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1978-06-13 第84回国会 参議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月十三日(火曜日)   午前十時二十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 省吾君     理 事                 青井 政美君                 大島 友治君                 山内 一郎君                 川村 清一君                 相沢 武彦君     委 員                 片山 正英君                 北  修二君                久次米健太郎君                 小林 国司君                 田代由紀男君                 田原 武雄君                 野呂田芳成君                 降矢 敬雄君                 坂倉 藤吾君                 丸谷 金保君                 村沢  牧君                 吉田 正雄君                 原田  立君                 河田 賢治君                 三治 重信君    国務大臣        農 林 大 臣  中川 一郎君    政府委員        内閣法制局第四        部長       別府 正夫君        国税庁間税部長  矢島錦一郎君        農林政務次官   初村滝一郎君        農林大臣官房長  松本 作衛君        農林省農蚕園芸        局長       野崎 博之君        農林水産技術会        議事務局長    堀川 春彦君        特許庁長官    熊谷 善二君        特許庁特許技監  城下 武文君        特許庁総務部長  勝谷  保君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部取        引課長      樋口 嘉重君        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君        大蔵省主計局主        計官       岡崎  洋君        農林大臣官房審        議官       小島 和義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○農産種苗法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農産種苗法の一部を改正する法律案審査のため、来る十五日の委員会に、参考人として全国農業協同組合中央会農畜産部長 小口芳昭君、日本種苗協会会長 瀧井利彌君及びぶどう品種改良家 沢登晴雄君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 農産種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は先般聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 丸谷金保

    丸谷金保君 この種苗法というのは、改正法律案ということで出てまいりましたが、ずっとこの経過を見ておりますと、もうほとんど前の種苗法とは異質のもので、全面改正というよりも新しい法律と言ってもいいんでないかというほど、従来の種苗法の基本的な考え方の中で違いが出てきておるというように実は読んだ次第でございます。  特に、その中で非常に重要な問題というのは、従来の種苗法ですと、優秀な品種というふうなことが入っております。今回はそれが抜けましたが、そのことについての理由をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  6. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 今回、優秀性を削除いたしたわけでございますが、そもそも品種優秀性については、やはり時代推移等もございますし、栽培技術あるいは利用技術の変遷と、そういうようなことで時代推移とともに変わってくると。したがいまして、従来は優秀性資材審議会等にかけて判断をいたしておったわけでございますが、それぞれ個人の嗜好によっても違いますし、そういうこともありまして、今回優秀性判断はひとつ個人利用判断に任せると。実例といたしまして、非常にその優秀性ということで時代に先駆けて新しい品種をつくった方で、お気の毒な目に遭った方も中にはおられるという事例もあるわけでございます。  したがいまして、そういう意味優秀性を削除したものでございますが、実際問題としては、これから出てくるものも、そう優秀性でないもの、あるいは利用価値のないもの、そういうものは余り出てこないのではないかと。同時にまた、外国制度でもやはりこの優秀性要件としてない、条約でもそういう優秀性要件としてない、そういうような理由優秀性を削除したわけでございます。
  7. 丸谷金保

    丸谷金保君 局長さん、いま時代推移で今回はその優秀性という文言を抜いたんだということでございますけれども、ちょっと納得がいかないんですが、変えないで約三十年使っていたわけですわね。どこら辺から、時代推移で変えなきゃならぬような状態になりました。
  8. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) まあ、どこら辺でと言われましても、具体的にいつからというようなあれでございますが、昭和四十七年に例の植物品種検討会ということが始まりまして、その検討会の中でもやはりそういう優秀性という問題についていろいろ議論が出まして、諸外国の例を見てもその優秀性というのは排除しているからそういう優秀性というものは排除したらどうかという、そういう議論が出てまいりまして、われわれとしても今回その議論を踏まえてそういうことにいたした次第でございます。
  9. 丸谷金保

    丸谷金保君 私たちが承っておりますところですと、どうも優秀性という言葉を入れておったことによっていろんな問題が出てきたと、だから抜かざるを得なくなったというふうに理解をしておるんですが、そういうことはないんですか。
  10. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 一つの例といたしまして、先生も十分御承知のことと思いますが、かつては、やはりいま非常に普及をいたしております巨峰というものが、そのときの状況によりまして非常に栽培地が制約される、非常に困難であるというような理由で、実は登録から落ちた例があるわけでございます。そういうようなこともかつてございましたし、先ほど申し上げましたように、やはりそういう点でそういう気の毒な方も出られたと、そういう実例も踏まえまして、今回、優秀性というものを排除したということでございます。
  11. 丸谷金保

    丸谷金保君 今度の法改正の中で一番際立って目立つのは、優秀性というものを抜いたということに一つの特徴があらわれております。ですから、新しい法案を審議するためには、それを抜いた背景というふうなものをやはり十分論議してかからなければならない。いまの局長の御答弁ですと、何かくつの裏からかゆいところをかいているようなことでどうもさっぱり伝わってこないんですが、ずばり申し上げて、品種登録の中で、農林省は、これは非常に優秀だから品種登録したということで優秀性を基準にして登録をしたやつがさっぱり優秀でなくて、こんなのだめだと、これは優秀でないということで登録をしなかったものの中に優秀なのが出てきたので、どうもそういう判定をしたのではまずいということになってきたのが本当でないんですか、どうですか。これはやっぱりずばり本音を吐いてもらわないと話が先に進まないので、いままでのやはり失敗失敗で認めていただかないと困ると思うんですが、どうですか。そういうことはたくさんございましたでしょう。
  12. 小島和義

    説明員小島和義君) そういう過去における登録失敗例と申しますか、成果が必ずしも上がらなかったという事例を否定するつもりは毛頭ございません。  ただ、今回の改正は、そういういままでにいろいろまずいことがあったからというだけではなくて、従来の農産種苗法が、法律全体の構想といたしまして優秀な品種普及していく、そういう奨励法規の一環といたしまして、その中に優秀な品種育成した者に対して名称登録を与える、こういう規定が設けられているわけでありまして、それ以外の品種につきましては、たとえ新しい品種であってもそういう地位を認めないという運用をやってきたわけでございます。ところが、世界各国動きと申しますのは、新しい品種育成した者につきましては、何らかの法的な保護を与えるというふうな動向になってきておりまして、御承知のような国際条約というのもできております。世界各国動きも大体その条約の線に即しまして、新しい品種育成者に与える保護というのは、優秀性とか有用性というものを要件としないでこれを認めると、こういう形になってきておりますので、従来の反省の上に立脚し、また、世界各国動きにならいまして今回の改正をいたしたと、こういうふうにお考えいただければいいかと思います。
  13. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうも非常に答弁がお上手で、なかなか私の言ったことに直接法でお答えいただかないで、間接法でお答えされるものですから再度質問しなければならぬですが、必ずしも否定するものでないということは、私の質問を認めたということですか。そういうことはたくさんあったということなんですか。間接法でなくて直接法で答えていただきたいと思うんです。
  14. 小島和義

    説明員小島和義君) たくさんというのはどの程度の数をおっしゃっているのかわかりませんが、事例としてそういうものがあったということは否定するものではございません。
  15. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはどうも申しわけなかったというような事例二つか三つ挙げていただけませんか、皆さんに御理解いただく面においても。私は覚えていますけれどもね。これは、やはり頭を下げるところはまず下げていただかないとね。
  16. 小島和義

    説明員小島和義君) 二つか三つとおっしゃいましたが、私は寡聞にしてブドウ巨峰事例ぐらいしか存じませんで、もし御必要がございますれば、調べまして早速お答え申し上げます。
  17. 丸谷金保

    丸谷金保君 巨峰しか知りませんか。丸山さんなら答えられるでしょう。高尾だとかああいうものについてひとつ。巨峰は、これはだめだと言って登録しなかったやつが出ていった方の例ですね。逆に、農林省登録して、これは優秀だと言ったやつでさっぱり優秀でなかった例の方もひとつ挙げてください。それでないと不公平なんで、丸山さんでいいですよ。専門家いますでしょう、そこに。
  18. 小島和義

    説明員小島和義君) 登録はしたけれどもさっぱり普及しなかったというふうの例としましては、ブドウ摂津というのが例としてあるそうでございます。
  19. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうも何か、専門家の方そちらにたくさんいられるのですが、答弁台に立てないそうなので、これはやむを得ないので間接的なお聞きをすることになるんですが、たとえば摂津とか高尾とか、農林省が優秀な品種だという品種登録をしたことによって、これがどの程度種苗業者を通じて日本農民の畑に植えられて、農民損害を与えてきたかというふうなことについての、農林省としての反省意味での調査はやっておりますか。
  20. 小島和義

    説明員小島和義君) 高尾は、御承知のように数年前登録したものでありまして、まだ普及段階である。それから、この種の品種について一様に言いますことは、優秀な品種として登録したものでありましても、日本じゅうすべての地域にわたって普遍性があるというものではございませんで、品種と植える場所及び栽培方法との絡みが出てくるということもございますものですから、それによっていかような損害が生じたということについては的確に判断をいたしかねますので、調査もいたしてございません。
  21. 丸谷金保

    丸谷金保君 いま御説明がありましたように、品種にも土地をきらうということがありまして、適地を得なければどんな優秀な品種でも成績を上げられないということがあるわけです。しかし、種苗業者はそういうことを言ってないわけですよ、広告に。農林省がこれはいいんだということでレッテルを張ってくれますと、これはこういうところにはちょっと無理だなと思うようなものでも、注文があれば売りまくります。高尾なんかの場合にはそういうことが山梨で行われましたでしょう。そのことは御存じですね。
  22. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 東京都の農業試験場登録した品種でございまして、いま先生のおっしゃった高尾でございますが、やはり先生がおっしゃいましたように、それぞれ適地というものは確かにあろうかと思っております。
  23. 丸谷金保

    丸谷金保君 新法になりましても、これは農林省登録した品種ですということで、そのことだけで農民の方は信用してしまうと。これは法律が変わりましても、そういう危険性というのは、危険性と言うより可能性というのは非常に多いわけです。それだけに慎重にこの法律というのは扱わないと、意外なところに大きな問題が出てくるというふうに思いますが、いま私が巨峰高尾のそういうふうな問題を申し上げますのは、農林省がこんなものはだめだといったやつが非常によくて、それからこれは優秀だといったやつがもう結論は出ておりますよ、目下あれだといいますけれどもね。山梨あたりじゃ、もうあれでしょう、高尾なんかにだまされちゃってということで抜いていますわね。巷間こういう話があるのを御存じですか、多年生の苗木を余りいいものやると、おれたち商売にならないんだと、こういう話をお聞きになったことはございませんか。
  24. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) いま先生からはお聞きしましたのですが、われわれいままで余り外部の方からはそういう話は聞いておらないわけでございます。
  25. 丸谷金保

    丸谷金保君 今度の法律の中で、優秀ということを抜いた問題、これは後でもまたもっと専門的な形で申し上げたいと思いますが、結局抜かざるを得なくて私は抜いたんだろう、いろんな問題が出てきそうだというふうなことがあると思うんです。  それから、時代推移で新しい種苗法に移り変わってきた経過、これは七十五国会で、衆議院予算委員会の第四分科会、この中で田中武夫委員植物特許の問題について質問いたし、その後参議院で鈴木省吾委員が、元来、植物の問題というのは特許法になじまない点もあるんじゃないか、農林省考えろということを強く言われて、国会論議を踏まえて新しい法律制定の方に進んだというふうに伺っておりますが、実際の法案制定ということに進み出した一つの原因というのはそこら辺にあったんでございましょうか、いかがでしょうか。
  26. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 先生おっしゃいましたように、やはり植物品種それ自体というのはなかなか特許にはなじみにくい、理論的には品種それ自体も、あるいはその育成方法等についても理論的には考えられるわけでございますが、品種それ自体になりますと、やはり特許対象になる進歩性とか新規性、そういう条件を満たすということが非常に困難である、そういうようなこともございまして、やはり特許対象にするよりも植物品種につきましては、現行農産種苗法許諾方式といいますか、登録方式といいますか、そういうものがなじみやすいのではないか、そういうような考え方でスタートをいたしておるわけでございます。
  27. 丸谷金保

    丸谷金保君 その論議の観点については、当時の答弁は、農林省側考え特許庁側考えと大分違っております。その問題に入る前に、一応経緯というふうなものをお聞きしておきたいと思います。  昭和五十一年の五月に、植物品種保護法案というのが一応案として農林省から提示されておりますが、その当時の内容、これについてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  28. 小島和義

    説明員小島和義君) これは、昭和四十七年に研究会をつくりまして以来、さまざまな形で役所の内部では試案のようなものをつくって検討いたしておったわけでございまして、御指摘がありました時期での案というのは、植物品種保護法案というふうな形のものとして決めたという段階だったと理解をいたしております。
  29. 丸谷金保

    丸谷金保君 非常にその出時と今度提案された法律中身が二転、三転しておりますので、その経緯を踏まえて論議を進めたいと思いますので、昭和五十一年五月当時のときに考えられた案、このものをまず御説明いただきたいと思います。
  30. 小島和義

    説明員小島和義君) これは、中身を一々申し上げますとかなり長い条文でございますのでいかがかと存じますが、骨子を申し上げますれば、要するに、植物の新品種につきまして、その育成をいたしましたものについて新品種保護権というふうな権利を与えるというふうなことを骨格といたしまして、大体特許法のようないわゆる無体財産権的な構成として組み立てよう、当時としてはそのように考えておったわけでございます。
  31. 丸谷金保

    丸谷金保君 当時の案を拝見いたしますと、ほとんど特許法余り変わりのないような法案、いわゆる無体財産権中心とした案であったと思うんです。当時のそういう案をつくった理念といいますか、考え方、こういうこともひとつ解明しておきたいと思いますので、御説明いただきたいと思います。
  32. 小島和義

    説明員小島和義君) 御存じのように、今回の改正案をお出しいたします前の時点におきましては、立法論としてはいろんな形というのが検討の俎上に上ったわけでございます。世界各国の実際の立法例を見ましても、ある国におきましては特許法の中に植物につきましての、植物の新品種のための特例的な規定を整備する、こういう形で問題を解決しておる国もございますれば、独立した法律を持ちましてある種の保護権を与える、こういうふうな立法をとっておる国もあるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、世界各国のそういう事例に照らしまして現行特許法でということについては、先ほど局長も申し上げましたように、いろいろなじみにくい問題もございますので、植物の実態に即した新しい権利制度を設けると、こういうことで考えておったわけでございます。ただ、特許法と全く同じということでは決してございませんで、どういう場合に登録を与えるかというふうな問題、それからまた、その権利の効果と申しますか、及ぶ範囲と申しますのも、これも特許法とは若干趣を異にいたしておりまして、世界各国とも大体そういう考え方法制化をいたしておるようでございます。  したがいまして、私どもとしましても、無体財産権的な法律構成ということを一時非常に強く願望しておったという経過はあるわけでございます。しかし、その後いろいろ検討していきました過程におきまして、どうも権利法というかっこう法律にいたしました場合に……
  33. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと、その分はまた後で聞きますから。いま五月の時点での理念を——どうも進み過ぎちゃいましてあれなんですが、聞いたことにだけ、そのことはまた後で聞こうと思っておりますので、ひとつ質問に答えていただきたいと思います。  それで、この五月には、いわゆる無体財産権中心とした一つ考え方一つの案が出てまいりました。それが、いまおっしゃったようないろんな協議会とかなんとかというふうなことの前に、農林省自体内部で八月になりますともう変わって、もう一つ今度は案が出てきております。われわれ当時これを、幻の法案というふうに名づけたものなんです。というのは、これは国内では余り説明されないで、どういうわけかアメリカの方から話が入ってきたのです。日本農林省はこういうことを考えていると。一体これはどういうわけでそういうことになったんでしょう。
  34. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 先生のおっしゃるのは、アメリカローリン氏に翻訳されたものが渡っているかと、そういうようなお話とは違うわけですか。
  35. 丸谷金保

    丸谷金保君 ローリン氏に渡ったのはそのもっと後の方なんです。これはそうでなくて、われわれのところへは、どうも農林省は、前のいわゆる無体財産権中心にしたのじゃなくて育種者保護中心にした法案にもう五月の案はやめて別な考え方を持っているぞというふうなことで聞こえてきたので、ですからわれわれにしてみれば、それは五月の法案でなくて八月にもう三ヵ月で別な考え方に変わって、アメリカ方面に向けて何か説明したやつのはね返りがわれわれの方へ入ってきましたので、国内ではこれを称して幻の法案と言ったものなんです、当時。これはどういうわけなんでしょうか。
  36. 小島和義

    説明員小島和義君) 五十一年の春から五十二年の三月にかけまして、御存じ制度検討会というのをつくりまして法案自体中身検討をやったわけでございまして、その当初の案というのは、御承知のような新品種保護法案というふうな形のものとして検討しておったわけでございます。ただ、そういう段階におきましても、特にUPOVあたり情報交換を行いまして、日本でいま考えている法案というのは大体こんな中身であるけれども、こういう中身で果たして条約加盟の適性があるかどうかと、こういうふうなことは常時連携をとっておるわけでございますので、はっきりした法律案というふうな形のものではなかったと記憶いたしておりますが、それぞれの段階におきます案文につきまして条約事務局意見を求めると、そういうふうな交流は常時いたしておりましたので、そういった動きが海外から迂回的に日本に入ってきたと、こういうことではないかと思います。
  37. 丸谷金保

    丸谷金保君 このときは、アメリカにのみ何かこちらから説明が行われている。アメリカUPOVに入ってないんですから、いいですか、ちょっとすりかえないで本当のところを話してくださいよ。UPOV関係ないんです、これ。
  38. 小島和義

    説明員小島和義君) アメリカとのお話でございましたならば、先ほど局長がお答え申し上げかけましたように、アメリカもまたUPOV加盟を目指しまして、世界各国のいろんな動きというものについて情報を集めておる。こういうことでございますので、たまたま訪日いたしましたアメリカ側責任者に対しまして、日本の現在考えている案はこんなかっこうになっているというふうなことを、日本文のものとして差し上げた経過はあるわけでございます。
  39. 丸谷金保

    丸谷金保君 ですから、五月の案というのは無体財産権中心にしたものとして、国内にも農林省はこういう考えを持っているということが流れましたわね。どうですか。それをもう一回。
  40. 小島和義

    説明員小島和義君) これは、あえて公開をするというつもりはなかったわけでありますが、制度検討会というふうなお座敷をつくりましたものでありますから、この中には各方面関係者が入っておりまして、その意味で広く関係者意見を求めるという意味もございまして、特段秘密扱いというふうにはいたしておりませんです。
  41. 丸谷金保

    丸谷金保君 そのとおりだと思うのです。これは検討会を通じていま農林省こういう案をつくろうと思うと、考えているということは広く流れました。ただ、私がいまここでしつこくお聞きしているのは、ところが、要するに国内には無体財産権的なものとして考えているということでの五月案が流れ、アメリカには育種者保護、特にこのときには職務育種者権利というふうなものを、新たに五月案にないものでアメリカ側説明している。それで私は、一体これはどうなんだろうか。といいますのは、日本国内にはこの九月に植物品種保護法というのの案が、今度はアメリカに出したやつとは違うやつが九月に、これは今度はそういう検討会にかかってくるのです。これでは、職務育種者権利というものはここで削ってあるんです。ですから、わずか四カ月の間に、内面と外面の違う農林省考え方というのが出ているわけです。これは一体どういうわけなんでしょうか。これが検討会意見を聞いて直してきたというのならわかるのですよ。そうでないんです。内部においてそういうふうに変わってきているんです。
  42. 小島和義

    説明員小島和義君) これは別に内面、外面ということでございませんで、五十一年の春から五十二年にかけましては、制度検討会で逐一条文審議みたいなことをしながら案を固めておった、こういう過程でございますので、その過程におきましてはいろいろな形の案があったわけでございます。その中のある種のものがアメリカ側に渡っておるということで、これは必ずしも法律案というかっこうアメリカに提供したものでございませんから、全条文を網羅したものではなくて、まさにその骨子に当たる部分を、向こうとしても関心を持っておったわけでございまして、全条文に関心を持っておったわけでもございませんので、必要な部分だけ提供したというふうにお考えくだされば結構だと思います。
  43. 丸谷金保

    丸谷金保君 植物育種に関係ある者は、こういうふうにネコの目の変わるように農林省考え方が変わるので当時非常に戸惑いした、私たちそういう経験を持っております。こういうふうに変わってきたのはどういうわけなんだと。内部でどういう事情があってこういうふうにころころと問題変わってきたかということを、私はひとつお聞きしたいということなんです、その原因を。
  44. 小島和義

    説明員小島和義君) くどいようでありますが、これは決してその時点で幾通りもの案があったということではございませんで、当時検討しておりましたものの中の、いわばアメリカが関心を持っている骨子部分というものを渡したということでありますので、決して二通りのものを内と外と使い分けておったというふうなことではございません。
  45. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ、八月にアメリカ説明したときは、職務育種者権利というものを明確にしておいて、九月にそれを削って国内検討をさしたというのはどういうわけですか。
  46. 小島和義

    説明員小島和義君) 職務育種に関します規定も、実は当初案から今日お諮りいたしておりますような形の案に至りますまでの間に、いろいろな形の実は案があったわけでございます。ですから、その部分について特段問題意識を持ってないという場合には、その部分をあえて御説明しないということはあり得るわけでございますが、その時点でなおかつ幾通りもの案があり、かつ外向けと内向けがあったということでは決してないわけであります。
  47. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうもちょっとわからないのですがね。八月と九月ですよ、五月にはもう無体財産権というものを中心にした——いいですか、五月案では法の「目的」は、植物品種保護、利用を図り、あるいはまたその植物の育種を奨励し、農林水産業の発達に寄与する、こういうことが法の目的に出ているんです。当時の案お持ちですね、よく読んでみてくださいよ。
  48. 小島和義

    説明員小島和義君) 五月の案も九月の案も、ともにいま手元にございます。
  49. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、五月案はそういうことですわね。それから今度は、アメリカ説明したときには「植物の新品種育種者権利を定め、併せてその新品種保護及び利用を図ることにより、」というふうな中身に変わってきているんです、今度アメリカ説明した案は。そうすると、五月に国内で、あえてわれわれとは言いません、私はそれに入ってないんだから。われわれが見せていただいた案によりますと、この場合は「新品種保護」なんです。ところが、アメリカの方に対しては「育種者権利」なんです。要するに、特に職務育種者といいますか、そういうもの。といいますのは、これは勘ぐるわけじゃないんですが、アメリカというのは非常に個人権利を尊重する国です。その方には、育種者保護という個人育種者権利保護するような形で日本農林省考えていると、こういう情報の提供をしている。国内では、五月にも無体財産権中心とした案として、あえて公表とは言わないけれども、これは流れますよね、検討会にかけるんですから。それから、九月にまた検討会にかかってきたものにおいては、今度はアメリカ説明したのと一カ月の間に全く違うものになって出てきている。  いま私がここでしつこくこのことを聞くのは、このことがいまの法案の外面、内面に関係を持ってくるんです、そういう物の考え方が。それで、ここのところをもう少しすっきりと説明をしていただかないと困るわけなんです。
  50. 小島和義

    説明員小島和義君) 何遍もお答えをいたしておりますが、この中間的な案というのは、実はいま私の手元にありますもののほかにも幾通りもの中間的な案がございまして、まあ書いては消し書いては消しをやっておったわけでございます。したがいまして、その中間的な案というのが、どれがその一つの決め手になる案ということではございませんで、検討会での御議論をわずらわしながら農林省の事務方がいろいろ案をつくった、こういうふうな段階のものでございますので、時間のその前後関係等から見ればあるいはおかしいと思われる部分があろうかと思いますが、まあ検討会自体議論としても、行きつ戻りつそういうことをやっておったと、こういう時期の案でございますから、前後関係比べてみれば、この段階の案が後になってこうなったのはどうだというふうな御指摘もありましょうが、それはそのまま検討会議論経過であると、こういうふうにお考えくださればよろしいかと思います。
  51. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは検討会で書いたり消し、書いたり消しということはわかります。ですけれども、私のいま聞いているのは、基本的な考え方の変わり方を聞いているんですよ。四カ月の間にどうしてこんなに、これはもう法文の検討の問題でないんです。立法趣旨において基本的に変わってきているのはどうかということを聞いているんでね、そのことをひとつ間接話法でなく、ずばっと言っていただけませんか。それによって、後のわれわれの判断の仕方が変わってくるんですよ。それを本音で、ひとつあのときこうだったんだと言ってくれませんか。
  52. 小島和義

    説明員小島和義君) 職務育種のことに関して申し上げますならば、現行農産種苗法は、品種育成をした者が第一次的に出願権があると、雇い主は本人の同意を得た場合に限って出願ができる、こういう仕組みになっておるわけでございます。形の上では、これは一番従業者の権利という点では手厚いということになるわけでございますが、運用の実態を見てまいりますと、自分が給料をもらい施設や予算の提供を受けて行いましたその成果につきまして、みずからが出願すると、雇い主に同意をしないと、こういうことはあり得ないわけでございまして、ほとんど空文に近いというふうな状態になっている。また、そういう状態のもとでも余りトラブルはないではないかと、こういうふうなことから、現行農産種苗法に近い案というものが、大体そのものと申し上げてもいいのですが、当初案にございまして、その後いろいろ検討しております過程におきまして、大体その現行の法律で申しますと、著作権における従業者の地位ないしは特許法における従業者の地位というものをややミックスしたような形の案が考えられた時期があるわけでございます。  しかしまた、その後でいろいろ議論いたしまして、その後におきましては、どうもまた現行農産種苗法の姿の方がいいのではなかろうかということで、そういう案に戻った段階もございます。恐らくその八月、九月というのは、そういう著作権法及び特許法のミックスしておったような段階の案で、一番その部分が流動的な段階でございましたので、その意味で非常にその五月案と変わったものが出ておると、こういう印象を受けられたのではないかと思います。
  53. 丸谷金保

