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1978-04-11 第84回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十一日(火曜日)    午前十時三十六分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月四日     辞任         補欠選任      山中 郁子君     上田耕一郎君  四月五日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     山中 郁子君  四月十一日     辞任         補欠選任      堀江 正夫君     降矢 敬義君      和泉 照雄君     田代富士男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 林  ゆう君                 原 文兵衛君                 片岡 勝治君                 井上  計君     委 員                 岡田  広君                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 竹内  潔君                 林  寛子君                 堀江 正夫君                 野田  哲君                 村田 秀三君                 山崎  昇君                 和泉 照雄君                 黒柳  明君                 山中 郁子君                 森田 重郎君                 秦   豊君    国務大臣        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁参事官   古賀 速雄君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁衛生局長  野津  聖君        防衛庁経理局長  原   徹君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        警察庁刑事局国        際刑事課長    水町  治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国の防衛に関する調査  (国の防衛問題に関する件)     ―――――――――――――
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  国の防衛に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 堀江正夫

    堀江正夫君 私はきょう四、五点の問題につきまして質疑をし、かつ一緒に考えさしていただこうと思っておりますが、その第一点は、この間六日でございますか、衆議院決算委員会で論議されました限定的小規模侵攻の問題でございます。私があえてこの問題を取り上げましたのは、どうも新聞で出ておりました状況だけから見ますと、いろいろと国民皆さん誤解をされる面もあるんじゃないかと、このような気もするわけでございまして、やはり正しく国民に理解してもらわなきゃいけない、このような観点からして質問をしたいと、こう思います。したがいまして、私の質問に対しましてやっぱり答えられないことがあるんじゃないかと思います。答えられないことがありましたならば、これはもう遠慮なくそのように申していただければ、あえて私は回答を求めません。やはり、事は国の防衛に関するところの重要な問題でございます。答えられることと答えられないこと、言っていいことと、言って悪いこととあると思います。その辺はひとつ十分に御考慮いただきたいと、こう思うわけであります。  この間の新聞によりますところの六日の衆議院決算委員会の論議では、結局、従来は限定的な小規模侵攻兵力というのは数個師団だ、このような防衛庁の見解であったのが、一、二個師団だと、このようにとれるような新聞の発表でございますが、この一、二個師団というふうに言われたのかどうか。また、もしもそういうような数を明確に言っておられるとするならば、その辺の事情といいますか、この辺をひとつまず承りたいと思います。
  4. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 先般の委員会におきまして御説明いたしました内容につきまして御報告申し上げます。  防衛計画大綱の中に、いわゆる「侵略未然防止」と、それから「侵略対処」という項目がございます。この侵略対処の中で、わが国整備する防衛力というものは、限定的かつ小規模侵略については原則として独力で対処できるような防衛力整備するという考え方が示されておるわけでございます。で、御質問の中で、限定的かつ小規模侵略というその規模はどの程度のものであるかというお話がございました。そこで私は、いま先生がおっしゃいましたように、私どもといたしましては数個師団というものを考えているということを申し上げたわけでございますが、さらに御質問がございましたので、防衛庁として現在日米安保体制下におきますいわゆる侵略として予想されるものというものを御説明申し上げました。一つは、この日米安保体制下にある日本に対して、アメリカの巨大な軍事力というものに対抗するような形での大きな侵略というものは比較的公算としては少ないと私ども考えております。と同時に、大きな侵略というものを決意するまでにはかなりの準備期間がございます。そして、部隊の移動あるいは後方支援体制整備等というものは、現在のような情報化社会におきましては事前にキャッチすることができる、したがって、これに対応する準備もこちらもできるであろう。とするならば、大きな準備をしないで直ちに持ってこられる陸上兵力については、私ども数個師団考えておるのですけれども日本周辺諸国の中には、そういった準備をしないで、あるいは一個師団あるいは二個師団といった程度のものなら侵略に向け得る能力を持った国があるというふうにお答えしたわけでございます。いまのような前提を置きまして考えられる数個師団ということを御説明したつもりでございます。
  5. 堀江正夫

    堀江正夫君 いまのを伺いますと、従来数個師団と、こう言われておった。それが一、二個師団と言われる意味は、数個師団と一、二個師団とはイコールであるというふうにお考えになって答えられたのか、そうでないのか、その辺をひとつお伺いします。
  6. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 私がお答えいたしましたときにも、数個師団というもので、私どもが想定し、いろいろ研究をする中でいろんな数字がありますと。その場合にどういう対処をするかということを研究し、あるいは演習などをしているわけでございますけれども、その数個師団の中で、現に私どもが予想しているものは何個師団かというような形で申し上げたわけではございませんで、周辺諸国の中には、一個師団あるいは二個師団という程度のものであれば、それほどの準備なく直ちに侵攻に向けられる能力を持った国があるというふうにお答えしたわけでございます。
  7. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうしますと、いまおっしゃられますところの一、二個師団というのは、奇襲的に来れる体制にあるのがまあそのくらいだろうと、こういうことだと思いますが、そうしますと、いま考えられておりますところの限定的小規模侵攻ということがあるとするならば、それはどのような状況下において、どのような目的を持って来るというふうにお考えでございますか。
  8. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 先ほども御説明申し上げましたように、日米安保体制を組んでおりますわが国防衛体制に対しまして侵略をするということは、やはりアメリカの巨大な軍事力というものに対決する覚悟がなければできないと私ども考えておるわけでございます。したがいまして、日米安保体制というものが安保条約の五条によりまして発動されるに至らないような形の小侵略、あるいはいやがらせといいますか、そういった形の奇襲的なものというものは一応考えられる脅威として私どもは勉強しているわけでございます。
  9. 堀江正夫

    堀江正夫君 そこで、結局これらの限定的な小規模侵攻というのは、先ほどお話ございましたように、奇襲的に行われるということだと思いますけれども、この事前察知可能性というものがあるのかないのか、あるいはあるとするならばどのくらいの幅をもって考えておられるのか、この辺をひとつ承りたいと思います。
  10. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 先ほど来申し上げましたように、大規模準備ということになりますと、これはほとんど確実に察知できるのではないかというふうに私ども考えております。といいますのは、御承知のように日米安保体制のもとにおきまして、アメリカとの情報交換ども行っております。そしてまた、アメリカというのは御承知のように人工衛星などを使いまして常に偵察をしているわけでございます。そういったこと、あるいは私ども監視体制のもとにおきます船の動き、そういったものからも判断できると思いますが、いまおっしゃられましたようないわゆる奇襲的な、それほどの準備なくして来る場合ということにつきましては、なかなか事前察知というものはむずかしいと思いますが、それにいたしましても、一つの意図を持って攻撃をかけてくるということになりますと、いろいろな情報手段によりまして事前には少なくともキャッチできるのではないかというふうに考えておりますが、そのためには、さらに情報機能というものを今後とも整備してまいらなければなりませんし、またこの情報を分析する能力というものを高めなければならないと思っております。で、そういうことによりまして、なるべく早くそれをキャッチする体制というものをつくっていく必要はあると思いますけれども、全然わからないで来るということはないだろうという程度に私どもはいま考えているわけでございます。
  11. 堀江正夫

    堀江正夫君 この事前察知という問題は大変私は大事な問題だと思うわけでございます。しかし、防衛庁が持っておる機能からしますと、私は余り事前察知できるような機能は持っておらないと、このように思います。今後いろいろな面で努力をされるのだろうと思いますが、やはり米軍からの情報入手以外には本当に的確な事前察知手段はないんじゃないか、こうも思うわけですが、しかりとするならば、米軍からの情報入手というような問題はもうルール化されて、いつでも心配ないような状況になっておるというふうに考えてよろしゅうございますか、どうですか。
  12. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) この米軍からの情報というものをもらうにつきましては、先生も御承知のように、やはり情報というものはお互いに利益を分かち合うというような観点からわが方としてもそれなり努力をしなければなりません。過去二十年間にわたりましていろいろ努力をしてまいりました。そして、そういった面の協力体制というものも確立するように努力をいたしております。さらにまた、現在日米防衛協力小委員会におきまして、そういった観点から努力をしてまいりたいと思っておりますので、米側協力体制というものはかなり高まってきているというふうに、私自身の経験からいたしまして、過去何年かにわたっての努力の成果というものはそれなりに上がっているというふうに考えております。
  13. 堀江正夫

    堀江正夫君 いまお話ございましたけれども、私はやはり、日米安保体制下における日本の不備をいろいろな面でアメリカにカバーしてもらっておるわけですが、まずカバーしてもらわなければならない問題は情報だと思うわけですが、この情報の問題につきまして、平時状態下で平面的な情報交換をやるというだけじゃなく、機微なる場合におけるところの情報交換がいつでもできるような体制というものがとられておるということが大変重要なんだと、こう思うわけでございます。恐らく今後の日米防衛協力小委員会協議等を通じて、そういったような問題も詰められてくると思いますけれども、ぜひとも、その辺が、奇襲攻撃、限定的な小規模侵攻であっても、全く寝首をかかれたような侵攻を受けるということは少なくもないようにしてもらわなきゃ困る、こう思うわけでございますが、この小規模の限定的な攻撃に対しまして、「原則として独力で排除する」というふうに、少なくも防衛白書では書いてございます、この基盤防衛力でもってつくるべき防衛力というものは。この排除とはどういうことを考えておられますか。
  14. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) まあ排除の中には、一番端的に申し上げますと、上陸部隊水際で阻止するということがあろうかと思います。しかし、さらに攻撃が続くような場合には、いわゆる米国の協力を得るまでの間、なるべくその水際において退治するというような形をとってまいりたいというようなことでございまして、ただここで「原則として独力で」と言っておりますのは、実は海空につきましては、協力を得る場合にも比較的早い時期にそれが可能でございますが、陸上兵力協力ということになりますとこれはかなり時間を要します。したがいまして、そういった意味におきまして、特にこの陸上自衛隊におきましては、できるだけ長い期間わが領土に上陸させないように努力する、上陸したものはその水際から追い出すように努力する、そういった考え方を持っているわけでございます。
  15. 堀江正夫

    堀江正夫君 実際は数日前に事前に察知できるかもしれません。しかし、基本的にこれは現体制のままからの奇襲的な攻撃考えておるわけですから、わが準備態勢というものはほとんどできない状況下における侵攻というものを前提にしなけりゃならないと思うわけですね。その場合に、私はもちろん原則として、これはもう海空軍米軍に期待できるんだという前提があったとしましても、陸上というものは自分でやらなきゃいけない。この陸上の現在置かれておるところの配置あるいは能力、これなんかを見ました場合に、本当に独力で排除できると、この基盤防衛力の造成によって。こう考えられておるのかどうかということについては、私はもう相当な疑問を持つわけです。ここでは、実は防衛白書では書き分けてあるわけですね。その程度のものであったら原則としては独力で排除するが、けれども侵略様相等によっては排除できない場合もある、このときにおいては米軍支援を受けてやるんだと、こういうことでございます。どうもそれの場合の考え方というのは、兵力的、あるいは置かれた状況大分前者とは違ったことを考えておられるように思うわけです。その辺、結局は私は目的を持って来るんだと、確かに奇襲的に来るのは一、二個師一団、これは来れる体制にある、能力も持っている、しかし、目的を達成するためにはさらに増加は当然してくるであろうし、またそれも可能である。したがって、そうであるならばわれわれが本当に、具体的に「原則として独力で排除」と言うならば、それはどうすることなんだ、そのためにどれだけの戦力、どれだけの体制を持たなければいけないか、この辺をはっきりさせないと、どうも確信を持った侵攻対処侵略対処ということにならないんじゃないかと、こう思うわけですが、いかがでございますか。
  16. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) まず先生のおっしゃいます前提の中で、私ども考えと幾らか違っている点があるんではないかというふうに考えますが、といいますのは、まず全く奇襲的に侵攻が行われるというふうにおっしゃいますけれども日本の置かれております環境からいたしますと、いわゆる防衛計画大綱で定められました勢力を維持するということは、直ちに侵略対処するという意味よりは、現在の極東軍事体制の中におきまして、それなりに力を持っているということの意味というものが多いというふうに私は考えているわけです。したがいまして、先生がおっしゃいますような状況侵攻するような状況というものは、やはり国対国の間、いわゆる国際情勢変化等によってある程度察知できるということであろうかと思います。たとえば、三十八度線とか、あるいはイスラエルとアラブ諸国との間のような緊張状態がありますと、これは全く奇襲的に行われるということはあり得ると思いますけれども日本の置かれておりますような環境の中におきまして、全く予知せざる奇襲というものは、これは国際常識から言って考えにくい、考え方としてはきわめて少ない。そうしますと、そういった緊張状態になったときには、やはりそれなり準備というものが行われるでありましょう。したがいまして、そういった際の決心というものは、政治的な判断というものを待たなければならないわけでございますが、そういう際に、現実にございます極東わが国周辺軍事力というものから、そういった国々がどのような形で侵略するということが可能であるかということは、具体的に検討されなければならないと思いますけれども、現在の軍事情勢のもとにおきましては、一応防衛計画大綱に示されております勢力というものを基礎にいたしまして、そういった情勢変化に応じて努力をしてまいりたいというのが防衛庁考え方でございます。
  17. 堀江正夫

    堀江正夫君 防衛庁が、従来、特に新防衛計画大綱考えておられるところの基本的な考え方というものは、私もそれなりによくわかっておるわけでございますが、最近のアメリカ国防報告、これによりますと、米ソ軍事体制、これからしまして、いまや一番危険なのは西ヨーロッパだと、したがって西ヨーロッパにおいては、すでに通常戦力をもってするところの奇襲攻撃可能性さえも否定できないのだ、そこでアメリカは、大変な重点をこの正面に志向しようと、こうしております。また、ことしのアメリカ国防報告によれば、アジアで事が起こるとするならば、一番危険であるこの西ヨーロッパ、これに紛争が起きた場合においては当然アジアにもこれが波及すると、こういうようなことを言っておるわけです。確かに、情勢はいろんな過程を経て緊迫をしてくるという場合が当然あり得る、これが常態じゃないか、こう思うわけでございますけれども、すでにアメリカはそういったような全般的な情勢判断のもとで兵力の再展開、これを実施しつつある現状下において、日本だけは、まあいまの状況じゃ心配ないんだといったようなことをまず第一言っておれるのかどうか。しかも、緊迫した状況になってきてからそれに対するところの防衛力整備というものをやっていけばいいんで、そのための基盤防衛力、これをつくっておけばそれができるんだ、こういうことでございますけれども、もう私が言うまでもございません、たとえば海上自衛隊の護衛艦一つつくるのに、予算を取って、それが第一線に就航するまで五年かかるわけですね。そういうようなことを考えますと、いまの状況下において、五年先、六年先、七年先というような情勢見通しながらこの兵力整備、こういったものをやっていかなければ、いざというときに間に合いやしない、こういう結果に私はなるんだろうと思います。日本防衛の基本的な体制が、急速に、いざというときに防衛力強化をするというような体制になっておらないことは言うまでもないわけであります。このようなことを考えました場合に、いまはそうかもしれないけれども、相当不安定な要素が将来に横たわっているというようなことを考えました場合に、私はその辺のアローアンスを十分に含みながら、いろんな施策というものが先行して行われなきゃいけない、そのことを国民にも十分理解してもらわなきゃならないんだ、こう思うわけですが、いかがでございますか。
  18. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それはいま先生のおっしゃるとおりだと思います。したがいまして、この防衛力整備には時間がかかりますので、情勢見通しというものはきわめて大事だというふうに私ども考えております。しかしながら、先生の御経験も私と同じだと思いますけれども、過去四回にわたって防衛力整備をやってまいりました。その間に私どもは、やはり大きな紛争は起こらないだろうという想定のもとに、御承知のように他の国のように急激に防衛費を増強するというようなこともなくやってまいったわけでございます。そして五年ごとにこの防衛力というものを整備してまいったわけでございますけれども、一応五年とかあるいは六年という見通し考えますと、過去あの東西が厳しく対立していた当時から考えましてもおわかりのように、この軍事力を直ちに使うという情勢というものは、なかなか使いにくい情勢になってきているということもまた事実だろうと思います。そしてまた、ヨーロッパアジアの違いというものは、国防白書にも指摘してありますように、ヨーロッパのいわゆる東西対立というものは、完全にNATOグループワルシャワグループとの間がはっきりしているわけでございまして、その両グループの持っている軍事力の対比というものがきわめてはっきりしているわけでございます。それに対しましてアジアにおきましては、現実の問題として中ソの対立という問題もございます。それから米中ソの関係というものもございます。そういった複雑な状況が入りまじっておりますので、軍事力を直ちに行使して紛争に至るというような情勢というものは、必ずしも緊迫している状況にはないというふうに考えているわけでございます。同時にまた、先生も御同意いただけると思いますけれどもヨーロッパでは確かに対峙いたしておりますけれども、たとえば中東とか、あるいは三十八度線に比べますと、ヨーロッパ自体情勢というものもそれほど緊迫している情勢ではないというふうな考え方もできるのではないかと思っているわけでございます。
  19. 堀江正夫

    堀江正夫君 確かに過去はおっしゃるとおりでございますし、そして現在の情勢、これはもう今年あるいは来年を見通した場合に、私は右から左に情勢が変わるということを言っておるわけではございません。しかし、過去を考えてみました場合でも、東西が非常に先鋭化しておったと言いますけれども、その段階の米ソ軍事力バランスという問題と、いまアメリカが当面し、今後当面しようとしておるところの軍事力バランス、あるいは極東におけるところの軍事力変化、こういったものを考えました場合に、私が言っているのはここ四、五年先はどうなんだと、こういうことを言っておるわけです。四、五年先につきましては、非常に不安定な要素もいろいろと出てくる可能性が大きくなっているじゃないか、その辺のことを踏んまえた判断、その辺を踏んまえたところの施策というものが当然あってしかるべしじゃないか、われわれは当然その四、五年先を見通さなければ防衛政策の遂行なんということはできないんだ、こういう観点を言っておるわけですが、もう一度その点につきましてお聞きします。
  20. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 確かに、この米ソ軍事力というものを考えてみますると、六〇年代あるいは七〇年代の当初に比べますと、軍事力というものは均衡していると思います。特に、この核兵器の軍事力におきましては、圧倒的に強かったアメリカ核戦略というものに対抗するような力を持ってきているというのは事実でございます。そしてまた、通常戦力につきましては、特にソ連の方は強化努力しているということも事実でございます。アメリカ政府といたしましても、国防省といたしましても、どうも通常兵器の増強のテンポというものを見ると、ソ連という国は自国の防衛のためだけであれだけが必要だとはとても思えないというような疑問も持っているようでございます。ただ、先生がいまおっしゃいましたけれども軍事力の相対性というものの中にもう一つ大きな要素があるということを私ども考えるわけでございます。といいますのは、米ソが持っている巨大な軍事力というものは、明らかに必要な軍事力を超えていると思うわけでございます。もうオーバーキルといいますか、この米ソが対決したら世界が破滅するだろうというほどの大きな軍事力だと思います。そういった大きな軍事力というものは、仮に拮抗いたしましたといたしましても、拮抗したからそれが使えるというようなものでもないと思うわけでございます。そういった拮抗している中で、お互いに大きな紛争を起こさないための努力というものに非常な努力をしているわけでございまして、その間、過去の戦後の国際情勢を見ますると、小さな紛争というものが起きているわけでございます。そういった突発的な紛争というものを起こさないだけの未然防止のための防衛努力、これが日本にも必要でございますし、また日米安保体制の有効性を維持するためにも必要であるということでございますけれども、私どもは、そういった軍事力が拮抗してきたことによって、その国際情勢そのものが流動的になってきているんだというふうにはどうも考えにくいというふうに思っておるわけでございます。
  21. 堀江正夫

    堀江正夫君 アメリカ自体が、もう非常にはっきりと、現在置かれた米ソ軍事情勢下における将来の方向について、非常な危惧を持ちながら努力をする一方において暗中模索をしておる。そのしわ寄せが、特にアジア方面、これに今後来るだろうということは大きな流れとして当然予測できるだろうと思います。もちろん今明年については、もう国防報告にありましたように、アメリカは在韓米地上軍の六千名の削減以外はやらないと、むしろ若干の空軍なんか強化すると言っておりますが、それは今明年の話であって、将来の大きい方向を考えた場合に、私はその辺の情勢というものを相当深刻に受けとめておかなきゃいけないのじゃないか、余り楽観的な見方は、結局成田事件の教訓に見るようなことにもなってしまうのだと、こう思うわけでございます。  この問題ばっかりやっておるわけにいきません。これにつきましては、また機会を求めて何遍でもいろいろと議論をしていきたいと、こう思うわけでございます。  次は、私は自衛隊の精強化のための若干の施策の問題につきましてお尋ねをしたいと、こう思います。  三月十九日の防大の卒業式におきまして、総理、そして防衛庁長官も、自衛隊は精強にならなきゃいけない、自衛隊は強くならなきゃいけない、こういうことを言われたということが新聞に大きく載っておったわけであります。私、従来の総理及び防衛庁長官の卒業式における訓示をいろいろと見せてもらいました。そのときによっては精強、こういったような問題についての要望が、ないときもありますけれども、今日までずっと、大体において毎回このことが要望されておるわけであります。ただ、ことしの場合は、特に新聞がこのことを大きく見出しでもって取り上げたということにはそれなりにやっぱり私は理由があったように思います。というのは、特に長官の御訓示の中で、精強にならなきゃいけないと、自衛隊は何といいますか、強くならなきゃいけないというようなことをいろんな場所で具体的に述べておられるわけであります。従来よりもこれに対するところの御要望が非常に強かったように私は思うわけであります。それは大変結構だと私は思うわけでありますが、そこで、精強な自衛隊、自衛官を育成するために本当に何が必要なのか、どうしたならば精強な自衛隊、自衛官ができるのだ、こういったようなことにつきましてどのようなことをお考えか承らしていただきたいと、こう思います。
  22. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 精強な部隊という問題につきまして、いろいろ御批判もあるようでありますが、私は国民の税金を使ってこの国の防衛をやるというとき、一握りの防衛ということであってはこれは国民に対して申しわけがない。少なくも日本を侵さんとする者に対してはいわゆるこれに拮抗できる、対処できる部隊でなくちゃならぬ、それには精強な部隊でなくちゃならぬと、私は強く声を大にして申し上げておるわけでありますが、この精強な部隊をつくるためには、その人間をつくるということであろうと私は思います。そういうことから言いますと、人をつくるということは教育だと私は思う。そういう意味で、防衛大学は防衛の中堅幹部をつくる、あるいは中核をなす指導者をつくるというところであろうと私は思うにつけましても、この人たちが本当に祖国のために、その有事の際には命をささげる、そして永遠に、わが日本民族を後世に存続させるというような気概がなければならぬ、それは私は教育だと、こう考えております。
  23. 堀江正夫

    堀江正夫君 まさに、私は長官のおっしゃったとおりだと思うわけでございます。したがいまして、従来から歴代の長官、あるいは自衛隊内におきまして各部隊の指揮官が、精強な部隊の育成、練成を目指して日夜努力をしておると、こういうことだと思います。私はこの精強な自衛隊、これは本当にいざというときに国民の期待に沿って任務を遂行し得るような能力、これを持った自衛官、自衛隊だと思うわけでございます。そういうような観点から考えますと、当然長官が、精強な自衛隊にならなきゃいけない、しっかりやれというふうに強調され、訓辞をされ、指導される、それに基づきまして各隊の第一線の指揮官が、与えられた条件の中で、与えられた土俵の中で最善を尽くして自衛官あるいは部隊の精強化のために教育訓練をしっかりやる。もうこのことは、私は二十数年間、警察予備隊として発足以来一生懸命やっていると、こう思うわけです。ただ、それじゃそれだけでいざというときに本当に完全に任務を遂行できるような自衛隊、自衛官ができるかということになると、私はそれだけじゃできないんだと、やっぱり基本的には国民の絶大な支援のもとに、理解のもとに、自信を持った、誇りを持った自衛官、自衛隊でなきゃならぬと、こう思うわけです。そういう意味において、やはりこれをやるためには、自衛隊自体が与えられた土俵の中でしっかりやるという以外に、その条件、自信を持てるような、誇りを持てるような、本当に精強な自衛隊になり得るところの条件を政治や行政が与えていかなければならないと、こう思うわけですが、いかがでございましょうか。
  24. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 私もそのとおりだと思います。いま、これは第二次世界大戦に負けて、国民も親を亡くし、子を亡くし、あるいは関係の親族を亡くすというようなことで、いわゆる防衛という問題につきましては拒否反応があった。これも否めないと私は思うわけでありますが、戦後三十有余年になりまして、いわゆる国民自体も防衛という問題につきまして重大な関心を持ってきた。ことにこの国会におきまして、この防衛問題につきまして相当論議が交わされたということは非常に喜ばしいことだと私は考えております。ことに、自衛隊に対する考え方、それはあくまでもシビリアンコントロール――文民統制、こういうことは十二分にわれわれは踏まえまして、そうして政治優先という中でこの国会で十二分に討議されるというようなことは、国民に理解を得る最大の私は要点だと、文民統制とは、国民のいわゆる期待にこたえる歯どめでもあると思うので、ぜひ私はそういう意味でこの問題につきまして国民の理解を得るためには、国民の代表である、最高の府であるこの国会で十二分な討議をしていただくことは、世論を高め、あるいは国民の批判、いろいろの場面にもなると私は思うわけでありまして、非常にそういう意味で、世論のない防衛というものはない、一億国民すべてが防衛は必要だという考え方、また一朝有事の際は、いわゆる自衛隊二十七万でこの国が守れるのか、とてもそんなもので守れるものじゃありません。いわゆる国民すべての人が、その部署部署において本当に有事に対処する気概を持っていただくようなことにするためには国民の理解を得なければならぬことは当然だと、こう考えております。
  25. 堀江正夫

    堀江正夫君 国民の理解につきましてはおっしゃるとおりだと思います。  私は、特に申し上げたいのは、警察予備隊が発足してからもう二十何年たつわけであります。先ほどから申し上げますように、歴代の総理あるいは長官、精強な自衛隊になれということで常に部隊に対してはっきりした見解、御指導をしておられるわけですが、しかし、先ほど言います本当に精強になるためには、自分自身が努力すると同時に、さらに本当に自信を持ち、そして誇りを持てるような状況にならなければならぬ、してやらなければいけない。その点がまだいろんな面で私はこれからという面が多いような気がするわけです。たとえば、自信を持たすということになりますか、これはもう精強化に直接、任務遂行にも直接つながる問題でありますが、有事法令の問題につきましても、これは前の八月の十一日、この委員会の席上で三原前長官の見解の表明もございました。また八十二臨時国会においても、本会議あるいは予算委員会等でこの有事法令の問題につきましては、総理初め皆様の見解の表明もあったわけです。さらにこの三月十五日には、参議院の予算委員会におきまして、ここにおられます野田委員の御質問に対して、総理あるいは政府委員の方から回答されております。この有事法令の問題につきまして、総理は野田委員質問に対してこのように言っておられます。この問題は「常日ごろ検討しておかなければならぬことである、」ということが一つですね、それからもう一つは、「そういうようなことで、もう有事に際してあらゆる面で備えをあらかじめなしておくということは当然のことである」、こういうようなお考えを示しておられるわけであります。それに対しまして、今度は政府委員の方が具体的な回答をしておりますが、それに対してはいま勉強しているんだと、こういうことでございます。検討しておる。有事の場合のあらゆる備えをしっかりしておかなければいけないという総理の見解、それに対しまして勉強しておる。しかも、この次の方には、「防衛庁といたしましては現在国民が差し迫った危機感を持っておるわけではございませんので、防衛庁として静かにゆっくりと勉強していきたいと思います。もし、いざというときに防衛庁がよく勉強しておったと言われるだけの体制で勉強を進めていくつもりであります。」と、こういうことでございます。どうも言葉じりをとらえるわけじゃございませんけれども、この有事の法令はいざというときに役に立たなければいけない、そのための有事の法令で、もう世界じゅう、最近だんだんできてきた新しい国は別としまして、およそ国と言われる国で有事法令を持たない国なんというのはほかにないと思うわけであります。それに対しまして、言葉じりになるかもしれませんが、「いざというときに防衛庁がよく勉強しておったと言われるだけの体制で勉強を進めていく」と、これではちょっとピントが違っているのじゃないですか。私は、確かにいま防衛庁が言われるように、ここ一、二年のうちに危機が迫っておるということではないかもしれません。しかしこの問題は、この国会において国民との間において十分に論議を重ねて、そして熟成さした上で法律化を図っていく問題だと思います。したがいまして相当期間を要します。それを静かに勉強さえしておけばいいんだということでは何ともぐあいが悪いじゃないかと、こう思うわけですが、いかがでございますか。
  26. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 先般お答えしましたとおり、防衛庁としましては、これは有事のための存在でございますから、有事立法は、それだけの勉強をしておくことは当然の義務だと思います。いままでなぜやっていなかったかという疑問すら持っているわけでございますが、昨年三原長官の御指示もあり、金丸長官にかわりましてからも金丸長官から御指示があり、この有事法令というものは、非常に国民の人権その他に及ぼす影響も大きければ、あるいは他の官庁等の所管法令に及ぼす影響も大きいわけですから、われわれの一番の基本は、防衛庁長官の直接の指示のもとに内局が中心になりまして各幕と一体になって進めていこうと、このシビリアンコントロールを常に入れておくことが一番大事だと思っております。それでいま勉強を進めておるわけでございますけれども、御承知のとおり、現在の自衛隊法でも、百三条には、有事の場合におきます物資の収用なりあるいは施設の管理使用等相当、かなりのものがあります。あるいは公衆電気通信施設を優先的に使用を有事のときにはできるんだと、あるいは航空法の適用除外とか等々のいわゆる有事におきます措置のものが現在の自衛隊法には相当ございますけれども、さらに、これだけでは足りませんので、現在各幕と一緒になって項目を詰め勉強しているわけでございますが、ただし、いま申し上げましたとおり、各省庁の所管法令の関係が非常に多いわけです。また、現在やはり国民がいま差し迫った危機感があるわけではない、あんまり防衛庁が先走って危機感をあおることもいかがなものかという感じも一方では持っております。われわれといたしましては、有事になった場合には、当然諸官庁はもとより国民皆さんが積極的にわれわれを応援していただくであろうということを前提にしておりますので、まだ各省庁に働きかけて立法の法案をつくっていま直ちにそこまでの法案までつくっていく段階ではないんではないだろうか。しかし、いつでも間に合うように各省庁には、恐らく有事近くなれば、国民が危機感持つようになれば、各省庁もこぞって応援してくれるだろうと私は思います。恐らく一日、二日でも法律が上がるんじゃないかというぐらいの自信を持っておりますので、その場合にはこれに合わせまして、現時点では各省庁にどういう問題があるかわれわれ十分に勉強しておきまして、徐々に国民の意識に合わせましてやっていくべきであろうと思います。しかし、国民のためには、こういう有事立法が永遠に日の目を見ないと、その方がいいわけでございますけれども防衛庁としましてはやはり積極的な勉強を進めていく、こういうことでございます。
  27. 堀江正夫

