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1978-04-25 第84回国会 参議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午前十時三十五分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      田代富士男君     和泉 照雄君      小笠原貞子君     山中 郁子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 林  ゆう君                 原 文兵衛君                 片岡 勝治君                 井上  計君     委 員                 岡田  広君                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 竹内  潔君                 林  寛子君                 堀江 正夫君                 野田  哲君                 村田 秀三君                 山崎  昇君                 和泉 照雄君                 黒柳  明君                 山中 郁子君                 森田 重郎君                 秦   豊君    国務大臣        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)      稻村左四郎君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        人  事  官  加藤 六美君        人事院事務総局        任用局長     今村 久明君        人事院事務総局        給与局長     角野幸三郎君        総理府人事局長  菅野 弘夫君        総理府恩給局長  小熊 鐵雄君        厚生省援護局長  河野 義男君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        総理府恩給局恩        給問題審議室長  手塚 康夫君        大蔵省主計局共        済課長      山崎  登君        大蔵省主計局主        計官       窪田  弘君        自治省行政局公        務員部福利課長  桑名 靖典君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、小笠原貞子君が委員を辞任され、その補欠として山中郁子君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 片岡勝治

    片岡勝治君 それでは、私の方から二、三恩給について質問をいたしたいと思います。  まず初めに、前回委員会でも自民党さんの方から質問がありました日赤看護婦恩給問題について、年金問題について最初にお伺いをしたいと思います。  この問題は、私ども参議院側としては、昭和五十年にこの問題を各党とも取り上げまして、参考人も来ていただいてお話を伺う、あるいはまた、私ども野党側としては、これに対して法律案を提出する、あるいは附帯決議をつけるということで参議院側として大変積極的に取り組んできた問題であります。そういう立場で、ようやくその解決の糸口が見えつつあるということについて私どもも大変喜ぶ次第であります。そこでまず、すでに答弁も一部なされておりますけれども基本的な問題として二、三お伺いいたします。  第一に、いわゆる一時金的な制度ではなくて、年金方式をとりたいという趣旨に私ども伺っておりますが、そのとおり受け取っていいかどうか。
  5. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 長い間本当に御苦労されたわけでございますし、特に各党とも日赤救護班と申しますか、看護婦方々の処遇については積極的に取り組まれまして、長い懸案事項であったことは御承知のとおりであります。そういう意味から、今年度は何とかしてやはりこれを解決をしなきゃならぬ、こういう形で、恩給局といたしましては精力的にこの問題に取り組んでまいったわけであります。  いま御指摘の点でございますが、この前も私は御答弁を申し上げましたように、恩給制度という、この中にはなかなかむずかしいという点が多々ございますので、そうかといってこれを一時金で解決をするということについては、これはいろいろな諸情勢考えた場合、一時金でこれを解決するというわけにはまいらぬと。そういう意味から、予算の伴うことでもございまして、いま一時金でもしないんだ、恩給制度の中にはなかなか入ることがむずかしいんだということになってまいりますと、当然詰められてくるところは一つ二つしかなくなってくるのではないかと、こういうことでございまして、いま申し上げたところの予算措置が伴うことでございますので、私は概算要求までにはっきりと申し上げることのできるように一つずつ詰めてまいっておりますので、この時点にこういう方法でこうということだけはもうしばらく差し控えさせていただきたいと、こういうふうに思っております。
  6. 片岡勝治

    片岡勝治君 私どもこの問題を取り上げたときにも、その方式にはいろいろあろうかと思いますけれども、単なる一時金でごまかすという、言葉は適切ではありませんけれども、ぜひ年金方式といいますか、そういうことでやるべきだ、問題の性質柄、いま長官の御答弁にもありましたとおり、そういうことでひとつ御検討いただきたい。  それから、概算要求までに成案を得たいということでありますから、そういたしますと、遅くも次の通常国会には関係予算あるいは関係法律案が出されるというふうに受け取ってよろしいでしょうか。
  7. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) そのとおりであります。
  8. 片岡勝治

    片岡勝治君 なお、どういう人たち対象にするかは、これから予算との関係もあって総理府の方で検討中と思いますけれども、何かそれについて、大体こういう人たち対象にしたいという構想といいますか、そういうものがあれば、もし発表できる段階であればお話を承りたいと思います。しかし、それが困難であればあえて答弁は求めませんが、構想をひとつお聞きしたい。
  9. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま御指摘の点でございますが、先ほどから大臣が申し上げておりますように、総理府挙げまして各関係部局相集まりまして、そういった問題も検討いたしておるところでございます。
  10. 片岡勝治

    片岡勝治君 前回委員会で、自民党さんの方からこの問題は野党が大変熱心であった、こういうお話がありました。率直に言って事実そういうことでありまして、もっと与党である自民党さんがこの問題について積極的に取り上げていただければもっと早く解決したような気がするわけです。しかし、それは別として、私がこの問題にかかわり合ってからも昭和五十年ですからすでに数年たっております。過般も陳情者の話を聞くと、もう大変高齢者もいる、すでに病に倒れて床の中でこの問題の成り行きを見詰めているという人たちの話も聞いたわけであります。総理府関係者大変いま熱心に取り組んでおりますので、なるべく早く成案ができますように心からお願いをいたしまして、この問題については終わりたいと思います。  次に、恩給そのものについてまず基本的なお考えをお聞きしたい。  これは私は、昨年の恩給問題についても質問をいたしました。つまり、今日いわゆる社会保障制度が拡充整備されつつある時代であります。また国民年金時代と言われております。その実態はまだまだ十分とは申し上げられませんけれども、しかし一応そういう体制になりつつあるということは、これは大変好ましい状況であります。そういう中において、一体恩給とは何か、皆年金時代恩給の位置づけというものをどういうふうにお考えになっているのか、と申し上げますのは、そういう恩給に対する基本的な考え方によって恩給改善という一つの具体的なものが出てくると思うわけでありまして、この点まずお伺いいたしたいと思います。
  11. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先生承知のように、恩給制度というのは非常にいろんな制約で、厳しい条件の中で公務員として非常に長期間忠実に勤勉された、こういった方々に対する功労に報いるための国家補償といいますか、独自の国家補償的な性格を持ったものである。国がそういった功労に対して償いをするんだ、こういう性格のものではないかと、このように考えておるわけでございます。ただ、いま先生のおっしゃいました社会保障的な性格といいますか、やはりそういった功労に報いるについては、一種の生活の支えとなるような機能も持っておるわけでございますので、恩給制度という枠の中ではございましょうが、やはり社会保障的な手法といいますか考え方、こういったものも逐次取り上げていかなきゃならないのじゃないか。たとえば最低保障といったような、従前の恩給制度にはなかったような制度を、やはり社会的あるいは経済的な事情、これを考えながら取り入れていかなきゃならないのじゃないか、このように考えておるわけでございます。
  12. 片岡勝治

    片岡勝治君 具体的にお尋ねいたしますけれども恩給支給額の総額を恩給受給者数で割ると平均受給額が出てきますが、これは余り深い意味はありませんけれども参考のために平均どのくらい受給金額はなっているか。
  13. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 先生ただいまおっしゃいましたように、平均と申しますと、実はいろんな、文官軍人でも条件が違いますし、またその中に普通恩給もございますれば傷病恩給もございますので、どの程度意味を持つかははっきりいたしませんが、現在、現行額でまいりますと総平均四十五万四千八百円ということになっております。ちなみに今度の改善によりましてどう上がるかといいますと、ただいま御審議いただいております法案が通りますれば、それは五十二万七千四百七十円ほどになるというふうに考えております。  なお、文官軍人傾向が違いますので、内訳を申しますと、文官を総平均いたしますと六十八万二千円現行でございますが、それから軍人の方が四十三万八千円、そういうことになります。
  14. 片岡勝治

    片岡勝治君 四十万、五十万と申し上げても年額でありますから、これを月に直しますと四、五万という程度になりますね。単純な平均額ですべてを総括的に評価をするということには若干無理がありますけれども、しかし、月四万ないし五万の恩給ということになりますと、これは生活保障的な数字にはほど遠いという感を深めるわけであります。  それで「恩給」という雑誌がありまして、去年の九月ですか、恩給局長がこの中で次のように述べております。「もち論、従来とも毎年毎年個々のケースについてべースアップその他多くの改善がなされてきたわけですが、最近の公害被害者に対する補償やその他の補償制度と比べ、まだまだ考えなければならない問題があるのではないかと思っています。」、こういうことが恩給局長意見として述べられておりますけれども、具体的にこれはどういうことを指しているのですか。もっと具体的に考えなければならないということは一体何を指しておられるのか。
  15. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) そこで私、頭の中にありましたのは、公務扶助料等において、たとえば水俣病等被害者、こういった方と比較いたしまして、やはりもっと改善しなければならないんじゃないかと、こういったことがちょっと頭にありまして書いたわけでございます。
  16. 片岡勝治

    片岡勝治君 確かにいま答弁がありましたとおり、補償的な性格と、プラス社会保障的ないわゆる生活保障というような要素がだんだん恩給の中にも入りつつあるわけでありまして、そういう点から考えますと、確かに遺族に対する給付というものはもっと抜本的に考え直していかなければならない段階に来ているのではないかと私も思います。  そこで、そういった立場から二、三お伺いいたしますが、まず、妻の年金権について、これはこういうことがなるべくないということを私たちは期待をするわけでありますが、現実社会においてはこういった事態も起こるということはあり得るわけでありまして、それは、年金を受けております夫と離婚をした場合、妻の年金というものは全くゼロになってしまうわけでありますね。これも私は昨年質問をしたわけであります。そこで、昨年長官は、確かに大きな問題であるが、これは何も恩給だけではありませんね、共済年金にしてしかり、厚生年金にしてしかりであります。しかし、これは二十年、三十年勤めをする、あるいは労働者として働くという場合に、やはりこれは家族一体協力態勢があってそういう長期間労働をすることができたわけであります。不幸にして離婚をしたという場合に妻の年金権がゼロになるということは、私どもどうもやっぱり納得できない、冷たい仕打ちではないかというふうにとられるわけであります。他の年金との関係もあるのでひとつ検討をさしていただきたいというお答えが昨年ありました。この問題について、これは恩給局だけの問題ではありませんけれども、何か検討された経過があればお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  17. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 離婚した奥さんに年金権を与えたらどうかという御意見でございますが、恩給というのは、御承知のように、退職した公務員あるいはその遺族の方に対する給付ということになっておりまして、まあほかの財産なんかとはちょっと違いまして、一身専属的な意味を持っておるわけでございます。それと、ただいま先生のおっしゃった離婚というのがないにこしたことはないとおっしゃいましたが、離婚にもいろんな原因も考えられます。また結婚生活の長短といいますか、期間といいますか、こういったものも考えられます。さまざまな事情が交錯するんだろうと思いますが、こういったものを一律に、画一的に何か年金権というようなもので考えるのがいいのか、あるいはもっと民法的な手法財産分与方法というものを考えた方がいいのか、どうも私ども考えといたしましては、恩給法で画一的に処理するということはなじまないんじゃないか、このように考えておるわけでございます。
  18. 片岡勝治

    片岡勝治君 大蔵省の方で、いまの問題について何かお考えありますか。
  19. 窪田弘

    説明員窪田弘君) いまおっしゃいました妻の年金権と申します場合に二つの問題がございまして、一つ遺族年金の水準の問題がございますが、いま先生が主として御指摘の点は離婚した妻の年金権の問題かと思います。これにつきましては、現行制度でも国民年金任意に加入する道が開けておりまして、被用者の妻はいま大体一千万人いると言われておりますが、そのうち約七百七十万人はすでに任意国民年金に入っておられます。また、被用者の妻であった期間は、通算老齢年金では資格期間として通算されるというふうな道も開いておりますので、かなりの程度に救済されるのではないかと、こう考えておりますが、しかし、それでもなお救済されない方があることは確かでございます。この点は厚生省年金基本問題懇談会でも検討されまして、昨年発表されました中間意見では、この問題は基本的には、ただいま恩給局長からもお話がありましたように、離婚した際の財産分与の問題、あるいはその後の扶養の問題などの私法的な問題として解決される問題である。しかし、さらにその上に年金権を付与するかどうかという問題については、現在の年金制度が、被用者の世帯に対する所得の保障というふうな仕組みでできておりますために、簡単にはそれを直すことができないので、なおこの問題については年金全体のあり方とも関連して研究する必要がある、こういう答申をいただいているわけでございます。厚生省といたしましてもこれを受けまして、なおもうちょっとこの問題を研究してみたいという御意見でありますので、私どももその研究の結果を待って対処いたしたい、このように考えております。
  20. 片岡勝治

    片岡勝治君 外国にはそういう例、つまり離婚した妻に対する年金権というものを認めておる国があるのかどうか。
  21. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 私ども一般年金の方まで手が届きませんので、各国の恩給的な、まあ公務員年金ですね、それについての資料、あり合わせの資料でいろいろ調べてみたんですが、私ども調べたところでは、英、米、独、仏といった諸国の公務員年金について、離婚した妻にも公務員年金を及ぼすといった制度をとっている国はないように見受けるわけでございます。ただ、ちょっと古い資料なものですからわからないんですが、十数年前のオランダの制度では若干それに近い制度があったようでございます。これも遺族の場合ですけれども、あったというふうに聞いております。
  22. 片岡勝治

    片岡勝治君 いままでの常識的な発想ですとなかなかむずかしい問題だと思いますけれども、しかし、先ほども申し上げましたように、夫婦の協力によって長年勤務をした、それに対する一つ生活保障ということでありますから、何らかの考えによって対処すべきではないか、なおひとつ十分検討していただきたい、このように考えます。  次に、これもいつの改定のときにも問題になりますけれども恩給年金等改定実施時期の問題であります。これも関係総理府等の努力によりまして、かつては一年半も二年も一般公務員給与改定の時期とずれていたわけでありますが、毎年改善が加えられ、ようやく四月ということが定着をしたといいますか、昨年から四月に実施をするということであります。しかし、これも今回の改善は、昨年の四月に実施をした公務員給与改定、それをこの四月に、つまり一年おくれて実施をするということになっております。一年おくれということになるわけであります。特に年金受給者生活が今日のような物価高の中では大変厳しいわけでありますから、こういう点の改善というものももっと積極的に取り組む必要があるのではないか、これに対する考え方をお示しいただきたいと思います。
  23. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま先生指摘のように、四十八年までは大体十月実施ということで定着しておったわけですが、四十九年以降一カ月ずつ毎年繰り上がりまして、昨年ようやく四月という時期になったわけでございます。まあ昨年はいろいろな事情がありまして、七月から一気に四月に繰り上がったわけでございますが、本年の予算編成に当たりましても、その点いろいろ問題があったわけでございますが、とにかく私どもといたしましては四月に定着させたい、こういう願いで、今般御審議いただいております法案では四月実施ということで法案をつくってあるわけでございます。今後これを、年度をさかのぼってさらに繰り上げていくということにつきましては、従来の国会の御意思もございますし、十分検討していかなければならないと考えておりますが、そういった年度をさかのぼった場合の財政的な措置とかあるいは立法の措置とか、そういったものについてもいろいろ技術的な問題があるかと思いますので、今後なお検討いたしたいと思います。
  24. 片岡勝治

    片岡勝治君 この問題につきましても、これまでも衆参両院を通じて附帯決議等がつけられた問題であります。事務的に確かに多少問題点はなきにしもあらずでありますけれども、しかし、一年おくれというのはちょっと長過ぎるような気がするわけでございます。で、この公務員のいわゆる生活をある程度守っていくための人事院制度、これも私どもは万全であるとは思いませんけれども、しかし、一応人事院の勧告に基づいて実施をされる、そういう一つのシステムがあるわけでありますから、年金に対してもそういった人事院的なものがあってこれを改定する、そういう方式がとれないかということを私は昨年申し上げたわけであります。この点についてもさらにひとつ真剣に取り組んで、これは私昨年も申し上げましたが、総理大臣以下政府方々はみんな四月から実施をしていると、しかし年金受給者は、おまえたちは一年後だよということ、われわれ国会議員立場としても、どうも気持ちの上で年金受給者こそもっと温かい手を差し伸べてあげるべきであるのに、われわれは四月から給与改定、報酬の改定実施されるけれども、しかしあなた方は来年からですよということですから、ですからそういう点で、私どももどうも気持ちの上でもっと温かく見てやらなければ、年金受給者というものは納得しないだろう、このように考えます。ぜひこの点の検討をお願いしたい。  次に、最低保障の問題についてお伺いをいたします。  まず最初に、旧軍人あるいは文官恩給受給者のうち、最低保障額対象になっている受給者割合はどうなっているのか、この点の数字を出していただきたいと思います。
  25. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 今年度予算におきます最低保障適用者でございますが、普通恩給につきましては、最低保障適用を受けております者が三十一万五千人でございます。受給者総数百二十七万四千人ですから、二四・七%ということになります。ただ、最低保障制度自体が、短期の人の六十五歳未満の方は制度適用を受けておりませんので、いわゆる最低保障という制度対象になる方は三十九万九千人ということになるわけです。その数に比べますと、現実適用を受けている方は七九%ということになります。普通扶助料につきましては、最低保障適用者は二十七万六千人でございますので、受給者総数三十五万九千人の七六・八%ということになります。
  26. 片岡勝治

    片岡勝治君 そのほかのいろいろな層の率も聞きたかったわけでありますが、大体の傾向はわかりますが、つまり最低保障を受けている受給者というものが全体の割合の中で大変大きな数字を示しておりますが、いま出されましたように七六%も最低保障を受けているということでありますから、これにはいろいろな意味がありますね。まず、その最低保障額が非常に低いという、そういう一つ意味もあると思うんです。大部分の者が恩給支給額が大変低い、低い層が大変多い、したがって最低保障で一定の線を決めてそれ以下の者は全部救い上げなければならない、その救い上げる人数が大変多いということは、恩給そのもの基準というものが大変低い、そういうことの一つの証左だろうと思うわけであります。そこで、この最低保障額、今回も改善をされておるわけでありますが、普通恩給最低保障額は今度はどういう金額になり、率にすると何%改善されるのか。
  27. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 私ども基準にしておりますのが長期の方、要するに実在職年規定年数に達している方、その老齢者ということで六十五歳を基準にしておりますが、六十五歳以上の長期の方、これについては現在最低保障が五十八万九千円でございます。これが今回の法案で御審議いただいておりますものでは六十二万二千円ということになっております。これは率で申しますと五・六%というアップ率になります。
  28. 片岡勝治

    片岡勝治君 今度の改定の、最低保障だけではなくて恩給全体の改定の率というものが五・九%ないし七・一二%ですね。そういたしますと、大変不思議なことは、恩給アップ率が大部分七%近い改善がなされるわけですが、しかしこの最低保障額については七%ではなくて五・六%しかアップをしない、させない。これはどういうことですか。
  29. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 恩給はほとんど毎年恩給法を改正いたしまして増額いたしております。これは、社会経済情勢が非常に変化してきているということもございますが、基本にしておりますのは、四十八年以降公務員給与を総合的な指標としてとらえ、それを基礎として上げているわけでございます。ただ、その中で別系統の指標をとっているものがございます。これが最低保障ということになります。これはむしろ恩給プロパーと申しますよりは、先生最初に御指摘ありましたように社会保障的な感じも入っている点でございまして、むしろ共済制度などでこういう最低保障は先行いたしました。ただその場合に、共済制度恩給では御指摘のような点もございまして大分差がついてしまう。古い公務員と、新しい公務員で差がつくというのは少し問題があるのではないかということで、実は共済並びということを主として考慮して取り入れたものでございます。したがって、今回も共済の方の最低保障がこうなるであろうという推定をいたしまして実は六十二万二千円という金額をはじいているわけでございます。それで、その共済制度の方の最低保障の上がりというのは、結局は厚生年金の方から来ているようでございまして、したがっていわゆる物価調整ということになっております。しかも、当初は五年に一度ないしは三年に一度賃金スライドで見直すということがございまして、三年ないし五年に大幅に上がると、残りの年は先食いと申しますか、大分上がっているものですから残りの年はゆっくり上がると、そういう制度になっております。したがって、単年度だけで比較するのではなくて少し長期的に比較しなければいけないような指標を使っていると、そういうことで今回は、一般的には約七%の増額になりますが、最低保障については五・六%というアップ率になったわけでございます。
  30. 片岡勝治

    片岡勝治君 さっきも言ったように、この最低保障というのは一つ社会保障的な生活維持の資料という意味があるわけでありますから、そういう考え方をもっと尊重していけば、一般の恩給については七%ベースアップをする、こういうことですから、最低保障というものについては少なくともその基準に引き上げるべきではないですか。最低保障という額が、それでも金額そのものが相当の額に達しておればまあそういうこともあっても理解はできますけれども、今度改定されても六十二万ですね、六十二万二千円、月約五万円ですからね。増加額は三万三千円、月に直せば約三千円ですね、最低保障額改定が。したがって、その額そのものを見れば決して大きい額ではないということを考えれば、やっぱりこの恩給の、あるいは年金改定率七%、つまり、公務員給与改定率七%をそのまま最低保障の額に適用するというのが私は当然の措置だろうと思うんです。ですから、冒頭申し上げましたように、社会保障制度的な考え方も逐次取り入れたためにこの最低保障制度というものが生まれたわけでありますから、したがって、もっとこの社全保障制度、そういう考え方を色濃くしてこの最低保障というものを考えていかなければならないだろうと思うんです。ところが、いまお答えになったように、これは共済年金との関係だ、あるいは共済年金厚生年金との関係だ、こういうことで、何か低い方に合わせていくということでありますから、年金全体が、あるいは恩給全体の水準というものが低下していく、そういう危険性が多分にあるわけであります。この点はひとつ、まあ今回はすでにこういうことで措置をしてしまったのでやむを得ないと思いますけれども、今後は最低保障についても一般恩給のべースアップぐらいはぜひ考えるべきではないかと私は思うんですが、ひとつ今後この点について考えていく、そういうことかどうか、もう一度お答えをいただきたいと思います。
  31. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先ほど手塚室長の方から説明いたしましたように、この最低保障額という制度、これは恩給では四十一年に取り入れたわけでございますが、これの性格といいますか、これはいま説明しましたように、共済年金という横の並びを考えながらやっておるわけでございます。ただ、先生指摘のように、アップ率が低いのではないかという御意見もよくわかるわけでございまして、ただ横並びという点があること、それからまた、ほかの年金と若干恩給そのもの性格が違う、いま長期在職者というか最短恩給年限に達したものを考えておると、こう言いましたが、その年限も、兵の場合は十二年というように一般の共済制度とも若干違っております。そういったいろんな事情はございますが、そういった横並びを見ながら今後とも最低保障額の増額、こういうところに力を入れてまいりたいと、このように考えます。
  32. 片岡勝治

    片岡勝治君 次に、同じく最低保障額が非常に低位に位置づけされておる一つの理由として、いまお答えがあったように、共済年金基準にする、共済年金厚生年金基準にする、こういうことになっております。その共済年金最低保障額の算定方式の中に、いわゆる報酬比例部分というものがございまして、これが三万円というふうに位置づけされておりますね。これは本来厚生省の方にお尋ねすべきだろうと思うんですけれども、きょうは何か衆議院の方の委員会があって同じく年金問題を審議しているそうであります。したがって、大蔵省の共済関係の方でおわかりになっておればお伺いをしたいと思いますが、この最低保障額厚生年金の老齢年金算出方法基準にしておりますが、報酬部分の三万円というのが私ども常識から考えて余りにも低過ぎる。そういう一つの材料を基礎にして最低保障額を決めておりますからこういう数字が出てきてしまうのではないか。これについて共済年金の担当の大蔵省のお考えをこの際お聞きしたいと思います。
  33. 窪田弘

