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1978-06-01 第84回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月一日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  五月十一日     辞任         補欠選任      上田  稔君     岩動 道行君  五月十二日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     上田  稔君      寺田 熊雄君    茜ケ久保重光君  五月十五日     辞任         補欠選任     茜ケ久保重光君     寺田 熊雄君  六月一日     辞任          補欠選任      初村滝一郎君     堀江 正夫君      熊谷太三郎君     竹内  潔君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中尾 辰義君     理 事                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 寺田 熊雄君                 宮崎 正義君     委 員                 上田  稔君                 上條 勝久君                 竹内  潔君                 藤川 一秋君                 堀江 正夫君                 丸茂 重貞君                 小谷  守君                 橋本  敦君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君    政府委員        法務大臣官房長  前田  宏君        法務大臣官房司        法法制調査部長  枇杷田泰助君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        警察庁刑事局国        際刑事課長    水町  治君        外務大臣官房領        事移住部領事第        一課長      池田 右二君        外務省アメリカ        局北米第一課長  渡辺 幸治君        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君        外務省国際連合        局科学課長    太田  博君        運輸省航空局飛        行場部管理課長  増田 信雄君        郵政省電波監理        局無線通信部航        空海上課長    吉川 久三君        郵政省電波監理        局無線通信部陸        上課長      徳田 修造君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事寺田熊雄君を指名いたします。     —————————————
  4. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 今国会におきましては法務省は大変元気をお出しなりまして、刑事関係それから民事関係、まあ法案がぎっしり詰まっておるわけであります。とりわけ民事執行法案など大変な条文を整備なさって、恐らくこれを検討するだけでも二、三カ月が必要ではないだろうかとさえも思われるわけであります。ところが御承知刑事事件公判開廷特例法あるいは岡原発言などいろいろのものがございます。  それから、これはまあ法務省の御提案というわけではありませんけれども、やはり法務省法律顧問的な役割りをある程度担当なさった成田新立法、そういうものもありまして大変法務省提案法案がストップしておる。ことにとりわけ公判開廷特例法関係で、衆議院ではたしか仮登記担保法などさえもまだ上がっていないというような状態もあるようであります。何か少し刑事関係の問題に重点が傾いているようにも感じられるわけであります。それから、まあ法務省と申しますか、刑法、刑事訴訟法など、そうした法律には治安維持と同時に、被疑者被告人を含めて国民の権利、基本的人権を守るというマグナカルタ的な役割りというものがあることはよく御存じのことと思うのでありますが、そのために法務省には特に人権擁護局というような、そういう他の官庁に見られないような局部もあるわけであります。  そういうことを考えますと、余り法務省の御提案というものが治安維持だけに偏って、国民基本的人権擁護、つまり所管の法律のマグナカルタ的な役割りというものが軽視されるような傾向になっては困るということも私ども考えざるを得ないわけです。この辺のところ法務大臣としてどのようにお考えなのか、これが第一点お伺いいたしたいと同時に、刑事事件開廷特例法、これはいまの衆議院審議状態では、とうていこの国会で、衆議院さえも通過する見込みというものはまずないということが大体言われますね。法務大臣としてはかなりこの法案に重きを置いていらっしゃるようにもお見受けするわけであります。  そういういま国会審議状況をにらんで、どういうふうにこれを御希望になっていらっしゃるのか。もちろん審議それ自体は国会の専権に属することであっても、ただ党の——自民党政府とはやはり一体でありますので、自民党としてはどういうふうに対処するかということは法務大臣としても当然御存じのはずであろうと思いますが、ちょっとその点どうなのか、その二点についてまずお伺いいたしたいと思います。
  6. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 寺田委員仰せのとおり、法務省関係といたしましては、刑事民事、相当多数の法案の御審議をいただいている、お願いしておるわけでございます。これは申し上げるまでもなく、行政府は御承知のとおり憲法法律の施行を担当させられておるわけでございますから、その運営の間においてその都度改正国民のためにする必要があるかどうか、事態に対応するのにはどうするべきかということを検討して国会の御審議をお願いする、こういう責任があると私どもは思っております。そういう関係で、相当今国会では多くの法案の御審議をいただいておる、こういう事情でございますが、いまお話しのように、何か刑事というか治安の面だけを重視するような傾向がありはしないか。まあ、御批判はあるかもしれませんけれども法務省また法務大臣としてはさような考えは全然持っておらないということを御理解願いたいのであります。申し上げるまでもなく、わが国憲法法律のもとではいわゆる国民主権政治を進めておるわけでございますから、その基本をなすものは国民人権と自由、こういうことが基本であるわけでございます。これをないがしろにするような考え方あるいは立法をすべきでないことは当然に承知をいたしておるつもりでございます。国会でいろいろ御審議を願っておるのがまだありますけれども、私どもとしてはできるならば、これはやはり必要を認めて提案しておるわけでございますから、国会の方で御審議願って速やかにその結論を出していただきたい、こういう強い希望を持っております。持っておりますが、実際問題として国会には会期もあろうことでございますし、なかなかわれわれの希望どおりにいかないこともやむを得ない事態である、かような考えも持っております。ただ、いまお話の中で、いわゆる刑事裁判特例法、これはしばしば申し上げておりますように、わが国の現下の情勢の中で多くの過激行動が行われておる、これまさに法秩序破壊といいますか、法律を無視する行動がいろいろ行われていることは御承知のとおりであります。それが裁判の中にも持ち込まれておる。御提案申し上げておりますように、裁判そのものを否定するような被告人弁護人の行為がある。これはやはり法を運営する立場にある行政府といたしましては、憲法刑事訴訟法の指向するように公正迅速な裁判が行われるような手段方法を講ずる必要がある。法律の内外を問わず、暴力によって事が支配されるということは断じて認めるわけにいかない。それに対する対策を講ずることは緊急の課題である、こういう観点から提案しておりますので、できれば今国会で御審議、御決定いただきたい、これを強く希望いたしております。しかしながら、実際の現状を見ますると、もう会期もそうたくさんありませんし、現在衆議院法務委員会で御審議をいただいておりますが、率直に申し上げて今国会で全部を終結することは不可能ではないかという、私の想像でございますが、さような考えを持っております。国会国会のもちろん独自の御判断で御審議をいただくわけでございますから、その間において全体の状況を見て他の民事法必要性を認めて出しておるわけでございますから、緩急よろしきを得て御処理をいただくものと、かように私ども考えておるわけでございます。
  7. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの法務大臣刑事事件開廷特例法、これに関する根本的な御認識と私ども認識とは、相去ること非常に遠いものがあるわけでありまして、ことに憲法との関連、それから裁判のあり方、国民基本的な人権とのかかわり合い、そういう総合的な見地から、私どもは許すべからざる法案であると考えておるわけでありますが、これは将来の問題でありますから、いまこれについて論議するのは適切でないかもしれない。そこで、それはそれとして、この問題に関連をいたしまして何か最近新聞紙上に、この法案のさらにまた上増し的なことも考えておられると。上増し的な問題というのは弁護士会弁護士に対する懲戒権といいますか、自治的な懲戒権限というものを奪ってこれを第三者機関に移すように弁護士法改正すると、そういう意図もあるのだというようなことが新聞紙上に出ておるわけであります。これは政府の方でそういう意図を固めたという趣旨であるのか、あるいは自由民主党与党議員の中にそういうお考えをお持ちの方があると言っておられるのか、その辺のことは私どもまだはっきりいたしておらないわけでありますけれども、いずれにいたしましてもそういう一連の国民基本的人権を次第に狭めていこうと、そして何か社会全体が右寄りにだんだんと走っていると、戦前の何か弁護士会に対する国の監督権限といいますか、そういうものを強化していく方向に次第に近づいていくのではないかというようなことを恐れるわけでありますが、これは法務大臣法務省のお考えとしてこれが新聞紙上に漏れたと承っていいのでしょうか、それともまだ法務省としてはそういう考えを持っておらないと承っていいのか、単純なる与党議員の中の一部のお考だえということなのか、その辺のところを明らかにしていただきたいと思います。
  8. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 弁護士法の問題、特に自治権の問題といいますか、それを法務省自身がいまこれを改めなければならないと、そういう方針を打ち出して検討しておるわけではございません。ただ、自由民主党の中では、この問題を取り上げてどうあるべきかということを検討する必要がある、こういうことを決められておると承っております。ただ、私どもとしてはやはり関係省でございますから、そういう御意見、あるいは自由民主党ばかりでなくて他の党でもこの問題について疑問を持っておられる、御意見もありますから、私どもとしてもこれを検討をしてみる必要があろう、こういう態度でございます。  と申し上げますのは、自治権の問題だけでなしに、少し長くなって恐縮でありますが、弁護士法は戦後諸制度の改革をされる場合に裁判所法あるいは検察庁法弁護士法、この改正昭和二十一年に着手されまして、御承知のとおりに検察庁法裁判所法昭和二十二年に速やかに成立をいたしておるわけでございます。弁護士法改正については法務省にも弁護士法改正何とか委員会というものを設置いたしまして検討を進めた歴史がございますが、なかなかその内容についていろいろ意見があってまとまらないうちに、いま申し上げましたように裁判所法検察庁法はもう昭和二十二年に国会成立をいたしました。現行法でございます。そういうことから議員立法にしようということで早々の間に昭和二十四年に非常な短期間に成立した経緯がございます。これもいわゆる総司令部、GHQとの間でいろいろ意見の相違、激論があったようでありますけれども、いずれにしても早々の間に成立した経緯があります。  それはそれとして、現在、憲法政治のもとでこれを見てみますると、これまだ結論ではありませんけれども感じとしては自治権のみならずもう少し再検討してみる必要があるところがあるのじゃないか、こういう感じを持っております。率直に申し上げます。といいますのは、これは釈迦に説法でございますけれども、私ども考えとしては——どもといいますか私の考えとしては、御承知のとおり憲法主権国民にあるとされて、そのもの立法司法行政、その組織のもとで国政の運営をする。すべてこれを国民監督といいますか、監視のもとにやるという仕組みになっておるわけでございます。御承知のとおり国会は、選挙という監督のもとに国会議員が選ばれていわゆる立法権を行使しておる。行政は、国会監視のもとで行政法律に従って行われておる。それからもう一つは、司法も、これは最高裁判所の判事は御承知のとおり国民審査に任されておる。その他の裁判官内閣の任命でございますが、内閣国民監督のもとにそれを任命しておる。それからもう一つ、特に独立を認められております裁判については、裁判所検察官弁護士、これが三本の柱として絶対の要件になっております。特にいま問題になっております刑訴法二百八十九条、それから憲法三十七条の関連において刑事裁判においてはこの三者が絶対の要件になっておる。これは大きな国民のための一つ制度であります。制度という言葉は適当でないかもしれませんけれども裁判制度ということでやっておる。その三本の柱の裁判官については先ほどの国民監視手段、それからもう一つは御承知のとおり憲法に定められた裁判官弾劾裁判所制度があって、これはやっぱり国民チェック機能といいますか、監視組織をつくられておる。検察官についても同様でございまして、検察審査会法に基づいてこれもやはり第三者機関監視を受けることになっておる。弁護士については御承知のとおり完全無欠といっていいぐらいの自立の道を与えられている。こういう重要な柱である国家の重要な裁判関係する弁護士については弁護士法によって完全な自立といいますか、独立といいますか、制度になっておりますが、憲法政治のもとでそういうことが一体国民監視から全然離れてやれるものかどうか、弁護士会また弁護士連合会には御承知のとおり登録なり懲戒のいわゆる行政事務も入っておる。これが全然国民主権のもとで国民監視というものがないところで行っていいのかどうか、こういう疑問も持っておるわけでございます。そういうものもあわせて、この際問題にされておりますから、われわれとしても検討してみる必要がある。こういう考えを持っておることを申し上げておきます。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 何か弁護士本質に関して多少法務大臣のお考えの中には誤解があるのじゃないかというふうな感じがいたします。御承知のように弁護士は何らの国家的な権限を背中に背負っておるものではないわけであります。ですから同じく司法の分野を担当するといいましても、それはその職能を通じて参加することはありましても、裁判官検察官のような強大な国家権限というものを握ってそれを行使するというお立場の方、つまり大宮人ではないわけであります。われわれは非常にずっと下の方にいる大衆にすぎないわけで、裸一貫でただ誠心誠意基本的人権を守るにはいかにあるべきかということで徒手空拳で仕事をいたしておる。ところが、裁判官検察官というのは強大な国家権限を行使せられる、そのゆえにいろいろな権力の乱用をいかにして防ぐかということのチェック機能というものがさまざまな法律にあるわけですね。そこのところを混同して徒手空拳で一平民にすぎない弁護士に対して、何かこうさらに国家権力でもってこれを制肘しようというようなことは、何か事態本質を全く見失っていらっしゃるような感じもいたすわけであります。  いま一つは、懲戒の場合には私ども裁判官検察官のようなお方もある程度これに御参加を願うというようなこともいたしておるわけであります。もう一つはやはり直接の動機は裁判所長東京地裁の所長がこの弁護士会に具体的な弁護士懲戒をお申し出になったのがはかばかしくいかない、けしからぬというようなことがその背景になっておるようでありますけれども、それなども何がゆえに裁判所長のおっしゃるような懲戒が実現しなかったのか、その問題に関して胸襟を開いて弁護士会裁判所あるいは法務省とがお話し合いになったということはないようであります。そこに相互誤解がある、そしてまた、けしからぬけしからぬと言って怒っていらっしゃる、そういうようなことを私どもが聞いておるわけであります。  したがいまして、法務大臣にぜひお願いいたしたいのは、やはりそういう懲戒の実態についてよく事実を御調査くださること、それからまた、弁護士会との間によくお話し合いをしていただくということ、それを希望せざるを得ないわけであります。これはまあ秘密でも何でもないので、刑事局長にもおいでをいただいてよくお気持ちも伺っておるのでありますけれども、私どもとしては、要は弁護士会懲戒自治機能が適正に働いておればもう言うことはないのではないかと思います。したがって、それが適正に動いておるのかどうか、また適正に動かすにはどうかというそこのところをどうぞお考えをいただきたい。そこを飛び越しちゃって、これはもう改正しなきゃいかぬと短兵急に御結論になるようなことがないように、その点を希望しておきたいのでございますが、そういうお話し合いをひとつ法務大臣、御調査をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  10. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いま申し上げましたことは、そういうことが自民党ばかりでなくてほかにも議論されておる、また政党ばかりでなくて社会の中で学者等においてもそういう議論をされている、意見が出ておる、こういう状態でありますから、われわれもいかにあるべきか、どうすべきかということを検討してみようということで、どういう結論を出さなきゃいかぬという状態ではいまないのでございますから、それは誤解のないようにお願いをいたしておきます。  それから弁護士、これは私も弁護士をやったことありませんから詳細は知りませんが、いわゆる自由業としておっしゃるような立場弁護士というものはあると思います。思いますが、やはり国民憲法その他の法律制度で決まっておる制度に参加されてやる場合に、完全ないまの日本弁護士会のような事実ということ、まあ学者の話を聞きますと、世界にそういう例はないそうでございますから、やはりそれも検討してみる必要があろうと、こういうだけのことでございます。それから、おっしゃられるようにこの法曹三者は十分に意見を交換してあるべき姿をお互いに見出すと、これは当然のことでございますから、そういうことは積極的にやりたい、こういう考えを持っておることを申し上げておきます。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なお次に、逃亡犯罪人引渡法の適用に関してお尋ねをいたしますが、現在わが国外国に対して特定犯罪人引き渡し請求している事態、そういう事例がございますでしょうか。
  12. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現在ございません。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 御承知のように、従来ございましたハイジャックですね。ハイジャック関連をいたしまして、警察の方が国際警察機構の方にいろいろな依頼をいたしておることを新聞紙上で拝見するのでありますが、これとの関連ですね。これをちょっと刑事局長御説明いただいて、そして少しその国際刑事警察機構を通じての手配の種類とかいろいろあると思うのですが、そうした点を御説明いただきたいと思います。
  14. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) すでに御承知のこともあるかと思いますが、国際刑事警察機構、俗にICPOと言っておりますが、これは各国警察加盟単位となっております機関でございまして、相互犯罪に関する情報交換等をやっておるわけでございます。  現在百カ国程度が加盟しておると思いますが、その加盟国から、たとえば特定犯罪人についての所在調査情報提供依頼等ICPO本部にありますと、ICPO本部から各加盟国にこれらの情報を流しまして、その加盟国当該犯罪人を発見いたしました場合は速やかに通報すると、あるいはさらに一歩を進めまして、特定の国が特定犯罪人を見つけたら仮につかまえてくれという依頼をいたしますと、これをまた加盟各国に流して、その犯罪人を発見した国におきましてはこれを仮に逮捕すると、そして事後の措置を待つというような仕組みになっております。俗に特定犯罪人についての情報提供を求める手配青色手配と言っておりまして、それから、見つけ次第とにかくつかまえてくれという手配赤色手配と、こう言っております。これは手配書に青マーク赤マークがついておるからこういうことを言うようでございます。  そこで、そういうICPOルートの事柄と逃亡犯罪人引き渡し関係になるわけでございますが、先ほど申しましたように、ICPO機構各国警察が加盟しておるわけでございまして、外交ルートを通してのいわゆる国と国との関係機関ではございません。したがいまして、たとえばわが国から逃亡しております犯罪人がある国でICPO機構を通じて発見されたということになりますと、直ちにわが方としては今後は逃亡犯罪人引き渡しの手続をとるということになるわけでございます。すなわち、簡単に言いますと、現在のところ国際鋼車警察機構わが国にとっては、わが国が捜し求めている犯罪人所在捜査をやってくれるシステムであると、所在が判明すると次に外交ルートを経由いたしまして逃亡犯罪人引き渡し請求をすると、こういう仕組みになると思うわけでございます。ただ、ICPOの、先ほど赤手配青手配ということを申し上げましたけれどもわが国では他の国からICPOを通じて手配があったというそれだけの理由でわが国にいる犯罪人を逮捕することは憲法上許されませんので、したがって、よその国とわが国との関係は常に相互主義の原則に立ちますかち、わが国としても諸外国に対して赤色手配をお願いできないという状況でございます。したがいまして、先ほどちょっと御指摘になりましたハイジャッカー等につきまして、現在警察におきましてはICPOを通じて各国青色手配をしておると、こういうことでございます。  そこで、今回の逃亡犯罪人引渡法改正におきまして仮拘禁制度を、従来は引き渡し条約の存する国との間にしか認めておりませんでしたのを、条約のない国からの仮拘禁請求につきましても、相互主義保障があればこれに応ずることができるように改正しようとしておるわけでございます。もし、これができますと、外国からわが国相互主義保障をして仮拘禁請求があればこれを受けることができることになります。したがいまして、逆にわが国から外国に対して相互主義保障をしつつ仮拘禁請求ができることになるわけでございます。したがいまして、先ほどのICPOを通じての青色手配というものにこの仮拘禁請求というものを併用することによりまして、従来よりも国際協力といいますか、わが国にとっても逃亡犯罪人の発見、身柄確保に一歩の前進がもたらされるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 よくわかりましたが、そうしますと、こういうことになりますか。ハイジャッカー、まあ相当複数の人物がおって国際手配ICPOにしておる、しかし、これを外交ルートに乗せて仮拘禁の手続を請求する段階に至っていないということは、まだ具体的にはこちらが手配をしておるハイジャッカーのうち何人もその所在がわからない、ICPOからの通知は一つもないという状態であるということになりますね。いかがでしょうか。
  16. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいま仰せになりましたように、現在たしか十一人ハイジャッカーその他を青色手配していると思いますが、今日までまだその所在が発見されたという通知がございません。将来の問題といたしまして、仮に所在がはっきりわからなくても、特定の国に潜入する可能性がきわめて高いというような確度の高い情報がありましたような場合には、その国に対しまして、もし入ってきたら仮拘禁をしてくれというような請求をすることも考えられるのじゃないかと思いますけれども、そういうような確度の高い精報というものも現在ございませんので、ICPO加盟各国の協力に期待しながら待っておると、こういう状態でございます。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 反対に、現在外国から犯罪人引き渡しを求められていると、そういう事例もございませんか。
