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1978-06-08 第84回国会 参議院 文教委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月八日(木曜日)    午前十時二十二分開会     —————————————    委員異動  六月二日     辞任         補欠選任      降矢 敬義君     内藤誉三郎君      熊谷  弘君     藤井 丙午君      大塚  喬君     宮之原貞光君  六月六日     辞任         補欠選任      山東 昭子君     塩見 俊二君      岩上 二郎君     竹内  潔君  六月七日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     山東 昭子君      竹内  潔君     岩上 二郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         吉田  実君     理 事                 後藤 正夫君                 世耕 政隆君                 粕谷 照美君                 小巻 敏雄君     委 員                 岩上 二郎君                 高橋 誉冨君                 二木 謙吾君                 増田  盛君                 勝又 武一君                 久保  亘君                 松前 達郎君                 柏原 ヤス君                 有田 一寿君    国務大臣        文 部 大 臣  砂田 重民君    政府委員        文部政務次官   近藤 鉄雄君        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省学術国際        局長       井内慶次郎君        文部省社会教育        局長       望月哲太郎君        文部省管理局長  三角 哲生君        文化庁次長    吉久 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    説明員        内閣官房内閣審        議官       門田  実君        国立公文書館次        長        鈴木 幸二君        警察庁刑事局捜        査第一課長    加藤  晶君        外務省国際連合        局社会課長    丸山 俊二君        厚生省児童家庭        局企画課長    下村  健君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部業        務課長      吉末 幹昌君        自治大臣官房企        画室長      久世 公堯君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査  (国士館大学管理運営問題に関する件)  (日本芸術院会員等選任問題等に関する件)  (歴史資料等の整理、保存に関する件)  (国際児童年に関する件)  (幼稚園・保育所一元化問題に関する件)  (通学定期の割引率是正問題に関する件)  (国連大学に関する件)  (教育関係者等の叙勲問題に関する件)  (高等学校制度問題に関する件)     —————————————
  2. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二日、大塚喬君、降矢敬義君及び熊谷弘君が委員辞任され、その補欠として、宮之原貞光君、内藤誉三郎君及び藤井丙午君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 吉田実

    委員長吉田実君) 教育文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、四月の二十五日、文教委員会におきまして、国士舘大学教職員三夏二十六人が弁護士を代理人として上申書を出した、その内容について文部省調査お願いをいたしました。その調査内容についての質問は後でいたしますが、実はそれに関して、きょうは国士舘責任者の方にも来ていただきたいと思ったのですが、文部省調査も依頼したことでありますし、文部省がどれだけのことをつかんできたかということできょうは終わりたい。この次には、ぜひ責任者の方を呼んでいきたいと、こう言われましたが、まあ私学内政干渉になるのではないかとか、いろいろなことがあって、大変むずかしいというような理事会話し合いでありましたので、なぜ私ども該当の方に来ていただかなければならないかというには、やっぱりこの辺できちんとどのような問題があったかということを皆さん認識をしていただかなければならないと思うわけです。  それで、昭和四十八年にこの国士舘の問題が大きく取り上げられたときにも、朝鮮人高校生に対する暴力事件があったわけです。私どもは、単なる暴力事件けんか事件ぐらいでしたら、それは大したことはない、若い人たちですからそのくらいのことはあると思いますけれども、やっぱり殺人に関係するとか、労働基準法違反のような問題があるということになりますと、これはやっぱり該当者の方に来ていただかなければならないと、こう思うわけです。  まず最初警察の方に、この国士舘大学に関してというよりは、一般的にこの学生暴力事件などというものはどのような形で実際的に行われているかということがつかまれていたらその数字、その内容、特徴、それから特に国士舘に限って、この数カ月間、あるいは一年間ぐらいの間に、大変な事件があったということを私ども教職員方々から伺っているわけですけれども、その内容をつかんでいらっしゃったらお話をいただきたいと思います。
  5. 加藤晶

    説明員加藤晶君) お答えいたします。  第一点の、学生のそういう暴行事件等はどういうふうな形で掌握しておるかということでございましたが、実はこれは学生であるがゆえに個別的に特別に統計をとるとか、まとめるというふうなことは警察の方ではやっておらないわけでございます。ただ、少年であるような場合がございますので、そういう立場から少年警察の方ではある程度の調査をしておると思いますが、私、ただいまその資料を持ち合わせておりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。  それから、国士舘大学に限りましてここ数年のということでございましたけれども、これもただいま申しましたように、刑事の方といたしますれば、事件が発生すれば、その都度適正に処理をしておるということでございまして、全体の数としてどうかということはちょっと掌握いたしておりません。
  6. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは何をつかんでいらっしゃるんですか。
  7. 加藤晶

    説明員加藤晶君) 最近起きましたような事案につきましては調査をいたしまして、お答えすべく準備をしております。
  8. 粕谷照美

    粕谷照美君 それではその最近つかんだことについて御報告ください。
  9. 加藤晶

    説明員加藤晶君) 一つは、本年六月に発生いたしました国士舘大学内のいわゆる学内暴力事件でございます。これは実は現在警視庁町田警察署捜査中でございまして、関係者取り調べ等がいまの段階で全部終わっているというわけでもございません。未済のものもございますので、事案の全貌を全部把握しておるということではございませんけれども、五月の二十九日、警視庁世田谷警察署告発手続等の教示を求めにきました国士舘大学教職員組合人たちお話、並びに六月三日、警視庁町田警察署において任意出頭を求めまして、事情聴取を行いました同大学学生部人たちなどの言うところによりますれば、大体次のとおりであるということでございます。  本年五月十日の午後四時ごろ、都下町田市にございます国士舘大学鶴川分校の教室におきまして、同大学日本拳法部員二名が、同大学一年生五名を集めまして、日本拳法部への入部を勧奨、勧誘したところ、この勧誘を受けました中の一年生の一人が、これを拒絶したところ、これに拳法部員の中の一人が憤慨いたしまして、その拒絶した人の足をけるなどの暴行を加えたという事案でございます。  その後町田警察署におきましては、その被害者からの事情聴取ども行うため、連絡をいたしておりますけれども、現在よそに旅行中であるというふうなことで、まだ被害者からの事情聴取が行われておりません。そのほかにも、まだ調べが残っておるということでございますので、現在までのところ、このような点まで把握しておるということでございます。
  10. 粕谷照美

    粕谷照美君 その一つしかつかんでいらっしゃらないわけですね、警察というところは。私、事前に言っておいたんですから、もうちょっときちんと調べておいていただきたいと思います。  具体的に言えば、そのこととあわせて、そのお父さんがガソリンをかぶって抗議のために自殺をしようとされた。たまたまライターが湿っていたために火がつかないで問題になったということもあるわけでしょう。そのことについても御報告ください。
  11. 加藤晶

    説明員加藤晶君) そのことも直接犯罪になるかならぬかは別といたしまして、前後の事情といたしまして、ただいま申し上げましたような人たちからは聞いておるわけでございますが、お父さんといいますか、その御本人がやはりまだ警察の方においで願っておらない。所用のため、ちょっと行けないということでございますので、まだそこのところを御本人から事情を聞くというところまで至っておりません。
  12. 久保亘

    久保亘君 ちょっと関連して。いま国士舘事件について、警察で把握されているものの報告を求めたのに対して、一つずつぼつぼつと言われておりますが、いっぱいあるんじゃありませんか。あなたの方でそれを御承知ないというのは非常におかしいと思うのです。現に、ことしの四月二十八日には二重橋前の広場で、国士舘学生が六名逮捕された事件もあるでしょう。警察が逮捕しておって、そういうものについてあなたの方で報告できないというのはどういうわけですか。
  13. 加藤晶

    説明員加藤晶君) 最近の例を一つ申し上げたわけでございまして、いま御指摘の件も御報告しようと思っていたところでございます。  四月の件、それじゃ御報告いたします。これは天皇誕生日皇居参賀における国士舘大学、それに拓殖大学の両大学学生の間で、いわゆる先陣争いといいますか、参賀にだれが一番先に行くかというふうなことで事案が起きたわけでございます。四月の二十八日、参賀の前日でございますけれども泊まり込み皇居の前に両方の大学生がそれぞれ来ておったわけでございます、それが飲酒をしておったというふうなこともございましょうか、国士舘側の数十人が、拓殖大学生がたむろしておるところに突然なぐりかかったと思われる事案でございます。そこで警察といたしましては、この事案を認知いたしましたので、早速捜査をいたしました。拓殖大学生二名に対しまして、右後頸部挫傷等、十日間の傷害、その他三名に暴行を加えたということが判明いたしましたので、警視庁丸の内警察署では同夜午後十時二十分、国士舘大学生七名を暴力行為等処罰に関する法律違反、並びに傷害罪で現行犯逮捕いたしまして、四月三十日にこれを東京地方検察庁身柄つきで送致いたしておるところでございます。
  14. 粕谷照美

    粕谷照美君 時間がありませんので、もう少し簡単におっしゃっていただきたいと思います。  その事件については、国士舘大学学生部長石田啓さんという方から文書をもって、政経学部森田健三さんあて報告が出ているわけです。その中で「事件の概要」として、もうそのときには機動隊が五十名、警察が二十名、計七十名にてその生徒たちを逮捕し、そのうち、主犯六名にしぼった、こういうことになっているわけですが、その報告書の中で「丸の内警察の処置の考」というのがありまして、「学生の大半は「やくざ」の如き感あり、感情を害している」「国会の発言あり、厳重処置するとの連絡あり、單なる暴行ばかりでなく、右翼暴力団としても考えている。」、こういう丸の内警察署お話学生部長石田啓さんから文書をもって出されているわけですね。  それから、先ほどの一年生の方のお父さんの問題につきましても、そういう事件があった後、「傷害の状況及びその他について」という項目の中で「本人は自宅に帰り、入浴時父に話した。父は憤慨のあまり本人を医師に行かせ、己は先ず本校に電話して、学生部に来り、総長に面接を求め、且つ支拂った授業料等一切の返却を要求した。」。新聞によれば、返したということが明らかになっているわけですけれども警察の方でたったこの二つしかおっしゃらないので、私もおかしいなと思っていたんですが、それにしても天皇誕生日のお祝いですね。あのテレビに出てくる旗を持った、本当に天皇家を愛する方々のその先陣争いを、これはことしだけじゃないわけでしょう。例年行われているわけでしょう。来年あるかもしれませんね。血で汚された天皇誕生日と、こういうことになるんじゃないですか。私は、こういうような問題についても、非常に問題点があると思うだけではありません。この間現職の警察官女子大生を殺して暴行したか、暴行して殺したか、どちらになるかわかりませんけれども、殺した事件がありましたね。そして、きのうの新聞によれば、お父さん子供のことについてはあきらめられない、何とかして損害賠償をもらいたいということで、弁護人を立てて損害賠償を要求した、五千八百万円だというのがありましたけれども、あの警察官は、警察官であるということが非常に前面に出たために、そう問題になりませんでしたけれども、どこかの学生じゃありませんか。つかんでおりませんか。
  15. 加藤晶

    説明員加藤晶君) 私、そこまで承知いたしておりません。
  16. 粕谷照美

    粕谷照美君 ちょっと調べ方が足りないんですね。国士舘学生なんですよね。私がいろいろとお話しした弁護士の中には、あの五千八百万円は、それは国家に対しても要求できるかもしれないけれども大学に対してだって要求する権利を持っているんではないかというようなお話がありましたけれども、これも私は非常に重要な問題だと思いますし、それから去年の暮れの十二月十二日、「拳法で死のリンチ」、通行の少年といざこざというのがありまして、自衛隊の教官も逮捕されておりますが、その中にもやっぱり国士舘大学学生がいるわけですね。そうしてマイケル君という子供が死んでいるわけです。お母さんが、いたぶって殺すなんてと、こう言って悲しんでいらっしゃる事件もあるわけですし、それから、先日は強制労働をさせていた事件がありますね。この件については簡単に御報告ください。
  17. 加藤晶

    説明員加藤晶君) 強制労働をさしたということにつきましては、私、ただいままでのところ承知いたしておりません。
  18. 粕谷照美

    粕谷照美君 これはおどかしまして、警備会社に働かせてお金も渡さなかったり、いろいろなことをやっているわけですね。大変なことなんですよ、これは。もう少しよく調べておいてもらいたい、こう思います。これだけではありません。一年間に起きた暴行事件が六十六件というような大学側の発表もあるわけですので、私はこのようなことについて、文部省にお伺いするだけでは足りませんので、ぜひ大学当局にも来ていただきたいという考え方を持っているわけです。  それで、大学局長にお伺いいたしますけれども、あるいは大臣、どちらでも結構ですけれども国士舘大学はどういうような調査をやられ、その調査結果、どのようなことがわかったでしょうか。
  19. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 国士舘大学の問題に関しまして、上申書が私あてに提出されてまいりました経緯もあり、また粕谷委員は四月にも御質問があったわけでございます。そこで、大学側からは五月八日に、そして教員側からは五月十六日に、それぞれ上申書に記載されました事項中心として事情聴取を行いました。これまでの聴取いたしましたところでは、同大学におきます問題の多くは、大学における重要な事項、たとえば学部長選任教員人事あるいは学内規則の改正などについて、教授会の審議が十分尊重されなかったことなどによって生じたものと私どもは認めております。このような事態を生じましたのは、大学運営に対します大学当局認識にも問題があったと思われますけれども、特に政経学部におきまして、大学側の設けた政経学部特別運営委員会と、教員の自主的な教授会が併存した形になっております。正常な教授会運営が行われていないためでございます。大学側ではこの特別運営委員会は、学則第三十九条の緊急事態に対する措置規定を適用したものとされておりますけれども、長期にわたりますこの委員会の運用につきましては、学則の解釈上にも疑問がございます。一方、大西教授中心といたします教授会も、正規のものとは言いがたい点もあるのでございます。まずは速やかに正常な教授会が発足できるよう関係者話し合い努力をいたしますことがまず必要だ、かように認識をいたしております。  教職員身分取り扱い学部長選任等の問題につきましては、いままでの調査をもとに、その有効性等について、断定的な判断をただいま下すことは困難でございます。この判断をきょうこの場所で下しますことは、ちょっと差し控えたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、正常な教授会を発足させた上で、今後の取り扱いを協議することが望ましいと考えております。  入学者選抜につきましては、教授会において定められました合格基準とは全く別途に、運動選手等を合格させている事実が明らかになっております。大学はこれらの合格者特別合格と称しまして、特別な寄付金を徴収しております。大学側学部長の了解を得、学部長教授会報告していると称しておられますけれども、いずれにいたしましても入学者選抜の公正を損なうものと認められます。大学に対して改善を求めたところでございます。大学高等学校時代運動部におりました者を選抜入試入学を許可するということは、これは頭から否定をするべきことではないかもしれませんけれども、やはり選抜基準に明確にしておいてから行うべきものだと考えるからでございます。なお、このほか補欠合格者に対しまして、五十万ないし七十万の寄付金を徴収しておりまして、あわせて改善を求めたところでございます。  学長政治活動の問題につきましては、学長及び常務理事名で、特定候補者政治活動を支特する文書を配布しております。これは個人的な立場から行ったものであるとされておりますけれども大学としての政治活動との誤解を生ずるおそれが当然あるわけでございまして、きわめて遺憾なことであったと考えます。  以上、上申書に指摘されております諸問題のすべてが明らかになったわけではまだございませんけれども、今後とも必要に応じて調査を続けたい、かように考えるものでございまして、とりあえずこれまでの事情聴取によって、改善を要すると認められました基本的な点につきましては、六月七日、同大学総長に伝えまして、改善努力要請したところでございます。  以下、指導事項等につきまして、大学局長よりお答えをさせたいと思います。
  20. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大臣からお答え申し上げましたような諸点を、今後さらに調査をしていく必要があるわけでございますが、この時点でやはり大学の側に対して基本的な事柄については、その改善方要請をしていくことが適切だと考えまして、六月七日に柴田総長の来省を求めまして、私から基本的な事項について改善方要請をしたわけでございます。  一つ政経学部につきまして速やかに教授会正常化を図った上で、学部長問題、あるいは現在問題になっております人事の問題につきまして、それらの解決方策検討をしていただきたい。まず政経学部教授会正常化について、できるだけの努力をし、その早期実現を図るということが重要な事柄であると考え、そのようなお願いをしたわけでございます。  それから学内の諸規定につきまして整備を図る必要がある。これは学部規則学則等関係、あるいは学則の一部の記載事項等について再検討を要する点があるからでございます。教職員身分取り扱いの問題については、いま大臣から御報告を申し上げましたように、教授会運営が正常に行われていないことに起因するものが多いわけでございますけれども、慎重に取り扱い、かつ手続の厳正を期してほしいということをお願いをいたしております。入学者選抜の公正を期し、入学を条件とする寄付金徴収を廃止すること、これについてもお願いをいたしました。さらに、学生暴力行為の根絶について適切な措置を講じてほしいという点もお願いをしてございます。その他、法学部教授会正常化の問題、あるいは中学校、高等学校の円滑な運営問題等、法人全体の円滑な管理運営に十分配慮してほしい。そういった諸点について総長要請をいたしました。総長はこれに対しましてそれぞれ善処をするということをお約束になっております。  文部省としては、今後大学改善努力が具体的にどのように進むか、それを見守りながら、必要に応じさらに指導を行ってまいりたいと考えます。
  21. 粕谷照美

    粕谷照美君 非常に要領よく答えていただきましたので、もう少し私は細かいことについてお伺いをしたいと思います。  昭和四十八年の国会でこの問題が取り上げられ、そして、近代化委員会ができてきた。近代化委員会の最終の改革案というものが、四十九年の一月に決議をされているわけですね。皆さんはこれに対して非常に期待を持たれたんだと思います。しかし持たれた期待がすぐ打ち破られまして、打ち破られた先生方はその後組合をつくったわけですね。組合なんかつくればすぐ首になると、そんな心配を持ちながらも、もうそれ以外ないということで組合をつくって、三月二十二日に初めて団交をやっていらっしゃるわけです。この組合にもう七四%の方々が加入をしたというのは、非常にすばらしいことだと思うんですけれども、私はそのときの組合団交覚書というものを見せていただきましてびっくりしたんですが、確認事項の「一、給与はお礼でなく(一方的な寸志ではない意)、最低限一般的生活を維持しうる額を支給する。」つまりそれまで国士舘大学給与というのは給料でなくて、寸志、謝礼であったという事実があるわけですね、これは覚書なんですから。柴田梵天氏の印も押してあるわけですから、そのことを認められたんだと思います。そしてさらにボーナスはどんな言葉で言われていたかというと、これは覚書ではありませんが、その先生方にお伺いをいたしましたところが、夏は暑中見舞金だというんです。冬はもち代だというんです。私は全日自労の闘争ではないかと思ったんですけれどももち代よこせだとか、暑中見舞よこせだなんという、そんなことがいままで行われていたのかと思ってびっくりしたわけです。近代化なんという以前に、もっともっとやらなければならない問題がたくさんあったんではないかと思いましたので、今回の大学局長報告を、総長善処すると、こうおっしゃったという報告ですけれども善処をするというのは一体どういうことなんだろうか。本当に具体的にそういうことができるんだろうかという気持ちを、心配を持たないわけにはまいりません。なぜかと言えば、そのときの覚書にサインをいたしました執行委員長佐藤俊夫さんという方が首になっているわけですからね。組合つくって交渉して近代化やっていこうとすれば、組合そのもの毛ぎらいするような私学の感覚では、私は困ると思います。  そういう意味で少し質問いたしますと、まず最初に、大学における学問研究、それから学生授業、この二つを除いた厚生補導についてはどのような責任体制がとられていたかということをお伺いするわけです。特に、教授会学生補導について討議をし、対策を立て、それを実行するような体制がとられていないというふうにお伺いしているわけです。具体的に言えば、学生補導の直接の最高責任者である学生部長及び学生部員が教授会によって選出をされないで、柴田理事長の独裁的な任免になっていると、このようなお話伺いましたけれども、その点はいかがでしたか。
  22. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 学生指導、あるいは学生生活関係近代化というのは、ただいま御指摘の近代化委員会報告においても、非常に重要な改善事項として挙げられていたわけでございます。近代化委員会報告に基づいてとられた措置として、学生部の設置というのがその時点で行われたわけでございます。学生の生活指導の充実を図るという措置がとられ、従来置かれていた学生監というものを学生主事というように改め、これを学部長の統率下に置いております。従来は学生監は学長の直属であるというようなことから問題があったわけでございますが、これを学部長の統率下に置いて指導の適切を期している。あるいは学生寮の寮則の改正が行われて、朝げいこの強制が廃止される。あるいは学内の清掃の学生使役が廃止をされている。そのような措置近代化委員会報告に基づいてとられております。そういった体制のもとで学生指導という面についての改善大学としては図られて、その方向での努力が行われていると私たちは承知をしております。
  23. 粕谷照美

    粕谷照美君 ですからね、その事実はいいわけですけれども、具体的に言いますと、私が先ほど最後に質問しましたのは、学生補導の直接の最高責任者である学生部長及び学生部員が、どこで選出をされていたかという問題です。
  24. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) その点については私どもは承知をしておりません。
  25. 粕谷照美

    粕谷照美君 これは後で調査をしていただきたい、こう思います。  次に移ります。国士舘大学学生部というのは、各教授会から選出された教授、あるいは助教授によって構成されて、これが暴力対策やクラブの指導などを最終的に実行して、責任をとるのが私は普通の大学のあり方だというふうに思いますけれども国士舘大学においては学生部長が法人当局の任命制で、その下の補助機関は全員事務職員であると聞いておりますが、これはどうでしょうか。教授会がこの学生補導について責任を果たさないで、暴力の温床は除去できないのではないか、こう思うものですから、いかがでしょうか。
  26. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、各大学とも学生部長、いわゆる学生の更生補導に当たる責任者は教授をもって当てている例が多いと思います。学生の更生補導に対する大学としての体制をどのように整えるかというのは、それはその法人の御方針がありますから、こうでなければならないということを文部省から申し上げるわけにはまいりませんけれども事柄の性質としては、やはり学生教育を担当している教学側の意向が反映できる、そういう体制をとることが望ましいことはもとよりでございます。
  27. 粕谷照美

