○
内閣総理大臣(
福田赳夫君)
お答え申し上げます。
まず、
景気問題でございますが、
経済を見る場合に、私は三つの非常に重大な要素があると思っておるのです。その第一は
物価でございます。第二は国際収支であります。第三は
経済活動、
雇用問題そういう問題である、このように見ておりますが、いま
わが国の
経済は、第一に申し上げました
物価、これは先進諸国の中でも一番安定しているというところまで来ておるわけであります。
物価問題はまずまずの成果を上げておる、このように見ております。
それから、第二の国際収支の問題でありますが、これはよ過ぎて実は国際社会からいろいろ問題を言われておる、このような状態でございますが、過ぎたるは及ばざるがごとし、私はその是正に努力をいたしておるところでございます。
それから、第三の
景気的側面でございます。本
年度初めに私どもは、本
年度の
経済は七%
成長だ、これを目指して発足をいたしたわけでありますが、その後の動きを見ておりますと、
日本経済の国内的側面はかなり順調だというふうに見ております。つまり、
国民消費は着実に伸びておる、在庫調整も順調に進んでおる、また、
住宅投資も活発である。それから特に
政府投資、これは、ことしの膨大な
予算、その実施過程でございますので、これも非常に大きく伸びつつあるわけでありまして、総じまして、国内的側面は大変順調だ。
ところが、対外的側面、つまり
輸出に問題が出てきておるわけであります。とにかく黒字問題は国際社会においてこれが是正を強く求められておる。
わが国は、
経済では大きな
責任のある立場にある国といたしまして、この国際社会における期待にはこたえていかなければならぬ、そういうような立場でございまするので、ある種の品目につきましては、昨年を超えて数量的にこれを
輸出するというようなことはあってはならないというような行政指導もいたしました。同時に、
円高がかなりの影響を持ってきております。
そういうようなことで、
輸出は今日もすでにかなり鈍化の勢いを示しておりまするけれども、この上さらに鈍化する傾向にある、このように見ておりますが、さて、この
輸出の数量的鈍化にもかかわらず、ドルの手取りは、これはまだまだ増加の傾向を示しておるのであります。そういうことで、
輸出の量的鈍化にもかかわらず、国際収支の黒字過剰を解消するというこの問題はまだいろいろむずかしい問題を抱えておりますが、それはそれといたしまして、とにかく
輸出の数量的鈍化ということは、それだけ円の手取りが減るということである。
わが国の
経済をそれだけ足を引っ張ることである。つまり、これがデフレ
要因であることは、これは間違いないのであります。
いまわれわれが当面しておる問題は
景気の問題であり、
雇用の問題である。そういうことを考えまするときに、これからの
日本経済、これをいまほうっておきますると、ただいま申し上げました対外的側面、つまり
輸出の鈍化、これがデフレ
要因として全体の
日本の
経済の停滞を招くおそれがある、そのように考えまして、いま
国会に
補正予算案をお願いいたしましたが、その他の
措置とあわせまして、この
輸出の鈍化によるところのデフレ
効果、これを何とか補って、年初に展望いたしました七%
成長といいますか、とにかく国際社会の中でも最も高いこの
成長水準を実現いたしたい、このように考えておるのでありまするけれども、金子さんは、なおこれから先を展望するといろいろ問題があるから油断をするな、このようなお話でございまするけれども、とにかくいま国際通貨が非常に不安定な状態である、いろんな波乱があると思うのです。でありますので、そういう中で何とかしてただいま申し上げましたような展望が実現されるように、全力を尽くしてまいりたい。
情勢が刻々と変化するでありましょう。その
情勢の変化に対しましては臨機、機動的に対処してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
いま申し上げましたように、国際社会の中でいろいろ問題があります。七月のボンの
会議におきましても、いま申し上げました
失業の問題、インフレの問題、あるいは
経済活動の問題それらの一連の問題が討議される。また、通商摩擦、その中から保護貿易主義の勢いというものが噴き出してきやしないかという憂えがある。これを阻止しなければならぬという、そういう通商をめぐる問題。それから資源エネルギーをめぐる問題。つまり、核エネルギーの平和的利用、これが拡散しないようにという配慮をしながら平和的利用を進めなければならぬという問題。そういう問題、それから南北の問題、これが論議されたわけであります。これは昨年も同じ議題が論議された。しかし、ことしは新しくつけ加えられたる