    説明員窪田弘君) 確かに、御指摘のように三万円という報酬比例部分も計算の基礎になっておりますために全体のアップ率が低くなっていることは事実でございますが、個々にどの部分は幾らという考え方ももちろん重要ではございますが、全体として、将来たとえば二十年加入した方の年金の水準をどう考えるか、そこから出発をいたしまして、定額部分と報酬比例部分それぞれ割り振って設計がしてあるわけでございまして、現在の成熟した暁での年金の水準というものは、たびたび申し上げておりますように、ほぼ西欧並みの水準に達しているわけでございますから、当面これを動かすことはいたさなかったわけでございます。
  34. 片岡勝治

    片岡勝治君 しかしどうですか、三万円というこの水準というものについては、まあ予算との関係で動かし得なかったと言うんですが、あなたはこの三万円というものが、今日の報酬月額として一体、三万円の労働者なんかいるのかね、大変私は不思議に思うんですよ。そういうもう常識離れの低い水準を基準にしておりますからね、そういう点私ども理解できないんですが、これは日本の年金全体にかかわる問題なんです。この数字をこのままにしていく限り、年金改善というものは私はなかなか進まないと思うんです。やっぱり、現実に合ったそういうものをとるべきじゃないですか、数字として。もう一度見解を承りたい。
  35. 窪田弘

    説明員窪田弘君) いま御指摘のように、まさに年金全体から考えるべき問題であろうかと思います。それで、御承知のように年金の水準自体は、これは原則として五年に一遍の再計算のときに全体として見直すことになっておりまして、年々これをいじることは、また保険料等にもはね返ってくる問題でもございますので、再計算のときに全面的な見直しの一環として検討をするということにいたしているわけでございます。
  36. 片岡勝治

    片岡勝治君 時間があれば厚生省等から説明を聞きたいと思っていたんですが、たとえば生活保護の基準ども数字で出せば明らかになりますけれども、また労働者の賃金の実態、あるいは最低賃金制、そういうものの角度からの数字を出せば、いかにこの三万円が現実に即していないかということが明確になるわけであります。これはまた他の機会に譲りまして、いずれにしても、大変日本の年金の水準を低く抑える、そういう機能を果たしているのがこの報酬比例部分三万円という格づけだろうと思うわけであります。ここの部分改定しない限り年金改善というものは期し得ない。そういう点でひとつ政府の方も至急再検討していただきたい。  さらに、最低保障額の問題で、いわゆる遺族年金といいますか、扶助料の問題をお伺いいたします。これも最低保障額基準でいけば半額ということになっておりますから、必然的に低額にならざるを得ません。しかし、これも数年前から若干扶助料等につきまして付加的なもの、加算的なものが出てきておりますけれども、今回の改正ではどういう数字になりますか。
  37. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 先生指摘のように、扶助料二分の一というのは、恩給法大正十二年できまして以来実はずっと続いてきた制度でございまして、これに対する反省と申しますか、扶助料の水準二分の一では低いではないかという国会の方の御意思もございまして、ここ数年、一昨年寡婦加算制度というものを設けていわば定額的に水準を上げていく。要するに低い方により効果が及ぶようにということで、率ではなくて一定額をむしろ加えるという方策をとっておるわけでございます。  それからもう一つは、御指摘のように最低保障適用を受けるような低い方、これもわれわれの方の原則で、対応する普通恩給の二分の一ということで基準を定めていたわけですが、昨年これを二分の一から若干上げました。今回は寡婦加算の増額を図るとともに、最低保障につきましても二分の一をさらに超えるという度合いを高めるという措置をとっております。したがって、まあ普通恩給先ほど申しましたように基準となりますのは六十二万二千円でございますが、扶助料、六十歳以上の老齢者等につきましては、それの半分である三十一万一千円ではなくて、三十六万円にするという措置をとっております。これにさらに寡婦加算が加わるということで、その辺を率で見ますと、本来の二分の一原則が大分上がりまして六三・七%までいくということになっております。
  38. 片岡勝治

    片岡勝治君 この二分の一の問題についても年金全体の大きな問題であります。これを改善しない限り遺族生活保障というのが大変むずかしい。これも毎回のこの委員会で問題になるわけでありますが、そこで共済の場合はどうですか、共済年金のいわゆる扶助料に当たる最低保障額
  39. 山崎登

    説明員山崎登君) ただいま御指摘共済年金につきましては、退職給付の最低がいま五十八万九千二百円でございまして、それに対して遺族給付が四十六万九千二百円でやっておりまして、比率が七九・六%、かようになっております。
  40. 片岡勝治

    片岡勝治君 この点も私は昨年質問をいたしました。お聞きのように共済年金の方は、最低保障額――これはことしですか、ことし改定で四十六万円ですか。
  41. 山崎登

    説明員山崎登君) 五十二年度べースでございます。
  42. 片岡勝治

    片岡勝治君 五十二年度べース。昨年は恩給の方の最低保障の方が三十二万円に対して、共済年金の方は四十三万円という数字が出ておりますね、これは答弁されております。それから、いま答弁がありましたように三十六万円に対するものですか、この四十六万円は。そういうふうにとっていいんですか、ちょっと違うような気がしますが。結構です、時間がありませんから。  いずれにしても、扶助料の場合の最低保障が、今度三十二万円のものが三十三万七千九百円になるわけでありますけれども、これに対応する共済組合の方の遺族年金最低保障は恐らく五十万近くなるんじゃないですか。こういうふうに非常に大きな差があるわけです、同じ遺族にしても。この恩給のいわゆる発端というものと、共済年金というものが始まった時期やその性格というものは確かに違うわけでありますけれども、しかし、こんなに違っていいでしょうか、非常に大きな差があっていいでしょうか。この点も私ども納得ができないところなんですがね。ことしあたり抜本的に改革されるのではないかと私たち期待したんですけれども、こんなに大きな差があっていいだろうか、この点どうですか、見解があれば承りたいと思います。
  43. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 扶助料の最低保障額の問題でございますが、確かに先生指摘のように共済年金の場合と非常に差がございます。先ほど申し上げましたように、一昨年寡婦加算制度その他を設け、また今年も三十一万一千円を三十六万円に上げるというような改善は行っているわけでございますが、ただ、その率を一律に上げるということについて、やはりいろいろ議論いたしますと、一定の率で上げていくと何といいますか、全般についてでございますが、上厚下薄といいますか、差が大きくなっていくというようなこともいろいろございまして、なるべく定額で積み上げていく、決まった金額で積み上げていくと、こういう方式がいいんではないかということで、一昨年からそういった定額で積み上げていく、こういった方式をとっておるわけでございます。しかし、先生指摘のようにいろいろ問題もございますので、今後また検討いたしてまいりたいと、このように考えております。
  44. 片岡勝治

    片岡勝治君 この点については、やっぱり恩給局の方がもっと積極的に取り組んでいいと思いますよ。同じ遺族年金でありながら共済年金の方とこんなに大きな差があっていいとはだれも思わないわけでありますから、ひとつ次回の改善につきましては抜本的に考え直して、少なくとも共済年金最低保障に近づけるように、これは努力すべきだろうと思います。  時間が参りましたので、私の質問は以上で終わりたいと思います。
  45. 野田哲

    ○野田哲君 去る四月二十一日に福田総理大臣は靖国神社に参拝をされたという報道がありますが、いま議題となっている恩給法対象者、軍人遺族方々ときわめて関係の深い問題でありますから、まずこの問題から伺いたいと思いますが、当日の総理の靖国神社参拝の行動、この詳細承知されておりますか、まずこのことの報告からお願いしたいと思います。
  46. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) このたび靖国神社へ総理が参拝をされたというのは、これはあくまでも公式のものでなく、個人という立場で参拝をされたものであると、こういうふうに伺っております。
  47. 野田哲

    ○野田哲君 私は、私人か公人かということの前に、当日の何時何分に、どういう形でだれが随行して靖国神社に参拝されたのか、その行動の事実経過についてまず伺っているわけです。
  48. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) まあ私的な行動でございまして、秘書官でないとわかりませんので、お答えすることはできません。
  49. 野田哲

    ○野田哲君 真田法制局長官伺いますが、いま総務長官は、私的な行為として四月二十一日に靖国神社に参拝されたというふうに言っているんですが、公的行為と私的行為、総理大臣の場合にだれがどういう判断で決めるんですか。
  50. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 去る四月二十一日に総理が靖国神社にお参りになりましたが、それが公的であるか私的であるかを、だれがどうして決めるかという端的な御質問でございますけれども考えてみまするに、そういう神社なり仏閣なり、そういうところにお参りするというような行為は、これは原則としてまず私人としての宗教心のあらわれでございますので、特別な事由がない限り、これは私的な行為であるというのが素直な見方でございまして、特別に、たとえば国の公費をもって玉ぐし料を差し上げるとか、そういうような特別な外形的事情が伴わない限りはまず私的な行為であるというふうに言って差し支えないだろうと思います。
  51. 野田哲

    ○野田哲君 玉ぐしとか、公費でささげるというような公的な経費の支出が伴っていなければ私的だとおっしゃるんですか。それでは当日の車はどの車を使われたのですか。
  52. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) その点も、実は私の所掌の事務の範囲でございませんのでつまびらかでございませんが、これは伝聞証言に相なるわけでございますけれども、当日何か宮中へ内奏に行かれて、その帰りにお寄りになったというようなことでございますので、つまびらかでございませんけれども、恐らく公用車でお回りになったんではないかと思いますが、しかとはっきりしたことは申し上げられません。
  53. 野田哲

    ○野田哲君 これは私のこの問題の質問中に、直接事情のわかる人にぜひひとつ出席をしていただくように計らっていただきたい。いかがですか。
  54. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 事情のわかる人、連絡していただけますか。
  55. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) いま参りましたから。
  56. 野田哲

    ○野田哲君 いまの法制局長のお答えでも、宮中で公務があって、それからそのまま総理の公用車で行かれたんだろうと、こういうふうに言われた。そうすると、これはどこで公的行為と私的行為の区別をつけるんですか。
  57. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) それは自動車のお使いになり方は、実は私はっきり知らないわけなんですが、先ほど申しましたように神社、仏閣、教会その他いろいろな宗教施設にお参りするということは、まず原則としては個人としての行為である、個人としての宗教心のあらわれでございますので、特別に国の責任で国の行事として行うというようなことがなければ、それは私人としての御参拝であると、こういうふうに思うわけでございます。
  58. 野田哲

    ○野田哲君 法制局長官ね、そのときどきで法制局長官の答え方を変えてもらっては困りますよ。まずこの前に、稻葉法務大臣ですか、稻葉法務大臣が自主憲法制定国民会議に出席をしたということが国会で大きな問題になって、本院の法務委員会、それからこの内閣委員会で、私もその問題で直接政府の見解をただしているわけです。あの問題のときに三木総理大臣が、この問題で国会で見解を明らかにされております。ここに議事録がありますけれども、この稻葉法務大臣の行動について、当時三木総理大臣はこういうふうに答えておられるわけです。閣僚の地位の重みからして個人の資格と閣僚の資格の使い分けはそもそも困難である、こういうふうに答えているわけなんですよ。それから、それとは多少問題は違いますけれども、その年に三木総理大臣が靖国神社へ参拝をされた。この問題もこの本委員会で議論になっているわけです。そのときには、あなたの先輩の吉國法制局長官は、当時三木総理大臣の靖国神社参拝については、あらかじめ新聞報道機関等に私的行為であるということを公表して、国民にそのことをよく周知してもらった上で個人の資格で参拝をしたんだと、こう言っているわけです。つまり、事前に国民に私的行為であるということをよく納得してもらった上でやったんだ、だから私的行為なんだと、こう言っているわけです。今度は、あなたは靖国神社とかそういう宗教関係のところにお参りに行くこと自体は公的行為ではあり得ないんだと、すべて私的行為なんだ、こういうふうにおっしゃっているわけです。稻葉法務大臣の問題に対する見解と、三木総理大臣が靖国神社へ参拝するときの見解と、いまの見解、三つ皆違うんです。そもそも私どもは、この稻葉法務大臣の問題で国会で審議をしたときの結論としては、三木総理大臣の、閣僚としての地位の重みからして個人の資格と閣僚の資格の使い分けは困難であると、こういう立場を表明されて、その見解に稻葉法務大臣も服されて本院ではこの問題の決着をつけたわけです。これが、そういうふうにそのときどきで使い分けをされるということは、これは憲法二十条に対する解釈というものが非常にあいまいではないですか、いかがですか。
  59. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) そういう問題がございますので、先ほど来私は特にその宗教上の行為、つまり神社、仏閣、教会等にお参りする場合のことを申し上げたわけでございまして、いまから三年前になりますか、当時の稻葉法務大臣が自主憲法制定国民会議に御出席になって、それでそれが問題になって、ただいま野田先生がおっしゃいましたような、当時の三木総理大臣の御発言があったことも知っております。そのときにそういうことがございまして、それでその後三木総理大臣が参拝をされるときに、また同じような疑問を抱かれると非常に困るので、それであらかじめこれは私的なんだよということを広報をよくしておいて、国民の方からの疑惑が毫も起こらないというように万全の手はずを整えて靖国神社に参拝していただいたわけでございまして、前にあらかじめ私的だよと言っておけば常に私的なものになって公的ではないんだというふうな論理構成は私はしておりませんので、吉國答弁と私とがそんなに違うというふうには思いません。
  60. 野田哲

    ○野田哲君 あなたは温和な顔をして、福々しい顔でときどききついことを言うんですがね。ぼくとあなたの論争がテレビへ出ると私は大分損をするんです、人相が悪いから。  三木総理大臣は稻葉法務大臣の問題のときに、閣僚という地位の重みからして個人と閣僚としての使い分けは困難である、こう言っているんです。今度あなたは、宗教的なところへ行くときにはすべて個人なんだと、こう言っているんですが、この閣僚という地位の重みからして使い分けは困難であるということと、だからこそ、宗教的なところへ行くときはすべて個人なんだということとは、一体どう結びつくんですか、全然矛盾しているんじゃないですか。
  61. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 繰り返してお答えをするようでございますけれども、なるほど閣僚の地位の重みからいって、私的行為か公的行為かということを使い分けることは非常に困難であるという場合もあります。稻葉大臣の場合にはまさしくそうでございまして、だからこそ当時の三木総理大臣は、憲法改正の意図がない内閣の一員である法務大臣が、公的私的の区別のむずかしい行動を、しかも自主憲法制定国民会議というところへお出になったことは非常に軽率であったということで陳謝をされまして、そこでその問題はけりがついたと、けりがついたと言っては申しわけございませんが、国会の御論議がそこで済んだと。今度はこれは問題が違うんでございまして、事は先ほど来申しておりますように個人の宗教心のあらわれでございますので、もし宗教上の行為について、国務大臣の地位の重みからいって公的私的は区別がつかないんだと、だからすべて公的になってしまうというふうに見られるんじゃないかと、こういうふうになりますと、稻村法務長官なり総理大臣なり、あるいは私でも同じかもしれませんが、そういう公的な地位にある者は、そこにある間、在任する間、神社参拝できないことになってしまう。かえってこれは憲法が保障している宗教の自由を阻害することになるんじゃないかと思うんです。ですから、これはかようなことを申してお気にさわるかもしれませんけれども、昨年のお正月には衆議院の議長、副議長おそろいで伊勢神宮に御参拝になっております。これも当然私は私的な行為であろうと思います。今回の総理の靖国神社御参拝も、やはり同じく私的な行為であると、かように信じているわけでございます。
  62. 野田哲

    ○野田哲君 朝日新聞で当時のことが報道されているわけです、囲み記事で。こういうふうに新聞記者に語っているんですよ。何を祈ったかということに対してですよ、国家安泰を神に祈った、訪米の成功、成田問題の成功、日中の成功すべて祈ったと、それに対して福田がんばれという神の声が聞こえた、こういうふうに言っているんです。祈ったことはすべてこれは国事のことを祈っているんじゃないですか、何がこれが私的行為ですか、どうですか。
  63. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 総理がどういう心情で靖国神社に祈念をされましたか、これはもちろん外部からは知る由もございませんが、なるほど新聞にはそのように書いてございます。これは私も拝見いたしました。しかし、これも考えようによっては、一国の総理ともあられる方は、これはもう寝ても覚めても、と言っては語弊があるかもしれませんが、常に国政のことも念頭に置いていらっしゃるはずでございまして、靖国神社の社殿に立ったときだけは、その瞬間は国事のことは忘れなさいと言う方がむしろ無理なんじゃないかと思いますね。常に神仏の前に行けば、自分のことをさておいて、それよりもむしろ国政、国事、内政、外交すべてがスムーズに国民のために行われるように神様にお祈りするというのがむしろ自然な心情であって、総理としては恐らく、新聞記者からそういう質問があったんだろうと思います、で、正直にお答えになったんだろうと思いまして、この一事をもって、これが公的行為であるというふうにきめつける原因にはならない、かように思うわけでございます。
  64. 野田哲

    ○野田哲君 いまいみじくも長官は、総理というものは寝ても覚めても、どこへ行っても国事のことは忘れることはできないと、こうおっしゃったわけです。つまり、これこそ三木総理大臣が言った、閣僚というものはその地位の重みからして個人と公人の使い分けはできないんだと、こうおっしゃったそのことだと思うんですよ。個人の資格で行ったのであれば、個人のこと、三枝夫人の長寿を祈るんならそれでいいんですよ。記者団に発表したのはみんなこれは国事のことじゃないですか。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕 いいですか、もう一つ言いますよ。神社新報という新聞があります。これには「靖國神社「公式参拝」の実現を」と、こういうことで大きく報道されているわけです。四月二十二日に挙行される靖国神社春季例大祭に、総理大臣が堂々と公式参拝するよう政府に働きかける、こういう運動をやっているわけです。つまり、総理の行動というのは、この神社新報で報道されている、全国代表者会議で要請をした靖国神社の大祭に公的な参拝をしてもらいたいという、こういうことに対してこたえたものなんです。あなたが、あれは私的だ何だって言ったって、受けとめる方は、総理が公的に参拝された、こういうふうに受けとめているんです。だからこそ総理あるいは閣僚というものは、こういう背景、バックグラウンドがあるからこそ、三木総理大臣が言ったように私的行為と公的行為の区別はできない、その重みからして、こういうことになるんじゃないですか。それをあなたは、いままでの三木総理の稻葉問題に対する見解あるいは吉國さんの見解――吉國さんは当時、三木総理大臣が靖国神社へ行かれたことについて、誤解があってはいけないので事前に周知徹底をして、あれはプライベートなことだ、こういうことだからあれでよかったんだと、こう言っているんです。今度は関係団体が、公的に今度は参拝してもらうんだということを全国的に運動を起こしているわけですよ。まさにそこへ総理の行動が起こったわけです。客観的に見ればこれは公的参拝という形が出てくるんじゃないですか、しかも何を祈ったのかと言えば、いろいろ国事のことを祈った。こういうことになってくると、客観的に見れば、憲法二十条が規定している国の機関は宗教行事に関与してはいけない、これを踏み出していることにはなりませんか、いかがですか。
  65. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 憲法二十条三項は、ただいまおっしゃいましたような趣旨のことが明瞭に書いてあるわけでございますが、これはやはり、国の機関として宗教的行事に関与してはいけないということでございまして、私人として行うことはむしろ憲法が保障していることでございますので、何を祈ったかによってその行為が公的行為になるという理屈はとうてい私は理解するわけにはまいりません。と申しますのは、先ほど申しましたように、国務大臣は神社へ行った場合には、もう自分と奥さんの長寿しか祈ってはいけないとか、あるいはもっとひどいことになれば、公私の区別はつけられないんだからということで、公的地位にある期間は在任中神社へも行けない、お寺へもお参りできないというような妙なことになるわけでございまして、そういう結果になるような考え方はとても私はとることはできないと、それはどこまでも私的な行為であることがむしろ自然なんでありまして、神様の前で宗教心のあらわれとしてお祈りをささげるわけでございますから、これは特段の事情がない限りは、これはもう私人としての行為であると見るのは、通常自然な素直な解釈でございまして、それは三木総理のもとにおける当時の稻葉大臣が自主憲法制定会議においでになったのとはバックグラウンドが違う、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  66. 野田哲

    ○野田哲君 私はバックグラウンドは同じだと思うんですね。ある日、暮夜ひそかに世田谷の私邸から、だれも知らない間にすっと行かれたんだったら、あるいはあなたの言うように個人としての宗教心のあらわれだと、こういうことが言えるかもわからぬけれども、その日の行動は、宮中での総理としての行事、それからそのまま行かれている。   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕 しかも、そのバックグラウンドとしては、こういうふうにこの大祭には総理に公的な参拝をしてもらおうじゃないかという要望が起こっているわけですからね。そういうバックグラウンドを考えれば、これはあなたの言うように、私人としての宗教心のあらわれというような素直な解釈は私はどうしてもできない。これはあなたとの論争、平行線ですから、私はこれは非常な疑問を持っていると、こういう点を明らかにして、もう一点これは厚生省に、あわせて法制局長官伺いたいと思うんですが、先日の朝日新聞の報道によると、靖国神社に本人――本人は亡くなっているわけですから、遺族に無断で韓国人や、それから台湾人を合祀をしているということについて、ずいぶん勝手なことをするということで抗議の声が上がっているという報道が大きくされているわけですが、これを見ると、この合祀のための名簿を厚生省の援護局から提供しているという報道がされているんですが、これは厚生省、事実なんですか。
  67. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 援護局におきましては、戦没者に関するいろいろな事項の調査の依頼を受けておるわけでございます。戦没者に関する資料は、厚生省、それから都道府県の援護の主管課におきまして保管整備されておるわけでございまして、靖国神社から戦没者の氏名あるいは遺族、あるいは戦没の日とか、あるいは状況、そういったことについて照会があるわけでございまして、これにつきまして厚生省あるいは都道府県で応じておるわけでございます。これは靖国神社に限らず、あるいは戦友団体とか、あるいは遺族会あるいは個人、そういったところからの照会につきましても応じているわけでございます。
  68. 野田哲

    ○野田哲君 厚生省という国の機関が、靖国神社という宗教団体の合祀という行事に名簿を提供するということ、これは国の機関が宗教行事にかかわっているということになりませんか。
  69. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 厚生省としましては、靖国神社がどなたを祭神として、あるいはどういうふうにお祭りされるか、そういった内容につきましては一切関与していないわけでございまして、ただ戦没者の身上に関するいろいろな資料について照会がありました場合に、業務に支障のない範囲におきまして協力申し上げておると、それから、他の宗教法人から同様な依頼がありましてもそのような協力はいたすわけでございます。
  70. 野田哲

    ○野田哲君 それじゃこれは私からお願いしておきたいと思うんですが、靖国神社で合祀をしたというこの外国人の戦没者の名簿、これを資料として提供してもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  71. 河野義男

    政府委員(河野義男君) まあ台湾の方、あるいは朝鮮の方で戦死された方、戦中に靖国神社に合祀されているということは私ども承知しておりますが、現在外国人でどういう方が合祀されているかということを私ども承知しておりませんし、また資料もございません。
  72. 野田哲

    ○野田哲君 あなたは靖国神社の方からの要求によって資料を提供したと言っているんでしょう、名簿を。それが私にはなぜ承知していないという答えになるんですか。
  73. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 先ほど申しましたように、私どもが提供した資料で、どういう方がどういう手続で、あるいはどういう方法で合祀されお祭りされているかということは、私ども関係しておるわけでございませんので、その意味におきまして、その事実について資料を提供することは困難であるというふうに申し上げているわけでございます。
  74. 野田哲

    ○野田哲君 合祀の確かに扱いは靖国神社でやるわけでしょうが、これは新聞報道によると、一蓮托生全部やっていると、こうなっているわけですから、だから台湾人、韓国人等、いま日本国籍にない人たちの戦没者というのはわかるわけでしょう。それを出してもらいたいというんです。
  75. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 先ほどと繰り返しになって恐縮でございますが、合祀されている方がどなたであるかということは私どもの手元にはございませんけれども、台湾の元軍人軍属につきまして、戦没された軍人軍属につきましての資料は、完全ではございませんけれども、その限りにおいては私ども手元に持っておるわけでございます。
  76. 野田哲

