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1978-10-17 第85回国会 衆議院 内閣委員会同和対策に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和五十三年十月十三日(金曜日) 委員会において、設置することに決した。 十月十三日  本小委員委員会において、次のとおり選任さ  れた。       逢沢 英雄君    小島 静馬君      小宮山重四郎君    玉生 孝久君       村田敬次郎君    上田 卓三君       上原 康助君    新井 彬之君       受田 新吉君    柴田 睦夫君       田川 誠一君 十月十三日  小宮山重四郎君が委員会において、小委員長に  選任された。 ――――――――――――――――――――― 昭和五十三年十月十七日(火曜日)     午前十時五十七分開議  出席小委員    小委員長 小宮山重四郎君       逢沢 英雄君    小島 静馬君       玉生 孝久君    村田敬次郎君       井上 一成君    上田 卓三君       大原  亨君    沖本 泰幸君       受田 新吉君    柴田 睦夫君       小林 正巳君  出席国務大臣         自 治 大 臣 加藤 武徳君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)     稻村佐近四郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         自治大臣官房審         議官      石原 信雄君  小委員外出席者         内閣委員長   始関 伊平君         法務省人権擁護         局調査課長   中津川 彰君         文部省初等中等         教育局小学校教         育課長     中島 章夫君         文部省社会教育         局社会教育課長 浪貝 一良君         厚生省社会局生         活課長     鈴木 昭雄君         農林水産省構造         改善局農政部構         造改善事業課長 阪田 彰夫君         中小企業庁計画         部振興課長   諸富 忠男君         労働大臣官房参         事官      鹿野  茂君         建設省住宅局住         環境整備室長  越智 福夫君         自治大臣官房参         事官      野村 誠一君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 十月十七日  小委員田川誠一君同月十三日委員辞任につき、  その補欠として小林正巳君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員新井彬之君同日委員辞任につき、その補  欠として沖本泰幸君が委員長指名で小委員に  選任された。 同日  小委員上田卓三君及び上原康助君同日小委員辞  任につき、その補欠として井上一成君及び大原  亨君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員井上一成君、大原亨君、沖本泰幸君及び  小林正巳君同日委員辞任につき、その補欠とし  て上田卓三君、上原康助君、新井彬之君及び田  川誠一君が委員長指名で小委員に選任され  た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  同和対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 これより会議を開きます。  同和対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  3. 上田卓三

    上田委員 きょうは同和対策事業特別措置法強化延長を決める、内閣委員会で設置されました同和対策の小委員会であるわけでございますが、本来ならば、八十四前通常国会でこの決着が図られることにもなっておりましたし、そのように私ども関係者はかたずをのんで見守ってまいったわけでございますが、残念ながら、延長幅あるいは内容改善が図られることなく、結果的には来年三月三十一日に切れますこの法律延長するということと、それから来年度の予算措置を従前どおり行うという二つの決定、そして延長幅については次期国会決着を見る、こういうような結論になったわけでありまして、とりわけ今次の臨時国会では延長幅をぜひとも決着をつけていただきたい、こういうように思うわけであります。当然中身改善の問題もございますし、その問題につきましては次回のいわゆる通常国会で十分御審議いただきまして、りっぱな改正案にまとまるようにぜひともお願いしたい、このように思うわけでございます。  本会議あるいは予算委員会、また昨日の内閣委員会等でもわが党の、あるいはまた公明、民社その他の先生方からも鋭く質問が出されまして、総理あるいは稻村長官等におかれまして、ぜひとも今国会延長問題に決着がつけられれば、これほどの喜びはない、こういうような言葉もいただいたようでございますし、また長官におかれましては、この延長幅については短期でなくきめ細かく、こういうような形で暗に二年間の延長では問題の解決にはならない、こういうような意味にとれる発言であっただろう、こういうように思っておるわけでございます。一九六九年にこの措置法ができたわけでございますが、十カ年の時限立法ということでありますから、当然私たちは十年間でこの問題が完全に解決がつくということを望んでおったわけでございます。  しかし、諸般の事情といいますか、私たちから言うならば政府の怠慢の結果、各省予算要求がやはり大蔵省段階で査定にあうというようなこともあって、所期の目的が十分果たせないままで九カ年が経過した。そういう中で、やはり法律が切れる時点でなお相当額同和対策事業が残る、こういうことで再延長の問題が大きく取りざたされてきておるだろう、こういうふうに思うわけでございます。とりわけ、あとどれだけ延長するのかということは、残事業の問題、あるいは事業という形で限定されるべきかどうかは問題があるにいたしましても、やはり教育とかあるいは人権の問題、法務省関係の仕事ですね、あるいは労働とか通産とかそういうふうな形で、必ずしも住宅とか道路とか、こういう物的な施設だけで解決しない多くの問題がまだひそんでおる、こういうふうに思うわけでございます。  とりわけ近年、われわれから見るならば差別事象といいますか差別事件がかえって頻繁に惹起されておる例も見られるわけでありまして、そういう意味で、やはりある程度予算は組むが、事業はするが、国民に対する部落問題の大事さといいますか重大さというものの認識といいますか、そういう啓蒙活動のおくれが、いわゆる同和地区はいいなとか、なぜあの人たちだけが特典を受けなければならないのだろうか、いわゆるその人たちが何世紀にわたって苦しい差別を受けてきたその歴史的な経過というものを一切抜きにして、現象面だけで、まだ同和地区よりも困っておる人が多いじゃないかというような、本当にそういう意味で、現実に部落大衆が悲惨な生活をし、また結婚問題あるいは就職問題などで本当に重大な基本的人権が侵されておる、そういう問題、いわゆる足を踏まれた者の痛みを逆なでするような、そういう発言すらもなされるということに対し、私たちは非常に憤りを感じざるを得ない、こういうように思っておるわけでございます。  特に国民の中でも比較的そういう教養人というのですか、常識あると言われるような学者とか文化人の中でさえもやはり部落差別を肯定するような、あるいはそういう賤称用語を使うなど、あるいは国会議員の中でもそういう文句も出るというような状況でございまして、本当に部落問題はそういう意味ではいまからが総仕上げといいますか、いまからが本格的な対策が始められるべきだ、ある人たちはもう同和対策は終わりに近づいているという認識もあるかもわかりませんが、私たちにとってはいまからが正念場だ、こういうふうに思っておるわけでございます。この小委員会は当面この延長幅の問題をめぐって、とりわけ政府において一定の決断をしていただく、あるいは与党の自民党の先生方の御理解をいただこうということが問題の趣旨でもあろうというように思いますので、以下、きょう総務長官を初め各省の方々がお見えのようでございますので、若干私の考えていることを質問にまとめてみたいし、またその他の先生からも、さらに突っ込んだ形の御質問なりあるいはまた問題点を別にしていろいろ御質問があろうかというふうに思いますので、一番バッターというような形になりまして、非常に私自身責任の重大さを感じ取っておるところでございます。  特にこの部落問題の解決は、これは一九六五年の八月に出されました同和対策審議会答申の中でも明確にうたわれておりますように、これは国の責任であり、地方自治体責任である、そして同時に国民的課題である。こういうことがうたわれておるわけでありますから、この部落問題の解決責任はひとえに行政府である政府責任である、こういうふうに言わざるを得ないというふうに思うのですが、しかし実際の問題の解決に当たっておるのは末端自治体ではないか、こういうように思うわけでありまして、政府末端自治体事業に対して、部落解放のためのいろいろな諸施策に当たっての事業に対して、補助なり起債をつけるということにとどまっておりまして、政府みずからが直轄事業というか、そういうようなものになっていないということ自身、われわれ非常に残念に思っているわけでございまして、多くが自治体にしわ寄せをされているということに、やはり自治体側からしても、もっと国の責任でこの問題解決をしてもらいたいという考え方が非常に強いのではないか、こういうように思っておるわけでございます。  しかしながら、部落大衆から見るならば、それが国であろうと、自治体であろうと、要するに問題の解決が図られればいいんだというようなことにもなるかもわかりませんが、現在の地方自治体の非常な財政難というような状況の中から、何か同和対策をすれば赤字の原因になるんだというような形のものさえも出てくるような始末でございまして、やはりこの問題の根本的な解決のためには、もっと国がこの問題に対して真剣に取り組んでいただく必要があるだろうし、延長問題それ自身、やはり政府が、いままでそれなりのことはしていただきましたけれども、怠慢のそしりは免れないだろう、こういうふうに思うわけであります。  さて、自治省の方がお見えのようでございますので、地方自治体が行っておるところの同和対策事業、いわゆる括弧づきの同和対策事業、これは事業と言いましても、措置法自身の中にも人権問題とかあるいは教育の問題とか、産業の問題とか、そういういわゆる物的なものだけ、いわゆる同対審答申でいうところの実態的差別対象だけでなしに、心理的差別対象も同対審答申でうたっておるし、特別措置法の精神も私はそうであろう、こういうふうに思っておるわけでございますが、いわゆる市町村の行っておる部落解放の諸施策、それを一概に予算だけであらわすことはできないと思いますが、とりわけ予算関係するものについて一体実態はどうなっておるのかということで、どれだけの残事業があると思われておるのか。全国市長会などでは、五十二年の十月の調査では一兆二千億の残事業があるというようなことも言われておりましたし、総理府の五十年調査と大きな食い違いを見せておるようでございますが、そういうものがもしわかればひとつここで、市町村同和対策事業というのは国の補助対象にならない単独事業も含まれておるわけでございますので、そういう点でひとつわかる範囲でお答えいただいたらありがたいと思います。
  4. 野村誠一

    野村説明員 自治省といたしまして、いま御質問にありましたように、地方自治体がどれだけ残事業を持っておるかという点については実は把握しておらないわけでございます。五十年に政府調査した事業量、そういうものは十分承知しておるわけでありますが、ただ、自治省基本的な考え方といたしまして、特別措置法趣旨に基づきまして同和対策事業というのは本来国がすべて補助対象事業として実施すべきものではないか、やはり法の趣旨から言えばそれが本筋じゃないかという基本的な考え方を持っております。  昨日御質問にもございましたが、私どもそういう意味実態は持っておりませんが、ただ地方債同和対策事業債ということで地方同和対策事業に対する財政措置というものを講じておるわけでございます。昨日申しましたのは五十二年度の数字を申し上げたわけでありますけれども、そういう充当結果を見ますと、一応これは事業費ベースでございますけれども補助対象事業分事業費で五五%、それから単独事業分が、事業費の比率が四五%、こういった数字が出ておるわけであります。それをさらに国費地方費という形で分けてみますと、国費が約三六%、それから地方費が六四%、こういった数字が出ておるわけでございまして、やはり総事業費に占める国庫補助負担費割合は依然として低い状態にあるんじゃないか。  そういった国の補助対象範囲の問題あるいは補助基準の問題、そういう点が非常にやはり問題があるんじゃないか、非常に不十分な点があるんじゃないか、そういう認識を持っておりまして、結果として地方自治体単独事業として同和対策事業を実施せざるを得ない、そういう実情にある、そういう例が非常に多いということは、そういう数字からもわれわれ認識しているわけでございます。そういう意味で、やはり補助事業としてどうこうということじゃなくて、基本的に同和対策事業は国の補助対象事業としてまず取り上げていただく、そういうことで国庫補助制度を充実していただく、それが先決じゃないかということで各省に早くから御要請を申し上げてきておるところでございます。
  5. 上田卓三

    上田委員 やはりいま特別措置法強化延長、とりわけ延長幅が大きな問題になっているわけですが、やはりそういう一つの物差しになるのは残事業だというように思うわけですが、地方自治体のそういう残事業自治省において把握されてないということは非常に私は残念だ、こういうように思うわけでございまして、これは早急にひとつ調べていただきたいと思います。これは各自治体で、府県ごとで、市町村の方でもまとめられておるだろうというようにわれわれは推定しておるわけですし、自治省なりあるいは総理府から聞かれればいつでも御返事を差し上げるというこういうような自治体もあるわけでございますので、これはそんなにむずかしい全国一斉調査をしなくても電話、あるいはこの措置法強化延長自治体の方も相当国会なり政府要請に参られておるわけですから、私はすぐ残事業量というものが出てくるのじゃないか、こういうように思うのです。  こういう意味総理府がまとめられておられるところの残事業量というものと地方自治体がまとめている残事業量の差が一体どこにあるのか、これは法律中身改正にも私は関連することにもなろうかと思いますが、やはりとりわけこの延長幅の問題の大きなかぎを握っておる、こういうように思うわけです。
  6. 大原亨

    大原(亨)小委員 ちょっと関連して一言。  自治省、いまあなたの方の御答弁を聞いていると、残事業調査していないということが一つと、それから同和対策事業は、あなたが指摘をされた四五%を含めて国庫補助対象にすべきである、こういう見解を言われたわけですよ。だから、そういう見解に基づいて、たとえば二年、三年でちょん切ると、挙げて自治体負担になるわけですよ。ですから、事業を遂行する自治省の立場でこの問題の調査を、期間延長議論になっているときにやってないということは、私は、自治省は非常に怠慢だと思うのです。自治省は怠慢です。調べようと思えばできるんです。こんなことは。だから、ことしの春以来いままで議論してきたことですから、そのことが大まかにわかっていないというようなことは、これがもし二年、三年でちょん切ることになって、後始末をどうするんですか。それは同和対策事業の本質、地域との密着性、こういうものを考えて放置できないことじゃないですか。非常に怠慢じゃないですか。調べようと思えばできるでしょう。
  7. 野村誠一

    野村説明員 残事業と申しますか、今後どれだけの事業があるかということにつきましては、自治省といたしましては、やはり各省同和対策事業について過去それぞれの所管分野について十分実績を積んできておられますし、実際の地方のそういった事業分野についての実情というものを十分御存じなわけでありまして、基本的には各省がやはりそれぞれの分野について実態を十分把握していただく。そしてその中で今後必要とする事業というのはどれだけあるのかということを把握していただくのが基本じゃないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、残事業がどれくらいあるかというようなことについて、やはり政府全体として統一的に対応していく、こういう問題ではないかというふうに考えておるわけであります。
  8. 上田卓三

    上田委員 それは自治省で調べるのか、あるいは総理府でするのか、あるいは各省が寄ってたかってするのか、いずれにしても政府責任で、末端地方自治体が行っている同和対策事業のいわゆる残事業の総額というものを明確にしていただきたい。  いま自治省の方のお答えの中で明らかになったのは、同和対策事業特別措置法適用を受けない、あるいは国の補助対象にならない事業相当額あるということが明らかになったわけです。自治省の持っておるところの同和対策事業債のうちで、いわゆる全事業量の四五%に当たる部分が国の法律適用外になり補助対象になっていない。もうちょっと詳しく言うならば、五五%が補助対象になり、三分の二の補助対象になり、あとの三分の一の八〇%がいわゆる十条適用によるところの同和債ということになるわけです。この十条適用というのは、この措置法の中でも述べられておりますように、いわゆる地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入するものであるわけでありますから、市町村で行うところの同和対策事業は全部国の補助金をもらって十条の適用を受けるところの起債を欲しいと言うのは、私は当然のことではないか、こういうように思うわけです。  そういう点で自治省が、四五%に当たるところの事業が国の補助対象になっていない、ゆえに十条適用起債は出せない、別途のいわゆる一般の起債というような形で一応この同和事業に対して、単独事業に対して、国が、やはりそれではかわいそう過ぎるのじゃないかということで、自治省みずからが起債を見ている。しかし、本来から言うならば、これは補助対象にすべきであるし、十条適用すべきだということで各省要請しているということであります。  重ねてお聞きいたしますが、その要請は恐らく財政局長通達あるいは事務次官の通達になっておるんではないかと思いますが、その内容についていつごろからいつごろまで各省に対して通達がなされたものか、その徹底はどうなっておるのかという点についてお聞かせいただきたいと思います。     〔小委員長退席村田委員長代理着席
  9. 野村誠一

    野村説明員 一番最初の時期というものは、私現在ちょっと承知しておりません。確認すればわかりますけれども、約十年近く前からだったと思いました。毎年概算要求の直前におきまして、財政局長名をもちまして各省に御要請をしているわけでございます。今年も七月の八日でございますが、やはり財政局長名をもちまして、「同和対策事業に対する地方財政措置について」ということで関係各省庁に対して御要請申し上げました。  その御要請を申し上げましたのは、先ほどの御答弁でも一部触れましたけれども、総事業費に占めます国庫負担事業割合というものが最近は少しずつ上昇はしてきております。してきておりますけれども、先ほどの数字でもすでに申しましたように、依然として低い状況にありますので、それというのもやはり国の予算措置というものが十分でない、そこで補助対象範囲とか補助数量あるいは補助単価、そういったものを地方実情に合わせるようにぜひ改善してほしい、こういう趣旨要請をしているわけでございます。
  10. 大原亨

