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1978-10-17 第85回国会 参議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月十七日(火曜日)    午前十時三十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         桧垣徳太郎君     理 事                 岡田  広君                 林  ゆう君                 片岡 勝治君                 井上  計君     委 員                 源田  実君                 竹内  潔君                 塚田十一郎君                 林  寛子君                 原 文兵衛君                 堀江 正夫君                 川村 清一君                 野田  哲君                 山崎  昇君                 和泉 照雄君                 黒柳  明君                 山中 郁子君                 森田 重郎君                 秦   豊君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)      稻村左四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        国防会議事務局        長        久保 卓也君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     角野幸三郎君        総理府人事局長  菅野 弘夫君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁経理局長  原   徹君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁施設        部長       高島 正一君        防衛施設庁労務        部長       菊池  久君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        外務省アメリカ        局外務参事官   北村  汎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣送付予備審査) ○特別職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣送付予備審査) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣送付、予備審査) ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査  (国務大臣靖国神社参拝問題に関する件) ○国の防衛に関する調査  (国の防衛問題に関する件)     —————————————
  2. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  本日の議事に入る前に、塚田委員長から発言を求められておりますので、これを許します。塚田君。
  3. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 実は、去る三日の委員会におきましてごあいさつを申し上げますべきところ、よんどころない要務のために欠席をいたしまして、まことに申しわけなく、深くおわび申し上げます。  過ぐる一年有余の間、委員長のいすを汚さしていただいておりましたが、その間、皆々様の温かい御協力をいただきまして、大過なく職責を全うすることができましたことを心から厚く御礼申し上げます。まことにありがとうございました。(拍手)     —————————————
  4. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。稻村総理府総務長官。
  5. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律案及び特別職職員給与に関する法律案について、一括してその提案理由及び内容概要について御説明申し上げます。  まず、一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  本年八月十一日、一般職職員給与について、俸給及び諸手当改定等内容とする人事院勧告が行われたのでありますが、政府としては、その内容を検討した結果、勧告どおり昭和五十三年四月一日からこれを実施することとし、このたび、一般職職員給与に関する法律について、所要改正を行おうとするものであります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、指定職俸給表を除く全俸給表の全俸給月額を引き上げることといたしております。  第二に、初任給調整手当について、医療職俸給表(一)の適用を受ける職員に対する支給月額限度額を十七万円に引き上げるとともに、医療職俸給表(一)以外の俸給表適用を受ける職員のうち、医学または歯学に関する専門的知識を必要とする官職を占める職員に対する支給月額限度額を三万五千円に引き上げることとし、また、右以外の初任給調整手当については、その支給対象官職を特殊な専門的知識を必要とし、かつ、採用による欠員の補充について特別の事情があると認められる官職人事院規則で定めるものとすることといたしております。  第三に、扶養手当について、配偶者にかかわる支給月額を九千円に引き上げるとともに、配偶者以外の扶養親族にかかわる支給月額を二人までについてはそれぞれ二千七百円に引き上げ、この場合において、職員配偶者がない場合にあっては、そのうち一人については五千五百円に引き上げることといたしております。  第四に、通勤手当について、交通機関等を利用して通勤する職員の場合、全額支給限度額月額一万五千円に引き上げるとともに、自転車等を使用して通勤する職員または交通機関等自転車等を併用して通勤する職員についてもそれぞれ通勤手当支給月額を引き上げることといたしております。  第五に、期末手当について、十二月に支給する期末手当支給割合を百分の二百から百分の百九十に引き下げることといたしております。  第六に、義務教育等教員特別手当について、支給月額限度額を二万二百円に引き上げるとともに、幼稚園等に勤務する教員に対しても、権衡上必要な限度において、この手当を支給できることといたしております。  以上のほか、附則において、この法律施行期日適用日俸給表改定に伴う所要の切りかえ措置等について規定いたしております。  次に、特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、ただいま御説明申し上げました一般職職員給与改定に伴い、特別職職員について所要改定を行おうとするものであります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  秘書官の俸給月額一般職職員給与改定に準じて引き上げることといたしております。附則においては、この法律施行期日適用日等について規定しております。  なお、内閣総理大臣国務大臣等一般職における指定職に相当する職以上の特別職給与については据え置くこととしております。  以上が両法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 桧垣徳太郎

  7. 金丸信

    国務大臣金丸信君) ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、このたび提出された一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案の例に準じて、防衛庁職員給与改定を行うものであります。  すなわち、参事官等及び自衛官俸給並びに防衛大学校及び防衛医科大学校学生学生手当一般職職員給与改定の例に準じて改定するとともに、営外手当についても改定することとしております。  なお、事務官等俸給のほか、扶養手当通勤手当期末手当及び医師等に対する初任給調整手当につきましては、一般職職員給与に関する法律規定を準用またはその例によることとしておりますので、同法の改正によって一般職職員と同様の給与改定防衛庁職員についても行われることとなります。  この法律案規定は、公布の日から施行し、昭和五十三年四月一日から適用することとしておりますが、初任給調整手当に関する経過措置規定については、昭和五十四年一月一日から施行することとしております。このほか、附則において、俸給の切りかえ等に関する事項について一般職におけるところに準じて定めております。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  8. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 以上で三案に対する説明の聴取は終わりました。  三案に対する質疑は後に譲ることといたします。     —————————————
  9. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 次に、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査をあわせて議題といたします。  この際、安倍内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。安倍内閣官房長官
  10. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 内閣総理大臣その他の国務大臣地位にある者であっても、私人として憲法信教の自由が保障されていることは言うまでもないから、これらの者が、私人立場神社仏閣等参拝することはもとより自由であって、このような立場靖国神社参拝することは、これまでもしばしば行われているところである。閣僚地位にある者は、その地位の重さから、およそ公人私人との立場使い分けは困難であるとの主張があるが、神社仏閣等への参拝は、宗教心あらわれとして、すぐれて私的な性格を有するものであり、特に、政府行事として参拝を実施することが決定されるとか、玉ぐし料等の経費を公費で支出するなどの事情がない限り、それは私人立場での行動と見るべきものと考えられる。  先般の内閣総理大臣等靖国神社参拝に関しては、公用車を利用したこと等をもって私人立場を超えたものとする主張もあるが、閣僚の場合、警備上の都合、緊急時の連絡の必要等から、私人としての行動の際にも、必要に応じて公用車を使用しており、公用車を利用したからといって、私人立場を離れたものとは言えない。  また、記帳に当たり、その地位を示す肩書きを付すことも、その地位にある個人をあらわす場合に、慣例としてしばしば用いられており、肩書きを付したからといって、私人立場を離れたものと考えることはできない。  さらに、気持ちを同じくする閣僚が同行したからといって、私人立場が損なわれるものではない。  なお、先般の参拝に当たっては、私人立場参拝するものであることをあらかじめ国民の前に明らかにし、公の立場での参拝であるとの誤解を受けることのないよう配慮したところであり、また、当然のことながら玉ぐし料は私費で支払われている。  以上が内閣総理大臣等靖国神社参拝についての政府としての統一見解でございます。
  11. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 野田哲

    野田哲君 ただいまの官房長官見解でありますが、まず前提として承っておきたいと思うんですけれども、八月十五日の参拝の前に、これは前回の内閣委員会でも私の質問でお答えになっていると思うんですが、あの参拝要請があったこと、その要請については、これは総理としての公的参拝要請があった。このことは間違いないですね。
  13. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 参拝要請並びに参拝をすべきでないという要請等がこもごも政府に対して行われたわけでありますが、参拝要請については総理大臣として参拝をしてほしい、こういう要請でございました。
  14. 野田哲

    野田哲君 総理大臣として公的に参拝をしてほしいという要請があって、しかも総理は当時の新聞報道で公的でも構わない、こういう発言があったということが新聞に報道されているわけであります。だからこれは公的参拝要請にこたえたという客観的な条件が整っていると思うんです。  そこで伺いますけれども、ただいまの見解は、一九七五年五月三木内閣の当時の稻葉法務大臣自主憲法制定国民会議出席をされたことが非常に問題になった。その際三木総理見解というのは、閣僚地位重みからして公私区別はつけられない、こういう見解を表明をされて、その趣旨が一応確認をされて稻葉問題決着がついたわけです。こういういきさつがあるわけであります。  それから、翌年の八月に三木総理靖国神社参拝されたことについて当委員会でそのことについての質疑が行われておるわけですが、そのときに吉國法制局長官発言趣旨は、稻葉法務大臣が前年自主憲法制定国民会議出席をしたことについては、これは法務大臣稻葉修という形で紹介をされたから大変問題になったんだ、今回のこの三木総理参拝については公用車も使っていない、公職者を随行させていないし、記帳も公的な肩書きをつけなかったと、そういうことで稻葉法務大臣法務大臣稻葉修として紹介をされた、このことと態様が違っている。そういうことで、公用車を使わなかったことや、あるいは公職者を随行させなかったことや、公的な肩書きをつけなかったことによって、私人としての三木武夫という立場を明らかにしたんだ、こういうふうに答弁をされているわけであります。  これらの見解といまの官房長官見解は全く相反した形になっているんですが、そういたしますと、私が先ほど稻葉法務大臣の問題に絡んでの三木総理発言、あるいは三木総理靖国神社参拝されたことに対する私的参拝であるという立場で幾つかの条件を挙げられている。これはそれぞれ国会の場で公式に発言をされているわけでありますけれども、この三木総理見解吉國法制局長官見解をいまの見解は全面的に変更される、こういう内容になっているんですが、そういうことなんですか。
  15. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほど総理大臣の先般の靖国神社参拝は公的なものではないかと、こういうお話でございましたが、総理大臣靖国神社参拝に当たりましては、事前に私から公の席におきましてこの福田総理大臣靖国神社参拝私人としての立場参拝をするものであるということを明確にいたしておりますから、したがって福田総理靖国神社参拝というものはあくまでも私人としての立場で行われたものであるということでございます。  なお、稻葉法務大臣、当時の法務大臣自主憲法制定会議への出席と、この靖国神社参拝とはおのずからその性格は全く異なるものである、こういうふうに私としては判断をいたしておりますが、その間のことにつきましては法制局長官から見解を申し上げさしていただきます。
  16. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 内閣総理大臣靖国神社参拝の問題に関しましては、野田委員からの御質疑を受けましてことしの四月の二十五日、それから八月の十七日二度にわたって私から詳細に御説明申し上げたとおりでございまして、先ほど来、稻葉元法務大臣自主憲法制定国民会議への出席の際の当時の三木総理大臣の御発言等引き合いに出して、そしてその場合の政府説明と今回の靖国神社に対する福田総理参拝とはどう違うんだ、政府説明はおかしいではないかというふうな趣旨のことを御質問になりましたが、そのときにも私申し上げたつもりでございますが、もともと神社仏閣への参拝というのは、これは私人としての信仰心あらわれでございまして、原則としてこれは私人行為と見るのが普通の常識、素直な見方であって、特に国の行事として行うとか、玉ぐし料公費で出すとかというようなそういう特別な事情がない限りは、むしろこれは私人行為として、憲法で言えば第二十条の第一項の信教の自由を保障している。むしろそちらの方の問題として考えるべきものでありまするから、軽々——軽々にと言ったら語弊があるかもしれませんが、たとえば公用車を使ったとか、肩書き内閣総理大臣という官職名を記したからとか、そういう一つ一つのことをとらえ上げて、そして神社参拝は、それは憲法二十条三項違反ではないかというふうに言われるのは、かえって私の方から言いますと心外に思うくらいでございまして、ただいま申しましたような特別な事情がない限りは、神社参拝することも、お寺にお参りになることも、これは本当に御本人の御自由であって、むしろこれは保障してさし上げなければ憲法違反になるということすら言いたいくらいでございます。  それから稻葉大臣のときの当時の三木総理大臣の御説明は、それはつまり法務大臣としての地位重みから、公人私人との使い分けは困難であるという表現になっております。それであるから、当時三木総理大臣とされましては自分内閣憲法改正はしないということを方針にしている、その三木内閣閣僚自主憲法制定国民会議というところへ出席をして、そして法務大臣という名前で紹介をされて、そのまま別にそれに対してお答えもなく壇上に座っておったじゃないかとか、そういうようなことがあって、結局三木内閣憲法改正意図がないのにかかわらず、その閣僚の一人がそういう席上に出ることは、それはいかにも国民三木内閣憲法改正意図があるんじゃなかろうかという疑いを抱かせるおそれがあると。したがって、そういうことは慎んでほしい。自分内閣総理大臣である限りは、今後は現職の国務大臣にそういう憲法改正会議出席するようなことはさせませんということを委員会で御発言がありまして、それであの問題はそれで決着がついたと、かように私は理解しております。  それで、神社参拝と政治問題を論ずるそういう集会に出るということとは、これはやはり本質的に問題が違うわけでございまして、政治問題を論ずる会議に出るということは、これは公的な立場で十分出席することが考えられるわけでございまするが、神社仏閣への参拝、そういうものは先ほども申しましたように、事柄性質上、本来的にこれは私人行為であると見るのが素直なんであって、特別な事情がない限りは公的だといって憲法違反云々を問題にされる筋合いではないというふうに私は考えている次第でございます。
  17. 野田哲

    野田哲君 心外なのは私の方ですよ。あなたが心外じゃないのです。私の方が心外なんです。いいですか。  今回統一見解を求めたのは稻葉問題決着をつけたときの三木総理見解、つまり閣僚地位重みからして公私区別はつけられないんだと、こういうことで、法務委員会、それから当委員会で大きな議論があって、この三木総理発言で一件落着をしたわけなんですよ。それから吉國法制局長官は、やはりこの委員会三木総理靖国参拝と、それから当時の稻葉法務大臣の問題を引き合いに出して、私人であるということの立場を明らかにするために公用車も使わなかった、あるいは公職者の随行もつけなかった。記帳総理大臣という肩書きは外して記帳した、こういうことで私人としての立場を明らかにしたんだ、こういうふうに吉國さんは説明をされているわけです。それと今回の、この前の八月十七日の法制局長官見解がそれぞれ異なっているから私は統一見解を求めたわけなんです。あなたはいま稻葉法務大臣が当時出席をされた自主憲法を制定しようとする会議、つまり政治的な問題を論ずるところと、福田総理靖国参拝をしたのとはおのずから性質が違うんだ、こういうふうに説明があったわけですけれども、いま靖国神社のあり方をめぐってどういうふうに国論が動いているか、あなたは承知されていないのですか。靖国問題の扱いは、まさにいま政治的な問題なんです。靖国法制定という大きな動きがある。これと靖国参拝というのは無縁ではないわけです。まさに政治的な問題なんですよ。これをいまそういうふうな説明をされることは、私どもとしては納得できない。だから結論として、この問題だけ長々とやっておるわけにいきませんから伺いますけれども、いまの見解というのは稻葉問題を処理をされた三木総理発言、それから三木総理自身靖国参拝についての吉國法制局長官の当委員会での発言、これを全面的に変更される内容になっていると思んですが、そういうふうに受けとめざるを得ないと思うのです。なぜそういうふうに、わずか三年の間に政府見解がこうも変わったんですか。その理由を伺いたいと思います。
  18. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 当時の稻葉法務大臣の自与憲法制定国民会議への出席の場合の問題と、それからことしの八月の福田総理大臣靖国神社への参拝と、この問題二つについての私たちの考え方がそんなに真っ向から違うというふうには考えておりません。その理由を申し上げます。  まず、当時三木総理大臣法務大臣としての地位重みから、公人としての行為と、私人としての行為とは使い分けがむずかしいというふうにおっしゃいました。その真意は私がよく考えてみますると、それは本来的にその行為私人としての行為か、公人としての行為かは区別がつかないというのではなくて、はたから見て、世間の人から見て、あるいは国民が見て法務大臣という地位にある人が、そういう場所にお出になると、そうするとそれは公的立場でお出になったのか、私的立場でお出になったかの判断がつけにくいんだと、こういう意味だろうと思うのですね。問題は、そのお出になったその行為そのもの性格なんであって、国民あるいは第三者が見てその区別がつきにくいかどうかということと、これは実は面が違うわけなんですね。それで、当時の三木総理大臣のおつもりでは、それは法務大臣としての地位重みから非常に区別がつきにくいから、それで国民をして三木内閣憲法改正を考えているんではないかというような疑念を起こさせるおそれがあると、そこで今後はそういうことはさせませんという御発言になったわけなんですね。ところが、神社参拝の話は、これは先ほど来申しましたように、政治問題を論ずる場所じゃございませんので、これはそこでいろいろ神仏に対して祈念をするというのが事の本質でございますから、ですからこれはやはり原則としてはもう私人行為であると、私的行為であると見るのが素直な立場でございます。そういうふうに私は考えております。で、当時の吉國法制局長官説明も、なるほどそれは三木総理大臣靖国神社参拝されましたときには、それは公用車は使わなかったとか、あるいは記帳についても官職名は番かなかったとか、いろんな事例を申し上げております。しかし、それと同時に、実はそれは国民のそういう誤解を、つまり公的な資格で靖国神社参拝したのではなかろうかという疑念があると困るので、それでそれを払拭するために当時の井出官房長官がやはり前もって、三木総理大臣靖国参拝はこれは私的なものであるということを十分PRをしてあるんで、国民疑いはこれで心配がないと、その上さらにそういう自動車の使い方とかあるいは記帳の仕方についても三木総理大臣はこういう手だてをおとりになったんですと、こういう説明だったわけなんですね。結局、国民のその疑念を晴らすといいますか、疑いがないようにするというのが実は問題なんであって、事柄のその参拝行為それ自身が私的なものであるということについては私と吉國長官との間に意見の相違は全くありません。
  19. 野田哲

    野田哲君 公人私人使い分け閣僚地位重みからして困難であると、こういうことは、それが行く先が自主憲法制定国民会議であろうがどこであろうが、これは行く先を選んで言われた言葉ではないはずです。閣僚地位重みからして公私使い分けは困難であるというのは、これはすべての場合にやはり閣僚というものは公私使い分けはできないんだと、こういう見解であると私は理解をしているんです。  それから、あなたは靖国がいま国政の場でどういう議論になっているか、どういう底流があるかということをまさか承知されていないとは思われないのです。これは最もいますぐれた政治的な問題になっているわけですよ。そこへ三木総理参拝のときとは違った対応で参拝をされているということは、明らかにこれは国民にとっては疑惑が起きているわけです。だからこそ官房長官のところにも要請なり抗議もいっているし、私もこれは問題にしているんです。だから、いまのこの問題、また機会を改めて私は問題にいたしたいと思いますのできょうはこれで終わりますけれども、いま官房長官が読み上げられたものをこれは文書にして提出をお願いをしたいと思うんですけれども、そのことをお願いしてこの問題についての質問は終わりたいと思うんで、委員長、しかるべく御配慮を願いたいと思います。
  20. 桧垣徳太郎

  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 文書にして提出をいたします。
  22. 野田哲

    野田哲君 外務省、見えておりますか。  まず、先日熊本でちょっとしたハプニングがありましたが、米軍の弾薬の問題に関連をして、熊本の金融機関の方へテレックスが舞い込んだということで問題になっておりますが、この経過についてはアメリカに照会をされ、いきさつは外務省あるいは防衛施設庁では承知をされていると思うんで、その経過をまず御報告をいただきたいと思います。
  23. 北村汎

    説明員(北村汎君) いま野田委員から御指摘のありました、在日米陸軍の司令部から送信されましたテレックスが誤って受信されたということにつきましては防衛庁からも連絡を受けておりまして、テレックスの内容にあるMの142ということにつきまして防衛庁からも照会いたしましたところでは、これは訓練用の核の模擬装置であるということでありました。そこでアメリカ側、すなわちここの、東京の米国大使館にMの142を米軍が日本の国内で保有しているかどうかということを問い合わせましたところ、その事実はないということを確言いたしております。これは在京の米大使館が三十日に行いました発表の概要でございますが。それは、本件テレックスの電文はアメリカの国防省から世界各地にあります弾薬庫全部に対して伝達するように指示された電文であって、これを在日の米陸軍の司令部が日本にある弾薬庫すべてに対して送信したということで、その内容自体は秘密扱いではございません。これは米軍がいろいろ弾薬庫に物があるなしにかかわらずそういう取り扱いに対しての注意事項をすべての弾薬庫に出すと、そういうルーティーンの連絡であったということを申しまして、そうしてなおアメリカ軍は日本国内にこの電文にありましたこのMの142という核の模擬装置というものは、これは日本には保有していないということを申しております。  以上でございます。
  24. 野田哲

    野田哲君 その後、恐らく、あの対象というのは江田島にある秋月に所在する司令官あてのものであったというふうに承知をしているんですが、秋月で管理をしている在日米陸軍の弾薬庫というのは広島県で川上弾薬庫それから広、こういうふうになっているわけですが、あの直後の十月の十一日から広の黄幡弾薬庫とそれから東広島市にある川上弾薬庫、ここへ向けて弾薬が陸揚げをされてトラック輸送が相当頻繁に行われているわけです。この陸揚げに際して4という表示を掲げてこの陸揚げが行われている。この4というマーク、これは一体どういう性質のマークですか。
  25. 北村汎

    説明員(北村汎君) 私どもその4という数字がどういう意味であるかということをつまびらかにしておりませんけれども、これはそのいろんな弾薬庫に運ぶものの種類その他によって、その注意を数字でもって分類しておるというように聞いております。で、4が何を意味するかということは私ども存じておりません。
  26. 野田哲

    野田哲君 施設庁長官は御存じでないですか、4のマークを。
  27. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 承知しておりません。
  28. 野田哲

    野田哲君 この4というマークは、いままで何回も国会でも問題になっている。この4というマークは核兵器、それからCB兵器、これの表示をする意味だということは、いままでの米軍の陸軍の発行資料の中で何回も指摘をされている。現にこの広の黄幡弾薬庫で、4のマークをつけて陸揚げがされていた。ここに写真が載っているわけです。そして、川上弾薬庫の中にもこの4のマークの入った半地下的な構造を持った弾薬庫があるのです。こういうふうに言われているわけでありますけれども、その点はあなた方は承知されていないのですか。
  29. 北村汎

