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1978-11-16 第85回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十一月十六日(木曜日)    午前十時四分開会     —————————————    委員異動  十月十九日     辞任         補欠選任      田原 武雄君     斎藤栄三郎君      降矢 敬雄君     竹内  潔君  十月二十日     辞任         補欠選任      竹内  潔君     降矢 敬雄君      斎藤栄三郎君     田原 武雄君      小谷  守君     坂倉 藤吾君  十一月十五日     辞任         補欠選任      下田 京子君     小笠原貞子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長        久次米健太郎君     理 事                 大島 友治君                 山内 一郎君                 村田 秀三君                 相沢 武彦君     委 員                 片山 正英君                 小林 国司君                 坂元 親男君                 田代由起男君                 野呂田芳成君                 降矢 敬雄君                 坂倉 藤吾君                 村沢  牧君                 原田  立君                 河田 賢治君                 小笠原貞子君    国務大臣        農林水産大臣   中川 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        国土庁長官官房        審議官      四柳  修君        農林水産政務次        自        初村滝一郎君        農林水産大臣官        房長       松本 作衛君        農林水産省農蚕        園芸局長     二瓶  博君        農林水産省畜産        局長       杉山 克己君        食糧庁長官    澤邊  守君        林野庁長官    藍原 義邦君        水産庁長官    森  整治君        水産庁次長    恩田 幸雄君        通商産業省貿易        局農水課長   篠浦  光君        資源エネルギー        庁石油部精製課        長        清滝昌三郎君        海上保安庁警備        救難部航行安全        企画課長     渡辺純一郎君        海上保安庁警備        救難部救難課長  宗形 健寿君        建設省河川局砂        防部砂防課長   小藪 隆之君        建設省道路局国        道第二課長    松井 宏一君        会計検査院事務        総局第四局長   岡峯佐一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件)     —————————————
  2. 久次米健太郎

    委員長久次米健太郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十五日、下田京子君が委員辞任され、その補欠として小笠原貞子君が選任されました。     —————————————
  3. 久次米健太郎

    委員長久次米健太郎君) 農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 きょうは、漁港整備事業関係について若干お尋ねをしたいと思いますが、初めに、素人ですからちょっと大臣見解を聞かしてほしいんですが、当委員会委員派遣で具体的に各地の調査をするわけです。当然、その中での重要な課題については取りまとめをいただいて、報告を受けるわけですね。その報告を受けた課題につきまして、これは省側として、いわゆる報告に対して、具体的に提起をされた問題等は、私ども指摘をしないと検討がいただけないのか、あるいは指摘をせずとも、報告に関して一応十分踏まえて具体的な政策の立案をされるのか、その辺はいかがなものでしょうか。大臣としての立場からお聞きをしたい。
  5. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 農林水産行政についていろいろ御指摘のあります問題については、当委員会報告書のみならずあらゆることに耳を傾けて、対処すべきは対処するということでございます。中でも、当委員会視察をされて意見があるという場合には、その委員一行の中には役所側も入っておりますので、十分耳を傾けて改めるべきは改める、尊重すべきは尊重する、こういう姿勢でまいっております。
  6. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 どうもありがとうございます。  いまの御答弁を聞きまして、一応安心をしながら質問をいたしたいと思いますが、いま第六次の漁港整備計画進行されておるわけですね。これによって修築事業が行われておるわけですが、この第六次の漁港整備計画、これは漁港法の十七条の手続を得るきわめて重要な問題だろうと思います。言うなら、内閣の承認、同時に国会承認、そういう手続を得ながら計画が確立をされて進められていくという、こういう段取りになっておるわけでありますし、したがって、その内容そのものは、この漁港法の三条のいわゆる基本的な施設関係なり、あるいは漁港そのものの機構をどう強化をしていくかという立場を踏まえた整備計画であろう、こういうふうに確信をするところですが、そういうふうに理解をして間違いありませんでしょうか。
  7. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) そのとおりでございます。
  8. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 これは長官お尋ねをしますが、この第六次の整備計画は現在おおよそ進行状況としては予定どおりいっているのかどうなのか、その辺についてちょっと進行状況等について概要を御説明をいただきたいのですが。
  9. 森整治

    説明員森整治君) 第六次の漁港整備計画は、五十二年度から御承知のように六カ年計画として定められたものでございまして、全体といたしまして計画事業費八千八百億に対しまして五十二年度におきましては補正を含めまして九百三十億、したがいまして、その進度は一〇・六%、二年目の五十三年度は補正も含めまして二四・一%という見込みでございます。
  10. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうすると、六カ年計画ですから、おおよそいまの進行状況でいって、ほぼ予定どおりいくというふうに理解をしていいんでしょうか。
  11. 森整治

    説明員森整治君) まあ今後の全体の公共事業費伸びいかんにもかかわる問題だとは思いますけれども、私どもといたしましては、当然この計画を完全に実施するということで強く要請をし、またその実現に努めてまいりたいというふうに考えております。
  12. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうしますと、第六次で予定どおりいったにいたしましても、これからの日本のいわゆる水産行政全体を見回してみて、引き続く第七次あるいは第八次という計画になっていく可能性についてはどういうことなんですか。
  13. 森整治

    説明員森整治君) 今後の全体の推移いかんによりますけれども、ともかく五十二年に発足して二年目でございます。いま直ちに次の計画というのはちょっとまだ私ども考えておりませんが、いずれ全体、港湾その他の計画もにらみながら、さらに改定をしてもっとそういう進度を速めるといいますか、もっと事業を早く達成したいというようなことが起これば、当然——当然と言うのはおかしいですけれども、期間中でも改定に踏み切るということはあろうかと思います。ただ、いまのところ、いっそういうことをするか、あるいは全然するかしないか、それもいま検討しているわけではございません。
  14. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 今日まで進められてきたこの二年間の中で、具体的に実施をしてみて、いわゆる計画進行中に計画をもう少し練り直す必要があるんじゃないのか、あるいはまた、この辺は追加をした方がいいんじゃないのかというような観点というのは、全国的に見ましてどうでしょうか。その辺の把握というのはできておりますでしょうか。
  15. 森整治

    説明員森整治君) 先ほど申しましたように、六次の漁港整備計画というのは五十二年、昨年からの計画でございますから、いまその計画変更をするというような重要な情勢の変化というのはないと思いますし、また、個々の計画につきましては、当然十分な計画をしてこの計画一つ一つ拾い上げてきているわけでございますので、まあ若干の微調整的な変更というのはこれは考えられますけれども、大きな変更をし、したがってこの計画全体を変更するというようなことはまずなかろうというふうに思っております。  なお、この計画を厳密に見ますと、いわゆる漁港修築計画が本来の計画として取り上げられておりまして、先生承知のようにその他改修事業、これは約八百二十港を予定をしておる。そのほかに、局部改良事業というのもございます。これら全体を含めて俗に漁港整備計画と言っておりますけれども、この辺につきましては別に河港と決められたわけではございません。それにつきましては、その都度必要に応じ手直しを行うということは当然のことだと思っております。
  16. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうしますと、第六次の計画樹立をするに当たって一つ条件がありますね、いまの港を何港というふうに指定をし、計画にのせるに当たりまして。当然これは地元の態勢、あるいは県、市、いわゆる行政対応の仕方なり、あるいはその地元分担金負担能力の問題なり、あるいはそれに臨むところの全体の合意ができているかどうか、こうした関係がありまして、そして、それがきちっと整理をされた上に立っておおむね第六次の計画というのが樹立をされている。ところが、そういう条件に満たずに、言うならば、地元でなかなか資金分担その他について合意が得られなくて計画樹立に当たって間に合わなかった、こういうところも全国的にはかなりあるわけですね。そうしたものは、いま説明のありました、たとえば局部改良その他で措置をしていくというふうに受けとめていいのかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  17. 森整治

    説明員森整治君) いろいろ事情がございまして、私ども地元意向というのをまず県を通じて確かめて、県がそれを集約しまして上げてきておるわけでございます。その過程において、いろいろいま先生指摘されたような事情があって出てこなかったというものもあろうかと思いますし、そういうものにつきましては、そういう過程を経てきているわけでございますから、計画自身を直すということでなしに、いま御指摘のように、弾力的に運用できる——これは計画でございますから、どうしてもやはり全体の金額というものを考えながら一応計画を立てておる、その中では金額的に改修局改事業というのは非常に少ないから、したがって、大きな計画というのは立てられないのは通例でございますけれども、できる限りの範囲内で局改事業対応をしておる、過去の先例というのは大体そういうことになっておるというふうに御理解いただければありがたいと思います。
  18. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そこで、少し意見をはさみますが、全国的にながめてみましたときに、たとえば各県別考えてみますと、県の中でのいわゆる漁港計画そのものが、たとえば行政とのかかわりの中で、三重県なら三重県全体をどういうふうに将来の漁港として整理をしていくか。大変今日段階では数が大きくて、その数はおおむね漁業組合単位に大体漁港を持つというような傾向がやっぱりあるわけですね。これは将来の行政立場からいきますと、ある程度協同化を大きく進めつつ一つの代表的な港に集約をしていく必要があるんじゃないか。これは将来の流通とのかかわりの中で当然考えていかなければならぬ、こういう課題があるわけですね。そうした将来展望を踏まえていきました場合に、必ずしもそれぞれの各県で完全な将来展望を含めた漁港の数の問題、あるいは設置場所の問題、こうした問題がちょっとまだ整理がし切れていないというふうに私は判断をするわけです。  この辺がずいぶん問題があるわけですが、おおよそ消費地との関係、そうしたところを踏まえて、その辺の調整水産庁としてはきちっとやっぱり指導をしていく必要があるんじゃないか、こういうふうに考えるのですが、その辺は展望としていかがなものでしょうか。
  19. 森整治

    説明員森整治君) この点につきましては、先生の御指摘は、恐らくむしろ一種、二種、三種、そういうこととあわせて、もう一つそういう漁港指定を具体的にその県なら県でどういうふうに考えてやっていくか、それが各県同一であるかどうかと、こういうことでございますが、一応は私ども同一の方針で進んでいるつもりでございます。  ただ、いまだに議論がありまして、私も確かに先生がおっしゃる問題があると思いますのは、要するに漁業の集落の前に漁港がある。考え方によりましては、漁港機能というのはやっぱり市場的なものがあるところに集まってまいるわけでございますから、それをこう幾つもつくるよりは、あるところへできるだけ集中してりっぱな漁港をつくり、関連施設もつくって、また道路もつくっていくということが一番理想的な考え方であろうと思います。また、効率的な金の使い方につながるのではないかと思いますけれども、ただ、今度は効率的にというふうに考えましても、実際問題としましては、やはりいまの漁民感情としましては、自分の前に船がないと、住まいと船と一緒にないとどうもおさまらないという、何というのですか、平等というのですか均衡というのですか、そういう意識というのが非常に強く働いておることも事実でございます。  むしろ後者に引っ張られがちな運用になっているということは——まあ引っ張られると言うのは語弊があるかもしれませんが、いずれにしましても、そういう点につきましてはなお私ども検討を必要とし、また、何かそういうことをもう少し誘導し、農民の感情に合わせながらもう少し効率的な使い方ができないかなというふうにも考えておるわけでございますけれども、いろいろ議論をし、かつ積み上げてきた中の話でございますから、そういう検討課題なり問題点としては私ども意識をしておりますけれども、いま直ちにそういう変更ができるというふうにも考えておりませんし、いま計画発足二年ということでございますから、ともかくただいまは計画を早くちゃんと実施すると、こういうことで当面は考えてまいりたいというふうに思っております。
  20. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 その論議は、いずれまた展開をしなきゃならぬというふうに思いますがね。結局、今日、これは前にも申し上げたことがあるわけですが、漁協と農協と体質的に対比をしてみたときに、あるいは農業と漁業という形で対比をしてみたときに、今日の段階では残念ながら漁業関係について、劣勢と言うと問題があるのですが、相当、設備あるいは施設、あるいはそういった観点から見て、まだまだ体質的に弱い部分を多く抱えておる、こういうふうに言わざるを得ないと思うんですね。したがって、その辺をどう強化をしていくかということがこれからのきわめて大きな課題になるだろうと、こういう立場で少し触れたわけでありますので、その辺はまたいずれ論議をしてみたいと、こういうふうに思います。  そこで、具体的に一つ考え方を聞いておきたいんですが、九月に当委員会現地調査をしまして、三重県の方にもおいでをいただいたわけですが、そのときに、津市の中に白塚漁港があるわけですね。この白塚漁港は、先ほど例として申し上げましたように第六次の計画の中に残念ながら入れなかった部類であります。これは、地元関係その他が計画そのものについて樹立ができなかったというところに問題があるわけですから、できなかったことについてとやかく言うわけではありませんが、今日何としても、いま白塚のこの業に携わる人たちが現に船を停泊をさしている港からもいろいろ問題を提起をされまして、いずれ早期にこれは解決をしなきゃならぬ。  解決をする具体的な方法としては、白塚自体漁港というものを設置をしないと解決に至らない。これは一つの津の行政自体の社会的問題にまで今日来ておるわけでありますから、こうした課題については何とか整備を早めていく必要があるだろうと、そういう意味合いで強く要望が出されましたし、御参加をいただきました各委員先生方現地視察をいただいて、なるほどこの状況ではということについてお感じをいただいたところでありまして、これらの課題はいま県の調査段階、あるいは市の少しの手当て、こういう形で地元なりの具体的な努力がなされてきておるわけでありますが、この白塚漁港等が第六次に入っていないということで放置をされるんじゃなくて、これを促進をしていくという立場での具体的な措置、これはお考えをいただけるのかどうか、この点について少し御回答いただきたいと思います。
  21. 森整治

    説明員森整治君) 白塚漁港地区につきましては、いま御指摘のございましたように、地元の漁船が従来重要港湾の津、松阪港を利用していたようでございます。最近、白塚漁港係留施設整備したいという要望地元で出てまいり、このために三重県から五十四年度に白塚漁港の係船の岸壁整備したいという要望が出されております。したがいまして、この問題につきましては、今後県、地元関係者意向を十分伺いまして、来年度の予算の編成とあわせて検討をしたいというふうに考えております。
  22. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 次に、同じく錦港ですね。これは第三種指定をいただいておるところですが、ここの視察もいただいたわけですが、ここでは特に道路の問題が一番中心になって問題の提起をされたところです。この道路関係について、漁港としての機能を高めるという立場から、当然この錦の置かれた地域の事情から見て、これは漁港整備にかかわる形というふうにわれわれとしては認識をせざるを得ない。ここには近くに国道の二百六十号、それから魚の搬送の順路といたしますと、錦を出発をしまして四十二号を通りまして、そして松阪、津を経て大阪あるいは名古屋、東京と、こういう形で常時運搬をされておるところであります。残念ながら、この四十二号に上がるまでが大変な距離がありますと同時に、非常に地盤の高低の差が強くてそして曲がりくねっている、こういうところでずいぶん問題がありまして、今日まで地元の出身の国会議員先生方幾つか問題を提起をされながら部分的に改良が加えられてきた経過を持っておるところです。  そこでお聞きをしたいことは、漁港価値を高めるという立場に立って、たとえば関連をする建設省との協議の問題、あるいは港湾設備として水産庁自体道路計画をする、こういう立場との関連、この辺の限界なり、そうした協議なり、あるいは共同で事業を進めるというこういう形のものは一体どうなっておるのか、この辺のひとつ御説明をいただきたいと思います。
  23. 森整治

    説明員森整治君) 漁港修築事業等で、国の補助で漁港整備事業を行っておる、その対象となります道路はございますが、これは法律のたてまえといたしまして、漁港機能施設の一環として行われる輸送施設である道路ということに限られておるわけでございます。この場合、いわゆる漁港施設としての道路、いわゆる臨港道路と言っておるものでございますが、これは一般道路法道路とは違いまして、漁港指定をいたしますその区域内の道路岸壁の背後にあります漁港施設相互間あるいは一般道路と結びつけるというようなごく短いそういう道路対象にしているわけでございまして、このほかにやっておりますのが、例の農林漁業用揮発油税の財源を見返りといたします道路でございまして、この道路は、漁港と主要な道路あるいは他の関連漁港を結ぶ一般道路漁港関連道整備事業として実施をいたしております。この事業は、漁港区域外にわたって実施することができますけれども一般道路行政との調整上、道路整備計画に採択されない市町村道に限って実施をするということにいたしておるわけでございます。  なお、これらの事業対象にならない国道なり県道、そういう幹線的な道路で、いま御指摘錦漁港はこういうのに該当するのだと思いますが、漁港の利用上どうしても整備が必要であると私どもは思っておりますが、こういう問題につきましては、地方公共団体道路部局水産関係部局との間、あるいは国同士では国の行政機関建設省に対しまして連絡を密にいたしまして、そこの整備を特に図っていただくということで御措置要請をするということにいたしておるわけでございます。
  24. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そこで、建設省の方にこれは見解をお聞きをすると同時にお願いを申し上げておきたいんですが、いまお聞きのような形で、多分もう御承知であろうというふうに思うんですが、国道二百六十号線というのは夢の道路というふうに言われておりまして、いまから二十年ほど前から道路地図の中には計画としてこの道路が入っておったわけであります。特に海岸線でありますから、京都、大阪あたりからドライバーの方がよく釣りを兼ねながら南東方面に入ってまいりまして、道路があるんだろうと思って来ますと道路がない。びっくりしてまた引き返すというふうな形の大変なところでございまして、ようやく本年の九月に、この錦から長島までの道路が開通をさしていただいた、大変ありがたいわけですが、ところが、逆に錦から南東に向かってのこの線は、依然としてまだこれから工事が始まっていこうと、本年度は四千万程度の調査費等がつけられておるところでありまして、せっかく努力をいただいておることはよく承知をしているんですが、この錦漁港が第三種漁港としての価値を高めていくのには、いまこの整備計画の中で大変港湾自体設備についての内容を充実をさしていただいているところでありますが、少なくともこの道路とのかかわり整備をされないと本当の力を発揮することができない、こういう事情にあるわけでございます。  そこで、大変むずかしい用地買収その他の問題があるわけでありますが、少なくとも錦−古和間を、この港湾整備計画に合わせてやっぱり完了していくようなそういう計画を、建設省の方でもぜひひとつお力添えを賜りたい、こういうふうに考えるわけであります。  で、これはやはり相当の年月を要するというふうに判断をしますので、通常使用しております道路自体がいわゆる二百六十号のごく一部と、それから四十二号に通じる、これは県道でありますが、七百二十四号一般道路というのがございまして、これまた大変な難所なわけであります。保冷車三台が何かの事故でとまってしまいますともう横側が通れない、こういうような事情の中で魚の輸送が行われているという状況等にありますので、県も県単事業の中でこの県道の方は努力をしているようでありますが、これらにつきましても県と十分に打ち合わせをしながら、ひとつ何とか港の価値が高められてそのことが全国に影響を及ぼすと、こういう漁港価値をあわせてお考えをいただきたいというふうに考えているわけですが、その辺の御努力をいただけるかどうか。この辺の見解と同時に、いま申し上げましたような趣旨合いに沿ってひとつ何とか計画促進をいただきたい、こういうふうに思うんですが、どんなものでしょうか。
  25. 松井宏一

    説明員松井宏一君) 一般国道二百六十号線の紀勢町錦漁港から北へ参ります錦峠までの六・七キロの区間につきましては、現在御指摘がございましたように非常に屈曲が多く幅員も狭うございまして、簡易舗装施工済みでございますけれども大型車のすれ違いが困難な区間が多いという現状でございます。当面の処置といたしまして、現道の局部的な拡幅、線形改良あるいはのり面防災工事を行っておりまして、交通の安全と円滑化に努めておるところでございます。  で、御指摘のございました当該の区間の抜本的な改築事業につきましては、昭和五十三年度から着手いたしまして、錦漁港の側から用地の交渉を行っておりまして、鋭意促進する所存でございます。  それから次に、一般県道の羽下−沖田線、いま七百二十四号でございますか、羽下−沖田線は一般国道二百六十号の錦峠と四十二号の伊勢柏崎を結ぶ路線でございますが、現在改良率は九一%でございまして、全線舗装済みでございます。幅員もほぼ二車線は確保されておりますので、当面改築する計画はございませんが、今後交通の需要によりましては、三重県におきまして必要な個所は局部的な改良実施するなど、交通の安全確保に対処すると聞いております。今後県ともよく打ち合わせさしていただきまして、御趣旨に沿いますように努力さしていただきたいと思います。
  26. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 ぜひひとつ、その辺の協議をしながら抜本的にお願いをしたいというふうに思います。どうもありがとうございました。  次に原油——石油ですが、この原油の流出による漁業被害対策の関係について質問を申し上げたいと思います。  去る十一月の八日の日に、昭和石油の四日市の石油のアウトシーバース、これは沖合いの五・五キロのところにあるわけですが、ここで大洋商船の隆洋丸、これの原油の流出事故が発生をしているわけです。いままだ、その流出をいたしました油の除去作業で大変な現地状況でありますが、この事故の詳細について、今日段階で把握をされている内容を概略御説明をいただきたいと思います。
  27. 宗形健寿

    説明員(宗形健寿君) お答えいたします。  今月の八日午前五時二十分ころ、三重県の四日市港昭和四日市石油株式会社の第一号シーバースに係留し原油荷揚げ中のタンカー隆洋丸、これは二十三万七千五百五十九重量トンでございます。船舶所有者は、先生おっしゃいましたように大洋商船株式会社、乗組員は三十一名、原油約二十三万キロリットルを積載しておりまして、この隆洋丸から積み荷の原油の一部が流出いたしました。  この事故発生の情報を入手しました海上保安庁としましては、直ちに巡視船艇等六隻、航空機一機を出動させまして流出油の状況調査に当たらせ、また、隆洋丸の警戒船に隆洋丸の周囲に二重にオイルフェンスを展張させまして、流出油の拡散防止に努めさせたわけでございます。海上保安庁としましては、船舶所有者等に対しまして流出油防除措置を命ずるとともに、回収を主体とした浮流油の防除作業を実施いたしました。また、十一月の八日午前八時に、海上災害防止センターに対しまして、流出油の防除措置を講ずるよう指示いたしております。  海上に流出いたしました油は、伊勢湾内に浮流いたしましたが、この浮流油の防除のために十一月の八日午前十時、四日市海上保安部に対策本部を設置しまして防除活動を実施いたしておりまして、十一月十四日までに海上浮流油をほとんど処理いたしております。  事故の概要並びに防除措置の概要について、以上のとおりでございます。
  28. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 事故の原因についてはどうなんでしょうか。
  29. 宗形健寿

    説明員(宗形健寿君) 十一月の八日、大洋商船株式会社所属のタンカー隆洋丸が、昭和四日市石油株式会社の第一号シーバースにおきまして原油約二十三万キロリットルを荷揚げ中に、一等航海士のバルブ操作のミスにより海面に油を流出したものでございます。
  30. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 新聞報道によりますと、油を半分程度陸揚げをした。揚げたために、船が揚げた方が軽くなって傾くわけですね。したがって、傾いたからそのバランスをとるために、いわゆる喫水を戻すために海水を空になったタンクに注入をした。注入をしたときにバルブが緩んじゃって、そこから油が漏れたという新聞報道になっているわけなんです。これは常識的に判断をいたしますと、確かに半分油を揚げまして、船が傾いてそこに海水を入れたと、そして海水を入れるときのバルブ操作によっていわゆる油が流れ出た、こう報道をされているわけなんです。もしそれが事実としますと、私はこれは大変な問題じゃないのかというふうに思います。  なぜかと言いますと、空になった油タンクに海水が入るわけですから、当然そこに付着をした、あるいは残りの油というものはタンクの上部にたまるはずであります。それが海洋に流れ出すということになりますと、これは一体そういう理屈が物理的に出てくるんだろうか。油が流れているということは、むしろ油タンクの方に何かの欠陥があって流れたんじゃないのか。海水を入れた方のバルブの問題で油が流れた、こういう形とはだいぶ違うんじゃないかというふうに、いわゆる今日段階の報道でありますから原因の確定はしてないと思うんですが、少し私は疑問を持たざるを得ません。いずれにいたしましても、この油の流出によりまして伊勢湾、特に三重県寄りは大変な被害をこうむっておるわけです。  後これはまた申し述べることになりますが、少なくともこれは石油コンビナートの海洋のシーパースである、常時そういうタンカーが発着をしまして、そして油をいわゆるおかへ揚げる作業というものが行われている、そこでこの事故が発生をしている、こういう現実でありますね。したがって、常時行われておるところだけに、私はこの荷揚げ作業にかかわるところのいわゆる油の流出をどう防止をするかについては相当詳細なところの検討が行われて、そうしてその対策というものが立てられていなければならない、また実行されていなければならない、こういうふうに考えるんですが、この油の流出事故防止対策というものについては一体どういうふうに今日まで指導され、あるいは実行されておるのか、その辺ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 御指摘のダンカーの荷役につきましては、ただいま御指摘のような原油等の危険物積載船が荷役をいたしますときには、港則法という法律に基づきまして港長の許可を受けて行うということになってございます。その許可をする際に、港長はオイルフェンスの展張、あるいは油処理剤の準備等を許可条件としまして、荷役時の安全対策、あるいは緊急に油が漏洩した場合の対策に万全を期しておるというところでございます。
  32. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 結局、今回の事故というのは、いまお答えのありましたような形で措置がされておってなおかつ防止ができなかったところに事故が拡大をしていった、こういう現状であろうと思うわけです。そうしますと、私は重視をいたしますのは、これは海上に出ておりますいわゆるシーバースでありまして、しかもそれは固定をされている。で、常時そこにタンカーが発着をする、こういう状況でありますから、それだけに慎重を期さざるを得ない。とりわけ瀬戸内海、伊勢湾、ここは法律的にも大変油の流出事故の問題については特別に規制を細かくして注意をすべき個所になっておるわけですね。そういうところでの取り扱いがこういう事故を招いたということについて、これは船舶側の責任なのか、あるいは施設側の責任なのか、この辺について私は法律をずっと見せていただいたんですが、よくわからぬわけであります。その辺は、一体施設側なのか船舶側なのか、いかがなものでしょうかね。
  33. 清滝昌三郎