    丸谷金保君 私の聞いていることは、現行種苗法のその問題はよくわかるんです。私たちもその現行の種苗法の中の職務育種の問題、これはたとえば国家公務員や地方公務員の場合、職務専念義務というのがありますから、われわれはそればやることが当然だという考え方でやってきていますよ。現行法にどうあろうと、これは一生懸命に職員のやったやつはこれは長に帰属するんだと、本人に帰属するんでないということで。それだけに、当時も職務育種者の地位をどうするかということで非常にわれわれ関心あったんです。  そうしましたら、外から聞こえてくるのは、職務育種者権利というのを、最初は無体財産権のようなのでやるんだと言っていながら、今度は外から聞こえてくるのはどうもそうではないらしいぞと。そうかといって、今度うちの中で出てきたのは、いややっぱりそれは削ってあったと、こんな調子なんですよ。当時われわれそういう点で、農林省は一体何を考えているんだと、この段階で思ったんです。今度そういうことを踏まえて、実は、ああそうかと、いろいろ当時と違って、今度国会論議というふうなものを勉強する機会を得ましたんで、なるほどこういうことが背景にあったんだなということをわれわれなりに勘ぐらざるを得ないような、こういう国会論議を読んでいると出てきたんですが、ひとつその点で、特許庁長官はおいでになっていますか。——  実は、昭和五十年の二月二十四日、衆議院予算委員会の第四分科会で、当時の特許庁長官が田中武夫分科委員にこういう答弁をしているんです。無体財産権の最初の案が出てきたのは、私はここら辺に案外原因があるんだなと。これはもう私の勘ぐりかもしれませんよ。田中委員はこういうことで質問しているんです。ひとつ、きょうは特許について若干の御質問をいたしますと、「現行の特許法で、植物の種とか苗についての特許は認められていない。現在、特許法等は工業所有権法と言われておるように、工業を中心として決められておる。だが、しかし、特許法の第一条の目的「発明の保護及び利用を図ることにより」云云、この第一条の目的を見る限り、あえて工業製品あるいは工業に関する方法だけに限るということではないと思います。現行の特許法で、植物特許についてできるのかできないのか、まずその辺からお伺いをいたします。」、私は、これは一条でなくて、二条の方なり三条の方がもっと援用するのには問題としてはあれと思うんですが、ここでは一条です。  これに対して当時の特許庁長官は、「第一条には、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」とございますので、植物だけ特異な取り扱いをするようなことではございません。」と、要するに、ここで植物特許法になじむんだという答弁をしておるわけです。このことについて、長官、当時のこういう記録というものはお読みになって御理解していらっしゃるんでしょうね。
  54. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) ただいま先生お読みになりました議事録、私もいま読んでいるわけでございますが、植物だけ特異な取り扱いをするようなことはございません。現行特許法におきましては、植物だけにつきまして特異な扱いをいたしていないわけでございます。ただ、先ほど農林省の方からお話がございましたように、実際にはそれじゃ植物特許についていままでどういう例があるかということになりますと、現在までは実績がないというのが事実でございます。これは植物の持っておる性質、特殊性というところから出てきている問題であろうかというふうに承知いたしております。
  55. 丸谷金保

    丸谷金保君 いま、私の質問以上に進んだ御答弁がごさいましたんで——ないという話でございますわね。ちょっと問題それますけれども、長官にお聞きしますが、出願はあるんでしょう。
  56. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 出願はございます。現在出願中のものは十三件でございます。
  57. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は特許したものはないということで、私はいまこの確認だけで、問題は、実は法制定までの経緯というものについての疑点をきょうはできるだけ午前中明らかにしたいと思ったんですが、答弁が確認以上のところへ出てきましたのでお聞きいたしますが、こういう問題が特許庁でございましたね。城下という技監いらっしゃいますね。この人は技術関係では特許庁で一番偉い方だというふうに伺っておるんですが、どうですか。
  58. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) そのとおりでございます。
  59. 丸谷金保

    丸谷金保君 この人が、植物特許の審査の書類をロッカーの中に三カ月も入れて審査にかけなかったという事実、長官御存じですね。おたくの方では問題になっているでしょう、このこと。
  60. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 承知いたしておりません。
  61. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういうことはないとおっしゃるんですか。
  62. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 御承知のように、特許出願がございまして、それから一年半後に特許公開が行われるわけでございます。  なお、具体的な審査の問題は、出願者から審査請求があって、それから審査を行うということになるわけでございます。  いまどういった具体的なケースであるかどうか、ちょっとつまびらかにいたしませんが、具体的に審査をまだすべきでない段階というものがあるわけでございまして、そういった出願書類は、たとえば審査請求があるまで一定の期間保管をしておくということはあろうと思うわけでございます。そういった取り扱いを内部でいたしておるわけでございます。
  63. 丸谷金保

    丸谷金保君 ひとつ、午後からで結構ですが、問題のその書類を拝見させていただきたいと思います。いつ受け付けて、いつ審査官の方へ回ったのか、何カ月ロッカーの中で眠っていたのか。これは特許庁の中では、われわれの耳にも聞こえてくるくらいの話ですから、長官御存じないことはないと思うんですよ。有名な話ですよね。どうなんですか、三カ月ロッカー事件というやつ。
  64. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 私は、大変申しわけございませんが、そういう話は聞いてないのでございまして、私が先ほど申しましたように、実際の審査との関連である一定期間書類を保管するというようなことは、これは多々あるケースだと思っておるわけでございますが、いま先生御指摘のような事件と称するものにつきましては、承知をいたしていないわけでございます。
  65. 丸谷金保

    丸谷金保君 委員長、この問題については、これはきょうの法案関係のある植物特許の申請でございますので、長官がわからないというのであれば、直接城下技監を午後からひとつ出席要求をして、ここで御答弁願いたいと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  66. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 理事会で相談いたします。
  67. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ、ひとつよろしくお願いいたします。  じゃ、本論の方に入らせていただきます。  私は、こういうことで、特許庁の方では植物特許というのは特許法になじむというふうな長官答弁がありましたので、それらを勘案して無体財産権的なものをつくったんじゃないかなと、こういうふうに実は思ったんです。これは、この記録は最近読んだものですから、前はわからなかったが、ああそうかと、こういうことがあったからそれで当初の案をつくったんだなと、それだけにこの四カ月の間にこんなにネコの目のように変わった理由、これはどうしても法案の審議に入る前に明らかにしておいていただかないと大変困るんじゃないかと思うんですが、どうもいままでの御答弁ですと、そこのところ何となくわかったようなわからないような御答弁になってしまって、無体財産権、職務育種、それを削ったという当時の模様が浮かんでこないんですが、それはいま皆さんにお聞きしても、もう何年も前のことだから、直接手がけたのでないから的確にはできないかと思いますけれども、やっぱり当時から手がけておった人はおると思うんですよ。よくひとつこれは昼の休み時間にでも当時の模様をお聞きして、御答弁を願いたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  68. 小島和義

    説明員小島和義君) 昭和五十一年の春から五十二年の春にかけまして設けられました制度検討会では、大体一貫いたしまして植物品種保護権というような新しい権利設定ということを念頭に輝いた制度検討が行われたということは事実でございます。それはこの期間を通じまして、表現の細かな点においては多少変わっている点があるかもしれませんが、骨子としては大体一貫してそういう考え方をとって検討しておったわけでございます。  御指摘がございます職務育種の部分の条文の移り変わりにつきまして、細かなどういう議論経緯があったかという点については、御指摘のように、私ただいま詳細には承知いたしておりませんが、昼の時間によく調べまして、またお答えをいたします。ただ、その時代といたしましては、まだいろんな条文がきわめて流動的で、まさにその中身について議論経過に伴いまして書き物も変わりつつあったそういう時代一つの案である、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  69. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、今度はそれでちょっとしばらく時間を置きまして、今度は五十二年から五十三年にかけて急速に今度の新しい案の問題が煮詰まってまいってきたわけでございます。それから、五十一年から五十二年の初めにかけまして、今度は農産種苗法の一部を改正する法律案ということで案が考えられた。これはもういよいよ出るのかなあと思ったのですが、どういうわけか国会への提出が断念されたという経緯がございますね。このときには特許庁の方から非常に強いクレームがついたというふうに実は私たちは当時承っておったのですが、状態はどうなんでしょうか。このときはもう皆さん関係している時期だと思うので、よくおわかりのことだと思うのです。
  70. 小島和義

    説明員小島和義君) 五十一年、つまりこの制度検討会が一応幕引きになりまして以降、政府部内の各省間の検討ということになりまして、特許庁との間におきましても、どういう法制にしたらいいかということを現行特許法の骨組みというものを前提にいたしまして、非常に熱心に議論がなされたということは事実でございます。
  71. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、この当時の断念した法案によりますと、やっぱり、この法律は「保証種苗の表示の規制及び植物の新品種育成者権利保護等を図ることにより、育種を奨励し、もって農林漁業の発展に寄与する」と、こういうふうな文言になっているのですが、そのときの案ございますね。間違いございませんね。
  72. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 五十一年の十二月段階でございますが、この段階ではそういうことになっております。
  73. 丸谷金保

    丸谷金保君 それが、実は今度五十三年になりますと、いわゆる現在の法に似たようなものが、政府案として農産種苗法の一部を改正する法律案として五月に農蚕園芸局から出ております。間違いございませんね。——私も持っているのだから間違いないわけなんで、これはもう聞くこともないですがね。
  74. 小島和義

    説明員小島和義君) 確かに、この法律案という形にいたしました場合に、農産種苗法の一部改正というふうな形のものに当時いたしましたものが、五十一年の終わりごろからでき上がっておるわけでございますが、そういう形にいたしました最大の理由と申しますのは、現在の農産種苗法の中には、いわば新しい品種育成した者に対する名称登録規定のほかに、流通する種苗の品質取り締まり的な部分の規定があるわけでございます。そういうものを全くなくしてしまうというわけにはいくまいということで、そういうものを取り込んだものとして法律案を書いたわけでございます。ただ、この品種登録制度関係いたします部分は、制度検討会の方で検討いたしておりましたような無体財産権という骨格の案文になっているという点は、形は変わっておりますが、中身的には同じなわけでございます。その後、五十三年の夏以降だったと記憶いたしますが、いろいろ検討する過程でまた変わってきた。こういうことでございます。
  75. 丸谷金保

    丸谷金保君 私、いまこの問題を長々と問題にしていることの大きな理由は、実は五十一年から五十二年までにかけてのずっと変わってきました無体財産権、あるいは職務育種者の問題を抜くとか、あるいはそれをずっと大事にするように権利保護中心になるような、アメリカに知らせたこういうものを考えているとか、それから国会の上程を断念した五十一年から五十二年にかけてのこれらを、いろいろ変わってきましたが、ただ、一貫しているものは、ここまでは権利保護だったんですよ。いいですか。ここでもう大きく変わってしまったんです。それまでも一転、二転、三転してきています。それを私いましつこく申し上げましたけれども、そこで揺れ動いて書いたり消したりと言っていましたが、ところが、それまでずっと検討会を通じて、非常に検討会を尊重する農林省の御意向で何年もかけて論議していましたね、この問題について。それが、五十三年の一月に出てきたときには、そういう権利規定でないものに変わって、全く異質なものになりましたね、一月に出てきた案というのは。ここの断層というのはこれは一体どういうことなんですか。
  76. 小島和義

    説明員小島和義君) これは無体財産権という形の法制化をいたします場合に一番問題になってまいりますのは、権利中身、特に、非常に類似性の強い特許法との関係というのとどういう調整をするかというのが一番厄介な問題であったわけでございまして、当初私どもは、特許法といわば並列というふうな形のものを実は念頭に置いたことは御指摘のとおりでございます。  ただ、いろいろ詰めてまいりますと、その種の権利中身というのが、特許法におけるすべての第三者に対して権利を主張し得るというものではなくて、種苗の有償譲渡というものにつきまして育成者権利を主張し得るというものでありますし、また、登録要件というものにつきましても、必ずしも特許法と相並列というふうなかっこうではないのではなかろうか。こういうふうなことが、特許法とのいろんな調整の過程におきまして私どもも勉強してまいりましたし、特許庁の方にもいろいろ勉強していただきまして、必ずしも無体財産権という法制をとらなくても、私どもがねらっておりますような新しい品種育成者保護するという目的は達し得るのではないか。  いろいろ微細に検討してまいりますと、権利法であるかないかということによって一番大きな違いというのは、独立した担保物権の対象になるのじゃないかというぐらいが大きな違いでございまして、格段権利法という法制をとらなくても、私ども考えておりましたような新品種育成をした者に対する保護としては何ら欠くるところがないのではなかろうか。こういうふうな意味で、ただいまのような案文に落ちついてきた。大ざっぱに申し上げれば、そういう経過でございます。
  77. 丸谷金保

    丸谷金保君 お話はわかるのですが、私はどうも何か私の質問がへたでつかまえ切れないのかとも思いますけれども、大事なところをすらっと逃げられるので、私の聞いているのは、それは権利法でなくてもいいんだという考え方で今度提案してきたんでしょう。しかし、ずっと五十年、五十一年というふうに審議している過程でいろいろに変わってきたけれども、ずっと権利法的なものとしての改正案、そして、しかも五十一年から五十二年にかけて一遍国会に上程しようとして断念するその段階では、まだ権利法的なものとして農林省考えていたわけですね。それがどうして変わったかということなんですよ。  そういうふうに、いまのお答えのように、必ずしも権利法でなくてもいいんじゃないかという考えなら、前からそういう考えでやっていけば私は特許庁との関係どもうずっと前に早くあれして、たとえば鈴木省吾先生が早く出せと言われたころにも出せたやつがここまでおくれてきた、しかも今回でも、もう一月にすぐ出るんだと思っていたやつが四月半ば過ぎてから閣議決定というふうな、そしてこんなぎりぎりのときに審議しなければならないようなことになってきた、こういうことの問題点。権利法でなくてもいいんでないかということになった、一体どこの時点から百八十度変わったのかということを聞きたいんですよ。
  78. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) ただいまも答弁いたしましたように、現行の農産種苗法でも三十年間いろんなそういう点で特別に支障はなかったというようなこと、それから育成者権利保護、これも先ほど来申し上げましたように、品種登録とか登録名義の変更とか、あるいは現在の法律にもありますように、差しとめ請求権とか賠償請求権とかというのは現在の法律にもあるわけでございます。そういうようなものを認めながら、育成者保護というものが実際の無体財産権といいますか、そういうものとほとんど同じような保護が得られる。同時にまた、従来の農産種苗法と同じように、特許権と違いまして、農家の自家採種にまでそういう効力は及ばないし、あるいは農家の生産販売にまで効果が及ばない。そういう意味で、農業政策との調和それから育成者保護も実質的にそういうふうな観点で保護される。そういう意味で、従来三十年間やってきました許諾方式でいくのが農業政策との調和のとれた面から見れば一番適切ではなかろうか、そういう考えで今回の形で法案を提出した次第でございます。
  79. 丸谷金保

    丸谷金保君 今回のやつはわかるんですよ。だから、どうしてこういうふうに急に百八十度変わることになったかという原因がわからぬわけです。それだけ答えてくれればいいんです。
  80. 小島和義

    説明員小島和義君) 端的に申し上げますならば、さまざまな無体財産権の世界があるわけでございますが、そういうものにいわば相並列というような新しい無体財産権というものとして制度を仕組んだ場合に、他の制度とどういう調整をするのかということが権利同士の問題として正面に出てまいるわけでございます。先ほど御引用になりましたさきの特許庁長官の御答弁にもありますように、特許制度はただいまのところあらゆる物資を通じまして一元的に特許対象となり得るという、特許一元化と申しますか、そういうたてまえというものを一方において持っておるわけでございます。それを突き崩すということにつきましても、なかなかこれは制度論として問題があるようでございます。逆にまた、特許法による発明というものが、常にこういう新品種育成者に与えられる保護と並列ないしは優越するものとして存在するということを立法的に認めるということにつきましても、これまた農産種苗の世界におきましてはいろいろ問題があるわけでございます。  その両方の制度のたてまえ論というものをいかに調整するかということになりますと、現行農産種苗法の延長線上のものとして考えていくということが一番建設的、現実的な処理方法ではないか、こういうことで、いつの時点ということははっきり申し上げかねますが、いろいろ勉強しております過程において、そういう結論に到達をいたしたわけでございます。
  81. 丸谷金保

    丸谷金保君 ずっと積み上げてきたものが百八十度変わったのですから、よっぽど何か大きな原因がなければならないと思うのですよ。この問題は、また差しとめ請求権、そういう問題はまた後でまとめてお聞きしようと思っておりますのであれしておきますが、特許庁長官にお願いいたしますが、これは七十六国会で、五十年の十二月十一日、参議院で鈴木省吾委員が非常に克明にこの問題について質問いたしております。  特許庁長官にお伺いいたしますが、これに対して当時の齋藤英雄長官が、特許が出てきた場合これを処置していくというのは、こういう「特許権がどこまで及ぶか及ばないかというのは、特許法特許の侵害訴訟の場合に裁判所が判断をする問題でございます。しかしながら、行政庁としましては、特許法の解釈なり運用なりを第一義的に責任を持っているのは特許庁でございます」、こういうふうなことを申しております。それから、ここで特許庁は植物品種の審査基準というのを発表しておりますが、この問題についても鈴木委員が当時質問して、こういうふうなことがどんどん出てくるじゃないかというふうなことで、読むとちょっと長くなりますが、あちこちにこの問題で大変専門的にわたって御質問しております。それで、特許庁の方は特許庁の方で当時こういうものを出して、植物特許特許庁でもって引き受けますよというPRをしたのを御存じでございましょうね。
  82. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 特許庁では国会での議論あるいはまた関係者の方からの要望がございまして、従来から特定の分野におきましての具体的な審査の基準というのを発表いたしておるわけでございますが、植物につきましてそれまではなかったわけでございますが、五十年の十一月に審査基準というものを公表いたしております。したがいまして、出願があったものにつきましては、その基準に照らして審査をするということを関係者に知らせたわけでございます。
  83. 丸谷金保

    丸谷金保君 これを関係者に知らせたというのはどういう意味になるか、新聞記者会見もしておりますわね、どんどん持ってきてくださいということで。関係者に知らせたというのはそういう意味ですか。
  84. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 先般先生御指摘の、田中武夫先生質問に答えました際もそうでございますが、先生からの要望もございまして、植物特許出願につきまして、特許庁の体系の中で受け付け得るということにつきましてはもう少しPRをすべきじゃないか、こういう議論も出ておりまして、そのように努力をいたしますということも言っておりますので、関係の方々にそのことをいろいろな方法でお知らせする、そういうことをやったわけでございます。
  85. 丸谷金保

    丸谷金保君 私も国会の記録は今度見たので、それでこの国会の記録を読むと当時の模様が非常によくわかってくるので、ここでも鈴木省吾委員が、PRが少し足りないんじゃないかというふうなことで強く言っておりますが、やっぱりこういうことが引き金になったのだろうと、ああなるほどあのとき新聞に出ていたのは、こういうことがやっぱり国会論議されてそれを踏まえてやったんだなと、こういうふうに中身がだんだんとわかってきたわけです、この国会論議とこの法案との関係が。これはやはり国会で、PRが少し足りないんじゃないかと、特許庁もう少ししっかりやれというふうなことを踏まえて、新聞記者会見までやってじゃんじゃん持ってこいと、こういうことになったんですか。
  86. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) そういった国会での議論等を踏まえて、私どもとしては関係者にPRいたしたということでございます。じゃんじゃん持ってこいというようなことであったかどうか、その辺のことはちょっと私承知いたしておりませんが、この審査基準に従って出願がなされた場合には審査をするということについて、公表をいたしたわけでございます。
  87. 丸谷金保

    丸谷金保君 まあ、じゃんじゃんという表現は使わなかったでしょう。ただ、新聞を見て私たちは、これはもう特許に出せるなと、これはもうたくさん出せるなというふうに感じました。要するに、反復可能性のあるものであればいいというふうなことが出ておりましたのでね。ところが、この経緯の中で、実は今度五十一年の三月の農林水産委員会、同じ席上で、当時のこれは農蚕園芸局長澤邊守さんと思いますが、鈴木省吾委員が、新品種保護の問題に私ども議員連盟として取り組んで、私も世話人になっておりますが、その後どういうふうになったかということをお聞きしたのに対して、澤邊守政府委員から、「植物の新品種保護の問題につきましては、来年度の予算におきましても具体的な調査、準備の経費を計上して御審議をいただいているところでございますが、われわれといたしましては、植物につきましては一般の工業製品と違いまして、特許法にはなじまない点が多々あるということで、独自の制度考えたいということで準備を進めておるところでございます。」、それで、「できますれば次の国会ぐらいをめどにいたしまして新しい制度をつくりたい」、こう言っているんですよ。  これはずっと読んできて、変だなあと。一方では、特許庁がPR雑誌まで出して、新聞記者会見をして、これはまあ会見は長官でなかったようですが、名前は忘れましたけれど、だれか長官の名前じゃなかったと思います、当時の新聞に出ていたのは。そして、一方では農林省の方は、これは特許法にはなじまないんだと、こういう国会答弁を同じ鈴木省吾委員質問に対して答弁している。特許庁長官、これをどう思いますか。おたくの方はなじむからPRしたんでしょう。そうじゃないんですか、簡単にひとつ。
  88. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 特許法植物特許についての申請があった場合に受け付けるということをこの審査基準で公表いたしているわけでございまして、なじむなじまないという問題は、私の理解するところによりますと、この法律の上で植物特許についても受け付け得るということで審査基準を、その場合にこういう審査でありますということを発表したわけでございます。  まあ、植物特許というものがいわゆる特許になじむかどうかという、他の工業製品との違いはどうかという点を考えますと、やはり植物につきましては他の工業製品と違った特殊性がございます。従来の、他の工業製品と同じような特許要件でこれを判断した場合に、なかなか特許になりにくいという性質のものであるという、そういう特殊性はある分野だと思いますが、制度の上で植物についての特別な取り扱いと申しますか、特許法上の特別な取り扱いは考えないでいくと、申請があった場合の審査基準はかくかくである、こういう発表をいたしているわけでございまして、今日もその基準を踏襲してるわけでございます。
  89. 丸谷金保

    丸谷金保君 法制局、おいでになっておりましたか。——特許法の第二条の三項、「この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。」、こうあります。「物の発明にあつては、その物を生産し使用し譲渡し貸し渡し譲渡若しくは貸渡のために展示し又は輸入する行為」、こうあるんです。そうしますと、これはやっぱり特許になって初めてこの実施が出てくるわけですわね、法制局の御意見を。
  90. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  ただいま丸谷委員御質問の、特許法第三条というふうにおっしゃったかと思いますが、第二条と考えてよろしゅうございますか。
  91. 丸谷金保

    丸谷金保君 第二条の三項です。
  92. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) 二条三項の各号に書いてございます発明の「実施」とございますのは、いま一番最後に言われました「特許発明についての実施」というふうに考えていただいて結構だと思います。
  93. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、この特許法特許になる、ならないによって、大変に利益を得るか得ないかということが問題になってくる。ですから、私はこの特許法植物特許というのがなじむかなじまないか。国会論議の中でなじまないというふうな形のものが出てきますと、これは私大変な影響を持ってくるんじゃないかと思うんです。この件につきまして特許庁の方としては、特許法になじまないんだという農蚕園芸局答弁について、それでいいとお思いになったんでしょうか。なったかならないか、ちょっとそれを確認しておきます。
  94. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 澤邊局長の意図がどういうことであったか、私つまびらかにはいたしておりませんが、農林省の方でかねてから検討されておりました植物品種に対する保護の仕方としては、いわゆる特許法という世界の中でなくて、別の方法においてその効果を十分果たし得る制度があるのではないかと、こういった意図で御発言になったのではないだろうかというふうに考えております。
  95. 丸谷金保

    丸谷金保君 この植物特許に関するいろんな記録を読んでいきますと、これは長官の時代になってからなんで、昭和五十三年三月二十四日、外務委員会で土井委員が、千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約の締結について承認を求めるの件という中で、「発明の法的保護ということを完全にする、このために審査主義ということが問題になってくるわけでありますが、審査官の職務遂行上についての独立性ということは認められるのですか」と、こういう質問に対して長官は、「審査について独立した判断を持って処理をする、こういう権能を与えておる」わけです、こういうふうに答えておられます。そうすると、もう審査権というのは審査官の独立の権限ですね。なじむとかなじまないとかということをほかの省庁で言われて、そのことについて特許庁としては何とも感じなかったんですか、どうなんです。
  96. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 澤邊局長がおっしゃった意図は、先ほど私が申し上げましたように推測をいたしたわけでございますが、この問題は長い経緯がございまして、両省庁でいろいろ調整をいたしてまいったわけでございまして、その後におきましても調整の結果、今日のような形で政府案としてお出ししたわけでございます。特許法の上での審査の判断、これは審査官が持っておることは御指摘のとおりでございまして、農林省の方で邊澤局長がおっしゃったなじむかなじまないかという問題の真意につきましては、ちょっと私はここでこれについて発言することは、この意図がよくわかりませんので差し控えたいと思っております。  繰り返して申し上げますけれども、両省間でこの問題につきましては相当長い期間かけて調整を続けて、今日最適の案としてお出しいたしているわけでございますので、今日の段階では両省庁の間には少なくとも完全な意思の調整が行われておると、こういうふうに御理解いただきたいというふうに思います。
  97. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうも御理解できないんですがね。片方はもうははっきり言っているんですよ、「植物につきましては一般の工業製品と違いまして、特許法にはなじまない点が多々あるということで、独自の制度考えたいということで準備を進めておるところでございます。」、いいですか、それから条約に関連した中で、審査については、これは特許の審査ですわね、独立した判断をもって処理する権限を審査官が持っている、こう言っているし、さらにまた同じように国会答弁の中で、基準を皆さん知らないで特許法になじまないと思って出してこないんだろうから、これはひとつお出しなさいと言って特許庁はPRもしたりしているんですよ。なじまないものであれば、どうしてPRするんです。もう少しはっきりひとつ。
  98. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 特許法上の植物に関します特許というのは従来までは基準もなかったわけでございますが、先ほど言いましたように、五十年十一月から基準をつくりました。つくりましたが、従来ともそうでございましたが、植物特許の申請があった場合に、当庁としてはこれは特許法になじまないものとしてはこれをイジェクトすることはいたしておりません。それで、具体的に基準を明らかにしたわけでございますが、植物は性質上一般の工業製品その他とはやや違った性質を持っているわけでございますので、実際の申請がありました中でも、今日までの特許実例は、植物についての方法の特許について特許があったわけではございますが、植物それ自体につきましては、先ほど来議論になっております継続反復性があるかどうかといったこと等から見まして、今日まで特許された実例はないわけでございます。ただ、将来にわたってあり得ないかというと、私どもは理論的にはあり得るというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、審査基準等につきましては、従来どおりこの基準を直す考えは持っていないわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、そういった特許法特許というもの、これは要件が相当厳しゅうございますので、今回提案されております農産種苗法改正によります品種保護という分野とは法域も異なるわけですし、それからまた保護の態様も異なる、こういうことで法域が異なる分野でございまして、そういう意味ではそれぞれの分野が両立して、相協調しながら植物特許並びに植物の新品種保護が行われるというようなことになるのではないかというように考えておるわけでございます。
  99. 丸谷金保

