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1978-03-31 第84回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三十一日(金曜日)    午前十時四分開会     ―――――――――――――    分科担当委員の異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     野田  哲君      野田  哲君     田中寿美子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     主 査         宮田  輝君     副主査         矢原 秀男君     分科担当委員                 糸山英太郎君                 亀井 久興君                 鍋島 直紹君                 林  ゆう君                 田中寿美子君                 野田  哲君    国務大臣        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)      稻村左近四郎君    政府委員        内閣総理大臣官        房会計課長兼内        閣参事官     京須  実君        内閣総理大臣官        房交通安全対策        室長       三島  孟君        内閣総理大臣官        房総務審議官   大濱 忠志君        宮内庁次長    富田 朝彦君        沖繩開発庁総務        局会計課長    永瀬 徳一君        沖繩開発庁振興        局長       美野輪俊三君    説明員        内閣審議官    田中 和夫君        内閣総理大臣官        房参事官     赤松 良子君        公正取引委員会        官房審議官    伊従  寛君        大蔵省主計局主        計官       塚越 則男君        会計検査院事務        総長       鎌田 英夫君        会計検査院事務        総局第四局長   阿部 一夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 宮田輝

    主査宮田輝君) ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和五十三年度予算中、会計検査院所管を議題といたします。  会計検査院当局からの説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮田輝

    主査宮田輝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それではこれより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 矢原秀男

    矢原秀男君 まず、五十三年度会計検査院予算についてお伺いをいたします。  五十三年度会計検査院予算は、総額七十六億九十二万九千円となっております。その内訳を見ますと、会計検査院事務処理に必要な経費、すなわち会計検査院法に基づく会計検査院一般事務処理に必要な経費として六十七億一千二百九万四千円、検査業務に必要な経費、すなわち憲法及び会計検査院法に基づく国の収入支出決算検査及び確認などに必要な経費として五億六千百五十二万八千円が計上されているほかに、会計検査院施設整備に必要な経費として三億二千七百三十万七千円が上げられております。五十三年度検査院予算総額の対前年度伸び率は一一一・五八%であって、五十二年度の対前年度伸び率一〇八・七三%を二・八五%上回っているのでありますけれども内訳で見ますと、逆に伸び率が減少している状態を私は見るわけでございます。まあつまり、五十三年度一般事務処理に必要な経費の対前年度伸び率一〇七・一七%は、五十二年度のそれの一〇八・二三%より一・〇六%減少をしております。まあ、検査業務に必要な経費については五十二年度の対前年度伸び率一一五・一二%より〇・四%少ない一一四・七二%となっているのでありますけれども、これは予算の対前年度伸び率で見る限り、一つは、一般事務処理経費検査業務経費とが施設整備経費に食われた形になっているので、果たして例年テンポ検査拡充が予定されているのかどうか疑問に思っているところであります。  そこで質問をいたします第一点は、五十一年度から五十三年度に至る人件費検査旅費庁費予算額伸び率はどのように推移したかを説明していただきたいと思います。
  5. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) いま御質問いただきました過去三年間の人件費等伸び率を申し上げますと、人件費は、五十年度は四十九億四千五百万――端数を省略せていただきます。五十一年度は五十四億八千百万円、伸び率は一〇・八%、五十二年度は五十九億二千四百万、伸び率は対前年度比八・一%、それと、ただいま御審議願っております五十三年度要求額は六十四億八千万、伸び率といたしましては九・四%、こういうことでございます。  また、検査旅費について申し上げますと、これは内国検査関係でございますが、五十年度は三億一千五百八十八万、五十一年度は四億七十三万、対前年伸び率は二六・九%、それから五十二年度が四億五千九百五十九万、前年比一四・七%でございます。それから五十三年度要求額は五億八百六十二万円、対前年比は一〇・七%、このほかに外国検査旅費というものがございます。  それから庁費について申し上げますと、五十年度は一億七千九百十七万円、五十一年度は一億九千二百四万円、伸び率が七・二%、それから五十二年度になりまして二億一千三百六十三万円でございまして、伸び率は一一・二%、それから五十三年度、ただいま要求しております金額が二億一千四百七十万、伸び率といたしましては〇・五%と、そういうような状態でございます。
  6. 矢原秀男

    矢原秀男君 いま御報告をいただいたわけですけれども、いろんな形で五十三年度予算をいろんな角度から検討さしていただいておりまして、先ほども少し述べたわけでございますけれども、これで例年テンポ検査拡充というものが期待することができるのかなあというふうな懸念性も持っているわけですけれども、この点はいかがでございますか。
  7. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 御承知のとおり、財源難と申しますか、こういう現況にありまして、会計検査院もできるだけ予算は節約すると申しますか、そういう方向でやはり協力していかなければならないと、こういう考え方が基本的にはございます。しかしながら、検査実行面、その充実ということにつきましては、これは最優先的に考えておりまして、多少他の面を犠牲にすることがありましても、検査の密度と申しますか、施行率と申しますか、そういった面につきましてはできるだけこれは優先的にお願いいたしまして、その充実を図るということでございまして、現在考えております予想というものを申し上げますと、この伸び率は、先ほど申し上げましたように、対前年比では、たとえば検査旅費について申しますと、五十一年度は対前年比が二六・九%に対して、五十三年度は対前年比が一〇・七%と、こういう計数的な面はございますけれども、これはそれぞれ運賃値上げ、そういったものが加味された上での伸び率ということが考えられるわけでございまして、現在要求申し上げております五十三年度予算で実行いたしましても、たとえば、この間国会に御報告申し上げました五十一年度検査実績八・八%という浸透率がございますが、これを下回るということはないと、こういうふうに考えております。むしろ、これをオーバーするようなことも可能ではないかと、こういうふうに考えております。
  8. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ次に、五十三年度検査旅費予算というものもいまいろいろ伺ったわけですけれども、そういう形の中で実地検査がどの程度可能なのかという心配もあるわけですが、先ほども御答弁いただいたわけですけれども会計検査院検査、これは大別して、一つ書面検査、二番目には実地検査、これは御承知のとおりでございますけれども、特に実地検査不当事項指摘に関して果たす役割りが非常に大きいと承知いたしております。まず、この二つの検査の概要について説明をしていただきたいと思います。
  9. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 御案内のとおり、会計検査というものは、書面検査、これはもう毎月の計算証明ということを各省庁にお願いいたしまして、あるいは政府関係機関等にお願いいたしまして、これを徴しているわけでございます。それと半面、大きなウエートを占めておりますのが実地検査現場に参りまして、帳簿書類はもとより、現場について徹底的に検査をするというのが私どものたてまえでございます。  まず、書面検査について申し上げますと、この書面検査と申しますのは、たとえば支出計算書あるいは国税収納金徴収額計算書あるいは歳入徴収額計算書、そのほかいろいろございます。国有財産増減及び現在額計算書とか、収入金現金計算書とか、あるいは前渡資金出納計算書、そういった毎月の計算書、これは毎月のものもありますが、三カ月に一回出していただくというようなものもございますが、そういったものにそれぞれの証拠書類――契約書でございますとか積算の内訳であるとか、図面、そういったようなものをつけていただきまして、検査院計算証明として提出していただく。これは五十一年度の集計を申し上げますと、計算書の数といたしましては二十三万四千冊、それから証拠書類の枚数にいたしますと六千三百三十六万余枚。この六千三百三十六万のほかには、いろんな図面などが、膨大な量のものが計算証明として出てくるわけでございます。これを常時やはり調査官検査をいたしまして、そこでいろいろな問題点をピックアップいたしまして、そういうメモを持って現地に出張して、より詳しい検査をする、こういうのが実地検査、こういうような状況でございます。
  10. 矢原秀男

    矢原秀男君 非常に大事な検査の過程があるわけですね。そこで、実地検査充実というものは予算執行適正化と非常に密接な関係があると考えられるわけであります。五十一年度決算検査率は平均八・八%で、かつての七%時代から一段と前進していることはわかります。そういう中で、過年度における実地検査推移、まず説明をしていただきたいと思います。
  11. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 実地検査推移と仰せられますのは、施行率で申し上げてよろしゅうございますか。
  12. 矢原秀男

    矢原秀男君 はい。
  13. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 施行率で申し上げますと、五年ぐらい過去にさかのぼってまいりますと、昭和四十八年度につきましては七・三%、四十九年度につきましては七・五%、五十年度につきましては八・三%、五十一年度については同率でございます八・三%、それから五十二年度につきましては八・八%と、こういうような状態でございます。ただ、これは私ども検査対象を区別いたしておりまして、重要な個所と、それからさほど重要でないと、こういうふうな個所に分けておりまして、重要な個所で申しますと、四十八年度は三二・六%、四十九年度は三二%、五十年度は三二・七%、五十一年度が三二%、五十二年度が三三・八%、その他重要でないと先ほど申し上げましたが、これの推移を申し上げますと、四十八年度が一・八%、四十九年度が二・一%、五十年度が二・五%、五十一年・度が二・六%、五十二年度が二・七%。つまり、重要でない個所というものが、これは少しずつでございますが、ふやしていっている。ただ、これはなぜふやすかと申しますと、やはり重要でない個所、たとえば重要でないと申しますのは、法務出張所であるとか、あるいは郵便局であるとか、こういうようなところがあるわけでございますが、そういうところにえてして問題が起こるということでございますので、これはなかなか軽視するわけにはいかないというわけで、これの検査個所をふやしているわけです。しかし、これが非常に何万というような個所の中で、これを三十ふやしても五十ふやしても、パーセンテージとしてはなかなか比率は上がらないわけでございますけれども、まあ、〇・一%でも上がるということは、個所が非常に多いということを考えますと、相当そっちの方も重点的に見ていると、こういうような状況でございまして、合わせて平均いたしましたのが、さっきの、たとえば五十二年度で申しますと八・八%。八・八%と申します数字は、私どもが過去十年調べましたところでは最高パーセンテージになっております。ただ、私どもといたしましては、やはりこれはもう少し向上させたいと、こういう考え方はございます。
  14. 矢原秀男

    矢原秀男君 やはり数字が示すように、非常にパーセントもふえているわけですけれども、五十三年度検査旅費予算については五億八百六十二万三千円、対前年度伸び率は一一一・六五%になっております。これは五十二年度のそれの一一四・七五%より三・一%減少しております。こういう意味合いから見まして、私がやはり懸念をいたしますのは、実地検査の縮小にならないかという、やはりどうしても懸念がするんですけれども、その点いかがでございますか。
  15. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) この五十三年度が多少伸び率が低いと、こういうお話でございますけれども、五十二年度予算の内容を考えますときに、これは実は汽車運賃値上げというものが非常に――予定しておったわけですが、これがおくれたというような関係がありまして、予算の中にはそれが入っていたというような関係もありまして、五十三年度も多少汽車運賃が上がるということは見込んで予算を要求しているわけでございますが、その辺を勘案いたしますと、必ずしも私どもの方は、これで少なくなるというふうには感じておらないわけでございます。そうかと申しまして、これで飛躍的に検査個所がふえると、こういうわけでもございません。ただ、現在の検査院人員構成から申しますと、やはり旅費額をふやすということは、逆に言いますと、労働の過重というような面もございまして、やはりこの辺が現在の人員に対応いたしましてはいい線ではないか、できれば九%程度は伸ばせるんじゃないかと、こういうような考えを持っております。  それともう一つ、ここでパーセンテージが上がる下がるの問題がございますが、これは遠くへ、たとえば沖繩とか鹿児島とか北海道、そういった汽車賃が非常にかかるようなところ、こういうところへたくさん参りますと、やはりそこで旅費に食われてしまって施行率が伸びないと、こういう一つ問題点があります。したがいまして、去年北海道へ行ったから、ことしは北海道は全然行かないかというと、必ずしもそうではございませんけれども北海道へ去年十本行った場合、去年十本行っているんであるからことしは七本と、それよりも東京に近い近県の方を今度は重点的にやろうというような操作はございます。したがいまして、この金額比で必ずしもそのパーセンテージが出てくると、こういう性質のものじゃないということは、蛇足でございますが申し上げておきます。
  16. 矢原秀男

    矢原秀男君 どうもいま御答弁を伺っておりますと、私も五十三年度検査旅費予算というものを見ておりまして、どの程度実地検査が可能であるかなと非常に感じているわけですけれども先ほどお話が出ましたように、五十一年度決算実地検査率では八・八%、まあ過去最高であると、こういうことでございますが、確かに、いまはこういう国情から見まして、検査院立場、非常に役割りが大事になっております。五十三年度は九%ぐらいの可能性があるといま言われておりましたが、これは間違いないですか。
  17. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 大体その辺に安定するように――安定しますと申しますか、その辺の実績が上がるようにやはり出張計画というものを組みたいと、こういうふうに考えております。
  18. 矢原秀男

