○東中
委員 百五十人体制に向かって努力する。百五十人の検診を行うことを目途にこの一年取り組んできた。そういう中で滞留が一層ふえてきた。だから今度は、この一年の
経験にかんがみて、百五十人体制じゃなくて三百人体制にするとかあるいは五百人体制にするとかいうふうな目途を決めてそれに取り組む、そういう姿勢になっていないのじゃないですか、ここを聞いているんですよ。
去年七月に出したものでは、検診医の増強が非常に大切だということを書いてあるんですよ。その
立場に立てば、この体制だけでは、まだ百五十人目標ではだめなんだということが、滞留がふえてくるという事態の中で明らかになっているのだから、それを三百人体制にするという目途を立てて、そういう方向で進むという
通知に今度なったというなら、まさに前の
方針に従ってやっているということになるのだけれども、その点については、新しい目標設定、検診体制の強化という点では
環境庁としては何にも
方針も出してなければ、ただ前の
通知だけでやっていくということにしかなっていないのでしょう。それではどんどん滞留がふえていくわけですよ。
患者の側の要求はむしろ全く無視されているということになるわけです。
だから、
長官、ちょっとお聞きしたいのですけれども、私、ここで
一つ例を聞いたのです。四年、五年とわたって放置され、または保留とされている人々の苦しみというのは大変なものです。ここに
一つ例があるのです。
浦上の藤本重造さんという一家なんですけれども、この方は代々漁業を営んできた。ある時期には年三百日以上漁業に従事して漁業協同組合から表彰を受けるほどだった。それだけに
汚染された魚を大量に食べて、藤本さん夫婦とおばあちゃんが
水俣病に冒された。そこで三人とも申請をしたわけです。藤本さん本人は昨年の暮れようやく
認定されたのですけれども、奥さんとおばあちゃんは保留のまま放置されて、これで六年です。この間各地の病院を転々とする。横浜で就職していた長男も帰郷を余儀なくされる。そして、おばあちゃんの場合は、
患者にとって大変苦痛な検診を実に三時間半にわたって行われた。ところが、あげく保留とされて、もういまは寝たっきりです。今度再
審査に必要な検診を受けようと思っても、体力的に受けられなくなってきている。こういう
状態になっています。だから、
昭和三十年当時の典型的激症型の
水俣病と違って最近の場合は慢性型で、その
症状も非常に多様化している。藤本さん一家のように、同じ家ですから同じように
汚染された魚を多食して、多少の違いはあったとしても同様な
症状が出ている。しかし、こういうおばあちゃんの場合、奥さんの場合はそういう
状態に置かれている。これは保留にしているあるいは滞留している、そういうことのないようにするのだということについて行政は本当に真剣に取っ組まなければいかぬじゃないか。いわば
チッソの不法行為なんですからね。この間論告されたように犯罪行為なんですから。そのことによって受けたという
被害者が行政の
認定がおくれることによってあるいは保留されることによって、もう本当にどうもこうもならない
状態に置かれているというのですから、こういう
実情を
長官よく知ってもらって、それを進めていく、検診体制を強める、それから
認定促進を図る、そういう
被害者を
救済するためにそれをやるのが
環境庁の任務なんですから、そういう姿勢に立たなければいかぬと思うのですけれども、
長官、いかがでございますか。