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1978-04-26 第84回国会 参議院 地方行政委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十六日(水曜日)    午後一時三十七分開会     —————————————    委員異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      上田  哲君     佐藤 三吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         金井 元彦君     理 事                 夏目 忠雄君                 望月 邦夫君                 志苫  裕君                 神谷信之助君     委 員                 衛藤征士郎君                 金丸 三郎君                 鈴木 正一君                 鍋島 直紹君                 成相 善十君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 野口 忠夫君                 阿部 憲一君                 上林繁次郎君                 向井 長年君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    参考人        横須賀市長    横山 和夫君        神奈川大学教授  渡辺 精一君        成蹊大学助教授  深谷 昌弘君        立命館大学教授  遠藤  晃君        横浜国立大学教        授        宇田川璋仁君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 金井元彦

    委員長金井元彦君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、上田哲君が委員を辞任され、その補欠として佐藤三吾君が選任されました。     —————————————
  3. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のために、参考人として横須賀市長横山和夫君、神奈川大学教授渡辺精一君、成績大学助教授深谷昌弘君、立命館大学教授遠藤晃君、横浜国立大学教授宇田川璋仁君、以上五名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中のところ御出席をいただきまして大変ありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、本案審査参考にいたしたいと存じます。  本日の議事の進め方につきましては、まず、皆様方からお一人十五分程度でそれぞれ御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず横山参考人お願いをいたします。
  4. 横山和夫

    参考人横山和夫君) ただいま御紹介をいただきました横須賀市長横山和夫でございます。  参議院地方行政委員会の諸先生方には、日ごろ地方行財政、広く地方自治行政の諸問題につきまして特段の御配慮をいただいておりますことを、この機会をかりまして心から厚く御礼を申し上げます。  本日、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして意見を申し述べる機会をお与えいただきましたので、都市行財政に直接携わっておる者の立場から、かつ全国市長会を代表いたしまして所見を申し述べさしていただきます。  昭和五十三年度地方財政計画は、その総額が三十四兆三千三百九十六億円でありまして、この中で地方財政不足額は三兆五百億円となっておるのでありますが、これに対します地方財政対策等を骨子とする本改正法案につきましては、わが国におきます経済環境、国、地方を通ずる財政状況がきわめて窮迫をいたしております状況等を勘案いたしますとき、当面やむを得ない措置内容であり、基本的に賛意を表するものであります。特に、交付税及び譲与税配付金特別会計借入金に対し、後年度その償還額の二分の一を臨時地方特例交付金として一般会計から交付する旨を、そして同じ措置昭和五十年度、五十一年度借入金についても講ずる旨をこのたびの法改正法律上明文化されますことは、当面の対応策といたしまして適切妥当な措置と言わざるを得ないのであります。したがいまして、本改正案に対し賛意を表するものであります。  思いますに、地方財政の実態は、昭和五十年度以降毎年度巨額の財政不足を生じ、財政構造の悪化が著しい実情にあります。しかもさき政府が策定されましたいわゆる地方財政試算によりますと、今後引き続き大幅な財源不足が見込まれ、今後において抜本的な地方税財政制度確立が早急に望まれるものと考えます。したがいまして、今後における問題点として地方自治確立、進展のために御配慮を賜りたいきわめて多くのものがあるのでありますが、時間の制約もありますので幾つかの点にしぼって申し述べさせていただきます。  第一は、都市税財源拡充強化であります。本来地方自治体は、その行政運営に必要な経費住民自身負担する租税によって賄うことが望ましいと考えます。しかし実情経済情勢の激変に伴い、地方財政なかんずく都市財政はその財政需要の増大に反比例して税の自然増収に期待できない大変厳しい状況下にあります。歳入構造がますます悪化することが予測されるのであります。その結果、ほとんどの自治体租税収入によって行政費を賄い切れず、交付税に依存しております。  横須賀市の例で大変恐縮でございますが、昭和五十三年度の当初予算におきまして一般会計総額は五百十四億余円でありますが、そのうち歳入地方交付税収入を二十八億円見込んでおり、その構成比は五・四%となっておるのであります。大小の差はありましょうが、多くの自治体がこのような現象下にあるものと存じます。これはもとより不況による税収の減に大きい原因があることは否めませんが、同時に根本的に地方税制度自体に問題があるものと思われます。したがいまして、今後地方自主独立税源拡充強化につき御配慮をいただきたいと思うのであります。  第二は、前述申し上げました税源確保関連を持つものでありますが、現実地方交付税が果たしております機能にかんがみまして、その地方交付税総額確保することであります。すなわち地方税拡充強化いたしましても、税源大都市等それに恵まれたところに偏在する実情にありますので、税源に乏しい自治体行政水準を保障するためには、どうしても地方交付税機能によらなければならぬ現状にありますから、したがいまして、この充実を図る必要があると考えるのであります。  ところで、地方交付税法第六条の三第二項によりますと、引き続き財源不足が生じました場合には、地方行財政制度改正または交付税率の変更を行うものとする旨が規定をされております。