    堀江正夫君 どうも若干見解が違うようでありまして、国民のために有事立法をつくっておかなければいけないんだろうと私は思いますね、これは、当然。これは国民の権利義務に関係するわけです、大きく。それだけではございません、もう国の安危に関するわけですから。自衛隊だったって有事法令なければ何にもなりません。そんなこといまさら言うまでもございません。私は、基本的にやはり慎重な配慮のもとでやられるということはもちろん大事でございますけれども、やはりこの問題は、なかったらおかしいんだと、おっしゃったとおりであります。そう気がついた以上は、また、やるというふうに総理も決心をされた、防衛庁長官も決心された以上は、一つの具体的な計画を持ってしっかりした体制のもとでやはり検討を進め、国民の前で国会に対して提示をしていただきながら、そして進めていくと、それで初めて私は国民の信頼感も得られるし、自衛官自体が、われわれが何のために毎日訓練をし精強化を目指しておるか、これについての裏づけもできてくると思うわけでございます。その辺、もうこれ以上時間ありませんから、もっといろいろ言いたいんですけれども、やめておきます。  もう一つだけ、時間ありませんから、言わしていただきます。それは精強化にもつながる問題でありますが、自衛官の停年退職者が、従来もだんだん出てまいりましたが、今後非常なスピードでふえてくると。大体どのくらい、これから二、三年先の停年退職者、特に五十歳停年、これが出てくるのか、ひとつお知らせいただきたいと思います。
  28. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 先ほどの有事立法の問題、まず私の考え方を申し上げたいと思うんですが、ただいま官房長から答弁したその趣旨はそのとおりだと思うんですが、いわゆる危機感をあおるというようなこともしてもならぬし、またどの国もそういうものはあると、こうおっしゃられるわけであります。日本にあることもしかるべきだと思うんですが、しかし国民の理解を得る、国会の理解を得るということは、自民党だけ理解を得ればいいということじゃない、各党の多くの理解を得るということについて考えなければならないという考え方で、慎重にやっておるということだけは御理解をいただきたいと思うわけであります。  また、雇用問題でいわゆる退職者の問題は、これは防衛庁といたしましては一番の重要な問題であります。この問題につきましては、これに対する対策をどうしようかというようなことを考えておるわけでありますが、その詳細につきましては政府委員から答弁をさせます。
  29. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 先生御指摘のとおり、自衛官の停年で退職する者の数が近い将来急激にふえるという見込みでございまして、その状況を申し上げますと、現在の見積もりでございますが、現在大体三千五百名前後停年退職をいたしておりますけれども、これが五十八年度になりまして六千名を超える、それからピークになりますと、昭和六十年度でございますが、このときにちょうど約六千三百名ぐらいに達する見込みでございまして、これは三自衛隊合わせてでございますが、五十歳停年というふうに先生おっしゃいましたが、この数は五十三-五十八歳の停年者も入っておりますけれども、大部分は五十歳停年の者でございます。
  30. 堀江正夫

    堀江正夫君 従来から、停年退職者だけじゃございません、任期制隊員の再就職の問題につきましても、防衛庁が大変な努力をしておられるのは私自身がよく知っておるわけです。しかし、もういまやその限界に達しているだろうと私は思いますね、いまのような方法では。そこで、新たな発想をしなきゃならない、こういう時期になっておる。その一つの発想がことしの予算で要求された就職援護の体制、外郭団体の組織化の問題だろうと思います。残念にもことしできませんでしたが、この問題は当然来年度以降、というよりも来年度こういう体制はまずしっかりしたものをつくっていただかなければいけない。しかもそのつくり方は、まずつくって、それからだんだん固めていくんじゃなくて、もう当面つくったらすぐ活躍してもらわなきゃいけないんですから、本当に初めから十分過ぎるぐらいのものをつくるような努力をしていただく必要が一つはあるのだろうと思います。  それはそれにしまして、この五十歳停年、これが非常に急増するという問題と関連をして停年延長の問題、これも考えられておるやに聞いております。停年延長につきましてはもう十分防衛庁内でも検討されておるんだろうと思いますが、おのずから利害得失があるというふうに思うわけです。その辺が防衛庁でも非常な苦心の上で検討されておるんだろうと思いますが、もう一つ私は、年金問題につきまして基本的に防衛庁が真正面から取り組む時期になっておるんじゃないかと、こう思うわけでございます。と申しますのは、もちろん年金につきましては、共済年金、厚生年金それぞれの規定がございますし、給付の開始の年というものも決められておるわけであります。特に自衛官の入っております共済年金の場合は支給開始が五十五歳、ところが自衛官の場合はほとんどが五十歳で国の都合によって一方的にやめなきゃならない、五年間満額はもらえない、子供の教育に金がかかるからどうしてももらわなきゃならない、したがって二割減でもってもう初めから給付を受ける、ほとんどはこういうふうになっておるのは言うまでもないことでございますが、しかも、この共済組合年金は、開始年齢が厚生年金に対して早いとか、あるいは事務職が主体で過酷な労働条件がないとか、こういうようなことで特例がないわけですね。ところが、一方において厚生年金の場合は特例があることはもう御承知のとおりであります。たとえば、一般支給開始は六十歳になっている。ところが、坑内夫で一定年数を経過した者、これなんか五十五歳だと、女性も五十五歳だと、こういう特例でございます。病気の場合もちろんでございます。こういうようなことを考えますと、共済年金、確かにいままではそういう発想はなかった。けれども自衛官、これはもう五十歳の停年。停年延長いろいろ検討されて、やられるとしてもそう大きくできるはずはないと私は思っています。これはもう有事の場合の任務遂行を考えますとおのずから制限がございます。そうなりますと、やはりこの停年即年金支給開始といったような問題をここで改めて真剣に考えていただく必要があるんじゃないか、こう思うわけですが、その辺いかがでございますか。
  31. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) ただいまの問題について若干御説明さしていただきたいと思います。  停年延長の問題は、先ほど御指摘ございましたように、近く停年退職者が非常に増加する、これに対処するためにどうしたらいいかという問題の一つの方策として考えておるわけでございます。もう一つの問題としては、先ほど先生おっしゃいましたように、法人をつくったらどうかという問題、この二つでございます。ただ、停年延長の問題は、この停年退職者が増加するということに対処するためだけではございませんで、もともと停年延長するという問題が出てきた発端と申しますか、その契機は、現在の社会的な背景にあると思うわけでございます。非常に最近平均寿命が伸びてきたということもございます。それから、民間企業の状況を見ますと、約半数の民間企業では五十五歳定年を敷いておりますし、最近では六十歳にその定年を延長しようという傾向にあります。こういう風潮の中で自衛官だけ若年停年でいいものであろうかという、反省と申しますか、そういうことがきっかけになりました。それと同時に、もう一つ先ほど申しましたように、停年退職者が非常に増加する、そのための一つの方策。で、合わせて現在の若年停年制というものの再検討をしたらどうか、こういうことになったわけでございます。  おっしゃいますように、若年停年というのは国家公務員の中で自衛官だけに課せられた非常に特殊な制度でございます。そこで、この若年停年制に対して停年を延長した場合に、自衛隊においてどういう問題が起きるかということを年来検討いたしてきております。もともと若年停年制というのは部隊の精強性を維持するために出てきておる制度でございます。したがいまして、停年を延長することによって精強度に影響を与えるか、影響があるかどうか、こういう問題を検討しなければなりません。その作業を現在いまやっておるわけでございます。それからもう一つは、停年を延長することによって昇任率が非常に低下をする、こういう問題がございます。さらには人件費が非常に増加するであろう、こういう問題もございます。そういう問題を全部解決する必要があります。片や自衛官個々の人間にとってみれば、五十歳で停年退職をするといいますと、ちょうどその時期は非常に経済的に負担のかかる時期である、しかも、いまのような状況では再就職は言うほど容易ではない。したがいまして、その利害得失というものを現在検討しているわけでございます。  そこで、先ほど先生おっしゃいましたように、年金の問題でございます。これはおっしゃるように受給できますのは五十五歳から。五十歳で停年退職いたしますので五年だけブランクがございます。停年を延長せずに五十歳ですぐに年金が受給できるという状態になることは非常に好ましいことであるし望ましいことでもあるわけです。しかしながら、年金制度は、先生よく御承知のとおり非常に複雑な要素が絡み合ってできておりますし、それから、防衛庁の共済組合のみならず各種の年金制度と全部絡み合っているわけでございまして、自衛官の年金についてだけ取り上げて直ちにこれを五十歳で支給をするという制度は、年金の財政等からいきましても非常に困難であるという問題がございます。しかし、停年を延長するという方策と同時に、いまおっしゃいましたような問題についても検討はいたしておりまして、何らかの工夫がないだろうかということを内々いま検討いたしております。  それから、法人化の問題につきましては、御承知のように自衛隊では職業紹介をするという権限がございませんので、現在は職業安定所の方にお願いをしておるという状態でございますけれども先ほど申しましたような停年退職者が非常に激増するという深刻な状態を迎えて何らかの対策が必要であるということで、いまのような問題を含めて現在検討いたしておる状況でございます。
  32. 堀江正夫

    堀江正夫君 もう時間がございません。これで終わりますが、いまの自衛官のこれらの若年停年の問題の解決、これはやはり、総理がこの前の臨時国会のときに山中議員の本会議における有事法令に対する質問でございましたが、自衛隊有事のためにあるんだ、こういうことをはっきり言っておられます。その原点、これがもう中心になると思います。ところが、やっぱり平和時がこう続きますととかくその辺の原点を忘れる、そういった方向に走りやすい。その辺を、基本的に防衛庁の場合、あらゆる制度の上で踏んまえた上で、やはりそういう特殊性というものを理解してもらう、もちろん努力しておられますけれども防衛庁だけではない、もうわれわれもこれは与野党問わず、みんなでそれらを正しく理解しながら新しい道を開いていく、こういうようなひとつ意気込みで総合的にやっていただきたい、このことを切に私は要望するわけでございます。  もう時間来ましたからこれで終わります。ありがとうございました。
  33. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) ただいまの問題につきましては、まず基本姿勢としては野党に認められるような自衛隊でなければならない、こう私はいつも考えているわけでございまして、そういう中でそういう問題を十分にひとつ検討して御期待に沿うようにいたしたいと、こう考えております。
  34. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 大変質問時間が少ないので一点だけ質問をしたいと思います。  昨年九月、米軍ジェット機が墜落をいたしまして、本委員会でもこの問題についてずいぶん論議をいたしました。関係各省庁においても、再びこういうような事故が起こらぬように必要な措置をとるという答弁があったわけでありますが、しかし、過般同じ厚木基地周辺におきまして、米軍機の部品が落下する、こういう事故が起こったわけであります。しかし、幸いにして人命には支障がなかったわけであります。しかし落下した場所は密集地帯であり、また五メートルのところには横浜バイパスが通っておるところでありまして、もし密集地帯に落下する、あるいはこの横浜バイパスに落下したということになりますれば、これは相当の被害が出たであろうということが容易に想像できるわけです。  そこでお尋ねいたしますが、この落下物を落とした飛行機はどういう機種なのか、落下物は一体何だったのか、この点をまずお答えをしていただきたいと思います。
  35. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) お答えいたします。  ただいま御質問の事故は、去る六日の夕方起きたわけでございますが、六日の午後五時五十五分ごろに厚木飛行場に帰還途上のP3機の右の主翼の翼の前縁――前の縁でございますね、前縁のカバーが落ちたわけでございます。ただいまお話しのように、落ちた場所は市道で幸いにして被害はなかったわけでございますが、米軍の発表によりますと、着陸態勢に入りました際に、その時点で非常に激しい雨が降っておったようでございますが、激しい乱気流に遭いましたために落ちたということでございます。しかし、おっしゃるとおり幸いに被害は生じませんでしたけれども、ごく近くに民家もあるということで、一つ誤れば大変大きな被害に結びつきかねないという問題でございますので、私どもは非常にこの事故は重大な点を含んでおると存じまして、直ちに米側にも申し入れをしたところでございます。
  36. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 昨年九月の米軍ジェット機の墜落事故につきましても、その後施設庁等からの事故調査の結果を文書で拝見をいたしました。しかし、私ども素人が読んだせいもあるかもしれませんけれども、事故原因というものが明確になっていない、あるいはまた、あれだけの事故を起こした一体責任というものはどこにあったのか、そういうものについても全く不明確であり、その後そういった責任体制が措置されたということは聞いておらぬわけであります。結局こういったことが再三の事故というものを生み出していく要因なのではないかと私は思うんです。  今回のこの主翼の一部が、まあ乱気流、激しい雨があったから落ちたと、まあ私ども素人考えでは、確かに相当激しい雨はあったけれども、それによって主翼の一部が脱落をして落っこちるなんというようなことは常識的に考えられないんです。飛行機が分解するようなひどい乱気流ということであればそれはそれにいたしましても、全く常識的に考えられない。これまたやっぱりこの軍用機の整備の不備にあったのではないかということが容易に想像されるわけです。結局その米軍機、まあ飛行機だけではなくして、軍事優先ということでそうした事故防止あるいは人命尊重というものが二の次にされているのではないかと、私どもは繰り返される事故にそういうことを想像するわけです。  それで、幸いにして人命や物件に損傷がなかったわけでありますから、こういうときには事故調査委員会というものは発動されないわけですね。
  37. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 事故調査委員会は、日本側に人的あるいは物的に被害が生じました場合に合同委員会の指示を受けて活動するということになっておりますので、今回の件は事故分科委員会の扱う事項にはならないと思います。ただ、おっしゃるとおりの問題を含んでおりますので、私どもから在日米軍あるいは在日米海軍司令部等に対して、それぞれ事故原因の究明と再発防止対策については申し入れを厳重にいたしておるところでございます。
  38. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そうすると、その事故原因の究明の申し入れをしたということでありますけれども、それはまだわかってないんですか。
  39. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 米側におきまして鋭意調査中であるということで、結果がわかれば日本側に連絡すると、こういう返事でありますが、現在調査中と承知しております。
  40. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 私は、これからこういった事故をなくすためにも、人命にかかわる、あるいは物件にかかわる損害がなかった場合にも調査すべきではないですか。そういうことを徹底的にやることによってこういった事故を繰り返すということが少しでもなくなると思うんですよ。人命に事故がなかったから、もう事故調査委員会は発動しないんだということだから、こういった事故というものが私はどうもあるような気がするわけですが、これについてどうですか、見解は。つまり、人命や物件に損害がなくても、まあごく軽微の事故は別にして、もしこれが道路や人家に落ちた場合のことを想像すれば相当の被害があっただろう、そういったことが想定されるような事故については、これはもう明確に事故調査委員会日米双方が、もう調査委員会そのものの機能について私ども不満がありますけれども、不満はあるけれども、まあそれは別として、調査委員会において徹底的に究明をする、そうして国民の前に明らかにするということでなければ国民は納得しませんよ。そういう点について見解をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  41. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 御承知のとおり事故分科委員会は合同委員会の下部機構でございまして、合同委員会における日米合意に基づいて活動をするわけでございます。したがいまして、現在のたてまえでは今回のような件は事故分科委員会にかからない仕組みになっておるわけでございますが、御指摘の点につきましては、これは私ども一存でお答えはしかねるわけでございます。関係省庁とも相談をいたしたいと思います。
  42. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 実はこの問題が起きまして、私も直ちに施設庁長官に、このような事故は、道路上に落ちたからよかったということで済ますわけにはいかないと、これが屋根の上に落ちた、あるいは歩いている人の上に落ちた、あるいはただいまのバイパスに落ちた、そういうようなことになって、人命が今回は損耗がなかったからといって安易に解決すべきものじゃないと、厳重な抗議をしろという話の中で、こういう事故がたびたび起こることですから、いま事務的にはいささかの話をいたしておりましたが、私はそういうものを改善して、ひとつこの事故防止委員会なり、そこで究明すべきことをこれからわれわれが提案してやるべきだと、このように考えて、今後そのような対処を、外務省もあることですからいろいろ相談して進めてみたい、こう考えているわけです。
  43. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 わかりました。防衛庁長官、ぜひ人命事故がなくても、ひとつ事故調査委員会を開いて徹底的に究明をする、そういう方向で、長官のその決意でやっていただきたい、このことを強く要望して私の質問を終わります。
  44. 野田哲

    ○野田哲君 時間がありませんから、午前中は一つの問題だけ伺って終わりたいと思います。  チームスピリット78、あの演習の状況については、防衛庁の方はすでに把握をされておりますか。
  45. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) このチームスピリットにつきましては外務省を通じまして情報を得ております。しかしながら、このやりました結果につきましての分析あるいは研究の結果、そういったものについては聞いていない段階でございますが、概要につきましては存じておるわけでございます。
  46. 野田哲

    ○野田哲君 外務省の方に伺いますが、チームスピリット78で、高速道路が滑走路として使われている、この事実は承知されていると思うんですが、いかがですか。
  47. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 私、経済協力局長でございますが、高速道路がこのたびの演習で使われたかどうか、私自身は承知いたしておりません。
  48. 野田哲

    ○野田哲君 防衛庁はいかがですか。
  49. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 私どもも正式なルートで聞いたわけではございませんけれども、多くの報道陣がこのチームスピリットを見に行っております。そういった報道など、あるいは写真等から見まして高速道路を滑走路に使ったという事実があったというふうに承知いたしております。
  50. 野田哲

    ○野田哲君 新聞のこの報道、特にチームスピリット78をグラフにしていろんな角度から写真を掲載をしておることは御承知だと思うんです。そこで、この高速道路が軍用滑走路に使われている、この事実は紛れもないことだと思うんです。  この韓国における高速道路の日本からの経済援助、この実績はどういうふうになっておりますか。
  51. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) このソウル-釜山間の高速道路につきましては、韓国との間に結ばれました請求権経済協力協定に基づきまして、一九六八年の六月及び一九六九年四月の二回にわたりまして、合計二十四億八千百万円というものを円借款といたしまして供与したことがございます。
  52. 野田哲

    ○野田哲君 技術援助の方はいかがですか。
  53. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 政府ベースの技術援助としての実績はございません。
  54. 野田哲

    ○野田哲君 外務省は、この高速道路、日本からの二十四億の経済援助、これによって建設をされた高速道路が、軍用機の滑走路として使用されるということは承知の上でやられたんですか。
  55. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 当時は、請求権有償資金協力の一環といたしまして供与したものでございますが、当時の韓国との間の請求権経済協力協定に基づきまして、韓国側から、その協定に基づき設置されておりました合同委員会に対しまして、ソウルと釜山との間に高速道路を建設したいという提案があったわけでございますが、私どもといたしましては、この計画につきまして検討いたしました結果、高速道路を建設するということが、韓国において必要とされておりまする輸送需要の増大に対処するものである、また沿道の地域開発にも寄与するものであるという判断を行いまして、そのような経済の開発、民生の向上ということに資するという見地から、先ほども申し上げましたような円借款の供与に同意したということでございます。
  56. 野田哲

    ○野田哲君 高速道路の設計の状態、たとえば中央分離帯がどういうふうになっているかとか、あるいはフェンスの状態がどういうふうになっているか、こういうことは一切承知をしなかったわけですか。
  57. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) この案件が合同委員会にかかりましたのが八年前でございまして、当時の経緯につきましては、私必ずしも承知いたしておりません。御質問の点につきましてはなお検討いたしたいと思いますが、いずれにいたしましても、日本側が供与いたしましたこの二十四億八千百万円、これはドルにいたしまして大体七百万ドルぐらいでございますが、この道路全体は韓国側の費用と申しますか、総費用が約一億五千六百万ドルぐらいなものでございまして、その一部の七百万ドルぐらいに相当する部分に、必要とされます、主に鉄鋼等の製品でございますが、鋼板とかガードレールだとか、鉄筋だとかというたぐいのものを円借款で供与したということでございまして、この高速道路全体の計画につきまして、どれほど詳細に当時承知していたかにつきましては、ちょっと帰りまして勉強さしていただきたいと存じます。
  58. 野田哲

    ○野田哲君 この日本からの経済援助によって建設された高速道路が軍用の滑走路に使われるんだということは、当時からいろいろうわさをされていたわけなんです。情報があったわけなんです。そのことが今度のチームスピリット78で実証されているわけです。結果的には、この高速道路に対する経済援助というのは、韓国の軍事用の滑走路の構築に日本が手をかした、こういう結果になっているわけです。これは他国に対する軍事援助の性格を持ったことになるんじゃないかと思うんですが、この点の見解はいかがですか。
  59. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたとおり、あくまでも高速道路の建設ということが、経済の発展、それから沿道の地域開発等を通じます民生の向上に貢献するということに着目いたしまして援助を行ったものでございます。
  60. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、あなた方の方では、これは軍事用の滑走路に使われるということを知らずに援助した、それを今回の演習に見られるように、韓国側では、あるいはアメリカも、軍事用に使っている、こういうことであれば、結局日本政府あるいは外務省はだまされたということになるんですか、いかがですか、その辺は。
  61. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 当時の経緯につきましては、先ほどのとおり私よく承知しておりませんので、帰ってから勉強させていただきたいと思います。当時、この高速道路が軍事目的にも役に立つという計画というものであったことを、外務省といたして承知した上で援助を決定したか否かについては、帰ってから確かめたいと思います。
  62. 野田哲

    ○野田哲君 これは外務省と防衛庁長官にも伺いたいと思うんですが、これから韓国から高速道路についての援助の要請があった場合に、今回は、この間明らかになったように軍事用に使われているわけですが、軍事用に使われるということがはっきりしておる場合、この援助の申し出はいままでどおり受けられますか、それともこれはノーと言われますか、いかがですか。
  63. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) わが国が行っております経済協力は、先ほど申し上げましたとおり、開発途上国の経済の発展、民生の安定向上ということを目的にしているわけでございまして、軍事目的の経済協力というのは行っておらないわけでございます。今後ともこのような方針はもちろん踏襲するつもりでございます。
  64. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 防衛庁の所管ではありませんが、ただいま外務省の言ったとおり、常識的に私は判断して、やるべきではない、こう思っております。
  65. 野田哲

    ○野田哲君 これはやはり、このような形で軍事目的に使われていることがはっきりしているわけですから、韓国に対して事実を具体的に指摘をして、これはしかるべき措置を外交的にとるべきではないですか、いかがですか。そうでないと、国民は、あのような写真がテレビでも新聞でも報道されているとすれば、これは日本の経済援助というのは軍事援助じゃないか、こういう認識を当然持ちますよ。これはいかがですか。
  66. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような趣旨で経済協力を行い、また、その効果といたしまして、この高速道路が韓国で必要とされております輸送力の増強とか、その沿道におきます地域開発等を通ずる民生の安定に貢献しているということは、これは間違いがないことではないかと考えているわけでございます。
  67. 野田哲

    ○野田哲君 いや、平生は高速道路として使われているんだけれども、あのヂームスピリット78で高速道路が軍用滑走路に使われたということは、これは道路であると同時に、日本がいわゆる軍事用の滑走路の構築に手をかした、軍事援助という性格を持ってくるんじゃないですか、そういう認識を持ちませんか。
  68. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) たまたまこの高速道路が今回の演習で使用されたということが、どれだけの軍事的意味があるかということにつきましては、私防衛問題、専門じゃございませんのでよくわからないのでございますが、いずれにいたしましても、本件の実態につきましては韓国側とも協議をしてみたいと考えております。
  69. 野田哲

    ○野田哲君 これは伊藤防衛局長に伺いますが、外務省はいま、たまたま高速道路が滑走路に使われた、こう言われたんですが、普通の高速道路の構造は、これはたまたま滑走路には使えませんよ、フェンスの構造とか中央分離帯の構造とか、あるいは高速道路の路面の傾斜の状態とか、そういう問題からしてたまたまは使えませんよ、これは。初めから計画的につくられたものでないと滑走路には使えないんじゃないですか、いかがですか。
  70. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは私どもも具体的にどこそこということは調査しておりませんけれども、一般的に申しますと、いわゆる高速道路の建設あるいは一般の道路の建設にいたしましても、それぞれの国というのは、やはり国の安全保障という観点からの考慮というものも当然払われているというふうに私どもは理解しております。したがいまして、これは私の記憶に間違いなければ、たとえばドイツのアウトバーン、こういったのはもう滑走路に使うというようなことも前提考えているようでございます。で、韓国のあの高速道路の中におきましても、数カ所につきましては、有事の際に飛行機が離発着できるようないわゆる直線コースというものもあるということは承知しておりますが、特に韓国だけの特異な現象ではないというふうに考えておりまして、むしろ各国とも積極的にそういったものは利用するという方向で検討しているというふうに理解いたしております。
  71. 野田哲

    ○野田哲君 これは設計の上からいって、初めから想定していなければこれは使えないんです。で、これは金丸長官ね、自国の経済力で自前でつくったものだったら、私がここで何も言う必要はないのです。日本からの経済援助がそういう形で使われているから私は指摘をしているので、そういうあり方がいいのかどうか、一遍これは政府として検討の上、しかるべきところで政府としての統一見解を明らかにしてもらいたい、こういうふうに思います。
  72. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) その問題については、武器輸出三原則というようなものがある。そういう精神から言うと野田委員のおっしゃるような点があると思いますし、またいま伊藤防衛局長の言ったような考え方もある。私はその所管でないですから、私がああだこうだ言うと将来問題が起きると思います。その筋とよく相談して、また考え方を申し上げることにいたします。
  73. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、休憩いたします。    午後零時二分休憩      ―――――・―――――    午後一時六分開会
  74. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国の防衛に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  75. 野田哲

    ○野田哲君 チームスピリットの問題で伺いたいと思いますが、まず外務省アメリカ局。  日本の基地からチームスピリットに参加をするために出動した米軍部隊名、それからその規模、基地名、これを説明してもらいたいと思います。
  76. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お答え申し上げます。  この演習に参加いたしました日本に関連する部隊規模といたしましては、まずアメリカの海兵隊が、第三海兵師団一個水陸両用戦上陸部隊、沖繩におるものでございます。それから第一海兵航空団所属の航空機、これは岩国と沖繩におるものでございます。人員の合計が約四千名ということでございます。  それから、アメリカの海軍の関係、第七艦隊の関係でございますが、一個空母任務群、それから両用戦部隊及び支援部隊、合計人員が約八千五百名ということでございます。  それから、アメリカの空軍の関係でございますが、これは第一八戦術戦闘航空団所属の飛行隊の一部、沖繩にあるもの、これが人員の合計が約千五百名ということでございます。
  77. 野田哲

    ○野田哲君 海軍の場合は、これは横須賀ですか。
  78. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ミッドウェーその他、横浜から出ていきましたものが主たるものであるというふうに理解いたしております。
  79. 野田哲

    ○野田哲君 横浜ですか。
  80. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 失礼いたしました。横須賀でございます。
  81. 野田哲

    ○野田哲君 本土から参加をする部隊で、日本の基地を経由した基地名と部隊名。
  82. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) オクラホマ州のフォートシルにおりますところの一個ランス大隊が、横田の基地を経由して現地に赴いたということがございます。これが主たるものでございます。
  83. 野田哲

    ○野田哲君 防衛庁に伺いますが、ランスというのは、これはもう言わずもがなのことですが、核の装備をしておりますね。
  84. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは核、非核両用になっておりますので、当然核弾頭を装備することができます。
  85. 野田哲

    ○野田哲君 いま、先ほど来の説明の部隊の移動、それから日本の基地を経由、これは当然実戦の場合で言えば事前協議の対象になりますね。
  86. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 実戦の場合というお尋ねでございますが、その実戦の場合に、これらの部隊わが国における施設区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用するということになれば、当然に事前協議の対象になります。
  87. 野田哲

    ○野田哲君 今度のこのチームスピリット78というのは実戦を想定して行われているわけですから、当然発進と、こういうことじゃないんですか。そうでしょう。
  88. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 実戦即戦闘作戦行動の発進ということには必ずしもならないであろうというふうに考えます。すなわち、従来から御説明申し上げておるとおり、これらの部隊日本の施設区域から特定の地域に移動して、そこで戦闘態勢に入るというような事態も当然に考えられるわけでありまして、そのような単なる移動は事前協議の対象にはならない。他方、それらの部隊が、まさに戦闘作戦行動を日本から発進させる、こういうことになれば、これは事前協議の対象になる。まさに、日本から当該作戦に実戦の場合に参加していくときのその行き方いかんによって、事前協議の対象になる場合もあればならない場合もあり得るということであろうと思います。
  89. 野田哲

    ○野田哲君 ちょっとそれは詭弁じゃないですか。今度のチームスピリット78というのは、韓国の全土と言ってもいい区域で展開をされているわけですよ。だから、当然日本から出ていくときが発進と、こういうことになるんじゃないですか、どうですか。
  90. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) この点につきましては、従来からもいろいろ御論議があったと思いますし、具体的な、たとえば板門店事件についてどうだとか、それから、マヤゲス号事件についてどうだったとか、いろいろな御論議があったと記憶いたしております。それらのときにもお話がございましたが、いずれにしろ日本にあるアメリカ部隊が特定の地域に入って待機態勢に入るとか、警戒態勢に入るとか、そこで戦闘状況に入って、そして新たな戦闘作戦行動の発進を待つというようなことはきわめてあり得ることでございまして、そのような場合には、これは事前協議に関する交換公文によりますところの戦闘作戦行動のための基地としての在日施設区域の使用ということには該当いたしませんので、これは事前協議の対象にはならないということを従来より申し上げている次第でございます。
  91. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、外務省は今回のこのチームスピリット78の場合、あれは事前協議の対象にはならないと、こういう解釈なんですか。
  92. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 今回のチームスピリットの場合は、いずれにしろこれは演習でございますから、実戦というような次元で考えられないことはまず当然でございますが、その上に、なおこのチームスピリット78への日本にあります米軍の参加の仕方がいかなる具体的態様であったか、個々の参加の仕方の態様につきましては、私どもとしては実は逐一把握しているわけではございません。したがいまして、それが実戦の場合であったらば戦闘作戦行動に該当した場合であるかどうかということにつきましては直接承知いたしておらないと、こういう状況でございます。
  93. 野田哲