  18. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現在ございません。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 アメリカ合衆国が第一次裁判権を持っている事件の処理、その結果について先般当院の予算委員会で質疑がございましたけれども、これはその後米国なり米軍の方からその処理結果について通報があったのでしょうか。もしあれば、おわかりになっている程度その結果を御報告願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  20. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいまお尋ねの件は、米軍構成員が公務執行中に犯罪を犯した場合に第一次裁判権が地位協定によりまして米軍にあるわけでございます。そういうものにつきましては、米軍が裁判権を行使した結果についてわが方に一カ月ごとに報告をしてもらうことに合意ができておるわけでございます。ところが、従来いわゆる軍法会議におきます刑事裁判についてはその結果の通報があったわけでございますけれども、そうではなくて、統一軍法には書いてございますけれども懲戒処分、これによって処置されたものについては米側からのわが国への通報が励行されておらなかったわけでございます。そのことを当院の予算委員会で御指摘を受けまして、私も大変申しわけないことであったということでおわびを申し上げた次第でございます。  そこで過去の懲戒処分の状況について米側に調査依頼いたしましたところ、懲戒処分の記録と申しますのが、部隊とともに本人がその部隊を変わりますごとに、本人の身柄について部隊を転々としておりますために過去の者については調査が不能であると、こういうことでございました。はなはだ遺憾なことでございましたけれども、事情をよく聞いてみますとやむを得ないということでございましたので、昨年末十二月に、わが方の刑事裁判管轄権分科委員長であります刑事局総務課長が米側の分科委員長と会談をいたしまして、懲戒処分の結果についても必ず通報をしてもらいたいということを申し入れました結果、その通報の事務的なやり方がきちんと詰まりまして、本年二月三日だったと思いますが、私から全国の検察庁に対しまして米側と取り決めました通報のやり方を示して、これによって報告を受けるように通報の励行について十分遺憾なきを期してもらいたいという通達を発したところでございます。ところでその後、ただいま申し上げます通達を発しました本年二月以降三月末日までの分につきまして結果報告がまとまっておりますが、それによりますと、その簡に米軍が公務中の犯罪ということで第一次裁判権を行使した事件数は四件でございまして、このうち、軍事裁判にかけた件数はゼロ、いわゆる正規の懲戒処分を行った件数もゼロ。ただし、行政処分を行りたものが二件と、こうなっております。ただいま申し上げました四件と申しますのは、自動車運転によります業務上過失傷害、約七日間の傷害を負わせた事件が一つと、それから道路交通法違反事件、これが三件でございまして、行政処分の内容は、ただいま申し上げた業務上過失傷害事件については、後で御説明しますが減点五、もう一件の道路交通法違反について減点三及び運転の再訓練という行政処分が科せられたそうでございます。この減点と申しますのは、わが国におきます運転免許制度の減点と同じようなものと考えていいようでございまして、そういう行政処分が行われたということの通報に接しております。したがいまして、先ほど申し上げました私の通達が出まして以後は、すべての事件について米軍当局からそれぞれの事件を扱いました検察庁に対して通報が来ると、こういうシステムになっておる次第でございます。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑事裁判の結果はこれはもう通報が従来励行されておったのでしょうか。それで刑事局の方では全部そういう資料の整理というのはできておるのでしょうか。
  22. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 軍事裁判にかけたものについては一カ月ごとにその件数が通報されております。ただし、ほとんど、軍事裁判に付した件数という欄にノンと書いてございます。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ちょっとよくわからないのですが、フランス語のノンですか。それでどういう意味なんですか、それは。
  24. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 要するに、軍事裁判にかけた件数はゼロであるという通報が毎月来ておると、こういう趣旨でございます。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはどうなんでしょうか、私ども新聞紙上で拝見するだけで余り実際を深く立ち入って調査したわけではないけれども、間々米軍のさまざまな不法行為というものが報道されることを読んだ記憶があるのだけれどもわが国刑事裁判の常識から言えば当然犯罪ではないかと思われるものがあるのにもかかわらず、米軍の方ではそれを刑事裁判、軍事裁判にかけないということなんでしょうか。その点、よくおわかりでしたらはっきりひとつ……。
  26. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) いわゆる刑法犯、普通の意味の刑法犯に当たるようなものはほとんど公務外で犯されておりまして、公務中の犯罪というのは、もうほとんどといいますか、全部に近い程度が大体交通事故あるいはスピード違反とか、こういうようなものでございます。これらにつきましては、米側では、最近だんだんわかってまいりますと、やはり懲戒処分とかあるいは行政処分で済ませておると、こういうことが多いようでございます。先ほど申し上げましたように、そういう関係で軍事裁判に付せられた件数がゼロのときが非常に多いわけでございますが、もちろんときには米側でも公務中の重大な犯罪というようなことにつきまして軍事裁判にかけているものもあると思いますけれども、米軍の内部で起きましたものにつきましては私ども余り関知しておらないわけでして、米軍基地の外でわが国民が被害者になったそういう事故、あるいはお巡りさんがスピード違反でとめてみたと、そうしたら公務中であったと、こういうような場合がほとんどであるわけでございまして、そういう関係で統計上軍事裁判に付せられた件数は非常に少ないのじゃないかというふうに思います。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、政治亡命についてお尋ねをしたいわけでありますが、これはずいぶん歴史の古い問題で、戦前でも孫逸仙の亡命、それをば頭山満とか犬養毅とかいうような人がかばったとか、あるいは上海の租界先で魯迅を内山完造氏がかばったとかいろいろこれは歴史がありますし、戦後も台湾におる中国人が日本に来ると。それから韓国で朴政権に反対する立場の人が日本へ来て、帰されると殺されるから何とか日本におらせてくれというような問題がしばしば裁判事件になります。そういうときに私どもはやはり政治亡命者を保護するという日本に法律があればいいのになあと考えることが多いわけであります。そうかと思うと、この間の三木内閣時代のミグ25のベレンコ中尉のような者は案外違法な入国をした者でも政治亡命の願いが聞き届けられるというようなことも私どもは経験したわけであります。この政治亡命をどう扱うかという問題が一つありますけれども、それと別に、最近わが国政治亡命を求めてきた者が具体的にあったのかどうか、また現在あるのかどうか。純粋の政治亡命という場合もありましょうし、あるいは政治亡命に準じて考うべきものだと思われる場合もあるでありましょうけれども、その点を御説明いただきたいと思います。
  28. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) 最近、ただいま先生がおっしゃいましたように政治亡命とは何ぞやということがございます。それで厳格に申しますれば私の方としては難民条約に規定するような、該当するものじゃないといけないのじゃないかと考えておりますが、難民条約で申しますのは、国籍とか宗教とか政治信条とかのために本国に帰れば迫害を受ける十分な根拠のあるおそれがあるということで、非常に限定いたしております。それで、世上言われている政治亡命といいますのは、私ほとんど当たらないのじゃないかというふうに考えております。したがいまして、厳格な意味での御質問でございましたら最近はございません。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 局長のおっしゃることはよくわかるのですが、その厳格な意味では当たらないという問題解釈になりますが、本人が政治的に亡命したいと訴えてきた事例はあるのでしょうか。
  30. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) これもたとえばベレンコ中尉のような場合は、これは日本に亡命を求めてきたわけじゃなしに、アメリカに亡命を求めたということでございまして、したがって日本側の扱いとしましては不法入国者、不法入国に基づく強制退去と、その行き先は要するに本人の希望する、できるだけ希望を尊重してアメリカへ行きたいと言うからアメリカに強制退去させた、こういうことになりまして、日本政府との関係でこれは亡命とは言えないと、政治亡命とは言えないと、こう思うのです。こういうケースはございまして、いろいろ方々の国に出るために、まず日本に入ってきて、自分はどこへ行きたいということでまたそれぞれ希望する国に行っているというケースはございます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは先般ベトナムの難民がかなり数多く参りましたね。それ以外にもございますか。
  32. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) 私はこれでお答えできますのは、要するにいわゆる本人はそう称していると、亡命だと、自分の本国へ帰りたくないのだと言っていますけれども、われわれとしてはそれは亡命のカテゴリーには入らぬと考えていますけれども、実際上本人の申し立てをできるだけ尊重して、人道的見地から尊重して扱っていると、こういうケースが最近で、これは四十八年以降でございますが、十八件、人数にいたしまして二十一名ございます。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはどこの国籍を持っておるのが多いのでしょうか。
  34. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) ソ連、チェコ、東ドイツ、キューバ、台湾等でございます。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変細かいことを伺って恐縮ですが、いまのソ連、チェコ、東独、キューバ、台湾、それ人数おわかりですか。おわかりでしたらちょっと教えてください。
  36. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) ソ連が五名、チェコが三名、東ドイツ四名、キューバ四名、台湾が五名でございます。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはどういうふうに御処置をなすったのでしょうか。
  38. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) 大体パターンといたしましてはベレンコ中尉と同じような形になっております。
  39. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ベレンコの場合はアメリカへ彼の言う亡命を希望したわけですね。いま局長のおっしゃったソ連人、チェコ人、東独人、キューバ人、台湾人、いずれも行く先はアメリカ希望が多かったのでしょうか。
  40. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) アメリカが多いのですが、そのほかの国々もございます。
  41. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは局長、後で表にしてこちらにお届けいただけますか。
  42. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) そのとおりいたします。
  43. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから先般ベトナムから難民が非常に参りまして、その処遇をめぐりましてずいぶん論議がございました。今度福田総理がアメリカにいらっしゃるその直前に難民の保護について一歩配慮を進めるという措置をおとりになったようですね。その後も現在滞在許可が許されてわが国に滞留する難民というものもあるのではないかと思うのですけれども、その現在地とか処遇とか数とか、これを一応御説明願いたいと思います。
  44. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) 五月末現在で本邦に滞在しております、いわゆるベトナム難民は二百七十六名でございます。これらの人々はカリタスジャパンとか立正佼成会、天理教、救世軍等の宗教団体及び日本赤十字社の管理する施設に居住しております。もちろん、これらの人々は本邦到着の際に法務大臣の上陸特別許可を得て上陸をしているわけでございますが、ただいま先生おっしゃいました、政府としてはいろいろ各省とも諮りまして、就労、職業についてもいいということを決めましたし、また一定の範囲内で定住も認めますと、こういう方針も明らかに最近したわけでございますが、もちろんそれから本邦以外の国に定住したいという人は国連のあっせんでそれらの国に行くわけでございますが、それまでには時間を要しますので、そのあっせんができるまではわが国に置くことで、それまでに出ていけということは申さない方針でございます。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうしますと、二百七十六名のベトナム難民が現時点ですべて永住許可をとっているというわけじゃないわけですね。将来どこかへ行く、その準備期間中だという、そういうふうに見ていいわけですか。それで二百七十六名のうち日本に永住を希望しておる人々、それから現実に永住許可を得た人、これはどのぐらいおるのでしょうか。
  46. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) ただいまのところ、この間閣議了解をいたしまして、それに基づく諸手続を決めまして、関係方面に流したわけでございますが、まだその定住希望表明は一件も出てきておりません。ちょっとこれは時間がかかると思います。  それからちょっとこの際御説明させていただきたいと思いますのは、わが国としましては、あくまで国連の要請に基づいてお預かりしていると、こういうたてまえになっておりますので、そういう定住希望がございましたら今度は個々の——国連の難民高等弁務官事務所の駐在官が東京におりますので、その駐在官を通じて外務省、法務省と、こういう経路でわが方にその希望の伝達がなされる経路になっております。それがまだ一件もその希望表明が届いてないのでございますが、これからおいおい希望表明があることかと思っております。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうしますと、これは局長でもあるいは法務大臣の御方針でも結構ですが、いまのような国連の駐在官を通じて外務省を経て永住許可の希望がございましたら、それは日本としては永住許可を認めて、わが国において平和な社会生活を営むということについては援助を与えていくと、そういう方針と承っていいわけですね。
  48. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど入管局長から御説明申し上げましたように、ベトナム難民の措置についてはいろいろこれまで議論され問題になっていたわけでございますが、先般、閣議でその方針を決めまして、これは後で必要であれば入管局長から御説明いたしますが、一定の条件といいますのは、いまおっしゃったように安心して生活ができる状態にあるかどうかと、そういう各種の条件がありますけれども、それが備わって定住がしたいという者は定住させると、こういう方針でおるわけでございます。
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 政治犯の定義について、これは日米間に何かこうはっきりした概念、あるいは定義でもいいですが、これは了解事項でもあるのでしょうか。それとも常識的に判断するほかはないということなんでしょうか。
  50. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 先般、日米犯罪人引き渡し条約の改定交渉を行ってまいりました際に、政治犯の定義について日本と米国の間に特定の了解ないし話し合いはございませんでした。一般的に国際慣習法上政治犯罪というのは、抽象的に言えば特定国の政治的秩序を侵害する犯罪というように考えられております。条約上具体的なケースについて引き渡し請求があった場合に、その特定犯罪政治犯罪に該当するか否かということについては、最終的判断は被請求国にゆだねられるという考え方でございまして、この点は新条約の第四条第一項の後段に書いてございます。すなわち「この規定の適用につき疑義が生じたときは、被請求国の決定による。」ということになっております。
  51. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この法案の第四条、この規定で法務大臣が東京高裁に審査請求検察官になさしめる。これは犯罪人引き渡しをなすことを相当と認める場合に限りと解釈したらいいのでしょうか、いかがでしょうか。
  52. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) おおむねそのとおりでございますが、場合を分けて考える方が正確だと思います。それは、引き渡し請求条約に基づいて行われました場合には、条約上の要件が備わっております場合には審査請求に付さなければならないということは当然でございます。さて、そうではなくて、引き渡し請求条約に基づかないで条約の存在しない国から相互主義保障のもとになされたというような場合には、法務大臣がフリーハンドで必要に応じ外務大臣と相談をいたしまして相当であるかどうかを判断した上審査請求をなさしめると、こういうことになります。
  53. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうして今度は東京高裁が第十条の一項三号で引き渡しができる場合ということを決定をいたしますね。今度また十四条第一項後段を見ますと、その後に引き渡しを相当でないと認める場合もあるようでありますけれども、それは事情変更とか、あるいは再検討とか、そういうことによるものでしょうか。
  54. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 第十四条の中で東京高等裁判所の決定があった場合であってももう一回法務大臣が引き渡すことが相当であるかどうかを判断するような書き方になっております理由は二つございます。一つは、御指摘のように審査の手続の間に事情の変更がある場合が考えられると、そういうことが一つございます。  それから、もう一つはたてまえ論でございまして、この引き渡しというものは行政権の行使として行うものでございまして、最終的な権限法務大臣にある、こういうことを明らかにしておるわけでございます。東京高等裁判所引き渡し相当の犯罪人であるという判断をいたしましても、その判断の執行として引き渡すわけではなくて、法務大臣がその判断を前提としてその権限において、法務大臣権限において引き渡しを行うのであると、そういうものの考え方、たてまえを明らかにしておると、こういう二つの意味がございます。  ただ、現実の問題としては第四条に基づいてすでに法務大臣は判断しておりますから、多くの場合また考えが変わるということはないと思いますが、そういうたてまえ上の問題と、それから事情の変更のあった場合を考慮して規定しておるわけでございます。
  55. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この法務省からいただいた関係資料、この中に「引渡事例調」というのがありますね。その六ページの(ウ)というのを見ますと、「引渡しを受けるには多額の費用を要するため日本において中止したもの」という説明があるのでありますが、これはどんな場合でしょうか、もしおわかりでしたら御説明いただきたい。
  56. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 大変申しわけないのでございますが、この資料のただいま御指摘の部分の最初に書いてございますように、司法省は戦争で全焼いたしまして資料が全く残っておりませんので、大正十五年に長崎区裁判所検事が行いました司法研究の報告書、こういうようなものからの孫引きでございまして、ここに書きました以外は一切わからないのでございます。ただ察するに、戦前特に明治から大正にかけましては旧日米引き渡し条約にもございますように、「被告人ノ逮捕監禁訊問及ヒ送致ノ費用ハ其引渡ヲ請求シタル政府ニ於テ之ヲ支弁スヘシ」ということになっておりまして、これが国際的な慣習であったようでございます。したがいまして、引き渡しのための審査手続に要した費用、その他通訳とか何とかの費用を全部請求国が負担しなければならないということであったように思われます。したがいまして、そういうこととまた取りに行くための費用とか、そういうことと事件の軽重を勘案してあきらめたのではないかと、これは推察でございます。
  57. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 第二十三条第一項一号の令状ですね、これはいま政治犯に該当するか否かの判断は被請求国において行うという外務省の説明がありましたが、同じような趣旨でこの令状というのも日本の法律によって合法的なものとされるものと解釈すべきか、あるいは国によっては裁判官以外の者が令状を発し得る法令を持つ国もあるようでありますが、かの地の法令で可とすればいいのか、その辺ちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  58. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 二十三条の解釈といたしましては、この令状といいますのはその請求国の法令で適法に発せられた令状であればいいということになります。しかしながら、二十四条の関係法務大臣がそういう国からの仮拘禁請求を受けてこれに応ずるかどうかを判断します場合には、ただいま御指摘の令状の性質、こういうものは十分考えなければならないと思います。仮拘禁をいたしますということは、犯罪人を引き渡すということの前提となりますので、したがって請求国が条約のない国の場合を前提といたしますと、その国の司法制度がどうなっておるか、たとえば令状発付の権限警察官等にも与えられておる、そういうような国であるのかないのか、すなわち被告人あるいは被疑者基本的人権保障についてわが国と同視できるような国であるかどうか、そういうようなことは当然考えた上で仮拘禁請求に応ずるかどうかを決定する、こういうことになると思います。
  59. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 仮拘禁によって拘束され、その後釈放された者について、その者が被疑者であった場合には被疑者補償規程の適用があるかどうか、この点いかがでしょう。
  60. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) お答えをまず端的に申し上げますと、適用はございません。仮拘禁されてその者が釈放されるという場合は、要するに請求国が仮拘禁請求はしたけれども引き渡し請求をしなかったとか、あるいは一般の場合二カ月という期間が限定されておりますから、二カ月間たっても何のあいさつもなかったというような場合になるわけでございますが、およそ国と国との関係で一回請求をしておいてナシのつぶてというようなことは外交上の礼儀に著しく反するわけでございますから、そういうことは万々ないのじゃないか、希有の中の希有のケースとして、まあ理論的には考えられると思いますが、まずないのじゃないかというふうに考えるわけでございますが、いずれにいたしましても逃亡犯罪人引渡法と申しますのは制定以来一度も使ったことがない実は法律でございまして、将来考えればいろいろなことがあるわけでございますけれども、それはその時点でまた考えるということでよろしいのじゃないか、大変どうも申しわけないのですが、そういうふうに思っておるわけでございます。  なお、その場合もう一つ理論的なお尋ねですからつけ加えますと、ある国がわが国に対して仮拘禁請求をしておきながらナシのつぶてでほったらかしたというような場合には、やはりまず第一義的にはその国から何らかの補償を取りつけるということが相当であろう、これは外交上の問題になると思いますが。それができない場合にどうしてあげるか、こういう問題であろうと思います。そのような場合は適宜対応いたしたい、こういうふうに思っております。
  61. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、若干法務省御当局に対する質問はちょっと後に回しまして、外務省の方、現在米国以外の国と逃亡犯罪人引き渡しに関する条約、この締結の交渉をしている国があるのでしょうか。あるいはまた、いまはないとしても将来交渉したいと考えている国があるのかどうか、これは外務省と同時に法務省ですから、どちらでも結構ですからお答えいただきたい。
  62. 池田右二

