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1978-04-25 第84回国会 参議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午前十一時二十分開会     —————————————    委員異動  四月十九日     辞任         補欠選任      小巻 敏雄君     神谷信之助君  四月二十日     辞任         補欠選任      神谷信之助君     小巻 敏雄君  四月二十一日     辞任         補欠選任      小巻 敏雄君     渡辺  武君  四月二十二日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     小巻 敏雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         吉田  実君     理 事                 後藤 正夫君                 世耕 政隆君                 粕谷 照美君                 小巻 敏雄君     委 員                 岩上 二郎君                 高橋 誉冨君                 内藤誉三郎君                 二木 謙吾君                 増田  盛君                 勝又 武一君                 久保  亘君                 松前 達郎君                 柏原 ヤス君                 白木義一郎君                 有田 一寿君    国務大臣        文 部 大 臣  砂田 重民君    政府委員        文部政務次官   近藤 鉄雄君        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省管理局長  三角 哲生君        文化庁次長    吉久 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    説明員        防衛庁長官官房        広報課長     月原 重明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○教育文化及び学術に関する調査  (国士館大学における学内紛争問題に関する  件)  (私立幼稚園整備充実等に関する件)  (養護学校の義務化問題に関する件)  (私立大学の寄附金問題に関する件)  (文化財史跡指定に関する件)  (道徳教育及び高校教育に関する件) ○国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、本委員会理事が一名欠員となっておりますので、ただいまから補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉田実

    委員長吉田実君) 御異議ないと認めます。  それでは理事に小巻敏雄君を指名いたします。     —————————————
  4. 吉田実

    委員長吉田実君) 教育文化及び学術に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 粕谷照美

    粕谷照美君 大臣にお伺いいたしますけれども、私もおとといこの書類を手にしたものですから、自分実態調査するところまで至っておりません。それからまた、問題点はやっぱりみんなの前で明らかになった方がいいのではないかというような考え方もありまして、きょうは大方のお考えをお伺いしたいと思うんですが、国士館大学教職員三百三十六名代理人、弁護士・法学博士木川統一郎さん、それから同じく石川明さんから、大臣あて上申書が出ておりますけれども、お読みになりましたでしょうか。そしてその内容というのは一体どのようなことになっておりましょうか。
  6. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 国士館大学につきましては従来から学内組織整備でありますとか、あるいは学生暴力を絶滅するとか、そういったことを期して、必要に応じましてその都度警告、指導を続けてまいりましたところ、昭和四十八年同大学では近代化委員会を設けまして、大学組織機構や、管理運営方法など学内慣行等についても改善すべく検討を進め、成案を得て実行に移していると聞いてまいりました。しかるに、ごく最近、いま粕谷委員の御指摘文書を私は受け取りました。ごく最近これを拝見したわけでございますけれども、この文書によりますと、総長の専断によって、学内規則の制定、改廃、教職員の採用、解雇あるいは学部長任命等が行われているなどの問題の指摘が行われております。文部省といたしましては改めて事情聴取を行いまして、問題点検討の上、実情把握をいたしまして、必要があれば指導を行ってまいらなければならない、かように考えておるところでございます。
  7. 粕谷照美

    粕谷照美君 大学局といたしましては、このような事実が四十八年以降、同大学の努力もありましたでしょうけれども把握をされておりましたでしょうか。どうですか。
  8. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) ただいま大臣からお答えを申し上げましたように、四十八年に設けられました近代化委員会において、学内組織機構、あるいは運営方法等改善について検討が行われ、その結果、四十九年の一月に最終の改革案をこの委員会は決議をいたしまして、理事会評議会の承認を得ております。その委員会改革案のうち、現在大学はこれまでに次のような改善措置をとっていると承知をしております。一つ管理運営関係で、従来学部長体育、工学部だけにあって、ほかはなかったわけでございますけれども、全学部について学部長任命を行い、これまで全学部学長中心になって教授会運営を行っていたものを、学部長中心教授会運営するように改め、さらに学部長会を設けて、教学面学部会連絡協議を図る措置をとり、さらに学部規則を定めて、学部教授会の細則、あるいは学部長選任方法などを定めております。それから、学生指導あるいは学生生活関係につきましても、四十八年の国会、あるいはそれ以前の国会での御審議を踏まえまして、学生部設置をして学生生活指導充実を図り、あるいは学生監という問題の職がございましたが、これを学生主事として学部長の統率のもとに置く、あるいは学生寮寮則を改正をして、朝げいこの強制を廃止する。そういった学生寮学生の自主的な生活と勉学の場とするような改善措置を図る。あるいは学内清掃学生を使うということをやめて、部室等学生専用部分について学生責任で清掃させるようにする。あるいは教育研究施設につきましても、鶴川地区の校舎の新増設を図り、あるいは体育学部体育館を新設をする。その他、学内式典簡素化を図ったり、あるいは団体訓練を廃止をしたり、問題になりました学長訓話につきましても、新入生のオリエンテーションのときだけに限ることとした。あるいは教職員の給与なり、事務組織についても改善整備を図っていくというような、いわゆる近代化委員会改革案は、その主要な部分については逐次実行に移されていると承知をいたしております。  ただ、政経学部におきまして、学部長選任をめぐって、この選任の仕方は教授会が三名を推薦をして、そのうちの一名を理事長任命をするわけでございますけれども、その際に一位の者が選任されないで、二位の者が選任をされたということを契機といたしまして、政経学部の中で教授会の間に対立が生じている。そういったことから、この上申書に示されているような問題が起きている、そのように承知をしております。
  9. 粕谷照美

    粕谷照美君 局長にお伺いいたしますけれども、一応その改革案実行に移されているとするならば、このような異常な事態というものは出てこないのではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。自主性を持ち、しかも大学先生方なわけですから、きちんと自分たち自身改革をしていくということが私は望ましいというふうに思います。特に、国会の中に持ち出してきて、討議をしようということ自体は、非常に異常なことでありますし、しかも大学専任教員百四十六名、職員百九十名、高校教員三十五名の委任状を出して、ぜひ文部省調査をしてくれというからには、なまはんかなことではこれは成り立たない。局長のおっしゃるような、こういうふうになっていますということだけでは済まされない何物かがあるのではないかというふうに思いますが、その辺のお考えはいかがでしょうか。
  10. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 四十八年の時点で、国会におきましても、たとえば教授会機能というようなものが問題となり、厳しい御論議があったわけでございます。そのときに国士館大学が持っておりました学則による教授会機能というのは、学長諮問機関であるということが明記をされておりました。この点につきましても改革委員会審議を経まして、学則を改めて、国士館大学の場合には教授会審議事項というものを明確にし、そしてその審議事項の中に、教員あるいは学部長等の選考、学生の入退学、カリキュラム編成等、そうした大学教育研究運営にかかわる基本的事項については、教授会審議事項として定めていると承知をしております。ただ、この大学の場合には、先ほど申し上げましたように、政経学部内の対立のために正常な教授会構成ができない。そのために起こっている問題がある。そういった異常な状況にあるということのように思われます。ただ、事実関係につきましては、この上申書に述べられている事柄については、まだ十分に把握をいたしておりませんので、当面、それについての判断は差し控えさしていただきますが、早急に調査をいたしまして、正常な運営が行われるように大学側お話をしたいと考えております。
  11. 粕谷照美

    粕谷照美君 学則を改めてと、こうありますけれども、書いたものが改まったというだけでは、実態が改まるわけではないと思います。いま大学局長がおっしゃるように、政経学部内の対立だけではないように、私はこの文書を読む限りにおいては思いますが、その実態調査方法ですけれども、具体的に文部省としてはどのような形で実態把握されようとするのですか。
  12. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学側責任者の来省を求めて事情聴取をいたします。
  13. 粕谷照美

    粕谷照美君 責任者というのは一体どの方をおっしゃるわけですか。
  14. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは大学側とも協議をいたしまして、最もよく実情把握をしている方においでをいただくのが適切かと存じます。学部長等がそれぞれ実態十分承知をいたしておりますので、そういった方々から事情を伺うのがよかろうと存じております。
  15. 粕谷照美

    粕谷照美君 それは、たとえば具体的には柴田梵天理事長総長短大学長、中・高校長、この方をお呼びになる、あるいは理事お呼びになるということもあるでしょうけれども、これらの問題を出した教職員方々事情聴取もなさるつもりですか。
  16. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在のところ、どういう形で事情聴取を行っていくのかにつきましては、確定をした考え方を持っておりません。管理局とも相談をいたしまして十分に検討をいたしたいと存じます。
  17. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はそれはおかしいと思いますね。実情調査するというのであれば、ここには具体的に名前を挙げて訴えられた方もいますし、訴えた人もいるわけですから、両者意見を聞いて調査をするということが前提でなければならないと思いますが、いかがでしょう。
  18. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 問題の指摘は、この上申書においてかなり詳細に、かつ具体的に行われております。まず、大学側からこの上申書に記載されている事項についての考え方、その説明を受けたいと考えます。
  19. 粕谷照美

    粕谷照美君 その次はどうなさるのですか。それで納得されて終わりですか。
  20. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学側からよく事情を聞きまして、その結果に従って判断をさらにいたしたいと存じます。
  21. 粕谷照美

    粕谷照美君 私が申し上げているのは、片方だけの意見を聞いたのではわからないから、もう片方意見も十分に実情調査する必要があるのではないかと、こう言っているんですが、大学局長は逃げていらっしゃるわけですよね。できないんですか、やらないんですか、しなくても間に合うとお考えなんですか。
  22. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほどもお答えを申し上げましたように、この上申書は非常に詳しく、かつ具体的な御指摘がございますので、それについて大学側がどのように判断をされ、どういう状況にあるのかということをまず大学側から聴取をすると。そしてその結果に基づいて、さらに上申をされている方々の御説明を聞くかどうかは判断をさしていただきたいと存じます。
  23. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部省がそういう考え方であるならば、私どももまた考え直さなければなりません。いずれこの問題について私たち両者意見を聞かなければならないというふうに思いますので、いまは文部省のお考えだけをお伺いして、この点についての質問を終わります。  次は、幼稚園脱税問題それから相次ぐ労働問題、もう一つ学校法人化の問題などについてお伺いをしますけれども、先日大変大きなニュースになったものに、脱税ワーストテンが挙がっておりました。その中で私立幼稚園、昨年は上から数えて六位だったものが、一躍三位になった。同じく私立の保育園が初めてことしランク入りして七位になった。何か大変いいことのように思いますけれども、これは脱税ということになりますと非常な問題点だというふうに思います。この辺について文部省自身は、去年もあったことだから大したことがないとお考えかもしれませんが、大臣いかがでしょう、まじめに努力している私学にしてみれば、こういう状況が出てきたということは、非常に私学全体のイメージがダウンしたということになるのではないかと思いますが、特にずっといままで歯科医科大学問題で、私学イメージがダウンしているところへもってきて、ダブルパンチのような形で出されているわけですね、どのようにお考えでしょうか。
  24. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 新聞で私もその報道を読みましたが、まことに遺憾な事態であると考えます。ただ文部省といたしましては、私立幼稚園に対します所轄庁都道府県だものでございますから、個々私立幼稚園実態を今日把握いたしておりません。新聞報道されましたことについても、その事実は残念ながら把握してないわけでございまして、文部省といたしましては、各私立幼稚園がその幼稚園というものの公共性社会的使命というものを十分自覚して、健全な適正な運用をしてくださることを期待をいたしているのでございますけれども新聞報道によります脱税事例等につきましては、直ちに第三者が知り得ないという問題点もございます。ただ、たとえば東京都におきましては、脱税問題について設置者としての姿勢を非常に正しておられる、私立幼稚園の適正な運営を図るように文書による指導等も行っておられることでもありますので、この問題の生じました事柄につきまして調査をしなければならない、かように考えているところでございます。
  25. 粕谷照美

    粕谷照美君 きのう私は国税庁の方に来ていただきまして、いろいろお伺いしたんですけれども脱税問題が都市近郊幼稚園経営者に多いということと、それから割合が非常に高くて四〇%なんですね。だから、約二百件近い件数の幼稚園の四〇%といいますと、相当のものがやっている。そうすると、悉皆調査をすればもっともっと大変なのではないんだろうかという憶測を国民の中に与えたと思います。大変心配なことでもありますので、東京都だけで終わらないで、全都道府県税金問題についてはきちんと姿勢を正すような指導というものがなされなければならないと思いますけれども、具体的におやりになりますか。
  26. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 新聞報道で読みまして、私も新聞に出ております番付、いわゆる番付の上の方に幼稚園がランクされているのを見まして、びっくりしたわけでございます。都道府県を通じて実情を一度調べてみたい、かように考えております。
  27. 粕谷照美

    粕谷照美君 幼稚園にも幾つかの組織がありまして、全私幼、全法幼ありますが、私も全法幼機関紙をずっと見せていただいておりますけれども、これは脱税ということはあり得ないと思いますが、それでもきちんと会計をやりましょうというような、みずからの姿勢を正していくような、内部的な運動というものが盛り上がっているわけですね。そういう点から考えていきますと、こちらの私立幼稚園というのは、どうやったらうまく税金を払わないで済むのかということを、共同で研究しているのではないかというのは言い過ぎですけれども考えているのではないだろうかというふうに思わないわけにはまいりません。それは税務署の方にお伺いいたしましたら、なぜ個人立幼稚園税金がかかるのか、どうして学法幼に対しては課税をされないのかというようなことについての大変な不満が、調査に行った税務署員にぶつけられると言うのですね。そのようなことからも考え合わせて、私は本当にきちんとした姿勢というものが必要になるのではないかと思いますが、こういうことを許しておくこと自体は、やはり許せないことである、大臣がおっしゃるように、本当に公共的な性格を持つ幼稚園であるだけに許せないという気持ちで一ぱいです。それとあわせまして、脱税ばかりではないのです。私立幼稚園で相次いで不当な解雇事件というものが起きているんですね。先生方解雇をしている。文部省はそういう事実を御存じでしょうか、どうでしょうか。
  28. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 私立幼稚園の雇用の問題につきましても、私立幼稚園に対します所轄長は各都道府県知事でございますので、文部省といたしまして、全国の個々私立幼稚園運営状況を常時承知するという状況にないわけでございまして、したがいまして、ただいま御指摘実態については把握しておらないのでございます。なお、いわゆるこの雇用問題につきましては、私どもとしては原則としてやはり当事者間で自主的に円満に解決していただくということが基本であろうと思っております。  なお、先ほどちょっと税金のことについて先生の御指摘があったわけでございますが、私ども脱税ということは非常に遺憾なことでございますし、また、いわんや幼児の教育をつかさどる当事者が、そういうことをなさるということについては、非常に重大な困った事柄であると思っておりますが、これはまあ国税当局の発表でございますので、私どもとしては直接タッチしておるわけではございませんが、ワーストの三位というのは、この表は一件当たりの申告漏れ所得が大きい順が並んでおるというふうに聞いております。それから、申告漏れ割合の四〇%というのは、これは申告漏れ額申告額に対してどのくらいの比率になるかという率というふうに承知しておりまして、でございますから、まあいろいろあります個人立幼稚園が、非常にたくさんの幼稚園が不届きなことをしておるということには必ずしも直接つながらないというふうに承知しておりまして、ほかのいろんなワーストの表が国税当局ではあるようでございますが、そのうちの一つ新聞に出たというふうに承っておる次第でございます。
  29. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでどういうことだというのですか。だからそのことが否定されるということではないと思いますが、いかがですか。
  30. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 申し上げましたように、非常にケースが少のうございましても、そういうことはあるべきことではないというのは当然でございます。
  31. 粕谷照美

    粕谷照美君 幼稚園都道府県知事管理をするものだから、文部省自体としては実情を知らない。私はそれはそれで事実だろうと思います。  それから、労使の問題については自主的にやりなさいと、これが望ましいとおっしゃいますが、私もそれは原則的にはそうだと思います。しかし、それは原則的にはそうであっても、余りにもひどいときには、そのことについてやっぱり私ども発言をしなければならない責任があるように思うものですから、きょうは実は取り上げてみました。  先日三月の三十一日の日に、参議院会館の私の部屋電話がかかってまいりました。これは四月の九日の日と、十日の日に、読売新聞に小平市の私立弥生台幼稚園不当人事の問題についての記事が載っておりましたから、具体的な名前を挙げても差し支えないのではないかと思いまして、いま質問をするわけですが、この幼稚園では、昨年の十二月に三人の先生に対して、あなたは遅刻が多いから、あなたは子供を産んでお産の休暇を取ったから、それからもう一人には、どうも園の方針に従わないからということで、来年はクラス担任をさせないからということを通告をしているわけです。そして、ことしの三月の三十日、つい先日ですね。そのほかの七名の職員には、春休みですから自宅へ電話をいたしまして、来年度はあなたは担任ではありませんよ、こう言って通告をしているのですね。そしてその翌日私の部屋電話をかけてまいりましたので、四月の一日には園に行くことになっていると言いますから、ではなぜあなた方は担任を外されたのかということの理由をきちんと確認をしておきなさいと、こういうふうに返事をしておいたわけです。そうしましたら、いろいろな理由を言っておりました。私いまここにそのときの話し合いのテープを持っているんですが、テープを動かすほどのこともないと思いますので、お話をするわけですけれども、突如として三月三十日に、四月の六日から始まる幼稚園の開園に当たって、あなたはクラス担任させませんよ。ようやく四月の一日になって、その理由は聞かれればこうこうこうですというようなことは、私は教育の場としてはあり得ないことだというふうに考えているところです。そしてその一日、二日、四日、五日という幼稚園が始まる間は、彼女たちは一体何をしているかといいますと、金のたわしで園の中のいろいろな、何というのですかね、手すりのようなところのさびを取っておきなさいとか、あるいはいろいろなところのお掃除をしなさいとか、トイレのお掃除をしなさいとか、非常な雑用をやっているわけです。それで、それだけならいいんですけれども、四月の一日からはもう新しい先生を十人雇ってきているんですね。だから、いままで十人いたのが、さらに十人ふえて二十人になっているという、こういう問題点一つ出てきているわけですが、こんなようなこと教育の場で考えられることでしょうか。
  32. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) ただいま具体的なお話がございましたわけですが、私どもとしては実情につきまして詳しく承知しておりませんので、ここで何らかの意見なり、判断なりを申し上げることは、ただいまの時点では差し控えざるを得ないという気がいたします。
  33. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは具体的に弥生台幼稚園と、こう言えば問題があると思いますけれども、一般的な問題点としまして、特別首にしなければならないような事情もない、そういう方々十名に、急にあなたはクラスを持たないでいい、そして新しく十人の人たちを採用しましたからなんて、そんなことあり得ますか。
  34. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) まあ一般論として、何と申しますか、常識論的に考えまして、ある一つ機構というものを運営いたします場合に、それを構成する者についての交代というようなことにつきましては、それがやはり円満にいきますように、ある程度の事前の予告とか、そういった通常考えられます手順はあると存じます。ただ、ある一つ組織が、その中の構成員交代をどういう事情で必要とするか、あるいはどういう手順で行うかということにつきましては、これは個々具体ケースにつきまして、それが常識的に見て果たして適切であるかどうかということの判断をしなねればならないというふうに考えます。
  35. 粕谷照美

