○
国務大臣(
福田赳夫君) 先ほどから申し上げておりますように、いまの国際通貨不安、その根源は私は
円高、マルク高、いろいろ
現象的にはそうなっておりまするけれども、基本的にはこれはドル安ということじゃないか、こういうふうに思うのです。しかし、私は、アメリカの経済体制は非常に強いものである、そういうふうに
考えておるわけでありまして、いまドル安というような
現象が起こっておりまするけれども、これはアメリカの経済の実体をああいう形で表現されておるというふうには
考えません。私は、アメリカ
政府がそういう強い経済体制の上に立って、ドルの安定、これに対しまして本当に実効のある手を打つ、これは
世界のために非常に大事なことである、こういうふうに
考えております。
それから、
世界の今日の経済情勢をどういうふうに
認識するかということでございますが、私は、このいまの
世界情勢というものは、これはひとり経済的角度じゃない、政治的角度から見ましても深刻な状態だというふうに
考えておるわけです。つまりこれは五年ぐらいの長期
世界不況と、これは大づかみに言って、そういうふうに言っていいんじゃないかと思うのです。
ことに南北問題、そういう政治課題のあるその中で、南の国々、発展途上国、わけても石油資源を出さないところの発展途上国、これは非常に困っているわけです。だからといって、さあこれに協力しなけりゃならぬ立場にある先進工業国はどうかというと、この先進工業国は、これはおしなべてまだあの石油ショックからの立ち上がりができない、こういう状態なんです。こういう状態が続きますと、これはもう私は一つ一つのそれぞれの国に社会不安というものが起こってくる。社会不安はやがて政治不安につながっていくだろう。私は、戦前、
昭和初期、一九三〇年代のことを
考えてみましても、あの戦争への道というのはちょうど今日の経済情勢というような過程をたどってあすこへ行っておるわけでありまして、私は、いまこういう核兵器が開発されたというこの時代におきまして、第三次
世界大戦争、核戦争が起こるなどとは思いません。思いませんけれども、それに近い政治的混乱の時期というものがやってくるおそれがある。
ことに国々がいま不況だ、失業だと、そういうことで悩んでおる。で、この状態が続きますと保護貿易体制というものが起こってくるおそれがあるんです。これが起こってきたら、一体どうなるんだといいますれば、ある一国が
わが国に対して障壁を設け、そしてナショナリズムというか保護貿易体制をしくということになれば、
わが国だってそういうことを相手国に対してやらなければならぬ、お互いにこれは縮小の過程をたどるわけです。そういうことで、ある一国が何かそういった態度をとりましたならば、これは一波万波、もう
世界じゅうがそういうふうになっていくんです。そうすれば
世界じゅうの総沈みになっちゃうんです。そういうことが一体どういうことにつながっていくか、これは本当に身の毛のよだつような感じがしてならないんです。
そういう間におきまして、とにかくアメリカは
世界第一の経済大国だ、
わが国はアメリカに次いで自由社会では第二の工業力を持った国である。
わが国のこういう
世界の政治、
世界の経済の中における責任、これは非常に私はいま大きくかつ重い、こういうふうに思うわけであります。そういう
世界情勢の中で、
わが国は、
世界の平和、
世界の繁栄のためにりっぱに役割りを尽くしていかなけりゃならぬ、こういうふうに
考えますが、これが私の今日の内外の経済問題に臨む基本的な姿勢でございます。