    大原(亨)小委員 ちょっともう一つ関連。あなたはかなり具体的な答弁をしているのですよ。四五%は自治体が借金をして自治体責任でやっているという数字を出しておられて、漸次改善されているというので四五%は修正されるのだと思うのですが、そうすれば私はこのままで二年、三年で切れば、最初申し上げたように自治体は全部もろにかぶるわけですよ。途中でとめるわけにいかぬですよ、そんなことは。ですから、私はその数字自治省は把握していると思うのですよ。五十年調査との関係で及ばす影響が大きいから、私は言えないのだと思うのです。そういう推察をするわけです。  そこで小委員長議事進行ですが、私はきょうじゅうに、この小委員会審議のめどがつくまでに自治大臣出席を求める。きょうはあなた以外にも自治省の人は見えているはずだから、その点について自治大臣からやや事実に近い答弁をしてもらいたい、これは非常に大きな問題ですから。単に政治的に延長幅について議論して決めるという問題じゃないわけです。数百年の問題を九年間やってきたわけですから、その問題についてどういうふうにけじめをつけるかという議論をしているのですから、自治省自治体の第一線にあるわけですから、そこを掌握しているわけですから。いままでは市長会知事会等参考人を呼んで議論してもそういうことは裏づけられているわけですから、自治省見解もそうですから、そしてこれは十条適用すべきだという意見ですから。ですから、自治省としてあなたが答弁できなければ、事実に近い数字自治大臣出席をして答弁してもらいたい。これは議事進行上私は要求しておきます。
  11. 村田敬次郎

    村田委員長代理 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止
  12. 村田敬次郎

    村田委員長代理 速記を始めて。
  13. 大原亨

    大原(亨)小委員 小委員長自治省出身で詳しいわけですが、しかし、あなたは自治大臣じゃないので、私が申し上げているのは、いまの段階自治大臣が政治的にどこまで答えられるかということを含めて、きょう出席政府委員では答弁できないだろうと思うから、そういうことについて一つの非常に重要な意見として自治大臣意見を聞きたい、こういうことですから、あなたのお気持ちはわかりますが、進行上、この小委員会の権威のため、ひとつ小委員長は積極的に御協力いただきたい。
  14. 村田敬次郎

    村田委員長代理 私からお答え申し上げます。  いまの大原君の御要望につきましては、自治大臣の都合を聞きました上で御回答を申し上げます。
  15. 上田卓三

    上田委員 それで、ちょっと総理府の方に、長官でも同和対策室長でも結構でございますけれども、五十年調査の結果、総事業費で一兆二千億の残事業がある。そしてその三分の二が国庫負担分であるということで、五十年、五十一年、五十二年、そして本年度の五十三年の予算を差し引いた残りが五十四年度以降の残事業ということで三千二百六十億の数字が挙がっているわけです。この数字自身が五十年調査時点でありますから、その後、物価高を見まして、これはほかの先生にやっていただくことになるわけですが、どの計数を当てはめるかという問題が一つありましょうけれども、いずれにしても物価上昇というものを考えなければならぬし、またその後、百二十地区指定追加という形で出てきて、その事業量がどれだけかという問題もあると思いますが、その政府が言うところの三千二百六十億というこの額は、自治省の方がいま言われた、全国地方自治体のやっているところの全体の中の五五%に値する、政府がいままで認めてきた、あるいはこれからも認めようとする事業量であって、私から言うならば、過去の例で言うならば、四五%相当分が国の補助対象になっていない、私はこれは特別措置法法律違反だと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、四五%の部分が国の補助対象になっていないということから考えるならば、五十四年度以降においてもやはり国の補助対象にならないところの地方自治体単独事業というものがあるのではないか、そういうふうに私は推定しておるわけでございますが、その点について総理府はどのように考えておられますか。
  16. 黒川弘

    ○黒川政府委員 いま御指摘の、五十年調査をもとにいたしまして算出いたしました事業量国費ベースで当時七千六百四十億、それから五十三年度までの予算の対応状況を考えますと、単純計算で三千二百六十億になるわけでございますが、これについては、御指摘のとおり物価等の要因は含んでおらないわけでございます。  それから、この事業以外に、いわゆる単独事業の形で地方自治体が計画している事業は現在の段階でもあるわけでございますし、五十四年度以降にも見込まれるということはそのとおりだと考えております。
  17. 上田卓三

    上田委員 そうすると、国庫補助対象外の同和対策事業があるということ自身、大いに問題があるし、自治省が十年前からそのことがないようにということで局長通達が出ておるにもかかわらず、いまだに改まっていないということ自身、非常に大きな問題があるのじゃないか。逆に言えば、九年間さかのぼって、措置法ができた時点にさかのぼって、地方自治体が抱えておるところの同和対策での借金というのですか、あるいは持ち出しの超過分は、そっくり国において別個の方法で還元すべき問題ではないか。これは地方自治体が常に要望されておると思うのですが、そういうことはさておいて、対象外の同和対策事業が五十四年度以降にもあるということを考えたならば、五十二年度の時点でも四五%近くもあったということでありますから、私はそのことを単純に計算に入れることができるのではないか、ある程度の一つの大きな目安になるのではないか、こういうように思うわけです。  それから、文部省の方も来られておるようですから、ちょっとお聞きしますが、自治省補助対象外の単独事業に対して起債を出していると言いますが、これは学校の部分は別の起債ですね。自治省の方でもいいし、両方答えてください。
  18. 野村誠一

    野村説明員 原則として学校関係につきましては、義務教育施設整備事業債ということで起債面では措置しております。
  19. 上田卓三

    上田委員 ということは、自治省が実施していただいておりますところの同和対策事業債の中には、同和教育関係しての学校の施設整備の起債というものは含まれていない、別途の起債で充当している、こういうことが明らかになったと思うのです。しかしながら、文部省においても、未解放部落の子弟が一名でもおったら当然その学校の校舎設備を同和対策事業にするのかというような極論もあるかもわかりませんけれども、だれがどういう形で認めるのかという問題も一つあるにしても、現実に地方自治体において学校の施設設備などは同和対策事業として、同和予算として計上して実施しているところもあるわけですね。  だから市長会あたりが出しておるところの一兆二千億の中には、恐らくそういう部分も入ってきておるというように考えてもいいわけでございます。あるいはまた、国の補助事業対象にもならない、また自治省起債でそれ以外の残りの分を出していると言うが、それじゃ地方自治体がやっている同和対策事業国庫補助漏れのすべてを自治省が出せるかと言ったら、そうではない部分もあるのではないか。地方自治体が一〇〇のものに対してあなたのところが一〇〇%起債を認めておるものもあれば、九〇%とか八〇%という場合もあるだろうし、あるいは全然起債対象にしていないという部分もあると思うのですが、その点は肯定されますか。自治省、どうですか。
  20. 野村誠一

    野村説明員 先ほど申しました数字は、やはりトータルとして、各都道府県から充当結果として報告があったものについての事業費として集計した数字でございます。したがって、地方債等に充当していないというものが仮にあるとすれば、私どもはちょっと把握しかねます。
  21. 上田卓三

    上田委員 だけれども、あるということは想像できますね。
  22. 野村誠一

    野村説明員 その辺あるかないかわかりませんが、あるいはあり得るかもしれませんが、ちょっと責任を持ってお答えはできません。
  23. 上田卓三

    上田委員 文部省関係の学校の建物の関係については、当然そういうことが言えるのではないか。あなたの方の起債は出していないけれども、別の分野同和対策としてやられているという部分があるわけですから、その点はひとつ含んでいただきたい、こういうふうに思います。  そこで言えることは、いわゆる対象になっていないということでありますが、私はこれは二つのものを含んでいると思うのです。一つは、政府同和対策事業の範疇にありながら、予算範囲内ということで、たとえば大阪など、最近の例ではないのですけれども、五、六年前までは共同浴場は毎年五カ所建つのですね。ところが国の補助は二カ所しかくれない。あとの三カ所は県単費あるいは市町村で別にせよ、こういうようなケースがあって、本来補助要綱の中にはその事業が含まれておりながら、予算範囲内ということで補助をもらってないという場合と、たとえばきょう厚生省の方、来られていると思うのですけれども、診療所ですね。同対審答申などから見ますと、やはり部落の医療というものは非常に低下している。大阪と三重などで平均の死亡年齢が一般と比べて十四歳も低いというような結果も出ておるわけです。この病院とかあるいは診療所が同和対策として末端自治体から上がってくることに対して、恐らく厚生省は大蔵省に対して予算要求されているのではないかと思うのですが、実際それが補助対象になってないというふうにわれわれは把握しているのです。その点について現状どうなっているのかという報告をしていただきたいと思います。
  24. 鈴木昭雄

    ○鈴木説明員 診療所の整備につきましては、現在厚生省で行う同和対策事業として予算計上されておりません。そういう意味で、同和対策としてそういう診療所の整備というのは、現在厚生省としてはやっておりません。
  25. 上田卓三

    上田委員 そういう意味で、部落の医療を守るということがいかに大事であるか、この同対審答申でもそのことを明確に述べておるにもかかわらず、全国の六千部落、あるいは総理府調査によると五千数百ということになるかもわかりませんが、小さな五軒、十軒というような集落もあるから、そこもおしなべてということはいかないにしても、少なくとも厚生省がやっているところのいわゆる隣保館、大阪などでは解放会館と言っておりますが、この隣保館の設置個所分くらい、少なくとも千カ所くらいはこういう診療所の設置が必要ではないか、こういうように私は思っておるわけです。しかしそれが特措法の事業対象になってない。こういうことに見られるように、各省においても、当然だれが見ても同和対策事業として国の補助対象に考えなければならないにもかかわらず、その項目に入ってない。  確かに近年補助対象の枠がふえつつあるということはわかります。わかりますけれども、現実にいままでで言うならば、四五%のものが国の対象外になっているということを考えた場合に、端的な言葉で言うならば、部落大衆から言うならば、これも同和事業である、これも同和事業であると思いながら、地方自治体にぶつけるとそれは国の補助対象にならないし、いわんや対象外になって、自治省からの別の同和債の充当さえも当てにできないということで、本来は同和対策事業であるにもかかわらず、国からもオミットされ、地方自治体からもオミットされている事業というものは枚挙にいとまがないだろうというふうに私は思っているわけです。いまの政府のやり方から言うならば、部落問題はいま三年とか五年とか、いや十年と言っているけれども、これは三十年も四十年もかかるのではないかという部落大衆の実感から言うならば、私は本当に気の遠くなるような数字が出てくるのではないか、こういうように考えておるわけであります。  そういう点で、少なくとも地方自治体サイドあるいは自治省サイドだけでもそういうものを補完していくならば、恐らく残事業と言われるものが行政ベースだけでも一兆円は下ることはないだろう。そういうことを考えるならば、われわれの言うている最低五年ということは当然のことではないか、こういうように思うわけであります。  稻村長官にも、私なりあるいは奈良の川本議員からの要請もありまして、先般神戸の部落を視察していただいた。あの神戸の部落、私も何回か行ったことがあります。一たん同和対策として建てられた公営住宅が、その屋上にまたバラック住宅が建ち、またベランダに一部屋ができるというような形で、一たんやられた同和対策がまた同和対策で建てかえなければとうてい人の住めるような状況ではないというような現状も恐らく見てこられたんではないかというように思います。そういうことでいまの話の経過というものも、長官、真剣に聞いていただいたと思います。そういう意味で、現地を、本当に典型的な大きな関西の部落を見ていただいたわけでありまして、そういう部落が果たして二年、三年で解決するような状態になるかということで、恐らくそういう短期ではだめだというような実感を持って帰られたんではないかと思うのですが、一言御発言いただきたいと思います。
  26. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 上田さん、各省庁でもう少し詰めていただきましょう。私は何回も答えておりますから、各省庁の意見を踏まえてひとつお願いしたいと思います。
  27. 上田卓三

    上田委員 長官も、そういうことで後で最終的に詰めた段階で……。
  28. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 一つだけ申し上げておきます。  いまの質問というか御指摘というか、この前神戸や兵庫県の某市某町を見たわけです。そこで、私行ってみまして、完成されたところは大変すばらしい、これは予想をしておったとおりですね。そこで、完成されない場所、これはやはり早くやらなければいかぬな、こういう感じを持ったわけです。  そこで、これをやるとしても空き地がないのです。そこに住んでおる人たちをいやおうなしにというのではなくて、望んでいますから。しかし、あれだけの大ぜいの人がおられるから、やはり住居やいろんな借地権問題あるいは地主問題、営業上の問題と、いろいろ問題があると思いますが、その人たちに移ってもらう。移ってもらう先の住居を構える。仮住宅というのを準備しなければいかぬ。これに要する期間はどれだけかかるかなというと、これはその場所をただ一日見てきただけですけれども、大体私が想像するのには、やはり仮住宅をつくって移動してもらう。これは強引にぐっとというわけにもいかぬわけですから、これに相当の期間がかかる。  そこで住居を取り壊して、そこに新しく建設をする。これは中高層がいいのか、高層建築がいいのか。あそこは中高層もありましたし、高層建築――高層建築ということになりますと、その建物は幾ら何でも十八カ月くらいかかるだろう。これは移転をしてからの話ですよ。移転にどのくらいかかるかというと、これはやはりそう簡単に――生活になれておるし商売をやっておられる人もありますし、商売ばかりでなく、いろいろな環境が定着していますから、その人たちが入りたいという願いが込められておりますから、これはほとんど大部分が協力しますね。そういう話がかかればさっと行くけれども、中に二、三の問題点は、これはどこでもあることですがやはりあるわけですね。  そうすると、移転をする、この移転をするのに半年なら半年かかる。そこで建設をする。高層ならばこれは十八カ月から十一カ月かかる。それで終わりじゃないのです。その地区は。これは何区画に割っていかなければならぬか、これはやはり今度の延長の問題にも大きく影響がありますから、一回というわけにはどう考えても、私はそんなことはできるものじゃない。そうすると、これは仮に二回とした場合にどの程度かかるのかということになってくると、これはなかなか大変なんです。これはやはり長官室におって理屈を言っておるのと違って、現地に行ってみて、多少感じを、角度を変えて、同和対策事業、この措置法延長問題を考えていくという、こういう感じになったわけです。  そこで、きょうは各省庁が来ておられますから、私は何かおこがましいことを言っては大変恐縮ですが、質問される方も核心に触れて、各省庁に対して責任の度合いを追及してもらう。これは幾ら私に言ってみたって、うちの予算は一億しかない。今度二億にしたけれども、これだけなんです。だから、各省庁の責任ある回答を求める。これはやはり質問される委員の方に端的にそれでできるのか、できなかったらどうするんだ、こういう質問をされて、その結果に基づいて、各省庁の調整の機能を果たしている長官が結論を言わしてもらうというのが一番ベターだから、きょう私は幾らいじめられてもだめなんです。何ぼいじめても出ません。そういうことで、よろしくお願いをいたします。
  29. 上田卓三

    上田委員 いま長官から激励を受けたわけでございますけれども、まあ長官責任というものも追及しなければなりません。いま神戸の部落を視察されて、用地の買収にも地元の協力を得られるものの、かなり時間がかかるだろうし、建てるだけでもかれこれ十一カ月近くかかるのじゃないか。これは二区画にすれば倍かかるし、あるいは三区画にすれば三倍かかるというようなことの感想を漏らされたわけでありますけれども、建設省は同和対策事業の多くを占める事業を持っておられるわけでございますが、建設省において、全国の部落のそういう不良住宅を中心にして、地域の改善を図るについて大体どのぐらいかかると見ていられるのか。また、特に神戸の実態などについても建設省としての考え方も出していただきたいと思うのです。
  30. 越智福夫

    ○越智説明員 建設省におきましては、住宅関係事業と都市関係事業をもって生活環境の整備を図らせていただいております。  昭和五十年度の総理府調査によりますと、全体の事業費で七千四百六十二億円でございます。五十三年度の調査によって把握をいたしました事業費から、昭和五十年度から五十三年度までの予算額を単純に差し引きいたしますと、事業費で約二千九百四十一億円、国費で約二千百三十四億円の残事業となっております。これらにつきまして、なお生活環境の改善のために建設省としては最大の努力を払ってまいりたいと考えております。
  31. 上田卓三

