運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-10-31 第85回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月三十一日(火曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————    委員異動  十月二十七日     辞任         補欠選任      市川 正一君     安武 洋子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺田 熊雄君     理 事                 楠  正俊君                 坂元 親男君                 長谷川 信君                 野口 忠夫君     委 員                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 岩崎 純三君                 河本嘉久蔵君                 永野 嚴雄君                 増岡 康治君                 穐山  篤君                 小野  明君                 和泉 照雄君                 沓脱タケ子君                 安武 洋子君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君                 野末 陳平君    国務大臣        労 働 大 臣  藤井 勝志君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        人事院総裁    藤井 貞夫君        総理府人事局長  菅野 弘夫君        沖繩開発庁総務        局企画課長    金子  清君        大蔵省主計局共        済課長      山崎  登君        大蔵省主計局主        計官       安原  正君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        厚生省児童家庭        局障害福祉課長  佐藤 良正君        厚生省年金局年        金課長      長尾 立子君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部施        設課長      岩橋 洋一君        運輸省航空局飛        行場部計画課長  平井磨磋夫君        労働大臣官房参        事官       清水 傳雄君        労働省労働基準        局長       岩崎 隆造君        労働省労働基準        局監督課長    小粥 義朗君        労働省労働基準        局賃金福祉部賃        金課長      花田 達郎君        労働省婦人少年        局長       森山 眞弓君        労働省職業安定        局長       細野  正君        労働省職業安定        局業務指導課長  田淵 孝輔君        労働省職業訓練        局長       石井 甲二君        労働省職業訓練        局技能検定課長  佐藤 仁彦君        自治省行政局公        務員部福利課長  望月 美之君        会計検査院事務        総局第三局長   松尾恭一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和五十年度一般会計歳入歳出決算昭和五十  年度特別会計歳入歳出決算昭和五十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和五十年度政府  関係機関決算書(第八十回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第八十回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第八十回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月二十七日、市川正一君が委員を辞任され、その補欠として安武洋子君が選任されました。     —————————————
  3. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 昭和五十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、労働省決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 小野明

    小野明君 本日は私は、ストライキ参加をした公務員処分をされる。そうしますと、生涯にわたる経済的な損失がその公務員に対しては加えられるわけでございます。その実損をいかなる方法により、あるいはいかなる時期にか救済できないものかどうか、こういう問題を中心にいたしまして、労働大臣初め本日御出席をいただいておりますそれぞれの方に質問を申し上げたいと思います。  まず、ILOの問題から入りたいと思うんでありますが、ILOの第八十七号条約わが国におきましてはこの条約昭和四十年六月の十四日に批准をされておりまして、御案内のように、結社の自由及び団結権保護に関する条約という名称が付されているものであります。この批准された条約に基づきまして、昭和四十七年の十月に、主として日教組あるいは自治労等から提訴がなされておるわけでありまして、この提訴に基づきまして、ILO結社自由委員会検討をされました。その結論理事会報告され、昭和四十八年十一月十六日に採択をされております。その結論が、ILO第百二十九次報告といたしまして記録をされておるのでありますが、その報告の要旨は、団結権あるいは団体交渉権ストライキ権等、各般にわたって報告がされておるわけであります。わが国における行政におきまして、公企体、自治体の多くに不当労働行為が見られる。さらに、この問題については、いかなる反組合的差別行為が起こらぬことを保障するよう、政府が適切な措置をとることを要請すると、こういう結論がつけられておるわけであります。  その第百三十九次報告の、私の本日の質問に関する要点を申し上げますと、ストライキ参加者懲戒処分については、処分実施ストライキの起こるときにいつも不可避のものと、このように目されてはならないという点が記録されているのであります。次に、処分実施によって生ずる報酬の恒久的な不利益だけではなくて、その結果として生じ得る関係労働者のキャリアに対する不利な諸結果に関しまして、政府に対し行われた諸提案を想起するよう提起をする、こう書かれているのであります。さらにまた、労使関係の調和ある発展のためにも、処分に対し柔軟な態度をとるべきであり、処分によって生ずる永続的な不利益や経歴に対する不利については検討をし直すことを勧告をいたしておるのであります。  この百三十九次報告については、大臣も御承知のことであろうと思いますが、この報告に関して、まず労働大臣の御見解を承るわけであります。
  7. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま御指摘結社自由委員会第百三十九次報告は、私も御指摘のような趣旨承知いたしております。ただ、わが国給与制度は、御案内のごとく、成績主義にのっとって行われておるわけでございまして、法律によって明らかに禁止されております争議行為行い懲戒処分に付せられた人たちと、勤務成績がそういったことで良好でないと認められた人とそのような処分を受けない人との比較においては、給与等でその差がつくというのは、ただいま申しましたようなわが国給与体系成績主義であるというこの原則からやむを得ないことではないかと、このように考えるわけでございまして、ただ、この懲戒処分を受けた人たちでも、相当期間特に良好な成績勤務上認められた方々に対しては、法令の許す範囲内で労使話し合いを行い、いわゆる特別昇給制度等運用によってその給与、時期のおくれを回復すると、こういう配慮をしていくのが適当ではないかと、このように考えるわけでございます。
  8. 小野明

    小野明君 確かにわが国国内法令におきましては、いまだこれを回復する措置が講じられておりません。ただ、いま大臣の御答弁を承りますと、このILOの百三十九次報告、私が申し上げました経済的制裁永久、恒久的に続いていく、それはどこかで回復をされなければならぬ。あるいはまたストライキが行われれば必ず処分が行われる、それは避けられなければならないとするこの百三十九次報告に対する全面的な否定の御答弁だと私は受け取らざるを得ないんでありますが、大臣いかがですか。
  9. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 私はそのように考えお答えをしたつもりはございません。言葉が十分でなかったのかもわかりませんけれども、ただいまお答えをいたしましたように、特別昇給制度運用ということをやって御指摘のような精神を反映していくのが日本の現在の制度としては許された範囲内の配慮であると、このようにお答えをしたわけでございまして、相当期間特に良好な成績を上げてもらうというこの実績を十分踏まえて、御指摘結社自由委員会第百三十九次報告のように、「報酬上の恒久的な不利益」という、こういったことは私は解消されると、このように思うわけでございます。
  10. 小野明

    小野明君 いま一つお尋ねをいたしておきたい点がありますが、ストライキが行われる、そうすると必ず処分が行われる、処分に対してさらにストライキが行われると、こういう悪循環があるわけでありますが、これにつきましてもそういう悪循環永久に続かないように、どこかでこれを解消する。これをILOの文言で言えば労使関係の調和ある発展という言葉で表現をいたしておるようでありますが、これはひとえに政治的な決断といいますか、政治家の判断によらなければならないと思うのでありますが、その辺に対する大臣の御見解はいかがですか。
  11. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 現在の日本法律制度において禁止されておるストをやった、そのスト処分を撤回するストをやる、こういう悪循環、これは私は断ち切る方法は、そういうストはやらないという、現在の法制から言えばやらないという姿勢以外には悪循環を断ち切る方法はない、このように考えざるを得ないと思います。
  12. 小野明

    小野明君 非常にタカ派的な発言ですな。このILOの言っておりますのは、ストライキが行われれば必ず処分が行われる、この件について柔軟な態度を持つべきである、こういう指摘がなされておるわけであります。ですから、この点については、ただいまの大臣の御発言から言いますならば、このILO百三十九次報告と全く反対の方向、これを否定する御意見だと解されますが、いかがですか。
  13. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) これまた私の言葉が不十分であったかと思いますけれども、やはり違法のストはやめるという、これは法治国家の私は大前提だというふうに思うのです。ただ、そういうストをされた後始末については、百三十九次報告精神を踏まえてそして労使話し合いをしてもらう。その間においては、相当期間非常に勤務状況がいいということ、これをしんしゃくをしてそして特別昇給制度、これを運用していく、そういうことになれば百三十九次報告精神が生かされてくるではないか、このようにお答えをしたわけでございますからひとつ御了解をいただきたい、このように思います。
  14. 小野明

    小野明君 前の答弁が私の印象に残っておりまして、まだすっきりしないところがございますけれども、次に移らせていただきたいと思うのです。  きょうは人事院総裁にお見えいただいておるのであります。給与勤務条件について責任を持たれております人事院におきましても、この百三十九次報告についてはその精神について十分な御理解をいただきたいと思うのでありますが、ただいまの労働大臣の御答弁とも関連をいたしまして、まず総裁の御所見を伺いたいのであります。
  15. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) ただいまお話に出ておりますILO結社自由委員会百三十九次の報告の問題でございまして、その点は私も十分承知をいたしております。したがいまして、これはなお具体的にどういうふうにこれを受けて国内的に処理するかということにつきましては、いろいろ経緯がございますので、現在労使間で協議をしておる最中であるというふうに承っております。その点は総理府の方から正確なところは御答弁いただいた方がよいのではないかと思いますが、それはそれといたしまして、私たち人事院考え方をこの際申し上げておきたいと存じます。  実は先刻労働大臣からもお触れになりましたように、日本公務員制度というのは、御承知のように給与については法定主義というものをとっておるわけでございます。また、公務員制度秩序というものを守りますためにいろいろ服務その他について制約があるということはこれは事実でございます。そのかわりと言っては語弊がございますけれども、別の意味では、そういう特殊性にかんがみて、利益の保護なり権利を特に付与するというような点についての配慮は別個やっておるということもこれは事実でございますが、あわせて義務も課せられておるということはこれは事実でございます。そういうところから一連の服務規程がございまして、それの仮に違反があるということになりますれば、これは当然服務上の義務違反ということに相なりますのでそれを是正する措置が講ぜられるというたてまえに相なっております。その一つ懲戒制度であるということは申すまでもないわけでございます。  ただ、いまお話に出ております。ストライキが行われて、それに対する措置として懲戒処分として昇給延伸ということを直接にやっておるというたてまえではこれはございません。懲戒というのは、先生承知のように、これは法定的にその処分の内容というものは決まっておりまして、四つでございますが、戒告、減給、停職、免職というものでございまして、別に昇給延伸ということが懲戒処分としてなされるという筋合いにはなっておりません。ただ、給与制度運用するに当たりまして昇給制度というものがございます。定期昇給とそれから特別昇給の二つがあるわけでありますが、このいずれも、昇給をいたしまするその前提といたしまして、その職員が一定の期間良好な成績勤務をしたという場合において昇給措置が講ぜられていくということでございまして、これは公務員のみならず民間の場合だって大体同様に運用されておるのではないかと思います。これを具体的に適用いたしまする際に、良好な成績ということのやっぱり証明があるということが必要でございます。それに対しまして、ストライキ等が行われて、それに対する仮に処分が行われたというような職員がございます場合に、その職員について良好な成績でその期間勤務したという積極的な評価を与えることはこれはむしろ困難でございます。他の職員との均衡その他の問題もございまして、公平の問題もございますので、そういう積極的な評価をすることはこれは当然できないということから昇給が見送られるというようなことはこれはあり得るわけでございます。その結果、当該職員については不利な面がついて回るということはあり得ることは現実にございますけれども、その点は、公務員秩序の維持あるいは公務の特質といたしましていろいろ服務等特別措置がある、それを守ってまいるということからくる一つ効果でございまして、やむを得ない面もあるのではないかというふうに考えております。  事柄懲戒処分ということに伴う効果でございますが、これはストライキだけに対する懲戒としての処分だけではございませんで、いろんな面で懲戒が発動されるということがございます。そういう場合も昇給延伸適用における効果としては同じであるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、いまの百三十九次報告精神趣旨というものもございますので、この点につきましては、ただいま労働大臣からもお話しになりましたように、その後大変職員につきまして良好な勤務成績があるということがずっと続いておる、それが立証されるというようなことになりますれば、当然定期昇給も行われますし、また場合によっては、特に良好であるという場合には特別昇給適用もあり得るということでございまして、そういう点については、過去にいろんなことをやったから特別昇給措置適用しないんだというような、そういう偏った運営はしてまいることは考えておりませんし、事実上、そういう点については矛軟な体制でもって運用するようにわれわれといたしましても考え、また指導もいたしておるところでございます。
  16. 小野明

    小野明君 そういたしますと、この百三十九次報告趣旨は、国内法令としては現在のところ特別昇給制度を活用する以外にない、こういうことでございますか。
  17. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 事柄を詰めて申しますとそういうことに相なるのではないかというふうに考えます。
  18. 小野明

    小野明君 この百三十九次報告に伴いまして、この精神を生かすために何らかの法令上の配慮といいますか、新たに勧告権限等もあるわけでございますが、立法措置等を考慮をしなければならぬ、こういう配慮というのは現在労働大臣におきましても、あるいは総裁におきましても別に考えてはいないと、こういうことですか。
  19. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) これは総理府なり労働省側からお答えをいただいた方が適切であるかと思いますが、この報告が出ましたときのその後のいきさつ、またそれ以来の労使にわたるいろいろな協議実態等考えてまいりますと、いろいろやはり検討はし、協議は続けていくという段階でございます。そういう点は、やはり人事院といたしましても十分成り行きを注視しながらやっていくことが事柄性質上適当ではないかという立場でおりますので、現在のところ、このことに関しまして何らかの立法措置その他について勧告等のことは考えておりません。
  20. 小野明

    小野明君 さらに、公務員スト権を剥奪されてその代償機能として人事院が置かれておる、あるいは地方には人事委員会、さらに公平委員会というものが置かれているわけですね。そこでこの百三十九次報告につきましては代償措置につきましても触れておるわけであります。この触れておる点はすでに大臣総裁におきましても御案内であろうと思いますが、日本における人事委員会あるいは公平委員会中立性について非常に厳しい批判を下しているわけでありまして、さらに、処分を受けた場合に措置要求する権利職員団体に保障しなければならぬ。ところが、措置要求人事委員会あるいは公平委員会にいたしましても、一向にこれが審理が進まないといいますか、和解あるいは勧告等措置等に至っていない。そこで両当事者を拘束をいたすわけでありますが、適切にして公平、しかも迅速な調停や仲裁と、こういうものが行われるべきであると指摘をされておるように読んでおりますが、この点について総裁はどうお考えですか。
  21. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 御指摘のように、人事院は、公務員についてはいろんな理由から基本的な人権というものについて制約を受けておる、特に労働基本権について制約を受けておる、それらの点を考慮して、それの代償的機能を果たすべきものであるということが大変大きな使命であるということは法律のたてまえがそうでございますし、われわれも身にしみてそういうことの自覚に徹して従来も仕事を続けてまいっておるつもりでございます。それの仕事の一環といたしまして公平事務というものがあるわけであります。事実、人事院に対する問題として直接関係のございます国家公務員に関しましても、過去いろんな事案がございまして、それに基づいて行政措置要求なりあるいは不利益処分審査なりということの提訴が数多くなされてきております。これに対しましては、われわれとしては事柄性質上やはり審理を大変急ぐ必要があるということで、その促進のためにあらゆる手を打っておるつもりでございます。正式の公平委員会の席上のみならず、それの前提としてお互いに労使関係話し合い促進をいたしましたり、また意見のあることについては直接に申し出を受けましたり、そういうようなことで、公平委員会の公の席上以外にいろいろな手を尽くして事案の円満な処理ということをやっておるわけでございます。  ただ事柄は、事案を少なくするということだけが目標ではございません。やはり公平審理ということでございますので、事柄を明白にしていく、そして将来の公務員秩序あるいは公務員労使のあり方というものについての示唆と申しますか、指針というか、そういうものを打ち出してまいることも重要な問題でございます。そういう点を考慮しつつ事柄進捗を図るということで毎度努力をしてきておるわけでございます。  ただ、ある年次において非常に集団的な事案が行われたために、案件がかなりの数に上っておるということは事実でございます。それらについても毎度もう少し進まないものかということで努力はいたしておりますが、事柄によりましては、何と申しますか、職員団体側の方でいろんな事情もございますものですから、もう少し審理は待ってくれといった場合もございます。  そういうような事情もございますので、思うように案件が減少するという点までまいっておりませんが、しかし、最近は全体として提訴案件というものもだんだん落ちついてまいっておりますし、事柄処理については、数はまだ少ないのでありますけれども、毎年五百件程度を目途に審理を進めておるということでございまして、今後とも審理進捗ということにつきましてはあらゆる努力をひとつ重ねてまいる所存でございます。
  22. 小野明

    小野明君 総裁、いまのように御答弁はありましたけれども、実際各地における人事委員会あるいは公平委員会措置要求に対する審理、これが進んでおるというふうにお考えですか。私は、この問題の処理労使双方非常に技術的な問題が多いように思います。ところが、現実各地人事委員会公平委員会というのは、この首長の意向をくんでといいますか首長の言いなりになって、そうして故意に審理をおくらしておる、技術的に少し頭を働かせれば促進できる、しかも被処分者側としては恒久的な経済制裁を受けておる、一刻も早い勧告あるいは和解等を待ち望んでいるにもかかわらず、総裁の御答弁はございましたけれども、一向に進んでいない。後から事例は申し上げますが、このように私は事実を把握をしております。いまの総裁の御答弁では事実と反するんではないかと私は思います。いかがですか。
  23. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 私の方は、御案内のように国家公務員を対象にいたしておるわけでございます。いま私が申し上げましたのは、したがいまして責任を持って申し上げられることは国家公務員に関する問題でございます。いま先生お話しになりました地方案件というものもたくさんあるということは、これも私も正式ではございませんが、過去の経験もありますので、実情は相当知っておるつもりでございますが、この点につきましては自治省当局から御答弁いたすことがむしろ適当ではないかと思います。
  24. 小野明

    小野明君 もちろん所管は自治省が適当であるかもしれません。しかしながら、給与勧告におきましても給与条件におきましても、人事院がどのような措置をとり行っておるかと、こういう点が非常にやっぱり影響を与えるわけですね。そういう点から見ますと、おれの方の権限ではないと、そういうふうに突っ放されることは私は非常に心外であります。また、機関といたしましても、そういう点について範をたれるといいますか、そういうことは私はなさってしかるべきではないかと思うんですが、いまの御答弁は納得いかないです。いかがですか。
  25. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 私はありのままに申し上げておるつもりでございますが、国家公務員の場合の公上平審理の問題につきましては、先刻るる申し上げましたようなことでせっかくいろいろ努力はいたしております。また、そのことが地方公平審理のいろいろ参考になるというようなことも中にはございましょう。また、事実われわれの方の公平局の方に、事案促進その他について地方公平審理の担当者からいろいろ意見を聞きに参られることもございます。そういうときには十分よくひざ詰めでお話をいたしまして、意見を交換して、御参考になるならば御参考にしてくださいという態度をもって接しておるつもりでございます。  私は突っぱねて申し上げたつもりは実はないわけでありまして、いまお話しになりましたように、給与制度運用であれ任用制度運用であれ、すべてやはりわれわれがやっておりますことが地方行政の運営ということに非常につながりがあるということは重々承知をいたしております。そういう角度からの配慮は十分いたしておるつもりでございますし、また、今度ともその点の配慮については欠けることのないような努力はいたしてまいるつもりでございます。
  26. 小野明

    小野明君 労働大臣、先ほども総裁お答えになったわけでありますが、このILO百三十九次報告にかかわりまして、新たな救済措置といいますか、百三十九次報告精神にのっとった国内法の整備という点については考えていないということであります。私はこれはまさにILO勧告政府は無視しておると、こう言っても過言ではないんではないかという批判を持ちます。さらに、総裁に申し上げましたように、いま各地における人事委員会あるいは公平委員会審理が停滞をして和解をし勧告をするという機能に欠けておると、これはもう事実なんですが、こういうことになりますと、労働者側にとりましても唯一の救済制度というのはILOの機能しかないと、こういうふうにもう断言しても過言でないと私は思うんであります。大臣としては、先ほどの御答弁もありましたが、和解を進める、そうして一生に及ぶ経済的な制裁が続かないようにさらに一層のILO勧告趣旨を生かした御努力が欲しいと思うんでありますが、その点については重ねてお尋ねをいたしておきたいと思うんです。いかがですか。
  27. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 私労働大臣に就任いたしまして、労働外交を積極的に推進していくことがもう日本の国際的地位から考えましても大切なことだと、こういったことで、ILOの批准がされていない案件についてももちろんでありますが、いろいろ見直さなきゃならぬ問題については十分配慮をすべきだという基本的な考えは持っておりますが、ただいま御指摘の具体的な問題、いま人事院総裁からもいろいろお答えがございましたが、やはりILOのこの条約というのは国際的な労働条件の設定ということでありまして、やはりその国々によって国情があるわけでございますから、その国の実情に合うように運営をするというのは、これはそれぞれの役所のまた当然の務めだと思うのでございまして、現在具体的な問題を中心に御発言の線は、私は現段階における日本公務員給与制度、こういった点から考えて、やはり人事院総裁の御答弁が現状の許された一つの線ではないかと、このように考えます。  ただ、この問題は、労働省の所管というよりもやはり人事院の問題、人事委員会の問題と、こういった性格のものでございますから、私からこれ以上のお答えを申し上げる立場ではないと、このように考えておるわけでございます。
  28. 小野明

    小野明君 ILOについてもその趣旨は尊重をして進めておられるというお話でありますが、大臣ILO百五号条約ですね、強制労働の廃止に関する条約、これはまだ批准を見てはおらないわけであります。この第一条(d)項によりますと、ストライキ参加したことに対する制裁等について刑事罰等が加えられる、このことに関してのものでありますが、この百五号についてはまだ批准を見ておりません。この未批准について促進する御決意がございますか。
  29. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいまお答えを申し上げたように、私はいまだ批准をされてないILO条約というのは、やはりこれが批准に当たっては前向きで対処すべきであるという基本的な姿勢は当然持たなければならぬと思います。ただ、いま御指摘の百五号について、いわゆる禁止された強制労働の問題ですが、この具体的な範囲の設定ということについては非常に解釈上の疑問点がありますし、そして日本の国内法との抵触があるかないかということ、なかなか私自身、法律的にきわめて素人でございますが、専門家の労働省の中でも一生懸命にいま検討をいたしておる最中でございますが、そういったことを十分検討し慎重に配慮して、精神はあくまで前向きで、批准されてないILO条約はこれを批准していくという——ただ問題は、いま申しましたような国内法との調整の問題、あるいはまた強制労働の具体的な範囲の設定ということについてまだ結論に至っておらないと、こういうことでございますので、さよう御了解いただきたいと思うのでございます。
  30. 小野明

