○安森
参考人 ただいま
紹介されました
全国環境衛生同業組合中央会の副
理事長をしております安森でございます。
中央会を代表いたしまして、
環衛法の一部
改正について
意見を述べさしていただきます。
まず、環衛業の現状でありますが、御承知のとおり、環衛業は、理容、
美容、
クリーニング業等を初めといたしますサービス業並びに飲食店
営業まで入れまして、十七の
業種を含んでおります。
これらの
営業は、その
業者の八〇%以上が
従業員二名以下の零細小規模
経営者の集まりであります。他産業と比べますと、経済的に非常に弱い職種に属しております。
また、環衛業は、比較的に少ない資本で開業できますから、新規開業が非常に多く、
昭和五十二年度における施設数は百九十五万に達しております。これを
昭和四十五年と比較いたしますと三三%の増加であります。
また一方では、構造的な不況によりまして、廃
業者も年々続出しております。
昭和五十二年度を見ますと、前年の施設数の一一・九%が廃業しているのであります。しかし、先ほど申し上げました施設数の増加は、これらの廃
業者を除きましても、さらに四・二%純粋の増加を見ておる状態であります。このことは、環境
衛生業というものがいかに不安定な
営業であるかということを示しておる次第であります。
こういうような主体的な条件を持っております私
どもの
業界に対しまして、最近の不況のあらしの中で、製造業などから、大資本の流入が環衛業に始まっております。また、雇用の停滞が深化する中で、環衛業に新規参入しようとする小規模店舗の数が続出しているありさまであります。
このように、私
どもの
業界は、他産業の不況の受けざら的な様相を呈しておりまして、今後とも大資本の流入は相次ぐことが予測されますし、私
どもの
業界をめぐる経済環境はますます厳しく、深刻化することが予想されるのであります。
したがいまして、零細な環衛業の
経営体質の強化を図っていくことが必要であることは当然でありますが、従来、私
ども環衛業は、製造業等の中小企業に比べまして、政府の施策の中では日の当たることが全く少ない業態でありまして、今後は、政府の積極的な
経営健全化のための指導、助成を必要としている次第であります。
急激な
営業人口の増加と大資本の流入によりまして、私
ども零細企業であります環衛業は、ややもいたしますと値下げ、ダンピング競争、不当な景品の供与などを含めます
過当競争が発生しがちでありまして、健全な
経営を維持することをますます困難にするわけであります。したがって、調整事業が必要になってくるわけでありますが、
業者といたしましては、いたずらに調整事業にのみ依存するのではなく、
経営の近代化、合理化、
消費者需要への対応を通じまして、業の
振興を図る必要を考えている次第であります。
今回
提出されました
環境衛生関係営業の
運営の
適正化に関する
法律の
改正案は、中小零細
業者の協業化、共同経済事業の促進、
営業の近代化、合理化を図るための環衛小
組合制度、
振興事業にかかわる内容、調整事業の一部手直し、
消費者の
選択の
利便を図るための標準
営業約款制度の創設など、私
ども環衛
業界が希求いたしております内容が盛り込まれておりますから、この一部
改正案の成立を心から念願する次第であります。
次に、今回の
改正案の中でとりわけ問題とされております調整事業につきましては、先生方御承知のとおり、この調整事業は、
基準料金の算定を計算
カルテル方式によるものといたしております。計算
カルテル方式は、御承知のように、原価プラス正常利潤以下で
営業する、不当な
料金競争を抑制するということを主眼としておるわけでありまして、原価プラス正常利潤によれば
基準価格以下であっても
営業を許容する、その
料金を認める方式でございます。
また、
昭和三十五年に
料金の
適正化基準に関する決定が行われました折に、計算
カルテル方式で計算した原価プラス正常利潤が、現行の慣行
料金と著しい差異のある場合には、
消費者の
利便等を考えて調整するということが決められておりまして、さらにそれを決める場合には、中央では中央環境
衛生適正化審議会、もちろん
消費者代表も入っていらっしゃるわけでありまして、地方では各
都道府県環境
衛生適正化審議会、こちらにも
消費者代表がお入りになっていらっしゃるわけでありますが、ここですべてチェックが行われて、そのチェックを経てさらに公正取引
委員会との協議を経てこれが認可されるという、非常に厳しいチェックが決められておるわけでありますから、先ほど
消費者代表の方がおっしゃったような
値上げにつながるものではなく、むしろ
基準料金は、
昭和三十七、八年の折におきましても、慣行
料金を下回る額が決定されているわけでありますから、それらのおそれはないということを申し上げておきたいと思います。
また
地域において限定的に
カルテルをやるということは
カルテルの強化につながらないか、あるいは高
料金につながらないかという御疑念があるように拝聴したわけでございますけれ
ども、本来、私
どもが実施いたします調整事業は緊急避難的なものでありまして、
過当競争の事態が発生した
地域に限定して事を運ぶ方が、他の区域に
カルテルを及ぼさないで済むという
利便があるわけでありまして、そのことは不必要な
カルテルの拡大を防止するわけでありますから、むしろ
地域に限定することの方が
消費者の
利便を図ることになると思います。
また、
地域でやれば当然他
地域との
料金の格差が生じて、その
地域のみの高
料金が発生するのでないかというお疑いにつきましては、各
都道府県で設定いたします
適正化規程の
基準料金は、全国で定められました
基準料金を上回らないという仕組みになっておりますから、常に大きな枠で中央で決定されます全国の
基準料金が枠になっておりますので、いかに
地域を限定いたしましても、特殊な
料金形態が発生するということはあり得ないわけであります。
以上申し上げましたように、はなはだ僣越でありますけれ
ども、従来、調整事業を行いまして
料金の
値上げがあったという御主張につきましては、これは私