    粕谷照美君 適切であればいろいろな問題が起きないわけです。いろんな問題が起きているという中で、私は一つの例としていまのことをお話したわけですが、たとえば四月の七日に進級式があった、そこのところには大ぜいのお母さん、お父さんたちが子供と一緒に出てくる、そうしますと去年まで年少組を持っていた先生が、当然持ち上がるだろうと思って期待をして来るのに、突如としてこの先生方はあなた方のお子さんのクラスの担当ではありません、こういうふうに報告されるわけですね。そして新しい先生名前が挙がる、その新しい先生名前が挙がっても、別にどうってことないんですけれども、いままでの先生方はもう先生ではなくて雑務、用務をやらせるんだと、こういう報告があれば、非常にお母さんたちは心配するわけですね。特にお母さんたちが言うには、私たちはこの幼稚園先生方がいいから、りっぱな先生方がそろっているからここの幼稚園に入れたのに、いまのようなことでは困ると言って署名運動まで起きている。非常に子供たちも落ちつかなくなってくる。そんなようなことが四月の九日の、あるいは十日の日の読売新聞に出てきた。そうしますと、九日の日に新聞に出たそのことを見て、近くにいらっしゃる幼稚園の園長さんがそこに集まって、そしてそのことについての討議をされているわけですね。そこに私のところに電話をくださった杉本さんという方が出席をしていたら、もうそんなのやめさせなくちゃだめよというようなことを平気で言っているというんですね。だから園長さんたちはいかにして早く何年も何年もたった方々をやめさせようか、そして新しい人たちを入れていくかということについて、一生懸命研究をしていらっしゃるんじゃないのか、こういうことを思いましたという話をしておられるわけですが、その事実は、たとえば同じ市内にあります円山幼稚園、あるいはりんどう幼稚園、すぐ近所の清瀬のゆりかご幼稚園なんか、やっぱりがばっ、がばっと十人ぐらいずつやめさせられて、新しい先生が十人ぐらい入っているわけですね。そのことを考えますと、何か連携をしながら、このような研究をしていらっしゃるんじゃないかということを思わないわけにはまいりません。一体十人も大量の先生方を一緒にやめさせるなんというようなことは、普通では考えられないことだと思いますが、大臣いかがですか。
  36. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私立幼稚園のことでございますから、そんなに大きな規模のものとは考えられない、そういたしますと、十人もの方が一遍に交代なさるというのは、先生のいまの御発言内容を一般的に承りますと、私はちょっとおかしいという感じを持ちます。ただ、感じを持ちますという程度にしかお答えできませんのは、やはり私立幼稚園に対します所轄長都道府県知事であるものでございますから、私としてはみんなで相談してどうやめさせようかということを研究しているんじゃないかというのは、これは粕谷委員の持たれた感じだろうと思うんです。そのことについてではなくて、そんなに大きな規模でもない幼稚園の中で、十人もの方が一遍にかわられるということは、それは何かよほどの事情があったのかな、おかしいという感じを持つことは事実でございます。
  37. 粕谷照美

    粕谷照美君 本当におかしいんですよ。それで父母からおかしいと言って騒がれますと、また十人のうちの七名についてはちゃんと園児を担当させているわけですね。そして、担任させますよと言って雇った新しい十人の方々も、二人組みで担任をさせるんですけれども、一人で担任させてくれると、こういうことだったから、それはおかしいと言って、今度は新しい先生方も大変な不満を園長さんに対してぶつけていくと、こういう実態が起きているんですが、そのことはさておきまして、以上のようなことから考えて、じゃあそんな問題は不当な首切りなんですから、当然大きな問題点として出てくるだろうと、こう考えるのが普通だと思うんです。けれども、その問題が出ていない。それほど普通幼稚園に勤めていらっしゃる先生方というのは、一年か二年、二年か三年でおやめになる方々が多いわけなんですが、権利意識に目覚めていらっしゃらないわけですね。  それで、何かこんな問題がどこかに統計がないだろうかと思いましてあっちこっち聞いてみましたら、東京都の新宿労政事務所でもって、やはりこれらのことについて実態調査をしているわけです。けれども、この労政事務所にだって幼稚園先生方は相談には来ていらっしゃいません。それから私立の学校の労働組合がありまして、東京私学労働組合があって、その幼稚園部というのがあります。けれども、ここにもやっぱり相談に来ていないわけなんですね。だから本当に労働基準法とか、働く者はどのような形で守られているかなどということを御存じない場合が非常に多いんじゃないだろうか、こう考えます。  それで最初に、労政事務所で出しました園長さんよりの調査結果と、それから先生方調査結果というのと二通りに分かれているんですが、園長さんの調査結果を見ますと、大変問題だなと思いますのは、第一に、就業規則があるかないかということの調査に対しては、就業規則がありますという園は六割で、三分の一の園がつくっていないわけですね。文部省は、それは労働省に聞いてくださいと、こういうふうに言われるかもしれませんけれども、法律によってこの就業規則というのは作成されるように義務づけられていると思いますが、管理局長いかがですか。
  38. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 私、不勉強で正確なお答えできるがどうか自信はございませんが、たしか労働法の上でそのような規定がなされておったかというふうに考えます。
  39. 粕谷照美

    粕谷照美君 労基法八十九条により、常時十人以上の労働者を使用する事業所は、就業規則の作成がこれ義務づけられているわけで、これがないということは明確なるもう労働基準法違反です。法律違反です。そのくらいのことをきちんとお答えいただけないようでは管理局長、ちょっと私ども心配でたまりません。それで、労政事務所はどのように言っているかというと、職員が労働条件、特に労働時間などを知らないような面が多いので、今後労働条件の周知徹底を図るためにも就業規則を作成し、労使関係改善に役立たせることが必要と思われると、こう言っているわけですから、先ほどの問題点ともかかわりまして、これは都道府県管理下にあります私立幼稚園なんですから、文部省としては知りませんということではなしに、法律を守るようにきちんとした姿勢というものをやるという必要があるのではないだろうか、私はこう考えます。  その他についてもずっと指摘をしていきたいんですが、十二時で一応昼食ということになっておりますから、ここでとめます。
  40. 吉田実

    委員長吉田実君) 本調査に対する質疑は、午前中はこの程度にとどめます。  午後一時再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  41. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  42. 粕谷照美

    粕谷照美君 午前中に引き続きまして、新宿労政事務所で出しております園長さんの調査による労基法違反の第二番目の問題は、たとえば労働時間についてですけれども、労働時間についての違反が、七十二園中五十三園ありました。また、有給休暇の制度がないという、こういう園も非常に多いわけなんですが、このような労基法違反というのは私ども問題だと思いますが、私立幼稚園というのは、労働基準法適用の事業所だというふうに思いますが、どうでしょう。
  43. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 規模にもよりますが、労働基準法が適用になる園が多いと存じます。
  44. 粕谷照美

    粕谷照美君 あわせて、先生は労働者と規定をされていると思いますが、第九条いかがでしょう。
  45. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 制度上そのようになっておると理解しております。
  46. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういうことであれば、きちんと労働基準法を守るということを労使ともに私は学ばなければならないと、こう考えているところですが、もう一つ私自身のところに訴えがありましたことを報告いたします。  私立学校共済組合法の一部改正についてのときに質問をしようと思いましたが、いまの方がよろしいかと思いましてやりますが、埼玉県のある私立幼稚園先生の話です。  昨年出産をいたしまして、出産いたしますと私学共済から給料の一カ月分の出産給付金が出ることになっているわけです。ところが、一年たっても出してこないので、非常に不思議だという連絡がありましたので、私学共済そのものに私は直接電話をして聞きました。そうしますと、手続上のことだとおっしゃるわけですが、一年間ほうりっ放しにされていたということは事実なんですね。その手続上のことは一体どういうことなのかといいますと、本人の給料よりも、私学共済に登録をされている給料が低いわけなんですね。おわかりですか。このような事実というのはあっていいことなんでしょうか。いいというふうにはお答えになれないと思いますけれども、どうでしょう。
  47. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 私立学校教職員共済組合で定めております標準給与につきましては、これは組合員が毎年七月一日に現に被用をされる学校法人等において、その七月一日の以前二カ月間に受けた給与の総額を、その期間の月数で割りまして得た額を、給与月額として私学共済としては決めておるわけでございます。
  48. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、そういうことはあり得るというふうに理解をしてよろしいですか。
  49. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) ただいま御説明申し上げましたように、私学共済組合は学校法人の報告に基づいて措置をいたしておるわけでございまするので、学校法人からそのような報告が来ておったのであろうと思います。
  50. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういうお答えですと返事にならぬのですね、大変私も困るんですが。具体的にA子さんとしますか、そのA子さんが自分の給料から引かれている私学共済の掛け金は大体七千円ぐらいなんです。そうしますと、その本人プラス設置者負担、学校の方でさらにお金を出しまして私学共済に納めるということになっているわけですね。ところが、私学共済に入っているのは本人の納めた七千円だけだというふうに言っているわけなんですね。問題があるんじゃないですか、この辺は。
  51. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) どうも具体の事例がよくわかりませんので、明確なお答えがちょっと考えにくいのでございますが、先ほどから申し上げておりますように、教員につきましての給与の届け出は、私学共済組合に対しては学校法人が行うということになっておりまして、そうしてただいまの掛け金の問題でございますが、当然、制度上半々で率によって出していただくということでございます。でございますから、その七千円というのがよくわからないのでございますが、半々でありましたら三千五百円ずつ半々なのか、それとも一万四千円であるべきものがその半分しか入っていないのかというあたりにつきましては、具体の実情について承知をいたしませんと、ちょっとここで申し上げにくいのでございます。
  52. 粕谷照美

    粕谷照美君 そのとおりなんです。私もその具体的なことで文部省に詰めなければならないというふうに考えておりましたけれども、しかし余りまた具体的にいたしますと本人の解雇にもかかわってくるのではないか、こういう心配をいたしますので、私は具体的にしないで質問をしているんですが、御主人からそのような連絡があって、私どもの方で本人に何回も何回も連絡をしました。私どもの方でそういう連絡をとっているということがわかりましたら、びっくりいたしまして、そこの園長さんは私学共済本部まで訪ねてきている、こういう実態があるんですね。そのこと自体に間違いがなかったとしても、出産をした本人から不信感をもたれるようなことを園長さんがやられる、そしてまた、私学共済本部そのものも、給料が毎年改定になる、低い給料で出していって、何か書類の不備があったから、一たん園へ返しました、こういうふうに言われるけれども、返ったものが何で一年間もほったらかされていたのか、こういう疑問点も私どもの方には出てくるわけなんで、きちんとこの業務かできていないのではないかというようなこともありますが、実は先ほどお話ししました弥生台幼稚園方々にも、出産をされる方が去年もいた、ことしもこれから出てくるというのですが、何か支給されるお金がきちんと明細が出ていないで、ばかんと出されてくる。お金自身が込みみたいな形で出されてきて非常に不明朗だというようなことも言っておりましたので、私はこの私立幼稚園がやっぱり自分のところの職員に対して、給与というものに対しては厳正な態度でもって支給するというようなことを、確実に守っていただきたいということを考えているわけです。  以上のようなことをいろいろ申し上げましたけれども、具体的に言いますと、園長さんがそういうことについて明確な知識をお持ちでないのではないかということが結論だと思うのですが、この園長さんになる資格というのは教職免許を持つということが必要になっているのでしょうか。どういうような条件が備われば園長さんになることができるのでしょうか。
  53. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 園長の資格でございますが、これは教育職員免許法に基づきます教諭の一級普通免許状を有し、かつ、五年以上、各種の一定の職にあった者ということになっておりまして、その一定の職と申しますのは、学校教育法一条に規定しますいわゆる一条学校の校長の職、それから、次に同じく一条学校の教授、助教授、教頭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭及び講師、しかもこれらにつきましては、いわゆる常時勤務の者でございますが、そういった職、それから一条学校の事務職員の職、それから旧教員養成諸学校官制一条の規定による学校長の職でございますとか、その他挙げられておりまして、それからさらに若干種類の異なったものといたしまして、「国又は地方公共団体において教育事務又は教育を担当する国家公務員又は地方公務員の職」、それから「外国の官公庁における前号に準ずる者の職」ということが定められておるわけでございますが、さらに同じ学校教育法の施行規則で、私立学校につきまして校長の資格に特例を設けておりまして、私立学校の設置者は、ただいま概容を申し上げましたような規定によりがたい特別の事情がありますときは、五年以上教育に関する職または教育学術に関する業務に従事し、かつ教育に関し高い識見を有する者を校長として採用することができるという定めになっておるわけでございます。
  54. 粕谷照美

    粕谷照美君 ですから、原則的にはやっぱり教職免許を持ってるということが望ましいけれども、特別の場合にはなくてもよろしいんだというふうになってるんですが、この特別の場合の方が私立幼稚園の場合にはよけいなんではないんですか。その辺の調査は全然なされていらっしゃらないと思いますから、この園長さんの資格そのものもやっぱり調査をしていただきまして、父母も本当に園長さんはりっぱな方だ、そこに働く先生方も、この園長さんとなら一緒に仕事ができるという、こういう喜んで仕事ができるような条件というものもつくり出していく必要があるのではないかと思います。昨年の予算委員会で玉置委員質問していらっしゃるんですけれども、学法なんかつくっていくと、すぐ組合つくってけしからぬというようなことが議事録に載ってるんですが、私は、組合があったって、その組合が本当に園長さんを信頼し、一緒にやっていこうという体制であったならば、そんなに御心配になるようなことばないのではないだろうか、こう思うものですから、いま質問をした次第です。  ところで、こういうようないろいろな条件が出てくるということは、闘いが出てくるということは、一体どこに原因があるんだろうか。このことを考えてみますと、やっはり何といってもお金が足りないという、ここのところに根源があるのではないかと思います。それはなぜかというと、幼稚園の園長さんが、あなたのところの先生はどういうふうにあってもらいたいと思いますかという質問に対して、もう大半の人たちが永年勤続をしていただきたい、もっと勉強してもらいたいという、こういう要望を出してますね。長年勤続してもらいたいと園長さんが思っていながら、二年か三年しか働いていらっしゃらないというのは、やっぱりやめざるを得ないような条件に教師が追い込まれているという実態だろうと思います。そういう意味で、今回のこの補助金というものは、昨年に比べてどのような前進度を示しているでしょうか。
  55. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 私立幼稚園に対します国の措置といたしましては、ただいま先生指摘の補助と、それから就園奨励費と、二つの手だてがまあ大きなものでございますが、私立幼稚園に対する経常費助成につきましては、御承知のように、従前から地方交付税制度における財源措置ということで、財政的な措置を講じてまいってきたものでございますが、五十年度から都道府県が行います経常費助成につきまして、国庫補助を行うことといたしたわけでございまして、そうして、学校法人立以外の幼稚園につきましては、これを五十一年度からこれらの幼稚園に及ぼしてまいったわけでございます。そうして、私立高等学校等経常費助成費補助金ということで、充実を図ってまいりましたわけでございまして、昭和五十三年度予算におきましては、幼稚園分として、前年度に比べまして約五割増の百十六億円、これを計上いたしておるところでございます。
  56. 粕谷照美

    粕谷照美君 幼稚園の数がふえれば当然その金額がふえるという、そんなのは自明の理だと思いますが、具体的に言えば、一番私立幼稚園にしても、学法幼にしても、困っているのは人件費そのものが問題になるわけですね。この人件費の伸び、たとえば人確法ができてきた、幼稚園にもそれを該当させるものとするなんて、こういうことになりますと、やっぱりそれに準じて上げなければならない。それなれば、それなりに給与費が上がるわけですから、私幼の経営っていうのは厳しくなるんだということはだれでもわかるわけです。そういう給与の伸びに対して見合うような額として、補助金が計算をされ、支給をされているか、おりているか、ここんところをお伺いしたかったわけです。
  57. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 御質問の、給与に対応してどのように伸びておるかということに、正面から対応したお答えになるかどうかと存じますが、幼児一人当たりの財源措置として御説明申し上げますと、五十二年度におきましては、学校法人立につきましては、国庫補助と交付税措置とを合わせまして、一人当たり二万九千九百五十円という数字になっておりました。それから、学校法人立以外のものにつきましては、これはこの措置の発足が一年おくれておった関係とか、それから各都道府県でのこれまでの助成の経緯と申しますか、歴史的な経緯もございまして、学校法人立と若干扱いが異なっておりまして、国庫補助と交付税措置とを合わせたものが二万八千七百五十円というふうに、若干額の上で差があったわけでございます。五十三年度におきましては、これをいずれも共通にいたしまして、国庫補助と交付税措置と合わせまして、三万六千二十円という金額にまで充実を図っておるという次第でございます。
  58. 粕谷照美