    説明員(北村汎君) 先ほども申し上げましたように、4の数字が、それが核の弾薬を意味する、そういうようなことは私どもは承知しておりませんが、もともと、先ほども申し上げましたように、アメリカ側は核の模擬装置でさえも日本に置いていないということを言っております。あまつさえ核弾薬というものを日本に持ち込みますためには、これは何度も政府側が答弁いたしておりますように、これは事前協議の対象に係る問題でございます。日米間の信頼に基づきまして、アメリカが核弾薬を持ち込むときには日本に事前協議を申し込むということになっております。いままでそういうことは一切なかったわけでございますから、私どもといたしましては、日米関係の信頼感に基づきまして、そういうことは一切ないと、一点の疑いも持っておらないところでございます。
  30. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) ただいま野田先生の御質問の件につきまして施設部長が米側との連絡の結果承知しているところがあるようでございますので、お答えさせていただきます。
  31. 高島正一

    政府委員(高島正一君) なお、先生のいま御指摘の点につきましては、詳細な調査を必要といたしますけれども、私どもいままで事務的に米軍に照会した限りにおきましては、4という標識は消火上の区分であって、一般弾薬以外の何物でもないという米軍から事務的な連絡を受けておるところでございます。  なお、詳細についてはさらに外務宵当局とも協議いたしましてお答え申し上げたいと、かように存じます。
  32. 野田哲

    野田哲君 4というマークはそういう性質のものでないでしょう。これは特殊な兵器を表示をする場合にこの標識を使う、こういうことが過去にも問題になったことがあるわけです。詳細にあなたの方では調査をするというのであれば、それで本日はこの問題とどめますけれども、米軍の弾薬の取り扱いの中の資料に4というマークはどういうものを、どういう場合に表示をするかというのがあるはずでありますから、これはもっと具体的に照会をして、特に広島県のこの広、それから川上弾薬庫、ここに向けての輸送というのは、プレースの中から東広島市に向けて、先般当委員会でも調査に行った経過があるわけでありますけれども、広島県の中心部の人口過密地帯、そうして非常に道路の狭いところを輸送しておるわけでありますから、広島県の住民がこれによって非常な不安を受けているわけでありますから、事実をもっと具体的に明確に示してもらいたい。このことを要望しておきたいと思います。  次に、まず金丸防衛庁長官に伺いますけれども、あなたはことしの六月にアメリカを訪問されて米軍に対する思いやりということをしきりに帰国されてからも強調されている。一体この昭和五十四年度に向けて、あなたがアメリカへ行って約束をされてきた思いやりというのはどういう具体的な実行をされようとしているのか、この概要をまず伺いたいと思います。
  33. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は、日米関係というものは日本の安全のために不可欠であるという基本的な考え方を持っておるわけであります。そういう中でドル安円高というこの時点で、これはアメリカから要求されるものでなくて、いわゆるその信頼性を高めるということであるならば、日本自体がこういうことについて考えるべきじゃないかという私は考え方であるわけであります。アメリカへ行って、六月お話し申し上げたのは、私は金額を申し上げたわけでもないが、アメリカの日本における駐留軍の財政が逼迫をしておるということも、われわれも十二分に承知いたしておるわけでありまして、そういうような考え方の中でいわゆる地位協定の範囲内でできるだけの思いやりというものが私は日米関係の信頼性を高める。こういうことで、この件につきましてはアメリカのブラウン長官とも話し合ったわけでありますが、その詳細につきましては施設庁長官から説明を申し上げます。
  34. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) ただいま大臣からお話がございましたように、私ども在日米軍の駐留経費の負担が昨年来の円高ドル安等の傾向に伴って大変窮迫してきておるという事態に照らしまして、一つは日米安保体制の信頼性を高める。その中核をなす在日米軍の駐留が円滑に行われるようにしなければならないということと同時に、駐留経費のドルベースにおきます実質的な負担の増大が、これが現在いま二千人おります駐留軍従業員の雇用あるいは労働条件等にいろいろな悪い影響が及ぶようなことがあってはならないということを考えまして、地位協定に抵触しない範囲で何をなし得るかということを鋭意検討してまいっているわけであります。その内容といたしまして、一つは在日米軍の施設の改善でございますが、これについては八月末に総額約百四十一億円の概算要求をいたした次第でございます。これはすでに御説明申し上げておりますとおり、隊舎あるいは家族宿舎の建設、あるいは貯油タンクの改築、サイレンサーの新設等でございます。それからこういう施設の改善の面のほかに、さらに直接の円負担に関連いたしますところの大宗をなす労務費について負担の可能性がありやなしやということを鋭意検討しておるところでございますが、これにつきましてはまだ結論を得ておりません。結論を得まして積極的に対処すべきであるということになりました暁には、予算の追加要求と申しますか、組みかえ要求をいたしたいと考えておりますが、まだ具体的に結論がまとまるに至っておりません。そういう状況でございまして、いずれにしましても私どもはそういう日米安保の中核である在日米軍の駐留の円滑化と同時に、駐留軍従業員並びにその家族の雇用、生活を安定した基盤に置くということを念頭に置きながらどう対処するかということを考えておるところでございます。
  35. 野田哲

    野田哲君 まず、基本的な問題ですが、金丸長官は、この円高ドル安によって在日米軍が困っているから、それは向こうから要求されるべきものではなくて、日本側からやはり率先してそれに対しては思いやりの立場で処置をすべきものだと、こういうふうにおっしゃっているわけですけれども、問題は、この在日米軍の取り扱いについては地位協定で定められているわけですね。地位協定というのは、これは国会で批准をした条約に相当する扱いで扱われているわけです。アメリカの国会ではこの地位協定は批准していないけれども、日本では国会で批准をしているわけです。この地位協定に定められていることが円高ドル安という通貨の変動によって中身がどんどん変わってくるという扱いが果たしてこの地位協定の扱いとして妥当な措置に該当するのですか。その点の見解をまず伺いたいと思います。
  36. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 御承知のとおり、地位協定におきまして米軍の駐留に伴う経費の負担関係の原則が定められておるわけでありますけれども、その地位協定の二十四条におきまして一々万般の経費の細目について負担の割りようを細かく規定しているわけではないわけでございます 原則的な考え方を規定してある。その範囲内においてどう日米が負担するか、どこまでが地位協定上の義務であり、あるいはそうでないかというふうなところは、必ずしも地位協定上明確に明文で規定されておるわけではないわけでございます。これについては、やはり両国政府間の話し合いによりまして、地位協定の原則のもとで具体的な負担関係を決めろということでございまして、そういう意味におきまして、決して円高ドル安によって地位協定そのものの意味合いを変えると、そういうふうなことを考えているわけではないわけでございます。
  37. 野田哲

    野田哲君 しかし、発想そのものが、金丸長官説明されたように、円高ドル宏の状態によって日本側としてそういう好意的な立場をとるんだと、こういうことになってくると、円高ドル安の状態がこれからずっと続く限りは米軍には同じ事情がずっと続いていくことになるわけです。そうすると、やはりこの円高ドル安状態が続いていく限りは毎年毎年何らかの形でこの特別の措置を、それをカバーするためにとっていくと、こういうことになるんじゃないんですか、どうなんですか。
  38. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 先ほども申し上げましたように、地位協定において経費負担関係の原則が定められておるわけでありますが、われわれが考えておりますのは、この地位協定の原則に抵触しない範囲で何をなし得るかということでございます。在日米軍は約十億ドルの駐留経費を要するとされておりますが、その過半が円払いである。昨年以来の円高ドル安というのは非常に異常なる状態でございまして、三割以上の円レートの高まりということがございまして、在日米軍の財政状況が非常に窮迫しておるということは不実であるわけでございます。  そこで、これについて、またこれを放置しますと何らかの形で従業員にしわが寄るおそれもないではないかということをあれこれ考えまして、いろいろ知恵をしぼっておるわけでございますが、私どもはこの地位協定に抵触しない範囲で何をなし得るかということをあくまで考えておるわけでございまして、これが際限なくどこまでももしそういう財政の窮迫状態が続くならば、現行の地位協定のもとで何でもできるというふうには考えていないわけでございます。地位協定上の定められたところでどこまでのことをなし得るか、現在はまだ概算要求の段階でございますので、いずれ通常国会におきまして、正式に政府としての予算決定をいたしまして、御審議をお願いするわけでございますが、その際におきましては、この地位協定との関連におきましてその意味合いを十分に御説明し、御納得をいただけるようにしなければならないことはもちろんでございます。際限なくというふうなことはあり得ないわけでございまして、当然おのずからなる限度があるべきものと考えております。
  39. 野田哲

    野田哲君 行政協定から地位協定に一九六〇年に協定の内容が変わりましたね。その行政協定から地位協定に変わったときに、前の行政協定によっては毎年一億五千五百万ドルの防衛分担金を日本から米軍に支出をすることになっていた。そのときの藤山外務大臣の国会での説明では、行政協定の内容を新しく地位協定に改めることによって、行政協定に定めていた年間一億五千五百万ドルの防衛分担金は必要がなくなったんだ、もう日本はこの地位協定に定める以外には財政的な負担をする必要はなくなったんだと、こういう説明を麗々しく国会でやっておられるわけです。それをまた今度百何十億かやろうとしているわけです。  そこで、まず第一点として伺いたいのは、外務省の方に伺いますが、この行政協定の当時、一億五千五百万ドルを日本側から防衛分担金として支出をするという取り決めに際して、この一億五千五百万ドルというのは、これは日本の通貨で払うと、こうなっているわけでしょう。日本の通貨で払うに当たっては、この日本の通貨の計算の仕方、これがあったと思うのですが、それはどういうふうになっておりましたか。
  40. 北村汎

    説明員(北村汎君) ただいま突然の御質問でございまして、私どもいまつまびらかにいたしませんので、早速調べまして返答させていただきます。
  41. 野田哲

    野田哲君 このときの取り決めは、ドルとの関係で、時の相場で払えと、こういうことになっていたわけです。私の調べたところではそういうことになっていたと思う、時の相場で払えと。そうして今度は行政協定が地位協定に変わって、この一億五千五百万ドルの防衛分担金はなくなった。そして米軍が使う施設区域あるいは労務役務の関係が地位協定で取り決められた。ところが、その後の現在の円高ドル安と、こういう状態になってきたときには、今度はそれに相応して日本側からまた新たに負担を行うというやり方、これは行政協定当時からのいきさつからして私は筋が通らないんじゃないか、こういうふうに思うのです。  そこで、具体的に伺いますけれども、サイレンサーというのは、これはまさに飛行場の施設そのものじゃないですか、どうですか。
  42. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 概算要求でお願いしておりますサイレンサーは、嘉手納飛行場におきますKC135という給油機のための消音装置でございます。これはエンジンテスト等をいたします場合に周辺に非常な騒音をまき散らすということを軽減防止するための施設であると承知しております。
  43. 野田哲

    野田哲君 だからサイレンサーというのは、飛行場の施設そのものですね、こういうものまで含めて円高ドル安だからということで、つまり米軍の飛行場の設備を日本側の金でつくってやる、こういう取り決めは地位協定の第何条をどういうふうに読めばできるんですか、これは。
  44. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 地位協定の二十四条の二項におきましては、施設区域等につきましては、この地位協定の存続期間中日本側の負担で提供するということになっておりまして、サイレンサー等の施設もこの地位協定二十四条の二項によって根拠が与えられておるというふうに考えております。
  45. 野田哲

    野田哲君 この施設区域ということの解釈について当時の法制局の第一部長であった山内さんが施設区域等の問題で説明をされているものがあるわけですが、これは「時の法令」というので説明されているわけですけれども、「施設とは土地または公有水面がこれらの運営に必要な現在の設備備品及び定着物と一体的に提供された場合の概念である」と、つまり地位協定締結をされた当時に取り決められた土地と、その土地の上にある建物、一体的にこれが提供された場合のことだと、こういうふうに説明をされているわけです。確かに地位協定の中では施設区域というのは非常に包括的で限定をされてはいない、特定をされてはいない。しかし新たにここで嘉手納飛行場に日本側の負担でサイレンサーつくるというような措置をとることは、これは地位協定を審議する際の政府側の見解とかなりこれははずれた措置になるんじゃないですか、どうですか。
  46. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 私どもはそういうふうには考えておりませんので、地位協定上その施設区域の定義は存在いたしませんけれども、その内容は建物工作物等の構築物及び土地公有水面を言うものというふうに解されておりまして、昭和二十七年以来一貫してこのような解釈に即して行われておるわけでございます。サイレンサーというのは、本来の軍事的な意味合いにおいては必要とするものではございません。これは周辺の地域住民に対して騒音公害を防除するという目的のために必要とするものでございまして、地元からも——御承知のとおり嘉手納の居住区域の方におしりを向けるかっこうでKC135の駐機場がございます。大変なエンジンテストの際に騒音が出るということで地元からも御要望がありまして、米側にもその旨伝えてはあったわけでございますけれども、なかなか米軍の予算というものは、特に施設関係につきましては、在外経費の節約という方針もございまして、こういう面まで手が及ばないということでこれは日本側の負担において地域住民のためになる施設であるということで提供しようというのが私どもの考え方でございます。
  47. 野田哲

    野田哲君 この施設区域というのは、地位協定発足の当時、それから沖繩については沖繩返還のときに、この地位協定に基づく具体的な取り決めとして土地それから地上にある建物等の施設、これを日米合同委員会で具体的に取り決められているわけでしょう。その取り決めるに当たって、当時の法制局の第一部長は、先ほど申し上げたような形で土地と一体的に提供された場合の概念だと、こういうふうに施設について述べているわけです。だから、すでに取り決められた土地あるいはそれと一体的に提供された建物等の施設、これが現にアメリカ側との間で具体的な細目を決めているわけでしょう。そこへ新たにその地上に今度は別のものをつくってやる、しかもそれが飛行場の施設そのものだと、こういうことになってくると、これは一体地位協定に定めている内容というのは際限なく拡大をしていくんじゃないか。一体この歯どめというのはどういう形でできるんですか。歯どめができないじゃないですか。あなた方の方は予算さえ承認をされれば、それですべて可能だと、こういうことでどんどん地位協定の解釈、範囲を拡大をしていく、これ際限がないじゃないですか。どうなんですか、この点は。
  48. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 先ほど私が申し上げました施設区域の内容というのは、建物、工作物等の構築物及び土地、公有水面を言うということで一貫してこういう解釈に即して行われておりますということを申し上げましたのは、四十八年の三月にそういう趣旨で衆議院における御質問に対して政府としてお答えしておるところでございます。もちろん具体的な提供の手続といたしましては、国内的な措置、予算措置等がとられました場合に、施設特別委員会、さらに合同委員会の議を経まして米側に提供されるという手続になるわけでありますが、私どもこれが地位協定の二十四条にもとるものというふうには全く考えないわけでございます。  歯どめというお話がございましたが、これはいかなる施設を提供すべきかということにつきましては、その施設の重要性、緊要度、あるいは経費のかかることでございますから、財政負担の関係、あるいはその施設の設置される地域周辺住民の事情等々を総合的に勘案して何を提供する、しないということを判断すべきものと思います。そして、その上で予算におきまして、国会の御審議を経て国会で予算の御承認がありました後において合同委員会の手続を踏む、こういうことになっておるわけでございまして、これが何でもかんでもというふうに行われるというものではない。そういう諸般の事情を勘案しながら、国会の御審議を経て提供すべきものを提供する、こういうことであろうと考えております。
  49. 野田哲

    野田哲君 この議論は、五十四年度の問題でありますから、この程度にとどめて、また機会を見て審議したいと思います。  そこで、別の問題に移りますが、この前の予算委員会で私はアメリカの戦争権限法の問題を出したわけですが、金丸長官は承知をしていない、こういうお答えがあったんですが、防衛庁の方ではこの戦争権限法の問題については一切検討に値しないと考えておられるわけですか。
  50. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 戦争権限法につきましては外務省の方からお話を伺ったりはいたしておりますけれども、いわゆる私どもといたしましては、日米安保体制を有効に機能させるための努力、それをすることによって米側の協力というものは得られるという判断のもとに協力体制を固める努力をしているところでございます。
  51. 野田哲

    野田哲君 いや、具体的に防衛庁では戦争権限法が日本の安保条約に対してどういう影響を持っているかということについては全く検討をされていないんですか。この点は私は源田議員と大体受けとめ方についてはある部分では一致するところがあると思うんです。ことしの三月の源田議員の質問を私は予算委員会で聞いておりましたけれども。全く防衛庁は戦争権限法については無関係だと、こういうふうに考えておられるんですか。
  52. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 先生の御質問趣旨は、戦争権限法によって日米安保条約に基づくアメリカの協力が、ある一定の期間が過ぎるとアメリカの議会の承認が得られない限り、その協力が得られなくなるのではないかという趣旨の御質問かと思いますが、私どもは必ずしもそうは考えておりませんで、確かに戦争権限法は出ましたけれども、日米安保体制というものを有効に活用する日本側の努力というものがあればアメリカの協力は得られるというふうに考えているわけでございます。
  53. 野田哲

    野田哲君 この前の予算委員会でこの議論をしたわけですが、私はこのアメリカで制定された一九七三年の戦争権限法については、いま伊藤防衛局長がちょっと触れられた五条の(1)、(2)、(3)、つまり外国に駐留をするアメリカの軍隊が戦争に投入をされるという状況は連邦議会が戦争宣言をしたときか、あるいは議会においてその使用について特別の権限を制定をした場合、二つ目には連邦議会が期限を延長した場合、六十日という期限を延長した場合、それからもう一つは、直接アメリカのあれに攻撃を受けて、それに対して投入をした場合、こういうふうに特定をされていると思うんですけれども、外務省の説明は八条の二項ですか、これを非常に拡大解釈をされている、こういうふうに思うんです。だから、あの戦争権限法については二つの相入れない条項があるわけですね。これこれに該当しない場合には六十日以内に撤退をするんだよと、こういう三つの条項があるわけです。それから八条でいままでの既定の条約やアメリカの憲法に影響を及ぼすものではない、こういうのがあるわけです。  この「国防」という本、これは防衛庁御推奨の朝雲新聞社が出している本です。この「国防」の中に、アメリカで戦争権限法が制定をされておりますが、宮脇さんという方が解説をされているんですが、その中では明らかにこれは日米安全保障条約それから米韓相互防衛条約などこれらがこの本項の適用を受けることになる。本項というのは、つまり授権があった場合あるいはアメリカが戦争宣言をした場合以外には六十日たったら引き揚げなければいけないんだ、この条項が適用を受けることになるんだと、こういうふうにこの「国防」では解説をされているんですが、これを防衛庁やそれから外務省ではこういう解説があっても八条でいいんだと、何ら影響はないんだと、こういうふうにあくまでも解釈をされているんですか。その点はどうなんですか。
  54. 北村汎

    説明員(北村汎君) ただいま先生御指摘の戦争権限法とそれから安保条約の関連につきまして、これはこの間の予算委員会で先生が御指摘なさいました問題も踏まえまして私ども引き続いて検討をいたしたいと存じておりますけれども、先生もさっきおっしゃいましたように、この戦争権限法の中には一見相矛盾するような条項があるわけでございます。この戦争権限法と申しますのはアメリカの国内法でございます。アメリカの国内法につきまして、いろんな解釈をアメリカの中でもやっておりますようでございますし、また私どももいろんな解釈ができるんでございますけれども、ほかの国の国内法についてこれが有権的な解釈であるということは、これは日本の立場からはできないわけでございます。で、いずれにいたしましても、私どもといたしましては日本とアメリカとの安全保障問題を律するものは、これは日米安保条約であるという立場に立っております。これは、二国間の法律関係を律するものは一般国際法か、あるいはその二国間に締結された条約であるということでございますから当然のことでございますが、この日米安保条約というものは、これはアメリカの行政府が締結した条約であるばかりでなく、これはアメリカの議会が承認した条約でございます。すなわち、アメリカは行政府のみならず議会も含めまして日本に対する武力攻撃があった場合には日本を守るんだということを宣言しておるわけでございます。で、そういうことでございますから、これは行政府あるいは大統領が日本を守るということを宣言したのみならず、行政府とか立法府とかということではなくて、アメリカの国家が日本の国家に対して約束したアメリカの防衛義務でございます。そういう立場に立ちます。われわれとしてはそういう立場に立たざるを得ないわけでございますが、そういう立場から申しますと、そのような国家としてのアメリカの防衛義務を承認したアメリカの議会が、他方においてそのアメリカの義務に支障を来すような措置をとるということは、これは考えられないわけでございます。そういうことで、私どもといたしましては、あくまでも安保条約第五条に基づいてアメリカは日本を守るという義務を宣言しておる、私どもはそのように解釈しております。もちろん先生さっき御指摘なさいましたように、戦争権限法と申しますのは、その成立の経緯から申しましても明らかなごとく、これはアメリカの長い間のベトナム戦争に対する参加、そういうことに対してアメリカの議会の意思が反映されていなかったというようなそういう議論、不満、反省、そういうものがあり、かつウオーターゲート事件において大統領というものの権威というものに対するいろんな批判が行われた、そういうことを背景にしていろんな主張、いろんな立場があって、いろいろ成立の経緯があるわけでございますが、そういうことでアメリカの中でもその解釈についてはいろいろな解釈があるように私どもは承っておりまして、先ほども最初に申し上げましたように、この国内法を有権的に解釈する立場ではございませんけれども、先生御指摘の八条a項と八条d項との関係とか、二条c項の問題であるとか、そういうところは今後ともいろいろ検討を続けさしていくつもりでございます。
  55. 野田哲