    矢原秀男君 そこで、そうなってまいりますと、やはり検査旅費というものを考えてみなくちゃいけないと思うんですけれども、第一点は単価増額、これは好む好まざるにかかわらず、仕事立場から見て、私は単価増額の問題、それから人員増を伴う総額の増加、これがやはり今後の課題になると考えております。最近、国家公務員等旅費に関する法律に基づいて、旅費の支給によっては当該旅行における特別の事情または当該旅行性質上旅行することが困難な場合には大蔵大臣協議して定める旅費を支給することができると、旅費法第四十六条第二項にこういう了解事項があるわけですけれども、これ、大蔵省検査院の間で成立したと承知をいたしているわけでございますが、その運用の実態がどうなっているのか、検査院と、大蔵省からも御説明を伺いたいと思います。
  19. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) この検査旅費の点は私ども非常に悩みの種でございまして、私ども実地検査と申しますのは、やはり一等級あるいは二等級、それから下の方は七等級というような者が一体になりまして出張をいたしまして、そうして同じところに泊まって毎日検査の結果というものを報告し、そこで主任官の指導を受けて翌日のまた検査に臨む、同じ宿屋に泊まっていなければならない。そういった場合に、いま旅費法等級別旅費定額が決まっておりますが、なかなかそういう面で苦しい下級職員がある、こういうわけでございます。最近の旅館ホテル等値上げというものもございまして、実際問題といたしまして赤字になる、こういう例がえてしてある、こういうような状況でございまして、私どもといたしましては、現行の旅費定額といいますものが、たしか五十年の十一月から実施されている、ここ三年たっておりまして、その間にかなりそういった宿泊費実態というものは値上がりがしているんじゃないか。現に、私ども出張さした者の報告を聞きましても、かなり上がっております。また、現在は出張センターというものを置きまして、宿泊先というものは一括して官において確保するという態勢をとっておりますので、値段というものは事前にはっきりわかる、こういう情勢でございます。そして、やはり場所によっては相当高い宿屋にも泊まらざるを得ない、ほかに安いところがないというわけでございまして、最近におきまして四十六条の二項というものを適用していただくようにいたしまして、この年度末はやってまいったわけでございます。ただ、何と申しますか、私ども調査官も、なるべくそういう余分な経費は出さないように、なるべく赤字にならないようにという心構えがございまして、公的な施設、そういったものを可能な限り利用するという態勢をとっておりまして、この年度末の三ヵ月間における四十六条二項の適用をお願いした件数というものは、現在のところ、九件でございます。ただ、これが新年度、四月、五月、こういうシーズンになりますと、この公的な施設もほとんどとれなくなってくるんではないか。やはり行楽あるいは観光旅行、そういったような人たちのためにそういう施設もやはり利用される面が多くなると、検査院職員検査のために確保する設備というものが制限を受ける。ですから、この三ヵ月で九件というものはオフシーズンのときの実績であって、シーズンになりますと、かなり多くなってくると思います。――失礼いたしました。ただいま協議済みが九件と申し上げましたが、いま大蔵省の方と協議いたしておりますのが十五件ございます。合わせて二十四件でありますが、いずれにいたしましても、四月から以降の旅館確保というものに非常に私どもは危惧を感じている、赤字出張メンバーが多くなってくるんじゃないかと、こういうふうに考えております。
  20. 塚越則男

    説明員塚越則男君) 大蔵省でございますが、私直接の担当ではございませんので、話を聞いておりますところによりますと、会計検査院の方からその都度御協議を受けまして、御協議を受けた際には、できるだけ前向きにということで処理しているそうでございます。
  21. 矢原秀男

    矢原秀男君 やはり検査だけは十分していただいて、工事の適正不適正、これは国民立場からきちっとしていただく大事な仕事でございますので、必要な経費等については、私はやはり、求めるところはきちっと求めて、士気の阻喪を来すのではなしに、下級人たちも喜んで仕事ができる、そういうふうな形に私はもっていかなくちゃいけないと思います。先般から出ておりました不祥事の問題にいたしましても、やっぱりそれをきちっと断ち切っていくということになれば、いまお話がございましたように、下級の方々が、これは上級であってもそうだと思いますけれども赤字をしながら仕事をしていくという形では、検査院の場合はあってはならない、少々のことがあっても、きちっと仕事を評価をして、それが国民の前に明らかにされつつ、ガラス張りの行政の中で一つ一つのものが国民に返ってくる、そういう第一線検査をしていただいているわけですから、きょうは大蔵省も、あなたは該当でないと言われておりますけれども、非常に私はきょうは不満です、本当に。やはり該当の方がきちっと出てきて、ある程度全面的にバックアップしていただかないと、これはいけない問題だと思います。  じゃ次に移りますけれども歳入検査充実について伺います。  わが国経済高度成長から低成長への転換に対応して、国家財政赤字国債依存時代がいま、訪れております。財政危機脱出抜本策については別途論ずることといたしまして、現在のような財政危機時代にあっては、あらゆる財源を的確にとらえ、適正な歳入確保することが従来にも増して大切になっていることは周知のとおりでございます。したがって、歳入に関する検査充実、とりわけ歳入に関する実地検査充実は、重要度を一層増していると考えております。そこで、過去の検査状況について説明をまずしていただきたいと思います。
  22. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 会計検査院といたしましては、国の収入支出決算を確認する、こういう義務を負っておりますわけでございまして、支出面だけではなくて、歳入の面、まことに先生指摘のとおり、これは重要な項目でございます。したがいまして私どもといたしましても、歳入の面にも十分力を入れておると、こういうわけでございます。  まず、歳入の大もとと申しますか大宗を占めるものは、御承知のとおり、租税収入というものでございますが、これにつきましては、先生承知のとおり、毎年十億以上の徴収不足、そういったものを国会へ御報告申し上げているわけでございます。現在検査院では、所管は第一局でございまして、租税担当検査課を一課、二課、三課と三つ設けまして、租税についてのエキスパートを集め、徴収賦課の適否について検査を行っております。またそのほか、最近では、個々の徴収、法人であるとか個人であるとか、そういったものだけではなくて、租税体系、そういったものについても検討を行わせておりまして、税収の確保というものに努めております。これらの三つの課でございますが、現在職員合計いたしまして八十名、このうち第一線に出向きます調査官、これは六十七名おります。このほかに、補佐官といたしまして主任事務官、これは検査にも参りますが、まあ主役は調査官――と主任でございまして、これが六十七名。昨年の計数で申し上げますと、税務官署、これが七百四十五ございます。そのうち二百三十六ヵ所――税務官署と申しますのは税務署のほか、税関も入っております。この七百四十五のうち二百三十六ヵ所、人日にいたしまして約五千人目検査をいたしておりまして、実地検査施行率では三一・六%、これは署の数に対する施行率でございます。また、いま申し上げたのは租税関係でございますが、国有財産検査というものが、これはやはり歳入面の大きなポイントでございます。で、売り払いとか貸し付けの対象となります大蔵省所管普通財産につきましては特に一つの課を設けてありまして、売り払い代とか貸付料適正化を図りますほか、政府が、つまり各省各庁が未利用地として管理しているもののうちに、もう長年にわたって使用していない、売り払ってもいいんじゃないかというようなものも、そういうものがありはしないかという点につきましても検査いたしております。この国有財産検査につきましては、職員が現在二十名でございます。調査官主任、これが十五名おりまして、昨年の計数で申し上げますと、財務局あるいはその出先の財務部、出張所、そういったものが百五十二ございますが、そのうち八五、ほぼ半数以上でございますが、約八百七十人目をもって検査いたしておりまして、施行率では五六%となっております。なお御意向を体しまして今後とも一層歳入確保というものに努力していきたいと、こういうふうに考えております。  なお、ここで補足して申し上げますと、歳入に関する検査は、この各課でやっておりますほかに、各、厚生検査課とかあるいは通産検査課とか、いろいろの課がございますが、そこでは検査対象のそれぞれが持っております収入徴収というものがございます。保険特別会計とか事業特別会計、政府関係機関もいろいろあるわけでございますが、そういった面でも歳入あるいは歳入に類する収入というものを扱うわけでございますので、そういった面についても重点的に検査をいたしておると、こういう状況でございます。
  23. 矢原秀男

    矢原秀男君 租税国有財産利用収入によっての実地検査充実や、いろんな成果の数字を挙げていただいたわけでございますけれども、ここで国有財産利用収入検査について、国有財産の適正な評価、これが前提条件であると考えられるわけです。そこで、会計検査院には不動産鑑定士の資格を有する職員は現在何名在職していらっしゃるのか、また、その資格はどういうふうに活用されているのか、伺いたいと思います。
  24. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 不動産鑑定士の数でございますが、ただいま不動産鑑定士としての資格を有する者は七名でございます。このほかに、不動産鑑定士補の資格を有しておる者が五人ございます。私どもといたしましては、この数は決して十分ではないと、こういうふうに考えまして、今後これらの資格を有する者をふやすと、こういう基本的な考え方がございまして、現在不動産鑑定に関する研修に参加させている者が三名ございます。ただ、なかなかこれも現在の定員の中から一度に大量にそういうところへ派遣すると、こういうわけにもまいりませんで、現在三人とわずかでございますけれども、そういう研修に出させております。これは現在でございますが、これが終わりますとまた次の者も出したいと、こういうふうに考えております。  これらの職員の活用につきましては、特に国有財産検査課だとか、その他国有財産、そういったものを対象として持っておるこういうような課に重点配置をして、仕事の上でメリットがあるように努力をいたしておるわけでございます。
  25. 矢原秀男

    矢原秀男君 ひとつ十分活用していただきたいと思います。  じゃ次に、予算執行の目的不達成事項指摘拡充について伺いたいと思います。  五十一年度決算検査報告には、補助金の目的不達成に関する不当事項がかなり目にとまるのであります。その例として、農林省所管の補助金不当事項第一八号について、まず概要を説明していただきたいと思います。
  26. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) これは、いま担当局長が参っておりますので、その方が詳しゅうございますので、局長から説明いたさせます。
  27. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) 五十一年度検査報告検査報告番号一八号の不当事項につきまして、概要を御説明いたします。  この事業は、栃木県農業公社が栃木県那須郡黒羽町の八溝黒羽地区に同公社の牧場を建設するものでございますが、入植者五戸によりまして、事業規模といたしましては乳牛等三百頭の経営を行うことといたしまして、四十八年度から三ヵ年計画により、事業費四億九千九百五十一万円で、草地造成面積四十ヘクタール、道路延長二千五百メートル余を施行することになっておりました。  これにつきまして、昨年の六月に本院において実地検査をいたしましたところ、計画の一部でございますところの道路一千二百メートル余り、それから草地造成面積四ヘクタールなどを実施いたしましただけで事業を休止している状態となっておりました。このような事態となっている原因につきまして追及いたしましたところ、この地区は急峻な起伏の多い複雑な地形でありますことから、切り取った丘陵部の土を谷間に埋め立てるため、切り取られた下層の土が耕土となるものであり、その土が草地に適するものでなければなりません。また、この地区に隣接する地区の土壌が砂土でありますことから、草地としての適合性についてもチェックする必要があったものであります。ところが、土壌調査といたしましては、全造成面積四十ヘクタールにつきわずか三ヵ所を九十センチ程度の試坑を行っただけにすぎません。そして、このような不十分な調査のまま全体の事業計画を立て、これにより事業を実施いたしましたため、実施途中において土壌が砂土であり、耐水性がきわめて悪く、草地に適さないことに気づき、事業を廃止せざるを得なくなったものでございます。  このため、これまでに投下した事業費一億三百七十三万円、これに対する国庫補助金四千六百四十七万円が全く投資効果を発揮することなく、補助の目的を達することができなかったもので、まことに遺憾な事態と存ずる次第でございます。
  28. 矢原秀男

