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1978-06-08 第84回国会 参議院 内閣委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月八日(木曜日)    午前十時四十分開会     ―――――――――――――    委員異動  六月七日     辞任         補欠選任      鈴木 正一君     加藤 武徳君      岩上 二郎君     竹内  潔君      井上  計君     藤井 恒男君      野末 陳平君     柿沢 弘治君  六月八日     辞任         補欠選任      斎藤栄三郎君     金丸 三郎君      源田  実君     石破 二朗君      堀江 正夫君     高平 公友君      藤井 恒男君     井上  計君      柿沢 弘治君     野末 陳平君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 林  ゆう君                 原 文兵衛君                 片岡 勝治君     委 員                 石破 二朗君                 岡田  広君                 金丸 三郎君                 高平 公友君                 竹内  潔君                 林  寛子君                 野田  哲君                 村田 秀三君                 山崎  昇君                 和泉 照雄君                 黒柳  明君                 山中 郁子君                 井上  計君                 野末 陳平君    国務大臣        自 治 大 臣  加藤 武徳君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)      稻村左近四郎君    政府委員        内閣官房長官  森  喜朗君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        職員局長     金井 八郎君        総理府人事局長  菅野 弘夫君        総理府恩給局長  小熊 鐵雄君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        厚生省援護局長  河野 義男君        自治省行政局長  近藤 隆之君        消防庁長官    林  忠雄君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        内閣公共企業体        等関係閣僚会議        事務局次長    伊豫田敏雄君        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君        大蔵省主計局共        済課長      山崎  登君        大蔵省関税局管        理課長      杉田 昌久君        文部省初等中等        教育局地方課長  加戸 守行君        文部省管理局参        事官       鈴木 博司君        農林省農林経済        局農業協同組合        課長       三井 嗣郎君        労働省労政局労        働法規課長    岡部 晃三君        自治省行政局公        務員部給与課長  石山  努君        自治省行政局公        務員部福利課長  望月 美之君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国家公務員法及び地方公務員法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○職員団体等に対する法人格付与に関する法律  案(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、井上計君、野末陳平君、鈴木正一君及び岩上二郎君が委員辞任され、その補欠として藤井恒男君、柿沢弘治君、加藤武徳君及び竹内潔君が選任されました。  また本日、藤井恒男君及び柿沢弘治君が委員辞任され、その補欠として井上計君及び野末陳平君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 国家公務員法及び地方公務員法の一部を改正する法律案及び職員団体等に対する法人格付与に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 野田哲

    野田哲君 法案の見解等について総務長官、それから地方公務員法を所管する自治大臣にそれぞれ見解を承りたいわけでありますけれども、その前に消防職員の問題について伺いたいと思います。  消防庁の方では、昨年の五月十七日に、宮崎県の北消防署職員松山昌広さんという方が死亡された事故について承知をされておりますか。
  5. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 詳細の報告を受けております。
  6. 野田哲

    野田哲君 その概要はどういうふうになっていますか。
  7. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 五月十七日の宮崎消防署松山さんの事故でございますけれども、宮崎消防署障害物突破訓練、いわゆる救助技術訓練でございます。突破訓練をするためにロープブリッジ手綱を引っ張って橋みたいなものをつくりましてそこを渡る、そのロープブリッジを張るために訓練塔の足場から他の訓練塔ロープを投げておった。そうしたら、投げたロープがどこかに当たりまして、そのはずみでバランスを失って七メートルもの高さから下に落下したわけでございます。事故後直ちに署長の指示により、他の隊員が酸素呼吸器酸素を吸入しつつ救急車市内市来外科医院というところに搬送いたしました。ところが、そこで手当てをいたしたわけでございますけれども、何か本人の妹さんが同じ市内江南病院というところに勤務しておられるということで、家族からの要望でもって、手当てをした上でその江南病院に転送したのでございますが、残念ながら六十何時間、三日後にお亡くなりになった、こういうのが事故概要として承っております。
  8. 野田哲

    野田哲君 消防署職員が、特別のいま言われた障害物突破訓練などという訓練をやるときに、相当これは高所でやられていると思うんですが、私の調査したところでは、高さ七メートルにロープを張っていた。こういうような非常に高所訓練を行うという場合には、実際の火災等の場合はともかくといたしまして、訓練の場合には、これは危険防除のための措置というものが必要なんじゃないですか。これはやられていたんですかどうなんですか。
  9. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 当然その訓練には、しかもこういうむずかしい技術訓練には危険が伴うわけでございますから、それを防除するためのあらゆる配慮をすることば当然でございます。この宮崎市の場合は、すでにロープが張ってあって、それを渡る途中で落っこったということではなくて、そのロープを張るためになわを投げていたということでございますので、訓練の場をこしらえようと先にしておったわけであります。で、そのロープを投げたのが、たまたまロープがどこかに当たってバランスを崩して落ちたんですが、安全ネットを仮に先に下へ張ってそれからロープを投げておれば、恐らくこういう痛ましいことはなかったと思うのです。その意味ではロープを投げるときに落ちる危険というのに対してそれほど配慮を払っていなかったのかもしれませんけれども、そもそも安全ネットを全然張らないでロープをやって、そこで渡らして死んだというのとはやや事情が違うような気がいたします。それにいたしましても、事故が起こったということは、つまりロープを張るために投げるときにも危険があるということは、後にして考えれば先立って思いをいたすべきであった、つまり安全ネットを一番先に張って、それからロープを張ればよかったという事後の反省はあるのではないかと思いますが、そういう意味で、全然注意を払うことに遺憾がなかったとは言えないわけでございまして、やはりそういう点の配慮技術上足りなかったんではないかというふうに見ております。
  10. 野田哲

    野田哲君 消防庁としては、この事故の場合の死亡に至る経過、原因等の中で、使用者責任についてはどういうふうな判断をしておるのですか。
  11. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) これはその後、刑事裁判あるいは最近遺族の方から損害賠償に僕する民事訴訟が現在進行中だと聞いておりますので、いまここで消防庁としてはという判断ははなはだ言いにくいわけでございますけれども、いまのような、安全というものに対して十分配慮したつもりではございましたでしょうけれども、結果において事故が起こったということに対する責任というものは、やはり考えなければいけないものであろうと考えております。
  12. 野田哲

    野田哲君 この松山さんの死亡の場合、これは当然公務死亡という扱いになっているのだろうと思うんですが、消防職員の場合には、公務死亡の場合でも自衛官消防職員、警察官等特別な扱いがあると思うのですが、この松山さんの場合にはその扱いはどういうふうになっていますか。
  13. 近藤隆之

    政府委員近藤隆之君) この件につきましては、地方公務員災害補償法第四十六条に言うところの「特殊公務に従事する職員の特例」が適用されるかということでございますれば、適用されません。
  14. 野田哲

    野田哲君 これは適用されていないわけですね。
  15. 近藤隆之

    政府委員近藤隆之君) さようでございます。
  16. 野田哲

    野田哲君 この訓練目的というのは、いまの障害物突破訓練という用語で説明があったわけですけれども、実際問題として、火災現場においてロープ向こうに張ってというようなことは、実際上はあり得ないんじゃないか、火災が起きている向こう側ロープを張るといったって、向こうでそれを受けとめて固定してくれるような状態にはないわけでしょう。この訓練というのは実際の火災に対する訓練というよりも、ある団体主催をしたいわゆるレンジャー競技、この訓練松山さんは従事させられていた、こういう状態でしょう、どうなんですか。
  17. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) ロープでもってブリッジをかけて人を助けるケースが、火災の場合にほとんどないのではないかという御質問に関しては、いままで十分な統計その他はございませんけれども、理論上は考えらないことはないわけでございます。つまり、ビルが火災になって屋上に取り残された。たまたまその近辺にはしご車がなかったというようなときに、その屋上で助けを求めている人間に対して、まず細いロープを銃で撃ち上げて、その細いロープに太いロープを結びつけて上から引っ張ってもらって、それで上に固定をして下に固定をしてというような救助必要性が考えられる場合もあるわけでございます。そこで、救助技術の中でこのロープブリッジというものは相当一般的にみんな練習をしておりますし、火災だけではなくて、たとえば急に水かさがふえて中の州に釣り人が取り残されたというようなときも、同じような形で、向こうの人にまず細いロープをつかんでもらって、太いロープを渡して助けるというケースもございますので、救助技術としてこのロープブリッジというのはきわめて一般的なものでございます。  それから、この訓練は、確かに先生指摘のとおり、救助技術全国大会というものが行われる予定になっておりまして、その地区予選に出るために訓練をしていた、その訓練中の事故であるというのはまさに御指摘のとおりでございます。しかし、その全国大会あるいはその地区予選に出るということを励みにして、この技術そのものを向上させることが目的でございますから、訓練はやはり一つ公務であり、必要な練摩であるというふうには考えております。
  18. 野田哲

    野田哲君 消防職員としての必要な技術練摩である、こういうふうにおっしゃるわけですが、そうすると、消防職員として必要な技術練摩である、この必要な練摩主催をしている全国消防協会というものの性格について伺いたいわけですが、この全国消防協会というのは、これはどういう人たち構成でつくられている団体ですか。
  19. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 財団法人全国消防協会というのがございまして、これは昭和四十年八月に自治大臣の許可を得て設立された公益法人でございます。それで、その消防協会目的とするところは、いろいろ書いてあるわけでございますが、「火災その他の災害防除に関する調査研究を行う。」「防災思想普及広報を積極的に推進する。」「関係機関及び関係団体と緊密に協力し、市町村防災体制強化促進を図る。」「災害現場に挺身する消防職員援護育成を行う。」、こういった救助技術大会開催は、実はこの第四番目の「災害現場に挺身する消防職員援護育成を行う。」という仕事の一環として行われているようでございますが、こういった目的を持っておるようでございます。  構成員は、この会の趣旨に賛同した消防職員ということになっております。消防職員というのは、御承知のとおりボランティア活動消防団員ではなくて、市町村公務員として給与を受けて消防事務に従事しているのが消防職員でございます。この消防職員のうちのこの趣旨に賛同した者が会員になっておるというように聞いております。  それからなお、ついでに申し上げますと、この会の活動経費は、その会員会費と、それから日本損害保険協会とか、日本船舶振興会あるいは日本自転車振興会とかから受ける寄付補助金等により賄っておるというふうに聞いております。
  20. 野田哲

    野田哲君 この消防職員構成されている全国消防協会の、長官はいま会費の問題聞かないことまで先走って答えられたんですが、会員としての経費負担というのは、これは消防職員が個々に出しているんですか。私の聞いているところでは、形の上では消防職員が出しているということになっているけれども、実際は自治体公費でその自治体消防職員人数分負担をしている、こういうふうに聞いているんですが、その実態はいかがですか。
  21. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 私の方も、実態としてはいま先生のおっしゃったようなケースが多いと聞いております。
  22. 野田哲

    野田哲君 この消防職員技術練摩として必要な訓練であれば、これは消防庁なり公的機関で必要な訓練をやるべきであって、それがなぜ消防職員として必要な技術練摩が、公的機関でない全国消防協会というような団体で全国的な大会が行われているんですか。
  23. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) こういう技術練摩を行うために、また技術を習得する職員たち励みを与えるために全国大会を開く、それを消防庁とか、警察であれば警察庁とかが主催するということも、これは一つの有力なと申しますか、通常の行き方の方法であると存じます。ただ、現在は私の方が主催してなくて、御指摘のような民間団体主催しておる。民間団体といえども、もちろんこれは営利法人ではございませんで公益を図る法人でございますので、公益的に意味のある仕事民間団体がやる場合に、役所の方が後援というような形で精神的、物質的な援助を与える、これも一つ方法であろうと存じます。この救助技術訓練は、たまたま一番最初の出発が、自治体側の自主的な何と申しますか、発意に基づいて行われたというような経緯もありまして、ずっとこの数年、民間団体公益法人たる全国消防協会主催してまいりまして、消防庁はこれを後援という姿になっておりますが、おっしゃるように直接私の方で主催するのも一つ方法でもございますし、主催するとすれば、これは大蔵に要求して予算も取らなければならないわけでございますが、さらにこういった事故経緯も勘案いたしまして、今後これをどう持っていくか検討を続けてみたい、まあ国がやるのだけが実は能だとも思いませんので、一つ民間団体というのが、こういった公益的に役立つ仕事を大いにやってもらうことも大変結構なことでございますから、その間の得失を勘案いたしまして、こういった事故が起こらないような配慮のもとに、今後開催の形をどうするかを検討してまいりたいと存じます。
  24. 野田哲

    野田哲君 昨年の全国消防救助技術大会、このことを収録をした「ほのお」という小冊子があるんです。これは全国消防協会で編集をされているわけですが、これを見ると、一昨年の九月十日に名古屋市の白川公園で第五回の全国消防救助技術大会というのが行われているわけですが、この大会笹川良一さんが名誉会長としてずいぶんここに麗々しく宣伝をされているわけですが、笹川さんがこの大会運営にはかなり重要な役割りを果たしている、そしてこの全国消防協会の、これはちょっと古い五十一年の予算書でありますけれども、この状態を見ると、経費の半分以上は笹川さんのところの船舶振興会助成金補助金運営をされている、こういう状態になっているんですが、そのことを承知でいらっしゃいますか。
  25. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 承知しておりますが、この笹川さんが、いま御指摘のおととしの九月十日でございますか、その大会名誉会長として出ておられたということは事実でございまして、実は私もそのときにお招きを受けましてあいさつをしたことを覚えております。  問題の笹川氏は、いま先生指摘全国消防協会名誉会長ということになっておりますので、その場合は、主催者側の、しかも、名誉がつきますけれども会長、一番の責任者というような意味で出席しておられたようでございます。それで、この全国消防協会というのは、会長はいまの東京の消防総監味岡氏が協会会長でございまして、何か笹川氏はその上に名誉会長という形で乗っておられる。この名誉会長というのは、何かこの消防協会内規がございまして、消防に理解がある人とか、功績のあった人だとかいうのを推戴するというような形になっておるようでございまして、それに基づいて笹川氏が名誉会長に就任しておるようでございます。これも私が消防に参りますずっと前からのことでございますので、詳しい経緯は存じません。  それから、いまの後段の、この協会経費相当部分船舶振興会補助金で賄われているというのはまた事実でございます。私は、これはその協会がさっき挙げましたように幾つかのいろいろな仕事をする、事業をする、それぞれに経費がかかるわけでございますけれども、この救助技術大会というような相当大規模な、大きな土地を借りまして施設をつくるにも数千万かかるようでございますが、そういう大きな大会をするについて船舶振興会から補助を仰ぐ。そうすると、船舶振興会というのはひとつの決まりがあるようでございまして、自己負担金二割あれば八割までは補助ができるというような内規があるようでございまして、したがって、この救助技術大会という相当経費がかかるものを主催しようとする場合に、自己資金が二割あればあとの残りの八割は補助を受けることができるわけでございますから、結果において相当大きな金額の補助を受けてその事業をやるということになりますので、それを年間決算で見ますと、相当経費の大きな部分を占めているという姿で出てまいりますけれども、これは救助技術大会をやるについての補助でございまして、それをどければほかの事業については決してそんなアンバランスになっていない、そういう形なようでございますので、これらの救助技術大会というのが意義がある催しである限りは、多額補助を受けてでもこれを行うということは、私は決して責められるべきことではないというふうに見ております。
  26. 野田哲

    野田哲君 この全国消防協会年間一億円以上の金が笹川さんのところから出ているが、別に基金として年々かなり多額の金が別に提供されておりますね、消防協会、これはどういう状態になっておりますか。
  27. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 実は、この全国消防協会経理内容、詳しくは私は調べておりませんので、定かな記憶は持っておりませんけれども、この全国消防協会が行う事業について船舶振興会、まあ船舶振興会だけではございませんで、自転車振興会とか、損害保険協会、これらからの寄付でもって相当賄われている。会員会費年間四百五十円というような決まりもあるようでございますが、先ほど先生指摘になりましたように、実際には市町村公費で賄われているという問題もあり、何か、近ごろは一般の会費というものをもうある程度やめようかというような議論も内部で行われているそうでございます。これらの経費がどういう形でまたあらわれるかについては関心を持って見てまいりたいと存じますけれども、いずれにせよ、行う仕事が公的に意義のある仕事であり、それをまた自転車振興会なり、船舶振興会なり、ないしは損害保険協会が、その趣旨に賛同して補助をしてこの事業を行わせるということであれば、その事業意義あるものである限りこれは結構なことであろうというふうに私たちは見ておるわけでございます。
  28. 野田哲

    野田哲君 全国救助技術大会、これは先ほど説明があったように、消防職員としての練摩に必要な訓練だと、こういうふうにおっしゃったわけですが、地区予選あるいは全国大会への出場、これは公務として行われているわけでしょう。どうなんですか。
  29. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) それは私も公務であると考えております。必要な技術訓練するということ自体公務であり、その訓績励みを与えるために、たとえば全国大会などをやり、それに参加する予選に出ることを目的としてといいますか、励みとして訓練をいたしましても、あくまでも訓練はその消防職員に必要な技術の習得でございますから、それらの予選あるいはその大会に参加すること自体、その必要な技術練摩するための一つの手段としての公務と考えて結構であると私は、思っております。
  30. 野田哲

    野田哲君 消防職員としての必要な技術練摩をやる、それの全国大会あるいは地区予選がある、それに公務として参加をする、そういう公務として必要なことをなぜ民間団体にやらしているんですか。公務として必要な技術訓練であれば、当然公的な機関において実施をする、こういうのがあるべき姿じゃないんですか、その点いかがですか。
  31. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 確かに公的な機関として実施するのも一つの有力なと申しますか、あるいは最も筋の通った方法であろうかとも思います。ですから、先ほども御答弁申し上げましたように、こういうものを今後たとえば民間団体主催消防庁後援という形でなくて、消防庁主催というような形でやったらどうであろうかということについて検討を重ねてまいりたいということを先ほど申し上げたわけでございますが、民間団体がこういうことを主催して全国大会を開くということも、これは許されないというか、あるいはあってはいけないことではないんであって、たとえばほかの普通の事務職員が必要な研修をする、その研修を国の主催で、国の機関で、たとえば消防学校とか自治学校でやるケースもございますけれども、その研修を国の方にそういう技術がなくて民間の方にそういう技術がある場合に、そこに派遣して民間研修活動を受けさして帰ってくるということもある、同じように。こういう消防職員に必要な技術研修するその研修励みを与えるための催しが仮に民間で行われたとしても、そのこと自体が公に意味があるものであれば、たとえば消防庁後援するというような形でそれに関与していく。経緯からしてそういうことが行われているということであれば、それ自体別にそうおかしいことではない。ただもう一歩進めて、国が直接やったらという御議論は十分あると思いますから、その点は検討してまいりたいと思います。現在の形がおかしいということは私はない。であるがゆえにまた後援ということで私の方の名前をおかしするというか、使っていただいておることで、精神的――物質的には余り予算ございませんので後援できませんけれども、技術的指導その他の面でそれをバックアップしているところでございます。
  32. 野田哲