    粕谷照美君 五十二年の三月の十五日の読売の朝刊を私ちょっと見ました。大分古い話になるのですけれども、これは下級生に強制労働を強いまして、そしてリンチで百万円巻き上げたという見出しでもって出されている新聞記事ですけれども、この暴力事件の加害者である学生に対して、停学処分にしたというのがありますけれども、この処分はどの学部の教授会で処分が討議をされて議決をされたのかという問題があるわけです。このような学生処分を教授会がやらないで、やっぱり理事会判断でやっていくところに国士舘大学の前近代的な性格があらわれているというふうに思いますけれども、この辺はいかがですか。先ほどの局長の答弁と絡んでお伺いいたします。
  28. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 国士舘大学の場合には、学則において、学生の処分の問題は教授会の審議事項になっております。当然それぞれの学部の教授会において審議をされ、それが理事会においてさらに検討される。先ほどもちょっと申し上げましたけれども国士舘大学学則において、教授会の審議事項について、理事長の承認事項としている規定がかなりございます。その点についての再検討を要する点はございますけれども教授会の議を経ていないということはなかろうと思います。ただ、政経学部の場合に、先ほど申し上げているような事情がございまして、教授会が正規に機能していないという状況がございますから、政経学部にかかわるものについては、教授会の議を経ないで運営特別委員会の議を経て行われているものがあるということは、当然予想できるわけでございます。
  29. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、局長教授会でもって処分が討議をされなかった、議を経ていなかったということをお認めになったと私は考えます。もしそのことをお認めになったとすれば、これは明らかに法律違反になるわけですし、国士舘学則違反にもなるわけです。そのときに処分された学生が今度裁判所に訴えまして、私はこれはおかしいと、停学処分は取り消してほしいと、こう訴えれば、法律違反なんですから、停学処分をされたこと自体も違反になってきて、もとへ戻さなければならない、こういう実態になろうかと、こう思います。私はこの辺をきちんとやっぱり具体的に調査をしていただきたい。もしこの調査結果について納得がいかないものがあるとすれば、やっぱり私は学校当局から来て、この辺についてのきちんとした証拠物件というものを見せていただきたい、こう考えているところです。  それでは、先ほどちょっと触れましたけれども、いわゆる制服警官の婦女暴行殺人事件が起こっておりますけれども、この警官は国士舘大学の二部の学生政経学部の二部です。この事件が起きたときに、この対策、事後の処置は政経学部二部教授会で審議し、それに基づいて対策を実行したのかどうか。それとも柴田理事長独断であったのかということについてお伺いをいたします。
  30. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) この加害者である二部の学生につきましては、事件発生とともに退学処分の措置がとられております。政経学部の場合の教授会の状況が正常なものでない、自主的ないわば教授会と、それから大学側が任命をした学部長のもとにおける運営特別委員会による審議と、両方がいわば併存をしている形であることは先ほど来申し上げているところでございます。したがって、大学当局としては、いわゆる教授会という形が正常に動いておりませんから、特例運営委員会の議を経て事を進めている、そのように考えております。
  31. 粕谷照美

    粕谷照美君 ここでも正しい処理が行われなかったということが明らかになっております。  いまここに国士舘大学学部規則というものを私は持っておりますが、その第十九条にこういうことが書いてあるわけです。「学部長及び教養部長は、学部又は教養部教授会において、所属教授中、本学において満五年以上の教授歴あるものを候補者として三名以内を推薦し、推薦された者のうち一名を、理事長が理事会の議を経て委嘱するものとする。」こうあるんですね。こういうことだったら総長さんのお気に入りでなければならないと、こういうことになりはしませんでしょうか。文部当局はこのような学則があるということを知っておりましたでしょうか。
  32. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 学部規則において規定が設けられていることは承知をいたしております。私立大学学部長をどのように選考するかということについては、別段の定めがあるわけではございません。しかし、大学の重要な事項でございますから、教授会の意見も反映されるような手続を経て任命が行われることが適切であることはもとよりでございます。その場合に、具体的な選考方法としてどのような方法をとるかというのは、それぞれの私立大学がそれぞれの伝統、慣行その他大学の御判断によって定める。それでいいわけでございます。教授会の推薦する三名以内の学部長候補者の中から、理事会に図って理事長が任命をする、そういう方法も一つの方法でございます。そのこと自体が不適切というわけにはまいらない。やはり大学として教授会の意向をどのような形で学部長の任命に反映をさせるかということを検討をされた上でとられた方法だと思います。
  33. 粕谷照美

    粕谷照美君 意見を反映されるような方法であることが望ましいと、こうおっしゃったことと、いまの具体的なこの学則の関連についてお伺いいたしますと、私はどうも矛盾しているような感じがいたしてなりません。特に、選挙結果の票数で言えば、もう圧倒的に少数の方がなっていらっしゃるわけですね。最高に票をとった、つまり信任を得た方がなっていないというこの事実は、私はやっぱり問題があるのではないか。問題ということよりも、憲法の保障する学問の自由、二十三条に違反するのではないだろうか、こういうことを考えているわけですが、大体、規則というものは教授会が定めたんじゃなくて、理事会そのものが定めたんだ、こう聞いておりますけれども、これは教授会に対する不当な介入だというふうにお考えになりませんでしょうか。
  34. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 学部長選任方法それ自体について、複数推薦制をとるということが不適切でないということはいま申し上げたとおりでございます。問題はそれがどのように運用されていくかということであり、実際問題としては理事会側で御判断をされる際に、十分に教授会側の御意向を判断される、教授会の推薦というものが適切に行われる限りは、理事会との間の調整も円滑に進むのが通常でございます。特段の事情が推薦の場合に生ずるというようなことがなければ、トラブルが起こるということはまずないし、また、そういうことを前提として、複数の推薦制というものは考えられ、運営されていくべきことだと思います。国士舘大学学部規則については、各学部に共通をした大学の基本規則、そういった性格を持っているものと思われます。このような規則の制定、改廃、これは一般的には教授会の審議を経るということが妥当だと思います。大学側の御説明によりますと、この学部規則は、四十九年の四月に近代化委員会報告に基づいて制定されたというように言われておりますけれども、その制定の経過について、教授会の議を経たということは認められないわけでございます。この学部規則が有効であるか、無効であるかということを、この時点で議論をするということは、国士舘大学のこれからの運営を考えていく上で、必ずしも有益ではなかろうと私は思います。まず教授会正常化を図る、その上で学部規則取り扱いなどを十分にお話し合いをいただく、そういう方向で学部の共通事項についてルールを持つ、そして大学全体の意思の調整を図って、運営を円滑に進めていこうという事柄自体は、決して不適切なことではございません。ただ、そうした規則を定めるについて、教学側の意思というものを十分に尊重をして定められなければならないことはもちろんでございますし、さらに、学則規定している事項と、この学部規則規定している事項との整合性についても、若干問題がある点がないわけではございません。そういった点についても、さらに検討が進められてしかるべきだと考えております。
  35. 粕谷照美

    粕谷照美君 教授会の議を経ていないということが文部当局でも認められたわけですが、これを直すためのそういう筋道は私は正論だと思います。しかし、そういう筋道がスムーズに動いていくような雰囲気を、総長にお会いしたときに、やられるなという感じを得ましたか。これは感覚の問題ですからあれですけれども局長いかがですか。
  36. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 総長政経学部教授会正常化の問題については非常に苦慮しておられる、何とか早くこれを正常化をしなければならないという点は、十分に私たちは総長のお気持ちとして受け取ることができました。経緯のあることでございますから、むずかしい点はありますけれども、やはり現在の森田学部長のもとにおける特別運営委員会の側から、大西教授中心としたいわゆる自主的な教授会の側に対して話し合いを求め、そしてできるだけ早く教授会正常化する努力をすることが必要でございますし、そのことについては総長は十分な御認識を持っていると私は考えました。
  37. 粕谷照美

    粕谷照美君 総長がそういう認識を持っていらっしゃるということについては、私はいまお伺いして非常に心強いものを感じたわけですね。しかし、ここ数年間続いている問題なんですよ。そんなに簡単に私はいま局長がおっしゃるように、森田さんの方から大西さんの方に話を持っていくなんていう条件にはないというふうに思います。そのときの基準になるのはどうなのかと言えば、やっぱり文部省そのものがきちんとこの原則を立てておく。やっぱり原則に基づいて話し合いを進めなさいという指導が非常に重要ではないんだろうか、こう思いますけれども、いかがでしょうか。
  38. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 特別運営委員会学則三十九条に基づいて設置をされているものでございます。その設置自体は、緊急の場合にそれに対処するために設けるということで、そのことが不適切ではございませんけれども、そういう緊急事態に対処するための委員会が長期間にわたって教授会の機能と同様な機能を果たしている。その点に問題があることは先ほど大臣からお答え申し上げたとおりでございます。しかし、大西教授中心とするいわゆる自主的な教授会の側も、これまた大学当局によって任命をされた学部長のもとにおいて運営をされている正規の教授会ではございませんし、構成員から見ましても全員が参加をするというような体制にあるわけではございません。したがって、先ほど申し上げましたように、やはり森田学部長の方から、学部教授会をどのようにして正常化をするかということについての働きかけが行われることが必要である。これまで長い間の経過がございますけれども総長も申しておられましたけれども文部省がこの点について早急な正常化ということを実現してほしいということを申し入れる、そのことが一つのきっかけになると私は考えております。
  39. 粕谷照美

    粕谷照美君 ぜひ文部省のその申し入れをきっかけにして正常化ができるように努力をしていただきたいと思いますけれども、今後とも文部省は見守っていかれるわけですか、黙って終わるまで傍観していらっしゃるわけですか、どのような態度で進められましょうか。
  40. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) もちろん総長に対して先ほど申し上げましたような要請をしているわけでございますし、これからがどのように進展をしていくのか、その具体の状況を見守ってまいります。それに応じてさらに重ねて指導をすることが必要であれば、指導をしてまいりたいと考えております。
  41. 粕谷照美

    粕谷照美君 それから、これは大変私自身もお話をお伺いしてショックな問題であるんですけれども柴田総長総長でも学長でもない、自分でそう言っているだけだという疑いが強いんだというお話伺いました。それで、文部省は御存じでしょうか、国士館には総長選出規程があると思いますか、一体どこのところにそれがありますでしょうか。それから柴田総長は、教授会の議を経て選出されておりますでしょうか、まず最初にそこをお伺いします。
  42. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 総長選任規程はございません。現在の総長が就任されるに当たっては、大学側は各学部教授会に持ち回って承認を得ている、そういう手続をとっていると承知をしております。
  43. 粕谷照美

    粕谷照美君 持ち回り閣議というのはありますけれども、持ち回り教授会というのはあるんでしょうか、大学局としてはどうでしょう、一般的な問題として、総長を選ぶのに持ち回り教授会なんというのをやるというのはどうですか。
  44. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学学長をどのように選任をするか、私立大学の場合に学長をどのように選任をするかということについては、それを規定している法令はないわけでございます。これはそれぞれの私立大学の御判断で、最も適切な方法をとるということが望ましいわけでございます。もちろん、大学によっては、学内の選挙によって候補者を決めて理事会が御任命になるところもありますし、あるいは理事会が直接に任命をされるところもありますし、それはいろいろな態様をとっておられますが、これはそれぞれの大学の御事情によって御判断いただければ結構だと思います。
  45. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかし、選挙によって行われることもある、理事会が決めることもあるとしても、一般的に言えば、学長をどのような形で選ぶかという原則的な選出規程というものはあるのではないかということをお伺いしているわけです。
  46. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) それぞれの私立大学の御判断で、やはりどのような形で学長を選出をするのかということについて、規程がある方が通常の姿であろうと思います。
  47. 粕谷照美

    粕谷照美君 私もその通常の姿がきちんと、選出規程というものが入るような形で文部省指導すべきである、そうでなければ、教職員方々が、おれたちが選んだ総長ではない、おれたちが心服している総長ではないという、そういうときには、何事もうまくいかないんだろうと思いますので、特に教育の場でもありますので、この辺についての話し合いも厳重にやっていただくことを要望いたします。  この総長さんの話についてはいろいろと話題が多いので、私も質問をしていいのかどうなのかもちょっと迷うようなこともあるわけですがね。たとえば、柴田総長の経済学博士というその学位は、ほかの人に書いてもらった疑いがあるんではないか、その書いたという人の言葉は、証人になってもいいというような人がいるなどというようなこともいろいろと耳にいたしますので、この辺は国会で論議をするようなところでもないと思いますから、もし肩書きに問題があるということであれば、先ほどの理事会ではありませんけれども、このごろの論文は大変問題だ、引用が多いなんというようなことも話し合いで出てきまして、本人の書いたものよりも、人の引用でもって学位をとっていくようなことがあるなんて、そんな悲しい事実があったとすれば、人はまたそういう人を尊敬もしないだろうと思いますので、この辺もちょっと調べておいていただきたい、こう思います。  さて、次に伺うのは、国士舘大学では教授会の議を経ないで、教授を免職にした事実があるということですけれども文部省はこの事実を把握しておりますでしょうか。また、私はあると思っているわけですが、あるとすれば、どのように指導したかについてもお伺いいたします。
  48. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教授会の議を経ないで人事が行われているという点は、やはり先ほど申し上げましたように、政経学部における教授会の不正常な状況というものが、形式的には教授会の議を経ていないということになる結果になっているわけです。で、そのことをとらえて、直ちに教授会の議を経ていないからきわめておかしい、無効であるというような議論はなかなかしがたいものがございます。この場合には自主的な教授会の方も問題がないわけではありませんし、また、大学が置いている特別運営委員会の方にもこれまた問題がないわけではございません。いずれにしても早急に教授会正常化して、そこで正常化された教授会において、問題となっている人事があれば、さらに検討をするということが必要であろうと思います。
  49. 粕谷照美

    粕谷照美君 これはいずれ争われると思いますので、私はこの辺事実があったということだけを確認をいたします。  では次に伺いますのは、教授会がこの生徒は単位不足だと、こう言いまして、卒業させられないという判定をした応援団の学生を、総長さんが卒業させまして、そしてその人を学生部に事務員として配属をさせているということがあるわけですけれども、こんな事実が明らかになってきますと、学校内の暴力を取り締まるなどというようなことは、とてもではないけれどもできないんではないか、こんな心配を持ちますので、事実があったかどうかをお伺いいたします。
  50. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 政経学部の一学生が五十二年三月に、いわゆる大西教授中心とする教授会によって、単位不足のために卒業が不可ということになった、しかし特別運営委員会がその後、追試験によって卒業を認定をしているということが指摘をされているわけであります。大学側の説明によりますと、特別運営委員会で調べたところ、一部の科目について追試験を受験する資格がありながら、手違いによって追試験を受けさせずに卒業が留保されたので、追試験を受けて卒業を認定をしたのであるということでございます。教職員側の説明によりますと、二十数単位の不足で卒業は不可になっているけれども大学側はこの学生の従来の大学における部活動の状況等もあり、便宜の措置を講じて職員に採用したんだ、そういう御指摘があるわけでございます。これは両方の説明が対立をしているわけでございますけれども、これも基本的には政経学部教授会が、先ほど来申し上げておりますような事情にある、そのことによって生じていることだと考えますし、この追試験を受けて卒業を認定されたということを、直ちにそれは無効であるというように断定をするわけにはまいらない事情があると考えております。
  51. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、もう諸悪の根源は政経学部教授会が正規に動いていないということでもって、文部省そのものはやっぱり判断をしているのではないか、こう思いますけれども、そのようなこともありますし、いろいろとお伺いしますが、私ここに裏口入学者の氏名一覧表というものをいただいてきました。どこのだれかなんということは問題がありますから言えませんけれども、この教授会が不合格と、こう判定をしているのに、学校法人当局が入学をさせてしまった者と、こういうふうに記されておりますけれども上申書が出ているわけですから、先ほどのお答えもありましたように、当然調査済みであるわけですが、指導についてはどのようになさって帰ってこられましたか。
  52. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほど大臣からも御報告を申し上げましたように、いわゆる教授会において定められた合格基準で合格すべき者を決める、その手続は行われているわけでございますが、それとは別途に運動選手等を合格させている事実がございます。これについては御指摘のように教授会側の判断によって行われているわけではございません、もちろん大学側は、この点については学部長の了解を得ているし、学部長教授会報告していると御説明になっておりますけれども入学者選抜に当たって、学生のその学力というものだけで選抜をするのでなくて、より広くいろいろな資料を用いて選抜をしていく、そのときに、先ほども大臣が申し上げましたように、その受験生の高校時代のクラブ活動であるとか、生徒会活動であるとか、そういったものの実績というものも評価の中に加えていく、そういう判断大学としてされるということは、これからの入試のあり方を改善していく場合の一つの方向にもなることであり、それを一概に悪いと言うわけにはいきませんけれども、それはどこまでも教学側で入学者選抜する場合の基準として、どのような選抜基準、選考の基準を設けるかということが審議をされて、その中に適切に位置づけられて、初めて大学入学者選抜として十分に公正なものになり得ると思います。そこのところが国士舘大学の場合には適切でない、その点の善処方、改善方大学側お願いをしたわけでございます。
  53. 粕谷照美

    粕谷照美君 それと同時に、先ほどお話しがありましたように、お金を払って裏口入学をしたという事実についても御報告がありましたから、指導をされてこられたんだと思いますけれども、やっぱりこの辺のところを、ほかの大学に与える影響も大きいわけですから、きちんとした態度でもって御指導いただきたい、こう考えます。  それから、労働組合の問題に関係するわけですけれども、労働法で言いますと、採用するときに、おまえさんは組合に入ってはいけませんよ、組合に加入をしなければうちの学校で採用しますよというようなことは一般的な言葉でどのようにして言っていますでしょうか、私は黄犬契約というふうに考えておりますけれども、このような事実があったか、なかったかについては御調査いただきましたか。
  54. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 労働組合法によりまして、使用者が労働者が労働組合に加入しないことを雇用条件とするようなことは、不当労働行為に該当するということで禁止しておるわけでございまして、これについては先生いまおっしゃいましたような黄犬契約でございますか、そういう言葉があるということは承知しております。  この学校でこういった規定該当する事実があるかどうかにつきましては、上申書内容と、それから学校側の私どもに対する説明とは食い違っておりまして、したがいまして、ちょっと判断をいたしかねる面があるのでございます。このことにつきましては、やはり労働組合法に基づいて不当労働行為に係る調査等の法的な権限を付与されております労働委員会判断に、究極はまつことにせざるを得ないというふうに考える次第でございます。
  55. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部省が行って調査できなかったというのは、私非常に不思議なんですけれども、御本人の言うことを信ずるか、大学当局の言うことを信ずるか、こういうことになろうかと思います。私はやっぱり言われた本人の方が一番正直なことを言っていらっしゃるんでないかと思いますが、どうですか、その辺の信頼度の問題は。
  56. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 現時点では両方が異なることを言っておられますので、これをどちらを信頼するかということは、大変私どもむずかしい局面に置かれているというふうに申し上げざるを得ないと存じます。
  57. 粕谷照美

    粕谷照美君 大臣、私いままで質問をいたしました具体的なことについて、やっぱりまだ文部省も事実を把握をしていないのではないかという気持ちがいっぱいです。  それから教職員方々は部屋にも来ていただきましたので、いろいろと事細かにお伺いをすることができましたけれども、まだ大学当局側からは私自身は具体的にいろいろと話も伺いません。したがいまして、文部省調査、それから大臣の御報告を私はそのとおりだと思って承っておりますけれども、もっと具体的にお伺いしたい部分もありますので、ぜひこの次の委員会には、私は理事会の中で当局に参考人に来ていただくようにお願いをするつもりでおります。  それで、いままで私がずっと質問してきた中で、大臣自身が調査、それから総長にお会いしたお話、それらのことを判断をされて、いまどのようなお気持ちを持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  58. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 冒頭にお答えを私からもいたしましたように、上申書に書かれておりますことすべての調査が終わったわけではございません。また、粕谷委員御指摘の具体的なことにつきましても、まだ調査をしていないことがあるわけでございます。しかし、大学側、そして教授側、両方の方々の御意見を承った上で、文部省としてのそのときそのときに判断できますことについて、こういう点は改善を求めるべきだと当然考えたことが幾つかございましたので、先ほどお答えをいたしましたような総長改善を何点か求めているわけでございますから、先ほど粕谷委員傍観しているのかとおっしゃいましたけれども改善方を求める指導をいたしたわけでございますから、重大な関心を持って、改善方を約して帰られました総長のどうお取り扱いになるかを、重大な関心を持って見守ってまいります。必要なことはまだ調査をこれからも続けることにいたしたいと考えます。
  59. 久保亘

    久保亘君 いまの粕谷委員質問に関連をして少しお尋ねいたしますが、先ほど警察庁の方からも説明のありました、ことしの四月の二十八日に二重橋前の広場において起きました国士舘大生百三十名と、拓殖大学生五十名との、いわゆる参賀先陣争いをめぐっての暴行傷害事件について、この行為については、暴行事件じゃありませんよ、皇居参賀のために前日の夜から二重橋前の広場に天幕を張って泊り込み、この両大学学生がここで翌朝、門があくのを待っているという状況については、これは大学側も承知して、むしろそういう行為を奨励をしてやらしてきたのではないかと思われるんでありますが、この点については文部省はどのように把握されておりますか。
  60. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 皇居前広場に前日から泊まり込んで、祝賀の際にいわば最初皇居内に参入をするということについて、大学側がそれを指導している、あるいは奨励しているかどうかということについては、私どもは承知をいたしておりませんけれども国士舘大学では、かつて天皇誕生日を祝いますために、昭和四十八年度以前には天長節式典というものを行いまして、学生に参加を義務づけておりました。しかし、その後この式典のあり方について大学側としても反省、検討をいたしまして、四十九年、五十年には祝賀行事を行いませんでしたし、また、五十一年度以降は、天皇誕生日慶賀式典と名を改めまして、従来四十八年以前に行われておりました観閲、あるいは分列行進というようなものを廃止をいたしております。また、学生の参加も自由ということにしている、そのような報告大学側から受けているわけでございます。そういう大学側のこれまでの、四十八年度以前のあり方についての反省というものが行われておりますので、事柄については十分大学側も承知をして対応してくれているものと考えております。
  61. 久保亘

