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政府委員(高橋寿夫君) お尋ねの順番に従って
お答えを申し上げますと、まず空域の問題でございます。御
指摘のように、防衛庁の百里の空域がすぐ北にあるわけでございます。そこで、百里の空域との間に合理的な調整を講ずる必要がございまして、昨年の夏を中心に数カ月にわたりまして防衛庁の管制
関係の専門家と私
どもの管制
関係の専門家が詰めまして、百里の空域の南側一部を削りまして成田空域にくっつける、また成田空域は羽田の空域を削りまして構成するという形で羽田、成田、百里と三つの空域が平面的に分割できたわけでございます。百里と成田につきましては、平面的な分割だけではなくて、飛行高度による垂直的な分割の
方式もやはり採用することにいたしまして、水平、垂直両方の空域分割の
方式によりまして、両方の空港に離発着する航空機が安全な間隔をとり得るようなそういう空域編成にしたわけでございまして、これは両方の専門家が何ら政治的な背景と申しますか配慮を加えることなく純粋に航空管制技術の面から検討した結果でございまして、安全上問題はないと確信いたしております。
恐らく、配慮というふうなことが世上伝えられますのは、こういうことだと思います。防衛庁は、百里の空域が削られるそのかわりに、埋め合わせに千葉県の海上に訓練空域を設定してくれと、こういう要望があったわけであります。これは実はずっと前からあったわけでございますが、成田空港の開港に伴って百里の空域を現実に削らざるを得ないという事態になりまして、初めてこの訓練空域問題を運輸省としても、どうしてもこれを入れなきゃならない義理に迫られまして、これもやはり合意の上に立ちまして、百里の空域が削られることに伴う埋め合わせとして千葉県の海上に防衛庁の航空機の訓練のための新しい空域をつくることで合意をいたしました。これにつきましても技術的な検討を経てやったわけでございますけれ
ども、何といいますか、私
どもとしては百里空域を削った恩返しというふうな
意味がありまして空域の設定をしたということがあったわけであります。
それから次は燃料問題でございまして、燃料輸送問題は、御承知のように千葉市の中を通りますパイプラインの建設が数年前に地元の反対でとんざをいたしまして、やむを得ず鹿島港と千葉港から暫定的に開港後三年間だけ鉄道で運ぶというふうになっているわけであります。もともと鉄道とかあるいはタンクローリーで運ぶのは近代的な燃料の運び方として余り好ましくない、したがってパイプラインをつくりたいということで地元にパイプライン建設の説得に回った手前がありまして、そのパイプラインができないからといって、鉄道でということは、実は非常に鉄道の沿線住民の理解をいただくのに苦労したわけでございますが、そこで閣議で御
議論いただきまして、五十年の夏でございましたが、開港後三年間だけということで、しりを切りまして暫定輸送
方式を決め、そういったことをべースに地元と話し合いをしてまいりました。昨年の夏、
関係の市町村と合意ができたわけでありますけれ
ども、何せそういういわば緊急避難的な問題でございますから、十分ゆとりがある燃料輸送計画を持つことが困難でありまして、やはり羽田の過密
状態から見て、どうしても早く成田空港に移る必要がある、そういったことを根拠にお話をしたものですから、羽田空港の処理能力を何十%も大きく上回るようなそういう油を確保するということでは、なかなか地元と話し合いがつきませんで、いわば必要最小限度にプラスアルファという程度のもので話し合いがついた経緯がございますので、燃料につきましては、正直のところかなりタイトでございます。したがって、諸外国からの新規乗り入れ、あるいは現在乗り入れている会社の増便要請等に対しましても、三年間はそういい顔をして、はいはいといって応ずるわけにはいかない、これもやはり必要最小限度義理の悪いところから優先順位をつけてという、かなり苦しい運用にならざるを得ないわけでございまして、大変残念でございますが、しかし今日の羽田の過密
状況は、これはもう大変航空安全上問題でありますので、そういった
意味で成田の開港を急がざるを得ないという立場から、非常にタイトな燃料スケジュールのもとで開港するわけでございますが、したがいまして、一日も早く本格パイプラインをつくりまして、そういう八方に肩身の狭い思いをするという
状態を解消したいと思っているわけでございます。しかしながら、このことは開港に支障を来す問題ではございませんし、開港後も国際的にも最小限度の義理を果たし得るというふうに
