○堀江正夫君 また私この
奇襲対処の防衛庁の統一
見解で
長官も再々言っておられますけれ
ども、情報及び通信機能等の強化を含む防衛体制の高水準整備が基本である、これはもうきわめて当然だと、私
自身そのように思っておるわけでございます。ところが一昨日いろいろと情報能力の問題で私お聞きしたわけです。ところが偵察衛星それ
自体にも限界があるんだというような
お話でもございます。また情報能力の現状というものは必ずしも満足すべき状況じゃないんだというようなことも申されておるわけであります。私はむしろ満足すべき状況じゃなくて、寒心にたえない状況じゃないかと実は思っておるわけです。ところがこれもおととい私申し上げたんです。そういう状態、そういう
実態に立てば当然
金丸長官のお気持ちから言うならば、すでに八月の末に出された概算要求、これに情報
関係の追加要求をされてしかるべしじゃないかと、このようにも申し上げたんですが、まあいまのところそういう御計画もないと、こういうようなことでございまして、したがいまして、確かに情報通信機能等の強化を含む防衛体制の高水準整備が本当に満足すべき状況になれば、ある程度
奇襲の可能性というものはないかもしれない、少なくなるかもしれない。けれ
どもそういう基本的な、何といいますか
実態と、それからその
実態に即するところの努力と、それからこういった物の
考え方が余りにも遊離してしまっているじゃないかということを、私
自身は
一つは大変に懸念をしておるわけであります。
それからもう
一つ、これはもうぜひとも私は
長官に申し上げねばならないと思うことがございます。
長官は終始一貫して自分は
奇襲はもう現在の
情勢では万万一もないんだと、万万一どころか、この前の本会議では万が五つつけて言われたわけでございます。ところがいまも
長官おっしゃったように制服は必ずしもそう言っておらない、こういうことでございます。私のもう生涯というものは、
軍人、自衛官として今日までやってまいりました。私の知識、私の能力から判断しましても、私はいかに軍事技術が発達しようとも、この
奇襲というものがないんだなんということは、とてものことに言える問題じゃない、私はそう思っております。いろんな評論家が自分の
考えで言うのはいいと思うんですけれ
ども、
長官どうか、
長官がそういうことを言われるのだけはひとつ、個人で思われるのはもうしょうがありませんけれ
ども、
長官としてそういうことを言われるのだけは、私は何とかやめていただきたいものだと、これはもう私の心からの念願でございます。
政治の最高責任者、防衛の最高責任者がこういうことを言われることの影響力というものは、もう国の内外に対して非常に大きいと思うわけです。どうかひとつこの点いろんなお
考えあると思いますけれ
ども、よくおくみ取りいただきたいものだと、もう念願をしてやみません。
次に、有事法制の研究の問題について私申し上げたいと思います。
総理は、自衛隊は有事のためにこそあるのだと、有事法令を研究するのは当然だと、このように言われました。
長官ももうきょうもそう言われました。再々そのように申しておられるわけでございます。これはもう当然過ぎるほど当然のことだと、こう思います。しかし、現実的には、二十九年に自衛隊が発足して今日までもう二十数年たちましたが、具体的な整備が放置をされておるという、独立国家としては異常な事態にあるんだということは私はまずはっきりと認識しておかなきゃならない問題じゃないかと、こう思うわけでございます。その
意味で平時から研究をしよう、平時こそ研究をする場なんだと、このように統一
見解でも言っておられることはもうもっとものことだと思いますし、またおとといの
委員会でも、逐次
国民のコンセンサスを得るために次の通常
国会では研究したものを
一つ、二つはぜひとも出したい、このように言っていただきました。私はきわめてこういったような
考え方、持っていき方というのが大切なんだと、こう思っておるわけでありますが、問題の第一は、私はこの有事法令に取り組む姿勢の問題だと思います。この統一
見解の有事法令の二のところに、「なお残された法制上の不備はないか、不備があるとすればどのような事項か等の問題点の整理が今回の研究の目的であり、近い将来に
国会提出を予定した立法の準備ではない。」このように言っておられます。私は実は二十七年に当時の警察予備隊に入りました。そして自衛隊を退職しますまで直接、間接にこういった問題にタッチをしてまいりました。防衛庁が自衛隊の発足のとき以来内部的にどの程度これらの問題に取り組んできたかということを私は知っております。私は、この慎重に対処すると、こう言っておられる、下手をするといままでとまた同じような蒸し返しになるんじゃないかというようなむなしい気持ちさえも実は持つわけでございます。特に去年の夏、三原
長官の指示で有事法制の研究を開始されてもう一年以上経過しました。この間に何を研究されたかということを思いますと、やっぱりもう少し防衛庁の責任においてこの問題には真正面から取り組んでいただく責任があるんじゃないかと、こう実は私は思うわけでございます。慎重にやられることは大切なことだと思いますけれ
ども、やはり真正面から真剣に同時に取り組んでいただきたい、こういうことでございます。
第二の問題は、実は有事対処のリードタイムの問題であります。現在の法令では、もう申し上げるまでもございませんけれ
ども、防衛出動が下令されなければ自衛隊は具体的にはほとんど何も行動できません。待機命令によっては施設内におけるところの準備でございまして、予備自衛官の招集さえもできないのはもう言うまでもないことでございます。もちろんおそれがある場合にも下令ができるんだと、したがって相当のリードタイムがあるんだと、準備はできるんだと、こういうお
考えのようにも思うわけでございます。また、平時からの即応体制の整備、これがもうもちろん基本である。だからこれを優先をするという
考え方、これももちろん納得できるわけであります。しかし、先ほ
どもしましたけれ
ども、GNPの一%以内という現在の
考え方、姿勢で、それじゃいつの日になったならば平時からの即応体制というのはできるんだという懸念を実は持つわけです。
そういう
意味において私はもう毎回この
委員会の質問では、もっとひとつ元気出してやっていただけないかということを申し上げておるわけであります。これはもう即応体制を向上するという以外の何ものでもございません。私は広範多岐なかつ相当の時日を要するところの対処準備の期間というものと、これはよく言われます陣地構築の問題ひとつ
考えてみてもそうでございます。この防衛出動下令になって、そして現在の状況でございますと土地の収用、これはもう政令等で決まりました。ちゃんと整備できました
段階においても収用をやる、資材を運ぶ、そしてそこでもって初めて陣地をつくる。そういうことではやっぱり実際の場合とマッチしない事態が起こる可能性が強いんじゃないかと、こう思うわけであります。もちろん私が言うまでもなく防衛庁その辺のことは一番よく御
承知でございますが、
長官も私は年度防衛計画の報告等を聞かれてこういった問題点というものは十分に御
承知になっておられるんじゃないかと、こう思うわけでございまして、ひとつこういう
意味でいま防衛出動下令後から有事があるんだと、有事法令の研究はこの防衛出動下令後の法令を整備するんだというこの有事の概念というものをもう一度やはり真剣に
考えて実効性のあるものにしていただかなければならないんじゃないか、こういうようなことを強く
考えるわけでございます。蛇足でございますが、そうでなければ訓練精到な自衛隊もまた有事事態に対処できない存在となってしまうということを実は恐れるわけでございまして、きょうはもうこの問題についてはこれ以上申し上げる気はございません。私いまるる申し上げましたこの点につきまして
長官の総括的な御所見を承らしていただければ幸いだと、こう思うわけでございます。