    丸谷金保君 両々相まってと言いますけれども、こっちではなじまないから新しい制度考えるとこう言っているんですよね、農林省は。そして出てきている。これは非常にくどいようですが、この改正案の逐条に入る前にここら辺が非常に大事なところ、要するに一つは、ずっと検討会等で植物の新品種保護育成ということについて、権利法だという考え方が突如として変わったという問題が一つあるのです。それから、特許庁の方では、そういう論議がやられているときに、あえてPRを始めているということですね、論議がもう始まってからPRが行われている。それからもう一つ、結局特許法の第二条の定義の中で、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」、こういうことになっているわけですね。そして、外国では植物特許法というふうなことでやっている国も何ぼもありますね、御存じのように。そうすると、この規定からいいますと、植物特許というのは日本の現行法においてもできるんでしょう。できるんですね。
  100. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 特許はあり得るわけでございます。
  101. 丸谷金保

    丸谷金保君 それでは、農林省側のなじまないということについての見解を御説明いただきたいと思います。
  102. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 先ほど申し上げましたように、植物の新品種それ自体につきましては、やはり新規性進歩性、そういうもののなかなか条件を満たしにくい。先ほど先生おっしゃいましたように、特許対象は自然法則による技術的思想の創作と、そういうようなことでなっておるわけでありますし、何といいますか、頭の中のひらめきとかそういうもので非常に高度なもの。で、品種自体をとってみますと、そういう進歩性とか新規性、そういうものはなかなかなじみがたい。そういうようなことで、われわれといたしましては、やはり工業所有権と違った対象も、あるいは保護の態様もそれぞれ違うのではないか、そういうことで特許対象としてはなじみがたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  103. 丸谷金保

    丸谷金保君 法制局にお伺いしますが、法制局ではこの特許法の二条の本文、これによって植物特許というのはこの方向でもってできるというふうに判断しておりますか、なじまないというふうに判断しておりますか。
  104. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。  一つ申しわけございませんが、先ほど二条三項の実施につきまして先生の御質問がございましたときに、特許発明の実施というふうに私申し上げましたのはちょっと言い過ぎでございまして、特許されるような発明の実施というふうにお考えいただきとうございます。  ただいまの御質問についてお答えいたしますが、発明とは、ただいまの丸谷委員の方も読み上げられましたように、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」ということでございますので、植物特許というお言葉をお使いになりました、植物特許の内容にもよるかと思いますのですが、一般に特許が先ほど来特許庁長官答弁しておりますように、物の特許と方法の特許というふうに二つ分けて考えられておる場合、方法の特許の方は、この「技術的思想の創作のうち高度のもの」というものに合うものが相当多いだろう。しかし、物の場合には、植物御存じのように自然物でございますので、その自然物がなかなかこの定義自体に当てはまらないものがむしろ多いのではなかろうか。ただし、全然当てはまらないということが言い切れるかというと、そうでもないのではなかろうかという点を、さっき特許庁長官がお答えをしたのだろうと思います。
  105. 丸谷金保

    丸谷金保君 方法特許と物それ自体特許という二つの問題については、非常にむずかしい学説のあるところでして、いろいろあるかと思います。しかし、たとえば植物の場合でも、これは長官の答弁の中に出てきているんですが、反復して物それ自体が変わらない、こういうものについては物も特許対象になり得るというふうにいまの御答弁解釈してよろしゅうございますか。
  106. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  いま丸谷委員のおっしゃったとおりに考えます。
  107. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは実は、法案の中で種苗ということで種と苗が一つになってこの法案が出てきているんです。そしてこれが、特許法のなじむ、なじまないという問題とも大変実は関連が出てきますんで、たとえば穂木をとってふやしていく場合にはこれは反復して同じものが出てくるんです。無性繁殖ですね。それから有性繁殖の場合は、反復してまくと、いわゆる本卦返りといいますか、何が出てくるかわからない、反復して同じものが出てこない。種の場合です。こういう種と苗でももうずいぶんこれは違ってくるんで、その場合に、特許庁の方にお聞きいたしますが、御答弁になっている反復して出てくるという、反復して変わらない、こういうものについては特許法になじむ——たとえば穂木をとって、バラであるとか、あるいはブドウであるとか、穂木でふやしていくもの、それから稲であるとか豆であるとかというふうに有性繁殖で種をまいてふやしていくもの、これの違い、このことがなじむ、なじまないということの論議にも及んでくる。  これを、一つにしてしまうところに焦点がぼけてくる。要するに、反復して変わらない性質のものであれば、植物といえども方法特許だけでなくて物それ自体特許対象になる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  108. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 継続反復して安定的に同じものが得られるということであれば、特許要件を充足するものであろうというふうに考えております。
  109. 丸谷金保

    丸谷金保君 実例として、ブドウの穂木をとっていくと、これは三代、五代、十代と継続反復して同じものが出るんです。なぜかというと、これは自家受精ですね、自家受精する植物ですから同じものが出てくるんです。こういう場合にはなりますね。
  110. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) いままで特許実例はございませんが、具体的な事例に即して判断を要すべきものと考えるわけでございますが、一般的に申し上げますれば、先ほど申しましたように、継続反復して安定的にあるものができるということでございますれば、まあ一応特許要件をその部分につきましては充足しているというふうに判断できるのじゃないかというふうに考えております。
  111. 丸谷金保

    丸谷金保君 たとえば、方法特許の具体的な例で言いますが、自家受精をする植物品種改良をするという場合にはこれは大変なんですよ。雄しべを全部取らなきゃならないんです。あの小さな花の中にあるやつを、拡大鏡を目にはさんで小さなピンセットで一本一本全部雄しべを取ってしまって別の花粉をつけなきゃ、これは品種改良にならないんです。しかし、そういう方法でやるのはこれは方法特許ですね。それと、それから物それ自体二つ特許対象になる。方法特許はもちろんこれはなじむでしょうし、物それ自体特許にしても、同じ植物でも有性繁殖するものと無性繁殖するものを分けなきゃならない、こういう点について特許庁としてはどう考えますか。
  112. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 特許法上は、有性であろうが無性であろうが、それによって要件を異にしているわけではございませんので、さように御承知願います。
  113. 丸谷金保

    丸谷金保君 何か大臣もあれなようでございますから、一応これで午前の質問を終わらしていただきます。
  114. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし、休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時六分開会
  115. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農産種苗法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  116. 丸谷金保

    丸谷金保君 先ほど質問を留保しておりました城下技監おいでになっていますか。——  実は、昨年、一昨年ですか、ちょうどこの植物特許の問題が農林省特許庁の間でやりとりが行われるようになってきている段階で、特に植物特許にかかわる書類を技監のところで相当長期間にわたって抱いていたということでございますが、その点についてのひとつ事実関係を御説明いただきたい。
  117. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答え申し上げます。  実は、特許庁におきまして植物品種に関する審査基準を発表いたしましたのが五十年の末でございます。それで、その後一年ばかり時間の経過した五十二年、昨年の初めでございますが、私ども審査内部では、そういった植物関係の出願にどういうものがあるかという、こういう実態調査をしたことがございます。一方、私、かねがね担当部長といたしまして、そういった植物に関する出願の実態を理解しようと思っておったわけでございますけれども、ちょうどその時分非常に話題になっておりましたハクラン——ハクランと申しますのはあのハクランでございますが、ハクランに関する出願がございましたので、その出願の内容を理解するために、いま先生御指摘の書類を私いろいろ勉強したわけでございます。  実は、このハクランに関する出願と申しますのは、五十一年の七月に出願されまして、したがっていまから二年前でございますが、出願されまして、ことしの一月二十三日に公開になったものでございます。一年半たちますと、その出願の内容が公開されますので、したがって特許内部のプラクティスとしては公開になった後で審査に入ります。それで、その当時——ですからいまからちょうど一年ちょっと前でございますけれども、昨年の四月ごろでございますが、まだ出願されたばかりで公開には日の浅い状態でございますけれども、そういった書類を私二カ月ばかり、あるいは三カ月だったと思いますけれども、詳細は忘れましたけれども、私の手元で、御指摘のとおり私勉強したわけでございます。それで、その後審査官の手元にその包袋が入りまして、ことしの一月二十三日に公開になり、現在審査待ちという、こういう状況でございます。  以上が、先生質問ございました、私が包袋を調べたという事件の概要でございます。
  118. 丸谷金保

    丸谷金保君 参考までにお伺いいたしますけれども、一応出願があると受け付けますわね。その受け付けの確定日付はいつでございますか。
  119. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  出願日が五十一年の七月五日でございます。
  120. 丸谷金保

    丸谷金保君 どこでもそうなんですが、特に特許出願の場合には書類というのは大変重要なんで、その場合にそうするとあれですね、たとえばわれわれも商標登録やなんか何回もやっておたくの役所にお伺いしておりますのでわかるんですが、一応書類を今度は担当なりほかへ回すときには、一回一回こう確かに渡したという、受付から行ったときにまた判を押しますわね、だれが受領したということで。そういう関係につきましては、どういう経緯をとりましたでしょうか。
  121. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  先生御指摘のとおり、私ども特許内部におきましては、書類の授受につきましては原則といたしまして借用書を出しまして、それでその辺の所在の確認を行っておりますが、このハクランの場合には担当審査官から直接包袋を借用しておりますので、いま御指摘のような借用書の授受はございませんでした。
  122. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、一遍担当審査官の方へ回ったんですか、その書類は。
  123. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  回ったわけでございます。
  124. 丸谷金保

    丸谷金保君 たくさんの数の特許が出ると思うんですけれども、担当審査官のところへ回ってから、それからそれをもう一遍勉強するというふうなことで、技監なり長官の方へ書類を回すということの事例というのはたびたびあるものでございますか。
  125. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  たびたびはございません。ただ、本件の場合は植物に関する出願でございまして、当時先ほど御説明いたしましたように、五十年の末に審査基準が発表され、それから約一年たった段階でございまして、非常に植物特許という問題がいろいろな意味で話題になっておった折でございますので、担当部長といたしましてその辺の出願の実態を理解いたしますために、実はさような先ほど申し上げたような理解に至ったわけでございます。
  126. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、植物特許のほかの書類はどういたしました。
  127. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  先ほど申しましたように、当時、私の頭の中で、話題になっておりましたのがハクランという非常に珍しいと申しますか、ことでございますので、それを全部私が見ると申しますか、そういう出願の実態を理解するためには全部見る必要もないと考えておりますし、そのためにこの一件だけを実は私読んだわけでございます。
  128. 丸谷金保

    丸谷金保君 先ほどの長官の答弁でも、出願した審査というのは審査官の何というか権限で、いわゆる行政機構上の上部機関の人たちも介入することのできない独立した機関としてあると、こういうふうに御答弁の中にございます。このことについては判例でも下級審の判例、審査官は出願事件について審査をし、許諾の査定をする権限を持つ単独性の審理機関であり、審査官のした行為につきその主体を特許庁長官であるとすることはできないと、こうなっておりますわね。  したがいまして、問題になったからと言って審査官のところに一遍渡った書類を、ちょっと研究するからよこせということで、非常に大事な書類だと思うのですよ、借用書も出さないで、一体部長さんなり技監さんなりが持っていくというふうな権限を特許庁は与えているのですか。長官ひとつ。
  129. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 審査官の審査に当たりましての独立性につきましては、いま先生御指摘のとおりでございまして、ただ、いま城下技監から御報告いたしましたように、当時新聞紙上でも大変珍しい種類の案件であるということで報道されておりました関係もあり、植物品種問題につきましても当庁として関心を持っていたさなかでもございましたので、そのハクランという書類につきまして、審査官の手元にまいっておりましたものを借り受けて勉強をしたということでございます。  特許技監が、城下技監が、同時にこの審査第二部長を兼務いたしておりまして担当部長でございます。担当部長と審査官の間におきまして、書類の授受につきましては、御承知のとおり重要な書類でございますので、厳重な取り扱いをすべきものと考えておるわけでございますが、このような事態というのは私はめったにあるケースではないとは思いますが、執務上必要に応じてこういったケースもあり得るケースではないかと、こういうふうに考えております。
  130. 丸谷金保

    丸谷金保君 私のお聞きしているのは、そういう場合に、その書類がどこにいま行っているということを明確にするための借用書ですね、そういうものを出さないで持っていったというふうな書類の取り扱いを、審査官に対して部長なり技監なりという人はできるような仕組みになっているのかということを聞いたのです。
  131. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  仕組みにはなっておりません。したがいまして、先生御指摘のように、通常と申しますか、たとえばその包袋と申しますか、出願書類を使いましてそれでいろいろと調査をする。つまり審査のための調査をするといったような場合には、いろいろと包袋を持ち運ぶ関係もございまして、その責任の所在を一般的には明確にしておりますが、したがいまして、私の場合、いま御指摘いただきましたように、実は場所的にもすぐ近くの私の部の審査官の担当しておったということもこれあり、そういった本件の場合には借用書の授受はなかったと、こういうことでございます。
  132. 丸谷金保

    丸谷金保君 非常に大事な審査書類、審査官というのは、いま読み上げましたように独立した機関として責任を持っております。そうしますと、審査官のところから三カ月も技監の手元に書類があって、その間に一体紛失したらだれの責任になるのですか。審査官でしょう。審査官は、受け付けた書類を確かに受け取ったという判こを押していますわね。そのときの管理責任は一体だれなんですか、審査書類。
  133. 城下武文

    政府委員(城下武文君) 御指摘のとおり、包袋の、包袋と申しますか、出願書類のその場合の管理に責任を持つのは審査官でございます。したがいまして、そういった意味では、私注意が足らなかったと、かように考えております。
  134. 丸谷金保

    丸谷金保君 取り扱い上の注意が足りなかったということかと思いますが、私たちちょうどその植物の問題が問題になっているときなので、審査できないわけですわね。それで、それから審査官のところに当然あるべき書類がないということになりますと、いろいろ実は風評が飛ぶわけです。たとえば、植物特許の出願があって取り下げたのは一体何件ぐらいあります。取り下げにいろいろなうわさが飛んでおりますから、ひとつ明確にしておきたいと思いますが。
  135. 城下武文

    政府委員(城下武文君) いま御質問の件数は数件でございます。
  136. 丸谷金保

    丸谷金保君 きちっと答弁していただきたいと思うんです。私は何件あるかと聞いたんで、何件とお答え願いたいと思います。はっきりわかっているはずだと思います。
  137. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  私どもわかっている範囲では三件でございます。
  138. 丸谷金保

    丸谷金保君 出願中のもの十六件のうち三件取り下げがあったので十三件ということなんですが、それで、この前の答弁の食い違いがちょうど三件。前の記録を読んでみますと、十六件というのが現在は十三件だというふうな話を聞きますので、取り下げたんだろう。取り下げたのは何でしょう。取り下げたものはどういう出願のものでございますか。
  139. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  実は、いま御質問の取り下げの件でございますけれども、公開前の出願中というものもございますので、内容については、ちょっと申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思います。
  140. 丸谷金保

    丸谷金保君 巷間伝わるところによりますと、大変きつい農林省側の圧力によって申請人が取り下げた、こういう話が流れているのです。それで、実はランの問題についても、何か特許庁のそういう植物特許についての取り扱い方が大変どうも私たち気になるんです。現在まで特許しておりませんね。そして、非常になじまないというふうな論議が一方できょう午前中もありました。しかし、明らかにPRして出しなさいということで、実際に公開して特許出願中のものについての審査官の方での検討段階というのが始まっているのは何件くらいありますか。
  141. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  現在まで、私ども審査内部におきまして審査を始める時期と申しますか、審査を開始する時期に至っておるものはございません。
  142. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、その件について、フランスからバラの申請がございますね。そちらでお答えできない性格のものでしたら、私の方で名前から何から申し上げます。フランスのメーアンさんから、早くバラの特許についての結論を出してくれというあれが来ておりますね。一体、これはいつごろ出願になったものなんですか。
  143. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  私ども内部と申しますか、いまの御質問に対しまして、実は公開されました植物関係特許出願の中には、いまの先生御指摘のようなものが見当たりません。したがいまして、恐らく出願中のものであろうと考えます。まだ公開されていない出願中のものであると考えますので、詳細については、その点まだはっきりさせることができないことを御了解願いたいと思います。
  144. 丸谷金保

    丸谷金保君 私の方には、一体いつまでたってもけりつかないのかと、それから新しい法律ができるのでこれはどうなるんだろう。しかし、これはやっぱり独立の機関としての審査官あるいは特許庁としては、要件を備えておれば特許する方針には変わりございませんね。
  145. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 特許すべき要件を充足している場合には、特許されるものというふうに考えております。
  146. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、これからもそういう審査の作業というのは続けていく、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  147. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) そのとおりでございます。
  148. 丸谷金保

    丸谷金保君 通産の主計官おりますか。——  実は、特許庁の予算の中で五十二年度に一千万、五十三年度にも三百万という植物特許関係の研修その他に使う予算が計上されておるやに承っておりますが、それはいかがでしょう。
  149. 岡崎洋

    説明員(岡崎洋君) 先生御指摘の費用につきましては、五十二年度に約一千万円、それから五十三年度予算で約三百五十万円計上しております。
  150. 丸谷金保

    丸谷金保君 予算査定の段階で、何といいますか、予算の合議が行われると思うんですが、もちろん今後引き続き特許庁においても植物特許の仕事はずっと続けていく、五十二年、五十三年。そういう要求によって確定したというふうに理解してよろしゅうございますか。
  151. 岡崎洋

    説明員(岡崎洋君) そのとおりでございまして、ただいま計上いたしましております費用は、出願があった場合に適正な審査を行うためにいろいろ勉強しなきゃいかぬ、そのための費用でございます。
  152. 丸谷金保

    丸谷金保君 特許庁長官にお伺いしますが、それでいま具体的に昭和五十二年度に一千万、これはどういう勉強に執行いたしましたですか。
  153. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  五十二年度のその関係の予算につきましては、主に植物関係の雑誌の購入に充てております。
  154. 丸谷金保

    丸谷金保君 一千万ですか。
  155. 城下武文

    政府委員(城下武文君) 一千万の一部でございます。
  156. 丸谷金保

    丸谷金保君 たとえば雑誌に幾ら、特にそのうち外国の文献に幾らで何に幾らというふうに、もう少し大まかでもいいから。予算費目だって一本じゃないでしょう、恐らく。予算費目というか、節なり何なりでは。
  157. 城下武文

    政府委員(城下武文君) 一千万円の資料関係の予算の内容でございますけれども、一応、たとえば植物関係の雑誌だとか図書だとか、そういう関係に相当部分使いまして購入いたしております。
  158. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと委員長にお願いいたしますが、これは法案の審議の中で大変大事な資料になってきますので、ひとつ改めて、もう使い切っておりますから、きちんとしたあれが担当の方から出ると思いますので、資料を要求いたしたいと思いますが、取り計らってください。
  159. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 承知いたしました。
  160. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、午前中にも申し上げましたが、昭和五十三年の一月に、この法律考え方というか、理念というか、非常にがたっと変わった。その裏には、どうも私たちきょうの御答弁を聞いておりましても、特許庁と農林省の間でそれぞれの分野についての調整が非常に手間がかかったんではないか。それが、そういうことのために、初めはわりとすきっとした権利法であったものが、何かわれわれ読めば読むほどわからなくなるような法律になってきた。そして、そのことがざる法的な意味を持って、とんでもない問題を起こすような事案が考えられるようになってきた大きな理由ではないかと。もう少しなぜすっきりと諸外国のように権利法というふうな形を、もし植物の新品種保護という、あるいは育種者保護、農業振興という立場から考えた場合に、農林省もっとすきっとしたものにして出せなかったのかと思いますが、その点について、もう少し何か腹にすきっと入るような御答弁を、どなたでも結構ですが、いただけませんですか。
  161. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 先生おっしゃいましたように、特許庁といろいろ調整を図ってきたところでございます。まあ長年そういう調整の問題があったわけでございますが、われわれといたしましては、やはり農業との調和のとれたもの、それと育成者保護権利、その調整ということに一番重点を置いたわけでございまして、育成者保護の点につきましては、先ほど申し上げましたように、品種登録あるいは登録名義の変更、登録期間の延長と、そういうようなことをいろいろやったわけでございますし、やはり植物品種自体ということから見ますと、従来のように理論的にはその特許というのはあり得ても、やはりなかなかその新規性進歩性というものは満たしにくい。そういう意味で、やはり特許にはなじまないのではないかと。それと同時に、先ほど申し上げました農家の生産販売、あるいは農家の自家採種にまで及ばないと、そういうことの調整を総体的に図りながら、特許庁と十分打ち合わせをして、植物品種それ自体の問題については特許法との調整規定も要らないのじゃないか、そういうようなことで合意をいたしたわけでございます。
  162. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで、合意に達した合意メモ、この点について御質問を申し上げたいと思います。  実はこの合意メモ、私もちょうだいして見たんですが、これは要旨となっているんですよね。私たちが一番ここで問題だなと思われるのは、これが要旨となっているのでちょっとあれなんですが、三番目の「植物品種それ自体の発明があったときには、特許される可能性は理論的には否定しえないが、農林水産植物については工業製品と比べて特殊性を有すること、品種登録制度では、登録要件が緩和されるため、大部分が品種登録の出願によるものと予想されること等により新品種それ自体対象とする特許発明は、従来もなく、今後も事実上まれであろうと考えられること。」と、こういう合意がなされておりますね。これはもう特許庁の方では扱わないということなんですか、ずばり言って。どうなんです。
  163. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 扱わないということではございません。審査基準に基づきまして、出願のあったものについては審査するということでございます。  ただ、補足して申し上げますと、植物の場合には、特許制度に課されておりますいろんな特許要件がございます。たとえば、進歩性あるいは新規性あるいは産業上の利用に供し得るかどうか、あるいは継続反復性云々と。こういった要件が非常に厳しゅうございますので、現実にはこれによって特許されるケースというものはほとんどまれであろうというふうには考えておるわけでございます。過去においては、品種それ自体についての特許はなかったわけでございます。将来につきまして可能性はある。しかしながら、あっても非常にまれなケースであろうと、こういうふうに考えておるというわけでございます。したがいまして、審査はいたします。
  164. 丸谷金保

    丸谷金保君 本当ですか。それで、これを読んでみて、実はこれは何のために要旨としたか、本文でないのですね。要旨なんです。一体、これは合意書ですから、これは役所間の合意メモと言われておるこの合意書ですね、こういうものについては、両方立会人が出て判こでも押すんですか、どうなんでしょう。
  165. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 双方で判こを押すわけでございます、文書に。
  166. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはだれとだれが押しました。
  167. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 私と特許庁長官であります。
  168. 丸谷金保

    丸谷金保君 日付がないのですがね、これはいつ合意されたのですか。
  169. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) ことしの四月十四日でございます。
  170. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと参考までにお聞きしたいのですが、こういう役所間の合意書、これは公文書になるのですか、私文書なんですか、どちらでしょう。
  171. 小島和義

    説明員小島和義君) 役所の文書の管理上は、公文書扱いということになります。
  172. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は大変失礼なことなんですが、トレースにかけてすっとやったのではないかと思うのです、この合意。ところが、三番目の、ここの薄くなっているところだけが字が違うのですよ。そうすると、ここのところだけ何かわれわれに知らせたらぐあいの悪いことがあるので、文章を書きかえて——だから、これは合意メモとしたいで、話し合い事項の要旨ということにせざるな得なかったのじゃないかと勘ぐるのですがね。これは明らかにだれか書きかえているんで、どうしてここのところだけ字が違うのか、ちょっとひとつ御説明いただきたい。
  173. 小島和義

    説明員小島和義君) たまたま先生のお手元に渡りましたものは大変お見苦しい資料だったかと思いますが、要旨ということでございますから、本文は相当に長い、かなり専門的な事項にわたっておるわけでございますが、いかに表現をすれば事柄の内容をよくおわかりいただけるかという意味におきまして、大変長いものを簡略化した、こういうふうな意味におきまして、まあ消したり書いたりということはあったと思いますが、内容は大体こういうふうなことで意見の一致を見ているわけでございます。
  174. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはわかるのですよ。ただ、これ、だれかがずっと書いたのですよ、間違いなく。そうしてどうもこれじゃぐあいが悪いんで、どっかに持っていったら、これをこのまま出しちゃうまくないというので、ここのところだけ後からこれは明らかに書きかえているのですよ。どうしてここのところだけ書きかえたのかなと、何がわれわれに見せてぐあいが悪いことなのかなあというような気がする。これは私のとこに来たやつだけかと思ったら、ほかの先生のところに行っているやつも、皆ここのところだけ違うのですよ。
  175. 小島和義