    説明員清滝昌三郎君) 正確なる、詳細なる原因につきまして現在調査がなされておる段階でございますので、結論的なことは申し上げられない段階でございますけれども、私どもの得ております情報での考え方によりますと、今回の事故は、恐らく船側の操作の関連によって起こったものであろうというふうに聞いておりますので、その限りにおいては、船側ではなかろうかというふうに判断しております。詳細につきましては、これは原因調査の結果を待たざるを得ないと思います。
  34. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 船側の責任、操作ミスということになれば、当然原因のところはこれは船側の問題でしょう。しかし、少なくとも油を常時取り扱うところ、しかもそれが固定した施設、こういうことになりますと、船側の方にももちろん注意をしなきゃならぬしそれなりの措置をしなきゃならぬ、準備をしなきゃならぬ課題があるでしょうが、むしろ施設の方の側としてそういう作業が常時行われるという立場に立つとするならば、いわゆる防災措置というものは施設側に行われておらなければいかぬのじゃないんだろうか、こういうふうに考えるんですが、特に海洋汚染防止法のかかわりからいきますと、その辺が施設側なのか、あるいは船舶側なのか、この主たる責任のところがよくわからぬわけです。船側にももちろんありますし、施設側にももちろんあると、こうなっているわけですね。  両者で責任を持ち合えばいいじゃないかと、こうは言いましても、そこは統括的に責任を持つところが明確でないから、あっちじゃないかこっちじゃないかということでぶっつけられたのでは、これは災害をこうむった方はたまらぬわけです。この辺は、通産省の指導としては一体どうなっているんですか。
  35. 清滝昌三郎

    説明員清滝昌三郎君) 非常に原因いかんによって判断さるべき問題だと思いますが、今回の事故に関しては船側の操作が中心になろうかというふうに聞いておりますので、その限りにおいては船側でなかろうかと思っております。ただ、実際作業を行うにつきまして、一連の作業そのものは、相互に十分な連絡が行われた上で実施されることになっておりますので、そういった状況その他の調査の結果によって判断さるべきものと考えております。
  36. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私は、事故が起きたからその事故原因が船側にある、あるいは施設側にある、こういうことを言っておるんじゃない。問題は、事故をどう防止をするかというたてまえに立って、当然これはどっかが常時もし万一何か事故が起こった場合に最小限に食いとめるという、言うなれば善管注意でしょうか、そういう形というものがきちっとしていなければいかぬのじゃないだろうか。そういう意味からいきますと、先ほども言っていますように、海洋汚染防止法の三十九条の三ですか、これでいきますと、配慮をしなきゃならぬのは船舶の所有者、それからもう一つは保管あるいは輸送施設設置者、それからもう一つは船舶の係留施設——いわゆるシーバスも一つ係留施設ですから、この係留施設施設管理者、この三つがお互いに注意をしなきゃならぬということははっきりしているわけです。  ところが、先ほども言いましたように、三つが責任を持たなければならぬのでしょうが、少なくとも固定をしてここから油を揚げるんですよと、ここにタンカーが着くんですよと、こういう常態の設備になっているわけですね。しかも、その設備というものは、法律に基づいて設置の許可を得て、そこで作業をすることになっておる。当然、設置許可をするに当たって、いま伊勢湾で最も重視をしなければならぬ油濁の問題について、犠牲を最小限に食いとめるという、最低の義務はどうあるべきかということについての抜本的な対策というのは、むしろ私は施設側にあるんではないか。施設側にあって、なおかつ船舶の方も、十分に予防措置として行ったものが活躍をしないでもいいように配意をするというのは、これは船舶側の義務だろう。事故が起こらないように、最大限にやっていこうというのが義務だろう。しかし、起こった場合にそれを最小限に食いとめるというのは、むしろ施設側の義務ではないのかというふうに考えるのですが、その辺はどうなんでしょうか。
  37. 清滝昌三郎

    説明員清滝昌三郎君) いわゆる防災体制につきましては、関係者全体のいわば体制のもとに行われておるわけでございまして、特に必要な機材の所有、施設整備等、それからそれに関連します防災体制は法律的に一応定められておるわけでございますから、そういったそれぞれの分担においてそれぞれの責任を果たしておると、こういうふうに思っております。
  38. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 どうもよくすっきりとのみ込めないんですが、正直申し上げまして、私が今日まで調べてきた形の中では、どちら側が本来きちっとした設備をしなきゃならぬかということがどうもあいまいであります。そういう意味で、これはまたもう一遍きちっと提起をしなきゃならぬし、法律的にもしそこに欠落があるとすれば、それを補完するような形のものをつくらなきやならぬというふうに思います。いずれまた、これは他の委員会の中でもその辺の対策等について明確にしていかなきゃならぬというふうに考えますけれども、きょうは余り時間がありませんから本題に移らなきゃなりません。  そこで、いずれにいたしましても、原油の流出事故がありまして、そうして大変な漁業関係を中心にした被害が出ておるわけでございます。その被害の状況はまだ具体的に掌握をされていないというふうには思いますが、今日まで私どもで把握をしておりますのは、ちょうどノリのこれから最盛期を迎えていく段階にあります。ちょうど一番ノリを摘みますのが、この十一月の下旬であります。そして、大体年内に三回のノリ摘みが行われるのが常例であります。ちょうど一番ノリで、黒ノリにとりましては一番値の高い、そういうのが今度の油の流出事故によりまして四日市から南の方、大体津の沖あたりまで直接的な被害をこうむっておるわけであります。  そして、ノリ網は、これは十八メートルの長さ、一・二メートルのものが大体一つの基準になっているようでありますが、一枚おおむね一万円ないし一万二、三千円という種のついたノリ網の価格になっているんですが、これが三万枚。そして、ノリ網は、ただ浮かしておくだけじゃありませんから、浮きを使って引っ張っておるもの、あるいは竹ざおを支柱にさしてノリ網を張っておる、こういう形ですから、支柱あるいは浮きにまで油が付着をしていますから、これを全部回収をして焼却処分をする、これだけでも約三億から三億五千、こういう金額になるわけであります。おまけに、海岸の砂浜に全部油が打ち上げられて、汚染をされた砂自体をブルドーザーで全部かいておるわけです。しかも、こういうことになりますと、かいた砂をただ除去をすればよろしいということだけじゃなくて、堤防とのかかわりの中で、取った分だけの砂をまたよそから持ち込んできてそこに置かなきゃならぬというような問題にもなるわけです。  同時に、油の事故によりまして、漁師が全部駆り出されておるわけです。そしてまた、今日段階は、油で一たん海が汚されますと、そこでとれる魚は油臭いんじゃないかということで、魚自体は仮に油のにおいがしなくても、そういう立場で魚価が暴落をするというような状態です。今日、県は、そうしたことをおそれながら実は漁師に出漁を停止をさしておる、こういうような関係にあるわけです。また、伊勢湾の入口にあります答志島あたりでは、これもやはりワカメだとか、あるいは最近はノリを始めておるわけでありますが、こうしたところも油だから上を浮いていくからということで深さを水面から下げて油を退避をする、こういう措置までとっておるわけでありまして、言うなら、労力あるいはそうした形を含めますと大変な実は被害を及ぼしているということになるわけであります。  いま、この被害に対する救済を船主、それから船主に対するところの保険会社、それから昭和石油、この三者でもって当然この被害補償をやるべきであるということで、現地の方では交渉を開始しておるわけでありますが、いずれにしても、大変な被害をこうむったわけでありまして、これらに対する水産庁としてひとつ救済対策あるいは今後再び起こさないという立場を踏まえての、関係のところに対して明確にその防災対策について進言をすると、こういう形が必要であろうというふうに思うんですが、その辺の具体的なお考えあるいは対策の姿勢、こうしたものについて少し御答弁を賜っておきたいと、こう思うんです。
  39. 森整治

    説明員森整治君) 御指摘の事件につきましては、原因の究明を急いでいただくということがとりあえず必要だと思います。それに応じまして、もし何か重大な要請すべき点があれば、その段階で当然申し入れをしたいというふうに思っておりますが、いまもう一つの問題といたしまして、被害が発生したと、まだ正確には報告は受けておりませんが、確かにノリの時期でございまして、第一回の摘採の予定の支柱さくの漁場が被害を受けたというふうには県からはとりあえず聞いております。幸いに、浮き流し漁場の方にはまだノリ網が展開されていなかったため被害を免れた、これは不幸中の幸いであったというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、その他いま先生指摘の問題について一つ一つども確認はしておりませんが、そのほかにも若干のいろいろ被害があるというふうに報告を受けております。  そこで、この被害の補償の問題につきましては、当然、汚染者が支払うということで処理すべきものであるというふうに考えておりますが、さらに農林水産省といたしましても今後とも三重県と密接な連絡をとりまして、被害補償が適正に行われるように関係者を指導してまいりたいと。なおまた、われわれが何か役立つことがあればということで、場合によりましては現地に必要な場合には担当官を派遣をして指導に当たらせるということも考えておりますけれども、いずれ三重県から連絡がございますれば、よく相談をいたしまして、円満に事後処理ができるというように指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  40. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 最後に、これは大臣に、大臣立場でぜひひとつ力を発揮をいただきたいと思うんですが、先ほどもずっと質疑を続けてまいりましたように、率直に言って、こういう災害を未然にどう防ぐかということがきわめて大きな課題なんですね。この伊勢湾沿岸、今度被害に遭いましたところは、五年前にも実は紡績会社がA重油を流出をしまして、ちょうどこの十一月の時期なんですが、その際にもノリに大変大きな被害を受けたわけであります。  したがって、私は今回特に農林水産の立場で問題にしたいことは、先ほども繰り返し申し上げておりますように、油、いわゆる大型タンカーを通じましてシーバースから油を絶えず陸地に揚げておる施設なんですね。したがって、常時油を取り扱う油専用のシーバースというものがあって、しかもそこを使っているところについて、これは船側の責任だとか、あるいは施設側の責任だとか、こういうふうに言い合っておってもらったのでは、これはとてもじゃないけれどもお話にならぬわけであります。少なくとも私は、常時それは船側にしましてもそこを使う、施設の側にしてもそこ以外は使わないと、こうなっているわけでありますから、当然この防災対策というものは緊密に、そして厳重に予防措置というものが当然含まれて行われるべきであろうと、こういうふうに考えるわけです。  今日、その辺が、どうも法律的にもすっきりしていないように思うんであります。これは、不勉強で私がよう探さないのかもわかりません。しかし、これは当然漁民を守る、同時に、漁民が精を出してがんばっておりますところのわれわれの食料資源を守る、こういう立場から、当然の義務化を含む問題として対策を講じる必要があるんじゃないのか、この辺をぜひとも私は大臣の政治的な立場でも協議をいただいて、再びこういう事故が起こらないように、仮に起こったにしても最小限に食いとめられる、ここに力点を置いた一つの結論を見出していただきたい、こういうふうに考えるんですが、その辺の決意なりお考え方をお聞きをして、質問を終わりたいと思います。
  41. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘のような被害があってはならぬことはもう当然でございますし、   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕 今回の問題は十分研究をして原因を明らかにし適正な補償がされると同時に、二度と再びそのようなことがない措置というものを講じていきたいと存じます。また、制度、仕組みについて欠陥があるというようなことが原因であるとするならば、当然そういったことも配慮して、こういった被害が起きないように最善を尽くしてまいりたいと存じます。
  42. 村沢牧

    ○村沢牧君 私は、農畜産物の貿易問題について、特に日米交渉に関連をしてお聞きをいたします。  最初に要請をしておきますけれども、現在進行中の外交交渉の内容を逐一報告することの困難性があるということは承知をしておりますけれども、日米の農産物交渉はきわめて重要な問題であり、それだけに国民の関心も高いわけであります。したがって、当委員会でできる限り率直な御答弁をいただき、わが国の交渉に臨む姿勢と、それからまた、国民に対する理解を深めていただくようにお願いをしておきます。  まず最初に、交渉経過と問題点についてでありますが、この九月以降、東京ラウンドの一環としての日米農産物交渉の経過を顧みますると、九月五日からワシントンで開催をされた中川、牛場両大臣とストラウス代表との会談に引き続いて、高級事務レベル交渉が二回、それから牛場・ストラウス代表との会談が一回、今日なおジュネーブで交渉が続いておるわけであります。この間の交渉で、基本的な問題についてはアメリカ側の要求とわが国の姿勢が対立したままである。したがって、近く中川・ストラウス会談で政治的決着をつけようとするということも聞いておるわけでありますが、しかし、マスコミの報道によれば、交渉は全然これは行き詰まっているわけではなくて、かなりの進展があったこともうかがわれるわけであります。  そこでお尋ねをすることは、まず九月の中川・ストラウス会談で物別れになった課題は何であったか、それをその後の事務レベル折衝においてどのように煮詰めてきたのか、その結果、今日残されている問題ですね、すなわち政治的決着をつけようとする課題は何であるか、このことについて単刀直入にお答えをお願いしたいというふうに思うのであります。
  43. 松本作衛

    説明員(松本作衛君) 日米農産物交渉の経過につきまして御説明をいたします。  第一点の、本年の九月に中川・ストラウス会談が物別れになったのはどんな課題についてであったかという点でございますが、中川・ストラウス会談におきましては農産物交渉全体について行ったわけでございますので、どの部分が物別れになったということを具体的に申し上げられる段階ではございませんけれども、特に問題がありましたのは柑橘及び牛肉の自由化の問題、それからこれらの枠の拡大の問題、さらに、その他の関税引き下げの問題というような内容でございます。  二番目に、それが今村・マクドナルド会談、いわゆる高級事務レベルにおいてどのような折衝をしておるのか、また、新聞報道等による煮詰まっておるというのはどういう内容であるのかということでございますが、先ほど御指摘がございましたように、十月と十一月に高級事務レベルの会談といたしまして、今村農林水産省経済局長とマクドナルド代表との間で交渉が続けられておるわけでございますが、事務レベルにおきます大きな課題は、関税の引き下げの問題ないしは関税の取り扱いの問題等でございますけれども、その他全体がパッケージになっておりますので、ここでどの部分がどのように詰まったのかということを申し上げる段階にはないわけでございますが、交渉の内容はかなり進展をしてきておるというふうに考えておりまして、特に関税の問題等につきましては、事務的に相当の詰めを行ってきておるということが申し上げられると思います。  今後残っておる課題はどのようなことかということにつきましても、ただいま御説明申し上げましたように、全体がパッケージの問題になっておりますので、どの部分だけが残っておるということを申し上げることが困難でございますけれども、やはり大きな課題、特に大臣同士で話をしていかなきゃならぬであろうというように考えられる課題は、柑橘及び牛肉の自由化及び枠の拡大の問題、さらに、若干の関税の問題が残るのではないだろうかというふうに考えておりますけれども、現在、交渉を継続中でございまして、最後にどれだけのものが残るのかということにつきましても、それ以上明確に申し上げられる段階にはないわけでございます。
  44. 村沢牧

    ○村沢牧君 表面的にはそうであろうというふうに思いますけれども、十月二十七日の各新聞は、農林水産省筋の話として、日米農産物交渉はさきに開かれたジュネーブ会談において輸入枠拡大の方向で大筋合意に達したということを明らかにしているわけであります。ここにその一部の新聞を持ってきておりますけれども、「日米農産物交渉は先のジュネーブでの事務レベル折衝で数品目の関税引き下げ問題を除き、日本側の大幅譲歩により大筋で合意した。それによると、懸案のオレンジ輸入ワクは1一九八〇年に六万数千トンとし2毎年六−八月の季節ワクは三万数千トンとすることになった。また牛肉の対米輸入量は八三年に三万トンとすることが決まった。」と、こういうように報道されておるわけですね。  これが事実であるとすれば、大幅な輸入枠を拡大することによって自由化されたと同じ結果になって、そのことがわが国農業に及ぼす影響もきわめて大きいというふうに思うんであります。この大筋合意という報道に対して農林水産省の方は否定をしておるようでありますけれども、しかし、火のないところには煙が立たないというふうに思うんであります。一体このような大筋合意がされておるのかどうか、この真実をひとつ明らかにしてもらいたいというふうに思うんです。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕
  45. 松本作衛

    説明員(松本作衛君) ただいまの御指摘は、十月下旬に報道された内容であろうかと思いますが、先ほども交渉の経過につきまして御報告申し上げましたように、この交渉は全体がパッケージとして進められておるわけでございまして、どの部分が明確に決まったというような段階にないことは事実でございまして、先ほどの読み上げられました新聞報道は私ども関知をしておらない事実でございます。そのようなことがもし事実であるとすれば、その後十一月に入りましてから相当長期間交渉をいたしておるわけでございますから、このような経過をごらんいただきましても、そのように決まっておるというような段階にはないということが申し上げられるかと思います。
  46. 村沢牧

    ○村沢牧君 この報道が事実であるかないかの論議はここでは私はあえていたしませんが、いずれ交渉の経過や結果においても明らかにされることであるというふうに思うのです。  そこで、そのような事実はないというお話があったわけですけれども、もう一点だけ伺っておきたいのですが、十月三十日牛場大臣とストラウス会談の中で、ストラウス代表はこういうことを言っておる。「ジュネーブでの日米農産物予備交渉でかなりの進展があったことを認めながらも、米側はなおオレンジ、牛肉の輸入自由化の時期の明示を求める」、この点について両者が確認し合ったということですね。これは一体何を意味しているのですか。
  47. 松本作衛

    説明員(松本作衛君) 先ほども申し上げましたように、交渉の過程を通じまして内容を煮詰めており、相当煮詰まっておるということはそのとおりであるわけでございますが、特に大きな問題として、先ほど申しましたように、牛肉、オレンジの自由化の問題、それに関連いたします枠の拡大の問題等の大きな問題が、今後とも政治マターとして交渉していかなきゃならぬだろうというふうに考えておるわけでございまして、牛場大臣が申した点も、そのように大きな問題が残っておるということを発表したものと了解しております。
  48. 村沢牧

    ○村沢牧君 大臣、いままでの答弁を聞いておりましても重要な問題がたくさん残されておりまして、最終的には中川農林水産大臣、あなたが訪米をして、それからストラウス代表との政治決着をしなければならない、こういう情勢にもなってこようとするわけでございますが、東京ラウンドの時期も決まっておりますから、大臣、あなたはいつごろをめどとして訪米をして、あるいはどこでストラウスさんとの話をしていこうとされておるんですか。それと同時に、その話はいままでの高級事務レベル折衝も積み上げてきて、大臣は手打ち式に行くんですか、それとももっと大臣が直接みずから詰めて決着をしようとされるのですか。その辺について、大臣見解をただしておきたいと思います。
  49. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 交渉経緯についてちょっと補足いたしておきますが、九月五日からの交渉はボンにおけるサミットで、福田首相とカーター大統領の間でぜひともMTNは解決しなければならぬ、特に問題になるのは農産物だと。そこで中川・ストラウス、牛場さんを加えまして、しかるべき時期にアメリカで交渉しようという話し合いのもとに九月の交渉がなされたわけでございます。  しかるところ、非常にアメリカ側が厳しい条件を出してこられまして、自由化の問題、輸入枠の問題、関税の問題等すべて難航いたしまして、決裂状態ということで、残念ながら一切話し合いは進まなかったということで別れたわけですが、出発直前、飛行場に向かおうかという直前に会談を持つ機会がたまたまありまして、そこで決裂はまずいと、やはり前向きに話し合いを進めていくと、今回話し合ったことも建設的なものであったということで、前向きに話し合おうという合意が急になされまして、しかも、両者の代表者でしかるべき時期にしかるべき場所においてひとつ話し合いを詰めていこうじゃないか、こういうことになったことはすでに御報告をいたしておるところでございます。その結果に基づいて話し合いはいたしておりますが、まだ肝心なところは詰まっておらないと。  そこで、今後どうするかというと、十二月十五日までにこれは一切合意をしようという締め切り日があるわけでございます。そこで、その日までに何とか詰められるだけ詰められるように事務当局もやると。そして、詰まるものならば手打ち式で終わるかもしれませんし、詰まらないというところがあるならばそこはひとつ政治折衝でぎりぎり決着をつける努力をして、十二月十五日、国際的な約束でもございますから、決着をつける最善の努力をしたいと。  しからば、時期はいつかということでございますが、これはまだ決まっておりませんが、十二月十五日に決着のつくように、それに間に合うようなしかるべき時期、向こうの都合もございますから、向こうの都合あるいはジュネーブにおける現在の話し合いの状況等を勘案して決めたいということでございまして、まだ十一月中に行くとか十二月になって行くとかということの決定はいたしておりませんが、なるべく事務的に話し合いがつくように、そしてなるべく早く合意ができるように、私の行く時期も含めまして最善を尽くしたいと思っておる段階でございます。
  50. 村沢牧

    ○村沢牧君 いつ訪米するかという時期は現段階では明確でないといたしましても、いずれにしても、中川大臣とストラウス代表との話で政治決着をつけると、そういうふうに理解をしていいんですか。
  51. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 政治決着が必要のないいま交渉を進めておりますけれども、そこで話し合いがうまくいけば結構です。政治的な問題も含めまして。いかなければ、やはり政治決着をつける交渉で解決をしたいと、こういうことでございます。
  52. 村沢牧

    ○村沢牧君 まだ交渉も最終的に煮詰まっておりませんし、それから政治決着をつけなければならない、そういう時期もあろうというふうに思いますから、そういう立場に立って以下私は政府の姿勢をただすとともに、わが国の農業を守るという立場から中川農林水産大臣が毅然たる態度をもってこの交渉に当たられる、あるいは指導する、そういう面で激励を含めて以下質問してまいりたいというふうに思うんであります。  まず、通産省にお尋ねをいたしますが、農産物の輸入自由化がアメリカから強く求められるようになったのは、わが国の貿易収支の黒字が大変大きくなってきてからであります。政府は、この貿易収支の黒字を五十三年度には六十億ドルへの縮小を目指してこれを内外ともに明らかにしているわけでありますけれども、五十三年度における貿易収支の関係はどういう現状になっているのか、どういう見通しに立っているのか、上半期における実績というか現状、それからこれからの見通し、そのことについてお尋ねをしたいとともに、この黒字になっている要因ですね、これをわが国輸出製品あるいは輸入製品の、工業製品やあるいは農産物その他に分けてこれを分析した場合にどういう状態になっておりますか、通産省の方からひとつ説明してください。
  53. 篠浦光