    説明員(池田右二君) 政府としましては、ただいまのところ特定の国との間に犯罪人引き渡し条約締結交渉は行っておりませんし、また将来の交渉についての具体的な計画を持ってはおりません。  米国以外の国と引き渡し条約を結んでいない理由は、従来わが国逃亡犯罪人引き渡し請求外国から受けたり、またかかる請求外国に対して行う必要が少なかったこと、及びわが国には逃亡犯罪人引渡法がありまして、相互主義外国逃亡犯罪人を引き渡すことができる法制となっておりまして、諸外国においても、引き渡し条約が存在しない場合でも、自国の逃亡犯罪人引き渡し法により引き渡すことができる法制をとっている国があり、実際問題として引き渡し条約を結ぶ必要が余りなかったからであります。今後わが国と諸外国との人的往来が盛んになりますに伴い、わが国外国犯罪人が逃亡してきたり、またはわが国から外国犯罪人が逃亡するというようなことも多くなり、犯罪人引き渡し条約必要性も高まってくると考えられますが、特定の国と犯罪人引き渡し条約を結ぶか否かにつきましては、第一に、人の往来の状況等より見まして、現実に犯罪人引き渡しの要請が多いかどうか、それから第二に、犯罪人引き渡し基本的人権にかかわりのあることでもございますので、相手国の法制度、特に刑法、刑事訴訟法体制がわが国のものと比べてどうなっているか、また相手国の政治や法制度が一般的に安定しているかどうか、さらに日本では逃亡犯罪人引渡法がありまして、条約に基づかない請求についても、先ほど申しましたどおり、相互主義を条件に引き渡すことが可能であって、諸外国でも同じような体制をとっている国、たとえばヨーロッパ大陸の諸国などもありますが、米国などのように条約が存在しなければ引き渡しは行えない体制の国もある次第であります。このような相手国の体制から見て、条約の締結の必要性がどのくらいあるかなどの点を考慮していくつもりであります。  実際にどこの国と条約締結の必要性があるかにつきましては、法務省とも協議いたしまして必要性のある国につきましては今後とも積極的に締結を進めていきたいと考えております。
  63. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 国際人権規約、これは外務大臣が何か五月三十一日、日本時間で、署名をしたと伝えられておりますが、国会提出は大体今国会になさるということでありますが、これはいつごろ提出する御予定でしょうか。  それから留保条項一これはまあ非常に遺憾なことで、全面的にこれを受け入れるべきであったと私は考えるけれども、まあ留保なさったということ、この留保条項について一応御説明をいただきたい。  それから、日本が留保した条項について、すでに批准をしている他の国で同じような留保をした国があるのかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  64. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 政府といたしましては、できる限り早く人権両規約を批准するという方針で、このために先般外務大臣の御署名をニューヨークにおいていただいたわけでございますけれども、なお若干の準備を要する面もございますので、具体的な提出の日取りについてはまだ確定を見るに至っておりません。私どもといたしましては、何とか今国会中に提出を図りたいという方向で努力を続けておるという現況でございます。  留保でございますが、この人権規約には二つございます。俗にA規約とB規約と言っておるわけでございますが、このA規約の方、すなわち経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の方につきまして三点留保をいたすことになっております。  その第一点は公の休日についての報酬の規定でございます。すなわち、国の祝祭日においても、すなわち労働の有無にかかわらず報酬を与えるべきであるという規定、この点につきましては将来ともそういう法制を導入する意思がございませんので、留保を予定いたしておるわけでございます。  次に同盟罷業をする権利についての規定でございます。第八条一項でございますが、この点についても現在の法制が若干の部門につきましては認めておりませんので、その観点から将来の方向を白紙としておくという考え方から留保をしたものでございます。  第三点は教育問題でございますが、高校、大学を漸進的に無償にしていくべきであるという規定がございます。この規定も、わが国におきましては私学の占める部分が非常に大きい、役割りが非常に大きいということもございまして、公立学校についてのみこれを無償化するという方針を全く予見できませんので、この点についても留保を行うことにしたということでございます。  なお、三点の留保に加えまして一点、解釈宣言というものを行いましたが、この解釈宣言はやはり労働関係の規定でございまして、団結権及び同盟罷業権の例外の対象となるものとして軍隊及び警察というものが両規約に挙げられておりますけれどもわが国におきましては消防職員は警察の、この規約上は警察の一部をなすものというふうに考えて、これらの同盟罷業権あるいは団結権の例外の対象とするという意味での解釈を宣言したわけでございます。  なお、同様の留保をしておる国の現況でございますが、第一点の第七条につきましては四カ国、第二点の第八条につきましては二カ国、第三点の第十三条につきましては四カがそれぞれ留保ないし宣言を行っているという記録がございます。
  65. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その具体的な国名をちょっとおっしゃっていただきたい。
  66. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 第七条につきましては英国、デンマーク、スウェーデン及びバルバドスでございます。第八条につきましては英国、ノルウェーでございます。第十三条につきましてはマダガスカル、英国、ルワンダ及びバルバドスでございます。
  67. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 留保はしていても英国では鉄道労働者はストライキをやっておるようだが、法制的な制約はないようですがね。これはどうですか。
  68. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 英国の留保はいずれも地域的なものでございます。すなわち、本国以外の英国が管轄権を及ぼしている、行政管轄権を及ぼしている地域、たとえば香港であるとかあるいはギルバート諸島であるとか、そういう植民地的な立場にある宗主権を行使している国についての地域的な留保でございます。
  69. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あとまだ若干時間がありますので、ちょっと後に回させていただきます。
  70. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案提案理由の説明にいろいろございますが、なるたけ私は重複を避けて質問をいたしたいと思いますが、中には重複する面もあるやもわかりませんが、御了承願いたいと思います。  最初に、提案理由の中に「国際犯罪」という言葉がございますが、その「国際犯罪」という定義と言いますか、こういうことについてお伺いをいたしたいのでございますが、大体言われておるところ、また辞典なんかによりますと「国際犯罪」というものが四つくらいの意味があるというふうに言われております。「(イ)は海賊のように、国際慣例上、世界万民に対する犯罪としてのこれを発見した国が処罰する犯罪、(ロ)婦女売買のように、文明諸国に利害を共通にする事項として共同して鎮圧しようとする犯罪、(ハ)窃盗詐欺のような普通犯罪についても、国際間の交通の発達とともに、人の往来と行為が数国にまたがり、かつその規模が増大し、諸国間の共同の鎮圧方法が講ぜられる場合。」、ここには括弧してそのことが説明されていますが、(ニ)は「戦争その他の兵力行為が不戦条約などで禁止されるようになり、その違反を国際社会全体に対する違法行為として特に国際犯罪と呼ぶ場合。第二次大戦の後に、それを引き起こしたドイツと日本の責任者は、平和に対する罪等を犯したものとして処罰されたが、それはこの種の国際犯罪が現実に処罰された最初の例である。」というふうに辞典にも出ておりますが、ここで外務省にもお伺いしたいのは、この国際犯罪というものに、いま私が辞書にありましたものを読みましたけれども、これに対する補足、また法務省として「国際犯罪」というものに対する定義ということについて御説明を願いたいと思います。
  71. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 提案理由説明で用いました「国際犯罪」という言葉の意味は、ただいま御引用になりました四種のカテゴリーの中の第三番目に近いのじゃないかと思います。すなわち、犯罪意図、実行、結果、それらが複数の国の間にまたがるもの、あるいは犯罪者の国籍と犯罪地が異なるもの、そういうものを「国際犯罪」という言葉であらわしたつもりでございます。すなわち、簡単に申しますと、ある国の国民が他の国で犯罪を犯したような場合、あるいはある国で犯罪の実行が企図され他の国でこれが行われた場合、あるいはある国で犯罪が行われその結果が他の国で発生したというような場合、こういう場合を「国際犯罪」というふうに考えて書いておる次第でございます。
  72. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) ただいま刑事局長から御説明がありましたとおりでございまして、今般日米犯罪人引き渡し条約の改定を行いました基本的な理由は、引き渡し対象犯罪の拡大ということでございまして、御案内のとおり、明治十九年、明治三十九年に締結された旧犯罪人引渡条約においては、いわゆる古典的な犯罪、殺人、強盗、放火等の古典的な犯罪のみを対象にしていたわけでございますけれども、近年の国際交通機関の目覚ましい発達によりまして犯罪が複数の国にまたがる事案がふえてきたということと、犯罪の形と申しますか、ハイジャックとかあるいは経済犯とかというものが非常にふえてきたということで、引き渡し対象犯罪を拡大する必要ありという前提のもとに条約改定交渉を行ってきたということでございまして、何が新条約の特色かというお尋ねでございましたら、まず第一に引き渡し対象犯罪の対象を抜本的に拡大したということに尽きるかと思います。
  73. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私は外務省なり法務省なりに国際犯罪の定義というものを求めたわけです。それに対する御答弁がありませんで、私の読みましたものに対する三番目のことについての御説明だけがございましたけれども、国際法上あるいは国連憲章等に国際犯罪という定義というものがあるのかどうなのかお教えを願いたいと思います。
  74. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 一般の国連憲章を含みますいわゆる国際法、確立された国際法において、国際犯罪というものの定義づけ、一般国際社会において合意された定義づけというものは存在しないというように承知しております。
  75. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいま外務省からお答えがありましたとおりでございまして、国際犯罪とは何ぞやということにつきまして、これを定義づけた条約あるいは憲章等はないというふうに思っております。また国際的に確立された解釈もないのじゃないかというふうに思っております。先ほど申し上げましたように、提案理由説明の中で使いました「国際犯罪」という言葉の意味は、先ほど申し上げましたような数カ国間にまたがるようなそういう犯罪、こういう意味で使ったと、こういうことでございます。
  76. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうしますと、国際法上にもないということですね、定義というものは。で、これを趣旨説明なさる以上は、国際犯罪というものに対するわが国法務省のとらえ方というものは、先ほど私が読みました三番目のものにとらえておるのだというふうなことしかないというふうに理解してよろしいわけですね。  また、法務大臣、「いわゆる国際犯罪」と、こういうふうに「いわゆる」ということが出ているわけです。一ページばかりじゃなくて三ページにも「いわゆる国際犯罪」となっているのですが、この「いわゆる」ということはどういうことの国際犯罪なんですか。
  77. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) まあ「いわゆる」はいわゆるでございまして、これが先ほどから専門家の説明のとおり、国際法上あるいは国際慣習上、学説的に決まった定義というのはないようでございます。しかし、いわゆる世界がこういうふうに近い姿になりましたので犯罪も国にまたがって行われたりする、こういうことを常識的に普通国際犯罪と言っておりますから、それをいわゆる世間で言う国際犯罪と、こういう表現にしたと御理解願えればいいのじゃないかと思います。
  78. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 外務省の渡辺北米第一課長ですか、こういう問題についてどうなんですかね。その国際的な定義といいますか、そういったようなことも——これから第三番目だけじゃないと思うのです。先ほど刑事局長は三番目の問題を主としたというふうなお話がございましたけれども、先ほど私が四つ提示しましたその問題から、それ以外にこれから国際間において相当複雑多岐にわたっての状況というものが生み出されてくると思うわけであります。後で私は質問をすることになりますが、電波妨害というような問題につきましても相当大きな、あるいは宇宙の航行の問題にしましても、宇宙開発の問題等におきましても、それらに関連しての妨害というようなことになってきますと、いろいろな分野で犯罪というものの枠というものが大きく広がってくるのじゃなかろうかと思うわけでありますけれども、こういったようなことの考えの上から、少なくとも条約を結んでいるアメリカとの内容というものは、第二条の付表というものに限定されているような四十七種類のものであるというようになっておりますけれども、それ以外に、お互いが合意の上にやっているものから考えていきまして、せめてアメリカともそういう犯罪というものに対する定義というようなことを話し合っていくとか、あるいは国際法上における海洋上と同じようなわけにはいかぬかもわかりませんけれども、そういった意味の国際犯罪の定義というものもだんだん煮詰められていかなきゃならないのじゃなかろうかと私は思うのです。どうでしょう。
  79. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 先生御指摘のいわゆる国際犯罪の範疇については、国連その他の分野においてそれぞれの検討対象に従っていわゆる国際秩序づくりの努力が重ねられているわけでございます。たとえば宇宙の平和利用の問題であるとか、あるいは新しい海の秩序をつくろうじゃないか、いわゆる御指摘の海洋法の問題でございます。それについて各国が国と国とのレベルにおいて新しい秩序をつくり、その秩序を乱さないように努力を進めようということになっているわけでございまして、方向としては先生の御指摘の方向と合致しているという考え方は成り立つだろうと思います。  しかしながら、犯罪人ということで、国と国とのレベルではなくて、個人というお話になりますと、その実態的な詰めは必ずしも十分に行われておらないのが実情でございまして、ただこのたび締結いたしました日米犯罪人引き渡し条約については先生御指摘のとおり四十七の罪種、旧条約では十五の罪種でございましたけれども、四十七の罪種については引き渡し対象にするというように明示的に規定されているわけでございますけれども、その他ということで現在は予見されないけれども、将来新しい犯罪として日米両国が認めるような犯罪ができた場合には、これが一年を超えるいわゆる重犯罪を構成すると日米両国のそのときの法制でなっている場合には、それを引き渡し対象と認めるということになってございます。したがいまして、このたび締結いたしました新しい条約においては、将来の歴史の進展といいますか、あるいは日米の協力の進展あるいは国際犯罪の定義づけの進展に即応し得る体制はできております。すなわち今度の条約は、いわゆる罪種の列挙主義ではございませんで、包括主義ということでその他犯罪という規定がございます。そこで将来の何というか、国際社会の協力の、あるいは日米間の話し合いの進展に即応し得る体制は一応できておるというように考え得るのではないかと考えます。
  80. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 その他のことで包括されているとおっしゃれば今後の課題として残されていくと思うわけでありますが、そこで法務大臣、この際わが国もいま外務省の説明がありましたようなくだんの点をとらえられて少しく突っ込んだ討議をなさいます用意がありますかどうか、大臣に伺っておきたいと思います。
  81. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 国際社会が、言葉が適当でありませんけれども、非常に狭くなったような関係で、世界各国にまたがって問題を処理しなけりゃならないことが従来からずっとふえておるわけでございます。でありますから、これは国連の場で、国際社会の秩序をどう維持するかということは、これ重要な問題でありますから、現在討議されておるわけでございまして、わが国といえどももちろんこの討議に十分の関心を持って進んでいく、これは当然だと思っております。
  82. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 法務省に今回新設されました国際犯罪対策室ですか、開設されて具体的にはどのような仕事をおやりになってきたか、またこれからおやりになろうとなさっているのか、御説明をひとつ願いたいと思います。
  83. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 本年度予算の成立を待ちまして、去る四月五日に私ども刑事局に国際犯罪対策室を設けさしていただいたわけでございます。まだ発足当初でございまして、これから大きく育てていかなければならない機構でございますが、やっております仕事は、大ざっぱに言いまして四つございます。  第一は、犯罪人引き渡しに関する事項でございます。この事項に関連いたしましては、もちろん日米新条約成立いたしました暁は日米間の犯罪防遇に関する協力が一層緊密になると思われますし、引き渡し請求相互にいまより以上に活発に行われるようになるのではないかというふうに思われますので、これにいつでも対応できるような措置をとるということが一つございます。  それからもう一つ、先ほど外務省から御説明ありましたけれども、私どもは、なるほど逃亡犯罪人引き渡し、引き取りにつきまして条約がなくても引き渡したり引き取ったりますことができる国が多うございますけれども、やはりこの二国間に引き渡し条約が存在するという事態は両国間の犯罪防遏のための協力体制が緊密になるわけでございまして、きわめて望ましいことだと思いますので、私ども立場として諸外国の法制度等を十分調査検討いたしまして、なるべく条約締結国をふやすようなことを、まず何といってもお互いの国の法務省同士で根回しをいたしまして、そうして外交ルートへ乗せなければなりませんので、そういう水面下の努力と申しますか、そういうことをやりたいと思っておるわけでございます。  それから対策室でやります第二は、刑事関係いたします条約あるいは協定に関する事項でございます。先ほども御指摘がございましたような各般の国際条約、特に多国間条約の締結の機運が非常に盛んでございます。海洋法でございますとか、あるいは多国籍企業の問題、いろいろ現在テーマに上っておるものがございます。それらにつきまして、刑事に関する部分については十分にたとえば受け入れ体制を整えるとか、そういう問題がございますので、その点を詰めながら外務省のおやりになりますそういった条約への加盟についての御協力を申し上げていくと、こういうことでございます。  それから第三は、それ以外の刑事に関する国際間の協力についてでございます。先ほど来お話に出ておりましたように、大変国際的にまたがった犯罪がふえております。ロッキード事件などはそのいい例でございますが、そういう場合にそれぞれの国と捜査上共助をしていかなければなりません。そういう問題につきまして常に各国の当該機関と連絡をとりながら司法共助、捜査共助の緊密化を図る、こういう仕事をやってまいりたいと思っております。  それから第四番目にやっております仕事は、犯罪人の出国のチェックの問題でございます。これは主として外務省がお扱いになります旅券の発給の問題あるいは入管が行います出国の審査の問題、これと関連いたしますが、私どもといたしましては全国の検察庁から国外逃亡のおそれのある犯罪者の通報を求めまして、これをリストアップをして、そして外務省へ御連絡をするというようなことをやっておるわけでございますが、そういう犯罪者の出国のチェックの問題。  大ざっぱに申しまして以上申し上げました四つの問題を中心に現在取り組んでおるところでございまして、今後この組織を次第に拡充してまいりたいと、こういうふうに思っておる次第であります。
  84. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 先ほどお話の出ておりましたICPOなんかとの接触といいますか、折衝といいますか、そういうこと等の問題も一切含めてのことでしょうか。
  85. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 先ほど寺田委員のお尋ねに際して申し上げましたように、ICPO加盟単位各国警察でございますから、ICPOに対するわが国の窓口は警察庁でございます。警察庁の具体的には刑事局国際刑事課でございます。したがいまして、国際犯罪対策室は外務省及び警察庁の国際刑事課と毎日のように緊密な連絡をとってやっておる次第でございます。
  86. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 せっかく国際犯罪対策室という、国際犯罪という言葉もここで明らかになっているわけであります。したがいまして、いまの四つの内容の点を伺ったわけでありますが、広い意味におきます国際間の問題等に関しまして、せっかく国際犯罪対策室というものを、前進なさってすばらしい対策室をおつくりになった以上、やはり先ほど申し上げましたような私の考え方というものを体していっていただきたいというようなことを要望をいたしておきたいと思います。  それから、いまICPOの問題が出ましたので、ちょっとお伺いをしたいわけでありますが、水町国際刑事課長さんですね。ダッカの事件で、先ほどもちょっとお話があったようだったのですけれども、現在逃亡している者の状態、実態といいますか、そういうふうなことを御説明を願いたいと思います。
  87. 水町治