    野田哲君 だから、つまりいまの参事官の考え方というのは、これは日本側の希望的な観測で、よもやそういうことはあり得まい、こういう希望的な観測だと思うんですね。アメリカ側でいま触れられたように、これが制定をされた経過を見ると、これはベトナム戦争でさえも議会は戦争宣言をしないで、大統領の統帥権によって突っ走っていった、このことに対する反省から生まれているわけでありまして、しかも、ニクソン大統領は、この法律は制定をされたときには、アメリカが諸外国と結んでいるところの安全保障条約、これに対する義務を制約をされることになるということで、一回は拒否権を発動しておりますね。その拒否権を発動したものに対して、さらに特別議決によって制定された法律でありますから、したがって、ニクソン大統領が、これでは日本や韓国等との相互防衛条約上の約束は履行できないということで、拒否権を発動したものに対して、再度特別議決をしているという経緯から見れば、私は外務省のいま述べられた見解というのは非常に甘い希望的な観測にすぎない、そういう状況があるにもかかわらず、防衛庁が日米安全保障条約を金科玉条のようにオールマイティーのように判断をされて防衛計画を立てておられるところに私はやはり問題があると思うんです。  私は、もうこれ以上この問題は触れませんけれども、私の見解というのは、すでにアメリカ側はそういう議会の意思が働いて、無条件にこの日本に軍隊を置いて、そして日本を守るという立場には立っていない、そういう状況からすれば、これはもう日米安全保障条約というのは、実質的には大きく戦争権限法によって変質をしているんだから、この際、いつまでも政府も安全保障条約にしがみつかないで、これは廃棄の方向を検討すべきではないか、私は、そこのところから先が自民党の皆さんと違うわけですけれども、だから、それにかわる軍備を持てとは言っていないんです。平和的な外交手段、福田総理ではないが全方位外交を全うしていけばこれで日本の安全は守り得る、こういう立場をもってこの質問をしたわけでありますが、この問題はまた次の機会に、外務省の方も鋭意検討すると、その本質的なものについて検討するということでありますから、検討の結果を待ってまた機会を見て議論をさしてもらいたいと思っています。  そこで金丸長官に伺いますが、有事という問題が非常に議論になっているのですが、万万万が一にも奇襲ということはあり得ないだろう、こういう見解も出されております。そうして奇襲という状態は起こらないようにするのが政治の責任だ、この点私どもも見解は一致するんですが、しかし、それにもかかわらずなおこの有事法制と、こういうことが進行しておりますから、この問題にまた触れていきたいと思うのですが、一体有事というのはどういう状態が起こったときからが有事と、こういうふうに判断をされるのですか。
  56. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 自衛隊法七十六条、これが発動されたその以後は有事だと私は考えています。
  57. 野田哲

    野田哲君 かつて高辻法制局長官があるいは佐藤総理が述べておられる見解というのがあるのですが、その意味というのは自衛権の発動の時点は武力攻撃を受けてからではなくて、武力攻撃が始まろうとするときだ。始まったとき、これがいつであるかは諸般の事情による認定の問題だと、こういうふうな見解があるんですが、佐藤総理見解としては、わが国が侵害されるおそれがある、そういう確かな情報があれば侵害を受けないようにするのが当然だ。したがって、そういう判断をし、あるいは情報を得ればその時点から有事の体制に入る、こういうような見解がかつて高辻法制局長官なり、あるいは佐藤総理が述べられておる例があるんですが、これは具体的に言えばどういうことなんですか。
  58. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生のお述べになりました内容が具体的にどういうものかというのは、私もちょっといま判断しかねるわけでございますが、いま大臣が申しました有事というのは、有事というのは定義がないわけでございますけれども、私どもが研究の対象といたして考えておりますのは、七十六条の防衛出動が下令されたような状況というものを考えているわけでございます。ただ、いまのお話にございましたように、いわゆる自衛力の行使とこの防衛出動とは結びついていないということは、私そのように考えているわけでございますが、防衛出動が下令されましてもなお自衛力を行使するのは、いわゆる自衛力行使の三要件と申しますか、それに該当したようなときだというふうに考えているわけでございます。
  59. 野田哲

    野田哲君 その自衛権の行使のための下令というのはいつの時点で発せられるのですか。つまり、どこか日本の国土にどこかの国の軍隊が武力を持ってあらわれたと、こういう現実に武力による侵攻があったときに下令をされるのか、それともどこかで日本に向けて準備がされているぞと、こういうときに始まるのですか、その点はどうなんですか。
  60. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この防衛出動の下令というのは、武力攻撃のおそれのあるときという場合にも防衛出動が下令されるわけでございます。そこでおそれのあるというのはどういう時期を言うのかというような議論も過去になされておりますが、これは直接にいわゆる武力攻撃がなされたという段階でもないし、また武力攻撃の着手のあった時期というのがいわゆる客観的に情勢が非常に緊迫してきた、それから部隊が集結しているというようないろいろな状況から判断して武力攻撃が行われる可能性があるということが客観的に判断されるようなとき、そのときにはやはりおそれのあるときとして防衛出動が下令される可能性があると考えているわけでございます。
  61. 野田哲

    野田哲君 そうすると、たとえば具体的な例で、ことしの六月に退職された栗栖統幕議長が択捉島にソ連軍が上陸演習をやっていると、こういう情報、金丸長官は後でこれは情報の間違いであったということで取り消されて陳謝されたわけですが、ああいうときには、これは待機のための出動と、こういうことが下令されることになるわけですか。
  62. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それはただいまも御説明しましたように、私はそういう場合にはもちろん仮にこの上陸演習があってもされないと思います。といいますのは、御承知のように、客観的に判断されるということの中には、いわゆる二国間の緊張状態が高まっておって、いわゆる武力を行使するというその武力が現実に動く場合、さらにそれに国家の意思が組み合わされるということが客観的に認められるような場合だと考えられるわけでございます。したがいまして、単に演習をした、軍事力がそこで動いたということだけでは、これは客観的に武力攻撃のあるおそれがあるというふうには判断できないわけでございまして、日本のように現在周辺諸国と友好関係を保っているこの時点において、その武力といいますか、戦車、艦艇等が動いたというだけではそういう状態ではないと考えているわけでございます。
  63. 野田哲

    野田哲君 朝鮮半島で、これは仮の話ですけれども、あの三十八度線の非武装地帯、ここで武力紛争が生じたと、この場合は、これはどういう判断をされますか。
  64. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それはまあその紛争の事態にもよると思いますけれども、三十八度線で武力紛争が起こったというだけでは直ちにおそれがあるというふうには結びつかないと考えております。
  65. 野田哲

    野田哲君 四十五年の二月二十四日に衆議院の予算委員会で当時の愛知外務大臣が、朝鮮で武力紛争が生じ、国連の措置が間に合わないときには一種の自衛措置としてこれを排除することは当然行われる。あるいはまた海外の権益及び海外在住の日本人の生命、財産が脅かされる場合は、国連協力という大義名分がなくても、武力行使を伴わない限り自衛隊を派遣してこれを保護する警備行動憲法上許される。これは四十五年の三月三日に高辻長官が参議院の予算委員会で答えておられるわけですが、こういう見解があるとすれば、いま伊藤防衛局長はそれ状況によるんだと、しかしそれは直ちにということではないんだと、こういうふうに答えられたわけですが、朝鮮半島の問題については全く関係ないと、こういうふうに考えていいんですか。
  66. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) そのときの御答弁の前後を詳しく読まないとわからないと思いますけれども、私どもは朝鮮半島で紛争が起きる、そしてまたその紛争によって日本の領土が組織的、計画的な武力攻撃を受けるというような事態になりますならば、やはり国の自衛権といいますか、正当防衛権としての武力行使というものはあり得ると考えております。  また、後段のその紛争があったときに武力行使を伴わない救済措置というものは可能かどうかということにつきましては、これは外務大臣の言われましたように憲法に抵触するとは思いませんけれども、現在の自衛隊法ではそういう任務を与えられておりませんので、現在の状況ではできないと考えているわけでございます。
  67. 野田哲

    野田哲君 昭和四十四年の四月八日に議員の質問書に対して政府の回答書が出されているんですが、この回答書によると、海外における武力行動で自衛権発動の三要件、つまり、急迫不正な侵害、他に適当な手段がない、必要最小限度の実力行使にとどまる、これに該当すれば憲法上の理論としては、そのような行動が許されないわけではない、こういう政府の回答書が出ているんです。これは法制局長官、御存じですか。
  68. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 先ほど来の御論議をここで聞いておりまして私感じますのは、防衛出動の発令の時期とそれから自衛権の行使の時期とどうも少し混同して御論議が行われていないかというふうな感じを抱くわけなんですが、七十六条は防衛出動の発令の時期でございまして、それはわが国に対して外部から武力攻撃があった場合及びそのおそれのある場合、その場合には防衛出動の発令ができるというふうな制度になっております。しかし、その防衛出動の発令がありましても現実に武力攻撃がまだない、おそれのある段階であるという、そういう段階において日本がいわゆるその具体的な自衛権の行使をすることはこれは憲法上許されない。先ほどおっしゃいました自衛権発動の三要件のうちの第一、第二に該当しなければ現実の自衛権の行使はできない。ただその自衛権の行使の前提となる外国からの武力攻撃、その武力攻撃があったというのが一体いつかというまた非常にきわどい問題になるわけなんですが、それはかつて楢崎委員が、「ニイタカヤマノボレ」という太平洋戦争の初期のときの行動を例に挙げられまして、そして一体その武力攻撃があったときというのはいつだということを政府に御質問になりました。そのときにもお答えしているはずなんですが、この七十六条に言っている「武力攻撃」というのは、これは国連憲章五十一条と大体同じ内容だというふうにわれわれも考えておりますが、あの国連憲章にも、原文では、あれはアームド・アタック・オカーズと書いてありまして、過去形ではないんですね、あの五十一条自体が。その辺がまた問題になりまして、国連総会の第六委員会で、一体国連憲章の五十一条が発動する時期は具体的にはいつだということがかなり真剣に御論議になったようです。で、その点につきまして政府のいままでの見解昭和四十五年の三月十八日に衆議院の予算委員会において当時の愛知国務大臣がお述べになっておるわけなんですが、「現実の事態において、どの時点で武力攻撃が発生したかは、そのときの国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様等々によるのでありまして、抽象的に、または限られた与件のみ仮設して論ずべきものではございません。」と言って具体的なお答えは差し控えておるというのがいままでの経過でございます。
  69. 野田哲

    野田哲君 つまり、この有事という判断をどういう状態で行うかというのはケース・バイ・ケースということで、政府の考え方もいま固定的にはなかなか説明できないと、こういうことなんですが、今度のこの有事法制という議論があるわけですが、日本には憲法上その手続は明記されていないわけですが、七十六条ではこの国会の議を経て下令という、あの条項があるだけですけれども、一体この有事立法をこれから検討されるということですけれども、その検討過程で有事体制に移行するというような場合の手続規定についてはどういうことを考えておられるんですか。
  70. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この七十六条には、国会の議を経て総理大臣が出動を命ずることができるということになっておるわけでございますけれども、当然のことながら、その以前には国防会議を開き、防衛出動の可否についてというのは国防会議の諮問事項の中にもございますので、そこの諮問を受けて総理大臣が閣議でそれを決定し、そして国会に諮るという手続になると私どもは考えているわけでございますが、そういった国防会議の中にもそういうことが決められておりますし、また当然のことながら行政府として閣議を開いて決めるというような手続があろうかと思いますが、具体的にどういう時期にそういう会議をお願いするかというようなことは、これはいま申し上げましたように、事態そのものがなかなかむずかしいわけでございます。しかしながら、これは国の運命にかかわる重要な問題でございますので、そういう際には的確な情報を早く総理大臣のもとに上げて、御判断をいただくという努力をしなければならないと考えているわけでございます。
  71. 野田哲

    野田哲君 そうすると、手続規定については特に新しいものを定める必要はないと、こういうふうに考えておられるわけですか。
  72. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) そこら辺はまあ今後研究する必要はあると思いますけれども、現在の法体系で一応整っているというふうに私どもは考えているわけでございます。
  73. 野田哲

    野田哲君 金丸長官に伺いますけれども、これから大分自民党の中も過熱をしてくる状態にあるようですが、有事法制の問題については自民党の中でも大分相異なった意見があるようですね。幹事長の大平さんは、現行法以上のものは必要ないんだと、こういうことを国民の前に表明をされている。片や中曽根総務会長に至っては、憲法まで改めるべきだと、こういう議論が出ていると。与党の中においてさえこれだけの相反したような議論があるわけですから、とてもこれは、国論を統一をしようなんというような情勢にないと思うんで、まあこれはしばらく——しばらくではない、もうこの辺でこの議論はやめて、幕引きにしたらどうかというふうに思うんですが、いかがですか、長官
  74. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は、有事というものがあるから、有事というものを仮定して自衛隊というものがある。自衛隊がある以上、日本を侵さんとするものがあるときはいかなる対処をするか。その対処方法をいろいろの面から研究するということは当然のことだと私は考えております。  また総裁選挙、過熱していろいろ論議がされるというようなお話。私は、大平さんの現行法でもいけるというような考え方、しかし、その中に研究はすべきだということを言っておりますが、自衛隊法というものは、非常に私はよくできておる自衛隊法だと考えております。先ほど来からいろいろ問題が出ておるわけでありますが、私は、防衛という問題は、いつも申し上げているんですが、二十七万の自衛隊員だけで日本の国を守るわけにはいかない。いわゆる一億一千万国民一人一人のコンセンサスを得なければならない。有事という問題等につきましても、十二分に国民に理解を得ながら積み重ねていかなければならない。また、私はこの問題についてはひた隠しはいたしません。いわゆる研究したものを中間報告するということであれば中間報告もいたします。こういうようなことも言っておりますし、また奇襲という問題等につきましてもいろいろ論議がされておるわけでありますが、私は奇襲というものは、先ほどもお話がありましたように、あり得ないようにすることが政治だと。で、それじゃあいま奇襲されたらどうなるか、そのあらゆる設備はあるのか、施設はあるのかと言われてみますと、現状においてはないけれども、しかし、いまのこの時点ではいわゆる日本を脅かすような状況にはないと。こういう平和なときにできるだけの対処をし、予算もいただいて、いわゆるその奇襲のないようにするということが当然のことで、私は奇襲というものはあってはならない。  先般西ドイツのシュミット首相が見えて、いわゆるどこかの新聞記者諸君がシュミットに西ドイツには奇襲というものがあるかという質問をしたら、ドイツには奇襲というものはあり得ないという答えをしたそうですか、私もそういう考え方でここは対処していかなくちゃならないし、また奇襲というものを、統一見解の中で、あるか、万が一あるとするならば研究するということでおくわけでありますが、私は奇襲というものはあってはいかない、また総理の権限を一つでも剥奪するということはシビリアンコントロールというものにもとる、そういう考え方でおるわけでありますが、万一あるというならば、それじゃあ研究はしてみる、こういう私は考え方でおるわけで、絶対総理の権限を譲るということはあってはならぬと、こういう考え方で、この奇襲という問題には私は考え方を——これにはいろいろな御批判があると思います。ですから、あるかもしらぬと言う人もありますし、それは絶対にこの時代にありっこはないじゃないかという考え方もあるから、それじゃあるかもしらぬというんじゃ研究してみたらどうかと、こういうことですが、私個人の考え方は、絶対あり得ないという考え方の中で統一見解をつくったということを御理解いただきたい、こう思うわけであります。
  75. 野田哲

    野田哲君 具体的なことで伺いたいと思うんですが、ことしの六月の下旬から七月の下旬にかけて、これは予算委員会で、山中先生もちょっと触れられましたが、あれは名前は何というんですか、神威作戦というんですか、かつて栗栖さんが師団長をやっていた広島に司令部のある十三師団が、約一カ月間にわたって往復五千キロに及ぶ北海道の矢臼別というんですか、そこへ向けて大機動作戦を展開をした。これは「朝雲」に載っているわけですけれども、この演習の目的というのは一体何ですか。
  76. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 確かに、本年六月から七月にかけて、十三師団の北海道の演習場を使用する演習を実施したことは事実でございますが、自衛隊が専守防衛を主とすることは言うまでもございませんけれども、実際有事の際に限られた自衛隊の勢力を有効に使うというふうな見地から、いろいろな場合を想定しまして部隊をいろんなところへ移動し派遣するというふうな訓練は従来からも実施しているところでございまして、今回の演習もそういった趣旨から実施したわけでございます。また、こういう演習を実施することによりましてこの部隊にとっても日本のあらゆる地形についての知識を得るというふうな面からもきわめて有効であるというふうに考えております。
  77. 野田哲

    野田哲君 十三師団というのは広島に司令部があって日本の西の方に配備をされている陸上自衛隊の部隊なんです。これが延べにして五千キロも移動作戦を行う。そしてこれはLSTを使って上陸演習もやってるんですね。その点どうなんですか。
  78. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 今回の演習に際して十三師団からLST、あるいは自走で行ったもの、あるいは航空輸送で運んだもの、各種ございますが、特に上陸演習というか、北海道の海岸にいわゆる卸下、積みおろしということは実施しておりますが、いわゆる敵前上陸というふうなための訓練ではございません。
  79. 野田哲

    野田哲君 旭浜というところへLSTによって上陸をすると、こういう行動が組み込まれているわけですが、いま夏目参事官もいみじくも言われたわけですが、有事の際にいろんな地形にも対応し得るようにいろいろなところに派遣をしてと、こういうことを言われたわけですが、日本列島の西の方に配備をされている十三師団が何で往復で延べにして五千キロも移動するような作戦行動の演習をやらなければいけないんですか。
  80. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 先ほども申し上げたように、陸上自衛隊の勢力というのは十三個師団十八万が限度でございます。こういった勢力でわが国に対して有事があった場合にどのように有効に運用するかということは、部隊を事態に応じて各方面に移動展開する必要がある場合が想定されるわけでございます。そういった意味で、かねがねわれわれこういう演習をいわゆる他方面演習というふうに申しておりますが、この種の演習というのは必ずしも西から北海道に移すだけでなくて、たとえば東部から東北へ、あるいは東部から中部へというふうな、その場の、そのときの演習場の使用ということを考慮しまして、あらゆる場合の移動訓練を実施しているということでございます。
  81. 野田哲

    野田哲君 長官、あの演習については国際的にはかなり物議を醸しているんです。あの演習は韓国の側ではこれは大変評価をしているわけです。つまり、あれは朝鮮半島有事の際に備えての日本の陸上自衛隊の演習だと、こういう評価をされているんです。北の朝鮮民主主義人民共和国は、あの五千キロというのは朝鮮半島を従断をする演習だと、こういう危惧を持っているんです。そういうふうに非常に外国にも反響を及ぼしているんですが、私はあの演習の形態というのはこれは専守防衛という立場で素直には受けとめられない内容を持っていると思うんです。山中議員も予算委員会であの行動の過程の中の一つを問題にされたわけですけれどもね。  そこで、有事法制に返って伺うわけですが、七十六条それから百三条でいろいろ下令になった場合の具体的な措置を決められている、政令は検討中だということですけれども。知事に対して総理大臣の命令が出ていろいろな行動をとるようになっているわけですが、いま夏目参事官が言われた、有事に備えればああいう行動もあり得るんだということになるとすれば、百三条というのは、あの行動があり得るとすれば——特定の地域を定める場合とそれから必要と認めたところに対して指示がおりる場合とあるわけですが、あれが有事の際の行動だということになると、これは百三条に基づく命令というのはまさに日本全域に出ると、こういうふうに理解をされると思うんですが、その点いかがですか。
  82. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この百三条に基づきます政令の中で、たとえば医療、輸送を業としている者に従事命令を出すということになっているわけでございますが、その従事命令につきましては現実に戦闘が行われていないという場所になろうかと思います。したがいまして、その内容あるいは手続等につきましては今後政令を検討する段階で研究しなければならないと思っておりますけれども、いわゆる部隊の移動のためにたとえば船を使用する、そういうことは当然考えなければならないと思っているわけでございます。
  83. 野田哲

    野田哲君 この十三師団の神威作戦についても、自走の場合と、それからLSTと、それから民間の船舶を使っていますね、フェリーボート。そうなってくると、当然あの行動の範囲にはすべて百三条が適用されると、こういうことになるわけでしょう。どうなんですか。
  84. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) その百三条の従事命令が必要かどうかというのは今後検討しないといけないと思いますけれども、たとえばLSTを使ったり自走していったりする範囲では特にこの百三条というものは必要ではないと考えておるわけでございます。
  85. 野田哲

    野田哲君 いや、民間の船舶を使っているでしょう、フェリーボート。そうするとこれは百三条によって使うと、こういうことになるわけですね、あれが実際に行われた場合には。
  86. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それはそういう場合もあろうかと思いますけれども、いわゆる雇い上げて運んでいくということも可能ではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、そういう点につきましてはこれから研究をしてまいりたいと考えているわけでございます。
  87. 野田哲

    野田哲君 雇い上げの場合には百三条でなくても可能だということですか。そうすると実際に百三条が発令をされたときには、つまりこれは平易な言葉で言えば徴用と、こういう形になるし、当然この一カ月の行動の中でそれを広島県からあるいは愛媛県の港からああいう形態で民間の船舶を使って出動したと、こういうことになると、そこに水とか食料とか補給品を積み込んでいくことになるわけですね。そうすると、この北海道の矢臼別あたりへ向けて発進をする、ああいう形態がとられるということになると、つまり百三条というのは、広島県、愛媛県、そこから以東は全部その範囲に入ると、こういうことでしょう。どうなんですか。
  88. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) そういうふうにはっきり広島県以東が入るとかいうことは研究しなきゃならないと思いますけれども、いずれにいたしましても、お医者さんとか、あるいは輸送業務に従事している者についての従事命令というものは出せるというふうに百三条では決められているわけです。したがいまして、その中でどういった内容のものを政令で決めていただいたらいいかというようなことはこれから研究したいと考えているわけでございます。
  89. 野田哲