    上田委員 それだけではよくわからないのです。いわゆる全国の未解放部落の住宅問題はそれで解決つくのですか。これだけの予算を投入すれば解決つくのですか。
  32. 越智福夫

    ○越智説明員 大変いろいろむずかしい問題が残っておりますけれども、これだけの事業量によって概数、これを整備を図ってまいりたい、努力してまいりたいと考えております。
  33. 上田卓三

    上田委員 これは何年かかるのですか。ざっとでいいです。
  34. 越智福夫

    ○越智説明員 年数についてはここで申し上げられませんが、年間の建設省の同和対策関係予算が、五十三年度で事業費が千五百八十三億円、国費で八百四十六億円でございますので、これで御判断いただきたいと考えます。
  35. 上田卓三

    上田委員 三年でできる……。はっきり言ってください。
  36. 越智福夫

    ○越智説明員 ただいま申し上げましたように、昭和五十三年度の事業費が千五百八十三億円でございます。今後もさらに予算を増額いたしまして、早期に解決するように努力してまいりたいと考えております。
  37. 上田卓三

    上田委員 要するに、五十四年度以降に同和対策として建てなければならない住宅が何万戸あるのですか、何千戸あるのですか。いま金額で言われたけれども、戸数で言ってください。
  38. 越智福夫

    ○越智説明員 戸数については持ち合わせておりません。
  39. 上田卓三

    上田委員 数字は千五百八十三億ですか。この分が残事業ですか。
  40. 越智福夫

    ○越智説明員 ただいま申し上げました千五百八十三億円は、昭和五十三年度の事業費でございます。
  41. 上田卓三

    上田委員 いや、ぼくが聞いているのは、残事業がどれだけあるかということ、あるいは残戸数というか、そういうものをいま問題にしているわけだから、それに答えてもらわなければいかぬ。
  42. 越智福夫

    ○越智説明員 事業費で約二千九百四十一億円、国費で約二千百三十四億円でございます。
  43. 上田卓三

    上田委員 これが残っているわけですね。これは、戸数ではわかりませんか。
  44. 越智福夫

    ○越智説明員 はい、戸数ではわかりません。
  45. 上田卓三

    上田委員 なぜわからないのですか。戸数がわかって、それから後で金が出るのじゃないですか。
  46. 村田敬次郎

    村田委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止
  47. 村田敬次郎

    村田委員長代理 速記を起こして。
  48. 上田卓三

    上田委員 それから、特に改良住宅などは、予算を組んだって、やはり二、三年おくれるということもよくあるわけでしょう。あるいは公営住宅の場合でも、なかなか、当初予算に計上しても、土地買収などでむずかしいということで、相当計画がずれてくるのじゃないですか。過去の実績などもあるでしょう。そうしたら、戸数もさることながら、予算を組んでも、それが二年、三年でいけると思ったものが実際は五年、六年になるという場合は、大いにあることじゃないですか。
  49. 越智福夫

    ○越智説明員 個々の事業地区におきましては、先生御指摘のような形で二年のものが三年に延びるということもございます。
  50. 上田卓三

    上田委員 だから、住宅だけに限ってみれば、その問題を解決するのに大体どれぐらい、いま延長期間が問題になっているわけですから、建設省としても、何年と言わなくても、そういう住宅問題を解決するのに大体これぐらいかかりますということを出す必要があるのじゃないですか、それが何年延長ということですぐつながるかどうかは別にして。建設省として五十四年度以降あと何年くらい事業をしなければ問題が解決しないかということは、あなたのところの主体性において論ずべきじゃないんですか。
  51. 大原亨

    大原(亨)小委員 関連して。  その実態は、予算額でなしに戸数なんだよ。だから、戸数についてどれだけ建設する必要があるかということをやはりここで答えなさい。それをあわせてやらなければ答えになりませんよ。価格は違ってくるのだから。
  52. 越智福夫

    ○越智説明員 戸数についてただいまお答えできませんでしたので、後ほど、整理をいたしまして、概数を御報告できるようにしたいと思います。
  53. 上田卓三

    上田委員 それでは、長官が視察された神戸の部落に限って答弁してくれますか。
  54. 越智福夫

    ○越智説明員 長官の御視察いただきました地区につきましても、相当長い期間をかけてやっておりますので、古いものにつきましてなお住戸改善しなければいけないというような事態が起こっております。それらにつきましては、建設省としては、一度建てました改良住宅につきましても住戸を改善するという予算措置も講じて、さらに居住水準の引き上げに努力してまいっておりますが、今後もさらにそういう努力を続けてまいりたいと考えております。
  55. 大原亨

    大原(亨)小委員 関連して。  いま長官は、いままで私も二回ほど聞いたのですが、非常に具体的な答弁をしておられるわけです。実態調査をね。その地区実態に即して、どれだけの不足戸数があって、どれだけの予算があってどれだけの年限で、関連を含めてどれだけの年数がかかるんだということをいまの地域について言われれば、非常に具体的な答弁なんです。机上プランじゃだめです。だから、いま長官の御答弁になったことについて、建設省としては住宅をいまのペースで何年あればできると、これは予算を組んだから一年でばっとできるわけじゃないわけで、できるということについては、どういう実態把握をしておられるのですか。机上プランだけじゃだめですよ。
  56. 上田卓三

    上田委員 この神戸の部落は何年かかって何戸建てた、そしてあとまだ何戸残っておる、過去のペースでいくとあと何年かかる、さらに、過去建てたものでも、相当期間がたっているからもう一度建てかえるというか、改良しなければならぬ、そういうものも含めたらどのくらいかかると――ただその場合、過去の例から言うならば、土地買収の問題とか移転の問題とか、いろいろのむずかしい問題があるわけでしょう。だから、数字は出てくるんじゃないですか。
  57. 越智福夫

    ○越智説明員 本当に申しわけございませんが、いま長官の申されました具体的な地区についての具体的な数字について私承知しておりませんので、後ほど調べまして、御報告さしていただきたいと思います。
  58. 沖本泰幸

    沖本委員 関連。  いまいろいろ御答弁があったのですが、同和対策事業があと切れるわけですね。そういうことの段階で、少なくとも政府が発表した残事業がある。それを消化するにはどのくらいかかるかということがいま焦点なんですね。私たちは、最低五年ということを野党全部が主張しているわけです。総理大臣は、与野党の話が一致すればということを言っているわけです。与党の方は、一年と言う人もいますし、二年と言う人もいますし、三年を言う方もいらっしゃるわけですね。現在の残事業に対して、総理府がまとめた残事業というものの中に、建設省が残事業で報告した数字というものはどれくらいあるのですか。
  59. 越智福夫

    ○越智説明員 昭和五十年度の調査の結果によりますと、五十年度以降の建設省所管の同和対策事業の量は、事業費で約七千四百六十二億円でございます。
  60. 沖本泰幸

    沖本委員 これから五十一年度、五十二年度を消化して、いまおっしゃった五十三年度やろうとしているのが千五百八十三億円ですか、そうすると、五十一年度、五十二年度の実施されたものは幾らあるわけですか。
  61. 越智福夫

    ○越智説明員 昭和五十年度から五十三年度にかけまして実施いたしました、また実施いたしております事業量は四千五百二十一億円でございます。
  62. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、これは差し引きしても三千九百四十億円ほど残るわけですね。五十年度から五十三年度にかけてやった仕事が四千五百二十一億円ですから、五十年度にわかったのが七千四百六十二億円あるわけですから、差し引いてみますと三千九百四十一億円、これから千五百八十三億円を五十三年度に実施するということでしょう。
  63. 越智福夫

    ○越智説明員 もう一度申し上げます。  昭和五十年度の事業量事業費で七千四百六十二億円でございまして、五十年度から五十三年度までの予算額を差し引きをいたしますと、二千九百四十一億円が昭和五十四年度以降に残っておることになります。
  64. 沖本泰幸

    沖本委員 いまおっしゃった二千四百幾らというのは、五十四年度以降に残るわけですか。
  65. 越智福夫

    ○越智説明員 そうでございます。
  66. 沖本泰幸

    沖本委員 これが正式に総理府の方へおっしゃった数字ということになるわけですか。
  67. 越智福夫

    ○越智説明員 そういうことでございます。
  68. 沖本泰幸

    沖本委員 そうすると、建設省だけで二千四百億ほどが残事業ということになるわけですね。
  69. 越智福夫

    ○越智説明員 事業費で二千九百四十一億円でございます。
  70. 沖本泰幸

    沖本委員 はい、わかりました。  そうすると黒川さん、一応の政府としての法律が切れる段階での残事業量というのは、各省全部含め、国全体として幾らあるのですか。
  71. 黒川弘

    ○黒川政府委員 残事業の総額につきましては先ほど申し上げたわけでございますけれども、順を追って申し上げますと、五十年調査でつかんでおります事業費の額が国費ベースで約七千六百四十億でございまして、昭和五十年度から五十三年度までの予算の中でこの事業に対応する分を差し引きますと、単純計算で三千二百六十億円になります。これが各省関係する事業の総額でございます。
  72. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、いま建設省が二千九百四十一億円が残事業ということをおっしゃっているわけです。これとの絡みはどうなるわけですか。
  73. 黒川弘

    ○黒川政府委員 先生のいまおっしゃっていらっしゃいます数字はいわゆる事業費ベースでございまして、私がいまお答え申し上げましたのは国費ベースでございますから、大まかに一言いまして一と三分の二の相違があるということでございますが、いま建設省が約二千九百四十億と言っておりますそれに対応いたします国費の額は、約二千百三十億でございます。
  74. 沖本泰幸

    沖本委員 二千百三十億が建設省分ですね、国が持つ分ですね。
  75. 黒川弘

    ○黒川政府委員 はい。確認的に申し上げます。二千百三十億円が建設省の国費に相当する事業額でございます。
  76. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、三千二百六十億の中の二千百三十億円というものが建設省が持つべき残事業量ということになるわけですか。
  77. 黒川弘

    ○黒川政府委員 そのとおりでございます。
  78. 沖本泰幸

    沖本委員 そうすると、やはり住宅ベースで持つウエートが残事業の中で一番大きいということが言えるわけですか。
  79. 黒川弘

    ○黒川政府委員 おっしゃるとおり、建設関係のウエートが一番大きゅうございます。
  80. 沖本泰幸

    沖本委員 それはそれで一応おかしていただきますが、この前の通常国会の中でのやりとりの分を引き抜いて、もう一度お伺いするということより、もう一度振り返って問題を申し上げてみたいと思うのです。  前にも申し上げたのですが、同対審答申で大体特別措置法ができる基本的な精神なり目的というものに沿って法律ができたわけであり、法律が尊重されなければならない、それに従っていろんな仕事が生まれてくるわけですから。ということになりますと、同対審答申では「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。」「これを未解決に放置することは断じて許されないこと」であるがために同和対策特別措置法が九年前にできたということになるわけです。  ですから、残事業につきましてもいろんな問題で食い違いがいろいろ出てきているわけですけれども、当然政府がその内容を十分に調査して、そして国民の前にこういう問題が残っております。こういうことになりますということを明らかにしていかなければならない責任があるはずなんです。ところがむしろ現在の段階では野党の方が一生懸命やいやい言っているということで、政府の方が受け身の方に回っておるということ自体が本末転倒していることじゃないかというふうになるわけです。ですから、残事業なり問題点を考えていただくのは、各省ともここの基本精神に立ってもらって、問題をもう一度振り返って処理していただかないと、全然ずれたところに問題を持っていってしまっている、そういうことになってくると私は思うわけです。  ですから、大きな問題になっている、民間でやっている名簿をつくったとか、いろんな差別問題がどんどん起こっていることは、むしろそういう基本的な問題に各省が立っていないから防ぎ切れない、あるいは前を向いて問題を持っていけないというところにあると私は考えるわけです。ですから、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題であるということなんですから、私は前からずっと言い続けておりますけれども国民に十分な認識なりということを政府自体が与えていかなければならない。それが十分やっていけておったら差別問題はだんだん減ってくるはずなんです。特別措置法をつくって、それに従ってやっているわけなんですから。  ですから、そういう問題が消えてくるのに、それがむしろよけい問題がかき立てられて大きくなってきているということは、やはりそういう面に対して政府がおやりになったことが残っている。その反面に、十分な予算を見込んで実態というものをよくおつかみになっていらっしゃらない、そういうところに問題があると思うのです。ですから、部落解放同盟からのいろんな報告、それによっても実際に法律ができてから政府が動き出してきた。長官がいらしゃいますけれども同和対策室が五年たってやっとできたということなんです。それから調査が始まっているわけです。そこでまとめ出しているわけです。ですから、そこから総理府がまとめ役として本格的に腰を入れて取り組まれて各省にいろいろなことをおっしゃって、それで実態調査が始まった。そのときはすでに五年たっているということなんです。それから実態調査が始まっているわけですから、法律が実際に生きて動き出したというのは、六年も七年もたって動き出したということになるんです。全然予算的な措置がなかったかというと、なかったわけではないのです。あったんですけれども実態がわかっていませんから、十分なことができませんというのがずっと各省答弁だったわけです。  だから、そういう経緯が各省から出てこなければいけないと思うのです。何年から調査を始めて、自分の省では何年に実態がほぼつかめました、それによってこういう予算を組んでいきました、ですから、実際にはこれだけ残っております。こうなってこなければならない。その上わかってきたということは、その後もやはりまだわかっていなかった部落がだんだん出てき出した、そして政府の対応に応じ出す県も出てき出した、こういうことですから、初めに進んでいたところと、それからやっと腰を上げた県とでは段違いの問題が起こってきているはずなんです。そういう実態もやはり十分明らかにしていただかないと、残事業というものがしつかりとつかめたということには至らないのではないか、こういうふうに、私は大まかな物の言い方をしておりますけれども、言えるんじゃないかということになります。  そこで、この前の通常国会で湯山先生質問なさった中にあるのですけれども政府ベースでいけば三千二百億、それから物価上昇を見込んでないけれども、五十一年度に一一・八、五十二年度に七・六、それから五十三年度、総理が言っているけれども六・八%、それから五十四年度からのが残っている。この分だけでも合わせると二六%以上になる。これを掛けると大体四千億を超える。それから地区の数も四十六年から五十年までの四年間で四百ふえている。それから、いまの予算委員会での答えに出てきているわけですけれども、従来のことから、残事業を合わせていくと一兆二千億になる、国の負担が七千六百四十四億という計算だから、これから見ると実際の事業量から言えば、スタートが遅かったという面があるけれども、半分程度であるというのが答弁からでも出てきている、こういうことになるわけです。ですから、与党の中でおっしゃっている、二年でできるというのは、いまおっしゃったような二千億とか三千億とかいう政府実態調査で明らかだとしていらっしゃる額に従っておっしゃっているわけです。そういう点を湯山先生も指摘しておるわけですけれども、これは各省とも、相当期間がたっているわけですね。この問題に対して答えを用意していただきたいと思うのです。  いま自治大臣がお見えになりましたので、私の質問は一応おりさせていただいて、自治大臣への御質問の方にかえさせていただきたいと思います。
  81. 大原亨

