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1978-05-25 第84回国会 参議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月二十五日(木曜日)    午前十時四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         吉田  実君     理 事                 後藤 正夫君                 世耕 政隆君     委 員                 岩上 二郎君                 山東 昭子君                 高橋 誉冨君                 二木 謙吾君                 勝又 武一君                 久保  亘君                 松前 達郎君                 柏原 ヤス君                 白木義一郎君                 田渕 哲也君                 有田 一寿君    国務大臣        文 部 大 臣  砂田 重民君    政府委員        文部政務次官   近藤 鉄雄君        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省体育局長  柳川 覺治君        文部省管理局長  三角 哲生君     事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君     説明員        郵政省電波監理        局放送部企画課        長        永野  明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十四年度以後における私立学校教職員共  済組合からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法  の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送  付)     —————————————
  2. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取をいたします。砂田文部大臣
  3. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) このたび政府から提出いたしました昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  私立学校教職員共済組合は、昭和二十九年一月に、私立学校教職員福利厚生を図る目的のもとに、私立学校教職員共済組合法により設立されたものでありますが、それ以後、本共済組合が行う給付については、国公立学校教職員に対する給付の水準と均衡を保つことをたてまえとし、逐次改善が進められ、現在に至っております。  今回は、昭和五十二年度に引き続き、国公立学校教職員年金の額の改定に準じて、私立学校教職員共済組合法規定による既裁定年金の額の改定等を行うため、この法律案提出することといたしたのであります。  次に、この法律案概要について申し上げます。  第一に、私立学校教職員共済組合法規定による退職年金等の額を、昭和五十二年度の国家公務員給与改善内容に基づいて行われる国公立学校教職員退職年金等の額の改定に準じ、昭和五十一年度以前の退職者について昭和五十三年四月分から増額することといたしております。また、これらに伴い、旧私学恩給財団年金についても相応の引き上げを行うことといたしております。  第二に、既裁定退職年金廃疾年金及び遺族年金最低保障額を、国公立学校教職員既裁定年金最低保障額引き上げに準じ、昭和五十三年四月分から引き上げるとともに、六十歳以上の者等にかかわる遺族年金最低保障額昭和五十三年六月分からさらに引き上げることといたしております。  第三に、標準給与の月額の上限国公立学校教職員掛金等の算定の基礎となる俸給等限度額引き上げに準じ三十六万円から三十八万円に引き上げるとともに、下限についても六万二千円から六万六千円に引き上げることといたしております。  最後に、この法律施行日につきましては、他の共済組合制度の例にならって、昭和五十三年四月一日といたしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  なお、私立学校教職員共済組合法は、給付関係規定については、国家公務員共済組合法関係規定を準用することといたしておりますので、昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案が成立いたしますと、遺族年金にかかわる寡婦加算の額の引き上げ措置につきまして、私立学校教職員共済組合給付についても同様に措置されることになりますので申し添えます。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。  なお、衆議院において施行期日等に関する附則の規定の一部が修正されましたので、念のため申し添えます。
  4. 吉田実

    委員長吉田実君) 以上で説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  5. 吉田実

    委員長吉田実君) 次に、国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案議題といたします。前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 有田一寿

    有田一寿君 いま計画されておるこの新しい教員養成大学大学院入学する資格でありますが、現場経験三年以上となっておりますが、これの三年以上とした根拠について伺いたいと思います。
  7. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学大学院は、現職教員に対して、高度の研究研さん機会を確保しようという趣旨をもって、それを主眼としてつくられるものでございます。そのためには、現職先生方が、現職経験を通じて、それぞれ大学院において研さんを深めるために、いわばそれの前提となるような課題意識問題意識というものをお持ちになって、そうして入学されてくるということが望ましいわけでございます。そういう趣旨からしまして、やはり、現職になられてすぐの方ということではなくて、そういった大学院への入学期待をしている趣旨に相応した、現職での経験を積まれるのに必要な最小限期間というものは考えなくてはなるまい、そういうことで、鰺坂調査会では教員におなりになってから二年、ないし三年の期間ということを指摘をされているわけでございますけれども、この大学院については、先般来お答えを申しておりますように、少なくとも三年以上の経験をお持ちの方ということを考えたわけでございます。このことは、大学院入学をされる方が、現職経験三年程度の方であることが望ましいと言っている趣旨ではもちろんなくて、少なくとも三年の経験は必要であろうということでございますから、実際に大学院進学されてくる方は、もちろんもっと経験年数の長い方が多くなるということは考えられるわけでございますが、いま申しましたような趣旨で、少なくとも三年ということを考えたわけでございます。
  8. 有田一寿

    有田一寿君 私は、三年でなくて、五年以上ぐらいの方が適当じゃないかというふうに考えておるわけですけれども、その論拠としましては、大学院に行こうと思う教員は、就職してから恐らくそのことを頭に置いておるだろうと思いますので、三年ということであれば、なかなか腰が落ちつかないんじゃないか。本当の意味現場経験というものが充実しない。したがって、少なくとも五年。やはりそういう意味で、腰を落ちつけて経験をした、そういう意味現場経験というものを経て、そして研修意味でさらに大学院に学ぶということの方がよいのではなかろうか。早く言えば、三年ということでは、現場に就職して最初の経験というものは、早く言えば見習い的なものが一年ないし一年半はあるであろう。そして、しかも次の大学入学考えるということであれば、腰も落ちつかず、現場経験も十分にならず、うっかりすると周囲からやきもちをやかれるというようなことで、どちらにもつかないような事態になるおそれはないか。むしろ五年ならば、その面がさらに落ちついて現場経験を経るという目的が達せられるんじゃないかというふうに考えるわけですが、その点について議論が多分おありだったと思いますので、その議論の経過から見て、そういう意見は出なかったでしょうか、そういうのを含めてちょっとお答えをいただきたいんです。
  9. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおり、この大学院入学をされる方が、大学院において研さんを積まれるのにふさわしい現場での経験を持たれる、そのためには経験年数をもう少し長くとった方がいいという考え方はあるわけでございます。それはまた十分に理解のできることでございますけれども、一方からすると、できるだけこの大学を広く開かれたものにしたいという考え方もございますので、そういった趣旨から三年という数字が出てきているわけでございます。  しかし、この大学院入学をされる場合というのは、三年たったらその時点で入学をするということがいわば原則ということでは決してないのであって、やはりそれぞれの先生方が、現場で十分な経験を積まれ、その上に立ってさらに大学院での高度の研さんを積まれようということで入学をされるわけでございますから、そういう意味からすれば、有田先生の御指摘のような点についても十分に配意をする必要があろうと考えます。  いずれにしましても、この三年というのは、先ほど申しましたように、少なくとも三年程度ということでございまして、それをもって原則とするということではもちろんございませんので、御指摘のような現場での経験の持つ意味というものを十分に考えて、大学院進学をするにふさわしい人たち進学をしていただきたいというふうに考えるわけでございます。  大学院進学経験年数については、下限は定めますけれども、上限はもちろん定めないわけでございます。これからそれぞれの県、市町村において、先生方の自発的な希望を生かしながら、大学への入学というものについてのそれぞれの計画が進んでまいるわけでございますし、また、大学の方が大学院に実際に学生を受け入れていった上での実際の推移ということもあるでございましょうけれども、いま申しましたような趣旨からして、三年ということを考えているわけでございますので、できるだけ現場での経験というものが真の意味で生かされて、大学院への進学というものが行われるような、そういった運用というものを大学、あるいは教育委員会双方の側を通じて期待をしたいと思っているわけでございます。
  10. 有田一寿

    有田一寿君 戦前師範学校専攻科というのが置かれておりましたが、あれの修業年限はたしか一年だったと思いますが、あの入学現場経験何年以上であったか、何かございましょうか。別に予告しておったわけではございませんから、なければ結構ですけれども、わかれば教えていただきたい。
  11. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 師範学校規程によりますと、専攻科目的あるいは修業年限についての規定はございますけれども、現職経験年数についての特段の規定は、規程の上ではないようでございます。
  12. 有田一寿

    有田一寿君 先ほどからの局長の御説明で、最低限を三年に決める、原則ではないということで、私それはわからないことはないわけですけれども、ただ、普通学部を出て、さらに学識を深めるためという目的であれば、学部から直結して大学院に進むというのが、これは普通でありまして、今度計画されている大学院の場合に、間に現職経験を置くという意味は、私がさきに申し上げたことをあえて否定して、そして、現職経験というものを踏まえたことの中に意味がある。そういう意味大学院での再教育考えるのだ、これがいわば日本初等教育界に対する一つの新しい面を開くのだということで進められておると思いますので、その意味から言えば、私はその現職経験というものは十分であるがよい、それかといって、十年以上だとか、十五年以上だとかいうようなことになって、教育に対する、うっかりすると意欲までが摩耗したような状態で、大学院で再教育するということは意味がない。しかしながら、これが三年としておるがために、最低限とは申しながら、三年で、あるいは四年でおれはもう入るのだというムードがずっと出てくることも考えられます。そうなると、今度教育委員会の方で、実質上年数が五年以上、七年以上の者を優先するということになると、これは別な角度から別な問題を起こしてくる、機会は平等なんですから。だから、そういうことも考えあわせると、私は五年でよいのではないか。二十二で卒業して、二十七ぐらいまでは現職経験を踏んで、それから入って十分ではないかという気もいたしますし、また、あるいは結婚する者もおりましょうが、結婚して家庭というものに腰を落ちつけて、そして勉強するということであれば、この考えられておる大学院教育というものは本当に実のある、ただ知識だけではなく、家庭あるいは現場教育、そういうものを経て入るということの中に、過去の大学に例を見なかったような意味を大変感ずるわけで、私はしたがって賛成しているわけなんです。  ただ一つ気になるのは、いまの三年というものがどういうなだれ現象を起こすだろうかということを考えるわけでありまして、これは他の各党がどういうふうにお考えかわかりませんが、私はそういうふうなことを考えておるということだけを申し上げて、この問題に対する質疑は終わります。  もう一つだけ放送大学のことについて、これも大学局長にお伺いいたしますが、放送大学の中のスクーリングというものについてお伺いをいたしたい。  これについてお伺いする意味は、たしかイギリスのオープンユニバーシティー計画されたときに、これは知識の切り売りだということで、英国の伝統的なマン・ツー・マン人間教育という理想からは大きくはずれるということで、予算的にも逐次漸減傾向をたどったように私は了解しているわけですが、日本の場合に、この放送大学放送による教育が行われます場合に、スクーリングというものが、それが教師対学生の唯一の生身の接触であるというようなことで、たしかこれは準備会等研究される段階で、いろんな角度から議論になった問題であります。現在それがどういうふうに落ちつきましたか、スクーリングの時間数とか日数、あるいはどういうことでこれを行おうとするか、またスクーリングにどういう意味考えていらっしゃるのか、それを伺いたいと思います。
  13. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送大学構想につきましては、御案内のように、放送大学創設準備に関する調査研究会議検討が行われまして、放送大学基本計画に関する報告書提出をされているわけでございます。ここでの考え方は、放送大学の場合には、教育方法については、放送を初め各種情報媒体を総合的に活用をして、自学自習の効果を高める、それと同時に、特定の施設出席をして行うスクーリングというのは、演習科目実習科目について必要な限度にとどめる、そういうことで計画をされているわけでございます。  放送大学授業科目聴講科目演習科目、それから実習科目に区分されておりますが、聴講科目につきましては、スクーリングを必要としないで、印刷教材基礎として放送による講義、これを聞く、あるいは見る、さらに自習書による学習成果というものを定期的な通信指導によって確認、評価をしていく、そういうことで進められるわけでございます。  演習科目実習科目につきましては、各県に設置を予定しております学習センターでの演習に参加をする、あるいは学習センター実験実習設備実地修練を行う、そういうものとして考えられているわけでございますが、その回数は、一科目について、演習の場合には一学期に三回、実験実習科目の場合には毎週一回ということになるわけでございます。卒業資格取得するまでにスクーリングを必要といたします演習科目実習科目は、十一科目で二十二単位ということが計画では考えられております。四年間卒業をするということになりますと、毎学期科目年間科目演習実習科目履修が必要ということになります。いま申しましたような演習科目実習科目のウエートの差がございますけれども、それぞれについて、仮に、たとえば演習科目だけで履修をすることといたしますと、一学期三回でございますから、年間で九回のスクーリングを必要とするというようなことになります。  そうしたスクーリング実施するための施設につきましては、この基本計画におきますと、全国の各都道府県に、地元大学なり、短大なりの人的あるいは物的な御協力を得て、演習実験実習の機能を備えたセンターを設ける、そして放送大学の専任の教員のほかに、地元大学短大教員に委嘱をした非常勤の指導者というものを配置をいたしまして、それによってスクーリング実施をしていこうということでございます。  いずれにいたしましても、放送大学におけるスクーリング取り扱いにつきましては、現在の私立大学通信教育との関係がございます。現在、大学設置審議会基準分科会の中に特別委員会を設けまして、放送大学だけでなくて、他の通信制大学を含めた設置基準を御検討をいただいているわけでございます。  御案内のように、現在通信教育設置基準として、省令で定められたものはございませんけれども、大学基準協会検討をし定めている通信教育基準というものが、実際上通信教育の認可に当たっての基準として取り扱われているわけでございますが、そこにおいては、スクーリングについては三十単位というものが卒業の要件として予定されているわけでございます。現在、特別委員会では、この三十単位というものが果たして妥当であるかどうか、それについて放送というものを活用した場合に、どのような取り扱いを行うことが妥当であるかというような点についての検討が進められているわけでございます。できるだけ早くこの基準分科会の方の設置基準の御検討をお進めいただきたいということで、現在鋭意検討が進められているところでございます。
  14. 有田一寿

    有田一寿君 二兎を追う者は一兎も得ずということがありますが、放送大学につきましては、もともと考えられたときから電波を利用して教育をするということであって、マン・ツー・マン教育というようなことはもともと考えられていない。それの補完作用としてスクーリングというものが考えられる。しかしながら、どちらにしてもスクーリングによって、十分な補完作用が行われるというわけではありませんので、申しわけ的なスクーリングというものは最小限もうぎりぎりにとめて、私は電波による教育に徹底すべきだということをずっと考えておるわけであります。  仮に各県に一つスクーリングセンターができたとして、どこかの大学に委嘱したとしても、たとえば、仮に福岡であったとすれば、北九州からそこに行って帰るとすれば、往復四時間かかるわけですね。四時間かかるということは、そこに三時間おったとしても七時間、一日は完全につぶれるわけです。しかも、これは勤労青少年等を主たる対象として大学教育を受けさせようというねらいですから、くたくたになった者を日曜日に引っ張り出して、これをするというようなことが、果たしていいことかどうかということから考えますと、このスクーリングという、まあ魔物というか、まあ考え方によれば魅力はあるんですけれども、それに引かれたがために教育全体を失うということが考えられやすいので、どうかひとつ、これは電波による放送教育は、電波による教育の中で目的を達するということに重点を置かれるべきではないかと思うわけです。  たとえば、実習だ何だといいまして、スクーリングのときには多くの学生を何百人集めて、そこで実験等のことをやってみせたといったって、後ろの方におる者は見えるわけじゃないんで、結局大写しにした電波映像作用によって、大きくそれを拡大して見せるということが一番電波による教育の場合有効なわけでして、それに徹底すべきではなかろうか。申しわけ的なスクーリングということで、この補完作用期待した場合に、どちらつかずの教育になるおそれがあるということを非常に強く考えておるわけでありますので、最終的に結論が出ますまでの間に、どうかその演習科目実習科目等につき、あるいはその単位数等について、いまのような考えが正しいか正しくないか、反論もおありとは思いますけれども、私はそう思いますので、これについて御勘案をいただきたいということを申し述べて質疑は終わります。
  15. 勝又武一

    勝又武一君 私は、特に教員大学にかかわる問題と、養護教諭にかかわる問題の二つにつきまして御質問をいたします。  まず第一に、教員大学にかかわる問題でありますが、その第一といたしまして、なぜ教員大学を創設するのか、率直に言ってこのことがよくわかりません。  衆議院文教委員会での質疑議論会議録で拝見をいたしました。あるいは本委員会になりましてから参考人の方々の御意見、引き続いての委員会での質疑をお聞きをし、文部省側の御答弁なお聞きをしているわけでありますが、率直に言ってわからないのであります。ひとつ大臣に、端的に言って、この創設される最大の理由は何なのか、このことを承りたいと思います。
  16. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 教員資質向上期待をし、それを求める世論が非常に高まっておりますこと、そして、また教員自身教員の皆さんもさらに研さん研究機会を得て、教員としての使命感に徹する、そういう資質をみずから養いたいという意欲も、これほど高まった時代は過去になかったと思うわけでございます。そういう国民全般要請、そして教員自身要請にこたえるために考えましたのがこの教員大学でございます。  もとより、これらの教員資質向上、あるいは教員みずからがなお一層の研さんを積み重ねたいという意欲にこたえますためには、教員大学というものだけでこれが全うされるものとは考えておりません。しかし、それは既存の大学にさらに大学院を置いていく、あるいは従来からありましたような各種各様研修機会をさらにふやしていく、実習の問題も再検討しなければならない。各種各様の手だてを尽くしてまいらなければなりませんけれども、やはり一つの今度の新構想として考えました教員大学も、非常に大きな役立ちを果たすものとして考えたわけでございます。
  17. 勝又武一

    勝又武一君 初等教育に限定をされた理由は何でしょうか。つまり、この初等教員のみの養成学校教育学部、そういう意味の新構想による教員大学とされている理由は、いま大臣のおっしゃった点と関連をいたしまして、なぜ初等教育だけに重点を置いているのか、その理由は何でしょうか。
  18. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) それは初等教員に対して特にそういう要望が強いことでもございます。中学校、高等学校教員を確保していくよりも、今日の現状は初等教員を確保することの方が困難な事情にありますことは、これはもう委員も御承知のところでございます。そういうことから初等教員重点を置いてスタートをいたします教員大学でございます。
  19. 勝又武一

    勝又武一君 高等学校教員養成については、問題はないというようにお考えなのでしょうか。問題があるんでしょうか、ないんでしょうか。
  20. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 高等学校教員養成についても、もとより問題があると考えております。  現在、開放制のもとにおいて、教員養成実施をされているわけでございますけれども、高等教育の規模の急速な拡大に伴いまして、課程認定を受けて教員養成に当たる大学の数は非常にふえているわけでございます。それに伴って、教員免許状取得を希望し、あるいは取得をする者の数も非常にふえてまいっております。実際に教職につく者との間の数の開きというものも著しくなってきておりますが、そういったことに伴って、一般の大学における高等学校、あるいは中学校における教員養成というものが、実質的に十分に充実をされているかどうかという点について、従来から御批判がございます。そういった問題については私たちも十分に意識をいたしております。
  21. 勝又武一

    勝又武一君 問題があるということのようでありますが、そうしますと、小、中教員養成に限定とするといいましょうか、新構想教員大学。これといま御指摘高等学校教員養成についても問題はあると思うんだ。しかし、この法案自身は初等教員にのみ限定をしている。この矛盾はどう考えたらいいでしょうか。
  22. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学の場合には、先ほど大臣からお答えを申し上げましたように、現在初等教育教員養成につきまして、一つには教育のあり方について、初等教育が非常に学校教育基礎として重要である。その教育には児童等の発達、あるいは成長についての総合的な理解の上に、原則として全教科領域にわたった能力というものが要求をされる。あるいは小学校と幼稚園の双方にわたる広い視点も要求されているというようなこともございまして、これまでも既設の教員養成大学におきまして、いろいろとその養成のあり方について工夫をしていかなければならないとされ、また、その工夫の努力が行われてきているわけでございます。そういった点から、この教員大学については、まず初等教育教員養成課程というものを置きまして、そこで既設の大学の場合には、小学校教員養成課程のほかに、中等教員養成課程であるとか、あるいは特殊教育教員養成課程等が置かれて、そういった全体の課程のあり方というものを考えながら、いろいろと工夫が行われるわけでございますけれども、他の課程との関連等もあって、なかなか十分にいかないという点があるというのは、参考人等の御発言にも出てきているところでございます。この大学ではそういったほかの課程との関連というものにとらわれないで、初等教育教員養成の新しい方向を開くというような意味を含めて、これまで各大学でいろいろ努力されてきている、たとえばピーク制等の問題等について、さらにいろいろな工夫、改善を図るようにしよう。そうして、そういったことが既設の教員養成大学教員養成のあり方についても、いい影響を与えるということが期待されるということを考えているわけでございます。  また、初等教育教員養成におきましては、申し上げるまでもなく、学校教育に関する実践的な教育研究が非常に大事だということが言われているわけでございますけれども、教職の経験者が多数入学をする大学院を持っている、その大学における教育研究というものは、学部初等教育教員養成のための教育改善充実という上にも、非常に効果的に働くであろうということが期待できるわけでございます。加えて、小学校の教員というものについては、全国的な需給の上からしましても、さらに養成数の増を図っていかなければならないという状況がございます。そういった点を考えて、教員大学の場合には、初等教育教員養成課程を置くということを学部の段階では考えたわけでございます。中学校教員あるいは高等学校教員養成というものについてももちろん問題はございます。これは先ほど申しましたような開放制のもとにおいて、現在行われている、主として中等教育教員養成というもののあり方というものを、どのように改善をしていくかという角度からとらえていかなければならないものでございます。この点については、すでに四十七年の教養審の建議においても指摘をされているところでございます。教養審の建議については、それを実現をするために必要な前提となるいろいろな条件の整備というものが必要でございますし、それに鋭意努力をしているわけでございますが、教員大学学部構想として、初等教育教員養成課程を置くということと、現在の開放制のもとにおいて、非常に困難な課題を抱えている中等教員養成課程を全体としてどのように充実をしていくかということとは、やや性質を異にした課題であり、また、異なった対応が必要であると考えるわけでございます。そういったところから、教員大学学部については、初等教育教員養成というものについて、限定をした課程を設けているわけでございます。
  23. 勝又武一