    野田哲君 あなたの方は、法律的に問題さえなければ構わないのだと、こうおっしゃりたいんだろうと思うんだけれども、世間の常識として私は物の判断をすべきじゃないかと思うんです。いま説明がありましたように、全国消防救助技術大会というのをやっている全国消防協会、これは予算書を見ると、この経費の大半はいま説明があったように船舶振興会の、あるいは損保協会からの資金によって賄われている。そして笹川さんがその団体名誉会長になり、全国消防先ほど説明があった常勤の、ボランティアでない常勤の消防職員構成されている団体会長に、名誉会長ということだそうですけれども、会長笹川良一さんというとかくの世間にうわさの多い物議を醸す人が会長に座っている、名誉会長に座っている。そして、そこから大半の資金援助を受けている。つまり、この全国消防協会という団体笹川さんの金を受けるための受けざらとしてつくられた、そして笹川さんが会長のポストに、金を出すことによって名誉会長に座っている、そしてこの消防職員の間に非常な発言力を持つような構造になって、この「ほのお」という特集の小冊子でも大変麗々しく笹川さんのあいさつが写真入りで掲出をされている。つまり、この状態というのは、笹川さんの名誉欲を満足をさせるために、そして笹川さんの金を――笹川さんの金じゃないか船舶振興会からの金を受け入れるための受けざらとしてつくられたとしか思えないわけです。そして、しかももう一つは、いま説明があった損保協会がこの資金を出している。これも私は消防関係の団体としては少し世間の疑惑を招くようなことになるんじゃないか。損保協会というのは、つまり火災保険の会社でしょう。これが資金援助を行っている、こういうあり方の団体というのは、私はやはり世間から非常な誤解を受けることになるんじゃないかと思うんです。公務のための技術練摩として必要であることならば当然公費でやっていけばいいんだし、それを主催をする団体が、公的機関でなくて別の団体をつくられたにしても、これはやはりしかるべき公的な機関運営され、公費で賄われている以上はそれにふさわしい大会のあり方、こういうものがあるべき姿ではないかと思うんですが、これは自治大臣に伺いますが、こういうあり方がいい正常な状態だというふうなお考えを持っておられるわけですか。こういう形によって、全国の消防の組織に笹川さんが名誉会長というポストに座り、金を出すことによって非常な発言力を持っている。こういう形が、先ほどあったように消防職員が命にかかわるような訓練をやっている、そういう厳しい訓練をやっている主催団体が、こういう形の金と、こういう人によって運営をされている、これはいかがですか、いい形と思われますか、どうですか。
  33. 加藤武徳

    ○国務大臣(加藤武徳君) 消防職員が、絶えず救護技術練摩、習得につきまして努力をしてまいらなければならぬことは当然なことでございまして、そして、その日ごろ練摩をいたしました成果を大会等で発表いたしますことがまた励みになりますことに関しては、議論のないところであろうと思います。そこで、さような励みになります大会を国みずからが国費においてやる場合ももとより多くあるでございましょうし、いま消防庁長官は、国が主催することをも検討いたしたいと、かような表現をいたしまして答弁をいたしておるところでございますが、しかし、その日ごろ練摩した技術を成果あらしめるための大会を、必ず国が主催しなければならぬというぐあいには断定しがたいと思うのでございまして、全国消防協会なるものは、全くの私団体ではございませんで、公益団体でございますから、公益団体主催するからといいましてそれが不適当だとは断言しがたい、かように私は思うのでございます。そして、笹川良一さんが名誉会長であることの御指摘もあったのでございますけれども、これは全国消防協会それ自身が、みずからその役員を選ぶのでございますから、笹川良一さんがその会長であるから直ちにその団体が不適当だ、かような結論には短絡はいたさない、かような感じを持っておるところでございます。
  34. 野田哲

    野田哲君 全国の消防職員が、非常な危険にさらされながら訓練をやっている、その訓練の金が――恐らく全国の消防職員は知らないんだと思うんです、そういう競技を、訓練をする金がどこから出ているかということは知らないと思うんです。しかし、実際はギャンブルの金あるいは保険会社の寄付金でやられている、そして名誉会長には笹川良一さんがなっている、これではこの死亡した松山さんにしても浮かばれないと思うんです。また全国の危険にさらされながら訓練をやっている人たちも、こういう事実を知れば私はかなりの意見を持ってくると思うんです。ところが、いま自治大臣は、そういうあり方も別に否定的ではないと、こういうふうにおっしゃるわけですけれども、まさにこの状態というのは、これは笹川さんのところの船舶振興会の金を受ける、あるいは損保協会の金を受けるための受けざらとしてこういう団体がつくられ、自治大臣がそれを認可をしている。これはやはり再検討すべきじゃないかと思うんです。  そこで、さらに私はこの問題で伺いたいんですけれども、消防職員がそういう状態を知り、そして訓練のあり方についても、先ほど宮崎の例にありましたように、七メートルの高所訓練、あるいは訓練のための設備をつくるために消防職員が従事をしている、非常に危険な状態救助網も張られていない、そういう状態訓練をしていたことによって起こった一つ松山さんの例があるわけですけれども、そういうことに対しての危険防除のためにこうあるべきじゃないかというような、消防職員の意向、あるいはまた、自分たちが入っている全国消防協会というのが、事実をせんさくしてみればほとんど笹川さんのところの金や損保協会の金で賄われていた、これは相当消防職員の間には波紋を呼ぶと思うんですが、そういうことに対する勤務上の不平不満、これはどういう方法で解決する方法があるんですか。
  35. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) まず、救助技術というものの習得は消防職員にとって大切ですし、これから救助技術というのがいろいろな新しい展開を示してくる、その行政内容が複雑になってき、重要性を増してくるという行政項目の一つであることは間違いございませんので、救助技術訓練は絶対的に大切でございます。この訓練に要する費用というのは、私はそれぞれの自治体がちゃんと賄っておると思います、訓練のための必要な経費その他は。それで、ただ励みを与えるための全国大会というのが開かれまして、その大会に派遣するのも恐らく地方団体の費用で、公務出張で旅費をもらって来ている。その全国大会を開くための開催費用、土地を借りたり設備をつくったりするのをいまの全国消防協会でやっておるわけでございまして、これはこの大会というのが、公的な意味消防職員消防技術の向上に励みを与えるという意味意義あることであれば、それに対して損保協会なり船舶振興会なりが補助を出してもこれは結構なことではないかと思っておりますので、そのあり方自体には、どうも先生のお考えとは多少違いまして、私それほど指摘されることはないという気がしておりますが、それは先生の御質問の前半でございまして、後段のそういったものに対して消防職員が疑問を抱いたり、あるいはそういった危険を冒しての訓練を強いられているというふうにおっしゃったと思いますけれども、そういうことに対する意見をどうやって吸い上げていくのかというのが御質問の主題だと思いますが、私はそういうことにつきましては、それぞれの消防というのは市町村仕事でございまして、市町村には消防長という消防に関する全責任者がおるわけでございます。その消防長というのが常々職員の不平不満とか、要望とか、そういうものをよくつかんで、そして待遇面にしろ勤務環境の面にしろ自分が責任を持って市町村の当局と交渉し、折衝する。たとえば訓練に危険だと思えば安全施設を要求する、それから、待遇面でほかの職員に劣るようなことがあれば絶対に是正する、そういったところを、それぞれの市町村消防責任者消防長が常々みんなの希望を把握して実現を図っていくと、こうあるべきであると考えておる次第でございます。
  36. 野田哲

    野田哲君 消防職員が、先ほど松山さんの例に見られるような、非常に訓練が危険な状態にあるということに対する事前の意見を述べることなり、あるいは待遇上の問題について、当局の方にこうあるべきじゃないかというような意見を述べること、その実現のための手段というのは、これは法的には何ら保障されたものではないですね。あなたは、それは消防長なり管理職側が意を配ることだと、こういうふうに言われるわけですけれども、職員の側のそういうことに対する法的な保障というのは一切ないですね、ないでしょう、どうですか。
  37. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) そういう道が閉ざされているということではなくて、恐らく先生がおっしゃいますのは、現在団結ということを許していないという点を御指摘になっていると思いますけれども、これはまあ警察も同様でございまして、警察官といえどもやっぱり給与をもらって勤務する職員でございますが、それらの給与とか待遇とか、危険にさらされているという意味でも警察と消防、これは余り選ぶところがない、両方とも大変危険な職種でございますし、また、これに必要な訓練にも危険が伴うというのも、警察と消防、非常に共通点がございます。それらについては、団結権ということは現在与えられておらないことは御指摘のとおりでございますが、それらに対する待遇その他については、責任者責任を持って、低い待遇とか過酷な勤務条件に甘んじるようなことがないようにしなければならない、同じような形で運営されていくべきものであろうと存じておる次第でございます。
  38. 野田哲

    野田哲君 あなたは、先ほど私が指摘をした全国消防協会という、消防職員構成されており、そうして経費は大体公費で賄われる、職員側の負担は。しかし、団体としての経費のほとんどは船舶振興会や損保協会で賄われている、こういう全国消防協会の存在については、そういう形のものがあってもいいんじゃないかと、こう言われるわけですが、職員自身が一つの会を任意につくる、そして職員相互間でいろいろ研修をしたり消防職員のあり方についていろいろ意見を取りまとめる、こういう状態が、いま全国の幾つかのところで消防職員の協議会というような形で存在をしている、このことについてはどういうふうな認識をお持ちですか。
  39. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) そのこと自体につきましては、その協議会なるものが、あくまでも親睦団体である、あるいは相互の研修のための団体であるということにとどまる限り、何ら法的にも実際的にも問題はないと思っております。ただ、現在の法制が、消防職員に団結を禁止しておる。これは警察と同様でございますが、この禁止したことには禁止したそれなりの理由があるわけでございましょうけれども、その法の趣旨にもとるような実際上の運営面、動きというものが出てまいります場合は、これは現行法でとめておることに違反することでございますから、そこに至るようであってはならないというふうに考えております。協議会なるものが、あくまでもそういった法の趣旨その他に照らして問題のない構成であり、問題のない活動をしている間は、これについて全く法的に問題があるというようには考えられないわけでございますので、要はその運営実態、それがどういうふうな活動をし、どういう動きをするかということについて、現行法との間で問題が生じる懸念はあるというふうに考えております。
  40. 野田哲

    野田哲君 消防庁長官は、この現行法で消防職員の団結権が禁止をされていることについては、先ほどは警察を引き合いに出されたわけですが、消防職員の団結権が禁止されておることについては、これはどういう認識をお持ちですか。これが当然だと、こういうふうに考えているわけですか。
  41. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 現在のわが国のいろいろな社会情勢その他の状態から言えば、私は現在の法制が一番わが国に適しているんではないかというふうに考えておる次第でございます。ただ、これについてはいろいろ議論もございましょうし、ILOその他についてもいろいろな議論がなされておりますので、これに対する政府の現在の正式な考え方としては、公務員制度審議会の答申によりまして、当面現状のままとし、公共企業体あたりのむずかしい労働問題が片づいた後で、さらにILOの意向とかその他を踏まえながら長期的視野を持って検討するということになっております。これが現在の政府の公式な態度でございますが、いま先生の御質問の私自身の意見を言わせていただければ、わが国の消防というものは、現在のこういう木造家屋が連なっておって、一歩間違えばすぐ大火になる懸念のあるところで、身の危険を顧みずして火を防ぐというこの職種から言えば、警察ないしは軍隊と同じような組織、同じような能率的な命令一下の組織的な行動がとれるという意味で現在の法制がわが国には適しておると私は考えております。
  42. 野田哲

    野田哲君 火災災害が起きれば、危険を顧みず命令一下でその業務に従事する、そのためにはいまの状態がいいんだと、こう言われるわけですが、消防職員に団結権を認めたときには、命令一下で火災の現場で消火活動に従事することにどういうふうな障害が起きるんですか、団結権と消防活動に従事することとは関係ないでしょう、これは。
  43. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) その点は予測ということになりますか、現在ない状態を想定するのでございますから、これはいろいろな御意見があろうというふうに考えておりますし、団結権とスト権とはまた直接に関係がないし、団結権と消火活動公務遂行にも関係ないじゃないかというのも御説としてはそのとおりであろうと思いますけれども、じゃなぜ一体、現在軍隊、警察、あるいは日本においては消防、これに団結権を与えていないかという場合に、先ほど私が申しましたように、直接の危険を冒しての相当危険を持った仕事、しかもそれを拒否できない、命令一下軍隊的な組織でやらなければならない仕事という中にやはり消火活動というものも入っていると思います。現在の警察、軍隊、あるいは消防というものに団結権という形でその原理を持ち込みます場合、どうしてもその労働理論というのは労使対立という観念、そして対等であるという観念、そして利害対立という観念のもとに運営をされる、その観念をこの消防の組織に入れるということは、少なくとも現在のわが国の状況では適当ではないという考え方をとっておる次第でございます。
  44. 野田哲

    野田哲君 自治省の行政局長に伺いますが、同じ地方自治体職員消防職員でない一般職員、これは現行法で曲りなりにも団結権があるわけでありますけれども、各地で風水害とかあるいは地震とか、いろいろ災害があって、一般職の職員に対しても災害に対して待機命令が出たり、あるいは防災活動に従事している、こういう例がたくさんあるわけですが、団結権があったために、保障されていたために救助活動、防災活動に支障を起こしたという例がありますか。
  45. 近藤隆之

    政府委員近藤隆之君) 具体的な事例について私が現在承知しているわけではございませんけれども、やはり消防というのはそういう職種であるということだろうと思います。一般職員はそういう災害等の場合に……
  46. 野田哲

    野田哲君 あなた、聞いたことを答えなさいよ、聞いたことを。
  47. 近藤隆之

    政府委員近藤隆之君) 臨時的にそういうことを行うということであろうかと思います。
  48. 野田哲

    野田哲君 いや、聞いたことを答えなさいよ。県庁の職員や市役所の職員が、風水害等で堤防の決壊等の危険があるというときに防災活動などに出動しているでしょう。それが、県庁の職員や市役所の職員に団結権があるからということで、その救助活動、防災活動に差しさわりがあった例が全国で具体的にありますかと、こう聞いているんです。
  49. 近藤隆之

    政府委員近藤隆之君) 災害等に際しまして、団結権があるということを理由で出動を拒否したという例があるということは、私は現時点では聞いておりません。
  50. 野田哲

    野田哲君 林さん、一般職員に団結権、曲がりなりな団結権ですよ、これも。しかし、団結権が.あるからということが災害に際しての防災活動に支障が起こった例はないと、こういうふうに行政局長は言っているんです。あなたも行政局長が長かったわけだから知っているわけでしょう。結局あなたが消防職員はだめだというのは、あなたの認識では、これはいま何回も引き合いに出された警察官と同じように扱われるべきだというが、消防職員と警察官というのがどうして同じであるべきなんですか、全然違うでしょう、これは。
  51. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) やはり、職種としてそういうふうに非常な身に危険がある、危険があるけれども、それに対して積極的にいどんでいくことを拒否するわけにはいかない。一方は火に対して闘う、一方は犯罪その他に対して闘いをするわけでございます。そういう意味で、軍隊式に命令系統が非常にはっきりした、しかも事態に処した機敏の行動をとらなければならない、そういう職種であるという意味で、私は警察と消防というのは非常に類似性があると、そのほかにいろいろ、たとえば法的に即時強制権があるとかいろんな議論がございますが、それは先生十分お詳しいと存じますし、私もここで繰り返せば時間をとるばかりでございますが、そういう職種として国民の生命財産を侵害するものから守る、一方は人為的な犯罪であり、一方は火という自然的なものですが、場合によっては人間よりもはるかに凶暴であります。こういうものに対して一般人民の生命財産を守るという職種、この職種については非常に共通点があるというふうに考えております。
  52. 野田哲

    野田哲君 ILOの話も出たわけですが、ILOの専門家委員会とか、結社の自由委員会で出されている見解というのはあなたのおっしゃるような見解とは若干違いますね、これは。一九七三年三月のこの専門家委員会の意見では、「消防職員の職務が軍隊および警察に関する本条約第九条に基づいてこの種の労働者を除外することを正当化するような措置のものであるとは考えない。」と、こういう見解があるのをあなた御承知ですか。
  53. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 十分承知しておりますが、したがって、わが国の社会的な現状においては、そういった、消防というのが警察の概念に含まれることが妥当であるということをILOに理解してもらうために何度となく意見を出し、実情の報告をし、いままで努力を重ねてきております。しかし、ILOの専門家委員会ないしは結社の自由委員会が、現在先生がおっしゃったような意見を持っておることは十分承知しておりますが、なおその八十七号条約を批准する時点においては、わが国の消防が警察に含まれるということに関して、わが国内でも政労使三者の構成委員会でも認められておりますし、ILOの結社の自由委員会でも、二度にわたって日本ならそれでよかろうという見解を出していることも事実でございます。その後専門委員会で違った見解が出されましたので、われわれの方では大変戸惑ってはおるわけでございますけれども、いまのわが国の実情からして、従来わが国の考えてきたことが一番適するのだという理解をILOに求めるようずっと努力を続けてまいっておる次第でございます。ILOも、昨年においては、この問題は本質的に国内問題なんだから国内の立法的な解決をしなさいということも言ってきておる。ただし、その後に後がついて、なるべくILOの考えているのに合致するようにすることが望ましいとは言っておりますけれども、同時に、本質的には国内問題だというのを言ってきておるということは、これは先生我田引水の解釈だと言われるかもしれませんが、私たちは、日本政府の繰り返しわが国内においてはこういうものであるという主張に対して理解を示した一つの姿であろうというふうにも考えております。
  54. 野田哲

    野田哲君 ILOの結社の自由委員会の中では、この団結権と争議権は相異なる二つの問題だ、こういう見解もあるわけです。どうもこの問題についての政府側の認識としては、団結権イコール争議権と、こういうふうな短絡的な物の考え方を消防職員に持っていて、団結権を与えればすぐ消防職員がストライキをおっ始めて、火事のときにもストライキをやって消しに行かないような状態が起きるんじゃないか、こういう短絡的な認識がずっと続いているんじゃないかと思うんですが、これはやはり私は認識を変えなければいけないし、現行法はこうだからということでいつまでもそれにしがみついているという形は、私はもう古いと思うんですよ。あなたの方では、福田総理はよく先進国首脳会議などに得々として出ていかれているが、ILO加盟国の中で先進国というふうに考えているところで消防職員の団結権を禁止している状態がどことどこにありますか、これは。
  55. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) 前段の団結権を与えるとすぐストにつながると、団結権を一たん与えれば、もう火事のときでも消防はすぐストをしてしまって、というふうに短絡的に考えておるということでは私はないと思っております。確かに、理論的には団結権とスト権は全く別物でございますし、それから、仮に団結権があっても、あるいは仮にスト権があっても、火事というような場合にストライキを理由に出ていかないというような非常識なことはせぬという当事者の一方側の御主張もまことにそうであろうと実は思っておりますけれども、ただ、現在のわが国の実情としては、団結権はあり、スト権がないケースで、事実上ストないしはそれに近い行為が次々と行われているという事態もやはり私たち考えなきゃいけないというふうに思っておりますし、ILOでは、明らかに団結権とスト権は別だと、こう言っておりますけれども、実際の時の勢い、どういう運営をされるかということに一〇〇%自信が持てない、したがって、常に団結即ストと短絡的には考えておりませんけれども、団結権だけあった場合にそれがストないしは類似行為に走る懸念があるということは、やはり頭のどこかに考えておかなければいけないことではないかと思っておる次第でございます。  それから、後段のILO加盟国の中で消防職員に団結権を認めていない国が何ぼあるかという御質問でございますが、消防職員に団結権がない国が、ILO加盟国の中で二十四カ国ございます。それで、この内訳は、労働者にさえ団結権を認めない国、これが二つ、それから公務員一般に団結権を認めていない国、これが十五、で、特別法で消防職員だけの団結権を否定する国、これが四でございます。それから、警察職員に団結権を認めず、警察が消防を扱っている国、これが二、それから軍隊に団結権を禁止し軍隊が消防を扱っている、これが一、合わせて二十四カ国消防職員に団結権を認めていない国がありまして、この二十四のうちの十二カ国が八十七号条約の批准国でございます。
  56. 野田哲