    説明員篠浦光君) 五十三年度の貿易収支の現状と見通しという御質問でございますが、まず、五十三年度上半期の輸出でございますが、これは通関ベースで申し上げまして、円高等の影響もございまして十兆二千六百七十七億円ということで、前年同期と比べまして五・九%の減少、それから数量ベースで申し上げまして三・二%の減少というふうになっております。  今後でございますが、一応こういう傾向が続くというふうに思われまして、五十三年度全体では政府経済見通しの約二十兆円、前年度に比べまして八%程度の下落ということが見込まれております。  それから、次に輸入でございますが、やはり上半期でございますが、八兆一千八百六十六億円、前年同期と比べまして一四・九%の減少で、数量ベースでは六・三%の増加というふうになっております。まあ、今後内需の拡大のさまざまな措置をとっておりますし、それから緊急輸入等も見込まれるわけでございまして、輸入は徐々に上向きに転じまして年度全体で約十六兆八千億円、比率にしまして、円ベースでございますけれども、九%程度の下落になるというふうに見込んでおるわけでございます。  そういう輸出入の結果といたしまして、上半期の貿易収支でございますが、これは通関べース——一般に貿易収支と言う場合に、通関の輸出入の差し引きじゃなくてIMFベース——輸入物資は船賃なり保険料なり入っておりますので、それを差し引いたベースで申し上げますと、二兆八千五百億円というような大幅な黒字でございますが、この黒字幅は年度末に向かって減少いたしまして、五十三年度全体といたしましては、前年度に比べまして約一八%減の四兆二千億円程度というふうになろうかと思っております。  それから、私ども食料品というかっこうで統計をつくっておりますので食料品で申し上げますと、上半期の輸出が千百五十三億円……
  54. 村沢牧

    ○村沢牧君 結論だけでいいです。結果だけで。
  55. 篠浦光

    説明員篠浦光君) 食料につきましては、輸出が千百五十三億、輸入が一兆一千九百九十億ということで、約一兆円の入超というかっこうになっております。  それから、先生がおっしゃいました農業関係あるいは工業製品でどういったバランスになっておるかという、これは非常に大ざっぱな概数でございますけれども、食料関係が、先ほど申し上げましたように上半期でございますと約一兆円の入超、それから石油関係が二兆円、それから原料でありますとか石炭ですとかが大ざっぱに言いまして約二兆円というかっこうでございまして、工業製品が概数で申し上げまして七兆円ぐらいの出超ということで、差し引き二兆円ぐらいの先ほど申し上げましたような出超というのが上半期の数字でございます。
  56. 村沢牧

    ○村沢牧君 いま通産省から現状を聞いてみましても、貿易不均衡の要因は、何といってもわが国の場合工業製品にあるというふうに思うんであります。ところが、アメリカ側がしつこくわが国の農産物市場を開放しようということは、わが国における農産物の輸入規制が日米貿易不均衡の象徴であるかのようにとらえておるのではないかという私は気がするんであります。まあ、不公平だとか不公正と言うならば、農産物を挙げること自体が私はおかしいことだと思うんですよ。  そこでお聞きをいたしますけれども、わが国の農産物の輸入額、そこに占めるアメリカのシェア、これはどんなふうになっているのか。それから、日米の農産物の収支の関係、輸入輸出の関係はどうなのか、このことについて簡潔にひとつ答えてください。理由は要りませんから、数字だけで結構です。
  57. 松本作衛

    説明員(松本作衛君) 一九七七年におきますわが国の農林水産物の輸入額は約百九十三億ドル、農産物だけで百二十四億ドルでございまして、総輸入額に占める割合は農林水産物で二七%になっております。それから、輸入先につきましては、アメリカからの輸入が農林水産物総輸入額の三一%になっておるわけでございます。それから、アメリカ自体といたしまして、農産物全体で二百三十七億ドルの輸出をいたしておりますが、日本向けの輸出はこのうちの一六%に当たっておりまして、最大の輸出先になっておると考えております。
  58. 村沢牧

    ○村沢牧君 いままで通産省や農林水産省の答弁を聞きまして、その数字が示しておりますように、わが国の工業製品を輸出をしていく、その見返りとして農産物の輸入を強要される。これであっては、わが国の農業は破壊をしてしまうというふうに思うんであります。仮に一歩譲って、農産物の輸入枠を拡大をしてくる。そうすれば、そうしてもなおかつ工業製品等において貿易不均衡が存在をする限り、いまアメリカ議会等で問題になっておりまする日本の工業製品に対しまして、アメリカ側に言わせれば輸入を規制していくような措置を上りますぞと言っておりますけれども、農産物の輸入枠を拡大すればアメリカ議会のそういう動きはやまるというふうに通産省は思いますか。  それから続いて、これからまた百歩譲って現在輸入制限をしている農産物を完全自由化したとしても、私は貿易黒字の解消には貢献する度合いはきわめて少ないというふうに思うんです。これは仮定の問題ですけれども、そういう場合には一体どのくらい黒字の解消に貢献をするのか。これらのことから、今日貿易不均衡を解消するには、私は農業以外で思い切ったやっぱり対策を立てる必要がある。貿易不均衡を解消しなければなりませんけれども、どういう方向で解消していくという確固たる対応がなくて農産物交渉をすれば、だんだん農産物が輸入を拡大していって一歩一歩譲歩せざるを得なくなってきて、これまたわが国の農業に及ぼす影響がきわめて大きいんであります。不均衡是正をしていくという政府のはっきりした方針と、その実績についてもお答えを願いたい。  以上、三点について、通産省になりますか、ひとつお伺いしたい。
  59. 篠浦光

    説明員篠浦光君) まず、第一点の農産物の輸入の拡大の問題と、それからアメリカの工業製品の輸入制限の問題でございますが、先生指摘になりましたように、アメリカを初めとしまして世界的にやや保護主義の思想といいますか、動きが見られるわけでございまして、貿易依存度の非常に高いわが国としまして、やはりそういった保護主義を防ぎながら世界の貿易あるいは経済を拡大していくということで、東京ラウンドの交渉にも積極的に参加しておるわけでございまして、日米の農産物交渉もその一環として行われておるわけでございます。この農産物交渉で両者の話し合いによりまして合理的な解決が図られるということは、東京ラウンドの成功、それからひいては保護貿易主義の拡大を防ぐということで不可欠なことだというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、そういった交渉あるいはその他もろもろの対外政策通じまして、保護主義の防遏に努めていくというふうに私ども考えておるわけでございます。  それから、農産物を自由化した場合にどのくらいの黒字が解消されるかということでございますが、いまの農産物の輸入制限品目の五十二年度、前年度の通関輸入額は約六億ドルということになっておるわけでございますが、それを自由化した場合に輸入がどのくらいふえるかということにつきましては、個別品目ごとにいろんな需給事情もございますし、また代替関係等もございましょうし、幾らと申し上げることはできないということ、まあわからないということでございます。  それから三番目の、いまのような貿易の不均衡をどうやって是正していくのかという御質問でございますが、基本的に、輸入の拡大による拡大均衡というかっこうで解決していくということを基本としておることは御承知のとおりでございます。そのために、まず内需の拡大によって輸入の拡大を図るということで、七%成長というのを目指して経済運営が進められておるわけでございまして、去る九月の経済対策閣僚会議でまとめられました総合経済対策では約二兆五千億円の内需の追加措置を決定して、その推進を図っておるということでございます。  それから、いま一つには、緊急輸入の実施、約四十億ドルということでございますが、緊急輸入の実施あるいは経済協力の推進あるいは対内的には輸出の自粛の要請関係企業にいたしておりまして、そういった一連の対策によりまして、貿易の大幅黒字を縮小していくということを期待しておるわけでございます。今後とも貿易立国というわが国といたしまして、そういった方法を通じまして関係諸外国との友好関係も保ちながら、均衡のある貿易の拡大あるいは発展に努めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  60. 村沢牧

    ○村沢牧君 長々と答弁いただきましたが、私の質問にも答えておらないし、そんな書いたものを読んだ程度では、こんなむずかしい問題は解決することはできないと思うんですよ。私は、農産物の輸入を拡大してもアメリカ議会やアメリカの国内で日本の工業製品の輸入を阻止しようとする動きはやっぱりとまらないだろうと、そう単刀直入にあなたの意見を聞いたんですよ。まあお答えができないでしょう。それから、農産物を完全自由化しても、たとえばいろんな論説なんかを見ると、せいぜい五億ドルぐらいしか黒字解消には役に立たないんだということも明らかにされているんですよ。それから、私は、この貿易均衡を図るために農産物にばっかり余り力を入れるんじゃなくて、その他の面でひとつ政府としてはっきりした姿勢と対応を示しなさい、それも聞いたけれども、抽象的な御答弁でありますから、こんなこと論議してもあなたと論議は合いませんから、それ以上言いません。よく検討してください。  それから、いま保護主義の話が出たんでありますけれども、アメリカは、国際競争力のない産業が後退するのは当然のことであって農業もその例外でない、こういう見方をしておって、日本の農産物と工業製品を同じように考えているのではないかというふうに思うんですね。農産物と工業製品を同様に私は論ずることのできない性格を持っているというふうに思うんです。だからこそ、いまお話がありましたような、アメリカを初め世界各国で農産物について輸入規制を初めとする政策的な保護措置を講じており、まる裸のまま自由貿易や国際的な自由市場に対応されておらないと思うんです。わが国の農産物の輸入制限品目はだんだん減ってきて二十二、しかも、これも多くのものが部分自由化されておるわけです。この残存輸入制限品目は、わが国の基幹的な農産物であり地域的な重要な農産物である。しかも、先進諸国に比べてみて、わが国のこういう制限品目は決して数が多いというふうには私は思わない。  そこで、大臣お尋ねしますが、こういう実態の中でわが国の農業の現状及び将来を展望するならば、自由化品目をふやしていくということや、さらにまた、輸入枠を拡大していくその余地は私はないというふうに思うんですけれども大臣はどういう見解を持っていますか。
  61. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) その前に、先ほどの通産省の答弁、不満足だということでございますから、ちょっと私が交渉をした全般的な感じを申し上げてみたいと思います。  御指摘のように、農産物、アメリカのリクエストを全部のんでみても一億ドルとか二億ドルぐらいしかならないのです。このことは向こうでも申し上げたのです。原因は工業製品にあるのであって、ドルの問題を解決しようとするならばそっちの方ではないかと。これはアメリカ側もよく知っているのです。そのことはよく知っていると。要は姿勢の問題だと。いまアメリカの国内には保護貿易主義が台頭してきておると。なぜ日本の安い自動車や、あるいはカメラ、テレビを洪水のごとく買い入れるのだと。したがって、失業者が出る、倒産が出る、あるいは赤字になるという大問題は、日本のあらしのような輸入にあると。そこで、議会筋から保護貿易が出てくると、これは世界経済に与える影響が大きいと。その議会勢力を抑えるためには、農産物についても、ドルが何ぼ減るふえるの問題じゃなくて、保護貿易主義を排除すべきであると。なぜ日本にだけ安い農産物がアメリカから入れないのか、これが説明できないのだというので、姿勢の問題として、金額の問題じゃないということをはっきり言っているわけです。  で、根っこの問題はどうするかというと、先ほど通産省が言ったように、わが国が内需を拡大して輸入拡大に努めると。また、アメリカ側のドルが大きい原因もこれも申し上げてきたのですが、アメリカのインフレが原因なんじゃないのかと。工業製品の入ることの数量はそんなにふえておらないのにドルがふえるのは、値段が高くなっていると。そこを抑えなければいけないのであって、農業にしわ寄せを持ってくることはけしからぬということは十分言ってきたのです。しかし、向こう側は、やはり議会を抑えるのには姿勢を示してもらいたいと、こういうことなのです。  それからもう一つ、アメリカ側が日本の農村を理解してないのではないかということですが、それは理解してない部分もあります。アメリカの農家は非常に大企業ですから、日本の零細企業を説明してもわかりにくいところがあります。しかし、最近だんだんわかってきつつあると。今度の議員団も来ておりますが、やはり零細農業は守っていかなきゃいかぬ、立場はわかるということがだんだん理解はしてきておりますが、わからぬ面もあるが、私は、アメリカ側はストラウスも相当理解しておると思う。したがって、自由化をむちゃくちゃに、やたらにやれと言うのじゃない。たとえばオレンジについて言うなら、オフシーズン、六、七、八ぐらいのところはミカンはないのじゃないですかと、だからその辺のところは自由化して何が支障があるのですかということであって、ミカン農家を無視して入れよと、こういうことじゃない。それでも私の方は、自由化という言葉はどうしても困ると、数量はミカン農家に影響を与えない調整はあり得るけれどもと、こういう姿勢でやっておるわけです。  牛肉についても、将来は自由化というようなことも言っておりますが、決してむちゃくちゃなことをやれと言っているのじゃなくて、輸入枠の中でアメリカが関心を持っております高級牛肉について調整できないかと、こういうことをやっているのであって、決してアメリカ側も、むちゃくちゃに何でも農産物を自由化して日本の農民はどうなってもいいと、こういう態度ではない、これは明らかにしておきたいと存じます。  また、私自身も、アメリカの言い分はわかるけれども、いま言ったように、ドルがこうなっておる原因は、日本の物を自由に買うと、逆に自分の物を自由に買ってもらえないというところにあるという立場はわかりますけれども、しからば農産物について農村に被害を与えるようなことを許したらどうなるかというと、これまた社会不安であると。どうしても農村は守っていかなきゃいかぬと。その農村を守りつつアメリカの輸入についてどう対処できるかというぎりぎりの交渉をし、そこに一致点を見出したいと、最大公約数を見出したいということでお互いに渡り合っている段階であって、最終態度としては農村を守ることだけは私は守り抜いて決着をつけたいと、こういう基本態度でおるわけでございます。
  62. 村沢牧

    ○村沢牧君 それでは、具体的に問題になっております牛肉あるいはオレンジについて質問してまいります。  まず、牛肉についてでありますが、わが国の肉牛の生産状況も四十八年から五十年の畜産危機を境として、飼育の戸数は減っているけれども頭数はだんだんふえてきて、私はある面においては畜産農家は軌道に乗りつつあるというふうに思うのであります。こういう生産状況を維持していけば、将来牛肉の需給関係はどうなるのか。具体的に言って、東京ラウンドの取り決めの期間である一九八〇年代の需要供給の見通しについて、お尋ねをしたいというふうに思うんであります。
  63. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) 現在まで農林水産省が需給見通しについて明らかにいたしておりますものは、四十七年を基準にした六十年見通しでございます。このいわゆる長期見通し、これにおきましては、需要の方から申し上げますというと、四十七年を基準に、年率四・二%でふえていくという考え方をとっております。そして六十年度においては、これは生肉ベースの数量でございますが、四十三万八千トンになるというふうに見込んだわけでございます。  一方、国内生産につきましては、生産振興の拡大を図るということで、年率四・四%程度の増加を想定したわけでございます。六十年度においては具体的な数量として三十五万六千トンというふうに見込んでおります。この需要と供給の差、国内生産の差、この不足する分については輸入で賄うということにいたしておるわけでございます。  その後の推移を見ますというと、国内生産の方は、いま先生もおっしゃられましたように、四十九年の石油ショックに続くもろもろの悪化した事態によりまして、いわゆる畜産危機を招くに至ったわけでございます。著しい生産の落ち込みということになったわけでございますが、逐次立ち直りを見せまして、五十一年の後半以降はまた増加傾向をたどってまいっているわけでございます。しかし、今日時点でも、なお長期見通しの想定をやや下回っているという状況にございます。需要の方は、見通しに対して、これは全体としてほかの食肉類が需要停滞している中で、牛肉は堅調な伸びを見せております。むしろ、予想を上回る伸びというような状況でございます。  以上、申し上げましたような動向からいたしますというと、今後需要としては、わが国のそれは、基本的には独自の食生活パターンもあります。欧米並みに上がるというようなことはこれはとうてい考えられませんけれども、長期見通しで想定した以上の伸びが期待できるのではないかというふうに考えております。国内生産につきましては、ようやく畜産危機以後の落ち込みを回復してまいったわけでございますけれども、なお今日、長期見通しのベースを下回っているような状況にあります。今後とも国内生産の回復、振興には、さらに政策的にも努力を続けていく必要がありますが、今日時点では、長期見通しの水準を実現するのにさらに一層の相当大幅な努力が必要であるというふうに考えております。
  64. 村沢牧

    ○村沢牧君 いま説明のあった昭和六十年見通しでは、農林水産省は牛肉自給率八一%という数字を出していますね。その昭和六十年、すなわち八〇年代であろうというふうに思いますが、八一%の自給率になってくると。そうすると、あと不足するものは輸入に頼るということになるわけでありますが、その段階になって一体輸入はどういう国に頼っていくかということになってくるわけでございますけれども、ちなみに、いまの輸入の各国別シェアを見れば、大まかに言ってオーストラリアが八三%、アメリカが一〇%、ニュージーランドが五%というふうないま国別のシェアになっていますね。こういう国別のシェアを八〇年代も維持していくとするならば、いわゆる八一%自給はできる。あとの一九%に対して、アメリカに対してはそれではどれだけ期待をするということになっていきますか。これはひとつ簡潔に答弁してください、わかりやすく。
  65. 杉山克己

    説明員(杉山克己君) 国内生産で賄えない不足分を輸入するということでございますが、その不足分は総枠として考えておるわけでございます。現在、輸入枠の決め方は、一般枠とそれから特別枠ということで決めております。特別枠は、その肉の性質あるいは需要のあり方等の特殊事情考えて決めているものでございますが、基本は一般枠でございます。そして、この枠の決め方に当たっては、別に国別に幾らというような決め方をしているわけではなく、どの国に対しても公平にということで、いわゆるグローバルベースということで決めておるわけでございます。  ただ、需要のあり方を見てまいりますというと、高級牛肉の需要がふえるのではないか、あるいはまた、それと並行して加工用の肉の需要がふえるのではないかという見通しの数字については、これはいろいろ意見もあるわけでございます。  アメリカの場合は、どちらかと言えば、穀物飼料を使って育てるところの牛、いわゆる高級牛肉に適する牛の生産が向いているといいますか、一般的でございます。そこで、アメリカも、アメリカの肉を増加させろというのではなくて、日本における高級牛肉の需要が増加するのではないか、その増加の見通しはアメリカとしてはこのように考えるというようなことで数字をいろいろ言ってまいっているわけでございます。私ども数字を、どのような数字であれ決めました際は、それはアメリカのものというようなことではなくて、競争条件として価格が安いか高いか、品質がいいか悪いか、売り込み方が上手であるかどうかというようなことによりまして、各国に公平に、これはオープンにいたしまして、その中で競争力の強いものがシェアを高めていくということになると考えております。いまの高級牛肉の数量も、これはいま申し上げました全体の総枠の中でどのくらいになるかということで決められるわけでございまして、直ちにアメリカの枠をどの程度に保証するというような性格のものではないわけでございます。  それから、総枠自体につきましては、これはMTN交渉全体の中で、単にアメリカとだけでなく、これから豪州そのほかの国との交渉によって決めてまいる話でございます。
  66. 村沢牧

    ○村沢牧君 時間がなくて大変恐縮であります。恐縮ですが、簡潔に御答弁願いたいというふうに思うんですけれども、いま局長は、不足分をどの国に対しても公平にやっていくというようなお話があったんですが、率直に言って、オーストラリアでも今日の日米交渉を見守っておるわけですね。アメリカ分が輸入がふえればオーストラリア、ニュージーランドへも影響してくることは当然のことだというふうに思うんです。そういう面から見ると、八〇年代の需給の見通しは、どれだけ必要だということをはっきりしなくて東京ラウンドの取り決めをするということは、きわめて私は無責任だというふうに思うんですね。私はいまのような形でいけば、アメリカが八〇年代に、八三年に三万トンですか、日本に牛肉をひとつ買えということで要請をされておるわけですね。とてもこんな数字には買えないではないかというふうに思うんですけれども、そのことはここで論議しても結論がすぐ出てこないというふうに思うんでありますけれども、要するに、世界的に見てこの牛肉は不足をしてくるんではないか。  たとえば、FAOの一九八〇年見通し、あるいはOECDの一九八〇年見通しでは、牛肉は世界的に不足してくる、このことが明らかにされておるわけですね。こういうときに、せっかくわが国の畜産農家も消費者の期待にこたえて、コストを安くして牛肉生産を高めようとして努力をしているときでありますから、これからの将来の展望として大切なことは、長期的に国内の牛肉生産の拡大を図っていく。足らないところは輸入していくのだという考え方が先に立つんじゃなくて、国内の自給を図っていくんだということをまず基本としてとらえていかなければならないというふうに思いますが、大臣どうでしょうか。
  67. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) その辺がむずかしいところで、食糧は、牛肉ばかりじゃなくて全体について言えることなんです。将来大変だから自給率を上げよと、こういう声があることも事実です。そこへ、外国から買えということも出てくるわけです。むしろこわいのは、私どもは、国内消費者が、牛肉が四倍のものをなぜ食わなきゃならぬのかと。少ないときもあるが、まあ保険みたいなものだ、危機のときに大変だから高いものを食ってくれという説明になるわけなんです。それに対しては、保険だからわかるけれど少し高過ぎやしないかと、四倍、五倍なんということは。そこで、まさに国内のものをどの程度にし外国についてはどの程度のものにするかという判断を、そのぎりぎりの中でしていかなきゃいかぬという苦しみがあるわけです。  私は、まあ生産農家からは怒られるし、消費者からは高い牛肉だと怒られて——一方の議論のときはそっちの議論も正しいのです。これは。高いじゃないか、もっと安い牛肉を食わしてくれと消費者が言うと、それも理屈なのです。国内を保護しろというのも理屈。理屈と理屈の間に入ってやせ細っているのが私だと思うのですが、いずれにしても現在の生産農家が意欲を失うようなことはしたくない。ことし春先、一月、一万トンやりましたときも、農家の人が大変だ大変だ、中川大臣、牛肉入れるのだということで牛が暴落しちゃったのです。しかし、消費の段階は全然値下がりしない。  どうかひとつ、先々不安になるようなことを誇大に言うことによって買いたたかれる、その方を私はむしろ心配しているのであって、私ども責任者としては、畜産農家がいまぎりぎりの努力をしていることにこたえて、外国からの輸入によって生産農家がおかしくなるということはしない。安定的に生産ができる、こういう仕組みをとっていきたい。特に価格を引き上げますと、これは消費者からしかられますから、私ども本当に農家には申しわけないのですが、価格は引き上げない、そのかわり生産コストを下げるということで、えさの値下げの仕組み、あるいは子牛生産に対して奨励金を差し上げる、こういうような努力によって畜産農家を守っていく、こういうことを基本といたしておるわけでございます。
  68. 村沢牧

    ○村沢牧君 次に、ミカンの問題でありますけれども、ミカンの生産は大幅に増加をしておるために、五十年から四カ年計画で四十一億円もの金をかけて、新植を抑制するなり、あるいはまた改植をするなりの方法をとってきた。なおまた五十四年、来年から三カ年間に栽培面積の二割の三万ヘクタールもこれを伐採、転換を行わなければならない、こういう取り組みをしているわけですね。つまり、このようにわが国のミカンが過剰で、国費の助成をしても生産を調整しなければならない、その他の柑橘類も自給自足ができる、こういうときに何でミカンと競合するようなオレンジを、アメリカから強く要請されたといっても輸入枠をどんどん拡大をしていかなければならないのか。あるいはまた、自由化をしろと言われているんですね。このことについて、どうしてもこれは素朴な気持ちとして納得ができないというのは無理からぬというふうに思うんですね。  皆さんの方は、国内の産業と競合しないように季節的なこの枠の拡大だというふうに言っておるんですけれども、御承知のように、いまのミカンの栽培はハウス栽培もあるし、それからまた、貯蔵技術も進んで六月まで貯蔵することができるようになった、こういう新しい一つ日本のミカン生産の方向も出してきておるわけです。これまた、季節枠を広げればこれに水をさすようなことになる。ミカンだけではないんですね。オレンジを入れれば、他の農産物というか果物にも影響してくる。この競合関係、季節枠ならいいと、そういうふうに言い切れますか。
  69. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) これも、外国からばかりの意見じゃないのです。国内消費者から、なぜ夏の時期にオレンジを食わしてくれないかということを率直に言っているのです。これはもうアメリカにも行って言うものですから、説明がつかないのです。しかも、ミカンなどの出る秋から正月、約百万トンの果物を消費しております。ところが、六、七、八月ごろになると、二十万トンぐらいしか消費しておらないのです。もちろんスイカとかいうようなものにかわる点はありますが、いわゆる果実というものは非常に少ない時期なのです。その時期に三万トンや五万トン、六万トン入れて、それも三カ月でそのぐらいのものを入れて、なぜミカン農家に影響があるのかわからぬというのが向こうの言い分なのです。  もちろん、いま言うように、ハウスミカンもあるのだということを言うと、ハウスミカンというのは特権階級が、一部の人が食べているものであって、そこへオレンジが入ったからといって、そうあんまり影響があるということはわからぬということであって、決してミカン農家を犠牲にして入れようということは私どもも言ってないし、アメリカ側も言っておらない。ただ感情的に、いま二割の減反をしなきゃならぬ厳しいときですから、これは慎重に扱わなきゃいかぬ。  それから、向こう側の言っているのは、四月、五月もいいのじゃないかと。六、七、八もさることながら、四月、五月もミカンとは関係ないと、三月になったらミカンは一粒もないのじゃないですかと。いやタンカン類があるのだと、これはもうミカン農家と生産のうらはらのものであり、そっちを指導してきたのだからというので、これもぎりぎりお断り申し上げているところであって、決してミカン農家の現状を無視してアメリカだけの言うことを聞いているわけじゃない。むしろ消費者のことを考えるならば、夏の時期ぐらいに入れて、そしてこの問題が解決できるならば、消費者にとっても生産者にとっても実質被害がない。  どうかひとつ、騒いで大変だ大変だでまたミカンも暴落するということのないように、よくわれわれの意のあるところを見てもらいたい、こう申しており、そういう方向で調整をしてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  70. 村沢牧