    矢原秀男君 農林省来ていましたですかな。――いま説明をいただいたわけですけれども、これは一つの氷山の一角ですけれども、大事な立場に置かれているわけです。  そこで、補助金の支出の目的不達成の指摘、また、他の費目についても該当事例があれば適用の範囲を広げることは、これは予算執行の目的不達成を具体的に指摘し、それによって将来の予算編成の適正化の一助とすることができるところに意義を見出すのであります。そういうふうなことで、これらについて総長の見解をここで伺っておきたいと思います。
  29. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 補助金の実施及び経理につきましては、これはもう終戦以降非常に、何といいますか、紊乱と申しますか、ひどい時代がございまして、そのときから検査院といたしましてはその実施及び経理につきましては非常なウエートを置いて、補助事業の計画、設計、積算、契約の内容、施行の実態につきまして多角的に検査を行ってきたわけでございます。五十一年度、昨年御報告申し上げました検査報告におきましては、補助事業について各省所管で合計五十件の不当事項がございました。この不当事項だけではございませんで、私どもといたしましては、個々の問題もさることながら、そういった実施及び経理に関しましてやはり好ましくないという態様につきまして大局的にこれをピックアップすると、そういう体制をとっておりまして、たとえば農林省の補助事業等につきまして五件の改善措置要求を掲げております。特にいまお話のございました補助目的を達していないという事例については、せっかく補助事業をやっていながら、その成果が全く没却されるというようなことになるわけでございまして、補助の趣旨、目的を損なうものであると、われわれといたしまして非常に遺憾に感ずるわけでございまして、こういったものが完全になくなるというのが必要でございまして、今後とも、農林省に限らず、建設省その他の省庁につきましても厳重に検査をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  30. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ、最後に、いま予算執行の目的不達成事項指摘拡充の点で農林省の一例を出していただきましたけれども、五十三年度予算は、公共事業の支出、これを柱としております。私は予算委員会でも、この公共事業の問題というものが県から市町村へ移るときにどういう段階になるかというふうなことを非常に指摘をしたわけですが、私もある県を調査をいたしますと、その県の用地買収をする担当課長、二十数人近く、いろいろ該当関係、部課によって違うわけですが、おるんですけれども、国からはやはり通達を出している。県は、各部の用地担当の課長とか、そこへ一片の通達を、そういう書類だけがずっと行っておるわけです。そうして、議会が始まっている。公共事業についての手だてというものは大丈夫か、いやもう連絡いたしました、というのが紙だけでずっと指令が流れていく。用地を買う方は、先行取得をしている土地だけではなしに、やはり別な面というものが新たに出てきている。そうすると、相手があるわけですから、なかなか土地が買えない。そうして、首脳部の方では、通達が行っているじゃないかというふうなことで、ある県では、全員われわれが総辞職しようやないかと、こんなむちゃなやり方があるかというところまで、先月ぐらいでも行ったところがあるわけです。そういうふうなことになりますと、これは年度を追うに従って、この五十三年度というのは非常にそういう面ではいろいろな問題点が出て、検査院の方々の意欲のある、国民立場に立った正当な検査、こういうものが要求をされるから、私はいま一連の中で、検査院の方々の待遇の問題、そうしていろんな懸念性のある問題点を、限られた中ではありますけれども、抽象的には見えるけれども、押すべきところの点だけをいま私が話をしているところはここにあるわけです。  そういうふうなことで、この公共事業というものが景気回復の政府の目玉になっている。反面、地方自治体におけるそういう未執行の問題が出てくる。そういうところでどういうふうに処理されていくか、これはもう現地の調査という皆さん方の期待というものは、国民の大半がやはりきしっと見ているわけです。そういうふうなことで、予算執行の目的が達成されたか否か、これが検査院立場検査し得る面であると私は考えているわけです。そういうわけで、最後でございますけれども、総長にこういうものを踏まえた中で御所見を最後に伺って、質問を終わりたいと思います。
  31. 鎌田英夫

    説明員鎌田英夫君) 御指摘のように、五十三年度予算というものは多額の公共事業を予定しているわけでございます。これは景気回復という大前提がありまして、政府当局におかれましても相当の努力をなされた、こういうふうに解するわけでございます。しかし、私どもといたしましては、やはりこの膨大な公共事業費というものが所期の目的を達成できるかどうか、予定どおり行われるであろうかという点につきましては、やはり先生の御指摘のとおり、私どもも同様な危惧を抱いているわけでございます。これはやはり技術者の不足もありましょうし、資材の問題もございましょうし、そういったものが渾然一体となってできるような体制にありませんと、この執行は予定どおり行われない。また反面、執行を急ぐ余りに、やはりどこかに手抜きが行われる、いいかげんな設計が行われると、こういうようなことがありはしないかと、こう当然私どもも考えるわけでございます。計画そのもの、あるいは設計、積算、そういったものが整合性を得ているかどうかということは、当然私ども検査していかなければならない命題でございます。ただ、これはこれから執行されるというわけでございますので、私ども検査対象といたしましては来年度施行する私ども検査対象となると、こういうふうに考えますけれども、五十二年度につきましてもかなりこういった面の予算はあります。したがいまして、五十二年度検査をこれからやるわけでございますけれども、それを検査すると同時に、この五十三年度の膨大な公共事業費の施行の状況をやはり同時に見ていく。これは検査というわけにはまいらないかもわかりませんけれども、どういう状況にあるかということはやはり五十二年度検査をすると同時に把握していかなければならない、こういうふうに考えておりまして、その結果が来年度以降に出てくると思いますが、私どもといたしましては超重点的な検査をやっていくと、こういう心構えでございます。
  32. 宮田輝

    主査宮田輝君) 以上で矢原秀男君の質疑は終了いたしました。  他に御発言もないようですので、会計検査院所管質疑はこれをもって終了したものと認めます。  午後一時三十分から分科会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午前十一時休憩      ―――――・―――――    午後一時三十分開会
  33. 宮田輝

    主査宮田輝君) 予算委員会第一分科会を再開いたします。  まず、分科担当委員の異動について御報告いたします。  本日、瀬谷英行君が分科担当委員を辞任され、その補欠として野田哲君が分科担当委員に選任されました。     ―――――――――――――
  34. 宮田輝

    主査宮田輝君) 昭和五十三年度予算中、皇室費、内閣、総理府本府及び沖繩開発庁所管を一括して議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  35. 野田哲

    野田哲君 公取、見えていますか。――公正取引委員会の方に若干の質問をいたしたいと思うんですが、先年非常に長時間の論議を経て独占禁止法の改正が行われたことに見られるように、公正取引委員会の業務の重要性というものは一段と強まってきていると思います。国民もまた、この公正取引委員会の業務が適正に運営されていくことを非常に期待をしていると思うわけです。その期待にこたえるためにも、事務局の職員が意欲を持って業務に当たっていく、このような職場環境でなくてはならない、こういうふうに考えるわけですが、事務局の管理者の立場にあって、その点についてどういうふうに考えておられますか。
  36. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 昨年独禁法の改正が与野党一致で通りまして、独占禁止法、またその執行機関である公正取引委員会役割りがきわめて重要になってきていると思います。こういう中にありまして、私たちの方としましては、職員先生のおっしゃるように意欲を持って勤務できるように絶えず心がけていくつもりでございます。
  37. 野田哲

    野田哲君 職員が意欲を持って業務の遂行に当たっていく、そのような職場環境を築いていくためには、職員の労働条件とか、あるいは職場環境等についての改善、こういう点について、職員団体、事務局の職員の方で組織をされておる職員組合から提出される要求事項等について、管理者側としては誠意を持って交渉に当たっていく、そうすることによって労使間に信頼関係を醸成をしていく、こういう慣行が非常に重要だと思うんですが、それについての管理者側としての認識、あるいは今日までそういうふうにやられているかどうか、こういう点について伺いたいと思います。
  38. 伊従寛

    説明員伊従寛君) その点につきましては先生のおっしゃるとおりでございまして、私たちの役所も職員人員が四百五名でございまして、比較的少ない小さな役所でございますが、職員組合とはあらゆる勤務条件につきまして十分話し合いをしながら進めてまいってきておりますが、今後もその問題につきましては職員組合の方と話し合いをしたいと思っております。
  39. 野田哲

    野田哲君 十分話し合っていると、今後もそうしたいということですが、そのとおりであればいいと思うんですが、必ずしも私はそういう環境にない面があるんじゃないかというふうにも感じているんですが、そういうふうに、いま、十分話し合っていくし、今後もそうだということでお答えになりましたから、それ以上のことは申し上げませんが、最近、公正取引委員会の事務局の庁舎の一部がかなり離れた場所に移転をするという計画を持っておられるようでありますが、これは具体的にはどのような計画で、いつごろからそういう状態を考えておられるわけですか。
  40. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 庁舎問題につきましては、これはその前提となります職員の数でございますが、現在の庁舎に移ることを決めましたのは昭和四十一年でございます。昭和四十一年の本局の職員の行(一)の数は二百三十五名でございます。いま御審議いただいております五十三年度予算では三百八人になることが予定されております。これは職員の数で六十七名の増加になっております。それからまた、この間、機構が課室で五、それから官が三ふえております。ですから、公正取引委員会の機構の拡充がこのところかなり急激にふえていることが言えるかと思います。こうなりますと、現庁舎で庁舎の面積が非常に少ない、職員の数、機構の現状に照らしましてきわめて少ないということで、昨年の初めからこの問題につきまして検討しまして、改正問題が終わりましてから、これに対していかに対処するかということを具体的に考えまして、これは部単位の移転を考える以外には方法がないということで、事務局の中の取引部の職員が六十名でございます。取引部の庁舎を、郵政省の飯倉分室に四百平米余の事務室がございましたので、そこを借りることにいたしました。
  41. 野田哲

    野田哲君 計画としては、いつそこへ移るわけですか。
  42. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 計画としましては、ことしの春、五月に移りたいと考えております。
  43. 野田哲

    野田哲君 現在のところと飯倉ということになると、かなりの距離があるわけです。都内の交通過密の状態等から考えまして、業務の執行上から言えば相当不便な状態が起こり、業務全体にもかなりの影響が出てくるんじゃないかと思うんですが、その点いかがですか。
  44. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 現庁舎と飯倉分室との間は二キロメートルほど離れておりますが、これは当然、庁舎が統合されている場合よりは、いろいろの事務の面で多少負担が多くなるかと思いますが、この点につきましては、できるだけそういう負担が少なくなるようなことを現在検討しております。
  45. 野田哲

    野田哲君 職員の勤務条件の上でといいますか、仕事の上でも、通勤場所が変わってくるという点、それから勤務中の連絡等で行き来をしなければならない場合が相当出てくると思うんですが、飯倉の方といまのところとの間の行ったり来たりという業務上の場合、その経費の負担等については万全の手配ができているわけですか。
  46. 伊従寛

    説明員伊従寛君) そのような問題につきましては、現在官房と取引部で合同で準備委員会をつくりまして、かなり詳細に検討しております。しかし、これはまた向こうに行きましてからいろいろな問題が出るかと思いますので、これは移転の前に限らず、移転後においても勤務条件が低下しないように十分配慮していきたいと思っております。
  47. 野田哲

    野田哲君 今回のこの移転の問題では、事務局の内部での労使間で意思の疎通が必ずしも十分ではなかったというふうに私は承知をしているわけですが、公正取引委員会の業務が効率的に運営をされ、内部の意思が十分な疎通が行われていく、労使間の人間関係が円滑に運営されていく、このためにも、いま説明のあったような形で、三百名ないし四百名と、こういう形で構成されている事務局が、霞が関と飯倉に分断されている状態というのがいつまでも続くということは、これは好ましい状態ではないと思うんですが、どういうふうにお考えですか。
  48. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 私たちの事務局は、職務的にも各部の間でかなり密接な関係がございますので、先生のおっしゃるように、私たちの事務局が一つの庁舎に入ることが一番好ましいことは当然でございます。しかし、現在急激に人口がふえまして、やむを得ずこれは分離という形をとりますが、できるだけ早い時期に統合できるように最善の努力を継続的にいたしてまいりたいと思っております。
  49. 野田哲

    野田哲君 そこで、いまおっしゃった、できるだけ早い機会に統合できる状態に最善の努力を尽くしたいということでありますから、具体的に何か腹案を考えておられるわけですか。
  50. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 庁舎問題といいますのは、これはやはり、あいている庁舎だとか、あるいは新しく建つ庁舎だとか、いろいろなその状況によって対処しなければならないと思いますし、また、相手方のあることでございますので、いつどういう形でということは、現在の時点で申し上げるような状態にはなっておりません。
  51. 野田哲

    野田哲君 具体的にここで答えられるようなあれではないということですけれども、腹案は一応あるわけですか。――ここで、相手もあることだから、どこそこにいつごろということはなかなか言えないということらしいんですけれども、事務局の意思として具体的に、これからいろいろ総合庁舎の計画も新しいのがあるというふうに私は聞いているわけですが、そういうことも含めて具体的にねらいは定めておられるわけですか。
  52. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 残念ながら、私たちの官庁は非常に小さな官庁でございまして、私たち独自で庁舎を持つという形にはなっておりません。ですから、たとえば合同庁舎が建つというふうな場合に、その計画の中に入れるということはわれわれの方としましてはこれは努力いたしますが、私たちが庁舎問題の解決に昨年の初めに乗り出してから、新しい庁舎計画はございません。それで、以前にありました庁舎計画につきましては、それはすでにいろいろ計画があるかと思いますので、この点につきましては、そういう合同庁舎その他の計画がありましたときに、できるだけ私たちの希望を取り入れられるように努力してまいりたいと、こういうことでございまして、いまこの段階ですぐ具体的にどうこうと言える事情にはございません。
  53. 野田哲

    野田哲君 これはやはりいまのような状態で、先行きの展望が持てないままに分断された状態というのは、先ほども言われたように、好ましい形ではないと思う。まあ相手があることだし、なかなかそう前広に具体的な内容をこうだと言うことは示しにくい事情はわかるんですけれども、やはり、職員の方にも気分よく仕事をしてその時期を待ってもらうということから言っても、できるだけ早くこれは職員の皆さんに展望を示すという努力が必要だと思うので、この点はぜひそうあってほしいと、こういうふうに思います。  それから、先ほど説明があったような形で、霞が関で一緒にみんなで仕事をしていた状態が、この一部分、六十名の方が飯倉へ移転をされるということ、これは移転をされる方が六十名であっても、仕事上からいえばやはりいろいろ行ったり来たりというような問題が起こってくるし、先ほどお話がありましたが、行ってみなければ予測できないような問題もあるんじゃないかと、こういうふうな話もあったわけですが、そういうこと等、やはり移転に伴って職場環境が変わる。たとえば、霞が関かいわいですと公務員の共済組合の施設等もいろいろあって利用できる面があるわけですけれども、飯倉へ行くと必ずしもそういう面、従前どおりにはいかないというような形での福利厚生面の問題等も出てくると思うんです。こういう勤務条件の変化など、さまざまの問題が発生するわけですけれども、当局側として労働条件の低下を来さないように万全の措置を講じる用意があるかどうか。そうしてまた、そのために職員組合との間で誠意を持って交渉に当たっていく、そういう考え方に立っておられるかどうか。いかがですか。
  54. 伊従寛