    ○野田哲君 それを出してもらいたい。
  77. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 非常に膨大な資料でございまして、戦没者が今次戦争で、正確な数字はちょっといまはっきりした記憶がございませんが、二百数十万あるわけでございますが、その中から台湾人である元日本の軍人軍属につきまして資料を抽出すること、相当な労力と、あるいは時間が要するわけでございまして、いま援護局の仕事を考えた場合に、直ちにそういった資料が出せるかどうか少し検討さしていただきました上で御返事いたしたいと、かように考えるわけでございます。
  78. 野田哲

    ○野田哲君 それは私のところへもう一遍、どの部分が必要かということは言いますから出してください。いいですね。
  79. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 具体的に御指示がございましたら、検討いたしまして、できるものは御協力申し上げます。
  80. 野田哲

    ○野田哲君 真田長官に法律的な見解を伺いたいと思うんですが、あの新聞を見ると、靖国神社の池田権宮司というんですか、あの人の見解としては、台湾人あるいは韓国人の遺族から合祀を取り下げてもらいたいという申し出に対して、池田宮司は合祀の取り下げには応じられない、こういうふうに答えられているというふうに新聞で報道されているんですが、この合祀の取り下げには応じられないという宮司のこの発言がもし事実であるとすれば、これは憲法二十条の禁止をしている特定の宗教の強要ということになりはしませんか、いかがですか、これは。
  81. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 事実関係が前提になりますのではっきりしたことは申し上げかねる次第でございますけれども、その朝鮮なり台湾の出身の戦死者の遺族の方から、靖国神社の宮司さんでございますか、合祀を取り下げてほしいと言われたときにそれを断ったかどうか、それは私よく知りませんけれども、いずれにいたしましてもこれは私人間の行為でございますので、憲法二十条三項がこれに適用があるとは私たちは解釈いたしておりません。それは民事間の問題として裁判所で処理していただくよりほかにしようがないと思います。
  82. 野田哲

    ○野田哲君 憲法二十条は「何人も、」と、こう言っているわけですね、「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。」こうなっているわけです。池田宮司の発言が事実だとすれば、この何人も強制されないという、この宗教上の行事、儀式を強要していることになりはしませんかと、こう言っているんです。
  83. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 法律上の見解を申せというお話でございますので、私は先ほどのように憲法の解釈を筋道を立てて申し上げた次第でございまして、実はその憲法のいわゆる自由権、宗教の自由、信教の自由、この自由権というのは一体だれからだれを保護するかという点がそもそもの出発点でございますが、この憲法の第三章に書いてある基本的人権のうちの特に自由権なるものは、これはやはり国家権力からの自由、これを憲法が保障しているのだというのが、これがわれわれの考えであり、また最高裁判所も、御承知の例の三菱樹脂事件で私人間の行為には憲法は直接適用していない、もしそれが争いがあれば、それは民事法の不法行為なり、あるいは刑法の罰則に当たれば刑事罰なり、そちらの方で処理すべきことであるというふうに言っているわけでございまして、憲法二十条とは関係がない、かように結論するわけでございます。
  84. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、二十条の場合には国家権力によって強制してはいけない、こうなっているわけですね。だとすれば、いまのいろいろ議論が起こっている靖国神社を国家の神社としてという議論があって、法律でも何回か出された経過があるわけですが、もしああいう形で、国で護持をする神社ということになった場合にはこの条項は明確に適用されて、靖国神社に祭られるのはいやだという者に対しては、これは全部取り下げに応じなければならない、こういう解釈が成り立つわけですね、その点はいかがですか。
  85. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 例の靖国神社国家護持論という問題がございまして、何度か国会にも法律案として提出されたことがございます。これは私もよく知っておりますが、問題はその中身でございまして、宗教性を帯びたままいわゆる靖国神社国家護持という線を打ち出すことは、これは憲法第二十条と、それから八十九条の両方に違反すると思います。それから、仮にそういう法案ができた場合に、いまおっしゃったような合祀を強制するかどうかということにつきましては、これはまたそのできた法案の中身でございまして、まさか国が直営で神社を設営するというふうなことはちょっと考えられませんので、そういう点じゃなくて、むしろ国が、そういうもし国家護持ということになって、これはもちろん仮定の話でございますが、国家護持ということになって監督権を持つということになれば、その監督権の行使としてそういう合祀の強制のようなことが起こらないように見張る、よく監督権を行使して見張るということはあり得ると思いますが、それは何とせよ仮定の問題で、でき上がるかもしれない法律の中身を見た上でないと私の最終的な確定的御意見は申し上げることはまだ尚早でございまして、この際は控えさせていただきたいと思います。
  86. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後は一時から再開いたします。  休憩いたします。    午後零時六分休憩      ―――――・―――――    午後一時六分開会
  87. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を再会いたします。  午前に引き続き、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  88. 野田哲

    ○野田哲君 午前の質疑の中での総理の行動についてわかっておれば御説明願いたいと思います。
  89. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 二十一日午後三時半より宮中において春の叙勲に関する内奏を行い、四時半前後に靖国神社に参拝された後官邸に帰られたわけであります。そのときの使用した車は官用車でございます。
  90. 野田哲

    ○野田哲君 随行ですが、私が承知しておるところでは、あなたの方はあれは公的行為ではないと言うんだったら、荒舩さんということにしておきましょうか、行政管理庁長官をやっている荒舩清十郎さん、郵政大臣をやっておられる服部さん、労働大臣をやっておられる藤井さんと、つまりこの三閣僚が随行されたと、こういうふうに承知をしているんですが、その点はいかがですか。
  91. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 随行というのではなく、そのときに偶然にこう出会わしたというか、同伴したと、こういうことであります。
  92. 野田哲

    ○野田哲君 大変忙しい分刻みの日程をこなしておられる各大臣が偶然九段坂で出会わしたと、こういうことだそうでありますけれども、これはどう見たって、真田さんにもう一遍伺いますが、世間に向かって、総理と行政管理庁長官労働大臣、郵政大臣、こういう職務にある方が行をともにされて、靖国神社の鳥居をくぐったと、これはどう見たって世間では偶然とは考えませんよ。そうして、この四人の私的な行為が偶然期せずしてそこに時間が一致をし、行動がともになったとは世間は思いませんよ。これは客観的にはどう見たって政府総理大臣以下閣僚が打ちそろって靖国神社に参拝をしたと、客観的に見ればそういうことじゃないですか、いかがですか。
  93. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 事実関係に関することでございますので、私がお答えしてしかるべきものかどうか自信はございませんけれども、ただいま総務長官が御説明になりましたように、総理の随行ではなくて、たまたまそこで一緒になって同伴して御一緒に参拝されたということでございますが、恐らくは、四方とも非常に信心深い方でございますので、靖国神社の例大祭を機会に私的行為としての参拝をされるということは、決してそう不思議なことではないというふうに存じます。
  94. 野田哲

    ○野田哲君 事は憲法の思想、信条、宗教上の自由という問題にかかわることですから、私はそんな説明では納得できませんよ。しかし、その問題だけで時間を費やすのもしょせんは平行線ですからきょうはこれで打ち切りますけれども、そういう説明では国民は納得しませんよ。このことだけは指摘をしておきたいと思います。この問題は終わります。  そこで、恩給年金改定の基礎になっている公務員給与制度についてこれから伺いたいと思います。  最近、政府の与党内部あるいは財界において、人事院の勧告制度の見直し論という議論がちょいちょい行われるようになって目についてきておりますが、一面においては、労働界においても労働基本権の問題等の関連において勧告制度についての一定の見解は持っているし、そのことは人事院にも見解の表明があったと思うのですが、まず政府与党、自民党の中で、勧告制度についての見直し、具体的に言えば民調のやり方を変えろとか、こういうような議論が起こっている、あるいは財界でも公務員制度検討論というものが起こっている、こういうふうに聞いておりますが、人事院に対して、それらの点について何か具体的に、ここをこういうふうに変えろというような意見が、与党の中からあるいは財界から出されたことがありますか、いかがですか。
  95. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 財界の関係あるいは党の関係等から、直接そういうお申し入れを承ったことはございません。
  96. 野田哲

    ○野田哲君 新聞等でいろいろ報道されていることについては御承知だと思うのですが、人事院の勧告制度というのは約三十年の期間を経過しているわけですが、いま起こっている見直し論、技術論としては民調のやり方を変えろ、こういうような議論もあるやに新聞に報道されておりますが、三十年間ずっと人事院は、私の承知しておる限りでは現在のやり方を今日まで踏襲されてきたと思うのですが、現在いわゆる見直し論についてどういう見解をお持ちですか。新聞で報道されている程度のことしか承知されていないと思うのですが、この点いかがですか。
  97. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) わが国の民間企業の給与を見ておりますと、規模別に格差といいますか、上下の開きがあることは事実でございます。ところが、これが好況であります場合あるいは不況であります場合、一般的にざっとした申し上げ方になりますが、そういう格差が広がったり詰まったりしておるということも事実でございます。それで大体好況のときにはそういう格差が詰まっていく、それからまた逆に広がっていく、こんな関係に相なると思いますが、最近の不況といいますか、産業界のそういう状況を見ておりますと、製造業、サービス業等でいままでと違ったようなやや動きも見えるようでございます。そういうことで、単に規模の開きというのがどの程度影響を与えますか、従来の予断をもってはわからないのではないかという感じも一方でいたしております。そういうことで、賃金に対するそういう影響については大変興味を持っておることは事実でございます。しかしながら、現在百人、五十人、会社の規模としては百人、事業所単位としては五十人ということで民間の調査の対象を設定いたしておりますが、これは顧みますと昭和三十九年に仲裁裁定で民間準拠という基本線が打ち出されましたあの時点以来、好況のときにも不況のときにも一貫してとってきた規模でございます。  私ども現在のその経過を考えてみますと、いままで、百人じゃ小さ過ぎるじゃないか、千人ぐらいに上げろと言われたことも好況のときには大変ございました。一方現在のようになりますと、百人でも大き過ぎるじゃないかという感じが一方で出てきている。それでも人が採れるじゃないかということも込めてであろうと思います。そういう側面があることも事実であろうと思っております。しかしながら私どもは、いずれにしましても、優秀な公務員にそういう好況不況にかかわらず一貫して公務に入りあるいはいてもらわなくちゃ困るという点においては一貫しておる次第でございます。そういうことで、一方では官民比較というのは給与設定の基本原理でございまして、これは好不況にかかわらずこういう基本点につきましてはそう軽々に動かすべきものでない、そういう筋が一方にございます。そういう両方を踏まえまして、一方では現在のそういう状況がどういう影響があるかということを研究したいという気持ちもございますが、一方では、これは軽々に動かすべきものではないということを踏まえて、現在、いま申しました三十九年以来の公労委のそういう公社、現業に対する基本線等も踏まえて検討しておる、そういう事実でございます。
  98. 野田哲

    ○野田哲君 いまの角野局長のお答えになっている民間給与の実態調査ですが、百人以上の規模の事業所を対象にやっておられる、この百人以上の規模の人事院対象にしているところの雇用者の数と、それから百人以下の事業所、これとの比率といいますか、百人以上の規模で大体日本の雇用者の何割ぐらいをカバーできるわけですか。
  99. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 概数でございますが、会社の規模百人以上というところで線を引きますと、従業員ウエートで従業員数の総数に直しまして約六割ぐらいでございます。五九%強でございますが、約六割をカバーしておる、そういう状態でございます。
  100. 野田哲

    ○野田哲君 人事院の勧告制度というのは、いわゆる較差を解消していく、これを原則にしてやっていくという説明でありますけれども公務員法の二十八条で勧告制度を定めているわけですが、ここに五%、百分の五という数字が入っているわけです。つまり、五%以上の較差を生じた場合には勧告を義務づけている。五%以下の場合においてはそのときどきの裁量にゆだねられていると思うのですが、そこで私は仮定の問題として伺いたいと思うのですが、仮に較差について調査の結果四%であったと、そのために勧告を行わないで公務員給与改定を据え置きにしたと。この場合には、その翌年民調をやってその結果較差が仮に定期昇給分を除いて六%出た、こういうような結果になったとするならば、当然較差論からいきますと、前年四%の較差を据え置いたとするならば、その翌年六%の較差が出たときにはその年には一〇%の勧告を行わなければならない。こういうふうに、較差が累積してくるから当然それをその翌年はカバーしていかなければいけない、こういう理屈になるんじゃないかと思うんですが、この点いかがですか。
  101. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 法律の規定で申しますと、五%以上増減する必要が生じたと認められるときはとなっておりまして、人事院の勧告義務の発生の限度がそこに表示されておる、こういう理解でございますが、いまその較差の見方あるいはそれの累積という点につきましては、先生いまお話しなさっておられますとおりでございまして、私どものやっておりますことは、単に相場といいますか伸びといいますか、そういうものの平均ということではございませんで、絶対額から出てきます水準比較の絶対額の差、それが幾らあるかと、こういうことでございます。したがいまして、勧告をいたします場合のものは四月時点の絶対額の差のいわば清算でございます。そういうことで、一年清算を外しますと次の年二年分清算となるというのは自然の勢いでございます。
  102. 野田哲

    ○野田哲君 そういう方式でいくということになりますと、今日経済が低成長の時代に入っている、この状態が当分続いていく、こういう見通しを持った場合には、この五%という勧告を義務づけているこの数字が非常に微妙な問題になっていく、そういうケースがあると思うわけです。その場合、人事院がこれをどう取り扱っていくか、どういう手段をとっていくかというこの選択が非常に重要になってくると思うんです。  私が私なりに考え二つ方法考えられるわけです。それは、一つは、五%にこだわらないで較差が生じておればその較差を解消していく、清算をしていく、毎年五%以上であろうと以下であろうと。以上の場合には当然義務づけられているわけですが、以下であってもその較差については清算をしていく、こういう方法と、それからもう一つは、五%以下の場合には据え置いてその翌年の較差に上積みをしていく、こういう方法とあると思うんです。その場合、後者の場合では私は非常に問題が出てくるんじゃないかと思うんですね。一つは、据え置きの年に退職した人と、その翌年較差を上積みした年に退職をした人と、この間に、いま審議している恩給に関連をする共済年金――今日では共済年金でありますが、あるいは退職金、こういうふうな点について非常な不均衡が出てくる。つまり、据え置きになって、翌年はこの据え置き分を上積みをして、さっきの例で言えば一〇%の清算を行ったという場合、据え置きの年に退職した人とその翌年退職した人との間では一〇%の開きがあって、これが退職金あるいは共済年金にまで影響が及んでいく、こういう非常な不公平が生じるし、平等取り扱いの原則からいっても問題が残るんじゃないかと思う。それからもう一つは、今日の公務員給与制度をめぐる環境といいますか、社会的風潮の中で、前年据え置いたからことしはこうですよという形のものが、たとえば民間は少額であっても毎年賃上げが行われていく、公務員は一年据え置いたから翌年民間五%のときに公務員は前年分を上積みをして一〇%の勧告を行った、こういう方法をとる場合に、素直にこれが国民のコンセンサスを得られるかどうか、こういう点で別の次元の問題が生じてくると思うんです。  そういう意味からすれば、一体人事院としてはどっちの道を選択するのか、これは非常に重要な問題になってくると思うんです。ことしの場合にも、どうも私鉄の状態を見ても今夕ぐらいには解決をするんではないか、こういう雲行きにあるようでありますが、ことしの場合この五%という問題が非常に微妙になってくると思うんです、特に公務員の場合には定期昇給部分を除いた較差で勧告が行われておりますから。そうすると、一体人事院は本年のいまの状態の中で、春闘の情勢を見た上でどういう選択をされるのか、較差は較差として三%だろうと四%だろうとそれを清算をしていくという方式をとられるのか、あるいは据え置いて翌年あわせて処理をする、こういう方法をとられるのか、これは端的にひとつお答えいただきたいと思うんです。
  103. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) ただいま、これから民間給与の調査にかかるという段階でございまして、大変仮定の問題でございますのでお答えいたしにくい面がございますが、考え方として申し上げますれば、先生お話しのように、年を越したということで累積をするという場合には、その次の年に大変そういうまた別の意味で、コンセンサスの面で困難な面が起こるということは事実でございます。これは現にそれに似たようなケースで、同じではございませんが、公務員のボーナス――特別給でございます。これがややそういう関係になっておりまして、これは一年間の民間の臨時給与、特別給与の一年間の締めくくりを、次の年に締めくくったところで合わせると、こういうことをやっておりますので、勢い一年おくれというかっこうでずっと運用されてきている。これがずっと景気動向、民間の状況が一貫して余り波がない場合ですと、わりと自然にそこの一年おくれということが目立たないわけでありますが、二、三年前のように急に景況の下降場面にぶつかりますと一年おくれが大変目立ちまして、民間が不況であるのに公務員のボーナスがどうなのかということでおしかりを受けた時期がございます。物事はそれと同じではございません。これは月給、今度は月給の問題でございますので、程度があるいは違うかと思いますが、そういう点でむずかしい問題をはらんでおるということは確かにそのとおりでございます。もちろん先生がいまお話しの退職金等の基礎のアンバランス等の問題もあろうかと思いますが、いずれにしてもそういうことで、かたがた一%といいましても、現在の公務員給与べースから見ますと千何百円から二千円近い数字になっておりますので、そういう金額から見ましても、なかなか判断をいたしますには、仮定の問題でございますが慎重な検討を要すると、こういうふうに考えております。
  104. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると結局あれですか、仮定の問題ではありますけれども、五%にはこだわらないで、較差があればその較差を勧告をすると、こういうふうに理解していいわけですか。
  105. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 同じようなことをお答えすることになって恐縮でございますが、調査の結果出てきます較差、あるいはそれから来ます民間の配分のすべてを見て、それから判断をいたしますときには現在申し上げましたようなことを頭に置いて、これで精密に作業をいたしたいと、こういうふうに考えております。
  106. 野田哲

    ○野田哲君 もう一つ給与局長ね、私は今日の民間の賃金の決定状況から見て問題を感じているのは、いわゆる民間では二段ロケットという言葉が使われている。物騒な言葉が使われているんですが、これは総務長官も、それから人事局長もよく承知しておいていただきたいと思うんですが、つまり二段ロケット、組合用語で言われているのは、春闘のときには低い額で妥結をして、他の企業への波及しないようにするためにいろいろ業界の中での影響等も考慮して、秋ごろにもう一回上積みをしていくと、こういうような方式が私の調査したところでもかなり大きい影響力を持った業界にあることは間違いありません。それからもう一つは一時金の扱いです。これは去年もここで私はかなり議論をしたわけですけれども、たとえば私鉄の場合が、昨年解決一時金として三万円という一時金を出した。この一時金は結局フォローされていないんではないかと思うんですが、ことしの場合も、いまの私鉄の成り行きを見ると去年と同じような処理方式がされる傾向にある。これは夕方になればはっきりしてくると思うんですが、あるわけです。こういう二段ロケット方式とか解決一時金方式という問題。特に二段ロケット方式ということになってくると、民調の実施の時期からいって秋ごろにそでの下でやりとりをした、ふところへ手を突っ込んでやりとりをしたような賃金の決定は、いまの民調の方式ではこれはフォローされないんじゃないかと思うんです。これはやはり厳密に把握をしていかなければ、本当の較差の解消になっていかないんじゃないかと思うんですが、これらの点について民調の実施の過程でどういうふうに考えておられますか。
  107. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 春闘の際に、春と秋とか二つに分けて、四月段階ではその何分の一かという方式があることは事実でございます。ことしも若干すでに新聞がそういうことを伝えておる企業もありまして、私どもこれから調査をする段階でございますが、そういう俗に二段ロケットと言いますが、それについてもできるだけ把握いたせるようなことで調査を進めたいと思っております。解決一時金も同様でございまして、特に解決一時金の場合には、去年の私鉄というようなことから非常に用いられやすい形になっておりますし、ことしもそういうことがあろうかと思いますので、これは十分把握できるように調査を構えていくつもりでございます。
  108. 野田哲

    ○野田哲君 総務長官伺いますが、政府は、ことしすでに三公社五現業に対しては非常に低率低額ですけれども有額回答を出しているわけですね。予算には七・二%ですか組んでいるんだけれども、それよりはるかに低いものではありますけれども一応有額回答を出している。これが現在公労委の場に問題が移行されている。恐らくきょう夕方までには、大体私鉄が決着がつくようでありますから、そうするとこの三公社五現業の問題は今晩あたりからかなり具体的に煮詰めの段階に入っていくと思うんですが、その経過はともかくとして、三公社五現業に対しては有額回答をすでに出している、金額の多寡は別にして。そのことを私は重視をしたいと思うんです。つまり、三公社五現業に有額回答を出しているということは、金額はこれから公労委の場で決まっていくと思うんですが、政府は三公社五現業の職員に対しては賃金引き上げの意思を一応示されたわけですね。さて、三公社五現業にそういう措置がとられたということになると、五現業はいわゆる国家公務員です。特に林野の場合で言えばこれは農林省の機構の一部です。同じ農林省の屋根の下の中へ、片や国家公務員適用の農林省の職員がおり、片や公労法適用の林野庁の職員がいる。大蔵省の中には、同様に印刷局、造幣局、通産省の中にはアルコール専売と、こういうふうに同じ国家公務員でありながら、労働法の関係についてだけ公労法の適用を受けている国家公務員がいるわけです4そういたしますと、公労法適用の職員については、これから公労委の中で具体的な作業が進んでいって一定の額が決められ回答が示されていく、こういうことになっていくと思うんです。そういう状況になったときに、国家公務員は、これからの人事院の扱いを見なければ何とも言えませんけれども、仮にことしは国家公務員は、財界とか、あるいは与党の中で言われているように据え置き論という形が前に出て、国家公務員は据え置きだということに仮になったとするならば、これは同じ国家公務員の間で、同じ屋根の下に同じ機構の中にいる公務員同士の中で非常な不均衡が生じる。平等取り扱いの原則、この原則から外れたような結果になるんじゃないかと思うんです。  そこで端的に伺いますが、率や額の高い低いはともかくとして、五現業に対して有額回答を出されているということは、つまりこれは国家公務員に対しても賃金改定の意思はあると、こういうふうに理解をしていいわけでしょうね、いかがですか。
  109. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 現在まだ人事院の勧告が出るとも出ないとも決まっていない段階であります。国家公務員給与というのは、広く国民の納得を得る必要が私あると思いまして、政府といたしましては第三機関の人事院勧告を、人事院による専門的な調査研究に基づく勧告をまって処置することが最も適切であろうかと考えております。
  110. 野田哲

    ○野田哲君 勧告をまってということでありますけれども、勧告があれば当然それは尊重すると、こういうことですね。
  111. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 政府は、これまで人事院の勧告を尊重するたてまえをとって誠心誠意やってまいったわけでございますから、当然そういうことだと思っております。
  112. 野田哲

    ○野田哲君 人事院の方に伺いますが、人事院の勧告というのは、民間の給与の実態調査をやった上で較差の清算と、こういう方式でやられているわけですが、先ほど言いましたように、公労協の場合に、三公社五現業、特に五現業の場合すでに有額回答が曲がりなりにも出されている。これから公労委の場でどうなっていくか予測はつきませんけれども、いままでの有額回答以下ということは当然あり得ない、常識的に考えて。そして、私鉄との見合いあるいはすでに出ているいろんな民間の見合い、こういう形で作業が進んでいくと思うんですが、五現業に一定の有額回答が示されて決着がついていったという場合には、当然そのことも人事院としては考慮の中に入れられてしかるべきじゃないかと思います。私は、今日までの毎年の公労協、三公社五現業に対する公労委の仲裁裁定と人事院の勧告とを見ても、やはりそういう点の配慮によって一定のバランスがずっととられてきておるというふうに私は思うんです。そういう意味からすれば、また国家公務員の中での公労法の適用、国家公務員法の適用、こういう形に分かれているわけですが、やはり国家公務員という五現業の職員の賃金がどうなるかという点は、当然バランスの上からも人事院としても考慮の対象にはすべきものとして受けとめていいんじゃないかと思うんですが、この点いかがですか。
  113. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 賃金問題といいますのは、大変バランスが軸になっておるということは全く先生仰せのとおりでございます。特に民間のそういう状況を見ておりますと、もちろん不況になりますと支払い能力ということが軸でありますが、同業他社といいますものとのバランスというのが、非常に給与決定の足がかりの大きな一つになっているということは偽りございません。そういう意味で、いまの先生お話しの五現業の林野あるいは郵政というような、いわば現業と非現業の違いはありますが、私どもから見ていわば同業他社というような関係で大変気になる関係であるということは事実でございます。そういうことで、現在進んでおります団交や調停の成り行きについては、大変気にして大いに注目をしておるという状況でございます。
  114. 野田哲

