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1979-04-27 第87回国会 衆議院 決算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月二十七日(金曜日)    午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 宇野  亨君 理事 國場 幸昌君    理事 津島 雄二君 理事 森  美秀君    理事 馬場猪太郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       玉生 孝久君    西田  司君       高田 富之君    楯 兼次郎君       春田 重昭君    安藤  巖君       田川 誠一君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         警察庁長官官房         会計課長    城内 康光君         警察庁刑事局長 小林  朴君         北海道開発庁総         務監理官    吉岡 孝行君         北海道開発庁計         画監理官    大西 昭一君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治大臣官房会         計課長     大嶋  孝君         自治省行政局長 柳沢 長治君         自治省行政局選         挙部長     大橋茂二郎君         自治省財政局長 森岡  敞君         自治省税務局長 土屋 佳照君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     根來 泰周君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         国税庁直税部所         得税課長    小野 博義君         会計検査院事務         総局第一局長  岩井  毅君         会計検査院事務         総局第二局長  藤井健太郎君         会計検査院事務         総局第三局長  松尾恭一郎君         北海道東北開発         公庫総裁    谷川  宏君         公営企業金融公         庫総裁     柴田  護君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況計算書     〔総理府所管警察庁北海道開発庁)、北海道東  北開発公庫自治省所管公営企業金融公庫〕      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管警察庁北海道開発庁北海道東北開発公庫自治省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。  それでは、順次概要説明を求めます。  まず、澁谷国務大臣から警察庁北海道開発庁及び自治省所管について概要説明を求めます。澁谷国務大臣
  3. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 昭和五十一年度警察庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十一年度歳出予算現額は一千十五億五千七百十一万六千百十一円でありまして、支出済歳出額は九百九十三億五千八百四十三万二千百三十円であります。  この差額二十一億九千八百六十八万三千九百八十一円のうち翌年度へ繰り越した額は六億一千三百六十一万一千円でありまして、これは関東管区警察学校生徒寮施設新築の際に地中に障害物が発見されて設計変更をしたこと等のために年度内に支出を完了することができなかったものであります。  また、不用となった額は十五億八千五百七万二千九百八十一円であります。これは、退職者が少なかったので、退職手当を要することが少なかったこと等のためであります。  次に、支出済歳出額の主な費途についてその大略を御説明申し上げますと、第一に、警察庁経費として六百二十八億五千七百八十一万九千五百四十四円を支出いたしました。これは、警察庁自体経費及び都道府県警察に要する経費のうち警察法規定に基づき国庫が支弁する経費として支出したものであります。  第二に、科学警察研究所の経費として五億七千八百五十万四百十五円を支出いたしました。これは、科学捜査、防犯及び交通についての研究調査等のための経費として支出したものであります。  第三に、皇宮警察本部経費として三十三億七千百九万六千七百三十一円を支出いたしました。これは、皇宮警察の職員の給与その他皇居の警備、行幸啓警衛等経費として支出したものであります。  第四に、警察庁施設費として二十七億九千八百九十七万八千四百四十九円を支出いたしました。これは、警察庁関係施設整備するための経費として支出したものであります。  第五に、都道府県警察費補助として二百九十七億二千八十六万三千円を支出いたしました。これは、警察法に定めるところにより、都道府県警察に要する経費の一部を補助する経費として支出したものであります。  第六に、他省庁から予算移しかえを受けた経費は、科学技術庁からの国立機関原子力試験研究費として九百五十万六千九百九十三円、環境庁からの国立機関公害防止等試験研究費として一千四十五万二千九百九十八円を支出いたしました。  第七に、都道府県警察施設災害復旧費補助として一千百二十一万四千円を支出いたしました。これは、警察法に定めるところにより、昭和五十一年九月に発生した暴風雨等によって災害を受けた県の警察施設について地方公共団体が施行する復旧費の一部を補助する経費として、予備費を使用して支出したものであります。  以上、警察庁関係歳出決算について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。  次に、昭和五十一年度における北海道開発庁決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  北海道開発庁は、北海道総合開発計画について調査、立案し、及びこれに基づく事業実施に関する事務調整推進を主たる任務としております。  当庁に計上されている経費は、北海道開発事業費及び北海道開発計画費並びに一般行政費等でありますが、このうち開発事業費につきましては、総合開発の効果的な推進を期するため一括計上されているものでありまして、治山治水対策道路整備港湾空港整備農業基盤整備等事業費であります。  これら開発事業執行に当たりましては、関係各省所管一般会計への移しかえまたは特別会計への繰り入れ措置を講じ、直轄事業については北海道開発局が、補助事業については道、市町村などが実施に当たっているものであります。  昭和五十一年度の当初予算額は三千七百五億五千百二万円余でありましたが、これに予算補正追加額百二十八億四千七百九十四万円余、予算補正修正減少額四千三百十三万円余、予備費使用額二十五億一千八百五十九万円、前年度繰越額十億七千九百十二万円余を増減いたしますと、昭和五十一年度総額は三千八百六十九億五千三百五十四万円余であります。  この総額のうち、前述のとおり開発事業執行のため関係各省所管への予算移替減少額が千四百三十八億四千七百三十一万円余ありまして、昭和五十一年度北海道開発庁歳出予算額は二千四百三十一億六百二十二万円余となります。  この歳出予算現額に対し、支出済歳出額は二千四百二十七億五千三十三万円余、翌年度繰越額三億一千六百五十一万円余でありまして、その差額三千九百三十八万円余は不用額であります。  次に、各省所管別移しかえ及び繰り入れ状況を申し上げますと、移しかえた額は、厚生省所管へ六千三百二十八万円、農林省所管へ千九十九億四百四十三万円、運輸省所管へ二億九千二百五十万円、建設省所管へ三百三十四億九千五百十万円余、通商産業省所管へ九千二百万円、合計千四百三十八億四千七百三十一万円余であります。  また、特別会計への繰り入れとして支出した額は、農林省所管国有林野事業特別会計へ六十五億五千八百六十九万円、運輸省所管港湾整備特別会計へ二百二十二億四千八百八万円余、運輸省所管空港整備特別会計へ二十億五千六百二十九万円余、建設省所管治水特別会計へ四百八十九億三千七百七十五万円余、建設省所管道路整備特別会計へ千百九十五億一千九百七十一万円、合計千九自九十四億二千五十四万円余であります。  次に、その他の経費支出につきましては、北海道開発庁一般行政費七十三億六千二百八万円余、北海道開発計画費一億二千三百四十五万円余、北海道開発事業指導監督費四億三千六十四万円余、北海道開発事業の各工事諸費三百五十三億八千百六十万円余、北海道特定開発事業推進調査費三千百九十九万円余であります。  以上、北海道開発庁決算概要を御説明申し上げましたか、何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。  次に、昭和五十一年度における自治省所管決算につきまして、概要を御説明申し上げます。  一般会計歳出決算につきましては、歳出予算現額は、当初予算額四兆六百六十三億八千七百八十七万円余、予算補正追加額三千八百二十八万円余、予算補正修正減少額六億五千五万円余、総理府所管から移しかえを受けた額一千四百八十七万円余、前年度繰越額三千六百三十五万円、予備費使用額九億五千五百十五万円余、合計四兆六百六十七億八千二百四十八万円でありまして、これに対し、支出済歳出額は四兆六百五十二億八千七百八十四万円余で、差額十四億九千四百六十三万円余を生じましたが、この差額のうち、翌年度繰越額は七億六千九百九十八万円余、不用額は七億二千四百六十五万円余であります。  以下、支出済歳出額の主なものにつきまして、御説明を申し上げます。  まず、地方交付税交付金でありますか、歳出予算現額は三兆八千九十六億五千五百九十六万円余、支出済歳出額は三兆八千九十六億五千五百九十六万円余でありまして、全額支出済であります。この経費は、交付税及び譲与税配付金特別会計法に基づき、昭和五十一年度所得税法人税及び酒税の収入見込み額のそれぞれ百分の三十二に相当する金額合算額から昭和四十九年度地方交付税に相当する金額を超えて繰り入れた額を控除した額を、交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れたものであります。  次に、臨時地方特例交付金でありますが、歳出予算現額は六百三十六億円、支出済歳出額は六百三十六億円でありまして、全額支出済であります。この経費は、昭和五十一年度地方財政状況を考慮し、その健全な運営に資するための特例措置として、地方交付税法等の一部を改正する法律に基づき、交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れたものであります。  次に、交付税及び譲与税配付金特別会計借入金利子財源繰入でありますが、歳出予算現額は六百八十九億八千九百万円、支出済歳出額は六百八十九億八千九百万円でありまして、全額支出済みであります。この経費は、交付税及び譲与税配付金特別会計法に基づき、借入金及び一時借入金利子支払いに充てるために必要な金額交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れたものであります。  次に、衆議院議員選挙費でありますが、歳出予算現額は百六十七億四千四百五十一万円余、支出済歳出額は百六十六億三千九百六十二万円余、不用額は一億四百八十八万円余となっております。この経費は、衆議院議員選挙執行に要したものであります。  次に、交通安全対策特別交付金でありますが、歳出予算現額は四百九十八億三千七百四十三万円余、支出済歳出額は四百九十八億三千七百四十三万円余で全額支出済みであります。この経費は、交通安全対策の一環として、反則金に係る収入額に相当する金額を、道路交通安全施設の設置に要する費用に充てさせるため、都道府県及び市町村に対し、交通安全対策特別交付金として交付したものであります。  次に、地方債元利助成費でありますが、歳出予算現額は七十億七千五百五十四万円余、支出済歳出額は六十九億五千九百七万円余、不用額は一億一千六百四十七万円余となっておりまして、この経費は、新産業都市の建設及び工業整備特別地域等整備に係る地方債特別調整分に対する利子補給金として、道府県に対し、交付したものであります。  次に、地方公営企業助成費でありますが、歳出予算現額は二百三億八千九百十八万円余、支出済歳出額は二百二億六千三百八十四万円余、不用額は一億二千五百三十四万円余となっておりまして、この経費は、公営地下鉄事業特例債利子に係る助成金として、地方公共団体に対し、交付したもの等であります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金でありますが、歳出予算現額は百五億円、支出済歳出額は百五億円で全額支出済みであります。この経費は、いわゆる基地交付金でありまして、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し交付したものであります。  次に、消防施設等整備費補助でありますが、歳出予算現額は八十五億三千七十一万円余、支出済歳出額は七十六億八千三百三十八万円余、翌年度繰越額は六億五千万円、不用額は一億九千七百三十三万円余となっておりまして、この経費は、消防施設等整備に要する経費の一部を関係地方公共団体に対し補助するために要したものであります。  以上が一般会計歳出決算概要であります。  次に、交付税及び譲与税配付金特別会計決算につきましては、歳入予算額は六兆八千四百六億七千二百万円余でありまして、これに対し、収納済歳入額は六兆八千五百二十四億九千四百八万円余となっております。  また、歳出予算現額は、歳出予算額六兆八千四百六億七千二百万円余、予算総則規定による経費増額七十五億二千六百三十四万円余、合計六兆八千四百八十一億九千八百三十五万円余でありまして、これに対し、支出済歳出額は六兆八千四百七十億五千九百四十五万円余、不用額は十一億三千八百八十九万円余であります。  不用額を生じましたのは、国庫余裕金を繰りかえ使用したことにより一時借入金利子等を要することが少なかったこと等によるものであります。  支出済歳出額の主なものは、第一に、地方交付税交付金五兆一千八百七十四億四十九万円余でありまして、これは、地方団体基準財政需要額基準財政収入額を超える場合にその財源不足額に応じて必要な財源を、また災害その他特別な財政需要等に対し必要な財源を、それぞれ地方団体に交付したものであります。  第二に、地方譲与税譲与金三千二十七億二千二百九十七万円余でありますが、これは、地方道路譲与税譲与金石油ガス譲与税譲与金航空機燃料譲与税譲与金自動車重量譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金として関係地方公共団体に譲与したものであります。  以上、昭和五十一年度自治省所管決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 加藤清二

    加藤委員長 速記をとめてください。     〔速記中止
  5. 加藤清二

    加藤委員長 速記を始めてください。  次に、会計検査院当局から検査の概要説明を求めます。藤井会計検査院第二局長
  6. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 昭和五十一年度警察庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  7. 加藤清二

  8. 松尾恭一郎

    松尾会計検査院説明員 昭和五十一年度北海道開発庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  9. 加藤清二

  10. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 昭和五十一年度自治省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  11. 加藤清二

  12. 谷川宏

    谷川説明員 北海道東北開発公庫昭和五十一年度決算について、概略を御説明申し上げます。  当公庫昭和五十一年度事業計画は、当初、総額千二百四十億円の出融資うち貸付千二百三十億円、出資十億円を予定しておりました。  これに対し実績は、苛性ソーダ製法転換緊急融資向け資金が予定を二十一億七千五百万円下回ったこと等により、貸付千二百十一億六千七百万円、出資六億五千八百万円、合計千二百十八億二千五百万円となりました。  これらの原資調達状況は、政府出資金十六億円、政府借入金三百五十九億円、債券発行六百二十四億九千五百九十五万円、うち政府保証債四百九十九億九千八百七十五万円、政府引受債百二十四億九千七百二十万円、及び自己資金二百十八億二千九百五万円、合計千二百十八億二千五百万円となっております。  この年度決算は、貸付金利息収入、滞貸償却引当金戻入等益金総額が六百十四億二千八百八十一万円余、支払い利息事務費等損金総額が滞貸償却引当金繰り入れ前で四百三十三億三百六万円余となり、差額百八十一億二千五百七十四万円余のうち滞貸償却引当金として百七十三億七千二十三万円余、うち当該年度引当増額十億八千四百七十八万円余を繰り入れました後、利益金七億五千五百五十一万円余を生じました。この利益金は、全額国庫に納付いたしております。  かくいたしまして、昭和五十一年度末における主な資産の状況は、貸付金残高四千七百十五億千五十四万円余、出資金五十二億三千五十万円となり、これに対する政府出資金は百五十五億円、また主な負債の状況は、政府借入金残高千四百六十七億五千四百五十一万円余、債券発行残高三千四十三億五千四百四十万円、滞貸償却引当金残高百七十三億七千二十三万円余となりました。  以上、昭和五十一年度北海道東北開発公庫決算概要を御説明申し上げましたが、何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  13. 加藤清二

  14. 柴田護

    柴田説明員 公営企業金融公庫昭和五十一年度業務概況について御説明申し上げます。  昭和五十一年度における貸付計画額は当初五千五百三十億八千万円でありました。  これに対し、貸付実行額は五千四十四億七千二百六十万円であり、前年度と比較して八六%の増になっております。  一方、この原資としては、産業投資特別会計からの出資金五億円、公営企業債券発行による収入四千八百七十七億百十万円及び貸付回収金等資金百六十二億七千百五十万円を充てたのでございます。  なお、当年度における元利金回収額は千七百九十五億六千四十六万円余でありまして、延滞となっているものはございません。  貸付実行額の内訳は、地方公共団体の営む上水道事業下水道事業等に対するもの四千八百四十六億二千九百十万円、地方道路公社及び土地開発公社に対するもの百九十八億四千三百五十万円となっております。  以上により、当年度末における貸付残高は一兆六千四百五十二億八千九百六十五万円余になり、前年度残高と比較して三五%の増になったのでございます。  以上のほか、短期貸付として二千百十二億八千百万円の貸し付けを行いました。  また、農林漁業金融公庫から委託を受けて公有林整備事業及び草地開発事業に対し百七十八億三千万円の貸し付けを実行しました。このため、受託貸付当年度末における貸付残高は八百七十一億四千八百六十八万円余になっております。  次に、当年度における公営企業債券発行額は五千五百二十五億円でありまして、このうち公募債が三千五百十七億五千万円、縁故債が二千七億五千万円であります。  なお、これらの債券発行による収入のうち五百八十九億二千六百四十万円は、昭和四十四年度発行した債券満期償還に必要な資金に充てたものでございます。また、縁故債のうち二百九十八億五千万円は低利の債券発行いたしました。  次に、公営企業健全化基金について申し上げますと、当年度における公営競技納付金収入額二百八億七千六十五万円余を基金に充て、当年度における基金運用益から基金管理費用及び利下げ所要額を差し引いた残額十九億七千五十六万円余を基金に組み入れました結果、当年度末における基金総額は八百七十六億五千十六万円余になりました。  次に、収入支出状況について申し上げますと、収入済額は、収入予算額千七十六億八千四百五十九万円余に対し、千七十八億四千八百二十三万円余、支出済額は、支出予算額千百六億八百七十七万円余に対し、千八十二億五千八十一万円余でありました。  また、損益の状況でございますが、貸付金利息等利益金総額千百二十六億七千八百二十三万円余に対し、債券利息及び事務費等損失金総額千百十八億四千六百二十一万円余でありまして、差し引き八億三千二百一万円余を各種の償却に充当いたしましたので、利益金は生じておりません。  以上、昭和五十一年度公営企業金融公庫業務概況について御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  15. 加藤清二

    加藤委員長 これにて説明の聴取を終わります。
  16. 加藤清二

    加藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林孝知君。
  17. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最初に、十八日の政府与党連絡会議政治資金規正法見直しを図ることが決定されたわけでありますが、そのときに総理見直し指示がどういう音心図で、どういう内容で出されたかということがいま大きな問題になっているわけです。  大臣にお伺いいたしますが、政府・自民党として政治資金に関する規制緩和、こういう一つの動きといいますか、そういう声が強い、そういうことが現在重要視されているわけですが、この政府与党連絡会議出席された大臣として、またこうした政治資金規制緩和動き、こういうものに対してどのように考えられておるか、お伺いしたいと思います。
  18. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 政府与党連絡会議には私は出席をいたしておりません。その点についていろいろな新聞報道がなされたわけでございまして、私は政治資金の主管の大臣といたしまして閣議の席上で、いろいろ新聞報道がなされておるけれどもそれについての総理真意はどうなのか、質問をいたしたわけであります。それに対して総理からは、自分として政治資金緩和方向で見直せというような指示は一切いたしておらない、なおかつそれに加えて総理は、企業献金緩和ということについては時計の針をもとに戻すようなことであって、そのようなことはやるべきでもないし、またできもしないということをはっきり総理みずから私に対して答えられました。私はそれで総理真意がわかったわけでございますので、よくわかりましたということでその閣議の席上のやりとりは終わったわけでございます。
  19. 林孝矩

    ○林(孝)委員 われわれが政治資金規正法改正を担当して改正した意図というのもまさしくそういうことでございました。政治資金規制緩和というものを考えること自体、そうした法改正趣旨から言いますと、いま大臣がおっしゃったとおり時計の針をもとに戻すという行為だ。これは当時の社会背景、世論、そうしたものを考えますと、これまた民意を踏みにじるものであると私は思うわけでございます。  大臣にいま御答弁を願いましたことで、政治資金規正法規制緩和という方向ではないと明言されたことでこの問題は終わりますが、政治資金規正法の附則第八条の、五年後に検討を加える、こういう規定趣旨、これを踏んまえて大臣はこれからどのような手続を踏まれてこの五年後の検討に取り組まれるか、お答え願いたいと思います。
  20. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 御指摘のように政治資金規正法自体が五年後に見直す、こういうことを定めておるわけでございますから、自治省といたしましては当然この五年間の実績を踏まえまして、どのような改正をなすべきであるのか、それとも改正しないでいいのか、総合的な角度から検討をしなければならぬと考えております。  言うまでもなく、政治資金の問題は、政党及び政治家にとりましてきわめて重大な関係を持つ事項でございますので、これの取り扱いについてはあくまでも慎重を期さなければならぬということは当然でありますけれども、私どもといたしましては、各党それから各方面、国民の考え方、意見、そういったような点にまで十分ひとつ耳を傾けて五年後の改正に備えてまいりたい、このように考えております。
  21. 林孝矩

