○赤桐操君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。
本法案は、特定空港における航空機騒音
対策として、空港周辺地区の
土地利用に厳しい規制を定め、本法案の成立をまって成田空港周辺地区にこれを適用しようとするものであります。
まず、国際空港には、その安全上、完全なる機能と高度の
整合性が強く求められるところであり、空港の機能を制するものは、滑走路、航空保安施設、燃料輸送、騒音
対策、運航時間、そして空域、気象条件等であると存じます。
成田空港についていまこれらの諸条件を見ると、滑走路を初め、いずれの場合においても開港後に多くの問題を残し、きわめて不完全な
状態にあるのであります。とりわけ騒音問題は、空港用地内において吸収解決は不可能であり、騒音被害を広く周辺に及ぼそうとしております。そこで本法案は、これら周辺地区の住宅の
土地利用に、罰則を含む厳しい規制を設けようとするものであります。
本法案による規制区域については、当面の対象面積は二千六百ヘクタールを超え、対象戸数は二千戸に及ぶものであります。やがて将来、この空港が当初
計画どおりの機能を全面的に発揮する活動段階に入る場合は、その対象面積は
拡大され、対象戸数、対象人口は一層倍増し、被害者はさらに増大するものと思われます。
しかして、本法案においては、これらの被害者に対する加害者側の
責任が不明確であり、住民福祉、
国民の
基本的権利をじゅうりんするものと言わなければなりません。
空港の建設は、それ自体の公益上の必要性に関して仮に疑義がないといたしましても、そのことが直ちに環境破壊を容認する論拠とはならないのであり、環境破壊を起こさない限りにおいて空港の公共性が認められるのであります。このことは、大阪国際空港の騒音公害訴訟における控訴審判決によっても明らかであるし、ニューヨーク・ケネディ空港の拡張
計画の中止、ロンドン第三空港の中止にも明らかなよう尺
世界的な世論であります。すなわち、空港の公共性は、それだけを切り離すのではなく、騒音
対策、公害
対策等々と一体としての要件が整えられていなければならないと思うのであります。
本空港と相前後して空港建設が始められたダラス・フォートワース空港を初めといたしまして、
世界の大規模な空港は、騒音被害の起こる可能性のある地域は空港敷地として取り入れることとしているのが最近の
世界的傾向であります。本法案の適用が想定される成田空港の場合には、当初
計画でも千七十ヘクタール、この用地が確保できたといたしましても、騒音被害は空港の周辺に広く及び、騒音面から見ても、そもそもの初めから空港として欠陥を持つものであり、空港自体の公共性が疑われるものであるということであります。空港自体の公共性に疑義があるとすれば、その周辺地域の
土地利用規制にどうして公共性を認めることができましょうか。
本法案は、まさに内陸空港の欠陥を露呈したものであり、特に
世界的にも数少ない六千三百万坪に上る臨海・内陸工業地帯に二千社を超える
企業が集中し、かつ、首都圏における人口集中地域としての千葉県の内陸部に国際空港を設置するという矛盾した空港
計画の欠陥をびほうしようとするものであり、とうていその公共性を認めることはできません。
また、この法案が都市
計画の手続を準用することには重大な疑義があるのであります。都市
計画法による
土地利用規制は、市民生活の相互
依存関係を基礎として、市民が相互の権利を調整しつつ、総体として最適な
土地利用形態の実現を図るものであります。この場合の
土地利用規制は、健康で文化的な市民生活を保障するものでなければならず、
国民の財産権を傷つけるものであってはならないと思うのであります。
土地利用規制によって利益を受けるのは住民
自身であり、それゆえに、都市
計画法による
土地規制には、一般に損失補償を要しないとされております。しかるに、本法案による
土地利用規制は、市民相互の権利調整によって行われるものではなく、もともと欠陥空港のびほう策として強権的に押しつけられたものであって、この規制によって利益を受ける市民は存在しないのであります。そのような規制を都市
計画法の名のもとに行おうとするのは、都市
計画法の理念を著しく逸脱したものと言わなければなりません。
また、本法案の想定する補償が憲法に言う正当な補償に相当するか否かについても、大きな疑義を持つものであります。正当な補償とは、
国民の生活権を補償するものでなければならないはずであります。だとすれば、騒音障害防止
特別地区内の居住者に対する補償は、完全なる生活の再建でなければなりません。公共用地の取得に関する
特別措置法を初めとして、
土地の提供者に対する生活再建を規定した
法律は少なくないのでありますが、本法案がそのような条項を欠いていることは、本法案のねらいが住民の追い出しにあって、
国民の権利の擁護にないことを端的に示しているものと言わなければならないのであります。
以上を要するに、本法案は憲法に保障されている財産権を制限するための要件たる公共性と補償の正当性のいずれにおいても重大な疑義を含むものであり、その意味で憲法違反の疑いを持つものと言わなければなりません。
最後に、この十二年間にわたって
政府が一貫してとり続けてきた、成田地域を
中心とする地元農民、地権者、周辺住民に対する政治
姿勢については、断じて納得できるものではありません。これらの人々が納得する十分な諸
対策を終わらずして成田空港の開港はあり得ないことを重ねて強調いたし、反対討論を終わるものであります。(
拍手)