    説明員伊従寛君) その点につきましては、勤務条件が低下しないように万全の策を講じたいと思いますし、また、この点について職員組合とも話し合ってまいりたいと思っております。
  55. 野田哲

    野田哲君 あなたの方も話し合っていきたいとここではおっしゃるんですが、なかなか、いろいろ条件をつけられたり、いちゃもんをつけて、必ずしも私はここでおっしゃるような状態にはいっていないというふうに思うんですよ。その点はやはりもっとざっくばらんな対応の仕方というものを考えてもらいたいと思うんです。  そこで、先ほどもちょっと申し上げたわけですが、今度庁舎が一部分移転をする。それから、まあ具体的には示されなかったわけですけれども、いつか統合したいという気持ちは先ほど述べられたわけですけれども、やはり一部分が場所が変わる、それから、将来統合される計画――まだ具体的ではないにしても、いつかはそうありたいと考えておられる、その間の、今度変わった場合、それから次に統合が実現をする場合、それぞれ職場環境が変わってくる、あるいは労働条件の問題がいろんな形で変わってくる、やはりこういうさまざまな問題がこれからも起こってくると思うんですが、私も公務員の経験を持っているものですから、庁舎の問題ということになると、えてして当局側の方が考える常套手段というのは、庁舎がどこにどういう形で変更されるかというようなことは管理運営事項というような考え方で、そういう問題は組合との交渉事項の外にある問題だという扱いが、えてして起こりやすいんですけれども、そういう傾向にどことも共通的にあると思うんです。しかし、職員にとってみれば、勤務の場所が変わるということは労働条件が変わるということになるんだし、それから職場の環境が変わるということになるわけでありますから、これはやはり労働条件の問題として職員団体としても黙視をすることはできないし、当然交渉事項という立場に立つと思うんですがね。まあ全体の庁舎の総合的な計画の中での一部分でありますから、あなた方の方ですべての問題について責任を持つということはなかなかできにくい状態にあると思うんですけれども、問題は、やはりその過程に応じて、必要によって組合側との協議あるいは交渉などを積み重ねて、十分な内部での意思の疎通が行い得るような措置が必要だと思うんです。やはりそのことが公正取引委員会の事務局全体の運営にも必要でもあると思うし、事務局運営全体が、国民の期待にこたえ得るような公正取引業務をやっていくことになると思うんです。ぜひそうあってほしいと思うんですが、いかがですか。
  56. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 先生の御指摘のように、移転それ自体は、これは管理運営事項として当局の問題だと思いますが、それ自体組合との交渉の問題ではございませんが、私たちとしましては、組合の移転についての意見がどういうことであるかということにつきましても、数回私自身が組合の方の意見を伺っております。問題は、移転に伴う勤務条件の問題だと思いますが、これにつきましては、先ほどから繰り返して申しておりますように、勤務条件が低下しないように最善の努力をしたいと考えておりますし、現に、準備委員会をつくりましてそこで検討をしております。また、この点につきまして組合の方から意見があれば十分伺いたいと思っております。
  57. 野田哲

    野田哲君 今後の問題についても、そういうことで理解していいわけですか。
  58. 伊従寛

    説明員伊従寛君) そのとおりでございます。
  59. 野田哲

    野田哲君 組合というのは、事務局内部の大多数の方の構成しておる団体であるし、やはりそれなりの見識を持ち、抱負を持って運営されているわけですから、先ほどおっしゃった、準備委員会というのを設けていろいろやっているということでありますけれども、そういう面にも、やはり組合員といいますか、職員の方が希望しておること、要求しておることが十分反映できるような運営というものをぜひやってもらいたい。  それから、今後の展望については、相手のあることでなかなか具体的なものをいま示せないということでありますけれども、これはやはり大蔵省あるいはその他建設省とか、いろんなところとの折衝過程というものがあるから、なかなか示せない事情ということだと思うんですけれども、経過経過に応じて示し得る範囲からそれぞれ経過に応じて示していって、その過程過程で、やはり十分組合側とも意思の疎通が図り得るように、ぜひやってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  60. 伊従寛

    説明員伊従寛君) 統合の計画につきましても、計画が進みまして具体化されまして、それで外に示し得る段階になりましたら、できるだけ早い時期において組合の方にも知らせたいと思っております。
  61. 野田哲

    野田哲君 終わります。
  62. 宮田輝

    主査宮田輝君) 以上をもって野田哲君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  63. 宮田輝

    主査宮田輝君) この際、分科担当委員の異動について御報告いたします。  本日、野田哲君が分科担当委員を辞任され、その補欠として田中寿美子君が分科担当委員に選任されました。     ―――――――――――――
  64. 宮田輝

    主査宮田輝君) これより田中寿美子君の質疑を行います。  速記をとめてください。   〔午後一時五十五分速記中止〕   〔午後二時十四分速記開始〕
  65. 宮田輝

    主査宮田輝君) 速記を起こしてください。
  66. 田中寿美子

    田中寿美子君 総務長官は、当然のこととして一九七五年の国際婦人年というものについてはよく御存じのことと思いますけれども、国際婦人年のキャンペーンを実施するために、私たち婦人たちの要望もあり、また婦人議員たちも大変一生懸命に努力をいたしました。そして、政府の方も努力したと思いますが、婦人問題企画推進本部というのを設置いたしました、三木内閣のときに。そして、総務長官は副本部長ですね。ですから、そういう点でも、いま国際婦人年を起点として、「国連婦人の十年」という期間に当たっております。私は、「国連婦人の十年」に関連して、婦人問題に非常に大きな責任を持つ総理府総務長官として、稻村長官の御決意を最初に聞きたいと思っているわけなんです。七五年には衆参両院で、「国際婦人年にあたり、婦人の社会的地位の向上をはかる決議」というのを全会一致、満場一致で決議をしているわけなんです。ですから、そのような決議について長官も義務がある。私たち立法府の者も義務がありますけれども。そのお覚悟を最初に伺いたいと思います。
  67. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 御指摘の「国連婦人の十年」、国際婦人年の目標でございますが、平等、発展、平和を実現するための期間として国連が設定されたものだと考えております。国内におきましても、行動計画を策定いたしまして、総理を本部長といたしまして、私が副本部長として、国内行動計画を作成をいたしまして、婦人の地位の向上――具体的に申し上げますならば婦人のあらゆる場面におけるところの参加、こういうことに重点を置きまして、現在婦人問題対策に取り組んでおるわけであります。
  68. 田中寿美子

    田中寿美子君 婦人問題についてレクチャーを受けられたと思うんですけれども、大事なところは、男女の平等というのがあるわけですね。社会的参加、もちろんいまおっしゃったそれは大事なところです。男女の平等、それから全面的に社会に参加するということ、日本では特にそれは大事なことだと思うんです。  それで、私は、いろんなことをお答えいただくことは、きょうは時間の制限がありますから省きますけれども、総理府には婦人問題担当室を設けて、そして、婦人の室長もいらっしゃる。それで、婦人問題について総合的に調整しながら大きなリーダーシップをとる仕事を持っていらっしゃると思うんですが、たとえば婦人の社会的地位を向上させるために、三月三日のひな祭りを祭日にしようなんていうようなことで、非常に張り切って世論調査なんかをやるということを新聞紙上で見ております。私はこのことについては長官といま議論するつもりはないんですが、もっとしなければならないことは山ほどあると思うんですね。  それで、その山ほどあるものの中で、私は一つを挙げたいと思いますけれども、いま国際婦人年の、よくこのごろグローバルという言葉を使うけれども、これはグローバルな婦人のキャンペーンなんですが、その基本になったものは、一九六七年の国連で、「婦人に対する差別撤廃宣言」というのをやったわけです。これはそれこそ経済、社会、政治、文化、あらゆる面で全面的に婦人に対する差別をなくすということを宣言したわけなんですね。それが基本になって世界行動計画だってつくられていると思うんです。ところが、それを昨年の秋の国連総会では、婦人に対する差別撤廃条約案として提案されているわけです。で、国際婦人年あるいは「国連婦人の十年」のキャンペーンの中ではこの条約の採択をしようということで大いにみんな張り切っていたわけですけれども、しかし、日本からは、佐藤欣子さんという婦人の検事さんが、経済社会理事会の人権委員会に代表として行かれました。その御報告を聞いてみますと、この条約案は審議未了に終わっております。で、私は先日外務委員会で、この国連の条約に関する限りは外務省が窓口であるから、だから佐藤欣子さんを代表として派遣するときに、婦人に対する差別撤廃条約についてはどのような訓令というか、指示を与えたのかということを聞きましたけれども、外務省からは余りはっきりとした返事はなかったわけです。内容にいろいろありますので反対じゃないけれどもというような状況でした。ところが、これは部分的には、労働団体なんかで国際的な連関のあるところからは、この国連の婦人に対する差別撤廃条約案は仮訳がみんなもう回されている。そして、政府からは少しもわれわれ婦人に対して、この国連に掲げられておって日本も参加して採択するはずであるべき婦人に対する差別撤廃条約案がちっとも知らされない。一体これはどういうわけですか。
  69. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) ただいま御指摘のような条約案が審議未了になったということでございまして、引き続き次の総会においてこの条約がかかるものと期待をいたしているわけでございます。で、その案につきましては各省からかなり細かいいろんな意見が出たというふうに聞いておりまして、また案文につきましても、今後の国連総会の中でワーキンググループができて討議をするというふうにも聞いておりますので、多少その細かい条文などについては変更があるやもしれないというふうに承知しているところでございます。しかし全体といたしましては、私どもといたしまして今後の男女の平等の政策を進める上に当たりましてこの条約は非常に意義のあるものというふうに認識をいたしておりますので、細かい条文はともかくといたしまして、こういう条約が審議されているということ、そして大体の内容がどういうことであるというようなことは、外務省とも相談をいたしましていろいろな機会をとらえまして周知を図りたいと、このように現在考えている次第でございます。
  70. 田中寿美子

    田中寿美子君 長官、いまお聞きになっていたと思いますけれども、国際婦人年にメキシコの会議で採択した世界行動計画だって、それに先行している婦人に対する差別撤廃宣言の中身だって、相当これは詳しいものです。私どもはそれをやっぱり要求しました。しかし政府は私どもになかなかそういう資料を与えないんですよ。そして、この世界会議があった後でこういうものはみんなに配布するという状況。これでは遅いんです。これは世界的に見て日本のように先進工業国で資本主義国である国々では、婦人の運動が先行して、そしてこの運動で政府に対して要求し、政府にサービスさせている。その点が私ども足りないという点は立法者である私たちも反省するし、婦人運動ももっともっと大きく巻き起こって、そしてそういう国際的なキャンペーンに参加していかなきゃならないと思うんですけれども、しかし日本の長い間のパターンで、政府が何でも握っているんですよ。こんな資料も政府を通じてしか出てこない。これが骨子になっています。私は外務省から原文をもらったけれども、まだ仮訳もできていない状況です。これじゃ、八〇年にまた二回目の世界会議が開かれ、ことしは二年目のモニターの年になっているわけですね。それにもかかわらず、今度来年はこの婦人に対する差別撤廃条約を必ず採択する、最優先して審議するということを申し合わせたと私は佐藤欣子氏から聞いておりますけれども、そのような問題であるのに、一般婦人が知らないという状況ですね。これは私は外務省にも要求しますけれども、しかし、国際婦人年をそれこそきっかけにしてできた婦人問題企画推進本部、これを進めていく副本部長として、このような資料はもう大至急、仮訳でよろしい。これはまた今度の国連総会で検討して、各国からの修正も出るかもしれませんね。ですけれども、私たちはこういうことが世界的に議論されるんである、日本の女性もそれに参加するんだという意味で、さっき参加というのに大変力点を置かれたでしょう。それだったらこういう資料はおたくの方からもぜひ婦人に頒布してもらいたいということを要望したいと思いますが、いかがですか。
  71. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) いま赤松婦人対策室長が申しておりましたように、外務省が中心となってこの条約の進め方に当たっておるわけでございますが、いま話を聞いておりますと、やはりそういうものを、婦人担当室としても積極的に協力をしてその締結に努めなければならぬと、こういう発言がありまして、ぜひひとつ田中先生にもこれから積極的に御指導、御鞭撻を私はむしろお願いをしたい。そしてその資料等については、そう秘密の文書にかかわる、守秘義務のあるような書類でないと思いますので……
  72. 田中寿美子

    田中寿美子君 ないです。全然そうじゃない。原文持っています。
  73. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 全然ないようでありますから、これは速やかにその都度その都度お届けをすることにいたします。
  74. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務省は窓口なんです。実質的にはおたくが国際婦人年に関してはそういう特別の室を設けたんですから、ですから積極的に外務省にも要求してもらいたいし、おたくもそういう意味では日本の婦人に知らせてほしい。女性だけでなくてもいいです。男女ともに国民に知らしてほしいということを私は申し上げておき、そしていまそうするとおっしゃいましたから、大至急していただきたいと思います。  それでは、その次に私は売春問題をお尋ねしたいと思うんですが、きのうおたくの担当官の方がいらっしゃって、私は、総理府の婦人問題企画推進本部がつくった、あるいは企画担当室がつくった国内行動計画の中に――世界行動計画に対応して国内行動計画をつくったんだけれども、その中には売春問題には何も触れていないと言ったら、売春問題はわれわれの問題でないかのような発言をされた。長官はどう思っていらっしゃいますか。婦人問題ではないと思っていらっしゃるんでしょうか。
  75. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) これは人権問題にかかわる重要な問題でありますから、売春対策室が設置をされておるわけでございますから、当然私は御指摘のとおりだと、こういうふうに考えております。
  76. 田中寿美子

