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1978-04-25 第84回国会 参議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午後零時三十九分開会     —————————————    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      鈴木 正一君     上條 勝久君      佐藤 昭夫君     宮本 顕治君     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         中尾 辰義君     理 事                 八木 一郎君                 寺田 熊雄君                 宮崎 正義君     委 員                 大石 武一君                 上條 勝久君                 初村滝一郎君                 秋山 長造君                 小谷  守君                 橋本  敦君                 円山 雅也君                 江田 五月君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君    政府委員        法務政務次官   青木 正久君        法務大臣官房長  前田  宏君        法務省民事局長  香川 保一君    事務局側        常任委員会専門        員        奧村 俊光君    説明員        大蔵省銀行局中        小金融課長    吉居 時哉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○仮登記担保契約に関する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、佐藤昭夫君及び鈴木正一君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君及び上條勝久君が選任されました。     —————————————
  3. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 仮登記担保契約に関する法律案を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 仮登記担保契約に関する法律案ですね、これの第二条の問題ですけれども債権者債務者に一定の事項を通知することが必要になりますけれども債務者住所または居所が知れない場合、よくサラ金業者暴力的追及を免れるために債務者が逐電してしまうというようなことが間々ありますけれども、その場合公示送達でやるのか、また支払いをどうするのか、そういう点、ちょっと民事局長、お答えいただきたいと思います。
  5. 香川保一

    政府委員香川保一君) ただいまの通知が、債務者住所居所が不明の場合には、民法の九十七条ノ二の規定によりまして、公示送達方法によらざるを得ないということに相なろうかと思います。それから債権額通知は、これはやはりその債権を特定させなければならぬことは当然でございますが、その特定の方法としましては、債権発生原因である債権契約名称成立日付でございますが、それと元本とか、利息遅延損害金の定め、こういったものを通知するということに相なろうかと思います。
  6. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 第二条第二項の「債権等の額」を明らかにすると、こういう規定になっておりますけれども、この条文文言によりますと、そのときの債権を明らかにしなければならないということになりますね。これは債権発生原因とか、あるいは元本額、それから累積した利息額あるいは損害金の額、そういうものをすべて明らかにすることを要求しているのか、ただ大まかに債権の総額を知らせれば足りるのか、そういう点どうでしょうかね。たとえば私ども高利貸しに悩まされている債務者の相談を受けることがかなりありますけれども、そういう場合に債務者が証書も渡されていない。それからやみくもに無我夢中で要求される利息を払って、一体いまはどうなっているのか、債権残額が全然わからないというような場合があります。そういうことを考えますと、これはできるだけ詳細にこれを通知することが望ましいわけでありますけれども、この場合の債権を明らかにしなければならないというのがどの程度のことを要求しているのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  7. 香川保一

    政府委員香川保一君) この二条の規定による通知趣旨から申し上げまして、債権者としては単に大まかにトータルの額が幾らというふうなことでは足りないわけでございまして、やはりその債権を特定させるに足りる、いま仰せの債権の、債権契約名称、その成立日付と、それから元本額幾らと、利息幾ら遅延損害金幾らと、そういうふうな内容、明細を通知しなければならぬと、かように解釈いたしております。
  8. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、この条文文言によりますと、必ずしもいま局長がお答えになったような結論が出るか出ないか、そこのところはわからないわけで、それを明らかにしなければ、その通知を無効とするのか、あるいは無効とするほどまでの要求ではないのか、もうちょっとこの条文がそういう点、国民が見てはっきりするように詳細な規定を置いた方が望ましかったというふうに私は考えるのですけれども、どうでしょうかね。これはそこまで局長のおっしゃったようにやらなければ無効なのか、あるいは無効とまでは言い切れないのか、その点どうでしょう。
  9. 香川保一

    政府委員香川保一君) この規定の字句だけから申しますと、債権の額を明らかにしなければならないということでございますが、この二条の通知趣旨というのは、当事者間のそういった債権債務関係を明確にするということ、その通知によって債務者がどのような処置をするかということを考える余裕を与えると申しますか、さような趣旨でございますので、明らかにしなきゃならないということから、私どもは当然解釈上はさっき申しましたようなことになるだろうと。これはなるほどおっしゃいますようにもう少し親切に規定をはっきりした方がいいじゃないかという御意見ごもっともでございますが、これは民法その他の大体こういう関係法律というのは、あるいは不親切で反省しなければならぬのかもしれませんが、一つの技術的な約束と申してはあれでございますけれども、そういう慣例に立っておるものでございますから、との辺のところは、十分この法律成立いたしました暁には一般に周知するようにPRに努めたいと、かように考えております。
  10. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、その無効か有効かの点。
  11. 香川保一

    政府委員香川保一君) 趣旨から申しまして債務者の方で中身がわからぬということでございますれば、これは通知は無効と、無効といいますか、通知がないのと同じ法律関係になるというふうに解釈すべきだろうと思います。
  12. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 できたら詳細なコンメンタールをつくって一般国民に流す。少なくも弁護士会あたりには行き渡るようにしていただきたいと思います。というのは、私は政治資金規正法の解説ですか、あれは自治省から——自治省が出したのじゃなくて個人が出したのでしょうか。われわれが読んでもさっぱり参考にならないですね。読んでも読まなくても同じような、意味のない、内容のないコンメンタールじゃ困るので、やっぱり読んで実務者が、ああこれはなるほどわれわれの疑問点に答えてくれる、参考になるというようなコンメンタールをつくっていただきたいと思うのですが、そういう場合債権者通知したその通知なるものが、内容としてどういうものを要求されているか、またそれがないとそれが無効になっちゃうのだというような具体的な、国民がこれにのっとって抗議をする場合に現実参考になるようなものをぜひつくっていただきたい。それから土地等見積もり価額というのも、私は少なくもだれだれの鑑定結果によるという程度根拠、これはやはりこの通知に記載することを命じた方がよかったと、こういうふうに思うのです。しかし、いまとなればそれもしようかないけれども、単に見積もり価額を、この土地が一千万円と私は見積もりましたということだけを表示すれば足りることになります。そこに鑑定士だれだれの鑑定結果によるということを書かなくても、これは必ずしもその通知が無効になるわけじゃないでしょうから。しかし、それをやはり書いた方が理想的なわけですね。なるほど民法などは、いまなくなっちゃったかもしれない「私権ノ享有ハ出生ニ始マル」というようなあれは、法律家でないとわからないようなああいう書き方だから、なるほど民事局長が、そう親切に書くのは立法技術としてはどうかと言われるのはよくわかりますけれども、なるべく国民具体的行動をする場合の基準というものは簡潔に表示した方が私はいいと思う。そういう意味で、この通知というのも現実にはそうするかもしれないけれども、書留、内容証明郵便によるということを要求した方がよかったのじゃないかと思われるのですが、どうでしょうか。
  13. 香川保一

    政府委員香川保一君) さきの見積価格でございますが、これは、かような立法をいたします一つのねらいは、今日まで不動産価額幾らだと、そして債権幾らだと、だから差額がゼロだとか、あるいはこれしかないというふうな、どちらかといいますと債権者自分に有利なような、したがって見積価額と申しますか、不動産価額は低目に債務者に強要するというふうな傾向は確かにあったと思うのであります。そういうことをやっても、結局この法律案を見ていただきますと、見積価額自身第三者から見ておかしいということに相なりますと、いろいろそこにすんなりとした所有権取得手続がとれないわけでございまして、そういうことになりますと、結局債権者としてはそういうことでできるだけ早く不動産をとって、それを転売して回収するというふうなことが通常考えられる行動でございますけれども、それがおくれるとなると、やはりそれだけコマーシャルベースに乗ってこないというふうなことになるわけでございますから、したがってそこはそろばんをはじきまして、できるだけみんなが納得するような価額通知する方が結局は自分は得だというふうな配慮が働くだろうということを大いに期待いたしておるわけでございます。そういう意味から申しますと、この条文ではなるほど見積価額根拠を示せとは書いておりませんけれども、仮に第三者が見てこれならば妥当だというふうな額を示すといたしますれば、恐らく通常の債権者は、これは商社等の場合でございますればある程度根拠のある価額を呈示いたすと思いますし、高利貸しのような場合におきましても、後の紛争を考えればできるだけ妥当な額を通知することになるだろうと、こういう期待をしておると申しますか、あるいは間接的にそういうことを強要しておることになろうかと思うのであります。  それから、この通知方法内容証明郵便によるべきだというお考えもあるかと思いますけれども、これも結局内容証明によらないときには後で通知があったかなかったか、あるいは通知内容がどういうものであったかということが争いになることが考えられるわけでございまして、したがって債権者がそういう争いを未然に防ぐということでございますれば、恐らく実務的にはこの通知内容証明郵便をもってやるということになろうかと思うのであります。ただ、法律といたしましてそういったことを一つ要式行為として強制するということはいかがなものか。債権者債務者間の間柄によりますれば、何もそういった内容証明郵便というふうなものでなくても争いが防げる場合もあるわけでございますので、それはやはり債権者債務者間のそれぞれのケースに応じて争いが将来起こるおそれがあるならば債権者としては当然内容証明郵便によるということになる。つまり、債権者側に将来のことを考えてさような選択を任せておるというつもりで特に要式行為にはいたしていないわけでございます。
  14. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なかなか要式行為を要求するというのは立法技術としてはちょっとやりにくいのでしょうね。だけれども、できたらやっぱりそういう点国民の無用な争いを防止するという意味でこの法律もできているのでしょうから、そこまで踏み切ってほしかったと私は考えるのです。いまとなればしようがない、修正するほどのことでもないようにも思うからいたし方ないけれども……。  それから、第三条の三項のただし書きを付した理由、これをわかりやすく説明していただきたいのです。
  15. 香川保一

    政府委員香川保一君) 私どものわずかながらの実態調査によりましても、金を借りるときにはどうしても債務者弱者地位に立たされる、そういう関係から、その契約内容というものがどちらかと言えば債務者に酷だとまではいかないにいたしましても、相当不利な契約がされるおそれがあるわけでございます。そういう関係がこの代物弁済等清算の問題になってきましたときに、それに拘束されるということに相なりますと、これは債務者に気の毒でございますので、そこで本文におきましては、以前に、つまり金を借りる際、清算が問題になる以前に、弱者的な立場にある債務者債権者から強要されたか、あるいはそうでなくても不利なことでなされた契約というものは無効にした方が債務者保護には徹底すると。しかし、結局債務不履行になりまして清算段階に入ってまいりますと、今度はどちらかと言えば債務者が決して弱者でないわけでございまして、その段階になってくれば債務者としてはつけ加えて特約をする場合には十分自分の利益を考えて特約するであろうと、もう金は借りてしまって今度は返す方の立場になるわけでございますから。したがって、その段階における契約までも無効にするという必要はなかろうと。それは債務者十分対等立場で処し得ることでございますので、そこまでは法律でもってよけいなおせっかいはする必要はなかろうというのがこのただし書き趣旨でございます。
  16. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはそういうふうな理解もできないことはないのですが、無理にこれを入れる必要がなかったような気もしないではないです。まあしかし、これもあえてこれを取ってしまえというほどの強い私ども希望を持つわけでもないので、この程度にしておきたいと思います。  それから、第五条の第二項「登記利害関係を有する第三者」、これは不動産登記法の百五条であるとか、百五条によって準用されている、あるいは百三十六条だったかな、何かに出てくるけれども、この場合局長として把握していらっしゃるものを具体的に幾つか例示していただければ非常に参考になりますが、どうでしょう。
  17. 香川保一