    久保亘君 この事件がありましてから、大学は事故対策委員会を、総長学生部長、各学部学生主任等で構成する事故対策委員会をつくって、その事故対策委員会が、来年再び不祥事を起こさないよう、前夜泊まり込みは禁止し、二十九日は学校が行う祝賀式に参列するよう学生指導する、こういうことを決めているんでありますから、この警察に検挙されるような暴行傷害事件を起こした、この前夜泊まり込みについては、むしろ大学側はこのような行動を奨励し、それを大学側としても認めておった、こういうことではないかと思うんですが、それはどうでしょうか。
  62. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学側が今回の不祥事件を機といたしまして、その改善について十分に検討をされているということは、御指摘のとおりでございます。もちろん、学生がどのような気持ちで天皇誕生日をお祝いをするかというのは、それは学生の自由でございますし、そのことについて大学といえども特にそれが問題でない限り、異常な事態を伴うものでない限り、干渉すべきことではないと思います。しかし、大学側が前夜からの泊まり込みを奨励していたかどうかということについては、先ほどもお答えを申し上げましたように、私の方は事情を承知しておりません。
  63. 久保亘

    久保亘君 このことについては、私は大学側がこういうことを承知しておったとするならば、教育上の問題として、なぜこういうものが黙認されておったのか。先ほど、あるいは私外しておりましたので、質問があったかもしれませんけれども天皇誕生日の慶祝のため宵のうちより宿泊して、明日参賀の一番乗りを目指した。初めのうちはテント内に仲よくこの両大学は同居しておった。そのうちに飲酒に及び口論となり、一応おさまったが、その後その口論の仲直りのために酒を持って話をつけに行ったところが、態度が横柄だと言われて、そこで乱闘に及んだと、こういうことになっておるんですよ。それで警察も、さっきも少し話があっておりましたように、ここにおった学生は、大半はやくざのごとき観あり、そういうようなことが行われておるということは、非常に問題ではないかと思うんであります。  それからもう一つは、こういう祝賀の行事を学生がやることは自由だと、それは私もそう思います。それはそれでいいんですが、この大学は、局長も先ほど言われましたように、昭和四十八年ごろまでは天長節と称する行事をやっておったんですが、いまも天皇誕生日奉祝式典実施要領というのが、国士舘大学から学生に出されて、教職員学生、生徒はこれ全員参加になりまして、そして五月四日が振りかえの休日になるんであります。で、この式次第を読んでいきますと、皇居遥拝、総長式辞、そして天皇誕生日奉祝曲演奏、天長節の歌斉唱、天皇陛下万歳三唱、こういうことになっているのでありますが、先ほど大学局長は、この大学は前は天長節の行事をやっておったと、こう言われましたね。大臣ね、天長節というのは歴史上の用語としては残っておるが、現在、これは教育的、あるいは社会的に、天長節という用語は生きて存在しているのかどうか、そのことはどうお考えになっておりますか。
  64. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘のとおりに、天長節という用語はございません。
  65. 久保亘

    久保亘君 そうすると、教育機関が、天長節という用語を大学が行う式典の文書の中に、公然と使用しておる、こういうことは、これは私立学校といえども教育立場から見た場合には、これは正しいと認めらるべきことなのかどうか、その点はどうお考えですか。
  66. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 天長節という戦前にありました制度がありませんから、天長節という用語もないわけでございますけれども、どうとらえるかはやはり私立大学の場合、私立大学の自主的な御判断によるものだと考えます。
  67. 久保亘

    久保亘君 そうすると、私立大学の場合には、現在存在していない用語が、それは一つの意味を持った言葉なんですね。存在していない歴史上の用語が、その大学という教育機関の中において、現存するような形で、学生を含めて教育的に使われる。しかも、それは単に天長節という言葉を使うだけではなくて、その言葉の持っていたもとの意味を、ここに改めて生かそうとするような意図でもって使われるということは、これは私学の自由として容認せらるべきことなのかどうか。これはどうなんでしょうか。それは認められてもよい、こういうふうに考えるべきなのかどうか。局長私学の自由だからそれは認められるということですが、大臣はどうお考えですか。
  68. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) やはり大学管理運営に責任を社会的にも持っておられる総長も、教学側の御意見も、大学の総意として、大学の自主的な御決定があってしかるべきだと考えます。
  69. 久保亘

    久保亘君 大学の自主的な決定ということになれば、この国士舘大学のいわゆる天長節の歌を歌い、そしていろいろ問題があって、その後表現を改めておりますけれども、天長節行事をやるということは、国士舘大学においては、大学の教授等を含めて学園の一致した考え方として行われてきたものだ、こういうふうに理解されておるのでしょうか。
  70. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大学側の御事情を私は伺っておりませんけれども大学が行います行事が、先ほども申し上げましたように、大学管理運営を責任を持たれる総長、そして教学側の御意見も一致してお決めになったことであるのならば、それはさように受けとめなければならないと考えます。
  71. 久保亘

    久保亘君 これは教学側のいろんな取り決めなのかどうか、私はその点についてはぜひ文部省に調べてもらいたい。そして、こういうような教育を背景にして、やっぱり今度の四月二十八日の二重橋前広場のあの事件が起こってきているわけであります。この事件については、そういう意味でいろいろ御調査をいただきたいと思いますし、それからこの事件と同じような暴力事件、中には殺人事件、そういうものが、まあ枚挙にいとまがないとまでは申しませんけれども調査をいたしますとかなり出てくるのであります。そのたびに、この大学は退学処分とか、そういうものを非常に機を失せずやっておるというので、文部省には少し評価されている面もあるようなんでありますが、事件を起こしてすぐ処分をやっているから、大学はなかなかしっかりやっているということにはならぬのであります。だからそういうような、非常にこういう事件が頻発してくるのでなれてきて、起こったらすぐ処分をして、この問題終わりと。それから、ちょっと社会的に大きな問題が起こりますと、事故対策委員会をつくって、そこで根本的な問題を解決するのではなくて、大学のあり方とか、そういう問題に触れることなく、そういう事件を現象的に押さえていく、そういう措置だけが非常に強く私どもは目につくのであります。そういう意味では、先ほどから問題になっておりますこの大学運営のあり方とか、そういう点について、文部省としては、私学に介入をするという立場を十分に自戒しながらも、同じ日本の青年の教育がそこで行われているということで、文部省の必要な指導助言というものを、私はやらなければならないような実情が非常にたくさんあるのではないか。それで、そのことをずうっと詰めていきますと、私学振興助成法による経常費の助成の条件にも触れるような問題が必ずしもないとは言えない。大学側から私どもの方に届けられておりますいろいろな事情説明などを読ましていただきましても、これは私学振興助成法の条件からも、文部省としては留意をしなければならない問題が存在するのではないか、こう思うんですが、それらの点について検討をなすったことはありませんか。
  72. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) いまたくさん御発言になりましたので、最後のところの私学振興助成法の配分の仕方であろうと思います。やはり基本的には、教官が学生の定員数に対して、適切に確保されているかどうか、そういうことを判断をいたしまして、教員の数に応じての配分をする、あるいは学生数というものが、学校が公表をしております定数どおりに確保されているべきであって、水増し学生というようなものをたくさん入れて、教官の数と学生の数がアンバランスになっているようなところには、それはむしろペナルティー的なことを計算の中に入れる、学生数に応じての配分、基本的なことにつきましては、私はいまの配分方法が誤っているとは考えません。しかし何さま、私学振興助成法の目的といたします経常費の半分までの助成をしていく、そこまで率直に申し上げてまだ到達していない現在でございますが、私学振興法の法の精神を目指して、なお努力をいたします過程で、これはやはり将来検討を加えなければならない問題であるとは心得ております。
  73. 久保亘

    久保亘君 いや、私申し上げているのはそういうことではないんです。その学生数とか、そういう問題は私はこの問題については調査しておりませんから知りません。そういうことではなくて、この大学の経営者のいろいろなやり方にも起因して、この種の事件が頻発しておる、そしてそれらをめぐって、経営者と教授陣との間に意見の対立がある、総長は正式に総長として認められるべき存在ではないという意見もある、そのような状況というのは、私学振興助成法上経常費の助成を行う側が留意すべき条件となってこないかどうかということなのであります。私は学園の中におけるいろいろな事件を理由にして、減額をされたり、打ち切られたりした大学を知っております。だから、そういう点について文部省が最小限助言し得る範囲内において、その改善を求めて、それに大学の経営者や、責任者が応じないという場合には、そのことについても留意せらるべきではないか、こういうことで申し上げているわけであります。
  74. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御質問の御趣旨わかりました。私学振興助成法に基づく経常費助成の決められました規則の中には、管理運営に適切を欠く場合というような項目があるわけでございます。ですから久保委員がただいま御発言になりましたようなことは、配分の一つの条件になるわけでございます。ただ、私ども管理運営が適切に行われることをこそ望むのであって、管理運営が適切に行われますような指導助言も今回の国士館大学に対してもいまとっているところでございますから、やはり総長改善を、指導助言をいたしました各項目について、そういうふうにいたしましょうということを約して帰られたわけでございますから、傍観をするのではなくて、重大な関心を持ってこれを見守ってまいりまして、管理運営が適切に行われてないから、経常費助成を何らかの措置をするというようなことがむしろなくて済むようにありたい、かように考えるものでございます。
  75. 久保亘

    久保亘君 私も大臣と同じような考えを持つのであります。この経常費助成が行われるようになった趣旨に照らしても、学生や父兄に過重な負担を私学であるがゆえに課さなければならないということにならないように、そして大学教育が充実したものになるようにという趣旨から出ているのでありますから、増額をこそ望むのであって、趣旨については賛成であります。しかし、私学助成法の精神に照らせば、このような不祥事が続いて、そのことが主として大部分学生自身に起因する場合は問題は別としても、経営者の側の学校経営や、その教育指導の仕方などにもかなりな原因がありはしないか、あるいは大学の中にそういう問題をめぐって、改善の意見があるにもかかわらず、経営者が一方的にそれを退けておるような事情はないのか、そういう問題について、私はやっぱり文部省がきちっとした助言をしなければならない。文部省がそれに対して、何ら大学側から改善の意思を示されないということになれば、私は留意すべき問題ではなかろうか。どうしろということを言っているんじゃありません。そういう意味で申し上げたのであります。その点については、私は、引き続き大学にいまいろいろな問題があります。国士館だけではなく、拓殖大学においてもそういう事件がありますし、全国に起こっております大学のその種の事件というのはかなり多くなってきております。中には現職の政治家がかつて総長をなさったようなところもあるのでありまして、文部省としてもそういう問題については格段のひとつ関心を持って調査をしていただきたい。この問題については、またひとつ機会を見てお尋ねしたいと思います。  きょうは時間がありませんから、最後に一つだけ。  最近人間国宝とか、それから芸術院の会員とか、近くは私立大学学長とか、こういう人たちの脱税が次々に国税庁によって明るみに出てきているわけでありまして、そしてこの脱税に対して追徴の措置がとられております。これは法律上いわゆる事件となるような犯罪としては取り扱われておりませんけれども、少なくとも私たちがこの国民一般の立場に立って考えれば、こういう人たちの間にかなり多額の、一般の庶民では考えも及ばないような多額の無申告、脱税があるということについては、決して軽視できない問題ではないだろうかと思うんでありますが、この芸術院会員とか、文化功労者とか、この種のものは、人間国宝にしてもそうでありますが、一度その地位を与えられれば、終身その地位が保全されることになっております。しかし、いずれもこれらの人が選ばれるときには、単なるその道での業績についてのみの評価でやられているのではないと思うんでありますが、人間としての芸術院会員とか、文化功労者とか、人間国宝とか、国家的な、何といいますか、誇りとも言うべき立場人たちを選定するに当たっては、当然にこれらの人たちの人格とか、そういうものも十分検討の上、いままで指名されてきたと思うのでありますが、この点については文部省としてはどう考えでおられますか。  それから、この終身の待遇になっている者について、これらの人たちが人間的に指弾せられるべきこと、あるいは犯罪を犯したというような場合には、その身分はこれは返上さぜられるべきものなのかどうか、それはどうお考えになっておりますか。
  76. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 芸術院会員、その候補者の選挙に際しましては、芸術上の功績顕著な芸術家について、芸術院で選挙をなさるわけでございます。日本芸術院は、国が「芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関」でございますので、その会員は、先生御発言のとおりに終身となっております。その退任につきましては、会員みずから申し出、総会の承認を経てこれを認めることができることとされております。これは日本芸術院令第四条に書かれております。  また、文化功労者年金法におきましては、長年にわたりまして「文化の向上発達に関し特に功績顕著な」文化功労者を顕彰するための終身年金を支給すると規定されておりまして、欠格条項等については特別の定めはございません。
  77. 久保亘

    久保亘君 欠格条項において定めがないということは、たとえば芸術そのものの評価において、芸術院会員として推薦をされるに足る、あるいはその手続で、会員の投票によって決まったということでもって、たとえその人にかなり重大な問題があっても、それは問題なく指名されるものか、業績だけで。それはどうなんですか。  たとえば数千万の脱税を行ったことが明らかになっておる場合に、その人がいま改めて初めて芸術院会員に推挙されようとしておる場合に、大臣はこれをどうされますかということを聞きたい。
  78. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 芸術院がそういう方を芸術員会員に指名されることはよもやあるまいと考えております。
  79. 久保亘

    久保亘君 指名されることがよもやあるまいと考えられるような立場の人が、現に芸術院会員である場合に、これはやむを得ないことだということになりますか。
  80. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先ほどもお答えをいたしましたように、芸術院会員になられるような方は、もう子供ではありません。御自分のなさったことは御自分で事の善悪、御判断ができるはずでございます。  そこで、芸術院令の第四条、先ほど申し上げましたように、みずからの意思によってというふうなことが書かれているものだと考えます。  私自身の感じといたしましては、芸術院会員であられる方が脱税等の問題を起こされた、きわめて遺憾なことだと考えます。そして、芸術院会員としての身分をどうなさるか、これは御本人がやはり出処進退明確になさるべき筋合いのものであって、やはり芸術院会員というものは多数の国民がそれだけの功績を認められ、その文化、芸術活動というものを評価されているわけでございますから、御自身の御判断で、出処進退いずれをとられましても、そのことによって、またとられた御行動が、国民から容認をされるのか、あるいは批判をされるのか、本来的に持っておられた芸術活動というものが否定をされるのか、それは私は国民の御判断にまつべきであると、そのことはやはりそういう栄誉ある地位を得られた方、大人なんですから、自分で御判断あってしかるべきだと、こう考えます。
  81. 久保亘

    久保亘君 芸術院会員というのは文部大臣の任命ですね。そして一たび任命を受ければ終身の制度となっておりますが、しかし、私は文化功労者についても、芸術院会員についても、これは国家が年金を支払っておるんです。そうでしょう。支払っておりますね。芸術院会員に対しては年金と呼んでおるのか何か知りませんが、芸術院会員というのは単なる名誉称号じゃありませんね。名誉職じゃありませんね。文化功労者も単なる栄典だけではありませんね。毎年支払われておりますね。幾らですか、いま。
  82. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 文化功労者の方に対しましては、年額といたしまして二百八十万円でございます。なお、芸術院会員の方に対しましては百七十五万円というのが本年度の金額でございます。
  83. 久保亘

    久保亘君 これ両方兼ね備えている人は両方から支給を受けますね。
  84. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) おっしゃるとおりでございます。
  85. 久保亘

    久保亘君 そうすると、それはみずから決すべきものだと言われるんですが、国民の側からすると、その数千万の脱税の行為が行われた方に対して、芸術院会員であり、文化功労者であるゆえをもって、年間四百五十五万の、直接支給されるものだけでそうですね。そうすると、これはみずから決すべきものだということだけでは済まない問題になってくるんじゃないかなという感じがするんであります。それから、任免権者である文部大臣として、やっぱり大人だからということではなくて、この種のものについては必要な勧告措置なり、そういうものはあるべきではないかという感じがするんであります。私立大学学長の場合とはちょっと違うんでありますね。これは国家が一つの地位を与えているんであります。財政的な裏づけをして地位を与えている。その場合にはそういうことだけではいかぬのじゃないでしょうか。  それから、この芸術院というのについては、従来も国会でも何回か議論されてきたところでありまして、芸術院は果たしてその設置の目的に沿うようなものになっているのであろうかということは、われわれ素人ではなくて、芸術家の人たちからもしばしば意見が述べられております。芸術院会員に当選をするために、かなりの政治家も顔負けぐらいの買収供応のようなことがあるということは、これは新聞にもその種の問題が取り上げられたこともあります。私はそういうような仕組みの中で、それから会員にしてもらうために投票権を持っている人たちに対して何をやるか。個展が開かれると、そのときに高くその人の作品を買うことによって、自分を推薦をしてもらうというような行為もあったようなことが書かれたこともあります。私はそんなことから考えていくと、今度の方のいわゆる脱税事件というものは、あらわれるべくして出てきたんであって、特殊な事件なんであろうか。そういう点で、芸術院の見直しがいま求められる段階にきているんじゃないか。芸術院会員になることによって、作品の価格が急激に上昇するとも言われております。画家の場合には号当たりの値段がうんと上がるわけです。だから、相当な運動をやっても、芸術院会員になるということは経済的にも引き合うと、こういうことが言われるに至っては、私は芸術院の名に値しなくなるのではないか。こんなことを考えるのでありますが、今度の事件を契機にして、私はやっぱり芸術院そのものを見直すということが迫られているんじゃないか、こう思っているんですが、大臣、私が申し上げていることは、何か今度の事件を問題視して、非常に何か話を大きくして言っているんだということにしか受けとめられませんか。これはもう相当長い間論議されてきた問題なんです。
  86. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 確かに文部大臣が任命をするわけでありますけれども、芸術院長の上申に基づいてやることでもあり、芸術院令というものをやはり尊重をしてまいらなければなりません。ただ、やはり私もそっち側へ座りますと同じようなことを言うだろうと思うんですが、文部大臣としてお答えのできるやっぱり制約がございます。察していただきたい。ただ、このような問題が起こらないように、また、日本の文化、芸術の最高峰、やはり日本文化の象徴でもあることでございますから、芸術院というものの存在が、国民の目から見て真の意味の権威のあるものであっていただかなければ困ります。芸術院とも私は協議をいたしまして、検討をいたしますとだけはお答えをしておきたいと存じます。
  87. 久保亘

    久保亘君 わかりました。大臣が非常に明確な意思をお答えくださったと思って、ぜひひとつ芸術院が国民のために、芸術院にふさわしいものであるように、その構成も、それからその会員の選ばれ方も、それから会員になられた方を国民が見る場合にも、そうあってほしいと思います。  私がぜひこの際、今度は時間がありませんからお尋ねできませんけれども、いままで終身制度の芸術院会員を、途中で辞任された方が何人もあるんです。横山大観さんも、菊池寛さんも、そのほか画家の川端さんとか、日本画の小杉さんとか、何人も著名な芸術家が途中で辞任されております。この辞任の理由は一体何だったのだろうか。一説によれば、芸術院のあり方に対して、批判の行動として辞任された方もある、こう聞いておるんであります。私は文部省は、数多く、終身で、しかも、国家から一定の恩典も保障されているこの会員を、しかも、芸術家としては芸術院会員という肩書きが非常に大きな意味を持つにもかかわらず、途中で辞任されている方が何人もあるということについて、今度これを調べておりまして非常に不思議な感じがいたしました。これらの人たちが芸術院会員を辞任されたのにはどういう理由があったのか。恐らく文部省としては、当時そのことについては理由も把握されたと思うのです。そのことを一遍お調べいただいて、もし差し支えなければ御報告を願いたいと、こう思っております。個人の名誉にかかわるようなこともございましょうから、ここで報告できない部分もあるかと思います。しかし、私は少なくとも芸術院に対して一つの批判的見解を持って辞任された方があるとするならば、そういうものがどういうふうに芸術院に生かされてきたのか、そういうことについてもぜひ調べてみたいと、こう思っているのでありますけれども文部省は記録をたどられれば、戦後の分だけでもかなりありますからすぐわかると思います。ぜひお願いをしておきます。  きょうは時間がありませんから、大臣が芸術院の問題についてきちっとした対応をおとりになるということでありますから、またいずれそのことについてお話をお聞かせいただくということにいたしまして、きょうはこれで終わります。
  88. 吉田実

    委員長吉田実君) 本調査につきましての午前中の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時二十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後一時三十七分開会
  89. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  90. 岩上二郎

    岩上二郎君 私は、歴史資料保存につきまして御質問を申し上げたいのであります。大臣はしばらく、いろんなことを申し上げますのでお聞き取りいただきまして、大所高所から御判断を願って、随時御答弁いただければ幸いと思います。  政府はおくればせながら、昭和四十六年七月に総理府の付属機関として、国立の公文書館を建設をされて、蔵書におきましても五十一万余冊を所蔵しておりまして、細々ながら四十七名の職員でスタートをされたわけでございますが、いまさら申し上げるまでもございませんが、古文書類の整理につきましては、国家、社会の歴史的な事実を知るためには最も確実な資料でありますし、民族の貴重な文化遺産であるわけでございます。芸術品とかあるいは民芸品とかならば、わりと表にあらわれやすいために、非常に進展度合いが強いわけでございますが、この公文書類につきましてはじみな資料であるために、その整理、保存については各省、あるいは各都道府県におきましても、まだ十分な配慮がなされていない実態であろうかと、このように思うんです。  外国における公文書は一体どうなっているかということを調べてみますと、非常にその歴史は古くて、古代ギリシャ文明にさかのぼると言われておりますし、近代公文書館は一七九〇年、フランス革命後パリ国立の公文書館が設立されて以来、各国においてもそれぞれ保存措置がとられておる現状でございまして、国、州、あるいは県、市町村、それぞれの単位に文書館ができております。特に、参考になりますのは西ドイツでありますが、約六百余りも文書館が設立されておるわけでございます。アメリカにおいてもインドにおいても、あるいはメキシコ等においても、きわめて保存、収蔵に力を入れている現状でございますが、そのために日本も加えまして、国際の公文書館の会が持たれるようになりまして、加盟国が何と百を超える、このような現状でございます。日本では一体どうなっているかといえば、奈良時代の正倉院の文書が最古のものとされております。最近地方においても、この奈良時代の古文書が発見されまして、きのう、おとといの新聞、毎日、朝日それぞれ紹介されておりますが、千二百年前の公文書が出てきているということから、その時代のやはり風俗、習慣、あるいは役人の生活、そういうようなものがおぼろげながらつかむことができたということで、非常に貴重な資料が発掘されたり、それからまた、それを通して地方豪族の生活なり、あるいはまた国府のあった時代における生活環境というものが、手に取るようにわかるような結果が招来されるであろうと、このようなことで、非常に問題を投げかけられているわけでございますが、奈良から平安、そして室町の時代までは、非常にこういう公文書等についての関心が高かったようでございまして、室町時代にも問注所という組織ができております。これはやはり裁判の手付関係とか、あるいはそれぞれの文書の記録、そういうようなものを十分に調査をし、収蔵していく、そういうふうな政府機関があったわけでございますが、明治以降になってまいりますと、だんだんと、一時は政府関係においてもこの問題を十分にとらえて、具体的に資料の保存、調査研究、こういうようなものをなされた経過もございますし、例を挙げてみますと、非常にたくさんございますけれども、そういう時代が過ぎて、戦後になってまいりますと、これが非常に大量に滅失していくような経過で現在を迎えている、このようになっているわけでございます。古文書の散逸状況というものは一体どうなっているかといいますと、これは世界で一番ほったらかしにしているのは日本じゃないか、このようなことがよく言われておる現状でございます。  そういうところから、三十四年に日本学術会議において、公文書の散逸防止と保存のための施設をつくるべきである、このような勧告がなされたわけでございますが、それに伴いまして、政府はようやく古文書館の建設に踏み切る。あわせて地方公共団体においても、相呼応して歴史学者あるいは同好の士等の働きかけもございまして、それぞれ文書館の建設の機運というようなものが高まってきた経過もございます。全国的にもこういう一つの運動を起こそうという組織も生まれて、今日に至っている現状でございます。  行政文書、公文書とも言われておりますが、こういう公文書等について各省は一体どういう保管をしているかというと、それぞれ文書保管の担当者を置いて管理をしているわけでございますが、総理府において公文書館が建設されて、集中保存というようなものを十分にやっていこうというようなことになったわけでございますが、なかなか各省間の何というか、壁も厚くて、まだ思うようにいっていない現状ではないか、このように思いますが、形の上では、この各省との連携、あるいは各都道府県との連携、こういうようなものが協力関係にあるというように、図解はされておりますけれども、現実的にはほとんどゼロではないだろうか、このように考えるのでございます。この点につきまして、まず私は総理府の公文書館建設後における各省との連絡、それから各都道府県との協力関係がどうなっているかということをまずお伺いしておきたいと思います。
  91. 鈴木幸二

