○浜本万三君 私は、
日本社会党を代表して、
福田総理の
訪米報告に対して、
総理並びに
関係大臣に若干の
質問を行うものであります。
国民は、
総理が昨年に引き続き、ことしも
訪米するとの報道に接し、
経済に行き詰まり、日中は決断できず、成田開港に失敗した福田さんが、一体何のために
アメリカに行くのかという疑問を一様に提起しておりました。いま
総理大臣から
報告を聞いて、
国民の疑問と不安がまさしく的中したものと思います。本当に何のために
アメリカに行ったのか、全く無
意味な
訪問であり、深い失望を痛感した次第であります。
福田総理は、
カーター大統領との
会談後の記者会見で、
大統領の心境について、「友あり遠方より来る、また楽しからずや」とコメントされたようですが、
アメリカ大統領が果たしてそうした気持ちだったか、はなはだ疑問と言わざるを得ません。忙しい
日程の中に無理やりに割り込まれた
大統領にとっては迷惑であったことは確かであります。「窮鳥ふところに入れば猟師もこれを撃たず」との心境で迎えたものと推察されるのであります。
しかし、今回の
会談で
共同声明すら出されなかったことは、
日米首脳会談として異例なことであります。気にくわないでしょうが、あえて聞くわけですが、なぜ
共同声明を出さなかったのか、出さなかったのはどちらの国の主張であったのか、明らかにしてもらいたいと思います。
私は、今回、昨年の
福田総理訪米の際の
共同声明や
会談記事を読み返してみました。当時は、福田新政権発足後であっただけに、カーター新政権にとっても
期待の念があり、
大統領の
発言や
日本に対する注文も迫力であったように思います。それに対し、今回の
米国側の
態度や
発言は、問題に真剣に取り組んでいる姿がどうしても見られず、全くおざなりに終始したと言って過言ではありません。こうした失態を招来したのは、そもそも
福田総理の
訪米自体が何ら
国民の真の要求に基づいて
計画されたものでないという必然の結果ではないでしょうか。「
経済の福田」であると自称しながら、その
経済政策はことごとく失敗し、日中
関係の前進も、その支持
基盤からの反乱に遭って決断することができない。政権獲得後一年有余にして何ら見るべき
成果を上げていない。これでは秋の自民党総裁選に不利であるとの
総理側近の派閥的打算に基づくものであることは、有識者のひとしく指摘している点であります。それは、帰国途中の記者会見での
発言が大平幹事長との総裁選問題が
中心であったということにも象徴されていることを指摘しなければなりません。
そこで、お聞きしたい第一点は、
国民の支持が二〇%程度に低下した
総理が、一国を代表して語るどんな資格があり、どんな内容を持って
訪米されたかという点であります。昨年の
日米共同声明で
合意した事項を実行していく過程で
国民の支持を失ったわけですから、
合意事項そのものが誤っていたのか、
合意事項の
推進方法が誤っていたのか、いずれかであろうと思います。そこで、
総理はどういう認識のもとに
訪米されたのか、率直に伺いたいと思います。
第二は、
アジア・
太平洋地域での
アメリカの政治的、軍事的、
経済的プレゼンスを確認したという点であります。これは、在
韓米軍、その他
地域の米軍の撤退に反対する立場であり、緊張緩和、平和共存の
拡大、民族自決、自主、自立の方向に反するものであります。
日本国憲法の定める恒久平和主義をみずから踏みにじるものと思いますが、どうでしょうか。
同時に、現在
日本と中華人民共和国との間に進められております
日中平和友好条約に盛り込まれようとしている覇権反対の
態度にも反するものと思いますが、いかがでしょうか。
今回の
会談に際して、
アメリカ側が
総理を
中心に論じようとしたことに対し、
福田総理は、軍事的、政治的側面の論議を引き出そうとしたと伝えられていますが、ベトナムにおいて失敗した
アメリカが、国全体として今日反省期に入っておる歴史的段階を無視して、再び
アメリカの軍事的行動を求めるがごときは、覇権確保の動きと言わなければなりません。ベトナム参戦の愚を再び繰り返すなと
発言すべきであって、
アジアにおける
アメリカの覇権確保の行動を是認するようなことがあってはならないと考えます。その点、しかと
総理の真の
意味を伺いたいと思います。
日中平和友好条約に対し、「御
成功を祈る」という言葉を引き出し、喜んでいる
態度は漫画的ですらあると思います。むしろ、
日本としては、
アメリカの中国人民に対する軍事的占領を
意味する米台
関係について一刻も早く清算をするよう呼びかけるべきものでありまして、これが反覇権の具体的な
意味であると考えますが、
総理の
所見を伺いたいと思います。
日中平和友好条約の締結は、国益と
世界平和に貢献するものです。条約締結
交渉を即刻開始すべきであると思いますが、
政府の決断と具体的な
日程について、
総理並びに