    政府委員香川保一君) この「登記利害関係を有する第三者」というのは、これも一つ解釈で決まっておることでございますが、つまり仮登記をいたしておりまして、それの仮登記に基づく本登記がされますと、仮登記順位保全の効力によりまして自分権利が否定される、無効になってしまう、そういう立場にある第三者というふうな意味でございます。具体的に申しますと、仮登記がされました後にその不動産について抵当権設定されたとか、あるいは地上権設定されたとか、あるいは賃借権設定されたとか、あるいはその不動産について差し押さえ登記がされた、さような場合が主なこの登記利害関係を有する権利関係でございまして、それは仮登記に基づく本登記がされますと一切無効になってしまう、こういう関係にあるわけでございます。
  18. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、具体的に例示してみていただきたい。
  19. 香川保一

    政府委員香川保一君) ちょっと私の言い方があれだったかもしれませんが、この所有権移転請求権の仮登記というのは登記簿登記用紙中の甲区にされるわけでございます。それがたとえば昭和五十三年の五月一日にされたと。その後でたとえば五月の十日とか十五日に抵当権設定登記がされたとか、あるいは地上権設定登記がされたとか、あるいは賃借権設定登記がされたとか、あるいはまたさらに代物弁済予約による所有権移転の仮登記がされることもございますし、またその不動産競売申し立てによって差し押さえ登記がされるとか、あるいは仮押さえ登記がされることもあるわけでございます。つまり、登記上見まして、仮登記がされた後に登記のされた権利を持っておる第三者を「登記利害関係を有する第三者」と、こういうふうに呼んでおるわけでございます。
  20. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、いま局長がおっしゃった抵当権とかなんとか、設定を受けた者というのは括弧で除かれている。だから、つまり第一項に表示されている者以外の者でどういう者があるかを具体的に例示してほしいということをお願いしたわけです。いま局長がおっしゃった中で、第一項に記載されている者以外の者は賃借権設定を受け登記した者ということを言われましたね。それは確かに一項の方にはないわけで、ほかにはどんなものがありますか。
  21. 香川保一

    政府委員香川保一君) 当該不動産の仮差し押さえ差し押さえ債権者がございます。それからさらに第三取得者、つまり所有権移転登記を受けた者もこの二項に関する限りはそういうものも入ってまいります。
  22. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 第七条の規定は、これは清算金支払いを目的とする債権につき差し押さえ債権者、これはすべて清算金の額について争いのなかったものだけを意味するわけですか。
  23. 香川保一

    政府委員香川保一君) 先ほど御質問出ましたこの法案の第五条の規定によりまして、通知を受けた物上代位権者物上代位権者はこれは担保権者でございますが、これが差し押さえてくることもこの七条の中には入っておるわけでございますが、さような物上代位権者差し押さえの場合には清算金の額について不服がないということだろうと思います。しかし、この七条の規定によります差し押さえ、仮押さえといいますのは、いま申しました物上代位権者差し押さえには限らぬわけでございまして、一般債権者差し押さえてくることもあるわけでございまして、さような一般債権者はその清算金の額について不服があるとかないとかいうふうな立場にはないわけでございますけれども債権者がそれだけ清算金があると、こういうふうに言っておるわけでございますから、少なくともその額に相当する債権はあるということで、一般債権者差し押さえてくるという関係になろうかと思います。
  24. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから第八条の第二項ですね。この債権者の算出した清算金額に他の担保権者が拘束をされ、それの額を争い得ないというのは何かちょっとおかしいようにも思うのだけれども、これを規定した趣旨はどういうことですか。
  25. 香川保一

    政府委員香川保一君) この法案全体を通じてのことでございますが、ある面におきましては債務者保護を徹底させる。しかし、債権者債務者間で事が円満に解決するのにもかかわらず、第三者である当該不動産担保権者がそれはおれは承服できないというふうなことで、現にごたごたごたごたしておるわけでございます。債権者債務者間の間では所有権移転登記についても話し合いができておるというふうな場合でも、結局不動産登記法上後順位の、先ほど申しました登記上の利害関係人に当たる後順位担保権者同意を証する書面を本登記をする際には登記所に提出しなけりゃならない。その同意書をなかなかよこさないというふうなことで、まあ同意料と申しますか、そういったものを取られるというふうなケースがわりあいあるわけでございます。そういうところのやはり実態考えますと、先ほども申し上げましたように、債権者としてはなるべくそういう第三者から文句がつけられないような見積価額を基礎にして清算金通知するということが円満に解決するゆえんでもございますけれども、一方、そういった同意料をさらに取るというふうなことで見積額を、したがって清算金の額が相当であってもいわば同意書をよこさないというふうな債権者をどうするかということも一方でやはり考えざるを得ないわけでございます。そこでこの案といたしましては、通知を受けた額に拘束されることにいたしまして、それについては債務者債権者の間で問題がないなら第三者文句を言う筋合いでなかろう、しかし、その通知した債権額がどうしても客観的におかしいという場合には、みずから競売申し立てをして裁判所の評価によって競売手続の中でその問題の決着をつけるべきだと、かような方法をとっておるわけでございます。  そういうことから、担保権者といたしましては、その清算金の額が相当であるならば、その清算金差し押さえ自分債権回収に充てるわけでございますが、またその清算金の額に不服があるならば、清算金は度外視いたしましてみずからその不動産競売申し立てると、こういうことになるわけでございます。さらにつけ加えますと、競売申し立てられますと、不動産所有権代物弁済で取りたい債権者抵当権者並みになりまして、結局優先弁済権しか行使できないというふうなことになるわけでございます。さようなことになります関係上、先ほど申し上げましたように債権者としては競売申し立てられれば不動産所有権は取得できなくなるわけでございますから、どうしても不動産所有権を取得したいという債権者は、やはり後順位担保権者でも十分納得がいくような清算金の額を提供するというふうなことになる。さようないろいろの面から考えまして、数多くの利害関係人利害を調整する一つの柱といたしまして、清算金の額に担保権者が一方では拘束されるという措置をその一環としてとったわけでございます。
  26. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは差し押さえをしてしまった後では、もうたとえ清算期間内でも競売申し立てばできませんか。あるいは、差し押さえをしてしまった後でも、考えてみたらどうも清算金額がおかしい、債務者となれ合っているのじゃないかというふうな疑いを持った場合にはやはり競売申し立てばできるという理解でよろしいのですか。
  27. 香川保一

    政府委員香川保一君) 差し押さえいたしました場合でも、それを取り下げいたしまして、そしてまだ競売申し立てができる期間内であれば競売の道を選べるということになろうかと思います。
  28. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その場合には競売申し立てを取り下げることが必須条件でありますか。取り下げなくても構わないのですか。
  29. 香川保一

    政府委員香川保一君) 実際問題といたしまして取り下げるでしょうけれども法律的には取り下げないで不動産の方の競売申し立てをしてもそれは差し支えございません。
  30. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 このあたりもひとつやはりコンメンタール実務家参考になるようなものをつくっていただきたいと思うのです。  それから、第十一条のただし書きは何か不用のような気もするけれども、どうしてもこのただし書きが要りますか。
  31. 香川保一

    政府委員香川保一君) これは債務者受戻権を非常に強く保護するということになりますと、ただし書きは要らぬということにもなるわけでございますけれども、しかしやはり債権者の方もその不動産を転売して貸し付け債権回収するといいますか、そういう合理的な計算のもとに働かなきゃならぬわけでございまして、それが受戻権がいつまでも行使できるということになりますと、非常に債権者地位も不安定になるわけでございます。たとえば民法に、類似とまでは言い切れませんでしょうけれども、御承知の買戻権の規定があるわけでございますが、この規定も買い戻し期間を五年に制限しておるわけでございまして、それとの均衡から考えましてもやはり五年間は受け戻しができるわけでございますけれども、それ以上実際経過いたしますと、受け戻しというふうな必要性はほとんどなくなるだろうと、こういうふうなことで買戻権にならったわけでございます。  それから、第三者所有権を取得したという場合は、まさにこれは債権者はその不動産を転売して資金回収を図ったわけでございますので、第三者が取得した場合でもなお債務者が受け戻しの権利が行使できるということに相なりますと、法律関係が非常に錯雑になりますし、また第三者地位を脅かすことにも相なりますので、それはやはり受戻権を制限した方がいいだろう、かような考えでこのただし書きを設けた次第でございます。
  32. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この受戻権というのは、このただし書きがなければ形成権として時効期間は十年ということになるわけでしょう。
  33. 香川保一

    政府委員香川保一君) お説のとおりでございます。
  34. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 また、第三者に移転されてしまった後は受戻権を行使できないという点は、いままでの最高裁判所判例もそういう法理をとってきたようですが、私どもが実際非常に善良な債務者から相談を受ける場合、取り戻してやろうと思って障害になりますのは、それが高利貸しが自己の名義にしてしまった後すぐ他家に嫁入った娘に移転登記してしまう、娘はまたこれ何かなれ合いの第三者の名義に移転してしまう、この善良な第三者の所有名義に移ってしまうような外観を呈しましてどうも追及が非常に困難だという、そういう困難さを覚えることが多いのですが、そういう場合、局長としてはどう考えられますか。受戻権はこれはもう行使困難だと、できないと見て、もうあきらめるほかないですか。
  35. 香川保一

    政府委員香川保一君) それも実際は所有権が移転していないのに、いわゆる通謀虚偽表示等によりまして仮想的に第三者名義にするというふうなことでありますれば、これは第三者所有権を取得したことにならないわけでございますから、したがってその場合には受戻権の行使はなおできるというふうに考えております。
  36. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、法理的にはそれは当然通謀虚偽表示でやれば無効ですけれども、立証がきわめて困難ですね。身分関係があるから通謀だというふうにすぐ結論づけ得るのかどうか、それが結論づけ得るとしても、今度は身分関係のない第三者にいってしまう、しかしどう考えてもおかしい、そんなものを買う能力はないはずだと思うような人間に名義が移転されている場合がありますね。そういうことを考えると、このただし書きの、まあ十年の時効を五年に短縮したのはいいとしても、何とかこの「又は第三者所有権を取得したとき」というのを入れて、それを受戻権のらち外に置いたというのは必要なかったのじゃないかというような感じもしますが、どうですか。やっぱり善良な第三者が実際取得した場合もあるのだから、これは必要だという結論になりますか。
  37. 香川保一

