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1978-08-17 第84回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年八月十七日(木曜日)    午前十時二十二分開会     ―――――――――――――    委員異動  八月十六日     辞任         補欠選任      井上  計君     木島 則夫君  八月十七日     辞任         補欠選任      木島 則夫君     井上  計君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 林  ゆう君                 原 文兵衛君                 片岡 勝治君     委 員                 岡田  広君                 源田  実君                 竹内  潔君                 野田  哲君                 山崎  昇君                 和泉 照雄君                 黒柳  明君                 山中 郁子君                 木島 則夫君                 森田 重郎君                 秦   豊君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)      稻村左四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     角野幸三郎君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        大蔵省主計局給        与課長      日吉  章君        自治大臣官房審        議官       石原 信雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査  (一般職職員給与についての報告及びその  改定についての勧告に関する件) ○国の防衛に関する調査  (国の防衛問題に関する件) ○理事補欠選任の件     ―――――――――――――
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、井上計君が委員辞任され、その補欠として木島則夫君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査を議題といたします。  まず、一般職職員給与についての報告並びにその改定についての勧告に関し、人事院から説明を聴取いたします。藤井人事院総裁
  4. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 去る十一日に、人事院におきましては、本年度給与に関する勧告を国会並びに内閣に対して提出をいたしたのでありますが、早速われわれの給与に関する勧告内容説明をいたす機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。以下、時間的な制約もございますので、ごくかいつまみまして、本年度勧告内容につきまして概略の御説明を申し上げたいと存じます。  本年の勧告の基礎になります較差の問題でございますが、これは予想せられましたように、民間における非常に厳しい状況を反映をいたしまして、非常に低位較差ということに相なったわけであります。これは昭和三十五年に、現在の勧告制度というものが制度的に定着をすることになった、その発足の年でございますが、それ以来の最低の率ということに相なったのであります。すなわちこの較差遡及改定分を含めまして三・八四ということに相なりました。昨年が六・九二、一昨年が六・九四ということでございますので、非常に低位較差ということに相なったということは明らかであるように思われます。したがいまして、この配分をいたしまする重点は、どうしてもその俸給表改定と、もう一つは、やはり生活関連手当に向けざるを得ないということに相なったわけでありまして、本年度におきましては、特にそのような点に配慮をして改定をいたしたということでございます。  俸給表改定に関しましては、本年は初任給程度のところが非常に低くなっております。これは考え方によっては安定した方向に来ているという見方も成り立つわけでありまして、一時非常に求人難というようなことで初任給のところが大変上がってまいりまして、これに対応する措置を講じていかなきゃならぬということがございました。そのために、もっと重視しなければならない世帯構成関係方々であるとか、あるいは中間階層方々というようなところに対して、重点の置き方がどちらかと言えば物足りなかったという点がございます。そういう点につきましては、いままでも十分な配慮は加えてきたつもりでございましたが、しかしながら、物足りない点もあったことは事実でございますが、初任給関係が安定をしてまいりましたことから、今後こういう方向に漸次軌道が敷かれてまいるのではないかという考え方を持っております。したがいまして、俸給表配分をするに際しましては、世帯形成時、それからその後は中間階層ということに重点を置いて、全体の較差がわずかでございますけれども、その中でも特別の配慮をしたつもりでございます。しかし、全体としては大体率が一定である、定率というようなことの傾向が顕著に出ているように考えております。  指定職俸給表につきましては、今年のいろいろな情勢を勘案をいたしまして据え置きをせざるを得ないということで、今年は据え置きということで指定職俸給表改定は見送ることにいたしました。  その他の各種の俸給表については、行政職俸給表を中心といたしまして、それの見合いで、教員、それから研究職あるいは税務職公安職等については、それぞれ従来の均衡等も考慮しながら改定をいたしたつもりでございます。  それから、高齢職員給与につきましては、いままでも非常に注意していろいろ見守ってきております。具体的に申しましても、民間と比較いたしました場合に、公務員の場合、高齢職員給与較差というのがむしろ逆較差ということに相なっておりまして、俸給表を作成するに当たりましては、それらを全部組み込んで改定をいたさなければならぬということから、むしろ四十歳未満の階層に対して非常に厳しい配分をせざるを得なかったというような情勢がございます。高齢職員給与については、四十六年にこの点を配慮をいたしまして、昇給延伸措置等について制度化をいたしたわけでございますが、この点はやはりもう少し強化をするという方向で事柄を考えていかざるを得ないのではないかという考え方をいたしておりまして、この方面の研究というものと、制度強化策というものについて早急に検討いたしたいという姿勢を打ち出しております。  それから、手当につきましては、生活関連重点を置きますが、なかんずく扶養手当について重点を置きました。これは配偶者について現在の八千円を九千円にいたしまするとともに、子供さんについては、二人までの方々について現行の二千三百円を二千七百円というようにかなり重点をもって配分をいたしたつもりでございます。  通勤手当につきましても、国鉄、私鉄、バス、その他について値上がりがございます。料金改定がございましたので、それに見合う改定交通機関利用者あるいは交通用具使用者等にわたりまして行うことにいたしました。  それから、上級試験採用者等初任給調整手当でございますが、これは現在までに、御承知のように理工科系統については二千五百円、それから法文系統については千円ということで調整手当を支給してまいりました。これは民間の方の初任給の上がりぐあいが非常に顕著でありましたために、一時公務員の場において、優秀な人材を確保するための給与上の配慮として何らかのことをやらなければ目的が達成できないということでこういうことをやってきたわけでございますが、ここ数年の状況を見てまいりますと、特に本年度あたりにつきましては、上級試験採用者、その前提となる上級試験応募者受験者というものが非常に数が多くなりまして、物によりましては四十何倍というような非常に高率を示すようなことに相なってまいりました。民間初任給をなるべく低位に据え置こうというそういう傾向等配慮いたしまして、この際、上級試験採用者等に対する初任給調整手当は再検討を要する時期になったのではないかということで、原則的にはこれを廃止することにいたしたいと思っております。ただ、理工系法文系には現在千五百円の差があるということもございますので、余りにも急激な変更をいたしますることもいかがかという点と、なお理工系については、職種の中で、非常に特定されたものでございますけれども、やはりある程度の配慮をしないと人は採りにくいというような情勢もありますので、それについては暫定的にもうしばらく金額は下げまして存続をするという措置も講じております。  それから、俸給調整額というものがございまして、これはたとえば病院勤務のお医者さん、それから看護婦さんがいらっしゃいますが、その病院の種類によりまして、一般病院と、そうでなくて非常に職務の内容が厳しい困難な、また時には危険を伴うというようなそういう病院勤務とがございます。それを全く同一の俸給表で取り扱うことにも、実質的なむしろ平等ということ、均衡という面からいって問題がございますので、俸給調整額というものを創設をいたしましてそれに対処してきたわけであります。四%刻みで現在六種までございまして、最高が二四%まで俸給調整額というものを出しているわけであります。ところが、これがその後定率でずっと据え置かれてきておるものですから、もとになる本俸が毎年のベースアップで上がってまいりますにつれてその調整額の額が非常に高くなってきたということがございまして、これに基づいて相互間の均衡とか、また調整額を受けられない方々との問題とかいうように、いろいろな点で問題が起こってまいりました。そういうことで、従来鋭意検討を加えてまいったわけでありますが、何分にもこれは一つの既得権化したものでございますので、その取り扱いはきわめてむずかしい面がございます。ただ、これにつきましては、やはり何らか適正な措置を講ぜざるを得ないという段階に来ておりますので、この問題についても具体的措置、方法を早急にひとつ検討いたしたいという線を打ち出すことにいたしたのであります。  それから、期末勤勉手当については、さきに五・二カ月でありましたものを〇・二カ月分削減をせざるを得ないような羽目になりまして、現在は五・〇、五カ月分になっておるわけでありますが、ことし調べました状況も、やはり大体想像いたしておりましたように非常に厳しいものがございまして、精査いたしました結果は四・九カ月分ということで、どうしても〇・一カ月分は削減せざるを得ないということに相なりましたので、これは私としても不本意ではございますけれども、これに合わせざるを得なかったということで、十二月期の期末手当を〇・一カ月分削減をするということにいたすことにいたしました。  そのほかにつきましては、週休二日制の問題については、引き続き調査をいたしました結果、民間普及率はほぼ大体定着して横ばいになってきて安定しておるという数字が出ておりまして、去年の六九・一%の普及率がことしは六九・二%ということに相なっております。年間の休日数も、これに伴いまして八十六・四日ということでありまして、一般公務員の場合六十八日でございますので、その間かなりの開きが出てきておるという状況が如実にあらわれてきておるのであります。いま、御承知のように、公務員についてはいろいろな点を考慮いたしました結果、二回目のテストを実施いたしておる最中でございます。この四月から始まりまして来年三月三十一日まで一年間再度の試行をやるということで現在やっております。その結果が出ました暁において、次のステップをどうするかということについて考えなければならない時期に参っております。いろいろ世界各国情勢もございます。民間の景況もございます。国民のこれに対する一つ意見、反応というものもやはり十分に考慮しなければなりません。そういうようなものをあわせ考えながら、この問題について次のステップを、再度試行の結果を見て検討をいたしたいというふうに考えておるのでございます。  それから、寒冷地手当につきましては、その後問題がかなり煮詰まっており、問題の所在もほぼ確定をしてきておるわけでございますけれども、もう一歩のところでもう少し調整を要する面が残っております。定率か定額かの問題とか、あるいは指定地域の問題でありますとか、そういう点、若干の深刻な問題がそれぞれございますけれども、もうしばらく調整の余地を残しておりますので、これにつきましては今回は勧告ができませんでした。しかしこれについても早急に詰めを行いまして、結論を得次第勧告お願いをするということに相なろうかと思います。  それから、最後定年制の問題でございますが、これにつきましては、昨年の暮れに閣議決定がございまして、それに基づいて本年の二月になって総務長官の方から私どもあてに、本問題は公務員に関する分限上身分上の重要な問題であるからせっかくひとつ検討の結果意見を聞かしてもらいたいという書簡をいただいております。現在までも、この点は公務員についての退職管理に関する重要な事項でございますので、それぞれの見地から鋭意検討を続けてまいりましたが、そういう書簡をいただいたということでございますので、本格的にこの問題についての調査検討に入っておる段階でございます。まだ結論は無論出ておりませんで、これからきめ細かい検討を続けてまいりますが、その旨をさき総務長官書簡に対する中間報告の形をもって御報告を申し上げることにいたした次第でございます。  それから、最後でございますが、例のいろいろ御心配をかけました人確法に基づく教員給与改定の問題は、今回をもって第三次の後半分で、いわば最終的な措置ということに相なったわけでございますが、最終の措置でございますので、いままでのやった制度落ちつきぐあい等を見る必要がございましたので、慎重に見守っておったわけでございますが、もはや最終的な措置ということでやるべき段階であるということで、今回の一般職給与改定にあわせてこれについても勧告を出すということにいたしたわけでございます。  内容については、特別手当増額、それから例の主任手当の若干の範囲の拡大、それから校長、教頭についての相当大規模な学校の該当者について特別調整額管理職手当を二%ずつ増額をする等の措置をあわせ講ずることにいたしたいと存じてお願いを申し上げておる次第でございます。  以上、ごく概略で恐縮でございましたが、今回出しました勧告内容の骨子について御説明を申し上げた次第でございます。
  5. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 以上で説明の聴取を終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 山崎昇

    山崎昇君 いま報告ありました人事院勧告について質問をいたしますが、それに先立ちまして、一、二点でありますが、官房長官法制局長官に、一昨日の福田総理靖国神社参拝について一、二点だけお聞きをしておきたいと思います。  本来なら官房長官からその経過について正式に報告を求めるのが筋道でありますが、時間が余りありませんので、きのうの衆議院の議論あるいはその他の報道等で、もう行ったことは事実でありますから、その点の正式報告は省略をして一、二点聞きたいと思うんです。  そこで官房長官に聞きますが、あなたも官房長官も行かれたそうでありますが、そのほかに閣僚でだれだれが行ったのか、それから政府・与党ではどんな方々が行かれているのかお聞きをしたい。
  7. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) お答えをいたします。  一年目の靖国神社参拝につきましては、福田総理参拝をいたしまして、私もそれに同行いたしたわけでございますが、その他の閣僚はそれぞれ個々に参られたわけでございまして、詳細ははっきりつかんでおりませんが、新聞等で拝見をいたしますと、総務長官あるいは農林大臣等参拝をされたと、こういうふうに聞いております。
  8. 山崎昇

    山崎昇君 重ねてあなたに聞きますが、福田総理は去年も行かれたそうであります。あなたも去年行ったと思う。それから総務長官も今度行かれたそうですが、一体総務長官になるまで、あるいは官房長官に就任するまで、あるいは福田さんで言えば総理大臣になる前に、一体靖国神社に行ったのかどうか、知っておればひとつあなたから聞きたい。それから総務長官からも、あなたは以前に行ったのか、行かないのかお聞きをしたい。
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、いわば戦中派ということで大戦にも参加しておる、そういう経験もあるわけでございます。そういう自分のこれまでの経験を顧みまして、靖国神社参拝は毎年欠かさずに行っておるものであります。
  10. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) ちょうど私も戦争に参加しておりまして、まあそのときの戦友はことごとく靖国神社で会おうというのが合い言葉でありました。そういう意味から、戦後もう早いものでございまして、一回も欠かしたことなく、わが戦友の英霊というか、冥福を祈ると、こういう意味で、どういう雨のときも戦後一回も欠かしたことなく参拝をいたしておりました。
  11. 山崎昇

    山崎昇君 いま官房長官と、それから総務長官は、自分経験から毎年行っておるという説明でありました。ところが、私ども承知しておる限りでは、三木さんにいたしましても、岸さんにいたしましても、歴代の総理大臣は、総理大臣という肩書きがつくと無理して私的行為というオブラートに包んで何かこっそり行くようでありますが、しかし総理大臣をやめるとほとんど行ってないというのが私の掌握だと思う。三木さんだって、総理大臣のときには大変物議を醸しましたけれども、ことし行ったかと言えば行ってない。だから、少し極端な表現になりますが、靖国神社参拝というのは、これは肩書きが行っているんであって、内閣総理大臣福田赳夫であろうが三木武夫であろうが、あるいは岸信介であろうが、そんなことは余り関係がない。総理大臣という肩書きがあれば行くし、なくなれば行かない、ここに私は一つ問題点がひそんでいると思っているんです。そういう意味では、憲法上でこれだけ世の中が疑義があると、またいろいろな宗教団体からもいろいろ指摘をされている時期に、なぜこの肩書きがつけば行ってつかなきゃ行かないのか、この辺のことについて、もう少し私はやはり政府としては、事憲法上の問題であるだけに慎重を期すべきではないか、こう思っているのです。しかし、この問題はきのうかなり衆議院でも議論された問題でありますから、私のきょうの本命は給与でありますから多くのことを申し上げませんが、少なくともそういう意味で言うならば軽率だと思う。  あわせて私は法制局長官に聞きますが、三木さんのときも、私的か公的かなかなか区別しがたい、そこで私的という問題をどう把握するかというんで、一つの材料としてあなたは四つの点を挙げている。それはもうあなた自身御存じのとおりであります。しかし、その四つの点がいまあなたによって否定されたら、これは一体どうなっていくんだろうか。私は法律の解釈というのは人の行動によってそう変わるものでないと思う。ただ、時によっては多少の変化はあることもあると思うが、やっていることは何にも変わりないのにあなたのとられた態度が変わっていくということについては納得できない。したがって、いまもあなたはあの四つの点についてそのとおり間違いないと考えているのか、まずその点法制局長官に聞いておきたい。
  12. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) お答えを申し上げます。  内閣総理大臣その他公の職にある方が、神社あるいは寺院にお参りになると、その場合に私的であれば全く問題がないと、それから公的の場合には憲法二十条三項との関係で問題が生ずるであろうというのが基本的な考えでございまして、それでその私的、公的の区別はどうしてやるんだというようなことに関連いたしまして、ただいまおっしゃいましたのによりますと、何か私が私的、公的の区別基準として、つまり私的であるための要件としてはこの点が必要なんだということで四つ条件をいままで示したではないかというふうな御感触の御質問でございましたけれども、私の方は、いまだかつてその四つの点を、私的であるための要件という意味四つの点を挙げたというようなことはございません。先日も何かある新聞で、法制局の従来から私的な行為であるための要件としての四条件に照らしてみて、今回の福田総理の御参拝は外れていると、したがって憲法上問題であるというふうな趣旨の記事がございましたけれども、これはかなり事実に反するのでございまして、私の方は、いままで申し上げておりますのは、やっぱり私的であれば問題ないんですけれども、ただ一般に受け取られる方が、あれはおかしいではないかというような疑義を持たれるとこれはまた心外でございますので、そういう疑義を避けるためにはこういう点は配慮していただきたいと、こういう点を配慮して慎重にやっていただく方が望ましいという趣旨幾つかの点を指摘しておるんでございまして、それを外れたから直ちに公的だというレッテルを押さなきゃいかぬというふうな、そういう意味合いで申し上げているわけではございません。  まあ一例を申し上げますと、乗用車の件なんかございますけれども乗用車として官用車を使っちゃまずいじゃないかというか、それはなるべく避けた方が望ましいんだという趣旨のことは申しておりました。おりましたが、しかしこれは官用車をお使いになると絶対それはもう言い逃れができないのかというと、もちろんそういう意味じゃございませんで、それはもうもともとが私的か公的であるかという実はその実体が問題なんでございまして、私的であるというためには、それはその疑いを避けるために公用車はなるべくお使いにならぬ方がよろしいと、こういう趣旨で申し上げているわけでございます。総理大臣ともなられれば、それは警備の問題もございます。警備の都合の問題もございます。それからまた、いつ何どき突発事故が起きて、スケジュールを途中で変更してほかの方へ行かなきゃならぬということも考えるわけでございますから、そういう点も勘案いたしますと、常に公用車じゃない私用車を用いなければ憲法上も問題になるというふうな趣旨で申し上げているわけではございません。  ただ、玉ぐし料の点は、これは多少ニュアンスが違いまして、もともとが、私たちは私的な資格で御参拝願うというふうに思っておりますから、私的な行為について公金を玉ぐし料としてお使いになるのはこれは困る、これは避けていただかなきゃ困るというふうに申し上げております。  今回の御参拝につきましても、内閣官房の方から私の方へ御相談がございまして、いま申し上げましたような意味合い幾つかの点の御注意を申し上げた、意見を申し上げたというのが実態でございます。
  13. 山崎昇

    山崎昇君 少なくとも法制局長官は、やっぱり私的行為としての一つ基準といいますか、考え方として疑義がある、だからこういう点は注意した方がよかろうという、あなたの説を仮にとったとしても、そういう形であなたは出されたわけでしょう。したがって、三木さんはやっぱり内閣総理大臣という肩書きを書かなかった。それから車も自分の車を使った。党の車を使ったそうでありますが、使った。あるいは同行者もやらなかった。そうなると、あなたのいま言われた、少なくともこういうことをしなければ疑いがありますよというあなたの考え方は、一つ一つ全部外れたら疑いが出てくる、国民が納得しない、それはあたりまえの話だと。いまの公用車の問題でも、総理大臣公用車以外使うのは何となく警備上おかしいという。じゃ三木さんは使って何でもなくて、福田さんが私用車を使えば何か警備上の問題が出てくるのか、もし警備上の問題があるというならば、それは警備上の問題として十分な配慮をすればいいことなんだ。だから、少なくとも法制局長官として法の解釈なり運用をやる場合に、あなたが絶えずそういう形で拡大解釈するということは問題があると思うんですよ。少なくとも、国民に対してこういうことをしなければ疑いが持たれると言うならば、それはやっぱり厳格に守るのがあなたの任務じゃないですか。適当勝手に後からその行動を合理化するような解釈はすべきでない。この点は法律の専門家であるあなたに私はきつく警告をしておきたいと思うんです。  なるほど玉ぐしの問題はそうでしょう。また同行の問題も、官房長官は同行と随行と違うように言っている。確かに言葉は違う。私も公用語ではどう違うのかよくわかりませんが、随行という言葉から言えば、上司に対して、命令されてくっついていくというような意味合いもある。しかし、同行といっても私的行為の場合もありますし、たとえば警察官なんかが犯人を同行する場合あるいは疑いのある者を同行する場合、同行と言えばある程度強制力が働く。そういう場合の同行もある。だから、単に一緒に行ったんです、偶然ですなんということで済まされる問題ではない。こういうことを考えますと、少なくともこれだけ憲法上の疑義があって、三木さんのとき以来議論されているこの種の行為については、私は内閣としてはもっと慎重に配慮すべきだし、そういう疑いを持たれるようなことはやるべきではない。本当に福田さんが行くというならば、総理大臣をやめてからでも行けばいい。総理大臣という肩書きを外してから行けばいい。そうすればだれもそう文句を言っているわけではない。しかし、総理大臣外れれば、三木さんであろうが何であろうがさっぱり行かない。総理大臣になった途端に行く。こういう政治姿勢について憲法感覚がどうかしているんじゃありませんかと、こうなってくるわけです。  ですから、この点は私はきょうは本命でありませんから、組み立てて物を言っているわけではありませんが、少なくともその点はひとつ注意を願いたいということを官房長官に申し上げておきます。法制局長官にも、もう少し法律屋なら法律屋としてのきちんとした態度をとってもらいたい。そうでなければ疑いが晴れるわけじゃありません。その点だけはきょう私は両者に、質問者として警告だけしてこの問題を打ち切っておきたいと思うんです。  続きまして、私は公務員の問題に入っていきたいと思います。官房長官法制局長官も結構です。  まず第一に総務長官にお伺いしますが、この勧告を受けて、公務員給与をどういうふうにあなた扱っていきますか、今後。
  14. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 十一日に勧告を受けました。直ちに関係閣僚会議を開きまして、そのときに決定に至らなかったわけでございますが、まあ誠心誠意、速やかに決定するように努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  15. 山崎昇

    山崎昇君 そこで総務長官、過去の例で言いますとね、これは私の方から申し上げるのもおかしいんですが、この十年間大体見てみるというと、勧告が出まして八月中に閣議決定やっているのが五回ですね。それから、九月に閣議決定やったのが一回、十月三回、十一月一回と、大体半分は八月中に閣議決定やって、一応政府としての意思決定を行っております。そこで、こういう過去の例からいくと、ことしも、私どもはこういう時期でありますだけに、閣議決定は今月中にでも行われるのかなあと、こう思っているんですが、どうですか。
  16. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 御指摘の点につきましては、昨年のこともよく私承知いたしておりまして、現在は各省庁で検討いたしておるところでございますが、できるだけ、先ほど来も申し上げましたように早く決定をしたいと、こういうふうに思っております。
  17. 山崎昇

    山崎昇君 いや、あなたの気持ちとしてはでね。いま十年間の経過を言いましたが、もっと具体的に言えば、昭和四十三年が八月三十日、四十五年が八月二十五日、四十六年が八月二十四日、四十七年が八月二十五日、四十八年が八月二十一日、これが閣議決定した日です。九月の場合には、五十年が九月の二日、十月が四十九年にあります。一番遅いので四十四年の十一月というのがある。したがって、あなたの気持ちとしては、担当大臣としては、少なくともこれら過去の経過から言えば、八月中に閣議決定するということぐらいは担当大臣としての考えとして述べていいんじゃないでしょうか、重ねて聞いておきます。
  18. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) いま申し上げたように、各省庁検討中でございますから、御指摘の点につきましては、よく誠心誠意そのように努力をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  19. 山崎昇

    山崎昇君 それでは私の方は、少なくとも総務長官のいまの答弁からいって、今月中ぐらいには閣議決定方向が出るものと、私どもの方で想定をしておきます。  続いてお聞きをしますが、大蔵省と自治省来ていると思うんですが、今度の勧告によって給与費がどういう状況になるのか、大蔵と自治省から説明願いたい。
  20. 日吉章

    説明員(日吉章君) 国家公務員につきまして申し上げますと、一般会計ベースで申し上げまして、すでに予算措置がされております給与改善費が二千六百三十億ございますが、これに対しまして、仮に今回人事院から出されました勧告を完全実施するといたしました場合に、所要いたします金額が千九百十億円でございます。
  21. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) お答えいたします。  今回の勧告による給与改定所要額、普通会計全体といたしまして二千六百億円を要するものと推定いたしております。
  22. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、当初予算に組んだ予算からいきますとどれぐらいの不用額が出ますか、大蔵と自治。
  23. 日吉章

    説明員(日吉章君) 国家公務員につきまして、一般会計ベースで申し上げますと、七百二十億が不用といいますか、差額として剰余となってまいります。
  24. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) 地方公務員関係につきましては、五%相当額といたしまして三千八百億円を先組みいたしておりますので、今回の所要額二千六百億円を差し引いて千二百億円がいわゆる余るという計算になろうかと思います。
  25. 山崎昇

    山崎昇君 そこで総務長官、いまお聞きのとおり、ことしは異例なんですな。いままでだったら追加財源あるいは行政の節約等々で、かなり給与費をめぐって問題になるんですが、ことしは大変低い勧告でもありましたせいか、財源が余るという。そこで、いま国の場合は一般会計で七百二十億円、それから自治省の方は千二百億円ばかり余裕財源ができるという。これは総務長官としてどういうお使い方をされますか。それから、自治省は、基準財政需要額上でこれは変わってくるわけなんですが、これに伴って交付税の扱いはどうなってきますか。  それから、自治体に対してこういう余裕財源が出た場合の扱いについてあなたの方で何か指示するんですか、その点お聞きをしておきます。
  26. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 財源の余ったことですから、これは大蔵省関係になると思います。
  27. 日吉章

    説明員(日吉章君) 今回剰余が生じます給与改善費につきましては、その他一般に剰余が生じました場合と同様の取り扱いでございまして、今後の財政運営に即応いたしまして適切に処理していきたいと、かように考えております。
  28. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) 給与改定所要財源は、地方交付税の積算上それぞれ単位費用に算入いたしまして、この額を前提として五十三年度分の普通交付税を八月末に決定する予定でございます。したがいまして、その後で給与改定が最終的に確定いたしますと、ただいまの申し上げましたような数字が各団体ごとに財源的な剰余となるわけでありますが、これをどのように使うかということは、最終的にはその各団体の自主的な判断によって、各団体の財政状況によって処置が決まるべきものと考えますが、私どもといたしましては、地方財政の現況にかんがみまして、今後の地方財政の健全性に寄与するような形で各団体がこれを使っていただくように期待しておる次第でございます。
  29. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、自治省、重ねて確認しておきますが、たとえば、交付税総額から言えば多少余裕みたいなかっこうになりますよね、かっこうで言えば。それは自治省としては吸い上げたりあるいは統一的に何か別な方に持っていくという考え方はない、各自治体でそのできた剰余については適正にひとつ使用してもらいたい。だから言葉をかえて言えば、あなたの方はこの問題については、そう地方自治体に対してどうこうという形の入り方はしていかないんだ、こう私は理解をしておくんですが、いいですな。
  30. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) ただいま申し上げましたように、最終的には地方交付税の使用は各団体の自主的な判断でございますが、私どもは各団体の財政運営について機会あるごとに指導申し上げております。その指導を通じて、その各団体の財政の健全性に資するようにこれを使っていただきたいと考えておりますし、会議その他の機会をとらえてそのような指導は申し上げたいと考えております。
  31. 山崎昇

    山崎昇君 そこで、大蔵にもう一遍聞きますが、私ども聞くところによれば、大蔵省では旅費について検討していると聞いています。先般来、会計検査院その他の問題もありまして、最近はどうも旅費法による旅費と現実と合わない点がたくさんある。そういう意味では、私は今度の、まあ公務員にとりましては不幸な事態でもありますが、七百二十億という一般会計で言うならば余裕ができたという点から考えて、当然旅費その他の他の面について大蔵省は考えるべきだと思うんだが、その点はどうですか。
  32. 日吉章

    説明員(日吉章君) ただいま御質問のありました旅費でございますが、これにつきましては、その中の赴任旅費だとか、あるいは日額旅費、日当等につきましては、そのときそのときの消費者物価の状況とか、そういうふうなものを見ながら改定をする場合にはしてきております。したがいまして、今回もただいまいろいろな方面の調査をいたしておりますので、その調査結果を見た上で、しかるべきときに措置すべきだとすれば措置をしたいと、かように考えております。ただ、私たちといたしましては、今回もし人事院勧告を完全実施いたしました場合に、さらに余ります金額を直ちにこれに充当するというふうな形になるかどうかという点は別でございまして、この剰余として出てまいります七百二十億円につきましては、その他新たなる財政需要があるかどうか、あるいはまた、非常に高い公債依存度になっておりますので、公債を減額するというふうなことに充てた方がいいのか、そういうあたりは総合的に勘案して決めていきたいと、かように考えております。
  33. 山崎昇

    山崎昇君 大蔵省ね、いまの総理の福田さんが大蔵大臣当時、旅費については二年に一遍変えますということで一遍やった。従来は三年に一遍ぐらいしか変わっていなかった。だから、当然私はこういう給与上の問題出てきたときに、その他の公務員をめぐります問題点についてはもう少し大蔵省がやっぱり積極的にやるべきではないだろうか。私はその点は機会あれば総理にも言いたいと思っているんですが、かつては約束をして実施をした。だから、そういう意味で言うならば、大変問題が出ている問題でありますから、当然旅費法等についてももう少し積極的な姿勢をとってもらいたい、こう思うんだが、どうですか。
  34. 日吉章

    説明員(日吉章君) ただいま先生から御指摘ございましたように、最近時点におきます旅費法の改正は二年程度の間隔でなされている例がございます。ただ、それは例のいわゆるオイルショック等がございまして非常に著しい諸物価の高騰と、暴騰というふうなことがありましたのでございまして、それ以前は必ずしも規則的ではございませんが、大体四年程度のタームをもって見直しをし改定をしております。幸いにして最近諸物価はかなり安定いたしております。ただ私どもは、五十年以来かなり日数もたっておりますので、いま鋭意実態を調査しているところでございまして、その実態の結果を見た上で検討いたしたいと、かように考えております。
  35. 山崎昇

    山崎昇君 積極的にやってください。  そこで、今度勧告内容について人事院にお伺いします。これは本来は技術論もありましてたくさんの問題点ありますが、きょうそう時間ありませんからごく二、三に限ってお聞きをしておきたいと思います。  第一点は、勧告率についてお聞きをしておきます。人事院勧告では三・八四と、こう言う。そして、期末手当〇・一削減をしたと言う。そこで、期末手当と、それから一般俸給等の勧告率とは一応切り離したあなた方の考え方になっている。しかし、かつて佐藤達夫さんが総裁のときに、これはきょう私も持ってきているわけでありますが、私にこういう答弁をされている。それは期末手当の性格をめぐって論争したときにこう私に言う。いろいろ経過ありましたが、「形を変えて申し上げますれば、大きな一つ給与というもののかたまりがあって、その一部分は毎月払う、その他の部分は一年に何回かに分けて払う、」、それをひっくるめて給与と言うんですというふうに私に説明した。私は納得できませんでしたが、給与の専門家がそう言うんですから一応これで矛先をおさめておった。そういう観点から今度の勧告を見ますと、期末手当の〇・一というのは、今度の勧告で全職員の平均が十九万三千七百幾らでありますから、仮に〇・一にしますとざっと一万九千円ぐらいになりますね。月割りにしまして千六百円ぐらいになる。今度の勧告率に直しますと大体〇・八五ぐらいに該当してくる。言うならば、片方であなた方は三・八四と言うが、片方で〇・一削ることによって給与全体として考えた場合に三%前後の勧告にしかならない、きわめて低率になっている。これは私は一つ問題があるんじゃないかと思いますが、それについての見解と、それからあわせて聞いておきますが、四月一日で民間と比較いたしますから四月一日については定期昇給が入ったと、こう言う。それならば、あとの三回の定期昇給は一体どういうふうに理解したらいいのか、公務員給与水準というものをどこへとったらいいのか。あなた方は水準比較と、こう言うのですね。したがって、私どもがお聞きするところによると四月の定期昇給者は約半分ぐらいと、こう言う。半分ぐらいの者は定期昇給に入って水準になる。半分の者は入らないということになる。だから論理的に言うならば、勧告というのは他の定期昇給も入れて私は勧告率というものをはじく必要があるんじゃないかという気もする。なぜこういうことをお聞きするかというと、仮に四月一日の定期昇給を除いたとするならば、官民較差は物すごいものが出てくる。もっと多くなります。定期昇給分を入れているから差が縮まってくる、一部ね。そういう意味で言うならば、今度の私はこの勧告率というのはきわめて低いものだと言わざるを得ない。この点を他の定期昇給との関連でお聞きをしておきたい。あわせまして、もし把握していれば、四月の定期昇給者が、おおよそで結構でありますが、どれぐらいで、七月がどのぐらいで、十月がどのぐらいで、一月がどのぐらいか、わかればひとつ説明を願いたいと思う。
  36. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 前提で重要な問題が若干ございますので、私からまず御答弁申し上げまして、あと補足的には給与局長参っておりますので、そちらから御答弁を申し上げたいと存じます。  第一点の問題でございますが、これは先生専門家ですからよく御承知でありますように、給与ということはいろんな使い方をいたしておることは御承知のとおりでありまして、いまお挙げになりましたように、給与の中にはやはり毎月支払われる俸給その他のものと、それから、毎年何回かにわたって支給されるいわゆる賞与みたいなもの、そういうように内容がいろいろある。それをひっくるめて給与と言う場合もこれは無論ございます。そのほかに、やはり毎月支給されるもの、しかもそれが定例的なものだけを指して申し上げることもあります。俸給表にある俸給給与ということに言う場合もあり得るわけであります。そのほか定例的ではございませんですが、超勤その他を含ませて言う場合もあると。いろいろそのときそのときで用法が違って用いられておるということは御存じのとおりだろうと思います。その中で、いわゆる五%云々と言っておりますのは、これは向こうにも書いてございますように、俸給表自体の増減の率の問題をパーセントでもって把握して物を申しておるという関係でございます。この俸給表の点につきましては、先刻御承知のように、四月時点でもって官民の水準を出しまして、それを比較して水準差を出して、そこに較差がある場合にはこれを埋めるという方式をとっております。これに対応いたしまして、いわゆる特別給、賞与に関しましては、これは毎月支給されるものではございませんので、その点については民間の実態等をも考慮いたしました上で、いわゆる何カ月分というようなことの率でもって一応把握することが便宜であるというような点もあり、従来、慣習上そういう方向でやってきておったわけでございます。したがって、この両者には大変密接な関係がございますけれども、やはり月例の俸給表に基づく俸給を主体とするものと、それから賞与的なものとはやはり一応別個に考えていくたてまえをとることが正しいのではないかという考え方に立っておるのであります。しかしながら、いまお話がございましたように、前段の俸給表に基づく俸給を中心とする給与でございますが、これにつきましては、昇給率その他のことが、ここ数年来といいますか、特に二、三年来非常に論議の対象になっております。われわれとしても誤解のないように、機会のあるごとにはいろいろ御説明を申し上げておるのでありますが、遺憾ながらわれわれの努力が足りないせいもありましょう、十分御理解をいただけない面があるということで、非常にじれったい思いも時として感じておることはございます。いまお話しになりましたように、われわれの調査というものは四月段階で、そこで一つの絶対額を出して、それとの平均的なものを較差としてとらえていくという方向でありまして、四月時点では、毎年の一月十五日で行います国家公務員給与実態調査、それでもって全部わかりますから、四月に昇給をする人が把握できますので、それを把握して、それを織り込んで比較しているわけです。したがいまして、以後は今度は三回になるわけですから、三回で、しかも人数は大体四月が非常に多いわけですから、四等分というわけではないというような関係がございます。したがって、その俸給表上の平均の昇給率というものをそのまま加えるということは、これは事柄として非常に問題がございます。それをそのまま出されることは実態をあらわさないということは明白でございます。そういう点もございまして、それに見合うしからば昇給率は何かといいますと、いろんな試算の方法はございますけれども民間の定昇率自体が、これは実は大変まちまちでございまして……
  37. 山崎昇

    山崎昇君 簡潔にしてください、時間がないから。
  38. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 簡単に言いますが、それでことしも定昇、民間のものを調べましたけれども、まだはっきりいたさない部分がございます。そういう点もあって、一般に言われている定昇率をそのまま積み上げるということは私は適当ではないという考え方に立っております。  以下、もしございましたら給与局長から申し上げます。
  39. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 数字にわたる点についてお答え申し上げたいと思いますが、ボーナスで〇・一、ボーナスといいますか、特別給〇・一の減は、月給に直すとどういう関係になるかという御質問と思いますが、これはいま総裁から御説明いたしましたように、ボーナスを換算して月給につなぐということ自体が問題がございますが、一応それはそれとしておくとして申し上げますれば、月給を下げました場合に、もちろん毎月の月給に響くことは当然ですが、同時にボーナスの基礎にもなっておりますのでボーナスにも響く、そういう両方の効果がございます。したがって、〇・一というその期末手当の減を何で割るかと、影響をどこまで持たせるかということによって計算が違うと思いますが、これを十二、要するに月給だけということで割りますと、先生お話しのような〇・八幾らというようなことになります。これはやはり、ボーナスの方にも影響するということを加味して計算いたしますと十七で割るということもあろうかとも思いますが、まあその幅の間だろうと思います。そういう割り方をいたしますと、〇・五九か八というような関係にも相なろうかと存じます。  それからもう一点でございますが、昇給期、期ごとのウエートでございます。現在の時点で、四月昇給は、一般職給与法、私どもの五十万人のウエートでございますが、三三・四%が四月に昇給いたしております。大体三分の一でございます。七月が二二・六、十月が二一・六、一月が二二・四、したがいまして四月以外は大体均等いたしておると、そういう状況でございます。
  40. 山崎昇