昭和五十年度以来毎年度おおむね二兆円を超す財源不足を余儀なくされております実情は、まさに法の言うところの条件に該当する事態にあると言うべきだと存じます。したがいまして、制度改正または交付税率引き上げが必要と思われます。  このたび交付税特別会計借入金の二分の一を一般会計で補てんするという制度化を図られましたこと、また五十年度以来の借り入れ分も同様の措置がとられるということになっておりますことなどは、前述いたしました事態に対応する制度改正と理解をいたし、また、これは実質的な交付税率引き上げ措置に相当するものと考えまして、これを評価するものであります。しかしながら、これはどこまでも諸般の情勢考慮をいたしまして、現時点措置としてやむを得ぬものと評価するにとどまり、決して抜本的な制度改正とは言い得ません。わが国経済財政現状は、国自体が約十一兆円近い公債うち特例公債が約五兆円という状況にあり、きわめて困難な事態にあることを承知いたしておるがゆえの評価でありまして、地方自治体行財政実情及び本質に立ち返って、今後に思いをいたしますとき、何としても早急に前述の地方税財源確保とあわせて交付税制度について税率引き上げ国税三税のほかに交付税目拡充等を含めた抜本的な改正お願いせざるを得ないのであります心なお、引き続いて都市的財政需要に即応した基準財政需要額算定強化につきましても考慮願いたいと存じております。  第三に、地方債について申し述べます。横須賀市の実情を御説明申し上げますと、昭和五十三年度一般会計予算さきにも申し述べましたが、五百十四億余の中におきまして、歳入上市債は約五十億円でありまして、その構成比は九・八%となっております。一方歳出面におきます公債費は四・四%となっておるのであります。このような状況は、全国都市の中ではむしろ良好な部類に属するかと存じますが、一般的には地方債の累増は将来の地方財政硬直化に大きく影響するという不安があります。すなわち御承知のごとく、昭和五十年度以降、地方財源不足に対しましてそのおよそ半分は地方債によって補てんする制度がとられており、その元利償還については、今回の地方交付税法改正でも五十二年度発行の地方税減収補てん債財源対策債、国の補正予算に伴い発行された地方債元利償還金基準財政需要額に算入するという配意がなされており、これは適切妥当なことと賛意を表しますが、しかしこのことは、結局地方交付税特別会計において後年度にそれを負担することになろうかと存じますので、その意味においても交付税総額拡充措置が必須と考えられます。  なお、起債、特に縁故債につきましては、多くの市町村ではこれを容易に引き受けてもらえる体制が欲しい実情にありますので、完全消化長期低利資金確保のために、今年度は幸いに公営企業金融公庫融資対象事業として新たに三事業、すなわち臨時地方道整備事業臨時河川整備事業及び臨時高等学校整備事業でありますが、これらを対象とするよう拡大をされておりますことはまことに感謝にたえないのでありますが、前段申しましたような意味合いにおいてさらに拡大されますことを望むものでございます。  以上、基本的なものにつきまして申し述べたのでありますが、さらに地方超過負担の解消を図ることにつきましても格段の御配意お願いいたしたいことを特につけ加えさしていただきます。  これまた横須賀市の例で大変恐縮でございますが、しかも言うところの超過負担のとらえ方は必ずしも正確を期しがたい要素を持っておりますが、仮に昭和五十一年度決算におきます本市の超過負担の調査によりますと、受託事業が四千五百万円余であります。事務事業が十億六千万円余、建設事業が二十八億五千万円余でありまして、その合計は三十九億五千六百万円余と、こういうことになっております。  これを原因別に見てまいりますと、その内訳は、単価差によりますものが十三億四千万円余、数量差等によりますものが二十六億一千五百万円余であります。単価差の主なるものといたしましては、保育所運営費を例にとって申し上げますと二億一千六百万円の超過負担数量差等の主なものとして学校建設費を例にとって申し上げますと十二億一千四百万円の超過負担、こういうことになっておるのであります。  最後に、地方交付税等改正法案は、現時点におきますところの地方財政対策といたしまして適切妥当なものとし、賛意を表しますので、速やかに法案成立を見ますよう、何とぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。  地方自治体にとりまして四月という月は資金繰り上非常に苦しいときであります。わが市に例をとってみましても、歳入の面では、固定資産税現行交付税概算交付分使用料等であるのに対しまして、歳出は、人件費生保扶助費貸付金需要費等であり、差し引き八億円を超す歳出の増となりまして、その資金不足に苦労をいたしておる状況でございます。このように、市町村にとりまして四月は、一時借り入れ等による資金繰りのため、きわめて苦しい月となっておるわけであります。全国市長会試算をしたところによりますと、改正法に基づく交付税特別会計借入金及び臨時地方特例交付金に係る額四千百七十二億円が交付をされないで、これを全額一時借入金で調達する、こういたしますと、その利子負担は一日約八千万円に達する、かように聞かされておるのであります。このようなために、景気対策のための公共事業の促進あるいは住民福祉行政執行等におきまして多大の支障を来すことにもなりかねない実情にありますので、この際、一日も速やかに法案成立をし、四月中に現金が支給をされますように、たとえではございませんが、干天に慈雨を待つ気持ちとでも申しますか、速やかなる措置お願いをいたす次第でございます。  何とぞよろしくお願いを申し上げまして、公述を終わらしていただきます。
  5. 金井元彦

    委員長金井元彦君) ありがとうございました。  それでは次に渡辺参考人お願いいたします。
  6. 渡辺精一

    参考人渡辺精一君) 渡辺でございます。  今回の法改正案昭和五十三年度地方財政対策にかかわる部分がかなり多いというふうに承知いたしております。そこで、五十三年度地方財政対策についての私見を申し上げながら、なるべくは法改正案関連させつつ、二、三の問題提示を試みて、責めをふさがせていただきたい、そういうふうに思います。  五十三年度国家予算は、実質経済成長率七%それから経済収支六十億ドルの黒字という政府経済見通しのもとに策定されたわけでございます。臨時特例大型予算と俗に言われておりますけれども、そこに景気を浮揚させるねらいがあるということはよくわかるところであります。五十三年度地方財政対策も基本的にはこの方針を貫いているというふうに考えられます。  たとえば、地方財政対策を踏まえて策定された昭和五十二年度地方財政計画策定方針では、その冒頭で、昭和五十三年度においては、現下の厳しい経済財政状況のもとで、国と同一の基調により云々というふうに述べられていることからも察することができるわけであります。  こうして策定された五十三年度地方財政対策を貫く最も特徴的な柱は、私の思うところでは、建設地方債増発公共投資を大幅に増額するということにあろうかと思われます。