    小野明君 早急にひとつ大臣、これは結論を出していただきたいと思います。  次に、公務員労働者に対しまして、実損の回復について非常に政府がサボタージュをしておると、怠慢であると、こう私は申し上げざるを得ないわけでありますが、ILOの百五十一号条約、これはことしの六月にILO総会で採択をされております。正式にはまだ訳文ができておらないようでありますが、公務員団結権及び雇用条件の決定に関する事務手続に関する条約と、こういうふうに承っておるんであります。この条約の批准等について、これは所管が総理府であると思いますが、どのように運ばれておるのでありますか、お尋ねいたします。
  31. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) お答えを申し上げます。  総理府だけではないのでございますが、便宜私から御答弁を申し上げたいと思います。  いま先生指摘のとおり、本年の六月の末でございますが、公務における団結権保護及び雇用条件決定手続に関する条約、百五十一号でございますが、それとそれから公務における雇用条件の決定手続に関する勧告、これは勧告の方の百五十九号でありますが、採択をされました。そこで、ILOの総会で採択されました条約及び勧告につきましては、先生十分御存じのとおり、国際労働憲章におきまして、総会の終了後遅くも一年以内に権限ある機関に提出をするということに相なつております。  そこで、わが国の従前の例でもございますが、そういう期間の中におきまして国会に御報告を申し上げるというための準備を進めております。したがいまして、この採択されました条約が正式に日本に届きましたのは八月の末でございますので、まだ二月ばかりでございますけれども、現在関係省庁、たとえば外務省あるいは労働省というようなところと総理府が一緒になりまして翻訳等の準備を進め、先ほど申し上げましたように、期間内に国会に御報告を申し上げるという手続を進めております。  したがいまして、批准問題というのはさらにその先の問題でございますけれども、採択されたばかりでございますし、また現行法制上のいろいろな問題点あるいはこの条約が採択されましたいきさつ等もございますので、そこら辺を十分煮詰めまして、今後十分検討の上慎重に対処してまいりたいということでございます。
  32. 小野明

    小野明君 労働大臣に、私は私が調べた資料についてひとつお尋ねをしておきたいと思うんでありますが、なぜ私がきょうの御質問を申し上げたかといいますと、人事院総裁から先ほど御説明がございましたが、一回公務員処分をされますと、昇給延伸はもちろん言うに及びません、退職手当に響きますね、それから退職後の年金に影響をしますね、そうしてさらに年末とそれから夏の期末勤勉手当にはもちろん影響がございます。さらに、本人が死亡をすれば遺族年金に対しましても影響があるわけです。いわば、一回処分を受けると、いかに良好な成績勤務をいたしましても——その良好な成績というのは普通の成績というふうに私は解しておるんですが、そのように解釈するのが通例だと思うんですが、この良好な成績で勤めましても、一回の処分によって墓場の下までその処分が続いていくあるいは家族その他にも影響がある、これはどこかで救済をされなければならぬではないか、こういうことがきょうの私の質問趣旨であります。  先ほど労働大臣和解を進めて云々、こういうことがございましたが、ここに私は実例を申し上げたいと思うんでありますが、全国的に和解が進んでおる状況を申し上げますと、六六年、ですから、いまから十二年前になりますか、一九六六年から七六年、この十年間に、順次申し上げますと、六六年で——これは日教組関係です。二十四件ストライキをやりまして、和解をしておるのが二十二件です。それから六七年は、二十八件ストライキをやりまして、二十五件が和解をすでにしております。六八年は二十二件のうちに十九件、これは全部申し上げますと時間がありませんので、かなりの府県におきまして前進的な和解というものがなされておるわけであります。この点は評価されると思うんでありますが、さらに日教組の関係で申し上げますと、全然和解がされておりません県は静岡県と福岡県です。  静岡県の処分は、これは年度から言いますと昭和四十一年の七千五百五十三名、これは全然和解なし、それから福岡県におきます例は昭和四十二年からですね、十五万八千四百七十名、延べです。これ。小中高ですね。非常に大量に上っております。他の府県においては前進的な和解ということが進んでおりまするけれども、この福岡県と静岡県におきましては全然和解が進んでいない。まあ福岡県の知事は、大臣も御案内のように労働省出身であります。十分このILO条約等の問題についても携わってきた知事である。これ全然和解が進んでいない。これは大臣関係があるわけではありませんが、労働省出身であるということをひとつ銘記をいただきたいと思うんです。しかも福岡県の処分は、先ほど小中高の関係は申し上げましたが、県職員におきましては五千八百五十一名であります。合計十六万四千三百二十一名、金額にいたしますと、概算でありますが、百三十三億円に上っておるわけであります。こういう非常に多数に上る、多人数にわたる処分、大体金額も多額に上りますが、平均号俸にいたしまして小中高で二号俸はダウンをしております。  先ほど申し上げましたように、和解が全然進んでいないのが福岡県、そして静岡県でありますが、この二県におきまして、このような経済的な制裁が恒久的に続く状態、しかも非常な多人数に上る、これについてどう労働大臣はお考えになりますか、御所見を伺いたい。
  33. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 労働大臣は、申し上げるまでもないことでありますが、労働者の生活の安定、福祉の問題、労働条件の問題と、こういうことに対して十分配慮しなきゃならぬ立場でございます。ただいま御指摘お話は具体的な問題でございまして、特に、福岡県の問題を数字的にお述べになりまして、非常に困った状態が続いておるということも聞いております。現在、小委員会においていろいろ話し合いを進めておられるように聞き及んでおるわけでございまして、これはやはり文部省、自治省、この省が窓口でいろいろ折衝に当たっていただくわけでございましょうから、労働大臣としては、そういった役所と連絡をとって、何とかしてひとつ和解の線が見つかるようにわれわれの立場としてできる範囲において善処をいたしたいと、このように考えております。
  34. 小野明

    小野明君 大臣、ひとつ労働省出身の知事でありますだけに、いまお話がございましたが、労働大臣の御趣旨が生かされますように、この福岡県においてなされておる実損が、いま私小委員会というものがどうなっておるかわかりませんけれども、早急に実損回復の実が上げられますように格段の御努力を重ねてお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  35. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいまもお答えいたしましたように、関係省庁と十分連絡をとりまして、御趣旨を踏まえて対処いたしたいと、このように考えます。
  36. 小野明

    小野明君 文部省からも、初中局長諸澤さん、お見えですね。  いまお話を申し上げておりますように、小中高の関係処分が全国一であります。したがいまして、この和解が一日も早く進められますように、実損回復がなされますように、御努力はいただきたいと思うんでありますが、初中局長、いかがですか。
  37. 諸澤正道

    説明員(諸澤正道君) 私どもは、現場の先生と任命権者である県の教育委員会との話し合いを注視しながら、文部省として適当な指導をするという立場にあるわけでございますが、御指摘の点につきましては、労働大臣もその方向で努力をされたいと、こうおつしやっておられるわけでございまして、ただ、そのお話し合いをいたしますにいたしましても、先ほど来、再三お話がございましたように、現在のわが国給与制度というものが成績主義をとり、特昇という制度も一定期間良好な成績勤務した者を対象とするんだという、この法律のたてまえはやはりたてまえでございますから、そういう趣旨を踏まえてひとつ今後も引き続き話し合いをしていただきたいと、かように思うわけでございます。
  38. 小野明

    小野明君 私が最初に申し上げましたILO百三十九次報告というのは政府に対する勧告であります。このILO百三十九次報告趣旨は、ただいまの諸澤初中局長の御答弁では全然その片りんだにうかがわれぬじゃないですか。全然これを無視する方針のように私には聞き取れましたが、いかがですか。
  39. 諸澤正道

    説明員(諸澤正道君) いまお話しのように、懲戒処分を受け、その結果、昇給延伸ということになったそれらの人々に対する救済として、全面一律に何らか復元するような措置考えるべきであるという、そういう御意見があり、それが言ってみれば立法論としてそういう意見があることは私も十分承知をいたしておりますけれども、現時点において、ILOのこのような報告がありましたといいましても、われわれ直接実務を担当する省庁といたしましては、やはり日本国法制に従って事務を処理しなければならない立場にあるわけでございますから、その趣旨については今後も関係各省庁といろいろ御意見の交換等をいたすことではありましょうけれども、しかし、文部省としてはいま申しましたことでございますから、現在の法制に従って事務を処理をするように指導せざるを得ないという、この立場は御理解いただきたいと思うわけでございます。
  40. 小野明

    小野明君 全然話にならぬじゃないですか。いままでの労働大臣答弁あるいは人事院総裁の御答弁、国内法制は踏まえておるわけですよ。皆それぞれ国内法制は踏まえた上で、そうして、そういう墓場の下まで続くような恒久的な経済的な制裁、これを何らかの形で救済をしなければならぬ、こういう御答弁。肝心の文部省が、和解を進めることを1何も私は一律に一時期にと、こうあなたの御答弁のように言っておるんじゃないんです。和解を進めていく、一回処分を受けたら、その後いかに良好な成績勤務しようともこれを救済する道はなくなる、こういうことではなくて、やはり何らかの形で前進的な和解とかあるいは仲介、これには人事委員会等ももちろん入りますけれども、それらの措置を一顧だにしないというのは、余りにも頑迷固陋に過ぎるといいますか、そういう御態度、御方針であるから、今日の教育の荒廃あるいは混乱というものがそういうあなたの態度から生じておる、こう申し上げても過言じゃないんじゃないかと私は思う。厳しく私はそういう点を申し上げたいわけでありますが、労働大臣あるいは人事院総裁の御答弁趣旨、これを生かす、あるいはILOの——何も国内法を無視してと私は言っておるわけじゃないですよ。こういう百三十九次報告、これを生かすような御努力はなされないものであるかどうか、重ねて質問をいたします。
  41. 諸澤正道

    説明員(諸澤正道君) 先ほども労働大臣なり人事院総裁お話しなさいましたように、このような実損回復の方法としては、特別昇給という制度による以外現在の日本ではないと、そして、その特別昇給というものはこういう趣旨だということでございますから、私は決して人事院総裁労働大臣のおっしゃった趣旨と異なることを申し上げているのではないのでありまして、そういう法制を踏まえてやはりやらざるを得ないではないか、あるいはそういうことを考えながら、現実に実損が回復できるような措置がとられることを期待するんだと、こういう趣旨でございます。
  42. 小野明

    小野明君 初めからそういうふうにおっしゃれば、私もわからぬではなかった。現に福岡県教育委員会には文部省から歴代教育長が派遣をされておるわけです。この処分は、実際はその派遣された天下りした教育長がおやりになっておるわけですよね。それだけに、教育委員会を指導をする、まあ文部行政指導助言ですけれども、いまの文部省のあれですと指導助言の域を超えておる面がたくさん私はあると思うんですが、そういう点は別の機会に譲るといたしまして、いま福岡県でも、ひとつ実損回復をしなければならぬという機運があるやに私も仄聞をいたしておるわけです。こういうときに、一層この対立を激化させる、行政当局、権力者の方から対立を激化させるというようなことではなくて、ILO趣旨を生かして労使関係の調和的な発展を図っていくと、こういう国際的な世論を生かしたひとつ措置をとっていただくように私からも要請をいたしたいと思うんでありますが、重ねて初中局長の御答弁を承ります。
  43. 諸澤正道

    説明員(諸澤正道君) 教育の現場において教員と教育委員会当局が対立しておるというようなことは決して望ましいことでございませんから、私どももそういう事態が一刻も早く解消されますように、事態を見守りながら適切な指導をしてまいりたいと、かように思います。
  44. 小野明

    小野明君 終わります。
  45. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は雇用問題と、それに表裏の関係にあります財政、予算のことについてお伺いをしたいと思います。  御案内のとおり、昭和四十八年のオイルショック以降、世界的に政治経済に与えた影響は多いわけですが、なかんずくわが日本もその例に漏れず、どちらかと言えば深刻な事態にあることは御案内のとおりであります。したがって、政治あるいは経済対策も各般のことがいままで行われたわけですが、特に失業、雇用についてひとつお伺いをいたします。  いま行っております決算は五十年度の決算でありますので、五十年、五十一、五十二、五十三年、それぞれの年の雇用、失業の状況といいますか、特色というものについてまずお伺いをしたいと思います。
  46. 細野正

    説明員(細野正君) 五十年から最近に至るまでの雇用、失業情勢の特徴というお尋ねでございましたが、まず昭和五十年は、御存じのように全般的に景気の底というふうに言われた時期でございまして、したがいまして雇用、失業情勢自体も急激に悪化の方向に向かいますと同時に、非常に特色でありました点は、一時的な休業という形での雇用調整が非常に大きく行われたということが一つの特色かと思われるわけでございます。と同時に、有効求人倍率も下がり、それから失業者の数も増加の方に転じていたということだと思われるわけであります。  その後、政府によりますいろいろな景気の振興対策によりまして、たとえば五十一年ごろはやや景気が、特に年度の当初におきまして立ち直りかけた時期もございました。そのために、たとえば有効求人倍率等も若干上がる傾向が出るとか、その他の改善の兆しも見られたわけでございますが、しかしながら年度の後半におきまして息が続きませんで、やはり著しい改善を見るまでに至らずに、景気の面におきましてもそれから雇用の面におきましても終わり、その低迷状態が五十二年に続きました。  五十三年に入りましてまた政府の公共事業を中心とします振興対策が、まあ五十二年度の補正、それからまあ五十三年度予算、さらには現在の、先般の補正等によりまして、その影響で現在までのところ景気自体は指標的には改善の基調を続けてきておるわけでございまして、それに伴いまして、たとえば求人等をとってみますと、五十二年に比べて改善の状況がここ数カ月続いている状況でございます。  しかしながら、先生も御案内のように、失業者の数が容易に減らない、就業者なり雇用者の数はある程度ふえておりますけれども、失業者数が減らない。それから有効求人倍率等をとってみましても、求人はふえておりますが、求職も依然として、特に有効でとってみた場合に、求職者が減らないために、せっかくの求人の増も効果が消されまして、ここ数カ月ほんのわずかずつ連続して上昇はしておりますけれども、それも依然として〇・五台ということでございまして、大幅にそれが一に近づくようなそういうことではなくて、非常に歩みのおそい改善の状況にあるというふうなことでございます。  さらには、昨年ごろから特にいわゆる構造不況業種におきまする合理化問題、雇用関係で言いますと、すでにその前から減量経営等が始まっていたわけでございますが、昨年それから本年にかけまして、構造不況業種の合理化問題、これに伴う雇用問題等が懸念をされるわけでありまして、そういう意味で、こういうまだ失業者が減らない、有効求人倍率もはかばかしく回復しない状況のところに構造不況業種の影響の問題、さらにはまあ円高の影響等が重なるわけでございまして、そういう意味で、当面、しばらくもう楽観を許さない状況が続くというふうに私どもは見ているわけでございます。
  47. 穐山篤

    ○穐山篤君 いままあ指摘をされているようなことだろうと思いますが、しかし量的に言いますと、昭和五十年度を境にして百万人の台に失業者が固定化したといいますか、慢性的に百万人の台に上ったと。これは非常に特徴的なことだろうと思うんです。  さて、そこで五十年からいまお話しのなりました五十三年までの間に、これは、雇用問題というのは国の政策全体の問題ですから、労働省限りでどうこうすべきことではないとは思いますけれども、所管でありますのであえてお伺いしますが、大ざっぱに年度ごとに、いまお話のありましたような雇用情勢あるいは雇用の見通し、失業の見通しがあったわけですから、それに対応して法的な措置行政上の指導というものがまあ相当強力に打たれたと思いますが、経過的にひとつ特徴的な労働省の対応策というものを一言お伺いしたいと思います。
  48. 細野正

    説明員(細野正君) 五十年度におきましては、先ほど申しましたように、急激な経済の変化に伴いまして、これに対応するために雇用調整が非常に頻繁に行われたという事態がございます。そういう事態でございますので、労働省としましては、いわゆる失業の予防ということを非常に重視をいたしまして、そういう観点からいわゆる雇用調整給付金制度というものを創設をいたしまして、この制度につきましては、先生も御案内のように、昨年にさらに事業転換に伴う雇用調整事業を追加いたしまして、安定資金制度という形で現在にまで至っていると、こういう状況でございます。  それからもう一つの問題は、昨年におきまして特定不況業種の離職者の問題が非常に大きな問題になってまいりましたので、そこで、これは国会における御審議の中から生まれてきたわけでございますけれども、特定不況業種離職者臨時措置法という法律を制定をしていただきまして、これによりまして特定不況業種のいわゆる構造不況業種から発生する離職者に対する失業の予防とそれから再就職の援助の強化をするというふうなことをやったわけでございます。  さらに、最近におきまして、そういう状況から特定の地域におきまして、いまも申し上げたような構造不況業種の影響で、非常に地域的全般に、経営面、雇用面両方に大きな問題が生じているという角度から、御存じのように、通産省が経営面、労働省が雇用面を担当しまして、二つの法律をさきの国会におきまして成立をさしていただきまして、これによりまして特定不況地域対策というものを現在進めつつある、こういう状況でございます。
  49. 穐山篤

    ○穐山篤君 まあ大体わかりました。  さて、そこで具体的にきょうの決算説明書にもあるわけですが、労働保険特別会計にかかわる問題について申し上げたいと思うんですが、昭和五十年度の決算を見ますと、当初予算とかなり違った決算処理を行っておりますね。移流用が行われ、なおかつ予備費が多額に出費されたと。まあこれは昭和四十九年に続き五十年は非常に厳しい雇用情勢でありましたので、あるいはまあ労働省指導もあって一時帰休などのことが行われたというふうないろいろな原因があるんでしょうけども、まあ通常の決算から見ますと、かなり異なった決算をしております。  そこで、当然反射的に出る問題としましては、給付金の方が非常に多額に出費されたと。そうしますと、他の費目あるいは他の政策というものに当然手抜きが行われた、あるいは結果として十分な予算の消化が行われなかったというふうに見ざるを得ないと思うんですね。そこで、問題を正確に把握するために、五十年、五十一、五十二、まあ五十三年度は執行中でありますので、五十二年度までの当初予算、それから決算額、それから不用額というものをひとつ数字で挙げていただきたいと思います。
  50. 清水傳雄

    説明員(清水傳雄君) 雇用保険のいわゆる四事業の関係につきまして申し上げたいと思いますが、五十年度におきましては、現在のような雇用安定事業というふうな形になっておりませんので、いわゆる雇用調整給付金は雇用改善事業という中に含めておるわけでございます。五十年度の雇用改善事業の当初予算といたしましては、二百七十二億四千八百万円ということになっております。で、具体的に五十年度におきまして雇用改善事業として支出をされましたのは八百七億七千七百万という状況でございます。それから五十一年度の当初予算といたしましては五百三十八億五千二百万、実績が九十二億四千四百万。五十二年度におきましての雇用改善事業は、これは五十二年度から雇用安定事業というものがそこから分離をしたわけでございます。雇用安定事業といたしましては四百七十七億七千五百万、実績といたしましては百億の安定資金への繰り入れを含めまして百三十三億三千七百万。それから雇用改善事業といたしましては、五十二年度の予算が百九十億四千四百万、実績が五十八億五千七百万、このような状況でございます。
  51. 穐山篤

    ○穐山篤君 五十年度が二百七十二億で、実績が八百七億、かなり予算の超過をした。状況としてはよくわかります。  さて、五十一年度が五百三十八億で、実際に使ったのが九十二億、不用になったのが四百五十億前後ですか。それから五十二年度は、いまお話がありましたように、安定事業で四百七十七億で約三分の一以下の百三十三億、改善で百九十億に対し五十八億しか使っていない。  私は、後ほど細かくはお伺いをしますが、三木内閣、福田内閣を通しまして、雇用あるいは失業対策というのは非常に国もあるいは国会全体も真剣に取り組んだわけであります。しかし、予算の執行の状況から見ますと、不用額が大変残っておる。これは非常に私どもの目から見ても、あるいは実際にこの財源となっております事業主の立場から見ましても、摩詞不思議なことが雇用関係の財源の執行については行われているというふうに見ざるを得ないと思うんですが、大臣いかがですか。
  52. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のような結果を考えますと、本当に今後の対処の仕方に十分意を払わなきゃならぬと私も思いますが、問題は、非常に昭和四十九年以降日本の経済、景気の動きというものがまことに不確定といいますか、不安定と申しますか、見通しが十分立ちにくいような状態で推移してきておる、こういうことから、しかもその中で雇用、失業情勢はきわめて厳しい状態が続いておる。ますます年を追うて厳しくなった、こういうことから、なかなか適切な予算措置、予算執行ということが行われなかったわけでございまして、その点は御指摘のようなことをわれわれは十分踏まえて今後に対処しなければならぬと、このように思っておるわけでございます。
  53. 穐山篤

    ○穐山篤君 たとえば五十二年度から目の項がかわりましたし、それから比較が多少複雑になるとは思いますけれども、労働省が来年度の予算の要求を行うという場合に当然積算の基礎があるわけです。それは来年度の産業構造の変化はどうなるだろうか、あるいは地域的に見て失業者がどういうふうに拡大をするかあるいは縮小するか、いろいろな分析を行った上で積算をやるわけですね。しかし、積算というのはあくまでも積算であって、これがこのまま使われるということはないのは当然であります。当然目の中で全体が移流用をされる、あるいは必要によっては予備費を充てるというのは、財政法に許されているわけですからそれは私はいいと思います。  しかし、労働省の政策として事業転換が当然行われなければならないし、行われると労働省もそれに対して財政的に支えをしなければならないということで計上を毎年毎年されているわけですけれども、一銭もとにかく使っていない。たとえば五十二年度の実績あるいは五十三年度の経過の中で見ますと、事業転換について去年の国会あるいはことしの国会でも大いに議論がありました。一例を挙げますけれども、まあ安定事業の中の事業転換等訓練給付金あるいは助成金、これが六十七億円も計上されながら全く一銭も使われていない。これは一例ですよ。それから景気変動に伴います調整事業でこれも同じく給付金というものがあるわけですけれども、二百四十九億七千一百万円計上されながら三十一億五千六百万円しか使われていない。これが一般会計で明許繰り越しというふうな事業のものならば、来年度行われるあるいは再来年度行われるという意味で理屈はつくと思うんですけれども、少なくとも何十倍と見当違いを起こしたということはどこかに誤りがあるんじゃないかと思うんです。それは見通しが全くできなかった、そういう見通しを明確にするだけの皆さん方の材料が十分にそろっていなかったということになるのか、あるいはまた積極的に事業主あるいは労働組合へのPRが足りなくて全然使われなかったのか、あるいは予算全体のボリュームを引き上げていくためにこういう幾つかの積算の基礎を出して、そして予算だけ取っておけばいいじゃないかということになるのか。これは非常に客観的に見て不まじめな予算の編成ではないか、あるいは実績が全く的確ではないというふうに言わざるを得ないと思うんです。私はごく抽象的な一般論ではなくて、具体的な項目あるいは積算に基づいてお尋ねをしているわけです。  労働大臣はなかなか答弁しづらいと思いますから、専門家の方から、見通しが誤ったというなら誤ったで結構です。誤るについてはまたその原因もあっただろうと思います。その点について少し明確にしていただきたいと思います。
  54. 細野正