    説明員(鈴木幸二君) お答えいたします。ただいま先生がおっしゃられましたとおり、各省間の公文書の国立公文書館への移管につきましては、なかなか問題がございまして、公文書館といたしましても「公文書等の集中管理」というようなパンフレットをつくりまして、各省庁の文書担当の方々にお分かちしましてお願いしているとか、あるいは会議を設けまして、その席上で各省の御協力をお願いするとかというような方法をとっております。  地方の公文書館等につきましては、会議等の席に出ますと、国立公文書館の状況、あるいは現在の整理状況等につきまして御説明して、地方の公文書館の機関についても、いろいろと技術的なことにつきましては、私どもの知っております範囲内でお教えしております。  それから、年一回、各省庁の文書担当者を集めまして、現在公文書館でもって保管しております状況、利用しております状況等を実際にごらんになっていただいておりますのが現状でございます。
  92. 岩上二郎

    岩上二郎君 まだ四十六年にできたばかりでございますから、十分な体制になっていないということも理解できるんですけれども、外国の事情と日本の現実を比べてみて、余りにも見劣りするような、そういう現実でございますので、せっかくできた国立公文書館、これの内容整備にもっと全力投球をすべきではないだろうか、このように思うんです。  あわせて、都道府県関係においても同様でありまして、意識的にこういう行政文書を保存するということは、非常に大事なことだというような考えを持った知事なり、あるいは市長さんなりの熱意に動かされたところでは、相当設備が整っておりまして、山口あるいは京都の府立総合資料館だとか、あるいは東京都の公文書館だとか、あるいは福島、茨城、宮城、岐阜、神奈川等々名称はそれぞれの名称を用いておりますけれども、おおむね約十六県ぐらいができているわけでございますが、その他はまだほとんど整備が進められていないような状態でございます。きわめて全国的にも低調である、このような状態でございます。  そこで、昭和四十四年に、第五十五回の学術会議の総会で、歴史資料保存法の制定について、政府に対して勧告がなされたわけでございますが、あわせて昭和五十二年十一月二十一日に、同じく日本学術会議の議長から、官公庁の文書資料の保存について議決がありまして、内閣総理大臣あてに、もちろんこれは各省庁の大臣に写しを送付されておりますけれども、要望されている事実があるわけでございますが、すでに御承知であろうと思いますが、文部省、総理府さらに自治省は、この勧告をどのように受けとめておられるか、それをそれぞれお伺いしたいと思います。
  93. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 便宜上文化庁としての、先生がいま指摘されました勧告に対する対処の仕方等についてお答えいたしたいと思います。  先生も御承知のように、文化財保護法では、いわゆる古文書につきましては、有形文化財の一内容として、すでに定義づけられておるわけでございまして、したがいまして、私どもとしては、文化財保護法制定以後、いわゆる歴史上、芸術上の価値の高い古文書等につきましては、保護法の定めるところに従いまして、文部大臣の指定を行い、それの管理、保存、公開、活用等に努めてまいったわけでございまして、それらにつきましては、現在のところすでに二千二百件を超えておるわけでございまして、点数にいたしましたならば、二十四万点ばかりの古文書になるわけでございます。しかしながら、これらは主として中世以前のものに視点を置いて調査、指定を進めてまいったわけでございまして、中世以後、近世、徳川以降、明治につきましては、その後の社会状況の変化に従いまして、いろいろ散逸するということが指摘もされてまいったので、これにつきましては、実は、この学術会議の勧告等をも参考といたしまして、昭和四十七年度から都道府県に特に補助をいたしまして、都道府県の教育委員会が都道府県下におけるところの古文書等を悉皆調査をするというような補助金を計上いたしまして、この額は昭和五十三年度で申し上げますと約八百万ばかりでございますが、二分の一の補助をいたしまして、計画的に調査をし、その調査結果に基づいて、価値のあるものにつきましては、それぞれ国において保存措置を講ずる。なお、都道府県等あるいは市町村等においての指定保存対策も、あわせて御検討願っているという段階でございます。  それらの措置をさらに進めまして、昭和五十年に、衆議院の文教委員会の御提案で文化財保護法の改正をしていただいたわけでありますが、その改正の御審議の際は、すでにこの四十四年の学術会議の勧告等も参考とされまして——この勧告は古文書等のほか、歴史資料ということで広くつかまえていらっしゃいました。従来、文化財保護法におきましては、歴史資料ということにつきましては、必ずしも明確でなかったわけであります。したがいまして、古文書のほかに、学術上の価値の高い歴史資料というようなことを特に定義に加えていただきまして、歴史資料調査ないし保存、管理を進めてまいるというようなことの改正がすでに昭和五十年に行われたわけでございます。私どもといたしましては、それらの改正に伴いまして、五十一年度から歴史資料に対する調査というものの補助金の予算を特に計上いたしまして、この金額は五十三年度で申し上げますと約千八百万でございますが、これも二分の一の補助でございまして、あとは県で持っていただきまして、県下におけるところの、散らばっておるところの歴史上の重要な資料につきまして、いろいろ計画的に御調査を願って、これを国で指定すべきものにつきましては指定にかけていくということをやっているわけでございます。これは実は昭和五十一年度から五カ年計画を立てまして、順次各県で計画を立ててもらい、継続的にやってまいるということを手がけているわけでございます。このようなことによりまして、古文書を初め、歴史資料等につきましての指定調査の体制も順次整えてまいっておるわけでございますが、なおこれらの保存なり、公開、活用、研究ということになりますと、当然それらを保管する施設が必要なわけでございます。したがいまして、これらにつきましては、都道府県に対しましては、いわゆる歴史民族資料館の補助金を従来からいたしておりますので、この補助金の執行の中で、それらを考えていただくということをいたしているわけでございます。すでに岐阜県におきましては、この補助金を使いまして、特に古文書中心とする歴史資料館というものをすでに岐阜県におきましては設置をして、その収集、保管、展示、研究、活用ということを始めておるわけでございます。  なお、市町村におきましても、市町村の歴史民族資料館の補助金を出しておりまして、これらの補助金の執行の中で、それぞれ各市町村にありますところの郷土史料というものを十分それらの歴史民族資料館で保管をしていただき、市町村民に公開、活用もしていただくというような措置をあわせて講じております。  なお、国自身もこの必要があるわけでございますので、これにつきましては現在千葉県の佐倉に設置を進めておりますところの、国立の歴史民族資料館の中でこれを保存し、公開し、活用するという体制に持っていくべく、現在設置を進めてまいっておるわけでございますし、さらに、歴史資料関係での全国的なネットワークということも考えまして、市町村、都道府県、あるいは国立の歴史民族資料館、これらが相互に連絡をとり合いながら、古文書ないし歴史資料の研究、活用、公開ができますような、センターとしての歴史民族資料館をも考えて、その建設計画を進めてまいっておるということでございます。しかしながら、私どもこのようなことでいろいろやってはまいっておりますが、まだまだ十分でない点もあろうかと思いますし、また中世以後、特に明治以前の江戸時代がかなりおくれておりましたので、ここらあたりにつきましては、中世以前の段階とおくれをとらないように、現在スピードアップをいたしておるところでございますが、社会の急激な変貌等によりまして、それらの史料が散逸するおそれが非常に増大してまいっておりますので、徳川以降近世、近代にかけての史料の保存等につきましても、なお今後格段の努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  94. 久世公堯

    説明員(久世公堯君) ただいま御指摘のありました点でございますが、先ほど先生御指摘のありましたように、現在十数の都道府県におきましては、内部部局として、行政資料の専門の所管課が設置されております。また、文書館でございますとか、歴史館でありますとか、そういうような形で古文書の整理なり、あるいは現代の行政資料、あるいは歴史的な文書、そういうものについての整備が整っているわけでございます。  先ほどから御指摘がありましたように、古文書やあるいは歴史上の行政資料につきまして、整理保存というものを図りまして、これを郷土史、あるいは歴史学上のそういう文献というようなものの研究に資したり、あるいはまた一般住民に公開をいたしまして閲覧に供して、そしてこれを住民にサービスをするということは、住民のサービスの見地からも非常に望ましいことではなかろうかと思うわけでございます。  一方、最近の行政資料につきましても、行政資料でありますとか、あるいは定期の刊行物等につきまして、一般の住民に利用をしてもらうということは、行政というものに対する住民の理解というものを深めることになるわけでございまして、これはまた貴重なことではなかろうかと思うわけでございます。地方団体におきましても、ただいま申し上げましたように、いろいろと整備をされておるところでございますが、これはいずれも地方団体の自主的な判断によって、そういうものを建て、また整備をしているわけでございますので、私ども自治省といたしましても、この学術会議の勧告を尊重し、かつ都道府県や市町村が示しております積極的な姿勢に対しまして、自治省としてもできるだけの協力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。従来も起債、あるいは補助金もごく限られておりますので、多く一般財源というものをこれに使用してまいったわけでございますが、今後とも自治省といたしましても、できる限りの協力をしてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  95. 鈴木幸二

    説明員(鈴木幸二君) ただいま先生がおっしゃられましたように、行政に関する公文書その他の記録が、国、地方公共団体を問わず、これが適確に保存され、広く国民の閲覧に供せられ、これに関する調査、研究が行われることは、御趣旨においては大変結構なことだと存じておる次第でございます。  先生先ほどおっしゃいましたように、国の行政に関する公文書に関しましては、総理府設置法第十条の規定に基づき、私どもの国立公文書館が設置されておりまして、その設置目的に即し、国の公文書にかかわる処理等をいたしておるところでございます。  ところで、地方公共団体においても、国と類似の機関の設置を要するのではないかとのお尋ねでございますが、これが設置につきましては、私ども総理府において責任を持ってお答えし得る位置にございません。ただし、これが設置されるということでございますならば、私ども国の保存機関たる国立公文書館におきましては、現在までの経験にかんがみ、でき得る限りの御協力をいたしたいと思っております。
  96. 岩上二郎

    岩上二郎君 文化庁並びに自治省、そして総理府の方からそれぞれのこの勧告に対する対処の姿勢を伺ったわけでございますが、さらに別な角度から私は御質問申し上げたいと思いますが、それは図書館法第三条をひもといてみますと、郷土資料さらに地方行政資料を収集し、一般公衆の利用に資するように努めなければならない、このようになっているわけなんですね。しかし、現実どういう状態であるかということを見てまいりますと、この文章の中にも抜けている一番大事な文書の保存というものが、この図書館法ではうたわれておりません。したがいまして、この図書館法に基づいて、教育委員会が具体的に行政資料を収集する際に、どうしてもこの領域の中では十分にその目的を果たすことができないというようなところから、行政資料中心に集める文書館的な性格のものをつくらざるを得ない、二のような現実でもございますし、また内容的に図書館での分類の方法、十進法と言われておりますが、総記とかあるいは哲学とか、自然科学とか、社会科学とか、そういうふうな分類方法をすぐ決めたがるわけですけども、この行政資料を集める際には、そういう分類ではなかなか思うようにその目的を果たすことができない。どちらかというと行政資料は複眼的なものでございまして、あらゆる総合的な判断が必要になっている関係から、この分類にはなじまないというようなことも手伝っておりますし、また司書の資格認定その他でも、やはりどうも行政経験が足りないというようなところから思うようにいかない。さらにはまた、この第三条に書かれておりまするような状態でございますから、公開、展示あるいは読書、こういうところにウエートがかかっておりますし、また具体的に行政文書、あるいは地方の資料を整えるというところもございますけれども、おおむね大体パンフレット程度のものか、あるいは各種各科それぞれ出ておる、何というか一冊にまとめた資料みたいなものが図書館に収蔵されているという、そういうようなことから、なかなか古文書類を収集する、あるいは保存するというようなことまでには至っていない、こういうふうな現実から、図書館法の領域の中で行政資料をまとめ上げ、それを発展さしていくというようなことはなかなか容易ではない。もちろんこれは教育委員会の所属であるために、知事部局との関係のいろんな問題もないわけじゃございませんが、それでもなかなかこの図書館法だけでは問題の解決にはなり得ないような、そういう現実のあることを、それぞれ文書館を運営されている側からは問題として提起されている現実でございます。そういう面で、やはりこれは新しい立法が必要ではなかろうかと、このような声が非常に全国的に台頭しつつあるわけでございます。やはり行政文書、これはそれを取り扱っている側から見れば、そういう総合的な資料、たとえば県庁内で起案したいろんな行政上の職務遂行上のもとになる一般的な古文書、こういうようなものがやはり必要だと、このように言われておりますし、いま国会開会中にこうして質問し、答えている、こういうふうなものの内容こそ大事なことであって、でき上がったものを、ただそれをそのまま収蔵していくというようなことでは、公文書の性格に合わないということもありますし、現実的にたとえば一番問題なのは、明治の初期から中期にかけて、この公文書類が相当散逸しているというふうなところもございまして、たとえば圃場整備事業をやる。そして農地の近代化を図ろうとしている場合に、やはり具体的にそのもとになっている、たとえば、地租改正法によって一筆ごとの一筆限り帳という、こういう地籍図が全国的にあったけれども、これがほとんど失われてしまって、その利用状況が一体どうだったのかというのを調べてみようとしても、なかなかそれが思うようにいかない、こういうふうなことで、大分悩んでおる学者もおるわけでございます。やはり、もしそういう時代時代における歴史資料というか、公文書が保存してあれば、相当後世の歴史家にとっていい参考になる。このようなことをあわせ考えてみて、いまの現時点が今度百年もたてば、これがまた一つの歴史資料として大いに尊重し、活用されるということを考え合わせてみて、やはり一番問題になっているのは、江戸時代よりもむしろ明治の初期から、戦前戦後における文書類、これをやはり急速に収集し、保存しなければならないという時点に、私はもっとウエートをかける必要があるんじゃなかろうか、このように考えるわけでございます。そういうことを考えてまいりますと、資料を収集し、整理をし、調査をしていくという場合の職員の養成、これもまた非常に大事なことでございますし、ただ単に図書館の司書だけで、もう少し行政的に拡大解釈をして、すでに第三条にうたわれているんだから、公文書類の取り扱いもやってできないことはないよというようなことだけで問題は済まないような、そういう感じがしてならないわけなんです。  そこで、私は図書館法の第三条による救済というようなものも、なかなか思うようにいかないと思いますが、この点について社会教育局長からちょっと従来取り扱ってまいりました図書館の具体的な整理の内容と、公文書との関係についてお伺いしたいと思います。
  97. 望月哲太郎

    政府委員望月哲太郎君) お答え申し上げます。  先ほど来岩上先生の方から御指摘のございましたように、公文書等の収集、保存及びその利用につきましては、わが国の社会文化の進展を支えるものとして、きわめて重要なことであると私ども考えておる次第でございます。そこで、先ほど先生御指摘のように、図書館法の三条「図書館奉仕」の分野におきまして、郷土資料、地方行政資料その他の資料を収集し、一般公衆の利用に供するということがうたわれておるわけでございまして、それと同時に図書館法の二条におきまして、「「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、」云々とございまして、保存ということも一応図書館法の二条におきまして定められておりますので、もちろん集めました資料につきまして、一般の利用に供するとともに、保存に必要なもの等につきましては、十分そこら辺のことは念頭に置きながら対応するわけでございます。そういう形になっております。  それでは実態はどうであろうかということでございますが、一応私どもが手元に持っております資料によりますと、古文書等公文書の収集を都道府県立の図書館でやっておりますところは十三館ございます。もちろんその内容等につきましては、それぞれの県の御方針等によりまして、いろいろな違いがございますが、一応そこが中心になってやっておりますという県が十三でございます。それからその他文書館あるいは資料館などで、公文書類を収集、保存していらっしゃるところもあるわけでございます。  それから、そういう中で、それでは図書館として十分それだけで機能しているかどうかということにつきましては、その都道府県の方針なり、図書館の体制等によりまして、いろいろな違いも出てまいると思います。また、そこで働いております職員につきましても、司書は一応図書館につきましては、一定の講習を受けまして、専門的な技術を、あるいは知識を身につけることになっております。その司書の資格を得ます講習の単位といたしまして、図書館資料二単位、資料目録法二単位、資料分類法二単位等履修をいたしますので、その点におきまして、行政資料取り扱いについても、必要な事項教育は一応受けることになっておりますが、なお行政経験その他の専門的な経験を得させるということにつきましては、これは必ずしも司書の資格という中では、そこまでは求められていないわけでございますが、一応そういうことも配慮しながら、司書の資格付与の講習は受けるようになっておるわけでございます。  それから分類法につきましても、これは一応私どもが承知しております段階では、やはり公文書につきましては、先生御指摘のようないろいろなこともございますので、やはりそれぞれの都道府県で、それぞれの実態に合った分類を進めておられるようでございまして、必ずしも一律な方法で処理はなさっていないと伺っておりますので、できるだけ公文書取り扱いの実態に即するように、各段階で御努力はいただいておるように承知はいたしておるわけでございます。しかしながら、図書館の機能につきましても、いろいろなお今後整備すべき点も残されておりますし、また公文書等をより効率的に利用すること等を考えてまいります。また、公文書等が持っております特殊性などもあわせ考えますと、より充実した専用の施設を整備することなども含めまして、公文書等の収集、保存、利用については、今後さらに検討をしていかなければならない問題が相当たくさん残されているというふうに感じております。
  98. 岩上二郎

    岩上二郎君 それぞれ自治省から、あるいは総理府から、あるいは文化庁から、そしてまた、社会教育局長から、そのそれぞれの分野におけるタッチの姿勢を伺ったわけでございますが、どうも公文書類の保存、収集に対して、これからどうするかということについて、熱意というか、現実的な矛盾をも解決することを含めてですけれども、足りないように感じてならないんです。  一昨日総理府を訪ねました。私のところでは地方にあります行政文書は、とても手に負えませんで、目下のところ国立公文書運営だけで精いっぱいでございます。それから、自治省へ参りますと、いや私のところでは全然組織がございませんし、各都道府県でおやりになることについて、交付税だとかあるいは起債とか、そういうようなもののめんどうを見る程度でございまして、また、そういうふうなものを取り扱う課もなければ、人員もおりません。それから、今度は文化庁へ参りますと、文化庁では、もう重要文化財の指定、ほんの氷山の一角みたいなものを取り扱うだけでもう精いっぱいでございまして、どうもそういう問題を取り扱うということについてはきわめて消極的でございます。それから今度は社会教育課の方に行ってまいりますと、社会教育課では、いやこれは図書館で救済できないはずはないんじゃなかろうかという話があったものですから、こういう具体的な悩み、運営についての具体的な問題を提起をしたわけでございますが、しかし、それに対しても、そういうものでございましょうかという程度の答えがはね返ってくるだけで、一体どこに焦点を当てればこのいま焦眉の急と言われております公文書類の保存、収集について、どうしたらいいんだろうかということを悩まざるを得ないわけです。これがやはり政府の縦割り行政の弊害というか、あるいは、すでにある城は、与えられたものは守っていく、新しいものに積極的に手を出そうとしない、やはり従来から培われた官僚体制がこういうところにもあらわれているような、そういう感じがしてならないわけなんです。  そこで、私は、文化庁で非常に前向きなごあいさつがありまして、きのう、おととい伺ったのと大分違うんですね。ですから、もし文化庁が積極的にこの問題に対処していきますよという姿勢さえあるならば、それをめどとして、あるいはそれを基幹として、自治省でも、あるいは総理府でも、もうすでに総理府は国立公文書館をおつくりになったんですから、そういう経験も踏まえておりますし、それと中央との関係の連係プレーをうまくしながら協力する。文化庁はできるだけこの問題について厚みを加えていきます、こういうふうなことであるならば、やはり文化庁らしいものなんですね、この公文書というものは。まあ、これは素朴にだれも考えると、これは文化庁のお仕事じゃないですかと、総理府でも言いますし、また、自治省でもおっしゃるわけです。  文化庁でこの問題をお取り扱い願えるというならば、これを今度は政府がもっと力を入れておやりになっていただくと。これが非常にネックになって、なかなか容易でないとするならば、特別立法措置も講じて、もっともっと積極的にこの公文書類の収集、保存に力を入れる。こういうふうな御努力を願えれば幸いでございます。それができるかできないか、これひとつ文化庁に再度御質問を申し上げたい。
  99. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) お答えをいたします。  私が先ほど先生の御質問につきましてお答えいたしましたのは、昭和四十四年の学術会議の勧告の中身をなしています歴史資料保存法の制定の中で述べられているその趣旨につきましては、私どももまことに同感なわけでございまして、これを文化財保護行政としてどう受けとめるか、また受けとめてきたかということについての施策を申し上げたわけでございます。先生のお話を承りますと、公文書という公の文書お話のようにも受け取れるわけでございますが、私ども文化財に関する限りは、公のものであれ、私のものであれ、それは区別をしないわけでございまして、その区別なしに文化財としておよそ価値のあるものは国は国の立場から、県は県の立場から、市町村は市町村の立場から、それぞれ国は文化財保護法、県は文化財保護条例、市町村は市町村の文化財保護条例、これらによりまして、それぞれ調査をし、指定をし、保存をし、活用をし、公開、展示、研究に資するということをやってきたわけでございます。先ほど来の先生のお話を承りますと、かなり明治以降のもの、しかも、公のものにつきましての御指摘がやや中心になっているかというふうに承るわけでございますが、これらにつきましても、将来は文化財になるわけでございまして、したがいまして、それらのものが文化財としての処置をするまでの間に散逸してしまう、なくなってしまうというようなことは、その材質が紙によってできているというような関係上、非常に保存に適しない性質のものでございますので、非常に管理もむずかしゅうございますが、文化財としての処置ができるまでの間に、散逸しないような措置につきましては、私ども立場からも非常に要望をしたいわけでございますが、ただし文化財保護行政の中で直ちにタッチできる面につきましては、これはあるいは若干限度があるんではないか。特に私ども文化財保護行政の中では努力しています中心は、従来は中世以前のものであったわけでありますが、だんだん近世から明治に移りつつあるわけであります。ここらあたりをできるだけ早く処置をした後、明治以降の大正、昭和というようなものにつきましても、これは当然文化財としての価値のあるものはなさなくちゃならぬわけでございますが、やや現在の段階で申し上げますと、近世から明治にかけてのものが、今日の中心であるという点はお認めいただき、われわれもその点は十分努力をいたしたいと思うわけでありますが、先ほど来の明治以降大正、昭和、今日におけるところの公の行政資料は、まだそのままで直ちに文化財としてはなっていないものもかなり多いんじゃないか、そういう意味では、それぞれの行政庁自体で、これを処理していただく必要のあるものが、かなりあるんじゃないかというふうに思いますので、文化財保護行政の体制の中で、一貫して直ちにいまの段階でなしていくということにつきましては、いろいろ制約はあろうかと思いますが、御指摘の点につきましての保護行政の姿勢も、これは当然必要かと思いますので、できる限りそういう面についての行政ができる段階に持っていけるように、保護行政の実質的な中身を拡充してまいる努力を当面はいたしたいというふうにお答え申し上げたいと思います。
  100. 岩上二郎