この柱を中心にしてその他の対策が講じられているわけであります。けれども、この五十三年度地方財政対策には、地方行財政運営のあり方という点から見ますと、そこに幾つかの問題があるやに感ぜられます。時間の関係上、大きく二つに分けてその問題を指摘してみたいというふうに思うわけであります。  第一の問題は、地方公共団体行財政運営において次第に自主性が損なわれるような形になりつつあるということであります。ここには二つ含意がございます。  その一つは、地方行財政運営が国の経済政策によって左右され過ぎるという問題であります。たとえば建設地方債増発も、公共投資増額も、ともに大幅なものであるだけに、果たして消化し切れるかという問題がすでに現実の問題となってきております。地方債に一例を引くならば、消化が可能かという問題は、単に財政力の弱い地方公共団体にとっての問題であるというにはとどまらずに、すべての地方公共団体に共通した問題もまたそこにあると思われるわけです。すなわち、現在は、民間資金需要が低迷しておりますためにいまのところは何とか消化されているようでありますけれども、しかし不安材料幾つもございます。たとえば、もしも為替レート円安化傾向をたどるようなときが到来したとするならば、短資が海外に流出してしまう。したがって、買い需要の減少が起こるということが予想されます。さらには補正予算編成に伴って公定歩合の一層の引き下げがもしも行われるようなときが来たとしますならば、長期債利回り低下を引き起こしまして、地方債需要が減退いたします。さらにはまた、資金運用部手持ち国債、恐らく現在八兆円ほどであろうかと思われますが、それがもし売却されるようなことにでもなりますと、これもまた地方債に対する圧迫要因となるわけであります。国の経済政策が短兵急に、しかも露骨な形で地方行財政に介入することによって、無用の、そして地方公共団体によっては深刻な問題を引き起こすという典型的な一例がここに見られるわけであります。もとより地方行財政は国の経済政策と完全に独立して運用されることはあり得ませんし、またそうあるべきではない、私もそのようには考えます。しかし、現状は国の政策に左右され過ぎているというふうに私は考えるわけであります。  自主性が損なわれるということの含意のその二は、国の地方公共団体行財政運営に対するコントロールがますます強化されてきつつあるというふうに考えるわけであります。公共投資の大幅な増額は、当然に国庫補助負担金の大幅な増加をもたらします。また地方債増発は、これまた当然に起債許可制度の活用の場を広げます。両者機能される場の拡大は、そのままコントロール範域拡大を意味いたします。この問題は、裏返して言えば、一般財源の地位の低下ということになります。ここに一般財源失地回復という課題が出てくるわけでありますが、ここで注意したいことは、一般財源の重要な一つである地方交付税でさえがコントロール強化に重要な一役を買っているということであります。たとえば、基準財政需要額算定要素である測定単位単位費用、主としては単位費用の多寡によって地方公共団体行政内容が左右される結果になるわけであります。   〔委員長退席理事志苫裕着席〕  国のコントロールがどのような形で一体あらわれるか。たとえば地方財政計画であるとか、あるいは地方債計画によって幾つかの指標を調べてみます。あるいは地方交付税単位費用事業によってどの程度アップに違いがあるかということを調べてみます。以上の指標を総合的に調べてまいりますと、一言で申し上げれば、五十三年度地方財政対策は、その公共投資の面に関する限り道路に最重点が置かれ、逆に生活環境厚生労働施設は軽視されているというふうに私は思わざるを得ないわけであります。ちなみに言えば、単位費用アップ生活関連行政の場合にこそ高められるべきではないかと、そのように考えるわけであります。こうして地方公共団体が自主的に策定している計画が、ともすると実際上の意義をそれほどには持てなくなってしまうのではないかという懸念が残るのであります。  さて、五十三年度地方財政計画が持つ第二の問題は、地方公共団体財政運営健全性が損われるという傾向が強まってきているということであります。いま一例として、大量に行われる公共投資経費負担内訳を五十三年度地方財政計画によって見てみますと、地方債による負担昭和五十年度計画までは一〇%台であったにとどまるのに、五十一年度からは一躍三〇%台となりました。これは五十年度以降、財源不足の一部を地方債で埋めるような地方財政対策が行われてきていることの必然的な結果であります。その結果どういう問題が起こったか。一つは、地方債依存度が高まったということであります。すなわち昭和四十年代の四%ないし八%から五十年代には二けたに乗せて、ついに五十三年度には一一・七%までにもふえました。  その二つ目は、一般財源に対する公債費割合が、五十年度の七・一%から五十三年度の一一・八%までふえたわけであります。大体実際の決算結果は、計画を上回るのがいままでの例となっております。その点を勘案するならば、五十三年度の一一・八%というのは、決算の時点では一二、四%ぐらいになるのではないかというふうに予測されるわけであります。しかもこの数字は、少なくもここ近い将来までの間はますますふえるはずだと思われます。ここに政府財政対策の結果、はしなくも政府が望ましくないと指摘した財政硬直化が進んでしまうという皮肉な現象が起こってくることになるわけであります。  以上、私は五十三年度地方財政対策との関連で、自主性並び健全性二つの見地から問題点を提示いたしました。重要なことは、それらの問題の根底に横たわるものは何かということであろうかと思われます。それを明らかにすることによって真に望まれるべき地方財政対策とはいかなるものであるかという点についての展望も開けることになろうかと思われます。それは構造的な問題であるというのが私のとりあえずの答えであります。ただし、構造的だということには二つ含意があります。一つは、地方税財政構造としての問題であるという含意であり、もう一つは、経済の仕組みと動きとによって根づく問題であるということであります。   〔理事志苫裕退席委員長着席〕 本席では、第二の含意についてはそれほど関連がございません。時間の制約もございますので触れないことにいたしまして、以下残された時間を第一の含意にしぼってもう少し私の考えを敷衍申し上げたいと思います。地方税財政構造としての問題だという点に着目するならば、すぐに頭に思い浮かぶ問題点を指摘することができます。それは一般財源充実強化を図る必要があるのではないかということであります。しかし、単に充実強化、量的な強化を図るということだけでなく、そこにはあわせて考慮されなければならない幾つかの重要な問題もまた含まれております。その点につきまして、地方税地方交付税とに分けて、簡単に私の考えを申し上げたいと思います。  まず地方税でございますが、地方税収量的割合が少な過ぎるということ、したがってこれをふやさなければならないということ、これは私は当然に要請されてよい課題であるというふうに思います。