    ○野田哲君 言葉を慎重に総務長官も角野局長も選んで答えておられる。私はまあ端的に言えば、そうすると当然人事院としては、率や額はともかくとして公務員に対しても勧告は行われると、総務長官はそれを尊重すると、こういうことでありますし、五現業とのバランスということも非常に重視をされている、こういう点から総合して公務員に対しても賃金の引き上げは行うべきものだというふうに答えられたと受けとめてよろしいですか、これ。総務長官と、これは人事官が出ておられるんですが、私の受けとめ方間違いないというふうにお答えいただけますか。
  115. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 先ほども申し上げましたように、勧告がまだ出ていない現段階でございますから、何とも申し上げるというわけにはまいりませんが、政府はこれまで人事院の勧告を尊重するという基本的なたてまえをとってまいりました。今年度は特に経済情勢の厳しい状況下にあるわけでございますから、勧告のその実施に当たっては諸般の事情を慎重に検討する必要があるのではないかと、これまでの基本的なたてまえに立って誠意を持ってこれに当たっていきたい、こういうふうに考えております。
  116. 加藤六美

    政府委員(加藤六美君) 先ほど給与局長申しましたように、人事院としましてはただいま鋭意民間の調査をやっておるところでございまして、現段階において勧告するともしないとも、そういう決定はしておりません。とにかく現在の情勢は近年にない異常な経済情勢でございますから、篤とひとつ考慮検討をいたしたいと思います。
  117. 野田哲

    ○野田哲君 もう一回それぞれ伺いますが、まず人事院の方ですが、較差があれば勧告する、こういうことですね、ずばり。
  118. 加藤六美

    政府委員(加藤六美君) そのこともまだ院議で相談いたしておりません。結果が出ましてから十分検討いたしたいと思います。
  119. 野田哲

    ○野田哲君 これはさっきの角野さんとのやりとりといまの人事官の答えは、どうも私はつじつまが合っていないと思うんです。五%という一つの義務づけの数字があるが、それ以下であっても、それを据え置いて翌年上積みをしていくというやり方は、これは私が指摘をしたように二つの点からして問題が起きるから、五%を境目にして取り扱うということではなくて、やはり較差は較差としてやっていった方がいいんだと、解消する方式をとった方がいいんだ、こういうふうに私は角野さんの考え方を受けとめているんですが、人事官は、まだ人事院としては態度を決定していないというのは、これは民調の結果が出ていないし、春闘がまだこれから続いているわけだから決定されていないんで、方針としては較差があればこれは勧告をするんだと、こういうことじゃないかと思うんですが、その点いかがですか。
  120. 加藤六美

    政府委員(加藤六美君) 較差をそのまま持ち越すということも決めておりません。したがいまして、民調をしながら十分その点も含めて検討していきたい、こういうことでございます。
  121. 野田哲

    ○野田哲君 決めているか決めていないかを私は聞いているんじゃないんですよ。人事院基本方針として、較差があれば勧告をする、較差の清算の勧告をするということじゃないですかということで私は五現業とのバランスの問題とか、いろいろの例を出して問題を伺っているわけなんですが、だから決めているか決めてないかということじゃないんです。三%であろうと四%であろうと較差があれば解消するんだと、清算をするんだと、そういう方針でやっておられるんですねと、こう聞いているんです。
  122. 加藤六美

    政府委員(加藤六美君) 御質問の趣旨十分わかりますが、まあ私からいまここで、少なくとも較差があれば勧告すると、こういうふうに申し上げる時期でないと思いますので差し控えさせていただきます。
  123. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、角度を変えて伺いますが、五%というのは一体どういうふうに受けとめておられるんですか、国家公務員法二十八条の二項の関係で。
  124. 加藤六美

    政府委員(加藤六美君) 少なくとも五%以上の増額を勧告すべきだというときにはしなければならないというふうに考えておりますが、それ以下のときにつきましては、別に規定もございませんので状況とあわせて検討をいたすというふうに考えております。
  125. 野田哲

    ○野田哲君 どうも前後の関係がつじつまが合っていないと思うんですけれども、もう一つだけ最後に総務長官伺いますが、総務長官、あなたはさっき私の質問に対してちょっと気になることをおっしゃったんで、言葉じりをつかまえるわけじゃなくて、これは基本的な考え方として承っておきたいんですが、尊重するということを言われたんですが、その前後にちょっともごもごっと気になることを言われているんです。それは、こういう経済の状態でありますから諸般の情勢を考慮し云々と、こう言われているわけです。勧告があった場合にはもう尊重ということしかないんじゃないですか、諸般の情勢を考慮しというのはよけいなことじゃないですか、そういうよけいなことは考慮される必要ないんじゃないですか、どうですか。
  126. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 諸般の情勢と申し上げまして何か誤解を受けたようでありますが、私の考え方といたしましては、人事院の勧告を尊重すると、この基本的なたてまえに立って誠意を持って対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  127. 山崎昇

    山崎昇君 余り時間がありませんので、総務長官人事院にまず二、三見解だけきょうはお聞きをしておきたいと思います。  第一点は、いま野田委員からも話が詰められておりますが、私もこの公務員給与を扱いましてほぼ三十年ぐらいになるわけなんですが、いままで人事院の勧告というのは、公労協の仲裁裁定を〇・一ないし〇・五ぐらいの程度で上下をしている。言うならば、仲裁裁定と見合った数字になっているのが人事院勧告の通例でありました。だからことしも、私の理解に間違いがなければ大体仲裁裁定と同程度のものが勧告として出てくるのではないんだろうか、公務員もまたそう理解をしているんではないんだろうか。そういう方針について人事院はいま変える理由がないと私は思っているんですが、そのとおり理解をしておいていいですか。
  128. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 三公社五現業の仲裁裁定の出てきますそういう数字、引き上げ率といいますか、それはやはり三十九年以来、先ほど申しましたように民間準拠ということでやっております。私どもも民間準拠ということでやっております。で、それは非常に厳密な調査をなさっての民間準拠であるかないかという違いはあると思いますが、過去の高度成長時代のやはり大きなパターンとしましては、非常に似ておったという歴史的な経緯があることは事実でございます。しかしまあ、制度上申し上げましても、国家公務員が民間準拠でやっておりまして、公社、現業は国との均衡ということは書いておりまして、私どもにはそういう意識はございません。
  129. 山崎昇

    山崎昇君 意識あるなしでなしに、今日までの現状は、十何年間にわたって仲裁裁定とほぼ同じような数字人事院勧告が出されておるんです。これはもう紛れもない事実なんですね。ですから一般公務員は、いま野田委員から有額回答という説もありましたけれども、きょうからあすにかけまして私鉄がどうなるか、民間がどうなるか、あると思いますが、それに伴って恐らくいま調停段階に入り、やがて仲裁という形になると思うんですね。その場合に、それが出ると公務員は過去のずっと実績から見て、ああわれわれもまたこの程度なんだなという一つは感じを持つと思うんです、低い高いは別でありますが。したがって、いま人事院がこれから調査やるわけですが、私もまた専門家の一人として大体そこら辺にあるんではないんだろうかと推定をしているわけです。それに誤りありませんか。
  130. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 歴史的にといいますか、現在までの両者の推移はおっしゃるとおりでございます。またそれを職員の諸君がそう見ておるとか、そういうことも事実のようでございます。ただ、それは結果でございますということを、一百多いかもしれませんが申し上げておきます。
  131. 山崎昇

    山崎昇君 もちろん結果です。調査の結果ですが、そういう事実はいま否定する材料が一つもない、やり方もまた全然変わらないとすれば、私自身そういうふうに理解をしておきたい、こう思います。  それから総務長官にお尋ねしますが、去年までは、人事院勧告が出る前でありましても仲裁裁定等が出た場合に、人事院の勧告も、金額は言いませんでしたが、やはりそれに見合うような勧告を期待をするという趣旨の発言がずいぶん前長官時代にあった、そういう趣旨の回答を公務員に与えていることも事実なんです。ですから、この場であなたは幾ら幾らということはもちろん勧告が出てる前ですから言えないと思うが、人事院にそういう期待をしているという、あなたの気持ちを私はくんでおきたいと思うんですがよろしゅうございますか。
  132. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) 昨年あるいは前のことでございますので、事務的に私からお答えをさせていただきますが、公務員の組合の皆様といろいろな交渉をした席で総務長官が申しておりますのは、人事院がそういう勧告をすることを期待するということではございませんで、公務員の皆様方がそういうふうな民間との較差が埋められるようなそういう気持ちを持たれる、そういう気持ちは十分理解できる、そういう発言をなさったものだと思っております。
  133. 山崎昇

    山崎昇君 まあ苦しい答弁のようですが、これもまた、きょうとても詰めることはできませんが、従来の総理府考え方として、公務員が要求しております額、満度にいかぬまでも、あらかた民間、公労協の賃金が終わる段階では、そういうことをあなた方期待しつつ公務員と会われるんだと私は思いますが、きょうもその程度に理解をしておきたいと思うんです。  そこで、人事院ですね、もう一つお聞きをしておきますが、大変努力をされているようでありますが、寒冷地手当の勧告も、お聞きするところ何か八月ごろに一般勧告と同様にというように漏れ承っておりますが、寒冷地の勧告も恐らく検討されているんだと思うんですが、ここで言える範囲内で結構でありますが見解を聞いておきたい。
  134. 角野幸三郎

    政府委員角野幸三郎君) 寒冷地手当の改善、改正につきましては、附帯決議も御決議いただいておりまして宿題になっておりまして、ここのところ引き続いて検討を重ねておる最中の問題でございます。ところで、この問題につきましては幾つかの足がございまして、地域区分の問題でありますとか、基準額の中の率と額のバランスの問題でありますとか、あるいは八月を境にしての採用その他の変動の調整でありますとか、そういう問題をわりと多面的に含んでおる宿題でございます。そういうことで、もしこれを全部取り上げるといたしました場合には、法改正を要する事項がまじってございますので、やはりそういう法改正という時期と御勧告申し上げる時期というのはやはり関係があると思います。それで、かたがた寒冷地手当はほかの給与と違いまして一年に一回、八月という支給でございます。いま先生お話しの八月にというお話も、そういうことと、あるいは八月の勧告と両方に関係があるような御発言かと思いますが、私どもいませっかく作業いたしておりますめども大体その辺をめどにして作業をいたしておる最中でございます。
  135. 山崎昇

    山崎昇君 次に、総務長官にお聞きをしておきますが、これは新聞報道でありますし、さっき野田委員からもちょっと触れましたが、あなた人事院の存在について、第三者機関とかあるいは専門的な機関という言葉も使われておりますが、どうもこの人事院のあり方について政治的に介入するような方向が私ども出されているんじゃないんだろうかという気がしてなりません。もしそういうことがないんだと、与党としても政府としてもそういうことがないんだというならここでひとつ明確に答弁をしておいてほしい。
  136. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 先ほどもお答えをいたしておりますように、政府といたしましては人事院の勧告を尊重するたてまえ、これは基本的に貫いておるわけでございまして、政治的に介入するとか、こういったことは一切ありません。
  137. 山崎昇

    山崎昇君 それから、人事院にあわせて聞いておきますが、与党の動きの中に、人事院の調査のやり方その他等々、制度そのものについていろいろ介入しておるような報道がありますが、そういうことは、あなた方はある程度独立機関でありますから私はあり得ないと思うんだが、この際でありますから人事院の見解も聞いておきたいし、さらに、先般前の事務総長でありました尾崎さんが、何か定年制について研究されて、これも新聞報道でありますが、人事院勧告に反映させますというような談話になっている。私はこれはゆゆしき問題だと思うんです、あなた方がどういう判断をするかは別でありますけれども。したがって、私は人事院の権威としても、この際きちんとした考え方をここで述べておいてほしいと思うんです。これは人事官からひとつ述べておいてもらいたい。
  138. 加藤六美

    政府委員(加藤六美君) 私も新聞で読みましたけれども、ただそれは介入というようなことは一切ございません。新聞で拝見したということでございます。
  139. 山崎昇

    山崎昇君 それじゃ本当に時間がありませんから、急いで二、三恩給関係等について質問していきます。  最近、与党のある議員の質問から、公務員は退職年金と退職手当と二重取りではないか、こういう新聞報道等がかなりなされまして、私も地方へ行くと、私ども二重取りしているつもりもないし、また政府がつくった制度で受給しているのに何でそういうことを言われるんだろうかという大変憤慨もあります。そこでお聞きをしておきますが、これは総務長官に見解を聞いておきます。一体恩給とはどういうふうにあなたはお考えになるのか、退職手当とはどういうふうにあなたは性格考えるのか、きょうはあなたの見解だけひとつ聞いておきたい。
  140. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先生ただいまおっしゃいました恩給性格については私の方から申し上げたいと思います。  恩給というのは、すでに御承知のように、公務員として非常に長い期間忠実に公務に勤務したと、この功労に報いるためのある種の国家補償といいますか、国が補償する、こういう性格のものであるかと思います
  141. 菅野弘夫

    政府委員(菅野弘夫君) 退職手当の性格、これもいろいろ説がございますけれども、私たちとしては、公務員が忠実に長い間勤続をいたしましたその勤続報償であるというふうに理解をいたしております。
  142. 山崎昇

    山崎昇君 いまお二人から答弁がありました。私はかつて委員会で、当時これは総務長官が田中龍夫さん、それからその後に山中さんが長官のときに、私から恩給性格という質問をいたしました。これは学説でも多数説でありますが、「恩給とは、退職又は死亡後、本人又は遺族生活に支給される金銭」であって、「公務員の身分に伴う権利で、給与請求権の延長である」と、こう述べられておりますが、そのとおりですかと言ったら、山中長官はそのとおり異存はありませんと。そしてまた、田中龍夫長官は、「公務員が公務を執行するために失った経済上の取得能力を補なうものである」と、こう言っている。言うならば、退職手当が報償金であるならば、恩給は報償金とは違う、給与の請求権の延長だと、こう言う。したがって、違う性格のものをもらったからといって二重取りみたいな物の言い方というのは、私は特に与党の議員から出ることは許されないと思っているんです。これについていまの長官の見解を聞いておきたい。
  143. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 私は二重取りではないと、こういうふうに考えております。
  144. 山崎昇

    山崎昇君 いま私が申し上げましたこの性格について、あなたもお認めになりますね。
  145. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) いろいろなことについてはいろいろな考え方があろうかと私は思いますけれども、私はいま申し上げましたように、-二重取りではないと、こういうふうに考えております。
  146. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、いま私が申し上げました恩給性格、退職手当のあなた方の見解はそうだということを私も記憶をして、以下質問を進めていきたいと思う。  そこで、御存じのとおり恩給法の二条ノ二は、俗にスライド規定と、こう言うわけです。これは法文上はスライドという意味でありませんが、政策上は四十三年の恩給審議会の答申に関連をしまして、公務員給与にスライドさせてきたのが今日の状況なんですね。これは政策としてそうなってきている。そこで、スライド制の制度的方向をとれというのが要望でもありますが、なかなか制度的にはそうなってない。そこで最近問題が起きてまいりましたのは、公務員給与にいたしましても、民間の賃金もそうでありますが、ここ一、二年は物価より低い状況にある。その場合に、公務員給与にスライドだけさせたのでは、これは生活保障ということになかなかなってこない。そういう意味で、あの恩給審議会の答申は三点挙げておりますが、一つは物価が五%以上上がった場合、第二は公務員給与改定になった場合、第三は著しい経済に変動があった場合と、こうなっています。したがって、いま問題点としなきゃなりませんのは、この公務員給与等が物価以下に仮に低い場合、一体このスライド的な規定をどう運用されていくのか、これも見解としてきょうは聞いておきたい。
  147. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先生いま御指摘のように、昭和四十七年までは大体物価、それに給与との格差、これを調整していくと、こういうやり方であったわけです。四十八年から給与にスライドしておる、これも五十年までは一律にベースアップ分を掛けている、これがまた国会等でもいろいろ議論を呼びまして、いわゆる上厚下薄の傾向が出てくるのではないか、こういうことで、五十一年から傾斜方式といいますか、上薄下厚といったような傾向も取り入れた方式をとりまして、ただいま御審議いただいている五十三年度改善も同じような方式をとっておるわけでございますが、そういったものが、五十一年からようやく三年、これは国会の御意思等もありまして、私どもとしてはようやく定着してきた、このように考えておるわけでございます。  ただ、いま先生指摘のように、そういったものが物価よりも低いではないか、こういう御指摘でございますが、私の見解といたしましては、やはり昔の公務員であった人の給与改善ということは、やはり現在の公務員とスライドさせていく、これは妥当性を持っておるんではないか、このように考えるわけでございますが、あとは物価その他の上昇に対しては、老齢者とか、あるいは経済的に非常に弱い立場にある人、こういった方々の優遇措置というようなことで考えていくのがいいんではないかというように私自身は考えておりますが、ただ仮定俸給の問題、これはいま三年間、大体定着したと、こう申し上げましたが、まだまだいろいろな問題を含んでいると思いますし、昨年あたりも先生方からもいろいろ御指摘があったようでございますので、今後とも検討してまいりたい、このように考えております。
  148. 山崎昇

    山崎昇君 次にきょうお聞きをしておきたいのは、整理資源をめぐりまして、これもかなり議論になっておりますが、国家公務員の共済組合が昭和三十四年にできましてね、地方公務員が三十七年。したがって、共済組合の年金を純粋に年金としてもらう者はまだ存在をしないわけです。仮に国家公務員でありましても、昭和五十四年以降でなければ年金だけの計算で受給する者がいない。それ以前、いまもらっておる者、それ以前から勤務する者は、御存じのとおり恩給部分年金部分で計算されて合算するわけですね。したがって、恩給は、これは国家の給与でありまして、公務員から言えば請求権の一部でありますから、当然国がその費用を負担をしなければならぬというので追加費用という規定があった。これが最近問題になりまして、何か共済組合だけが国家の資金がどんどん入っているような宣伝をされる、私はまことにこれは遺憾だと思うのです。そういう意味で、この機会にこの点は明らかにしておいてほしいと思うことが第一点。  それから第二点は、同じ恩給受給といいましても、私の調査によれば文官恩給はわずかに六・三%ぐらいしか該当がなくて軍人恩給が九三%ぐらいになるんですね。したがって、恩給という一言でくくられ、共済年金という一言でくくられることになりますと必ずしも正確ではない。そういう意味では、整理資源というものに対して政府はきちんとした態度を明確に示しませんと混乱をするのではないだろうか。そういう意味で、きょう総務長官からこの点についてきちんとした見解を聞いておきたい。  それから、あわせまして、立ったついででありますから、先般来日赤従軍看護婦の問題を大変総務長官が積極的にやられておるようでありますが、もしこれがやられますというと旧陸海軍の看護婦の問題もまた出てまいります。御存じのとおり、旧陸軍共済組合令あるいは旧海軍共済組合令に基づきます看護婦は、全部乙種でございましたために年金がないのです。だから、もしも日赤従軍看護婦の問題が解決されるとするならば、当然旧陸海軍の共済組合令によります看護婦もまたあわせてこれを処置をしなければならぬじゃないか、私はこう思うのですが、それについてのひとつ長官の見解を聞いておきたい。
  149. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいまの整理資源の話でございますが、先生の御説のとおりかと思います。  それから、日赤看護婦の問題でございますが、ただいま先生指摘の陸海軍看護婦、これを入れるかどうか、こういったことも含めまして、私ども長官からの命によりまして検討いたしておるところでございます。
  150. 山崎昇

    山崎昇君 それじゃ陸海軍看護婦も入るというふうに私も理解をしておきます。いいですね。
  151. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 今後の日赤の看護婦の問題として、総理府恩給局の中では、副長官を中心としてこの問題にいろいろ解決をすべく当たっておるわけであります。いま御指摘の問題につきましては、どういう形になるか目下全体を含めて検討中である、こういうふうにお考えになっていただければいいと思います。
  152. 山崎昇

    山崎昇君 次に、通年方式の導入について聞いておきたいと思うのです。  これは私が計算した方法でありますが、私の方から計算した内容をちょっと申し上げて、それがいいかどうかあなたに聞いておきたいのですが、たとえば、やめたとき十五万円で三十年勤続して一般方式、これは共済組合方式で計算した場合に九十九万円になります。それから、通年方式でやりますと百十八万ぐらいになりまして、通年の方が十九万九千円ぐらい高くなる。それからまた、例題の二つ目として、二十万でやめて三十年勤務した人を仮に計算いたしますというと、一般方式でやると百三十二万円ぐらい、通年方式で百三十六万九千円ぐらい、言うならば四万九千円ぐらい通年方式の方が高くなる。それから二十五万ぐらいで計算しますと、一般が百六十五万で通年が百五十四万でありますから一般の方が多少高くなる。言うならば、月給が高くなってきますと一般方式の方がよくて、月給が低ければ通年方式の方がいいという計算も出てくる。そういう意味では、いま通年方式というのが余り恩給に導入されておりません。そこで、恩給に通年方式というのをあなた方導入する考えがあるかどうかだけきょう聞いておきたい。
  153. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先生ただいま御指摘の通年方式でございますが、これは、共済年金が保険数理に基づいて運営されております関係から、厚生年金との間に通算退職年金制度をとっておる、それとの関連におきましてとられている方式であるかと思います。  ところで恩給でございますが、先ほど申し上げましたように、恩給はそういった掛金あるいは保険数理というようなたてまえではございませんで、国がかつて公務員で退職した方あるいは死亡された後の遺族、この方に償いをする、こういう性格のものでございます。したがいまして、いま共済年金でとっておる通年方式、これをとるということにはいろいろ技術的にも問題があるのではないか。また、先生指摘のように、確かに通年方式をとりますと、給与の低い人で非常に勤務年数の長い人と、給与の高い人で勤務年数の短い人、こういった方々の間に、恩給の内部だけで見ますと逆転現象が起こってくるわけでございまして、しかも先ほど先生指摘のように、昭和三十四年に共済に移る以前にやめられた方々給与でございます。そこで、いま申し上げたようなことから、なかなか通年方式をとるというのはむずかしいのではないか、このように考えております。
  154. 山崎昇

    山崎昇君 これはきょうはあなたと議論する時間がありませんから問題だけ述べておきますが、ただ私は、いまの共済年金にいたしましても、根本は恩給に見習っている、準じてやっている。ですから、その恩給がきちんといたしませんと、何か年金だけが飛び抜けてよくなったように世間で宣伝されるものですから、そういう格差があるなら当然恩給もある程度是正すべきじゃないかという見解を持つものですからいまお聞きをしているわけです。  次にあなたにお聞きをしておきたいのは、上厚下薄を改めるために多少傾斜方式をとったのですね、それはそれでいいと思う。ただ、いま公務員の場合には、昭和三十二年のあの給与制度の改正以降通し号俸制がなくなっちゃったですね。等級制度になっちゃった。ところが、恩給法によります軍人だけは通し号俸制みたいに仮定俸給がなっているわけです。そこに多少問題点が出てまいります。そこで、通し号俸は一体どういう基準でいまの号俸というのをつくっているのか、とてもきょうこの短い時間で述べることはできないと思いますが、もし下の方に厚く上に薄くしたというのなら、どういうふうな計算方法をとったのか、一例でいいから説明してほしいと思います。
  155. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 軍人の仮定俸給でございますが、もう先生承知のように、戦前は、ずっと昔は階級と年数によって恩給額そのものが決まっておった。これが昭和八年にその恩給額を仮定俸給に改めた。その後いろいろ変遷はございますが現在のような形になってきておる。したがいまして、文官の立て方とは基本的に違っているのじゃないか、このように考えるわけでございます。ただ、軍人恩給だけについて言いますと、いまの上薄下厚、これを単に傾斜方式といったことだけではなくて、下の方については一号アップするとか二号アップするとか、こういった改善も行ってきておるわけでございます。したがいまして、かつて軍人恩給復活、その前ですか、たとえば大将と兵の格差、これなんか見ましても、かつて十六・何倍かあったのが現在は六・何倍になっておる、こういったような状況です。
  156. 山崎昇

