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国務大臣(
園田直君) 第一に、先般の御
意見でありますが、
日本の
平和外交にとって、
米ソの
対決、中ソの
対決、これをどのように
日本の
立場でやっていくかということが
アジアの平和の重大なポイントであるということは、御
意見全く同
意見でございます。
なお、本日の
新聞に
安保条約の
変質あるいは
極東の
範囲に関する記事が出ておりますが、これは必ずしも私の真意を伝えておりません。
まず第一に、
安保条約の
変質ということは、
米中正常化によって
変質したと私は言ったわけではなくて、これとは
関係なしに、三十年間の間に
国際情勢の
変化によって
必然性が出てきて、
日米安保条約というものは逐次性格が変わってきた。これは
米中正常化とは別個の問題。
どのように変わってきたか。御
承知のとおり、私は第一回の
安保条約、
行政協定には
反対投票し、党を脱党した一人であります。その当時の
日米安保条約というものは、
三矢作戦と論議された過程においてもわかりますとおり、ややもすると
米国の
世界戦略というものが大陸に対して目を向けておった。その場合に
日本の自衛隊に一翼を担当させようということでありますから、これは
アジアの平和、安定に寄与するものではないと私は思っておったから
反対をしたわけでありますが、その後、
冷戦から逐次、はっきり変わったとは申せませんけれども、少なくとも
ソ連の
ブレジネフ書記長の
努力、それからこれに対して
アメリカのベトナムから下がり、韓国から
地上軍を撤退するということは、
両方とも
抑止力による平和という方に変わってきたと、こう思うわけであります。そういうわけで
安保条約というものの本質が変わってきたと、こう私は申し上げたわけであります。
なおまた、その後さらに
米国は、
日本の
アジアにおける
経済的役割りではなくて
政治的役割りに
期待をするという
意向があるようでありますが、その
政治的役割りとは、力をもって
アジアをどうこうということではなくて、少なくとも
日本は持った
経済力、
技術力、その他の
政治力を使って
アジアに紛争を起こさせるなと、こういうことだと私は解釈しているわけであります。だとするならば、第一回目から引き続いて
日米の
協議委員会等も、
日本の方は
大臣が二人出て、
向こうは
太平洋軍司令官等が出て何年かに一回
協議することになっておりますが、この
仕組みというのはあくまで
有事の際にどうやるかということに
重点を置いてなされた
仕組みでありますので、今日の
日本の
政治的役割りは、
有事を起こしてはならぬということが
政治的役割りだと存じますので、だとするならば、軍事的な
協議よりも政治的な
判断が上にこなきゃならぬはずでありますから、そうだとするならば、少なくともこの
協議委員会は、政治的な
判断から、
日本の閣僚と
向こうの
最高責任者と
協議するような
方向に
仕組みを変えていかなきゃならぬのじゃないか。こういうことで、私は数カ月前から
安保条約見直しということを考え、そしてまたその
意見の一部は
委員会でも申し上げ、さらに
アメリカには正式にそういう
意向を申し伝えたところであります。
ただ、いますぐにその
機構いじりをしようと考えていないのは、
日中友好条約締結直後にこういう動きをいたしますると、
ソ連に対する日中の
対抗組織ということ、それから
日米条約の
仕組みに変更を来すんだという誤解を受けてはいかぬので、その時期はしばらく延ばそうと、こう考えているところでありまして、
安保条約の
変質というのは、
国際情勢の
変化、
冷戦から
抑止力の平和というふうに変わってきたと、こういうことから
変質したと私は申し述べておるわけであります。
なおまた、
台湾をめぐる問題でありますが、これは今度の
米中正常化の
最大眼目は、
台湾というものをめぐって
米国と
中国の
意見がどう調整されるかということが一番問題であった。特に最後まで残った問題は、
武力解放をしないということを
中国に約束してもらいたい。
中国はできない。それから、一方はまた、
事態がいかようになろうとも
台湾地域の安全と安寧については
米国は重大な関心を持つと。こういう意味で
米国は必要な兵器の供給はすると、他のことは一切正式なあれは絶つけれども、文化、通商等は
日本と同様に実質的なものはやって、この安全には関心を持つと、こういうところの二つの点が問題であったと思いますけれども、
一つは共同声明、そして
アメリカが一方的に
台湾地域をめぐる問題で一方的な声明を出しております。これに対して
中国は反発をしなかった。しかも
事前に、共同声明を出し、一方
アメリカは一方的な声明を出すということも
中国は了承しておったと私は
判断をいたします。したがいまして、
米国それから
中国の間で
台湾地域をめぐって武力紛争、あるいは
安保条約第六条の
極東の
範囲という
条約に該当する
事態は発生しなくなったと見るのが当然だと私は
判断をしておるわけであります。しかし、これはさらに
中国あるいは
アメリカの
指導者と具体的に直接
話し合いをする必要はあると考えておるわけであります。
したがいまして、
米台条約の破棄は一年後であります。一年前の
通告でありますから、一年間はこのままにいたしましても、その後
極東の
範囲というものに
台湾地域が入るか入らぬかということは、実際上言えば、
中国の
言葉をかりれば名存実亡になったわけでありますけれども、名存実亡になったものをそのままほうっておくのか、あるいはこれは変更するのかということでありますが、これは先ほどから申し上げましたとおり、
米国の
指導者とも、
中国との相談並びに今後の見通しというもので相談しなきゃならぬことでありますが、どっちにいたしましても、このために
安保条約を手直しする必要はない。第六条の中の
極東の
範囲という、該当するかせぬかという解釈上の問題でありますから、これで
日米が合意すればこれはどっちにでも決定できるわけであります。ただし、いま直ちに一年先のことをいまからやりますことは、それぞれ影響もあることでありまするし、また
台湾地域に対する微妙な影響も大きいわけでありますから、これは将来
米国と相談の上やるべきことであると、こういうふうに私は答弁したわけでございます。