    ○野田哲君 マヤゲス号のとき、これは私が直接やりとりをしたんだからよく記憶をしているんですけれども、あのマヤゲス号事件の問題の解釈にしても、これは非常に私ども事前協議条項の空洞化だ、こういう理解をしているんです。あなた方の方の説明では、一回途中でマヤゲス号事件の現場のすぐ近くにあるタイの基地に一遍おりたから、これは直接のあれではないんだ、こういうふうな説明をされているんです。朝鮮半島で、もしあのチームスピリット78、ああいう形の戦闘行動が行われたとするなれば、日本からのアメリカ部隊、これは経由するところはどこもないですよ。これは海域、空域、それから陸上部隊にしても、入ったところがいきなりもう戦闘行動という形になっているわけですよ、実態からすれば。これが、事前協議の対象になるかどうか個々のケースによって判断をしなければならないというようなことでは、これは事前協議条項なんて必要ないじゃないですか、全く無意味じゃないですか。どうなんですか、その点は。
  94. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま先生もお触れになりましたように、具体的な事態が、戦闘作戦行動を直接発進せしめる、日本における施設区域から直接発進せしめるということがあれば、これは当然に事前協議の対象になるわけでございます。そうでなければ、それはならない。それは事前協議の交換公文が、これも御承知のように「日本国から行なわれる戦闘作戦行動」条約第五条の場合を除く「のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」、それが事前協議の対象となる。「日本国から行なわれる戦闘作戦行動」ということでくくってあるわけでございまして、これに該当するものは当然に事前協議の対象にならなければならないわけでございますが、他方、その韓国におきますところの米軍の基地に移動して、そこで待機姿勢に入るというような事態があれば、これは日本国から戦闘作戦行動が直接発進せしめられているわけではございませんのでこの対象にはならない、こういうことを申し上げた次第でございます。
  95. 野田哲

    ○野田哲君 今度のチームスピリット78のような形が実際に行われたとすれば、韓国全土が戦時態勢に入っているわけですね、どこでどういう状態が起きるかわからない、こういう状態の中で、あなたの説明では、たとえば嘉手納から発進をしたアメリカ空軍が韓国の領域に入っていった、そうして弾を一発も撃たずに烏山の基地へ着陸をした、これは事前協議の対象ではない、こういう意味ですか、具体的な例を挙げて言えば。
  96. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま先生の表現されたような場合、すなわち、日本におきますところの施設区域から米軍の戦闘機が韓国における烏山の基地に移動していって、そうしてその後戦闘態勢に入ったということである場合には、これはいわゆる単なる移動ということでございますから、これは事前協議の対象にはならない。すなわち、日本国から戦闘作戦行動が発進せしめられているわけではないという意味におきまして事前協議の対象にならないわけでございます。ただ、他方、まさにいままで申し上げておりますように、日本から直接戦闘作戦行動を発進させるという、その戦闘作戦行動と申しますのは、直接戦闘を目的とした作戦行動ということで、いわゆる、俗に言いますところのパチパチと申しますか、本当に攻撃を加える行為でございます。そういうものをまさに日本から発進せしめるということであれば、これは当然に事前協議の対象になります。他方、先生のおっしゃられたような状況においては、それは移動と心得るべき事態であろうというふうに考えます。
  97. 野田哲

    ○野田哲君 嘉手納から、朝鮮半島の方へ向いて嘉手納にいる米空軍が発進をしたと、烏山へ移動するつもりで行ったところが、途中で敵と遭遇をした、そこで戦闘行為に入ったと、こういうときはどうなんですか。
  98. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いまおっしゃられたような事態は、日本の施設区域を出ていくときには移動として出ていったわけでございますが、それが途中において、まさに敵軍に遭遇して戦闘を交えたという事態でございまして、軍の特質として、攻撃を加えられればそのような反撃に出ることは、それは当然にあり得ることだとは思いますけれども、だからといって、そのもとになっている日本の施設区域の出方がさかのぼって戦闘作戦行動の発進ということにはならないという意味におきまして事前協議の対象にはならないと、こういうことでございます。
  99. 野田哲

    ○野田哲君 これは伊藤さんの方に聞きますけれども、チームスピリット78のような状態が実際に起こったとして、一々日本の基地から発進をする空軍が、あるいは海軍にしても海兵隊にしても、これは移動だ、これは直接戦闘行動に行くんだということが、一々区分けをし、チェックできるんですか、そんなことできないでしょう、実際の場面を考えた場合。どうですか。
  100. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) まあ軍事的な常識から言いますと、まず今度のチームスピリットで増加されました米軍部隊というものは、いわゆる戦略展開だと思います。戦略展開というのは、通常の場合だと、緊張状態になって紛争が起こるかもしれないというときにそれを防ぐというような意味の戦略展開というのがよく通常行われるわけでございまして、こういう場合には当然のことながら単なる移動だというふうに理解できると思います。  それからまた、外務省の方から四十七年に御答弁しておられますが、たとえば航空部隊による爆撃というのは、嘉手納を飛び立ってどこそこを爆撃してこいということで、そこに爆弾を落として嘉手納に帰ってくる、こういうのはまさに戦闘作戦行動だろうと思います。しかしながら、たとえばファントムのような比較的足の短い戦術戦闘機の場合には、嘉手納を立って、攻撃して帰ってくるという任務はなかなか果たし得ないと思います。したがいまして、まず韓国の最寄りの基地に移動いたしまして、そこで爆弾を搭載し、その戦術戦闘に参加するというのが通常の形態ではないかというふうに理解しているわけでございます。
  101. 野田哲

    ○野田哲君 ちょっと理解できないんですがね。  それじゃ形を変えて伺いますが、アメリカ空軍の演習のコードネームでコープダイヤモンド、コープサンダーというのがありますね。このコープダイヤモンドというのはどういう形態をとっているわけですか。
  102. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 直接のお答えにはならないかもしれませんけれども、現在航空自衛隊におきましては、米側と調整の上、米空軍機をターゲット、目標機として要撃訓練を行うことがございます。この訓練に対してわれわれ特別名称を付しているわけではございませんが、アメリカ側ではコープダイヤモンドという、訓練の際にそういった支援をするというようなことを聞いております。
  103. 野田哲

    ○野田哲君 これは夏目さんね、あなたずいぶんおとぼけだと思うんですよ。実際行われているコープダイヤモンドというのは、いま言われたように米軍機をターゲットにしている。このとおりですね。そのターゲットというのは、これは烏山、群山、韓国の空軍部隊がターゲットになっているわけでしょう。それで、これに対してこの沖繩の嘉手納、それから日本の航空自衛隊が那覇からそれぞれスクランブル発進をしている。そして、この沖繩の西北方の空域で演習をやっているわけですね、そうでしょう。
  104. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ただいま申し上げましたように、米軍機をターゲットとします訓練については、年間数回、五十二年度においても二回、最近におきましては今年の一月に沖繩近辺の空域において実施されておりますが、この訓練につきましては、在日米空軍と航空自衛隊とが調整をして実施しているものでございまして、その空軍機が韓国から来たかどうかということについてはわれわれ承知しておりません。
  105. 野田哲

    ○野田哲君 これはね、事実を確かめてみてもらえばはっきりしておるんです。このターゲットというのは韓国に駐留する米空軍が烏山、群山から飛んでるわけです。で、これは一緒にやっているわけでしょう。つまり、この嘉手納にいる部隊と、それから那覇の南西航空団、一緒にやっていますね。どうですか、その点。
  106. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 米側と一緒にという協同訓練の形とは全然別でございまして、わが航空自衛隊の要撃訓練に米側からターゲットの支援をしていただいているというのが実態でございまして、アメリカがその際どういうふうな訓練をし、あるいは演習をするかについては、われわれ全く関知しないところでございます。
  107. 野田哲

    ○野田哲君 これは事実をちゃんと調べてくださいよ。嘉手納の第一八戦術戦闘航空団、これと、それから南西航空団、これが一緒にやっている。これにはあれも出ていますよ、空中給油機も。で、このいまのそういう形で行われている、あなたの方では一緒にやっているかどうか知らないと言うんだけれども、一緒にやっているからこそアメリカのコードネームがついているんでしょう。コープダイヤモンド作戦というのは、そういう形で実施されているからコードネームがちゃんとつけられているわけです。いまの私の質問したような形で行われるこれが実戦の場合、これはどうなんですか、事前協議ということの解釈はどうなるんですか。
  108. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 御質問の趣旨を必ずしも十分に理解していないかもしれませんが、自衛隊の航空機が、わが国から出撃していくということが実戦の場合にどういうことであるかといえば、これは関係がないと思いますが。
  109. 野田哲

    ○野田哲君 違いますよ、それは。コープダイヤモンドというこのコードネームは、アメリカの第一八戦術戦闘航空団で使っているコードネームなんです。それに南西航空団も私は参加していると言うんです。だから、本隊の方は第一八戦術戦闘航空団なんです、本隊の方は。これが烏山、群山から飛来するターゲットに向かって嘉手納の基地を発進をしているわけですよ。これは事前協議の対象になるのかどうかと、こう聞いているわけです。   〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
  110. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいまのような場合に、その当該米軍機が日本を発進すること自身が戦闘作戦行動であったとしても、いまのような場合は、恐らく安保条約上第五条の事態として日本に対する攻撃が行われておる事態ということになるんであろうと思われますので、第五条の事態はこの事前協議の対象から除外いたしております。そういう意味事前協議の対象にはならないということになるだろうと考えます。
  111. 野田哲

    ○野田哲君 そのまま空中給油を受けて、そして今度は基地の攻撃に行ったと、こういうふうに行動がエスカレートした場合にはどうなりますか。
  112. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ちょっと軍事的な面で説明申し上げたいと思いますが、防空作戦をやっておりまして、いま先生がそのまま給油を受けて攻撃に行ったらどうだというお話でございますけれども、防空作戦をやるときの武器、空対空のミサイルその他と、それから攻撃をするときのいわゆる空対地のミサイルあるいは爆弾、こういったものは一緒に装備していくということはございませんので、現実の問題としてはあり得ないというふうに私どもは軍事的には考えておるわけでございます。
  113. 野田哲

    ○野田哲君 このコープダイヤモンドという作戦には、南西航空団の管制サイトが協力をしておる。これは常時嘉手納の基地からの行動については協力しておると思うんですが、その点いかがですか。
  114. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) コープダイヤモンドという訓練は、先ほど来御説明いたしましているように、航空自衛隊と米軍とのまず協同訓練でないということを御認識いただきたいと思いますが、航空自衛隊が要撃訓練をする場合にレーダーサイトが要撃管制をするのは当然でございまして、その際米軍機の支援を受けるというのが、ただいま申し上げたターゲットサービスを受けるゆえんでございますが、その際米側の要望によりまして、何というか、誘導といいますか、ある特定の空域まで米軍機の依頼を受けまして誘導することはままございますが、そのコープダイヤモンドが全部そうであるとか、あるいは航空自衛隊のターゲットサービスを受ける演習すべてについて米軍機の要撃管制もやっているというものではございません。
  115. 野田哲

    ○野田哲君 夏目さんは、コープダイヤモンドというのはこれは協同訓練ではないと、こう言われたんですけれども、第一八戦術戦闘航空団のコードネームを使って、それへ日本の南西航空団が参加をしているということになれば、当然これは協同だと思うんです。私は、だからあなたの言うような認識は持たないんですが、いずれにしても、嘉手納におけるアメリカの第一八戦術戦闘航空団の行動には南西航空団の管制サイトが協力をしている、こういうことなんですね。
  116. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 米側からそういった支援を依頼された場合には誘導する場合があるということでございます。
  117. 野田哲

    ○野田哲君 今度のチームスピリット78、これには、先ほど説明があったように嘉手納のアメリカ戦術戦闘航空団が参加をしているわけです。このときはやはり同じように南西航空団の管制サイトが協力をしているんでしょう。
  118. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 今回のチームスピリット演習に関して、航空自衛隊が米側にそのような支援をしたということは聞いておりません。
  119. 野田哲

    ○野田哲君 これは嘉手納との間では、常時管制サイトが協力をするという取り決めがあるんじゃないですか、いかがですか。
  120. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 航空自衛隊が米軍機の目標支援を受けて訓練をいたしますというのは、通常航空自衛隊の訓練の場合にはT33であるとかいった飛行機を目標機として使用するわけでございますが、なかなか性能的にも十分満足し得ないと、それからファントム、104についても機数が少ないというふうなことがございまして、特に沖繩の南混団の所在部隊につきましては、米軍機の支援を受けることが技量の向上に非常に役立つということでそういった訓練を実施しておりますけれども、いま申し上げたように、特に南混団が、あるいはあそこのレーダーサイトが、米側と特別の何か話し合いがあるというふうには聞いておりません。もちろん、全般的な防空体制、領空侵犯の問題については日米間の協力関係があることは明らかでございますけれども、それ以外に特にそういった問題、関係があるというふうには聞いておりません。
  121. 野田哲

    ○野田哲君 今回のチームスピリット78、昨年の77から比較をいたしまして規模が一段と大きくなっている。特に午前中の質問伊藤さんは、まだ詳細なこの情報は得ていないと、こう言われたわけですけれども、私どもがいろいろ検討した中の特徴というのは、一つは軍事境界線のもうごく接近したところで行動が展開をされているということだし、特にその演習、つぶさに検討してみなければわからない面もありますけれども、明らかに、これは朝鮮民主主義人民共和国のある都市を攻撃をする、そういう想定の演習も行われているように私は思うわけです。それからもう一つは、やはりランスの部隊が参加をした。これは日本の平和にとっても、あのような形のものが実際朝鮮半島で行われるということは非常な重要な問題だと思うんです。そういう点から、この個々のケースについて事前協議の問題等を伺ったわけですけれども防衛庁の説明も外務省の説明も、これは私どもからすればきわめて問題を感じるわけです。結局あの状態で日本の基地を使用し、日本の基地を経由をしてああいう形の演習が行われていった。これは演習ですから、やはり非常に重要な意味を持っていると思うんですよ。あの形態を見ると、日本の場合には、朝鮮半島で問題が起こったときに日本の基地を使うこと、経由すること、日本の基地から発進をすること、すべてこれはオーケーだ、事前協議は必要なし、すべて総括的にもうオーケーだと、こういう想定のもとに行われているとしか私どもは思えないわけですが、この点はいかがですか。
  122. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) そのようなことはないというふうに考えております。いずれにしろ、演習でございますので、事前協議という問題を離れて、実戦的な立場からどういう訓練をするべきかという観点からこの計画が練られたものだろうと考えます。それは当然に事前協議がすべての場合にイエスであるということを前提としたものというふうには全く考えておらない。実態は先ほど来御説明申し上げておりますように、現実の場合に戦闘作戦行動の発進ということになれば、当然に事前協議の対象になる、そのような事態でなければ対象にはならないということであくまでも考えられているものというふうに信じております。
  123. 野田哲

    ○野田哲君 あなたはそういうふうにここではおっしゃるが、じゃ今度のチームスピリット78の場合、これは外務省へはアメリカ側からはどういう形の、事前に通告というか、コンタクトがあったわけですか。
  124. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) たしか二月の十五日だったかと思います。この合同演習の開始に先立ちまして、大使館側からは、今度の演習の一般的な規模、それは先ほど御説明申し上げましたような、日本と関連ある米軍部隊の参加の仕方、それから、その他の本土からの米軍の参加の規模、そういうものについて一般的な説明がございました。
  125. 野田哲

    ○野田哲君 外務省や防衛庁は、あの行動の展開を見て、この場合は事前協議を要する――これは実戦の場合を考えて実際にあのような戦闘行動がとられていった場合に、この場合は事前協議を要する、あるいはこれは要しないというような個々の検討をされたわけですか、それとも、全くこれは演習だからもうそのときはそのときだということで検討を一切してないと、こういうことなんですか。
  126. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほども触れたのでございますけれども、今度の演習の実行過程において、現実の軍隊の日本の施設区域の使用の仕方が具体的にどうであったかという点の詳細については、必ずしも十分にこれを承知し把握しているわけではないということでございます。
  127. 野田哲

    ○野田哲君 この実態を把握をしていないということでなくて、事前協議というのは事前なんだから、その行動の内容なり目的を聞いた上で、先ほど説明のあった日本の基地からの出動、それからランスの横田経由、こういうそれぞれのケースについて一切そういう検討はなさらなかったと、こういうことなんですか。
  128. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来申し上げておりますように、その実際の戦いの場合に、これは戦闘作戦行動の発進基地として日本を使うということであれば、これは事前協議にかけるべきことはアメリカ側の当然の義務でございます。それから、いまのランスのお話でございますが、ランスが現実に核を搭載してわが国に入ってくるということになれば、核の持ち込みとして当然に事前協議の対象でございます。そういう意味におきまして、実戦の場合にどうかという点になれば、これはいま申し上げたようなことで事態は明確であると思います。  で、問題は今回の場合に、その事前協議の問題とは離れて軍隊の演習ということで行われておるということで、これが事前協議との直接の絡みを特に具体的に検討するというような事態ではないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  129. 野田哲

    ○野田哲君 それでは、ランスの問題は当然事前協議の対象になるということですが、それ以外の海兵隊、それから岩国、沖繩からの空軍、それから横須賀からの海軍、それから一八戦術戦闘航空団、先ほど説明のあった日本の基地を使っての参加、これについてはそれぞれあれですか、事前協議の対象外というふうに考えておられるわけですか、実戦の場合、いかがですか。
  130. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 今回の事態につきまして、私一々先ほど来申し上げておるように、具体的な軍の移動の仕方を個々に具体的に掌握しているわけではないわけでございます。ただ、新聞その他の報道で一般的に理解いたしておるところによれば、このアメリカ部隊日本の施設から韓国におきますところの特定の基地なり、特定の地点に移動しておったというふうに考えるべき状況ではなかったろうかというふうに考えております。その限りにおきまして、これは単なる移動として事前協議の対象にはならないと、実戦の場合にもならない。ただ、それじゃ実戦の場合にすべてならないかということになれば、これはまさにその具体的な与件に応じて米軍側がいかなる対応をその際に行うかということいかんによるのでありまして、それを戦闘作戦行動の発進という形で日本の施設区域を使うという事態があれば、これは当然に事前協議をかけてこなければならない事態になると、こういうことでございます。
  131. 野田哲

    ○野田哲君 あなたそうおっしゃるがね、第七艦隊の場合は、横須賀をミッドウェーなどが出港して、海域はすべてこれは実戦の場合にはどこでどういう状態が起きるかわからない状態でしょう。たまたま空軍の場合で言えば嘉手納から出て烏山に着陸する場合もあるいはあるかもわからない。それにしたって、韓国全土が戦争状態に入っているときは、これは当然単なる移動というふうなことにはならないはずなんです。そういう意味からいえば、私どもは、これは全部あの演習が実際の戦闘であった場合には、戦争であった場合には、すべてこれは事前協議の対象にすべきじゃないかと思うんですが、外務省や防衛庁は、全くあれはあれでいいんだ、対象にならないんだ、そういう判断なんですか。
  132. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) たびたび同じことを繰り返すようで恐縮でございますけれども、私どもは、いまあれに類似の事態が生じたときにすべて事前協議の対象でなくてよろしいということを考えているわけでは全くないわけでございます。まさにそのときの具体的な与件に応じて米軍側がいかなる対応の仕方をするかということいかんにかかわるのであって、それがその戦闘作戦行動の発進基地としての使い方をするという事態があれば、当然事前協議にかけてこなければならないというふうに考えているわけでございます。
  133. 野田哲

    ○野田哲君 あなた方の方がそういうふうに言われるから、安保条約そのものに対しても今日多くの国民が不信感、疑惑の念を持っているんですが、この問題はまたの機会に譲って次の問題に入ります。  午前中にも議論になった有事立法の問題について伺いますが、この前の予算委員会で、私の質問に対して総理並びに防衛庁の答弁によって、政府の部内で有事立法について具体的な準備が進められている、このことが明らかになったわけですが、今度のこの地震の法案にもそれらしきものが出ていると私は思うんですよ、地震の法案にも。これはまた後で直接議論する機会があると思うんですが、法制局に伺いますけれども、現行憲法のもとで一体有事立法というものが可能なのか、どうなのか、どういう形態のことならば可能なのか、その点をまず法制局から伺っておきたいと思います。
  134. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  現行憲法下における有事立法のあり方につきまして、一般論として申し上げますと、わが国が外国から侵略を受けたというような非常緊急な事態に対応いたしますための法制といたしましては、あくまでも憲法に規定しておりますところの公共の福祉を確保する必要上の合理的な範囲内におきまして、法律で国民の権利を制限したり、特定の義務を課したり、また場合によりましては個々の臨機の措置を具体的な授権のもとで行政府にゆだねるという形が考えられると思います。現に、自衛隊法におきましても、百三条以下におきまして、防衛出動の場合その他の場合につきましてもろもろの規定が置かれておるわけでございますが、この規定が果たしてこれで十分かどうかという点につきましては、ただいま防衛庁の方で御勉強という意味でいろいろ検討をされておるというふうに私ども伺っております。
  135. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、あなたの方も有事立法は現行憲法のもとで可能だという判断を持っておられるわけですか。
  136. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 先生の御質問の有事立法というものはどういうものだということは、実は必ずしも私はっきり承知しておりませんけれども、いわゆるわが国が他国から急迫不正の侵害を受けたというような場合に、わが国の平和と独立あるいは国民の生命、財産の安全というようなものを守るという点から、いわゆる防衛の点からどういうような措置を講ずべきであるかということは、これは法制面を含めまして検討することは当然でございますし、また必要に応じましていろいろ整備をするということもまた必要であろうかと思いまして、これは決して憲法に違反するとかなんとかという問題ではないというふうに考えております。
  137. 野田哲

    ○野田哲君 検討はそれはいいんでしょうが、法制上の問題としてどうかという点なんです。  じゃ具体的に防衛庁の方に伺いますけれども、どういう手順を踏めば可能と考えているのかという点について伺いたいと思うんです。いろいろ外国の例を防衛庁の方では検討されているようですね、たとえばドイツの例とかベルギーの例とか、何かベルギーの場合を非常に参考にされているんじゃないかというふうな情報を私は得ているんです。つまり、午前中の堀江さんの見解と私の見解全く違うんです。日本防衛庁が有事立法の検討に当だってベルギーを非常に参考にしている。それは、ベルギーの憲法には憲法上有事条項はない、そういう中でかつて有事立法を制定をしたと。これを非常に参考にしているというふうに聞いているんですが、手順としてはどうなんですか。たとえば一般的に行われているのは、あらかじめ憲法の中に一項を設けて非常の場合に超憲法的な権限を総理あるいは大統領に与えておく、そして、それによって憲法並びに諸法律の例外的な措置をとる権限を持つと、こういう制定の仕方が外国で例としてあると思うんですね。それからもう一つは、個々の必要な法律の改正をやっていくという例、今度の地震の法律はまさにその一つの私は道を開こうとしているんじゃないかと思うんですけれども、何か聞くところによると、防衛庁部内では、今度の成田とかあるいは大規模地震の法律をつくるに当たって、これこそ有事立法の絶好のチャンスだというような議論があるやに伺っておるんですが、そういう機会をとらえて逐次現行法の必要な改正を行っていく、あるいは新しい憲法解釈をとって合法化していくと、こういうやり方がある。それから三つ目には、緊急事態ということに名をかりて、法手続を経ないで実際の行動を起こしていって、事後でそれを議会等の手続で承認を受けるというやり方。これは私が昨年の予算委員会で内閣調査室の資料によって質問を行ったところでありますが、あの中に、国家緊急権の発動ということで、あの内調の資料はまさに法律の手続を経ないで非常のときにはすべてのことを総理がやり、あるいは自衛隊が出動してやる、それで、後でよかったか悪かったかは国民の審判を受け国会の承認を得る、こういうやり方が手順として書かれているわけですけれども、そういう幾つかのケースがあると思うんですが、その中のどれを防衛庁としては立法の場合には考えておられるわけですか。
  138. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 前にも先生にお答えしましたように、去年の八月に三原長官から、防衛庁においても有事立法の勉強をしておけという御指示を受けましたのですが、その際に、いわゆる防衛庁として勉強しておけと同時に、もう一つは、現行憲法の範囲内でどういう法律が必要かどうかということについて勉強しておけという二つの指示があっておるわけです。われわれも当然現行憲法の範囲内でいかなる立法措置が有事の場合に要るんであろうかということで内局中心になっていま勉強しておるわけでございます。  御承知のとおり、この有事というときには、恐らく国民の最大の基本的人権である命というもの、生命というものが危機に陥るときだろうというような点で、憲法十三条から見ましても必要な立法措置があるいはできるんじゃなかろうかというようなことも勉強しておりますし、一方では十一条で、国民の基本的人権というのは絶対これを侵してはならないということもございます。いずれにしましても、現憲法体制内のもとにおいてのわれわれは勉強を続けるべきだと、このように考えておりますので、現憲法改正で何か新たな有事立法の根拠法規を設けるというようなことは毛頭考えておりません。それで、現行憲法の範囲内でいかなる有事立法ができ得るかという勉強を現在続けておるわけでございます。  で、内局の官房は法制担当でございますから内局の官房が中心になっておりまして、現在法制担当の部局と、それから各幕の法制担当部局が勉強中でございまして、それぞれの項目をいま拾い上げております。私まだ詳しくは聞いておる段階でございませんので、ベルギーのそれを勉強しておるかどうかということはまだ私聞いておりません。今後の報告にまちたいと思います。  それから法手続、当然これは憲法の範囲内におきましての関係省庁いろいろ法律もありますし、その法律の改正ということもあるいはあるのかもしれませんし、あるいは別個の法律が必要になるのかもしれませんが、当然、立法措置で立法手続をとるわけでございますから、将来必要となりますならばこれを関係省庁と連絡しまして、そして法制局等を挙げそういう立法手続をして当然国会にかけて審議をして通すべき問題である。法的手続はそうなろうと思いますが、現在まだ勉強中でございますからそういう立法手続をいまとる考えは持っておりません。  それから、ついでに触れられましたけれども、今回、大規模地震対策特別措置法案というものが国土庁中心でいま考えられて案ができておるわけでございますが、われわれとしましては、現在、自衛隊法で「災害派遣」という条項がございまして、都道府県知事の要請があって防衛庁長官が必要と認めるならばその部隊を派遣することができる。それでもういけるんじゃないかとわれわれは思っておったわけです、大地震も同じ災害だから。ただし、自衛隊法では、これは「災害に際し、」という言葉になっておりますので、これは法制局等と詰めましたら、「災害に際し、」というのは、やはり災害がもう起こった場合、あるいはもう本当に起こる直前というようにしか読めないわけなんです。今度の大規模地震の場合には、いわゆるあれは気象庁の長官から通知をしまして、間もなく起こるであろうという、地震が起こるかもしれないという一種の警戒段階なんですね、その警戒段階であっても、この場合には必要な措置を、地震警戒対策本部というものを設けて内閣総理大臣が長となってやるわけですけれども、そういう際の直前の前であっても、警戒の段階であっても、大規模地震の場合には、やはり自衛隊は当然国民の命を守るために現法律と同じように災害派遣として出るべきではなかろうかということでございまして、これは自衛隊法では書き切れませんので、今度の大規模地震対策特別措置法の法案の附則に、現在の自衛隊法の災害派遣と同じような言葉を入れただけのことでございます。
  139. 野田哲

    ○野田哲君 その地震の問題はまたの機会にやりますが、そうすると、あなた方が考えている有事立法というのは、現行憲法をあなた方流に、防衛庁流に解釈をして憲法はそのままでいいと、そしてその中で現行憲法のもとで必要な法律の改正を行っていく、こういうふうなことで準備をされているというふうな理解を持つわけですが、そこで伺いますが、そうすると、この前の官房長の予算委員会での答弁でも、検討項目については全部洗っているとか、拾っているとかいう言葉を使われたと思うのですが、大体そういうふうに、こういう法律の改正が必要だ、こういう法律の改正が必要だと、こういう項目は大体もう準備ができたと、こういうことなんですか。
  140. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) この前先生に御報告いたしましたとおり、大綱的には、有事の場合に最も大事なのは戦乱のちまたとなるわけでございますから、多くの国民の避難誘導等、これがいまのたとえば警職法あるいは災害救助法等々だけでできるのかどうか、こういった大きな項目も一つあろうと思います。あるいは、当然有事の場合でございますから、自衛隊の活動というものを相当優先しなきゃならぬというようなことで、現行の法令でどの程度のことができるのであろうか、足らないならばどういう法令が必要であろうか、それからさらに、自衛隊に対しまして恐らく国民協力してくれると思いますけれども、そういった国民協力につきましていまの法体系では不十分かどうかという、大体こういう三つの大きな項目を私の方から指示いたしまして、いま各幕でそれに対しましてどういう法律があるか、どういう法令のどういう不備があるか、そういうことをいま洗い出してくれておりますが、私まだ詳細には目を通しておりません、現在どの法律をどうするかということまではまだ聞いておりませんが、たとえば国民の避難誘導等の関係では、いまの道路交通法あるいは警職法だけでも相当いけるのじゃないかというような声もあるようでございますので、各種法令との関連はもうしばらく勉強さしていただきまして、いま項目を挙げて私が御説明をするような段階にまだ至っていないことをおわびしたいと思います。
  141. 野田哲