    岩上二郎君 私が主張しておりますのは、公文書あるいは行政文書というか、それだけではないんですね。やっぱり古文書も入っているわけですね、プラス古文書、私のものも入れてもいいんじゃないか。ただ、行政文書というのは非常に大事なものですから、それを中心に論じているわけでございます。したがいまして、文化庁がこの問題を、中世のものはもう大分やってきた、しかしまだまだ問題がある、それから今度は近・現代に入る、そういう近・現代のものさえもまたこれはもう大いに必要である、このようなことを考えている国のベースと、今度は地方のベース、地方でもやはりその問題をもっと真剣にやらなければならない、そういう考え方があるならば、私は、文化庁が中心になって、これを大いに進めるということのために、立法措置でも講じて、速やかにかつ全国的に、この行政文書その他の整理、保存、収集、そういうようなものに全力を注いでやるべきだという、そういう熱意を示していただけないだろうかと思うのですよ。各省はそれに対して協力をする、そういう一つのへそが国の機関にないところに問題があるので、そのへそをどうしてもつくりたい。それをつくることによって、全国的に、ほうはいとしてこの行政文書なり、古文書なり、いろいろと埋もれているいろんな資料が収集、保存できるんじゃなかろうか。これを一日も早くやらないと、これは日本の文化の大きな損失になるだろう、このように考えるのです。  いままでお伺いしたところでは、みんな御趣旨はごもっとも、しかし私のところはと、こういうふうな拒絶反応が出てくるだけで、じゃ私のところで積極的にやりましょうというところが見当たらなかった。じゃ各都道府県のお世話役をやっているのだから自治省にお願いしようかと言ったら、私のところは。じゃ総理府、総理府はせっかく公文書館をおつくりになったんだから、その経験を踏まえてやってくれませんかと言うと、いや私のところはもう精いっぱいでございます。こういうふうな状態では問題の解決にはならない。その意味で、文化庁が非常に熱意のある御答弁をいただいたわけでございますけれども、この際、いろいろな助成金だとか、起債だとか、あるいは法律をつくる場合にどうするかというようなことは、各省とも御協力をいただけるならば、私はこれはもうすぐできるんじゃなかろうか。すぐと言っても、すぐ簡単にはいかないかもしれませんけれども、私は、一番大事な、いま公害問題が騒がれておりますけれども、むしろ心の公害と言ってもいいような、そういう現実に立たせられているような公文書類の収集、保存ということを速やかにおやりにならないと、これは国家的な損失、民族の存亡にもかかわると言ってもいいかもしれない、きわめて大事な大事な作業ではないか、このように考えるのです。したがいまして、これは歴史資料保存法というか、そういう法律をおつくりになって、そして速やかに、国のベースでも積極的におやりにならなければならないし、いまの国立公文書館程度のもので、できましたというようなことを大っぴらに言えないまだ現実ではなかろうかと思うのですね。国立の公文書館ですらも職員が四十七名、私のところの茨城県の歴史館ではもう五十名おります。もっともっとこういう歴史資料の保存については力を入れなければならないし、また地方においても同様。こういう角度から、ひとつぜひお取り上げいただきたいと思います。そこで、大臣の御所見をいただければ幸いと思うのです。
  101. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御発言の御趣旨はよく理解ができます。ただ、お言葉を返す意味ではございませんが、岩上委員の御発言の中に古文書という言葉、公文書という言葉、歴史資料という言葉が出てまいりました。それぞれ定義が違うような気持ちがいたすわけでありますけれども、古文書につきましては、文化庁がお答えをいただきました方向は、私御理解がいただけるのではないかと思うのです。すでに文化庁は、その方向でそれぞれの仕事をやってきているわけでございます。また、地方自治体もそれぞれ条例を持っていただいているわけでございます。ただ一つ昭和五十年の文化財保護法の改正のときに、美術品であるとか美術的意義のあるものについての文化財、それにとどまらずに、歴史資料としての価値もやはり文化財としての指定の対象にする、この改正をいたしましたけれども、地方公共団体がそのことを十二分に理解していただけているかどうか、ちょっと危惧を感じるのでございます。地方にありますところの古文書がりっぱに収集され、保存されていないおそれがあるのではないだろうか、そういう意味で、いま文化庁が取り組んでおります歴史資料というものにも、文化財としての意義を求めて、これの指定をいたします準備を進めておりますことを、地方公共団体にも積極的な理解をいただく手だてをひとつとってまいりたい、かように考えるわけでございます。  それから、図書館法のことでありますけれども、図書館法の第三条に保存という言葉がないという御指摘がございました。しかし、第二条に「図書館」というものの定義づけをしてございます。図書館とはこういうものだという定義づけの中には、「保存」という言葉もあるわけでございます。そういう意味の図書館が果たすべき仕事が三条に書かれておりまして、そして、その図書館として果たすべき役割りの中には、「地方行政資料」という言葉も明確に書かれているわけであります。文化庁が指定の準備をしております中世から近世までのもの、文化庁の次長がお答えをいたしましたように、明治以降の新しいものが散逸するおそれがある。それを私は地方公共団体が図書館法に正しく基づいて保存、収集をしてくださらなければいかぬと思いますので、図書館法の定義、図書館が果たさなければならない役割りというものを、よく地方公共団体に御理解いただくことが大事ではないか、こういうことを先生の御指摘の御意見の中から私は非常に強く感じたものでございます。ひとつ、このことにつきましては、図書館で保存、収集、ある場合には公開することがいいのか、県によっては資料館というものを新たに持たれてやっておられるところも現にあるわけでございます。そういう姿がいいのか、どういう施設でこの種のものを収集、保存、整理をしていくのがいいのかということを含めまして、さらに一層の検討をさせていただきたい。直ちに私は立法をしただけでは済まない、そんな感じがいたすわけでございます。図書館法そのものを正しく地方公共団体が認識していただけていないのではないかというおそれすら基本的には持つわけでございますので、これらの趣旨徹底を図りながらひとつ検討させていただきたい。同時に、このことは文部大臣だけですべて解決できる問題ではないという気持ちがいたしますので、総務長官なり、自治大臣なり、関係ありと思われる閣僚にも、私から意見を申し述べまして、検討をさせていただきたい、かように考えます。
  102. 岩上二郎

    岩上二郎君 最後の大臣のお言葉で、いささかこれならば前進するかしらと、このように感じた次第でございますが、その最後の言葉というのは、自治大臣と、総理府総務長官に十分相談してみますというこの態度に対して非常に敬意を払う次第でございます。  図書館法でできないことはないじゃないかということなんですけれども、この第二条ではそういうふうに保存までうたっていて、第三条でなぜ保存というのが抜けちゃっているのか、これがちょっとやはり問題なんですね。ですから、図書館法では保存まで全部入っていながら、第三条で抜けているから、何となく図書館の内容というのは閲覧するとか、公開するとか、勉強の部屋をつくるとか、そういうふうなことにウエートがかかり過ぎちゃって、その大もとになる保存、収蔵という、そういうふうな役割り分担というか、それがおろそかに手抜きになっている。ところが、文書の整理をする場合には、むしろそれが大事なことなんで、見せることよりもむしろ調査、研究、保存というのが大事なんで、図書館でやっていたのが、だんだんと文書館的な性格に移行してしまっている、このあたりにひとつネックがあるんじゃなかろうか、このように思うんです。で、いまの大臣の御意見で了解いたしましたが、各省とも拒否反応を示さないで、できるだけ前向きに、一緒になって研究する、地方の実態もよく調査をし、そして各省間でお互いに協調ムードの中で、いま大事な行政資料、特に、私は行政資料と言っているわけですけれども、そういうものの保存、収集というものをいまこそ図らないと大変なことになりはしないだろうかということを考えるんです。特に、第一次大戦、第二次大戦を経た、明治の末期から大正、昭和にかけて、この資料というものが非常に荒らされに荒らされ、散逸しているような現状なんですね。ですから、その面で私どもは非常に危惧するわけでございます。むしろ、こういう資料収集こそ、最も急速に進める必要があると、このように考えざるを得ないわけなんです。  きょうは大変、この一点だけとらえまして各省わざわざおいでいただきましてお答えいただきましたことを感謝しながら、私の質問を終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  103. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私は国際児童年についてお尋ねいたします。  一昨年——一九七六年の国連総会で、来年一九七九年が国際児童年というふうに決定されたわけでございます。ちょうど児童の権利に関する宣言の二十周年にも当たり、また同宣言の実施をさらに促進する機会となるということで、来年の国際児童年、これは非常に大事な年であると思います。  そこで、外務省にお尋ねいたしますが、この国際児童年中心機関に指定されたユニセフの事務局長が外務大臣に、国際児童年についての協力要請に関する書簡を出しておりますが、その内容の主なところはどういうことでしょうか。
  104. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 外務省がまだ来ていないようでございますが、ユニセフの児童局長のリム女史に私もお目にかかりましたので、私からお答えを申し上げたいと思います。  国際児童年の目的というものは、世界の関心を児童の問題に向けて、今日の児童の福祉があすの世界の平和と繁栄をもたらすものであるとの認識を深めよう、そういうことを目的にしている、リム女史からもそういうお話を私は承りました。そして、日本政府としても、積極的にこの国際児童年の目的達成のために、ひとつ各種、各様の努力を願いたい、その事業内容については、それぞれの政府でお考えをいただいて結構なのですというお話を承ったわけでございます。全く賛成なお話でございまして、私も賛意を表しまして、積極的に協力をいたしますというお約束をしたわけでございます。事務当局へもその話を私はおろしまして、その趣旨について文部省としても積極的に支持していこう、こういう決意を文部省としても持っているものでございます。
  105. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その主な内容についてはいかがですか。
  106. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) リム女史からのお話は、事業内容はそれぞれの協力をしてくださる政府政府で、それぞれの国でお決めをいただきたい、こういうお話でございましたけれども国際児童年にかかわりますわが国の事業の推進につきましては、国全体としてその大綱を決定をいたさなければなりませんので、事業推進会議を設置する方向で、総理府が中心になって検討を進めております。来週中の閣議で、これが決定できるかと考えております。文部省もこの会議の当然一員に参加する予定でございます。  文部省といたしましては、教育の分野で国際児童年についての事業の調整、推進を図るための文部省内の関係局課から成ります連絡会議をすでに設けまして、国段階での方針決定を待ちまして、関係省庁との連絡を密にしながら、具体的な事業計画について検討を進めたい、かように考えているところでございますが、ぜひ成功をさせたい、かような決意を持つものでございます。
  107. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それでは、文部大臣からの御発言もございまして、総理府が中心になってというようなことでございますので、総理府の方にもう少し具体的にお尋ねしたいんですが、国際児童年推進委員会というような名前にでもなるのでしょうか、その点はいかがですか。
  108. 門田実

    説明員(門田実君) 私は内閣の方の者でございますが、お答えいたします。  初めに先生御質問のユニセフからの書簡でございますが、たまたま私いま手元にその要旨を持っておりますので、ちょっと申し上げますと、書簡の要旨は、「貴国が、国際児童年の行事及び諸活動に参加することにつき、検討するよう要請する。」というのが第一点でございます。  それから、「貴国が、国際児童年のための諸活動計画を策定するよう希望する。」と、これが第二点でございます。  それから、「国際児童年事務局の経費を拠出可能な国は、ユニセフに対し特別拠出を行うよう希望する。」と、これが第三点でございまして、大体以上が書簡の骨子でございます。  それから、ただいまお尋ねのことでございますが、日本といたしましては、ただいま大臣の方から答弁ございましたとおりでございまして、これに誠実に取り組んでいかなくちゃいかぬという考えでおります。具体的には、まだこれは仮称でございますが、国際児童年事業推進会議といったようなものをつくりまして、これは民間と政府の方と両方のメンバーから構成いたしまして、これを中心に連絡を密にし事業を推進したいと、こういうふうに考えております。
  109. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 発足の予定、大臣がおっしゃったようなころが発足できる時期になりますんでしょうか。
  110. 門田実

    説明員(門田実君) いま関係者非常に鋭意詰めておりまして、近々発足できると思います。大臣のおっしゃったような線になりますように努力してまいりたいと思います。
  111. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、その組織の位置づけでございますが、どこに置かれるか、またどんな仕事をするのか、御検討になっている程度でおわかりでしたらお願いいたします。
  112. 門田実

    説明員(門田実君) この仮称でございます推進会議は、総務長官が恐らくはヘッドになりまして、これを強力に推進してまいるということになろうかと思います。そのメンバーにつきましては、目下具体的に検討中でございまして、まだ煮詰まったものがございませんが、民間と政府と両方で構成して、庶務は総理府において処理するというようなことでやっていきたいと考えております。
  113. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その事業計画を立てて決定する機関になるのかどうか、その点どうでしょうか。
  114. 門田実

    説明員(門田実君) その点でございますが、これは国際児童年の事業となりますと、それぞれの役所、あるいは民間団体、それぞれが決定して推進するというものが非常に多うございます。したがいまして、この推進会議としては、その全体を連携を密にして、効果的に推進していくというのが、その立場であろうかと思います。ですから、推進会議が直接何かを決定して事業をやるということではございませんで、推進会議はその大綱を定めて、それぞれの役所なり、民間団体が、その決定したところを実行していくと、こういうことになろうかと思います。
  115. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その決定機関じゃないと、決定権がないということが非常に問題になると思うんですね。国際婦人年のときも総理府に推進本部ができたわけですけれども、決定権がない。その位置づけが非常にあいまいだという点で、やはりその設定された意義というのは非常に弱いという感じを持っておりますので、また来年こうした児童年、それができても、婦人年のときにできたあれだけの世間からの期待を持って大きく取り上げられた婦人年の婦人問題推進本部が、いまだにあれだけの程度の仕事しかできてない。それに比べますと、さらにこの国際児童年を記念して行われるこの会議というものは、非常に力の弱いものになりはしないかということを心配しているわけでございます。しかしそれも、やはり総理府の中心になる人の熱意の問題であって、今後そうしたことが、また、おぜん立てはできたけれども、おざなりのものにならないように、ぜひこの児童の権利のためにしっかりしたものをつくっていただきたいと、特にお願いするわけでございます。  そこで、続いてお聞きいたしたいんですが、現在の時点で来年の国際児童年の活動計画としてどういうことを考えていらっしゃるか。まだできないんだから、考えていないと言えばそれっきりですけれども、諸外国では具体的なことがいろいろと取り運ばれている。しかし、新聞の報道などによりますと、子供万国博というようなものを催したいというようなことを考えている自治体もある、早くも誘致の名のりを上げているという、そうした積極的な動きもあるわけです。こういう中で、政府はどういう考えを持っているのだろうか、のんびりしていやしないんだろうか、こういうふうに思いますので、期待できるような姿勢とか内容をお聞かせいただきたいと思うんです。
  116. 門田実

    説明員(門田実君) 実は、関係の各省庁で連絡会を開催いたしまして、各省それぞれに内々ではいろいろと検討をやっておる段階でございます。その検討を具体的には事業推進会議と申しますか、この会議の設立をまちまして、そこでさらにもんでいって、具体的な案をつくっていく、こういう段階のものでございますから、どうもただいますぐ先生にお答えできるようなことはこの場で言えるようなことはございません、申しわけございませんが。御指摘のように政府が非常に事柄の処理がゆっくりとし過ぎていると、あるいはりっぱなものにならないというようなことがあっちゃいけませんので、その点は積極的に今後推進していきたいと、かように考えております。
  117. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 非常に有意義な記念事業をぜひ計画してほしいと思います。そういう点で別な角度から活動を開始すべきであると思いまして、その一つの問題として、わが国の子供の置かれている現状、こうしたものを総点検すべきである、こういうふうに考えております。特にわが国にも児童憲章というものもあるわけです。そういう点で政府は来年のチャンスというものを機会に取り上げてみてはどうか、こう思っておりますが、この総点検どうでしょうか。
  118. 門田実

    説明員(門田実君) 私のやや個人的な判断になりますが、非常に有益なことであると思います。そういう事柄も含めまして、推進会議において本当に実のあるものをやっていかなくちゃいけないと、かように思います。ただいまの御発言は十分検討さしていただきます。
  119. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 有意義な記念事業をと期待する上から、もう一点意見として述べておきたいのですが、日本の国の児童というのは、表面的には文化的に恵まれた立場に置かれているようですけれども、児童の生活の中に踏み込んで児童の立場を見ますと、教育問題一つを取り上げてみても、受験地獄、落ちこぼれ、また年々ふえていく非行、あるいは自殺、こうした問題が山積しております。こうした児童のあらゆる角度からの現状をとらえて、児童白書というようなものをまとめてみてはどうか。今後の児童の問題の対策を進めていく資料として来年はやってみたらどうかと、こういうふうに考えております。その点いかがでしょうか。
  120. 門田実

    説明員(門田実君) ただいまのお話は、非常に広範な問題になると思います。児童の問題ではございますけれども一つの役所だけではカバーできないいろんな範囲の、いろんな分野の問題を含んでおります。この点も十分検討さしていただきたいと思います。
  121. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 文部大臣もこうした問題には、国務大臣の一人として積極的に取り組んでいただける大臣でいらっしゃると思いますので、こうした児童の現状を総点検してみる、また、今後の対策のために児童白書、こうしたものをつくってはどうかという、これに対して閣議などにこれを出されて、何とか実現できるような方向にお力を出していただきたいと、こう思いますが、その点いかがでしょうか。
  122. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先ほどもお答えいたしましたが、推進会議がまだスタートしていない段階でございますので、断定的なお答えが残念ながらいたしかねますけれども、いま御指摘の総点検、あるいは児童白書というようなことも、せっかく御発言がございましたことでございますので、積極的に検討させていただきたいと思いますし、この国際児童年というのは、非常に有意義なことでありますだけに、できるだけ大ぜいの方からの御意見をお伺いしながら、仕事の内容を固めてまいりたいと思いますので、また今後もいろいろな御意見をお寄せいただきたいと、かように考えるものでございます。
  123. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それでは外務省の方がお見えになったようなので、お聞きしたいと思います。  先ほど書簡の内容を承りました。この国際児童年中心機関であるユニセフの執行理事会の議長に、わが国の女性外交官第一号の緒方貞子公使が選ばれております。非常に期待を持っているわけですけれども、この緒方さんがユニセフの執行理事会の議長として、国際児童年を成功させる非常に重要な責務を担うことになったわけですが、ぜひ大成功をおさめるために、日本の政府としても絶大な応援をしてほしい、これを強く要望いたしますが、外務省としてはこの点いかがでしょうか。
  124. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 先生御指摘のとおり緒方公使は、この八月一日から向こう一年間のユニセフ執行理事会の議長に任命されております。これは前々から話があったことでございまして、特に競争相手があらわれて表決に付されるということもなく、満場一致で選出されております。こういう背景を踏まえまして、外務省といたしましても日本のユニセフに対する協力の強化、それから国際児童年につきましても関係省庁にもお諮りいたしまして、積極的な協力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  125. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、口先だけじゃなくて、議長を日本から出しているという、しかも、女性であるという立場で、外務省は具体的な応援をしていくべきだ。そこで先ほどの書簡にもございますように、このユニセフに対するわが国の拠出金、これが問題だと思います。そこでこの五年間にどのくらいの金額を出しているか、また、先進国の中で何番目なのか、こういう点をお答えいただきたいと思います。
  126. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 御説明申し上げます。  恐らく御質問の点は二つの点を含んでいるかと思います。  一つは国連児童基金への通常の拠出金でございます。これは今年度は二百六十万ドルを計上いたしております。  それからもう一つ、ユニセフ事務局長の方からの書簡にございましたのは、国際児童年のための事務局経費の拠出をしてほしい、いわば特別拠出でございます。この点につきましては今五十三年度二十万ドルが計上されております。
  127. 吉田実