    ○林(孝)委員 五年後という一つのタイムリミットが設定されているわけでございますけれども、具体的にそうした、いま御答弁になった姿勢で行動に移されるめどというものは決まっておりますか。
  22. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 政治資金規正法が施行されてことしは四年目に入ったわけでございますから、五年後に見直す、こういう法律の規定でございますので、具体的な法改正の行動はまだ起こしておりません。ただいま申し上げたように、各党あるいは各方面の意見に十分耳を傾けていよいよ最終的な法改正の具体的な作業に入る準備を整えておる、こういうことでございます。
  23. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、今回の統一地方選挙で地方の時代、言いかえれば地域の時代とでも言いましょうか、そうした政治テーマというものが大きな話題を呼んだわけですが、そういう認識については各政党とも同じであったと思いますし、ここで国民の地方の時代、地域の時代というものに対する期待というものが非常に大きく浮かび上がっておる。これに対応する行政当局としての具体的な政策また行政というものが望まれるわけですけれども、この点だけ一点お伺いしておきたいのですが、大臣としてどのようなテーマを考えられておりますか。
  24. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 御指摘のように、今回の統一選挙で地方の時代ということが日本じゅうで叫ばれたわけでございます。これは明らかに一つの新しい時代に入りつつある、こういうことを示しておるものと私は受けとめております。つまり従来の日本の政治、行政のあり方は、言うまでもなく中央集権の方式であった。しかし、これからは、従来のように中央集権で何もかも中央に集中したというやり方ではなしに、地域の住民に一番密着しておる、また一番事情のわかる地方自治体というものにもつともっと現在よりも権限を与え財源を与えて、地方自治体が自主的に主体性を持って政策を実行できるようなそういう条件を整備しなければならぬ、こういうことを意味しておるものと私は考えております。私はまさにそういう方向にこれからの日本は進まなければならない、こういうふうな認識に立ってこの問題とひとつ真剣に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  25. 林孝矩

    ○林(孝)委員 具体的な内容について、たとえば財政上のことであるとかあるいは税制上のことだとか、いろいろあると思うのですけれども、具体的なプランニングはなされておりますでしょうか。
  26. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 これは大きく言いますと、明治以来の日本の政治のあり方というものが中央集権のあり方であった、こういうふうに考えられます。それを今度は重点をずっと地方に移していくということは、大きく言って明治以来の日本の政治、行政のあり方の大転換を意味しておるわけでございまして、その持つ意味、内容というものは非常に大きなものを持っておるわけでございます。  そしてこの地方の時代、地方分権というものを実現するために中心になるものは、私は大きく言って二つだと思うのです。  一つは、やはり中央の持っておる権限を、中央と地方の仕事の分担というものがどうあるべきなのか、そういった意味での事務の再配分、そして方向としてはもっともっと地方に対して行政の権限を与えていく、こういう方向が一つだと思います。  それからもう一つは、仕事をやるためには当然金が要るわけでございますから、地方にもっともっと自主的な財源を与えていかなければならない。仕事と金と、この両方を地方にもっともっと重点を移して充実をさせていかなければならぬ。大きく言って、方向としてはこういうことだと思うのです。  言うことは簡単でございますが、さあこれを実行するということになりますると、これは百年余にわたる日本の政治、行政の構造に大きな変革を実行するという大事業でございますから、そう簡単に短期間にできるものと私は考えておりません。しかしながら、方向としてはまさしくそういった方向に向かって行財政の改正、変革というものを逐次実行していくべきものだ、こういうふうに私は考えております。
  27. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは次に、北海道総合開発計画についてお伺いいたします。  五十五年までに第三期の北海道総合開発計画実施されることになっておったわけです。それが現在、完全に挫折といいますか行き詰まりといいますか、そういう状態に置かれておる。そういうことで、政府が新たに新北海道総合開発計画というものを策定して、昨年度から六十二年度までのプランで総合開発に当たることになっているわけですが、二年目に入ってどういう進捗状況にあるのか、当然把握されておると思うのです。  もう一つは、過去にそうした行き詰まり、挫折というものを経験した新たなプランでございますので、当然過去と今日の腹構えといいますか、そういうものも変わっていなければならないと思いますし、その点あたりをどのように受けとめておられるのか、お伺いしたい。  それから、北海道東北開発公庫の立場から、やはりこの計画に対して取り組む姿勢というものがあると思いますので、お伺いしたいと思います。
  28. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 御指摘のように、新北海道総合開発計画が策定されまして、ことしはその二年目に当たっておるわけであります。新しい総合開発計画は、これからの日本の進み方というものを展望して、その中で北海道の総合開発をどう進めていくかという青写真を関係方面のいろんな人が参加されて策定されたものでございますから、私はこの新しい総合開発計画はこれからの北海道総合開発計画のいわば憲法的なものである、このように受けとめております。そういう意味でこの二年目、実態的には本格的な開発計画に取り組む実質的な初年度と言ってもいい、そういう大事な二年目であると私は考えておりまして、そういう意味でこの五十四年度予算編成に当たりましても、この二年目というものを順調に総合開発計画を軌道に乗せるか乗せられないかという大事なポイントの年であると考えまして、最善の努力を払ったっもりでございます。結果といたしまして、御承知のように開発費全体の予算としては前年度に対して二二%の増額というものを獲得したわけであります。国の経費で大体七千億程度にまで達したわけでございまして、これは新しい総合開発計画の各年次別の進捗度というものと照らし合わせて見ましても、この予算は十分にこの開発計画を進められる、軌道に乗せ得る予算であると私どもは確信をいたしておるわけでございます。
  29. 谷川宏

    谷川説明員 お答え申し上げます。  北海道東北開発公庫の北海道開発の面に果たすべき役割りというのは、全体から見ますると必ずしも大きくはないと思いますけれども、ただいま大臣が仰せられましたように、公共事業費その他の国の財政が積極的に投下され、そして企業の進出、活躍の地盤ができ上がるのと表裏一体となりまして、民間の企業が、地元企業のみならず北海道以外の地域からの企業の進出か容易になる情勢のもとにおきまして、民間の資金だけでは企業活動をしていく上において不十分の場合に、積極的に長期の設備資金あるいは長期の運転資金を民間に供給することによりまして北海道に企業が新たに進出をし、また従来の企業ともども企業活動を積極的にやるための金融的な支援を積極的にやるのが任務でございます。その場合に、私どもは、単に国あるいは道の計画ができ上がるのを待って金融をつけるのでは物足らないんじゃないか、その計画に即した実行計画か進行する過程におきまして、公庫の者も中に溶け込みまして企業化に参加することによりまして、北海道の新しい発展計画の中で民間の資金が不足している面におきまして長期低利の資金をできるだけ企業の立場に立って考えて供給する、そういう積極的な姿勢が必要だと私は思うわけであります。  ただ、政府機関でございまするので、金利の率の限度にも制約がございまするし、また、資金の面におきましても予算の制約がございますけれども、その制約のもとで、北海道の発展のために、私どもは従来以上に十二分に役割りを果たすように努力するつもりでございます。
  30. 林孝矩

    ○林(孝)委員 前計画が、昭和五十年代前期経済計画などに示されている中長期経済政策に適合するように策定された、このようにうたわれているわけですが、この中長期経済計画は、現在政府によって改定作業が進められているわけです。そうしますと、その五十年代前期経済計画というものに基づいて行われた北海道の開発計画、そのもとかいま改定作業が進められておる、中期経済計画ですね。それか改定されておるということになりますと、この新しくスタートした新開発計画も当然それに伴って見直されなければならないんじゃないかというふうにも考えるわけですが、この点はいかがでしょうか。
  31. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 社会経済七カ年計画、その骨組みはもう閣議でも発表されましたし、国会にも報告をしておるわけでございますが、その肉づけ作業をいまやっておるわけであります。間もなくこれは最終的に固まってくるだろうと思うのでありますが、その固まったものが出た段階でこの北海道総合開発計画というものを見直す必要があるのかどうか、これは真剣に、しさいに点検をしなければならぬ、このように考えております。  ただ、現在の私の感じとしては、この北海道新総合開発計画というものはかなりいろいろな点を予測して、これからの日本の進みぐあい、そういったものを十分に検討した上でつくられております。特に三全総との関係あたりのすり合わせというものも十分行われておりますので、そう大きな変更は必要はないのではないかという、これは現在の私の感じでございますが、いずれにいたしましても、最終的に中期経済計画というものが出された段階でこれはひとつ真剣に検討してまいりたいと考えます。
  32. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで具体的な問題に入りますが、北海道開発の拠点の一つであります苫小牧臨海工業地帯の開発計画、これは昭和二十五年の北海道庁と北海道大学の共同港湾調査研究から開始されたものでありますが、いまだに完成されていない状況にあるわけであります。大臣御存じだと思います。この二十六年より着工された港湾建設について、その建設実績、現在までの投資額、今後の計画、この三点をお伺いしたいと思います。
  33. 大西昭一

    ○大西政府委員 ただいま林先生から御指摘がございましたように、苫小牧臨海工業地帯の核になります、苫小牧西港とわれわれ言っておりますが、西港の港湾整備につきましては、昭和二十六年度に着工いたしまして、昭和五十三年度までに総事業費約三百九十一億円を費やしておりまして、東防波堤、西防波堤等防波堤約三千五百メーター、公共岸壁約四千二百メーター、外港区、内港区、商港区あるいは工業港区等の航路の泊地四百六十万平方メートル等の整備を進めてきたところでありまして、現在の港湾計画の主要な事業につきましてはほぼ完了しておるという状況になっております。  ちなみに、現在の苫小牧西港の港湾取り扱い貨物量は、昭和三十八年にこの供用を開始いたしまして、五十三年度には約四千三百万トンの港湾取り扱い貨物量でございまして、いま申し上げました港湾施設はほとんどフルに利用されておるという状況でございます。
  34. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この重化学工業を主体とした大規模臨海工業地帯を目指す苫小牧西部工業地帯、ここの産業配置、産出主要品目及び規模、これについてお伺いします。
  35. 大西昭一

    ○大西政府委員 苫小牧臨海工業地帯における工業の立地想定は、実は三十二年に北海道開発庁が作成いたしました苫小牧臨海工業地帯造成計画の構想というふうなもので、これが基本計画と申し上げていいかと思いますが、明らかにしたところでございます。その後、具体的なその立地に当たりましては、この基本構想を踏まえながら、内外の経済情勢を配慮しながら、現実的な選択をしてまいったところであります。したがいまして、いま考えております立地想定は、当初考えたものとかなり変更は来しております。  現在臨海部において想定いたしております業種あるいは規模についてお答え申しますと、石油精製日産十万バレル、アルミ精練年産十三万トン、これはアルミナ三十六万トンを含みます。このほか苛性ソーダあるいは化学肥料、石油製品等を主品目とする化学工業あるいは製材合板等の木材木製品工業、鋼材、機械部品、飼料等の関連工業を考えております。なお、電力につきましては、現在すでに重油火力百万キロワットの規模の電力が立地いたしております。
  36. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ここでも二十六年からですから相当年月がたって、当然計画も変更を迫られたことは言うまでもないことですか、事業主体として苫小牧港開発株式会社ですか、いわゆる第三セクター、これが参加しているわけです。政府は北海道開発に当たって第三セクターを積極的に参加させた、そして事業推進を図っているわけでありますが、この第三セクターを積極的に参加させた意図、これは一体どういうところにあるのか、具体的なメリットについて伺いたいと思います。
  37. 大西昭一

    ○大西政府委員 昭和三十二年に先ほど申しました基本構想をつくったわけでございますが、当時としては実は第三セクター方式というのは今日のようにそれほど一般的ではなかったわけでございますけれども、この苫小牧臨海工業地帯造成計画はかなり長期にわたる事業であるし、事業の範囲もかなり広範にわたるというふうなことであります。また、その計画を総合的に進めるためには、国あるいは地方公共団体が行う公共事業が主体でございますが、それに対応いたします民間部門が担当すると考えられます事業分野につきまして、それを一体的、総合的に進めるというためには、民間の活力と民間の資金を導入して、事業そのものを準公共的な事業として推進することが開発を進める上で効果的だというふうに考えまして、第三セクター方式によりまして、ただいま御指摘がございました苫小牧港開発株式会社というものを設立いたしまして、開発の推進の主体というふうにいたしてまいったわけでございます。
  38. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうして結果論ということになりますけれども、効果の点はどのように評価されておりますか。
  39. 大西昭一

    ○大西政府委員 実はこの苫小牧港開発株式会社が担当いたします事業は工業用地の造成がメーンでございますけれども、そのほかに当時、今日もそういう事情がますます起こってきたと思いますが、当時非常に問題でありました北海道の産炭地における石炭の流通合理化、輸送コストを低減させるというふうなねらい、石炭輸送の合理化というふうなことがもう一つございまして、そんな関係から石炭荷役事業というのが工業用地の造成とあわせまして当時非常に大きな事業でございました。これらにつきましては、あくまでも石炭各社の協力を得ながらできるだけ輸送体系の合理化を図るというふうな必要がございましたので、それらを勘案いたしまして、実は民間資本の参加をいただいて第三セクターを設立したわけでございます。そのことによりまして、当時室蘭、小樽から道外に輸送されておりました石炭は、大半が石狩炭田から最も近い苫小牧港から道外に搬出されるというふうなことになりまして、最盛期には約四百万トン近い石炭を道外にこの苫小牧港から出しておりました。  そういうふうなことから、民間の活力と機動性というふうなことを活用する意味では十分に効果があったと思いますし、また工業用地の造成あるいは分譲につきましても、いわゆる民間企業としてのメリットを生かしながら今日まで造成あるいは分譲にかなり成果を上げてきたというふうに考えております。
  40. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この開発計画のうち分譲対象となっている用地、これは千五百八ヘクタールだと思いますが、そのうち分譲済みの面積、それから未分譲面積かあると思うんです。その分譲面積は千二百十六ヘクタール、それから未分譲面積は二百九十二ヘクタールある、このようになっているわけです。この二百九十二ヘクタールの未分譲部分の造成工事着工、これと完工というものはいつになっておるのか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  41. 大西昭一

    ○大西政府委員 ただいま苫小牧港開発株式会社が今日まで行っております土地の分譲状況を最初にちょっと御説明申し上げたいと思います。  五十四年、今年三月末でございますが、臨海部の工業用地の分譲対象面積、これは先生いまお話がございましたが、分譲対象面積は千百七ヘクタールでございます。そのうち分譲済みが九百七十六ヘクタールで約八八%になります。それから内陸部の準工業用地につきまして、分譲対象面積が二百六十七ヘクタールでございまして、そのうち百六十七ヘクタール、約六三%が分譲済みでございます。それからさらに内陸部に従業員住宅用地といたしまして、関連する工場、立地する工場の従業員の住宅用地を考えておりましたが、それの分譲対象面積が百三十四ヘクタールでございまして、このうち七十三ヘクタール、約五四%が分譲済みでございます。こうやってそれぞれ種類別にあれをいたしますと、未分譲用地というのは御指摘のとおり二百九十二ヘクタールになります。  このうち臨海部の工業用地あるいは内陸部の準工業用地の未分譲の土地、両方合わせまして百六十ヘクタールはすでに造成済みでございまして、その残りの百三十二ヘクタール、住宅用地とそれから内陸部の準工業用地、両方足しまして百三十二ヘクタールばかりがまだ未造成の状態でございます。この未造成のものにつきましては、今後の企業の立地動向などを見きわめながら造成を進めるというふうな方針を目下のところ会社は持っておるというふうなことで、具体的に余り先行的に造成をして寝かせるというのもむだだというふうなことからそういう方針でおりますので、いつ造成をして完了するかというふうなことは、ちょっといまのところ具体的な計画を持っておりません。
  42. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、北海道東北開発公庫は、資本金十二億五千万円のこの苫小牧港開発株式会社に対して幾ら出資をしておりますか。
  43. 谷川宏

    谷川説明員 四億三千五百万円であります。
  44. 林孝矩

    ○林(孝)委員 配当は幾らになっておりますでしょうか。  さらに、この工業地帯に立地している企業に対する融資状況説明してください。
  45. 谷川宏

    谷川説明員 苫小牧港開発株式会社からの配当はまだ受け取っておりません。だんだん業績もよくなってまいっておりまするので、今後その業況によりまして配当を受けることが起こり得ると思いますけれども。  それから次に、苫小牧工業地区西地区に立地している企業に対します公庫貸付金でございますけれども、現在までのところ約九百億円融資をしております。
  46. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、分譲順に先ほど説明がありました用地の千二百十六ヘクタールの売却先二百八十三社のうち、工場等が操業中のものは何社ありますか。それから、その用地面積はどれくらいありますか。
  47. 大西昭一

    ○大西政府委員 分譲済みが千二百十六ヘクタールでございまして、分譲対象会社は二百八十三社でございます。  その操業の状況でございますが、臨海部について申しますと、分譲済み七十二社、九百七十六ヘクタールのうち、四十五社、その面積が七百十二ヘクタール、これか操業中でございます。それから、内陸部の準工業用地について申しますと、分譲済みが百八十一社でございまして、面積で百六十七ヘクタールのうち、百三十三社、面積にいたしまして百四十二ヘクタールが操業中でございます。それから、内陸部の従業員住宅用地につきましては、分譲済みが三十社、七十三ヘクタールのうち、十六社、四十五ヘクタールが使用済みでございます。
  48. 林孝矩

    ○林(孝)委員 先ほど来、ずっといろいろな角度から開発計画並びに実施状況についてお伺いしておるわけですけれども、いままでの段階で感じますことは、いわゆる昭和二十六年以来今日まで非常に長期にわたってのこの開発でございますが、現在、未操業の実態というものを見ても、八十九社、三百十七ヘクタールに上る工場が未操業である、こういう点。あるいは未分譲の面積がさらに二百九十二ヘクタールある、こうした問題。それから先ほど、この開発公庫から苫小牧港開発株式会社に対して四億三千五百万出資がなされているけれども配当がいまだ起こっていない、将来事情によっては起こり得るであろうというような状態、非常に憂慮される。これは問題意識の受けとめ方であると思いますけれども、私は、憂慮すべき状態であろう、北海道にとってこの総合開発、これは非常に歓迎される面があり、また計画があっても実施状況がこういう状況であるということについては憂慮される面がある、こういうことだと思うのです。  それで、さらにお伺いしていきますけれども、北海道庁及び苫小牧市当局などにおいて、苫小牧西部工業地帯企業進出予定の未立地企業の動向調査、こういうものを五十二年の八月と五十二年の七月に実施しているわけです。五十二年の時点で、この工場等の着工予定を五十三年着工としていたもの、これは食料品製造業A社、B社。木材、木製品の製造業C社、D社。石油製品製造業E社。窯業、土石製品製造業F社。一般機械機具製造業G社。この七社が五十三年着工予定として挙げられておったわけです。これらの着工予定が一年後の調査でどのようになっているか御存じでしょうか、政府は。
  49. 大西昭一

    ○大西政府委員 先生から御指摘がございましたが、進出企業のいつから工場の建設に入るかというふうなその動向等につきましては、毎年北海道、それから苫小牧市、それから先ほどの第三セクターと申しました苫小牧港開発株式会社が合同で直接企業から事情聴取をいたして、実態の把握と立地の促進についていろいろ努力している、そういうことも毎年やっております。私どももその状況等につきましては逐次報告を受けておりまして、ただいま五十二年と五十三年の状況はどうかというふうなことでございますが、五十二年で五十三年度中に着手するというのが、五十三年の調査ではそれがかなりスローダウンして、また先に延びておるというふうなことについては、この合同でヒヤリングをしたところから私どももその状況は聞いております。
  50. 林孝矩