    野田哲君 終わります。総務長官いないからもうあとできない。
  90. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 両調査に関する午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後は午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後二時六分開会
  91. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  92. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 実は、きょうは最初に奇襲対処の問題、有事法令の問題を、意見も申し上げ、またいろいろとお尋ねをするつもりでございました。ところが、何か衆議院の本会議があるとか、また長官の方の御都合もおありというふうに承りましたので、これは十九日にまた質問の機会もあるようでございます。次回に譲りまして、きょうは、現在来年度の概算要求を大蔵省にしておられ、その内容の中の幾つかの問題につきまして質問をし、防衛庁のこれに対する取り組み、取り組む姿勢をお尋ねしたいと、こう思う次第でございます。  一番初めにお尋ねするのは、情報能力の向上の問題であります。ことしの五月一日に、五十四年度の業務計画の作成に際して指針とすべき事項に関する長官指示が出されております。この中には特に留意すべき事項として十項目が挙げられておりますが、その中の第一項目に、「昭和五十三年度に引き続き、各般にわたる警戒のための態勢」、この「向上を図るための諸施策を推進する。」ということがあるわけでございます。また別に、この夏以来奇襲対処、これが大きな問題になりまして、奇襲が行われないような体制をつくることが優先だ、まさにそのとおりだと思います。そのためには情報能力の向上等について今後いろいろと施策をしていくのだということを防衛庁当局は言っておられるわけであります。  そこで、私は特にこの八月の末に出された概算要求、これに加えて奇襲対処の問題がクローズアップしました以降、防衛庁で来年度の要求として情報能力の向上について何か新しく追加要求することを考えておられるものがあるのかどうか、あるとするならばどういうことを考えておられるか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  93. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この情報能力の向上というのは、私ども防衛庁としましては常に心がけなければならないことだと考えているわけでございます。奇襲対処の問題というものがクローズアップされまして、情報能力というものを高めるということによって奇襲をなくする努力をするというのが防衛庁の今後努めなければならない重要な問題と考えておりますし、もともとこの専守防衛という立場からいたしますと、有事即応の体制というものが求められるわけでございますが、有事即応のかなめになるものはいわゆるこの部隊の練度あるいは兵器の更新というものもございますけれども、同時にまた情報を的確につかみ、そしてそれに対して行動するということが最も重要なことであるわけでございます。そこで、自衛隊におきましても、前々からこの情報の能力の向上というものは努めてきておるわけでございますが、何と申しましても情報が発達した社会におきまして広くいろいろないわゆる情報のソースから軍事的な動きを把握しなけりゃならないわけでございます。その意味におきまして自衛隊の能力は必ずしも十分ではございません。そしてまたこの情報の能力というものはこれで万全だということはなかなかないわけでございます。そこで、この情報能力につきましては、御承知のように、まず一般に公刊されております資料の積み上げというようなことも大事でございますし、あるいはまた艦艇、航空機の動きというものを把握し、その積み重ねによっていろいろな判断をしなければならないという面もあるわけでございます。私どもの現実に行います情報といいますか、その行動の中の一つといたしまして、いわゆるこの艦艇、航空機による外国の艦艇、航空機の動きを把握するという監視態勢というものがございます。で、現在におきましても監視のためにP2Jあるいは艦艇等が、これは海上あるいは航空におきまして監視活動をやっておりますけれども、何と申しましてもこの行動というのはそれなりの燃料あるいは維持費、そういったものが必要でございまして、昨年よりもその点を特に重点にいたしまして、あるいは日本海側、太平洋側、それから東シナ海、さらには北海道周辺におきましても一日に一回あるいは二日に一回という形で監視活動が行われるようないわゆる維持関係の費用を求めてるというのが一つあるわけでございます。  それから、ことしようやく研究の成果が出まして、早期警戒機の導入ということを現在大蔵省にお願いいたしております。これはE2Cという飛行機によりまして低空侵入によって入ってまいります航空機を捕捉する、こういったものもいわゆる警戒態勢の一つの機能であり、これは情報に結びつく問題だと私どもは考えているわけでございます。さらには、この通信情報というのを重視いたしているわけでございますけれども、その関係の機材というものが非常に古くなってきております。そしてまた一方におきましては、そういった機材を更新すると同時に性能を上げていかないといままで以上の情報はとれないという問題もあるわけでございます。そういった関係の機材を予算で要求をいたしておりまして、人をふやすと同時にそういったいろいろな方法によって情報機能を向上してまいりたいと考えているわけでございます。
  94. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 私いまお尋ねしましたのは、来年度の要求として八月の末に出されたその内容を聞いたわけじゃないんです。その後奇襲対処が大きくクローズアップした段階において特に情報能力向上が大事なんだと、やるんだと、こうおっしゃっている。私は当然防衛庁の態度としてはそれらを補備して追加要求するといったようなことがあっていいんじゃないかと。だからそれがあるのかないのか、また今後さらに予算が始まる前までに要求されようとしているのか、それをお聞きしたわけです。
  95. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは特にございません。特にございませんというのは、いわゆる情報機能というものは逐年整備し、それに伴う人間の訓練というようなものも必要でございますから、何かがあった、すぐ機材だけ買った、それによって情報能力がすぐ高まるというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  96. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 その辺が大体基本的考え方が違うところだと思いますが、私はやっぱりこれだけ国民の耳目を集めて問題になっているわけですから、当然いままでのパターン・プラス・アルファというような姿勢があってしかるべしじゃないかと。そういうような、当然あるんじゃないかと、こう思ってお聞きしたわけです。まあないと言われるのであるならばそれも一つの見識かもしれません。しかし、その辺はやっぱり基本的な姿勢としてひとつお考えいただく必要があるんじゃないかと、このようなことを強く思うわけであります。  具体的にいまお話しになりました海上の哨戒の措置を強化をする。このことは私も大体承知しておるわけですが、いまお話ありましたように、広い海を一定コースに従って一日一回一機あるいは二日に一回一機、こういう程度の哨戒、警戒で果たしてどの程度の警戒、哨戒これが期待できるのか、その辺ひとつお聞きしたいと思います。
  97. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはまあ一日一回というといかにも薄いような感じがなさるかもしれません。しかし、御承知のように船の速度というのはそれほど早いわけではございません。したがいまして、私どもの監視活動によりまして、たとえば三つの海峡を通っている艦艇等につきましてはほとんどこの情報というものは得られているわけでございます。したがいまして、まあ以前二百海里の問題が出ましたときにもいろいろ御議論がございましたけれども、航空機による艦艇の監視というものはこれは一日何回もするというような必要はないというふうに考えております。もちろんこの情勢の変化に応じまして、非常に緊張状態が高まってきたというときにはそれなりの手当てはしなければならないと思いますけれども、現状におきましてはその一日一回あるいは二日に一回の哨戒というものによって軍の行動というものは把握できると考えているわけでございます。
  98. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 まあ哨戒の重点が集約されますところの海峡を考えておられる、これは当然だと思いますけれども、同時に私は、たとえばウラジオから日本海岸の港にいろいろと一般の通商のための船が往来をしておる。これはもう二十四時間で速い船になると来れるというようなことの情報を平時から的確につかんでおられるのかどうか。またつかむ努力をしておられるのかどうか。またそれらはこの哨戒の問題とは別個の問題だということなのか、その辺ひとつお聞きしたいと思います。
  99. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま日本に参りますそれぞれの港の外国船の状況というものを毎日フォローしているかということになりますと、それはいたしておりません。ただ、いま申し上げましたような三つの海峡を通過する外国船、そういうものについては情報を集めているわけでございます。
  100. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 そうしますと、いまの海峡通過ということにそれじゃ話を移しますが、海峡通過するものについてこれは宗谷海峡、津軽海峡、対馬の東水道、こういうことになると思いますが、これらについては大体心配なく確実にとれておると、このように思ってよろしゅうございますか。
  101. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはその全部を完全に把握しているかということになりますと、たとえば夜間、それから非常に天候の悪いとき的確にどういった形のどういう船が通ったということはなかなかはっきりはいたしておりません。しかし、一応船が通ったというようなことがわかる程度でございますけれども、いまおっしゃいましたように、九割とか一〇〇%とか、そういう形では把握できないというのが実情でございます。しかし、かなりの程度これを把握いたしておりますので、いろいろなその物の流れとか、あるいは艦艇の動き、そういったものは積み重ねによって判断できると考えておるわけでございます。
  102. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 もちろん一〇〇%つかんでおられるなんて実は私は思っておりません。私自身はどの程度かということは個人的には知っておるわけですが、私はもっと確実につかむための具体的な施策というものが、もっともっと積極的にやる責任があるんじゃないかと思うわけですが、いかがでございますか。
  103. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) その点は私も堀江先生と同感でございます。しかしながら、御承知のように、この陸海空自衛隊がそれぞれ防衛力を整備し、あるいは運用をやる場合に、どうしてもそういった分野の優先度というのは低くなってきているというのが私のいままでの経験でございます。堀江先生も御経験があると思いますけれども、あるいは機材の面、あるいはその教育の面等におきましてもっと力を入れていい面もあると思いますし、そういう方向に持っていく必要があると思いますけれども、実際問題として、この防衛力整備あるいは部隊の運用を担当なさっておられる専門分野の方々の中で、もう少しそういった意識を持っていただきたいというのが私の率直な考えでございます。
  104. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 そういうお考えもあるでしょう。私申せばいろんな言い方もあります。ただ問題は、やっぱり結局予算枠に制限されますから、これでその中の優先順序、こういうことで、結局やりたくてもやれないと、これがもう基本だと思います。私は。その辺は後からまた問題が出るでしょうから、私は必ずしもいまの防衛局長の言われたのができない原因だなんていうことは思っておらないということをはっきり申し上げておきたいと思います。ただ、海峡の情報能力を高めるために、また警戒能力を高めるために、去年からですか、船を配置して、そしてそれによって能力を大分高めておられる、こういうことを聞いております。これらはもう確実に予算化されておるわけでありますか。
  105. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは昨年から予算化されておりまして、三つの海峡につきましては護衛艦による哨戒というのを実施しておるわけでございます。
  106. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 ただ私が承知しておる範囲では、護衛艦によってやっていると。けれども実際には大変お粗末な船も駆り出されてやらざるを得ないと。したがって、その船の持っている能力からして必ずしも期待どおりにはなっておらないと、こういうことも承知しておるわけですが、それらの改善については具体的に考えておられるわけですか。
  107. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 実はいま先生がおっしゃいましたようなことがございます。あるいは十分じゃないという御批判もあろうかと思いますが、私どもといたしましては、昨年からそういうことを実施したということと同時に、いわゆる海峡にございます監視所、これのレーダーも先生も御承知だと思いますけれども、最初はアメリカからもらいましたLSという三百五十トンの警備艇に載っているレーダーを、その警備艇が廃艦になりますときに持ち上げまして使っておったというような状況でございます。しかし、そういったものも逐次かえてまいりますし、またそれぞれの海峡に置いてございます水中機器も、逐次米軍からもらって入れておったものを新しくかえていくということによりまして、能力的にはかなり上がってきていると思いますけれども、こういった機能というものは性能的にも今後一層強めていかなければならないというふうには考えているわけです。決して現状で満足しているというわけではございません。
  108. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 海上、海峡の監視の問題につきましてはかりやっておりますと、もうそれだけで終わりますから情報能力の中の、先ほどお話ありましたAEWの問題でありますが、これは調査の結果、大体結論を得たということで来年御要求になっている。大体いつ審議になるのかどうかしりませんが、の全般的な計画どうなっているのかお聞きしたいと思います。
  109. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私どもはこのAEW、早期警戒機につきまして、いろんな角度から検討いたしました。現時点におきましてはE2Cという飛行機が日本が自衛隊で運用するのには最も適した飛行機だと判断をいたしまして、現在概算要求をいたしております。この運用の仕方でございますが、完全に低空で侵入して参ります飛行機を、いわゆる固定のレーダーの届かないところのものを把握するというのには、私ども運用面から見ますると日本の周辺、六つの地点に配備しておくというのが最も運用上好ましいと考えております。しかしながら、六つの地点に常時飛ばせるということになりますと、これはきわめて膨大な予算を要しますので、私どもといたしましては、外国に最も近いところということで北の方の二つの地点に置きまして、これは平時から二十四時間なかなか飛ばせるというわけにはまいりません。非常に費用もかかりますし、費用対効果の面からいきましても、平時から常時飛ばせるということは考えておりませんけれども、緊張が高まったような状況あるいはまた有事というようなときには、この二つの地点に飛ばせることによりましてかなり早い時期に侵入してくる飛行機を把握できると考えているわけです。この二つの地点で常時飛行機を飛ばせるということになりますと、いろんな運用の面から考えまして飛行機の能力の面から考えまして、全体として九機の飛行機が欲しいと考えております。これを五十七年度ごろまでに整備したいと考えておりまして、五十四年度ではとりあえず最初の六機を予算としてお願いしている状況でございます。
  110. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 ミグ25以来国民の非常な懸念、これ実際であれば私は五十三年度の予算要求で要求してしかるべき問題だったと思います。そこにはいろんな理由があったんでしょう。その理由も私なりにわかっていますけれども、五十四年度初めて要求される、ぜひともこれは最優先的にやっていただきたいと、こう思っておるわけですが、いまおっしゃった本当は全部をあれするためには六ポイント要るんだと。そのうちの重要な二ポイントだと。私知る限りにおいては本当に優先度の高いのは全部カバーすれば六ポイントかもしれませんが、本当は三ポイントぐらいなきゃいけないんじゃないかと思うわけですね。しかしとりあえずいろんな事情から二ポイントだと。やっぱりこれも予算の枠の関係ですか、結局は。
  111. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 必ずしもその予算の枠ということではございません。しかしながら、いわゆるミグ事件の反省もひとつありましたけれども、この飛行機が入って来て、現在のような平和な時期から常時三ポイント飛ばせるということは、これは大変お金がかかることでございますし、世界各国とも常時そういう形で飛ばしているというところはないわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては緊張が高まってきたようなとき、あるいはまた有事のときに運用することを考えているわけでございますが、現在はその二つのポイントというものを考えておりますが、さらにまた三つ、あるいは四つというような形で今後ふやしてまいりたいとも考えておりますけれども、現時点の計画の中では二つのポイントというふうに考えているわけでございます。
  112. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 現在のレーダーの能力からいって、私はもう当然専守防衛の日本の立場からいうならば、本当はいかに金がかかろうとも、やはり少なくも情報能力に対しては十全の措置を講じなければならないと思います。しかし、全部やらないとしても優先順序がある。優先順序として二つを取り上げられておる。私は、二つじゃない、三つは最小限取り上げられてしかるべしじゃないかと実は思っております。しかし、現実的には現在の計画は二つということでございますから、後続いてつくられる計画の中でそういったような問題をやはり真剣に考えていただきたいと、このように思うわけであります。  続いて。実は奇襲問題が起きましてから、偵察衛星があるじゃないかと、偵察衛星でやればちゃんと事前にわかるんだと、こういうことでございます。偵察衛星の情報をキャッチするためにはアメリカ側からもらうか自分で偵察衛星を上げなけりゃならぬわけです。それでアメリカ側から適時適切にそういったような情報がもらえるというめど、あるいはそういったような交渉というものが具体的に進められておるわけでしょうか。
  113. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この偵察衛星というのが、まあよく言われておりますけれども、私は偵察衛星そのものを万能だとは思っておりません。たとえば最近、ことしの夏起こりました択捉島の演習問題というのがございました。これにつきまして、多くの方々はアメリカが偵察衛星を持っているから完全に把握しているんではないかというような御意見もございましたが、現実に私がアメリカの情報関係者と話し合いましたときにも、実はこの偵察衛星というものも万能ではないということを言っておりまして、択捉島の状況そのものもはっきりつかんでいないということであったわけです。それから偵察衛星を打ち上げるにいたしましても、まずその費用対効果の問題もございますし、技術面でどれだけ正確に把握できるかという問題等も検討しなけりゃならないと思います。したがいまして、偵察衛星も一つの手段であることは間違いございませんけれども、そのほかのいろんな手段を総合して判断しなければならないと思います。  で、偵察衛星によりまして得た情報というものを適時適確にくれるかという問題でございますが、この点につきましては、私どもが日米防衛協力小委員会におきましていろいろ有事の際の対処の研究をいたしておりますけれども、その情報部門等におきましては、やはり有事といいましても、これはおそれのある時期というような、緊張が高まってからなるという場合も当然にあるわけでございまして、その間におきまして、平時から情報というものは交換をいたしております。そしてその緊張が高まったときにはどうするかというようなことも含めまして、今後研究してまいらなければならないと考えているわけでございます。
  114. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 先ほど言いましたように、奇襲対処の問題が起きましてから、防衛庁の姿勢は一貫して情報能力を向上することによってその奇襲なんという問題が起きないようにするんだと、その情報収集という問題はいろんな、複雑多岐にわたっておることはもう当然でございますが、その中で、偵察衛星の問題も再々論議されておるように思います。私は、もちろんいまの防衛局長見解のように、偵察衛星万能だなんというようにはちっとも思っておらないわけですが、しかし、偵察衛星に依存できる面というのは非常に大きいことはもう明瞭であります。日本が打ち上げる計画があるのかないのかこれは別にしまして、少なくも打ち上げるまでの段階においてはもっとアメリカとの間で情報の適時適切な入手という問題について真剣に私は話し合っていただく必要があるんじゃないか、その問題がどうしてもやはり限界があるというならば日本として打ち上げるという考え方ということもあわせて真剣に考えてもらいたいと、こう思うわけでございます。情報ばかりで時間になりますから次へ移らせていただきます。  海上自衛隊関係の来年度の要求の一番目玉といいますか、重点は何でございましょうか、お聞きしたいと思います。
  115. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 海上自衛隊につきましては、目玉といって特に新しいものはないわけでございます。しかしながら、私どもが考えておりますのは、現在持っております。あるいは防衛計画の大綱で定められました護衛艦の数を今後維持していくのにはかなり多くの護衛艦をつくっていかなければならないと考えているわけでございます。したがいまして、例年にないことではございますが、護衛艦をことし五隻要求しているわけでございます。で、この五隻要求いたしておりますのは、この護衛艦ができ上がってくる三年ないし四年後の時期におきまして戦後つくりました海上自衛隊の艦艇が大幅に除籍になる時期を迎えているわけでございます。したがいまして、その落ち込みといいますか、それを最小限にして現在の艦艇の数を維持していくためにはぜひともこの護衛艦の数を確保しなければならないと考えているわけでございます。同時にまた、この艦艇の寿命を延ばし、そしてまたその寿命のある間有効に使えるために、いわゆる近代化計画といいますかFRAM計画、これはことし新しく考えた計画でございますけれども、それによりまして装備品をかえ、船体を補強をして、従来二十年程度あるいは二十余年というような艦齢を三十年以上に引き延ばし、しかもその引き延ばした中において有効に活用できるような態勢にしたいというのが海上自衛隊の来年度の業務計画の中で特に重視した点でございます。
  116. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 新防衛計画の大綱ができましてから五十二年度、五十三年度と二年続けてこの護衛艦、これが三隻の要求に対して二隻ずつしかつかなかったと、それを来年度計画では三隻だと、それを、取り不足分を含めて五隻要求をされた、また装備の更新によって艦齢、就役を延ばすことを進められると。もうともに私は大変妥当な計画であろうと、こう思うわけですが、ところが従来要求されておったDD、このDDのトン数が今度の五隻の内容で見ますと大分縮小されておるわけですね。たとえば三千九百トンのDDに対して今度は二千九百トンを四隻だと、こういうふうに私は理解しているんですが、そんなことはございませんか。
  117. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは違うわけでございまして、大きな三年計画、四千トンとか五千トンとかいうのは、たとえばターターを積んだ船とか、いわゆる対空ミサイルを積んだ船とかあるいはヘリコプターを積む船、こういったものは大きくなっておりますけれども、私どもはDDとして、いわゆる四次防以降新しい形のものといたしましてはこの二千九百トンというものを考えているわけです。そしてもう一つは、もう少し小型の護衛艦——DEと言っておりますが、そういった千五百トン程度の系列、この二つの系列がいわゆる護衛艦の中の主力だというふうに考えているわけでございます。したがいまして、昨年度お認めいただきましたこの二千九百トンの形を四隻と、それから千四百トンのものを一隻というふうにお願いしているわけでございまして、したがいまして、来年度はヘリコプターを積んだDDHとかあるいはターターを積むDDG、こういうものは含まれていないということでございます。
  118. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 新防衛計画の大綱が決められた後——第一年度が五十二年度だったと思いますですね。五十二年度はやはり三千九百トンを要求し、取っておられますね。  それから五十三年度三千九百トンをやはり要求しておられるんですね。これは通らなかったわけですよ。そうしますと、あれですか。もうその後思想が変わったのですか。違いますか、私の理解は。
  119. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 護衛艦で三千九百トンというのは私は記憶ないのでございますけれども、いわゆるDDHというのは大体四千九百トンからいま五千二百トンになっております。それからDDGというのは、これが三千九百トンだったですか、これはDDGでございます。これはターターを積んだものでございまして、これは一つは最初の計画を立てましたときには四個群の中でDDG、いわゆるターターを積んだ艦艇というものを各群に二隻ずに持とうという考えがあったわけでございます。一応各群に一隻ずつが終わった段階におきまして、片一方には護衛艦自体が非常に除籍の時期を迎えておりますので、一群の中にDDGを二隻ずつ配備するよりは、もっと早く新しい艦艇をつくっていかなければならないということで、二者択一というようなわけでもございませんけれども、とにかく隻数を確保するために、いわゆるDD三千九百トン型をなるべく多くつくっていこうという考えに従ったものでございます。
  120. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 そういう意見もあるでしょう。しかし、これも結局予算なんでしょうね、言ってみれば。予算の枠を考えれば、やっぱり大きいのをやると金がかかる。だから隻数をふやす方が優先だと。そうしますと、来年以降ももうDDGは要求しないのですか、そうじゃないでしょう。とりあえずおくれ分を取り戻さなきゃいけないということが大きい理由じゃないでしょうか。いかがですか。
  121. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 来年度の予算を要求する際には、いま先生がおっしゃいましたようなことをまず私どもは考えました。といいますのは、五十七年、五十八年の間に五隻ないし、六隻の艦艇が除籍になるわけでございます。これを補うためにはどうしてもことし数多くのDDを建造しておかないと非常に落ち込みが大きくなるというようなことを考えました。一方におきまして予算の問題ももちろんあるわけでございますけれども、そういった艦艇の落ち込みということになりますと、その間、定員的にもずっと減ってまいるわけです。そうして、じゃあ翌年艦艇の数をふやしたからといって乗組員を一度やめさしてしまった場合にはなかなか艦艇の乗組員の教育という問題も大変な問題がございます。したがいまして、落ち込みを少なくして維持しながら能力を上げていくという観点からするならば、そういった予算が無制限にあるというなら別でございますけれども、与えられた予算の中で最も効率的に防衛力を上げていくという観点からいたしますと、こういう形が適当だと考えたわけでございます。
  122. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いまの話で大体わかりました。ですから、もちろんDDGも必要なんだと、将来もちろん考えなきゃいけないので、もう全部DDだけにしてしまうのじゃないということだと理解をしまして、次に移らせていただきます。  次は、いま海のことをお聞きしたのですが、陸の来年度の要求の中の一番重視しておられることは何でございましょうか。
  123. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) まあ陸もこれはいろいろあるわけでございまして、考え方といたしましては地上戦闘におきます火力の増強、あるいは機動力の増強、そういったものも当然重視しなければならない点でございますが、現在の時点におきまして非常に予算的にも大きなものを要求し、早急に装備を更新したいと考えておりますのがホークでございます。したがいまして現在持っております八つのホークの群があるわけでございますが、そのうちの半分をなるべく早い時期に改良ホーク——これは先生も御承知のように現在のホークよりもかなり性能が上がるわけでございます。たとえば発射速度が高くなる。あるいは射程距離が延びる。それから電子妨害に対して強くなるといったようなことがあるわけでございますが、そういった改良ホークを一昨年から逐次導入して新しいものにかえていこうという計画を持っているわけでございまして、最初の年には教育用として半分、一個群の半分の予算が成立いたしております。昨年は一個群分が成立したわけでございますが、ことしは残りの三個群につきまして全部を予算化してその装備を更新する時期を早めようというようなことで要求をいたしておるわけでございまして、予算的に見ますときわめて大きなものになっているわけでございます。
  124. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 改良ホークの要求の問題、まさにそのとおりだと思います。実際陸上自衛隊の切実な問題として私理解しておりますのは、いまの改良ホークの問題以外にたくさんありますけれども、一つはやはり充足率の問題ではないかと思っておるわけです。これはもう毎日の訓練を実施する上においても、隊務運営の面においても、さらに奇襲対処のための基本になります即応体制の向上維持という面においても、この充足率の問題はやはりこれは大変重要な一つだと思いますが、その点についていかがお考えでございますか。
  125. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは私も全く同じように考えているわけでございます。海と空におきましては充足率は常時九五%以上維持しているわけでございますが、それに比べまして陸上自衛隊は非常に募集がむずかしかった時期にいろいろ陸上自衛隊と私どもで知恵をしぼりましてまあ八五%ぐらい充足しておれば通常……
  126. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 八六でしょう。
  127. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いや、当時は八五%というのがあったんです。八五%充足しておれば訓練が可能であろうというようなことを四次防の初期のころに考えたこともございます。しかしながら現実の問題として部隊の方々のいろいろな悩みというものを検討した結果、陸上自衛隊ではどうしてもこれをふやさなければいけない。御承知のようにいまから十年ほど前になりますが、陸上自衛隊では九〇%を割ったら教育ができないといっておられた時期もあったわけでございます。で、私どもは現時点におきましてやはりそのお考えが正しかったというふうに思っているわけでございますが、昨年とりあえずこの八五%というのを八六%というふうに上げていただいているわけでございます。で、来年度もさらにこれを上げていただきたいと思いまして充足率八六・五%という形で要求をいたしておりますが、私どもはできれば早くこれを上げてまいりたいと思うわけでございますが、一方には人件費の高騰というような問題もございます。そこで通常の訓練に本当に支障のない充足率というものは一体何%になるのかということを真剣に研究しながら、いわゆる適正な充足率というものを維持していかなければならないと考えているわけでございます。
  128. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 この充足率の問題は、私前の委員会でもずいぶんいろいろと意見を申し上げたわけであります。そのときには八六%あれば何とか訓練できる。こういうようなお答えもあったかと思いますが、いまの御答弁によりますと八六%じゃないんだと、もっと上げなきゃだめなんだと、そのように理解してよろしゅうございますね。
  129. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは確かに先生のおっしゃるとおりでございます。以前は充足率といいましても幹部あるいは曹というものと、それから士のところに大きな穴があいておったわけでございますが、最近の状況では幹部と曹というのはほとんど一〇〇%に近くなっているわけです。したがって八六%といいましてもその大部分は士がかぶっているということになりますので、士の充足率というものは七〇%あるいは七五%程度になりまして、ことに普通科の連隊なんかに参りますと、士の充足率というものは六〇%台になっているということを聞くわけでございます。そうなってまいりますと、いわゆる人員を充足して実員による訓練あるいは教育というものはなかなかできない実情であるというふうに聞いているわけでございます。したがいまして、私どもはこの八六・五%をことしお願いしているわけでございますけれども、さらにこの充足率というものは適正なところまで上げていく努力をしなければならないと考えているわけでございます。
  130. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 大変失礼かもしれませんけれども、普通科の第一線、士が六〇%ぐらいだとおっしゃったのはどうも違うんじゃないかと思いますよ。もっと低いと思いますよ、私は。大体全部で六〇%あるかなしかですからね。その中で幹部と曹が一〇〇%だと。部隊によって違いますけれどもね。したがって、特に南九州なんかの部隊においては士が本当に少ないと。そのために、たとえば普通科の場合小隊三個班である。その一個班は十一名である。それが現実的には二個班しか編成できない。それも一個班が六名ぐらいだ。戦車ももう大同小異、対戦車隊においても同じ、こういう状況があるわけです。私は訓練だけで見るのは間違いだと思っているんです。根本的には。やっぱり即応性という意味からも基本的に考え直していかなきゃいけない問題だと思います。しかし、当面訓練というふうにするにしても、八六五%というのは本年度の一過程であって、さらに五十五年度以降はもっともっと向上さすんだと、このように理解をしてこの問題は終わろうと思います。よろしゅうございますか。ありますか、まだ。
  131. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生が一部の部隊は六〇%を割っている、まさに私はそのとおりだと思います。しかし、同時にまた、これは定員的に見ますると、本来は十人でやらなければならないようなところに過充足をしてやっているという問題もあるわけなんでございます。たとえば募集の関係で申し上げますと、地連なんかにも増加配置をいたしておりますし、それからいわゆる日常衣食住の世話をしております駐とん地の業務隊、こういったものは百数十%の人員を充足しているわけでございます。したがって、本当の訓練をやっている部隊になりますと、この八六%を割り振った約六〇%というのよりもさらに減っているというのは実情だろうと思います。したがいまして、そういったいわゆるそのいろんな業務におきましてもさらに適正に実員を配備するということも含めまして検討いたし、さらに精強な部隊にしなきゃならないというふうに考えているわけでございます。
  132. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 陸上自衛隊にとってやっぱり大きな悩みは弾薬の問題もあると私は思っておるわけです。それで、去年も私はまず訓練用の弾薬の問題につきましていろいろと指摘をいたしました。五十一年度以来ですか、大体その前の八〇%ぐらいしか訓練用弾薬を予算でつけてもらっておらない。そのためにはっきりと訓練成果の上でその低下が出てきておる。何とか改善しなきゃならないと、こういうことを提案をしました。五十三年度非常に努力をされた。けれども、結果的にはある程度の成果は得たけれども、まだまだじゃないかと思うんですね。私の理解によりますと、五十三年度は六弾種について二〇%の落ち込みが一〇%まで回復したと、それ以外は回復してないと、こういうふうに思っています。訓練重視というのは毎年毎年長官も指示しておられるところであります。この訓練を重視するというたてまえから、私はやはり後から備蓄用の弾薬の問題も申し上げますけれども、この訓練用の弾薬を何とか早くもとに戻して、部隊が責任をもって訓練ができるようにしてもらいたいと、こう思うわけですが、いかがお考えでありますか。
  133. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 訓練をいたしますのに弾薬が足りないということは前から言われているわけでございます。そこで、私どもといたしましては、一方におきましてはそういった訓練弾薬の確保ということで努力をしてまいると同時に、弾薬にかわるヒットインジケーターというようなものも装備するというようなことにおいてその練度を上げる努力はしているわけでございますが、何といいましても実際に弾を撃たなければならないという面が非常に多いわけでございますので、訓練射耗につきましては、一応ある時期備蓄を食いながら訓練射耗を続けていった時期もありますけれども、現在の時点におきましては、五十三年度から一応訓練の弾の予算を認めていただいた上に、多少備蓄に回っているということでございますが、その訓練の弾自体がこれで十分かどうかという点は問題もあろうかと思いますので、検討しなければならないと考えているわけでございます。
  134. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 訓練用弾薬の問題は陸だけの問題じゃないわけであります。海も空も同じ問題があるわけでございまして、ひとつこの問題につきましては、いま申された考え方に立ってやはり努力をしていただかなければならないと、こう思うわけであります。  次に、いま訓練の問題出ましたので、訓練環境の改善、この訓練環境の改善がこの一年間でどの程度促進されたのか、大変むずかしい問題もあるわけです。具体的にお答えいただきたいと、こう思います。
  135. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 有事自衛隊が有効に機能するためには自衛隊が精強でなければなりませんし、隊員の練度が向上されなければならないというふうなことから、われわれ訓練態勢の整備というのは一番大事なことであるという認識のもとに努力はいたしております。しかしながら、一方自衛隊をめぐる訓練環境というのは必ずしも好転しておりません。  そこで、先ほども話が出ましたように、われわれとしては、引き続き訓練環境、たとえば航空自衛隊の訓練空域の新しい設置というふうなことについて、精力的に運輸省航空局あたりと調整すると同時に、いわゆる訓練機材、各種のシミュレーターでございますが、そういったものの活用、あるいは外国留学というふうなことを総合的に考えて訓練環境、広い意味での訓練態勢の整備ということをしておりますが、具体的に申し上げれば、航空自衛隊の訓練空域について昨年度一カ所追加されたというふうなことが具体的なそのあらわれであろうと、そういうふうに思っております。
  136. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 いま申されました航空自衛隊の訓練空域ですね、訓練空域の問題につきましては、まあ百里の問題についていろいろと御苦心、御調整があったんだろうと思いますが、それ以外の訓練空域の問題、それから民間飛行との運用上の統制の問題、こういったような問題につきましてどの程度まで具体的に検討あるいは話し合いが進んでおりますか。
  137. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 現在の百里の訓練空域については、いまお話がありましたとおり、成田空港の開港も完了いたしましたので、私どもとしては、できるだけ早急に訓練空域を設置してもらいたいということで、現在運輸省と交渉中でございます。  それから、それ以外の中部区域の上に訓練空域を一つ設定したということは先ほど申し上げました。  なお、これで十分かといいますと必ずしも十分ではございません。現在ある空域その他も非常に狭うございますし、また基地からも遠いというふうなことから、必ずしも訓練環境というものはよくないわけでございますので、私どもとしては、たとえばアメリカに行って訓練するというふうなことも含めて、るる検討しているという段階でございます。  ただ、まだこれらの問題については、目下なお交渉を続けている段階でございまして、具体的にどのような態様になるかということを申し上げる段階ではございません。
  138. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 この訓練空域に関連する問題につきましては、私曲にもいろいろと質問もし意見も申し述べました。一部改善されたところもあり、またアメリカにおけるところの転地訓練という考え方も出されたわけですが、基本的にはまだほとんどこの一年間そのままじゃないか、こういう印象を受けるわけです。ひとつこの面につきましては、何しろ戦闘能力のない航空自衛隊じゃどうにもならないわけなんですから、真剣に取り組んでいただかなきやならない問題だと、こう思うわけですが、もう一つ陸上自衛隊が沖繩行ってもうずいぶんたちます。行きました当時、当時の山中長官が当分は沖繩においては訓練はさせないんだということを言われました。その当分がいまや六年ですか、にもなっておるわけであります。一部いろいろと具体的に解決を図られておるということは承知しておりますけれども、これらにつきまして防衛庁側の基本的な考え方、これについて承りたい、こう思います。
  139. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) おっしゃるとおり現在沖繩におきます陸上自衛隊の訓練、特に射撃訓練につきましては、火砲の射撃は言うに及ばず小銃の基本射撃すらできない状況でございます。またさらには空砲の射撃も実施してないというふうなことが現状でございまして、私どもとしては火砲の射撃訓練はともかくとして、とりあえずは小銃の基本射撃ぐらいは当然すべきではないかという、また必要があるんではないかというふうに考えまして、できるだけ早い機会にできるようにしたい、このように考えていまいろいろ検討中でございます。
  140. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 毎回できるだけ早い機会にと、こう言われておるわけです。それで一年たったわけですね。本当にいつまでにそういった一般訓練ができるようにされるおつもりですか、もちろん相手があることですけれども。
  141. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 私どもとしてはあすからでも始めたいぐらいの気持ちは持っておるわけでございますが、地元の関係もございますし、まあなるべく摩擦を少ない形で処理をしていきたいというふうなことを考えておりますが、具体的にいつまでということは申し上げられませんが、できるだけ早くそういった事態になることをわれわれとしては期待しているということだけ申し上げておきます。
  142. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 言葉が適当でないかもしれませんけれども、少なくもこの国内において、しかも配置されて六年もたってまだ本当に何の訓練もできない、これは私は少し無責任じゃないかと、こう思うわけです。ひとつ私は防衛庁側が本当に真剣にこの問題の解決に当たっていただくことを心から期待をするわけであります。実は五十四年度の問題につきましてもまだお聞きしたいことが二つ、三つ残っておりますが、十九日にも質問の機会があるようでございますから、そのときまで問題を残さしていただいて時間が大体参りましたからこれできょうは打ち切らしていただきます。
  143. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  144. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 官房長官、けさの新聞情報で、民放を通じまして、総裁選第四の男がまたあの有事立法を中心にしまして、有事体制研究ですか、調査ですか、正確に言うと、ありましたけれども、これは今度通産大臣という大臣ですからね。ですから、ちょっとやっぱり内閣の大番頭として頭が痛いんじゃないかと。これはあと数週間たちますと既定事実として浮かび上がりますが、まだまだやっぱり国会中でありますし、総務会長あるいは幹事長ならば、官房長官は知らぬところだというふうに済まされるでしょうけれども、昨日の場合には、あるいはけさの報道の場合にはちょっと中曽根さんと大平さんとはケースが違うと私は思うんですね。どうですか、官房長官
  146. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 河本通産大臣の有事立法に対する考え方についての新聞報道は拝見はいたしたわけでありますが、新聞で伝えられただけでございまして、内閣として河本通産大臣の有事体制に対する考え方につきましては、これは聞いておかなきゃならぬなあと実は思ったわけでありますが、内閣としての有事体制に対する基本的な考え方はすでにもう福田総理大臣あるいは防衛庁長官からはっきり打ち出しておるわけでありまして、防衛庁の見解ということでもって統一見解として出しておるわけでありますから、閣僚としてその方針を逸脱されるようなことは私は万々ないと、こういうふうに判断をしておるわけでありますが、この点については、新聞記事ではございますが、内閣として、政府としても確認はしなきゃならない問題ではないかと、こういうふうに考えております。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっと内閣としても何か聞こえなかった。済みませんね。
  148. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私としても、閣僚の一員の発言でございますので、確認はしなきゃならぬ問題であると思います。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 大平幹事長の場合も、中曽根総務会長の場合も新聞報道であって、一々確認したわけじゃないと思いますが、やっぱり時期が時期ですから当然国会でも取り上げられる、というよりも、大きくやっぱり世論を動かす材料になったわけで、今回も一民放の録画撮り、それが同系列の新聞に出たと言いながら、やっぱり批判として出たわけですよ。私はもうそのとおりだったと思います。あのビデオで録画したものを出したんですから、間違ったことを出すわけないと思うんですが、今回の場合にはお聞きするということで、完全に閣内不統一ですね。もう臨時国会あと四日で終わるわけですが、それ終わったらば国会での審議がないからいいんだとは言えないまでも、せめてその二十一日までは閣内の不統一なんかさらけ出すとうまくないと。ですから、事情聴取するといっても早急に真意のほどを聞いていただくと同時に、福田総理防衛庁長官以上に先走っていろんな有事体綱のことを考えていらっしゃるということも御存じのとおり。それと違った意見があれば、これは二十日に自民党の選対の方で党の役職、政府の役職を辞任するのかしないのか、総裁候補は、というようなことを検討するということでありましょうけれども、それに先んじてやっぱり問題にすべきことだと思うんです。私はいいとか悪いとかは、真意を確かめなきゃわからないというこう譲った態度はあるんですけれども、真意確かめるまでのこともないという私は断定的なものを持っているんですよ。官房長官が聞いてからと言うんで、私もちょっと譲歩しているんですよ。もう聞くまでもない。ああいう閣内不統一のことをさらけ出してやったという事実に対しては、もしかするともう河本通産大臣は、おれはもう総裁候補として出馬表明する時期も迫っているし、辞任なんかあたりまえだと、こういう覚悟できのうのああいう発言になったかもわかりません。そうとなると、これは総理の決断を待って、きょうでもあしたでも、すぐ意見聴取して閣内不統一だから辞任という問題にも発展する可能性が当然あるんじゃないでしょうか。こう思うんですけどいかがですか。
  150. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 防衛体制の整備という非常に内閣にとっても重要な問題でございます。したがって、この問題につきましていやしくも閣内で不統一ということになりますれば、これは非常に大きな問題でございますから、そういうことはないと私は判断はしておるわけでありますが、そうした閣内の統一が保てないというふうなことは非常に重大でございますから、少なくとも事情を早速聞きまして判断をしなきゃならない。しかし、閣内不統一というふうな立場で河本大臣が発言をされたのではないだろうと、こういうふうに私は考えておるわけです。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあないという信念が河本さんに聞けばそうじゃないという結果になるのか、少なくともけさのこの活字の範囲では、そうではないと断定できる判断を下されるわけです。国民全体は。長官、大平幹事長のときもそんなものを総裁選に利用しちゃだめだと、防衛問題をと。だけど大平さんも研究はいいんだと言っているじゃないかというようなことをつけ加えて、まあ正確な発言をしたというのか、ですから総裁選について利用するということでなくて、総裁候補としましてこれだけ重要な問題についてやっぱりスローガン掲げて自分の真意をこう……。  あ、読むの。ゆっくり読んでくださいよ、私そんなせきませんから、落ちついた性格ですから。どうぞゆっくりお読みください、結構ですよ。——よろしいですか。
  152. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 読んでません。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 読んでない。どうもそうちらちらするとぼくもちょっと近眼なんですけどよく見えるんです。そういうことは。
  154. 金丸信