    政府委員香川保一君) この条文は、債務者清算金支払いを受けるまでの間の問題でございまして、実際その債権者第三者に転売するという場合は、これはやはり通常は債権者名義に移転登記がされている場合でございます。で、この法律案では、債務者清算金を受け取るまでは債権者への所有権移転登記に協力しなくてもいいと、つまり同時履行の抗弁権を与えておるわけでございます。しかも、先ほど問題になりましたように、清算期間の前にたとえば委任状とか権利証とかあるいは印鑑証明書を債権者に取られておる、そしていつでも移転登記ができるようになっているというふうな関係というのは、一切これは無効になるわけでございまして、したがってそれを考えますと、第三者に転売する前提として、債権者所有権移転登記をしておるというのは債務者が同時履行の抗弁権を放棄して登記に協力したという関係が通常だろうと思うのであります。そうしておきながらなお債権者が——まあ債権者は、これは不動産を持っていることに意味があるわけではございませんので、金融業者にいたしましてもあるいは商社、銀行等にいたしましても、それを売却して金にかえることが必要なわけでございまして、それをそういったことで換金したときになおかつ債務者受戻権が行使できるとなれば、これは第三者として買う人がいないことに恐らくなると思うのであります。買いましても、いつ受戻権の行使がされることによってせっかく買ったものが所有権を失うことになるわけでございますから、買い手が恐らくないだろうということに通常はなるだろうと思うのであります。そうなりますと、債権者の方はいわば踏んだりけったりのことになりまして、不動産を取ってみたって換金ができないということになりますと、その面での損失が非常に大きくなってまいるわけでございまして、やはりこの辺のところは債権者債務者双方の利害をある線でもって調整するということをせざるを得ないだろうと、こういう考えでこのただし書きを設けておるわけでございます。
  38. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはちょっとおかしいので、これは清算金支払いを受けたときは、もうこれはいいわけですからね。これは債務者としても、一たん清算金支払いを受けてなおかつ受戻権を行使していくことは、この条文によってもできないわけだから。だから、転売して債権回収を図ろうとすれば、債権者清算金支払いをしてしまえばいいわけだから、だからいま局長のおっしゃったような問題は起きないと思うのだけれどもね。  それからもう一つは、ここに規定してあるように、ただし書きで特に「第三者所有権を取得したとき」というのを規定した趣旨は、清算金支払いの弁済をやっぱり受けていないのを前提にして言っているのじゃないでしょうか。どうでしょうかね。
  39. 香川保一

    政府委員香川保一君) そのとおりなんでございます。しかし、第三者に転売するという場合には、債権者の名義にその不動産がなっておりませんと、これは第三者は買い受けが非常に困難でございますので、だから第三者所有権が移転したという場合と申しますのは、債権者債務者から所有権が移転登記されまして、その後のことになるわけでございます。その移転登記債権者名儀にするについて債務者の協力がなければできないわけでございますから、それをこの法律では清算金支払いを受けなければ登記に協力しなくていい、拒絶できるということにしておるにもかかわらず、債務者清算金支払いを受ける前に債権者に名義を移すというふうな場合でございますので、やはり債務者としては何かの事情でそういうことを承知した土で移転登記に協力したということでございますので、余り受け戻しの関係で問題にすることはなかろうと、こういうふうに考えるわけでございます。
  40. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 立法者としては同等な合理的人間が相対峙して、そして取引をするというふうに、それを前提となさるものだから、債権者がすでに登記を取得した以上はそこにやはり債務者の承諾があったのじゃないか、自由なる意思で譲渡したのだから文句を言うべき限りでないというふうにおとりになったのだろうと思いますけれども、われわれが実務を扱いまして一般の市民から相談を受けます場合は、やはり非常に強弱の差があって、あるいは詐欺に至らないような欺罔といいますか、民法によって取り消し得ないようなうまい手段で名義の移転というものをのまされてしまう、そういう場合があるのです。それで困るわけですね。私はこの第三者所有権を取得したときというものを特にここにうたうというのは何か非常に好悪なる債権者によって余り強くない債務者所有権を移転登記をさせられてしまったときの障害になる、そんなふうな感じをどうも消しがたいのだけれども、そういう場合はないでしょうかね、どうでしょうか。
  41. 香川保一

    政府委員香川保一君) こういう法律がないわけでございますので、法律ができてからの実態というものはいまちょっとはっきりと予測を申し上げかねますけれども、少なくとも現在の法制のもとにおきましては、債務者が金を借りるときは確かに債務者弱者立場で相当不利な契約を強要されるということはそのとおりだと思うのであります。しかし、債務不履行になった段階では今度は債務者が協力してくれなければ債権者所有権移転登記は受けられないわけでございますから、その段階になりますと移転登記に協力しないということを武器にして、債務者は決して強者とは申せませんけれども弱者的な地位にはないというふうに考えるのが常識だろうと思うのであります。そういうことから考えますと、現在でも債権者がなかなか移転登記を受けられないというふうなことをおもんぱかって、先ほどもちょっと申し上げましたように、金を貸すときに権利証から委任状から印鑑証明書までとっておるというふうなことが行われてきておるわけでございます。今回の法律案ではそういった事前のことは一切だめだということにいたしまして、この手続を踏まぬ限りは所有権移転の効果は生じないということにいたしておりますので、そういった金を貸す際に将来の登記を容易にする意味でのいろいろの債権者のとる手続というものは一切無視することにいたしまして、そして清算金が支払えなければ債務者は移転登記に協力する義務がないということにしておるわけでございますから、したがって、さようなことに相なりました場合に、なおかつ清算金支払いを受けないで債務者債権者への移転登記に協力するということもあるでしょうけれども、その場合には決して債務者が弱いためにそうさせられるというのが通常だとはちょっと考えられないと思うのでありまして、だから第三者に転売する前提として債権者への移転登記がされるということはそれなりに円満に話がついているということだというふうに考えてよかろうかと思うのであります。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その点の論争はその程度におさめて、あとはまた二十七日ですか、次回にすることにして、きょうは大蔵省の方から来ていらっしゃるのでその方の質問をしたいと思います。  サラ金業者の被害というものは私どもも頻繁に受けますね。最近も子供を岡山に残して夫婦が東京へ来てしまったというのがあるのですね。学校を何とかこちらに転校させるようにしてもらえないかというような、そんな依頼も最近受けたわけです。債権者住所を知られてはまずいというので、私にさえも電話番号だけ教えて住所も教えないというほどの警戒ぶりで、いかにサラ金業者から過酷な要求を受けたかということは想像できるのですが、大蔵省当局としてはこのサラ金業者に対する取り締まり強化について何か新立法みたいなものを考えておられませんか。たとえば許可制にするとか、登録制にするとか、登録制にした上でけしからぬことがあったらもうどんどん登録を取り消して、なおかつ営業を続ける者に対してはかなり厳重な罰則を付するというようなことを考えておられませんか。
  43. 吉居時哉

    説明員吉居時哉君) ただいま御指摘のように、サラ金に関する被害ということは私どもも十分承知をしているところでございます。ところで、そのサラ金に関するいろいろな問題と申しますと、主としまして高金利の問題あるいは暴力的な取り立てといったような問題等々、いわゆる反社会的な行為でございます。したがいまして、こういうような反社会的行為から消費者を保護し、かつ社会秩序を維持するということのために、いま御指摘のように取り締まりをさらに強化するということの必要性は申すまでもないわけでございます。ただ、まあサラ金を含めます貸し金業者の問題といいますのは、実は内容が非常に多岐にわたっておりまして、御承知のように利用者の保護といった問題もございます。あるいは犯罪の防止といった問題もございます。さらにまた庶民金融のあり方といったような問題もございまして、非常に内容が多岐にわたっておる。したがいまして、こういうような多岐にわたる問題につきましてはいろいろな面から検討しなければいかぬというわけでございまして、たとえば高金利の処罰の問題あるいは取り締まり上の問題あるいは行政上の能力をどう考えるかといったような問題等々総合的に実は検討する必要があるわけでございます。  そこで、このような趣旨で昨年九月からこの貸し金業務団につきましては、関係六省庁が集まりまして鋭意毎月勉強会をしているところでございます。大蔵省としましても、この研究会と申しますか、協議、連絡の場におきまして各省と合わせて鋭意これを勉強していきたいと、こういうふうに考えておるところでございます。したがって、いま先生から御指摘ありました現在の届け出制を許可制ないしは登録制にしたらどうかといった、こういった法改正を含む問題につきましても、ただいま申し上げましたようないろいろな観点から総合的にこの研究会の場におきまして勉強していきたいと、かように考えております。
  44. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その関係省庁の会議というのは、毎月一回やるというのですが、どこの省庁とどこの省庁ですか。
  45. 吉居時哉

    説明員吉居時哉君) 関係省庁は六省庁ございまして、総理府、警察庁、経済企画庁、法務省、大蔵省、自治省の六つの省庁でございます。
  46. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは大体いつごろまでに結論が出るのでしょうか。そういう現実の力のない国民ですか、そういう被害、まあ時には自殺、一家心中するような者もあるようですね、新聞紙上で。そういうものをいつまでも放置するわけにもいかないので、ある程度結論を出すめどをつけてほしいのだけれども、衆議院の社会党なんか独自の案を持っているようなんだが、そのめどはどのぐらいに置いていますか。
  47. 吉居時哉

    説明員吉居時哉君) 先ほどお答えいたしましたように、大変内容のむずかしい問題がたくさんあるものでございますから、いま各省庁それぞれ鋭意検討しているわけでございまして、いつまでとなかなか期限を切ることはむずかしいのでございますが、なるべく早くやりたいと思っております。実はこれに関連しまして、このサラ金業者を含めます貸金業者といいますのは、たてまえとしては自由営業でございまして、なかなかその実態がよくつかめていないという点がございます。そこで、まずこの実態がどうなっておるかということを調べることも今後の検討にとって非常に大事であるということで、この関係六省庁の間でもって意見が一致いたしまして、これは近々都道府県を通じまして実態調査を行うということにしております。したがって、この調査の結果も見た上でいろいろ今後の検討を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  48. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは実態調査ができないと対策の立法化というものの作業も進まないわけだけれども、方向としては許可制にいくのか、登録制にいくのか、それとも現状のまま自由にするのか、あるいは自由化、自由と同じような届け出制にするのかと、大体この四つぐらいに考えられますね。自由、届け出、登録、許可制と、こういう四つぐらいでしょう。大勢としてはどちらが有力なんでしょうね、その四つの中で。
  49. 吉居時哉