    山崎昇君 期末手当をどう影響させるかということは、また別論で私は議論していいと思うのだが、ただ少なくとも今日まで、私ども公務員給与で議論した限りでは、かつての総裁は期末手当も入れて、言うならば本俸化みたいな考え方をお持ちのようである。したがって、私に答える中でも、各月ごとの俸給の中に入れてなかった部分を、一まとめにして何回かに分けて払うという答弁をなされているわけですな。そういう観点から今度の場合を私ども想定すると、こっちは上がったがこっちでは削りますよ、しかし中身は、支給の仕方は違うが同じようなものですよ。こうなると、総体で言うならば三・八四にならぬじゃないですか。言うならば、今度の勧告ぐらいあめとむちと並んできたものはないのじゃないだろうか、こういう私どもやっぱり見解をとらざるを得ない。その点だけ申し上げているわけです。  それから、四月の三三・四%の人が定期昇給に入って、あとの人が入ってないと、こうなるんですね、水準比較となれば。だから、論理上で言えばあとの者も入れてやっぱり考えなければ水準比較にはならぬのじゃないでしょうか、こう言っているわけです。とるかとらないかは政策の問題でありますから別であります。  そこで、もし仮にあなた方の説明をそのままにしたとしても、三・八四であとの三回の昇給率を一・七四にすれば、これは五・幾らになりますね。そうすると私は、国家公務員法二十八条の第二項による五%を超えるという考え方に立たざるを得なくなってくる。だから当然勧告すべきだということになってくる。五%以下だから勧告してもしなくてもいいんだなんという理論にはなってこない。そこにこの定期昇給率をどうとるかによって私はやっぱり問題点が所在をしてくる。そういう意味でこれはお尋ねしているわけであって、これはいずれまた議論しなければいかぬと思いますが、その点だけ指摘しておきます。  それから、あわせまして、この法律で言うならば、国公法の六十四条の第二項との関係が最近薄れてきている。特にここに三つの問題点がありますが、民間における賃金というかっこうでは調査されるけれども、あとの点についてはどうも私どもうやむやになっているのじゃないか。だから、六十四条の二項との関係はどのようにお考えになっているのか、考え方だけきょう聞いておきたいと思うんです。  時間がありませんから、続いてこの配分について二、三点お聞きをしておきたいと思う。  第一点は、五十二年の勧告に比較して五十三年の勧告は、本俸に対する配分がきわめて低くなっている。諸手当配分が多くなってきている。言うならば、もっと言葉をかえて言えば民間の第二基本給に似通った考え方人事院はなりつつあるのだろうかと、こう考えるのですが、本俸に対する配分率が低かった理由について説明願いたい。  それから第二は、初任給がきわめて低かった。たとえば大学卒が二・八%で高校卒が二・三%です。公企体と大体同じ数字をとった。それならば初任給を決める一体基準は何なのか。そのときの民間だとか、そのときの周りだけで決めているのだろうか。かつては標準生計費、その他あなた方はいろいろ科学的と称して数字を出しましたが、いまやそれはなくなっちゃった。だから、初任給を決める基準は一体何なのか。  第三点は、上に薄くて真ん中に厚くて下に薄いと、こう言う。しかし、私がしさいに見ると平均が三・六でありますが、あなた方が中心を置かれたという五等級と六等級はなるほど三・七ぐらいになっている。しかし号俸別に見ると、十八号から上のものについては昇給間差額が据え置かれる。言うならば、等級としては中心に〇・一%程度多いが、昇給間差額から言えば据え置かれるということになると、余りこれは重点配分になったとは受けとめがたい。この点についての説明を願いたい。  それから第四は、職種別の改善を図ったと、こう言うが、公安でありますとか、税務でありますとか、これは一般行政の(一)と同じでありまして、単に研究職だけが三・七で〇・一だけふえている。言うならば、職種別にどういうふうに具体的に改善をしたのか、これも私どもは疑問を持たざるを得ない。  それから第五は、高齢職員の問題について総裁から話がありました。しかし、私は定期昇給というものの定義について、これもかなり私は議論した一人でありますが、少なくとも行政経験についてあなた方の評価という言葉がある以上、年とったからというだけで定期昇給を抑えたり削ったりするということについては私は疑問を持つ。ただ民間との比較だけで抑えるということについては疑問を持つ。そういう意味で言うと、高齢職員の問題についてももう少し配慮すべきではないかと思うんです。特に具体的に聞いておきますが、いま人事院規則では五十八歳以上の者について延伸を図っておりますが、これを動かす考え方があるのかどうか。これは恐らく定年制の問題とは関連してないと思いますが、念のために聞いておきたいと思います。  とりあえず国公法二十八条、六十四条の二項、そして配分関係内容について二、三まずお聞きをしておきたいと思います。
  41. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) お答え申し上げます。  まず国公法の六十四条の二項の関係でございますが、これは生計費、民間賃金その他人事院の定める適当な事情、こういうことに相なっておりまして、先生お話しのとおり、その中で特に民間賃金との均衡ということで勧告いたしておるということは事実でございます。私どもは、そのいろいろな諸条件の中に物価、これは生計費にも含まれると思いますが、そういう要件が大いにあるということは十分承知いたしておりますが、大体民間の団体交渉等をやっております場面を考えましても、そういうものが集約された上でその結果出てくる賃金、これと均衡をとることでそれが間接的に反映されておると、こういう考え方で賃金均衡ということを第一にいたしておる次第でございます。しかしながら、できましたものについてやはりそういうのを横目でといいますか、真剣にいろいろ頭に置いてやっていることは事実でございます。  それから二番目のお尋ねでございますが、ことしの配分は本俸というよりも扶養手当中心の諸手当に傾斜しておるということについてでございます。これは本俸中心と申しましても、全体の較差が非常にことしのように少ない場合にはやはり実質的なところにお金を配りたい、こういうことでございますれば、やはり世帯持ちといいますか、結婚をし子供がある年齢層に配るということで、まず俵給表でございますが、当該年齢に当たります号俸をもちろん模索しつつ配分いたしておるということは事実でございますが、しかし、これはやはり平板的な配分になってしまうわけでございまして、その中にはひとり者もまじっておるというようなことになりますので、わずかな原資を配ります関係上、扶養手当は最もその目的にかなうということで具体的な配分方法として選んだわけでございます。結果的には、先生申されますように、そういうやや手当に偏っていることは事実でございますが、そういう重点配分を考えた次第でございます。  それから三番目でございますが、初任給を抑えましたということでプリンシプルは何かということでございます。本年は民間初任給調査をいたしまして出ております。おりますが、かたがた民間の雇用調整等を調べました結果、新規採用ストップと、それから初任給据え置きというようなものが全体の一五%、百社で十五社ぐらいまじっておるという事実がございます。私どもは、どちらかと言いますと、民間調査で調べましたデータは、これは実際に採用した会社について、しかもその採用の頻度に応じたウエートで入っておると、そういう調査結果になっておりますので、その他の民間情勢を考えましてこれを抑えたわけでありますが、正直申しまして、横目で見ましたのは、同じ公務という関係で公労委関係の五現業の初任給でございます。千七百円という高卒の引き上げはこれを頭に置いたということは事実でございますが、これは初任給据え置きますと、先輩、後輩といいますか、二年間くっついてしまうわけでございます。したがいまして、部内のそういう秩序といいますか、序列感覚を頭に置きながら、なし得べくば最低の差でもってしかし差をつけておくというようなことからいたしましたものですから、民間初任給とも離れておりますし、標準生計費からは相当上ざやになっておる、そういう宙ぶらりんの関係になっていることは事実でございます。  それから上下配分の問題でございまして、高号俸者の昇給カーブが落ちておるではないかというお話でございます。これはやはり一番世帯年齢といいますか、年齢別に、制度的にとりました場合には、やはり中位号俸及び中位よりやや上というところに主力がございまして、分位で申しますと大体第九、十分位までがその辺に属しておりまして、今回の引き上げ率は大体最高あるいは最高に〇・一ぐらいのところ、第三、四分位から第九、十分位ぐらいまではカバーできるようにという考慮をしてやっておる次第でございまして、やはり重点はその辺に置いたということは間違いない事実でございます。  それからあと職種別の配分の問題でございますが、これは先生お話しのごとく、研究職については、研究員の若いところでございますが、これについては重点配分をいたしております。あと税務、公安は、全体の職種系といたしましてはかわりばえがしておりませんが、これはしかし、部分的に非常にそれぞれの職種の大事なポイントがございまして、それぞれの税務署の課長クラスでありますとか警部補クラスにポイント的に重点を置いたということでございます。  それから最後に、高齢者の官民比較の関係でございますが、これはやはり年齢別の配分というのは重要な柱でありますので、そういう意味で、現在五十八歳以上昇給延伸という措置をとっておりますものでは、もうこれは昭和四十六年から相当長い間経ておりますが、民間調査を毎年いたしておりますたびに年齢別に開いてみてその状況をずっと見てきたわけでありますが、改善されていないと、これでは効果が薄いということが一方にございます。なるほどこれは相対関係でございますので、こちらがやります以上に民間がそれ以上にその辺の配慮をなされば幾らも改善できないということも事実でございます。しかし、いままでのように大幅なベースアップがありますときは別として、非常にベースアップの幅が小さくなります場合には、配分ということにみんな意識を集中してまいりますので、やはりこういうことは今後このままほうっておくと問題になるということで特にこの際取り上げたわけでございます。
  42. 山崎昇

    山崎昇君 そのほか、本当は総裁談話にあります代償機能でありますとか、寒冷地給でありますとか調整手当、住宅手当、週休二日制、定年制等々公務員をめぐります問題点はたくさんありまして、いろいろお聞きしたいと思うんですが、もう私の時間がなくなりましたから、もう一、二点だけ聞いて終わりにしたいと思います。  それは、私の調査によりますと、これは行(一)だけでありますが、四等級におる者が一五・六%、五等級が三二・六%、六等級が二二・六%、言うならば四、五、六で大体七割の職員が存在をいたします。そこで、何が問題が起きてくるかというと、昇格という問題が伴ってまいりませんと、もはや一般給与配分だけでは行き詰まってきているんではないだろうか。その証拠の一つに、指定職俸給表が三十九年につくられたときはきわめて少なかったが、いまや千三百人ぐらいになっている。片方では、上級職の方は調整官とか審議官とか何とかという職をつくってある意味では昇格と同様のような方法をとっておる。下級職員はそうなってこないからある部分にかたまっちまう。そういう意味では、この昇格の問題について真剣にひとつ考えてもらいたいということを一つ申し上げておきたいと思います。  それから、第二は指定職の問題でありますが、これは今度の場合は見送ったわけです。これの是非についてはまた議論せねばなりませんが、ただ指定職は見送ったことによって、また〇・一削ったから、言うならばこの諸君はかなりな損失となる。これだけは事実だと思うんですね。そこで問題は、一等級との間に調整をしなきゃならぬところが出てくるんじゃないか。たとえば指定職の三号から四号、五号、六号ぐらいの間は、一等級の諸君が上がって、片方抑えますから、そうすると、やり方にもよりますが、そこら辺のことは調整しなければ問題点としては出てくるんじゃないかという気がします。これは総額的に計算しなければなりませんから、私はいま計算した例を持っていますけれども申し上げませんが、その点についての見解をひとつ聞いておきたい、こう思うわけです。  あともう時間がございませんので、その答えだけできょうは終わっておきたいと思います。
  43. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 一般職員といいますか、中堅職員の昇格問題でございます。これは等級内でできるだけお金の関係でカーブを立てるという努力に限界があるという御質問だと思いますが、しかしながら、その等級内での折れ曲がり是正という努力をいたしておりますほかに、昇格についてもその熟練の度合いに応じてそれぞれの仕事に対応する昇格ということでやっておることも事実でございます。それで、基本的にこういう等級構成の検討というような、別途そういう検討もいたしておることは事実でございます。総合的によく検討いたしたいと思っております。  それから、指定職を据え置きましたこととの関係で行政職の一等級との間のバランスの問題についてお尋ねでございますが、これは今回の行政職の一等級の改善の一番末号といいますか、高い号俸を相当抑えておりますので、そう思うほど上にはもろにはぶち当たっているという関係ではございません。しかしながら、従来よりは窮屈になったことは事実でございます。しかし、一般にいままでの経験によります一等級から指定職に昇格する関係におきましては逆転が生じるというところまではいっておらないので、何とかいけると思っておりますが、特殊な例といたしまして医療(一)、お医者さんなどの場合に、病院長などが上がってまいります場合にはいまでも非常に苦しい関係にございます。そういう点についてはそれがさらに深くなるということで問題は若干ないことはないと思っております。  以上でございます。
  44. 山崎昇

    山崎昇君 それじゃこれで終わりますが、総務長官ね、冒頭に申し上げましたように、早くひとつ政府の態度を決めて、臨時国会もあるようでありますから、ここで処理をしていきたいと思っておるわけです。  それから重ねて、これはこれから予算編成になるんでしょうが、ことしの勧告は異常な低さでありますから財源に余裕ができたなんていうことはありますが、来年はそうなるかどうかもわからぬ。そういう意味では、来年の給与費の扱いについても、政府はいろいろなことが飛んでおりますが、私どもとしては、ことしと同じような方式をとられるんだろうと、こう思っておりますが、そういう点慎重にひとつ配慮してほしいということを述べて私の質問を終わっておきたいと思います。
  45. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 先ほど人事院の総裁からいろいろ説明がございましたが、人事院は本年八月十一日、国会及び内閣に対して国家公務員給与引き上げについて勧告を行っておりますが、その勧告内容一つに、本年四月から平均三・八四%、七千二百六十九円引き上げることとしている。だが、この勧告は、昭和三十五年に人事院勧告制度が本格的に始まって以来の最低の数字になっていることは御承知のとおりでございます。  そこで、まずこのような最低の勧告を提出しなければならなかった原因等について簡単に御説明を願いたいと思います。
  46. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 簡単に申し上げます。  人事院勧告というものは、もうすでに累次申し上げておりますように、四月時点における官民の比較をいたしまして、その較差がある場合にそれを埋めるということを基本原則といたしております。で、ことしの場合も例年と大体同じような方式で詳細に民間の実態を調査いたしたのであります。ところが、民間の場合は、世の中に言われておりますようないろんな景況を反映いたしました結果、全体として非常に低いということが言われておりましたが、調査の結果を見ましてもそのとおりでございまして、これを分析いたしました結果が三・八四という非常に低位なものが出てまいりましたので、これを基礎にしてそれを埋める意味において勧告お願いしたということでございます。
  47. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、今回の勧告で一番注目すべき点の一つに、国家公務員法の第二十八条では第二項で五%以内の勧告は義務づけられておるわけでございますけれども、今回は五%以内の場合でも勧告を出された、この点ではないかと思いますが、そこで、給与の官民較差が五%以内でも勧告をお出しになったその理由ということについてもう少し詳しく御説明願います。
  48. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 俸給表について五%以上の増減があった場合には人事院勧告が義務づけられておりますことは法律の規定上明らかでございますが、しかし、このことは五%以上の増減がない場合において人事院勧告義務がないということの意味ではなかろうかというふうに考えております。その点は、いまお挙げになりました二十八条の第一項におきましても、給与その他の勤務条件というものはこれは国会によって改定をされるものであるということと、その前提として人事院というものがあらゆる点で情勢に適応するような勧告というものを怠ってはならないということを書いておりますのは、まさしくこのことを明確にしているものではないかというふうにわれわれ受け取っておるのであります。それといろんな事情、すなわち説明は申し上げませんで、個条だけで申し上げますと、やはり民間においてもそういうことで低位ではあるけれども、春闘の結果その他の事情でやはりベースの改定が行われたということ、それから公務員とはいわば親類づき合いみたいなことである三公五現というものについても四月にさかのぼって改定が行われたというような点、それからさらには、従来法制定の時期と違いまして、今日ではやはり基本になります俸給の総額自体というものがかなり上がっております関係上、事は一%というふうに言いましても、一般職の場合について申せば大体十九万円程度になっているわけですから、一%と言っても千九百――二千円近いというようなことですから、一方において物価の上昇その他を見てまいりますと、これはやはり無視はできない数字ではないかというような観点から、あえて三・八四ということでもやはり勧告すべきである、この較差を埋めるべきであるという判断に立ちまして勧告お願いしたということが実情でございます。
  49. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 今回の低額の給与勧告と関連をいたしまして、なかなか現在の厳しい経済情勢では今後もこれが長期的に続くという見通しが強いようでございますが、そうなりますと、来年度勧告もやはりこのような低額の勧告にならざるを得ないのじゃないかと、こういうように思うわけでございますが、そこで、来年度も本年度のように五%以下であっても勧告をされるおつもりなのか、将来こういうような状態が若干続いたとしてもこれを定期的に定着をされるおつもりがあるのかどうか、そこらあたりをお答え願いたいと思います。
  50. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) これは仮定の問題でございますので、来年の景況がどうなるかということを私らの立場から予測していろいろ申し上げることは適当でないので差し控えさしていただきますが、ことしはいろんないま申し上げましたことで、三・八四という較差であったけれども、諸般の事情から考えてこれは放置すべきでないということで勧告に踏み切ったという、そういう意味では一つの新しい事例ができたというふうに解釈をしていただいても結構だと私自身は考えております。したがいまして、来年以降どういうふうに事態が推移するかは予測の限りではございませんけれども、ことしのようなことが続くというような場合においては、その場合にまたいろんなことを判断し、また、ことし勧告お願いしたということも踏まえて適切な判断を下していくということにならざるを得ないのではないかと思います。それが仮に三・八%が三%のときはどうするかとかというようなことについて確たる限界線が理論上出てくるわけのものではございません。そういうことは、実際に数字が出てきた時点において、今年の勧告の前提としていろいろ申し上げましたことも勘案をして、最終的に結論を下して、必要があればまた勧告お願いするということになろうかと思います。
  51. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 国家公務員法第六十四条「俸給表」の第二項には、「俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定め」ると、このように規定をされているようでございますが、そこで、ここで言っている「人事院の決定する適当な事情」というのは、いままでの国会答弁では物価を指しておると、このように理解しておりますが、このように理解してよろしいかどうか。
  52. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) その他の事情の中に物価が入っておるかということはかねてからよく議論された点でございます。しかし、物価がその中に入っておろうとおるまいと、生計費というのがございまして、生計費、民間賃金となっておりますが、生計費といいますのはいわば生計のためのコストでございまして、そういう意味には当然物価をそこに反映しての生計費という意味で、当然すでに入っておるという見方もございます。それで、そういうこともございますが、そのほかにその他の事情といいますのは、たとえば国家公務員俸給表を作定いたしますときに部内配分をいたします、その公務員のいわば家庭の事情に属するような事情もあろうかと思います。配分のルールでありますとか、そういう公務員の人員分布なり何なりに応じて配分するというような、そういう事情もその辺でもちろん入ってくるだろうと思っております。
  53. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 いま御答弁がありました物価を反映しての生計費ということになりますと、やはりある程度物価を考えてということだと、こう理解をするわけでございますが、今回の勧告の中で、この物価を反映しての生計費の中でどういう比率でこの勧告の中に反映されたか、それをお答え願います。
  54. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 私ども民間給与調査いたしましてその実態をとらえますが、民間給与の形成過程を考えてみますと、これはいわば民間で団体交渉をやっておりますその中に溶け込んでおる要素としては何かということが前提条件としてございます。団交の席上では、大根が上がったとか家計がこんなに苦しくなったとか、そういうことがいろいろ議論された上で出てくるのが賃金として妥結するという結果をとっておりますので、そこで出てきた民間給与を反映するということで、間接的ではありますけれども、そういう物価とか生計費とか、その他の社会一般情勢でございますが、そういうものを織り込んでおるということでございます。ただ、でき上がりました官民比較の結果出てきます今度は配分の問題でございますが、配分を個別の等級について考えますときに、これは世帯構成がどうかとか、それが生計費という意味で実質賃金としてどうなのかという場合には物価が当然頭の中にございます。それは配分の問題として、たとえば世帯構成、世帯形成年齢のところでどうなのかというような生計費的な考慮の中に溶け込んでおりまして、当然その中で考慮されておるものと考えております。
  55. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 物価ということになりますと、人事院の方から出されたこの資料等を見ましても、消費者物価が全国的には三・九、それから東京を中心にしますと四・五、こういうことになりますと、三・八四という数字からしますと、やはり賃金というのは、そういうような物価を反映した生計費ということを中心にしますと、やはり四・五という、こういうところまで勧告をしていただきたいという要望は私は強いのではないかと思うのですが、そこらあたりができなかったそういう理由についてはいかがですか。
  56. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 生計費ということを考えますときに、それぞれ職員個人個人が幾らお金をもらうかという見方、そういう収入と消費という関係になると思いますが、これは給与水準を三・八四上げますと同時に、このほかに一般に、普通でありますれば昇給分がございます。昇給分が本年の場合、平均いたしまして大体二・三強ございます。これもやはり一年間に職員がベースアップとともに受け取るお金の伸びでございます。したがいまして、実質のそういう生活費に見合います賃金の伸びというのはこれを足しました関係に相なろうかと思いますが、それを加えますとこれは六%に達すると、そういう関係でございますので、そう十分ではございませんが、物価に対する対応においても大丈夫、こういうふうに考えております。
  57. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 いま局長が、昇給分も含めてというようなことをおっしゃいますけれども、昇給制度というその根本の解釈が大事ではないかと思うのですが、労働用語辞典で言っておる定期昇給制度というのは、御承知のとおり、一般には勤続期間の経過に伴う自動的昇給と、個々の労働者について能力、能率、成績などを考慮して行う評価昇給の二つがある、こういうふうに定義づけられておるわけでございますが、昭和四十二年の十二月二十一日、参議院内閣委員会で当時の局長の答弁では、昇給制度というのを、やはりいまおっしゃった答弁の趣旨とちょっと違ったような答弁をしていらっしゃるのですが、そこらあたりの関連といいますか、考え方関係というのはどのようにお考えですか。
  58. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 昇給制度といいますのは、これは公務員だけじゃございません。わが国一般といいますか、日本的な賃金秩序の中で非常に大事な役目を果たしている制度であろうと思います。民間企業におきましても、企業内の一つの秩序として昇給制度が主にとられておりまして、これはそれだけ技能なり能力の伸長に伴う業務に対する貢献ということと相対応しているようでありますが、一方では、それぞれ年齢が増加しますことによる家族構成とか生計費の増加に結果的には対応しているというさまになっておるというのが現在のこの制度の非常に妙味のあるところでございます。で、公務員給与の体系の中にこれが基本に取り入れておるということは、そういう民間の体系の反映であるということが大前提ではございますが、これを運用いたしますときには、やはり成績といいますか、円満な能力があって十分仕事にたえ得ると、たえたということでもって一年間に俸給の金額を引き上げるということに対応して、一歳年をとることによるそういう生計費の増加に対応している、こういう関係に相なっておりまして、昇給制度の本来の職務に対する関連と、それからやはりそういう実質的な生活に対する関連とがそこでうまく融合しているんではないかと思っております。そういう意味で、いまベースアップの引き上げ額と、それから消費との関係で実質どうかというようなお尋ねでございますので、それはまさにいま説明いたしました後者の点で昇給率を足してみるとそれでうまくかなっているんではないかと、そうお答え申し上げた次第でございます。
  59. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 給与勧告の改善率と定期昇給の率とを加えて消費者物価の上昇率を上回っておるからというような考え方では、私は定期昇給の制度が生かされないんじゃなかろうかと、こういうように思うわけでございます。  次に、高齢者の職員の問題についてお尋ねをいたしますが、人事院調査によりますと、若中年層の職員給与民間のそれより下回っているのに対して、五十歳以上の高齢層の職員についてはついに民間を相当上回っている傾向にあると、このように分析しておられるようであります。昭和四十六年からとられた昇給延伸措置、五十八歳から第一回の昇給期間は十八カ月、それ以後は二十四カ月を実施したにもかかわらずその効果は必ずしも上がっているとは言えないと、このように述べておられるわけでございますが、その点について説明をしていただきたいと思います。
  60. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) お答え申し上げます。  給与配分問題の中で一番大事なのが、年齢別に対応しておるかと、それから職種別に対応しておるかと、それから地域別に対応しておるかと、大きく分けましてこういうことであろうと思っておりますが、特に最近のようにベースアップの幅が官民ともに下がってまいります場合には、この辺の乖離が非常に気になるという状態にだんだん相なっていくと思います。そこで、いま始まったわけではございませんで、昭和四十四年、五年にこういう問題意識を持ちまして、当時の公務員職員構成、平均年齢がだんだん高まっていくということを見越しまして、約十年前にこの問題提起をしたわけでございます。そこで昇給延伸と、五十八歳以上というところで実行いたしておりますが、私どもとしては毎年毎年官民比較をいたしまして、それを年齢別に開いてみてどうなっておるかと、大変興味を持っていままで来たわけでありますが、最近は民間におきましてもやはりこういう配分に非常にいろいろ気を使っておられる面があるかと思いまして、私どもが努力している以上に向こうがそういうカーブに調整を加えておりますれば、私どもの努力がかえってまだ追いつかないという関係に相なることも事実でございます。そういう意味で、十分効果が上がっていないという問題提起をさらにいたしたわけでありまして、やはり一番働き盛りといいますか、四十歳未満あたりはやはり民間の方が大変高い関係になっておりますので、まあできれば適正配分としてその辺を中心にした年齢別配分に持っていきたいということで、昇給延伸だけではなくて、それ以上の措置を考えながら今後検討していきたいと、こういう問題提起をしたわけでございます。
  61. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 これまでの昇給延伸措置が効果が上がっていないから、人事院は今回の勧告においては「かかる不均衡を是正し、公務部内における給与配分の適正化を図るため、昇給の停止を含め、高齢層職員給与について早急に適切な措置を講ずる必要がある」と、このように述べておられますが、そこで、ここで言う早急な適切な措置というのは具体的にどういうことなのか、そしていつごろからおやりになるおつもりであるのか、お答え願いたいと思います。
  62. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 早急に検討を開始したいと思っておりますが、これは実際に適用いたしますにつきましては、具体的な問題としてはいろいろあるかと思います。公務員にはいろんな職種がございまして、全部平板的なそういう実施ができるかどうか、この辺は非常に大事なところでございます。昇給停止といいましても、職員の分布の実態を見てどうなのかと、どの程度効果があるかと、これだけじゃ足りないからこの措置をとろうと、こういうことになるわけでございまして、それは職種別にいろんな考慮をしなければならないと同時に、それによる効果がどういうことになるかと、何年累積して、将来何年先にはどうなるかと、いろんな算定をしなくちゃならないと思いますが、こういう点を早急に検討を始めたいと、こういうふうに思っております。
  63. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 まあしかし、この高齢層の職員方々はいままで安月給で甘んじて非常に苦労してきておられるわけでございまして、その上にまた昇給延伸というのは、自分たちが好んでではなくて国の給与制度によってそういうことの枠をはめられたと、こういうようなことであるのが実態でございますが、そこでまたこういうような強い枠をおはめになるということになりますと、公務員の、まああなたがおっしゃった若中年齢層ですか、と、高年齢層との世代の間の対立というのが激化をするおそれが出てくるんじゃないか、職場関係に悪い人間関係が起こってくるおそれがあるんじゃないかと、まあこういう問題と、仕事のサービスと能率の低下ということを招くおそれが出てくるんじゃないかと、こういうことを恐れるわけでございますが、その点についてはどのようにお考えでしょう。
  64. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 現在、私もそうでございますが、大体高齢層という世代は大変苦労して、軍隊あるいは戦後をくぐってきたという意味で、それは気の毒な世代であるということはよく存じております。しかしながら、若年層と高齢層とが、企業の中といいますか、公務員の中で非常に不協和になるような、そんなドラスチックなことはできないと思っております。やはり企業内賃金といいますか、全体の秩序の中で行うことでございますので、おのずから程度がございます。民間で言いますれば、非常にもうベースアップをやめてしまったり、いろんなドラスチックな措置があるかと思いますが、現在そこまでは考えておりませんで、やはりそういう働き盛りの――それから民間と申しましても非常に賃金上落差のあるところには持っていかなくちゃならないが、少なくとも高齢層といいましても五十代、さらに六十近いと、そういうところから先と、こういうことで、できるだけそういうドラスチックでないような関係と、そういうことはよく考えておりまして、まあ職種別にもそういう企業内のいろんな人員構成等にも気を使いながらよくやっていきたいと、こういうように思っております。
  65. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 それから、今回の人事院勧告によりますと、期末勤勉手当を〇・一カ月のカットをなされるようでございますが、昭和五十年ですか、このときには民間と比べてマイナス五%のダウンがあったということで、先ほど総裁のおっしゃったとおり〇・二カ月のカットをされたのも事実のようでございますが、いま民間の方は五十二年度が六・五%の上昇率、大企業がですね、中小企業の方は五・九%の上昇率を持っておるわけでございますが、こういうふうな状態との比べ方はどのような比較をされたんでしょう。
  66. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) ボーナスといいますか、特別給の関係のお尋ねと存じますが、特別給の関係は、民間のボーナスの伸び、それからそれに対応する民間の月給の伸び、で、このボーナスを月給で割りまして支給月数といいますか、それの伸びがどうなのかと、こういう関係で私ども把握いたしておりまして、いま先生お話しの五・九という数字は、これは民間の月給の伸びであると思います。ところが私どものボーナスの調査は一年ずれておりまして、いわば昨年一年間の決済をボーナスについてはことし行うという関係になっておりまして、ところで去年一年間の民間の賞与のいわば夏と冬の合計が非常に伸びが悪いということになっております。それで、水準の上がりは去年の春闘でも八・八とか九とか申しておる関係にありますが、それに比べますとボーナスの伸びが非常に悪いということで、その結果を本年に持ち込みまして、それでことし公務員の五・〇を〇・一引き下げると、こういうことにいたしましたわけで、ボーナスはボーナスとしての民間の実態に合わせて月給で割ってその均衡をとっておると、こういう関係に相なっております。
  67. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 最後に、週休二日制のことについて総裁と長官にお尋ねをいたしますが、現在公務員の週休二日制については二回目の試行実施をしておられるようでありますが、しかし今回の勧告では明確に週休二日制の本格的な実施については触れていないようでございますが、しかしながら、民間調査によると全企業の約七〇%近いところが実施をしておるようでございますので、来年度は本格的に実施を導入してもいいんじゃないかと思うんですが、そこらあたりのお考えをお知らせ願いたいと思います。
  68. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 現在、週休二日制については第二回目のテストをやっております。これは一年間で来年の三月三十一日までということでございます。この結果がどういうふうに出てまいりますか、結果を収集し分析をした上で、いろんな情勢を判断いたしました上におきまして次のステップをどうするかということを決めてまいりたいと、かように考えております。何分いまテストをやっておりますので、この結果を見た上で次のことを考えていくという順序をわれわれとしても考えておるのが実情でございます。
  69. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) いま人事院総裁お答えになったとおりでありますが、問題は、世論もあるいはまた民間、まあ中小企業を含めて相当定着をしておると、こういうふうな関係から、第一回目は御承知のように相当抜けた諸官庁もございまして、そういったことも含めて再試行に踏み切ったわけでございますが、五十一年時代と五十二年時代と最近とは相当変わってきておると、こういう踏まえ方も私はいたしておりますので、早急に人事院に再試行お願いしておるわけでございますから、これは来年の三月三十一日ということでありますが、まあできるだけ早く結論を出してもらおうと、こういうふうに考えております。
  70. 山中郁子

    ○山中郁子君 今回の勧告はいろいろ問題があるんですけれども、私は二つの大きな問題について人事院の見解をただしたいと思います。  第一の重要な問題は、今度の勧告が法的義務がない五%以下の勧告ということを大義名分にした形で、物価上昇率や春闘相場も大きく下回る、そういうものでありながら、それと引きかえに一時金のカットだとか、あるいは高齢者の昇給ストップの問題だとか、ないしは調整額の改悪を示唆するというような一種の合理化ですね、そういうものを提起しているというところが大変重要な問題だと思います。公務員労働者を初めとして多くの方たちが、これに抗議もし不満も出されているというのは当然なことであると私は考えておりますけれども、私は、一つは労働基本権の剥奪、そして人事院の設立、三十年を経過したわけですけれども、そういう事態のもとで、いままさにその代償機能としての人事院の真価が問われるという時期にあって、人事院の基本的な姿勢、それが見直されなければいけないと思っておりますが、具体的な一つの例として、私はこの姿勢と体質という点に関連して参与人事のあり方について、ひとつ初めにお尋ねをしたいと思います。  もちろん人事院の方では十分に御承知のように、人事行政の重要な事項について人事院意見を述べるということで参与制度が決められておりまして、現在九名の参与がおられる。その構成が、調べてみますと、行政委員長をされている方とか、ないしは元高級官僚とか大企業の役員、それから政府サイドの審議会のメンバーをしていらっしゃる方たちのいわゆる学者、そういう方たちに限られている。そういう状況で、本来の中立公正を旨とする人事院の重要な事項について意見を述べる人たちとしては大変ふさわしくないし、国民の代表ないしは公務員労働者の代表にふさわしい人たちが入っていないということを私は大変問題だと思っておりますけれども、これについてぜひ総裁の率直な意見を、ひとつ簡潔に初めにお伺いいたしたい。
  71. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 参与につきましては、いまお述べになりましたような方々お願いをして、ときどきお集まりを願って人事院の行政運営に関して何かと御意見を拝聴をいたしておるのであります。  この人選については、やはりそれぞれの立場からお考えになる場合に御批判があることは私は無論否定はいたしません。ただ私といたしましては、やっぱり人事院の立場、これは公正中立な第三者機関である、そういう立場から行政というものを公正に推進をしていかなければならぬ、そういう立場から、やはり私の考え方からしてこれは適当でありますというふうに判断をした方に参与の職をお願いをいたしておるのでありまして、その意味では私は妥当な人選をいたしておるつもりであり、また、これらの参与の方々はその職責の重要性にかんがみて大変御熱心に、また大変参考になる意見を時々賜っておるというふうに考えておる次第でございます。
  72. 山中郁子

    ○山中郁子君 批判があることは知っているとおっしゃりながら、そしてまた具体的な九名の内容が先ほど申し上げたような方たちであるということがはっきりしているわけですから、私は人事院の中立公正という立場に照らして、こうした問題についての批判を受けるという実態があるわけですから、そこのところを銘記しておいていただかなければならないと思っております。  それから、今回の問題の重要な中身の一つですが、高齢者職員給与の問題があります。勧告では「早急に適切な措置を講ずる必要があると考える。」とか言っておりまして、「給与配分の適正化を図るため、昇給の停止を含め、」という大変大きな問題を提起されているわけですけれども、これは日経連などが高齢者雇用に関連して年功序列賃金体系の是正を主張しているということとも軌を一にしていると私は考えておりますけれども、これを実際に人事院が主張するように、働き盛りの三十代、四十代の人たちへということで考えていくならば大した額にはならない。で、これは私、人事院の方で試算をしていただきました。そうしましたら、五十六歳以上の職員の昇給を停止した場合ですね、最高の場合ですわ、それであっても五十五歳以下の職員配分は月二百八十七円、〇・一五%、そういう状態です。ですから、一年延伸した場合だとこれがさらにずっと減りまして百二十八円、〇・〇七%、俸給改善を一%引き下げた場合で百四十九円、〇・〇八%と、こういう本当に少ない額ですね。私はこういう程度のものを理由にして、そして配分の問題を主張して高齢者の賃金ストップを含めた改悪の方向を打ち出すということは、やはり一つのまやかしであるし、そして高齢者の待遇の問題についての基本的な問題点をそらさせる内容を持っていると思っておりますので、こうした基本的に低賃金にある実態のもとで、そういうわずかのお金を、高齢者の昇給を打ち切るというような過酷な措置をとって、そして幾らでもない積み上げを言い分にしてこうした方向をとるということは大きな問題点があると思っておりますけれども、その点についての見解を伺っておきたい。
  73. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) お答申し上げます。  試算によりますと先生がお挙げになりました数字のとおりでございます。これはしかし、その高齢者の昇給を延伸なりストップしたその原資をどこに使うかという問題であろうと思いますが、年齢別の民間との賃金較差の資料にもお示しいたしておりますが、四十歳未満というところが較差があるところでございまして、四十歳代になりますともう平均並みでございますから、ここのところでベースアップいたしますと、もうそれで逆になっているという状態がございます。したがいまして、逆較差になるところにそういう原資をぶち上げるという考え方ではなくて、四十歳未満、すなわち二十歳、三十歳代のところの今度ベースアップをして三・何%やりましても、なお民間の方が高いところに使うとすれば、それはその効果はもっと大きいだろうと思っております。  それから、これはお金を移しかえるわけでございますから、一方の配分をやめてこちらへパイの中で配分をいたすわけでございますから、効果は倍になるわけでございます。それからもう一つは、一年間、単年度の試算でございますが、これは累積するわけでございますから、やはりここのところはやや長期的に見て早目にこれは持っていきたいと思っておるのも事実でございます。これは本当を申しますと、先ほども和泉先生から御質問がありましたように、民間では非常にドラスチックなことをやるかもしれませんが、いま先生がお話しのように、非常になまぬるいやり方にはなっておりますが、それはやはり職場内の秩序ということを考えながらやらざるを得ないということが頭にあるからでございます。  それからもう一つは、日経連とかその他のいろんな動きということとの関連ということでございますが、そういうことではございませんで、私どもはこの問題を取り上げましたのはすでに十年近く前でございまして、一貫して同じ問題意識を持っておって、それの延長の話でございます。
  74. 山中郁子

    ○山中郁子君 多少計算の仕方を変えてみたところで、その額の程度というものが変わるものでないことはもうはっきりしているんですね。私が申し上げているのは、全体的な低賃金の中でそうしたことをすることが主要な問題ではなくて、高齢者も含めて必要な賃金の引き上げですね、昇給、そうしたものを確保するということが人事院がとるべきその設立の趣旨に照らしての最も重要なことである。しかも、それがそうした微細な効果しか生まないということを大義名分にして高齢者の昇給延伸、ストップ、そうしたものをさらに合法化し拡大していくということは大きな誤りであろうということを申し上げております。  次の問題ですけれども民間比較の問題は、これはいろんな問題がありまして、国会でも議論をされているところですので、きょうは大変時間が短いですから全般的に申し上げられませんけれども、私は一つだけ、いま民間の場合でも年功序列賃金がベースになっているということは事実ですよね、全体の流れとして。そうした場合には、比較の調査事項の中に、比較をより公正に、より合理的にと、そういう意味で、比較の計算する場合の中に勤続年数ですね、勤続年数の要素を取り入れるべきではないかと思っておりますけれども、その点についてのお考えはありますか、伺います。
  75. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 勤続年数という物差しがあることは事実でございます。これは民間公務員の場合の企業内の年数というものの取り方、カウントの仕方が必ずしも同じじゃないんじゃないだろうかという、非常に比較のむずかしい点もございますし、それから民間調査は非常に限られた期間内に事業所に行きまして調べます。そのときに、いわば事務の時間的な制約と能率化のために、経験年数ということを、一応それに見合うものとして年齢でもってこれにかえているということがございます。年齢そのものが勤続年数とは合っておりませんが、一応公務と民間と、経験年数の企業内のカウントの仕方が違うということが片やあり、かつ民間を調べましたときの調査の仕方として非常にむずかしいということもありますので、年齢を尺度にいたしますと両方の目的に同時にかなうというような便法であることも事実でございます。しかも、これはわりかた経験年数等を結果的に反映しておるという経験則もありますので、これを使っておるということでございます。
  76. 山中郁子

    ○山中郁子君 便法の気味があるということはお認めになっていらっしゃるし、実体的に勤続年数が年功に正確に反映しているということにはならないということはそれも十分御承知で、そこのところから較差についての不正確さというものが労働組合なんかもかねてから指摘しているところでもありますので、私はその点について、むずかしいということだけでなくて、より公正な、より正確な勧告ということで努力をなさるということが口だけでないことならば、そうしたいま指摘しましたことも含めて大いに研究もしていただかなければならないと思っております。勧告自体の問題点があるということはもちろん大きな前提として私は申し上げております。  次の大きな問題は、やはり教員関係です。この点については主任手当の問題から議論されてきているところですけれども、今回の勧告でも、主任手当支給対象の拡大、それから校長、教頭の管理職手当の引き上げ、そうした問題がこういう学校の反動的管理体制強化のための差別賃金という形で打ち出されてきているということは、二つ目の私は重大な問題だと思います。  この問題に関連しまして、具体的に三つのことをお尋ねいたします。  一つは、かねてから議論されておりますように、主任は中間管理職ではないということを盛んに言っていらっしゃるけれども、現在の状況は、確実に中間管理職化が急速に進んでいると私どもは把握をしております。ですから、人事院はとにかくその後の実態を調査をして、制度化主任の実態と変化ですね、それを調査をして、そのことがはっきりするまでは少なくとも拡大は凍結をすべきであるし、調査がはっきりすれば私は主任手当は撤廃すべきという結論が出ると思っておりますけれども、そうした方向でもって取り扱われるべきだと考えておりますが、その点についての見解をお伺いいたします。  それからもう一つは、大規模校の校長、教頭のの管理職手当増額ですけれども、その点について、もしそういう原資があるならば、当然のことながら人確法の立法趣旨に従って全体に配分をするということをするべきだと思いますけれども、なぜこういうことがされたのか。これはすでに第二次改善以降、新しいランクを引き上げる、一ランクを引き上げるという措置をとっているわけですから、いま今回の勧告でそうしたことを出す必要はないと考えております。  それから第三点目の問題ですけれども、国立幼稚園教員に対する教員特別手当を半額ということで出されております。これは先日給与局長から説明を伺ったときも、半額ということの合理的な根拠は私は理解はできませんでしたけれども、なお強いてその合理的な根拠があるならば伺いたいと思いますけれども、私はそういう合理的な根拠がないままに半額ということは理屈に合わないし、当然のことながら学歴、資格、職務の責任、困難の違い、そうしたものもほとんで教員と変わらないわけですから、ですから同様な手当ですね、これを措置すべきであると考えております。  以上、三点につきまして見解を伺って、質問を終わります。
  77. 角野幸三郎

    説明員角野幸三郎君) 教員人確法関係でございますが、第一番目に御指摘の主任の問題でございます。これは実は文部省で主任に関する学校教育法の省令改正がございましたときに、国立についての特段の主任についての規定ということとの関係でこれがおくれておりまして、付属でありますがゆえに、研究協力でありますとか、教育実習に関する指導手当というのは国立の場合には非常に大事なものでございます。それをこの七月一日に省令化されたものでございますから、それを制度化をまってこちらで手当を出す、そういう措置に踏み切ったわけでございます。  それで、先生お話しの中間管理職という問題でございますが、これは公立学校における実施の状況を、文部省はその趣旨においてこれは文部省が指導し、実施し、国に準じてやっておるわけでございますが、これは中間管理職ではないということを文部大臣もるるおっしゃっている経過でございます。私ども今回やりましたのは、全く国立のそういう二つの主任について、従来逆におくれておりましたものを新しくしたわけでございますが、これに伴いまして主任の数というのがふえます。これは結果的にふえることは事実でございます。大体国立の場合でありますと、これで校長、教頭を含めまして教員全体の三分の一というような関係に相なりますが、これに対して公立学校にどういうふうに文部省の方で御指導をなさいますか、それぞれの公立の情勢、事情に応じて御指導なさるものと考えております。  そこで、もう一点の管理職手当関係でございます。これはいろいろ事情がございますが、今回人確法によります改善の最終ラウンドであるということで総点検をいたしたわけでございます。その総点検の中の一つに、文部省の方から、第二次の勧告のときに文部大臣からいただいた要望がございます。それで二次、三次、とにかく最終までを含めた上で次のことを実施願いたいという御要望を、もう最終ラウンドでございますので点検したことは事実でございまして、その中に特別調整額、校長、教頭のそれの改正、規模によってというような、そういう御要望がございますので、それを受けとめたと、文教当局の御要望を受けとめたということは事実でございます。しかし、これはその事情について考えてみますと、最近教員の配置定数がだんだん改善されまして、標準的な教員数というのが増加いたしまして大規模校がふえております。非常に小さいところと、規模だけで見ましても校長、教頭の職務と責任に大変な開きがあるという、そういう実態を踏まえまして、規模の著しいところだけは、行政職においても同じ官職でありましても規模並びに官職の責任によってではありますが、区別をした管理職手当を出しているということも事実でございますので、それに対応してやったということでございます。  それから、幼稚園につきまして最後に申し上げますが、これは二分の一はどういうことかというお話でございますが、まず基本的に申しますと、幼稚園は義務教育といいますか、人材確保法の直接の対象ではないということが基本でございます。それで特別手当はと申しますと、これは人確法趣旨に伴う手当であるということで、水準を高めるために義務教に対して特段に新設した手当でございます。したがいまして、これは一〇〇%そのままで義務教でない幼稚園に支給するということはないと、こういうふうに考えておりまして、それが二分の一かという話でございますが、かたがた一方で、幼児教育に対する今後の方向ということで文部当局と厚生省の方でいろいろいま御研究並びに協議をなさっている途中でございます。そういうこともよく見ていきたいと思いますが、そういうこともありまして、二分の一ということで最終ラウンドにおいて踏み切ったと、こういう実情でございます。
  78. 山中郁子