    大原(亨)小委員 自治大臣せっかく……。  午前中上田委員から自治省にいろいろ御質問がございました。そこで明確にできない点と、それから特に自治省同和対策事業あるいは関連した啓蒙教育等について実施をする第一線の官庁を言うなれば指導助言、掌握しておられる官庁ですね。ですから、自治大臣意見はこの延長の問題についてはきわめて重要な意義を持つ、私はこういうふうに考えたわけです。そこで、十分という時間を割いて来ていただいたわけですから、二つの点についてお答えいただきたいと思うのです。  その第一は、自治省政府委員からいままで答弁がありました中で、自治省の立場、自治体の立場での残事業についての的確な調査をしていないという一点があるわけですが、質疑応答の中で明らかにされた点は、同和事業は全部補助事業としてなすべきである、これは事業の性質上そうすべきである、自治省はこういう見解を持ち、局長通達等も今日まで出しておられるわけです。しかし、細かな議論は別にいたしまして、いわゆる十条の国の補助事業が五五%とすれば、残り四五%は自治体が借り入れをして事業を遂行しておられるわけです。ですから、自治体同和対策事業を進める上においては各省庁の、日本の一つの欠陥ですが、縦割り行政の中で国庫補助をつけて流しますけれども、その裏づけの財源については十条がございますが、しかしこれを総合的に受けとめて地域における環境整備事業をする上においては実施の過程において非常にたくさんの問題が起きるし、いわゆる補助対象以外の経費が必要である、そういうことは明らかなんです。たとえば、全国市長会だけの見解ですが、全国市長会は前国会の本委員会でも五十二年の価格で一兆二千億円という発言をしておられます。そこで、残事業について自治省の立場で掌握していないということは、非常にむずかしい問題ではありますが、たとえば五五%、四五%という数字も出ているわけですから、大体どの程度の残事業の規模が必要であるかという点について、かなり政治的な判断を含めて自治省見解があってしかるべきではないか、これが第一点。  それから第二点は、自治大臣の立場から、自治体の立場に立ってこの事業を締めくくっていくあるいは区切っていくという観点でありますと、たとえば前の国会のときには小委員会で稻村長官政府全体の見解として、同和対策事業は関連事業があることですから、太く短くではない、きめ細かくすそ野を広くやらなければ一つのけじめにはならぬ、こういう見解を議事録に残しておられるわけですね。いままでの議論を通じまして、二年、三年で片づくような問題ではないと私は思っているのですが、野党側がそれでいいと言っているわけではないが意見がそろっておるのは、五年を区切って少なくともこのけじめをつけていくべきではないか、その中でこの歴史的な同和対策事業、佐藤内閣のときに初めて手をつけたわけですから、これは画期的なことですから、この実績を踏まえて、ようやく軌道に乗りかかった同和対策事業について、責任ある行政上の措置を確立する必要があるという観点に立てば、自治大臣として二年、三年で足りるのかどうかということについて、党を離れて、行政当局として、自治省として、自治大臣のこの段階における見解があってしかるべきではないか。その点についての見解をお伺いしたい、これが第二点であります。  二つの点について、自治大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  82. 加藤武徳

    ○加藤国務大臣 同和対策事業を実施するに当たりましては、地方団体が非常な苦労をしながらやってまいっております。そこで自治省といたしましては、地方団体の負担を極力軽くしてもらわなければならぬし、こいねがわくは、全事業補助対象にすべきだ、こういう基本考え方を持っておりまして、毎年度予算を編成いたします前に、各省庁へその意見を強く申し述べておるのでありますけれども、しかし、対象範囲でありますとかあるいは単価の決定でありますとか、かような面におきましていまだ不十分な点が多うございます。そこで、結果といたしましては地方団体が相当の負担をしておる、これが事実でございまして、正確な数字は記憶いたしておりませんけれども起債を許可するに当たりましては、補助事業の裏負担の許可と、単独事業の許可と両者がございます。これを総計してみますと、いまお話がございましたように、やはり四五%程度その負担をいたしておる、これが端的な数字でございます。  そこで政府といたしましては、残事業実態調査をしたことが――あるいは総理府等から詳細な説明があったかと思うのでございますけれども調査をいたします段階で、自治省もまた参加をいたしまして、政府としての調査をいたしております。ですから、公的に表現できます残事業は、その調査数字であろうかと思うのでございますけれども、しかし昭和五十年に調査をいたしました後、百二十の新たな地域も指定されておるようでありますから、これは当然カウントさるべき性格のものだ、こう理解をいたしておりますが、自治省独自では残事業調査をいたしておりませんので、明確には申し上げにくいのであります。ただ、起債を許可する観点からいたしますと、いま申しましたように四五%程度単独でやっておる、かような数字でございます。  それから、相当の残事業がありますので、二番目に御指摘がございましたように、短い期間の延長ではとうてい完全な事業消化はできなくて、相当の年数が要るではないか、かような御指摘でございました。  そこで、各政党内においてもいろいろ研究をなされておることは御承知のとおりでございますし、ことに十年前立法化されましたいきさつを振り返ってみますと、議員発議の形ではなく政府提案にはなりましたものの、その背景をなしましたのは各党間の合意、この上に成り立った特別措置法である、こう私は理解をいたしておるのでございます。そこで、いま各党間で盛んに話し合いがなされておる最中でございますから、この段階延長することはもとより賛成であり、延長しなければ事業の消化ができない、このことは明確でございますけれども、どの程度延長さるべきかにつきましては、明確に答え得べき段階ではないので、この点は御了承願いたい、私はこういうぐあいに思います。
  83. 大原亨

    大原(亨)小委員 時間が限られておるので守りたいと思うのですが、ただ自治大臣、九年前に同和対策特別措置法をつくりましたのは、御承知のような同対審答申を受けまして、立法化すべきかどうかということについて議論があったことは事実で、その中で岸元総理あるいは佐藤元総理大臣は、非常なイニシアチブと決意を持ってこれの打開に当たられたわけです。  そのときのいろいろな議論は別にいたしますが、寝た子を起こすなという議論もあったわけです。しかし、寝た子を起こして、そうして啓蒙し、教育し、ようやく事業と一緒にいまやこの同和事業が緒についた。大きな実績を上げつつある。いろいろな問題はあるかもしれないが、上げつつある。これは間違いない。そうして九年間実施をしてきた経過から考えてみて、九年前の当時の各党の合意によってできたときとは違って、事業やいろんな行政を実施する過程において政府が今度は執行上の責任を持ってきたのであるから、そこで、各党の意見もさることながら、単なる政治的な議論だけではなしに、いままでの実績に基づいて、行政上の立場から、この同和対策事業という歴史的な事業はどうあるべきかという点について、総理以下総務長官だけではなしに、この問題については重要なポストである自治大臣は、やはり独自の見解があってもしかるべきではないか。各党の合意ということに任せないで、出発はそうであったかもしれないけれども、九年間の実績を積んだのですから、そこにどういう欠陥があり、どういう問題があるかという観点に立って、その内容はいままで議論いたしましたが、かなりこれは問題があることは、指摘いたしましたように事実であります。  ですから、自治大臣としては、もう少し私は端的に聞きますが、二年、三年というので幕を引くなどというふうなことは、とても行政上私どもの常識から考えてみても考えられないというふうに私は考えるわけですが、そういう議論に対しまして、自治大臣としては賛成ですか、反対ですか。
  84. 加藤武徳

    ○加藤国務大臣 先ほど、相当の残事業がある、こういう表現をいたしたのでありますけれども政府としては今後さらに同和対策事業を強力にやっていこう、この基本考え方には変わりはございませんし、そうして集中的に大量に各年度事業を消化していきますのか、あるいは財政状況上それが不可能であるといたしますならば、ある程度の年数を必要といたしますのか、その辺の認識によりまして延ばす年数も異なった議論が生まれてこようかと思うのでございますけれども、私はさっき申しましたように、この段階でどの程度の年数ということは明確に表現しにくいのでございますが、しかし、相当の事業があり、そして集中的にやるといたしましても、ある程度の年数は必要である、こういう認識に立っております。  それから、福田総理大臣のことがいま大原議員のお話の中にございましたけれども、内訳を申しますと、前回の閣議におきまして総理も、積極的に同和対策事業を推進すべし、そうして、できれば今国会中に決着をつけるべきだ、こういう積極的な発言をしておるのでございますから、総理同和対策事業に対しまして認識が足りないということはみじんも私どもは考えておりませんし、きわめて積極的な態度だ、こう理解をいたしておることをつけ加えておきたいと思います。
  85. 大原亨

    大原(亨)小委員 それでは委員長、これだけの発言で終わりますが、私が申し上げましたように、二年、三年などで切ってしまうなどというふうなことはあり得ない、こういうことについては賛成である、こういうふうな御答弁というふうに理解をいたしまして、私の質問を終わります。     〔村田委員長代理退席、小委員長着席〕
  86. 上田卓三

    上田委員 ちょっと一言だけ。  いま、四五%がいわゆる十条適用外ということでありましたけれども、過去の同和債の合計が二千七百一億円あるのですね、現在同和債として自治省から借りている分が。そのうちの二五%が十条の裏打ちを受けた額なんですよ。だから実際は、過去のトータルから言うと、七五%が単独負担の部分に対する同和債になっておるのですね。だから、国は全事業に対して二五%しか補助金を出していないということになるのですよ。それを十分理解してもらわなければいかぬと思うのです。それだけ言っておきます。
  87. 加藤武徳

    ○加藤国務大臣 わかりました。
  88. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止
  89. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 速記を起こして。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後五時三十二分開議
  90. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  同和対策に関する件について質疑を続行いたします。井上一成君。
  91. 井上一成

    井上(一)小委員 文部省の方にお尋ねをいたします。  差別をなくするために、いわゆる基本的人権を守るんだという同和教育を推進されているわけですが、このことは何年で完全に全うできるのだ、そういう時間的なものでは私はないと思うのですよ。一生涯かけてでも、あるいはいつどんなときにでも差別をしてはいけないし、また差別を受ける子供たち差別と闘う、そういう人間をつくっていくことが文部省の基本的な同和教育の柱だと私は思うのです。大ざっぱな表現ですけれども、私のいまのその考えに同意されますね。もし私の考えと意見が違うようでしたら、違う部分を指摘していただきたい。全く同じであればその通りであると。
  92. 中島章夫

    ○中島説明員 私どもでは、日本国憲法と教育基本法の精神にのっとりまして、差別をなくしていくという教育をあらゆる場で徹底していかなければいけない、こういうふうに考えております。したがって、その時間的な問題は、差別がある限りそういう教育は充実をさせていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  93. 井上一成

    井上(一)小委員 まさにそのとおりだと思うのです。差別が存在する限り同和教育は推進していかなければならない。いま論議になっている、時限立法ではあるけれども差別をなくするための、いろいろと議論のあるこの法律、その見地からいけば年限をここに持ち込むということは基本的に誤った考え方だ、私はこういうふうに思うのです。この法律趣旨あるいは同対審の精神から考えれば、年月あるいは残事業はどこだという認識で取り組むこと自体に間違いがある、こういうふうに思っております。やはり心理的な、いわゆる内面的なものも含めた差別解消が、差別の心を持たない、差別の現実をつくらないということが一番大事だと私は思うのです。  そういう意味では、この法律は五年や十年で、本当は早く差別がなくなることが望ましいのですよ、しかし、文部省としてはそんな短期間で本当に差別を解消させるという自信がおありなのかどうか、聞かしてください。
  94. 中島章夫

    ○中島説明員 過去九年間には同和教育についてかなり充実した実績を上げてきていると思っておりますが、教育の面での差別というものは、おっしゃるとおり、なかなかある年限を切って解消するものではない、こういうふうに思っておりますので、そういう差別がある限り私たちはこれを充実していく、こういう考えでございます。
  95. 井上一成

    井上(一)小委員 縮めて言えば差別がある限りこの法律は必要である、差別がなくなることによってこの法律は必要がなくなる、こういうことなんです。もちろん私はあなたから強い考えを聞かせていただきたいけれども、私の意見に対して同意されるのか、いや、この点は文部省の考えは違うのだという部分があれば指摘をしてほしい、こういうことで質問をしておりますから、私の言っていること、差別がある限りこの法律は必要である、こういうことです。このことについては同意をしていただけますね。  そしてまた差別をなくするために文部省は真剣に取り組んでいただいているわけです。確かにこの法律ができてから同和教育に一定の成果を見ることができたと私は思うのです。しかし、差別がなくなるまでこのような法律の必要性を認めてもらいたい。認めるべきである。認めてもらいたいじゃなくて、本当は私は願わないのだけれども。本当にこういう法律があること自身日本の国として恥ずかしいのですよ。そうでしょう。文部省としては、そういうことについては十分心を痛めていらっしゃる。きのう文部大臣は私と基本的に同じ考え方を持ってお答えをなされたが、事務的に事を処理していらっしゃる行政の中で、この法律の時限を切っていくということは文部省としては大変困る問題だと私は思うのです。それ以後はどうなんだ、それで完全にすべて解消されるのかといったらされないでしょう。困るのですよ。困るのはあなた方なんですよ。実際に実務するあなた方だ。私は、そういう意味では本当に、率直にこの法律基本的に充実していくことを文部省は望んでいらっしゃると思うのです。いかがでしょう。
  96. 中島章夫

    ○中島説明員 私ども、たとえば同和教育の研究指定校を設けたのは昭和三十四年でございますし、同対法ができます以前からもそういう面は充実をさせてまいりましたけれども、この同対法ができましてさらに一層充実をさせたわけでございます。その中で先ほど申しましたように、一定の成果を上げてきたと思っておりますが、実は私ども一般法の中で、たとえば同和の加配の問題とか検討している問題もかなりございまして、そういう問題は特別措置法延長問題と直接の関係はなく、今後とも必要がある限り充実をさせていく、こういう基本的な心構えでおります。
  97. 井上一成

    井上(一)小委員 もちろん一般法でも補足的に、あるいは相乗した中で必要なものを埋めていかれているという現実はそれは私も認識しておるし、それはそれなりの一定の評価をしたいと思うのです。でも文部省としては、くどいようですけれども、時限で切られるということには基本的には賛成でないというか、そういうものではない、賛成、反対は立場上あるからよしましょう、そういうものではない、そういうことで処理していくものでないということはお認めになられますね。私はそう思っているのです。いかがですか。
  98. 中島章夫

    ○中島説明員 年限を切りまして、その間に心理的差別、そういった問題が解消してしまうとは思えません。差別がある限り、私どもはこの事業を充実さしていく、こういうつもりでございます。
  99. 井上一成

    井上(一)小委員 あなた方の気持ちというものは私は十分理解できますし、全くそのとおりだ、差別がある限り、法律でもってその差別がなくなるように行政というものは主体的に取り組んでいくべきであります。ひとつそういう点についてはあなた方の意思が十分反映できるように努力をしてください。これはお願いをしておきます。  厚生省、来ていらっしゃいますか。――いま私が文部省の小学校教育課長に尋ねたことを繰り返したくありません。繰り返したくありませんけれども、いわゆるみずからの権利の保持というか、そういうものについては不断の努力というものがそこには私は必要であると思います。権利を保持していくために常に努力していく。わかりますね。そのためにはみずからの不断の努力というものは当然必要である。私は、差別を受けている、あるいは差別を受けた中におる人たちに対して厚生省がいままで取り組んでこられたいろんな行政面での、施策面での問題点、そのことについてここでは指摘いたしません。  しかし基本的に、人間が生きていくために、あるいは生きようとしてみずから努力をしていらっしゃるその人々のために、いま文部省にもお尋ねをしたように、時間を決めて、期限を決めて問題を処理することが本当にいいのかどうか。そんな性質のものではない、そういう性格のものではないという一つ基本的な私なりの理念を持っているわけです。まさに厚生省もそういうことについては同じ考えを持っていらっしゃるのかどうか、いかがですか。
  100. 鈴木昭雄

    ○鈴木説明員 厚生省といたしましては、物的施設の整備以外に、いわゆる行政施策として代表的なものとして隣保事業をやっております。先生御案内のとおり、隣保事業というのは、地域の方々の各種の生活上の相談に応ずるとか、あるいはその他いろいろ社会福祉とか保健衛生の問題とか、あるいは啓発活動とか、そういうことをやっておるわけでございます。厚生省といたしましても、そういうような生活実態がその対象地域にある限りは、やはりこの隣保事業というものは実施していかなければいけないのじゃないかと考えているところでございます。
  101. 井上一成

    井上(一)小委員 私は、基本的な認識として、差別をなくするためには、どうしてもそれをなくするための行政の主体的な取り組みができるような法律、制度というものが必要である、こういうことです。そういうものを時限的に切っていくことについては、あるいは短い期間でやることは、行政それ自身が非常に困るのだ。それで達成ができ得るかどうかということ、短い期間では達成ができないし、またそういうことで責任が持てるかどうかということになると、むしろ皆さんの方が非常に困られるのではないだろうか。  そういう意味では、これはいま文部省と厚生省だけにしか聞きませんでしたけれども各省にまたがって同じことが言えると思います。そういう意味では、皆さんの考えているところを率直に今後示していただくことが非常に大事である。大臣が、あるいはいろいろな与野党の中で話し合いがなされているわけですけれども、実務に熱心に取り組んでいらっしゃる皆さんの考えを十分運営に反映できるように、そして基本的な問題としてはいま申し上げたことを十分踏まえて取り組んでいただくことを、私はここで強く要望をしておきます。そして、大変短い時間でしたけれども、私の質問を終えたいと思います。どうもありがとうございました。
  102. 小宮山重四郎