課題があったのですが、これが国際通貨問題であります。
いま、ドルの下落を中心といたしまして、国際通貨が非常に不安定な状態にありますものですから、
国際経済が安定しない大きな原因をなしておるわけでございますが、このためには、いまお話もありましたけれども、何としても
世界の基軸通貨であるところのドルが安定するということが絶対必要である、このように考えておるのでありまして、
アメリカに対しましては、つとに
アメリカのそのようなための努力を要請し続けてきておるのであり、またボンの首脳
会議におきましても私はこのことを強調いたしてきておるわけでありますが、最近になりまして、とにかく
アメリカもドルの価値安定のために幾つかの施策を打ち出しております。私は、これを歓迎はいたすものの、
アメリカがみずからの通貨の価値、しかし、同時に
世界の基軸通貨であるところのドルの価値安定のためにもっともっと努力を続けるよう要請をいたしてまいる所存でございます。
次に、いろいろの品目にわたりまして
円高差益還元の問題がありました。
まずお触れになりました小麦につきましては、これは非常に機微な
関係があるのです。それは米価とのつり合いの問題であります。いま何としても米が過剰である、その米価を高くするわけにはいかないし、またパンが大いに値下がりになって、そして米の需要が減殺されるということになってもいかぬし、その辺に非常にデリケートな問題があるとともに、国際相場の動きという問題があるのでありまして、そういう諸問題がありまするが、御趣旨の点はよくわかっておりますので、引き続いてこの問題は検討してまいりたいと考えております。
牛肉につきましては、先ほど下平さんに
お答え申し上げましたが、牛肉の安売りを行う、そういう値下げルートの新設をやるというようなことで、
円高消費者還元を考えておるわけでございます。
また、配合飼料をどうするんだというお話でございましたけれども、トウモロコシなどの
輸入原料価格が低下したのでありまするから、配合飼料メーカーに値下げをしてもらうことは当然であります。このための指導をいたしておりますし、また、事実、その結果配合飼料の価格は五十二年九月以降三回にわたって行われました。ただいま全体といたしますと二四%下げというところまできておるわけであります。
石油製品につきましては、これも
円高の問題がありまするので、行政的に価格値下げのための誘導をいたしておる次第でございまするけれども、かなりの値下げが行われておるということは御承知のとおりであります。
航空運賃につきましては先ほど申し上げたとおりであります。
なお、その他いろいろありますけれども、
円高が
消費者に還元されるような努力、これは企画庁を中心といたしまして、監視
体制等を充実いたしまして誤りなきを期してまいりたい、このように考えております。
一般消費税、これは慎重に、また単純明快な方式でやれ、こういう御指摘でございますが、これは先ほど
お答え申し上げたとおりで、そのとおりに考えておるのであると同時に、
政府といたしましては、まだ案を決めたわけでもなし、ましてそれをいつ、いかなる段階で実行するということを決めておるわけでもなし、これから慎重に検討してまいるということを明快に申し上げたいのであります。
なお、金子さんは、
一般消費税、これを採用する以前に行政
改革を大いにやれ、また中央、地方の
財政整理をやれというお話でありますが、これは当然のことであります。行政整理につきましては、昨年暮れにも
方針を決めましたけれども、はでなことは余りやりませんけれども、じみちに強くこれを推し進めておるところであり、中央、地方の
財政につきましても同様の考え方でやってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
なお、日中条約ができた以上、
経済、技術、文化等にわたりまして、事実上の交流を活発にせいというお話でありますが、これはそのように心得ておりまして、すでにまた、その
方向の動きが始まっておるということを申し上げさせていただきます。
また、
日ソの
関係につきましては、拙速を避け、わが方の立場を踏んまえて毅然として臨めというような御趣旨の御発言でございまするけれども、そのような考え方をいたしております。
率直に申し上げまして、
日中平和友好条約の締結に対しまして、ソビエト連邦におきまして不快感を示しておることは事実でございます。しかし、私どもは、先ほども申し上げましたとおり、いずれの国とも平和
友好のつき合いをしていきたいと思っておるのです。日中間で平和
友好条約ができた、これは日中間のことです。それによって他の国に何ら害する