    勝又武一君 大臣からも、局長からも、一つは小学校教員については、特に需給関係がやや困難だという意味の御指摘があったと思うんですね。それから、特にこの小学校教員についての、初等教員についての問題は、教育のいまのあり方の問題、あるいは全教科担任の問題、実践的な教育研究のこと、あるいは四十七年の教養審の建議、こういう提起が、御説明がありました。それから中学、高校の教員等については、既設のいまの教育制度を充実していくんだという意味合いに私にはとれました。そういう意味で、以下それらの点を少し具体的に、いま御説明がありました点についてお伺いをしてまいりたいと思います。  そこで、第一に、この需給関係にかかわる問題でありますが、正直に言いまして、文部省に私調査を求めたわけなんです。特に小、中、高の学校種目別による受験者数と採用者数の調査を求めましたが、残念ながら私の手元に参りませんでした。それはトータルでしかありませんでしたので、こういうように考えるしがなかったわけであります。  それで第一に、文部省がいままで発表されている数字によりますと、一つは再三本委員会でも議論のデータになっている教員免許状取得者と教員就職者の数というのがございますね。それからもう一つは、私の手元に参りました文部省の学校種目別ではない受験者数と採用者数、それから倍率という、この二つしかありません。  そこで、特にこの免許状取得者と教員就職者数の関係を文部省の数字で見ますと、教員養成大学学部は、小学校で免許状取得者は一万二千九百、就職者数が七千八百、中学校では同様に一万四千五百に対して二千七百人、高等学校では一万二千八百人に対して六百人、それから一般大学では同様な数字ですが、小学校では三千九百人に対して二千六百人、中学が五万三千七百人に対して四千人、高等学校では六万八千七百人に対して三千九百人、短期大学は小学校が九千百人に対して千六百人、中学が三万三千四百人に対して三百人、それから大学院専攻科が小学校は百人、中学が百人、高等学校が三千四百人に対して四百人、トータルでは小学校が二万五千九百人で一万二千百人、中学が十万一千六百人で七千百人、高等学校が八万四千九百人で四千九百人、こうなっております。この中には私は同一人が二ないし三の免許状を取っているという、よく言われますダブっていることはあると思いますね。特にこれは教員養成大学学部の項を見ますと、歴然としていると思うわけです。あるいはこの教員免許状を取ったけれど、教員試験を受験をしていないということを、この数字からも推測はされるわけでありますが、文部省が発表しているこの数字には間違いございませんですね。まず第一にそのことをお伺いしたいんですが。
  24. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 五十二年六月一日でとった数字でございます。御指摘の数字に間違いはございません。
  25. 勝又武一

    勝又武一君 そうしますと、そこで同様にこの教員養成大学、一般大学、短期大学別の小学校、中学、高等学校の受験者総数と採用者数を私は知りたかったわけです。ところが、そのことは文部省でも現在わからない。そこで、私の手元に参りましたのは、この五十二年度の数字で、小学校というトータルですね。小学校で受験者総数が六万三千二百六十一人、採用者数が一万七千九百三人、倍率は三・五。中学校は受験者数が十万三千七百三十三人、採用者数が一万五百四十二人、倍率は九・八。高等学校は受験者数が五万六千八百五十一人、採用者数が五千六百三十五人、倍率が一〇・一と、こういう数字ですが、これもよろしゅうございますか、文部省からいただいた数字ですが。
  26. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) これは教育委員会の方から調査した資料でございますから、このとおりと思います。
  27. 勝又武一

    勝又武一君 それでは、この二つの数字に基づきまして幾つかお聞きしたいと思います。  この数字から直接に言いますと、需給関係理由にして、つまり小・中学校の教員のなり手が少ない、そういうことを理由にして教員大学の創設ということにはならないと思いますけれど、この点はいかがでしょう。
  28. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) まず、御指摘もございましたように、小学校で見ますと、免許状取得者のトータルが、新規卒業者で約二万六千。年度当初の小学校教員就職者一万二千百人の関係から申しますと、約二倍の免許状取得者があるわけでございますけれども、これは中学校、高等学校あるいは幼稚園の免許状と重複をして取得をし、実際にこれらの学校を志望して行くという者が含まれておりますし、あるいは単なる資格として取っておくという者もございますから、この二万六千と一万二千の対比だけで、小学校の教員の供給というものについて、現在の体制が十分であるとは言えない状況にあるわけでございます。五十二年三月の新規卒業者の中で、年度当初の小学校教員の採用者は約一万二千百でございます。このうちの国立の教員養成大学学部の出身者は、御指摘のように七千八百で、約六割程度でございますが、こういった状況は大体過年度の卒業者を含めた全採用者について見ましても、同じような状況がございます。  小学校の教員につきましては、御案内のように、児童数の増加に伴ういわゆる自然増というものが、教員数について当然今後予想をされるわけでございますし、また教育条件の改善のための増というものも今後検討されていくわけでございますけれども、自然増だけを考えましても、今後十年間の採用者数については、大体毎年平均二万人程度は必要になってくるというように見込んでいるわけでございます。国立の教員養成大学学部入学定員は、五十三年度の増募分を含めましても、一万一千四百三十名ということでございます。現在の採用の実情から見ましても、自然増を考え、あるいはさらに改善増というものを考えますと、小学校教員採用者の充足については、今後ともかなりのものを、一般大学あるいは短期大学等における免許状取得者に依存をしていかなきゃならぬ。そういった傾向が続くと思います。しかし、そういったことを前提としながらも、なおかつ初等教育教員養成について、その相当数を安定的に国立の教員養成大学から供給をしていかなければならないという考え方からいたしますと、国立の教員養成大学の小学校の教員養成課程については、さらに増募をしていく必要があるわけでございます。四十五年以来、小学校の教員養成課程につきましては、計画的な入学定員増を逐次進めてきておりますけれども、たとえば五十三年度の増募分を含めまして、四十五年度以降、すでに千九百二十名の増募を行っているわけでございます。もちろん今後とも既設の大学について、小学校教員養成課程の増募というものは考えてまいりますけれども、既設の大学養成課程の増ということだけではなかなか対応できないわけでございまして、やはり教員大学における小学校教員養成課程の設置というのは、いま申しましたような状況を改善していくために役立つわけでございます。
  29. 勝又武一

    勝又武一君 大学局長のおっしゃるのは、私が挙げた二つのデータのうちの最初の部分、つまり教員免許状取得者と採用者数の関係での御説明ですね。その限りでは確かに免許状取得者は二万五千九百で一万二千百人ですから、いろいろいまの御説明はその限りにおいてはわかります。ところが、私がもう一つお伺いをして、初中局長の御確認をいただきました小学校の受験者数は六万三千二百六十一人、そして採用者数は一万七千九百三人、倍率は三・五倍という文部省側の数字があるわけですね。私はこの六万三千二百六十一人というのは、類推するしかございませんが、当然五十二年度の免許状取得者の二万五千九百人に、いままでの方々がずっと積み重なっている、もうこういうことしかあり得ないわけですね。ですから、くどいようですが、この分析は、六万三千二百六十一人というのが、実は教員養成大学から幾人、一般大学から幾人、短期大学から幾人という数字を、文部省から示していただけば私は非常に論議がしやすいんです。つまり、文部省側でおっしゃる既設の養成制度のうちの、どこに一体小学校の教員の場合の隘路があるのか、なり手があるのかないのか、あるいはそれは非常に短期大学に多いという結論づけをなさるのか、あるいは一般大学に大変多くて、それは私学との関係でこういうような欠陥があるというように考えるのか、こういうことが出るわけですけれど、トータルしかございませんので、この議論はやや類推するしかありませんが、結論を申し上げますと、二万六千人という免許状取得者でなくて、六万三千二百六十一人が小学校教員の受験者数である。つまり小学校教員への採用、小学校教員になりたい、こういうことを希望している数字だという、この点についてはどういうようにお考えになりますか。
  30. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、受験者数及び採用者数の数字は、受験者数はこれは各都道府県を合計したもので、いわば延べ数でございます。さらに採用者数については、これは公立だけであって、かつ新規卒業者だけではなくて、過年度の卒業者を含みますので、先ほどの免許状関係の数字とは食い違っているわけでございます。御指摘のように、免許状取得をした者の数、あるいは受験をしている者の数というものが、実際に教職についた者の数、採用された者の数をかなり上回っているということは言えるわけでございます。延べ数であるということを考えましても、実質的にもそれは上回っているであろうと思います。小学校の教員というものは、御案内のように全教科を担任をするということの性質上、非常に養成のむずかしいものでございます。それについて、現在は短期大学卒業して、小学校教員になる方ももちろんあるわけでございますけれど、やはり全科を担任をしながら、しかも特定の教科については十分なピークを持った教育というような、そういうすぐれた小学校教員養成、あるいはその安定的な供給という点を考えますと、目的大学と申しますか、教員養成大学、あるいは学部における養成というものが、小学校教員については、やはり相当な部分を占めていくということが必要であると考えます。それは、小学校教員の質というものを維持し、あるいは向上させていくという観点からも、どうしても考えなければならないことでございます。どこかから小学校の教員が供給をされてくるか、実質的に数の上ではつじつまが合うということだけではなかなか対応できないということがあるわけでございます。そのことはもちろん短絡的に現在の短期大学における小学校教員養成ということを否定する趣旨で申し上げているわけではございませんが、これからの教員定数の自然増、あるいは改善増ということを考え、それに対応して、小学校教員全体の養成、あるいは供給の質というものを維持するということを考えますと、どうしても国立の教員養成大学学部入学定員というものについて、現在よりもこれを拡充をしていく、従来続けてきた拡充の努力というものを継続をしていくということが必要になるわけでございます。
  31. 勝又武一

    勝又武一君 単なる数が不足だからということは、ややいまの点で明らかになってきたと思うのですね。数の点では確かに受験者数で言えば三・五倍ですから、数が少ないから、つまり供給不足だからということにはならない。言ってみれば、短大ということを短絡的には言わないけれど、質の問題がありますよと、こういう趣旨の御答弁だというように私も承ります。  これは大臣にお伺いしたいんですが、とすれば、なおさら受験者数六万三千二百六十一人という方々は、教員養成大学で何人、それから一般大学で何人、短期大学で何人、大学院から何人、こういう内訳というのがあってしかるべきだ。これは四十七都道府県に聞けば、文部省の号令一下ほかのことをやられることを考えると簡単にできるんじゃないか、何でこの程度のことができないのか、やらないということは、やられるお気持ちがないのか、余りそんなことは必要ないと、つまり短絡的に考えると、あるいはいや小学校は数が少ないんだと、こういうように思っていらっしゃるというように私は指摘せざるを得ませんので、この程度の数字は文部省としてもすぐに出すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  32. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) いまの御指摘の、都道府県教育委員会から提出をしていただきました数字の集計の六万何千という数、これはいまおっしゃったような、教員養成大学を出た人が何人という、その内訳の調査は、都道府県教育委員会に私ども問い合わせまして、その調査をいたします。  ただ、もう一つ問題がございますのは、東京と、千葉と、埼玉と、どこかで教員として就職したいという方もダブってきているわけでございますから、その点も調査をしなければ実際の数字が出てこないと思いますので、それらの点も都道府県教育委員会に問い合わせましてその調査をいたします。ただ、教員たらんと志望なさる方々の数を検討いたしますときには、もう一つの方の、勝又委員も先ほどお使いになりました、新規卒業生の数で判断をしてまいる方が正確な数の推定ができる。と申しますのは、いま申し上げましたように、東京か千葉か埼玉かどこかで先生に就職したいという方が、まあ平たい言葉で言えばてんびんかけて志望しておられる、その集計が六万何千人になっているわけでございますから、比較的正確な将来推定等を考えますときには、新規卒業生の数で一万二千幾らという、先ほど勝又委員もお挙げになりました、この数字で考える方がより正確な推定ができるわけでございます。  私ども先ほどから、大学局長お答えをいたしておりますように、数だけで判断することは間違いだと思いますが、やはりこれから五十七年にかけまして、小学校、中学校の児童、生徒増が百三十万も出てまいります。これに対応しなければならないということは、実は私どもといたしましては少々驚異な数字でございます。初等教員の定数を確保いたしますためにも、いまのままでは大変不安である。いままでやってまいりましたけれども、やはり増募を考えていかなければならない、教員大学もそのような趣旨を踏まえての構想を立てたわけでございます。いまの調査はいたします。
  33. 勝又武一

    勝又武一君 それでは、もう一つこの問題でお伺いしますが、この教員免許状取得者と就職者との学校種目別の関連を見ますと、特に高等学校の場合には、教員養成大学よりも一般大学の占める比率が相当程度高いわけですね。就職状況においてもそうだと思います。それから小、中においても一般大学、もちろん短期大学ということは議論があると思いますけれども、一般大学という出身、短期大学ということを含めても、小、中においても相当程度占めているということが、この数字から判断されますが、この点について、どういう評価を文部省としてはなさっていらっしゃるんでしょうか。あわせてやはり戦後三十年間、こういう教員養成大学以外の一般大学の出身者の方々が果たしてきた、戦後教育を担ってきた役割りといいましょうか、戦前教育を是正してきたという意味合いも含めて、そういう役割りについて、大ざっぱで結構ですけれども、どんな評価をなさっているんでしょうか。
  34. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおりの実情にございます。また、それが一つには戦後とられてきた教員養成開放制というもののいい点があらわれているところでもあろうと思います。御指摘のように、一般大学卒業されて教職につかれた方々が、これまでの教育の発展というものを、ことに中等教育の部分について果たされてきたということは、私たちも十分に評価をしているわけでございます。四十六年の中教審の答申におきましては、御案内のように初等教育教員については、これは事の性質上、主として目的にふさわしい特別な教育課程を持ったいわゆる教員養成大学養成をするということがたてまえであろう。中等教育教員のある割合は、目的に応じた教員養成大学養成をするということであるけれども、やはり他方一般の高等教育機関の卒業者で、一定の要件を具備した者については、広く人材を誘致をして、すぐれた教員の確保を図っていこうということを考えているわけでございます。私たちも教員養成の方向というのは、そういうことでこれまでも進んでまいりましたし、またこれからも進んでいくということであろうと思います。
  35. 勝又武一

    勝又武一君 それでは次の問題に移りますが、現在の教員養成制度に全く問題がないと、こういうことになれば、教員養成大学を創設するという趣旨も非常に薄弱になると考えますが、先ほどから御指摘のように、教員大学を創設する趣旨から考えますと、現行の教員養成制度について、相当多くの問題があるというようにやはりお感じになっていらっしゃると思うんです。そこで、現行制度に問題があり、欠陥があると、そしてなおかっこの教員大学をつくる、こういうことになりますと、正直言って、うんとわかりやすく言えば、全部これは初等教員については、教員養成大学のような形に変えてしまう、こうするか、あるいは現在の教育制度というのを、教員養成大学をつくるような趣旨で直していく、是正をしていく、こういう考え方も生まれてくると思うんですね。だから、教員養成大学もつくるし、現行制度も直していくんだという御説明がずっと続いているわけです。そういうように私も理解をしてきているんですが、そこでよくわからなくなるのは、一体教員養成大学でこういう方式でやっていくんだと、それから現行の教育制度の方も直していくんだと、こういうように御説明はなさっていらっしゃるんですけれども、現実の問題として、そうなるんだろうかというように思うわけです。率直に言って、教員養成大学に力点を置けば、現行制度の改善の方はやや力が抜けていく、こういうように心配せざるを得ないんですけれども、この辺は再三再四の御説明はそういう説明なんですけれども、ここが非常によくわからないところですからあえてお聞きするんですけれども、どうなんでしょうか。その辺は、本当にそういうように文部省としてはお考えになっていらっしゃるんですか。
  36. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) まず国立の既設の教員養成大学学部と、この新しく創設をしようとする教員大学との関係というものを考えてみる必要があるわけでございますが、教員大学は、御案内のように、主として教員に高度の研究研さん機会を確保することを趣旨とする大学院を設けるわけでございますが、これを設けることは、今後現職先生方研修意欲というものを高めるということが十分期待をできるわけでございます。それと同時に、既設の教員養成大学学部大学院構想をこれから御検討をいただく場合におきましても、現職教員の受け入れについて、積極的な検討が進められていくであろうし、また教員大学大学院設置をするということが、既設の教員養成大学大学院の整備ということについて、それを推進をする力として働いていくということも十分に考えられるわけでございます。また教員大学学部では、先ほど申し上げましたように、初等教育教員養成について、これまで指摘されてきましたようなさまざまな面で工夫、改善を図ろうとするわけでございますけれども、そのことは既存の教員養成大学学部における初等教育教員養成改善をやはり一層推進させることになるであろうと思います。  学校教育に関する実践的な教育研究ということが現在欠けているという御指摘もございますけれども、そういった点の推進についても、大きな効果が全体として期待できるわけでございます。教員大学設置というのは、まさに既設の教員養成大学学部の充実というものを促進をするし、また教員養成というものを今後充実をしていくためには、教員大学の整備ということと並んで、既設の教員養成大学の教官組織であるとか、あるいは研究費であるとか、そういった教育研究条件の整備充実ということを考え、それと一体となって進めていかなければならない性質のものでございますから、そういう方向での施策の推進ということを私たちも考えておりますし、またそれを実現をしていかなければならないと思っているわけでございます。  教員養成大学学部における養成のあり方というもの全体を通じて問題がないわけではございません。それは教員養成教育課程の工夫、改善の面につきましても、教育研究条件の整備についてもいま申したように努力をしていかなければなりませんが、そのこととやや性質を異にするものとして、先ほど来申し上げております一般の大学における、主として中等教育教員養成のあり方というものについての改善の課題があるわけでございます。これは非常に免許状を取る者の数がふえてきておりますので、そのことに伴って、一般大学における教員養成が中には形式的な養成になっている面がある、そういった御指摘があるわけでございます。これについては四十七年の教養審の建議におきましても、免許状の種別の整備の問題であるとか、あるいは免許基準引き上げの問題であるとか、その中における教育実習期間の延長の問題であるとか、現在の教員養成の質というものを、より充実させるための提案があるわけでございます。そういった方向での努力を続けてきているわけでございますけれども、実際に免許制度を改正をするということを実施をするためには、前提となる大学院の整備の問題であるとか、その他諸般の条件整備が必要でございますので、それを進めながら現在検討を続けている、そういう方向での一般大学における教員養成のあり方の改善、充実というものをあわせて進めていかなければならない。これはやや事柄を異にした、全体としてはもちろん教員養成改善、充実ということでございますけれども、課題になると考えているわけでございます。
  37. 勝又武一

    勝又武一君 先ほどからその点をくどくお聞きをしている趣旨は、一つは後半に、私は小学、中学、高校等の人事交流、あるいはそれにかかわる免許制度、こういう問題についても、お聞きをしたり、意見を申し上げたいというふうに思っているから、その関連もありますので、ややくどくお聞きをしているわけですが、もう一度お聞きしますけれど、再三この本委員会でも御答弁されていますように、本教員大学というのは、既設の教員養成大学、つまり教育学部系、あるいは一般大学の充実、こういうことと、格差をつくらない、エリート校にはしない、こういうことは再三言われているわけですね。そういう意味からいくと、もちろん小学校教員養成と、中学、高校教員養成という違いはありますけれども、再三局長がおっしゃる事柄としての養成制度からいけば、充実をするという方向性からいけば、この新たなる教員大学も、既設の教員養成大学も、それから一般大学も全く同程度、同じように力を入れて充実していくんだと、こういうことをくどいようですけれども、あくまでも文部省としてはお考えなんですね。
  38. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学の創設というものが、既設の教員養成大学学部の充実ということについて、いい意味での刺激を与えると、そして教員大学と既設の教員養成大学学部とが、それぞれ協力をし、お互いにそれぞれの大学学部における教育研究の成果というものを交流をしていくというふうなことも通じて、両々相まってわが国の教員養成のあり方というものを向上さしていくという、そういう期待を持ってつくっていくわけでございますし、全体の教員養成というものを充実をしていくためにも、既設の教員養成大学学部教育条件の整備というものを十分に考えていかなければならないということは、先般来御答弁を申しておりますように、私たちの基本的な方針でございます。  一般の大学における教員養成の充実というものに、どのように取り組んでいくかというのは、御指摘のように、国立の教員養成大学学部をどのように整えていくかということとやや異なったむずかしい課題を持っております。開放制のもとにおける一般の大学短大における教員養成内容というものを、どのように充実をしていくかということは、ひいては根本的には現在の教員養成制度のあり方と申しますか、あるいは免許制度のあり方というものに及んでくる重要な課題でございますので、そういった角度を含めて対応していきたいと考えているわけでございます。
  39. 勝又武一

    勝又武一君 正直に言いまして、よくわかりません。やっぱりこの教員大学というのを創設をするというのは、私は正直言ってつくっていけば、そしてそれに重点を置けば置くほど、今後の動向の中では、どうしても、率直に言って教員養成大学、つまりいままでの既設の教育学部系、あるいは特に一般大学教員養成制度とは格差がついていくだろう、いろいろの点で。こういうように正直に思わざるを得ません。そしてまたそうでなければ、この教員大学をつくる意義を強調されている方々の主張からすれば、また逆の意味の矛盾が出てくるんじゃないかというように思わざるを得ないわけです。そこで、この議論は果てしないと思いますので、角度を変えまして、ひとつお聞きをいたしたいと思いますが、四十七年の七月に発表されました自由民主党文教制度調査会と文教部会とが、「教員養成、再教育並びに身分・待遇の根本的改革について(中間報告)」というのがあります。このうちの教員養成にかかわる項目と、本法案と根本において重要事項が一致している向きが幾つか散見されるのでありますけれども、これについては大臣はどのようにお考えになりますか。
  40. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員養成の充実を基すると、そういう趣旨のもとに新しい教員養成大学構想し、その新しい構想大学とあわせて教員教育のための大学院構想するということが、御指摘提案の中には掲げられているわけでございます。こうした教員の再教育と申しますか、研修と申しますか、そのための機関というものを整備をしていくという考え方は、中教審においても指摘をされておりますし、また、教員養成審議会においても指摘をされているところでございますし、そういった方向それ自体は、この中間報告の御指摘考え方としては一致をしているわけでございます。具体の構想の中身につきましては、設置の形態が特殊法人ということが構想されている点であるとか、あるいはこの中間報告において構想されている新構想大学院卒業生に対して、給与等において特別の処遇をするというような点であるとか、やはり現在御提案を申し上げている教員大学とこの中間報告とは、具体の構想においてはかなり違うところがあるわけでございます。
  41. 勝又武一