    説明員吉居時哉君) いま御指摘がございました大きな方向、それぞれにいろいろ問題なりメリットがあるわけでございますが、それらを含めてこの六省庁間の協議、連絡の場でもって勉強していきたいと思っておりますが、ただ、先生御指摘のような、たとえば登録制にするとかあるいは許可制にするといったことも確かに一つの方向であるとは思いますけれども、実はこれはやはり行政能力との関係において考えなければならない問題でございまして、サラ金業者を含めます貸金業者というのは現在約十六万軒届け出数がなされております。もちろんこの中で実際に営業しておりますのはどのぐらいかということは、近く行います実態調査の結果を見た上で判明するわけでございますけれども、いずれにしましても相当の数の貸金業者が存在することは間違いございません。しかも、これらの大多数がいわば個人的な小さな経営でございまして、株式会社組織というのは非常に少ないわけでございます。しかも、これが頻繁に移動をし、またやめたり復活したりというふうなことになっておりますので、なかなかその監督をするということになりましても、非常にむずかしい問題が現実にはございます。したがいまして、たとえばこれを許可制にする、あるいは登録制にすると、こう言いましても、これを現実に行政能力の上からいって可能かどうかといったような問題、さらに行政能力上十分その自信がないのにもかかわらず、たとえば登録にする、許可にするといった場合には、単に貸金業者に箔を与えるだけであって、かえって利用者、消費者というものをミスリーディングするといったような問題も実はございまして、これはかつて昭和二十九年までは、先生御承知のとおり事前届け出制という制度があったわけでございます、営業する前に届けなさいと。そこで若干のチェックポイントがあったわけでございますが、当時約一万軒ぐらいしか貸金業者の数がなかったにもかかわらず、行政能力を超えるといったこともありまして、実はかえって客に迷惑をかけたといった例がございます。現在は先ほど申し上げましたように、その約十六倍、十六万軒になっているわけですから相当の行政能力を要する問題であることは間違いないわけでありまして、この辺の問題も十分考えあわせて、いまおっしゃった問題を考えないと、かえって所期に反する結果になるのじゃないかということも心配されますので、この辺は十分関係省庁の間でもって、かつ実態調査の結果も見ながら慎重に検討していきたいと、このように考えています。
  50. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 貸金業者で苦しめられた大衆から相談を受けました場合に、われわれは支払った利息の計算をして、利息制限法所定の利息を超えるものを元本に算入して、もうこれはゼロじゃないかと、あるいは払い過ぎじゃないかということでその大衆を救う、高利貸しをやっつけるという方法をとりますね。そのときいつも困難を感ずるのは、幾ら払ったかということの全然証明がないことですね。まあ、しようがないから記憶をたどって表をつくらして、そして裁判で勝負すると、裁判官が信用してくれれば勝つと。大体勝つ方が多いけれども、もしその受取があれば一番明瞭なわけですね。ところがもう高利貸しに限って受取を出さないのですね。だから新立法のときは必ずその金融業者は受け取った利息については受取を出せと強要し、それを強制して、そしてそれに反した者はもう処罰するというぐらいなきつい態度をとってもらいたいと私は考えている。これは参考にしてほしいのです、これは希望だから……。  それから法務大臣に最後にお尋ねしたいのは、このサラ金業者の被害というものは、まあ新聞紙上大変報道されるからよく御存じだろうと思いますけれども、これは大変なものであります。法務大臣も弁護士として御相談をお受けになったことがあると思うのですが、これは何らかのやっぱり規制をしていただかないと困るわけですね。いま大蔵省の担当課長のお話では十六万軒もあるし、実態がなかなか把握できないので立法作業というものが非常に慎重を要するということでありましたけれども、これは民事法秩序、ことにまあ利息制限法の関係もありますし、それから大衆の平穏な生活を守るという意味もありますし、これは法務省としても関心を持ってこの問題の解決に御努力願いたいと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  51. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) いわゆるサラ金問題、これはまあ特に近年といいますか、経済がこういうようになりまして、よけい社会問題として非常に少額借り入れの人が困っておると、こういう事情がありますから、法務省といたしましても大きな社会問題として放置できないと、こういう考えでおります。法務省の立場から言いますと、高金利、いわゆる貸金業法の一〇九・五ですか、これを超えたものは罰するとありますけれども、これを罰すればいいと、それから取り立てにあるいは脅迫、暴力を使えばこれは罰すると、そういう事件はたくさんあるわけでございますが、それだけでは足らない問題だと思っておるのです。ただ、先ほど来大蔵省からもお話がありましたように、現在十六万人ぐらいに及んでおるそうでございますが、このまた内容もいろいろあるようでございます、まあ営業といいますか、やり方についても。そこで実態調査をまずしなきゃならぬということでそれを進めておるわけでございますが、それが明らかにならないとどういう対策を講じた方がいいかと、ただ取り締まりだけではいけないと思いますのは、やはり社会生活上一般のいわゆる金融機関以外にこういう少額金融が必要だからこう起こっておるわけでございますから、これを禁止するだけではまた社会生活上逆な弊害が出てくる。でありますから、考え方としては育成といいますか、必要性に応じたいわゆる庶民金融、少額金融の制度もなければいけない。ただそれがああいういろいろな弊害を起こしている、社会問題を起こしておるというところにありますから、今後の検討でありますが、私どもの方でもいろいろ考えて事務当局に命じて積極的にやっておりますが、先ほど来あるいは単なる届け出にするか許可にするか登録にするか、いろいろな方式もあると思いますが、その点は今後の検討にしなきゃならない。ただやはり利用者も気をつけてもらわなきゃならぬわけですけれども、やはり利用者がよくこの金を借りるとどういう結果になるのだということがわかり、判断ができるように貸し金の仕様というものを明確にするとか、それから領収書の話もありましたけれども、返済があったときに領収書を出させるとか、それからもう一つはこういう貸金業をする者についても、やっぱり相当程度の資格要件といいますか、欠格条項も考える必要がある、いろいろな人がおるようでございますから、そういうことを兼ね合わせて庶民金融としてこれを半面育成し、半面弊害を除く、こういう考え方で進めなきゃならない、こういうつもりで十分積極的に検討しております。私はいつも督促している方なんですけれども、なかなか先ほど来説明がありますように、まず実態をつかんでどういう手段、方法がよろしいか細かに各省庁専門家が集まっていま検討してもらっておるわけでございます。  これは余談になって恐縮でありますが、例の不動産業、これも非常に弊害を伴いまして、これは昭和二十七年に、まあ私のことを申し上げて、恐縮ですけれども、議員立法として不動産取引業法をつくったわけでございます。これも相当年月がかかって業界も自粛するところは自粛し地位の向上を図る、信用といいますか、信頼を受けるような業態にしなきゃならない、今日まで続いてきて相当程度不動産業界も信頼を得るようになりました。やっぱりこれと同じことだと思います。ですから、これは何としても可能な限り早くしなきゃいけない、こう考えておることを申し上げておきます。
  52. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最後にちょっと時間あるから一つ。  大蔵省の方で、最近海を渡ってアメリカから庶民金融の会社が上陸して盛えてきたようですが、あれはやはり大体月五分というようなものを月四分ぐらいにちょっと下げているようですね。大蔵省としてはむしろ歓迎しておるのですか、ああいうものを。それとも放置しているわけか。あれはどういうふうに対処しているのですか。
  53. 吉居時哉

    説明員吉居時哉君) 現在御指摘のような外資による消費者金融というものが現在数社日本にあるわけでございますが、それらのいずれも金利は日本の貸金業者の金利よりも低くて、大体いま御指摘のような年利四十数%といったような水準であろうと思います。これらの外資系の消費者ローンの会社、貸金業者が入ってくることにつきまして特段の規制をする根拠もございませんし、またその必要も実はないわけでございます。また現実問題としましては、金利はそのように比較的安い金利でございますので、私どもとしましては、いまのところそのような外資による貸金業者というものを特段排除するというつもりはなく、むしろ入ってくる者についてはそれを認めておるというのはおかしいですが、認める根拠も実はないのですけれども、入ってくることについてむしろそれが契機となって適正な競争が行われれば、むしろいい結果が生まれるのじゃないかというふうに考えております。
  54. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大臣が二時から衆議院の方に行かれるということなんで、私はほとんどが大臣に質問をする予定でいたのですが、きょうは時間が余りないものですから残念なんですけれども、二十七日の日にまた若干さしていただくということで御了承を願って、まずお伺いいたしたいのは、法務大臣として、また国務大臣としまして、わが国は法治国である、こう言われておりますが、そのおのおの各般の基本となる法律が、かたかなのもの、ひらがなのもの、ひらがなまじりのもの、これが特に母法となるようなものに多いというようなこと、これはどういうことなのか、まず私は小学校が何年からひらがなになったか大臣にお伺いをいたして——というのは、この法律の私は参考資料をいただきました。それにこの仮登記担保契約に関する法律関係法律条文というのが列記されております。その中にかたかなの法文が幾つあるか、そしてそれがひらがなの文が幾つあるかということを考えまして、それにこだわるのじゃございませんけれども、非常に六法を読みましても、母法である民法を拝読いたしましても、いまの中学生にはわからないような、読んでいって読めないようなところが随所にあるわけなんですが、こういうふうなことを考えまして、今度のこの法案を提案をなさっておられますけれども、これが本当にオートバイの免許を受けるとか、あるいは自動車の免許を受けるとかといったら、中学生、高校生からもう盛んに受けているわけなんですけれども、そういうものの規則の定めたものによって受けていくようになるのですが、たとえば民法をそのままほんと出して、この民法の例をとると、たとえば、五百三十三条、これはずっと読んでごらんなさいと言ってずっと読める生徒が何人いるかというようなことを考えますと、これは捨てておくべきことじゃないと私は思うのですが、大臣のそのお考えを承っておきたいと思うのです。
  55. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) おっしゃるとおりでございまして、まあ古いといいますか、前の法律は全部かたかなになっておるわけでございます。刑法も民法も、親族、相続は戦後に改正いたしましたからひらがなになっておるわけでございますが、おっしゃられるような実態がたくさんあるわけでございます。現在刑法改正草案をやっておりますが、現行刑法はなかなかそう簡単に読めないと、こういう事情があります。これはもうできるだけ早くひらがなに統一した方がいいことはわかっておるのですが、なかなかこれをまた一挙にやるということも大変な事業でありまして、改正の際にやるというのが現在進められておる実情でございます。おっしゃることはよくわかりますが、できるだけこれは、法律国民のだれもが見てわかるようにつくることが必要でございますから、今後新たなものは全部ひらがなと、こういうことに統一していま進めておるところでございます。
  56. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 小学校はいつからひらがなに変わりましたか御存じでございましょうか。
  57. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) いつからだったかわかりませんが、われわれもかたかなからひらがなを教わって両々、これは日本独特のことだと思いますが、いつからということは残念ながらいま記憶しておりません。
  58. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 新憲法はいつからでございますか、ひらがなになったのは。
  59. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 昭和二十三年じゃないですか。
  60. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私はこんなことをやりとりするつもりではなかったのですが、いずれにいたしましてもまことにいま大臣の御答弁ございましたように、今日の、現在の国民の側に立ってからのやはり法律というものの改正をなさることを考える上から申し上げているわけでありますが、民法一つの例にとりましても、昭和五十一年、法六十六号というところでおしまいになっておりますが、改正されてこれだけ、五十一年までずっと中の一部分を改正し、改正してその部分だけがひらがなになっております。それで母法は全部かたかな。しかも、かたかな読んでいきますと大変なのがあるのですよ。三百二十九条に二項のところにもございますが、ここのところちょっと開いて見ていただきたいのでございますが、局長さん読んで教えてくださいよ。三百二十九条の二項のところを読んで教えてください。
  61. 香川保一