    ○山中郁子君 終わりますけれども、文部省の言うことをうのみにしてやるんじゃだめだということを私は申し上げております、制度化主任の問題に関して。  終わります。
  79. 木島則夫

    木島則夫君 私は、ごく簡潔に一、二点の問題について確認と御質問を申し上げたいと思います。  質問に入ります前に、私どもの今回人事院がされた勧告についての立場というか、態度を申し上げておきたいと思います。  内容には、もちろんいまここで論議をされてきたように多くの問題もありますし、また検討を要することが多々あろうかと思うけれど、今回厳しい経済環境の中にありまして、今回の勧告を出された人事院の勇断に対して私どもは評価を申し上げたい。前段でこのことを申し上げておきたいと思います。  公務員労働者にはスト権もありませんし団交権も非常に不備でございます。そういう中にありまして第三者的権能を持つ人事院の存在というものは、これはもうそれなりに大きい意味のあることは、先ほどからもここで述べられてきたとおりでございます。そこで、特に組合の意向を吸収していただきたいと、吸収することも大事であるという点に関しまして、今日まで十分になされてはきたと思うわけでございますけれど、総裁が組合との折衝、接触、意向を吸収をする面においてどのように接触をされてきたか、また今後どのように対応をされていくか、ひとつ具体的にお示しをいただきたい。つまり、人事院の基本的な姿勢にもかかわる問題でございますので、まず第一点お伺いをいたしたいと思います。
  80. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 人事院の機能なり性格から申し上げまして、公正に事柄を処理するという基本線がございますけれども、何にも増してやはり労働基本権制約の代償機能というものを果たしていかなければならぬという大きな一つの使命がございます。そういう観点からいたしますと、しかも事柄はやはり給与の問題を中心といたしますし、しかもまた別の意味からは生活にも関係する、また一面技術的ないろいろな点がございますので、これは組合側のみならず、労使を通じまして非常にいろいろな御意見が現実に出てまいります。これに対しましては、本当にそれこそ一々の問題について掘り下げて検討し、また取捨選択をして最後的に結論を下す場合の参考にいたしてもらっておるわけでありまして、たとえば組合関係で申しましても、私が首脳の方々と何回かお会いをいたしますこと等含めまして、恐らく年間に私が記憶いたしておりますところでは二百回程度あるのではないかと思っております。そのほかに、やはりそれぞれのお立場から、要するに当局側と申しますか、ここからもいろいろな御意見なり要請がございます。その中心でありまする人事管理官会議でありますとか、それぞれ各省の立場からの御意見もございますし、勧告の直前等になりますると、各省のやはり特に重要な事項を持っておられまする大臣以下私のところに直接参られます。そういうことで、いろいろ御意見を拝聴し、これを参考にすべきことは参考にするということでやっておりまして、その点の立場は、私は一時とは違って非常に情勢が定着をいたしてきたということもございまして、それなりにやはり人事院の姿勢というものについては御理解がいただけておるのではないだろうかと、それが十分であるとは私は口幅ったいことは申しませんけれども、やはりそれなりの姿勢としては定着をしてきておるのではないかというふうに考えてきております。その点はもう労を惜しまず、できる限り接触をして実情をやはり正確に把握しなければいい結果が出ませんので、そういうことは、私機会あるごとに職員各位にも申し上げておるところでございます。そういう基本姿勢は正しかったと思いますし、今後ともその点についてはなお十分に配慮をいたしまして、緊密な連携を保ち、また接触を保って、事柄の十分な達成ができますようにこの上とも配慮をいたすということで努力をしてまいる所存でございます。
  81. 木島則夫

    木島則夫君 人事院勧告の基礎になるのは、言うまでもなく民間企業の賃金実態でございます。そこで、公制審から出されている提言の中で、非現業職員の団体交渉権の項目の中に「国家公務員給与については、当分の間、人事院勧告によるものとするが、その基礎となるべき調査等に、職員側および当局側の意見を聴く制度を設けるものとする。」という項目がございます。どのような制度を設けるか、これは将来の問題としてお伺いをしたいわけでございますけれど、この制度によってどのように組合の意向というものを吸収をしていくか。いま先ほどお答えをしていただいたこととこれはもう当然関連を持ってくるわけでございますけれど、いかがでしょうか。
  82. 藤井貞夫

    説明員藤井貞夫君) 公制審の答申の内容等についても、私も承知をいたしておるつもりでございます。そのためにはやはり、労使という言葉がいいか悪いか存じませんが、そういう点を十分に拝聴していくことを姿勢としてはやはり守らなければなりませんし、それと同時に、機構その他の組織の面でもやはり配慮をすべきであるという趣旨もごもっともであろうというふうに考えております。そういう意味で、実は現状を申し上げますと、個々にやはり給与運用上の問題等についていろいろ御意見がございますが、それ以上に毎年のこの給与勧告ということになりますと、その前提といたしまして国家公務員の実態調査、あるいは主体になりまする官民の給与をはじき出すための民間給与の実態調査、もうそういう段階から調査の方法をどうするかというようなことについても御意見が出てまいる、そういう点は謙虚に受けとめて、考慮すべきは考慮するという態勢で従来も来ております。組織の面では、特にいまのお話がございましたので、それを受けまして、全体としては、給与局あるいは職員局、その他の点でもいろいろ会見の申し入れがあれば十分それを受けてできる限りの応対はいたしておりまするが、その窓口といたしまして給与局に参事官の制度というものを設けまして、特にその参事官については、専門的に窓口としてその意見を率直にひとつ承る、また問題の所在については申し上げるべきことは申し上げるというようなことでその制度を活用しております。これらにつきましては、その参事官から、要請は給与局長を通じ、また直接にわれわれ人事官会議の方にもそういう御報告を受けまして、事柄の処理に、率直に取り入れるべきことは取り入れるということで従来もやってきております。こういう基本姿勢というものは、組織その他を問わず、できる限り改善の余地があるものについてはさらに改善の努力は惜しまないという姿勢でやってまいる所存でございます。
  83. 木島則夫

    木島則夫君 私の質問の冒頭で、今回の人事院勧告についてはこれを勇断であると御評価を申し上げた。今度は、こういう勇断が出たんですから、政府の方でひとつ勇断を示していただきたい。申し上げるまでもなくこの勧告を早期に完全実施していただきたいと、こういうことでございます。民間あるいは公企体におきましては五月の段階で改善された賃金の支給が行われているのに、公務員の場合ですとやっぱり年末十二月というのが通例でございます。これにはいろんな政争が絡んだり思惑が働いたりということはございますけれど、近く開かれるであろう臨時国会で必ずこれを提案をし可決をしていただきたい、こういうおつもりがあるかどうか。まあひとつ今度は政府が決断を示していただきたいという意味でむしろこれは確認をしたいわけであります。いま景気の状態も、もう一つ消費の動向が伸びていないという折でもございますので、景気の向上を図る、そういう意味からも、私は早期に完全実施ということがいかに大事であるか、これはもう私がこういうことを蛇足をする必要はなかろうと思うわけでありますけれど、政府のひとつ決断をお示しをいただきたいと思います。
  84. 稻村佐近四郎

    国務大臣稻村左四郎君) 御指摘の点でございますが、厳正、公平、中立という、まあ第三者機関の人事院勧告を従来から尊重する、こういうたてまえをとっております。御指摘の早期支給の問題でありますが、臨時国会等々の問題については、いまここに触れるというわけには私の立場から申し上げるわけにはまいりませんが、臨時国会が召集をされるとするならば、いち早く提出をさせていただきまして、各党の御審議をちょうだいし、速やかに成立をお願いしておきたいと思います。
  85. 木島則夫

    木島則夫君 結構です。
  86. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後は一時から再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  87. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国の防衛に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  88. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 最近、政府あるいは防衛関係の発言や見解の表明について、大変重大な問題に触れているわけでありまして、国民のわれわれの側から見ると大変心配をする次第でありまして、すでにこの問題については昨日衆議院において質疑が継続されました。その結果も私新聞等で拝見をいたしまして、できるだけ重複を避けた点で質問をしたいと思います。あるいは若干重複する点があるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思うわけであります。  まず第一点といたしまして、昨年以来、いわば防衛庁制服組の最高責任者である栗栖統幕議長の発言が、いま申し上げましたように大変重大な点に触れたことが繰り返されているわけでありまして、この際、これらの発言について防衛庁の見解を明確にしていただきたいと思うわけであります。  第一点は、自衛隊の最高の責任者である統幕議長は天皇の認証官にすべきである、こういう発言を昨年十月しているわけであります。私たちはこの点も大変心配でありまして、かつての天皇の軍隊化を志向するのではないか、こういうことで私自身も大変憂慮するわけであります。この際、この問題について防衛庁の明確な見解をお伺いしたいと思います。
  89. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 栗栖君の発言はいろいろあったわけでありますし、また、ただいま御指摘の発言は私が防衛庁長官になる前の発言でありまして、あれやこれやいろいろ発言があったわけでありますが、先般、超法規行動というこの問題を週刊誌あるいは記者会見等で本人の信念として申し上げたというようなことを、私もこれは重大に受けとめまして――私は大正の人間であります。あの五・一五事件から二・二六事件、あるいは蘆溝橋事件、満州事変、支那事変、大東亜戦争、第二次世界大戦、こういうものを私は目で、耳で、はだで感じて、こんな日本にしてはならないという考え方は、いつも私は国会で申し上げておるとおりでありまして、こういう超法規行動やむを得ぬというようなこと、これは重大に受けとめなくちゃならぬということで、事務次官を通しましてこの話を栗栖君に申し上げたわけでありますが、栗栖君も非常に誤解を招き、そうして大臣には非常な心配をかけた、なお大臣の信任を得られないと思うにつけては、という進退伺いが出たわけであります。そこで私は進退伺いを受け取りましたところが、本人早速辞表を出したと、こういうことでありますが、私はいままでの問題は問題といたしましても、この問題は重大に私は受けとめたわけでありまして、いろいろこの問題につきましても御批判があろうと思うが、私は戦前の日本にしてはいかないという考え方、また制服が政治に関与してはならぬ、シビリアンコントロールとは政治優先、国会が最高のこれを決めるところであると、こう私はいつも考えておるわけであります。
  90. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 その点についても後ほど触れたいと思うんですが、いままで栗栖発言がたび重ねられてきているわけですよね。たとえばいま申し上げましたように、天皇の認証官にすべきである、あるいは専守防衛と抑止力保持とは併存しがたい概念である。これもいま日本のいわゆる自衛隊、防衛庁の基本的な考え方は専守防衛だと言っているんだけれども、それと抑止力保持とは併存しがたい。これはこれまでの日本の政府考え方と大変重大なかかわりある発言だろうと思うんです。  それから、これは前回の本委員会でも、私ども山崎委員から厳しく指摘された択捉島における極東ソ連軍の動きについて、あれはソ連軍の上陸作戦だ、こういう発言。たびたび繰り返されておったわけであります。その都度、防衛庁長官は遺憾な発言である、こういうようなことで善処する旨繰り返してきたわけでありますけれども、私は率直に言って、こうした栗栖発言なるものを今日まで許してきた、そういう点では、もちろん栗栖氏自身の責任追及は、いま長官のおっしゃったように最終的にはこれを免職するというようなことになったわけでありますけれども、こうしたことが繰り返されてきたこと自体、私は防衛庁の長官あるいは政府の責任は免れないと思うんですよ。これらの点について長官はどういうふうにお考えになっておりますか。
  91. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) いろいろな発言もありましたし、たとえて言えば択捉島の問題等についてはいろいろの、これは判断でございますから、判断という問題についてはこれは可能性が絶対ないということではないというような考え方、ただ、そのときの問題も、いわゆる防衛庁全体の総意の中で決められた判断でないと、栗栖統幕議長個人が判断したというところに問題があったと思うんですが、しかし私は可能性がないわけじゃないと。また私がアメリカへ参りましても、アメリカでもはっきりわからないが、陣地をあるいは構築しているというようなことじゃないかというような程度の問題でありまして、いろいろ栗栖君の言葉が国民に誤解を招いたということについては、その責任は防衛庁の責任者である防衛庁長官にあることは十分承知をいたしておるわけであります。
  92. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そうすると、今度金丸長官も勇断をもって栗栖統幕議長の更迭を断行されたわけでありますけれども、この措置の中には、いま申し上げましたように、これまでの栗栖発言、大変重大な問題に触れた発言が繰り返された、そうした責任も含めての措置であったのかどうなのか、これはいかがでしょうか。
  93. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 今回も進退伺いを出したわけですが、前にも一度進退伺いがあった。そういうようなものも全然考えの中になかったということではないと私は思います。
  94. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 いま申し上げましたように、超法規的行動などという恐るべき発言をついに彼が口にした。いま申し上げましたように、これまでの栗栖発言について私はもっと厳しくシビリアンコントロールの機能を発揮しておればこういうことは出てこなかったのではないか。そういう点で私は政府防衛庁長官の責任というものが大変重大であったというふうに考えるわけでありまして、そういう点の認識がややいままで欠けておったのではないか、こういうふうに率直に考えるわけであります。  しかし、一方私は、いわゆる制服組、栗栖統幕議長をトップとする制服組の中にはこういうこともあるということが推測されるわけであります。というのは、冒頭申し上げましたように、福田総理あるいは防衛庁長官の発言等も、時たまわれわれ国民にとっては大変心配な発言をしているわけでありまして、たとえば核武装も憲法違反ではないとか、あるいは、長官は直ちにお取り消しになっな事項でありますけれども、台湾と日本とは運命共同体であるとか、こういう発言自体が、政府部内、つまりシビリアンコントロールの機能を果たすべき政府防衛庁の責任者がそういう重大な発言をしておるものですから、それに籍口してというか、呼応した発言というものが出てきているのではないか、こういうことを私は大変心配するわけであります。これはいま長官のおっしゃったように、究極的には政府及び防衛庁長官の責任である、こういう点を深く自覚されて、シビリアンコントロールの機能を十分果たしていただきたいと思うわけであります。  それから、さていま長官もお触れになりましたけれども、今回のいわゆる超法規的行動というものに関して、昨日衆議院においてもこの問題が論議されました。こういうふうに集約されたと判断をしてよろしいかどうか。  第一点として、いわゆる自衛隊法第七十六条による首相の防衛出動命令が出る前には部隊としての武力行使はでき得ない。つまり、超法規的行動というものは許されない。これが基本的な考え方でありますけれども、そういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  95. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) これは、自衛隊は超法規的行動はあり得ないということであります。
  96. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 栗栖発言の中で、いま申し上げましたように防衛出動命令が出る、その間、時間的空白があるというようなことが一つ指摘をされておるわけでありますけれども、これについて、実は新聞報道で防衛庁長官はこういうふうに昨日も答弁されております。「奇襲や、ゲリラが上陸した時の対応は難しい。しかし、一発の銃声によって、国民のコンセンサスを得ずして自衛隊が行動することが適切かどうか。そのために有事立法とか情報網の完備などの研究が大切だ」と、こういうふうに述べたと報道をされておりますが、これは事実ですか。
  97. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) そのとおりであります。
  98. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そういたしますと、非常に矛盾をするような気がするわけであります。防衛庁長官は超法規的行動はあり得ない、つまり防衛出動の命令が出ない限り部隊としての行動はとり得ない、こういうふうに明確にお答えをしているわけであります。しかし一方において、自衛隊が行動することが適切かどうか、それを判断するためといいますか、それに対応するために有事立法とか情報網の研究が大切だと、こう言っておるわけですね。そういたしますと、有事立法やそうした研究はその空白を埋めるということになるわけですか。
  99. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 自衛隊というものは、有事というものを仮定して自衛隊というものが創立されておるわけでありますが、私はこの有事というものが絶対なければ自衛隊というものは必要でないと、現実の事実二十七万の自衛隊がおる、その二十七万の自衛隊がそれぞれの部署についておるわけでありますが、その自衛隊が、ただ現状二十七万の自衛隊がおるということだけであって、何もしない、毎日のらくらしておるということで自衛隊の本分が国民の負託にこたえられるのか、そういう意味で、有事の問題につきましては三原長官が一年前に指示いたしておるわけでありますが、私は栗栖君のような、いわゆる前線の部隊が奇襲攻撃をされるというような場合、私は全知全能を使えば奇襲というものはあり得ないと、レーダーを使い、あるいは情報網等を使い、いろいろの英知を使えば奇襲というものはあり得ないというような私は考え方を持っている。それには栗栖君のような思い詰めた考え方をそういうものではっきりさして、そういうことのないように私はその研究というものはやらなくちゃいかぬと、やることが国民の負託にこたえることだ、こういう意味で私は申し上げておるわけでありまして、矛盾はいたしておらぬと私は思っております。
  100. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 情報網の整備ということについてはそのとおりであろうと思うんです。ただその前段で、つまり時間的空白を埋めるために有事立法が必要だということになりますれば、これは大変な問題だと思うんですよ。私は栗栖統幕議長が指摘したいわゆる時間的空白、これがシビリアンコントロールの――長官も一部そういうことを言っておりますね、この期間が、短い時間ではあるけれどもこの時間がシビリアンコントロールの機能する時間だと思うんですよ。これを法律で埋めてしまえば、それは自衛隊の超法規的行動ということじゃなくて合法的行動によってすべてが対処されるということですからね、この栗栖さんが指摘した時間的空白、これがシビリアンコントロールの機能する時間である、シビリアンコントロールが働く時間帯である、これを有事立法で埋めることはあり得ない、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  101. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) ただいま大臣から御説明いたしましたように、いわゆる自衛隊が部隊として行動するのは、あくまで七十六条に基づいて初めて行われるものでございます。このことは、御承知のように実力を持っている部隊というものが行動するに当たっては、慎重の上にも慎重な態度で臨み、そして政治の指導のもとに動くということを前提に防衛二法によって定められているものだと私どもは思っているわけでございます。一方におきまして、栗栖前議長が発言されたような奇襲というケースはきわめて少ないとは思います。しかし、その間の空白を埋める努力というものを自衛隊としてやらなければならない分野といたしましては、先ほど大臣が申し上げましたように、情報を集め、そして的確な情報というものを最高指揮官である総理に上げ、その必要な場合の出動の手続というものが早くとれるような努力をするということでございまして、有事立法というものによってその空白を埋めるというようなことは考えていないわけでございます。  その間、その空白の間はどうするかということでございますが、これは現在も私どもが考えております正当防衛、緊急避難ということによりまして対処するというような考え方をとっているわけでございます。
  102. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 この点は明らかになりましたが、私たちは、この有事立法によってシビリアンコントロールが機能する時間帯をもし埋めるということがありますれば、それはまさに本末転倒だろうと思うわけでありまして、この点はひとつはっきりとして今後もいっていただきたいと思うわけであります。  しかしながら、この栗栖発言をいろんな方々がそれぞれの立場で受けとめているわけでありますけれども、一体防衛庁の制服組はどういうふうにこれを受けとめているか。これも新聞報道ですから、それぞれの発言のすべてが報道されているとは必ずしも考えられませんが、しかし大変危険な見方をしているわけであります。というのは、つまり、その時間的空白、そういうものが法律的に満たされていないから大変心配だ、言ってみれば栗栖発言はそういうことでありますからね、つまり法の不備がある。これは自民党さんの何かの部会の中では、政治の怠慢だ、だから栗栖統幕議長がああいう発言をせざるを得ないんだ、そういう受けとめ方をしているという。私はこれは大変本末転倒だろうと思うわけです。そういう点で、各方面の栗栖発言の受けとめ方について、私がいま指摘したように大変心配な点があるわけでありまして、これらの点について長官の見解を承りたいと思うわけであります。たとえば陸幕長は、栗栖議長の発言は問題提起として大変意味がある、こういうようなことを言っておるわけであります。また、人事教育局長ですか、そういうポストの方も同じような発言をしているわけでありまして、こういう点は、だからいま長官のおっしゃったようにシビリアンコントロールを制服組としては何とか埋めてもらいたいと、そういうつまり栗栖発言であったというふうに受けとめられているわけであります。そうした自衛隊内部の受けとめ方について、大きな危険性といいますか、誤りが私はあると思うんですね。そういうものは、やっぱりこの際、長官のおっしゃるとおりはっきりとしていかなければならぬと思いますけれども、この点について長官はどのような措置をおとりになっているのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  103. 渡邊伊助

    説明員(渡邊伊助君) お答えいたします。  ただいま先生、人事教育局長もそういう意味のことを発言しているとおっしゃられましたけれども、私はそういう発言をした覚えはございません。  制服組等の受けとめ方はどうかというお尋ねでございますけれども、これは私一人一人当たったわけではございませんけれども、現在の陸海空三幕僚長あるいはしかるべき担当の部長等を通じていろいろ話を聞いておるわけでございますけれども、大部分の隊員は、今回の件について非常に冷静に受けとめておるということでございます。制服組がいろいろ議論をするということ自体について歓迎をする向きがあるということは聞いておりますけれども、その発言の仕方については問題がありますけれども、いろいろ議論をして事柄を前進し、進歩発展をするということ自体については私どもは問題とするに足らないというふうに考えております。ただ、今回の発言の内容そのもの、すなわち超法規的行動、言いかえれば法を無視して自衛隊が行動をするというような発言の内容そのものを支持するという隊員は一人もございません。これははっきりと言えると思います。法律に基づきまして、自衛隊員はすべて服務の宣誓をすることになっておりますけれども、この服務の宣誓の中には、憲法を遵守するという文句がございます。この点について、憲法認識について基本的な誤りがあるというふうには私どもは考えておりません。  今回の件、栗栖議長の辞任の後、七月二十九日付をもって長官から御指示がございまして、防衛庁長官所信というものを事務次官通達という形で全部隊に流してございます。この内容は、ちょっと時間がかかりますので内容を全部申し上げませんが、要約するところは、自衛隊は憲法及び防衛二法を根幹として管理運営するものである。今日までいろいろ困難な諸条件にもかかわらず、隊員の教育訓練等は逐次その整備に努めてきた。しかし、有事に必要となる法制等の検討については、種々の困難があったとはいえ近年まで進捗はしなかった。昨年私は防衛庁長官に就任して以来、この問題の重要性に思いをいたして、有事法制の研究を初め防衛研究等の推進を指示してきた。防衛問題は国家国民の大事である、そこで国民的な基盤に立つとともに、直接その任に当たる自衛隊員諸君の英知と経験をくみ入れるべきものと考えている。隊員諸君は、大いに建設的な意見の交換を行い、有効適切な有事対処の施策の推進に寄与してもらいたい。ただ、外部に向かって公の立場において意見を述べるに際しては、一般公務員と同様におのずから守るべき節度があることを忘れてはならない。公務にある者の言動は、その立場を踏まえて行うよう求めたい。  こういう趣旨の事務次官通達を部隊に流して遺憾なきを期した次第でございます。
  104. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 新聞報道によりますれば、丸山事務次官は、栗栖発言はある意味では第一線の士気を鼓舞する発言だと、こういうふうに言われていますね。あるいは大賀というんですか、海上幕僚長の発言も、「法の不備があるからこそ有事立法、防衛研究などに着手した。庁内で発言」――これは人事局長談話と書いてあるね。「法の不備があるからこそ有事立法、防衛研究などに着手した。庁内で発言せずに外部に対していうのはどうか」、そういう発言もしております。つまり、私が心配するのは、栗栖発言というものの不当性を厳しく処断をしておりながら、実は本当はいいことを言ってくれたというようなもし空気があるとすれば、これは大変私は危険だと、防衛庁長官がそういうことは全く誤りであるということで厳しく処断しておるけれども、いやあれは一つの犠牲者なんだ、これを契機にして有事立法をというようなことを考えているとすれば、大変私は危険だ。しかし、その危険な徴候はなしとしないんですよ、率直に言って。防衛庁長官は、これを契機にして、その点についての研究も指示し、また福田総理も有事立法あるいは防衛研究ですか、それを進めるように指示をする、これは栗栖発言を厳しく処断したということとは全く逆な方向にいま進められているということを私は大変心配するわけなんです。この点は繰り返し申し上げますけれども、ひとつ厳しくこれらの発言について私は長官は対処していただきたいと思います。単なる栗栖発言だけではなくして、それにかかわる、いま申し上げました方々の発言も厳しくこれを調査をして対処していただきたいと思いますが、この点について長官の見解を承りたいと思います。
  105. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 栗栖発言を契機にして、そういうものを栗栖発言をてこにして何か騒々しいことを考えておるというようなお考えをお持ちのようでございますが、私はこの栗栖発言の前に、そういういろいろ有事のときの対処方法等を自衛隊が頭の冷静なとき、クリアのとき考えておかなくて、有事になって、さあどさくさ紛れに、いわゆる一気かせいに国会でこれを決めてくださいなんということは、まことに国民を愚弄するものだという私は考え方を持っている。そこで私は、シビリアンコントロールということは、戦前の日本にしてはいけないと、それは政治が優先だということであり、その最高権威は国会だと。その国会に十分にひとつ御批判をいただくことが国民の批判をいただくことである、それは平時にやっておくべきこと、これをひた隠しに隠して、そうしていざというときにすぽんと出せばいいわというような考え方――しかしこの問題は非常に関連の関係も多いと思いますし、また防衛庁だけで考えてみても、その問題すべてに対応できるというものでもない。それは日本全国民のことを考えながらつくる法律でありますから、各省にいろいろの関係があることはすべての行政官庁に関係があるということでございますから、その行政官庁との連絡等もとらなくちゃならぬ。しかし、そのまだ有事立法というものはたたき台を出すまでにも至っておらぬ、たたき台のたたき台の卵ぐらいのところがきょうの現状であります。私は、この有事立法というものは慎重に研究して、そうして国会へ提案して平時御審議願えるというような体制を、あるいは研究の過程を皆さんに御批判をいただくというようなことも考えるべきだと。全然自衛隊がそういうことを考えておらぬということになれば、国民の負託にこたえられぬじゃないかというようなことになると私は思うわけでありまして、また先ほどいろいろな言動の問題等につきましていろいろ御忠告がありましたが、そういう面につきましては、ただいま人教局長からも話がありましたように、十分に徹底して、いわゆる超法規行動というような考え方の中で、自衛隊はそのときは法を守らなくていいなんという国民に印象を持たれるということは、これは絶対ならないということですから、十分に戒めながら私は自衛隊の健全な生成を願っておるわけであります。
  106. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 今回のいわゆるシビリアンコントロールの問題と有事立法とはつながる問題では私はないと思うわけでありまして、こういう点はまさに重大な問題でありますので、その点は明確にしていただきたいと思います。  さて、もう少し基本的な問題について一、二触れたいと思うわけでありますけれども、いわゆる防衛出動に関する事項でありますけれども、これは御承知のように最終的には国会の承認を得る、こういうことになるわけでありますが、この防衛出動というのは、防衛出動により、なおかつ自衛隊の実力行動が仮に行われる、あるいは行われたとする、まあ仮定の話でありますけれども、これは憲法で言う国権の発動たる武力の行使になるのかどうなのか。
  107. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 先生の御質問を正確に理解したかどうか私も自信がございませんけれども、いまの防衛出動が下令されたということが直ちに自衛権の行使というものになるというふうには考えていないわけでございます。
  108. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 防衛出動によって自衛隊のある実力行使が行われた、あるいは行われる、実力行使を前提にした一つの命令が出された、こういう一つの仮定の話でありますけれども、それは憲法に言う国権の発動たる武力の行使ということになるのかどうか。
  109. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) これは順序を追って申し上げますと、防衛出動が下令されて、そしていわゆる武力の行使ができるような態勢には入ると思います。その際に武力を行使するというのは、いわゆる自衛権の発動の三要件がございまして、急迫不正の侵害があった場合、それから他に方法がない場合、最小限の実力を行使する、これがいわゆる国権の発動による実力の行使というふうに考えております。
  110. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そうすると、いま言った三条件が満たされれば、憲法で言うところの国権の発動たる武力の行使と、こういうふうに見てよいわけですね。
  111. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) いわゆる国権の発動というのが戦争を意味するという意味ではございませんで、いわゆる自衛権の行使という形の実力行使というふうに考えているわけでございます。
  112. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 いや、私は戦争ということを言っているんじゃなくて、御承知のように、憲法第九条には「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」、二つの要素が含まれているわけですよね、国権の発動たる武力の行使は云々でしょう。その中に入るんでしょう。これは基本的なことですよ。
  113. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 自衛権の行使でございまして、ここの九条に書いてある「国際紛争を解決する手段」としてのいわゆる国権の発動というものではないと考えているわけでございます。
  114. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 これから私がそれを聞こうと思っていたんですが、その要素はまずは取り外して、そこまで行く前に、いま言ったような行動は国権の発動たる武力の行使ということになるんじゃないですか。そういう目的があればだめですよ、そういう目的があれば。そういう目的じゃなくてね、おわかりですか。
  115. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) それは自衛権の行使でございますから、国権の発動である武力の行使というふうに考えられます。
  116. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 わかりました。そういたしますと、この国権の発動たる武力の行使ということになって、つまり国権の発動として武力を行使して、物理的強制力といいますか、ずばり言えば一つの実力行使を行うわけですね。その場合に、これは国の交戦権の行使ということにはなるんですか。
  117. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 国の交戦権の行使というふうに直ちには考えておりません。いわゆる自衛権の行使というふうに考えているわけでございます。
  118. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そうすると、自衛権の行使とこの交戦権の行使といいますか、これは具体的にどういうふうに違うんですか。
  119. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) この交戦権というのは、国際法上いわゆるその戦闘をしている国の権利というふうに考えております。
  120. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そうするとあれですか、この場合――この場合というのは、いま申し上げましたように、自衛隊がそれぞれの手続を経て実力行使を行うということについては、国権の発動たる武力の行使ではあるけれども、交戦権の行使ではない、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  121. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) これは昨日法制局長官の方からも御答弁がございましたが、いわゆるその自衛権の発動と交戦権というものは区別して私どもは考えているわけでございます。
  122. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そうすると、自衛権の発動がこの交戦権の行使ということになるにはどういう要件といいますか、条件というのが加わるわけですか。自衛隊というのは、本来何をやろうと交戦権の行使ではないという理解なんですか、これは。
  123. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 交戦権と自衛権の問題につきまして、二十九年の内閣委員会法制局長官の方から御答弁がございますが、いわゆる国際法上戦争をしている国に認められる権利、これを交戦権、いわゆる交戦者としての権利、最も典型的なものとして占領地行政等を答えてございます。これに対しまして、自衛権というものは国の基本的維持生存の権利でありまして、急迫不正の侵害に対してこれを排除するに必要やむを得ない限度の実力行使、これを自衛権として答弁されております。
  124. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 どうもはっきりしないんですがね、その辺が。これは憲法にかかわることですからさらに論議を進めたいと思うんですが、私は、この国権の発動たる武力の行使だということをいま防衛庁の方で認められたわけですから、一つの国権の発動たる武力の行使ということになれば、これは主体的に日本の側で考えていけば一つの交戦権の行使ではないんですか、これは。相手がどう、あるいは国際的にどう見ようとも、国権の発動として実力を行使することが可能だということになりますれば、これは日本の側からすれば一つの交戦権の行使になるのではないだろうか。だとすれば、交戦権を否定したこの日本国憲法に私は抵触することが出てくるのではないかという、まあこれは素人考えでありますけれども、しかしこの問題についてはもっと論議をしたいと思いますが時間がありませんから。  そこで、これはそうすると、交戦権ということについては、自衛のための交戦権ということはよもやあなた方は認められないとは思いますけれども、これはどういうふうに理解されておりますか。
  125. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 自衛のための交戦権は認められていないというふうに考えております。
  126. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 私たち国民の側からすると、国権の発動たる武力の行使、つまり、自衛隊の実力行使というものと、いわゆる交戦権というものの関係が大変その点では不明確なような気がするわけでありまして、この辺が私は本来憲法第九条がありながら、日本が事実上の軍隊を持つという一つの大きな矛盾だろうと思うわけですね。そういった矛盾がこれまでの日本の防衛政策に、私は国民に対して大きな疑惑を持たされていると思うわけであります。この点だけ私はきょうは指摘をして、いまの論議はさらに追及をしていかなければならぬと思うわけであります。  ここで、私は過般提出されました防衛白書について一、二点最後質問をしていきたいと思うわけであります。  私は、これまで防衛白書が提出された折にも内閣委員会で指摘をしました。今回の防衛白書は、国際情勢の分析、特に世界の軍事力、なかんずくソ連の軍事力等について事細かに指摘をされておるわけであります。もちろん、この防衛白書という立場になればこういうものも必要でありましょう。しかし、私はこれまで防衛白書について当局に追及したことは、少なくとも平和憲法下における日本の防衛政策については、そういうことよりももっと日本が果たすべき役割りは何なのか、日本の安全保障というだけではなくて、極東の、あるいは世界の安全保障、平和と繁栄のために日本の果たす役割りというものはもっと別なものがあるのではないか、そういう角度からの分析がほとんど皆無に等しい。これは平和憲法を持った日本の一つ防衛政策を考えていく上に非常に大きな欠陥ではないかということを指摘してきたわけであります。そういう態度から考えてみますと、今回の防衛白書についても大変私は不満なんです。非常に膨大なものでありますから、ごく具体的な一、二を申し上げて防衛庁長官の見解を承りたい。  たとえば、核武装の問題にいたしましても一部触れられております。しかし、この核の問題について私は日本の果たす役割りというのは非常に大きいと思うんですね。そういう点について一体わが国はどういう役割りを果たしてきたのか、そういう点についてもっと積極的に取り組むべき課題ではないのか。それは日本の安全だけではなくして、世界の平和、そういうことを考えてみたときに、日本の政策としてもっともっと核武装の問題について世界の国際社会の中で日本の果たすべき役割りがあったのではないか。もしそういう点について十分でなかったならば、そういう反省を私は防衛政策の中で、防衛白書の中で指摘すべきであろうというふうに考えるわけであります。そういう点がほとんど指摘をされていない。あるいはまた、国の安全と平和の維持は、単に軍事面のみならず外交努力によって国際協調の推進並びに政治経済、社会の安定と発展といった非軍事面における努力がきわめて重大な要件となっておる、こういう点について一体日本はどういう役割りを果たしてきたのか。つまり、国防政策というものは軍事面だけではないのだ、もう一つの重要な要素が、むしろ非軍事的な面が重要なんだというふうに書いてあれば、一体日本はそうした面についてどういう役割りを果たしてきたのか。あるいはまた、究極的には、国際連合の平和維持機能が必要である、あるいは完全軍縮、全面軍縮というものが必要なんだ、こういうことが書かれておりますけれども、そうした世界の軍縮に対して、国際社会の軍縮問題について日本は一体どういう発言をしてきたのか、どういう活動をしてきたのか、そういう点が触れられていない。もしやってこなかったならば、そういう点は謙虚に反省をしていくべきではないのか、こういうことを考えるわけなんです。防衛白書のもう一つの側面というものが非常に欠落をしている。そうして一方では、憲法の解釈はこうだということを得々としてずっと書かれておるわけであります。これは平和を愛する国民の側からすると、防衛白書というものが非常に不完全である、平和憲法を持つ日本の防衛政策としての現状と展望については不備であるというふうに考えますが、防衛庁側の見解を承りたいと思うわけであります。
  127. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 今回の日本の防衛白書は四回目でございますが、いま先ほど先生が申されましたと思いますけれども、これは防衛庁の出す白書でございます。当然日本の安全保障上最大のものは、何といっても周囲の各国を敵に回さない、恒久平和を願う平和外交、平和への努力、これが日本の安全保障上最大のものだと思うんでございます。そういう意味を、これは事外交問題になりますので、外交白書じゃございませんので、若干防衛庁としてはその辺まで触れにくい問題がございました。ただし、そのために昭和三十二年の国防の基本方針というものも再掲いたしましてその趣旨を言っております。  御承知のとおり、この国防の基本方針は、第一が「国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。」、これが国防の基本方針の第一に挙げてある。そういった平和外交あるいは民生安定、こういうふうなものが非常に重要視されて、その後に国防という軍事問題が出てきますという、この国防の基本方針をわざわざ掲げまして説明しておるのも、そういった防衛庁としてのできる限りの努力はしてみたと、私はそう思っておりますし、また先般ございました国際軍縮会議につきましても数行これを入れまして、その際の園田外務大臣の発言まで、これは防衛庁として書くのはどうかと思いましたけれども防衛白書の中にそう言ってわが国が軍縮努力もしておると、こういったものも安全保障上非常に大事なことだという防衛庁の立場からのことを触れております。  先生が言われますそういった広い意味での安全保障、これはやはりちょっと防衛庁の白書の限界を超えるものである、あるいは将来国防会議なら国防会議事務局あたりでまとめた安全保障、日本の安全保障という全般的な白書が出るならそういうことも含まれるだろうと思いますけれども防衛庁の「日本の防衛」の白書では、先生の言われましたそういうことは十分心得ながら、防衛庁の立場ということで非常に軍事問題中心にならざるを得なかったということでございますが、考え方といたしましては、先生の趣旨は十分われわれもわかっておるつもりでございます。この文書のそれぞれの部分にも、すでに先ほど先生が挙げられましたように、まず平和外交、恒久平和を望む努力というふうなことも常に入れながら、この文章の中に入っていることも御承知いただけるんではなかろうか、このように思っているわけでございます。
  128. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 これは防衛白書と言うんですけれども政府一つの見解じゃないですか、政府防衛にかかわる現状と展望といいますか、そういうことでしょう。したがってこれは閣議か何かで、防衛庁の防衛白書じゃないんですよ、これは。日本政府防衛白書ということですよ。国防会議にも諮ってあるわけでしょう、これは。ですから、お役所ですから、なわ張りという言葉は語弊がありますけれども、外交問題にはそう触れるということは避けたいという気持ちは私もわからないわけじゃない。しかし、やっぱり日本の防衛、安全保障、外交政策というものは私は一体だと思うんです。それを個々ばらばらに分解して、これが白書でありますといっても、われわれとしてはなかなか総合的な理解ができない。少なくとも政府発表の防衛白書ということであれば、むしろそういう点が、繰り返すように平和憲法を持った日本の安全保障はいかにあるべきかという角度でなければ私はいかぬと思うんです。特に、この中国問題なんかの表現が私は国籍不明の白書だと言うんですよ。「日中関係では、新しい動きとして日中平和友好条約の交渉再開に関する動きがあり、その成り行きが注目されている。」、一体これはどこの防衛白書ですか、成り行きが注目されるなんて人ごとの話じゃないですよ。日本の防衛や日本の安全保障の上で日中国交回復というのは私は重要な要素だと思うんです。そういう点が、成り行きが注目されるなんて人ごとみたいな表現をしているところに、私は何か日本の安全保障というものがだんだん危険な方向にいく、いわゆる軍事力を増強していくという、そういうふうに見られてならないわけであります。今後ひとつこういう点、まだたくさん防衛白書について国民の側から見れば多くの問題点があるわけでありますけれども、そういう点一、二指摘いたしまして、今後の防衛白書の取り上げ方についてはもう少し広い視野で書かれた方がいいのではないか、書くべきではないかというふうに私は率直に感ずるわけであります。  以上の見解を申し上げて私の質問を終わりたいと思います。
  129. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 私は自分意見も交えて御質問いたしますが、どうしてもいままでの御質問と重複する点も出ると思いますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  まず最初に、栗栖前統幕議長のいわゆる超法規的行動発言による更迭という問題について金丸防衛庁長官にお伺いしたいと思いますが、このことにつきましては、私の接している一般の人たちの中にも、栗栖前議長の発言は正しいんだ、正しいことを述べて退任せざるを得なくなるというのはおかしいじゃないかというような意見を言う人も相当おります。したがって、この問題についての経緯と長官のお考えをはっきり述べていただきたいのでございますが、この問題について、いま発売されておりまする文藝春秋の九月号に、前防衛大学校長の猪木正道さんが「文民統制を考える」と題して書いておるのでございます。ちょっと読ましていただきますが、まず冒頭に、「「去る七月二十五日朝、金丸防衛庁長官福田首相に会い、栗栖統合幕僚会議議長を更迭し、後任に高品陸上幕僚長をあてることを報告、了承をえた」という新聞記事を読んで、私は「やむをえない」措置だと感じた。」、「栗栖発言は、新聞報道によると、〃自衛隊が奇襲攻撃を受けた場合、法令が不備だから超法規的行動をとって対抗せざるをえない〃というもののようである。私は栗栖さんが〃法令が不備だから整備してほしい〃といったのなら、問題はないと思う。しかし自衛隊は国民と国家を守るためのものだから、法令がなくとも、行動せざるをえないという論理は、かつて軍部が自衛の名の下に下克上で、どんどんアジア侵略を進めていったことを思い出させる。」というふうに書きまして、そうしてさらに「張作霖の爆殺」、これは一九二八年でございますから、「爆殺から、柳条溝事件(一九三一)をへて、支那事変、大東亜戦争へと暴走した大日本帝国の歴史はまことに戦慄的である。」と、こういうふうに猪木さんは続けておるのでございます。  これにつきましては、金丸長官も栗栖発言に対して、蘆溝橋事件を例に引いて、一軍人、一部隊の行動が非常に大きな問題に発展する危険性もあると言われたように聞いておりますが、私も栗栖発言の真意がどこにあったかということはよく知りません。しかし、超法規的行動が、自衛隊が独自に行動するというようなことであったならば、これは大変だと思うのでございます。元来文民統制というのは国民が軍を統制すること、すなわち国会による国軍に対する統制ということだと思います。それは機能の面から言えば政治の軍事に対する優位ということになると思います。ところが、世界の歴史を見ても、政治が軍事に優越し、国会が国軍を有効に統制し得たという例は余りないんじゃないかと思うのでございます。文民統制というのは、歴史的に見るとなかなかこれはむずかしいようでございます。しかし、このむずかしいことをやってのけないと、軍の暴走によって国を誤る危険性が大きい。国民とその代表者である政治家が軍を統制しなければ、これは軍の方が国民を統制することになるおそれがきわめて大きいと思います。私どもはこのことについてはもう言うまでもなく苦い経験と貴重な反省を持っておるのでございますが、したがって、文民統制はどうしても堅持されなければならないと思います。その意味で、今度の栗栖問題は文民統制の基本にかかわるものとして、姿勢を正すという意味において金丸長官のとった措置は私も妥当だったと思います。ただしかし、一部には蘆溝橋事件というのは、これは外地にいた旧軍が外地で起こしたのであって、いまの自衛隊にはそういうことは全然考えられない、そういうことはあり得ない。したがって栗栖発言に対して蘆溝橋事件を例に引いて批判するのは適当ではないという意見もあるのでございます。どうかこれらの点も含めまして金丸長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  130. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 日本は専守防衛という考え方の自衛隊基本方針であるわけでありますから、蘆溝橋事件のような、よその国で起きる事件ではないけれども、私は専守防衛という立場から考えるということになると、国内でこの問題が、一発の銃声によって国民のコンセンサスも得ずにやるということは許されない。国民のコンセンサスを得ずにということは、最高の権威である国会の承認を得ずしてやるということ、日本の運命をその一発によって決めるということはまことに重大であると思うわけであります。  ミグ25が函館に突入してきた。このとき、突入、着陸する前に、いわゆる空域侵犯ということでこれを一発の銃声によって落としておったらどういう事態が出たかということを私は考えてみても、いわゆる超法規的行動をやるということになると、いわゆる日本の国の運命がかかっている。その運命というものは、いま国中で、専守防衛という立場で、そんなことはあり得ないと言うけれども、私は日本を侵さんとするものが日本に上がってきた、奇襲してきた。その奇襲、それに超法規的行動で一発の銃声を投げかけることが、果たして国民が了承できるかできないか。私はもう蘆溝橋のような事件を二度と起こすということは相ならぬと、こういう意味で私の考え方は判断をいたしたわけであります。
  131. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 お考えはわかりました。  それで、もう一つこの問題に関連してお伺いしますが、この栗栖発言というのを契機にいたしまして、奇襲を受けた場合、防衛出動が出るまでの前の段階において、自衛隊は一体どういう対応をしたらよいのかということがいろいろと論議されていると思います。中には手をこまねいていていいのか、あるいは攻撃されたら逃げ出しちまうのか、あるいは刑法の正当防衛なり緊急避難によって応戦できるのかというようなことについていろいろと論議が出ているように思うのでございます。自衛隊法では、八十四条に、領空侵犯に対しては長官が「必要な措置を講じさせることができる。」とあります。また九十五条で、自衛官が武器等の防護のため武器を使用できるという規定があります。しかし、それ以外は奇襲攻撃を受けたような場合に対応する法令はないようでございます。  私は、この奇襲攻撃を受けたような場合の対応策について、昨日も衆議院内閣委員会でいろいろ論議されたようでございますが、一体この法令がなくても必要な措置が講じられるように現在なっているのかどうか、あるいは、先ほど刑法の正当防衛、緊急避難によって措置するというようなふうにお伺いしたんですが、しかしそれは言葉では正当防衛、緊急避難によって措置すると言っても、一体具体的にどういうことになるのか。緊急避難なり正当防衛というのは、これは個人の問題だと思うのですね。そうすると、自衛隊の一線の部隊が、個人が勝手に正当防衛あるいは緊急避難によって行動するのかということに非常に問題があるんじゃないかなとも思うんです。そういう点、だから、それであるならば、法令が不備だからこれを整備するという必要が出てくるのかどうか、これらの点について、どうも防衛庁がいままで言ってきたことは私にはっきりしない点があるんですが、この問題はやはりはっきりさせなければいけないんじゃないかというふうに私は思うわけでございます。まず、そういうような点につきまして、防衛庁と法制局から、明確にやはりお考え、また方針というものを聞かしていただきたいと思うわけでございます。
  132. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) 奇襲攻撃があった場合に法令上何らかの根拠規定があるか、それに対処する際の根拠規定があるか、またどうするかという御質問だと思いますが、御案内のとおり、防衛出動に関する手続というのが七十六条に書いてございます。で、正直に申しまして、私たちは現行の自衛隊法の規定を読みまして、七十六条で武力攻撃があった場合にはもちろん防衛出動の下令ができますのみならず、括弧書きがございまして、「武力攻撃のおそれのある場合を含む。」という規定がございます。ですから、非常に緊迫している事態を予想していると思いますけれども、情報化の非常に進んでおる今日におきましては、「おそれのある」という事態の判断がつくのだろうと思うのですね。それからもう一つ、自衛隊法のいまの七十六条の規定によりますと、非常に緊急の場合には国会の御承認は事後でもよろしい、発令をしてから直ちに国会を開いて承認の手続をとりなさいという規定もある。こういう規定から見まして、現行法を制定されたときには、恐らくいまの自衛隊法の七十六条の手続で大体カバーできる、そういう発令前に日本が武力攻撃を受けてあわてふためくということがないようにということでそういう仕掛けになっているのだろうとわれわれは理解しておったわけなんです。  最近になりまして、奇襲攻撃があって、しかも防衛出動の発令が間に合わないという場合にどうするのだということが提起されまして、非常に検討に値する問題提起だろうと思いますので、私たちの方もこれから早急に検討を進めて、そして一体、それでどういうことをやればいいのかというまず政策判断をしてもらいまして、そしてそれを前提にして、立法の手当てが要るならば立法の手当てをしなければなるまいというふうに考えております。いまの現段階でいまのような事態について一体どうしたらいいのかということは、私の方では即座にお答えするのは御容赦願いたいと思うし、また私の方ではそれだけの権限もございませんし、また能力もないということを申し上げておきます。
  133. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 日本が防衛力を行使するに当たりましては二つの相反する条件があると思います。それは御承知のように、戦前と違いまして常に受け身の形で専守防衛という形でございます。したがって、これは有事即応の体制というものを維持しなければなりません。そしてまた、いっそういうものがあるかわからないという点が、いわゆる防衛力を行使する者にとっての一つの不安であるということは事実だろうと思います。同時にまた、非常に情報が発達してまいりまして、日本に対して侵略を企図する国の行動その他につきましては、情報というのはきわめてとりやすい状況になっているということでございます。したがいまして、ただいま法制局長官から御説明がありましたように、私どもはこの実力部隊が防衛力を行使するに当たっては、現在の防衛二法のもとで七十六条、防衛出動が下令された際に部隊としての行動をとるというのが当然のことであろうと考えているわけであります。  一方、栗栖前議長が発言したような奇襲、この奇襲ということが、いわゆる観念上の問題としてある日突然陸上の部隊があらわれるというようなことは、私どもはまず予測できないというふうに考えているわけでございますが、じゃ仮に理論的にそういうことがあった場合にどういうことをとるかということになりますと、いわゆる部隊としての武力行使というものは、これは総理大臣の命令がなければできないと考えております。しかしながら、その場合にとっさの必要な措置として、正当防衛あるいは緊急避難の範囲で武器を行使するということはあり得ることだというふうに考えておりまして、そういった意味のいわゆる突発事件の場合に、やむを得ざる行為としての措置というものは、正当防衛あるいは緊急避難によって措置をし、そして直ちにそれを報告し、命令を待つというのが現在の防衛二法の命ずるところであろうと考えているわけでございます。
  134. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 正当防衛なり緊急避難によって措置するということでございますが、その場合の措置の仕方が誤らないように、やはりこれは十分にひとつ防衛庁としても研究して徹底しておかなければならない、個々ばらばらになっちゃいけないんじゃないかと私は思うんです。  それから、法制局長官も、この自衛隊法の当初においてはちょっと考えられなかったということでございますが、まあいま疑問が出てきているわけでございます。私は必ずしも疑問が出てきたからすぐ法律をつくるべきだという意見じゃございませんが、十分この点は御検討いただきたいと思うわけでございます。  なお、もう一つこの問題について関連してお尋ねしたいと思いますが、栗栖前議長は、先ほども質問がありましたが、まあ就任以来実に思い切ったことをたびたび発言をしていると思います。ところがこの栗栖発言に対して、一方においてはこれに喝采を送っている、拍手を送っているというような人もかなりいると思うんですね。同時にまた、栗栖前議長は防衛庁の部内、ことに制服の間ではなかなか人気があったというか、信望が高かったというか、かなり栗栖ファンというような者も多かったように聞いているのでございます。そういうような意味合いから、ひとつ今度の栗栖前議長に対する更迭という措置によって部内に動揺が起こっていないかどうかという点も私は心配するものでございますが、これについてお伺いいたしたいと思います。
  135. 渡邊伊助