    野田哲君 ILO加盟国というのは百をかなり超しておりますね、百三十ぐらいですか。そのうちのわずか二十四カ国ですね、しかもこの二十四カ国の中で、あなたの方がこの中に拾い上げているのは、一律に禁止しておる状態でなくて、たとえばアメリカの場合もこの二十四カ国のうちに入っているんだろうと思うんですが、アメリカの場合は州ごとに州の法律によって禁止しているところが幾つかある。そういう状態までも二十四カ国の中に入れているわけでしょう。どうですか。
  57. 林忠雄

    政府委員林忠雄君) それはそのとおりでございます。アメリカの場合はアラバマ州とノースカロライナ州で、これは公務員一般に団結権を認めていないということで、ほかの州ではいろいろな形の変化はあると思います。したがって、アメリカは州ごとに形が違うものですから、八十七号条約自体を批准しておらない、さらにILOを今度は脱退してしまいました。それから、さっき申しました軍隊に団結権を禁止し、消防が軍隊組織に含まれる国、私一と申し上げましたけれども、これはフランスでございますが、フランス全土ではなくてパリとマルセーユ、この二つだけでございます。ですから、正確に言えば、その国全体ではなく、その国の一部に別の法制があって禁止しているのをいま数え上げました。それは正直に申し上げますが、それで二十四カ国でございます。
  58. 野田哲

    野田哲君 世界の大勢は、これは消防職員については団結権を保障しているというのが世界の大勢になっているわけです。先進国というようなことを自称する日本の政府の措置としては、もうこの状態というのは、国際的には非常に古い頑迷固陋な態度だと、これは現行法体系を再検討すべきだということを私は要望して次の問題に移っていきたいと思うんです。  今度のこの二つの法案でありますけれども、この運用についての考え方を伺いたいと思うんですが、まず一つは、今度の法律によって管理職の範囲の問題が取り扱われているわけですけれども、この管理職の範囲については、この法改正によってその範囲を拡大をするという考え方に立ったものではない、範囲を明確にするということで、拡大をするという考え方に立ったものではない、こういう理解でいいわけですか。これは総務長官、それから自治大臣、それぞれ伺いたいと思います。
  59. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 現在の国家公務員法地方公務員法の規定は簡潔にでき上がっておると、こういうような関係から恣意的に解釈をされるという、こういう疑問点がなかったわけでもありません。そういう意味からこれをなくするということで、今度の改正案では、労働組合の方の規定を参考として具体的に規定をしたものであって、この幅を広げたりあるいは狭めたりということはないわけであります。こういうことでぜひ御了解を賜りたいと思っております。
  60. 加藤武徳

    ○国務大臣(加藤武徳君) 御承知のように、昭和四十八年に公務員制度審議会から答申がございまして、その答申は「管理職員等の区分について」と、「管理職員等の区分については、労働組合法第二条の規定に準じて、その規定を整備するものとする。」と、かような答申でございます。したがって、今回の改正は労働組合法第二条に準じまして、公務員制度審議会の答申の趣旨に沿いまして規定の整備をいたすと、かようなことでございますから、拡大等一切考えておらないと、かようなことであります。
  61. 野田哲

    野田哲君 この実務を取り扱う人事院の方ではどういう認識をお持ちですか。
  62. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 管理職員の範囲につきましては、現行の規定が労働組合法の規定と若干違っておりますが、その趣旨、精神というものは私は全く同じであるというふうに従来から解釈し運用に当たってきたつもりでございます。事実現行の規定の解釈上も、労働組合法第二条の規定の趣旨、精神にのっとって運用をしてまいっておるところでございます。いま両大臣からもお話がございましたように、今回の規定の改正につきましても、その点やっぱり労働組合法第二条というものと、はずを合わせてもう少し詳細に規定をしておくことが、いざという場合に乱用を防止するという意味からいって適切ではないかという趣旨からこういう答申がございまして、また法案として御審議をいただいておるというふうに解釈をいたしております。したがいまして、私たち本法の運用に当たります者といたしましても、従来もそうでありましたが、今度の改正によりましても、これによって管理職員の範囲についてさらに拡大をするとかその他のことは一切考えておりません。従来どおりの方針で運用をしてまいりたい、かように考えております。
  63. 野田哲

    野田哲君 先ほど総務長官の答弁で、この運用によって恣意的に扱われないように考えなければいけないというふうなお話があったわけですが、この法文を読んでみると、やはり懸念されるのは、「参画する」者とか、あるいは「当局の場合に立って」、こういうような字句が使われているわけです。これはやはり、運用によっては非常に私は拡大をされる危険性があると思うわけなんです。そういう点については恣意的な拡大解釈をしない、こういうふうに理解をしておいていいですか、いかがですか。
  64. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) お答えを申し上げます。  いま先生から「参画する」あるいは「当局の立場に立って」というような表現を恣意的に解釈するおそれはないかという御質問でございましたけれども、「参画する」というのも、法令上は、先生方十分御存じのとおり軽々しい表現ではございませんで、たとえば政務次官の定義でございますとか、あるいは審議官とか、あるいは参事官とか、そういう者にはしばしばそういう表現が使われておりますが、そういう意味におきまして、私たちがここで考えておりますのは、たとえば局議の構成員でございますところの審議官とか部長とか、あるいは参事官とか課長とか、そういう者を指すものと思っております。しかも参画するだけではございませんで、「参画する管理的地位にある職員、」ということでございますので、そういう意味におきましても、何かあいまいなことでずっと下の方まで入ってくるんではないかということは歯どめがかけられているというふうに存じております。  それから、もう一つの「当局の立場に立って」ということでございますが、それは労働組合法の方におきましては、「その他使用者の利益を代表する者」というような表現に対応するわけでございますが、公務員の関係におきましては、「使用者の利益を代表する」というような、そういう表現では適当でございませんので、そこに書いてあるような条文案になっているわけでございますけれども、ここで予想している管理職も、たとえば本省におきましては、人事関係で当局の立場に立っていろいろなことをする、そういう人事の係員でございますとか、そういう者でございまして、従来とも人事院規則等におきまして管理職員の範囲に入っているわけでございまして、これを広く解釈をするということは許されないというふうに思いますし、私たちも心してそういうふうにしていきたいというふうに思っております。
  65. 野田哲

    野田哲君 いまそういうふうなお答えがあったわけですが、従来の例を見ても、この「参画する」とか、あるいは「当局の立場に立って」というような字句を拡大解釈して、悪用して、かなり非常識な管理職の範囲を定めている例も私は幾つか承知をしているわけなんですから、これはやはり今後常識的な範囲に、いまお答えがあったような趣旨によって、そういう非常識な範囲にまで拡大をされていることについては是正をしていく措置がとられるべきであると思うんですが、この点は国家公務員、地方公務員、それからこの認証機関である人事院、それぞれどういうふうに考えられますか。
  66. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 先刻もお答えを申し上げておりますように、私たちは今度の改正というものは、実質的には何ら趣旨に変更があるものではないという前提に立って物事を考えておるつもりでございます。いま先生から、従来ともすれば、何か少し無理なようなものまで管理職員の範囲に入っておるようなものもあるのではないかというような御懸念の点がございましたですが、私たちはそういうことは万々あるまいというふうに考えております。と申しますのは、この規定の趣旨自体が、やはり職員団体の自主性ということをねらいとして考えられておるところでございますし、そういう点では、労働組合の自主性というものをねらいとする労働組合法第二条の規定の趣旨と全く同じわけでございます。そういう認識に立って運用をしてまいっております。したがいまして、これは先生もお詳しいように、最初この管理職員の範囲を決めます段階においては、私も当時人事院におりましたですが、最初のことですから、いろいろすったもんだというやりとりがあったこと、これは事実でございます。しかし、そのうちにやっぱりだんだんと一つの線といいますか、ルールというものができてまいりまして、これが形成される段階におきましては、使用者側あるいは団体側というものの意見がいろいろ出されまして、だんだんと煮詰まってまいって一つのルールができてきたということに相なっておるというふうに私は理解をいたしておるのであります。事実これを決めます際には、やはり各省の関係者あるいは組合側というものから、いろんな御意見も出てまいりますし、事実上われわれはそれを虚心に受けとめていろいろ検討して結論を出しておるということでございますので、これはわれわれとして少し口幅ったい言い方ではございますが、いまやルールができておりますので、まあ一〇〇%皆さん方に満足だというふうなことを申し上げることは、これはいささか行き過ぎかとも思います。思いますが、しかし大体において、いまのやり方というものについては御理解がいただいているのではないかというふうに私は考えております。今後ともこの趣旨というものはあくまで堅持をいたしまして、今度の改正というものが、管理職員の範囲を拡大するという趣旨のものではないんだ、あくまで本来の趣旨にのっとって、従来の実質的な趣旨をさらに明確化するためにやったんだということを私は考えておりますので、その線に沿って今後とも厳正な、しかも常識的な運用を図ってまいりたい、かように考えます。
  67. 野田哲

    野田哲君 地方公務員の認証機関を指導する自治省としてはどうなんですか。
  68. 近藤隆之

    政府委員近藤隆之君) それぞれの地方団体におきますところの管理職の範囲というものは、それぞれの権限の配分の状況、職制、そういったものによって客観的に決まってくるわけでございます。そういったものにつきまして、第三者機関でございます人事委員会、公平委員会、それが規制をもって定めるということでございまして、先ほど人事院総裁等からもお話ございましたように、今回の改正は従来の管理職の範囲を改めるものではございませんので、その旨につきましては十分地方団体を指導してまいりたいと思います。  それから、先生の御指摘の基準と申しますか、非常に広く管理職の範囲をとっておる地方団体があるというような御指摘でございますが、このことは今度の法改正とは別問題でございまして、それぞれの地方団体におけるところの、先ほど申しましたような権限の配分、職制の状況、そういったものを見まして、第三者機関である人事委員会、公平委員会等が公正に判断すべきものであるというふうに理解しております。
  69. 野田哲

    野田哲君 認証機関扱いですけれども、先ほど総裁の方でも触れられていたわけですが、今度の法改正によって、いままでずっと定められてきた管理職の範囲を変更するとか、あるいは新たに管理職の範囲を決定する、こういうような場合に、それぞれの関係の職員団体の意見を述べる機会を持つ、事情聴取、こういうような形で、それぞれの職員団体の意見が決定に当たっては事前に反映をできる、こういうような運営がされるべきだと思うんですが、この点は人事院、それから地方の認証機関の指導に当たる自治省の方ではいかがですか。
  70. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 正式の手続として管理職員の範囲等を決める際に、事前に団体側の意見を聴取するとかいうようなことは、これは現在の法体系のもとではそういうふうにはなっておりませんのでそういう手続はとりませんですが、先刻も申し上げましたように、実質的には大変緊密な連絡がございます。各省庁で何かやろうとすれば、それはやはり各省庁関係の団体が、すぐにそいつはあらかじめ知っておるというようなことはこれは現実でございます。それが人事院の方に参った段階におきまして、当然事務当局側といたしましては各省庁の当局側の意見も聞きますし、また、実際上それに関連して何か意見がある場合は職員団体側も意見を申し述べてまいります。実際上われわれの方といたしましては、別に意見はないなというようなことの念押しをすることもございます。実際上は、いま先生おっしゃるようなことは事実上行われておるというふうに私は理解をいたしております。したがいまして、先刻申し上げましたように、現在はこの決定手続その他についてそれほどの別にトラブルというものはない、一応のルールというものは確立しておるんだというふうに解釈をいたしております。したがいまして、今後行政の改革なり組織の変更なり、そういったことがございまして別の評価をしなきゃならぬということは、これは別問題でございますが、従来のやり方というものにのっとってやっておりまする事柄につきましては、今度の法改正によって何ら変更を来すものではない、そういう立場で運用をしてまいりたい、こういうことでございます。
  71. 近藤隆之

    政府委員近藤隆之君) 地方公務員の場合におきましても、ただいま人事院総裁から御説明申し上げたとおりでございます。制度上の問題はともかくとして、現実問題といたしましては、当局あるいは職員団体、そういったところなどからいろいろな意見が出てくるだろうと思います。要は適正な管理職の範囲というものが決定されればいいことでございますので、第三者機関でありますところの人事委員会、公平委員会、そういったものが、そういった意見を踏まえてどういうふうに判断するかということだろうと思います。
  72. 野田哲

    野田哲君 法人格の問題について両大臣と、それから認証機関である人事院に基本的な見解を伺っておきたいと思うんですが、法人格付与に関する法律ですが、私どもとしては、これはいままで公務員の全国的な連合組織あるいは地方的な連合組織、これが実際の活動はやっているんだけれども法人格が与えられないということについて、これに法人格を与えるということ、これが目的でつくられたものだというふうに最初は受けとめていたわけですけれども、法案をずっと読んでみますと、法人格を与えるについてはこういう条件が整っていなければいけないぞというような形で、むしろ法文から受ける印象は、法人格を与えるという口実のもとに現在実態としてある団体に対していろんな難癖をつける、端的に言えば難癖をつけたり条件をつけたりする。こういう条件を整えなければ法人格を認めないぞと、こういうことで、むしろ印象としては規制をする印象の方が強過ぎるんじゃないか、前に出過ぎているんじゃないか、こういう印象を非常に強く持つわけなんです。この点が一つの懸念として、今日まで長く三回もこの法案が出ても日の目を見なかった問題点だと思うんです。だから、ここまでいろいろ審議をしてきているわけだし、関係の団体ともいろいろ協議を続けられてきたわけでありますから、この法案の運用に当たっては、これは目的どおり法人格付与するということが目的であって、活動を規制するためにつくったものではないんだと、こういう立法の趣旨でなければならないと思うんですが、その点に対する両大臣の見解と、それからあと認証事務を扱う人事院の総裁の見解をお聞かせいただきたいと思うんです。
  73. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 御指摘のとおり、法人格付与できるような資格のあるものについては、これはやはりその道を開いていくことは当然であると、法人格付与についてはそれなりのメリットがあるわけであります。しかしながら、法人格を与えない組合に対しても、何らこれを与えられたものと与えられないものとの差はあるものではないと、法人格付与によって団体活動を規制したり、あるいはまたこれを阻害するというようなことは絶対ないと、こういうことでございます。
  74. 加藤武徳

    ○国務大臣(加藤武徳君) 御承知のように、現行の登録制度とは切り離しまして法人格付与の法案の御審議をいただいているわけでございますけれども、しかし、法人格を取得するから、あるいは付与するからといいまして、職員団体等活動に制約を設ける、かような考えはみじんもございません。
  75. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 両大臣のお考えと全く同じでございますが、この法人格付与法案というのは、国家公務員法あるいは地方公務員法に基づいて、登録団体たり得ない団体、特に全国的あるいはそれに準ずる連合団体、しかもそれはやはり公務員が主体であるというものについて、その活動上財産権の主体となったりあるいは財産を運用するという主体になったり、そういうことができる道を開くことが非常に便宜ではないか、その団体のためにもなるのではないかというような趣旨からこの法案ができておるのだというふうに解釈をいたしております。したがいまして、この法案によりまして、その本来の団体自体活動が、従来より特に規制をされたり制約をされたりすることとはもう全くねらいが違うと思うのであります。極端な言い方をすれば、そういうおそれが仮にありといたしますれば、その連合団体自体法人格付与のための認証手続をしなければそれで事足るわけでございまして、そういうねらいでは全くございません。その団体のために要するに利益になること、いまより一歩進んだ活動の基盤が与えられること、それをねらいとしてこの法案ができ上がっているというふうに私自体は解釈をいたしております。したがいまして、今後実際これが法案が成立をいたしまして、その後認証の手続が進むという段階におきましても、われわれ認証機関といたしましては、その基本的な立場に立って、あくまで本来の趣旨というものから見て、法人格を与えるためにはどの程度は団体の自主性なり規律性というものが確保されているかということだけは見ますけれども、そのほかの、やはり本来的な団体のいろいろな活動その他について制肘を加えたり制約をしたり、そういうことは毛頭考えないという趣旨で運用をしてまいります。
  76. 野田哲

    野田哲君 終わります。
  77. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後は一時から再開することとし、休憩いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時九分開会
  78. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国家公務員法及び地方公務員法の一部を改正する法律案及び職員団体等に対する法人格付与に関する法律案を一括して議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  79. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私はまず前段に、法案に若干関係がございますのでスト権の問題についてお尋ねをします。  最近マスコミの報道によりますと、国鉄などの三公社五現業の職員のスト権付与是非に関する公共企業体等基本問題会議の意見書の原案骨子が明らかにされておるようでございますが、そこで、この会議はいつまでに総理に答申を出すのか明らかにしていただきたいと思いますが、新聞報道によりますと、六月十九日に答申が出るようだとも言われておるようでございますが、それと、いままでの会議の経過と今後のスケジュール等についても明らかにしていただきたいと思います。
  80. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 公共企業体等基本問題会議につきましては、一昨年の秋以降、現在までに約百七十回以上に及ぶ会合を行っておりまして、当時会合を始めるに際しまして、一応おおむね二年間、本年の五月または六月ごろを目途に最終的な結論を出すという状況で始まったわけでございます。その後順調に審議は進んでおりまして、現在、内容にわたりますが、内部的な三懇談会のそれぞれの懇談会についての結論はすでにほぼまとまっておりまして、内部的には明らかにされております。  それから、最近新聞紙上に出ております争議権問題との関連において、その三懇談会の報告書を踏まえてどのように基本問題会議を取りまとめるかという点につきましては、座長、部会長を務められました十二人の委員の方にお願いいたしまして現在会議が進められておりますが、昨日第四回目の会合が行われました。今後の見込みといたしましては、次回十六日に最終的な調整が若干残されておりますので会議を行う予定となっておりますが、その十六日以降、もし順調に審議が進み最終的に意見がまとまれば、十六日以降可及的速やかに政府に対しまして意見書の提出が行われると、このように承知しております。
  81. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 国会も十六日に閉会になるわけでございますが、その会合が十六日になって、総理に対する答申というのはその後になりますと国会閉会中ということになりますが、どうして、そういうふうに国会の開会中に間に合わせることができなかったのか。スケジュールを見ますと、五月にこの二懇談会の報告書を取りまとめるという状態にスケジュールはなっておったようですが、おくれた理由等についてお聞かせ願いたいと思います。
  82. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) 三懇談会八部会から成ります委員九十七名をお願いしております非常に大きな組織でございまして、若干ずつ審議がおくれてまいりましたという問題と、最後の争議権との関連において意見書を取りまとめるかどうかについて、一部新聞紙上で報道されておりますように、その取りまとめ方に非常にむずかしい点がございました。若干時間を費やしたということでございまして、当初の予定どおり何とか六月中には意見書として基本問題会議からの政府への提出ができるのではないかと、このように考えておりまして、国会等との関連でこういう状況になりましたものではございませんので、できるだけ審議を促進すべく努力いたしました結果、ただいまのように六月中下旬ぐらいに意見書の提出が行われるだろうかと、こういう見通しとなっております。
  83. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 公表されていない時点でお聞きするのもどうかと思うんですが、新聞紙上の報道によりますと、スト権は付与しない方向のような報道がされておりますが、そういうような理解を持っていいものでしょうか。
  84. 伊豫田敏雄