    国務大臣金丸信君) いや、一心に聞いています。
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません、もう恐縮です。  まあそういうことで、利用しない、するしないという問題じゃないと思うんですよ。当然それをテーマと掲げてもし四人の総裁候補になるとするならば、国民にあるいは党員に、支持者に訴えることは、これは最大の問題点と思うんですね。ですから私は、あの大平さんが総裁選に利用したんだと断定はしないけれども、長官が利用したとするならば、これは利用じゃなくても掲げるのは当然だと思いますよ、このテーマを。と同じように河本さんがきのう発言したことについても利用するのは悪いということじゃなくて、総理あるいは長官の、あるいは閣内の統一というものを乱す閣僚が隣にいたということになると、今度は一番当事者の長官としては官房長官みたいに真意を聞いてから、いやそうじゃないと思いますなんて悠長なこと言えないんじゃないですか。片や国会の前では金丸長官を首にせよなんてデモが来ているんでしょう。後ろからは同僚が鉄砲を撃っているんじゃないですか。そうなった日には金丸長官立場がなくなっちゃうんじゃないですか。これ一言あるべからざることじゃないですかね、どうですか、河本きのうの発言に対して。
  156. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私はたびたび申し上げるわけではございますが、いわゆる奇襲問題あるいは超法規行動あるいは有事法制の研究というようなものが混同をして、これがひとり歩きをしちゃったと、こう私は申し上げておるわけでありますが、私の考え方、本旨とはいわゆる反対の方向へ行っているという感じもしないわけではない。しかし、まあそういう問題についていろいろな御意見があることは私は結構なことだと思う。また防衛庁といたしましても結論的にこうやるんだと、こうだというものはまだでき上がっておるわけじゃありませんから……
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 閣僚じゃうまくないでしょう。
  158. 金丸信