    ○野田哲君 私は非常に懸念を持つから、あなた方の考えをよく事前承知をしておきたいという立場で、個々にわたって何法のどこを、何条を変えるというところまで私はいま聞きませんが、まず一つ伺いますが、陸上の交通についてかなり規制をするという考え方があるのじゃないかと、つまり交通の禁止をやるとか、あるいは道路交通法あるいは道路運送法によらないで必要な車両を動かすとか、あるいは日本国有鉄道の輸送を、あなた方の方で必要な物資の輸送、人員の輸送に優先させるとか、そういう交通上のものは当然検討課題としてはあると理解していいわけですか。
  142. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 御指摘のとおり、この狭い国土で戦乱のちまたにということから言いますと、非常に交通問題が大きな問題になると思います。それは国民の避難誘導の見地から言いましても、あるいは自衛隊の活動を容易ならしめるためにも、道路交通というものは大きな問題があろうと思います。ただ、現在自衛隊の場合ですと、自衛隊の車両というのはこれ皆道路交通法上緊急自動車として現行法律でも優先権があるわけですから、これは別としまして、あるいは道路交通上の危険、交通の危険という観点から言いますならば、現在都道府県の公安委員会があらゆる規制権を持っておりますから、そういった意味での私は警察の協力で相当のものがいけるのではなかろうかという感じがいたします。しかし、あくまでも道路交通法は道路交通の安全あるいは交通渋滞という見地からのみ取り上げておりますので、果たしてこれだけで十分かどうかはさらに勉強してまいりたいと思いますが、多くの現在の法律で警察の協力ということが当然得られることと思いますので相当のことができるのじゃないか、もうしばらく勉強さしていただきたいと思います。  それから、国鉄の輸送の関係でございますけれども、現在の自衛隊法上でも、いわゆる戦乱の地域以外の地域でしたならば、輸送を業とする者に対します従事命令というのが都道府県知事から出るようになっております。これは国鉄に直ちに出るかどうか私自信ございません。しかし、現在の自衛隊法でも、平素から自衛隊と日本国有鉄道等の協力という規定が百一条にございますけれども、そういった意味で、もし有事になるならば当然、これは期待かもしれませんが、国鉄の方も相当の協力を得られるはずだと思います。それをさらに法的に担保しなければならないかどうかということはいましばらく勉強さしていただきたいと思います。
  143. 野田哲

    ○野田哲君 航空関係も対象に入っておりますか。たとえば民間航空の規制とか、あるいはいま民間航空で使っている飛行場の強制使用とか、あるいは航空管制の問題。現行の自衛隊法でも運用上の問題は前にちょっと触れられましたけれども、この分野にまで及ぶわけですか、いかがですか。
  144. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) いま先生が御指摘になりましたとおり、現在の自衛隊法百七条で航空法の適用除外がございまして、特に四項に、平時における自衛隊の航空に対します規制が有事の場合には相当自由に排除されるような規定が現行自衛隊法上ございます。これで相当部分いけると思いますけれども、もちろん民間航空機は、有事になったならば危なくて仕方がないわけですから飛ばないと思いますけれども、そういった点を運輸省の法令関係につきましてこれまた勉強中でございます。恐らく運輸当局あるいは民航も自発的な協力が有事のときには当然あると思いますから、それをさらに法令で強制的な担保が要るかどうか、現在の自衛隊法のこれで相当いけると思いますのでそれ以上の必要性があるかどうか、いましばらく勉強さしていただきたいと思います。しかし、いずれにしましても重要な問題だと思います。
  145. 野田哲

    ○野田哲君 大体竹岡さん、この前の予算委員会では大体検討項目のあれは全部終わっておると、洗い直しは終わっていると、こういうことで、私がいろいろこの問題に関心を持っているところではもう大体全部できておると、部内では、というふうに聞いているので、もうちょっと具体的に答えてもらいたいと思うのですが、海の場合はどうですか、航路の規制あるいは港湾の強制使用とか、海の場合はいかがですか。
  146. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) これは海上保安庁法によりまして、現在の海上保安庁法で海上保安官、あるいは有事の場合に自衛官がその一部の権限を行使できますけれども、これはいずれも海の航路の安全のための強制措置なんですね、海の航路の安全のためには船の運航もとめることができますし、現在の海上保安庁法で。そういうものの準用で、先ほどの警職法なり道路交通法と同じように相当の部分が私はでき得ると思いますけれども、これもさらに勉強さしていただきたいと思います。えらい手ぬるいしように思われるかもしれませんけれども、官房長のところではそこまでまだ全部上がってきておりませんので責任持った答えはできませんが、大局的にはいま申し上げたような現行法令でも相当部分ができると、このように考えております。
  147. 野田哲

    ○野田哲君 陸海空に及ぶということですが、今度の地震の場合でも、私有物件の私権の制限が行われているわけですが、土地、建物の強制使用、それから公的な土地、建物、これを転用する、強制使用する、こういう検討課題もあるんじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
  148. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 現在の災害救助法と同じような条文でございますけれども、現在の自衛隊法の百三条で、御承知だと思いますが、いわゆる防衛出動いたしました場合に、これは都道府県知事が防衛庁長官の要請に基づいて行うわけでございますけれども、「土地、家屋若しくは物資を使用し、」あるいは「病院、診療所その他政令で定める施設を管理し、」というようなことで、土地、建物の管理、あるいはこれを使用することは、現行法令、この自衛隊法で有事の場合にできるような条文がございますので、これで相当やはり私はでき得ると思います。これでなおかつ足るか足らぬかは、先ほど申しましたようにもうしばらく勉強さしていただきたいた思います。
  149. 野田哲

    ○野田哲君 物資の徴発は――徴発という言葉は少しどうかと思いますが、物資の徴用と言っておきましょうか、物資の徴用というのは現行でどうなんですか、これもやはり検討課題の中に入っているわけですか。
  150. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) これも現在の自衛隊法百三条で、いわゆる防衛出動出ました場合には、「物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ、又はこれらの物資を収用することができる。」ということがございますので、大半の物資の収用は相当この法律でもでき得ると思います。ただし、これは災害救助法と同じようでございまして、こういう場合には後の損失補償、そういったものは当然同じ法律の三項によりましてやらなきゃならぬという規定もございますけれども、物資の収用その他はこの現行百三条で相当部分はできると思います。
  151. 野田哲

    ○野田哲君 電波の問題はどうですか。
  152. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 現在の自衛隊法百十二条で、これは必ずしも有事に限っておりません。現在の平時においてもそうでございますけれども、「電波法第百四条の規定にかかわらず、」云々ということで「自衛隊がそのレーダー及び移動体の無線設備を使用する場合については、適用しない。」という一部の適用除外例がございます。これをさらに有事のときにもつと必要なものがあるかどうか、この百十二条におきます電波法の適用除外だけでは足らないかどうか、これもしばらく勉強さしていただきたいと思います。
  153. 野田哲

    ○野田哲君 民間人の強制徴用、この点はどうですか。
  154. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) いままでたびたび政府が答えておりますとおり、いわゆるその徴兵制度というのは、これはもう憲法に反するということで当然われわれは考える段階ではございません。一般の徴用ということも、これはやはりいまの憲法制度からいかがなものか、われわれ考える段階のものではないと思います。ただし、一部、現在の自衛隊法でも、有事の場合にいわゆる危険区域以外のその他の区域でございますが、その場合に内閣総理大臣が告示して定めた地域内に限りまして、都道府県知事が医療、土木建築工事または輸送を業とする者に対して、その同じ業務についての従事することを命ずることができるという、いわゆる特定業種に対する従事命令というのがあります。医療なり土木なり、こういうものは有事のときですから大いに手伝えと、ただし、危険なところへ行くと危ないから、こちらの後方において必要なものは従事命令を都道府県知事が出す、ということは現行法でございます。しかし、一般的に国民の徴用とか徴兵ということは、いま現在われわれの勉強の範囲内では前提にしておりません。
  155. 野田哲

    ○野田哲君 徴兵制度は考えていないということですが、労務者として徴用する、そういうことは想定しておられますか。
  156. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 労務者が自発的に協力してくれることは別としまして、当然のことだと思いますが、いま私らの考えでは、先ほどありました業務従事命令、この範囲を広げることがあるのかどうか、これも現在勉強中でございますが、いまのところ、そういう憲法に触れるかどうかという基本的な問題になりそうでございますので、よく勉強させていただきたいと思います。
  157. 野田哲

    ○野田哲君 いろいろ伺ったわけですが、ほぼアウトラインとしてあなた方が考えている問題がわかったわけですが、実際問題として、そういうあなた方がいま検討をされておるようなことが法制化されるということになると、これは国民の権利をほとんどすべての面にわたって掌握をするというか、規制をする、こういうことになるし、今日の社会機構、経済機構にもかなりの制約を行うということになる。言うならば、これはまさに防衛庁長官は大変な権限を持つことになるんですが、いまいろいろ検討していると、私の質問に、各項目にわたって、抽象的であるけれども検討課題として答えられたわけですが、そういう法的な措置が必要と考えておられるんですかどうなんですか。そしてまた、これが現行憲法下で可能だと、こういうふうに考えておられるんですか。これは防衛庁長官、まあ竹岡官房長が答えられてもいいですが、総括的に言えば防衛庁長官からお答えいただきたいと思います。
  158. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) たとえ話でございますが、一軒の家屋の中に子供が一人おる、その家屋の中が火炎もうもうとして、その家が焼ける、その家の中へお母さんが飛び込んでいく。飛び込んでいくということは勇気の要ることであり、あるいは死ぬかもしらぬ、それをお母さんは飛び込んでその子供を抱いて飛び出してくる。まさに子供の防衛だと私は思うわけであります。一朝有事の際、民族が滅びるか滅びないかというときを考えてみれば、そんな悠長なことを言っておることはできないと私は思うわけであります。これは自民党であろうと社会党であろうと何党であろうと、当然お互いが民族、わが家の子孫を守るためにもこれは考えなくちゃならぬ問題であろう。まあいま平和なときですから有事立法がどうだというようなことで、こちらの方も静かに検討していますなんていう答弁をいたしておりますが、いまだからそんなことを言っていられるけれども、有事のときにそんなことが言っていられるのか、あるいは徴用されるのかされぬのか。みんながこぞってこの国を守らなくては民族を守っていけぬというような考え方を私はすべての人が持つんじゃないか、ここに大きな期待を持っています。
  159. 野田哲

    ○野田哲君 まあ長官は火事場のばか力のような話をされたわけですが、火事場のばか力のような形でやられちゃ困るんですよ。  それでもう一つ、竹岡官房長は午前中の堀江さんの質問の中で、一日か二日あればこれはやってもらえるんじゃないかというようなことを言われたけれども、まあそんな簡単なものでないですよ、これは。私どもは、これは正常な状態じゃないと思うんです、こういう形が法律として出てくるということは。私は私なりにいろいろ情報、資料を集めておりますが、あなた方の方では、これを制定するときには衆議院、参議院ということでやっておると手間がかかるから、参議院の緊急集会というような形で処理をしようというようなことも検討されているというふうな情報もあるんですが、そんなきんちゃく切りのような方法を考えておられるんですか。
  160. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) もちろんこれは、もしそういった有事立法ある程度必要だということになりますと、これは当然法律でございますし、議会制民主主義のもとにおきまして国会の十分の審議を経なきゃならぬことは当然でございます。あたりまえのことでございます。と同時に、これを本当につくろうと思いますと各省庁との非常な折衝も要りますし、十分政府全体で詰めていかなきゃならぬ問題だと思います。できますなら、余裕がありますならば十分の余裕を持ってやっていくべきだと思います。しかし、先ほど言いましたように、まだわれわれは勉強しておる段階でございます。また勉強しておけという長官の指示もあります。また現在のこういう社会情勢におきまして、いたずらに危機感をあおる必要もないというようなことで、立法準備作業までいかない勉強を続けております。先ほど、午前中に言いました、もし仮に急迫不正な侵害がぱっと起こったというような場合には、恐らく、先ほど長官が言われましたように、国民の皆さんもこれ何とかせいと言われる、叱咤激励されるようなことになるんではなかろうかという期待感と、ちょっと口が滑りましたけれども、恐らく国民の皆さん、国会の先生方も、国会審議に当たりましてはいろんな面で御審議をやっていただけると、大方のまた御協力を得なければ私は自衛体制日本の国というのは守れないと思っておりますが、そういう自分の個人的な期待からちょっと口が滑りましたけれども、急にそう差し迫ったような事態が起こった場合には非常に急いでやらなきゃならぬということも考えますが、そうでない限りはやはりゆっくり時間をかけて各省庁の審議も十分経まして、もちろん国会の十分な審議を経なきゃならぬことはもう当然でございます。
  161. 野田哲

    ○野田哲君 終わります。
  162. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカ局長、きょう一部の新聞、また昼のテレビあたりで報道、放映されておりましたけれども防衛施設費に関する外務省見解なんというのはあるんですか。
  163. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 本日の読売新聞に出ておりました記事のことと了解いたしますが、この書類は昭和四十八年当時でございますけれども、大平答弁なるものがなされた前後におきますところの国会におきまして行われましたようないろいろの御論議を整理して、執務の参考用に当時つくったものがこれに該当するものではないかというふうに理解いたしております。別にいまの時点で新しく統一見解などをつくったと、そういうようなことではございません。
  164. 黒柳明

    ○黒柳明君 当時つくったものが、いま何らかの形で活字になった、テレビに報道された。だけどこの内容についてはどうなんですか、内容についてはこのとおりなんですか。
  165. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) まことに申しわけないんでございますけれども、内容につきまして、けさのことでございまして私自身まだ十分に読んでおりません。当時の執務の参考用として、課の単位で何らか内部的な文書をつくったものがある、それがいまの御指摘の文書であるというふうに理解いたしております。
  166. 黒柳明

    ○黒柳明君 端的に言えば、もう勉強しなくても、読まなくても、大体感触でおわかりのように、四十八年当時の大平外務大臣のいわゆる米軍施設の代替は新しいものはつくらないと、こういう見解を外しているんじゃなかろうかと、こういうことなんですがね。読んでなければお教えいたしますけれども、こういうことは考えているんですか、当時考えて、いまもその考えを持っているんですか。
  167. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 新聞の記事、私急いで拝見いたしました印象でございますけれども、あそこに出ております書類そのものも、大平答弁の範囲を特に拡張するとか、広げるとかいうようなことで行われたということではなくて、大平答弁が行われたときの論議を、こういうことがあり得るのじゃないか、こういうことがあり得るのじゃないかということで整理したものだというふうに理解いたしております。いま何か、大平答弁を覆して何か新しいことをというようなコンテントでのお尋ねであれば、そのようなものとは理解いたしておらないわけでございます。
  168. 黒柳明

    ○黒柳明君 当時何らかの形で意見をまとめたと、それをいま現在、つまり四月四日にあのラビング在日米軍司令官からありましたですな、要請、それに時期を符合しているわけですよ、きょうの報道がですね。それとは全く関係ないと。それからもう一つは、大平答弁というものの枠は超える考え持ってないと、こういう理解でいいんですか。
  169. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 防衛施設庁の方に、具体的に在日米軍司令官がいかなるお話がありましたか、必ずしも私は詳細につかんでおりませんが、当時の新聞にありましたような記事のようなことではなかったというふうなお話を承っております。したがいまして、具体的にいまこの問題が出てきておるということではないというふうに理解しておりますのが一点でございます。  それから、いま申し上げましたように、きょうの新聞に載りましたのは、当時の国会の論議を整理したものということで、その詳細につきましていまこれを検討して、いまもこのとおりであるとかないとかいうことを申し上げるような状況では実はないということ、これが第二点。  それから第三番目に、じゃ大平答弁はどうだと、こういうお尋ねでございますが、大平答弁につきましては、これは運用上の問題としてこれをいままでも変えておりませんし、変えるつもりがないと、こういうことでございます。
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 施設庁長官、ラビングさんの四月四日の、活字では見たわけですけれども、しさいに――ちょうどアメリカ局長も知らないと言うんで、そんなにしさいと言ったって内容はないかと思いますが、若干どんなことだったのか、それに対してどのように対応するつもりか、そこらあたりをお聞かせいただけますか。
  171. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) お答えいたします。  ラビング司令官が防衛庁へ参りましたのは四月四日、これは事務次官のところへ表敬訪問ということで参ったわけでございます。ちょうど五日から事務次官が東南アジア等へ視察に出かけるということもございまして、そういうあいさつもあったかと思います。私陪席いたしまして話は聞いておったわけでございますけれども、話の内容はほとんど雑談のようなことでございまして、何かの申し入れとか、公式の話に来たというふうなものではございませんでした。時間も、通訳を入れまして、あいさつを含めて三十分ぐらいというふうなことでございましたので、新聞に書かれたような内容のある会談ではなかったというのが事実でございます。
  172. 黒柳明

    ○黒柳明君 内容がそんなになかったけれども、ああいうことはあったんですね、雑談の中に一言でも二言でも。申し入れであるかないか別にしましてね、それもなかったんですか。
  173. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 話は、私がおりましたものですから、施設庁にはいろいろお世話になっていますというふうなところから始まりまして、次官の視察の話、それから、今度東南アジアから中東の方へ参りまして、トルコへも参ります。それで、ラビング司令官はトルコに在勤しておりましたので、まあそんな話が主でございまして……
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、住宅等についての新設。
  175. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 住宅について、具体的に住宅問題が出たというふうには私承知しておりません。これは通訳を介して聞いておった範囲では、具体的に住宅の問題が出たということはないと思います。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、先日の四月五日のラビング司令官から住宅問題について要請があったというのは全く誤報であると、こういうことですね。一言もそんなことはなかった、あるいはそのほかの時点においてもそんなことはなかった、だから在日米軍基地から正式にそういう要請は全くないと、こういうことなんですか。
  177. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 私ども米側とはしょっちゅう接触がございますので、雑談の間に住宅が不足しておるというふうな話は時折出ます。しかしながら、公式にかつ具体的にどう足りないからどうしてくれというふうな話は現在の段階で一切ございません。それから、繰り返しますが、四日の段階でもそういう話は出ておりません。
  178. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官、なかなかその話というのは当事者から聞きませんと、私たちの知る範囲というのは非常に限られておるわけですけれども、まあ雑談の中で住宅が不足していると、こんな話があった、こういうことですけれども、それはああいうふうにラビングさんから要請があったかどうか、正確に私は知っておりません、そのときのこと。あったということはもうはっきり報道されておりますけれども、こういう要請が正式にあった場合ですね、どうですか、けさのあるいはお昼の報道もこれはちょっと誤りであるみたいですけれども、正式にもしそういう住宅関係で要請があった場合に、いま、この日米間の経済問題等を踏まえまして前向きにやっぱりこういう問題は検討すべきだと、地位協定というものを、拡大解釈になるかどうかは別にしましても、やっぱり日米間の協力関係というものはそういうふうなところまで踏み切って援助すべきだと、こう考えていましょうか。ああいう報道がありますもので、あるいは雑談的に出ていると、こういうふうな長官のあれもありましたので、防衛庁長官としてはその点どうお思いになっていますか。
  179. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 実は私は、けさ読売新聞に出ておるのも見まして、またきょう閣議後の記者会見もいたしたわけでありますが、この問題について私は、前に六十一億ですか、雇用者、米軍に働いている人たちの福祉の問題であるからこれを肩がわりすべきだという考え方でことしの予算の中に盛られておるわけであります。そういうことから言えば、日米関係というものは不可欠だ、むしろ私はF15を一台でも二台でも外しても、この関係だけはちゃんと手がつながる、パイプがいつでも通るような姿にしておかなければ、日本一国で日本の安全はできないと、そういう意味で、ドイツがアメリカを人質にしておるというような話を聞いてみれば、日本も、あれはだめだこれはだめだと言っておっていいのかというような私は感じがいたしておるわけであります。そういう意味で、できるだけのことは、許される範囲のことは考えるべきじゃないか、こういう私は個人の考え方を持っておることをお伝えいたします。
  180. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、いまの六十一億の問題、これはやがてこちらで審議されるかと思いますけれども、これも地位協定の拡大解釈ではなかろうかという一部の意見がある、これは間違いないわけでありまして、さらに、真偽のほどは別にしまして、これだけ詳しい報道が当時検討されて報道されているわけですから、こういう考えがあったんだと私は思います。それがいまその延長線にないということで、はっきり聞きましたけれども、そうすると、いまおっしゃったことは、確かに日米間の関係というものは私どももやっぱりより親密にならなければならないと、こう思います。しかしF一機あるいは減らしてもこういう関係はと言うのは、この住宅方面、厚生施設関係だと思いますね。そうすると、それもやっぱり地位協定の問題と絡むわけですね、当然。長官ですからこんなことは言うまでもありません。そうすると、また地位協定の拡大解釈じゃないか、きょうの報道もそういう論点だったわけですね。それについては、やっぱり相当地位協定というものは、ただ単にアメリカに援助するために拡大解釈するんじゃなくて、もっともっとやっぱり拡大解釈しなければならない、やらなければならないものは基地内の事故の問題、これなんか向こうの権力、警察権力じゃなくて、こちらの警察もいち早く行ってやっぱり調査しなければならない。それについては外務大臣あたりはやれるんですとは言ってもなかなかそれに対して手を打たない。そういう地位協定の話し合いでできる問題すらやってないのに、地位協定でいままで守ってきたのが一遍にここで何か日本の負担が多くなるようなこともこれまた一つ疑問であろうかと、こう思うんですが、長官として、いま私個人としてなんてことをおっしゃいましたけれども、どこかの新聞では、その個人がたびたびちょっと行き過ぎているというおしかりを受けているところもありますので、いまおっしゃった個人としても個人として済まされないわけですが、厳重にやっぱり地位協定の拡大解釈――幾ら日米関係、ドル安円高だって、ただ一方的に援助するだけが日米間の友好親善を深めることに通じないと、こう思うんですが、まあひとつ防衛庁長官、そういう面に対しては全面的に協力するという発言ですけれども慎重に対処していただきたいと、こう思います。これ以上は、やると言うのですから私はもう野党ですから実際的な行政権力持っておりません。この点は結構です。  論点を変えますけれども防衛局長、ニクソン・ドクトリン、六九年からアジアからの米軍の縮小、これはもう既成事実でありますが、なかんずくカーター政権になって、なかんずく本年に入ってから、非常にブラウン長官を中心にしまして、アメリカ議会を中心にしまして、何かアジア離れが促進されたんではなかろうか。これは二月の国防報告ですね、向こうの。NATOに対しては全面的に勢力を展開する、具体的に出ていますね。それから、当然韓国からの地上軍の撤退、それに対しても具体的な形が演習ということで出ているんです。ないしマンスフィールド大使あたりもクレームつけていますな、先日の演説で。カーター外交に対して、日本はどうしたんだ、アジアはどうしたんだ、こういうこと。   〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕 当然いままで、タイからもいなくなり、台湾はわずか二千名、あるいはフィリピンも若干名、韓国と日本だけと、万といるのは。こういうことで、このアメリカアジア離れと、一応こう言われておりますけれども、完全にアジア離れの方向にこれから行くのかあるいは行かないのか、この分析と、もう一つは、要するにそれに対してどう日本の安全保障、防衛を中期的に対処していこうと、こうお考えなのか。
  181. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 国防白書、昨年あるいはことしにおきまして非常にヨーロッパを重視しておって、アジア離れをしていく、アジアを軽視しているんではないかというのが新聞の論調あたりで大分指摘されておりました。私どもも、韓国からの陸上勢力の撤退という問題が昨年発表されまして、その後アメリカ政府ともいろいろ接触いたしましたし、私自身、昨年三原長官のお供をいたしまして国防省あるいは国務省あるいは大統領府のブレジンスキー補佐官等とも話し合ってまいりました。そのときの印象では、確かにニクソン・ドクトリンといいますか、いわゆる自助の努力を重ねている国に対して公約を守るという基本線は出ているようでございます。で、韓国からの地上軍の撤退につきましても、七二年に一個師団を撤退いたしまして、その延長線上として、それが可能ならばやりたいという気持ちは持っているようでございます。そして、アメリカ政府判断といたしましては、韓国の国力の充実等に伴ってそういった時期が近づきつつあるという判断はあるようでございます。同時にまた、この前方展開といいますか、アジア戦略というものが基本的に変わってはいないんだということを再三強調しておりまして、この軍事力といたしましては、総合的な見地から、地上軍を撤退してもそれにかわり得る力というものをわれわれは確信しているということを言っておりました。なお、ヨーロッパの問題につきましては、現実の問題としてヨーロッパというのは西と東が対決しておりまして、それぞれのグループ兵力というものがかなり情報上はっきりわかっておりまして、そのウイークポイントというものもわかっております。そういったものは補強してまいりたいという気持ちを持っているようでございますが、国際情勢の分析の点からいたしますと、やはりこのアジアにつきましては、幾らかヨーロッパほどはっきりしていない。対立点というのが、三十八度線というのはきわめてはっきりしているわけでございますけれどもアメリカソ連、それに中国との関係がいろいろ入り乱れておりまして、ヨーロッパほどはっきりした軍事体制というものを把握できない状況であるということも事実のようでございます。しかしながら、アメリカが最も注目いたしておりますのは、極東にありますソ連軍の増強ぶりということでございます。特に海上兵力につきましては、過去十年間に飛躍的にふえておりまして、もう一つ重要な点は、沿岸警備の能力から、さらに外洋における行動を目指してる艦隊の整備というふうに進んでいるようでございます。特に七〇年代に入りましてから、オケアン演習その他におきまして、しばしば三海峡を通過いたしまして太平洋上におきまして演習を繰り返しております。ということは、いわゆるこの自由主義諸国の結びつきというものは海路によっているわけでございますから、そういうものに対して脅威を感じている。いわゆる自由主義諸国の紐帯といいますか、そういうものを脅かされる危険があるのではないかということで特に注目をいたしているわけでございます。しかしながら、繰り返し言っておりますのは、極東におきます日本というものの存在というものは、アメリカの国益にとってきわめて重要であるということをいずれの場合にも表明いたしておりまして、この日本の安全というものに対してはきわめて強い責任を持ち、日本の安全ということによってアメリカも繁栄するというような認識はきわめて強いというふうに私ども考えているわけでございます。
  182. 黒柳明

    ○黒柳明君 ソ連軍事力強化に対してアメリカが注目し、脅威と思っていると。ということは、やっぱり日米安保のもとにある日本もまあイコールの、注目し、脅威と思うかどうかは別にしても、そういう感じを持たざるを得ないということになるんでしょうか。
  183. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 日本軍事力アメリカが脅威を感じているということは、これは……
  184. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、アメリカソ連に対してというより、日本ソ連に……。
  185. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 日本ソ連にでございますか。それは、日本の場合には御承知のように周りが海に囲まれている国でございます。したがいまして、海上交通というものが日本の生存の上にはバイタルなものであるということから考えますと、やはり周辺諸国の中に、いわゆる自国の防衛と同時に非常に強大な海軍力を持つということは、潜在的な脅威というような形ではとらえざるを得ないというふうに考えております。
  186. 黒柳明

    ○黒柳明君 潜在的な脅威……。  防衛白書が七月ごろ出ると、これはもう例年そういうことですね、これまたマスコミに報道されていますね、先行して。その中で、対象潜水艦とか対象飛行機とか、こういう用語があると、まあこれは決定的なものじゃないと思います。草案の草案かと思いますけれども、しかし、あれだけ的確に報道されておりますので、考えてないことでもないと思うんですよ。さらに、ソ連のいまおっしゃったようないわゆる潜在的日本に対する脅威の実例は並んでいると。これを突き合わせると、もう非常にやっぱり日本防衛というものがソ連を仮想敵国化しているんじゃなかろうか。これまた申しわけない、報道によって私知ったんですけれどもね。その点、七月に出るにせよ草案はできている、これから丸山次官がどこかから帰ってきて意見調整すると、そういうことですけれども、そこらあたりはお考えはどうなんですか。
  187. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは、仮想敵国というのは私ども考えていないわけでございますが、わが国防衛考えますときには、周辺諸国の軍事能力というものは、当然わが国の安全の対象として軍事的には考えざるを得ないと思います。その中に、いわゆる世界の超軍事大国であるソ連というのが隣国にあるということもまた事実でございます。したがいまして、そういった点から、わが国防衛構想なりあるいは防衛力整備という点につきましては、いわゆる質の向上といいますか、そういった点に努力をしなければならないということはあると考えております。
  188. 黒柳明

    ○黒柳明君 もしわが国が地理的にソ連とこういうふうに近接していなくて、たとえばインドネシア、まあ例がいいかどうかわからないけれども、となると、F15やP3Cというのは持つ必要がないということも言えますか。これは仮定の仮定で、いまから大国主命が日本国を引っ張っていくわけにいかないんで、仮定の仮定で申しわけないんですが。
  189. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それはいま先生がおっしゃいましたようなことはあり得ると思います。といいますのは、仮に日本が南アメリカの中にあったような場合には、まあ陸続きというようなことがありますとまた別な構想があるかと思いますけれども、純粋に、ほかの周辺諸国が持っている装備、そういったものに対応する形の装備品ということになりますと、F15が要るのか、あるいはF5ぐらいでいいのか、そういった議論というのは当然あり得ると思います。
  190. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは先日も長官がソ連云々とここで言って、いまソ連から相当おしかりを受けていますですね。しかしながら、そういう皆さん方の考え方が、相当これからの日本の安全保障、防衛に影響することは間違いない。ひとつ十二分にやっぱり的確な分析と誤りがない指導をしないと大変なことになる可能性があると。私はここで云々する立場じゃないものですから、一応きょうのところは考えだけをお聞きしたいと思うんです。  それから、これまたアメリカが震源地ですけれども、もし日本に何か有事が起こるとヨーロッパの動乱が影響するかあるいは朝鮮半島かと、こういうふうなことですけれども、有事に対して防衛出動の待機命令、これは長官が持っていますね。自衛隊の一部または全部、自衛隊法七十七条。もしその朝鮮動乱みたいなことが起これば、やっぱり長官としては自衛隊に対して防衛出動の待機命令は出しますか。
  191. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これはやはりその起きたときの事態の様相によると思います。で、そのことが直ちに日本の直接侵略にかかわり合うというような危険のあるような場合には、これはやはり政治の判断というものが大事だと思いまして、それによりまして、大臣が判断し内閣総理大臣の承認を得ていわゆる待機命令を出すということもあり得るかと思いますけれども、朝鮮で紛争が起きたからすぐするかどうかというのは、やはりそのときの状況によって判断なさるべき問題だと思います。
  192. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは全く大臣が命令権者ですから、大臣が命令権を持っているわけ。情勢判断をしなきゃならない。有事になると、大臣はどこでそういう判断をし指揮をとられるんですか、有事に対して。また三軍の直接の指揮者である総理大臣は有事になったときどこで指揮をとるんですか。
  193. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 実はその問題につきまして、私どもは現在中央指揮所というものを設立したいということで準備を進めているわけでございます。で、中央指揮所の機能といたしましてはどういう機能を持っているかといいますと、まず、いま先生が御指摘になりましたような、情勢を的確にその責任者が把握できるような機能を持っているということ、それから、指揮官であります命令を出す長官、あるいは最高指揮官であります総理の意思が部隊に徹底して迅速に的確に伝えられるというこの二つの機能があると思います。私どもは、過去におきまして何回かこの中央指揮の問題というものを研究してまいりましたが、現在統幕の一室に情報を集めるという、現在持っております情報機能の延長として一カ所に集めるということまではいたしておりますけれども、これに対する指揮機能という面につきましては必ずしも十分じゃないと思っております。その場合に、実際に有事になって戦闘状態に入るということになりますと、もちろん総理のもとで、その総理がどこにおられると一番的確に情報を得、判断をし、そして指揮権を行使できるかという問題があるわけでございますけれども、現在のところでは、やはり総理官邸におられ、あるいは長官は防衛庁あるいは総理官邸に行ってというような形になろうかと思いますが、そういった点を含めまして、中央指揮所構想というものをいま検討し具体化しようとしているところでございます。
  194. 黒柳明