    説明員小島和義君) 内容をより的確に表現するという意味において、表現に苦労した跡がにじみ出ているというふうに考えます。
  176. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうも大変御親切な御配慮をいただいて、ありがとうございます。まあ、わかりやすい文章に直していただいたと、内容を的確にするために。  ひとつ委員長にお願いしますが、この合意メモ、公文書ということでございますので、合意メモの全文を資料要求いたしたいと思います。  それでは、これではちょっとわからないところもあるのですが、実はここの中には一番上の方に「種苗法案は植物品種保護に関する国際的動向等にかんがみ」とあるんですが、これはどうして「等」なんですか。この「等」というのはどういう意味なんですか、非常に何かわかりにくいんですが。
  177. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 今回の種苗法を提出した理由にもございましたが、国際的動向から見ても大体条約加盟国並みの保護水準を育成者に与えるということ、それから国内的に見ましても非常に優秀、多収あるいは早生、病害虫に強い品種、そういういろんな国内的事情からも、そういう育成者保護を通じた品種育成が要望されている、そういうようなことも入れまして「国際的動向等にかんがみ立案された」、そういうような文章にしたわけでございます。
  178. 丸谷金保

    丸谷金保君 この合意趣意書を見ると、全文を見ないとわからないんでございますけれども、非常に問題点が何ぼか介在します。午前中の審議で明らかになったように、独立の審査権限を持つ一方では特許庁の審査官、それから出てきた書類はこの審査官の手元において判断をして決定をすることになるんで、それの判断のいいか悪いかということはそこへ出てから行われるということでありますが、この合意メモを見ますと、それが何か特許庁からすっかり農林省の方に移ってしまうようなそういう感じがいたします。しかし、長官はそんなことないと、こうおっしゃるんですが、もしもそういうことになりますと、いろいろな事案が出てまいります。たとえば特許になることは非常に少ない、事実上は従来もないし今後も余り行われないだろうというふうなことが再三にわたって答弁の中にも出てきております。いままでにも実際特許したものは一つもないんだと。  この点、明確にしておきたいと思いますのは、法文の中に入りますとこれらについての調整規定が非常に明瞭でないことになってくるんではないかということで、先ほどから強くこの点を解明したいと思ったんですが、どうも詳細でないのでこれではちょっと質問もできません。たとえば特許法ですと、非常に権利法ですから明確になっております。民法の三二条ノ二にあるところの同時死亡の推定——まれにしか起こりません、こういうことは。きわめてまれなことでも、やはりそういうことを想定した法律ができておりますけれども、承継相続ができるということのうたわれている今度の種苗法改正案の中においては、一体今後どうなるんだというふうな問題がたくさんこちらへ移ると出てくるわけでございます。それだけに私は、双方が合意した合意メモというものの全文がないと論議できないと思います。そういう点で、われわれは法に守られております、個人権利を。それがいわゆる工業特許、それからそれに類するものと植物特許は違うんだということになりますと、これは特許法という法の中で差別されることになる可能性が出てきます。  そういう点で、ひとつぜひ委員長さんに全文を何とかひとつ理事会においてお諮りをいただいて、それが出てきませんとこの大変大事な問題の解明ができなくなってまいりますので、お願いをいたしたいと思います。  それじゃ法案の本文に入って、非常に問題と思われる点を順次御質問申し上げたいと思います。  今度の法案理由の中に「最近における種苗の生産流通事情の変化」云々とあって、「植物品種育成者保護する制度を整備する」と、こうなっております。これが提案理由の一番大きな理由のようです。ところが、本文の中には育種者というあれが出てこないんです、この第一条の目的に。提案理由では、この法律育成者保護する制度にする、こう書いてありますが、一条を見ますとそのことが書いてないんです。これは何か提案理由と本文とが違っているんではないかという疑点を持ちますので、この点をひとつ解明をいただきたいと思います。
  179. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) いま先生おっしゃいましたように、提案理由育成者保護ということを言っているわけでございますが、その育成者保護を図るための具体的ないろいろ権利の内容の確立、充実、先ほど申し上げましたように、品種登録にするとか、あるいは登録名義の特定継承による変更を認めるとか、そういう育成者保護を目的としました内容は法案にもちろん織り込んでおるわけでございます。種苗法の目的規定には新品種保護のための品種登録、そういうふうにうたってございますが、当然新品種保護ということは育成者保護にも通ずるわけでございますし、また全般的に提案理由といいますのは、一般の法律全体を通じてそうでございますが、なぜ今回こういう法律を出したかというような動機なりそれから過去の経過なり、そういうことを中心にしてお話をいたしますので、まあ一般の法律においても提案理由とそれからそういう目的と必ずしもぴったりした同じ文句であるということにはなっていないわけでございますので、そういうふうにひとつ御了承を願いたいわけでございます。
  180. 丸谷金保

    丸谷金保君 ところが国会答弁の中でも、たとえば五月三十日の衆議院、たくさんあるんですが、六ページで野坂委員から「「種苗の流通の適正化と品種育成の振興」ということが目的になるわけですね。」と、こういうふうな質問がありましたが、そしてさらに「育種者保護の点を明確にしておく必要があるじゃないか、」という質問が出ております。この点については、今井政府委員が「ひとつ前向きで検討させていただこう、」ということで、その後こちらへ回ってきた法律では改正されておりますが、そのときにもやっぱり育種者と入らないで、衆議院で修正可決された案件の方は新種の保護からで、やっぱり育種者保護というのはないんです。  何かこれを見ていますと、どうも育種者保護すると提案理由で言っていながら、ここで、衆議院でも野坂委員の質問は、育種者保護ということをもっと明確にせいという質問をしているんです。しかし、それに対して今井政府委員は、御説のように前向きに考慮しますということは、ああそういうふうに改正するんだなと、実は私あのとき衆議院で傍聴しておりましたので、われわれ傍聴していてそう思ったんです、質問する方がそういう質問しておるんですから。そしたら、やっぱりここは今度出てきている修正案というのは育種者というのが入ってないんです。何かそこを避けて通っている感じがするんですが、一体どうなんですか。
  181. 小島和義

    説明員小島和義君) 私どもも、まあ俗な意味におきましては育種者保護ということを念頭にも置き、また言葉にも言っておるわけでございます。御指摘のありましたその修正部分は衆議院農林水産委員会におきまして修正になりました部分でございますから、私どもじかにタッチしたわけではございませんが、衆議院の法制局段階から意見を求められるというかっこうでは参画をいたしておるわけでございます。で、当初育種者保護というふうなことをじかに目的の中に入れるべく案文をひねってみたわけでございますが、人の保護ということになりますと、何か非常にいいことをした人であるからその人間をめんどう見るというふうな、いわば属人的な保護のように思われるのではないかという問題が出てまいります。  厳密に言いますならば、そういう新しい品種育成した人のその品種保護するというふうに回りくどく規定すべきところであろうかと思いますが、いろいろ立法例を調べてみますと、特許法の中に「発明の保護」というふうな規定があるわけでございます。これは第一条でございます。発明者の保護という言い方を必ずしもしておらないというふうなところなども参考にいたしまして、「新品種保護」ということをもって、そういう表現をもって新品種育成した人のその育成品種保護するのだというふうな気持ちは十分出るのではないかというふうなことで、こういうかっこうに落ちついたものというふうに理解をいたしております。
  182. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはアメリカ特許法にしましても、それから今度この法律によって加盟しようとするUPOVにしても、UPOV条約なんかでも明確にやっぱり育種者保護ということをうたっているんですよね。どうして日本だけがそれがうたえないんですか。
  183. 小島和義

    説明員小島和義君) 先ほど申し上げましたように、育種者全般を保護すると、つまり新品種をつくり出そうが出すまいが、育種者全般を保護するということは、必ずしもこの法律の条文から見て適当ではない。むしろその新品種育成した人のその品種と、その品種保護するというふうな意味であろうと思いますが、こういう目的規定でございますので、まあ簡にして要を得た表現が望ましいというふうなことから「新品種保護」というふうなことになっているわけでありますが、精神におきましては、先生の御指摘のような精神を盛り込んだものというふうに理解をいたしております。
  184. 丸谷金保

    丸谷金保君 精神においてそういうふうな精神でやっていくということでございますので、できるだけそうお願いいたしたい、かように思います。実は、なぜ私そのことが気になるかというと、従来非常に育種者、特に民間育種者というのは恵まれていないんです。先ほど問題になりました巨峰、これはまあ伊豆の奥で戦前から大井上先生が非常に御苦労なさってつくった品種だということは皆さんおわかりだと思います。これを当時農林省では、いわゆる前の種苗法では、こんなものはだめだということで新品種には登録してもらえなかったわけです。それで、登録をしてもらえないので非常にこれは保護になったんです。非常に苦労しまして、これは今度特許法の方で巨峰という名前を商標登録したんです。名称登録というのですか、名称登録を。そのために、農林省に断られたので何かにあれしておかなきゃならないということから、名称の商標登録を行って、それがいまでも巨峰という名前を打つとき、巨峰会というのがありまして、あれは証紙一枚一円か二円で、お金を払っているんです、これに。これで遺族が大変助かっているわけなんです。こういう例があります。  その半面、ベリーAというブドウ品種御存じだと思うんですが、これは新潟の川上善兵衛さん、この方が作出した品種です。この方も私財を蕩尽し尽くすくらい、一生かかってそれはずいぶんいろいろな種類もやったし、有名な方でございますけれども、ベリーAという一つ品種を生涯かけて残されて、これの方は何にもあれないんです。非常に晩年は貧困のうちに亡くなられた。大変優秀な息子さんも、そういうおやじの跡はもうこりごりだということで別の道に進んでしまいました。こういう育種者もいるわけです。  それから、きょうおいでになっている倉方先生、これも衆議院の農水でもって御発言なさっておりますけれども、ずいぶん御苦労なさって倉方桃などという桃をこしらえてみたけれども、結局は何にも保護されていません。どこへ行ってもたくさんつくっている。この衆議院の記録を見ましたら、本当に私読みながら、御苦労して何にも報われていないのに、何か目頭が熱くなる感じでこの記録を読ませていただきました。そういう御苦労に対して何にも報いるところがないんです。逆に、たまたま品種登録してもらえなかった巨峰だけがそういう点で報われていると。まあ、報われていると言ってはあれですが、救われる道があった。こういうことですから、やっぱり育種者保護ということが明確になっている法律法律でないかということによって、提案理由やそれからこの国会論議見ていますと、衆議院でもとにかく育種者保護育種者保護とずいぶん出てきます。勘定してみましたけれども、とても切りありませんので私もやめましたけれども、至るところに、今国会論議の中で、衆議院の中では政府答弁として育種者保護が出てきているんですが、にもかかわらず、目的にも何もあとずっと載ってないんです。そうするとこれは、どうもこれからもこの新しい法律出ても、口では言っているけれども、結局育種者保護されないんじゃないか、こういう感を深くするんですが、いかがですかこの点。これは本当は農林大臣にお聞きしたいところなんですが。
  185. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 先ほどから申し上げましたように、本法案の内容を見ますと、登録の効力を名称登録から品種登録にしたり、あるいは登録名義の書きかえで一時的な財産を得るようにできるような道を開いたり、あるいは登録期間を長くしたりということで、先生のおっしゃいましたような育成者に対する保護中身として法案には十分盛り込んだつもりでございますし、また、育成者が死亡したときの場合にもその保護が相続人にも及ぶと、そういうようなこと等、法案中身におきましてその育成者保護を十分考えたい、また、先生おっしゃいましたような精神でもってこの法律を運用してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  186. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、この育成者保護というのが明定されていないことが、その後の法律の組み立ての中で各所に出てきていると思うんですよ。たとえば、これは新品種登録の申請があった場合に、検査に行くことができますね、それを審査する。これはどなたがおやりになることになりますか、どういう資格で。
  187. 小島和義

    説明員小島和義君) 将来の問題といたしましては、農蚕園芸局の中の機構の整備ということも実は考えておるわけでございますが、現状に即して申し上げますならば、農蚕園芸局果樹花き課の中に種苗対策室という部屋を設けております。そこに置かれております現在は農蚕園芸専門官というふうな職名の職員がおるわけでございますが、そういう人が中心になって審査に当たる、こういう考えを持っております。
  188. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は消防司令もやっていたんで、実は消防法の関係、こういう特殊な関係については、一般の国家公務員や地方公務員の守秘義務と別に特殊な仕事としての守秘義務をうたっているんです。たとえば消防法の場合は四条で立ち入り調査ができる、消防職員というのはどこの家へでも行って。そして、そこで質問あるいは検査によって知り得たことについて、これはみだりに漏らしてはならないというふうな規定があります。それから、特許法の中でも守秘義務というのは強くうたっておると思います。そういうふうに非常に特殊な調査をしなきゃならぬこういう今度の法律で、守秘義務規定がないと、これは育成者保護にならないんですよ。これはどういうわけなんですか。
  189. 小島和義

    説明員小島和義君) 消防法の規定は私存じませんが、国家公務員につきましては、国家公務員法の第百条におきまして「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」というふうなことが規定をされておるわけでございます。そういう一般的な秘密を守る義務というものをもって十分である、こういう判断をいたしておるわけでございます。
  190. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ、特許法なり消防法なりその他たくさんありますよ。そういうところで長官にお伺いしますが、特許法ではどうなんですか。
  191. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 特許法二百条に「秘密を漏らした罪」ということになっておりまして、「特許庁の職員又はその職にあつた者がその職務に関して知得した特許出願中の発明に関する秘密を漏らし、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」、こうなっております。
  192. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは十二条の九によって、登録品種調査ができることになっております。そうすると、そこで覚えたことを一般国家公務員の守秘義務で守れる、そういうふうに考えるところに、私はやっぱり育成者保護ということが理念的に欠けている大きな問題点があるのじゃないかという気がするんです。これは一般の国家公務員の守秘義務でいいんだということになったら、特許法だって何だって要らないんですよ。ちょっとその点は、私はそういうところからこういうものが出てくるのじゃないかと思うんです。
  193. 小島和義

    説明員小島和義君) 私どもは、その国家公務員法の百条の規定というのは緩やかなものであるというふうには実は考えておらないわけでございまして、これはこれとして相当な規定であると思っておるわけでございます。問題は、ある特殊な職業につきました公務員についてその義務をさらに加重する、あるいはその罰則を強化するという必要があるかどうかというのは、それぞれのその公務員の職務内容によって違ってくるのだろうと思います。  以下は推定でございますが、特許の場合においては、先ほど来お答えいたしておりますように、技術的な思想の創作の高度なものということで、アイデア、ヒントというものが物を言う世界でございます。これに比べますと、植物の新品種の方はアイデアだけで物ができるわけではございませんで、多くの場合非常に長年の苦労の積み上げ、ないしは突然変異の特見というふうなことによりまして新しい品種をつくっておるわけでございますから、アイデアだけあれば同じ物がだれでもできるというふうなものでもないわけでございますから、その意味におきまして加重規定を置く必要は特にないのではないか、こういうふうに見ておるわけでございます。  ということは、その審査に当たる者がルーズにやってもいいということを申し上げているわけでございませんで、これはやっぱり厳重に秘密を守らせるという立場を貫くつもりでございます。
  194. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは非常に大事なことだと思うんです。というのは、たとえば、この法案でも特許法と同じような先願主義ですわね。そうしますと、やはり情報が漏れるか漏れないかということの心配、これはわれわれ実際にやっている者にするとやっぱり一番心配なところなんですよ、これが法文で明定されてないと。同じようなものであっても、特許庁の方へ出しておけば心配ないけれども農林省の方へ出せば心配だ。そうして一般国家公務員の守秘義務があるからいいという程度のお考えしかないのかな、立ち入り調査ということがそんな程度にしか考えていないのなら危なくてしょうがないという気になるんですがね。  こういう点については、どうもいまの国家公務員の、それは確かに国家公務員の一般的な守秘義務ありますよ。しかし、それがあるからいいというような一般社会通念になりますか、国家公務員、地方公務員の守秘義務。われわれが考えているように、この守秘義務というものについて、たとえば、お医者さんが持っている職業上の守秘義務、そういう特殊な職業の弁護士さん、あるいは特許庁あるいはまた消防庁職員、こういう特殊な特定の問題に携わる職員の場合には、職員でも職業でもそうですが、やっぱりちゃんとそういう立法措置をしておりますよ。どうしてここだけしないのかなと思うと、最初の要するに新品種だけ守ればいいんだという考えと、やっぱりそれを苦労してつくった育成者というものについての頭が及ばないというふうなことで違ってくると、こういうところに出てくるんでないかと思うんです。どうなんですか、それ。
  195. 小島和義

    説明員小島和義君) 何度もお答えいたしておりますが、そういう国家公務員の一般的な守秘義務というものを加重すべき必要があるかどうかという問題であろうと思います。  先ほども私の推測で申し上げたわけでありますが、特許の場合にはその特許中身が事前に漏れておると、一般にあまねく知れわたっておるという場合においては、それはもう特許事由にならないというふうなこともございますが、農産種苗法の場合におきましては、そういう新しい品種があるということが事前に知れわたっておりましても、それが販売されておらない場合においては新規の品種として出願ができるというかっこうになっておりますので、単に知識として外に知れわたっておるというだけで直ちに本人の出願権が損なわれるということにはなっておらぬわけでございます。そういう意味において、特別加重する必要はないものというふうに考えておりますが、何度も申し上げておりますとおり、その審査の任に当たる者が厳重にその秘密を保持する立場にあるということにおいてはいささかも変わりない、こういうふうに考えております。
  196. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはすれ違うので、この問題については私はどうも納得できないのですが、一般的な国家公務員なり地方公務員の守秘義務、これはもう私たちも何年も衝に携わってきたからよくわかります。それと立入検査をする場合の新しい品種育成者保護という立場からもこれはちょっと違うと思いますが、ただ、一応疑問点まだたくさんございますので挙げていきます。  第七条に「品種育成」として括弧して「(人為的変異又は自然的変異に係る特性を固定し又は検定することをいう。以下同じ。)」括弧としております。「した者又はその承継人」とあるんです、が、この「又は」というのは、これはどういうことなんですか。
  197. 小島和義

    説明員小島和義君) 本人がすでにその地位を譲り渡しておる、ないしはその死亡によって相続人に引き継がれておるという場合のその承継人でもよろしいということで、「又は」としておるわけでございます。
  198. 丸谷金保

    丸谷金保君 たとえば、これはどういう場合を想定しているんですか。具体的にひとつこういう場合という……。
  199. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) いま話が出ましたように、相続人の場合、それからその他、他の人と協議をしてその権利を譲り受けた人というふうに理解をいたしております。
  200. 丸谷金保

    丸谷金保君 ここで「人為的変異又は自然的変異に係る特性を固定し」と、この「自然的変異に係る特性」というのは、たとえばどういう場合でございますか。
  201. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 「人為的変異」というのはコバルト照射によってこういろいろ変わるとか、「自然的変異」につきましては枝変わり等の発見というように考えております。
  202. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、これには四倍体は入りますか。
  203. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) いま申し上げましたあらゆる「人為的変異」、「自然的変異」、全部入るわけでございますし、特に突然変異としてできるものについては、先生がおっしゃいました四倍体の品種でも、あるいは二倍体の品種でも、これはすべて包含されるというふうに理解しております。
  204. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、たとえば巨峰——巨峰ばかり出して申しわけないんですが、皆さんの方も巨峰と言えばおわかりが楽だろうと思いますので……。巨峰の場合ですね、センテニアルと、それから石原早生の四倍体の交配品種なんですけれども、その場合に巨峰は入りますわね。しかし、この親はどうなんですか、これも入るんですか。この法律でどうも私たちよくわからないので……。
  205. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 両方入るようになっております。
  206. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、もちろん芽条変異なんかも入りますね。
  207. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 入ります。
  208. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、放射線育種なんというのがこのごろ非常にはやってきたんですが、こういうのは一体どうなりますか。
  209. 小島和義

    説明員小島和義君) 放射線照射によりまして生じました変異がいわば固定するということでございますれば、その限りにおきまして新しい品種たり得るものと考えております。
  210. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、この固定——特許法で言うと反復して確定するということですが、突然変異なんかはこれは反復して固定するというふうな概念に入ると思いますか、どうですか。
  211. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 検定をするということで、これを試作して確認をするということで入ることになっております。
  212. 丸谷金保

    丸谷金保君 あのね、局長さん簡単におっしゃるけれども、試作して確定するとなると何年もかかるんですよ。いいですか。ということは、当分それはできないということじゃないですか。何年くらいかかると思いますか、試作して検定するって。
  213. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 高接ぎして、それを確認するのに、一般的に果樹等につきましては大体三年ぐらいというふうに考えております。
  214. 丸谷金保

    丸谷金保君 本当に三年でやれますか、確認しておきたいと思うんですよ。
  215. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) まあ、種類によっても非常に違いますが、三年のものもあれば、五、六年のものもあるし、七、八年のものもあると、そういうような状況のようでございます。
  216. 丸谷金保

    丸谷金保君 ですから、ここに「固定し又は検定することをいう」とありますでしょう。検定するということがどんなに大変なことかということを、この法文の中であなたたちがお考えになっていましたか、提案者として。検定するというこは、物によっては五年も十年もかかるのですよ。この法文の中でこの一言だけでもこんな大変な意味を持っているのだと、そうしてこのことをきょうから質疑始めたばかりでも、えらい大変な法律だということが私わかるんですよ。そしてこれ何ぼ読んでみてもなかなか——幸い私はあれなんでわかるのですが、非常にわかりにくい、専門的なことになるとわかりにくいと思うのですがね。  それにしても、そこら辺までよくお考えになっていただかないと、これは大変なことになるのじゃないかと思います。検定するということは何年もかかるということを、この場で明確にしておきます。そんな三年でできるなんというものがむしろ少ないのですよ、特に果実類は。それから実をとってみなければだめだし、もう一回やってみなきゃだめなんですよ。いいですか。そうすると、桃クリ三年カキ八年と言うけれども、桃、クリだって六年かかるんですよ、もう一回やれば。実際には、もっとかかるんですよ。これは倉方さんなんかいらっしゃるから、笑っているだろうと思いますよ。そんな簡単なものでできるなら、おれは苦労しなかったって言ってね。そういうもうこの第七条一つとってみても、実は大変な問題があると思います。  それから、次は品種登録の取り消しについてちょっと御質問申し上げたいと思います。十二条の五の三項ですか、いわゆる差しとめ請求権というのがここに出ている。品種登録者はその行為者に対しては差しとめ請求ができることになっております。この取り消しの問題なんですが、一体これはどういう権利なんですか。
  217. 小島和義

    説明員小島和義君) 品種登録者に対して、この法律によって与えられた請求権ということになろうかと思います。
  218. 丸谷金保

    丸谷金保君 一応これはおまえやめろ、けしからぬというのですから、非常に強い権利を持つわけですね。これは財産権というもの、それで午前中の問題に戻るんですが、無体財産権的なものであればこれは権利として認められますけれども、そうでなくて、無体財産権的なものでない権利というのは一体どういう場合なんでしょうか。
  219. 小島和義

    説明員小島和義君) これは、実定法上何々権という名前をつけたものとして権利を保持する場合は、それが権利であるということは何ら疑念をはさむ余地がないわけでありますが、この法律のように、法律中身におきまして登録の効果としてさまざまな保護を与えておると、こういう場合に、その中身権利性があるかどうかという点については、これは実定法上の問題というよりは学問上の問題というふうになろうかと思いますが、御承知のように、こういう差しとめ請求権並びに損害賠償請求権は、従来の名称登録時代におきましても登録者に与えておった権利でございます。また、こういうふうな権利を与えておることによって、裏返しに見れば品種登録者の地位というのは非常に権利性が強まったと、こういうふうに見れるのではないかと思います。
  220. 丸谷金保

    丸谷金保君 同じ条文の中で、十二条の五の八項ですか、有償で譲り受けた者はその後この許諾なくしてこれを他に転売できるという条文でございますが、事実としてこういう問題があるんです。  大石早生、御存じですね。プラムですが、これはいまの品種登録登録になっております。それらは確かにそういう点では権利があるわけですね。現行法でもあるわけです。この大石さんが大石早生という品種登録して、そうしてこれはある会社へ販売権を譲ったんです。いわゆるこれはここで言う許諾行為になります。ところが、一年間はある程度苗木を買ってくれたんですが、二年、三年とたつうちにだんだんと買ってくれる量が少なくなりまして、実際には逆にだんだんと、この会社の名前は言いませんが、二年、三年とたつうちによけい売れるようになるわけですよ、会社の売っているのがいい苗だということで。ところが、大石さんから買う苗はだんだん少なくなる。二年、三年とだんだん少なくなっちゃって、今度は百本が十本も買わないというふうなことになった。  これは、前に買ったその苗木をふやしたということもあるでしょうが、ところが買った農家からは、どうも大石早生の特性がないんでないかと、こういう抗議が今度は大石さんのところに、売った種苗会社でなくして大石さん自身のところに、これは実際に聞いた話なんですが、どんどん文句は来るわけです。ですから、一遍これは育成者保護と言いながらこういう許諾を与えますと、いまの法律でも差しとめ請求権があるといってもどんどん売られるわけなんです。しかも今度の法律では、今度は許諾をしなくても有償で買えば売れるわけですね。したがって、品種登録をしても今度は合法的に売れるということになってくるわけなんです。  おわかりになりますか。もう少しむずかしく言った方がおわかりになるのかもしれませんが、むずかしく言いますと、十二条五の八という再販権を認めた法律があると育成者である権利者が保護されないと、従来の種苗法でさえも保護されなかったけれども、今度は許諾も必要でなくなるんです。前に許諾を必要としているときでさえも、苗屋さんはよけいにどんどんふやして売って、育成者保護されないわけですよ。今度は許諾が要らないとなったら、どんなことをされるかわからないと大石さんは言っている。だから私はもう売りませんと、こう言っているんですが、いまの御答弁ですと、いかにも前からあった権利で、差しとめ請求権があるから、そういう権利があるんで、現行法でもあるし、今度の改正法でもそれはそういう意味での権利を認めているんだからとおっしゃるかもしらぬけれども、この十二条の五の八の許諾なくしてという、有償で買った場合になりますと大変な問題がどうも起きるんじゃないかという気がするんです。ここいらに対する配慮はどうなんですか。
  221. 小島和義