  103. 沖本泰幸

    沖本委員 私は休憩前の質問から引き続いてということになるわけで、質問内容がばらばらに飛ぶようなことになりますけれども、前にお伺いした問題と、これからいろいろ申し上げることとを関連させながらそれぞれお答えいただきたいと思うのです。  それでまたもとに戻るようなお話になりますけれども、そして言わずもがなみたいな点になりますが、どうしても私としては納得できないので、原点に一遍返ってみたい、こういうことでお伺いするわけですけれども同和対策特別措置法の第四条に「国及び地方公共団体の責務」というのがある。これには「国及び地方公共団体は、同和対策事業を迅速かつ計画的に推進するように努めなければならない。」こうなっておるのです。ところが、いままでいろいろ指摘された点からいきますと、超過負担の問題なり、この法律ができてから政府補助なり何なりいろいろな問題点が浮き彫りにされてきた。法律が十分でないので、十二項目の確認事項までついておったわけなんです。そういう内容の中から進めていったわけですけれども、公共団体という点からいきますと、結局地方公共団体のところにしわ寄せがうんと行っている、これは否めない事実だと思うのですね。  そういう点からいきますと、「国及び地方公共団体は、」とこう明記されているわけですけれども、国というのが抜けているような気がするわけです。ほとんど地方公共団体にしわ寄せが行って負担が多くなって、現実に困ってきている。また、あるところではいろいろなことから問題点が浮き彫りにされてきているという点を考えなければなりませんので、当然これからの一年間にもその点を十分検討していただきたいということになります。そういう原点に返って物をもう一度考えていただきたい。  それから、今度は第五条は「同和対策事業の目標」になるわけですけれども、「同和対策事業の目標は、対象地域における生活環境の改善、社会福祉の増進、産業の振興、職業の安定、教育の充実、人権擁護活動の強化等を図ることによつて、対象地域の住民の社会的経済的地位の向上を不当にはばむ諸要因を解消することにあるものとする。」と、こうなっているわけです。ですから、その点からいくと、たとえば残事業が幾らあるということになれば、これはこういう諸問題をどの程度解消したことになるのだろうか、目標を達成したことになるのだろうか、そういう点の指摘が政府機関の中でなければならないと思うのですね。これだけの残事業があったということなんです。その点をもっと振り返ってみますと、結局、さっきも指摘しましたけれども、この法律ができてから五年目に対策室ができた、こういうことになるわけです。そういう観点から見ても、前期の五年の間には事実上何も十分なことが行われていなかった。これは記録を読んでみても皆おわかりだと思うのですけれども各省ともまだ実態がわかっていませんからという御返答なんです。なるほど予算は出ておったわけですけれども。ですから、同和対策に対する本当の仕事というのは実態がわかってからやりますというのが、各省のお答えだったわけです。それで、五年目に至ってやっと実態らしいものが出てきた。それに従っていろいろと各年ごとに予算が組まれていき出した、スタートがし出したということになるわけですから、その辺に重大な問題が残ってきておる、こういうことを言わなければならぬ。  そのために、やはり残事業の中にいろいろな問題点が出てきておる、こういうことになりますし、また、十二項目の確認事項をつけて、各大臣がそれに対して間違いなく実施しますということを最終的にはお答えになってやっておるわけです。その点につきましても、確認事項の中で、  総合的推進について  ――「同和」の問題の早急かつ完全な解決は国の責務であり、国民的課題である。政府により尊重が約束された「同和」対策審議会の答申の重要な柱として本法案が提出され、審議され、成立を期待できることは喜ばしいことである。   ところで、法律の条文においては、本法案提出の根底となった「同和」対策審議答申との関係の記述が困難であり、十二分に解明されていない。したがって、本法案が成立し、告示の際の通達においてこれらのことを解明し、関係者の十二分の理解のもとに本法が有効に発動し「同対審答申が完全に実現されるようにしなければならない。そのために、  一、(イ) 政府は「同対審答申を尊重し一〇カ年計画――これは前期五カ年、後期五カ年という両方の内容があるものであるが、この一〇カ年計画を推進し問題の解決に当たる決意であること。    (ロ) 本法律が「同対審答申の結語の重要な柱の一つであることにかんがみて法律が絵にかいたもちにならないよう、国及び地方公共団体は具体的施策の推進を急速かつ強力に行なわなければならないことを通達に明記すること。  二、「同和」教育の推進が本問題解決の重要な柱であり、その推進とそのための指導者を養成することを通達に明記すること。  三、「同対審答申及び本法活用の推進のために地方公共団体の機構の整備が緊要であり、その整備を促進すべきことを通達に明記することがなされるべきである。 こういう質問に対して、当時の床次総務長官は、   政府はただいま御指摘されましたところの御趣旨を尊重いたして、法律施行の際の通達によって、地方公共団体に対してもその趣旨の周知方をはかる所存である。   さらに政府は常に「同対審答申を尊重し本法案を積極的に活用し「同和」問題の急速な解決のため国の行政の実施、地方行政の推進に当たる所存である。 こういうことでスタートしているわけなんです。  ところが、あと一年に迫った現在に至って問題点が浮き彫りにされてきて、政府の見積もるところの残事業というものの中身に大きな問題を残してきておる、こういうことになるわけです。そのために、何年延長かというところに問題がかかってきているということになるわけですから、この点を考えてみても、各省の間でお示しになった残事業そのものが的確なものであったかどうかということが、私は大きな問題だと思うのですね。  それで、まずお伺いしたいことは、すべて事業を行う点についてはちゃんとした目標と計画があるはずなんです。ですから、時限立法ですから、自治省なら自治省、あるいは建設省なら建設省が、この法律を十年間で完全に実施するためにはこれだけの事業予算とが必要であり、毎年こういう計画のもとにこれを実施していって、十年間で消化しますというものが出てこなければならないのです。各年ごとにこういうことをやっていきます。最終年限ではこういうことをやりますというものがあって初めて、十カ年計画ということが言えるわけです。  ところが、前期の五カ年間では何にもわかっていない。これはもう記録の中に御答弁でちゃんと出ているわけです。そうすると、よしんばあと五カ年間で完全にこれを消化するということになったら、その五カ年間で消化する消化内容というものが出てこなければならないということになるのですけれども、そういうことは一切お示しにならないまま、残事業というものが示されてきている。これじゃ私たちわかりようがないわけですね。  ですから、そういう点について各省ごとに聞けば時間がかかりますから、総理府の方でどういう計画書をおまとめになったか、前期の五カ年が終わった段階で、各省はこういう計画を持ってこれを完全実施することにして、各年ごとに大まかにこういうことをやってきた、しかし、これだけのことが実現できずにそれに伴う残事業がこれだけありましたということで、三千二百六十億という試算が出てきたのかどうかという点にかかっているわけです。ただ各省のお示しになった残事業の数だけをお集めになって御発表になったのかどうか、その辺はどうなんですか。
  104. 黒川弘

    ○黒川政府委員 同和対策事業の実施につきましては、国、地方の行政の仕組みにのっとって行っているわけでございます。地方が計画をしております同和対策事業実態について過去何回か調査をしているわけでございますが、最近の時点におきましては、昭和五十年に各省共同で実施いたしました同和地区調査がございます。  これはすでに御説明申し上げまして、十分御了解いただいているところと思いますが、重ねて申し上げますと、各地方自治体昭和五十年度以降のみならず、法律が一応切れることとなっております五十四年度以降につきましても計画している事業調査したものでございますが、これによりまして把握いたしました事業量が、先ほど来申し上げております。たとえば国費ベースで申し上げますと七千六百四十億、その予算の対応状況を勘案いたしましてこれを差し引きますと、物価等の変動の要素を含まないで五十四年度以降三千二百六十億ということで把握しているわけでございまして、総理府同和対策事業を実施しております事業諸官署を含めまして、こういう認識のもとに従来同和対策事業を進めてまいりましたし、また、この残事業というものを十分に頭に置いて今後同和対策事業を進めていく必要があるというふうに認識している次第でございます。
  105. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、五十四年度以降にもおやりになる事業も含めてということになるわけなんですけれども、それは五十三年度中にできなかったものと、あるいはそれは十カ年計画の外にあるものであって、期間がかかって、先ほどの御質問にもありましたけれども、十カ年だけではとうていできないから、はみ出しの内容がいろいろあるわけです。そのはみ出しも含めてそういうことになるということになるのかどうか、こういう点。  もう一つは、幾らお金を使って事業をやってみたって、効果がなかったらどうにもならぬわけですね。結局、十カ年で一応差別をなくしていく。差別をなくするのは、当然物と心との両面からなくしていくための法律ということになるわけです。そういうことなんですから、やはりその間には実態がつかめないから調査はできないという面はあるにはあるにしても、法律が走り出したわけですから、走り出した法律に従ってつくった概略の目標というものがなかったらおかしいと思うのです。予算の組みようがないと思うのです。ですから、そういう前期五カ年までの間に各省が組んだ予算実態がわかってからお組みになった予算との関連性、その実態が十分に私たちや一般の国民にわかるような形できちんと整理されておるのかどうか、その辺はどうなんですか。
  106. 黒川弘

    ○黒川政府委員 この調査を実施いたしました昭和五十年度におきましては、この時点におきます同和対策事業について国庫補助対象の概要は、事業を実施されます地方自治体において十分に理解されておるところでございますが、それを前提にいたしまして、各自治体におかれまして当該自治体同和地区においてはどういう事業が必要であるかということを十分に調査検討されまして、計画されました事業がまず土台にあるというふうに考えておるわけでございまして、これを五十年度に各省合同の調査でまとめましたのが先ほど来申し上げております金額になります事業量でございます。  したがいまして、各自治体におきましては、当該自治体に存在する同和地区に必要な事業については十分に認識され、検討された上で調査に応じられたものというふうに考えておりますし、事業を所管いたします各省といたしましては、そういう御要請にこたえるように従来予算措置も講じてまいりましたし、今後とも予算措置を講じてまいるという考えであるというふうに考えております。
  107. 沖本泰幸

    沖本委員 もう一つのみ込めないのですが、私たち頭が悪いですから、わかりやすく物を言ってくれぬと困るのですけれども、最初は各自治体にお問い合わせになったわけですね。その仕事をするのはどういうことをせにゃいかぬか、どれくらい金がかかりますかとか、あなたの方にはどういう内容差別問題がありますか、住宅なら住宅、学校なら学校あるいは社会施設なら社会施設、環境問題なら環境問題あるいは下水、水道、道路、あらゆる面についていろいろお問い合わせをなさったわけでしょう。それは各省別におやりになったわけですか。各省別におやりになって、それを一応吸い上げてみて、それから各省がそういうものを持ち寄って合同で話し合いをして、出てきた試算なりあるいは一つの指標がこういう形で出たということになるわけですか。
  108. 黒川弘

    ○黒川政府委員 五十年度の調査は、各省共同で行った調査でございます。  それから、その対象といたしましたものは国庫補助事業に限定された形でございますけれども国庫補助対象事業を前提といたしまして、各地方自治体が五十年度以降計画している事業を出していただきたいということで調査いたしまして、出ました資料に基づきまして各省それぞれが分析いたしまして積算いたしましたものが、先ほど来申し上げております数字になる事業量ということでございます。
  109. 沖本泰幸

    沖本委員 その法律ができましたときが四十四年の七月なんですね。七月にスタートしているわけです。ほかの法律からいくと、法律が走り出すときには実態というものが大体あるんですね。だからそれによって予算もわかるし、それに対していろいろな事業対策も組み込めるということになるわけですね。そういうことになるわけですけれども室長のおっしゃっている各省がお調べになって、寄って実態を調べてわかったというのが五十年度なんです。六年たっているわけなんですね。
  110. 黒川弘

    ○黒川政府委員 先ほども申し上げましたけれども、五十年度以前にもこの種類の調査は実施しておるわけでございます。最近の時点におきましては五十年度の調査が一番新しいということでございますので、この調査をもとにして申し上げているわけでございますが、五十年度以前には、たとえば昭和四十六年度に同種の調査を実施しております。
  111. 沖本泰幸

    沖本委員 そういたしますと、結局この残事業というものの数字が出てきましたけれども、五十年度のときの積算をそのまま引いていきながら残事業というものが出てきた、こういうことになるわけですか。
  112. 黒川弘

    ○黒川政府委員 はい。五十年調査で把握いたしました事業量から、五十年度以降五十三年度までの予算の中でいわゆる物的事業に対応するものを差し引きまして計偉いたしましたものが、五十四年度以降国費ベースで約三千二百六十億円というふうに見込まれているいわゆる残事業であるということでございます。
  113. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、それはその後もいろいろおやりになっているでしょうけれども、すべて各市町村から吸い上げていく資料というものが土台になるわけですね。
  114. 黒川弘

    ○黒川政府委員 同和対策事業のほとんどは市町村が実施されるということでございますので、先生おっしゃるとおり、ほとんどは市町村の計画を国が把握いたしまして、積算したものでございます。
  115. 沖本泰幸

    沖本委員 そうしますと、いま各市町村、いわゆる地方自治体市長会から、知事会から、各市の議長さんから、議員さんからこぞってこの問題を指摘しながら、このままでは困る、一番最たるものは超過負担ということになってはね返ってきているわけですけれども、そうすればやはり最初の段階で、直接国の補助なりあるいは事業実施、いろいろな計画があるわけですから、各省関係があるわけです。だから実施されていく段階で、これは違う、困るというような問題なんか各省でも出てこなかったわけですか。いままで問題点は出ずにするすると来たわけですか。
  116. 黒川弘

    ○黒川政府委員 恐れ入りますが、これは困るというのをもし具体的に例示でお示しいただければ判断しやすいかと思うので、おっしゃっていただけましょうか。
  117. 沖本泰幸

    沖本委員 では、たとえば最初に御質問しました、湯山さんが予算委員会の御質問で言われました物価上昇の点ですね。物価上昇を見込んでないという政府答弁だ。これは五十一年度には一一・八、五十二年度に七・六、それから五十三年度、来年度は総理も言っておられたように六・八%と見ると、五十四年度からのが残っておるわけですから、その分だけで二六%以上になる。これを掛けると四千億を超えることになる。地区の数も、四十六年から五十年までの四年間で四百ふえておる。だから残事業は四千億をはるかに超える。そして従来のことから見ると、一兆二千億に対する国の負担が七千六百四十四億という計算だから、これから見ると、実際の事業量から言えば、スタートが遅かったこともあるけれども、全体の量の半分程度がいまの答弁からでも残っている、そういうことになるわけだ。これは政府にも重要な責任があるのだ、こういうふうに通常国会予算委員会で湯山さんが御質問になっているわけです。  さらに、せっかく同和事業をやってみても、十条指定になっていない、あるいは土地取得等については、たとえば同和地区の保育所、これは建物はいまのような補助起債があるけれども土地はゼロである、隣保館の土地は二分の一補助というように、補助がきちっと三分の二になっていない。こういうことから、結局、本来なら八〇%元利償還を見てくれるはずのものが、実際はいまのように二千八十三億に対して四百五十五億ぐらいしか見られていない、その率は二一・八分だ。このような点が整っていないために、その二一・八%の残が地方へかぶさってきている、こういう状態なんだというわけです。  先ほども大原先生から加藤自治大臣に、これに関連していろいろ御質問があったわけなんです。それで、こういう御質問があったことに対しても、通常国会予算委員会からいままで相当たっているわけですから、その食い違った点はどういうふうにお受けになって、食い違っていたのか食い違っていないのか、食い違っているのはどの辺が食い違っているのか、食い違ってないというのはどこが食い違ってないのか、ここのところを明らかにしていただきたいと思うのです。
  118. 黒川弘

    ○黒川政府委員 ただいまの御指摘の中の一つの問題でございます物価変動の要因に伴ういわゆる見直しの問題でございますが、昭和五十四年度以降、三千二百六十億円の残事業を見込んでおるというのは、もちろん物価変動を見込んでいない数字でございます。  それで、何をもって見直すかという手がかりの見つけ方につきましてはいろいろ御意見のあるところだと思うのですが、たとえば、いま先生御指摘の消費者物価とかあるいは卸売物価とか、こういうものによって見直したらどうかというお考えがあるかと思うわけでございますが、その御意向を受けまして、たとえば卸売物価で見直しますと、これは最近の政府の改定経済見通しの数字では、昭和五十年度を一〇〇といたしまして、これは余り大きな数字ではございませんが、一〇四・三ということになっております。この数字を用いまして五十年調査で把握いたしました事業量を、国費ベースでございますが見直し、それから五十年度以降、五十三年度の予算につきましても同様に見直しをいたしまして差し引きをいたしますと、五十四年度以降、約三千五百九十億円という数字になるわけでございます。     〔小委員長退席玉生委員長代理着席〕  これをさらに消費者物価によって行いますと、同じような計算をいたしまして、約四千六百五十億円ということになるわけでございますが、何をもって見直しの適当な指標とするかということについては、御意見のあるところだというふうに思います。  それから、五十年調査によりまして把握いたしました同和地区の数は四千三百七十四地区でございますが、その後、いわば追加報告の形で寄せられました同和地区の数は百二十地区でございまして、これにかかります五十四年度以降の事業費は、国費ベースで約百七十億でございまして、これについても同様に物価で見直しますと、卸売物価で見直すとこれが約百八十億になり、消費者物価で見直すとこれが約二百十億円になるという試算をしております。  それから、先ほど申し上げましたように、これは国庫補助対象事業を前提にしての調査でございますので、このほかに先生御指摘のような問題があることはそのとおりでございます。
  119. 沖本泰幸

