○
国務大臣(
牛場信彦君) ただいま御質問になりました
アメリカの
実情につきまして、
調査その他が不十分であったのではないかという御質問、私は帰りましてからそういうようなことを申したこともございますけれ
ども、あれは主として私自身の勉強が不足であったということを申しましたので、
アメリカの
状況につきましては外務省その他を通じましていろいろ聞いておりました。ただ、私も過去の経験から申しまして、まあそんなことはないだろうという考えは若干持って参ったのでございますけれ
ども、行ってみますと、いろいろの
報告を受けておりました
状況に近いものが相当ありまして、どうも
アメリカも変わったものだという感じを実は持ったわけなのでございます。
ことに
議会の力というものが
政府に対して非常に強くなってきておる。また、これは
議会人自身が、自分たちが強いのだ、自分たちが力を持っているのだということを私
どもにも繰り返し申しまして、だから
議会と話をしなきゃだめですよということを言うわけでございまして、私がおりました——これはニクソン
大統領のころでございますけれ
ども、とはよほど違った
状況でございます。それからまた
議会でも、私がおりましたころはいわゆる強力な指導者がおりまして、その人が大体この通商問題に関しての
意見などをまとめてくれたものでございますが、そういうことがなくなってしまったようでございます。これは
アメリカの元来の姿に返ったというようなこともないかもしれませんですけれ
ども、
カーター大統領になりましてから、そういう点は大部変わってまいったということを感じた次第でございます。もちろん
政府の
調査は十分だったと、全部万全だったということではございませんけれ
ども、しかし、いろいろな情報は私はもらっておりまして、ただ私自身の考え方がどうも少し甘かったということを反省しているという意味で、そういうことを話したことがある次第でございます。
日本のやり方、
日本のいまの姿勢につきましてアンフェアだという考え方が
アメリカの
国内、これは相当下の方も上の方も非常に浸透していることは事実でございまして、それの一番のあらわれが
日本の閉鎖的な対外
経済姿勢だということでございまして、これは非常な大きな誤解もございます。これは確かにあるのですけれ
ども、そういうものはやはり具体的な事実によってだんだん反駁していかなければならない。これは相当時間のかかる問題でもあるし、そういう点におきまして、今後の対米外交のやり方というものも十分考え直していかなくちゃいけない。これは私の個人の感じでございますけれ
ども、そういう感じも持ってまいった次第でございます。
それから今回の対米
協議の上における重点でございますが、確かにマクロとミクロとございまして、当初はマクロの点だけが実は問題になっておったわけでございまして、それがそのうちにだんだん具体的に
アメリカの物を買ってもらいたいとか、
アメリカの対日
輸出の機会を多く与えてもらいたいというような方に重点が移ってまいったことは事実でございます。このマクロの点につきまして、七%の
成長、これは
先方が大いに多とした次第でございますが、その七%
成長を必要とするゆえんは、
日本の
経常収支の
黒字をできるだけ減らすという点にあったわけでございまして、ここに
アメリカ並びに世界の関心もあるわけなのでございますが、これをどれぐらい減らせるだろうというようなことにつきましては、私がおりますうちは東京からの指示もございませんでしたし、相当目立った
削減ができると思うということを申しただけで、数字は一切申しておりませんです。しかし、向こうも一応いままでの
日本の
経済の動向などから判断いたしまして、この
程度は減るだろうという考えは持っておるようでございました。かれこれ合わせまして、七%
成長ということは非常に
日本経済のためにも、世界のためにも、
日米関係のためにも結構だということは申しておった次第でございます。
それから、ミクロの問題につきましては、結局、具体的にはお示しになりましたように、
関税の
引き下げと、それからいま
輸入制限にかかっております品物の
輸入の
増大、あるいはできれば
自由化と、こういうことが
要求として出ておったわけでございますが、
関税につきましては相当多数の
品目につきまして前倒しを
約束した。それからさらに、今後
東京ラウンド、つまりガットの
交渉でございますが、その場におきまして
日本がさらに相当の
引き下げを行うということを向こうに伝えました。もちろんこの
日本の
引き下げというものは、当然
東京ラウンドにおける
日本の貢献度としてカウントされるとそれだけまた
相手方から譲歩を得られるということになるわけでございますので、カウントすることは当然のことでございますけれ
ども、そういうような態度につきましては
アメリカとしても大体了解しているというところでございます。
ヨーロッパの方でもそういうような感じでございます。そういうことになりまして、結局
輸入制限品目の枠の
拡大ということが問題として残っておるというのが現在の
状況でございます。
それから日程につきましては、これは相手がありますのでなかなかはっきりしたことは申し上げられませんですが、できれば来年一月十九日の
アメリカ議会の再会前に、いまの段階における
協議というものは一応一段落をつけたいというのが
日米の共通の考え方でございまして、そのためには年末から来年の初めにかけて恐らく
先方からも
要求が出てまいるでございましょうし、われわれとしてそれに対応する策を立てなきゃならないというのが現在の
状況でございます。