○松本(操)
政府委員 先生の御質問、非常に広範な問題を含んでおるわけでございますが、まずアメリカがIATAの機能をやめてしまえ、これに反対するというショー・コーズ・オーダーというのを出しております。これがもし物になりますと、いま
先生がおっしゃったように、二国間の話し合いといいますか、相互の認可という形で運賃を決めなければならないということになるわけですが、国際運賃というのは、御承知のように第三、第四の自由のほかに第五の自由と申しますか、よその国から飛んでくるものも入るわけでございますので、簡単に二国間でこの話を決めるということは実務的には非常にむずかしい。そこで、アメリカのショー・コーズ・オーダーに対して、四十二カ国がすでに反対の意向を表明しておりますし、ICAOも反対の決議をしております。米国内の国務省もどうも余りやり過ぎではないかというふうな
意見を出しておるようでございます。
したがって、この行方は、いまここで私、結論を言うところまで判断をつけかねるのでございますけれ
ども、いずれにしましても、対米
関係の議論では、従来のIATAの場というものの
役割りがある
程度落ちてきているということは、現実問題としては否めなくなっております。
そこで、そういうことを踏まえて、いま御
指摘のありました、まず
方向別格差の是正の問題につきましては、これは向こうを四%上げ、こちらを四%下げるというのを、IATAの協定としてアメリカ
政府にも出してあるわけですが、いまのようないきさつがあってアメリカ
政府がうんと言わない、それでは、
大臣の御指示もございまして、思い切って
日本発往復運賃を割り引いてしまえ、こういうことで、すでにヨーロッパの一〇%引き、オーストラリアの一五%引き、カナダの一五%引き、これは全部発効してしまったわけでございますが、アメリカについてのみまだこれが発効していない。アメリカの理由は、運賃格差というものは
日本側にとっては
意味のあることであっても、アメリカ側のドルが動いたわけじゃないのだからというふうな理屈を一方でこねておるようでございます。そう言いながら今度は、別のいわゆる低運賃
政策というものに乗った形で、これも
先生いまお話のございましたノースウエストの距離比例制運賃と申しますか、短いところは思い切って安くしてしまうというふうなのを持ち出してきているのが、先ほどおっしゃいましたノースウエストのシアトル発の三五%引きでございます。ところが、日米間だけで議論をいたしますならば、仮にここに
一つの理屈があるにいたしましても、シアトルのすぐ向かい側はバンクーバーでございますので、バンクーバーと東京の間の運賃についてアメリカ側がとやかく言う立場にない。カナダと
日本の間で仮にこれを議論しようといたしますと、アメリカがさっさとこれを三五%下げてしまうということになると、カナダというものは非常におかしな立場に置かれてしまう。したがって、これは日米だけで論じ得る問題ではございませんので、当然カナダも巻き込んで議論をしていかなければならない、こういうことになろうかと思います。
米国がどういう理由で、われわれが提案しております
方向別格差というものについて難色を示しておるのか、正確なところはなかなかうかがい知れませんけれ
ども、しかし、
先生もおっしゃいましたように、自分の国が提案しております低運賃
政策というものを押し込んでいくための手段方法としているのではないかという疑いはないわけではございません。
そこで、私
どもの方としては、今後の問題として、まず
方向別格差というものは、これは当面の是正策としてどうしてもやっていかなければならない問題だと思いますので、たとえば東南アジアとかそういったところについても、この往復割引のようなものは拡張していく。それから、いまお話の中で出てまいりましたアペックスのようなものは、まさに
方向別格差にとどまるのではなくて、これは本格的な低運賃
政策のはしりでございます。これを初めとする各種の低運賃をたくさん取りそろえるということによって、
旅客が自分の
旅行の都合に合わせましてどれかの低運賃を採用していくということによりまして、いまよりもはるかに合理的に
旅行ができるように持っていくという考え方でいきたいと思っております。
ただ、いずれも二国間の問題が絡んでくるということでございますので、IATAの機能がいささか低下をしたのではないかと思われるような現状で、特にアメリカに対してこれをどうやって押し込んでいくか、この手段方法としては、いろいろございましょうが、先ほ
どもちょっと申し上げましたように、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダといったような大きなところについてどんどんと話を進めていく、アメリカだけが自説に固執して孤立無援の形になっていくということで、国際世論の場においても十分にたたいていけるような形をつくり出しながら、また別途、直接アメリカに対してもいろいろと注文をつけていくというふうなことの組み合わせによりまして、できるだけ速やかに私
どもの考えております
方向で進んでいけるようにいたしたい、このように思っております。