    説明員(渡邊伊助君) お答えいたします。  先ほどもちょっと御答弁申し上げたところでございますけれども、今回の問題以後、各幕の幹部等にお会いしまして、部隊等の状況について私もいろいろ聞いておりますけれども結論的に申し上げますれば、全部隊ともきわめて冷静に受け取っておりまして、これに関する動揺というものは一切ないというふうに報告を受けております。特にこの発言の内容そのものについては、やはりその超法規的というのは適当でないという受け取り方をしておるというふうに聞いております。やはり発言がやや軽率ではなかったかという受け取り方をしているというふうに聞いておりまして、部隊一般においてこの問題について動揺を来しているというふうには承知いたしておりません。
  136. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 次に、いわゆる有事立法の問題についてお伺いいたしたいと思います。  まず最初にはっきりさせておきたいのですが、栗栖前統幕議長の、いま問題になりました超法規的口頭発言があったために、この問題と有事立法の研究ということとが、何かこうごっちゃにされているんじゃないかというふうに私は感ずるのでございます。  で、栗栖発言というのは、奇襲攻撃に対して国会、政府が自衛隊に防衛出動を命ずるまでの時間的空白にどう対処するのかというのが、これが栗栖発言だと思います。で、有事立法の方は、国会、政府防衛力使用の意思決定をした後、自衛隊を中心とした防衛上の行動をどのように規定するかという問題で、両者は別ものだと思うのでございます。有事立法の研究はいま始まったことではなくて、昨年から防衛庁ではすでに着手をしているということでございます。ですから、この問題と別なんだというふうに理解してよろしいのかどうか、まずその点を確かめておきたいと思います。
  137. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 先生がおっしゃられましたとおり、防衛庁が有事法令の研究、すなわち防衛二法も含めまして、あるいは防衛二法以外の所管各省、わが国のいろいろな法律がございますけれども、有事の場合に、わが自衛隊の活動を容易ならしめるためとか、あるいは国民の避難誘導とか、そういうことが現在の法令だけで果たして十分なのだろうか。まあ自衛隊法というのは相当よくできておりますけれども、そういった意味の見直しを研究せよと言われましたのが去年の八月でございます。たまたま先月の二十七日に国防会議議員懇談会、それから二十八日に閣議、そのときに、私どものあの白書、防衛白書を総理以下に報告したわけでございます。ちょうどその二十八日の閣議のときに栗栖さんの辞任の了承を得たわけなんですが、そういう人事とも関連したわけですけれども、そのときに別に改めて総理から栗栖発言と関連して有事法令の勉強をせよというふうな指示があったわけでは毛頭ございません。去年の八月に三原長官が有事法令の研究防衛庁部内でやれと言われたことにつきましては、もうその当時から総理の御了解を得ておられてやっておられましたので、今回の栗栖発言を契機にして有事法令の勉強をせよと言われたことではございません。その関係はございません。
  138. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 まあいまのお答えのように、いわゆる有事の際の法制上の問題については、防衛庁は昨年から検討を進めているということでございます。私はやはり自衛隊というのは、何といいましても侵略者に対して自分の身の危険も顧みないで、わが国の上平和と独立を守るために、また国民の安全を守るために戦うわけでございます。したがって、その重大な任務を遂行するための自衛隊の行動が、法制上の不備なために支障を来すというようなことがあったらこれは大変だと思うわけでございます。その意味において私は防衛庁が、まあ昨年からでございますか、本当はもっと早くから着手すべきじゃなかったかと思いますけれども、この問題について検討しているということは当然であり、また大いに推進すべきものであるというふうに考えます。  ところが、一部には、この有事立法の研究に対して、これが平和憲法に挑戦するものであるというような反対論を言う人もいるわけでございます。もちろん現在の自衛隊法にも、防衛出動とかあるいは治安出動について規定しておりますが、こうした際の自衛隊の防衛上の行動が、これで十分なのかどうかという点について私は疑問を持つわけでございますが、まあ一、二の例を考えてみましても、たとえば土地とか家屋の使用の命令を出すことができるといたしましても、この命令に応じない場合に一体どうなるのかというような問題もあります。また、その手続について政令で定められることになっているのに、まだその政令が定められていないというようなものもあるようでございます。なお、こういう点を考えますと、検討すべき点は多々あるのではないかと私は思うのでございます。有事の際に、防衛出動が命令された場合に自衛隊の行動を保障するための法令等が不備でないかどうかを検討するのは当然でありまして、これはもういわゆる平和憲法に挑戦するものとかなんとかいうものでは全然ないと私思うのでございますが、これについての防衛庁の考え方、またその姿勢と、いわゆる憲法との関連においての考え方、姿勢についてお答え願いたいと思います。
  139. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) お答えいたします。  この有事法令の研究に二つの範疇がございます。一つは、現在の有事法、すなわちわれわれの自衛隊法、防衛庁設置法、そういったもので、防衛関連法案ですが、これは有事を想定した有事法だと思いますけれども、この有事法は、当然有事の場合いろいろな規定がございまして相当よくできております。この防衛二法、われわれの防衛二法を、さらにこれだけで十分かどうかという見直しは、これは現在もやっておるわけでございますが、これが第一の範疇であり、もう一つの範疇は、いわゆる有事法である自衛隊法とか、それ以外にわが国のいろいろな法制がございますけれども、わが国のそれ以外のいろいろな法制というものは、当然、そんなことがあってはならないことではございますけれども、有事というものは全く前提にしていないわけでございますね。たとえば災害対策基本法にしましても災害救助法にしましても、あの災害というのは戦災ということは当然予想されていないと思います。そういった意味で、もし仮に万一、あってはならないことでございますが、そういった有事の場合に、たとえば国民の避難誘導ということが、戦災における避難誘導というものがいまの法的措置で十分かどうかというふうなことの勉強はしなきゃなりませんし、あるいは自衛隊の行動一つとりましても、いまの道路交通法の範疇等で十分できるのかどうかと、そういった有事に備えて、われわれはいまの法制で足らないところがあるのだろうか、あるいは例外規定を相当設けてもらわなきゃならないのだろうか、そういった防衛二法以外の法令の勉強も進めておる。この両方、二つの範疇をわれわれ有事法令の研究で進めております。そして、長官から指示がありました大前提は、何といいましても憲法の範囲内で考えろということでございます。この有事は当然あってはならないことでございますが、ないとも言い切れません。そのために防衛庁もあるわけでございますが、そういった有事のときにやる法令は現在の憲法の範囲内でなけりゃならぬ。特に現在の憲法はかつての憲法と違いまして、非常に基本的人権というものが尊重されております。そういう観点から、できる限り、国民の協力があるであろう、有事のときにはわが国は非常な場合でございますから、そういった国民の自発的な協力というものを前提にし、憲法の範囲内で勉強せよという指示を受けております。現在の憲法に挑戦するような気持ちはさらさらございません。
  140. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 次に、防衛庁では現在内局と三幕が一体となって、有事を想定した統合作戦研究というのを始めることにしたというふうに聞いておるのでございますが、私はこれは当然やらなくちゃならないことだと思うのでございます。  私は、先ほども申し上げましたように、戦前の軍国主義の歴史を繰り返すようなことは断じてしてはならないと思っておるのでございます。が、しかし同時に、戦後一部の間に言われたような、いわゆる空想的平和主義では現実の国際社会の中にあっては国を守るということはできないと思います。それだけじゃなく、むしろそのようなことで、いわゆる受動的で消極的な逃げの姿勢の平和主義では今日の国際社会ではこれは通用しないんだと、かえって日本が国際社会の一員としての義務を果たしていないというふうに非難されるのではないかとさえ思うわけでございます。私は、もう日本は周りの国々に脅威を与えない、しかも周りの国々から頼りになると思われるような防衛力を持つことがきわめて大事じゃないかというのでございます。そしてまた、その防衛力が有事の際に有効に働くように常に作戦研究を怠らないようにしておくこと、これも大事だと思うわけでございます。こういうような点を考えまして、私はシビリアンコントロールを堅持しながら、防衛庁としては研究でも何でもやるべきことは大いにやってもらいたいと思うわけでございます。こういう点につきまして、これはひとつ長官からお答えいただきたいと思います。
  141. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 先ほども申し上げましたように、有事ということがあってはならないことはわれわれの願いでありますし、しかし絶対ないと言い切れないというところにいわゆる自衛隊というものが創設されておると。しかし、この創設という問題につきまして、二十四年もたっておるわけでありますが、法の不備があるかないか、そういうことも平時よく調べておいて、また先ほど来からいろいろお話がありましたように、いわゆる栗栖統幕議長のやめたことをてこに有事立法をやるというような考え方は持っておるわけではありません。一年前に三原長官がこれを指示した、それも平和憲法の範疇の中で研究をしろと、こういうことでございます。また、自分の国は自分の国民の力でやるという気概というものもなければならぬと私は思っておるわけでありますが、ただ、防衛は国民のコンセンサスを得ながらやっていかなくちゃならぬと。いまドルが余っているから黒字減らしにどんどん何でも買ってこいというような無計画なものであってはならぬと。防衛計画の大綱とか防衛の基本方針とか、そういうものが毅然としてあるわけでありますから、この計画に従って着実に私は国民の合意を得ながらやっていくということを考えておるわけでありますが、今後とも国民の負託にこたえるように、そしてまた、国民の防衛という問題が大きな負担にならないように、また戦前の日本のような姿にならないように、十分に心にとめまして防衛のあり方を進めてまいりたい、こう考えておるわけであります。
  142. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 最後民間防衛の問題について一言お伺いしたいと思います。  欧米各国では、核攻撃に対する防衛はもちろんでございますけれども、通常兵器による武力攻撃に対しましても、国民の生命、財産等を保護するために、政府あるいは自治体の指導のもとに民間防衛に真剣に取り組んでおると思うのでございます。ことしの防衛白書の中にもスイスや中国の例が出ておりますが、アメリカあるいは西独あるいはスウェーデンというようなところで、この民間防衛が非常に真剣に進められているということ、これは私も行って見てもきておりますし、また聞いてもおるわけでございます。  わが国は海に囲まれている、国境を接していないということから、そこまで必要ないんじゃないかということも言われておりますけれども、しかし、この問題は決して、だからといって等閑に付することはできない問題だと思うのでございます。もちろんこの問題は防衛庁だけの問題ではないのでございますけれども、私は国民の生命と安全を預かる政府として、この民間防衛の問題に今後大いに積極的に取り組んでいただきたいと思うのでございますが、最後に、この点につきまして金丸長官の御見解、御所見を承って質問を終わります。
  143. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) まことにこの問題につきましては、どこの省が管轄しておるというところがいまないということであります。日本は専守防衛ということでございますから、日本の国内においていわゆるいろいろ問題が起きてくるということを考えてみると、当然シェルターの問題、防空ごうの問題、そういうようなこと、国民の避難する場所、あるいはまた近隣諸国で核爆弾が落ちた、その放射能が日本に舞い込んでくるというようなことも考えてみれば、当然私はそういうことを考えなければならないと、こう思うわけでありますが、先般国防会議の折、白書にその提起をいたしたわけでありますが、総理からその問題についていろいろお話がありました。そこで私は、これは国防会議に諮問を総理からして、そうして、これについて今後の方向というものを決めていただくことが大切ではないですかと、こういう私は提言をいたしたわけでありますが、私は必要だとひしひしと感じて、先般ヨーロッパへ行っても見てまいりましたが、これは国民のために必要だということを痛感をしてまいりました。
  144. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 終わります。
  145. 野田哲

    ○野田哲君 六本木というところは、夜は非常ににぎやかですが、最近は昼間もずいぶん騒々しくなったようであります。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕 その中心におられる長官に、まず進退問題について伺いたいと思うんですが、あなたはこの八月七日の日に山梨県で、今度は山梨県知事になってもいいんだと、こういう発言をされたというふうな報道があるんですが、これは事実ですか。
  146. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) この問題につきましては、本年の三、四月ごろから、いろいろ与野党問わず私のところへ参りましてお話がありました。そこで、いろいろまあ話もあったんですが、この話は来年の一月の知事選挙だから、まあ九月ごろまでに決めればいいじゃないかという話をして私も流しておったわけでありますが、欧米から帰ってまいりますと、毎日私も防衛庁の関係だけでも忙しいのに、その問題でもうひっきりなしに来るものですから、私もいたたまれなくなりまして、私もいわゆる選挙に出るために後援会があります。後援会でもやいのやいのと言うし、いろいろの関係からもやいのやいのと言うものですから、それじゃ私の後援会の全県下の幹部を集めろということで二百四名集めたわけであります。そのときの出席が二百二名ということであったわけでありますが、知事四選反対、好ましくない、金丸信知事出馬要請という決議までできた。私は、先生方も選挙やる身でございますから、自分一人で衆議院議員あるいは参議院議員になったものじゃない……
  147. 野田哲

    ○野田哲君 長官、経過はいいですから結論だけ。
  148. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) そういうことでございますから、私もこれは受けて立たざるを得ぬ。しかし私は現職の閣僚でありますし、また知事職というものは後援会のものでもなければ金丸信のものでもない。県連の選対もあることだし、また各層各層の人たちの意見も聞かなければ、そうしてそこに素地が出るというのであるならば、私は皆さんがそれぞれ要請するということであるならばそれにこたえなければ政治にならぬと思いますと、こういうことを言ったわけでありまして、まだ出馬をすると言ったわけではございません。
  149. 野田哲

    ○野田哲君 きのうもその話が出たそうですが、自分から言ったわけではないが、出ろと言われれば場合によってはあり得るというような、消極的にはそういう意思があったというふうな情報があるわけですが、いずれにしても、あなたはいま現職の閣僚であるわけです。そして、その所管の防衛庁は最近非常に注目を浴びているわけです。この一カ月ばかりの防衛関係の報道だけでもスクラップにするとこれだけあるわけです。そうしてあなたは栗栖発言については、統幕議長としての責任をとって辞職という措置をとられたわけです。これは私どもも了とするわけですけれども、先ほど人事局長は、あの問題についてはその後防衛庁の内部には全然リアクションはありませんと、後遺症は残っておりませんという意味のことを言われたわけですけれども、実際はそうではない。これはやはりいろいろざわめきは続いていると思うんだし、国民はやはりシビリアンコントロールということについての長官の果たす役割りについては大変な関心を持っているわけだし、シビリアンコントロールについての部内に対する信頼と、国民の信頼というものを一日も早く回復をしなければならない立場にあると思うんです。そのあなたが、仮に消極的ではあったにしても、事と成り行きによっては来年の一月には知事選に出馬してもいいんだというような発言を公開されるということは、私は、あなたにとっては政治的に非常に不用意な発言ではないか、こういうふうに思うんです。やめられるのであれば、私は明確にやめられる、おれはもうやめて知事に出るんだと、こういうふうに明確にしてもらいたいと思うんですが、その心境はいかがなんですか。
  150. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 先ほども申し上げましたように、私は現閣僚であるということを前置きをいたしておるわけでありまして、やめるならばやめるとはっきりしろという、私はまだその段階ではないと、こう私は思っております。
  151. 野田哲

    ○野田哲君 まあ本筋ではないからこの問題はこれで終わります。  先ほど片岡委員からも指摘がありましたが、先ごろ発表された「日本の防衛」と題する、いわゆる防衛白書と言われているこの性格について伺いたいと思うんですが、これは次に作成をされる、まあ来年になるか再来年になるか、次の防衛白書に至るまでの間の防衛庁あるいは政府としての防衛上のポリシー、基本方針を決めたものと、こういうふうに理解をしていいんですか。
  152. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 先ほどお答えしたと思いますけれども、この防衛白書は防衛という問題をできる限り国民の皆さんにわかってもらいたいということで、しばらく中断しておりましたのを、いま第四号目でございますけれども、五十一年、五十二年、五十三年と毎年出す、来年も出すつもりでおります。毎年同じことが重複することがあっても、その年々の問題等も含めて、その年に新たに読んでもらえる人の立場を考えまして毎年つくっていって国民の御了解を得たいと思っております。この中には、当然われわれが考えております国防の基本方針とかそういうものも含めており、あるいは国際情勢、そういうものも含めて書き足しております。
  153. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、ここに掲げてある方針というのは、これは国防会議、それから閣議の了解も得た上で発表されているわけでありますから、防衛上の諸方針については、これが変更されるまではここに掲げてあることに防衛庁の長官あるいは防衛庁の幹部、政府は拘束をされると、こういうふうに理解していいわけですか。
  154. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) これは防衛庁で作成したものでありましても、国防会議で報告をいたし、あるいは閣議で報告して了解を得た白書でございます。この中で先生が御指摘恐らくなられておるというものが国防の基本方針ですと、前の白書にも取り上げておりますが、三十二年の国防の基本方針、それから防衛計画の大綱、こういう二つが大きな基本柱だと思いますが、その方針には変わることはないと思います。
  155. 野田哲

    ○野田哲君 そこで、まずこの全体の流れについて私は伺いたいと思うんですけれども、昨年の場合には、この「日本の防衛」と題するいわゆる防衛白書は、防衛計画の大綱ということについて基盤的防衛力構想という形がずっと終始一貫貫かれていたと思うんです。昨年のもここにあるわけですけれども、この目次でも「防衛計画の大綱」という第二章、これはもうすべて「基盤的防衛力構想」、こういう記述で貫かれているわけですね。それの背景、動機、こういう点について、防衛のあり方に関する国民的な合意を確立したいと考えたと。二つ目には、防衛上の具体的な任務範囲を明確にして、見通し得る将来に達成可能な現実的な防衛体制を、完結性のある形で置こうとしている、進めようとしている。それから三つ目には、防衛力を整備をしていく上での国内的な制約、条件に対して、諸種の配慮を行うと。四つ目は、当面の国際情勢に対する判断として、東西間の全面的な軍事衝突またはこれを引き起こすおそれのある大規模な武力紛争が生起する可能性は少ない。この四つのことを述べられているわけです。ことし、最近発表されたこれを見ると、全くこの基盤的防衛力構想という記述、表現は全くないですね、これ。一カ所だけ、これがいわゆる基盤的防衛力構想と称せられるものであると、一カ所確かにありますが、昨年は第二章は全部それで貫かれていたものが今度は全くなくなってしまっている。これは一体どういう意味なんですか、考え方が全く変わったわけですか。
  156. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) これは決して変わっているわけではございません。先生も御承知のように、昨年の防衛白書は夏出たわけでございますが、一昨年、五十一年の十月二十九日に防衛計画の大綱が決定されております。したがいまして、毎年出す防衛白書でございますから、おのずから重点を置くということでございまして、昨年は防衛計画の大綱が中心になっているわけでございます。したがいまして、その背景、それから防衛計画の大綱の内容、そういったものが詳しく述べられているわけでございます。  ことしの白書におきましては、昨年この防衛計画の大綱、それからそれを裏づけます基盤的防衛力、こういうものについては詳しく述べてございますが、簡潔性を持たせるという意味で、改めて防衛計画の大綱、これは基盤的防衛力を背景といたしまして、持つべき防衛力の規模、そういったものを重点説明をしてあるわけでございまして、この構想に基づく防衛力の規模というものは十分説明してあるつもりでございます。
  157. 野田哲

    ○野田哲君 いま伊藤局長説明で、それぞれその年々で重点を考えているんだという意味説明があったわけですが、私はことしの防衛白書を一読して非常に強く印象として受けたことは、まず一つは、基盤的防衛力構想ということが全く文字として出てきていない。これについては、ある新聞では、基盤的防衛力構想というのは内局が非常に昨年主張したんだけれども、制服の方でかなり抵抗があったということで、制服の抵抗があったために影をひそめたんだと、こういうふうな解説もあったわけですが、あなたは精神は変わっていないと言ったんですが、これはやはり国民の側からすればですよ、去年、ことしと、ずっとあれを読んだ印象からすれば奇異な感じを受けるんです。その点が一つ私は印象づけられたわけです。  二つ目には、国際情勢について、ソ連と、それから朝鮮民主主義人民共和国、ここの軍事的脅威というのを非常に強調されておりますね。アメリカや韓国よりもソ連や北朝鮮の方が軍事的には優位に立っているんだというような印象を受ける記述の仕方になっていると思うんです。  それから三つ目には、量的にはある程度自衛隊については達成をしたと。量的拡大から今度は質的な転換に向かいながら、その中で法解釈を拡大をして、あるいは新しい法体系をつくってその行動範囲を拡大していく必要があるんだと。そのことを非常にいままでにない特徴的な形として私は認識をしているんですが、そこで、これは長官に伺いたいと思うんですが、私はそういう印象を受けるんですが、金丸長官はことしのこの防衛白書をつくる上に当たって、あなたが特に重点的に意を用いられた点はどこですか。
  158. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) これをつくるのには、専門のところでつくっておりまして、私が防衛庁長官に赴任してまいりましたときは、もうある程度のものは構想ができ上がっておったと私は思うのです。そういう意味で、内容を見せていただいて、私もこれでよかろうという考え方で了承いたしたわけであります。
  159. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、あなたは特に事前に、重点的な点についての意向は出さなかった、こういうふうに理解していいですか。
  160. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) そのとおりであります。
  161. 野田哲

    ○野田哲君 長官に具体的なことについて伺いたいと思うのですが、あなたは七月三十一日に経済団体の招きで講演をされている。この講演の表題は「日本の防衛」という表題であったというふうに聞いているんですが、そのとおりですか。
  162. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 余り記憶に強く残っておりませんが、あるいはそうであったかもしれません。
  163. 野田哲

    ○野田哲君 新聞の報道では確かにそうなっているわけですね。「日本の防衛」という講演ということになると、この白書が私は基調にならなければならないと思うのです、長官の講演としては。先ほど竹岡官房長は、これは防衛庁が作成をして、国防会議と閣議の議を経ている基本方針だという説明があった。そうすると、長官が経済団体であろうとどの団体であろうと、「日本の防衛」と題して講演をする以上はこれが基本になっていなければならないと思うのですが、あなたはその中で、日本と韓国と台湾は運命共同体であると、こういう発言をされたというふうに報道されて、あわててまた後で取り消された。新聞報道などによると、取り消しているがごとく取り消さざるがごとき解説がされているんですが、この中にはどこを探しても日韓台運命共同体というようなことはないわけですが、一体どこからそういう判断が出たんですか。
  164. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) その会合は、経済団体でなくていわゆるマスコミ、あるいは経済の人が入っているかもしらぬが、その会合で私が述べた事実は確かでありますが、講演をしながら、運命共同体と言った話は、これは誤解を招くということを思いながら、座ると同時にこの問題は取り消しますということにいたしたわけでありますが、私がそういう話を申し上げましたのは、アメリカへ参りまして、ブラウン長官と日中正常化の将来、アメリカの考え方を承りたいという中で、向こうさんから台湾問題という問題について、ペルシャ湾航路、あるいはハワイ航路、こういうものは、アジアに対しても、また台湾に対しても、あるいは日本に対しても、韓国に対しても重要だという、そういう意味のお話をし、そこで私も、そんなことは絶対にないと確信はいたしておりますが、もし台湾にソ連の基地が出たらどうなるんだろうと、これは私は防衛庁長官として、重要な地域だという認識を持たされたわけであります。そういう認識の中でお話しを申し上げた。私が、いわゆるその重要な地域の中にわれわれはおるというような意味でその言葉は言ったのですが、それは誤解を招くもとだということで即刻私は取り消しをいたしたというわけでありますが、記者諸君は、それを聞かなければきょうの新聞にならぬと、もう言ったらだめだと、こう言うし、やむを得ませんと、こういうことであったということだけ御理解をいただきたいと思うわけであります。
  165. 野田哲

    ○野田哲君 これはブラウン長官との話の中で、台湾にソ連が基地を持つなんという奇想天外なことが話題として出ておる。そのことをやっておればこれはまた時間がかかりますからともかくとして、これについては二十八日に決定をされているわけでしょう。あなたが講演をされたのは七月三十一日です。わずか三日たったときにこの問題で講演をする場所で、しかも、日中友好条約の非常な重要な時期に立っているときにこういう発言が不用意に出るということは、私はこれは問題になったから取り消してくれという、そんな軽々な問題ではないと、こう思うんですよ。何か新聞によると、あなたはいつも心に思っているからつい出たのだというような説明があったのですが、あなたはいつもそういうことを思っておられるわけですか。
  166. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 新聞が書かれることはどのように書かれてもやむを得ませんが、私は、その話は、台湾という問題に触れてはいけないということはいつも頭の中にあるということは確かであります。思っておるということじゃありません。台湾の問題に、いま日本の、ことに閣僚が触れてはいけないということだけはいつも胸にあることは間違いありません。
  167. 野田哲

    ○野田哲君 胸にあっても、閣僚というものは、日本の政策に大きく影響を及ぼして、いま進められていこうとしている外交方針とか、あるいは防衛政策に悪い影響が及ぶようなことは私は厳に慎むべきだと思うんです。  そこで、引き続いて、いま騒々しい有事立法の問題について伺いたいと思うんですが、私は防衛庁というのは非常に悪い癖があると思うんです。これは私だけではないと思うんですが、あなた方はそうは思っていないかもしれませんけれども、印象として非常に悪い癖があると思うんです。  それは新しい装備を導入する場合とか、あるいは新しい立法措置について、偶発的に起こったトラブルを、これに便乗して、これを政治的に利用するという癖を持っておるのじゃないかと思うんです。これは私の誤解かもわかりませんが、悪乗りをする傾向があるんではないか。まずその一つを言えば、いま具体的に準備しようとしているAEW、早期警戒機の導入についても、この前のあのミグ25の事件を千載一遇のチャンスとしてこれに悪乗りをしているというような感じを非常に強く受けるわけです。今度の有事立法についても、栗栖統幕議長には詰め腹を切らせた。これは私は当然だと思うんですが、あの発言で統幕議長に詰め腹を切らせた以上は、とるべき措置としては、自衛隊は超法規的な行動は絶対にいたさないし、これは政府としても許さないと、こういうことを内外に長官なり政府として明確に示せばいいことなんです。ところがそれを逆手にとって、だからこそこの有事立法が必要なんだと、こういうふうな形で悪乗りをしようとしている。これが私は一番問題だと思うんです。いまあなた方の方でやろうとしていることは、自衛隊というところは、このままでいけば信号を無視したり、スピード違反をするから、自衛隊についてだけはその信号を合わしたり、信号を無視しないように自衛隊が通るところは全部青信号にするように交通法規を直す必要があるんだと、こういうふうな私は手法だというふうな印象を受けるんです。シビリアンコントロールというのは、長官ね、制服の方がこういう行動をとろうとしておるからということで、これに法体系を合わすというのがシビリアンコントロールというものではないと思うんですよ。もしそうであれば、そのシビリアンコントロールというのは、これは死に体になっていると思うんです。軍の行動、制服の行動に法律を合わしていくというのだったら、これは昭和二十年八月十五日以前と同じなんです。あの旧陸軍、海軍、空軍が、当時は空軍とは言わなかったですけれども、旧軍隊がやったことについても、これは一応法体系としては、法律的には合法的になっているんですよ。それがあの暴走になっているんですよ。シビリアンコントロールというのは、だからそのことが国民にとって必要なのかどうなのか、日本の平和にとって必要なのかどうなのか、こういう点で判断をすることがシビリアンコントロールだと思うんです。いまやろうとしているこのやり方は、長官にしても総理にしても、シビリアンコントロールというのを根本的に間違っているんじゃないかと思うんです。自衛隊が超法規的な行動に出る危険があるから、そこまで法規を広げようという認識じゃないですか。それは許さないというのがシビリアンコントロールですよ。その点いかがですか。
  168. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) それは非常に誤解だと思うわけであります。私は有事立法の問題と栗栖さんの問題――この有事立法の研究という問題は、三原長官の時代に、ちょうど一年前ごろ出たと思います。また私は、自衛隊のいわゆる有事のときにどさくさ紛れに法律を出して、そして国民に押しつけるようなことがあってはならない、頭の冷静なときに、そういうどうしても必要なものがあるならば研究して、また栗栖さんが言うような問題についても、私はそれは立法によってやるということでなくて、レーダーの問題や情報網というようなものを集めて、奇襲というものは絶対にないというような方法等、英知をもってこれに対処するというようなことは、自衛隊がある以上、これは毎日寝てぶらぶらしているような自衛隊ではない方がいい。そういう有事ということがあるから、自衛隊というものは憲法で何だかんだいろいろ言われたけれども、現実に二十七万おる、予算は一兆九千億、この金を使いながら国民の負託にこたえられぬような自衛隊でどうするのだと、こういうことでありますから、いわゆる栗栖さんの問題を契機にしてとか、そうしてまたシビリアンコントロールを無視してとか――私はそういうものはだんだん一つなり二つなり出てきたら、その過程においても国会の皆さんに十二分に平時に審議していただく。私は防衛二法もあることだしいたしますから、そんなにいろいろな法律を変える必要はないだろうし、また憲法の範囲内だと三原君は言って指示しておるということでありますし、逸脱していわゆる政治の最高である国会を無視してやるなんということは全然考えていないということだけは御理解をいただきたいと思います。
  169. 野田哲