    委員長吉田実君) 答弁が漏れています。
  128. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) なお、通常の拠出金で申しますと、五十三年度、いままで入りましたところでは、日本は各国の中で十番目になっております。  それから特別拠出金の二十万ドルでございますが、これは実は各国からの拠出成約額と申しますのは、ある国は二カ年にわたっての拠出であると言っている、ある国は一年だけということで、順不同でございますけれども、たとえばノルウェーあたりは七八年、七九年の両年度にわたって合計五十万ドル、アメリカは二十五万ドル、これは七七年についてでございます。ドイツが約二十四万四千ドルでございますか、大体そのような感じになっておりまして、これは成約状況が年度ごと少しずれておりますので、厳密な比較はむずかしいんでございますけれども
  129. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 まあ余り出していないから、あなたのお答えも非常に弱腰の、言いわけ的なお答えのように思いますので、もう一度念を押しますが、国連児童基金、これを五年間にわたってどのくらい出しているか、こういうことをお聞きしたわけですね。私も資料いただいて、あなたの御答弁とどうなのか比べてみたわけですけれども昭和五十年度、本当に少ないですね。三百三十三万ドルですか。そうですね。それから五十一年度は二百二十万ドル、五十二年度は二百四十万ドル、五十三年度は二百六十万ドル、こういうわけですね。それで、同じような基金で人口活動基金というものも日本の国は出しておりますが、この方の五年間の金額と順位、これはどうなっておりますか。
  130. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 手元に実は資料を持ち合わせておりませんが、国連人口活動基金、UNFPAに対する拠出は本年度予算ではたしか千四百五十万ドルでございます。それから昨年度、これが千百万ドル、それからその前が九百万ドル、大体そういうふうになっております。
  131. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 大体お聞きしましたのと私が資料としていただいたのと同じで、これはわりあいと出しているわけなんですね。ですから答え方も出してないのと出しているのと答え方が違うわけです。外務省としてもよくもう御存じでいらっしゃると思うんですね、私が何を言おうとしているか。この同じような重要な拠出金、これを比べてみますと非常に差があるわけです。同じ年度、そして五年間を比べてみても、この児童のための児童基金、これは本当に二十万ドルぐらいずつちびちびちびちびふやしてはいるわけなんです。本当に言いわけ的にふやしている。人口活動基金の方は、毎年二百万ドルをふやしている。片方は二十万ドル、片方は二百万ドルと非常に差があるわけです。ですから、児童のための協力というのはいいかげんだと、子供は後回しだと、女、子供という、そういう姿勢がやはりこういうところに出ている。特に、このユニセフの国際児童年の方針というのは、開発途上国における児童にサービスを提供する、そうした活動に重点を置いている。開発途上国における児童がどんなかわいそうな立場に立っているかということについて、積極的に手を差し伸べようと、そういう活動を期待しているわけなんで、私は格段の援助をすべきである、こういうふうに思うわけです。  来年の国際児童年に対して、議長を日本の女性の代表のような方を押し出して、そして成功させるためには、やはり日本の政府の、口だけじゃない、格段の、格別の援助をすべきである、こういうふうに思うわけです。その点、外務大臣でもないのですから、なかなかお答えはしにくいと思いますけれども、その任に当たっていらっしゃる皆さんが、やはりそうしたものを強く主張していただけば、私は実現できると思います。その点いかがでしょう。
  132. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 国連児童基金への拠出につきましては、明年度予算要求の問題は、まだ具体的には議論していない段階でございますけれども、先生御指摘の点を踏まえまして、増加のために鋭意努力してまいりたいと考えております。
  133. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 毎年ふやしている程度じゃだめですよ。その点大丈夫ですね。ふやしてはいるんですよ、少しずつ。こんなやり方じゃだめだ。ぜひ国会委員会で取り上げられたということ、そして、それを受けたあなたは責任を持って省内でひとつがんばっていただけますね。
  134. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 具体的な数字については御勘弁いただきたいんでございますけれども、御指摘の点を踏まえまして、鋭意増加に努力いたします。
  135. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ひとつよろしくお願いします。  そこで厚生省にお聞きしたいんですが、かつて児童福祉法施行十五周年記念として児童福祉白書をまとめられました。私は、あの児童福祉白書というのは非常にいいものがつくられたと思っております。十五年前につくったものとしては非常によくできている。いまでも役に立つような白書であった。問題のとらえ方、ねらい、非常に参考になっております。それに比べて、悪口言うわけじゃありませんけれども、総理府から出ている青少年白書、あれは私比べると非常に内容が落ちるんじゃないか、こう思っておりますけれども、児童白書、こういうようなものをつくってみたらいかがだろうか。厚生省としては国際児童年に向かって、やはり活動計画はお考えになっていると思いますけれども、いかがですか。
  136. 下村健

    説明員(下村健君) 白書の問題につきましては、先ほどもお話に出たわけでございますが、厚生省も毎年厚生白書を出しておりますというふうなことでもございまして、どういう形でやるかということは別にいたしまして、ひとつ十分検討させていただきたいというふうに思っております。  それから国際児童年につきましては、厚生省といたしましても、その趣旨には大いに賛同いたしまして、先ほどお話に出ました推進会議の設置運営等につきましても、積極的に協力してまいりたいというふうな方針を決めております。  具体的な事業内容につきましては、私の考えでは五十四年度予算の要求、あるいは編成過程で具体的に煮詰まっていくというふうに思っておりますが、まだ厚生省として、具体的に決定するところまで至っておりませんけれども、既定の行政面でも、児童に関連する施策をいろいろ持っておりますので、例年に増して、十分いろいろな問題点につきまして検討を加えまして、積極的な姿勢で対処いたしたいというふうに考えております。
  137. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私は、この際に法律の見直しも必要ではないか、こう考えております。児童福祉法が制定されて三十年というものが過ぎております。当時の児童福祉という問題に取り組む姿勢というのは救貧的な考え方だ、救貧対策的なものだと、こういうふうに感ずるわけですが、もっと健全育成という立場に立って、児童福祉法というものを見直すべき時期が来ていると、こう思いますので、国際児童年を機会に行うべきじゃないか、こういうふうに考えておりますが、厚生省としてはどうお考えですか。
  138. 下村健

    説明員(下村健君) 法律の問題につきましては、もちろん児童福祉行政についていろいろ問題点検討してまいります場合の一つ検討項目であろうというふうには考えるわけでございます。ただ、私どもの所管しております児童福祉行政について申し上げますと、発足当時はいろいろな問題の児童でありますとか、あるいは児童に対する虐待の防止でありますとかというふうなことで、比較的法律で規制を加えていくという側面がかなりウエートが高かったわけでございますけれども、今日の状況で申しますと、むしろ積極的ないろいろな福祉サービスの提供というふうな面が、非常にウエートが増してきているというふうに、行政の姿も変わってきております。また、いまお話に出ました健全育成というふうなことになりますと、考え方としては私どもお話のとおりだと思うわけでございますが、直ちに法律の問題に結びついていくかどうかということについてはちょっと、十分検討してみないと確実な答えを申し上げられませんけれども、法律で対処するというよりは、むしろいろいろ予算の面なり何なり、実態行政の面で対処していく方が適切であるというふうな面もありますので、その辺は検討項目ではございますが、直ちに法律問題になるかどうかはやや疑問であるというふうに考えるわけでございます。
  139. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 最後に文部省にお尋ねいたしますが、文部省としては国際児童年に向かって、どういう活動計画をお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  140. 望月哲太郎

    政府委員望月哲太郎君) お答え申し上げます。先般大臣から、先ほどもお答え申し上げましたように、文部省といたしましては、関係各局課の代表の者によります連絡会をつくりまして、政府の事業推進会議でいろいろ御検討いただきました方針に即しながら、来年度の予算要求に間に合うように、いろいろ検討してまいりたいという体制を整えておるわけでございまして、ただいまのところ、まだ、具体的にどういう仕事をするということを申し上げる段階までは参っておりませんけれども、先ほど来申し上げておりまするように、体制は整えまして、いつでもこの仕事に組織的に取り組めるような状況になっておるということを御報告さしていただきたいと思います。
  141. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いつも感じていることなんですけれども文部省と厚生省との関連で取り組まなければならない問題が非常に私はあると思います。特に幼児教育、児童の問題の根本は、やはり幼児教育というものを確立しなきゃならない。日本の文部省の姿勢というものは、この幼児教育というものに対して、もっと積極的でなければならない、こういうふうに考えているわけなんです。そういう中で、特に親が働いている子供は保育所だと、母親が家庭にいれば幼稚園というような、非常におかしい問題がいまだに解決されてない。親が中心になって子供のあり方というものがそういうふうに変わっている。そうじゃなくて、子供立場に立ってどうすべきかということを、やはり国が、文部省がしっかり考えなければどうにもならない、母親、あるいは家庭だけの問題では解決できない問題であると私は思うんです。こうした点で、幼保の問題、これは前々から問題にはなっていながら、こうすべきだというものがいまだに決まってない、こういう問題が一つございます。  また、来年から養護学校が義務化になる。これについても、障害児に対する教育のあり方というものは、私、文部省、厚生省というものが真剣に取り組めば、もっと障害児の立場に立ったあり方ができると思うんです。そういう点で、こうした国際児童年という意義ある年は、こうした問題ももっと前進さしていけるチャンスじゃないか、こう思いまして、文部省、厚生省がもっと連絡をとって、こうした問題を考えてほしいということを強力に申し上げるわけなんですね。その点いかがでしょうか。
  142. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 幼保一元化という言葉を使われて御議論がありましてから、もうずいぶん長年たつわけでございます。しかし、幼保一元化ということ自体大変むずかしい問題を絡んでいるわけでございまして、文部省といたしましては、四、五歳児の就園希望者全員を幼稚園へ入れる、その体制を固めますための長期計画に取り組んでいるところでございます。五歳児については計画どおりにおかげさまで進んでいるわけでございますけれども、四歳児の計画が若干おくれておりますことも事実でございます。なお努力をいたさなければなりません。そしてまた、やはり幼稚園というものを私どもは幼児教育という立場から考えるわけでございます。しかし保育園では、やはりこれは保育というお考えで、保育園というもの、保育所というものが置かれているわけでございます。いま柏原委員の御発言の中にもございましたけれども、親御さんの御家庭もそれぞれ事情があるわけでございます。御両親ともがお勤めで、子供さんを夕方まで預かってほしい。すべての幼稚園にそういう体制がすぐに整えれば、もう厚生省に保育所やめなさいということを言うことも可能でございますけれども、それも直ちにできることではございません。そこで、それらの問題も含めまして、地域的にも幼稚園の非常に多い県、保育所の非常に多い県、そのばらつきも大変な差があるわけでございますので、そういうことも含めて、厚生省と文部省両省で委員会で御検討いただいているところでございますので、この委員会の御議論等を踏まえまして、ひとつ積極的に厚生省と密接な連絡をとって、この問題の解決に進んでまいりたいと考えております。
  143. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 最後に文部大臣として国際児童年を迎えるに当たって、具体的な抱負をお持ちでしたらお聞きいたして、おしまいにしたいと思います。
  144. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) まだ推進会議発足いたしておりませんので、具体的なこういう仕事をということを実はまだ決めておりません。しかし、非常に有意義な国連、ユニセフの御企画でもございますので、児童福祉というものに教育がどう絡むか、このことも含めまして積極的に取り組んでまいりたい。そういう意味合いをもちまして、まだ政府部内の推進会議ができておりませんけれども、将来の体制だけは早くとりたいと考えまして、省内で連絡会議をすでに設けて、政府の推進会議の発足を待っているところでございます。
  145. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 国士舘大学の問題について、午前中来、粕谷委員からの質問もあったわけですが、続いて若干の質問をいたしたいと思います。  この大学に関する問題は今回が初めてのことではなくて、すでに昭和四十八年段階でも、七十一国会でありますが、六月十五日には衆議院文教委員会で、さらに六月二十一日には参議院の文教委員会で、大学の方から参考人の出頭を求めて調査、審議を行ったところでありました。さらにさかのぼれば、昭和四十一年段階で、三十九年ころからさまざまな問題があったというところから、日本学術会議の学問思想委員会においてこれが問題となされ、その時点でも国会の審議の中で登場をしたことがあるというふうに承知をしておるわけでございます。私、四十八年当時は国会来ておりませんでしたけれども、これがどのように国会の中で、特に文教委員会——本委員会においても審議をされたわけですが、問題になり、本日の午前中からもしきりと出てまいりました近代化委員会というものがどういう目標で進められようとしたのかということをまず明らかにした上で、本日の時点におけるいわゆる近代化を定着をさせていくように図られる必要があるだろうと思います。当時の時点で奥野文部大臣は、国士舘大学は右寄りの学校であると思うというふうに言っておられますね。奥野さんがだれが見ても左寄りの方であるというふうな判断はしないだろうと思うのですけれども、それでもなおかつ右寄りの学校であると思う。しかし、教育基本法を踏み外せば問題だ。当事も暴力的事件が端緒となってこれが出てきたわけでありますが、これは厳に戒めなければならない。しかしながら、大学も強い反省の上に立って、また着々と実施もしておられるので、熱意を見守るのが本来の姿と思うということで、今日まで見守ってこられたわけであります。その中でここで問題になった点、特に法学部の教授の中村宗雄さんは、ここに出てきていろいろ改革の具体的内容について約束もされ、みえも切っていかれたわけであります。したがって、文部省は政策の継承性をもって、ずっと見守ってこられたんだと思うわけです。こういう結果、何が約束され、何が実行されたのかというのが肝心なところだと思うのであります。特に、その中で奥野元文部大臣の答弁でありますが、文部省とそれから大学との接触によって近代化委員会が生まれることになる、それから暴力学生に対しては適切な処分も早速に行われる、また問題の運動部の応援団も解散をされると、こういうふうなことが答えられております。また中村氏の証言におきましては、大学近代化についてはこの中村が責任を持って近代化委員会を設け、改革に当たると言われた上で、幾つかの問題について改革方向を言われているわけですね。  第一点は、当時の大学独得のカリキュラムとしての実践倫理、ここでは何が問題になったのか。こういうカリキュラムを十二分の改革を加えますと、こういうふうに言っておられるわけです。この後は今日どのように進行したのか。紀元節、天長節、これらの始末については、近代化の重要な論点として改革委員会において、これに対して実を上げていきますと。当時は何か選挙権バンクというなのがありまして、いまから見れば驚くべきことでありますけれども学生から二百円巻き上げて、そして政治目標のために動員をされて、憲法改正議員の選出の資金とするというようなことが行われたりした。それからもう一つは、教授会が諮問機関である。これは中村氏の口からしても、まことにこれは異常なる構成になっておりますので、これは改革の重点でございますというようなことがございました。それからさらに学生監というあり方ですね。これについての近代化の実を上げていきますと、これらのことが約束をされたと承知をしておるわけです。  二、三御答弁もあったわけですが、特にこの実践倫理の問題はどのようになり、今日はその点、近代化の実が上がったのか、初めひとつ御答弁をいただきたいと思うんです。
  146. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、学長が講話を実施をいたしまして、その後受講が強制されているという状況があったわけでございます。これは四十八年以前からそういう状況がございまして問題になっていたわけでございますが、その点については、近代化委員会報告に基づいて、改革措置が四十八年度以降とられまして、学長の訓話は新入生のオリエンテーションのときのみに行う、いわゆる単位としてこれを取り扱うというようなことはしないというように取り扱いが改められております。
  147. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 これはなぜ、学長が訓話をするということは何かよいことのように思う人もあろうかと思うんですが、なぜ学長の訓話というのはやめられる必要があったのか、その点はいかがですか。
  148. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘の四十八年の国会における御審議におきましても種々御指摘があったところでございますが、端的に言って学長の講話の内容というのが、いわゆる右翼的な内容を強く持っているものであり、それが学生に対して強制的に受講が求められ、そしてその単位を取るということが、いわば卒業をしていくために不可欠であるというような形で実施をされているというのは不適切であるということであったわけでございます。
  149. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 やっぱり二つあったわけですね。  一つは、内容が問題があるということと、しかも、それが強制的に単位取得の中に繰り入れられて、学則の中にもないようなところで合否が決められて、やらなければ卒業できなくなる。さらに、これを取り扱っておるのが、プロフェッサーではなくて、学監というようなところで内容を取り扱っておったと。それらの問題が問題になった。もう読み上げることはいたしませんけれども、私も改めてこれが現代かと思うような内容が、その中には展開をされておったわけであります。ですから、この点は内容が改められることと、それからこの押しつけ単位についての取り扱いが変更されることと、この両方がその後見守られた結果改良されていなければならないと思うのですけれども、私が今日聞くところでは、確かに形態的に単位移譲の措置では、従来のような押しつけが緩和をされておるというのか変更を加えられておりますけれども、かなりのものが行われておる。総長のオリエンテーションというのは毎月行われておるようであります。四月には、本年の総長室発行の文書によりますと、四月の十一日、十二日、十三日で各学部に行う。毎月ではないですが、六月のものありますが、十六日それから九日、七日、三十日等に日程が入っております。六月七日のは仄聞するところでは突如中止されたということでありますけれども、これらはすでに組まれたカリキュラムを無視をして、英語の時間を突如としてカットをしたり、また他の授業時間をカットをして行われるというようなことで、やや目立つ部分については少し後退をされておりますけれども内容的には継続をしており、なおこのときに委員会においても非常に問題になりました、当時の木田政府委員の言葉で言えば、奇矯の言辞があるというわけですね。教育内容としては奇矯にわたる点がありますけれども、これは他の人は憲法違反の疑いがあるというふうにも言われておるのですが、この点当時と同じ資料を用いて、今日もこの講義が行われているということを承知をしておられるのか。これらの措置については総長との話し合いをされた中で事情を聴取され、これについての文部省の考え方も述べられたものであるのかどうか、その点はいかがですか。
  150. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) ただいまお答えを申し上げましたように、学長の訓話という形で新入生のオリエンテーションの際にのみ実施をする。単位移譲の取り扱いは行わないという形で是正をされているわけでございます。学長の訓話については、まさに学長の識見に基づいて実施をされている事柄であろうと理解をいたします。そのような形での改善措置大学としてとられているということを私たちは承知をしておりますけれども、今回の柴田総長と私がお目にかかっていろいろと改善方要請をした際には、学長訓話の内容については全く話が及んでおりません。
  151. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 すでに教職員組合あるいは学生有志から、さまざまな資料並びに文書上申書として上げられ、あるいは陳情書として上げられて、内容は承知しておられると思いますけれども、この点では私の見るところ、少なくとも中村教授が国会でいろいろ抱負を語られた点については、風当たりの強かった部分は幾らか手直しされたけれども内容的には温存をされているというふうに見ざるを得ない。なお、さきの国会の中では、これは木田政府委員であったかと思いますが、内容にやや奇矯にわたる点があろうとも、他の教授が他の見識について語られるのですから、大学とはそういうところだというようなことを言っておられますが、ここのところに重ね合わせてみると、他の教授が見識を語れば、首にしてもとめようがないというような状況が一方に温存されておるところに、近代化内容的に空洞化し、実が上がってないということがあるのではないかということを指摘せざるを得ないわけであります。  さらに、具体的にお伺いをするわけですけれども、この実践倫理、この中には、これはもともと学則になくて、時間割りの中にあるところに問題があったんじゃないのですか。従来から学則等でのカリキュラムの中にははまっていなくて、実質上卒業に必要なものとされておったのではないですか。
  152. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) いわゆる大学のカリュキラムとして組まれているものとは別に、学長の講話の受講が義務的に課せられていた、そこが問題であったと思います。
  153. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 以前から学則等に記載ないままにこれが増加単位のような姿で卒業判定の対象にされておったのですから、いまからでも規則変更しなくても、いつ復活されるか、この点は目を光らしていなければ、全く保障がないということを指摘しておく必要があると思います。しかも、かなりの回数にわたって同一内容のものが繰り返し今日も行われているという状態があるわけです。  次に、紀元節並びに天長節の問題の取り扱い、これは今日段階でどうなっておりますか。
  154. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 天長節につきましては、確かに四十八年度以前は天長節式典という形で学生に参加を義務づけていた。そこでは学生の観閲、あるいは分列行進等が行われていたわけでございます。これらは五十一年度以降からは天皇誕生日慶賀式典という形に名前も改められ、また分列行進等は廃止をされ、学生の参加も自由ということにあり方としては整えられているわけでございます。
  155. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 これについての私の聞くところでは、今年も国民の休日である二十九日を繰り上げて、二十五日に学校として休日繰り上げの措置を行って、行事を行う等、やっぱり任意参加の行事というよりは、位置づけられた学校行事になっておるということを承知しておられるのかどうか、問題ではなかろうかと思うわけです。いかがですか。
  156. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは、いまお答え申し上げましたように、学生の任意参加ということであって、たとえば出欠をとるというようなことは実施をしていない。その点は大学側から確認をいたしております。
  157. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 こういう問題について、二十九日国民の休日であるものを、授業日に一方的に振りかえる等の措置もまことに異様であって、妥当とはとうてい思いがたい問題があります。  続いてお伺いをするわけですが、教授会権限の問題について、私の聞くところでは、午前中るる答弁がありました点では、教授会権限、学則に問題は感じるものの、今日の措置というものについては、学校当局に対して、是正を求めるというふうな状況にないという答弁だったと思うんです。問題は政経学部において、まあ森田教授会大西教授会が二本立てになって、不正常な状況があるのを大体是正をしていくなら、この運用というのは保障され、おおよそ近代化の実が教授会に関しては上がったことになるというふうな把握をしておられるようですけれども、そういうことでいいわけですか。
  158. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) もちろん政経学部教授会正常化というのが、非常にこの大学の現在抱えている問題を是正していくために重要なポイントになるということはそのとおりでございますけれども学則の点についても私たちは問題を意識をしております。またその点については、総長に対しても改善方検討を求めたわけでございます。  たとえば教授会規定につきましては、三十四条で「教授会は、左の事項を審議する。」ということで審議事項が九項目にわたって規定をされております。このことは私立大学教授会規定として問題のないことではございますけれども、三十六条に「議決事項の承認」という形で「教授会及び教員会の議決事項中特に次の事項は、理事長の承認を要するものとする。」ということで、教授会の審議事項の相当な部分を理事長の承認事項としている規定がございます。これはもちろん私立大学の場合に教授会の機能と、理事者側との調整をどのように円滑に進めていくのかということは、私立大学全体を運営していく上に非常に大事なポイントでございますし、それぞれの大学で御工夫のあるところでございますけれども学則の上において教授会の審議事項について、しかもその大半について、理事長の承認を要するという規定を設けることは必ずしも適切ではないと考えます。この点については大学側にさらに再検討を求めているところでございます。  また学部規則につきましても、午前中お答え申しましたように、その制定の手続で不明確なところがございますし、さらに学則との関係も必ずしも明らかでない点がございます。そういった点を含めて、学内規定の整備ということを御検討願いたい。そのように要請をしたわけでございます。
  159. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 一方的な教授会システムを形ばかり整えても、内容が保障されなければ、実際問題として教授会は無力なものになってしまうと思うわけですが、問題の政経学部についても、御承知のとおり、二十六人が出席をして教授会が開かれて、これは三分の二を超える有効な成立であったと。この中で投票であらわれた結果は、大西教授に過半数の十七票が投ぜられている。実際に後に学長が指名をした森田教授は三票と、同数三票がもう一人あり、あと二票、二票とか、こういうぐあいになっておるので、三人の中から選ぶというなら、せめて法定得票数の三分の一とか何とか決めておかなければ、二十九票とった人と、一票とった人とがあって、一票の方を選ぶというようなことになれば、空洞化をしてしまうわけであります。こういうような点でも、この点内容的にいまのような、特に近代化の過程で生まれてきたもの、近代化を行おうとするものと、これを拒絶しようとするものとの間で、こういう状況があれば、内容を空洞化した悪しき例としてこれは非常に明白なのであります。しかも佐野局長は、この問題だけがそのように言われるわけですけれども、法学部はどうなっておりますか。
  160. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 法学部においても問題がございます。五十三年の四月に学部長改選が行われたわけでありますが、そのときに法学部の教授会は選挙の結果に基づいて浜口教授を推薦されたわけでございます。これに対して大学側は他の藤谷教授を任命、発令されております。これについて大学側の見解は、学部規則の教授歴五年以上というその要件を満たしていないので、浜口教授の発令をすることをしないで、藤谷教授の任命をしたんだ、そういう説明でございます。なお、藤谷教授を学部長に任命するごとについては、学長法学部教授会に出席して了解を得ていると大学側は説明をいたしております。教職員側はこれに対して、学長教授会に出席して藤谷学部長任命について通告をしたけれども、これに対し教授会の選挙に基づかない学部長の任命は認められないという、そういう決議を教授会としては行っている、そのように説明されております。  いずれにしましても、現在この問題のために法学部教授会の機能は停止をしております。
  161. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 午前中るる説明の中で、たまたま前質問者の質問がそこに当たらなければ、その部分はほおかぶりをして説明をされないと。こういうような状況だと、改革が行われ定着することを期待をして見守り、指導助言をしておられるのかどうか疑わしくなってくるわけであります。これもすでに私は六月六日付で公開質問状が、国士舘大学あてて、学生有志から上がっており、私の手元にも届けられておるわけですけれども、明確に総長が任命した藤谷豊松教授と、後援会が推した浜口金一郎教授、二人の学部長が存在をしておる。先ほどからるる答えられたように、この大学では何も政経学部だけに問題があるのではない。この学長の力が及ぶ範囲はどこにでもこういう問題が起こるということを物語っておると思うわけです。聞くところによれば、ここでも、最初に投票されたときには、確かに藤谷教授のほかに浜口教授の名前も上がったけれども、いずれも非常に得票数が低くて、三分の一にも達しなかったので、再度投票が行われたところ、一名大西教授のみが教授会の意思として候補に推薦をされたと。推薦をされていない他の教授を、しかし学長は任命をされたのであって、少なくとも差しかえして再審議を求めるとか、適格者を審議せよと要求するのではなくて、こういう状況の中で一方的に任命をしたのであれば、みずから拘束を受けるべき学則なり、運営規程の規則に照らして、いわば権力の乱用を学長が行ったことになるというのは、これは明白ではなかろうかと思うんです。三人選んだ中から一人より抜いて指名をしようと思ったら、一人だけしか持ってこなかったので、別のを選んだという理屈は通らないと思うわけであります。そこら、もう一つ文学部の方ではどうなってますか。文学部はめでたく学部長は決まっておるわけですね。しかし、ここでも選出の過程ではただ一人、文学部としては春名教授を一人だけ選出をして、三名を選ぶということをしなかったわけであります。一名だけ推薦したところ、学長はこの際には問題を感じなかったのか、それをオーケーを出しておるんですね。ここにはルールというものがもう存在しないわけであります。こういった状況を見るなら、やっぱり教授会における部長の選出規程というもの自身が見直しの対象にならなければ、問題は解決されないと思うわけですけれども、いかがですか。
  162. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在の森田学部長選任の当時、政経学部でございますが、この当時にはまだ教授会による推薦の手続学内規程になかった時期でございます。教員の側での御説明によりますと、学部長教授会で選出することについて学長の了解を得ていたということを申されておりますけれども、この点についてはそれが事実であるという確認はできません。いずれにしても、教授会からの推薦が行われたわけでございますけれども、その推薦が行われたとおりに発令がされていないからといって、その学部長の発令が法律上問題がある、あるいは不適法であるということにはならないわけであります。問題はやはり教授会の側の意思、意見というものをどのように理事会の側で受けとめて、それを反映させて学部長を選ぶのか、それぞれの私立大学においてこれは一様ではないと思いますけれども国士舘大学の場合には、御指摘の三名を推薦して、その中から選ぶという方法を現在はとっているわけでございます。そのことが教授会の意思の反映のさせ方として不適法であるとは申せない、そのように考えます。  文学部長の問題については私たちは事情聴取をいたしておりません。教養部について問題があったことは承知をしておりますけれども、文学部については承知をしておりません。  いずれにしても、この問題はけさほども申し上げましたように、政経学部については現在の教授会運営特別委員会とが二つ併存をしているという状況を早急に是正をする、そうして、そこで全体の御意見のもとに、もう一度その変則的な状況のもとに起こった事柄について再検討をする、そういった措置がとられることが適切であると考えておるわけであります。
  163. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 もともと大学がりっぱに発展するためには、それはいかに規程がみごとに整備されても、あるいは文部省がどのように指導されても、そのことが直ちによい結果をもたらすものではなくて、学内の力がみなぎって、そうして学内教授会、あるいは大学関係者が力を合わせることができて、初めてこの問題は解決されるんだと思うわけです。しかし、それとは別に、どうしても文部省としては、問題があるときには原則を大胆に示して、そうして自発的に解決をされることを援助をし、促すという態度をとっていかれる必要があると思うんです。その点で、私は文部省の態度は、明確な指導責任上問題があると感じるわけです。法律論をやる暇もないわけでありますけれども、もともと学校教育法第五十九条で、重要な事項を審議するために、教授会が置かれなければならないと、このことは国立大学、私立大学を問わずに働く法律であることは、これは明らかでしょう、どうですか。
  164. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 学校教育法の教授会に関する規定は、国・公・私立を問わずに適用されるものでございます。
  165. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 それで、その中の重要な事項というものは、私学ではあれが重要であり、国立ではあれが重要であるというようなものであるというよりは、大学というものにかかわって、基本的に重要だというものは共通して存在するに違いないと思うわけであります。特に国立大学においては、この重要事項の規程は非常に整備されておりまして、これは明文化もされておるわけですけれども、私は基本的には国立に独得の、よそには適用できないような部分もそれはよく探せばあるかもしれませんけれども、基本はこれは大学に必要なことが、国立の場合にもおおむね記述されておるんだというふうに理解をしておるわけですが、いかがですか。
  166. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教授会においてカリキュラムの問題、その他教学に関する重要な事項については、それを教授会の審議事項とする、あるいは学生の入退学等、学生教育、あるいは補導に関する重要事項が同じく教授会の審議事項にされる、それは国、公、私を通じて同じことであると思います。  ただ、教授会の審議事項をどのように規定をするかということについては、もとより重要事項について教授会の審議事項とした学校教育法の趣旨がございますから、その趣旨の中で、それぞれの私立大学学則において定められてしかるべきものでございます。  国立大学の場合の教授会の果たしている実際の機能と、私立大学における教授会の果たすべき実際の機能とが、必ず同じでなければならないということではございません。私立大学の場合には、私立大学としての法人全体の運営、その中での教学組織の意見というものをどのように調整をして、大学全体の教育というものを円滑に進めていくかというむずかしい課題があるわけでございますから、それぞれの法人において、教学側の意思というものを学生教育について十分に尊重していく、そういった趣旨のもとに教授会の機能が検討され定められていくべきものと考えます。
  167. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 もちろん、学生に対する教学の問題、これは当然教授会権限に属することである。重要事項として、少なくとも教授会の意思が反映しないようなことは許されない。それと同時に、教官、教職員の身分擁護と権利、学問研究の問題についても、これは国立、私立を問わず、教授会権限として確保されるものではないですか。
  168. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 国士舘大学の場合におきましても、教授会の審議事項の中に「学部及び教養部教員人事に関する事項」というのは掲げられております。教授会の審議事項の中に人事に関する事項が加えられるというのは一般の形であろうと思います。国立学校の場合には、教育公務員特例法の規定によりまして、教授会が、人事において、教職員の採用選考においてどのような機能を果たすかということは法律上定められておりますので、そのように機能いたしますが、私立大学の場合には、教育公務員特例法の規定がもちろん適用されるわけではございませんし、教職員人事というものについて、教育研究というのに果たすべき教学側の役割りということを十分に尊重して、大学側判断をされるということに尽きると思います。
  169. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 時間がありませんので、この点の質問はここでおきますけれども私学に裁量権が大きく残されているというのは、この法律の趣旨を私学関係者に生かしておくために裁量権が残されておるのであって、自由裁量権があればこれらを無視していいということには決してならない。しかも、この法の実施の担保は、やっぱり認可事項、認可の権限は文部省に所属をし、そして認可の際以降、学則が届け出制になり、認可条件になると同時に、変更はすべて届けなければならぬというふうに置かれておるところに、その担保があると思うのです。その担保である文部省が、さように問題の指導中心の方向を明らかにされないという点では、非常に心もとないものがある。こういう状況の中では、一たん約束をされても、内容が無視されていくということは引き続いて起こるわけであります。午前中からも問題になった、単位の不法認定の問題と、同人を職員採用をしたという問題が問題になっておりましたけれども、これに関連もしてお伺いをするわけです。  まず、前回の四十八年時点での、一つ近代化に伴う問題として、応援団の解散というものがありましたが、それはその後どうなったわけですか。
  170. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 四十八年当時の国会での御審議もございまして、応援団が解散をした後に再び復活をしている、そのように理解をしております。
  171. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 近代化を進めるという時点では、あのときの暴力の問題の一つの巣窟としての応援団の解散が約束をされ、実行されたことは事実なんですね。しかし、日ならずしてこれが再び再建をされ、その後、午前中からもるるあったように、運動部応援団に関しては、絶えず問題が起こっておるわけです。これに対して、少なくとも、解散した時点で設けられたような精神に従って、近代化大学にふさわしい指導が図られたのかどうかということに非常に問題がある。文部省の方に提出された文書の中にも、暴力を温存をし、これを容認していくという風潮が絶えないという点が上がっているのですが、その一つの具体的な例が、単位不法認定、そしてこれを職員に採用するといった問題であったというふうに把握するのが常識的ではなかろうか。単位が二十六単位不足であって、総長あるいは森田教授会の方から特認で卒業さしてもらったというこの人物は、一体どういう人物だったのか。元応援団長だったんじゃないですか。
  172. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教職員側の説明によって承知をしておりますところでは、同人は応援団長であったと承知しております。
  173. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 応援団を一たん解散したけれども、日ならずして復活され、この応援団長は学校当局の厚い庇護を受けて、教授会の目で見て卒業する相当の学力が認定されなくても、直接総長の肝いりなり、あるいは少数の人から支持を受けた学部長によって、強引な状況で単位が与えられ、しかもそれが学校職員、学生課の職員としてこれまた協定違反で採用される、こういう状況を見ますと、前回の国会証言等で約束をされた近代化というのは、一定の形式はとられたとしても、その内容において一つまた一つと旧体質が温存をされ、その同じ原因から幾つかの事件が発生しているというふうに見ていくのが、私は常識的な見方だろうと思うのです。  きょうのところは、後々理事会等で調査の継続について問題もあるでしょうからそこまでにいたしますけれども、前回も、奥野元文部大臣は、先ほど大学局長が答えられたのとほとんど同じ答弁をされたんです。熱意を持って学長は改革をやると言って帰られました、見守ります。それが、四年間、五年間見守ってこういうふうになっているのですから、もう少し筋道を立てて、これこれを指導したということを天下に公表をして、全国民の手で内容を見守っていく。そういう状況の中で、学校の中に新しい風が吹くというふうにやってもらわないと、指導の実は上がらないと思うのです。この点について文部大臣の所感を求めたいと思うのです。
  174. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 非常な細部にわたっての御質問でございましたが、先般私が受け取りました上申書も、四十八年当時の近代化の線に沿っての上申書でございました。総長文部省においでをいただいて、大学局長がいろいろ事情聴取をいたしました。そのことによって、上申書に指摘されております諸問題すべてのことがまだ明らかになったわけではございません。必要な点は今後も調査を続けたいと考えております。そしてまた、とりあえずこれまでの事情聴取によりまして、改善を要すると認められました問題点につきましては、六月七日に同総長に対しまして改善努力要請したわけでございます。そして、改善方についての努力をする旨を約束をしてお帰りになった総長でございますから、どのように今後事が進んでまいりますかを重大な関心を持って見守りながら、必要があれば、さらに指導助言をしてまいる決意でございます。
  175. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 大体時間が来ておるのですが、きょうはもう一つ通学定期の値上げの問題について、文部省並びに運輸省にお伺いしたいと思っておったわけです。時間が来ておりますから、一言ずつお伺いをするわけです。  去る運輸委員会で、わが党の内藤君の質問に答えて、文部省としては、国鉄の今回の申請による通学の経費の高騰というのは、非常に多額にのぼるので、この点については、学生生活、あるいは教育費について配慮をしてもらいたいという趣旨の運輸省に対する申し入れを行われたが、翌日の六月の二日の読売等を見ますと、運輸大臣文部省を一喝したとか、文部省の申し入れはばかげたことだとかというような記述があるわけであります。しかし、明治三十年代から行われてきた通学割引は、これは国策の一つでもあり、一つの国民の期待権にも属する問題であり、文部省は通学保障、就学保障の立場から、この点について意を用いるのは当然だと思うわけでありますが、運輸省としては、この点は従来の政策をこの際無視をして、今後引き続いて運賃を引き上げていこうとなさるのか。それから、運輸大臣答弁の中には、文部省調査は私鉄問題の資料も含んでおるので、当を得ないというようなことがありましたが、私鉄の運賃引き上げについては、運輸省がこれを所管しておるわけですが、私鉄の値上げはもう行わないという考えでいるのか、その辺のところについて、ひとつ運輸省の方から先にお答えをいただきたいと思います。
  176. 吉末幹昌