    沖本委員 一応は答えを用意されたのだと思いますけれども、どっちかというと二カ年でこの事業を終えてしまうというところに視点を合わせて、それで予算の点が、形の上で政府各省なりで心配なさって、その辺のしぼりがあるんじゃないかという点なんですね。  それで、今度は根拠を探さなきゃいけませんけれども部落解放同盟なりあるいは地方自治体から指摘されてきている残事業は、いろいろな点の積算を拾い上げていくと一兆六千億と言う方もいるし、一兆円と言う方もいるわけですね。ということになると、いわゆる同和対策特別措置法事業によって、いろいろな施策によっていままでの差別を解消していく側の人たちは、数字の上からいっても満足していないということになるわけです。実態からいくと、まだまだ違った問題を皆持ってきておるということになるわけですから、その点の十分な話し合いなり検討なりというものがないままに、それはおまえさんのところが勝手に言っておるんだ、こういうことで話を切ったりというふうな段階がいまの段階じゃないかということになるわけですね。ですから、いろいろな数字からいくと平行線をたどっていくわけです。こっちはこうだと言うし、こっちではあなたの方はこれだけだと言う、こういう平行線で議論が横を向いていってしまいますのでね。  佐藤総理も一番最後におっしゃっているんです。いろいろな意見はあるけれども、大きい点に立って話し合いをしていけば必ずどこかで一致するんだと。佐藤総理はもう亡くなってしまっているけれども、十二項目の確認事項のときの最終的なところで佐藤総理はそういう表現を使っているわけですね。そういうところから考えてみても、もっと話を詰めていく、大きいところで話し合いをしていくという問題が出てこなければ、この問題は解決していかないと思います。  もちろん問題によっては十年で解決できない問題、あるいはこれからどんどん実態が明らかになっていく地域もまたあるわけです。だから、どっちかと言えばその分だけはいわゆる余裕を持った内容のものを持っておいていただかないと、後から出てきたのはもう終わりですというようなことになったのでは困るということになるわけですね。そういう点からも、やはり余裕を持った考え方をしていただかないと困ると考えるわけですけれども、その点どうなんですか。
  120. 黒川弘

    ○黒川政府委員 国が五十年に調査いたしました先ほど来御説明申し上げております数字のほかに、たとえば、先生御指摘のように全国市長会昭和五十二年度に調査されまして、これは事業費でございますが、一兆二千八十億という数字を公表しておられます。ただ、これにつきましては、そのすべてが国庫補助対象事業ではないということと、それから逆に町村が対象になっていないというふうないろいろな要因がございますので、幾つかの前提を置きませんと、国の調査いたしました、あるいは残事業として把握しております数値と比較することはむずかしいわけでございますが、ただ、単独事業を含めまして一兆二千八十億という数字をおまとめになっている事実はもちろんあるわけでございまして、これは参考資料として各省とも活用させていただきたいというふうに申し上げているわけでございます。
  121. 沖本泰幸

    沖本委員 それで、この点はどうなんですか。国が基本的に三分の二の補助を行うことになっているけれども、実際には三分の一にも満たないありさまであって、自治省の発表した七六年度事業状況によれば、住宅を除く総事業費は千三百億円、国費はわずか四百二十九億円だ。三三%にしか過ぎない。六七%は地方費によって負担されている。この辺が一番大きな問題なんです。ですから、七五年度までの同和事業費の総額の中で国庫支出金の占める割合は二六・五%にすぎなかった。残りは地方支出金によって賄われているという実態が明らかになってきているわけです。こういう点についてはどうなんですか。
  122. 黒川弘

    ○黒川政府委員 広い意味同和対策事業におきます国費地方費割合につきましては、先生御指摘の数字を承知しておりますけれども、これを逐年的に見えますと、年々改善されているという実績もあるわけでございます。この点につきましては、今後とも同和対策事業が続けられるわけでございますので、一層その改善に私ども努力してまいりたいというふうに考えております。
  123. 沖本泰幸

    沖本委員 改善に努力すると言いますけれども、たとえば与党の自民党がおっしゃっている二年なら二年の延長幅で、改善に努力するという改善の努力は実りますか。
  124. 黒川弘

    ○黒川政府委員 法延長の年数の問題はとにかくといたしまして、改善の努力は毎年続けていくべきものというふうに考えております。
  125. 沖本泰幸

    沖本委員 だからその辺が、努力するとか善処するとか、そういう言葉で終わってしまうから最初のところに戻ってしまうわけで、最初に目標をはっきりして、事業量をはっきりして、予算上きちんと組み立てていって、これだけでこの事業は終わりますということになれば、足りるとか足りないとか、もっとふやしてくれとかいうことが最初の段階で起こってくるはずなんです。それを調査がわかってないということで五カ年終わったわけですね。その後で五十年度から――それはいままで実態調査をやってきたと自治省はおっしゃるわけですけれども各省の答えというのは、私の省で実態調査しておりますからというお答えは、私いままでずっと質問をやってきましたけれども、そういうお答えじゃなかったわけです。むしろどっちかというと、総理府の方で調べていますので総理府調査がはっきりしましたら、あるいはどことかはわからないわけですが、政府調査をやっておりますから、調査がはっきりしましたら、それによって予算を組みますということを言っているわけです。そういうことなんですね。  ですから、いわゆる残事業がなかったという数字の問題の議論もあることはあるけれども、それ以上に、十カ年というものの使い方というものが十分ではなかったということになりますし、それから実施されるべき同和地域の人々、対象の方々との十分な話し合い、あるいは政府の意図しているものとの意見交換なり、そういうものの意思疎通というものは十分でなかったということも言えるわけです。  政府がやっているんだけれども、どうもはっきりしないということですね。最初の間わからないから、法律ができたんだから地方自治体の方へ要求をどんどん出していく。出していくけれども、国の方がはっきりしないので、地方の方はどうにもなりませんというのが、紛争の一つの大きな問題点として残ってきたわけです。それが動き出してきたのはずっと後になる。そういうことにもなりますから、一番苦しんだのは地方自治体だということになります。そういう点の問題も十分じゃなかったと思うのです。だから、そういう反省材料も十分検討していただきながら延長も考えていただかなければならない、こういうことになるわけです。私たちは、皆さんをここで追い詰め、やり込め、頭からひっぱたいて、どうしろこうしろ言うわけじゃないわけです。皆さんをどんなに追い詰めたって答えが出てくるわけじゃないわけですから。  しかしながら、実際はどうだったという実態を私たちは知りたいわけです。そういうために根掘り葉掘り伺っているということなんですから、いままでこういう議論を何時間もかけてどうだこうだとやった機会は余りないのです。この九年間で。予算委員会で社会党さんの方が委員の数がたくさんありますから、どなたかががんがんやる、後は何か問題が起こったときそれぞれの委員会でやっていく、そのほか私たちの党では持ち時間がないものですから、分科会あたりで質問する以外に質問のやりようがなかった、こういう面もあるわけです。それは私たち野党の方にもいろいろ責任がないことはないと思いますけれども、それとは別に、政府の皆さんがおやりになったことと、いい法律ができて日が当たっていってよかったということにはならないのです。  だから、締めくくりみたいなことで申し上げますけれども、四十四年七月にこの法律ができたときは、明治四年に太政官布告が出てちょうちん行列をやったときと同じ気持ちのような立場に皆立っていらっしゃったわけです。これで解決するという気持ちが大いにあった。しかし、ふたをあけてだんだん向こうへ向けていくほど、すそ野の方が、しまいの方がだんだん心細くなってきた、こういうことになるんじゃないかと思います。やってないということではない、おやりになってきておるけれども。私は、そういう点を申し上げていきたいと思うのです。そうでなければ、法律の根本の精神にもとってくると思うのです。国の責務である、人類普遍の原理であるという根本に立ったときに、お互いのそういう立場立場は違っておっても、そこのところへ向かって、お互い真剣にこの問題解決のために努力をしたかどうかというところに結論は来ると思うのです。これくらい申し上げておきます。  質問を終わります。
  126. 玉生孝久

  127. 受田新吉

    受田委員 皆さん、こんばんは。遅くまで御苦労さまですが、沖本先生に続きまして質疑を続行します。  同和対策事業特別措置法ができて十年、この法律は十年を目途としてというスタートでございますが、十年の間にようやく事業が半分あるいは半分に足らないところの進捗ぶりであるという意見全国各地から集まっております。そこで、私、教育人権問題を中心にきわめて端的にお尋ねをしましょう。  文部省が同和対策長期計画に基づきまして、十年を目途としてなさった結果、この同和対策長期計画はどの辺まで進んできたとお考えでございますか、お答え願います。
  128. 中島章夫

    ○中島説明員 文部省では、同和教育推進地域の指定、同和教育研究指定校の指定、同和教育の研究協議会の開催、それから資料の作成配布というような事業をやります一方、高等学校等、これは現在では高等学校及び大学にわたっておりますが、進学奨励費補助というような事業を実施しておりますし、同和教員の特別の加配という措置を学校教育関係では実施をしてまいっております。  先ほどもちょっと申し上げましたが、研究指定校の指定あるいは高等学校の進学奨励費の補助といったものは、同和対策特別措置法の少し前からも実施をしておったわけでございますが、この間に各事項について予算的にも非常に努力をいたしまして、各府県、市町村等でも充実をしてもらいまして、私どもの資料にも載っておりますが、相当充実をしてまいった、こういうふうに考えております。  私どもの方では、物的事業に関しましては、学校教育に関して特にないものでございますから、物的事業の計画とその実施につきましては、社会教育課長の方から御説明を申し上げます。
  129. 浪貝一良

    浪貝説明員 社会教育におきましては、同和地区同和対策集会所という施設を整備してございます。これは昭和三十七年ごろから始めたのでございますが、昭和五十年の調査時点までに四百以上整備されたわけであります。五十年調査では三百九十の計画をいただいたわけでございますけれども、その後五十二年、五十三年と追加の計画が御提出になりまして、合計四百二十五館の計画でございます。実際に実行いたしましたのは、そのうち四百二十三館でございますから、ほとんど計画は完了したという形になってございます。  ところが、掘り起こしの効果と申しますか、こういった集会所が社会同和教育に非常に役立つということで、市町村の御計画が進んだ、あるいは地区が掘り起こされたということがあるのでございましょう、それにもかかわらず、現在、来年度百四十館の御要求をいただいておりまして、概算要求中でございます。  それから、そのほか社会教育におきましては、関係団体の育成、指導者の研修の実施等を行っておるわけでございますが、これの効果と申しますか、どの程度進んでいるかということにつきましては、事は教育の問題で、どの程度ということが正直なところ年月を経てみなければわからないということになるのでございましょう。しかし、いずれにしろ、十全であるということは言えないと思います。今後充実する必要があるというふうに考えております。
  130. 受田新吉

    受田委員 お二人の御答弁を承って、これから十年を目途とした時点からさらに二年か三年かで、その所期の目的を達成して、本法の教育的効果を上げるということは不可能である。二年や三年ではなかなか上げ得ない。奨学資金のごときも、これは継続的なものでございますから、これから二年か三年かで延長を打ち切ったとしたら、まだ継続的な事業は残るという問題がありやしませんか、お答えを願います。
  131. 中島章夫

    ○中島説明員 奨学金の問題につきましては、御指摘のとおりでございまして、能力があり進学を希望しているのに、経済的な理由で進学できないという子供が出てまいります限り、これは充実をさせていく、こういう心構えでございます。
  132. 浪貝一良

    浪貝説明員 教育事業と申しますのは、たとえば土木事業のように、道路をつくる。りっぱに舗装ができました。そうしますと、その道路が悪かったときのいわばマイナス面、そういうものは全部カバーできるわけです。結果はぱっとわかる。教育はそういうことになかなかならない、これはいわゆるむずかしさがあるわけでございます。この問題のむずかしさも、同和対策のむずかしさも、恐らくその辺がポイントになるような気がいたしますけれども、そういったことでございますので、とても何年ということでは問題の解決にはならぬ、こういう感じがいたします。
  133. 受田新吉

    受田委員 いまお二人の文部省の課長さんの御答弁によっても、十年を目途として今日を迎えたが、現時点でなお教育的効果を同和対策の上に上げるということになれば、二年や三年の延長では片づかないという御答弁があったわけです。これは長期計画の非常にポイントでございます。十年を目途としたのであって、これはこういう長い間、国民の中に、まずい、大変残念な行きがかりがあったものを、抜本的に解消しようとするならば、まず教育問題一つ取り上げても、相当の期間を持ってその弊害をえぐり捨てなければいけないわけです。  私、郷里が山口県大島という島ですが、その島の人口の五分の一は海外に、アメリカ、南米へ行っております。そういう地区では、こんなつまらぬ議論はちっともなくて、もう移住した地区で本当に兄弟四海同胞というむつまじい関係ができておるのを私よく知っております。日本の国でも、東北、北海道へ行きますと、開拓の苦労をともにしてきた同士として、つまらない因襲にこだわるようなばかげた空気は全然なくなっている。日本が本当に四海同胞という、本当に祖国日本人として生まれて、手をつないで、つまらない門地、身分というような差別を一切捨てた人間として、自由で平等である社会を築くという風潮が、私は、海外に行った皆さんあるいは北海道や東北の皆さんなど、そうして開拓の精神に生きた皆さん、そういう社会につくり出されたこの美しい本当に四民平等の思想というものを、またそうした体制というものをつくっていかなければならぬ。これは私は、同和対策の問題、地域的にそうした本当に残念な現象が残っているということを、教育の力でまず直していく。  同和教育の主任さんも相当おるということですが、主任さんは全国でどのくらいおるのですか。同和教育を担当している主任、これはやはり同和教育上大変大事な、小学校、中学校に同和教育主任というのがありますね、主任が設置されている。
  134. 中島章夫

    ○中島説明員 県によりまして、学校におきます同和推進教員と申しましたり、まあ主任と言っている場合もあろうかと思いますが、私どもで同和加配という特別の措置をしておりますのが、現在までに千百六十二人になっております。五十年の、総理府で実施をいたしました調査によりますと、三千五百二十八でございましたでしょうか、約三千五百人ばかりという結果が上がってきておりますが、これは今度、現在悉皆調査を実施しておりまして、正確な教字をつかむことにいたしております。現在千百六十二人の加配をいたしております。
  135. 受田新吉