    山崎昇君 重ねてあなたに具体的に聞いておきますが、今度の改善で、たとえば兵隊で六十五歳以上の人は七十六万四千五百円になります。これ十二で割りますと月一八万三千七百八円しかならない。ところが、公務員の方を計算しますと、行(二)の最低と言われます五等級の初号をとっても六万五千六百円になる。だから、そういうものを比較しただけでも、言うならば下の者はやっぱり低いのではないか。そして、これはまだ恩給をもらっている人でありませんが、公務員の一番低い者と兵隊の六十五歳以上の人と比較してみてもなおかつその方が低い状態が出てくる。だから、そういうことをあなた方改めませんと、やがてまた公務員の方がよくて恩給の方が悪いんだ、悪いんだという宣伝もされる。だから、そういう点をあなた方やっぱり目についたら、むしろ改めるべきはきちんと私は恩給でも改めてほしい。そういう意味でいまあなたに、上の方に薄く下の方に厚くするというなら一つの例として申し上げておりますが、今後もひとつ見直してほしい。このことを申し上げておきたいと思うんです。  それから次に、最低保障問題について、特に遺族年金関係についてお聞きをしておきたいと思うんですが、恩給は扶助料でありますが、本人の年金の半分しかもらえない。ところが、最近は寡婦加算でありますとか、遺族加算でありますとかつきますから、実質は二分の一を超える形になっている。そこで、まず基本的にこの遺族年金等につきましてはILOの国際条約でも言っておりますように、少なくとも最低私は六〇%ぐらい保障すべきだと思うんですが、そういう基本的な考え方についてどうお考えになりますか。
  157. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 扶助料の支給率を現在五〇%のものを六〇%以上にするべきである、こういう話かと思いますが、この支給率を上げるべきだということにつきましては、国会等からもいろいろ附帯決議等もございまして、私ども検討いたしておるわけでございますが、こういったものを一律の割合というか率で上げた場合、これは上厚下薄といいますか、格差がだんだん開いていくということもありますし、やはりある限られた財源の中で現在非常に恵まれない立場におられる方、老齢の方、あるいは妻子、あるいは寡婦、こういった方々に手厚くしていくというのがいまの立て方といいますか、そういうことになっておるわけでございますが、御指摘の点につきましてはまた今後とも検討を続けていきたいと思います。
  158. 山崎昇

    山崎昇君 それから、あわせて私は、本当はこれは共済組合法も一緒にやればもっといろんな点であなたに聞きたいこといっぱいあるんですが、もう私あと五、六分しか時間ありませんからはしょって聞きますが、私が恩給法を見ても、やっぱり遺族年金にいたしましても、共済年金との間に歴然たる差があるんですね。それが余り改善されていない。たとえば、数字で言うと一番いいのでありますが、仮に普通恩給の場合でも、寡婦加算を入れたとしても大体遺族年金の場合は本人の年給の六三%前後にしかならない。ところが共済年金の場合は、仮に寡婦加算等を入れたと仮定をすれば八六%ぐらいになる。ここに私が計算いたしましてもざっと二〇%前後の差があることはやっぱり事実なんですね。ですから、さっき申し上げましたように、恩給性格からいけば国は責任を持ってこういうものを改めなきゃいかぬのですよ。共済は相互扶助ということで、保険数理である程度やりますが、恩給はこれは過去に恩給納金を納めて、国が給与として本人の請求権に基づいてやるわけでありますから、当然本人はこういうものを請求する権利がある。そういう意味で言うと、恩給局はもう少しこういう点検討して、改めるべきものは当然いまの世の中に合うように改めるべきだと私は思う。そういう意味で申し上げているわけなんですが、これは長官どうですかね。もっと遺族年金についても基本的に私は率を上げるべきだと思うが、現実的にこれだけある差をどうあなたは縮めますか、それも聞いておきたい。
  159. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先生指摘の点、全くそのとおりでございまして、私どもも今後とも研究を重ねてまいりたい、このように考えております。
  160. 山崎昇

    山崎昇君 今後とも検討を重ねるって、直すのですね、そうすると。それは一年で直すか二年で直すかは別でありますけれども、直しますね。そうしませんと、必ず何か会議があったりテレビに出ると、格差格差ということで公務員だけが責められる。もらっている本人は何の罪もないですよ、これ。あなた方がつくった制度なんです。あなた方がつくった制度公務員は当然の権利としてもらっておって、責められるのは公務員です、いいんではないかいいんではないかと。そこは施政者はやっぱりそういう矛盾があったらみずからそういうものをきちんと直す、それは一遍に二〇%が直せないなら、二年で直すとか三年で直すとかきちんとしてもらいたい。これは総務長官、決意ひとつ伺っておきたい。
  161. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 御指摘の点につきましては、急激というわけにはまいらないわけでありますが、逐次縮めるべく実施いたしておりますので、今後もなお検討してみたい、こういうふうに思っております。
  162. 山崎昇

    山崎昇君 次に、旧軍人等の加算恩給の減算率についてあなたに聞いておきたいのですが、今度の改正で、六十歳から六十四歳の人はゼロにしたのですね。したがって六十五歳以上の人と同じになった。ところが、加算の方はこれは依然として六十五歳以上でありまして六十四歳以下は何もない。だから、減算の緩和をするということは私は反対でもありません。しかし、それならば加算の方もやっぱり私は年齢的に合わせるべきじゃないかと思うんです。加算の方だけは据え置いておいて減算の方だけは少しいじりましたよというのでは、私はやっぱり片手落ちだと思う。したがって長官どうですか、来年はこの加算の方も六十四歳未満の人も改めますか、聞いておきます。
  163. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 加算減算につきましては、軍人恩給復活当時から行われておった制度でございまして、これは加算そのものに対する当時のいろいろな社会的評価、こういったものから出てまいったんだろうと思いますが、しかし、その後いま先生指摘のように、六十五歳以上の人、こういった老齢の方、その方々には戦前のいろいろな期待感というようなこともあったかと思いますので、これを戦前の形に戻すということにいたしたわけでございます。まあ御指摘のように六十歳から六十四歳の方、これは減算を行わないという今般改定をいたしまして、ただいま御審議いただいているわけでございますが、これを直ちに、またこれに加算年をつけ加えるというようなことにつきましては、やはり加算に対する世間の受けとめ方といったようなこともあるかと思いますので、もう少し検討してみたいと思います。
  164. 山崎昇

    山崎昇君 検討もいいけれども、同じ年齢で扱うならやっぱり私はきちんと整合性のあるものにしてほしい。そういう意味でいま申し上げているわけです。時間が来ましたから最後にもう一点聞いておきます。  今度の改正で、断続して三年以上勤務した者について一時金一万五千円とありますね。これは私なりに理論をこうとったんだと思うんですが、昭和二十八年に旧軍人恩給が復活いたしましたけれども、そのときの俸給が五千五百円ですね。したがってこれに三年掛けますと一万六千五百円、それに基準を置いて私は一万五千円と出したのじゃないかと思っているんですが、そのとおりですか。もしそのとおりだとすれば、私はいまの世の中に三年、まあ断続あったとしても合わせて三年以上で一万五千の一時金もらって、極端に言うならば軍歴証明の手数料にもならぬじゃないかと、こんなものは。私は、もう少しやるならやるできちっとしてほしいと思うんです。私は軍人恩給にそんなに賛成するものでもありませんが、まあ反対もしておりませんけれども、しかし、いずれにしても、こういう制度をせっかく設けるというなら設けただけの価値のあるようなものに私はしてもらいたいと思うんです。  まず、最初に私が伺ったように、私の理解に間違いがなければそのとおりだと言ってください。余りにも私は低いと思うんだが、第二点として、あなた方は改善する意思がないかどうか聞いておきます。
  165. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいまの一万五千円の根拠でございますが、先生指摘のように、兵の一時恩給、これは三年以上七年未満の方々に出しておるわけでございますが、これがやはり二十八年の一時恩給復活の際の単価を用いておると、したがいまして、それの均衡を考えまして一万五千円という計算が出てまいると、こういうことでございます。  それから、この金額についてでございますが、戦前には、こういった断続した者について出しておるということにつきましては、いろいろ御苦労願ったということに対する国の感謝の意をあらわしたというようなことでお受けとめいただきたいと、こう思うわけでございます。
  166. 山崎昇

    山崎昇君 いや、やらぬよりはやるのがいいことは間違いない。しかし、二十五年前の金銭の単価持ってきて、いま計算して、これで国の慰労でございますなんてよく私はこんなところで言えると思う。余りにもあなた方無感覚じゃないでしょうか。それは私は二十万も三十万もやるなんて言っているわけじゃありませんよ。しかし、少なくとも現実の世の中に合う程度のことだけはしてもらいたい。二十五年前の単価でよろしゅうございますなんというのは、私はどんなに野党立場からいってもこれは納得できない。したがってこれは長官、ひとつ早急に検討してもらいたい、これも。  きょうは私は時間ありませんから、はしょって二、三の点だけ質問いたしましたが、いずれ共済組合のときにはまた別な角度からお聞きをすることを保留しまして、きょうの質問を終えておきたいと思います。  最後に、あなたの決意だけちょっと述べてください。
  167. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 御指摘の点につきましてはあらゆる角度から検討してみたいと、こういうふうに考えております。
  168. 和泉照雄

    和泉照雄君 私はまず、恩給受給者の今後の推移という問題について質問をしてみたいと思います。  恩給局の調査によりますと、最近五カ年の恩給受給者の推移を見ますと、昭和四十八年の三月末を一〇〇としますと、四十九年に九八・八、五十年に九七・二、五十一年に九五・一、五十二年では九三・九と年々そのように指数が低下しておりますが、これは恩給性格上当然のことだと思いますがそこで、今後十年後、あるいは二十年後、三十年後のこの恩給受給者の推移を分析をされたことがあるかどうか、その辺の点について御答弁願います。
  169. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま御指摘受給者の推移でございますが、私どもの、これもかなり大ざっぱな推計ではございますが、大体十年後に二百万、現在二百五十八万ほどありますが、十年後に約二百万、二十年後に約百五十万程度になるのではないか。したがいまして、大体年間五万人ぐらいずつ平均すれば減っていくような形ではないか、このように推定いたしております。
  170. 和泉照雄

    和泉照雄君 一方、昭和三十六年の法律改正によっては、旧軍人の地域加算年を基礎として在職年数にこれを算入するということで、短期在職者の新規裁定者、そういう裁定者の恩給受給者対象になってふえてきておると思うんですが、最近の新規裁定者の増加の傾向、これはどのような状態になっておるかお答え願いたいと思います。
  171. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 最近三、四年で申し上げますと、大体年間十万件ぐらいずつ新規裁定が行われておる、こういう状況でございます。
  172. 和泉照雄

    和泉照雄君 そこで、古い恩給受給者方々は年をとるにつれて亡くなる方も多いと、年に大体五万件ぐらいと、こういうようなお答えでございましたが、新規の方が年に大体十万件と、こういうことでございますけれども、あと十年、二十年後になりますと相当に差が開いてくるわけでございますが、そこで、この前から質問を申し上げておりますこの適用範囲の拡大ということをいろいろお考えになった方がいいんではないかと、適用範囲を拡大して、いろいろ御苦労なさった方々に国家として報いてあげるという、こういうことをお考えになる必要があるんじゃないかと思いますが、その辺のところはどうお考えでしょう。
  173. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) これも先生承知のように、恩給制度そのものがもうすでに百年の歴史を持っておりますし、また昭和三十四年以降おやめになられた公務員の方、こういう方は入ってこない。要するに、もう何といいますか、言葉が悪いんですが、一応終わってしまったような形の年金制度でございます。したがいまして、これからまだどんどん出てくるというような形ですと、範囲拡大あるいはその他いろいろ考えるべき問題が出てくるのかもしれませんが、過去のそういった独自の歴史を持ってきたというようなことから、現在のところ枠を広げるということは考えておらないという状況でございます。
  174. 和泉照雄

    和泉照雄君 適用範囲の枠の拡大ということについて、いまから二、三問題をしぼって御質問してみたいと思いますが、最近、先ほど質問の中にあったわけでございますが、この当委員会でもいろいろ問題になりました元従軍看護婦方々に対する国家補償の問題も、私はこの拡大の一つ対象ではないかと、こういうようなふうに考えざるを得ないわけでございますが、現在新聞報道ではいろいろ報道されておるようでございますけれども、具体的にどのような方向で、どのような内容でこの国家補償について検討をしていらっしゃるのか、そこらあたりを明らかにしていただきたいと思います。
  175. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) これは先ほど大臣の方からも話がございましたように、現在そういった範囲なりあるいは金額方法、そういったことすべてをひっくるめて検討をしておると、こういう段階でございまして、まだここで方向づけというような段階には至っておりません。
  176. 和泉照雄

    和泉照雄君 この前の三月の三十一日の新聞でしたか、総理府は稻村長官、秋山総務副長官、管野前恩給局長らによってトップ会談を開いたと、そこで最終的な決定をしたと、このように言われておる。その際、大蔵省ともすでに話し合いがついておって、昭和五十四年度から、予算化された後総理府法案国会に提出する手はずが整っているとも、このように報道されておるわけでございますが、そうであるとすれば、具体的なその国家補償の内容というのが私はもう固まっておるんじゃないかと、ですから、元従軍看護婦に対する補償をいつからどうするのか、こういうことをもうそろそろ具体的にお示しになってもいい時期ではないかと、こういうふうに思うわけで、新聞の報道からしますと、真偽のほどは明らかではございませんが、三月三十一日の総理府の最終決定は、ある新聞によりますと、長期勤務者には国債による特別給付金または特別年金を支払うと、中短期勤務者には一時金を支給をすると、対象は外地で三年以上勤務、これには抑留期間を含む、そういう勤務をした人を対象とすると、支給開始は五十四年度とすると、こういうふうに報道されておるようでございますが、こういう新聞記事等があるところを見ると、そういうような具体的な内容があるんじゃないかと、国民の皆さんは非常に、特に元従軍看護婦のこういう方々は非常に関心をお持ちであろうと思います。実は私のところにもきょうお手紙もいただいておりますので、わかる範囲で長官の方からお答え願いたいと思います。
  177. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) この日赤看護婦の問題は、各党とも大変長い期間論議をされてこられたわけでございますけれども、いまだなお解決をしなかったわけであります。私が長官に就任をいたしまして、各党からの強い要請もこれあり、また旧日赤の看護婦方々からも大変涙ながらの訴えがございまして、私といたしましては、何としてもこの問題を解決をすべく事務当局に強い指示をいたしました。前の秋山副長官を長といたしまして、各省との連絡、あるいはその取りまとめと、こういうような形から鋭意努力をしてまいりまして、旧日赤看護婦方々に対しましては、大体いま新聞で報道をされておるようなところまで煮詰まりつつあるわけでございますが、これには予算措置も伴うことでございまして、概算要求の八月までには必ず決着をつけてまいりたいと。これは先ほども申し上げましたように旧日赤の看護婦。その他の方々については目下検討をいたしておるというのが実態であります。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
  178. 和泉照雄

    和泉照雄君 いま長官がはっきりしていただいたところでは、この新聞記事で報道しておるその大体の枠内でいままとまり、八月の予算折衝をこの線でやるつもりだと、こういうようなことに確認していいですか。
  179. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) いま先ほども申し上げましたように、予算の伴うことでございますし、また各省との関係、特にまた党との関係等いろいろな御協力もちょうだいをしなきゃならぬということでございまして、いま、この前も申し上げましたように恩給法適用はなかなかむずかしいと、しかしながら、一時金で片づけるということにはこれは絶対相ならぬと、こういう形でございまして、さてそれでは大体いいところへ来ているんじゃないか、それを言えと、こうおっしゃる気持ちもわからぬではございませんが、いまの現段階でこの方法ということは私の立場からむしろ申し上げない方が私は成功するのではないかと、こういうふうに考えております。
  180. 和泉照雄

    和泉照雄君 いま長官がおっしゃったとおり、一時はこの元従軍看護婦方々、一時金で処理しようと、こういうような時期がございましたけれども、一時金の方式では生活の再建に余り役立たないと、こういうことで、特にいま長官がおっしゃったとおり、強い御指摘もあって再検討されて、一歩前進した姿であるように感じられて非常に心強いわけでございますが、新聞の報道等見ますと、中期、短期ということも言われて、この期間の受給の資格についていろいろ言われておるようでございますが、この中期、短期というのは、これが新聞報道どおりでありますと、どういうことを基準にしておやりになるつもりなのか、中期、短期ということ。
  181. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) いま御指摘の点につきましては、いろいろ概算要求のそのときまで、先ほど来も申し上げましたように決着をつけてまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございますが、現在の段階におきましては検討中であると、こういうふうにお答えをしておきたいと思います。
  182. 和泉照雄

    和泉照雄君 先ほど質問の中にございましたが、長官答弁の中でも、旧日赤看護婦さんを対象にして今回はとりあえずやるんだと、こういうことでございましたが、先ほど質問があったとおり陸海軍の従軍看護婦さんたちもいらっしゃったわけで、こういう方々は、いままで陳情というものがなかったから対象から今度は外されたのか、今度対象にされなかった理由というのはどういうところにあるんでしょうか。
  183. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) いま先生のお言葉でございますが、旧陸海軍の看護婦さんをまだ外すというような決め方は出ていないと思います。まだ、そういうものを含めて検討しておると、それを外すかどうかということも含めて検討しておるというのが現在の段階でございます。
  184. 和泉照雄

    和泉照雄君 看護婦さんとすれば、同じようなやはり陸海軍から給与を受けて、兵隊さんと同じような危険な状態になって、いろいろ陸軍刑法とか懲罰令に従って行動されておる方でございますから、この際一緒におやりになることが、私はこれはもう平等公平じゃないかと思うんですが、そこらあたりはどうお考えでしょうか。
  185. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 大臣先ほどからまだ検討中であると申し述べていますのは、いまのような端的な問題、いろんな問題確かにございます。日赤救護員の方、これはわれわれいろいろ調べましても、身分的にもきわめて複雑と申しますか、ちょっと意外だったんですが、日赤の方から見ても職員ではないと、国との関係も正式な雇用関係というものはないと、あくまでも救護員という身分で、日赤の戦時救護事業の一環として戦地で救護事業に参加したということになっております。それに対して陸海軍看護婦というのは、いわば陸海軍が直接雇用して、雇傭人として同じような業務についたと。したがって、日赤の救護員を処遇するというのはこれはもう大臣の至上命令下っております。それに沿ってわれわれも検討しておるわけですが、何に着目するのか、それが一つの問題でございまして、そういった点を検討していくために、現在陸海軍看護婦と、それから日赤救護員、仕事の面では確かに共通な面もございますが、身分、任用的には違っている面もあると、そういった点を検討を深めている段階でございます。
  186. 和泉照雄

    和泉照雄君 もう一点お伺いしておきたいのは、外地に勤務した方々は、旧軍人は戦地加算というやつが認められておりますけれども、この加算の問題はどのようにお考えでしょうか。
  187. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 加算年というのは、これは世界に例がないとは申しませんが、日本ではきわめて特殊な扱いを受けています。資格年限として加算年を認めている国は、各国の軍人恩給でも多分一例もないと思います。一定年数過ぎた者の年金額をふやすために加算年という制度が用いられているわけでございます。したがって、アメリカではこういった軍人についての加算年はございませんし、二十一年、占領下でございましたが、軍人恩給廃止ということで、特に加算年は廃止されたわけでございます。それを受けて、二十八年復活の際に完全な形では復活しなかった。まあしかし、いろいろ老齢者優遇というような措置も加味して、優遇措置として逐次戦前に近い形に持ってきているわけです。そういったような経過を踏まえておりますので、いま改めて、振り返って過去の、まあ戦地ではありましたが勤務について同じような手法で加算年といったものを考えるのが妥当かどうか、この辺も問題があります。むしろ、日赤の救護員なら救護員の方の勤務の実態というものをもう少し調べて、それにふさわしい処遇というものがどういう形であり得るか、これを目下ねじりはち巻きで検討しているところであります。
  188. 和泉照雄

    和泉照雄君 今回の従軍看護婦方々国家補償の問題は、いろいろ論議の末、女性兵士という、そういうこと等の認識からぐっと前進したように私は理解しておるんですが、そういうことになりますと、やはり数少ない方々でございますので、同じような公平な取り扱いをするということからは、やはり加算年を加味してあげた方が私はいいんではなかろうかと思うんですが、長官その点はどうお考えでしょうか。
  189. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 女性兵士という言葉でございますが、多少誤解というか、私の言い回しが違っておったのかもしれませんが、まあ女性の身でありながら大変軍人とともに苦労されたと、こういう表現であったわけであります。そういう意味から、具体的なものについては政府委員から答弁をさせます。
  190. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま大臣の方からお話がありましたように、大臣が女性兵士と申された真意、これは女性でありながら兵隊さんともども非常に苦労されたという意味だということでございますが、これは申し上げるまでもなく、日赤精神というようなものが兵士というようなことであってはいかぬじゃないかといういろんな御意見も出ておるようでございますが、そういった意味で比喩的に用いられたんだというように考えておるわけでございます。
  191. 和泉照雄

    和泉照雄君 仮定の問題でございますが、いろいろと論議が進んで拡大をして、元従軍看護婦方々が、日赤の看護婦方々のほかに陸海軍の看護婦ということまで拡大をするということになると、大体幾らぐらいの方々がいらっしゃるんでしょうか、その人数は確認していらっしゃると思うんですが。
  192. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) どのような方法をとるかによって対象はもちろん違ってくるわけでございます。したがって、現在つかんでいる数字というのは、日赤の救護員が救護班として派遣された数、これは幾らかということでございます。これも実は中間報告でございますが、日赤からの中間報告によれば、実数でいきますと約二万六千五百名ぐらい召集を受けて救護班が編成されていると。そのうち外地で勤務したのは約半数の一万三千五百名、内地で勤務したのが一万三千名、そういうふうに聞いております。陸海軍看護婦については私どもお答えするのがどうかと思いますが、これはなかなか実態つかめないということでございまして、厚生省の方に伺ってもその数がどうだということはつかめないようでございます。
  193. 和泉照雄

    和泉照雄君 じゃ次は、戦後ソ連に強制抑留された旧軍人補償についてお尋ねをしたいと思いますが、厚生省の方来ておられますか。――この問題については、すでにことしの二月二十七日の衆議院予算委員会の第一分科会で、わが党の瀬野議員が質疑を行っているところでございますが、そこでまずお尋ねをしたいことは、戦後旧満州から強制的にソ連に抑留された者についての概要について御説明願いたいと思います。
  194. 河野義男

    政府委員(河野義男君) ソ連に抑留された方の総数は約五十七万五千名でございます。そのうちモンゴルに抑留された方が一万三千四百名、それから帰還された方の数は四十七万三千名でございます。そのうち一万一千七百名がモンゴルから帰還された方です。それから、抑留されて死亡されたと推定される方の数が五万五千名でございます。それから、病弱等のために、一たんソ連に入られましてまた再び満州に送られた方が四万七千名でございます。それから現在残留しておられる方の数が九十四名でございます。以上のような状況でございます。
  195. 和泉照雄