    田中寿美子君 メキシコ宣言の中に、「人間の肉体は、男女の如何を問わず、不可侵であり、肉体に対する尊敬は、人間の尊厳と自由の基本的要素である。」という宣言がされております。そして世界行動計画の中にも「婦女子の搾取防止」というのがあって、その中に「売春及び搾取の慣行が社会的経済的条件の結果として未だ多くの国において存在している」、だからそれを速やかに政府はなくすように努力しなければならないということを述べており、日本もこれは採択してきているメキシコ宣言であり世界行動計画。ですから、これはもう婦人の問題の一番最初、日本でも明治以後婦人問題のもう一番はしりの問題として売春問題が取り上げられ、そしてその運動がずっとあったんですね。ですから、これは婦人問題でないかのような考え方をし、そして行動計画の中で少しも考えられないというようなことは、これはよくないことだと思いますが、いかがですか。
  77. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 先生の御指摘のとおり、世界行動計画の中で、売春と「闘うための立法上その他の措置がとられるべきである。」というふうに書かれているわけでございますし、   〔主査退席、副主査着席〕 また、人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約を批准もいたしているわけでございます。で、国内行動計画にこれを書く場合に、世界行動計画の中で書かれている部分で落ちているという御指摘もそのとおりでございますが、すでにわが国では売春防止法で、売春の禁止、売春を助長する一定の行為の処罰、補導処分等が定められておりますので、「立法上その他の措置がとられるべきである。」という世界行動計画の中での指摘が一応満たされているものと考えて、国内行動計画の中で直接触れなかったのではないかと理解しているわけでございますが、国内行動計画に基づいて婦人の地位と福祉の向上のための施策を充実してまいりますれば、売春の防止にも役に立つというふうに考えている次第でございます。売春問題が婦人の人権にかかわる重要な問題だという認識を十分に持っております。
  78. 田中寿美子

    田中寿美子君 メキシコ宣言あるいは決議、それから世界行動計画の中にも、いまおっしゃった法律制度をつくれというだけじゃなくて、「婦女子の売春及び搾取の慣行が社会的経済的条件の結果として未だ」に非常にたくさん存在しているということを指摘しております。そのことは何も法律制度のことにこだわらなくたって、日本では非常に大変な問題があるということは認識していらっしゃるのは当然だろうと思いますので、そのことに関してはもっと考えなけりゃいけないということ、これはもう私は要望しておきます。  それで総務長官、そのメキシコ会議の中の宣言、決議の中にありますように、あらゆる種類の形態の売春と、それから売春によって搾取をする者がある。日本の状況はまさにそうですね。私は、長官よく御存じだろうと思いますけれども、たとえばトルコ売春あるいはキャバレーを使っても、モーテルを使っても、パンマも、旅館でも、あるいは観光売春なんというのがあります。それからこのごろは少女売春もある。ありとあらゆる形のものがある。  総理府は売春対策審議会というものをわざわざ持っていらっしゃるわけなんですね。この審議会が五十年以降一体どういうことをされて、それでどういう活動をしているか、最近は何をしていらっしゃるのかを御報告いただきたいと思います。
  79. 田中和夫

    説明員田中和夫君) お答えいたします。  この一、二年の売春対策審議会の活動状況を申し上げます。五十一年七月以降、売春対策審議会といたしましては、年少者売春ということを議題に上げしまして、これに対して鋭意審議してまいった次第でございますけれども、昨年は三月にその審議会を開催いたしまして、その後は開いておりませんけれども、年少者売春の問題につきましては、各委員の調査研究、これをお願いしているわけでございます。
  80. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま社会問題としては非常に重要な問題がいっぱい売春に関してある、そしてそれは非常に婦人の人権やそれから年少者の人権にかかわりがあるという認識を十分持っていただかなければならないと思うんですが、売春対策審議会は、かつて菅原通斎さんが会長であったときに建議を出していますね。それで、これは特にトルコぶろに関してですけれども、そういった審議会から出す答申というか、答申になっていないかもしれないが、建議ですね、あの場合に、公衆浴場法の改正、トルコぶろをやめさせなければトルコ売春というのはなくならないという意味の建議をしていらっしゃいますが、こういった建議というのはどう扱われるんですか。ただもう審議会というのは言いっぱなしでやっているだけなんですかということと、それから売春対策審議会は、いまの行政改革で、これはこんなものはもうめんどうくさいからなくそうというようなことになりはしないかということをお伺いします。
  81. 田中和夫

    説明員田中和夫君) お答えいたします。  一つは、先生指摘のとおりにトルコぶろに対しましてわれわれも捜査、と言うとまたちょっと語弊があるかもわかりませんが、いろいろな点からの事情を聴取いたしまして、四十八年の七月、それから四十九年の七月、それから五十年の四月、三回にわたりまして、トルコぶろが売春の温床とならないよう法律改正を含めた規制措置及び取り締まりを、各省庁にそういうような要望意見が提出されたわけでございます。  これは、実は審議会令によりますと、答申と意見と二つに分かれておりますけれども、答申の場合には、諮問があって答申するということでございまして、このトルコぶろにつきましては実はどこにも諮問がございませんでしたけれども、審議会でもって独自に調査研究いたしまして、そして意見という形でまとめたわけでございます。で、これにつきましては、政府といたしましても関係省庁と連携いたしまして、この意見の趣旨を十分尊重いたしまして検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  そこで問題は、じゃそのような審議会の意見が出たら一体審議会としてはどうするのかという問題でございますけれども先生承知のとおり、やはり審議会の性格というものがあろうかと思うんでございます。これはやはり国会内だけでもまずい、あるいは行政機関内だけでもまずいということでもって、民間の人にも入っていただいて、それでもって常識的な、あるいは前を見通したような意見を出そうと、こういう趣旨でまいっているわけでございます。そこでそういうような意見が出てまいりますと、審議会といたしましては関係省庁に、こういうようなものが出ましたのでひとつ十分尊重してやっていただきたい、こういうことで連絡しておるわけでございます。これが第一点でございます。  第二点の、行政改革で売春対策審議会がどうなるかというようなお話でございましたけれども、これは私どもとしては、売春というものは社会的な大問題であるという認識の上に立ちまして、こういうものはなくしてもらっちゃ困るということでもって、これは存続することに決まりました。
  82. 田中寿美子

    田中寿美子君 審議会の答申を各省に連絡して検討していただいているということで、それからもう三年もたっているわけですよね。何にもほとんどやっていないという状況なのは、実は売春問題に一番力を入れて主管する省がどこもないということです。これはさっき行動計画の中に抜かしたのにも私はそういうところがある。あの行動計画を見ますと、前期計画も見ますと、各省の行政目標みたいなものがみんな書いてあって、だから特に一生懸命に取り組む省がどこもないから出てこなかったんだろうというふうに私は想像しまして、非常に遺憾だと思います。  ですから、婦人の非常に基本的な人権にかかわる問題でありますところの売春問題は、やはりこの総理府の婦人問題企画推進本部はぜひしっかりと取り組むという姿勢を出していただきたいと思いますが、長官いかがですか。
  83. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) きょうは田中先生の御質問があるということを聞き取りまして、当然国内行動計画の中になぜ入れなかったかという、こういう問題は出るであろうと、こういうことを私も承知しておりまして、なぜそれではそれを入れなかったかというと、先ほど多少触れたわけでありますが、売春防止法あるいは売春禁止、売春を助長する一定の行為の処罰、補導の処分等が定められた規定がある、こういうようなことから、ここに入れなかったということであります。先ほど来のやはり何といっても人権を守る、平等、こういった立場から、先ほど幾つかの例を挙げられました。たとえばトルコぶろであるとか、あるいはモーテルであるとか、あるいはキャバレーであるとかという、こういういろいろなことを御指摘ちょうだいいたしまして、大変参考になったわけでありますが、やはりこれには各省庁との関係もございますので、各省庁緊密な連絡をとりまして、そのような行為が取り除かれるようにと、こういう形で推進本部としてはひとつやってまいりたい、こういうふうに思っております。
  84. 田中寿美子

    田中寿美子君 長官が売春問題も一生懸命に取り組むというふうに言われましたので、そういう計画を今後立てていただきたいと思います。  そこで、私は、公衆浴場法の一部改正案を社会党の私どもが最初に発議し、そして婦人議員がみんな発議者となり、そして野党がみんな賛成者として、過去七十七国会、八十国会に提案いたしております。で、私は、その内容は総務長官もぜひ見ていただかなけりゃならないと思います。というのは、いま法律制度はちゃんとできているから売春問題は余り問題にしなかったかのように聞こえる御答弁が係官からも長官からもありましたけれども、法律制度だけじゃなくて本当に実態としてみんなよく知っている問題がいっぱいある。その実態をなくしていくために少しでも手がかりになるような法律の改正をしなければならないんではないかということから、私ども昭和三十一年に制定した売春防止法、それに完全実施になった三十三年以降、売春というのが非常に潜行していったり、多種多様な形になっていって、そして非常に問題をたくさん投げかけている。私は、何もかもはできないから少なくとも婦人の肉体を売らせることによってもうけるというようなそういう搾取の業態、そういうものをなくさなければいけないというところに一番焦点を置いてやるよりほか仕方がないというふうにいま思っているわけなんですね。  そういたしますと、トルコぶろなんですが、これは事実上警察の人にお聞きになってもそうだし、一般の人の世論調査でも出ていますでしょう。一般の人の世論調査でも、五〇%以上はトルコぶろでは売春あるいは売春類似行為が行われているということを認めているし、警察の人に聞けばもう本当に八〇%以上やっていますよと。それがわかっていながらこれをつかまえることもできない。そうしてそこに働いている女の人たちは、トルコ嬢と呼ばれる人たちは、実際に私どもはトルコ嬢の話を聞き、手記を読み、それからそういう人たちを補導している婦人相談員のお話を聞いても、全くこれは業者の搾取を受けている。業界ではこれは雇用関係がないかのように装っておりますけれども、そういうことがずいぶんあるという事実はみんな周知のことなんです。そういうようなトルコぶろはやっぱりかつての赤線に非常に似た関係、管理売春的な様相を呈しているということから、公衆浴場法の一部を改正することによって少しでも入り口のところでとめたい。許可するんですからね、あれは公衆浴場法で。厚生省の所管している公衆浴場法で都道府県の知事が許可をするということになっているわけでしょう。それをやめさせたいというのが骨子であるところの公衆浴場法の一部改正案を提案しているわけなんでございます。  その公衆浴場法に関連して、私は長官の御意見を伺いたいんですが、長官は、私は個人的に長官を誹謗するなんというようなことをする気はございません。しかし、長官はトルコ浴場に関しては大変御造詣が深いと聞いておりますが、それをお答えさせるのは控えますけれども、業界の「トルコ協会新報」というのを私見ました。その中には三十八年ですか、長官が初当選なさったときには、業界で大変トルコぶろの建設について造詣の深いこの部門の権威者ということで期待をしているという記事があります。そういう意味で、トルコぶろというものがどういうことをやっているのかということは御存じでございましょう。
  85. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) いま大変造詣が深いと、こう言われた……
  86. 田中寿美子

    田中寿美子君 そう書いてあるんです。
  87. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) それはどういう記事かわかりませんが、私もあれですが、まあ私もやはり以前に国会に入ります前は建設会社の社長をいたしておりまして、早い話が社長ですからね。どういう建設がなされておるか、ただ収支のバランスを見るものであって、どういう建設がなされておるか、どういうものがなされておるかという、ビルの中に、たとえば地下で何をやっておるかというようなことまでも、それは相手の営業に関することでありますから、そういうことには全然承知をいたしておりませんが、ただ造詣が深いということになりますると、これはその点をひとつ私の方ではっきりと申し上げておかなきゃならぬと思いますが、決してトルコぶろには造詣が深いと、そういう関心をも持ったことはありません。
  88. 田中寿美子

    田中寿美子君 「トルコ協会新報」によりますと、トルコ浴場関係の建設に造詣が深い、だからもっぱらトルコぶろを建てていらっしゃったんじゃないでしょうか。(笑声)
  89. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 違います。
  90. 田中寿美子

