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参考人(
行方正一君) 二つの問題について
お答えするわけでございますけれ
ども、まず後段の問題につきましては、ただいま
久保先生からお話の趣旨につきましては、私
ども協会といたしましてはそういう考え方を今後前向きにいろいろ検討したいと思うわけでございますけれ
ども、現状といたしましては、いま現在各メーカーから発売されておりますすべての
レコードは、国会図書館に
レコード関係は保存してございます。で、国会図書館で、いま先生が御指摘のように、カタログから除かれた廃盤の
レコードなどを聞きたい場合には、国会図書館へおいでいただければお聞きいただけるようなチャンスはございます。それを今後
業界としてどのようにそういう中で取り上げていくかというのは今後の問題でございますので、何かいい方法があればまた積極的に考えていきたいなあと思っておりますが、一応現状はそういう形の中でそういう御希望の
方々の御満足におこたえしているというのが現状でございます。
それでは前段の私的
使用の問題につきましてせっかく御
質問をいただきましたので、この機会をいただきましてぜひ
先生方の御理解をちょうだいしたいというふうに思っておりますので、しばらくお時間をいただきたいと思うわけでございます。
冒頭、
会長からこの私的
使用の問題につきましては、現在
関係三
団体によりまして
文化庁さんの方に一括要望をしているわけでございますが、まあその過程などにつきまして少しくお話し申し上げたいと思うわけであります。
昭和四十六年に現在の
著作権法が制定されるに当たりましての
審議過程におきまして、私
どもがやはり将来を見通した場合、私的
使用を認めた場合には、
関係権利者に重大な弊害をもたらすことが明らかであるということが予想されましたので、これを禁止してほしいという
意見を具申しておったわけでございますけれ
ども、その当時の
審議に当たりまして、これはやはりその当時の複製機器の
技術の進歩を考慮すれば、これらの機器を利用する私的
使用を制限することは実情にそぐわないし、かつ家庭内での複製を禁止しても実益は少ないのではないかというような御
意見もございまして、結局改正
著作権法の三十条におきまして、私的
使用のための複製の自由が認められました、そして今日に至っているわけでございます。
ただそういう決定をされるときに、参議院の
文教委員会、あるいは衆議院の
文教委員会におかれましては、
一つの附帯決議がされているわけでございます。その
内容は、「今日の
著作物利用手段の開発は、いよいよ急速なものがあり、すでに早急に検討すべきいくつかの新たな課題が予想されるところである。よって、今回改正される
著作権制度についても、時宜を失することなく、
著作権審議会における検討を経て、このような課題に対処しうる措置をさらに講ずるよう配慮すべきである。」と、いわゆるその当時としては将来に対してそういうことが拡大されることがあるから、その時期にはひとつそういう時期を見計らってやはり配慮すべきじゃないかという附帯決議をいただいて、そして今日まで来ているわけでございます。
それで、私
どもといたしましては、四十六年に現在
著作権法が施行されまして五年を経過しました五十一年の十月に、
関係団体でございます
日本著作権協会、あるいは
日本芸能家
実演団体協議会、私
どもレコード協会、この三
団体が、果たして録音、録画の
実態はどういうふうになっているんだろうというようなことで、東京二十三区の六千人を対象にいたしまして共同に調査をいたしました。その結果、どういうことがわかったかと申しますと、放送または既存の
録音物、あるいは録画物が複製する個人録音、録画の行為及び
実演の生録音をする
実態、そういうようなものは現行
著作権法が制定される当時の予想をはるかに上回りまして、これでは速やかにやはりある
程度制度を改正していただく時期に来ているのではないかということになりまして、
昭和五十二年の三月三十一日に
関係団体で
文化庁の方にそういう要望を御提出申し上げたわけでございます。
その要望の
内容につきましては、現在
著作権法三十条で私的
使用のための複製については認められているけれ
ども、それに追加いたしまして私
ども著作権者、
実演家、