    勝又武一君 四月の十八日時点でしょうか、教育学者三百六十八名の連名によります、本教員大学についての反対の向きの声明がありますけれども、これについてはどのようにお考えに、何て言うんでしょうか、これに対する文部省の批判といいますか、考え方といいますか、その辺はどうでしょうか。
  42. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 国立大学協会の関係特別委員会においていろいろと御批判があり、そしてその御批判というものをわれわれも受けとめながら検討を続けた結果、現在御提案を申し上げているような具体の構想というものを考えたわけでございます。そして現在の教員大学構想については、国大協の特別委員会は十分にこれを理解をして、そして今後この大学がどのように発展をしていくか、そして当初の趣旨に従って発展をしていくかどうかについて、それを見守っていきたいということを委員長も明らかにされているところでございます。そういう点については、この声明をお出しになった方々についても、私は将来は御理解を賜ることができるというように考えるわけでございます。この声明の中で、具体的に述べられている点は三点ございますけれども、少なくとも今後この大学が具体に整備をされていく過程を通じて、この大学がこの国会においてわれわれがお答えを申し上げてきているような趣旨のものとして、既設の教員養成大学の整備と相まって、わが国の教員養成を前進をさせていく、そういう趣旨のものであるということをさらに十分に御理解を賜るような努力をしていく。そういうことを通じて、この声明に述べられているような御批判についてもこたえることができると考えているわけでございます。
  43. 勝又武一

    勝又武一君 日本教育学会が、この教員養成に関する研究委員会の発足準備を始めたという報道がございますが、この点については、どのように文部省としてはお考えでしょうか。
  44. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 具体にどのような準備が現在進行中であるかについてはつまびらかにいたしませんけれども、教員養成の問題について、いろいろな方面で検討が行われるということは望ましいことであると考えております。
  45. 勝又武一

    勝又武一君 さらに、中央教育審議会で、引き続き教員養成の方法、あるいは教員像のあるべき姿、教育実習のあり方、それから現職教員研修ですか、そういう問題について本格的な検討が続けられている向きの報道がありますし、けさの一般紙にもちょっとありまして、さらにまた、近く総会で云々という記事もございましたが、こういう点が、中教審答申ですから、当然教員養成大学と文部省の考えていらっしゃることとの矛盾は恐らく生まれないというように想定はされるでしょうけれども、問題の事柄から言って、いろいろの場合のこともまた出てくることも予測をしてもいいんじゃないか、メンバーも違ってくれば。そういうことよくわかりませんが、そういうような、引き続き前回の中教審答申、教養審建議、そういうことで、いま新構想教員大学、こういうことできていますけれども、時間的に言えば、さらにそういういろいろの角度からの、私は日本教育学会だけをあげつらうつもりはありませんけれども、そういういろいろな角度からの討議というものが十分尽くされていいんじゃないか、そういうように思いますけれども、この辺はそうそう矛盾は生じないというふうにお考えなんでしょうか。
  46. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員養成改善については、非常に広い課題があるわけでございます。そういったそれぞれの課題について、さまざまな形でのプログラムが進行していくわけでございます。教員大学は、そうした教員養成研修改善、充実を図っていこうといういろいろな施策の中で、とりわけ今日の重要な課題になっている、大学院における教員の高度の研修の推進ということと、それから、改善、充実のための工夫が必要な初等教育教員養成の面での新しい方向を開く、そういったプロジェクトとしてそういう課題にこたえていこうというものでございます。  教員大学がどのようなものとして具体に育っていくかということは、これからこの大学の創設にかかわる方々の努力にもよるところであり、また、その努力の過程でいろいろな御意見を承りながら、国大協も言っておられるように、既設の大学と相まってお互いに、何と申しますか、相ともに成長をしていくものとして、これが充実をされていくような努力をしていかなければならないわけでございます。  しかし 教員養成の課題というのは、もちろん教育大学設置をするということをもって済むわけではない、これはいま申しましたような一つの課題にこたえるためのプログラムでございます。それ以外のさまざまな問題点については、各方面におけるいろいろな御指摘があるわけでございます。あるいはこれからも御指摘を賜ることができるわけでございましょうから、それを十分に伺った上で、教員養成改善、充実というものを進めていかなければならないと考えております。そういういろいろな教員養成改善のための諸施策の中に、この教員大学の創設というのは矛盾なく、また非常に重要なプロジェクトとして位置づけられていくと考えているわけでございます。
  47. 勝又武一

    勝又武一君 先ほど大臣からも、国民なり、教員なりからの強い要請があってという御答弁があったと思うんですね。私は、それで一つ、二つ感ずるんですが、国民の要望、教員要請というのをどう受けとめるのかということですね。一つは、やはり科学的な調査ということが私は必要じゃないかというように思うんです。  たとえば、これは一例ですよ、現職教員大学院への入学というのを本当にどの程度の人数において望んでいるんだろうか。私は、現職教員がいま、本案にありますように、三年以上たって大学院入学をして、研究を進めたり、専門的な学術的な高度の研究を進めるんだということについていささかも反対ではありません。ただ、現職教員の願望が、教員研究ということで、大学院への入学ということが圧倒的に多いんだという科学的な調査なり、根拠はおありなのでしょうか。つまり、もっと端的に言えば、現職教員の一体何%がそのことを本当に望んでいるんだろうか。そういう調査というのを一体文部省は現職教員からおやりになったことがあるんだろうか。現場からの要請、国民からの要請ということがありますけれども、この辺はどうなんでしょうか、一例ですけれども。
  48. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 文部省において、全国の教員を対象にして、いま御指摘のような大学院進学の希望の調査を行ったことはございませんが、たとえば五十一年三月に栃木県の小学校長今が実施をした無作為抽出による小学校の先生方の希望を調べた結果を見ますと、大学院における研修についてぜひ進学をしたいという方が一一・四%、条件が整えば進学をしたいという方が四五・二%、両方合わせて五六・六%になっております。母数が二千名をちょっと超える調査対象でございます。そのうちの約千二百名の方々が大学院において研修をしたいという御希望をお持ちでございます。こういう状況から見ましても、やはり現職教育についての先生方の御希望というのは、非常に高いというふうに考えているわけでございます。
  49. 勝又武一

    勝又武一君 栃木県をことさらあげつらうけちな根性はありません。しかし、全国的なそれが傾向だろうかということになると、私はやはりややこの点については疑念を抱かざるを得ません。ですから、もっと現場教員現職教育について何を望んでいるのかということは、私は、文部省としてはもっとやっぱりシビアに、的確に把握すべきだというように思います。  そこで、何かそういう意味の、現職教員だけでなくて、ややこれは官庁統計としてはおかしいかもしれませんけど、現在の学生、あるいは現在の高校生、あるいは一般の父母、そういう方々が、本当に現職教員の欠陥は何か、現職教員の欠陥を埋めていく方途というものは何なのか、そうしてまた、一番該当者である現場教員たちが本当にいま自分たちの欠陥を是正する研究制度というものは何を望んでいるのか、こういうことはぜひ栃木県の一例だけでなくて、今後ひとつまた私は文部省としてはおやりになったらどうだろうかと思います。  それは別にしまして、いままでのお話のありました審議会なり、特別委員会なり、調査会等の答申、これは拝見をいたし、同時にまた衆議院でも参議院でも議論が尽きないわけでありますが、まだまだいままでの内容では、私は十分な国民に対する説得力があるというふうにどうしても思えません。  そこで、一つは国・公立あるいは私学も含めた大学関係者の皆さん、そういうやっぱり圧倒的な合意というものが、事教育養成制度にかかわるわけですから、そういう合意が必要ではないのか、そういう意味では教育の最重要課題であります教員養成制度の根本的な問題であるわけでありますから、そういう意味の、それぞれの関係者の皆さんのもっともっと合意というものを煮詰めていく努力も必要じゃないんだろうか、そんなように考えるわけですけれども、この点については、これはひとつ大臣でも、局長でも結構ですけれども、どうでしょうか。
  50. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) この教員大学は、昭和四十六年の中教審答申を受けて準備が始まったわけでございます。もう相当な年数の間、各方面でいろいろな活発な論議が続けられてまいりました。ある時期には、先ほど先生が御指摘になりましたような、自民党の文教問題調査会等で、こういう形で進むのがどうかという御答申もあったわけでございますし、鰺坂調査会の報告もまたございました。そういうものを受けて、各方面でいろんな論議が尽くされて、先ほどから先生が御心配になっておりますような、エリート教員のみを特別に養成する大学ではないか、そのような議論もあったわけでございます。そういう性格のものではなくて、やはり既設の教員養成大学の充実整備と相呼応して、教員資質向上に役立てる、そういう養成一つの手段としての教員大学という構想がだんだん固まってきたわけでございます。ある時期には、国大協もこの新構想教員大学というものに危惧の念を持たれました時期がありましたことも事実でございます。その都度、文部省としての考え方を御説明をし、また国大協、あるいは国大協の須田委員会等が御指摘になりました点も取り入れながら、今回の法案をつくるところまでまいったわけでございます。十分論議を尽くせということは当然のことでございますから、教員大学内容等についてはまだこれからもさらに準備を進めてまいらなければならないことでございます。須田委員会等とも、まだ今後もいろんな御意見を拝聴しながら進めてまいらなければならないことでもございます。先ほど勝又委員が御指摘になりました、慎重な検討を求めるという声明書に署名をなさった方々も、私は十分な御理解を得られるものと、さように確信をいたしますだけに、積極的にこれらに問題提起をいたしながら、国大協の側とはまだなお御相談をし、その御意見を承りながら、準備室を中心に、間違いのないものにつくり上げていく、いかなければならない、かように考えるものでございます。
  51. 勝又武一

    勝又武一君 それでは次に、教員大学と現行教員養成制度、こういう関係についてお伺いをしたいと思うんです。  この教員大学は、いままでの再三の御説明によりますと、教育技術あるいは実地研修、いわゆる教育実習重点を置く、こういうようになっていると思うんです。衆議院文教委員会会議録によりましても、たとえば教員大学についての、これは参考人の賛成意見でありますが、大学新卒の教員にすぐ求められるからという点で、実地に役立つ教育技術、実際的な教育指導の方法に重点を置く、こういう個所がございますが、これらを総合しまして、教員大学の特に大きな特徴というのはそういうような点にあるというように考えてよろしゅうございますか。
  52. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学が学校教育に関する実践的な教育研究重点を置くというのは、この大学の創設を考えた場合の一つの特色でございます。しかし、そのことは、単にいわゆる教育技術と申しますか、そういったものをこの大学において教えていく、そういうことを考えたものではございませんし、また、この大学大学院がいわゆる教員研修所のようなものとして、そういった技術的な面をもっぱら研修をするというようなことではございません。大学として十分な教育研究というものを行っていく。その場合に、従来の教員養成のあり方において、御指摘の強かった教育の実践的な面についての教育研究の不十分な点というものを、この大学においては特に意識をして改善を図っていこうということでございます。
  53. 勝又武一

    勝又武一君 よく言われておりますように、大学における教員養成原則大学等の設置別を問わず、教員免許状取得に必要な課程履修資格要件とする開放制免許制度の原則、これもよく言われるわけでありますが、この点は文部省としてはどうなんでしょうか。これは是正されるんですか、それともこの方針には変更はないんでしょうか。
  54. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員養成につきまして、戦後とられてきた開放制原則というのは、これはどこまでも基本に置いて尊重をしていくということでございます。
  55. 勝又武一

    勝又武一君 そうしますと、くどいようでありますが、教員大学は学校教育に関する実践的な教育研究、このことが一番大きな特徴であり、モットーである。一般大学は先ほど言いました開放制を基調とするでありましょうし、私はやはり特徴として当然違ってくるというように思うわけですね。この点については、そういうそれぞれの特徴を生かすと、こういうことなのか、あるいは教員養成大学、いわゆるいままでの既設の教育学部、この方も実は教員養成としては、特に初等教育ということに限定しても結構ですが、学校教育に関する実践的な教育研究が不足しているから、そっちの方も教員大学と同じように重点をかけて直していくんだと、つまり教員大学構想する学校教育に関する実践的な教育研究というのは、教員大学だけではなくて、現在ある既設の教育学部、こちらもそういうように変えていくんだと、こういうようにお考えなんですか。この辺はひとつはっきりしていただけませんか。
  56. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 既設の教員養成大学学部におきましても、実践的な教育研究を推進をしていくということについては、十分な問題意識をお持ちになっておりますし、そのためのカリキュラムの上での工夫であるとか、あるいはその推進のための特別なセンター設置というような工夫も行われてきているわけでございます。あるいは大学における現職教員の受け入れという点についても、これは既設の教員養成大学大学院においてもそれは課題として考えられ、そのための改善ということも具体に東京学芸大学等においては検討をされているわけでございます。既設の大学がどのような形でそれぞれの教員養成のあり方を改善をしていくかというのは、まずそれぞれの大学の自主的な御努力に待たなければなりませんし、そういった努力が続けられていくということについては、私たちは確信をしておりますけれども、そういった既設の大学の努力、あるいは実績というものを尊重をしながら、教員大学が既設のそういった大学の努力というものに好ましい影響を与える、そういうことを期待をして、この大学設置をするわけでございます。  先ほど来申し上げておりますように、両方が相まって教員養成の充実、向上というものが図られていくと、そのような期待を持っているわけでございます。
  57. 勝又武一

    勝又武一君 そうしますと、この新構想教員大学と、既設の教育学部とは、学校教育に関する実践的な教育研究、そういう点では全く同じになっていくんだと。一般大学教員養成課程の方はどうなるんでしょうか。全くこの方も同じような趣旨で、学校教育に関する実践的な教育研究、このことに重点を置いた、そういう形に一般大学の方も、文部省指導としてはそうなっていくんでしょうか。
  58. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) やはり教員養成目的として設置をされている大学の場合と、一般の大学課程認定を受けて教員養成を行っていく大学とでは、そもそも大学設置をされている趣旨といむものが異なりますし、それぞれの大学の機能している態様というものが異なるわけでございます。教員養成大学であろうと、あるいは一般の大学であろうと、教員養成内容、質というものを充実をしていく。そのときに戦後の開放制のもとにおいて、非常に広い視野を持った教員教育界に迎え入れられていくという、そういったよさはあるけれども、一面教育の面における実際的な指導能力というようなものが不足をしているというような御指摘は従来からあるわけでございます。その点は一般の大学も、これからの教員養成のあり方についてもちろん御工夫を願わなければならないことでございますし、特に現在問題になっている教育実習のあり方というようなものについては、特に一般大学における中等教育教員養成の場合の教育実習、それをどのように改善をしていくかという点について、工夫と努力が要るところでございます。基本的にはそういった状況にございますけれども、教員養成大学の場合と、一般の大学の場合とでは、やはり事柄を分けて考える必要があろうかと思います。
  59. 勝又武一

    勝又武一君 私は、教育現場経験から言いましても、特にこれは大臣もよくおわかりと思うんですが、教育というのは一人の教師だけが、自分がオールマイティーで、自分の学級王国だけをつくって、そして四十五人なら四十五人の子供を教育するといううぬぼれを持ってはいけない。そういう教育に対する熱情と信念を持つことは非常に重要でありますけれども、もっと言えば、いろいろのタイプの教員がいて、学校教育というものが成り立っていくし、それは当然社会教育という問題にもかかわってくるというように思ふわけです。そういう意味では、私は正直に言いまして、いまの大学局長の御答弁は正直で大変私は賛成なんです。やっぱり一般大学というのは、一般大学の、そういう開放制に基づいた教育の中から、画一的でないいろんな考えを持った教員が生まれてきていいんじゃないか、特徴のある教員が生まれていいんじゃないか、私学出身の教員があっていいんじゃないか、あるいはもっと言えば、民間から積極的に教員を採用するというようなことも今後も考えていいんじゃないか。ただ、言われている教育実習の不足というのは別の意味考えていく。こういう意味で、私は一般大学の欠陥を埋める方法、同時にそれは教員大学の出身の方と違った、もっと幅広い教養と言いますか、実践的な教育研究ということではやや不足をしているけれども、人間的な幅広い教養なり、そういう意味で、もっと別の、うまく言えませんけれども、能力なり、力量を持っている教員というのがいる。片方には非常にそういう教育実践にすぐれた教員がいる。お互いが切磋琢磨する、お互いが総合的な力を発揮するという中で、教育の相乗効果が高まっていく、こういうことだろうというふうに私も思うのです。そういう意味では、正直に言って、そこで最初からくどく聞いたのですけれども、格差なり、差別なりが生じないという意味で、実は心配はするけれども、一般大学教員養成課程というものの特徴があっていいんじゃないか。そういうように思っていましたので、この点はくどくお聞きをしたわけです。  そういう意味で、一般大学における教員養成の欠陥は何なのか。教員大学における教員養成の欠陥は何なのか。こういうことでの今後の議論を進めていく必要があるんじゃないか。そういうように思います。そうしないと、先ほど来出ています実践的な教育研究、つまり端的に言ってしまえば、教育技術、教育実地研修に走りがちな側面と、それからもっと幅広い開放制に基づく特徴面、このこととが両々相まっていい面を発揮する。この方がいいんであって、それを何か一つのものにしてしまう。こういうようにすることは間違いじゃないかというように思うのです。そうしないと、なかなかこの教員大学を創設するという根拠が非常に矛盾してくるというように私は思わざるを得ません。  そこで、一つ観点を変えてお聞きしますと、中教審答申の中に、「初等教育教員と中等教育教員のある割合は特別な教育課程をもつ教員養成大学養成する、」とありますけれども、このときの中教審が言っていました「ある割合」というのはどういう意味なんでしょうか。
  60. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 義務教育教員の中で、初等教育教員については中教審のお考えは、主として目的にふさわしい、特別な教育課程を持った高等教育機関で養成するというお考えであったと思います。  中学校の教員についてはまさに「ある割合」という御指摘があったにとどまっておりまして、中学校教員の何十%を教員養成大学において養成をするというような具体の御指摘はなかったと思います。
  61. 勝又武一

    勝又武一君 私が調べたのでは、そういう「初等教育教員と中等教育教員のある割合は」、こうあるのですけれども、そうしますと、この答申の志向している大学と、いまこの議論をしています法案の教員大学というのとは、その意味では同じなんでしょうか。それとも違うのでしょうか。
  62. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 中教審の答申が述べておられる「初等教育教員は、主として、その目的にふさわしい特別な教育課程をもつ高等教育機関において養成をはかり、中等教育教員のある割合は、その目的に応じた教員養成大学において養成をはかるものとする」。このお考えは、特に現在の教員養成の実態を変えるということまでを意味しているものとは考えられません。やはり現在の教員養成のあり方、実態というものが、まさにこういうものとして整備をされてまいっているわけでございます。このことは教員大学がどうであるかということよりも、むしろ現在の国立の教員養成大学等を中心とした、いわゆる目的大学における養成のあり方というものを示している、そのように理解をいたしております。
  63. 勝又武一

    勝又武一君 一般大学のうちの、特に私学の関係について引き続きお聞きしたいのですが、私学の四年制大学三百十校のうちで中学校教員養成課程を持つのが二百四十八校、約八〇%。同様に高校の教員養成課程を持つのが二百六十八校、八六%、こうありますが、この点は、この数字は間違いないんでしょうか。
  64. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおりでございます。
  65. 勝又武一

    勝又武一君 先ほど、戦後、一般大学の出身の教員が果たしてきた戦後三十年間の評価という議論が先ほどもございました。私もそれは大いにそうであるというように思います。果たしてきた役割りは大変大きいと思うわけです。ところが片方で、きょうの最初にも数字を出しました教員免許状との関係で、何か私学における場合の免許状の乱発ということがときどき言われているのでありますが、私学における養成課程、それから一般大学教員養成の果たしてきた役割りから言って、一体免許状の乱発という言葉、これについて文部省としてはどんな見解をお持ちですか。
  66. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のようによく免許状の乱発ということが言われます。そのことは先ほどの資料において御指摘もございましたように、実際に教員に就職をする者の数が、年度当初において四万人弱であるのに対して、免許状取得する者の実数が十七万近い数に上る、そういったことをとらえて免許状の乱発という御指摘があるというふうに理解をしております。量的に非常にたくさんの免許状が授与されているということは事実でございますし、またその授与に際して、たとえば教育実習というようなものが一般の大学の場合に十分に実施をされているかどうかという点を考えますと、学生が自分の出身校へ帰って、そこで教育実習を受けてくる、それが十分に大学の指導のもとに行われるというような点において欠けるというような御批判はございます。現在の一般大学における免許状の授与というものについて問題がないわけでは決してない、改善すべき点はあると思いますけれども、十七万近い免許状取得者が出ているということをもって、直ちに免許状がすべて形式的に乱発をされているというようなとらえ方をすることは適切でない。問題はございますけれども、それを全部乱発だというようなとらえ方をするのは適切でないと思います。
  67. 勝又武一

    勝又武一君 一般大学、これは国・公立、私学を問わず、教員養成課程について私も問題があると思います。欠陥もあると思うんです。是正すべき問題がいろいろあると思いますね。特に多く言われます、たとえば教育実習という問題があると思うんです。私もこの二週間・四週間ということについては再検討する必要があるというように思います。ただ、参考人の方の意見、あるいはときどき本委員会でも、他の委員の方からも出ますような一年間の試補制度、こういうものについては私は賛成をいたしかねます。しかし、たとえば教育実習について、もっと長期にわたってやるような方法、こういう問題について、後でも触れたいと思うんですが、考えることが必要だと思うんです。あるいは免許法の改正ということにも取り組んでもいいんじゃないかということも生まれてくると思うんです。問題は、一般大学にそういう欠陥があるから、免許状の乱発だ、一般大学はだめだ、だから実地教育重点を置く、学校教育に関する実践的な教育研究をモットーとする教員大学だよと、こっちでなきゃだめだよと、こういう短絡的な発想というものが私はやっぱりあると思うんですよ。そのことをやっぱりダイレクトに結びつけていくところに問題があると思いますので、むしろやっぱり一般大学における養成課程の欠陥なり、問題点をどう是正していくのか、ここにこそウエートを置くべきだというように思いますけれども、この私の見解は間違いなんでしょうか。
  68. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在、開放制のもとにおいて課程認定を受けている大学の数が非常に多数に上る、それに伴って免許状取得する者の数も非常に多数に上っている、そういった量的な問題というのは当然に養成内容、質というものについて問題を生ずるわけでございます。したがって、御指摘のように、一般大学における教員養成のあり方というものを、開放制原則というものを、どこまでも維持をしながら、どのように改善をしていくかというのが重要な課題になります。そのことは御指摘のとおりでございます。また、そういった教員養成の原状が問題を抱えているからといって、従来の開放制というものを否定をして、もっぱら目的大学における養成に切りかえるということがとるべき施策でないという点についても、これまた御指摘のとおりであろうと思います。やはり現在の開放制原則のもとで、目的大学と一般大学とが両々相まって、それぞれの特色を発揮しながら教員養成というものを充実をしていく、そういう方向で施策が講ぜられていかなければならないと考えております。
  69. 勝又武一