    和泉照雄君 そこで、強制抑留された方々は、強制的にかつまた重労働によって多数の人たちが、ここでも五万五千の方々が亡くなっておるわけで、また生存をして帰国をされても、栄養失調とか肺結核あるいは伝染病などによって現在でもソ連抑留による後遺症のために非常に悩んでいらっしゃる方々が非常に多いようでございますが、そこで、さきの分科会で瀬野質問に対して厚生省は、シベリア抑留と疾病の因果関係について誠意を持って調査をして対処していくと、このような答弁がなされておるわけでございますが、この答弁はお聞きのとおりきわめて抽象的で非常に理解しにくいところでございますが、具体的にはいつどのようなことで、どのような日にちをかけて調査をされて、そしてその結果が出た場合には、その治療等は全額国庫で負担をして治療、加療させるのか、そこらあたりはどうなっておるのか、どのような計画をお持ちなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  196. 河野義男

    政府委員(河野義男君) 前回の分科会で御答弁申し上げましたように、抑留者につきましては、シベリアへ抑留されたということと、それから病気、傷病との間に相当因果関係がある場合におきましては、戦傷病者特別援護法によりまして援護の対象とする、こういうふうに制度はなっておるわけでございます。そこでこの因果関係の問題でございますが、因果関係につきましては、個々人の具体的な事情によって異なるわけでございます。そこで個々人から戦傷病者特別援護法によります請求が出た場合におきましては、十分各人の当時の具体的な事情を調査いたしまして、またこれは医学上の問題でもございますので、専門家の意見を踏まえまして、慎重、公正に因果関係の認定をしてまいりたい、こういうお答えをしたわけでございまして、そういった抑留されまして、その後体の調子が悪い、あるいは傷病にかかっておられる方につきましては、請求を待ちまして十分そういった事情を踏まえて検討していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
  197. 和泉照雄

    和泉照雄君 ですから、答弁はそれでいいかもしれませんけれども、具体的に九州あたりでも相当に強制抑留帰還者の方々一つの組織をつくって国に陳情をしようという動きもあるようでございますし、非常に時宜を得た質問であろうかと私は思いますが、それに対応する厚生省のそういうただ口の先だけの対応では、私は一つ解決にならぬと思います。ですから、いつどういうようなことで、こういうような問題が挙げられておるけれども、こういうようなことで診療、診察をやって、そういうような因果関係が起こった場合はこのようなという、そういうような論議をされた後で自主的に実行していくというような詰めをしっかりやっていかないと、ただ答弁のための答弁で何ら具体性がない、こういうふうになると思うんですが、そこらあたりはどういうふうにお考えでしょうか。
  198. 河野義男

    政府委員(河野義男君) シベリアに抑留された方も準軍属として、ただいま申しましたように戦傷病者特別援護法の適用があるわけでございまして、それ以外に軍人軍属につきましても援護法の適用がございまして、この援護法の具体的な適用につきましては、個々の人から請求をしていただきまして、請求に基づきましてその事情を十分調査しまして裁定をすると、こういうことでございまして、先生お話しの、抑留された方につきまして傷病あるいは障害がある方につきましては、請求をされますれば、先ほど申しましたように十分調査をして裁定をしていきたい、こういうことでございます。
  199. 和泉照雄

    和泉照雄君 そこで、恩給の方の関係になりますが、ポツダム宣言の中では、戦犯でない限りみんな家庭に帰って、そしてこういうような強制的な抑留とか、こういうような強制的な労働には就労させられるはずはなかったわけでございますけれども、こういうような一方的なことで大変に御苦労され、悲惨な状態でお帰りになった方々が相当にいらっしゃるわけでございますが、そこで、その償いの一つという形でしょうけれども、四十年の恩給法の改正で、旧軍人等の抑留加算を一月について一月と、こういうふうにしていらっしゃるわけでございますが、この一月が一月では余りにも御苦労が多かったんじゃないか。一月を、戦地ではございませんけれども三月ぐらいの加算にすることはできないものか、その辺のお考えはどうでしょう。
  200. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 加算年のことでございますが、御存じのように、いろいろ戦地加算、その中で戦地戦務加算とか、あるいはその他の加算とかいろいろあるわけでございますが、いずれにしましても、やはり生命の危険を顧みずその勤務に励んだと、こういうことが加算の前提になっておると、こう思うわけでございまして、したがいまして、抑留期間というものと戦地戦務加算、これはそれぞれ、人によって非常に大変な御苦労をされたという方もおありかとは思いますが、やはり何といいますか、平均的に見るといいますか、おしなべて考えましてその他の加算との均衡から考えて一月というのが妥当な線ではなかったかと、このように考えているわけです。
  201. 和泉照雄

    和泉照雄君 いまおっしゃったとおり、戦地ではそういうようなことが考えられますけれども、これは御本人たちの意思を超越して、ある国が強制的に抑留して重労働に就労させたということで、日本としても、これによってはある種の利益といいますかね、は受けておったんじゃなかろうかという解釈も成り立つんじゃないか。こういうような五十四万の人たちが向こうに強制収容されて強制労働をさせられて、それが大変に日本の損害賠償といいますか、そういうような、賠償の相手国の事情にもよりますけれども、そういうようなことで償いをさせられたという、そういうような意味合いからいきますと、やはりただ一カ月が一カ月というようなことでは済まされないのじゃないか、こういうふうに思えてならないわけです。やはり本人の意思に反してこのような強制労働ということは、何らか国が報いてあげることが私は当然じゃないか、こういうように思うんですが、そこらあたりはいかがですか。
  202. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま申し上げておりますのは、旧軍人であるとか、あるいは公務員であった方々のことでございます。それで抑留された方、こういった方々の中にはまた民間の方もおられたかと思いますし、まあ公務員としての立場考えますと、やはり先ほど申し上げたようなことで一カ月が一カ月ということが必ずしも不当であるというようにはならないんではないか、こう考えるわけでございます。
  203. 和泉照雄

    和泉照雄君 恩給法のたてまえからいきますと、公務員という、そういうような資格がそれは当然だと思いますけれども、戦争のどさくさで大変に御苦労された旧軍人方々、あるいはまた民間の方々も含めまして、やはり将来の受給の人たちはだんだんだんだん激減をしてくる、そういう中では、やはり適用範囲を拡大していくという、こういうことも考えていっていいんではないかと思うんですよ。そこらあたりの考え方を、現行適用範囲をもうそのまま守っていくのか、受給の予算枠というのは一応枠が決まっていますから、だんだん受給範囲が少なくなりますと少しずつ広げていくというような考え方はおとりにならないのか。そのときには、こういうようなソ連に抑留された方々の問題等も広げていって救済してあげるというようなことをお考えにならないのか。もう後二十年もすると相当に激減をするわけでございますから、そういうような国の温かい施策ということはお考えになっていないのか、そこらあたりを明らかにしておいてください。
  204. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先ほど来申し上げますように、恩給法というのは非常に長い歴史を持って、軍人あるいは文官恩給公務員と総称してもいいかと思いますが、そういう方々について運用してまいったわけでございますが、これを今後また範囲を拡大するのかどうかということでございますが、何といいますか、恩給法自体非常にいろんな法律改正も何回か行っているわけですが、これ自体の根本にかかわるといいますか、非常に基本にかかわる問題でございますので、これをさらに今後とも範囲を拡大していく、こういう考え方はとっておらないわけでございます。
  205. 和泉照雄

    和泉照雄君 じゃ、その問題はそれまでにしておきまして、次に、今回改正をされる恩給給付水準とその内容についてお尋ねをしてみたいと思います。  その前に、恩給制度というのは、先ほど質問がございましたが、社会保障制度の一環であると私は考えるわけでございますが、そのように理解をしてよろしいでしょうか。
  206. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先ほど来申し上げておりますように、恩給公務員として非常に長期間忠実に勤務された方に対して国が償いをする、そして退職後あるいは遺族方々生活の支えとしての機能を果たす、これが恩給のたてまえであるかと思います。したがって、ずばり社会保障かということになりますと、やはりそこは違うのじゃないか、このように考えておるわけでございます。
  207. 和泉照雄

    和泉照雄君 昭和四十一年に恩給法の改正によりまして長期在職者の低額恩給について最低保障制度という、こういう創設があったということで、最低保障制度の創設ということは社会保障制度の中からの発想だと思いますが、そのとおり理解していいですか。
  208. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先ほど来申し上げますように、まあ恩給自体というのはその人の勤務年限なりあるいは最終俸給、こういったもので決まっていくわけでございますが、そして計算された金目、これが老後といいますか、退職後の生活の支えになると、こういうような機能も持っておるわけでございますので、これが余りにも低い金額ということはどうであろうかということで最低保障手法が取り入れられたと思いますが、その意味では、恩給という枠の中ではございますが、社会保障的な手法も取り入れられつつあると、これは社会経済情勢に応じながら逐次そういった手法も入ってくると、こういうことの見合いかと思います。
  209. 和泉照雄

    和泉照雄君 そうしますと、今回の法律改正によって、公務関係扶助料の最低保障額が五十三年四月以降、兵の仮定俸給の増額に準じて七・一八%増額するほか、六月分以降さらに引き上げられることになっておりますが、そこで公務関係扶助料の最低保障額に該当する受給者は、公務関係扶助料別にどのくらいいてどのくらいの割合になるのか、そこらあたりをお答え願いたいと思います。
  210. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 公務関係扶助料、公務扶助料の最低保障適用者、これは、公務扶助料の最低保障は四十八年からできたものでございます。普通恩給最低保障とはちょっと違うんですが、これは最近の、たとえば自衛隊などで亡くなられた場合に比較して低いものですから、ここ数年特段の増額措置を図っているわけです。したがって、現在では九七%ぐらいまでが最低保障適用を受けているはずでございます。
  211. 和泉照雄

    和泉照雄君 いまお答えのとおり、九七%ぐらいであるのが実情のようでございますが、そうだとするならば、明らかに恩給制度社会保障制度の一環であるということを私は確信を持って言えると思うわけです。  そこで、現在の公務扶助料、普通扶助料給付の水準は、憲法第二十五条に言われております生存権の保障という、この点からは、この水準というのは果たして十分であると、このようにお思いですか、それともほかの御意見をお持ちでしょうか。
  212. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 恩給生活の支えとしての機能を持っておるということは先ほど来申し上げておるわけでございますが、ただ、たとえば生活保護といったような社会扶助とはちょっと違うんじゃないかと。こういったものは、たとえば生活保護の場合は、いろんな資産とかあるいは所得とか、こういうのをつぎ込んでさらに最低生活に足りないものを扶助すると、こういうたてまえのものであるかと思いますが、恩給の場合におきましては、過去のいろいろ功労に報いるための国の償い、補償ということで、これはどういうような方に対しても、どんな資産をお持ちの方に対してもひとしく支給すると、こういうたてまえのものでございますので、必ずしもそういった、これが最低生活保障すべきであるかどうかということに対する直接の答えにはならないかもしれませんが、そういった性格のものであると、このように考えております。
  213. 和泉照雄

    和泉照雄君 次は、三号扶助料ですか、このことについてお尋ねいたしますが、特に問題になっている恩給法第七十五条第一項三号に規定されるいま申し上げた三号扶助料、増加非公死扶助料についてでございますが、たとえて申し上げますと、特別加給介護手当を支給されるような第一、第二項症の増加恩給方々は、今回の改正で六月分以降は二百九十三万円と、第二項症の方々二百四十万円を受給することになるようでございますが、この方々が年をおとりになって平病死をされた場合この三号扶助料に該当してくるわけでございますが、そうなりますと、その遺族に支給される増加非公死扶助料というのは、最低保障額は六十五万一千円、これは六月分以降ですが、このように激減をするわけでございます。大体四分の一ぐらいにがんと落ちるわけでございますが、いままでこの増加恩給に併給する普通恩給と一緒で生活をずっとしていらっしゃる方が、御主人が亡くなったということで――よく趣旨はわかるんですよ、増加恩給の趣旨はよくわかりますが、遺族方々生活がこれによって本当に大黒柱を失うような状態になるということは、少し考えてあげた方がいいんではないかと、私はこのように思えてならないわけでございますが、従前のやっぱり増加恩給の額を考えながら少し引き上げてあげるという、そういうようなことを考えることが必要じゃないかと思うんですが、その辺のところはどうでしょうか。
  214. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま先生おっしゃいましたように、増加恩給というのは、まあ非常に重いけがをされた方、重い病にかかられた方、こういった方々に対する傷病年金でございますが、この増加恩給そのものは、やはりあくまでもその傷病とかあるいは傷とか、そういうものに着目して、これに対する償い、これをするんだと、こういう趣旨のものでございまして、したがいまして、その方が亡くなられて、まあ非常にそれはお気の毒なことであるということはわかりますが、まあいろんな病気もあるかと思いますけれども、平病死されたというときに、以前の所得に比べて非常に激減するということも考え合わせまして、基本的には普通の扶助料の、兵の場合ですと三・四何倍か、三倍半ぐらいの金額を差し上げると、こういうことにたてまえはなっておるわけでございまして、その点につきましては、やはりこれをさらに引き上げるということはむずかしい問題がいろいろあるんではないかと。たとえば公務扶助料との関連とか、そういったこともあるかと思いますので、非常にむずかしいと思います。
  215. 和泉照雄

    和泉照雄君 先ほどから社会保障のそういうような一面もあるんだということからしますと、特に長い間そういう方々を介護し生活基準をそこに置いていられた方々が、御主人の亡くなったということで急遽その生活の大半の糧を失うということは、これは考えてあげることが私は大事ではないかと、ほかの扶助料とは内容が違うわけでございますから、生活保障的な意味からも少し遺族に対する手当の引き上げを考えられた方がいいんではないかと思うんですが、そこらあたりは長官いかがお考えでしょうか。
  216. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま申し上げましたように、増加恩給におきましては、十分それにいろいろな、連れ添っておられる奥さん方に報いるだけの恩給になっておると思います。またそれが増加恩給意味合いではないかと、こう思いますので、その方が亡くなられた後の扶助料、これを、公務扶助料等との兼ね合いもございまして、現在公務扶助料の七五%になっておるわけでございますが、まあその辺がやはり、必ずしも多いとは申しませんけれども妥当な線ではないか、このように考えております。
  217. 和泉照雄

    和泉照雄君 二百何十万が六十五万にということになりますと、大体月五万、六万足らずですが、必ずしも多くはないとおっしゃいますけれども、物すごく少なくなるわけですよ。ですから、そういうふうなことから非常に生活上不安を感じたりする、年はとっているということで、少し引き上げをお考えになってもらった方がいいんじゃないかと、こういうふうに思うわけで質問をしておるわけでございますが、まあ局長は御答弁になりましたので、長官そこらあたりはいかがお考えでしょうか。
  218. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 御指摘の点については、検討いたしたいと思います。
  219. 和泉照雄

    和泉照雄君 まあいろいろと私は申し上げてまいりましたけれども、最後に恩給審議会のことをですね、この前も申し上げましたが、設置について申し上げてみたいと思います。  まあいろいろ恩給制度の問題は、制度それ自体、あるいはまた適用範囲の拡大といういろんな問題等について問題を内在しておるように私は思えてならないわけです。そこで、新しいいろんな問題も、ソ連の抑留の問題とか、あるいは陸海軍看護婦さんの問題とか、またいまも出ておりますが、そういうことは必ず出てくることは必至だと思います。そういうことから、恩給制度を洗い直して抜本的に検討するために再度恩給審議会の設置ということを考え段階ではないかと、こういうふうに思うんでございますが、総務長官のお考えを明確にしていただきたいと思います。
  220. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 恩給問題については、諸般の事情を考慮しながら今後とも私の責任において処理してまいりたいと。恩給審議会を設置をする考え方はありません。
  221. 山中郁子

    山中郁子君 すでに質疑が重ねられておりますので、なるべく重複しないようにいたしまして、私は初めに従軍看護婦さんだった方たち恩給問題について二、三お伺いをしたいと思います。  すでに今国会で、長官はこの問題については今国会中に解決を見たいというふうに御答弁されていらっしゃいますし、私どもも直接申し入れもした経過がございます。それで、先ほど来の答弁を伺っておりますと、予算関係その他がありましょうから概算要求の時期というふうなお答えになったと思いますが、そこのところの取り組みの姿勢が、よもや後退をされているというふうには思っておりませんが、再度今国会中にお考えを固めて、そして実現を図っていくという決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  222. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) いささかも後退しておるものではございません。
  223. 山中郁子

    山中郁子君 先ほどの御答弁の中に、恩給法ずばり適用についてのむずかしさ、それから一時金というふうなことにするつもりはないと、それで二つほどの考え方があるが現在検討中であるということでお任せ願いたいというニュアンスの御答弁が繰り返されておりました。新聞なんかで報道されておりますのを見ますと、たとえば交付国債の発行とか、年金制度的な新たな考え方、こうしたことが二つ方法だというふうに理解してよろしゅうございますか。
  224. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 先ほども申し上げましたように、恩給制度はむずかしいと、しかし一時金でこれを決着するということには、これはできないということでありますから、いま御指摘の点で解決が望めるならばと、こういうふうに考えております。
  225. 山中郁子

    山中郁子君 私も、長官がこの問題について努力をされていらっしゃることを認識するのにやぶさかでないものですけれども検討中というお答えが繰り返されておりますので、その検討の中に、頭にも置いていただかなきゃいけないし、前向きな形でのものにしていただきたいと思っておりますことがありますので、二、三お考えをお伺いしながら私の考え方も述べたいと思います。  一つは、どういう形になるにしても、その場合階級的なもの、つまり当時の看護婦さんの位ですね、そういうものに基づいて差をつけるということが踏襲されるのかどうか。私は基本的にはそうあるべきではないという考えを持っておりますが、それが第一点です。それから二つ目の問題としては、勤務年数だとか抑留期間、こうしたものも、軍人恩給の問題にならった形での考慮を入れられるのかどうか。それから支給資格の最低年限を大体何年ぐらいに置かれるのかということについてお尋ねをして、三つ目には、十二年、文官の場合には十二年でないわけですけれども、その十二年という線は当然のこととして考えに入れておられるのかどうか、そこのところをお尋ねいたします。
  226. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) そういった問題も含めまして、たびたび申し上げてどうも申しわけないんでございますが、副長官のところで中心になっていただいて検討いたしておるわけでございまして、そういったこと、これはいろんな絡みがございまして、それ一つ一つ解決つくような問題ではございませんで、やはりすべてが金目に絡んできますし、またほかとの関係も絡んできますし、そういうことでございますので、なかなか一つ一つについてこれはこうだ、これは何年にするんだと、そういうぐあいにはまいらないんじゃないかというのが私の感想でございます。
  227. 山中郁子

    山中郁子君 まあひとつ、それではぜひ長官にお約束をいただきたいわけですけれども、私がいま具体的に二、三の点を申し上げました趣旨はおわかりいただけると思うんです。要するに、せっかくの検討でありますし、せっかくの前進を図ろうということですので、いま申し上げました内容点を踏まえた形での積極的な解決のために御努力をいただきたい、こういう趣旨でございますので、ぜひとも長官にその辺の見解をお伺いしておきたいと思います。
  228. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 御指摘の点につきましては積極的にこれに対処してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  229. 山中郁子

    山中郁子君 次には、これも質疑が行われたものですけれども、私はやはり大事な点なので強く要望も申し上げ、ぜひとも解決をしていただきたいと思います。  それは、旧日赤従軍看護婦の方たちだけでなくて、いわゆる旧陸海軍の看護婦さんたちの問題です。先ほどからの御答弁ですと、これも、まあそのことをどうするかを含めて検討中であると、こういう御答弁ですが、私は若干このことについては、旧日赤看護婦さんの対処の仕方と差異を持った危惧を感じております、御答弁のニュアンスからですね。で、そうした根拠は何らないと思っております。つまり旧日赤看護婦さんたちと、それから旧陸海軍の看護婦さんたちが結果的にこの処遇において差をつけられるという根拠は全然ないのではないかと思っておりますので、これもいまの時点でもちろん入れますという御答弁がいただけないことはいままでの質疑の経過で承知をしておりますが、この点も同様にぜひ積極的な立場で、含めると、当然のことながら、という立場での検討をお約束もいただくと同時に、もしそれができないとするならば、どういう根拠なのかということも御答弁をいただいておきたいと思っています。
  230. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先ほど手塚室長の方からも説明いたしましたように、いま非常に苦労しておりますのが日赤の従軍看護婦の方たちの位置づけといいますか、どういう位置づけでどういう処遇ができるか、このことに非常に苦慮しておるわけでございます。先生ただいま御指摘の旧陸海軍の看護婦でございますが、これは恩給法のたてまえから申し上げますと、はっきりこれは公務員ではないという位置づけになるわけでございます。その辺、それじゃそれをどうするかということでございますが、どうも先ほど来申し上げておりますように、その辺の日赤看護婦の位置づけということをまず明確にしながらその辺の問題も考えていかなければならないと、このように考えております。
  231. 山中郁子

    山中郁子君 で、その二段構えみたいな形での検討という場合の、そういうふうにする根拠というのは何になりますか、いまおっしゃったことが根拠になるんですか。つまり、旧陸海軍の場合には公務員ではなかったという、そういう趣旨が根拠になるわけですか、二段構えに考えなきゃいけない根拠。
  232. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま旧陸海軍看護婦について申し上げましたのは、恩給法処遇の場合の問題でございまして、ただこれを何らかの形で処遇するということになりますと、御承知のように陸海軍には同じような形の雇傭人という方がたくさんおられます、徴用された人とか。そういった方々との関係をどうするのか、そういった問題がいろいろ出てまいります。したがいまして、先ほども申し上げましたように日赤救護員の方に何らかの処遇をするという場合には、よほど明確に日赤救護員の方の位置づけ、その際、旧陸海軍の看護婦方々がどういう位置づけになるのか、それも含めて検討していかなければならないと、このように考えております。
  233. 山中郁子

    山中郁子君 私が申し上げたいのは、その恩給法処遇ということに関しては、旧日赤看護婦さんたちの場合にもいろいろ困難があるということが検討のいま皆さん大変苦労していらっしゃるところだというお話がありました。そういう意味で、違いはないんだし、基本的に同じ次元で取り扱うべきものであるから、ぜひその点を同じような方向でもって善処するような対応をしていただきたい、するべきではないかということを申し上げておりますので、この点もひとつぜひどうぞ総務長官からお考えをいただいておきたいと思います。
  234. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先生のお考えもよくわかりましたので、そういった、ただいま申し上げたようなことで、もう少し検討させていただきたいと、こう思うわけでございます。
  235. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 陸海軍看護婦の従軍看護婦方々の処遇問題でありますが、私は、日赤の看護婦方々らと、成り立ちと申しましょうか、私は多少違うと、こういう見解をいまも持っておるわけであります。しかしながら、任務、行動においてやはり同じであったという御指摘の点については、私もその点には大変同調するわけでございますが、先ほども申し上げましたように、日赤の看護婦方々らの処遇の位置づけという問題が当面の問題としてきわめて重大な問題でございますので、御指摘の点につきましては今後一つ検討の課題として進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  236. 山中郁子

    山中郁子君 長官が多少違うという認識もあるんだというお話ですので、どこが違うというふうに認識していらっしゃるのか、ちょっとお聞かせをいただきたい。
  237. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) この問題は再三国会でも取り上げられて、数年かかっておしかりを受けていますが、その間御議論があるのが、たとえば召集という形をとったじゃないかと。赤紙で、当初ピンク紙と言っていましたが、調べましたら兵と全く同じ赤紙でした。ただ、その召集は日赤本社が召集したものでございます。それから、直接規定はしていませんが、その根拠となっているのが勅令、日赤社令ではないか、特に兵に準ずとなっているではないかと、もしその方から日赤救護員というものを位置づけていくとすれば、陸海軍看護婦についてはそういった根拠規定は同じような形としてはございませんし、たとえば召集という形式はとっていません。ですから、それに着目するのか、もっと別の点に着目するのか、なかなかむずかしいところで、われわれも時間を要して、何とか概算要求までにというふうに検討しているのはそういった点を含んでいるということでございます。
  238. 山中郁子