    政府委員香川保一君) 読めとおっしゃればお読みいたしますが……。
  62. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 教えてくださいと言っているのです。
  63. 香川保一

    政府委員香川保一君) 「一般ノ先取特権ト特別ノ先取特権ト競合スル場合ニ於テハ特別ノ先取特権ハ一般ノ先取特権ニ先ツ旦共益費用ノ先取特権ハ其利益ヲ受ケタル総債権者ニ対シテ優先ノ効力ヲ有ス」とそう読むのだろうと思います。
  64. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 局長もそう読むのだろうと思いますとおっしゃるのですが、これをちょっと見ますと、まずと読んじゃうのですね、これ。だけどよく読めばそうじゃありませんけれども、こういうふうなこれは一例でございます。私、いっぱいこういうのを拾い上げてみたのですが、何もほろを探すわけでもない、あらを探すわけでもないのですけれども、やはり言葉というものが、ごろ、語訳というものが、一番われわれの生活に欠くことのできないものとすれば、そういう面から考えていきましても、お考えを長く時間がかかるとおっしゃられておられますけれども、少なくともこれは、ひらがな小学校が二十六年からですから、二十七年たっております。そうしますとゼロ歳の人がいま二十七歳になっております。ですから、それからお考えいただければ明治の私たちの時代はもう大分遠のいていきまして、そういうふうなことの観点の上から私はまじめにこの法文という、条文というものを考え直していかなきゃならない大事なときじゃないか。これは法務省ばっかりじゃございません。したがいまして、法務大臣としてまた国務大臣としてということを申し上げたわけなんでございますが、どうかひとつ大臣もこれに処していかれるという御答弁でございますので、ひとつその点は要請をいたしたいと思います。よろしくお願いをいたしたいと思います。  それでもう大臣結構でございますので、きょうはありがとうございました。  そこで、局長にお伺いいたしたいのですが、この法律案民法その他の特則を定めるものとして立案をされながらその適用範囲というものをずっとお決めになってきておられますが、その関連性、関係性といいますか、そういうことについて御説明を願います。これは法でいきますと一条そして二十条に及んでくると思うのですが、この御説明を願いたいと思います。
  65. 香川保一

    政府委員香川保一君) 御承知のとおり、民法では代物弁済一般規定があるわけでございます。これは債務の弁済にかえて不動産とかその他の財産権を債権者に移転して債権債務関係を決済するという制度でございますが、その民法のそういった本来の金銭債務のかわりにある物を、財産権を債権者に渡して清算するという関係の面から、これが今回御審議願っておる法案民法の特則ということになるわけでございます。ただいまお示しのその二十条の規定がなぜ民法の特則的なものになるのかと、これは民法代物弁済のそういった清算関係というものは、民法規定しております動産、不動産あるいは債権というふうなものに限らず、たとえば鉱業権とかあるいはそのほかの財産権についても当然適用になってくるわけでございまして、そういう関係から不動産につきまして代物弁済関係、仮登記担保契約と一言で申しますればそういうものでございますが、その関係の規制をする以上はやはり仮登録、鉱業権なんかは登録でございますが、その仮登録によってなされる同様のものも同じような規制をしなけりゃ整合性を欠くというふうなことでこの法案ができておるわけでございまして、そういう意味から申しますと代物弁済関係民法の特則と、その大もとのところは民法の特則でございますが、その対象となる財産権については民法が直接規定していないものも入ってきておると、こういう関係になるわけでございます。
  66. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いまお説の中に鉱業権というお話もございましたけれども、先ほど大臣にお話をしておったのですが、仮登記担保契約に関する法律案参照条文の三十五項までございますが、先ほど申し上げましたついでにかたかなが幾つでひらがなが幾つと数だけ数えましたので御参考に申し上げてみますが、かたかなが十二、ひらがなが二十三、合計三十五ということになるわけでありますが、私はこの中の十番目の立木ニ関スル法律とというこのことにつきましてわからないものですからお伺いをいたしたいと思うのですが、この立木ニ関スル法律という法律はどういう法律でございましょうか。
  67. 香川保一

    政府委員香川保一君) 山林つまり土地でございますが、その所有者あるいは山林たる土地地上権設定を受けた地上権者が、御承知のとおり植栽いたしまして、そこでいろいろの樹木を育てるわけでございますが、この土地と切り離してその樹木の集団を担保に入れる方法民法ではございませんので、そこで民法の特例法ということで立木法によりましてその「樹木ノ集団」、これを立木と言っておるわけでございますが、これを抵当権の目的に供することができるということにした法律でございます。
  68. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 過去における判例か何かございますか、いま局長のおっしゃった点について。抵当権だとかあるいは担保だとか、そういうものに対する判例か何かございますか、立木に関するもの。
  69. 香川保一

    政府委員香川保一君) 立木法につきまして判例は幾つかございますが、いま御質問のその判例というのは、たとえば抵当権の効力に関してのことでございますか。この立木の抵当権というのは、抵当権それ自体は民法抵当権と全く同じでございます。と申しますのは、立木ニ関スル法律をごらんいただけばわかりますように、先ほど申し上げました「樹木ノ集団」、これを立木と言っておるわけでありますが、この立木は不動産とみなすというふうに立木法で規定いたしておるわけでございます。したがって、民法における不動産に関する規定が全部適用になると、かような関係になりますので、したがって立木を目的とする抵当権民法抵当権ということに相なるわけでございまして、したがって立木特有の抵当権そのものの内容についての判例と申しますか、これはまさに民法抵当権の判例がそのまま通用しておると、こういうふうな関係になろうかと思うのでありまして、不敏にしまして立木特有の関係から生ずる抵当権についての判例は承知いたしておりません。
  70. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 判例を御存じないとすればいささか私は質問に困るわけなんですが、たとえば、甲という人が土地を持っておりました。乙という人が植林をしました。その植林をした乙という人が借りているわけですから、そしてその一部を売却した。三分の一なら三分の一売却をした。三分の二はやはりそのまま立木としてある。その伐採をして三分の一を売却した。残った切り株というものはどういうふうになりますか、立木に関係するか。立木には関係ないか。
  71. 香川保一

    政府委員香川保一君) 植裁した樹木を切った後の切り株は、これは立木には関係ございません。
  72. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 その切り株をこのごろ床の間の飾り用として相当利用して、切り株をとることで大分争いが起きておるわけです。じゃ、山火事で類焼を受けて焼けてなくなった場合は、それが担保に入っていた場合はどういうことになるでしょうか。
  73. 香川保一

    政府委員香川保一君) 登記してある樹木の集団が山火事によりまして焼失いたしますと、恐らく根っこは残るかもしれませんが、その場合には立木は滅失したというふうに法律的には解釈することになるわけでございまして、したがって、抵当権は目的物の滅失により消滅したと、こういう法律関係になろうかと思います。
  74. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それは判例もまだないわけですね。まあ局長のおっしゃられているのは、そうなるやもしれないということなんでございますか、そうなるということなんでございますか。
  75. 香川保一

    政府委員香川保一君) そういう趣旨の判例はございませんが、民法抵当権としましては、目的物が滅失すれば抵当権は消滅するということはもうはっきりいたしておりますが、立木についての抵当権につきましてそういう判例はないと思います。
  76. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 先ほど申し上げました切り株が残るわけです。それもその権利というものは生じないということなんですね。
  77. 香川保一

    政府委員香川保一君) その点の判例もないと思いますが、解釈といたしまして、この抵当権は消滅いたしましても、民法抵当権が、たとえば例を申しますと、適当でないかもしれませんが、建物が火災で滅失したと、抵当権がついておりました場合に、その建物の所有者がたとえば火災保険に入っておったというふうな場合に、物上代位という制度がございまして、その抵当権者はその火災保険請求権の上にかかっていけるということになっておるわけでございます。これは民法の三百四条でございますが、これが抵当権に準用されておるわけでございます。あるいは物の関係で言いますと、よく判例がございますように、抵当権の目的になっておる物がそこから取り払われて搬出されるというふうな場合には、まあ判例、学説上いろいろの説があるようでございますが、いずれにしましても、その搬出された物が特定性を保っている限りは抵当権は物上代位で追求できるというふうな点は学説、判例一致しておろうかと思います。それと同じようなことをいま例として挙げられましたその切り株について考えました場合に、抵当権者は、まあ切り株になったものはこれは立木ではないわけでございますけれども、物上代位権の行使がその切り株にできるというふうなことは解釈としてはあり得ることだろうと思いますけれども、立木そのものの中にその切り株が入るということは、これは解釈としても恐らくなかろうというふうに考えます。
  78. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 話は本文からちょっと外れていきますけれども、入会権問題で大分こう抵当権問題だとか担保問題だとかいうことがこのごろ論議されることが多いのでございますけれども、大体私の聞いたところによりますと、裁判所の方は入会権というものをずっと保持していくという形できている。それから自治省の方はなるたけならもうそれを切っていきたいというようなことを伺っているわけなんですが、そういう点についてちょっと御参考に聞かしていただきたいのでございますけれども
  79. 香川保一