    粕谷照美君 答えになっていないんです。  補助金が上がるということはわかりました。前進しているということもわかりましたが、教員の給与が年々よけいになるわけですね。長くいればいるほど高くなるわけですね。その給与を支払う側にしてみれば、教員の給与費というのが一番目につくわけですから、その伸びに見合うような実勢として出されるかどうなのか、単価の考え方そのものがやっぱり問題があるのではないかという指摘をしているわけです。
  59. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 経常費補助の考え方でございますが、これはまあ所轄庁でございます都道府県がどのような助成を、どういう方法論を立てておやりになるかということがございます。まあ若干都道府県によりましてやり方は異なっておるものもあるようでございますが、その都道府県の助成に対しまして、それに対応して国が都道府県に対して助成を行うという考え方でやっております。それで、都道府県が計画を立てます場合には、やはり幼稚園の園の数、あるいは学級の数、教員の数、園児の数といったようなものも、計画の要素に入れますと同時に、特に経常費助成の中の構成要素としては、大きい部分であります先生の給与につきましても一応見積もりを行い、かつ、その給与の伸びと申しますか、定期昇給分の伸び、あるいは給与改定等に必要な伸びといったようなものも、ある程度見込みをつけて、積算をするというふうに従来もなっておりますが、ただ、五十三年度給与がどのあたりに落ちつくかということは、まだはっきりいたしておりませんので、そういうものに対応してどういうぐあいになったかということは明確には申し上げにくいのでございます。ただ、先ほど申しましたのは、園児一人当たりの額がかなり伸びておるわけでございますので、これを単純に、給与の伸びがどのくらいになるかわかりませんけれども、比較しましても、かなりの部分吸収をできる程度に地方財政措置としては手当てをしたんではないかというふうに考えておるわけでございます。なお、ちなみに、これまたいま申し上げましたような事情で、推計でございますが、五十二年度につきましては、幼稚園の経常費に対しての国の財源措置は約二六・八%程度ではなかろうか。五十二年度につきましても、これは推計でございますが、この方法論で明年度の財源措置を当てはめて計算をしてみますと、明年度は二六・八から二九・六程度にまで充実が図られておる計算になるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  60. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、賃金が上がっても安心していられるというふうに文部省はお考えになれますか。
  61. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 経常費の補助のための財源措置はあくまでもその必要な経費の一部を補助するというものでございますから、したがいまして、ただいま推計で申し上げましたようなパーセンテージが出るわけでございまして、当然、本来の各私立教育機関におきます財源措置は、当該設置者責任を持って計画を立て、またその手当てについて責任を持っていただくということでございまして、補助金ですべてを事足れりということで安心できるという性質のものでないわけでございまして、これはまああえて御説明するまでもないとは存じます。
  62. 粕谷照美

    粕谷照美君 私も何も補助金で一切を支払いますなんて、そんなことを言っているわけではないのです。お話をした幼稚園先生が、二十五年も勤めて十三万九千円の月給だと、こういうことを伺いますと、とてもではありませんけれども、よくそんな低賃金の中でがんばってますねと、そういうもう感謝の心でいっぱいなわけです。やっぱり子供がかわいいからがんばってますと言うんですけれども、それでも新卒の方々の初任給に比べれば高い給与だから、経営難であります園長さんにしてみれば、大変目に余る額だろうというふうに思いまして、やっぱり長年勤めた方々はやめていただきたいということになるのではないかと、これは想像にかたくないところであります。そのようなことも含めまして、ぜひともこの経常経費に対する補助額というものは大幅に考えてもらいたいと思います。  質問を変えまして、それではこの幼稚園の数についてですけれども、五十七年度には四、五歳児の入園を希望する園児をすべて受け入れることを目標にしてきているわけですけれども、四十七年からの前半五年間の実績ですね、公立の伸び具合、それから私立の伸び具合、これを文部省考えていたものに対してどういうふうに受け取っていらっしゃいますか。
  63. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 四十七年度の当初に、五十七年までに幼稚園の新設計画として五千九百八十一、約六千を設置する計画で進めてまいったわけでありますけれども、五十一年度——つまり五十一年の五月一日から五十二年の四月三十日までの間の実績を申しますと、公立の幼稚園で百四十八園、それから私立幼稚園で二百五十八園、合わせて四百六園なんですが、これはその間の計画から言いますと、五百七十四園ということになりますので、計画に対して七〇・七%ということで、計画どおりには行っていない。ただ中身を見ますと、私立幼稚園の方は、計画を上回って一三四・四%ということになっておりますので、私立の方は計画をかなり上回っている、逆に公立は計画を下回っておると、こういうことでございまして、五十一年度までを累計いたしますと、その間の計画としては、公・私合わせて二千六百二園に対しまして二千三百九十五園ですから、目標額に対して九二%達成されましたと、こういうことになっておるわけです。なお、つけ加えますと、いまの計画のうちで、特に四十九年、五十年、五十一年と、この辺になりますと、公立の幼稚園の方が計画を毎年下回っておって、私立幼稚園の方は計画数よりも数が多いと、こういうような実績になっております。
  64. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は特に公立の計画達成度はどうであるかということをお伺いしたかったわけですが、私立については一三四・四%と明確に数字を出されましたけれども、公立についての明確な数字はどうですか。
  65. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 公立の達成率を四十七年度から申しますと、四十七年度が一〇二・五%、四十八年度が九三・七%、四十九年が七八・五%、五十年が五一・一%、五十一年が三八・七%、こういう数字になっております。
  66. 粕谷照美

    粕谷照美君 大変激減しているわけですね。その理由は一体どこにあるのでしょうか。これはやっぱり、去年の予算委員会における質問で、玉置委員がやっておられますけれども、県知事の中にピンはねをしているのがあると、こういうことを言っていらっしゃいますね。それに対して犬丸政府委員が、「玉置先生のおっしゃいますつまみ食いということの意味は、こういうことであろうかと思います。実は幼稚園につきましては、国庫補助と交付税の措置で、両方で五十一年度三百三十九億の措置をいたしております。しかるに、都道府県におきまして実際に行った幼稚園に対する補助、この実績が百八十二億ということで下回っております。」と。この昨年度の実績はどうでしょうか。
  67. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 五十二年度におきましての地方財政計画における幼稚園分の財源措置が、国庫補助と交付税措置を合わせまして、四百九十三億円であったわけでございますが、これに対します各都道府県の支付決定額で、ただいま手元にあります資料で申し上げますと、幼稚園の学校法人立と、それからその他学校法人以外のと合わせまして、約二百九十億円という数字を手元に持っております。
  68. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、本来そちらに回すべきものが、ほかのところに回っているお金が二百三億円と、こういう理解でよろしいのですか。
  69. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) ほかへ回っておると申しますか、交付税措置でございますので、これは一応そういう積算で措置をいたしますが、これについてどのような各地方公共団体ごとの財政計画と申しますか、予算をお立てになるかは、その公共団体の判断によることでございますので、いま申し上げましたような姿になっておるわけでございます。ただ、幼稚園につきましては、たとえば個人立等のものにつきましては、将来学校法人になるという意思を持っておるかどうかというようなことで、補助が受けられるか受けられないかといったような仕組みがございますために、その間に若干のずれが起きるということもあろうかと存じております。
  70. 粕谷照美

    粕谷照美君 それは問題があるわけですよね。明確に四百九十三億円と、この予算措置があるのに、実際には二百九十億円というんですから、その差額の二百三億円は正しく使われていない。なるほど原則的には、いま御答弁のようなことがあってもいいわけですけれども、しかし、幼児教育を大事にしようというその国の方針から考えてみますと、私どもにしてみればこれは許せない行為だというふうに考えます。  けれども、そのことはさておきまして、それではその学校法人化についてのこの認可基準の通知が五十一年の十月に出されましたね。一年余りたっているわけですけれども、各都道府県の進捗度というのはどんな状況でしょうか。
  71. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 学校法人立以外の幼稚園からの学校法人化の数でございますが、四十九年度中には五十園、五十年度中は六十八園、五十一年度中は七十一園というふうに、学校法人に組織がえをする幼稚園の数が徐々にではございますが増加しておりまして、なお五十二年度中にどのくらい学校法人化ができましたかにつきましては、現在まだ調査中でございます。
  72. 粕谷照美

    粕谷照美君 この数字というのは、文部省が最初に考えていた数よりも多いというふうに考えていますか、あるいは少ないというふうに判断してよろしいでしょうか。
  73. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) なかなか学校法人化をいたします場合にも、いろいろ個々の園につきましては、それぞれの事情でございますとか、それからいろいろ片づけておくべき問題でございますとかがあろうかと存じますし、したがいまして、学校法人化をするということは、そう簡単なことでもないというふうに思っておりますので、これ必ずしも多いとは思いませんが、なおこの五年間というものの年数が始まったばかりでございますので、今後はもう少しふえていくんではないかというふうには考えておるわけでございます。  なお、この学校法人化というものの数は、いま申し上げましたような数でございますが、新設のものにつきましては、これはほとんどが学校法人立ということでできておりまして、たとえば五十一年度には対前年に比べまして二百八十八園、それから五十二年の五月一日現在で、三百二十園が前年に比べて学校法人立というものの幼稚園がふえておるというような事情があるわけでございます。
  74. 粕谷照美

    粕谷照美君 新設はわかるんですけれども、既設に対するこれは緩和基準のわけでしょう。ですから、それはどうであるかという質問をしたつもりでいたわけです。私が「全法幼時報」によってわかったんですけれども、各県内で非常にアンバランスがあるわけですね。たとえば一〇〇%学法化したいという希望の県は三重県、鳥取県、長崎県です。それから、その次一〇〇%までいきませんけれども、高い比率を示しているのが新潟、愛知、千葉、高知、北海道だと、こういうふうになっているんですが、その中で大変気になりますのは、愛知だとか千葉は高い希望の数字を示してはいるけれども、「補助金はもらうだけはもらっておけの宣伝が浸透しているためとも考えられる。」という言葉が記事にあるわけですね。ここのところでちょっとお伺いしたいんですけれども、五年以内に学法化しますと、こういう園は、五年たってもしなかった場合には何か罰則規定でもあるのでしょうか。罰則規定がないとするならば、そのお金は返してもらうということになるのでしょうか。もらい得で終わりということになるのでしょうか。
  75. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 経常費の補助につきましては、学校法人立以外の場合につきましては、やはり所轄庁である都道府県が一々補助の申請を受けます場合に確認をして、将来学校法人になる意思があり、努力をする気持ちがあるかどうかをチェックしているはずでございます。そういうことで助成をしておるわけでございますが、五年を経まして、学校法人にいろいろな事情でならなかったという場合に、御質問の罰則というようなものはないわけでございます。  それから、それまで受けました補助につきましては、これはまあその後の補助は打ち切らざるを得ないと思っておりますが、それまで受けました補助につきましては、これは経常費の補助でございますから、毎年毎年の幼児の保育に充当してもらう、そういう経費でございますから、これを返還をさせるということは考えておらないのでございます。
  76. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、もらい得ということになるわけですね。五年間純然たる私立幼稚園でいった場合と、私は学法化しますよと言って、五年間ずっといって、やっぱり学法化しませんと言って、個人立幼稚園になっていった場合とでは、考えてみればもらい得ということになるのではないですかと聞いているわけです。
  77. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) もらわなかった場合よりは、もらった場合の方が有利という意味ではもらい得ということかと存じますが、私どもはやはり所轄庁である都道府県がいろいろそこの園の運営のけじめ等はチェックをして支給しておるものでございますし、でございますから、究極その補助金の効果が及ぶのはやはり園児、幼児の方に及んでいくということで、ですから幼児がもらい得になるということであれば結構ではないかというふうにも考えるわけでございます。
  78. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういう理解しかないんですか。個人立でずっときて、六年目も個人立でいった場合と、学法化しますよと言って、相当の多額のお金になりますけれども五年間もらっていく、園児一人当たりにでしょう、ですから、大変なんですよ。そして五年目からは個人立になっていった場合と大きな差があるんではないですか。子供のところに返っていったということについては、私は異議ありません。しかし、そのことによって違いが出てくるのではないですか。そうすればこれからも個人立の学校は、じゃあうちも学法化すると言って五年間もらって、六年目からはやっぱり個人立でいこうと、こういうことが宣伝されて、やられていくというふうにはお考えになりませんか。
  79. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 私どもはそういう事例は期待したくないのでございます。やはり所轄庁が確かめまして、学校法人となる努力をするということで補助金の交付をするわけでございますから、できる限りの努力をしていただきたい。ただ、一つの社会的な営みでございますから、状況によりまして、いろいろ不可抗力的な隘路とか、そういったことでできない場合もあろうかと。そういう場合に果たしていままでの補助金をどうするかということにつきましては、これはやはり日常の教育活動に充当されたものでございますので、それをさかのぼって返還をさせるということは考えないということにいたしておるわけでございます。
  80. 粕谷照美

    粕谷照美君 私もすべての幼稚園がそうであるというふうに理解をしているわけではありませんけれども、この全法幼の資料を見る限りにおいては、補助金はもらうだけはもらっておけの宣伝が浸透しているためとも考えられるというのは、国民に対して非常に大きなショックを与えるわけです。この辺のところは悪質なものがあるとすれば、私はやっぱり返還を求めるべきであろうという考え方を持ちます。しかし、そうは言っても、そのときになって、またいろいろな事情があって学法幼になれない場合もあるでしょう、これは意図的なものではないわけですから。その場合については、あなたのおりしゃったような答弁も納得ができますけれども、その辺についての御討議を今後もやっていただきたいと思います。  さて、それではお伺いいたしますけれども文部省自体はやっぱり学法化を指導しているわけですね。なぜ個人立よりも学法化がよろしいというふうに指導されるのですか。
  81. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) やはり学校教育法の基本原則として、私学は学校法人によって設置されるということが前提になっておるわけでございまして、ただ御承知のように、幼稚園とか特殊教育諸学校につきましては、従前からのいろいろな事情もございまして、学校法人立以外のものも現にございましたし、それから実際に運営もされておるわけでございます。そういうことで、まあ現状では両方を認めるということでございますが、どちらかと申しますれば、教育というものはやはり継続性でございますとか、安定性でございますとか、そういうことが大事でございますので、そういう意味合いの上から、個人立でもそういうふうにやっていっていただくというところは多いと思いますけれども、制度の仕組みとしては、そういう意味から学校法人の方が望ましいということで、そういう基本的な立場でこれまでやってきたわけでございます。
  82. 粕谷照美

    粕谷照美君 りっぱな個人立があることも私も直接お伺いして見ておりますから、その点については構わないわけですけれども、しかし原則的には学法化していくということが非常に重大でありますが、しかし、大事であるというふうに考えていらっしゃるのであれば、なぜ学教法百二条、ここのところにある「当分の間」というものを削除をされないのですか。いつになったらその「当分の間」というものはなくなるのですか。
  83. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) これは当初からこういう規定がなされておるわけでございまして、「当分の間」というのを具体的にどの程度の長さで処理するかということば、個々の法令とその法令が規定しております事柄実態、それから見て、これは区々であると存じます。ただいま御指摘幼稚園の問題につきましては、現在のところ「当分の間」がいつまでであるかということについて、明確な見通しをつけるという状況にはないというふうに現状では考えておるわけでございます。
  84. 粕谷照美

