○松本(操)政府
委員 非常に該博な御教示をいただいたのでお答えする私がいささかたじたじでございますが、仰せのようにニアミスの問題について、御指摘になりました空域の問題、管制官の問題あるいは方式、施設、機器の改良、いずれも重要な問題であろうかと思います。多少お答えの順序が変わるかもしれませんが、まず空域の問題についていまやっていること、こういうふうな
考え方で取り組んでいるということを御
説明申し
上げます。
私
ども、第二次、第三次の空整によってVORというものをたくさんつくってまいりました。ところが、現在までのところは、VORとNDBと二つの無線標識を使いました
航空路が混在をしております。そのために無用のと言うと語弊がございますけれ
ども、先生の
お話の中にございました南北と東西の
航空路のクロスするポイント、こういうふうなものとか、あるいはたすきがけに
航空路が走りますものですから、
航空路の途中で
航空路がジョインしてくる、こういうふうな問題が幾つかございます。
そこで、現在もうすでに取りかかっておりますが、五十二年度からの三カ年
計画でVORを主体にした
航空路の再編成をいまやっております。それによって、今度は飛行場から出入りをいたしますルートとこのVORの
航空路とのつなぎ目というものについても、もっとすり合わせをとったきれいな形にしよう、それがまず第一点でございます。
そういうふうにいたしましても、どうしても交差点というものを避けることができません。そこで今度は、空域の切り方でございますが、この空域と申しますのは、成田と百里の空域というような意味ではなくて、
航空路管制上の空域の方をまず先に申し
上げます。
航空路管制上の空域は、実は
日本列島に沿ってこれをぶつ切りにしたような形で現在空域ができ上がっておるわけでございますが、これをもう少し、魚で言いますと背骨に沿って上下に分けるといったような流れに沿った空域の分け方というものを工夫してみまして、それによって一つの管制空域の中にクロスポイントが複雑に入ってこないというふうなことをしていきたい。ごく手近な例といたしましては、近畿東の空域については、五十四年度中ということを目途にそういうことをしようといたしております。ターミナルにつきましても、同じような形で空域の形をいろいろと工夫しながら全体の流れがスムーズにいくように考えていきたいということで作業をしております。
次に、管制官の問題でございますが、管制官そのものにつきましては、
昭和四十六年第二次空整が始まりましたときに七百余名でスタートいたしました管制官が、五十三年度末の時点で予算定員千三百六十六名でございますから、それなりの増強もしてまいったつもりでございますし、また
航空路監視レーダーのようなものも、わずか二カ所でスタートいたしましたものを八カ所にふやし、この四月からはほとんど全部の管制部においてディジタルの、つまり記号や符号のつきました形でのレーダ管制ができるようにしてきたわけでございますが、それだけに管制官の教育訓練について十分に努力をしてきたつもりではございますけれ
ども、まだ至らない点があるかもしれません。
そういう点で、ダブルウォッチという点についても御指摘がございましたが、管制部
関係で最近三年間に二十名のダブルウォッチ要員をふやし、ターミナルの方につきましても、二十名のダブルウォッチの要員を追加いたしました。これと教官の方とは別でございまして、教官はたとえば管制部だけで十六名の訓練教官というものを別途に置いて訓練に集中しながら、かつ現場の作業のダブルウォッチが実施できるようにという努力を重ねておるわけでございますが、今後ともその方向でいろいろと努力をしてまいりたい、こう思っております。
それから、方式あるいは施設等の問題でとりわけ成田のレーダーについての御指摘がございましたが、成田のレーダーは四十六年に設置をした
関係もございまして、
東京、大阪のようなコンピューターと組み合わせた形にはなっておりません。しかし、取り扱う機数が一日百七十機程度でございまして、福岡の二百機をやや上回るのと比べましても多少の余裕がございますので、当面このレーダーを使っていることがはなはだしく不安全につながるとは私
ども思ってはおりませんけれ
ども、しかし、空の表玄関でもございますので、五十四、五十五の二カ年間で
東京、大阪と同じARTS・Jというコンピューター組み合わせのレーダーを入れることにいたしました。五十六年度なるべく早い時期にこのレーダーを使って管制ができるようにしたいと思っておりますが、行く行くは関東地域全体につきましての複合的な管制と申しますか、そういったような形を早く確立するようにしていきたい、このように考えておる次第でございます。
次に、訓練空域の点について御指摘があったわけでございますが、百里の訓練空域は去る五月の十七日にAIRAC・NOTAMを出しまして、六月の中旬から運用開始の予定であるということを予告したわけです。これはE1と、それからE2、E3の二つのグループに分けられます。E1につきましては、時間を限ってこの空域をまるまるあけてございます。
〔堀内
委員長代理退席、関谷
委員長代理着席〕
ここにはOTRと申しまして、太平洋上に出ていく