    ○野田哲君 そこで、有事立法についての具体的な方向について伺いたいと思うのですが、先ほど原委員の方からもちょっと触れられたのですけれども、有事立法ということについて、ちょっと私は、どうも先ほどは失礼な悪乗りという言葉を使ったんですけれども、ちょっと私は世間でも誤解を受けている面があると思うんです。それは、一つは栗栖前統幕議長の発言とか、あるいはけさも空幕長の見解が発表されているんですが、東京新聞であったと思うんですが、これらに代表される制服の意見というのは、自衛隊法の六章、七章、つまり第七十六条から九十六条にわたって自衛隊の行動や権限が規定されている、これがいまのままでは有事の際に不十分であるから、いまのままでは超法規的な行動にならざるを得ないとか、あるいは航空自衛隊が侵入機があったときに対応できないからここのところを変えろ、こういう主張だと思うんですよ、制服の方で出た意見というのは。もう一つの点は、私どもがいままで国会審議を通じて、私も内閣委員会や予算委員会等で防衛庁の皆さんに何回かこの問題をただしたことがあるんですが、その説明の中で私が受けておる理解というのは、自衛隊が有事の際に行動するに当たっての必要な国内体制を整備する必要がある、こういうことだと思うんです。たとえば交通の規制の問題であるとか、あるいは道路交通機関の優先的な使用の問題であるとか、あるいは海域、空域の優先使用の問題であるとか、港湾の問題であるとか、こういうふうな点を有事の際には改正をしておかなければ自衛隊の活動に支障を来す、だからここが必要なんだ、こういう説明であったと思うんです。先ほどの片岡委員質問に対する答弁でも、金丸長官は全知全霊を使えば奇襲というものはあり得ないんだと、これはレーダーその他によって察知できるんだと、こういうふうに言われておるし、したがってこの有事立法というのは、七十六条のあの奇襲が起こってそれから下令に至るまでの空白を埋めるという考え方に立ったものではないんだと、こういうふうな説明もあったわけです。そういたしますと、制服の皆さんが言っている七十六条を中心にした自衛隊法の六章、七章を瞬間的に行動ができるように改正をするのではなくて、竹岡官房長が何回か私ども説明のあった、国内体制を必要に応じて改正をする、こういう方向の有事立法をいま考えているんだ、検討しているんだ、こういうふうに理解をしていいわけですか。
  170. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) お答えいたします。  昨年の八月に三原長官から指示を受けた、有事立法の勉強で。その後、前国会あたりでもこの委員会で問題にされました。私も当時、いまもそうですけれども、三原長官から指示を受け、われわれがやろうとしております有事法令の研究ということは、先ほど私二つの範疇があると原先生に申し上げました。一つは、いわゆるわれわれ自衛隊法とかいう防衛庁関連の法律を持っております。これはまさに有事法なんです。これはもう相当よくできております。ただし、それにはまだ政令で定めることやなんかまだ残っておりますけれども、それは別としまして、われわれの有事法令、防衛二法、防衛関連法案以外のわが国の法体制は現在有事ということはほとんど想定していない、みな法律のたてまえはそうなっております。そういう各種の法律につきまして、もし有事の場合に、あるいは国民の避難誘導なり自衛隊の活動というもの、これは恐らく国民も早くやれということになろうと思いますけれども、そういった活動を容易ならしめるためにも、いまのいろいろある法令、たとえば道路交通法なり、いろんな各種法令があります。電波法とかあります。そういう法律で十分に有事のときの活動ができるのか、国民の避難誘導ができるのか。たとえば国民の避難誘導一つにしましても、災害対策基本法の災害というのは戦災ということは考えておりませんが、そういった意味で、有事の関連から各種の法令を防衛庁なりに――これは案外僣越かもしれません。というのは各省庁がそれぞれ持っておるわけですから、主管法律を。しかしながら、現時点では防衛庁なりに一応そういうものを研究してみたらどうかという御指示があって防衛二法以外の各種の法律の勉強をしておる、これが有事法令の研究でございます。ただし、最近の新聞論調を見ておりますと、いわゆる自衛隊法そのものの運用やその他について、この際まだ相当やるんじゃないかとか、こちらの方にえらい力を入れられておりますけれども、従来私たちが説明しておりました有事法令の研究は、いま申し上げましたように防衛二法以外の法律の勉強を中心にしておりました。しかし、自衛隊法につきましても有事の場合におきます政令等の不備、これもあわせて勉強するつもりでおります。だからそういった意味で、先ほど悪乗りと言われましたが、われわれむしろ迷惑しておるわけなんです、栗栖発言で。ということは、有事法令ということは去年の八月から勉強しておるわけなんです。そして、これは防衛庁が長官の命令で静かに勉強しておけと言われたんです。というのは、国民の皆さんに、いまいかにももう有事が来ておるようにことさらに危機感をあおるようなことがあってはならないということはわれわれ長官からも言われております。そういった意味で、悪乗りどころかむしろ迷惑したなという感じは持っております。
  171. 野田哲

    ○野田哲君 有事立法というのは、自衛隊法の改正でなくて国内関連法を考えているんだということだけここでは確認をしておきたいと思うんです。  もう一つ有事防衛研究について伺いたいと思うんですが、先ほどもちょっと私指摘をしたんですが、今度の防衛白書では、ソ連と北朝鮮の軍事力が拡大をされているという点が非常に強調をされているんですが、防衛庁がいま進めている、最近始めたと言われる有事の際の防衛研究というのは一体どのような軍事的な脅威を想定をして進められているのか。ある新聞の報道によると、この軍事的脅威として想定をされているのは、日米共同対処を含む防衛対応計画集、こういう資料があって、それではソ連の軍事的脅威、これを前提にした防衛研究が進められている、こういうふうに報道されておりますが、そのとおりですか。
  172. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 先ほども大臣から御説明申し上げましたように、自衛隊というのは有事の際に有効な防衛力を発揮しなければならないわけでございます。したがいまして、その防衛研究、すなわち運用研究というものは従来からもやっていたわけでございます。したがいまして、各年度研究の結果を、その年のいわゆる防衛計画あるいは警備計画という形で計画を作成しておったわけでございます。ところが、先生も御承知のように、四次防までの間といいますのは、防衛力が質量ともにふえていく時期でございます。したがいまして、その計画を立てるに当たって、その足りないところというものはこういうところが足りないから今後の防衛力整備計画の上でそれをやっていけばいいというような一つ考え方もあったわけでございます。したがいまして、そういった観点もありましたので、陸海空三自衛隊がそれぞれにそれぞれの考え方によってつくっていたというのが実情でございます。しかしながら、防衛計画の大綱によりまして防衛力の規模というものが一応定められております。その定められた防衛力で最も有効に対処するためにはどういう運用が効果的であるかというような点を、いわゆる統合運用という立場からもう一度再検討してみる時期ではないか、従来毎年度の計画というものは、その年度の勢力によって対処する仕方というものをまあやや惰性的にやってきたというきらいがございますので、中央指揮所の研究もやっております。五十七年度を目指して整備したいと思っておるわけでございますが、そういう時期にこの統合運用というものを中心にやっていきたいということがこの防衛研究を始める一つのきっかけであったわけでございます。同時に、いろいろなこの対処の仕方というのは、周辺諸国から侵略された場合というものを考えるわけでございますから、日本の周辺諸国の軍事力というものを参考にいたしまして、日本の周辺の中で、まあ領土的に近いところのその侵略の可能性というようなものを想定いたしまして、それに対処するやり方というものを考えておったわけでございます。そして、その足りないところというのは全部アメリカがやってくれるだろうというような前提に立っておったわけでございますけれども、一方におきましては、いわゆる極東におきますアメリカの前方展開の配置の勢力、そういったものも変わってきております。したがいまして、日米防衛協力小委員会におきまして、今後の防衛協力については一方において研究をいたしておるわけでございますが、今回いわゆる陸海空自衛隊が、その自分の立場を維持しながら統合運用というものをやるのにはどういう方法がよいのかというのが中心になっておるわけでございまして、その想定される問題といたしましては、陸上の兵力が投入される場合もございましょうし、海上におきます船舶が攻撃を受けるというような場合もあるかと思います。それから航空攻撃によって日本が攻撃を受けるという場合があろうかと思います。一方、これに備えますわが方の体制といたしましても、かなり前もって相手の意図がわかる場合もございますし、きわめて短い間にこれに対処しなければならないという場合もあろうかと思います。そういういろいろな対応というものをこれから一年間かけまして可能性のある対応というものを検討し、さらに一年間をかけましてそれにこの統合運用の立場からどのように対処していくかというようなことを研究したいと考えているわけでございます。
  173. 野田哲

    ○野田哲君 簡潔に答えてもらいたいと思うんですが、いま言われた脅威ということについて、周辺諸国の中で、近いところで軍事的にも侵略の能力を持っているところ、これは私の受ける印象としては、周辺諸国の中で、韓国との間でそういうことを想定されているわけでもないだろうし、中国とは日中平和友好条約を締結をした。そうするとソ連しかないんですが、そういうことなんですか。
  174. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 私どもは仮想敵というものは考えているわけではございませんけれども、やはり周辺諸国の軍事能力、その軍事力というものが日本に向けられた場合ということを想定して対処行動というものを考えるわけでございます。で、ソ連がやはり日本の隣国の一つであるということは間違いないわけでございます。
  175. 野田哲

    ○野田哲君 防衛問題は最後にもう一つで終わりますが、きょうは外務省は出席を求めてないんですが、この前外務省が発表した外交青書、この中では全方位外交ということを強調されて、特にソ連とも外交的手段によって友好的な関係を続けていくんだと、こういう方針が述べられている。全方位外交といっても、距離は大分長い短いがあるんだろうと思うんだけれども、片一方外務省の方が出したのは、そういう形でソ連とも友好関係を持続していくんだと。防衛庁の方が集まってやっているのは、いま国の名前は伊藤局長は出されなかったけれども、どう聞いたってこれはソ連としか思えないですよ、この「日本の防衛」というこれに書かれていることからしても、いまの説明からいってもソ連としか私は思えないのですが、そういう研究のやり方をやっていることが、これからソ連との関係を、中国との日中平和友好条約を締結をしたということも含めて、関係をより改善をしていかなければいけない時期に、片一方においてそういう研究をすることが、一体国策、外交方針として妥当な措置なのかどうか、これは閣僚の一員である金丸防衛庁長官からひとつ答えてもらいたいと思うのです。
  176. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私も日中条約が締結されたということ、まことに両国にとって喜ばしいことだと考えております。これからの政治は、ソ連と日本との関係をより一層改善して、善隣友好というような線に持っていくことがこれからの日本の政治だと私も思っております。そういう中で、その研究はいかがか、敵視しておるじゃないかと。敵視ということでなくて、われわれは向こうへ攻めていくということでないのですから、もしこちらへ来られたらどうすべきかという考え方だけで、受け身の形で、こっちが向こうへちょっかいをかけるということでないわけでありますから、その辺は防衛という問題を扱っている以上考えざるを得ないと御理解をいただきたいと思います。
  177. 野田哲

    ○野田哲君 防衛研究の中で資料にされているという日米共同対処を含む防衛対応計画集というのがあるのであれば、これを資料として提出をしていただきたいと思います。資料要求としてお願いしておきたいと思うのです。
  178. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) そういうものはございません。実は防衛協力小委員会におきましては、先生も御承知のように、いまいわゆるガイドラインをつくっている段階でございます。それから、防衛研究におきましては、従来年度防衛計画をつくる際に自衛隊の運用計画が書いてあるわけでございまして、日米間で共同してやるというような資料は持っていないわけでございます。
  179. 野田哲

    ○野田哲君 きょうはその程度にとどめておきたいと思うんです。  官房長官、お忙しいところどうも。  八月十五日の、一昨日のことについて伺いたいと思うんです。具体的な事実はもう発表されておりますし、特別否定もされておりませんから省略をいたしまして、一点だけまず前提として官房長官に伺いたいのは、福田総理大臣にあてて、八月十五日に靖国神社参拝をしてもらいたいということを、ある団体から渡海副幹事長を通じて要請があったというふうに聞いているのですが、どういう団体からどのような要請があったのか伺いたいと思うのです。
  180. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 八月十五日の総理の靖国神社参拝は、福田総理自身の個人的な意思によって行われたものでございますが、それに至るまでの間には、各方面から、個人、団体等から要請があったことは事実でございます。その一つとして、たとえば「靖国神社忠霊祭委員会」、これは総代は源田実先生であります。及び「英霊にこたえる会」、代表者石田和外氏であります。こうした団体からも要請がありました。その他各方面、各個人からもあったわけであります。
  181. 野田哲

    ○野田哲君 きのうもこの要請をした団体から私のところにも代表の方何人かお見えになったのですが、この要請というのは、公的参拝という形での要請であったと思うのですが、そのとおりですか。
  182. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) その団体の主催される会には参列ができなかったわけでありますが、要請としては公的参拝であったように私も聞いております。
  183. 野田哲

    ○野田哲君 そこで、公的か私的かという問題ですが、官房長官は、あなた自身も含めて私的な参拝である、こういう点をきのうもお答えになっているようでありますが、ここで公的、私的という問題について、その場その場で政府の見解が、私どもに対する国会での答弁が非常に変わってきているんですよ。どういうふうに変わってきているかここで例を具体的に申し上げて官房長官法制局長官の見解を伺いたいと思うんです。  まず、閣僚の公的か私的かという問題について私の記憶している例を申し上げますと、稻葉法務大臣が、これは三木内閣の当時ですが、自主憲法制定国民会議に出席をしたことについて三木総理はこういうふうに言っておられるわけです。御承知だろうと思うんですが、閣僚の地位の重みからして公私の区別はつけがたい、こういうことを国会で述べられているわけです。それからその次は、三木総理大臣靖国神社参拝をされたことについて、これは当時の吉國法制局長官が公私の区別という問題についてこういうふうに言っておられるわけです。私人としての立場の参拝であるということを事前に官房長官から発表して国民にPRした、それで私人であるという立場を明確にして参拝をしたんだと。そして私人であることの配慮として、車は公用車を使っていない、それから記帳は三木武夫とだけ記帳した、それから公職にある人を随行させなかったというようなことが状況説明として述べられているわけなんです。そして、そのことに関連をしてどういうふうに吉國長官が言われているかというと、稻葉法務大臣と三木総理大臣の違うところは、稻葉法務大臣は自主憲法制定国民会議に出席をしたときに、法務大臣稻葉修と紹介をされて参列者に会釈をされたと、立ち上がって。車には配慮をしたようだけれども、法務大臣稻葉修と紹介をされたことに問題があったんだと。で、三木総理の場合には事前に三木武夫個人でありますということをPRをして、記帳にも三木武夫だけを記帳したと、そこが違うんだと、こういうふうに説明してあるわけなんですよ。稻葉さんの問題のときと比較をしてこう違うんだと、だから私的なんだと。  それから、ことしの四月二十五日に私が内閣委員会でこの問題で質問しております。そのときに真田法制局長官は、福田総理の靖国参拝の問題について私的とはどういうことかということについて、先ほど山崎委員質問にも答えられたわけですけれども、玉ぐしを公費で買ってささげるとかいうような公的な支出を伴わないことであると、それから外形的事情が伴わないことということをあなたは述べられております。今度は、これは新聞で見たんですが、きのうの内閣委員会でのあなたの答弁というのは、公的というのは、閣議決定による公式行事ということであれば公的だけれども、それがなければ神社仏閣等に参拝するのはあくまでも私人だと、こういうふうな意味のことを言われたというふうに私はけさその報道を受けたわけですけれども、こういうふうに稻葉法務大臣の問題からずっと変わってきているんですがね。  まず真田長官に伺いたいのは、外形的事情というのはどういう事情のことなんですか。私は外形的事情というのは、外にあらわれた形なんですから、これは公用車を使わないとか、あるいは公人を随行させないとか、記帳に肩書きをつけないとか、こういうことが外形的な事情だと思うんですよ。吉國長官は、三木総理が靖国に参拝したことと稻葉法務大臣との違いについて、稻葉さんは法務大臣稻葉修として紹介されたからあれは公人的な紹介だった、三木総理は総理大臣というのを記帳しなかったから私的なんだという意味のことも言っておられた。この外形的事情というのは一体どういう事情なのか、これが伴わなければ私人なんだと言うが、これは一体どういうことですか、具体的には。
  184. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) まず大もとから申し上げまして、神社仏閣にお参りするということはそもそもが個人の信仰心のあらわれなんです。ですから、原則として神社にお参りするというのはまず私的な行為だと見るのが素直な、自然な見方だろうと思うんです。ただ、それじゃ絶対ないかということになりますと、それは私の万は公の地位にある人が公的な資格で神社にお参りするということは憲法二十条三項に照らしてはなはだ困るという見解でございますから、だから、公的な形で一体大臣なり公の地位にある人が神社にお参りなさるということがどだいあってはいけないことだと思っているものですから、どんな場合がそうだとおっしゃいましても、私の方でこういう場合だというふうに的確に申し上げられない。ただ言えることは、先ほどおっしゃいましたように、公金で玉ぐし料を出すということになりますと、そうすると、これは公金を使うということと私的な資格で参拝をするということとがもともと相入れない観念でございますので、それはやっぱりそうなれば公的だと言わざるを得ないだろうということは言えるんです。  それから、先ほど申しましたように、公的な資格で公の地位にある人が神社にお参りするということがまずあり得ないことだと思いますので、じゃどういう手続をしたらいいのかというふうなことになりますと、的確に申し上げにくいわけなんですけれども、たとえば、閣議決定をして何々大臣お参りしてこいというようなことが仮にあったとすれば、これはもうりっぱに公的だということになりますということを一例として申し上げたんでありまして、閣議決定がなければもう全部私的だというふうな意味で申し上げたんじゃございません。  それから、私の先代、前任者の吉國長官が、三木総理大臣のときにはPRをしたと、だから私的だというふうにもとれるような発言でございますけれども、私はそのときの吉國長官の御説明の真意は、そういうふうに事前に私的であるということを十分に説明して、PRして、広報を尽くしてそして行ってもらったんだから、世の中の人から見ても、公的ではあるまいか、憲法違反ではあるまいかというような疑問を投げかけられるおそれはもうないというふうな趣旨で言ったんだろうと思うんです。そうでないと、私的だというPRさえ事前にしておけばみんな私的になるというふうなことは、これはまたおかしな話なんであって、やっぱり公的か私的かということがまず先行しまして、そして私的ではあるけれども世の中の誤解を受けちゃまずいということで事前によくPRをしておきましたと、こういう趣旨だろうと思うんです。今回も官房長官から、福田総理参拝に先立って新聞記者の方にはやはり私的で行かれるということは繰り返し発言していただいております。ですからその点は同じでございます。  それから、乗用車、それから肩書きの話にお触れになりましたけれども、これも事の本質ではないのであって、けさほど山崎委員にも私お答えしましたが、それは乗用車の件についてお答えしました。それから肩書きの方は、これはどうも日本の社会では、公の地位にある人が私的な行為をする場合でも往々にして肩書きをつけるわけなんですね。たとえば、私、野田さんからまだ年賀状いただいたことありませんけれども、国会議員の方からずいぶん年賀状いただきました。これはまさか公的とはだれも考えないんですね。しかし、もう顔写真入りのりっぱな肩書きつきの年賀はがきいただくんです。それと同じでして、それは参議院議員野田さんの個人のお仕事であって、まさかこれを公的にいただいたとはだれも思いませんし、一般の国民の感情から言いましても、それは肩書きをつけたから途端に公的だというふうに決めてしまうということにはならないんだろうと思います。
  185. 野田哲

    ○野田哲君 簡単に答えてもらいたいんですが、私の四月二十五日の質問に対して、あなたが外形的事情が伴わなければいいんだと、こういうふうな意味のことを言っておる。この外形的事情とは一体どういうことなんですかということなんですよ。私は外形的事情は、これは公人としての外形的な事情がもう目いっぱい整っている、残っているのは閣議決定がないだけで、あとは全部外形的には公的な立場が整っていると。で、福田さん自身も、総理自身も、前にも後にも、安倍長官は私的だということをPRしたと言っておるけれども福田さん自身は、事前に要請があったときにもおれは公的に公人として行ってもいいんだと、こういうふうに言ったといわれる。きのうも、けさの新聞に出ておりますが、私人か公人かということを議論されていることがおれには意味がよくわからぬと、こう言っておられるわけです。だから、外形的事情というのは一体どういう事情なのか、これをまず聞かしてもらいたい、端的に聞かしてもらいたいんです。   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
  186. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) 御説明申し上げますと、本来的には、先ほど申しましたように神社にお参りする、寺院にお参りするというのは宗教心のあらわれなんであって、それは内心の宗教心と非常に結びつきのある行為なんです。それを強いて公的だと言うためには、それが国の行事として行われているんだという、いまのたとえばその手続が国を代表して行ってこいというようなことがあれば、これはもう公的でございましょうが、そういうことがなければまずそれは私的な行為だというふうに評価するのが自然な理解の仕方ではなかろうかというふうに私は考えるわけなんです。
  187. 野田哲

    ○野田哲君 つまり、あなたの言う外形的事情というのは、閣議決定によって行ったものでないというようなことであればそれでいいんだと、こういうことなんですか、外形的事情というのは。
  188. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) そのほかに、玉ぐし料を公金で出すというようなことがあればやはりだめなんじゃないかと思います。
  189. 野田哲

    ○野田哲君 法制局長官が言っていることが、この二、三年の間に変わるということは私はゆゆしき問題だと思うんですよ。まして憲法二十条の解釈が変わるということはゆゆしき問題だと思うんです。あなたは記帳の問題について、たとえば参議院議員野田哲が真田法制局長官に年賀状を出したのに参議院議員と書いてあるから、肩書きがあったからといってこれは公的ではないでしょうというような例を挙げられましたけれども三木さんの問題のときは、稻葉さんは法務大臣という肩書きつきで紹介されたからあれがいけなかったんだと、三木さんは肩書きを書かなかったところに違いがあるんだと、だから私的なんだと、こういうふうな言い抜けをされているんですよ。今度は、肩書きを書こうと書かれまいと、私的と言えば私的なんだと、これは。たとえば政府を代表して行くとか、閣議決定で行ったということでなければ個人的な宗教心のあらわれだと、こういうふうにあなたいま言われたわけです。とにかく、その場その場で法制局長官の見解が変わってきているわけです。私はやはり公人である以上は、三木総理が稻葉問題の処理で苦し紛れに言われたのかどうか知らぬけれども閣僚の地位の重みからして公私の区別はつけがたいと、これでなければいけないと思うんです。  で、そういう点から、ここ二、三年来の憲法二十条をめぐる公的か私的かという問題について、そう聞くたびに見解が変わったのでは私はこの問題はけりはつかないと思うんで、これは官房長官ね、この公的か私的かという問題について政府としての統一的な見解を文書にして明らかにしてもらいたい。これはきょうはもう間に合わないと思うんですが、できるだけ近い機会に。そのことをお願いしたいと思うんですが、いかがですか。
  190. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この靖国神社の総理参拝につきましては、御承知のように事前に、先ほど申し上げましたように、総理大臣靖国神社参拝してほしいという要請が各方面からも出ましたし、また反対に、福田総理の出席は――出席といいますか、参拝はすべきでないと、これは公人という立場においても、あるいは私人という立場においてもなかなか判別しがたい面もあるわけだから、これは参拝をすべきでないと、こういう御意見といいますか、反対の要請等もしばしばありまして、私自身がそれを受けております。そういういろいろな方面からの御意見も受けまして、この際やはり福田総理靖国神社参拝をするということになれば、その立場を明らかにしておかなければならない、こういうふうに判断をいたしまして、私は記者会見をいたしまして、私人として参拝をする予定であるということを明確に申し上げ、法制局とも相談もいたしまして、私人なら差し支えないということでございましたからあの参拝ということになったわけでございます。その際に、玉ぐし料等も差し出したわけでありますが、これはあくまで総理のポケットマネーでございます。まあその他、公用車を使った、あるいはまた肩書きをつけて記帳したという点はあるわけでございますが、これは法制局長官から申し上げましたように、差し支えないと、こういう判断でやったわけでございまして、あくまでも今回の靖国神社総理大臣参拝は私人としての立場で行われたわけでございまして、その点については憲法に触れるものではないと、こういうふうに確信をいたしております。  また、いろいろと国会でしょっちゅう問題になることでございますので、先ほどからお話がありましたように、それでは公人としての立場、あるいは私人としての立場はどういうふうなものであるかということにつきましては、いろいろの御質問等も踏まえて、法制局とも相談をいたしまして、政府としての考え方を統一して、機会を改めて申し上げさしていただきたいと思います。
  191. 黒柳明

    ○黒柳明君 官房長ですね、有事立法の研究についてお伺いしますけども、組織的に研究が始まったのが三原前防衛庁長官から一年余と。ただ、国会では、その前から各担当大臣が防衛庁の関係者に個人的に研究させていますと、あるいは個人的に研究していますと、まあ有事立法とは言わなくても、有事に対する法の整備ですかね、そう言った方がより適切ですが、ですから、この有事の立法ないしは法令の整備というものは、相当前から、まあ個人的にせよ、やってきているわけでありますが、組織的にいま問題になり、一年前から研究を始めたと、こういうことかと私は認識しているわけですが、そうなりますと、まあきのうきょう、衆参の内閣委員会で有事立法、いままで何勉強していたか、これから何をやるのかということについて、官房長が余りにも断片的に、交通のことだ、通信のことだと、こういうことですが、ひとつもうちょっと具体的に、項目を立てて系統的にですか、現段階で言える範囲で結構ですから、ひとつその、いままで、言うならば個人的資格にせよ研究段階を経てきているわけです。この個人というものは、まあ行政というものは関連性があるんだと、もう政府の立場を皆さん方は絶えずおっしゃるわけですから、決してあるときの局長自分研究して、それはもうそれだけのものだということはないと思うんです。それがある意味において生きてもきたんではなかろうかと、私こうも認識せざるを得ない。そうすると、もうちょっと具体的に、これから何をやるのか、いままで何をやってきたのかと、こういうことをおっしゃっていただけるんではなかろうかと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  192. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 昨年の八月に長官から指示がありまして、これはやはり何といいましても各陸海空の幕僚監部、各自衛隊に非常に関係のあることですから、内局だけではいきませんので、内局の官房が中心になりまして陸海空の幕僚監部に、いままであるいは部局的にこういうことを研究しておった部門もあっただろうと思うんでございますけれども、組織的にやるのは初めてでございますので、各三幕からどういう問題点があるか、どういう体制、どういう法体制なんかをわれわれは考えなきゃならぬだろうかというようなことでお互いに意見を持ち寄りました。で、そのときに私が指示しましたのは、その場合に前提がある、その前提の一つは、この間も申し上げたと思いますけれども、現在の憲法の範囲内でわれわれは研究していくものである。と同時に、政府の基本方針でありますシビリアンコントロールとか非核三原則とか、こういった従来の政府の基本方針の範囲内のものである。それから、やはり有事というときはこれは大変なことでございますので、相当の国民生活と、それからいわゆる防衛活動とのバランスをとらなきゃいかぬ。しかし、国内で戦うわけでございますから、恐らく各省庁あるいは各国民の皆さん方、自発的な協力が相当あるであろうということも前提にして考えてみようということで、各幕から、約半年ほどかかりましていろいろ研究してくれまして、ことしの初めにいろんな意見を持ち出しました。  で、われわれは、一応今後考えていく問題としましては、大体抽象的に、これだけでは私いかぬかもしれませんが、まだ中途段階でございますけれども、グループ的にまあ八つぐらいいま考えてみておるわけでございます。  たとえて申しますと、まず最初には、有事になりましたら、この狭い国土で戦うわけですから、恐らく国民の皆さん方は、とにかく自衛隊早く行って戦えということになろうと思うんです。そうしますと、その自衛隊の行動につきまして、いまの他のいろんな諸法令から例外規定なんかを相当設けてもらわにゃいかぬかもしれない。もちろん道路交通法では緊急自動車というような指定を自衛隊の車は受けておりますけれども、そういった除外例なり特例なりを設けてもらう必要があるかもしれない、そういう必要性があるかどうかということが第一のグループだと思います。  それからもう一つは、やはり有事になりますと、自衛隊は防衛出動を下令されまして行動をとるわけでございますけれども、その前に待機命令等がございますですね。で、現在の百三条等、それらはいずれも防衛出動を下令されてからのことになっておりますけれども、その防衛出動を下令される直前、準備段階にあるいは何らかの手当てが要るだろうかどうかということも考えてみようということが第二番目でございます。  それから三番目には、そういう有事の場合ですから、防衛庁、自衛隊のいろんな事務関係をやはり少し簡素化してもらう必要があるんじゃないか、たとえば会計手続とかいろんなものを。こういった点は果たしてできるのかどうか、いまのままでいいのかどうかということも勉強しようじゃないか。  それから四番目は、何といいましても一般市民の避難誘導、保護というようなことにつきまして現行法制で十分なのかどうだろうか、われわれ研究する。  それから五番目は、恐らく自衛隊に対しまして行政官庁なり国民の多くの協力を得られるであろう、そういう協力体制ということにつきまして、法的にさらに、強制的にやるかやらぬかというのは非常に問題でございますけれども、そういった面で何らかのまだ方法があるかどうかということも検討をする。  それから六番目は、これはやはり、もし国内で戦いました場合に、やはり侵攻してきた侵略敵の捕虜なんかができる可能性がございますですね、捕虜のジュネーブ条約なんかでこれは人道的な立場で扱わなければならぬ。こういったものは別に法規定何もございませんけれども、そういったものの国内法的なものが要るんではなかろうかというようなことも上がっておりました。  それから、恐らく有事の場合には、これは米軍が安保条約五条によってわが国土を守るために協力してくれます。そういった協力につきましても国内法的に何か要るのかどうか、いまのままでいいかどうか、そういったグループ。  それから最後は、隊員が有事の場合におきます特別処遇、たとえば、現在防衛職員給与法に、有事の場合に特別出動手当とか災害補償とかいうのは別の法律で定むとなっておりますが、こういった問題もあろう。  大体こういうようなところを一応考えながらやってみておりますが、果たしてこれだけで正しいかどうか、まだそれ以上になるのか、あるいはこの中で不適当なものがあるのかどうかはこれからの勉強にまちたいと思っております。
  193. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官ですね、有事の立法について私どもいろいろ見解まとめました。必ずしももろ手を挙げて賛成という立場じゃない。盛んに官房長もおっしゃって、また長官もきのうもきょうも言ったんですが、国会では批判を受けます、あるいはシビリアンコントロールはきちっとします、現行法の枠の中でと、こういうことです。そこで、ある一部の野党は、あれはとんでもないという意見もあるんです。というのは、国民の意見がそういう批判的なものがあるということなんです。そこでどうなんでしょうか、現行法、平和憲法の枠の中でやると言うんですが、ところが、それ信用してくれと言ったって、いままでの過去の実績ですと私みたいな素直な者でもなかなか信用できないきらいがあるんです、防衛庁の姿勢、自民党政府の姿勢。そこで、より信用をしてもらって、いいはいい、悪いは悪いとして防衛論議を発展させなきゃならない時代になっている。  そこで、防衛庁長官に要望するんですけど、むしろ研究する前に、現平和憲法の枠の中でこれはできないんだ、これはできるんだ、こういう大枠でもいいですよ、これから研究するんだから。そういうものをまず国民に提示していただいて、安心なんだよ、徴兵なんかやらないんだからと。それは民生の方にもいろいろいく可能性あるでしょう。その場合に言論統制も絶対やらないんだから、あるいは土地強制収用の方はどうなのか、こういう大枠でもいいですから、現憲法下の枠、平和憲法の枠でやるんだやるんだという国会答弁だけじゃなくして、まず、より具体的にもう一歩踏み出して国民の皆さん方に提示する。大枠でもいいですよ、そういうものをまず提示して、こういう範囲でやれるものをやるんだからひとつ安心してもらいたい。安心してもらいたいじゃない、自衛隊をお互いに育てて理解してもらいたいということになれば、より国会を中心でもコンセンサスがまとまる可能性、国民の理解も得られる可能性があるんじゃなかろうかと、こう私素人考えで思うんですが、どうですか長官
  194. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私はたびたび申し上げているんですが、これをひた隠しにして秘密裏にこの研究をするなんということは、これは許されない。ですから、いま御提案になりましたことはまことに私も、あなたも素人だと申しましたが、私はあなたより素人でありますが、一つの国民のコンセンサスを得るということは必要であるという意味で、ひとつその点については十二分にあなたの意のあるところをくみまして対処してまいりたい、こう考えております。
  195. 黒柳明

    ○黒柳明君 きのうもきょうもいろいろ問題点出ておりますので、私、より具体的に詰めたいと思うんですけれども長官ですね、有事、この有事のときは国際情勢、アジア情勢いろいろ変わる、変化する、それに徐々に対応するという有事もあるでしょうし、栗栖さんがおっしゃったように緊急有事もあるでしょう。いま緊急有事の場合が若干話の中心になっているわけですが、万が一海上自衛隊の艦船が、護衛艦が緊急に攻撃されたとき、この護衛艦はどういうふうに対処すればベストなんですか、長官。――防衛局長
  196. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) いま先生も御指摘になりましたように、自衛隊法の七十六条の規定に基づく防衛出動が下令されていない場合に、突然護衛艦が奇襲攻撃を受けるという場合はきわめてまれな場合だと思います。しかし、そういったことが仮にあったといたしましても、その護衛艦が七十六条の規定に基づくいわゆる部隊行動としてこれに武力を行使するということは許されないと私どもは考えているわけでございます。しかし、国会でも御説明いたしましたように、奇襲攻撃を受けた場合、突然予期しない攻撃を受けた場合に、とっさの反撃行為としてその護衛艦の乗組員が武器を使用するということは、正当防衛行為としてその範囲内では禁じられていないと私どもは考えているわけでございます。ただ、いわゆる個々の自衛官が正当防衛行為をやるわけでございますけれども、艦艇の場合には乗っている者はこれはまさに運命共同体でございますから、全部が脅威を受けるわけでございますから、正当防衛行為を行うというような場合に行動が同じような行動ということもあり得ると思いますけれども、これはやはり私どもは、実力行使を伴う七十六条に基づく防衛出動による武力の行使というものとは違うものだというふうに考えているわけでございます。
  197. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一つ問題あれして法制局長官に聞きたいんですけどね。スクランブルの場合は、これは皆さん方の白書でも百四十回もと、日本海は。佐渡や輪島の監視哨へ行きましたら大変ですわね、もういる間にどんどんどんどんソ連の映像が映ってくる。スクランブルかける場合、要するに機銃砲弾は持っていく。ミサイル持ってスクランブルかけない。私もそう思うんです。スクランブルかける、敵機とは言えませんな、不明機が急に攻撃かける例はないと思いますよ、たまだと思いますよ。だけど、可能性を含めてスクランブルかけるんですから、そのとき機銃砲弾だけ持ってスクランブルかけますね。ところが、相手は当然空対空ミサイル持ってくる。こちらは持っていない。完全にやられちゃうんです。私は、スクランブルをかける時間的にもいろいろ問題があると思う。これはこの次の機会でいいです。まず、装備の問題について、いわゆる空対空ミサイル、これは内規とか、それから法例の改正とか研究とかというものの範囲外だと思うんですね。現状においてこれはどういう考えかわかりませんが、ミサイルは持ってないでスクランブルをかける。そのときに、栗栖発言というものを私はそんなにウエート、重きを置きませんけれども、万が一の有事ですから、しかも緊急の場合を想定してこれから勉強をするんですから、そうすると、肝心なミサイル持ってないで機関砲なんかじゃ、とてもじゃない、攻撃されに行くみたいなものじゃないですか。聞きました。あんた方スクランブルをかけるときに、もう二十六年間かけるにはかけるけれども習慣的になっちゃった、もう緊急の攻撃はないんだと、そういう考えでスクランブルをかけているんじゃないですかと言うと、まあそんなふうになっちゃっていますかねと。実際、緊急の場合にはこれはどうしようもありません。こういう問題残っていますね。これは有事立法とか研究とかなんとかという以前の問題だと思うんです。こういうものについてはどう考えるんです。
  198. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 御承知のように、自衛隊は領空侵犯措置の任務を持っているわけでございます。領空侵犯措置の任務というのは、いわゆる平時におきます任務で法律によって航空自衛隊に与えられている任務でございます。この任務を遂行するに当たりまして、現在は機関砲を持って行くわけでございますけれども、いま先生がおっしゃいましたような状況というものが皆無ではないと思いますけれども、これはやはり状況に応じて必要な措置をとるということではないかと思うわけでございます。したがいまして、過去二十数年間、日本は近隣諸国と友好関係をずっと保ってまいりました。そういう状況のもとにおいては、必要最小限のものとして機関砲を装備していったわけでございますけれども状況が緊迫したような状況になってまいりますと、これは武器というものは必要なものを持たせるということはあり得ると思います。そして、このことはもちろん長官の承認を得た上で航空総隊司令官の責任において必要な武器を持たせるということになろうかと思いますが、現在までのところは、こういう平和な状況のもとにおいては機関砲というような武器で対処するという方針を持ってまいってきているわけでございます。
  199. 黒柳明

    ○黒柳明君 おかしいんですよ。まず法制局長官、第一点は、要するに七十六条で超法規はやらないと、自衛隊の組織が動くときは。だけれども、刑法上緊急避難あるいは正当防衛のときは、いま防衛局長おっしゃったように個々にやるんだと。船の場合には個々と言わないんだと。飛行機の場合にはこれは個々とは言えるかわかりませんな、パイロットがやるんですから。船の場合には、これはある意味では時間的余裕がある。空の場合は時間的余裕がないわけですよ、一々指示仰ぐなんてことは。船の場合は、これは完全に若干余裕がある、空を考えれば。そうすると、明らかに七十六条で組織が動けないんだと、超法規は。だけれども、個々にやるんだというときに、船の問題では完全に矛盾ができてくる。陸というのは、これはもうそういう緊急有事というのはまず想定できないで、徐々にということになるんです。その点についてどうですか。  それからもう一つ局長、いま言ったように空の場合には、あくまでもいまおっしゃったのは、要するに警察権力が空にはないんだから自衛隊がそれを代行するという意味も含めてですから。だけれども、緊急緊急ということでこれだけ研究を始めたんならば、そういうものについて自衛隊法で定められているんじゃない、内規で自分たちがそうしているんですから、そういうものについてはこの際変えるということにしなければ――私は変えた方がいいと推薦しているんじゃないですよ、そういう矛盾が内在していると言うんです、二十六年間。それでいま有事だから法体制をと言ったって、もっともっと現場の方に行ってよく見ませんと、現場ではきょうがあしたでも皆さん方のあるいは指揮官の考えで変えられる、手も打てるものもあるのに、何か国民の、野党の非難を受けながら有事立法だ研究だと、これがいままでの内局の、政府・自民党の自衛隊制服栗栖さんにああいう発言をさす一つの要素になっているんじゃないですか。まあ長官の方から、いまの組織のこの矛盾ですわ、これをどう法的に解釈したらいいんですかね。
  200. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) 大変むずいしい問題なんですが、黒柳さんのおっしゃっている御質問の中に、現行法の解釈はどうだということと、それから、じゃ将来の立法としてどうしたらいいかということと二つ入っているんだろうと思うのです。私がお答えする限りのものは、これは現行法の解釈はどうだということにとどまるわけなんですが、それを前提にいたしまして、現行法上どうなるかということにつきましては、先ほど原先生の御質問に対しまして私若干お答えしたんですが、つまり、現行法は、防衛出動は七十六条で一定の手続に従って発令されるわけですが、その条文を見ますと、武力攻撃が行われた場合のみならず、その少し前段階、武力攻撃が行われるおそれがある場合にも防衛出動は下令ができる。しかもまた、手続的に言いますと、原則としては国会の承認を得てからかけなければいけない。しかし緊急、非常に急ぐ場合には、それは内閣総理大臣限りで、つまり行政府限りで防衛出動を発令して、そして事後に直ちに国会にかけなさいというふうになっておると、こういう配慮がしてあるわけであります。そういう規定を見まして、それからなお、今日のように情報化が非常に進んでいることを踏まえて考えますと、どうも現行法の読み方としては、そういう防衛出動の発令前に抜き打ちにやられるということは、それはまず想定していないんだろうというふうに解釈上出てくるわけなんです。私も従来そういうふうに理解しておりましたので、そういう奇襲攻撃で時間的なギャップがあると、それをどうしようかということは実はいままで研究したことはございません、正直に申しまして。ただ、最近栗栖発言を契機といたしまして、防衛出動発令前の時間的ギャップ、その場合に現地ではどうしたらいいんだろうかということが提起されましたので、非常に検討に値する問題提起だろうと思いますので、これは防衛庁の方でいろいろ考えてもらって、方策を一つお願いしているところなんです。ただ、現行法ではそういうことでございますので、仮に栗栖さんが指摘されましたような、そういう時間的なギャップがあった場合にはどうなるかといいますと、まず防衛出動が発令された場合に期待される自衛隊の部隊としての武力行使、これはまずできないと言わざるを得ない、現行法上は。しかし、何にもできないんじゃなくて、まあそのとき頭をひねって考えたのは、正当防衛要件に該当する場合には、それは個々のそこの隊員は過剰防衛にわたらない限度で一応の対処はできるであろうということまでは言えるわけなんです。いま飛行機の場合と軍艦――失礼しました。護衛艦の場合と例に挙げられましたが、これは護衛艦の場合にはまさしく運命共同体なものですから、だから全員がやっぱりこぞって正当防衛行為に出るんだろうと思います。ただ、余りばらばらじゃおかしいじゃないかとおっしゃいますが、その辺をもう少し考えまして、いろいろ検討を加えた上で最終的な結論は申し上げたいと思います。
  201. 黒柳明