    粕谷照美君 そこがおかしいんですね。「当分の間」が、たとえば幼稚園できましてこれで百年ですけれども、「当分の間」が一体いつまで続くのですか。百年も二百年もまだこれから続くのですか。大変姿勢が悪いというふうに考えるんですよ。ですから、この「当分の間」というものを明確にしていただきたい。  それとあわせて、私は時間がありませんですから大臣の御決意をお伺いしますけれども私立学校はいま局長がおっしゃったように、学教法二条によって、学法人の設置するものに限られると、こうありますけれども幼稚園は学教法百二条で「当分の間、学校法人によって設置されることを要しない。」と、こうあるのです。だから、ここのところで矛盾が出てくるわけですね。このこと自体は私どもは民間の恣意に幼児教育をゆだねて、国家が国の責任において処していこうという姿勢が足りないからだというふうに考えます。この問題について大臣はどのように取り組んでいらっしゃるおつもりかお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  85. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) やはり幼児教育の場としての幼稚園が、ずいぶん昔から自然発生的に私立幼稚園で行われてまいりましたことは、これはもう粕谷委員も御承知、御認識のとおりでございます。その現実をみつめて「当分の間」という字句が入ったと思いますけれども学校法人化するためにいろいろな困難な事情もまたありましたけれども、そういう困難な事情を克服するために、各都道府県所轄庁として持っておりました学校法人化するための基準、学校法人として認可をいたします基準の緩和を図りましたり、公・私立幼稚園の適正な配置についての協議会を設けるなど、そのような方向で都道府県に対して指導、助言をやってまいりましたので、私はやはり先ほど初中局長お答えをいたしましたように、公立の幼稚園が計画どおりいかない、逆に私立幼稚園が非常に計画以上の実績を上げてきている。これは一つは地方公共団体の財政の問題等もあったかと思います。また先ほど管理局長がお答えをいたしました、交付税の配分どおりに公共団体がそれを使っていない、このこともまた、各都道府県の経済事情もここ三、四年の大変な変わり方にも原因するかと思いますけれども、そのような事態事態といたしまして、方向としては先ほどお答えをいたしましたような、法人化への問題点の緩和を図る趣旨の指導都道府県に対していたしておりますから、これからもなお一層、自治省における交付税算定をより充実させていただくようにお願い、連絡をとりながら、私どもの助成金についても、充実強化を図りつつ、学校法人化への努力をさらに続けてまいりたい、かように考えるものでございます。
  86. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私は、養護学校の義務化について、何点かお聞きしたいと思います。  来年——昭和五十四年四月一日から養護学校は義務化になります。義務教育は制度的に完成することになるわけでございます。で、この養護学校の義務化というのは、実質的にはすべての障害児に就学する機会を保障するということになる。すべての障害児に教育を受ける権利を保障するということになるんだと、こういうふうに思います。そして、その対応すべき問題と文部省が取り組まなければならないと、こういうふうに考えておりますが、この点いかがでしょうか。
  87. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 養護学校の義務制の趣旨から、障害児に対しまして、可能な限り教育の機会を提供することに努めなければならない。すべての障害児に対してというのが第一の基本的な問題点でございます。また、そうあるべきと心得ております。  そこで、第二番目に問題になりますのは、やはり現実の問題として、その障害の種類、程度等からして、医師の診断等によりまして、治療にもっぱら専念をしなければならない、そういう必要があるために、学校教育を受けさせることが極端に申しますならば生命的に適当でない、そういうお子さんがおられることもまた事実でございますので、いまの第一点の基本的な趣旨、第二点の現実問題、あわせお答えいたしますと、画一的に就学できないお子さんはゼロであるということにはなりませんけれども、やはり何といっても、第一番目にお答えをいたしました義務制の趣旨を踏まえて、この養護学校充実に努力をしてまいらなければならないと、改めて肝に銘じて考えているところでございます。
  88. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、養護学校義務化に当たりまして、政府は障害児を持つ保護者に対して、全員就学についての趣旨、これを漏れなく知らせる。不就学児をなくす努力というものがまず第一にされなければならない、こういうふうに思います。とかく障害児の就学ということについて消極的な保護者もある、こう考えましたときには、いま国が義務化に踏み切ったんだという力強い呼びかけ、そういうものはぜひ必要だと。文部省としてもお考えではあると思いますが、その具体策、これをお聞かせいただきたいと思います。
  89. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) やはりこの問題は保護者の方々に、十分の御認識と御理解をいただかなければならないことは、もう議論の余地のないところでございます。やはり第一義的には、養護学校設置者でございます各都道府県教育委員会において、その趣旨の徹底に最大限の努力をしていただかなければなりません。そういう意味で、就学指導委員会等のことにつきまして、国がその経費補助をいたしましたのも、一つはその趣旨に基づくものでございます。同時に、本年五十三年度におきまして、心身障害児教育に関します理解を得て、その普及、促進を図りますために、保護者等に配布する小冊子を作成する経費を、五十三年度予算で計上いたしているところでございます。
  90. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう少し具体的な広報が必要じゃないか。いまテレビもある時代でございますし、何かそういう点はお考えになっていらっしゃらないんでしょうか。
  91. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 現在までのところ、いわゆるテレビ、ラジオ等の機関を使ってということは考えておりませんが、いま大臣お答えしましたように、この小冊子をつくる問題ですけれども、これはやはり障害児の教育というのは、かなり詳しくこういう障害のお子さんは教育を受けるのが大切なんですよということを、やはり個々に、丹念にPRする必要があると思うのです。そこで就学指導委員会等をつくって、そういうことをやる。その際の資料としても、障害を持っておられる子供さんの親一人一人について、そういう趣旨がよくわかるような冊子をつくるという趣旨でございますので、当面それに力を入れて、私どもPRに努めてまいりたいと、こういうふうに考えるわけです。
  92. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、義務教育になれば就学義務の猶予、免除ということについての取り扱いは、義務化以前よりは異なってくるのではないか。当然異なってこなければならないと私は思います。その点についてお尋ねするのですが、規定には病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村教育委員会は就学義務の猶予または免除を行うことができると、こういうふうになっております。  そこで、この病弱、発育不完全、こういう点には、義務化になればそれなりに教育的な対応をしなければならない。何かの方法教育すべきだ。就学義務の猶予、免除については、ここに言われているように、真にやむを得ない事由によって、教育的対応が不可能だという場合に限って、猶予または免除の取り扱いをすべきで、この適用の基準を再検討すべきだと私は思います。  そこで、一例を申し上げますと、昭和三十七年の十月十八日付で、初中局長の通知第三百八十号が出されておりまして、ここに猶予または免除についての指導がされてございますが、この中を見ましても、ここにございますように、(2)の中の白痴その他についての猶予または免除を考慮することの中で、「養護学校における教育にたえることができないと認められる者については」というようなことが、これは義務化されないときはこれでいいと思いますけれども、義務化されれば、こういうところはもう当然検討問題点だと私は思います。その他、児童福祉法などによる措置にゆだねることが適当だというようなことも出ているわけです。向こうへ行けと言わんばかりの。養護学校をつくって、全部そこに入れるということが基本的なたてまえならば、こういう点ももう少し検討さるべきじゃないかと思いますので、専門的な再検討は当然なされると思いますが、その点いかがでしょうか。
  93. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 養護学校教育の義務制の趣旨からいたしましても、病弱、発育不完全、こういう子供たちに対して可能な限りこういう教育の機会を提供していくのが基本でございます。医師の診断等によって治療に専念をしなければならないという、学校教育を受けさせることが適当でない最小限と申しますか、そういう医師等の判断から慎重な対応をしなければならないという一部分の子供さんたちに対しまして、そういった猶予、免除の措置に当たりましては、心身の状況を正確に把握をして、きわめて慎重に判断をするよう指導していこうとしているわけでございます。また、できるだけ猶予措置でこれはやりたい、免除という措置は例外的な場合に限定する、そういう考え方に立ちまして、ただいま御指摘の三十七年の通達というものは、猶予、免除措置基準を含めまして再検討をいたすことにしております。
  94. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、障害児の教育措置の判別、これが就学指導委員会検討により行われ、そして教育委員会がこれを決定するということになっているようですが、この就学指導委員会、この委員会についてお聞きしたいんです。  まず、運営状況はどうなっているか。年に平均して何回ぐらい会が開かれているか、時期的にはいつごろ開かれているのかというようなことをお尋ねいたします。
  95. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 就学指導委員会は、五十三年度までには全都道府県に、それから全市町村をカバーする地域に設置される予定で進めておりますが、五十二年度にすでに設置されておりまする都道府県、市町村の就学指導委員会の開催状況を見ますと、都道府県の場合は年四・二回、市町村の場合は三・三回となっておりまして、大体の開催の時期は十二月から一月、二月と、この辺の時期になっておるわけでございます。
  96. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この就学指導委員会の活動に対して、先ほど大臣からもこういうことをやっているという、大変御期待をかけていらっしゃるようなお言葉がございました。ところが、国の補助を見ますと、非常に少ないわけです。都道府県に対しては二百十八万円の半分、百万円足らず、市町村の場合には二十一万八千円の三分の一、約七万円足らずの補助でございます。そして、権威ある人たちを十人とか、十五人とか任命しているわけです。これは一体どうなのかしら、余りにも少ないのじゃないか。就学指導の機会が四・二とか、三・三とか、これで果たしてこういうむずかしい検討がされているかどうか、私は非常に不十分だと思います。その回数が少ないというのも、結局国の補助が足りないからだ、ぜひ予算の裏づけをもっとやっていただきたい、必要なメンバーが確保できるように、活発な検討ができるように、そして適切な就学指導ができるようにすべきだ、こう申し上げるわけでございます。
  97. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 確かにこの予算の補助単価は、御指摘のとおり、県の場合は事業総量二百十八万に対して二分の一補助、市町村の場合は二十一万八千円に対して三分の一補助、こういうことになっておりますので、補助金が少ないから開催回数が少ないのか、開催回数が少ないから補助金が少なくなるのか、ただ、五十二年度の実績を見ますと、府県からの申請額の平均は百五十四万六千円、市町村は十九万八千円、こういうことになっておるわけでございますが、そういたしますと、先ほど申しました回数程度ということになるわけでありまして、今後きめ細かく就学指導をさらに充実していくということは、私はこれは非常に大切なことだと思いますので、市町村、府県の段階における、こういう面についての努力と充実とを見合いながら、一層内容を充実するように予算の面でも努力をしてまいりたい、かように思うわけでございます。
  98. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この就学指導委員会の仕事は、先ほどお聞きしますと、十二月、一月、二月、その辺で開かれているようですけれども、就学の時期だけでなく、就学後において児童、生徒の発達とか、あるいは変化、あるいは転学、就学前の種々の教育相談にも応じられるように、非常に大事な私は会であると思いますので、こういう会は常設の機関として必要だ、たとえばですけれども、特殊教育センターというような名前をつけて、専門的な教育相談機関としての整備、これがぜひ必要であると思いますが、この点いかがでしょうか。
  99. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先生指摘の特殊教育センターというようなものは、だんだん必要だと思うんです、体に障害を持つ子供さんたちが就学をした後の問題として、このようなやはりセンターというものを置いて、教育と医学と心理学との総合的な見地からの教育相談でございますとか、検査でございますとか、そういうことを行います特殊教育センターを、各都道府県に逐次置いてまいらなければならないことだと考えます。ただ、就学指導委員会というものはこれと少し性格を異にする委員会考えていった方がいいと私ども考えておりまして、就学指導委員会については、もっぱら就学指導に専念をしていただく、就学した後のお子さんたちのためには、各都道府県に特殊教育センターというものを置いて取り組んでいく、こういうふうにしてまいりたいと考えているところでございます。
  100. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 関連でございますが、障害児の幼児教育についてお尋ねいたします。  障害を有する子供の場合は、特に幼児からの教育が大切だ、このように言われております。  まず、そこで、国の養護学校の幼稚部、この整備が計画されております。ところが見てみますと、計画の当初からその目標が幼稚部に就学させるべき該当幼児が二分の一というふうになっております。全該当幼児の二分の一、どうして二分の一というような目標を立てたのか、最終段階のときに二分の一、それを具体的に見てみますと、非常に大ぜいの幼児が入りたくても入れない、こんなような現状になるわけですね、どうして二分の一を目標にしたのか、その点いかがですか。
  101. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) この四十七年から五十六年までの十年間に、いまおっしゃるように対象幼児の半分が入れるように幼稚部の整備を図る、こういう計画を立てたわけでございますが、御承知のように、この養護学校教育というのは非常におくれておりまして、障害児の実態を国で初めて調査したのも実は昭和四十二年でございます。その前は一体どのくらいの障害のお子さんがいるものかということも明確でなかった点もあったりしているわけです。そこで、国としてはできるだけ早く義務教育部門の完成を図りたいと、こういうことを第一の念頭において整備をしてきたわけでございます。  そこで、幼稚部につきましても、できることなら一遍に全部の整備計画を立てたかったわけでございますが、県の財政等を考えました場合、そうは言っても、並行して幼稚部まで完全整備ということはむずかしいであろうと、こういうことで四十七年からまず十年間で半分を対象とすると、こういうことにしたわけでございます。そこで、五十四年から御指摘のように、小・中の義務制が施行され、それに対応していま各県では小学部、中学部整備を急いでおりますので、それが整備されましたならば、直ちに私どもとしても幼稚部の方にさらに力を入れて整備を図ってまいりたいと、こういうふうに考えるわけでございます。
  102. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、この養護学校幼稚部の整備計画は非常におくれております。今後の見通しはどうなのか、またおくれている原因というものはどこにあるのか、それをお聞きしておきたいと思います。
  103. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) いま申しましたように、この十カ年計画のうち、昭和五十二年度までに四百四十五学級を整備する計画でおりましたが、現実には五十二学級しかできていないということでございまして、これはまあ御指摘されたとおりでございます。その原因とするところは、結局この小・中学部に大部分の精力をとられておるというのが現実であろうと思うわけでございます。養護学校小・中学部整備計画につきましては、四十七年当時二百六十一校ありましたのを、さらに二百四十三校でしたかつくって、約五百校を整備する計画でございましたが、その後やってみますと、そのような学校は大体一校の児童、生徒の規模を百五十人と抑えておるわけですけれども、現実には、やはり百五十人規模の学校をつくりますと、子供の通学距離の問題等もあってなかなかうまくいかない。そこで、規模は小さくても、もっとたくさんつくらにゃいかぬというような課題もありまして、いま非常に各県とも、どういう配置で、どのくらいの規模の学校をつくるかということについて、最後の配慮をしておるというような現状でございますので、繰り返しになりますが、その問題をまず一応のめどをつけてから、幼稚部の方に力を注ぎたい、こういうことで考えておるわけでございます。
  104. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、養護学校が義務化されますと、法令等に定められた程度の精薄児、肢体不自由児、病虚弱児は必ず養護学校に就学しなければならないということになるわけで、そうしますと、いままで特殊学級、普通学級に通学していた障害児も、養護学校に入れられるのではないか、転校させられるのではないかという心配が一部の保護者にあるのを聞いております。こうしたことについては、機械的に行うのではなくて、障害児の立場、保護者の状態、いろいろ考えて、それこそ就学指導委員会など、専門的な機関でよく検討して、納得いくように、そして、混乱のないようにすべきであると思いますが、この点はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  105. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 養護学校の義務化というのは、私どもは二つの義務があると考えているわけです。一つは、やはり設置者養護学校を設立をする義務、もう一つは心身に障害を持っているお子さんを就学させる義務、しかし、どこに就学をするかということは、それはやはり施設等も整い、専門的な教育を受けた、そういう教員がおられる養護学校に行かれることが一般的には好ましいことであると考えております。しかし、いま御指摘になりましたような、現に小・中学校に就学をしている、あるいは普通の小・中学校の特殊学級で教育を受けている、そういう、どう申しますか、レアケースのお子様とでも申しますか、そういうお子様に対して、無理強いに養護学校に引き離していくというようなことは考えておらないところでございまして、やはり適切にその障害の種類なり、程度なりを把握をしていただきまして、いま通っておられる学校の御意見も聞き、御両親の御意見も聞く、そういうことを通じて慎重に各種の検査、調査などを行いました上で、総合的な見地から就学なさる道を教育委員会考えていく、こう考えているわけでございます。原則は原則、レアケースの場合はレアケースの場合で対応していくべきものだと、さように考えております。
  106. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それではもう少し念を押しておきたいんですけれども、現在入っている特殊学級、普通学級に通学している障害児は、強制的には変えていかない、こう考えていてよろしゅうございますね。
  107. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先生、それはもう個々ケースによるんではないでしょうか。現在特殊学級に進んでおられて、そのまま特殊学級へ行く程度の障害のものである者、そしてまた御両親も特殊学級にそのまま通わせたいと思われる場合も当然ございましょうし、やはり特殊学級へ行くのは無理だなというお考えの御両親もあるかもしれません。それはやはりケース・バイ・ケースの問題であろうと思うんです。ただ基本的なことは、いま先生おっしゃいました無理強いというようなことは考えておらないところでございます。
  108. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、養護学校と児童福祉施設との関係についてお尋ねいたします。  養護学校と児童福祉施設、この内容を比べてみますと、機能的に同じような部分がいろいろございます。先日、東村山福祉園、これは重度精薄児の施設ですが、そこを訪ねましたが、近くに清瀬養護学校をつくって、そこへ通学させるということになっているようです。施設から学校へ行っても、児童は同じことをやるようなんです。一方は先生、一方は指導員という点では違いますけれども、重度の精薄児が特別変わったことをやれるわけもないわけです。こうしたことを考えますと、両者関係について、施設と学校のあり方について、これは調整できるところは調整していかなければ、教育と療育の効果というものはより以上上がらないのではないか。より以上上げるための研究、調整というものは今後非常に大事だと、こう思いまして、むだのない、そして効果的な方法が生み出されてほしいと思いますので、お尋ねしているわけでございます。
  109. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 重度精薄の子供さんを収容するような児童福祉施設をどういうふうに考えていくかということは、先ほど先生が御指摘がありました義務化という場合に、すべての子供をできるだけ小学校、中学校の児童、生徒として扱ってあげたいと、こういう気持ちがあるわけでございますから、児童福祉施設にいたきりで、その施設が何ら教育施設としての学校教育法上の立場を持たないと、どうしてもそれは圏外に出てしまうと、こういうことになります。そこで、そういう場合に、いまの訪問指導というような形で、施設におる子供さんに対して学校の教員がこちらから出向いて行って、養護訓練のような教育内容を教授するという方法もございましょうし、それから、障害の程度によっては、いま申しましたように外へ出て、近くの養護学校へ通っていただくという方向もありましょうし、児童福祉施設にもう一つ看板をかけて、何々小学校分校という形で、いわば二枚看板で、福祉と教育と混合的に運営するという方法もあろうかと思うのでありますが、それらの点につきましては、御指摘のようにこれは画一的に考えてはやはりいけないので、それぞれの施設及びそこに収容されておる子供の実態というものを考えて、どういうふうにしたら一番効果的であり、かつ公教育的であるかということを考えなければいけないと思うわけでありまして、御指摘のように、そういう点についてはよく各県の関係者に趣旨も徹底し、また努力も願って、摩擦を起こさないで運営ができるようにひとつ努力をしたいと、こういうふうに思うわけでございます。
  110. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 一言もう少しつけ加えさしていただきますが、摩擦を起こさないでとおっしゃいますけれども養護学校の方は文部省、児童福祉施設の方は厚生省というふうに、管轄が違っているわけなんてすね。そこに摩擦が——摩擦というんじゃないですけれども、何かなわ張り根性みたいな、もっと話し合いしてもいいんじゃないかと思われることすら、話し合いがされてないような現状を見ておりますので申し上げるわけで、文部省としては、じゃ厚生省のそういう係の方ともよく話し合いましょうというその一言があっていいんじゃないかと思うんですけれども、さっぱりないので申し上げるわけです。厚生省と文部省と本当に話し合いをすれば、もっともっと効果が上がる、現場はもっとやりよくなるということがいろいろな面でありますのです。それは御存じだと思うんですね。ですから上の方がそういう点をもう少し何とかしょうという姿勢が一番大切じゃないかなと思いますので、お聞きしているわけです。
  111. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 御指摘の点は全くそのとおりだと思うわけでございまして、私も実は厚生省の児童家庭局長とはその点でこの間もお話をしまして、お互にいろいろ問題を抱えて、なかなか理屈どおりにいかない面もございますけれども、今後もひとつできるだけ協力してやろうやということでおりますので、御期待にどれだけ沿えますか、できるだけ努力はしたいと思っております。
  112. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に養護学校の適正配置についてお尋ねいたしますが、盲・聾・養護学校の建設には、地理的な条件などがありまして、いろいろと考慮をもっとされなきやならないという点がたくさんございます。恐らく土地の確保、こういう点で片寄った配置になっていると私は思いますが、これをできるだけ適正配置できるように、国の立場で配慮しなければこれはできないと思います。そういう点で、特殊教育の機関は都道府県設置する義務になっておりますが、これも、たとえばですが、一定規模以上の大きい市とか町などについては、障害児の教育機関を設置できるような、制度上の検討をする必要があるんじゃないか、その場合盲・聾・養護をまた別々じゃなくて、総合でつくるというようなことも考えてもいいんじゃないか。  もう一つは、市・町・村立の場合も国庫負担率を都道府県並みに引き上げるというような、まず財政上の措置を図るということは絶対的な条件だと思いますが、こういう点の配慮、これは検討されておりますでしょうか、またそれに対してのどんな御意見をお持ちでしょうか。
  113. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 養護学校の配置について、国が積極的に何らかの力を持って前面に出てするということは、これまでいたしていないところでございまして、まあ現実には各都道府県において、どこに養護学校をつくるかというその場所の選定から、土地の確保で非常に苦労され、かつ先ほども申しましたけど、一県に養護学校をつくるといっても、そうたくさんはつくれませんから、どうしても子供の通学距離との関係、あるいは寄宿舎をどうするかという配慮、そういうことを総合的に考えなければならないんで、どこへどのぐらいの規模の学校をつくるかというのは、非常に苦心をしているように私は聞いております。  そこで、一般にこれは県立の学校であり、県の設置義務を有するものでありますから、国が直接関与する性質のものではないと思いますけれども、私どもも従来からそういう個々ケース等については御相談に乗り、アドバイスをしたりいたしておるわけでございます。そして施設の建設費の助成につきましては、御指摘のように都道府県が新設の場合三分の二補助ということにいたしましたが、それをたしか指定都市まで三分の二ということにいたしたわけでございまして、その線でこの五十三年度最後の仕上げをやっていただいておると、こういうことでございまして、五十四年度以降になりますと、そう新設の問題はたくさんは出てこないかと思うんでございますが、引き続きいまと同じような考え方で、なおできるだけいろいろな指導、助言をして、適正な配置ができるように努力をしてまいりたい、かように思うわけでございます。
  114. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 養護学校教員の配置基準についてお尋ねいたしますが、その前に、養護学校教員で腰痛の人がふえていると聞いておりますが、実態を掌握していらっしゃいましたら教えていただきたいと思います。
  115. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 掌握しておりません。
  116. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 障害の重度化、重複化、それに伴って常時生活介助を必要とするために、教職員の負担というものは非常に過重になっております。現場の先生方にお聞きしますと、本当に想像以上の負担になっているわけです。こうした先生方の健康状態に、腰痛というものはもう本当につきまとっている。非常にお気の毒だと思っております。そこで、介護的な業務の必要に応じて教員の定数をふやす、もう絶対これはふやさなきゃならないと、現場へ行きますとどこもそういうふうに思うわけです。で、この検討はぜひしていただきたい。する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  117. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 教員定数の長期計画は、五十三年度で第四次を一応終わるわけでございます。その悉皆調査をいたしまして、その次の計画を立てるわけでございますけれども、この次の計画の中で、やはり養護学校教員のことは、特に重点に置いて検討しなければならない問題と心得ております。
  118. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ぜひお願いいたします。  また、医療、養護、訓練という養護学校における内容を考えましたときに、医師、看護婦、OT、PT、言語訓練、こうした専門職が絶対に必要だ、こういう声が、要望が非常に強いわけです。その点はいかがでしょうか。
  119. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 昭和四十九年度から五十三年度までの第四次の五カ年計画で、養護学校教員配置について改善を図ってまいりました点は、一つは、学級編成の基準を一学級八人と、それから、重複障害、重度障害の場合は五人というふうにいたしたわけでありますが、これも先生教育活動を的確に行い、教育効果を上げるためにどのぐらいの学級編成がいいかというのが一つの今後の課題だろうと思います。  それから、いまの各種の職員を置く問題ですが、その一つとも言えようかと思うんですけれども、この五カ年計画では、手足の機能訓練とか、発声訓練とか、聴覚訓練とか、そういう各種の養護訓練を一つ教育活動として免許法上も位置づけ、それを担当する先生というものを特に肢体不自由児を対象とする学校等においては、たしか三名だったかと思いますが、配置をするというようなことをいまやってきておるわけでございますが、そのほかに、この予算上の措置としては、子供の学校内での移動や、登・下校の際の介助をするための介助職員に対する予算補助というのは、ことし、たしか四百五十人分予算計上いたしましたが、そういった増員をいたしておるわけでございまして、今後はただいま大臣が申し上げましたように、いろんな面から本当にこの養護学校教育を一層充実するために、どういう職員をさらに置くような方向で検討すべきかということも、ひとつ十分検討さしていただきたいと思います。
  120. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、訪問教育の位置づけについてお尋ねいたしますが、在宅の障害児及び施設、入所児に対する訪問教育、これは教育方法、内容、形態、教師の身分、処遇、学籍の有無、各県ばらばらの実態でございます。これはぜひ義務化になった養護教育でございますから、制度としての訪問教育の位置、これは明確にすべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  121. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 確かに現在訪問教育をいたしております県においても、その対象となる子供を、学籍を持った児童、生徒としておる場合と、そうでない一種の社会教育的な教育活動としている場合と両方あるようでございますが、義務化という見地からいたしまして、私どもはこれを学籍を持った児童、生徒として、いわば学校が出向いていって、学校教育活動をその家庭なり、病院ですると、こういう考え方整備をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。そして、その実際に教育する内容でございますが、現在大体訪問指導教員設置する場合の予算補助の基礎となる考え方は、一人の子供について一週二日、一回二時間程度の養護訓練を主とする教育活動ということにいたしておりますが、このような教育訪問指導のあり方につきましては、実は二、三年前にその実態を調べました、それを基礎にして考えてきておるわけでございますが、今後も大体そのくらいの方向で考えてまいりたいと思うわけでございます。そしてそれを担当します教師につきまして、これは現在、いま申しましたように非常勤講師の予算補助という形で実施をしておるのが大部分でございますが、この先生方をどういう身分にするかというようなことにつきましても、早急にひとつ詰めて、同じ方向を出したい、こういうふうに考えております。
  122. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 特に訪問指導員に対する国の補助は、先ほどのような基準で、しかも一時間千四百九十円の半分、七百四十五円という本当にわずかなお金が国の補助として出されている。それも地方自治体でやったのを聞いて、それに出しているというような出し方だったらしいですね。いままではそれでもやむを得ないとしても、義務教育というふうに来年度からなるんですから、これを制度的に整えるという点から、財政的にもぜひ検討していただきたい。月額十万円程度で片手間の仕事のような仕事としてやられているのが実態じゃないかと、こういうふうに思いますので、その点検討の必要を強く申し上げるわけです。その点いかがでしょうか。
  123. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 訪問指導の補助金は、いま申しましたように非常勤講師の手当という形になりますので、そうしますとどうしてもこれは予算の積算としては、一般のそういった職種の非常勤職員の賃金は幾らかということで横並びを考えますから、飛び抜けた予算を要求してもなかなか実現できないというのが実情だと思います、しかしおっしゃるように、この仕事の非常に大事なこと、また適切な人を得なければならないということもございますので、どういうふうな身分にして、どういうふうな処遇をするのが一番よろしいのかということは、先ほども申し上げましたけれども、よく検討さしていただきたいと思います。
  124. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 国立大学の付属養護学校についてお尋ねいたします。  国立大学の付属養護学校の重度、重複学級、これはどのくらい設置されているでしょうか。それから、寄宿舎を持つ学校はどのくらいあるか。スクールバスで通学させている学校はどのくらいあるか。この三つの点をお尋ねいたします。
  125. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) まず、教員養成大学学部の付属養護学校設置につきましては、これまで鋭意努力をいたしまして、昭和四十六年当時十五校でありました養護学校が、五十三年度新設の三つを含めまして、五十三年度で三十七大学に三十八校の設置を見るに至っております。これらの付属養護学校での重度、重複学級につきましては、現在筑波大学の付属大塚養護学校に重複障害児学級を、これは精薄と言語障害でございます。さらに筑波大学の付属桐ケ丘養護学校にも重複障害児学級を設けて教育に当たっております。桐ヶ丘の方は肢体不自由と精薄でございます。重度の者につきましては、これはだんだんに重度の者の入学がふえてまいっております。現在小学部では全児童の一三%程度がIQの三十未満の者、中学部におきましては全児童数の五%程度がやはりIQの三十未満の者ということに相なっております。  それから寄宿舎につきましては、これは桐ヶ丘の着護学校のみに設置をいたしております。スクールバスにつきましては、現在五十三年度分を除きまして三十五校中所有しているものは二十校でございます。
  126. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 国立大学の付属養護学校は、教員養成のためにある学校だと思います。そこで、そこに就学している障害児は、むしろ重度、重複化の障害児であることが望ましい。ところが、先ほどお聞きしましたように、現状は軽度の障害児を就学させているという傾向のように思うわけです。教員養成と関連して、国立大学付属養護学校の障害児の内容は検討する必要があると思います。もっと力のある教員養成をするために、やはりそこに就学させる障害児も軽い障害児だけを入れるんじゃない、そういう付属養護学校にしていきたい、すべきだとこう思いますが、その点いかがでしょうか。
  127. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、付属の養護学校は、大学学部の特殊教育に関する教育研究へ協力をし、さらに学生教育実習に当たる。それと同時に、公開授業の実施、あるいは研究発表会、研究紀要の発行などを通じて特殊教育の推進に努力をしている、そういうことでございます。御指摘のように、研究に協力をするという面からしますと、重複あるいは重度の障害児を、積極的に受け入れて学級をつくっていくということが必要でございます。また一方、学生教育実習という点を考えてまいりますと、やはり多様な障害児というものを入学させていくという配慮が必要でございます。いずれにしても御指摘の点は私どもも十分に配慮すべきところであると考えますので、いま申し上げましたような付属養護学校の目的を十分に考えながら、今後慎重に検討してまいりたいと存じます。
  128. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一点、養護学校教育内容についてお尋ねいたしますが、児童、生徒が重度化、重複化しておりますので、現場の先生教育内容の点で非常に苦労されております。教材、教具一つを見ても、本当に工夫して、苦労をしていらっしゃるなということを痛感するわけですが、この教育内容の研究、あるいは教材、教具の開発、こういうことについて、国としてももっと力を入れるべきであると、こう思っておりますが、その点どのようにやっていらっしゃいますでしょうか。
  129. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 心身の障害が重度、重複しております児童、生徒の教育内容、方法の研究及び教材、教具の開発につきましては、国立特殊教育総合研究所におきまして、実際的な研究を総合的に行いまして、さらに研究所と相互に協力をいたしまして、国立の久里浜養護学校では、重度、重複障害児を対象に実践研究を行っておりますほか、特殊教育実験学校を設けて研究等の充実を図っておりますとともに、それらの研究成果の普及を推進しているところでございます。  また、先生が御指摘のように、教員方々が非常な御苦労のもとに教材、教具を創作する場合が多いのが現実の問題でございますが、そのことは今後も期待をしてまいらなければなりません。それに必要な材料費の一部につきまして、昭和五十三年度から補助を行うことにいたしましたのも、こういう教員方々に引き続いて御苦労をいただきたいと願うからでございます。なお一層このような補助の充実に努めてまいりたいと考えております。
  130. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まず大学局長にお伺いをします。  三月十八日の予算委員会で、私大の補欠合格者に対する寄付金問題について、何校かについては調査をするというような答弁をいただいておるわけですが、その後調査をされた結果、またこれらの問題の寄附金の返却等について、具体的なあらわれ等があればお聞かせ願いたいと思います。
  131. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘をいただきました大学については、各大学からそれぞれ事情聴取をいたしました。共立薬科大学、大阪経済法科大学、追手門学院大学の三大学につきましては、学生募集要項に明示をしていない寄付金をやはり入学の条件としていたと考えざるを得ない面がございます。大学側は必ずしもそれは入学の条件ということではないという趣旨を申してはおりますけれども、しかし実態を見てまいりますと、やはり実質的には入学の条件となっていたというように考えざるを得ない面がございます。したがいまして、これを廃止をするように強く三大学に対して指導をいたしまして、各大学ともこれらについては明年度以降改善の方向で検討を申して承ります。  近畿大学につきましては、これは学生募集要項に明示をされているものでございます。前回もお答えを申し上げましたように、寄付金というよりはむしろ学生納付金と考えるべきものでございます。このような場合は、一概に入試の公正を害するとは決めつけられない面がございますけれども、一般的に申しまして、補欠の者からだけこうした形で特別の学生納付金をとるということは好ましいことではございません。今年度もできるだけそれはやめるようにということを、各大学に申しているところでございますので、これまた大学に話しまして、できるだけ廃止をするように指導をしております。そういう状況でございますが、やはり共立薬科大学、大阪経済法科大学、追手門学院大学につきましても、徴収をした寄付金を返還させるかどうかということにつきましては、これは私どもの方で返還を指導をするということは考えておりません。やはり各大学判断によって自主的に対応されてしかるべきものと、かように考えます。
  132. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 それ以外の大学についてその後調査をされたのがあったらあわせてお聞かせ願いたいと思います。
  133. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 五十二年度まではかなりの大学で補欠から寄付金を徴収するということが行われていたというように私は考えております。もちろんその実態文部省が掌握をしているわけではございません。五十三年度の場合も、全体の大学状況を掌握しているわけではございませんけれども、傾向としてはやはり補欠から寄付金を徴収をするというようなことは、各大学ともできるだけこれを控えるような努力をしていると承知をしております。具体的に御指摘をいただきました大学以外に問題になったものといたしましては、大東文化大学で、五十二年度まで補欠合格で入学する者から寄付金を徴収していたという事実がございました。
  134. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 どこですか。
  135. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大東文化大学でございます。五十三年度からは正規、補欠にかかわらず、入学者全員に学債を一口以上引き受けさせることとした、そういう報告を受けております。
  136. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私に対しても、あの質問以降手紙が寄せられたり、あるいは電話をよこされたり、幾つか情報が入ってくるわけですが、確かにその後追手門学院、あるいは近畿大学にもケースが出ておりますし、あのときは名前は挙げませんでしたけれども、摂南大学というようなものも大体同様な状況にあった。これらで、この学内で決めて、申し出があった場合には寄付金を返却するというようなことを決めておるところも出てきております。それらについても大学ごとにかなりまちまちであります。本当に厳しく努力をしてもなおかつ資金に苦しむところと、よそもやることだからというので、まあよそ目で言えば比較的権利のようにして安易にやっているところもあると思うんですけれども、むしろ厳しいところでも、かなり努力をして返却の方向へ歩み始めている。たとえば摂南の場合には、三年以内に全廃をしますというような約束をした。初めは学内で一年以内にということを事務局で言うておったが、内輪で苦情が出て三年にしたというような情報も聞くわけですね。しかし、経済法科大学なんかの場合には、途中から返すと混乱が起きるから、よかれあしかれことしはやり抜くんだということで、来年以降相談に乗ろうというような若干居直り型のところもありますね。  前大臣のときに取り上げたことのある大阪歯科大学なんかでは、その点はかなりクリアにされたとみえて、お気の毒なことですけれども、かなりお医者様の息子が合格しなかったとか、いままでと違って、医者の子弟の合格率が圧倒的であったのが、二〇%台になったとか、いろいろな変化があらわれてくることは事実であります。同時に、このことに対して、世論が妥当な措置を求めるなら、変化が出てくるということを物語っておるわけでありまして、その点、寛容も時によりけりでありますから、現にこうして努力をしておるところが、まあいわば正直者がばかを見るような格好にならないように、この点は筋を通して、それらの大学に対して御指導をいただくこと。これはやっぱり計画的に、いつまでにどうしたいと思いますぐらいの答えは、調査をすると言われた以上は、御報告がいただけたようなところは、よく後まで見ていただきたいと思うわけであります。  幾つかのところで、この寄付金は全廃をして、学費は据え置きをしたというような大学も、これも納付金が多いというところにいまなお問題はありますけれども、電通大とか、大阪商大とかいうところでは、そういうような状況も報告を聞くわけであります。これらの問題を含めて一層御指導を強化していただきたいと思うわけでありますが、私は、前回予算委員会のときは、時間の関係もあって本当に学生の声や、父母の声を十分大臣にも御紹介することができませんでしたので、いま一、二御紹介をしておくわけでありますが、やってくる手紙なんかを見ると、どうしてもことし一年でもほうっておけないというようなものがあります。これはわが党の委員長の宮本議員のところへ寄せられた手紙ですが、東京のものですね。高等学校であっても五十万円時代といわれる納付金が、どのくらい教育上にも、あるいは生徒の心理的にも圧力になっておるかというようなものがあるのですね。「私は私学の一教員ですが担任している生徒の実話です。」という書き出しで、妹がいて高校受験を控えているのですが、母親が学費の高い私学に姉妹二人通われては苦しい家計が耐えられない、おまえはぜひとも学費の安い公立へ合格してくれと毎日毎日妹に言うのを、私学に通っている姉が聞かされて、暗い気持ちになって、自分は親不幸者だ、こう思い、さては妹が入学したら自分はますます肩身が狭いので、ときには妹が不合格であってくれれば私の気持ちも楽になる、こういうようなことを教師に言うというわけですね。それでも高校へは行かねばならぬし、やらねばならぬわけでありますから、こういう点はぜひとも実際の状況をよく承知をしておいていただきたいと思うわけであります。  さらに、これはちょうど私の質問をした翌日の三月十九日の日付で来ておる手紙なんですけれども、入学辞退者には補欠入学納付金全額を返していただきたいと思うのであります、こう言いまして、サンケイ新聞の記事を見て「私共の家族もその様な被害に出会った事をお伝えします」と、こうありますね。そこで、手紙の要旨を紹介しますと、これは近畿大学受験の場合ですが、合格発表の前に大学から連絡があり、「あなたのお子さんは補欠合格で、学校協力金を納めるとすぐ合格通知を出しますが、」ということでした。他の大学も受けていますので待ってほしいと申し出たのですが、「すぐお払いくださらなければ不合格になる」と言われて、権利を保留するため納入しました。その後他大学に合格したので、入学を辞退したのですが、三月末に呼ばれて、入学金は仕方がないにしても、前期学費及び協力金は全額返してもらえず、結局強制的に急がされて払った補欠合格の協力金の半額のみ返金してもらいました」と、こういうことでございます。これももらわなかったよりは、はるかにいいでしょうが、この人はもう一つ大学に入って、またそこで学納金を払わなければならないわけでありますから、まことに厳しい状態になっております。教えなかった者からこういう権利金のような姿で取っていくというようなことは、少なくとも、こうして世論も追及をし、文部省でも指導されると言われる以上、一つ一つ大学の内容を明らかにすると同時に、計画的に、少なくともいつまでにどうしますというようなことは明らかにしていただきたいと思うわけであります。大臣、その点について御答弁を伺っておきます。
  137. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘の点は、二つの重要な問題があると思うのです。学納金でありますとか、そういうものを含めて修学費が高いという問題が一つ。もう一つは、入学の選考に当たっての不公正の問題、二点の御指摘があったと思いますが、いかなる事由であれ、金などが絡んで入学のときに選抜が不公正であるということは許されるべきことではございません。それはもうすでに昨年私大御当局がみずから、社会的な批判というものがどれだけ強いものであったかということを理解しておられると私は期待をいたしておりますし、個々の具体の問題点につきましては、先ほど大学局長お答えをいたしました方向で、今後も公正が期せられるように指導助言を続けてまいる所存でございます。  それから、学生の修学費負担が私学において非常に過大である、非常に大きなものである。これにつきましては、なお一層私学助成に力を入れてまいらなければならない。五十三年度予算は相当大幅な改定を実現することができましたけれども、引き続いてなお努力をしてまいらなければならない、かように決意を新たにいたすものでございます。
  138. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 重ねてお伺いをするわけですけれども、募集要項に書いてあれば補欠から余分に徴収をしても強くは追及できないというふうに、局長どうも言われておるように思うわけですけれども、その点、いまの手紙でも読み上げましたように、これはあらかじめ発表される前に個人のところに手紙が来て、寄付金を出しなさい、そうでなければ次の補欠を繰り上げますというのですから、もし寄付に応じなければ結局成績の下位の者が上がるわけですから、これは明らかに、だれが見ても条件ということにならざるを得ないと思います。その点についても、大臣の方から包括的なお答えをいただいておるのですけれども、ひとつ強化をして御指導をされることと、それからもう一つは、国庫助成の拡充という場合に、学費ストップをしたり、あるいは寄付金を一定範囲で抑制をしていくというような良心的な経営の努力を重ねておるものと、それから比較的気楽にいただこうという姿勢のものと、これらについて何がしか、努力をしておるものに対して手厚い補助の措置が講ぜられるような方策がないものか、こういうことも多くの関係者から聞くところであります。結局のところ、学生数から補欠金が割り出されるわけでありますから、必ずしも、経営努力をすれば補助金が厚くなるという関係にはなっていないわけでありますが、こういう点について大臣の所見、募集要項に明記してあればいいのかという問題と、良心的努力に対する補助の優遇措置といいますか、少なくとも乱脈なものに対しては抑制をするということと、あわせてお考えを聞かしていただきたいと思うのです。
  139. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 初めに納付金の問題についてお答えいたしますが、入学時に納付すべきものについては、募集要項においてこれを明らかにするということがまず必要でございます。そういう意味で、共立薬科なり、あるいは大阪経済法科なり、追手門学院の場合には、募集要項に記載がなくて、実際上寄付金の納付が入学時の条件と認められるような形で徴収されておるというところにまず問題がございます。それでは、募集要項に明記をしてあれば問題がないかといいますと、私たちは問題がないとは考えておりません。ただ、学生募集要項に明記をし、いわばオープンで入学時の学生納付金として徴収をしているものは、募集要項にも記載をしないで、いわばオープンでない形で徴収をされているものとは性質をはるかに異にするものであろうという評価はしているわけでございます。しかし、こういったものにつきましても、正規の合格者からは取らないで、補欠からだけ取るということについては、必ずしもそれを妥当とする十分な説明のつきかねる面がありますので、できるだけ補欠からの学生納付金の徴収ということも控えていただくように、各大学にお願いをしているところでございます。
  140. 三角哲生

