○
国務大臣(
河本敏夫君)
先ほども五十二年度の
貿易の動向のアウトラインにつきましてはお話しをいたしましたが、
数量的にほとんど
伸びていない、五%前後しか
伸びていないのに、なぜ価格の面でそんなにふえておるかといいますと、
一つはこの
円高に対応するために
競争力のあるいろんな
輸出品、たとえば
自動車などは、絶えずこの手取りを減らさないために
値上げをしておるわけです、数回にわたって
値上げをしてまいりました。そのために円としての収入はふえなくても、
ドルとしての
数字はふえる、こういうことが
一つであります。それからもう
一つは、円建てで
輸出しておるものがございます。全体の約二割ありますが、これがやはり計算上は
ドルがふえてくる、こういうことになります。それからもう
一つ、赤字でどうしても
値上げはできない、しかしながら操業を維持するために
出血輸出をしなきゃならぬ、たとえば繊維なんかですね、そういうものは
出血輸出を続けておる、この
三つのグループに分けられると思います。
そこで、
数量全体としては、
世界全体の
伸びと比べまして決して大きく
伸びておるわけじゃございません。ただ
円高のために、
先ほど申し上げましたように
金額が非常に大きくなっておるということでございます。で、もう少し個々の品目について若干申し上げますと、たとえば家電などは五十二年度は前年に比べまして二・四%ぐらい減る見込みでございます。あるいは三%近く減るかもわかりませんが、これはなぜかといいますと、テレビを
中心に
アメリカに対して
輸出規制をいたしております。そのために全体として減るわけでございますが、結局、余り強引な
輸出規制をしますと、たとえばテレビなどでは、
アメリカにおける
日本の企業は三社でございましたが、
輸出規制をいたしました結果六社にいまふえております。そういうことで、国内の労働問題、雇用問題にも大きな影響が出つつある、こういうことも御参考までに申し上げておきます。強引な
輸出規制の結果、こういう
状態の業界もあるということでございます。
それから鉄などは、これは
数量的には五十二年度は五十一年度に比べまして若干減る予定でございます。五十三年度もさらに若干減ると思います。ただ、
アメリカではトリガー価格などの制度ができましたために、
金額は相当上がると思うんです。それからヨーロッパなども、いま交渉中でございますが、これも最低価格制ができる気配でございますから、したがって
数量的にはむしろ減る傾向ではあるけれども
金額的には
伸びる、こういう
状態でございます。鉄と家電関係は、大体、大物は外国との間におよその話し合いがついて、秩序ある
輸出にいま向かいつつある、こういうことでございます。
それから
自動車のことにつきましては、
先ほど申し上げたとおりでございます。年度間を通じては大体
数量はふえない、このように
指導をしてまいるつもりでございます。
ただ、私どもがちょっと心配しておりますのは、やはりここで
輸出規制をするのだとか、そういうことがうわさにでも出てまいりますと、リーズ・アンド・ラグズという
動きが非常に顕著になりまして、二月以来もうすでにその傾向が出ておりますので、三月にまたその
動きが増幅される、こういうことになりますと、これは統計的には一時的に
輸出の
数量がふえる、こういうことを懸念しなければなりません。したがって、
政府といたしましては、集中豪雨的な
輸出は当然避けなければなりませんし、そのようなことのないように
行政指導をいたしますし、さらにまた、全体としての秩序が壊される、そういう場合も強力な
行政指導をするつもりでございますが、巷間伝えられるような
輸出規制などは、これは
日本としてはすべきではありませんし、それから外国からもそういうことは少しも
要求されておらぬわけでございます。それからまた、そういうことを外国から
要求されていないのに、
日本が白旗を掲げて勝手にそんなことをしますと、それが導火線になって、結局は
世界全体が保護
貿易になる、こういう懸念が多分にございます。でありますから、
行政指導によりまして
貿易の秩序を取り返していこう、こういう
考え方でございます。