したがって、税源を国、地方間で配分し直すことが課題となりますが、その場合、注意されるべきことは、現在の道府県税が全体として景気感受性が高いが、しかし市町村税は、全体としては逆に景気感受性が低いという欠陥を内蔵しております。税源の配分し直しに当たっては、両者欠陥をそれぞれある程度のところまであわせて埋め合わすことができるような考慮を加えながら行われるべきだと、そのように考えるわけであります。  次に、もう一つ一般財源である地方交付税についてはどうでありましょうか。ここでもまた地方交付税増額するということは強く要請されてしかるべき課題だと思われます。端的に申し上げるならば、現行交付税率は大幅に引き上げられるべきだと私は思うわけであります。なぜなら、最後交付税率改定されました昭和四十一年度以来、地方公共団体財政需要もきわめて大幅に拡大してきておりますし、国税政策減税に伴う地方公共団体減収もふえてきているからであります。昭和四十一年度までは、これら二つ理由に基づいて何回かにわたった交付税率改定が行われてまいりました。昭和四十一年度以降、同じ理由に基づいて交付税率改定が行われなくてよいということにはならないわけであります。ただし、リンク対象たる国税三税のうちの所得税法人税はともに景気感受性が強いので対象税目国税全体に広げることも考えられてよいと思われます。さらにはまた、交付団体の数が九〇%を超えるほど多くに上っていること、及び交付税配分算定財政調整制度として持つべき本来の機能から外れるものが要素として加わるようになってきているということ、こういった問題もまたございますので、制度全体を見直す必要があるだろうと思われます。なおつけ加えて申し上げるならば、五十年度以降の財源対策債の元金もしくは元利償還は、これを後年度地方交付税によって行うのではなく、新たに国の一般会計負担とすべきであろうというふうに考えます。  さて、一般財源についての問題を離れまして、次に指摘できることは、国庫補助負担金は原則として整理されるべきことということであります。  以上、三つの点について私の考えを要約して申し上げましたが、以上の三点は相互に関連を持ちますので、制度の改革に当たっては十分に関連性を考慮しながら行われる必要があるというふうに考えます。  最後に、地方債について一言申し上げます。ここでの中心的課題は、起債の原則的自由化であります。これまで起債許可制度が設けられてきていた理由として、国はおよそ三つのものを掲げてきているのが常でございました。私の見るところでは、そのうち最も重要な理由だと思われますのは、公共と民間との間の資金配分を許可制度によってコントロールする必要があるということであろうと思われます。しかし、公私相互間の資金配分というのは、地方債の発行条件を公社債市場の実勢に近づける方向で政策的にコントロールすることによって、公社債市場がおのずから持つ資金配分機能にゆだねるならば、起債許可制度は事実上その主たる存在意義を失うことになるはずである、私はこのように考えます。  現にそのような客観的条件は、わずかずつながらではありますが、形成されつつあるように見受けられるわけであります。ただし、その場合、金利が高くなりますと地方公共団体の金利負担が高まりますので、一定の条件のもとで、一定範囲の利差補給を国は地方公共団体に対して行う必要がある。そういった前提はぜひ必要になるだろうというふうに考えるわけであります。  以上で私の考えの御提示を終わりますが、以上の諸改革を総合的に行うならば、さきに述べた諸問題はおのずと解決されるはずである、私はそのように考えます。  構造的問題だということは、高度成長期には個別問題が具体的な形で表面化しなかったにすぎず、潜在的には常に問題を内包していたということであると私は考えます。  低成長がすでに数年にわたって続いている今日、したがって、問題が数年にわたって表面化している今日こそ、本格的な制度改革の好機であるというふうに思うわけであります。その意味では、自治・大蔵両大臣が五十三年度地方財政対策に関して、昨年十二月二十三日に交した覚書の中で何ヵ所かにわたって、地方財政が好転し、あるいは地方税財政制度の基本的改正が行われるまでの間の対策であると述べて、五十三年度地方財政対策が暫定的対策にすぎないことをみずから認め、しかもなお、本格的制度改革に着手したと伝えられていないことはまことに残念なことであるというふうに思わざるを得ないわけであります。  以上で終わります。
  7. 金井元彦

    委員長金井元彦君) ありがとうございました。  それでは深谷参考人お願いいたします。
  8. 深谷昌弘

    参考人深谷昌弘君) 成蹊大学の深谷でございます。  ごらんのように、私は若輩者でありますし、また学問的にもまだまだ未熟でありまして、しかも、このような場で意見を述べるという経験もこれまでございません。それでお聞き苦しい点もあるかと思いますが、しばらく私の意見をしんぼうしてお聞き願いたいと思います。  私は、今回の改正案における主な改正点というのは、次の二点であると理解しております。  まず第一は、交付税及び譲与税配付金特別会計の借り入れに関してのものであります。内容は、借入純増加額の二分の一を当該借入金をした年度以後の年度臨時地方特例交付金として一般会計から繰り入れるというものです。ただし、この措置は当分の間とされています。この当分の間という意味は、先ほど渡辺参考人から出ましたように、大蔵・自治両大臣の取り交わしました覚書を敷衍しますと、地方財政が好転し、あるいは地方税財政制度の基本的改正が行われるまでの間と、こういうふうに解釈されます。  それからもう一つの主要な改正点は、公営企業金融公庫融資対象事業に関してのものであります。すなわち普通会計における三事業を融資対象として認めるというものであります。で、これは従来なされていなかった普通会計への融資に、いわば端緒を今回開いたというふうに私は理解いたします。  で、以下、私の意見は、この二つの点について私なりの私見を述べさせていただきたいと思います。  大きく分けまして、以下三つの観点から私の意見を述べたいと思います。  最初は、まずこれらの改正、諸施策の必要をもたらしたマクロ経済的な背景、そして財政状況、そういうものについて私がどのように理解しているかということ、これが第一です。  それから第二は、今回の施策がいわば暫定的な施策であると、性格的にはそのようにとられますので、暫定的施策として私はどう評価するかという点であります。  それから第三番目は、暫定的とは言いながら、それがやはりある意味で制度改正でありますから、制度というものはある程度継続すると見られます。そうした場合に、中長期的な視点から問題点はないかということが出てまいりますので、中長期的な視点から問題点があるかどうかということに関して、三番目の最後の問題として触れたいと思います。  改正案の暫定的な性格としての評価とそれから中長期的な評価に入る前に、まず、これらの諸施策がなぜ必要とされるに至ったかということに関する私なりの理解を簡単に述べておきたいと思います。  まず、マクロ経済的な側面に関して申し上げますと、第一に、中長期的には、高度成長路線から安定成長路線への、いわば経済の進路のシフトダウンが生じているということ。