    受田委員 相当数の同和教育主任がいて、その地域の学校教育の上で、そこに学ぶ児童生徒の上に本当に公平な愛を降り注いでおるわけです。この公平な児童愛、公平な教育愛、そこからこの差別というつまらない現象が去っていく。人間の心を変えなければいけないのです。その上で教育の果たす役割りは非常に大きなものがあると思うのです。だから、教育の重大な役割りを果たすのに、この問題が、十年たって、今日を迎えてなお、事業的には半分以上も残っているという地区が多い。教育的にも、比較的長期の展望でこうかけたいという状態では、この法律を二年とか三年とかいう短い期間で延長するのではなくて、せめて五年は延長して、充実した施策をとって、後顧の憂いがないように、みんなで心を合わせて、物質と心と両方から日本の国民の心を変えていかなければいかぬと思う。  それについて一言、人権擁護局長おいでいただいておりますか。――局長さんは裁判官の御出身ですね。あなたの前任の村岡二郎先生も、私いま指摘した山口県大島郡が御先祖の地でございます。したがって、前の人権擁護局長もこの問題に非常に関心を持っておられたのですが、現局長さん、世界人権宣言以来三十年の日月がけみせられたのですが、人権を阻害する行為、たとえば興信所みたいなところで、本当に二人の愛が結晶をしようというときにつまらぬ調査を持ち出して結婚が破れる、あるいは就職が破れる、こういうようなときに、裁判は、この人権侵害をしたという訴訟に対して、人権尊重の答えが大半出ておるのじゃないかと思うのですが、裁判官御出身であるだけに、こういう人権を阻害した裁判の結論は、おおむねどういうことになっておりますか。
  136. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 すでに御承知かと思いますけれども、最高裁判所で、部落出身者についての身元調査を興信所がしたというケースにつきまして、そういうものは不法行為であるという判決が出ております。  もう少し詳しく申し上げますと、これは最高裁判所の第二小法廷昭和四十九年(オ)第一五三号、昭和五十年四月四日の民事訴訟の判決でございます。「興信所がなした部落出身者である旨の身元調査報告が不法行為を構成するとされた事例」ということでございますけれども、いま御指摘の点についての判決の文書を、ごく短いものでございますので、ちょっと読み上げさせていただきます。  憲法一四条によれば、すべて国民は法の下に平  等であって社会的身分によって差別されない  が、同条の社会的身分によって差別されないと  は、人の生れながらにして、すなわち人の出生  という事実だけによって決定される社会的な地  位または身分によっては、人の社会生活におい  て均等でない取扱をうけることがないことを意  味するから、身元調査を営業目的とする法人が  結婚に関する身元調査の報告をする場合におい  て、部落出身を理由として他の者と区別した報  告をすることは、社会的身分による差別であ  り、これを是認することは、法適用の一場合で  ある裁判においては法を不平等に適用すること  になり、許されないものと解すべきである。これは、結局憲法十四条の法のもとの平等に反する、違法であるということで、そのような行為につきましては損害賠償を請求できる、こういうふうにされた事例でございます。これは最高裁判所の判例でございますので、判例の傾向というよりも、これは最高のものでございますので、私どももこの判例の趣旨に従いまして興信所の指導などをしているところでございます。
  137. 受田新吉

    受田委員 人権擁護局長さんの御意思を承りました。裁判の判例も伺いました。そういうことで、人権を侵すつまらぬ争いに対しては、本当に自由と平等という人間尊重の原則で処理していけばいいので、それをどんどん推し進めていって、不法なやり方をする者に対する法の制裁というものをびしびしやれば、私はその方が効果が上がると思う。  いつか地名総鑑なるものが発行されたことがございまして、その図書の中にいろいろな不愉快な、部落の地名を書き述べておって、その地区の人に大変迷惑な出来事をもたらしたことがありますが、こういうようなことこそ時代逆行の最たるものですが、こういうものに対する処分はどういうふうにされたのですか。
  138. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 ただいま御指摘のとおり、いわゆる地名総鑑事件、それに類するものを含めまして、第一から第八までそのような事件が発生しておりまして、まことに遺憾に存ずるところでございます。  発行した者につきましては現在まだ調査を続けている状態でございますが、これを購入しました企業等、これは約百五十二ございます。そのうち約百二十につきましては処理をいたしまして、まだ残りのものについては調査を続行中という状態でございます。
  139. 受田新吉

    受田委員 まだ未処理がある……。
  140. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 そうでございます。
  141. 受田新吉

    受田委員 それをどういうふうに処理しようとしておられますか。
  142. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 いま調査責任者の調査課長がおりますので、その処理状態について直接御説明いたします。
  143. 中津川彰

    ○中津川説明員 残りの事件につきましては、従前処理した事件と同じように、その購入者に対して啓発を続けまして、その意思が確認できた段階で処理をする、処理の場合に、事案によりましては勧告あるいは説示、そういうことで処理していきたい、こういうふうに考えております。
  144. 受田新吉

    受田委員 これは徹底的にやっていただきたい。  時間が進行して、皆さんもお疲れのことと思いますので、この問題は、教育問題を通じても、人権問題を通じても、また関係各地の市町村長の強烈な延長への要望を拝見しましても、二年や三年で片づけ得る問題でなくして、十年を目標であったのであって、目標を達成するという段階になるとどうしても長い長い、本当に残念な現象であるだけに、時間がかかる。したがって、抜本的な手を打つためにもう五年間延長するという提案をあえていたしまして、質問を終わります。
  145. 玉生孝久

  146. 柴田睦夫

    柴田(睦)小委員 本日は、小委員会の小委員の皆さんからいろいろの角度から質疑がなされまして、これらの質疑を見てみましても、同特法を延長するということがどうしても必要であるということはもう言うまでもないことであります。そして、各党とも延長の必要を主張しているわけです。ところで、延長を決めるとすれば法律改正が必要であるということは言うまでもないことです。この小委員会延長の必要性について審議をしているわけですが、そればかりではなくて、本当に差別の解消を早急に図っていくためには、法律全体も見直していくといいますか、法律改正という問題について、こういうこともいままで検討されているか、また、検討する考えを持っていらっしゃるかどうかということをお伺いしたいと思うのです。  わが党は、五年間延長するその期間内において、まさにこうした法律を必要としない世の中をつくらなければならない、それは国の責任である、こういう立場に立っての改正案も用意しているわけです。さきにわが党案については総理府の方にもお配りしておりますが、総理府自体がよりよい法律にするための改正問題についていままで検討していらっしゃるかどうか、また検討する用意があるかどうか、この問題についての見解をお伺いしたいと思います。
  147. 黒川弘

    ○黒川政府委員 同和対策事業特別措置法内容につきましての御意見は、先生御所属の共産党の御意見、その他各政党、各団体からいろいろ承っておるところでございます。あるいは法律改正自体に結びつきませんでも、運営の改善という面についての御意見についても同様に承っておるわけでございます。総理府といたしましては、いただいております御意見に基づきまして検討しているわけでございますが、まだこの場で申し上げる段階に至っておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  148. 柴田睦夫

    柴田(睦)小委員 結局、差別をなくして、本当の民主主義の世の中をつくっていかなければならないというのがわれわれの立場でありますから、全体的にこの国民の声を尊重しながら善処していただく、その先頭に立っていただきたい、こういうことを申し上げて、重なりますので、私の質問を終わりたいと思います。
  149. 玉生孝久

  150. 小林正巳

    小林(正)小委員 時間も遅いですから、端的に伺いますけれども、先ほどからこの同和対策事業に関して自治体負担が大変過重になっておるということがしばしば指摘をされておるわけですね。  そこで、自治省は毎年予算編成前に、各省に対して財政局長名で要望されておるということでございますが、毎年やっておるにもかかわらず目覚ましい成果はない。これは問題はどこにあるんでしょうか。各省にあると言うよりも、結論的に言って、大蔵省にあるということなんでしょうか。黒川さんのところでお答えをいただいたらいいんじゃないかと思います。
  151. 黒川弘

    ○黒川政府委員 同和対策事業に関連いたします予算につきましては、各事業所管省におきましても制約のありますいわゆる要求額を超えまして、精いっぱいの要求をしているわけでございます。また財政所管省におかれましても、国の最近におきましては厳しい財政事情のもとで最大の配慮をしているというふうに承知しているわけでございまして、先ほど自治省の方から御披露のございました同和対策事業の中で国費の占める割合も年々相当の度合いで改善されているというふうに考えております。
  152. 小林正巳

    小林(正)小委員 大体いまの財政状態の中で大蔵省がそういう対応をしておるのは、まあまあ妥当だ、こういうことですか。
  153. 黒川弘

    ○黒川政府委員 財政所管省を含めまして、国といたしましては最大限の努力を払った結果が、御承知の年々の予算改善状況になってあらわれているというふうに考えます。
  154. 小林正巳

    小林(正)小委員 では、自治省は毎年そうやって財政局長名各省にお願いをされておるわけですけれども自治省としては毎年、毎年繰り返しそういう要望をしなければならないということは、財政当局の努力は別として、自治省としては大変不満足だということは間違いないですね。
  155. 野村誠一

    野村説明員 いま総理府の方からお答えになりましたように、私たち地方債の充当結果等の推移を見ますと、確かに年々改善はされてきております。  ただ、トータルの数字でございますけれども、依然として単独事業という形で結果的にやらざるを得ないというふうな数字があらわれておりますので、私どもとして、まだまだもっと補助制度の充実、改善に努めていただく必要があるということで、今後ともそういう要請を続けていくつもりでございます。
  156. 小林正巳

    小林(正)小委員 大蔵省がいないから、この問題はこれだけにしておきたいと思います。  文部省、社会教育の立場から、昭和三十四年以来やられておる、そして一定の成果を上げておる、こういうふうに評価をされておられるわけですけれども、大体先ほど同和対策室長が言われたように、地方自治体からの、こういう事業をしなければならない、ああいう事業をしたいということで、それに対応して国として補助金をつけようということであって、国としてかくあるべしという考え方からリーダーシップをとってやっておりますか。
  157. 浪貝一良

    浪貝説明員 社会教育につきましては、自発性の尊重、こういうことがございます。これは社会教育法の制定あるいは改正のときにも常に国会等でも議論になるところでございますけれども、いわば国民の自発性、社会教育を受ける者あるいはする者の自発性というものの尊重ということが根本命題でございます。それが同和社会教育についても当然包含されるわけでございます。そういった中で、いわば醸成と申しますか、そういった雰囲気の醸成、社会環境の醸成、そういったものを通じて社会教育を行うというのがいまのやり方でございます。  そういったことでございますので、文部省がいわば国費で委嘱と申しますか、補助金でなくて委嘱している事業が幾つかございます。指導者の研修とか調査、指導とか、そういったものについてはいわば国の事業として市町村あるいは県に委嘱をして事業を行っている。またそのほかに、社会教育主事とか公民館主事等の研修、これは国も社会教育研修所という研修所がございまして、そこでも行ってございますけれども、そういった中でそのカリキュラムの中に同和教育というものを当然組み込みまして、そういった研修を通じましてその問題の重要性を確認して推進する、こういうやり方でございます。
  158. 小林正巳

    小林(正)小委員 学校教育、社会教育を通じてお尋ねをするのですが、いまのように自発性ということから言いますと、たとえば同和問題を抱えている地域ではそういった問題が必然的に起こってまいりますね。しかし同和問題を抱えていない地域、同和地区のない地域といいますか、東北なんかそういうところが多いわけですが、そうしたところについては自発性に基づいて対応するということになると、そうしたことはできない、やらないということになりますね。そうでしょう。
  159. 浪貝一良

    浪貝説明員 先ほど申し上げましたとおり、自発性の尊重がまず第一に重視されるわけでございますけれども、それに至るように指導し環境を醸成する、こういう行政の仕事があるわけでございます。そういったことで行うということでございまして、先ほど申し上げました社会教育主事とか公民館主事の講習等には当然日本全国から集まっていらっしゃる、そういうやり方になると思います。
  160. 小林正巳

    小林(正)小委員 私が申し上げたいのは、なぜそういうことを伺ったかというと、社会教育の面から、いわゆる差別というものを精神的な面からなくしていくために、ただ単に同和地域のあるところだけでそういった教育をしてもだめなんですね。しり抜けになってしまう。やはりこれは日本人全体にそういった誤った差別があるということを、やはり社会教育あるいは学校教育の面で教えていくということでないと、差別というものはなくならないと思うのですね。そういうことから言うと、なかなかそんないま当面挙げられておるようなことだけで、二年でできるか三年でできるか五年でできるかというふうなものではない、あるいは何十年、その必要が将来にわたって存続をするだろうと思うのですね。一刻も早くそういう必要がなくなることを念願しますけれども、実際問題として、そういった社会教育を日本全体に徹底をしていくためには、大変な時間がかかるであろうと思うのですね。そうした必要性というものを文部省は一体お認めになりますか。
  161. 浪貝一良

    浪貝説明員 ただいまのお話、いわゆる啓発という問題だと思いますけれども、実は啓発は社会教育だという考え方というものは戦前相当強くあったわけで、いわゆる社会教化、そういったものが社会教育である、こういう時代があったわけでございます。戦後いろいろな反省等がありまして、社会教育と啓発は一応別個のものだ。つまりいわば……
  162. 小林正巳

    小林(正)小委員 いや、そういう理屈を聞いているんじゃない。
  163. 浪貝一良

    浪貝説明員 それで啓発につきましては、それは当然やらなければならないことでございます。これは政府全体として、総理府を中心にして取り組むという形で文部省は当然それに協力して進めているわけでございます。
  164. 小林正巳

    小林(正)小委員 たまたま私は文部省だけ対象にしたけれども、皆さんについても言っておるのですよ。ですから、この同和教育同和対策という問題をそんなに年限で何年で解決できるというふうな簡単なものではないと私は思うのですね。そういう認識各省とも持っていただかなければならないし、特にその主管大臣である稻村大臣においては、問題の本質をよく御認識をいただいて、自民党の中に二年で十分だなんというような御意見があるやに伺いますけれども、そういうことに対してやはり政府としても、各省が果たしてどれだけこの残事業、それは単に家をつくるとかそういうことだけじゃありませんよ、もっと広い意味での残事業というものを把握されて、政府としてさしあたり一体どのくらいの年限が必要なのかという考えをやはり持っていただかなくちゃいかぬし、私は同和対策事業そのもの、事業面だけですね。一応社会教育とかそういったものは外して事業面だけから考えて、それが三年か五年か、私どもは五年が適当であろうと言っておりますが、たとえ五年でそれができたとしても、なおかつ私は、法律の形があるいは同和対策基本法か、同和問題基本法か、どういう形になるかは別として、そういう形で将来にわたって存続をすべきものであるというふうに思っておるのですが、最後に大臣のお考えを一言伺います。
  165. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 いま御指摘の点ですが、事業だけを見て何年という問題がいろいろ論議されているのですが、そのほかに教育問題等いろいろな問題がありますから、私はできるだけ――きょうも首脳会議が二回、いま幹事長、国対と話を詰めてまいったわけですが、御承知のように本当に大変きつい状態である。年限の問題、こういう問題について切々とその必要性を三回にわたって説いてまいっております。私としましては、所管という形で現地にも行っておりますし、いま党の中で考えておられるような、そう簡単にこれは解決できるものじゃないということで、私ども政府も強く主張してまいったのです。  そういう意味から、これはたしか成功したと思うのですが、幹事長、総裁一任というところまで並行しておりますから、一歩も引かざるという私の体勢でありますから、総裁、幹事長一任ということで、交えて小宮山委員長、こうなると小じゃなくて大ですよ。大委員長と連絡をとって決定していきたい。こういうことで、いまの段階では成功したとかどうということは申し上げられませんが、私は昼のときにも時間を割いて、総理にも、この実態というか話して、総理もいろいろ具体的な例を挙げられて、大変私も声援というか激励を受けたのです。もう総理にしては珍しい激励の仕方であったわけです。  そういう意味で、最後の最後までがんばって、ここで最後とは申し上げませんが、総裁、幹事長一任ということに仮になって、なるところまで来たわけですが、そういう意味で、どういう結論が出ようと私はその後もこの問題について検討をしていく、対策をしていけるような条件というか、これはつくる、つくらなければならぬ、こういうふうに私は考えておるわけです。いまの時点で、こういうことになると長官というものは大したことはないものだと認めているのです。わが意がなかなか通らないということですから、ぜひひとつ御勘弁をちょうだいしたいと思います。
  166. 小林正巳