    説明員伊豫田敏雄君) ただいまのところ会議は一応非公開ということで行っておりまして、民間の方に審議を依頼している状況でございますので、ただいまこの席で私からお尋ねの件につきまして何分の御返事を申し上げることは、できれば遠慮させていただきたいと、このように考えております。
  85. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 その問題はそれぐらいにいたしまして、次に、労働基本権の問題と関連をしまして国際人権規約についてお尋ねをいたします。  この規約は一九六六年十二月十六日に国連で採択をされ、すでに十二年間を経過しておりますけれども、いまだにわが国は批准をされていないのが実情でございます。A規約の批准は四十六カ国、B規約の批准は四十四カ国と、こういうふうに非常に多くなっておるわけでございますが、この批准について、いつごろこの人権規約について国会に提出をして批准をしようとしているのか、この期日の明示をしていただきたいと思います。
  86. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 人権規約、AB両規約ございますが、この規約の国会提出につきましては早朝にこれを行うべく政府当局としては努力を払ってまいった次第でございます。提出期日につきましては、まだ政府としての正式な決定はございませんけれども、今国会の会期中に提出を行うべくあらゆる努力を続けておる、所要の手続を進めておる段階でございます。
  87. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 もう国会もあと残すところ少ししかございませんが、この規約の国会提出が大幅におくれた原因は、政府部内の調整が難航したからだと、このように言われております。しかし、ようやく調整がついて五月三十日の閣議で正式に提出が決まったと、このように報道をされておりますが、その報道は正しいのかどうか。そこで、政府部内の意見の調整が難航したという具体的なものは何であるか、御説明を願います。
  88. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) ただいま御指摘のございました五月三十日の閣議決定は、この両規約に対する署名の決定でございまして、この決定に基づきまして、同日、ニューヨーク時間正午、園田外務大臣が軍縮総会出席の機会をとらえましてこれに署名を行われたということでございます。したがいまして、国会提出の閣議決定はいまだ行われていないという現況でございますが、一刻も早くこれの決定を仰ぎますように手続を進めておる現段階でございます。今日まで作業が、私どもが期待した以上の時日を要したのは事実でございますけれども、しかしながら、これはこの規約がきわめて広範にわたる内容を有するということから、その関連国内法令もきわめて広範に及んだわけでございまして、こうした国内法令との整合性及び整合性に問題がある場合の将来の方針について、それぞれについて細かく検討を進める作業が非常に膨大な量に及んだということが、この規約を国会提出するための作業が予想以上の時日を要した原因でございます。したがって、何か一つの問題がボトルネックになってこの作業が妨げられたということではございません。
  89. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 この国際人権規約が国会で批准をされるということになりますと、勢い関係国内法の改正、整備が必要になるわけでございますが、そこでA規約である経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の第八条一項(d)号に規定されている同盟罷業をする権利、この権利と、憲法第二十八条にあります労働者の団結権、団体行動の権利及び公労法の十七条、争議行為の禁止と、こういう三つの関係はどのように解釈をしておられるのか、説明願いたいと思います。
  90. 岡部晃三

    説明員(岡部晃三君) お尋ねの経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の八条一項(d)におきましては、同盟罷業をする権利を保障しているわけでございますが、御承知のとおり、わが国法制におきましては、国家公務員法地方公務員法、公共企業体等労働関係法、それから地公労法というような法律におきまして争議行為を禁止しているわけでございます。で、これらの規定はただいまの人権規約の規定とは必ずしも合致しないところでございます。したがいまして、この条約も認めているところでございますが、留保をこの条項につきましては必要な限度においていたすことにしておりました。これは、その理由と申しますところは、やはりこの国家公務員、地方公務員並びに公共企業体等の職員の職務の公共性、それから身分の特殊性、地位の特殊性というふうなことに基づきまして、わが国の法制とは相入れないという考え方に立つわけでございます。
  91. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、職員団体等に対する法人格付与に関する法律案について総理府に若干お尋ねをいたしますが、この法案によると、職員団体法人格は登録制とは切り離して付与すると、このようになっております。そうだとするならば、登録団体と非登録団体とは、先ほども質問があったようでございますが、実質的にはどのような現行法上の差異があるのか、さらに、登録制と切り離して法人格付与するというメリットを具体的に説明をしていただきたいと思います。
  92. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) お答えを申し上げます。  現行の国家公務員法あるいは地方公務員法というものは、登録された職員団体が人事院に申し出ることによりまして法人格が取得できる、そういう道がございます。また在籍専従の役員を持つことができるというような点、その他若干の利便が与えられているわけでございます。しかしながら、と申しますか、非登録団体の場合には、それではどういうあれかと申しますと、そういう点で若干の差異がございますけれども、いわゆる職員団体としての存在なり、あるいは交渉等を通ずる活動なり、そういう面におきまして、当局と勤務条件について交渉する、そういう点についてはもちろんそういう行動は認められているわけでございまして、いわば職員団体活動能力の面という面におきましては登録のみによって差異はない。先ほど申し上げましたような利便は登録団体の方に若干あるわけでございます。  それから、もう一つお尋ねの、今度の法律によりまして法人格付与することができた場合のメリットでございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、職員団体としての活動そのものには影響がないわけでございますけれども、いわゆる法人格を持つということによりまして、その団体の名前によりまして財産を取得できたり、あるいは維持運用するというようなことで、いわば経済取引の主体と申しますか、そういう地位を得るわけでございます。そういうメリットがございますほか、さらにこれは法人格を持ちました職員団体や、あるいは法人格を持っております労働組合と同じでございますけれども、たとえば固定資産税あるいは法人税あるいは所得税等について、そういう税制面において非課税の特例が認められる、そういうメリットがあると思います。
  93. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 登録された職員団体は、メリットとしては国家公務員法第百八条の六「職員団体のための職員の行為の制限」第一項のただし書き、それを受けた人事院規則一七-二、職員団体のための職員の行為の第一条「専従許可」によって在籍専従を置くことができると、このようになっておるようでありますが、そこで、登録職員団体の結成状況と在籍専従の状況について、最近のデータで結構でございますので説明してもらいたいと思います。これは国家公務員と地方公務員、一般、教育に分けて詳細に説明していただきたいと思います。
  94. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 国家公務員法に基づきます登録された職員団体の総数でございますけれども、昭和五十三年三月三十一日現在におきまして千九百八十四団体でございます。その組織人員は二十六万千六百七名、組織率は六三・二%となっております。なお、この組織率は、警察職員等の団結権が認められていない職員及び管理職員等を除いた一般職職員の在職者数に対する比率でございます。  それからなお、現在の登録職員団体には、管理職員等のみをもって組織する団体はございません。  それから次に、そのうちで法人格を取得しておる職員団体は、同じく本年の三月三十一日現在におきまして三百七十二でございまして、登録職員団体数千九百八十四に対しまして一八・八%でございます。  なお、詳細ということでございますけれども、省庁別等の内訳につきましては省略させていただきたいと思います。
  95. 石山努

    説明員(石山努君) 教育公務員を除く地方公務員についての登録職員団体の結成状況等についてでございますが、五十二年四月一日現在におきまして、職員団体の総数は三千百一でございますが、そのうち登録職員団体は二千七十五でございまして、法人格を持っている団体の数は四百六となっております。  なお、登録職員団体についてでございますけれども、在籍専従職員の総数は同じ時点で八百十五人でございます。
  96. 加戸守行

    説明員(加戸守行君) 公立学校職員関係の全国的な団体数でございますが、昨年の十月一日現在での調査によりますと、全国での団体、総教職員をもって構成する職員団体が二百六十九でございます。そのうち登録されております職員団体が二百二十一、その中で人事委員会または、公平委員会に申し出まして法人格を取得しておりますのが百八でございます。なお、そのうち大多数が日教組系の団体でございまして、ちなみに日教組系の団体に限って申し上げますと、登録団体が百二十五、そのうち法人格取得団体が七十四という構成でございます。  それから、在籍専従職員につきましても、昨年の十月一日現在での状況でございますが、全国で九百四十六名の在籍専従職員がございます。その内訳で大多数が日教組でございまして、日教組の関係の専従職員数が八百五十四名でございます。
  97. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 今回提案をされました法案の第八条に、職員団体の「認証の取り消し」という規定が設けられております。そしてまた第六条「認証の拒否」という項も設けられておりますが、提案理由の説明にもありますとおり「取消しの効力が生じた日から三年を経過しないものであるときは、認証を拒否しなければならない」、このようになっておりますが、そこでお尋ねをしますが、三年間という規定は長過ぎるんではないかという意見もあるわけでございますが、三年間ということにされた根拠は何でしょう。
  98. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) いまお尋ねの点でございますけれども、この法人の取り消しにつきましては非常に詳細なといいますか、慎重な手続がなされておりますし、そういう意味におきまして、まあ法人の取り消しということはほとんどない、めったにない、希有のことであるというふうに私たちは思っておりますが、もしもそういうふうなことで法人格が取り消された団体があります場合には、それはこの法の趣旨に照らしまして法人格を与えるにはふさわしくない団体であるということを意味するわけでございますので、そういたしますと、一方この法律の立て方でございますけれども、認証というのはいわゆる許認可主義と申しますか、出てきました規約をいろいろな面から審査をして許可をする、認可をするというたてまえではございませんで、一種の準則主義、すなわちここに書いてあります一定の条件を満たしさえすれば認証機関によって認証をされるというものでございます。そういうことでございますので、取り消されてまたすぐその同じ団体が認証の申請を出すということになりますと、これは制度自体意義が失われてくるばかりではございません。第三者の保護という見地から見ても必ずしも適当でないということになるわけでございまして、いま御指摘のようにそのうち三年間は認証を受けられないということにいたしたわけでございます。  お尋ねの第二点でございます、三年は長過ぎるではないかという御批判でございますけれども、これはこの法人格を与えることということは、もちろん団体そのものにとっても、先ほど申しましたようなプラスがあるわけでございますけれども、一方、そういう法人ができたことによりまして、その取引の相手方になるような第三者の利益というものも十分保護していかなければならないわけでございまして、これが先ほど申しましたように、万一取り消されたような団体があって、また次に準則主義にのっとってすぐ新しい認証が行われるということになりますと、その旧法人と新法人の差異がどこにあるのかという判断もなかなかりきがたいわけでございまして、そういう点でそういうものの差異が十分に判断ができるような、そういう一定の期間が必要ではないか、そのための期間というのは、常織的に見て三年程度が必要なのではないかということでそういう規定を設けさせていただいたわけでございます。
  99. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 さらに、認証の取り消しの要件の一つとして、第八条一項三号に、「団体活動として規約に定める目的を著しく逸脱する行為等を継続し、又は反覆することにより、構成員の勤務条件の維持改善を図ることを目的としていると認められなくなったときを含む。」と、このように規定されておるようでございますが、そこでこの規定は、認証機関である人事院、最高裁、人事委員会等が恣意的判断を招くおそれがあるというふうに組合側は警戒しておるようでございますが、どのような基準で運用しようとされるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  100. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) いまお尋ねの点は、第八条の第一項の第三号の括弧書きの問題でございまして、これはその三号の括弧書きじゃない部分、本文の部分は、「規約に、構成員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とする旨を定めた規定」がなくなった場合と、これはそもそもそういう勤務条件の維持改善を図ることを目的とする団体じゃなくなってしまうわけでございますので、そういう点で認証が取り消されるのは当然だと思いますが、その場合に、そういう規約がございましても、事実上の問題といたしまして、その運用に当たりまして明瞭にあるいは客観的に、もう明白にそういう団体そのものではなくなってしまったんだと、そういうふうな判断ができるような場合には、やはりこれは同じように法人格を与えるのには適当ではないのではないかということでございます。で、もちろんこれが恣意的に解釈されることはよろしくないわけでございまして、そういう御指摘はまさにそのとおりだと思いますけれども、先ほども申しましたように、この認証の取り消しにつきましては、条文上で申しますればこういう場合には認証を取り消すことができるんだという規定でございますし、それから、認証の取り消しの手続というものも非常に慎重な要件を備えております。また効力発生時期につきましても、たとえば裁判所に提訴している間はそういう発効はないんだという慎重な手続もしておりますし、それから、認証を取り消すこと自体は、いわば公平な第三者機関でございます人事院初め、そういう機関によって行われるわけでございますので、いずれにいたしましてもそういう恣意的な運用ということは絶対にないだろうというふうに確信をいたしております。
  101. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次に、本法案の第十条「報告、協力等」という項がございますが、これによりますと、「認証機関は、職員団体等に対し、」「必要な限度において、報告又は資料の提出を求める」、この規定が設けられておりますが、組合側の方では、認証機関がこの規定の乱用によって、労働組合と、その運営活動に不当な介入、干渉を招くおそれがあると、このような心配をしておるようでありますが、福そので「必要な限度」という基準、さらに報告または資料の提出を拒んだ場合どのような措置をとろうとされるのか、説明を願いたいと思います。
  102. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) ただいまの御質問は第十条に関するものでございますけれども、これはそこの条文にも書いてございますように、まさに「必要な限度」でございまして、その必要な限度を超えるような不必要な資料の提出等を求めることを許した規定ではないわけでございます。必要な限度というのが、じゃどういうところだということは、これは個々具体的に何を必要とするか、何を求めるかということによって決まるわけでございまして、いまここで必要な限度という基準というものは申し上げられませんけれども、抽象的に申しますれば、先ほど申しましたように過度なあるいは不必要な資料要求等が許される条文ではございません。  そしてもう一つ、お尋ねの拒んだ場合はどうなるかということでございますけれども、これは、たとえばその認証を申請するような場合でございますと、規約の提出その他に関するものでございますと、これは当然組合側としても必要な資料を出されるわけでございますので、まあ拒否をするというようなことは通常考えられないところでございますけれども、法的に申しますれば、仮にそういうことが生じました場合でも、この条文からおわかりのように、別に罰則その他特別な規定を設けているわけではございません。
  103. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 きょうは総理府の関係でございますので、いまからはちょっと関連した質問をさしていただきたいと思います。  実は、私は四月に当委員会で恩給法の質疑の際に、ソ連に強制抑留された旧軍人等の補償問題について若干政府側の意見をただしたわけでございますが、その当時は時間の制約がございまして満足な質問もできませんし、また満足な答弁も引き出すことができなかったわけでありますので、きょう改めてお尋ねをいたしますが、そこで、まずこの問題はポツダム宣言と深いかかわり合いがあるわけで、とりわけその第九項は最も重要な部分であるので、その部分についてわかりやすく説明を外務省にしていただきたいと思います。
  104. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいまお尋ねの点はポツダム宣言第九項の規定と解釈いたしておりますが、この規定は日本の軍隊に関する処置を定めたものでございまして、「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」と規定しているわけでございます。したがいまして、少なくとも戦争犯罪人と言われますような、国際法的に認められた者の処罰等に関する正当な理由がなくして抑留され、長く引きとめられるというようなことにつきましては、このポツダム宣言の第九項に違反する行為であったと、このように考えられます。
  105. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 いま御答弁で、ポツダム宣言の第九項の違反をソ連はしたと、このように解釈をしてよろしいということの答弁と、このように理解してよろしいですか。
  106. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 私どもは、ソ連がポツダム宣言第九項に違反したものと解しております。そのように御解釈していただいて結構でございます。
  107. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 そうしますと、五十七万五千人の抑留者の多くが、強制的に抑留されただけではなくて、森林伐採、工場、鉄道、発電所等の建設、石炭の採堀等の強制的重労働に従事させられていた、そうしたことは帰国者の証言によっても明らかなようであります。しかも、食糧事情も劣悪で、それによって栄養失調、肺結核、急性肺炎、赤痢、発疹チフス等の伝染病にかかり、死亡した人も多く、全体の約一〇%に及ぶ死亡率となっておるようでございますが、こうした悲惨な事態について政府はどのように受けとめていらっしゃるのでしょうか。
  108. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 最初にお答え申し上げました中で申し上げましたように、正当な理由なくして抑留され、あるいは強制労働に従事させられ、あるいは疾病のために死亡されたと、このような方々の御労苦はまことに大変なものであったと私ども考えております。この点大変遺憾なことでございます。ただ、当時戦中、戦後にかけましては、日本国民挙げていろいろな犠牲を払ったことでございますので、この点に対しては、やはり国民全部がしょっていかなければならなかった一つの大きな犠牲の一つであろうと考えております。
  109. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 このように幾多の犠牲を強いられながら、強制労働によってもたらされた生産利益というのは、ソ連側にとっては大きかったことは、これは多言を要しないと思います。この点について日ソ共同宣言の第六項と深いかかわり合いがありますので説明と解釈を求めたいと思いますが、ソ連が一切の賠償請求権の放棄をうたっておるわけでございますけれども、皆さん御承知のとおり、旧満州からはソ連は相当な資材も撤去して搬入をしておりますし、また五十七万五千の強制抑留者の強制労働の生産利益は全部自国のものにしたと、こういうようなことからしますと、私は非常に国際信義上も許せない行為じゃないかと、こういうふうに思うわけでございますが、そういうことを踏まえて御説明願います。
  110. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいまお触れになりました日ソ共同宣言第六項でございますが、この規定は「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。  日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に放棄する。」、この規定でございます。ただいまお尋ねの点につきまして、抑留者が強制労働させられた結果ソ連として非常に大きな経済的な利益を得たのではないか、それから、いろいろな財産の略奪、押収、接収と、こういうものを含めましてソ連がいろいろな利益を得たのではないかと、こういうことでございますが、この点は私事実と考えております。しかしながら、そのような事実がございましたといたしましても、法的にはわが国としてこれを賠償の一つの形態として認めたと、こういうことではないわけでございます。
  111. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 賠償の形態として認めたわけではないと言われますけれども、両国間の請求権というものは放棄したと、そういうことになりますと、事実は五十七万幾らの人たちがいろいろ強制労働させられて、その役務賠償みたいな利益はソ連が全部取っておるということになりますと、そこらあたりはどういうふうに解釈すればよろしいのですか。
  112. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) お尋ねのとおり、ソ連側が日本の旧軍人、将兵、軍属等を使用することによりまして幾多の経済的利益を得たという事実は実際にあったと考えておりますが、これを私どもは賠償とは認めておらないということでございまして、単なる事実としてそのようなことが行われたということでございます。他方、共同宣言六項におきましては、ソ連側は戦後の賠償請求権を放棄し、日ソ両国とも請求権を相互に放棄し合うということを協定いたしまして、戦後の国交回復をもたらした次第でございます。
  113. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 局長にお尋ねをしますが、いま全国的に、全国戦後強制抑留補償要求推進協議会と、こういうような団体が結成をされて、要するに、戦後強制抑留をされた、その補償について要求をするという運動が行われておるということを承知していらっしゃいますか。
  114. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 私、詳しくは承知しておりません。
  115. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 これはもう全国的な運動でございまして、承知していらっしゃらないようでございますので必要なところだけをお読みしてみようと思いますが、陳情書の一部でございますが、   我々を終戦後ソ連軍は、無法にも拘引に強制  抑留し、言語に絶する強制労働を虐げられ、数  万と云う栄養失調者及び、労働に堪難く何万人  と云う死亡者を出した事は、国民の方々の御承  知の通りです。米英中ソ四ケ国は、日本にポツ  ダム宣言を押付、日本は受諾したにも斯らず、  ソ連一ケ国は此の宣言を躁躍ぢり、我等日本人  に銃剣を突付け、応じなければ其の場にて銃殺  されたのです。  其の中には中国人、朝鮮人誰れ彼れの見境いな  く、中には男装した女性迄抑留したのです。シ  ベリヤに着き始て其の国籍及び男女の性別が判  明して一ケ月後は、中国人、朝鮮人は全員帰国  を命じられたのです。   我々抑留者は、ソ連軍の将官の訓示に依り、  日本国並に国民の肩代りとして、貴君等は戦時  賠償を労働力にて、賠償する事を宣告されたの  です。我々ソ連強制抑留者は戦争中に、米国其  の他の国に強制抑留せられた邦人とは全く実情  が違うのです。我々の場合は終戦後である。日  本国軍隊は八月十五日にて解体され、部隊は解  散命令にて我々は民間人に成っていたのです。   八月二十日ラジオを通じ、日本語にて元兵隊  は各自の隊に帰れと布告があり、翌日は帰隊せ  ぬ者は銃殺に処すと布告され、其れより人間狩  が始められたのです。ソ連国家は戦後復興の為  に、我々の労働力を利用したのであり且、又日  本国家のソ連に対する賠償労働であった事は間  違いありません。 こういうふうな陳情、その当時の状態等もお述べになって、ソ連の将官が訓示をして、おまえたちは日本及び日本国民の肩がわりとして労働力を賠償の役務として出せと、出すんだよと、こういうふうに訓示をされたということをこのように公文で言っておられるんですが、この点についてはどのようにお感じになりますか。
  116. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 当時抑留されました方々がお受けになりました苦痛というもの、これはもうはかり知れないものであったろうということは私どもよく承知をいたしております。しかしながら、これらのうちの大変多くの部分は、ただいま申し上げましたように、私どもの考えておりますところではポツダム宣言に違反して行われたものでございまして、それは少なくとも当時起こりましたことに関しましては、当時のソ連の体質というものを反映したものであろうと考えております。
  117. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 強制労働の対象を役務賠償として認めないとおっしゃるけれども、そういうような一切のことを放棄をするという裏づけには、やはり国家としてはそれを認めざるを私は現段階においては得ないんじゃないかと、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  118. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいまおっしゃいました御質問は、ソ連の司令官がおまえたちの労働は日本が払うべき賠償であると、こう言ったと、こういう点を認めなければならないのではないかという御質問と思いますが、私ただいま申し上げましたように、そのような司令官の発言というものは、日本政府といたしまして容認し得るものではないという意味で、抑留されましたお気の毒な方々が提供されました役務、これを賠償の形態の一つであるとは考えておらない、解さないということを申し上げておるわけでございます。
  119. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 あなた方があくまでもそうおっしゃるんであるならば、ソ連のポツダム宣言の第九項による違反、それによってもたらされた強制抑留、強制労働の不当行為について、少なくとも日ソ共同宣言が発効、発せられた日、昭和三十一年の十二月の十二日以前に日本国政府はソ連に強制労働についての請求権を問題にしたことがあるのかどうか、あるいはまた、この九項の違反について抗議をしたことがあるのかどうか、その点を説明してください。
  120. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 通常、戦争の結果として生じます請求権の問題につきましては、戦後処理の問題といたしまして平和条約の交渉において取り上げられるわけのものでございます。日ソ間におきましても、日ソ共同宣言という形で、ただいま申しましたように決着がつけられたわけでございます。それ以前に、すなわち共同宣言の交渉妥結、発効以前にソ連側に具体的にこの問題を提起したことはなかったと私ども承知しておりますが、これは和泉委員もよく御承知と思います当時の状況からいたしましても、まことにやむを得なかったことであると考えております。
  121. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 当時の状況上まことにやむを得なかったという、その状況は私もわからぬでもないわけでございますが、しかし、政府が日ソ共同宣言で強制抑留、強制労働の対価の請求権を放棄したということは、これは当然抑留該当者に対しては国家の責任上私は補償すべきではないかと。ソ連の抑留者が結果としては役務賠償を果たしたと。抑留中の強制労働に対する労働賃金あるいは慰謝料等の支払いを、当然私は政府がやるべきではないかと、こういうふうに思うわけでございますが、現在のところずっと見てみましても、ただ、帰還をしてきた軍人の加算が一部認められておるだけで、あとは全部放置でございます。抑留中の死亡者の遺族については、軍人等の恩給公務員については扶助料、一般民間人についての遺族については戦病者と戦没者遺族援護法によって、旧軍人に準じて弔慰金、遺族年金が支払いをされておりますけれども、生存者については加算だけでございますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  122. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) この共同宣言におきまして放棄をいたしたということは、これは国家間の問題でございますので、お互いに政府に対して請求はしないと、こういうことを約束をしたわけでございます。したがいまして、理論的にはそういうことを国内において補償するかしないかということと、対外的に相互に放棄をしたということとは一応別のことでございます。ただいま御指摘のように、戦傷病者その他ソ連で亡くなりました方、あるいは負傷されました方にはそれぞれ慰謝料、扶助料あるいは医療給付等、国内措置によって行われておることは私ども承知しております。ただ、先ほども申し上げましたように、戦中、戦後にかけましては、日本人のほとんど全部が、程度の差はございましても、それなりに大小の犠牲を払っているわけでございますので、戦争損害というものに対してこれを全部補償するということは、これは実は私直接の所管の問題ではございませんが、私の考えといたしましては大変に困難なことであろうと考えております。
  123. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 これは通告をしてはございませんでしたけれども、この陳情書等を見てみますと、先般の委員会の質疑の中では旧軍人が五十七万五千、そのうちに民間が一万人ぐらいしか該当者がおらないような答弁でございましたけれども、これによりますと、抑留者は、正確な数字じゃないと思いますが、実に八十万に上ると推定をされる。生き長らえて帰国した者は五十万足らず、四十何万というのは、これは数字が当たっておるんですが、この推進協議会の団体構成を見てみますと、もちろん八月十五日に軍は解体をしておるわけで、それから民間にお帰りになったということかもしれませんが、職業欄にある中では、大体鹿児島県の場合は千百名ぐらいの方がいらっしゃる中で、旧軍の方はたった三十五名と圧倒的に民間の人が多いわけでございますが、この八十万と五十七万五千人と民間の方が一万という、そこらあたりの相対関係というのは厚生省はどのように把握をしていらっしゃるんでしょうか。
  124. 河野義男