    説明員小島和義君) 御指摘がありましたのは、ちょっとこの法律は項番号がなくておわかりにくいかと思いますが、十二条の五の二項八号の問題であろうかと思います。  実は御指摘がありましたように、現行農産種苗法におきまして、許諾を受けました者からその種苗を買い取りまして転売する場合に、登録者の許諾が要るかどうかという問題につきましては、かなり解釈上の疑義があるわけでございます。ある段階におきまして、農林省の中の解釈としても、卸売、小売という二段の販売がある場合に、両者とも本人の許諾が要るのではないかと、こういう見解を持った時期もあるのでございますが、一遍その許諾を受けて何らかの対価を払っているというものにつきまして、重ねてその次の販売段階においてまたその許諾料を払うというのは二重になるというふうなこともございますし、その許諾をした相手方が卸売というふうな人の場合におきましては、当然その小売段階の許諾も暗黙に与えておるのではないかというふうないろんな解釈が成り立つわけでございまして、今回、その点につきまして明文上重ねて許諾は要らないということにいたしておるわけでございます。  ただ、いま御指摘がありましたように、許諾を受けました者がその許諾の範囲を超えて幾らでも売るというふうなことがあり得るのではないかということにつきましては、これは許諾の与える与え方ということにかかわってくるだろうと思います。包括的に相手方に対して幾らでも売ることを認めるというふうな契約もないことはないと思いますが、この種の許諾といたしましては、たとえば本数何本までとか、あるいは地域を限る、あるいは時期を限るというふうな契約によりまして、登録者自身の権利を保全するような契約をすべきものと思いますし、また、そういう点がもしきわめてルーズに行われておりまして、結局登録者の権利が保全されないというふうな事例が多いようでございますれば、その登録者に対しまして、許諾のあり方というのはこういうふうにしなければみずからの地位保全ができないということも、これからの問題といたしましては十分啓蒙していかなきゃならぬと思っております。  ただ、御指摘がありましたように、仮に本数なり何なりを限定して許諾を与えましても、相手方がそれを破ったということでございますれば、先ほど御質問ありましたような損害賠償請求ないしは差しとめ請求の問題になってくる、こういうことでございますので、一応制度上としては完結的に保護されるようになっているわけでございます。
  222. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは、許諾を必要としてさえもいま大石さんこぼすようなこういう実態があるんですよ。今度の法律で、これは大変いいところもあるんですけれども、ここなんかはもう非常に改悪だと思うんです。現況でさえなかなかそんな損害賠償とか差しとめ請求なんというのは字に書いてあったって、まじめにこつこつと生涯かけて育種をしている人たちがなかなかやれる仕掛けでないんですよ。まして、今度は苗木屋さんが許諾なしにやれるとなったら、何始まるかわからないんですよ。どうしてそういう前の法の中のいいところまで抜いて、苗木屋さんたちが楽な商売できるようなふうに変えなきゃならなかった義理があるんですか。
  223. 小島和義

    説明員小島和義君) これはまさに運用の問題でございますので、法律の世界において明らかにするわけにはなかなかいかないのでございますが、先ほど御指摘がありましたような、たとえば巨峰の例で証紙を貼付して、それについて一本幾らというふうな費用を徴収しておると、こういうふうなお話も承りましたが、許諾を与えたたとえばその本数につきまして、本人がこれは許諾を与えた分であるということを明入するような方法を施すと、そういう契約を結ぶというのも一つの方法であろうと思います。ただ、その場合でも、そういう契約を破って売るということはあり得るわけでございますから、最後はやはり損害賠償請求ないしは差しとめ請求というふうな司法上の争いと、こういうことになるわけでございます。
  224. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは有償で買った場合に、その物を売るのは売れるということですが、これは増殖禁止は今度入りましたわね、増殖を禁止すると。ところが、これは有償と特にうたっておるばかりに、今度無償の問題が出てくる。無償なら構わないわけでしょう。そういうことになりますか。
  225. 小島和義

    説明員小島和義君) 無償の場合には、通常相手方と特別な信頼関係にあるものとして提供をするということでございますので、それまでも許諾にかからしめるという必要はないというふうに考えておるわけでございます。また、その無償頒布を大々的にやりまして、それで権利者、登録者の地位を脅かすという反経済的な行動をとるということも余り考えにくいというふうなことから、有償というふうに限っておるわけでございます。
  226. 丸谷金保

    丸谷金保君 実際には、無償で経済行為が非常に大きく行われる状況が出てきたんです。たとえば名前はあれですが、何々ワインというんで善光寺ブドウという種類を上田の塩田農協にいまただで提供しているんですよ、農協の方に。すると、これ一本買ってくればただで提供できますわね。こういう矛盾が出てきます。通常は、恐らくこの法の想定の中では、おまえもあれだから一本やるわというような、数本、業としない、そういう形を想定しているのだと思うんです。無償は、この輪から外して許諾を必要としないでやれるということは。ところが、こういうことになってくるんですよ。無償ですからね、無償で、何万本もです。これはできないですか、これはこの法律でできますわね。
  227. 小島和義

    説明員小島和義君) 無償で何万本も配るというふうなことは、この法律上は許諾にかかわらないわけでございますけれども、逆に申し上げますならば、有償販売いたしまして相当な対価を得られるものを、みすみす無償で配るというのは、よほど経済的な観念からすれば逆行したことでありまして、通常はまず余りそういうことはないのではないか、そういうふうに考えております。
  228. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはもう皆さんはごりっぱだから、通常ないとおっしゃるのかもしらぬですが、実例挙げてみましょうか、これ考えられること。たとえば、いま北海道でクラレという大きな会社の二千町歩のブドウ園計画があるんですよ。それで大ワイン工場をつくる。これは知事さんなんかも来て、この発会式に出ている。そこでクラレの社長が来て答弁しているんですからね。いいですか、これ一本買っていったら、この会社は二千ヘクタールのブドウ園、その苗木一本買っていって、あと無償ですからやれるということになると、これ何万本になると思いますか。ちょっとひとつおたくの方で勘定してみてください。
  229. 小島和義

    説明員小島和義君) ただいま御指摘の問題は、無償譲渡の問題というよりは、むしろ大規模自家増殖の問題であろうと思います。実はこの制度検討の過程におきましても、大規模自家増殖をどうするかということについては一つ検討課題であったわけでございます。検討会段階におきましては、そういう大規模自家増殖というものについても登録者の権利が及ぶようにしたらどうかというふうな意見も、かなり強いものとしてあったわけでございます。ところが、実際問題といたしまして、大規模自家増殖というのは何ヘクタールを意味するのかということになりますと、なかなかこれは一元的な物差しが決めにくい。もちろん農家でも手広くやっていらっしゃる人もいるわけでありますし、法人でありましても、その面積からいきますと必ずしも大きいとは限らないものもあるわけでございまして、なかなかどういうものはよくてどういうものはだめということをその仕分けが大変だ。  加えて、大規模に増殖をしたという場合に、前年どの程度の栽培をしておった人がその翌年にどれだけふやしたかということを見なければ、増殖の数量というのはわからないわけでございますから、かなり以前にさかのぼって増殖の事実を突きとめなきゃならないというふうないろんな制度的な制約がございまして、十分検討した問題ではございますが、登録者の許諾にかからしめるということはむずかしいのではないかと、そういう一応結論になっておるわけでございます。  ただ、恐らく御心配になっておりますような、相当まとまった面積で果樹園をつくるということになりますれば、それを一本の苗木から逐次ふやしていくということになりますと、これまた相当な年月がかかるお話であることは先生御存じだと思いますので、そういうものについて種苗業者からその苗木を得るというふうな、有償譲渡によって一斉に果樹園を仕立てていくというふうな姿もまた通常起こり得るところでございます。一本から何千ヘクタールということももちろん理論的に不可能なことではございませんけれども、そういうふうな事例だけを念頭に置いて全部道をふさいでしまって、その結果、農家段階における増殖ないしは自家採種というものを封じてしまうということもいかがかと思いまして、こういう形になっておるわけでございます。
  230. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで、これは一つは有性繁殖できるものと無性繁殖できるものと、これらの区別がこの法律の中で明確になってない。アメリカ特許法のように、植物特許のようなそういう制度になっていない。こういうところに、私はやっぱりこの法自身の持ついろんな問題点が出てくると。常に有性繁殖と無性繁殖両方のことを頭に置きながらこの文言を考えていかなきゃならぬわけですわね。これはもう違うんですからね、本来。ですから私は、これは当然農家の場合でも、有性繁殖のものについてまで一々許諾というと、これは実際問題として不可能ですし、またこれは何といいますか変わっていきますから、当然また種を買わなきゃならないわけです。  しかし、穂木をとっていくというふうな無性繁殖のできるものについては、一本あれば幾らにでもふえていくという性質があるんです。これが一つになっている。それで私は午前中もこの問題を強く言ったんですが、こういう法律中身のいろいろな問題点としてそれが出てくるんじゃないか。たとえばこの許諾を必要としないということで、増殖はだめだと、増殖して販売してだめだと言っても、非常にいろんな範囲が考えられるんです。育種者種苗業者に百本これを販売します。卸屋さんがこれまた小売屋さんに百本、販売する。そうすると、小売屋さんはこれを売らないで増殖します。増殖して百本だけ売ると、あとの竹本は今度また卸屋さんにバックしていくと。これはできますわね、無償ですから。
  231. 小島和義

    説明員小島和義君) 恐らく御説明のような場合ですと、そのバックするのが無償である限りにおいてはかからないわけでありますが、卸屋さんがそれをまた有償で譲渡すると、有償販売するということになりますれば、その段階で改めて許諾が必要になってくるということだろうと思います。
  232. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで考えられることは、これをたくさん小売屋にやっておくと、バックはたくさん来ますわね。あっちの小売屋に百本、こっちの小売屋に百本——百本が千本でもいいですが、やるとたくさん来ます。今度これを有償で販売はできないけれども、無償ならいいんでしょう。これは無償ですと、そのかわりこの肥料をつけて買ってください、こういうふうなセットで行われるときに、これの方は無償だと、この場合に取り締まれますか。
  233. 小島和義

    説明員小島和義君) これは恐らく卸、小売の買い戻しと申しますか、無償の戻しというふうな関係を前提にしなくても、ある苗木屋さんが苗木を売るに当たりまして、苗木は全部ただである、しかし、くっついている肥料の方は、通常の市価よりも相当に高い肥料は買ってもらわにゃいかぬということになりました場合に、その肥料代というものの中に苗木代が実質含まれてないかどうか、苗木の実質有償譲渡ではないのかどうかということが技術的な判断の問題になってくると思います。ただいまのような設例でございますれば、多分擬装的な無償譲渡ということになってまいりますので、登録者の方において十分争い得るケースではないかと思います。
  234. 丸谷金保

    丸谷金保君 ところが、衆議院論議の中でも明らかになったように、大きな苗木屋さんというのは年商百億とか、これは必ずしも種だけでないんですよ、関連する資材をたくさん扱っているんです。いろんなものを扱っています、大きなところは。ところが、地方の小さな種屋さんなんていうのは、そういうことはできないんですよ、あんまりね。やってみても大したことはない。ですから、そういうところからバックさして、膨大な量を持っていたら、これは肥料だろうが何だろうが通常よりも特別高くしないだって苗木ぐらいのサービスはできるんですよ、商売というのは。これを取り締まれますか。しかもこの法律によると、申し出をすることができるというのは広告することができるということでしょう。これは申し出というか何かわからないけども、よくよくあれしてみたら広告することができるということですよね。そうですわね、ここにいう申し出というのは。
  235. 小島和義

    説明員小島和義君) これは、事実関係がどういうかっこうで展開されるかによって大分変わってくるわけでございますが、無償というのはあくまで無償なわけでありますから、ただである。ところが、何らかの有償取得というものがセットで組み合わされておる場合に、果たして片っ方の方が無償で片っ方が有償だと、そういう仕分けが実際にできるのかどうかという現実問題になってくるわけであります。苗木というものは非常に単価の安いものでございますから、ただで配っても十分やっていけるということもあろうかと思いますけれども、通常は苗木もまたこれを有償で売るというかっこうで生計を立てている一つの生業でございますから、単価は安いといいましても、ただでどんどん配って商売が成り立つというものではないわけでございます。もしそういうふうなことができるといたしますと、すべての苗木は無償譲渡の系列でふえていきまして、苗木を大量に売るということによって商売が成り立つ道理がございません。  そういう意味におきまして、御心配のような事態が脱法的に全くないかと言われれば、そういうケースも考えるものがあろうかと思いますが、通常はそういうものは全部ふさがれているというように私ども考えております。
  236. 丸谷金保

    丸谷金保君 この法律は、育成者保護を目的としているんでしょう。そうすると、苗木屋さんの商行為がどういう形で行われなきゃいいか悪いかということはないわけですわね。要するに、どういうふうにしたら育成者が守られるかと、新品種を守って、そのことによって新品種を開発するという育成者の意欲をかき立てて、そうしていい苗木、いい品種をつくる、いい種をつくることによって農業振興に発展させていこうと。そんなばかくさいことじゃやらないわということになったら、大変なんですよ。ところが、こういう文言がこのまま残っていますと、水をかけることになるんです。あなた、ならないと言うか知らぬけどね、これはなるんですよ。たとえば広告、何かのあれだからということで、どこの苗木を無償でもって頒布いたしますというふうな謝恩をどこかでやるとしますか、これはひっかかりませんよね、広告を何ぼしても。それから買っていった人が、今度は自分でもって何ぼふやしてもいいということになると、何にも育成者、この法律で守られたいということにならないですか。  もう本当に要するに許諾をしなくてもいいという、これが前の法律よりももっと悪いものが入ったために、この許諾がなくても売っていけるんだという、あるいは無償の場合にはいいんだというふうなことになっているために、許諾を必要としないんだと、こういうふうな許諾なしということによって育成者は守られないんですよ。そうして、これで守られるのは小さな苗木屋さんでもなくて、卸屋さんのような大きなところだけがどうもこの法律の一番恩恵に浴するようなことが起こってくる。それはチェックすればいいと言いますけれども、許諾を必要とするいまの法律でさえも、チェックできないで皆こぼしているのに、許諾なしになってチェックしてやれるというふうに考えることの方が、よっぽど私は現実無視だと思うんです。どうなんですか。
  237. 小島和義

    説明員小島和義君) 十二条の五の二項の八号の規定は、典型的なタイプといたしましては、卸売業者がその許諾を得て販売いたしましたものを、そっくりそのまま小売がまた売るというケースでございますから、そこに重ねて登録者の許諾が要るということにいたしますと、二重に許諾の手続が要るということになりますので、これはいかがかということで、こういう明文の規定を置いて除いたわけでございます。  ただ、御指摘のように、その間に無償譲渡という関係がはさまりまして、有償譲渡の縦系列で流れていく通常の想定と相反するような仕事のやり方というのが非常に普遍的に行われる、そういう心配があるというふうなことでございますれば、少なくとも第一次のその許諾を与えるに当たりまして、いまのようなかなりまとまった無償譲渡をするということについて、許諾の際の条件としてこれを禁止する、ないしはその本人の承諾が要るというふうなことも、許諾を与えるに当たりましての条件としては自由につけられるわけでございます。ただ、しばしば申し上げておりますように、そういうふうな契約を幾らがっちり結びましても、相手が契約観念が非常に乏しいというためにそれを踏みにじるという場合でございますれば、これは最終的には裁判上の救済を求めるしか仕方がない、こういうかっこうでその法律はでき上がっているわけでございます。これはそういう法律上の関係を定めているものでございますから、非常に冷たい言い方でございますが、最後は裁判上の問題になってくるということでございます。
  238. 丸谷金保

    丸谷金保君 まあ、それは結局、最後は裁判上の問題になりましょうね。しかし、できるだけそういうことにならないような配慮を法律はつくっていかなきゃならないと思うんです。  それから、契約でやると——契約でやるならこの法律要らないですよ。なくたってちゃんとやりますよ、契約で。いいですか、契約できちんとやっていくこともできると思いますし、この法律なくたってやれるんです。ですから、それはやはりこの法律の中で、そういうことは契約でやればいいんだと、わざわざ紛らわしい事項を残しておいて、契約でやればいいんだとか、最後、法律で、裁判上で決めるんだと——やっぱりその前に、そういうことのできるだけ紛らわしいことのないように考えていかなきゃならないんじゃないかと思うんです。われわれはそのための論議をしていると思うんですが、いかがなものですか。
  239. 小島和義

    説明員小島和義君) 契約でやればいいと申し上げましたのは、この八号の規定は、通常は卸売業者から有償で買いましたものをそのまま有償でまた小売りすると、こういう姿を描きまして、そこに二重に許諾をかかわらしめるということはいかにも不合理であるということからできておるわけでございます。もちろん、法律なしでもうやれるとおっしゃいますが、これはその当初の登録者の許諾がなければ販売ができないというふうな法律上の規制がございまして、そういう制度がございますからこそ許諾というものが生きてくる、許諾を与えなければ結局相手方は売れないということになるわけでございますから、全く法律なしで、契約だけでやる場合に比べますれば、その意味の重みというのは違ってくるわけでございます。  そういう意味において、一つの防衛手段としてあくまで申し上げているだけでございまして、そういうふうな無償譲渡の連続のような形で種苗の販売業務が非常に撹乱をされるということを、決して望ましいことと考えておるわけではございません。私どもといたしまして、種苗の関係者はそれぞれみんな通常の商売によって生業を立てておるわけでございますから、そういう市場撹乱的な、ないしは権利侵害的な事業活動をやらないように、今後ともその指導はいたすつもりでございます。
  240. 丸谷金保

    丸谷金保君 まあ、それは種苗業者も確かに税金を払ってやっているんですから、もう正常の商行為の行われるように、それは当然のことだと思います。しかし、それらを保護しなきゃならないということが中心になって、この種苗法の提案の理由にあるように、育成者保護なり新品種保護ということに欠けるような保護まで私はする必要はないんじゃないか、その点はいかがなんですか。
  241. 小島和義

    説明員小島和義君) 今回の八号が入りましたことによって、育成者権利保護に欠くるというふうなことはないように運用もいたしますし、条文自体もそういうつもりで実は書いたつもりでございます。
  242. 丸谷金保

    丸谷金保君 実はこの法律の中で、この八号が入ってきた経緯について私たちいささか私は疑念を持つんです。午前からの論議の中、あるいは衆議院論議などで、しばしば検討会を開いて、ずいぶん検討しながらやってきた、こういう御答弁がございました。また、それは確かにそのとおりだろうと思うんです。何回もやってこられた。しかし、この間の二十四日の衆議院参考人のところで、加賀山参考人がこういう発言をいたしております。日本の農業生産を上げるというそういう視点から考えるならば、やはり特許というような思想よりは現在の農産種苗法の線上で持っていった方がいいんじゃないか、そういうふうな感じにだんだんなってきました。その間、約一年間検討会の開催が行われなかったわけでございますと。ですから、一時これは中断していたんですよ。だんだん検討会をやっているうちに、やはりこれは種苗法でやるべきだという考えに私たちもなってきたと、そして最後に五十三年の当初開かれた最終的な懇談会では、農林省側からこういうふうなことで持っていきたいというそういう話がございまして、検討会の委員はまあ全員がそういうことかということで大体了承いたしまして現在に至っている、こういうふうに発言なさっておるんです。  五十三年の当初開かれたんですよね、それが最後なんです。そして最後に、昭和五十三年一月に農産種苗法の一部を改正する法律案というのが出ております。そして、この中には、いま問題になっている号、これが入っていないですよ。一月のやつには入っておりませんわね。私も持っている、これ。いいですか。だから検討会に出して、最終的にこれならいいんでないかと皆さんが言って、加賀山さんたちも言って、みんな了承したと、いいですか、この中に——そしてこれ見たら、最終って書いてあるんですよ。後やってないんです。そしておいて、後からこの業者に有利な法律が突如として入ってきているから、私たちはこれはおかしいと思うんですよ。このときには、最終のやつには入ってないんですもの、審議の。そして皆さんの方は口をそろえて、検討会意見を尊重して尊重してと、そう言ってきてますでしょう。たくさんあるんですよ、検討会意見というのは。そして最終やったんです。それで結構だと言ったというんですよね。それから後にこれが入ってきたんです、業者向けのやつが。一体これはどういうわけなんです。これで検討会意見を尊重したことになるんですか。大変なことなんですよ。
  243. 小島和義

    説明員小島和義君) 制度検討会自体は五十一年度の年度当初から始めまして、五十二年の年度末で一応その検討会を終わっておるわけでございます。そこまででいわば政府の原案たり得る一つの素材を提供願ったということになりまして、それから先はもっぱら政府部内の検討ということになりましたわけでございます。で、もちろんその最終的な政府案というのは、閣議にかけて決定いたしましたものがその政府の最終案でございまして、この法律が非常に法制局等の検討の時間を長く要したものでございますから、四月になりまして成案を見ると、こういう経過があるわけで、時間的な余裕というのは非常に窮屈であったわけでございます。ほとんど連日のように法制局の審査、あるいは他官庁との連絡調整、こういうことに追われておった中ではございますが、その一年間の間に、検討会でまあ大体こんなところだろうということになりました案からずいぶん変わってきておるわけでございます。  私ども一番気にしておりましたところは、先ほど来先生から御指摘いただいておりますように、当初、新品種保護権という形で構築いたしましたものを、許諾方式というふうなことに大きく変えていった経緯がございますものですから、その辺を主に御了解を得るというふうな意味で、懇談会という形式ではございますが、御参集を得まして、こういう結果になったということを御報告申し上げておるわけでございます。もちろん出席されなかった方もいらっしゃるわけでございますから、そこで全員同意とか合意とかいうふうなことではございませんで、役所の方のそれまでの作業の経過を御報告したということになっておるわけでございます。その際に、いま御指摘がございました八号の規定が入っていなかったと私もたしか記憶をいたしておりますが、これは、懇談会を開きましたのが三月でございまして、まだ法制局での検討が続いておる中で、大きな骨格はもう変わらないというところで御相談をいたしたものでございます。  八号は、先ほども申し上げましたように、解釈上といたしましては、すでに許諾を与えたものについて重ねて許諾ということはなくても当然ではないかというような解釈論も成り立つわけでございます。ただ、従来は名称の使用ということでありましたから、その名称がつけられた形で卸売から売られたものについて小売が何らの作為なくそのまま売るという場合に、これは名称使用という行為があるのかどうかちょっと疑問な点もございますから、従来はそれでもよかったという気もするわけでございますが、今回は許諾にかからしめる事項を有償譲渡ということにいたしましたから、小売の方もまさしく卸から買ったものを有償譲渡するわけでございますから、手当てをしなければ当然これはダブルの許諾が要るということになってくるわけでございます。そのことが一つのまた弊害もあるのではないか、こういう判断で、従来解釈上やや疑義のありました問題をこの際成文上はっきりさせると、こういうことに法制局の段階でなったものでございますが、懇談会の段階で、意図的にそこを隠蔽するという意味で懇談会にそれをお示ししなかったというものでは決してございません。
  244. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうも説明を聞いていると、やっぱり苗木屋さんの法律になっちゃうのですよね。というのは、育成者保護ということを言いながら、説明自体みんないまのは苗木屋さんたちの卸から小売、こういうふうなことの不便があっても困るからという配慮でなされているわけです。  法制局おいでになっておりますか。——ちょっとお願いいたしますが、いま御答弁ありましたように、これらの文言は法制局がやっぱり問題にして挿入したんですか。
  245. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) 法案の審査に当たりましては、政府提案の場合に原省、この法案であれば農林省が原案を持ってまいりまして、原案につきまして主として制度的な合理性あるいは他の法律との整合性、しかも、こういう法律規定は、特に今回の場合はいわゆる丸谷委員のお言葉によれば、育種者保護という趣旨をどの程度に効果あらしめるかということ、いわゆる立法の趣旨というようなものを考慮に入れまして法案の審査をいたしますので、ただいま御質問のございました十二条の五各号、いまの八号を含めました各号につきましては、担当の参事官が相当時間をかけて審査をいたしました。
  246. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、この八号については、特にこれを入れなければこの法律の法制上どうしても困るという法制局側の意見ではなかったというふうに承ってよろしゅうございますか。
  247. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  第十二条の五につきましては、一方である程度の制限、いわゆる品種登録についての効力としての制限を加えておるわけでございますから、その制限が余りに厳しくなり過ぎることは品種登録立法趣旨にも逆に反するということで、実態がこのような実態の場合には、その制限を外してもよかろうということを農林省の原案に即して当方で検討しました結果、やはり八号のようなものは、先ほど小島議官から答弁がございましたように、一般に卸、小売の間の流通を全部とめてしまうということは不適当であろうというところに重点を置きまして、当方も賛成をしてこういう法案にいたしたわけでございます。
  248. 丸谷金保

    丸谷金保君 せっかく十二条で、十二条は一応何というか、本来制限規定ですが、これを設けて、その中で今度逆に「前項の規定にかかわらず、業として当該各号に定める行為をすることができる。」、こういうことを業としてする場合にはいろいろな禁止規定があるけれども、それにかかわらないでその制限を受けないよということで、今度は緩める方のあれがずっと並んでいるわけです。その中で、特に私たちは、有償で譲り受けた者が許諾なくやれるということは、いまは許諾を必要とする法律でさえもなかなか育種者が守られないといってこぼしておるという状態の中で、これ以上緩めて育種者を守るということになるという判断が、業者は確かにいいでしょうけれども、どうしても育種者保護というふうにとれないんですがね。どうしてそういうふうにとれるんですかね。  しかも、五十三年の、いまは一年前にやめていると言いますが、加賀山さんのあれを見ると、五十三年の一月に最終的にいろいろ御相談を受けたということになっているんですよ。五十三年の当初開かれた最終的な農林省側からの懇談会、加賀山さんは植物品種保護制度検討会の会長代理ということでここへ出席しておりますわね。そうしますと、私はやはりそのときに相談したのはこれでないかと思うんです。一年も前にやめていると言いますけれども、ことしの春やっているんじゃないですか、こういうこれでどうですかというやつを。
  249. 小島和義