    ○村沢牧君 いま大臣の答弁で、アメリカ側の強い要求の話も出たわけでありますが、ミカンのこういう切実な状況にたまりかねて、愛媛県農協は去る八月十八日、アメリカの有力日刊紙であるロサンゼルス・タイムズとワシントン・ポスト両紙に、ここに私持っていますけれども、こういう意見広告を出したんですね。これは、ミカン農家が全部金を出して出したわけなんですよ。ここにはオレンジ輸入枠の拡大反対、理解してください、アメリカオレンジ生産者の皆様へと、一ページにわたる意見広告ですね。これに対してきわめて大きな反響を呼んで、アメリカの人たちから愛媛県農協に対して、いろいろな見解が寄せられておるわけですね。それを私は拝見したんですけれども、そのうちの多くの人たちが、日本がそれだけ困っているのならアメリカもそんなにオレンジを日本へ送り込むことはないではないかという意見が非常に多い。  一農協や一地域でも、これだけアメリカに対して努力をしているんです。大臣も交渉に当たっては努力はしておりますけれども、もっと政府自体がやっぱりアメリカに理解を得るような方向を、行動をとらなければいけないというふうに思うんですが、これを見てどういうふうに感じますか。
  71. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 愛媛県で広告を出したことも承知しております。約三百万円ぐらいかかったそうですか、農家の皆さんから金を集めて、そしてこれが反響を呼び、ばかなことを言うなという手紙と、それからいや理解できるという手紙ですね、錯綜しておるということも承知いたしております。  しかし、私は農協が努力している以上に努力しているつもりなのです。もうあらゆる機会を通じて、議員外交、単なるストラウスさんとの話だけじゃなくて、今度参りました議員団にもよく説明をし、そして理解を求めております。ただ、こちら側も、何でもかんでもだめなのだ、季節もだめなのだ、枠の拡大もだめなのだではなくて、やはりそこのところは向こう側にも農家の理解者だけじゃなくて、先ほど言ったように議会側というのが非常に強いのです。若干申し上げると、日本は選挙制度がおかしいと、票数によって合わぬというのですが、アメリカはもっともっと合わないので、何百万、何千万の州も、何十万の州も上院議員の数は同じなのだそうです。したがって、農村議員が圧倒的に多い。この圧倒的に多い農村議員に、それぞれオレンジについてこうしました、牛肉はこうしました、小麦はこうしましたと、こう言って理解をいただかなければ政府がやっていけない。  こういう厳しい事情の中で、ストラウスさんも非常に苦しい立場の中で交渉しているのであって、われわれもストラウスさん以上の厳しいことでやっておればこそこれだけの苦しみをしているのであって、決してそういう農家の皆さんの苦しみを知らないで交渉しているのじゃない。命がけの折衝をし、農家に被害を与えない、特に不安を与えないようにやっていきませんと、大した被害でないのに不安だ不安だと言ってけがをする場合が多いのです。ことしの場合でも北海道あたりは、私が断じてそういうことはありませんと言うから牛肉の値段は下がらなかったのです。牛の値段が。鹿児島や宮崎方面は、もう実際下がってないのに買いたたかれる。ミカンなどでもそういうことで、大変だ大変だで暴落しないことの方がむしろ農家に対して親切であると、こういうことを申し上げておきたいと存じます。
  72. 村沢牧

    ○村沢牧君 時間がぼつぼつ参るようでありますから締めくくりにいたしますが、大臣はアメリカと交渉して、アメリカ側の議会の意見が強いということもはだをもって感じておりますが、わが国においてもこの農産物自由化、買い入れ枠の拡大については議会の意見も強いということを御認識を願っているというふうに思いますけれども、ぜひ認識をしていてください。  要するに、この農産物貿易問題も、国民の食糧を供給をしていくんだという、こういう農業の基本的な問題というよりも、むしろ貿易問題を中心としてこのようになっていくことに私は問題もある。もちろん貿易の不均衡はその国として是正をしなければなりませんが、いまのように、目先の利害関係に押されて輸入枠をだんだん拡大をしてくる。そうすると、日本農業はだんだん縮小後退をしていくことになってきますね。このことは単に農業だけの問題ではなくて、将来の国益にとって大きなマイナスになることは、私は明らかだというふうに思うんであります。このように輸入枠を拡大すれば、日本農業もやっぱり転換をしなければならないという時期がやってくるんです。  そこで、私は大臣に最後に伺っておきたいんですが、その国の必要とする食糧の自給度を高めていく、このことは国を防衛するいわゆる安全保障の第一の条件だというふうに思うんです。食糧の国際分業論であってはならないと思う。財界の皆さん方もいろいろな意見を言っていることも私は承知しておりますが、これに対しましては私は多くの反論を持っております。そのことは別といたしまして、そのためには国内の農業を発展をさしていく、すなわち、そういうためにこれから八〇年代の取り組みをするんですから、大臣に課せられた責任はきわめて大きいと思うんです。  日本農業の将来を誤らないように、いままで答弁をお聞きしていましても、私が主張するばっかりにはいかないよということもわかります。わかりますけれども、絶対アメリカが言われておりますような自由化なんということはやっぱり応ずることはできないではないか。さらには、輸入枠の拡大にしても、いまアメリカから出されているというようなこの大幅な拡大は、日本としてのむことはできないではないか。その辺を大臣に、冒頭申し上げましたが、ひとつ毅然たる態度をもって日本農業を守るという立場に立って、勇気をもって交渉してもらいたいというふうに思うんですけれども、その辺の見解と決意をお聞きして、時間が参りましたから、私の質問を終わりたいというように思うんです。
  73. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) これはもう基本的に貴重な議論でございまして、食糧は国家安全保障上欠くべからざるものであると、国防費にもまさるものだという議論が一方にございます。まさにそのとおりでございます。それにしてはまた高過ぎるのではないかという議論も一方にある。米なども国際価格の六倍なんということはけしからぬ大臣だと、もう食管を廃止して自由化すべきだと、こういう議論も国内にあるのです。国内の消費者に。しかも、消費者というのは、生産者に比べれば大多数を占める消費者、国民の声である。しかし、私としては、やはり農業は、食糧確保ということは基本的に国防費にまさる大事なことなのである。それだけじゃなくて、もし農村が荒廃すれば地域社会もおかしくなってしまう。あるいは人間形成も農村から出てくると言われるぐらい、農村の持つ意義は食糧を単なる供給するだけの意義じゃないと、もっと次元の高い意義があるのだということを国民の皆さんに知っていただきたい。  そういう意味で、農業基本法などももっと消費者に位置づけられる、納得できるものをもって農村を守っていきたいと、こういう思想で取り組んでおるところであり、しかし、なかなか農村が抱える米の問題あるいはミカンの過剰の問題、輸入との調整、なかなか厳しくありますけれども、御指摘の点は十分踏まえて、しっかりした農村、しかも長期的にはやはり生きがい、誇りの感ぜられる農村、それには生産体制をやっぱり改革していくことだ。従来のように値上げだけでやっていきますと、外国からはもちろんですが、国内消費者からも理解を得られないということで、米価なども据え置いていただいた上で生産対策について最善を尽くして、長期的に農村を守っていきたい、こういう方向で取り進めているところでございます。
  74. 村沢牧

