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柴田(睦)
委員 三矢研究以降の
有事立法の研究が単に制服だけの研究というだけにとどまらないで、一九六六年に
防衛庁法制調査官室が取りまとめた
有事立法の研究というのがありますし、一九六九年の国防
会議のいまの「シベリア・極東の戦略的考察」でも明らかなように、民間委託という形はとっていても制服とシビリアンとが一体になって推進しているというように見なければならないし、これが重大な問題であるわけです。内閣調査室もこういうことにかかわっているわけです。
これまでの
国会答弁で福田総理は言論統制につながる機密保護法の制定ということを考えていると答弁されましたけれども、それが重大な問題になっているわけですが、この点について内閣調査室は、設立当時すでに「啓蒙宣伝要領」というものをつくっております。それを見ますと、
啓蒙宣伝の具体的方策
具体的方策には消極的方策と積極的方策とあるが、消極的方策は最少
限度に留め積極的方策を主として推進すべきである。
一、消極的方策
(イ) 国民思想、国家治安上許し難い有害な言論出版等について最少
限度の制限取締方途を講ずる。即ち立法措置によるものであるが、憲法との
関係もあり立法化は困難であり、必要があり、国民輿論がそこまで向って来る時は殆んど必要を認めないものである。而し緊急時においてはこの種の対策は必要である。
(ロ) 立法的権限行使によらないものは所謂消極的宣伝工作である。工作員と工作費によって又革命勢力に対する国民の抵抗意識によって有害なる宣伝(言論、出版、演劇等)の影響をできるだけ狭い範囲にとどめる方法である。
こういう提言を行って、具体的な方法を例示しているわけです。
また、戒厳令と直結する非常事態措置についても一九六九年に取りまとめた提言的文書であります「一九七〇年の対策とその展望」という本で、「国民生活の維持と国家緊急権」と題する項で提言を行っております。これも資料をお渡しします。時間の
関係もありますので、要約文の一部だけ読み上げます。その
内容は、四行目、
国民生活への重大な侵害の原因には、自然的なものと人為的なものがあり、また、それが国内的に発生する場合と、対外的に生ずる場合とがある。それに対する国家緊急権の発動が認められる根拠は、憲法保障のためのやむをえない手段としての特質以外に求めることができないし、その背後には、国民の憲法擁護に対する一致した
承認と支持が必要である。もしそれがなければ、憲法破壊の暴力に転化することになる。
国家緊急権は緊急事態に対してとられる臨時応急的な措置であるが、民主主義と権力分立の体制をとっている憲法の場合は、憲法の正常な運営が一時的に停止中断される。また、国民の権利自由に対する制限の強化が避けられない。このような性格から、国家緊急権はその法的根拠を憲法の明文の
規定の上に求めることができない。しかし、憲法秩序の破壊の危機に直面した場合、正常な状態への回復のために、やむをえない例外として、国家緊急権は、法的にも正当化される。
というふうになっておりますし、最後のところで日本では、国家緊急権を
制度化していないが、それは
政府当局者に対する慢性的な政治不信と、信頼するにたるだけの
政府をつくりえない国民の自治能力の未熟さに対する不安があるからである。しかし、緊急事態に対する措置については、冷静な判断をなしうる平時において十分研究すべき必要がある。
こういう提言をしているわけです。この提言は、以前
防衛庁長官をやっておられた方が鹿島研究所編の「日本の安全保障」の中で、
間接侵略の問題に関連して、安保の時に見られたような事態に対処する一つのキイ・ポイントは戒厳令なのです。戒厳令がなければいけない。これは前々から私どもは
政府部内で話をしているのですけれども、戒厳令を研究してみろということは、よう言わないのです、
政府にしても。
で、内々でやっているのですが、戒厳令というものは、昔のとおりのものを持ってくる必要はないのですけれども、やはり、非常事態における、総理なり
長官なりの権限を拡大しなければいけませんからね、それから、動く動き方をもっと変えなければいけないですよ。で、戒厳令というものを作らないというと、ああいう騒擾暴動には対処できません。戒厳令ができれば警察だってうんと力ができますし、自衛隊だってきわめて有効です。
飛ばして、
これはまた憲法
改正ということになりそうなのですが、憲法
改正をしなくても、戒厳法というものをこしらえれば、ある程度はいけると思います。
これと一致するわけです。内閣調査室のこれまでの一連のこの提言的文書には、現下の
有事立法の策定の骨格と本質があらわれているわけです。
さらに昨年三月に委託して取りまとめた「一九八〇年代に臨む日本の選択」という文書では、現下の
有事立法策定の策動のねらいと本質を示唆する予測と提言が行われております。
予測の部分の資料ですが、右の方ですけれども、一九七八年から八〇年まで「新
防衛力整備計画決定」「
国会に
防衛委員会設置」、それから一九八一年から八三年まで「自衛隊と米軍の協同体制確立」「安全保障統括
会議発足(
防衛・経済・食糧を含む)」「自衛隊の一元的指揮確立」、それから一九八四年から八六年「教科書に「
防衛理念」を掲載」、こうしているわけです。
「一九七〇年代の対策とその展望」、それから「一九八〇年代に臨む日本の選択」、この二つの文書の印刷部数と配付先リスト及びその現物、並びにこれまで行ってきた軍事戦略に関する委託研究のテーマの一覧を本
委員会に
提出すべきだと思いますが、内閣調査
室長の
考え方をお伺いいたします。