外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
また、近く国連の軍縮特別総会が開かれます。原爆被爆原体験の中から、非核三原則を国是として原水爆廃絶を悲願とする
日本国民として、この国連軍縮総会に向かってその
エネルギーを集中すべきときであると考えます。
総理が
国民の悲願をみずからの心とするならば、核問題を
エネルギー問題として
カーター大統領と語るという
姿勢でなく、この国連軍縮総会に積極的に出席して、核廃絶への具体策を提起すべきであると思いますが、
総理の
所見を伺いたいと思います。
第三に伺いたい点は、
防衛分担金の増額や
防衛力増強についてであります。
福田総理が
アメリカの
アジアでの行動を、
アジアの平和、
日本の安全のため支持するという立場をとったことは、
アメリカ軍の基地の存在は
日本のためという論拠を補強し、
アメリカ人にとってみれば、その費用を貸本に持てと言うのは当然であります。
日本社会党は、
日米安保条約や
自衛隊の増強は
アメリカの反共政策に役立つものであり、
日本を戦争に巻き込む要素を大きくするだけだと考えていますが、いまその根本論はさておきまして、仮に
政府・官民党が言うように、安保条約が
日本の安全に役立つとしても、その負担として、基地の提供、その他十分過ぎるほど
日本は負担をしておるのであります。この不況のさなか、これまで以上の
分担金の増額や兵器の購入、軍備
拡大は、
国民感情として許すことができないと思います。
アメリカ政府からの公式の要請はないとの官房長官談話が発表されておりますが、いつも後から何か出る現在までの
状況を考えますと、これはさらに聞いておきたいと思うのですが、本当に非公式の要請もなかったのでしょうか、正直に答えてほしいと思います。
また、
アメリカ議会筋からの
発言も伝えられ、その中には、
日本の憲法を軽視したり内政干渉めいたものもあったようであります。
福田総理としては、これらに対しどのように答え、
日本の立場を
説明してこられたのか、はっきり
答弁をお願いしたい。
また、
分担金増額要請は、仮に今後あるとしても拒否するということを、ここで言明されたいと思います。
また、
分担金増額の
防衛手段として憲法を利用し、一方では、今国会の
答弁に見られるように、憲法上からも核兵器まで持てるという反動解釈は、今後厳に慎むように警告をいたしたいと思います。
次に、朝鮮半島の問題についてお尋ねをいたします。
昨年の
共同声明において、朝鮮半島における緊張を緩和するため引き続き
努力することが
意見の
一致を見たと言われております。南北間の対話の速やかな再開を強く希望したとも述べられておりますが、私は、
日本政府がその後こうした点について
努力したという事実を不幸にして知らないのであります。
日本政府として、どんなことを
アメリカに話したのですか。
アメリカ側は、国交のない朝鮮
民主主義人民共和国との間に、ルーマニア
大統領、チトー・ユーゴスラビア
大統領を通じて、事態の
解決にそれなりに
努力をしております。向こうから話すべき内容があったのではないかということを推察しますが、どこまで
話し合いが進んでおるのか、その内容を承知されたならば、明らかにしていただきたいと思います。
また、
福田総理は、記者会見の際、
カーター大統領がこの問題を韓国抜きで話し合うことは一切しないと答えたと得んと話していましたが、
カーター大統領の
発言や行動が、
アメリカの利害を考慮する上とはいえ、一応民族自決の原則の上に立った
考え方であるのに対し、
福田総理の
発言は、韓国の朴政権の
利益を代弁しているとの印象がどうしてもぬぐえないのであります。
カーター大統領は金大中氏の釈放のため
努力し、また、
議会は韓国政権の意向に逆らってまで米韓の腐敗的癒着を是正しようとしていますが、
日本政府は、主権を侵害された金大中事件の原状回復を放棄し、竹島の占拠を容認し、日韓黒い霧の疑惑をそのまま放置するなど、韓国の朴政権を絶対視する
考え方をとっております。これでは、反共を理由に国内弾圧をしておる政権を説得できないし、また、朝鮮
民主主義人民共和国との間に友好
関係を築く何らの手がかりも見出せないと思います。これを
機会に、朝鮮半島において一つの民族が
二つに分かれておる事態を
解決し、自主的に、平和裏に統一されるよう
努力するため、特定の政権に固執することなく、
両国に対して等距離外交の
姿勢に転換すべきだと考えますが、
福田総理の
考え方を伺いたいと思います。
また、本日、わが党の飛鳥田委員長以下たくさんの方々が訪朝いたしました。率直な
話し合いをすることになっていますが、帰国後、委員長の
報告を率直に聞かれまして、今後の朝鮮問題に真剣に対応する
決意があるか、お伺いしたいと思います。
次に、
日米間にある貿易及び
国際収支の不均衡に
関連してお尋ねをいたします。