関係を持つということはいささかも考えてはおりません。日中は日中、
日ソは
日ソ、そういうたてまえをもちまして、親善
友好の
関係を進めてまいりたい、さように考えておる次第であります。
二百海里宣言実施以来、
日本の水産界も非常に大きな変貌であるが、いかに対処するか、このような御
質問でございまするけれども、御指摘のように、非常に大きな影響がある二百海里
時代でございます。
政府といたしましては、多獲性魚の消費
拡大、利用加工の開発、それから国際協力を含む漁業外交の推進、また、遠洋漁業の新展開による新資源、新漁場の開発、そういうようなことも特に推し進めてまいりまするけれども、しかし、私は、一番大事なことは、二百海里
時代と言うけれども、
わが国もまた、二百海里に
わが国の漁業水域は広がったのです。
わが国の場合は――まあソビエトもずいぶん広がったわけですが、ソビエトが広がったその大
部分の
地域が北氷洋でしょう。あるいはオーストラリアも大きく広がったけれども、あれは相当
部分が南氷洋でしょう。私どもの
日本列島、この二百海里というものは、いずれも魚族に対しまして非常に適した水域でございますので、この二百海里を有効に開発しますれば、私は、新しい
意味においてまた
日本の漁業問題というものは大きく展開していくであろう、このように考えますので、そのような
認識のもとに二百海里
時代に対処してまいりたい、このように考えております。
それから、日米農産物交渉を一体どうするというお話でございまするが、日米間のMTN交渉、これは大体大筋は固まってきておるわけであります。ただ農業問題、二、三の品目につきまして双方に隔たりがあるということで、まだ最終的な決着には至っておりません。
しかし、私も
日本の農村の現状というものはよく承知しております。その
日本の農村の現状を踏まえまして、そして
アメリカ当局の理解も十分得て、そして妥当なところでその決着を見なければならぬ、このように考えておりますが、(「補償をどうする」と呼ぶ者あり)補償というお話もありましたが、補償問題が出てくるような、そういう決着にはしたくないのです。
いずれにいたしましても、
日本の農家が非常に大きな打撃をこうむるというようなことでなくこの問題を
解決してまいりたい、このように考えておる次第でございます。(
拍手)
さらに金子さんは、磁気浮揚方式、つまりHSSTとも言われまするし、リニアモーターとも言われますが、非常に快速な交通機関でありますが、この交通機関の開発を急げというようなお話でございますが、これは私も全く同感でありまして、
政府におきましても、この交通機関の開発につきましては積極的な協力をいたしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。(
拍手)
最後に、
有事立法問題、これにつきまして、
国民の間にまだ理解が届かない、よく申し上げておいた方がよかろうじゃないかということでございますが、これは私は
有事立法と言っておるのじゃないのです。これは有事
体制と言っているのです。自衛隊がある以上――自衛隊を認めませんという方でありますれば、これは何をか言わん。しかし、いやしくも自衛隊が必要である、自衛隊の
存在を認めるならば、一体自衛隊は何のために必要なのかと言えば有事のために必要なんですから、その有事の際にどういうふうに対処すべきかという
体制が整っておらぬということになりますれば、これは本当に自衛隊の
責任であり、
政府の
責任に帰すべき問題であります。私は、
国民は自衛隊というものは存続すべきものであるという理解を圧倒的多数の人が持っておると思うし、また、そういうことになりますれば、有事の際に何もまだ準備というものが十分でないというならば、ぜひこれを検討してもらいたいというのが
国民の大方の心であろう、私はこのように考えるのであります。(
拍手)
もちろん、
奇襲攻撃なんというような場合が、仮に頭の中で考えると、なしとしませんでしょう。しかし、
奇襲というような問題は、今日、科学技術、情報、そういうものが非常に進歩しておる、私どもの通常の常識では
奇襲というようなものは考えられませんし、また、そんなことが行われないように努力するのが
日本の全
方位平和外交なんです。考えられない
奇襲ではございまするけれども、観念的にはそういうものも考えられる。そういう万々一の場合にどうするかということにつきましてもよく検討しておくということが、自衛隊の
責任であり、また
政府の
責任である、私はこのように考えております。(
拍手)
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