    説明員(吉末幹昌君) ただいまの先生のお話通学定期の割引率でございますけれども、現在国鉄の通学定期の割引率は八〇%を超えるという高率でございますので、ほかのお客さんとの負担の公平の見地というような観点からも、やや問題があろうかと存じますので、割引率は逐次是正していかなくてはならぬものではないかというふうに考えているわけでございます。ただ、割引率の是正と申しましても、一度に是正するというふうなことになりますと、改定率が非常に高くなるというふうなことでございますので、やはり段階的に実施していかなければならないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  177. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 文部大臣の方で、ひとつ運輸省に申し入れをされた趣旨について、この趣旨を貫いていかれるのかどうか。なお、国鉄ばっかりにしわ寄せがきてはというので、肩がわりのための、閣議に問題提起するという点が報道されておりますけれども、この点について文部大臣の所見もあわせて伺っておきたいと思うんです。
  178. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 学割りの問題は、小巻委員御指摘のとおり、明治三十年代からやっていただいていることでございます。別に文部省の権限として持っているものでもございませんけれども、この制度がやはり教育というものに与えた好影響というものは非常に大きなものがあったと思う。運輸省、国鉄に私は感謝をいたしているものでございますが、今回の改定案を聞きまして、改定幅が非常に大幅である中学生、生徒の中には経済的に困窮している者もあるわけでございますし、長年の間定着をしてきた学割りの制度であり、割引率でございますから、学生たちの期待が裏切られるというおそれを多分に私も持つものでございます。今回のような割引率の改定を打ち出されますと、文部大臣といたしましては自分の身を切られるような思いがいたすものでございますから、運輸大臣に対しまして、通学定期の割引率の改定に引き続いての御配慮をお願いをしてまいりました。文書をもってまた運輸省にも申し入れ、お願いをしているところでございます。今後もこの努力を続けてまいりたいと考えるものでございます。近く関係閣僚会議も開かれるように伺っておりますので、そういう場でよく事情を御説明をして御理解をいただきたい、このように考えておるものであります。
  179. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 その点は継続して努力いただきたいのですけれども、同時に、生徒の方から考えれば、これは国鉄の再建のためにさまざまな努力が行われる中で、運賃の割引率を学生に対してももう少し小さな幅にしたいという圧力がありますが、肩がわり問題も、文部省としても同時に、自分の責任でプランについて検討される必要があるのではなかろうか。大変人の責任でやる分だけりっぱなことを言って、自分の方は研究しないのかというような批判も聞きますと、教育関係者として、私も若干心痛むものもあるわけです。その点についてはいかがですか。
  180. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 今回の率の改定によって、今回の運賃値上げ並びにいろいろな割引率の改定で、千二百数十億の増収を国鉄はお考えのようでございます。その中で通学定期の割引率によっての増収が四十億と伺っております。いまの小巻委員の御指摘の、やはり学生がそれだけの恩恵をこうむっているならば、文部省が予算をとって、それを文部省が負担をするべきではないかという、そういう考え方は従前からあったわけでございます。福祉関係の問題については厚生省が負担をするべきではないか。しかし、そういう議論を進めてまいりますと、生鮮食料品の割引は農林省が負担をし、通勤定期の割引は通産省が負担をし、そうなりますと、国鉄財政というものを常に私どもつまびらかにしていなければなりません。文部省にも、農林省にも、厚生省にも、通産省にも、国鉄財政をつまびらかにしているだけの人間を抱えておきますことが、果たして行政上それが正しいやり方であるかどうか疑問に思うわけでございまして、私は賛成をいたしません。  たとえば、そういうことになりますと、文部省が予算を要求をいたしまして、大蔵省から予算をもらって国鉄にお払いをする、国鉄の財政全体について国鉄財政をつまびらかにいたしております財政当局が、国鉄再建のためにいろいろな予算をつけられる、国鉄が通学定期割引で文部省から収入がある、大根、ニンジンのようなものの割引率で農林省から収入があるとなれば、財政当局から国鉄に支出する財政支出が減るだけではないかという気がいたすわけでございます。行政の簡素化という面からも私は賛成をいたしません。
  181. 有田一寿

    ○有田一寿君 きょうは、国連大学のこと並びに褒章制度のこと、さらにもう一つ入学基準あるいは留年、卒業のこと、以上三点について、時間が短いわけですけれども、十分余りずつ質問をいたしたいと思います。  最初に国連大学のことでありますが、国連大学の負担金につきましては、日本はすでに五十二年度までに七千万ドルを拠出し、五十三年度予算で一千万ドルを計上しておりまして、これを支出するとすれば八千万ドル、それに対してほぼ同額を予定して今日までまいったアメリカがゼロである、しかもアメリカの国会で七百五十万ドルに減額された、それもまた下院の委員会で否決されたという状況を承知いたしまして、この国連大学の将来についてきわめて憂慮しているわけであります。文部省と外務省のこれに対する守備範囲は承知しております。だから外務省からも来ていただいてとは思いましたけれども、さればといって、そこで基本的な解決策が出るとも思われませんので、あえてお呼びしなかったわけであります。これは文部省の方の所管の井内局長の方に、いまどうなっている、どうなったということを伺いたいと思うわけです。
  182. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ただいま御質問のございました国連大学の基金の拠出の状況でございますが、ただいま有田先生から御指摘ございましたように、現在までに約七千八百万ドルの拠出が行われております。これはわが国を初め、ベネズエラ、サウジアラビア、ガーナ等計十四カ国でございます。で、国連大学が基金の目標として掲げました当初は四億米ドルと言っておりましたが、その後五億米ドルという説明もあったようでございますが、そういうことからいたしますと、国連大学への拠出金の支出状況が非常にむずかしい状況に相なっておるわけでございます。本年度一九七八年度の国連大学としましては、年間九百十三万ドルの年間の予算をつくりまして、そのうちプログラムの関係に六百四十九万ドルを予算計上をし、国連大学が現在掲げておりまするプログラムの展開を図っておる状況にございます。  ただいま御指摘がございましたように、アメリカの拠出その他特にEC諸国でありますとか、そういう方面の拠出の状況が非常にむずかしい状況にも相なっておりますので、文部省といたしましては、外務省とも協力し、側面から国連本部そのもの、ユネスコ本部そのもの等に対しまして、ただいま外務省の方も通じながら、いろいろと国連大学設立の趣旨にかんがみ、各国の拠出を促しつつ努力をいたしておるというのが基金に関する状況でございます。
  183. 有田一寿