    政府委員三角哲生君) 経常費助成の問題でございますが、これは助成の目的といたしまして、私立学校の教育条件の維持向上ということと同時に、修学上の経済的負担の軽減を図ることを目的としておるわけでございますから、個々の学校法人におきまして、そこの健全な経営の上から可能であるということで、納付金の額が抑制されるということは、補助の目的から申して好ましいことであろうと存じます。ただ、学校法人が学校を運営するに際しましては、いろいろな教育、研究上の必要な経費、さらには教員の給与をどうするかというような、いろいろな問題がございますので、やはりその意味での学校法人自体の経営努力というものも必要であると思っておりますので、一概にこの学納金を前年並みに抑えたところに補助金をふやすというような、直接的な連関関係考えるということもできないと思っておりまして、ここ当分は現在考えております配分方式でいくのが妥当ではないかと思っております。  なお、経常費助成が今後とも充実してまいりました場合、現在の配分方式を将来どのように改善するかということにつきましては、なおその状況に応じて検討いたしてまいりたいというふうに思っております。
  141. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 単純に学納金ことしとめたからふやすというわけにはいかぬでしょうね。二年分取り上げておいて翌年とめたって、高ければ高いわけですから。ただ、やっぱりランクをつけて配分をしておられるわけですしね。水増し入学の極端なものなんかに対してはとめるというようなことも行うわけですから、一定要件、指導上の問題点検討されて、こういうようなところには上積みがつくということは、工夫をすれば方法もあるんじゃなかろうか、それに対する考え大臣にも実はお伺いをしておきたかったわけであります。いかがですか。
  142. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私学の助成は、私学振興助成法の精神に沿って、だんだん拡充はしてきておりますけれども、まだまだ完全に私学振興法の望むところまで達し得たとは、残念ながら言えない次第でございます。まずそこに達しますまでが第一段階と思います。そこで、いま管理局長からもお答え申し上げましたけれども、やはり学生数に応じてりっぱな教育、研究が行えるだけの教員をそろえていただいております大学に対しては、それなりの助成がいくわけでございますし、どうもそういう教員充足に余り熱心でないというところには少ないわけでございますから、やはり教育、研究をりっぱにやっていただく大学、そうでない大学には補助金配分が現在でも格差がつけられておるわけでございます。また、学生定数をはるかに超えるような水増し入学を認めているようなところは、したがってまた教員とのバランスの問題がそこに出てまいりますが、そういう定数をオーバーしたところに対しましては、もう御承知のとおりの格差が助成でも行われているわけでございます。当面はただいまの配分方式で、私は私大御当局の取り組み方が反映された配分ができていると思うのでございます。当分の間はこの配分方式でいきたいと考えておりますが、冒頭に申し上げましたように、この助成が充実してまいりました将来の問題としては、御指摘のようなことで、もう一遍検討しなければならない問題が出てまいろう、かように考えるものでございます。
  143. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 遠い将来と言われても、気の遠くなるようなことでは困ると思うんですが、御研究を鋭意お願いしたいと思います。  続いて、私はここで奈良県の近鉄あやめ池遊園において、四月一日から六月十八日までの期限で、サンケイ新聞社主催による「ぼくらの平和博」という催し物が行われておるわけでございますが、その問題についてお伺いをしたいと思うわけです。後援団体に防衛庁も入っておりまして、いわば子供相手の博覧会という姿になっておるわけであります。ここではあやめ池という遊園地の入口の正面の花壇の上に、戦車の現物が置いてあって、そして中に入れば小銃や、機関銃などの模擬射撃を子供にやらしたり、まあ自衛隊自身の、現職の自衛官もかなり出回って、自衛隊の資料等も配布をされながら、こういう民間の催し物に対して大いに乗り出してやっておるわけでございますけれども、どういう状況で自衛隊、防衛庁はこれは協力をしておられるかということを伺います。
  144. 月原重明