    政府委員香川保一君) 民法におきまして入会権を規定しておりますのは、これはやはり民法制定以前からのいわゆる入会林野、山林あるいは原野におきましていろいろ薪をとるとか、あるいは牧草をとるとかいうふうな、人の土地に生育しておるそういった自然生育の樹木あるいは草木につきまして、それを採取する権利が慣行的に行われてきておったという点に民法が着目いたしまして、そういった地方地方における慣習による権利というものを一括して入会権ということで民法規定してこれを物権にしておるわけでございます。ただ、いま申し上げましたように、この入会権の内容というのは、全国的に一つの近代化された統一的な内容のものではないわけでございまして、それぞれ地方の慣習によりまして慣行として成立してきた権利でございますので、その慣行によるその内容民法は尊重するという態度をとっておるわけでございます。したがいまして、いろいろこの入会林野の関係で、大きく申しますれば北富士演習場の入会権というふうなものから、東北とか九州、そのあたりの山林につきましての入会権が相当法律的に論争を呼んで訴訟になっておるというふうな事例も多々ございますが、裁判所はやはり民法に従いまして、その入会権として民法制定以前からどういう形態で成立してきたものかどうかというふうなことを相当苦労して認定してきておるようでございます。ただ、今日におきまして、入会権と言われておっても民法考えておる入会権でないものも相当あるようでございまして、いま例として挙げられました自治省云々のことも、これは私内容をつまびらかにいたしておりませんけれども、現在付近の住民が入会権があるのだと、こういうふうに言っておられる、それは決して民法考えておる入会権というふうな物件でないものも相当あるようでございまして、そういう点が実は一番訴訟になりましてもあるいは訴訟外におきましても問題になる点でございまして、これはやはり私どもといたしましては民法の入会権の再検討と申しますか、そういうことでやはりもう一度考え直さなきゃならぬのじゃないかというふうには思っておりますけれども、やはりこれには相当の準備が要るわけでございまして、ただいまのところいつの段階でこの入会権の再検討をするかということは、法制審議会にもお願いする関係がございますので、ここではっきり申し上げられませんけれども、相当その内容が複雑なものがあっていろいろ解決の困難を来たしておるという実情にあろうかと思います。
  80. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いま御説明がありましたように、ややっこしいものは公有林野が一番多いのじゃないかと思います。それはこの法律の問題と全く関係ないとも言えませんし、先ほどの立木に関する問題につきましても、この中に関係法律条文としての加えられたそのお考えというものを理解をいたしましたけれども、この法律の制定に伴う国税の徴収方法と、それから国税通則法、それから地方税と不動産登記法、これの要するに改正案というものが出ておりまして、ほかのものはいま私が一つの例を挙げた立木に関するもの以外のものもこれはいま申し上げた中に入っていない、改正の中に入っていないものはそういった意味でとらえてよろしいのでしょうか。立木に関する説明がありましたようなことで総体的に考えていいかどうか。先ほどの鉱業権のことをちょっと触れられましたけれども、そういうふうに私受けとめていいかどうかですね。
  81. 香川保一

    政府委員香川保一君) そのとおりでございます。
  82. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 最初に私は質問の順序を立てて質問をする予定でおりましたのですが、大臣のお立ちになる時間がありましたものですから、いきなり変な、姿勢とかというようなことでお話しましたのですが、趣旨説明の中に、一番当初のところですね、「民法によれば、金銭債務を担保する法的手段としては、抵当権がもっとも典型的、かつ、近代的な担保制度でありますが、近時、種々の理由により、」云々とずっと出ておりますが、この「種々の理由」ということについて、どういうものなのか御説明を願いたいと思います。
  83. 香川保一

    政府委員香川保一君) これはいろいろ関係の金融業者あるいは登記の面等からわずかながら実態調査もいたしておるわけでございますが、ここの提案理由説明における「種々の理由」と申しますのは、まず第一は、遺憾ながら抵当権を利用いたしました場合に、債務不履行のときには御承知のとおり競売法によって競売するということになるわけでございますが、この競売法が非常に明治二十三年でございますか古い法律でございまして、先ほどのまさにかたかなの古い法律の最たるものでございまして、これが解釈上いろいろ疑義があって、しかも実際問題として、競売いたしましても、申し立てから競売が完結して配当を受けるまでには相当長期間を要する、それからなかなか競売いたしましても時価どおりに売れなくて、相当低額でしか売却できないというふうな実情にございますので、そういうことから抵当権では十分でないというふうなことが一つ考えられると思います。それからもう一つは、抵当権設定をいたしますと当然その登記をしなきゃならない、この登記に要する登録免許税その他の費用というのが、契約によりまして債務者が負担しなきゃならない、これが比較的高負担になるわけでございます。それに比べると仮登記を使った方が安上がりだというふうなこともあろうかと思いますし、それから仮登記がついておりますと、ここのところが一番問題かと思いますけれども、やはりなかなかいわば実質的な余剰担保価値が利用しにくいという面がある。これは債務者にとっては不利益なことなんですけれども債権者から申しますと、つまり利害関係人が多数出てこないというふうなことがあって、いろいろ話し合いで決済をつける場合に容易だというふうなことも一部にはあろうかと思います。そういったことがここで言っておる「種々の理由」ということでございます。
  84. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 与えられた時間が限られておりますので、先ほど寺田委員の方から、実務家のために、債務者の方にこの法案の徹底をするためコンメンタールをつくってやったらどうかというお話がございますが、これは非常に大事な寺田委員の発言でございまして、私も同じようなことを考えておったのですが、これを国民に周知徹底する方法としてどういうふうなことをお考えになっておられますか、具体的にひとつ御説明を願いたいと思います。
  85. 香川保一

    政府委員香川保一君) この法律成立いたしました場合に、この法律特有のPR方法というのは考えておりませんが、従来私どもの所管の法律が新たにできました場合と同じような形、つまりは内閣法制局の方で出しておられる政府発行の雑誌があるわけでございますが、新しい法律の解説書でございますが、それに要旨を解説して載っけるというふうなこととか、あるいは新聞等におきましてもその面の協力が得られるわけでございますし、またいまおっしゃったような解説書を発行するというようなこともその一つかと思いますが、一番直接関係する関係業界にいろいろ雑誌がございますので、そういう雑誌を利用させていただいてPRする。一般国民に向かってPRする方法というのは、これはなかなか事柄がこういった非常に技術的なむずかしい法律でございますので、これを素人わかりするというPR方法は私ども不得手でございまして、その点一工夫も二工夫も要るかと思いますが、できるだけ、こういう法律ができたことによって債権者債務者が十分この制度をのみ込んだ上で利用していただくというふうなことにつきましてPRに努めたいというふうに考えております。
  86. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そこでお伺いしたいのですが、仮登記担保契約の運行状態といいますか、運行の実態といいますか、その利用の状況、そういうものを調査したことがあるかどうか、仮登記の件数、そういうものがおわかりになるかどうか、先ほど言いました利用状況に対する抵当権の対比を不動産登記の統計等によって説明を願えればいいと思うのですが。といいますのは、先ほど申し上げましたように国民に周知徹底するためには、いろいろな角度で裁判があるわけです。したがって容易に統計もとれないのじゃないかと思いますし、またその件数もなかなか調べることもできない。それだけに、国民の中に根を張った債権債務の問題担保の問題、抵当権の問題とか仮契約、仮登記の問題ということは、複雑怪奇な、生活の中に根をおろした問題がいっぱいあるわけなんですから、したがいまして、どれだけの登記の件数があるか、そういったものをお知らせ願えればありがたいと思います。
  87. 香川保一

    政府委員香川保一君) 調査いたしましたのはちょっと古いのでございますが、つまりこの仮登記担保法案の制定を私ども準備いたす初めの段階実態等調査をいたしました関係でちょっと古いのでございますが、申し上げますと、仮登記がされておる件数は、昭和四十三年度で三十八万九千件、昭和四十四年度で四十一万八千件、昭和四十五年度で四十二万五千件、昭和四十六年度で四十一万四千件。これに対比いたしまして抵当権設定登記がされておるものを申し上げますと、抵当権昭和四十三年度が百五十七万五千件、昭和四十四年度が百七十三万一千件、昭和四十五年度が百八十三万九千件、昭和四十六年度が二百二万八千件、かような数字になっております。  利用状況と申しますか、これもただいまおっしゃっていただきましたようになかなか実態はつかめないのでございますが、私どもその一つ方法としまして金融関係の業界に集まっていただきましていろいろお聞かせ願った調査がございますが、それをちょっと御披露いたしますと、一般の市中銀行は全くこの仮登記担保というふうなものは使っていないようであります。それから相互銀行の関係、これはやはり、従来は使っておられたそうでございますけれども、根抵当立法成立してからは余り利用されていない。さらにこの仮登記担保に関する最高裁の判例が昭和四十二年に出まして、それ以来いろいろ問題がございますので余り使っていない。それから信用金庫関係も大体相互銀行と似たようなものでございます。結局わりあい使っておられるのは商社関係。これは御承知のとおり、商社がいわゆる系列化したいろいろの中小企業があるわけでございますが、そういう系列にある中小企業に対するいろいろの形での融資をする際にわりあい使っておられる。たとえばガソリンスタンドについて融資をするというときに、そのガソリンスタンドは自分の系列化において、だれが営業主であろうとも、その場所においてある石油会社なら石油会社のガソリンスタンドとして置いておきたいというふうな関係がある。あるいは薬屋等にもそういうことがあるようでございます。そういういわば系列化をそのまま続けていくというふうな意味で仮登記制度を使っておるものが相当あるようでございます。それから何と申しましても多いのはいわゆる町の金融業者でございまして、これは不動産を担保に取るときには抵当権と併用するかあるいは仮登記だけでいくか、いずれにいたしましても仮登記を相当便っておるというふうな実態でございます。
  88. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうしますと、これの中に金融業者とか商社とか、そういうものの件数というのはお調べになっていないわけですか。こういう金融業界とのお話し合いを進められて今回の法案も大分煮詰めておいきになったのじゃなかろうかと思うのですが、その際にいまのようなお話がどれだけぐらいの件数を握っているか、掌握をされておられますでしょうか。たとえば商社ですとスタンドだとかいうようなお話もありましたけれども、私どもの実際の現場でいろいろな問題を持ってこられるので、まだずいぶんいろいろなことがあるわけなんですけれども、たとえば牛乳メーカーなんかもそうなんですが、いつの間にかそのメーカーのものになってしまう。最初は個人が冷蔵庫なら冷蔵庫を入れるという契約をやって、お金を借りながら——自分のものになるからといって商売を始めさしておいて、そして一番ネックになるのは牛乳びんの回収というものに手が届かないために、牛乳の問題にすれば一番大きなそれらの問題、空びんなんかが回収率が悪かったということでだんだん赤字に追い込まれる、また顧客をふやしていけなかったというようなこと等で倒産に追い込まれていくようになって、いつの間にか名義が変わってそのメーカーの名義になってしまうという例もずいぶん聞いているのですが、そういったような関係等で件数がおわかりになれば幸いですが……。
  89. 香川保一

    政府委員香川保一君) まことに申しわけありませんが、個々の関係での件数等は調査いたしておりませんので、全くわかっておりません。
  90. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 仮登記の問題にしましても四十六年までお調べになって、抵当権の問題も二百二万八千も四十六年にあるというような実情で、これを調べるなんといいますと大変なことだと思うのですね。えらいことだと思いますが、先ほど申し上げましたように、要はこれだけ、仮登記にしましても四十六年が四十一万四千件等あるわけでございますし、特に五十三年になるまでの間というものは相当の経済の変遷が行われてきておるのですから、私はもう膨大なものだと思うのですが、それを端的に言えば処理をなさって御苦労なさっているのだということにもなるわけでありますが、ともあれ、こういうわけで、周知徹底ということは、いままでの決められたようなコースで定型的なものじゃなくて、もう少し具体化したやさしい解読書をつくって、漫画入りにでもして、わかりやすく掲示をしてあげるというような行き方等を考えていかれれば、いまのような悩んでいる方たちが解決をしていくのには非常に近道になるのじゃないか、このようにも思うわけですが、いかがでございましょうか。
  91. 香川保一