    政府委員(河野義男君) ソ連本土に抑留された総数は、先生いま御指摘ございましたように約五十七万五千名でございます。そのうち死亡推定者数が五千五百名でございまして、この大部分は軍人軍属でございます。  それから、いま八十万とおっしゃった数字はちょっと私の方で承知しておりますソ連の本土抑留関係の数字とは関係がないんじゃないかと思いますが、満州の在住邦人につきましてはまた別に約百四十万人ございまして、そのうち死亡者の数が約十七万九千人、こういうふうに推定されております。
  125. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 八十万の内訳は、その在満の関係の方々を含んでおるのかもしれません。  そこで、この前の委員会で質問をした中の加算の問題、旧軍人の加算の問題について恩給局にお尋ねをいたしますが、ソ連に強制抑留されて帰国した、生きて帰ってこられた方々に対する国の措置としては、現在恩給法において抑留期間を一カ月加算して二カ月として、実在職年に加算をして恩給受給資格年限に計算をしている、こういうような措置しか見当たりませんが、そのほかに特別な措置があるのか、あったならば御説明願いたいと思います。
  126. 小熊鐵雄

    政府委員(小熊鐵雄君) ただいま先生指摘の抑留期間について、恩給法上の措置については先生おっしゃったとおりでございます。恩給法以外の制度で何かそういう措置があるかという御質問かと思いますが、私のいま勉強した限りでは、ほかの制度でそういった措置がされているかどうかということはつまびらかではないわけでございます。ただ、私の考えとしては、恐らく同じような措置はないんじゃないかと、このように考えております。
  127. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 恩給法では戦務加算、戦地加算を実在職年一カ月につき三カ月以内の加算で認められておりますが、そこで、このような戦務と、あるいは戦地によって加算年に格差をつけられた根拠は何であるのか御説明願いたいと思います。
  128. 小熊鐵雄

    政府委員(小熊鐵雄君) ただいま先生指摘のように、抑留者について一カ月につき一カ月の加算、つまり二倍に計算しているという措置をとっておりますのは、抑留という特殊事情に着目しまして、普通の在職とは事情が違うと、その点を考慮しまして恩給制度上の全く特例措置として加算をつけておるわけでございます。加算年というのは、先生承知と思いますが、大体戦地において直接生命の危険にさらされながら職務を完遂すると、したと、こういう方々に対してそれぞれその危険度に応じてつけておるわけでございますが、抑留加算というのがそういうものと比較してどうかということで、いま申し上げたような場合の計算、一カ月につき一カ月という加算をつけておるわけでございます。
  129. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 加算の意味はよくわかるわけでございますが、抑留者の扱いについては、昭和四十年に恩給法の改正によって初めて抑留加算制度が創設をされて、抑留加算はどの地域についても同じように一カ月、一カ月と、こういうことでありますけれども、どの地域でも抑留生活は厳しかったでしょうけれども、全抑留者の約一〇%が生命の犠牲を強いられたところはソ連地域以外私はないのではないかと。台湾とか中国あるいは南方地域、仏印といろいろあったと思いますが、あるところでは南方でも厳しいところがあったようでございますけれども、全抑留者の一割が死亡したというところはソ連のところだけしかないと思います。そういうようなことで、ほかにやっぱりソ連と同じような厳しいところがあったのかどうかですね、私はなかったと思うんですが、中国、仏印と南方、そういうところに大体大きく分けて幾らぐらい抑留されて、どういう抑留の生活だったのか、そこらあたりを説明願いたいと思います。
  130. 小熊鐵雄

    政府委員(小熊鐵雄君) 恩給局としては、そういう資料、手持ちもございませんし、厚生省の方の所管ではないかと思います。
  131. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 先ほど申しましたように、満州の在住邦人は約百四十万人でございまして、そのうち死亡者が約十七万九千人で、ここは一〇%を超えております。それから北朝鮮につきましては、二十二万六千人のうちで死亡者が二万五千人でございます。それから南方の諸地域でございますが、これは中国本土を除いておりますが、からの復員者は約百四十五万五千人でございます。そのうち昭和二十年八月十五日以降の死亡者は約四万五千人でございます。そういった状況でございます。
  132. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 お答えを聞いておりますと、ソ連ぐらい厳しいところ、北方で非常に寒いところでございますし、給与も悪いというところで強制抑留、強制労働と、重労働というようなことでございますので、ほかの地域とは趣が大分違っておるんじゃないか、こういうような認識をされるのは普通ではないかと思うわけでございますが、そこで前の恩給法の第三十二条、第三十三条に規定されておるような恩給の加算の取り扱いを、このような過酷なところは当然すべきではないかと思うわけでございますが、その辺のことについて適用するというお考えはないものかどうか、お答え願いたいと思います。
  133. 小熊鐵雄

    政府委員(小熊鐵雄君) 先生ただいま御指摘のように、抑留された土地柄あるいは国柄と申しますか、そういったものによってかなり事情が異なっていたであろうという推測はできるわけでございますが、ただ、どの国の場合にはどうこうというようなことにつきましては、これはそういったことで差をつけるというのはなかなかむずかしい、余り適当ではないんじゃないか、このように考えております。
  134. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 締めくくりで、せっかく森官房副長官がいらしておりますので、いま全国的に相当な数のこういう犠牲者の方々が、先ほど申し上げたとおり協議会等をつくって大きな運動を起こそうとして、もう事実起こっておるわけでございますが、これについて、先ほど外務省の局長の方からいろいろと御答弁がございましたけれども、やはり本人の意思に反して強制抑留されて、強制的に重労働に付せられて、極悪な条件下で大変な苦労をされたわけでございまして、それで国の相互間にはそういうような賠償のあれは一切やらないということで一方的に放棄をされたということで、どうしてもいまの時代では納得できないと、こういうような運動を起こしておられるわけでございますが、これについて副長官はどのようにお考えでしょうか。
  135. 森喜朗

    政府委員(森喜朗君) いま和泉先生から御指摘、そしてまた、いろいろとそうした犠牲の中に立たれた方々の御心情というものはよく私どももわかります。また、そういう方々の気持ちを代弁して和泉委員が真情あふるる御意見を述べていらっしゃることも非常に私どもよくわかるわけでございます。しかし、先ほどから宮澤局長あるいはまた厚生省、総理府からも御答弁申し上げております中に出ておりますように、一応戦後のシベリアに抑留された方々に対しましては、死亡した方あるいは負傷された方に対しては戦傷病者戦没者遺族等援護法によっての援護が行われてきたところでございますし、また旧軍人、一般公務員に対しましても、恩給法で抑留期間をいわゆる公務従事と定めて、そして割り増しの評価もいたしておるわけでございます。勤務期間に算入をいたしているところでありますので、一応政府としてはとるべき措置はとったという判断をいたしておる次第でございます。特にシベリアでの抑留生活を送られた方々の御苦労というものは、当時は私どもまだ子供の時代でありますが、いろいろと聞いておりますし、またその後もいろんなものを読んだりいたしまして、確かに大変申しわけないし、また大変お気の毒であったというふうに考えております。しかし、先ほどからも議論に出ておりますように、一応国によって差をつけたり、あるいは同じ国によっても、また労働されたり、あるいは抑留をされた中によっての条件もいろいろ違う、そういう条件を一つ一つ細かにして差し上げられることは本当に血の通ったことになるかと思いますけれども、一応そうしたことも含めて、できるだけ寛容な形で援護措置をとったというふうに私どもは解釈しておりますし、当時は国内外におきましても、だれもがすべて大変な犠牲を払ってきたところでございます。戦争損害に対しましての補償すべき義務は一応いまのところはないというふうに判断をいたしております。
  136. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 亡くなった方々とか、そういう遺族の方々に対する手厚いことはよくわかるんでございますが、生きて帰って、いま元気、あるいは病床に伏している方も若干いらっしゃるようでございますが、要するに生きて帰った方々は、軍人だけが一カ月の加算をされておるだけで、ほかは、民間にも相当いらっしゃったようでございますけれども、引き揚げをされた方々には、引き揚げのきわめて少ない金額であってもある程度のそういう支給があったということも聞いておりますし、本当に本人の意思によらないそういう国家権力の、横暴な権力によって自由を束縛されて強制抑留された、また重労働を付せられた方々に対しては、私は当然国は役務賠償の、事実そういうことでソ連当局は相当な利益を受けておるわけでございますから、そういう方々に対しては手厚い何らかの措置をされることが私は当然ではないかと、こういうふうに思いますし、またやがてそういうような意見の集約が大きくなって、日赤看護婦さんの問題と同じようなだんだんふくらみを持っていくんではないかと、こういうふうに思いますので、いまからそろそろ対処して調査等もしておかれることが大事ではないかと、こういうふうに思いますので、それだけは要望いたしておきます。  次は、私は傷痍軍人の恩給の問題で若干お尋ねをして質問を終わりたいと思いますが、決算委員会で私は質問をいたしましたけれども、納得をいたしかねる点がございますので、増加恩給受給者が平病死した、要するに三号扶助料、この問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  この前は時間がございませんのでいろいろと質問の内容等も飛ばしまして申し上げたわけでございますが、きょうは少し詳しく申し上げてみたいと思いますが、三号扶助料を遺族に支給されるということになりますけれども、たとえて言いますと、一項症の傷病恩給受給者は五十二年の八月現在で、増加恩給を入れますと二百七十三万六千円、これは兵の階級の方でございますが、その中で普通恩給が二十九万四千五百円、妻の加給が八万四千、計三百十一万四千五百円、このようでございます。公務扶助料になりますと七十二万、三号扶助料になりますと五十四万六千、三百十一万が六分の一、こういうふうに御主人が亡くなるとダウンをするわけでございます。二項症が、増加恩給が二百二十三万九千、普通恩給が二十九万四千五百、妻の加給が八万四千、計二百六十一万七千五百円で、公務扶助料の場合は七十二万、三号扶助料の場合は五十四万六千円。三項症の場合は百八十万の増加恩給、二十九万四千五百円の普通恩給、妻の加給が八万四千、計二百十七万八千五百円。そして公務扶助料の場合が七十二万円、三号扶助料の場合は五十四万六千円と、御主人が生存中に比べまして一項症の場合は公務扶助料が四分の一、三号扶助料は約六分の一、二項症の場合が公務扶助料が四分の一、三号扶助料の場合が五分の一、三項症は公務扶助料が三分の一、三号扶助料の場合が四分の一。ちなみに六項症の場合は公務扶助料が一・五分の一、三号扶助料が二分の一、こういうふうになりまして、項症の高いほど、受傷の程度の高いほど、結局体の不自由な、しかも家族の人たちの看護が非常に濃密でなければならない、そういう項症の人ほどダウンが激しいということでございます。遺族の方は、御承知のとおり不具廃疾の主人を長年看護をして、しかも増加恩給を生活の頼りにしてきておるので、この比率を少しでも増額してもらいたいという強い要望があるわけでございます。いろいろ障害もあろうかと思いますが、最近の傾向としては、昭和五十一年度に制定された通算遺族年金制度、この制度では、いままで遺族年金は出されていなかったのが年金の二分の一が支給されるという、このように恩情ある制度に発展をしておるわけでございます。しかも、通算をして年金がなかったのが二分の一の年金がいただけるという、遺族に非常に恩恵の深い制度を政府がとってくれたのが昭和五十一年でございます。また款症者では普通恩給のある人は二分の一、これは普通扶助料が支給されますが、款症者で普通恩給のない人でも昭和五十一年の七月一日から特例法で十万円支給をすると、また昭和五十二年八月からは十二万円、このようにだんだんと手厚く厚遇をされつつあるときに、この三号扶助料だけは依然としてこういうような格差がはなはだしいということでございますので、この格差を縮める、そういう努力をするおつもりは恩給局にはないのかどうか。
  137. 小熊鐵雄