    国務大臣金丸信君) だからそういう意味では大平さんの言っていることも私はわからぬわけではない。なぜならば自衛隊法というものは非常にりっぱにでき上がっているということであります。また河本さん自体も、大平さんも、いわゆるよく研究すると、慎重にやれという、これ慎重にやらにゃいかぬと私は思っているので、そういう面で総裁選挙に利用しているとか、あるいは閣内不統一だという私は感じはいたさぬ。ただ、自民党の幹部の中に憲法改正するなんていうことを言うから、またいろいろ物議を醸すというようなことになる。私はこの時点において憲法改正することができるのかということを現実に考えてみても、そんなことをこの際言うことは及ぼす影響は大だと、まことにそういうことを言われることは、防衛庁のこの防衛という関係の有事法制の研究とか、奇襲に対処というような問題についても誤解を招くことが大きいじゃなないかと、こう思っておるわけであります。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 同僚として守るという気持ちは非常に結構なことだと思うんですけど、ただはっきりと国民の世論を代表するマスコミではまた批判と、こう出ているわけです。それを今度読む国民、党員の皆さん方は、また閣内でと、党内どころか閣内でもと、こういう結果を思えたことは間違いありませんね、これは。いま長官が言ったそんなことはないだろう、あるいは官房長官が言ったそうはないとは思うけれどもと、こういう情状酌量のこの善意を別にしまして、一般の国民に与えるものはまた批判と、こう出ているわけですから、河本通産大臣もと、これは間違いないです。それについて悪影響を与えたということについてのやっぱり一言当事者としてなかるべからざるものであると、私はこういう観点なんですよ、どうですか。ちょっと時間が短いんで同じことの往復じゃあれですけれども、もう批判というものが先行して出ちゃっているんですよ、活字に。
  160. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は河本さんのおっしゃっておること、あるいは大平さんのおっしゃっておること、しかし大平さんは執行部ですから、河本さんの問題も私もこの有事法制の問題の研究とか、あるいは奇襲というような問題に対処する方法とか、それは慎重でなければならないという考え方で、まあそれ以外に強いことを言っておる考え方の政治家もおりますし、あるいはマスコミもありますし、その他いろいろあるけれども、私はやはり慎重にこれは研究すべきものだと、こういう点ではそんなにこう差があれじゃないかと、こう私は思っています。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 防衛局長が今度この問題担当になったということですけど、もう組織的には三原前長官から足かけ三年ですね。それからいま論議がこう沸騰して、ですから調査研究緒についたということですけれども、責任者としまして今度実施本部長になるわけですな。今度責任者じゃなくなるんだよ。またこう気楽になるかと思うんですけど、少なくともあと十一月一日まで二週間は責任者ですから、もうそろそろ何かめど、内容のめどじゃなくて、プラン的なものを持っていなきゃ責任者と言えないんじゃないですかね、それはどうでしょうか。足かけ二年の研究の中、しかもその前には個人的研究も含めていますよ。四十一年からとは言いませんけれども、しかもこれだけ物議を醸し出している、それについていやいやまだ緒だ緒だなんて言わないで、内容的には私はそうだと思うんです。どうするかと。だけれども、一応このときまでこのぐらいのものをして、このときまでこうしてみたいというような責任者として何かプランを持っていなきやおかしいと思うんです。そのプロセス、いつまで何やるなんということじゃなくて何かありますか。
  162. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 実はこの前の内閣委員会におきまして、先生に官房長から御答弁申し上げました八項目というのがございます。私はこの内容につきましていろいろ調べてみましたが、いわゆる法制担当者といいますか、法律の担当者が思いつくままにいろんな法律を挙げ、あるいは項目を挙げてみた結果、大体こんなことになるのかなというような予想を申し上げたわけでございまして、あの時点におきましてはそういうようなことも考えておったようでございますけれども、現実問題といたしましてはやはり自衛隊の行動、有事におきます行動を中心に物事を考えていかなければならないわけでございます。  で、先ほど大臣から申し上げましたように、この自衛隊法そのものもかなりそういった有事に対する自衛隊の動きというようなものについてはよく書かれておりますが、何といいましても有事というのはいままでございませんでした。そうしてまた、軍事技術というものも非常に変化しておりますし、またそれに伴います戦術思想というものも変わってきているわけでございます。そういう中で現在のこの自衛隊法の七十六条が発動された場合に、その運用面とその法制との関係というものをすり合わせる必要というものがあるわけでございます。私がまず感じましたのは、どうしてもこのことしから始めました防衛研究、陸海空を統合的に運用するということを中心に考える、この防衛研究とすり合わせながらいかないと、いわゆる法律的な、概念的なものだけで走るのではないかという感じがいたしまして、そこのところをすり合わしてまいらないといけないというふうに考えております。  したがいまして、まだ具体的にどういう構想で進めるというところは考えておりませんけれども、いま私が思っておりますのは、その防衛研究の研究の進みぐあいと符合しながら、吻合させながらこの研究を進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 くしくもかな局長の口から出たんですが、やっぱり実態論がない法律研究あるいは立法化をもしされるとするならば、これはもうどうしようもないと思うんです。いまの自衛隊の制服の実態、私言うまでもなく、要するに充足率だって何にもない、いまの兵際さんが戦って負傷者が出たらお医者さんが何にもいない。実際にもし研究するということが必要ならば立法化する、その中間報告もすると長官何回も繰り返している。その実態面、いろんなこと実態ありますよ。いろんな実態があるが、ここでやったらもう時間がありません。有事になったときだって、前戦に進んだって後站部隊が全然ない。一人の人傷ついたってお医者さんが、手当てする軍医だって一人もいない、極端に蓄えば。そういう実態面、充足率の面を含んで一番端的なのが医官の問題なんかそのとおりでしょう。  だから、それをくしくも陸海の防衛面という言葉を使われて、それと研究と一緒にと言ったのか、私そこまで思案わかりませんけれども、いわゆるその法制研究、やがてそれが国会にかかった中間措置を通って立法化される可能性を含めての研究といまの実態面、これが全く伴っていないんじゃないですか。幾ら法制化されたって、いまの制服の実態じゃ、その法律に伴った動きができる可能性がない実態しかない場合も、局面もあるんじゃないですか。その点はどうお考えなんですか。
  164. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) その点は確かに私どもも反省しなければならない点だと思います。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 何も実態充実しろということじゃないですよ、現状が……。
  166. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 実態の問題がどういうところに問題があるかというようなこと、そこをどうやって埋めて、そして先生も御承知のように、専守防衛という立場からいたしますと、どうしても有事即応体制というものを維持していかなければならないと考えているわけです。で、その観点からしますと、いま多くの欠点を抱えておりますので、それを埋めながら、その部隊が動くについてはどういった問題点があるかというようなことをあわせて研究しなければ、いわゆる言葉が適当かどうかわかりませんけれども、空洞化した法制だけができてもこれは意味がないというふうに考えているわけでございます。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官ある時期においてそんなものは一年やそこらでできるもんじゃないんだという裏づけをいま局長がある観点からしたわけであります。ただ、できるわけはないんだと言いながら、やっぱり閣内不統一みたいな、あるいは党内不統一みたいな賛否両論があるわけです。となると、やっぱりこういう意見もあるわけですよ。もうこれで自民党政府としては、金丸長官としては制服にメンツが立った、これだけもう有事でがんばっている金丸長官さすがは山梨県の大物政治家だと、メンツは制服には立ったんだ、これでもう立法化なんて考える必要ないんだと——私じゃありませんよ。ある人の声なんです。これもあながち私は実態論から言うと誤りじゃないかもわからないんですよ。これだけの世論を巻き起こした、制服だって、おまえたちめんどう見る意思はあるんだぞと、こういうことが本当に表に出たことだけで政治的効果はあった。後は研究といったって、国会報告といったってできるもんじゃないんだ、そんなものは。立法化で憲法の枠なんてのは夢物語なんだということで、このままうやむやになるんじゃないかという意見も相当あるんです。専門家が。そうすると、長官は一年ではできないと、具体的にはこんなことを言いましたね、一年ぐらいでできるもんじゃないんだと、そうすると局長よりもっとの責任者ですね、最高責任者。そうすると、やっぱりその最高責任者よりも総理が飛び抜けた発言はしていますが、その研究ないし法制化の当面の一番近い責任者は総理より長官なの。そうなりますと、一年の短期間じゃできないし、それじゃプロセスぐらいはやっぱり長官としてある程度持っていなければ、また何か総理が言っちゃった、そんなことはおれは寝耳に水だなんて言っていたんじゃ、それこそますます何を考えているのか、政府だって防衛庁だって何にも考えがなくて防衛論議が進まっちゃうんじゃないかと。もうきょうだってそういう活字が出ていますよ。そんなことを書かれることは心外じゃないですか。ひとつ私は促進派じゃないけれども、皆さん方の考えをまず聞かなければ批判もできない、正確な認識がなければ評価もできないという意味で、長官ぐらいはもうじっと腕を組んで考えているこの瞬間だってひらめくものがあるでしょう。どういうこれからのプロセスでもって、一年という短期間じゃできないけれども、せめておれ在任中には何とかしてみたいんだとか、いや在任中には無理だけど、中期的に数年間のうちには何とかやっぱり国会に報告しなければうまくないとか、何か将来に向かっての金丸長官として、防衛庁としてやる気がある人としては建設的な何か考えぐらいは私は持っているんじゃないかなと反対派でもこう思うんですが、いかがですか。
  168. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 有事があるから自衛隊があるという論法の中で有事法制の研究をするということ、これだけ国内にいろいろの意見を巻き起こして、ただここまでやればそれでおれの目的は達したと、こんな考え方は私は持っておりません。しかし、憲法の範囲内でやるということでありますから、その範囲内でやるについては十二分にひとつ検討して、そして私のところにできるだけ早い機会に上げろと、こういう私は指示をいたしておるわけでありまして、そういう中で現在いろいろ拾って研究をしているというのがきょうの現状でありまして、あくまでも研究したものは国会で皆さんに目を通していただき、いろいろな御批判をいただき、そしてそういうものはもう要らないとか、これはあった方が、自衛隊があるうち必要だというものがあれば、それはまた皆さんの御同意を待て、さあ、そこでじゃあ立法化するのかというような問題も出てくるであろうと、こう考えておるわけであります。
  169. 黒柳明

    ○黒柳明君 局長、できるだけ早くおれのところに上げろと、これを聞いていますか。できるだけ早くおれのところに上げろって。
  170. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは大臣から、とにかく物事ができ上がってから持ってくるんではなくて、その節目節目に大臣のところに上げて、そしてまた国会にも報告して皆さんの御意見を伺いながらこの法制の研究というものは進めていかなければならないということでございます。で、現在まで実はこの法制担当者が主としてやっておったために運用面とのすり合わせというようなことが必ずしも十分でなかったと思いますのは、いま私が振り返ってみますると、たとえば部隊が動くに当たって必要だろうと思われる道路交通法の条文の研究なんかにかなり時間がかかっております。したがって、能率的ではなかったという感じがいたしますので、そういった点をこういう範囲でこういう研究を進めていこうというようなことを防衛研究の進展とあわせまして、いま先生がおっしゃいました今後の方向を決めてまいりたいというふうに考えております。
  171. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官、あの研究に対してわが党も批判的なんです。ですけれども、あながちその批判が中期的将来になったら誤りだったか、やっや、こんなものが出てくればこれは結構なんだということになる可能性はゼロじゃないと思うんですよ。そのためには、研究に対してこれも未知数であって何にも言えないという段階よりも、もっと実質的な審議ができる段階というのは、長官が何回も言うように、国会に中間的なものを出すとか報告するこの段階です。この段階において本当に憲法の枠を越えるものなのか越えないものなのか、機密保護法というものはどうなのかということがはっきりしてくるんじゃないんですか。これをやっぱりせくということは長官にはあるんでしょうね、早く上げろということは。そしてなおかつ、長官だっていつまでも長官であるか、あるいは青年行動隊にやみ討ちに遭うかわからない身分ですから、失礼ですけれども。そうなると、やっぱり長官という在職任期というものと、国会に報告してより実質的な討議を願いたいという長官の、いいか悪いかわかんないけれども、前向きの意向というものは合致しなければならないんじゃないですか。そのあたりの将来に対するめどというものはお持ちにならなきゃおかしいと思うんですけれどもね。
  172. 金丸信

    国務大臣金丸信君) この臨時国会で出す段階ではないと思いますが、一遍にそういう問題を幾つも幾つも、十も二十も一遍に出すなんという研究ができるはずのものではない。一つできたらひとつ中間報告をするというような考え方でいけば、私は通常国会には中間報告の一つや二つはできるであろうと、こういう考え方を持っております。
  173. 黒柳明

    ○黒柳明君 官房長官が見上げて心配していましたよ。いまの顔、心配の顔です。あの顔は安堵の顔じゃありませんよ。いや、ハッハじゃない、私はちゃんと公平に見ているんですから。  まあ、通常国会で一つや二つ、できたらひとつ国会にと。私は、できることにも憂えがあります。つくることについても批判があります。しかしながら、批判、批判してたって、これ以上審議が進まない。論議が進まないならば、一回具体的なものを出して、そこでお互いにもっとより現実的な論議することも、一つのやっぱり国民に対する国会の真摯な役目かなという半面もあるんです。批判する半面。まあ通常国会まで長官であるかどうか私全くわかりませんが、ひとつ通常国会で一つでも二つでもという考え、私それの方がある面ではいいんじゃないかなという気がします。  最後にまとめて防衛局長お願いしたいんですが、この有事と、もう一つ忘れているのが、防衛庁がことしから調査費をつけまして、五十七年までにつくるという中央指揮所、とかくこの中期的な、まあ四年ですから短期的といいますか、防衛庁の非常に大きな仕事、先般アメリカに調査に行ったというようなことを私仄聞しているんですけれども、もうこっちの有事の方でとられているので、そっちの方余り気にしなかったんですが、どうなんですか、調査の結果、あと四年間の、いつまで調査していつまでにどうするというようなプロセス、企画あたりできたんでしょうか。あるいはコンピューター入れる、どんな種類のものを入れるとか、あるいは配置するところは総理官邸なのか、あるいは市ケ谷の地下ごうの中なのかと、そういうところまで議論は進んでいるのか。ということは、やっぱり有事ということは、あくまでも七十六条の総理の下令、その下令されるところがいまあると言えばあるけれども、ないと言えばない。そのために、あるいは情報網だって集約するところが非常に散漫であるとかいうためにつくるものですから、そうすると、有事法制よりも前にこっちができる可能性もあるし、より具体的なわけですな、この中央指揮所の構想の方が。これについてやっぱり見過ごすことは私はうまくないと、こう思いますので、わかっている範囲、これから四年間のプロセスなり機材なり場所なり構想なりをお聞かせいただけますか。
  174. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この中央指揮組織というものは、これはたまたま一致したようなことになりましたけれども、私どもの方といたしましては、早くから総理大臣あるいは長官の文民統制の中枢としてこの中央指揮機構というものを考えているわけでございます。  この中央指揮機構に必要なものは、的確な情報がそこに集まるということと、それから総理大臣あるいは長官の意思が的確に部隊に伝わるというこの二つの面があるわけでございます。そこで、その情報というものが、いわゆる総理大臣長官の文民統制の見地からの判断として、必要な情報というものはどういう内容のものであるか、これは第一線の指揮官が得る情報とはおのずから違う面もあると思います。したがって、どういう情報を集め、そしてどのような方法によって適確な命令を与えるかというようなことにつきまして、先生もいまおっしゃいましたように、ことしの六月に運用課長を中心といたしましてアメリカ、ヨーロッパに調査に行ってまいりました。その結果、すでに持っておりますアメリカなどからは非常にいいアドバイスを得てまいりまして、まずこの中央指揮所をつくるに当たって一番大事なことは、どういう情報をそこに集めるかということが一つの問題である、それからいま申し上げましたように、この通信能力というものをどのように確保して、第一線の部隊とそれから中央との意思の疎通をするかというようなことについて学んでまいったわけでございます。  そこで五十四年度、来年度はそういった調査の結果をもとにいたしまして、そういった中央システムというもの、いわゆる情報あるいは指揮機能のシステムというものをシステムデザインをしたいと思っているわけでございます。それに基づきまして、どういうところにどういう機材を入れ、どういう人員を配置し、その中央とそれから前線との意思を完全に伝えるかという具体的な設置の計画は五十五年度と五十六年度の予算においてお願いをいたし、五十七年度から運用したいという計画を持っているわけでございます。
  175. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  176. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。  暫時休憩をいたします。    午後三時三十五分休憩      —————・—————    午後三時四十三分開会
  177. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  178. 山中郁子

    ○山中郁子君 初めに、防衛協力小委員会の問題についてお伺いをいたしますが、日米防衛協力小委員会の任期というのはどうなっていますか、いつまでになっていますか。
  179. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは任期というものは特に決めてございません。
  180. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうすると、所期の目的をある程度、ある程度というだけではなくて達成したならば解散をするという、そういう性格のものなのか、ずっと何らかの形態をとって引き続き存続させていくものなのか、その点はどうでしょうか。
  181. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは最初にはそういうことを協議せずに出発いたしました。そしてとりあえずこの防衛協力小委員会におきましては、今後日米間で整々と対処するためのガイドラインをつくるというのが最初に与えられた課題だったわけでございます。で、このガイドラインにつきまして過去二年間それぞれ部会をつくりまして、いま成案をつくりつつあるわけでございますが、これを日米安保協議委員会に報告いたしました後、米側とあるいは日本側とそれぞれ今度は別個に防衛計画といいますか、そういったものをつくる段階になるわけでございます。その際にこの協力小委員会というのを残しておいて、そしてそういった計画の中で実際にそのガイドラインを守ってつくられているかどうかをチェックする必要があるのかないのか、そういうようなことも検討しながら今後のことは決められていくのではないかというふうに考えております。
  182. 山中郁子

    ○山中郁子君 外務省お見えいただいていますでしょうか。——そうしますと、この防衛協力小委員会の三つの部会ですね、作業部会——作戦、情報、後方支援、これはその作業部会の任務ないし任期は終わっているのかどうか、現在どうなっているのか、終わったということならば解散するのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  183. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはその部会の仕事というのは一応終わっております。したがいまして、まあ解散したという言葉が正しいかどうかわかりませんけれども、その後は作業部会というのを開いておりません。実質的に開いていないということでございます。
  184. 山中郁子

    ○山中郁子君 まあそれ以上のことは外務省の見解でないとはっきり言えないというように理解してよろしいですか、防衛庁としては。
  185. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは外務省と意見を交換しながら、今後の問題というものを考えなければいけないと思いますので、やはり外務省の御意見も聞いていただきたいと考えているわけでございます。
  186. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、それは後ほど外務省が見えてからお伺いすることにいたしますが、防衛庁としては、残るとするとどういう任務が与えられるというふうなことが予想されるのか、お考えがありましたら伺います。
  187. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私どもといたしましては、まあ一応このガイドラインをつくった段階で防衛協力小委員会の任務は終わったというふうに考えているわけでございますが、なおシビリアンコントロールといいますか、いわゆる日本の政府とあるいはアメリカの政府側が今後も引き続きそういった計画内容等について検討する必要があれば、いわゆるその日米安保協議委員会の補助的な機関として残してもいいのではないかという気がするわけでございます。
  188. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、補助的な機関、性格的にそういうものとして仮に位置づけたとしても、内容的にはどうなりますか。そういうふうに位置づけた場合ですね、考えられるんではないかとおっしゃった場合には、その内容としてはどういうことになりますか。やっぱり先ほどおっしゃったような、ガイドラインの実行状況のチェックだとかというふうなことで理解をすることになりますか。
  189. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) まだ詳しく研究をしたわけではございませんけれども、考えられるものとしてはそういうことではないかと思っているわけでございます。
  190. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで、防衛協力小委員会でガイドラインをつくってきたということになっておりますけれども、そのガイドラインの性格についてお伺いをしたいと思います。つまりこのガイドラインは、結局日米両国政府を拘束するものになるのかどうか、性格の問題を端的に伺うと。その点はいかがでしょうか。
  191. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはいわゆるその両国政府を拘束するものというふうには考えていないわけでございます。この研究の結果、大体こういうガイドラインのもとにそれぞれのミリタリーでいろいろ計画を立てる、その指針として適当であろうということで合意がなされますと、そのガイドラインに従って、まあさらに計画をつくり、研究をするわけでございますが、その際の指針であって、それを実際にどうするかというのはそれぞれの政府判断によるということで合意ができているわけでございます。
  192. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、参考意見という範疇に入るわけですか。
  193. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはまあ共同で研究をしてまいりましたから、全く何にも考慮を払わなくてもいいというものでもないと思います。こうやってやることによって、いわゆるその日米の協調というものはきわめてうまくいくだろうということで合意されたわけでございますから、そのガイドラインに従いましてそれぞれ計画をし、研究を進めることになろうと思いますが、いわゆる二国間の条約のような、あるいは協定のような、取り決めのような、そういった強制力を持ったものではないというふうに考えているわけでございます。
  194. 山中郁子

    ○山中郁子君 そのガイドラインの内容にかかわる問題ですけれども、日本の有事——いま有事体制その他で問題になっておりますけれども、日本の有事の際に来援の米戦力ですね、というような点での、たとえば規模だとか、そうしたものは盛り込まれているということでしょうか。
  195. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それはガイドラインには盛り込まれておりません。
  196. 山中郁子

    ○山中郁子君 まあたとえばミッドウェーの兵力の使用だとか、それから沖繩の海兵隊第三海兵師団の使用、そうしたことについては一切入っていないというように理解してよろしいですか。
  197. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは、来援につきましてはアメリカ政府判断によるところでございますので、このガイドラインの中ではそういうものは取り扱っていないわけでございます。
  198. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、そのガイドラインというのは一体何なのかということになるわけなんですけれども、たとえば朝鮮有事の際に自衛隊を動員すると、そういう計画。端的に言ってしまえばそういうものがガイドラインの中に含まれているのか。
  199. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) そういうことは全く含まれておりません。
  200. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういう関係、いま私が申し上げたような問題については一切ガイドラインの内容としては含まれていないし、かかわりがないと、こういう御答弁だと承ってよろしいですか。
  201. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは、そういう内容は含んでおりません。
  202. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしましたら、防衛局長、ひとつ端的にガイドラインの中身というのは一体どういうものなのか。いま私が伺ったようなことは入ってないとおっしゃる。じゃ一体、端的に言うとどういうことなのかということをひとつお聞かせいただきたい。
  203. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この中身につきましては、日米安全保障協議委員会に報告した上で発表することになっておりまして、いま最後の詰めをやっておりますので、中身の御説明は差し控えさしていただきたいと思います。
  204. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、これは前々から防衛庁も答弁をされておられるわけですけれども、十一月の日米安保協議委員会でガイドラインを正式に承認するということも伝えられておりましたが、時期的にどういうプログラムになっているのか、お尋ねいたします。
  205. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは、御承知のように、日米安保協議委員会は、日本側は外務大臣と防衛庁長官でございます。それからアメリカ側が太平洋軍司令官と在日アメリカ大使でございますが、その日程をそれぞれに詰めながら、なるべく早い機会に開催したいということで外務省が折衝いたしておりますので、私どもはいまいつ開かれるかということは聞いていないわけでございます。
  206. 山中郁子