    山中郁子君 私が申し上げたいのは、総務長官もいままで繰り返し熱意を持って答弁もなさいましたし、私どもの申し入れに対してもお答えいただいたんですが、こういう方たちはまさに女性兵士であると、だから、その実際の労苦に国として報いなければいけないと、こういうことでおっしゃっておられたわけです。私もその意味で、まさにいま申し上げました旧陸海軍看護婦さんとの違いがないんだということを申し上げておりますので、先ほど局長からも御答弁がありましたし、総務長官もそういう方向で検討なさるというお約束をいただいておりますので、これはこの点でさらに重ねて要望を申し上げておくということにとどめますが、ぜひその方向で善処されたいということです。  ちょっと細かい話になりますが、この問題に関して、これは私は指摘だけにとどめておいていいと思っておりますが、婦長さんの場合ですね、これは文官待遇で恩給法適用になっているわけです、旧陸海軍の場合の看護婦さんの場合ですね。そのように私認識しておりますけれども、違ったらそれを教えていただきたいんですが、そうした場合には、十七年と十二年の違いが兵並みということになればまた出てまいりますので、そこのところの何らかのお考えがあればお伺いいたしたいと思いますし、御検討が済んでない問題でありましたら、私の方で指摘を申し上げて、ぜひ検討もあわせて有利な方向に、もちろん根拠がなく有利なという意味ではありませんから、当然善処されるべきものであるということでお考えをいただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
  239. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 陸海軍の看護婦さん、婦長になりますと確かに判任官と、ただ、これは海軍では判任官にならないようでございます。その辺も調べてみますと、陸海軍、これ時期によっても違いますし、いろいろむずかしい問題がございます。その辺もバランスがひっくり返るようなことは私どももつらい話でございまして、検討課題として、どういうような措置をとった場合どういうことになるか、いろいろ考えておるところでございます。
  240. 山中郁子

    山中郁子君 もう一つ関連して、問題提起で御検討いただきたいと思っておりますのは、多少旧日赤、旧陸海軍の看護婦さんたちとは違う面もあるのですけれども、旧満州国政府の赤十字社の看護婦さんですね、この方たちの問題もあるわけなんです。この点についても準じた扱いとしての善処をお願いする筋のものだと思っておりますけれども、まず把握がされていないとすれば調査をお願いしなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  241. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) まあ満赤と申します満州国赤十字になりますと、われわれの観点からいっても実はかなり遠い存在になります。はっきり申しまして、恩給、いろいろ通算措置、満州国もとっておりますけれども、満州国政府だけに勤めた方については恩給制度としても何ら処遇できないという関係になります。そういう意味で、実を申しますとまだその実態調査といったところまではとてもまいりません。ただ、はっきり申しまして、数やなんかも、これはむしろ厚生省の方があるいはおわかりになるかもしれませんが、なかなか把握しがたいように聞いております。
  242. 山中郁子

    山中郁子君 これは後ほど触れますけれども、旧満州国での恩給の問題での特別な扱いをしている面と、それから全然それが見られていない面とあるわけで、旧満州国の赤十字社であるからということで全然問題外だということにはならないと私は思っておりますので、この点も含めて今後改善していく方向でのまずは調査をお願いをしたいと思っておりますが、それもできませんか。
  243. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) そういった調査に関しまして、私どもの方は手足といいますか、そういうものもございませんし、むしろ、もし調査をお願いするとすればやはり厚生省なりにお願いすることになるんじゃないかというふうに思いますが。
  244. 山中郁子

    山中郁子君 では、その点を総務長官に、ぜひ政府として調査の御努力をお願いしたいと思いますけど、御答弁を。
  245. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 御指摘の点につきましては、調査をしていただくよう連絡をいたしたいと思っております。
  246. 山中郁子

    山中郁子君 それで、旧日赤従軍看護婦の方たちのいま考えられる対象者数ですね、考えられるというか、把握されていらっしゃる数、それから旧陸海軍病院での看護婦さんの対象者数はどのように把握されていますか、数です。
  247. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) この対象ということでございませんが、先ほども御答弁いたしましたけれども現実に日赤救護員が救護班として、あるいは病院船に乗り組んで派遣された数、これがどうかということについては現在日赤の方で調査をしている最中でございます。近く結論を得ると聞いております。ただ、中間報告として聞いておりますのは、先ほど申し上げましたように実数で約二万六千五百名、そのうち外地で勤務した者が一万三千五百名、内地勤務が一万三千名と、こういうふうに中間報告を受けております。
  248. 山中郁子

    山中郁子君 日赤だけですか、それは。
  249. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 日赤救護員だけでございます。陸海軍看護婦については、これはむしろ厚生省の方の問題になるわけですが、私ども問いただしたところでもなかなか実態は把握できない、数もなかなか把握できないと、そういうふうに聞いております。
  250. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ、その点も実態把握をあわせてお願いをしておきたいと思います。  次に、この方たち年金との通算の関係なんですけれども、その問題についてひとつぜひお考えいただきたいと思いますのは、旧日赤従軍看護婦であった方で、戦後地方公務員あるいは国家公務員になられた人ですね、この場合の通算が全部通算されていないというのが現状だと思いますが、実態がどうなっておりましょうか、年金です。
  251. 山崎登

    説明員山崎登君) 日赤の救護員につきましては、戦地勤務に服したことがあった人でその後国家公務員になられた場合におきまして、その当該戦地勤務に服した期間につきましては年金対象期間として取り扱っております。ただ、その場合におきまして、一つ先ほど来問題になりました婦長以上の任官者につきましては恩給期間として取り扱われているわけでございますけれども、雇傭人相当者に対しましては年金の資格を与える資格期間、実のない期間として取り扱われております。
  252. 桑名靖典

    説明員(桑名靖典君) 地方公務員、日赤の救護員として勤務されまして後地方公共団体に勤務した方々についても、いま国家公務員について答弁されたこととおおむね同じような取り扱いをいたしております。
  253. 山中郁子

    山中郁子君 ちょっとよくわからないんですけれども、これは全部通算されるんですか、抑留期間、それから戦地勤務期間ですね、それが戦後公務員としての、あるいは地方公務員としての期間に全部通算されるという計算になりますか。
  254. 山崎登

    説明員山崎登君) 戦地勤務に服した期間の中には、引き続いて抑留または留用された期間は含みます。そして、しかも恩給公務員相当の日赤の看護婦、婦長以上でございますが、そういった方々の当該期間につきましては、年金給付の算定の基礎の期間として入っているわけでございます。それから、先ほど申したように、いわゆる雇傭人相当の婦長以下の人でございますけれども、そういった方々につきましては、年金権を与える、共済の場合でいきますと二十年たたないと年金権を与えられないわけでございまして、全体の期間が、たとえば公務員期間が十五年で当時の期間が五年あるとすれば十五年分の年金を支給すると、資格を与える期間というふうになっております。
  255. 山中郁子

    山中郁子君 十年あっても、結局戦後公務員期間が十五年あれば年金権取得までの足りない分の五年だけを見ると、こういうことなわけですね。結局あとの五年というのは見られないと、これはやはり不合理というか不公正だと思いますので、これはぜひ全部、全期間を見るというふうにすべきではないかと私は思っております。それで御承知だと思いますが、旧満州国の政府機関だとか、あるいは外国特殊法人、外国特殊機関まで含めてこの人たちについては通算されるということになっておりますし、これと比べただけでも大変なやはり不均衡、不公正だと思いますので、この点はぜひ全期間が通算されるというように改善をすべきだと私は思っておりますが、いかがでしょうか。
  256. 山崎登

    説明員山崎登君) 年金制度の通算のやり方についてはいろいろな見方がございますけれども、私ども共済年金につきましては、御承知のように恩給とか旧共済組合を統合して共済年金をつくったわけでございますけれども、旧法におきましても、実は国家公務員でありながら新法の制定当時に引き続かなかった雇傭人期間につきましては、現在の取り扱いといたしまして実は資格期間しか与えていない、そういうこととのバランスも考えなければならないわけでございまして、当時、旧法時代は、一在職一期間というような、一回やめてしまえば引き続かない期間は本来通算しないというたてまえをとってきたわけでございまして、それとの絡みでなかなか日赤だけに限って実のある期間にするということは、私ども旧法の時代のものとのバランス上の問題でなかなかできないわけでございます。
  257. 山中郁子

    山中郁子君 長官にぜひこの点は内閣として善処をしていただきたいと思います。それはいろいろ陳情もありますけれども、私が一つ具体的な例を申し上げますとね、日赤の従軍看護婦として十八年に満州に行かれて、そして二十年に敗戦になってその後抑留されて二十八年に帰国をされたという方がいらっしゃるわけです。そしてその後三十二年に、埼玉県のある町役場なんですけどそこに勤められてずっと来ていらっしゃる。すると同じ職場に、その埼玉県の同じ町役場に、やはり旧満州で拓殖公社ですかね、勤められて、それで引き揚げてからその町役場にまた勤められておるという、本当に同じケースですね、片方は看護婦さんで片方は公務員なわけです。そういうケースで年齢も勤続も大体同じぐらいな方がいらっしゃる。退職するときにその通算期間がまるで違ってくるわけでしょう。だから全然違ってきちゃうのですね。これは大変なやはり不合理だと思います。具体的にそういう事例がやはり出てくるわけです。そうたくさん、やたらあちらにもこちらにもあるという例ではないでしょうけれども、少なくともこうした通算の仕方によって不利を受けている、不利をこうむっている方たちはかなりな数に上るはずなんです。これは一つの省庁だけという問題ではないですから、ぜひとも通算されるように、そういう方向で内閣としても御検討もいただき、善処もしていただきたいと思います。現に、先ほども申し上げましたように、政府機関の方たちや、あるいは特殊機関みたいなところですね、そういうところにいた人も通算されるように法律ができているんですよね。片手落ちと言うには余りにも片手落ちだと思いますので、ぜひとも御検討、御善処をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  258. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 各省と連絡をとりながら検討してみたいと思っております。
  259. 山中郁子

    山中郁子君 いま斉藤さんの例を申し上げましたけど、この方の場合、いまのままのやり方で年金計算すると百四十万円、それが二十年で切ってしまわないで前の期間を通算すると百八十万円と、四十万円の開きが直ちに出てくると、こういう事実です。それを申し上げておきたいと思います。  次に、これも先ほど触れられた問題ですので、御答弁があったんですがもう一度正確にお聞きしたいんです。  旧軍人等のいわゆる一時金の問題です。一万五千円というのは余りにもひどい額じゃないかという御指摘がありましたが、私もそうだと思うんですけれども、ちょっともう一度その根拠を教えてください。算出根拠です。
  260. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 先ほども申し上げましたように、一時恩給軍人恩給の廃止と同時になくなったわけですが、その後二十八年の再出発時には七年以上の方々に一時恩給が出たわけでございます。その後いろいろ変遷はございましたけれども、兵の方につきまして三年以上の勤続があれば一時恩給がつくという制度に改まりまして、この三年以上勤続といいますか、続けていた人と、二年応召されて帰ってきてまた二年応召された人、そういった断続している勤続年、これを持つ人との間にそんなに差を設けていいのかと、こういうような議論がございまして、今度の法案でこういった方々にも一時金を出すと、こういう法案でいま御審議をお願いしているわけでございます。その場合の金額でございますが、これは二十八年当時、軍人恩給が復活した当時、これは下士官その他の人もすべてその金額で一時恩給を支給したわけでございますが、この金額を基礎といたしまして一万五千円という数字をはじいたわけでございます。
  261. 山中郁子

    山中郁子君 結局、一時恩給自体が低過ぎるわけですよね。それは十分そちらでも認識されていらっしゃると思うんですけれども、現在の仮定俸給表で三年在職した人の試算をしてみますと、六十歳未満で約十六万八千円、それから六十歳から六十四歳で十八万三千円という数字が出ます。それは皆さん方の方で試算していただいてもそう違う数字が出るわけじゃないと思います。それで、これは余りにもやっぱり少な過ぎて、一時恩給もそうですし、したがって今回の一時金もそうなるわけなんですけれども、これはやっぱりどうにかもう少し前進をさせるべきだと思っておりますが、長官の御見解はいかがでしょうか。
  262. 手塚康夫

    説明員手塚康夫君) 先生指摘のように、五十年に三年以上の兵の一時恩給に踏み切ったわけでございます。そのときから実は二十八年の仮定俸給を使うという一万五千百五十円でしたか、兵の場合はそういう金額になったわけです。ただ、そのときの問題としては、実は先生とうに御存じかと思いますが、わが国では兵に対する一時恩給というのは戦前なかった制度でございます。もっと極端に申しますと、国によっては兵に対しては年金恩給はないという、たとえばドイツのような国がございます。職業軍人には年金恩給ございますけれども、兵に対しては、むしろ帰ってきた場合に職業訓練を行うというような措置をとっている国もあるぐらいです。したがって、兵というものが一時恩給対象にならないと、戦前の制度としてはそれなりに理解できる点があったわけでございます。ただ、ああいった事情で敗戦ということもございまして、戦後下士官以上の一時恩給も逐次復活していくというときに、兵についても全く国から何のお礼もあいさつもないじゃないかと、そういう声がございまして、方策としては、たとえばそこで金杯を出すとか銀杯を出すというような方法もあったかと思います。ただ、そういう方法をとらずに、いわば恩給的な手法をかりて、感謝状と申してはちょっと失礼かもしれませんが、出したというのが実は真相でございます。したがって今回も、われわれも一万五千円というのは、それだけをとらえて高いか低いかと言われれば決して高いというわけではございませんが、趣旨としては、年功に報いるというよりはむしろ感謝の気持ちをそういう形であらわしたと、そういうことで一万五千円で御勘弁いただいているというふうに実は思っている次第でございます。
  263. 山中郁子

    山中郁子君 二十八年の仮定俸給を基準にされているということ自体合理性がないんですよね。仮定俸給、要するに生活費でしょう、幾らぐらい給料もらっているのかと。それが二十八年のところを根拠にして算出されても、それは何ら合理性がないということは十分おわかりで、しかもそれが一万五千円という金額がいまどきどれほどのものかということも申し上げるまでもないと思いますので、ぜひ将来の問題として改善を図っていただきたいと思っておりますが、長官の見解をお伺いしたいと思います。
  264. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 先ほど政府委員がお答えをしておりますように、一万五千円がどういう基準ではじかれたかということでありますが、むしろ金という問題よりか、ここになかった制度を国が誠意を持って心の問題としておこたえしたものであろうかと私は考えております。しかしながら、御指摘の点につきましては、現在のいろいろな情勢を踏まえた場合には検討してみる必要もあるのではないかというふうに思っております。
  265. 山中郁子

    山中郁子君 次に、公務扶助料の最低保障についてなんですけれども、今回の法改正後、六月以後改正額が年額八十五万二千円、六月以後の金額ですね、ということになっております。これも、要するにもう少しちゃんと引き上げるべきではないかという私は趣旨なんですけれども、それは生活保護世帯のケースを見ますと、これは厚生省からいただいた資料で計算をいたしました。計算したというよりも厚生省資料で出ておりますのですけれども、七十歳以上の女性の方の一人の場合、一級地ですけれども生活扶助料、老齢加算、住宅扶助入れて合計九十一万三千五百三十六円という数字になるんです。片方公務扶助料の最低保障が改正後で八十五万二千円ですね。生活保護よりも低いということは私はやはり問題があると思っております。これは考え方です、考え方基準として申し上げますけれども、最低でも生活保護適用の場合を上回るという内容で本来あるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  266. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 生活保護の考え方でございますが、これも先ほどちょっと申し上げたんですが、先生も御存じのように、社会扶助というような観点から、いろんな資産あるいは所得、そういったものを活用した後になお最低の生活に満たないと、こういう場合にその不足分を差し上げる、これが生活保護のたてまえではないかと思います。片や恩給でございますが、これも先ほど来申し上げますように、いろいろ国のために長年尽くされた方々、あるいはいまの公務扶助料でございますと、公務のために死亡された遺族の方に国として補償を差し上げて生活の支えにする。これにつきましては資産あるいは所得、こういったことに関係なく差し上げるという趣旨のものでございまして、両方とも直に比較するというのはちょっとむずかしいんじゃないかと思いますが、ただ、特に公務扶助料の場合は、先生指摘のようにいろいろ生活のかかっている問題でもございますので、これの引き上げといいますか、改善といいますか、これにつきましては今後とも努力してまいりたい、このように考えております。
  267. 山中郁子

    山中郁子君 最後の問題なんですけれども、これはちょっと具体的なケースなんですが、いままでそちらにいろいろと問い合わせもしておきましたが、まだお答えをいただいておりませんし、逆にそちらの恩給局の官僚的な扱いがやはり話を聞くと見られるんで、ぜひともこういう方たちについては本当に、先ほどからおっしゃっているように、国の誠意と言うならば、誠意を尽くして対処もしていただきたいと思うのであえて申し上げるわけです。  これは傷病恩給の申請とその認定の問題なんですけれども、担当の方は聞いていらっしゃるわけですが、板橋区に住んでいらっしゃる橋本政雄さんという方の傷病恩給申請の件なんです。この方の話によりますと、昭和二十年の一月に川崎市の高射砲陣地におられて、米軍機の爆撃でまあ木材のようなものが倒れて目に当たって、それから視力を失ったということなんです。その後、現認証明ですか、証人の方の現認証明が要るということでそれを取られた。で、日赤のお医者さんの証明ももらって、そういうふうにして申請をしているんですけれども、因果関係がはっきりしないとか、証明するものがないとか、年をとれば視力がなくなるということもあるだろうとか、そういうようなことで却下されてきたんですね。私はそういうケースはあると思うんです。国がそうした人たちに国の誠意を尽くすんだということがたてまえだけでなくて本当のものならば、こういうケースはあり得るわけですから、そして何年も何回も一生懸命そうやって申請されているわけでしょう。そのこと自体が、別にありもしなかったことを言うとか、そういうことじゃないということは当然もうわかるわけです。現実にそういう状況のもとで、そんなはっきりした、恩給局がおっしゃるような証明だとか因果関係がとれない場合だってあるわけです。十分考えられるわけですね。私は何としてもこうした方たちの再三再四にわたる申請に対して、もっと誠意を持って実際にその申請が認可できるように、――認可して間違いない問題だと私は思っておりますけれども、そういう姿勢がまず必要で、御本人に対して、何か何回も何回も書類を出し直させたり、御本人はあっち行ったりこっち行ったりしてやっていらっしゃるんだけれども、なかなかそれが、やれ書類が不備だとか因果関係がはっきりしないとか、いろんなことをおっしゃって突き返されるということで大変怒りも感じていらっしゃいますし、私も理不尽なことだと思っておりますので、ぜひどのような状況になっているかという現状を教えていただくと同時に、早急に解決をしていただきたいと思っておりますが、いかがでしょう。
  268. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいまの個別案件と申しますか、具体的な例でございますが、実は先般先生の方からも御連絡ありまして調べましたところ、現在異議の申し立てという形で私どもの方に出ております。これの余り具体的なことを申し上げるのはいささか差し支えがあると思いますので、これはまたあるいは後ほどお話ししたいと思いますけれども、一般的に言いまして、私どもの方にそういった傷病恩給の申請がございますと、私たちとしましてはできるだけ御本人の負担にならないように、いろいろ検診を行うとか、これも私どもの費用で行うとか、あるいは現地を実際に調査してみるとか、そういういろんな手だてを尽くしまして、これについての正しい判断、正しい因果関係を求めたい、こう考えておるわけでございますが、ただ、何分にも戦後三十数年たっておるわけでございまして、こういった方は、いま先生もちょっとおっしゃいましたように、非常に年もとってこられますし、まあ私どもも医学のことは余りよくわかりませんで、これは日本でも有名な有数な先生方にいろいろ顧問医として鑑定していただいているわけですが、そういったお医者さん方がいろいろ判断してくださるわけです。たとえば目の場合ですと、老人性白内症とか、あるいは先天性の強度の近視とか、そういったものがだんだん年をとるにつれて出てくるという場合もございますし、もちろん先生のおっしゃったような、傷を受けたために神経がやられて目が見えなくなるという場合も出てくるかと思いますが、そういった点をできるだけ客観的に把握するように私どももいろいろ努力しているつもりでございますし、まあ先生おっしゃるような、恩給局に関しては少なくともそういった官僚的というようなことはまずないと、私は確信いたしております。  まあ、いまの具体例についてはちょっとここでどうこうという問題でもないかと思いますので、これはまた後ほどいろいろお話し申し上げたいと思います。
  269. 山中郁子

    山中郁子君 官僚的でないと確信されておられるようですので、ぜひそうあってほしいと思っておりますが、細かい具体的なことはともかくとして、私はぜひ確認をしたいんですけれども、現認証明があって医師の診断として因果関係考えられると。それは考えられないということもありましょう。だけれども考えられるという程度の診断が出ていれば、当然国の誠意として戦争で被害を受けた方たちに報いるというのがこの恩給の精神であるということならば、解決できる、救済できる方向で検討していただけると理解してよろしゅうございますか。
  270. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただ、これはお医者さん方によってもいろいろな考え方があると思いますけれども、やはりいま申し上げましたように、三十数年たっておるわけでございまして、できればその中間のいろんな具体的というか、客観的な診断の資料といったようなものがほしいという場合もこれはあるかと思いますけれども、そういったものによって総合的に判断して最終的に鑑定をいただくと、こういうことになっておりますので、あるお医者さんが因果関係考えられると言うことだけで判断するのが、果たして客観的かどうかという問題も、これはあり得るかと思います。
  271. 山中郁子

    山中郁子君 それはいろいろな即断というか、はっきり認識できる、判断できるものがあればそれにこしたことはないわけです。だけれども、三十年前の問題で、カルテや何かだって消失しちゃっているケースもありましょうし、そういうことだからやはりいろいろと問題がややっこしくなってきているわけですから、私がいまここで申し上げているのは、職業病なんかの認定の場合もそうなんですけれども、何回も私もいやというほど経験しているんですが、いろいろいろいろおっしゃって、結局職業病としての認定をなるべくしないようになさるというのが一つのやはり傾向なんですよ。私はいまこのケースがそうだというふうにここで断定するつもりはありませんけれども、よもやそういうことのないように、繰り返し総務長官がおっしゃっていらっしゃるような、政府としての基本的な姿勢を踏まえた上で、それは昔のことですからわからない面もあります。あるけれども、あるからといって救済がすべて閉ざされるんだということだったら、全く政府の言っていらっしゃる戦争で苦労した方に対する国としての誠意だとか、そうしたことは口だけの問題になってしまいますので、不分明なところがあるのは、これは昔の話ですからやむを得ないです。だけれども、なおかつそれでもこうした、いま私が申し上げました現認証明とか、お医者さんの中にそうした因果関係ということも肯定される方もあるわけで、現にその診断書も出していらっしゃると私は聞いておりますから、そうしたことを踏まえて、救済するという方向で努力もしていただくし、審査もしていただくと、ぜひこのことを、重ねてになりますが総務長官に見解を伺って終わります。
  272. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 具体的な問題はいまここでお聞きしたわけでございますが、私は、全体の中でいろいろ問題点のあるものもあるのではないか、こういうふうに考えておりまして、できるだけ幅広く意見を聞きまして、概算要求までにまとめられるものはできるだけまとめていきたい、こういうふうに考えております。
  273. 井上計