御承知のとおり、昨年初め、景気回復の足取りの遅いことに着目をいたしまして、わが党を初め各野党は、内需を
拡大するため二兆円の減税政策を主張したのでありますが、
福田総理は、勤倹貯蓄、輸出
拡大の政策に狂奔いたしました。
アメリカ側は、従前からある
日米間の貿易や
国際収支の不均衡について大きな懸念を抱いており、昨年の
共同声明におきましても、「相互に受け入れうる公正な
解決がえられるよう、
両国政瞬間で今後とも緊密な協議と
協力を行う」としたのは、その不安を一応は抑えて、将来の
発言の足がかりを確保することにしたものと言えましょう。ところが、
福田総理は一向に政策
態度を改めませんでした。このことは、国内景気の回復をおくらしたばかりでなく、
アメリカの強力な反発を呼び起こし、矢継ぎ早な
ドルの対円相場引き下げ、対米輸出に対する規制、農産物の輸入制限撤廃などを呼び起こしたのであります。外圧があるまで政策を転換せず、外圧があると恥も外聞もなく、くるりと転換するというのが自民党のこれまでの伝統的な政策の特徴ですが、それを如実に示したものと言えます。今回の
訪米において
米国から具体的な要求はなかったとされていますが、それだけに、お約束なさいました七%の成長及び
黒字幅縮小の重みは大きいものと考えなければなりません。
そこで、
関連する事項を幾つか具体的にお聞きいたします。
昨
年度の
経済成長率の
見通しは五・三%と推測されています。この成長を支えた要因は、前半においては自動車を
中心とする輸出増であり、後半においては、息切れぎみであった公共投資を十五カ月
予算等により補強したのが
影響したものだと思います。
ところで、最近、五十三
年度の七%成長を支える要因が一つ一つ崩れていることを心配いたしております。それは、最近、特に春闘の低額妥結、失業者の増大、預金金利の引き下げ等であります。個人消費支出の伸び一一・九%の
実現は不可能と言うべきではないのでしょうか。公共事業費の伸び率は大きいとはいえ、一般会計
予算の増加額は一兆一千六百億円、補正後の数字と比較をしますと、四千六百五十億円にすぎないのであります。乗数効果があるとはいえ、基礎産業部門の稼働率が極端に低い現在、成長率への
影響は多くは望めないと思います。七彩成長の起爆剤たり得るものがほかに本当にあるのでしょうか。この点は特に率直にお答えを願いたいと思います。
次に、
黒字の縮小について伺います。
八十億
ドルの
黒字幅縮小の
見通しを示したようでありますが、仮に七彩の
経済成長が
実現するといたしましても、基礎産業の伸びはなく、知識集約的産業の伸びによるものと考えられますが、その場合、輸入増は微々たるものにすぎないはずであります。したがって、八十億
ドルの
黒字幅縮小の
実現を図ろうとすれば、勢い輸出減に頼らざるを得ません。仮に八十億
ドルのうち六十億
ドルを輸出減によるものとすれば、その国内
経済に対する
影響は、直接的なものだけで一兆三千億円ないし一兆四千億円と見込まれています。この全額は今
年度予算の公共事業費の増加額を上回るものであり、それだけで今
年度予算における景気
対策は吹っ飛んでしまうではございませんか。こうした国内需要への悪
影響を減ずるためには、
補正予算の早期提出が必要であり、また、その内容としては景気回復に即効性のある減税を
中心とすべきであると考えますが、
政府として、
補正予算の提出時期等につきまして明確な御
答弁をいただきたいと思います。
経済問題の最後に、関税貿易一般協定の
東京ラウンドの七月決定の問題について、
アメリカ側は、
首脳会議前にこの問題について決着をつけたいという
態度であると伝えられていますが、これに対してどのように対処されるのか、
政府の具体策についてお伺いをいたしたいと思います。
最後に、
カーター大統領夫妻の訪日要請についてお尋ねをいたします。
アメリカの
大統領の来日は、
両国の親善
関係を強めるためであれば
国民はこぞって歓迎するでありましょう。しかし、過去にそうであったように、軍事的あるいは政治的なねらいを込めて招待とかあるいは来日されるということでありますと、問題は別にならざるを得ません。招待の
目的は一体何なのでしょうか。また、一つの問題は、招待の主人公はどなたかということでございます。
アメリカの国務省周辺は年内の訪日はないと申しております。
国民の支持を大きく失った
総理大臣が、その時点で主人公を務められることになるとお考えなのでしょうか。
また他方では、
総理の帰国を契機に、にわかに九月解散説が流布されておるようでございます。この際、解散問題について
総理の真意を明らかにしていただきたいと思うのでございます。
以上諸点につきまして明確な御
答弁を求めまして、私の
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣福田赳夫君
登壇、
拍手〕