それから第二に、景気変動という、先ほどの成長路線のいわば中長期的な問題よりは、やや短期な局面の問題となるわけですが、オイルショックあるいは円高、そういった事柄による不況が現在発生している。この二つがマクロ経済の面では指摘されるわけです。  すなわち、中長期の路線のシフトダウンと、それから景気の落ち込み、この二つが重なって発生している。そのために不況は長引き、また深刻化しており、またさらに、マクロ経済は今後もなかなか立ち直れない状況にあると見られているわけです。  こうしたマクロ経済状況に対して、財政状況はそれではどうか。  まず第一に、国、地方ともに大幅に税収が落ち込んでいる。こういった経済状況を反映して、国、地方ともに大幅に税収が落ち込んでいる。それから第二に、国、地方とも歳出需要拡大傾向は、高度成長期からやはりまだ継続している。それから第三に、その結果として、国、地方とも深刻な財源難に陥っている。しかも、その改善はこのままでは当分の間見込めそうもない。このことは、大蔵省あるいは自治省から発表されております国、地方財政収支試算でも明らかであります。すなわち現行の財政制度、税制度が維持された場合に財政収支がどうなるかというケースを見れば、この財源難が当分の間続いていきそうだという予想がなされているわけです。それから四番目に、財政機能としては、これは教科書的でありますが、資源配分の機能。すなわち公的財サービスの供給、第二に所得再分配、第三に安定成長——フィスカルポリシーと言いかえてもいいかと思いますが、この三つの機能が挙げられておりますが、このうち地方は主として資源配分、中でも地域的な公共財サービスに責任を持つべきものであると私は考えております。所得再分配、安定成長、そして国家的な規模での公共財サービス、それは国の責任と考えております。目下の不況期においては、フィスカルポリシーの要請上、減税、歳出増などが必要とされているわけであります。  次の点は、フィスカルポリシーは、基本的には国の責任とはいえ、現在その政策手段としては公共投資が依然として大きな比重を占めざるを得ない。そういう現在のわが国財政制度にあっては、やはり地方財政の協力が必要不可欠となっていると言えるかと思います。  最後に、このような状況のもとで地方財政税収の落ち込み、そしてフィスカルポリシーの要請という二重のパンチを受けていわばダウンしかけていると私は考えます。しかも、前に申しましたように、このダウン寸前のグロッキー状態というのは放置されていれば容易に回復しそうもない、このように私は見ているわけであります。  以上述べたような状況の中で、今回の改正案が提出されている、そのように私は認識いたしております。  そこで、以下この改正案の私なりの評価を述べたいと思うのですが、今回の提案は、交付税特会借り入れについては「当分の間」という形容詞がはっきりついておりますし、また公庫の融資対象拡大にしても、普通会計が必ずしもタブーではないということを示したわけではありますが、しかしその融資対象事業も臨時事業とされていて、必ずしも恒久化されるものとは限られていないわけであります。したがって、両者ともやはり暫定的な性格のものであると言わざるを得ないと思います。  さて、暫定的な施策として見た場合にどうであろうかということなのでありますが、その場合に二つのことを考える必要があると思います。  まず、現在の地方財政の困難の度合いというものがどれほどのものであろうかということでありますが、この困難の度合いは、フィスカルポリシーの要請に支障を来すという、それだけのことではなくて、やはり地域的公共財サービスの確保も困難になっている、そういう状況にあると私は考えます。たとえば五十三年度におきましては、一兆三千五百億円の地方債が財源対策のために増発されております。これはやはり単なるフィスカルポリシーの要請に支障を来すというだけでなく、地域的公共財サービスという地方財政が第一義的に果たすべき責任の個所においても、やはり困難を来している、そういう状況にある一つのあらわれではないかと思います。こうした困難な状況は、歳出の合理化はもちろん必要ではありますけれども、しかしそれで乗り切れるものではないと考えられます。  第二として、何よりもまず公共財サービスの確保と、それから不況からの脱出ということが目下の急務であるとすれば、そしてこの困難が当分継続するとすれば、交付税確保と、それから地方債の発行の円滑化はやはり不可欠であろうと考えられます。したがいまして、「当分の間」という括弧つきではありますが、それにめどをつけたという今回の提案はそれなりに私は高く評価し得ると考えています。しかしながら、このそれなりに高く評価し得るという意味は、こういう困難な状態にあってめどをつけたという意味と、もう一つは、この提案が暫定的だからこそ評価できるという意味が含まれております。すなわち中長期的な観点から考えますと、以下私は国、地方をあわせての財政制度の抜本的な改革がいま必要になっていると考えるわけですが、その抜本的な改革の方向が現在まだ確定しておりません。そういう中にあっては暫定的な施策だからこそ意味がある。そういう国、地方あわせた全体としての財政制度のあり方が確立していない状態においては、ある一定の方向だけを地方財政制度においてとってしまうということにはやはり問題がある。したがって、そういった抜本的な方向が確立されるまでの暫定という意味においてこそ評価できる。そういう意味もあるということであります。  最後に、中長期的な視点からの問題点を申し述べたいと思いますが、今回の提案を暫定的とみなした場合に、それなりに高く評価し得るということは申し上げたとおりなのですが、中長期の観点からはやはり問題が残ります。以下では幾つか気づいた点を指摘してみたいと思います。  まず、中長期的な視点から問題を考えてみるというときの、中長期的な前提条件として私がどのようなことを考えているかと申しますと、まず第一に税収でありますが、税収については成長路線のシフトダウンによってかつてのような大幅な伸長はこのままでは期待できないと考えております。それから歳出面につきましては、高度成長期には公共投資がどちらかというと、景気抑制の手段として使われる傾向があったという関係もありまして、依然として社会資本整備が立ちおくれていると考えております。また各省での整備計画も、昨今の財源難から大幅なぺースダウンを強いられる傾向にあったことは御承知のとおりかと思います。  私も地方財政の長期展望に関する研究作業をいたした経験がありますが、そこで可能な地方財政の投資量はどれぐらいになるであろうかという試算をした経験がございますが、やはり財源的に見ますと、これまでの十年計画、五ヵ年計画といった諸計画が大幅にぺースダウンせざるを得ないというのが現下の状況だというふうに、その試算の中でも結果が出ております。  それからもう一つ、社会福祉的な支出の需要についてはどうかと申しますと、高度成長期における自然増収に頼った安易な拡大ということについては、現在反省が求められているわけですが、しかしながら、今後人口老齢化が急速に進む、あるいは核家族化が進んでいくだろうといったファクターを考えますと、これらはやはり社会福祉的な支出需要拡大させる基調を持っておりますから、この福祉的な支出需要拡大基調というのは今後も変わらないであろうと私は考えております。  