    田中寿美子君 トルコぶろというトルコぶろは稻村建設の手にかかったのかなと、私は造詣が深いと書いてありますのでそう思ったわけですが、そしてこの部門の権威者として知られる人が当選したので非常にうれしいということで、大歓迎しているわけです。  私がなぜそんなことをいま言うかと申しますと、私どもが過去に二回国会に公衆浴場法の一部改正案を出した、この国会にも出す予定でございますが、それの先を越して、昨年の暮れからトルコ業界が非常に活発に動いております。そして、私はお名前を言うのは控えますけれども、ある議員は政治献金を受けていらっしゃる、   〔副主査退席、主査着席〕 あるいは選挙違反で、ある議員の選挙員であるトルコぶろ業者がつかまっているという事実もございます。ですから、私、自民党が非常に党勢を拡大なさる中にはトルコ業者も大いに協力しているんじゃないかなあというふうに思うわけで、そのこと自体は自由です。どこの党を支持しようと自由だと思うんですね。ただ問題は、その業界がそのために私たちの出している法案をつぶそうとする動きをすることによって議員と結びつくということであっては、私はこれは問題になると思う。ですからその点で十分注意していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  91. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) いま御指摘の点についてだれかれがどうこう、こうこうという、こういうことの名前を挙げての発言がありませんでして、具体的な点については私は全然存じておりませんが、ただし婦人の先生方から、やはり婦人としての地位向上、平等を守り続ける、守らなきゃならぬという、こういう立場で法案が提出されたものを、やっぱりそういう形でそれをつぶしに回るという人も恐らくいないだろうと思いますし、そのようなことのないことを期待をいたしております。
  92. 田中寿美子

    田中寿美子君 そこで、ちょっと理解しておいていただきたいんですが、私たちは公衆浴場法の一部改正案を出しておりますその骨子、一番のポイントといいますのは、公衆浴場というのは一般の公衆がおふろに入る場所でしょう。だから公衆浴場法で「この法律で「公衆浴場」とは、温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設をいう。」、ですから大勢の人が入る場所ですね。そしてそれを設置するためには都道府県知事の許可が要るということになっているわけなんです。ところがその公衆浴場法でもって、特殊浴場ということで個室つきのトルコぶろを許可するようになっておりますね。そして個室だけでなく、個室つきでしかもそこで異性のサービスをさせる、役務を提供させるというのがいまのトルコぶろ。だから公衆がトルコぶろに入ってマッサージを受けるなんということは、これは私は構わないと思うんですけれども、個室に入って異性の役務の提供を受ける。これは業界でも認めているし、一般によく知られていることだけれども、そこで売春行為または売春類似行為が行われるということもみんなが認められていることなんですね。だから、私はそもそも公衆浴場という法律の趣旨に合うように、そういうような個室で異性の役務を提供させるものをやめさせるべきだという趣旨の法律、だからそういうものに許可を与えないという趣旨でございますね。で、公衆浴場法の三条に「換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。」ということがあるわけです。公衆浴場法ができた当時は、この衛生及び風紀の風紀という意味は、厚生省に言わせると混浴をさせないようにという意味だと、風紀という意味は。しかし、その後のいまのトルコぶろの発展の状況から見ますと、やっぱりこの風紀というのに私は当たると思う。もう混浴の公衆浴場というのはほとんどないと思いますよ、温泉地以外は。それで、やっぱり現状に合わせて公衆浴場法も私は変えるべきじゃないかというふうに思っているので、それで、公衆浴場法の中で個室つきで異性の役務を提供する浴場の許可をやめなさいと言っているのにすぎないことを、厚生省は、非常にこれは衛生立法だから、それにそぐわないかのようにおっしゃっているわけなんです。  そこで、その法案に対して業界から要望書が各議員のところに来ております。特に婦人議員のところに来ている。自民党の議員にも恐らく私は来ているだろうと思いますが。そこで、その業者が――業者というのは、全日本特殊浴場協会連合会という名前でございますが、御承知だろうと思いますけれども、前に会長をしていらしたとかと私は聞いておりますが、それは違いますか。長官、議員になられる前には会長をしていらっしゃいましたか。
  93. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 会長というのはいろいろやっておりましたが、トルコの会長をやった覚えもないし、またやろうとも思っていないし、また推薦をしてくれる人もいないというのが事実であります。
  94. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ、トルコ協会の会長をなさったことはないということで、まあ安心しました。それで、業界の言っていることについて御意見を伺いたいと思うわけなんです。それは、非常に婦人の問題に大きく関係するからなんです。  この要望書の第一点は、トルコぶろでもって売春類似行為が行われているということについて必ずしも否定しませんと言っている。これは業界も知っていますよ。そんなこともうあたりまえのことだけれども、全然ありませんと言ったら余りおかしいから、トルコぶろで売春類似行為が行われているというふうに一般に言われている、テレビなんかでも、それからポルノ雑誌やなんかにもみんなそういうふうに書いてあるが、それは否定はしませんと。しかしそれは、第二点として彼らが言っているのは、現行法の枠内で取り締まれますということなんですね。まず都道府県の知事が許可をする。それから風俗営業法の四条の四というのがあります。それで地域制限をされている。だから一定の地域、学校から二百メートル以上離れなければいけないとか、いろいろあるわけです。それで、現行法の取り締まりでもって、違反した者は刑法にもひっかかる。刑法百七十四条公然わいせつ、百七十五条わいせつ物公然陳列、百八十二条淫行勧誘、それから売春防止法の第二章、これはいろいろありますね、場所提供とか管理売春とか、そういったいろいろな法律で取り締まりができるから、何もわざわざそういう新しい禁止法――と彼ら言っておりますが、私たちは公衆浴場法の一部改正で、つまりあすこの許可をすることをやめなさいと言っていることですが、できるというふうに言っておりますね。稻村長官はそれをそのようにお思いになるんでしょうか。
  95. 田中和夫

    説明員田中和夫君) お答えいたします。  ただいまのトルコぶろが、いわゆるトルコぶろがいろいろな法律によって規制され、あるいは場合によっては処罰の対象になるかと、こういう話でございますけれども、確かに公衆浴場法では許可の対象になっておりますし、また風俗営業等取締法、いわゆる風営法と申しまして、風営法の第四条では地域規制もできます。それから、刑法上の問題点があればもちろん刑法でもって問擬することもできますし、売春防止法によりまして取り締まりの対象になるということも十分できるわけでございます。
  96. 田中寿美子

    田中寿美子君 と言うのは業界が言っていることと同じですけれども、それじゃどうしてそんなに事実として起こるのかということです。私は男の人たちは、まあこの中にそんなに愛用者いらっしゃるかどうか知りませんけれども、ほとんどよく知っていらっしゃると思う、トルコぶろというのはどんなものかですね。で、警察に言わせれば、もうこれは手の施しようがない。売春防止法というのも、あれもなかなか抜け道のある法律で、とてもあんなものでつかまえるわけにはいかないということも言っているわけですね。つかまってしまった後は刑法で罰せられます、何がありますと言うけれども、実際にはそれができない。だからそれにもかかわらず、いまあなたがおっしゃった、いろいろな法律がございます、法律がございますだけじゃ実態がちっともよくならないわけなんですね。  それから、風俗営業法の四条の四というのは地域規制ですよね。距離規制ですね。だから、一定の学校とか図書館とか、公共の施設から離れたところ以外に建ててはいけませんという風営法の四条の四というのを昭和四十一年につけ加えちゃったですね。そのことによって、もうここの業者たちも言っているように、風営法の四条の四でちゃんと営業として認められていると居直っているわけなんですね。ところが私たちは、実態をよく見ますと、長官御存じだと思うのですけれども、東京の吉原でも、それから千葉の栄町でも、あるいは滋賀県の雄琴でも、ほとんど集媚地域みたいになっていますよ。トルコ街になって、そしてネオンが夜になったらついて、私ども女性が行くのは恐ろしいような地域になってしまっている。ということは、かつての赤線と同じような場所ができ上がったのは、距離規制をしたことが一つは反対に作用しているわけです。一定の地域にはできないなら、できるところに集まるということですね。これは県や何かの条例によっては、全然できないような地域制限をしているところもあるのですけれども。ですから、四条の四の地域規制というのは、かえって私どもは一種の集媚地域化するのに役立ったというふうに思っているのですが、これは総務長官に答えていただきたい。
  97. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 案外こう、法律的なことですからL3。
  98. 田中寿美子

    田中寿美子君 法律的じゃない、実態ですよ。
  99. 田中和夫

    説明員田中和夫君) 実態的なことを答えろと、こういう話でございますけれども、風営法でもって、まず四条の四でもって地域規制をされるというのは、これは確かでございます。そこで、そういうような地域規制するから地域規制外は公認するんだ、認めたんだ、あるいは風俗営業法上認めたんだというふうに解釈されるのは、やはり当初の法律の制定の趣旨から言って若干外れるんじゃなかろうかという、私、感じがいたします。最初はそういうものじゃなくて、まさしくこれは好ましいことではないのであって、少しでもそういう学校だとか、そういう影響のあるところから排除したいと、そういう心持ち、誠意でもってつくったと思うのでございます。それがこのように曲解されているというのは、大変私はけしからぬ話だというふうに思っております。  それから、条例で地域を規制をしているというのはございまして、県でもほとんどトルコのないところがございます。たとえば私の前任地であります群馬県では一軒もない、こういうようなところもございまして、それ相応の努力をすれば少しずつでもいわゆるトルコぶろが少なくなっていくんじゃなかろうかと、かように考えておる次第でございます。
  100. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま総務長官お聞きになったように、風営法の四条の四をつくったときの趣旨は、もう目に余るものがあったからですよ。国会のすぐそばにつくろうとしたのがそもそものきっかけになったのですからね。それで少し離そうということだった。しかし、それが逆作用して、そこから離れたところなら営業をどんどんしてもいいんだということになって、そして、集まった地域ができている。これが現状なんですね。だから、幾ら法律のところで議論されてもだめなんで、そういう情勢の中で、そこに働いているトルコ嬢、そのトルコ嬢の状況や何かから、業者はトルコ嬢と自分たちの間に雇用関係が何もありませんと、彼らはそうしたら実は売春のために場所を提供したのだ、することになる。実態を見ますとちゃんと、私どもが行ったときでも、千葉の栄町なんかでトルコ業者は、一番いい自分の浴場の建物の上にトルコ嬢を住まわせていますよね。そして時間が来たら、お客が来たら呼んでおろしてくる。そういうやり方ですしね、それから入浴料だって、最初に入るときに入ったもの以外に、いろいろな種類のサービスをした分を取るわけですが、そのうちからピンはねしていますよ。ピンはねというか、手数料というのか、そういう形で取っているわけですね。  だから、そういうようなことをさせないために、私たちは、それを公衆浴場法という、そもそも公衆がおふろに入るはずのものである法律の中から、そういう特定の個人の個室を設けて異性にサービスさせるような施設に許可を与えないというふうに、ほんのちょっと法律を直すべきだと言っているわけなんですがね、長官、どうお思いになりますか。
  101. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) いま四条の四についての説明を聞いておったんですが、住宅地であるとか、あるいは文教施設のあるところからそういうものをやはり取り除いていくということで地域指定をしたと。地域指定というのか、まあここならば建設をしてもいいという指定をしたわけです。そのことによって、そこだから治外法権という、そういう考え方ではないんだと。たとえばそこで集合した、そこで集められたとしても、法は法として守ってもらわなきゃならないし、守らせるのだという、こういう、いまそういうお話がありました。  その後なるほどと思って、なるほどって、いまごろかとおっしゃると大変恐縮ですが、ここに出る前に、売春対策室というのは一体何をやっておるのだということでいろいろお聞きをいたしまして、早のみということで多少間違った点があるかもしれませんが、いま答弁を聞いておりまして、そこでまた御指摘の点について私も考えさせられるところがありますし、また、県によっては大変どういうのか、こういうものを認めないという、そういう県もあるということをいまちょっとこの場で、事実関係がどうかということはこれは別問題として、お聞きをいたしました。そういう意味から、これを全般に、ひとつ大変御熱心に現地まで入っておられるということを聞きまして、私どもの方でもこの対策室があるわけでありますから、まあ私ども等が行って大変なお邪魔になって、むしろ誤解――ただでさえ誤解を受けるのだから、愛用直の一人になってもいかぬ、あれですが、できるだけ対策室長等はやっぱり協力をする意味において、取り締まる権限がないとしても、対策室がある限りにおいては、やはりこれはあらゆる情勢に対応するという、こういう意味から、私は、現地等々のやはりこれは認識を深める意味にも、いろいろ視察を――視察ということがいいのか、どういう意味がいいのか、私は積極的に取り組ませてみたい、こういうふうに思っております。
  102. 田中寿美子