    説明員(細野正君) 先生指摘のように、予算と実績の間にかなりの乖離があるわけでございます。その原因としまして、たとえば雇用調整給付金を例にとってみますと、これは先ほど先生の御指摘もございましたように、五十年に始めたときには予想もしないほどたくさん出まして、そこで、そのために流用、移流用等をお願いせざるを得なかったわけでございますが、その後におきまして、そういう五十年の実績を踏まえまして、そのぐらいのものが出てもたえられるようにということで予算を組んでまいりましたところが、実際に他の調査等によりましても明らかなわけでございますが、その一時休業という形でやる雇用調整が現実にもう減ってまいりまして、そういうことの結果、その雇用調整給付金につきましてはかなりの残を残したと、こういうのが原因かと考えられるわけであります。  ただ御理解をいただきたいと思いますのは、そういうことで、まあ言ってみれば見通しを間違ったと言えば確かにそのとおりなんでございますが、この景気変動なりあるいは産業構造の変化に対応する各種の調整制度というものは、本来的に波動性が大きくて、これを予測することが非常にむずかしいという前提に立ちまして、したがいまして、ある程度平常時から積み立てをいたしまして、その積み立てたもので不測の事態が生じた場合にこれに対処できるという、そういうことの必要な制度ではなかろうか、こういう考え方に立ちまして御存じの雇用安定資金制度という制度ができまして、したがって、日常的にまず積み立てをやりますと同時に、ここで生じました残額はすべて積み立てをいたしまして、そういうことで先ほども申しましたような五十年の当時みたいな、こちらの予想もしないほどたくさんの雇用調整が出るというふうな場合にもたえ得るようにしようという仕組みになっているわけでございます。そういう意味で、一般の何といいますか制度と違って、本来的に予測が非常にむずかしく、機動的な対処が必要だという性格のものとして制度が仕組まれているということはひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つの事業転換等雇用調整事業につきまして、ほとんど出てないじゃないかと、こういう御指摘がございました。五十二年度につきましてはその制度発足間もないという面もございましたし、御存じのように、五十二年の十月から事業転換という制度が始まりましたのと、それからその雇用調整給付金等に比べますと、事業転換等になりますと経営側自体もかなりあらかじめ計画的に準備、それからそれに対応するいろんな検討が必要でございまして、そういう意味で、五十二年度におきましては私どもの方のPRも足りなかった面もありますし、それから事業側のこれに対する対応というものが非常にむずかしかったという問題、それからやってみないとわからぬ点がございますものですから、条件等につきましてもある程度、何といいますか、実情に即した検討ができないという面がございまして、そういう点については後ほどまた申し上げたいと思いますけれども、最近までの経験に徴しましていろんな制度を使いやすいように改善をするというようなことを現在やっているというふうなことでございまして、大きく考えられます予算と実績の乖離は大体以上のような点でなかろうかと思うわけでございます。
  55. 穐山篤

    ○穐山篤君 大蔵省にお伺いをしますけれども、この雇用改善事業、安定事業含めてそうですか、毎年毎年労働省から要求が出てくる。当然それは一定の積算というものを基礎にして積み上げてやるわけですね。で、当然大蔵省の査定ということがあるわけですから、プラスをしたりマイナスをしたりすることがあると思う。しかし、ここ五十年、四十九年から予算と決算全部調べてみますと、大変な乖離が生じているのは御案内のとおりですね。  大蔵省は、労働省から出てまいりました積算というもの、あるいは積算が全部合理的だとは言いませんけれども、多少変化を含めて査定をされたと思うんであります。しかし、これほど乖離があります財政というのは他に例がないわけですね。いま五十四年度の予算の査定中であろうと思いますけれども、大蔵省としては、労働省から出てきました予算の内容をどういうふうに審査しているんですか。労働省から出てまいりました積算の基礎というものは、これは専門的に検討したわけだからそれはしようがないという立場でただお認めになっているという慣行でしょうか。ちょっとお伺いします。
  56. 安原正

    説明員(安原正君) 四事業の予算につきまして、予算と決算の間に相当な乖離が生じたことは先生指摘のとおりでございまして、その原因等につきましては、ただいま労働省の方から御説明のあったとおりであると考えております。  御質問要求と査定の関係でございますが、労働省の方で雇用安定四事業について予算要求を、いま五十四年度予算につきまして要求をいただいておりまして、いま労働省と密接に協議しながらその詰めを行っている段階でございます。  この予算をどう組むかというのは、当然のこととして五十四年度の雇用情勢がどういう推移をたどるか、それに対応して事業主がどういう雇用調整の対応をとるのか。それからどの程度給付改善すればまたそのインセンティブが働いてくるのか、いろんな要素がございます。そういう点につきまして労働省から十分な御説明を伺い、問題点につきましては指摘し、協議を重ねながら労働省と合意を得たラインで予算をつくるということでございます。
  57. 穐山篤

    ○穐山篤君 昭和四十八年の秋、いわゆるオイルショックがあった直後、昭和四十九年、五十年というのは見通しが不案内だと、あるいは構造不況業種につきましてもこれがどういうふうに推移をするかよくわからないと、あるいは失業の状態についても地域的によくわからないという不安の材料があったので、昭和五十年度の決算というのは約予算に対しまして四倍近い決算をしているわけです。ですから、そのことは私はよく理解をしますよ。しかし、五十一、五十二、五十三年とずっと調べてまいりますと、もう先行き不案内というふうな話だけでは説明がつかないんじゃないかというふうに思います。  で、先ほど労働大臣は、この予算の執行について非常に遺憾だという意思表明をされたわけですが、大蔵省の立場から、この労働省の予算の執行の状況についてはどういうふうにお考えなんですか。
  58. 安原正

    説明員(安原正君) 先生指摘のとおり、五十年度におきましては予算を上回る実績となりまして、移流用等の措置を講じたわけでございます。それで、五十一年度、五十二年度と今度は逆に予算を下回る実績になっておるわけでございますが、予算編成の時点では、ある程度の実績と申しますのが前年度の前半程度の実績しか得られないという事情がございます。それから雇用情勢が非常に流動的でございまして、その予算の編成当時に想定したとおりなかなかいかないと、こういうこともございまして、結果的にまた逆の姿になったわけでございますが、それはまあこの予算自体が事業主に対する助成であると。事業主がどういう雇用調整の対応をとるか、一時休業の形をとるのか、あるいは減量経営の方向にいくのかという点で非常に大きく違ってくるわけでございます。  先ほど労働省の方から御説明がございましたように、五十年度は一時休業という形での雇用調整がかなり行われた、五十一年度以降は減量経営の方向に推移したということで、非常に大きく食い違った面がございます。この予算を適切に執行していくことは非常に重要なことでございますので、労働省の方において検討され、御承知のとおり、ことしの十月から適用要件の緩和あるいは地域対策の充実とか、いろんな措置が講じられておりますので、今後この予算を活用して失業の予防、雇用安定事業の推進が図られていくものと考えております。
  59. 穐山篤

    ○穐山篤君 見通しが狂った。それも全体の二、三割ぐらい見通しが狂ったというならばこれはわかる話です。しかし、この決算書を見ると八割方見通しが狂っているわけです。これは非常に私は不思議な決算だというふうに思います。五十年度を審議しているわけですが、理屈から言えば、五十一年度の決算についても、五十二年度の予算、決算についても、こういう誤った見通しあるいは行政指導のあり方を基礎にしてこれから決算をする、あるいは予算を審議するというのは非常にわれわれにしてみましても至難なわざでございます。また大蔵省自身としても、約八割方金を使わずに残してしまった、そういうものをそのまま放置しておいて一たとえば五十一年度の決算を見ますと、不用額が四百四十億、最初の予算は五百三十八億で四百四十億も不用で残してしまった、そういうものをある程度頭の中に入れながらも五十二年度五百八十五億が組まれている。不用額が四百三十五億、八割方残しているわけですね。これは労働省にも私は責任があると思いますけれども、国の財政をきちんと決めて国民の前に明らかにする大蔵省にだって大いに責任がありと言わなきゃならないと思うんです。大蔵省ではこの積算の問題について特別に専門的に研究されているんですか。
  60. 安原正

    説明員(安原正君) 予算と決算の乖離が非常に大きく生じたということは申しわけないことであると考えております。今後できるだけ適切な見通しを立てまして、雇用安定事業が円滑に実施されるよう、財源面の措置について検討してまいりたいと考えております。  五十二年度の例を御指摘になりましたが、五十二年度の予算を組みました時点におきましては、景気停滞が長引いておるという状況を踏まえ、それで五十一年度前半までの雇用調整給付金の支給状況等を踏まえまして所要額を計上したわけでございますが、先ほど来申しておりますように、一時休業の雇用調整を実施する事業主が非常に減少したと、それから新たに五十二年度から雇用安定事業という形で事業の拡充を図ったわけでございますが、これが制度発足当初の段階でございましたので、見込んだとおりの実績が出なかったというふうな特殊な要素もございまして、結果的にはその乖離が大きく生じたということでございます。五十四年度のいま予算編成を準備している段階でございますが、五十四年度予算につきましては適確な予算編成を行うよう努力してまいりたいと考えております。
  61. 穐山篤

    ○穐山篤君 労働大臣、五十年度について私はよく意味がわかると申し上げたのは、やむを得なかったことだろうと思うんです。五十年度としては。しかし、五十年度の実績を見て五十一、五十二、五十三、この中には新たに円高という要素も加わって、それを踏まえていま予算を編成されていると思いますけれども、非常に乖離が大き過ぎますね。ですから私は、予算を組んだものよりも実は適用者が多かったということで、予備費までを流用しなければどうしても措置できないという国の温かい措置があるならばともかく、八割方金を残してしまうというふうな雇用政策あるいは失業防止対策というのは、そもそも雇用政策という姿勢に大きな過ちがあったんじゃないかというふうに指摘をせざるを得ないと思うんです。これは五十年度の決算ですから、当時は長谷川労働大臣だったんでしょうか、これはいま責任はおれにはないと言われるかもしれませんけれども、国民の立場からすれば、これは一貫した国の行政、政治と見るのは当然ですね。したがって、私はもうこれからはこういうことがないようにもつと真剣に取り組んでいただきたい。それと同時に、ある費目に、たとえば雇用調整給付金がどうしても必要で他の項目からたくさん持っていったということになりますと、他の項目といえば事業転換であろうと思いますし、あるいは高年齢者の雇用対策であろうと思いますが、そういうものが手薄になることが反射的に出てきたわけですね。中高年層の問題なんかは特に私はそうだと思うんです。そこで、予算を拡大をするという労働省のお気持ちはわからないわけではありませんけれども、適切に予算を組むということと適切に執行していくということが必要ではないかというふうに思います。もうこれ以上追及してみてもいまの段階ではどうにもならないと思いますが、ぜひ今後はそういうことがないように十分なひとつ積算基礎に基づいて予算の編成をしていただきたいし、執行についても適切を期していただきたい。このことは注文をしておきたいと思うんです。
  62. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) いろいろ御指摘をいただきましたが、的確な見通し、そして適切な情勢判断によってこれが予算を編成せなきゃならぬということはまさに御指摘のとおりと思います。ただ、この雇用保険四事業のいわゆる雇用安定関係、雇用改善関係、能力開発、雇用福祉という四事業、これは御案内のように使用者負担で千分の三・五、こういった前提で積み立てられておるわけでございまして、特別会計で積み立てられてありまして、この四事業以外には使えない、もし余った場合にはそれをよそに流用するというわけにはいかないで、この千分の三・五の負担率を下げるというか弾力的に配慮すると、こういうふうな仕組みになっておることは御承知のとおりでございますから、一般会計の予算執行のいわゆる予算と決算との食い違いとはおのずから性格が違うという、これはひとつ御理解をいただきたい。決して弁解を申し上げるわけではございませんけれども、そういう点はございますけれども、やはりこれから厳しい雇用情勢でございますし、適切な雇用安定にこの金が生きて使われるように、きわめて機動的に弾力的にこの四事業の枠内で配慮していくと、こういうことは、御指摘のような過去の足跡を踏まえまして、四分労働省として、また労働大臣として配慮しなければならないと、このように思う次第でございます。
  63. 穐山篤

    ○穐山篤君 ぜひしっかりやっていただきたいと思うんです。  さて、最後になりますけれども、先日中央職業安定審議会の会長から大臣に対しまして一つの答申が行われたわけですが、その答申にいろんな示唆が含まれておりますが、本問題に関連をして申し上げるならば、離職者臨時措置法案の審議の際に出されました資料の中に重大なことが三つほど述べられているわけです。一つは、雇用安定事業等四事業に関しては、相当の資金の積み立てを生じてはいるけれども、雇用安定事業等について今後とも不可欠な事業につき内容の充実及び周知に努めるべきことは言うまでもないとしても、さらに不急な事業の繰り延べなどの合理的運用を図り、資金需要に応じ四事業にかかる保険料率を弾力的に調整するようなことを考えなさい、これがまあ一つだと思うんですね。それからもう一つは、いまも大臣指摘をされているわけですが、雇用の情勢が非常に厳しく、またこれも長期的に継続することが予想されるので、さらに雇用の確保、安定を図るために必要な施策の拡充を検討するとともに、雇用保険制度についても給付及び四事業のあり方、保険会計の健全なる運用について基本的に見直しなさいと、こういうふうに言われているわけです。まあ五十二年、昨年の十月一日から安定資金制度が発足をして間もないこの時期に、審議会としては抜本的な問題について二つ指摘をされたわけです。これはある意味では当然だと思うし、また労働省側もそういうことをあらかじめ研究されておったのではないかと思いますが、この答申に関係をして労働省としては、具体的にどういうふうに作業を進められているのか、あるいはこれが次の通常国会に必要なものについて法律なり政策としてお出しになるのかどうか、その点をひとつお伺いしておきます。
  64. 細野正

    説明員(細野正君) 先生ただいま御指摘にございました安定審議会の答申の内容でございますが、その中の、まずいわゆる安定事業にかかる料率の弾力条項の問題でございますが、この点はいま大臣からもお答えございましたように、結局できるだけ安定資金制度が充実され、これが活用されるという努力を当然やらなきゃいかぬわけでございまして、これはこの十月にも大幅な改正をやり、また今度の地域法案に絡んでもいろんな弾力的な運営をすることにいたしておりまして、そういう努力を続けているわけでございますが、それでもなおかつ当初の見通しよりも速いピッチでこれが積み立てが積み立てられつつあると。先ほど来御指摘のように、各年余剰が出ますとそれが積み立てられるかっこうになっておりますので、したがって、その両方の努力が必要かと思われるわけであります。したがいまして、今後ともこの安定資金制度の充実強化に努めますと同時に、料率が資金需要に見合いまして弾力的に定め得る、そういう措置も必要かと、こう考えておりまして、できるだけ早い機会に私ども成案を得まして、安定審議会にお諮りした上で私どもは次の通常国会に関係の法案をお願いしたいと、こういうふうにいま考えているわけでございます。  それから二番目の、各種の雇用対策の保険制度を含む基本的な見直しの問題でございますが、これにつきましても、現在第三次雇用対策基本計画そのものの見直し作業をやっておりまして、これに伴いまして、その内容をできるだけ、現在、同じように改定作業をやっております経済計画の内容に反映させますと同時に、私どもの雇用対策自体も充実の方向に持ってまいりたい、こういう考え方でございます。  で、計画自体は、完成するのは恐らく来春だろうというふうに思っておりますけれども、いま先生も御指摘のように、通常国会等に間に合わせなければならぬような緊急な問題がございますれば、中間的なあるいは御報告をいただく等のことも考えた上で、ひとつ通常国会なりあるいは来年度予算なりに反映できるように努めてまいりたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  65. 穐山篤

    ○穐山篤君 まあ繰り返して申し上げますけれども、この財源が事業主負担の財源です。事業主もこういう円高不況の中ではいろんな負担が多くなるわけですね。泣きの涙で、ざっくばらんに言えば出している企業もたくさんあるわけですね。しかし、私が先ほど指摘をしましたように、十分に予算執行の面で効果があらわれない。ざっくばらんにこれを一人一人の事業主に見せたと仮定をしますと、労働省のその意気込みはわかるにしてみても、おれたちの出した拠金というものが十分効果をあらわしていないんじゃないかと、こういう気持ちにならないとも限らないわけです。で、当然余った金は基金に、安定資金に繰り入れて、その資金というものを大きくして常にそれが適用できるようにしたいと、これは政策としてもよくわかると思う。しかし、金を出している、分担をしている人の立場から言うと、抽象的な論議だけでは信頼できないし安心ができないと思うんです。そこで、この答申にもありますように、厳しくその点は私は指摘をされたんじゃないかというふうに思います。きょうはもう時間がありませんから、これ以上の指摘は申し上げませんけれども、十分私が先ほど申し上げましたようなことを踏まえて、次の国会では事業のあり方の問題を含め、制度全体についてもひとつ納得のできるようなものを出していただきたいということを申し上げて、私は終わりたいと思います。
  66. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 午前の審査はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時六分開会
  67. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和五十年度決算外二件を議題とし、労働省決算審査を続けます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  68. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、身体障害者の雇用についてお尋ねをいたします。  この身体障害者の雇用については、国、地方公共団体、特殊法人、民間企業にそれぞれ一定の率で身障者を雇い入れることを義務づける現行制度が発足してからちょうど二年たっておるわけでございます。今回発表された五十三年六月現在の身体障害者の雇用状況を見てみますと、民間企業の雇用率は平均一・一一%で、法定雇用率の一・五%にはまだ遠く及ばぬ低さでございます。また、雇用率未達成企業が四七・九%もあり、大企業ほど雇用率が悪く、雇用率未達成の企業の割合は大きく、従業員一千名以上の大企業の雇用率は〇・八三%、大企業の七九・五%は雇用率未達成であるなど、大体一年前と同じ状態で、身体障害者の雇用はこの一年の間にほとんど進んでいない状態でございます。  身体障害者の雇用は単に労働問題だけではなく、肉体的にハンディキャップを背負っている人々を社会全体で受け入れて、ともに社会経済活動をしていくという福祉国家として当然取り組むべき課題であり、この雇用率は福祉国家の程度をはかるバロメーターであるとも言われております。身障者の雇用促進について国は必要な施策を推進する責務があるから、この一年の間に政府は何もしなかったというわけではなく、当然いろいろな努力をされていたと思いますけれども、一年たっても一向に身障者の雇用が進まぬ状況について政府はどのように反省をしておられるか、お尋ねをいたします。
  69. 細野正

    説明員(細野正君) 身体障害者の雇用の促進につきましては、私どもも雇用対策の重点課題の一つといたしましてかなり努力をしてきたつもりでございますが、御指摘のように、雇用率自体としてはほんのわずか改善を見ましたけれども、まあ達観すると横ばいに近いような状況でございまして、その原因としてはいろいろのことが考えられますけれども、そういう点につきましてもよく分析をいたしまして、さらに今後とも一層の努力をしてまいりたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  70. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 雇用状況を業種別に見た実雇用率というのは、昨年は金融、保険等が〇・四八%で最低でございました。今回もまた金融、保険は〇・五一%と雇用率はやや上回っておりますけれども、最低であります。労働者の資料によると、金融、保険は今回も最低ではあるけれども、この一年間に新規に雇用された身障者八千六十四名のうち一一・一%の八百九十五人は金融・保険業であって、新規雇用身障者の割合が、金融機関は他産業に比べて著しく高く、こうした業種の身障者の雇用が進み始めたとも言えると、このように評価をしておられるようでございますが、金融機関や保険会社は不況業種でもなく、したがって減量経営をしているわけでもないわけでございます。一番よい条件の業種である。それがこんなに低い雇用率では、とうてい社会的責任を果たしているとは言いがたいと思います。一度に法定雇用率までにするということは無理なことはわかりますけれども、せめて他の業種並みに近づく努力が望まれるわけでございますが、労働省は、やはりこの程度でも銀行など金融機関努力は認められると、このように評価をしておられるでしょうか。
  71. 細野正