    ○林(孝)委員 具体的に言いますと、五十二年の調査で一年後着工という予定であったもののうち、このいま私申し上げました業種別の七社のうち、どれ一つとして着工できていない。五十三年度着工はゼロです。着工時期を一年あるいは二年延期し、あるものはめどさえついてない、こういうのが実情なんですね。ですから、政府の新産業都市計画構想、こういうものに乗って展開されてきたこの大規模プロジェクトの現状というもの、その一端がこの苫小牧西の開発計画の中にうかがわれるわけです。  したがって、私どもは、この新産業都市計画構想によって展開されてきた大規模プロジェクトの将来について、いろいろな立場で、たとえば予算委員会の審議であるとかあるいは地方行政委員会であるとか、いろいろな場で、いろいろな問題を指摘してきたわけでありますけれども、ここに至ってこうした実情というものが現実に存在しておる。  先ほど来、答弁を聞いておりまして、十分目的を達成する可能性がある、また現在非常に好調であると受け取られるような発言が多かったわけでありますけれども、いま指摘しましたように現地の地方自治体の北海道庁及び苫小牧市当局の調査ですから、これによって進出予定の企業が五十二年度で七社あったのが五十三年度着工というのが一社も着工できないというような状態は、どこにその原因があるのか、どうすればそうした予定どおり企業誘致というものができるのか、こういう点は非常に私は大事だと思うのです。過去に決算委員会において東部苫小牧開発ですね、あそこの現地調査委員会としてしたことがあるわけですけれども、あそこも造成は全部完了しておるけれども、誘致する企業がゼロであります。それで第三セクタ——収益ゼロ、こういう実態がありました。いまこの西部の場合も同じように五十二年八月に調査した結果、この七つの企業が五十三年度着工、ところが五十三年度になってみますと一社も着工できない、めども立たないというところも中にはある、こういう実態なのですね。ですから、問題意識としてどういうふうにとらえるかということは非常に立場によって違ってくると思いますけれども、やはりその計画、これは何もためにする計画ではなかったと思います、北海道総合開発ということでございますから。それが北海道の道民に対してどういうメリットを与えていくか、これは非常に大事なことなわけですね。  ここで私は大臣に伺っておきたいわけでありますけれども、まずどういう意識でとらえられているか、ここから始まらなければいかぬと思う。それと、どうしてこういう現状なのか。原因の問題を解決して初めて結果として目的が達成されるわけですから、その辺の分析というものをなされてきたと思いますが、将来のためにその点に関してお伺いしておきたいと思うのです。
  51. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 お話のように、この苫東地区における企業の進出状況というものが芳しい状態ではない、これは御指摘のとおりだと思います。それで、その不振の原因は一体どこにあるのかという御質問でございますが、やはり一番基本の原因は日本経済全体のこの長い不況、これがやはり最大の原因だというふうに私は認識をいたしております。  とにかく御承知のように、全体として非常な過剰設備を抱えて、操業率が一時はもう七〇%を割るというような状態にまで落ち込んだ日本の経済でございますから、そういう状態の中で北海道にだけ企業がどんどん工場を建てるというようなことは、これはもう期待しても無理なわけでございますから、やはりその根本的な対策としては、日本経済全体としての景気の回復、そして経済の成長を促進をするという、これがやはり基本の対策であろうと私は考えております。  ただ、それは全体としての意見でございまして、さらにこの分析をして、やはり全体として日本の経済がそれだけ活気を取り戻しても、北海道の苫小牧地区に企業がどんどん出てきてくれる、それを実現するためにはさらにやはり幾つかの条件というものが整備されなければならない、このように私は考えておるわけであります。  とにかく、内地から非常に離れた距離にあるというハンディキャップを背負っておるわけでありますから、そのハンディキャップを克服するだけの何らかの有利なプラスの条件というものを私は準備すべきではないか、こういうふうに考えておりまして、それにはやはり財政面の援助も必要でございましょうし、金融面の援助も必要であろう、そういったような総合的な立場で企業の北海道進出というものがもっと活発になるように努力をしていかなければならぬ、私はこのように考えております。
  52. 林孝矩

    ○林(孝)委員 全くおっしゃるとおりで、非常に計画どおり事が進んでおるということではなしに、逆に憂慮されなければならない実情にある。先ほど挙げた七社のほかにもあるのです。五十四年度着工予定だった食料品製造の会社、五十五年、やはり食料品製造の会社、五十四年着工予定だった木材木製品製造会社、五十四年着工予定であった会社、こうしたところが五十三年の調査では、着工については全く不明だ、こういうふうになっているわけです。ですから、企業立地計画の進捗については、五十二年の時点から五十三年度までわずか一年間の動向調査だけでもこうした事態の重大さが認識されなければならないわけです。  ですから、計画があって、どうしてもその計画というものを——先ほど変更する必要かないという話であったわけですけれども、企業が進出していけない事情というのは、これからまだ少し問題を指摘していきますけれども、あるのですね。ですから、着工計画というのは大幅に後退しておる、こういうふうに見ていいのじゃないかと思うのです。苫小牧西部工業地帯臨海部進出決定企業八十一社のうち、五十二年で操業中企業は四十九社あったけれども、現在何社になっておりますか。これはわかりますでしょうか。
  53. 大西昭一

    ○大西政府委員 私、ちょっと手元に資料を持っておらないものですから、後ほど御答弁させていただきたいと思います。
  54. 林孝矩

    ○林(孝)委員 結構です。  先ほど挙げました食料品製造B社の場合、五十三年着工を五十四年着工に延期するとともに、会社の起業内容を見ますと、設備投資金を二十三億から十四億に計画変更している。  それから、木材木製品製造のL社は、五十四年着工を五十五年にして、従業員百十一名を四十六名に減少させておる。資金三億三千万円を二億七千万円に計画修正しております。  金属製品製造のM社は、五十四年着工の予定を五十五年に延ばして、従業員三百二十名を百六十名に減少させる。設備資金十四億六千万円を十二億に縮小変更してしまっておるわけです。  それから、石油製品製造業のE社だとか、こういうところは敷地買収も非常に面積が広いわけでありますけれども、具体的な進出時期、設備施設、こういうものの計画は現在もう持っておりません。これは進出企業の中でも、経営の行き詰まりというものから十五ヘクタールの用地を手放した企業もある。ですから非常に問題が出てきております。  それから、化学工業のN社は十三ヘクタールの用地で操業しておったわけでありますけれども、業績が悪化したということから、最近操業を中止いたしました。  それ以外に広大ないまだ売却されない用地も抱えているわけです。したがいまして、苫小牧西部工業地帯の開発がこれで進行しているのかどうかということについては非常に大きな懸念を感ぜざるを得ないわけです。大臣に先ほど認識の問題を伺いましたけれども、この企業の立地動向についての実態調査政府自身の手で機動的に——私はいま苫小牧西部のみの問題を指摘しておりますけれども、他の開発プロジェクト地域においても、日本の現在の経済の状況から言いますと、同じようなことが大なり小なりあるのではないかと思うわけです。そういうこともありますので、政府みずからの手でこの実態調査をなされて、それを、冒頭に大臣がおっしゃったこれからの経済の見通し等を含めてこの事業推進に参考にされる、こういうことを一回やってみられたらどうか。これは提案なんですけれども、いかがでしょうか。
  55. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 御提案は、私は適切な提案だと考えます。とにかく予定どおり進んでおらないわけでございますから、その原因がどこにあるのか、そういった実態というものを正確につかむということが対策の第一歩でございますから、道庁とも連絡をとりましてその実態をつかむ、どういう方法がいいのかひとつ真剣に検討してみたいと思います。
  56. 林孝矩

    ○林(孝)委員 苫小牧市はこの港開発株式会社に対して三十三年以来一億三千万円を出資しているわけです。この財源地方債で賄っているわけでありますが、これは配当もないような状況なんですね。三十三年、三十六年、四十一年、四十三年、起債の償還期限到来済みの地方債の金利、これも相当に上るんではないかと思いますが、幾らぐらいになっておるのか、それから自治省としてこの苫小牧市に対して何か対策を考えられておるかどうか、この点をお尋ねいたします。
  57. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いまお示しのように出資総額一億三千万円でございまして、起債は一億二千七百万円でございます。その償還は五十四年三月末で全部済んでおりますが、利子合計額は六千二百四十四万七千円でございます。  こういう第三セクターに出資をいたします場合、相当な金額に上るわけでございますので、どうしても地方債資金として出資財源を求めるということになります。反面、それに従いまして利子負担が出てまいるわけでございます。ただ、こういうふうな出資をするかどうかということにつきましては、その地域の開発なりあるいは町づくりなりいろんな観点から市議会の御審議も経て市自体が判断をして決められることでございますので、私どもといたしましてこれについて特別の財政措置をしていくという考え方はいままでのところとっておりません。将来こういうふうな利子負担が市の財政上、運営上非常に大きな支障か生じるという事態が出てきたら、また要請が出てまいりますれば所要の検討をいたしたいと思っておりますが、当面のところは苫小牧市からもそのようなお話を承っていないのでございます。
  58. 林孝矩

    ○林(孝)委員 出資するときの情勢とそれからその後の情勢の変化によって起こることが可能な問題だと思うのですね。しかし、この金額を見てみますと、一億三千万の出資で、利子でいま御答弁ありました六千二百四十四万七千円と、非常に地方にとっては財政負担が大きくなってきている。この区域内に、苫小牧市の市有地二百二十四ヘクタールがあるわけです。五十五年度から五カ年計画で土地区画整理事業を興して分譲の予定になっておるわけですが、第三セクターの用地分譲というものはいま十分に進まない状況であるわけですから、当然市の開発計画も困難なことが予想されます。こうした問題に対してもいま御答弁があったように、特に国としては措置を講ずる方針がないのかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  59. 森岡敞

    ○森岡政府委員 第三セクターが行います用地造成に関連をして、その周辺のいろんな施設整備あるいは区画整理事業などを市自身として並行して行っていくという事態は当然生ずると思います。それらにつきましては、必要な公共投資の地方負担につきましては、地方交付税等の算定の際に一定のルールで計算をいたしておりますので、大体において私どもは所要の財源措置か講ぜられておると思います。ただ、地域地域によりましてかなり特殊な事情もあり得るかと思います。苫小牧市において特にそういうふうな特別の事情等がございますれば、また市当局からもいろいろ承りまして検討は進めてまいりたい、かように思います。
  60. 林孝矩

    ○林(孝)委員 現在北海道では、道庁それから開発局、通産局、市長会、町村会、北海道東公庫、地元経済団体、こうしたところが一体となって企業誘致、これを推進をしているわけですけれども、最後に、北海道の問題に限って私質問をしてきましたが、こうした北海道の総合開発の進捗状況、問題は指摘したとおりでございます。大臣の今後の方針といいますか、それを伺って次の問題に移りたいと思います。
  61. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 せっかく北海道総合開発の大きな目玉と申しますか、中心的なプロジェクトとして進めてまいっておりますこの苫小牧地区の総合開発、私も非常に重大な関心を持っておるわけです。不振である、こういう現実でありますから、先ほど来答弁申し上げておりますように、その実態をさらに正確に把握してどうすべきであるか、道庁とも十分ひとつ相談をして積極的に取り組んでまいりたいと考えます。
  62. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、アメリカのスリーマイル島の原子力発電所の事故、放射性物質、またそのほか爆発性物質、毒劇性物質、こういうものの質、量、これがますます増加しているということで大きな社会的問題になっておるわけでありますけれども、これら特殊災害に対処するための地域防災上の問題、これは現実に起こっておる問題はアメリカの事故でありますけれども、わが国としてこの特殊災害に対する対策、これをどのように強化していくべきか、これに対しては御意見をどのようにお持ちになっておりますか。
  63. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 今回のアメリカにおける事故、これは大変な災害であるわけでございますか、わが国も言うまでもなく、国内に原子力発電所を設置して活動をしておる。さらにまた今後も原子力発電を進めていく、こういう立場にあるわけでありますから、安全ということについては最大の努力を払っておるわけでございますけれど曲、事故というものが絶対に起こらないという保障はないわけでございますから、そういった事故が万一起こった場合にそれに対して防災上どのような対策を講ずるかということはきわめて重大な問題であると考えております。それで、政府としても、それから関係の会社におきましても、今回のアメリカの事故というものをわれわれに対する非常に大きな教訓として、その実態のデータの収集その他にいま大変な努力を払っておるわけであります。そういったものを参考にして関係省庁で現在鋭意その対策協議を進めておるわけでございまして、その結論が出てまいろうと思いますので、そういった結論を踏まえて自治省としては防災対策、新たな事態でございますから、そういったものを十分踏まえた新たな、原子力発電から起きる事故に対しての防災対策を立てまして、関係の地方公共団体に防災計画の見直しを指導してまいりたい、このように考えております。
  64. 林孝矩

    ○林(孝)委員 原発建設は国の安全確認があるまで認めない、そうした態度があり、また福井県、茨城県の両県が国や電力会社に安全確保のための再点検を要請している、これが現状です。災害対策基本法に基づく原発事故の防災計画を設けていない原子力発電所立地地域、これは関係市町村では一体どれだけありますか。建設中のものについてはどうでしょうか。
  65. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 災害対策基本法に基づきますところの地域防災計画につきまして、原子力災害関係で策定しておらない県はございません。現在立地県は七県でございますが、七県すべて策定しておるほか、青森、神奈川、京都といった原子力発電所がない県も、関連して原子力災害に対する計画をつくっております。それから関係市町村でございますけれども、原子力発電所が立地しておるところで、三市町村で現在策定中でございます。それ以外の市町村はすべてできております。
  66. 林孝矩

    ○林(孝)委員 たとえば原発事故か起こった場合の対応というか避難、これはいつの時点で発動するのでしょうか。発電所内で起こった時点、それから地域住民に影響かあるかどうかの判断をいつするか、これも非常にむずかしいわけですけれども、こういう点もすでに検討されてはっきりしておるのでしょうか。
  67. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 自治省消防庁といたしましては、五十二年以来原子力災害に対しまして地域防災計画の準則を示して、関係地方団体はこれを策定するよう指導してきたところでございます。その策定状況はいま答弁したとおりでありますが、内容を見ますと、大体茨城県の東海地区の原子力発電所かモデルになっておるようでございまして、それに準じて各団体が現在のところつくっております。事故の規模によりまして第一種から第四種まで災害の規模を想定いたしまして、それによりまして避難の態様、避難場所を設定しております。  まず、事故が起きますと、直ちにそれを警察あるいは関係地方公共団体に連絡するということでございますが、事柄の性質上、どの程度に汚染区域が及ぶかという非常に学術的、専門的なことになるわけでございますので、大学その他の原子力の専門家が直ちに出動いたしまして、この程度の規模であればこの程度の地域が危ないというような認定をいたしまして、その認定に基づいて消防機関等が地域住民を適切な方法で適切な避難場所へ誘導するというような仕組みになっておるわけでございます。  ところで、今度のスリーマイルズ・アイランドの事故でございますが、現在、その事故原因につきまして科学技術庁を中心としていろいろ究明しておるわけでございますが、どういった事故があればどの程度危険かということをこれから詰めていかなければなりません。関係省庁十五あるわけでございますけれども、連日のように現在会議を開いておるわけでございまして、そこで恐らく応急対策が早急に固められてくるだろうと思います。私ども、関係地方公共団体と緊密な連絡をとりながら、現在の地域防災計画でいいのか、もし悪いならどういうふうに変えればいいのか、そういう点について検討し指導してまいりたい、このように思っております。
  68. 林孝矩

    ○林(孝)委員 現状で、原発事故に対する出動の際の被曝防止装備は整っておりますでしょうか。たとえば消防署に配備するとかそういうことを図っておかなければいかぬのではないか。  それから、アメリカの今回の事故では〇・一ミリレントゲンで州知事が避難させているわけですけれども、日本の場合人体の吸収許容量二十五レム、こういうふうに規定されているだけで避難の基準か全然ないわけです。ですから、今後こうした基準を検討することも必要ではないかと思うわけです。  それから、避難場所というものも、決められておる部分もあるが、全域にわたって決められておらない、こういう現状だと思うのですが、その三点、いかかでしょうか。
  69. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 正直申しまして、原発に対する装備、汚染に対する装備を消防団が持っておるという段階ではございません。消防の方の関係といたしましては、そういった専門的なことについてはすべて学者その他専門家の方に任せるという考え方でございまして、この程度の事故であればこの区域が危険が予想される、これをどこへどんな方法で誘導するか、そういったことがいままでの防災計画の中心になっておったわけでございます。  ただ、それだけでいいのかどうかという問題が実はあるわけでございまして、それらにつきましては、先ほども申しましたように、現在関係十五省庁でいろいろ検討しておりますので、その検討の結果を待って対処していきたいと思っております。
  70. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、いま防災対策の一層の充実を図っていただくための質問をいたしました。原発立地県に安全管理——専門官というお話かありましたけれども、この専門官をどのように配置されるか、こういう問題も含めて——この原子力発電の必要性は十分わかるわけでございます。ただ、その安全という面について、先ほどの北海道総合開発の議論ではございませんけれども、現状は余りにも後手になっております。そういう点でいっときも早く充実した安全対策がとられるように望んでおきます。大臣、決意を述べてください。
  71. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 わが国のエネルギー事情からいいまして、原子力発電の占める役割りは非常に大きなものがございます。しかも、その原子力発電を現在運転しておる、今後またそれを広めていこうという立場から考えますと、安全性の確保ということか至上命令であるわけです。そういうことで、政府におきましても安全性の確保ということを最優先事項として取り組んでおります。それと同時に、万が一不幸な事故が起きた場合に、それに対する防災対策というものも完璧なものにしなければならぬということは当然のことでございまして、私どもはそういった認識に立ってあらゆる努力を傾けてまいる決意でございます。
  72. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  73. 加藤清二