    説明員小島和義君) 検討会を懇談会という形で開催いたしましたのは、ことしの三月でございます。時期といたしましては、まさに法制局で最終的な審査を受けている段階でございましたが、大きな法律の骨格というのはもう大体固まってきた、こういう段階で懇談会を開いたわけでございます。加賀山さんの御発言であるいは一月というふうに誤解されるようなお話があったかもしれませんが……
  250. 丸谷金保

    丸谷金保君 一月ではないです。五十三年の当初開かれたと言った。
  251. 小島和義

    説明員小島和義君) 実際の開催は、三月に開催をいたしておるわけでございます。
  252. 丸谷金保

    丸谷金保君 いや、結構です。  そのときはまだこれでしょう。そして、大体この法律は固まったというけれども、これ一つ入ることによって、育種者自体考え方はもう本当に百八十度変わったんです。いろいろな問題もあるけれども、まあまあ新しい法律でもって、いままで三年だ五年だといっていたやつが十五年、十八年になる、大変いいところもあるのですから、結構なことだという一面もあったのですがね。この法案を見て、四月の半ば過ぎですが、私びっくりしたのです。いままでと全く変わって、たったこれだけですが、これが入ることによってがらっと変わるんです。いいですか。最初の無体財産制から、五十三年になって、今度は何かはっきりした権利規定ができないとき、こう変わって、またさらにここでこういうことによって、育種者保護でなく、皆さんと相談したときに出したやつから種苗業者保護法律に突如として三月から四月に変わった。これを挿入しなきゃならなかった原因、法制局に聞いたら、法制局で入れたんじゃないというのでしょう。あなたたちの方から持っていったというのでしょう。何があったんですか、そこに。
  253. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  先ほどの答弁丸谷委員の方で誤解がおありだといけないので。——法制局で入れたのではないということを申し上げたわけではございませんで、法案の審査の場合には、法制局が全部法文を書くわけではございませんで、原案を持ってまいりまして、原案に即しまして実態の説明を聞き、先ほど申し上げましたように、制度の合理性なり実効性、それから他の法律との整合性というようなことを中心検討して条文をつくるわけでございますから、農林省が入れたわけではございませんで、農林省といわば法制局との合作というふうにお考えいただいた方が適当だと思います。
  254. 丸谷金保

    丸谷金保君 農林省と法制局の合作というのなら、法制局の方にひとつ御質問さしていただかなきゃならぬ。合作ですね。
  255. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) はい。
  256. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、この八号を入れて、このことによって、育種者保護よりも業界の保護の方に比重が移ったというふうには当時お考えになりませんでしたか。
  257. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、十二条の五の第一項は、登録品種についての保護規定ということで非常に強い制限をかけておりますから、その制限をある程度外すことが——登録品種は制限をすることだけが趣旨ではなく、登録をすることによって保護を加えながら流通を図るということが必要だろうというふうに当方は考えまして、先ほど小島議官からも説明ございましたように、ある程度の流通を確保するということのためには八号の規定が必要であり、これはもともと品種保護というのは、育種者保護だけではなく、先ほど申し上げたように、登録品種についての保護という点から言えば、育種者種苗業者も全体を含めまして、効果的な運用が可能なような規定にしたいというつもりで入れたわけでございます。
  258. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、育種者保護だけでなくて、種苗業者保護もこの法律でしていかなきゃならぬと、こういうことでございますね。
  259. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  育種者保護あるいは種苗業者保護という言葉を丸谷委員お使いになりましたので私も使いましたが、当方で審査をする際に考えましたのは、だれを保護するかということばかりではなくて、登録品種についてのいわば合理的な適正な流通が確保されるようにという趣旨でございますので、その点から言えば、種苗業者が流通に関与している以上、種苗業者に関連する規定が入ってくるのは当然であろうというふうに考えております。
  260. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、最初の法の目的の第一条に「流通の適正化」というふうな文言があっても、新品種保護とか育成者保護という提案理由にあるようなのがないというので、衆議院の方で修正されました。これについてはどうお考えですか、法制局では。  それで、もう変わってきているのですよ、考え方が。この目的のところも、最初の原案を修正しなければならないことになって、結局立法府において修正したわけですわ。だから、最初おたくたちが相談をし、持ち込まれたような「流通の適正化」ということの比重はうんと弱まったはずなんです。いかがなんですか。そうでないのですか。
  261. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  ただいま丸谷委員から御指摘ございました第一条「目的」の修正は、第一条に原案で入っておりました「品種登録に関する制度」というところを修正されまして、「新品種保護のための品種登録に関する制度」というふうになっているはずで、私そういうふうに了解しておりますが、そこの部分がそう変わりましても、私がただいま答弁しましたように、「新品種保護のための品種登録」ということの範囲から修正によって変わったというふうには理解しておりません。
  262. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、修正はしたけれども変わっていないということですか。
  263. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  修正されたわけでございますから、文言が変わっていることは確かでございますが、「新品種保護のための品種登録に関する制度」ということは、私が先ほど十二条の五の第二項第八号について申し上げました答弁と違った趣旨とは考えていないということを申し上げたわけでございます。
  264. 丸谷金保

    丸谷金保君 私もわりと物わかりのいい方のつもりなんですが、どうもいまの御答弁を聞いていてよくのみ込めないのですよ。いいですか。最初の原案から、「新品種保護のための」という文言が一番上につきましたね。そうすると、この目的は、これのあるのとないのじゃ、新品種保護のための法律だというふうにウエートがかかったので、種苗の流通の適正化ということのウエートはうんと低くなったのですよと、私聞いているのです。それが、修正をした立法府としての修正の意義だと私は思う。そうでなかったら、こういう修正をしなくてもいいんですから。それについてひとつ。
  265. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  新品種保護という点につきましては、丸谷委員がお考えになっておられることと私が答弁を申し上げたことと、それほど大きな違いはないかと思いますが、新品種保護ということがすぐに育成者の、育種者保護というようになるかならないかという点につきまして、私が申し上げたのが若干幅が違うというふうに私は考えておりますが、なお改めて、ただいま丸谷委員がおっしゃいました「種苗の流通の適正化」云々と申しますところは、その次に、第一条の目的で言いますと、原案では、どちらかと言えば、「指定種苗の表示に関する規制」「について定めることにより、種苗の流通の適正化と品種育成の振興を図り、」というふうにつながって読むべきかと思いますので、新たに第一条の中に「品種登録」のいわば形容句としまして、「新品種保護のための」ということが入ったことによって、「種苗の流通の適正化と品種育成の振興」というところへのつながりが大きく違ったというふうに、私自身は考えておりません。  ただ、これは私の解釈でございますから、衆議院修正の御趣旨がどういうところにあるかというところまで直接私伺っておりませんので……。
  266. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ、衆議院で附帯決議をしておりますよね、この中では、修正の趣旨の説明の中で、目的規定の中に新品種保護を明確にするためという字句をつけ加えたということと、それから、この附帯決議の中でも衆議院は「育成者保護を通じて優秀な新品種育成を図る」、こういうふうに附帯決議をしているんです。これで、「新品種保護」というのは「育成者保護」と相通じない別なことだというふうに考えなきゃならないんですか、どうなんです。
  267. 小島和義

    説明員小島和義君) 衆議院経過でございますから、私どもの方からちょっと経過をお答えを申し上げます。  この第一条の「(目的)」につきましては、いま丸谷先生がおっしゃいましたような育成者保護というふうな文言が全然出ておらぬということにつきまして、御質問の過程において再々御指摘があったわけでございます。政府側の答弁といたしましては、もとの表現をもちましてもそういう趣旨は十分にじみ出ておるつもりであるというお答えをいたしたわけでございますが、さらに明確にしたらどうかと、こういう御指摘がございまして、そういうことについては政府としても前向きで対処をすると、こういうお答えを政務次官から申し上げた経緯があるわけでございます。  なおまた、余談でございますが、そういうことと同時的に、ただいま問題になっております十二条の五の二項八号の規定につきましても、これは再々申し上げておりますように、卸売、小売というふうな二段構えの流通ということを念頭におきました場合、苗木の場合には必ずしもそうなっていないという御指摘もあるわけでございますが、二段構えという流通を考えました場合に、その卸売段階で許諾を得たものにつきまして、また小売がそっくりそのままのものを売るということでございますから、仮に許諾料を五円取るといたしました場合に、卸売段階で五円、小売段階で五円、二段構えで十円だと、こういうことにする方がいいのか、それとも卸売段階で許諾を与えるに当たって、仮に十円なら十円というものを許諾料として取れば、そっくりそのままのものを小売がまた売るということについて、重ねて許諾が要るというかっこうにしなくてもいいのではなかろうか。  私どもは、当初は解釈論としても十分そういうことは言えるのではなかろうかと思っておったわけでございますが、なかなか解釈論だけでそういうことにはまいらないだろうというふうなことで、明文の規定を整備した方がどうもいいのではないか、こういうことになったわけで、先ほど御指摘がありましたような、ある段階でそういうことが明文に入ってなかったということは、必ずしも小売段階で重ねて許諾が要るのだという前提で案を書いておったわけではないわけでございます。  しかし、そういうふうなことで、そっくりそのまま卸売段階で売られたものをまた小売で売るということが、この八号の規定上からはなかなかはっきり読みにくいというふうな御指摘もございまして、この八号の部分につきましても衆議院農林水産委員会で修正が行われまして、「その数を増加させることなく、」というふうな部分的な修正が行われておるわけでございます。それは、小売段階でも卸売段階でも、その数をふやすというふうなことは全然考えていないで、そっくりそのままのものを流通させるのだ、こういう前提で当初から考えておったわけでございますが、さらに一層明文上はっきりさせる、こういうふうなことも同時的に修正をされておりますので、目的の修正と内容的な修正、ほかにも修正部分がございますが、そういったものが一貫となって一つ衆議院における審議が完結をし、かつ、そのことが附帯決議においてもそのようなかっこうで表現された、経過はそういうことに承知をいたしております。
  268. 丸谷金保

    丸谷金保君 経過はその後の経過なんで、これが挿入された経過はやっぱりちっとも言っていないですよね。法制局に聞いても、どうもいまのところ、はっきりしません。  それと、それから大変大事なことなので、文言がどうだこうだと言っても、この附帯決議の中でも、二で「育成者保護の強化に伴い、許諾料及び種苗費が不当に値上がりすることのないよう適切な指導を行うこと。」。これを修正したというのは、育成者保護を強化するということを法文上明確にしたということなんですよ。そうでないですか。それを、新品種保護育成者保護とはあたかも全く別なもののような言い方を法制局の方でおっしゃいますけれども、私たちは、やっぱりこの院の決議とか、たとえば衆議院で修正すれば修正したものを尊重しなければならない。これは明らかにこの附帯決議でも明確にしているし、やっぱり「新品種保護」という一文を入れることによって、育成者がより保護されるだろうということは、もう当然の帰結として出てくるという判断のもとにわれわれはこの法律論議することになるんですが、政務次官いかがですか、ここは。衆議院の方ではっきりと、こう育成者保護を目的にしていると。
  269. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 法律を前のものを新しくするということは、結局、利用する者が利益になるようにやはり私はすべきである、こう考えます。したがって、この育成者が不利になるようなことはやっちゃいけないと考えます。したがって、そういう考え方に基づいて法の運営を図っていけばいいじゃないか、かように考えます。
  270. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、第一条に「新品種保護のための」と入れたことは、衆議院のこの附帯決議を見ると、育成者保護を強化した。だから、今度こういう条文を入れたんだから、これでさらに強化される、だから逆な面についての配慮はせい、こういうことだと思うんですが、法制局、もう一遍ひとつ、新品種保護育成者保護とは必ずしも違うという言い方は、私は納得できないのですがね。
  271. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  先ほどの私の答弁の仕方が不適当だったことをおわびいたしますが、私は、新品種保護ということがすなわち全部が育成者保護だけではないということを申し上げたいというつもりでそう申し上げましたが、その相当部分、むしろ大部分が育成者保護ということであるという点につきましては、丸谷委員のお説と同様の意見でございます。
  272. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうもありがとうございました。ようやく、何かこう……。  そういうことで、新しい修正をされた趣旨の大部分は、「新品種保護」ということには、育成者保護ということが関連してくるというのが附帯決議の案文を見ても明らかなところだと思うんです。そうしますと、そういう観点でこの八号の直し方というのは非常に何かすっきりしていないんですよ。やはりここで有償譲渡を受けた者は許諾なしにということ、これでいままでだって苗木屋さん、許諾を必要としていたってちゃんと商売やっていたんですから。年商百何十億というふうな人がたくさんいるわけですよ。やっていたんです。そうしなければ、どうして商売にならなくなるんですか、許諾を必要とするといういままでのとおりにしておいて。
  273. 小島和義

    説明員小島和義君) 従来の農産種苗法におきましても、一遍許諾を受けたものを小売が転売をするという場合におきまして重ねて小売段階で許諾が要るのかどうかということにつきましては、明文の規定がないままに解釈上ずいぶんあいまいであったわけでございます。  ただ、これは重ねて必要がないという立場に立ちますと、すでに卸売段階で許諾を得て、そういう名称をつけたものとして売っておるのをそっくりそのまま売るだけでありますから、重ねて名称使用という積極的な行為は何もないわけでありますから、重ねて許諾は要らないというふうな解釈も成り立ちますし、逆にその名前をつけて売る以上は、これは使用であるから重ねて許諾が要るのだという解釈も成り立つ。どちらの解釈も成り立つままに、実態はその辺が非常にあいまいなままに小売段階で重ねて許諾が要るというのは、一遍許諾を得た苗木についてまた許諾が要るというのはどうも不自然であるというままに、この何年間か過ぎてきたというふうな実態があるわけでございます。  今回は名称使用ということではなくて、有償譲渡ということを許諾にかからしめるということが十二条の五の第一項に書いてあるわけでございますから、そのこととの関係で言いますと、この手当てがなければ、明らかに小売は重ねて許諾が要るのではないかということがはっきりいたしているわけでございます。ですから、これは流通の実態によって違ってくるわけでありますが、そういう二段重ねの流通、しかもその間において物の増殖とか生産というふうなことは全然加わらない単純な流通ということを考えますと、二段階においてそれぞれ許諾が要るというのもどうも不合理なことではないかということにもなりまして、解釈上そういう必要がないという解釈が成り立てば、もちろん規定がなくても済ませ得たかと思いますが、いろいろ御相談いたしますと、そういう解釈はやはり成文上明確にした方がよろしいと、こういうことになりまして、ただいまの八号のような規定が入ったわけでございます。途中から急に考えを変えて、押し込んだというふうなことでは決してございません。
  274. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうもそうしますと、ますますちょっとおかしいと思うんですが、何年もやってきたんでしょう。その中で論議にならなかったんですか、こんな大事な問題が。そして、全部論議が終わっちゃってから初めて、これはやっぱり入れなきゃおかしいと。四月まで気がつかなかったということですか、何年間も。どうも私たちはますますそういう答弁をされるとおかしくなる。
  275. 小島和義

    説明員小島和義君) これは許諾にかからしめる事項といたしましては、一番問題点でありましたことは、先ほど先生からも御指摘がありましたような大規模の自家採種というものをどうするのか、これは一つの論点であったわけでございます。しかし、卸が許諾を必要とし、重ねてまた小売も同じものについて許諾を必要とするというふうなことにつきましては、実は余り検討会でも議論が出ておらないわけでございます。  と申しますのは、この辺の解釈につきまして当然それは二重重ねで要るという読み方もできますし、あるいは最初に許諾を得たわけでありますから、同じものについて二度と重ねてその許諾を得る必要がないという解釈も両方成り立つものでございますから、それぞれあるいはそう思い込んでおったというふうなことが正確かもしれませんが、その部分が特に抜き出されて、どうあらねばならぬということが論議されたという経過は実はないわけでございます。法制局段階におきまして初めてその辺が具体的に詰められた、こういうふうな経過でございます。
  276. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、こんな想定されること、これはもうたくさんあるんですよ。私は、いまの説明でどうも納得できないんですがね。これが入ってきた、こんな大事な法律をわれわれからひた隠しに隠してきて、突如として出たというふうにしか考えられないんです、苗木屋さんのために有利な法案というものは。ずっと論議の中で、最後のときにも世間に流布されているのは一月案ですよね。一月案でああだこうだ、ああだこうだという議論がなされて、これは農林省は、内部検討資料といったって、もうこれは何ぼでも出ていますよ。そして、それでもって一般的な世論とかいろいろなものが行われてきたんです。そして、四月になってこんな、本当にこの法律そのものを根底からおかしくしてしまうような、ざる法になるような条文が入ってきた。その理由が納得されないままに、何かそこのところをあれしないで、こっちとこっちだけ説明していて、ずばりと出てこない。法制局の説明を聞いても、出ないんです。  しかし、まあこのことについては、もう少し答弁考えておいてください、何かちゃんと書いて、さっとわかるように。どうして出てきたかということだけでいいんですから。一体だれが発議したか。これはだれかが発議したんだと思うんですよ、突如として。だれが発議して、どういう経緯でここへ入れたかという——内部の部局の中でやったと思うんですよ、これを入れるからには。それは、恐らくおたくの方に記録があるでしょう。何月何日に局議を開いて、いままでのこういうやつを今度その中へこれを入れるということにだれかが発議して、それがいいだろうというふうなことになって、それじゃそれは印刷して入れろと。その次の局議でそれはどういう検討をしたと、こういうことは恐らく記録としてはできているでしょう。そういうものはずっととってあるでしょう。
  277. 小島和義

    説明員小島和義君) 法案中身の整備の過程におきまして、一々局議という形式は必ずしもとっておらないわけでございますが、私を中心といたしまして担当の参事官ほかの者が、法制局を中心にしましていろいろ議論を重ねておるわけでございます。その段階におきまして法制局から提起された問題、わが方から提起した問題、いろいろ意見を出し合いましてよりよい法律をつくる、こういう作業でございますので、その間の、だれがどういう発言をしたというふうな経緯は一々はメモにとっておりませんが、いつごろからそういうことが問題になってきたということは、経過をさかのぼればこれははっきりいたしますが、メモという形で日誌風に記録をとっておるわけでは決してございません。
  278. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは後刻のまた答弁の中で、これは資料要求というものとは違うと思いますので、ひとつしっかり調べて、腹に入るように次回答弁してください。  それから、こういう問題たくさんまだあるので、いろいろな問題が私のところへも来ている。要するに、有償であれば許諾が要らなくなるということですね、いまこういうふうなあれが行われようとしているんです。これはタモトユリというものがございます。これは北海道のあれですが、これは一球いま二万円も三万円もするという大変貴重な新品種なんです。このタモトユリ、御存じですか。これは一九七五年、このときになくなりかけて、ある種苗会社がいま持っているんです。ところが、この法律が通りますと、うっかりするとこの種苗会社はもうけ損う、この条文があるから。これはもろ刃の剣ですわね、そういう点では。そういう面もあるんです。種苗会社にしたって、逆に言うと、いい物を持っている、新品種を持っている。これは譲り受けて、ある種苗会社の権利になっているんですからね。今度はそれをその種苗会社が売ると、へたすると今度は、ああいい物だからやるなんて言ってどんどんあれすると、価値がいま一球二万円もするやつがそうでなくなっちゃう。こういう危険性があるんです。  そこで、これを考えたのは、本人の許諾が要らないということが明定されますので、今度はそれを有償で買って、もうそこしかないその種苗会社は、このタモトユリの育種者には相談しなくても、これは一反歩二万から六万くらいの球根ができるんですが、一気につくって、許諾を必要としないで、何万という球根を一遍に売るんです。いまもう準備しているんですから、これが出る。そうすると、そこでわっと一遍に何億ともうけちゃうんですよ。そうすると、あとはこの法律では守られないから、そういう商売をやるよりしょうがないということで、実はこういう可能性が出てきているんです。種苗会社でもいいの持っていても、自分のとこだけで守れないから、それだったら一遍にわっと売っちゃうと。許諾を必要としないから、育種者に相談することないということでですね。あとはもうどんなにふえようと一勝負だと、こういうことが出てくる可能性があるんです。あえてまだ可能性と言っておきましょう。そういうことがある。  それから、もっとひどいのになると、ランの種苗ですが、寒天培養できることは御存じですね。これで、あるこれはランの種類なんですが、やはり同じようなことを考えて一遍にやっちゃうと。こういうやっぱり業界の中における準備も進んでいる。ということは、これはこの法律によって、要するにこつこつとやってきた育成者保護もできなくなると同時に、育成者から買って持っている権利も、自分のところのやつも一気にやらなきゃ守られなくなると、こういう逆に反対の角度からのあれなんです。そうすると、これは今度買った連中はどうなるかというんですよ。一球二万も三万もすると思うから、農家の人は飛びついて買うんです。それを今度は売ろうと思ったときには、大暴落するに決まっているんです。こういうことで、今度はあおりは、この条項の案文があることによって、最後にやっぱり泣くのは農民なんです、きっと。こういうことが起こるんです。想定できませんか。
  279. 小島和義

    説明員小島和義君) 現行の農産種苗法は、御指摘のように、登録を与えられますケースというのも非常に限られておりますし、また登録をした場合におきましても、その有効期間というのは、三年から十年の間で資材審議会が決めることになっておりますが、従来の運用の実態というのは、大体五年ぐらいという非常に短いものとして運用されております。したがって、登録者がその地位を保全しようと思いましても、その期間が過ぎてしまえばもはやその保護は及ばないと、こういう問題がございまして、御指摘のように、現物を大量に一遍で売るというふうなかっこうで費用を回収するというふうなことを考えるということはあり得ることだと思います。  ただ、お話のございましたようなケース、これは小売段階でそういう増殖をいたしまして、それで一遍に大量に売るということになりますれば、十二条の五の一項に入ってまいりまして、一号または二号あるいは三号というふうな規定によりまして、登録者本人の許諾が要るということは、登録が有効であります間は当然のことになるわけでございまして、たとえばランの成長転売業というふうな場合におきましても、これは十二条の五の一項二号でございますが、そういう場合には、この植物体を「繁殖させて得られる植物体の全部又は一部」、つまり、仕上がったランの形になったものについても登録者の許諾が及ぶというふうに、今後はいたしておるわけでございます。ですから、御指摘のような事態は、今度の法律が通りました暁におきます新法の運用といたしましては、十五年の登録有効期間内は押さえられる、こういうふうに私ども考えております。従来の問題といたしましては、期間も短うございましたし、そういうふうな事例が起こり得るかと思います。
  280. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、この法律につきましては、私たちもこれは許諾の問題、いろんなことから大変これは困ることが起きてくる可能性があると、この条文何とかならぬかなといまでも思っておりますけれども、思っていても、これが発効した場合に、こぼしてばっかりもいられませんから、それじゃどうしたらいいか、これはやっぱり真剣に考えたのです。  それで実はお伺いするのですが、無償貸与はいいですわね。無償貸与は許諾を必要としないで行われますわね、まず第一義的にも。それから増殖もできます。そこで、これを売るから、あと許諾を必要としないで売られたり何かするようなものができてくるんで、売らなきゃいいんだなと。しかし、育種者の人が売らなきゃ、やっぱり経済的には困るわけです。ですからリースでやろうと、こういう意見が実は出てきております。貸し付ける場合には、この法から言って別に差しつかえございませんですね。
  281. 小島和義