    ○黒柳明君 何だか、先ほどから、法制局長官おかしなことを言っているよと、社会党の先生方から御指摘がありましたけれども、非常に何か苦しい答弁です。まず私は、ある意味では明快だと思うんですよ。現行法じゃそういう緊急に対しての攻撃はないんだと、そういうことを前提にしているから、だからさっき言ったようにミサイルなんか積まなくたっていいんだと、要するに警察権力だけ空で発揮していればいいんだと。そこに栗栖発言が来た。ところが、この可能性はゼロじゃないための自衛隊でもあるわけでしょう。そこに戸惑いが起こってくるわけですよ、戸惑いが。それにさらに、いま言ったように、現行法じゃそういう緊急の戦いはないんだ、だけれども頭ひねって、その場合においてはこれは刑法上の正当防衛で個々ということで逃げよう。さあ軍艦はどう――済みません、あなた軍艦と言うからぼくも軍艦と言っちゃった。護衛艦はどうなるか、これは運命共同体で個々と言えないじゃないか。こういう非常に曲がり曲がって矛盾だらけじゃないですか、局長。ですから、ひとつこの矛盾は矛盾として認めなさいよ。それをどうこれから解決するのか。私ばかな知恵だけれども、皆さん方の要望があれば――まあぼくなんかに要望ないでしょうな、長官ぐらいなものですね、要望があるのは――話し合わなきゃならない立場にもなるかわからない。いいですか、日本のためですよ、日本のため。それを矛盾であるのを何か矛盾じゃないように答弁をしながらやるから、私がさっき言うたように反対意見が出てくる。われわれだってへますれば、そんなだったら反対だという立場に立たざるを得なくなるかわかりませんよ、変な方向に行きますと。矛盾なんじゃないですか、現行法が、そういうことについては。
  202. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) いま先生が飛行機の領空侵犯のことを御指摘になりました。なぜミサイルを持たないかということは、先ほども状況の変化に応じてはそういうこともあり得るということを申し上げたわけでございますが、実はそこのところが、私はパイロットとも話をしたみたのでございますけれども、領空侵犯の措置というのは、まさにこれは平時の警察的な行動でございます。そして有事の際の作戦というのは、これはまさに防空作戦になるわけでございます。そこで、先生がいま御指摘になりましたように、確かに栗栖さんが言いましたような陸上の兵力が忽然とあらわれるとか、その次には海上で突然攻撃を受けるというような機会よりは、二十数年前にできました自衛隊法の時期から比べますと、航空機の性能というものはきわめてよくなっているわけでございます。したがいまして、その領空侵犯の時期からあるいは防空作戦に切りかえなきゃならない時期というものがきわめて短時間に行われる可能性というものが出てきてまいっておるわけでございます。そういう点につきましては、どうやって必要な行動がとれるかということは、今後研究してまいりたいと思いますけれども、いま直ちにミサイルを積んで領空侵犯措置をしなければならないという情勢だとは私どもは考えていないわけでございます。
  203. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、何も私、ミサイル積んでやれとは言わない。そこに皆さん方と制服のギャップがあると言うの。現行法ではそれを認めていない、ないという前提でやっているんですから。ところが、ないという前提じゃない自衛隊なんでしょう。有事に備える自衛隊なんでしょう。おかしいじゃないですか。また長官がおっしゃったように、現行法は、それはないんだということを前提にした現行法だろうと、そのことはもうお認めにならざるを得ないんじゃないですか。そういうことを前提にしないと、これから皆さん方の研究も何かひそかに、秘密でやらなきゃならないような研究になりますよ。オープンでオープンでと長官が言っているけれども、山梨県知事に行ったってその次の長官になったらどうするんですか。また秘密でやろうやてなことになりますよ。認めなさいよ、現行法はそういうことはないんだと、前提にしているから、だからそういう矛盾――矛盾と言えるか矛盾と言えないかわかりませんよ、それも改めて考えなきゃならない。いつでまでもそんな警察権力だけの空でいいのかと、いざというとき。だから百四十回もスクランブルかけているんじゃないですか。いつまでも警察権力のスクランブルでいいんですか。いざというときの想定しなかったら、もうしようがないじゃないですか。想定しているんでしょう。するんでしょう、これから。そのために研究するんでしょう。私はこれを推奨するわけじゃない、くどいようだけど、むしろ皆さん方研究する立場に立って現状というものを認識もっとしないとうまくないですよと、ますます制服と内局のギャップが出てくる、こういう立場ですよ、忠告しますけれども。私はミサイル持ってやれなんて言っているんじゃないですよ、ある一部誤解する人がありますけれども、そういうことじゃない。現行法はそれはないんだ。だから持つ必要ないんだ。ところが、いまはそうじゃないという意見から、そうだから研究しようというふうに変わって、現に自衛隊というものはそういう緊急も考えての自衛隊だということは周知の事実。いまだって何回もそれは確認されているんじゃないですか。それを局長だけが、いや現行法は現行法はと言う。その現行法は、いまおっしゃったように、くしくも古いもので、飛行機の性能から含めてもう変えなきゃならない段階に来ているんでしょう、現行法含めて勉強して変える段階に来ているんでしょう。そうなれば、そういう警察措置だって変える可能性も将来できてくる。というよりも、変えなきゃならないという意見がむしろ皆さん方から出なければ本当の防衛論議にならないかわからない。どうですか局長、もう時間がないからちょっと……。
  204. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 私は必ずしも先生のおっしゃるのに全面的に同意はできないわけでございます。といいますのは、警察行動というのはあくまで平時の行動でございます。したがいまして、いわゆる自衛力を行使するという部隊の行動というものは、やはり慎重にしなければならない面もあるわけでございますので、そういう点につきましては、あくまで慎重にしながら、現在の自衛隊法の中でどういうことができるか、どういうところに問題があるかというようなことは研究したいと思いますけれども、直ちに変えなきゃならないというふうには考えていないわけでございます。
  205. 黒柳明

    ○黒柳明君 官房長官済みません、お忙しいところ。二点ばかりお伺いしたいんですけれども、あしたまた外務委員会がありますから、衆参、あさってと含めまして。  けさ香港からの新聞、私そんなに気にする問題じゃないとは思いますけれども、でも、これは中江局長にもお伺いしなければならないと思うんですけれども、何か園田外務大臣と鄧副主席と話したときに、要するに再び尖閣列島付近のああいう偶発行為はしないと、それについて園田さんが、その次言おうとしたとき、待ってくれと、それを言ったら日本に帰れなくなると、こういうようなことで、あのときもはっと感じたんですけれども、向こうも大人ですから、まさか領有権を主張するなんという発言でなかろうかと思ったんですが、香港からけさの新聞で、いや、あそこではそういう発言したかったんだと、こういうことが伝えられております。二度とああいう問題がない、領有権についてのお互いのやりとりがない、そのための平和友好条約であり、園田外務大臣苦労したんですから、そういうことは決してないでしょうね。間違っても中国側から尖閣について、けさ香港から伝えられたああいう領有権を何も放棄したんじゃないんだと。こういうことは決してないということは断言できる、園田外務大臣の報告も聞き、直接は局長ですけれども、それは間違いないでしょうか。  それからもう一つ、きのう批准しました。中国と日本と体制が違いますから、向こうはすぐ批准した。それが即日本より熱意があって、日本は熱意がないとは言えませんが、それにしましても、福田総理の日程というのが、また何かエジプトから崩れてきた。私はむしろ政治日程を決める場合には、向こうに行ってまとまるかどうかわからないにせよ、これは野党だって全面的に批准に対して賛意を示しているのですから、むしろそちらの政治日程を先に組むぐらいにして、それで熱意あるところを中国に見せなければならない。それが何かほかの政治日程組んじゃって、政治日程が詰まっているからというわけで九月下旬、中旬の召集、批准と。ちょっとこれは中国の熱意からいうと日本の熱意が薄いのじゃなかろうかと、こういう感触がするんですが、その二つの点いかがでしょうか。
  206. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 尖閣列島の問題につきましては、御承知のように、わが国を代表する園田外務大臣と、中華人民共和国を代表する鄧小平副主席の間で話し合いが行われて、園田外務大臣からわが国の立場を説明したことに対して鄧小平副主席から、二度と再びああした事件は起こさないということを明確に断言されたわけでございますので、私どもはこの両国を代表する責任者の会談、そして中国の鄧小平副主席の発言のように、今後ああした事件が起こらないということについてはかたく確信をいたしております。  それから、政治日程についてのお話がございましたが、この日中友好平和条約につきましては、できるだけ早く調印した以上は批准をしなければならぬわけでありまして、最も早い機会に、臨時国会が行われればその臨時国会で承認をお願いをしたいわけでありますが、臨時国会の召集につきましては、これはいま政府検討いたしておりまする補正予算の提出を行わなければなりませんので、その補正予算のできぐあいといいますか、見通しがついた段階で、野党の皆様ともお話をいたしまして臨時国会の日取りを決め、そしてさらにこの条約につきましては、野党の皆さんの御協力も得まして、国会が召集された以上は速やかに承認していただけるように政府としてはお願いをしたいと、こういうふうに考えております。
  207. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません、最後に一言ですけれども、松原公使がソ連の外務省に一応説明した。非常にやっぱり批判的な返答が来ましたですね、外務次官から。しかも現実的政策、現実的態度で見ていくと、こういうことですが、特使も出さないと、説明すれば納得すると、福田総理大臣内容はいちゃもんつけられるものは何もないと言いましたが、向こうは向こうなりにやっぱり見解というか、公的にやっぱり日本政府に対して、具体的政策あるいは具体的行動を見たいと、こう言っているのですから、それに対して、日ソ関係を修復するという言葉が適切かどうかわかりません。具体的行動というものはもう何か考えているのでしょうか。それとも説明をして、こちらはもう何も弁解することはないんだからいいんだと、こういう姿勢なんでしょうか、その点お聞かせください。
  208. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日中平和友好条約につきましては、これはしばしば申し上げておりますように、これはもう日本と中国との関係でございまして、あくまでもこれがソ連と第三国に対するものではないということは条文そのものから明瞭でございますが、ソ連としては、いろいろの方面からこれに対する批判が出ておることは御承知のとおりであります。したがって、重大な関心を持っておるということでございますので、わが国としてもこの条約の内容、そしてその条約締結に至る経緯等につきまして詳細にソ連を初め関心を有する関係国に説明をしておく必要があるということで、条約が締結された日に早速ソ連の駐日代理大使を呼んで外務省で説明をいたしました。同時に、モスクワにおきまして松原公使からソ連の外務次官に対して説明をしたわけであります。これに対しましてソ連は、いまお話がありましたように、今後の日ソの関係については日本のこれからの示す態度によって決まるんだというふうな発言があったというふうに聞いておりますが、わが国としては、この日中友好平和条約ができたことによって日ソの友好平和と親善ということには何ら差し支えはないと、あくまでも今日の路線に従って日ソの関係をさらに緊密に友好親善を図っていきたいと、こういう立場には、これは変わりないわけでありまして、この政策は不変でありますし、こうした不変の立場に立って今後とも日ソ関係を進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  209. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、最近問題になっております奇襲攻撃、こういうことを防遏するという、そういうような立場も踏まえまして質問を申し上げようと思います。  自衛隊は、御承知のとおり自衛隊法第三条によって、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」と、このように規定をされておるわけでございますが、いわゆる領域保全に限定をした専守防衛に徹するということでございますけれども、御承知のとおり南北に千六百海里もあります長い日本列島、そして長大な海岸線を持っておる。しかもまた、人口集中度の高い都市型のそういうような日本国土でございますので、簡単に守ると言っても、言うはやすくきわめて至難なことではないかと、こういうふうに思えてなりません。防衛のためには常に相手国の意図を察知する迅速、的確な情報収集、そして有事即応の警備防衛体制の確立が私は一番大事ではないかと思います。  過般の択捉島におけるソ連の動きにしても、情報化時代の先端を行くべき自衛隊が、制服の方は演習だと言い、あるいはまた内局は基地設定ではないだろうかと言う、こういうようなまことに遺憾な状態でございました。先ほど申し上げました、いま問題になっている奇襲時の超法規的行動についても、奇襲を防遏する対策を立てることが領域保全、専守防衛に徹して国土と国民の生命、財産を守るためにも急迫不正の侵略の意図の事前の探知がきわめて必要であります。その対策を立てることが、国民の厳粛な信託を受けている国政の推進者である政府が当然なさなければならない重大な責任であると、このように思うわけでございますが、自衛隊の情報収集は一体どのようになっているのか、そして、択捉島のこのような問題はどのようなことが欠陥でこういう事態が露呈したのか、また、どのようにすれば完璧な体制ができると考えていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
  210. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 詳細につきましては政府委員から答弁するということにいたしますが、情報収集ということは専守防衛をする上においては最大の私は点だろうと考えております。そういう意味で、択捉島の問題にいたしましても、また栗栖君の超法規行動というような問題も、情報があれば奇襲というような問題も探知できますし、奇襲でなくなるということにも相なるわけでありますから、そういう面について一番最大の私はウエートを置いて、英知をしぼってこれに思いをいたさなければいけないというような考え方で、いわゆる防衛に対する国民の負託にこたえるにはそのような方法でやらなくちゃいけないという考え方を持っておるわけであります。  また、択捉島の問題や情報収集等の問題につきましては政府委員から御報告をいたします。
  211. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) ただいま先生が申されました、日本の防衛というものについて一番重要なのが情報の収集ではないか、まさにそのとおりだと私どもも考えておるわけでございます。  情報の収集の仕方としてはいろいろな方法があるわけでございますけれども、私どもは、まず第一に、公刊されておりますいろいろな資料から、それぞれの国の軍事体制、あるいは軍事技術の動向、あるいは軍事思想、そういったものを把握する努力をいたしているわけでございます。この努力というものはきわめてじみちな努力でございますが、長年の積み上げによって、それぞれの国の考え方なり、あるいは防衛体制というものはある程度把握できるわけでございます。それから同時に、いまのこの時代におきましては、一国だけの情報では必ずしも十分でない点は当然あるわけでございまして、この点につきましては、同盟国でありますアメリカとも常時情報の交換は行っておりますと同時に、日本の友好国との間にもそれぞれ情報を持ち合って交換しているというような状況でございます。  さらにもう一つ大事なことは、実際に日本の周辺の軍事力の動きがどうなっているかという点でございます。この点につきましては、主として私どもは通信情報等によりまして、それぞれの軍の動きというようなものを把握する努力をいたしているわけでございます。さらには、艦艇、航空機等によりまして、かなり広い範囲におきます軍隊の動きというようなものを把握する努力をいたしているわけでございます。  先般の択捉島の問題につきましてただいま御指摘がございましたが、この動きにつきましては、私どものレーダー網あるいは通信情報その他によりまして、航空機、艦艇が五月の二十日ごろから択捉島に移動していっているというような状況は確実につかんでいるわけでございます。しかし、その意図がどこにあったのかということはなかなかむずかしい問題でございまして、私どもの判断といたしましては、可能性といたしまして、演習をやるために移動していったというようなことも考えられますし、もともと択捉島には二個飛行隊がおります。これは要撃飛行隊でございます。そういった飛行隊が、あるいは強化されたのか、あるいは後退したのか。それから、最近特に極東におきますソ連軍の基地というものは強化されている状況でございます。その一環として択捉島にある基地も強化されているのかもしれないというようなことも可能性として考えていたわけでございます。その後注目いたしているわけでございますが、本来ならば日本の領土であるわけでございますから、そういうことを確認するために、たとえば対潜哨戒機を飛ばしてその実態を確認するという方法もあるわけでございますけれども、あそこは現実に施政権が及んでいないということで、なるべく国際紛争が起きないような配慮をいたしているわけで、そういう最も端的な確実なやり方というものは行っていないというのが実態でございます。しかしながら、私どもが得ている情報というものがそれほど劣っているかということになりますと、たとえば、この間大臣のお供をしてアメリカに参りましたときに情報の把握の状態を聞きました際にも、やはり最後の決め手というか、確認する方法はアメリカにもないというようなことでございます。しかしながら、私どもはこれで満足しているわけではございませんで、今後ともいろんな手段によりまして、周辺諸国の軍事力の動きその他につきましては、的確に把握していきたいというふうに考えているわけでございます。
  212. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 それで、問題になっている奇襲防遏のためにも、大体危険性のあるようなところには人工衛星ですね、これを常時監視の手段に使うという、そういう考え方はお持ちでございませんか、長官
  213. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 人工衛星による警戒ということでございますが、これは御承知のように現在までに打ち上げられました二千二百個の人工衛星、現在そのうちの約九百八十個が生きていると言われております。そのうちの半数がいわゆる軍事衛星といいますか、偵察衛星といいますか、そういったものであるということは承知いたしております。アメリカとソ連におきましては、一九五〇年代からそういった人工衛星を上げているわけでございますが、この人工衛星というものも、ある一点に静止してじっとある場所を見るというようなものではなくて、やはり宇宙を回りながら必要な情報をとっているという状況でございます。私どもといたしまして、そういう機能がきわめてすぐれておって、早くいわゆる侵略してくると思われる軍事力の動向というものが発見できるということであれば、まあきわめて有効であろうと思いますけれども、いわゆる警戒衛星といいますか、その能力そのものについてもまだ完全に理解しているわけではございません。ただ、今後の問題として研究はしてみたいと思いますけれども、いま私どもがその警戒衛星を持ちたいというような構想は持っていないわけでございます。
  214. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 やはり一億一千万の国民の生命、財産を守るという、そして専守防衛に徹するということになりますと、情報収集が一番大事だということになると、そういう面も今後は相当ウエートを置いて研究開発をしていかなければならない問題だと思います。  それで、次は警戒防御体制の確立という問題で申し上げますが、最近、PGMという精密誘導兵器でございますが、これは非常に防御側にとって有利であると、暴露された攻撃側の姿勢をとらえて攻撃ができるという、そういうような防御側に非常に有利であると言われておりますが、専守防衛に徹するわが国の自衛隊にとっては防御作戦が非常に有利に展開するんじゃないか、こういうようなことを感ずるわけでございますが、これについての御意見はどのようにお考えでしょうか。
  215. 番匠敦彦

    説明員(番匠敦彦君) お答えいたします。  ただいま先生がおっしゃいましたPGMでございますが、PGMと申しますのは五十年ごろから盛んに言われて、精密誘導兵器と言っておりますけれども、まあはっきりした定義が確立しているわけではございませんけれども、簡単に申し上げますと、ミサイルとか誘導爆弾とか、そういうもののように、従来の砲弾やなんかに比べまして精密誘導技術を利用いたしまして命中精度を飛躍的に向上したような兵器というふうに言えると思いますが、その中で、いわゆる誘導武器といいますか、そういうものにつきましては、わが国におきましても非常に力を注いでおりまして、すでに各種のミサイル、たとえば改良ホークの装備等も進めておりますし、研究開発の面におきましても、現在は誘導武器が一つ重点項目となっております。たとえば短距離の地対空誘導弾とか、対艦船誘導弾等の研究開発も進めておりまして、わが国の国情に適したようなこういうような兵器については今後とも力を入れていきたいと、そういうふうに考えておるところでございます。
  216. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 やはり早く情報をキャッチして、そして準備をしっかりやって、そういうような精巧な兵器で急迫不正な侵略を防遏をするという、そういう体制が限定された領域保全の専守防衛には必要ではないか、こういうように思うわけでございます。  それで、領域保全の専守防衛ということになりますと、私たちの感覚からいきますと、あの終戦当時の本土決戦と、こういうようなことになるわけで、本土に上げて、そして迎え撃つということになるわけでございますから、こういうような狭隘な国土の中でございますと、もう少し専守防衛ということに徹した部隊の編成とか、あるいは兵器の装備とか、そういうことを考え直して、本当にそういう領域保全の能力をぐっと上げた、他国に脅威を与えるんじゃなくして、領域保全の能力をぐっと上げる、そういう自衛隊に、国土警備隊と言ってもいいようなそういう力を持たせることが大事じゃないかと、こういうように思いますが、それで、いまの陸上自衛隊の師団をもう少し動きやすいような旅団編成とか、そういうようなことにして、もう少しきめ細かな配置をされることが大事じゃないかと思いますが、そこらあたりはどう考えていらっしゃいますか。
  217. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 確かに、先生がおっしゃいますように専守防衛の立場というのは、一つの弱点といたしましては、いつ攻撃を受けるかわからないから常に有事即応の体制をとっていなければならないという問題がございます。しかもその有事即応体制を有効に機能させるためには、情報活動を盛んにいたしまして的確な情報をとらなければならない、この二つの大きな要件があるわけでございます。同時にまた、その即応体制のために必要な編成なり配備、そういうものが当然考えられるわけでございまして、防衛計画の大綱でお決めいただきました防衛力の規模を最も有効に機能させるために私どもは考えているわけでございます。  現在の師団についてのお話がございましたが、まさにそういった点も考慮いたしまして、私どもはいま師団の改編というものを勉強いたしているわけでございます。で、御承知のように陸上自衛隊が発足いたしましたときには現在の師団の編成ではなかったわけでございます。これは管区隊という編成をとっておりまして、それぞれの管区隊が一個管区隊約一万二千おりました。この一万二千では、現在のような、日本のような国土の地形から申しましてきわめて移動が鈍重になってまいるわけでございます。したがいまして、これを早く移動させるためには、七千師団あるいは九千師団という機動性を持った師団の編成がよいのではないかというようなことで、昭和三十五年に現在の師団の編成をとったわけでございます。で、それからすでに二十年近くたっているわけでございますが、防衛計画の大綱を御決定いただきました機会に、さらにこの師団の編成というものをもっと機動性を持たせ、それぞれ装備品そのものも自走化するなどの対策を講じまして、機動性を持たせた編成にしたいというようなことで研究を進めている状況でございます。
  218. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、日中条約の締結に関して、極東軍事情勢の変化というようなこと等で、たしか二月の二十七日に防衛庁の方でまとめられておったようでございますが、それによりますと、大した変化はないけれども、将来ソ連の極東海軍の長期的な増強は見込まれるであろうと、台湾のことは余り心配はないと、こういうような情勢分析のようでございましたが、いま日中条約が締結をされて、台湾の新聞等を見ますと相当に反発をしておるようでございますが、そこで長官もあのような発言があったかもしれませんけれども、やはり台湾というところは、わが国の資源エネルギーの西南航路に当たる重要なところでございますので、そういう台湾の情勢等の変化が、実際締結をした現在確かにあると思うんですが、それをどのように把握をしていらっしゃるかお答え願いたいと思います。
  219. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 日中条約締結後の極東の軍事情勢防衛庁としてまとめたという、そのまとめた文書というものは私どもは持っていないわけでございますけれども、御承知のように、私どもの自衛隊にはそれぞれ情報を担当する部門がございます。それぞれの立場において日中平和友好条約が締結されたというような一つの外交的な事象をとらえまして、それが極東の軍事情勢にどういう影響を与えるかということはそれぞれの分野で勉強いたしておりまして、そして意見を交換しておるわけでございます。しかしながら、基本的な考え方といたしましては、いわゆる三極構造というものが極東にはあるわけでございまして、米中ソのいわゆる三極構造がございます。そして、お互いに牽制し合い、お互いに協力し合っているというようなことがあるわけでございます。一方、アメリカの軍事力のプレゼンスというものが、第七艦隊を中心といたしまして、沖繩にもあるいは韓国にも駐留いたしているわけでございます。そういったいわゆるアメリカ車のプレゼンスというものも、このいわゆる三極構造の中の一つの大きな柱になっているわけでございまして、そういう情勢の中で極東の軍事情勢が大きく変化するというふうには私どもは考えていないわけでございます。  で、先ほど来先生もおっしゃっておられますように、日本の安全にとって一番大事なことというのは、やはり日本の周辺の諸国と友好関係を維持するということが大事でございますので、そういった友好関係を維持しながら、もちろんこの極東の軍事情勢の推移は見守っていかなければならないと思いますけれども、現時点におきまして大きな情勢の変化があるというふうには考えていないわけでございます。
  220. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 長官にお尋ねをしますが、いま防衛庁の有事立法研究ということが相当論議をされておるわけでございますが、そのような有事防衛研究ということではなくて、有事の事態を起こさせないため、エネルギーや食糧面などを備える、そういうことを主体にした外交、経済、文化等の総合的かつ長期的な幅広い視点に立った安全保障政策を研究するための安全保障特別委員会を設置して、ここで徹底的に私は国の防衛の論議をすべきだと思いますが、これについての長官の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  221. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) この問題につきましては、かねてから私も大きな関心を持っておるわけでありまして、野党は合意をしていただける、法案は審議しない特別委員会だというようなことで。私は、法案を審議するとかしないとか、それは別だと、つくることに意義がある。たとえば、ただいま先生の提案のような問題を十分にそこで各党が、いわゆる討論形式でも結構ですから話し合うというような場をつくることが、国民がいわゆる防衛という問題あるいは安全保障という問題について十二分に理解していただけると、そういうものの積み重ねなくして私は防衛というものはあり得ないという考え方を持っておるわけでありますが、これがまだまとまらないということはまことに残念至極ですが、私も政治家として、微力でありますが、この特別委員会の設立につきましては今後とも最大の努力をいたしたいと、こう考えております。
  222. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 最後に、航空自衛隊のF104の事故のことで聞いて質問を終わりたいと思います。  昭和三十六年に自衛隊にF104機が配備をされて以来、去る四月十日、宮崎の新田原基地所属の104ジェット戦闘機が空中訓練中墜落したことで大体三十四件目になるようであります。特に宮崎の新田原はことしの事故で四件目でございます。特に昨年の十二月二十日の事故は、原因究明もなされておらず、遺体も収容ができていないと聞いているわけでありますが、今回の事故も、昨年の事故からまだ半年もしないうちにまた事故を起こしたと、こういうことで、緊急連絡も発しておらず、パラシュートの脱出もしていないことから、きわめて不測の事態が起こったのだろうと思いますが、たしか聞くところによりますと、空幕で調査団を派遣したようでございますが、原因の究明はどのようになっているんでしょうか。
  223. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 本年の四月十日、新田原基地所在の第五航空団のF104J一機が、いわゆる九州東北のL空域というところで戦闘機訓練を実施中墜落しまして、パイロット一人が死亡したという事故がございました。まことに残念でございますが、パイロットが死亡した上に、機体そのものも海に沈んでおります。そういった関係上、具体的な原因解明ができかねるというのが現状でございます。  なお、昨年の十二月の事故についても同様でございます。
  224. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 特に新田原は、この104の事故の三十四件のうちの十一件と非常に多いわけですが、原因は何でしょうか。
  225. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 特に新田原の基地の事故がどうこうということではございませんが、全般的に、先ほど御指摘がありましたように、F104Jは昭和三十七年にフライトを開始して以来三十四件、三十六機の事故を起こしております。このうち、事故原因について申し上げますと、操縦上の過誤によるものが十二件と圧倒的に多うございまして、その次に機材あるいは整備の過誤というものが七件、二件というふうに続いております。
  226. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私がいただいた資料をいろいろ検討してみますと、消息を絶ったという、そういう事故が毎年大体一件ずつ起こっておるようでございますが、これは機材の欠陥によって緊急連絡もできないでそのまま突っ込んでしまったのか、緊急脱出がどうしてできなかったのか、そこらあたりの調査の結果はどうなんですか。
  227. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 先ほど三十四件事故があったというふうに申し上げましたが、このうち死亡事故が二十人でございまして、このうちパイロットの遺体が収容できないものが七件、それから緊急脱出をしているものが十八件、緊急脱出していないものが十六件というふうなことになっております。この緊急脱出できなかった原因が何かということは、緊急情報連絡というものもなかったものではっきりしたことはわかりませんけれども、あるいはパイロットが機材のふぐあい等を見つけて、それの回復措置に手間取ったということから緊急脱出の機会を失なったというようなことがまず一つ考えられると思います。それから第二点には、機材の欠陥あるいは空中爆発、火災等によって、パイロット自体が緊急脱出するいとまなく死亡もしくはけがをしたというふうなことから脱出できなかったのではないかというふうに思われますが、何分にも、いま申し上げたような状況から詳しい事情がはっきりいたしませんので、申しわけないことですが、原因がどこにあるかということがなかなかわからないのが実情でございます。
  228. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 F4の方は余り事故が起こっていないようですが、104の方は、たとえば翼の面積が狭くて、そして失速のそういう機会が非常に多いというような、そういうような欠陥はないものか。それから空幕が調査団を出した、その調査の結果の報告はどうなっていますか。
  229. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 確かに104Jは、ファントムに比べて事故が先ほど来申し上げますように三十四件というふうに若干多うございますが、この104Jの事故自体も、決して私いばって申し上げるわけではございませんけれども、米軍あるいは西ドイツの事故率と比べて相当低い事故率にとどまっておるということで、私どもこの104Jに特に欠陥があるというふうには認識しておりません。  それから、先ほどの事故調査調査団の報告でございますが、それは航空幕僚長を通じて提出されております。
  230. 山中郁子

    ○山中郁子君 有事立法研究についてお尋ねをいたします。  初めに、先ほど黒柳委員質問に対しまして、防衛庁はこういう内容だということで、八項目だと思いましたけれども挙げられましたが、それの二、三の点についてお尋ねをいたします。  一つは、有事の場合米軍が協力してくれるので、その場合の法整備ということを言われましたが、これは具体的に、たとえば自衛隊法百三条での物資の収用とか従事命令、これはまた後ほど少し詳しく伺いますけれども、こういうことに、自衛隊だけのためでなく米軍のためのものも含むと、こういう内容をもって整備が必要だとされているのかどうか。
  231. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 先ほど八つほどの項目を挙げまして、いま作業に取りかかっておりますのが、一番初めに申し上げました自衛隊の活動の除外例ということで、交通関係からやっております。最後の、米軍が恐らく安保条約五条によってわが国を守るために支援に来るといった場合に、米軍の活動、協力を得るために、向こうの軍隊が国内に動くわけですけれども、そういった場合にいまの国内法で十分にできるのかどうか、そういう点はまだ十分詰めておりませんけれども、そういう問題があるんではないかという問題意識を持って項目を挙げております。これからもう少し勉強さしていただきたいと思っております。
  232. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、自衛隊法百三条の物資の収用とか従事命令、それもその中に入っているということですか。
  233. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) この物資の収用その他、後で政令で定めることになっておりますですね、百三条。この百三条について、米軍との関係で何があるかということはまだ十分詰めておりません。あくまでも百三条は、私どもの方は、国内で働く自衛隊の活動の関係で取り組んでおりますので、ちょっと米軍との関連はいま思いついておりませんし、勉強の対象にはしておりません。今後の勉強の結果、私、要るのか要らないのか、ちょっといまお話できるほどの勉強進んでおりませんので確答はちょっとしにくいと思います。
  234. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、全く関係がないというふうにいまの段階で明言されていないということだと思いますが、二つ目の問題で、有事の場合の防衛会計の手続の簡素化という趣旨のことを述べられましたけれども、これは前に、私たしか防衛庁の関係者の方からレクを受けましたときに、予備費をつくっておいて、有事の際それを使えば可能だという説明をされておりました。予備費をつくっておいて、有事の際にはそれを使うということで可能であると、予算面の問題ですね、そのように言われておりました。で、先ほどの有事の場合の防衛会計手続の簡素化ということはそういう範囲のものであるのか。たとえば有事のにおいがしてきたということで予備費を少したくさんとっておくと、それによって可能であると、こういう趣旨の中に入るのかどうか。それとも別な手続の簡素化を考えておられるのかどうか、伺います。
  235. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 申しわけございません。まだそこまでの具体的な内容まではいっておりません。恐らく大蔵大臣とも協議しなきゃならぬような事項その他ありますが、そういった面の手続の簡素化を考えるということで考えておりますので、予備費でもうぱっとやると、これは非常に簡素化できるじゃないかというようなことも言われましたけれども、そういう点はもうしばらく勉強さしていただきたいと思います。
  236. 山中郁子

    ○山中郁子君 いままでおっしゃっていた予備費の中でということでできるということだけではなくて、それを超える範囲での手続の簡素化も考えるんだと、こういう御趣旨だと承りましたが、それでよろしゅうございますか。
  237. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 要するに、事務の簡素化がどこまでできるかという勉強でございますので、それがどの範囲かどうかというのは、ちょっともうしばらく勉強さしていただかなければ確答できません。
  238. 山中郁子

    ○山中郁子君 三点目ですけれども、行政官庁とか国民の協力体制のための法整備ということを言われておりました。これは、たとえばどんなことを想定されて、それを想定された根拠というのはどういうことがあるのかということをひとつ承りたいと思います。このように八項目の中として出されていますが、いままで二つの点についても、いや、これから勉強します、勉強しますとおっしゃっているけれども、これは防衛庁のいままでの有事立法の問題についての答弁の一番大きな問題点だと思いまして、そんなはずはないんであって、それはいろいろなことがもうすでにでき上がっているものが多く出ているわけだから、それはいままでの皆さん方の答弁の中、あるいは国会答弁だけでなくて、いろいろなところでおっしゃっているわけですから、少なくともこの三点目については具体的なケースですね、それを想定されて中身として整理されていらっしゃるはずですので、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  239. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) たとえば、いまの災害対策基本法なり災害救助法なんかで、災害関係なんかで情報を提供してもらうというような規定なんかもございますけれども、たとえば一般民間方々防衛関係でいろんな情報をつかんだ場合に自衛隊に知らしてもらえるとか、そういう協力もあるでしょうし、あるいは一般の部外の通信施設なんかを利用さしてもらうようなこともあるかもしれません。これも、何もいままで相当勉強しておると思われては困るんでございまして、先ほど申し上げたように交通関係の方から進めておりまして、こちらの方までまだ十分手が回っておりませんので確答はできませんけれども、そういう大まかながら八つほど選んだのは、いま言ったような関係もあるんじゃなかろうかということで選んでみたわけでございます。
  240. 山中郁子

    ○山中郁子君 前回の内閣委員会で、私の質問に対しましても、また、たしか野田委員質問に対しましても、防衛庁長官並びに防衛当局は、現在の有事立法研究はかつての三矢研究というようなものではないんだという趣旨のことを言われました。私はもう一つはっきりさせていただきたいんですけれども、三矢研究当時問題になりましたのは、何もそれが手続上の問題だけではなくて、内容的な問題も含めて、むしろそれが本質的な問題として問題になりました。具体的には百項目を超える項目が出ておりまして、法律関係だけでも八十七項目と言われておりますが、その項目自体、一切現有事立法研究はすべて入ってないんだと、こういうことは明言できるんですか。
  241. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 三矢研究のときにいろんな緊急法制といいますか、いろんな法律をたくさん並べて、こういうものも要るんじゃなかろうかという話もあったように聞いております。その中には戒厳令とか何かあったように聞いておりますけれども、あのときの資料はいま防衛庁持っておりませんけれども、そういったところの記憶も残っておりますので、そういうときに勉強したようなものが、法制上こういう問題があるんじゃないかという、先ほどの各幕から上げてきたような中にはそういうものも考えながら入れてきたものもあろうと思いますけれども、三矢研究で挙げられましたやつと直接関係があるとは直ちに結びつかないと思います。参考にはしておるかもしれません。
  242. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうすると、当然のことながら三矢研究を参考にもするし、具体的な項目も内容的には含まれているんだということだと思います。ですから、あなた方が三矢研究とは関係ないんだというふうにおっしゃって、違うものだとおっしゃるけれども、事実上の問題は中身はそういうものも含めた大変危険な問題の多い研究をされているということを私どもは強調してきたわけですけれども、その点が一つ問題点です。  それで、先ほど米軍との関係でもお伺いいたしましたが、自衛隊法百三条の問題につきまして具体的に伺いたいと思います、有事立法研究ということとも関連して。  それで、第一項で、緊急の場合、長官または政令で定める者は、病院、診療所を管理したり「土地、家屋、若しくは物資を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ、又はこれらの物資を収用することができる。」と規定しているわけです。これを拒否した場合はどうなるんですか、拒否された場合。百三条でそういうものが発動されたと、しかし出す人が、収用するということは出す人がいるわけですから、拒否した場合どうなさるんですか、そしてそういうことも今回の有事立法の整備の対象として何らかのことを考えていらっしゃる、検討対象にされているのかどうか。
  243. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) その前に、三矢研究の成果をそのまま利用するという意味じゃございません。三矢研究のとき法制勉強なんかやったようでございますから、そういうときの記録をもってあるいは上げてくるものにあるかもしれません。しかし、当時私が聞いておった中では、三矢研究の中にはいまの憲法を超えるようなものもあるいは考えておったというようなことも聞いておりますから、そういうようなことはあってはならないということは厳重に申しておりますから、そういうものが入ってくるとは思いません。  それから、いまの百三条、これは当時私は非常に苦心してつくられたと思うんですよ。御承知のとおり、これは災害救助法の物資収用の規定をそのまま生かしてきておるわけです。災害救助法には罰則があるわけです。これは罰則を置いておりません。だから、それは恐らく有事、いわゆる国内で戦争が起こるわけですけれども、国民は非常に悲惨な目――われわれも一生懸命になって戦うわけですけれども、そういった場合に、さらになお国民に強制してまでやらなきゃならぬのかと、恐らく国民の多くは協力してくれるであろうというような期待も込めてやっておったんじゃないかと思います。少なくも現行法制では罰則がございませんから、強制的な罰則を担保ということはあり得ないと、そのように思っております。
  244. 山中郁子

    ○山中郁子君 私が申し上げていますのは、それがだから現在いろいろな不整備があると、不十分さがあるから研究をしているんだとおっしゃるから、具体的にここの罰則がないというところについては拒否をされたらどうするかということについて御研究の対象になっているんですかとお尋ねしています。
  245. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) これは、私の方も果たして罰則まで必要かどうかということにつきましてはもう少し勉強してみたいと思います。少なくともこのできたときには罰則がなかったわけです。その当時の制定の趣旨というのはわれわれ十分考えなければいけませんけれども、罰則をつけるべきかどうかということも改めて勉強してみたいと思います。
  246. 山中郁子

    ○山中郁子君 同じ百三条二項ですけれども、これも従事命令ですね。これもやはり罰則がない、拒否された場合にはどうかということも研究対象に当然なっているということでございますか。
  247. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 先ほどの一項の場合と同じです。
  248. 山中郁子

    ○山中郁子君 先ほど、百三条のいまの問題につきまして、政令が決められていないということがございましたけれども、これは一つは業務に従事する者の範囲。これは「国防」という雑誌のことしの五月号ですけれども、当時の保安庁法規班長であった宮崎さんという方が論文を書いていらっしゃる。これは昨日の衆議院内閣委員会でも、別なところでこの同じ方の書いた別な問題について松本議員が質問され、その書かれた内容についてお認めになっておりましたけれども、この中で、昭和二十九年四月、保安庁第一幕僚監部は自衛隊法案に関連して、自衛隊法に基づく政令案要綱を保安庁長官に提出したということで、この業務に従事する者の範囲として十二項目の業種を挙げておられます。「医師、歯科医師、薬剤師、診療X線技師」「看護婦、保健婦」「土木技術者、建築技術者、建設機械技術者」「大工、左官、とび職」「土木業者、建築業者」「地方鉄道業者」――みんなこれに「従事者」が入っておりますけれども、「軌道経営者およびその従事者」「自動車運送業者およびその従事者」「船舶運送業者およびその従事者」「航空運送業者、航空機使用事業者およびその従事者」「港湾運送業者およびその従事者」「馬車、牛車をもって運送に従事する者」、こういう十二項目を挙げておりますけれども、これが当時一つの案になっていたことは事実ですね、政令の中身として。
  249. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) これも実は残っていないんですけれども、私はこれを読みまして、あるいはそういうこともあったんじゃなかろうかと思います。
  250. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、こうしたものをいま、宮崎さんが当時そういうことで正規の案としてつくられたものを含めて、さらにこれを拡大するということも含めて研究をされていらっしゃるというように理解をしてよろしいですか、第百三条の政令の問題として。
  251. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) この業務従事命令の規定も非常に苦心してつくったものだと思うんです。戦前の一般徴用と違うんですね。それぞれの業務、ここで申し上げますと、御承知だと思いますけれども、医療、土木建築工事または輸送、そして、しかもその輸送業務に従事する者、そういう同じ業種の業務に業務従事命令を出すという形でございますが、その範囲を政令で定めることになっておりまして、いまのようなそういう業種につきましての細かい枠が一つの案として出たんだろうと思います。これは今後の勉強にまちたいと思います。それ以上ふやすことが必要なのか、あるいはそんなに要るのかどうかというようなことも今後の勉強にまってみたいと思います。それは一つの案で、当時はそれでは広過ぎるという意見も相当強かったようでございますから、そういうことも聞いて勉強したいと思います。
  252. 山中郁子