    説明員(細野正君) 御指摘のように、現在各産業の中で金融、保険、不動産関係の雇用率が非常に低い状況にありまして、したがいまして、私どももここに重点を置いて、それと、率先して雇用を進めるべき政府関係特殊法人等と、いま申し上げた金融、保険、不動産等を特に重点的な私どもの政策を進める対象として対処してきたわけでございます。そういう意味で、こういう全般的な経済情勢の中ではございますけれども、ある程度の効果は上がったと思っておるわけでございます。しかしながら、先生指摘のように、まだはるかに法定雇用率を下回っている状況でございまして、今後とも一層私どもがやってきた努力、それから現在金融機関等がやっております努力というものをもっともっと強化していかなきゃならぬというふうに考えているわけでございます。
  72. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、大臣にお尋ねをいたしますが、雇用率が悪い企業などには、労働大臣は身障者の雇い入れ計画の作成命令を出すことができますし、計画を作成をした事業主に適正な計画の実施勧告をして、さらに勧告に従わないときは企業名を公表することができるようになっております。当決算委員会昭和四十九年度決算審査を終了するに際して、昭和五十三年の六月七日に内閣に対して全会一致で出された警告決議の中にも、身障者の雇用については、法定雇用率が定められているにもかかわらず、これを達成していない事業主が多いので、法定雇用率を達成していない事業主には、法に基づく雇い入れ計画の作成命令制の活用を図るなどの措置をとるようにとの趣旨が述べられております。これに対して労働大臣は、決議の趣旨を踏まえて努力をするとの答弁をしておられるわけでございますが、その後具体的にはどんな措置をおとりになったのか、雇い入れ計画を出させた企業はどのくらいあるのか、事業所の規模別にこれは言っていただきたいと思います。  さらに、計画どおりに実施をしない場合、企業名を公表するということになっておりますが、これは勇断をもって公表すると、そういう御決意でございますか、お伺いいたします。
  73. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 最近のこの厳しい雇用情勢を考えますときには、一層私はこの身障者の雇用対策というのは雇用対策の重点施策として推進しなきゃならぬというふうに考えております。  ただいま御指摘がございましたように、なかなかこの法定雇用率に達していない企業が大きな企業ほどその傾向が強いし、また同時に、金融であるとかあるいは保険であるとか不動産関係、こういったものは御指摘のようにまだ成績がよくございません。したがって、これに対してはいわゆる身障者の雇い入れ計画の作成の命令をすでに出しております。それと同時に、いろいろ企業側の身障者を受け入れる体制の整備についても労働省は直接指導をしておりますし、また、各種のいろんな助成金の制度もこれに付加されましていろいろ努力しておるわけでございます。  それと同時に、新しいこれからの身障者の訓練の要請、ニーズにこたえた訓練施設の整備、あるいはまた所沢に国立職業リハビリテーションセンターがございますが、そこへいろいろ訓練技法の研究開発を依頼をして、どういうふうなやり方をしたら身障者の雇用機会が拡大をするかということでいろいろ工夫をしてもらっておりますし、何とかして私はこの法定の雇用率制度に早く企業が達するように、同時にまた個々の企業でなかなか解決できない問題は、やはり事業主がこれは共同して共同雇用の形をとって、そしていろいろ同じような立場の身障者が共同で作業すると、こういう工夫はできないものかというので目下事務当局に検討さしておりますし、現在でもこれはできるわけでありますが、その方向へ誘導できるように指導助言を労働省としてもやるべきではないかというふうな施策も今後進めてまいりたいと、このように考えております。  具体的な数字につきましては、局長からお答えをさせます。
  74. 細野正

    説明員(細野正君) お尋ねございました身体障害者の雇い入れ計画の作成命令でございますが、この命令を出しました企業は約六百五十でございます。規模別にというお尋ねございましたので、従業員三百人未満のところが百十九企業。それから従業員三百人以上四百九十九人以下という企業が六十四企業。それから従業員五百人以上の規模の企業が四百六十九ということでございまして、大部分がいわゆる大企業ということになるわけでございます。  それからなお、企業名の公表についてのお尋ねがございましたけれども、これは先生案内のように、身体障害者雇用促進法におきまして、まず安定所長が雇用率未達成の企業に対しまして身体障害者の雇い入れ計画の作成を命ずる、その次に、その計画を実施しない等の場合に適正実施についての勧告を行う、そういうことで自主的な努力を促す、それをやった後でこの勧告に正当な理由がなくて従わないと、こういう場合に労働大臣がその旨を公表すると、こういうふうになっておるわけでございます。  この手続の考え方自体は、結局雇用関係は、先生ももう御案内のように、継続的な関係でございますので、雇い入れるだけでなくて雇い入れを継続していかなけりゃならぬと、こういうことになるわけでございますので、やはり基本は事業主が理解をして自主的に努力するというところになければならぬわけでございます。そういう意味で、公表制度というのは、そういう意味での事業主の理解と自主的な努力をさせるための私どもが対策なり努力を一生懸命やって、そういう手段を尽くしてもなおその事業主が努力をしないという場合に初めていわば社会的な制裁として発動すべきものでなかろうかと、こういうふうに考え、またその趣旨で先ほど申し上げたような手続が定められているというふうに理解をしておるわけでございます。したがいまして、ああいう手続を踏んでできるだけ事業主側の自主的な努力促進する方向に向かうべきでございまして、雇用率が未達成であるからといってすぐ公表するというふうにやるのはどうも適当ではないんじゃないかと、こういうふうに考えているわけでございます。
  75. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 何もやらないからすぐというわけではございませんで、大企業あたりはそういうところが非常にルーズといいますか、認識が甘い点がございますので、やはりそれぐらいの腹を持って行政を進めてもらいたいと、こういう意味でございます。  次は、公団、事業団などの特殊法人についてお尋ねをいたしますが、この公団、事業団などの特殊法人は、雇用率一・八%が適用されておりますが、今回の調査では一・二%で、前回の〇・九%から見れば改善をされたとはいっても、しかしながらまだ法定雇用率の一・八%には相当の開きがあるわけでございます。  特殊法人は政府出資のあるものが多く、中には全額出資のところもありますので、一般の民間企業とは異なって、率先して身体障害者を雇い入れる立場にございます。また、不況の影響を受けておるわけでもないわけでございますから、これぐらいの改善は当然と言わなければならないと思います。まだ雇用率未達成の法人にはどんな措置をおとりになっておるのか、また指導してきておられたのか。五十二年度は特殊法人が九十三あるようでございますが、その中の未達成法人の数は幾らで、パーセンテージは幾らなのか。身体障害者の雇い入れ計画の作成命令を出されたのは何法人ぐらいあるのか、そういうことを含めて御答弁願います。
  76. 細野正

    説明員(細野正君) 先生指摘のように、ある程度、特殊法人関係につきましては昨年からこれまでの一年間に改善をされているわけでございますが、しかし、法定基準から見るとやはりかなり下回っております。それから率先して身体障害者の雇用促進に当たるべき性質のものでございますから、そういう意味で、今後とも一層当該法人はもちろん、私どももその促進について努力をしてまいりたいと、こう考えているわけでございます。  で、いま御指摘のございました、どんなふうな指導をしてきたかということでございますが、一つには、昨年の調査結果が判明しましてから、直ちに直接当該法人の人事部長等の責任者を呼びまして、私どもの方から強力に指導をいたしました。それからもう一つは、当該法人の監督官庁の責任のある方にお見えをいただいて、またその方面からも指導をしていただくように要請をいたしておるわけでごいます。それからなお、安定所におきまして雇い入れのための計画を作成を命じているわけでございます。なお、その計画の命令を出しております法人の数は四十四でございます。全数から見て差がございますのは、特殊法人等の中には新規採用を予定していないところ等がかなりございますので、そういう直ちに命令を出すことについて問題のあるところを除きまして、それから人数が非常に少ないというふうなところも除きまして、いま申し上げましたような四十四のところを選定して命令を出していると、こういう状況でございます。
  77. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 これまで身体障害者の雇用状況を見てみますと、非常に熱心で成果の上がっておるところは、中小零細企業の方々のところが多いようでございます。これは理解のある町工場の主人が親身になってめんどうを見るという形で雇用されていたということに原因があろうかと思いますが、木材や家具製造、金属製品といった業種の雇用率が特に高いことでもおわかりかと思いますが、大企業は就職希望者が現在でも殺到しておりますが、労働力の確保に苦労していないので、身障者の雇用には無関心ではないかと、こういうふうに思うわけでございます。それが雇用率を義務づけられたから、急に身障者を雇用することになってどう対応していいのか戸惑っているということも、そういう点もあろうかと思われます。雇用が義務づけられて二年もたったわけでございますから、どんな事情があるにせよ、企業が法で決められた雇用率の達成に努めることは当然であると思いますが、結局は一人でも多くの身障者がその人にふさわしい職業につくことでございますから、国も企業も身障者を雇い入れるためにできるだけ手をかす必要があろうかと思います。たとえば、身障者に適した職種といえば単純な作業という見方がまだあって、自分のところには身障者に向く仕事がないと採用に消極的になるような、受け入れ側の一般の理解が足りない場合の助言の仕方とか、身障者が職場にうまく適応できるだろうかといった、雇い入れ側の不安を解消することも私は必要ではないかと思います。  それにはこれまで身障者を多く雇用している企業の状況を広く紹介をするとか、身障者向けの新しい作業分野や職種を開発して一般に身障者に対する理解を深めることが必要で、そのために末端まできめの細かい施策が一層望まれるわけでございますが、労働省の方で具体的にこのような施策を進められていることがあれば、どういうふうな施策を進めておられるか、お答え願いたいと思います。
  78. 細野正

    説明員(細野正君) 先生指摘のような点は身体障害者の雇用を促進するために非常に重要な側面でございまして、私どもとしましても、まず各安定所におきまして個々の事業主指導等を行いますほかに、事業主団体等とのあらゆる会合の機会等を通じまして、この身体障害者の雇用率制度、その他の周知徹底を図っているわけでございますが、さらに先生指摘のようなきめの細かい指導の内容につきましては、たとえば身体障害者雇用促進協会というのがございまして、そこで身体障害者を雇われて非常にうまく円滑にやっておられる場合の好事例集等を集めましてそれを発行いたしますとか、それから身体障害者についてのいろんな専門の方に審議会の委員をやっていただいておりますので、そういう方々のお知恵をかりていろいろな指導の内容等について工夫をこらすとか、その他のPR活動、あるいは助成金制度に伴ういろんな指導等を通じて御指摘のような方向に向かって努力をしているわけでございますが、今後一層その方向を強化してまいりたいというふうに考えております。
  79. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 従業員三百名以上の雇用をしておられるところで法定の雇用率を達成していないところには、雇用率に足りない分の身障者一人について月額三万円を身体障害者雇用納付金として徴収をしておりますが、この納付金を五十二年度は約九十六億円、四千七百企業が納めているわけでございますから、従業員三百人以上の企業の大体六三%が未達成で納付金を納めていることになります。五十三年度はこれまでに約八十八億円が納付されておりますけれども、この納付金は延納が認められておりますのでもっとふえる見込みと思いますが、最終的には五十三年度分はどれぐらいの額になる見通しなのか。  またこの状況から見て、金で済むことなら、身障者を雇うより金を納めた方がいいという大企業の姿勢が見られるわけでございますが、納付金が巨額になっても身障者の雇用が促進をされるわけではないわけでございまして、この徴収金の中から、雇用率を超えた身障者を雇用している企業への雇用調整金や助成金を支出することになっておりますが、身障者の雇用が進まなければ労働省が当初予定していたよりも多額の金がたまることになると思いますけれども、このたまった多額の金の管理はどのようにされるおつもりなのか。
  80. 細野正

    説明員(細野正君) いま御指摘のように、集まりました納付金はこれを原資といたしまして、法定の率をかぶっている企業については雇用調整金、それからそれ以下の小さいところにつきましては報奨金、それから雇い入れる場合の各種の助成金という形で支出をしているわけでございますが、いまお尋ねのように、それが余ったらどうするんだ、こういうお尋ねでございましたが、これは特別会計を設けましてそこに積み立てをいたしまして、将来雇用が促進されて実雇用率が上がりますと途端に収入が減って支出がふえる、こういう一遍に相乗効果が出てまいりますので、そういう事態に備えておくということが一つと、それからもう一つは、そうは言いましても余りにも単年度的にも納付金と支出の間に差が大き過ぎますので、こういう助成金その他の内容の充実に今後とも努めてまいりたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  81. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 今度は具体的な問題で、やはり身体障害者の雇用問題、これに関連をして具体的な問題で質問をいたします。  去る七月に宮崎県で、ある公益法人が身体障害者に対してきわめて低い賃金で冷遇をしていたことが問題になりました。具体的事実はどのようになっているのか。問題の内容あるいは関係団体の名前とか、性格、経営内容、労働基準監督署あたりがおとりになった措置はどのようなものなのか、お答え願いたいと思います。
  82. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 御指摘の件は、ことしの七月宮崎県下で問題になった件だと存じますが、財団法人弘潤会のクリーニング事業を行う「友愛の里」ではないかと存じます。この財団法人弘潤会は、クリーニング事業を行う「友愛の里」のほかに、内科、精神科の両科を持つ野崎病院、それから内科のみの青葉中央病院と、二つの病院の経営を行っております。この弘潤会の「友愛の里」では、ことしの七月の十日に心身障害者五名について最低賃金適用除外の申請を所轄の監督署に提出してまいったわけでございます。所轄の署では、その申請を受けまして、三回にわたって実態調査を行いました。その上で八月十六日付でその申請にかかる各人について支払うべき賃金日額の付款をつけまして許可をいたしたわけでございます。しかし、同時に、その最賃法の適用除外の申請が出る前の期間についてそれぞれの心身障害者に払われておりました賃金がきわめて低いという問題もございましたので、それを、その点については、本人の賃金日額がその適用除外の申請に当たってつけました許可の日額よりも低い分についてことしの一月から七月までの間さかのぼって支給するように指導いたしました。これは九月二十八日までに完済をされたところでございます。
  83. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 ただいま御答弁がございましたとおりの概略の内容のようでございますが、実はこの問題は、去る六月に、「友愛の里」に勤める女性のA子さんという十七歳になる方でございますが、中学を出て去年勤めた方です。そのA子さんのお父さんから問題が持ち込まれて発覚をしたという状態でございまして、この財団法人弘潤会というのは、設立の趣旨の中には、傷病者の診療と経済的負担の軽減を目的に設置をされて厚生大臣の所管に属する公益法人でございますけれども、昭和三十七年知事の認可によって発足をしております。その後、いまおっしゃったとおり精神病院野崎病院と、老人専門の中央病院と、クリーニングを経営しているのがこの「友愛の里」で、「友愛の里」はそのクリーニング部門でございます。しかも、県や私立病院等の基準寝具を一手に引き受けて洗たくをしております。  従業員は三十人近くおりまして、その大半は身体障害者や精神薄弱者などで、その内訳を申し上げますと、六十五歳以上の高年齢者が二人、身体障害者が二人、精神薄弱者が九人、精神病院の入院患者を治療と訓練という名目で七ないし八名を使って、それに健常者が数名いるという状態でございます。洗たくやアイロンがけ、シーツの折り畳みの作業を行っているわけでございますが、こうした従業員に支払われている給料がまあスズメの涙ほどの状態であるということが問題になったわけでございますが、A子さんの場合は、五十二年の四月から五十二年の九月までの六カ月間は臨時雇いのときでございまして、このときには月四万円でございます。本俸が四万円。そして五十二年、去年の十月から本雇いとなって、十月から十二月までの三カ月間は本雇いになって給料が下げられまして一万八千九百円という本俸に下げられてしまっております。そしてことしの五十三年一月から四月までがまた下げられて一万五千円、五十三年の五月から六月まで少し上がって二万円、こういうふうになっておりまして、給与体系も本当にいいかげんな上に、日給に計算をすると六百円から七百円でございまして、宮崎県の最低賃金二千八十三円のわずか三分の一というありさまで、このA子さんの話によりますと、同僚の人たちも同じような低賃金で働かされていたということでございます。  私は労働基準監督署のおとりになった措置等もいろいろお聞きしましたけれども、これは明らかに最低賃金法の第五条違反で、第四十四条の罰則適用をすべきであると思うのでございますが、労働省の御見解をもう一遍お聞かせいただきたいと思います。
  84. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 先生指摘のように、法定の最低賃金額を下回って賃金を払っている場合、当然最低賃金法違反ということになるわけでございます。その場合に、私ども労働基準監督機関としてどういう取り扱いをするかということになるわけでございますが、もちろん法違反については厳正な態度で臨まなきゃならないわけでございますが、違反の事実があった場合にすべてこれを司法処分、つまり罰則を適用するということには必ずしもいたしておりませんで、もちろん悪質な者あるいは是正の意思のない者、こうした者については積極的に罰則の適用、つまり司法処分に付するということもいたしているわけでございますが、まあ内容の軽微な者あるいは単なる手続違反にとどまった者といったような者については、是正の指導をし、その是正の指導に従った場合にはそれをもって実質的な救済が図られるということになりますので、そういうような取り扱いをしている場合もあるわけでございます。  で、本件の場合にどうなるかという問題でございますが、御指摘のような最賃法の違反ということにはなるんでございます。ただ、その場合に、これは地元の方からの報告によるものでございますが、相当「友愛の里」が経営状態が不振であった。そのために健常者を含めて人員整理というのも行われたという状況の中で、最低賃金の額を、これら先ほどの例ですと五人の方になるわけですが、支給するとなると経営が成り立たない。その場合には解雇をせざるを得なくなるというような相当厳しい情勢であったやに聞いております。そういう中で、一応適用除外申請の許可に当たってつけました付款に応ずる賃金の支払いを少なくともさかのぼって支給するという点については、一応財団法人側の誠意も認められましたので、特にこれを司法処分に付するということではなくて、そういう形で処理をいたしたわけでございます。
  85. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 まあ後でおいおいわかってくると思うんですが、労働省の方はこういうような三百人以下の方々には報奨金というのを出していますよね。報奨金——奨励金というのを出しておるんですよ。そういう問題からしますと、一万八千幾らでしょう。そうしますと、ほんのプラスアルファをやっただけで、そして仕事は、これは厚生省が指定をした授産施設であればこれはそういう点もあるでしょうけれども、県立・市立病院の基準寝具を一手に引き受けておるクリーニングなんですよ。そしてあたりまえの料金を取っておる、そういうことからしますと、私はこの措置は非常に手ぬるかったんじゃないかと。また後からも若干申し上げますけれども、要するに、身体障害者の側に立って事をいろいろ聞いておやりになっておるような点が非常に薄いものだから私はあえて言うわけです。向こうの財団法人側の方に経営がどうのこうのとおっしゃっておりますけれども、病院も相当やっております。そういうようなところがこういうような身体障害者に対して最低賃金の三分の一も賃金を払わないことに対して、ちゃんとした手を打たなかったということ自体が、ましてことしの一月に遡及して差額を払えばよろしいと。最低賃金は宮崎県の場合は二千八十三円ですから、それからすると臨時雇いの四万円のときも若干差額が出てくると思います。なぜその前の方に遡及して支払いをさせられなかったのか。  それからまた、身体障害者の第八条の適用除外を簡単に出させるというのは、これは厳正にやらなければならぬということを言われておるわけでございますから、そういう点が非常に、私は身体障害者の雇用促進法というものがあって、雇用を促進して安定したそういう職業につけさせるということからすると、こういう違反行為は、やはり身体障害者の側に立ってやるべき問題ではなかったか、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  86. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 一月以前の賃金の支払い額が幾らであったか、私どもちょっとそこまで状況をつかんでおりませんでしたのであれでございますが、御指摘のように、身体障害者の側に立って監督行政、基準行政を進めるべきであるという点はおっしゃるとおりであろうかと思います。  本件の場合に、財団法人側の言い分だけを聞いてやったということじゃございませんで、問題は、先ほどちょっと触れましたように、他方から奨励金が受領されていたかどうか、その点は私どもまだ把握いたしておりませんでしたので、さらにそうした点も調査をしなければならないと思いますが、結局、雇用を継続するかそれとも賃金かというような問題にぎりぎりまいりますと、率直に申しまして、監督機関としてなかなかむずかしい問題にぶつかるわけでございます。本件の場合、といって、その法の違反を見逃していいというものじゃもちろんないわけでございますから、そこで、いろいろと事業所に対する指導をした中で、事業所側のさかのぼって払うというような誠意も認められたということから先ほど申し上げたような措置をとったわけでございますが、結局解雇せざるを得なくなるというような言い方が——これは本件の場合に限りません、ほかの場合でもともすれば出てまいるわけでございます。身障者の場合、あるいは高齢者の場合の最賃法違反について、それならばそれらの人をやめてもらって、かわりにほかの人を雇わざるを得なくなると、言うならばこういう企業側の言い方がございますので、それに対しては、当然法違反は法違反ということで私ども臨んでおりますし、仮にそうした場合、そのために職を失う方が出られますならば、これは私ども監督機関としては、当然職業安定機関とも連携の上でしかるべき職というものをまた見つけていく努力もしなきゃならないと思っておるわけでございます。その辺の兼ね合いがいろいろございましたものですから現地ではそういうような取り扱いをいたしたと、こういう状況でございます。
  87. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 企業側といいますか、財団法人の方の事情は聞いておるのは事実なんですよね。ところが、A子さんの方をもう少し的確に聞いておられれば、前からの給料の事情も、いま私が申し上げたことをよくわかっておると思うんですよ。それから報奨金の問題等も、監督署の方でそういうことをつかんでおれば、いかに安い賃金で冷遇しておったかということはよくわかったと思うんです。どうも私は、この件については財団法人側の方の事情を余りくみとり過ぎた、そういうふうな措置のような感じがするわけです。先ほども申し上げましたとおり、適用除外というのは厳正にやらなければならないと、こういうふうにありますが、許可基準というのがあると思うんですが、どういうふうになっておりますか。そしてこのA子さんの場合は、その適用除外になったときに大体幾らぐらいの、最低賃金の何%ということに基準局の方はお考えになっておるんでしょうか。
  88. 花田達郎