    政府委員(小熊鐵雄君) ただいま先生指摘の金額は私どもも十分承知いたしております。それで増加非公死で扶助料を受けておられる方々の金額、いま先生お挙げになった金額は最低保障額でございますが、これも先生がお挙げになった金額より現在またさらに伸びております。ことしは六月から六十五万一千円という金額になっております。こういった形で現実的に差は縮まっていくかと思いますが、ただ増加恩給の方も、またこれは非常に傷ついてこられた方々に対する厚遇といいますか、処遇をどんどんよくしておりますので、比率そのものが果たして縮まるかどうかわかりませんが、現実の金額としてはいまの最低保障額を上げるというような形で上げておるわけでございます。今後ともこういった努力は続けていくというふうに考えております。
  138. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は厚生省の方にお尋ねをしますが、傷疾病等の妻の特別給付金についてお尋ねをしたいと思います。  これは項症以上の妻に三十万、傷病の妻の方に十五万円を十年にわたって支給するという制度でございますが、ただしこれは、傷疾病等の妻の場合は主人が死亡すると継続支給の権利は打ち切られるわけでございますが、ところが戦死者の妻の方は六十万、これを十年で支給をされるわけでございますが、これは奥さんの生存中はずっと支給されるということで、性質は若干違うと思いますけれども、傷疾病等の妻の特別加給でございますので、やはり十年間御主人がどうあろうとも支給されるというのが私は差別のない扱いではないかと、こういうふうに思うわけでございます。そしてまた、この傷病等の妻の特別給付金は、昭和十二年七月七日以降と、五十一年に改正になって昭和六年九月十八日満州事変以後と、こういうふうに改正になりましたけれども、ここにもまた一つの制限があるわけでございます。そしてまた、昭和四十一年に基準日を昭和三十八年四月一日において年金を受けていると、このように規定をされ、これがさらに昭和四十八年の四月一日に延期をされましたけれども、昭和四十八年の四月二日以降に爾後重症の判定になって年金を受けた人の奥さんは適用外という制限がまたあるわけでございますが、これらの制限を撤廃をされる御意思はございませんか。
  139. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 戦傷病者の妻に対する特別給付金は、夫の日常生活の介助とか、あるいは看護、そういったいろいろ精神的にも御苦労があるわけでございますが、そういった精神的な御苦労に対しまして慰謝を行うことを目的としたものでございます。したがいまして、戦傷病者の死亡後はそういった事情がなくなるわけでございますので、そういった方を制度の対象とすることはいまの制度の立て方からして無理があるというふうに考えるわけでございます。  それから、戦傷病者がその当該傷病で死亡された場合には、国家公務のために死亡された者の妻に対しまして特別の慰謝をするための戦没者の妻に対する特別給付金の制度があるわけでございまして、これの対象に当然なってまいるわけでございます。  それから、その範囲の問題でございますが、現在満州事変後の方を対象にしておるわけでございますが、この制度は、今次の大戦の戦争公務に起因いたしまして負傷され、あるいは病気になられた方の妻に対して慰謝をする趣旨で行われておるわけでございまして、それ以前のシベリア出兵等につきましては、今次の大戦とのつながりはないわけでございまして、そこまで拡大するということは困難であるというふうに考えております。  それから、もう一点の爾後重症についてでございますが、この特別給付金は、戦傷病者の妻の特別給付金のほかに戦没者の妻、それから戦没者の父母に対する特別給付金というものが制度としてございまして、これらの制度は、いずれも趣旨その他類似な制度でございまして、いずれも基準日を定めて運用しておるわけでございまして、第一回は三十八年の四月一日をいずれの制度も基準日としてとらえておりますし、第二回が四十八年の四月一日ということになっておるわけでございまして、しかもこれは一時金という制度の立て方になっておるわけでございまして、その基準日をさらに爾後重症の方にまで拡大するということはなかなかむずかしい問題だと思うわけでございます。今後の検討課題として検討はいたしたい、かように考えております。
  140. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 傷疾病の妻に対する給付金で、支給の方法は国債で三十万を十年ですから三万ずつのチケットでずっとやってあるわけですよね、そういうようなことで長い間看護されて御苦労さんという意味でやったならば、金額もそうよけいじゃありませんし、また爾後重症の方々も、四十八年の四月二日以降に相当やっぱり認定されて資格者も多いと思います。金額も大したあれじゃないと思いますので、そこらあたりはひとつ前向きに検討をお願いして、最後の質問に移りたいと思います。  最後の質問は、昭和五十一年に制定をされました通算遺族年金制度についてお尋ねをいたします。  この制度は、御主人が公務員十年会社十年計二十年を通算をして、御主人が死亡のときその奥さんに遺族年金を支給しようとする制度でございますけれども、遺族である奥さんが果たして、主人が公務員でも、共済年金制度は八種類ぐらいあるわけで、たとえて言いますと、国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、農林漁業団体共済年金、私立学校職員共済年金、公共企業体職員等共済年金と、このような制度がいろいろとあるわけで、御主人が亡くなった後のこの通算遺族年金の申請についてなかなか申請の仕方がわからない場合が多いのではないか、こういうように思うわけで、五十一年から発足しておりますが、この制度発足以来の各省庁の申請件数、適用件数、それからPRについてはどのような処置をしておられるのか、と申しますのは、やはりよくわからないという声が国民の間に非常に強いわけでございますので、この辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  141. 山崎登

    説明員山崎登君) 通算遺族年金制度につきましては、五十一年の十月から発足したわけでございまして、発足以来日が浅いということもございまして、ただいま御質問の国家公務員の場合の年金受給者数は三十五名でございます。五十二年三月まででございますが、三十五名でございます。  それからもう一点お尋ねのPRということでございますけれども、この点につきましては、各共済組合の広報誌というのがございますが、そういうもの等によりましてPRをしているわけでございます。また、私ども連合会組織を持っておりますので、連合会の場合につきましては、在職者につきましては「共済組合新聞」というのがあるわけでございます。それから年金受給者に対しましては「共済年金だより」というものがありまして、広報活動を続けているわけでございます。また、通算退職年金の受給者が死亡したことが判明いたしますと、年金原簿等を調査いたしまして、遺族に対して係から遺族年金の申請を送付しているかどうかということを一応私どもやっている、かような次第でございます。
  142. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 先ほどの御質問で、私お答えしましたことでちょっと補足させていただきますが、戦傷病者の妻の特別給付につきまして、一たん裁定を受けられてその後戦傷病者が亡くなられた場合でございますが、これは三十万を十年で償還するわけでございますが、その場合におきましては、残った分につきましては相続人が権利を承継されるということで、三十万は支給されるということでございますので補足させていただきます。
  143. 望月美之

    説明員(望月美之君) 通産遺族年金の関係での地方公務員共済組合関係についてお答え申し上げます。  公務員につきましては先ほどの答弁と同様でございますが、五十一年度におきましては、何分にも制度が発足した年度でございますものですから、発足しました五十一年十月から五十二年三月までに裁定を受けた者は合計で十一人でございます。なお五十二年度でございますが、現在集計の作業をしておるわけでございますが、いまのところ百五十人を超えるというふうに見込んでおります。  それからもう一つ、この制度のPRにつきましてでございますが、これも各地方公務員の共済組合におきましての「年金だより」というふうな広報誌がありまして、これによりまして通算退職年金の受給者などに制度の周知を図っておるところでございます。もちろん、これは前提として、共済関係の事務担当者につきまして十分な研修等も行うことによって、より広報ということが徹底がいくものとしておりまして、そういう担当者のベースにおきましてもまた十分な理解と周知を図る、こういうふうなこともしておる状況でございます。
  144. 三井嗣郎

    説明員(三井嗣郎君) 農協職員などが加入いたしております農林漁業団体職員共済組合につきましては、通算遺族年金の申請者、それから適用者の数は、五十一年度につきまして、申請件数、適用件数は一致いたしておりますが、五十一年度十五人、昭和五十二年度百四十八人でございます。  なお、広報の仕方につきましては、先ほどございましたように、各共済組合合同の広報誌のほか、農林漁業団体職員共済組合自体といたしましても、年に二回の「年金広報」その他「年金者のしおり」などによってこの種の啓蒙宣伝をいたしておるところでございます。
  145. 鈴木博司

    説明員鈴木博司君) 私立学校職員共済組合の場合についてお話し申し上げます。  昭和五十一年につきましては、請求件数三十八件、決定件数三十八件でございます。五十二年度につきましては請求件数三百二十五件、決定件数三百二十五件、それで受給件数が三百六十三件でございますが、この間、消滅件数が四件ございますので、五十二年度末の受給者数は三百五十九人、こういうことになっております。初年度につきましては半年でございますので件数が少なかったのでございますけれども、二年度につきましてはかなり徹底をしている、こういう状況でございます。  なお、この制度の発足に当たりましては、各学校及び年金受給者を対象に広報誌でPRをするというようなことでもって周知を図っておりますけれども、今後ともこの面の徹底につきまして努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  146. 山中郁子

    ○山中郁子君 初めに国公法、地公法の一部改正についてお尋ねをいたします。  まず、提出省庁である総理府総務長官からお答えをいただきたいんですけれども、今回のこの法案は管理職の範囲についてでございます。で、日本のほかに発達した資本主義国で管理職の範囲を法律で決めている国が一体あるのかどうか、その辺の実情はいかがでしょう。
  147. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) 管理職の範囲の問題で、他国でどういうふうになっているかというお尋ねでございますが、実はいろいろ調べておりますけれども、完全にわかっておりませんが、私たちが調べました範囲におきましては、法律でそういうものを置いているというのは、たとえばアメリカ合衆国は管理職員は団結権を持たない、その管理職員というのはこういうものであるということが大統領令以下によって決まっているようでございます。ヨーロッパの国々におきましては、法律ではそういうことをやっている国は、大きな国では私たちの調べた範囲ではございません。
  148. 山中郁子

    ○山中郁子君 ぜひこれは、もう一つの法案である法人格付与の問題とも関連して総理府できちんとお調べをいただきたいと思うんです。この管理職の問題に関しましても、これが労働基本権、つまり団結権を侵害し破壊するものであるという根本的な問題で一貫して議論になっているところで、今度の法改正についてもそれが大変大きな内容を持っているわけですから。  ただいまアメリカで法律で決めてあるかのような御答弁がありましたけれども、これも私どもつい最近総理府の人事局でお調べいただきました。それから、人事院の職員職員団体課でもいろいろ調べていただきました。国会図書館の労働課でも調べていただきました。いずれも不明なところが大変多うございます。それで、アメリカの問題につきましても、総理府の人事局の調べを要約いたしますと、使用者の利益のために働く者、監督者との混合団体を組織することは自由だが、使用者は監督者を労働者と考えることを強制されない旨の規定があるというだけでありまして、管理職の範囲を法律で決めているということとはかなり違った遠い内容のものです。私は、やはりこれが国際的な状況の中で日本がどういうところにあるのか、この問題がかなり根本的な問題になると思いますので、ぜひ総務長官、先進諸外国、主要資本主義国における実情を総理府で責任を持ってお調べをいただきたいと、このことの要望を申し上げる次第ですが、いかがでしょうか。
  149. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) できるだけ御趣旨に沿って調査をいたしたいと思います。
  150. 山中郁子

    ○山中郁子君 改めて申し上げますが、いま申し上げましたような国、つまり主要資本主義国では法律で管理職の範囲を決めているところはありません。アメリカの場合には、いま申し上げましたような内容で、そうした要素が一〇〇%ないとは申し上げませんけれども、内容的には管理職の範囲を法律で決めているというものではありません。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕  次に、今回の法改正によりまして管理職の範囲が狭くなるということになるのかどうか、つまり、これはもう一貫して四十年の国公法改悪以来問題になっておりますのは、重ねて申し上げますが団結権の問題です。それで、そういうことが本改定によって行われるのか、それとも現状の規定を整備するということだけであって、変更するものではないということなのか、その辺の御答弁をいただきたい。
  151. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) お答えを申し上げます。  今度の法案の趣旨は、四十八年の九月に答申を受けました公務員制度審議会の中において、現在の国家公務員法なり地方公務員法の管理職の範囲の定義と申しますか、それは簡潔に過ぎるので、労働組合法等の規定に準じて整備をするようにという答申を受けたものでございます。   〔理事原文兵衛君退席、理事林道君着席〕 したがいまして、いまの趣旨にのっとりまして今度の法改正ということで御提案を申し上げているわけでございまして、これによって管理職の範囲が広くなったりあるいは狭くなったりするものではないというふうに私は思っております。
  152. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、やはり現行の登録制度を前提にして昭和四十一年に人事院規則一七-〇ですね、これを制定されましたけれども、その基本的な骨格をそのままにしておいて管理職の範囲を整備すると言われたところで、私は現状を改善するものにならないということは明らかだと思います。そればかりか、登録制度の問題に関して申し上げますならば、公務員労働者への分断支配、これを固定化するものだということ、そういう機能、役割りを果たすものだというふうに言わざるを得ません。  そこで、管理職の範囲の問題に関して若干具体的な点に立ち入って質問をいたしますけれども、まず前提として明らかにしておきたいことは、当然のことですけれども、こうしたことを論拠にして管理職の範囲を拡大し、非組合員の範囲を拡大し、団結権を侵害する、こういう問題が、後ほども触れますけれども、ILOその他でも大きな問題として指摘されているわけですから、実情がまずどうなのかということを伺いたいと思います。つまり、中央官庁各省庁で現在全体の人数、それから管理職の総人数、そうしてそれがどのくらいのパーセンテージに及んでいるのかという、まず総数をお伺いいたします。
  153. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 国家公務員関係について申し上げます。  五十三年三月二十五日現在で申し上げますと、定員が四十七万三千二百四十三人でございますところ、管理職等の範囲に指定しております指定数は五万二千五百八十九人でございまして、指定率と申しますか、その率は一一・一%でございます。
  154. 山中郁子

    ○山中郁子君 十分時間があるわけではありませんので、各省別の現在の指定率でよろしいですけれども、ざっとちょっと教えてください。
  155. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 省庁別に申しますと、それでは読み上げます。  総理府が一二・一%、法務省一八・三%、外務省一二・六%、大蔵省一二・四%、文部省一〇・四%、厚生省八・一%、農林省一〇・六%、通商産業省一〇・九%、運輸省一〇・二%、郵政省一〇・七%、労働省九・六%、建設省一二・三%、自治省二〇・九%、人事院一八・六%、会計検査院一一・四%でございます。
  156. 山中郁子

    ○山中郁子君 いま数字のお示しがありましたけれども、高いところで二〇%を超えております。私は、これがやはり四十一年の人事院規則一七-〇の制定当時から、いろいろ議論があったときに、つまり四十年の国公法改悪に関連していろいろ議論があったときに、そういう無原則的に拡大するものではないし、労働基本権、団結権の侵害ということではないし、関係職員団体と十分協議する、さまざまなことを政府は言われました。しかし、これの推移を見てみなければ、果たしてそれではこういう形で管理職の範囲を拡大しないできたのか、抑えてきたのかということは解明できないと思います。  それで伺いますけれども、四十一年の人事院規則一七-〇の制定当時の、これも全数で結構ですけれども、総数と指定率ですね、指定数、指定率、これをお伺いいたします。
  157. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 四十一年の七月九日現在におきまして総定員は四十五万三千五百一名でございまして、管理職等の指定数は四万一千四百六十七、指定率にいたしまして九・一%でございます。
  158. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、指定率で見まして九・一%から今日まで一一・一%へ二%増加しているわけです。総務長官、ぜひこれをよくお聞きいただきたいんですけれども、四十年のその時期にそういう形で拡大するものではない、さまざまなことを言われました。しかし、問題は結局いろいろな方法をとって指定をふやして、そして非組合員の数をふやし、ウエートをふやしてきているということは現実としてあるわけですね。それで、これは省庁別の数字を資料としていただきましたので比較をしてみますと、大変ふえているところを見ますと、人事院五・二%ふえているわけです、比率でですね。それから、大蔵省三・一%ふえています。建設省四・九%、総理府三%、こういうようにふえていて、最もふえていないところで厚生省の〇・六%、郵政省が〇・二%という数字がありますね。大体こういうことで、平均して全体として二%ふえているわけです。これは間違いのない事実です。このことは一体どのようにお考えになりますでしょうか。
  159. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 確かに、御指摘のとおり四十一年から五十三年までの間に総計で二%ふえております。これにつきまして私ども管理職の指定の事務に当たっている者といたしまして、数字を、何といいますか、意図的に管理職の範囲をふくらませるということは毛頭ございませんので、やはり社会の進歩なりいろいろ複雑になってまいりますと、それに対応いたしまして行政需要というものが拡大してまいります。したがいまして、それに応じたような官庁の組織なり、あるいは官職というものの増設なり改廃というものが行われます。私どもは大体まあ年に最低一回、多いときで最近は二回にしておりますけれども、管理職の指定につきまして、そういう官職、組織の改廃に応じてよく調べた上でこの指定という作業をやっておりますけれども、その際には当局はもちろんでございますけれども、職員団体におきましてもこういう問題については非常に重要視しておることは十分承知しておりますので、その意見等は十分お聞きして、午前中にも総裁申し上げましたけれども、一〇〇%とまではいかなくても大体の御納得を得て指定というものを行っておるわけでございます。したがいまして、必然的にそういう組織、機構の改廃ということがもとになりまして、結果的にまあふえておるのでございまして、ちなみに三公社五現業等における労使の管理職等の範囲の比率と比べましても、いまの一一・一%という数字はいまのところ下回っておるわけでございまして、いわゆる第三者的な立場で慎重にこの問題を扱ってきているつもりでございます。
  160. 山中郁子

    ○山中郁子君 そんなことないですよ。十分な納得を得てなんてとんでもないです。後で明らかにします。もしそうおっしゃるなら、そのことはちゃんとこの際はっきりさしてほしいと思いますけれどもね。  それから、三公社五現業に比べてとおっしゃるけれども、これはいま国公法、地公法の問題でやっていますから私は申し上げているんでね、三公社五現業はよろしいとなんてちっとも思ってませんよ、私実態よく知ってますけれどもね、大問題ですよ、その管理職の範囲の問題は三公社五現業にとってだって。それは指摘しておきます。  それでもう一つ、特に著しいというか、ひどいのは官房ですね、各省庁官房。数字についてもちょっとお示しをいただき、資料をいただきましたんですけれども、合計が千三百四十四名という数字で、パーセンテージはわからないというお話でした。それで、各省庁の数字だけで何人いるかということだけをちょっとお示しください。資料お願いしたので、あると思いますが。
  161. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 本年の三月二十五日現在におきます各省庁のいわゆる官房の中で指定されております管理職等の数でございますけれども、総理府は三百九十八、法務省八十三、外務省五十五、大蔵省百二十三、文部省八十四、厚生省六十一、農林省百三十五、通商産業省八十七、運輸省六十一、郵政省七、労働省六十七、建設省七十七、自治省四十、人事院二十八、会計検査院三十八、計千三百四十四でございます。
  162. 山中郁子

    ○山中郁子君 これはパーセンテージはわからないというお話でしたので、私どもの方で公に発表されております定員からパーセンテージを出しました。それで申し上げますけれども、総理府が九五%、まあこれはちょっと特別な構成になっておりますから別に置くといたしましても、法務省二一%、外務省九・一%、大蔵省二二%、文部省二〇%、厚生省七・五%、農林省二二・八%、運輸省一七%、郵政省〇・八%、労働省三〇%、建設省二三%、自治省四〇%、こういうふうに、官房をとりますとまた極端にこの比率が高くなるという状況があります。  で、私はこれをまずまくらにして少し見解をお伺いしたいんですけれども、まあいろいろな形で、ふやすことを意図的に目的としたわけではないけれども、結果的にふえているんだという苦しい御答弁だったわけですけれども、意図しようとしまいと――私はかなり意図的なものはあると思いますよ。だけど、まあそれはいま横に置いて、意図しようとしまいとこの管理職の数をふやして、しかも、それを指定して範囲を法律で決めると、こういう形をとっていることがどんなに基本的な労働基本権、団結権の問題にかかわりあるかということは、もう一貫して論議をされてきているし、国際的な問題にもなっているわけです。それで、もう十分関係者の皆さん御承知のところなわけですけれども、一九六五年に約二週間ILOのドライヤー委員会が日本の実情調査をされました。ドライヤー報告ですね、このドライヤー報告の中でも、「本委員会は、管理職員の範囲を、職員団体から現在の又は潜在的な構成員相当部分を奪うことによって当該団体を弱体化する程に広く定めないこと、並びに異なる人事委員会及び公平委員会の行なう管理職員等の指定を一層統一的なものとすることを勧告する。」ということで、「相当部分を奪うことによって当該団体を弱体化する程に広く定めないこと、」ということが、ドライヤー委員会の勧告としてもうすでに一九六五年に出されています。このドライヤー勧告の精神との関係はどのようにお考えでしょうか、いまお述べいただいた実態、意図したしないということは関係ありません。実態です。そして、しかも四十一年から現在までふえているという実態は、このドライヤー委員会の勧告に照らしてどのように判断されていらっしゃいますか。
  163. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 御指摘のドライヤー委員会の報告の内容でございますけれども、人事院といたしまして管理職の指定をするに際しましては、先ほども申しましたように、中立的な第三者機関ということを十分に踏まえて、どちらにも偏らない形で、しかも両当事者から十分に意見を聞いた上で指定しているわけでございますので、先生おっしゃるように、ドライヤー委員会の指摘事項と私どもの方で指定しておる指定の態度というのには差異はないというふうに考えてやってきております。
  164. 山中郁子