したがって、「当分の間」という括弧つきの表現がありますが、その「当分の間」が解消するケースとしての財政の好転による解消というのは私は望みがたいと考えております。税負担率の引き上げを含む税財政制度の基本的な改正が国、地方ともに必要と思われるわけであります。このようなことを私はまず中長期的な視点の前提条件として考えております。  そのときに、次に、安定成長路線に即した中長期の税財政制度が必要だということを申し述べたいと思います。  現在の交付税制度及び地方行財政制度は、高度成長期にはある程度うまく機能してきたわけですが、現行制度が果たして安定成長路線の上でうまく機能し得るかどうか、うまく機能しない可能性があると考えます。たとえばその徴候として、国の財政においては建設公債主義が破綻いたしました。それから地方では今回の提案が行われております。こういったことはやはり高度成長期に機能していた国、地方財政制度が安定成長路線の上でうまくいかないかもしれないということの徴候であろうと考えます。地方税財政の基本的改正ということも全体の税財政制度のあり方の一環として私は考えられる必要があると思います。で、新しい全体の税財政制度について要求される幾つかの必要な性格というものが考えられるわけですが、時間の関係もありますので、二点だけ私は指摘したいと思います。  まず一つは、税負担率は全体として引き上げられるであろうということ、そのような制度の改革になるであろう。第二番目として、景気調整をより的確に行い得るような制度であると、これが必要であろうかと思います。で、実質成長率が高いときは経済の少しの変動というのは大目に見られるわけですが、この実質成長率が低くなりますと、少しの変動でもインフレが激化するとか、あるいは不況感が強まるといった可能性があるわけです。そうしてまた、現在の公共投資の増減による景気調整の効果が弱まってきたのではないかというような問題点もありまして、こうした景気調整をより的確に行い得るような制度になることということが一つ課題であろうかと考えます。  で、そのような点を念頭に置きまして、中長期的な視点から地方税財政制度のあり方ということに私の気づいた点だけを指摘しておきたいと思います。  で、まず第一点は、地方財政の借り入れについてでありますが、国の借り入れの場合、マクロ経済全体の貯蓄投資バランスを配慮しなきゃならないといったことも必要でありましょうが、地方についてはどの程度が借り入れとして妥当なものだろうということがやはり考えられる必要があると思います。で、私の私見では、投資的経費の範囲、つまり建設公債主義が恐らく地方の場合の借り入れを許容する妥当な限度ではなかろうかと、せいぜいそこが上限ではなかろうかというふうに考えます。で、特別会計の借り入れあるいは地方債増発などで投資的な経費を上回るような借り入れが長期的にも行われるとすれば問題ではなかろうかというふうに考えます。  それから第二点は、渡辺参考人も申されましたが、地方財政の自立性についてであります。特別会計借り入れの増大、それから地方債依存度の上昇、こういった現象はいまの制度のもとでは、これらの総枠の決定が、いわば中央に制約されておるわけですから、そうである以上、三税の一定率という地方交付税率の引き上げよりも、やはり自立性を低める可能性は強いかもじれないと考えます。したがって、抜本的財政制度改正のめどが立たない現状では仕方ないとしても、余り長期にわたってこの制度が維持されるのは問題ではなかろうかというふうに考えております。で、地方財政がどの程度自立性を持つのが適当であるかということに関しては、今後大いに議論される必要があるわけですが、しかし今後のわが国状況考えますと、地域格差は次第に縮小する傾向にありますし、それから人口移動の緩慢化が生じてきております。こういった今後の傾向を前提に考えますと、中央政府による強力な調整の必要性というものは長期的に低下していくだろうと考えます。また、定住圏構想といったような考え方に見られますように、人々が地域社会に定住するという傾向が次第に強くなってまいりますと、やはりみずからの居住地域のあり方の決定に参加したいと、それぞれが参加したいという意欲も高まろうかと思います。したがって、私としてはいまよりはどの程度かは、今後大いに議論の余地はありますが、いまよりはやはり地方の自立性を高めるのが長期的な方向だと考えております。で、その点から考えますと、単独事業のウエートが、ここに地方財政白書がありますが、そこで普通建設事業費の推移という図がありますが、それによりますと、昭和四十一年度から五十一年度まで単独事業費のウエートが歳出決算額の中で占める比率ですね、これがどのように推移してきたかということが図に描かれているわけですが、それで見ますと、昭和四十九年度までは歳出決算額に占める単独事業費のウエートというのが高まっております。ところが、五十年、五十一年度に至ってウエートは実は昭和四十一年度のウエートよりも下がっております。で、単独事業費が果たして自立性の指標として適当であるかどうかは別としまして、地方のどの程度裁量の余地があったかを示す一つ指標にはなろうかと思います。それが現在ウエートが低まってきているということは気になるところであります。  で、五十三年度は単独事業費の増加率も非常に高いものになっておりますけれども、これは景気対策の観点からこのようにされたわけであって、決して恒久的なものではないわけです。で、私自身は地方の自立性ということに関しましては、ナショナルミニマム以上は地方の裁量に任せる。そうして税負担も、地方自身がそれに責任を持つということが理想ではないかというふうに考えております。これは財政民主主義の理念から申しましても、それから住民の選好は住民がよく知っているという資源配分の効率性の観点から見ましても、こういう自立性をある程度高めるということが私は必要だと考えております。  それから第三番目としては、少しいままで申したこととこんがらがるところがあるかと思いますが、景気調整への地方の協力というのは強めざるを得ない。一方では地方の自立性を高めよと言い、一方では景気調整に対しては、地方ももっと協力を進めなければならないというのは、一見矛盾しておるように思えますが、私は自立的な地方財政計画、資源の長期的な配分計画と矛盾しないようなシステムが必要であるというふうに考えております。で、それがないと、合理的、効率的な財政運営もまた破綻を来すということであります。  これまでの経験から申しますと、景気調整の必要によって公共投資がしょっちゅうフラクチュエートして、それが長期的な必要な資源配分にかなっているかどうかということが無視されるという傾向にあったわけです。それであってはならないわけです。そういう長期的な資源配分の計画と矛盾しないような景気調整のシステムが私は必要だというふうに考えます。たとえば地方の投資を、景気変動に応じて調整する地方の投資調整基金のような構想が私は考えられてもいいのではないかと思います。それで、長期的には、中央政府の投資が長期の計画に沿った形で実現されていく。しかしタイミングその他に関しては景気の変動に合わせた要請に国に対しても協力をしていく、そういうようなことが考えられてよいのではないかというふうに考えております。  で、以上のような私の気がつきました点だけを指摘して、私の意見を終わりたいと思います。  で、このように成長路線の変更と、その中での税財政制度のあり方という基礎からの検討が現在必要な事態だと私は考えております。そのような中において、今回の暫定的な制度が余り長く機能しますと、私は前に申し述べましたような幾つかの点で問題が発生してくると考えますので、やはりできるだけ早目に基礎的な点からの検討を押し詰めていただきたいというふうに考えております。  以上です。