    勝又武一君 午前中はちょうどあれですからここで終わりたいと思いますが、そうしますと、午前中の私は総体として感じますと、やっぱりそういう意味でいけば、まだまだ教員養成大学の創設ということについては、そういう意味ではやっぱりもっともっと慎重な配慮があっていいんじゃないかというように思わざるを得ないわけです。だから、現在の既設の教育学部の拡充強化、あるいは一般大学の欠陥の是正、そういうことをもっと十分考えていく中で、教員養成制度というものを考えていくべきであって、教員大学の創設についての問題点というのは、まだまだあるんじゃないかというようにこの点思わざるを得ません。しかし、時間の点で午前中は以上で終わりたいと思います。
  70. 吉田実

    委員長吉田実君) 本案に対する質疑は、午前中はこの程度にとどめます。  午後一時から再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      —————・—————    午後一時九分開会
  71. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  72. 勝又武一

    勝又武一君 大学院への入学について伺います。  もちろん、大学院が専門的な研究、学術的な専門を深める、そういう観点からいきますと、出身の大学、あるいは既設の教員養成大学大学院で学ぶということでよろしいんじゃないかというように私は思いますが、この点はどうでしょうか。つまり、問題は、現職教員をよりやさしく、あるいはより多く特別に大学院へと入れる制度をつくってやろうという、言葉が少し言い過ぎかもしれませんが、ややそういうきらいがあるような気がしてなりません。この点やや無理があると思いますが、この点はどうでしょうか。
  73. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現職教員大学院レベルにおける高度の研さん機会の確保という点につきましては、教員大学設置をしてその要請にこたえていくということを考えるわけでございますけれども、それと同時に、既設の教員養成大学学部大学院の整備を図っていく、そしてそこにおいても現職先生方が受け入れられるようにししていきたいというように考えております。現職教員研修の場というものを、教員大学大学院に限るという考え方ではもちろんございません。ただ、教員養成大学学部大学院におきましては、現職教員の受け入れということとともに、学部教育基礎の上に、さらに一貫的に大学院において高度な教員養成を図るという、そういった役割りがありますし、現在設置されているものについては、現実にそのような形で機能をしている点が多いわけでございます。そういった点と、現職教員研修をこれからできていく既設の教員養成大学大学院がどのように調和をさせていくか、関連させていくかということについては、それぞれの大学の今後の検討に待たなければならない点があるわけでございます。
  74. 勝又武一

    勝又武一君 現職教員研修なり、研究ということは、一つ別に考えていいというように私は思います。ただ、大学院での研さんという問題でありますから、専門的な研さんという言葉が使われておりますけれど、これにかかわりまして、先ほどから議論をしています実践的な教育研究、そういう教員大学における大学院、これとの関係ですね、ですから、大学院というものの本来の性格からいけば、私はやや現職教員大学院研さんをさせるという、そこに一つのやはり無理があるという、そういう感じがこの点いたしてなりませんのでお聞きをしましたが、これはやや平行線のような感じがいたしますので、これ以上やめますが、特にもう一点ですね、この大学院というのは単なる教育技術の修得ではない、そして学術的な、専門的な研さんを積むという観点からし場合に、その大学院卒業生が、指導的なあるいはエリート的な層につくのではなくて、小・中学校の初等教員養成でありますから、必然的に現場で授業をやるということはそうなると思いますが、実際の現場で小学生、中学生に授業を行う、このことがたびたび確認をされていると思いますが、そういうことで再確認をしてよろしいかどうか、そうして、そのことは、特別な待遇や管理職的な地位につくことでもない、こういう再三の答弁がありますが、そのこともあわせて確認してよろしいかということです。
  75. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学大学院卒業した者に対して、特に特別に給与あるいは免許の上で措置を講ずるわけではない、そのことは再三申し上げてきているとおりでございます。また、教員大学大学院で勉学をされる方々が、現場における現職経験を経て、課題意識を持ってさらに高度の研さんを自発的に積もうという、そういう意欲を持った方であってほしいと考えているわけでございますし、そのような方々が教育現場に再びお戻りになって、初等教育、中等教育の面で指導的な役割りを果たしていただくということを念願をしているわけでございます。もちろん大学院で熱心に勉強をされようという意欲を持ったすぐれた方々でございますから、それぞれ将来はいろいろな分野で活躍をされるであろうし、それぞれの県における教科教育等の面においても、指導的な役割りを果たしていただくことを願うわけでございます。すぐれた方々を受け入れて、そしてそれらの方々が大学院研さんを経て、それぞれの現場において指導的な役割りを果たしていただくということを念願をいたしますけれども、これはこの大学院がいわゆる校長なり、あるいは教頭なりになる方の養成ということを目的とするものでないということはもちろんでございます。
  76. 勝又武一

    勝又武一君 そういう意味で小学校、中学校、高校の格差の問題なり、人事交流の問題にあわせてお伺いをいたします。  いまありましたように、私は大学院というのは、この教員大学大学院でなくて、既設の教員養成大学大学院なり、一般大学大学院でいいというようにいまでも思いますが、これは別にいたしまして、その大学院卒業生が小・中学校の授業をやるということは私は非常にいいことだと思います。としますと、このいわば大学の講師、助教授クラスの方が、言ってみれば小・中学校の授業をやるということは非常にいいことだ。としますと、たとえばいま小学校、中学の人事交流というのがありますけれど、もっと中学と高等学校との人事交流なり、あるいは小学校と高等学校の人事交流ということがもっと積極的に行われていいというように思いますけれども、これらについては文部省はどんなお考えをお持ちになりますか。
  77. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 先生がいろんな段階の学校の教育を体験されるということは、先生としての能力の幅を広げるという意味からも、またそれぞれの学校にとっても、言ってみれば新しい気風を吹き込むという意味からも、意義のあることであろうと思うわけでございます。ただ、現実には小学校は免許状も全科担任制でございますし、中、高は専門に分かれておるというようなことがございますし、また給与上は小、中と高等学校では御承知のように、別建ての俸給表になっておるというようなことからいたしまして、全面的にこの人事交流が円滑にできるというような体制ではございません。しかしながら、また一方、実際にこの教員免許状を取ります場合に、小学校の養成課程であっても、何かピークを立てて、特別の教科を勉強して、中学校の免許状を複免として取るというようなことも相当やっておりますし、中学校の一級と高等学校の二級は同じ学歴で取れますというようなこともございますんで、現実には私ども悉皆調査をしたわけではございませんけれども、それぞれの県において限られた範囲でありますけれども、小、中間、あるいは中、高間、あるいは特殊学校がございますけれども、特殊学校と普通の学校との交流というようなことが、やられておるというふうに承知しておるわけでございます。
  78. 勝又武一

    勝又武一君 小学校、中学、高等学校、それぞれ違うんですが、教育の本質からいけば、一般的に言われている小・中学校と高校との間のもろもろの格差、そういうものは私はなくなっていいんじゃないか、たとえば給与ということもいろいろ歴史的な変遷があるわけですね、戦前の差があった場合、戦後一度小学校、中学、高校の給与上の差も一切なくなった場合、それからまた高校の給与が小学校、中学と分かれた、いわゆる給与三本立てという歴史的な変遷等がありますが、私は給与などは小学校、中学、高校、すべて同じでいいというように認識をする一人でありますけれど、その議論は別にいたしましても、もっとそういう意味ではやっぱり小学校、中学、高校の、そういう意味の格差というものがなくなっていいんじゃないかというように思うんですが、その点はどうでしょう。
  79. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 給与のお考えにつきましては、現実にいまの小、中と高等学校の俸給表も、最近の小・中・高等学校教員の学歴というものが、一律に大学四年卒という者が大部分を占めるように、特に若い方がなっておりますから、採用後十三、四年ぐらいまでは、逐次同じグレードに持っていくという操作を人事院でもしておるようでございますから、これは、教員構成の変更に応じまして、逐次そういう措置がとられるであろうというふうに私ども考えておるわけでございます。  ただ、その職場としての格差と申しますか、その点につきましては、やはり人事交流はもちろん必要なんですけれども、免許法のたてまえが、小学校の教諭免許状、中学校教諭免許状高等学校教諭免許状というふうに、それぞれ分けております趣旨は、やはり小学校は全科を担任するのがたてまえであるし、中学校は教科であり、高等学校に至りますれば、たとえば理科とか、社会などになれば、またそれぞれ物・化、生・地、あるいは政治・経済、倫・社というふうに専門が異なってくる。これは子供の発達段階に対応して、教える方の体制もそういうふうに専門化している方が妥当だという判断に立つのだろうと思いますから、それを格差と見るのではなくて、やはりそれぞれの教育段階が非常に重要な意味を持つものであり、その教育を的確に行うためには、やはり資格内容の異なる先生を必要とするんだという、その前提を考えますと、余りに人事交流自体を、非常に強調するのはどうであろうか。やはり実態に応じて、その辺は適切な配慮のもとに、適時適切な人事交流をしていくということがよろしいのではないかというふうに、こういうふうに思うわけであります。
  80. 勝又武一

    勝又武一君 ここで格差問題を議論するのは本論でありませんので差し控えますが、言いたい意味は、たとえば一週間当たりの受け持ち授業時間数、あるいは事務職員の配置の問題等ですね、幾つか挙げていけば、小学校と高等学校との間に、私は、格差なり差別というものが、正常でない差というものがあり過ぎるというように思いますので、あえてその点を指摘したかったのであります。しかし、それは本論ではありませんから差し控えます。  いまお話のありました免許法上の問題ですね、一つは、先ほどの調査でも明らかですが、一人で小学校一級、中学一級、高校二級、そういう免許状を持っていらっしゃる方々が、いまの教員養成制度の中ではあるわけですね。ですから、高等学校教員で小学校免許状を持っていらっしゃる人、小学校勤務で小、中、高の免許状を持っている人もいると思うんです。同時にまた、そのことが免許法が隘路ということがありましたら、私はやはり免許法の改正ということにもこの際手をつけていってもらっていいんじゃないかとさえ思います。というのは、大学院の修士課程卒業生が小学生、中学生を相手に授業をやるということは、私はいいことだというふうに思うわけですよ。そういう意味からいけば、当然むしろそういう意味で、何か小学校というのはこういう先生、高等学校というのはこういう先生というような、そういう従来のいままであったものを、大学院卒業生が教育現場で授業をやるということが、ここでいま議論され、想定されるわけでありますから、そういう機会を通して、ひとつ一歩を進めてもらったらどうだろうかということですが、その辺は、非常にいまの御意見では無理があるという意味合いだと思いますけれども、なおその辺を、小学校、中学、高校の人事の交流を進めていくということが、そういうことをひとつ側面から直していくもとになるんじゃないかと思いますので、この点はぜひ今後の中で御検討をいただき、必要に応じて、各県指導等もそういう観点でもお願いをしたいと思います。  それから、お話がありました小学校の全教科担任とのかかわりですが、私は、そろそろ小学校の高学年における教科担任制ということは、踏み切るべき時代の即応といいましょうか、そこへ来ているんじゃないかと思いますね。  たとえば一例を挙げますが、低学年における全教科担任ということは意味合いがあると思いますね。ですけれども、同じ小学校の二年生を受け持っていても、音楽だけはという感じですね。ぼく自身がそういう経験もありますので、思いますけれどもね。同時に、私は小学校、中学、高校と、それぞれの段階を経験いたしましたが、そういう意味から言っても、やっぱり小学校の高学年における教科担任というのは、最近の各教科の発達のぐあい、あるいは子供の受ける側、いろいろ総合して、小学校の高学年における教科担任制というのは、そろそろ踏み切るべき時期だというふうに思うんです。  同時に、これは前の文教委員会で私が御質問を申し上げて、初中局長からも御答弁がありました受け持ち授業時間数と研究時間の保障の問題がございますね。一週間の勤務時間の中で、授業一時間やるには一時間の研究時間が、事前準備、事後指導、そうして教材研究を含めた一時間の準備活動というのが必要だということになれば、必然的に小学校の先生の受け持ち時間数も、一週間に十八時間とか二十時間というように、だんだん初中局長趣旨から言っても必要でないか。となれば、当然専科教員の問題なり、高学年の教科担任制という問題が、その意味からも、研究時間の保障という意味を含めて必要だと思いますが、この辺についての文部省の見解はいかがでしょうか。
  81. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるとおり、現在は、高等学校より中学、中学より小学校の先生の方が実際の授業担任時間は多いわけでございまして、一般的に言って、先生が十分な内容を盛った授業を行うためには、相当の準備を必要とするわけでありますから、そういう意味で、定数の確保というようなことは、これまでも努力し、今後も引き続き努力をすべき課題だろうというふうに十分認識いたしておるわけでございます。  ただ、小学校のそれと、教育活動自体を高学年について専科担任にはっきり踏み切るかどうかということでございますが、これにつきましては、やはり小学校の段階の教育というものを考えました場合に、高学年であっても、たとえば理科と社会、自然現象と社会現象を子供に教えるという場合に、それぞれ別な先生が教えた方がよろしいのか、あるいは両面から関連する問題を適時適切にとらえて、一人の先生が教えた方がよろしいか。あるいは国語と社会というような問題も、社会の授業を通じて国語の勉強ということも、まだ小学校ではあり得るんではなかろうか、こういうような専門家の意見もございますので、先生の御趣旨も踏まえて、なお検討をいたしたいと思います。  しかし、いまの免許法のたてまえからいたしますと、小学校は全科担任と言っても、特に音楽、図工、体育については、これはすべての教師志望者に、この道の領域を、教師として必要な能力を持たせるよう期待することは多少無理であろうという判断だと思いますが、この三つのうち二つだけ専門に勉強すればよろしいというたてまえもございますから、その辺の音楽、図工、体育というような領域につきましては、専科担任の場合もありましょうし、あるいは相互に関係教員が時間を分け合って教えるというようなことでやってまいっておるわけでありまして、これは教育活動を十分行う上にも、やっぱり十分な能力を備えた先生が、そういう芸能、体育のようなものは教えていただく方がよろしいわけでございますから、そういう点についての人事上の配慮なり、そういうものは今後も引き続き努力をしてまいりたいと、こう思うわけでございます。
  82. 勝又武一

    勝又武一君 この教員大学免許状はどうなりますか。
  83. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 小学校と幼稚園の免許状でございます。
  84. 勝又武一

    勝又武一君 だけになるわけですか、今度は。
  85. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 小学校と幼稚園の免許状だけでございます。
  86. 勝又武一

    勝又武一君 そこの辺が、私はいまの教育学部、既設の教育学部は小、中の一級、それから高校の二級、そういう道が開かれておりますね。そこと、今度の教員大学が幼稚園と小学校だけの免許状という問題などが、率直に言って、いまの点私引っかかるわけですね。もういまのような段階ですから、私は高等学校の専門的な英語を担当した方が——やや極論ですよ。小学校の五年生ぐらいにリーダーなしの英会話を教えるというようなことを、もうダイナミックに考えられてもいいぐらいにさえ思います。それの是非は別にいたしまして、たとえば非常に理科にすぐれている高校の理科の先生が、小学校の五年生に理科を教える。私はこれは非常に違ってくるということがあり得ると思うのですね。それが得意科目による交換授業なり、あるいは教科担任の変則的な移行なりということは、教育現場ではいろいろ工夫されていると思うのです。ですからそういう意味で、あるいは、また小学校の五、六年生しか受け持ってやったことしかない小学校の先生が、高等学校で自分が持つ免許状を——たとえばそれが国語なら高校の国語の授業をやれるぐらいの日常的な研究実践を積んで、そして高校で国語を教えて、三年たってまた小学校へ帰ってくる。こういうようなことはダイナミックに、そろそろもう考えていく方が、むしろ教育の幅を広げるというような意味でも、子供の側からも必要だという意味で、くどくどしく人事交流の問題等はお聞きをしたのですが、そういう意味ではやっぱり私は、新設の教員大学学校教育学部が、幼稚園と小学校の免許状しか取得できないという点に、残念ながら失望と不満の念を持たざるを得ません。これはもう問題点の指摘にとめます。  そこで、あと教育実習の問題ですが、特に一般大学、特に私学の中における教育実習というようなことが、よく免許状乱発の問題と一般的には言われますので、こんなふうに思うのですがどうでしょうか。  それは先ほどからありましたように、開放制による免許状取得という特質を生かす一般大学の持つ重要性、これはもう先ほどからお認めいただいているとおりです。ところが、その教育実習というのは非常に不足しているという点については、私もそう思います。そこで、片方には一年間の試補制度という御意見もありますけれども、それには私は賛成しがたい。そこでやや長期にわたる、長期間検討なり、免許法上との関係も出るでありましょうが、そういう意味教育実習について、期間を二週間・四週間をさらに長期に延ばすとか、あるいは大学卒業後一定のそういう期間を設けるとか、何かそういう意味で一年間の試補制度でない形での文部省での検討というものはおありなんでしょうか。
  87. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教育実習の問題につきましては、四十七年の教員養成審議会の建議があるわけでございます。現在の二週間・四週間の教育実習について、これを六週間・八週間に延長をするということが提案をされているわけでございますが、現在の教育実習期間をもってしても、実際問題としては、教育実習生を受け入れる側の中学校なり、高等学校なりの状況からすると、非常に対応に困っているという状況があるわけでございます。また大学の側からいっても、十分に行き届いた自分の学校の実習生に対する大学としての指導というものが行いがたい面があるというような問題点があるわけでございます。したがって、教育実習については、それを充実をするために、実習期間を延長するということを考えなければならないということが、基本として指摘はされておりますけれども、それを直ちに一律に免許法を改正をして実施できるかどうかということになりますと、特に、一般大学教育実習については実態上問題があるわけでございます。教養審の建議においては、そういった点について、たとえば、在学期間中に教育実習を履習しなかった者に対して、大学なり、教育委員会の十分行き届いた指導のもとに、一定期間の教職経験研修というものを重ねる、それによって、教諭となる道を開く、そういった方途を講ずることも検討してはどうかというような御指摘がございます。  これは具体的にはどういう制度にするかという点について問題がございますし、十分な検討を要するところでございますけれども、開放制のもとにおける一般大学教育実習の強化ということと、それを現在の中等教育教員養成の実態というものと、どう調整をさせるかという点から、養成審議会で御苦心のあったところだと思いますし、私どもそれを直ちに取り上げて、免許法の改正を考えるということをいま予定をしているわけでは決してございませんけれども、一つの示唆に富んだ方向ではあろうと思うわけでございます。  そのほか、現在の学部の課程の上に、一年の特別の課程というものを置いて、そこにおいて学部学期間中に履習できなかった教員養成関係科目等の履習をするというふうなことも、建議の中では提案をされております。  いずれにしても、教育実習を強化をするということは、一つにはそういった教育実習期間の延長ということがあるわけでございますが、それ以外にも教育実習実施の仕方について、それは送り出す側の大学における教育実習に対応する体制の整備の問題であるとか、あるいは大学教育委員会と受け入れ校との連絡提携の体制の強化の問題であるとか、いろいろと改善をしなければならない点があるわけでございますし、むずかしい問題をたくさん備えているわけではございますけれども、現在の教育実習の状態をとにかく改善をしなければならないという点は、ひとしく各方面で指摘をされているところでございますので、教養審の建議等も十分念頭に置きながら検討してまいりたいと考えております。
  88. 勝又武一

    勝又武一君 この問題にかかわる最後といたしまして、現職教育の問題についてお伺いをいたします。  私は再三指摘しておりますが、大学院への入学者というのは、やはり現職教育全体の水準を引き上げる、そういう観点からいくと、どうしてもやはり一つの部分であり、同時にまた、いわば現職教育の目玉的発想というように指摘せざるを得ないわけなんです。そこで、現職教育というのはもっと別にあっていいんじゃないか。私は、一つは自主的な、あるいは自発的、創造的な教員研究活動の保障、そのための指導の強化、あるいは条件の整備、そういうことが非常に重要だと思うんです。たとえば夏季休業中における教員研究というものが一体いまどの程度保障されているんだろうかというたとえば一つの問題があります。昔はよく、学校の先生は夏休みがあって大変いいなんて話がありましたけれども、いまやそういう風潮であろうかという問題ですね。もっともっとやはりそういう長期の休業中における自発的、創造的な研究活動を保障するような条件整備なり、指導の必要性、特に、文部省は各県教育委員会に対するそういう意味の指導こそ、きわめて現職教育という問題については重要だというふうに思うんです。  もう一つは、そういう長期の休業中における講習会等への参加の保障なり、参加体制の確保なり、それにはいろいろ行政当局の主宰の講習会もおありでしょうし、自主的な教育団体の講習会というものもあると思いますし、そういう意味の問題等が両方併存して、並び立っていっていいんじゃないか、こういうように思うんです。あるいは、いまはなかなかでしょうけれども、たとえば土曜日とか、夜間とか、あるいは通信教育の拡大とか、そういう意味合いの現職教育に参加できる、研究体制に参加できる機会の拡大といいますか、そういうことをこそむしろ文部省は考えるべきだ。つまり一部の大学院入学者ということよりは、現職教員全体の水準、そういうものを引き上げていくということが非常に重要だ。特に、短大卒の場合のことがよく言われますので、小学校の臨免しかない場合もおありでしょうし、そういう意味のことを考えれば考えるほど、そういう意味合いの現職教育の強化ということがどうも片手落ちになっている。さあ大学院ができます、ふるってどうだというような調子が多過ぎるというきらいがあるというふうに感ぜられるわけですが、この辺はいかがでしょうか。
  89. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるとおり、研修につきましては、国や都道府県教育委員会がいろいろな内容の伝達講習的なものも相当ございますし、それも積極的に参加していただき、それを通じて能力を高めていただくという意味では非常に意義がありますが、御指摘のように、教師自身が自分の能力を高めるために、純粋にそういうお気持ちで各種研修機会を自発的に持つということは、非常に望ましいことであり、またそうでなければならないわけでありますから、現在も教育研究団体に対する助成等を通じて、若干の補助をいたしたりいたしておりますが、私もおっしゃるように、ごく限られた一部の先生が大学院へ行って、資質を高めることももちろん必要でありますが、できるだけ多くの先生方がそういった研修機会を持てるように、いろいろ条件を整備していくということは、行政の課題として今後も勉強してまいりたいと思うわけでございます。
  90. 勝又武一