    加藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後三時四十九分開議
  74. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。原茂君。
  75. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは三点質問申し上げますか、最初に北富士問題を取り上げますので、大臣もひとつ聞いておいていただいて、最後に御答弁をいただきたいと思います。  北富士演習場という問題を私もずいぶん長く取り上げてまいりました。その問題の根源とも言えるような富士吉田市外二ヶ村の恩賜県有財産保護組合、これは一部事務組合のいろいろな活動の例を挙げまして、法制上この一部事務組合とは一体いかなるものなのか、その権能、組織、運営等についてお伺いするのが目的でございます。  一般的に、普通地方公共団体は、団体の事務の一部を共同処理するため地方公共団体の組合を設けることができるとされているのでありまして、これが一部事務組合と言われているものであります。御承知と思いますが、そしてこの意味においてはきわめて明快にその法制上の根拠、地方自治法第二百八十四条ですが、とその意義を了解することができるものであります。なんとなれば、地方公共団体がその事務を処理するに当たって、単独で処理するよりも共同に処理する方が行政上の能率を上げることができる場合も多いと考えられますし、また効率的でもあるという意味からであります。さらに、広域行政の需要が多くなるとすればこの制度は積極的に活用されてしかるべきであるかもしれませんが、そのような意味ではこの一部事務組合という法制度はきわめて現代的課題を担っていると言って過言ではないと思います。  しかし、私はこのような一部事務組合の現代的課題に即して、今日の一部事務組合の法制上の一般的諸問題を自治省当局に伺おうとするものではありません。戦後の激動の中で、新憲法と地方自治法は同じ年月日、一九四七年五月三日に施行されましてからすでに三十余年の歳月がたっているわけであります。日本国憲法か帝国憲法に取ってかわりまして、大日本帝国の強大な中央権力のもとで奇形化されていた地方自治制度も憲法上に明定をされまして、「地方自治の本旨に基いて、」これは憲法九十二条、地方自治法一条ですが、地方公共団体の区分、権能、組織、運営等に関する大綱が決められました。この地方自治の本旨の拡充、発展の過程にある今日、何を地方自治の本旨と解するかは一様ではございませんが、それを歪曲、縮小したり、地方の時代を否定してはならない、これはもうお互いの常識だと言っていいと思います。したがって、どのようにこの地方自治の本旨を発展させ、急激に変わりゆく社会の諸矛盾を解決すべきか、施行後三十余年を経た今日、そのための地方自治制度の見直しの一つの課題として一部事務組合も検討さるべき必要があるというのも事実だと思うのであります。  しかし、私がここで取り上げる北富士地方における一部事務組合の問題とは、かかる現代的課題とは一切無関係であります。私はただいま、一部事務組合の法制上の根拠とその意義を了解することはできると言いましたが、私なりに地方自治法第二百八十四条所定の一部事務組合は理解できます。しかし、北富士地方の一部事務組合問題は、二百八十四条以前の問題であります。といいますのは、御承知のように大日本帝国憲法下においても町村は町村制第百十七条によって特設役場を設置することができましたが、この役場及びその後の町村組合が日本国憲法のもとで成立した地方自治法第二百八十四条に基づく一部事務組合とみなされるとする附則第十一条によって、戦前設置されたものでも自動的に一部事務組合となるという点に存するからであります。  たとえば、富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合という団体は、明治三十三年三月十三日町村制第百十七条によりまして特設役場の設置が許可されまして以来、明治四十四年三月十一日御料地が山梨県に下賜されると、大正一年十月四日山梨県指令で恩賜県有財産保護組合となりまして、戦後そのまま昭和二十三年十月十五日地方自治法第二百八十四条第一項及び附則第十一条によって一部事務組合であるとされまして、今日に至っているものであります。  さて、ここで問題なのは、この恩賜林組合は、みずから記するところによれば、かくのごとく法形式上は一部事務組合となっているが、その実体は入会集団としての管理団体であるというところであります。  ちょっと、北富士地方の歴史を御存じでないと何のことだかさっぱりおわかりにならないと思いますので、コメントしておきますと、この北富士山ろく地方は昔から入り会いの慣行がありまして、住民が自由に産物を採取するなど立入使用、さらには桑畑にするなどして収益すらしてきたところであります。しかるに、この地方が明治初年の官民有区分で官有地に編入されてしまいますと、このような入会住民の立入使用収益は官の物を窃盗することと法的には評価される。さらにこの土地が官有地から御料林へとなると、取り締まりは一段と厳しくなる。それにもかかわらず、山梨県の発行した書物によると「住民が自由に産物を採取してきた旧慣習は幾度かその所管庁を替え、年代を経過しても牢固として容易に抜くことができず、前主管庁においても、これが矯正と取締についてあらゆる苦心方法を講じたのであったが、遂に成功することができなかった」、これは昭和四十六年五月十一日の山梨県発行の「山梨県恩賜県有財産御下賜六〇周年記念誌」の第百九ページに書いてあるのでありますが、ここで重要なことは、山梨県はもちろん国もすでに北富士地方の住民にかつて旧慣として入会慣行はあったが、官民有区分によって法的にはなくなったものとしている点であります。  そこで、取り締まりをいろいろ苦心してやってみたのですが余り効果がない。そこで、この土地が下賜されて再び山梨県の財産となったのを契機といたしまして、山梨県管理規則でもって地元の町村にその保護の責任を課すこととして、この事務を共同処理させるために「法令の規定に従って町村組合を設けることとし、その町村組合は町村制による」、前掲の同じものの第百十ページにありますか、としたのであります。こうやって、北富士の入会住民は町村組合によって監視、監督されるようになるのであります。しかし、戦前から北富士には入会権があるのだと主張してきたごく一部の地域住民を除いて、この山梨県の施策は完全に功を奏したと自画自讃できるほど、地元住民はこの町村組合に牛耳られることになったのであり、このような状態で戦後を迎えることになるのであります。コメントはこのくらいにしておきますが、こうしてこの町村組合はそのまま一部事務組合になって現在に至っているのであります。  ところで、戦後日本社会の情勢は一変いたします。これまで天皇陛下の名において自己の権利主張もままならなくされていた入会農民たちは、富士山ろくは自分たちの山だ、入会山である、そこには自分たちの入り会いという権利があると敢然主張し始めます。たまたま富士山ろくが米軍演習場に接収されていましたので、これらの入会農民は米軍政府を相手に入会権の擁護確認を求めて積極的に交渉をいたしまして、ついに政府、防衛庁から、同地に農民が旧来から有する入会慣行に基づいて立入使用、収益することを将来にわたって尊重する旨の一札をとるなどして、ほとんど入会権の存在を確認させていって今日に至りました。  特に決定的に重要なことは、この覚書が出されるに至った交渉過程におきまして、現在はすでに昭和四十八年の最高裁判決によって変更されていますが、昭和三十六年当時は、いまだ官有地に入り会いなしとする大正四年の大審院判決が判例として効力を有していたにもかかわらず、実質的には入会権をこの北富士に確認する、ただし、大審院の判決もあることだから入会権の名称は使えず、入会慣行とするとしたこと、及びその入会慣行の内容は、単に立ち入る、使用するといった土地の自然のままでの天然果実の採取だけにとどまらず、これまでの具体的な同地の用法を審究し、放牧、植林、特に桑畑などの活用が入会慣行として行われてきた事実にかんがみまして、農業経営遂行のために必要な収益をも入会慣行の内容として確認、尊重するということまで詰めて交渉がされまして、それが覚書として成文化されたということであります。このような事実は、この交渉当事者であった当時の防衛庁木村経理局長、門叶防衛事務次官と北富士農民の顧問である天野重知氏などから聞いていただけば明らかになるのであります。  こうして人会住民がみずからの権利を直接擁護確認させ、北畠士に入会権ありというような状態になってきたところで、例の町村組合、もうそのころは一部事務組合ですが、この富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合か、実は自分こそこの地域の入会地の管理団体であると称して、勝手に入り会いを論じてはいけない、表面上は一部事務組合だが実質上は入会地の管理団体だと主張して、入会住民の権利主張を封殺せんとしているのであります。  まさしくこのような一部事務組合と住民との関係をどうとらえたらよいのか、一体一部事務組合とはいかなるものであるのか、その法制上の権能、組織、運営等についてどうしても明らかにしておかなければならない必要が出てくるのであります。  単に一部事務組合と住民のあつれきだけの問題にとどまるものではありません。一方では、このように法形式上は一部事務組合であるということ、つまり地方公共団体であるということで、この組合は国から多くの補助金を受領しています。たとえば防衛施設庁所管の周辺整備法に基づく補助金などです。また、地方公共団体であるということで、山梨県の実施する林業整備事業の造林者として活動もしています。もしこの組合が本当に法制上一部事務組合であるというのならば、それはそれでよいかと思います。  しかし、他方で実質的には入り会いという私権の管理団体であるということを理由に、入会集団の管理として、自分が入会地であると思ったところは、他の地域住民が耕作をしていようがお構いなしに、ここは自分が管理すべき入会地だと称して、その耕作者が設置している工作物を損壊する、あるいは住民をけしかけ、入り会いは地元住民の私的権利であるとして、戦前、戦後を通じて必死に入会権の確立のために尽力している忍草農民の牧草地を壊滅させ、同組合の統制に服していなかったという理由の文書を出し、あるいは、ここは市村民全員の入会地だから忍草の独占利用を否定するという理由をつけるなどして、同組合の活動の理由はすべて入り会いの管理団体ということに根拠づけられているのであります。否、それだけではありません。これらの活動を行うためには多大の費用がかかりますが、これは入会管理団体として当然支出する、たとえば住民に同組合の意向を示すように金を出してデモをさせるなど、莫大なデモの費用支出されているようです。  もちろんこれらにとどまるものではありません。入会管理団体ということで、近隣とのつき合いも密にしなければならないということでしょうか、町内会への金一封、神社に金一封、婦人会に金一封と金をばらまき、さらには何百万という金を、同組合は入会管理団体であるというパンフレットその他印刷物のたぐいを発行させるために費やしているのであります。まさしく都合のいい一部事務組合であると言わなければなりません。もちろんこのような支出そのものをチェックする機関などはありません。理由とするところは、実質は入会管理団体という私的団体であるところにあるようです。  事実、忍草母の会の渡辺喜美江会長は、昭和四十九年八月五日、恩賜林組合議会の補正予算の中で負担金を除く他の支出は、地方自治法、学校教育法などに違反しているとして監査を請求いたしましたが、同組合に監査制度がなかったためにナシのつぶてとなっているし、現在も同組合に監査制度は存在していません。  本来ならもっと具体的な事実を摘示した上で質問をしたいのですが、この程度の摘示だけでも私が伺いたい実態というものは大まかには理解していただけたかと思うのであります。  そこで、以上の私の話を前提とした上で、現在の地方自治法上の一部事務組合の権能、組織、運営等に照らして、この団体は果たして一部事務組合と言えるかどうか、これから申し上げる質問に即して答弁を伺いたいのですが、四点に分けて聞きます。  まず第一は、私的権利たる入会権を管理する一部事務組合というのが適法に存在し得るのかどうか。私にはちょっと考えることができないのですが、適法に存在し得るとするならば、少なくとも入り会いに関する事務が、その基礎たる地方公共団体事務でなければならないと思います。しかし、入会権が地方公共団体の権利と考えられた戦前は別として、現在どうして入会地の管理団体としての一部事務組合というものが成立し得るのか。この点が第一の質問でございますが、時間の都合でなるべく早く上げたいので、全部質問を先に申し上げますから、記録しておいてください。  二つ目は、山梨県は、前に述べたように、入会権は存在しないという前提で町村組合を設置させましたが、戦後これがそのまま一部事務組合となっています。地方自治法的にかかる組合が入り会いの管理団体と称し得る根拠があるのかないのか、これが二つ目。  第三に、補助金をもらうときには公共団体、使うときには私的団体というような、かかる御都合主義的な組合のあり方についてでありますが、これをきちんとさすべき所管というのは許可権者であるところの山梨県だと思うのですが、山梨県としては法的にはどのような手が打てるのか、また打つべきであると考えるのか。  実際地元では、この組合のことを伏魔殿とか雌雄同体動物とか、はなはだしきは治外法権なんだとまで酷評されています。仮に山梨県が、それは組合とそれを構成するとされている地方公共団体の問題として手をこまねいているといたしましたら、国としてはどのような手が打てるのか。また、当然何らかの手を打つべきだと考えますが、その点についてお伺いしたい。  四つ目に、仮にこの組合が地方公共団体であるとするならば、町内会、神社、婦人会などなどへの寄付というものは、地方自治法上許容されるものなのか。許容されないとすれば、この寄付はどのような手段で匡正されるべきなのか。四つ目です。  もう一つありました。第五に、この組合が地方公共団体であるならば、監査委員は義務設置である、これは四十一年一月三日、行政実例ではっきりいたしますが、義務設置であるのですから、当然設置しなければならないはずですが、設置していない現状を一体どうごらんになりますか。そして、これはどのような手段で匡正し得るのか、県及び国のとり得るおのおのの手段を明らかにされたいと思うのであります。  この五つに対して自治省から御返事をいただく。明快に、簡潔にお願いします。  最後に、会計検査院にもお伺いいたしますが、いま私が質問した五つの問題に関連いたしまして、今日までの調査概要とその法的適否並びに今後の方針を明らかにしていただきたい。
  76. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  最初の第一間の点でございますが、入会権について一部事務組合が管理団体になれるかという問題だと思いますが、この点につきましては、入会権自体が非常に慣習に基礎を置いているということで、権利の内容を確定することが非常にむずかしいというふうな問題があろうかと思います。これは相当な学者でも、この入会権の問題についてなかなか結論が出ないという話を伺っております。  御質問のこの地域における入り会いの問題につきましては、地元でもかねがねいろいろな議論があるというふうに聞いております。この組合は、演習場内に入会権がある、自分たちは管理団体である、こういうふうに主張しているというふうに私どもも伺っておりますが、土地の所有者である山梨県は、現在行われている入会慣行、先ほどの中にもございましたが、入会慣行が入会権であるかどうかという問題についてもはっきりした判断を示していない。それから、この問題に関連する昭和四十八年の政府統一見解におきましては、当該土地に対する入会権は明治初年に消滅しておるというふうな見解を持っております。  そういう点で、入会権があるのかないのかというところが非常に漠然としておりまして、そういう点で、まず管理すべき入会権の問題がはっきりしていないということでございますので、私の方でいまの問題についてどうこうということはちょっとお答えしにくい、こう思いますし、また山梨県の方では、この恩賜県有財産の保護組合は県有財産を管理する管理団体であるということで、入会権の管理団体とは考えていない、こういうふうに聞いております。  それから、二番目……
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 ちょっとごめんなさい。一つお答えをいただいたら、疑問があったときにまた私の方からすぐ質問します。そうしないと、五つ全部一括だと入りまじりますから。  いまの一部事務組合だと言われるものが入り会いの管理団体ということを公言し、物にも書いている事実があるのです。いいですか、この場合、入会権が認められるかどうかとか、入会権に関する今日までの論議がまだ未解決であるとかいうことは別にいたしまして、現在まで、いま私が申し上げましたように、入会慣行というものを認めたという前提が一つありますね。しかも、一部事務組合というこの組合は入り会いの管理団体であるということを公称し、公言をしているという事実かある。山梨県は入会権は認めていないという事実もあるのですよ。そういうものがあるから、現在のように一部事務組合、公共団体たるものが、いま私が指摘したような経理上のずさんな違法な運営を行っているというようなことが許されていいということにはならないんではないかということに重点を置いた私の質問ですから……。入会権は山梨県が認めていない、そして入り会いの管理団体であると一部事務組合が言っているこの事実もあることを二つ併記しながら、自治省としてはこれをどうお考えになるのか。問題があそこでペンディング、ここでまたペンディングだから、どうもはっきりしたことは言えない、じゃない。そういう事実をぴしっと私は申し上げている。申し上げている上で私の第一の質問にお答えいただきたいというのが私の念願ですから、もう一度お答えいただきたい。
  78. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 いま申し上げましたのは、現地の入会権の問題が全く未解決である、そういうことを前提とした場合に、管理団体の問題は、その前提が解決しない限り、管理団体であるかどうかという問題は出てこないだろうということですね。  それから、この組合の場合には管理団体とみずから称し、山梨県はそういう入会権そのものがはっきりしていないんだからないんだと、こういうことを言っておられるわけですね。そういうことでございます。
  79. 原茂

    ○原(茂)委員 だから、一部事務組合が入り会いの管理団体であるという二つの意味を持つことが認められるか、成立するのか、法的に。そのことを、イエスかノーか。
  80. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 ただ、理論的に一部事務組合は地方公共団体事務でなければ処理できませんから、そういう点で、私的な権利ですね、そういう問題は一部事務組合の事務にはならない、こう思いますが、ただ、それが入会権の場合がどういうものに該当するかという点がはっきりしませんので、その点はなかなかお答えにくい、こういうことでございます。
  81. 原茂

    ○原(茂)委員 要領よく大事なところをちょっと半分逃げているのだけれども、いろいろな歴史があるものだから、ついその歴史の中で体制上、体制の一員として、私どもに言わせるとやはり偏った恣意的な見解を述べている部分がいまの答えにもあるというふうに考えますけれども、確かに、私的という言葉をいま使ったとおり、少なくとも公共団体が、公共団体の事務を処理するためにある一部事務組合というものが、私的財産なり私的利益というものを目的とする入り会いの管理団体というものを一緒に人格上あわせ持つことは不可能だというふうに答弁があったことは間違いないと思うので、それ以上これは追及しないという前提で、きょうはここで終わっておきます。  二問目に答えてください。
  82. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 二番の御質問ですが、これは入会権が存在しないという、それで組合に土地を管理させているのはどうか、こういうことでございますか。
  83. 原茂

    ○原(茂)委員 山梨県が入り会いを認めない。
  84. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 山梨県がですか。これは私、事情をいまよく知りませんが、県の考え方は、入会権の問題は別としまして、いろんないきさつのある土地が払い下げになって県有地になっておる、それを一市二カ町村で一部事務組合をつくって管理させるんだ、こういうふうに承っておりますが……。
  85. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、第一の問題を少しくドリリングしていま質問しているのですが、山梨県はこの団体に対して、入会権はない、入り会いなんという前提で管理を任せることはないんだ、そういう態度だった。ところが、実際には入り会いの管理団体として一部事務組合があるんだ、現実にはこうなっているんですよ。だからその部分だけ考えて、そういうことがあり得るのか、それはおかしい、あるいはないというのかを明快に答えていただけばいいんです。そういうことがあり得るのか、それはないんだというのか。山梨県は、とにかく入会権はないんだ、だから入会権管理団体なんというものは否定する立場にある。にもかかわらず、現実には、先ほど第一でも言ったように入り会いを管理する団体である、一部事務組合であるという二つをうまく使用しているわけですね。さっきちょっと申し上げたように、もらうときには公共団体、使うときには今度は管理団体だということにまたずっとなっていくわけですから、そこの途中の、いまの二つが併記される、両立するということが、山梨県がそう言っている、否定をしていながらなおかっこの一部事務組合は入り会いの管理団体であると言って、いまだに両面を生かしながら生きているということは正当なのか不当なのかというふうな判断を細かく、そこだけ言っていただきたい。
  86. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 その組合が二つの顔を持っている、こういう形になろうかと思いますが、山梨県がそれは一つの顔しかないということで入会権の存在を認めてないということがやはり妥当な考え方ではなかろうか、こう思います。ただ、入り会いの問題は、先ほど来御説明がございましたようにいろんな問題がございますので、問題はいろいろあろうかと思います。
  87. 原茂

    ○原(茂)委員 じゃ第三の問題。
  88. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 第三番目の問題は、いま片方で管理団体と言い片方で一部事務組合である、こう言っておるが、そこら辺に対して県あるいは国で何か打つ手はないか、こういう御趣旨のことだったと思います。この問題につきましては、管理団体であるとかないとかという問題とは別に、事務執行あるいは組織、運営等の面でいろいろ問題があるとすれば、先生も御存じだと思いますが、地方自治法の二百四十六条で財務監視の規定がございますね。それで知事の方が、財務上の問題について財務監視を行うことができるようになっております。(原(茂)委員「国は」と呼ぶ)  国の方は、二百四十五条で一部事務組合に対して地方自治法の準用がございますので、組織及び運営の合理化に資するために技術的な助言または勧告ができる、こういうのがございますし、またいまの二百四十六条でも、自治大臣は必要があるときは財務監視をすることができる、こういう規定になっております。
  89. 原茂

    ○原(茂)委員 で、私がいま申し上げている事実、不法にも両面を生かしてやっている事実があったとして、そのときに県が適切な指導をしないというときに、国として条文上何々ができるというんじゃなくて、自治省としてその条文に照らして何かをなさいますか。法律だけ聞くんじゃないんです。自治省としての態度を聞きたい。
  90. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 私の方は市町村なりに対して直接指導するというたてまえをとっておりませんので、これは県を通じまして指導するというたてまえをとっております。そういう点で、もしいま御質問があったような点でいろいろ問題があるとすれば、県を通じて指導させたい、こう思っております。
  91. 原茂

    ○原(茂)委員 じゃその次の第四の問題に移ってください。
  92. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 四番目は、町内会とか婦人会に対する寄付でございますか、これができるかどうかという……(原(茂)委員地方公共団体として」と呼ぶ)できるかということですが、これは一応公益上の必要があれば寄付ができるという形に自治法ではなっております。そういう点でその寄付の行為そのものが、これは具体的にわれわれは知らないわけでございますが、それに該当しているかどうかということで判断されるものであろうかと思います。
  93. 原茂

    ○原(茂)委員 この団体が入会権の所有者である、入り会いの管理団体であるということを、一部事務組合というだけの大衆の認識だけじゃ困る、入り会いの管理団体であるということを周知徹底させるために大変な人数を動員して日当を出してデモを行い、そのデモの費用は調べてみるとわかりますが、莫大な費用が出ている。何回もやっている。それとか、 いま言ったようないろんな寄付を、それも相当のものを大胆に、公益の云々じゃなくやっているという事実があったときに、これはどのようにお考えになるのかという質問ですから、もう一度お答えください。
  94. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 いまの問題につきましては、私どもは個々具体的な事実関係を実は承知しておりませんので、御指摘の点もございますので、県あるいはこの組合にその関係を聞いてみたいと思っております。
  95. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう事実があったときに地方公共団体としてそれが許されるものかどうかだけはここでお答えをいただきたい。その事実があったとしてですよ。これから調べていいか悪いかを判断するのは勝手だが、それはやっていただきたいのだが、仮に私が言っていることが事実だとしたときに、地方公共団体としてその種の支出が許されるものかどうか。それは好ましくない、許されない、そのお答えだけはしていただきたい。
  96. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 公益上の必要がない場合に支出することはできない、適当でないと思います。
  97. 原茂