  9. 金井元彦

    委員長金井元彦君) どうもありがとうございました。  それでは遠藤参考人お願いいたします。
  10. 遠藤晃

    参考人遠藤晃君) 立命館大学の遠藤でございます。  時間に限定がございますので、私は、今回の地方財源不足の補てん問題に限定をして意見を申し上げてまいりたいと思います。  この問題を考えます場合に、まず前提として私は二つのことを確認をしたいわけであります。  第一の点は、財源不足と言われるものの性格でありますけれども、これは地方交付税基準財政需要額と基準財政収入額との差額に対して、現行の法定税率によるところの地方交付税で埋め切れない部分であると。言いかえれば、これは地方交付税総額不足であるという事実であります。そしてその額が、改めて申し上げるまでもありませんけれども、五十年度以降二兆円の規模を超えてまいりまして、本年度の場合は、それがついに三兆円を突破をするに至ったということであります。  それから二つ目に、確認をしたい前提は、そういった場合のとるべき措置でありますけれども、これまた改めて申し上げるまでもありませんけれども、地方交付税法第六条の三、第二項でありますけれども、その中で、引き続いて、しかも著しいという、そういう水準でもって、そういった財源不足が起こった場合には、地方交付税率を引き上げるか、それとも行財政制度について所要の改正を行うという、このことが規定をされているということでありまして、しかもこの場合のその規定の解釈につきましては、地方交付税法成立直後の、これは昭和二十九年の五月四日のこの参議院地方行政委員会においてでありますけれども、当時の塚田自治大臣がなさった答弁以来、一貫した考え方が成立をしてきているということであります。つまり、引き続いてという場合は、二年連続をして財源不足が起こり、しかもそれがさらに三年次以降も継続をするような、そういう場合であるということ。そしてこの著しいという場合には、これは地方財政一般会計総額に対して一割くらいの規模であるという、このことが繰り返し政府当局から答弁として行われてまいりましたし、それからまた、ごく最近でも、自治省の財政関係の責任ある立場の方が雑誌等にお書きになっているところであります。したがって、いま申し上げましたようなことを前提にいたしまして、今回の財源不足にどう対処をしていくのか、このことが課題になってくるわけでありますけれども、それに対して提案をされております地方交付税法改正案は、その基礎にあります地方財政計画とあわせて参照してまいりますと、御案内のとおり、財源不足のうちの一兆三千五百億については、これを建設地方債に振りかえる。そしてあと一兆五千五百億については、交付税特別会計が一般会計から借り入れを行う。ただしその二分の一については、政府一般会計元利を保障するということでありますけれども、それにこの臨時特例交付金一千五百億を加えたという、こういう形で処理をするということが提案をされているわけでありますけれども、このことが果たして妥当であるのかどうかということ、これが私の申し上げたい意見の内容であります。  そこで、この問題を考えてまいりますに当たりまして、私は二つの尺度を踏まえるということについては、大方の御異論がないのではないかというふうに思っております。  第一は、これは地方交付税法そのものの立法趣旨なり、そこで明文で規定されている内容を踏まえるということであります。地方交付税法の第一条では、この地方交付税制度の持つべき性格として、次のような規定を行っているところであります。読み上げてまいりますと、「この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、」以上、前段をおきまして、「その財源の均衡化を図り、及び地方交付税交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」ということであります。  つまりそこで強調されておりますことは、まずは地方公共団体自主性をこの財政制度を通して損なうことがあってはならない、そういう原則に立ったところの財政制度地方交付税制度であるということでありますし、これは具体的には、地方交付税財源が一般財源として、地方公共団体において自由にその使途を決定できるということであります。そしていま一つは、地方行政の計画的な運営ということでありますけれども、これは地方自治体が自主的に一定の計画をもって、安定した状態の中で行政を遂行していくことができるような、そういう内容を持った財源保障措置でなければならないということであります。そうしてこのことが、歴史的には平衡交付制度から地方交付税昭和二十九年改正されるに当たりまして、国税三税の一定率を地方財源交付税財源として保障するという、そういうことになってこの制度が生まれたわけでありまして、それらを通して地方自治、いまの第一条の言葉で申しますれば、地方団体の独立性を強化をするという、こういうところが基本的な目的として据えられているということであります。  それから、考えたい尺度の第二点でありますけれども、そういった趣旨をもって成立をしました地方交付税制度が、それ以来踏んでまいりました歴史的な経過であります。主要な点は、三つばかり挙げられると思いますけれども、まずはこの新しい交付税制度に移行をした際に、一番最初の地方交付税率がどのような基礎をもって決定をされたかということであります。これは周知のところでありますけれども、各地方公共団体ごとに基準財政需要額と収入額との差額を積み上げてまいりまして、いわばこの逆算方式から総額を決定をする、そうして、その総額を今度は国税三税に割り振りまして、一番最初の出発点であった一九%でしたか、一九・五%でしたか、そういう税率が決まったということであります。そして二つ目は、それ以降の経過でありますけれども、ここではほとんど連年にわたって税率改正引き上げということと、それからいま一つは、その年度年度の特殊な条件に対応する特例措置が講じられ続けてきたということであります。言うならば、そういう措置を講ずることを通して税率改正という面では、いわば長期安定的な、しかも一定水準の行政を保障するという、そういう立法趣旨を具体化するという、こういう形で国会でそのことが議決されてきたわけでありますし、しかし、そういう長期的な視点から考えなくてはならない面以外のところについては、その年次限りの特例措置、つまり基本的な制度の目的にかなう調整ということと、それからいわば臨機的な微調整、この二つを組み合わせて制度の運営が果たされてきたということであります。