    ○黒柳明君 これはいつごろ完成して、その機能ですけれども、たとえば、私はアメリカへ行って、大統領の指揮へ三カ所に分かれて、空もありますね、一カ所。その防衛庁の中にできる予定の中央指揮所というのは、まさかアメリカみたいに、世界全体が戦略的に手にとるようにボタン一つで見えるということはいかないんでしょう。そうすると、少なくともあれですか、いまのこれから持つF15が四千キロの足があるから、その半径の行動範囲あたりカメラつければ見えるわけですな。そういう何かしら相当の広範囲でやっぱり目で見える、ただ単に情報を集めるだけじゃなくて、相当近代的なコンピューターを入れるというものもやっぱり想定できるんですか、しているんですか、それからそれはいつごろまでにそういうものを完備する予定なんですか。
  195. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 四千キロの範囲というのはとてもできないと思います。
  196. 黒柳明

    ○黒柳明君 その半分だから二千幾らだ。
  197. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) いま私どもが、防空の関係のレーダーというものの到達距離というのも二百マイルちょっとの程度でございます。したがいまして、そういった情報というのは入ると思います。しかし、現実にどこの部隊がどういう行動をしているかということを目に見えるような形ということになりますと、それはやはり、連絡によりましてボードの上に展示するという程度のことになろうかと思います。しかしながら、全体のいわゆる行動というものにつきましては、指揮官である総理あるいは大臣がこれを把握できるような体制はつくりたいというふうに考えているわけでございます。同時にまた、その場所といたしましては、やはりアメリカもそうでございますが、いわゆる抗たん性というものを考えますと、地上にあるよりは地下にそういった通信線を入れたものが必要ではないかと思っております。で、昨年来勉強いたしておりまして、具体的にこれの建設に着手し運用するのは、五十七年度からは運用したいというようなことで準備を進めているわけでございますが、とにかくこういったものは、一度つくっちゃいますとなかなか欠点が出ても修正するということはむずかしくなりますので、そういった点、いろいろ詳しく調べた上で必要な機能を持たせたいというふうに考えておるわけでございます。
  198. 黒柳明

    ○黒柳明君 五十七年、あと四年ですね、それについてまだ調査書の段階ですか、一千万ぐらいの、これからいろいろ論議が始まると思いますけれども。  先ほどにちょっとまた話は戻るんですけれどもヨーロッパに具体的な兵力の展開、それから韓国については具体的に動かして訓練やった。そうすると日本の場合ですけれども、これは核についての平和時の抑止力、これは日米安保、いわゆる核のかさにいるとか言われておりましたけど、大体世界的にこの考えは定着したんじゃないんでしょうか、核についての戦争というのは避けるべきだと。SALTIIが若干もたもたしておりますけれども、だから核についてはやっぱり抑止力であるんだと、これは日本安保の関係だけではないと思います。米ソのSALTII、この話し合いだけじゃないと思います。そうすると、いま何が問題にっているのかというと、いま言った国防白書のNATOの問題にせよ、あるいは韓国のチームスピリットにせよ、通常兵器において有事にどう対処するかと、こういうことが具体的にやっぱり論議され訓練の一環としてあらわれた。そうすると、日米安保というもの、本質的には皆さん方が変えようとしないから変わっていないと思いますよ。だけど、いまの局面を迎えまして、まあ皆さん方が日米安保を核安保と言ったかどうか、そう定義づけているかどうかわかりませんが、一応そういう形で核のかさにいる、こういうふうに言われてきたことは間違いないんですが、いまのアメリカの作戦、世界の態様を見ますと、やっぱり全体的に有事に対してどう対応するか、そうなると、当然日米安保の性格、皆さん方が規定している性格じゃなくて、アメリカがいま世界に展開している戦略、具体的に出しているそういう訓練を見ますと、日米安保というものも有事についてどのように対応するのか、またしてもらいたいのか、それがSDCで、防衛協力小委員会でやっているんじゃないかと思うのですが、その安保、質的変化というよりも、アメリカと世界の戦略対応から見て当然そう考えざるを得ないんじゃないか、安保条約というのは。核安保というよりも有事のときに対するお互いのというか、アメリカからの援助、そういう有事に対する通常戦力に対しての支援関係、こういう安保体制に変わりつつあるんではなかろうか、こういう感じが私するんですが、いかがでしょう。
  199. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) いま先生のおっしゃったとおりだと思います。で、安保体制ができましたのは独立して以降でございますが、御承知のように、日本が独立したときに日本におりました米軍というのは二十六万でございます。二十六万の米軍がいわゆる直接侵略あるいはまた間接侵略に対しても一つ能力として存在しておったわけでございます。その後自衛隊が発足いたしまして四次防まで防衛力整備努力をしてまいりました。その間に米軍日本から昭和三十一年以降去ってまいりまして、現在は四万数千人に減っているわけでございます。ということは、日米安保体制そのものも、すべての日本の安全に対してアメリカが責任を負っていた時代から、やはり日本の自助の努力に応じてのいわゆる共同対処というものが必要になってきているわけでございます。しこうして、この日米安保体制、これはアメリカの戦略体制というふうに先生先ほどおっしゃいましたが、その最大の目標というのは紛争を起こさせないということだろうと思います。そういった意味におきまして、日米安保体制が果たしてきた機能というものは当然あるわけでございますが、同時に、そのことは有事の際にそれが十分に機能するという保証がなければならないわけでございまして、過去二十年間は全くそういったことを考えずに防衛力整備されてまいりましたけれども、今後はそういった際に有効に対処できる体制というものを固める必要があるということで、一昨年来SDCにおきましてそういうものを含めて研究をいたしているわけでございますが、核安保というものは確かに先生が言われましたように、核の勢力というものは、超大国であります米ソの間の均衡というものは、五〇年代の圧倒的なアメリカの核戦力からいまや均衡がとれるというところに来ておりますけれども、同時にこれはまた余りにも大きくなり過ぎたということで、なかなか核を使っての戦争というものはないのではないかというふうに、先生のおっしゃるように私ども考えているわけでございます。特にことしの国防白書におきまして、米側考え方として、私どもいままで余り知らなかった点は、戦術核兵器も使うということはきわめて危険である、これは戦略核兵器の使用というものに至る全面戦争になる危険があるからということをコメントしておりますけれども、従来のアメリカの姿勢というのは、戦術核は、これは戦いの場合には使わざるを得ないんだという姿勢であったと思いますが、そういうふうに変わってきたところに、この核の巨大な力というものを抑えなければならないという気持ちがあらわれているのではないかというふうに考えているわけでございます。
  200. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に一つですね、先ほど盛んにスピリット計画のことでランスの話がありましたけれども、さっきも話あったように、訓練というのはやっぱり実戦を想定しての訓練だと思いますね、必ずしも訓練が実戦につながるかどうか、これは未知数としても。しかもアメリカ本土から一万キロ離れて日本を中継給油基地として韓国に行くんですから、こんなことたまたまできることでもないし、相当の費用もかかるわけですから、だから、まず訓練イコール実戦につながる可能性が強いと。そうじゃない場合もありますよ、一〇〇%そうであると断定はできなくても、実際の訓練が実際の戦闘につながる可能性が強い、そのための訓練ですから。そうなると、ランスの場合ですけれどもね、要するに横田に来たと、オハマから、それで給油して向こうへ行った。いまミッドウェーないしは海上のことで核があるのかないのかとアメリカに聞いたらノーと言ったからノーですよと、ランスがそういう形でどっかに、動乱地域に対して行く場合において、まず向こうは横田あたりを中継基地と、こう考えているから訓練でやったんでしょうから、その場合、ランスも核、非核です。持っているかどうかわかりません。その場合にやっぱりアメリカに聞いたらノーだと言ったからノーなんだと、こういうつれない返事しかやっぱりできないものでしょうかどうでしょうか。――言っている趣旨わからないですか。
  201. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) いやわかりました。  先ほども申し上げましたように、この戦術核というものにつきましてもきわめて使用を慎重にしなければならないというのがことしの国防白書にも見えております。その場合に、じゃ核弾頭をつけているかどうかということを聞いて答えるかということでございますが、それは言わないというのがアメリカの政策のようでございまして、その場合に聞いて直ちに答えるというものではないのではないかというふうに考えております。
  202. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、言わないということは、あるかどうか向こうはわかっていてももう日本政府に言う必要がないわけでしょう、向こうのやっぱり核政策がそうですから。だから、結局そうすると、ランスが通過してもミッドウェーと同じように言う必要がないと、あっても言う必要がないと、こういうことなんですか。
  203. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いま防衛局長がお答えになりましたのは、一般的な核の存否についてのアメリカ側の政策を申し述べたものだというふうに理解されますが、他方、それでは事前協議の場合にどうなるかということが当然に出てきて、それが先生のお尋ねのポイントだと思いますが、これも従来からお答えいたしておりますように、核の持ち込みというのは事前協議の対象であるということは、これは条約上の義務でございまして、そして、アメリカ側はその条約上の義務を履行することをいままでも誠実に履行してきたし、今後も誠実に履行するんだということをたびたび確約いたしております。したがいまして、事前協議の問題になれば当然にその核の持ち込みについての事前協議が行われると、こういうことになると思います。
  204. 和泉照雄

    和泉照雄君 私は、いま質問の過程の中で、将来の戦いの中には核攻撃は想定されないんだと、こういうような意味防衛局長お話がありましたけれども、希望的にはそうあってほしいわけでございますけれども、それが果たして正しい判断であるかどうか。それは世界的に見ても、アメリカ、カナダ、あるいはソ連、中国、あるいはもう戦争にほとんど中立を標榜しておるスイスとかスウェーデンあたりまで、この核の防備ということについて非常に関心を持っておるようですが、そういう面からしますと、日本はこの狭い国土でございますし、また都市が集中的であるといういろんなハンディを持っておるわけでございますけれども、全然そういうような対策の協議等も、国防会議あたりでは核の問題に関しては無防備であるという、この点に関して協議等なされたことがないのですか。
  205. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 核戦争がいわゆる比較的公算の上では少ないということは、これは軍事的な判断からいたしますとそうだろうと私ども考えております。これは専門家の判断も大体そういうことではございます。しかし現実に核の時代に入っております。そうしてまた、核兵器を持った国というのはあるわけでございます。したがって、そういうものが攻撃を全くしないということを考えるのは少し行き過ぎだというふうにも考えられるわけでございます。しかしながら、わが国におきまして核攻撃を受けた場合の対策というものは、実は、議論され、それに対する対策というものが検討されたということはいまだございません。わずかにございますのは、まあ核の攻撃を受けたときに、その放射能を測定するような装置を細々と自衛隊が持っているというようなことはございますけれども、いわゆるソ連アメリカあるいはスウェーデン、そういった国々が、小国を含めましてこの核の対策に真剣に取り組んでいる状態とは違っているという気がいたします。しかし私どもは、やはり民間防衛という立場からするならば、そういったものに対する配慮というものも考えていくべき問題だというふうには思っているわけでございます。
  206. 和泉照雄

    和泉照雄君 核の攻撃に対しては、大体そこの国民の二五%以上が死傷した場合にはもうほとんど国の機能を失うと、こういうように言われておるわけでございますけれども日本の場合は東京の首都圏をやられますと、日本の人口の約三〇%が一遍でいかれるというような、そういうことになろうかと思いますが、そうなりますと、非常に脆弱な――やはり備えあって憂えなしでございますから、そういうようなことでやはり市民防衛と、そういうようなことを私はやっていかなければ、まあ去年のハイジャックで人間の命は地球よりも重いと、一億一千万の人間の命はそれこそどれだけの重量だろうかと、こういうような観点からしますと、やはりこの問題は真剣に取り組む必要があると思うんですが、長官どうでしょう。
  207. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) おっしゃられるとおりだと私は思います。
  208. 和泉照雄

    和泉照雄君 言うとおりだと、それだけおっしゃっただけでも、将来国防会議あたりでこの問題は検討されるおつもりがありますか。
  209. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 検討すべき問題だと私は思います。
  210. 和泉照雄

    和泉照雄君 ひとつ、前向きでやっぱりこういう問題は検討していかなければならない問題ではないかと思います。  次は、先般の参議院の予算委員会の分科会で長官がおっしゃったことに関連をしてお尋ねをいたしますが、新聞によりますと、有事の際、自衛隊がソ連軍の攻撃を受けた場合、自衛隊は最大限一ないし二週間程度しか持ちこたえられない、こういうように御答弁をなさっておりますが、その前後の背景といいますか、大体ソ連軍の攻撃をしてきた場合の規模といいますか、そういうことはどういうようなことで一、二週間とおっしゃったんですか。一週間と二週間はちょっと二倍の差があるわけですが、一週間、二週間という概略のことをおっしゃったというのでは余りにも防衛庁長官としては軽率過ぎるんじゃないかと思うんですが、そこらあたりはどうでしょう。
  211. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 実は私の頭の中に入っている一つの問題があったわけであります。それは、防衛庁の記者諸君がソ連の武官の招待で、ソ連大使館でソ連防衛関係の映画等を鑑賞いたしたとき、その後パーティーがあったと。日本攻撃したらソ連はどの程度日本を攻略できるかと、まあ数時間でしょうという話があったということでございます。また私は、きょうの日本防衛という問題を考えてみますと、たとえて言えば、弾薬等につきましても予算等に制限されましてまことに少ない状況であります。また、極東に配備されておるソ連の戦闘機は二千機、日本はそれに類するものを入れて四百機しかないというような状況等踏まえながらあれこれ考えてみると、日本の安全保障というものは、日米安全保障条約というものがあるから安全をきょうまで保つことができたんだ、そういうようなことを踏まえまして二、三週間というようなことを私は申し上げたと思うわけであります。
  212. 和泉照雄

    和泉照雄君 今度は二、三週間に大分長くなりましたが、長官も確たる決意でひとつ答弁をしていただきたいですが、いままで二十数年間練りに練ってきたとおっしゃっておるこの自衛隊が、ソ連の側から言わせると数時間で壊滅するんだと、こういうようなことを言われるということは、正面装備の兵器装備、兵員の問題で欠陥があるのか、あるいは支援装備の方で、弾薬、燃料とか、いろいろなそういうような縦深配備上の点でこういうような――余りにもこの新聞を見たら国民は私はショックを受けたんじゃないかと思いますが、そこらあたりはどういうふうになっておるわけですか。
  213. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 分科会におきます御答弁のときの御質問を思い出しますと、あるおまえたちの先輩が、ソ連が本格的に攻撃をしてきたら数時間しかもたないということを本に書いているんだけれどもどうなんだというような御質問であったと思います。それに対して大臣がお答えになりましたのは、私もソ連が本格的に攻めてきたらそう長い間持ちこたえることはできないだろうというような意味で、一、二週間というのをお答えになったと記憶いたしておりますが、これは私どもも、ソ連という国はいわゆる世界の二つの軍事大国の一つでございます。そしてまた、ソ連が攻めてくるという場合は過去にもございましたが、たとえば二十年の八月九日にソ満国境を突破して入ってまいりましたときには、あのソ満国境に集めましたソ連兵力は八十個師団、約百五十万以上の兵力でございました。そのとき関東軍は二十六個師団、七十万程度のものでございまして、しかもそのうちの一部の者は南方戦線に展開されておりまして、終戦のときに降伏をしたのは五十数万だったというような記憶もあるわけでございます。したがいまして、本格的にやってくる場合には圧倒的な戦車を持ち、圧倒的な兵力を持って攻めてきておりまして、あの八月九日はあっという間にソ満国境を突破してきたわけでございます。また、ノモンハンにおきましても、わが方が約一万六千の兵力でございましたが、ソ連の方は五万以上の兵力でございます。しかも、あのときには戦車は六百両以上だったと思いますが、関東軍はほとんどなかったというような状況、そういった圧倒的な兵力を持って攻めてくるという場合に、現在私どもの自衛力、自衛隊だけの力ではそう長い間持ちこたえられないだろう。したがって、大きな攻撃に対してはアメリカ協力を得てこれに対処する以外に方法はないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、先ほども御説明申し上げましたように、いわゆる日米安保体制の発動に至らないような形の小規模侵略、そういったことに備える力というものを持っているということ、そのことがやはり日本の安全にとって重要なことであるというふうに考え整備努力しているわけでございまして、補給の面とかあるいは勢力の面、どの点でそういう判断かということになりますと、先ほど大臣がお答えしましたように、陸上兵力につきましても三十数万、航空機につきましても二千機、艦艇につきましては百二十五万トン、こういった大きな勢力を現に配備しているソ連の力というものはきわめて強大だというふうに考えているわけでございます。
  214. 和泉照雄

    和泉照雄君 空と海からは、ある程度機動力がありますから、この安保条約体制下ではある程度の来援が期待ができると思うのですが、陸上部隊は一カ月ぐらいかかるというような、そういうようなことをおっしゃる人もおるのですが、平時とそれから緊張時、そして有事のこういう連動をした日米間の共同行動計画というのですか、そういうものが私の感覚では何となくちぐはぐのような感じがするのですが、これは常時詰めておられてちゃんとしたものができておるわけでしょうか。
  215. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 実はその点が日米安保体制の中でいままで十分に詰めてなかった点でございます。そこで、日米防衛協力小委員会におきまして、有事の際に共同対処をするのにはどういう観点からやるべきかということを研究しているわけでございます。そして、その研究の成果を日米安保協議委員会に報告をいたしまして、それぞれの政府の責任において自衛隊は自衛隊、あるいは米軍米軍におきまして有事に対処する計画というものをつくり上げていくということになろうかと思います。その際に、御承知のようにわが国の憲法下において自衛隊というものは諸外国の軍隊と同じような行動がとれないわけでございますから、自衛隊のできる範囲はこういう範囲である、そして米軍に期待するのはこういう点であるというようなことを具体的に研究をいたしまして、それぞれの両軍の有事の際の対処計画の中にそれを織り込んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  216. 和泉照雄

    和泉照雄君 長官はまた、自衛隊が壊滅をした後は米軍に頼む以外にないと、こういうふうにおっしゃっておるわけでございますが、非常な関心事は、果たして米軍が来てくれるのだろうかと、こういうことも一つの大きな関心ではないかと。二月のブラウン国防長官が発表しました国防報告によりますと、アメリカの志向する重点というのは欧州だと、ほとんど欧州の方に兵力を張りつけられると、アジアの方に、助攻方面でいろいろ事が起こっても割く兵力はないんじゃないかと、こういうようなことを言われておるのですが、そういうこと等も考慮されていろいろ対処していらっしゃるわけでしょうか。
  217. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) ブラウンの国防報告の中に、日本は「イカリ」だという言葉が出ておるわけでありますが、先ほど防衛局長からも答弁を別の先生にいたしたわけでありますが、そういうことを踏まえてみましても、アメリカ日本離れをしておるとは私は考えませんが、いわゆる本当にしっかりした、ただいまお話しの三段階のような詰めができておるのかという問題についてはいささか頼りない面があると私は承知をいたしておるわけであります。そういう意味でこの関係だけはしっかりしておかなければ、日米安全保障条約が結んであるからただ安心だじゃ、これは国民に対して申しわけないわけであります。そういう意味でいつも日米間のパイプというものはその中にはこりがたまらないような姿にしておかなければならない、小委員会はできるだけ回数を多く開いてそういう問題を詰めるべきだ、また日米関係の人間関係というものをこれは積み重ねていかなければだめだ。  昨年三原長官がアメリカを訪問いたしたわけでありますが、本年はアメリカのブラウン長官が日本に参る予定で、私も招待状は出してあります。その問題は別問題として、日本日米安全保障条約を堅持していくという立場から、私は私なりにこれをよく人間関係を積み重ねてみたいというようなことで、国会終了後アメリカへも行きたい。しかし、いろいろ御論議がありますNATOの関係等につきましても、このNATOの状況も見て私はそのままアメリカへ行きたい、そしてアメリカとの話し合いというその積み重ねを今後も間断なく続けていくというようなことを考えていかなければならぬ、こんなように考えておるわけであります。
  218. 和泉照雄

    和泉照雄君 次は、金丸長官が一月八日に習志野の降下部隊のところでおっしゃったことをちょっと問題にしてみたいと思いますが、「敵に脅威を与えずして何の防衛か」ということをおっしゃっておりますが、これは一面の真理をおっしゃっておるということは私もそのように感ずるわけでございますけれどもわが国は太平洋戦争という大きな教訓を受けておるわけでございますが、昭和十六年の十二月八日開戦のその時点においては、それ以前からもでございますが、日本にとってはアメリカ、イギリスの海軍、陸軍、空軍ともに脅威的な存在であったわけでございますけれども、抑止力は持たなかった証拠には、あの奇襲攻撃という戦争の誘発にかえって結びついたという、こういうような歴史的な先訓があるわけですが、こういうことはお考えになってこの発言をされたのでしょうか。
  219. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) まあ新聞の面で先生は私に御質問なさっておられると思うのですが、その前段に、私は日本憲法を踏まえ、平和憲法を踏まえ、侵さず侵されずという考え方が自衛隊の考え方でなければならない、そういう中で日本を侵害しようとする者に対して自衛隊は脅威を感じない自衛隊であってはならない、精強な部隊でなければならない。私はこういう言葉を使うことは初めてでございますが、一軒の家の入口に、猛犬ありと、御注意ということを書いた家もあります。私は自衛隊を猛犬にたとえたいとは思わないけれども、まさにそれは脅威があるぞということだから、どろぼうや強盗が入っていかないことだろうと思うわけであります。平和憲法を踏まえ、侵さず侵されずという精神の中で、脅威のある精強な部隊でなくてはならぬ、こう言ったわけであります。御理解いただきたいと思います。
  220. 和泉照雄

    和泉照雄君 私は、猛犬が戦力と、その比較論は非常に問題があると思いますが、反面かえってそういうような大きな力を持つことは、誘発をする一面もあるという先訓があるということを、防衛庁長官はひとつ太平洋戦争の先訓できちっと確認をして、今後はそういう自戒の――日本民族がとうとい血を流した先訓でございますから、ひとつ心していただきたい、こういう意味で申し上げておるわけでございますが、最後に。
  221. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 実は、私はもう戦争は、戦いというようなものは絶対やってはいけないと。私は五・一五事件とか二・二六事件とか、いわゆる軍がエスカレートしていく姿をこのはだで感じておるわけであります。軍人でなければ日本人でないようなあの姿というものは再び繰り返してはいけない。私はそういう意味で、まあこの問題につきましては、強くシビリアンコントロールというものを徹底した歯どめにしなければいかぬ、それは政治家の姿勢だと、こういうことを私はいつも申し上げておるわけでありまして、与野党を問わず、この問題は国民に理解を得るということは国会の理解を得るということであろうと、この国会の中で、思う存分のいわゆる討議をしていただいて、あのような姿にしてはならない。人は金丸信は何かタカのようなことをおっしゃられるけれども、――先生じゃないですよ――金丸信はハトだと、こう申し上げておるわけであります。
  222. 山中郁子

    山中郁子君 米軍施設費の日本側負担増の問題について初めに伺いますが、けさの閣議後の記者会見で防衛庁長官は、できるだけ便宜を図るよう研究すべきで、目下外務省で検討していると、こういう趣旨のことをお話しなさったようですけれどもアメリカからどういう要請を具体的に受けているのかということと、外務省は何を一体どういうふうに検討なさっているのか御答弁いただきたいと思います。
  223. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 私は、アメリカからもあるいは施設庁からもその話は聞いておりませんが、けさの読売の新聞を見まして、私の感想として、日米関係というものは不可欠である、許される範囲のことはできるだけのことはしてやるべきだ、こういうことを申し上げたわけであります。
  224. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 金丸長官の御発言につきましては、いまお話がありましたようなことで、具体的にいま私どもに対して特定の検討をせよという御指示は特にないわけでございます。
  225. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ、長官は別に外務省に検討を命じたわけではないんですか。
  226. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) とんでもない。私は外務大臣じゃないですから、外務省に検討なんか命ずるわけにいきませんし、また施設庁長官にもその話はまだしたわけじゃありませんが、ただ、けさの新聞を見て私の感想としてそういうことを申し上げた。まだ個人の考え方であります。
  227. 山中郁子

    山中郁子君 じゃもう一つだけ。外務省が目下検討している、こういう趣旨のことをきょうおっしゃったんですけれども、そういうことはないわけですね。
  228. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 私は、外務省が検討しているかしないか、その辺はつまびらかではありません。
  229. 山中郁子

    山中郁子君 そうしますと、アメリカの七九年度の国防報告、この中で「米国は日米防衛協力向上を進めており、日本政府と在日米軍の経費削減の方法について協議してきた。」、こういう項がございます。そのほかいろいろありますけれども、これは七七年の会計検査院長の議会に対する報告の中でも同様趣旨のことが言われておりますけれども、どういうことを、いつどこで日本側はアメリカと協議をしてきたのですか。
  230. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま御指摘の国防報告の部分は、昨年の末に合意を見ました在日米軍の労務問題に関する話し合いに言及したものだというふうに考えております。
  231. 山中郁子

    山中郁子君 それ以外の、いま問題になっている施設の新築その他の問題については、この中には何にも入っていないと、アメリカにそのことははっきりさせてあるわけですか。
  232. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) アメリカ側から具体的にそのような要求というものを受け取っておりませんので、私どもが心当たりとして考え得るものは、恐らく昨年の末に決着を見ました労務問題、これはその前々年ですかから合同委員会の場におきまして検討を続けてきた問題の決着でございますが、そのことを言っておるものというふうに理解いたしているわけでございます。
  233. 山中郁子

    山中郁子君 私は、昨年のいま言われた労務費の分担の問題についても大きな問題があるというふうに認識しておりますが、これは別な機会に究明をいたします。  それで、ぜひ外務省に調べていただきたいんですけれどもアメリカに具体的に問い合わせてほしいんです。というのは、いまこうしたことがいろいろ問題になってきていて、そして多くのところでアメリカ日本にそうしたことを要請しているということは、あなた方がどういうふうにおっしゃろうと、それは事実なわけですから、このいまの国防報告のこうしたアメリカ側の記述の中に、いまあなたが言われたこと以外の、問題になっている施設の新築その他は、入っていないならいないということをアメリカに確認をしてほしい、そして報告をしていただきたいと思います。
  234. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 私がただいま申し上げました点については、米側に確認いたしております。
  235. 山中郁子

    山中郁子君 先ほど外務省は、きょうの新聞の報道あるいはニュースなんかの報道は、四十八年の当時の大平外務大臣のこの問題に対する見解が出された当時の外務省の見解であろうと、こういう判断をなさっておりましたけれども、そうしますと、これは読売新聞の「米軍施設費に関する外務省見解要旨」ということで二面に出されていて、先ほど中島さんまだ詳しく読んでないとおっしゃっていましたが、中身は大体把握されていらっしゃると思うんですが、こういう内容のものを、外務省は当時の大平見解の要旨としてまとめられていたということですか。
  236. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほどもお答え申し上げた次第でございますけれども、この点は、当時昭和四十八年、大平答弁はたしか春であっただろうと思いますが、その数カ月後にその大平答弁がなされるに至った国会での御論議とか、その後の国会での御論議などを整理して、執務の参考上どう考えるべきかということを、当時課のレベルでまとめたものだというふうに理解いたしている次第でございます。
  237. 山中郁子

    山中郁子君 そうしますと、これは具体的にいつの時点でまとめられたものですか。
  238. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 正確な日時を心得ているわけではございませんが……
  239. 山中郁子

    山中郁子君 日時までは要らない。
  240. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 昭和四十八年の、たしか大平答弁が三月だったと思いますが、それから数カ月後、恐らく夏から秋にかけての時点だったというふうに理解いたしております。
  241. 山中郁子

    山中郁子君 そうしますと、ここの中にこういうふうに書かれています。「代替の意味」として、「大平答弁でいう代替とは、(イ)いわゆるリロケーションの場合のように、ある施設・区域の返還に伴い、同施設・区域内の建物等を他の施設・区域に移設すること及び、(ロ)ある施設・区域内において、老朽化等の理由により使用に耐えなくなった建物等を建て替え、改築することを意味する。」と、このように書かれているんですけれども、大平答弁の際の問題になったときは、代替の範囲を超えないということになっていて、(ロ)の方は、当時の政府の見解の説明あるいは論議の範囲でも明らかに超えていると思いますけれども、この当時すでに外務省は大平答弁をこのように拡大解釈して認識をしていたということになりますか。
  242. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 大平答弁が出されました当時の状況におきましても、大平答弁に至ります御論議は、既存の施設区域の中で、リロケーションだとか改築だとかいうこととの関連で、新規の提供をどう考えるべきか、こういう御論議があって大平答弁が出たというふうに理解いたしております。その限りで、いま御指摘の点は基本的には変わっていないのではないかというふうに理解いたします。
  243. 山中郁子