    ○山中郁子君 その後またさらにですよ、一九七三年の条約勧告適用専門委員会で、これは日本に対する意見ですよね、重ねてこのことは指摘されているんです。「管理職員等の範囲は、団体からその現在のまたは潜在的な組合員の相当な割合を奪うことによって当該団体を弱化させる程広く定義されるべきではないと実情調査調停委員会は指摘している。」――ドライヤー委員会のことですけれども、「利用しうる情報からは、ある場合には管理職員および類似の職員の範囲が非常に広く定義されており、」――これは日本のことを言っているんですよ、世界全体を言ってるわけじゃないんです。「定義されており、実情調査調停委員会の表明した希望に十分な考慮が払われていないように思われる。本委員会は、政府が前記のコメントに照らして情勢を再検討」する、このことを要望している、勧告しているわけですね。一九七三年です。日本はILOに加盟して八十七号条約を批准していて、それでこういう状態で、どうなんですか、重ねてお尋ねいたします。
  165. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 国家公務員関係の管理職の指定につきましては、少なくとも先ほど申しましたように、いわゆる中立的な立場でこれはやっているつもりでございますし、現に管理職の範囲を指定しております人事院規則をごらんいただければわかると存じますけれども、仮に、たとえば人事を担当の課長補佐であるとか係長と申しましても、その名称だけによって直ちに管理職に指定するというようなことはしておりません。別表の欄外に書いてございますように、課長補佐、係長であっても、実質的にそういう人事関係の事務を相当広範にやっているかどうかということを詳しく調べた上で指定をするという態度をとっておりますように、指定に関しましては非常に慎重な態度でやってきておりますので、先ほど申しましたような慎重な、しかも偏らない立場で指定はしているところでございます。
  166. 山中郁子

    ○山中郁子君 それは強弁というものであって、いま私引用しましたのは、これは一九七三年の条約勧告適用専門委員会の意見です。日本に対する意見です。もう言わなくたって御承知でしょう。その中ではっきり言っているんですよ。「ある場合には管理職員および類似の職員の範囲が非常に広く定義されており、」と言っているんですよ、そして「実情調査調停委員会の表明した」――これはドライヤー委員会ですよね、ドライヤー委員会の「表明した希望に十分な考慮が払われていないように思われる。」と、ちゃんとこう言っているの。よその国のことを言っているんじゃないんです、日本の国に対する意見ですよ。これは、それじゃILOのこの専門委員会の意見については何らかす耳は持たないと、こういう態度ですか。
  167. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) そういうわけではございませんので、少なくとも私どもの方で指定しております管理職等の範囲につきましては、先ほど申しましたような態度でやっておるということでございまして、ただいま御指摘の、その専門家委員会の「ように思われる。」ということにつきまして、これは管理職の指定の問題は国家公務員だけではございません、地方公務員にもございますけれども、少なくとも人事院の方では、そういう先ほど申しましたような姿勢、態度で指定をしてきておるつもりでございます。
  168. 山中郁子

    ○山中郁子君 それじゃ、もう提出省庁の責任者である総務長官にお尋ねする以外にないんですけれども、どうですか、ドライヤー委員会、ILOでこういう指摘を日本に対してしているんですよ。人事院は、指摘があっても一切そういうことはないと、こう突っ張っていらっしゃるわけ。
  169. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) 先生が言われたような指摘があったわけでございますけれども、そういうものを受けまして、公務員制度審議会でその後において御討議をいただき御答申をいただいているわけでございまして、その公務員制度審議会の答申を忠実に法案化しようというのが今度の御審議を賜っております法律案でございますので、先ほどの範囲が広くなったではないかというお話につきましては人事院の方からいろいろお話ございましたけれども、たとえば、わりあい最近の状況として、ポストなどの増設の場合に、全体の状況もございますと思いますけれども、管理職のポストもふえるということもございましたりいたしまして率はあるいはふえているのだと思いますけれども、全般といたしましては、第三者機関である人事院が公平に管理職の範囲を定めているわけでございまして、決しておかしなことになっているわけではないというふうに信じております。
  170. 山中郁子

    ○山中郁子君 ILO八十七号にちゃんとはっきりしているわけでしょう。いまドライヤー報告、専門委員会の提起を申し上げましたけれども、ILO八十七号、結社の自由の第三条、「労働者団体及び使用者団体は、その規約及び規則を作成し、自由にその代表者を選び、その管理及び活動について定め、並びにその計画を策定する権利を有する。」「公の機関は、この権利を制限し又はこの権利の合法的な行使を妨げるようないかなる干渉をも差し控えなければならない。」、そして第八条には、「国内法令は、この条約に規定する保障を阻害するようなものであってはならず、また、これを阻害するように適用してはならない。」、こういうふうに明記されているわけですよね。結社の自由、団結権の問題で基本の問題になりますけれども、日本は八十七号条約を批准しているんでしょう。そして、そういう事態のもとで、私は先ほどからたびたび指摘をして、しかもILOで重ねて指摘をされている事態を、政府がもっとちゃんと認識をして、正すべきところは正すという態度をとらなければ、今回の提起がどのような結果になるかというのはもう火を見るよりも明らかだと思います。先ほどからの御答弁もありましたけれども、問題はない、関係職員団体に協議をして合意を得ていると、こういう趣旨説明がありました。もう一度確認をいたしますけれども、実情は問題がないわけですか、管理職指定に関して問題がないと把握しているわけですか。
  171. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 一〇〇%御理解なり納得を得ているということまでは、それはとてもちょっと申し上げられませんけれども、指定に当たりましては、先ほど申しましたように、両当事者から十分意見を聞きますし、それから、問題のところにつきましては実地調査等も加えましてその上で指定をしております。したがいまして、指定当初は、多少いろいろ意見の相違というようなことが両当事者間にはございましたけれども、最近の指定の改定等に当たりましては、さほど、これではどうしても困るというようなことで大きなトラブルというものはございません。それは労働組合、職員団体の方といたしましては、完全に一〇〇%これで納得したというところまではいかない場合があると思いますけれども、さればといって、それによって非常なトラブルが生じたということはございませんし、私どもの方もできるだけその点は慎重に、実情等をよく見まして、大体の御理解というものをいただいた上で指定しているというのが実情でございます。
  172. 山中郁子

    ○山中郁子君 いや、それは全然違います。私はそれじゃ二、三の点について申し上げますけれども、一つは、係員まで含めて全部指定しているんですよね。だから、そもそも一七-〇が問題あるわけですわ。先ほどすべての課長補佐を指定しているわけではないとおっしゃっている、それは各省庁によって違いはありましょう。だけれども、労働係員、人事係員、そうした者については係員まで全部指定している。そして一つ一つ見ていきますと、会計の支払い窓口、そこの担当の課長補佐、そうした者までみんな指定しているわけですよ。一体そういう人たちがどうして指定する根拠があるのか、この現行法に基づいてもですよ、私どもはそれ自体問題にしていますけれども、それで結局、そういうことで現実に、先ほど一番最初にお示しいただいたようにどんどんふえているわけですよ。労働関係とはいえ、人事関係とはいえ、すべての人が、つまり係員まですべて含めて秘密に属する仕事を担当する、そういうような解釈をされるわけですか。
  173. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 人事院規則一七-〇の「備考」に書いてございますように、いま先生指摘の、たとえば人事係員であるとか労働係員という者につきましても、その記述といたしまして、たとえば人事係員につきましては「主として部内職員の任用、昇格若しくは昇給又は労働関係についてその企画に関する事務を担当する上席係員をいう。」、こういうふうに規定しておりまして、これに合致しない単なる、たとえば文書の謄写であるとか浄書であるとか、全くの事務的、補助的な業務を行っておる人事係員まで管理職の範囲に指定しているということはございません。中には係員の数が非常に少なくて、いま読み上げましたようなそういう人事関係の事務を担当すると同時に、文書の謄写であるとか浄書であるとかということも一部やっている者があるかもしれませんけれども、少なくとも私どもの指定の際のこういう細かい点につきましては、いま申し上げましたような点をポイントにいたしまして指定をしているわけでございまして、その他労働係員という者についても同様でございます。
  174. 山中郁子

    ○山中郁子君 事実は違います。それで先ほど申し上げましたけれども、会計支払い担当の課長補佐まで指定している。そういう一つ一つ挙げればたくさんあります。また、仮にいまおっしゃったような係員だということで指定していても、実際上そういう機密とか、現行法に照らしてみても余りにも拡大している、量的にも拡大しているし質的にも拡大している、そういうことがあるのが実情です。各関係職員団体みんな意見持っています。先ほどは大方の了解を得てきているとおっしゃったけれども、協議をしてきているとおっしゃったけれども、それじゃいままで人事院規則一七-〇が制定されて以来、関係職員団体との協議によってこの指定ができなかったというケースがありますか。
  175. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 過去相当年数がたっておりますので、その全期間にわたってつまびらかなことはちょっと承知しておりませんけれども、大体そういうことにつきましてはそう大きなトラブルはなかったというふうに承知しております。
  176. 山中郁子

    ○山中郁子君 結局、もし仮に聞いたとしても人事院はその意見を聞きおくだけだ、当局も聞きおくだけ。だから、何だかんだ言いながら当局の指定を実行しているという結果になっているということを言わざるを得ないんです。  それで、いま人事院がそのようにおっしゃるなら、私は具体的な例として、きょうは大蔵省においでいただいていると思いますけれども、大蔵省はこの管理職指定に関して当該職員団体、労働組合と協議をしていますか、通知をして協議をしていますか。
  177. 杉田昌久

    説明員(杉田昌久君) 私の方は関税局でございまして、税関に限ってのことでございます。  先生御存じのように、管理職員等の範囲につきましては別表に定められたとおりでございまして、税関の場合には、詳しく税関から管理職員等もしくはこれに相当すると認められる職員の官職の改廃もしくは新設があったときには、速やかにその旨を人事院に通知しております。そして、人事院の方から正式に具体的な官職というものを通知を受けまして、これで管理職員等に指名されるというふうに決まるわけでございます。で、そういった人事院からの通知を、あるいは人事異動等で新しく管理職になった、あるいは管理職でなくなったという場合の本人に対しまして、私どもでは文書でその旨通知いたしております。なお、職員団体との関係でございますが、もちろん職員団体から具体的に申し入れがあった場合には、その職員の官職名をお知らせするという形になっております。  なお、事前に協議というお話がございましたけれども、私どもで独断に事前に協議をいたしておりませんが、具体的な職員団体の交渉の場で要望として出てきた場合にそれを承っております。大体実情はそういうことでございます。
  178. 山中郁子

    ○山中郁子君 協議してないじゃない、説明もしてないじゃない、どうなんですか。――いや、いま人事院に伺っている。しているとおっしゃるけれども、いま税関に伺えばしてないじゃないですか。
  179. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 先ほど申し上げました協議と申しますのは、人事院の方に制度的に協議という形は制度上とっておりませんけれども、実質的に私どもの方で指定をする際に、職員団体の意見、それに関する意見、要望等につきましては十分にお聞きしまして、その上で慎重に検討の上指定をすると、こういうことを申し上げたわけでございます。ですから、当該省庁と職員団体の間で協議するというようなことまで私が先ほど申し上げたわけではございませんので、念のため。
  180. 山中郁子

    ○山中郁子君 それじゃ関係職員団体と十分協議をすると、そして問題はないんだとおっしゃっている基本的な姿勢としては、当局は労働団体、関係職員団体と何ら話し合わなくてもよろしいということならば、何らこの精神にのっとってないじゃないですか、さっきから言っている。関係職員団体と十分お話し合いをして、それで大方問題なくやってきておりますと、了解を得てきておりますと。何も了解してないじゃないですか、説明さえしてないんだから。
  181. 杉田昌久

    説明員(杉田昌久君) 私ども税関の場合で、先ほど協議の対象としておりませんという意味は、そこで議論しまして、じゃこうこういきましょうと話を詰めて、固めて、それから人事院の方に行くという意味での協議じゃございませんので、先ほどの私が申し上げましたように、職員団体との交渉の場で、いろいろ職員団体の方からも要望等がありますと、私どもその要望を聞いて、その要望の趣旨を頭に入れながら人事院の方と御相談させていただく、そういうようなことでございまして、決して一方的に私どもだけでやっていると、そういうことじゃございませんので。
  182. 山中郁子

    ○山中郁子君 違います。事実はもう全税関本部が明らかにしているところですけれども、当局からは何も言ってこないと、人事院から指定した後通知が来ると、これだけです。違うんですよ、さっきから人事院がおっしゃっているように、関係職員団体と十分にお話し合いをする、それは政府の姿勢でしょう。人事院がどうだとか当局がどうだとかって言わないでくださいよ、この際基本的な議論をしているんだから。だからそこのところを、もしそういうふうにおっしゃって、問題はないんだと言われるならば、この際はっきりしておいていただきたいと思います。人事院に指定申請する前に当該職員団体に通知をして十分協議をすると、こういうことは姿勢として皆さんがやらなきゃいけないんだとおっしゃっているわけだから、そしてやっているかのような答弁もなさっているわけだから、はっきりそういうことは確認してよろしいですね。これはまず大蔵省に伺います。
  183. 杉田昌久

    説明員(杉田昌久君) たびたび申し上げますように、私どもでは職員団体との交渉等の場におきまして要望として出されるということがときどきございます。そういうときに、組合としてはどういうような考え方でいるかというのを頭に置きながらやるということでやってまいりましたし、今後ともそれで十分ではないかというふうに考えております。
  184. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうじゃないんです。指定申請する前に、人事院にする前に、当該職員団体と十分協議をしてお話もするんですとおっしゃるならば、職員団体に通知をするべきでしょう。そして協議をするべきでしょう。だって労働組合の方はいつだれが指定をするのかというのを、一決一々それじゃおたくの方に聞かなきゃいけないということ、そんなの協議でも何でもないじゃないですか、意見を聞くということでも何でもないじゃないですか。結局口でどんなこと言ったって、結局は実際に管理職の範囲を拡大するということを四十一年以降おやりになってきた結果、先ほど申し上げた数字になって、しかもそれは関係職員団体の意見は聞かないで一方的に通知をして強行してきたというだけじゃないかと、私はそのことを申し上げておるんです。そうでないとおっしゃるならば、じゃちゃんとしてくださいと、税関の場合に、指定する、まず人事院に申請するわけでしょう、当局が。その前に、指定するときに当該職員団体に話をして、そして意見聞くなら十分そこで意見聞いてくださいよ。そうすべきでしょう。そうしているという趣旨のことをおっしゃっているわけだから、じゃそれをはっきりしていただきた  い。
  185. 杉田昌久

    説明員(杉田昌久君) 先生のおっしゃることと私どもと、即イコールかどうかはわかりませんけれども、私どもといたしましては、職員団体との交渉の場におきまして要望が出ているということは、それは要望は十分頭に置きまして人事院と折衝に入ると、そういうことでやってまいりたいと思っております。
  186. 山中郁子

    ○山中郁子君 だから指定する前に――指定しちゃってから要望聞いたってしょうがないでしょう。指定する前に、こういうふうに指定しますと、申請しますということを当該関係職員団体に話しなさいと、説明しなさいと、それで意見があれば十分聞くと、こういうことなんでしょう。そうすべきじゃないですか。
  187. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 御指摘の税関に関しましては、確かに職員団体が複数存在しておりまして、なかなかその辺につきまして問題がある点もあるようでございます。基本的に、私どもの方はいずれにいたしましても指定する際には、これは官報等で組織の改廃等には目を配っておりますと同時に、当該省庁から連絡を受けることになっておりますけれども、そういうことがあった際に、原則としましては労働組合、両当事者の意見というものを聞くたてまえにしております。たまたま税関につきましては複数組合の関係で多少連絡その他について、まあ不十分といいますか、そういう点があったきらいはあるようでございますけれども、人事院の方の姿勢としては、少なくとも両当事者の意見というものを十分に聞きながら指定していくという態度でいきたいと存じます。
  188. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ税関よろしいですね、人事院のいまあれがありましたけれども。
  189. 杉田昌久

    説明員(杉田昌久君) ただいまの人事院のお話のようなことを受けまして、私どもでどういうかっこうが一番よろしいか研究さしていただきたいと思います。
  190. 山中郁子

    ○山中郁子君 研究することないのよ。あなたいつまでそんなこと言ってるの。いま人事院が言ったじゃないの。
  191. 杉田昌久

    説明員(杉田昌久君) 具体的にはどういうふうに進めるかという点につきまして研究さしていただくと申したわけで、趣旨としましては人事院のおっしゃること十分わかって、私理解しておりますので、そのようにやりたいと思っております。
  192. 山中郁子

    ○山中郁子君 確認いたします。とにかく申請するときに当該関係職員団体に通知をして話し合うと、そういうことですよ、言っているのは。いいんですね。
  193. 杉田昌久

    説明員(杉田昌久君) 先生のおっしゃっていることは私十分理解しておりますので、そのようにやりたいと思います。
  194. 山中郁子

    ○山中郁子君 うそ言っちゃだめよ。じゃもう一つ人事院にお伺いいたします。  人事院としては、各省庁から指定の申請があった場合に、先ほど確認されたように、関係職員団体に通知して意見は求めると、そういう姿勢でやりますと。私もすべて全部そうやってないと、すべて税関みたいにやっているというふうに言っているわけじゃないんですよ。それは各実情いろいろ知っております。その上で労使双方の意見が一致しないもの、対立するもの、そういうものについては、一たん各省庁に返してまた十分協議をするというぐらいに、柔軟な姿勢で慎重な姿勢をとるべきだと思っておりますけれども、いかがでございましょうか。
  195. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 基本的にはおっしゃるとおりだと思います。
  196. 山中郁子

    ○山中郁子君 これはILOに対して、政府が関係職員団体とよく協議をして指定をしていると報告しているんですよ。税関みたいなことをやっていたら全然違うわけだから、私は重ねてこのことを申し上げておきます。  それからもう一つは、労組法二条にならってこの問題を取り入れていらした経過があります。その面からいっても、運用上もやはりそれだったら準用していくという姿勢が必要だと、これは念のため申し上げておくんですけれども、労働委員会が行っている運用、つまり各労働委員会では職務内容、権限などを個々に調査をして労使双方の意見を十分聴取して決めていると、こういう形ですね。経過としてそうなんですけれども、労組法二条との関連で、こうした歴史的に取り入れられてきたということの背景を考えれば、当然運用についてもこうした準用を行うべきだと思っておりますので、その点ははっきりさせておきたいと思います。  それから、少なくとも、そうしますと、今度の改定ですね、管理職の範囲がこれ以上広がらないと、問題はそこに一つあるわけですから、という歯どめになるのかどうか。つまり、人事院がどういうふうに認識されようと、事実としては拡大の方向へずっときている、私どもはそこに一つの大きな公務員法の管理職の範囲の制定に関する本質があると思っておりますけれども、これの拡大の傾向に対して抑止力として働くのかどうか、今改正がですね。そこの見解をお伺いいたします。
  197. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) 先ほどからお答えを申し上げておりますように、現在の国家公務員法なり地方公務員法の表現が非常に簡潔に過ぎまして、恣意的に管理職の範囲が広くなるおそれがあるという御懸念もあったわけでございまして、そこら辺を踏まえまして、公務員制度審議会が労働組合法の規定等に準じまして整備をしろというお話、それを受けました本法案の改正でございまするので、この改正によって管理職の範囲が広くなる、あるいは広くする意図があるということは毛頭ないわけでございます。もちろん個々のポストポストが新しく生まれたり消滅したりするわけでございますので、そのポストポストの評価で、新しく生まれてくるポストの評価が管理職の範囲に入り得るというようなことでふえる部分はもちろんあると思いますけれども、本法案の趣旨先ほど申しましたような趣旨でございます。
  198. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一つはっきりしないんですよね。いろいろ別な理由でもって広がる、ふえるかもしれないけれどもふやすためのものにはならないんだと、こういう御趣旨だと思うんですけれども、どういう言い方をしようとふえるものはふえるのであって、そうして、かなりな部分というところでその当該団体の勢力を弱める結果になるだろう、このことだけを言っているわけですよ。どういう趣旨でふやそうかということで、こういう趣旨でふえた場合にはいいけれども、こういう趣旨でふえた場合にはいけないんだなんて言っているわけじゃないんですよ、ILOの問題に関して言いましても。抑止力として働くと理解してよろしいんですか、拡大の傾向に対して。
  199. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) よけいなことまで言ったものですから、あるいは御心配のあれがあったかもしれませんけれども、この法律そのものは、これを拡大するというものでは全くありません。
  200. 山中郁子