    説明員(水町治君) 昨年九月の日航機乗っ取り事件の犯人ら十一人についてでございますが、現在までアルジェリアを出国したという確認の情報はございません。しかしながら、さまざまな情報を総合してみますと、十一人はすでに同国を出国している可能性がございます。行き先等を含めまして現在鋭意情報の収集に努めているところでございます。
  88. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 何か報じられるところによりますと、最近一部の者の所在が、所在の者の動きがわかったみたいに事が報じられているのですが、それはどうなんですか。
  89. 水町治

    説明員(水町治君) 本日の朝刊等に若干出ておるわけでございますけれども、私ども確認された情報として現在承知はいたしておりません。
  90. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それに対する、早く言えば追及といいますか、そういう調査はもちろんおやりになっているのでございましょうね。
  91. 水町治

    説明員(水町治君) 犯人らの手配につきまして、その後の捜査の結果でございますが、実行犯が五名おりますが、その五人のうちの四名についてはすでに判明しております。これらの者につきましてはすでに国際手配をしております。さらに釈放犯六人につきましては、これもすでに国際手配をしておるわけでございます。
  92. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 なかなか捜査、手配というものも国際にまたがってやることですから、大変だと思いますが、要はむしろ、これは全体的に考えなきゃならないことは、そういう犯罪者を出さないという基本のもとに考えていかなきゃならないのは当然でありますが、いずれにしましても、いま事件が起きた以上は、それの収拾というものに全力を傾注しなきゃならぬじゃないかと思いますので、鋭意また努力をしていただきたいことを要請しておきます。  先ほど外務省の渡辺課長に御質問いたしました二条の問題でございますね、この二条につきまして改めて御説明をひとついただきたいのですが。
  93. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 新条約の第二条では引き渡し犯罪について規定しているわけでございまして、この趣旨はいわゆる相互可罰性という基本的な考え方に基づいているわけでございます。すなわち、日米両国で長期一年を超える重犯罪引き渡し対象にする。その引き渡し対象として例示的に四十七の罪種を列挙してあると。それ以外にも、先ほど申しましたとおり、その他の犯罪で、日米両国で一年を超える拘禁刑の対象となるいわゆる重犯罪ということを対象にしているということでございます。これが二条第一項前文でございまして、それでは長期一年を超える拘禁刑以下のものはどうして引き渡し対象にしないかということになるわけでございますが、たとえば三カ月の拘禁刑というものを引き渡し対象犯罪にしてもいいじゃないかという議論はあり得るわけでございますけれども、やはり引き渡し手続等から勘案して、いわゆる軽犯罪というものについては引き渡しの対象にしないことが相当であるということが日米間で合意され、かつ一般に世界各国で締結されております犯罪人引き渡し条約においても長期一年を超える拘禁刑以上、もちろん死刑等が入るわけでございます、無期も入るわけでございますが、それを対象にしようということでございます。  第二条第一項第二文が若干専門的といいますか、むずかしい、理解しがたい条文でございますけれども、先生御案内のとおり、アメリカ合衆国の刑法、刑事訴訟法の立て方は連邦制度に立脚しているわけでございまして、連邦政府犯罪と指定し得るものは限界があるということで、州際、各州にまたがる郵便、交通手段を利用したものが連邦犯罪ということになる場合があるわけでございまして、たとえばそういうような犯罪を犯した、連邦犯罪であるということでアメリカから日本に対して犯罪人の要求があった場合に、日本ではそういうように連邦制をとっておりませんし、連邦の郵便を使った犯罪ということで引き渡し要求があっても、それじゃ日本では犯罪を構成しませんといって断るということでは不都合が起きる。したがいまして、こういう規定を置いたわけでございます。これはアメリカから明示の要求のあった、要請のあった条文で、アメリカが締結しています他国との引き渡し条約にもこの種規定がすべて入っているということでございます。  以上でございます。
  94. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 御説明になりました、まずその「付表に掲げる犯罪以外」、その「付表に掲げる」という、その付表四十七種ですか、先ほどもありましたけれども、この中で一々いまの条文を通してのそれぞれの内容についてお伺いをしようと思っておるのですが、時間の関係でとてもそれはできませんので、特に私は二十六、二十七、二十八二十九の問題につきましてお考えをお伺いしたいと思います。
  95. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 付表の二十六項は「国際法上の海賊」となっております。「国際法上の海賊」と申しますのは、一九六二年に発効いたしました公海に関する条約十五条に定義がございまして、この定義が国際的にいま認められております。したがって、この公海に関する条約十五条に掲げる行為を「国際法上の海賊」という表現であらわしておると思われるのでございまして、それによりますと、まず(1)として「私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客が私的目的のために行なうすべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為であって次のものに対して行なわれるもの」「(a)公海における他の船舶若しくは航空機又はこれらの内にある人若しは財産」「(b) いずれの国の管轄権にも服さない場所にある船舶、航空機、人又は財産」。それから(2)といたしましては、「当該船舶又は航空機を海賊船舶又は海賊航空機とするような事実を知ってその船舶又は航空機の運航に自発的に参加するすべての行為」、(3)「(1)又は(2)に規定する行為を扇動し又は故意に助長するすべての行為」と、こういうことでございまして、俗に言いますと海賊と空賊とを含んでおる、こういうものでございまして、これに対応いたしますわが国内法制といたしましては刑法の強盗罪、逮捕監禁罪、略取、殺人、暴力行為等処罰ニ関スル法律、強要、こういった犯罪を構成するもののうちの先ほど挙げました条約に掲げる定義に該当するものと、こういうことになろうと思います。  二十七項は、「列車、航空機、船舶その他の交通手段の不法な奪取又は管理に関する罪」ということでございまして、これはいわゆるハイジャックあるいはこれに類似する行為、俗に言うトレインジャック、シージャックとでも言いましょうか、そういうものを念頭に置いて書かれておるわけでございまして、わが国内法制でこれに当たります罪は強盗、逮捕監禁、略取、殺人、暴力行為等処罰ニ関スル法律、航空機の強取等の処罰に関する法律、強要、こういった罪に当たるもので、ただいま申し上げました列車、航空機、船舶等の不法な奪取あるいは管理に関するものと、こういうことになろうと思います。  二十八項は、「列車、航空機、船舶その他の交通手段の正常な運行を妨げ又はこれに危険を生じさせる罪」、これはハイジャックに対比して申し上げますと、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律、こういうようなものとか往来妨害とか、そういうものを念頭に置いた規定でございまして、わが国内法でこれに当たると思われます罪は刑法の往来妨害、電車汽車艦船等往来危険、電車汽車艦船覆没、業務上過失往来妨害、高速自動車国道法違反、道路交通法違反、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律違反、新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法違反、こういうようなもののうち列車、航空機、船舶等の正常な運航を妨げたり危険を生じさせる行為、これが該当すると思います。  それから二十九項は、「爆発物、火災装置又は危険な若しくは禁止された武器の規制に関する法令に違反する罪」ということでございまして、これに該当しますわが国内法の規定といたしましては、刑法の凶器準備集合罪、同結集罪のほか、爆発物取締罰則違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、武器等製造法違反、火薬類取締法違反等の中で、ここに書いてあります爆発物、火炎装置あるいは違法な武器の規制に関する行為と、こういうことになろうかと思います。
  96. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そこで、私は方向をぐっと変えまして質問をするわけですが、郵政省の方々にお伺いをいたしたいのです。きょうは六月一日で電波の日と言われております。で、きょうは大臣がこの日の催しの方に出られて、局長もそちらの方に出られているということでありますが、きょうのNHKの大臣の対談の言葉じりをとらえるわけではございませんけれども、非常にわが国は、日本の電波というものは非常に誇りを持っているように、他の国に見られないほどの技術があり、またその技術教育もすぐれているということを言われておりました。ということは、非常に民間に、国民の中に電波というものが、知識というものが入っていったということが大きな発達の原因だというようなこともおっしゃったようであります。  そこで、私はこの電波妨害による幾つかの問題と、また障害というものの問題、幾つか取り上げながらお伺いをするわけですが、古い話になりますが、私が四十九年の内閣委員会で質問をいたしております。これはお読みいただけるようにということを言っておきましたけれども、お読みになりましたか。どうですか。
  97. 吉川久三

