○
馬場(昇)
委員 わからないのですから、わかるような
答弁を再度求めるということで保留をしておきたいと思います。
そこで、時間もございませんけれども、私の見解を申し上げたいわけですけれども、この新次官通達というのは、いままで聞いたけれども、大部分質問も保留いたしました。はっきりしない点が非常に多いのです。しかし、私がいろいろ、私も二十年近く
水俣病にタッチしております。これはもうはっきり言っておきますけれども、絶対に
認定促進にならないし、ただ、あなた方の不作為違法の顔づくり、形式づくり以外の何物でもないし、このことで
認定は遅滞し、そして
患者は
救済できない、こういうことになることは間違いない、こういうぐあいに思うのですけれども、その背景について、私、こういう事実をたくさん知っております。
知事が言ったのは、先ほども言いましたように、この保留の問題、わからない、こういう問題を、やはり棄却とかあるいは
認定、こういう中で何か別な
方法を国で考えてくれということだったのですけれども、あなた方から出たのは、蓋然性とかあるいは棄却とかいうことで切り捨ての通達で、この熊本県の要望を逆に抑えつける方向でこたえたわけですけれども、実は先ほど言っておりますように、このことはやはり閣議の問題、自民党筋の問題、いろいろとあったわけですよ。
たとえば、内閣官房筋がこういうことを言っているのですよ。
チッソ補償金総額がわからぬ
状態では
国民の血税は使えませんよ、
認定、棄却は厳重にやってもらわなければ困る、こういうことが、先ほど言われました春段階から盛んに言われておったことは、報道もされておりますし、私も聞いたことがあるのです。
それからさらに、内閣官房や自民党筋から、
水俣病患者補償のため
チッソ救済を県債でしのぐなら、
認定条件を厳しくして
患者の増大に歯どめをかけておく必要がある、こういうことが話し合われておるのです。
そしてさらに、官房筋からも自民党筋からも、政治的保留と医学的保留を区別するような通知を出すことで
環境庁も了承した、こういうことが出ているのです。熊本県
知事もこういう新次官通達を出すなと言っておったのです。
環境庁も本当は出したくないと言っておったじゃありませんか。それを、このような意図の中の閣議了解事項にこぎつけるまでのいろいろな自民党とか各省の話し合いの中で、いま言ったような背景の中でこの新次官通達が出てきたということは、これは明らかなのです。そういうことについて、きょうはもう時間がございませんから、
一つ一つ質問に答えを受けませんけれども、総括して後で
答弁してもらいたいのですけれども、たとえば信澤さんは何と言いましたか。要綱が表に出てまずかった、どのような目的で、どのような
条件のもとでどうこうという点が抜けて、
結論だけ出ている、あれだけ見れば
患者さん
たちが心配するのも否定できない、こういうことを信澤さんなんかは、要綱が漏れたときに、自民党にあなた方が要綱を持っていったときに、
関係閣僚
会議に出せと言われてあなた方が要綱を持っていったときに、それが報道された、そういうときに、こういうことを信澤さん自体も言っておるということは事実でございます。
だから、こういう点で、少なくともさっきのセット問題等につきましても、
チッソ救済の県債発行とか新次宮通知とか自民党の特別立法、これは切り捨てという考え方ではセットなんですよ。それの一環としてあなた方が出しておるわけですよ。こういう
行政の意図というのははっきりしております。このことは、二十年本当に苦労して苦しみ抜いて、最初私が言ったように、みずからの力で
自分を守るために闘ってきた
患者さんなんかは、もうすぐその裏は見抜きますよ。そうしてはだで感ずるのです。このことは完全に
患者切り捨てという以外の何物でもない。このことはもう明らかに言えると思うのです。そのことがさっき言ったように混乱を起こし、
促進にはならなくて遅滞を起こすということになるのだ、そのことを知らずに
行政をするということは、かつて黒岩検診体制で二年間審査会がとまった、このことに通ずるのだということをはっきり私は申し上げておきたいと思うのです。
このことについて、いま熊本県の
状況を御存じですか、
長官。
患者さん
たちは熊本県庁前に、この新次官通達の撤回を求めて、もう二カ月以上も座り込んでおるのですよ。吉本モモエさんという人がおりますけれども、この人は
認定患者です。そうして一回
けいれんが来ますと三日間ぐらい寝なければ動けないような人ですよ。この人の御主人は
水俣病患者だったとだれも思うのだけれども、
申請もせずに死んでおります。そうして長女は
患者として
認定されているのです。次女はいま熊本地方裁判所の第二次原告団になっているんですよ。それで、長男はいまもう体が動けなくなって自宅で療養している。その長男が
申請中で、いま保留になっているのです。この通達を見たときに、この不自由な体で座り込みにこのような人
たちが来ているのですよ。こういう人
たちが、この次官通達は切り捨てだということでもって撤回を求めていま熊本県庁前にいっぱい座り込んでいる。こういう事実をどう見るのですか。
さらに、あなた方は、ひとり勝手なことを先ほどから
答弁しておるけれども、要綱が出たときから、この新次官通達が出た、その後の報道機関の報道を見てくださいよ。どこの報道機関も例外なく、これは
患者切り捨てだ、それで
チッソ救済に名をかりてここで
患者切り捨てをする、みんな報道機関は口をそろえて言っておられるじゃないですか。そうして、このことについては新聞の社説等でも書かれております。これは世論じゃないですか。これが本当の鋭い目で公平な目じゃないですか。そうしてまた、この
国会におきましても、
患者さん
たちが全野党に質問をいたしました。自民党にも質問があった。全政党に質問いたしました。ところが、社会党、公明党それから共産党、新自由クラブから回答があっております。民社党から回答が来ていないようですけれども、この政党は
——民社党もあったのですかね。(「ぼくのところへ来なかったよ」と呼ぶ者あり)それは失礼いたしました。
そこで、すべての政党が口をそろえて、この新次官通達は疑わしきは
救済するという四十六年次官通知の原則を崩すものである、この新次官通達はそういうものであるということを野党全部が言っておるじゃありませんか。これが大体本当の目じゃありませんか。そうして具体的なあらわれとして、この新次官通達が出た後、不服審査七名が全員棄却になっているのですよ。それまで不服審査があって全員棄却になったということはないじゃありませんか。そういうことから見て、あなた方
環境庁がただひとり、これは変わらないのだ、切り捨てじゃないのだと言っても、すべての人
たちが、これは
患者切り捨てになっている、そういう働きをするということを言っておるのですよ。これについて
長官、あなたはやはりこれでも、こういうあらゆる角度から見て
——あなたはさっき
患者の心の上に立った
行政をすると言った。これはこの上に立っていない。すべての人
たちの意見が切り捨てだと言っておる。これをあなたはどういうぐあいに判断しておるのですか。あなたの見解を聞きたい。