    説明員小島和義君) 御指摘のケースが育種者、つまりその新品種育成した本人であります場合には、それを売りましょうと、あるいは無償で譲渡いたしましょうと、あるいはだれかに貸すという形をとりましょうと、育種者本人が登録者本人であります限りにおいては、この法律の問題というのは余り出てこないと思います。
  282. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、結局、貸し付けをして貸付料を取ると、この場合には貸しているんだから、これは転売はできませんわね。それはできないことになると思うのです。それで、新しい品種をつくった育種者が、もう売るのはやめたと、貸し付けをしようということで特定な人にだけ貸し付けると、こういうふうなことが行われる。もう現に行われているんです、長野県でも。行うというか、計画がある。私は相談受けたんですから、それ。どうだと言うから、いや、私たちはやっていますよと、自分で守らなければならぬから、これは町という一つの自治体として、うちは清見一号とか二号とかという新しい品種登録にも出さぬし、登録に出したら裁定という問題が出てきますから、登録しなきゃいいんだということになるわけです。  問題は、登録をしないで、これはいいんだということを別に自分たちで確認し合って、貸し付けにしていくと。これが一番いい方法で、丸谷方式ということで、日本種苗リース協会というのをつくって、財団法人にしてひとつやろうじゃないかと、具体的にもう何人かで相談が始まっているんです。真剣に育種する人、恐らく倉本先生なんかも入っておられるだろうと思うんですよ。みんな一生懸命いままでやってきて報われなかった。この法律でまたさらにこれじゃ大変だというもので、しかしそれを自分たちの周りからよそへ出さないということ、独禁法の関係いかがでしょうか、ひっかかりませんか。それだけいま心配なんです。
  283. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) 事案の内容が私よくわからないところがございますが、一般論として申し上げますと、公正かつ自由な競争を促進するという独禁法の目的からいたしますと、相手方の事業活動を拘束するようなやり方は、独禁法の趣旨から見ますとどうもよくないのじゃないかというようなことになるわけでございますが、ただ、形といたしまして、相手方の事業活動を拘束いたしましてもうまいぐあいに競争が保たれるということになれば、その場合には独禁法上特に問題となるということがないわけでございます。  この事案に即して申しますと、特定の品種のものが代替品があるかどうかというような市場の状況でございますが、そういうような状況から判断しなければならないという面がございます。そういう意味から、実態がどの程度の競争があるかという、そういうような実態を把握した上でないと、個別的な問題としてはちょっといまのところではお答えいたしかねるところでございます。
  284. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはそうすると、実態ということになると、いま考えていることを言いますと、ブドウの場合、これは大手も含めて考え出しているようですけれども、新しい種苗が、苗木ができます。これは枝を取っていけばふやせるわけです。ですから、ふやせますから、売ってしまうと今度は無償譲渡と称して、この法律ですとばらまかれる危険性が一方にあるんですよ。ですから、貸し付けていれば、所有権はこっちにあるわけだからよそへやるわけにいかないということで、そのかわりそこからなった果実は全部出してやったところで買いましょう、こういう場合にどうですか。他にかわるものがあるというのは、たとえばリンゴならリンゴ、ブドウならブドウ、そういうもので他にかわるものがあればいいというのか、特殊な品種そのもので他にかわるものがあればいいというのか、そこのところをひとつ。
  285. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) ただいま先生が例に挙げられましたブドウのケースでございますが、ブドウにもいろいろ品種があろうかと思いますが、この場合の品種が他に代替できないようなものであるかどうかということが、一つのポイントになろうかと思います。ブドウをそのまま食べる場合とか、あるいはブドウ酒にする場合とか、いろいろなケースがあろうかと思いますので、その場合、そのブドウがほかのもので代替できないかどうか、いわゆる一つの何といいますか、商品群としてお互いに競争ができるような状態にあるかどうかというような観点から判断されることになるわけでございます。たまたま新しい品種ができても、それに従来から同じようなものがあったというようなことであるならば、いま先生がおっしゃいましたような買い戻し条件といいますか、ちょっと買い戻し条件に直接にはならないと思いますが、そういうようなとれた果実を買い戻すというような条件、一種の拘束するような条件でございますが、そういう条件をつけても独禁法上問題にならない場合もあろうかと思います。
  286. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、そういう条件をつけないで、できた果実はどこに売ってもいいという場合なら独禁法はひっかかりませんか。
  287. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) お答えいたします。  その場合は、独禁法上特に問題になることはございません。
  288. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、まだあるんです、考えられる大変なことが。そうすると、結局いま考えられる幾つかのいろんな問題が、この八号があるために知恵をしぼらなきゃならないところにわれわれが追い込まれておるわけなんです、逆に言うと。そしてまた、いろんな問題があるということは御理解いただけましたですね。皆様の方で想像もしなかったようなことが、この許諾、それから有償譲渡の許諾は要らないんだというこのことによって起こるし、無償譲渡は制限がない、何かのチェックをしなければえらい大変なことが起こるというふうなことで問題が起こる。これは、関税定率法の関係とも実は関連してくるわけでございます。関税定率法の二十一条の一項の四号をお開きいただきたいと思いますが、これは午前中のあれと関連してくるんです。特許権であるとか実用新案権、いわゆる私が午前中に申し上げた無体財産権に属するものにつきましては、これらを侵害する物品の輸入は禁止されておりますね。  しかし、今度この種苗法ではこれは無体財産権でないということになりますから禁止されませんわね。禁止されないんです。そうしますと、たとえばシイタケの菌をこの中へ登録します。これを、菌を輸出する、まあ韓国でも台湾でも。そうして、それで向こうでつくってこちらへ輸入してきた場合に、この禁止規定には当たらないということになりますわね。そうすると、何ぼでも入ってくるということになりますよ、そういう形で。私がいま、たとえばシイタケの菌を——これは余りワインのことばっかり言っちゃ悪いから、ほかのことを言わなきゃならぬと思ってシイタケの話をするんですが、これは一体、こういう形で新品種を発見したものだけれども無体財産権でないもので関税定率法の中で防がなければ、何で防ぎますか。
  289. 小島和義

    説明員小島和義君) これはまあこの法律の全体的な仕組みでございますが、種苗の流通段階にしか原則としてその許諾の権利は及ばない、こういう仕掛けになっておりますので、国内的にも農業生産者段階におきまして、購入の種苗をもとにいたしまして増殖ないしは生産を行いまして、その農産物を販売するという行為につきましては登録者の権利が及ばないという仕掛けになっておるわけでございます。したがいまして、海外との関係におきましても、海外からその登録者の育成をいたしました品種の種苗を輸入するということになりますれば、十二条の五の一項の規定によりまして輸入自体を抑える、許諾を受けてないでやるということで差しとめ請求の適用になるわけでございますが、農産物ということになってしまいますと、つまり製品段階になってしまいますと、国内はもちろん海外につきましても差しとめは及ばない、こういう法律になっておるわけでございます。
  290. 丸谷金保

    丸谷金保君 結局、この場合に差しとめ請求権は及ばないと、ところが特許法ならこれはできるんですよね。  そこで、特許庁長官、また戻るんですが、それだから特許法の中における植物品種というのをきちんと残しておいてもらわないと困るんです。こういうざる法になっていくんです、これ。もうすでに商社がこれは組織的にこういうことをやるということを考えているのが出てきているんです、もう法律もできないうちからですよ。だから、こういう至るところに、何といいますか、あると。   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕 それはなぜかというと、午前中に申し上げた、もっとはっきりした新品種登録制度権利として守れる、いわゆる無体財産権的なものできちっと位置づけるというアメリカその他の国、あるいは育種者を徹底的に保護するというUPOVのいまの条約の趣旨、こういうものをきちっとやっておかないで、八号あたりをこのままにしておくとえらいひどい目に遭う農民もできてくるんでないか、こう思うんですが、その点どうなんですか。大丈夫ですか。
  291. 小島和義

    説明員小島和義君) いま御指摘の問題は、確かにこういう農産種苗の世界、これは海外の条約を含めましてそういう問題があるわけでございますが、新しい品種育成した人に対する保護と、農業生産が通常は自家採種、自己増殖という形で農産物を販売していくという農業の通常の姿というものをいかに調整をとるか、こういう趣旨で制度ができております。  したがいまして、もし無体財産権という構成をとったにいたしましても、その権利の及ぶ範囲は農業生産活動には及ばない、その種苗を使って農産物を生産販売する行為には及ばないという立法形式になるだろうと思いますし、私ども経過的に二、三年前まで考えておりました無体財産権という構成をとりました法律におきましても、農産物にはその権利者の権利は及ばない、こういう構成をとっておるわけでございます。これは、世界各国とも、特許法の特例ないしは新品種保護権というふうな構成をとりました国におきましても、条約加盟国の場合には通常の農業生産にはその権利を及ぼさない、こういうふうな形をとっておりますので、非常に大事な論点ではございますが、無体財産権であるかないかということによって、そこが違ってくるというものではないわけでございます。
  292. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうもこの八号の問題については釈然としないんですけれども、これにだけかかってもいられませんので、何とかこれはならないかというのはまた後の問題にして、私の方もこれについてはこういうふうにでもできたらというふうなことはありますけれども、これはもう少しやっていかないと、せっかく御苦労してつくった法律ですからとも考えるんですけれども、読めば読むほど、時間がたてばたつほどいろんな問題点が出てくる。いまも申し上げましたように、五十三年の一月に出した、そして三月まで検討したものと違うという問題も、全部要するにこの八号にかかってくるわけですから、それはひとつ十分にあれしていただくことに、さらに調査した上で御答弁いただくということにして、先に進ませていただきたいと思います。  それから、いま関税定率法の問題が出ましたのでそれらの方を先にひとつやってしまいたいと思いますが、あわせてこの国税庁の間税部、この品種登録制度が行われますと、いまのうちはまだいいんです。しかし、私たちが大蔵委員会等で強く酒の基準を厳しくしていけということを要請し、前回の酒税法の改正のときにも附帯決議の中で、その点は厳しく正していくようにというふうに議決いたしました。それらを踏まえますと、結局ワインなんかの場合にはアペレーション・コントローレの問題が出てくるんです。そのときに、将来この品種登録がしていないとそれはうまくないというふうなことにつながらないかどうか。
  293. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) お答え申し上げます。  先生御専門でございますので釈迦に説法になろうかと思いますが、フランスの場合には一九三五年にアペラシオン・ドリジーヌ・コントローレというような、いわば原産地呼称統制法というのができまして、フランスのワインにつきまして、原産地とか、あるいはブドウ品種名とか製造法、栽培法、それから収穫制限、それから表示制限といったようなことをいろいろ規制してこのワインの格づけをやるというようなことで、現在EC諸国でもだんだん採用されようというような動きにあるわけでございますが、日本におきましては、この表示の問題につきましては酒団法でございますか、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律というものの中で規定されておりますと同時に、食品衛生法あるいは不当景品類及び不当表示防止法、こういうようないろいろな法律によって、どういうふうな表示をするかということにつきまして決められておりますことについては、御案内のとおりでございますが、このうちの国税庁の所管しておりますいわゆる酒団法の中では、八十六条の五で表示義務がございまして、製造者の氏名とか、製造場、所在地、容器、容量、それから酒類の種類、品目、級別、アルコール分、エキス分、税率区分といったようなことにつきまして規定してございまして、これはあくまでも酒税の保全というような見地から必要最小限度のものを決めておるというのが実態でございます。  したがいまして、いま先生の御質問のございましたような事項につきまして、このような酒団法に恐らく規定されるということは現在はしておりませんし、今後も恐らくないのではないかというふうに思うわけでございます。現在時点においては、少なくとも私どもはそういうふうに考えております。ただ、呼称法の問題につきましては、これは景表法の問題としてむしろ公正取引委員会の所掌事項に属する問題でございまして、そこの点につきましては、今後の公取との問題に相なろうかというふうに思うわけでございます。  以上でございます。
  294. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは私の方で聞くのもちょっと本当は筋違いかと思うんですが、私たちがそういうふうにやれと言っているわけなんですよね。まだ大蔵の方ではなかなかそこまではやれないと。やれと言っている私たちが、そうなったときにそこで自分で心配するのはちょっと逆なんですがね、そういうふうにすべきだと。しかしそうすると、結局は日本もヨーロッパのように、そういう産地あるいは品種名、これらを表示するようなことが義務づけられてくると思います。いや、思いますじゃなくて、そういうふうにしていかないといけないと思うんです。  ただ、そのときに、この法律関係ないんだと。というのは、フランスでは非常に関係あるんです。植物特許、それからあすこは特許法でなくて登録法だったと思いますが、もう非常に厳しいあれで、それらのきちんとした登録を受けて、きちんとしたものでないとそういうふうに書かせないんです。そのかわり、フランスの登録法の場合には、もっとはっきり育種者保護というふうなことが前面に出ている。それがやれとわれわれ言っていながらそれでやることになる。いまのこの日本法律では守られないから登録しないでいこう、これはとってもじゃないけれど登録しない方がいいということに、大体民間育種者の中でのこの二、三日の空気は、そういうふうなことに何人か集まった中でなってきておるんです。これはブドウだけじゃない。  それで、特に一つお約束しておいていただきたいのは、フランスのような新品種登録というふうなことは入らないということについて、どうもちょっと、これはっきり言うと悪いことなんだけれども、御答弁いただいておきたいと思うんですが。
  295. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 原材料の表示とか原産地の問題でございますが、一般にある商品の原料ないし産地というものは、種々のところで使用されておる、あるいは種々のものが使用されておるということで、それが商品の品質とか、あるいは機能に結びついておるといったような場合には、当然原材料の表示というのは行うべき方向でいくのだろうと思います。  ただ、現状について申し上げますと、これも先生、いまさら申し上げるまでもないことでございますが、わが国のワインにつきましては、現在公正競争規約とか自主基準というそういう段階にまで至っておりませんで、公正取引委員会中心といたしまして、昨年の四月ワイン業界に対して内容表示の適正化をもっとしろというような御指導がございまして、現在業界の方でもそういう方向で検討しておるというのが現段階でございます。  したがいまして、現段階では、ワインのこういう問題の表示についてどういうふうにいくのだろうかということは、何とも申し上げられる段階に至っておらないわけでございますが、今後ワインの表示に関する規制がどういうふうに行われていくのかという問題とも関連いたしますので、御指摘の問題につきましても、そういうものと相まって研究さしていただきたいというふうに思うのでございますが、ただ日本とフランスでは経済、社会の環境も相当異なりますし、そういうような考え、相当のバルクというものが実は入っておりまして、そういうものの導入が直ちにできるかどうかということについても、やはりいろいろ慎重な検討が必要ではないかというふうに思うわけでございまして、大変失礼な言い方でございますが、今後の慎重な研究課題というようなことになろうかと思うわけでございます。本来、これは公正取引委員会の方でお答えされることだろうと思いますが、国税庁の方としてはそういうふうに考えておるわけでございます。
  296. 丸谷金保

    丸谷金保君 公取からはおいでになっておりましたですね。
  297. 山内一郎

    ○理事(山内一郎君) 来ております。
  298. 丸谷金保

    丸谷金保君 国税庁ほどに、業界見通しとか、そういうことになると御質問しても無理かと思うんですが、表示義務の中でこの法律によるところの品種登録というのが、いわゆる公取が考えている表示義務というふうなものとどこかでクロスしていくかどうか、交流していくかどうかというふうなことについてのお考えはいかがですか。
  299. 樋口嘉重

    説明員(樋口嘉重君) お答えいたします。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕  表示の規制は、一般的に私ども不当景品類及び不当表示防止法に基づいて行うということになっておりまして、景品表示法の第四条で不当表示の禁止を規定しているところでございますが、第四条の規定によりますと、これは一般消費者を誤認させるようなそういうようなものは表示はしちゃいけないというようなことになっているわけでございます。  ただいま、こういう苗なんかについて見てみますと、その取引の実態私よくわかりませんけれども、仮に相手方、需要者に対しての表示だということになりますと、景品表示法で規制するということについては非常にむずかしい問題ではなかろうかと、こう思っております。  それから、質問の御趣旨とあるいは違うかもしれませんが、ただいま国税庁の方から御説明ございましたように、ワインについて申し上げますと、でき上がったものについて、その原材料なり原産地をどういうふうに表示させるかということにつきましては、ただいま御説明ございましたように、景品表示法第十条に基づきまして公正競争規約をつくるように業界に対して指導しているところでございます。ただ、原産地の表示につきましては、ほかの商品についてもそうでございますが、非常に現在のところむずかしい問題をいろいろ含んでおります。それは先生よく御承知のことではないかと思います。バルクで輸入して詰めたところを原産地とするのか、あるいは醸造したところを原産地とするのか、ブドウがとれたところを原産地とするのか、そういうようなところで非常にむずかしい問題があるということで、いま業界で検討しているところじゃないかと思います。
  300. 丸谷金保

    丸谷金保君 国税庁、それから公取の関係につきましては、一応そのことを、これを登録をしないで、しかも品種の名前を出していくということが可能だという考え方のもとに対処してまいりたいと思いますので、一応いまの御答弁で結構でございます。  で、外国との交流の問題がいま出てまいりましたので、ちょっと取り消し権者の問題でございますけれども、その前に、非常に先ほどからのことと同じような点で疑点を持つ、たとえば、これは五十一年ですか、ローリン氏と言いましたかね、アメリカからだれか来たときに、先ほど申し上げましたアメリカの方に出したのをずっと見ますと、全部法的には権利という用語で出ているんです。これの原文はないんですか。これの訳を頼んだ人は、これは日本語を英訳したんだ、英語でできたものでないと、こう言うんですがね。
  301. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 先生おっしゃいますように、アメリカ文の原文というものはございません。たまたま、そのアメリカローリン氏が五十一年にこちらへ来られましてUPOV同盟の問題について日本政府と非公式な話し合いをするというようなことで、そのときにわが方から、一つの討論の材料といたしまして原案の日本文アメリカ大使館に提示をいたしまして、英文への翻訳はアメリカ大使館で行われたということでございます。これはあくまで非公式なテキストということで、当然これは変わることあるべしということを冒頭で最初に断りながら相手方に出した。したがいまして、細部にわたってはちょっと表現の不適当な点があるかもしれませんが、いずれにしても、当方の原案を大使館で訳したということになっておるわけでございます。
  302. 丸谷金保

    丸谷金保君 今回の法案の提案の中で、強く外国との交流の問題を非常に急ぐというようなことがございますんですが、いま外務省、あと十分ぐらいで来られると言うので、ちょっと同じことの前後いたしますが、これがそういうことで外国との間に非常に交流が深まったと、UPOVにも加盟するというようになった場合を想定してあれたので、前後いたしますが、本当は外務省から聞いてからと思ったんですが、逆にひとつ質問を進めます。  そうしますと、皆さんがうたい文句にしているように、外国からもいい品種がどんどん入ってくるというふうなことをし、こちらからも出せると、そういうことの協定に入るためにもこの法律を急ぐんだと、こういうことでございますね。
  303. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) そのとおりでございます。
  304. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで、外国からどんどんそういういい品種、いい苗、そういうものが入ってまいりますと、これは種の場合はまた別かと思いますが、植物防疫の問題がひっかかってまいります。  実は、いまでもなかなか植物防疫というのは大変なんです。たくさん苗木を入れられないで、大変日本の各界が苦労している。このことについては農林大臣に大変私たちはお世話になって、北海道に支所をつくっていただいたときには、これは大臣じゃなかったですが、ここで何か言うのはあれですが、七、八年前に大変御協力いただいたことがあるんです。というのは、やはりそういう体制が非常に悪いということなんです。それだけはそういうことで一つ北海道にできましたけれども、これは鹿児島から沖繩から、暖かいところ寒いところずっとあるんで、われわれの方は寒い方の地域に一カ所ふやしてもらったのでいいんですが、今度は必ずしもそういうことにはならないと思うんです。これらの植防の体制を強化しておかないでこれだけやっても絵にかいたもちになるんですよ、外国から物が入ってくることになると。この点はいかがですか。
  305. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 先生がおっしゃいますように、現在でも相当数いろいろ種苗として入っているわけでございますが、輸入の種苗類につきまして植物防疫法の規定によって検疫をやっているわけでございまして、特に果樹苗木等につきましては、ウイルス病の侵入を防止するため一定の期間隔離圃場で検査をする。そこで植物防疫所またはその植物防疫所の指定する圃場に隔離をすると、そういう制度になっておるわけでございます。新品種保護制度によってそういう輸入類もふえるとは思いますが、いまのところはいまの体制で対応し得るというふうに考えておるわけでございますが、非常に人数が不足するような場合は近辺の植物防疫所から応援体制をとると、そういうようなことで発足をしたいと思っておるわけでございますが、将来の問題といたしましては、また徐々に職員の拡充ということも考えてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  306. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうもお言葉を返すようなんですが、局長さんよくおわかりになってないと思うんです。植物防疫のあれというのは、神奈川県に一カ所と北海道に分場ができただけなんです、隔離圃場というのは。これは近辺から応援に来るといっても、限られた面積の中で一定量よりもそこへ入れられないんですよ、いま。だから、物が入ってきたら人が行って応援すればいいということにならないんです。その点の認識いかがなんですか。だから、ぼくはこの法律だけつくったって、そっちの方をやってないんなら本気でやるのかなという気がするんです。
  307. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) いま申し上げましたのは、輸入港である京浜、それから大阪、神戸、そういうところでの防疫の、何といいますか、人が不足した場合に応援体制で近所から駆けつけると、そういうお話を申し上げましたので、隔離圃場につきましては現在大和、札幌、明石、那覇と、四カ所あるわけでございます。それで、全部で種苗の関係の検疫官が三十二名おりますが、そのうち隔離検疫を担当しているのが十三名ということで、札幌支所では二人ということになっておりますが、われわれとしましては、当初はこういうところで一応は対応できるのではないかと思いますが、先ほど申し上げましたように、またこの拡充に努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  308. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は、北海道の方にふやしたときうれしくてそのことだけ覚えているのですが、その後そうするとふえているのですか。大和というのは神奈川県のあれじゃないですか。そうすると、どことどことふえたんですか、何かいま四カ所と言ったようですけれども
  309. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 大和で、これは神奈川県でございますが、五人でございます。それから札幌が二人、明石が四人、兵庫県です。
  310. 丸谷金保

    丸谷金保君 それがふえたんですね。
  311. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) それから沖繩の那覇、二人でございます。
  312. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは圃場の面積も小さいし、それからいま言ったくらいな人数では、せっかくいいのをこの法律つくって入れるったって、とてもやれないんですよ。これは検疫やるのの応援というようなことにはいかないんです、ずっとついていなきゃならないんですから。ひとつそういう点の拡充、幸い植物防疫については大変理解の深い大臣ですから、大臣ひとつそういう点について、もっと有効に、苗木を余りよけい入れてきたから横浜でもって燃しちゃうなんというようなことでおどかすことのないように、体制のとれるようにお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  313. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 今度こういう種苗法改正もやって、種苗を大事にするという時期でもありますから、前向きでひとつ力を入れていきたいと存じます。
  314. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで大臣にお伺いいたしますが、過般の衆議院で、最終日のまだ記録ができてきていないんですけれども、最終の、大臣が帰ってきてからの答弁の記録だけがまだでき上がっていないので、三十一日まであるんですけれども、その中で取り消し請求権、要するに取り消し権については大臣が取り消しをするということにこの法律でなっているわけなんです。これは、第三者がこれに対して直接的に取り消しを請求する権利がないと、こういう状態でございますので、結局大臣がやらなきゃならない。そうすると、大臣のところでなかなかやらないために農民が非常に損をすると、こういうふうな場合には責任を持ってひとつ善処するというふうなことを御答弁なすったので安心だという話を聞いたんですが、そういうことございましたですか。
  315. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) ちょっと私から先に答弁さしていただきますが、品種登録の取り消しにつきまして、今回の改正法では登録要件を満たしていないのに品種登録がされた場合、これは取り消し得るということになっておるわけでございますが、この場合は行政不服審査法に基づく異議の申し立て、あるいは行政事件訴訟法に基づく訴訟を提起することができることになるわけでございます。それからまた、登録品種の特性が登録当時と異なった場合、この場合には大臣が品種登録を取り消すことになっているわけでございますが、この取り消しの運用に当たりまして、いま先生がおっしゃいましたように、第三者からの登録品種の特性の保持に関する申し立ての道を開くと、そういう方法で適正な運用を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  316. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) いま言いました第三者からの特性の保持に関する情報の提供は、この取り消しの適正な運用のために役立つものと考えられますので、第三者からの登録品種の特性の保持に関する情報提供の道を省令で制度上決めていくと、こういう道を考えて適正を期していきたいと、こういうことでございます。
  317. 丸谷金保

    丸谷金保君 これはどうも政令委任事項、省令委任事項というふうなものが、これは何もこの法律だけではなく、この前からずっと審議さしてもらっている農林省の各種予算について非常に最近多くなってきているのじゃないかという感を実は深くしておったんです、かねがね。これも今度政令で決めていくということになると、結局はそれは大臣の責任において取り消しその他がなされると。通報するといっても、それは情報提供だけであって申し立てでないですから、それは大臣がやらなきゃならぬことになるのですよね。それで、損害を及ぼした場合の損害については、やはり国の方で責任を持つことになりますか、もしも取り消しをしないでいて。
  318. 小島和義

    説明員小島和義君) 恐らくお尋ねは、国家賠償法の問題としてそういう取り消しをすべき事態であるにもかかわらずやらない場合にどうかと、こういうお話であろうと思います。国家賠償法の規定によりますと、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたとき」、これは国が損害の責めに任ずると、こういうことを書いておるわけで、すべてのケースがこれに該当するかどうかということになりますと、これはケースによっていろいろあろうかと思います。本件の場合、これは作為によって損害を加えるというよりは、不作為ないしは行為の遅滞と申しますか、そういうふうなことでありますので、そのケースによりまして該当するかどうかはまちまちであろうと思います。  ただ、政府が当然取り消しをすべきにもかかわらずその取り消しをしなかったということになって、それが第三者の損害を巻き起こすということになりますと、これはゆゆしい事態でございますので、政府といたしましては最大限の努力をいたしましてそういうことがないような行政的な責任を果たすと、こういうつもりでおるわけでございます。
  319. 丸谷金保

    丸谷金保君 第十二条の十について、私はそういう国家賠償というふうなものの前に、要するに国家賠償をやるためには行政不服審判とかそういうふうなものが前提になってまいりますわね。ところが、これの適格者の条件に、私の言う第三者というのは、やってしまってえらい損害を受けた第三者を言っているんじゃないんです。こういう品種登録をしたけれどもあれはおかしいじゃないかと言って、第三者がこれに対して異議の申し立てをする道がないということを言っているんです。どこかこの条文の中でできますか、それ。
  320. 小島和義

    説明員小島和義君) これはちょっと意味を取り違えて失礼をいたしましたが、登録時におきまして登録それ自体について異議ありということになりますと、行政不服申し立ての一般法であります行政不服審査法あるいは行政事件訴訟法というふうな一般法がございますので、その法律の条項によりまして異議のあるものは争い得ると、こういうことになっておるわけでございます。この法律自体の中でそういういわば争訟の道を特別設けなかったということにつきましては、これはそういう不服の申し立てというのはどの程度件数が出てくるものであるか、あるいはその争いの内容というのはどの程度専用分化した問題であるかということによりまして、立法政策的に判断すべき問題であろうと思いますが、従来のこの法律の運用の実績などにかんがみますと、特別な争訟の規定を設けるという必要はないということで、一般法によることにいたしておるわけでございます。
  321. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっとどうも私の質問の方が悪いのかと思いますが、私の申し上げていることは、実はそういうふうな問題については衆議院で五月三十日に、松沢議員の質問に対しまして野崎政府委員から、不服審判、行政事件訴訟法というふうなもので救済するということは答弁があったんです。三十日、ちょうど松沢さんがやったときに、私はあれを傍聴しておりましたから聞いておりました。だけれども、私それでこう思ったんですが、そういう場合は登録がなされてからなんでしょう。だから、登録してはっきりするまでの間は、この法律にはなじまないんですよ。  これは登録にまだなってないと、間ありますわね、期間が。このときに、あれはだめなんだぞと第三者が言わないと、登録になったわ、わあっと種は配られたわ、真っすぐなキュウリができると思ったらこんな曲がったのしかできなかったと。それからはできるんですよ。そうでなくて、もうあんなものは本当はうそなんだということが、第三者はこれじゃできないんです。だから、十二条の十の中にそういう道をあけておかないと、農家がえらいそれで泣きを見るようなことが起こるのではないかということなんです。
  322. 小島和義