    山中郁子君 そうすると、代替だけでなくて、新築、改築、それも含まると、こういうことですか、新築と入っているんですよ。――改築ですね。
  244. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) そのとおりでございます。改築の点も含めまして論議が行われたというふうに理解いたしております。
  245. 山中郁子

    山中郁子君 私どもは、大平見解自体についての問題点はすでに何回も指摘をしてきました。そのことを前提にいたしまして、その見解をもさらに上回る見解をすでに当時外務省がちゃんと取りまとめていたと、この問題は代替を超えないというのとは明らかに反する問題ですし、またそのほかにも、代替というけれども必ずしも現状をそのままということではなくて、いろいろな場合があって拡大できるんだというふうなことは、いま時間がないので私読み上げませんけれども新聞が書いている要旨なるものの中には入っているわけですね。かなり大幅な、この範囲でも大幅な、当時の大平見解を上回る内容になっていて、私大変問題だと思うので、ひとつこの外務省の見解というものを資料として提出をしていただきたいと思います。
  246. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほどもお答え申し上げた次第でございますけれども、この見解なるものは、当時大平答弁をめぐりまして行われました論議を整理すると、いかなることが考えられるかという点を執務上の参考のためにできる限りまとめてみたいということでつくられたものでございまして、私、現在におきましても、そのデータそのものの内容を詳しく検討する余裕もないわけでございます。そして先ほどもお答え申し上げましたところでございますが、この見解をいまもそのまま正しいものと考えるべきかどうかという点も軽々に申し上げる立場にないわけでございます。いずれにせよ、このペーパーは、当時の課の単位で事務をとり行います場合に、その参考としてつくりました全くの内部のものでございまして、外務省の見解、公式見解というようなものとは違うわけでございますので、そのような性質にかんがみましても資料の提出は御容赦いただきたいというふうに考えます。
  247. 山中郁子

    山中郁子君 こうやって新聞にも報道されて、そしていまあなたも、私が読み上げたものは見解としてはそのとおりだとおっしゃっているわけでしょう。だけれども、何か誤りがやっぱりあるかもしれないと、こういうことも言われている。大変矛盾をしているという感じが私はいたしますけれども、いずれにしても、何らかのそうした解釈でもってその後外務省がやってこられて、現在もそうした解釈にのっとっていらっしゃるんだから、それは提出すべきじゃないですか、秘密にする必要は何にもないでしょう。
  248. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま申し上げましたように、現在でもこれにのっとって何らかの事務をやっている、外務省としての見解をまとめており政府の見解をまとめておるということではないわけでございます。当時の担当官が、当時の論議にかんがみましてどのようなことが考えられるかということをまとめたものでございまして、これは外務省の正式見解というものとは異なるわけでございます。そういう意味におきまして、恐らく、新聞に出ておりますのですから、おおよその趣旨はそこにありますとおりであろうと思います。その点について特に疑義をはさむものではございませんけれども、問題の性質にかんがみまして提出を御容赦いただきたい、こういうふうに考える次第でございます。
  249. 山中郁子

    山中郁子君 それでは、さっき金丸長官は、そうしたことを聞かれたから自分の感想としてできるだけ便宜を図りたいと、図るようにしたいと、こうおっしゃったけれども、新築だとか、そうしたものについては便宜が図れないようになっているわけですよね。地位協定二十四条もそうだし、それからそれに基づく大平見解もそうだし、そうだとすれば、何らかの便宜を図るようにしたいという防衛庁長官の見解は、あなたは、私は外務省に指示する立場にないとおっしゃるから指示しなくても何でもいいですけれども、指示しなくったっていいですけれども政府として便宜を計らうためには何らかの検討をしなければいけないわけでしょう。
  250. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) それは、けさの新聞に出た閣議終了後の記者会見で、私は、いわゆる解釈でできるものはできるだけのことはしてやりたいというだけであって、何を検討するとか、あれをこうするとか、住宅の面をどうするとか、大平発言というものを頭の中に入れながらあの新聞記者諸君に私の考えを申し上げたわけではなくて、日米関係というものは不可欠だからできるだけのことはしてやるべきだという考え方を申し上げただけであります。
  251. 山中郁子

    山中郁子君 そうしましたらね、日本側は新たな建物を提供する義務はないんだし、それからその規定ももちろんないわけだから、新聞報道なんかで、たととえば横田五百戸新築の要請があるとか、そうしたことも伝えられたことがありますけれども、それだけに限らず、そうした新たな新設の要望にこたえるということはしないんだということは、政府としてはっきりしているということですか。
  252. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 私も、防衛庁の問題は広範な問題でありますから、そういう問題をつぶさに知っておるわけじゃありません。そういう意味で、十分これから施設庁等と話をしまして、聞きまして、その私の考え方が間違っておるか間違っておらないか。ただ私は個人的に希望の意見として申し上げただけだということだけは御理解いただきたいと、こう思います。
  253. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ、政府としてどなたが御答弁なすっても結構ですけれども、新しい建築の要請には日本はこたえるつもりはないんだと、私はこたえられないと思っていますけれども、そういうことはしないということははっきり明言できるわけですね。どなたでもいいですよ。責任持って答えてください。
  254. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 先ほど来いろいろ新聞報道に関する御質問をいただいているわけでございますが、私ども具体的に住宅等について公式の要望を米側から受けているわけではないわけでございます。米側から公式の要望が出てきた場合におきましては、私どもも大臣の御趣旨を体しまして、できるだけのことをいたしたいということはもとよりでありますけれども、現在具体的な要望が出ていない段階でこれをどうするということは申し上げかねるわけでございます。いずれにいたしましても、私どもは地位協定の範囲内で対処すると、できるだけのことをすると、こう申し上げられるだけでございます。
  255. 山中郁子

    山中郁子君 具体的な要望が出てきても、私は新築などの追加の工事についての日本側負担の要望にはこたえられないはずだしこたえるべきではないと、このことははっきりしているんですねということを言っている。地位協定の範囲の中でやろうとすればそれはできないですね、大平見解もそうです、代替の範囲を超えないんですから。
  256. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 具体的に米側の要望が出てまいりました場合に、それがどういう態様のものであるか、それをつぶさに聞いてみませんと地位協定の中で対処できるものであるかどうかは判断しかねるわけでございます。したがいまして、この段階で抽象的にできるとかできないとかいうことを申し上げることは差し控えたいと思います。
  257. 山中郁子

    山中郁子君 いいえ、問題ははっきりしているんです。新築、追加、そうしたものについてはできないということですねと、しませんねと言っているの。具体的に横田に五百戸追加で建ててくれという要望があったというふうな報道もされているわけです。  じゃ、具体的に伺います。横田はもうリロケーション済んでいますね、全部済んでいますね。横田に新たな米軍の施設に関して日本の負担がこれからあるということはあり得ませんね。
  258. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) いわゆるKPCPと申します関東地区の空軍施設のリロケーション計画は最終段階にありまして、本年度内に終了するわけでございます。ただいまの、一般的に今後横田に何もできないのかどうかということは、できないはずであるとおっしゃいますが、私どもは具体的な態様を踏まえて地位協定の枠内で検討いたさなければ、一般的、抽象的にできるできないということは申し上げかねる次第でございます。
  259. 山中郁子

    山中郁子君 横田はリロケーションが済んでいるとおっしゃるんだから、その後何も出てくるはずがないでしょう。代替しかできないということになっている、代替の範囲を超えないということになっているわけだから。そして、これはやはり国会でかつての施設庁長官の山上さんですかが答弁なさっていらっしゃるけれども米軍が入りました後においていろいろな備品をつくる、設備をつくる、家を建てる、これは自分でやるのがいまたてまえになっているということでちゃんと答弁もされていらっしゃるし、それから、昔の本ですけれども、占領軍調達史ですか、その中でもちろん御承知だと思いますけれども、経費負担の問題につきまして「施設と区域および路線権の提供に要する経費(借上料と補償費)」ということになっていて、それ以外のものは入っていないわけでしょう。そうしたら、いま長官が言われるようなことは考えられないわけです。私はそのことを申し上げているんです。一般的に抽象的にということをおっしゃるけれども、私は具体的に言っている。横田はもうあり得ないでしょうということ。いままであなた方が言ってらしたことで、大平答弁の見解が変わるものではないと、こうおっしゃるならば、あり得ないということですね。
  260. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 繰り返すようで恐縮でございますが、私どもはあくまで地位協定の範囲内で対処すると、それからその場合に大平答弁の趣旨を踏まえて対処するということを申し上げたいと思います。
  261. 山中郁子

    山中郁子君 いま横田はあり得ないというふうに答弁どうしてもなさらないんだけれども、じゃどういう基地で今後どういうことがあなた方は予想されるんですか。リロケーションはほとんど済んでいるでしょう。
  262. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 私も今後起こり得べきあらゆる事態について想像する能力がございませんので、現在の段階でどうするこうするということを具体的に申し上げかねると申し上げておるわけでございまして、いずれにしても、地位協定の範囲内で、かつ大平答弁の趣旨を踏まえて対処するということを申し上げておきます。
  263. 山中郁子

    山中郁子君 大平答弁が出された当時、私が申し上げるまでもありませんけれども、横田への移転集約の問題、その他アメリカの大変強い要求があって何とかそれをやらなきゃいけないからと、そしてあなた方はこの二十四条のまさに拡大解釈ですよ、リロケーションの問題だけでも。そういうことも押し切ってやっていらしたわけ、大平答弁でやっていらしたわけ。そのときは主要な問題がそうしたリロケーション、移転集約だったから、米軍の主要な要求が、それで押し切ってきた。いまここへきたらね、米軍はさらに在日米軍の経費を節減するために、もっとこういう問題も日本に経費を持たせようということでさまざまな圧力をかけてきている、こんなことはだれが見ても明らかです。今度はそれをね、その要望にこたえよう、アメリカの言いなりになるために。地位協定二十四条の拡大解釈をした不当な大平発言、そのこと自体もまたさらに拡大解釈する余地を残そうとしようとしているという以外には考えられない。  私はここで指摘したいのは、かねてから安保条約の問題についてさまざまな観点から指摘もし、追及もしてきました。米軍の事故犯罪の問題についても、後ほどもまたちょっと触れますけれども、そういう安保体制のもとで、日米軍事同盟のアメリカ極東の軍事戦略に日本がもうどんどん組み込まれて、そうしてますますエスカレートしていく。けさほど来からの論議でも、有事立法の問題でも、たとえば装備の問題でも、F15だとかP3Cだとか、空中給油装置の問題、爆撃装置の問題、そして戦術核兵器の問題、そういう問題を見ても、もう無限にそうしたことがエスカレートしていく。そうして、そういう中に経済的な裏づけをするためのアメリカの要求に対して、またこれ無限に地位協定を拡大解釈していこうという、そういう姿勢というものに根本的な問題がある、私は指摘をせざるを得ません。  それで、実際上の問題として、アメリカとの間で、皆さんは口を開けば何の要請もない、何の約束もしていないと、こう言われるけれども、事態の推移は、何らかの要請があって、何らかの約束をしているということはだれが見ても考えられる内容なんです。  最後にもう一度だけこの点について念を押しますけれども、そうしたアメリカの要請、まあ雑談でもって話が出たことがあるとかいうお話もありました。雑談であろうと非公式であろうと、何でもいいですけれどもアメリカから一体どういう趣旨の、どういう要請が来ていて、日本政府はそれに対してどういうふうな対応をしようとしているのか。先ほど金丸防衛庁長官は、いずれにしても聞かれたから感想として答えるけれども、なるべく便宜を計らうようにしたいと、こうおっしゃっているわけでしょう。そのことは、地位協定二十四条を拡大していく以外には、そうした要請に対する便宜は計らえないんだということははっきりしているんですから、そこのところを明確に示していただきたい。
  264. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 一つ申し上げておきたいと思いますが、リロケーション、これは関東計画でありますとか、あるいは沖繩で現に進めておりますけれども、これはアメリカ側の要請というよりは、日本側から特に都市周辺の米軍基地を整理して集約して、その跡地をいろいろ民生その他に利用しようということで、日本側のイニシアチブで始まったと私は承知しております。  それからもう一つは、リロケーションが地位協定の拡大解釈であると、こう仰せられましたけれども、私どもはその点については全く地位協定の範囲内のものであって、拡大解釈であるというふうには考えておりませんので見解を異にするわけでございます。  それから、先ほどもお答えしたわけでございますが、最近の状況でいろいろ住宅が足りないというようなことは雑談の間に聞いておるということは事実でございますが、これが公式かつ具体的な要望として出ていないこともこれまた事実でございまして、決してうそ偽りを申し上げておるわけではございません。公式の要望ということであれば、施設特別委員会、合同委員会のレベルに出てくるべき筋合いのものでございますが、現在の段階ではそういったことはございません。
  265. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ一つだけ、最後にもう一度しつこいですけれども伺っておきます。  大平答弁は、日本側負担で提供する米軍施設は、原則として代替の範囲を超える新設を含まないものとするということになっておりますが、代替の範囲を超える新設は今後はないということですね、応じないということですね。
  266. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来も施設庁長官からお話がありますように、大平答弁の趣旨は十分にこれを踏まえて今後も対処するということでございまして、大平答弁そのものを変更するというような意図を当面政府が持っているということは全くないわけでございます。
  267. 山中郁子

    山中郁子君 ストレートに私が言ったとおりのことに対して答えていないということについて、あなた方のこれからどこに抜け道を探してどういうふうにやっていこうかという底意が見えると言わざるを得ないということなんです。厳重にその点については国民に対する約束、その点について責任を持っていただかなければなりませんし、警告もしておきます。要求もしておきます。  次に……
  268. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) ちょっと私に答弁させてください。  この話は、外務省からも施設庁長官からも、全然私は聞いておりません。うそ偽りを申し上げておらぬということは御理解いただきたいと思います。
  269. 山中郁子

    山中郁子君 次に、けさほど片岡委員の方からも質問が出ておりましたけれども、横浜の旭区で、またまた米軍機の部品が落下するという事故が起きたんですけれども、私はそれに先立ちまして、昨年の九月のファントムの墜落問題を三月二十四日の予算委員会質問をしたときに、依然として現在まだ捜査中であるということで、何ら進展をしていないということでしたのですけれども、大分日時もたちました。捜査はいかように進展をいたしましたか、警察の方の御答弁をお願いいたします。
  270. 水町治

    説明員(水町治君) 警察におきましては、事故発生以来、本件事故の原因の究明と関係者の刑事責任の有無につきまして捜査を行っておりますが、いまだ捜査は終了しておりません。継続中でございます。
  271. 山中郁子

    山中郁子君 あのときに具体的に要求いたしました、米軍関係者から直接事情聴取をしなさい、それから、そういう点で外交交渉が必要なら外交交渉をするべきだ、そして一次裁判権の放棄を要求すべきだと、それは当然そういう状況になるならばいたしますと、外務大臣も防衛庁長官も皆さん答えられました。法務大臣も答えられました。そういう答弁の趣旨は進行をしておりますか。
  272. 水町治

    説明員(水町治君) いまだそのような段階に至っておりませんので、現在そこの段階に向けまして捜査中でございます。
  273. 山中郁子

    山中郁子君 いつまでかかるんですか。
  274. 水町治

    説明員(水町治君) 本件につきまして、非常に専門的、技術的な事件でございますので、航空の専門家の協力も得まして、軍用航空機のエンジンの構造とか、性能とか運航方法等専門的な知識の修得に努めながら捜査を続けてまいります。なるべく早い段階にそういう段階に至りたいと思っておる次第でございます。
  275. 山中郁子

    山中郁子君 無責任なことばっかりこれ以上続けてもらっちゃ困るんですよ、本当に。またその後事故が出てくるわけでしょう。けさからお話もありましたけれども、私も現地へ行って参りました、旭区に。本当の数メートル落下場所が違ったら大惨事になりましたよ。またファントムのときと同じくらいの負傷、人命の損傷というのは出たはずです。それはもう皆さんもよく御存じだと思うんですけれども、少なくとも、旭区の部品の落下の問題につきましては米軍に申し入れをしたとけさおっしゃったね、どういう申し入れをしたのか、どういう要求をされているのか、それとあわせて落下物の形状、重量、部品名、もう一度おっしゃってください。
  276. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) まず、物は主翼の、英語で申しますとリーディング・エッジ・フェアリングと申すようですが、翼の前の縁の前縁カバーということでございまして、形状は縦百七十センチ、横百六十センチ、重さ約二十三キロのジュラルミン製のものでございます。  それから、これに対して私ども、おっしゃるとおり非常に一歩間違えば大変な事故につながるということでございますし、昨年の九月の悲惨な事故が起こりましてからまだわずか六カ月というのに、続きましてこういう事故が起こりましたことは大変遺憾であると存ずるわけでございます。そこで、在日米軍司令部並びに在日米海軍司令部、それから厚木の米海軍基地司令部に申し入れた次第でございますが、直ちには口頭で申し入れ、それから後に文書で申し入れておりますが、その趣旨は、今回の事故については大変遺憾であるということ、それから、事故原因の究明に努めて、今後この種の事故が起こらないように再発防止対策について万全を期してもらいたいということがその趣旨でございます。米側も遺憾の意を表しておりまして、原因については調査中であるが、わかり次第日本側に連絡するという回答を得ております。
  277. 山中郁子

    山中郁子君 まず、アメリカから原因について報告があったら、それは報告してくださいね、どういう報告だったと。
  278. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) そのとおりいたします。
  279. 山中郁子

    山中郁子君 いま落ちたものはどこにあるんですか。
  280. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) これは警察署で保管されましたので、その処理については警察からお答えいたしていただいた方がよろしいかと思います。
  281. 水町治

    説明員(水町治君) 当該物件につきましては警察署において保管しておりましたが、米軍機から落下したものであることが判明いたしましたので、四月七日に米当局に引き渡しております。
  282. 山中郁子

    山中郁子君 じゃ、原因も何だかわからないし、そういうままに、みんなそういうものはどんどんアメリカへ返しちゃうわけですか。
  283. 水町治

    説明員(水町治君) 警察署にあります段階において証拠保全の措置をとってございますので、米軍側に引き渡した次第でございます。
  284. 山中郁子

    山中郁子君 ファントム機のときのエンジンの問題その他ありますし、何回そういうことを繰り返すんですか。もう少しちゃんとした国民の安全を守るという立場に、毅然とした立場に立ってやってもらわなければ、政府は一体何のためにあるのかと、市民の不安というものはいま本当に大きな怒りになっています。それで問題は、これがファントムのときに、いま防衛施設庁長官も答弁されたんですけれども、またまた今後起こらないように万全を期してほしいという、こういう要望をされているということで、明らかに整備ミスということが類推されるわけですよ、いまの段階でね。ファントムの場合にもエンジンの整備ミスだというふうなことになってきている。そして、この前のあの事故調査委員会の報告書の中に「勧告」として、「合衆国は、引き続き、航空機の整備、点検及び飛行の安全を最重点事項とする。」という勧告がされています。この時点で、ファントムの墜落事件での事故調査委員会の報告書、この勧告がどのようにアメリカにおいて実行されたのかということをどのように把握されていますか、報告は受けているんですか。
  285. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 御承知のとおり、昨年九月のファントム機の事故は、これは米本国において行われましたアフターバーナーの組みつけの不良であるということでございまして、これがこの種の事故が起こらないようにその組みつけ作業についての改善措置が講じられたということ、それから、事故分科委員会の報告にもございますように、厚木周辺の管制の再検討、それからさらに、事故が起こった場合の救急の連絡体制整備、それからいまおっしゃいました整備については、整備点検に最善を尽くすと、こういうことでございます。これは軍でございますから、整備点検についてはマニュアルがあるわけでございまして、これは当然その規定どおりにやっておると承知しておりますが、今回の事故が整備ミスであるのかどうか、その点については調査が済みませんと判然といたさないわけでございます。当時天候も大変悪かったということで、激しい乱気流があったというふうなことも伝えられておりますので、その点を含めまして現在鋭意調査中であるということでございます。
  286. 山中郁子

    山中郁子君 いままでも、この厚木基地をめぐる飛行機によって、こうした事故が、神奈川県下で墜落したり物が落ちたりずいぶんあるんですけれども、講和条約発効後ということでいいですけれども、神奈川県下何件ぐらい起こったのか、横浜市では何件起こっているのか、ちょっと教えてください。
  287. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 神奈川県下におきます米軍機の墜落事故は、講和発効の二十七年から今日まで五十二件でございます。ただ、このうち特に二十年代、三十年代が多発いたしておりまして、四十一年以降においては四件ということでございます。それからなお、五十二件のうち横浜市におきましては十四件でございます。
  288. 山中郁子

    山中郁子君 あのね、いままでと同じことをやっていたんだったら、結局これと同じような率でもってまた起こるというふうに考えなきゃならないという事態なんですよね。だから、先ほど、引き続きいままでもやっていてそういう整備をやってくれていると思うというふうにおっしゃったけれども、もうこれ以上こういう問題を起こさないために、私は日本政府は緊急に厚木基地を使う飛行機ですね、米軍に対しても、緊急に全部の飛行機の点検整備をやれという要求をすべきだと思います。もちろんその前提には、私どもは厚木基地の撤去ですね、そしてそれがすぐできないまでもそうした整備点検の安全が保障されるまでは当面厚木基地の使用を禁止する、そういう措置は少なくともとって、国民の不安、市民の不安、こうしたものに政府としての責任の立場からこたえるべきだと思いますが、いかがですか。
  289. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 点検整備に万全を期すべきことはおっしゃるとおりでございまして、この点については従来から申し入れておりますが、今回も点検整備を万全にするようにという申し入れはいたしておるわけでございます。  それから、基地の撤去、あるいは厚木におきます飛行中止という問題につきましては、これは米軍日本の安全と極東の平和のために駐留しておる、駐留する以上は訓練は欠かせないということでございますので、お話しのような点の申し入れをすることは私どもとしてはいたす考えはございません。ただその場合に、住民の人的、物的な安全につきまして最大限の配慮を行うべきことは当然でございますので、この点については繰り返し申し入れをいたしたいと思っております。
  290. 山中郁子

    山中郁子君 配慮なんてしようがないんでしょう、上から降ってくるんだから。どこに落ちるかわからないようなそういう事故が県下だけでももう五十二件起きて、横浜市で十四件でしょう。この事故で実際に死者、負傷者それぞれ出ていると思うんですけれども、県下での、それから横浜市での死者、負傷者の数を教えていただきたい。
  291. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) ちょっといま手元に資料持ち合わせませんので、後ほど調査しまして先生に御報告いたしたいと思います。
  292. 山中郁子

    山中郁子君 それでは、いまの神奈川県下と横浜市の、それぞれの事故による死者と負傷者数、それともう一つ先ほど五十二件とおっしゃって年度別に何かアンバランスがあるというお話でしたので、年度別の発生件数ですね、それもあわせて資料で後でください、よろしいですね。  いま、事もなげに、日本の安全と平和を守ってもらうために米軍機が飛ぶんだから飛行中止を要求するつもりはないとおっしゃるけれども、事態はまさに逆さまで、安全がそれで脅かされているわけじゃないですか、現実にこの飛行機の落下問題でも。政府の責任で、少なくとも私たちは、だから安保条約に基づく米軍への基地提供がその面から見ても日本国民の生命と財産を脅かしている、そういうものだということを何回も言ってきました。このことはいま申し上げると同時に、だからこそ、基地撤去もそうだけれども当然の要求だし、そうすべきですけれども、まず当面、またいつ天から何か降ってくるかわからないんだから、その整備が確認されるまでは厚木基地の飛行を中止すると、このぐらいは政府として、やはり国民の立場に立ってアメリカに対してちゃんと申し入れすべきだと思いますけれども、どうですか。
  293. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 先ほど申し上げたとおりでございまして、駐留しておる以上訓練は欠かせない、訓練をしなければさらに危険が増すという点もあるわけでございます。したがいまして、現在の段階で飛行中止を求める考えはございませんが、住民の安全に対しては万全の配慮を求めてまいりたいと思います。
  294. 山中郁子

    山中郁子君 金丸長官、政治責任を持つ長官として、いま私が申し上げていること、当然でしょう、あたりまえのことじゃないですか、ぜひそれやってください。
  295. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 日米安全保障条約の関係もありますし、ただいま亘理長官が申し上げたとおり、人命の尊重ということは当然これはもう看過すべきことではありませんから、十分な厳重な申し入れをして、演習をやめろというようなわけにはいかないことは御案内のとおりであります。
  296. 山中郁子

    山中郁子君 厳重に申し入れるといったって、その保証は何にもないんです。だから、半年後にまたこういう事故が起こっている。それに対して厳重に申し入れるだけで、何で国民に対する安全を守る責任を政府として果たせるんですか、私はそうした長官の態度、政府の態度に対しては大変大きな問題があるし、今後の問題としても、重ねてファントムの捜査の問題とあわせて引き続き追及していくことを申し上げて質問を終わります。
  297. 井上計

    ○井上計君 防衛庁にお伺いをいたしますけれども、日中平和友好条約がいよいよ大詰めの段階に来ておる、こういうふうな状況でありますが、そこで、きょうはその問題に関連をいたしまして、防衛的な問題を二、三お伺いをいたしたいというふうに考えております。  そこで、まず最初に、仮にということで申し上げますけれども、現在問題になっておりますところの反覇権条項が未処理のまま、未解決のままで日中条約が締結をされた場合、その場合に極東におけるソ連の軍事的あるいは戦略的な変化等はどのように防衛庁当局は分析をしておられるかお伺いをいたしたいと思います。
  298. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) この日中条約が結ばれた場合の軍事的なソ連の行動という御質問でございますが、御承知のように、防衛庁におきましては、周辺諸国軍事力の動向あるいは軍事力の推移等につきましては、常時情報系統を通じまして分析検討をいたしております。特にソ連につきましては、過去十年間の単位で見ましても、極東におきます軍事力というものはきわめて増強されているところでございます。そしてまた、軍事的な演習その他の行動というものも活発になってきているのも事実でございます。しかしながら、条約との関連において軍事行動が起きるとか、あるいは軍事情勢が大きく変化するというふうには判断していないわけでございまして、軍事的な活動というものが近年活発になっているという事態はありますけれども、外交あるいは漁業問題等におきましていろんなことがあるいはあるかもしれませんけれども、少なくとも軍事面におきまして行動が起きるというふうには判断いたしておりません。その背景にありますものは、やはり極東にあります軍事情勢でございますが、中ソの対立ということもございます。それから、アメリカと中国との接近ということもございます。それにも増して重要なことは、日米安保体制があるということだと私ども考えておるわけでございます。先ほどの御答弁の際にも申し上げましたように、ソ連が軍事行動を起こす場合というのは、きわめて圧倒的な力というようなものを頼むというような傾向が過去にもございます。そういった観点からするならば、この日米安保体制というものが有効に機能するであろうという限りにおいて行動が起きるというふうには考えていないわけでございます。
  299. 井上計

    ○井上計君 日中条約との関連、またそれから起きるところの新しい脅威といいますか、これについては余り心配がないといういま局長のお答えでありますけれども、そこでちょっと観点変えますけれども、中ソ軍事同盟条約は死文化しておると、こう言われております。しかし、国際法上まだ有効であることは間違いがないと思いますが、現在たまたま中ソのいわば対決、あるいは緊張がああいう状態でありますから死文化しておるということであろうと思いますが、もし万一、一転して中ソの対立が、対決が解消した場合、直ちにこれは日本を、あるいはアメリカを対象としたところの中ソ軍事同盟が復活をする、その場合と、日中の友好条約が締結されたと仮定してですが、その問題との関連は防衛上特にありませんか。
  300. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 外交的な問題が主であろうと思いますが、軍事的に見まして、先ほど申し上げましたように、現実に私どもが得ております情報では、あの何千キロに及びます中ソ国境に配備されている兵力というものが相対峙をしている状況でございます。そしてまた、米側といろいろ話し合って現実に私どもが得ております情報から判断いたしましても、まあ数年あるいは五年先、六年先というような見通しのもとに立ちますと、この対立というものがすぐ解けるというふうには考えられないわけでございます。しかしながら、いま先生がおっしゃいましたように、もし万将来融和するような状況になったらというお話でございますが、軍事的な面から見るならば、これはやはり一つの大きな要素になろうかと思います。したがいまして、私どもが一昨年防衛計画大綱ということによりまして、防衛力整備を決定していただきました際の情勢判断の中にも、現在のような情勢ということを前提にいたしておりますが、あるいはその時期になりますと、そういった現在のような情勢に大きな変化を与える軍事情勢としてとらえなければならないということもあり得るかと考えておるわけでございます。
  301. 井上計

    ○井上計君 といたしますと、現在日中友好条約の覇権問題、まあ反覇権は明らかに反ソであるということを中国側は明瞭に言っておるわけですが、といたしますと、将来の問題、仮定でありますけれども、両方の条約から、あるいは二重に日本は中ソ両国から敵国視されるというふうなことがあり得るんではなかろうか、その場合の防衛上の問題というのを、新しいやはり事態の推移という面から考えていく。先ほど局長お話しになりましたが、この十年間のソ連の陸海空極東軍の増強は大変なものがあるというふうな御答弁でありますが、ソ連がこの十年間の間に著しい増強をなし遂げた最大の理由は何ですか。
  302. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 実はその点が、なかなかその意図というものがわからないわけでございまして、アメリカの分析によりましても、判断といたしまして、ソ連軍事力というものは自国の防衛を超えて、なおかつふやし続けているというのが現実の問題であると、したがって、この判断として、従来からの増強の線というものをそのまま延長しているものであるのか、あるいはある意図を持ってそれをなし遂げているのか、その点はどうもわからないというふうに言っております。しかしながら、アメリカはそういった意図いかんにかかわらず、現実兵力としてこのソ連軍事力に対抗できる軍事力というものを整備していくのがアメリカの意思であるということを言っておりますので、いま先生が御指摘になりましたけれども、どういう意図のもとにやっているかということはなかなかむずかしいわけでございますが、特に海軍力を見ますると、従来の沿岸警備の能力から、外洋におきます行動、そういうものを可能にするような増強というような形で進んでいるということは言えるだろうと思います。といいますのは、この十年間にふえてまいりましたトン数、七十万トンが百二十万トンぐらいにふえておりますが、隻数の方は余りふえていないわけでございます。といいますのは、艦艇が大型化されておる、そして載せている武器というものがミサイル化されているということでございまして、このことは、やはり外洋におきます行動というものを可能にしているというふうに考えられるわけでございます。
  303. 井上計

