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政府委員(林
忠雄君) ただいまの御指摘の昨年の五月十七日、宮崎市の北消防署の事件でございますが、亡くなられた方は松山さんとおっしゃる方、レンジャー訓練中でございます。事故の概要を申し上げますと、障害突破訓練をやるためにロープブリッジ、綱をきつく張りまして橋みたいなかっこうにして、そこを渡る訓練でございますが、その訓練の場をしつらえようとしてその綱を投げる、これが投げたときに、その綱がこちらの柱か何か異物に当たりましたためにバランスを崩して七メートルから落ちられて、結局不幸にして三日後に亡くなったということでございます。通常、こういう訓練をするには十分安全を
考えなければいけないわけでございまして、安全ネットその他を張ってやるのが常識でもございますが、この場合は訓練中ではなくて、その訓練の場をしつらえようとしておったために、まだ下に安全ネットが張ってなかったという実態であったと存じます。しかし、それにしても、場をしつらえるにしても、先にまず安全ネットから張ってということをすればこの事故は防げた。そういう意味では何と申しますか、その手順に配慮が足りなかったとも言えるわけでございます。
それで転落をされた三日後に死亡をされましたわけでございますが、その後この松山さんに関しましては、事故が五月の十七日でございまして、亡くなられたのが三日後で二十日でございますけれ
ども、二十日に直ちに二階級特進で消防司令補に任命をされ、それで五月の二十四日に消防葬を行いました。
それで、そのあとの金銭的な面と申しますのは、まず正規の退職金が、勤務年数が三年でございましたので、これは言うに足りないが九十七万円余り、それから県の規定によります知事表彰によって見舞い金が百万円、それから市の消防賞じゅつ金が千三百万円、これは最高の額でございます。
消防庁長官の方からこれは報償金で五十万円、それから公務災害
補償金が八百十五万余り、合計二千三百二十九万余りの額を御遺族に対して支給をされておる。これでもちろん人の命のことでございますから十分というわけでもございませんでしょうし、何か最近伺いますと、これに関しまして賠償の訴訟が提起されておるということを伺っておりますが、それはその経過を見たいと
考えております。
それから、こういう事故が起こりましたので、一般的に私の方で、六月二十九日付で消防訓練時における事故防止についてということで、私の方の消防
課長から各都道府県を通じてそれぞれの消防当局に注意を促しておりまして、こういつた事故が起きたことにかんがみ、安全のネットとかカラビナとか訓練直前のこういう命綱の結着
確認とか、幾つか項目を挙げまして、以後こういうことに注意するようにという通達をすでに出しております。
それから、
先ほど先生もおっしゃいましたような議会での和田静夫先生あるいは野田先生、小川先生その他からもいろいろ御注意も受けましたが、その中にこの救助についてはまだ法的なタッチが余りはっきりしてないという面もありましたし、実際の社会的な需要が非常に、こういった社会経済の進歩のためにあちこち進んでおりますので、
現実にはこの救助ということが消防の仕事としてすでに取り上げられ、やっておりますけれ
ども、それに関する法的
措置の明確化と、もう一つはこれに関する一つの基準でございますね、訓練をしたり実施したり実行したりする場合の技術的な基準を消防庁でつくるべきであるという御指摘を数回受けまして、私の方も全く同感でございましたので、研究を重ねまして現在この基準の原案はすでにできております。これをこれから実際にこれらの運営に当たられる第一線の方々その他の御
意見を伺った上で、大体この七月ごろには確定をいたしましてそれぞれの消防当局にお流しすると、こういう予定でおる次第でございます。
それから、御
質問の後段の消防職員の公務による死傷者でございますが、これが一九七五年中のは——いま五十年までの数字がはっきり手元にございませんで、それ以降のものは集計中でございますが、五十年の数字によりますと、合計が、亡くなった方が十人、それから負傷者が二千四百五十人となっております。内訳を簡単に申し上げますと、火災による死者が四人と負傷者が八百五十八人、風水害等の災害による死者が三人、負傷者十八人、救急は死者はございませんが、負傷者が百十八人、これに対して演習訓練によるものが、死者が一人と負傷者が六百六十四人、あとは特別警戒、お祭りのときの警戒とか、あるいは遭難者の救助、その他といったもので死者が二人、それから負傷者が七百九十二人、こういう数字が現在手元に来ております。