    勝又武一君 それでは、大きな二つ目の養護教諭の問題に移りたいと思います。これは本法案との関連について直接の問題ではありません。  まず第一に、養護教諭の現状ですね。第四次五カ年計画達成の見通しについてお伺いいたします。
  91. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 養護教諭の定員の増につきましては、昭和三十三年の最初の標準法ができました時点における設置率が二四・五%、つまり四校に一校程度であったわけでありますが、その後、逐次これを増いたしまして、五十三年度で終わりまするところの第四次の五カ年計画におきまして、具体的実数はまだつかめませんけれども、予算措置と計画が実現いたしておりますので、そのとおり行われるとしますと七五%の充足率になる、こういうことでございます。
  92. 勝又武一

    勝又武一君 養護教諭の学校で占めている位置というのはどんなようにお考えでしょうか。
  93. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 学校の職員構成は、御承知のように、校長、教頭があり、その監督下に実際に授業を担当する大ぜいの教員がいて、養護教諭は養護を担当するということで、通常一名でございます。  そこで、日常の教育活動としては、一般の先生方がそれぞれ児童、生徒を対象に、教科等の教育をするわけでありますが、養護教諭は、子供についての健康保持、増進についての指導である上か、身体検査であるとか、あるいは事故の場合の応急措置であるとかというようなことを担当するわけで、その点、職務内容は一般の先生と異なるわけでありますが、同時に、学校全体の保健計画なり、保健管理なり、あるいは保健教育というものを、学校としては十分に展開しなければならない。そこで、組織としては、学校に、御承知のように、保健主事というものを置いて、保健主事は教諭をもって充てることになっておりますが、その先生の連絡調整のもとに、養護教諭を含めて全教員が保健の問題を協力しながら進めていただくということになるわけでありますが、その中においても、養護教諭はやはり養護の専門家として、専門的な知識経験を持つわけでありますから、各教科の担任の先生等に対して十分なアドバイス、協力をしていただくというかっこうになるわけであります。そういう養護教諭の現実の姿を学校でどういう位置にあるかというふうに御質問かと思いますが、私は、やっぱり学校に一人でございますから、そういう意味で、ちょっと一般の先生方と溶け込みにくいというような点があるかもしれませんけれども、やはり養護教諭としての職責を十分に果たしていただくというためには、その先生の、御本人の能力なり、意欲だと思うんでありまして、それが十分でありました場合には、やはり学校において相当重要な位置を占め、また、お仕事をしていただいているというふうに理解するわけでございます。
  94. 勝又武一

    勝又武一君 養護教諭と学校保健主事との関係につきましては、後でまたお伺いをいたします。  そこで、いま養護教諭が学校に一人という問題がありました。そこで、私は次に、いま七五%の配置率ということにかかわりまして養護教諭のいない学校についてお伺いをするわけです。  文部省の各県別の養護教諭の配置率の一覧表をいま手元にいただいております。この配置状況には大きなばらつきがあります。当然のことでありますが、一〇〇%を超している大都府県と、五〇%以下のところがございます。特に、この五〇%以下、小学校、中学でもそうでありますが、養護教諭が配置率五〇%以下という県を見ますと、大筋、農山村、過疎地帯あるいは僻地、離島——離れ島ですね、そういうところを抱える県の多くであると思うんですね。言ってみれば、これは小規模校が多い学校を含んでいる。つまり、小規模校のところは、養護教諭が配置になっていないから、必然的に、結果的に配置率が五〇%を割っている、こういうことに見れるわけですね。そこで、お聞きしたい点は、一体そういうことでいいんだろうか。つまり文部省の配置率というのは、何か七五%とおっしゃっているのだけれども、そういう小規模校に配置されていない。そういうやり方に反省があってもいいんじゃないか。端的な例を挙げますと、僻地なり、離れ島というところほど、実は無医村が多いんじゃないか。お医者さんがいないところが多い。そこにまた小さな学校がある。小さな学校には養護教諭もいないという、こういう非常に何というのですか、皮肉な現象が生まれている。むしろ私は、そういうところこそ養護教諭を配置すべきだというふうに思うんですけれども、この辺大臣いかがでしょうか。
  95. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先ほど初中局長お答えをいたしましたように、第四次の長期計画完了いたしました段階で、全国の平均値をとりますと七五%という数字が出てくるわけです。まだ依然としてばらつきがあることは御指摘のとおりでございます。ただ、過疎、僻地、離島等に多く見られます無医村地域にある学校につきましては、従来から特別枠として養護教諭を配置できるように措置をいたしておりますし、この前もたしかこの委員会でもお答えをいたしましたが、第四次の長期計画が完了いたしました段階での悉皆調査をいたしておりますので、養護教諭についても全国平均で七五%やっと配置し終えたと。それ以降についてもなお改善に努力をしなければならないことでございますから、どういうところに重点を置いてこれの改善をさらに努力をしなければならないか、これらの悉皆調査に基づいて次の段階にやらなければならないことであると考えております。
  96. 勝又武一

    勝又武一君 私もよくわからないのですが、たとえば岩手の小学校三五・九、中学校の三九・一、あるいは大分の小学校の三七・六、四〇%台というのは北海道、青森、山形、福島、富山、石川、福井、それから和歌山、鳥取、島根、徳島、高知、熊本、こうあるわけですがね。その辺は一体じゃあどこに未配置なんですか、そういう非常に小規模校なり、離島なり、僻地なり、そういうところにはみんな養護教諭が配置されていて、なおかつこんな数字になるんでしうか。その辺を聞かしてください。
  97. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 若干補足させていただきますが、お手元にいまお読みになりました資料は、五十年五月一日現在ではないかと思うわけでございますが、それが先ほど申しました七五%というのは、五十三年の五月になるわけで、この数字はまだ出ておりませんけれども、それがそろいますと、おっしゃるよりは大分比率が高くなってくるのではなかろうかという気がいたします。  それから、全国的なこの七五%という設置率が実現した場合の、仮に学校規模の大きいところからやっていくとしますと、大体小学校、中学校とも六学級以下の学校がこれからの課題になる。逆に言いますれば、小学校で言えば七学級以上、中学校は六学級の半分以上ぐらいはもう設置されているという勘定になろうかと思うわけでございます。  それから逆に、僻地、離島に対する手当はどうかという問題ですが、これは現在の標準法でも、御承知と思いますけれども、僻地、無医村につきましてはここに一名、それから村全体としては、無医村というわけではないけれども、その村の一部の行政区画がたとえば離島になっておるということで、事実上異なる行政区画と同じような場合にはその離島に一名というようなことで、これに対して、この基準で言いますと、現在たしか二百名ぐらいの養護教諭が配当になっていると、こういう実情でございます。
  98. 勝又武一

    勝又武一君 しかし、依然としまして七五%になっても、この個別の各県の比率が仮にこれ一〇%上乗せになりましてもまだ開きがある。いま局長の御指摘のように、六学級以下、七学級以下の問題が残りますね。ですから、そういう点からいけば、ぜひ養護教諭の全校配置ということは、もう先ほどから言われている趣旨からいきましても、一刻も早くこの点の努力はお願いをしたい。そういう意味合いでお聞きをしていますので、よろしくこの点についてはお願いをいたします。  そこで、例の学校教育法二十八条、排除規定はこの二十八条にはございませんね。そしてこれは学校教育法の付則の百三条ですか、「当分の間」というのは。これはひとつそろそろもうはずされていいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。あるいはそれをもしはずせないとしたら、その理由は何でしょうか。
  99. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるように、私もはずしたいんです。はずしたいんですけれども、しかしやはり現実にまだ二五%残っている。そうしますと、それを数に直して八千名ほどになるわけでございますから、次の年次計画において最大限拡充をはかりたいと、かように思っておるわけでございますから、この附則がはずれる日が早く来るようにということを期待しながら、ひとつ努力をしてまいりたいと思うわけでございまして、法律違反の状況になるのはちょっとまずうございますから、まず全員充足するという努力の方を先にしてまいりたいと、こう思うわけでございます。
  100. 勝又武一

    勝又武一君 これは大臣にお願いいたしますが、やはりいろいろの考えもありますけれども、まずやはり「当分の間」ははずそうと、文部省としてはその法改正に取り組む、そういうやはり何というんですか、姿勢を持って、同時に全校配置に全力を上げる。こういうようにひとつ両方やるように、大臣にもぜひお心がけをいただきたいと思います。  それから、先ほど御指摘のありました、保健主事と養護教諭関係の問題についてお伺いをいたします。  保健主事の地位について、これは施行規則ですか、それを見ますけれども、一体法的にはどうなっているんでしょうか。
  101. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 御指摘の保健主事につきましては、学校教育法施行規則の二十二条の四に規定されておりまして、「小学校においては、保健主事を置くものとする。ただし、特別の事情のあるときは、これを置かないことができる。保健主事は、教諭を以って、これにあてる。保健主事は、校長の監督を受け、小学校における保健に関する事項の管理に当る。」この条文をそれぞれ五十五条、六十五条、七十三条の十五で準用いたしまして、中学校、高等学校あるいは盲・聾・養護学校に適用いたすようになっております。現在、小、中等におきまして、ほとんど八割方の学校に教諭をもって充てる保健主事が置かれているという状態でございます。
  102. 勝又武一

    勝又武一君 養護教諭の職務はどうなっていましょうか。
  103. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 養護教諭は、学校教育法におきまして、「児童の養護をつかさどる。」定めになっております。
  104. 勝又武一

    勝又武一君 いまの挙げられました規則の「教諭を以って、これにあてる。」——規則二十二条四項の二ですか。この教諭という意味はどういう意味なのか、養護教諭というのは、この教諭の中には入るのか入らないのか、この点はどうでしょうか。
  105. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 学校教育法で、学校には教諭、助教諭あるいはそれ以外に養護教諭、あるいはその他の職員を置く定めがございまして、「教諭を以って、これにあてる。」と施行規則でいたしておる場合の教諭には、養護教諭は含まれておりません。
  106. 勝又武一

    勝又武一君 そうしますと、よく問題になります養護教諭と保健主事とのかかわりの問題なんですね。これは衆議院文教委員会で体育局長お答えになっている点、「保健主事の役割りは保健計画全般につきましての調整あるいは指導等の仕事に当たる」という「立場から養護教諭に対しましての関係は生ずるというように感じておる」、こういう向きの答弁の個所がございます。それから同様に初中局長の答弁は、「保健主事と養護教諭の方は相互に連絡していただいて、養護の専門家としての養護教諭のお仕事はやっていただく、そのお仕事が学校全体の保健計画の中で円滑に進行するように、やはり保健主事というものが連絡調整していただく、そういう関係」、こういう向きの答弁をされていらっしゃるわけです。やや微妙な食い違いがあるように思うんです。  これは体育局長にお伺いしますが、「養護教諭に対しましての関係は生ずるというように感じておる」という、何かちょっと言いにくい質問になってきましたが、「関係は生ずるというように感じておる」というのはどういう意味なんでしょうか。
  107. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 衆議院文教委員会お答え申し上げましたとおり、保健主事は、先ほど施行規則の規定にございますとおり、学校における「保健に関する事項の管理に当る。」とされておるわけでございます。つまり学校保健は、学校に置かれる教員、教諭の先生方を初め、また学校医あるいは学校歯科医、学校薬剤師等のすべての方々によって学校運営の全般にわたりまして、組織的かつ計画的に行われる必要がございます。そのゆえから保健主事が置かれまして、学校保健計画の企画、立案に当たるとともに、その推進につきまして先生方の間の連絡調整を図る等の役割りを果たしておるわけでございます。  一方、養護教諭につきましては、その専門的な知識、技術を有する教諭として置かれているわけでございまして、その専門性を十分生かしまして、保健管理あるいは児童、生徒の保健指導に当たるという職務を持っておる次第でございます。したがいまして、全般の保健計画の立案、あるいはその立案された計画の推進等の調整に保健主事が当たるわけでございますが、当然に計画立案、推進等におきましては、養護教諭の方が専門的な立場から最も大きな役割りを、実際問題として保健管理、保健指導の面では果たされるわけでございまして、その間に十分な緊密な協力関係があるということを申し述べた次第でございます。
  108. 勝又武一

    勝又武一君 そうしますと、引き続きお聞きするんですが、教諭の中から任命される。それでこの教諭というのには養護教諭は入らない。そこでどういう人が保健主事になっているかと見ますと、結論的に言いますと、非常に学校内でも多忙な先生が多い。一例を挙げますと、この場合は県名は省略しますが、たとえばその学校の中の校務分掌では体育主任との兼務が多い。授業時間数は一週間ですが、受け持ち時間が一週間小学校で二十八時間ぐらいやっている。それから特にスポーツ等の外郭団体の役職の兼務が多い。熱心な部活動の指導と相まって、非常に多忙な教諭の方が保健主事になっている。つまり保健主事を兼務している。もちろん兼務になりますね、教諭の中からのあれですから。そういう多忙な人たちがしている例が非常に多い、こういう例がありますが、これは文部省の学校保健講習会要綱、文部省で出されている資料、——県名はわざと伏せましたが、そういう資料ですから間違いないと思うんですけれども、大体そういうように把握されていらっしゃいますか。
  109. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 保健主事につきましては、やはり学校保健全般につきましての計画の企画、立案、あるいはその推進についての調整に当たるという立場でございますので、学校保健につきまして十分な理解を持ち、そのような役割りを担うにふさわしい教諭を充てるよう配慮することが肝要だということで、従来指導してまいっておるわけでございまして、具体には御指摘のとおり、体育主任等の方で、保健体育の実際の指導に当たられ、またその面の御造詣の深い方が保健主事に当たっておられるという例が多いというように聞いております。
  110. 勝又武一

    勝又武一君 そのとおりだと思うんですね。たてまえと本音ということがよくありますが、たとえばこの保健主事を命ずるに当たって、学校保健について十分な理解を持ち、このような役割りを担うにふさわしい教員を充てるように配慮すること、こういう選考基準的なものがございますね。そうすれば当然学校では私はそういう方がなる傾向が非常に多くなっていくというように思います。  そこで、このような学校保健主事と養護教諭との間に、いわゆる上下関係養護教諭は保健主事の下にいるというような、そういう関係になることを文部省としては望んでいるのか、いやそういう関係はないんだというように思われているのか、その辺をはっきりしていただきたい。
  111. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 衆議院文教委員会の御答弁でもいたしましたが、保健主事が監督、命令して、保健計画の立案、推進を図るというような立場ではございませんで、調整に当たるというような立場でございます。いまの保健主事の役割りはそういう立場でございまして、学校運営全般に当たって、学校保健の問題が円滑かつ組織的に進むように、そういう調整のお世話をする立場でございまして、養護教諭は当然に養護教諭としての専門性を持ってその職務を遂行する立場でございますから、その限りにおいて、上下関係において論じられる問題ではないというように考えておる次第でございます。
  112. 勝又武一

    勝又武一君 そうしますと、そういうように過って理解をしている県段階、あるいは各県教育委員会における問題がありましたら、これは間違いでありますから、そういうのは間違いであるという文部省としては指導をしていただきたいと思いますが、それについても確認してよろしゅうございますか。
  113. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 計画の立案あるいは推進の調整に当たる、それによりまして学校全般の保健が円滑に進むという役割りを果たしております。その限りにおいて連絡調整、あるいは指導助言という立場にあるわけでございまして、あくまでも監督命令によって、上司の立場から命令系統で事を進めていくという立場ではないということをはっきりしていきたいと思います。
  114. 勝又武一

    勝又武一君 ここに「学校保健実務必携」という第一法規の三人の方の共著がございますが、現場ではよくこのことを荷見私案と呼んでいるようであります。この中にはいろいろございますが、特にこのうちの十六項目というのがございまして、これが養護教諭の専門性、あるいは機能あるいは自主性、そういうものを規制をして、保健主事との関係ではいかにも上下関係を生ずるような項目が散見をされるわけです。  そこでお聞きしたいのは、そして同時に各県の教育委員会や校長、保健主事等がこの「学校保健実務必携」、いわゆる荷見私案というのを指導書的に利用し、そして活用し、指導をしている、こういう向きがありますけれど、文部省としてはこの点はどう見ていらっしゃいますか。
  115. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) いまいわゆる荷見私案と御指摘されましたものは多年、昭和七年からお亡くなりになる昭和四十一年まで、学校保健あるいは学校衛生の問題にこの道一筋に専門の、最終的には教科調査官でおられましたが、特にこの面の専門家として終始御指導に当たってこられました、お亡くなりになりました荷見秋次郎先生が、講習会やいま御指摘の著書などで、養護教諭の職務内容として十六項目にわたりまして、従来の経験あるいは各方面の御意見も受けられましてお示しになったもので、貴重なものであるというように私どもも受けとめておる次第でございます。いま端的にこの十六項目を見まして、先生御指摘のとおり、これは保健主事にこの限りで従属しておるというように私どもは必ずしも受け取りがたい感じでおりますが、ただこの荷見先生のおつくりになられましたこの時点では、養護教諭の全国的な配置率も三〇%に満たないというような状態でございますし、また養護教諭養成につきましても、看護婦の資格を取られた上にさらに大学等で一年の勉強をされるというような、そういうことを背景にいたしまして、養護教諭の職務をより専門性を持ちながら明確化をしていこうということで、十六項目にわたりまして、大変詳細な分類をされまして、養護教育の職務遂行に何とか役立っていきたいということでお示しになったものと受けとめております。しかしながら、その後児童、生徒の健康の問題が一層重要視されてまいりましたし、また養護教諭養成、あるいは資質向上等につきましてもそれなりの進展を見、また文部省としても養護教諭の配置につきまして、その促進を図るということも進めておるところでございますので、保健体育審議会にこの面の養護教諭の職務内容の明確化等につきましてもお諮り申し上げまして、四十七年十二月二十日に御答申をいただいております。その中で養護教諭につきましては専門的立場から、一つには児童、生徒の健康及び環境衛生の実態の把握を第一とし、また第二には、疾病や情緒障害、体力あるいは栄養に関する問題等、心身の健康に問題を持つ児童、生徒の個別の指導に養護教諭は当たる。また三番目には、健康な児童、生徒一般につきましても、健康の増進に関する指導に当たること。さらに、一般の教員の行う日常の教育活動にも、専門家としての立場から積極的に協力していく。この四つの役割りを明確にいたしまして、養護教諭の専門性を持った立場での職務の遂行を期していくということの御答申を受けておりますので、現在はこれをもとにいたしまして、養護教諭の方々の職務の遂行につきましての指導に当たっておるというのが実態でございます。
  116. 勝又武一

    勝又武一君 ちょっと私の質問と焦点が外れていると思うのです。細かいことにわたりますけれども、具体的にじゃあお聞きします。  この荷見私案という実務必携の中にこう書いてあるのです。「保健主事の職務内容としては、主なものとして次のようなものが考えられる。1 下記の事項についての具体的実施計画内容とする学校保健計画の立案に当り、及びその実施の管理に当る。」そして、(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(へ)(ト)(チ)(リ)(ヌ)とあるわけです。あと2345678とあり、そして今度は「養護教員」という欄があって、「養護教員の職務内容としては、主なるものとして次のようなものが考えられる。」これがいわゆる1から16まである。そのうちの1が、「学校保険計画の立案に協力する。」こう書いてあるわけです。  そこで、この16を読む限りは私もそう気にしなかった。ところがこの16の1を読んで、その前の欄の保健主事の職務内容という、ここをつなぎ合わせると、どうだろうかという疑問が出てくる。同時にこれを読む人によって、こういうように読む人と、私が指摘しているのは、これを読んだ教育委員会なり、校長さんなり、そういう学校保健主事なりが、いろいろの講習会の席上等で、この1と1をつなぎ合わせまして、あたかも上下関係だというような説明をするのは誤りではないか、そういうのにこの実務必携を金科玉条のようにお使いになるのは誤りではないか、単なる参考書として、これは使用するという程度にとどめるべきではないか、こういう意味で御質問をしたわけです。
  117. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 御指摘のような御疑問があるいはここから生ずるかと存じますが、そのような御指摘もございまして、先ほど申しました保健体育審議会で保健主事の職務と、養護教諭の職務内容の明確化をお諮り申し上げたわけでございまして、その結果いま御指摘の点と絡むわけでございますが、保健主事につきましては、保健体育審議会の答申では、「保健主事は、学校保健委員会の運営にあたるとともに、養護教諭の協力のもとに学校保健計画の策定の中心となり、また、その計画に基づく活動の推進にあたっては、一般教員はもとより」「すべての職員による活動が組織的かつ円滑に展開されるよう、その調整にあたる役割を持つものである。」というように、保健体育審議会の御答申でも、保健主事の役割りを明確化していただいたわけでございまして、保健主事は保健計画の立案に当たって、養護教諭の協力のもとに、立案していく中心的な役割りを果たすというような立場を明確にいたしまして、その間のいわゆる上下関係等での一方的な行為ではないということを、この面で明確化していただきましたので、これに基づきます指導を現在行っておるというところでございます。
  118. 勝又武一

    勝又武一君 ですから、くどくなりますけれども、ぜひこの実務必携というのは、単なる参考資料ですよという意味の、上下関係というものがこれから出てくる、これは根拠法規でも何でもないんですよと、そういう意味の指導をぜひやっていただきたいと、こういうことを申し上げているんですから、ぜひお願いをいたします。  それから、最後にこの問題でお聞きするんですが、最初の保健主事は教諭の中から充てるという教諭というのは養護教諭を含まない。確かに法律上の用語としてはそのとおりですね。ところが、職務内容なり、その他から考えた場合には、違う場合もあってもいいし、同じ場合もあってもいいんじゃないか。つまり教諭というところへ養護教諭というのを一つつけ加えてもいいんじゃないか、規則の方に。教諭の中からの保健主事と養護教諭という場合もあるでしょうし、養護教諭の中から保健主事になる方もある、そういう道も開けていい、そういうことを再検討なさるというお気持ちはございませんか。
  119. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 養護教諭につきましては、その保健管理に関する専門的な知識、技術をもちまして、児童、生徒の保健管理、あるいは保健指導あるいは緊急の場合の応急看護という役割りを持っておるものでございます。養護という立場からの専門的な職務を持っておるわけでございまして、学校保健全般の計画の立案、あるいはその推進の円滑化のための調整という役割りをこの専門的な立場である養護教諭の方が当たった場合に、全教員を動かし、あるいは学校医を動かし、あるいは学校歯科医、学校薬剤師の先生方の円滑な活動を図っていくということを進める立場にふさわしいかどうかという問題につきましては、なお十分な養護教諭の配置問題、あるいは養護教諭養成資質向上の問題、その他との関連において、検討されるべき課題であるというように感ずる次第でございまして、現在のところ、私どもは養護教諭の専門性の高揚という面から、養護教諭に対する講習、研修等に相当力を入れてまいりたいというように考えておるところでございまして、現在直ちに保健主事に養護教諭を充てることの道を開くということにつきましては、現在のところそこまでの結論を得ていない状態でございます。
  120. 勝又武一