    田中寿美子君 売春問題を本当に積極的に取り組む官庁がどこもないとさっきも申し上げましたので、それで私は、世界行動計画やメキシコ宣言によるまでもなく、日本国憲法で、憲法の十三条、十四条-個人の尊厳とか人権とか男女の平等とかいう、そういう基本的人権というのは日本国憲法がちゃんと掲げておりますので、その世界行動計画にまつまでもなく、婦人の肉体が商品として扱われる、そういうような場所をつくっていかない、こういうことで、いま総務長官がまだおなれにならなくて売春対策の部屋が総理府にあるかのように錯覚していらっしゃいますが、売春対策審議会ですね。だけれども、婦人の問題に関して婦人問題担当室というのがありますので、そこで婦人の問題としてやってほしいというふうに私は申し上げているわけです。  それから、造詣が深いと言われているけれども、造詣が深くなければ、これは見にいらっしゃる必要もない、警察を呼んでお聞きになっても、どこへお聞きになってもわかります。  それで、私、時間の催促が来ておりますから、あと十分ぐらいしかないので、業者が言っているポイントを一つ、二つ総務長官に申し上げて、御意見を聞いておきたいんですが、業者は、私たちが営業の許可をさせないということは違憲だ、憲法違反だと言っているんですね。憲法二十二条の職業選択の自由に反するというようなこと、二十九条の私有財産の補償というのにも反するという言い方をしているわけなんです。私は、このことについて議論をしている時間がありませんので、私の意見として、憲法の基本的人権というのは、職業とか営業の自由権というのは「公共の福祉に反しない限り」というちゃんと条件がついておりますので、どっちの人権を大事に考えるかということに一番基本があると思います。ですから、女性が肉体を売る、あるいはそれと類似するような行為をしてかせがなければならないということはまことに悲しいことですから、そういうことがないようにすることの方が、まず、もう私ども婦人の人権を主張する者から言えば、最も重要なんです。だから、そういうことをさせる場所を職場として与えないというようなこと。そうすると、この業者が言うのには、営業権の自由を侵害するから、もし万一私どもの言っているような法律の改正が行われたときには損害賠償をせよということをここでは言っているわけなんですね。私は、それを妥当と思われるかどうか。これは法律解釈の問題でありますけれども、過去に売春防止法を制定する当時、私はその防止法制定に携わった者の一人でございます。そして、赤線業者というのは国じゅうに、いまのトルコぶろ業者よりもっとたくさんいた。そこを回り歩いたときに、やがて赤線はもう廃止されなければならない運命にあったということを業者は次第に自覚してきました。初めは抵抗しておりました。そして、いろんな政治活動をしましたよ。売春汚職も出ました。つかまった議員さんもたくさん出ました。私はそのことを思い出して、本当にそんなことにならないようにしてほしいと思いますし、それからその当時、赤線の業者というのは戦前からも国家が黙認し、ある意味では育ててきた業者でもあったんですから、それを一遍に灯を消すときに、損害賠償してくれというのが出るのはまあある意味では彼らにすれば無理からぬことだったかもしれません。しかし、私たちは絶対に売春業者に補償した国というのはないからそういうことはできませんということを申しました。そして転業のための資金の融資ということはしたわけなんですね。今度はそんなことじゃないんですよ、実は。私たちが言っているのは、個室にしないで――長官は建設業でいらっしゃいますよね、トルコぶろ建設にもかかわりなさったと。建物をごらんになって、個室ね、一つずつの個室によけいなものがありますよ。一人一人ずつだったらそういうよけいなスペースが要るのです。だからあの壁を取り払って、何人もがマッサージも受けられるし、スチームバスも入れるようにして、公衆浴場らしくすればいいんであって、その投下した資本がなくなるとか、それから設備が役に立たなくなるなんて、全くこれは言いがかりだと思うのです。公衆浴場らしくもっと大ぜいが利用できるようにしてくれれば、そしていまのような高い一万円とか二万円とかという特別サービスをするんじゃなくて、もうちょっと妥当な値段で、おふろにも入り、マッサージも受けられるような大衆的な、公衆的な施設に切りかえればいいんであって、そんなものは、一軒当たり一億の損失だというんですよ、これによりますと。だから、千三百何十軒かあるので、国は千三百数十億――千三百二十九億の補償をするべきであるなんて計算をしておりますが、そういう考えを総務長官はどうお思いになりますか。
  103. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) いま御指摘の点は、それはトルコ業界の見解であって、政府はこれに拘束されるものではないです。
  104. 田中寿美子

    田中寿美子君 ええ、そうであってほしいですね。
  105. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 決してこれは拘束されません。そういう意味で、そういうさまざまな事態が出てまいりましたならば慎重に対処してまいりたいと、こういうふうに思っている次第であります。
  106. 田中和夫

    説明員田中和夫君) 先ほどお話のとおり、三十一年に売春防止法ができまして、いわゆる赤線業者が廃業したわけでございまして、そのとき、先生のおっしゃるとおりに、特別にこれに補償したということは私は聞いておりません。  また、いまただいま、これは廃案になったわけでございますけれども、公衆浴場法の一部を改正する法律案を見てみますと、別にトルコを全部禁止するということにはなっておらないわけでございます。個室だけでございますので……
  107. 田中寿美子

    田中寿美子君 個室も、女性がサービスする、という制限がついていますね。
  108. 田中和夫

    説明員田中和夫君) はい。ですから、いわゆる個室でもってマッサージをする例のトルコとサウナと分ければ、トルコというような感じのするものでございます。それだけですから、別に営業全部を廃止するというわけでもございませんので、そこら辺はやはりわれわれとしては賠償あるいは補償を要求するということに納得しがたい面もあるのじゃないかと思います。
  109. 田中寿美子

    田中寿美子君 業界の方は、いま私はそれを勘違いして、稻村長官が来られたので力を得て、それでこういう要望書を積極的に持ってこられたのかと思いましたけれども、そうでなければ幸いです。  それで、先を越して賠償要求のことまでも述べているわけなんで、いま審議官が正しく把握されましたように、これはトルコぶろをみんなやめなさいなんて一つも言ってない。個室の中で異性の特別サービスをするのは許可しなさんなということで、これは厚生省と警察がまるでまり投げのように、自分のところはやりたくない、あっちでやれ、こっちでやれと言うので、私たちは一番簡単な改正のやり方として、入り口のところで許可しないということにすれば、出口の方で規制するのは警察がやるでしょうから、警察権をやたらに強化することは私たちは賛成じゃないから、だから公衆浴場という一般の人がおふろに入るという観念、それにそぐわないような業態を公衆浴場法で許すことをやめてくださいと言っているのにすぎないわけです。トルコぶろ業者は全部やめなさいなんて一つも言っておりません。ちょっと施設を変えて、壁を取っ払って、そうしたら、一つずつの部屋に相当スペースをとっていますよね、そして何かお酒飲んだりするところまで置いてあるから、そんなのをやめて、飲むのは別の部屋で飲めばよろしいから、三人も四人もが一緒に治療を受けられるということですね、というふうにすればいいんであって、これは全く言いがかりだというふうに私は思っております。ですから、トルコ業者の要望書をぜひ読んでみていただいて、そして婦人問題を担当するところの総理府として正しい認識をしていただき、婦人の社会的地位を高めるとか、男女の平等とか、社会的参加のために力を尽くしていただくようにしていただきたいということを私は要望申し上げまして、時間が来ましたからこれで終わります。
  110. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 一言だけ申し述べさせていただきたいと思います。  お話の中で、トルコ業者とかかわりがあるような発言がありましたが、そのようなことは全くないということだけをはっきりとL3。さきにも申し上げましたのですが、いまも要望書のことがちょっと出ました、その要望書等も拝見したこともありません。全くかかわりがないと、こういうことだけを申し上げておきます。
  111. 宮田輝

    主査宮田輝君) 以上をもって田中寿美子君の質疑は終了いたしました。  速記をとめてください。   〔速記中止〕
  112. 宮田輝

    主査宮田輝君) 速記を起こしてください。  次に、矢原秀男君の質疑を行います。
  113. 矢原秀男

    矢原秀男君 沖繩関係について質問したいと思います。  沖繩開発庁につきましては、五十三年度の歳出予算、必要な経費として一千七百十一億四千一百四十五万三千円、こういうふうになっておりますけれども沖繩が復帰後、私たちも調査に行ったり、いろいろと考えているわけでございますが、沖繩の経済ですね、経済、社会の開発、そういう発展を図るために、沖繩復帰の前後からやはり戦前戦後にかけて沖繩の方々が大変御苦労なすったと、こういうふうなことで、わが国の施政権の外にあったというので、それによって生じる格差を是正していこう、そうして豊かな沖繩県をつくっていこう、こういうことで、長期的な視野の中からいろいろな問題点が行政の中で行われたわけでございますけれども、先般もいろいろな問題で調査に行ってまいりました。それで、きょうは時間の関係で交通方法の変更についてだけを質問するわけでございますが、その前に、総括的に一点だけ伺いたいのでございますけれども、経済振興ですね、産業基盤の整備、中小企業振興――港湾輸送等も入りますが。第二点は鉱工業の開発、砂糖、パインかん詰、セメントなど地域内資源による工業。三番目には農漁業の振興――甘蔗、パイナップル――基幹を占めております。また、第四点は中小企業の振興、全事業所の九九%が百人以下の企業でございます。第五点は観光開発。第六点は国土の保全と開発。その他、物価、雇用の安定等々種々の問題が、私は先般調査に参りまして、これでは本土との格差がまだ大変だなと、努力をされていらっしゃるけれども、やはりあの戦前戦後の非常に打撃を与えた沖繩県というものが、なかなか実質面においては格差というものがどうしても埋まっていないな、こういう実感を得てきたわけでございますが、この点について長官から総括的に、どういう現況であると、こういうふうにまずお伺いをしたいと思います。
  114. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 沖繩復帰に際しましては、本土との格差是正と明るい豊かな県づくりと、こういう形で沖繩の振興にあらゆる施策を進めてまいっております。まあ、今年度は六年を迎えるわけでありますが、公共事業等につきましては、他の地域から見れば大幅に上回って積極的な推進を進めておりまして、文教政策を除いてのほか、下水道、道路その他の公共というものはやや本土の水準に達しておる。そのほか、いま申し上げた文教施設あるいは福祉施策、福祉政策、あるいは水資源対策等、まだ本土におくれておるものもございますが、これもやはりこの期間内に必ず本土の水準に達し得る計画が毎年逐次、漸次進められておる。ただし、いま御指摘のありました中小企業問題あるいは農水産問題、特に中小企業問題については、世界経済の影響もございますし、また本土の経済というものの落ち込みも影響いたしておりまして、特に零細型性のやはり沖繩の中小企業というものは大変苦境にあるということを私は受けとめております。そういう意味から、これらの位置づけのために、中小企業の振興自立と申しますか、沖繩経済自立のために、きょうも参議院の本会議において金融公庫法の一部改正をも通過をさせていただいたわけでありますが、こういうもろもろの金融政策を初めその他全般各般にわたって、一日も早くやはり本土との、あらゆる分野において、経済分野においても、あるいは公共施設の問題においても、本土の水準に一日も早く達するように、そしてやはり復帰の際の明るい豊かな格差のない沖繩県の県づくりのためにひとつ全力を注いでまいりたいと、こういうふうに考えております。
  115. 矢原秀男

    矢原秀男君 ぜひ格差是正のために御努力をお願いしたいと思います。  時間の関係上、一点だけ質問いたしますけれども、やはり沖繩調査で、最近の向こうの方々の課題は交通関係でございまして、航空運賃の問題等ございますが、今度交通方法の変更というものが大きな課題になっております。この点については衆参ともに各該当委員会等で長官を中心として審議等が尽くされたと思いますけれども、非常に重要な観点でございますので、質疑をしてまいりたいと思います。  まず第一点は、去る三月十六日その対策要綱が決定をされましたけれども、決定するまでの間、地元沖繩県と各種の折衝が行われました。県とか県議会等から要請が行われているわけでございますが、その間の経緯、簡単に御報告を願いたいと思います。
  116. 三島孟

    政府委員(三島孟君) お答え申し上げます。  ただいまお話がございました沖繩県の交通方法変更対策要綱につきましては、できるだけ早く作成いたしたいということで、かねて沖繩県等から御要望のございました点を考慮しつつ検討を進めてまいったところでございますが、二月中に関係省庁間でいろいろ協議しました結果、原案がまとまりましたので、三月早々、三月六日の日でございますけれども、現地に出向きまして、沖繩県で現地連絡会議を開いていただきまして、御説明申し上げました上御了解を求めたわけでございます。その後、沖繩県等からいろいろな御意見、御要望等が出てまいりましたので、その点を十分さらに検討いたしました上、原案を一部修正いたしまして、三月十六日の日に対策本部会議で最終的に決定を見、翌日の十七日に閣議に御報告申し上げたと、こういう経緯でございます。
  117. 矢原秀男

    矢原秀男君 第二点は、いま御報告を伺いましたが、県当局、県議会等の要請についてどのようにこたえたかということなんですが、端的に申し上げますと、地元の要望が対策要綱の中にどういう形で取り入れられているか、数点で結構でございますので、御説明してください。
  118. 三島孟

    政府委員(三島孟君) 沖繩県等からかねていろいろな御要望、御意見をちょうだいしておったわけでございますけれども、これは原則的な問題、基本的な問題でございますけれども、今回の交通方法の変更が国の責任において実施すべきものであるということをはっきりさせてほしいと、こういう御要望につきましては、要綱の基本方針のところではっきりさしておるわけでございます。そのほかいろんな問題の御要望がございまして、私どもといたしましてもできるだけそれを盛り込むように努めたわけでございますけれども、御要望の中には、やはり文書の上で表現できない問題もございまして、そのすべてについて要綱に盛り込めたわけではございません。しかしながら、たとえば特に御要望の強かった特別事業の問題等につきましては、御要請の趣旨を踏まえて検討するという表現ではございますけれども、盛り込んだわけでございます。
  119. 矢原秀男

    矢原秀男君 第三点は、対策要綱の中で「必要な措者に要する経費については、原則として国の責任において措置する。」となっており、すべて国の責任において処理されるべきだとする県側との食い違いを見せておりますけれども、「原則として」という語句、これを挿入した理由は何か、これを伺います。
  120. 三島孟