    ○山中郁子君 同じ宮崎さんの論文の中に、百三条二項で収用できる物資についても八項目を挙げておられるんです。「食糧、加工糧食品、飲料」「自衛隊の用に適する被服」「自衛隊の用に適する医療品、医療機械器具その他の衛生用資材」「自衛隊の用に適する通信用器材、資材」「装備品等の修理、整備に必要な器材、資材」「土木建築用器材、資材、照明用器材、資材」「燃料、電力」「船舶、車両、航空機、その他輸送用器材、資材」、たくさんあるんですね、大事なことが。こういうことも、これも事実ですね。
  253. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 当時そういう案も出たんだろうと思います。そういうことにとらわれないで、われわれはわれわれの立場で十分勉強してみたいと思います。
  254. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一つ確かめておきたいと思います。管理することのできる施設です。その中には「隊員の戦傷病者を収容する病院、診療所のほか、戦傷病者を収容するための「旅館」、「装備品等の修理、整備設備を有する工場または事業所」」、そうしたことが挙げられて、そのほかにまだたくさん挙げられておりますけれども、これも正規の案として検討されたということは事実ですか。
  255. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) これは宮崎さんのそれを読んで、私も当時そういうことがあったのかと類推しておるだけなんです、証明する資料何もございませんから。恐らく、それを読んでみましたら、宮崎さんも当時陸幕の法規をやっておられた方だろうからそういうことがあったろうと思います。それについて、その宮崎さんのやつを読みますと、そういう案も出たけれども内局の方では非常にこれはまたシビアに解釈したというようなことも書いてありますですね。そういう点も含めまして、政令の検討につきましてはそれも参考にしたいと思います。
  256. 山中郁子

    ○山中郁子君 結局、こういうことからもはっきりしますように、これは正規にそういうふうにして検討された案なんですからね。あなた方はいま百三条も含めて、自衛隊法を含めて防衛二法の整備のための研究、それから、そのほかの省庁にかかわる法律の研究、そういうことをおっしゃっているわけでしょう。そうしたらこういうことを全部やはり研究対象としては考えていらっしゃる、これをもっとふやさなきゃならないかもしれない、ということは、つまり旅館じゃとどまらないわけですよ。一般民家までそれは自衛隊の用に供さなきゃならなくなるかもしれない。戦争中そうでしたね、兵隊さんが泊まると、普通のうちにですね、私もよく知っておりますけれども。そういうようにまさに戦時下のかつての国家総動員体制、そうしたものとつながる内容でもってあなた方はもうすでに昭和二十九年にその政令を考えていらしたわけ。そして、いまやまたそうしたものを土台にしながらそのことについての研究対象として検討しておりますと、こういうような対象にされていると、これは間違いのないところですね。
  257. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 当然これは、現在自衛隊法というものがございまして、それで政令で決めるようになっておるわけですから、当然この政令の内容をわれわれは今回の防衛二法の見直しにつきまして勉強していかなけりゃならぬと思います。この場合非常にわれわれが注意しなきゃならぬのは、この百三条を決められるときもそういう苦心がございましたが、やはり現在の憲法、前の憲法と違いまして非常に基本的人権というものを重視しておりますから、この国民の基本的人権と軍事必要性のバランス、これをどう考えるかということが最も大事なことでございますので、そういう観点からも今後われわれは十分に勉強していきたいと思っております。
  258. 山中郁子

    ○山中郁子君 自衛隊法百三条以外の問題についてお尋ねいたしますけれども、地震立法のときにもいろいろ議論になったところですけれども、歩行者または車両の通行禁止だとか制限、立ち入り禁止地域設定、退去などの措置を自衛隊がとれるというようなことも研究課題になっておりますか。
  259. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) こういうものは、私は日本の警察の協力でほとんどできるんじゃなかろうかと思いますけれども、ただし、戦場なんかでの避難誘導、危いというような場合に自衛官がどの程度できるかということは、あるいは研究しなきゃならぬかと思いますけれども、原則的には警察がやるべきだと思っております。
  260. 山中郁子

    ○山中郁子君 研究対象にはなっていると、それがどうなるかということは別としてですね、そのように理解してよろしいですか。
  261. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 国民の避難誘導ということもわれわれの研究対象になっておりますし、自衛隊の活動を円滑ならしめるためということも一つ研究対象でございますから、そういう点から含めて勉強していきたいと思いますが、いまのところわれわれの第一次的な感触は、この道路交通関係は警察という機関が表に出てやってもらわなけりゃならぬ、このように思っております。
  262. 山中郁子

    ○山中郁子君 八月一日から始めたとおっしゃっている防衛研究ですね、つまり作戦研究ですか、そうしたものとも関連するのですけれども、部隊の作戦遂行のために部隊の移動、たとえば有事の場合、農道が狭くて通れないという場合にたんぼや畑を通っていくとか、それから、その際家屋などの撤去もあり得ると、こういうときの撤去をしなければ有事に際して部隊が通れないというようなことも出てくるとすれば、そういうことも含めて、つまり対処方法、検討対象となるのかどうか。
  263. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) これは当然自衛隊の活動の問題でございますから研究対象になろうと思います。もちろんその場合、いわゆる本当の戦場の場合とか、あるいはその後方の地域とか、あるいはもっと離れた地域とか、そういった点においていろいろの差があろうと思いますけれども、いずれにしましても研究の対象でございます。
  264. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしたらもう一つお伺いをいたします。  いまの問題で、部隊の移動、配置などについては、軍事的には秘密を保持しなきゃならない内容かなり多いと、これはまあある意味一般論として。それから、先ほどの通行の問題ですね、これは大体警察でというふうに考えていらっしゃるようですけれども、実際問題としてはそういうことも研究の対象になるとおっしゃっておられる。そうすると、結局そういうことを考えていけば、たとえば言論、報道の自由の問題について何らかの制限、規制を考えざるを得なくなるんではないですか、憲法に抵触しないとおっしゃっているけれども
  265. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 先ほども申し上げましたとおり、有事を考えます法制の場合には、国民の基本的人権と、それからその軍事効用のためとのバランス、これが非常に大事だと思っていますが、しかし、いずれにしましても国民の命が危険になるという最も最大の基本的人権が脅かされる事態なんですね。そういう意味で、恐らく国民の多くも自分たちの命を守るためのある程度の規制、制約ということは甘受されるであろうと、このように思います。いたずらにわれわれが国民の生活の権利を無性に、無理やりに奪うとか、そういう気持ちは毛頭ないわけでございまして、何といいましても国民の命が脅かされる、最大の基本的人権である命が脅かされる事態でございますから、そういうことも考えながら、しかも国民の平素からの、いま言われましたが、表現ですか、表現の自由とか……
  266. 山中郁子

    ○山中郁子君 報道、言論、表現。
  267. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) こういうものは、私は恐らく国民の多くの方々の協力があるだろうと思うんですよ。だから、それを果たして強制的にまでやらなきゃならぬかどうかというようなことにつきましては、十分まだ勉強していくべきだと思います。われわれの勉強の一つの基本点は、国民の多くが当然そういう場合協力があるであろう、自発的な協力があるであろうというようなことを前提にしながら考えておるわけです。
  268. 山中郁子

    ○山中郁子君 官房長、あなた大変重大なことをおっしゃっている。つまり、言論、表現、報道の自由についても規制するということが必要であるかどうかについては検討し、勉強するけれども、多分そういうふうにならないまでも、国民の合意が得られるだろうと、こうおっしゃるけれども、それにしてもそういうことも研究しますと、こうおっしゃっているわけね。憲法の範囲の中でと、いままで繰り返しおっしゃっていたことは結局違うじゃないですか。憲法一つの大きな柱です。人間の命と同じだけの柱です。表現、報道、言論の自由、それが規制の対象にしなきゃならないかどうか、やっぱり研究なさるんですか。
  269. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 私少し言葉が間違ったかもしれません。間違っておったら訂正いたします。やはり言論とか思想とか、良心とか、こういうものは基本的人権の自由でございますから、こういうものを制約するということは考えられないと思っております。あくまでも憲法の基本的な枠組み、憲法秩序の範囲内で考えることが今回のわれわれの研究の使命でございますから。
  270. 山中郁子

    ○山中郁子君 口先だけでそういう約束をしていただくことが私の主な目的じゃないんです。本質を明らかにしたいんです。だから先ほど申し上げましたでしょう。あなた方は交通の規制だとか、それから部隊の移動の場合に、たんぼや畑も突き抜けることもあったりなんかいろいろすると、そういうような部隊の移動や配置についての秘密も保持しなきゃならない部分があるでしょうと。そうすると、こうしたものを研究対象にして進められている有事立法というのは、必然的に言論、報道、表現の自由にもかかわって、それを規制せざるを得なくなるものを持っているんじゃないかということを申し上げたわけ。矛盾しませんか。
  271. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 憲法秩序の範囲内ということでございますから、あくまでも憲法で保障された人権を脅かすようなことは考えておりません。しかし、軍事機密とかいろいろあるかもしれません。そういった点とのバランスはまだ勉強してみたいと思います。
  272. 山中郁子

    ○山中郁子君 だから、憲法で保障されたものについては憲法の範囲内でと、こうおっしゃっているけれども、軍事機密とのバランスがあるから研究するとおっしゃっているわけです。長官、これどうですか。結局そういうことも研究対象にやっぱりなるということになる、いまの官房長の話を聞いていると。
  273. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私はまだ研究内容を全然聞いておりません。私は先ほど来から申し上げましたように、まさにたたき台のたたき台の卵ぐらいだと、こう言っておるのもそこにあるわけでありまして、なおまたこの委員会で、さき質問者に、私は平時皆さんが冷静なときにこの問題を国会に御審議いただいて御批判をいただくと。そういうことですから、また途中でひとつ中間報告ができるなら中間報告をする、ひた隠しに隠して秘密の中でやるということじゃないということだけで御理解いただきたいと思うわけであります。
  274. 山中郁子

    ○山中郁子君 中間報告はいつごろなさるおつもりですか。
  275. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 中間報告、私もまだ一回も聞いてないんですから、中間報告いつやるなんて言うわけにはいかない。とてもそんな簡単なものでなくて、そんなにえらく血走ってやっているということじゃないということだけでも御理解いただきたいと思います。
  276. 山中郁子

    ○山中郁子君 それにしては大分いろんなことをいろんなところで血走っておっしゃっているというのが実情です。問題は、いま先ほどの竹岡官房長の答弁の中でも明らかになりましたように、結局皆さん方が考えていらっしゃる有事立法というものを突き詰めていけば、一つ一つ聞いていけば、それはみんな対象だと、三矢作戦のときの中身なんですよ。それから、かつてのあの侵略戦争のときの国家総動員体制の中身なんです。そのことを私たちは申し上げております。ですから、徴用の問題にしてもそうですし、物資の徴発の問題にしてもそうです。結局、あの忌まわしい戦争のもとで、いかに軍が無法きわまる横暴な権力を握って、そして結果的に、有事立法というものが成立すればそれは国民に対する軍事的抑圧に使われるということがはっきりしているというのが、これが日本の歴史の教訓です。私はそういう立場から、こうした有事立法の研究は直ちにやめるべきであるし、先ほどからまだ初めの初めで私は何にも聞いてないと長官とぼけたことをおっしゃっているけれども、そんなことはないということは、いまの防衛関係の方たちの発言その他ではっきりしているんですから、直ちにやめるべきであると同時に、現在行われている研究はすべて公表すべきであるということを強く要求をいたしまして質問を終わります。
  277. 木島則夫

    木島則夫君 初めに、きのうの衆議院内閣委員会での質疑の中から、一、二フォローをさせていただきたいと思います。したがって、事前に質疑内容に通告をした範囲外のものもあることを御了承いただきたいと思います。  衆議院内閣委員会におきまして伊藤防衛局長は、このたび締結をされた日中平和友好条約につきまして、軍事的には日本の安全にとってこれがプラスであるというニュアンスの見解を示されております。これはどういうよりどころによってこういう御発言となったのか、そのよりどころをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  278. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 私は、軍事的には有利になったというような発言をした記憶はございません。私が御答弁申し上げましたのは、日本の国の安全保障というものは、やはり周辺諸国と友好関係を維持するということが大事だということを申し上げたわけでございます。そういった観点からするならば、日中平和友好条約ができたということは、日本の安全保障にとっては好ましいことであるという考えを申し上げたわけでございます。
  279. 木島則夫

    木島則夫君 それから、これはきのうのやはり内閣委員会でございますけれど、伊藤防衛局長が、平和時でも正当防衛に限って領空侵犯機の撃墜は可能であると答弁をしましたが、この問題に関して航空自衛隊の幕僚長が、侵犯機が射撃をしてきて初めて行使できる正当防衛権だけでは、領空侵犯に対して不十分な対応であるという批判があって反対をしている旨の東京新聞の朝刊の記事を私は見たわけでございます。撃墜していい場合には、なるほどきのうの委員会で伊藤局長がお述べになったように、刑法上の正当防衛権の行使に限定をされていると、これは私もよく理解をいたします。つまり、侵犯機が先に射撃をしたときとか、あるいは機体の爆弾倉が開いて日本本土に爆弾が投下をされようとしているときというように限定をされることも承知をいたしております。私も全く素人でありますけれど、しかしよく考えてみますと、相手が射撃をしてきてから正当防衛の権利に基づいて行使をするといったときに、射撃装置なり射撃水準というものが格段に進歩した現在、射撃をしてきたときはイコール命中か死ということにつながるんじゃないか。で、それから行使をするといったって、そのこと自体がどういう意味を持つのかと、これは現場段階での不満であると同時に、私にもそういう疑念が当然わいてくる。それから、先ほど同僚委員から、こういうことがあっちゃいけないんだがという前置きがありましたけれど、たとえばスクランブル発進のときにミサイルのお話がありましたね。このミサイルの発射についても、発射をすること自体、人間の五感によって感知できるものかどうか、いつ発射されたかわからない、こういうものに対して一体正当防衛権が行使できる、そういう認識が、こちらに受け取り方ができるのかどうか。つまり、こういうことを私素人でもわかるわけでございます。ですから、侵犯機に対する措置というものは、単なる内局の行政行為である内訓によらないで、自衛隊法上明記すべきではないかという現場の声があることも私は事実だろうと思いますね。この辺はいかがですか。もちろん現行法規の中での御発言としては私もわかるんでありますけれど、栗栖発言のよって来るところというものは、こういうことがもし起こったときに一体どうしたらいいかという、現行法の規定とそれから有事の際との格差が余りにも大きいという心配の余りこういった問題がやっぱり出てくる、そこに象徴された問題であろうと思うわけでありますけれど、これは伊藤防衛局長どういうふうにこの矛盾というか、現実を受け取られ、これを将来の方向としてどういう形で埋めていくか、当然私は研究対象になっていいはずだと思うんでありますけれど、いかがですか。
  280. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 私が御答弁申し上げましたのは、領空侵犯措置というのはあくまで平時の措置でございます。で、平時の状況というものもいろいろな情勢の変化というものはあるわけでございます。したがいまして、過去わが国が過ごしてまいりました二十数年間のような平時の状況におきましては、やはり領空侵犯措置としては正当防衛あるいは緊急避難の際に武器を使用してよろしいということが内訓で示されているわけでございます。  その場合の正当防衛の問題でございますけれども、いま先生がおっしゃいましたように、向こうが撃ってきたら撃ち返すというのは、これはもう最も端的な例でございますけれども、相手が攻撃の態勢に入ったときには当然正当防衛行為というものは許されると思います。しからば、そういったことを全部、その事態の考えられ得るあらゆる態勢というものを法律に書けるかというと、これは私は書けないと思うわけでございます。したがいまして、行動の基準として私どもが内訓で示しておりますのは、正当防衛行為として合理的な範囲の武器の使用というのは許しているわけでございます。で、それは通常身の危険を感ずるというようなときに行われるわけでございますけれども、従来のような時期におきましては、そういった危険性を感じたことはないということでございますが、一方におきまして、先ほども答弁いたしましたけれども、いわゆる奇襲といいますか、予期しないときに攻撃を受ける可能性としては、やはり航空機による攻撃というものが可能性としてはあり得るんではないかというわけでございます。その場合には平時から有事に変わっていくわけでございます。したがって、平時からさらに緊張が高まったような状況においては、その有事に切りかえる、有事に切りかえるということは何もミサイルを撃つだけではございませんで、地上におきますナイキあるいはホーク等によっての応戦ということも考えなきゃならないわけでございますが、そういうためには、どういうふうにすれば早くそういった七十六条の防衛出動による武力の行使ができるかということの研究はさらに進めなければならないと思います。  しかしながら、一方におきましては、こういった有事に至らない場合の武器の使用によりまして、これは軽々に使用することによって、そういうことが本来ならば他の手段によって紛争が解決されなければならないような状況のもとにおきまして、そういった不時の行動によりまして、いわゆる射撃によりまして戦闘が起きるという危険性もまた一方にははらんでいるわけでございます。したがいまして、部隊の行動あるいは自衛力の行使としての行動というものは、やはり私どもは自衛力行使の三原則、急迫不正の侵害があったときに総理大臣の命令によって行動するのが妥当だと考えておりますが、その間に至るとりあえずの措置というものは、正当防衛、緊急避難という範囲において合理的と考えられる範囲において行動するというふうに考えているわけでございます。
  281. 木島則夫

    木島則夫君 言葉じりをとらえるわけではありませんけれど、平常時から緊急時に切りかわるといったって、それは一秒でできるものじゃないと思いますよね。いろいろな手続が必要だと思う。そのときに上空で相手の飛行機とこちら側の飛行機とが対峙をしていて、平時から緊急時に変わるまであなた待っていてくれるようなことができるんですか。つまり、そういうお答えお答えとしては私は通用する。通用するけれど、やっぱり現実問題として有事なり非常事態というものを考えたときに、これはあるべき法規なりそういうものを整備をしておかないと、これから栗栖発言のようなああいう発言がまたまた後を絶たないんではないかという意味でここで申し上げているわけですよ。第一、相手が射撃をしてきたかどうか、マッハ三なんというすごく速い速度で飛行機が飛んでいるときに一体わかるものかどうか、私素人でもその辺非常に疑念を感じるんですけれどね、どうですか。
  282. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) いま先生は、平時から緊急時に急に変わるかというようなお話でございますけれども、私どもが考えておりますのは、緊急時というのは緊張が高まった時期を含んでいるわけでございます。したがいまして、いまのような平時の状態から直ちに有事に行くとは考えておりません。したがいまして、たとえば防空作戦にしましても、三マッハの飛行機が飛んできて攻撃をするのを前もって対処できるかということになると、これはなかなかむずかしい面もあるわけでございます。したがいまして、その緊張が高まってきたときには、たとえば防衛出動が下令されたときに直ちに対応できるように、その防空作戦というものが直ちに行えるような態勢というものをだんだん整えていくというような時期、これがいわゆるその緊張が高まっている時期だろうと思います。そういった状態を経ていわゆる防衛出動ということになろうと思いますけれども、その場合には、そういった防衛出動による防空作戦が一刻も早くできるような態勢をつくり、その手続を急いで決めていただくというようなことになるんではないかと思うわけでございます。したがって、いまのようなこういう平時において一発ポンと撃たれたから直ちに有事に切りかわるということは私どもは予想していないわけでございまして、まあ、そういう平時におきます領空侵犯の対処、これは平時の任務でございますが、その限りにおきましてはいまのような正当防衛、緊急避難の範囲で対応できるというような形が正しいのではないかと考えているわけでございます。
  283. 木島則夫

    木島則夫君 別にこだわるわけではありませんけれど、先ほどのような経過措置の中で、侵犯機に対する措置というものは、単なる内局の行政行為である内訓によらないで、自衛隊法上明記をすべきではないかという問題も当然将来の問題としてお考えになる、考えなければならないということはお認めになりますね。
  284. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) まあ、私どもは、原則といたしましては、この武力の行使といいますか、自衛権の行使のための武力の行使というものは、やはり七十六条のもとにおきます防衛出動が下令された以後だというふうに考えております。しかしながら、いま先生がおっしゃいましたように、この軍事技術の非常な発達によりまして、いろいろな奇襲の状態というのは考えられるわけでございますけれども、その中で一番早い、時間を置かないで攻撃が可能なのはもちろん航空機でございます。したがいまして、領空侵犯措置、現在は識別し、確認し、そして退去を命じ、そして着陸を命ずる措置になっておりますけれども、それからいわゆる有事の防空作戦に切りかわる過程が現在のままで十分であるのかどうかというようなことは研究はしてみたいと思いますけれども、基本的には、やはり部隊の実力行使というものは、総理大臣の命令に基づく部隊の行動として実行しなければならないというふうに考えているわけでございます。
  285. 木島則夫

    木島則夫君 まあ、この問題のやりとりをしているだけでもう私の持ち時間半分たってしまいました。自衛隊はもともと有事のためにあるのであって、これについて法的整備ができていないのは私は残念だと思っています。特に、自衛隊法に基づいて当然作成されることになっている政令などがいまだに整備をされていないということについては、その経過的措置というものは私もよくわかりますけれど、これはやっぱり考えなきゃならない大きな問題だというふうに思います。先ほどから論議が出ているたとえば自衛隊法百三条ですね、物資の収用に関する規定にいたしましても、これは自衛隊をスムーズに行動せしめる重要な規定と言えるわけだけれども、この規定違反に対しては罰則もありませんし、この規定はその細則を政令にゆだねているけれど、その政令そのものが制定をされていないということです。こういう、法律はあっても政令がないということ、こういう問題はいつごろをめどにつくっていくつもりなのか、またつくれない一番大きな障害というのは防衛庁としてはどういうところにあるというふうにお考えですか。もちろん、日本の憲法の問題もある、それから昭和二十年の敗戦、そういうことも尾を引いていることも私はあると思います。どうですか。
  286. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) やっぱりその政令の内容を決めるのに、いままで決めてなかったと、政令で決めるべきことを決めてなかったというのは、そういった社会情勢いろいろあったと思います。それから、一方では防衛庁も、とりあえずはやはり第一次、二次、三次、四次と、防衛力整備計画というものにも非常に追われておったということもあるでしょう。ようやく防衛計画の大綱等で一応セットされてきております。この際われわれは、やはり政令で決めなきゃならぬことになっておるんですから、できるだけ早い機会にこの政令部門につきましては何らかの形で制定していきたいなと、このように思っております。
  287. 木島則夫

    木島則夫君 法律があっても政令がつくられないということは、立法府に対する何というんでしょうか、怠慢というのかな、そういうことにもなりませんか、長官
  288. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) まあ、法律がある以上、政令というものはあってしかるべきだと私も思いますが、ただいま官房長が申し上げましたようないろいろの理由もあったと思います。しかし私は、有事があるから自衛隊というものがあるということでありまして、その有事というものに対してあらゆる角度からそれに対処する方法を考えて研究すべきだという私は考え方を持っておるわけでありまして、そういう問題を含めまして今後十二分に検討させて全きものにしていく。しかしそれも、全くするものもひた隠しにしていくということでなくて、国会で十二分にひとつ御批判をいただいて、その上でと、こういうことであろうと私は考えております。
  289. 木島則夫

    木島則夫君 防衛白書によりますと、有事立法について国民のコンセンサスが必要であるというふうに述べています。これはもう当然だろうと思います。自衛隊の存在につきましては、大方の国民の皆さんが理解を示しておりますけれど、その自衛隊はもともと有事のために存在をするんだと、だから有事立法が必要だということになりますと、いまお話しの法律はあっても政令がないというように、コンセンサスづくりというものは、長官、きわめてこれはむずかしいと思いますね、一朝一夕にできるものではないと思います。このむずかしさをどう認識をし、どうやってこれをつくっていくのか、長官の率直なひとつお考えを聞かしていただきたい。そして、一体めどをいつごろに定めているのか、できれば具体的にお答えをいただきたいと思うんです。
  290. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私は、ただいまコンセンサスを得ていくということのむずかしさは、しかし、まあ戦後三十三年になりまして、自衛隊というものの認識も国民が理解し始めてきてくれておるという姿もあるわけであります。そういう中で、いままで防衛庁も、あの第二次大戦の敗戦というようなことで、国民が防衛という問題あるいはもう戦うことはいやだというような拒否感、そうして子供を亡くし、親を亡くした、そういうことが拒否感にも続いているということも考えて、きょうまでの歩みの中で、自衛隊員が、たとえて言えば大学へ入ったけれども自治会が反対で入れないとか、あるいは住宅の問題、あるいは子供の学校の移籍の問題等にもいろいろの拒否反応があったというような時代もありまして、防衛庁自体も、これは私の推測ですが、小心翼々のような態度であったと私は思うんです。そこで私は出すべきもの、言うべきこと、それを言わずにほおっかぶりして通ってきたというような面もあったと思うんです。私は、それは出すべきものは出し、そして間違っているものは間違っている、正しいものは正しいで、いわゆる国会で、持ってきて十二分にオープンで話し合って、そういう中で国民が十二分に理解していただくような方法をとって、一つ一つ積み上げていくという苦労もしなくちゃならぬだろうという私は考え方を持っております。
  291. 木島則夫

    木島則夫君 いま長官がおっしゃったように、出すべきものはきちっと出してほっかぶりをしないでこれを通らなければならないんだというこの姿勢は、私も大いに評価をしたいと思います。で、それはそれなりに結構ですけれど、こういう問題の研究が、何か栗栖発言をきっかけにして誘導をされてくるというようなところにやっぱり問題があるんであって、もっとこういう問題はオープンに当然議論をしてくるべきであった。それが私は政治の責任であろうというふうに考えているわけです。いま長官からもおっしゃられたように、有事立法を一朝一夕につくることのむずかしさというものは、これはもうだれしも同じ考え方であろうと思います。ですから、いま必要なことは、その土台となる防衛に対する国民のコンセンサスと申しますか、シビリアンコントロールの確立を図ることが何よりも大事だと、そのためには、われわれがかねがね主張をしてまいりました防衛委員会を国会に置くんだということ、それから国防会議を改組をして、これを強化をしてもっと機能させる必要があるんだということをかねがね言ってまいりました。このことについては後ほど長官からお答えをいただきたいと思うわけでございますけれど、シビリアンコントロールについて、たしか週刊文春だったと思いますけれど、栗栖前統幕議長の記事が載っております。そのシビリアンコントロールについて述べられた個所を抜粋をしてみると、「正しい内局、制服のあり方という問題は何かということなのです。すなわち、シビリアンサイドと制服は、機能的に並列していなければならないということで、これは外国でもみんなそうなっている。次官はシビリアンサイドをコントロールする一方、統幕議長ないし統合参謀本部長はミリタリーサイドをコントロールしつつ、ともに防衛長官あるいは国防長官を補佐するのがふつうです。日本でも「自衛隊法」の建て前はそうなっている。われわれ制服は「隊務」を遂行し、内局は「基本」をつかさどるという言葉を使っていますが、「隊務」とは純軍事的事柄を指し、「基本」とは「政策」のことをいっているわけです。ところが、いまの日本では長官を補佐するのは事実上内局だけになっており、その内局が制服の上に完全に乗っかっている。これは「自衛隊法」の建て前にも反するし、国際常識にも反する。これを本来の姿に戻そうというのが、われわれの主張なんです。」と、こういうふうに栗栖前統幕議長は週刊文春の中ではっきりと述べられております、週刊文春の記事によりますと。どうですか。
  292. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) この自衛隊をシビリアンコントロールするということで、この防衛庁の組織というものは非常に苦心されたのだと思います。いま先ほど先生がおっしゃられたとおり、内局というものが基本的政策、それから制服の方が軍事専門的な最高の長官に対する幕僚長は助言者になっておるわけです。まさに車の両輪のようにいかなきゃならぬはずだと私らは思います。で、今回の栗栖発言の問題を見て、決してわれわれがその制服を押さえつけておるというわけのものじゃないと思うんです。というのは、たとえば、毎週のごとく内局から次官、それから三幕僚長と統幕議長、制服四人、毎週会議をやっているわけなんです。それから、われわれも週に一遍は皆制服も寄りましての会合ございますし、私のところでは各幕の副長が、これも一週間に一遍ぐらい私のところに来て、みんな集まりましてやっておるわけなんです。問題は、われわれがあの事件で反省しますのは、果たして、しかしヒューマンリレーションというのがうまくいっておったかどうかということは深く私も反省します。あの事件がある前にも私は各幕僚長に――建物の構造も悪いのかもしれません。というのは、陸海空の幕僚長は皆遠いところにおるわけなんですね。で、幕僚長、長官のところにどれくらい行かれますかと言いますと、やっぱり長官のところへ余り行っておられないようなんですね。で、長官は前から、みんなどんなわしに用があっても幕僚長来るときは必ず会わせということを言っておられますから、こういう点で各幕僚長も遠慮なく長官のところに行ってもらう必要があるということを強く要請したわけです。私はこういうヒューマンリレーションさえもう少しわれわれがお互いに注意しながらやっていくならば、制服の方は内局の立場をわかってもらえるはずでしょうし、内局の者は制服の立場を十分わかっておるわけでございますから、お互いに手をとり合いながら長官のもとで車の両輪のごとく補佐しなきゃならぬ、このように思います。もし栗栖さんがそう言っておられるといいますならば、非常にわれわれは残念なことであり、反省したいと思います。
  293. 木島則夫

    木島則夫君 そうしますと、要するに内局と制服というものは、本来並列的に存在をしながらお互いに補完をして機能をしながら防衛庁長官を補佐するというこの栗栖発言は、そのまま内局としても、これが本来のシビリアンコントロールにつながる一つの組織だというふうにお認めになりますか、これは。
  294. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) これは、内局というのは長官を補佐するのにわれわれは一応文官――シビリアンということで政策面を補佐するわけなんです。そのためにわれわれは一応ゼネラリストというような立場で、シビリアンマインドという言葉をよく使われますけれども、シビリアンマインドということで補佐しておりますし、制服の方はまさに一たん有時のときの軍事的専門家でございますから、むしろスペシャリスト、ミリタリースピリットという言葉を使っておりますが、そういう立場でお互いに車の両輪のごとく補佐しております。ただしいまの防衛庁設置法でも、内局の「官房長及び局長は、その所掌事務に関し、次の事項について長官を補佐するものとする。」、それは「陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊に関する各般の方針及び基本的な実施計画の作成について長官の行う陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長に対する指示」、あるいは「陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊に関する事項に関して陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長の作成した方針及び基本的な実施計画について長官の行う承認」、あるいは「陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊に関し長官の行う一般的監督」、こういうことで、官房長なり局長はこれを補佐する立場にございますので、そういった面から相当、平時におきます政策面の基本的なものを内局の幹部が補佐することになりますから、ともすれば、制服の方も内局が少し押しつけるんじゃなかろうかという印象を持つかもしれません。しかし、これは法律で決められたお互いの立場は十分わかってもらっておるはずだと思いますので、こぞってかぎは私はヒューマンリレーションにあろうと思います。
  295. 木島則夫

    木島則夫君 国防会議につきまして、われわれはかねがね国防会議というものが、もっぱら関係官庁、特に防衛庁の出す資料と方針の追認機関になっているんじゃないかというようなこととか、国防会議というものはその任務の性格上一定の限界があるんじゃないだろうか。つまり、狭義の意味における国防問題を内容としていて、広く政治、外交、経済、文化等を含めた国家安全保障問題の審議を所掌事項としていない。したがって、わが国には、このように広い視野からの安全保障問題を考察する機関が存在をしていないということになるわけですね。それから、国防会議に自衛官が常時出席できるようにされていないと。もちろん決定権はないにいたしましても、やっぱり陪席できるような措置をとるということもヒューマンリレーションにつながってくる問題だろうと私は思います。いろいろそのほか問題がございますけれど、こういう問題点のある国防会議を改めてこれを強化をすることが必要だと思うし、長官防衛委員会の設置は、これはもうかねがね私どもの主張するところでございます。こういった点についていかがですか。やっぱり国防会議の充実ということと、防衛委員会の設置、これについて率直なひとつ長官お答えをいただきたい。
  296. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 委員会をつくるということは私もかねてからの私の考え方でありまして、ちょうど衆議院の議運の委員長をやっているとき、保利議長とも相談いたしまして、また各党ともこの問題を話し合って、何回か議長の公邸でこの問題を真剣に討議をいたしたわけであります。議長は、つくることに意義がある。私もつくることに意義がある。いわゆる法案を審議しない委員会というものは意義ないと、こういうような考え方が一部にあるわけでありまして、私はまことに残念だという意味で、いまなおつくれないわけでありますが、今後とも、私も政治家でありますし、何とかひとつこれを物にしたいという考え方で、微力でありますが努力をいたしたい。  また、国防会議の問題につきましては、まさにおっしゃられるとおりだと私は思います。これは改組しなければだめだ、そして本当に安全保障というあらゆる観点で、ただ追認をされるだけのような感じを持たれる国防会議というものは、これは実際は有名無実だという私は感じをいたしております。
  297. 木島則夫

    木島則夫君 最後に一言。防衛大学学長の後継がいろいろうわさをされています。この基準ですね、どういう人が適任なのか。やっぱり隊員の士気に大きく影響をするところであります。人事の問題というのはなかなかむずかしい問題ではございますけれど、ひとつお考えを聞かしていただきたい。
  298. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私は教育という問題、ことに自衛隊の幹部を養成するということであります。時には命をささげなければならぬという、こういう人材の教育というものに対しては私は人の問題だと、その人柄という問題、この人のはだ、その人の思想、そういうものが映ってこそ優秀な幹部ができる。だれでもいいというわけにはいかないと、こういうように私は感じております。
  299. 木島則夫

    木島則夫君 基準について。
  300. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 基準は、私はもちろん相当な教養の持ち主であることは当然であります。その上にいわゆる人格、識見ともにそろい、そして防衛大学の学生に慕われるような私は校長でなければならぬと、こう考えております。
  301. 木島則夫

    木島則夫君 もう一言。立ち入って恐縮ですけれど、官僚出身の人がいいとか、いや学者はだの人がいいとかいろいろ言われておりますね。長官個人の感触としてはいかがでございますか。
  302. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私は学者であろうと官僚であろうと、自衛隊の幹部OBであろうと、問題は人であろうと、こう感じております。
  303. 森田重郎

    ○森田重郎君 私、まず第一にお願いを申し上げたいことは、ひとつ御答弁に際しましては、どうぞひとつ縦割りの行政的な発想ということでなしに、なるべく横に連動するような形の中で御回答を賜れば結構だと、こう思うんでございます。  まず第一にお尋ね申し上げたいことは、防衛力の構成、防衛力は何でできておるのか。この辺につきましてひとつ長官の御答弁を賜りたいと存じます。
  304. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私は、防衛力の基本というものは、国民すべての人の理解の上に立って、そこに成り立つものであると考えております。
  305. 森田重郎

    ○森田重郎君 私の御質問が多少当を得なかったのかもしれませんけれども、たとえば防衛力の構成、この白書等で見ますと、装備の問題、兵器の問題、いろいろあるようでございますが、その辺についての御答弁を賜りたいと、こう申し上げたわけでございます。
  306. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) おっしゃられることがちょっとわかりにくいんですが、私は安全保障という、これが防衛の問題の基本だというようにも感じておるわけであります。
  307. 森田重郎

    ○森田重郎君 まだどうも、ちょっと私の意図が必ずしも十分通じないようでございますが、ずばり私申し上げまして、このエネルギー資源、エネルギーの問題と防衛の問題を長官どのようにお考えになっておられるか、御答弁をちょうだいしたいと思います。
  308. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 防衛の問題は、私は政治の原点でありますし、エネルギーがなくていわゆるわれわれの生存ができるかということを考えれば、両方とも政治の原点で必要なものであると、こう思います。
  309. 森田重郎

    ○森田重郎君 ただいまのお話で、エネルギー資源、これが防衛のやはり大きな基本につながる問題であるというふうな御答弁を一つの前提にいたしまして、私なりにちょっと感得いたしておりますことを申し上げたいと思うのでございますが、恐らく一九八〇年代は、これは資源小国のわが国にとりまして、大変な時代になるのじゃなかろうかというふうな感じがするわけでございます。世界の軍事環境あるいはまた資源環境というものも大きく変わってくるのじゃなかろうかというふうな感を深くするわけでございます。  OECDの報告等によりましても、仮に、もし世界各国が現在のような形でエネルギーを消費するというような事態が続くならば、一九八五年はこれは最大の危機に当面するというようなことが報告をされておるわけでございますが、御承知のとおり、現在のエネルギー資源の九五%ぐらいでしょうか、七%でしょうか、海外から輸入をしておる。そのうちで何と七五%というものはこれは石油である。こういうような事態を考えますと、これがいわゆる平時の状態であろうか。先ほど来何回かお話が出ております有事であるとか、あるいは防衛計画の中でこれらの問題がどういうふうな形で取り上げられていくかというようなこと、この辺を考えますと、大変大きな問題が防衛の背景にある。それは先ほど来申し上げておりますエネルギー問題、この辺が、どうも私この防衛白書を拝見いたしましても、全然と言っていいぐらい載っていないわけなんですけれども、その辺の感覚につきまして防衛庁幹部の方々の、何か一つの定見がございましたらお聞かせを賜りたいと、かように思います。
  310. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) いま先生は、広くわが国の総合安全保障という見地からお話しになったのだろうと思います。エネルギー問題等挙げられたと思います。これは確かに政府全体が総合安全保障という立場から広く見る場というものは、非常に僭越でございますけれども、まだ十分ないのじゃなかろうかと思います。そして、私の方も、防衛白書――これはあくまでも軍事的な立場の防衛の見地から見る。まあ役所は皆縦割り行政だからまことに申しわけないことでございますけれども、そうしますと、総合安全保障の面から見ますならば、やはり第一には外交でありましょうし、あるいはそういった、先ほど言われましたエネルギーなんかの備蓄の問題等もあり、これは通産省になろうと思います。そういう広い見地の総合安全保障的なものを国民に訴える白書が私たちも要るんではなかろうかと思います。それには、国防会議事務局等がこれに当たるのが私は最も当を得ておると思いますけれども、そういう観点から、まことに申しわけないことでございますが、役所同士の縦割り行政――防衛庁が出す防衛白書にはその限界がございますので、十分その点までは触れていなかったと思います。しかし、これは私の方ももう一度反省しまして、防衛庁の立場から、総合安全保障の面を白書ではどの程度までできるかどうかということは勉強してみたいと思いますが、その点は御賢察を願いたいと思います。
  311. 森田重郎

    ○森田重郎君 冒頭、縦割り行政的な発想、そういった感覚の中での御答弁でなしに、御存じのところがございましたらひとつ横に連動するような意味お答えをちょうだいしたいと、こう申し上げたのは、実はその辺のことなんでございますけれども、現在のたとえばアメリカ、まあ世界有数の資源国、このアメリカでも、実はエネルギー政策の第一の問題を大きくこの石油からとにかく石炭に見直している。第二には、この大節約を御承知のように展開している、大きな節約をですね。八五年までにはとにかく十億バレルの備蓄をするというようなことが言われておるわけです。皆さん御承知のとおりだと思うんです。ただ、こういう考え方、発想の裏には、これは民生用の問題であるとか、あるいはまた工業用のいろいろ問題だけでなしに、その背景にやっぱり大きな意味一つ防衛政策というふうなものが基本になって、そういう石油政策というものもなされておるんじゃなかろうかというような私は感触を非常に強くするわけでございますけれども、まあかような点から考えまして、やはり人がいても、それからどんなに近代的な装備、武器を持っても、食う物と燃料がなければ、これは何の防衛かということを私は特に申し上げたかったので、あえてこの問題を取り上げさしていただいたわけでございますけれども、どうぞひとつこういったような問題を、先ほど来若干お話が出ておるようでございますけれども、何らかの一つの大きな機関に諮って取り上げていただくような姿勢で、今後の防衛政策のあり方というものを御討議願いたいというふうに考えておるわけでございますけれども長官どうぞひとつその辺をもう一度お尋ねします。
  312. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 先ほど木島先生からもお話がありましたように、いわゆる人間の生存という問題、生存をするためには安全保障というものが必要であるということ、これはゆるがせにできる問題ではないことは当然でありますし、それがいまなかなかそういうことが総括に審議される場がないということ、あるいは協議される場がない。私はこれは国防会議等を拡充して、そういうことを真剣に考えるという、もう時期へ――遅きに失しているという感じもいたしますが、そういうことについての最大の努力をいたしたいと考えております。
  313. 森田重郎