    ○村沢牧君 時間ですから終わります。
  75. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 過剰米の問題につきましてお伺いいたしたいと思いますが、農家は百七十万トンの生産調整という厳しい割り当てを受けながら、   〔委員長退席、理事大島友治君着席〕 結果的には一一一%という大変協力を示した。それにもかかわりませず、五十三年の産米を加算いたしますと、試算では六百三十万トン台になりかねない。つまり、五十四年の十月末の在庫は六百三十万トン台に上るだろうというふうに見込まれているわけであります。この過剰米を処理するに約二兆円近い予算を必要とする。これは国民経済に与える影響も非常に大きいし、また、農家の生活の安定のために必要欠くべからざる食管会計に大変大きな影響を与えかねないという状況であります。ですから、私は、この過剰米対策というものを本当に政府・議会が真剣に取り組んでいかないと、これは大変なことになってくるというふうに考えます。  そういう観点から、きょうは与えられた時間で質問をいたしたいと思いますが、まず最初に、過剰米処理の一つの戦略として、いつも言われる学校給食の問題であります。米飯の学校給食、伺いますと、五十六年度に完全給食実施校全校において週二日程度の実施を目標とするというふうに言われておりますけれども、きょうはあえて文部省当局は呼びませんでした。農林水産省が文部省と折衝過程において、なぜこの五十六年までかかって週二日しか進まないのか。これだけ過剰米の問題は深刻であるのに、そういう進展ぐあいしか示せないという理由について、ひとつつぶさに御開陳を賜りたいというふうにまず思います。
  76. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 学校給食に米飯導入をしてまいりますことが、当面の過剰米の処理ということよりも、むしろ長い目で見て米を中心とした食生活を維持していくというために、あるいはまた、消費の拡大を図るために大事なことは御指摘のとおりでございます。それで、五十一年度から本格的に文部省においても米飯導入を進めていただいておるわけでございます。  食糧庁といたしましても、米飯給食用の米の売却価格の値下げ等の対策を講じて推進しておるわけでございます。五十一年には玄米で言いまして一万一千でございましたのが、五十二年には二万二千、五十三年は計画四万五千ということでやっておるわけでございますが、まあ倍、倍、倍で三年目やっておるわけですが、二年目までは予定どおり伸びてまいりましたが、三年目は四万五千の当初計画を達成するのはなかなか困難な事情にあるというふうに文部省から聞いております。  そこで、いまお尋ねの、なぜうまく予定どおりいかないのかということでございますけれども、種々事情はございますが、長年の間、パン給食を中心としてやってまいりましたので、これを米飯給食に切りかえるということになりますと、自校で炊飯する場合の炊飯施設なり、あるいは外注するといいますか、委託炊飯の場合の外部に施設をつくる、これは共同でやる場合もございますし、あるいはまた業者に委託するという場合もあると思いますが、いずれにいたしましても、そういう施設設置しなければいけないということと、次に、どうしても米飯の場合はパンと比べまして準備なり後片づけ等に人手がかかります。そういたしますと、職員の労働問題、労働条件の問題というようなものがございます。  私どもといたしましては、文部省もやっておりますし、私どもの方といたしましても施設に対する援助をいたしておりますが、また、施設を設けます場合に、都市部におきましては用地が不足だというような土地問題にも及ぶわけでございます。それから物的、人的な条件整備していかないと、進まない理由になるわけでございますが、そのほかに、私どもは米中心の食生活を維持拡大していくことが必要だという考え方でおりますけれども、したがって、現在文部省当局で進めておられる学校給食の場合には、完全給食というのを目標に置いてやっているわけでございます。完全給食と言いますと、一切の昼食を全部同じものを学校において提供するということでございます。  いま言いましたように、米飯を中心とした給食を進めますためには、そういう施設なり人員の問題が整備されれば結構ですが、それがすぐには及ばないということになりますと、米飯だけ弁当として学校に持参するというような方法も、促進のためには必要ではないかというような考えを私ども持っておって、一部そういう方法も取り入れることになっておりますけれども、いまのところはこれは暫定措置というようなことがございまして、いずれは三年間の間に自校炊飯なり共同炊飯なり委託炊飯に移行するというようなことになっておりますことが、一部は進んでおりますけれども、米飯弁当持参による給食を進めるのに支障になっておる点も見られます。これは完全給食という考え方に基づくものでございますので、文部省は教育的な立場でそういうような考え方があるということはそれなりにわかりますけれども、できますれば、米飯弁当持参を恒久的な方法として認知をするといいますか、そういうようなこともお願いをしておるわけでございますが、その辺はまだ完全な一致に達しておらないというような面がございます。  なお、もう一つ申し落としましたけれども、パン給食の場合、パンを学校に納入をしておりますパン業者が全国に多数おられるわけですが、この方々はどちらかといいますと、中小企業のパン製造業者の場合が多いわけでございまして、パン給食が一気に米飯に切りかわるということになりますと生業の問題、転業の問題といいますか、そういう問題にも波及するということがございますので、ここはやはり段階的に進めることが摩擦を少なくするために必要ではないかと、こういうような考え方もございまして、先ほど申しましたような、また御指摘がありましたような計画で現在進めておるわけでございます。  五十六年の計画をとりあえず一〇〇%達成するのが最大の先決でございますので、私どもといたしましては、来年度以降も各種の施設に対する助成の強化あるいは値引き率等についてももう一回洗い直してみるというようなことも考えていきたいと思っておりますし、完全給食との調整の問題につきましても、さらに文部省当局の理解を得るように努力をしてまいりたいというふうに思います。
  77. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 御承知のとおり、アメリカやヨーロッパでは、学校給食について国産品の主食を使えというようなことはかなり徹底されているわけでありますし、それからいま理由として挙げられた施設に金がかかるとか、あるいは用地に金がかかるというような観点は、国家経済というか国家予算の、政府予算の観点から見ましても、六百三十万トン台の過剰米をためて、これを古米にして二兆円も要するような予算を浪費することになりかねない、そういう国民経済的な観点から見ても、学校の米飯給食の施設や用地費の取得なんというのは微々たるものにすぎない。ですから、そういう視点からこの問題をとらえていかなければいけないんじゃないか。  それからもう一つ、教育的な観点から文部省は完全給食を進めるとおっしゃいますけれども、どうも議事録を見たりしていますと、文部省が言っている教育的な観点というのは、親が米飯の弁当を持ってくることをやった場合に弁当を忘れたらどうするかとか、あるいは子供たちが盛りつけをしたり自分の食べ物をさらに盛ったり配ったりするようなことが一つのしつけだと、教育的な要素だと言われますけれども、米飯の弁当を持ってきても副食の盛りつけはあるし運搬はあるわけでありますから、そういう意味での教育的な見地は損なわれてない。親が子供に弁当を渡すことを忘れるなんということはこれは論外であって、そういうような観点から、学校給食を完全給食にするのが目標だという文部省の説明には、どうしても納得がいかないわけでありますね。  ですから、私どもはやはり広い国家的な観点から、あるいは本当にその教育的な見地から見ましても、もう少し学校給食の、五十六年までに完全給食実施校全校において週二日程度というようななまぬるい問題ではなくて、とりあえず毎日米飯の弁当持参にするか、あるいはまた週二日という目標をもっと繰り上げるべきだ。パン業者の問題もありましたけれども、私は、パン業者の問題も、国産品を愛用するという欧米の学校給食の観点から見てもその点は割り切るべきだ。パン業者に対する補償は、六百三十万トンも過剰米を残して二兆円も予算を要するようなことにするならば、パン業者を徐々に補償して転業させるような観点をとってもいいじゃないか。そういう公益的な問題から、少し米飯の学校給食のスピードアップという問題についてさらに努力をしていただきたいと思いますが、この点についていかが考えられますか。
  78. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) ただいまの御意見、私どももそのとおりに考えております。先ほど来申し上げておりますように、文部省の教育的立場と私ども考え立場が、非常に最近は一致する面がふえてはきておりますけれども、御指摘のような点について、まだ一〇〇%の一致に達しておらないという点が、この米飯給食というものを進めるのに何がしかの足を引っ張るような面もなきにしもあらずというふうに思いますので、御指摘の点につきましては、私ども全く同じに考えますので、さらに一層理解を求め協力を要請してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  特に、教育的見地という点では、私どもといたしましては単に米が過剰だから食べてほしいと、学校給食に入れてほしいと、こういうことではなくして、やはりわが国の食糧需給の安定ということ、あるいはまた、栄養政策的な面でも望ましい方向に即しておるわけでございますので、そういうことを児童のうちから理解をしてもらうというようなことは、米飯の学校給食を通じて理解をさせるといいますか、そういうこと自体が学校給食の教育的効果もあるのではないかというようなことも言っておるわけでございますが、それらの点につきまして一層力を入れたいというふうに考えております。
  79. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 まあ学校給食の問題は、私は週二日完全給食をやったとしても十一万四千トンぐらいの問題である。これを毎日完全給食しても二十五万トンということでありますから、六百三十万トン台のこの過剰米に対して、完全にやることは至難であっても、やったとしても二十五万トンにしかならない。ですから、これは決め手にはならないと思います。まあ、確かに子供が学校に弁当を持っていくというようなことになれば、家庭でも御飯を炊きますからその分はふえるかもしれませんけれども、これが過剰米対策の決め手には決してならない。私は、過剰米対策の最大の問題は、やはり米に対する国民の基本認識を変えてかからないと、これは解決しないというふうに思うわけであります。  そこで、まずお伺いいたしたいんでありますが、この米の拡大について農林水産省が現在講じている対策、これをごく簡潔にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  80. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 現在、農林水産省において進めております米の消費拡大対策の主要な項目だけ申し上げてみますと、ただいまお尋ねがございましてお答えした学校給食、これは長期の基本対策だという考えで積極的にさらに進めていきたいということでやっておるわけでございます。  そのほかの対策といたしましては、やはり米の新規用途の開発といいますか、あるいは加工技術の開発によりまして、米食として粒食だけではなくして、加工によります粉食によってとるというようなことも進めていく必要があると。御承知のように、小麦の場合はそのままで食べるよりは全部加工によって食べておると。米はそのまま食べるのが非常においしいがために、逆に加工技術が発達しなかったというような面がございますので、今後、在来の米加工品だけではなしに、新しい加工技術を開発をいたしまして、そういう新規の用途を開拓していくということについて努力する必要があると思っております。これにつきましては、実験用の原料米の無償交付等の対策もやっておるわけでございますが、技術的な指導も含めまして一層促進する必要があると考えております。  それから、一般的な米の重要性についての見直し。これは栄養政策の面と、それから需給政策と両方の面からいっての米の見直し、米食の普及というようなことをPRといいますか、広報宣伝といいますか、浸透させるために各種の対策をやっておりますが、県、一部市町村までそういう関係者による推進協議会のようなものをつくりまして、米祭りとか講演会とか講習会とか、あるいはパンフレットを配布するとかというような各種の事業をやっております。これらも、私どもといたしましては、県段階のようやく形が整ったという段階でございますが、市町村段階にも一部は始めておりますけれども、早急に全国的に拡大をしていきたいというように考えております。また、そういう啓蒙宣伝の一環といたしまして、国なり関係団体を通じましてテレビその他による宣伝もやっておるわけでございます。  それからまた、良質米の生産、流通を促進するということ。味をよくするということが消費の拡大につながることは申すまでもないことでございますので、生産面あるいは食管制度の運用面におきましても、良質米が奨励されるような各般の奨励措置を講じておるわけでございます。生産面だけに限らず、ことしのような場合は単年度でも大豊作であるわけでございますので、例年よりは新年度に入りましてからの新米と古米の混入割合を、去年は新米は四七%ぐらい、全国平均でございますが、来年の春までの数カ月間の平均の混入率は昨年四七%でございましたのを、ことしは七〇%に引き上げるというようなことによりまして、少しでもおいしい米を提供するというようなことも考えておるわけでございます。  さらにまた、現在の流通機構は食管制度のもとにおきまして完全に自由化されておるわけじゃございませんので、各種の登録制度によりまして店舗制限等もあるわけでございます。それら法制に伴うやむを得ない面もございますけれども、やはり販売業者の販売努力といいますか、消費者に対するサービスという点で、他の食品に比べて見劣する面が見られますので、現行の制度の中で競争条件を少しでも入れていくというようなことにつきまして現在検討し、関係業界とも話し合いに入る予定にいたしております。  それら各般の施策をこれまでやっておりますが、今後一層強化する。先ほど御指摘ございましたような過剰米の累積状況でございますので、格段の強化を来年度以降図ってまいりたいということで検討しておるところでございます。
  81. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 いま長官から細かく説明がありましたが、私はやっぱりポイントは、PR、宣伝をしたり各種講習会をやったり、いろいろなことをやられますけれども、国民の基本認識を変える場合に、一つの大きな誤解が米に対して与えられている。たとえば米を食うと非常に脳溢血が多いとか、あるいは米を食うと頭が悪くなるというようなことが、かつてたとえば慶応大学の林繰さんなんかそういうことを言ったわけですね。それから各種統計を見ても、やはり米産県にどうしても脳溢血が多い。私の選挙区の秋田、また隣の山形なんかそのチャンピオンになっておるわけでありますが、どうしてもそういうことが多い。ただ、これを医学的にきちっと解析してみますと、これは非常な誤解である。  たとえば、秋田や山形に脳溢血が多いという大きな原因は、どうしても米産県なるがゆえに農作業はローマ字のUの字を逆さまにした形に一日いっぱいやっている。これは、長官が一時間でも頭を下げて作業したら目まいがすると思うのでありますが、それを生涯やっている。だから、秋田や山形でも、果樹の多い秋田の鹿角とか、あるいは平鹿、山形の東根周辺、果樹の多いところでは驚くほど脳溢血が少ない。これは袋をかけたり、もいだり、天井を向いて作業をやっているということが一つの大きな要素になっておるわけです。それから、東北は青物が少ないわけですから、冬季間の野菜が少ないわけであります。野菜は、血液をアルカリ性にして、血液の粘性をなくして血行をよくして血圧を下げる。これが、冬になると野菜がない。東北人の知恵として、これを塩で蓄えるのがつけものでありますが、この塩がまた血圧に非常によくない。  それから、雄物川、米代川、子吉川、山形の最上川、これは上流に硫黄鉱が多くて川の酸性が非常に高いわけですね。特に、雄物川なんかは世界でも屈指の酸性の高い川だということでありますが、こういう酸性の水を飲むとどういうことになるか、生まれ落ちてから死ぬまで酸性の高い水を飲めば、これはもう血液が酸性になって、血圧が上がって脳溢血になるという循環を繰り返すというようなことがありまして、これがたまたま山形や秋田のような米産県に多いものですから、どうしても米産県に多い脳溢血、これがつまり主食、米を食うと脳溢血になるというふうに置きかわっている誤解がある。私は、米に対する大変なこれは冤罪だというふうに思うんですね。  それから、米を食うと頭が悪くなる——最近、川島四郎さんという方が「まちがい栄養学」という本を書いておりますが、この方は東大の農芸化学を出まして農博になって、食品栄養学に対して十数冊の大きな著書があって、そしていま食糧産業研究所の所長をなさっている。この方が数十名の人を集めて合宿さして、そして世界の主食を食べさしてみると、一番先になくなるのがこの米飯である。つまり、世界の人たちが米飯がおいしいということを立証しているわけですね。この米がおいしいということが、どうしてもお茶づけやみそ汁、たくあんで食べられる。ハンは、これは乾いてまずいものでありますから、バターやチーズをつける、ハムやベーコンをはさむ、そしてスープや牛乳を飲む。こういうことになりますと、これは非常に大きな栄養学上の差異が出てきます。つまり、パンと米との比較では、米の方が総合栄養が非常に高いんでありますが、わずかに頭脳の方に影響する酪酸とビタミンとたん白質が少量パンに多いというだけだと思うんですね。  そこで、パン食の違いと米食の違いが、どうもパンを食うと頭がよくなって米を食うと頭が悪くなるというふうに短絡をしてきた。そこに私は間違いがある。だから、御飯を食べながらパンで食べる副食を食べると、これは栄養学上非常にいいというのがこの川島先生の御指摘であります。  私は、やはりこういうことが米に対する国民の基本認識が非常に誤ってしまっている。つまり、米飯を食べながらパンの副食をとる、そして米を食べても決して脳溢血にはならない、そういうようなことを先ほど長官が言われた各種の宣伝、PRの文句の中にそういう国民の米に対する基本認識を改めさせるような、そういう誤解をやはり根本から解いてやらないと私は米の消費拡大につながらないと思うんですが、その点についての所見をひとつ伺いたいと思います。
  82. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 一番大事な点の御指摘かと思います。基本的なことでございまして、私どももかってございました、米が栄養的に劣るとか健康によくないのだというような俗説が一時かなり広められまして、いまだに一般国民の間には印象として残っておるのではないかというふうに思います。専門家の方の御意見は、栄養学者も医師の方もいまやそういう議論をなさる方はほとんどないと思いますが、一般国民の中にはあの当時の強烈な印象が頭の底に残っているのじゃないか、それが米の消費拡大の支障になっているというふうに私どもも思います。   〔理事大島友治君退席、委員長着席〕 したがいまして、先ほど申しましたPRの中にはそういうことをいろいろ織り込んでやっておりますが、なかなか浸透しない面がございます。  そこで、もう一つ、そういうマイナス面がないのだという、その冤罪を晴らすことと同時に、むしろ日本人の現在の食生活の、穀物とたん白と脂肪の三つが三大要素だと思いますが、そのバランスは国際的に見て最も望ましい水準にあると、割合にあると。むしろ、アメリカとかヨーロッパとか進んだところは脂のとり過ぎ、砂糖のとり過ぎ、動物性たん白のとり過ぎということで、いわゆる成人病がふえるということで、栄養政策として穀物をもっと食えというような政策を現にやっておるわけでございます。  したがいまして、わが国もこれ以上いわゆる西欧化する必要はないということが、専門家の、私受け売りでございますけれどもそういう説がございますので、むしろ積極的に穀物、わが国の場合は米というものを食べることが健康食である、低カロリー健康食であるということを積極的にPRすべきだというふうに考えておりまして、そういうこともいろいろ言っておるわけでございますが、考えてみますと、私ども食糧庁なり、あるいは農林水産省なり、あるいは農業団体なり、あるいは米屋さんが言いますと、どうも手前みそに聞こえるというところがありますので、そういう専門の第三者の方、医師の方あるいは栄養士の方、学者を含めましてそういう方々の御協力を得て、そういう方々から言ってもらうのが一番耳に入りやすいというふうに思いまして、現在関係の団体にお願いをして具体的に、まあラジオの医療講座の中にそういうものを入れていただくとか、しかもシリーズでやっているというようなこともやり、あるいは種々の講演会の際にお話をしていただく、あるいはパンフレットを出していただくということをやり始めております。まだまだ足らないと思いますが、御指摘の点、重々念頭に置きまして、さらに一段と強化をしてまいりたいと思います。
  83. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 私がいま指摘した心配は、実は都市生活者の中だけならいいんだけれども、農家の中にまずそれがあらわれている。「五十三年度の米をめぐる情勢」というのを農協中央会が出しておられますけれども、この調査資料を見ましても、四四%の農家が従来どおり米を食べている。しかし、四三%の農家の人が従来より米を減らしているというような数字がここに出ております。米を食うと脳溢血になるとか、パンを食うと利口になるけれども米を食うと子供がばかになっていくのじゃないかというような心配が、農家の中にもやはり基本的にあるんじゃないか。いま長官がいろいろ言われましたけれども、やはりそういうPRがまだ浸透していない。生産者である農家の半数近くが米を減らしながら、学校給食を一〇〇%米飯にしろとか都市生活者に米を食えと言うことはなかなかむずかしい。やはりそのあたりを変えてかからないと米の基本認識が変わってこないし、膨大な消費拡大につながっていかないと思いますが、その点についてどうお考えですか。
  84. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) ただいまの点も私ども全くそのとおりに思っておるわけでございまして、都市、一般国民に消費の拡大を呼びかけることも必要ではありますけれども、特に農業団体の方々、そういう方々もそういう努力をされておりますけれども、それも必要ではあるけれども、その前に生産農家自身が農村地帯においてみずから米を食糧として大事に取り扱い、減らないような、それを中心とした食生活を続けていくということがまず大事ではないかということも、お話をしておるわけでございます。最近の全般的な米の消費量の減退の中で農村関係がやや減り方が多いと。絶対水準はもちろん高いわけですけれども、そういうような傾向も見られますので、まず自分自身の問題として、自分から消費拡大の先鞭をつけてほしいということをお願いしておるわけでございます。  いまの御指摘がありましたような調査結果によりますと、確かに四十数%の農家が減ってきておると、これは家族数が減るとか、あるいはまた、食生活が変わるとかいろいろありましょうけれども、しかもそれが水田地帯で多いと。また、地域的に見ますと、東北だとか北陸とかいういわゆる米地帯により減り万が大きいと、減らしておるパーセンテージが高いということでは本末転倒ではないかというようなことで、農業団体の方にも内部の努力をお願いをしておるわけで、昨今では農業協同組合を中心といたしまして、米の日を設けるとか、あるいは農協の店舗におきまして米製品を売るとか、あるいは小麦製品を売らないとかいうような各種の努力をされております。一般的な講習だとか啓蒙活動はもちろんやっておられます。それらをさらに一層強化をしていただきたいというふうに思いますし、私どもの普及事業でやっております生活改善事業の中でも、この問題を特に取り入れて重点的に食生活の指導の中に織り込んでやってもらうように、県にもお願いをしておるところでございます。
  85. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 ぜひひとつ、そういう農家そのものに対するPRも十分していただきたいと思うのであります。  次に、私は過剰米に対処していく第二の問題として考えておりますのは、いろいろな文献によりますと、毎年食糧がなくて死んでいく人たちがこの地球の上では数百万数えられるというふうに言われております。そういう食糧飢餓国に対して、日本の米は六百三十万トン台も余ってきてしまっている。前の鈴木大臣にもお願いしましたし、中川農林水産大臣にもお願いしておるわけでありますが、去年の十二月、インドネシアに十万トン持っていかれた。これは私は、大変意味のあることだと思っておるのであります。従来、国会で論争された余った米を外国へ持っていくことについて、いろいろ総理や歴代農林大臣の答弁を整理してみますと、幾つかの。八ターンがあります。  一つは、まず嗜好が合わない。大体飢餓国は粘性の米は余り好まない、指で食うわけでありますから、粘るものは余りよくないというようなことが言われております。それから、流通機構が悪い。船で運んでいくと五、六十度の温度になりますから、そこでまずおかしくなる。それで、今度は港へ積み上げてから末端に至るまでの流通機構が非常に悪くて、これが変質してしまう。それから、第三者の国、たとえばタイ国なんかは米しかできない国でありますが、こういう国が、日本が善意で持っていったこの食糧、これについてタイ国の米が売れなくなって、日本の善意が第三国に非常に外交上大きな影響を持っている。あるいは食糧をただでくれてやると、その次は日本は経済侵略を考えるんじゃないかというようなことが憂慮される。大体いままでの総理や歴代の大臣の答弁を整理すると、そういうことに要約されるわけであります。  しかし、去年の十二月インドネシアに持っていった米では、そういう粘性の問題も余り問題にされない、米の変質もなかったというようなことがあるようでありますけれども、私は、米の基本認識を変えて消費を拡大することのほかに、余ってしまった米を、数百万も餓死者が出るこういう国に持っていくことが、やはり大きな問題であると思うのでありますが、その外国に持っていくことができない理由があれば、ひとつ御指摘いただきたいと思います。
  86. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 援助を含めまして、輸出のために国内でこれから生産するということには非常に問題があると思いますが、現に過剰で累積しておるもの、いずれ何らかの方法で処分しなければいけないわけでございますので、海外に援助、種々の援助の形ございますけれども、援助という形で出せるものならば、人道的な見地からも望ましいことですし、私どもの過剰米の処理としても望ましいことでございますので、積極的に対応すべきものだというふうに考えておるわけでございます。  問題は、いま三点ですか、大きく御指摘になりましたこと、それぞれございましたけれども、特に、最後にお触れになりましたタイその他の伝統的な輸出国の邪魔をするといいますか、そういうことになると、わが国の外交政策全体からして必ずしも望ましくないというような配慮が必要であることはこれも当然でございますが、流通機構の問題もございますし、それからまた嗜好につきましては、これは国によりまして、必ずしも日本の米が不向きだということはございませんし、特に、餓死寸前とか非常な災害を受けたという国は、品質を必ずしも選ばないということもございますので、それらは絶対的な障害ではないというふうに考えております。  実は、もう一つ大きな問題は、何といいましても国際価格と国内価格の差で、海外に無償援助の場合であれ、あるいは有償で何らかの償還条件を有利にしながら出す場合であれ、国際価格と国内価格の差はこれは損失になります。食糧管理特別会計の損失になりまして、これは特別会計の健全な運用のためには、その年度に直ちに補てんしなければいけないということで一般会計の負担にはね返ってくるわけでございます。そういう点がございますので、余っているものはできるだけ早く出せるだけ出せばいいとばかり言えない面がございまして、国の財政事情全体もにらみながら、逐次やっていくということが必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。  最近、ベトナム等から、大災害、大水害のために援助をしてほしいということを各国に要請をしてきておりますし、わが国にも来ております。私どもといたしましては、財政負担をにらむことは当然でございますけれども、できるだけ協力するということで前向きに検討しておりますが、相手国が実際にどのような数量を、いつどのような方法で希望するのかという点について現在種々調査といいますか、問い合わせをいたしておりまして、まだ最終的な要請が来ておりませんので、それを待って検討してまいりたいというふうに考えております。
  87. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 これは大臣にちょっとお伺いしますが、いまいろいろ指摘されました日本米の生産者米価はタイ国米の国際建て値の五倍近いわけでありますから、これを売買するというわけにいきませんので、これはどうしても援助するということでなければだめだと思うんであります。援助しますと、食管会計に穴があいてしまって食管会計が倒れるようなことになるという説明では、これはもう一歩も前進しない。私は、やはり米が余っているから出すということのほかに、まあ去年十二月にインドネシアに十万トン米を送った。これは非常に大きな量でありますけれども、これを換算するとたった七十億にしかならない国際援助だろうと思うんであります。ですから、これを拡大していくためには、やはり外務省とかっちり相談して、大きく外国に対する経済援助の枠の中で議論すべきであって、持っていったらすぐ食管会計に穴があいてしまってだめだというようなことでは、外国に米を持っていく問題は一向に解決しない。  海外援助の枠組みの中に組み入れて、食管会計には穴をあけないような、どうせいま海外援助はたくさんやっておるわけでありますから、できることであれば金だとかほかのもので渡すのじゃなくて、あり余っている米で援助するというようなことを考えていただく、そういうことをぜひひとつ農林水産大臣から強く要請していただきたい。特に、過剰米を買い上げて保管しますと、トン当たり三十万円ぐらいかかる。これをあり余らして家畜の飼料にしますと、三万円ぐらいにしか売れない。運搬費をかけたらどうせゼロであります。それならば、経済援助の枠の中に入れてこの米を持っていく。そのしわ寄せが、食管会計が赤字になるというような財政の仕組みにしてしまうとこれは一歩も前進しないわけでありますから、その問題をぜひ乗り越えていただきたい、これに対する大臣の御所見をひとつ伺いたいと思うんです。
  88. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) きわめて妥当な御指摘ではございますが、なかなか大変なのです。と申しますのは、仮にベトナムがいま二百万トン欲しいと言っているわけです。二百万トン欲しいということになると、これは日本の米の値段でいきますと六千億になるわけです。トン三十万円ですから。ところが、インドネシアの値段でいくと千二百億だ、四千八百億円損しなければベトナムの要請にこたえられない。この間、ベトナムに対して緊急援助を外務省が一億円やった。一億円やって大変なものだといばるぐらいの外務省のふところに、四千八百億をどうして持ってくるのか。外務省予算が、恐らく三千億か四千億ぐらいのものじゃないかと思うのです。外務省の予算を一つか二つ持ってこないと百万トンの米が処理できないという、その予算を外務省が組んでくれるというなら本当に助かるのです。これは。現実問題として、外務省がそれだけの予算を持ってくれるかというと、くれない。そうすると、やっぱり農林水産省の食管で持つよりしようがないということになってくる。  農林水産省で持つということになると、いま食管の赤字が山ほどある、その上に生産調整、怒られながら金を出して二千億、三千億と使っている。そのほかに今度は、余剰米処理を仮に五年間でやっても、四千八百億だと九百六十億。農林水産省の予算、漁港に金くれ、土地改良に金くれという段階でそういうけた外れの農林水産省の予算があるのかと、こういうことで、どこへいっても大変なのです。本当に大変なことで、そこで無理ではあるけれども生産調整をお願いする、生産調査をすると怒られるというので、しかしやってもらわなければいかぬ。幸い農家の皆さんに御協力いただいたものですから、単年度では需給のバランスがとれるようになってきた。  しかし、これも先ほど来、米の消費拡大の話がありましたが、麦に米がかわっているなら麦を抑えるという仕組みもあるのです。ハンにかわったとか、うどんにかわったというよりは、むしろ国民生活が豊かになったのでしょう、おかずの量が多くなっちゃって米がおかずになってしまったんですね、大体、言ってみれば。中川農林水産大臣が来たからきょうは米食でやっておりますなんと言うから、あけてみたら、弁当の中につけものより小さいようなお米が入っている。それでもお米だ。いまや主食じゃなくなっちゃったのです。ヨーロッパでは野菜に入っているそうですか、野菜の一部というようなぐらい消費については先々非常に暗い。ところが、米が余ったらどうしようもないという、本当に私は大臣として、これは進むも引くもとどまるも大変というのが現状でして、しかしそうかといって外務省になするわけにもいかない。やはり何か長期的なもので、農林水産省の予算の中で処分していく仕組みをこれから大蔵省とも考えて、一遍にこれをやれといってもできませんから、長い意味で財政のしりぬぐいをしていく。そして、とりあえずは六百万トンになるでしょう、来年になれば。これを処理する。二百万トンやっても大変ですが、六百万トンやると、それの三倍ということですから天文学的数字になってくるわけなのですが、天文学的数字といって逃げられませんから、何とかこれはこれとしてやっていく。その場合、外国に出せるものは外国に出す仕組みを十分配慮してまいりたいと思う。  ただ、余りやりますと、さっき言ったタイのような輸出国から非常に悪感情をもってやられるということでございますので、その辺のところも配慮しながら、あるいは嗜好、流通等の問題もきめ細かく配慮してそういった対応をしていきたい。いずれにしても、過剰米というものは恐ろしいものであると。私ども米を生産する勉強はしてまいりましたが、余った米をどう処理するかについての学問もありませんし、いろいろ無責任に、中川さん、そんなもの生活保護の人に食わせたらどうかと言うのですが、そこへ食わせれば、胃袋が倍あるわけじゃないのですから、いい米が食わないで余ってしまうだけでございますし、なかなか容易じゃない。悩みを訴えつつ何とか乗り越えていきたい、こう思う次第でございます。
  89. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 大臣のお話で苦衷のほどはわかるのでありますが、こういうむずかしいときだからこそ有能な中川大臣が出ているわけでありますから、余り弱音を吐かないでひとつがんばっていただきたいと思うんであります。  しかも、六百万トン台の過剰米だとこの解消に二兆円も必要なわけでありますから、生産調整百七十万トンのあらしの中でベトナムが二百万トンも欲しいということであれば、これは一年分の生産調整が要らなくなる数字でありますから、ぜひこれは二兆円の問題を抱えながら、ひとつ日本の外交政策の中に一環として組み入れていただいて、強力にベトナムの二百万トンの米を持っていく問題について活路を見出していただきたい。特に要請をしておきたいと思うんであります。  また、われわれ国会議員団の中に、十名ほど、こういうベトナムやインドネシアやバングラデシュの方に米を持っていくことに何が隘路があるか、あるいは日本の米を援助することによってタイ国の感情を逆なでするとすればどういう緩和策があるか、そういう問題についてひとつ調査に行こうじゃないかという声が非常に出ているわけであります。できれば私は、これは非常に意味のあることでありますから、農林水産省も外務省も入っていただいてこういうまじめな調査を進めるべきだと思いますが、大臣はどうお考えですか。
  90. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 二百万トンと言われているのですが、その後調査をいたしてみますと、大体ほかの国々から百万トンぐらいはできそうだと、それは社会主義国ですか。そのほかの国からかなり入りそうで、実質はどれぐらいか、二百万トンというようなものじゃなくてかなり少ないものではないかなと、いまそれを打ち合わせをいたしております。そういうことで、まず外交ルートではやりますが、さらに現地に乗り込んでもっときめ細かく、あるいは短期的なものじゃなくて、長期的な方向がどうなるかというようなことも含めて調査されることは結構なことですし、農林水産省としてもできるだけの御協力はいたしたいと存じます。
  91. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 私は、過剰米対策として頭のいい人が計算しますと一日一人軽く一握り、御飯にしますとお茶わん一杯食べると、六百万トンの問題は一年間で解消できる問題だそうでありますから、先ほど来長官に質問したように、国民の米に対する基本認識を抜本から変えていただきたい、無用な誤解についてはやはり反復してPRしていただきたい。そのことが一つ。  それから、いまのように過剰米を飢餓国に持っていく、これは余ったから持っていって食管会計に穴をあけるという短絡な発想ではなくて、外交政策の一環として、どうせこの六百万トンの米を解消するに二兆円かかるわけでありますから、そういう大きな枠の中で解決する問題ではないかということが一点。  そして、時間がありませんからほかの問題を割愛して最後に一つだけ申し上げたいと思うのでありますが、いま日本の市街化区域、これは都市計画法によって農家の皆さんも同意をして決めた市街化区域の中に水田が十三万三千ヘクタールあります。そして、それから生産される米の量は五十七万トンと言われております。いま、一方において秋田や山形のような米の単作地帯で生産調整を受けながら、大都市の近郊で、しかも都市計画法上十年以内に市街化しなければいけない区域でなかなか農地を手放さない、そして、そういう水田が十三万三千ヘクタールもあって六十万トン近い米が生産されて政府がこれを買い上げている、これは大変な大きな私は問題だと思うんであります。いつかもこの点について質問しましたところ、米をつくることを制限するわけにはいかないという答弁がありました。  しかし、よく考えてみますと、農林水産省の予算の中でこういう市街化区域には現実には生産基盤の整備費等は一切つけてない、もうすでにそういうふうに区別して取り扱っている地域であります。こういう東京や大阪のような地域、たとえば東京なんかは、大根とかキャベツとか白菜のような主要野菜六品目をとってみても自給率四・一%、大阪は七・一%であって、大部分を遠隔地から運んできてこれが物価値上げの原因になったりいたします。こういう大都市で不足をした自給率の低い野菜をつくらないで米をつくっている、そして、山形や秋田のような米産県が米の生産調整を受けるという矛盾はどうしても許せない。  ですから、私は、大都市における市街化区域に宅地並み課税を厳格に課す、そして、早くこれを都市計画法で定めたとおり市街化させる。しかも、それがどうしても困難である場合は、せめてこういう大都市近郊で、浦和の駅前でオカボをつくっているなんというような変なことはやめて、そしてそれを政府が買い上げなければいけないというようなことはやめて、ぜひひとつ、こういう大都市近郊の農家においては水田やオカボはつくらせない、そして四%から七%という低い自給率の野菜をつくらせる。それができないわけはないと思うのですね。現実に農林水産省の予算の中で、農林水産省関係公共事業費は市街化区域には現実につけてないわけでありますから、農地としてどうしても保存するならば、せめて米はつくらせないというような思い切った措置ができないものか、最後に大臣にそれを伺いたいと思うんであります。そうしますと、約六十万トンの米がつくられなくなるということを考えて、ひとつ大臣から最後の答弁をお願いしたいと思います。
  92. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘の点は多くの人から聞いておりますし、当然の意見だろうと思うのでございます。  そこで、農林水産省としてやっていることは二つ、一つは、市街化区域の多い地帯にはたくさんの転換数量を消化していただく要素の中に一つ取り入れておるということ。それから、転作のための助成をいろいろやっておりますものを、市街化区域の中に重点的に配分していくということまではやっております。しかし、これは御指摘のように、一切これをやめさせるということまでできるかどうか。実は逆に言うと、いままだ開田が行われているわけなんですね。開田はこれは法律によって禁止したらどうか、それぐらいが当然だろうということなのですが、それをやろうとすると、これは憲法違反の疑いがあると。私が食いたいものを、私が処理する米を何で制限するのですか、個人の自由を侵害するという意見があって、これも立法化にはなかなかできない。ましてや、つくっている水田、市街化区域指定したとはいえ、米をつくってはならぬということを指導はできるけれども、法律上できるかどうか。  まあ私は、国会等がお許しをいただくならば、市街化区域の中においては米はつくってはならないという法律でもしませんと、また法律を無視してやりますと、国会でむちゃくちゃに怒られて、作付転換ですら法律違反だと言って怒られている今日の国会状況でできるかどうか、ひとつ今後十分その辺のところを詰めて、趣旨はよくわかりますから、そういう方向に誘導するように最善を尽くしてみたいと存じます。
  93. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 ちょっと一つだけ。  同じ法律でそこはおおむね十年内に市街化しろということになっているわけですから、農林水産省も生産基盤費やなんかつけていないわけですね。すでにもう法律上平等じゃないわけです。で、私は米をつくらせるなということのほかに、つくっても買い上げるなということを要請して、質問を終わりたいと思います。
  94. 原田立

    ○原田立君 過剰米対策とミカンの問題と、あと若干の問題をやろうと思っておりましたが、ただいまも質問がありましたが、非常に重要な問題でありますので、この問題あえてダブるとは思いますが、お伺いしたいと思います。  ことしの秋は、水田利用再編対策の第一年目の収穫を迎えることになったわけでありますが、当初の予想では、このような大規模な減反が果たして可能なのか非常に不安があったところでありますが、実際の減反目標面積の一一一%の達成が確実となり、ほっとしたところであります。これも、すべて生産農家の血のにじむような努力の結果であり、一方、ことしの収穫は十アール当たりの収量は史上最高、収穫高も千三百五十八万トンと推定されているわけでありますが、このような大豊作を喜べないとは、全くおかしな社会を目指していると言わざるを得ない。十月末の古米の在庫量は五百三十万トン、来年の十月末には六百万トンをオーバーするのは確実とされておりますが、現在、政府のつかんでいる生産量、在庫量など、現在の実態と見通しについてまずお伺いします。
  95. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) ことしの稲作の作況から算出できます米の生産量は千二百五十八万トンというのを、先般農林水産省の統計情報部から公表をしたわけでございます。最終幾らになるかはまだ確定してはおりませんで、十月十五日現在の数字でございます。  そこで、もう一つお尋ねでございます十月末から十一月一日にかけまして米の年度が新年度にかわるわけでございます。その段階におきます古米、したがって五十二年産米を含めました古米の持ち越し量がどれくらいであるかという御趣旨のお尋ねかと思いますが、私どもかねて夏の初めごろ生産者米価の米審をやりましたころは、五百三十万トン前後ではないかというような推定をいたしておりましたが、その後、夏の期間、御承知のように異例の酷暑が続いたわけでございまして、ああいう暑さが続きますと、従来もそうでございますが、米だとか、あるいはパンとかいう、そういう主食的なものが消費がかなり減退をいたします。また、ことしの作柄は先ほど言いましたように非常にいいということもございまして、十日ばかり出荷時期が平均的に繰り上がっております。  したがいまして、自主流通米なり、あるいは一部自由米等の出回りも繰り上がっておると、十月までの間に例年以上によけい出回っておるということもございますし、先ほどもお答えしましたことにも関連いたしますけれども、十一月の新年度に入りましてから新米の売却率を昨年よりかなりよくいたしました。そういうこともございまして、卸業者が政府から買うのを前年度中  十月までの間をやや手控えたと、十一月になればいいものがたくさん買えるということもございますし、それら各種の要因が重なりまして、政府米の売れ行きが予想より悪かったということがございまして、最終的な集計は現在やっておりますので確たる数字はまだ申し上げられませんが、私どもの見通しでは五百七十万トン前後になるのではないかというふうに、現段階として、見ておるわけでございます。
  96. 原田立