    説明員(吉川久三君) お答え申し上げます。  読ませていただきました。
  98. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 お読みくだされば話は早いわけですが、これに対するお考えはどうなんでしょうか。たとえば当時の寺井久美さんですか、その人の答弁がございましたね。ソ連の方に、ハバロフスクの方に二十数回も、千歳から飛び立ったものが東京に行かないで、ぐるっと回転をさせられていったわけです。それが二十数回もあった。以後にもまたあるわけですけれども、こういうふうな問題について私が取り上げました。その答弁なんですが、   ただいま御指摘の件につきましては、直ちに航空局の飛行機によりまして電波の検査をいたしました。その際、千歳のNDBの周波数に非常に近い外国の放送の周波が混信しておるという事実が判明いたしましたので、直ちに電波監理局にこの旨を通報いたしますとともに、この旨をNOTAMによりまして運航関係者に周知徹底をいたしますとともに、また、定期航空会社三社に対しましては函館のVOR/DME及び熊NDBを併用いたしまして正確に航空路を飛行することを指示いたしまして、また、航行中管制機関とも十分連絡をとって航空路から逸脱しないようにということで周知徹底をはかりました。で、その結果、その後防衛庁からのレーダーの監視による報告によりますと、ほとんど逸脱する航空機がないというふうに聞いております。また、電波監理局と引き続き協議をいたしまして、すみやかに処置をとるということで目下検討中でございます。 とあります。そして今日に至ってきておるわけでありますが、これお読みになったお考えですね、それと今日の実情、そういうものについて御説明願いたいと思います。
  99. 吉川久三

    説明員(吉川久三君) お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘のとおり、昭和四十九年に千歳の航空用の無線標識の電波に混信がございまして、この混信源はソ連の放送用の電波でございました。で、ソ連に対しましてその妨害の除去につきまして要請したわけでございますが、この千歳のラジオビーコンの電波とそれからソ連の放送用の電波が条約上同じステータスを持っておりまして、ソ連はわが国の要請に応じなかったわけでございます。でございますので、やむを得ず千歳のラジオビーコンの周波数を変更しております。このような航空無線施設等に対します混信妨害等が発生した場合におきましては、まず電波監視等によりましてその混信源を探査いたしまして、その原因を究明することにしております。で、その混信源がわが国の国内である場合はその混信の排除について措置すると。国外の場合は当該混信源がございます外国主管庁等に対しましてその妨害の排除について折衝すると、こういうことになっておるわけでございます。なお、この千歳のラジオビーコンの波にソ連の放送用の電波が混信した。これお互いに国際的な周波数分配に従いましで使っておったわけございます。そのような国際的な周波数の分配に従って使っても、場合によってはそのような国際間におきます混信妨害が起きるということもございますので、実は明年九月ジュネーブにおきまして世界無線通信主管庁会議、これが開催が予定されておりますので、国際的な周波数の分配表の見直しを含めまして、このような事例を防止する方策について検討しようということになっておる次第でございます。  以上でございます。
  100. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 運輸省の人もおいでになりますが、せんだっての大韓航空の事故なんかも周波数云々ということも取り上げられているように報じられているのですが、これは郵政省と、運輸省の増田管理課長ですか、お伺いしたいと思います。
  101. 増田信雄

    説明員(増田信雄君) 飛行場部の管理課長でございます。  ただいまの御質問の件、担当の者を連れてまいっておりませんので、後ほど先生に御説明に上がらせたいと思います。
  102. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 郵政省、周波数の問題はなかったのですか。
  103. 吉川久三

    説明員(吉川久三君) あの際の事故の電波関係につきましては、詳細な情報を実は得ておりません。
  104. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 せっかく明年会議をお持ちになるというわけですね。こういう問題等もそれまでに一応チェックなさって臨んでいかれることを私は要請しておきます。それが事実だったかどうかわかりません。ただ報じられているから、煙の立たないところに火は起きないといったことわざもありますので。ですからそういうふうな面から考えていきましても、これから相当複雑怪奇な問題が出てくると思うのです。これからだんだんと問題の焦点に入っていきますけれども、いずれにしましても、そのことは私は強く要請をして、その原因の解明ということのお考えをちゃんとしておかれるように希望しておきます。  それから、先ほど渡辺第一課長の御答弁がございましたけれども、この電波妨害、あるいはこれに関するいろいろな問題が派生的に出てくるということも先ほど私申し上げましたけれども、外務省の国際連合局の太田科学課長さんですか、その方にもあわせてお伺いをしたいわけですが、いま非常に電波が、きょう大臣も、日本の電波というものは世界からもその技術を取り入れに来ているというぐらい強調されてお話があったわけです。と同時に、私は心配されるのは、その半面、この無線局の使い方そのものが大きな問題を起こすようになってくるわけでありますが、こういうことについてのきょうの電波の日というものが、即今日のすばらしい発展を発表すると同時に、新しく生まれかわっていく、だんだん時代が進んでいく、電波のやり方も、ハム問題も、ハム王国だと言われているぐらいで、相当民間人の中に入ってきている装置を使って電波妨害といいますか、そういうようなことでテレビの視聴も落ちているとかというような問題もありますが、そういう民間、家庭生活の中じゃなくて、国際間にも大きな波動を起こしていくような事件が生ずると思うわけでありますから、こういうこと等を考えていきますと、きょうが私は新しい出発である、考え直す日だとも言えるし、また新しい電波法というものも考えなきゃいけないのじゃないか、こういうふうにも思うわけです。  そこで、これはある新聞の記事なんでございますが、   最近、プロ野球のナイターに加えて、アメリカ大リーグのナマ中継がお茶の間で〃観戦〃できる。通信衛星のおかげだ。そういえば北極点 にただ一人立った植村直己さんを追いつづけ、植村さんの北極点到達を確認したのは米航空宇宙局の人工衛星だった。   さる四月二十日突然、音信を断ち世界の耳目をかきたてた大韓航空機が、ソ連北部の氷結湖に強制着陸させられていた事実を最初につかんだのは、人工衛星を使った米軍の遠距離早期警戒ライン。またソ連の原子炉衛星がカナダに墜落したとき、すばやくデータを出したのもアメリカの地上レーダーと人工衛星を結んだ警戒網である。 これなんかも、あのコスモスが上げられるときには、国際間に報告されたのは技術開発のためだということなんですが、内客はうたってなかったわけですが、原子力を積んでいたということで、それが問題になるかならないかはこれからの問題だと思いますが、いずれにしましても、さらにこの記事が続いておりますが、   人工衛星のうち、軍事スパイ衛星の特殊カメラは百六十キロの上空から、地上の白墨で書いた線さえ探知するという。また最近では海中深く潜む潜水艦を〃千里眼〃で探し出す特殊装置を積んだ軍事衛星も開発されているといわれ、お茶の間での米大リーグ戦の〃観戦〃は米ソ宇宙開発競争が生んだ副産物にすぎない。ソ連が世界で初めて人工衛星を打ち上げたのは二十一年前。そのとき米国はバスケットボールほどの大きさの人工衛星を打ち上げると予告していた。ところがソ連の第一号は直径五十八センチ、重さ八十三・六キロの人工衛星で、一カ月後にはイヌを乗せた第二号を打ち上げたため、米国のショックは大きく、いらい米ソの開発競争は激烈をきわめ、今日では「天空を覆い隠す」といっても過言ではないほど無数の人工衛星が宇宙空間を飛び回っている。野球の観戦に、むずかしい論議は必要ない、といってしまえばそれまでだが〃観戦〃している頭上にダモクレスの剣が細い糸につるされ、ぶらさがっていると思うと、あまり喜んではおれない。文明には絶えずこうした〃光〃と〃陰〃がつきまとう。 というような記事がありますが、まさしく今日の世相を明らかに国際間に投げかけておる大きな一つの問題点になっていると思うわけであります。  こうしたこと等を踏まえながら私はアメリカとの条約交渉に対する、先ほど課長はその他の事項で将来は当たっていきたいというようなお話なんですが、もちろんいま私が報道されているものを読みましたことは十分御承知の上のことだと思いますが、ともあれ、そういう時点を考えながらいま私はこの付表の中の一番問題点になってくる個所じゃなかろうかと思って確認の意味で二十六、二十七、二十八、二十九の問題点を説明をしていただいたわけでありますが、こういう電波妨害とかいうような問題、成田の今度の新しい新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案、この法案の中にも明らかに五番目に電波法というものがうたってあるわけであります。こういう点から考えていっても、この電波というものに対するアメリカとの合意というものはどんなふうにしておったのか、課長にまずお伺いして、あとは徐々に今度は郵政省の方に質問を回していきます。
  105. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) 条約交渉においてその付表の罪種を日米間で詰めていく過程において、日米双方の電波法違反というものを引き渡し対象犯罪にし得るかどうかということについて具体的な検討は行っておりません。ただ、関係者としては網羅的に双方で勉強をした結果でございますので、多分私の想像では、電波法違反というものがアメリカにおいてここで規定していますような長期一年を超える拘禁刑以上の犯罪を構成するというようにはなっていない、したがって四十七の列挙された罪種には書かれていないということだと承知しています。
  106. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それは大事な発言だと思うのですね。これは御案内のように、この「宇宙開発ハンドブック」の中から「宇宙条約及び関連協定」というのは御存じだと思いますが、こういう問題と——わが国もこの協定に入っておりますけれども、あとの二つの問題については入っていないように伺っておりますけれども、アメリカではこういう問題は起きないわけです。日本だけが起こしてきているわけです。ところが、知らない間にアメリカでもそういう日本のようなハイジャックだとか、電線を切るとか、あるいは高圧線の電柱を倒してしまうとか、無線を切ってしまうとかというような乱暴なことは余りアメリカでは聞いてはいないようなんですが、したがってこの日本のやっているいまの過激派、新左翼といいますか、左翼といいますか、その人たちがやっている、過激派がやっている、事件を起こしております、成田空港開港に伴ってやってきているこの行為を見ていきますと、そしてまたハム王国と言われたその問題点をこれから私は質問をしていくわけでありますが、民間に電波を、国民の中に電波を自由にさせたということに対して、非常にいいことなんでありますけれども、それによって生ずる今後の課題というものもチェックしていかなきゃならない大事な時点にきているから、私は特に伺ったわけでありますが、いずれにしましても、アメリカの刑法の中に確かにそういうふうになっているかどうか、確認をいたしておきたいと思います。
  107. 渡辺幸治

    説明員(渡辺幸治君) その点は照会調査をいたしまして、先生に御報告させていただきます。
  108. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 じゃ先ほどの御答弁はどういうことになるわけですか、一年以内云々とおっしゃいましたね、それはどういうことになりますか。
  109. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) わが国の電波法におきましても、通信に関する施設を切断したり損壊したりいたしまして通信作用に支障を与えるというような行為は五年以下の懲役等で処断することになっておるわけでございます。で、同じような行為につきまして、付表の第十九項をごらんいただきますと「財物、文書又は施設の損壊に関する罪」というのがございまして、ただいま申し上げましたような行為につきましては、この十九項で読むことによって相互引き渡しが可能であろう、こういうふうに思っております。
  110. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうすると、周波数の問題もこの中に入っちゃうわけですか。
  111. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 何といいますか、通信妨害のようなことを御指摘かと思いますが、その点につきましてはアメリカの法制上、先ほど外務省の御答弁がありましたように、一年を超える刑をもって臨むこととしていないということからこの例示の中に挙がってきていない、こういうことであろうと思います。
  112. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それはまた、いま第一課長がおっしゃったようにお調べになるということですから、またそれは後日で結構ですから教えていただけばいいと思います。  紙が回ってきまして十二時三十九分までだというのですが、いまやっと入ったばかりなんですが、まことに時間がありませんので、どうしてもまだ質問が残っていますので、私は時間を要求をして続けていきたいと思うのですけれども、きょうはもう一問だけで後日に譲りたいと思いますけれども、せっかく郵政省の方、外務省の宇宙開発の課長さんがおいでになっておられるわけでありますので、まず先ほどの宇宙条約及びその関連協定、わが国はこれは協定しておりますということは先ほど私も言いましたけれども、それはそのとおりですね。で、後の二つのものについてはどうお考えになっているのですか。
  113. 太田博

