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貝沼委員 それでトロトラストの話をさっきちょっと出したのですが、これは議事録に残しておいた方がいいと思いますから、私申し上げますけれ
ども、「
太平洋戦争直前、戦傷兵の外科手術に際し、負傷部位の血行障害
状況を調べる手段として、旧陸海軍が、X線造影剤「トロトラスト」の注射を行った患者の実数は、三万人に及ぶと推定されている。」「「トロトラスト」の注射は、これにより外科手術の作業を容易ならしめた利点があったことは確かであるが、反面次に述べる致命的な一大欠陥を包蔵していたことに対しては、」ここが大事なんですね。「当時の医学的知識水準では、これを殆ど無害と看做し、回復し得ない恐るべき薬害の存在についての適切な配慮を全く欠いていたことは、かえすがえすも遺憾な次第なのであった。」ですから、当時としてはこれは安全であったわけですね。「即ちこの「トロトラスト」の主成分は、放射性物質トリウムであり、現在
原子力発電等で重大な社会問題となっている放射性元素プルトニウムと同一種類の放射線、即ちα線を半永久的一半減期百四十億年一に放出する。そのため、一度これを人体内に注入した場合は、「トロトラスト」は永久に人体内に沈着して、絶えず放射線を放出し続ける所謂内部被曝の結果、爾後三十−四十年後には、普通人に比較して、肝癌(二十二倍)白血病(四倍)等を発生させる危険極まりない造影剤なのであった。(因みに
昭和二十五年厚生省はその使用を禁止した。)」こうなっております。事実
日本と西ドイツは一番多いわけでありますけれ
ども、統計を見ますと、二十
年間潜伏しておりまして二十年後発がんした患者数というものは圧倒的にふえておるわけです。
ところが、その後十数年後西ドイツは下り坂になりました。これはなぜかというと、国家的な施策として、患者一人につき一人のホームドクターをつけてめんどうを見たため少なくなってきたという結果がございます。
日本はそういうことはまだやっておりません。さらに西ドイツは、先ほど申し上げましたように、国が一つの組織としてこれに当たっております。ところが、
日本の場合はまだそこまでいっておりません。さらに、死亡率を見ましても、
日本の場合は世界一高いような
状況になっております。こういうところから、トロトラストの問題は非常に大きな問題を持っておるわけでありまして、この方々の救済をしなければならぬということはもちろん第一義であります。
しかし、それと同時にさらに問題とされておるのはWHOの
報告書であります。「ラジウム及びナトリウムの人体に対する長期的影響に関するWHO科学
委員会報告書」というのがあります。このWHOの
報告書によりますと、「この
研究が、
原子力産業におけるプルトニウムその他の超ウラン元素の使用に関連性を有することは明らかである。」ということ、また、WHOの勧告の中にも、「これらの
研究の結果は公共保健施策、特にプルトニウムおよびアメリシウムその他の超ウラン元素についての
一般人口を
対象とした線量
限度の設定の基礎資料として役立つことが要求される。これらの線量
限度を環境衛生との関連において正確に評価することは、
原子力産業の発展にとって不可欠の要件である。」というふうに述べられております。
まだいろいろありますが、要するに、今後人体がこういう被曝を受けることがあってはならないわけでありますし、恐らくないでしょうけれ
ども、こういうふうに考えますと、人体に対する被曝の問題としては非常にまれな、しかもかけがえのない資料となっておるわけでありまして、これを
わが国がどのようにとらえて、さらにこの
研究結果を生かそうとされるのか、この辺のところは非常に大事だと私は思うわけであります。
しかも、この方々は、いま申し上げましたように傷痍軍人の方が圧倒的に多いわけでありまして、あと二、三十年もたてば、大体もうその例はなくなるわけであります。したがって、救済が第一義であることは当然だけれ
ども、しかし、いまあるその資料をさらによりよく活用し、そして今後の人体に対する被曝の基準を設定するなり、
研究のための重大な資料と私は考えるわけでありますが、この点について当局はどのように受け取っておられますか。