航空路も何もございませんので、完全に訓練用にあけておいても支障はなかろうと考えておりますが、E2、E3にかかります部分につきましては、いわゆるOTRと申しまして太平洋上に抜けるルートがございます。ただ、これは一日の交通量が二、三機でございます。したがって、この扱い方といたしましては、空域の広がりについてはノータムで決めますが、実際の使用に当たっては、自衛隊の方から
東京管制部の方にあらかじめ調整を求めて、わが方が民間機を飛ばす考えが全くない、そのルートの近辺に民間機がいないという時点において何時から何時までの間訓練をしてもいい、こういう形で当該空域の訓練を認める、こういうふうにしたわけでございます。
この
考え方は、実はいささか数年さかのぼりますけれ
ども、北海道のC2空域とかあるいはこれも二、三年前になっていると思いますけれ
ども、新潟沖の超音速訓練空域とかいうふうな形で部分的に行われ、安全性についての確認をしてきた上でのことでございますので、御指摘のような安全上これによっていささかの支障を生ずるというふうなことは絶対にない、こういうふうに確信はいたしておりますが、今後とも、さらに実施に当たっての具体的な細部を、私
どもの方と防衛庁との間で詰めて、安全上何ら支障なく運用できるように努力をしていきたい、このように考えております。
次に、沖繩の方において、特に日中のフライトにかかる
航空路の混雑度の問題の御指摘があったわけでございますが、これは先生御案内のように、上海を出ました
航空機は、台北のFIRと韓国の大邸のFIRの間のすき間を縫ってわが那覇のFIRの中に入ってまいります。これがアンバー1と呼ばれております台北から鹿児島へ抜ける大通りの土手っ腹に入ってくる、こういうことに実は問題があるわけでございます。しかもさらに、この問題をむずかしくしておりますのは、那覇の管制部と上海の管制部との間に直通の電話回線がない、そのために現実には、那覇の管制官は
東京管制部の管通官を通して、御案内のように短波で話をしている、こういうことでございますので、前々から中国の方に、直通回線をつくろうじゃないかということを申しておったわけでございますが、ことしの九月十一日には直通回線ができ上がるという見通しがつきました。そこで、先ほど御指摘のございました七便目の増便という問題も、この直通回線ができるということを前提に七便目をふやそう、こういうことにいたしたわけでございます。
それから、高度変更の問題でございますが、これは中国はメートル法を使っておりますので、
飛行機の高度が私
どもの使っております高度といささか流儀が違っております。ただ、それによってトラブルが起こりませんように、実は日中間にフライトを飛ばし始めましたときに協定書を結びました。その協定書の中で、
東京と上海の間の飛行高度の指定はICAOの巡航高度表による、こういうふうに確約をしてございます。
ちなみに、これはどういうことかと申しますと、ICAOの巡航高度表によって、たとえば、わが方が三万フィート、こういうふうに指定いたしますと、この表によってそれは九千百五十メートル、こういうふうになっております。ですから、わが方が仮に三万五千フィートをとって上海の方に飛んで行ったといたしますと、中国側は境界線を越えたところで高度一万六百五十メートル、こう指定すれば
飛行機自身はいささかも上下に動かないで飛んで行ける、こういうふうにしてあるわけです。高度を変えなくてもいいように約束をしてあるわけでございますが、残念なことに、中国の管制というものは、私
どもの目から見ると、そう言ってはなんですけれ
ども、まだかなり昔の時代ではないか。したがって、当方から都合により高度をこれこれフィート、つまり換算表による何万何千メートルに
上げて、わが方の空域に入れてくれ、こういうふうに注文いたしましても、なかなかそれが
理解できないのか、やり方がへたなのか存じませんけれ
ども、しばしば古い高度のままで飛び込んでくるのがある。それを
上げ下げするのに那覇の管制部がときどき難渋をするということがあったわけでございますので、これでは非常に困りますので、来る六月十八日、那覇の管制部の連中と、それから本省の方からも専門家をつけまして、中国に渡って
——渡ってとは大げさですが、中国に参りまして、向こうの管制の専門家と詰めた話をしよう、こういうことにいたしております。
最後に、御指摘のございました今後のニアミスの防止についての基本的な
考え方でございますが、先生御
承知のとおり、私
どもの方には、首席安全監察官を長として安全監察官制度というのがございます。ここでいろいろとニアミスについての解析なり対応策なりを論じておるわけでございますが、やはり本省レベルでの議論にはおのずから限界がございますので、実はことしの二月から三月にかけまして、現場に問題を提示いたしまして、具体的なニアミスの
状況な
ども、全部資料を提供いたしまして議論をしてもらいました。その中から機つか具体的な提案というものも私
ども受け取って、いま、それをどうすれば方式基準の中に溶け込ませることができるかというふうなことを検討しておるわけでございますが、先生の御示唆もございますし、今後とも、こういったような制度を最大限に活用することによりまして、機器の
整備、空域の再編成あるいは管制官の訓練というふうなことと相まってニアミス、コンフリクションというものの減少に努力をしてまいりたい、このように考えております。