    勝又武一君 それでは時間の関係養成の問題に移ります。  本法案と直接関係する個所はここでありますので、時間が短くなりましたがお願いをいたします。  五十三年度で国立養護教諭養成所がすべて養成課程に転換終了するわけでありますが、今後の需給関係、これは現在の養成制度のこの体制で十分だというようにお考えでございますか。
  121. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 五十二年の三月に大学なりあるいは養成機関を卒業したもので、養護教諭免許状取得した者の数は約五千人でございます。このうち養護教諭として就職をした者の数が千九百、過年度に卒業した者で五十二年度に採用された者等を含めますと、二千五百人が五十二年度当初に採用をされております。こうした状況から見ますと、現在量的な面では需要に対応できる体制にはあると考えるわけでございます。  なお、いま御指摘のように、これまで九つの国立大学に付設をしておりました国立養護教諭養成所は、養護教諭資質、能力を一層向上させようという見地から、逐次四年制の養護教諭養成課程に転換をしてきたわけでございまして、五十三年度ですべての転換を終わっているわけでございます。今後養護教諭養成課程を、これら以外にさらに設置をしていくことによって、養護教諭の質を高めていく、あるいは量的な要請にも対応していくという課題が残るわけでございますが、この点については、これからの需給状況なり、あるいはそれぞれの大学の事情等を勘案しながら、検討してまいりたいと考えております。
  122. 勝又武一

    勝又武一君 この養成期間、長さの問題ですね。養成期間は三年が四年という、この移行によりまして、御指摘のように資質向上が図られる。その他の問題については大変私もよいことだと思います。  そこで、この四年制の卒業生には一般教科の保健科目免許状、これが与えられることになるわけですか。この辺はどうでしょうか。なりますか。
  123. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 養護教諭養成所の場合には、中学校教諭の二級の普通免許状、これは保健の免許状でございますが、それが与えられるわけですが、大学になりますと中学校の保健の一級の普通免許状と、高等学校の保健の二級の免許状がもらえるということになります。
  124. 勝又武一

    勝又武一君 もちろん先ほどから議論のように、養護教諭資質向上をし、そういう一般教科、保健の免許状が与えられ、教諭として道が開けますね。非常に私もいいことだと思うんですが、この需給関係との悩ましさというものはどうなんでしょうか。端的に言いますと、養護教諭にならないで教諭になっていく、そうすると養護教諭の方が少なくなるんじゃないかという、こういうような御心配なり御指摘はないんでしょうか。あるいはそういうことについての改善策といいますか、そういうような点はどうなんでしょうか。
  125. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) もちろん保健の免許状取得できるわけでございますけれども、やはり養護教諭養成課程として設置をし、そこにおいて養護教諭資質、能力の向上という見地から、十分な教育というものが展開されるわけでございますから、この課程の卒業生は、養護教諭として学校の現場に入っていっていただくことを私たちは期待をしているわけでございます。実態としてどの程度保健の先生として就職されていくか、そこのところの状況はつまびらかにはいたしておりません。
  126. 勝又武一

    勝又武一君 実際の現場へいきますと、養護教諭というのは一人ですね。初中局長、それから体育局長等とも答弁されましたが、一人なんですね。いろいろの問題があるわけですね、現実には。ただ大学四年課程ですから、養護教諭というのがそういう意味では全く教諭と同等になってきておる。このことはぜひ指導する文部省側としても確立していただきたい。  そこで、たとえばさっきの保健主事の中の教諭という中に養護教諭を入れたらどうだという意味合いも、一つはそういうところにあるわけですけれども、仕事の内容が違う、守備範囲が違うということはよくわかる。ところがこっちは教諭で、こっちは養護教諭であるというような問題が、やはり大学卒業という、こういうことを契機に、養成期間の伸展を契機に、ぜひひとつこういう点を、優遇策と言うとやや語弊があまりすけれど、一般教諭と全く同等にしていく、こういう方向性についてはぜひ考えていただきたいと思いますが、この辺の見解はいかがでしょうか。
  127. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 現在も給与制度上からは、教諭であれば養護教諭であっても同じような俸給表の適用を受けるわけでございますので、特にその処遇上差をつけておるわけではございませんけれども、おっしゃるように、具体的職場の雰囲気としては、やはり養護教諭になりますと、一人で別な仕事をするというような関係から、あるいはその保健の教諭としての立場を望む人も出てくるのは、これはまあ人情かと思います。思いますけれども、先ほど大学局長が申されましたように、やはり本来養護教諭としての資格、能力を十分つけてもらうための養成でございますから、そういう方はやはり養護教諭として十分力を発揮していただくように、任用の際に当たっても十分考えなければいけないし、また仮に本人が保健の教諭を望んでも、それぞれ定数もあることでございますから、要は人事管理として最も適当な能力、意欲を持つ方を配慮するように、今後とも努力をしてまいると、こういうことだろうと思います。
  128. 勝又武一

    勝又武一君 養護教諭の中で、従来の資格を受けたプロセスには多種多様があると思いますね、教員の場合だって同じですね。今度は大学卒になっていく。ですから、中ではいろいろそういう違いがあるわけです。たとえば先ほど現職教員の再教育の問題について触れましたときにも申し上げたんですが、大学院入学だけでなくて、たとえば小・中学校、特に小学校に短大卒の臨免の方々がいらっしゃる、こういう方の現職教育ということこそ、私は力点を置いてもらいたい。そういう意味で先ほど御質問もし、御要望もしたわけです。同じように、養護教諭の場合にもあると思うんですね。大学出ていなければ大学院行けないわけですから、大学院の試験を受けたくたって受けられない多くの現職養護教諭の方がいらっしゃる。だから、大学院だけ目のかたきじゃありませんけれども、そういう短大なり、あるいはその他もろもろのいろいろな形で養護教諭資格を取られた、現在の養護教諭の方の現職教育についても、大学院入学だけでなくて、ぜひひとつ力点を置いてもらいたい。いろいろと研修研究の方途というものをお考えいただきたい。資質向上に役立つようにお願いをしたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  129. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 養護教諭研修現職教育の問題につきましては、従来各種の国、地方公共団体、それぞれの立場を通しまして、また養護教諭の方々の自主的な研究会を通しまして、研修活動がなされておるわけでございまして、今後特に児童、生徒の健康保持の増進の問題につきましては、最近いろんな形で、しばしばこの委員会でも御指摘を受けておりますが、いろんな新しい健康管理の問題が起こってきております。学校は常に成長過程にある子供たちをお預かりしている集団の場でございます。その中におきまして、学校医は常置されておらないところでございますので、その中における健康管理、あるいは健康指導、あるいは特に緊急の場合の緊急看護という問題は大変大事なことでございますので、私は今後養護教諭の方々の役割りというものはますます重かつ大になっていきますし、また、現在のいろんな意味で抱えております健康上の問題につきまして、養護教諭の方々が専門性を高めて、これに対処していただくということが必要になってきておるということでございまして、養護教諭の専門性の高揚という面に主眼を置いた研修計画を、今後とも鋭意立ててまいりたいというように考えておるところでございます。
  130. 勝又武一

    勝又武一君 最後に一つお伺いをいたします。  国立の養成機関四年制課程を設置したいと、「設置計画の有無」のうちの「有」というところの調査、これは五十二年三月二十七日現在の調査ですので、資料としては非常に古い——年前ですから古いのかもしれませんのでお教えをいただきたいのですが、この中によりますと、設置計画で「交渉中」というのが五つ、それから設置計画があるかないかというので、「有」というのが五つ、こうなっているんですが、このように他の大学養成課程を設置したいと考えている大学があった場合、文部省としては速やかにこれらについては認められようとするのか、姿勢はどうなんでしょうかね、その辺どうです。
  131. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) いまお示しの数字はちょっと私どもの方の調査では恐らくはないんだろうと思います。
  132. 勝又武一

    勝又武一君 文部省の調査ではございません。
  133. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 五十三年度の概算要求の際に、各大学の方から養護教諭養成課程を設置したいということで御要求のあったものが五つございます。そのうちの二つは養成所からの転換のものでございますから、それを除くと、三つの大学から養護教諭養成課程の設置の御要請があったということになります。なかなか養護教諭養成課程を置くということについては、大学の方の内部の意思がまとまりにくいというむずかしさがあることは十分承知をしておりますし、そういった事情のある中で、御要求が出てくるというのは、それぞれの大学にとっては、かなり事柄を重要に考えて御要求になっているわけでございます。そういった大学の御要請にこたえていく、それを通じて養護教諭養成のあり方、特に質的な向上という点について配意をして、養護教諭養成課程をさらに設置をしていくということは、基本的な方向としてはなお考えていかなければならないことだと思いますが、具体的に明年度の概算要求でどのように対応するかという点については、さらに各大学の御要望も伺わなければなりませんし、また、今後の教員養成全体の整備のウエートをどのように置いて逐次進めていくかということともかかわりますので、慎重に検討しなければなりませんけれども、やはり基本的な方向としては、なお養護教諭養成課程については、既設の養成所の転換にとどまらないで、さらに整備を進める必要があると考えております。
  134. 松前達郎

    ○松前達郎君 放送教育開発センターについて若干の質問をさせていただきたいと思います。  電波を媒体に使う、これは非常に最近その面での技術開発が進んでおる関係もありますし、また、同時に、教育工学の面でもあちこちでいろいろと検討をされつつあるのが現状だと私は思うのですけれども、さらに最近は特に視聴覚教育ですね、こういった面でも多少進歩が見られるんじゃなかろうか、あるいはまた同時に、コンピューターを使って、コンピューターと対話というのもちょっとおかしいんですが、とにかくコンピューターによる教育、こういう面も開発されつつある。そういう面から見ますと、教育効果をねらった場合、非常に大きな影響力を持っているんだと私は思うのですが、そういう意味からして、放送教育に使うということ、これは当然考えられてくるべきことであろうと思うわけでありますけども、まず最初に、放送教育センター設置に関して、この目的ですね、最終的な目的、主な目的は私は放送大学設置というのがその目的にあるんじゃないかと、かように理解をいたしておるんですが、その点いかがでしょうか。
  135. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 放送教育開発センターは国立大学におきます教育の発展に資しますために、国立大学共同利用の機関として設置をしようとするものでございます。放送を利用して行います教育内容、方法などの研究及び開発を行いますのとともに、国・公・私立大学教員その他の者で、この機関の目的でございます研究及び開発と同一の研究及び開発に従事をしておられる方に利用をしていただくことも目的一つでございます。  また、放送教育開発センターは国・公・私立大学から要請されました場合には、その要請に応じて当該大学教育に協力することも、また一つ目的としております。  なお、従来文部省におきまして取り進めてまいりました放送大学の創設準備の事業も、この放送教育開発センターが承継することとしておりますから、そして、同センター放送大学の創設準備を引き続いて、このセンターの活動を通じて準備を進めていこうとするものでございます。
  136. 松前達郎

    ○松前達郎君 放送大学設置もその目的の中の一つにある。その放送大学なんですが、これは私が新聞から得た情報なんですけれども、経過として、昭和四十九年度にこの案がある程度まとまってきた、そして、実際には基本構想昭和四十九年に報告されて、五十年に施設の着工をする、さらに五十一年に開校をして、五十二年から学生を受け入れるんだと、こういうふうに書いてあるものがあったわけなんですが、このスケジュールについていかがですか。実際そういうふうなつもりで最初はスタートされたのかどうか、その点ちょっとお伺いします。
  137. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送大学構想検討されたのは、当初は四十四年の十月の閣議におきまして、文部、郵政両大臣から放送大学放送について検討を始めると、そういう御報告を申し上げた、そのとき以来のことでございます。したがって、当初は、いま御指摘のスケジュールよりももっと早く、放送大学のスタートを切ることは考えられたわけでございますが、なかなか事柄の性質上実現を見るに至らなかった。それは放送大学でどのような教育実施をするのか、あるいはどのような方法で教育実施をするのかという、放送大学教育内容、方法ということ自体が、初めて取り組むプロジェクトでございますから、非常に検討に当たって慎重を要するということがございました。そのための調査研究を鋭意進めてまいりまして、御指摘のように、四十九年の基本構想、あるいは五十年の十二月に調査研究会議が明らかにいたしました放送大学基本計画に関する報告等によって、どのような形で放送大学が活動をしていくかという、その骨組みの構想は明らかになりましたし、また、その間にNHK等にお願いをして、放送大学放送番組につきましても、いわゆる実験番組を作成をして調査研究を進めてきたわけでございます。  そういう形で調査が進んできておりますけれども、なお、内容について検討すべき点がカリキュラムその他の面について残っておりますし、さらに放送大学設置する場合の放送の主体というものをどのように構想するかという点についても、むずかしい課題がございまして、五十三年度の概算要求では、放送大学の創設というのは見送らざるを得なかったという経緯でございます。
  138. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、先ほど申し上げた五十年度に施設着工というのは、これはそういうことではなかったということでございますか、五十一年開校、五十二年学生受け入れ、そういう段取りだということを拝見したのですけれども。
  139. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 率直に申しまして、そういう構想を立てた時期がございますから、そのこと自体が誤りではございません。放送大学の開学の目途とする年次というのは、端的に申し上げれば、いま御指摘のころから逐次一年ずつ後ろへ送られて、計画がいわば再検討されてきているという状況にあるわけでございます。
  140. 松前達郎

    ○松前達郎君 その構想がスケジュールどおりにいかないで、だんだんと延び延びになってきているという、こういうことだと思うんですが、スケジュールどおりに運ぼうと思ってもなかなかできないものかと思いますが、運ばなかった一番大きな原因ですね、私は、恐らく電波の問題と大きな関連があるんじゃないかというふうにも思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  141. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほどお答えを申し上げましたように、やはり放送大学が初めての試みであるだけに、放送大学でどういう授業科目をもって、どのように教育実施をするのか、放送大学としての教育研究の機能というものを具体的にどのように展開をするのかということについての調査研究をさらに十分に詰める必要があるという点は確かにございます。その点は現在においても放送教育開発センターで、放送を利用した大学教育内容、方法についての検討を進めていただくという意味において、やはり重要な検討課題になっているわけでございますが、そのことが重要な問題として、その調査研究に時日を要したということが一つございます。  それともう一つは、御指摘放送の主体をどのように考えるかということでございます。放送大学構想は、御案内のように、大学設置する主体と放送事業を実施をする主体とを、同じものとして構想をしたい。一つ設置主体が同時に大学設置者であり、かつ放送事業者であるという形をとることによって、大学教育というものと、放送というものとの円滑な連携なり、調整なりを実現をしていこうということを考えているわけでございます。したがって、その放送実施する主体というものをどのように考えるかということが、課題として出てくるわけでございますが、従来の構想は、四十九年の基本構想におきましても、また五十年の基本計画におきましても、設置主体としては特殊法人を考える。特殊法人が大学設置主体となり、かつ放送事業の実施主体になるという考え方をとったわけでございますけれども、特殊法人というものを新たに設置をするということが、国の方針からして問題があるということもございまして、先ほど申しました大学のあり方と並んで、現在のむずかしい課題になっているということでございます。
  142. 松前達郎

    ○松前達郎君 スケジュールどおりなかなかうまく事が運ばなかったということについては、理解をいたしたわけなんですが、放送ですから、多少放送大学の問題についてはこれからの問題だというふうにも思いますけれども、ちょっと先走った質問になるかもしれませんが、放送と名のつく以上電波を使うんだと。その電波の使い方の問題がいろいろあって、それが大きなネックにもなって、いろんな法律の規制等もありますから、そういう面でのネックもあるというふうに私も理解をいたしておるんですが、現在あるいは今後、どういう種類の電波を使ってこの教育放送を行う、この放送大学放送を行おうとしておられるのか、この点について伺いたい。
  143. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送大学で利用する電波につきましては、先ほど申し上げましたように、四十四年、文部、郵政両省で放送大学構想検討に入るということを閣議に御報告を申し上げたわけでございますが、その後の検討の過程におきまして、郵政省において、放送大学のための全国的なネットワークが可能となるように、テレビジョンとラジオのそれぞれ一系列の周波数を確保する。テレビジョンについてはUHF、ラジオについてはFMの周波数の各一系列を確保するということで、郵政省の方で御対応をいただいているわけでございます。
  144. 松前達郎

    ○松前達郎君 またこれも放送大学ができる段階でも結構なんですが、とにかく放送大学設置一つの目標となっておるわけですから、質問をさしていただきたいんですが、その放送大学の形態ですね、これは新しい試みだと思いますので、一般のいままでの大学の形態とは多少内容が違ってくるんじゃないか。ちょっと悪い言い方かもしれませんが、なんとなく中心がぼけているような、そんなような感じがしないでもないわけなんです。一般の大学と比べて違うところがどういう点にあるのか、その点ちょっと見解をお伺いしたいと思います。
  145. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送大学ももちろん正規の大学として構想されるわけでございますし、いわば独立の通信制の教養学部を持った大学ということで、基本計画考えているわけでございます。学生の側から見れば、これは一般の大学と同じように正規の大学であり、そこにおいて研さんを積むことによって、教養学士として世の中に出ていくということになるわけではございますけれども、しかし一面からすれば、この大学考えている学生というのは、いわゆる十八歳の高等学校の新卒者だけではなくて、むしろ広く社会人に対して高等教育の門を開いていく。従来必ずしも高等教育の恩恵に浴することのできなかった人人、あるいは生涯教育的な観点でもう一度勉強をしたいという人たちに対して、広く高等教育機会を提供するという意味合いを持ちますし、したがって、教育内容におきましても、教養学部ということで幅の広い教養というものを身につけるという観点から、授業科目の開設も考えられているわけでございます。  さらに、教育のあり方といたしましても、放送その他の情報媒体を最大限に活用するということを考えますので、ジャンルとしては従来の通信制大学と類似のものになりますけれども、やはり従来の通信制大学の場合よりも、放送を利用するという点において、特色を持つということになるわけでございます。  私たちはこういった大学というものをつくるということが、単に高等教育機会というのを生涯教育的な見地で多くの人に提供するということだけではなくて、この大学をつくり、そしてそれを運営をしていくということのためには、どうしても国・公・私立の既設の大学の御協力を得る。そしてそこの教官がいわば放送大学に集まって、衆知を集めて番組をつくっていく。そういうことを通じて、これまで閉鎖的であった大学の壁というものが破られて、国・公・私立大学の連携協力というものを進めていく非常に有力な場になるであろうし、あるいはそのことが、この放送大学の番組というものを既設の大学が利用する、そういうことによって、各大学間における、教育内容の面においても、進歩と申しますか、向上考えられるし、単位の互換というようなことについても、それを進めることができるであろう。そういう意味で、今後における高等教育ということを考える場合に、非常に大事な方向である高等教育のあり方はもっと柔軟な流動的なものにしていくという、そういう課題にこたえるためにも、放送大学は非常に有意義なものであろうと思います。  いろいろ申し上げましたけれども、確かに従来の大学とはそういった意味において異なった点を多々持ちますけれども、大学の基本的なあり方としては、どこまでも正規の大学として構想していこうということでございます。
  146. 松前達郎

    ○松前達郎君 構想についていまお伺いいたしましたけれども、おっしゃるとおり、社会教育的な意味も含めて、構想としては非常に意義が深いものだろうと私は思うのです。ただ、この内容をいろいろ拝見いたしますと、ちょっとデスクプラン的な面もなきにしもあらずなんで、これからそういうことについては十分検討されていくんじゃないかと思うのですが、この放送大学について、いろいろ調査されていることがあると思うのですが、入学希望者ですね、一体どのぐらいかという推定をされていると思うのです。それと同時に、入学定員は一体どのぐらいになって、それに対して入学希望者が一体どのぐらいと推定されるのか、その点ちょっとお伺いいたしておきます。
  147. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 昭和五十年の六月に、先ほど申し上げました放送大学基本計画に関する報告を取りまとめるに際しまして、全国から十八歳以上の者約五千人を抽出をして、放送大学に対する教育需要の予測調査というものを実施をしたことがございます。この際、全回答者の約四五・五%の者が、放送大学を利用して勉強をしたいという回答を寄せ、さらにその中で放送大学入学して単位なり、あるいは大学卒の資格を得たいと考えている者が三分の一の一四・三%、さらに放送番組を連続して聞き、あるいはテキスト等によって自宅で学習をし、面接授業のために学習センター出席をするというような、そういう勉学上の所定の負担というものを考えても、なおそれをあえて行って放送大学で勉強をしたいという者が、全回答者の七・二%でございました。  こういった状況から、基本計画では、放送大学に常時登録をされている学生の数というものを、全国規模で最大限四十五万三千、そういうようなことを考えたわけでございます。これはもちろん全国のネットワークが完成した最大限の規模に達したときの状況でございます。  現在、放送大学については、初めから全国的にネットワークを張るということではなくて、まず一期の計画を立てて、その一期の計画においては、いわば東京タワーから電話が到達する範囲と、もう一つ関東ブロックの中に送信所を建てて、そこから電波を送る、その範囲を対象として実施をしようと考えているわけでございますが、そういったもとで開設時に入学定員として予定をしたのが一万人でございます。内訳としては、いわば全科を履習をして卒業することを予定する者が四千、それ以外に特定の科目なり、あるいは科目群を選択して履習をしようとする者の数が六千、そういう考え方をとったわけでございます。
  148. 松前達郎