    ○井上計君 苦干古いことになりますけれども、中国が昨年度相次いでわが国の自衛隊のOBの人たちを招待をしておる。そこで、昨年の九月に鄧小平副主席が自衛隊のOBの人たちとの会談の中でこういうことを言っておるということが新聞報道に当時あったわけです。特に言いたいことは、日中両国は同じ方向から脅威を受けていると、戦争は必ず起きる、私たちは欧州や米国や日本の人々に備えをかたくすべきだ、こういうふうなことを言っておるということであります。そこで、先ほど申し上げましたが、反覇権条項は第三国を指すものではないということを条約の中で明記をしなければ、明らかにこの鄧小平の、あるいはまた中国側の発言の中に反覇権というのは反ソであるというふうなことがもうしばしば出ておるわけでありますから、それらのことを明瞭にしないで締結された場合のやはり日本防衛という問題、あるいは軍事上の各種のやはり紛争等に対処する事態が大変むずかしくなるんではないかということを考えます。  そこで、当時の新聞報道にもありますけれども、こういう疑問が起きておりますが、万一中国とソ連との間に戦端が開かれた場合、紛争が生じた場合に、東シナ海の戦闘等で傷ついた中国の艦艇が、わが国の領海内あるいはわが国の港に逃げ込んできたという場合、その場合には、この条約が締結されておるとすると、現時点での防衛庁の見解は、その場合どういうふうな方法をとるということをお考えでしょうか。まあ外交的な問題があろうと思いますが、純粋に防衛上から考えて、その場合にはどういうふうな事態として処理されますか。お答えにくければよろしいですけれどもね、そういう疑念をやはりわれわれは実は持つということを申し上げておるわけなんですが、お答えにくければ結構ですが……。
  304. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これはまあ外交の問題が主になります。したがいまして、政府判断に従いまして自衛隊がそれに対応するということになろうかと思いまして、自衛隊が独自の判断でどうこうするということは、申し上げるのは非常にむずかしい問題だと思うわけです。
  305. 井上計

    ○井上計君 当然まあ現在の時点では防衛庁としてはお答えにくいということは承知をいたしておりますが、ただその場合、外交上の問題ではありますけれども、日中平和友好条約からいって、中国側のそういうふうな艦艇が日本へ逃げ込んでくる、当然それは条約がある以上は一時緊急避難というふうな面で、これは若干の停泊あるいは修理その他を受け入れざるを得ない。そうするとその場合、ソ連が中国の艦艇を攻撃ということで、当然日本侵略を、あるいは日本攻撃――日本をではありませんが日本に停泊をしておる中国の艦艇を攻撃をするということはやはりあり得ると思うんですが、これはどうでしょう。
  306. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これもまあ外交上の問題でございますが、国際法上の問題から御説明するのが適当かと思いますけれども、私の知り得る範囲の知識で言いますと、たとえば日露戦争のときに黄海の海戦で傷を負ったロシアの艦艇が青島に逃れていったことがございます。このときには国際法の規定によりまして、これを武装解除して、そしてまあ拘置したというようなことがありますので、それが直ちに攻撃の目標になるかどうかということはわかりませんけれども、国際法上の規定に従って処理されるものだというふうに考えております。
  307. 井上計

    ○井上計君 まあいろいろと仮定の上に立って、またさらに仮定の問題ということですからお答えにくい点があろうかと思いますが、そこで、これは仮定じゃございません。私があるところで聞きました情報によると、ソ連が、先ほどお話がありましたが、極東海軍が非常に増強されておる、それらと関連するんだと思いますけれども、台湾政府に対して海軍基地、あるいは基地と言ったかどうかわかりませんが、租借の申し入れを行ったというふうな実は情報を聞いたことがあるんですが、防衛庁としてはそのような情報をどのように入手されておるか、あるいは入手されておるとすればどういうふうに分析をされておるかお伺いしたいと思います。
  308. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) そういった情報は全く聞いておりません。
  309. 井上計

    ○井上計君 そうですか。聞いておらぬと言われるとそれ以上お尋ねの方法がないわけですが、かなり確率の持てる確実な情報としてそういうふうな情報が各方面に流れておるという事実があります。これにつきましては、一度ぜひひとつ防衛庁としても、あるいはまた防衛庁だけの問題ではないかと思いますけれども、そのような情報調査をぜひともひとつしていただく必要があるんではなかろうかというふうに思います。と申し上げますのは、もし万一そういう事態になったときに、実は大変な問題が起きるんではなかろうかと、こう思いますのは、ブラウン国防長官が上院の軍事委員会あての文書の中ではっきりこのように述べておると、「在韓米軍の撤退後は、日本の北東アジア海上交通路の防衛分担が不可欠の条件となってくる。日米両国がこの分野で協力することは、両国の利益にかなう。日本は対潜能力を改善すべきである」、まあこういうふうな軍事委員会あての文書を出しておるし、さらにまた、ハロウェイ海軍作戦部長が下院の軍事委員会で七九年度国防予算についての証言の中で「欧州で紛争が発生、太平洋の米海軍力を振り向けなければならなくなると、日本を含む西太平洋の同盟国に対する海上交通路は軍事的なもの以外確保できなくなる」ということをはっきり述べておると、こう伝えられておる。その場合に、もし、先ほど情報として私お伺いしましたけれどもソ連が台湾に対して海軍基地の租借を行う、そこで中ソの間の紛争がさらに激化する、また海上交通路は軍事的なもの以外についてはアメリカが確保することは不可能であるというようなことになってくると、台湾海峡を通っておりますところの日本の輸送船舶、これは相当な量でありますけれども、それらの面に対する脅威というものが発生をしてくると思うんですけれども、それらについてはどういうふうな分析、見解をお持ちでしょうか。
  310. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) わが国が四方を海で囲まれておりまして、海上交通の安全ということは重要であるということは、私どもは前々から考え、それに従って防衛力整備をしてまいっているわけでございますが、いま先生が言われましたような、台湾にソ連の基地ができるかどうかということは、新聞情報以外には私ども知らないわけでございますが、現実的に考えてみますると、台湾とアメリカとの間には米華防衛条約があるわけでございます。したがいまして、そういうことが現実に行われるかどうかということは、ほとんどいまの段階で即断することはむずかしいと思いますけれども、本当に日本という国は周りが海で囲まれているわけでございますから、海上の平和ということはきわめて重要な問題だというふうには考えているわけでございます。
  311. 井上計

    ○井上計君 仮定の問題で、また現時点では考えられないというふうな問題でありますが、お尋ねするついでに、万一その場合、ソ連が台湾海峡を制圧をする、これは日本目的ではなくても、中国とソ連との間の問題でありますが、中国に対する一つの戦略的な方法としてソ連が台湾海峡を制圧する。その場合、日本の輸送船舶がソ連の海軍の脅威にさらされたという場合に、日本防衛という問題はその場合どういう形で行われるかということをお伺いいたします。
  312. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それも大変むずかしい御質問でございまして、現に第七艦隊というものが西太平洋に展開されているわけでございます。したがいまして、その制圧するというような事態があるのかないのかということになりますと、私どもはきわめて公算としては少ないというふうに考えられるわけでございます。いずれにいたしましても、海上の交通の安全というものは一国だけでできるものではございませんので、多くの国々の協力のもとに平和を守っていかなければならない問題だというふうに考えているわけでございます。
  313. 井上計

    ○井上計君 余り仮定に基づいてのむずかしい質問ばかりしてもどうかと思いますので、それではひとつ資料等をお持ちであろうと思いますが、お聞きしたいと思いますが、先ほどお話がありましたが、ソ連極東軍が非常な勢いで増強をされておるということであります。特に大型化されておる、あるいはミサイル化されておるということでありますが、最近のソ連極東軍、陸海空、それらの状況等について御説明をいただきたいと思うんです。
  314. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 極東に配備されております最近のソ連軍事力というのは、陸上兵力につきましては約三十個師団、三十万人以上の兵力が展開されているというふうに理解いたしております。海上兵力につきましては、先ほども申し上げましたように約百二十万トン、そのうち百二十五隻程度の潜水艦が含まれていると承知いたしております。航空兵力につきましては、先ほど大臣からもお答えいたしましたように約二千機でございます。この中には戦闘機、爆撃機を含んでいるわけでございます。
  315. 井上計

    ○井上計君 その百二十五隻の潜水艦のうち、原潜はどれぐらいあるんですか、それから二千機の航空機のうち、ミサイル搭載機はどれぐらいあるんですか。
  316. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 原子力潜水艦は約四十五隻程度であったと記憶いたしておりますが、ミサイルを搭載できる飛行機の数といいますと、ミサイルといいますと空対空のミサイルあるいは空対地のミサイルということでございますが、いわゆる戦闘機といいますか、戦闘爆撃機、そういったものは一応ミサイルを積めるということでございますと、戦闘機につきましては約六百機程度でございますか、戦闘爆撃機につきましては七百機程度のものが配置されているようでございます。
  317. 井上計

    ○井上計君 もう一つ陸上兵力三十万人ということでありますが、このうち戦車は何両ですか。――じゃ、後でいいです。  関連して、アメリカ極東政策の変化、特にアジア離れということでお伺いしたいと思っておりましたが、先ほど黒柳委員の御質問にも若干お答えがありましたので、これは質問を省略いたします。  そこでお伺いしたいのですが、一番最近の主要各国の軍事予算、あるいは防衛予算、どちらになるか知りませんが、軍事予算のGNPに対する比率、あるいはそれと同時に、それぞれの国の一般会計の予算に対する比率、それらをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  318. 原徹

    政府委員(原徹君) 英国の国際戦略研究所のつくっておりますミリタリーバランスによりますと、ソ連は、これは実は国防費が必ずしも十分わかっておりませんが、ミリタリーバランスの推測では、GNPに対する比率は一一ないし一三%と書かれております。国防費の歳出予算比はわかりません。それから、アメリカはGNP対比の比率が六%、歳出予算に対する比率が二四・四%、それから西ドイツでございますが、これはGNP対比が三・六%、歳出予算対比が二二・九%、それからフランスはGNP対比が三・七%、一般会計対比が二〇・四%、それからイギリスはGNP対比五・一%、歳出予算対比一一・四%、そんなところでよろしゅうございますか。
  319. 井上計

    ○井上計君 中国は。
  320. 原徹

    政府委員(原徹君) 中国は、これは不明でございます。
  321. 井上計

    ○井上計君 ベルギーはどうですか。
  322. 原徹

    政府委員(原徹君) ベルギーはGNP対比三%、それから予算対比が一〇・四%でございます。
  323. 井上計

    ○井上計君 私のいただいておる資料によりましても、いま御説明いただいたとおりでありますが、率直に申し上げて主要各国の国防費のGNP対比あるいは歳出予算比等をずっと見ましても、わが国が最低であるわけですよね。わが国は〇・九%、GNP対比、それから一般歳出比が五・九%であります。ベルギーにおきましても一般歳出比は一〇・四%である。ソ連、内容よくわかりませんし、また中国もわからぬというお答えでありますが、これらから考えまして余りにも少ないというふうな感じがいたします。さらに、国民一人当たりの国防費等から見てまいりましても、わが国ソ連の十分の一であるというふうなことになっておるようですが、これについてGNP対比一%というふうな従来の政府見解がこの際どうだこうだというふうなお尋ねは長官にいたしませんけれども、長官としては、これらのわが国の国防費、防衛費が、主要各国の国防費と比べて果たしてどうであるか、ひとつ御見解をお聞きをいたしたいと思います。
  324. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 自衛隊、防衛庁の予算につきましては、いろいろの御意見があるわけでありますが、きょうまで積み上げてまいりました防衛庁予算というものを踏まえて、国防会議が当面GNPの一%というふうに決めた、これは逆立ちじゃないかという御意見もあります。しかし私は、これは逆立ちでなくて、いままで積み上げてきたその内容の中で、当面一%程度でこれからしばらくはいけるという考えの中で決めたわけでありまして、まあできることであれば、防衛庁の予算というものは国民の理解を得ながら、上げるということについても十分な理解を得なければならぬということは当然でありますし、そういう意味で、国民の負担になるような予算であってはならないことは当然でありますが、各国の予算を比較してみますと余りに小さいという考え方もあるかもしれません。しかし私は、防衛予算というものは、憲法にのっとって、その憲法の精神をできるだけ生かさなくちゃいけないというような考え方で当面一%以内というのが妥当ではないか、こう考えておるわけであります。
  325. 井上計

    ○井上計君 防衛予算が、現在の情勢の中でGNP対比一%が多いか少ないかという論議、これはまた非常にむずかしい問題でありますから、また別の機会にさらに突っ込んでお伺いしたいと思っておりますが、いずれにしても、国際責任というふうなことが特にこれから強く問われるようになると思います。日本日米安保のいわばかさのもとでいままで平和を保ってきたわけでありますけれども、今後さらに日米安保条約を有効に機能さすために、またアメリカが、やはり日本をあるいは極東を守るというふうな、アメリカにそのような義務感をさらに強く持ってもらうためには、日本が守るに値する価値のある国だというふうにアメリカに感じてもらうことがやはり重要ではなかろうかというふうに思います。その意味では、西ドイツ並みに国際責任をもっと日本が果たしていく、あらゆる面で。そういうことが必要であろうというふうに思いますが、それらのことにつきましても、特にこれは今後とも、長官また防衛庁いろいろとそういう面でお考えであろうと思いますので、私の意見としてひとつ強く申し上げておきます。  先ほど和泉委員質問に長官お答えでありましたが、脅威を与える防衛、そういうふうなことについて長官の御見解を承りました。私も長官の御見解と全く同感でありまして、先ほどたまたま私がそう常に考えておるような、いわば猛犬ありというふうなことを一つ例にお出しになりましたが、われわれが――まあわれわれがという言い方がおかしいですが、どこかよそへ行った場合に、犬がおってもその犬はほえるだけで絶対に飛びついたりかみついたりしないというふうな安心感があれば、やはり堂々と平気で入っていきますけれども、その犬がほえるであろう、あるいはさらにかみつくであろう、飛びつくであろうということになりますと、まあなかなか入りにくいというふうなことと同様であろうというふうに思いますが、今後これらの問題等についても、十分長官の御見解を広く国民が素直に理解できるような、そのようなお考えをよく今後とも大いにひとつお広めをいただきたい。これは要望いたしておきますが、長官、それについての一言御見解をひとつ承りたいと思います。
  326. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 国会へ参りまして、委員会で井上委員のような御理解をいただきましたことは初めてでありまして、非常に感銘をいたしております。ありがとうございました。
  327. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 先ほど質問ございました戦車の数でございますが、これはなかなか具体的なことはわかりにくいわけでございますが、いろいろな資料から判断いたしまして約七千五百両というふうに見積もっております。
  328. 井上計

    ○井上計君 もうちょっと、若干時間がありますのでお伺いをいたしたいと思います。  五十三年度は定員増が予算上全く行われておりませんね。これは何ですか、現行の定員でも十分であるからということであるのか、あるいは五十四年度以降は定員増についてはどのようなお考えがあるのかお尋ねいたします。
  329. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 御承知のように陸上自衛隊は十八万体制というもので推移いたしております。海上自衛隊と航空自衛隊につきましては、艦艇、航空機の就役に伴うもの、あるいは部隊の新設に必要な定員というものを毎年お願いをしてまいったわけでございますが、五十三年度につきましては、艦艇、航空機の就役に見合う定員増の所要といたしまして二千九十八人ございました。さらにまた、他の部隊の新改編、機材の運用等に伴うものとして二百三十九人を見積もったわけでございます。したがいまして、艦艇、航空機の増に伴う所要のものといたしまして二千三百三十七人となったわけでございますが、一方、艦艇、航空機の古いものが除籍になってまいります。そういった除籍に伴う定員の減というのが千八百十五人ございました。それから機材の更新によりまして、新しい機材になりまして合理化されることによります定員の減というものもございます。あるいは仕事の合理化等に伴って行われます定員の減というものがございます。そういう関係が五百二十二人ございまして、これらを振りかえることによって五十三年度は実質の増員というものは必要がないと判断をいたしましたので、定員の増を行わなかったわけでございます。しかしながら、御承知のように、艦艇、航空機の更新に伴い必要な増員というものが、今後そう多くはございませんけれども、行われると思いますので、五十四年度以降必要な定数については、こういう形でまたお願いするか、あるいはまた総定員法のような形である一定の上限を切ったような形でお願いするか、そういったものについて今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  330. 井上計

    ○井上計君 もう一つお伺いします。  いま、定員増については五十四年度以降についてのお考えもお聞きしましたが、当然今後ますます防衛力の質的な変化といいますか、資質の向上という中で配置転換が当然これは行われる、また配置転換等を考えることによって資質の向上ということが当然必要であろうというふうに思いますが、その場合現行法で十分であるのか。いまちょっと局長お話しになりましたが、総定員制というお話がありましたが、総定員制についてどういうふうにお考えでありますか、ひとつお伺いいたします。
  331. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは四次防をやりましたときに自衛隊がどんどんふえていくというような御批判もございました。そこで、先ほど申し上げましたように、総定員といいますか、人員については大体これぐらいのものということで、かつて久保防衛局長が三十万人というようなことを申し上げたこともございます。しかしながら、その後防衛計画大綱が決まりました関係で、いわゆる勢力的には大体四次防が終わったときの状況であるということになりましたので、人間の面でもある程度定員というものを見通し得るのではないかというふうに考えたわけでございます。陸上自衛隊の十八万というものは、これは維持してまいりたいというふうに考えておりますし、艦艇、航空機も防衛計画大綱で定められた中におきます必要な人員というものが出てくるのではないかと、で、それがもし多少のバッファーを持って決定されるならば、それを決めていただくということが、国会において人員の面のシビリアンコントロールというものをはっきりさせていただくという方法もあるかと考えておって検討しているわけでございますが、実は航空機と艦艇につきましては、ただいま御説明申し上げましたように、ふえていくものと減っていくものとを相殺しなきゃならないわけでございます。その場合に、質的向上によってどれぐらいの人員の余剰ができるのか、あるいはその質的向上によって整備の面なんかでどのぐらいの人間が要るのかというのは、具体的に艦艇、航空機というものに即して事務的には積み上げていかなければならない問題でございますので、陸上自衛隊がその定員の数によってある程度勢力を表明するというのとはやや異質のものでございます。そういった点で、なかなか事務的に積み上げて国会の御認識をいただけるような数字というものが出るのかどうかというような点につきましては、現在研究いたしておりますけれども、技術的にはむずかしいというような感じもございます。しかしながら、毎年百人とか二百人という数字がどういうわけで必要なのかということは、この国会においてもなかなか御理解しにくいということを私どもは体験いたしておりますので、合理的な数字というものが得られるならばそういう方向も考えられるのではないかというふうに思っているわけでございます。
  332. 井上計

    ○井上計君 なかなか国会で理解をしてもらいにくい。したがって、そういうふうな意味でなかなかそういうふうなものを出しにくいと、こういういまお答えなんですが、最後に長官にこれは要望いたしておきますが、長官は大変タカ派だというふうなことを、いろいろと、非難であるのかどうか知りませんが、言われておられるようであります。私はタカ派大変結構ではなかろうかと思いますのは、確かに先ほど山中委員から、日米安保があることによって実は国民の安全が大変危険に瀕しておると、こういうお話がありました。もちろん米軍機の事故あるいは従来ありましたような事故等については、これは絶無を期すために最善の努力をしてもらわなくちゃなりませんけれども日本全体の安全保障を考えるときに、私はもっと防衛問題等については、長官もいろんな批判等あるかもしれませんけれども、毅然とした態度で、国民に、日本がどのような脅威にさらされておるか、あるいは近い将来どういうふうな問題が国防上起きるかというふうなことは、私は勇気を持ってやはりおっしゃるべきだと、何か遠慮して言われるところに、逆に国民がかえって事実を認識をしないで、何かあいまいな状況の中で、日本防衛なんというのは全く必要ないんではないかと、こういうふうな誤った考え方をしておる、あるいはしつつある国民が多いんではないかと、こういう感じも多分にいたしますので、ぜひひとつ今後とも勇気を持って、何もわれわれは事を構えるとか、あるいは他国を侵略する云々とかというのは毛頭ないわけであります。   〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕 やはり防衛のためにはお互い国民がもっと関心を持ち、そうしてさらに、その方向に向かって努力をしていくということを国民に理解徹底をしていただくように、大いに今後も長官ひとつ御検討いただくよう最後に要望して質問を終わります。
  333. 秦豊

    ○秦豊君 朝からの質問で、きょうの読売が朝刊の一面のトップで報じた「極秘に「外務省見解」」「基地整備も含める 地位協定を柔軟に解釈」という事項についてはかなりな質疑が展開されたものと思いますけれども、あえて私が多少の重複をして申し上げますのは、これは去る昭和四十八年三月十三日の衆議院予算委員会、われらが楢崎弥之助の質問に対する大平答弁が基軸になっていますので、それから発していますのであえて確認を含めてあなた方の考え方を聞いておかなければなりません。  まず、外務省からいきましょう。外務省当局は、あの読売の報道に対してはいまこの時点でどういうことを言いたいですか。
  334. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来の御論議でもお答え申し上げたところでございますが、この読売の新聞に報ぜられましたところの外務省の考え方なるものは、四十八年の当時に大平答弁が出ましたのは三月でございますが、その数カ月後の時点で、その大平答弁に至りますところの国会の論議及びその後数カ月間にありましたところの論議をいろいろ整理して、こういうふうに考えるべきであろうかということで執務の参考用につくったペーパーということでございます。私自身、まだその詳細について、実はまことに申しわけありませんが、十分に検討して、いまの時点でこれがいいとか悪いとかというようなところまでいってないわけでございますが、いずれにせよ、それは当時の執務参考のためにそういうものをつくったということでございまして、いま政府の見解が、これに直接基づいてどうこうということではないということをとりあえず申し上げさしていただきたいと思います。
  335. 秦豊

    ○秦豊君 アメリカ局長が、あの報道はわが意を得たものと心得ます、なんて言ったら大問題だからね、そう答えなきゃならないけど、あれは政府筋なんですよ、外務省筋じゃない。政府筋が言明したとなると大体官房長官から上というふうな常識もあるし、ちょっとその周辺という観測もあながち無理ではないんだから、だから政府筋は絶えずこういう問題、小出しにするわけですよ。つまり観測気球、野党の反撃、世論の反応、いろいろ見てそろりそろりとくるわけだ。だから、それはもう常套手段だから、私たちはしたがって警戒を強めているわけなんですがね。だから政府筋の言明として、しかも模様じゃない言明、かなりな根拠を持たなきゃ普通マスコミはこういう扱いはしない。だから、あなたはもちろん立場上とやかく言えないかもしれないけれども、この方向というのは、あなた方が三カ月後にまとめたいわゆる見解なるものとほとんど同じ線上ですよ。あなた方にとっては不愉快じゃないでしょう。むしろ歓迎さるべき内容じゃないんですか、違いますか。
  336. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま申し上げましたように、当時のその見解なるものが、現在の時点に照らしてどうこれを考えるべきかという点について、実は私どもが検討をしていないわけでございます。したがいまして、いま先生の御指摘のような、それがいまの私どもの心境に照らしてわが意を得たりというようなことであるかどうかという点については特に言明を差し控えさしていただきたいというふうに存じます。
  337. 秦豊

    ○秦豊君 亘理長官ね、防衛施設庁から見ると、この報道ははなはだ迷惑に存じているんですか、どうなんですか。
  338. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 私もけさほどその記事を拝見したわけでございますが、この見解なるもの全然承知しておりませんでしたので、これから十分研究させていただきたいと、こう思うのでございます。
  339. 秦豊

    ○秦豊君 そうすると、いままでの質疑応答の中で、少なくとも防衛施設庁、また少なくとも外務省は、四十八年三月十三日の大平答弁はいささかも踏み外さないということを確言できるわけですね、改めて。今後いかなるありようの中でも大平答弁は踏み外さないということは確言できますか、改めて。
  340. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先般も外務委員会で楢崎先生そのものからのこの点についての御討議があり、またきょうの御論議でも、施設庁長官、それから私からも申し上げたところでございますが、いずれにしろ、現在具体的に米側からいかなる要求があるのかという点でございますが、具体的にはその要求に接していないということでございます。そこで、したがいまして、将来これからどうするかという点につきまして、いま特に確定的な見解があるわけではないのでございますが、その外務委員会での御討議がありましたときにも、外務大臣また施設庁長官からもお答え申し上げましたけれども政府としていま大平答弁を変更するというようなことを考えていることはありません、こういうことでございます。
  341. 秦豊

    ○秦豊君 亘理さんは、四日のラビング司令官と丸山事務次官との会談は同席されましたね。あれは申し入れという日本語になっているのですよ。申し入れというのはリクエストじゃないのですよ、もっと強いアピールあるいは要求そのものというのが常識でしょう。丸山事務次官はただ聞きおいただけだという報道も散見されるけれどもアメリカ側にしてみれば、一定のタイムスケジュールと一定の見解に従ったこれは正規の要求なんですよ、やがて聞きおくなんていうことは言えなくなる。そうじゃありませんか。
  342. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 先ほども四日のラビング司令官が防衛庁に参りましたときの要請についてお尋ねがありましてお答えしたわけでございますが、これは繰り返しになりますけれども、五日から事務次官が東南アジア等へ出張に出ます前日でございまして、ラビング司令官が表敬訪問ということで参りまして、私立ち会いましたけれども、その内容は雑談的なあるいはあいさつ的なことに終始いたしまして、内容のある会談、あるいは申し入れというふうなものがあったことはないわけでございます。これははっきり申し上げられるわけでございます。時間も三十分ぐらい、通訳を含めて三十分ぐらいでごく雑談的なことで終始したと。これは新聞記事が出ましたときにも、次官にはああいうことを次官は言われたのかと、私の承知しているところと違うがということを尋ねたわけでございますが、次官もそういうことは言ってない、こういうことでございます。
  343. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ外務省ね、あなたアメリカ局長で、決して条約局長じゃないから、やや分野がずれるんだけれども、あえて聞きますが、いやしくも二国間の協定が現存した場合、一行政官庁が解釈、適用、運用を勝手に広げるということは、私は邪道だと思う、許されないと思います。現実と乖離して協定や条約に矛盾、乖離が生じた場合には、協定や条約そのものを改めるのがむしろ正しい両国関係のありようじゃありませんか。今後とも、じゃあなた方はいわゆる外務省見解なるものは援用しない、適用しない、あくまで四十八年三月十三日、大平外務大臣の答弁の線を、答弁の線ということは地位協定第二十四条二項、あの解釈、あれは在来どおり踏襲するということになるんですよ、確信していいんですね。
  344. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 条約の解釈につきましては、御承知のように私自身の直接の所掌ではないわけでございますが、私どもも条約の解釈を踏まえまして一定の所掌事務を進めることになるわけでございます。ところで、大平答弁は、地位協定の第二十四条につきましては先般来御説明申し上げたところでございますがということで、地位協定の解釈につきましては、当時いろいろの御論議が行われていたわけでございます。そこで、しかるにもかかわらず、その御論議に徴して、この際政府としてはその運用については原則として代替の範囲を超える新築を含むことがないように処置すると、こういうことを述べられたわけでございます。これが直接、条約の解釈と、法律的な解釈というようなものとはちょっと違うことなんだろうというふうに理解いたしておりますが、いずれにせよ、この大平答弁で述べられた趣旨は踏まえながら、今後も事態に対処していくということは、先ほど来施設庁長官もお答えになっておりますし、私どももそう考えておりますということを申し上げておるわけでございます。
  345. 秦豊

    ○秦豊君 それじゃ話をしぼりまして、あなたの答弁が部分的に正しいですよね、つまり、私は見解をつくったことが直ちに違法を構成するなんて言っていませんよ。これはあなた方が、主務官庁としてどうだろうなと問われれば作文をさっと提出する、A案からC案ぐらいまでね。これはあなた方の特殊技能だからそれはちっとも構わないと思う。ただ問題は、大平さん時代の「原則として代替の範囲を超える新築を含むことのないよう措置する」ということは、いわばこの見解のようにはふくらまさないということなんです。これが原点なんですよ。ところが、ちょっと目を離すとあなた方すぐ広げる。いわゆる土俵を広げる、弾力化する、そういう下敷きがあるから政府筋の言明というふうに、だんだん周囲を見ながらざんごうから出てきて、うかがいながら匍匐前進する。これまたあなた方の特殊技能だから、そういう意味で私たちは絶えず厳重なチェックをしなければならないと言っている。じゃあれですね、少なくとも亘理さんとアメリカ局長は、見解があろうがどうしようが、山中議員も相当追及されておったようだが、今後は昭和四十八年三月十三日、あれを一歩も踏み外すことはない、厳重に拡大解釈しないで適用するというのを重ねて確信をしてもらってから次の質問にいきますが、どうですか。
  346. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま、また先ほど来もお答えを申し上げましておりますとおりに、きょうの新聞に載りました見解そのものは私自身もいまだ精査しておりません。これが果たして現在の段階の政府の見解としてとり得るものであるかどうかというところの判断はなし得ない状況。それはなぜかと申しますと、当時の執務参考のためにあるペーパーをつくったということであって、これはこれ自身が外務省の公式見解というようなものではないからでございます。他方、大平答弁の内容につきましては、この趣旨を踏まえて今後も対処していくということを、繰り返しになりますけれども、その点は先ほど来お答え申し上げているとおりでございます。
  347. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁長官にぜひ伺っておきたいんですけれども、これ、とんだ黒字減らしになると思うんですよ、私。いま日本政府、はなはだおおようにできていますから、三百億ドル近い、紙くずに近いドルの山の中で、かなりおおようになっている。これはとんだ黒字減らしになりますよ。黒字減らしというのはもっとほかの分野で、ほかのアイテムでやってもらいたい。こういう無原則に、NATOでもやっていないような方式を、西ドイツもやっていないようなおおようさを大盤振る舞いすることによって日米間の摩擦を緩和するとか、あるいは日米安保体制の基盤を強化するとか、これは見当違いだと私は思っている。だが長官はどうですか。
  348. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 私は防衛庁の予算というものは、まさにシビリアンコントロールというものは歯どめがある。時に、状況により黒字減らしにこれを使うというような考え方は、これは逸脱した行為だと、こう考えておるわけであります。
  349. 秦豊