    説明員(月原重明君) 防衛庁といたしましては、防衛思想を周知することが、われわれの役所に課せられた任務でございますので、今回のものについてはその広報効果を考えまして、主として装備品等を展示しているわけであります。で、内容は航空機六機、戦車五両、装甲車両十四両等でございます。
  145. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 これはサンケイ新聞社主催という遊園地の出し物で、入場料も取るわけであります。行くのは幼稚園、保育所の子供、小学校低学年、こういうところが主になると思うわけですが、まあいわば民間のこういう催し物に、現職の自衛官を大量に動員をされてやられるというのは、私はやや異様なことではなかろうかと思うわけです。基地でいろいろ展示をされるというような点について、これについては承知はしており、それをここで言っているわけではないんでありますが、何人ぐらい現職自衛官を派遣されておられるわけですか。
  146. 月原重明

    説明員(月原重明君) 約二百名でございます。説明要員として派遣しております。
  147. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 これについて文部省の方にお伺いしたいと思うんです。  名前は「ぼくらの平和博」、こういう名前がついておるわけでありますけれども、中身は現物のいま言われたように車両、戦車、あるいはジェット機、これに対戦車ミサイルの誘導装置のついたものと、いろいろありまして、ウエポンに見るスーパーメカニズムというのを、子供の興味をそそって、中に入れば照準を定めて模擬射撃もできるというようなものであります。これは現地の学校、幼稚園等では、遠足の季節になりますと、あの遊園地というのは子供を連れて行くのに手近ですので、かなり平生から利用するところなんですよね。これは非常に波紋というか、大きく言えば混乱を呼んでおるということが言えると思うわけであります。この問題については、日本の武装の問題については、政治的にも大きく、日本の社会で大きく意見の分かれるところであります。明らかに行ってみますというと、これは平和博というより戦争博というふうに書かないと看板に偽りがあるんじゃないか、言ってみればまさに戦争賛美に通じるのではなかろうかというような意見を持つ方もあります。子供は素直に科学技術に対する好奇心と興味を持っておりますから何ですけれども、こういういわば判断力のない小さな子供に対して、国家機関が、たしかこれいま二百人と言われましたが、宇治駐とんの四十五連隊から二百人、こういうふうに自衛官を出動させて行われているわけですが、これに対して近辺の各県からは幼稚園、保育所で、公園の管理事務所で聞いてみますと、三百ぐらい予約がいっておりますし、奈良県下ではこれを批判する人たちは、そこのところへ例年連れていく季節なんですけれども、まあ行かせにくいというような問題とか、いろいろあるわけなんですね。こういう点について、教育的に見て、子供が遠足に行くような場所でかような催しをすると、それを国家機関たる防衛庁が、教育にもかかわり深いことですけれども、大きくタッチをしていくというような問題。あわせて、これに対して奈良県初め近県、三重県、兵庫県、滋賀県、こういったふうな県がこれの後援団体になっておるわけですね。私はこれも適切でないと思うんです。大阪府は、初め平和という名前がよかったのか、後援団体になって、途中取りやめておりますね、批判を見まして。大阪の言い分としては、防衛、戦争など、大人の意見対立があるものに対して自治体が推薦するというのはどうかと、こういうふうに言って推薦を取りやめておりますが、いかがでしょう、大臣。こういうようなものについては国家機関が後援をしたり、子供を動員するようなものとして適切であるのかという点についてお伺いしたいと思うんです。
  148. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 奈良県のあやめ池で開かれております平和博覧会というのは、サンケイ新聞が、日本の平和と安全について理解を深めてもらうということを目的として主催をしておりまして、防衛庁並びに近在の県が後援していると聞いております。小・中・高校生などが任意に入場、観覧をしているようでございます。文部省といたしましては、学校教育におきましても、国を愛し国を守る心情やその知識、またわが国の平和や、わが国の安全の問題について指導をいたしているところでございます。  以上、私の、いま大臣どう思うかとおっしゃいましたので、お答えにいたしておきます。
  149. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 少なくとも集中して幼稚園、保育所、小学校の低学年がしばしば利用するような場所に、愛国心の涵養と、こういうふうに申しまして、いわば学校教育周辺のところでこういう催しがされるというのは、私は問題だと思うわけですし、大臣のお言葉ではあるわけですが、やっぱりこれを批判する人たちも国を愛し、これに対して中止を求める人もこの平和と子供の将来を案じておるわけであります。ひとつこれらの点につきましては、防衛庁とも話し合っていただき、検討していただきたいと思うわけであります。  続きまして、時間もございませんので、次に、文化財の問題についてお伺いをするわけであります。  平城京左京の三条二坊六坪という遺跡が昨年発掘をされ、そして保存に当たるということになっておるわけであります。奈良時代の庭園遺跡、すでに文化庁傘下の奈良県国立文化財研究所では発掘調査の概報という出版物も出しておりますが、非常にみごとな庭園の遺跡ですね、遺構が発掘をされておる。私は、文化庁にこれの史的価値というのはどういうものであり、今後この保存についてどう考えておるのか。特に県の文化財保護の審議会でもって、昨年の三月史跡指定すべしという決定をやっておりますけれども、これを文化庁として指定されるのか、されるならばいつ告示をされるのかというようなことについて、お伺いをしたいと思っておるわけであります。
  150. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 指定の件は私からお答えをいたしておきます。  大変りっぱな庭園遺跡でございまして、きわめて重要なものであると考えております。文部大臣から文化財保護審議会に諮問をいたしまして、昭和五十一年の十二月十日に、同審議会から特別史跡に指定すべき旨の答申をすでに得ております。現在この遺跡の所在をいたします土地につきまして、奈良市が郵政省から昭和五十二年度から三年計画で、文化庁によります国庫補助事業として買い取る方針が定まりまして、昭和五十二年度分につきましてはその土地の売買の契約が成立をいたしておると聞いております。遺跡地全体につきまして、奈良市によります取得の手続等が確定をいたしましたならば、可能な限り早い時期に特別史跡指定の手続を行うことにしておりますが、五十二年度から三カ年計画と申しますと、五十四年度までになるわけですが、最近聞いておりますところでは、五十二年、五十三年度で奈良市が郵政省から買い取りまして、五十四年度分に当初予定をしておりました残りを、奈良市の地域自治体の公社が先行取得をするという話が郵政省とほぼできたようでございますから、五十三年度中には土地の問題も一切解決される見通しになってきておりますので、もうここ数カ月を出ずして指定ができるのではないかと考えております。
  151. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 大臣の御答弁になりました残余の御質問につきまして御答弁をいたします。  まず、御指摘の遺跡の歴史上の価値でございますが、この庭園遺跡は奈良時代初期につくられた苑地を伴う庭園遺跡でございまして、日本様式を有する庭園といたしましては、これまで発見されたもののうちで最も古いものであるわけでございます。しかも苑地の遺構につきましては、その保存状態がきわめて良好であるわけでございまして、このような価値からいたしまして特別史跡に指定すべきものであるということで、すでに文化財保護審議会に諮問をいたしまして、その御答申を得ておるわけでございます。  保存についての考え方でございますが、この庭園遺跡がそのようなものでございますから、保存につきましてはその遺跡のままで保存するというよりは、むしろ昔の状態に復元をして保存するのが適切ではないかという考え方基本といたしておるわけでございます。したがいまして、奈良市の方でこれを取得しました後、史跡の指定をいたしまして、その後はたとえば苑地につきましては必要な整備を図り、そのほか植樹をするとか、あるいは池に水を引くとか、あるいはこの苑地の周りにこれを観賞した建物の遺構も出ておりますので、必要な建物の整備を図るなどいたしまして、昔の状態にこれを戻しながら、したがって、その意味では公開活用等を広く考えながら、保存整備をするというような考え方をとっているわけでございます。
  152. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そうすると大体買い取りのめどは、奈良市でもって三年計画であったのを、繰り上げて今年度じゅうに完了できると、少なくともこれは郵政省の持ち分であった範囲はでしょうね。そういうことになりますと、大体史跡として指定をする条件はおおよそ整ったというふうに見るわけですけれども、もうあすにも史跡指定を行われるというふうにお聞きしていいわけですか、告示の予定日取りは。
  153. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 大臣先ほど御答弁のように、基本的な手順につきましては一応そのめどはついたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、なお事務的な手続を終え次第、できるだけ早く告示の運びにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  154. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いつごろになりますかね。
  155. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) これにつきましては、これからの事務手続もございますので、明確には申し上げかねますが、大臣が先ほど申し上げましたように、数カ月を出ない範囲内でできるのではないかというふうに考えております。
  156. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 指定の際には範囲の問題もあるんじゃなかろうかと思うんですが、この遺構は平城京の条坊に従って存在をしたものでありますし、ここにはたしか隣接をして道路の跡等について民有地があるわけですね。これについても当然あわせて、この遺跡の関連部分というのは指定をされるものと思うわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  157. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) ただいま先生指摘の民有地につきましては、私どもも相なるべくは民有地を含めて指定をいたしたいということで考えております。  で、いろいろ奈良市等におきましても検討をお願いをいたしたところでございますが、この点につきましては、なお、いわゆる地権者の方々の御了解等も得る必要がございますが、それらの御了解を得る間に、いろいろ時日が経過いたすのもどうかということで、現在のところでは、それらが来るべき指定の時期までに間に合わないということであれば、一応それは後で追加指定するという考え方で、とりあえず郵政特会から奈良市が買収する予定のところにつきまして、指定を急ぎたいというのもやむを得ないかと存じておるわけでございます。
  158. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そうすると、第一次として郵政省跡を、数カ月を出ずというふうに言われるわけですから、秋を待たずしてこの夏じゅうぐらいには指定できるであろうということと、民有地については、今後の状況を見ながら、いずれ可能な限り条件を整えて指定をしたい考えだと、こういうふうにお聞きをしてよろしいわけですか。
  159. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 大体そのような方向で努力したいと思っております。
  160. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 民有地ということになれば簡単でない点はありましょうが、少なくともこれを指定しておけば、文化財保護法の五十七条によって、調査の問題その他についても条件がつくわけですし、その点はお進めいただきたいと思うわけです。  この問題で、関係者の中に一つの心配があるわけですね。復元保存ということになってくれば、次第にプランも出てくるでしょうけれども、もともと郵政省が電話局を建てようとして、そのために発掘調査を始めたものであり、奈良市が買収した後、ここに遺跡を破壊するような建築物をやるのではなかろうかというような点についても、かなりの懸念をされており、また市長の方でも、少なくとも遺跡に関する便益施設とか、公開活動のための施設とはちょっと考えにくいようなプランも立てられたかに聞いておるわけですが、その点についてはいかがですか。
  161. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) その点につきまして私どもといたしましての考え方を申し上げたいと思いますが、この庭園遺跡の保存につきましては、これを旧状に完全に復元をいたした上で保存し、あるいは公開活用を図るのが適切ではなかろうかと存じておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、植樹だとか、あるいは水を引き入れるというようないろんな整備をするための管理をする施設等が当然必要になってまいりましょうし、また水を給排水するための機械室等の整備も当然必要になってまいるわけでございます。また公開活用を図るとするならば、若干の方々の集会室、あるいは便益施設等も必要でございましょうし、あるいは、この庭園遺跡からは木簡その他の出土品もあるわけでございますので、この庭園の公開活用にあわせて、そこから出た出土品等の展示もあわせ行う施設も建てたい、また建てる必要があるのではないかと考えておるわけでございます。この庭園遺跡の中に、そのようなための必要な範囲内のものにつきましては、これを整備をすることによって、庭園遺跡としての公開活用なり、あるいは管理保存等が適切に行われるような措置を別途考える必要があろうかと存じておるわけでございます。
  162. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 あわせてお伺いをするわけですが、最近これまた和歌山県の根来寺のところへ農道拡幅工事をやってくる。ここで発掘調査が行われた結果、これも非常に史料価値の高い遺跡が発掘をされておるということであります。私も現場へ行って見たわけですけれども、いまはもううかがう由もない過去の巨大な地域の中で、どこを掘っても、掘った場所から、秀吉に焼かれた跡というのですか、焼け土が出てきて、その下に整然と過去の遺跡が発掘をされるというような状況もあるわけです。多くの一定の地域がいまもお寺の持ち物ですから、お寺の財産でありますけれども、少なくとも農道関係で発掘されたところから出ておるこの遺跡、遺構というのは、学者先生に聞いてみますと、これは朝倉遺跡よりも史料価値は低くないのだというふうにも言われるわけであります。これについての保存、さらに農道拡幅工事との関係、農道の迂回等について、そして史跡指定の問題、こういう点についてひとつ簡潔にお伺いをしたいと思います。
  163. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 御指摘の根来寺と農道との関係につきましては、和歌山県教育委員会ですでに昭和五十一年度に遺跡の分布調査を実施し、昭和五十二年度から国庫補助で予定地の発掘調査を実施をいたしておるところでございまして、いろんな寺坊の関連遺構等が比較的良好な状態で検出をされておる状況でございます。したがいまして、私どもといたしましては、この根来寺の重要な歴史上、学術上の価値に従いまして、農道につきましては、現在和歌山県教育委員会と農道の施行者である県の農林部との間で、その取り扱いについて協議を行わせているところでございます。  私ども考え方といたしましては、農道につきましては、これを拡幅する部分と、道を新設する部分とがあるわけでございまして、拡幅する部分につきましては、その道に接していろんな根来寺の遺跡が出てまいっておりますので、これらにつきましては工法を変更して、遺跡を破壊しないような工法に変更させるというような協議をいたしております。  それから、最も問題の新設部分につきましては、いろんな遺跡が今後発見が予想されるところでございますので、このところに農道を新設することは適切ではないという考え方で、路線の変更を現在協議をさせているところでございまして、主要な遺跡を破壊しないように他の方向への路線の変更を協議をいたしておるところでございます。このような協議は、県教委と県の農林部との間で近く間もなくまとまるような報告に接しておりまして、これの状況文化庁で十分見ました後、それが適切なものであれば、それによって農道の今後の工事を施工するように指示をいたしたいというふうに考えますし、それが適切でなければ、さらに協議を続行いたしまして、この重要な根来寺の遺跡が十分保存されるような農道の施工にいたしたいと考えるわけでございます。  なお、この根来寺全体の遺跡は、実は現在の根来寺よりもかなり広域なわけでございまして、これは先ほど先生指摘のように、非常に室町末期におけるところの、戦国大名に匹敵するような大宗教教団の遺跡の規模等をあらわすところの重要なものでございますので、私どもといたしましては将来指定する必要があると考えるわけでございます。ただし、指定をする場合につきましては、その範囲を確認をするとか、あるいはかなり民有地にも及びますので、それらの地権者の方々の了解等の手続も必要になってまいりますので、これが史跡指定をいつするかにつきましては、なおそれらの検討との関係で、いまのところは明確ではございませんが、本年度、五十三年度から和歌山県教育委員会におきまして、それらのマスタープランをつくるための委員会を県で予算化をいたしまして、開始をするように相なっておりますので、それらの委員会における検討との関係十分承知しながら、文化庁としても保存の方向で指導してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  164. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 現地を見まして、現地の方々の希望をいろいろ聞いてまいったわけですが、文化庁でも一これらの希望を聞き取られて、農道迂回の問題についても、適正な助言を与えられているように私も見てきたわけです。しかし、現地の発掘作業の状況などを見ますと、社団法人の何か現地の研究者、同好者の方々による努力で、予算は文化庁の方で今度補助金をつけてもらっておりますけれども、いま精力的に進められておりますけれども、今後の問題についてはかなり悩みが深いようですね。奈良の場合であれば、国立文化財研究所がすぐそばにありますし、遺跡の処理についても、実績もあるわけですけれども、実際これをやろうとすると県持ちになって、県としては文化財保護法も新しくなったんだけれども、その後の措置については、必ずしもこの交付税の積算の中に小人数のものをもらっておる程度で、県としてはみんな単費持ち出しになるというようなことについて悩みがあるようにも聞いておるわけです。この点について、後々のこれを取り扱っていくあり方と、それについての人材というようなものについては、いま国ではどれだけの手当てをしており、今後県と協力してやるならどうすればいいのか、こういう点ひとつお伺いしておきます。
  165. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 先生指摘の問題につきましては、前々から、文化財保護法改正問題の前後からも、いろいろ御指摘をいただいておるわけでございまして、私どもといたしましては、現在の体制下におきましては、都道府県教育委員会の発掘体制を整備をするというのが基本でなかろうかということで、その財政的な保障といたしましては、地方交付税で毎年度財政保障をしていくということで対処をいたす傍ら、都道府県がいろいろ定数化をいたしましても、必要な人員が確保できないという問題もございますので、昭和四十九年度から、奈良文化財研究所に埋蔵文化財センターを付設をいたしまして、ここで計画的な養成を図るということを実施してまいっておるわけでございます。現在までのところ、都道府県、市町村合わせまして、約千二百名の埋蔵文化 の専門職員が確保できておるわけでございますが、これとても開発事業等が急増する中で、十分な体制ができているとはまだ考えませんが、今後とも都道府県、市町村と十分な話し合いをしながら、専門職員の確保をしてまいりたいと思うわけでございます。  なお、最近埋蔵文化調査センターというような施設も、特に国庫補助をいたしまして、都道府県、大きい市あたりに設置を勧奨をいたしておるわけでございまして、このようないろんな対策を講じながら、埋蔵文化調査専門職員の定数増、調査体制の整備の努力を今後ともいたしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  166. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 和歌山県で聞いてみますと、交付税として国で見ておるということになっておる数は、県で七人相当かと聞いておるんですが、市町村にもいるとしても、県教育委員会がやっぱり中心になるわけですけれども文化財担当と文化担当というのを合わせての数でありますね。文化担当と言えば天然記念物もあれば、モダンバレーみたいなことを扱うのもあって、それで七人とか八人とかいう人数の積算というのでは、今日の状況にそぐわないのではなかろうかと思いますし、ひとつ予算方面では大臣一層の努力を傾けていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  167. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 全国的に開発がずいぶんふえておりますから、それに伴ってこのような遺跡が発見されてくることも数多くなってまいろうと思います。特に人の確保の面等につきまして、都道府県の財政負担ができるだけ軽く済みますように、一段の努力を続けてまいりたいと思います。
  168. 有田一寿