    ○松前達郎君 いまの御説明は、五十年十二月十七日の放送大学基本計画に関する報告、これに基づいた御説明だったと思うのですが、それ以後は調査その他は行われていないでしょうか。
  149. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) その基本計画を取りまとめるに際して、いま申し上げました教育需要の予測調査というのを実施をいたしておりますが、それ以降は実施をいたしておりません。
  150. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、先ほどからいろいろと大学趣旨、あるいは内容等について御説明いただいたわけなんですけれども、実施するからには、必ず電波の問題がつきまとってくるわけなんで、この問題の何らかの解決を見出しませんと、大学そのものができても電波が出せない、したがって、目的が達成できない、こういうことになるのじゃないかと思うのですが、そういう点に関して郵政省の方にちょっとお伺いをいたしたいことがあるわけなんですが、電波教育に使用するということですね、これに関していままで多少行われておる面もありますけれども、今後の問題として郵政省としてどういうふうなお考えを持っておられるか、その点について御説明いただきたいと思います。
  151. 永野明

    説明員(永野明君) 放送のメディア、まあ電波を必ず使うといってよろしいわけですが、これを教育に使うということにつきましては、私どもは非常に望ましいことだというふうに考えております。したがいまして、その一つといたしまして、高等教育機会を、家庭婦人あるいは社会人、勤労青年等の方々に広めていくという放送大学構想につきましては、かねてから電波の活用という見地から賛意を表してまいっておるわけでございます。  先ほども文部省の方からお答えがございましたように、テレビジョン放送用の周波数といたしまして、UHFの電波を全国に一系統張りめぐらすための周波数を保留しております。それからFM放送につきましても、全国一系統張りめぐらすように保留をいたしてまいっております。まあさようなことで、この保留しております電波を、放送大学の実現の際には十分活用していただくということで、文部省とも緊密な連絡をとりながら今日までまいっておると、こういうことでございます。
  152. 松前達郎

    ○松前達郎君 テレビのUHFが一系統、それからFMが一系列と、こういうことだそうでございますが、最近どうも情報化時代で、波の取り合いが起こっているわけですね。たとえばFMの放送局あたりですと、新聞報道機関を中心として、あちこちで申請が行われている。この申請の圧力といいますか、申請攻勢に教育用の電波一系列をとっておくというのが、これすぐ放送大学設置されるということではないと思いますんで、将来の問題になるんですが、それの、悪い言葉ですが、防戦ができますかどうか、その点自信のほどをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  153. 永野明

    説明員(永野明君) 最近新聞紙上で報道されておりますように、FM放送を開設したいという申請希望が非常にふえておるということは確かでございます。現在、全国で約六十の申請が出ておるわけでございますが、これはただいま申し上げました放送大学用に保留しておる周波数以外の、まあ一般放送事業用の周波数を念頭に置きまして申請をしてまいっておるものとわれわれは考えております。現在、民間放送のFM事業は、東京、名古屋、大阪、福岡、この四地区で行われておるだけでございますので、これを全国的に拡充していただきたいと、そういった考えでの申請でございまして、放送大学用に保留しているものとは別個のものということで十分配慮をいたしておるつもりでございます。
  154. 松前達郎

    ○松前達郎君 いまFM放送があちこちで行われているのは全国、民間放送で四カ所ということです。このFM放送が将来各地で行われるようになってくる場合、このFM放送の波はF三という系統の波だと思うんですけれども、その波のサブチャンネルを教育に使うとか、いろいろ考えれば、まだまだ用途が広がってくるんじゃないかと思うんですが、その点についてはいかがでしょう。
  155. 永野明

    説明員(永野明君) ただいまお言葉が出ましたFM放送の中の副チャンネルを使う放送といたしまして、多重放送ということが技術的には考えられるわけでございます。これはFM放送だけではございませんで、テレビジョンにつきましても、一つの周波数の中に副チャンネルを使いましてやはり多重放送ができるということが技術的に明らかになっております。そういった意味で、この副チャンネルをどのように使ってまいるかということは、これからの問題でございますが、一昨年郵政省に設置しておりました多量放送に関する調査研究会議というのがございまして、これから郵政大臣報告書提出されておりますが、その中でこの多量放送の今後の使い方につきましては、やはり教育等につきまして、これを活用していくという方向をいろいろ考えめぐらすようにというような趣旨のことも書かれてあるわけでございます。私ども今後この過程につきまして、行政実務上どのようにやっていくのかということをいま検討しておりますが、確かにおっしゃいますように、この面でも教育に有効と考えられる使い道が今後開けてまいるというふうに考えております。
  156. 松前達郎

    ○松前達郎君 まあ放送大学が国立の大学であるということになりますと、国が放送をするということになると思いますけれども、これ私確認しておきたいんですが、国が放送するということになると、法的にできないんだということをよく言われておるわけなんですね。その辺一体どうなんだろうかと思うんですが、たとえば放送法ですとか、電波法とかありますけれども、その中で、もしか国がやることができないんだとなれば、どれに該当してできないのか、その点ちょっとお教えいただきたいと思います。
  157. 永野明

    説明員(永野明君) 先ほど放送大学設置の主体につきまして、むずかしい問題があるということがございましたけれども、私ども放送大学の基本構想、あるいは基本計画に表明されております設置形態をとる場合におきましては、若干の放映法の中で検討を要する規定はあろうかと存じますが、大筋におきまして放送考え方に即しておるものでございますので、特別問題があるというふうには考えていないわけでございます。  ところが、これを国ということで放送を行うという場合を想定いたしますと、放送法のどの条項がということよりも以前に、放送という巨大なマスメディアを国が直接運営するということをどのように考えるかという、そういう基本論の問題になってまいるというふうに思うわけでございます。  現在のわが国の放送体制は、昭和二十五年の電波法、放送法の制定によりまして出発しておるわけでございますが、その際に、放送を行います主体といたしまして、NHKという特殊法人でございますが、公共放送を行うものと、それから一般放送、まあ民間放送と称しておりますが、そういうふうな二つのものでわが国の放送体制を行っていくということが定められておるわけでございます。そういう際に、国が行うという考え方をとらなかったということが、いわば出発点の考え方と私どもは考えておるわけでございますが、そのような意味で、放送法のどの条項がどうというよりも前に、国が放送を行うということを予想していない法律ではないのか。したがって、国が行う場合を考えますと、改めてそういった原点に戻った立場での検討を必要としてこようと、こういうふうに実は考えておるわけでございます。その辺につきまして、世界の自由主義国と申しましょうか、言論の自由が守られておるような国等を見ましても、国営放送という例はほとんどないわけでございまして、いろいろな観点から国営放送についての問題を指摘し、これに対する拒否感と申しましょうか、そういった考え方もまた非常に強いわけでございまして、その辺なかなか問題が多いというふうに考えているわけであります。
  158. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、先ほどちょっと御質問申し上げた法律との関係は、私はこの放送法の第一条の第二項ですか、これが多少ひっかかってくるのじゃないかと思っていたんですが、どうもいまのお話ですと、もっと基本的な問題だと、こういうことであると思うんです。そうしますと、一般放送事業者、これだったら行えるのか、あるいはNHKであれば行えるのか、その二種類が放送の認可をとるときの区分になっているわけですね。そうすると、NHKがやるか、もしくは一般放送事業者がやれば、この放送大学というのは可能なのかどうか、その点ひとつ。
  159. 永野明

    説明員(永野明君) 放送局の免許を受ける主体といたしまして、NHK、あるいは一般放送事業者ということで、これを受けますことは可能なわけでございますが、ただ、放送大学が、これを行うのは可能かどうかということで、特にNHKにつきましては、実は昭和四十四年の放送大学問題の検討が始まりました時点以降、かなり論議はされたわけでございます。その意味で、NHKが行うのは可能かということよりも、むしろNHKが放送大学を行いますと、NHK立大学になると申しましょうか、放送局を運用するものと、それから番組を作成するものと、これがいわば一体となって、放送局を運用するものが即放送事業者だということに放送法ではなっておりますので、NHKが放送大学の実際の運営を行いますと、どうもNHK自体が大学を運営するということになってしまうというようなことが、非常に当時論議として問題になった経緯がございます。それに加えて、放送大学を行いますのには、やはり現在のNHK等の放送設備以外に、さらにもう一系統、放送の設備等をつくらなければならない、かような点もございまして、やはり放送をみずから行い、大学としての運営も行う、そういうふうな別の主体をつくりまして、放送大学を一体的に行っていくようなのが望ましい、かような結論となって、今日までまいっておるというように考えております。
  160. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、放送大学が国立の大学であって、その放送大学がNHKに委託をして、その波を使って番組を出していくと、そういうことなら可能だということになりましょうか。
  161. 永野明

    説明員(永野明君) NHKの行います業務につきましては、放送法の九条にすべて列挙をされてございまして、そのような意味で、放送大学の想定されますような放送内容、あるいは放送時間といったようなものを、NHKが委託を受けて行うということ自体は、現在の規定でできるというふうにはちょっと申し上げかねるというふうに思います。
  162. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、どうも放送大学教育番組といいますか、教育内容検討して、せっかく新たな熱意に燃えてやろうとしても、八方ふさがりで、なかなか波には乗り切れないんだということになるんじゃないかと思うんですが、せっかくさっきおっしゃいましたように、テレビのUHF、あるいはFMの波を一系列教育のためにあけておくんだとおっしゃるわけなんですね。何かそこに、そういうことはあるけれども、しかし現実にはなかなかそれが使えないんだというふうなことになりはしないかと思うんですが、あるいは何か使う方法ですね、そういう方法があるのかどうか、その点ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  163. 永野明

    説明員(永野明君) 私どもはテレビ、FMの周波数を保留してまいっております。これが有効にお使いいただく、教育に活用されるということは非常に結構なことでございますので、いろいろと放送大学につきましては、むずかしい問題が確かにございますが、昭和四十九年の放送大学の基本構想、あるいはそれをさらに裏づける基本計画等で、骨組みが示されておるわけでございますので、なお文部省とも十分御協力いたしまして、実現方に努力を尽くしてまいりたいと、かように思う次第でございます。
  164. 松前達郎

    ○松前達郎君 その問題は今後ひとつ文部省と郵政省で十分御協議をいただいて、これが解決しませんと、放送教育開発センターも何も意味がないということになりかねないわけなんで、その点十分御協議いただいて、何とか解決のできるような方向に御努力いただきたいと思うのですが、それが実現した場合、先ほどいろいろと放送大学計画等についてお伺いしたわけですが、全国に数多くの送信所をつくらなければいけない、こういうふうな点もあるんだと思うのです。これ私、ちょっと拝見したところでは、二百カ所ぐらいという計画もおありのようでございますけれども、こういった数多くの送信所をつくらなければならないのかどうか、その点について、これ問題がないのかどうか、その点ひとつお答えをいただきたいと思うのです。これは、ただつくると言って、二百カ所置いて、ぽんとできるものかどうかですね、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  165. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) UHFとFMの波を当初の計画のとおり予定をいたしまして、それに基づいて全国にネットワークを張っていくということになりますと、もちろんどの程度のカバレージを前提とするかということによって、送信所の建て方は異なるにいたしましても、御指摘のように多数の送信所の施設を準備をしていかなければならないということになるわけでございます。基本計画におきましてもそうでございますけれども、現在の文部省の計画としては、先ほど申し上げましたように、まず第一期は関東地区というものを対象地域として、そこにおいて第一期の計画を実現をする、そうしてその実施の状況を確かめながら、逐次全国に広げていくということを計画としては考えているわけでございます。ただ私どもは、非常に郵政省の方でお進めになっております放送衛星のプロジェクトが、どのようにこの放送大学構想とかかわってくるかということについて、注目をしているわけでございます。放送衛星がいわゆる実用衛星として、実際に考えられる時期は、郵政省の御発表によると、五十八年度以降の事柄になるわけでございますから、いずれにいたしましても、私たちは第一期の計画は、当初の予定どおり、できるだけ早く放送タワーから電波の届く範囲というものでスタートをしたい、それによって放送大学の有効性というものを十分に確かめて、国民の理解をさらに得たいと考えているわけでございますけれども、それに続くそれ以降の計画については、場合によっては、放送衛星とのかかわり合い、放送衛星による既定の計画の再検討ということを、郵政省と十分に御相談をして考えていかなければならない事態になり得ると考えているわけでございます。
  166. 松前達郎

    ○松前達郎君 先ほどちょっと私御質問申し上げた中で、多重放送の問題、FMサブチャンネルですね、こういう問題だとか、そういう問題と関連していまちょっとお伺いしたわけなんですが、新たにそれだけ設けなくとも、何かうまい手があるんじゃなかろうかというのも含めてお伺いしたわけなんです。いまお話出ました放送衛星といいますか、いまちょうど実験用の中型放送衛星「ゆり」というのが上がっておるわけなんです。こういった放送衛星が将来実用衛星として打ち上げられた場合に、それを使って全国至るところに電波が飛ぶような、そういうことも考えられるわけなんですけれども、いまの「ゆり」の場合ですと、ちょうど六十万世帯二チャンネル分を中継することができるような能力があるんだということをお伺いいたしておりますけれども、この二チャンネルというのは、これは一チャンネルはたとえばNHKあたりが使うにしても、残りの一チャンネルというのは、何かほかに、いまさっきお話がありました教育用に使うとか、そういうふうな何かお考えがあるのかどうか、その点についてひとつお伺いしたいと思います。
  167. 永野明

    説明員(永野明君) この四月に実験用の放送衛星が打ち上げられまして、ただいま東経百十度の赤道上空、三万六千キロの上空に静止をしておるわけでございます。しばらく初期のチェック等をいたしまして、その後三年間実験を行うという予定でございます。ただいまおっしゃいましたように、この衛星の機能といたしまして、カラーテレビ二チャンネルを送信することができるということになっておるわけでございますが、これ自身はいろいろな実験項目を予定しております実験用の衛星でございますので、特にこれを具体的にNHKが使うとか、そういうふうなことは別にございません。私どもとしましては、この実験を通じまして放送衛星の次の実用のいろいろな問題を解明しつつ、将来どういうふうな実用放送衛星の目的考えていくかという検討の材料にすると、こういう考え方に立っておるわけでございます。したがいまして、将来実用衛星につきましても、具体的に何に使うということは明確ではない段階でございますが、ただ、この放送衛星の機能を考えますと、非常に高い位置から日本全国を一波でカバーするという、こういう機能ははっきりございます。その意味で、そういったものにふさわしい放送番組の使い方を考えるのが常識的ではないかということから、全国に散在的に残っておりますいわゆるテレビの難視聴地域に電波をあまねく届かせるというような趣旨によく合っているのではないかということが一つ。それから全国同一放送番組で行うような趣旨のものであれば、これまたふさわしいのではないかということから、放送大学計画によりますと、全国同一番組であり、なおかつこれの学生として参加するような方をいろいろ考えますと、僻遠の地等で、なかなか大学に行きにくい方々にその恩恵を与えると申しましょうか、そのような趣旨も非常に重要かと存じます。さような意味で、この放送衛星が非常にそういった意味で効果的ではないかという点も十分うなずけるわけでございます。私どもそういうふうな点から将来の実用衛星の利用目的というふうなことを現在いろいろ検討中でございまして、文部省御当局とも今後そういった観点からできるだけお話し合いもしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  168. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういうふうになりますと、結局はNHKと放送大学だということにどうもなりそうな感じを持つわけなんですが、これは今後の問題ですから、またその際に御検討いただければと思います。  そこで、また放送大学の方に戻りますれけども、先ほど午前中の質問の中でいろいろと指摘された面で特にスクーリングの問題が出ておったわけなんで、このスクーリングというのは非常に大変な問題だと私は思うのです。それに関してこの放送大学が、比較的簡単にスクーリングが行えるような、たとえば実習とか、そのスクーリングやる場所ですね、そういう場所がそう多くなくても済むのだということが書かれておるわけなんですれけども、私はこれは大変なことじゃないかと思うのですが、その点について十分検討されたのかどうか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  169. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在の通信制学部の場合もそうでございますけれども、放送大学の場合においてもスクーリングをどのように効果的に実施をするかというのは、非常に重要な課題であると考えております。イギリスのオープンユニバーシティーの場合におきましても、全国各地に学習センターを設けて、そこにおいてスクーリングを行い、あるいは夏季に合宿によるスクーリングを行うというような、いろいろな工夫がなされているわけでございます。放送大学の場合には、聴講科目演習科目実習科目科目が分類されるわけでございますが、聴講科目の場合にはスクーリングを必要としないで、印刷教材基礎として放送による講義を聞き、そして自習書による学習成果通信指導によって確認評価をするということになりますが、演習科目実習科目については、もちろん十分なスクーリングが必要になるわけでございます。このために各都道府県に学習センターを設けて、それぞれの地域における既設の大学短大の物心両面における御協力を賜りながら、スクーリングの体制を整えようとするわけでございます。このことは、単に放送大学についてだけ特例的に何かスクーリングの態様を考えるということではなくて、既設の通信教育学部の場合にもスクーリングのあり方を含めて検討しなければならないことでございますし、そういう趣旨において、現在大学設置審議会基準分科会におきまして、通信教育基準というものを、放送大学を含めて御検討賜っているわけでございます。その御検討を通じて、スクーリングについての卒業の上で必要となる単位数その他、そのあり方についての基準が適切にお示しいただけるものと考えておりますので、それに従って放送大学の場合においても、遺漏のないようにスクーリングの体制を整えたいと考えております。
  170. 松前達郎

    ○松前達郎君 先ほど国立大学のための放送教育開発センター、これに関していろいろとこの内容を拝見していきますと、これ国立大学のためというのは必ずうたわれておるわけなんですね。先ほどからの御説明ですけれども、これは国・公・私立ということをおっしゃっておられたと思うのですが、スクーリングあたりをやることになれば、これは結局は各大学の協力がないととてもこれはできないのじゃないか、そういうふうに私考えるわけなんです。ですから、そういう面からいきますと、やはり日本大学すべてが関与する問題である。NHKでもいまちょうど放送による教育をやっておるわけですが、これについてスクーリングの実情を見てみますと、やはり非常に大きな問題がなかなかあるようで、そういう点でこのスクーリングというのは非常に重大で、しかも大きな問題となってくると私は考えておるわけなんです。それに対してスクーリングはなるべく簡単にして、放送そのものだけで、なるべくそれを中心としていったらいいだろうという御意見もありますけれども、しかし、放送だけで教育を行いますと、往々にして一方通行になりがちであるという面も含めて考えますと、やはりスクーリングが重大な問題だというふうに私は思っておるわけであります。そういう面でこの点も十分今後御検討をいただかなければならないんじゃないか、かように思っております。  それから、先ほどの資料ですが、「放送大学基本計画に関する報告」ですね、これをちょっと拝見いたしておりますと、えらく正規の大学というのを強調されておるわけですね。四ページあたりにも、「この大学は、学校教育法による正規の大学であり、」これが出てまいりますし、その後にも何カ所か正規の大学、正規の大学と、こういうことをうたっておられるので、その点強調されることもわかりますけれども、正規の大学となると、これはまたいろんな問題が派生してくるんじゃないか。たとえば大学設置基準との関連ですとか、これもまた大きな問題になってくる。ちょっと、いままでない形態ですから、恐らく設置基準にぴしゃりと合うような内容じゃないんじゃないか、そういう面が出てくるんじゃないか、こういうふうに思うんですね。その点がまた大変大きな問題になりそうなので、そういう点で、たとえば大学設置基準の中に、この放送大学を実現するに当たって新たな基準を設けられる、あるいはその中の一部を直される、そういう御意思がありますかどうか。それをやらないと、どうもうまく合致しないんじゃないかと私は思うんですが、その点いかがでしょう。
  171. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおり、放送大学に限らずに、現在の通信制学部の場合でございましても、大学設置基準をそのまま適用をしがたい面があるわけでございます。現在、通信制学部の認可に当たりましては、省令をもって定めた設置基準ではございませんけれども、大学基準協会が定めた通信教育基準がございます。これに従って大学設置審議会は認可を事実上行っているわけでございます。通信制学部というのは、御案内のように経済学部があって、その経済学部が通信による教育を行うという形で機能をするわけでございますが、放送大学の場合には、いわば独立の通信制大学になるわけでございます。これについて直接これを規制をする基準というのは、現在ないわけでございますので、先ほど申し上げましたように、設置審議会の基準分科会を煩わしまして、放送大学と現在の大学通信教育を両方含んだ通信教育基準というものを新たにつくるということで、現在検討を進めていただいているわけでございます。
  172. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういうことであれば大体理解できるんですが、どうもこの文部関係の法令の要覧を見ましても、高等学校通信教育規程というのはあるんですね。大学通信教育に関しては別にこれを定める、命令で定める、そういうことになっていて、これはあるんですか。
  173. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) お答え申し上げましたように、現在省令をもって決めている基準はないわけでございます。現在その基準の制定のために基準分科会の御検討を煩わしておりますが、基準分科会の方の御検討もかなり進んできておりますので、できるだけ早い機会に答申を得て基準を設定をしたいと考えております。
  174. 松前達郎