    ○原(茂)委員 じゃ五番目を今度答えてください。
  98. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 この組合に監査委員が置かれておらないという点の御指摘だったと思いますが、この点につきましては、昨年でございますか、先生の御質問の中でこの点ございまして、私の方から県を通じまして監査委員の問題を考えるようにというふうに実は指導しております。現在監査委員は一応必置制になっております。義務制になっておりますので、監査委員がいないということで監査請求ができないとかあるいは財務会計が乱れているのではないかと、いろんな疑問が出るわけでございます。そういう点でぜひこれは早急に置くべきではなかろうかということで県を通じて指導しております。現在までの状況では、規約等の特別委員会を設置しまして監査委員の問題を含め、監査委員だけのあれではなくて規約の問題もあるらしいのですが、含めて一応検討中である、こういうふうに聞いております。
  99. 原茂

    ○原(茂)委員 これは大臣からも答弁をぜひ欲しいのですが、いま局長がおっしゃったように、私の質問は昨年の四月です。まる一年たっている。こんなわずかなこと、しかも法律上しっかりともう右左がはっきりしているものを、山梨県に聞いてみました、どうも、なければいけない義務設置だから置くべきではないかと言いました——自治省が、行政官庁が法的に指導する義務を負っている役所としてこのぐらいのことを言った、その後はどうなっているかのチェックを全然していないから、いま私が質問すると去年の質問のときと同じ程度のお答えしかできないのです。  これは大臣、行政処理の立場からいっても、少なくともこの種のこんな簡単な問題、地球の裏側へ行って何かしろと言っているんじゃない、山梨県ですよ。電話でもできる。呼びつければすぐ短時間で来る。一遍指導したら、その指導の効果がどうなっているか、そのとおりやっているのかどうか。とにかく法律を守る義務を持った行政官庁が、法律の上に照らして絶対違反だ、いけないという態度を表示しておきながら、まる一年たったいまだに、その指導をしてまいりました、山梨県がそのうちに何とかするだろうと思いますと言わんばかりの答弁しかできないというような、そんなばかな怠慢なやり方がありますか。行政の事務を行うということは、必らずチェックしなければだめですよ。一つ指導したら、こうしろと言ったら、それができているかどうかを、指導したものの効果がどうなっているかを、いっぱい人がおいでになるのだからせめて半年に一遍ぐらいは調べていかないと、行政、政治に対する国民の不信というものはつのってくるし、物は進歩しないと思う。しかもこんなことが一年間も、いま私が鋭く指摘したのですが、指摘してなお何も言ってこないから多分できているのだろうと思っていた、現地で調べてみたら監査委員の制度がまだ確立されてない。組合の総会をその間にすでにやっている。指導はしたって、県から何が行っているのかいないのか知らないが、やられていない。監査委員がいまだにいない。それで質問をいまわざわざ五つに分けてやっているわけだ。  こういうことは物の軽重の問題じゃないのですね。影響するところが大きいか小さいかの問題ではない。行政というもののあり方について特に注意をしなければいけない点だろうと思うのです。しかし、この点でいま局長の答弁は、大変局長としては従来の慣習、陋習に従って、注意をしておけば何とかするだろうと思って、原がもう一遍質問するというから調べてみたらどうもまだやっていないらしいというような程度だったかもしれない。ほかのが全部その程度だからその程度に終わったのだろうと思うのですが、私はやはり一つ重要な問題としてこういうものをけじめをつけてやるという物の考え方、仕事の仕方をこの際行政官庁としてはぴしっと一遍考えておく必要があるのではないかという意味で、非常に重要だと思うのです。  大臣にこの感想をお聞きするのと、この問題は直ちに徹底的な指導をしていただかないと、法律はあってなきがごとし。確かに地方の時代と言われて地方自治は大事なんですが、かといって地方自治体におもねてはいけない。地方自治体も守るべきものは厳しく守らせるということをやっていかなければ、国家の統制ある秩序というものは守れない。その意味で、これは国としては一つの小さなつまらない例かもしれませんが、しかし重要な問題として考える必要があるんじゃないか。大臣の見解を聞きたい、直ちに実行するということを含めて。
  100. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 先ほどから質問をお伺いいたしておりまして、私としてはちょっと常識的には考えられないような実態があるのだなあという感じがまず第一印象であります。それだけに恐らく長い歴史の中でいろいろなことが絡み合ってそういう事態になっておるのではないかという推測をいたすわけでございますが、私も少しこの実態を調べてみなければならぬと思います。特に最後の、義務制になっておる監査委員というものを置いておらない、これは明らかに法に違反しておるわけでありますから、自治省としてはこれを置くように指導したが一年たっても置かれてないという事態は、法治国家でございますからそう見逃しておくわけにはいかない。そういう意味でこの点についても、なぜ置かないでいるのか、そういった実態も調べて早急に対処いたします。
  101. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣、よくお調べになっていただきたいのだが、調べた上で、法律があっても守らなくて当然だともしお考えになるのだったら、そのときには文書でその旨を私に通知していただきたい。そういうことはないと思いますが、そういうことがあったら文書で回答を大臣からちょうだいいたしたい。よろしゅうございますか。
  102. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 よろしゅうございます。
  103. 原茂

    ○原(茂)委員 では、そのままでいいのですが、あと、会計検査院が今日までこの問題について会計検査院の立場で検査を行ってきた過程で、こういった問題に気がつかなかったのか、気がついても放置してあったのか、あるいは会計検査院法上こういった問題は取り上げないでいいとお考えなのか、ないしは、内容は知っているが検査院としてはこれでいいと判定をされてきたのか、四つに分けてその点をお答えいただきたいのと、同時に、そのお答えの続きで、今後どうするんだということをはっきりとここで言明していただきたい。
  104. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  会計検査院といたしましては、地方公共団体の組織、権限あるいは財政につきまして検査するということはございません。ただ、検査いたしますのは、関係省庁から補助金等が出ておりました場合に、その補助金等に関係する部分につきまして検査をすることに相なるわけでございます。  私の担当いたします防衛庁関係におきましては、五十二年度に周辺整備関係の補助金が出ておるわけでございます。これにつきましては五十四年度も引き続き行われる予定でございますので、五十三年度、五十四年度あわせて今後の検査を待ちたい、さように考えているわけでございます。  以上でございます。
  105. 原茂

    ○原(茂)委員 五十三年、五十四年あわせてやるときに、その検査の結果というものはやはり五十二年、五十一年にも当然のことして出た答えはさかのぼらして処理していただくということが必要だと思いますが、いかがですか。
  106. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  私いま存じておりますのは、五十三年度初めて補助金が出たように聞いておるわけでございまして、ちょっとその点は……。
  107. 原茂

    ○原(茂)委員 それはそのとおりでした。私が失念しました。  北富士のこの問題についてはこれで切り上げさしてもらいますが、大臣にお断わりしておきたいのは、これはまあ大変な八幡のやぶ知らずみたいで、私に言わせると権力を持つ方がさせてしまった問題です。それに片足から両足から体ごとずぶりとつかっちゃったのが私なんで、やり出したら抜け切れないんです。しかし、ここまで来た以上は、頭がもぐって息ができなくなるまでやるつもりでいますから。  しかし、そうは言いながらも、解決をしようという私の善意は、自治省を通じ、大蔵省を通じ、防衛庁を通じ、何を通じてでも小さいところ、できるところから解決をしていきたい、そうしないとだめだという考えに基づいて、きょうの質問はそのほんの一部なんです。何かできるところからやりたい、そうして匡正していく以外にはない。山梨県、国という大きな権力に原茂が幾らじたばたしても、なかなか問題は一挙に解決するわけにいかない。たとえば正義だとか不正義だとか、法的に正しいとか正しくないとかいうことが幾ら論じられても、それ以外の、権力の側にあるいわゆるガードが相当厚く、強く、広くできていますと、なかなかこれはぶち破れない。  そういうもがいている中から今度は一つ一つ問題を摘出して、解決できるところから解決していけば、おのずから全体に及ぼしていけるだろうという、隗より始めよの一環としてきょう大臣に特にお答えをいただいたわけですが、ぜひひとつ早急に、また原が委員会で質問があると言ったらあわてて答えられるようにしょうなんというのじゃなくて、従来みんな残念ながらそうなんです。ですから何年たったってだめなんです。ですから、そうでなくて、早急に、いま申し上げただけの範疇で大臣のおっしゃるとおりひとつ締めくくりをつける意味の解決をお願いしたい。これ、要望しておきますが、いかがですか。
  108. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 了承いたしました。
  109. 原茂

    ○原(茂)委員 それではこの問題はこれにして、次に消防の問題をちょっと。  消防の団結権の問題ですが、去年ILOで何回かのチャンバラをやったはずなんですが、その後の経過をお聞かせいただいて、現在消防に対する団結権というものをどのようにお考えになっているのか、また見通しとしてはどうなのかをひとつお伺いしておきたい。
  110. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 昨年のILOにおいてどのような論議が行われたかということにつきましては、私、詳細に存じておりません。いずれ機会を見てお答えをいたしたいと思いますが、この消防の団結権の問題は、御案内のように非常に古い問題でございます。ILOの八十七号条約の批准をめぐって、私はあのとき直接これに関係をした一人でございますが、非常に広範な論議の対象になった問題であることはもう原さん御承知のとおりであります。  それで、これにつきましては従来から政府は一貫して、八十七号条約の警察という範疇にわが国の消防は入る、こういう解釈に立ちまして、したがって、団結権を認めることは賛成できない、こういう立場をとってきておるわけであります。それで、例の内閣に設けられました公務員制度審議会ではなかったか——懇談会だったと思いますが、ここでもこの公務員の労働基本権をめぐって論議がもう数年間にわたって行われた。その中でこの消防の団結権の問題も当然取り上げられておるわけでございますが、あの懇談会の答申の中では結論が出なくて、引き続き検討する、こういうことになっておるわけでございまして、私どもも、政府としては依然として従来からの考え方の上に立っておるわけでございますけれども、その懇談会の答申もございますので、なおひとつ各方面の意見を聞いて検討を続けてまいりたいと考えております。
  111. 柳沢長治

    ○柳沢(長)政府委員 いまの大臣の答弁をちょっと補足させていただきます。  昨年のILOの総会でございますが、消防の団結権は全然取り上げられなかったということでございます。  なお、ことしは六月からその問題について議論される、こういうふうに聞いております。
  112. 原茂

    ○原(茂)委員 はい、それはそのまま六月以後また論じます。  それから、宝くじの問題をちょっとお伺いします。  今日まで宝くじが発売をされた推移、資料をちょうだいいたしました。五十年、五十一年、五十二年、五十三年度まで、いずれも一〇〇%の消化をされているということがわかりました。  そこで、この問題も少し聞きたいことがあるのですが、それはほかに回しまして、この資料で説明を聞いたのですが、全国くじという立場で全国一斉にやるくじ、それから四つなり三つなりの県をブロックにしたブロックくじみたいなもの、その中に単独で東京だけがやっているものもあるというお話を聞きました。  それで、全体的な問題じゃなくて、これの分配の仕方はどうなるのでしょうか。地方自治体とそれから実際の扱っているところの手数料といいますか何かと、その売られたものの分配のされ方、これをまず最初にお伺いしたい。
  113. 森岡敞

    ○森岡政府委員 このお示しいたしました資料のそれぞれのくじによりまして若干の幅がございます。ですから、ラウンドな数字で申し上げたいと思いますが、まず当せん金は、購入者に当たりくじで返る分でございますね、これは四三%ないし四四%でございます。それから地方公共団体に入ります収益金、大体これが四〇%でございます。それから売りさばき手数料、これが八%ないし九%でございます。その他支払い手数料でありますとかなどがございますが、おおむねのシェアはそういうことになっております。
  114. 原茂

    ○原(茂)委員 私は大体三八%か地方公共団体と聞いたのですが、四〇だから、これは四〇ぐらいになるように引き上げたのですね。そうすると、五十三年度の発売額が全部で約千二百一億ですね。千二百一億ですから、四百八十億ぐらいは地方公共団体に入ってくる、そういうことになりますね。  これは当然のことですが、各市町村でも、とにかくいまの財政の苦しい中で何とかして宝くじをという大変な運動か起きて、ついに五十四年度、本年度初めて市町村用の宝くじの発売がされることに決まり、大体それが二百億ぐらい、それも全国のくじの一環として幾日に今度やるあれが市町村へ配分するものだという性格を決めて、いまやっている。二百億ぐらいやっている。間違いありませんか。
  115. 森岡敞

    ○森岡政府委員 そのとおりでございます。
  116. 原茂

    ○原(茂)委員 なぜ二百億という金額が出たのでしょうか。もっと大きくできなかったのですか。
  117. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いま御質問の中にもございましたように、市町村からは、現在の宝くじの発売権限が都道府県と指定市になっておりますが、市町村にも発売権者にならせろ、こういうような御要請があったわけでございます。ただ、私どもいろいろ法制的に検討してみましたけれども、県の場合にも、先ほどお話にありましたように単独でやっておりますのは東京都だけでございまして、ブロックでやるとか全国ということでありませんと本当にこの円滑な運営はできません。ところが、その全国の市町村を一本にまとめて協議会をつくって発売をするということになりますと、各市町村の議会の議決その他手続が大変でございます。そのほかに法制面でも、いろいろなお検討しなければならない部面が多うございます。  そこで、当面何か実質的に市町村に財政収入が入る方法はないものだろうかということで、発売権の問題は将来の問題に一応いたしまして、当面の措置として市町村にも行き渡るような方法を考えようということで、お示しのように県が市町村振興宝くじということでかわって出す、こういう仕組みをとることにしたわけでございます。  それで、全体が千二百億程度、来年はもう少しふえますですが、そういうことでございますので、県にかわって出してもらうロットとしてはやはり最初はまあ二百億くらいがこれは穏当じゃないだろうか。もちろん市町村増額要望はかなり強うございますから、五十五年度以降さらにその拡充をなし得るかどうか、県と相談をしながら検討してまいりたい、かように考えております。
  118. 原茂

    ○原(茂)委員 四〇%というと市町村に八十億ですね。市町村の数が非常に多いものですから、全国の市町村全部にその八十億はやがて何かの基準で配分されるのですか。
  119. 森岡敞

    ○森岡政府委員 市町村に対する配分は、まずそれぞれの県に収益金の配分を行いまして、県から、その県内の市町村の全体で協会をつくってもらいまして、その協会に出してもらうという形をとる予定でございます。と申しますのは、個々の市町村に毎年毎年配分いたしますと、一市町村当たり八十万とか百万とかいう金額になりまして、これは市町村としても使いでがないわけでございますね。そこで、市町村全体の御意向としても、やはり一定期間基金として積み立てて、たとえば災害のときの融資でありますとか、その他いろいろな公共施設整備の融資にも使える。弱小町村の場合に、金融機関に頭を下げて起債をするというのが、いまのような金融情勢ですとわりあい簡単でございますけれども、金融がタイトになってきますとなかなか苦しい面がございます。当面は基金で積み立てて、その運用を市町村に対する融資という形で持っていったらどうか、ある一定の基金ができましたらその後は公共施設整備に直に使っていく、こういう方向も考えたいというふうなお話でございますので、私どももごもっともだと思いまして、そういう方法でそれぞれの県に基金をつくり、県が受け取った収益金を市町村でもって構成いたします基金支出をする、こういう形をとろうという考えであります。
  120. 原茂

    ○原(茂)委員 私は、ある意味では奨励する意味で質問しているのですからね。反対だのやめろなんという意味じゃありませんから……。  それで、ついでにお聞きするのですが、すると、現在発売中の二百億円というものは、市町村に行くのだけれども、県単位に市町村で配分するための協会みたいのをつくらせて、県へ行って県からその協会へ行ったが、その配分は貯蓄をしていく、積み立てておく。何年かたったときに、それを目的を決めて市町村別に使い道を決めて配分するということになるわけですね。そうですね。  そこで、それじゃ県からこの協会に行くときに手数料があるのですか、ないのですか。全然ないのですか。ちょっと答えてください。
  121. 森岡敞

    ○森岡政府委員 県から協会に行きますときに県が手数料を取るということだと思いますが、それは考えておりません。
  122. 原茂

    ○原(茂)委員 協会が配分するときに、今度は協会が市町村に手数料を取りますか。
  123. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いま申しましたように、当面は市長会、町村会で合同して基金をつくりますから、直接に現金を配分するということは先の話になります。したがって、貸し付けのような形で資金運用をするわけでございますので、手数料を取るという問題は起こってまいりません。
  124. 原茂

    ○原(茂)委員 将来ともその協会が市町村に積み立てたやつを配分するときに手数料は取らせませんね。
  125. 森岡敞

    ○森岡政府委員 そんなふうな措置はとりたくないと私ども思っております。
  126. 原茂

    ○原(茂)委員 取りたくないから取らせない、そういうふうに思います。  それから、いま二百億ですが、先ほど言ったように発売権の問題は別途にこれから検討をしていくという答弁がありましたが、これは別途に検討していくのですか。市町村という数の多いものに県と同じような発売権、いわゆる県ブロックと同じような発売権を認めるという方向検討しますか、それはもう不可能だ、したがって、当分の間は現在の方式を将来ともとっていくのだ、発売権を別途にというお話が先ほどあったのですが、発売権というものを別途に研究して、やがて市町村別に発売権を与えるなんという方向を一応は考えていいのでしょうか、どうでしょうか。
  127. 森岡敞

    ○森岡政府委員 市長会、町村会は、少し時間がかかってもいいから発売権を認めるようにしてもらいたいという要請が非常に強うございます。ただ都道府県は、むしろいまのこの方式を拡大していく方がいいのじゃないかという意見が強うございまして、地方団体間で若干食い違っております。私どもは、県もやはり従来宝くじを発行してきた経験があるわけでございますし、県の意向というものも十分尊重しなければならぬと思います。ただ、市長会、町村会がそういう強い要請を持っておられますので、検討課題にはしていきたい。ただ、実際問題として非常にむずかしいなあという感じを率直に持っております。
  128. 原茂

    ○原(茂)委員 よだれをたらすように市町村ではこれに大変な希望を持っているわけですから、ある程度ぴしっと早く検討して、むだな動き、むだな陳情なんかがもう起きないように、こうする以外にないというなら——やめろと言うのじゃないですよ。市町村別にやった方が市町村から喜ばれるからいいかもしれませんが、私は素人が考えてみて、やはり短い時間にぴしっと結論を出してやった方がいいのじゃないかと思うのですね。いたずらに、できもしないものをできるように思って時間の浪費をしないように、できるものなら早くしてやるという意味では、この問題の発売権を市町村別に考えることは不可能だとか可能だとか、可能だからいま検討するのだとかいうような結論を出してやるようなことをなるべく早くやっていただいた方がいいのじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  129. 森岡敞

