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永山参考人 石油連盟の
会長の
永山時雄でございます。
本日御
調査をいただきます問題及びそれに関連をいたしまして
石油あるいは
石油産業に関する問題、これを御参考までに冒頭陳述いたしまして、お聞き取りを願いたいと思うのでございます。
申すまでもなく、
石油産業は
わが国第一次エネルギーの約七五%を
供給して、
わが国のエネルギー
安定供給を支えておるのでございますが、この際、その現況について若干申し述べさしていただきますと、企業の数は三十六社、精製会社が二十三社、それから元売りが六社、それから精製、元売り両方を兼業いたしておりますものが七社、すなわち元売り販売を行っている者の
合計は十三社あるのでございます。
それから、原油の輸入量は、昨年五十三年度二億七千百万
キロございました。それで、これに要する輸入金額は、製品輸入を含めまして二百七十五億ドルとなり、これは
わが国の総輸入金額の三二%を占めております。
また、この原油を処理する精製設備能力といたしましては一日
当たり五百九十四万バレルあるのでございまして、
わが国の場合、若干の製品輸入を除き、この設備を用いまして輸入原油を国内で精製し、国全体に販売をいたしておるという姿でございます。
次に、
石油産業の経理
状況を申し述べさしていただきますと、まず五十三年度決算、三十六社
合計で売上高は約十四兆一千億円という巨額に達しておりますが、経常利益はわずかに五百三十九億円でございまして、五十二年度の経常利益に比べますと約五分の一に転落をいたしておるのでございます。なお、経常利益五百三十九億円のうちには、一過性のいわゆる為替の決済のユーザンス差益が二千三百八十億含まれておるのでございまして、したがって、実際の営業活動によって得られた利益は約千八百四十四億円の実質赤字でございます。五十二年度のそれよりもさらに悪化した
状況にあったのが昨年の決算の姿でございます。とりわけ下期は、昨年の十月以降は製品
価格の一層の値下げ等に加え、円安化などの事情により経常利益自体が赤字に転落しておりまして、特にことしの三月期決算の二十二社について見ますると、ほとんど全社が経常損失を計上するに至っておるというのが実際の
状況でございます。
次に、翻って四十八年下期の
石油危機以降五十二年度までの経理
状況を見ましても、四十八年度下期以降今日に至るまで、五十一年度だけを除きまして連続的に実質大幅赤字決算を余儀なくされておるというのが実際でございます。こうした事情から企業の体質も非常に悪くなっておりまして、たとえば、その指標として自己資本比率を見ますると、六・七%で、日本の製造業の
平均は二一%半でございますが、
石油産業はわずかに六・七%と、際立って体質が悪いというのが実態でございます。
それから次に、OPEC原油の
値上げの問題をざっと御説明いたします。
イラン政変に端を発した第二の
石油危機とも言うべき国際的
石油需給の逼迫を契機といたしまして、原油
価格は、OPEC総会の決定により、数次にわたって再々
大幅値上げが実施されてまいりましたことは、御
承知のとおりでございます。すなわち、本年一月からの四段階のスケジュール
値上げが、昨年末OPECで決まったのでございますが、それによりまして、まず
年間一四・五%
値上げする、最初一月に五%
値上げするということで始まったのでありますが、四月に至りまして、四段階に分けて
値上げをするはずのものを、繰り上げて一遍に四月に実行をいたしたのでございます。また本年六月のOPEC総会におきましては、基準原油
価格が、バレル
当たり十四ドル半から十八ドルまで引き上げられた。それからバレル
当たり二ドルを上限として、さらにその上乗せを認める。また原油はいろいろ種類がございますが、その質のよしあしによって、さらに、いま申し上げた値段に、三ドル半を上限としてもう一つ上乗せを認めるというように、二重、三重にも
値上げをされたのでございまして、七月以降、バレル
当たり二十ドル七十五と試算をされておりまして、これは昨年の十二月当時の値段に比べますと、六一%の値上がりになっておるのでございます。
なお、この六一%はドルベースによるものですから、最近為替の円が安くなっておりますので、これにこの問題を加味いたしますと、日本円の表示はさらに高くなるということになるのでございます。
こうしたOPECによる原油
価格の連続的大幅引き上げに加えまして、本年六月からまた実施されましたガソリン税、
軽油引取税がそれぞれ二割五分増税になりまして、今後の国内
石油製品
価格は大幅な
影響を受けざるを得ないという
状況になっておるのでございます。
なお、
石油に課せられた税金は、現在、五十四年度の予算の中で約二兆五千億円計上されておるのでありますが、こうした莫大な課税は、ただでさえOPECによるエネルギーコストの上昇に直面している産
業界、消費者の混乱をさらに増幅させるものである。大体
石油一
キロ当たり平均して一万円足らず、九千円何がしというのが税金になっておるのであります。
石油諸税については、この際、その負担軽減を図ることを今後の問題として、十分に根本的な検討をしていただきたいと私
どもは念願をいたしておるわけでございます。
それから、最近の原油の
需給状況でございますが、国際
石油需給の逼迫化は、ただいま申し上げましたとおり、原油
価格の
高騰をもたらすとともに、
需給面では、エクソン等のメジャーによる
わが国への一部原油削減措置など、短期的にも長期的にも著しい不安定が露呈をされてまいっております。
こうした中にありまして、