    政府委員(三島孟君) 今回の沖繩県におきます交通方法の変更は、要綱にも明らかにしておりますとおり、国の責任において措置するたてまえでございます。しかし、その具体的な措置につきましてはいろんな施策、各施策ごとに国の責任において措置すべきものの範囲、程度等についていろいろ検討を要する点がございますので、たとえばバスの代替の問題等でございますけれども、バスの車齢ですね、使用した年数によって、どの程度国において措置すべきか、いろいろ検討を要すべき問題等もございますので、要綱のような表現になったわけでございます。
  121. 矢原秀男

    矢原秀男君 第四点は、自治体の件ですけれども、地元負担を要している経費はどんなものがあるのか、把握をされておられれば明らかにしてください。
  122. 三島孟

    政府委員(三島孟君) それぞれ各市町村の方で御負担になられるという経費につきましては、いろんな点の御要望が出ておるわけでございますけれども先ほど申し上げましたように、交通方法の変更は国の責任において措置するというたてまえでございますので、それぞれの自治体に財政的な御負担をかけないようにするために、関係省庁と十分に連絡をとりながら検討を進めておるところでございますけれども、具体的に申しますと、それぞれの地方自治体で行う交通方法変更関係の事業につきましては、事務費を含めまして全額国庫負担で措置することにしておるわけでございます。しかしながら、これらによって賄えないものにつきましては、自治省において特別交付税の配分の際検討されるということになっておるわけでございます。
  123. 矢原秀男

    矢原秀男君 第五点は、いま向こうに行きましても、いままで運転をしていたのと今度は逆に、というのは、これは事故が絶えないのじゃないかという現実面の物すごい問題がありますね。で、対策要綱では、「交通方法の変更に伴い県民が被る物心両面にわたる負担を極力軽減することにより県民一人一人の理解と協力を得て」「円滑な実施を図る。」と述べてあるわけです。ところが、県民がこうむる営業上の損失補償については何らの具体的な措置が講じられていない、こういうふうに感じるわけです。これでは、もしそうであれば、県民の理解と協力を得て円滑な実施を図ることがやはりなかなか困難ではないか、こういうように感じるわけですが、この点についてはいかがですか。
  124. 三島孟

    政府委員(三島孟君) 要綱にも明らかにいたしましたとおり、いま先生指摘のとおり、物心両面にわたる影響を受けることになるわけでございますから、できるだけそういう御負担を軽減するためにいろいろ国としても措置すべきだという考え方に立ちまして、すでにいろんな形でその影響のはっきりしておるものにつきましては措置することにしておるわけでございます。たとえば、先ほどちょっと申し上げましたけれども、バスの代替の問題、あるいは自動車の前照灯の問題なんか、これはすべての前照灯につきましては国で全部措置することにしております。そういうはっきりしたものにつきましてはすでに措置をすることにしておりまして、今度の予算にもお願い申し上げておるわけでございますが、確かにいざ実施いたしました後いろんな形で影響が出るんじゃなかろうかということも考えられるわけでございますけれども、現在の段階ではなかなかそれを予測することはむずかしゅうございます。果たして数量的にとらえることができるかどうか、その点、いまの段階では予測することは困難なわけでございますので、そういう問題が出てきた場合におきましては、やはり必要なものがあれば個別に適切な措置を検討するという考え方をとっておるわけでございます。
  125. 矢原秀男

    矢原秀男君 その点、よろしくお願いをいたします。  で、第六点は、同じく沖繩県が交通方法の変更によって県民がこうむる有形無形の損失の補償にかわるものとして強く要請してきた問題に特別事業があります。この特別事業については、対策要綱ではきわめて抽象的な表現にとどまっております。この特別事業は交通方法変更の大きな受け入れ条件となっておりますね。後で県民を裏切るような骨抜き事業になるのではないか、こういう懸念もされております。さらにこの際、特別事業の実現に対する、老婆心ではございますけれども、今後の取り組みの方針をここで明確にしていただきたいと思います。
  126. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 御指摘のとおり、やはりこの特別事業というのはきわめて沖繩県民にとっても関心の深いものであることは当然のことだと私は思っております。そういう意味から、先ほど来からお答えを政府委員がしておりますように、国の施策で行う交通の区分変更でありますから、当然、国があらゆる経費については、県民の各位にもまた県市町村の段階においても御迷惑をかけないと、この基本方針は貫いてまいるわけでありますが、特にいま御指摘の記念事業につきましては、これはいま約束をしておいて、終わればそれで食い逃げをするんじゃないかと、こういったことはいささかの御心配もぜひされないように、むしろ進んで、なるほどわれわれにはいろいろな精神的にも経済的にも負担があったが、なるほど政府はすばらしい一つの事業として残してもらったという、永久にそれが――これは私は復帰後最後とは申しませんが、一つの区切りの大きな事業と、こういうふうに受けとめて、これに真剣に取り組んでおるということを御報告を申し上げておかなければならぬと思います。
  127. 矢原秀男

    矢原秀男君 そのとおりよろしくお願いいたします。  特に第七点でございますけれども、この中で、沖繩自動車道の南伸問題については来年度から事業の着工に入ることができるのかという点でございますけれども、事業実施の見通し等を明らかにしてください。
  128. 美野輪俊三

    政府委員美野輪俊三君) 先生お尋ねの沖繩自動車道の南部延伸につきましては、その実現をぜひ図りたいということで、現在その路線を検討中でございます。具体的には、中心となる路線につきましていま県とも調整をいたしておるという状況にあるわけでございます。で、昭和五十三年度におきましては調査費を、お願いしております予算の中に計上してございますが、これによりまして環境アセスメント調査等を実施をするということにいたしておりまして、その後引き続いて県、地元の協力を得まして路線の決定をいたしたい。まず当面の目標といたしましては路線の決定が緊要の事柄であろうと存じます。この路線の決定を、できるだけ地元とも十分連絡をとりながら決定をいたしてまいりたい、このように考えておる段階でございます。
  129. 矢原秀男

    矢原秀男君 第八点は、五十三年度予算で特別事業関係の調査費として五百十五万円が総理府予算の中で計上されております。こういうふうに私見ておるわけでございますが、この調査費の使途内容ですね、具体的にお願いしたいと思います。
  130. 三島孟

    政府委員(三島孟君) ただいま御質問のございました調査費は、交通方法変更後の交通安全施策のとるべき方向につきまして調査研究をし、沖繩県における今後の交通安全対策の推進に資することを目的にしているわけでございます。この調査の対象事項といたしましては、幾つかあるわけでございますけれども一つには沖繩県における交通事故の特質、二つ目には道路交通安全施設状況、三つ目には交通規制等の道路交通環境、四つ目には交通安全教育の状況、五つ目には交通事故被害者の救護状況、この五項目を考えておるところでございます。
  131. 矢原秀男

    矢原秀男君 九点目は、県では特別事業の柱である交通安全センターの設置、交通災害医療センターの設置については五十三年度で調査を終わり、五十四年度から事業の実施に入ってほしいと希望しておりますけれども、それが可能なのかどうか。そうしてもし準備ができておらなければ、早期着工のために調査をもう少し急ぐべきではないか、こういうふうに感じるわけですけれども、この点はいかがでございますか。
  132. 三島孟

    政府委員(三島孟君) 沖繩県から御要望のございましたいろんな点につきましては、現在各省庁と連絡をとりまして、また沖繩県とも御相談の上、検討を急いでおる段階でございます。
  133. 矢原秀男

    矢原秀男君 この事業については、交通方法変更に伴う事業として全額国費で実施してほしい、こういう県の要望がございますけれども、これに対する見解はいかがでございますか。
  134. 三島孟

    政府委員(三島孟君) その点につきましては、要綱でも県の要請の趣旨を踏まえて検討するというふうに表現したわけでございますが、実はその沖繩県から出てきております問題、実はいろいろ検討を要する問題がございますので、現在、先ほど申し上げましたとおり、その経費等の措置につきましても各省庁と協議をしながら検討を急いでおるという段階でございます。
  135. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ、その点はよろしくお願いいたします。  十点は、次に米軍基地の対策ですけれども沖繩においては米軍基地が大きなウエートを占めております。米軍人軍属も一般交通に参加するので、交通方法の変更については万全を期す必要がございます。米軍側の具体的対策内容が明示されていないように感じております。これは沖繩県民に非常に不安を与えておりますし、また観光で渡る方々も安全の問題等で非常に懸念を持っているんですけれども、米軍との話し合い、現時点ではどういうふうになっているんでしょうか。
  136. 三島孟

    政府委員(三島孟君) 米軍側とは日米合同委員会の場で、米軍人等に対する交通安全教育・広報あるいは米軍関係車両対策、基地内におきます交通安全施設の整備等につきまして、交通方法変更への十分な対応措置が行われるように申し入れたところでございますし、米軍側としては十分日本側に呼応して対応措置をとるということは約束しておるわけでございます。その後、非公式ではございますけれども、日本側関係者と米軍司令部関係者がたびたび会合いたしまして、現在は話し合いを進めておるところでございます。また現地沖繩におきましても、日米両関係者間の連絡会議を持ちまして話し合いを進めておるところでございます。米軍側としましてもいろいろな問題もあるようでございますので、現在話し合いを進めまして、七月三十日、もう迫ってまいりますので、交通方法の変更が米軍基地内におきましてもあるいは米軍の立場としましても安全かつ円滑に実施し得るように、わが方としても協力しながら努力してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  137. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ最後に、米軍基地内の交通方法変更に伴う施設整備経費負担においても日米間に意見の対立があるやに伺っております。また、こういう経費負担問題で、米軍基地内の準備がいま御報告を受けました七月末に間に合うのかどうかという、こういう心配もしております。これ重ねて、実際に間に合うのかどうか、その点伺います。
  138. 三島孟

    政府委員(三島孟君) 経費の問題でございますけれども、米軍基地内におきます交通方法変更への対応措置は米軍の責任において行うということに地位協定上からもなっておるわけでございます。ただ、私どもとしましては、ただいま御指摘がございましたように、交通方法が安全かつ円滑に行われるように万全の措置をとる必要がございますので、実質的に私どもとしましても協力できるように、現在双方で話し合いを進めておるわけでございます。七月三十日の交通方法の変更が米軍基地内においても完全に行われるようにわれわれとしても十分努力したいというふうに考えておる次第でございます。
  139. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ、長官最後に、交通方法の問題とあわせて、先ほども御答弁いただいたわけでございますが、どうか沖繩県民の方々が本土とやはり一日も早く――本土よりも早く、もちろん同じ国内ですけれども、他の県よりも少しでも上向きになるように、そういう点について最後に御答弁いただきたいと思います。
  140. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 七月三十日に向けての大変微妙な――微妙という表現はどうか知りませんけれども、大事な時期に入ってまいりました。  そこで、先ほど来から政府委員が答えておりますわけですが、ここで誤解があってもいかぬと思いますので、仮に市町村道にいたしましても、交通変更に伴う地域であるとするならば、当然これは国の責任においてなさねばならない。それから特別事業の問題についても、もちろんいま各省庁との連絡を急いでおります。そういう意味から、冒頭に申し上げましたように、国の施策で行うものでございますから、当然国の責任において行うというこの基本方針は、いささかも私は変えるものではありません。石川から那覇への長大な高速道にいたしましても、やはりこれも一つの事業の一環にしてまいりたい。観光に役立つ、経済の動脈として役立つ、こういう意味から、これも地元とのいろいろな御協力によってこれもやはり並行させてまいりたい。  それから特に、政府委員が申し述べておりますいろいろな損害の問題でありますが、これもやはり利害得失いろいろあると思いますが、できるだけ温かい気持ちで――もちろん損をする場所もあります。しかし得をする場所もあります。はっきり申し上げますならば、右から左へということでありますから、得をするところもあれば損をするところもありますけれども、しかしその議論は議論として、冒頭に申し上げたように、国の施策で行うこの大事業に対して温かい気持ちでこれはやはり対処をしてまいらなきゃならぬ。そういう意味から、何としても県民各位の御協力によって七月三十日のこの日に幕を開かなきゃならぬという、こういうかたい決意でおるわけであります。  最後の御指摘の点でございますが、最初に申し上げましたように、復帰に際してのやはり大きな願いというのは、本土と何ら格差のない平和で明るい県民づくりという、こういう基本方針というものはいささかもこの計画の中で変わるものでもありませんし、六年を迎え、しかしながらあと四ヵ月後におけるところのこの計画は、他の予算と違って常に、この場所ではっきりと申し上げておきますが、受入体制さえ整うならば、余裕を持った予算の体制をつくっておるわけでございますので、御指摘の点については、いろいろ御指導、御鞭撻を賜りながら、やはり沖繩と本土の格差の是正ということについて全力を挙げていくということは、これはやはり行政の心であり政治の心であると、こういうふうに真剣に受けとめておるということの決意を申し上げておかなきゃならぬと思います。
  141. 宮田輝

    主査宮田輝君) 以上をもって矢原秀男君の質疑は終了いたしました。  他に御発言もないようですので、皇室費、内閣、総理府本府及び沖繩開発庁所管質疑はこれをもって終了したものと認めます。  明日は午前十時から分科会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十分散会      ―――――・―――――