    説明員小島和義君) 事前の、つまり登録以前に利害関係人から意見を申し述べるという機会を与えよと、こういう御趣旨に承ったわけでありますが、衆議院のその審議段階におきましては、従来もその登録に当たりまして事前にその内容を公表いたしまして、第三者が意見を言うチャンスを与えるというふうなことを運用としてはやってまいったわけでございます。  改正法におきましても、そういう運用を続ける意向であるということを赤保谷参事官からお答えを申し上げたように記憶をいたしておりますが、その後また省内でいろいろ検討いたしました結果、単なる運用ということではなくて、この法律には、先ほど御指摘がありましたように登録の手続等について実施のための省令を定めることができるという委任規定がございます。その省令の中で、登録を行う以前に公告縦覧というふうなかっこう意見開陳の機会を与えると、こういうふうなことを考えたらどうかと、ただいまそういうふうに思っておるわけでございます。
  323. 丸谷金保

    丸谷金保君 公告するといいましても、法律で明定してないと、どういう公告をするつもりなんですか。周知させるための方法です。これは特許法ですとありますわね、きちんと。しかし、この法律からはそういうものはうかがえないんですよ。どういう方法でおやりになるんですか。
  324. 小島和義

    説明員小島和義君) 具体的な公告事項まで現在詰めておるわけではございませんが、従来は、出願がありました品種の特性が大体わかるような事項を発表をいたしておるわけでございます。実際のその運用といたしましては、業界誌などに発表をしているということで、業界誌なんかでは徹底を見ないではないかというふうな御指摘も衆議院でちょうだいをいたしております。したがって、どういうふうな広報手段を用い、あるいはどういう事項を具体的に定めて公表したらよろしいかということは、まだ実は完全に詰めたわけではございませんが、従来の運用だけでの対処ということにつきましても御要望の趣旨が生かされないように存じますので、何らかの手がかりになるものを実施省令に書き込むと、ただいまそういう方向で検討いたしております。
  325. 丸谷金保

    丸谷金保君 これを最終的には省令でそういうものを織り込んで公告するといたしましても、第三者側がこれは申し立てができないわけですよ、どっちにしても。そうすると、損害が起きたときの場合でも、第三者の場合は損害が起きた本人でないと、この国家賠償法の適格者にはなれませんわね。これから起きるかもしれない、こういうことで、あれはおかしいということで声を大にしてもこれはどうにもならないんですよね、このあれからいくと大臣以外にはだめなんだし、第三者申し立てができないんだから。これらのことによって起こる損害、申し立てができないそのことによって起こる損害というふうなものを、大臣しかやれないんだから、国の方が一体責任持つのかということになりますと、国家賠償法以前の問題なんですがね。  それじゃ、外務省来たようですから、その問題はひとつあれしまして、あと法案の中でどうもあれなのは、十二条の四で「品種登録の有効期間は、十五年(第十条第二項に規定する品種にあつては、十八年)とする。」と、こうございますね。これは一体発効日はいつになるんですか。受け付けたときですか、登録の。これがはっきりしてない。
  326. 小島和義

    説明員小島和義君) 登録の日でございます。
  327. 丸谷金保

    丸谷金保君 外務省おいでになっておりますので、ほかの方の問題に入りたいと思います。  これは国際条約にぜひ参加しなきゃならないと、UPOVに参加しなきゃならないということで非常に急ぐと、こういうふうなことが再三にわたって言われております。しかし、いままでのあれで、UPOVに入らない不便というものを具体的にひとつ御説明願いたいと思います。
  328. 小島和義

    説明員小島和義君) これは、役所が直接的に民間の種苗の取引でもタッチいたしておるわけでございませんので、あくまで事例的なものというふうにお聞き取りをいただきたいのでございますが、アメリカから私どもの方で輸入をいたしておりますレタスとか、あるいはインゲンというふうなああいうものにつきまして、グリーンピースでございますが、アメリカ側の種苗業界の方から、日本においてはそういう品種保護制度というものが確立していない、そういうことでは自今新しい品種のものは提供できないというふうな申し入れを昭和五十年ごろに受けております。  そのほかに、会社間の問題といたしましては、主として花の関係でございますが、花は先ほどお話しがありましたように、非常に一部を増殖することによって幾らでもふやせるというふうな特性を持ったものもございますので、せっかくいい品種を導入しようと思いましても、相手方から出されましたその条件というものをわが国におきまして完全に履行するだけの法律的な制度の担保がないというふうなことから、向こう側から断られたり、あるいはわが方の輸入を行う方の側が、国内的に向こうの条件を完全に履行するだけの自信が持てないということでお断りをしたと、こういうふうな事例は二、三耳にいたしております。そういうことが、いままでのありましたトラブルでございます。
  329. 丸谷金保

    丸谷金保君 この法律が出ますと、そういう点はどういうふうに便利になりますか。
  330. 小島和義

    説明員小島和義君) これは、外国から導入いたします品種がすべてこの法律による品種登録要件を備えておるとは必ずしも限らないわけでございますが、外国からの出願の場合におきましては、その国において販売をいたしましてから一定期間たちましてからでも出願ができるというふうな特例も設けております。国内は、出願以前に販売したものについてはもう新規性を認めないということにいたしておりますが、外国の場合には、その国において売りましてから一定期間たちましてもその受け付けを認めるというふうなことにもいたしておりますので、新品種としての要件を備えておるものでございますれば、日本国内において登録が受けられる。  もちろん、これは法律にもございますように、いわば相互主義というたてまえをとっておりますので、その国が日本人に対して同じような保護を認める国でなければそういう扱いはしないということにいたしておりますが、同じような扱いをしてくれる国であればそういうことを認めるということにいたしておりますので、いままでよりは外国人がわが国に出願しやすくなる、こういうふうに考えております。
  331. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、UPOVに入った場合に、そういうふうなことが非常に交流がスムーズにいくようになるというようなことで、この法律改正の大きな理由一つになっております。しかし、UPOVの実態というものについてはどういうふうに御判断なさっておりますか。実は、私この間ヨーロッパへ行きまして、多少調べてまいりました。私なりには調べてまいりましたが、一体UPOVという制度がそれほどオールマイティーなものであるかどうかということについて、ひとつお答え願います。
  332. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 現在、UPOV条約に加盟している国は十カ国でございますが、このうち九カ国が西欧諸国でございます。そのほか南アフリカがあるわけでございますが、昨年の十二月の会議ではアイルランド、ノルウェー、オーストリアでも条約に沿った品種保護法制定が進められておる。ただ、この条約自体も現在改正動きがありますので、わが方としましてもそういう条約改正動きを見ながら、早急に加盟をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  333. 丸谷金保

    丸谷金保君 いま日本が、一番種苗の関係で交流の深いのはアメリカでございますね。アメリカがこれに入っていないんです。そして、アメリカの方は植物特許の中で非常に明確に、午前中から問題にした有性繁殖と無性繁殖、これを分けて実は指定をしております。有性繁殖につきましては農民が買ったものをふやしてもいいし、それをまた販売してもいいというふうなことですが、無性繁殖につきましては、これはもう非常に厳しい制限規定を持っておる。そして、このことにつきましては大統領が、これは特許局なんでしょうが、局のこの種の問題について、農務省から職員の派遣その他いろんなことを命じて協力をさせるというふうな条項が出ております。この非常にすぐれた、そしてこの法律ができたことによって、アメリカではもう大変植物育成者が張り切って、非常にいい品種がたくさん出てきている。そのアメリカが現在入っていない。  それで、アメリカがこれに入るについては、日本にいろいろ連絡をしてきておると思うのです。それで先ほどの文章ですが、こういうものですね。通常、あれですか、向こうからこれはローリンさんが来られたときに出されたと思うんですが、こういうものはやっぱり日本文でお渡しするのが常識なんでしょうか。
  334. 小島和義

    説明員小島和義君) これは外国人との交渉でありますから、できれば横文字の方が望ましいことは言うまでもございませんが、当時私どもの事務方の方にこれを完全に横文字に直せるというふうな自信もございませんでしたものですから、むしろ大使館の翻訳能力に依存するというかっこうで、異例ではございますが日本文のものを提供した、こういうことでございます。
  335. 丸谷金保

    丸谷金保君 外務省の方おいでですか。——実は、午前中からも問題にしておったんですが、非常に植物の新しいいまの法律段階権利だと、いわゆる権利規定無体財産権的な明確な権利でというふうな表現をしていないんですが、アメリカローリン品種保護局長ですか、植物品種保護局長が来られたときに渡しているのを見ますと、もうきわめて育種者権利保護のものになっているんです。これは公式な向こうの国のあれですから、民間じゃないんで、こういう場合の翻訳して出すというのは、それは各省がめいめい勝手にやるんですか。外務省との相談というのはないものなんですか。外務省を通すというふうなことにはならないんですか。
  336. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 先方——外国政府に対する文書の提出の意味によって、かなり場合が違ってくると思うのでございますけれども、その文書の提出がわが国の権利義務関係に直接な影響を及ぼすという場合には、当然これは外務省の方に御相談いただいて、場合によっては法制局の方にも御相談して処理することになると存じますけれども、その前段階における予備的な話し合い、あるいは単なる行政上の事務処理における便宜の場合におきましては、各省間、外国の担当官庁との間で直接に協議が行われるということは間々あることでございまして、そこまで私どもとして介入するようなことは実際上いたしておりません。
  337. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、今度UPOVに加盟するというふうなことの段階になると、これは外交ベースを通すことになるんですか、農林省が直接おやりになるのですか。
  338. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 今回の農産種苗法改正も、先生御指摘の条約に加盟することを念頭に置いて行われつつあるということは非公式に伺っております。したがって、この条約への加盟、条約の締結ということの問題が近い将来に起こってくるであろうということも、私ども予期いたしております。そのような場合には、当然御相談いただきまして、所要の検討を経て手続をとるということになると承知いたしております。
  339. 丸谷金保

    丸谷金保君 一応そういう話を聞いておるということでございますので、この種苗法と、それからヨーロッパにおけるUPOVの置かれている現在の状況というふうなことも、外務省は外務省なりに把握いたしておりますか。
  340. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 条約その他の国際取り決めの締結は、外務省の責任に属することでございます。ございますけれども、実際問題といたしまして、外務省が積極的にイニシアチブをとる条約その他の国際取り決めの締結と申しますのは、その第一義的な意義がわが国の外交関係に影響を及ぼす場合でございまして、その直接の意味が、国内の機能的な、各省と申しますか、その直接の所管に属するものである場合には、それらの主管各省の御判断を第一義的にいただいて、その御提言を得て外務省が相談に乗っていくというかっこうになります。これは行政経済上も当然のことだと思いますので、今回はそういった事例に属することと存じますので、農林省側からの御提議を受けて、私どもとしても勉強させていただくということになろうかと存じます。
  341. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういたしますと、この関係については、余り外務省としてはヨーロッパの状況というふうなものを掌握していないと、こういうことになりますか。
  342. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 私の承知しておる限りにおきましては、そういうことになろうかと存じます。
  343. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、条約そのものに加盟したそれぞれの国において、大変いろいろな問題が出ているんです。これは、農林省の方は加盟したいということですからいいところだけ出てくるので、外務省の方からそのことによって、いま私もヨーロッパへ行っていろいろ聞いてきたんですが、起きている問題点等についてお聞きしたいと思ったんですが、そういうことでしたら結構でございます。ジュネーブにあることは御存じですね。
  344. 小林俊二

    説明員小林俊二君) このユニオンの事務局、事務総長はこのジュネーブにございますWIPOの事務総長が兼ねておるということは承知いたしております。先生御指摘のことでございますので、農林省側からこの条約に具体的に参加したいと、締約したいというお話があった場合には、先生のおっしゃったことを念頭に置きまして、問題点の有無についてなお十分注意して勉強をさせていただきたいと存じます。
  345. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ外務省の方では、たとえばUPOVが非常にいまお金がなくて、とにかく何でも日本アメリカに入ってもらいたいということで、多少のことは目をつぶるからひとつ申し込んでくれないかというような非公式な打診があるというふうなことをお聞きになっておりませんか。
  346. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 申しわけございませんが、承知いたしておりません。
  347. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃアメリカの方は、日本だけ余り進んじゃって、アメリカが取り残されても困るし、しかしUPOVそのものにずいぶん問題があるので、あんまり日本は急がんでほしいがなというふうな非公式な空気が流れてきておることは、情報としてつかんでございませんか。
  348. 小林俊二

    説明員小林俊二君) 最近の両国間の経済関係の発展等もございまして、そういう事例はときどきいろいろな場等において生じておりますので、別段そういうことが事実であっても驚きはいたしませんけれども、この本件につきましては特に承知いたしておりません。
  349. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、これは大変むずかしいというか微妙な問題なんで、私もこのことについては非常に判断に苦しむのですが、アメリカは非常に厳しい植物特許法を持っております。そしてまた、それが非常に有効に作動しておると。日本も、そういうふうなものをきちんとした、あいまいもことしたものでない形のものができて、本当に育種権者が保護されるようなものになってほしいなというふうな考え方を持っている。そしてそれは、ちょっと名前を挙げるわけにはいかないのですが、アメリカの相当な方からの話として伺っておるんですけれども農林省の方ではそういう点について何か非公式にアメリカ側の、いまの私の申し上げたようなことについての情報をお聞きになってはおりませんか。
  350. 野崎博之

    政府委員野崎博之君) 特に、いま先生のおっしゃいましたようなことを、まあ特別にはわれわれは聞いておりません。
  351. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、この法律の中で非常に問題に私はなると思いますのは、アメリカのような育種権者というか、権利がきちっと守られるような制度になっておりませんので、何かこのもの自体が、それで、ときに農林大臣が裁定して強制権を持っております。しかし、ここに言う公共の利益ということがございますね。公共の利益ということになると、これは非常な財産権を抑えることになるわけです、個人においてね。その場合には、憲法二十九条では法律で定めると、公共の財産権の内容というのは公共の利益に合うように法律で定めることになっておるが、一体この法律の新品種登録ですね、これはどういう財産権になるんですか。
  352. 小島和義

    説明員小島和義君) 憲法のいわゆる二十九条に言うところの、財産権のいかなるものに該当するかというお尋ねであろうかと思いますが、これはむしろ憲法学者が、私どもが今回考えました農産種苗法によって登録名に与えられる法的な地位というものを、あの中の財産権というふうに解釈をしてくれるかどうかという問題でございまして、実定法上面接のつながりは持ってないわけでございまして、ただ私どもとしましては、先ほど来申し上げておりますようないろんな差しとめ請求権やら、あるいは賠償請求権というものを持ち、またその地位を名義変更という形で譲渡できるということにいたしておりますので、広い意味の財産権には含まれるものというふうに理解をいたしております。  したがいまして、憲法二十九条の三項にありますように、その権利中身を制約する場合には、公共の福祉にかなうものとしてこれを行わなきゃならないということでございますので、この法律におきましても、例の使用につきましての許諾につきましての大臣の裁定という規定を設けるに当たりましては、公共の福祉というふうな目的にかなうものとしてそれが運用されるということを、明文上明らかにいたしたわけでございます。
  353. 丸谷金保

    丸谷金保君 広い意味の財産権と言いますけれど、財産権の内容というのは法律で決められておるわけなんです。法律に明定されてない財産権というのはないわけです。所有権、質権ずうっとありますわね。そうすると、これは相続もできるし承継もできるということになると、どっかに属さなければ広いも狭いもないんじゃないですか、財産権に。そのどこに属するから、承継したり、あるいは裁定というふうなことによって公共の利益に合う場合には農林大臣がこれに対する強制力を持つというふうなことも、権利があるからでしょう。だから、その権利、財産権は何なのだということなんですよ。
  354. 小島和義

    説明員小島和義君) この登録によって与えられます地位というのは、この法律の中におきまして第三者がその許諾を得なければ勝手に有償譲渡ができないというふうな禁止規定を置いたことのいわば反射的な効果として、ある種の経済的な利益が本人に確保されると、こういう仕組みなわけでありますから、広い意味で財産権だと申し上げたのはそういう意味でございます。ただ、何々権という名前がついたものでなければ憲法で言うところの財産権に入らないかというと、決してそんなことはないわけでありますから、こういうものでありましても広い意味の財産権に入るという考え方は十分成り立つわけでございます。それを憲法上どういう解釈であるかという問題は、私ども農蚕園芸局の立場から憲法二十九条の解釈に触れまして、憲法上こうだというふうなことを申し上げるのはちょっと僭越なものですから、ここは遠慮さしていただきます。
  355. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうもはっきりしないのは、特許法ですと無体財産権というふうなことでこれははっきりするんですが、何かいまの話を聞いていますと反射的な権利、そういう権利はあるんでしょうか。これは光ですか、光なんかの場合でも物だということですかね、電気なんかも。そういう判例がございますわね。その反射的な権利というのは、一体どこから出るんですか。
  356. 小島和義

    説明員小島和義君) 比較的近い例で申しますと、商法の世界において商号というのがございます。これは、登記をいたしますと、第三者が勝手にその商号を使えないというふうな差しとめ請求などもできるわけでございます。そういうものを学者がこれを商号権というふうな名称をもって呼ぶということが、後の学者の解釈としてだんだん出てまいりまして、そういうものもやっぱり広い意味の財産権には入る、こういう理解になっておるようでございますから、私どもがこれを何々権と名づけるのは大変恐縮なわけでございますが、そういういま申し上げました登録者の地位というものについて学者がどういう名づけをし、憲法上どういう位置づけになるかという問題は、これは私どもが云々する問題ではないだろうと実は思っておるわけでございます。  ただ、そういうものが、私どもはあくまでも広い意味の財産権には入るのだという理解に立ってこの法律を用意いたしておりますので、憲法二十九条の三項と抵触をしないように、その権利内容を制約する場合においては、公共の福祉にかなうようにということにいたしておるわけでございます。
  357. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは商号権なんかの場合は、たとえば商標登録とかいろんなそういうものもありますし、しない場合には、たとえば地域の限定だとか、同じものを使ってもいい場合がたくさんあるんですよ。そういうものとこれはどうも——もう少し何か近いいい例はございませんか。どうも商号権とはちょっと違うと思うのですよ。
  358. 小島和義

    説明員小島和義君) この法律によって登録者に与えられます地位というのも、すべての第三者に対して排他的な権利を主張できるというものではないということは、すでに先刻から御説明申し上げているとおりでございます。いわば種苗として有償販売する場合に、許諾を必要とするというふうな限られた分野で起きますが、ある種の権利性を持っていると、こういう意味で広い意味の財産権であろうと、こう申し上げておるわけでございます。
  359. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、その財産権の内容が、財産がどういうのかということが明確にならないと、公共の利益のために裁定すると、裁定が非常に違ってくると思うのです、これが明確にならないと。農林大臣が非常な権限を持つわけです。持ちますわね。だから、その権利の内容がはっきりしませんと、公共の利益というものがどこまで、公法的な利益が私権とぶつかるところ、これがどうもこの法律では権利でない権利でないと、要するに無体財産権でないと、いわゆるいまの私的所有権でもないというふうなことで、特許法でもって私的所有権として守られているようなものを、みんなそうでないそうでないということにしちゃったでしょう、これはね。  どうしてそうなったかはわかりませんよ。どうしてそうなったかはわかりませんが、そうしておいて、じゃ今度公共の利益のために大臣が裁定すると。その場合に想定している公共の利益、これはきわめて限定されたものにならなきゃならないんじゃないかと思いますわね。しかし、一般のこれを見た人は、これは大変だということなんですよ。財産権としてはっきりこういう権利だといって守られているものに対する公共の利益等を代表しての裁定であれば、これは財産権というものの中でいろんな法的な根拠なり基準があればそれで対抗もできるわけです。しかし、何かわからないような、法的な根拠があいまいな財産権なんだということになると、大臣によって裁定される公共の利益というものは農林省考え方次第でどうにでもなるんじゃないですか。そういう心配が一つこの法律にはあるんです。
  360. 小島和義

    説明員小島和義君) 私どもは、この法律はあくまで公法上の一つの地位ではございますが、私的な権利性を持つものというふうに理解をいたしておりますので、公共の目的、公共の利益のため必要であるということでその権利を制限するという場合には、これは慎重に対処すべきものというふうに理解をいたしておりまして、大臣の胸三寸でだれにでもどんどん裁定が与えられる、こういう趣旨のものではないというふうに理解をいたしております。
  361. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは法制局にお聞きしたいんですが、やはりこういう法律のスタイルとして、公共の利益というふうなことの場合の裁定権というのは入れておかなきゃならないんですか。
  362. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答えいたします。  先ほど来、財産権に入るのか入らないのかという御質問ございましたので、そこにさかのぼってお答えしてよろしゅうございましょうか。——憲法の二十九条で規定されております財産権というのは、先ほど丸谷委員から御質問ございましたように、たとえば所有権あるいは地上権、特許権というように権利としての名称がついていなければ財産権と言えないということはなかろうという趣旨の答弁小島議官からいたしましたのは、私もそういうふうに考えております。したがって、それでは財産権というのはどういうものかという点について小島議官答弁を補足いたしますと、法律によって保護される経済上の利益または地位というふうに考えられるかと思いますが、この法律によってそれではそういう経済上の利益または地位が無制限に与えられているかというと、これも先ほど小島議官から御説明しましたように、一応法律によってそのどの程度という範囲が制約が加えられているということは、いま小島議官の御答弁したとおりでございます。  そういたしますと、それを制限する際に、公共の利益のために——条文を見ていただきますと、十二条の八の第一項でございますが、十二条の五第一項に掲げる行為というのを受けまして、十二条の五第一項に掲げる「行為がされることが公共の利益のため特に必要であるとき」ということで、公共の利益といわば十二条の五の第一項で品種登録者に認められている、先ほど申し上げました法律によって保護される地位とをいわばはかりにかけまして、そういういわば具体的な内容から言えば許諾でございますが、許諾をすることが公共の利益のため特に必要であるという判断が行われたときに限って、いわば公益裁定という形での許諾を裁定によって認めるという趣旨の規定を置いたということでございます。  なお、具体的にどういう場合にそういう実態があるかということにつきましては、担当の農林省の方からお答えいただいた方がよろしかろうと思います。
  363. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういうたとえば財産権の場合も明定した権利であれば、それぞれの法律によって公共の利益のためにという政府の方針の場合でも、たとえば補償だとかいろいろな問題がきちっと確立されているし、おのずから限度がありますわね。しかし、この法律だけで守られている、この法律によって要するに与えられた権利、そしてそれに対して公共の利益のためということになると、これはもうできるだけ限定して解釈してもらわないと大変なことになるというふうに思うわけなんです。  それで、たとえば私も薬草をやっておりますけれども、大疫病がはやったと。そうすると、それはおまえのところにある薬草は自分たちでつくったからといって、これを自分たちの——これは武田薬品のダイオウという薬草をやっているんですが、それをほかへどんどんつくらして一斉にやらなきゃならぬと。これはもう人命救助というふうなことですから、そういう場合はわかるんですよ。しかし、たとえばダイオウなんというのはこれは下剤なんです。これを何ぼ抱え込んでいても、ほかに下剤ならたくさんあるでしょう。そうすると、下剤かけて伝染病を直さなきゃならぬというような場合でも、これはほかのものでもできるというふうな場合には、それは公共性があるということにはならないですね。そこら辺がはっきりしないと、非常にこれは心配なんです。
  364. 小島和義

    説明員小島和義君) 具体的な事例としてはなかなか適当なものは思い浮かばないわけでございますが、強いて申し上げますならば、非常に病害虫が蔓延をいたしまして日本のある農作物の生産が非常に危ういと、その生産がなければその商品分野においては非常に不自由なことになると、こういう際におきまして、ある特性を備えた品種をたまたま登録者が持っておるという場合に、それを使わせることによってその農業生産を維持し、あるいは国民を救うと、こういうことができるという場合において、これは発動されるという性格のものであろうというふうに私ども考えておるわけでございます。したがいまして、ほかに代替性のあるものがいっぱい流通しておりますのに、その方がまだ幾らかいい品種であるからというだけの理由をもって、裁定にかけていくというふうな立法趣旨ではないというふうに理解をいたしております。
  365. 丸谷金保

    丸谷金保君 特に緊急を要するような場合にのみ限るというふうに理解いたしますが、この点について、もう一点だけひとつお聞きしておきたいと思います。  公共の利益ですが、たとえば具体的な例で申しわけないんですが、富良野市というのが北海道にございます。ここが市営でワインを始めました。それで、ここがよくなることは公共の利益なんですよ、市営ですからね。いま何か非常に御苦労しているようですが、私のところからどうしても苗木を欲しいと、うちは出さないと。この場合に、公共の利益ということで出せというふうなことにはならないでしょうね。
  366. 小島和義

    説明員小島和義君) 憲法の二十九条の三項におきましては、実は公共の用というふうな表現をいたしておるわけでございます。で、あたかも文章だけ見ますと、何か公共目的に使うと、公共団体が使うという場合に限られるように読まれますが、実はこの憲法のその解釈といたしましても、たとえば農地買収のように、その買収による直接の受益というのはその買収農地を買受ける元小作人に……
  367. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうでなくて、いまの答えだけ言ってください。
  368. 小島和義

    説明員小島和義君) そういう場合でもいいということになっておるわけでございます。したがって、その使う主体が公共団体であるから全部公共の利益であり、公共団体でない、たとえばある種屋さんが裁定を申請しているからこれは公共の福祉に合致しないということではなくて、あくまでその品種を使うことの目的によって判断すべきものだろうと思うのです。したがって、いま御設例の場合に、その富良野市がある農産物の日本じゅうの大部分の需要を賄っておるということであれば別でございますが、そうでもなければ、単に隣接市町村であるというだけでもって公共の利益ということには該当しないと、こういうふうに考えます。
  369. 丸谷金保

    丸谷金保君 農業資材審議会の問題その他ございますけれど、本日の質問はこの程度にして、さらに解明のされない問題、資料要求によって質問をしていかなきゃならない問題等もございますので、質問を保留して終わらせていただきたいと思います。
  370. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十八分散会      —————・—————