    ○森岡政府委員 私も御指摘のとおりだと思います。できるだけ速やかに結論を出して関係地方団体の理解を得たい、かように思います。
  130. 原茂

    ○原(茂)委員 これで終わります。
  131. 加藤清二

  132. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 公安委員長にまず暴力組織の問題、取り締まりの問題等についてお伺いをいたしたいと思うのです。  私どもの日常の経験からいいましても、殴ったとかすったとかゆすられたというようなささいな問題で、おそらく事件にもなってないような問題から含めまして、四月に入ってから新聞記事を見ただけでもずいぶん暴力組織の犯罪というものが目立つわけなんです。  たとえば六日の新聞を見ますと、競馬予想紙の「1馬」というのですか、ここの経営者の中に稲川会の会長が入って一億二千万の用人棒代をもらっているというような記事が載っておるかと思えば、その翌日にはまた暴力団の組織の人たちが覚せい剤を公害患者や運転手さんにまで売りつけるというような記事までも載っておりますし、あるいはまた、これはいま大きな問題になりつつあります愛知宝運輸の保険金殺人事件、これなどもやはり暴力組織の人たちが絡んでいるという。十五日の新聞を見ますと、関東における大きな稲川会の組織の会長の犯罪について一週間ぐらいで釈放されたという記事が載っているわけなんですが、いままでについて、第一次から三次までにわたってずいぶんと公安委員会としてもあるいは警察庁としても積極的に、社会の敵という位置づけをしてまで、今度の警察白書の中にも「暴力団根絶のために」という章をわざわざ設けられて、非常に積極的な努力をなさって、ここ十年来、五千二百十六団体、十八万四千三十一人から十万八千二百六十人というふうに減らすような努力も意欲的になさってきたという点については非常に私たちも評価をいたしますけれども、しかしこういう状態がずっと続いている中で、依然としていま読み上げましたようないろいろな記事が続いていることに対して、まず公安委員長としてはどういうふうな感じを持っておられるのかということをお伺いいたしたいと思います。
  133. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 私どもは、暴力団というものはまさに社会の敵である、これは速やかに徹底的に掃滅しなければならぬ、こういう基本認識を持っております。ただいま御指摘がございましたように、警察庁としても全国の警察力を動員して、警察の最大目標の一つに暴力団の取り締まりという項目を掲げて真剣に取り組んでおるわけでありますが、かなり効果も上がってきておると思います。しかしながら、依然としてまだ十一万近い暴力団員というものが現存しておるということも事実でございまして、私どもは、これを一挙に掃滅するということは非常に困難なことではございますけれども、警察のこの暴力団取り締まりの努力は、これは断じて緩めてはならない、引き続きこの暴力団の組織の壊滅に向かってひとつ真剣に努力を重ねていく方針であります。
  134. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私も先ほど申し上げましたように、非常に努力をしていただいていることはよくわかるのですが、それでもなおかつせんだっての総理府の調査を見ましても、たとえば八ページに暴力犯罪取り締まりに対する評価について、「まだまだ手ぬるい」というのが四八%もあるというような状態ですし、さらに東京都区部では五六%、九大市では五二%というような調査の結果が出ておるのですが、これに対してはどういうふうに受けとめておいでになるでしょうか。
  135. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 ちょうどその世論調査の行われました時期が、昨年の七月以来の暴力団の対立抗争、特に山口組の対立抗争事件のさなかでございまして、国民の関心も非常に強かったというふうに私、思うのでございますが、私どもはもうこれに対しては不断の努力で暴力団を何としても封じ込めていきたいということで努力をしておるわけでございます。
  136. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いや、その努力は、やっていただいているのはよくわかるのですが、それでなおかつこういう数字が出ているということに対してどういうふうに感じられたのかということです。
  137. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 警察としてはとにかく総力を挙げて真剣な努力を重ねておるわけでございますが、それにしてもなおやはり国民の半数近い人がなまぬるいという印象を持たれておるということは私ども謙虚に受けとめて、さらに努力を重ねなければならぬ、このように考えます。
  138. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 同じ「警察への要望」のところを見ましても、これは十二ページにあるのですが、トップが「あき巣などの侵入窃盗の取締り」三一%、そして次が「暴力団の取締り」で二九%、「人をなぐったり、お金をおどし取ったりする粗暴な犯罪の取締り」に二五%というふうに、上位三位ずっと続いておりますね。こういう状態に対して、確かに幾ら頂上作戦ということで三次にわたってやられておっても、依然として市民感情から見ればまだまだ手ぬるいというのがここらの数字にはっきりあらわれているわけですが、やはり市民感情といま警察庁で取り締まりを徹底してやっておるのと、どこかに乖離している面があるのではないかと思うのですが、その点どういうふうに感じられているのでしょうか。
  139. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 私どもは実を言いますと、暴力団の表面的な事件につきまして、表顕と申しますか表にあらわれた違反につきましてはできるだけ検挙という手が打てるわけでございますけれども、何分にも潜在的な犯罪が多いのではないか。そういう意味では、警察に届けたくても届けられないというようなそういう問題がまだあるのではないか。私どもの暴力団の取り締まりというのはそれを何とか掘り起こしていきたい、潜在的な犯罪を顕在化する、そういう形によってこの要望に沿えるのではないかというふうに思うわけでございます。
  140. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この白書の統計を見ましても、認知件数が五十二年度で百二十六万八千四百三十です。そしてそのうちの検挙件数が七十二万三千五百九、検挙人員が三十六万三千百四十四、これ自体がひょっとしたら半分なのか三分の一なのか。ですから、こういう統計にあらわれない面まで見ると、市民感情としてはやはり相当厳しい反発があるということは当然ですし、だからといって警察の陣容からいって飛躍的に検挙率を上げるということもむずかしいでしょうし、こういう状態、しかもこの調査は前回の五十年と比べますと、前回空き巣などに対するものが二七だったのが三一に上がっていますね。それから暴力団の取り締まりに対する要望などは前回五十年五月の一〇%に対して二九%にはね上がっている、あるいはまた粗暴犯なんかも九%が二五%になっている。だから、やってもやってもこれはもう警察の方がむしろ後手後手に回っているんじゃないかというふうなことを指摘しているような感じがいたしますが、その点はいかがでしょうか。
  141. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 確かに暴力団に対する関心に若干波がございまして、一時はでな対立抗争事件などで街頭で拳銃などの撃ち合い等がありますと国民の関心がぱっとその方を向く、そうしてしばらくしてしまうと何かすべてが鎮静化したように一見とられるというような波がございまして、世論調査の面におきましてもそういう波を反映することがあるのではないかと私は思うのでございます。  私も長い間この暴力団の取り締まりにずっと携わってまいっておりますので、警察としては相変わらずずっと暴力団というものに対する関心はそんなに波が打つような形でやっておるわけではないのでございます。それでもなおかつ、やはり選挙がありますと選挙の取り締まりだとかというようなことでそのときの方に関心も向くわけでございますので、若干そこらの取り締まりに寛厳があろうかと思うわけでございますが、だんだんそれを克服いたしまして、常時監視体制をつくっていくというような方向で現在進んでおるわけでございます。
  142. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一面から言えば、やはり世論喚起で孤立化作戦と言っておるが、そういう面で関心が高くなってあるいはこの要望度が高くなったという見方もしようと思えばできるわけですが、それにしろあらわれた数字自体がまだまだ氷山の一角だという感覚がこういうふうにあらわれてきていると思うのです。それと同時に、またいまやっておられるやり方そのものに対する批判も含んでいるのではないかと思うのですが、その点について、三十年代からずっと、この白書によれば三回にわたっていろいろやってこられておりますが、大体同じやり方をやっておられますね。それについてやはりいままでの取り締まり方針でいいのか悪いのか、そういう点について何かお感じになっていることはございませんか。
  143. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 いままでも順次改善は加えておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、私どもがやるものは犯罪を検挙するという面からしか寄与する仕方がないわけでございますので、その犯罪を要するにいち早くわれわれが知るということが前提でございます。そのためにはやはり暴力団自身の行動等をできるだけ詳細に視察ができるというような体制か組まれればこれも一つのやり方かと思うわけでございます。御承知のように警察の制度というのは各都道府県まちまちなんでございますけれども、暴力団の方は相当広域化をいたしておりまして、そして広域化した中での各暴力団の情報交換というのは非常に活発でございます。警察の方もそれに応じて昨年から情報センターというようなものを設けまして、主要な都道府県を中心にいたしまして暴力団の動き等をいち早く相互に知り合うというような制度を設けまして、それに対処していくというようなやり方を考えておるわけでございます。
  144. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それでは、白書の二十九ページに載っております暴力団の検挙数は刑法犯が三万八千二百五十一人となっておるのですが、これが検察庁へ送られたいわゆる送検されたのはそのうちでどれくらいあるのか、そして送検された後起訴されたのは、これは法務省になると思いますが、どれくらいあるのか、不起訴あるいは起訴猶予になった数字はわかりますか。
  145. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 五十三年中に検挙いたしました者が五万八千七百五十人おるわけでございまして、そのうちで送検した者はすべてでございます。それを起訴した率はちょっと私の方はわからないのでございますが……。
  146. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 法務省の方で。
  147. 根來泰周

    根來説明員 ただいまお話のあった件数につきましてどういうふうな処分になっておるかということについては、警察の御統計と私どもの統計と関連させておりませんので、残念ながら判明しないということになっております。
  148. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 五十二年度が三万八千二百五十一人でしょう。それで五十三年度が五万八千七百五十人。それが関連してないから全然わからないと言うんですか。そんなことはないでしょう。ある程度推定でも出ていることは出ているのでしょう。
  149. 根來泰周

    根來説明員 私の方でも暴力団事件について厳しい処分をしなければならない、あるいは保護、矯正と連絡をとりましてその後の改過遷善といいますか、そういうことをやらなければいけないということで、特別調査というのを若干やったわけでございます。特別調査によりますと、全部の件数ではございませんけれども、特定の検察庁について、暴力団関係の事件ということで何件あるか、その処分状況がどうなっておるかということを調べましたところ、一般事件よりも相当起訴率が高いという結果になっておりますけれども、いまのお話にあった件数がすべてどういうふうにリンクしているかということまで調べておりませんので、ここで判然と申し上げられないわけでございます。
  150. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 どうも法務省の方の姿勢と警察庁の姿勢がちょっと違うように思うのですね。ということは、警察庁の方にお伺いすれば暴力団組織の人数、十万八千何ぼという人数まで把握しておられるけれども、法務省の方はそういうことは全然知らないのだ、暴行事件にしてもあるいは凶悪事件にしても、これは暴力団との結びつきでなくて、一般的な暴行事件であり一般的な凶悪事件であるというとらえ方しかしておりません。ですから、そこに結びつきがないものですから、たとえばはっきり暴力団がやった事件だということであれば、量刑がありますね、三年以下の懲役または十万円以下の罰金というような上限と下限があるときに、そういうときには法務省、どうなんですか、はっきり立証できたような場合にはできるだけ重い方をとるとか中間をとるとか、そういうことについての基準はございますか。
  151. 根來泰周

    根來説明員 実務をやっておりますと、警察から事件が参りますと送致書という頭書きがあるわけでございますが、その送致書の裏に犯罪の情状に関する事項ということで送致者の意見というのが載っておるわけでございます。それには詳しく、たとえば被疑者は暴力団の構成員であるとかあるいは準構成員であるとかという状況の意見がついておるわけです。私ども検察官といたしましては、その意見を見ましてなおそういう見地から被疑者を調べ、またそういう構成員かどうかということも情状関係ということで調べまして、ただいまおっしゃったように、一般的に申し上げれば、一般の事件が一年の求刑であれば暴力団であれば少し重く求刑する、あるいは保釈についても厳しい態度で臨むとか、あるいは判決の控訴審議といいますか、判決結果についても厳しい態度で見るとか、そういうことを一般的にやっておることは間違いないところでございます。
  152. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 では、いま警察庁の方は、送検するときには全部送致書というものについて暴力団とか何とかいう細かいことをつけて送られているわけですね。
  153. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 県によりましてぽんとマル暴という判を送致書に押して特にわかるように送るというようなことを約束して、検察庁とお互いに連絡をとり合ってやっておるというようなものがあると思うのです。それで、いま法務省からもお話がございましたけれども、私どもは、要するに検挙いたしまして、それについてこういう事件について何名関係しておるという場合に一件何名、こういうふうにやるわけでございますが、検察庁の方では必ずしも私どもがとる統計とリンクしてないということで、そのために、処理につきましては十分連絡をして、その態様それから悪質度、そういうものにつきましてはそれに応じた処置をしていただいておるわけでございますけれども、一般犯罪もそうでございますが、件数のとり方はすべて違っておるというのが実情でございます。
  154. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それにしても、マル暴ならマル暴という判を押す、あるいは送致書を暴力団の犯罪ということで送れば、そのままストレートに同じ数字にならなくても、暴力団の犯罪だということについてのある程度の数字というのは法務省でわかるのじゃないでしょうか。
  155. 根來泰周

    根來説明員 その辺、私どもの方では統計的に把握していないものですから、各検察庁ごとでは、いろいろ警察から御連絡をいただいて、暴力団関係の犯罪というような統計をとっているところもございますけれども、法務省としてそれを全国的に集計しているということではございませんので、ちょっとその辺についてはお答えいたしかねるわけでございます。
  156. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 せっかく警察庁の方で頂上作戦をやって、広域暴力団をできるだけ減らそうということで検挙されても、意思疎通が完全に図られていなくて、法務省の方は一般犯罪として軽い方の処分をしていくというようなことがたびたび起これば、どうしても、何だ、結局検挙されてももう出てきた、普通なら一年も二年も引っ張られるところを一週間で出てきた、こういうふうな結果を招いていることもたくさんあるのじゃないか。きちっと連絡がいっておったら、そういうことをほとんど逃さずにいけるはずなんです。そういう点で、意思疎通が図られていない点があるのじゃないでしょうか。
  157. 根來泰周

    根來説明員 そういう御批判は受けると思いますけれども、私どもの方は、法務省でも検察官の会同等におきまして、大臣からあるいは刑事局長から、暴力団の犯罪について厳しい姿勢で臨むようにということで再々訓示をいたしておりますし、また各検察庁でも警察と緊密な連絡をとりまして、万々抜かりなくやっている所存でございますけれども、先生の御意見もございますので、それをまた検察庁の方に伝えまして、遺漏のないようにいたしたい、こう思っております。
  158. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 たとえば暴力団に対しては、一般庶民は警察という言い方をしますけれどもこれは検察も含めてだと思うのですが、どうも甘いという印象を持たれている原因の中には、この間の四月十五日の記事によっても、少なくとも恐喝容疑ということで重い方の十年以下の懲役でいかれると思っていたところが、実際には、それが立証できなかったのかどうかわかりませんけれども、単なる暴力行為として、わずかな罰金を払って一週間で出てきた。こういう結果が出てきたところを見れば、庶民感情からは、ああいう悪いことをする、暴力団として札つきだ、そして当然長期間ほうり込まれると思っておったのが、すっと出てくるものですから、逆に、こんなに軽いのだったら少々ぐらいやっても、組、会の人であればむしろ箔がつく、そういうようなことを助長する結果を招いているのではないだろうか。悪意がなかったとしても、そういう結果を起こしていくのではないだろうか。そういう点から見て、警察なり検察の取り締まりが甘いというような表現、そしてまた先ほどの世論調査の中でも要望度が非常に高いという結果が出てきているのじゃないかと思うのです。官庁同士の連絡も十分なさっていると思うのですが、いまの御答弁を聞いていますとどうも余り緊密な連絡がとれていないような感じがいたしますが、その点はいかがでしょう。
  159. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 官庁間の連絡は十分にとっておるわけでございます。ただ、法務省の方では統計をおとりになっておらないということなのでございますが、私どもの方と検察庁とでは、一つ一つの事件をどう処理するかという問題につきましては、十分連絡をとってやっております。  それで、この間たまたま一週間で罰金で出てきたという話、恐らく稲川会長の事件だろうと思うのでございますけれども、これは確かにおっしゃるとおり恐喝の事件としてはちょっと成立しない。それは、その間に一人、人が介入いたしておりまして、その介入しておった人がフィリピンに逃げてしまったわけでございます。そのために恐喝の、要するに金銭の貸借関係の面の立証ができないというような形になってしまった。ただ、それに対して、大ぜい寄っておどかしたという事件として暴力行為等取締法で処断をするという形になりまして、それに見合う処置をしてもらったということでございまして、それによる組の打撃は、先生がお考えになっておられる以上に深刻なものがあるのでございます。  以上のような状況でございますので、連絡はこれからもさらに緊密にとってやっていきたいと考えております。
  160. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまの稲川会の会長の件については、七日に「一億二千万の用心棒代」という記事が出ている。そして十五日に一週間で釈放という記事が載っている。続けてこういうことをたびたび大親分がやっているような形ですね、この新聞記事によれば。そういうところでわずか一週間前に出ていた事件との関連性、そんなことはちっともないのか、素人から見ればそういうふうにとられてもやむを得ないのじゃないかと思うのですが、そういう点の調査は十分行き届いているわけですか、検察と警察との間の両方でも。
  161. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 この事件は全然別個の事件でございまして、先ほどの事件は神奈川県で起きた事件でございまして、その新聞記事が出ました事件は現在、警視庁と兵庫県とが中心になってやりました韓国のツアーの賭博事件というのがございますが、これに関連したことでございまして、ちょっと性格が違うわけでございます。その面につきましてはまだ捜査中でございますので、私ども何とも評価の仕方ができないわけでございますが、そういう状況で全く別個の事件として御理解いただきたいと思うわけでございます。
  162. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それはわかっているのです。別の事件だということも地域が違うということもわかりますけれども、しかし警察の情報網をもってすれば、関東で起こった事件であろうが、神戸で起こった事件であろうが、しかも片方は何年間にもわたってずっと継続しているわけでしょう。そうすると関連性があるわけですから、種類が違うにしても、いろいろな犯罪を犯していることに対して市民としては不信感を持つのは当然じゃないでしょうか。
  163. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 そちらの方で稲川角二に犯罪があるということであるならば、当然いままでの段階で一緒になって捜査が行われたと思うわけでございますけれども、もしそういう問題がいまあるとするならば金の流れの問題だったろうと思うのでございますけれども、現在までのところ、それに関連しての犯罪容疑というものは十分に出ていないわけでございます。まだ捜査中でございますから何とも言えませんけれども、そういう状況なのでございます。
  164. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それじゃ具体的に、松田組と山口組の対抗で百六十六人を逮捕してピストル六十七丁を押収したという記事が、これまたつい最近出ていましたね。こういうふうな具体的なものだったら法務省としてもちゃんと統計をとらなくてもわかるわけですか。百六十六人の逮捕者についての起訴とか不起訴、あるいは有罪になったとか、そういうことはわかりますか。
  165. 根來泰周

    根來説明員 ただいま御指摘の件については、現在資料の持ち合わせがございませんけれども、調べますと直ちにわかることになっております。
  166. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 警察庁の方ではそれをつかんでおられますか、それが送検されて以後の経過について。
  167. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 まだ調査いたしておりませんが、先ほども法務省の方からお答えになったようなことで、どうかと言われれば調査はできると思います。
  168. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほどのように、結局検挙はしたけれども、後は非常に微罪で終わってしまったという結果になっているかどうか。それらは監視する必要があると思いますし、後ほど調べてその結果だけお知らせいただけますか、その点は。
  169. 根來泰周

    根來説明員 ただいまのは新聞報道でございますので、正確かどうかという点が前提になるわけですけれども、松田組との対立抗争についての結果は多分報告も来ておるはずでございますので、御報告申し上げます。
  170. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 法律的に言えば暴力団というものの定義は別にないわけですね。ただしかし、警察の方ではこの白書の中に「暴力団を「集団的に又は常習的に暴力的不法行為を行い又は行うおそれのある組織」と定義し、」こうあるのですが、法務省としても同じような定義で同じような位置づけをして、処分をするときにはそういうふうに臨んでいらっしゃるわけですか。別の解釈をお持ちなんでしょうか。
  171. 根來泰周

    根來説明員 暴力団というのは、いまお話のあったように、むしろ法律的な概念じゃなくて、社会学的といいますか、そういうような概念でございますので、警察の方でおっしゃっておるような概念でとらえてやっておりますけれども、私どもの方は具体的事件を処理するときには、暴力団というよりも、むしろ暴力団に入っている、人間のそういう背景ということで把握しておるものですから、特にきちっとした概念でやっておるわけでございませんで、その辺御了承願いたいと思います。
  172. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ということになると、罪一件については暴力団員であろうと何であろうとみんな  一緒の扱いになっておるわけでしょう。ただしかし、そのところで警察の方からいろいろ書類をつけたり丸印をつけたりしてやっても、余りそれはあらわれていないわけですか。ほとんどそれはもう、ほかの市民と同じような犯罪であって、暴力団員としては全部が全部そういうことは取り上げて罪一等重くするとか加重するとかいう考え方は実行してないわけでございますか。
  173. 根來泰周

    根來説明員 先ほども申し上げましたように、暴力団というのは本人の背景になっておるものですから、それは情状ということで重く処理しておる、その一つのファクターであるというふうに考えております。
  174. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ですから、全部が全部警察から言われたことはそういう扱いになっておりますか。
  175. 根來泰周

    根來説明員 ちょっとお言葉を返すようですけれども、警察段階の証拠関係と、また検察庁で調べた証拠関係といろいろそごする場合もございますので、検察官は警察の御意見を十分参酌しながら、また独自な立場で検討して、そして判定しておる、こういうふうに御理解いただければありがたいと思います。
  176. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ありがたいじゃなしに、どうもやはり、警察でのこれは暴力団員の犯罪だという証言を法務省としてはそのまま素直におとりになっていない面が非常に多いように思うのですね。ですから統計も言えないとおっしゃると思うのですが、そうすると、普通の犯罪と全く同じ扱いになっているとしたら警察の方でやっていることが実ってこない。それが本当はもっと長く引っ張られるかもわからぬやつが早く帰ってくるという形になっているのじゃないかと思うのですが、そういう点はどうも私は解釈がちょっと食い違っておるような感じがいたしますのですが。
  177. 根來泰周