    説明員(花田達郎君) 最低賃金法の適用除外につきましては、先生指摘のとおり非常に厳格に運用するということになっておりまして、ただ身体障害者であるという理由だけで行ってはならないということでございます。障害の程度が著しく、しかもそのやっている仕事の業務に直接支障のある場合に限り行うということでございまして、その業務に関係なければ、身体障害者であるという理由だけで除外になるというわけではございません。この適用除外の許可に当たりましては、許可申請書に、これから払おうとする賃金額を記載させまして、その額が労働者の能力に照らしまして適当であるかどうかということを監督官が行きまして調査をいたしまして、適当な場合のみ許可するということを基準にしておりまして、その意味で仕事の能力に対応しない著しい低賃金になるようなことのないように、慎重には運営しているつもりでございます。  御指摘の事件につきましては、監督官が事業場へ行きまして、一応その標準作業量に比べてどの程度であるかということは、一応はかってみたということのようでございます。大体六割足らずの作業量であったというふうに判断をいたしまして、一般の賃金に比べてその作業量が足りない限度に応じまして付款でもってその金額だけは少なくとも払わなければならないというふうに許可書に指摘をしております。大体六割足らずの金額ということでございますけれども、この方とほかの方と比べると大体千四百円前後でございまして、多少は能力に違いがあったようでございますので差はあるようでございますけれども、そういう判断をいたして決めたようでございます。
  89. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 いまあなたがおっしゃったとおり、確かに法の中では、直接支障を与えることが明白である場合のほかは許可してはならないと。そうしますと、監督署の方で申請を出せということを簡単に言われたということは、私は非常に疑問に思うわけです。向こうがいろいろなことを考えて、そして出したものを、あなた方はいろいろなそういうような諸条件を勘案して許可をすべき立場であって、そういうことを示唆して出させるということ自体が非常に私は矛盾しておると思うんですが、その点はいかがですか。
  90. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 監督署が本件を承知した際のいきさつがどうであるか、私ども承知いたしておりませんでしたが、いま先生の御指摘ですと、監督署の方がむしろ許可申請を出せということを切り出したというようなお話でございますが、私ども考えますに、たとえば法違反の実態を臨検監督の場合につかんで、それを違反の是正方を指導する。と同時にその際に、法的にはこういう道があるから、法違反の形ではなくて、少なくとも法定の所定の手続をとってちゃんとした形で措置をすべきだということを言うことは、本件に限らずいろいろな場合にあるわけでございます。したがって、そういう意味で恐らく監督署が言ったんではないかと思いますけれども、ただ適用を免れんがために、進んで監督署の方からいたずらに適用除外の申請さえすればいいんだという形で言ったとは信じがたいわけでございますけれども、その点はよく事情を調べてみたいと思います。
  91. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 それから、あなたの方で大体そういうようなことで向こうに示唆を与えて、離職票なんかを見てみますと、遡及した差額の支給は約七万円ぐらいしかもらってないです。一月から七月まで七ヵ月ですから、約一万円の差額なんですよ。これなんかも、先ほどお答えになった六割じゃなくて、七割で、千四百四十五円に向こうの現地の方の監督署は査定をしておられるようでございますが、そうなると三万七千五百円ぐらいになるんですよ。そういう意味合いからも、非常に遡及額が期間が短い。前からの雇用した当時からやるべきであるのにそれも非常に短いし、金額も少ない。それからまた、そういうようなことを示唆したということが、私は非常にこの身体障害者の雇用問題に対して出先の監督署あたりの考え方が甘過ぎるんじゃないかと、こういうふうに思えてならないわけです。この点はもう少し事情をよくお調べになって、厳重注意されるところはされた方がいいんじゃないかと思います。  次は厚生省にお尋ねをしますが、この「友愛の里」は公益法人弘潤会の経営するクリーニング部門でありますが、身体障害者に対する授産施設なのか、あるいはまた単なる営業部門なのか、そのところを明らかにしていただきたいと思います。
  92. 佐藤良正

    説明員佐藤良正君) この「友愛の里」は授産施設等ではございません。したがって、一般の事業の一環と承知しております。
  93. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 営業部門であるということになりますと、身体障害者を雇用して、しかも最低賃金法に違反をして最低賃金の三分の一にも満たない。しかもまた、あたえていいましても、最低賃金の適用除外を許可をされても、その金額の二分の一にも満たない賃金で、しかも県立、市立のそういうような基準寝具を一手にクリーニングしておったという、営利を主とするこういうような部門を設置することは、公益法人という立場からは逸脱した行為ではないかと私は思うんですが、厚生省はそこらあたりはどういうような御見解ですか。
  94. 佐藤良正

    説明員佐藤良正君) 事業の個別的内容につきましては詳細承知しておらないわけでございますが、一般的に申し上げますと、いまの基準寝具のクリーニング等につきましては、事業といたしましてやや病院あるいは施設等に対する給付ということで公益性を持っているという解釈で臨んでおるわけでございます。
  95. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は労働省にお尋ねをしますが、この公益法人弘潤会のクリーニング部門「友愛の里」には、身体障害者雇用促進法に設けられた報奨金の制度適用をされていると思いますが、この制度とその額についてお知らせください。
  96. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) 身体障害者雇用促進法の雇用納付金制度に基づく報奨金、助成金等につきましては、ちょっといま、きのうお伺いしました段階では雇用奨励金というお尋ねと承りまして、承知いたしておりませんが、従来からございます身体障害者を雇った場合に出ます雇用奨励金、これは月額一万三千円が出るわけでございます。これはこの方についてかどうか判明いたしませんが、当該事業所につきまして十四万四千円、十二カ月分が五十二年度支出されております。支給されております。
  97. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 たしか改正になって一万三千円になって、その以前は一万一千円だと記憶しておりますが、それにしても一人についてそれだけ出ておるのですから、一万五千円というのはそれにプラス四千円しただけで、自分のところが幾らクリーニングで都合が悪いからといって、人を雇うのにそういうことの姿勢というのは私は問題があろうかと思います。特に身体障害者の場合は温情をもって雇用してあげにゃならないという立場からしますと、大変私は不都合なことではないか。  そしてまた、あなた方の出先の方々がいろいろ御指導をされたについて理事長は一つも反省の色が見えないそうであります。というのは、自分で経営をしておる病院の看護婦さんたちに、おれは何も悪いことをしておらぬのだと、何をがあがあがあがあ言うのだろうと、こういうようなことを放言をされたとも聞いております。特にこのA子さんたちの場合は、職業安定所から職業あっせんをされた人だものですから、職業あっせんをされて、そして雇ってやったのに何をつべこべ文句を言うんだと、そういうような態度が言外にも非常に明らかにあらわれておるということを、話を聞いた人の話ではそういうことの報告があっております。  こうなりますと、身体障害者雇用促進法というのはあってなきがごとしで、本当に浸透しておるのかと、こういうようなことを思わざるを得ないわけでございますが、こういうような公益法人の理事長がこんな認識では非常に困ったものでございますが、国としてもこういう点には、現実にあるわけでございますから、責任をお感じになって、是正をされにゃいかぬと思いますが、これについて労働大臣、どういうような御見解をお持ちですか、いろいろお聞きになってですね。
  98. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 具体的な案件、ただいま拝聴したわけでございまして、十分事情を調査いたしまして、この問題の善処方並びに今後の身障者の雇用政策を進めるに当たりまして、十分注意してまいりたいと、このように考えます。
  99. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 また、このA子さんたちは公共職業安定所の紹介によって就職をしているわけでございますが、身体障害者雇用促進法第四条では「就職後の指導」、第五条は「事業主に対する助言」等を規定をされております。これが適正に行われておればこんな問題は起こらないはずだと思います。また、このA子さんは療育手帳を持つ精神薄弱児でございまして、十七歳で未成年でございます。ですから、当然中央児童相談所等の検査も行われるはずで、このときに実情把握をすればこんな問題は未然に防止できたはずでございますが、労働省の公共職業安定所に対する、あるいは厚生省の児童相談所等に対する、就職後の指導や事業主に対する助言、これはどのようなお考えをお持ちなのか。  そしてまた、労働省と厚生省の横のつながりはどういうようなふうにお考えなのかですね。連携を持っておられるとこういう方々のことも守っていけると思うんですが、そこらあたりはどうお考えでしょうか。
  100. 細野正

    説明員(細野正君) 労働省関係の分を最初にお答え申し上げます。  まず、雇用促進法の四条、五条に規定されております就職後のアフターケアの問題でございます。これにつきましては、先生も御指摘のように、一般の健常者の方に比べますと職場生活に対する適応上いろいろな問題がございますので、したがって、私どもも御本人及び事業主に対しましていろいろな就職後についての相談指導ということを実施しているわけでございます。具体的には就職促進指導官、それから職業相談員等が定期的に職場適応指導実施する、こういう形で事業所の労務担当者に対して助言指導する、こういうかっこうでやっているわけでございます。御指摘の財団法人の場合にも、事業主及びその身体障害者の方に対しまして、職場適応についての指導を数回実施をしてきているわけでございますが、今後とも一層指導を強めるようにやってまいりたいと、こういうふうに思っているわけでございます。  それからなお、関係機関との連携の問題でございますが、こういった問題につきましては、たとえば盲聾養護学校等の教育機関とか、それから身体障害者の更生援護のための施設とか、いろいろな福祉関係機関、そういう連携をとらなければならない機関がございますので、そういう機関との連携を強化して、連絡会議等を設置して、そういう連絡を密にするようにという指示を第一線に対していたしているところでございます。また、第一線だけじゃなくて、国のレベルにおきましても、総理府に中央心身障害者対策協議会というのが設けられてございまして、ここで身体障害者、心身障害者に関する施策の推進につきまして関係省が連絡を密にしながら連携、調整をやっていくと、こういうことにいたしておるわけでございまして、今後ともこういう意味での連携を強めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  101. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 身体障害者雇用促進法の第七十九条によりますと、事業主、その財団法人は、身体障害者職業生活相談員というものを選任をするということになっておりますが、何名ぐらい選任をされておるのか。それからこういう問題が起こってきますと、今後資格認定講習については十分な配慮がなされなければならないと思いますが、これについて労働省の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  102. 細野正

    説明員(細野正君) 法律によりますと、五人以上の身体障害者、または精神薄弱者を雇っている事業所につきまして、いま御指摘の職業生活相談員を選任しなければならぬと、こういうことになっているわけでございます。で、その相談員は、身体障害者である労働者の職業生活に関する相談、それから指導を行うと、こういうことでございます。  御指摘の法人につきましては、五十三年、ですからことしの一月に相談員の選任が行われておりまして、確認しておりませんが一人というふうに考えます。それで、この生活相談員につきましては、身体障害者等が従事する職務の内容等に関すること、それから作業環境の整備に関すること、それから職場生活に関すること、余暇活動に関すること、それから職場適用向上に関すること等々の講習を受けさせるということになっておりまして、このいま御指摘の法人の相談員につきましては、ことしの十月に講習を受けたというふうに聞いております。  いずれにしましても、各企業に置かれます生活相談員につきましては、今後とも研修制度というようなものを充実しまして、資質の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。
  103. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、この問題が起こった後、関係の財団法人がA子さんに対してとった処置について、御承知であればお聞かせ願いたいと思います。
  104. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 五名の方のうちのお一人について、財団法人側が八月十七日付で解雇をいたしております。その解雇の理由としては、無断欠勤が多いという理由を挙げておりますが、予告手当三万幾らを支払いまして、したがって、解雇それ自体の取り扱いについて基準法上の問題はないわけでございますが、そういうふうに承知をいたしております。
  105. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 いまおっしゃったとおり、八月の十八日にたしか解雇を命ぜられておるようでございますが、この公益法人弘潤会は、宮崎労働基準監督署から指導されて、七月十七日に最低賃金法第八条の最低賃金適用除外の申請を提出をして、先ほどお話があったとおり、八月十六日労働基準監督署より許可をされたら、八月のお盆に、長崎まで届け出て休暇をもらって行っておったこのA子さんが、休暇明けに出勤をしたのが八月の十八日でございますが、そうしたら突然解雇を言い渡されたと。理由は欠勤が多いという理由だそうでございますが、八月だけは長崎の親類の人の病気見舞いに行ったのでそれは休みましたと、しかし毎月そういう欠勤が多いということは当たりませんということは、勤務表でずっと見てみました。そういうようなことはないようであります。事実は、おまえは背が低過ぎると、仕事に不適格であるから、背が伸びたら来いと、こう言ったそうです。こういう人格を無視したような解雇の言い渡しというのはあったものではないと思います。御本人も、家族の方々も非常に不快がっております。背が低いということは初めからわかって去年の四月に雇ってくださったのに、いまさら縮まったわけじゃないし、あたりまえであったものを背が低いから不適当だと。伸びたら来いというのはもう報復以外にないと。自分の父親が訴え出たものだから、そして問題になったので報復でこういうふうな解雇を言い渡されたんだと、こういうふうに言っておるわけで、私もそれはそのとおりだと思います。解雇権の乱用だと思います。これは。しかも雇用促進法にある精神からすると、そういうような自分の過ちを改めて、そうしてやっていかなければならないのを、かえってそういう弱い立場の人を事業主という解雇権を乱用をして、しかも虚偽の理由をつけて解雇の届けをしておるということは、これはまた明らかに雇用促進法の罰則にまた抵触する行為ではないかと思うんですが、御見解いかがですか。
  106. 細野正

    説明員(細野正君) 御指摘のようなことが事実といたしますと、精神から見てはなはだ遺憾な事態であるというふうに考えます。
  107. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 これは私が先日宮崎に行って署長さんともいろいろ話したんですよ。ですから、あなた方のところに報告が来ていないというのはこれは非常に残念なことでございますので、ひとつよくお調べになって、私が申し上げたことは真実でございますので、ちゃんとした措置をとっていくことが大事じゃないか、こういうふうに思います。  きょうはもういろんな関係で時間も参りましたので、白ろう病対策は残念ながらできませんけれども、この方はいろんな風評がある方だと聞いております。宮崎県庁の衛生部の方でも、とかく困っておるというお話もちょっと聞かされました。ですから、ひとつ身体障害者の側に立って毅然たる態度でこの問題は処置をしていただきたいと強く御要請をして私の質問を終わります。
  108. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それではお伺いをしていきたいと思います。  いま婦人労働旬間の行事が進められております。やはり依然として職場における男女差別というのは多様な形であらわれてきております。昨日や本日の新聞報道などを見てみましても、女子の学卒者の就職というのはきわめて厳しい狭い門になっております。一昨日の報道によりますと、女子の学卒者の就職というのは、採用ゼロの企業というのは昨年と比べましても、昨年は三〇%であったのが六〇%にふえているということで、非常に厳しいわけでございますが、さらにそれに加えて、女子の場合には自宅通勤者を採用条件にする、あるいは浪人経験者を排除する、そういう傾向が出てきているということが問題になっております。これはもう明確な男女差別だと思いますが、労働省としてはこういう問題についてどのような行政指導などを行うおつもりでございますか。
  109. 森山眞弓

    説明員(森山眞弓君) 職業上のさまざまな条件につきまして、特に女性であるからというだけの理由で男性と違った条件をつけ加えて最初から門戸を閉ざすということは、男女差別であると言わざるを得ないと思います。職場の男女平等を進めていきます私どもの立場といたしましては、そのようなことは好ましくないということを機会あるごとに申しまして指導をしているところでございます。
  110. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣、婦人労働旬間をおやりになって、そうして職場における男女平等を進めようということでちょうど進めておられる最中ですよね、きょうは最終日です。職場における男女平等というものの保障というのは、本当に大変だということなんですね。第一、この問題一つをとりましてもスタートから差別がつけられている。こういう問題について本当に実効の上がる対処というのはどうするのか。本当に大臣、なまやさしいことはできないということが、いよいよあしたから入社試験の解禁を控えて、こういう問題がクローズアップされてくる。直ちに手を打たなきゃならないと思うんですけれども、どうですか、大臣。好ましくないというのは局長おっしゃった。大臣としてこういう問題に本当にどうするんだ、基本的なやはりお考えを、姿勢を伺っておきたいと思います。
  111. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 姿勢はもう局長お答えをしたことが私の姿勢でもあります。しかし、現実は御指摘のように、いろいろきわめて遺憾な状態が、雇用情勢が厳しい環境であるきょう今日、なかなか困難が山積をしていると、このように思いますが、その山積している困難をやはり私は粘り強くこれを一つ一つ解決していく努力を続けていく、これ以外には方法はないと、このように思います。
  112. 森山眞弓

    説明員(森山眞弓君) そのようなことが行われております理由の一つとしまして使用者側が挙げられますことに、女子の特に大学卒の場合には大変勤続年数が短いということをいつも挙げられるわけでございます。それからさらに、職業に対する取り組み方が男性に比べていささか問題があるということも指摘されるわけでございまして、そのようなことがありませんように、若い女性の方々にも、また現に働いておられる方々、就職をしようとする大学生の女子の方々にも、職業に対する取り組み方をもっと真剣に一生の問題としてよく考えるようにということ。そして職業についた者につきましては、本気で仕事に打ち込んで十分その能力を発揮し、大いに認められるような職業人になるべきであるということを婦人労働者側にも啓発、教育をしているところでございます。
  113. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 婦人労働者側というけれども、これから就職するのにもうすでに門戸を閉ざされているでしょう、スタートから。ここからやっぱり解決をしていくという構えというのは大事だと思うんですよ。それは粘り強くと言うけれども、あしたから入社試験がスタートでしょう。非常に絶好のチャンスだから特にお伺いをしたんです。大変心もとないですね。  だからいろんなことが依然として続くわけですが、時間の都合がありますから、あんまり長くお伺いをするわけにいきませんが、まさかと思うようなこともあるんです。これは実は私は驚いたわけですが、参議院の事務局の職員採用ですね。上級職試験案内を見てみますと、受験資格が「昭和五十四年三月大学卒業見込みの男子」と書いてあります。男子。衆議院でも同じですよ、やっぱり。ちょっと書き方が違うんですが、上級職の採用試験案内、受験資格「(1)昭和二十九年四月二日以降に生れた男子 (2)昭和五十四年三月に大学の法学部を卒業する見込みの者」。両院とも上級職の採用の門戸にはこれは女子は加えられておりません。女子に対しては採用の門戸が閉ざされている。これも明白な男女差別なんですね。  私は、国際婦人年以降、労働省が大変積極的に御努力になって、政府機関の各省庁についてはその点についての改善方をずいぶん御努力なさった、一定の改善がされてきたから、まさか足元にこんなのが残っておるとは知らない。こういう状況なんですけれども、一般的に見まして、労働省が国会事務局を指導するというわけにもいかぬでしょうけれども、こういう事態は一体どう考えますか。
  114. 森山眞弓

    説明員(森山眞弓君) 私どもの立場から申しますと、先ほど来申し上げておりますように、最初から就職の条件について女子であるというだけで差別をされるということは好ましくないというふうに考えますので、いま取り上げられました例につきましても、好ましくないと申し上げざるを得ませんです。
  115. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 全くぐあい悪いと思うんですよね。  大臣、確かに労働大臣が国会事務局に対して指導するというのは直接的にはいかぬかもわかりませんけれども、まあ国会で——ちょっとあっけにとられたんですけれども、男女平等に関する国会決議までやっているのに足元でこんなことがあるというのは、やっぱりほめられた話じゃないですね。少なくとも大臣、こんなことは早く解決をしていただけるように、事務総長にでもこれは御意見を申し述べていただくべきだと思うのです。私どもは私どもの立場で、これは別途問題にいたしますけれども、労働行政の上から言うて、足元でこんなのがあるというのはぐあい悪いと思う。  ついでに言いますけれども、これだけじゃなくて、細かく見ますといろんなことがあるのですが、一番端的なのは昇給昇格で、特に初級ですね、高校卒の職員の昇任昇給ですか、昇格昇給ですか、こういう点にも差別があるようですね。六等給、五等給。七等給まではどうやらラインがそろっているんだけれども、六等給、五等級になってくると、男子は四年だけれども女子は七年というふうな明確な差別とおぼしき状況があります。こういうことも余り望ましいことじゃないですね。何とかして改善をしなきゃならぬ内容だと思いますので、こういったことも含めまして、大臣、これはお立場上いろいろあろうとは思いますけれども、ひとつ御意見は出していただけると思うのですが、どうですか。
  116. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいまお話を聞きまして、私も初めて承知するような次第でございまして、これは私の推測を申し上げるのはどうかと思いますけれども、その昔深夜国会あるいは乱闘国会とか、こういうので、どうも女性の保護といいますか、そういった観点も相当あっていまのようなことになってきたのではないかという、これは私の勝手な推測でありますけれども、やはり雇用機会の均等、待遇の平等というのは、これはわれわれの立場からいって男女を区別すべきではないという認識でございますから、ひとつ環境づくりについて労働大臣としてできる範囲努力をいたしたいと、このように思います。
  117. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃぜひひとつよろしくお願いをしたいと思います。  それから、なかなかいろんな問題がたくさん出てくるので実は私どもも頭を悩ますわけですが、一つこういう問題が出てきているのですね。これは大阪に本社があります日本シェーリングという西ドイツ資本の会社なんですがね。ここでは労働協約で稼働率八〇%以上の者だけをベースアップの対象とするということを決めているわけですね。ところが稼働率八〇%という中に、年次有給休暇も、労働災害による休業、通院、それから産前産後休暇、生理休暇、育児休暇、慶弔休暇、ストライキ、すべて稼働率算定からこれらは不就労時間として削除されている。こういう事例があるわけですね。私は、これは非常に多くの問題を含んでいると思うんですが、一、二に分けてお伺いをしたいと思うんです。  まず、年次有給休暇の規定の労基法三十九条によりますと、これは労災による休業とか産前産後休暇は出勤とみなすと明記されていますね。もちろん年次有給休暇もこれは算定されないことになっていますよね。ところが、こういうものがベースアップの際に稼働率から削除されるというふうなことについては、一体どうなんですか、労働省としてはどういうふうにお考えですか。
  118. 岩崎隆造

    説明員岩崎隆造君) 先生いま御指摘のように、年次有給休暇の請求の場合の稼働率八〇%という中には、いまの労災事故等については稼働日数とみなすというかっこうにこれは法律上規定してございます。これはやはり年次有給休暇請求権そのものが法律に基づいて設けられておるものでございまして、その要件として法律でそういうことが書かれているわけでございますが、昇給とかそういった問題は本来賃金制度自体の問題で、これはそれぞれの事業主でのいろいろな賃金形態がございます。常識的に考えますと、確かに定期昇給の場合、稼働率どのくらいというような場合には、やはり年次有給休暇をとったとかあるいは労災の場合の病休というように、それ自体が法律に基づく権利の行使ないし保護の結果として書かれておるものをとったことが定期昇給の場合の不利な要件になるというようなことは、私ども一般的に言って好ましくないことだと存じます。ただ、法律そのものが、賃金制度そのもの自体についてどうしなければならないというような規定がないために、直接的に法律でどうこうということがその点規定されていないと、こういうのが現行法の書き方であるというふうに私ども承知いたします。
  119. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 しかし、労働災害というようなのは企業責任によって起こっている負傷だとか疾病なんで、これは民事責任の肩がわりの形で労災法が適用されているわけですから、これはもう当然企業主の責めによって休んでいるわけですから、これは出勤とみなすのはあたりまえですね、給料も渡しているわけだし。それから年次有給休暇も同じくですね。そういうことですね。だからこれは好ましくないと。それをベースアップ算定の、稼働率算定の場合の不就労時間として算定する、評価するなどというのは望ましくないと、好ましくないと。こんなことはやっぱり改めさせなきゃいかぬのですね。これは労働省がきちんと態度を決めればこんなことがやられるという筋合いのものではないと思うんです。これはひとつはっきりするべきだなと思いますが、労働省、この辺のあたりは、ほかの問題は抜きにしまして、労働災害みたいなもので休んでいるから、あるいは病院へ行っている間仕事場におらぬからということで不就労時間として算定するなどということは、ふらち千万だと思うんですよ、私は、たえまえから言って。こういうものだとか年休というのを算定の基礎にするのは好ましくないという点を、やはり行政的に、行政指導の上ででもきちんとするべきだと思いますが、どうですか。
  120. 岩崎隆造