    ○松前達郎君 それで、さっきから一生懸命探していたんですが、どうも、見当たらないのがわかりましたけれども、これもないとちょっとおかしなことになりますから、高等学校まであって、大学は現にやられているわけなんで、それについてもひとつ努力をしていただきたいと思うんです。  それから、もう一つ問題があるので、ちょっとこれについてお考えをお聞かせいただきたいと思うんですが、私立大学通信教育協会ですね、この四十九年の調査を見ますと、現在まで行われてきた大学通信教育の中で、スクーリング出席というのが、大学で四〇%、短大の場合は八〇%程度しか出席がないんだ、特に大学で低いわけですね。そうなってきますと、これは高等学校でもそうでしょうし、あるいは電波を使っての通信教育の現状でもそうなんですけれども、相当強い意志を持ちませんと、放送大学教育を受けるそれが完成されない、こういうことになるんじゃないかと私は思うんで、その点が私非常にこの効果が上がるかどうかのキーポイントになるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけなんですが、そういう意味からいくと、やはりスクーリングで確認していくということですね、これがやはり本人の意思をはっきりさせることと同時に、しりひっぱたいて何とか持ちこたえさせる、最後まで続けさせるというために、大きな意義があるんじゃないかと、私はこういうふうに考えておるんです。実際にFM放送を使った高等学校通信教育をやってみますと、なかなかこれが大変な問題である、これがわかってきたわけなんですが、その点も含めて、今後スクーリングの問題、これはただ単に教員と会うというだけじゃなくて、あるいは教育効果の確認をするとか、あるいは一方通行でないためにやるんだとかいうことだけではなくて、もっと精神的な意味で彼らを激励する一つ機会にもなるんじゃないか、こういうふうに私は思っておるんですが、その点いかがでしょうか。
  175. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおりだと思います。先ほど御指摘のありました放送大学に対する需要の予測調査をいたします際にも、そういった趣旨でアンケートの中に、放送大学単位を取るためには、これこれの自宅における学習が必要であり、また、これだけセンターにおいてスクーリングを受けなければならない、その負担に耐えられるかどうかということを明らかにした上で、アンケートに答えていただくという措置をとったわけでございます。その過程で見ましても、単に放送大学の番組を視聴をして勉強をしたいという者の数は、スクーリングまできちっと受けてやるというところに至るまでの間に、ずいぶん希望者のパーセントというのは少なくなっていきます。そのことは、そういう意味放送大学について関心をお持ちの方の間にも、スクーリングというものが非常に大変だということは、十分認識をされておるということを示しているんだと思います。  これまでの通信制大学の場合には、主な形態としては夏休みの期間等を利用して、集中的にある期間、中央の大学のキャンパスにお集まりをいただいてスクーリングを行うというような形態が多くて、それがなかなか期間関係等で、負担が重いというようなこともありました。現在、通信制学部は、単にそういった中央のスクーリングだけではなくて、地方におけるスクーリングというようなことも実際問題としていろいろと御工夫になっているわけではございますけれども、放送大学の場合には、先ほどお答えをいたしましたように、各都道府県にスクーリングのためのセンターを設ける、そしてそこに一週間に一回とか、科目に応じておいでをいただいてスクーリング実施をするようなことを考えているわけでございます。これはそのセンター施設というものを十分に整える、あるいはそこにおける指導に当たる教員のスタッフというものを十分に整えるということを含めまして、十分な対応をして、放送大学で学ぼうとする人々の期待というものにこたえていく必要があると考えますので、御指摘の点は十分に念頭に置いて、スクーリングの体制の整備というものを、さらに検討をしていきたいと存じます。
  176. 松前達郎

    ○松前達郎君 将来つくられるであろう放送大学ですから、余り細かいことをここでお伺いしてもどうかと思いますが、あと二、三この点についてお伺いしておきたいと思うんです。  特に、先ほどから申し上げております「放送大学基本計画に関する報告」に関して、ちょっと御質問したいことがありますんで、それについて二、三御質問いたしますが、学習成果について、またここに、正規の大学であるから「学習成果についての厳正な評価の手続きを含む」というふうな表現があるわけなんですね。これは、単位を認定して卒業してある一定の資格を与えるということであろうと思うんですが、そのために学習成果について評価をするということだと思うんです。これ一体どうやって、どういう内容の評価をされるのか、お考えがあればひとつお聞かせいただきたいと思います。
  177. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは放送大学学生は、全科の履修生として、大学側のガイダンスを受けながらそれぞれ三つ設けられるコースを選び、その中でそれぞれ自分の最も適当と考える、いわばピークというものを立てていきながら、大学卒業するためのカリキュラムに沿って勉強をしていくわけでございますけれども、それぞれの単位ごとに、聴講科目でございますれば印刷教材について勉強をし、そして通信指導を受けて、その結果について大学側が逐一評価をし単位を認めていくということがございます。さらに卒業に当たっても、成績の評価というものが行われるわけでございます。この評価のあり方というものについても、これまで放送大学の創設準備の過程で関係の調査会の専門委員会等で検討が行われておりますし、また今後放送教育開発センターの中でもさらに検討が進められるわけでございますけれども、非常に大量のものの処理をいたすことになりますので、コンピューターを活用をして、客観的な基準のもとに評価を行うということで、検討が進んでいるわけでございます。
  178. 松前達郎

    ○松前達郎君 それからもう一つは、放送大学の講義を教材に用いる件について、その履修単位を自分の大学単位にどこの大学でも認定したりすることができるようになるんだと、これは非常に思い切った発想だと私思うんです。この場合、今度はその単位を認定した大学ですね、たとえばある大学がこの放送大学放送を聞いて、講義を聞いてこいというふうに指定した場合、単位を認定するということがあり得るということになるんじゃないかと思うんですが、そうなりますと、これまたいろんな問題が出てきて、それならばその教員は一体専任教員として、その大学の講義として認めていいのかどうかですね、そういう問題も出てくると思いますし、またこれちょっと変な関係が出てくるんじゃないかと思うんです。著作権の問題とか、いろいろ出てくるんじゃないかと私思うんですが、その点は今後の問題として解決するにしても、こういった新しい発想が取り入れられてくるという、これが開かれた大学という意味に通じるんだろうと私思いますが、その点について、いま私が申し上げたようなことについて、今後積極的な展開をされるのかどうか、その点お伺いいたしたいと思います。
  179. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在の制度のもとにおきましても、学部でございますれば三十単位までは大学間の単位の互換ということが認められているわけでございます。放送大学の開設をする授業科目というのは、先ほど申し上げましたように、教養学部のいわば授業科目でございますから、一般の大学の場合には、いわゆる一般教育の段階において、放送大学授業科目というものを十分に評価をすることが可能であろうと思います。放送大学放送番組、教育内容というのはテレビを通じて、あるいはラジオを通じて、国民全体の前に公開をされ、そのまさに客観的な評価を受けるわけでございますから、それぞれの大学において放送大学の開設をしている授業科目というものを評価をし、それをそれぞれの大学の一般教育単位として認めていくというお考えを、大学の側でお持ちになれば、単位の互換というのは十分に進めることができるわけでございますし、そういう意味において放送大学というのは、先ほど申し上げましたように、今後における高等教育の構造の柔軟化、流動化というような面において、あるいは大学間の壁を取り払っていくというような意味においても非常に貢献するところが大きいと考えておりますから、これは放送大学がどれだけ十分な内容を持った番組を教育内容として提供できるかということにかかり、またそれについて各大学の御理解、御協力が得られるかにかかるわけでございますけれども、方向としてはできるだけそういう方向に推進をしたいと考えているわけでございます。また、そのためにも、放送大学の番組を制作をする、そういった放送大学教育のあり方自体について、既設の国・公・私立の大学先生方の参加と協力というものをお願いをしていくということが必要になると考えているわけでございます。
  180. 松前達郎

    ○松前達郎君 それともう一つ細かいことなんですが、放送大学入学した学生の授業料は一体どういうふうにされるつもりですか。
  181. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 授業料はもちろん徴収をするという方針でございます。授業料の額については、現在の私立大学実施をしております通信制教育における授業料というものを考えて、それと見合ったものとすることが適当ではないかと考えております。
  182. 松前達郎

    ○松前達郎君 わかりました。  それでは最後に、この放送大学に関して、調査研究会議ですね。この一番後ろの方にその調査研究会議の構成について載っておるわけでございますけれども、これはこの前参考人をお呼びしたときにも、いろいろ御意見が出されたわけなんで、特に児玉参考人あたりからいろいろと御意見があったと思うんですが、これをちょっと拝見いたしますと、実際に通信教育をやったり、計画し、実行し、そして、その中でいろいろ苦労されてきた人の御意見が、どうも盛り込まれないような、まあスタッフが悪いというわけじゃないですけれども、そういうような配列になっているんじゃないか、こういう気がしてならないわけなんで、さっき冒頭に私申し上げたように、机上で計画するのは理想的な計画ができますけれども、実際やってみると、非常に大きな数多くの困難があり、これを乗り越えなきゃならないという面があるわけなんで、そういったことについて努力を続け、しかも経験を持っておられる方がたくさんおられるわけですから、そういう方々の御意見も反映させていただきたいと私思うんですが、その点についていままで何回かそういうことをやられたことがございますか。
  183. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 基本構想を作成する場合の調査研究会議、あるいはいま御指摘基本計画を作成する場合の調査研究会議、いずれにも通信教育関係の方々の御参加はいただいているわけでございます。もちろん、私立大学関係の方々でございます慶応の塾長であるとか、そういう方々は別といたしましても、私大通信教育協会の会長をしておられる有光先生であるとか、あるいは慶応の通信教育部長をされていた通信教育の専門家である村井先生であるとか、そういった方に当初から御協力を賜っておりますし、さらに、調査研究会議に専門委員を置いておりますが、その専門委員の中には、通信教育協会の御推薦に基づく委員の方々にも、これまで参加をしていただいているわけでございます。また、そういった調査研究会議とは別途に、私大通信教育協会と文部省との懇談の機会をこれまで数次にわたって持ってきております。また、現在通信教育についての基準検討している大学基準分科会特別委員会におきましても、やはり通信教育協会の方々に先般御出席を賜った児玉先生を含めて、御参加をいただいているわけでございます。できる限り御指摘のように、非常に豊富な経験をお持ちの通信教育関係の方々の御意見を十分に伺っていかなければなりませんし、また、放送大学ができた場合の通信教育との十分な、かつ円滑な協力関係というものを確保していかなければなりませんので、そういう面については、今後とも十分に配意をしてまいりたいと考えております。
  184. 松前達郎

    ○松前達郎君 この前児玉先生からもそういう御意見があったものですから申し上げたわけなんで、今後そういう方々も含めてひとつ十分御検討いただくと同時に、先ほど申し上げましたように、電波の問題が解決しませんと、これ幾らやっててもらちが明かないということになりますから、その点もひとつ御協議いただく中で推進をお願いいたしたいと私は思います。  放送大学関係についてはそれぐらいにいたしまして、今度は教員大学について、これももうすでにいろいろな方から御質問があって、いろいろと御説明いただいておるわけなんですが、多少蒸し返しになる点もあるかもしれませんけど、私自身としてまだ疑問の点が残っているのもありますので、これについてお伺いいたしたいと思います。  まず最初に、これまたまた蒸し返しかと言われるかもしれませんが、名称なんですけれども、やはり名称というのはどうも幾ら考えてみても重要な問題だろうと私は思うので、これについてもいろいろな御意見があるんじゃないかと思いますけれども、教員という名称ですね。教員という名称がどうも個人の持つ職業を意味するだろうと私は思うのですね。ですから教員大学というとちょっと何かその辺がひっかかりが出てくる。職業であるということになれば、たとえばお医者さんの大学であれば、医師大学としなきゃいけないことになりませんか。あるいはそうじゃなくて、学問領域ですとか、あるいは産業だとか、そういう分野からの名前をつけるとすれば、これはたとえば商船大学ですとか、あるいは水産大学ですとか、工業大学とか、いろいろあるわけなんで、そういうことから考えますと、どうも教員大学というのがいまだに私ひっかかっておるわけなんです。内容についてはもうるる説明がされておりますから、この教員大学という名前が、そういう面でさっき申し上げたようなことでひっかかっているということなんで、いままでこれと同じような大学がたくさんあるわけなんですけれども、どうもこれだけが特別な大学だという印象を私持つわけなんで、この点についてもできたら御検討いただければというふうに思うわけなんですが、それはそれといたしまして、内容的に見ますと、大学院大学、こういったことになると私思うのです。私の経験からしまして、どうもその辺もまたちょっとひっかかりがあるんですけれども、いままでの大学院というものの設置大学院そのものの考え方というのが、いわゆる学部そのものの研究とか、あるいは教育成果とか、そういうものができ上がった上に、大学院ができるのが好ましいのだと、こういったような説明を何回か受けておるわけなんですが、今回のこの大学の場合には、そういうことじゃなくて、大学院大学として初めからスタートしていくのだ。これは、大学院大学でスタートするということも、法律的にはこれ条項がありますから、そういうことも可能であるわけなんですが、大学院というものの性格から言って、さらに大学学部でやるよりもっと深い学問研究をやるのだというふうに言われて、なっておるわけなんですが、その点ちょっとひっかかりがあるのですけれども、この点いかがですか、大学院大学、初めからこうつくるということについて。
  185. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学院大学という場合には、いわゆる学部を持たない、大学院だけの大学として構想されるものが将来あるとすれば、大学院大学という名称を恐らくは用いることになるであろうと思います。この教員大学の場合も、創設準備が進められている間は、教員大学大学ということが、いわば通称と申しますか、事柄を端的にあらわしたいということで、用いられてきてはおりますけれども、この大学の場合には、法案でお願いをしておりますように、ことしの十月に普通の大学と同じように学部を持つ大学として設置をする、そして大学院は五十五年度から設置をするということに形式的にはなっているわけでございます。ただ、学生の受け入れについて、御指摘のように大学院設置学生の受け入れの関係が、学部学生受け入れよりも、大学院設置が先になっているという点において、従来の大学、あるいは大学院のつくり方とはかなり違った対応になっているわけでございます。御指摘のように、大学院をこれまでつくる場合には、多くは充実した学部基礎の上に大学院をつくっていくということで、各大学とも御構想になり、あるいは大学設置審議会の対応もそのようなものとして審査が進められてきた経緯がございます。しかし最近は教育研究上の必要に応じまして、必ずしも学部の組織等に拘束されることなく、独自の目的に即して大学院の組織を編制、設置をするということも必要であるという考え方から、大学院設置の仕方は、学校教育法の改正等を通じて弾力化され、いわゆる独立研究科というような形での大学院設置等もこれまで進められてきているところでございます。  教員大学の場合には、大学院学部が置かれるわけでございますし、教員の組織も制度上は学部に位置づけられるということになりますので、この大学院現職教員に対する研究研さん機会を確保しよう、そういう目的を持つ、さらに学部よりも大学院にむしろ重点を置いてつくられるというものでもございますので、御指摘のような形で、異例の形ではございますけれども、大学院設置学部学生の受け入れよりも先にするということを兵庫については考えたわけでございます。
  186. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、大学院大学として発足するということで、設置審の方もだんだんとそういうふうな方向に考え方が変わってきているというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  187. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在、大学設置審議会は、大学院については、大学院の審査基準要綱というものを定めておりまして、それによって審査を行っておりますが、その中に掲げられている研究科の編制等におきましても古い基準要綱では、充実した学部基礎の上に大学院設置されるということを前提として考えていたわけでございますが、現行のものは、そうした学部の組織というものにかかわらずに、研究所等を母体としてつくったり、あるいは大学院の独自の教員組織というものを考えて、大学院を編制をするということを考えた対応になっているわけでございます。  大学院については、これは決して一律の形で設置をされるわけではございませんし、各大学におけるいろいろな御構想もあり、また専門分野によりまして、必ずしも一律の対応にはなっていない面が、これからの経過の中でも出てくるとは思いますけれども、全体として大学院設置について、学問研究要請に応じてできるだけ弾力的に対応していこうということは、現在の大学院に関する制度自体が予定をしていることでございますし、設置審議会もそのような基本的な方向で対応はしているわけでございます。
  188. 松前達郎

    ○松前達郎君 あと五つほど質問をさせていただきたいんですが、私立学校も義務教育の学校を持っているところ、これは数は少ないんですけれども、あるわけなんですが、この私立学校教員の場合は、この教員大学入学に関しては入れるわけですか。
  189. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学大学院についてはもちろん国・公・私立を問わずに現職先生方の受け入れということを考えているわけでございます。
  190. 松前達郎

    ○松前達郎君 それは当然だと思うんですけれども、そうなりますと選抜方法の問題が一つ出てくるわけですね。この教員である身分のまま入学するわけですから、その場合の大学側の選抜方法ですね、適切な入試を行うということになっていますが、これ内容的にはどの程度の選抜方法であるのか、その点をお聞かせ願いたい。
  191. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これはまさに大学が非常に重要な問題としてお考えをいただかなければならないことでございます。大学院の入試ということでございますから、事柄としては既設の大学院の入試選抜と異なるところはないわけではございますけれども、現職先生方を受け入れるわけでございますから、やはり現職の先生を受け入れるのにふさわしい入試のあり方というものが、大学において検討をされると考えますし、また、私どももそうした点に配意をした、適切な入学者選抜が行われることを大学側に期待をしたいと考えているわけでございます。
  192. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、現在各大学大学院を持っている大学が選抜をいたしておりますけれども、それに大体類似したような内容の選抜方法になると解釈してよろしゅうございますか。
  193. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 既設の教員養成大学大学院の場合で申しますと、たとえば東京学芸大学の場合には、当初二カ国の外国語の試験を課しておりましたけれども、その後、専攻によっては外国語の数を一科目に減ずるというような対応をしておりますし、大阪教育の場合には、たしか外国語科目は一科目であったと存じます。そのように、大学によって、どのような入学者選抜を実施をするかというのは、まさに大学自身で御判断をいただかなければならないことでございますし、それは決して一律ではないわけでございます。当然この大学院の場合にも、筆記試験等、面接の試験が行われるでございましょうし、筆記試験の場合であれば、各専攻コースごとに専門科目に関する試験が行われ、そのほか、恐らくはそれぞれの現職先生方現職経験を通じて、教育研究上いろいろな課題意識をお持ちになり、それの研さんを深めようとされているわけでございますから、そうした点についての判断というようなことも含めて、論文試験等も行われるでございましょうけれども、いずれにしてもそれを最終的にどのようなものとして決めるかというのは、今後大学が御判断になるところでございます。
  194. 松前達郎

    ○松前達郎君 まあ、教育委員会が推薦するのか、あるいは申請をして認めるのか、そういうことが大分議論になっておるわけですが、この教育委員会のそういった推薦、あるいは教育委員会がオーケーするという問題ですね、これが入学の選抜に関しては何らかの役割りを果たすんでしょうか、どうでしょう。
  195. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは、これまで再三お答えを申してまいりましたように、教育委員会の推薦を受けて、その推薦された者を大学に受け入れるという考え方をとるわけではございません。そういった推薦による入学制度、推薦入学という考え方は、この大学院についてはとらないわけでございます。大学院入学を希望する者について、大学において適正な入学者の選抜を行って、適切な者を大学院入学させるという考え方をとります。ただその場合に、現職の先生の場合には二年にわたって現場を離れて、現職のまま給与を受けて大学院において勉強をされるということを考えておりますので、他の現職の者が、現在ほかの大学大学院進学する場合と同じように、大学院入学をするということについて、市町村の教育委員会、公立学校であれば市町村の教育委員会の同意を得ていただきたい。これはまさに入試の事務を取り進める上で、それが必要であるからお願いをしているわけでございまして、そのことば、同意があるということが、それは教育委員会の推薦であるということとして入学者選抜の上で特段の考え方をするというようなこととは全く関係がないわけでございます。
  196. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、教育委員会の同意を得るということが必要であるというふうに解釈していいと思うんですが、私はさっき現職の場合で御質問申し上げたわけなんで、どうしてこういうことを申し上げるかと言うと、私立学校の場合、じゃ校長の同意が必要だということになるわけですね。  それからもう一つ教員である身分のまま入学して大学院入学した学生が、これは大学院の修士の場合だったら二年以上ということになっておりますけれども、いま留年制というのは余りないと思いますけれども、三年目に入ってしまった場合には、何か問題が起きるでしょうか。
  197. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 東京学芸大学なり、あるいは大阪教育大学大学院の場合の最長在学年数修業年限の二倍でございますから、四年でございます。教員大学大学院の最長在学年数も恐らくはこれに準じて定められることになるだろうと思います。したがって、現職教員修業年限の二年で大学院の修了に必要な単位を修得できなかったという場合に、大学として直ちにそれを除籍をするということにはならないだろうと思います。それはなお在学年数の範囲内にあるわけでございますから、大学としてはそれを直ちに除籍をするということにはならないと思いますけれども、引き続き従前と同じように在学するかどうかについては、教育委員会の方の事情があると思います。したがって、その点については教育委員会と本人との間で御相談が必要になるであろうと思います。いずれにしても、大学としてはそういったことがないように日ごろの指導に十分に留意をする、そして所定の年限で十分な勉学を重ねて修了をしていただくということを考えてまいるわけでございます。
  198. 松前達郎

    ○松前達郎君 それでは最後になりますけれども、今度のこの教員大学目的といいますか、その中の一つ教員資質向上という問題がうたわれておるわけなんですが、そういうことになりますと、ちょっとおかしなことになるんで、現在の教員養成機関というのが、教員資質をいい資質にするような努力をしてないんだと、先ほどちょっと違う面からの教員免許状の面で質問もございましたけれども、そういうことにもとられる向きもあるわけなんで、今日まで資質が低い、そういうことであれば、既存のその教員養成機関も大いに努力をしていただいて、この資質を上げるように努力を続けていただかなきゃならないんじゃないか、かように思うわけなんですね。二種類の教員養成組織が生まれるわけなんで、その点がいろいろと議論をされておるわけですが、現在の大学ですね、現在あります教員養成大学に対して、文部省としてもひとつ強力なそういった面での指導をしていただきたい。  そういうふうに申し上げますと、大学大学のお考えがあるんだというふうによう言われますけれども、しかし、それはそれとして、やはり強力な指導というのがどうしても必要なんじゃないかと、私は思うわけでございます。その点について文部省のお考えをお聞かせいただいて質問を終わらしていただきます。
  199. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員資質向上ということを考える場合には、もちろん教員養成、採用、研修の全過程を通じて、その資質向上のために必要な施策を講じていくということが必要でございますし、教員大学設置というのは、現職教員に対する高度の研さん機会を確保するという趣旨において、あるいは学部の段階において現在非常に問題の多いと考えられている高等教育教員養成というものについて、新しい方向を開く、それが既設の教員養成大学のあり方についても、いい影響を及ぼすというような意味で、養成あるいは研修の段階における資質向上のための一つの重要な施策ではございますけれども、教員大学設置が、即それだけが教員資質向上のための施策だとはもちろん毛頭考えていない、もっとさまざまな角度から、さまざまな施策が講ぜられていく必要があるわけでございます。その場合に、既設の教員養成大学、あるいは学部教育研究条件の整備に力を入れていかなければならないということは、再三お答えを申し上げているとおりでございますし、またこれは既設の教員養成大学学部もすでに十分問題意識として持っていることではございますけれども、それぞれの学部における教員養成のあり方において、たとえば実践的な教育、そういった面において欠ける点があるというようなことは、すでに考えられていることでございますので、そういった面について、私どもも教員大学の創設と並んで、既設の大学の充実ということについて、十分に国立大学協会、あるいは教育大学協会とも協議を重ねてまいりたいと考えております。
  200. 松前達郎

    ○松前達郎君 終わります。
  201. 吉田実

    委員長吉田実君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会      —————・—————