    根來説明員 非常にリアルな話でございますけれども、現実にその事件を処理しますときには、警察と検察庁というような関係でなくて、事件を直接担当された警察官と事件を直接担当している検察官とのいろいろな情報交換で事件を処理するわけでございます。ですから、検察官がこの男はどうも暴力団じゃないのじゃないかというふうに考えたときは、その担当の警察官においでいただいていろいろ情報をいただいて、その情報をもとにしてまた調べる。それでお互いに隔意のない情報交換をして、そして情状というものを考えていくということでございますので、その辺、両方にそごがあるとは私は考えていないわけでございます。
  178. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ただ一斉検挙とか何かで、何々組ということをはっきり銘打って行ったような場合はどうもとらえておられるようですが、警察庁の定義の中にも、暴力団員の中にも、狭義と一般の広い広義との意味がありますね。組織から外れた、はぐれと言うのですか、そういう者については、これを一斉検挙でなしにやる場合に、本人が暴力団でないと言えば検察庁としてはあと立証するものがないわけですから見逃している面があるのじゃないかと思うのですが、警察が言っても警察の言っていることは証拠にならないのでしょうか。
  179. 根來泰周

    根來説明員 警察の言われていることがすぐ証拠になるというものじゃございませんけれども、検察庁も警察からいろいろ暴力団全体についての資料をちょうだいしておりますし、またその個人につきましても前歴とか、そういういわゆる暴力団関係の資料を検察庁自身が持っておりますので、あるいはその前科等のときの書類がございますので、そういう立証には手抜かりがないというふうに私どもは考えております。
  180. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 警察の言われたことが直ちにということをいま言われたわけですから、では、警察の言われたことでなしに、検察庁は検察庁としての独自の調査網とか、あるいは暴力団組織をきちっとつかんでおられるわけですか。
  181. 根來泰周

    根來説明員 検察庁には暴力係検事というのがおりまして、そういう係検事制度のもとに暴力団に関する情報というのを主として警察からちょうだいして、あるいは警察官がいろいろ調べた段階で情報を入手することもございますので、そういう情報を係検事のもとに集大成といいますか集めておりますので、そういう資料も活用しながらやっておるというのが実情でございます。
  182. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 では、独自の調査ということでなしに、あくまでも警察からいただいた資料とか、そういうものをもとにしてということなんですね。そういうことであれば、警察から資料はいただくけれども、しかしそれが暴力団員とかということで位置づけしようということはまた別問題だということになるわけですね。検察庁は検察庁で判断が別なんですね。
  183. 根來泰周

    根來説明員 ぎりぎり御質問いただくと、やはり警察は警察の御判断、検察庁は検察庁の判断ということに、まあ犯罪事実それ自体もそういうことになっておりますので、たてまえはそういうことになるわけでございます。  繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、そういう資料あるいは情報の交換というのは十分やっておるつもりでございます。
  184. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 なぜそういうことを申し上げますかといいますと、私が現認したことがあるのです。それは、警察の資料は警察の資料だ、一週間かかって一生懸命調べた、検事さんは検事さんで全く別個の調査をなさって、あれは当てにならぬぞというようなことを言われたことが現にあるのです。ですから、検察官と警察の調べとは完全に一致していない面がある。ですから、警察が完全にこれは暴力団員であって重い方の処分をすべきだと思っても、検事さんの方はそういう処分をなさらないというような結果も間々あるように聞いているのですね。そういうところがやはり市民の方から見れば、重い処分で当然引っ張れるべきところが軽い処分で帰ってきて、結局先ほど申し上げましたようにチンピラというかいわゆる末端の団員に箔をつけてやっている結果になっているというようなことを往々にして聞くわけですね。それで、その連絡がどの程度いっているのか、そうして警察の判断と法務省の方の判断とどの程度違うのかということでいまお伺いしたわけです。  これ以上申し上げませんけれども、やはり大分食い違うような感じがいたしますけれども、今後、そういうことが原因となって暴力団に対して甘いという感じを持たれないような対策というものはやはり詰めていただく必要があると思いますし、その点両省とも十分御協議もいただいて、そういう点のないような方法も考えていただきたいと思いますが、よろしゅうございますね。  それから、時間の関係で続きまして、最近、これは第四次と言っていいのかとうかわかりませんけれども、警察庁の方としては兵庫県で暴力団の取り締まりの会議をお開きになった。これはいつやられて、今度あえてやられたねらい、そしてその方針というものをひとつお教えいただきたいと思います。
  185. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 去年の五月に対策会議を開いたと思いますが、これは昨年七月にたまたま山口組の田岡会長がねらわれるという事件がおこったわけでございますけれども、それ以前から関西におきましては山口組対松田組の対立抗争事件が続いておったわけでございます。そのために、関西の最も大きな広域暴力団ということで山口組を何とか取り締まりができないかということで、その対策会議を開いたという次第でございます。
  186. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そこでは、新聞によりますと三本柱という書き方をしているのですが、どういうふうな主な方針、いままでと違った方針なのか、あるいはまたいままで以上に上回った方針なのか、ひとつお教えいただきたい。
  187. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 これは、暴力団の対立抗争事件、その他でも言うわけでございますけれども、幹部を中心にいたしまして検挙を徹底するということが一つでございます。  それからもう一つは、資金源を何とか封圧していくという糧道を絶つ作戦をとる。  もう一つは、対立抗争事件の武器になります主として拳銃でございますが、こういうものの取り締まり。  この三本柱を掲げてやっていくんだということでございます。
  188. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そういうことであれば、いままでの一次、二次、三次とも大体同じような方針で来ておられるわけでしょう。特別にこの会議が改まった方針ということじゃなかったわけですか。
  189. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 そういうことで、それが基本的な三本柱ということになるわけでございますが、当時、さらにこちら側の取り締まり体制の強化ということと、それから情報センター、先ほどちょっと申し上げましたが、兵庫、大阪等に関西の主要暴力団に対する情報交換を主としてする情報センターをつくるというのが一つの問題。それから、先ほど言いましたかと思いますが、検挙をいたしましてなるべく社会から隔離をしてもらうその隔離率を上げるということでないと検挙の意味がありませんので、そういうものもひとつ目指していこうということで、隔離率向上という、その三つの問題をそこでも討議をいたしております。
  190. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 広域情報センターというのは、先ほどもちょっと話が出ましたが、わざわざそういうセンターをつくるということをこの会議でお決めになったということは、裏返して言えば、いままでの広域活動というのは、もう一つ情報交換が十分にうまくいってなかったということですが、改めて去年の時期になってこれを確認なすって、そしてこういうセンターをつくろうということになったということは。
  191. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 仕組みとしてそういうことをやろうということにしているわけでございます。いままでいかなかったというわけではございませんけれども、犯罪が発生すればお互いに情報というのは交換するわけでございますが、しない段階におきましても、動き等につきましてA県が知っておいた方がいいんじゃないかというものについては、ひとつそういう仕組みをつくって、仕組みに乗せていこうではないかという相談でございます。
  192. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 だから、本当言えば、その仕組みがあろうとなかろうと、警察情報というのはほかで聞く情報と違って一番早いし正確だし、一番統制がとれているということはわれわれかねかね聞いているのですが、そこがわざわざセンターをつくらなければならなかったということは、逆に言えばどうもそういう情報網の欠陥があったんじゃないかというふうに受け取れるのですがね。
  193. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 欠陥があったというわけではなくて、現状をさらに向上させようという意味でございまして、私どもは県単位の仕組みでございますので、警察法上はお互いに協力し合ってくれというやり方でございますので、むやみやたらに県の情報を流せば、これはまた大変なことになるわけでございます。さればといって何も流さないと言われれば、先ほどのような孤立した形になるわけでございます。それをだれかが選択をしまして、これはA県に知ってもらわなければいけない、これはB県の方に知っておいてもらった方がいいのじゃないかという仕組みをつくらないと、反対に情報の洪水になってしまうというようなことになるわけでございますので、従来やってなかったというわけではございませんけれども、さらにそれを整理したという形でございます。
  194. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 暴力組織の方は四十年代から広域化広域化で、系列化を図っているわけでしょう。警察組織の方はそれぞれ府県ごとですから、少なくとも向こうの方が十年近く対処の仕方、組織の方が先々へ行っていますよ。そういう面ではどっちかというと後追いという感じかいたします。もちろんそういうことをしなくてもそこそこの努力はなさっていたと思うのですが、そういう感じがいたします。  それはそれ以上言いませんけれども、隔離率ということは、結局いま言いました、先ほど私もちょっと触れておりました、罰金刑で済むところをたとえ少しでも拘束するような刑に持っていくというふうなことになると思うのです。いわば服役率を上げるといいましょうか、そういうことになると思う。それにはできるだけ送検した者が全部起訴されるような根拠を持つということになると思うのですが、ただ単にいままでのやり方であればそれだけのことはできない。隔離率を上げるような警察側の組織的な強化というものをどういう点で考えていますか。
  195. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 これは要するに犯罪の悪性の立証ということになるわけでございまして、個々にそれは違ってくるわけでございます。先ほども暴力団自身はどういうふうに認定するんだという問題がいろいろ出たりいたしますが、組織としていろいろな回状を回す、これは犯罪に全然関係のないことですけれども、その回状に名が連なっておるということが要するに暴力団のメンバーではないかということにもなるわけですし、捜索をしまして、代紋というバッジがございますが、そういうものが出てくれば、これはやはりここの組の一員であるということが立証できるわけですから、そういうようなものを細かく積み上げていくよりほかにないということで、種々の捜査会議ではそういう捜査技術上の検討をし、それをつけまして立証するというようなことをやっておるわけでございます。
  196. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、いままでも第一次、第二次、第三次とやられてこられたけれども、いままでのやり方は一斉検挙方式で、確かに量の上ではたくさん検挙ができた。しかし、実際には、量的検挙か多くなったかわりに、いま言われた立証とか、材料を集めたり証拠を集めたりという面にはどうも欠けておった。そういうものを充実させて、今度はそれを隔離率を高めるというふうに、ある程度量から質的な転換という見方ができるわけですか。
  197. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 一斉検挙は確かにおっしゃるような欠陥を持っておったと思うのでございます。ただし、私どもは一斉検挙だけに頼っておったわけじゃございませんで、いわゆる長期的に目標を決めましてそうしてじっくり捜査を遂げていくものと一斉検挙とをときどき合わせて、その時に応じて使い分けをしておったということなのでございます。
  198. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ますます強化をしていただいて、ひとつできるだけ根絶を早めていただくように御努力願いたい。  もう一つ他の官庁との協力体制ということもこの中にもたくさんうたっておられるのですが、税制面から攻めていくということもやっておると思うのです。いままで検挙されたうちで税制面でどういうふうな成果をお挙げになったでしょうか。その点ひとつ国税の方からお答えをいただきたい。
  199. 小野博義

    ○小野説明員 税務行政の目的と申しますのは、先生御案内のとおり公平な課税の実現ということにあるわけでございます。これは所得税法人税について申しますれば、所得のあるところ適正、公平な課税を行っていくということでございます。そういう意味からいたしますと、私どもの面から言えば、一般の納税者であろうとあるいは暴力団であろうとこれは差異がないわけでございます。しかしながら、近年暴力団が非合法的な活動の領域を深めてまいりまして、そういうところから多額の不法な収入を得ておる、そういう事例が多くなっているやに承っておるわけでありますが、国税庁といたしましてはこれにつきまして重大な関心を持っておるところでございます。  しかしながら、暴力団のかせぐ利得の相当部分というのが非合法的な方法で得られているというふうに考えられるわけでございますけれども、まさにやみのお金でございますので、通常の税務調査ではなかなかこれが把握できないという問題があるわけでございます。それとまた、暴力団関係者に対する調査と申しますのは、一般の事案と違いましてなかなか協力が得がたいあるいは課税の端緒がつかみにくいというようなことで、一線の職員は非常に苦労が多いわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、税務当局で行います独自の調査のほかに従来から警察当局との連携を図っておりまして、暴力団の課税に関係する情報の提供を警察当局の方からいただきまして、これに基づいて課税を行うというような方法をとっておるわけでございます。ただ、所得税は一年間に発生するすべての所得を課税の対象とするわけでございますけれども、警察からの情報と申しますのは特定の部分の収入にかかわる情報でございますので、ストレートに課税に結びつくというものでは必ずしもないわけでございますが、非合法所得の課税上非常に有効な手がかりを与えるものだというふうに考えておるわけでございます。  ちなみにその活用状況を申し上げますと、五十年の五月から五十三年の十月までの最近三年半の間に警察当局の方から提供を受けました課税資料が三百八十四件ございます。うち税務調査を行ったものが二百三十一件。その結果新たに課税した所得といたしましては、所得金額で十億五千八百万円、同じく税額では四億四百万円という増差を上げているわけでございます。
  200. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま警察当局としてはそういう非合法活動の分については全部国税の方へ通告をなさっているわけですか。
  201. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 すべてというわけにはまいりませんですが、検挙いたしましたもので、たとえば賭博等そういう非合法なものの収入等がございました場合に、それについて国税の方と相談を申し上げるというようなことでございます。
  202. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 白書の三十三ページによりますと、資金源の中で総額が三百三・四億、これは主として覚せい剤とかのみ行為とか恐喝ということですから非合法活動でしょうから、この三百三億のどの程度のことを国税の方へ連絡し、そして国税の方ではそのうちでどの程度のことが取り上げられたんでしょうか。
  203. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 この三百三億の内訳につきましては、どのところまでやったかというのは恐らくまだちょっと調査してみないとわからないのでございますが、これによる件数は余りないんじゃないかというふうに思います。要するに非常にはっきりした賭博の行為とかそのケースによりましてとられておるものでございますので、全体的に検挙されました暴力団が取得したと推定されるということなんで、やったかやらないかということと同時に、大体月にどのくらい水揚げがあるんだというようなことを聞きましてやったものでございますので、はっきりしたものではないというふうに御理解いただければと思います。
  204. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 推定ですから、それはわかるんですが、推定を出す限りはある程度の根拠があって推定しているわけでしょうから、そのうちのどの程度まで国税に通告なさって、そしてそれを受けて国税が、たとえば半分なら半分くらいは推定ですから推定の根拠になるようなものについての——一〇%かもわかりませんが、一〇%なら一〇%の根拠があって推定三百三億出たということであれば、その一〇%分は全部国税に通告しておるのか、そして国税はその一〇%についてどれくらいまで把握できたかということをお聞きしているわけです。
  205. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 その辺のところは私もこの三百三億が推定で出てきた状況がちょっとわかりませんので、一応調べてみたいと思います。
  206. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それでは国税としてこの三百三億の推定についての何か資料とかそういうものはございますか。
  207. 小野博義

    ○小野説明員 ただいまの件でございますが、先ほど申し上げました数字は大体マクロで考えておりますので、その内訳を必ずしも正確には把握しておるわけではございません。また推定で三百三億というお話でございますけれども、私どもとしては具体的に課税資料にあるようなものをいただいておるわけでございますので、ちょっと両方の間の結びつきというのははっきりわからないわけでございます。
  208. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 全体はわからなくても、たとえば麻薬なんというのは皆大体において警察当局も麻薬の元締めとか売人とかほとんどつかまえていると思うのですね。警察だけでなしにこれは厚生省もつかまえておると思うのですね。麻薬なんかを見ますと、三百三億のうち大体百九十一億というんですから、ほとんど三分の二ぐらいですからね。こういう点ではどの程度把握しておられるんですか。
  209. 小野博義

    ○小野説明員 そういう点につきましても、ただいま申し上げましたお答えと同様になるわけでございますけれども、具体的に課税資料としてある人間なりある組織なり、組織と申しますかある法人なりが幾ら幾らの金を受け取っておる、そういう情報を御提供いただきまして、それについて、税の話でございますので麻薬取引であっても一応いろいろな必要経費というものがあるわけでございます。ですから、そういう収入金額の中から必要経費を差し引いたものに課税するわけでございますけれども、ただ、大体売人一人について幾らの所得があるのだということではちょっと課税には結びつかないかと思います。
  210. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 余り一人一人のことでなしに、結局麻薬なんというのは元締めがおって、卸、それから仲卸というふうにして末端の人だけが恐らくつかまっていると思うのですね。そうすると、実態はなかなか肝心なところはつかまえられないと思うのですよ。そういう点では本当に税金も、課税もできないようなところだけが逮捕されたり検挙されたりという形になると思うのです。そういう点では、暴力団の、暴力組織の根源というのはやはり金だと思いますし、資金源を押さえることが一番大事だということはもうこの白書の中でも書いておられるのですが、警察当局としては、そういう麻薬組織の金の入るルートとかそういう点についてはどの程度この百九十一億の中で把握していらっしゃるのですか。
  211. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 これ、先ほども先生がおっしゃるように、課税の対象にするようなはっきりしたものがつかめないわけでございますね。帳簿があって、その帳簿を押さえれば幾らという金が出てくるというものはもう全然ないわけでございますから、本人たちが売った、買ったという一部分をとらえまして、そしてその犯罪行為の中から、本人たちからいやこういうふうに月にはこのぐらいのもうけになるんだというような話を聞いたものが推定額になっていくものでございますので、この麻薬、覚せい剤で課税の対象にできるものは私はほとんどないんじゃないか。むしろいままで対象にしてきたものはのみ行為とか賭博の中で帳簿に書いてあるもの、こういうものが中心になっておったように私は記憶しておるわけでございますけれども、ケースによりましてできるだけ国税との間で連絡会議を持って通告をするというたてまえはとってはおるわけでございますが、現実のものとしてはなかなかむずかしいということが言えるんではなかろうかと思います。
  212. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 時間がなくなってしまいましたので最後に、この間科研の方ですかあるいはまた刑事局の方と協力されたんでしょうけれども、一兆三百七十六億の資金源の実態推定調査というのが出ましたですね。これはどういうふうな把握のされ方をしたのかわかりませんけれども、これについてひとつお教えいただきたいと思います。
  213. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 これは二通りの計算をやったわけでございまして、一つは、先ほどからお話がありますように、非合法な活動によりまして得たもの、あるいは合法な活動によって得たものを、各収入源別といいますか、覚せい剤ではどうだ、のみ行為ではどうだろうかということを検挙した者から聞きまして、そうしてその人が、大体こういうことに従事しておる者が年間にはどのくらいの収入があるか、これは個々の収入というのは全く粗収入でございまして、すべての収入という形でございます。ただ、暴力団同士の間で得るものを収入とはしておりませんで、組以外の外の社会から入ってくる金というものをそういうふうに考えたわけでございます。そういうふうにして計算してみますと、一兆三百七十六億程度の金になる。  今度は、各人で暴力団の幹部クラスというのが年間にどのくらいの生活をしているかというのを調べますと、大体年間に三千万円くらいの生活のための所得がある、所得といいますか、収入ですね、粗の収入がある。それから中間の幹部でございますと二千万円くらいのものがある。それが何人おるか。それから、やや女のひもみたいな者がおる、結局暴力団の社会も非常に大きな競争社会でございまして、上がどんどん収奪をしますと、上納金というような形で取り上げてまいりますと、結局今度は弱い者のところへそれがしわ寄せが参りまして、女に依存して吸い上げてくるというようなことになっておるわけでございます。これが非常に大きな額になっておるわけでございますが、そういう女依存の者が何人くらいおって、それが年間に一千万くらいの収入の生活をしておるというようなものをいろいろ足してみまして、そして総額を調べますと、これもやはり一兆八百二十六億くらいの金になるわけでございます。そこらに大体推定するとなるのではないか。  そうしますと、暴力団がいま十万から十一万ということになりますと、一人当たりに直せばまあ一千万程度の収入があるというような計算になったというのがこれでございまして、全部それ個々に調べたというのじゃなくて、そういう推計をしたということでございます。
  214. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 時間が来てしまいましたので、暴力団は社会の敵と言われているわけですから、ひとつ暴力団の壊滅のためには今後とも一層の努力をしていただきたいということで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  215. 加藤清二