    ○有田一寿君 いただいた時間がわずかでありますから、別に質問についても私御通告は申し上げておりません。文部大臣の徳育の初歩的な問題について、お考えを伺いたいと思うわけでございます。  教育のことを英語でエデュケーションと申しますが、いわゆるエデュースというのは引き出すこと、だから人間の持っておる中のものを引き出すのが教育だと思うんですが、そのときに何を引き出し、何を引き出さないかという選別の問題が教育の始まりであろうというふうに考えますが、その何を引き出さないで眠らせておくかということ、これは人間の心の中に、もう眠らしておいた方がいいというものもあるだろうと思うんです。眠らしておく、あるいは片一方引き出すという、この分かれ目のところが徳育だろうというふうに考えるわけですが、それについて、全く初歩的なことで恐縮ですが、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。そこからお伺いしたいと思うんです。
  169. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大変基本的なことでございますから、全く同感ですと申し上げるしかないと思うんですが、有田先生が御指摘のように、やはりエデュース、何を引き出すか。人の心の中にはいろんなものがある。ただ、私考えますのに、やはり人の心というものも、年をとるに従って変わってもまいりましょうし、人それぞれ個性的に持っているものもございましょうし、何を引き出して、何を眠らしておくかということの、それの選択は大変むずかしいことであろうと思いますけれども、やはり先生指摘のことに私は同感でございますと申し上げておきたいと思います。
  170. 有田一寿

    ○有田一寿君 基本的な考えの中にすべてを引き出すべきである。言いかえれば、そこに作為だとか、抑えつけておくものとか、そういうことをせずに、人間の持っておるものを正直にそのまま引き出すのがよいんだという主張もあると思います。ただ人間は社会的人間になるというのが一つの目標でありますから、社会的人間になるためには社会的なひとつの伝統、仕組みのようなもの、あるいはルール、エチケットのようなものがある。そうすると、これを子供のときからその社会に適応しやすいようにしておくことが、これが徳育だと思うんです。いま御指摘のように、時代とともに変わるだろうと思います。それは社会そのものが変わるわけですから。しかしながら、どんなに社会が変わろうとも、あるいはイデオロギーで社会主義社会、あるいは自由主義社会、その区別はあろうとも、いずれにしても時代と場所を超えて、人間が共同生活を営んで、社会的人間として生きていく限り必要な最低のルールというか、モラルというものがこれは必ず必要であろう。だから、これにイデオロギーの色がつきますと、また時代的な色がつき過ぎると、これは甲論乙駁議論は果てしないと思いますけれども、いま申し上げましたようなぎりぎりのモラルミニマムというようなものは、これは私はどの国でも教育に必要だと思うんですが、特に自由主義社会の場合は必要ではないかと思います。もっと言えば、それは何だと言えば、禁止規定と奨励規定と二つのものであろう。何をしてはいけません、何はしない方がよいという禁止的なものと、老人に席を譲りましょうとか、弱い者を助けましょうという奨励的な規定と、この二つで構成されるものと思うんですが、これのまたぎりぎりのところのものを、私はやっぱり児童憲章というか、名前はどうでもいいんですけれども道徳教育基本に据える必要があるのではないか。それについて、いやそういうふうの児童憲章だとか、守則だとかいうものはなくとも、道徳教育指導要領で示されたとおりなされておりますと、おるんですよというふうに、大臣現在の小・中・高の教育を見てお思いでしょうか。率直なお感じを述べていただきたいんです。
  171. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 有田先生が御指摘のとおりに、私もまたモラルのミニマムと申しますか、これは人間が本来持っているべき基本的な倫理観、こういうものは昔も今も、また国の東西も南北も変わりがないものである、かように考える点は同じように考えるわけでございます。  そこで、時代とともに変わりますモラルもございましょう。しかしいま申し上げた基本的なものは、もう古今東西を問わず変わらざるもの、永久に変わらざるものであって、変わっていくものと、変わらざるものの見分けをすることが、私は今日一番大事な時代だという感じを持つわけです。そこで、いまも先生端的に児童憲章というものを制定をする、そういう考え方に立たなくてはいけないんではないかということの御発言がございましたけれども、いまの学習指導要領で、いつまでもあれでよしとしていくかどうか、私は問題点は、学習指導要領に基づいての時代の古今、また、場所の東西を問わず、変わらざる人間本来が持つべき、一番基本的な倫理観というものを、学習指導要領に基づいてどう工夫されて、児童、生徒たちに教えられているか。そのこと自体にあるとすれば問題があるんではないだろうか、こういうふうに考えるものでございまして、それを克服するために児童憲章というようなものが必要であるかどうかは、これはきわめて慎重に、これから取り組まなければならない文部省としての一つの非常に重要な問題であると考えております。
  172. 有田一寿

    ○有田一寿君 そういう守則もしくは児童憲章というようなものを設けた方がよいか、設けないがよいか、また設ける必要がないかということですね。もっと裏返しにして言えば、いまの行われておる指導要領に基づく現在の徳育の体系の中で、十分とはいかずとも、これでお互いが考えておる徳育というものは行われ得るということであれば、これはもう私はどちらでもよいと思うんです。ただ私は、どうも指導要領にも盛られておる、ただしそれが実際に行われるところで、大臣が期待しておるような行われ方がしていないのではないかというどうも不安がある。言いかえれば不信感もある。だからもう一歩進めてもいいのではないか。ただしそれが逆効果になるというのなら別ですけれども、そういう必要性があるのではないかということを考えるのですがね。たとえば自分のことは自分でし、人に迷惑をかけないこととか、心身を鍛え、正直でよく働き、絶えず努力をすること、あるいは三番目に、親兄弟を大切に、友人に思いやりをかけよう、あるいは次に、譲り合い、助け合い、親切にすること、それから感謝と奉仕で平和な住みよい日本をつくろう、それから、自然を愛し、世界じゅうの人々と仲よくしましょう、あるいは老人、病人、体の不自由な人にはできる限り援助をしようとか、以上のような、たとえばその程度のことは、先ほど申し上げた本当のぎりぎりの人間が生きていくために大切な、しかも必要なことだろう。これを子供のときからやっぱり教えておくことは、子供の将来を考えたときわれわれの義務ではないか。それを物わかりがいいように自由だということで伸び伸びとさせなきゃいかぬというようなことでほうっておくことは、他日その子供の将来にかえって不幸をもたらすのではないかという感じさえするわけです。したがって、この方法につきましては、いま大臣お話ございましたように、どういう方法がいいのか。ただこれ、五年、十年、十五年と研究してと言いますけれども、毎日毎日子供は育ちつつあるわけですから、いやそれはいまのままでいくならまだ五年ぐらいはいくんだとか、いややっぱり早急にひとつやってみようとか、何かここで態度決定を——この場という意味ではありませんけれども、そう遠からざるうちになさる必要があるのではないかというふうに考えるわけです。  それから、この国家主義教育というものと個人主義教育というものについてのお尋ねですけれども、国家主義教育というのは、先ほどのエデュケーションの中のエデュケートするものの選択と、今度引き出されたものに対して、それを教育学で言うビルディングというのですか、色づけしていくということ、これを国家がやる。国家が強い意思を持って行うのが国家主義教育で、それをやらないのが個人主義教育だと思うんですけれども、ところが、国家主義教育といっても、全然個人の福祉だとか、未来とかを一切考えずに私はやっているのではないと思うんです。国家といえども個人によって成り立っておりますし、国家と個人がそれほど相対峙すべきものではない。それから逆に、個人主義教育といいましても、これは国家が明るい繁栄した国家にならなければ、国民の一人一人も幸せにならないわけですから、個人主義教育といえども、やはり国家の中における個人であって、そして国家を通して世界に結びついていくという、それだけのことであって、一般に言われるほど国家主義教育と個人主義教育とは違ったものではない。ただ、一断面を切ってみれば違うということであって、少し時間をかけて見れば、私はそう違わないという気がするわけです。したがって、どちらであるにしても、一人一人の子供が必要なしつけ教育から始まって、徳育的なものは身につける必要が必ずありはしないか。その方法論に関してはもうしつこいからこれ以上申し上げませんけれども、ほっておいていいものではない。そして、新聞等で子供が親を殺したとか、中学生が母親に暴力をふるったとかいうようなことが、もうほとんど毎日のように紙面に出ますが、そのときそれだけをとって、これは教育の欠陥だというふうな新聞の論調がありますね。それから社会心理学者もそれらしきことを言うが、それは学校の至らざるところなのか、家庭なのか。まあ両方だろうと思うのです。私は、その場合に親の責任がきわめて大きいと思う。学校だけに責任を転嫁するのは大いに間違っている。しかしながら、学校の教師は逃げるべきではない。それはわれわれの責任だというふうに考えることが大変大事なことである。しかし現実にはそうじゃない。やはり家庭の方の責任が大いにある。しからばここで、目標は一つなんですから、学校教育面においてどういう徳育を行い、家庭に対してはどういうふうなことを要望するか、これをまた社会教育の面でそれを包んでいく、あらゆる面が鼻面をそろえながらずっと進んでいかないと、責任論ばかり言っている間に、子供は毎日毎日そのまま育ってしまうというようなことで、非常に危機感を持つわけです。  これについて、家庭教育の問題については、先般この席で書籍だとか、あるいは看板だとか、そういうものについて、営業の自由だとか、憲法における表現の自由だとか、そういうことで、ポルノの看板でも何でもどこにでも立てるというような、あるいは店頭で何でも売るというような、そういうことは、片一方からさいの河原のように教育を崩しているのじゃないか。これは大人の責任だというふうに申し上げたのですけれども、そこら辺について大臣の方としては、これを一歩も二歩も前進させていくために、壁がいろいろあると思いますが、どういう御決意で、またどういう御判断で、それに取り組んでいこうとなさっておるのか、この際お伺いしてみたいと思うのです。
  173. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私が先ほど、有田先生の御指摘になりましたことにつきまして、非常に重要なことであって、これからの文部省が抱えておりますきわめて重要な課題でございますとお答えを申し上げましたその意味には、いろんな理由がございますけれども、たとえば先生も御指摘になり、私もお答えをいたしました、人間の基本的な、いつの時代にもどこの国ででも変わらない倫理観、こういうものを果たして学校教育という場だけで、子供たちをりっぱに指導できるだろうか、私はその疑いを持つ者でございます。ざっくばらんな率直な例を引いて申し上げますと、学校で集団規律を教える、そして、みんなで校庭をきれいにしようと言って、ほうきを持って先生指導して、そういう癖をつけていくように指導教育をしていく。ところが、家庭で朝歯もみがかない、朝御飯もつくってやらないで子供を送り出しておられる御家庭では、せっかくの学校におきますその教育が全く死んでしまうわけでございます。また、そういう教育を受けている子供たちが、日曜日にお父さんに連れられて車で出かけて赤信号にぶつかったら、同じようにとまった前の車から、窓ガラスがあいて車の中の灰ざらが道路にあけられる。自分の身の回りを自分できれいにしようということを教えられた子供が、外へ出たらそういう社会にぶつかってしまう。当然子供の頭の中には混乱が起こるに違いありません。やはりそういった、人間が持つべき基本的な倫理観というものは、学校教育の場だけでもできるものではない。家庭教育だけでもまた子供たちをりっぱに導けるものでもない。やはりそういう道徳、あるいは倫理観といいますか、そういったものは、そういうことを導いていかなければならない教育というものの持っております価値を、学校も、教師も、政府も、家庭も、社会もみんな同じような価値観を持つのでなければ、子供たちを私は正しく導いていけないという気持ちがいたします。学校教育の場だけでの児童憲章というようなものでスタートしていいのかどうか、この点から勉強してかからなければならないことなのではないか。社会に対しても家庭に対しても同じようなことをやはり強く要望していく立場に立たなくてはならないんじゃなかろうか。それには文部省だけでこれは取り組める問題であろうかというふうなことを率直に申し上げて悩んでおりますのが、いまの私の本当の気持ちでございます。そういう意味で実はこれからの重要課題ということを申し上げたわけでございます。
  174. 有田一寿