石油産業はDD原油——直接産油国から買う原油、それから政府ベースの協定で買いますGG原油の引き取り増など、原油の輸入
確保に最大限の努力を傾注いたしておりますが、当面の
需給事情を述べますと、次のとおりでございます。
まず、上期の原油輸入量につきましては一億三千五十万
キロ、これは先般、
資源エネルギー庁が公表いたしたものでございますが、一億三千五十万
キロが見込まれております。これは前年同期に比べて三・九%増加であります。また
石油供給計画に比べますと、約百八十万
キロの減少になっておるのでございます。この原油輸入量を前提といたしまして、内需量が
供給計画どおりであるといたしますと、九月末の備蓄は八十四日分
程度が見込まれるのでございます。
下期の原油輸入についてでありますが、サウジアラビアの増産の見込みなど、若干緩和の兆しがありますが、他方では、依然としてイランを初めとする中東産油国の生産動向が不透明であるというようなことから、国際
石油情勢は楽観を許さず、その見通しはきわめて困難でございます。また東京サミットで合意されました
石油輸入目標との関連で言いますと、各消費国ともその
確保に苦慮しておりまして、
わが国にあっても、五十四暦年の
石油輸入目標、一日
当たり五百四十万バレルを輸入できるか否か、今後の問題は依然として不透明である、かなり困難ではなかろうか、かように感じておる状態でございます。
燃料油需要と自動車
燃料の問題について申し上げますと、最近の
石油製品の内需動向を見ますと、景気の順調な拡大などにより、四−六月は
燃料油
合計で五千四百三万
キロとなり、前年同期に比べまして三・一%の
伸びを示しております。
製品別に見ますと、特に自動車
燃料であるガソリンは前年に比べて六・六%の増、それから
軽油は同じく九・三%増と高い
伸びを示しております。
なお、御参考までに申しますと、灯油は三・九%の増加になっておるという
状況でございます。
ガソリン、それから
軽油需要の増加要因を考えますと、その需要主体である自動車保有台数が着実に増加をしておる、これは五十四年五月末は前年同期比六・七%保有台数が増加をしておりますが、そういうことに加えまして、貨物
輸送体系が、貨車などから
トラック輸送へシフトする傾向にあること、さらには過積み規制による延べ
輸送車台数の増加等が、その要因になっているものと思われます。
また、ガソリンに比べ
軽油需要の
伸びが特に高いのは、最近の傾向としては、小型四輪車の
トラックを中心といたしまして、ガソリン車から
軽油車へのシフトが非常に高度に行われておるということも、その一因であろう、かように考えております。
いわゆる中間三品、灯油、
軽油、それからA重油、この中間三品問題でございますが、最近の
わが国の
石油製品の需要構造は、自動車
輸送の拡大、それから灯油の暖房機器の普及、さらには公害規制の強化などに伴いガソリン、灯油、
軽油、それからA重油等のいわゆる軽質の
石油製品、とりわけ中間三品と呼ばれる灯油、
軽油、A重油の需要が著しく高まっており、今後ともこの傾向は続くものと考えられます。
一方、これに対する
供給面を見ますると、まず原油の種類によって軽質
石油製品の得られる率が大体決まっております。すなわち、軽質原油からは軽質
石油製品が、重質原油からは重油などの重質
石油製品が多く生産されるわけでございまして、いずれにしても、ある特定の
石油製品だけを大量に生産するということは不可能なのであります。
したがって
石油業界は、今日までアラビアン・ライトなど、軽質原油の輸入を拡大するとともに、生産段階におきましても、生産技術的に極力軽質油の生産を高める努力をしてまいりました。たとえば中間三品の得率は、五十二年度以前は二六%以下でありましたのが、五十三年度は二七・一〇%までとるというような努力をいたしてまいっておるのでありますが、軽質
石油製品の需要の
伸びが著しく大きく、これに対する
供給が非常に困難をきわめておる
現状でございます。
しこうして今後の原油事情を見ますると、世界的に軽質原油の生産が
伸び悩む一方、重質原油の生産がだんだん拡大をする傾向にあり、また原油生産設備面からは、軽質
石油製品の得率を現在以上に高めることには限界がございまして、軽質の
石油製品を今後とも安定的に
供給するためには、まず短期的には
石油製品規格の緩和などの措置をとる必要がある、それから中長期的には重油分から軽質
石油製品をつくる、いわゆる重質油の分解技術の開発などが必要となるのでございます。いずれにいたしましても、これによる
石油製品のコストが高くなるということは免れ得ないところだろうと思うのでございます。
したがいまして、需要者側におかれては、省エネルギー、
節約の励行により、極力
石油の消費を少なくするとともに、用途に見合った上手な
石油製品の使い方をしていただくように
お願いをいたしておる次第でございます。
以上申し上げましたように、最近の厳しい国際
石油情勢の中で、OPECは次々と衝撃的な原油の
値上げを繰り返しておりますが、こうした量的
確保と高
価格の両面にわたる困難な局面下におきまして、今後とも
石油を
安定供給していくためには、
石油産業自身による原油入手努力をすることはもちろんのことでございますが、OPEC
値上げなどのコスト要因が適正に反映された
石油製品の
価格水準が形成される、要するに、円滑なる転嫁がされるということに消費者側の格段の御理解を得ることが必要である、それから
石油の
節約についても、申すまでもなく一段の各方面からの御協力を得たい、かように念願をいたしておる次第でございます。
以上をもちまして私の陳述といたします。ありがとうございました。(拍手)