    加藤委員長 安藤巖君。
  216. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、消防体制の問題についてお尋ねいたします。  消防力の基準というものが定められておりまして、これは消防庁の告示で決められておるのですね。これは御承知のように、市町村市町村民の生命、身体、財産、これを火災などの災害から保護するための必要最小限度の施設及び人員についての基準が定められているものと思いますけれども、現在全国各地の市町村でこの基準に従って十分な施設及び人員が確保されているというふうに消防庁としては理解しておられるかどうか、まず最初にお尋ねします。
  217. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 消防力の基準につきましては、消防行政を推進いたしていく上におきまして、これだけが最低限必要であるということで消防庁としての一つの基準を示しておるわけでございます。したがって、具体的にどれだけのポンプが必要であるか、どれだけの職員が必要であるかということは、それぞれの市町村がこの基準に基づいて計算するという形になっております。それぞれの市町村計算しておりまして、これが自分の町の基準数であると言っておるものに対しまして、現在の実動の力が及んでおるという形には、残念ながらなっておりません。
  218. 安藤巖

    ○安藤委員 残念ながらなっていないとすると、その原因はどういうところにあると考えてみえますか。
  219. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 この基準そのものが非常に消防として万全を期するという見地から成り立っておることと、それぞれの市町村の消防本部が計算いたします場合には、何といいますか、自分の町を守るためにはこれだけはぜひ欲しいという要望が加味されておりますので、基準としてそれぞれの市町村が設定しておりますものが相当高い数値になっておるということは事実でございます。ただ、私ども、それぞれの町の実情を一番よく知っているのはそれぞれの町の消防本部でございますから、それが自分の町はこれだけ必要であると言っておる数値にできるだけ近づけるように、財政措置等については十分努力していく必要があると思っております。
  220. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、ちょっと細かい話をしますけれども、その消防力の基準の中に「人員の基準」というのが御承知のようにあるわけですが、これによりますと、全部言いませんけれども、たとえば消防ポンプ自動車の操作員の数は五人とか、はしご自動車または屈折はしご自動車は五人とか、化学消防車は五人、あるいは救急自動車三人ですか、というふうにあるわけですが、それぞれの自動車について、いま言いましたような数の操作員あるいは乗務員を専任として配置していなくても、有効操作ということで交代で乗れる、そして出動することができるようなことになっておればいいのだというのが、この消防力の基準の二十一条にあるというふうに聞いておるのです。そのうち特に消防ポンプ自動車と救急自動車には専任の操作員を配置するように指導しているというふうに聞いておりますけれども、そういうようなことで賄っていける体制にあるのかどうか、いかがでしょう。
  221. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 現実の問題といたしましては、御承知のように乗りかえと私ども称しておりますけれども、化学消防車あるいははしご消防車、そういったものと一般の消防自動車その一般の消防自動車を運転し操作する方々が、はしご自動車なり化学消防車なりが出動しなければならない場合にはそちらへ乗りかえるという計算、それから救急の場合でも御承知のように警防職員と兼務しておるというような者もございますので、そういったものを認めておるわけでございますが、それで現実の消防活動あるいは救急活動には支障がないようにしておるつもりでございます。
  222. 安藤巖

    ○安藤委員 しかし、実際問題としては、これは私の地元の名古屋の場合を申し上げれば、ポンプ自動車、はしご車等々、救急車も配置しているのは当然なんですが、消防ポンプ自動車、救急以外の、はしご車とか化学車あるいは三点セット、あるいは消防艇、こういうところにも名古屋市は必要な専任の操作員を配置しているわけなんです。だから、それは、そういう名古屋市というような都会、これはほかの都会でもあろうかと思うのですが、特殊な事情を考慮してやっておられるのだというふうに思っております。  そこで、名古屋の場合、消防費についての地方交付税の算定の基礎になります基準財政需要額、これは昭和五十二年度では百四億三千八百万円というふうに聞いておりますが、そのほぼ一〇〇%を使用して先ほど言いましたような調子で施設及び人員を確保しているというふうに聞いておるわけなんですが、実際の状況は、消防ポンプ車は、消防力の基準からはじき出されてきている基準数から言うと、名古屋市の場合で言うと百二十三台ということになっているのですが、実動できる態勢になっているのは六十九台。そしてはしご車は、基準数は十九台となっているのに、実動できるのは十一台にすぎない。そして救急車の場合は、基準が三十六台となっているのに、実際は二十八台にすぎない。この数は、私が調べましたところ、名古屋市の消防司令室にあるコンピューターに組み込まれている数ですね。だから、実際に動くことのできる数なんです。それが基準数よりも、いま言いましたように相当下回っているというのが実情です。  これはもちろん車のことですから、修理中というようなのもあるのかもしれませんが、実情を聞いてみますと、車はあるのだけれども、それを操作する人あるいは運転する人が足らないので、実際にはこういう数しか出動できない態勢にあるのだということを聞いているのです。これは先ほども財政的な措置云々というふうにおっしゃったのですが、こうなるとこれは大変なことじゃないかというふうに思うのですが、この点についてどういうふうに消防長官としてお考えですか。
  223. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 まず、名古屋の基準の消防ポンプ数でございますが、名古屋市の消防本部といたしましては、先生御指摘のように百二十三台が基準であると言っております。私どもの方の基準をそのまま計算いたしますと、予備車十台を含めて九十一台という数字が出てくるわけでございますが、これは私どもの基準では九十一台ですけれども、名古屋市のいろいろな事情を勘案すると、名古屋市の防災の上では恐らく消防本部は百二十三台要ると申しておるのだと思います。そして現実問題として、現在名古屋市が持っておりますところの消防ポンプは六十何台とかいうお話でございますが、私どもの統計では、現在百台名古屋市が保有しております。ただこのうちで、予備車がどうなっておるのか、あるいは故障しているのかどうか、その辺はちょっとつまびらかにはいたしません。  それから、名古屋市の職員数でございますけれども、決して多いとは申しませんけれども、御承知のように現在二千百八人おるわけでございます。私どもの方の基準そのもので計算いたしますと二千百四十九人ということになりまして、おおむね職員数の面でも基準は達成しておるという考え方もできるのかと思いますが、ただ先ほど申しましたように、名古屋市の消防本部としては、国の基準はそれはそれとして、名古屋市の実態から見てこれだけの消防ポンプが欲しい、その消防ポンプをそれだけ置くという前提に立って今度は人員をはじき出しますと、もっと大きな数字になるわけでございまして、毎年毎年市の消防本部としては、市当局に対してこの基準でもってぜひ確保してほしいというふうに要望しており、市当局でいろいろ検討の結果、毎年少しずつ増強し予算化されておるようでございますけれども、現在の形になっておるというふうに理解しております。
  224. 安藤巖

    ○安藤委員 消防ポンプ車の場合に、消防庁の方での基準の台数は九十一台だというふうにおっしゃったのですが、先ほど私が言いましたように、現在名古屋市では消防ポンプ車は六十九台しか出動できない状態にある。これはきのう私が聞いたばかりなんです。そうなると、消防庁の方の基準の数からいっても、これは相当少ないのです。だから、こういうようなことだと、これはいざというときに大変なことになるのではないか。そしてそれが、先ほど言いましたように、人が不足しているから車があっても動かす状態にはないのだ、こういうふうに私は聞いているのです。だから、その辺のところをしっかり認識していただきたいと思います。後からもうちょっと具体的な話を申し上げますので、大臣もよく聞いていただきたいと思うのです。  そこで、自治省の財政局交付税課、財政課、この両方で編集しておられる「地方交付税制度解説」というのがありまして、そのうちに消防費の五十三年度分のものがあるのですが、消防費については人口十万人を標準として単位費用の算定をしておられるというふうに聞いております。名古屋の場合ですと二百十万ですから、これは相当な補正をすることになろうかと思います。ほかの都市もそうなるのだろうと思うのですが、この十万人を標準とした単位費用の算定によりますと、先ほど言いました解説によると、職員の配置は五十三年度が百二人、五十四年度でも百三人で、一人ふえるだけというふうに聞いております。そして現実にそうなっているわけです。  いまのは地方交付税の方からの消防費を出す基準ですが、今度は消防力の基準に基づいて配置を考えると、十万人を標準にした場合は何人になりますか。
  225. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 百十名になります。
  226. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、交付税の方は百二人、消防力の方の基準からすると百十人、これで八名も足らぬわけです。それで現地といいますか、たとえば私の持っておるのは全国消防長会の要望書もあるのですけれども、各市町村では、それぞれの市町村の実情に合った消防力の基準というのを、消防庁の方でつくっていただいた基準に従って計算をすると、百十名ではなくて百十五ないし百二十だというふうに言っているようです。そうなりますと、この差はもっと開きます。十万人で七人ないし十七人開くということになると、五十万あるいは二百万あるいは三百万ということになると、もっと差が開いてくるのではないかと思うのですね。  だから、これはいまちょっと言いましたが、全国消防長会の昨年の十二月の「消防力の整備充実に関する財政措置」という要望書がありまして、たくさんあるのですが、そのうちの一つだけ申し上げれば、「地方交付税の充実」、そして「単位費用算定基礎の増額」、そのうちの一つとして「消防職員の増強」、そのうちの一つとして消防力基準達成のための要員を増強してほしい、こういう要望になっているのですよ。  つまり、お金の方は、実際の市町村民の生命、財産あるいは健康を守るための最低限必要な消防力の基準に達していない、こういう状態だ、だからせめて消防力の基準を達成することができるまでの要員にしてほしいという痛切な話です。消防力の基準は消防庁でお決めになっている。しかし金の方が全然これに伴っていない。先ほど言ったとおりです。だからこういうようなことでは大変なことです。  これは大臣にお答えいただきたいのですが、先ほど消防庁長官の方は財政的にも云々というふうにおっしゃったのですが、こういうようなことでは困りますので、大臣の方から、金の方、いわゆる地方交付税増額も含めてしかるべき適切な措置をとっていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  227. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 交付税において消防力の基準というものをどういった形で反映させるかという問題かと思います。実は現実の姿が、先ほども申しましたように、消防力の基準よりも低いわけでございます。そして、先ほど申しましたように、昭和五十四年度で見ますと、消防力の基準で計算すれば、標準団体である人口十万、市街地人口、これを七万と想定しておりますけれども、百十名ということになっておるのに対して、百三名を交付税では算定の基礎に置いておるわけでございます。十万都市をずっと見てみますと大体百名以下、平均して百名を割るというような現実の姿でございます。  それで、私ども交付税で見た消防費については、満度まで消防費に使ってくれということを絶えず言っておるわけでございますけれども、現実の姿はそうなっておりません。御承知かと思いますけれども、五十二年度の実績を見てみましても、消防費として地方交付税基準財政需要額に算入した額の八六・九%しか現実問題としては消防に使われておらない。指定都市におきましては、これは九一・一%まで使っております。名古屋のごとく九七%まで使っておるというのは最高の部類でございまして、指定都市以外のその他の市におきましては八五・九%、町村におきましては七九・三%という実態でございます。  地方交付税もとよりひもつき財源ではございませんので、それを私どもとしては市町村長さんに強制するつもりはございませんけれども、消防の重要性にかんがみて、こういった形で地方交付税については年々基準財政需要額を引き上げておる、これだけぜひ使ってほしいと申しておるのにもかかわらず、現実問題といたしましてなかなかそれが使われておらない。特にここ数年、地方財政がわりあいと窮屈になってきた関係もございまして、消防費の方へなかなか金が回りにくいという関係もあろうかと思います。  四十九年度には実は一〇三%までいったわけでございます。それが年々下がって、現在八〇数%というような形になっておるわけで、私ども、現実に地方団体が消防力の基準を目指して努力してくれる、そうしたら基準財政需要額あるいは基準財政需要額以上にまで現実に金がかかるという形になるわけですから、そういったものを背景といたしまして、自治省財政局にもお願いして、もっと交付税の中での算定を厚くしてもらうということも可能なわけでございますけれども、現実問題といたしましては、いまも申しましたように、交付税基準財政需要額に入っておるのさえも使い切っておらないという状況でございます。  私ども、御承知のようにここ数年来年々消防を取り巻く環境の変化が非常に著しいものでございますので、自治省財政局と相談の上、年々上げてきてはおります。今後も上げるべく努力はしてまいりますけれども、基準までは至っておらないという点は残念に思いますか、そういった背景があるということを御了承願いたいと思います。
  228. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 自治省としては、この消防の重要性にかんがみて、この交付税の算定の場合も相当努力して手当てをしておるというふうに私は聞いておるわけでございますが、ただいま長官から説明しましたように、現実には交付税の算定で見積もった額すら使われておらない、そこまでも至っておらないという状態、これは恐らくここ数年来の地方の財政が非常な窮迫の状態にあるということを反映しておると思うのでございますが、何といってもやはり消防というものは国民の生命と財産、身体を守るという基本的な重大な使命を持っておるわけでございますから、自治省としては今後とも消防が目指しておる基準の達成に向かってひとつ一層の努力を傾けてまいりたいと考えます。
  229. 安藤巖

    ○安藤委員 満額使っていないのではないかという話か出ましたが、これは地方交付税そのものの増額の問題とも関連してくることにもなるわけで、実はきょうも衆議院の本会議地方交付税改正案が通過しておるわけなのですが、名古屋市の場合あるいはこういう大都会は、東京都も恐らくそうだろうと思うのですが、ほとんど一〇〇%近いところまで使っているという状態だろうと思うのです。だから、そういうような状態であるにもかかわらず、人数の関係からしても、出動の車両のところへあらわれてくる影響からしても、先ほど言ったとおりなのですね。  それで、いま大臣の方から御答弁いただいたのですが、実にお寒い状態にあるのですよ。これはほかのところでも同じじゃないかと思うので、一つ具体的な例を申し上げたいと思うのですが、名古屋市の場合でこういう調査ができているのですよ。名古屋港に九号地というところかあって、そこには石油の貯蔵タンクがたくさん並んでいるところがあるのです。いま名古屋港のちょうどど真ん中というような位置になってしまっておるのですが、そこにある屋外タンクで火災が発生したということになりますと、これは特別火災ということで四十七の車両が現場へ急行することになる。そうしますと、これは名古屋市の北西の辺のところから南東の辺にかけて斜めにぱっと切って、その北東部分の半分と南西部分の半分というふうに分けて、南西部分の半分の六つの行政区、港とか中川とか、この六つの行政区の消防署が全部空っぽになってしまうんだ。だから、同じ南西部分のところでもう一つ火災が発生したとしても、空っぽになっちゃっているものですからそこへ行けない。というのは、その北東部分のところから、相当の距離のところをやはり走っていかなくちゃならぬという状態になる。そうなりますと、ビルもあるし、あるいははしご車を必要とする火災もあるだろうと思うのですけれども、それが非常に手間取って応急の間に合わないという状態になるという指摘がきちっとされているのです。だから、これはもうお粗末どころじゃなくて、背筋が寒くなるような実態にいまあるということを十分御認識いただきたい。  そうしてこれはひとえに名古屋市とか東京都とかあるいは横浜とか、そういうような地方自治体独自の努力では何ともならぬと思うのですね。だから、そういう点からも、先ほど大臣の方からおっしゃっていただいたのですが、地方交付税増額、消防費に関してのみいま申し上げておるのですけれども、しっかりと腹を据えてやっていただきたいということを重ねてお願いをしたいわけなのですが、いかがですか。もう一一言だけ……。
  230. 澁谷直藏

    澁谷国務大臣 先ほどもお答えしましたように、消防というものはきわめて重大な任務を持っておるわけでございますから、消防が期待をしておる基準の達成に向かって一層の努力を傾けてまいります。
  231. 安藤巖

    ○安藤委員 それじゃ話をちょっと変えまして、消防署の階級制の問題について一つお尋ねしたいのですが、これは消防庁の方から各市町村に対してどのくらい指導力が及ぶのかどうかわかりませんけれども、消防吏員の階級準則、これも消防庁の告示で出されております。これによると、上は消防総監から、下と言っていいかどうかわかりませんか、とにかく階級ですからいいのでしょう、消防士に至るまで九、消防士長と消防士との間に副消防士長というのを設けている市町村もあるというふうに聞いておりますけれども、これはどうしてこんなにたくさんの階級制度が要るのかということが一つと、実際に現場に出動すれば、消防士、消防士長、消防司令補、ほとんど同じように行動するのじゃないかと思うのですけれどもね。それは相当な大震災みたいなことになれば大部隊が動くというようなこともあり得るのかもわからぬのですが、それが一つ。  もう一つは、試験によって昇任をするという制度をとっておられるところが多いようですね。それで、たとえばこれは名古屋市の場合ですけれども、副長から消防士長への試験がある。それから司令補から司令に上がるときにまた試験がある。そこから消防司令長にまで試験があるか、とにかく三つこの辺のところで試験によって合格した者を昇任させる、こういうふうになっているという話です。  そこで私が申し上げたいのは、これは全国消防職員協議会、これは「消防職員の意識と職場の実態」というパンフレットがあるのですが、幾つかあるのですけれども、いまの関係だけで申し上げますと、「階級制度がすべてを律する消防にあって、五十代以上でも副士長以下」、一番下が消防士、その上が副士長、「副士長以下の階級が四割以上を占めている現実」だという指摘があるのです。だから、試験ばかりではなくて、実際に火災の現場に行ったときのこういう機敏な活動の仕方とか平生の勤務態度とかそういうようなことも勘案をして昇任をさせるというようなことも考えていただいた方が、そういうような社会的な使命に燃えてこの職を選んでおられる方ばかりだと思いますので、やはりそういう希望と期待を持たせるということも必要じゃなかろうかと思うのです。だから、そういう意味から言って、試験ばかりではなくして、私がいま一、二言いましたようなことも含めて昇任をさせるということも考えていただいてもいいのじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょう。
  232. 近藤隆之

    ○近藤政府委員 まず第一点でございますけれども、消防副士長まで入れると十の階級が並んでいるというお話でございますが、これは消防というのは昔警察と一緒になっておりまして、警察から分かれたという経緯がございまして、警察の階級と全くこれは相対応しておるわけでございます。警察にも十の階級があるわけでございます。  それから、すべての団体にこの十の階級があるわけではなくて、一番上と申しますか、消防総監というのは東京都だけに一人おるだけでございます。政令指定市の消防長というのが消防司監というその次の位になるわけです。人口三十万以上の都市の消防長が消防正監というのになるわけです。人口十万以上の都市につきましては消防監というのが消防長になるわけです。人口十万以下の市町村につきましては消防司令長というのが消防長になるわけです。したがって、ほとんどがそうでございますけれども、人口十万以下の都市ということになると、一番偉いのが消防司令長というのが一人おって、あとは司令、司令補、士長、消防士という階級になるわけで、それほど複雑になっておるという形ではございません。消防ポンプがたとえば二台出ますと、その中に一人は消防士長というのがおって、その二つを統制するとかいろいろなことが必要でございますので、やはり消防の業務の必要性からかんがみまして、こういった階級制度というのがやむを得ないことではないかと思います。なお、消防の現場におられる方々等の意見を十分反映しながら消防庁でこういった準則を定めておるわけでございます。  それから、試験制度でございますけれども、地方公務員法によりまして昇任は試験あるいは選考によってやることができるわけでございますが、こういった消防のような業務につきましては、やはり中堅幹部までは一回あるいは二回試験という関門をくぐらせるということは必要ではないかというふうに思っております。ただ、その場合に筆記試験だけでいいというふうにわれわれ毛頭考えておりません。経験年数であるとか人柄であるとか、いろいろな面から総合的に判定する必要があるという感じは持っております。試験、選考をやっておりますところで筆記試験だけでやっておるというところは現実問題としても非常に少ないわけでございますが、私どもといたしまして、今後の指導としても、総合的にその人物を判定して昇進させるよう指導してまいりたいと思います。
  233. 安藤巖

    ○安藤委員 終わります。
  234. 加藤清二

    加藤委員長 次回は、来る五月八日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十四分散会