    ○有田一寿君 これに関しては、いろいろ紆余曲折があったようでありますけれども、結果的には、先ほど申し上げましたように、非常に危殆に瀕しているというのが現状であろうと思います。これに関しては、駐日大使のマンスフィールド氏が終始努力をして、今日まで至ったわけですけれども、同大使の見通しによっても、先行き暗いということのようであります。いずれ近々のうちに、恐らくアメリカの国会で最終的な結論が出ると思いますけれども、仮にこれがゼロだということであれば、五十三年度に予定しておる一千万ドルの日本の予算計上額も、この支出はきわめてむずかしくなるのではないかと憂慮しているわけでございまして、この国連大学そのものは人類の未来について、それぞれナショナリズムを越えた問題について取り組み、そして主としては発展途上国にピントを据えながら研究開発を進めていこうという非常に高い理想で出発し、日本がホストカントリーとして責任を持って今日に至ったわけですが、先ほどの四億ドルのうちも、アメリカが一億ドル、日本が一億ドル、ヨーロッパが一億ドル、その他が一億ドル、合計四億ドルということ、その果実をもって運営するということで現在研究が進んでいるわけですけれども、国連大学そのもののいわゆる認識が乏しい、これは国連大学にも責任がありましょう、あるいは文部省、外務省等にも責任がありましょうけれども、何はともあれ基金になるべきそのもとの金が、出るべきものが出ないというところになったということは、私はこの国連大学大学としては非常に前途運営が至難になったのではないか、そういうことであれば、国連大学というものはやがてやめて、これを国連機関の一研究所ということにして、細々とながら運営していって、十年、十五年後を期して、これを世界の総意によってもうちょっと所定のものまで拡大していくという以外に道がないのじゃないか。日本としてはこれを誘致した。したがって、この七千万ドル、あるいは五十三年度分を入れて八千万ドルという金額は、他の国際協力基金に比べては、私は十二分に出していると思います。先ほど公明党の方から質問がありましたけれども、その他のものに比しまして確実に支出してきた珍しいケースだと思うんです。しかし、その熱意に対して、逆に外国の方は協力がなされないということ、この原因が那辺にあるか。今後の見通し、これは文部省から、いま私が申し上げたような悲観的な見方は、末席で申し述べることは恐らくなさらないだろうと思いますが、もうきわめて憂慮している、存亡の危機に直面したということをお互いに認識すべきではないかということであります。しからばどうすべきかということを考えなきゃならぬところまで立ち至ったと思います。いかがでしょうか、それについての御答弁というか、見解を伺いたいと思いますが。
  184. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 国連大学の基金の拠出の状況につきましては、ただいま先生御指摘のように、文部省といたしましても何とか打開をしなければならない、前進させなければならない非常に重要な課題と心得、先ほども申し上げましたように、外務省とも密接な連絡をとりながら、いまいろいろと努力をいたしておるところでございますが、文部省立場といたしましては、ただいまも先生お触れになりましたように、国連大学の構想に積極的に賛成し、国連大学本部をわが国に誘致したねらいは、そもそも何であったか、まず日本としても、こういった国連大学が目的とする研究プログラムの展開等を通じて、サイエンスの面で、学術の面で広く世界に貢献したい、特に開発途上国に対しての貢献もしたいということであり、同時にまた、一般に閉鎖的と言われるわが国の大学や研究機関を、わが国に本部を置く国連大学との接触を通じて、国内的にも国際的にも開かれたものにしたいということが、基本の私どもの願いでございました。このような趣旨にかんがみまして、文部省といたしましては、昨年十一月に学術審議会に、国連大学の取り上げている研究領域とかかわりのある研究で、わが国が自主的に推進していくべきものの振興方策をどうしたらいいかという形での検討を、学術審議会で始めていただきました。と同時に、科学研究費によりまして国連大学が取り上げている研究課題と関連のあるわが国の研究の現状を分析し、展望し、把握するという作業にもただいま入っておるところでございます。  昨年十二月東京で開催されました国連大学地域懇談会におきましても、学術協力の面からきわめて真摯な議論が行われまして、わが国の学界におきましても、国連大学への関心が次第に高まってきておるのではないか、かように思っております。  なお、国連大学のプログラムに関しまする専門家会議、研究集会等にも日本人の学者が多数参加しておりますが、特に人間と社会の開発プログラムの一プロジェクトでございまする技術の移転、変容及び開発、日本の経験という研究テーマで、国連大学の委託により、アジア経済研究所が研究をすでに実施中でございますし、また世界の飢餓の問題のプログラムにつきましては、農林省食品総合研究所が国連大学の提携機関に近く指定をされ、食糧の保存等に関し発展途上国からの研修生も受け入れる予定になっておるところでございまして、基金の問題は外務省と協力をしながら、いろいろむずかしい問題がございますが、側面から文部省としてもできるだけの努力をしなければならない。  第二に、学界、学術研究という側面から、国連大学が取り上げておる問題をどうバックアップし、ギブ・アンド・テークしていくかという、その点を私どもとしましては、ただいま真剣に検討しておるところでございます。
  185. 有田一寿

    ○有田一寿君 これにつきましては、文部大臣の方にぜひとも前向きに取り組んでいただきたいということをお願いをして、この問題については終わりたいと思います。  次に、賞勲制度のことについて、意見を交えてお尋ねいたしますが、これは一昨年予算委員会のときにも、私永井大臣にお尋ねしたことであります。もともとは賞勲局の方から来てもらってお尋ねすべきことかとも思いますけれども、その必要もないと思いましたので、文部大臣にお尋ねをいたします。同じ大学四年の課程を終わって、それぞれ職場に入る。そして、小学校の校長さんの場合は、勲四等が大体普通だと思うんですが、校長会長でも勤めた場合勲四等で、一般が勲五等ですか、何かそういうことのようです。それについて詳しいことはもうお尋ねをいたしません。いたしませんが、私が申し上げたいのは、賞勲制度というものは、これはある意味では政治の根幹をなすものです。公平の原則が働かなきゃならない。ただし、実施に当たってはなかなかむずかしい問題があるんですけれども、ざっと言って、教育者が受けるいわゆる位階勲等、そういうものを問題にしてないという先生方もおられると思いますが、問題にしている先生方もおられるし、そうなるとちょっと低いのじゃないかという私は感触を常々持っています。それについて一方、勲一等、勲二等等もらわれた人がある意味の功績がないとは言いませんけれども、これは見方見方だとは思いますが、国民がみんな納得しているであろうかというと、ちょっと最近疑問を感ずるわけでありまして、特に文化、芸術、古典芸能、古典芸術の保存者、そういう者についても、私はやはり余り優遇されてないのじゃないか、ここでひとつ、これもあわして文部大臣にちょっとお聞きしておきたいんですが、これは国家に功労があった者ということなんですけれども国会議員だとか、それから官僚だとか、そういう人はわりに恵まれる方のようです。昔で言う意味の国家に功労があったといいましても、いま国家あるいは国家を構成する国民、そこら辺に対する考え方も明治時代とはずいぶん変わってきたように思いますんで、そこで矛盾が露呈してきているんじゃないかと思いますが、まあそれについて教育者あるいは文化、芸術等の関係者文部省の所管の方たちの方が優遇されていると思われますか。いかがでしょうか。
  186. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 優遇されてない。教育界に人材を得るために、教育の基本であります人材確保法、その待遇改善が図られているという趣旨が栄典まで及んでない、そのように私は感じます。教育一般に来ている人たちに対して、栄典の面においても当然報いられるべきだという気持ちを私は持ちます。現在文部省関係の叙勲者は、春秋合わせまして約千五百名で、各官庁の中でも叙勲者の数としては一番多い方ではないかと考えられます。ただ、勲等は総理府において決定されます。小・中学校長は、その勤続年数によって相違がございますけれども、おおむね四十年勤続で旭五等とされております。御指摘のように、教育界に人材を得るため、待遇の面だけではなくて、栄典についてもやはりただいまの有田委員の御指摘の線に沿うべきだという気持ちを、私は非常に強く持つ者でございます。  もう端的にお答えをいたしますが、文部省だけで決められることではございませんから、政府全体の答弁はできません。文部大臣としての気持ちをお答えしたいと思いますけれども、やはりそれは確かに社会的な責務も果たされ、社会に大きな貢献もなさったかもしれませんけれども、営利追求を目的とする株式会社、りっぱに働いてこられた方と比べて、やはり教育一筋に歩まれた方々のいまの栄典についての処遇が、バランスがとれているとは私には思えません。同じように、もう今日ではやはり国民生活の中に占める文化であるとか、芸術であるとか、教育であるとか、そういうことが国民生活の中に占める割合がこれだけ多くなっている時代でございます。経済成長七%、七%と言って棺おけに入るようなことでは、それはもういまの国民生活は、人間の人生ではない。しかし、残念ながら、行政の場におきましては、そういうふうな意識の改革がまだできてない。大変残念に私は思うわけでございます。ひとつこの点については、力いっぱい、このバランスがだれにでも理解ができるように、是正を図りますための努力をしてまいりたいと決心をしておりますので、御支援をお願いを申し上げます。
  187. 有田一寿

    ○有田一寿君 ナポレオンが言ったとされている言葉に、人間はおもちゃを愛する本能がある、このおもちゃの与え方によって、人間をどうにでも動かすことができると。これはまあ恐らく軍隊のことから類推してのことだとは思いますけれども、このおもちゃとは何だ、これは勲章であるとはっきり言っております。だから、人間とは案外たわいないもので、すぐれた人はばかにしますけれども、位階勲等等も、この世にある限り、やはりこの運用については適切に、公平に、忘れられた者がないように運営しなければ、政治というものはやはり国民から信頼されないというふうに思いますので、いまの文部大臣の御答弁、私もしかく満足でございまして、御一緒に何とか、時間はかかるにしても、これを努力して、もっと文化関係教育関係者等が恵まれますように努力していきたいと思うわけであります。  次に進みます。時間の関係がありますので、中途半端なような提言、質疑でこれは意を尽くしませんけれども、最後のことに入りますが、一つは留年制のことであります。この高等学校の留年のことにつきましてお尋ねをいたしますが、これはいま日本の高等学校は単位制と学年制と両方がミックスされております。もともとこれが単位制一本に整理されたならば、あるいはもっと、以下私が申し述べることについては実現がしやすいのではないかと思います。  自分がこれはかつて提言したことでありますが、ここでもう一回私申し述べさしていただきますけれども高等学校は三年で卒業することを原則とするが、三年未満で所定の単位を修得した者については、残りの期間を能力、適性等に応じて学習ができるようにする。言いかえればこれはできる子供についてのことです。その際一定の者を選抜して、学校の内外において、外国語、数学、理科、芸術、体育、職業等の科目について、特別な指導を受けられるような制度を導入することを検討する必要はないか。なお、特定の科目について、一定以上の成績を上げた者については、高等学校において大学の教養課程の一部の科目を履修できるような制度についても考慮することは必要ではないか。三年間で所定の単位を修得できない場合は、一年を限度として留年させ追試を行う。そして、高校卒業の認定が安易である場合が現在は多いので、単位の修得の認定を厳しくするものとして、将来は高校卒業資格認定試験制度を設ける。あるいは卒業を次のように二種類に分けることはどうであろうか。一つは普通卒業。一つは特別卒業。普通卒業は単位を完全に修得した者、特別卒業は所定の単位を修得できないまま卒業する者、したがって、卒業には間違いがありません。その卒業できない理由は、それは勉強しなかったという場合もありましょう。それから勉強してもできなかったという場合もありましょう。あるいはスポーツ、あるいは美術等に熱中したために単位が取れなかったという場合もある。それは形から言えば留年ですけれども、この特別卒業者で、普通卒業の資格を得たい者については、卒業後一定期間の後単位修得のための機会を可能な限り与えるよう考慮する。こういうことで、いま全部ところてん式に卒業さしておりますけれども、これは必ずしも適当と思えないんです。もしこういうことで卒業はさせるけれども、一律に、正直者がばかを見るように、勉強してもしなくても、できてもできなくても皆同じだということでなく、特別卒業というようなことで、しかも、自分はいろいろ学校時代はスポーツその他に熱中し過ぎて、勉強の方はやらなかった、しかしあと一年あれば追試で十分に単位は取れる、あるいはこれが大学に行ってからでも、あるいは職場についてからでも、そういう制度を残しておけば、いつでも普通卒業に切りかわるということであれば、履歴書に跡がつきませんから、別に後結婚するときの障害になるとか、いろんなことは私はなくて済むのではないか。要するに悪平等ということは決して民主主義をよくするものではないのではないかという意味で、留年ということを少し真剣に考えたらいいのではないかという感じがするわけですが、これについてどう思われますか。
  188. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) ただいま先生の御意見で、高等学校教育というものをいわば単位制を主体として考えて、一つ一つの教科科目を本当にそしゃくした、その積み重ねを評価して卒業を認めるという考え方は、確かに一つあるわけでございますが、御承知のように、現在の高等学校は単位制を加味しておりますけれども、その扱いは学年制でございまして、一年一年の学年の進級、あるいは卒業を認める場合には、平素の成績全般を評価してやるものとする、こういうたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、一年間の成績を全般的に見て、とてもこれはぐあいが悪いという場合には、落第をさせるわけでございますが、その実情はきわめて少ない、こういうことでございます。  そこで、いま先生がおっしゃったように、日本の場合に余り本当に修得したかどうかという評価に重点を置かず、いわば形式的に一年勉強すれば、みんな単位を与えるというやり方はどうかということで、その点につきましては、私は今回高等学校の学習指導要領を改正しましたその改正の基本的な考え方がかなりはっきりした際に、もっと単位の修得というようなことを厳格にやってもらうようにしていただきたいということをかねて念願しているわけでございます。その趣旨は、従来の高等学校というものが、あらゆる子供について理科、英語、数学、社会といった教科を相当大量に共通必修としておるということでありますが、これは実態として九三%の子供が進学しておる今日、かなり消化不良を来しているというのも事実でございます。そこで、今回の改定では、できるだけそういう共通必修の内容と単位というものを基礎、基本にしぼって、だれでもこのぐらいはやってほしいというその範囲を狭めると、そして、しかも同じことをやるにしても、子供によっては、毎週二時間で済む子供もあるし、四時間で済む子供もあるだろう、しかし、四時間かけてもやはりだれもその必要なところはやるようにしてほしいという考えが一つあるわけでございます。もう一つ、今度は高等学校の課程の用意の仕方としても、従来高等学校といえば、職業教育もそうですけれども、何といってもその主要教科の座学を中心とした理論の勉強になる。しかし、今日のような子供の実態を考えました場合に、外国語を専門にやる子供がおってもいいし、音楽もいいし、古典芸能もいいだろうし、あるいはその他いわゆる技能教育的なことも高等学校でもっぱら勉強する課程もあってよいんじゃないか、そういうふうな準備をしますというふうに考えて、今回の指導要領を改正しようとしておるわけでございますが、その場合に、やはりそういうふうにしますと、それでは高等学校内容というのは、いままでのようなやり方をすれば、程度も下げるし、範囲も狭い、質のまさに低下ではないかというような意見も一方では出るかと思うんですけれども、私はそうではない、それは従来の高等学校教育というのが、形式的な指導要領の基準の高さは言えたとしても、実質子供が本当にそれをそしゃくし得るかどうかという点についての心配が非常にたくさんあったわけですから、それであるがゆえに、今回は一人一人の子供の多様な実態に即応して、教育課程をいま申しましたように多様化すると、そのことを確実に保障するためには、必ず自分で勉強したことは、少なくともちゃんと身につくまではやらせるようにしてほしいというのが私の考え方でございまして、そういう意味では、いま先生がおっしゃったように、いま直ちに単位制ということを全面的に取り入れて、高等学校の段階で能力が進んでいる子は、大学の教養科目的なものもそこでやるとか、あるいはおくれておる者は一遍特別卒業させるとか、そういうところまでは考えていないわけでございますが、考え方の基礎としては、私はやはり高等学校教育というものは、一つ一つ内容を、やはり一人一人の子供が十分これをそしゃくして勉強できるような体制にもっていくことが大事ではないか、こういうふうに考えております。
  189. 有田一寿

    ○有田一寿君 ところで、いまおっしゃったことを敷衍いたしまして、次の質問をいたしますけれども高等学校で、あるいは大学で、こういう生徒、学生に育て上げたいという一つの理想とする物差し、あるいは期待される人間像という言葉が以前ありましたけれども、やはりそういうものがあるんだと思うんです。あって教育というものは行われていると思いますが、その期待される人間像という中には、知識でこり固まったような我利我利勉強主義者で、エゴイストで、友人とも暖かく交わらないと、スポーツもやらずに机にかじりつくというようなものでない、もっと広い、深い、そういう人間像がお互いに描かれていると思うんですよ。そうであるとするならば、私は、高等学校入学するときの選抜の仕方ですね、今度の共通学力テストのことについては一切触れませんけれども、中学時代に、たとえば書道なり、美術なりで展覧会にも入選したとか、あるいは生徒会の世話をするとか、運動部のマネージャーをして実によく人の世話をしたとか、あるいはスポーツについても熱心に取り組み、そしてその学校のスポーツ熱というか、運動に対する興味まで先に立ってあおっていったというようないい意味の生徒もたくさんあるが、これを入学のときにどういう方法で、どう評価するのか。いまはもう全部学力試験だけ、したがって、ここで私がひとつ申し上げたいのは、これが残された道は二つしかないと思うんです。一つは内申書の内容の問題、一つはいわゆる推薦入学制度の問題、もうこの二つしかないだろうと思います。ところでこの内申書の場合に、ただこれは、いま私が申し上げたようなこういうことで、非常に好ましい生徒であったということを書いてみても、それだけでどう高等学校がこれを評価できるのか、現実はできにくいと思うんですよ。だから、これをある意味で点数化するということができれば、それは評価される。そうしないと知育偏重はいけないとか、学力だけを問題にするのはいけないとか、口では言いますけれども、現実にはそれを拒否するような制度になっていない。だから、個性を持って、一つのものに情熱的に取り組むとか、数字はできずとも、こういうものにおいては非常にすぐれているとか、多様化された人間像というものを受け入れようと思えば、そこで具体的に推薦入学の枠をこれだけ広めるとか、あるいは内申書の記載の仕方とこの評価、こういうふうに点数づけていくとか、何か方法はないものだろうか。そうしないと幾ら言ってもどうにもならない。それは午前中国士舘大学の話が出ておりましたが、これは推薦入学だとか、推薦卒業だとかいうようなことで、それは総長が勝手にやるとか、それは困りますから、私が言う意味はそういうことじゃなく、みんなの評価にたえるような姿の中からそれが評価され選ばれていく、それが五%か一割ぐらい入っても、その学校はいいわけですから、何かここで方法を加味しなければ、百年河清を待つに等しいというふうに私思うんです。だから少し乱暴な提言ですけれども、どういうふうにお考えでしょうか、諸津局長と文部大臣のお考えを伺いたいと思います。
  190. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるように、この高等学校入学試験のあり方を改善する、いろいろその学生問題等ございますけれども、御提言の一つは、推薦入学という問題ですけれども、これは現在——現在といいますか、五十二年度のたしか調査でも、農業学校等一部の学校ですけれども、推薦入学制を採用しておるところが三県くらいございます。そしてそれはいろいろお聞きしますと、やはり特に職業教育高校の場合、本来子供がそこへ志望しないけれどもいろいろなことでそこへ入らされる、これは私は一番子供にとってもやはり考えてやらなきゃならない課題だと思いますが、その際、たとえば自営者コースへ推薦入学で、本来それになりたいという子供を真っ先に入れるということは、子供自身の勉学意欲を高める上からも非常にいいことだと思いますので、そういう点、私はよく教育長さんの集まりなどではさらに検討していただいて、今後そういう点をもっと充実していただいたらどうだろうかという提言をしておるわけでございます。  それからもう一つの内申書の問題ですけれども、これは文部省指導としましては、内申書と学力テストの成績を十分見てくださいということで、各県の点数上の計算としては、内申書と学力テストを大体半々に見るというのが四十県近くでございますので、ほとんど大部分です。ただ、問題は内申書の中身なんですけれども、内申書でいわゆる五段階評価を中心とする教科の評価が中心になっておりまして、特別活動等の記録をこれにプラスしているようなところは限られた県しかないという実情でございます。そして、この点は御指摘もありましたけれども、クラブ活動でリーダーであったとか、特定のスポーツを非常に一生懸命やったとかいうことが、どういうふうに客観的評価ができるか。やはり内申書でございますから、信頼性と公平性というのを確保しなければいけないと。そこで日本の場合、なかなかそういう点がしにくいという面がございますけれども、最近大学を出た青年が就職する場合の実態を見ますと、単に大学の成績がよいというだけでなしに、この青年は学校において運動部で大いに活動したとか、部活動でいろいろみんなの世話をしたとかいういわば人間的な広さとか、厚みとかいうものを、やはり企業なり、採用者側でいろいろ考えるようになったという記録をよく見るわけでございますが、やはり私は社会全体の風潮がそういうところへ持っていって、要するに学校で勉強ができればいいんだというような一般の風潮で、それゆえにもう高学歴を志向し、いわゆる一流大学へ入るんだという志向一点張りであっては、なかなか高等学校入学試験の、いまの先生御指摘の点もうまくいかないというふうに考えますので、これはやはり少し時間をかけて検討すべき課題だと思いますけれども、この点も私はよく教育長さんの集まり等ではいろいろお尋ねをしておるわけでありまして、今後も何かきっかけをつかみながら、少しずつでも前進させる方向で考えていくのがいいんじゃないかと、率直に私はそういうふうに考えております。
  191. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大変貴重な御提言だと私は受けとめるものでございます。やはり選抜の公平性ということも考えなきゃなりませんけれども、やはり社会的な協調性であるとか、体育的、芸術的な能力にすぐれている、これはやはりそういうことに人間的価値というものを評価していかなければならないと思う。したがって、いま初中局長からもお答えをいたしましたけれども検討を要することでございますが、検討の仕方が教育委員会関係方々等、いわゆる教育専門家だけの方々だけで御検討いただくのでは私は足りないような気持ちがいたしまして、もう少し幅広い方々に御検討お願いをして、ひとつ重要課題として検討させていただきたいと思います。  実は余談のようなことになりますけれども、私は、私の母校の立教大学の学校側と校友会の会で、コンピューターではじき出して、入学試験の点数のいい者からコンピューター的にのみとるということでいいのかという話をいたしましたら、立教大学の社会学部の教授会が開かれまして、その席で、文部大臣の言うことは検討に値すると、どうも入学試験の点数だけで頭から順番にとるというようなことをしていたのでは、バイタリティーのある子供たちが育っていかないのではないか、五十四年度から別枠を設けて、そういう人たち入学を考えていこうということを教授会で昨晩決定されたということを聞かされました、大変喜んでいるところでございます。
  192. 有田一寿

    ○有田一寿君 これで終わりますが、一言だけ言い添えて私は終わらせていただきたいと思います。  実は能力主義と努力主義ですけれども、できないと一言に言う子供の中に、もう御承知のとおり、怠けるからできないのと、一生懸命にこつこつと積み上げて自分は努力もしている、それから友だちとも仲よくする、しかし点数としては上がらないという子供もおるわけです。その他にもいろいろおりますが、その努力は一生懸命にまじめに努力をする、それは悪い意味のエゴという意味でなく努力する、その努力点というものは、私は社会に出てもこれは貴重な存在でありますから、必ずしも頭がいいとか、気がきいておるとか、要領がいいとかいうことはなくとも、これは貴重な存在でありますし、そういうタイプの人間が取り組む仕事というのは幾らでもあるわけですから、これを学校ではねのける傾向が非常にある。言いかえれば、頭はいいが怠けておるという子供と、いまのようなタイプの子供も、結果的には、形式的には同じことですから、全部はねのけられていくと。これは健全な社会をつくる上においてはいかがかというような気がするわけでありますので、いま文部大臣からもいい御意見を伺いましたが、そういうことも加味しながら、このむずかしい高校制度に取り組んでいただきたいと思うわけでございまして、これをお願い申し上げて質疑を終わります。
  193. 吉田実

    委員長吉田実君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会