    ○森田重郎君 長官の御答弁でよくわかりましたけれども、これまた逆説的に言いまするならば、そういった資源、特にエネルギー問題等を十分に横との連動において討議する場所がない中で、こういった形で、その防衛のあり方というふうなものを討議するそのこと自体にも私は何か問題があるような気がするわけでございますが、ちなみに、これは先ほどの食べる物もない、燃料もない、燃料がなくてP3C、F15をどうして飛ばせるか、食い物がなくてどうしてその隊員が行動できるかということにもつながるわけでございまして、先ほど来の安全保障的な感覚の中で、こういったふうな問題を取り上げるというようなお話でございますが、これはちなみに食糧問題なんかにつきましても、これはエネルギーにまさるとも劣らぬような問題だと思うのです。最近注目されておりますことは、防衛問題と同じような形でアメリカの食糧戦略ということが非常に話題になっておる。これも御承知のとおりだと私は思うんでございますけれども、仮にその食糧問題一つ取り上げてみましても、わが国の食糧の自給率というのは、恐らく穀物ベースで四〇%ぐらいじゃございませんでしょうか。六〇%ぐらいのものは輸入しておる。恐らく世界最低の食糧資源国というふうに私は理解しておるわけでございますが、こういう基盤の中で現在の防衛問題というものが云々されておるというところに、何とはなしに、感じといたしまして、感触といたしましてどうもぴんとこないものが実はあるような気がするわけでございます。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕 かつて農業国は一たん捨ててしまった英国ですら、現在食糧の自給率というものは六十何%ぐらいになっているかと思うんです。工業国と言われている西独ですら八三%か四%、このぐらいのやっぱり自給率というふうなものがあるわけです。翻ってわが国の状態を見ますれば、ただいま申し上げたようにその自給率というものは非常に低い。そういう中で、これが先ほど来いろいろ論議をされております有事の際――平時にあっても、あるいはまた、特にこれ一たん有事の際に、一体燃料とか食糧というものを全く度外視した形での防衛というものはあって実はないようなものだと、ナンセンスに等しいと、こういうことすら実は言いたいような気持ちなんでございますが、どうでしょうか、長官、食糧問題等につきましても、今後の防衛計画を進める上におきまして、何らかの形で、少なくともこの防衛白書のアイテムの一つぐらいには、食糧問題――必要ないという感覚であればこれは別でございますけれども、あえてその点をひとつお願い申し上げたいと、かように思うわけでございます。
  314. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 森田先生のおっしゃるとおり、食糧がなかったらどうなるかと。ただ白書の中に、いま横に連動するようにというお話もあったわけでありますが、これはまあ日本の官庁のいいところであるか悪いところであるか、御批判のところであろうと私は思うんですが、よその官庁に関係することを白書に入れるということはなかなか困難なようであります。そこら辺に、なわ張りを荒らすようなかっこうになっても困るという、こちらの遠慮もあるのかもしらぬし、向こうからそれは困るということがあるのかしらぬが、そんなような雰囲気がないばかりでもないという私は感じがいたしているわけでありますが、しかし、食糧の問題と防衛の問題、安全保障という立場からいっても、全然こういう問題に触れないということも、これもおかしいわけでありまして、そういう点につきましても今後十二分に参考にいたしたいと考えております。
  315. 森田重郎

    ○森田重郎君 その重要性、必要性は認めると。しかし、この問題を個々具体的な形で白書の中へ盛り込むということは、他省庁との関係、あるいはまた将来の見通し等、そういった諸般の情勢から大変むずかしいというふうなお話でございました。確かに私ども一般論として考えますとおっしゃるとおりだとは思いますけれども、いずれにいたしましても、このエネルギー問題あるいは食糧問題というふうなものが、防衛のある意味では基本的な問題につながる。ただ単に国民、民生の問題だけじゃない、やはり防衛問題の基本的な問題として大きな比重、ウエートを占めるということはよくおわかりいただけたかと思うんでございます。  そこで、たとえばその問題を取り上げることがむずかしいということであるならば、この防衛白書を拝見いたしますと、第一部が「国際軍事情勢」、第二部が「わが国の防衛政策」、第三部がこれは「防衛の現状と問題」、言うなれば三部作からできている。以下は資料という形になっておるようでございますが、少なくとも第一部の「国際軍事情勢」、その一項の「国際情勢の動き」、この辺には、なるべくその辺をもう少し詰めてひとつ挙げていただければ、国民の方々のそういった問題についての御理解が得られるのではなかろうかというふうに感じますので、その辺もあわせてお願いを申し上げたいと、かように思う次第でございます。
  316. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 防衛の面から見ましての必要な施策、この政府の白書というのは、なかなか施策の提言なんかも込み入ったことは言えないようになっておりますけれども、たとえば今回の白書にも民間防衛という問題を提言しておりますが、これはたまたま各省どこも主管官庁がないから書けたと思いますけれども、しかしいま先生御提案のように、防衛の面から見まして、たとえば食糧なりエネルギー、こういう問題があるのではなかろうかといったような意味の提言が防衛に絡めて書けるかどうかということは、来年の白書については十分検討したいと思っております。
  317. 森田重郎

    ○森田重郎君 くどくどしく説明申し上げたようですけれども、私の考えでは、やはり今日の安保問題というのは単に軍事的視野からだけでなく、やはり経済安保の視点をも含めた総合的なやっぱり安全保障という体制の中にあって、先ほどのエネルギー問題あるいは食糧問題等をも含めた防衛というのがやはり真の防衛であり、同時にまた、こういった席におきまして、その辺も含めての御討議というのが私は本当の防衛につながる問題ではなかろうかというふうに考えましたので、あるいは多少見当違いのような質問になるかと思いますが、しかし、考えてみますれば、やはり防衛の言うなれば一つの大きな基盤ということにもつながるかと思いましたので、あえてこういった質問をさせていただいたわけでございます。  それでは、先ほど来幾つか問題になっております奇襲攻撃、これらの問題につきまして簡単で結構でございますので御答弁をちょうだいしたいと思うんでございますが、まず第一に御答弁を賜りたいことは、自衛隊として、奇襲攻撃防止のためどのような体制を現在とっておられるのか、今後これをどのような方向強化されていかれるのか、その辺をひとつ簡潔に御答弁賜りたいと存じます。
  318. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 先ほども申し上げましたが、専守防衛の立場で、奇襲攻撃というものに対する有時即応体制というものがきわめて重要でございます。そのためには、的確な状況、情報を把握して、そして最高指揮官であります総理にそれを的確にお伝えするという必要がございます。そのためのいわゆる情報収集の努力というものが一つございます。それから、有事即応のためには、それぞれの部隊が必要に応じて戦える態勢をとらなければなりません。いま先生の御指摘にもありましたけれども、エネルギーの問題もございますし、また同町に弾の備蓄、そういった態勢、それから隊員の純度を高めておいていつでも対応できるような態勢というものも必要なわけでございます。さらには、必要なときに自衛隊法七十六条によります防衛出動というものが適時適切に総理大臣から下令される必要があるわけでございまして、そのための手続、それからその手続のために要する時間というものをどのように短縮することができるかというようなことを今後一層研究してまいらなければならないと考えているわけでございます。
  319. 森田重郎

    ○森田重郎君 そうしますと、ただいまの御答弁の中で考えられますことは、先ほどちょっと冒頭御質問を申し上げました、いわゆる燃料の問題であるとか、食糧の問題であるとか、こういったようなものもその中に入っておるわけでございますか。防衛研究との関連はどんなふうな形になるんでございましょうか。
  320. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 先ほど先生の御質問にありました、いわゆる防衛政策の考え方の中における食糧、エネルギーの問題というものは、やはりこれは国防の基本方針にございます民生の安定というものが、いわゆる国防の一つの大きな柱であるということが掲げられてあるわけでございまして、そのことだと思いますが、同時に、自衛隊のいわゆる防衛力の行使の面からいきましても、エネルギーの問題も、それから燃料、それから弾の問題、それからもちろん必要な食糧、そういったものも備蓄し、有事に対応できるようにしなければならないと考えているわけでございます。
  321. 森田重郎

    ○森田重郎君 わかりました。それでは、時間もございませんが、奇襲攻撃の際の部隊指揮官のいわゆる行動基準というものを早急に樹立する必要があるんじゃなかろうかと思いますが、この辺についてお考えを承りたいと思います。
  322. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 防衛出動に至らない前に、平時といいますか、通常の状態において奇襲攻撃を受けた場合の対応の措置といたしましては、一応部隊としての行動はできないわけでございますけれども、その奇襲といいますか、攻撃に対処するために正当防衛、緊急避難の範囲において行動するということは、武器を使用するということはあり得るわけでございますが、これにはいわゆるその行動の基準というものが的確に示されるということがまた必要であろうと思います。ただ、いろんな事態というものがあるわけでございますから、すべてのことを網羅的に書くということもなかなかむずかしいと思いますけれども、まあ典型的なものとして幾つかの事例というような形で、行動の基準を示せるものについては示すように努力いたしたいと思っているわけでございます。現在ございますのは、平時から任務を持っております領空侵犯措置の場合の行動の基準といいますか、対応の基準といいますか、そういったものは内訓で示しているわけでございますけれども、いまいろいろ問題になっております正当防衛というものでどういう行動ができるのかというようなことについては、さらに研究をしてまいりたいと考えているわけでございます。
  323. 森田重郎

    ○森田重郎君 どうも超法規的な行動、あるいはまた奇襲攻撃、こういったような問題がいろいろな角度から御討議をされておる、時間的な空白の問題もあるというような感覚の中で、何らかの形で、ただいまも申し上げました部隊指揮官の行動基準というふうなものがなされないと、何かその辺に、またまた若干問題でも起きやせぬかというふうな気がするわけでございます。   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕 必ずしも行動基準があるからそれでいいというわけではございませんけれども、やはり部隊指揮官の立場というようなものを考えました折には、何らかの形の行動基準というものが、何らかの具体性を持って示さるべきであろうかと思うのですけれども、もう一度その辺を御回答賜りたいと思います。
  324. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) この行動基準というのには、やはりその情勢の変化というものも加味しなければ意味がないと思うわけです。たとえば、この間前統幕議長が一つの例として挙げました陸上の部隊が忽然とあらわれるというような場合には、これはまず考えられないような事態でございますし、また、いまのような平時におきまして、忽然と奇襲部隊があらわれましても、常時陸上自衛隊は弾を持って訓練しているわけではございませんから、そういう事態が起きるということはなかなかむずかしいわけでございますが、したがいまして、その情勢の変化に応じまして、緊張したときにはどういう対応があるだろうか、平時にはどういう対応があるだろうかという、いろいろな形の行動の基準というものが必要になってくると思うわけでございまして、そういった幾つかの要素をかみ合わせました形において、いろいろな場合を想定し、研究をしなければならないというふうに考えているわけでございます。
  325. 森田重郎

    ○森田重郎君 これは質問が若干重なるかと思うのでございますけれども、先ほど官房長から、防衛研究、あれは八項目でございましたか、有事立法の問題でございますが、八項目でしたか、ちょっと御説明があったようでございますが、この辺はひとつ、おさらいする意味でもう一度具体的にお尋ねを申し上げたいと思います。
  326. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 第一、番目は、自衛隊の行動につきまして、現在あります各種法令の中で、その行動を容易ならしめるために何らかの法的な除外規定とか、特例とかいうようなことを設ける必要があるのかどうかという、自衛隊の行動の円滑化に関するものが第一でございます。  それから二番目に、自衛隊の行動の準備ということで防衛出動下令前に防衛出動の待機命令等がございますが、そういう際に何らかの措置をとることについては、これは場合によれば自衛隊法の改正になるかもしれませんけれども、そういった点に何らかの法的な措置が必要かどうかということも勉強してみる必要がある。  三番目には、有事のときにおきます防衛庁の事務を簡素化します、そういった手続的ないろんな法規につきまして、何らかの措置をする必要があるんじゃなかろうかというようなことも考えてみたわけでございます。  それから四番目に、一般市民の保護、誘導というようなことにつきましても、何らかの法的な措置が要るかどうかということを考えてみたい。  五番目が、自衛隊に対しまして、他の官庁なりあるいは一般市民の方からどういった協力が得られるであろうかというようなことについて、現在の法体系の中で何らかの措置が必要かどうかということを研究したいと思います。  それから六番目には、当然有事には国内で戦争が起こるわけでございますけれども、もし敵国の俘虜やあるいは戦傷病者、そういったものに対する国際法規的な措置をしなければならないのでございますが、そういったものが全然法律上ございませんので、そういったものについても考える必要がある。  それから七番目には、当然有事のときには米軍からも支援が来るわけでございますけれども、その米軍の支援について、現在国内法上何らかの支障があるのかとか、こういう点も勉強してまいりたい。  八番目が、隊員の有事におきます処遇関係、出動手当なり災害補償なり、そういったことを考える必要があろう。そういったところを一応大まかに最近一まとめにしまして、その関係でどんなことがあるかどうか、これから具体的に勉強してみたい。そして最初に交通関係の法規を勉強しておる。二週間に一遍ずつでございますからなかなか進捗しませんけれども、そういったことを勉強しておる次第でございます。
  327. 森田重郎

    ○森田重郎君 非常に大きなこれは政治的な今後の課題でもあろうかと思いますので、あくまでもただいまの研究そのものにつきましては、広く国民の方々の合意を得られるような、そういう形の中でひとつ御研究を賜りたい。私自身は決して反対じゃございませんので、それを特にお願い申し上げます。
  328. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 御了解を得たいと思うのでございますけれども、これは本当に有事、恐らく国民の皆さんもわれわれも有事が来るといま思っていないわけですね。有事法令というのは、本来これは所管官庁があるわけですから、道路交通法なら警察なり。恐らく政府内閣の責任におかれましてそういう有事法令の立法手続をとる、立法作業をとるというようなことがもし将来あるならば、そのときに初めて本来なら各省庁一緒になって本格的な立法作業が行われ、そしてその法案が国会で慎重に審議されましてやられる手続であろうと思うんです。しかし、恐らくまだそういった有事が近づいているわけでもないし、そこまでの立法作業をまだとる時期ではない。しかし、防衛庁は防衛を担当しておるんだから、所管官庁の法律があり、そういう立法手続が将来要るだろうけれども、それまでの間に勉強しておけということでございますので、ちょっと他の所管官庁の法律なんかについて、これこれこうというふうに言いますのも、やはりそれは内閣が将来有事立法手続をとれという高度の政治的な判断があってから初めての問題だと思いますけれども、事が事でございますから、防衛庁の内部でこういった研究をしておりますということで、立法手続まではまだいっておりませんが、防衛庁内部でこういった研究しておりますようなことにつきましては、できる限り概括的に報告しなければならぬ義務があると、このように思っております。
  329. 森田重郎

    ○森田重郎君 事が事だけにこれは非常にむずかしい問題であるというようなお話ですが、考え方によりますと、事が事だけにまたいろいろな意味で、すでに防衛研究というような言葉も出ているわけですから、やはり国民的な感覚の中で問題になりやすい、問題を起こしやすい問題でもあろうかと思いましたので、私はそう申し上げたわけでございます。  終わります。
  330. 秦豊

    ○秦豊君 確かに長官ね、有事立法については、あなたの言葉ではないけれども、血走ってはいらっしゃらない。だが、自信満々と進めていらっしゃるということだけは明らかですね。質問がしんがりだから多少の重複はお許しをいただきたいと思います。  有事立法というのは、私、一種の戦時立法だと思うんですよね。それで、以下具体的に伺いますけれども、さっきからの質問を伺っていると、有事立法については各省庁にまたがる検討項目が大体二百近いのではないかと思われますね、防衛庁を含めて、もちろん。防衛庁が一番多いのではないかとも思うが、大体それくらいあるんですか。
  331. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 申しわけございませんが、ちょっと項目別に数、何ぼというところまでは十分具体的には詰めておりません。
  332. 秦豊

    ○秦豊君 長官が、せっかくなるべくオープンに、フェアに合意をと言っておられるからあなた方はそれを体していただきたい。まず大前提ですよ、これは。  そこで、二百あるのか百八十かわからないけれども、各省庁にまたがるいまの時点での検討項目を、まず中間報告なんかじゃなくて、それははるか先だから、まず国会の当該委員会、この内閣委員会に提出をしていただきたいが、そうすることがまた長官のその方針に沿うゆえんだと思うんだが、その辺まずどうですか。
  333. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 先ほど申し上げましたとおり、二週間に一遍の割りでゆっくり勉強しておるわけなんですけれども、概括的にはわれわれは項目的に先ほど八つのような項目の主体が考えられるだろう、しかし、それについてどのような法律がどうだというようなところまで勉強はまだとてもいっておりません。その八つの項目中、こういう考え方だというようなことは私は申し上げていいと思いますけれども、まだ具体的な法律をどうというのは今後の勉強でございますので、ちょっと資料としてできるようなものはございません。
  334. 秦豊

    ○秦豊君 しかし竹岡さんね、余りおずおずされないで、むしろ堂々と訴えるという態度があなたは一番欠けているんだ。そうでしょう。合意の形成にはほど遠くなるわけ。あなた方にしてみても、優先順位は兵力が移動展開する場合の、たとえば陸上輸送とか海上輸送、火薬類取締法の除外規定とか、もうずっとできているわけだ、シナリオはね。そういうものはその都度委員会に報告をするという態度があって初めて長官の言う合意の路線が形成されるんですよ。どうも何かこう及び腰のような、重箱のすみをつつく議論をするために言っているんではない、基本的な姿勢を私は言っている。やはりいまこういうことが検討課題に上っていますと、各省庁にまたがっては。中では防衛庁がまずこれですという程度のことがなぜ委員会に出せませんか。
  335. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 先ほどの八つの項目を大体申し上げまして、そのうちの特に自衛隊の行動というような問題で交通関係の法令から勉強しておりますということは申し上げたこともあろうと思います。そういう段階にいきましたら、たとえば道路交通法なり航空法なりにつきまして勉強しましたら、大体いまわれわれの感触は――これはそれぞれの所管官所があるわけでございますから、われわれの研究の範囲ではこういうような感触を得ておりますというようなことは、そういう研究を終わりました段階では申し上げることもあろうと思います。
  336. 秦豊

    ○秦豊君 各省庁はちょっとやめましょう、あなた答えにくいから。  じゃ陸上から始めましてね、道路交通法、それから何々何々たくさんありますわね、隊法もある。設置法はちょっと外れるかもしれない。じゃ、あなた方の作業の優先順位ぐらいは大体長官を中心に固めていらっしゃるでしょう。それは明らかにできますか。
  337. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) まだ長官には詳細には報告しておりませんけれども、われわれ事務的には、先ほど言いましたようにまず交通関係の方から進めていこうということで道路交通法、それから海上交通安全法、その辺の勉強をまず進めてみておる段階でございます。
  338. 秦豊

    ○秦豊君 答弁になっていませんわね。だから、道路交通から始めて火薬類取締法とか、自衛隊法百三条に絡む政令の制定とか、あるいは爆発物の問題、航空管制、海上輸送、ちゃんと優先順位はあるんでしょう。ないんですか。
  339. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 全般的な法律全部をまだ洗っておるわけじゃございませんから、そういう順位は決めておりません。現在道路交通法ですか、そういったものを勉強を終わりまして、いま航空法なんか勉強しておるようですが、その後どういう勉強をしようかというようなことも、これから私の方に伺いが上がってくると思いますけれども、そのときには長官にも報告しまして、全般的にこの次は何をやっていこう、こういうことで進めていくことになろうと思います。
  340. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、こうしていただけますか、長官官房長はなかなか慎重に言葉を選んでいらっしゃるから。あなたの方針に沿うように、国会がチェックをその都度できるように、そのことが合意を近づけますからね。だから洗い出しの検討項目のこの幅が決まりましたら、そのときにはちゅうちょなく直ちにこの内閣委員会に出していただく、そういうお約束は願えますか。
  341. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 先ほど来から私は申し上げているように、これはオープンだと、シビリアンコントロールの上からいっても当然これは――実際えらく秦先生はでき上がっているように思っているんだが、私がまだ聞いてないんですから、卵の卵の卵ぐらいのところだということで御理解を、しかし、おっしゃられるとおり十二分にお説に従います。
  342. 秦豊

    ○秦豊君 われわれも油断なくレーダーを張りめぐらせますけれども長官もその姿勢で対応をしていただきたい。  それから、有事立法を検討するといったって、おたくだけではもちろんだめで横に広がっていく。そうすると、やっぱり関係省庁とはどういう場で協議をされるのですか。国防会議が適当なのか、内閣審議室に集まるのか、つまり総理府という舞台がいいのか、全然新たに非常立法何とか検討何とか総合委員会というふうなものが妥当なのか、その辺もお考えになっていらっしゃらないのか、その辺ぐらいはアイデアがありますか。
  343. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) これは、要するに立法手続をとるという具体的なスケジュールが上がってきたときに果たしてそれが出てくるんじゃなかろうか。その立法手続をとるべきであろう、もういよいよ日本も相当危なくなってきた、有事法令要るんじゃなかろうかというような高度の政治的な判断があって、そういった具体的な立法手続のゴーが出るんではなかろうかと思います。日本のためには、あるいはそういうことが永遠にないのかもしれません。それはわかりません。しかし、いずれにしましても、それは高度の政治的な判断で、そういう必要性があるときに御判断願ってそういった総括的な窓口をお決めになるんだろうと思います。あるいは国防会議事務局なり、そういうことで、どこになるか私もちょっと自信がございませんが、防衛庁だけでできる問題でないことは間違いございません。
  344. 秦豊

    ○秦豊君 まあしかし、主として意見具申をされる能動的な主体がおたくであることは間違いない。うちの社民連に対する回答書というのも、なかなかこれは模範的な優等生の作文でね、可もなく不可もなく――もちろん不可だらけだけれども、木で鼻くくったようなものなんだが、それはいいでしょう。ここにも政治判断と書いてある。確かにそうだと思います。  少し具体的に質問を進めますが、伊藤さん、防衛出動、出動とぼくらぱっと何げなく言っているのですよね、何年も何年も。しかしよく考えてみると、隊法七十六条に言う「防衛出動」というものは、具体的にどんな状況、どんな対応のどの程度の規模の侵略に対して発動されるのか、全然私わかってないのですよ。あなたはわかっていらっしゃるでしょう。どうなんですか。
  345. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) これはどういう規模の侵略に対して防衛出動が下令されるかということは、具体的にはなかなか御説明しにくい問題がございます。したがいまして、私どもが考えておりますのは、日本の周辺諸国の軍事力の実態でございます。その実態の中で、仮に日本に対して侵略を行うための軍事行動をした場合には、どのぐらいの勢力というものが行動できるかというようなことは一応想定をいたしているわけでございますけれども、いずれにいたしましても、日本に対する直接の武力侵略が行われるそのおそれがきわめて強いとき、そのときに七十六条が発動されるというふうに理解をしておるわけでございます。
  346. 秦豊

    ○秦豊君 あなた方のそれ、常に常套手段でね、絶えず具体的なORを踏まえた、見積りを踏まえた具体的な防衛計画を含めたものは国会には全く出ない。抽象的、概念的、これがあなた方の一つのテクニック、みがき上げたテクニックなんだが、しかし、やっぱりこういう問題についてもっとフェアに言えなければだめですね、これは。だんだんむしろ私は歴代防衛局長の口が固くなるのではないか、長官がせっかくああおっしゃっていても。それを憂えますね、やっぱり。で、ある以上は機密です。マル秘です。ランクの違いがあるだけ。非常に討論がかみ合わない。  そこで、もう一つだけ関連して言いますけれども、あなた方の白書を拝見しても何にしても非常にロマンチックな部分がなぜかあるんです。たとえば対象敵国は明らかにソビエト社会主義共和国連邦らしいんだが、ところが、絶えずその対象国から来る侵略というのは、なぜかいつも限定的かつ小規模という判断があなた方のベースになっているんですよ。ある程度持久する、米軍来援、こういう図式があるんです。そう判断される根拠というのは一体何ですか。
  347. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 私どもは日本の安全保障を考える場合に、いわゆる日米安保体制、この力というものが大きな抑止力であり、これが防衛力となるというふうに考えているわけでございます。私ども防衛構想の基本というものは、やはり日本が侵略されないような体制を維持するということが大事でございます。そのためには日米安保体制というものは欠くべからざるものだと思っておるわけでございます。とするならば、日本に対して侵略行為を行う場合には、この日米安保条約のもとにある日米安保体制がある限りは、アメリカの軍事力と対決しなければならないという不安といいますか、恐怖、そういったものを侵略国というものは常に持っているだろうと思うわけでございます。そうなってきますると、このアメリカの軍事力と対決をしなければならないような大規模な侵略をあえて行う国というのは少ないであろうと。そうなってまいりますと、いまの国連の機能の中で、私どもが世界的に見ましてなかなか平和維持機能というものが十分に果たし得ているかどうかということに対してもいろいろの問題を感じておりますけれども、その中でも、ある既成事実ができたところにこれを回復する機能というのは、非常な国連の努力があるにもかかわらず実態としてはなかなか行われていないというのが実情だろうと思います。そうなりますと、アメリカの軍事力が動き出さないような範囲で何かの既成事実をつくろうというのが日本を侵略する場合に一番考えられる可能性のあるものであるというふうに判断するわけです。といいますのは、日本に対する侵略行動を起こすことによって、やはり日本の持っている国力、こういったものをその国の意思のもとに使うということがやはり重要なことでありまして、日本を二次大戦のときのような焦土と化しても、これは余り意味がないわけでございますから、そういった点から考えますと、そういった小規模の侵略というものは可能性としては考えられるというふうに思っておるわけでございます。
  348. 秦豊

    ○秦豊君 これは多分いつかはできるでしょう防衛特別委員会あたりにかっこうなテーマですね。そのときにゆっくりやりましょう。  そこで、法制局長官いらっしゃいますね。あなたをお待ちしておったわけですが、あなたは非常に先般の国会以来、自衛力の範囲、持てる装備の大胆な発言を初め、きのうは狭義の交戦権、またごく最近のあなたのヒット作は、福田総理の靖国参拝を合法化して、みずからつくった土俵をみずから壊すというふうな大胆なことをされている。私の価値観からすればあなたは仕事のし過ぎだ。逆流の権化なんだけれども、しかし政府にしてみれば頼もしい法制局長官かもしれない。  そこで私は、いろいろ聞いてもどうもわからないんだが、いろんな国を調べてみると、この戦時法というのは一つの法体系として独立しているんですね。たとえば国家非常法とか、戒厳法とか、日本のいまの憲法にはありませんよ。竹岡さんによればぼつぼつ申し上げますと言っておるんだが、各省庁の法律、政令を手直しする、そのばらばらっとした雑然たる集合体を集めると非常立法だと、有事立法だというのでいいのか、あるいは賢明なるあなたの頭脳の中では、やっぱり国家非常事態法というふうな集大成された法律をやがて必要とするのではないかと、私は思っておるんだが、あなたの中ではどうなっているんですか、構想されているんですか。
  349. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) 有事の場合を想定した日本の法制を整備するということに仮になった場合にどういう形になるかという御質問だと思いますけれども、いまの有事立法のあり方については、御承知のとおりいま防衛庁で作業に入っているというか、検討を始めた時点、段階でございまして、まだ私の方へは全然お知らせがないわけで、この段階ではまだ役所として私の方は全然タッチしておりません。防衛庁でせっかく御検討の結果、何らかの総体としてのそれが私の方の頭に浮かぶような時期になれば、その内容を拝見して、それでいまの各法にまたがる、特例なら特例ということになりますか、あるいはそれをまた集大成した一本の法律にするのがいいか、それはそのときによく考えたいと思います。この段階ではまだ申し上げるべき時点ではございません。
  350. 秦豊

    ○秦豊君 なるべくあなたに対する質問をここで集中したいと思いますがね。  あなた、きのうたしか内閣委員会衆議院の方ではこう言われていますか。狭義の交戦権を大胆に肯定されましたね、ところが表現が少し気に入らない、ぼくは表現が。たとえば、あなたこういう慎重な言葉を使っている。海外の国々から見ればとかいう表現で、日本に交戦権があると思われるかもしれない。つまり、第三者に仮託をして大胆なことを表現していらっしゃるんですよ、あなたは。そうじゃなかったですかな。また、第三者に仮託した間接叙法ではなくて、内閣法制局長官真田さんが、狭義の――狭義であろうが広義であろうが、この区分け自体が私非常に問題があると思うんだが、一応百歩譲って、狭義の交戦権であれ、あのように第三者に仮託するんじゃなくて、ダイレクトに直接叙法であなた自身がどう思っていらっしゃるんですか。憲法九条一項、二項との全体的な判断の中で、矛盾も混乱もなく二律背反でもなく逸脱でもなく、なぜ狭義の交戦権が認められるのか、あなた自身はどう思っていらっしゃるんですか。
  351. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) きのうの受田委員に対する私の答弁ぶりについての御指摘だろうと思いますが、ちょうどいい機会だから一言補足させていただきますが、私の発言に関しましてどうも誤解を与えたきらいがあります。それから現に、けさのある新聞では大変誤解に満ちた記事が載っております。  で、私の真意は、受田さんとのやりとりよくごらんいただければおわかり願えると思うんですが、私の真意は、結局、日本の憲法九条の規定もありますけれども、日本の憲法九条のもとにおいても自衛権はまあまあ認められると、これは大体異論のないところなんですね。したがいまして、自衛権があるのに、ただ権利があるあると言ったってこれは始まらないんであって、自衛のために必要な最小限度の実力部隊、組織、つまり自衛力は持てると。また、その自衛権を行使する場合の活動の根拠になる、法律的な評価をすれば権原ですね、それは自衛活動、自衛行動権といいますか、自衛活動権としてこれまた放棄したものでないと。で、一方憲法の九条の二項の後段で交戦権は否認すると言っておりますから、したがいまして、その伝統的な国際法に言う戦争の、戦闘行為といいますか、それを合法化するための権原としての交戦権は、これはもうないというふうにわれわれ見ているんです、否認されていると。ただ受田先生が、交戦権がないと国際法上の戦時国際法の適用はないんじゃないかとかいうふうにおっしゃいましたので、それの誤解を明らかにするために、また現象的には国内で戦闘行為が行われれば、そこで敵の装備、兵器を破壊するとか、敵の兵隊といいますか、人員を殺傷するというようなことも許されるわけですから、それができなきゃ自衛権の行使ができませんから、で、そういうことは国際法上の交戦権の中身にも入っております。ですから、現象的には非常に似ている面がありますから、それでそういう点をとらえまして受田先生が、それじゃ事実上交戦権が非常に制約されたものがあると言ってもいいんですかということをおっしゃいましたから、だからそういう、私がいま先ほど申しましたような、いわゆる第二項で言っている交戦権と、それから自衛行動権との違いがありますよと、そういうことをよく御承知の上でおっしゃっているんだろうということを念を押しまして、それで、それはそうおっしゃって御理解になっても実態は変わらぬということで、それでああいうお答えをしたわけでございまして、私の真意は、やはり前から政府が言っていますように、交戦権は否認していると、しかしその自衛行動権はあるよということなんです。それを、自衛の範囲ならば交戦権があるというふうに端的に言われますと、やはり非常に誤解を与えることになりますので、その点も実は昨日受田先生には私から繰り返し述べておったわけでございまして、どうぞそういう誤解のないようにひとつお聞き取りを願いたいと思います。
  352. 秦豊

    ○秦豊君 真田さんね、あなた自身がちょっと混乱していらっしゃるのですよ。新聞の扱いとか、ある代議士の立場にとか、これも第三者に仮託してはいけない。国際紛争を解決する手段としての交戦権、国際紛争を解決するための武力行使、これは九条一項の方ですよね、それでは日本は明らかに永久に否定している。しかし、自衛のためというあなたの後段の説明は、報道は的確ですよ。いわゆる狭義の部分に該当するあなたの発言だからちっとも間違っていない、ゆがんではいない、誤解ではない、そのとおりじゃありませんか。  それからもう一つは、中曽根総務会長あたりは、東大の五月祭で、たしか五月の下旬だと思ったが、憲法九条はネック中のネックだと。なぜならば、いまの憲法のままであれば戦時国際法の適用を受けられない、日本の第九条でやれば。だから名誉が与えられない、捕虜の扱いも受けられない。だから憲法九条を大胆に改めよと言った。あの人らしくブラフまじりでぶっていらっしゃるのだけれども、それはあなたのきのうの発言によって見事覆ったわけです。つまり、戦時国際法の適用を受けるというのがあなたの法的な解釈の前提だから名誉は保たれるんですよ。中曽根発言はうそです。誤りです。粗雑です。こういうことがあなたの発言でわかった、それだけぼくは鋭くわかった、それだけは。あとは巧みに韜晦していらっしゃるから。ただし一つ聞きたいのは、戦時国際法の適用を受けるための受けざらが要るんですよ、調べてみると。それは、伊藤さんの範囲か竹岡さんの範囲かわかりませんが、ルール・オブ・エンゲージメントと俗称されている交戦法規ですね、これを備えているか備えてないかが最後の判断の基準にされるおそれはないのか、あるいは国際的な慣例はないのか、法制局長官防衛庁と両方伺っておきたい。
  353. 真田秀夫

    説明員真田秀夫君) そのルール・オブ・エンゲージメントというものなんですが、その中身は私よく詳細に存じておりません。また、それがあるかないかによって戦時国際法規の適用があるかないかという決め手になるという話も私よく存じません。いま初めてお聞きしたことでございまして、いずれそれは外務省なりを通じてよく調べてみたいと思います。
  354. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁いかがですか。
  355. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) ちょっといまの点については知りません。ただ、俘虜関係とかああいったものについては知っていますが、いま言われた名前なんぞはちょっと勉強しておりません。
  356. 秦豊

    ○秦豊君 これは、だから法制局と外務省と防衛三者が調べられて回答してください、改めて。いいですね。  それから、その次に防衛出動ですね、きのうの答弁、ぼくの記憶の誤りでなければ、防衛出動下令以前に、いわゆる部隊行動としてはだめであるが、個人の判断では例の刑法の、急迫不正とか、できると言いましたね。あれは私とんでもない答弁だと思いますよ。あれは官房長がなすったんですか、防衛局長ですか、法制局長官ですか。これは私とんでもないという理由を申し上げようと思うのですが、いいですか。隊員個人個人の判断なんて言いますけれども、武器を使うんですよ、場合によっては。隊員というのは訓練が行き届いている場合には隊長の指示を必ず受けます。振り仰ぎます。隊長の判断が加わったという形になるのだから、一人一人がアトランダムに、自由に、各個に撃てというふうなことはないんですよ、火力を集中する、火戦を。そういう場合隊長の判断が加わるんですよ。部隊行動に客観的にはなるんです。だから、あれはその場逃れの答弁にすぎない、実体的ではないと私はあれを読んでそう思ったんですが、しかもそういう解釈をその程度のラフなところにとどめるならば、内局としては大きな怠慢ではないかと私は言いたいんですが、違いますか。
  357. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 御答弁申し上げましたのは、防衛出動が下令される以前に武器を使用することは絶対ないということはないわけでございまして、その場合には、いわゆる防衛出動が下令されたもとにおける部隊行動としての武器の使用ではないということを申し上げたわけでございます。したがいまして、その際に武器は絶対に使用できないかということになりますと、私どもはそうは考えておりませんので、いわゆる正当防衛あるいは緊急避難に該当する範囲内で合理的に武器を使用するということは可能であるというふうに……
  358. 秦豊

    ○秦豊君 部隊としてですか。
  359. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 部隊としてではなく……
  360. 秦豊

    ○秦豊君 個人でしょう。
  361. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) はい。そのように考えているわけでございます。
  362. 秦豊

    ○秦豊君 それは答弁としては理路整然だ、まさに完璧な答弁です。しかし実体的ではない。なぜならば、これを適用してごらんなさい、伊藤さん、大変な混乱が起こりますよ。それで責任をきっぱりとる潔い武人のような隊長であれば別ですが、おれは責任をとらない、優柔不断というような人の場合は混乱がはかり知れない。やってごらんなさい、これを。大変な混乱が起こりますよ。そういう答弁をあなた方はされているんですよ。だから、ここはやっぱり長官、あなたの持論であるシビリアンコントロール、蘆溝橋の再現許すまじ、一発の銃声にもと、あれが正しいんです。やはり防衛出動下令即反撃という明確な一線でないと、下令以前はどうのというような、ああいう被害妄想的な、非実体的な、そういうあり方は私は正すべきではないかと思いますが、長官いかがですか。
  363. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 奇襲というような場面に触れてのお話であろうと思うんですが、私は奇襲というものはあり得ないという考え方を持っております。ですから、ただいまのような論争というものは、またもしあるとしたら、それはないようにするという、奇襲はないようにするという英知をしぼって万全の策を講ずると、こういう考え方でおります。
  364. 秦豊

    ○秦豊君 それはその限りにおいてはいいと思うんですが、あとしばらく時間がありますから、伊藤さん、ちょっと答えていただきたいんですが、航空自衛隊のスクランブル、まだ幸いに86Fから始まって一発も撃っていません。慶賀すべきことです。去年は四百数十回、北から南西航空団までやっぱり四百数十回スクランブルしている。いままでは幸いであった。これは僥幸と言うべきです。  そこで、きのうから伺っていると、領空侵犯のときの、これは何ですか、空幕長の内訓というんですか、木島委員にもお答えになったようだが、内訓というのは、これは扱いはどうなっているんですか、マル秘ですか、機密ですか。
  365. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) これはマル秘になっております。
  366. 秦豊

    ○秦豊君 そうすると、やっぱり国会議員はチェックできないと、見ることさえかなわぬということになりますね。これはしかし、私はやはり航空自衛隊のマル秘の内訓、通達は、やっぱりルール・オブ・エンゲージメントの実質的な一部を構成すると思います。ただ、この場合も、あなたは撃墜も可能だというようなことを答弁されたわけでしょうけれども、この判断というのはパイロット個々が判断をするんですか。それでそのために二十ミリが当たって対象機が撃墜された場合、基地に帰投しますね、そうすると、一応隊長に報告する、警務官の取り調べを受ける。対内的にはそれでよろしい。表の警察関係はどうなるんですか、刑法上の責任をよもや問われることはないんでしょうね。その辺は、責任と、だれが判断するか、これを明確にしてもらいたい。
  367. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) これは昨日も御説明申し上げたわけでございますけれども、平時におきます領空侵犯措置の任務を航空自衛隊は持っているわけでございます。その場合に武器の使用が許されるかどうかという問題でございますが、これをやはり正当防衛、すなわち明らかに攻撃されるような場合、あるいは緊急避難の場合に武器を使用することが可能である。その結果、向こうに当たって落ちるということもあり得るわけでございますけれども、いまお話がございましたように、もちろん警務官の取り調べを受けますし、同時に警察、検察庁の聴取ということも当然あり得るわけでございます。したがいまして、その責任は、結局その正当防衛をやったパイロットにあるということになるわけでございます。
  368. 秦豊

    ○秦豊君 それはおかしいんじゃありませんか。やはり方面隊長とか、撃墜――ファイアーという号令を電波で下した隊長の責任というのはないんですか、あくまで個人ですか。
  369. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) これは刑法に基づきます正当防衛行為によってやるわけでございますから、その責任はそのパイロットにあるわけでございますが、もちろんそういう状況のもとで、いわゆる攻撃の命令を出すといいますか、そういった範囲におきまして実際に正当防衛行為をやったということであるわけでございますから、いわゆる法律的な責任というものが上の方に及ぶということはないと考えております。
  370. 秦豊

    ○秦豊君 これで最後だと思いますが、最後に、そういう問題もやや不透明なんですよね。有事立法、きのうからの答弁の混乱の淡いのがここに出ている、弱いのが。もっとそこをタイトにする必要がある、シビアにする必要があると思いますよ。われわれはもちろん有事立法に強く反対している前提でしか物を言いませんけれども、そのことは要望ですよ、あなたに対する。  最後に、自衛隊法百三条は、防衛出動、七十六条だけなのか、発するところは。七十七条の防衛待機が含まれるのか、それだけを伺っておきたいのと、最後に、長官はかねがね、七月以来、たとえば外人記者クラブあるいは国民政治研究会等々での発言の中で、しばしば、あるいは朝鮮日報の報道もありますが、リパブリック・オブ・チャイナと、中華民国という国名を使っておられて、八月の国民政治の段階ではさっといち早く取り消されたから、撤退作戦きわめて迅速であったんだけれども、これはあなたの中の牢固たる信念というか、国際認識というか、さっきはどなたかの質問に対して、日中はいいことだと、平和友好条約いいことだとおっしゃりながら、一方ではあなたの中に、非常に奥深いところにはやはり中華民国というふうな認識が残っていらして、それが折に触れて触発されて出る、その都度取り消す、あるいは朝鮮日報は誤報を演じたからいま取り消しを求めているとか、こういうことが起こるんで、しかしこのことは、日中批准を控えたまさにこの時期に、国務大臣の一員とされては、やはりその認識が、もしあなたの本来的なものであれば、大変私は穏当を欠くのではないかと思いますので、最後にその点だけの追加をお願いして終わりたいと思います。
  371. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 再々私これは国会でも答弁したりしておるんですが、変幻自在というか、すぐ取り消しをしたというお話でありますが、私は、講演をする中でこれは言い過ぎたという話、また、中華民国という言葉は、私は、何というんですか、台湾と言うべき筋を中華民国と言う、それが潜在的な意識かということでなくて、私、台湾を含む地域は日本にとって重要な地域であるという考え方がいつも頭の中にあるわけであります。時たま台湾と言ってみたり、時たま中華民国と言う、まあ同じところですから。そんなようなことを言って誤解を招くことがあったと思うわけでありますが、本心は、台湾という地域は重要な地域というような意味で申し上げていることでありますから、その点御理解をいただきたいと思います。
  372. 竹岡勝美

    説明員(竹岡勝美君) 自衛隊法百三条「防衛出動時における物資の収用等」、これは明らかに「第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられ、」、これが前提になっております。
  373. 秦豊

    ○秦豊君 ありがとうございました。
  374. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 両調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  375. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま、木島則夫君が委員辞任され、その補欠として井上計君が選任されました。     ―――――――――――――
  376. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事の補欠選任を行いたいと存じます。  理事の選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  377. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に井上計君を指名いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十四分散会