    政府委員香川保一君) この法律関係もお説のようにいたしたいと思いますが、先ほど寺田委員の御質問で出ましたサラ金の関係での利息制限法のPRも実は私どもはなはだ努力が足りなくて、どうしても私どもが書くものというのは書き方がへたなことで、なかなかおわかりいただけない、またそれをおっしゃるように漫画を入れたり、いろいろそういうことをする能力もございませんので、そういう専門家にひとつ知恵を拝借して、できるだけPRに努めたいというふうに考えております。
  92. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間がございませんので、三十五分までだというのですから、お伺いしても時間が回答を入れますと終わってしまうので、きょうはこれで私の質問をやめます。あと四分残っておりますけれども、終わりにします。
  93. 円山雅也

    ○円山雅也君 まず、いただきました資料の、この法案の第一条「この法律は、金銭債務を担保するため」というふうに印刷になっておりますけれども、これは「金銭債務」というのはミスプリントではございませんか。
  94. 香川保一

    政府委員香川保一君) 民法では、この担保の関係では債務を担保するという用語になっておりまして、したがって「金銭債務を担保する」というのはこれで正しいのだと思います。
  95. 円山雅也

    ○円山雅也君 やはり、いただきました資料、たとえば政府の方の逐条解説でも、第一条については、いきなり「金銭債権を担保するため」という御説明になっているし、それから最高裁の大法廷判決も判決理由では金銭債権の満足を確保するため、それから要旨が金銭債権担保、その他小法廷判決も全部金銭債権担保という言葉に、表現に統一されている。そうしますと、どうしてわざわざいまの、それこそ宮崎委員が古いあれを直さなきゃいかぬ、大臣も古いのを直さなきゃいかぬと言っておられるときに、たまたま古い抵当権条文に金銭債務を担保するという表現が使われておったからといって、多分それを根拠にこれも金銭債務にされたのだろうと思うのでございますけれども、こだわらなきゃいけないのでしょうか。債務担保というのはいまの表現ではいかなる意味でもおかしい、矛盾ですわね。債権担保ならば考えられるけれども、債務を担保するというのは何を担保するのですか、その点どうでしょうか。
  96. 香川保一

    政府委員香川保一君) これは私自身が古いためかもしれませんが、私は民法の、債務を担保するという用語は正しいと思っておるのですが、これはしかし、現在、お説のように最高裁の判例でも債権担保、学者の書物も債権担保というふうな使い方が非常に多くなってきておりますが、これは担保というのはつまり債権者側から見るか、債務者側から見るかによって、つまりそれだけの債権担保と言うか債務担保と言うかの使い分けが出てくるのだろうと思うのであります。たとえば保証人の場合の保証も、これは民法自身は保証というのは、これはいわゆる人的担保といわれるものでございますが、これは保証人を、一般的には保証人を立てるというふうに言っておりますが、これは債務者から見た言い方だろうと思うのです。本来、担保はつまり債務者が提供する性質のものでございまして、そういう意味から言えば、自分が債務を払えないときにこれで担保いたしますというふうなことが本来の担保なのでございまして、まあ理屈を申し上げてはなはだ恐縮でございますが、そういう意味から言うと、民法の、債務を担保という言葉が私は正しいのだろうというふうに思っておりますけれども、これはしかし、別に債権を担保と言ったからといって間違いということでもございませんが、民法の特例でございますので、民法が変わりますればもちろん変えていいことでございますけれども、いまのところは民法に従っておるというだけのことでございます。
  97. 円山雅也

    ○円山雅也君 これはもうしっこくは申しませんが、ただ、せっかく政府側の解説書も債権担保、最高裁も債権担保とみんなせっかく統一しているのに、わざわざ新しい法律にわざと古く、何かこれだけ一つまた残すというのもちょっとなにかと思いましたのでお尋ねをした次第です。特にこだわりません。  それから第二条ですけれども、第二条、二ページのところですが、この通知ですけれども、「その契約の相手方である債務者又は第三者通知し、」という、この「又は」ということなんですけれども、「又は」となりますと、つまり債務者が担保提供者のときは債務者だけでもよろしい。それから物上保証人つまり第三者が担保提供者のときは第三者だけ、その担保提供者だけに通知すればいい、債務者には要らないのだという意味でしょうか、この「又は」というのは。つまり、「及び」ならば両方、債務者も担保提供者も要らない……。
  98. 香川保一

    政府委員香川保一君) これは、第三者と申しますのはいわゆる担保提供者のつもりでございますが、これは民法流の言葉でございます。だから、この二条の通知関係はまさにその不動産のいわば所有者、担保提供者だけでいいわけでございますから、債務者か担保提供者であれば債務者だけ、第三者が、債務者以外の者が担保提供者であればその第三者だけ、こういう趣旨でございます。
  99. 円山雅也

    ○円山雅也君 たとえば、確かに担保処分の通知だけならばそれでいいと思うのです。担保提供者にだけでもいいと思う。清算金やなんかを含むのだから、通知が、担保提供者だけにやっておいたら債務者は全然わからないから、清算金がいいとか悪いとかの当否も担保提供者にはわからぬのじゃないでしょうかね。債務者にも同時にやっておく必要がないとお考えになった意図はどうなんでございましょうか。
  100. 香川保一

    政府委員香川保一君) この関係はまさにその所有権を取得する要件を規定したものでございまして、したがってその対象の目的物のその所有者、つまり担保提供者を相手にして通知をすればいいと。お説のように、確かに担保提供者と債務者が違います場合に、清算金等の関係はこれは担保提供者の方にいくわけでございますけれども、債務の内容、先ほど寺田委員の御質問ありましたような債権の額というふうなものになってきますと、必ずしも担保提供者が熟知しているわけでもない関係があるわけでございます。もちろん、そういうときには人の債務のために担保を提供しているものでございますから、当然通知債権者から参りますれば債務者にその点を確認して処置をするというふうに行動するであろう、こういうことを期待しておるわけでございます。
  101. 円山雅也

    ○円山雅也君 わかりました。その「又は」というのをちょっと確認したかっただけでございます。  それから、同じく第二条の第一項の一番末尾の「二月を経過しなければ、その所有権の移転の効力は、生じない。」という意味ですが、これは裏返せば、逆に二ヵ月たてば一応実体的な所有権は移るというふうに解釈してよろしいのでしょうか。
  102. 香川保一

    政府委員香川保一君) 一般的にはそうなんでございますけれども、それなら、なぜ、こう持って回ったような書き方をしたかと申しますと、これは後であるいは御質問があるかもしれませんが、三条二項で清算期間前の特約で債務者に不利なものは無効というふうにしておるわけでございます。この法律ができました場合に、この通知が到達してから、たとえばその三ヵ月日に所有権を取得するというふうな特約がされました場合に、これは債務者にはむしろ有利というふうに考えていいと思うのであります。そういう場合もございますので、少なくとも二ヵ月たたぬと所有権移転の効力は生じませんよということだけを書いたと、こういうふうなきわめて技術的な書き方でございますので、あるいはわかりにくいかもしれませんが、そういうふうなことも含めまして裏から書いておると、こういうことでございます。
  103. 円山雅也

    ○円山雅也君 そうしますと、たとえば普通の民法の理論でいけば予約完結の意思表示や何かをすれば普通、所有権契約がしてあるのですからね、そのときに移るという、だから移っちゃう。じゃ普通の民法の理論のそのままで解釈しておけばいいのですね。ただ、たまたま移る時期が二ヵ月ということですね、延びるということですね。
  104. 香川保一

    政府委員香川保一君) ちょっと私の言い方があるいは不正確だったかもしれませんが、金を貸す際の契約におきまして所有権移転の時期を決めておりました場合には、これは二条一項の「その契約において所有権を移転するものとされている日」、これに当たるわけでございます。これが決まっておりまして、そして通知をすると。しかし、その際に債権者債務者間で、法律通知してから二ヵ月たったところで所有権移転するということになるわけだけれども、その債務不履行になってからの話でございますが、通知が到達してからいろいろ話し合いをして三ヵ月日に所有権移転することにいたしましょうというふうな特約がこれはあり得るわけでございまして、それを特に禁止する必要もないわけでございまして、そういう場合を込めましてこういう書き方にしておけば大丈夫だという趣旨なんでございまして、非常にこれは持って回った表現だと思いますけれども、そういう内容でございます。
  105. 円山雅也

    ○円山雅也君 そうしますと、いずれにしても二ヵ月たって所有権が移ったといたしますね、実体的な所有権が。そうすると所有者に残されているのは、債務者に残されている方のは、三条の二項で清算金と引きかえに、登記、引き渡しは清算金と引きかえの同時履行の抗弁が残されるわけですね。そうしますと、同時履行の抗弁だけが残っているという前提で考えますと、もしその時点で債権者がたまたま、寺田委員や何かが御質問になりましたけれども、たまたまその登記書類を預かっているので自分名義にしたとします、勝手に登記を。そうすると実体的な所有権はあるのだから自分名義しようといいだろうと。登記はできました。そうするともちろん同時履行の抗弁がありますね、債務者の方に。そこで、そうすると同時履行だけで保護されている関係なんだから、登記を勝手にしちゃうとその登記は一体絶対無効なんでしょうか、それとも同時履行の抗弁権に何か、その登記の効力ですがね、たとえば受け戻し権で保護される、後は保護すればいいのだということなのか。つまり勝手に登記した場合、二ヵ月後ですもちろん、その登記の効力は絶対無効、従来どおりの理論で何か、無効なのか、でも同時履行だけなら無効にならないのじゃないか、その辺のちょっと登記の効力につきまして。
  106. 香川保一

    政府委員香川保一君) この法律に従いまして通常の場合は通知した日から二ヵ月たったところで所有権の移転の効力が生ずるわけでございますから、その以後に前もって預かっておった書類を利用して移転登記をいたしましたときに、そのときはその登記の効力はこれはあるわけでございます。所有権が実体上もう移転しているわけでございますからあるわけでございます。
  107. 円山雅也

    ○円山雅也君 そうすると、その同時履行の抗弁権は後損害賠償か何かで救済されるのですか。つまり登記が有効になっちゃいますとね、その登記が有効ならば債務者としちゃ損害賠償か精算金の請求権かまたは受け戻し権か、それしか残らないのでしょうかな。
  108. 香川保一