    小林(正)小委員 せっかくの御努力を期待いたしまして、私の質問を終わります。
  167. 玉生孝久

  168. 大原亨

    大原(亨)小委員 時間もかなり進んできたわけですが、いままで稻村長官が席を外されておって、党間、政府間の御努力をなすっておられる間に、それぞれ全小委員各省別にわたる質問があったわけです。  自治省につきましては、長官が午後出席のときに加藤自治大臣も御出席になり、自治省実態地方自治団体の実態については、かねてから御承知のような問題についての質疑応答、審議をいたしました。  それから、いままでそれぞれございましたが、文部省に関係いたしましての学校教育、社会教育をいまの差別実情の中で進めておって、前期五年、後期五年、ようやく軌道に乗りつつある状況であるという教育の本質に係る問題として、文部省側も教育の問題は二、三年で片づくものではない、しかし努力すれば片づく問題である、解決できる問題である、そういう点は私どもは確信が持てるというところまで言っておるわけですから、文部省の見解もきわめて明快でございます。     〔玉生委員長代理退席、小委員長着席〕  また厚生省も、それぞれの施策差別と貧困の実態を基礎にして解決するまで粘り強く展開するという意思から言いましても、これは二年、三年の法律だけで打ち切れるものではない、こういうことでございます。  建設省についての審議を通じまして私が感じますことは、たとえば不良住宅とか、これから事業対象とする住宅一つをとってみましても、あるいは長官が番町を御視察になった、その結果に基づいて具体的にあの被差別地域における住宅政策について何年を要するかという問題についても明快な答えは出ておりませんが、それだけに私どもは深刻な問題であるという点を十分承知をしておりますし、この問題は本委員会においても引き続き議論をして、そして実態を把握したいと思うわけです。  また、きょうは人権擁護局長見えておるわけですが時間がないのですが、いままでの質問の中から私どもが理解をする点から考えてみましても、地名総鑑あるいは差別事件の非常に衝撃的な発生の実態がやはり行政が進むに従ってあらわになっているという事実も否定できない。人権擁護局長は大阪その他の近在を御視察になったそうですか、法務省も、いままでの質疑応答を通じまして、このような自由と平等にかかわる、人間の尊厳にかかわる深刻な問題についてはやはり徹底的に解決をしていきたいという意思を持っておられる。  そういうように考えてみますと、五十年当時の残事業のいろいろな議論があるわけですけれども、単価の問題とかあるいは自治体の受け入れ体制の問題とか、物価の問題とか、それらを総合的に考えてみまして、いままでの実績、九年余りの実績に基づいた行政ベースの実態と判断というものがきわめて重要な段階に来ておるというふうに思うわけです。  長官がいみじくも言われましたが、本小宮山委員会においては前委員会以来一定の合意を得て、次の臨時国会では期間については解決をして、そしてさらに中身についてどうすべきかという審議を進める、こういうふうな方針を立てて、来年度の予算についても四二・七%の、それぞれ各省予算増加の要求に向けているわけです。総務長官は、総務長官という名前がついておって総理大臣の次のように見えますが、しかし、実際にはこの問題についての実態各省が握っているわけで、それらを調整して代表する総務長官であるわけで、非常な御苦労であると思います。そういう点で、せっかく今日まで努力をしてこられて、現地調査もされて、実態把握をされて、それぞれの関係者についても信念を吐露してこられたわけですから、私どもがこの委員会において、各党合意と言うけれども、行政ベースの実態把握の上に立って、やはり各党がその実態と事実の上に立って判断をすることが必要であろう。  そういう点においては、野党各党の皆さん方からそれぞれ真剣な質問があり、与党の調整が部分的におくれておるわけですが、しかし非常な御努力をされているという点についてはいまの話からも十分理解ができるわけであります。私は、二年、三年でこれを打ち切って、そしてこれで終わりというようなことは、いままでやってきた同和対策特別措置法趣旨からいって、国会あるいは政治の権威において絶対に避けなければならない、そういうことであると思います。したがって前期五年、後期五年というふうにやってきましたが、五年間を一刻みといたしまして差別解消のために全力を挙げる、そういう観点の上に立って、この期間について十分の悔いなき努力をする責任があると思います。  この問題について端的に質問をいたしますと、長官の答えもなかなかむずかしい点もあると思うのですが、あなたが御答弁されたように、太く短くではなく、きめ細かくすそ野を広く、これからの仕上げを期限を区切って進めていくということについて考えるならば、私は、いままでの行政ベースと質疑応答を通じて、二年、三年というふうなことはないと確信をいたしております。  私が質問申し上げたい点は、加藤自治大臣にも申し上げましたが、二年、三年で打ち切るというふうなことはこの小宮山委員会においてはない、こういうふうに合意ができるのじゃないか、私はこういうふうに確信をいたしておりますが、その点につきまして長官はこの趣旨に賛成であることを確信いたしますが、私の意見を申し上げました点について御回意いただけるならば、あなたの端的な御見解を簡潔にお答えをいただきたいと思います。たくさん申し上げたいことがあるのですけれども、時間の関係等もあり、問題点をそういうふうにしぼって私は御質問をいたしたいと思います。
  169. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 大原委員に申し上げます。なかなか答弁しにくい面がございますけれども、差しさわりない点があったら、総務長官からお答え願いたいと思います。
  170. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 きょうも相当議論がされたということは想像でおわかりだと思います。そういう意味で、小宮山委員長、先ほど来も申し上げたのですが、本当に小委員長という名前はあれで、大委員長、枠をはめたことではいけないのではないか、私は小宮山委員長に対してある程度枠をはめないような形でということで強く要請もいたしました。ここへ来る二、三分前ですが、幹事長、国対委員長それに小宮山委員長、こういうことで――私はいつも答弁には変わりありません。これはそう簡単に――この前現地を見てまいりまして、よく承知しております。そういう意味合いから、小宮山委員長の政治力と申しますか、二回やっておられますから、そういう意味で、私は大きくここに期待を寄せるより方法がなくなったということでございます。しかしながらその後におきましても、やはり小委員長という立場もあり、私もまだ総務長官として残っておるわけでありますから、よくいいかげんにやめぬかと言われますけれどもまだ当分は残っておるわけでありますから、最善を尽くして、その後も話し合いができるような余地をつくる、こういうことで、私の決意と申しますか、これ以上の具体的なこととなりますると、委員長の方で作業ができなくなるようなことをすることは相ならぬ、むしろ迷惑になることでありますし、全体が大変不幸になることだ、こういうふうに考えますので、この程度でひとつ御勘弁をちょうだいいたしたいと思います。
  171. 大原亨

    大原(亨)小委員 いま小林委員質問に対しまして幹事長、総理・総裁の決断を求める、あなたからこういう端的な話があった。私はこれはあなたの重大な決意のあらわれであろう、こういうふうに理解をいたします。私どももそれに対しましては、稻村総務長官として、小宮山委員長として、この歴史的な仕事を果たしていただくように心から希望をし、信頼をいたしまして、私の質問を終わります。
  172. 沖本泰幸

    沖本委員 確認事項の最後に佐藤総理のおっしゃったことがあるのです。これは遺言みたいになると思うのですね、いまいませんから。これを読んでみます。   もちろんいままで各大臣がお約束したこと、  政府はこれを忠実に履行するその責任がある。こうおっしゃっているわけです。それから、間を飛ばしますけれども、  政府も前向きで取り組んでいくし、また皆さん方も今日まで積極的に取り組まれたが、それぞれの立場の相違はあっても大局に立つと必ず一致する。それを現実に示された。こういうことで私はほんとうにうれしいのです。 これは総理の最後の結びの言葉なんです。こういうことで確認事項をとって、それで法律ができたということですね。当時の福田大蔵大臣は、   財政当局といたしましても、この法案の趣旨が生かされるように、できる限りの御協力をしたい。単価の問題については、そういう趣旨において、実態に即するように処置いたしますから御安心願いたい。 こうおっしゃっているのです。当時の福田大蔵大臣、いまの福田総理です。これは一遍総理に読んでもらいたいと思うのです。  そういうことなんで、これはいやみたっぷりに申し上げるつもりは全然ないわけですけれども、先ほども申し上げましたとおり、この法律をつくるとき私も携わった一人なんです。この法律ができたときというのは、お互いに買いかぶり過ぎたかもわかりませんが、全部の人がこれですべての問題が解決できるような気になったのです。九年たってこんなことになるとは思わなかったのです。お互いに甘かった点もあると思います。  ですから、そういう点は総務長官もお考えになっていただいて、総務長官の先ほどの御答弁の中にあった、もういまおれの手を離れてぐっと上に行っているんだ、だから長官の力のなさを理解しろ、こういうことなんですけれども、いまや総裁選挙がたけなわで、もうそんなところ頭にないかもわかりませんけれども、そうでなしに、選挙が終われば総務長官ももう総務長官でなくなるかもわかりませんので、この際、総務長官も普通で言うイタチの最後っぺみたいにならないように、将来の国民が、これだけ深い理解を稻村総務長官は持っておられたということで、銅像まではいきませんけれども、歴史的に稻村総務長官の名前を忘れないようなことを最後に仕上げていただきたい。それが、もう私たちの大いなる期待なんです。
  173. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 きょう、四十四年から以降六年も同和対策室をつくらなかったという理由から責めるのだけれども、ところがまた相手が大ぜいだから、その間はこういうふうにやっておったということを言われる。本当のつばぜり合いで、私も大分皆さんに教育、指導されて、大体頭の中で、一番大きな問題は、現地を視察した、これはやはり動かすことのできない最後のパンチになるだろう。そこで総裁、幹事長に一任というところまで行ったということは、これはそこまで行くということがなかなかむずかしい。  そこで、あすの時間も、ここで言うと、またおくれるとおしかりを受けてはいかぬのですけれども、あしたの時間も、これは報告をされる小宮山委員長がよく知っております。しかし、これは時間を言うというわけにまいりません。そういう意味で、幹事長、総裁、小宮山委員長というラインで、そこまで持ち上がったというところに、また小宮山委員長も長くこの問題に関係をしておる理解者である、こういう意味から、いい結論が必ず出るであろうというふうに私は考えておりますので、ぜひきょうはひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
  174. 受田新吉

    受田委員 総務長官御不在中に皆さんに質問さしてもらったのですが、私、非常にいい先例があると思うのです。これをあえて申し上げたい。  昭和二十八年に、離れ島は生活環境として非常に不便であるので、高率補助を中心とした離島振興法というのができた。石川県にもありますが。離島振興法はちょうど十年の時限立法でした。十年たった時点で、せっかくここまで来たのであるから、さらにもう十年ということで十年延長。それからさらに昭和四十八年にいよいよ仕上げというので十年、昭和五十八年まで続くということでいま進行中、最後の仕上げです。全国の離島の水準がいま非常に高まってきた。  離島振興法は十年の時限立法。ちょうどこれと同じ十年がさらに十年、そして仕上げの十年。この十年で完全にやれるはずです。私、この法律を担当して知っておりますだけに、十年を目途とした昭和四十四年、ちょうどわれわれも沖本さんと一緒に担当してきた問題を、ここでまだ半分も事業が進んでいない地区がある、強い要請がある、いま教育の問題がある、奨学資金などは、これ、途中でやめるということにならないのです。やはり何年間かは続けていかなければいけないというような事情もあるし、教育の効果を上げるためにということですから、二年や三年ということでなく、十年とは言わぬが、五年間という非常に狭い、われわれとしては最小限の年限を切って、いかがですかと、野党の皆さん方、みんなそういう方向にあるわけです。これは、いまの離島振興法を例示して、長官にさらに再考を煩わしたいと思います。  それから、先ほどから幹事長、総裁のお話も出ましたが、小宮山先生の政治家としての高い手腕をわれわれも期待しておるのですけれども、足して二で割るというような、野党は五年と言っている、与党では二年でどうかと言うので、五年と二年と足して二で割って、三・五年じゃあれだからまあ三年にするかというような小細工をやられぬようにしていただきたい。これは十分検討を要する問題です。大局につくのが政治です。政治家の判断というものは。これは人間を大事にする法律です。物を大事にするのじゃなくて人間を大事にする法律であるから、足して二で割るということでなくて、五年という立場は、これは高度の政治判断でございますから、そういうことで、きょうも本会議をやるかやらぬかで騒ぎ立てて、最後にちょこちょこっとやるような事態が起こっている。こういう事態の中でこの法律がいかに大事な法律であるかという、本会議を揺さぶるような大法律なんです。人間を大事にする法律なんです。その点を御判断されて、総務長官という大事な地位におられる稻村先生に、最も高度の政治決着をつけるように、もう一度総裁、それから小宮山先生との話をつけてびしっとやっていただきたいということを要求しまして、質問を終わりますが、御答弁がいただけますか。
  175. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 小宮山委員長、何かしゃべっておられたが、受田先生の話をよく聞いておられましたか。――これはやはりそこまで行ったということは、一歩も私が引かなかったのです。引かなければどうにも決着がつかないということで、総裁、幹事長というところまでやった。私は異例の処置だと思うのです。そこで後は、先ほど来も申し上げたように、総裁、幹事長、そして小宮山委員長、こういうことで決着がつけられていくわけです。  しかしその決着という問題については、やはり問題は小宮山委員長もよく了解をしておられますから、また、私も行政の責任者という立場から、可能な限りの問題は全力を注ぐ。これはここまでがんばっておるのですから、後で異議を唱えられるようなことはしない。これはどういう形になったとしても、その後の交渉過程、経緯というか、その後の交渉は当然やっていける可能な問題をつくり出していく、これは行政の中でできるものである、こういうふうに考えておりますから、よろしく御協力をちょうだいするように……。
  176. 受田新吉

    受田委員 われわれの責任もあるわけですよ。わかりました。
  177. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 小宮山委員長、よろしくひとつ私の方からも御陳情を申し上げておきます。
  178. 上田卓三

    上田委員 きょうは一日この小委員会を開いていただきまして、各省の方といろいろ質疑を交わす中で、強化延長をするについて大変貴重な資料といいますか、意見というものが出されまして、私自身非常に喜んでおる次第でございます。  私も、まだ数点にわたりまして各省の方にお聞きしたいこともございますし、当然今国会におきましては、継続してこの小委員会が持たれることだと思いますので、その中でさらにこのような質疑を繰り返さしていただきたい、このように思うわけであります。特に、所管大臣であります稻村総務長官、非常に御苦労いただいていることを私自身も非常に敬意を表するわけでございまして、それがいわゆる何もないということでなしに、お互いに握手をして、よかったなあと言えるような状況を、きょう、あすが大きな山場だと思いますので、ぜひともひとつ最後の御奮闘をお願いしたいし、また長官から小宮山委員長に対して、小委員長と言うよりも大委員長だということで、非常に小委員長小宮山先生の肩は重くなってきておるわけでございますが、われわれ自身もぜひとも全面的に御協力させていただかなければならぬ、こういうふうに思っておりますし、私自身の問題でもありますので、ぜひともひとつ御奮闘をお願いしたい。  特に、小宮山委員長におかれましては、かつて総理府の副長官をされまして、そのときに初めて総理府同和対策室ができたわけでありまして、これひとえに当時の小宮山総理府長官の御努力のたまものである、私はやはりこういうふうに思っておるわけでありまして、いままた特別措置法延長強化の問題について御苦労をいただくということに対して、何か因縁めいたものを感じるわけでございますが、ぜひともひとつよろしくお願いしたい。  最後に一点だけ、長官の前で、人権擁護局長も来られておりますので、簡単にお答えいただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、いわゆる同対審答申といいますと、実態的差別心理的差別がある、これを両方解決しなければならないということをうたってあるわけで、とりわけ同対審答申に基づいてつくられたところの特別措置法は、確かに物的施設を中心としたいわゆる実態的差別の解消を中心にしながらも、同時にやはり心理的差別をもなくしていかなければならぬということで、多くの事業という名前で予算も含めて具体策がされておるわけでございますが、やはり私たちが考えるのは、先ほどもちょっと問題になりました部落地名総鑑など、いわゆる差別図書を商売にする、そういう悪質な差別事件というのは、かつて日本の歴史の中でなかったような、本当に忌まわしい事件である、こういうふうに思いますし、また近年、いわゆる良識の府と言われる大学などで落書き事件とか非常に言語道断なそういう悪質な差別、落書き初めそういう事件が起こっておるわけでありまして、それだけじゃなしに結婚の差別事件を中心に枚挙にいとまがないわけでございますが、そういう点で差別事件が近年減ってきているのか、ふえてきているのか、その傾向も含めて、ひとつこの問題に対する考え方というものをお答えいただきたい、このように思います。
  179. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 ただいま御指摘のように、いわゆる実態的差別とそれから心理的差別、これは非常に深い関係にある。特に私、昨年、奈良及び大阪方面を視察しましたときにも、これを非常に痛感いたしました。  私ども法務省の方の担当しておりますのは心理的差別の解消でございますけれども、ただいま御質問のいわゆる差別事件が減っているのか、それともふえているのかということは、私どもが現実に扱っております審判事件それから相談事件と合わせまして、やはりこれは決して減ってはいない、逐年増加の傾向にあるということは申し上げられるかと存じます。そして差別図書の購入者は、ただいま御指摘のように、中には大学も含まれておりまして、世の中をむしろ啓発、リードすべき立場にあるところの人がこういう購入者になったということはまことに遺憾である。やはりこの心理的差別というものがいかに根の深いものであるかということをわれわれの仕事を通じまして痛感させられるわけでございまして、やはりこれは非常に困難でございますけれども、何とか根絶しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  180. 小宮山重四郎

    小宮山委員長 本日は、遅くまで大変御苦労さまでございました。皆様方の熱意ある御質疑によって同和問題が前進するように心から願っております。  また、後日この問題について討論することになりますけれども、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十七分散会