    説明員(太田博君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、宇宙条約に関しましてはわが国もこれに参加をいたしております。この宇宙条約関連する協定といたしまして、宇宙救助返還協定、それから宇宙の損害賠償条約、それから宇宙物体登録条約、実はこの関連する条約が三つございまして、これにつきましてはわが国はまだ参加いたしておりません。ただし、政府といたしましては、残るただいま申しました三つの条約につきましてもできるだけ早期にこれに参加すべきであるという考えでございまして、現在までのところ、そのためにどういう国内的な措置が必要であるか、場合によって国内の法改正が必要であるかどうか等を含めまして鋭意検討を行ってきたところでございますけれども、先ほど先生御指摘のとおり、先般のソ連の原子力衛星の落下事件等もございまして、やはりこの三条約というのはできるだけ早期に批准すべきであるということで準備をいたしておるところでございます。
  114. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 先ほどから私、ハム王国、ハム王国と言っているのですが、これは実際は財団法人日本アマチュア無線連盟の方々を呼んで詳しく事情を聞こうと思っておったのですが、またこれは専門委員会の方にでも行って質問をすることを決めました。したがいまして、この定款をいただいたわけですが、この定款の中の第五条の事業というところに、その中の「(10)アマチュア局の無線設備等の適否認定。」という問題がありますが、これに対する電波法によるいろいろな規定がございますね。九条では工事設計等の変更、十条では落成後の検査、第十六条二の変更等の許可、十八条の変更検査、第三十七条の無線設備の検定、七十三条の検査、また戻りまして十五条の簡易な免許手続、これらの電波法の中に条文が一つずつございます。これについて一つずつやっていきたかったわけなんですが省略をしまして、相当なチェックをしなければならないということになっているわけです、この法律に基づいていきますと。そうしますと、ここに「アマチュア局の実態」というものをいただいておりますが、現在、わが国が一番、世界最大国であったというのですけれども、王国であったというのですが、いまアメリカの方が高いということも聞いているわけですが、三十六万四千局アマチュアの局数があるというふうにデータいただいております。その中で職業別の局数の中で、農林・水産とか商店・工場・自営だとか、あるいは公務員、教員、会社員事務系、技術系、交通・通信、サービス業・自由業とありましてそれぞれの局数がありますが、一番大きいのは学生十六万三千局と、これが四五%を占めております。  そうしますと、学生ということになりますと、年齢別でいきますと、十五歳以下二万五千、十六歳から二十歳まで七万四千局、それから二十一歳から二十五歳まで五万四千局、このパーセントにいたしましても上位の方の数を示しておりますが、こういうアマチュアがCQ、CQでやっております、日本でつくったやつをアメリカで打ち上げて成功をしたというようなことを言っておりますが、この免許認定というものに対するどういうふうなチェックをしているかということを私は伺っておきたいと思います。  といいますのは、先ほど来から言っておりますように、相当のテレビの視聴に影響を与えるとか、あるいは成田の場合でも警察官同士の話し合いもできなかったということもありますし、いろいろな問題を具体的に取り上げて、大なり小なりの問題を取り上げて私は電波妨害というものに対する、事前の防止策というものに対するためには、何といいましても最初の認定それからその後の変更しているか変更していないか、その検査の過程、そういうものをずっと調査をしなきゃならないわけです。大きいものに対しては、この電波法にありますように、年一回やるようになっている。認定もどんなふうにしてやっているかと言えば、もうアマチュア無線にはアマチュア連盟が認定を出している、ネームプレートを出してそこに張らしておいているという。私も知っている友人関係でやっぱり持っておるのがおりますからいろいろなことを聞いているわけですが、ともあれ非常に監督、指導というものが行き届いてないように思うわけです。  さらにもう一つつけ加えて言うならば、これをやっていく人がいるのかどうか、人的不足がないのかどうなのか。これは郵政省自体も考えてみる必要もありますし、同時に、年々人間も削減されていくというようなことも聞いておりますし、アマチュア無線の経営形態といいますか、設立した状態、財政規模、そういうものから考えていきまして、郵政省はこの補助を与えているのか、助成を与えているのかというようなこと等について総括的に御答弁を願いたいと思います。
  115. 徳田修造

    説明員(徳田修造君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘ございました日本アマチュア無線連盟の定款の五条の事業の中の十番目の事業でございますが、「無線設備等の適否認定。」ということがございます。これは電波法の十五条の「簡易な免許手続」によりまして新しくアマチュア無線局を開設する場合にその設備が電波法の第三章の技術基準に合致しておるかどうかというその認定を日本アマチュア無線連盟にしてもらうという形で、その認定された技術基準に合致したものについて郵政省が無線局の免許を与えるというような形になっておるものでございます。アマチュア無線連盟ではこの認定のために機器の性能のチェックをやっておりますし、それから実質的な面でございますが、免許後におきましてもこのアマチュア連盟の中で各都道府県に監査指導委員という者を全国で七百名置いてございまして、これらの委員によりまして随時アマチュアバンド内の監視を行っております。法令に違反して運用しているという局に対しましては注意をいたしまして、それからさらに規制をする必要がある場合には郵政省の方に連絡がありまして、郵政省の方でしかるべき処理をするという形になっております。アマチュア無線局はただいま先生お話ございましたように、非常に数がふえておるわけでございまして、これらの無線局が正常に運用されるということは、私どもとしても非常に大きな問題であるというふうに考えておる次第でございます。  郵政省といたしましては、これらのアマチュア無線局が電波法に基づきまして合法的に運用されるためにこの運用監査というものを郵政省が実施いたしております。それから電波監視ということで特に不法アマチュア無線局の探査ということも実施いたしております。それから必要がある場合には無線局の臨時検査とか、そういうような検査も実施いたしております。  それから年に一回不法電波の一掃月間というものを設置いたしまして、これらのアマチュア無線その他の一般の無線局も含めてでございますが、無線局が正常に運用されるように指導をいたしております。  なお、アマチュア無線局に関しましてはいろいろなアマチュアの会合等の機会に法令の周知徹底を図っておる次第でございます。  先生御指摘の人の問題、こういうような監査指導をする人の問題あるいは助成というような問題、これらにつきましていろいろ問題がございます。それから助成は現在のところ日本アマチュア無線連盟に対してはいたしておりません。私どもといたしましては、このアマチュア無線局が正常に今後とも運用されるようにさらにこういうチェック体制の強化について検討してまいりたいと考えております。
  116. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これは私は少し煮詰めていきまして、犯罪を未然に防ぐために取り上げているわけです。犯罪が起きてから逃亡犯人をこうしたい、ああしたいという法律つくるよりも未然に防ぐというためにそういう考えの上から私はいままで質問をしていたわけであります。そういう意味合いにおきましていまの御答弁ございましたけれども、運用監査の問題にしましても、それからアマチュア無線局の監査にしましても、実際やっているどころじゃなく、聞いていないのですよ。もう任せっ放しというようなことのような状態に私は聞いているわけですが、これは私の聞き違いかどうかわかりませんけれども……。それから、そのアマチュア連盟では、じゃあ果たして申請書を出して実際その後行ってみて、変更されているかされていないのか、最初の機械からかえられていのか、かえられていないのか、それをチェックして、異常な電波が出ているということを発信すれば自分の分だけ黙って装置をちょっととめておけばわからないようなことにもなるわけです。悪いことしようと思えばどんなことでもできるわけです。したがって、私はその検査、検定というもの、この調査というものがいかに大事になってくるかということを電波の日だから特に申し上げまして、猛省を促して、未然にそういうアマチュア間同士で、もうアメリカとのやりとりをやることを喜んで、うれしくてしょうがないというような問題、それが今度は人工衛星になっていきますと、人工衛星の妨害というものは不可能だという。不可能だとは言えないわけです。可能なわけです。ですから、そういうふうな問題等を考え合わしてみましても、郵政省の一番最先端に立って、闘われている、きょう御答弁に来ていただいた方々に特に強くそういう実践面の指導、検査、育成というものを特にお願いをしておきたいわけです。局長さんも大臣も私は来ていただいて、もう少し大きいところを詰めようと思ったのですが、それによって犯罪を未然に防止するという観点の中でお伺いしようと思っわけですが、現場を直接担当されている課長さんがきょうおそろいなんですから、特に航空陸上監視業務、あるいはその電気通信監理官の方々がおいででございますので、その点私の意のあるところをくんでいただいて、処置をしていただきたいと思います。  ともあれ時間が大分過ぎましたので、これで終わりますけれども、最後に大臣に、私はこの法案についての質問がまだあるわけですけれども、私の質問を終わるに当たりまして、いま私がいろいろな問題を取り上げてやりとりしておりました、そういうことについての法務省としての、今度の日米条約等を通じての所見を伺って終わりたいと思います。
  117. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 電波のことは所管外でありますけれども、いま宮崎さんのお話等承って、率直に申し上げて非常に重要な問題を取り上げられたと私は思います。科学技術が進歩いたしまして、なるほど人間の生活その他に非常に便利なところがありますけれども、これを悪用すると想像を絶するようなまた事態が別に起こり得るわけでございまして、まあ、えてして人間社会は何か起こってから、それがいかぬということでやるわけでございますが、いまのこの国内あるいは世界の情勢を見ますると、最も先端をいって進んでおると思われる電波の問題は、これは悪い面に使おうと思えばとんでもないことになるおそれがある。私は実は先般、まあ言葉は適切かどうかわかりませんが、電波ジャック、テレビジャックですか、ありました直後に成田空港の閣僚協議会がありまして、その翌日でございましたが、こういうものを、これはまあ電波そのものは郵政省関係でございますけれども、ああいうことが現に行われておる。私は、まあこれは私の感じでございますが、どうも成田闘争の実験をしておるような気がすると、こういうことを閣僚会議で話をして、航空機はほとんど電波で今日動いておりますから、こういうことが起こるととんでもないことになるという話もして、政府部内では十分そういうことに神経をとがらして方策を講じようと、もちろん郵政省、電電公社等も細心の注意を払ってもらっておるわけでございますが、今後とも一まあきょうは関係省の専門家も見えておりますから、十分注意をしてまいりたい、さように考えております。
  118. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣、   〔委員長退席、理事宮崎正義君着席〕 お昼も大分過ぎまして、おなかもすいてらっしゃると思うのですが、私のおなかもすいてるのですが、きょうはお昼抜きで審議を続けるということになっておりますので、審議を続けさしていただきたいと思っております。  まず、この逃亡犯罪人引渡法の問題でありますが、政府のこの法案提案理由の説明の中に、いわゆる国際犯罪が最近増大をしたこと、犯罪者の国外逃亡事例がますます多くなっていること、まあこういう今日の情勢がこの改正法案提案する理由として説明されております。まさにそのとおりであろうと思うのですが、具体的に法務省は最近の事例として、どういう事案に着目されておられるのか。この具体的な中身となっている事例でございますね、たとえばどういうものに着目されておられるのでしょうか。
  119. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいま御指摘のように、いわゆる国際犯罪が非常にふえておることは事実でございまして、まず第一にわれわれとして、わが国から外国へ出ておると思われる犯罪人、これを引き戻すためには相対的に私どもの方からも引き渡せるようにしなければならないと、こういう要請があるわけでして、そういう点から考えますと、まず第一にハイジャッカーあるいはそれによって釈放された凶悪犯、こういう者を何とか探し出したいということがございます。  それからもう一つは、今後あってはならないことでございますが、ロッキード事件に見られるようないわゆる国際間にまたがったいまわしい事犯というものもあるわけでございます。  それからさらに、日本人の海外渡航が自由になっておりますので、犯罪を犯した者で刑を免れておる者、これを探していきますと、どうやら外国へ逃げたらしい、こういうものも枚挙にいとまがないわけでございます。そういう者を一生懸命探しておるわけでございますが、ICPO等の御協力を得て探し出してこれを連れ戻してくる、こういうようなことをぜひやりたい、こう思っておる次第であります。
  120. 橋本敦

    ○橋本敦君 いま刑事局長がお答えになりましたように、まさにその点は私どももそう思っております。私ども共産党といたしましても、日本赤軍を中心とするような凶悪なハイジャック等の国際犯罪を徹底的に取り締まる必要があるという観点から、こういった過激派分子の海外への流出を可能な限り阻止する、そして流出した場合は犯罪人引渡法を早く改正をして、そして彼らを厳重に処断をして取り締まりを強化する、こういったことが必要だということをダッカハイジャック事件以後も強く主張してまいりました。そういう観点から、この引き渡し法には賛成の立場をとって質問をするわけであります。もちろん、いま御指摘のロッキード事件等のああいったいわゆる多国籍企業、国際的にまたがる醜悪な贈収賄犯罪、こういったものもあるわけであります。  そこで、私はこの法案成立するということに当たって大臣にお伺いしたいのですが、この法案成立したことによって、たとえばあのダッカハイジャック事件、こういったことの取り締まりやこの法の運用が具体的にどう進むであろうか、具体的な展望なり、そしてこの法案を運用して国際的な過激派集団は断固取り締まるというその方向にわが国が大きく一歩踏み出せるという展望が具体的にどこにあるだろうか、そこのところの御決意を伺いたいと思うのです。
  121. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 具体的な措置等については、専門家である刑事局長の方が適当だと思いますが、まあ全般的な問題として、御承知のようにこれは提案してありますように、この二国間条約がないところでも相互主義をとってやれる方法等も講じておりますから、積極的に運用をして諸外国との連絡をとって目的の達成をしたいと、かように考えております。
  122. 橋本敦

    ○橋本敦君 あのダッカハイジャック事件が起こりました、その直後に大臣は御就任になりました。そのときに大臣の所信表明として国民から注目されたのは、多少の血を流してもあのような過激派集団の法秩序破壊の暴力は許さないというかたい決意を大臣はお示しになりました。もちろんそういう決意はいまもお変わりないと思いますし、日本赤軍というような過激暴力、われわれの言葉で言えばにせ左翼集団ですが、こういった凶悪な犯罪に対しては断固として厳しく追及するという姿勢は大臣はいまもお変わりないと思いますが、念のため一言伺いたいと思います。
  123. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私が就任直後の新聞記者会見における発言が、受け取り方によっては非常にとんでもないこと言うやつだという受け取り方をされた方もおるし、ショッキングな発言のようにも見えたかもしれませんが、私はいまも信念は変わりません。やはり民主主義社会においては、議論がどうであろうと思想がどうであろうと、これはもう問題ありませんけれども、暴力によって自己の主張を通すということであったら社会というものは成り立たないと、私はそういう考えを持っておりますから、これはあくまでも断固として排除する。やむを得ない場合は血を流してでも排除するという決意がなければそういう社会は守れないと、今日でもそういう決意に変わりはありません。
  124. 橋本敦

    ○橋本敦君 この犯罪人引き渡し条約関連をしていわゆる政治犯の引き渡しをしないという、これは非常に大事であります。しかし、彼らが、いわゆる日本赤軍等がいかに言葉で革命的な言葉を使おうとも、そしてまた彼らが革命的な宣伝をいかにしようとも、彼らの行っているこういうハイジャックというような、あるいは成田闘争にも見られるような管制塔破壊という、こういった暴挙ですね。こういったことについては、いわゆる政治犯には該当しないという考え方が今日国際的にも通用しているはずだと思いますが、その点、法務省の御見解は刑事局長いかがですか。
  125. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 申し上げるまでもないことかと思いますが、政治犯罪というのを講学上分けまして、絶対的な政治犯罪と相対的政治犯罪と、こういうふうに言われております。相対的政治犯罪というのを非常に広く解しますと、政治目的を達成するために犯した行為ならば何でも政治犯罪だと、こういうことになると思うわけでございますが、最近の国際間の認識は次第に改まっておりまして、いかに政治目的を口にしておりましても、その行為の破廉恥さ、こういうものに着眼してその破廉恥性の非常に大きいものにつきましては政治犯罪とはみなさないというのが現在の国際的な大方の合意になってきておると思います。条約上も国際慣例上も、政治犯罪であるかないかということを認定する最終権限はそれぞれの国にあるわけでございますが、やはりそういう国際間の共通認識というものを十分尊重して解釈をすべきものであると思います。わが国立場としても、御指摘のようなハイジャッカーとか、あるいは管制塔へ乱入して非道の限りを尽くしたあのような者はいかなる目的を唱えましょうともこれは絶対に政治犯ではないと、こういうふうに思っております。
  126. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで警察当局にお伺いをするのですが、いわゆるあのダッカハイジャック事件で実行犯の五名のうち四人までは手配済みである。それから釈放犯のうち六人はすでにICPO国際刑事警察機構を通じて各国手配済みであるという、こういう御説明をいただきました。実行犯五人のうち一人が残っているのはどういう理由か、それからもう一つは、この手配をしたのはいつごろであったか、この点だけ一つまず最初に明らかにしていただきたいと思います。
  127. 水町治

    説明員(水町治君) 残る一名につきましては捜査をいたしましたけれども、まだ特定ができておりません。
  128. 橋本敦

    ○橋本敦君 いつごろ手配をなさったか、時期ですね。
  129. 水町治

    説明員(水町治君) 手配につきましては、本年の一月に国際手配の要請を行っております。その後、正式に手配書となりましたのは、三月の時点でございます。
  130. 橋本敦

    ○橋本敦君 この手配はいわゆる赤色、青色ございますね。どちらの種別に属しますか。
  131. 水町治

    説明員(水町治君) 青色の手配でございます。
  132. 橋本敦

    ○橋本敦君 赤色の手配ということになりますと緊急逮捕ということに近づくわけですが、赤色の手配ということに至らない理由は具体的に何かございますか。
  133. 水町治