    ○有田一寿君 親、いわゆる親権者は、自分の子供を自分教育するのがもともと本来の姿でありまして、ただ、だんだん世の中が複雑になってまいりますとともに、自分の職業を受け継がせるだけならともかく、子供が他の職業につく、そのためには他のことを知らなくてはならないとか、あるいは、集団生活の利点というものも子供に教え込まなきゃならないとか、いろんな理由があって、私は親権者はお金を出して、それを学校の教師に委託したと思うんです。したがって、親権者は委託者であって、教師は被委託者だ。これは間違いがないと思うのです。したがって、被委託者がその親の願いを無視して、勝手な教育をしてみたりすることはもともと許されないと思うのです。徳育の場合についても、委託した親の方も、言いかえれば家庭にもちろん十分責任がある。そして委託された方も、集団生活の中でこれを行う責務がある。それで、いわゆるキャンパスというのは多く友達がおるわけですから、その中でもまれていく。家庭ではできないことですね。だから、家庭でやるべきことと、学校でやるべきことは、同じ徳育と言ってもおのずから差があると思うのです。その差をはっきり認識した上で、家庭についても、言いかえれば特に母親についても、そういう教育を私はしていく必要がある。その方法はいろいろ、テレビを活用することもありましょうし、それからPTAでなさることもありましょうし、また別に母親学校的なものでやることもあると思うのですが、そういうものも進める。そうして家庭と学校と両々相まって、徳育と言うと言葉がかたいのですけれども、いわゆるモラルミニマム的なものは、本当に納得させながら教え込んでいくという義務がある。それが、どうも大臣、各人はそう言うんですけれども、現実にはわりにそうなっていないということをお感じになっておられると思うのです。背中をかく思いがあるわけですね。これは、大きな国際社会、あるいは近代化の波、合理主義、能率主義、そういうものの中で行われるわけですから、なかなかむずかしいと思う。むずかしいけれども、私はそういうソ連だとか、中国だとか、北朝鮮とか、全体主義国家の場合はそれほど徳育は重要でない。なくったって強大な権力によって、法律によって、きちっと統制することができる。ごみを落としたらどれだけ罰金を取るぞということを言いさえすれば、一つもちりは落ちなくなります。しかし、自由主義社会というのは自由ですから、それの何倍かの自己規制というか、道徳というか、そういうものがなければだめだ。そういう道徳の欠如した自由社会は必ずだめになる。だめになるとわれわれは思うわけです。したがって、ここのところを、大臣のお考えもわかりましたけれども、いろんな方法を模索しながら、これをゆるがせにしないようにしていかないと、いろいろなものが、学校教育だ、文化財だ、まあいろいろ同じ大学にしても放送大学ができ、すばらしいものはいろいろできていくけれども、果たしてその中でお互いが考えておる日本人というものが育っていくだろうか。これは決して偏狭な意味の日本人でなく、世界に通用する日本人が育っていくのだろうかと自問自答したときに、やはり首をかしげたくなるような思いをするわけです。したがって、この徳育の問題については、ぜひともさらに気をつけていただきたい。これは何年か前の世界青年意識調査統計集計表、これは大臣も十分御存じのことと思います。ここでも一回私言ったことがあるんですけれども、いまの社会に満足しているかという青少年の意識調査ですが、これ見ても、一番満足していないと、不満足であるというのは世界で日本が最高ですね、統計から見ると。それから、その反対に一番不満である、いまの社会に不満が多いというのは、これは日本が一番多いですね。そして、インドでさえ日本から見たら満足度は深い。日本が四%のときにインドは五一・七%。これはまあ仏教の影響があるのかもわかりませんけれども。それから、不満だというのが、日本が二七%、インドは七%。これはインドの例を引きましたけれども、ほかの先進国もみんな同じでございます。どうして日本の青少年がそれほど不満を持つのか。それほど日本の国は住みにくい、貧しい、苦しい国であろうかと。私は逆に、世界一自由があって住みいい国ではないかと思うんです。だから、自由がふえ、物質的に豊かになればなるほど、不満の度もふえていくということは、人間というものはなれというものもあるし、自己規制、克己ということがなければ、もうどこまでいったって不満だらだらということが、この統計に私はあらわれているような気がしますので、それは結局物の考え方基本が、物差しが違うからこういうことになるので、その物差しをわれわれは、いわゆる価値観をはっきりやっぱり教えてやる必要がある。これはイデオロギーと関係ないというふうに思うわけですね。どうかひとつ、余りくどくなるからこれ以上は申しませんけれども、徳育の問題についてはぜひともお考えを願いたい。  それと、続いて、これは文化庁の次長いらっしゃるからあれですが、その後新たに学校建築物をつくる場合に、一%程度の芸術的装飾を施すということについて、諸外国の例はその後おわかりだったですか。何か資料が手に入りましたですか。
  175. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 諸外国の例につきましては、部分的にはこの前文化部の文化普及課長も行ってまいりまして、いろいろ実情聴取してまいった資料はございますが、まだ十分な調査はもう少し時間をかけて調べたいと思っているところでございます。
  176. 有田一寿

    ○有田一寿君 私も詳細は知りません。ただ、一、二あるんですけれども、そこら辺をさらに正確なものを調査していただくとよろしいです。  イタリアは、これは昭和二十四年——一九四九年の七月に法律七一七というのが制定されておりますが、その中に、一カ条だけですけど、こう書いてあるようですね。「国の行政機関とその自治組織、ならびに管区、州、市区町村およびその他の公共団体で、戦争中に破壊された公共建築物を再建しようとするものは、その計画にかかわる予算総額の二パーセントをくだらない額を、当該建造物の美化のため用いられる芸術作品の購入費として計上しなければならない。」と。  ドイツの場合はちょっとパーセンテージが幅があるんですけれども、これは一九七〇年に決めておるようですね。「連邦行政機関および連邦が補助する公共建造物の建設工事については、その建造物の性格およびその工事の範囲からもっともと考えられるかぎり、その建造物の建設費および外部設備費の一パーセントから五パーセントまでの金額を、芸術作品(彫刻、絵画等)の購入費として計上しなければならない。」  まああとフランスとスウェーデンとアメリカとありますが、ただ、アメリカのやつは予算の外に一%加えるんじゃなくて、決まった予算の中から一%を取ってそれに充てろというようなことが書いてあるようです。  まあ別に外国がどうだから日本がどうだということではございません。しかしながら、この前から申し上げておるようなことで、新しい学校建築物、あるいは公共建築物をつくるときにそういうことをぜひとも行って、十年、二十年続けていけば、文化的な環境に接することによって、子供あるいは大人も同様ですが、芸術的な感覚を身につけることができるだろうということでありますので、どうぞひとつ御調査になって、それを参考にしながら、わが国でもそろそろこういうことを考えていきたいというような気持ちであります。  次に、これは大臣で結構ですが、身体不自由児、あるいは精神的な面で立ちおくれた子供、それをどういうふうに小・中学校、あるいは高等学校で受け入れて、教育していくかという問題に関連するわけですが、先般これは新聞で読みましたが、高等学校の教科課程、コースを多様化していくということの案が文部省のものとして発表されておったものを読みました。そのときに、学力別学級編成ということも考えておられるように承知しましたが、それについてお伺いできたらここでお伺いしたいと思いますが。
  177. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) あの新聞の記事になったことでございますが、高等学校の学習指導要領の改定につきましては、まだ文部省検討中でございます。高等学校の先生等にお集まりをいただいて、内容の御相談をした段階で、どこかから漏れたようでございます。まだ検討中でございまして、発表する段階に至っておりません。
  178. 有田一寿

    ○有田一寿君 そういうことでしたら、それ以上ここでそのことについてお尋ねをすることはできないわけですが、それならば希望として申し上げることはできるかと思いますが、この多様化の問題につきましては、いまの高等学校の状況から見て、いまのコースでは不足だということは言えようかと思うんです。この間新聞にはホテル科というようなこともちょっと書いてありました。私は大いにそれは必要なことだろうと思う、ホテル科にしても、演劇科にしてもですよ。芸能科というのも昔私もちょっと言い出したこともあるんですけれども、そうすると、いまのタレントとか、歌手のことを考えるようだったから、その言葉は不適当だろうということで撤回したことがありますが、その芸能というのは古典芸能の意味でありまして、その後継者を養成する、あるいは陶芸の後継者を養成するというようなことで、これはすべての高等学校にそういうものをつくったからといって、田舎の方ですべてホテル科が定員いっぱいになるということはありますまいが、これは全国で一つか二つ、あるいは数校の学校をつくって寄宿舎制度を取り入れれば、ずいぶん救われる生徒があるのではなかろうか。で、ここで多様化の問題についてどういうことを検討しているか、これは初中局長からでも結構ですけれども、お伺いできたらお伺いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  179. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) ただいま大臣お答えしましたように、この高等学校の学習指導要領をどう改定するかというのは、いま作業中でございまして、いろいろな方々の御意見を伺っておる段階でございますが、まあ基本的な考え方として、高等学校の学習指導要領の改定の大きな一つの柱は、やはり今日のような進学率が九三%にもなった現状において、いかにしてこれを多様化して、能力、適性の異なる一人一人の子供に、できるだけ満足のいく教育が施せるようにするかというのが課題だろうと思うわけでございます。まあその一つのあり方として、一つは高等学校を卒業するに必要な単位数を今度八十単位としたわけですけれども、従来の学習指導要領では八十五単位でございますが、何と四十数単位が必修といって固定されております。それは私はやっぱりよくないんではないか。やはり必修といっても、できるだけその必修の幅というものを少なくいたしまして、高等学校段階になるとすべての子供に、たとえば国語、社会、数学、理科といった各教科を、全部一定の単位修得させるというのはかなり無理がくるというふうに考えますので、その辺ももう少し弾力化できないかという、単位修得とその単位の中身のあり方の問題が一つございます。  それからもう一つは、ただいま御指摘のように、今度は高等学校に置かれる専門の課程でございますが、現行は普通課程のほかに農、工、商、水産という職業コース、それに英語、理数、体育といったような特別の課程を置くことができるという例示をしてございますが、この例示の幅を制度上はいろいろな学科を置くことができることにはなっておりますけれども、やはりある程度例示をして、もっと高等学校の課程のあり方というものを幅広く考えてもよろしいんですよという言い方をした方がよくないかということで、そういう意味での御意見を聞いておる。  そこで、いまその幅広くといった場合に、その中身として、たとえば演劇であるとか、あるいは書道であるとか、あるいは体育であるとか、あるいはホテルであるとか、あるいは美容であるとか、理容であるとか、そういうようなものをどの程度例示し、考えていったらよいであろうかというのは、確定したところまではまだいっておりませんけれども、いま申しましたような幾つかのものを例示して、こういうものはどうでしょうかと、こういうことで御意見を伺っている、こういう段階でございます。
  180. 有田一寿

    ○有田一寿君 高等学校の留年ですけれども、公立高等学校で留年ということはどの程度現在ありますか、調べられたことありましょうか。
  181. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 具体的なその数字を調べたことはございません。ただ、公立でも一部に留年というものが実際に行われているのがあることは確かでございますが、非常に数は限られておるというふうに思います。
  182. 有田一寿

    ○有田一寿君 ここまで進学率が上がってくると、やがて昭和六十年になれば九六%を超すということになりますと、実質上の全入が行われておるというようなことで、小・中までは義務教育ですけれども、高等学校の場合義務教育ではないと、ここで留年、早く言えば落第ということをどう考えるか。これは落第はさせないんだということでしょうか。いや留年ということもやはり考えるべきだというふうの方向を考えておられるか。いまはもう留年なし、怠けようと全部卒業させるということになっておると思うんですが、それは正しいことでしょうか。
  183. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 現在の学校教育法や規則のたてまえから言うと、その単位を履修するということと、修得するという二つの言葉の使い分けをして、要するに教室へ出て一定の時間講義を聞けば履修だと、しかし具体的にその内容を自分のものとして成果を上げたかどうかというのが修得だと、こういうふうな考え方になっておるわけでありまして、率直に言って現在どちらかと言えば、その履修主義のたてまえできておるわけでございまして、これはアメリカなどに比べると非常に運営として適当でないじゃないかという議論も御承知のようにかねてからあるわけでございますが、日本の実際の風土としましては、一遍落第して学校の外へ出たというても、また思い直してしばらく後にもう一回勉強するというようなことは通常やらないし、できにくいというような風土もございますんで、どちらかと言えば履修主義でずっときておるというのが現状だと思います。  そこで、たてまえとして、これはもう落第をどんどんさせる方がいいんだということは、私はやっぱりそうは言ってみても、いまの段階ではなかなか行われにくい。実際に私立学校等ではそういうことをかなり厳しくやっているところもありますが、それはそれとして大いに結構だと思いますけれども、日本の高等学校教育制度をいま急にそういうふうにたてまえを変えていく、変える方がよろしいかどうかというと、やはり徐々にそういうことを考えていかないと、実際問題として非常に無理なんではなかろうかというふうに私は考えているわけです。
  184. 有田一寿

    ○有田一寿君 単位制度と学年制度が併用されておるのが日本の高等学校で、それを単位制度に割り切って徹底すれば、留年ということはそんなにむずかしいことでもないし、体裁の悪いことでもない。足らない単位を後日取って追加していけば、半年後にその単位を追試で受けて、いわゆる特別卒業というふうになっておったものを、普通卒業に切りかえてもらうことができる。ただ、学年制が前面に出ておる限りは完全なる落第、留年という姿になりますから、なかなか一単位残した、二単位残したから一年留年というのはむずかしいと思うんですけれども、ただこれからずうっと将来高等学校を中身の濃いものにしていく、言いかえれば多様化するものは徹底的に多様化する、学力別学級編制も取り入れていく、それからできない者はこれをできるようにする、それからできる者が足踏みをしないようにするという、そういう個性教育的なものに配慮を加えようとしていく場合に、全然留年というようなことは考えないんだと、考えてないということでは、私は結局いいかげんな教育になっていくという危惧があるんですけれども、まあ反面のまた短所も出るかもわかりませんが、先般のオナードだとか、パスだとかいうような卒業のさせ方もあるわけですが、これを全部ほおかぶりして、入るだけほとんど全入に近く、一〇〇%に近く入れていく。そして一〇〇%に近く押し出していくということで、私は高等学校の教育が望ましいものになるとはどうも思えないわけです。だから、これは今後いろいろな例も参考にしながら、真剣に研究していく必要があるのではないか。大学とか、中学、小学よりも、高等学校が一番のいろんなその意味ではポイントになってくるような気がしますが、どうでしょうか。これは大臣の御見解を伺いたいと思います。
  185. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) まさに高等学校がポイントになってくると私も考えます。やはり、いまのような、何か履修させただけで目をつぶっているという状態が、高等学校教育の私は本当の目的ではないかという気持ちがいたします。やはり修得させて卒業させる、そこに目標を置かなければ、みずから選んで高等学校へ行って勉強しよう、高等学校へやって勉強させよう、本人も、家庭もそう思うわけでございますから、その意義が、やはり修得を目標にするのでなければ根底からなくなってしまう。しかし、いま直ちにということになりますと、私はやはり単位制度というものの認識が今日の日本の社会にやはり確立されていない。大学の場合でもまた同じことが言えるわけでございまして、これだけの単位を大学で取ったということの価値を認めてくれないいまの日本の社会、一枚の紙切れを、卒業証書を持っていれば、もうそれに値打ちを見つけてしまうといういまの日本の社会、こういうところからの社会全体の改善に伴いつつ、高等学校も本来の目的である修得を目指して、内容を充実させつつやっていくということでなければ、むずかしいのではないかという気持ちがするわけでございます。
  186. 有田一寿

    ○有田一寿君 終わります。
  187. 吉田実

    委員長吉田実君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  188. 吉田実

    委員長吉田実君) 速記を起こして。  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明聴取いたします。砂田文部大臣
  189. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) このたび政府から提出しました国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、昭和五十三年度における国立の大学の新設、学部及び大学院の設置、短期大学の新設及び廃止、放送教育開発センターの新設、国立養護教諭養成所の廃止等について規定しているものであります。  まず第一は、上越教員大学及び兵庫教員大学の新設についてであります。  この二つの教員大学は、教員の資質能力の向上と初等教育教員の養成・確保という社会的要請に対処するため、主として、教員の研究・研さんの機会を確保することを趣旨とする大学院と、初等教育教員を養成する学部を有し、全体として大学院に重点を置く大学として設置し、学校教育に関する実践的な教育研究を推進しようとするものであります。  なお、両大学とも、本年十月に開学し、学生の入学は、兵庫教員大学にあっては、大学院は昭和五十五年度から、学部昭和五十七年度から、上越教員大学にあっては、学部昭和五十六年度から、大学院は昭和五十八年度からとするものであります。  第二は、福井医科大学、山梨医科大学及び香川医科大学の新設についてであります。  近年における医療需要の増大と医師の地域的偏在に対処するため、これまで無医大県の解消を図る施策を進めてきておりますが、その一環としてこれら三大学設置し、医師養成の拡充を図るとともに、医学研究の一層の推進に資することとするものであります。  なお、三大学とも本年十月に開学し、昭和五十五年度から学生を入学させることとしております。  第三は、学部設置についてであります。  信州大学に人文学部の経済学関係の学科を基礎として経済学部を、島根大学に文理学部を改組して法文学部及び理学部を、広島大学教育学部教員養成関係の課程を基礎として学校教育学部を、山口大学に文理学部を改組して人文学部及び理学部を、それぞれ設置し、これら地方における国立大学教育研究体制の整備を図ろうとするものであります。  第四は、大学院の設置についてであります。  これまで大学院を置いていなかった富山医科薬科大学及び愛知教育大学に、それぞれ大学院を設置し、もって、これらの大学における教育研究の水準を高めるとともに、研究能力のある人材の養成に資することとするものであります。なお、富山医科薬科大学大学院には博士課程の薬学研究科を、愛知教育大学大学院には修士課程の教育学研究科を置くこととしているものであります。  また、上越教員大学及び兵庫教員大学は、前述のように、大学院に重点を置く大学として新設するものでありますので、これら二大学にも大学院を設置することとしております。  第五は、短期大学の新設等についてであります。  これは、筑波大学に医療技術短期大学部を新たに併設し、看護婦等の養成及び資質の向上に資することとするとともに、千葉大学工業短期大学部については、昭和五十一年度において工学部へ発展的に転換を行い、以来、学生の募集を停止してきておりますので、このたびこれを廃止することとするものであります。  なお、筑波大学医療技術短期大学部は本年十月に開学し、昭和五十四年四月から学生を入学させることとしております。  第六は、付置研究所の位置の変更等についてであります。  東京工業大学の資源化学研究所及び精密工学研究所については、研究体制の整備充実を図るため、神奈川県長津田地区へ移転することとし、これらの位置を東京都から神奈川県に変更するものであります。  また、富山大学の和漢薬研究所については、同大学の薬学部及び大学院薬学研究科の富山医科薬科大学への移行に伴い、医学との連携を重視しつつ、薬学に関する教育研究の一体的な遂行を確保するため、これを富山医科薬科大学に移すこととするものであります。  第七は、放送教育開発センターの新設についてであります。  これは、放送利用の大学教育に関する研究開発を行う国立大学共同利用機関を新設しようとするものであり、これにより、この面における国公私立大学の連携協力の推進と大学開放の促進を図り、あわせて、放送大学の創設準備を推進することをねらいとしております。  なお、設置の時期は本年十月とし、位置は千葉県とするものであります。  以上のほか、このたび新設しようとする五大学を含め、昭和四十八年度以後に設置された医科大学等の職員昭和五十三年度の定員を定めるとともに、昭和五十一年度において教育学部の養護教諭養成課程に発展的に転換し、以来学生の募集を停止してきておりました北海道教育大学養護教諭養成所、千葉大学養護教諭養成所及び大阪教育大学養護教諭養成所を廃止することといたしております。  なお、衆議院において施行期日等に関する附則の規定の一部が修正されましたので、念のため申し添えます。  以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますよう、お願いいたします。
  190. 吉田実

    委員長吉田実君) 以上で説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会      —————・—————