○柳谷政府
委員 お答えいたします。
五月十二日に
米国政府から連絡がございましたのがこの件の端緒でございます。五月十二日にワシントンにおきまして
米国の国務省から、情報の自由に関する法律、つまり情報自由化法と呼んでおりますが、この法律に基づいて、日本の共同通信社ワシントン支局からかねて金大中に関する一連の文書の提供方の申し入れがあった、大分前からあったということのようでございますが、それをこの法律に基づきまして検討した結果、先ごろ提供したけれども、その中に秘密指定未解除の文書が、後でわかったわけですけれども、二件含まれていたということをとりあえず通報してまいったわけでございます。
東京においても同じ通報が少しおくれてございました。これは土曜日でございましたので、とりあえず
東京とワシントンにおきまして事実
関係の
確認を行いたいということを申し入れたわけでございます。それと同時に、たしかその日のうちか翌日に、数件の文書が新聞にすでに報道されたものでございますから、それらに関しては、単にそういうことが公開されたという事実のみならず、公開された電報の
内容についてもとりあえず聞きたいということもあわせて申し入れたわけでございます。これに対して
米国政府から、まずそういう文書を公開した、この件数は百四十三件であるということ、そのうち二件は秘密指定未解除のものであったという説明を受けたわけでございまして、このうちすでに当時報道されました五件は、在米大使館から直ちに電報によって本省に
報告がございましたので、間もなく請求がありました向きには発表したわけでございます。その他百三十余点につきましては外交行のうによって送られてまいりましたので、これが接到次第、コピーをとったり日付順に配列し直すというような作業の後に、これも
関係方面に差し上げたということでございます。
これは事実
関係の
確認あるいは現物の入手のことでございますけれども、それに
関連いたしまして、その後読売新聞社が、初めは共同通信社と同じものを同じような手続によって入手されたというふうに伝えられていたわけでございますけれども、一部食い違ったものを入手されているということがわかりましたのでこの点を改めて照会いたしましたところ、先方がさらに
調査を行いまして、その結果二件、ただし一件は、電報そのものはすでに共同通信社に渡っておりましたけれども、そのうち一部が削除されていた、ところが後者に対してはこの削除部分も含めて手交したという意味において若干の食い違い。それから、もう一件がこの間から非常に話題になっております八月十一日のハビブ電、これは前者に対しては供与されていなかった、かつ指定解除がこれまた適当でなかったと後から説明している文書が渡っていることがわかったということで、この文書についてもその後提供を受けまして、これを便宜上百四十四番目とつけますと、現在
米国がこの法律によって提供した、若干その中には適当でなかったと後に言うものもありますけれども、顧みて適当でなかったと思うにせよ、一たん請求者に対して手交した以上は、先方の言葉によりますとパブリックドメーンに入った、公の領域に入ったということで、これを再度回収できないということだそうで、これら百四十四件が公開文書の全体というふうにいま
確認されたわけでございます。
それから、
お尋ねの中に含まれておると思いますが、
内容についてのどういう照会努力をしたかという御
質問もあるかと思います。韓国政府及び
米国政府に対して、これら文書の
内容の
調査にはなお時間がかかるけれども、とりあえずのコメント、説明を得たいという形で、
東京及びワシントン、
東京及びソウルにおいて早速その努力を始めたわけでございます。
米国政府からの回答は、従来から一貫して
米国政府の基本方針であるように、この金大中事件というのは日韓間の問題であって
米国はこれに介入する
立場にない、したがって、これにかかわるいろいろな照会とかいうものについてはコメントする、論評する
立場にないというのが
米国政府の基本的な
立場であるということを
確認する返答に接したわけでございます。最初は参
事官、
部長レベルの
確認でございましたが、本件の重要性にかんがみまして、在米東郷大使も先方の国務次官に面接いたしまして、先週の末でございますが同じ申し入れを、またその申し入れの際には、この事件の日本において持っております非常に重要な、国民的な関心、真相究明に対する政府の姿勢、国会の関心、その他の
事情をさらに詳しく説明いたしまして
米国側にいろいろ説明を求めたわけでございますけれども、結論は、従来から申し上げておるとおり、論評する
立場にないというのが
米国政府の変わらぬ姿勢であるという返答があったわけでございます。
他方、韓国政府に対しましてもとりあえずの照会として行っていたわけでございます。特に一月十日のスナイダー大使発国務長官あて電報に述べられておりますところの一月九日の金東祚・スナイダー会談というものについてとりあえず問い合わせたわけでございますが、先方の説明は、韓国においてはこのような大使と大臣の間の会談というものは必ず記録が作成され、保持されているものであるけれども、早速調べたところによればそのような記録が見当たらない、作成されていない。それからその二、三日後でございますけれども、当時の金東作外務
部長官に直接当たって調べたところが、金元長官の説明では自分にそういう記憶はないという返事であったということをとりあえず返答してまいったわけでございます。
その後もまだ
東京における全文書の
調査は完了していないわけでございますので、まだいろいろ必要に応じて照会することはあると思っているわけでございます。その間も、
アメリカと韓国のそれぞれに対して、先方から返事がありますときにまたこちらからさらに
質問するというようなことでいろいろ照会をしております。
ちょっと一つ、昨日聞いたことを御披露したいと思います。
たまたま昨日、国会の後、夜になりましたけれども、在京の呉公使を招きまして懇談いたしました。私が呉公使に会った一番の目的は、先週来、特に今週に入ってからの国会における審議の状況、日本における本事件に対する深い関心の模様等々すでに
承知のこととは思いますけれども、さらに私から伝えまして、本国にもその辺のことをよく伝えてほしいということを少し具体的に話しておいた方がいい、これはきのうが初めてではございませんでいろいろなレベルでしばしばやってはおりますけれども、昨日もそういう機会をつくって呉公使と話したわけでございます。その際、何日か前に韓国側にもう一度聞いていたことについて先方が本国へ問い合わせた結果として二、三の説明を得たわけでございます。
一つは、七三年八月十一日のハビブ電報についてでございますけれども、先ほど土井
委員も御
指摘になりましたが、ここに、ダミングエビデンス、のっぴきならぬ証拠ということがある点を
指摘して、これについての韓国側の何らかの見解と申しますか、意見がわかれば
承知したいということをかねて申し入れていたわけでございますけれども、それに対する先方の答えは、
アメリカ側が何をもってのっぴきならぬ証拠と言ったのか韓国側としては全く知るすべがない、こういう返事でございました。
それから、七三年八月二十一日のハビブ電報についても、この電報には「新聞報道は基本的に正しい」という表現が入っている点について何らかのコメントがありやということを確かめていたわけでございますけれども、これに対する先方の説明は、当時韓国側は
アメリカ側に対して、韓国の官権は
関係していないということを再々説明していたにもかかわらず、その韓国政府の説明をハビブ大使がどのように受け取ったかということ、それは全く米側の問題であって、米側の主観的判断によるものであって、韓国側はその結果に拘束されることはないという説明でございました。
〔
委員長退席、愛野
委員長代理着席〕
昨日幾つか話した中で、いまの御
質問との
関係で、特に新しいことであるかどうかは別といたしまして、さらに韓国側から得た説明をちょっと御披露したわけでございますけれども、先般来申し上げていますように、まだ私どもの検討は完全には終わっておりませんし、また国会の御審議等におきまして、いろいろ、こういう点ももう少し
確認したらどうかというような御意見も出ております。それらも踏まえまして、さらに
事情の照会等についての努力はなお続けてまいりたい、このように思っております。