    ○山中郁子君 外務省はまだ見えていらっしゃいませんか。  関連をして、これも外務省の御答弁でないと承れないのかどうかと思いますけれども、当然のことながら、協議会でそれがオーソライズされるという段階になりましたらそれは発表される、公表される、そのように理解してよろしゅうございますか。
  207. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは外務省から御答弁いただく方が適当だと思いますけれども、外務省と私どもあるいは米側と話し合っているのは、ガイドラインについては発表をしたいということで話を進めております。
  208. 山中郁子

    ○山中郁子君 よく内訓もマル秘ということで、防衛庁にマル秘がつきものなんですけれども、この問題につきましては、たとえば付属の秘密の約束、取り決め、合意、そうしたものはありますか。
  209. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは全く考えておりません。
  210. 山中郁子

    ○山中郁子君 安保六条の場合の基地使用以外に関連される内容がありますか。
  211. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 六条の関係についてのガイドラインというものがまだ最終的に合意されてないと思いますけれども、いずれにいたしましても六条の関係におきまして自衛隊と米軍との直接の関係というものはないわけでございます。
  212. 山中郁子

    ○山中郁子君 いまいわゆる日米防衛協力小委員会がつくられるときのいろいろな議論がありました。それで、国会論議もありましたけれども、その際にも後方支援の問題で、具体的にどういう問題が出てくるかということは、「それぞれの有事の際の事態の様相を詰めてまいりませんと出てまいりませんので、一般的にいま申し上げましたような部門の問題もあるのではなかろうかというふうに存じておるわけであります。」という答弁があるのです。この点に関してお伺いをしているわけですけれども、基地使用以外には考えられないということでよろしいですか。
  213. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは、六条の場合にはまず再三申し上げておりますように、日本政府判断というものがあるわけでございます。その中でいまおっしゃいましたような基地使用の問題なんかはあるかと思いますけれども、そのほかに自衛隊が直接米軍と関係するといいますか、協力するという分野はないわけでございます。
  214. 山中郁子

    ○山中郁子君 いま残された幾つかの問題につきましては、外務省が見えてからお尋ねをもう一度したいと思います。  次に、防衛庁が先日発表されました有事法制研究についての統一見解、さまざまな議論になっておりますけれども、その点の一つに関してお伺いをします。  戒厳問題です。有事法制についての防衛庁の統一見解では、「旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような制度を考えることはあり得ない」、同時に「言論統制など」も「対象としない。」と、こう言われているわけですけれども、もう御承知のように、先日の予算委員会その他で総理大臣がすでにもうこの防衛庁の統一見解を踏み外した形で言論統制その他エスカレートした答弁をされて、政府の真意というものが大きな問題になっておりますし、また防衛庁の統一見解そのものが国民の批判をかわす、世論を鎮静させるというような役割り、そういうつもりでごまかす材料として出されたものではないかと私も指摘いたしましたし、そういう問題になってきておりますが、この「旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような」となっておりますが、旧憲法下のようなものでない戒厳令や徴兵制を考えられ得るということでしょうか。その点はいかがですか。
  215. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 旧も新もありません、全然そういう問題については考えていないということであります。
  216. 山中郁子

    ○山中郁子君 これは前に三矢研究の問題に関しまして議論が行われた際にも議論になりまして、そして当時の高辻さんが答弁をされている中にいろいろあるんですが、「明治憲法時代の戒厳令というのは、戒厳令がしかれますと、いろいろ国法上の関連に影響を持った法律関係が生じてまいります。そのうちには、もとよりわが現行憲法のもとでは許されない事項が入っていると私は思います。したがって、はっきり申し上げれば、わが現行憲法の上ではそのとおりのものはできないというふうに考えます。」、つまり、「そのとおり」というのは旧戒厳というものはできないと考えると、こういう御答弁で、同様の御答弁が何回か出されているわけですけれども、その点も踏まえた上で防衛庁のはっきりした御見解をお伺いしたいというのが私の趣旨ですけれども、竹岡官房長は見えてないですね、お願いをしたんですけれども……。  実は、前回のこの内閣委員会質問で、竹岡官房長の答弁の中に、ことしの二月まで、昨年の有事法制研究の指示があって以降、各幕でいろいろ検討項目をその他検討してもらったという御報告がありました。それが新聞報道によりますと二百項目というように伝えられて、そしてそれを大体グループに分けたのが同じように竹岡官房長が答弁された八つのグループだと、そのようにも伝えられてもおりますし、私も先回の予算委員会でもその点について幾つかの指摘を申し上げました。その中で竹岡官房長が三矢研究のときの緊急法制ということについていろいろ話が確かにあったと、憲法違反内容もあったという趣旨の答弁をされた中で、その中には戒厳令とか何かあったように聞いておりますけれども、あのときの資料はいま防衛庁は持っていないと。そういう記憶があると。で、「そういうときに勉強したようなものが、法制上こういう問題があるじゃないかという、先ほどの各幕から上げてきたような中にはそういうものも考えながら入れてきたものもあろうと思いますけれども、」と、こういうふうにおっしゃっているわけなのね。つまり、だから戒厳を含む憲法上大きな問題になる三矢研究の際のいろいろな項目が各幕からそれぞれ上がってきているということも、それはだから防衛庁でふるい落とすなり何なりなさるという過程も入るのかどうかわかりませんけれども、事実上の問題として長官も何ら隠す必要はちっともないと、こうおっしゃっていらっしゃるわけですので、各幕から相当項目、二百項目と伝えられている相当項目挙げられた中には、断然のこととして戒厳令その他が入っていたと、このように理解をしてよろしいですか。その辺の実情をお聞かせいただきたい。
  217. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 非常に数多くのものが出たということは私も聞いております。ただ、これは先生、この委員会におきましても御説明したかと思いますけれども、いわゆる法制担当者が頭に浮かぶ範囲でいろんな項目を洗い出したというのは事実でございます。先ほども御説明いたしましたように、この実体を伴わない一つの概念としていろんなものを出して、たくさん集まってそれを振り分けてみたということでございますが、戒厳というようなものは入ってなかったと聞いております。
  218. 山中郁子

    ○山中郁子君 この戒厳問題に関しては政府関係、自民党関係の方がいろいろ意見をお述べになっていらっしゃるんですけれども、政府憲法調査会ですね、そこで元の防衛局長の加藤陽三さんが、質問に対して答弁をされている中で、質問は、「自衛隊といたしましては、できたら戒厳法というものを制定したいという希望をもって研究していられますか。」、こういう質問に対して、「非常事態に対処する方法は研究はいたしております。」、このように答弁をされていらっしゃるんですね。それから、元防衛庁長官の増原さんがやはりこの問題について、これは著者の中に「安保の時に見られたような事態に対処する一つのキイ・ポイントは戒厳令なのです。戒厳令がなければいけない。これは前々から私どもは政府部内で話をしているのですけれども、戒厳令を研究してみろということは、よう言わないのです。政府にしても長官にしても。」——よう言わないというわけですね。で、内々でやっているのですが、戒厳令というものは、昔のとおりのものを持ってくる必要はないけれども、非常事態におけるそういうものが必要だと。内々でやっていると、こうおっしゃっているわけですね。この増原さんの発言の中でもはっきりあらわれていますように、戒厳令は、戒厳ということに対する自衛隊ないし、その希求というか希望、要求ですね。それは有事の際、単なる防衛という問題だけではなくて治安——民主運動や労働運動やあるいは反戦運動、そうしたものに対処する、安保のときに見られたような状態ということを言っているわけですから、そういう大変危険な内容を含んでいるということを私は指摘をしたいわけですけれども。  そこで、長官にもう一つだけお伺いしたいんですが、戒厳令は考えていないとさっき明言をなさいましたけれども、それでは非常事態法のようなものですね、そうしたものはいま増原さんや加藤さんなんかの発言がいろいろありますけれども、そういうものはやはり考慮のうちに入るとお考えでしょうか。
  219. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は、しばしば申し上げておるように、いわゆる憲法の範囲内でやるということでありまして、憲法範囲外のものは研究はしない、こういうことであります。
  220. 山中郁子

    ○山中郁子君 戒厳令はもちろん、非常事態法も一切研究の対象にはしないということで明言していただけると思ってよろしいでしょうか。
  221. 金丸信

    国務大臣金丸信君) そのとおりです。
  222. 山中郁子

    ○山中郁子君 では具体的に一つだけお尋ねをいたします。これは国防基本法私案、問題になりましたけれども、その中にも戒厳という条項でもって成文をされています。これはそれこそ旧憲法下の戒厳令を踏襲した形で十一項目にわたって、第五十四条として成文されているんですけれども、その中に、たとえば「住居の移転を命じ、もしくは禁止し、もしくは制限し、住居を指定し又は人の移動を命じもしくはこれを禁止もしくは制限すること」、そのほか十一項目あるわけですね。そういうものとして戒厳の内容がとらえられているわけです。ほかにもいっぱいありますよ。そういう点についてもただいまのお考えは変わらないというこでよろしゅうございますか、長官
  223. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は、もうたびたび申し上げておりますように、憲法の範囲内ということでありますから、当然それは憲法の範囲外であれば、それは入らないわけであります。
  224. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、当然憲法に抵触するということをこういう形でつくったということが問題になったということを前提に申し上げておりますので、いま例として申し上げましたことに対して、当然入らないということなら、そのように明言をいただきたいと思います。
  225. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 論議を整理するために、戒厳令をお持ち出しになっておりますが、戒厳令というものの本質といいますか、どういう内容のものをもって戒厳令と称するかということをまず決めてかからないと、戒厳令のようなものはしないとかするとかいうんじゃ、普通は議論が宙に浮くおそれがありますので……
  226. 山中郁子

    ○山中郁子君 いまごろそんなこと言われたって困る、ちゃんと議論しているのに。
  227. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) そこで、旧憲法に言うような戒厳令とは何かということで、それが憲法違反であるかどうかというところを決めなきゃいけないわけですが……
  228. 山中郁子

    ○山中郁子君 いま私が言ったことについて答えてください。
  229. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 私の理解では、戒厳令と言われるものの本質は、非常の場合とか有事の場合といいますか、そういう場合に軍が、あるいは自衛隊が、前の戒厳令で申しますと戒厳司令官が、司法作用あるいは行政作用を統括するという非常体制に移すというのがまず基本の考えだろうと思います。そういう軍が司法作用あるいは行政作用を統括するというようなことは、もちろん現行の憲法の各条章に違反します。  それから、人の住居の話、移転の話等お出しになりましたが、これはたとえば避難を命ずるというような場合のことを考えますと、全然憲法上許されないというふうに言い切れるかどうかは、それはその避難命令を出すときの構成要件といいますかあるいはその手続といいますか、それからまたそれを必要とする事態の重大さの程度とか、そういうものを総合考覈しまして、そして場合によっては許される場合があり得るんではないかというふうな気がいたします。  ですから、全然いまおっしゃったようなことは、てんからもう非常事態立法といいますか有事立法の検討の対象に初めからならないというふうには私は考えていないわけでございます。  もちろんこれは防衛庁の方で立案されて、それででき上がったものを現在の憲法のもとで許される範囲内のものであるかどうかという観点から私の方で十分審査をいたしまして、慎重の上にも慎重にその要件なり手続なりを考慮して決めなきゃならぬ問題であると考えております。
  230. 山中郁子

    ○山中郁子君 だから、防衛庁長官がいろいろそのように明言をされても、結局いま法制局長官が言われたように、そういうことだって考えられるかもしれないと、こうおっしゃるわけですよね。いま私申し上げましたように、私がいま引用したものは、国防基本法私案ということで問題になりました、そこの非常事態措置、国家非常事態における特別措置、その中で十一項目挙げてある一つの項目をたまたま申し上げました。これは、旧憲法下の戒厳令の中に全部照応しているんですよ。旧憲法下の中では、戒厳の項目の中に七項目入っています。そこの中にも当然そうした内容がみんな入って、照応したものとしてつくられているわけです。だとすれば、抽象的、一般的に戒厳令あるいは非常事態宣言、そのようなものは考えないとおっしゃっても、具体的に一つこうして申し上げていけば、法制局長官は、そういうことも考えられる可能性はあるということをおっしゃっている。長官、どうですか、これは明らかに戒厳令として、範疇としてとらえられている問題なんですよ。
  231. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 防衛庁の作文を私が弁明するわけではございませんけれども、ただいま御指摘の、「旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような制度を考えることはあり得ない」とございますが、そのすぐ前のところに、この研究が「現行憲法の範囲内で行う」こととしているものである以上ということがはっきり書いてございます。したがいまして、「旧憲法下の戒厳令や徴兵制」と一口に書いてございますけれども、旧戒厳令の中には、先ほど申しましたように、明瞭に現行憲法上許されないというものもありますし、それから先ほど私が申しましたように、その命令の必要とする事態あるいはその命令の中身、手続あるいは保障の有無、いろんなことから場合によっては許されるものもあり得るかもしれない。だから、前の戒厳令の中身、私いま現在全部暗記しているわけじゃもちろんございませんけれども、これは十分検討を加えて現行憲法上許されるかどうかを決めるというものであろうと思います。ですから、前の戒厳令これ実は旧憲法のもう一つ前の太政官布告なんですけれども、その中に書いてあったこと等にあるいは近いようなことは全部てんから問題にならないというものではないんだろうと思います。私は。やはり現行憲法の範囲内で行うという制約があるわけですから、その範囲内でもし許されるものがあれば、それは必要に応じて防衛庁で検討された結果、もし法文化する必要があるということであれば、私の方で憲法に照らして審査をいたします。
  232. 山中郁子

    ○山中郁子君 いま法制局長官がおっしゃったその言葉は私そのまま引用して申し上げますけれども、無論、現行憲法の範囲内で行うものであるから旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような制度を考えることはあり得ないと、だから徴兵、戒厳ともに現憲法違反になる、憲法に抵触すると、こういうことでおっしゃっているんじゃないですか。それにもかかわらず、法制局長官は旧憲法下の戒厳令であっても、いまここで考えられるものがあるとおっしゃる。そういうことは絶対にないと防衛庁長官はおっしゃる。これは明らかに意思が不統一ですよ。それはどうぞ明らかにしていただきたい。
  233. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は、法律専門家でないからわからないわけでありますが、しかし憲法の範囲内という中でこういうものを取り扱っていきたい。またはそういうものを考える中で何が出てくるかわかりませんが、研究したものを法制局にどうだと、相談に乗ってください、研究してください、こういうひとつの順序はあると私は思うわけであります。
  234. 山中郁子

    ○山中郁子君 きょうは時間が限られておりますので、この問題は、法制局長官の御答弁は戒厳もあり得ると、非常事態宣言もあり得るという内容を含んでいるわけでしょう、旧憲法下の戒厳令の内容でさえ考えられると、ものによっては。そういう御答弁と承らざるを得ないです。違うんですか、それは。
  235. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) そういう御疑問をお持ちになるかもしれないと思いまして、私は最初に一口に戒厳令といい、あるいは非常立法とおっしゃっても、その中身をよく決めた上でなければ結論を出すわけにはいきませんということを申し上げたわけでございまして、私、現在手元に旧戒厳令の条文持っておりませんけれども、たとえば避難命令をすると、避難命令を出すというようなことは、これは場合によっては憲法が全然禁止しているとは思いません。先ほど申しましたようないろんな要件を総合勘案しまして、そしてそこにおったんじゃ国民は犬死にしますよ、逃げなさいというようなことをやることが、私は直ちに憲法違反するとは考えておらないわけでございます。
  236. 山中郁子

    ○山中郁子君 この問題は明後日引き続き取り上げたいと思います。  民間防衛の問題につきまして、国防会議事務局長にお見えいただいていると思いますので、一点だけお伺いをいたしますが、先回の衆議院の内閣委員会で、国防会議として民間防衛について研究するという総理からの指示があったと、現在内閣審議室と私どもで協議を進めていると答弁をされていますけれども、その協議はどういうように進んでいるのか、民間防衛とはそれこそ何を指すのか、核シェルターのことはよく出ますけれども、民間防衛というのは三矢研究の中身によれば、たとえば三矢研究では五点にわたってその問題を提起しておりますが、そうしたことも含めて考えておられるのかどうか、お伺いをいたします。三矢研究は「重要施設・機関都市等へ空襲騒擾に対する防衛組織」「民間防空・民間防空監視隊、官庁防空」「郷土防衛隊の設置」これは「(非常時国民戦闘組織)」となっております。「消極防空に対する統制権限」「災害保護法等の制定」この五項目が民間防衛という形で三矢研究の際には挙げられておりました。そういうことが含まれるのかどうか、ちょっと一遍に質問をいたしましたけれども、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  237. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 国防会議において、総理が民防の問題についても検討をするようにという御指示がありましたので、防衛庁なり私どもなりで検討を進めることにしておりますけれども、本来国防会議事務局としましては縦割りの権限を持っておりませんから、私どもの所掌になるわけではございません。したがいまして、内閣審議室と相談をしているわけですけれども、内閣審議室としましてもそういった議論も従来扱っておりませんので、現在は民間防衛というものが外国ではどういう範囲で行われているのかということを若干資料を集めて内閣審議室に説明をし、かつ内閣審議室に関係省庁の人に集まっていただいて、そこでも同様の説明をし始めている。そこで各国とも同じでありまするけれども、民間防衛の範囲を決めるのはそれぞれの国でありまするし、わが国は民間防衛という問題を取り上げるのかどうか。取り上げるとするならば窓口をどこの役所にするのかということを考え始めようとしている段階でありまして、民間防衛内容規定そのものを検討するまでにはまだ至っておりません。
  238. 山中郁子

    ○山中郁子君 三矢研究との関係は。
  239. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) したがいまして、三矢研究を関係者がどういうことを考えようとしておりましても、私どもとしてはこれから民間防衛内容を、もし民間防衛を取り上げるならば、民間防衛内容をこれから考えるべきもの、したがって、当面三矢研究の内容とは全く無関係に新しく考えてまいりたい、さように思っております。
  240. 山中郁子

    ○山中郁子君 外務省がお見えになりましたので、最後に外務省にお尋ねをいたします。  先ほど防衛庁にお尋ねをしたのですが、防衛協力小委員会並びに作業部会、これが作業が終わって任期がないようですけれども、さっき伺いましたら特に決められた任期というのはないようですけれども、任期があるのかどうか、終われば解散するのかどうか、継続するのか、継続するとすればどういう任務を持つのかということが第一点です。  それから、ガイドラインがいま詰まりつつあると、こういうことですけれども、いつ発表の段取りになるのか。十一月には日米安保協議委員会でガイドラインを正式に承認するというふうに伝えられておりますけれども、そのプログラムがどうなっているのか、その二点についてお尋ねをいたします。
  241. 北村汎

    説明員(北村汎君) まず、防衛協力小委員会並びにその下部の部会の存続につきましてお答えいたしますが、部会につきましても今後とも防衛協力小委員会の研究協議の過程で必要があれば活用していきたいというふうに考えておりますので、いまのところ部会を解散するという考えは持っておりません。小委員会ももちろん継続してまいります。  それから、ただいまこの間の第七回の協力小委員会で、一応部会レベルからのガイドラインの案を小委員会として受けましたので、目下それについていろいろ字句の点あるいは構成面の整備などをいたしておりまして、これができまして次回の、次回と申しますか、安全協力協議委員会、そちらで報告を出すということを考えておりますが、まだ日米安保協議委員会の日程については未定でございます。しかし、それで報告をいたしましたときは、できるだけその内容を公表するということでございます。
  242. 秦豊

    ○秦豊君 最初にうちの楢崎議員が、きのう衆議院段階で質問中時間切れになった問題があるんでそれをちょっと詰めておきたい。  それは、内閣法第九条と自衛隊法との関連、いわゆる安全保障と副総理制というポイントです。これは防衛庁と法制局に伺っておきたいのだけれども、御存じのとおり、内閣法の第九条には内閣総理大臣に事故あるとき、または欠けたときは、そのあらかじめ指定する国務大臣が、臨時に総理大臣の職務を行うと、このように規定されている。言うまでもなく自衛隊法は七十六条を初めさまざまな項目の中で、内閣総理大臣が個有の権限として、余人をもってかえがたい権限として「自衛隊の全部又は一部」あるいは「部隊等の出動を命ずることができる。」と明記されていますね。安全保障に瞬時といえども切れ目がないというのがあり方であったと、あり方であるとすれば、またそうであろうから、たとえばこの場合は内閣総理大臣が何か笑いに紛らわした答弁になっているが、そんな安直な問題ではなくて、むしろ真剣にこれに対応すべき私は項目ではないかと思うから確認の意味で聞くんですが、これは防衛庁長官としてはやはり余人をもってかえがたい総理に万万一、それこそ万一があった場合も含めて、やはり平素から副総理というふうな職位が厳として存在した方が心強いでしょう、違いますか。
  243. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 万万が一のそういう問題が出たとき、当然副総理がいてくれた方がそれは問題は切れ目がないというか、副総理がなくて総理自分から発言が出ないというような場面が、私は法律家でないからわからぬですが、自分の口からいわゆる代理を指名することができないような事態があったとすれば、そのときどうするかというようなことは法制局長官に聞かなければうまくわからぬですが、私の意のあるところをくんでいただきたいと思います。
  244. 秦豊