考えておりますが、決して楽ではないということだけを申し上げたわけでございます。それから、三番目のアクセスの問題でございますが、アクセス問題は鉄道あり道路あり、いろいろな方法がございます。輸送力としては鉄道、道路、それぞれ見まして問題はございません。問題はむしろ質の問題でありまして、質といいますと具体的にはパンクチュアリティーの問題であります。特に道路につきましてその問題があるわけでありますが、御承知のように、建設省にもお願いいたしまして、りっぱな湾岸道路をつくってもいただきまして、ずいぶん事態は改善されましたけれ
ども、何せ道路と申しますのは混合交通でございまして、空港へ行くお客さんは急ぐからといってパトカーをつけるわけにもいかない。まして専用路線をつくるほど空港旅客というものの数も多くはないというところから、混合交通になりますので、他の東京−千葉間の、特にトラックなんかが多いわけでございますが、そういったもののラッシュと重なったときには若干の時間がかかるという弱味がございます。いまいろいろ飛行機の発着時間のラッシュになるときと、それから東京−千葉間の道路のラッシュになるときと比べてみますと、幸いなことに少しずれておりまして、いまの東京−千葉問の道路のラッシュがそのままアクセスに対する障害になるかというと、そうはならないわけでございますが、しかしながら、これは夏の海水浴などのことを
考えますと問題なしといたしません。そこで、道路の使い方を十分上手に
考えていくということで、建設省、道路公団、あるいは警視庁、千葉県警などとお話をいたしまして、円滑な使い方ができるようにいま知恵をしぼっているところでございます。
鉄道につきましては、成田新幹線ができませんので大変残念でございますが、輸送力としては京成電鉄がこれにかわる輸送力として十分ございますし、また、国鉄成田線も三年ぐらいの後には成田空港に直接延伸するという計画もございますので、そう致命的なものではないと思います。しかしながら、羽田に比べますと物理的に確かに距離がございますので、この点につきましては十分利用者の方に事前に御理解をいただくということと同時に、特に道路
関係につきまして、
関係機関が十分連絡をとって円滑な、そしてパンクチュアルなアクセスが実現できるように引き続き努力をしているところでございます。
それから、滑走路の
関係でございますが、さしあたりA滑走路一本で開業するわけでございます。能力としては一年間に十三万回の離発着を処理する能力がございます。ところで、現在羽田から成田へ移りまする需要は一年間五万五千回でございますから、A滑走路は優に倍以上の余裕がございます。問題は横風が吹いたときにどうするかという問題でございまして、羽田のように横風用滑走路がぶっ違いに一本できてないのがきわめて航空安全上危険があるのじゃないかという
指摘を航空の専門家がなさる場合があるわけでございます。もちろん私
ども横風用滑走路が必要だと思うからこそ当初から計画に入れているわけでございますが、御承知のような事情でまだ二期工事がかかれませんので、横風用滑走路なしで開港せざるを得ないわけでございますが、それならば安全上問題があるかという点でございますが、ぎりぎりの話を申し上げますと、安全上支障があるとは思えないわけでございます。そこのところは非常に話がむずかしくて、安全上支障がないということをはっきり申し上げますと、では横風用滑走路をつくる必要がない、二期工期は要らないという
議論になりますので、非常にむずかしいのです。そこで、むずかしさを十分予想しながら御
説明申し上げますと、まず横風用滑走路がなくても当面の開港には支障はないという点、安全上支障はないという点を申し上げますと、飛行機は御承知のように風に向かって飛び、風に向かって着陸するわけでございます。したがって、横風を受けますと飛行機というのは弱いわけでございますから、横風が強い地域には横風用滑走路をつくるというのが原則でございます。羽田は海辺でございまして、風向きがしょっちゅう変わります。そこで横風用滑走路をつくりまして、横から風を受けないような配慮をして運営をしておるわけでございます。成田というところは内陸でございますので、横風の率が非常に小さいわけでございます。これは最近三年間の成田のあの現地における気象庁の観測によりますと、飛行機が離発着するのに困難なほどの横風が吹く率は年間
平均で千分の一の確率しかない、〇・一%という確率しかない、そういうデータが出ているわけでございますので、そういった
意味で、横風用滑走路がないために使えなくなるという確率は年、これは二十四時間
考えて千分の一でありますから、空港の運用時間は朝の六時から晩の十一時でございますから、確率はもっと小さくなるわけでございます。しかしながら、仮にあった場合にはどうするか、これは羽田を代替空港として使う準備を整えておりますので、そういった場合にはあらかじめ飛んでおる飛行機にいましばらく横風が吹いている間羽田へおりなさいと、こういう指示をすることによって安全上の問題は解決できると思います。
それから、よく乱気流があるのじゃないかということが新聞に出まして、これも成田の安全問題として
議論されますけれ