レコード製作者はいわゆる録音をとるための機械及び機材、この機材と申しますのは要するに録音するときに当然
テープを使います、
テープに録音するわけでございますから、その
テープを言うわけでございますけれ
ども、そういう機械と
テープをつくる
製作者から、その機械及び
テープを販売する
価格に一定率を乗じて得たその保証金をぜひひとつ受け取る
権利を持つようにしていただきたいというような
お願いを三
団体でいたしたわけでございます。それで実は昨今来お話がございますように、
文化庁さんの方ではそれを第五小
委員会という形の中で、いま専門
委員会をつくっていただきまして御
審議をいただいているというのが現状でございます。それでもう少しお時間をいただきたいと思いますが、それでは私
どもの調査によってどういう現状がわかったのかということでございます。
幾つかの現状がわかりましたので、これも詳しく申しますと時間かかりますので大ざっぱに申し上げておきますと、まず何といいましても非常に私
どもが驚きました点は、この
テープレコーダーの
普及というものが異常に大きいと、その当時の、制定時よりも急速にそういうものがふえているということでございます。経済企画庁の
消費者動向調査によりますと、
テープレコーダーの世帯
普及率は四十一年のときには一八%でございました。それが五十一年には五七%に達しております。これを東京だけにとりますと約六〇%という高率を示しているわけでございます。そしてさらに最近の機械
関係をごらんいただければ、いわゆるワンタッチでラジオ放送を
テープ録音できるような機能、つまりラジオつきカセットと呼んでおりますが、そういうものの
普及が特にヤングを中心に急速に伸びているわけでございます。このラジオつきカセットというのはいわば個人で録音するための機械でございますから、そういうものが急速に伸びているということは、別な面で私
どもとしましては事態を深刻に感じているわけでございます。機械の
普及ができました、そうしますと当然個人の録音する人口というものが増大してまいります。それではその増大はどのくらいあったんだろうということを調べてみますと、一年間で個人録音の経験者は東京都では約二百九十万人でございます。これは東京都の全人口の二五・三%に当たっております。で、東京の録音経験者の基準を全国に仮に当てはめたといたしますと、何と全国では二千三百万人の人が何らかの形で個人録音の経験者であるということが推定されるわけであります。しかも個人録音の人たちは、
先ほど申しましたように若い人たちが非常に多いというようなことで、中学生を中心とした人たちの占める割合は何と七三%の人たちが個人録音をしているということでございます。さらに申し上げますと、御
出席の
先生方も十分御存じだと思いますが、最近ではFM放送の番組は一週間分を詳細に新聞に折り込みの中で紹介しているわけです。あるいは
業界誌によりますと、FM放送の欄の中に、今週はこれをとりなさいというような形で積極的にそういうものを奨励している記事がどんどんどんどんふえているということは、ますますこういう個人録音の対象というものがふえるんじゃないかということでございます。で、対象はふえました、それでは量はどうなんだろうということでございますと、量的に申し上げますと、大体一年間に一人平均三十五回、曲数で二百五曲ほどになります。これはその人が一年間に買います
レコードの枚数が八枚でございますから、合計四十七曲でございます。その人が買う
レコードの曲数とそれから録音する曲数を比べますと、何と録音する方が四・四倍も多いというようなことでございます。そのほかいろいろございますけれ
ども、ちょっと時間がないようでございますので、また後ほど御
質問があれば御
説明したいと思うわけでございますけれ
ども、そういういろんな
状況がわかりました。そこで私
どもはそのような
お願いをしたということでございます。
最後にもう一度私
どもの基本的な考え方だけを申し上げておきますが、私
どもでは家庭内での録音行為を容易にする機械というものの発達
普及を阻止しようなんというつもりはございません。が、家庭内で録音を行う者が容易に機械を利用して録音できるというその利点に対して、利益の還元の見地から何らかの御負担を
お願いしたいというのが、私
どもが
お願いしている要望の一番のポイントでございます。時間が後半なくなりましたので不十分になりましたが。