    政府委員香川保一君) これはつまり登記の効力いかんという点から申しますと、手続的にどのようであっても実体上所有権債権者に移っておってそして、それを反映する登記がされたということになれば、これは実体に合っている登記でございますから有効だと言わざるを得ないわけでございます。ただこの法律考えておりますのは、二ヵ月を経過しなければ所有権が移転しないわけでございますから、その以前に預かっておる書類で勝手にその登記をやっていればこれは絶対無効ということになるわけでございます。これは実際この二ヵ月と申しますのはいろいろのことを考えてのあげくではございますけれども、私どもとしましては大体高利貸しの、町の金融機関の貸借の場合でも最低一月が多いわけでございます。それ以下になってまいりますと不動産を担保に出すというふうなことはおよそないわけでございます。御承知のとおり登記をいたします前には印鑑証明書が要るわけでございますが、これが有効期間が発行してから三ヵ月になっておるわけでございます。そうしますと、これはたとえば金を貸してそしてその月の月末に債務期限を決めまして月末に債務不履行になればとたんに所有権が移転するというふうな契約をされておりますと、月初めから勘定して二ヵ月というのがちょうど三ヵ月未満の日になるわけでございますから、そのときには印鑑証明書はまだ三ヵ月来てない場合もございますから、勝手に登記ができるということもあり得るわけでございます。しかし、不動産を担保に出して貸借をやる以上は一月未満の貸借期間というふうなものでやることはまずなかろうと、これは実態調査の方からもそういふうに考えていいと思うのでありますが、そういたしますと、従来のように事前にとっておって、そしてその書類だけで、つまり債務者の知らないうちに、担保提供者の知らないうちに登記がされてしまうというケースはまずなかろうというふうに考えておるわけでございます。そういう意味からこの法律で同時履行の抗弁権を与えておきますれば改めてそういう印鑑証明書の請求があってもそれを拒否できるということになって債務者保護を図れるのじゃないかという、かような考えでおるわけでございます。
  109. 円山雅也

    ○円山雅也君 そうしますと、そのいまの解釈が例の十一条の受け戻し権に影響してくるのですがね。受け戻し権の一番最後の、「又は第三者所有権を取得したときは、この限りでない。」、寺田委員が問題にされていましたこの条文に引っかかるのですけれども、もし実体権も取得して登記も有効だとなるならば自分の物に完全になるので、あとは受け戻し権しか残らないと、この法律で、または損害賠償があるかもしれませんけれども。とすると、第三者にそれを譲ったって当然に第三者は完全な権利を取得するのだから、この受け戻し権で第三者に移ったときにはこの限りでないというのは何か余り意味がない。つまりそこのかね合いなんですがね、ちょっとどう表現したらいいかな。先ほど局長、つまり同時履行の抗弁権を放棄して第三者に移ったようなときにのみこの「第三者所有権を取得したときは、この限りでない。」という条文が生きると、そのような場合にのみ生きるのだという例を出されましたけれども、いまもし同時履行の抗弁権なんか放棄しなくとも完全に実体所有権がいって登記も有効だというならば第三者に当然移れますわな。そうするとこの十一条でその場合は受け戻し権は及ばないという、第三者権利を介してまでも受け戻し権及ばないという意味が生きてくるわけですよ。だから必ずしも同時履行の抗弁権を放棄した場合にのみ限らないで、すべての場合に生きてくるのじゃないですか、この第三者が。
  110. 香川保一

    政府委員香川保一君) これもあるいは法律の言葉が民法流過ぎて悪いのかもしれませんが、この十一条の「第三者」と申しますのはこれは全くの第三者でございまして、二条一項の先ほど御指摘の「第三者」というのは契約の相手方である第三者、つまり担保提供者であるわけであります。先ほど私が寺田委員の御質問にお答えいたしましたのは、「第三者所有権を取得したときは、この限りでない。」、つまり第三者所有権を取得するというのはその前提としまして債権者所有権が移って登記がされたその後のことでございます。債権者所有権が移るというのはその二ヵ月を経過した日に通常は移るわけでございますけれども、その登記までされるというのはきわめて例外の場合として、前に預けてある書類を利用してということもそれは絶無とは法律的には申しませんけれども、そのほとんど大部分の場合には同時履行の抗弁権をこの担保提供者が行使せずに清算金を受け取ってないわけでございますから、受け取らずに登記だけが向こうに移るということでございますから、したがって同時履行の抗弁権を行使しない場合でなかろうか、こういう意味で申し上げたわけでございます。だから先ほど申し上げましたように、最初金を貸すときに書類を取っておきましても、この法律ができ上がりますと、もうほとんど全部と言っていいくらい有効な移転登記債権者が勝手にできるということはなくなるわけでございます。つまり、その取っておった書類が役に立たぬわけでございます。そうすると、改めて債権者の方から債務者に印鑑証明書なりよこせという請求をすることになるわけでございますが、そのときに担保提供者の方は清算金を払ってくれなければよこさぬということで拒絶できるわけでございますから、そうすれば債権者に移転登記はされないことになるわけでございます。したがって第三者にも売れない、こういうことになるわけでございますが、それが何らかの理由で債権者清算金が支払われないままに移転登記されているというのは、つまり担保提供者の方が同時履行の抗弁権を放棄して清算金はいただかなくても後で結構ですということで、登記に協力したということではなかろうかと、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  111. 円山雅也

    ○円山雅也君 私も論理が混乱しちゃいまして、ただ先ほど局長がそういう場合勝手に——寺田委員の質問で勝手に自分が預かっているのをやって第三者に転売なんかした場合に、通謀虚偽表示だとかというふうなことを言われましたし、通謀虚偽表示どうのこうの、だけれども先ほどのいまの前提で実際に登記も有効、実体権もある、それを第三者に売ったら通謀虚偽表示なんという問題起こらないのじゃないかなあと、だからちょっとわからなくなりましたけれども、この辺にします。  時間がありませんのであと先に質問に入りますが、十条の方ですが戻りますけれども、「(法定借地権)」、これは建物のみを普通、例の法定地上権規定は建物のみの場合と土地のみの場合と両方やっていますね。これは土地だけについて規定をされまして、建物のみを担保に取った場合の規定を意識的に外されましたけれども、この外した理由は何かあるのでございましょうか。
  112. 香川保一

    政府委員香川保一君) この民法のいわゆる法定地上権抵当権の実行があった場合の規定として置かれておるわけでございまして、たとえば一般の無担保の債権者土地について競売して競落が出てきたというふうな場合は、現行法は法定地上権のようなものはないわけでございます。したがいまして率直に申しますと、この仮登記担保の関係だけにつきまして民法の特殊な例として法定借地権の制度を設けることが法制の整合性と申しますか、均衡上どうだろうかということをいろいろ考えたのでございますが、しかしただいま国会に提案いたしております民事執行法案の中におきまして強制執行の場合、それから競売法の競売の場合、現行法流に申しますと、そういう場合にもやはり法定地上権規定を設けることにいたしましたこともございまして、そこで全般的な意味から言えば若干均衡上問題があるけれども、少なくとも必要最小限度にこの仮登記法案においては法定借地権の制度を設けようと、こういうことで考えたわけでございます。そこで必要最小限度の場合というのはどういうことかと申しますと、結局その土地だけが仮登記担保になりまして、そしてそれが債権者所有権が移転したということになりますと、多くの場合にはその上にある建物に住んでおるのは債務者なんでございます。ところがその土地所有権第三者債権者に移った関係で建物の所有者、債務者土地について権利を持たないことになって追い立てを食っているということが非常に多いわけでございます。したがって、債務不履行になって土地を取られるのはしようがないといたしましても、その後住んでおる家まで追っ払われるということはいかにも債務者にとっては気の毒なことでございまして、その面をやはり保護をする必要があるだろうというふうに考えまして、土地に仮登記がある場合について建物の所有者は法定借地権を持つということにして債務者保護考えたわけでございます。  逆の場合はどうかと、建物について仮登記担保を使いまして土地については使ってないという場合にはこの十条では法定借地権は認めてないわけでございます。これはまことに法律的に均衡上どうかという御批判はあろうかと思いますけれども、建物について仮登記担保を使ってそれが債務不履行のために債権者のもとに所有権が移ったということになりました場合には、法定借地権がどうのこうのということよりも、債務者としてはそこにおられないことになるのはこれはやむを得ないことでございます。したがって、債務者保護の観点から考えますと、その場合は必要がないということになるわけでございます。ただ一点、その建物について法定借地権の制度を設けますと、確かに債権者としては便利であることは便利なんですけれども、その辺のところはさっき申しましたように、法律がそこまで干渉しなくても債権者としては強い立場にあるわけでございますから、したがって、建物だけについてそういう仮登記担保をつける際には当然実行のといいますか、そういう場合の手当ては債権者としてするであろう、こういうふうに考えまして、法律は特にその場合おせっかいをやいて債権者保護する必要はなかろうと、こういう考えでございます。
  113. 円山雅也

    ○円山雅也君 わかりました。要は債務者保護をむしろ中心にということですね。  そこでこの十条の、これ一つで終わります。法定借地権が発生した場合に「その存続期間及び借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。」こういう規定になっております。そうすると、たとえば存続期間、借賃以外の範囲とかそれからまたは使用目的とかそれから借賃の支払い方法とか細かい点で当事者間に意見が分かれた場合、これはやっぱり裁判所に申し立てれば裁判所が判断できるのでしょうか。
  114. 香川保一

    政府委員香川保一君) 率直に申し上げまして、私もいま御指摘のその法定借地権、これは民法の法定地上権の場合も同じでございますが、その範囲については一体どうなるのかという問題があるわけでございます。伝統的な法定地上権についての解釈は、範囲は客観的に決まっておるのだ、したがってこれはいわば客観的に決まっておることでございますので裁判所がそれを決めるという筋合いのものではない。範囲が当事者間で争いになった場合には当然その客観的に決まっておることを裁判所は確認すればいいのだ。そういう意味では訴訟で決めることだというふうに言われておるわけでございます。私はそういうこともございますけれども、やはりさらにその点は検討しなけりゃいけないのじゃないかというような感じはいたしますけれども、そういうふうな通説判例上訴訟で決めることだとなっているものをこちらで非訟事件の手続でやるということにするのは、これはやっぱり憲法問題が出てまいるわけでございます。そういうことからこの面はやはり現行の解釈判例に従っておいた方が無難ということで、ここで存続期間と借賃だけを非訟事件の手続で裁判所がめんどうを見るということにしておるわけでございます。ただいま御指摘の借賃の支払い時期というふうなものは、この借賃を決める際に当然裁判所が決めるということでございます。  それから使用目的につきましては、これは御承知のとおり借地権につきまして堅固な建物所有を目的とするか非堅固な建物を目的とするかという区別が法律上問題になっておるわけでございまして、この場合には建物はあるわけでございますからそのままの状態で、その使用は住宅に使っておるものをそれじゃ倉庫に使うというふうにする場合にはどうするかと、これが現行の借地契約の中身として申しますれば、特約のない限りは使用目的はこれは拘束されないわけでございまして、特約で住宅以外に使ってはならぬとなっている場合にはこの法定借地権の関係ではそれは対抗の問題になってまいりますので遮断されると、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって使用目的について裁判所がめんどうを見るという関係はこの限りではないだろうと、こういうつもりでございます。
  115. 円山雅也

    ○円山雅也君 終わります。
  116. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時散会      —————・—————