    ○山中郁子君 同じような問題に関して自治省の見解をお伺いいたします。おいでいただいてますでしょうか。
  201. 石山努

    説明員(石山努君) 今回の法改正は、いま人事局の方から御説明がありましたように、管理職員等の範囲を拡大したり、あるいはこれを狭くしたりすることではございませんで、この法改正の趣旨につきましては地方団体に対して十分徹底してまいりたいというように考えております。
  202. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一つ自治省に確認をしておきたいのですけれども、先ほどの当該職員団体と十分話し合って、協議をしてという件につきましては、人事院の方から姿勢が明らかにされ、政府としての見解が示されたわけですけれども、地方公務員についても同様に十分協議し、慎重に検討するというように、地方自治体に対する指導ですね、という立場に自治省はなると思いますけれども、その点についてもよろしゅうございますか、御確認をいただきたい。
  203. 石山努

    説明員(石山努君) 管理職員等の範囲を決めます場合に職員団体の方からいろいろな意見が出るということはあり得ることであろうと思いますが、その意見の申し出をどういうように扱うか、これは現在地方団体におきましては、人事委員会なり公平委員会が規則で指定をするという仕組みになっておりますので、人事委員会なり公平委員会がどう判断をするかということであろうと思います。
  204. 山中郁子

    ○山中郁子君 人事委員会、公平委員会というところが主体的にすることは当然のことです。私がいまお願いをいたしましたことは、十分協議をして慎重に検討するように自治省としての姿勢、行政指導上の姿勢、このことを確認したいと、これを申し上げています。
  205. 石山努

    説明員(石山努君) ただいま申し上げましたように、管理職員等の範囲を定める場合に、職員団体から意見の申し出があるということはあり得ることかと思いますが、これを最終的にどういう形で取り扱うかということは、それぞれ第三者機関として権限を執行しておりますところの人事委員会なりあるいは公平委員会の判断をするところでございまして、自治省としては、従来からこの管理職員等に関する規定は職員団体の自主性の確保に直接関連する制度である、そういうことから、職務の実態を十分に把握した上で慎重に行うように指導しているところでございまして、この基本的な指導の方針はこれまでと同様でございます。
  206. 山中郁子

    ○山中郁子君 地方自治体によりますと指定率が二五%を超えると、中央省庁の場合の官房並みですね、そういうところもあるんです。私も、ですからそういう点はこの問題を一つの契機にもして、いま申し上げました趣旨で十分把握もされ、指導というのですか、行政姿勢として認識をしておくべきではないかと。少なくとも今後これを契機にして、こういう大変異常に高い指定率の実態は改まっていくような方向で自治省として認識すべきだと思っておりますけれども、いかがでしょう福か。
  207. 石山努

    説明員(石山努君) 個々の団体の詳細については十分には承知をいたしておりませんが、一番最近の五十二年四月一日現在で実態を総括的に調査したところによりますと、管理職員等の数は、これは一般職員の場合でございますが、一般職員等総数に対して八%程度でございます。団体によってはこれよりも高いところも低いところもございますけれども、団体によってそれぞれ組織、構成なり、あるいは権限の分配等の状況が違いますので、率だけで一律に判断をするわけにはいかないかと思いますが、基本的に管理職職員等の範囲は、それぞれのその制度のあり方に即して考えるべき問題でございまして、今後ともそういう制度のあり方に即した運用をするように十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  208. 山中郁子

    ○山中郁子君 主任制度の問題とかかわりを持って、制度化主任ですね、大変いろいろな不安もあるし、危惧もあります。そこで、すでに委員会の中でも明らかにされてきた面もあるのですけれども、人事院にお伺いしますが、国立学校の主任を管理職に指定はしないんだということについては、もう一度ここで確認をいただきたいと思います。
  209. 金井八郎

    政府委員(金井八郎君) 国立の局等学校以下に置かれております、あるいは今後置かれるかもしれません主任につきましては、私ども、これは管理監督の地位にある者ではないかというふうに承知しておりますので、現在までのところも指定はしておりませんし、今後も指定する予定はございません。
  210. 山中郁子

    ○山中郁子君 文部省においでいただいておりますでしょうか。――文部省、同様の問題について、公立学校に対する文部省としての指導姿勢ですね、その確認をいただきたい。
  211. 加戸守行

    説明員(加戸守行君) いわゆる主任につきましては、この省令改正が五十年の十三月二十六日に行われまして、その施行通達を事務次官名をもちまして五十一年一月十三日に出してございますが、その中でいわゆる主任等につきましては、巷間言われております中間管理職ではないということを明記いたしておりまして、これは都道府県に流しております。したがいまして、五十一年の三月以降各都道府県で、現在までに四十三都道府県で主任制が実施されてございますけれども、いずれも現在までのところ、このような主任につきまして管理職の指定が行われたケースもございませんし、またそういうような考え方は毛頭ございません。
  212. 山中郁子

    ○山中郁子君 それじゃこの際ぜひ、現場ではやはりかなりの不安が、制度化主任の問題それ自体が問題で、不安がありますので、自治省、文部省、どういう形ででも結構ですけれども、いま言明されました内容の制度化主任を管理職として指定はしないと、してはならないという趣旨の通達などを出されることが必要ではないか、ぜひそのようにそのことを御検討いただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  213. 加戸守行

    説明員(加戸守行君) ただいま申し上げましたように、事務次官通達で管理職でないということをもうすでに各県に指導済みでございますので、この法案改正に伴ってそのような措置を講ずる必要はないと思いますが、先生指摘のような趣旨につきましては、各種会合等を通じましてその趣旨を明らかにするという方向で対処をしていただきたいと思います。
  214. 山中郁子

    ○山中郁子君 検討もいただくし、いまの御趣旨でもってはっきりさせていただきたいと思います。  それでは、あと法人格付与に関する法案に移って若干ただします。  労働組合に対する法人格付与の問題、現行法のもとにおいて登録問題、批判が大変多いですけれども、団結権を擁護するという見地から登録問題と合わせて一体的に解決すべきであると、こういう主張が強くあります。すでに委員会でも議論されてきたところですけれども、この点についての基本的見解はいかがでしょうか。   〔理事林道君退席、委員長着席〕
  215. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) 提案理由にも御説明がありましたし、またたびたび御答弁申し上げておりますように、今度の法律改正の主たるものは、公務員制度審議会の答申の中で法律改正を要するもの等について御審議を賜っているわけでございますので、登録全体の問題としては公務員制度審議会の答申の中にも現在のままにすると、法人格付与の問題に関しましては、登録と切り離して法人格付与の道を開くべきであると、そういう御答申を得て御審議を賜っているわけでございますので、そういうお答えをさしていただきます。
  216. 山中郁子

    ○山中郁子君 先ほども引用いたしました一九七三年のILO条約勧告適用専門委員会の意見でも、現行の登録制度と法人格取得制度について、日本の現行法令はILO八十七号条約の規定から見て問題があるという指摘をしています。問題の多い公制審最終答申でさえ、法人格は登録制度と切り離して付与するものとすることを指摘していますけれども、提出された法人格付与法案は、現行登録制度には結局何一つメスを入れてないと、入れてなくて、むしろ中にいろいろ問題があって、第二の登録制度にもなりかねないという内容になっています。ILOの指摘と、いま引用いたしました適用専門委員会ですね、のILOの指摘と逆行する内容であると判断せざるを得ないんですけれども、その点はどうですか。
  217. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) ILOがいろいろ御指摘を賜ったそれをさらに踏まえまして、公務員制度審議会が使用者、労働者、それから政府、三者が合意をして出された答申でございまして、その答申をまさに実現をしようというものでございますので、ILOの精神にも必ずしも背くものでもなく、あるいはILOにおいてもこういう二法案を出すことを評価をいたしておりますし、早期に通過をすることを期待されているわけでございますので、そういう趣旨において、決してILOの精神に反するものではないというふうに信じております。
  218. 山中郁子

    ○山中郁子君 先ほど議論がありましたけれども、認証取り消しの効果が生じた日から三年間は認証を拒否するとあるけれども、これは長過ぎるのではないかと、もっと短縮すべきだという意見がありますね。もう一度この点についてのお考えを伺います。
  219. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) 長過ぎるかどうかという問題がございますけれども、先ほどもちょっと御答弁を申し上げましたように、現在の登録も、これは認証と登録と必ずしも同じではございませんが、登録も国家公務員については取り消された例は一件もないわけでございまして、認証の場合においてもそういうことは希有だろうと思います。それから、その認証の場合に取り消しの手続等も非常に慎重に行われているわけでございますし、第三者機関である人事院がその任に当たっているわけでございますので、そこら辺はそう急に、何と申しますか、心配するような規定にもなっていない、実際の運用もそうなるというふうに思います。  三年というあれでございますけれども、先ほどもちょっとお話ししましたように、万一取り消された場合に、新しい団体が出てまいりまして認証の申請をしてまいりましたときには、恐らくこれは一般の法人でございますと、許認可の問題としてすぐにはならないだろうと思いますが、当方の法案の場合にはいわゆる準則主義でございますので、規約がこれらの要件に該当すれば認証をするというたてまえになっております。そこで、法人自体のメリットもございますけれども、第三者を保護するという立場もございまして、万一そういう法人としてふさわしくない団体であるというふうに取り消されました場合には、やはり前の法人と新しく出てまいります法人と、これがどういうものかというのを第三者の目にも明らかになるような期間が必要なのではないか、それがおおむね三年ぐらいは必要だというふうに判断をいたしております。
  220. 山中郁子

    ○山中郁子君 次の問題ですけれども、第八条の第三号の括弧書きですね、この中で職員団体活動がその目的を逸脱したときは認証を取り消すと、こうなっているんです。これは第四号の規定と重複しているわけですけれども、あえてこの規定をなぜ設けたのか、これは要らないんじゃないですか。
  221. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) 第三号が第四号に重複するというお話はそのとおりでございまして、もちろん一号、二号、三号も全部その四号の一つの例示でございますので、四号はそれを総まとめにして表現をいたしているわけでございます。したがいまして、しかしこれらは、そういうケースに当たってはこうなんだということを、やはり具体的なケースにつきまして書いておいた方がよかろうというのを一号から三号までに挙げたわけでございます。特に三号の括弧書きにつきましては、これは、その団体の憲法である規約自身にそういうものがなくなった場合、勤務条件の維持改善を図ることを目的とするようなことがなくなった場合には、これは本法の趣旨に反するわけでございますので書いたわけでございますが、括弧書きにおきましても、規約にはまだ残っているけれども、実際問題としてそういう事実が全くなくなったような団体があった場合には、これをやはり含むんだということを明らかにしたまででございまして、どういうものがこれに該当するかというふうなことは、まさにその括弧書きに書いてあるとおりでございまして、団体活動が福利事業ばかりやっている、あるいは共済事業ばかりやっているというようなこと、あるいは文化団体になってしまったというようなものにつきましては、やはりこれは、万一規約が残っているといたしましてもその実体がないというふうに判断せざるを得ないので、こういうことを明らかにしておいた方がよいと思います。
  222. 山中郁子

    ○山中郁子君 同じような性格のものに関係するんですけれども、第十条ですね、第十条で、労働組合等に対して報告または資料の提出を求めるという規定を置いているんですよ。これは組合活動だとか運営に対する不法な介入、干渉を招く危惧を持つということを言わざるを得ないと思います。民法なんかでも、法人の組織、運営に対して介入、干渉の根拠となる明文はどこにもありません。どうして職員団体にのみこうした条文を設ける理由があるのか、私はこの十条は必要ない、当然削除すべき内容であると考えておりますが、いかがお考えですか。
  223. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) いま先生、民法のお話が出ましたけれども、民法の場合には、ちょっと条文は忘れましたけれども、監督官庁はいつでも全面的な監督ができる、その監督に服するように、そういう体系になっております。ですから、むしろこの第十条というのはそういうふうな一般的な広いことではなくて、必要な限度において、必要なときにはその限度において報告や資料の提出を求めるということでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  224. 山中郁子

    ○山中郁子君 限られた時間ですので私は御答弁に対して一々反論はいたしませんでした。しかし、いまの御答弁一貫して全部、特に法人格付与の法案ですね、結局結社の自由及び団結権の保護に関する第八十七号条約に反してわが国の公務労働関係の現状を固定化する、そういうために機能することが明らかだということはいまの御答弁でもはっきりしていると思うんです。それで、特に第六条で「規約に法令の規定に違反する事項が記載されているとき」は認証を拒否される、こうあるんですけれども、「違反する事項」というのは一体どこが認定するのか。労働組合が法令に違反する反社会的行為の是認を公然と規約に規定するということはあり得ないんです。この条文は労働組合に対する不信、敵視の上に立って、そして組合の運営活動に介入し、それを規制することになるという、こういうことを本質的に持っている。そういう側面、本質を私は見逃すことはできないし、このこともあわせて、これは明らかにILO八十七号条約に違反すると考えておりますけれども、特に御答弁はいただきません。そのことを強く主張いたしまして質問を終わります。     ―――――――――――――
  225. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 委員異動について御報告いたします。  本日、斎藤栄三郎君、堀江正夫君及び源田実君が委員辞任され、その補欠として金丸三郎君、高平公友君及び石破二朗君が選任されました。     ―――――――――――――
  226. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 他に御発言もなければ、両案の質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。討論は両案を一括して行います。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  228. 野田哲

    野田哲君 私は日本社会党を代表して、国家公務員法及び地方公務員法の一部を改正する法律案及び職員団体等に対する法人格付与に関する法律案に反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、もともと国家公務員法及び地方公務員法は、公務員の労働基本権を否定し、公務員によって組織されている労働組合の活動を不当に制約するために制定されているものであります。今日まで約三十年の間、この法律を理由として公務員の労働組合の活動に対して不当な干渉や抑圧が加えられ、また多くの組合員が不当な処分を受け続けています。  この法律の不当性をめぐる労使間の紛争はILOの場でも論議の対象となっており、日本の公務員の労使関係に対する政府のあり方は、法律的にも実態的にもおよそ先進国とは言えない頑迷固陋な認識にこり固まっていると言っても言い過ぎではありません。  今回の改正案についても、このような不当な制度に対して何ら改善を行おうとせず、むしろ固定化する中で、管理職の範囲についてのみ法改正を行っている点については強く反対の意向を表明せざるを得ません。  反対の理由の第二点は、公務員の労働団体に対して法人格付与にかこつけて、公務員の労働団体活動のあり方、組織運営について多くの条件や制約を行っている点であります。公務員といえども、その労働団体活動や組織運営については、憲法の規定に反しない限り、社会的な常識によって組合員自身が自主的に決定すべきものであります。  反対の第三の理由は、本法案の公布施行によって、その実務を担当する認証機関である人事院、人事委員会、公平委員会が、制度的にも実態的にも公正中立な第三者機関としての性格を備えていないことであります。これらの機関が公正中立な第三者機関として公務員の信頼を得て、その認証業務あるいは勧告、公平審査等の業務を遂行するためには、人事官、人事委員、公平委員構成は、公労使の三者構成が確保されるべきであります。  以上の点を指摘をして反対の討論を終わります。
  229. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は日本共産党を代表し、国公法及び地公法の一部を改正する法律案並びに職員団体等に対する法人格付与に関する法律案の両案に対し、反対の討論を行います。  初めに、国公法及び地公法の一部改正案についてであります。  本案は、管理職員の範囲についての現行規定を労組法第二条の規定に準じて整備するとともに、登録職員団体の登録取り消しの効力発生につき裁判所へ出訴または訴訟係属中はその効力が生じないことに改めようとするものでありますが、登録取り消しの効力発生時期の改定については、現状を一定程度改善しようとするものであり、本改定部分には反対するものではありません。しかし、管理職範囲の規定の整備は、第一に、現行の登録制度の存続と公務員労働者の反対意見を無視して一方的に制定された人事院規則一七-〇の基本的な骨格を変更しないことを前提としており、現状を改善するという点ではほとんど意味がなく、第二に、重要な行政上の決定に参画するとか、当局の立場に立って遂行すべき職務を担当する職員というような拡大解釈の根拠にもなりかねない想定が依然として残されています。さらに第三に、憲法やILO八十七号条約の規定に沿って現状を改善するという点ではほとんど意味がなく、ILOのドライヤー委員会や条約勧告適用専門委員会の指摘に対してさえまともにこたえるものになっていないのであります。  本案は、公務労働関係の現状の固定化を目指した公制審最終答申具体化の第一弾であり、世界の公務労働関係の趨勢に逆行し、憲法違反のわが国の公務労働関係の現状をより巧妙に固定化するために役立つものでしかないと言わざるを得ないのであります。  次に、法人格付与法案についてであります。  本案は、公制審の最終答申に基づいて、現行の登録制度とは別に、非登録団体に対して新たに法人格付与しようとするものでありますが、本案は、第一に、認証の要件として職員団体の規約の中身を規制したり、認証の取り消しを事由として職員団体活動に二重三重にわたる行き過ぎた規制を加えたり、さらには認証団体に対し関係当局が報告または資料の提出を求めることができるというような、職員団体に対する不当介入の根拠にもなりかねない条項を設けるなど、第二の登録制度とも言うべきものになっています。  第二に、本案は、現行の登録制度と法人格取得手続に問題があるとしてその改善を求めた一九七三年のILO条約勧告適用専門委員会の意見や、全国的な労働組合が結社の自由、団結権保護を前提として法人格を取得できるような立法措置を講ずることを指摘したドライヤー委員会の報告に対してさえまともにこたえるものになっていないという問題があります。  第三に、本案は、関係当局の不当な支配介入に反対し、法人格取得を拒否する職員団体に法外組合の烙印を押す口実として悪用されかねない危険をはらんでいます。  本案は、国公法、地公法改正案と同様、世界の公務労働関係の趨勢に逆行した憲法違反のわが国の公務労働関係の現状をより巧妙に固定化し、その基本的な改善を将来に引き延ばすために役立つものでしかないと言わざるを得ません。  以上の理由をもって、国公法、地公法改正案並びに法人格付与法案の両案に反対するものであることを明らかにし、私の反対討論を終わります。
  230. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 他に御意見もなければ、両案の討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより両案の採決に入ります。  まず、国家公務員法及び地方公務員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  232. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、職員団体等に対する法人格付与に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  233. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました、  この際、稻村総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。稻村総理府総務長官。
  234. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) ただいま国家公務員法及び地方公務員法の一部を改正する法律案並びに職員団体等に対する法人格付与に関する法律案につきまして御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。  どうもありがとうございました。
  235. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。   午前三時四十分散会