    説明員岩崎隆造君) 先ほど私ちょっと申し上げましたとおり、賃金制度のあり方、ですからしたがって、定期昇給制度というようなものも、いろいろとその定期昇給のさせ方、それに対する要件、まあ勤務成績の評定とかいろいろな問題がありまして、基本的には労使が自主的に定めるべき問題だと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、労災の問題などは法律でそれ自体が休業の期間を保障されているわけですから、それ自体労使として制度としてはなるべくそういうふうに稼働率の中に算入するような方向に持っていくべきことが望ましいと思います。私ども具体的な事例にそれぞれ即しまして指導等をしてまいりたいと思います。
  121. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 その次は、それじゃ産休はどうか、産前産後休暇。これも基準法で定められた休暇なんですね。だから年休を与える場合の八〇%の稼働率にはこれは欠勤と認めないということが法律上規定されているんですね。ところがベースアップには規定されてないんですよね、そんなことは。こういう問題についてはどうですか、私は年休の規定を当然準用するべきものだと思いますが、その点どうですか。たとえば産前産後休暇、あるいは労基法で規定されている生理休暇、育児時間、この三つですね。
  122. 岩崎隆造

    説明員岩崎隆造君) いま先生指摘の年次有給休暇につきましては、これは有給で休めるということの権利を基準法で規定しているわけですが、産前産後の休暇、それから生理休暇ないしは育児時間につきましては、それ自体は一定の要件のもとに請求があればというような規定、あるいは産前産後の一定の期間という強制的な面もありますが、そういうものとして休暇を与えなければならないということにはしておりますけれども、それを有給か無給かということは現在の基準法では問わないことにしておりまして、これは労使の定め方ないし就業規則等の規定の仕方によることにしておりますので、若干そこが、年次休暇制度による年次休暇を取得した場合の給与制度へのはね返りの取り扱いと、それから後者の三つの問題につきましては、考え方といいますか、受け取り方といいますか、違っても仕方がない面があるんじゃなかろうかというふうに考えます。
  123. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、時間の都合があるんで細かくお話ししていられないんですが、しかし、労働基準法で母性保護の立場で定められているこの三つの条項、これが何らかの歯どめがなかったら、こういう稼働率から削除されるというふうな算定がやられるような事例が起こってまいりますと、幾ら法律で産前産後休暇あるいは生理休暇、育児時間などの定めがありましても、労働者に権利行使ができるという担保にならないでしょう。だって現にこの日本シェーリングという会社では、八〇%を割ったということで、これは労災で休んだとか通院したとか、あるいは年次有給休暇をとったとか生理休暇をとったとかということで三年間ベースアップをストップされているというような労働者が出てきているんですよ、三年間。そうしたら、賃金だけで生活をしている労働者にとっては、生活防衛のためにせっかく定められている権利は活用できないんです。やったらベースアップしてもらえないんですよ。こういう法に定められている権利行使、これをやはりどこかで歯どめをつくらなくて野放しのままに置いておきますと、この法律の条文というのは死文化すると思うんですが、いま特に労働婦人旬間などを通じて労働省全体としては非常に積極的姿勢を示されておられるわけですね。片や法律の盲点を実に巧みについて——いまお話があったように、有給の規定がないと。有給とも無給とも書いてないわけですね。だからこういう盲点がつかれているということでなってきているわけですが、まさに法律の盲点をついて死文化させられるというところへ来ているわけです。こういう点について、まずこれは婦人少年局長の御見解、基準局長の御見解、両方聞きたいんですが、婦人少年局長、これは大変困ったことだと思うんですが、御見解をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  124. 森山眞弓

    説明員(森山眞弓君) 法律の条文の御説明は先ほど基準局長が申し上げたような仕組みになっておりまして、労働基準法上では定期昇給について格別のことを決めておりませんし、したがって生理休暇、産前産後休暇の取得状況を考慮に入れてはいけないとも入れてもいいとも何も触れていないわけでございますので、それ自体がすぐに法律違反するというわけではないというふうに思いますが、しかし、そのために大変著しい不利益になるという状態であるということは、こういう規定が設けられた趣旨には合わないというふうに私思いますので、好ましいことではないと思います。しかし、最終的にその具体的な職場での扱いがどのようになるかということは、先ほど来申しておりますような法律のたてまえから、労使話し合いにお任せするということで、現状はそのような状態であるのであろうと解釈しております。
  125. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 確かに法違反だとは断定できない。しかし、法律で規定されている権利が死文化されるということにはなるんですね、ならぬですか。だって行使したらベースアップしてもらえないから使えないんですよ。現に、産前産後休暇をとっただけで八〇%以下になるんですよ。だから、幾ら基準法で定められていても、それをとったらベースアップがしてもらえない、三年間も据え置きだ、こうなりましたら、今日の社会では、これは賃金労働者はその賃金で生活している唯一の原資ですから、たまったものじゃないですから、とれなくなってきますよ。ここの企業では年次有給休暇だっとれないですよ。労災だってもうこれはしようがないから、自分で体を治さなきゃならないから病院に行っていたらそれも引かれて、だから十七人ベースアップのストップされた中で、十六人が職業病、労働災害の人たちですよ、こういうことが起こっている。  だから、私は、少なくとも年次有給休暇で定められているような定めを、少なくとも直ちに法律改正はできなくとも、これは準用して労働省指導する、行政指導するということができるのではないかと思いますが、そういうことを進めて労働者保護の立場にお立ちになるかどうか、この点についての御見解を簡潔に聞きたい。
  126. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 具体的な事例を挙げての御指摘でございまして、具体的な事例を調査して必要な行政指導を男女職場における同権という精神に立って指導したい、このように考えます。
  127. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私たまたま日本シェーリングを例に出しましたけれども、こんなのが広がってくるおそれがあるので、一般論としてもぜひ対処することを御検討いただきたいと思うんですよ。  それで、時間の都合がありますから次にいきますけれども、労働省ではことしの婦人労働旬間においてもずいぶん対策をとってきておられますし、特にその中で一つお聞きをしておきたいと思いますのは、国内行動計画の具体化の柱の一つになっております若年定年制、それから結婚退職制の改善年次計画の推進という柱がございましたね。五十二年度の調査の実態というのがすでにでき上がっておられて、指導の対策もお進めになっていただいておるようでございますが、これによりますと、これは説明してもらってもいいんですが、時間の都合がありますからもう御説明を伺わずに、いただいた資料でまいりますが、これによりますと、男女別定年差別で女子の定年年齢が五十五歳未満の企業数というのは一万三千三百、四十歳未満の企業数が千二百、結婚退職制のある企業数が千二百、その他男女別定年制の疑いのある企業数が五百ということになっておるようですが、そうして五十三年度における行政指導の重点ということで、五十三年、五十四年度で四十歳未満の者及び結婚、妊娠、出産退職制のある企業に対する重点改善指導と、こういうのが御方針のようです。私は数が非常に多いということで、とりあえず四十歳までということの段階を置かれてそれを解消するという取り組みをしておられるわけですが、この非常に多い数ですね、これを改善をするのに一体どうなさるのかなと思ってちょっと心配しているんですよ。  というのは、行政指導で、法的権限はないわけですね。もし聞いてくれなんだらどうするかという問題がある。たとえば何でこんなことを言うかといいますと、これは私、ことしの三月の二十四日、やっぱり本決算委員会だったと思うんですが、あのときに幾つかの事例を出しながら、住友金属本社でも五十歳、五十五歳で、もう来年、再来年該当する女子労働者が数人おって非常に不安がっているという問題を申し上げましたね。ところが、ことしの七月ごろに、やっぱり定年退職者が出てやめさせられておるんですね。来年四人が該当するという該当者が出てきていると。どうなるんやろうか、やっぱりあかぬのやなということで非常に不安を抱えているわけですが、私は聞いてもらえなかったらどうするかと、四十歳までということでやっておられるから五十歳はまあええやろうということになっているのかもしれませんけれども、そうではなくて、段階的な解消について、とにかく第一段階四十歳までということの重点施策、これはいいと思うんですよ。同時に、やはり直接該当者がおって問題になるというふうな企業、あるいは公的に問題になったような問題、あるいは婦人少年室等に相談のあったようなところ、そういう問題についてはやはり適切な対処をすべきだと思うんですがね、これはどうですか。
  128. 森山眞弓

    説明員(森山眞弓君) いま先生がおっしゃいましたように、非常に多数の企業を対象としまして指導いたしておりますので、とりあえず重点的な計画をつくりまして、それにつきましては個々に一つ一つ当たりまして、粘り強く説得をし、解消していくということをやっているわけでございますが、そもそもこの計画をつくりました趣旨が、男女差別の定年制をなくしていこうという大きな方針に基づいて行われたものでございますので、その途中で、まだ当面は四十歳未満の者を重点的な対象としてはおりますけれども、その途中で御指摘のような例がございました場合には、こちらといたしましても積極的な改善指導をするという姿勢で臨んでおります。
  129. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣、私はいまの段階はいいと思うんですが、最終的に五十六年になって、これだけ多数の企業が全部労働省の言うことを聞いてもらえたらいいんですがね。聞いてもらえないようなときにはどないします。これはもう氏名公表でもしたらどうですか。どれだけ効果があるかないかわからぬけれども、身障者雇用の場合でも、やらぬところは氏名公表すると言うたらやっぱりあれちょっとこたえるらしいですよ。そういうことを考えたらどうですか。
  130. 森山眞弓

    説明員(森山眞弓君) この対象企業は、就業規則あるいは労働協約等によりましてこのような差別的な定年制度を持っている事業所でございますが、そのような協約や就業規則があるということを確認いたしましたものがこれだけあるわけでございます。しかし、具体的にそれぞれの個々の企業に当たってみましたところ、中にはすでにその就業規則は非常に古くなっておりますので早速直しますということで、非常に快く改善をしてくださる事業所もございますし、また中には、先生がおっしゃいますように、簡単には言うことを聞いてくれないというものもございますが、私どもといたしましては、当分の間粘り強く説得をする、繰り返し繰り返し説得をするということによって改善をできるだけしていきたいというふうに思います。また、これは個々の事業所の当事者の考え方だけではございませんで、世間一般の世論と申しますか、そのようなものの影響というのも非常に大きいと思いますので、そのような世間の考え方を改善していくという努力もあわせてしたいと存じます。
  131. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 大臣としてもこれ以上のいま申し上げる知恵を持っておりません。常時ひとついい工夫があれば前向きで対応していきたいと、このように思います。
  132. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、労働者の保護規定というのを本当に企業に守ってもらうということ、守らせていくというのはむずかしい問題だなあということを、いろんな事例を調べれば調べるほど実は思うのですよ。労働省を追及するという立場だけではなくて、本当に実効のあるやり方というのが大事だということを痛感しているわけですね。  たとえばこんな例もあるんですね。労働安全衛生規則の六百十八条には休養室の規定がございますが、これでも、休養室をつくれということになっているからつくってあったらそれでもう違反にならぬわけですね。労働者が適切に使えようが使えなかろうが、これはもう別問題になってしまっているわけです。  たとえばこんな実例がありますよ。これはたまたま住友金属の本社の話ばっかりになるんだけれども、ここでは、休養したいと思ったらまず勤労課へ行って、それで気分が思うなったんで休養したいんだと言うたら、そこの住友ビルの十二階に診療所があるんだそうですか、その診療所へ行って診察を受けて診断書をもらう。診断書をもらってもう一遍勤労課へ行ったら認可証をくれるわけですね。認可証をもらったら勤労課から庶務へ電話をしてくれて、初めて保安がかぎをあけてくれると。相当繁雑ですわな。だから、ちょっと簡単に休養したいと思っても休めない。だから、現実はどうなっているかというと、もうめんどうくさいから、しんどいのにそんなところぐるぐる回っているよりもということで、早退をしてしまうか、あるいは女子の労働者では給湯室のそばのごみ箱に腰をかけておしりを落として座っているとか、更衣室のすのこの上でお座りをしているとか、そういうことが起こっているんです。これはまあほんの一例ですがね。  だから、こういうことでも、せっかく設置した施設が労働者に有効に使えるように、繁雑な手続をできるだけ省略するように、こんなことは行政指導で簡単にできるのじゃないかと思うのですがね。これは労使間でも問題になっているようですから、労働省でひとつ一言御指導になれば私は簡単に片がつく問題で、こんなところでわざわざ言う必要のない問題だと思うのですけれども、しかし、事ほどさように労働者保護の問題について企業にきっちりと守ってもらえるようにしていくということはむずかしい。そういうことを心して対処してもらいたいということで実例として出したわけですが、どうですか。
  133. 岩崎隆造

    説明員岩崎隆造君) 先生指摘のとおり、労働安全衛生法に基づきまして規則で休養室を設けている趣旨は、利用すべきときにできなければ意味をなさないわけでございますから、ただ勤務時間との関係において、利用について一定の職場秩序との関係から手続が必要だということはあり得ると思いますが、事実上門戸をシャットアウトしてしまって、休養室を利用しなければならないような心身状況にある方々まで事実上利用できないというような状況は行き過ぎだと思います。一般的に申しますと。そのような事実がありますれば行き過ぎ是正という形で指導することにやぶさかではございません。
  134. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は若干の実例を出してみたんですが、いますべての労働者の要求というのは、非常に厳しい労働環境の中ですから、労働時間の短縮だとか年休の延長とか週休二日制の実施というのはもう切実な願いになっていますよね。本当に労働者が人間らしい生活を営む権利を保障するためには何よりもこれがいま大事だと。同時に、雇用不安に対処していく新しい雇用創出の上からも緊急課題だということで労働省もお取り組みを始めておられるのですね。  それで、若干労働時間の問題について聞いておきたいのですが、労働時間に関するILO条約というのはずいぶんたくさんあるんですね。この中で、労働時間に関するILO条約、資料をいただいたのを見ますと十六本あるのだけれども、わが国においては一本も批准されてないんですか。それはどうですか。
  135. 岩崎隆造

    説明員岩崎隆造君) 御指摘のとおりでございます。
  136. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでちょっと驚いたんですよ。ILOの一号条約というのは一九一九年、ILOの第一回総会で採択されているんですね。これ一号条約というのは、労働時間を一日八時間、一週四十八時間に制限する条約なんですね。それで、採択をされてから今日五十九年。これが批准されてない理由は一体何かということです。実際。私はこの辺大問題だと思うのですが、どうですか。
  137. 岩崎隆造

    説明員岩崎隆造君) 確かに一号条約は工業的企業における労働時間を定めている条約なんですが、基本的には戦後の労働基準法の週休一日、それから一週四十八時間、一日八時間労働という基本は実現されているわけです。ただ、基準法も若干の例外規定を設けておりますものと、この条約でも例外規定はあるわけなんですが、それが必ずしも符合していないという点があるわけです。時間外労働の規制にかかわる問題、あるいは特定の業種につきまして若干の、いまの一週四十八時間、一日八時間の例外を設けておりますが、その辺に若干の違いがあると。しかしそれは法的な規制の違いでございますので、現行法のもとではそのまま条約にぴったり合った形でございませんので批准ができないということになっているわけでございます。
  138. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 一日八時間、一週四十八時間ったら基準法に書いてあるとおりですよね、おっしゃったように。残業、これは一号条約では残業を含めて一週五十六時間を超えてはならないと書いてあるんですね。わが国では残業は制限がないわけですからね、一般的に労働者には。だからこれはちょっと、その後すでに四十七号条約では週四十時間制というのが採択されているわけでしょう。何ぼ何でも、六十年も前の条約、いまだに批准できる条件が整わないというのはあんまりおくれ過ぎていると思うのですよ。だって、あの条約制定のときには日本は特例国になったのでしょう。特例国になっていますわ、読んでみたら。四十八時間では困りますと。日本の工業の水準というのは後進国でございますので何とか御勘弁を言うて、英領インドと日本だけが特例国になっている。そんなことをやってもらって、いまだに批准せぬというのはおくれ過ぎてますよ。こんなもの、あなた、週四十時間というのがすでに批准されておるわけだし、国際的にもどんどんその方向を向いているわけですからね。  それから、年次有給休暇に関する条約もそうですよ。百三十二号条約、時間がないですから私簡単に言いますけれども、これによると、条約では年次有給休暇は三労働週となっているのですね。わが国の有給休暇は六労働日ですね。それで一年に一日ずつプラスして二十日までとこうなっているんでしょう。これはもう四十一年前の五十二号条約の一部の水準にしかすぎないんです。だから外国の比較をしたらもう一目瞭然ですよ、同じ資本主義国のを見たらね。たとえば西ドイツでは法に基づいて団体協約で十五日から二十四日、それから未成年に対しては二十四日ですよ。それからフランスでは二十四日、イタリアでは十二日から三十日、オランダでは十八日、未成年には十八日から二十三日ということになっておって、わが国ではいまだに六労働日、それから勤続によってプラス一日ずっと、こうなっているわけですから、大分おくれるといってもちょっとけた違いにおくれていると思うんですが、大臣、こんなところは条約が批准できるように不十分なところは労働基準法を改正して、これは労働者の労働条件を保障していくという方向をおとりになるかどうか。これはもう国内で担保しないと条約は批准できないですけれども、基準法を改正をしてでも、労働時間だとか、年休の延長だとかあるいは残業規制だとかというふうなものをきちんと法律改正によって保障する意思があるかどうか、その点大臣にお聞きしたい。
  139. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 労働時間対策の進め方につきましては、特に現在の雇用情勢から考えまして、いわゆる仕事を分かち合うと、こういう新しい要請から考えましても当然検討されなきやならぬ問題でございまして、現にこのような問題については行政指導で進めていこうと、こういう考えを持っております。  いまお話がございましたような問題でございますが、これも私はやはり法律で一律に決めるということはきわめて簡明直截でありますけれども、やはり個々の企業によって実態が非常に違っておると、こういう現状を考えますと、やはり行政指導を主体にしてやっていく、そしてまあある程度現状が全体的にそろったところで法律でどういうふうに取り上げるかと、こういうふうな順序で検討をすべきではないか。いずれにいたしましても、貴重な御意見を聞きましたから十分検討さしていただきたいと、このように思います。
  140. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ただ私は、大臣、これ本当に真剣に取り組んでいただかないと、実際六十年も前に国際水準で決められていることを特例国に決めてもらって、それさえ批准できないほどぎりぎり働かせてきて、そういうかっこうで働け働けで、言うたらいわゆる経済大国に成長をしたわけですよ。そういう形がどんどんエスカレートして、今日のやはり経済不安というふうなものが非常に大きくなってきていると思うんですよ。そういう点では、経済大国であったりあるいはGNPが世界第二位、第三位というだけではなくて、労働環境も国際水準にするべきだ。少なくともその立場というのは堅持なさらないとぐあいが悪いと思うんですよ。  その点でのおくれという点では、私も時間がありませんから余り詳しく申し上げられませんけれども、たとえば母性保護についても同じなんですね。母性保護の中の、たとえば産前産後休暇一つ見ましても、ずいぶんヨーロッパ諸国と比べたらおくれているんですよ。日本では御承知のように、産前産後おのおの六週ですね。それからイタリアでは産前二カ月、産後三カ月ですよ。それから賃金保障が八〇%。フランスは産前六週間、産後八週間。それからこれは五〇%の手当と保育手当をプラスしている。西ドイツでは産前六週、産後八週ということになっているわけですね。これだってやはり非常におくれている問題の一つですね。  しかも今日、私が言うまでもなく雇用されている婦人労働者というのは千二百五十一万、五十二年度でね。雇用労働者の三分の一を占めているんでしょう。しかもその全体のうちの六五%が既婚婦人でしょう。ということになってまいりますと、いま母性保護対策というものを強化するということなしには本当に健全な種族保存の責任が果たせないということになってくる。まさにこの対策の強化こそ社会的責務だというところへ来ていると思うんですよね。だから、当然のこととして産前産後休暇の延長というのは、すべての婦人団体が政党、政派、思想、信条を超えて要求しているんですね。こんなところは、大臣、これももう非常におくれている実例なんです。こんなところをひとつ、これは基準法改正でもやって早いことやるべきだと思うんです。早いこと。もう遷延を許されないところへ来ているんですね。  だから見てみなさい、これはもう時間がありませんから詳しく言えませんけれども、諸外国と比べても周産期の妊産婦死亡率は高い、異常分娩は家庭婦人より格段に高いというのは、すべての研究者が言うているでしょう。こういう状態になっているんですから、一日も待てないという状態になっているんですが、大臣、これはどうですか。
  141. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 労働時間の問題、母性保護の観点からの対応策を急げという御趣旨でございまして、十分御趣旨を踏まえて検討さしていただきたいと、このように思います。
  142. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 質問時間の方も五十分になりましたので……。
  143. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんので申しわけないんですが、最後のまとめでございますので済みません。  まあ慎重にとおっしゃっておられるんですが、私は労働基準法研究会の問題がせんだっても新聞紙上で報道がありました。近く報告がされるということも伺っておりますので、特にこの際にお伺いしておきたいと思いますのは、いわゆる国内行動計画、それから世界行動計画、それからILO行動計画と言われているILO六十回総会で採択された「婦人労働者の機会及び待遇の均等を促進するための行動計画」、この中で「保護法の再検討」という項ですね。これはわが国の国内行動計画と国際的な行動計画とは同じなのかどうかという点、基本的な点をひとつ聞いておきたいんです。
  144. 森山眞弓