    ○原田立君 ことし生産される米の量は、当初予定の千百七十万トンを大幅に上回る千二百五十八万トンの収穫が見込まれているわけでありますが、一方、消費量について見ると、米の消費拡大PR、学校給食の米飯導入拡大など、いろいろとその対策を試みているんでありますが、実際には対前年比二%前後の減り方だったものが、ことしは三%に落ち込むのではないかとの推定がなされております。このため、ことしの消費量を、当初千百六十万トンから消費拡大の努力によって十万トンアップの千百七十万トンを考えていたようでありますが、実際には十万トンの消費拡大どころか、消費の減退から逆に二十万トン以上の減少との見通しであります。  その結果、政府の古米の在庫は来年の十月末には、ただいまは五百七十万トンと言われましたけれども、六百万トン以上となるのではないかと、こう言われているわけでありますが、適正在庫量二百万トンを引いた残り約四百万トンは完全なる過剰米となり、ますます財政を圧迫する結果を招いているわけであります。で、この四百万トン以上に及ぶ過剰米の処理対策をどうするつもりか、具体的にお伺いします。
  97. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) ただいま御指摘がございましたような数字に近い見通しを、私どもも持っておるわけでございます。ごく最近の消費量はどうなっているか、需要量はどうなっているかということにつきましては、現在正確な数字として把握いたしておりますのが五十一会計年度の数字だけでございます。近く五十二会計年度、と言いますとことしの三月までの数字がまとまるのではないかというふうでございますので、ごく最近の数字はいずれも見込みで申し上げざるを得ないわけでございます。  そこで、先ほど申しましたように、今年の十月末から十一月にかけての古米の持ち越し量が五百七十万トン前後になるのではないかと申し上げたわけでございますが、来年のことは、これから一カ年間始まるわけでございますので、今後一年間の需要の見通しがどうなるか、これは政策努力も加えるわけでございますので、どうなるか。また、ことしの産米を千二百五十八万トンと申しましたけれど、これは最終的な数字でございませんのでそれがどうなるかということ、それからすた、五十四年の米の作柄がどうなるかということで、先ほどもちょっと申しましたけれども、作がいいときと悪いときとその見込みでございますが、それによって米の出回り量も変わってきますので、それらによって影響を受けるところが大きいわけでございますので、現段階で来年の十月末の古米の持ち越し量が何万トンだということを申し上げるには、時期が尚早といいますか早過ぎると思いますけれども、まあいまおっしゃいました四百万トンをかなり超えるということは考えられるところでございます。  そこで、これらの過剰米についてどのように処理するかと、それから御指摘ございましたように、二百万トンの計画持ち越しを引いたものが過剰米ということになるわけでございますが、それらの処理の仕方につきましては、持っておりますれば金利、倉敷等の保管経費がかかるわけでございますので、将来主食として売却の見込みのないものについてはできるだけ早く処分すべきだという考えもございますが、他方また、これは財政負担にもつながる問題でございますので、一気にすべて片づけてしまうというわけにもいかない面もございますので、それら両方にらみながら現在検討しておるわけでございますが、方法といたしましては、前回と同様国内の加工原料用が一つと、先ほど来お話の出ております海外への援助を含めた輸出、三番目には家畜の飼料にするということでございますが、それぞれ現在の市況のもとにおきましては単位当たりの損の仕方が違います。飼料にするのが一番損が大きいと、加工用に回すのが一審損が少なくて済むということもございます。しかし、それぞれ受け入れ体制といいますか、用途に振り向けるといいましても、こなせなければ実行できないわけでございます。それらも考えながら、現在検討しております。  もう一つは、処理の方法といたしまして何年間で処理するかと、それから短期間にやるのか、かなりの期間を費やして処分をしていくのか、あるいは損失の補てんの仕方をどのようにしていくかというようなこと等、現在検討をしておるところでございます。
  98. 原田立

    ○原田立君 いま長官の言われたようなことで、もう少し具体的な計画はもう立っていますか。
  99. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 私どもといたしましては、いま申しましたように検討を進めておるところでございまして、最終的にこのような計画で、このような経費の予定をしながら処分をしていくというところまでの結論は得ておりません。
  100. 原田立

    ○原田立君 やっぱり最初はそういうふうなところから始まるんだろうと思いますけれども、いつごろまでにじゃはっきりするんですか。
  101. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) まあ個々の処理の問題につきましては、たとえば先ほどベトナムの話が出ておりましたけれども、ベトナムの話が具体化すればその時点でその問題について方針を決めていくということは必要かと思いますが、全体の処理の計画につきましては、私どもといたしましては、来年度予算編成までに結論を得て、必要な部分は予算化をするというスケジュールを考えております。
  102. 原田立

    ○原田立君 先ほどの三つの項目のことをやるとすると、年間の、項目別処理量はどのぐらいになりますか。
  103. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) その点はいま検討を進めておるわけでございますので、現段階でどのような用途に何万トンというところまでは結論を得ておりません。
  104. 原田立

    ○原田立君 結局、具体的なことを聞くと、何にもやってないみたいなんですよ。ただ項目だけぱあっと打ち出しただけで、あとは中身は何にもありませんね。それじゃ長官、無責任ですよ。いまの話では、来年度予算の編成時で結論が得られるというような話だったけれども、それにしてもちょっと遅いような感じがする。大臣、もう少ししっかりしなきゃいけないと思うんですが、その点どうですか。
  105. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 早くしたいのですけれども、二つ問題があるのです。  予算、財政上の見通しがなくて数字をつくろうと言っても、これはつくれないのです。何ぼ怒られても、それからもう一つは、過剰米があるということはよくないことではあるのですが、やはり農家の皆さん方にも認識をしていただきませんと、過剰米はなくなったのだからまた米つくれというような空気になってきても困る。  それやこれや勘案をして慎重にやっているところであって、特に財政の上見通しがなくて何万トンと軽々には言えないというところから、予算の編成の際に全体的な問題と、もう一つは単年度の問題を両面を決めると、こういうことになるの、だろうと思います。
  106. 原田立

    ○原田立君 大臣は、五十四米穀年度の政府売却米の新米混入比率を平均して八五%に引き上げる旨の発表をしておりますけれども、本当に米離れに少しでも歯どめをかけるように本気で考えるならば、一〇〇%新米を売るようなそういう積極的な姿勢があってしかるべきではないか。おいしいお米を少しでも多く食べてもらい、そうして備蓄用の二百万トンを除いた他の古米をできるだけ早く処理すると、こういうふうな処置でなければならないと思うんですが、いかがですか。
  107. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私は、思想としては一〇〇%というもので指示をいたしたわけでございます。それに対して技術的な問題があって八十何%になるということで、技術的なところは事務当局に答弁させます。
  108. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 先ほどもお答えいたしましたように、十一月から来年の春、五月までの間に政府が売却いたすものにつきまして七、三ということで新米を七〇%に引き上げた、昨年に比べますとかなり大幅な引き上げをしたわけでございます。  これを全部新米でというようなお尋ねでございますけれども、これは現在収穫は地域によってもう終わっているところもございますけれども、西日本の方はまだ終わっておりません。したがいまして、米の年度は全国一律でございますので十一月から新年度に入りますけれども、西の方ではまだ収穫がいま最盛期といいますか、終わっていないところが多いわけでございますので、これまでもそうでございますが、一気に十一月一日から全部新米に切りかえるということは需給操作上不可能なことでございます。したがいまして、需給操作上可能なことも考えて、先ほどのような新米比率に引き上げたわけでございます。これは本来、二百万トンの古米の持ち越しを備蓄の意味も含めてやるということにいたしますと、それがうまく回転していくためには、新年度に百七十万トンぐらい売っていかなければいけないというようなことになるわけでございますけれども、ことしのような連年の豊作というようなときには、そのような考えは一時的にやめまして新米をふやしていくというような措置を講じたわけでございます。
  109. 原田立

    ○原田立君 いま大臣は一〇〇%混入という指示を出したと、ところが技術的には八五%というふうに事務当局はしたと。そうすると、大臣考え長官考えと違っているわけですね。おかしいと思いませんか。
  110. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 違ってないのです。思想は新しいものを一〇〇%入れる思想でやるのですが、実は十月以降といえども新米のとれない、収穫の終わらない地域が相当あるわけです。ですから、新米でないものを入れざるを得ないので入っておるということでございまして、一〇〇%の思想を受けてやった結果そういうことになったということで、決して考え方は違っておらないわけでございます。
  111. 原田立

    ○原田立君 農林水産省内部では、米の需給見通しとして現在の水田利用再編対策を三カ年実施し、三カ年以後についてもさらに減反を進めたとしても、需要の後退等を考えると、五年後には一千万トン以上の大台に在庫量がふくれ上がるのではないかという試算が行われているやに聞いているわけでありますけれども、「農産物の需要と生産の長期見通し」では、昭和六十年の生産量は千二百十一万トンとなっておりますが、一方、需要面を見ると、昨年に比べて二%から三%の減少が見込まれ、米離れは一層進むのではないかとの予想がもっぱらであります。こういう点からも、千二百万トン以上の消費は望めなくなるのではないか。このような点からも、六十年見通しを抜本的に見直し、現実にマッチした需給体制の確立が必要なのではないか。その上に立っての諸施策がなければならないと、こう思うんでありますけれども、いかがですか。
  112. 松本作衛

    説明員(松本作衛君) ただいま御指摘がありました六十年度の長期見通しにつきましては、御指摘がありますような米の問題を初めといたしまして、その他の農産物につきましてもその後の事情の変化が出ておる実態にございます。しかし、この計画をその都度都度によってみだりに変えるということもいかがかという点もございますが、それらも勘案いたしまして、将来の方向を見定めていくために現在検討を進めておるところでございます。
  113. 原田立

    ○原田立君 六十年の見通しを抜本的に見直ししたらどうかという提案に対して、いま検討していると言うんですけれども、どんなふうな方向にいま進んでいるのですか。
  114. 松本作衛

    説明員(松本作衛君) ただいま申しましたように、六十年度の見通しの段階に比べまして需要の全体をどう見るかという問題がございます。この点につきましては、国の経済の伸び全体がどのようになり、それに基づいて消費水準なり食生活の水準がどのように変わってくるかという全体の問題がございまして、この点につきましては経済計画改定作業も進めておりますので、それとの関係も出てくるという点がございます。それから、その他の農産物個別につきまして、米、ミカン等が過剰である等の変化もございますし、その他の農産物の需要供給の関係が変わってきておるというような事情もございますので、そのような内容も踏まえまして将来の方向を固めていきたいということで検討をしておるところでございます。
  115. 原田立

    ○原田立君 お伺いしますけれども大臣、六十年ごろには一体在庫量はどのぐらいになりそうだという見当をつけているんですか。
  116. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) とりあえずことしから三年間百七十万トンの生産調整に御協力をいただくということであれば、そしてまた、その後も続けていけば在庫量はふえない、そしてむしろ余っておるものは、その間といいますか、かなり時間をかけてバランスをとっていきたい、こういう方向でやっておるわけでございます。
  117. 原田立

    ○原田立君 現在よりもふえる心配はありませんか。
  118. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 六十年の見通しにおきまして、ただいま大臣が申しましたように、在庫を過剰部分は処理した上で適正在庫に持っていくということでございますので、現段階考え方といたしましては二百万トンの古米の持ち越しが適正であるということでございますので、そのような在庫を目標にして、それが達成されるように生産の調整あるいはまた消費の拡大に努力をしていくと、こういうふうになるわけでございます。
  119. 原田立

    ○原田立君 よくわからないですね。要するに現在五百七十万トンですね、それがまた来年の需給の問題やなんかで六百三十万トンぐらいになるだろうと、こう言われていますがね。それで、だんだんだんだん在庫量がふえるおそれがあるんじゃないか。先ほど大臣はふえないと、こう言っておるけれども、ふえつつあるのが現状ですからね。それで、ある一部の人の意見を聞いてみると、一千万トン台に六十年代には入るんじゃないかと、こういう心配があるわけです。そんなことはありませんかと。  それと、それは前段の話で、本当はもっともっと厳しい生産調整を農民にまた押しつけるんじゃないかと、こういう心配をするわけなんです。そっちの方についてはそんなことがあるのかないのか、どうですか。
  120. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 黙っておけば千万トンになるだろう、そこで、千万トンになったら困るから百七十万トンとりあえず三年間やってみましょうと、こういうことなのです。ただし、ことしは本当はふえないはずだったのですが、天候がよ過ぎちゃって八十万トンふえてしまったと、理論的には天候さえよくなければまあまあ在庫量はふえなかったと、こういうことなのです。じゃ、来年はどうするのかと言うから、来年は三年計画の二年目としてはこの仕組みは変えないと、さすれば来年度はふえないで済むであろうと。その後どうなるかということになると、その後消費の方向や、あるいは生産の意欲等々を勘案して、もしまだふえるという仕組みであれば、やはりこれは生産調整強化しなきゃいかぬという時期が来るかもしれません。  消費のない生産を続けるというようなことはできませんし、在庫した場合の国家の損失というのは先ほど申し上げたとおりでございますから、いずれにしても在庫はふやさないと、手持ちはそんなに持たないという方向で進めていくということでございます。そのようなことのないように、消費が拡大をされてこれ以上の強度の生産調整がないということを、神に祈るつもりでこいねがっておるわけでございます。
  121. 原田立

    ○原田立君 先ほどベトナムの話がありましたけれども、要するに救援米の問題、いろいろと大臣立場での予算の問題等のことについて話がありましたけれども、一億円日本政府は援助したからそれでもういいんだというふうな決め方は非常に安易な考え方ではないかと、こう私思うんです。で、実はもう少し具体的な問題としては、岩手県では農家一戸当たり二キロを拠出し百六十トンを送るとか、あるいは岐阜県の農協青年部が同じような運動を進めているとか、こういうようなことを聞いているわけでありますが、もっと政府として積極的な応援の施策を講ずべきである、救援米等々のことを講ずべきであると思いますが、いかがですか。
  122. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 一億円やっただけで済ませようというのじゃなくて、外務大臣からも食糧援助について研究してもらいたいと、御協力願いたいということがありましたので、事務当局は外務省と連絡をとりながら、ベトナムの事情はどうなっておるのか、ベトナムの要請はどうなのか、こういうことで進めておるわけでございます。そんなことをやったら問に合わぬのじゃないかという意味も含めての気持ちがあったようですが、年間を通じて二百万トン足りないのであって、いまとりあえず食うものがなくて困っているという事情でもなさそうでございますから、そういった時期の問題も十分頭に置きながらできるだけやりたいという、非常に前向きにやっておるわけでございます。
  123. 原田立

    ○原田立君 大臣の認識は少しなまぬるいんじゃないかと思うんでありますけれども、これは報道によるところでありますから、実際にベトナムへ行って聞いたわけではありません。だけれども報道によれば、ベトナムでは今後六カ月間に穀物三十万トンの緊急援助を強く訴えておる、そういうふうなことでありますから、財政的に問題があり検討中、あるいは外務省でやるだろうじゃなくて、もっと農林水産省としてしっかりした施策を、新米を含めて送るようなことも考えるべきではないでしょうか。
  124. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) わが方は一生懸命やっているのです。むしろベトナム側から具体的にこうしてほしいという内容が出てこないところに問題があるのであって、わが方が怠けたり、あるいは非常事態の認識が足りないのではないということでございますから、向こうから出た案がありますればそれに対応したいということで、鋭意むしろこちらは受けざらで待っていると、こういう感じでございます。
  125. 原田立

    ○原田立君 何かあんまりはっきりしないですね。ところで具体的な問題として、岩手県の農協では船積みや海上輸送費は相手国に負担してほしい、ベトナム側では日本米の精米機がないのでそういうのが欲しい、こういうような具体的問題が提出されたやに聞いておりますけれども、そういう点は聞いていませんか。
  126. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 詳細には聞いておりませんけれども、農協中央会が中心になりまして、岩手県の農家からの救援米といいますか、そういうものを集めたいということで食管法上の取り扱いについて照会がありまして、私どもといたしましては、そういうようなことを民間としておやりになることは結構なことでもあるので、食管法上のいろいろな規制があるけれども、それは手続をとっていただければ承認をするということで出せるようにいたしますと、こういうお話をしたことがございます。  具体的に、船をどうするかとか、あるいは精米をどうするかというような問題については、いま向こうともいろいろお話をされておるようでございますので、具体的に農林水産省に対してどのような援助をしてくれというような話は来ておりません。
  127. 原田立

    ○原田立君 船積みや海上輸送費はベトナムで持ってほしいと、こう言っていると、ベトナム側では日本米の精米機がほしいと言っていると、聞いていませんか。
  128. 澤邊守

    説明員(澤邊守君) 私どもとしては、具体的にそういう要請を聞いておりません。想定されることといたしましては、確かに精米施設が向こうは不十分ですから、こちらで精米をして持っていった方がいいのじゃないかと、こういうふうには考えられますけれども、具体的にいま岩手県等で救援米を集めて向こうに援助するという際の問題としては、私自身はまだ聞いておりません。
  129. 原田立

    ○原田立君 大臣、こういうふうな要請が来た場合に、積極的にこれを取り入れて、受け入れて実施していく、そういうお考えはありますか。
  130. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 具体的にございますれば、相談には乗りたいと思います。ただ、こういったものは外務省がやるべきものなのか、農林水産省がやるべき問題もありますけれども、相談には十分乗りたいと存じます。
  131. 原田立

    ○原田立君 では、減反問題はこのぐらいにしまして、次に減船補償問題について若干お伺いしたいと思うんであります。  実は十月の二十二日、それから二十五日それから十一月の六日、各紙に「二〇〇カイリ補償金不正山分け」とか、「減船補償金また疑惑」とかいろいろなことが報道されているわけでありますけれども、本格的な二百海里時代に入った昨年の日ソ漁業交渉の結果、北洋で操業している日本漁船がその漁場を失う結果となり、そのため、国が救済策として減船に対して総額七百九十億円余りに上る補償を行ったんでありますが、それが現在に至って、先ほども申し上げましたように、減船補償を行った中で、沖合い底びき網漁業とエビかご漁業の二業種の中に正当な補償がなされていないとの疑惑が持たれたと、その実態が指摘された報道がなされているわけでありますが、その具体的な実態の内容を示してもらいたい。
  132. 森整治

    説明員森整治君) まず、エビかごの問題でございますが、御指摘のように、昨年の五月の日ソの漁業交渉の結果、わが国の漁船が大幅な減船を余儀なくされた。そこで政府の救済金を交付することになりましたが、エビかごの漁業につきましては、専業船につきましては一隻当たり約一億円、兼業船につきましては一隻当たり約五千万円が交付されたわけでございます。   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕  そこで、当時のエビかごの漁業は、道知事の許可を受けまして日本海えびかご漁業大型船連絡協議会の会員になっていたエビかご漁船が五十八隻ございました。このうち、ソ連の水域で操業することができるようになった漁船、その他武蔵堆の出漁船等を除きます三十四隻が減船の救済金の交付対象漁船になったわけでございます。  道庁からの報告によりますと、この減船の対象漁船のうち三隻は、以南ニシンの兼業船として救済金の交付を申請をいたしまして、そのときに五十二年の操業実績と出漁の準備行為をしておらなくて、交付の要綱の要件に該当しないということで減船の救済金の交付の対象にならなかったほかの四隻と覚書を締結をいたしまして、もらいました救済金一億五千四百二十四万八千円を配分をしたようでございます。  それから、なお先ほどのエビかごの協議会は立会人としてこれに関与をしておりまして、その配分の対象金額の百分の三十、二千六百三十五万円を特別の協議会費として支払いを受け、これを旅費等に支出をした。それで、さらに残った残金を、減船の対象船中のいまの三隻を除く、三十四引く三、三十一隻に、一隻当たり約六十六万円になるようでございますが、その三十一隻に均等配分をしたということでございます。  この問題の三隻が、減船の救済金の交付の対象とならなかったほかの四隻に救済金の一部を配分をしたということ、それからいま申し上げました特別協議会費という相当部分を協議会がこの三隻に負担をさせたということ、それから協議会のその残余金を三十一隻に配分をしたということ等についてなお不明な点がございまして、道庁でさらに調査をいたしておる最中でございます。
  133. 原田立

    ○原田立君 会計検査院いますか。−会計検査院にお伺いしますけれども、減船に伴う補償について七都道府県を対象調査されたとお聞きしておりますが、調査の実態をお示し願いたい。
  134. 岡峯佐一郎

    説明員岡峯佐一郎君) 北洋漁業減船漁業者救済費交付金につきましては、当局におきまして交付要綱及び実施要領が作成されておりましたので、私どもはこの要綱等に基づきまして適正な交付対象者に交付されているかどうか、また交付枠に誤りはないかということに重点を置いて、相当な注意を払って検査をいたしたつもりでございます。  一般的なことでございますが、検査の実施に当たりましては、私どもの方に証拠書類が参っております。この証拠書類を見ますと、交付申請書のほかに算定表、それから漁船の原簿、それから操業の状況、また印鑑証明、委任状、さらに現地の知事の進達書がついております。こういった書類をまず庁内において検査をいたします。それから現地に赴くわけでございますが、本年につきましては四月から九月までの間に、ただいま先生がおっしゃったように、北海道、青森、東京、千葉、神奈川、新潟、愛媛の現地に参りまして、対象漁業者が二百三十二名、百九十三億八千七百万円につきまして検査をいたしました。  検査方法の具体的なことでございますけれども現地対象漁業者にお会いいたしまして、過去に操業実績があったかどうか、こういったものを裏づける漁獲成績報告書、荷受け機関の水揚げ証明、こういったものを確認いたしました。また、操業の予定が確実であるかどうかということにつきましては、資材の購入状況、船員の雇用状況等現地において調査検討いたしたわけでございます。  その結果でございますが、交付対象者の資格要件につきまして、交付要綱の解釈上若干疑問を持ちました。当局に質問をいたしましたが、減船している事実が現実にございましたので、検査の結果として特に不当として指摘したものはなかった状況でございます。
  135. 原田立

    ○原田立君 いまのお話のように、特に不正というものはなかったと、こういうふうなことでありますけれども、「三隻で一億五千万円」あるいは「“休漁”五隻が七億円 ずさん審査、一部は返還」と、こういうふうなことが報道されておるのでありますけれども、天下の公器であるマスコミ等で報道されたような場合に、やっぱりこれはこのままほったらかしにしておくのはちょっとまずいのじゃないかと、こう私は思うんですけれども、その点はいかがですか。
  136. 岡峯佐一郎

    説明員岡峯佐一郎君) 先生指摘のように、過日来、再度にわたり新聞報道がなされておりまして、会計検査の衝に当たる者として非常に関心を持っておるところでございます。また、責任を痛感いたしまして、検査の手法として反省すべき点がないかということをいま検討いたしているところでございます。  問題の北海道についてでございますが、検査人員とか日程等のこともございまして、必ずしも全部について実施をいたしておりません。したがって、報道のような事態につきまして現地で見てないわけでございます。北海道につきましては、漁業種類としまして二十二種類、それから対象としまして八百六十隻、金額で四百四十億八千四百万円が交付されておりますが、この対象につきまして私ども漁業の種類としましては十六種類、百五十四隻、百十七億八百万円につきまして、五月の三十一日から六月の十日にかけまして検査をいたしたわけでございます。このうち、問題のエビかごにつきましては、三十四隻、二十七億円余、このうち十一隻、十億円余につきまして検査をいたしました。また沖合い底びきにつきましては、三十七隻、五十七億円余につきまして、うち十隻、十五億一千五百万につきまして検査をいたしたわけでございます。  この中には、新聞報道されております個所が実は三つございました。その検査の模様をちょっと御披露申し上げたいと存じます。  沖合い底びき漁業の浜屋水産というのがございますが、これにつきましては、漁獲成績報告書から見まして、五十二年の一月から八月までの操業実績がございました。また、対象漁船につきまして、これを五十二年の十二月に売却処分していることが契約書上判明いたしました。また、沖合い底びきの山善水産、それからエビかごの竹林某というのがございますが、これにつきましては船体の定期検査を受けておる事実がつかめましたので、操業を予定したことがはっきりしておったということで、交付要綱の交付対象になると考えまして、そのように判断をして帰ってきたという報告に接しております。  それから、交付金の配分の問題でございますが、これは交付要綱上ではその使途についてまで条件をつけてないわけでございますので、私どもとしてはそこまでのチェックはいたしませんでした。  それから、今後の対応策でございますが、報道の事実につきましては、ただいま当局から御説明がございましたように、水産庁におきまして調査中でございますので、その結果を待ちまして、場合によっては事実の確認にもう一度出向きたいと、このように考えております。
  137. 原田立