    説明員(水町治君) 赤色手配青色手配の区別でございますが、赤色手配は相手の警察に対しまして逮捕を要請するということになるわけでございます。それから青色手配の場合には情報の照会でございます。  さて、赤色照会をする、赤手配をするということになりますと、どうしてもこれは相互主義という問題が起きてまいります。したがいまして、今度外国から日本に対しまして赤手配が、まあ現在もございますけれども、それに対してこれを逮捕するというような義務を課せられはしないかと、こういうような問題が若干ございますので、いまのところ赤手配は差し控えているような次第ございます。
  134. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点はそれとして、問題が私はあり得ると思うのですが、おくとして、いわゆる逮捕状が当然発付できる状況にこれらの犯人たちはあるということは間違いありませんね。
  135. 水町治

    説明員(水町治君) 実行犯の四名につきましてはすでに逮捕状はございます。
  136. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、この実行犯の四名についてはすでに逮捕状があるわけですから、先ほど御説明になりましたように、すでにアルジェを出国している可能性があり、ICPO、インターポールに手配をなさっている。そうすると、ある国に具体的に潜入した可能性があるとすれば、その国に対して今度の法案成立後はいわゆる仮拘禁請求法務省がするという条件ができる、この点は局長間違いございませんか。
  137. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) おおむね御指摘のとおりでございまして、国際間の外交ルートを通して行うことでございますから、当てずっぽうなことではいけまんけれども、ある特定の国へ潜伏する可能性が非常に高いと、そういう確度の高い情報があったと、こういうことになりますと、その国と相互主義保障をすることが相当であるかどうかということを判断した上で仮拘禁請求をすることができると思います。
  138. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで法務大臣、断固としてこういった凶悪犯罪人を取り締まるという趣旨で立法がされ、国会も合意するということで、今後の運用ですが、このダッカハイジャッカーの実行犯が、いま局長がおっしゃったように当てずっぽうではいけませんけれども、具体的にある国に入った可能性が、蓋然性、推定性じゃなくて、可能性がある程度具体的にあるという、そういう情報が入った場合には、局長がおっしゃったように相互主義との関係を考慮して、この法案に基づく仮拘禁請求わが国が行う、そういう方向に向けて検討する御決意はございますか。
  139. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いまいろいろ御説明申し上げましたように、条件が整えば当然やるべきだと、かように考えております。
  140. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで問題はその情報であります。アルジェを出国したらしいという情報警察もそれなりにつかんで国際手配をなさったわけです。問題はどこへ行っているかということです。これについては新聞でもいろいろなことが報道されておりますが、具体的に、これに関する情報というのは具体的につかむ努力を日本の警察はどういうようにいまおやりになっているのでしょうか。
  141. 水町治

    説明員(水町治君) 外国に対する手配あるいは情報収集の依頼の道筋でございますけれども、大きな観点から分けますと二つございます。一つ外交ルート一つICPOルートでございます。外交ルートを通じましてお願いをし、さらにICPOのルートを通じましてお願いをする、こういう形で情報収集に努めておるわけでございます。
  142. 橋本敦

    ○橋本敦君 法務大臣、この情報収集は私は世界百数十カ国全部ということの必要はなくて、捜査当局と相談をすればある程度幾つかの国にしぼられる可能性がある事件なんです。特に赤軍派の行動についてはそうであります。そこでいま御説明のように一つICPOからの情報が入ってくるのを待つ、もう一つ外交ルートを通じていわゆる外務省サイドで情報提供を受けられるように積極的に努力をする、これをやらなくちゃならぬと思います。私はこの法案成立を機に、このダッカハイジャック事件の犯人のその後のアルジェ出国後の情報を入手するように、法務大臣としては警察並びに外務省サイドと積極的な協議を詰めるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  143. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) もちろん、この法律成立いたしますと法律の運用については協議和しなきゃなりませんが、それを待つまでもなく、従来から、いまも警察庁からもお話がありましたが、いわゆるハイジャック犯人、それから逃亡犯人については従来からやっております。公安調査庁等も、細かいこと申し上げませんが、いろいろな手段をもって所在を突きとめることにいま努力しているわけでございます。
  144. 橋本敦

    ○橋本敦君 今後なお一層具体的な努力を政府を挙げて行うという御決意はいただけますか。
  145. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そのとおりでございます。
  146. 橋本敦

    ○橋本敦君 警察に、関連をして伺うのですが、あのダッカハイジャック事件の際にも、あるいはそれ以前アムステルダムを飛び立った日航がハイジャックされた際にも、日本赤軍は海外から声明を発して、いかにも彼ら自身の行為であるかのような宣伝をしておる事実があります。これは警察庁もつかんでおられると思う。その日本赤軍のいわゆる中心人物とされるのが有名な重信房子であります。今度のダッカハイジャック事件が起こった後でも、警察庁はこの重信房子の日本における自宅をハイジャック防止法違反の容疑で捜索をされた。それはあのダッカハイジャック事件が、これがまさに日本赤軍との国際的な組織的共謀関係にあるという、そういう関係を追及するというためになされたものであることは間違いないと思いますが、この重信の自宅に対して強制捜索をやられたその後の捜査経過についてお話いただけませんでしょうか。
  147. 水町治

    説明員(水町治君) ただいま申されましたような捜査を通じまして現在鋭意捜査に努力をしておるわけでございますけれども、現在進行形の捜査の内容でございますので、一応答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  148. 橋本敦

    ○橋本敦君 じゃ具体的な中身は伺いませんが、あのダッカハイジャック事件に関しても重信房子がそれなりに重要な役割りを果たし共謀関係にあったという方向で捜査を進められているという事実はこれは客観的に間違いありませんね、だからこそ捜索されたわけですから。捜査の結果は聞きません。
  149. 水町治

    説明員(水町治君) 私どもといたしましては、関係者の一人というふうに考えまして捜査を進めておるわけでございます。
  150. 橋本敦

    ○橋本敦君 まさに関係者の一人である。しかも彼女が伝えられているように日本赤軍の重要な頭目であるとすれば、まさに重要な関係者であるわけであります。この重信房子というのは一体どこにいて何をしているか、これも、こういった国際的な赤軍の暴力を断固取り締まる上で政府としては注目をしなくちゃならぬと思います。  そこで、この重信房子はああいうハイジャック事件について一体どういうものの言い方をしているだろうか。彼女とのインタビューを報じたある本によりますと、こう言っております。あの「日航ジャンボ機のハイジャック事件に、あなたはどういうかかわりあいがありますか。」という問いに対して「事件と直接関係があったかどうかは、公安警察が調べてくれるはずですから、直接的な答え方は避けたいと思います。むしろ、あの闘争の全体の利益とは何だったのかを、話したいんです」、こういう説明をしておる。否定はしていないです。公安警察が調べるだろうからわかるだろう、みずから調べられることを予知し、そしてそのことを承知の上で、あの利益は何かを説明しよう、こういう言い方をしているわけであります。そしてこういう言い方をしております。あの事件は「日本の一部の人とパレスチナ解放闘争を戦っている人たちとが、一体となって参加してやったということです。」、つまりみずからパレスチナ闘争に参加している闘士であることを自認している彼女が組織的連帯関係をまさに自白していると言わなければなりません。そしてさらに重大なことは、さらに「今後もハイジャックをやりますか。」という質問に対して「それは戦いの中の戦術ですから、必要があったら起きると思います。私たちが考えている革命戦争というのは、常に私たちのほうで時間を選び、場所を選ぶものだからです。」こういう言い方までをしている。いささかの反省もないどころか、相次いで彼らの言う狂信的な革命闘争のためには無謀なハイジャック事件もやるということを広言してはばからないのがこの重信であります。この重信房子があのダッカハイジャック事件の重要な関係者として警察当局の捜査の爼上に上っているというのは当然であります。当然過ぎるほど当然であります。断固やらにゃならぬと思います。  そこで次の問題は、この重信房子が、この本でここまで言っているのは、これはいま環境庁政務次官をおやりになっている自民党の山口淑子参議院議員が「誰も書かなかったアラブ」という本の中で単独インタビューとして報道されている事実であります。そこで問題は、この重信房子がどこにいるかということは、これはほぼこの単独インタビューをなさった政府の政務次官をやってらしゃる山口淑子参議院議員御存じなんです。大臣、あの重信という女はどこにいるかということについて重大な関心をお持ちと思いますが、警察並びに大臣はこの山口淑子参議院議員にその所在をお聞きになったことがおありでしょうか。
  151. 水町治

    説明員(水町治君) 私ども現時点において重信房子がどこにいるかということにつきまして確たる情報は持ち合わしていないわけでございます。
  152. 橋本敦

    ○橋本敦君 現時点でといいますけれども、山口淑子さんが、これがお会いになったのはそんなに遠い昔じゃありませんよ。そして彼らの日本赤軍の拠点が大体推定するところアラブ地域にあるということも、これも人の知るところですよ。そしてこの山口淑子さんは、この問題の重信房子と単独会見をやったということを、これは一九七四年六月十二日付の自民党機関紙「自由新報」、ここで堂々と公にされている問題ですよ。この中で山口淑子さんを紹介した記事として、「李香蘭の名で芸能界へデビュー、現在は、テレビ司会者、海外ルポライターとして活躍。国際感覚にモノをいわせて、元赤軍派の女闘士・重信房子との単独会見をスクープして話題となる。」、公にされているのですよ。この本も公にされているのです。この時点で聞きましたか、この時点で。いまはいいですよ。
  153. 水町治

    説明員(水町治君) この日本赤軍関係犯罪捜査の担当は公安第三課長ございまして、担当ではございませんので、詳細は存じていないわけでございます。
  154. 橋本敦

    ○橋本敦君 徹底的に日本の政府が、法務大臣が御就任になっておっしゃったように、このような日本赤軍の動向を断固許さないということに本当に真剣にやっているなら私は聞いていなきゃならぬと思う。会っている場所もダマスカス、はっきりしているのです。そして、この山口淑子自身は、彼女が出てきたときに十年来の知己のような気がしたという書き出しがら始まって、具体的なインタビューをやっているのです。しかも私は、問題なのは、この山口さんがどういうお考えかこれは別として、大臣がにくむべき許さざるハイジャッカー、こう言った凶悪な犯罪に対して、むしろほ「ほほえみながら、死について語る」、重信房子をいかにも賛美するような言葉をもって称揚されているような、そういう文章になっておる。私はこういったことが政府が今日まで過激派を泳がしてきたという、そういうことだと指摘せざるを得ないのですが、この重信房子に対して自宅の家宅捜索まで行って、捜査の結果によって、いま進行中だとおっしゃいましたが、実行犯と同じように共謀関係の事実が立証できれば、厳格な立証でなくても逮捕状がとれる状況の証拠があれば当然逮捕状がとれる、また請求するという状況に至ると私は思いますが、いかがですか。
  155. 水町治

    説明員(水町治君) 捜査の進展を待って判断をしてまいりたいと思います。
  156. 橋本敦

    ○橋本敦君 可能性があるでしょうと聞いているのです。結果はそれは進展を待ってだけど、逮捕状をとる可能性が出てくるでしょうと聞いているのです。
  157. 水町治

    説明員(水町治君) 現時点で確固たることは申し上げられませんが、捜査の進展を待って判断してまいりたいと思います。
  158. 橋本敦

    ○橋本敦君 断固としてこれをやらなきゃならぬのですよ。いいですか。ハイジャック事件が起こるたびに赤軍の声明を出して、重信房子が、私が指摘したように、山口淑子参議院議員に何のおくびれもなくまたやるんだと、こう語っている事実もある。こういう人物を海外に泳がしておいて日本の警察の威信、法務省の威信が保てるかと。過激派断固国際的にせん滅しなきゃならぬ。日本の威信がかかっているのです。だから、いま警察が家宅捜索までおやりになってやられているのですよ。だから、捜査を、本当に突き詰めて言えば、重信房子に対して逮捕状がとれる可能性があるところまで断固としてやる決意があるのですか、ないのですか。問題はそこですよ。
  159. 水町治

    説明員(水町治君) 捜査につきましては断固として、かつ鋭意実施をしている次第でございます。
  160. 橋本敦

    ○橋本敦君 言葉だけじゃだめですよ。大臣に聞きますが、この重信に対して逮捕状が出る可能性が私はあると見ている。なかったらおかしいですよ。こういうことを言ったり、赤軍がダッカハイジャック事件の後で声明を出したりしているのを見ます。この重信房子に対して逮捕状がとれるところまで捜査がいく可能性があるとすれば、その次は仮拘禁ということを使って引き渡しを要求するということを法務省が決断するかどうかということになってくる。もし逮捕状が出るという状況になったという捜査当局からの報告に接すれば、法務省は断固としてこの重信房子の仮拘禁による引き渡し請求をおやりになる決意がおありでしょうか。
  161. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいま資料を持ち合わせておりませんので、私の記憶で申し上げますが、水町課長よりもあるいは私の方が多少捜査の内容を知っておるかもしれませんが、重信房子には逮捕状が出ているように私は記憶しております。もちろん古い事件の逮捕状だったと思いますが、過去におきます日本赤軍のメンバーが何人か諸外国の協力によりまして日本へ送還されて、また奪還されてしまいましたけれども、それらの取り調べの過程を通じまして私自身がいま記憶しておるところでは、いろいろなハイジャックあるいはアムステルダムの事件でありますとか、そういうものに関して重信房子を共犯と認定するに至る証拠、あと一歩というところまできておったように思います。  また、山口議員警察の方でお聞きになったかどうか存じませんけれども、大体うろうろしておる地域というのはわかっておるわけでございます。問題は、数カ国のうちのどこかにおるという場合に、さてそこへ仮拘禁請求をするかどうかと、こういうことになるわけでございますが、一番の問題は、相互主義保障に適するそれが国であるかどうかと、逆に向こうからこちらへ何か言うてこられた場合に、いわゆる債務の弁済というような形でこれに応ずることができるかどうか、そういう問題がございまして、率直に申しますと、私自身としては何とかいわゆるヨーロッパの国へ立ち回ってくれないかという気がしておるわけでございます。
  162. 水町治

    説明員(水町治君) 重信房子に対します逮捕状でございますけれども、ハーグ事件及び本富士警察署襲撃事件、この両事件によって逮捕状の発布がございます。
  163. 橋本敦