    説明員(森山眞弓君) 世界行動計画それからその趣旨を受けましてつくられましたわが国の国内行動計画は、言葉が違います。表現は多少違いますけれども、考え方は同じであると解釈しております。
  145. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 同じだと言われると、私は読むとなかなかむずかしいんですがね。  国内行動計画ではこんなふうに書かれているんですよ。「雇用における条件整備」「雇用における男女平等を徹底するためには、男女が同じ基盤で就労できることが前提要件となるので、現在婦人に対して行われている法制上の特別措置について、その合理的範囲検討し、科学的根拠が認められず男女平等の支障となるようなものの解消を図る。」と。世界行動計画では、D項の「雇用及び関連の経済活動」の項の百二号で、「婦人のみを対象とする保護立法は、科学的、技術的な見地から再検討を加え、必要に応じ改訂、廃棄又は全ての労働者にその適用を拡大すべきである。」と。ILO行動計画の方は、六の「保護法の再検討」の項で「今日の科学的知識と技術の進歩に照らして、婦人に関するすべての保護法を再検討し、或いは、これらの法制を国内の状況に応じて修正、補完、男女すべての労働者への適用拡大、現状維持又は撤廃するなどの措置がとられるべきである。これらの措置は、生活水準の改善を目指すためのものである。」というふうに述べられていて、国内行動計画は「解消を図る」というだけで終わっているんですが、国際的文書では、これらの措置をとるということは労働者全体の生活水準の改善を目指すものだということで、政府の国内行動計画の主張というのは、国際文書の理念や内容から見たら非常に大きくすりかえられたというんですか、一方的な、一面的な点だけが強調されているように思うわけです。こういう点をはっきりしませんと、たとえば労基法研究会の報告が出てきたらどうなるかという点での不安というのが、わが国の婦人労働者全体の中にいろいろと問題が起こるわけなので、その点がはっきりされなければならないであろうというふうに思うんです。  で、極言すれば、わが国の行動計画というのは、これは保護規定についてはまさに資本の側から探求できるという許容限度を探っていると、だから時間外労働も撤廃しようじゃないかというふうなところへ行くということになれば、労働者全体の幸せにつながるのではないと。むしろ労働者全体の家庭生活をも破壊するような不幸につながりはしないか、こういう不安が出てくるわけですね。ところが国際文書で言うたら、いま申し上げたように、労働者全体の生活水準の向上に資すると、だから女子労働者にとって残業が都合が悪い、危険有害業務が都合が悪いという場合には労働者全体に拡大すべきだと、適用するべきだという立場をとっているという点では基本的な違いがあると思うわけですよ。そういう点について明確にするということが、いま何よりも国民全体、特に婦人全体に不安を与えないという点できわめて重大だと思いますので、その点をはっきりしてもらいたいと思うんですが、どうですか。
  146. 森山眞弓

    説明員(森山眞弓君) わが国の国内行動計画におきましても、婦人の生活、婦人の労働者の立場をよりよくする、改善することが目的であるのはもう当然のことでございまして、特にそのことを文章として書いてございませんでも、それを前提として、そのためにどうすればよろしいかということをるる述べているわけでございますので、それに基づきまして行われております労働基準法の検討、あるいは男女平等のさまざまな措置についての検討につきましては、当然そのためのものであるということがはっきり申し上げられると思います。
  147. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) これを最後にしてください。
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこで、私最後に労働大臣にお願いをしておきたいと思いますが、いまおっしゃられたような状況でございますので、私は何よりもいまは労働者全体の労働時間の短縮やあるいは年休の延長あるいは残業規制というふうな国際水準からはるかにおくれているもの、これは早く改善をする、あるいは母性保護についても、産前産後休暇などの国際水準から比べてはるかにおくれているものは一日も早く改善すると、このことがいま何よりも大事な先決問題だと思うのですが、その点についての御見解を伺いまして、大変時間がおくれて申しわけありませんので、これで終わりたいと思います。
  149. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御趣旨を体して今後努力をいたします。   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕
  150. 三治重信

    ○三治重信君 技能検定についてきょうは若干の質疑をしたいと思います。  職業訓練法によって技能検定が行われるようになって、初めは試験だけやって何も恩典がないじゃないかとかいろいろの点が指摘されたんですが、逐年職種も拡大され、そうしてその技能士になった方々の努力といいますか、によって逐次社会的な非常な信用を得て、いまや技能検定というものは非常にだれでも知っている、非常に普及をしてきて、制度として非常に権威をだんだん高めてきていると思っております。  そういう中で、一つだけちょっとここで——検定をだんだん広げていかれると、戦前あるいは各種団体でいろいろこの訓練法による検定制度、いわゆる国家検定以外にも独自にやっていた検定とかち合ってきたり、あるいはほかのいわゆる制度上、いろいろの技術、技能の、何と申しますか国家試験の制度が行われている、そういうのとかち合うと、これが当初から問題になり、しかし、現実に先行している試験や資格制度を訓練法の検定の方へ取り込む、統一化するということは非常に難事であり、そういうことが実際上あんまり進んでいないようでございますが、その中を勇敢にと申しますか、業界との了解と申しますか、そういうことで、四十五年度から和裁の技能の検定を取り入れられて、今日においてもさきに商工会議所がやっているのと競合をしているみたいなんですけれども、競合と言っちゃ悪いかもしれませんが、両方が行われている。しかし、この試験の中で商工会議所の方がやったものについてはこの実技試験を免除すると、こういうふうになっているんだが、商工会議所のこの一級、二級の認定試験にはこの資格が国家検定のように何も決められていないと、こういうふうに聞くわけです。この試験を受ける資格が何にも決められていなくて商工会議所がやる和裁の実技の試験に合格したからといって、この実技試験を免除しているというのはどういう理由なんですか。
  151. 石井甲二

    説明員(石井甲二君) 技能検定につきましては、ただいま先生指摘のように、労働省が訓練法に基づきまして三十四年度からこれまでやってまいりました。その間に、商工会議所におきまして、法律、いわゆる商工会議所法に基づきまして従来から和裁についての技能検定を行っておったわけであります。そういう意味では、まさに国が行う技能検定と商工会議所が行う技能検定につきましては、和裁については両者が行うという形になっております。  で、なぜ両者が行うかということでありますけれども、それは先ほど言いましたように、東京商工会議所の和裁の検定試験というのはかなり長い歴史を持っておりまして、すなわち、技能検定を国が行う十年前からこれをやっておるという実績がございます。したがって、その社会的な評価につきましてもまさに定着をしております。また、実際の技能検定を行う実態につきましてもかなり歴史を持っておりますために、かなりの一つの十分充実した形をとっております。そういう意味で、そういう歴史的な経過等を踏まえまして両方行うことになっておるわけでありますが、御指摘のように、商工会議所の方で行って合格をした場合に実技については国が行う技能検定の場合には免除をすると、国が行う技能検定に合格した場合には商工会議所の行う検定については同じように実技を免除すると、こういう相互乗り入れの形を実はとっておるわけでございます。  しからばどうしてそういうことになるのかという場合に、御指摘のように、それぞれのその資格といいますか、条件が違っておるわけでありますが、ただ、労働省が行う、つまり国が行う技能検定につきましては、たとえば中学の卒業者に対しましては、二級の場合には五年、一級においては十四年の当該職種に関する実務経験が必要でございます。したがいまして、たとえば商工会議所が行う和裁の検定に合格をしても、そのままストレートに無条件で国が行う技能検定の実技免除になるわけでございませんで、先ほど言いましたように、二級の場合には五年、あるいは一級の場合には十四年という実技の経験を得て初めてその免除を受ける資格ができると、こういうことでございますので、その点は御指摘のようなストレートな形ではないということを申し上げたいと思います。
  152. 三治重信

    ○三治重信君 本年の三月にも、全日本和裁連絡協議会から検定課長あてに、職業訓練法に基づく技能検定職種の実技試験免除の廃止についてということで要望事項として出されているわけですが、いまのお話だと、実技試験の免除は、訓練法に基づく和裁の検定種目の経験年数をそれだけ満足しなければ、商工会議所の一級、二級の試験を得ておっても、国家試験の方の免除は直ちにストレートにそれを試験を受けたから与えるわけではないと、その労働省の国家試験の資格の要件を満たした上で免除をして学科試験をやって免状を与えると、こういうことですね。そうすると大分誤解が解けると思う。いままでの私の聞いたところでは、東京商工会議所の検定試験の方は実技試験を受けるのについて何も資格要件がない。たとえば労働省でいまおっしゃったように五年、十年という経験が必要なのに、商工会議所の方ではそういう経験が何も試験を受ける資格としては要請されていない、こういうことです。  そういう一つの一般の、これだけ国家検定試験なり商工会議所の試験を受けるということは、やはりそれ相当の勉強をし訓練をしてみずから励んだわけですから、それが誤解を受けるような——商工会議所の方はやさしくてそっちを受けて、そしてあとは試験だけ受ければ、労働省の国家試験の方は簡単にとれると、むしろ実技試験の方は東京商工会議所の方を受けた方が得だぞとか、つまらぬ動きが出ないように、特にそこの点はひとつ、受けるいろいろの各団体に周知を徹底してもらいたいとともに、できれば商工会議所の方に、今日までこういうふうに別々の制度になっているけれども、いまの話だと実質上の実技も水準も大体同じになっていると、こういうことならば、受験資格や何かについても、実質上そういう統一指導が行われることが望ましいと思うわけなんですが、   〔理事野口忠夫君退席、委員長着席〕 実際はどうなんですか。商工会議所の一級試験、二級試験を合格した者が国家試験の一級、二級を得るために実技試験が免除になるということで学科試験を受ける数がこれは相当あるんですか。また、国家試験を受かった者が東京商工会議所の一級試験、二級試験を受けにいっている人が相当あるんですか。その相互乗り入れと言うが、乗り入れの実態はどうなんですか。
  153. 佐藤仁彦

    説明員佐藤仁彦君) 東京商工会議所が行います和裁の技能試験に合格いたしまして国が行います和裁の技能検定を受験いたしました者は、五十二年度、昨年度の実績で申し上げますと、一級はおりませんで、二級が五十一名ございます。それから、国の方の技能検定に合格いたしまして東京商工会議所の方の和裁の技能試験を受けた者は、一級が五十二年度で四名、五十三年度で三名、二級が五十二年度で十八名、五十三年度で五十二名になっております。
  154. 三治重信

    ○三治重信君 人数は非常にわずかなようですが、そこに誤解を受けられないようにひとつ指導を願いますとともに、その受ける方、いわゆるこういう和裁の技能者をいわゆる従業員として雇っている事業主体の方からいくと、そこに従業員に試験を受ける指導をする場合に、その点が非常に最近は混乱を来しているし、さらに東京商工会議所ばかりでなくて、ほかの商工会議所も、その和裁の試験検定をやるという動きもある。こういうことについてひとつ労働省の方がもっとしっかりしてくれなければ困る。何ゆえに国家検定を、商工会議所がやっていればいいものをまたさらに労働省の方で国家検定をやるようになったかというのは、われわれ和裁のそういう団体が、国の試験をやってもらいたい、商工会議所ばかりでなくて国の試験をやってもらいたいということで、それは東京商工会議所も了承して国がやるようになったはずなんだ。そういうふうになると、やはりいまは自由主義のところだから、どこの試験を受けろというのをそう強制はできぬ、自分のところの従業員に対して。ところが、従業員の方は東京商工会議所を受けると早く簡単に受かる、試験も何でも早く受けられる。試験を受ける資格がないから受けようと思うといつでも受けられる。労働省の国家試験の方は何年かたって試験を受ける。そうすると一級、二級というふうに実技ではそういうふうに程度は同じだというけれども、受ける方から見ると非常に指導がやりにくい、こういうことですね。労働省の方だと中学を出てから実技五年とかあるいは一級なら十四年、こういうぐあいになるが、商工会議所だったら自由に受けられる。一級は、もちろん商工会議所の二級が受からないと商工会議所の一級が受けられない。だから、いつ検定試験を受けるか、こういうことになってくると、商工会議所はやり始めてから二、三年、一年、二年でも受けられる。こういう問題があって非常に指導をやりにくい。  こういう問題があるから、この商工会議所も商工会議所法の九条によってやっている、国家検定の方も職業訓練法の六十二条でやっているから、いずれも国の法律でやっているわけだから、これをとやかく言うことはないけれども、せっかく両方でやるようになったのは、いろんなやはり受ける方の団体から見れば、国家検定試験もやってもらいたい、商工会議所ばかりでなくてやってもらいたいという要望があって始めたことなんです。ところが、ずっとやってきて、国の方への受験も実際の数字からいくとずっとふえている。しかし、商工会議所の試験があるために、自分のところの従業員のそういう和裁の検定試験について情報が二つに分かれて非常に指導しにくい、こういう問題があります。  ひとつ局長、これは一つの例なんですが、こういうふうに国家検定試験なり資格試験が二つ重なるような場合には、制度としてあるやつがすぐ法律が変らぬ限りはしようがないとすれば、その受ける方の各事業主体の団体、そういうのにひとつ、そういう受験資格なり、受かっても国家検定の免状をもらえるようになるのはその国家検定の受験資格が満足しないと免状は出ないんだよとか、そう急ぐこともないし、同じ水準でやっていくべきだ、こういうようなことについて、ただ試験をやるということでなくして、受験者の気持ちをもっと思ってひとつ指導をしていただきたいとともに、ほかの商工会議所のやっている珠算だとか簿記とか計算尺だとか、いろいろあって、有名であり、この商工会議所のやっている試験に受かると、各企業もわざわざ試験をやらぬでも、その免状によって採用試験は面接だけですぐポストに職種として採用できる、非常に便利な、しかも権威のあるものだが、ところが同じ試験内容といいながら、受験資格が違うとこういうような問題が出てくるわけですから、ひとつぜひ商工会議所と検討会を開いて、お互いに法律に基づくんだからおれはおれだ、お前の方はお前だ、自分のところは伝統は変えられぬということじゃなくして、そういう受ける側の立場も考慮してひとつ協議をして、その和裁の検定が、商工会議所、国家検定ができれば一つになるのが望ましいけれども、その過程を少しずつぜひ統一していくようにお願いをしたいと思います。  わずかな時間での問題ですが、こういうふうに非常なリバイバルブームですか、文化活動というんですか、非常にそういう新しいといいますか、従来の職種の中で見直されてくる職種があるわけなんです。  最後に一つ質問しておきますが、先日も、今回訓練法が改正されて、いままでの一級、二級というんじゃなくて、それほど、一級ほど特別な高度の技能を要さぬ職種でも技能検定ができるように、単一職種、単一等級の技能検定をやるように幅を広げたと、こういうふうにおっしゃるわけです。その観念はいいわけなんですが、しかし実際、今後どういう職種に広げていこうか。私はこういうふうな非常に産業構造の変わる、しかも雇用の問題がある場合に、どっちかと言えば製造業から第三次産業の方へこの検定の単級職種、技能職種を広げて、雇用の場を広げる役にも立つような、新しい第三次産業の中に一つの職業意識を持たす、そうしてそれで雇用をする側にとってそういう国家試験なりいろいろの検定によって非常に採用しやすくすると、こういうことが、今後雇用問題から見ても、または新しい職業意識を持たすためにも、こういう検定制度というものは私は非常に最近役立つと思うんですが、そういう職業意識なりこれからの産業構造の変化による雇用に対する、何というんですか、各職業の地位の向上、確立のためにどういう職種を広げていこうかということをしっかり検討し、そういうことについて構想があればひとつお話し願いたいと思う。
  155. 石井甲二

    説明員(石井甲二君) 技能検定につきまして今後新しい産業構造の変化とかいうのに対応する場合に、公的なといいますか、あるいは公に一つの資格なりあるいは技能の程度を評価するにしても、より多く開発をしたり、あるいは多く広げたりということは非常に重要なことであろうと思います。そういう意味では、第三次産業を含めて、また現実に工業的職種につきましても、先ほど言いました単一検定という制度も設けましたので、年次計画をもってできるだけ多く整備をいたしたいというふうに考えております。具体的な方向としましては、現在検討をしながら毎年追加をしておりますので、方向はもう大体先生指摘のとおりでございますので、これを推進するということにいたしたいと思います。
  156. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように、私も技能検定制度というのが公に認められた一つの雇用の場を確保し、また同時に労働者の処遇の改善ということに結びつくような制度として今後充実することを期待いたしたいと。特に今度の法律改正によりまして、いわゆる単一等級制度というものを導入したゆえんのものは、やはりできるだけ技能検定制度のすそ野を広げて、そして御趣旨に沿うような方向に制度の充実をしたいと、こういう考えを持っておりますから、十分われわれも御趣旨に沿うて努力をしていきたいと、このように思います。
  157. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最初に労働大臣にお尋ねします。  政府は経済成長率七%を打ち上げておられますが、それが本当に実現可能だと思っていらっしゃいますか、どうですか。
  158. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 政府といたしましては、景気の回復のために積極的な財政政策を進めておりますし、このたびの補正予算をつくり上げたのも、経済成長七%実現を目標に努力をしておる最中でございまして、努力中に挫折するようなことは発言としても慎まなきゃならぬと、このように考えます。ともかく努力をしておると、こういうことであります。
  159. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 財界人の中には、恐らくそれは無理だろう、六%がやっとであると。あるいはある資料では六・三%もあるわけですが、なぜ私はそれをお聞きするかと申しますと、この成長率の一%の差によって百万人の失業者につながるということも言われております。だからこれは事は重大であります。もし万一、七%が実現しなかった場合に、ますますわが国の失業者はふえるわけです。そこで、この資料によりますと、五十三年の四月、五月、六月、七月、八月まで資料が出ておるわけですが、完全失業率が、四月二・二%、五月二・二%、六月二・二%、七月二・一%、八月二・二%。九月、十月は恐らくこれ以上に落ち込んでおるんじゃないかと、こう思われますが、八月までしか出ておりませんので。これからしますと、わが国の失業状態というものは横ばい、決して前向きに解消されつつないと、こう言えるのではないか。ところが政府とされては、いわゆる不況、失業の対策として財政投資を強力に打ち出しておられるわけなんですが、公共投資を打ち出しておられるわけですが、さしてこの政府の施策が、馬力をかけておるとおっしゃるけれども、実際に結びついてあらわれておらないのではないか。これをどう理解されますか、大臣
  160. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のごとく、大変雇用情勢は厳しゅうございますが、実はきょう閣議で有効求人倍率並びに労働力調査の結果が報告されました。私の方は有効求人倍率を報告いたしましたが、就業者総数は五千四百六十万人でありまして、前年同月と比べて四十五万人の増加になっておると、こういうことであります。ただし、その増加のうち、女子就業者が四十万人という大半になっておると。完全失業者は百二十五万人で、前年同月に比べて二十万増加しておると。そして有効求人倍率は、これは季節修正値で、前月は御案内のごとく〇・五七倍でありますが、九月、本日発表いたしましたのは、〇・五八倍とちょっと上回っております。  そのようなことでありまして、なかなか雇用情勢は楽観を許さない現状に推移しておりまして、これに対していままでわれわれとしてとりました対策としては、まず雇用の創出を図るために、内需の拡大による景気の振興はまず大前提でありますが、それから今度の補正予算において造船等の不況業種に対する緊急需要の創出、それから、これはまだこれからでありますけれども、労働時間短縮の問題ということを、これを今後の雇用創出の長期的計画として推進しようというふうに考えております。  それから、失業の予防対策といたしましては、雇用安定資金制度の弾力的な運用、十月一日からこれまた大幅な改善をやったわけでございまして、それと定年延長の促進ということも、これも一つの失業の予防対策であると思うんであります。  そのほか、離職者が発生した場合の再就職の援助対策としては、雇用保険制度の積極的な活用、それから構造不況業種等について職業転換給付金制度の活用による再就職の促進、それから、中高年齢者の雇用開発給付金制度のこれまた充実、それから職業訓練の機動的な実施、こういった各般の施策を遂行することによりまして、当面の雇用の困難な問題に全力を尽くしたいと、このように考えるわけでございます。
  161. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま大臣が述べられたように、計画はよろしい。しかしながら、極論かもしれませんが、いわゆる机上の計画、ペーパープラン、絵にかいたもち。失業者の生活というものは毎日毎日を生き延びていかなければいけない。それが密着するのが余りにも時間がかかっておる、延びていかない、そこにもどかしさを感ずるわけです。  そこで時間がありませんので、掘り下げていきたいんですが、沖繩の失業の状況がなお深刻であるということなんです。さっき国の状況を申し上げましたが、沖繩の場合、四月が完全失業率が七・二%、五月六%、六月五・七、七月六・〇、八月六・八と、まさに本土の全国の三倍を占めておるわけなんです。  ところで沖繩の場合にはそれなりの理由があるわけなんですが、そこで、沖繩の場合には、沖繩振興開発特別措置法第三十八条による就業の機会の増大を図る必要があるという、こういうふうに明記されまして、私はそれに基づいて質問主意書を九月十九日にいたしたわけなんですが、全く私の質問に答えてもらっていない、すれ違いである、ここに私は非常に不満を持つわけなんです。私は具体的に、開発就労事業として、一つ、市町村ごとの道路、二つ、下水道の工事、三つ、団地造成、四つ、造園事業等考えられるが、というふうに具体的に質問をいたしておりますけれども、これに対して何一つ答えはありません。そうして抽象的な概念的な一般論で答えが来ておるということなんです。それはまあ無意味とは言いません。しかしながら、少なくとも質問主意書に出したからには、一応は前向きでその問いに答えてもらって、なお国としてはこういうことも考えておると、こういうことが筋ではないでしょうか。大臣いかがですか。
  162. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 沖繩の雇用情勢は、御指摘のごとく大変厳しいことはわれわれもよく承知いたしております。これが対策の基本は、申し上げるまでもなく沖繩の産業振興ということがこれが大前提でなければなりません。そのようなことを踏まえまして、われわれとしては各種のいわゆる就業を促進するための施策として、いわゆる広域職業紹介の実施ということを積極的にお手伝いをするということ、それから中高年齢者の雇用開発給付金制度のこれまた積極的な活用というこういったこと。それから公共事業の拡大といわゆる失業者吸収率制度でございまして、先ほど、具体的なせっかく提案をしたにかかわらず、それに答えがないのはまことに遺憾であると、あるいは下水道工事、団地造成、道路工事、こういった御指摘等々ございましたが、これなんかはおおむね公共事業としての対象に十分含まれてくるわけでございまして、ただそのほか個別のいわゆる就労事業と、こういったことになりますと、これはやはり再就職に結びつかない、滞留してくるという過去の苦い経験もございますから、やはり再就職に結びつくということを考えながら、同時に御指摘のような事業に対して公共事業を大幅に拡大をして、公共事業に失業者を吸収するという、沖繩地帯においては六〇%でございますか、吸収率制度を活用して、これによって御趣旨の線を生かしていきたいと、このように考えるわけでございます。
  163. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの問題につきましては、開発庁も責任があると思いますので、時間がありませんから一応次の問題に移ってから答えていただきたい。  それで、この沖繩の失業問題は、いわゆる雇用問題は、小手先の操作では解決できない、抜本的な解決策が必要であると、そういう立場から、私は二つの大きな目玉をここで質問いたしまして、これに対する、運輸省の回答を求めたいと思いますが、まず第一点は、これは沖繩が、日本における地理的位置、いわゆる国策の立場からも県策の立場からもどうしても必要だと、こういって熱望しておるのが、那覇国際空港早期建設要請決議、いわゆる第一種空港としての民間専用那覇国際空港の建設ということが、これはもう県民挙げて島ぐるみの要望でございます。県は先頭に立って、主催団体二十二団体、参加団体六十三団体で八月四日に県民大会を開いて要望しておるこの空港、これを実現することによって沖繩の労働者の就労が大きく吸い上げられていくという、この面からも非常に大事であると思っております。これは国策の他の面からはきょうは申し上げません。それに対する計画があるかどうか。  第二点は、四十七都道府県で国鉄のないのは沖繩県が唯一であります。その国鉄を沖繩に開設することを、これまたいろんな立場から申し上げたいんですが、これも一貫して県民を挙げて、県もそれを要望いたしております。その立場から、もし沖繩に国鉄が開設されるということになると、まあ結論だけ申し上げますと、この建設途上におけるピークで二万五千人の就労、それからこの開発後の平年度で四千八百名の労働者が吸い上げられると、こういう資料も実は私持っておるわけであります。この立場からも私は非常にこれを大事にしたいと、こういうことで、まず一つは国際空港の問題、第二点は国鉄の問題、そして先ほど注文をつけました、沖繩の窓口は開発庁でありますので、開発庁の立場はどういう態度をとっておられるか、以上質問をいたし、お答えを願って、時間ですので終わりたいと思います。
  164. 平井磨磋夫