    ○井上計君 私は、質問時間を遠慮して短くしましたので、ごく簡単に、お伺いというより、むしろ私自身の考え方意見一つ申し上げて、若干のお答えをいただきたいというふうに思います。  先般来、特にまた、本日も、与野党委員とも、また政府答弁におきましても、恩給等の不公正を是正をしろというふうな御意見、また政府答弁もできるだけ前向きに検討というふうな、与野党委員質問に対してのまた政府側の御答弁もあります。私自身も、できるだけ財源があれば多く出すということについては特別に異論はありません。また不公平ないろいろと支給制度等についての是正ということについては、これまた異論がないわけでありますが、ただこのままでまいりますと、将来財政的な負担がどのようになるかということを私は別の角度でひとつ検討しなくてはいけないというふうに考えます。  先日、大蔵省の方からそれらの資料を実はちょうだいをいたしました。時間がありませんから、私からいただいた資料に基づいて申し上げたいと思いますが、五十三年度恩給、国庫負担の負担額は一兆二千億円を超えております、このうち大部分軍人恩給ではありますけれども。それから、その他各種年金等の国庫負担分が約一兆九千億円、したがいまして、合計が三兆一千億円という数字になっております。このほかに公共企業体の共済組合の国庫負担分、国庫とは言いませんが事実上の国庫だと思います。それから地方公務員共済年金の地方自治体の負担分が約四千五百億円、したがいまして、約四兆円というものは国及び地方自治体の負担であるという数字がここに出ております。これを五年後あるいは十年後ということで試算をしていただきました。ごく少なく見積もってというようなことでありますけれども、これでまいりますと、大体昭和六十五年、約十二年後になりますけれども、六十五年はいろいろと合わしますと十兆円を超えるというふうな数字が実は出ておりますけれども、これをひとつ考えてまいりますと、将来大変なことになるのではなかろうか。言いかえますと、私は現在のような恩給あるいは年金についての考え方、言い方は悪いですが、パワーに負けてというと大変各委員の方御無礼でありますけれども、各団体のいろんな要望に余りにもこたえ過ぎた形でこれからもまいりますと、実は大変なことになるのではないか。事実上そうなりますと、昭和初期に言われておったようですが、恩給亡国ということがまた再び持ち上がってくると思いますし、何か昭和八年にはそのために恩給を減額するための恩給法の改正が行われたということが記されておりますが、そういうふうなことが果たして、私のただ単なる杞憂にすぎなければ結構でありますけれども、そういうことが起き得るんではなかろうか。そうなりますと、そのときになってもう払えぬ、したがってじゃどうするかという問題、あるいはまた、現在二十代、三十代のいわばこれから自分たちの将来の老後のために負担をしておられる人たちに対して、これは大変なまた不満を醸成するということになるんではなかろうかという懸念をいたしますが、これについて大蔵省どのようにお考えでありましょうか、ひとつお伺いをいたします。
  274. 窪田弘

    説明員窪田弘君) ただいま先生の御指摘になったとおりであると思います。ただ、今後の日本の社会考えますと、核家族化が進むとかそういうことで、個人の所得保障の重要性というものもまた否定できないと思いますが、それをやる上においては、やはりおっしゃったようなその負担というものの意識を常に考えていかなければならないというふうに考えております。先般御発表になりました民社党の中期経済計画でも、いまのままでは不可避的に年金財政は破綻するのではないかと、こういう御指摘をいただいております。ただいまお挙げになった数字以外でも、厚生省の推計では、年金が成熟した暁では五十年価格で現在の仕組みのままでも国庫負担は約五兆円に達するという、五十一年価格でございますが、計算になっておりますが、これは五十一年度一般会計予算二十四兆円の二〇%を超えるという計算になります。また厚生年金の保険料におきましても、将来においては所得の二〇%を超える負担をしていただかなければならないと、こういう計算になっております。現在西ドイツの年金の保険料が一八%でございまして、この辺が限度ではないかという学者もございますので、御指摘のように、将来の年金の負担というものが現在の制度を前提にして考えても大変な問題で、御指摘のように、この辺は今後どうしていくか、やはり国民各層の方に十分お考えをいただかなければならないと、こう考えております。
  275. 井上計

    ○井上計君 大蔵省としては、いまそれ以上の御意見はお述べになることについてはいろいろと問題があると思いますから、いまの御意見で十分でありますが、そこでもう一つ伺いますけれども、先般、ことしの二月でありますが、大蔵省が発表されました中期経済計画の試算ですね、あれには、いまお話しの五十一年度価格によるそれらの恩給並びに年金等の負担額等の計算はされていると思いますが、要するに、今後のやはりいろんな一制度の改正あるいはベースアップ等によってかなり上昇すると思いますが、それらのものは一切計上されていないと、こう聞いておりますが、どうなんですか。
  276. 窪田弘

    説明員窪田弘君) 先般まとめましたパンフレットは、現在の年金の仕組み、制度としては、まだ現状ではもらえる人が少ない、つまり成熟しておりませんが、将来成熟した暁にはその水準というものは西欧諸国の水準に決してひけをとるものではないと、こういう観点から書いてございまして、将来こういう負担になるというその先の話は実は書いてないわけでございまして、ただいま私が申しました数字は、厚生省の厚生大臣の諮問機関でございます年金基本構想懇談会の資料に出ているものでございます。先日申しましたものは、現在の仕組みでも給付の水準は相当なものである、それに相応したやはり負担を考えていただかなければならないと、そういう観点からまとめたものでございます。
  277. 井上計

    ○井上計君 私は、恩給の趣旨、目的いろいろあります。また特に軍人恩給については、青春を長い間国にささげた、あるいは国に対する功労、また公務員等については長い間国に対して功労がありましたので当然そこについて請求権があるとか、いろんな意見もありますし、それをすべて私は反対をしたり否定するものではありません。ただしかし、生活に困っておる方、あるいは本当に老齢の方、あるいは軍隊等あるいは戦争等におきまして不具廃疾になられた方、傷病によって非常に生活に大変障害のある方、そういう方々にはできるだけ多くこれは支給するというのは、これはもう大変結構だと思いますけれども、必要がないと言うと大変語弊がありますけれども、それほど恩給を必要としない人も相当あると思うんですね。そういう方々に対してもやはり一律にいわば制度の改正によって上げていく、また上げることが当然だと、また請求することが当然だ、要求は当然の権利だという形がこのまままいりますと容易ならぬ事態が財政的にも来るんではなかろうかというふうに思います。  実は私のことを申し上げて大変恐縮でありますけれども、私も実は実役六年、そのほとんどが戦地勤務でありましたから、加算を入れると何か十五、六年になって恩給の資格があるということはもちろん早くから承知をしております。それから、戦争中大陸において、生きていることが奇跡だと言われるような負傷をいたしました。二十八年の傷病恩給の復活時において、大体四款症ぐらいでありましたから当然傷病恩給ももらえる資格がありましたけれども、私自身は戦後病院船で復員したときに、焼け野原の内地を見て、この復興のためには、われわれはやはりこれから国に、いろんな自分たちの犠牲だとか、あるいは補償だとかというそんなことを求めないで、復興にやっぱりわれわれは努力すべきである、こういう考え方で、当時十数名のグループで話し合いましたら、今後仮に国からそういうふうな補償があるという事態が来ても一切辞退をしようではないかという、申し合わせではありませんけれども、そういうふうなことを実は話し合ったことがあります。私は何も自分の考え方が正しいとか、あるいは自分の考え方を多くの人に押しつけようという気持ちは毛頭ありませんけれども、私はそういう気持ちでおりましたので、恩給も、また傷病恩給もすべて実は辞退――まだ手続をしておりませんから現在全くもらっていないわけでありますが、したがって、もらっている人がどうとかというんじゃありません。しかし、われわれの友人、グループの中には、大して欲しくないんだけれどもやると言われるからもらうんだ、くれるものはもらうんだという考え方の人がかなりいることもこれは事実なんですね。ですから、そういうふうな人にまで一律に恩給という形でいまのような出し方をしておる、そうすると、どうしてもだんだんエスカレートして、やっぱり少ない、だから多くする、多くするとまた不公正が出てくるからこれを是正して上の方にまた右へならえしていく、またこれがというふうな、いつまでたってもイタチごっこのような形でそういう格差が解消できない。だからどんどんふえていく、そうすると最終的には、いま大蔵省お話しになりまして遠慮したようなお答えでありましたけれども、大変な事態が財政上私は到来するんではなかろうか。そのときになってもうだめですということになれば、これはもう容易ならぬ事態になるわけでありますが、だからそれらのことを、やはり大蔵省だけではなくて、私は総理府も、各方面がお考えいただきながら、やはり恒久的に、いわば不公正にならぬように、拠出している方が、将来自分がやっぱりずっと計算上もらえるんだ、こういうふうな形の恩給あるいは年金というふうなものをいまから考え直しをしていくということも必要ではなかろうかというふうに思います。長官や、また総理府の御答弁要りません。私の意見を申し上げただけでありますし、また御答弁しにくい点もあろうかと思いますけれども、だから、あえて私は各委員先生方の御質問とは全く違う見解を述べましたので、あるいは後でおしかりを受けるかもしれませんけれども、やはり多くの受給者の中には、それほど必要としないんだと、まあしかし、くれるから実はもらうんだという方も相当あるという事実を申し上げます。  それからもう一つ、軍隊に行っておった人だけが戦争犠牲者あるいは功労者というだけではないという意見も相当あるんですね。というのは、この軍人恩給、できました当時、明治あるいは大正の初めごろは、国内では戦争が全くないと、予測されなかった時代ですから、戦地あるいは戦地加算という問題で相当いろいろ考えられておりますけれども、先般の大戦は、いわば戦地もあるいは国内も事実上同じような状態に置かれておった。特に国内で警防団等で大変努力、苦労をされた方、そのためにやはりけがをしたという方も相当あるようでありますし、あるいは警防団活動をしておったために自分の家が実は焼けるに任して焼けたり、爆撃によって焼けたという被害を受けた人も相当あるわけでありますけれども、そういう方々に言わせますと、われわれも、兵隊として戦地に行っていなかったけれども同じような戦争犠牲者である、われわれに対する補償は何もないではないか、こういう実は不満があるということも事実でありますから、それらのものをやはり考えて、今後こういう問題についても、もちろんふやすこと、増額すること、多く支給をすること、あるいは広範囲に支給することもそれは一面では大変結構でありますが、将来のことも考えていく必要があるんではなかろうかという気持ちを従来からずっと持っておりましたが、また先日並びにきょうの委員会の質疑をずっと伺っておりまして改めてそういう感じがいたしますので、大変生意気なことを申し上げましてあるいはお気にさわった向きもあるかと思いますけれども、あえて私の意見を申し上げて私の質問を終わります。
  278. 森田重郎

    ○森田重郎君 私は、かねて参議院の制度改革協議会に出席をさせていただいておりまして、常々小会派の保障問題につきまして声を大に訴え続けておるわけでございます。どうもこの委員会の審議方式というものが、会派一順という形でありますれば大変ありがたいのでございますけれども、どうしても小会派は一番最後になるのが通例でございまして、大体これまで委員先生方から大部分質問がし尽くされたというような形でございますが、三つ四つ問題を集約いたしまして御質問をさせていただきたいと思います。  まず、私はこの恩給問題というのは、これはやはり生活に直結するというような意味では大変重要な問題であろうかと思うのでございますが、この附帯決議実施状況というふうな問題、これがどうなっておるかというようなことを実はお尋ね申し上げたいと思います。  先ほど来何回かもうお話が出ておりますので、ちょうど昨年当委員会におきまして改正案を審議する際に、たまたま実は六点が、これは偶然ことしも衆議院の方におきまして六項目の附帯決議がなされておるようでございますが、ちょうど六点ございますが、この点につきまして、第一点は、これは恩給最低保障の額の問題、第二点は扶助料の給付水準の引き上げ改善の問題、第三点は、これは旧軍人と一般文官との間の仮定俸給年額の格づけ是正の問題、それから第四点が、これが加算年の金額計算への算入及び加算減算率について改善を図るという問題、第五点が、恩給改定実施時期についての問題、第六点は、これは恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限を撤廃する、この六点が実は附帯決議として昨年なされたわけでございますが、これらの点につきましてごく簡単で結構でございますから、第一点、二点、三点というような形の中で、その辺の実施状況を改めてお伺い申し上げたいと思います。
  279. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま、昨年本委員会で付せられました附帯決議、これについての実施状況のお尋ねでございますが、第一点が最低保障額について引き続きその引き上げを図ること、これにつきましては、今回、先ほど来いろいろ御質疑がありお答えしましたように、特に老齢者長期にお勤めになった方、こういった方の最低保障額を従来の五十八万九千円から六十二万二千円に引き上げるという措置をとってございます。   〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕  それから、第二点の扶助料でございますが、これも給付水準という意味で、先ほども五割をもっと上げるべきじゃないか、こういうお話もあるわけでございますが、今回御審議いただいております法案におきましては、老齢の寡婦の方あるいは子供を抱えておられる方、こういった方に特段に優遇措置を講ずる、あるいは寡婦加算の引き上げを行う、こういった措置を行っております。  それから、第三点の文武官格差の問題でございますが、これにつきましては、軍人恩給の大尉以下の低い方の方、この方々を今年もまた一号俸引き上げるという形で改善を図っております。これはまだそれでも文官の短期の方との差が若干ございますが、これも今後とも努力してまいりたい、このように考えております。  それから、実施時期につきましては、昨年から四月実施ということになったわけでございますが、今年もこれを四月実施ということで定着させていく、さらにその他の改善につきまして、昨年は八月であったわけですがこれを六月に繰り上げると。  それから第六点は、これは私から答えますよりはむしろ厚生省の問題かと思いますが、老齢福祉年金の支給制限の撤廃、これはお話、伺うところによりますと、限度額の三十三万円を三十七万円に引き上げる措置がいま考えられておるというように伺っております。大体以上であります。
  280. 森田重郎

    ○森田重郎君 大体御説明でよくわかりました。私が申し上げたいことは、ただいまの第六点まで、それぞれ政府御当局いろいろな角度から御苦労をしていただいている、その辺の意味合いにつきましては大変高く評価もし、また感謝も申し上げておるわけでございますが、実は、ただいま私たち、こういう形の中で今回の改正案を審議しておるわけです。恐らくは附帯決議が何らかの形でなされるか、あるいはどうか、その辺は私どもが何も申し上げる筋合いのものではないかもしれませんが、いずれにしても、一つ法案が採決に持ち込まれ、そこで可決される、それに附帯決議がつくということは、やはりその法案そのものが附帯決議が十分に生かされてこそ一つ法案であるというふうに私ども解釈するわけでございますので、したがいまして、この附帯決議実施というふうなものに対しましては、ぜひとも行政当局で引き続いて格段の御努力をお願い申し上げたいという意味で、ただいま質問の形でお願いを申し上げたというふうなことでございます。  次に、最低保障額の問題につきましてはかねていろいろな御意見もあったようでございますが、これは私はやはり将来の一つの高福祉社会というふうなものの実現化に向かって、国民年金的な考え方、発想というものは、どうしてもこれはその意味において社会保障ないしは生活保障というふうなものにつながるような感じを実は受けるわけでございます。そういう点から考えますと、先ほど局長おっしゃいましたように、ずばり言ってそれは社会保障ではないと、それじゃずばり言わなければ社会保障であるかどうかというようなことにもなるわけでございますが、私自身として考えてみますと、やはり将来の何といいましょうか、福祉国家の建設というふうな高い次元で考えてみますれば、何らかの形でそれが国民生活そのものに直結するというふうな意味合いの中で、あえて私自身は生活給的な、またそれが社会保障的な、そういう意味合いのものであるというふうに考えておるわけでございますが、そういうような意味合いから考えまして、今回五十八万九千円から六十二万二千円にアップをした、その差額が三万三千円である。何回かお話に出ておる問題でございますが、まあそういう意味から考えますと、何回か申し上げておりますように、いささか額が少ないんじゃなかろうか、かように思っておるわけでございますが、重ねてその辺をもう一度御答弁賜りたいと思います。
  281. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま先生指摘のように、まあ最低保障が低いではないかというお話でございますが、私も先ほど来申し上げておりますように、この最低保障額等につきましては、とにかく社会的、経済的に弱い立場にある人たちについては、そこを重点的に改善を図っていくという立場で、今後とも引き続きその改善に努めてまいりたい、このように考えておりますので、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  282. 森田重郎

    ○森田重郎君 実は附帯決議に関連しまして扶助料の給付水準の引き上げの問題でございますが、いろいろ陳情の向きその他から、八割ぐらいアップしたらどうかというような大変強いお話もあるようでございますが、その辺についてはどんなお考えでございましょうか、お聞かせ賜りたいと思います。
  283. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 扶助料の水準の引き上げにつきましても、先ほど来各先生方からいろいろ御指摘を受けておるわけでございますが、まあこれも先ほど答弁いたしておりますように、なかなか一律でアップするというような形がいいのか、あるいは先ほど来申し上げますような社会的、経済的に非常に弱い立場にある人たちに手厚くかさ上げしていくような方式考えた方がいいのか、こういった問題もあるわけでございますが、それらも踏まえながら、ひとつ扶助料の改善、こういったことに努めてまいりたい、このように考えております。
  284. 森田重郎

    ○森田重郎君 わかりました。  それではもう二問ほどございますが、恩給改善実施時期につきまして、昨年の改正法では恩給年額の増額等公務員給与改善に伴うものは、これは四月から実施したというようなことになっております。いろいろな問題があったようでございますが、ことしはこれは何か三段階にやっていくというような形になっておるようでございますが、この辺を多少御説明いただければと思います。
  285. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) ただいま御指摘の今年度改善でございますが、御指摘のように、四月、これはベースアップ関係といいますか、増額改定関係については四月、その他の改善については六月、   〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕 それから、加算減算の改善、それと断続一時金の支給、これについては十月と、こういう三段階になっておるわけでございます。  増額改定の四月につきましては、これも先ほど来各先生方からも御指摘あったように、それでも一年おくれているではないかという問題があるわけでございますが、私どもとしては、とにかく昨年の四月を本年において定着させる、させたという実績を踏まえていきたいと、こういう考え方でございます。  それから、その他の改善でございますが、これも従来先生方から四月にそろえるべきではないかという御意見をいただいておるわけでございますが、ある限られた予算の中でそういったものを繰り上げるのがいいのか、あるいは中身をもっと手厚くしていく方がいいのか、そういったこともいろいろ考えました結果、やむを得ず六月というところに落ちついたわけでございます。  その他の改善につきましては十月となっておるわけでございますが、これは年金とはちょっと違う面もございますし、また先ほど申し上げた財政絡みの話もございまして十月ということに相なったわけでございます。
  286. 森田重郎

    ○森田重郎君 実施時期については大体わかりました。  そこで、お伺いしたいのは、あれでございましょうか、現在この恩給の支給事務の関係はどういう形になっておりますか、その辺の現況を御説明いただきたいと思います。
  287. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 恩給の支給事務といいますか、この法案が審議されまして成立いたしますれば、直ちに恩給改定事務というのが必要になってくるわけでございます。一人一人について計算し、それに基づいて証書をつくるということになるわけですが、このつくりました証書をそれぞれ地方の貯金局の方へ送りまして、そこでいろいろ調整その他の事務を行いまして、これを受給者が指定いたします郵便局に送ります。郵便局でその証書を受給者の方が受け取り、また金も受け取ると、こういう形になっておるわけでございます。したがいまして、これは私どもの方から直接御本人に送るというシステムになっておりませんので、その点あるいは時間がかかる要素になっておるかもしれませんですけれども、一応そういうシステムになっております。
  288. 森田重郎

    ○森田重郎君 昨年は恩給のこの実施時期が六月であった、これを二カ月繰り上げて四月に実施したということでございますね。恐らくこれは減税問題や何かとの関係でいろいろの絡みもあったことと思いますけれども恩給証書がどうも手元へ着くのが大変遅いと、年内に間に合わぬとか、いろいろな問題があるようでございますが、その辺あわせまして事務の促進方につきまして何か現在お考えの点があるようでございましたらお聞かせいただければと思います。
  289. 小熊鐵雄

    政府委員小熊鐵雄君) 時期を早めて四月実施ということにいたしますと、受給者気持ちとしては四月にすぐにでも証書がいただきたいと、こういうお気持ちではなかろうかと思います。そこで、私どももこういった法案が成立しますと直ちに改定証書といいますか、増額改定をいたしました証書の作成にとりかかるわけでございます。しかし、何分にも二百五十数万という受給者の一人一人について証書を作成するわけでございます。これを計算し、証書をつくる、たとえば一番単純な証書に数字を写すという作業だけでも数千名の人手が必要になる、延べ数千名の人手が必要だというようなことでございまして、昨年度におきましても、私どももいろいろいま先生指摘のような、まだ着かない、証書が着かないがどうした、こういう苦情をいただいておるわけでございますが、この証書作成のために、私どもとしましては職員だけの手ではとてもできませんので、パートとか、あるいはアルバイト、こういった方々にも単純な作業をしていただくという意味で御協力願っておるわけでございます。しかし、それにしましても、ただいま申し上げましたような物理的な制約といいますか、いっときにそう何千人もの人を入れるわけにもまいりませんし、そういった制約もございまして、従来、大体昨年ですと、やはりちょうどことしぐらいの日程で法案が成立したんじゃなかったかと思いますが、それですぐに作業に取りかかりまして、早い方で七月ごろ証書を受け取っておられます。遅い方になりますと九月ごろになってしまう、こういった状況であったわけでございます。それで、私どももこれを手作業でやっている限りは、幾らがんばっても一カ月と早めるのはなかなか無理じゃないかというように考えておりまして、実は二年ほど前からこれをコンピューターを導入して処理するという方式について研究をしてまいったわけでございます。幸いにして本年度予算におきましては、これの準備経費が認められましたので、ただいまこれをコンピューター化するための準備を進めております。もちろんそういったコンピューター化いたしますと、出てきます証書は従来のような枠取りのある大きな証書じゃなくて、かたかな書きの小さなものになってくるだろうと思いますので、その点あるいは受給者方々に御不満があるのではないかという懸念もありますが、何分にも、やはり一日も早く受給者の手元にお届けするということの方が、いまの情勢としては必要ではないかと、こう考えますので、今年度からコンピューター導入の準備を始めたい、このように考えております。まあこれも逐次マスターファイルをつくっていく必要がありますので、そう一挙にコンピューター化できるわけはございませんが、大体五年計画ぐらいで完了いたしたい、このように考えておるわけでございます。
  290. 森田重郎

    ○森田重郎君 一日千秋の思いで、八月の旧盆には恩給証書を仏壇に供えて亡き主人の霊を弔いたいというような、そういう声も耳にしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、これを手書きでやるというのは大変な作業だろうと思うんですね。幸い改定作業の機械化に伴う準備費も計上されたようでございますので、どうぞさような意味でも事務の促進方を重ねてお願い申し上げまして、私の質問これで終わらせていただきます。
  291. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  恩給法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  293. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、林君から発言を求められておりますので、これを許します。林君。
  294. 林ゆう

    ○林ゆう君 私は、ただいま可決されました恩給法等の一部を改正する法律案に対し、各党共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。  まず、附帯決議案を朗読いたします。    恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかに検討の上善処すべきである。  一、恩給改定実施時期については、現職公務員給与改定時期を考慮し、均衡を失しないよう配慮すること。  一、恩給最低保障額については、引き続きその引上げを図ること。  一、扶助料の給付水準については、さらにその改善を図ること。  一、旧軍人と一般文官との間の仮定俸給年額の格付是正を行うこと。  一、加算年の金額計算への導入及び加算減算率についてさらに改善を図ること。  一、戦地勤務に服した日本赤十字社の救護看護婦等については、旧軍人、軍属に準じ、適切な救済措置を講ずること。  一、恩給に対する所得税法上の手続きについては、他の公約年金と同様の取扱いをするよう配慮すること。  一、恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限を撤廃すること。   右決議する。
  295. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいま林君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  296. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 全会一致と認めます。よって、林君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、稻村総理府総務長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。稻村総理府総務長官。
  297. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、御趣旨を体しまして検討してまいりたいと存じます。
  298. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十六分散会      ―――――・―――――