    ○秦豊君 間淵さんね、いまライセンス生産の話でノートの準備をしていますけれども、この前予算委員会が時間切れになりましたので聞けなかったんですけれども、F15のライセンス生産について、たとえばホットセクション、あるいは電子式燃料管制装置というふうな枢要な部分については、アメリカの国防総省とメーカーを含めてリリースはいたしかねるというふうな中間的な回答は参っておりますか。
  350. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) F15のライセンス生産に関しまして、先日来予算をお認め願った後で、五日からアメリカと交渉を続けてまいったわけでございまして、その間に実務者同士では実質的な合意に達したというような現状でございまして、F15のライセンス生産に関しまして、先生も御承知のように、当然暗号であるとかECMであるとか、そういうものは、生産ではなくて、まあ販売、使用、そういうもの自体が許されないというのが常識だろうと思うわけでございますが、そのほかの部分に関しましては、たとえばエンジンならエンジン、電子機器なら電子機器というようなものにつきましては、総体としての生産というのはリリースされることになると思うわけでございますが、そのうちのごく一部といったようなものについては、生産のリリースが行われないというものもあるというところがあるのも確かでございます。
  351. 秦豊

    ○秦豊君 もう少しシャープに具体的にお答え願いたいんですが、たとえば国産化率をぼくはつかみたいんですよ、FXの価格に連動していきますからね。納税者の重大な関心の一つです。だから聞くんですが、やはり私が申し上げた二つの重要なセクション、これは大変重要な部分なんで、リリースを拒否されている部分はどういう部分なのか、それからもう一つボデーとかエンジン含めて国産化率はどれくらいになるのか、それによってFXの当初積算価格より値段は上がるのか下がるのか、下がるとすればどれぐらいになるのか、一機当たり。これを明らかにしてください。
  352. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) リリースを拒否されておる部分、非常に詳細な部分というのは申し合わせによりまして公表しないということになっておるわけでございますが、たとえばエンジンのコアの一部、タービンの何とかのブレードといったような、非常に最先端的の技術という部分は生産のリリースが現段階では拒否されておると。もちろんこれはタイムフェーズでときどき相談してリリースを行っていくということにはなっておるわけでございますが、現段階ではそういうことになっておるわけでございまして、そういうものを前提といたしまして国産化率というのを考えてみますと、第一次契約におきましては、F15につきましては約四〇%と、こう見込んでおる次第でございます。
  353. 秦豊

    ○秦豊君 値段。
  354. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 値段は予算で説明申し上げておったところでございますが、二十三機平均で、F15に関しましては補用部品込みで七十億円でございます。   〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕
  355. 秦豊

    ○秦豊君 いや、在来の価格がでしょう。そうじゃなくて国産化率が減ったわけですから、その波及効果というか、連動してどうなるかということを伺っているのです。
  356. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 国産につきましては、昨年来実務者同士いろいろな話し合いをしておったわけでございまして、予算を提出する段階におきましてある程度の感触を得ておったわけでございまして、今回の決まった点もそれと余り離れるところはないということでございまして、従来と変わりはございませんです。
  357. 秦豊

    ○秦豊君 値段変わらないわけですか。
  358. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) もう今回生産のリリースが認められなかった部分につきましては、予算が決まる前から大体わかっておったところでございまして、したがいまして値段は変わらないことになります。
  359. 秦豊

    ○秦豊君 あなた方と密接な防衛産業という観点から見ると、工程がかなり減ることはもう事実ですね。工程数が激減する、激減か微減かわかりませんが、国産化率四〇%なんてことになりますと工数が減りますね。そうすると、余り防衛産業から見たら妙味がない。F15をせっかく導入する意味合いと技術の波及効果、それから妙味がないというふうにはなりませんか。
  360. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) これは立ち上がりの第一次契約でございまして、この第一次契約におきましては三十三機の予算でございますが、そのうち八機というものは完成品で輸入するわけでございまして、あとの残りの十五機のうち八機がノックダウン生産、それから七機が本当の意味の国産の部品を使ってのライセンス生産ということでございまして、ここら辺どの部分がライセンス生産から拒否されるであろうといったところは予想したとおりでございまして、したがいまして、私ども考えておりました工数といったようなものにも変化はないわけでございます。
  361. 秦豊

    ○秦豊君 少しはあなたの見方がちょっとずれてるんですね、失礼だが。あのね、ホットセクションとか、電子式の燃料管制装置とか、それから装備で言っても中央のデジタルコンピューターとか、そういう、火器管制装置もちろん入るんだが、なぜアメリカがこの段階で、ノートを交換しようという前になって、あなたは前からわかったなんておっしゃるけれども、そうじゃないんで、だんだん厳しくなってるんですよ、日本に対する条件が。これはなぜですか。
  362. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) この段階になって減ったということではございませんでして、今回実質的な妥結に至った点に関しましては、前々の話し合いの間からわかっておったところでございまして、言葉の端々の間には、ちょっとこれはきついことを言いよるなということはうかがわれたわけでございますが、実際の工数、それからリリースの範囲といったようなものに関しましては、前々からわかっておったその範囲でございます。
  363. 秦豊

    ○秦豊君 じゃP3Cはどうなりますか。問題は対潜哨戒機の中身ですよね。相手はユニバックですよ。日本の通産と富士通連合、もう至れり尽くせりの連合組んで過保護でやっているんだけれども、相手はユニバックだからF15よりさらにむずかしいですよ、勝負は。だから、たとえばP3Cのコンピューターを中心にしたシステムの、じゃどこをどれぐらい国産化できるかというのはやがて大きな問題になるわけですよね。F15の場合よりもむずかしくはありませんか。ライセンス生産とおっしゃっているんだけれども、どこをどれぐらい可能なんですか。
  364. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) P3Cに関しましては、初めの国産化率、これは八機のうち三機を完成品で輸入いたしますから、四機がノックダウン、一機が完全ライセンス生産ということでございますが、この国産化率はおおむね四四%を見込んでおるわけでございまして、コンピューターにつきましてはライセンス生産の許可が出ております。
  365. 秦豊

    ○秦豊君 やはり、いまF15、時間がないからこれもっとゆっくりやりましょうね、これ。あなたの言っていること違うと思いますが、問題はその話し合いがどこまで進んでいるのかというのは、もう予算が四月四日にあれしたんですから、これすぐ具体的になるわけですよ。話はどこまで進んでいるんですか。
  366. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 実務者同士ではかなり細かい部分まで進んでおるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、ちょっと申し上げることができないのははなはだ残念でございますが、われわれが当初予期したところまではきちんと進んでおりますです。
  367. 秦豊

    ○秦豊君 それで、アメリカ日本防衛庁に対する警戒心を抱き始めているというのは別な理由があるんだけれども防衛局長はそんなことは把握していらっしゃいませんか、リリースの内容、比率に関連して。
  368. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 何か警戒をしてリリースについてアメリカが態度を変えているというふうには理解いたしておりません。
  369. 秦豊

    ○秦豊君 対潜機に関係して、ホークアイですね、E2C、早期警戒機。これはやはりいまのテンポからいったら、夏の概算ぐらいから秋口にかけて入れなきゃいかぬとすると、調査団はそろそろ送る、もう送ったんですか、送るんですか、どうしますか。
  370. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは先般も御説明いたしましたように、私どもといたしましては、現在まで調査を終わった段階ではE2Cという飛行機が適当だと考えております。で、このバッジシステムとの連結といいますか、いわゆる艦載機を地上で運用するわけでございますので、そういった関係の調査ということでなるべく早く出したいと思っております、か、まだ行っておりません。
  371. 秦豊

    ○秦豊君 ぼくの質問は全部防空システムの周辺をいっていますからね。移動式レーダーの装備状況を簡潔に答えてもらいたいんだが、あの三菱がつくっている。これは抗たん性強化に絡んで聞いているんですが、北部、中部は一応移動式レーダーの必要セットは配備済みなのか、じゃ残るとすれば西部なのか、それはいつごろ配備されるのか、この辺を参考のために。
  372. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 北部と西部につきましては配備を終わっておりまして……
  373. 秦豊

    ○秦豊君 西部ですか。
  374. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 西部でございます。――失礼しました。
  375. 秦豊

    ○秦豊君 違っているんでしょう。
  376. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 北部と中部を終わりまして、次が西部でございます。
  377. 秦豊

    ○秦豊君 そうすると、レーダーサイトがもし破砕された場合の最低限度のいわゆる警戒能力はそれによって保たれると見ていいわけですか。
  378. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 最低限度というのがどういうことでございますか、現在の移動式レーダーというのはそれに代替するものでございますが、現在の固定式の三次元レーダーと同等の能力は持っていないわけでございます。
  379. 秦豊

    ○秦豊君 時間がそろそろ迫っているようですから、これはどなたの担当でしょう。長官、防衛白書はまた出し続けるわけでしょう。出し続けるとすれば、私の記憶では夏ごろあれ出てきたように思うんだが、ことしもそのテンポですか。
  380. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 七月に出す予定にいたしております。
  381. 秦豊

    ○秦豊君 そうすると手回しよく一次案、二次案、素案というか何というか知らぬが、もうでき上がっているんでしょう。
  382. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 現在私の方の官房の審議官が長になりまして、各幕からも担当者を入れまして作成チームをつくりまして、単なるいまその辺の素案が大体できつつあるようで、来週あたりにわれわれの参事官会議に第一次案をかけるべく作業を進めておるというところでございます。
  383. 秦豊

    ○秦豊君 かなり今度は大胆でフレッシュじゃないんですか。たとえば、いままで三回の防衛白書でははばかってきたような用語を大胆に出すとか、たとえば、あなたもう見ているはずだが、ソビエトを踏まえまして、井上委員も聞いておられたが、対象航空機とか、それから対象潜水艦というふうな言葉がぽんと初めて出てきて、読者の方がごらんになると、納税者の方がごらんになると、ああ初めてだな、防衛庁はかなり大胆になったな、言うべきことははっきり言おうというさっきの井上議員の激励のような、そういうものにこたえようとする姿勢が今度の第四回では出るんじゃありませんか、かなり特徴的な白書になりそうなんでしょう、違いますか。
  384. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) 五十一年に出しましたのは、大体概括的に防衛関係全部まとめました。五十二年のものは特に装備関係、F15、P3C等国民にわかってもらうべくそれに中心を置くと、こういうふうに思います。五十三年度は当然第一に、従来からやっております国際軍事情勢をまず第一に挙げると思います。それから、五十三年度の防衛力整備の概要、これに中心を置きます。あとやはり最近の国会で防衛力の歯どめ論等いろいろございましたですね、こういう点をもっと国民にわかってもらうことに力を入れるべきではなかろうかと思います。また、従来から国会でも、基地というものは非常に国民に大きな影響を与えるし、防衛上も大きな問題がある、この基地問題なんかももう少し取り入れるべきじゃなかろうかというようなこと等もありますので、できるだけ国民にわかってもらうべく、できるだけフレッシュなものにしたいということで進めてくれております。いまの対象潜水艦とかいうの、実はまだ私のところに上がってきていないんです。そういう用語を使っているかどうか私知っておりません。しかし、そういう言葉を使うべきかどうか、これはもし使っておるようでしたら参事官会議で十分に検討しなきゃならぬ、このように思います。
  385. 秦豊

    ○秦豊君 使っているようですね。だから問題は参事官会議でやってください。  それから基盤的防衛力構想、久保さんの置きみやげ、これは平和時の防衛力ですね。今度の竹岡官房長言われたのは、有事のため、あるいは有事の際の防衛力というふうなところが第四回防衛白書では一つの主流というか、色濃く流れる構想の一つじゃありませんか、あるいは特徴の。違いますか。
  386. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) やはり私は防衛全般につきましては、現在基盤的防衛力が中心で、この流れに沿っていくべきだと思います。有事に沿っての、いわゆる拡大する、エクスパンションの防衛上いかにあるべきか、所要防衛力とかいう言葉がございますが、そういうことには五十三年度版では触れる必要は私はないと思います。
  387. 秦豊

    ○秦豊君 では少し私のつかみ間違いかな、何かかなり違っているはずですから、やがて明らかにされますが。  私は、最近の防衛庁の長官も含めた勇気りんりんたる発言、これがやはり防衛白書に投影されない方がおかしいんですよ、それは。だから、恐らく竹岡さんもう何回も熟読玩味されているはずで、上がってないなんというのは防衛庁のスピードやテンポじゃない。それはおかしい。恐らく基盤的防衛力構想というのがちょっと誤解を与えたんじゃないかな。たとえば、ぼくは防衛大学へ行って同窓会長のあれを聞いたが、基盤的防衛力なるものによって果たしてわれわれが十全に備え得るかどうかも考えねばならぬとか、あれは彼らの常識ですよ。ならば、今度第四回の白書では、平和時の防衛力から有事を目指した踏み込んだ表現が方々の章を埋めていたとしても、それはあなた方によれば常識だろうから聞いているんだが、やっぱり基盤的防衛力構想の論理と表現を踏襲されるんですか。
  388. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 御承知のように、防衛計画大綱は国防会議において決定され閣議の決定を見たものでございまして、現在われわれに与えられている指針でございます。したがいまして、この線に沿った防衛力整備の構想というものを変える考えは全くないわけでございます。
  389. 秦豊

    ○秦豊君 あと何か一分半ぐらいあるそうですけれども、長官、私かねがね思っていますのは、これゆっくりやらなければいかぬですね、防衛特別委員会あたりで。どの辺がネックなのか、あの辺だと思うのですけれども防衛努力の目標というのがあるわけですよ。これはぼくらの素人の用語で言うからあなた方にすれば正確じゃないかもしれぬが、防衛努力の目標というのは、陸海空三自衛隊それぞれが、どのような脅威、侵攻に対してどの程度守りなさいと、たとえば昔の航空士官学校、あれだと三〇%の撃砕率を目指せだとか、伊藤さんの世界ですよ、昔のあなたの世界。こういうふうに大体あるでしょう。ところがユニホームからして見ると、政治がそれに立ち入っていない、指針とガイドラインとオーダーがはっきりしない、われわれはむしろ政治に要求したいという欲求不満がもう三幕にもあるし実施部隊にもある。恐らく陸海空それぞれについて、きょう一回の答弁ですぱっと割り切るわけにはいかないだろうが、これは長官大事な問題で、むしろ長期の見積もり、中期の見積もりの基本になるトータルプランというのはわれわれ政治の側が関与して、三幕はその部分的な技術的な手直しをするというのが順逆で言えば順なんです。いまは逆立ちしているんですよ、三幕から上げたものを統幕の見積もりの基本にする、能力とあれに応じてプランができる、これはぼくは逆立ちだと思えてならないんですよ。本当にシビリアンコントロールなんていうのは、だからお飾りになるんですよ。いまは言葉だけ、美名、形骸、もうすべてこの仕組みが基本的にまずい。たとえば、あなた方の統幕の見積もりなんかを、どこかから見せてもらったことはないけれども、あんなもの政治家が見なければいけない。ところが、あれには非核の局地戦に対応できるものというふうになっている。ソビエトが効率の悪い通常火薬の通常兵器侵攻してくると思う方がロマンチックなんであって、ことごとくがおかしいんですよ。その意味で、時間がないからやめますけれども、とにかくいまの策定の仕方が基本的に私はおかしいと思う。これはゆっくり議論しましょうが、その点についてだけ伊藤さんの考え方をちょっと伺っておいて、よしましょう。
  390. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 軍事情勢というものにつきまして、いろいろな情勢判断をしながら軍事力というものを評価してまいるわけでございますが、これにはかなり技術的な問題もございます。したがいまして、政治の判断をいただくための基礎資料というものは、やはりそれぞれの専門分野において積み重ねていくというのはこれは世界各国同じでございます。その積み上げた結果に対しましての政治の御指導というものは当然私どもが受けなければならないものだというふうに考えているわけでございます。
  391. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 秦さんの質問にひとつ答えてみたいと思うのですが、あなたのおっしゃることも私はわかります。防衛庁の予算等につきましても、いわゆる下から来ればそれでみんなまとめちまうというようなことでなくて、本当にそこに政治というものが優先するという立場で考えなくちゃならぬ。  また、白書の問題につきましては、勇ましく書くであろうと言う。防衛庁がいままで答弁をしておるその答弁が、いわゆる国民から疑心暗鬼を買うような答弁をした、こういう面も私はあったと思うのです。そういう面で、はっきりしたことを言えと。いままで間違っていることは間違ったと頭を下げることは下げる、それによって政治家がよくわかったと、こういうことにもなるのをひた隠しに、いままでの慣例があるからやれというような考え方対処してきたところに誤解もあったと思う。そういう点は十分に今後改めてまいりたい、こう考えておりまして、白書の点につきましては、勇ましいというよりも正しい考え方を白書の上に載せたい、こういう考え方でございます。
  392. 秦豊

    ○秦豊君 楽しみにいたしております。
  393. 山崎昇

    ○山崎昇君 もう朝からそれぞれ専門家が防衛問題で質問をしておるわけですが、私はもう全くの素人でありますからわかりやすく答弁してほしいと思うのです。  まず、総務長官にお尋ねをしたいのですが、最近、一朝有事、一朝有事という言葉が大変出てくる。何かぼくらの背中にもう戦争があるような時代であるような宣伝が大変多くなってきている。そして私が、ここにも二、三持ってきておりますが、知り得るだけの資料を集めてみると、防衛庁では、脅威がない、仮想敵はないと言う。だが、書かれたものを、私の知る限りでは昔の防衛庁の幹部でありますとか、現役の皆さんでありますとか、あるいは学者、軍事評論家、外交専門家、こういう人のものを大体私は見ているつもりですが、読むというと、すべてソ連が攻めてくるようになっている、ソ連が仮想敵になっている。それが、こういうところで議論するというと全部隠されちゃう。何にもないと、こう言う。しかし反面では一朝有事という言葉が使われる。そこで総務長官に一つ私はお聞きをしたいと思うのは、ソ連が仮想敵だとあなた方はお考えになるのかどうか、そうだとすれば、いまソ連との間に何が一番重要な課題なのか。中心課題は、私は何といっても北方領土の問題が解決されなければなかなかこのソ連の脅威というものが去っていかない、あなた方の頭から去っていかない。そこであなたに聞きたいのは、一体この北方領土という問題を、総理府が、対策会議もあるそうでありますが、どうされておるのか。  なぜ私がこれを聞くかというと、私が調査した限りでは、今日まで、大体昭和四十三年に一番初めの方が北海道に行かれたようでありますが、それ以来五十三年まで、あなたも三月に行かれたそうでありますが、外務大臣を入れまして十人の大臣が北海道へ行っています。そして、行くたんびに大変美しいことを現地の人に言ってくる。帰ってきたら何にもない。一つもない。そこに行政マンとしてのあなた方の責任もあるんではないんだろうか。私の調べたことで間違いなければ私は申し上げてもいい。田中龍夫さんが四十三年の十月、床次さんが四十四年の八月、山中さんが四十五年の九月、本名さんが四十七年の八月、坪川さんが四十八年の六月、そして小坂徳三郎さんが四十九年の十月、植木光教さんが五十年一月、藤田正明さんが五十二年の七月、あなたが五十三年の三月と聞いている。その合間に宮澤外務大臣が五十一年の九月に行っている。ざっとこの十年間に十人の大臣が行っています。毎年行ったことになる。そして、行くたんびに、現地の有識者というのですか、集めて、またあの海上保安庁の船に乗って望遠鏡で国後をながめる、択捉をながめる。現地にはきわめてあなた方は美しいことを言って帰ってくる。帰ってきたら何にもしない。この十年間に十人の大臣が行っているが一体何をやったのか、どんなことが行政の実は効果として上がっておるのか、それを聞いておきたい。
  394. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 御指摘の点でございますが、これはなかなかじみな運動でございまして、私はそれでもここ二、三年はぐっと世論の喚起と申しますか、私はこう盛り上がっておるのではないかと、こういうふうに考えております。総理府としましての仕事というのは、世論を啓発をする、北方四島一括返還、こういうことに世論を盛り上げることが最大の仕事でございますが、そのほかに一体何をやっているかという、こういう問題でございますが、第一番目には、貝殻島のここで相当のコンブの漁があったわけでありますが、それができないという、こういうような関係から、昨年の補正予算からここに予算を計上いたしまして、コンブ礁の造成に着手をいたしておるわけであります。それから具体的な問題の第二番目というのは、花咲港を重要港湾に指定をした。それからもう一つは、いままでは国費として世論喚起の予算を計上していなかったのでありますが、もちろんわずかではありますが、二千万という、これに対する広報活動費として計上いたしました。こういう意味から、歴代の総務長官は約束はしてまいったけれども何にもやっていないということの大変な御指摘をちょうだいをいたしまして、私も地元で対話をいたしてまいりました。その結果いろいろな要望も出されてまいっておりますので、北海道庁あるいは根室市あるいは北海道開発庁長官等と、長期的に今後これを、経済の地盤沈下をしたここに対して、どういう方向を方向づけるか。いまここで具体的なものはと、こうおっしゃいますと具体的にお答えをするというところまでにはまいっておりませんが、少なくともできる範囲内において誠心誠意、また旧島民の方々に対しましても十億の基金をもって、できるだけ島民の方々の生活の問題、あるいはまた事業等々の融資の問題、特にこの基金では足りないということで一般の金融機関からも協力を得ながら、できるだけ旧島民の方々の援助に当たっておるというのが現況でございます。  もう一つつけ加えさせていただくならば、相当その後の物価もきわめて急激な上昇をいたしておる、こういうような関係から、やはり基金に対する考え方も、私といたしましても今年度の概算の要求のときにはやはりこの現在の十億でいいのかどうかと、私はむしろこれはもう少しここでふやして旧島民の方々に温かい気持ちで御援助、御協力をすることが望ましいのではないか、こういうふうに考えております。
  395. 山崎昇

    ○山崎昇君 私はきょうは時間ありませんから、そう中身に具体的なことは申し上げるつもりはありません。しかし、いまあなたの答弁聞いた限りでも、ざっと十年間に十人の大臣が行って、いま言われたことは何か漁業対策だけですな。言うならば貝殻島に魚礁をつくって二千万です、島民のために国債で十億出しました、それだけの話です。あと一体あなた方が行って――私はしゃべったことはみんな記録しているつもりでありますから、だから北海道の現地に言わせると、大臣に来てもらうのは、あれは何の目的に来るんだろうか、帰って何をしているんだろうか、一体外務大臣に対してどういう総務長官はサゼスションを与えるんだろうか、あるいは今度中川農林大臣が行かれました。一体農林大臣が訪ソするに当たって、対策本部をお持ちのあなた方は一体何をして、どういう形で出してやったのか、それから、一番問題になります北方領土の返還ということについて、一体総務長官は何をしているのだ。現地へ行くと大変あなた方はうまいことを言うのだ。外務大臣も宮澤さんが行きましたよ。しかし、その後はナシのつぶてです。最近は何か知りませんが、新聞報道によると、北方領土を見るパック旅行とかというのに何か総理府が金出すんだそうですな。旅行者を何かどんどんどんどん送ることにあなた方一生懸命になるらしい。そんなことで一体、あなた北方領土が返るわけでもない。具体的にどういう施策をしてどういうふうに政府部内であなた方の影響力を行使するかというものは何もない。これでは、行ってもらうことは行かないよりいいかもしれません、私は行ったことにとやかく言うつもりもない。だがしかし、何の効果もないようなこの十年間の放置の仕方というものは承服しかねる。そして、一方では仮想敵国ではありませんと言いながら、さっき申し上げましたようにほとんどはソ連が仮想敵国だ。この北方領土が片づかない限りはソ連の脅威というものは去らないと私は思う、私も。そう考えるときに、私はこの問題というのはきわめて重要だと思うんですよ。今度、きのう出ました五月号の中央公論でもそうですね。これもまた、いまソ連の脅威はどうなのかという、そういう特集です。日本の国は挙げてソ連がいまにでも上陸してくる、いまにでも攻めてくるような宣伝が開始をされる、そういう私は危険を感ずるがゆえにあなた方の姿勢についてお聞きをしているわけです。今後どういうふうにあなた根性を据えてやるのか、もう一遍ひとつ聞いておきたい。
  396. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 外務大臣も、日ソ交渉に行かれるときにぜひ領土問題を強く交渉してもらいたいと、外務大臣の発言のとおり、壁は厚いと思わないと、こういう発言があったことも皆さん御承知のとおりであります。今度また中川農林大臣は漁業問題で行かれたわけでありますが、この際にも私は忘れないように、北方領土返還ということを強く要請をしてもらいたい、これは私は北方対策本部長としての立場からこれは強く要請をしてあることは御披露申し上げなければならぬと思います。ただ、いま御指摘の、納沙布の岬から北方を見ましょうと、これは決して観光業者の手先に動いておるのではなく、やはりその目で見てもらう、これをキャンペーンをする。私も大変あそこへ行ってみて、やはり大変に目の当たりに見ましてやっぱり北方に対する関心というものはより私は強くなったと思います。行かないよりか私は行った方がいまでもよかった、こういうふうに思っております。ただ旅行業者は多く、目で岬から見るというのでなく、各市町村に対しましてもできるだけその窓口をつくる、あるいは、いままでの方式とかえて、できるだけパンフレットであるとかあるいはその他のいろいろな施設を使って、そしてやはり一番先に申し上げましたところの、総理府というのは国民の世論を喚起をするという、こういう重大任務を帯びておるわけでございますので、あらゆる報道機関を使って、決して観光業者だけで、目で見るという手段だけではなく、ここで今年度からあらゆる手段を、あらゆる各種団体をも網羅して、やはり国民各層の幅の広いすみずみまでの喚起を促したい、こういう決意でおることも申し上げておかなきゃならぬと思います。
  397. 山崎昇

    ○山崎昇君 私は、北方領土を見るパック旅行というのはこれからですから、どんなことになっているのか、私も新聞報道だけですからよくわからない。しかし、行かれるのは、これは私の推定でありますが、ほとんど大体七月か八月ごろに集中しますね、観光旅行ですね、あれから実は宇登呂とかそっちの方まで行く一連の観光旅行だと私は思う。これに総理府が賛助して何か金を出すらしいんだが、これはよほど考えませんと私は観光旅行だけに終わると思いますよ。あなた方が本当に意識的にやるというならその実を今後見守りたいと思いますが、きょうは時間がありませんからその点だけ触れておきます。  そこで、防衛庁長官に聞きたい。  いま申し上げるように、北方領土の問題というのはそう簡単に私は片づく問題でないという認識だけは持っている。だが、これが片づかないから、実際はソ連を仮想敵としてあなた方はやっているんじゃないでしょうか。自衛隊の配備は、陸上で言うなら三分の一は北海道、もし北海道にソ連が上陸したらどうなるかということは、中村龍平さんなんかやっている、海原さんもそうだ、すべての本はそういうことで組み立てられている。いま海軍の潜水艦をどうするかというP3Cの問題も、ソ連の潜水艦が日本の周りに来ているからこれを一体どうするかということになっている。だから、あなた方は文章で書けば脅威がなくて仮想敵がない。実際はソ連が仮想敵で全部の仕組みが組み立てられている。そうではありませんか、それはノーと言い切れますか、防衛庁長官に聞いておきたい。
  398. 金丸信

    ○国務大臣(金丸信君) 北方領土の返還の問題につきましては、国民の切なる悲願であることは当然であります。ソ連を仮想敵国にしておるというような考え方につきましてはいささか意見を異にするわけでありますが、防衛庁はできるだけ善隣友好ということで、たとえて言えば武官の連絡というようなことで中国から招待をいただきました。しかし、中国だけにそれを差し向けるということはどうかということで、ソ連にもそのお話をいたしましたところが、ソ連も快諾をしてくれたというようなことで、武官が両国へ差し遣わされて最近帰ってきておるわけでありますが、そのように防衛庁はいろいろの配慮はいたしておるわけでありまして、しかしこの四島の中には、国後に飛行場がある、択捉に飛行場がある、色丹島に飛行場、港もある。ソ連にとりましてはまことにかっこうな軍事基地であろうと私は思うわけであります。これが日本に返されてくるのとこないのとということを考えてみますと、これはまことに日本防衛の上からいきましても、また日ソ親善の上からいきましても、まことに大いなるこれは結果が出てくる。いまの防衛上の問題から言えば、もしこれが日本に返ってくるということであるならば、いわゆるソ連日本防衛の対象にはならないだろうと私は思うわけでありまして、一日も早くこの四島の返ってくることを私は念じてやまないものであります。
  399. 山崎昇

    ○山崎昇君 だから、あなたのいまの答弁で言えば、北方領土の四島がいまのままである限り、ソ連は仮想敵みたいになってしまう。ソ連を対象にしてあなた方は軍備の増強ということになっている。これが返ってくればソ連との間に何もなくなるでしょうと、こう言う。私はだから、そういうことが別な言葉で言うと一朝有事、一朝有事という言葉で、私は余り勉強していませんが、いまここに持っております「路度線はどうなる」というこの本で、かつて統幕の議長をやった中村龍平さんの文を読んでもほとんどそうです。朝鮮で何か起きるのも背後に中ソがどうだとこうなっている。それから、そのほか私は集められるだけ集めて読んで見ると、全部ソ連が仮想敵国だ。きょうはもう私の時間がありませんからやりませんが、いずれこの問題は明確にしなければ、何のために自衛隊を増強するのかがわからなくなる。そういう意味で、いずれはこれはやらなきゃなりませんが、きょうは時間がありませんからやめます。しかし、いずれにいたしましても、いま一番わが国にとって重要なのは外交政策であって自衛隊の増強ではないはずなんだ。そういう意味で、もう一遍総務長官のこの北方四島に対する見解を聞いて私の質問を終えておきます。
  400. 稻村佐近四郎

    ○国務大臣(稻村左近四郎君) 大変有意義な御指摘をちょうだいをいたしました。今後一生懸命努力をいたしまして、一日も早く返還されるべく努力することをお約束いたしたいと思います。
  401. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会