どもとしては全く
反対であるということを申し上げざるを得ないわけであります。特に、
昭和三十五年ごろから認可申請いたしました第一回の調整事業につきましては、
昭和三十七年、八年に認可が行われましたが、その折にはすでに一般のインフレが高進しておりまして、
高度経済成長に移っておりましたから、申請した
料金と
基準料金との格差がはなはだしく、基準
料金そのものは慣行
料金を大幅に下回ったという例がございます。
その後の
料金の
値上げ等につきましては、これは賃金の高騰によるものでありまして、環衛業の
料金の中に占める賃金の比重は四八%に達しております。したがって、当然、一般
社会の相場賃金が高騰いたしますと、私
どもの
業界も、最低賃金の適用を受けておる相場賃金を払えない業態でありますけれ
ども、それなりにある程度の賃金の上昇を余儀なくされまして、それが
料金に波及しておるということは、私
どもも認めるものであります。
さて、指導
センターの設置につきまして、いろいろな御
意見をあちこちからお伺いするわけでありますが、これはむしろ、私
どもの中小零細
業者を含みます環境
衛生営業は、他のたとえば中小企業
団体中央会の指導を受けております。私
どもからすれば大手の中小企
業者、あるいは商工会または商工
会議所、私
どもから比較いたしますと大手の
業者が、それらの一連の
経営指導や情報提供のサービス等を受けておるわけでありまして、私
どもはこれらの指導体制の網からこぼれた非常に小さな
業者であります。したがって、私
どものような零細
業者はそういう指導を受ける資格がないのだ、おまえたちはもう黙って勝手に自由にやっておきなさいということであれば、これはもう何をか言わんやでございますが、私
どもは、物的なものより人的なものを
中心とした
営業でございますので、当然国の適切な、御懇篤な御指導をいただくような仕組みをいただくことが好ましいわけでありまして、その
運営等につきましては、私
どもの十六
団体の方から
運営者等も出てくることでありましょうし、また専門家等を用意いたしまして
経営指導や
消費者の苦情処理等が指示されるわけでございますから、これが役所の天下り的なものにつながるおそれはないわけでありまして、商工
会議所や中小企業
団体中央会もそのようなことはないということを承っておりますから、私
どもに限ってそういうことが発生するということは、これは少し事実に対する誤認ではないか、このように考える次第であります。
先ほど申し上げました、私
どもがこの
法律に賛同いたしまして、この
法律に対する評価としておりますのは、たとえば、飲食業などでは生鮮食料品などの共同購入や、あるいは旅館等における配ぜんの共同化、あるいは浴場等の石油の共同備蓄、それらの共同事業を私
どもは一つの県のエリアで実施することがはなはだ困難でありました。環衛
組合には共同経済事業をしてよろしいという規定があるわけでございますけれ
ども、この規定を運用しようといたしましても、全県的なエリアでは実施できない、効率が悪い、当然一定の限られた区域でそれらの共同経済事業をすることが業の近代化、合理化につながるということで、小
組合制度というものが設けられることになっておりますが、これは環衛業の近代化、合理化を促進する上で非常に大きな役割りを果たすものであると私
どもは非常に期待いたしておるわけであります。
また、中小企業近代化促進法による
振興事業等につきましても、私
どもは製造業のように機械化や省力化をし得る部分が非常に少のうございます。御承知のように、労働集約的な、手工業的な要素を持っておるわけでありまして、当然、それら環衛業に存在する特殊な要件を基礎といたしました
振興事業というものが必要になってくるわけであります。さらに、御承知のように、環衛業は
衛生上特別の規制を受けております。
これらのことを考えますと、この
法律の中に、環境
衛生業者のための
振興指針が設けられ、あるいは
組合が
振興計画を立てて業の近代化、合理化を図るという、業の特質を生かした制度が設けられようとしているわけでございますから、私
どもとしてはぜひそのようにあってほしいと念願する次第でございます。
さらに、
消費者の
利便の問題につきましては、
昭和四十八年の二月二十七日に国民生活
審議会が答申されております「環衛サービス業に係る
消費者保護について」というものがございますが、これによりますと、「近年、提供されるサービスの内容が多様化し、また
技術も高度化したため、これらのサービスの内容は、一見しただけでは
消費者にわかりにくくなってきている。また、サービスの名称が、
業者によりまちまちであり、誤認を生じる場合もある。したがって
消費者の
選択の指針とするため、その内容の表示を促進するとともに、
クリーニング等についてはその規格化を検討すべきである。」ということが指摘されております。
国民生活
審議会には当然
消費者代表も御参加されているわけでございまして、これらの答申に御同意なさったと思うわけでございますが、私
どもは今回標準
営業約款を
制度化することによりまして、提供するサービスの内容あるいは施設の内容の表示を適正に行いますとともに、現在
社会的にいろいろ問題になっております損害賠償を明確にする、それらの内容を付しました標準
営業約款を
制度化するということが、
消費者の
利便あるいは
利益を決して損なうものではなく、むしろその
反対であるというふうに考えているわけであります。
以上のように、今回の
法律改正の内容は、単に調整事業のみを目的としたものではございませんで、中小企業の二五%から三〇%、中小企業の最も下位に属する環境
衛生営業の近代化、合理化というものを促進することを目的として案の内容が作成されておりますので、全国環衛
同業組合中央会といたしましては、ぜひ一日も早く、先生方の御尽力によりましてこの法案が
国会を通過し、いままでほとんど日の当たらない職種でございました環衛業にわずかでも曙光をお当ていただきたく、心からお願いいたしまして、私の
意見を終わらせていただきます。(拍手)