    ○橋本敦君 私がダッカで聞いたから課長がああいう慎重なお答えをなさったと私もよくわかっておりますから……。  そこで、法務大臣、仮拘禁する逮捕状が重信に出ている要件があるとして、いま刑事局長がおっしゃったように、問題は相互主義だと、こういうことになる、相互主義。そこで、私は相互主義というのは非常に大事です。非常に大事ですが、具体的に重信房子が大体中近東地域、ごく限られた数カ国にうろうろしている可能性がこれは具体的にあるのです。数カ国に対して仮拘禁請求をやるという、こういう方向で、大臣さっきおっしゃったように、積極的運用ですよ。こういう方向でそれぞれの可能性のある国について、刑事局長がおっしゃるように、相互主義でいくかいかないか、できるものかできないものか、私はこれは個別的に具体的に検討を開始すべきだと、この法案ができれば、こう思いますが、いかがですか。
  164. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 御承知のように、アラブ地域は非常に複雑な国柄、情勢でございます。でありますから、いま刑事局長が他のヨーロッパ汎諸国へ行ってくれればというようなことを言いましたが、問題はそこでございます。外交ルート等を通じてそれがうまくいくかどうか、もちろん検討したいと思います。
  165. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、その相互主義ということに関連をして、相手がわが国と同じような基本的人権保障あるいは民主的法秩序を持っているかどうか、こういう関係における相互主義ということを判断する——非常に大事であります。しかし、こういう過激派、ハイジャッカーその他の犯人は、往々にして、刑事局長希望をなさろうとも、先進ヨーロッパ諸国へは行ってくれなくて、往々にして後進性の国へ行くのです。そこで、そういうところとの相互主義ということを思い切ってやらなければ、こういった過激集団を日本国に引き戻すということができない場合もある。大臣は多少血を流しても断固やるとおっしゃった、私は誤解しておりませんよ。だけど、相互主義という原則を余り大事にする余りに、仮拘禁の具体的法の運用をやれればやれるという状況であってもやれないというのはいかにも無念じゃありませんか。そこでいう相互主義検討を私は軽々におろそかにするなどとは決して申しませんが、場合によっては具体的個別に検討して相手方から相互主義としてこちらに要求されるということの中身がわが国に、法秩序その他にとって特に不当なものがないと判断すれば、相手が現在民主的法制度、法秩序を仮に持ってなくても具体的判断としてやってよい場合、やるべき場合が私はあり得ると思う。こういう考え方にお立ちいただけますか。
  166. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いわゆる相互主義でありまして、そうむちゃな要求をすべきものでもないし、しないと思いますが、その点を十分検討を進めたいと、かように考えます。
  167. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういう検討を深めて、今後この運用によって赤軍派の絶滅という国民の期待に私は必ずこたえていただけるような努力を警察並びに法務当局に特にお願いしておきたいと思います。  それから、時間もなくなってまいりましたが、私は、こういう「自由新報」が出たり、こういう本が出たら、私どもは関心を持って本当にすぐ読むのです。読むという意味は、重信というのは注目する人物ですから、これはやっぱり私は、山口さんは国際感覚の豊かな、アラブ地域については非常に知識の深い方だというようにこの本にも出ておりますし、そうだと思いますが、今後とも、政務次官としては政府の一員ですから、政府を挙げての対策をとるという上では、これは具体的に山口さんにいろいろお聞きになるということがあってもよいと思いますよ、山口さんに限らないと思います。ただ私が指摘したのは、山口さんの考え方がこのハイジャックを断固取り締まるという立場でない、むしろ慫慂しているという立場で書かれているところに問題があるという指摘をしたのですが、あらゆる情報を集めて今後は積極的にやってもらいたいと思います。  それからもう一つ、金大中事件に関連をして、例の逮捕状が出るところまでいっている金東雲の問題ですが、彼がもしヨーロッパあるいはアメリカ等に行ったという、あるいはまた行くという、こういう可能性が具体的に判断される状況になれば、私はこの仮拘禁という、こういう運用によって金大中事件の解明に一歩踏み込むことが可能になる状況が生まれると思いますが、刑事局長、その点はいかが御判断でしょうか。
  168. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 先ほど原則論で申し上げましたとおりでございまして、ある国に所在をする可能性が非常に高いという確度の高い情報があれば仮拘禁の適用について前向きで検討すべきだと思います。
  169. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで法務大臣、私はこれもまた政府の姿勢にかかわると思うのですが、金在権氏を証人喚問するという問題が予算委員会、ロッキード特別委員会で持ち上がりまして、金在権氏に意思を確認する必要があるという、そういう話が出て、日本の外務省はアメリカ政府を通して金在権に接触をするという、こういう努力をされている。これは新聞でも出ておりますし、国会にも報告があったわけですが、金在権氏がいまアメリカにいるであろうということは私も何度もアメリカに行って調査をしてきておりますが、これはかなり具体的可能性のある問題であります。われわれは、金在権氏もこの金大中事件については重要な犯行グループの一人であるということをかねてから主張して徹底捜査を要求してまいっておるのですが、この金在権氏がもしも金東雲と同じように今後政府が金大中事件を徹底解明する中で有力容疑者であるという、そういうような捜査の結果が出てまいりますと、私は、これはアメリカですから、当然にこれは仮拘禁を堂々と請求していいという、こういう事態に発展するだろうと思う。金在権については刑事局長どうお考えでしょうか。一つの前提がありますよ、犯罪容疑者として断定できる状況に捜査が進めばということです。
  170. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいま御提示になりました前提条件、これが一番問題なわけでございます。要するに適法な令状がこちらで取れるということが前提でございますが、適法な令状が取れて、その時点でやはり金在権氏が米国に在住しておる可能性が非常に強いということであれば、仮拘禁を前向きで考えるべきだと思います。
  171. 橋本敦

    ○橋本敦君 このようにして提案理由説明に大臣みずからが御説明になった最近のハイジャック事件やあるいはロッキードその他国際犯罪の増大、犯罪人の諸外国への逃亡一こういった状況に対応するこの法案としては、これが成立した後の運用はこれは積極的にやるならば、金大中事件も、そして赤軍派の犯行も解明できる系口と方途が見出せる、そういう改正案だとして私は賛成をするわけです。問題は、こういった過激派を泳がせない、あるいは金大中事件の捜査についても政治決着の壁を理由にしてその捜査をなかなか進ませない、こういったことをやらない、政府は断固とした姿勢で徹底的な捜査をあるいは追及をやるという、そういう姿勢が今後はこの法案成立によって一層問われるだろうと私は見ている。この改正案が成立すれば一定の手段ができるわけですから、そういう意味で今後、あのダッカハイジャック事件を含む過激暴力集団の国際的な断固たる取り締まりなりあるいは金大中事件の捜査なり、こういった問題について一層決意を新たに今後政府として断固究明を進めていくという、そういう大臣の所信を伺うことができましたら、私はきょうはこれで質問を終わらしてただきたいと思います。
  172. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど寺田委員にもお答えいたしましたように、政府国民から預かっておる行政の万全を期するため必要だということで諸般の法律案を御審議いただいております。これが国会で認められて、これが成立しました以上は、それを忠実に実行してその期待にこたえる、それだけの責務があるわけでございますから、積極的にこの法律の趣旨を生かす、こういうことに努力をすることでございます。
  173. 橋本敦

    ○橋本敦君 終わります。
  174. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま金大中事件のお話も出ましたけれども、あの問題についても私どももうちょっと捜査、司法共助法制ですか、これを整備する必要があるのではないかというふうに考えざるを得なかったわけであります。ロッキードの場合は、幸いにいたしまして、法務省の御努力である程度アメリカとの間に捜査についての取り決めができたわけであります。あの規定を遺憾なく適用し得たと、大変私どもも満足しておるわけです。金大中事件に関しては日本の検察官警察官がかの地に行って被害者の立場である金大中氏さえも取り調べができない。まことにどうも残念なことであります。なお、あちらから来るところの供述調書、恐らく検面調書も含まれておるのだろうと思いますが、どうもこちらの捜査の結果とは相反するようなものであるらしい。そういうことを考えますと、最近の国際交通の飛躍的発展に伴う犯罪の国際化の傾向ということにかんがみて、これを整備する必要があるのではないかというふうに考えておるのですが、これはいかがでしょうか。
  175. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいまの点はまことに御指摘のとおりでございまして、これまでたとえば、ロッキード事件を別といたしましても、日本赤軍の関係で、オランダの当局あるいはマレーシアの当局あるいはスウェーデンの当局などは非常な協力をしてくれたわけでございます。しかしながら、翻って考えてみますと、それらは事実上の好意的な協力ということでやってもらっておるわけでございまして、将来われわれとしては司法共助と、それから裁判に至るまでの捜査共助、この二つの問題についての国際的な協力体制をもう少し根本的に固めていかなければならないというふうに思っておるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、国際犯罪対策室が発足いたしましたので、ここで諸外国のいわゆる捜査共助、司法共助の受けざらのありようなども十分検討しまして、そうして所要の協定を結ぶなり、あるいは国内法制が必要であればそれをつくるなり、こういうようなこともあわせて検討していきたいと思っております。たとえばその一つに、民事訴訟法には外国への嘱託の規定があって刑事訴訟法にはこれが欠けておると、欠けておるからできないというふうには解しておりませんけれども、やはり姿勢の問題もございますし、そういった点も含めて国の内外、国際的な取り決め、あるいは国内的な法制の整備、こういった問題について諸外国のありようを見ながら鋭意検討していきたい、かように思っておる次第でございます。
  176. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 入管局長はお見えになっておりますか。
  177. 宮崎正義

    理事(宮崎正義君) 速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  178. 宮崎正義

    理事(宮崎正義君) 速記を起こして。
  179. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 時間がちょっとまだ入管局長が来られるまでにあるようですから、刑事局長にお尋ねしておきます。  先ほど米国以外の国とも犯罪人引き渡しに関する条約を現在締結交渉をしておるかということを外務省に聞いたわけですが、しておらない、将来必要に応じ交渉をするという外務省当局の答弁がありましたね。必要に応じたというと、その事態が起きたときということなのか。その必要というのは現在もあるのか、あると考えておられるのか。必要が現実に発生したときにあわてて条約ということは不可能だから、その点をどういうふうにお考えになっておられるのか。ちょっとその点お伺いできれば……。
  180. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 外務省は外務省としてのお立場でお答えになったと思うのでございます。要はむしろ法務省が積極的になるかどうかということで外務省も動いていただく、こういうことであろうと思います。将来の引き渡し条約締結の問題について二つの考え方でアプローチをする必要があると思います。一つは、アメリカのようにその国の国内法で条約がなければ引き渡しは一切行わないという国、これにつきましては、将来何か事が起きましたときに条約がありませんと引き渡しを受けられませんから、どうしても条約を結ぶ必要性が高いと言わなければなりません。そういう国というのは要するに英米法系の国と一口に言えば言えるわけで、アメリカ合衆国のほかにはイギリス、それから私の記憶ではオランダもそうではなかったかと思うのでございますが、そのほかの主な国、特にヨーロッパ諸国、これはそれぞれの国内法で条約がなくても相互主義保障があれば引き渡すということになっておりますから、どうしても条約がなければ引き渡しが受けられないから困るということはございません。しかしながら、私ども考えでは、やはりそういう国との間でも引き渡し条約が結ばれるということは、それらの国との間の協力関係犯罪防止に関する協力関係を深めていくという大きな意味があるというふうに思うわけでございまして、そういう意味でそれらの国とはやはり条約を結んで、緊密に協力体制を整えていくという必要があろうと思います。そうしますことがまたひいては捜査共助、司法共助の推進にも役立つと、かように考えておるわけでございます。ただ、それをやります場合の問題点といたしましては、この日米条約の付表をごらんになってもおわかりいただけますように、国によりまして犯罪のとらえ方が違っておったり、あるいは法制的な手続が違っておったりしますから、まずもってわれわれといたしましては、わが国と深い関係のある国々につきましてその国の法制を的確に把握をする。特に人権保障関係がどうなっておるとか、そういった点についてきっちりと把握をして詰めておくと。その上で具体的には両方の法務省同士でサウンドして、お互いに乗り気であるということになれば外交ルートへ乗せていただいて交渉していくと、こういうことになろうかと思います。ちょうどたまたま日米間の問題につきましては、両者の気合いが、全く偶然と言えば偶然でありますが、合致をいたしまして、わずか二回の条約交渉でまとまったというようなことでございますので、詰めをしっかりやって、相手をよく選んでやれば締結は次第に広がっていくのじゃないかと、こういうふうに思っておりますので、私どもとしてはいま申しましたように、外務省のお立場はそれとして、積極的に締結国を広めていきたいと、かように思っておる次第でございます。
  181. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 入管の局長にお尋ねをするわけですけれども、難民の保護、政治亡命者の保護、これが従来日本の方は非常に消極的であって、国際的な非難をこうむった。そこで、先般ベトナムの難民が大挙わが国に上陸をした。これを機に方針を一歩進めたと。これは先ほど局長から御説明があったわけです。これを百尺竿頭一歩を進めて難民条約に加盟をすると。また、社会党が出しておるような政治亡命者保護法、こういうものをつくる。これは非常に望ましい進歩的な学者が皆指摘していますね。これはどういうふうにお考えでしょうか。
  182. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) 社会党から政治亡命者保護法案が出ておりまして、われわれも勉強させていただいてはおります。ただ、この前内閣委員会で同様な質問がございましてお答えした次第でございますが、要するにことし人権規約を署名しまして、国会の批准を求めるわけでございますが、それでそれに従って国内体制というものがその規約の実施にあわせていろいろ検討を現実的にされると思っております。そういう段階を経まして、次は難民条約に入るかどうかということを真剣にやはり政府として検討する段階になると思いますが、大体先生は保護の方を中心に主目を置いておられると思いますが、人権規約のカバーする面と、それから難民条約のカバーする面というのは非常に重複している面がございますので、人権規約の方で国内体制ができていけば相当難民条約の方はすでにその体制ができているので余り問題がなくなっていく。絶無とは申しませんけれども相当その体制で間に合うのじゃないかと、こう考えて見ておりますが、そういう段階で社会党のいまの案というものは、その段階に来たときにこういう特別立法を必要とするかどうかということが問題になれば検討されると、私は現実、実際の事務的なステップとしていま御説明申し上げている次第でございます。  それからもう一つ国際面から申しますと、実は難民条約というものは、眼目はすでに国内に入った人を国内的にどう扱うかということをたてまえ、主眼点としております。  それからもう一つ、国際的にいま問題になっておりますのは、これから入ってくる人をどうするかという面でもやっぱり国際条約が必要じゃないかということで、これは領土的庇護に関する条約と申しておりますが、これは去年ジュネーブで第一回会議を開催いたしまして、また二回目、三回目の国際的会議が行われると思います。そういう要するに政治亡命者を扱う条約でございます。それが国際条約がまとまりましたところでやはりわが国としてその条約に加盟するか、それから国内体制をどうするかという問題が出てくる。したがいまして、その段階、これがいまのところ、いっとは申しませんけれども、そうなってきたときに国内体制がどうかという現実の問題になると思っております。したがいましてしばらくの間、私は入管当局の立場から申しますと、現行法で十分カバーできると、こう考えております。  ただ、保護という見地は、何も入管の方はただ上陸をして滞在許可を与えるということで、出たいと言えば出国許可を与えるという面が主眼でございますので、やはり個個に生活をしていく面では法務省だけではない、厚生省であるとか各省にまたがる問題がございます。だから、その点で私いまここで御説明する立場にはございませんけれども、少なくとも法務省の入管当局の立場としては現行法で十分賄い得ると、こう考えている次第でございます。
  183. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 前後で局長のお考えはややニュアンスの相違があるような感じがあるのですね。初めのうちは、人権規約に今度は加盟した、したがって国際的なああいうレベルの高い理想を達成するという方向に一歩を進めて国内法の整備をどうするかということも検討しなきゃいけないとおっしゃる。しかしまた一面、現行法でも入管当局の立場で賄えないことはないというふうに今度はまたレベルダウンをしてくる。そういうことでも困るので、つまりやっぱり日本は国際的なレベルまで高めていくと、先ほど人権規約のスト権条項などはイギリスが植民地は適用除外すると、日本を植民地と同じぐらいの、まあいま日本は人権がレベルダウンをしていることがわかりましたけれども、この問題ではやはり国際的な理想といいますか、それを追求しそういう人権を守るというレベルまで日本を引き上げていく。そういう見地から局長のおっしゃった保護、人権擁護、そういう平和な生活をかなえさしていく。そういう面でやはりいまでも関係各省庁で現実に協議をなさっていらっしゃるわけですか、どうなんでしょうか。また、なさっておってそういう方向へ高めていくと、そういう努力はやはりなさるお気持ちはあるのでしょうね。その点を確かめておきたいのです。
  184. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) 私は法務省立場でございますので、各省にまたがることを余り正式に答弁する立場にはないのでございますが、それを前提といたしましてお答えさしていただきますと、もちろんいまさっき申しました人権規約に署名するに当たりましては、法務省が中心となりまして関係各省の間で十分検討をした次第でございます。したがって留保条項が三つばかり出てまいりましたが、それ以外の項目については一応いまのところ現行体制で十分やり得るということじゃなかったかと考えております。したがいまして、全然検討しなかったかとおっしゃられますと、いやもうすでに人権規約加盟に当たって十分各省間で検討はしたと申し上げるわけでございます。
  185. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 何かくどいようですが、その人権規約に加盟をした以上は国内法の整備も必要となるという、そういう御趣旨なんでしょうか。それとももう国内法も現行法規だけで賄えるという、そういう御答弁なんでしょうか。そこら辺をちょっと……。
  186. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) 私は各省を代表して答弁する立場じゃございませんので、関係各省に関することについては差し控えさしていただきたいと思いますが、法務省に関する限りは現行法改正等の措置は必要ないという結論に達しております。
  187. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 じゃ終わります。
  188. 宮崎正義

    理事(宮崎正義君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 宮崎正義

    理事(宮崎正義君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時一分散会      —————・—————