    ○原田立君 必要があればぜひもう一遍行くという、そういう姿勢でやってもらいたいと思うんであります。  ただいまも申し上げたように、現実に不正が指摘され疑惑が持たれている以上、補償金の交付要綱なり支給に問題なりあるいは欠陥があるゆえこのような問題が発生していると思うんであります。要綱とか、あるいはまた支給の方法に問題があるのじゃないかと、こう思うんでありますけれども、この点、検査院の立場から見てどこに問題があると思われましたか。
  138. 岡峯佐一郎

    説明員岡峯佐一郎君) 本年の全般的な検査のところで申し上げましたように、結果としては問題がなかったわけでございますが、たとえば日本海サケ・マスはえなわ漁業におきましては、漁業を現に営んでいる者が対象になるといっている点がございましたが、実際に行って見ますと、資材の手当て、準備だけをしておりまして、これは正確に考えますと要綱に違反すると私たちは思ったわけでございますが、何分にもこの交付金は五十二年度初めてのことでございます。水産庁見解をただしましたところが、当局におきましては、やはり拡張解釈していただきたいという御要望がございました。そして、先ほども申し上げましたように、これにつきましては現実に減船をいたしておりましたので、指摘をしなかったわけでございますが、この例に見ますように、要綱につきましても再検討願う余地があるのではないだろうか。しかし、これにつきましては、もう少し調査を広げないと批判するのは早過ぎるというきらいがございます。  もう一点は、先ほど私、証拠書類の話をいたしましたが、書類上はほとんど完備していると言っていいのではないでしょうか。そういう事情でございますので、やはりこの種の性質上、現地の確認がどうしても一定の書類のほかにチェックする必要があるのではないか、このように考えております。そういう意味で、私ども五十三年度も四百億に及ぶ予備費でこの種交付金がされますので、引き続きそういった面も考えながら検査を進めてまいりたい、このように考えております。
  139. 原田立

    ○原田立君 大臣、会計検査院からいま聞いたとおりですけれども、実際問題、書類だけで、書類が完備していればばっばっぱっとやったという、そういうことについては非常にずさんなやり方ではなかったのか。要するに、会計検査院も現地にはこれからまたもし不正があれば行くと言うけれども、その前の段階で、実際に水産庁でやった段階で書類審査だけで事を決めていったということは、ちょっとずさんなやり方ではないかとぼくは批判するんですけれども、その点どう思いますか。
  140. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私もよく内容はわかりませんが、減船した事実はあると、したがってお金が出たと、その金が、なぜ減船しなかった人にまで配らなきゃならなかったのか、その背後はどうなのかということであって、その辺の実態をもう少し調べて、反省すべきものは反省し、改めるべきものは改めたいと、こう思っておるわけであります。
  141. 原田立

    ○原田立君 本格的二百海里時代に伴い、今後もいろいろの補償が考えられると思うんであります。国民に対しては当然のこと、関係漁業者の立場からも、すっきりした補償が行われるようにするためにも、明確なる補償の制度化が必要ではないかと、こう思うんであります。大臣は、これからなお調べて、もし不正なことがあればきちっとした処置を講ずるというお話であったけれども、その前に、こんなようなことが起きないようにしっかり努力してもらいたいと、こう思うんですよ。この点はどうですか。
  142. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 減船補償費といえども国民の血税でございますから、不正な支払いや不正なことがあってはなりません。十分今回調査をし、改めるべきは改める、また仕組みについておかしいところがあるならばこれも改めると、こういうことで十分対処して、国民の不信を買わない措置を講じたいと思います。
  143. 原田立

    ○原田立君 それでは二百海里問題についてはこのぐらいにして、ミカンの問題を聞きたいと思います。  ミカン問題について若干質問をしたいと思うんでありますが、具体的問題に入る前に、昭和五十年以降の生産量及び卸売価格と五十三年の生産量及び卸売価格の見通しについてお伺いしたい。
  144. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 五十年産以降の生産量について申し上げますと、五十年産は三百六十六万五千トン、五十一年が三百八万八千トン、五十二年が三百五十三万九千トン、それから五十三年産が、十月一日現在の予想収量でございますが、これが三百一万トンということでございます。  それから卸売価格でございますが、東京中央卸売市場のキロ当たりの卸売価格でございますが、これが五十年産が九十二円、五十一年産が百三十八円、五十二年産が百九円、五十三年産はこれからぼつぼつ出回っておるという状況でございますので、全体締めてみませんと最後の平均の数字が出ないということで、いまのところはこの金額がどのぐらいになるかまだわからぬわけでございます。ただ、ことしは三百一万トンという前年対比一五%の減産ということになっておりますので、相当強含みの価格になるのではなかろうかと、かように考えております。
  145. 原田立

    ○原田立君 農林水産省は「農産物の需要と生産の長期見通し」の中で、昭和六十年では作付面積十六万五千ヘクタール、生産量四百五十三万八千トンと見込んでおりますけれども、六十年における需要の中身は生果、果汁などどの程度の割合となるのか、その点はいかがですか。
  146. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 六十年で国内の消費仕向け量、これが四百三十四万七千トン、生産量の方は四百五十三万八千トンでございますが、国内仕向けは四百三十四万七千トンと見ております。この中の内訳でございますが、大づかみに見まして加工用の関係が大体百三十万トン、その他がいわゆる生食用と農家の自家消費と、それからロスがございます。そういうことで、合計しまして四百三十四万七千トンの国内仕向けというふうに見ております。
  147. 原田立

    ○原田立君 生食用のミカンを見た場合、ここ数年横ばい、頭打ちとなっておりますが、また果汁についても五十一年までは順調に消費が伸びてきたが、五十二年には濃縮果汁の伸びはとまり、五〇%あるいは一〇%などの薄物が急速な伸びを示しているものの、大幅な消費を望める実態ではない。政府としても、消費の拡大を図るため本年七月から果汁消費促進特別対策事業実施したようでありますが、このような実態から判断しても、六十年見通しの四百五十万トンの生産に対して需要量が伸びない、追いつかないんじゃないかと、こういうふうなことを思うわけでありますけれども、その点はいかがですか。
  148. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) ただいま先生からもお話ございましたように、果汁が今後一つの戦略的に伸ばすべき分野であろうということで、学校給食等への導入等もやっておりますが、いずれにいたしましても、生食用の面につきまして四十八年をピークにしまして減少傾向にございます。したがいまして、六十年の国内消費の仕向け量といいますか需要量、これにつきましては、五十年に公表しましたこの長期見通しの四百三十四万七千トンといいますものにつきましては、大分これを下回るというのが厳しい現実であろうというふうに一応予想をいたしております。
  149. 原田立

    ○原田立君 さっき加工用は百三十万トン、それから生食、それから農家自家用、ロス合わして幾らなんていうことを何か言っていたけれど、これは項目別にわかりますか。
  150. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 一応全体としてこういう数字を出しております。ただ、一応のその際の目見当というような感じで申し上げたわけでございまして、正式にこの中の内訳として生食用が幾ら、ロスが幾ら、自家消費が幾らというようなことで詳細には出しておりません。
  151. 原田立

    ○原田立君 六十年見通しのこの問題等について国として計画、方針を立てているんですから、そんなことぐらいと言ってはあれですけれども、こういう大事な問題についてまだ計画していませんでは、議論の余地ありませんよ。議論の話がかみ合いませんよ、そんなことじゃ。もう少しきちっとしてもらいたいと思います。  ところで、温州ミカンの需給のバランスは昭和四十七年の段階で完全に崩れ、生産過剰が表面化してしまったのでありますが、そのため新規植栽の抑制あるいは改植等の促進を強力に実施して対策を講じてきたようでありますが、その後も過剰傾向は大きく変わるところまでには至っていない。さきにも指摘したとおり、政府の示した六十年見通しの需要供給のバランスにはかなりの差が生じていることが明らかとなっております。六十年見通しの見直しをし、抜本的対策を講ずる必要はありませんか。
  152. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 「農産物の需要と生産の長期見通し」、五十年に公表したものにつきましては、これは先ほども房長の方から答弁いたしましたように、現在これの見直しといいますか、そういう検討を進めておるわけでございまして、その際に、ミカンにつきましてもその一環といたしまして検討を進めておると、こういうことでございます。
  153. 原田立

    ○原田立君 各農協等でいま工場を持って選果機を備えつけ、それで作業をしているわけでありますけども、大体四十二、三年あるいは四、五年ごろに設置したのがもう減価償却して、機械をかえなければいけないというような段階に現在なっているやに聞いております。ところで、第一回目の設備をするときには国あるいは県等で補助等が出るわけでありますけれども、新しく更新する機械には国や県からは一銭も出ないというようなことで、農家の自己負担というようなことのようでありますが、そうなると農家の負担増につながって非常に困ったものだと、こういうふうなことを現地の農家の人たち、あるいは農協の人たち、町役場の人たち等が言っておりました。で、これらは法律でそうなっているんだろうとは思いますけれども、その更新する場合にもある程度の若干の援助というものはなされないものなんでしょうか。
  154. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) まあ選果機等を導入しまして後でこれが更新をするということになった際に、これに対して補助ができないかというお尋ねでございますが、これはミカンの選果機のみならず、一般的に補助事業につきましては、こういう機械施設等には更新に対して補助するというのは共通原則として補助はできないというのが一般的でございます。何らかの援助はできないかというものにつきましては、これは補助ではなしに、融資という措置はこれは当然あるというふうに考えております。
  155. 原田立

    ○原田立君 じゃ、融資ということだけれども、そうすると、農林漁業金融公庫あたりの三・五%利子のようないわゆる低利あるいは無利子に近いようなそういうような資金援助はできるんですか。
  156. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) この融資の方につきましては、主として農業近代化資金というのがございます。この資金の融資ということが考えられるわけでございます。まあ貸付条件としては、選果機ですから大体農協等が所有することになろうと思いますが、大体六分の金利というふうになろうかと思います。
  157. 原田立

    ○原田立君 農業近代化資金では金利は幾らになるんですか。
  158. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 六分でございます。
  159. 原田立

    ○原田立君 農林漁業金融公庫の三・五%利子というそこら辺までの下がった低利のものは使えませんか。
  160. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 一般的に、三分五厘とかいうこういう資金は、農地等取得資金なり未懇地取得資金というようなものにはございますけれども、選果機等のような施設につきましては三分五厘というようなものは無理ではなかろうか、かように思います。
  161. 原田立

    ○原田立君 じゃ、また別な面でお伺いしますけれども、いまの各種ミカンの生産過剰で新規植栽あるいは改植等をやっているわけでありますけれども、融資が行われる、そのときにあんまり利息の高いお金では農家は実際問題困るわけです。私、福岡県の立花町のある人に、町長にも聞いたわけでありますけれども、実際接ぎ木して、あるいは改植して実がなるのには最低三年あるいは普通で六年ぐらいはかかるというのです。で、年一回しか回転しない。こういうようなときに、あんまり高利なお金を融資してもらっても実際ありがた迷惑だと、もっと低利のお金を融資してもらいたい、こういうふうな話がありましたけれども、その点についてはいかがですか。
  162. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 明年度要求予算におきまして、ミカン園の転換といいますか、この資金の要求をやっております。ミカン園転換促進事業ということで五十億ほど要求いたしておりますが、これにつきましては、ミカンの木を切る、あるいはその後の伐根整地等をやるというような際に、考え方として二分の一の補助をする、こういうことで考えております。  それから、ただいま先生からお尋ねございましたように、そういうことで切る方につきましてはこれは実際にかかった金の大体半分というのを補助しますが、ミカンを切りますと、そのあと先生おっしゃるように、四、五年間所得が入らないという問題がありますので、こちらの面につきましては経営の維持安定のための融資というのを考えておりまして、これは末端金利を三分ということにすべく利子補給をしたいということで考えて、いま要求をいたしておるところでございます。
  163. 原田立

    ○原田立君 これで最後にするわけでありますけれども、実は先ほどの選果機の問題について、九州・山口県の連合の農協で過日大臣に、選果機についても更新の場合もっと補助等をしてもらいたい、できるだけの点をしてもらいたいというそういう要請をした、つい最近。それからまた、輸入枠の拡大についても反対、期間幅の拡大についても現在ネーブルや伊予ミカン、ハッサクあるいはユズ等をやって、それが四、五月ごろにはできるということになるので、輸入の物なんかも入ってくると競合する、そういう期間幅の拡大も反対である、こういうふうなことを大臣に強く要請したということでございます。これについて大臣も余りはっきりしたお返事はなかったやに聞いているわけでありますけれども、なお改めてお伺いしたいと思います。
  164. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 九州・山口の連合会といいますか、連合して陳情をされたという、その陳情内容の三点につきましていまお尋ねあったわけでございますが、第一点の選果機の更新に対する補助につきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。  それから、オレンジの輸入枠拡大反対、それから三点の季節枠の延長反対という問題につきましては、目下、日米農産物交渉という際にこのオレンジも大きな政治品目として取り上げられておりまして、これにつきまして大臣初め精力的にわが国のミカン農家の実情等も十分踏まえて、影響のない姿にということで強力に向こうとの折衝をやっておるわけでございます。  ただ、その際に、第三点の季節枠というのが、これが六、七、八ということの三カ月を現在五十三年度は設定をして季節枠の輸入を認めているわけでございますが、これにつきましてさらに広げろというような強い要請もあることは事実でございますが、先ほども大臣から御答弁ございましたように、この面につきましては、その枠を広げるということにつきましては非常に困難だということで、強力にこの面については現在押し戻しておるというのが現状でございます。  それから、輸入量の枠の拡大の問題につきましては、これは自由化時期の明示というような強い話もございますので、その辺との調整ということで、実際問題としてそう実害のない形でその辺の若干の調整ということはこれはあり得るということで、実害のない姿で対処をするということで現在強く折衝中というのが現段階でございます。
  165. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) オレンジの輸入枠拡大反対ということではありますが、反対で押し通せればいいのでありますけれども、やはり向こうとの折衝でございますから、生産農家に影響を与えない調整ということで処理をいたしたいと思っております。それがどういう姿になるか、これからの折衝ということでございます。  それから季節枠の延長、時期の延長ですか、これは四月、五月をオフシーズンと見ていいのじゃないかと、ミカンはなくなる時期だからということでございますが、タンカン等がございますのでこれは何とか勘弁願いたいということで折衝中でございますが、どういう姿になりますか、なかなか厳しい要請が来ておることも事実でございます。しかし、何とかこれを食いとめたいと思って努力しております。
  166. 原田立

    ○原田立君 選果機。
  167. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 補助は無理でございますが、融資でもって対処したいと、こういうことでございます。
  168. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まず最初に、有珠の泥流災害の問題に関してお伺いしたいと思います。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕  国土庁にお答えをいただきたいのでございますが、有珠の災害では人命事故がなくてということでほっとしておりましたが、御承知のとおりついに三人の犠牲者を出すというような状態になりまして、今度の泥流災害でこちらも調査に入りましたけれども、非常に心配いたしますことは、いまいろいろと対策を立てて工事どもしていただいているわけですけれども、いまの見通しでいまの程度やっておけば、今後もうこういうような本当に大変な災害というものが起きないで済むのだろうかということが皆さんの非常に心配で、私も心配でございます。その点、今後大丈夫だというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか。そういうことがなければ、安全宣言というものも本当の意味がないことになりまして、温泉町としても死活の問題でございます。そういう点について今後大丈夫なのかということと、安全宣言というものの実際の宣言が出せるというふうにお考えになっているのはいつごろとお考えになっていらっしゃるか。  それからまた、去年からずっと何回か行ってまいりましたけれども、非常に地殻変動というものが激しく動いております。外輪山もだんだん立ってきたりというようなことで、そしてまた、大きな岩石が流れ出るというような危険も、もうむき出しに大きな岩が出ております。そういたしますと、いまの段階で非常に綿密な各全般にわたる調査というものがいま必要になっているのではないかと、それについてどういうふうに見ていらっしゃるか、まずその点お伺いしたいと思います。
  169. 四柳修

    説明員(四柳修君) お尋ねの順序と答弁が逆になるかもしれませんけれども、安全宣言ということに関連しまして第一点の問題としまして、私ども現地に参りまして北海道大学の先生、あるいは札幌管区気象台長から伺った話で恐縮でございますけれども、有珠山の今後の見通しということが安全宣言という話につながるということになりますけれども、御承知のように、昨年八月七日の大噴火以来、数次にわたり昨年噴火がございまして、その後昨年の十一月からまた断続的な小噴火が続いております。本年の三月以降の地震活動、あるいは地震のエネルギーの放出率、さらには火口原の隆起の速度といいますか、そういったいわゆる火山活動総体は減少の傾向にございまして、現在もこの傾向が続いているというふうに伺っております。  具体的には、たとえば地震の回数が最近では最高百八十回から最低二十回。さらには、北海道大学の観測によりますと、外輪山の洞爺湖側への地殻変動のせり出しが、前回調査のときには毎日八センチ程度でございましたが、最近は五センチ程度という形で、いわば山の活動そのものは次第に鎮静化をしております。  そういう意味で、観光地という特殊性から考えまして、大噴化があるかないかという点での安全宣言的なものの見方につきましては、専門家のお話では去年のような大噴火というものはもうないのではないだろうかと。現に、新山も六百二十二メートルという隆起の目標に対しまして、たしか六百十九メートル近くになっております。そういう状況でございますから、残り三メートルを日量六センチないし七センチという話になりますと、そういう意味では山の活動はまだしばらく続きます。しかし、噴火という点での安全宣言ということは出せるというお話でございます。しかし、別の観点から、御案内のように地盤隆起をしているところがございまして、そこにある病院あるいは住宅等が地割れが入っております。この地域につきましての安全宣言ということは、やはりそういった火山活動が終息するまでは安全宣言は出せないと、こういう点でございます。それが二番目の安全宣言の問題でございます。  そういう状況でございますものですから、第一問の治山工事の安全性の問題でございますが、やはり現在やっております治山工事も恒久的なコンクリートダム等はできません。そういう意味で、やはりまだ山が動いておりますから、動いている山の中でまだ崩れるものもございますし、緑が落ちついてないところもいっぱいございます。そういう過程の中で、ここしばらくはやはり泥流はもちろんのこと、明治新山時代の噴出物も場合によってみては落ちてくるのではないだろうかと。そういったものを、床止め工を初めとしまして砂防工事その他で、いわば落ちてくるもののエネルギーを分散し弱めながら、場合によりましては市街地にもろにかぶらないで市街地に流路工も掘りまして洞爺湖に落としてしまうと、ここしばらくはやはり山が落ちつきまして緑が戻るまでは、そういった形の法山工事あるいは砂防工事が続くのだろうと思います。  そういった見通しでございますものですから、実は第三問の調査の問題でございますが、これもいかんせん山頂部分には危険で上がれません。いずれ山の活動がおさまるところを見ながら、場合によりましては航空機によります調査等もあろうかと思いますけれども、そういうものを進めながら、山の活動の落ちつきぐあいを見ながら調査も並行してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  170. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 確かにおっしゃるとおりだと思いますけれども、やっぱりそれでは結論的に言いまして、山の方はちょっと落ちついたから安全という状態に入ってきたと、しかし山自体がまた地殻変動なんかで動き出してくると、そうすると安全であるかどうか、今後どうなんだということは、住んでいる人間にとって、自分たちの命の問題として、いまの動きの状態の中で、いろいろ恒久的なものは無理としても、いまやっていらっしゃることで、人の命に関してはもう大丈夫だとおっしゃっていただきたいわけですわね、もう気持ちとしては。それをおっしゃれないとするとこれは大変なことになるんですけれども、そこのところなんですね、お伺いしたいところは。あとはいいんですわ。
  171. 四柳修

    説明員(四柳修君) 御指摘の点、神ならぬ身と申しましては恐縮でございますけれども、私どもも防災側の担当としまして、あるいは地元の道庁も町長以下も、せっかくいままで人身災害のないことでほっと胸をなでおろしたものが、この間のような事故になりまして、いまのところは、大変恐縮でございますけれども、天気予報を見ながら、とにかく逃げることに精いっぱいということでございまして、そういう過程の中から来年の雪解けまでに山を治め、あるいは流路工というものをつくる形で、御指摘のようなことがないように、道も国も町も、あるいは町民もみんな一緒になって真剣になっている状況でございますので、そういう意味で、そういうことがないように私どもも祈念しておるところでございます。
  172. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうお答えにとどまるかもしれませんけれども、町民や町や道というのは、やっぱり地元でございますから、それなりに一生懸命やっているわけです。しかし、相手が相手でございますから、地元の町民が幾らやったってこれはもう限られたことでございます。やっぱり国の立場で、もう大きな立場から英知を集めて、安全だという対策を立てていただきたいというのが切実な要望でございますし、また犠牲が出るようなことがあったら大変でございますので、その意味で国として窓口になっていらっしゃる国土庁の立場でも総合的に御努力をいただきたいということを、重ねて要望したいと思います。  じゃ、具体的に林野庁の方にお伺いしたいと思いますのですけれども、ことしはそうでもなかったけれども、これがありますと来年の融雪期ということを控えましてまたこれ大変心配でございます。その治山事業で来年融雪期に対応できると、対応するためにどういうふうに対策を立てていらっしゃるかという点について、時間がございませんので、具体的に要領よく簡単にお願いいたします。
  173. 藍原義邦

    説明員(藍原義邦君) 林野庁におきましては主として山地部分を受け持っておりまして、予算面で申し上げますと、ことし予備費をいただきまして約八億二千八百万でございますけれども、それを含めまして事業費にいたしますと三十億七千五百万円をこれからつぎ込もうと。個所数は三十四カ所でございます。  これは、主としてこれからの、いま先生も御指摘になりましたけれども、次期の降雨あるいは来春の融雪、こういうものに対する対策ということで、山腹斜面に堆積いたしました火山灰、こういうものを安定させる工法でございますけれども、編柵工とか土どめ工がございます。そういうものを中心にいたしまして、一部渓流の間にも谷どめ工だとかあるいは流路工、こういうものをやりまして、必要な泥流の拡散といいますか、そういう拡散をする必要がある場所につきましては、泥流を停滞させるための導流工や、あるいは遊砂地というものを作設したいということでいま道と折衝をいたしておりますし、あるいは国有林は国有林で自身検討し、現地におきまして十分調整をとりながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  174. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 非常に大仕事でございますし、規模も大きくなりますわけですよね。そうすると、時期を非常に早くするということと大きな予算をつけなければならないというようなことで、緊急治山激甚災害特別事業というようなことも対処していかなきゃならないというふうに思われるわけですけれども、当然そうなるわけでございますね。
  175. 藍原義邦

    説明員(藍原義邦君) いま申し上げましたこの総額三十億七千五百万円という事業費の中には、いま先生がおっしゃいましたものと、それから国有林が自身でやるものと両方入っておりまして、当然そういうことでやるということでございます。
  176. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 もういろいろやっていただいているわけですけれども現地へ行きますと、やっぱり広い山の中に何人かがぼつぼつといるというようなことで大変まだるっこいと、いまの日本の力でしてみれでもっともっと早くばっとできるんじゃないかというのが、本当にそう思いますね、行ってみますと。だから、一生懸命やっていただいているのはありがたいことだけれども、お金でちょっと大変だというようなことでまた犠牲ができないように、ぜひ御努力をいただきたいと思います。  次に、建設省にお伺いしたいと思います。流路工というのは当然いま工事に入って、これを緊急にしなければならないわけですけれども、そうしますと、その道筋に当たるところの買収問題というようなものが具体的な問題になってまいりますが、その買収費というものについて来年度早々でも支払えるようにしていただきたいし、どういうふうに価格としては考えていらっしゃるかというのが具体的な問題でございますが、お考えを伺わせていただきたいと思います。
  177. 小藪隆之

