○
国務大臣(
中川一郎君) 私も日本の
農政の一番厳しいのは土地がないということだと思うのです。したがって、
アメリカの二百分の一、豪州に比べると恐らくまだ五百分の一とか千分の一という極端な数字になっているでしょう。でありますから、
農村の厳しさは厳しさとしてがっちり受けとめなければならぬ。ところが、今度は
消費者からは、勤労大衆の多くの人からは、なぜ外国の安い物を食わしてくれないのだ、なぜ高い物を食わなければならないのだという、これまた血の叫びの声もあるわけなんです。でありますから、その辺をどう
調整して、勤労大衆にも安い物を食っていただく、また農家の皆さんも
アメリカの二百分の一の農地でもって生活をしていくという、ぎりぎりのそこに接点を求めなければならぬのが農林行政の一番むずかしいところでございます。しかし、どちらが優先するかというと、私はやはり
食糧の
自給率の
向上、農家経済の安定ということを優先すべきであろう。でありますから、二十二品目の非自由化品目も、
アメリカを初め多くの国々から自由化せよという声はありましても、いまこれを自由化したならば、たちまち二百倍の力を持つ
アメリカやECや豪州にやられるので、これは断じて受け入れることはできないということを
基本方針としたのも、まさにいまの論調から来るところでございます。さらには、非自由化の中で国内で
生産のされない部分は、
アメリカから入れてもいいではないか、その他の国から入れてもいいではないかと、今度の判断はまさにそのぎりぎりであって、農家経済に
影響のない範囲内で輸入できるものはどの辺かということで肉なりあるいはオレンジに対処したのであって、その場合、単に
アメリカの言うことを聞いただけではなくて、やはり安いオレンジを食いたい、安い牛肉を食いたいという国民の声にもこたえなければならないということも配慮をして今度の
調整を行った。それから第一に御指摘がございました、何か工業の犠牲になっているようにおっしゃいますけれども、やはり工業があるから
農業があるのであって、約三兆円のことし予算が入っておりますけれども、やはりこれだけの工業力であるからこそ
農村にも三兆円からの金が入るということでございますので、どうかひとつ
農村だけ見ずに、
消費者のことも考え、全体を考えながら苦しんでおるということも御理解をいただきたいと思う次第でございます。