○曽祢益君 私は、ただいま
議題となりました
日中平和友好条約に対し、民社党を代表し、批准
賛成の
討論を行わんとするものであります。(
拍手)
その第一の理由は、この
条約の
締結は一九七二年の日
中国交回復の共同声明を基礎として、
日中両国政府が慎重な検討と協議の結果、
社会体制を異にする
両国が、恒久的な
平和友好関係をここに
確立するという画期的な喜ばしい出来事だからであります。
四十六年前の柳条溝事件を発端とする日華
両国の戦争と、
日本の
中国侵略、占領の長い重苦しい
歴史を踏まえ、かつ太平洋戦争における
日本の敗北以来、大陸
中国との間の通商から国交回復への
努力の跡を回顧し、加えて、この期間の中での小生自身の上海在勤五年を含めた長い
中国とのかかわり、さらに、新
中国以来、国会
議員として使いすること三回の私の体験から生まれた強い
中国への関心からしても、
両国のため、衷心よりこの
条約の成立を祝福したいと存じます。(
拍手)
特に、華国峰主席、鄧小平副主席を頂点とする
中国最高指導部が、文革以来のある種の行き過ぎの是正と、農業、工業、国防及び科学
技術の近代化を旗印とし、冷静、着実な内外政策を大胆に実行されたこと、並びに
わが国の朝野の良識者が、
日中双方の満足するラインでの友好
条約の
内容の妥結を目途とする日夜の
努力を重ねられたことを高く
評価したいと存じます。(
拍手)
賛成の第二の理由は、
条約そのものの
内容と
締結の経緯から判断して、
締結に当たり問題となった諸点につき、本
委員会の
質疑を通じ、納得できる解決がなされたと認められるからであります。
その
一つは、
覇権問題の処理であります。
まず、
条約第二条は、
日中両国がみずから
覇権を求めないこと、並びに「
覇権を
確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも
反対する」旨を明らかにしておりますが、この
規定は
日中共同声明と同
趣旨であるとともに、その該当
地域を
アジア・太平洋
地域に限らず「他のいずれの
地域」にも拡大している点、並びにその対象を「いかなる国又は国の集団」として、
特定の国を指していないことを明らかにしている点の二つを
評価したいと思います。これは、言うまでもなく、ソ連などの、反ソ集団の結成の危惧を取り除くために有効であります。
同じく、
覇権問題との関連において、第四条は、この
条約が、各
締約国が
第三国との
関係でとっている
立場に何らの影響を及ぼさないことを
規定しております。
この
規定は、わが方としては、ソ連などが、この
条約の
締結によって
わが国が
中国の反ソ包囲網の中に組み入れられるやの危惧を抱いていることを払拭する
意味において必要であるとともに、
中国側としては、逆に、ソ連の
覇権主義
反対、ソ連修正主義
反対の国是とも言うべき
立場を害しないことを明らかにする
意味で重要と認めているわけで、
両国それぞれにとって必要な
条項であります。
賛成の第三の理由は、本
条約締結と、尖閣諸川島、中ソ友好同盟
条約との
関係、並びにいわゆる全方位外交の観点から見て、本
条約承認に特に支障なしと判断されるからであります。ただし、後述のように、特にこの点に関して慎重な配慮と適切な
措置を必要とすることを申し添えておきます。
すなわち、尖閣諸島については、私は、
わが国の一部にあった尖閣諸島の領有権の問題を取り上げて、
本件日中平和友好条約締結に際し、
中国側の領有権放棄の意思表示を求むべきだとの
意見に対しては、
賛成いたしかねます。それは、尖閣諸島と同様に、
わが国の領土である竹島問題に関する
日本の韓国に対する軟弱な態度に比して、片手落ちだからであります。
しかし、日中
条約の関連において、この際、
中国に対して領有権の主張の放棄を求めることは問題外とし、先般の
中国漁船団のわが方領水の侵犯のごとき不祥事件の再発はない旨の
中国側の確実な言質が得られたという外務大臣の答弁を重視し、これを信頼し、私は、尖閣諸島の観点からの
本件平和友好条約への
反対は唱えないことといたします。同時に、竹島問題に関し、韓国の不当な竹島占拠を改めしめるような
措置を速やかに講ずることを要求します。
中ソ友好同盟
条約については、同
条約が他にほとんど類例を見ない、ある国々を名指して非難し、これに対抗する軍事同盟であって、日中、日ソの友好
関係の現状にそぐわないものであるゆえをもって、わが方としては同
条約が第六条の
手続に従って正式に廃棄されることを強く要求するものであります。
同時に、同条が示すごとく、来年四月九日までに廃棄の
手続をとらない場合は自動延長期に入るわけであって、これを避けるためには、それまでに廃棄の意思表示を行うという
中国の今般の決定を歓迎するものであります。私は、
政府に対し、ソ連についても同様の
措置をとるよう働きかけることを要求いたします。(
拍手)
賛成の第四の理由は、本
条約締結が、わが方のいわゆる全方位外交から見て、対ソ
関係を含めて、特に支障なしと判断されるからであります。
対ソ
関係については、わが方は、先方の日中
条約に対する疑惑や警戒的態度に対しては、堂々と、かつ冷静に対処し、その
誤解を解くべきであり、わが方として負い目を感ずる必要は毫もないと信じます。
同時に、私が
質疑を通じ、
政府に要求したごとく、ソ連の善隣友好
条約の
提案等に対しては、わが方は、かかる代用品をもって平和
条約にかえるごときことは断じて
反対する旨を明示しつつ、北方四島を含む領土問題の最終解決を軸とする平和
条約を
締結するという基本原則をソ連が
承認することを明確にしたならば、それに至る中間
措置としての善隣友好
条約等については、まずもって、前述のごとく、この精神に全く背反する中ソ友好同盟
条約廃棄の
手続をとることをソ連に求むべきものと信じます。(
拍手)
なおまた、平等互恵の原則に基づく日ソ
経済協力については、積極的に応ずる構えをもって臨むべきことは言をまちません。
政府の唱える全方位外交なるものの実体については、
質疑を通じ、その概要が逐次明らかになりつつありますが、全体としては、その構想並びに
内容について検討と対策の不十分なるもののあることは遺憾であり、
政府の善処を強く要求するものであります。
その二、三の実例を挙げてみれば、次のとおりであります。
わが国の安全から見て特に重要な
地域は、朝鮮半島と台湾海峡であります。朝鮮半島における南北の対立緩和と共存の積み上げに向かって、今回の
日中関係を
発展させ、これを活用する
措置を強く望みます。
一方、台湾海峡の静ひつの維持は、日米中三国並びに台湾の
政府と住民の望むところと信じます。これが維持に努むべきであります。
次に、ASEAN
諸国の中立的なブロックとしての
発展と強化は、
アジア全般の安定に有効であります。これら
諸国側において、日中
条約の
締結に対し危惧と不安を抱いていることは、政治・軍事
大国中国と、
経済大国日本との親善そのものが引き起こす自然の現象であります。
また、他方、これら
諸国の中には、中ソの激しい対立が日中
条約の
締結により、一層激化することに対する不安もあります。したがって、ASEAN
諸国に対する適切な
措置を速やかにとることを
政府に強く要請したいと存じます。
以上の
意見を付し、私の本
条約賛成の
討論を終わります。(
拍手)