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政府委員(吉久勝美君) 便宜上
文化庁としての、先生がいま指摘されました勧告に対する対処の仕方等についてお答えいたしたいと思います。
先生も御承知のように、
文化財保護法では、いわゆる古
文書につきましては、有形
文化財の一
内容として、すでに定義づけられておるわけでございまして、したがいまして、私
どもとしては、
文化財保護法制定以後、いわゆる歴史上、芸術上の価値の高い古
文書等につきましては、保護法の定めるところに従いまして、文部
大臣の指定を行い、それの
管理、保存、公開、活用等に努めてまいったわけでございまして、それらにつきましては、現在のところすでに二千二百件を超えておるわけでございまして、点数にいたしましたならば、二十四万点ばかりの古
文書になるわけでございます。しかしながら、これらは主として中世以前のものに視点を置いて
調査、指定を進めてまいったわけでございまして、中世以後、近世、徳川以降、明治につきましては、その後の社会状況の変化に従いまして、いろいろ散逸するということが指摘もされてまいったので、これにつきましては、実は、この
学術会議の勧告等をも参考といたしまして、
昭和四十七年度から都道府県に特に補助をいたしまして、都道府県の
教育委員会が都道府県下におけるところの古
文書等を悉皆
調査をするというような補助金を計上いたしまして、この額は
昭和五十三年度で申し上げますと約八百万ばかりでございますが、二分の一の補助をいたしまして、計画的に
調査をし、その
調査結果に基づいて、価値のあるものにつきましては、それぞれ国において保存
措置を講ずる。なお、都道府県等あるいは市町村等においての指定保存対策も、あわせて御
検討願っているという段階でございます。
それらの
措置をさらに進めまして、
昭和五十年に、衆議院の
文教委員会の御提案で
文化財保護法の改正をしていただいたわけでありますが、その改正の御審議の際は、すでにこの四十四年の
学術会議の勧告等も参考とされまして——この勧告は古
文書等のほか、歴史
資料ということで広くつかまえていらっしゃいました。従来、
文化財保護法におきましては、歴史
資料ということにつきましては、必ずしも明確でなかったわけであります。したがいまして、古
文書のほかに、
学術上の価値の高い歴史
資料というようなことを特に定義に加えていただきまして、歴史
資料の
調査ないし保存、
管理を進めてまいるというようなことの改正がすでに
昭和五十年に行われたわけでございます。私
どもといたしましては、それらの改正に伴いまして、五十一年度から歴史
資料に対する
調査というものの補助金の予算を特に計上いたしまして、この金額は五十三年度で申し上げますと約千八百万でございますが、これも二分の一の補助でございまして、あとは県で持っていただきまして、県下におけるところの、散らばっておるところの歴史上の重要な
資料につきまして、いろいろ計画的に御
調査を願って、これを国で指定すべきものにつきましては指定にかけていくということをやっているわけでございます。これは実は
昭和五十一年度から五カ年計画を立てまして、順次各県で計画を立ててもらい、継続的にやってまいるということを手がけているわけでございます。このようなことによりまして、古
文書を初め、
歴史資料等につきましての指定
調査の体制も順次整えてまいっておるわけでございますが、なおこれらの保存なり、公開、活用、研究ということになりますと、当然それらを保管する施設が必要なわけでございます。したがいまして、これらにつきましては、都道府県に対しましては、いわゆる歴史民族
資料館の補助金を従来からいたしておりますので、この補助金の執行の中で、それらを考えていただくということをいたしているわけでございます。すでに岐阜県におきましては、この補助金を使いまして、特に古
文書を
中心とする歴史
資料館というものをすでに岐阜県におきましては設置をして、その収集、保管、展示、研究、活用ということを始めておるわけでございます。
なお、市町村におきましても、市町村の歴史民族
資料館の補助金を出しておりまして、これらの補助金の執行の中で、それぞれ各市町村にありますところの郷土史料というものを十分それらの歴史民族
資料館で保管をしていただき、市町村民に公開、活用もしていただくというような
措置をあわせて講じております。
なお、国自身もこの必要があるわけでございますので、これにつきましては現在千葉県の佐倉に設置を進めておりますところの、国立の歴史民族
資料館の中でこれを保存し、公開し、活用するという体制に持っていくべく、現在設置を進めてまいっておるわけでございますし、さらに、歴史
資料関係での全国的なネットワークということも考えまして、市町村、都道府県、あるいは国立の歴史民族
資料館、これらが相互に連絡をとり合いながら、古
文書ないし歴史
資料の研究、活用、公開ができますような、センターとしての歴史民族
資料館をも考えて、その建設計画を進めてまいっておるということでございます。しかしながら、私
どもこのようなことでいろいろやってはまいっておりますが、まだまだ十分でない点もあろうかと思いますし、また中世以後、特に明治以前の江戸時代がかなりおくれておりましたので、ここらあたりにつきましては、中世以前の段階とおくれをとらないように、現在スピードアップをいたしておるところでございますが、社会の急激な変貌等によりまして、それらの史料が散逸するおそれが非常に増大してまいっておりますので、徳川以降近世、近代にかけての史料の保存等につきましても、なお今後格段の
努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。