ども、成田という場所は御承知のように山あり谷ありといいますか、丘あり谷地ありという起伏の富んだ土地でございますので、地表近くの空気は土地の起伏に従って波を打つわけでございます。したがって、風の強い日には地上から恐らくせいぜい五十メーターか百メーターくらいの高さだと思いますけれ
ども、そういう地表の風が波を打ちます。したがって、それに特にエンジンをとめておりてくる着陸機などが乗りますと、多少がたがたと揺れる日があるということでございまして、乱気流という言葉は大分前に富士山の頂上でBOACの飛行機が晴天乱気流というのにぶつかって空中分解したこととすぐ結びついて、乱気流という言葉は非常に悪いわけでございますけれ
ども、言葉としては乱気流というほどのものじゃございませんで、内陸空港は日本じゅうどこにでも見られる現象でございまして、成田は危険だということはそれはございません。したがって、安全上の問題は何もないと思います。
次に騒音問題でございます。これはいままで何にも飛んでいないところに新しく飛行機が来るわけでございますから、主観的には恐らく大変な問題であると思います。私
どもといたしましては、騒音防止法に基づきまして各種の民家防音工事とかあるいは移転
補償等の仕事を公団を通じてやっております。その目安は環境庁が四十八年に告示をいたしました目安がございまして、それによりますと成田の空港では五十三年の末にある一定の数値まで下げなさいと、こういう
基準がありまして戸外で八五WECPNL、屋内で六五でございましたか、そういう
基準がございまして、この
基準に合うようにいま公団が中心になって民家防音工事等をしているわけでございます。したがって、音を全然なくすということはできないわけでございますけれ
ども、政府で決めました飛行場周辺の環境
基準というものを達成することは、ことしの暮れまでに可能であります。空港公団としては開港までにこの
基準を満足さしたいということで、ずいぶん努力をしてきたわけでありますけれ
ども、先ほ
どもちょっと御
説明しかけました、もうどうせやるならうちじゅうぐるみ防音工事してくれというふうな方があったり何かいたしまして、従来の防音工事の仕方では応じないという方があったりいたしましたためにまだ若干残っておりますが、これにつきましても、できるだけ早く完成をさせまして、政府で決めた環境
基準はクリアできるというふうにしたいと思います。しかしながら、内陸空港でございますし、何しろいままで何にもなかったところへ音が降ってくるわけでございますから、地元の方々のいろいろ御不満やあるいは御要求があると思います。これらにつきましては、開港後、きめ細かに対応をしていくと、そして
一つ一つ解決を図っていきたいというふうに
考えております。従来までの成田空港反対運動というものが、開港後は騒音に対する被害を問題にする動きに、市民運動にきっとなってくるということは予想いたしておりまして、これに対しては準備を十分いたしまして、そして対応をしていくことを
考えているところでございます。
なお、内陸空港でございますから、発着時間等につきましても厳しい制限をつけていきます。羽田と同じ発着時間にいたしましたのは、国際空港でございますのでどうしても日本の事情だけで時間を決められません。日本がいい時間だと相手の空港が真夜中になっちゃうというふうなこともございまして、やむを得ず羽田と同じ発着時間にいたしましたけれ
ども、そのかわり羽田空港に間々見られますような遅延便等はもう絶対出さないように、特に出発の遅延等は絶対やらせないということで、十一時以後はいかなることがあっても出発させないと、翌日に回すという方針を堅持いたしまして、たくさんその回数を重ねて違反を犯した会社に対しましては乗り入れの制限等のまた処分をするというふうなことも含めまして、十分この夜の十一時から朝の六時までというものの飛行禁止時間を守るということにつきましても努力をしていくつもりでございます。
お触れになられませんでしたけれ
ども、私
ども心配なのは、最後にセキュリティーの問題であります。三月二十六日の
事件以後、政府それぞれのつかさつかさでいろいろ努力をいたしておりますけれ
ども、セキュリティーの問題がやはり現在でも国際線の外国の航空会社あるいはパイロットの協会等の人たちからも心配だと言ってきている問題のかなり大きい点がそこでございますので、これにつきましては四月四日の対策要綱の線に沿いまして、
関係各省にいろいろお願いいたしまして万全を期していく。そして先ほどからもいろいろ御
議論ございますように、もとを正す
意味で地元と話し合いを十分展開していくと、そういうことを通じまして成田空港が本当に安全で心配のない空港になるように——ただ若干、燃料輸送とかアクセスで御不便な点があるかもしれませんが、これについてはできるだけ前向きに解決をしていくと、こういうことで開港を迎えたいと思っているわけであります。