    説明員平井磨磋夫君) ただいま先生指摘のとおり、沖繩県は、地理的な関係もございまして航空輸送が非常に特性を発揮する地域でございます。それで、中でも那覇空港は、本土の主要都市との問の連絡あるいは離島閥との交通の拠点として非常に重要だと考えております。また一方、近距離の国際線の一つの基地としても重要な役割りを果たしております。そこで、私どもといたしましては、現在就航いたしております大型のジェット機の運航の効率性をより高める、あるいは安全性の一層の向上を図るという意味で、第三次空港整備五カ年計画におきまして、現在の二千七百メートルの滑走路を三千メートルに延長する、あるいはエプロンを拡張する、あるいはレーダーの性能を向上するといったもろもろの施策をいたしておるところでございまして、五十五年度を目標年次といたします五カ年計画の年次の中でこれを完成を図っていきたいと考えておるところでございます。  ただ、いま御指摘のございました、沖合いに滑走路をまた新しくつくりまして、ターミナル地域を展開していくという大構想が地元であるというふうに承っておりますけれども、当面は私どもは、いまいたしておりますような施策でもって十分需要を賄っていけるというふうに考えておりますので、このような大構想につきましては、長期的な構想といたしまして今後の需要の動向等も勘案しながら検討してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  165. 岩橋洋一

    説明員(岩橋洋一君) 沖繩県に輸送の面から考えまして鉄道が必要であるか否かということにつきましては、沖繩の振興計画においても、交通体系の整備に当たっては、各種輸送機関の特性を生かした合理的な機能分担のもとに、計画的、一体的整備を進める必要があるというふうに記されておるところでございまして、輸送需要等の見通しを十分踏まえて検討してまいりたいというふうに考えております。したがいまして、国鉄線を導入することにつきましては、現在沖繩開発庁が中心となりまして、建設省、それから地元、県、市を含めて行われておりますモノレール関係の調査等を踏まえまして、輸送需要等を慎重に検討して進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  166. 金子清

    説明員(金子清君) まず最初に、沖繩振興開発特別措置法三十八条に基づきます特別就労事業についてでございますけれども、この関係につきましては、御案内のとおり、労働大臣の所掌するところでございまして、ただいま大臣からも御答弁ございましたように、この特別就労対策事業を実施いたしますにはいろいろとまだ問題があるというふうに考えておるところでございます。しかしながら、開発庁といたしましては、基本的には沖繩の産業を振興をいたしまして県内の雇用機会を確保することが必要であるというふうに考えておりまして、振興開発計画に基づきまして産業基盤の整備や産業の近代化にいま努めておるところでございます。  また、公共事業につきましては年々大幅な拡大を図っておりまして、こういうような現行の施策を促進することによりまして失業者の吸収に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  167. 野末陳平

    ○野末陳平君 ここに持ってきました手紙は、労災で半身不随になった人からかなタイプで私のところへ届いたんですが、ここにこういうことが書いてあるんですね。地方公務員は共済年金の廃疾年金一級の者に限り介護手当が年十五万円加算される、しかし、厚生年金にはこの制度がないと、まあこういう部分があるんですが、地方公務員共済にはいわゆるこの介護手当十五万円というのが実際にあるのかどうか、まず自治省
  168. 望月美之

    説明員(望月美之君) お答え申し上げます。  地方公務員共済組合が支給いたします公務による廃疾年金の最低保障額の計算をする際に、まあ恩給との関連から、お尋ねにございましたような廃疾の程度が一級に該当する方々に対して、介護手当を十五万算入するという制度になっておるところでございます。
  169. 野末陳平

    ○野末陳平君 国家公務員共済の場合にも、同じような介護手当というか、十五万円が廃疾年金に加算されているかどうか、これはどうですか。
  170. 山崎登

    説明員(山崎登君) 同様に、介護手当ということではございませんけれども、特別給付ということで、一級については十五万円の特別加給がございます。
  171. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、今度は民間の場合ですが、まあ厚生年金の一級障害に対しては、いま、国家・地方公務員共済にありましたような、介護手当に当たるような、いわゆる十五万円の特別給付という制度があるかどうか、これについては……
  172. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 厚生年金の第一級の障害者につきましては、いまお話がございましたような介護手当という形の加給の制度はございません。
  173. 野末陳平

    ○野末陳平君 次に、家族に対する加給金、扶養加給というんですか、これについてお聞きしますが、国家公務員共済の場合は、公務上の廃疾に限っては、一級、二級、三級ともそれぞれ扶養加給が決まっていると。この金額は幾らでしょうか。妻あるいは子供についてお願いします。
  174. 山崎登

    説明員(山崎登君) 扶養加給といたしまして、妻である配偶者の場合は九万六千円でございます。それから子供等の扶養者がある場合、二人まで一人につき二万七千六百円でございます。三人目からは一万二千円でございます。
  175. 野末陳平

    ○野末陳平君 地方公務員の場合も、共済は同じと考えてよろしいですか。
  176. 望月美之

    説明員(望月美之君) 地方公務員の共済年金制度におきましても、同様な制度になっておるところでございます。
  177. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうなりますと、今度は民間の厚生年金の場合ですが、厚年における障害年金ですね、この場合の家族への加給金、扶養加給ですか、これはそれぞれ幾らになっておるか、その点についても数字をお願いします。
  178. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 厚生年金の加給年金額でございますが、これは五十一年に私ども財政再計算をいたしましたときに、これは私どもの方はすべての年金に加給がついておるわけでございますが、その加給金を定めたわけでございまして、配偶者につきましては七万二千円、一子、二子につきましては二万四千円、第三子以下につきまして四千八百円という金額になっております。
  179. 野末陳平

    ○野末陳平君 いまの扶養加給においても、やや共済年金とそれから厚生年金では差があるようですが、さてこれら制度の違いが現実の年金額にどう反映するかということについて次にお聞きしたいわけなんです。この場合は障害ですから、いつ襲ってくるかわからないわけで、平均などがとれるはずがないと思いますが、とりあえず現実のモデルをつくってみまして、公務員の場合のモデルは人事院が毎年出す年次報告というのを見まして、あの年次報告に示された公務員の平均像、これにほぼ近い線で実例をとってみたのです。すなわち、俸給月額が十七万三千九百円で、それから共済組合加入期間が十八、九年程度として、妻と子供二人、こういう公務員がいると設例しまして、この人がいま公務上の事故により廃疾年金を受けることになった、こう仮定しますと、年金額は幾らになるかということなんですね。国家公務員共済ですけれども、その場合、計算はちょっと省略して合計額のみでよろしいのですが、廃疾の程度一級、二級、三級に分けてその年金額をお願いします。
  180. 山崎登

    説明員(山崎登君) ただいま先生の御示しの前提条件で、組合員期間十八年の場合ということで計算いたしますと、一級につきましては二百三十九万七千五百六十円、それから二級の場合にいきますと百五十二万七千二百四十円、それから三級の場合でいきますと百十五万三千九百二十円というふうになっております。
  181. 野末陳平

    ○野末陳平君 念のために、いまの額は先ほど質問しました介護手当とか、それから扶養加給がもちろん含まれた数字でいいわけですね。
  182. 山崎登

    説明員(山崎登君) 含まれております。
  183. 野末陳平

    ○野末陳平君 地方公務員の場合も、何かくどいようですが、国家公務員共済と同じやり方で計算しているのかどうか。とすれば、いまのモデルをそのまま地方公務員に置きかえてもほぼ近い年金額になるのではないか。これはもちろんぴったりするはずはないんですが、ほぼ近い線と理解してよろしいかどうか、その点についても自治省にお願いします。
  184. 望月美之

    説明員(望月美之君) 先ほどのモデルによりまして計算いたしました場合に、各等級ごとに先ほど大蔵省の方からお答えになったような額に相なるところでございます。
  185. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで、公務員の場合は大体わかりましたが、これはもちろん公務上の廃疾ということですが、今度は民間のサラリーマンの場合をまた厚生省にお聞きしたいと思うんです。ただで、この厚生年金の場合は、年金額を出すに当たって公務員と同じ計算方法ではないですから、設例として先ほど挙げました公務員モデルと同一の条件をほぼ当てはめてみたのです。  そこで、勤続年数が十八年から九年程度、妻と子供が二人いる。そうして俸給の方は公務員と同じ十七万ちょっとですね。それから手当を含めまして、諸手当いろいろあります。それを含めまして合計の月収が二十四万五千円近くになるんです。それは現在のベースで計算をしてみるとこのくらいになるのですが、二十四万五千円近くになりますね。こういう条件の民間企業のサラリーマンが事故にあって障害年金の受給者になる、こういう場合に年金が幾らになるかというのが一番知りたいわけですね。この計算は厚生省でできるものでしょうか。
  186. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 厚生年金の年金額の計算をいたします場合に、ただいま先生お話し報酬の問題でございますが、被保険者期間いま十八年から十九年というお話でございますが、この期間の全期間の平均をとると——若干の例外はあるわけでございますが、全期間の平均をとって計算をいたしますわけでございます。したがいまして、ただいまの俸給を全期間に直してみましてどれくらいになるかということでございますので、ちょっといまお示しの最終の俸給だけで計算をするのは、十八年とか十九年とかいう長い年数でございますと、ちょっと私ども前の報酬を勘案いたしませんと計算ができないということでございます。平均を大体これぐらいということで御設定いただければ、その分で計算ができるわけでございます。
  187. 野末陳平

    ○野末陳平君 いま厚生年金は全期間の、平均という説明がありましたけれども、公務員共済の場合はこの平均は全期間ですか、それともどのくらいを見ているわけでしょうか、ちょっと途中になりましたけれども。
  188. 山崎登

    説明員(山崎登君) 事故のあったときの過去の一年間の、平均給与が基礎になっております。
  189. 野末陳平

    ○野末陳平君 基礎だけについて言うならば、厚生年金は全期間の平均という言葉がありました。それから共済は一年間ということがありましたけれども、制度が違いますから、これだけでもってあれこれ言うつもりはありませんで、改めて厚生省にお聞きしますが、いまの十八、九年という勤続でいわゆる年金計算の算定の基礎になってくる平均標準報酬月額ですね、これを幾らか示せば年金額が出るということなんで、私の方はこれをこんなふうに考えてみたんです。民間企業のサラリーマンですから、この人の過去十八年勤続した全期間といってもなかなかむずかしいですから、公務員の俸給表に基づきまして、昇給昇格などの率も公務員並みとして計算していったわけです。そんな計算で得た平均標準報酬月額が十二万になったんです。で、この十二万円という数字に基づいていまのモデルの障害年金を厚生年金の方から幾らもらえるかというような前提でひとつ額をお示し願いたいと思います。
  190. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 奥様と子供さんお二人という前提でよろしゅうございますか。
  191. 野末陳平

    ○野末陳平君 はい。
  192. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) その場合でございますと、一級の障害者の方につきましては年金額が百十一万七千八百円という金額になります。二級の場合は九十一万八千二百円、三級の方の場合は五十九万八千七百円という金額になります。
  193. 野末陳平

    ○野末陳平君 念のためもう一つ厚生省にお伺いしますが、平均標準報酬月額、私の計算では月額十二万になったわけですが、これが人によってはもっと上の場合も当然あるわけですから、たとえば十五万円ぐらいあるいはさっきの公務員の俸給月額十七万にやや近いというような数が出た場合に、いまお答えになった年金額と比べて大体何万円ぐらいの上乗せと見たらいいでしょうか。
  194. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 大略のことを申し上げますと、私どもの年金額の計算は定額部分と報酬比例部分ということになっておりまして、おおむね定額部分と報酬比例部分の比率が一対一、つまり半々になっております。で、いまのお話しの標準報酬が響きますのは報酬比例部分ということでございますので、その半分につきまして一割上がれば一割分が上がる。つまり〇・五%動く、おおむねそういうふうにお考えいただければよろしいかと思います。
  195. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、先ほど厚生年金とそれから共済年金でそれぞれ障害を受けた場合に支給される年金額、これを同列に比較するのは制度が違うわけですから、私もやや何といいますか、無理があるという気はもちろん若干します。しますけれども、一級の障害者に限って言えば、まあ相当な差があると、公務員共済の場合が二百三十九万で、そして厚生年金の場合は百十一万であると。もちろんこれは制度の違いによる計算がこういう結果を生んでいるんですけれども、ちょっと差があり過ぎるような気がしますね。ですから、いわゆる介護手当があるなしと、それから扶養加給と、これを考慮に入れてもどうもちょっと差があるんで、この差はどの辺からどういう理由によってこんな差が出てきたのかということについても、ちょっと大蔵省の考えを簡単にお聞きしておきたいんですが。
  196. 山崎登

    説明員(山崎登君) 私どもの公務上の廃疾年金につきましては、実は先生承知のように、三十四年の十月に恩給制度と旧共済制度を一本にして新しい共済制度ができ上がったわけでございまして、その間恩給とやはり新共済組合で、同じ公務員でありながらその年金額に差があってはいけないということから、実は公務上の廃疾年金の最低保障額につきましても、恩給における増加恩給の最低保障を基準にしてとっているために少し差が出てきているんだろうというふうに考えております。
  197. 野末陳平

    ○野末陳平君 それだけの説明ではどうも十分に納得できないような気もしますが、念のためまた厚生省にもいまの質問なんですが、要するに差があるなしということだけをとって制度について批判するという気はないんですが、とにかく具体的にこれだけ差が出ていると。まあ同一人じゃありませんし、モデルの比較ですから、感じとしてちょっと差があり過ぎるんではないかということで受け取っていただけばいいんですが。どうでしょうか、いまの恩給との関連でこの差が出てきたんだというのが大蔵省のお答えです。それも当然あると思いますが、計算が、全期間を平均するのとどうも一年間を平均するというこのあたりにも、何か差を生むような大きな理由があるような気もしたりするんですが、厚生省ではどうでしょうか、いまの公務員共済と厚生年金のこの差をどういうふうに理由を見ておられますか。
  198. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 私どもの厚生年金の沿革を少し御説明さしていただきたいと思うのでございますが、昭和十七年に厚生年金ができまして、二十九年に新法、現在の姿へ生まれ変わっておるわけでございますが、昭和十七年時期には厚生年金は業務上・外、すべて給付をいたしておったわけでございます。で、十九年の時点で業務上の障害年金につきましては、業務外に比べまして約三割——月、そのときにはいまの計算方式と全く違っておりまして、俸給の何月分という計算をいたしておりますけれども、業務外が四月分であったときに一級は八月分というような差があったわけでございますが、二十二年に単一給付という形にいたしまして、その際に二級相当を老齢年金相当という形にいたしまして、一級相当をそれよりも二割五分増しという形でセットをいたしたわけでございます。  基本的にはそういう沿革的なものが現在の厚生年金の障害年金の水準を決めてきたという経緯があるわけでございまして、その後、御承知のように厚生年金につきましては一万円年金、二万円年金という形で老齢年金を中心といたしまして給付のレベルアップを図ってきたわけでございますが、それにつれまして現在の障害年金の水準が定まってきたと、こういう経緯を持っておるわけでございます。  現在の障害年金というものにつきましては、共済との間に非常に大きな差があるではないかという御指摘かと思いますが、私どもの、平均標準報酬の算定自体でございますけれども、全期閥を平均するといいましても、過去の期間というものにつきましては、その時点の賃金水準に置きかえるといいますか、読み直しをいたしておるわけでございます。私どもといたしましては、六カ月以上の被保険者期間がある方につきましては、現職中におきましても障害年金を支給するという制度になっておるわけでございまして、在職されながら障害年金を受給されると、その以前のその方の報酬というものをすべて反映すると、そういう仕組みをとっておるわけでございまして、全体として見まして、退職を必ずの要件としております共済組合と、一概には厚生年金がきわめて低いということではないというふうに理解いたしておるわけでございます。
  199. 野末陳平

    ○野末陳平君 制度の違いがありますので同列に比較しているわけではありません。ですから、理由についてもいろいろな角度からの説明がつくと思うんですが、とりあえず、私はいまお答えいただいた範囲で、いわゆる最近よく言われています官民格差ということをここで議論するわけじゃないんです。障害を受けた場合には、困るのは民間も公務員も同じだからどうしてこんなに差があるんだろうと、この差はどういう制度の違いからくるんだろうかということをもう少し突き詰めて考考えてみたいと、そんなふうに思っているわけです。  そこで、いま幾つかのこの差が生まれた理由についてお答えありましたけれども、実態もやはりここで知っておきたいと思います。  厚生年金における障害年金支給についてですけれども、支給額で一番低い例はどのくらいか、それから高いのはどのくらいであるかと、同時に平均では大体どんなものであるかということをお願いします。
  200. 長尾立子

    説明員(長尾立子君) 厚生年金の障害年金の受給者の実態でございますが、現在受給者五十三年の六月末現在の状況で御説明を申し上げます。  受給者数全体といたしまして十六万七千八百五十三人でございます。このうち一級該当者が二万一千五百二十八人で、全体の一二・八%でございます。二級該当者が七万二千九百五十三人で四三・五%でございます。三級該当者が七万三千三百七十二人、四三・七%でございます。  いま御質問の年金額でございますが、最高の年金額は二百三十二万六千円でございます。最低年金額の御質問でございますが、これは最低保障が三級の該当者のものにございますので、この金額を申し上げますと、四十六万二千百円という金額になっております。全体としての平均でございますが、ただいま申しましたように、一級、二級、三級、それぞれ年金額の算定方式が違いますが、全体をひっくるめまして申し上げますと、七十万八百六十七円という金額でございます。これを各級別に申し上げますと、一級につきましては九十一万二千四百七十五円、二級につきましては七十七万八千八百七十九円、三級につきましては五十六万千二百十二円と、こういう金額になっております。
  201. 野末陳平

    ○野末陳平君 大分実態がわかってきたんですけれども、時間が超過してしまいましたので、同時に厚生省にお願いしておきますけれども、いまの分布状況、分布と言っちゃあれですが、いまお答えいただいたデータにもう少し実態がわかるならば、それらをひとつ資料で後ほどまた説明していただきたいと思っております。  それから、大蔵省の方にも、それから自治省にもお願いしたいのは、廃疾年金の支給の実態、公務上、公務外と、こういうことでやはり資料をお願いしておきたいと、そういうふうに思います。委員長よろしくお願いします。
  202. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) いまの資料は両省ともよろしいですか。——よろしいですね。
  203. 野末陳平

    ○野末陳平君 時間が来ましたので。  そこで、労働大臣に聞いていただいいて、なかなかそこまでいきませんでして、この年金議論はまた別の機会にあると思いますけれども、何か非常に民間のサラリーマンの場合が厚生年金においてどうも年金額が低いように思われるので、その辺を労災保険との兼ね合いでひとつ何とかカバーできる方何というのが考えられないものかどうか、あるいはこれはこれで年金と労災との併給ですから仕方がないんだということか、その辺の御意見だけ伺って、きょうはこの辺にしたいと思いますが。
  204. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 労働災害を受けた人たちが給付を受けるいわゆる労災保険は、これは労働者が業務災害または通勤災害を受けた場合に保険給付が受けられるという制度でございます。したがって、この業務外の事情によってはその対象になり得ないわけで、厚生年金の給付改善ということをこれを労災保険で行うということは、これは労災保険制度そのものの趣旨からいって不可能であると、こういうお答えでございます。
  205. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 他に御発言もないようですから、労働省決算についてはこの程度にとどめます。  次回の委員会は、来る十一月十四日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会