    ○秦豊君 真田長官ね、直ちにこれが違法を構成するなんという前提でぼくは物を言ってないわけ、現状が。つまり、ゾルレンとしては、あるべき姿としては、たとえばアメリカの大統領と副大統領とのきわめて緊密なあの法的な関係、同じ飛行機には必ず乗らないとか、あの安全保障上のシステムがありますね、法制が。あれを考えても、有事法制だなんという安直な騒ぎをやる前に、むしろ日常から緻密に詰めておくべき問題点の一つではなかろうかというわれわれの前提で物を言っているんで、違法は構成しないが望ましい行政の姿としては副総理内閣法第九条を踏まえあらまほしき姿ではないのか。法制局長官としてはどうお考えですか。
  245. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 大変むずかしい問題でお答えしにくい面も若干ございますけれども、実はその問題はかつて国会でもお取り上げになりまして、一体内閣総理天田はその地位に就任すればまず第九条で副総理を指名しておくべきではないかというお話がありましたときに、実はこれはいまおっしゃいましたように、それはその当該内閣総理大臣の一応の御判断に任せてあるのであって、その必要がないというふうに確信される場合には、それはその必要が起きるまでの間はいわゆる副総理を指名しないでおくことも進法ではないんだよというようなお話がありました。それで、またそれと関連しまして申しますと、有事の場合とかあるいはいわゆる奇襲なんというのは万万一ということになっておりますが、いまの総理は非常に御健在でありますので欠けたり故障があるというようなことも万万一のことだろうと思うんです。万万一のまた万万一ですから大変可能性は少ないわけなんで、いまの総理がまあ当分おれは大丈夫だと思っていらっしゃれば、これは副総理の指名が現在、きょう今日なされていないからといって違法状態とは言えないわけなんですね。  そこで、御質問趣旨は万万一のまた万万一が重なって武力攻撃が起きた場合に、ではどうするかと、自衛隊の防衛出動下令がおくれるではないかという御心配だろうと思うんですが、その点につきましても実はかつて、これは詳しく申しますと昭和三十九年の十二月十八日に第四十七国会衆議院の内閣委員会でまさしくその点が問題になりまして、当時の法制局長官が一応の御答弁を申し上げております。その内容はもう御存じでございますか。
  246. 秦豊

    ○秦豊君 結構です。  防衛庁長官防衛研修所がテキストにしているこういう本がありますよね、「自衛隊と法律関係」という、これはごくあたりまえの本だが、それの二十二ページを見ると、いまのように笑いごとでは済んでないんです。つまり「総理個有の権限であるからこそ、内閣総理大臣が突発的事故で欠けた場合等には、安全保障上はなはだしい支障があるので、副総理の指名という問題は、わが国の防衛上きわめて根幹的に重要である。」、こういう問題提起をしているわけです。これはユニホームの常識です。だから、むしろ内閣改造が十二月X日かどうか私知らないけれども、防衛庁の強力な進言として次の内閣改造に当たっては安全保障を真剣に考えるならば、有事法制で空回りをしたくないならば、あえて副総理制については強力な建言をなすべきである。次の改造でも恐らくあなたは長官であろうと思うから、注文をするんだけれども、金丸さんからひとつ強力に進言をするおつもりはありませんか。
  247. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は秦先生のいまの提案は一つの提案だと私も思います。私が次の防衛庁長官をやるなんていうことは、自民党には多士済々でありますから、考えてはおりませんが、防衛庁の長官としてあるいは国会議員の一人として総理に進言はいたしたいと思います。
  248. 秦豊

    ○秦豊君 防衛局長ね、ちょっとお名残惜しい感じがしますね。  この九月二十七日の朝刊で、たしか東京新聞だと思うんですけれども、ちょっとはでな記事があって、「P3Cの地上施設費こっそり予算に計上防衛庁導入時に説明なし」というわりとはでな扱いだったんですが、この記事は事実とかなり違っていますか。それともあなたのコメントも引用されているが、ぐさり正鵠を射ていますか、どうですか。
  249. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いわゆるその国防会議で御決定をいただきますときには、P3C、その飛行機だけではなく、地上関連施設、そういうものについても一応の費用というものは御説明いたしております。しかし、じゃP3Cに関するすべての予算というものをそのときに挙げて御説明したかと言われますと、必ずしもそうではないと思うわけでございます。たとえばパイロットあるいは整備員の教育のためにどのくらいかかるのか、それからそのほかの整備機材の細々としたものがP2Jの場合と違ってどの程度かかるかとか、そういう点までは御説明いたしておりません。しかし、一応P3Cの運用に係る飛行機とそれから地上関運施設については御説明したつもりでおるわけでございます。
  250. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、ちょっとこの記事のニュアンスと違うな。伊藤局長はインタビューに答えて「国防会議での選定の際にP3C本体だけを議題にしたことは不十分だったと思う。地上施設にも膨大な費用がかかることを、国民の前に明示すべきだった」、こういうコメントまで出ているんだが、この部分はじゃ、はね上がっているわけですか。
  251. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私はそのとき御説明いたしましたのは、いま御説明申し上げましたように、一応の地上関連機材については御説明いたしております。しかし、関連のものをすべて御説明したかと言われると、必ずしもその自信はないという説明はしたわけでございます。
  252. 秦豊

    ○秦豊君 対潜哨戒機を動かすというのは、一つのシステムのある部分です。ワン・オブ・ゼムです。だからシステム全体にかかる予算を説明しないで十全と言えますか。あなたの中に一つの計らいというか、故意にそうなすったとは思いたくない、ないが、これは粗漏というふうな問題じゃありませんよ。国防会議とか恐らく自民党の国防部会にもそういうデテールを説明なすっていないとすれば、それはやっぱり防衛庁の説明のあるべき姿として私ははなはだもって不誠実かつ不十分だと思うが、どうですか。
  253. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それはいま御説明いたしましたように、P3Cを運用するに当たっての地上関連機材、これについては十分御説明いたしました。ただ、御津知のようにたとえばデータバンク的なものはP2Jの場合にも必要なものがございます。したがいまして、P2Jの場合に必要でつくったものがP3Cになってそのどの部分が幾らぐらいふくらむかというようなことまでは御説明いたしておりません。しかし、P3Cの運用にかかわります地上関連機材については十分御説明したつもりでございます。
  254. 秦豊

    ○秦豊君 まずいいでしょう。このタクティカル・サポート・センターのシステムを組む場合、来年度予算は厚木の分だけとりあえず計上だと、これは常識的な計上。これは将来完成を目指すシステムとしては横須賀の自衛艦隊の司令部、それから同時に、横須賀に所存する米軍、アメリカ海軍司令部のコマンドセンターとリンクしなければ役に立ちませんね、そういうシステムでしょう。
  255. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 私どものいま考えておるところは、アメリカはその海軍その他、すべて総合的にやっておるようでございますが、そういうような理由で私どもは、そのPACといいますか、パッシブ・アコースティック・センターのソフトをアメリカに要求した場合、アメリカは総合的にやっておると。しかし、日本ではこれをインデペンデントにやるようであるから、なかなか日本の御要望には応じ切れないという返事があったわけでございまして、そういうことにもあらわれておりますように、私どもはただいまのところ、そういう総合的に海上自衛隊その他、すべて総合的にやるという運用は考えておりません。
  256. 秦豊

    ○秦豊君 それは間淵さんにしては非常におかしな答弁だと思いますよ。対潜作戦というのは第七艦隊と共同した作戦の部分になるわけです。リンクしなければ十全な機能は果たしませんよ。おかしいんじゃありませんか。
  257. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 艦艇とP3Cと共同作戦をやると、そういう場合のそのコミュニケーションと申しますか、通信といったようなものは十分考えられるわけでございますが、いまのところ、その大きなシステムとして海上の艦艇をも含めたデータと申しますか、プログラムをつくってやるというふうにはなっておらないわけでございます。
  258. 秦豊

    ○秦豊君 対潜作戦は独立してはできません。大物は今度もらうそうだが、それだけじゃだめ。やはりアメリカ海軍との共同というのは必ず出てくるからそんなに隠すべき問題でもないと私は思うんですが、非常に平明な初歩的なこれは問題だと思うから聞いているんだが、考えてないという。それはいいでしょう、きょうは。  アメリカのブラウン長官はいつ日本に到着ですか、訪問ですか。
  259. 金丸信

    国務大臣金丸信君) まだはっきりはいたしておりませんが、十一月中旬ごろ見えるんじゃないかと、こう思っております。
  260. 秦豊

    ○秦豊君 あらかじめアマコスト国防次官補代理が——私もこの前ワシントンで会ってみたけれども、なかなかシャープな人ですが、この人が先にすでにやってきておたくの方と、防衛庁側ないし外務を含めた事前のコーディネート、交渉というか、まあ調整というか、打ち合わせはあったんですか。
  261. 金丸信

    国務大臣金丸信君) アマコストが見えまして、いろいろ外務省あるいは防衛庁の岡崎参事官等と話し合ったということは聞いております。しかし、その中でどのようなお互いに話し合いをするかということについてはまだ決まってはおりませんが、ただ私は、一つ今度の交渉の中にいわゆる沖繩基地の労務者の解雇問題があるわけであります。私もブラウン長官を初め、アメリカへ参りましたとき、国会の小委員長とかその他関係の筋へ、みんなこれを強く要請をいたしてきたわけであります。それで、一応ある程度の話し合いはできたんですが、それじゃ満足じゃないということですから、なお継続して一人でも二人でも減らせることを考えることがいわゆる失業問題も、あるいは社会問題も、あるいは政治問題も解決する一つの糸口だというような考え方は持っておるわけであります。
  262. 秦豊

    ○秦豊君 まあいやしくもアメリカの国防長官が北東アジアを旅をする場合には、単に儀礼とか何となくということはあり得ません。やはりこの日中平和友好条約のまさに批准承認寸前と、それから恐らく来年の上半期にも米中正常化という国交樹立というふうなテンポで恐らく展開すると思うんだけれども、そうなるとこの北東アジアの安全保障の枠組み、それこそシステム、防衛分担、つまり軍事体制への基盤を固めることについてはどん欲であると、あらゆる機会を使うであろうというのはこれは常識ですね。  したがって、単なる儀礼、たとえば韓国も今度恐らく長官は訪問すると思う、ブラウン氏は。そうするとワシントン、ソウル、東京という日程で動くわけだから、広がりで。そういうふうなことが議題というよりはポイントになると私自身は認識をしているわけですが、長官によると、何か沖繩の駐留軍労務者の問題というふうに限局化されているが、私はもっと広がりの中であなたやないし外務大臣や、時によっては総理と会談をするのではないかと思うから、もう一回、どんなことを話し合うのか、もっと突っ込んでお話しをしていただきたい。
  263. 金丸信

    国務大臣金丸信君) これはきょうにわかにブラウン長官がこちらへ参るということでなくて、定期的に今度はアメリカからいわゆる長官が見えるという、そういうような話し合いの中でブラウン長官が見えるわけでありますから、いろいろのお話があると思います。思いますが、いま確たるこれこれこれだというお話をする、この機会にまだ申し上げる段取りにはなっておらない、こういうことであります。
  264. 秦豊

    ○秦豊君 伊藤さん、あなたも非常にきわめて激しい時期に局長を担当されて、しかも、だからこそかなり蓄積をされたと思うんですよ。それが今度の新しい舞台で活用されることを祈っておりますけれども、私自身は実は八〇年安保という時期が必ず来ると思うんです。やはり最近のソ連海軍のマダガスカル北方、ペルシャ湾も含めた演習を見ても、あるいはアメリカ第七艦隊の重心が、何となく日本海この三海峡周辺でなくて西に移っているという兆しを見ても、やはり私はこのアメリカの太平洋艦隊、七艦を含めて、かなり戦略配置が変わってくると、一つの傾向としてはやはり北東アジアは日本と韓国の応分の貢献でという時期は必ず来ると思う。これは革新陣営が口を開けば米日韓軍事体制、トライアングル反対と言っておると、その一環だなんというふうに軽くしないで、捨てないで受けとめて答えていただきたいんだが、そうなるとむしろどっちが提起するかは別として、やっぱり北東アジアの第一義的な防衛については日韓でという時期が必ず来るという私の認識、もちろん共同防衛ですよ、日米安保ですよ。比重の問題を言っているんだが、伊藤さんはそれについてはどういうふうな基本的な認識をお持ちですかね。
  265. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) まず極東におきますソ連軍の増強ぶりについてはアメリカもきわめて注目しているというのは事実でございます。そしてまた、一方におきまして核戦力というものが、だんだんアメリカとソ連との間に差がなくなってきたということもまたアメリカは受けとめているようでございます。その中におきまして特に通常兵器によります軍事力の強化というものが、アメリカがベトナム戦争をやっている間にどんどんどんどん計画的にソ連が進んでいったということもそのように受けとめているようでございます。同時にまた、このアメリカの軍事力というものがいわゆるベトナム戦争以前のように圧倒的な強さを持っていないというのも事実でございます。したがいまして、七〇年代以降ニクソン大統領は自助の努力を同盟国にも求めるという姿勢というものはいまも続いていると思いますけれども、いわゆる米韓日共同というような形ではないと思いますが、日本の自衛隊がやれる、いわゆる自衛のためにやれる範囲というものはきちんとやってもらいたいという考え方は当然のことながら持っていると思います。
  266. 秦豊

    ○秦豊君 これはやや防衛特別委員会でもできたら何日かかけてゆっくり議論するとなかなかおもしろいテーマだと思うんだが。やっぱりぼくは八〇年安保というのは、条約の改定をワシントンが求めるかどうかは別として、やはり運用、あるいは条約の改定を求めるか、運用の拡大ですり抜けるか、それは別として、私の言ったような方向がだんだん色濃くあらわれてくると思っているんですよ。  この話はちょっとおいておきますけれども、つまり、もっとしぼれば安保条約第五条に対応する日米防衛協力小委員会並びに有事法制ではなくて、第六条、つまり極東の安全というふうに、シェアというよりも分野を広げた役割り分担を日本に対して要求をしてくると、だからさっき参事官はさっと答えて帰ったようだが、私は要求してないからいいんですが、伊藤さんどうですか。いまの防衛協力小委員会は、五条を一応ガイドラインつくっちまったら解散しないで置いといて、山中さんの質問じゃないけれども、それで今度は時間かけて第六条に対処できる日米防衛分担とは何かというところまで踏み込むんじゃないんですか。
  267. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはこの六条の問題というものは、在日米軍の使命の中に極東の安全に寄与するというところがあるわけでございます。しかしながら、その極東の安全に寄与するというのは、在日米軍の使命であって、自衛隊がそれに直接関与するということはないわけでございまして、もし、強いて極東の安全のために自衛隊が寄与するということになりますと、これは自衛隊自身がいわゆるこの有効な防衛力を持っている、きちんとした体制を持っているということが極東におきますいわゆる軍事力のいろいろな枠組みの中でそれの任務をおのずから果たすということによって間接的に協力をするというような結果になろうかと考えておるわけでございます。
  268. 秦豊

    ○秦豊君 がらっと質問を変えますが、かつて私が八月の当委員会で航空自衛隊の内訓問題、スクランブル、機密でございます。たしか衆議院で今度の予算委員会で共産党の予算委員の方が質問されたように記憶しますけれども、夏もそう、この秋もそうだが、内訓のごときもの、空の。これと陸と海については達というふうな形、通達の一字をとって達というふうな形であらかじめ想定されるさまざまなケースについての第一線指揮官の対応の権限、裁量の幅についてはすでに防衛庁長官の名前ないし他の適当な職員の名前で第一線に、指揮官には示達済みなんですか、それともそんなものは存在しないんですか。
  269. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは内訓というのは、御承知のように航空自衛隊は平時から領空侵犯に対する任務を持っておるわけでございます。その任務を果たすための内訓があり、それに基づく航空幕僚長の達がございます。さらには航空総隊指令官の達というものがございまして、その一連の内訓、通達、達によりまして任務を果たす体制をとっているわけでございます。ところが、このいわゆる陸上自衛隊、海上自衛隊には任務として平時与えられているものがございません。したがいまして、そういった仮に行った場合には有事があった場合を想定した達というものはないわけでございます。これはいわゆる年度の防衛計画の中で、現時点において何か有事があったらこういう形で行動するという計画は持っておりますけれども、いわゆる法制的に達という形で出しているもんではございません。
  270. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁長官、国会の論議が一応ここまで終わっていますね。ここまで終わったという段階で、だから改めて伺うんですけれども、あなた方の方から積極的に提示されたいわゆるこの有事立法問題、その提起の仕方、それから提起をされてからそれ以後のあなた方のきわめて目まぐるしい、きわめて変化の激しい対応の仕方全般についていかにも準備が第一不足している、粗漏である、粗雑である、安易であるという私は印象を隠しません。長官はこの段階で今度の国会のいわゆる有事立法論議を振り返って、いま特にどういうことがおっしゃりたいか、まさか万全の構えで整々粛々と議論を進めてきた、出すべきショック療法をやってきたとまではおっしゃらないと思うんだが、この段階でどういうことをおっしゃりたいですか。
  271. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私はたびたび申し上げておるわけでありますが、超法規行動、こういうような中で栗栖君の発言というようなことで、これはあの立場におる栗栖君があのような発言をするということは、いわゆるシビリアンコントロール、政治が優先するという立場からいってこれは許しがたいことであるというような感じがいたします。それを契機にいろいろの御意見も出てまいりまして、私は有事法制の研究と奇襲が一緒になって、混同してひとり歩きをしてしまったと、私の考えている考え方とは非常に方向の違った方向へ動き出したという、またわが防衛庁の政府委員の中にも発言に穏当を欠くような、国民誤解を招くような発言もありあるいは自民党の幹部の中にもいわゆる憲法改正というような問題もあり、非常にそういうことによってこの問題がいま御批判を受けたようなお言葉のとおりになってきたということについては、いささか私も自分の考えとは違う方向、しかしそれもこのようになりましたことについては、いろいろの防衛庁自体にも不用意過ぎるという御叱正を受ければそれもそうかもしらぬと、こういうような受け取り方をしなければならぬとも思っておるわけでありますが、しかし有事があるということを仮定して自衛隊があるという以上、自衛隊は何をすべきか、そういうことについて有事があるときの対処法その他を常時研究することは自衛隊存続している以上は必要ではないか、こういう考え方でありますが、それも憲法の範囲内でということでありまして、またその問題については私はひた隠しはいたしません。いわゆるいろいろの研究がまとまってくる状況の中で中間報告をしろといえば中間報告もいたします。そうして政治の場で十二分に検討していただきたい、こう申し上げておるわけでありまして、本当にこの問題が慎重を欠いたというおしかりを受ければまさにそれは甘受しなければならぬ、こう考えております。
  272. 秦豊

    ○秦豊君 時間がないみたいなんでこれ木曜日の議論にちょっと継続させましょう。  一つだけ伊藤さん伺いたいんだが、栗栖さんなかなか元気で方々で発言しています。自衛隊の任務と即応体制の問題点という新しい発言もしているが、時間がないから木曜日にやりますが、一つだけ、防衛出動下令以前の行動はスウェーデン法制に学んだらどうかと。御存じのとおりスウェーデンの法制は交戦権発動の前の状態でも武力を使うことができ、また平時においても国境侵犯された場合等には第一線国防軍が政府から授権されて処置、対応ができるとあるところを栗栖さんは踏まえて、したがって自衛隊法にはたった一つ、大幅な改正は要りませんと、一くだりだけ防衛出動下令前においても必要な措置をとることができるとさえ書いてくれれば私のフラストレーション、つまりミスター栗栖のフラストレーションは相当解消されるということを述べているんだが、これはごく最近の国民政治研究会という団体でのものでありますが、それについてあなたどういうことをお答えになりたいですか。
  273. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) スウェーデンの基本法を見ますと、いわゆる部隊の指揮官に授権されているところがございます。この間スウェーデンの陸軍の方が来ましたときに、これ授権されているんだけれども、一体これは危険性はないのかということを聞きました。そうしたら、これはスウェーデンの長い歴史の中で教育をやっているから、その健全な判断によって対応しているんだというお話がございました。で、わが国の自衛隊法によりますと、七十六条によりまして防衛出動が下令される条件といいますか、下令される型がはっきり決まっているわけです。したがいまして、私どもといたしましては、自衛隊法で定めたのはやはり日本の過去の経験からしてああいった一つの法体系を選択したものだというふうに考えているわけです。したがいましてスウェーデンと同じような事情のもとに日本が置かれているとは考えていないわけでございます。したがいまして、そういったいわゆる万万一の状況の場合にどういうことができるのか、どういう対応があるのかというのを研究してまいりたいと考えているわけでございます。
  274. 秦豊

    ○秦豊君 残り僅少ですが、味岡陸将補が「軍事政策概論」昭和四十八年三月、一九七三年、防衛研修所講義資料の中の八十七ページで、「陸海空を通じて奇襲攻撃対処能力は四次防以後においてもできていない。」こういう表現があって、あとは長いからやめますが、こういうことを言っている。私自身の基本的な考えは、あなた方のように一種の世論操作というか、ショック療法か何か、アメリカの要請か、さまざまコンバインされたもんであろうけれども、ああいう粗雑な有事法制論争をいどむよりも、有事体制を緻密に、いつも私が言うように防空ならばシステムとしてというふうな、抗たん性というふうな、そういう有事体制の方を充実せよと、安易な粗雑な議論をいどむなというのが私の大きな前提なんですけれども、一言だけ、味岡さんの言っているのはとんでもないこれは事実誤認だと、防衛局長幾年もやって、私自身見解としては総括して言えば、奇襲には対処できる有事体制があるんだと、能力は、いうふうにお答えになれますか。
  275. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 現在この有事即応体制というものを高めるということが自衛隊にとっては一番大事だと思います。したがいまして、現在その奇襲があった場合に直ちに対処できるか、そういった即応体制にあるかというと私はそうは思いません。いろんな問題があると考えているわけでございます。しかしながら、先生の御意見と私は全く同感な点は、いわゆる法制が整備されれば奇襲に対処できるとは考えていないわけです。奇襲に対処するのは有事即応体制を高めることだという気がしているわけでございます。したがいまして、奇襲というものの考え方といたしまして、非常に緊張状態が高まってきて日本に対して攻撃をしようという場合には、攻撃する側は常に奇襲をねらうわけでございます。これは攻撃効果を上げるためでございますし、日本側といたしましては、奇襲じゃないように、対応できるように努力しなきゃならないわけでございますが、そういった意味におきまして今後有事即応体制を高めていくということが最もいわゆる制服の人にとっても、また防衛庁にとっても重要なことではないかと考えているわけでございます。
  276. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ引き続き次回に改めてやりましょう。委員長終わります。
  277. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 両調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  278. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) 速記を起こして。  暫時休憩いたします。    午後四時五十二分休憩      —————・—————    午後四時五十五分開会
  279. 桧垣徳太郎

    委員長桧垣徳太郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会      —————・—————