    説明員(小藪隆之君) ただいまの流路工に伴う用地買収費でございますけれども、御承知のように温泉の町でございまして、ここには支障物件とか、あるいは地下埋設物等のいろんな問題がございます。それから道路等のつけかえ等もございまして、そこらを兼ね合わせまして現在現地において折衝中でございます。御承知のように、額その他につきましては現在来年度以降の激特の見直しをやっておりまして、来週には大蔵省の方にお願いできるのじゃないかと思いますが、今年度とりあえず仮排水路といたしまして流路工を仮工事で施工いたしますので、額その他につきましては後ほどまた御報告さしていただきたいと思います。
  178. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 有珠の最後の質問なんですけれども現地へ入って非常に住民が不安に思っているということは、やっぱりいまの状態がどうだと、現段階でこうこうこの程度やれば、まあ最後的には逃げなきゃならないかもしれないけれども、こういうふうになっているからいざというときにはこういうふうな道があるという、そういうようなこの有珠の被害についての全体の青写真というのが示されれば非常に安心するというわけなんですね。それが、いろいろなところから情報が入ってきて、山が動いているからいまの場合は恒久対策ができないんだなんて、非常に不安にさらされているというところなんですね。だから、急にすぐに恒久的な対策をしろというような無理なことは言わないと言うんですわ、町民の皆さんも。そして、これは人ごとでなくて自分たちの町の問題だし自分の命の問題だと、だから自分たちもできるだけのことは協力すると、だから全体構想について、有珠は今後どういうふうにやっていくべきだと、それについては住民としてもこういう問題について協力してほしいという、そういう何というんでしょうか、青写真みたいなものを示していただければ、心の余裕もあるし、もう協力する態勢もあると、ぜひそれをお願いしたいということを言っておりました。  ぜひそれを何とかつくっていただきたいということと、それから大臣にもお願いしたいんですけれども、たとえば有珠の問題はいろいろな関係ありますね。建設省あり、農林水産省あり、それから環境庁がありというようなことで、それでいろんな問題が北海道の場合はやっと一つに窓口がかたまりまして大変通りがよくなりました。で、国の場合でも国土庁が窓口になっていただいておりますけれども、まあいまのところ本当の窓口なんですね。何か私たちの方が聞きますと、ああそれはちょっと気象庁に聞いてくれ、それは各省に配分があるからそうやってくれと言われれば、窓口という窓があっても窓口の意味をなさないわけでございますので、そういう意味でも、これは大変な事業でございますので、ぜひ青写真を出していただくことと、窓口らしい窓口になるようなそういう体制をとっていただきたいということを、お願いしたいと思います。
  179. 四柳修

    説明員(四柳修君) ただいまの御要望かたがた御叱正、私ども十分受けとめまして、道なり町ともよく相談しまして、具体的にはやはり部分的には集落移転のような話もどうしても出るのではないかと思います。そういう意味で、やはり長い目で見ました町づくりということ、とりわけ、地元でも気にしておりますけれども、やはり御案内のように有珠山というのは三十年おきに噴火がある山でございますから、もう三十年先も考えないことにはやはり問題があろうかということもございまして、そのような点を踏まえまして、十分注意してまいりたいと思います。
  180. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣もよろしくお願いします。
  181. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 承知いたしました。
  182. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 時間が大分なくなりましたが、次の減船の補償の問題についてお伺いしたいと思います。  少し具体的な問題に入りますけれども、私がこの問題を取り上げます立場といいますか姿勢の問題なんですけれども、御承知のように、二百海里から締め出されて日本の水産業界は大変だと。特に、北海道は、もろにその打撃を受けているわけでございます。こういう方たち、漁業関係者や漁業労働者の方たちの被害を最小限に食いとめ、二百海里時代に対処する国の責任においてやっぱり適正な補償もしていただきたい、そして、その補償が公平な分配が行われるようにということが、基本的に大事にしていただきたい問題なんです。  しかし、先ほどもちょっと出ましたように、具体的な疑惑というのが次々と出てまいりました。こういう疑惑がもし事実といたしましますと、そういう俗な言葉で言えばなまずるいことをやったやつがけしからぬというふうに、その人たちがけしからぬということでは済まないと思うんですね。やっぱり大変な厳しい中だから、何とか生き延びようということを考えれば、そこにいろいろな才覚も働こうかと思います。それで、何とかいい道があったらという誘惑にも駆られるだろうと。そういうときに、そういう誘惑に駆られて疑惑を起こすようなことに進まないで済むような、そういう姿勢での補償であり配分になるような、そういうきちっとしたものは国の責任でもって指導もしなければならない。方針も立てなければならないという立場でございます。ただ単に、けしからぬということを暴露して私はこの問題を取り上げているのではないということを冒頭お話をいたしまして、具体的に次の問題に移らせていただきたいと思います。  まず、沖底の問題なんですけれども、もう時間がございません、事実はもう御承知だろうと思います。で、五隻が補償金を七億七千万円もらったと、そして、約三億二千万円が業界内に留保されていたということが一つの大きな問題になっているわけです。これが業界の中に三億円からという大きなお金が手をつけられないで預けられている。しかも、これが先月や先々月の話じゃなくて、一年以上もほったらかしになっていると。こういう点について、水産庁としてはどのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  183. 森整治

    説明員森整治君) 現在調査中でございますが、いま考えられておりますことを申し上げますと、当時のなぜプールされたかという問題がもう一つ先にあると思います。これにつきまして、まだ推測の域を出ませんが、当時北海道におきまして日ソ漁業交渉の、暫定的に漁獲をしておりましたのが、期限が切れて、片方で交渉が進められた。そういう時点で、北海道では日ソの漁業交渉の円滑な妥結を促進するということで、まあ相手方を刺激しないということで、四月以降沖合いの底びき漁船の出漁の停止を実施をいたしておりまして、四月一日から一カ月、あるいは地域によりましては四、五、六、三カ月までやっておるところもございます。そういうところで非常に経済的な打撃を受けた、それから減船に入ってくる、こういう中で、比較的に複数の漁船を持っておって打撃が少なかったと思われる五隻の漁業者が拠出をして、こういう事情でいろいろまあ何といいますか、減船をスムーズに実施するための財源として積み立てられたものではないかというふうに考えられるわけでございまして、その後、確かにプールされた拠出金というのは手がつけられておらないようでございます。  今後、その処置につきましては、当面まず、なぜ積み立てられたか、また、その前にあります五隻についての救済金の交付が妥当であったかどうかということまでさかのぼってすべて問題を追求中でございまして、これをどうするかということまでは、ただいまのところまだ直ちにお答えできる段階ではございません。
  184. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 これは本当に不思議なことですよね。もう当然自分たちが補償の対象になるので申請してもらったのであれば、出してプールして業界に預けておくということは必要ないわけですからね。だから、その辺のところを、補償の対象になると言いながら、労賃だとか退職金だとか漁具の費用だとかという四二%分を業界に預けたということは、もらう資格がないとみずから認めたからそれを吐き出して預けたという、結果的にはそうならざるを得ないということになって疑惑が出てくるわけでございますね。  で、いまいろいろおっしゃいましたけれども、私がここで言いたいことは、先ほども言ったけれども、これは先月、先々月に起こったことでなくて、もう一年以上もたっている問題ですよね。そして、そういう補償を出されるときに、そういういろいろな条件というものを当然に書面でも審査なすったというふうにおっしゃって、そのときは正しいと思ってお出しになっているということになるわけですね。そうすると、結果的には、そういうもう事実としておかしい問題が起こってきた。そして、一年以上たっていま事実を調査していますというのは、いかにもこれは間の抜けたといいましょうか、底抜けの補償のつかみ金をぽっとやったというふうに見られてもしようがないという点については、少々じゃない、やっぱり大分ずさんだったなあというふうにはお思いになりますでしょう。
  185. 森整治

    説明員森整治君) いま御指摘の問題、まあずさんというよりも、要するにその問題の五隻につきまして、ともかく調査を急いでおるわけでございまして、確かにいま五隻について調査をいたしているその過程の中で感ぜられますことは、非常にこのケースがボーダーラインにあるということでございます。現に、この五隻についての交付金の交付もおくれて行われたという経過がございます。それだけに一応議論はされたわけでございますが、まあそれにいたしましても、何といいますか、片方でペーパー船主に対しては絶対金は出さない、こういう立場がある。と同時に、いろいろ代船の建造に入っておったり、あるいは用船をできる状態なのにしてない。逆に言いますと、すでに五月に話が進みまして、六月には政府の減船の基本方針が出てきておるわけでございます。その過程で用船をする人がいるだろうかということを逆に考えますと、これまた無理からぬ面もある。  そういうそれやこれやで、問題のともかく交付の要綱にございます「漁業を営むことを予定していたことが確実」であるかどうかというこの認定につきまして、まさにいろいろボーダーラインの人たちの集まりといいますか、どうも集まりの問題のように感ぜられるわけでございまして、いろいろな角度から、漁具を用意したか、あるいは労務費を支払っていたのか、あるいは労務費は要するに交付要綱交付金といいますか救済金から支払っていたのか、あるいは別の船に乗りかえてそこで支払っておる、あるいは基幹の幹部要員を確保していたかどうか。まあ、それやこれやいろんな角度から追求をして客観的な判断をいたしませんと、確かに大臣もお答えいただきましたように、大変なお金でございます。同時に、裏返して申しますと、場合によりましては、今度はこの処置をめぐりまして、まあそこまでは言い過ぎになるかもしれませんけれども、経営の浮沈にかかわるかもしれないところまでの問題かもしれません。ですから、ちょっと時間をかけて、その点、後で問題の起こらないようなともかく適切な措置をこの際講ずる必要がある。  いずれにせよ、減船をしていることは事実でございます。自主減船を行った者に対して救済金を交付する、そういうたてまえの中から一つ出てきた、そういう温床はあったと思います。また、それをせざるを得ないという——だれも好んで減船を先に手を挙げてやってくれる方はございません。したがいまして、業界同士でだれが減船に当たるかということは大変な問題でございます。大変な議論を重ねてこの結果が出てきている、そこへ政府がその見舞い金的な金を交付した、こういう環境の中でどういうふうに、いろんな条件がございますので——まあ少し長くなって恐縮でごさいましたけれども、そこのところで公正妥当な解決策を至急出したいというふうに考えて、いま一生懸命調査をしているところで、この問題についての個々の個別の問題についてのイエスかノーかということにつきましては、御容赦をしばらくいただきたいと思います。
  186. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 調査中の段階でちょっとお伺いしたいんですけれども、時間がございません。いろいろ具体的に伺いたいんだけれども一つだけにしたいと思います。  第五三吉丸についての調査は具体的にどういうふうにおとりになっていらっしゃいますか。
  187. 森整治

    説明員森整治君) 第五三吉丸につきましては、当時小樽高洋水産の許可を承継をいたしまして、同時に、第五三吉丸を用船をして態勢を整えたのが五十一年の十二月でございます。そこで、五十二年の二月十日で同船の用船をやめまして代船建造、かわりの船をつくるということで起業の認可を受けました。その後、造船所との打ち合わせ、漁具の注文を行っている事実など、操業の準備を行っておるという事実は把握をいたしております。建造の許可を申請したわけですが、当時構造改善計画によります建造をストップしておりました関係で建造の許可申請が保留となった、そのうちに減船になってしまった、そのまま減船になったと、こういうことのようでございまして、なお新たに把握しておりますことは、新造船の漁労長の候補を造船所との打ち合わせで立ち会わせているという説明もあった状況でございます。ただいまのところ調査の中間でございますが、そういう報告を受けております。
  188. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 不思議な船がたくさん出てくるわけなんですけれども、いま言いました第五三吉丸にいたしましても、私どもの方も紋別に行っていろいろ調べてみましたけれども、紋別港で船籍というものがないんですね。五十二年度北海道に船籍そのものがないということです。これは、道機船連の五十二年度船名名簿によるものです。それから、雇い入れ、雇いどめ名簿、これも紋別市に差し出されていない。それから、小樽の高洋水産から五十一年といまおっしゃいまして、五十二年三月四日に紋別港にちょっと入港して即日出かけちゃっているというような点も、おかしなというふうに見られるわけなんですね。だから、いろいろ具体的に御調査なすっている段階だろうと思いますので、その御調査段階を伺いながらまた私どもも追って調べていきたいなと、そういうふうに思うわけなんです。  そこで、やっぱりここで問題になるのは減船の数の決め方そのもの、どの船をどう減船するかという、そのものに一つは問題が残っているのではないか。ということは、一つの業者が一つの船を持っているというわけじゃなくて、何隻も持っているということで、実際には減船したというふうな形にはなるけれども、乗組員はそっくり新造船の方に移しちゃって、そして実害は全然なかったというように、つまり実質的には使ってない休漁した船を減船という対象にすりかえるということになるわけですよね。だから、そういうふうなことを考えますと、減船数の決め方そのもの、数を決めるというのじゃなくて、やっぱり漁獲高が減少してきている。だから、どうしても実質的に船を減らさなければならないというふうに、減船そのものが生かされるような減船になっていなきゃいけない。起業認可の船も勘定に入れているというようなことでは、減船といっても底抜け減船ではないかというふうに見られるわけなんですけれども、その辺のところはどういうふうにお考えになっていますか。済みませんが、簡単にお答えいただきたいと思います。
  189. 恩田幸雄

    説明員(恩田幸雄君) 北海道の沖合い底引き漁業の場合には、これは大臣許可の漁業の中でも一番安定した漁業であろうと私どもは思っておるわけでございます。それで、そのような経緯から、日ソの協定ができましてクォータで規制されるまでは、やはり周年操業が可能であって相当高い収益性をあらわしていたということでございます。したがいまして、許可を有しながら操業しないで遊ばせておくような漁業者は存在しないというのが一般的な見方でございましたし、また現実に私どもの調べた中でも、従来操業しておってたまたま用船をしたり、あるいはその船の所有者が返せといって返したというような場合も想定されます。さらに、古い船が使えなくなって新しい船を建造した、建造中であったというようなケースでございまして、決して遊休であったということではなかろうと考えております。
  190. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、時間ありませんからエビかごの問題に入りますけれども、先ほどおっしゃいましたけれども、結局、補償をもらったという三隻——これは覚書が手に入っているわけですけれども、甲、乙、丙というのが補償をもらったと。そして、丁という四人が全然補償対象にならなかったというのが、山分けしたという山分けのこの覚書なんですけれども、これも本当に自分が減船して当然対象になるということであれば、その全然対象にならない四つのところに山分けする必要がないということになるはずなんだけれども、こういう覚書というものが出されて、三隻が補償をもらって、四人に分けてやって、あとまた残った三十一隻にも山分けしたということは、やっぱりこの補償が正しく出されていなかったという証拠になるんじゃないですか。これをどういうふうにごらんになっていますか。
  191. 森整治

    説明員森整治君) この問題については道庁でいろいろ調べてもらっておりますが、当初、五十一年に操業の実績を持っている者が救済金の交付の対象になるというふうに考えられておりましたのが、結果的には、五十二年一月以降に漁業を営み、または営む予定の者に交付が行われるということになったわけでございます。  そこで、この三名は五十一年には操業をしていないのでございます。で、五十二年からやるということで準備を進めておる。それからこの四隻の方は、分けてもらった方は五十一年に操業の実績を持っておりまして、五十二年には該当しないということになったわけでございます。そこで、その三隻と四隻の話し合いが行われたのではないかというふうに一応推定を、そういう説明があったようでございます。その辺からこういう問題が出てきたのではないか。ただ、それにしましても、協議会なるものが横から出てまいりましていろいろ金の配分にあずかっておる、それからその他の者まで金の配分にあずかっておる。その辺はまだちょっとどうも私ども納得のいかない問題がございますので、さらに調査をしてここの究明を図っておるというのが現状でございます。
  192. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 本当に調べれば調べるほど世にも不思議な物語ということになりまして、大変困ってしまうわけなんですよね。  で、エビかごはそれでおきまして、今度は以南ニシンの場合なんかでも、ニシンというのはもう制約されるであろうということが予測される状態であったというふうに私たちは当然思うんですけれども、この以南ニシンの操業隻数が四十六年には九十六隻ございましたけれども、四十七が五十三、次が六十六、その次五十一、三十五、五十一年五十五というふうに、大体五十から六十くらいまでなんですね。ところが、五十二年度の操業予定船というのが八十一隻も、非常な数ですね、五十何隻だったのがその年になって八十一隻も道が許可しているということなんですわ。その中には、過去五年間操業実績全くないものというのが十二隻も含まれている。これは全部船もわかっているわけです。そうしますと、この検認のやり方にも問題があるのではないかというふうに考えられなくはないと思うわけですね。  そこで、結局減船の補償が出るんだぞというのは、まあだれかつながった人がいたんでしょうね。そうすると、これに乗っていかなかったら損だというので、いわゆる駆け込み申請みたいな形でその数に入れてもらって補償をもらったと。まあ事実、道議会なんかでも出されたけれども、二十万円くらいちょっと出しておいてその権利をもらって、そして補償をもらったというような具体的な事実が出てきているわけなんです。で、紋別のニシン漁船のものを具体的に調べたわけですけれども、いま言ったように、去年の一月から二月にかけて他の船主から営業権を二十万くらいで買ったと。そして、その人はニシン協会にも入っていない人であったと。そして、その人の実績というのを調べてみると、アザラシとかズワイなどをやっていて、乗組員を契約するときにもニシンというのではなくて、ズワイなどというようなことで契約もしていたというような事実なんですね。そうすると、まさにこれは駆け込みで補償がもらえるんだということで、安く二十万円で買っちゃってというような、これもまた事実が非常に疑惑になるということが出てきているわけなんです。  時間がないからそういう事実だけ申し上げまして、こういう問題から考えますと、会計検査院の方、先ほどいろいろ御検査いただいたということが出ましたけれども、減船補償の要綱というのがありますよね。だから、その要綱に従って金が出されていれば会計検査院としてはそれで正当だと、こういうふうに認められると。しかし、要綱そのものが非常に解釈というものが広いです。船が実際どこにあって、どの程度すぐに出ていくというような準備が具体的にあったかどうかと、それから漁船員の雇い入れの契約というものがどうなっていたか、それから漁具やなんか実際にどういうふうに準備されていたかというような、いろんな点が要綱というのが非常に大らかにできているんですね。大ざっぱにできていると。だから、検査院としては、その要綱に従って出されているから正しく使われていましたという報告にしかなってこないと。  しかし、国民感情としても、具体的な事実といたしましても、やっぱり百万や二百万でないと、億という金がついているものが、たとえば要綱のそのとおりに使われたとしても、要綱に逃げ道があって、そしてそこで疑惑が起きるような使い方をされているとなれば、これはちょっと困るわけなんです。だから、会計検査院としても、やっぱりその要綱どおりではあったけれども、会計検査院の立場からすればこの要綱自体に問題があるのではないかというふうに結果的にはなっていくんじゃないかと。  そうすれば、当然その要綱そのものをもっと具体的なものにしろというふうな御意見が出されてしかるべきであるし、そしてまた、水産庁としても、書面で審査だと、そうしてもう一つ一つ見ていくわけにはいかないと言われればそれっきりだけれども、書面で審査して間違いないといって出された結果こういうことが起きたとすれば、やっぱり書面の裏をとるという、そういう大変日ソの交渉の中で、いろいろ伺ったら何日も寝られなかったなんて、つい同情したくなるけれども、やっぱり国費でございますのでそうはいきません。そういう意味で、会計検査院としても、そういう結果を待ってどこに問題があったかという点なんかも検討していただきたいと、そう思いますし、それから要綱そのものの拡大解釈をできるような、そういうずさんと言えばちょっと申しわけないみたいだけれども、もうちょっとそういうことが起きないようなきちっとした要綱というものを出していただくということがどうしても必要になるというふうに思いますので、その点について、はっきりした姿勢で対処していただきたいということをお伺いしたいと思います。
  193. 岡峯佐一郎

    説明員岡峯佐一郎君) 先生先ほどの御質問につきましては、先ほど原田委員の際に答弁しましたように、前向きに私としては検討を加えていきたいと、この交付金の趣旨も十分考えながら対処していきたいと、このように考えております
  194. 森整治

    説明員森整治君) いま調査をいたしまして、その上でいろいろ反省すべきものは反省し、適切な措置をとりたいと思います。  ただ、一言だけちょっと名誉のために。八十隻にふえたと、非常にニシンの価格が上がって収益が上がったため八十一隻の許可が実際に行われ、道庁の職員が実地で検査をした上で認定をいたしております。  それから、過去についてあったかないかということにつきましては、少なくとも交付金の対象の基準として合格を——いけないということにはなっていないということでございます。  それから、紋別の三隻につきましては、釈迦に説法で恐縮でございますが、御承知のように三月の末から四月の上旬にかけまして、まあ氷明けを待って出漁するということで、上架をいたしておったものというふうに報告を受けております。
  195. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 本当に書面でちゃんと整っておりました、こういう報告を受けました、だから当然支払うべき金だったと思いますという御答弁になるんでしょうけれども、そこのところから問題が起きているんだということで、別に名誉を損ねることが目的じゃございませんけれども、謙虚にこの事実を、処理する中でお考えをいただきたいということを申し上げたいと思います。  それから、交付要綱というのが非常に大ざっぱだと言いましたけれども、たとえば賃金の問題についても、解釈のしようによっては賃金を支払っても支払わなくてもいいみたいに解釈できるわけですよ、その賃金の問題一つ見ても。  そこで、具体的な問題で調査してください。時間がないから申し上げます。  これは古平です。古平の第三十七神宝丸、ここの相内厚さん、この場合には、おたくの方に出された賃金の明細書によりますと百四十万三千四百円になっております。しかし、これは本人に伺いました。名前を出してもいいと言われましたので申し上げますが、本人には五十万しか支払われていないという事実がございますので、だから書類では大丈夫だと言われても、事実そういうふうなことがございますので、これは具体的に名前を出しましたから御調査をいただきたいと思います。それは御調査はよろしいですね、お願いして。
  196. 森整治

    説明員森整治君) 先生からお話がありまして、調べた結果を持っております。よろしゅうございますか。
  197. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それは、全体の人数の名前でしょう。
  198. 森整治

    説明員森整治君) いやそうじゃございませんで、相内さんの問題でございまして、船主が百四十万支払ったということは、二月、三月、四月、五月と、それから十月に五十万三千四百円、これを全部足しますとそういうことになるようでございます。  で、当人が申しておりますのは、その十月分の五十万三千四百円から所得税の三万九千六十八円を引いたものが四十六万四千三百三十二円になると、大体この話を本人が言っておって、片一方は二月、三月、四月、五月と十月にもらったものと。要するに、各月の合計との食い違いのようでございまして、この点は、よく本人にわかるように説明をしてあげたいというふうに思っております。
  199. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 説明しましたの。——いいです。
  200. 久次米健太郎

    委員長久次米健太郎君) 小笠原さん、時間を超過していますよ。
  201. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 済みません。だから、それをいま伺いましたので、時間をもうちょっととって、私の方とも打ち合わして、本人にもどうなっているか了解をつけるようにしたいと思います。  最後に、大臣にお伺いしたいんですけれども、十八日からの日ソ漁業交渉のまた御苦労の場になるわけですけれども、ソ連側はこの中で、着底トロールの禁止とそれから漁獲割り当て量を日ソ両国を同量にするということを提案するという意向だと伺っているわけなんですが、その中で着底トロールの問題なんですけれども、着底トロールの禁止ということは、カレイ、メヌケ、スケトウなどを漁獲対象とする沖合い底びき、それから北転船にとっては、非常に壊滅的な打撃になるという大きな問題になってきているのは御承知のとおりだと思います。この着底トロールについては、ことしの三月から四月にソ連が突然問題化して出してまいりまして、これを禁止し取り締まるということになってびっくりしたわけですけれども、まあまあこの段階ではこれを切り抜けまして、ことしいっぱいということになったわけです。  で、伺いますと、その禁止の理由というのが、ヒトデとか、カニ、ツブなどの大陸だな資源を混獲するおそれがあるという理由のように伺いましたけれども、日本側としては、従来からヒトデなんというのはこれはしようがないものだけれども、これは網に入ったから返せということや、それから混獲が多い場合には漁場を移動するというような措置をとって、こういうふうにやっていけば混獲も十分に避けられるはずだと思うわけです。まして、ヒトデなんというのは、日本じゃあんなものもうどうしようもない。それをもとの海にまた戻せなんというソ連の要求じゃ、これはもう漁民としても泣くに泣けないというような立場だと思うわけです。漁獲量というものの割り当てをもらっても、実際問題、着底トロールがだめになってとれないようなことであれば、そうすると漁獲量をもらったって何にもならないということですよね。だから、その着底トロールの問題について、大臣としてどういうふうな姿勢で交渉にお臨みになるか、そして、見通しとしてはどういうふうな見通しをお持ちになっていらっしゃるかという点を最後に伺って、終わらしていただきたいと思います。
  202. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 着底トロールの問題についてはソビエト側から昨年春先意見が出、五月私が参りましたときにも、私の段階ではありませんでしたけれども、お話があって、何とか理解を得て禁止にならずに済んだということであります。今月の十七日からまた来年分が始まりますが、向こうが言い出すかどうかわかりませんが、もし仮に言い出しても、これは非常なダメージをこうむりますから、何とか継続できるように交渉したい、こう思っておるわけでございます。
  203. 久次米健太郎

    委員長久次米健太郎君) ほかに御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時一分散会