おおむねそういう事態昭和四十年前後まで続いてまいりまして、その後特例措置については、以後も続いてまいりましたけれども、税率改正そのものはそれ以降据え置かれてきたということは御案内のとおりであります。  そして経過の三つ目として重視をしたい点でありますけれども、この財源不足が著しくなりました昭和五十年以降の措置でありますけれども、これは内容的にはおおむね本年度と同様の措置考えられてまいりました。ただ、その際の含意でありますけれども、これはあくまでその年度の特殊な条件を踏まえての、言うならば応急的な対応措置であるという、こういう考え方でそれぞれの措置が具体化をされてきたということでありますし、そしてそれと同時に含まれておりましたことは、そういう応急的な措置が毎年継続されていくということになって、旧来確認をされてまいりました地方交付税法六条の三の第二項でありますけれども、それに該当するような事実が明白になる、つまり一割以上の財源不足が三年も続くようなときには、言うならばこの本格的な対処の方策というものを考えなければならないであろう、こういう含みを持って一連の措置が講じられてきたということであります。そこで、そういった立法趣旨なり経緯を踏まえながら今回の法律改正案が上程をされたわけでありますけれども、いま言いましたような尺度から考えてまいりますと、私はまず今回の改正措置が、これは地方財政計画なりあるいは過日の本会議における答弁を通じて、地方交付税法の六条の三の二項に当たるところの制度改正をこれでもって行ったのであるというふうな言われ方がされていることについて大変大きな問題があるというふうに感じるわけであります。そして、その場合の論拠としては、この当分の間という言葉が加わったことによって、これはこの年度、五十三年度だけの措置ではなくてしばらく続くのである、したがって、これは制度改正に当たるんだというふうに言われております。しかし、私は三つの理由からそうは言えないというふうに考えるわけであります。  まず第一に、手続上の問題がございます。これは旧来からの過去三年にわたる措置を単に引き継いだということでありまして、制度改正という限りはそれにふさわしい基本的な地方財政の長期のあり方についての議論が交わされて、その中で一定の結論を得るということが当然のことでありますし、その場合、これは地方六団体を含めまして、かねて一致をしておりました地方団体側からの要請は、これはあくまで交付税率引き上げ、ないしは交付税率算定の際の税あるいは国債等の対象範囲の設定のあり方といったようなところがあったわけでありますけれども、そこのところの議論を避ける形で、そして大蔵・自治両大臣の間の確認にもありますように、暫定だということで形成されてきた今回の措置が、一転して国会答弁あるいはこの地方財政計画の中では当分だという言葉があるということをとらえて制度改正だと、こういうふうに言われるということはこれは納得ができないということであります。  それから二つ目には、今回の措置を仮に制度改正というふうに呼びますならば、かつて昭和三十年代を通して連年行われてまいりました地方交付税率の引き上げというものをいかなる性格のものとしてわれわれが今日振り返って理解すべきかという問題が出てくるということであります。つまり交付税率引き上げにも至らない実質的な借入金等々でもって行う措置までが制度改正だというふうに言えるのであれば、これは交付税率引き上げそれ自体がりっぱな制度改正ということになるわけであります。しかし、地方交付税法の中では、交付税率引き上げるのかもしくはということで制度改正ということを述べておるわけでありますし、単にこの交付税率を上下するというふうなことは、そこで言われている制度改正には当たらないということは明らかであります。したがいまして、その税率改定といった水準にもなお至らない応急的な措置はこれはとうてい制度改正とは言い得ないというふうに私は考えております。  それから三つ目にこの点で申し上げたいのは、制度改正ということは、ともあれこの制度を変えればいいということを、この地方交付税法の第六条は規定をしているのではないということであります。あくまで財源不足が著しい状況の中で起こっているときに、それを解消するために制度改正を行うべきであるということを規定をしているということであります。しかし、今回の措置は、これは一定の不足財源を起債に振りかえていく、あるいはまた借入金によって後年度交付税会計から返済をしていかなければならない部分が借り入れの二分の一あるという、そのこと自体これは財源不足を解消はしておらないわけでありますから、そういう点からも地方交付税法第六条によるところの制度改正だというふうには言い得ないということであります。先ほども申し上げましたとおり、今日の事態は明らかにこの地方交付税法第六条に挙げている税率引き上げもしくは制度改正を行わなければならない、そういった要件に当てはまっているわけでありますけれども、結論を申し上げれば、このいずれの措置もとられていないというふうに判断をしてよろしい事態ではないかということであります。  以上が、この改正案問題点の第一点目でありますけれども、いま一つ第二点として具体的な内容上の問題点を挙げたいと思います。  これはいまも制度改正と言われることの性格について申し上げたことと重なる点がございますけれども、今回の措置は、財源不足を解決をすることになっていないだけではなくて、逆に地方財政状況を一層悪化をさせる措置であるということであります。昭和五十年度以降の借入金による処理が重なってまいります中で、御承知のとおり、本年度からまずあの二年の据え置き期間が済みまして、五十年度借入分の返済をしていかなければならない、そういうことでありますけれども、そういう事態が今後累年返済分が累増をしてくるということでありますし、このことは結果的に見れば地方交付税率を引き下げていることになるのではないかということであります。それからまた地方債振りかえ分について、これは当然償還問題が起こってまいりますし、公債費負担が急増をしていくということでありまして、これはしばしば地方交付税算定に当たって一定部分を基準財政需要額に算入をするからということで説明されるわけですけれども、そういった算入部分がこれが増加をしてくればくるほど全体として総枠が固定されているところの地方交付税がより薄くばらまかれていくということになるわけであります。ですから、基準財政需要額に対する算入部分をふやしていくという場合には、当然交付税率引き上げ措置をその程度に応じて考えていかなければならないわけでありますけれども、それなしに地方債償還財源についてそういった措置が重ねられていくということは、これまた交付税率の実質的な引き上げであり、地方財政の一層の悪化を招く要因になっていくということであります。  それから内容面でいま一つ、これは地方公共団体自主性を損うという、そういう問題をより強めていくことになるということであります。これは端的には起債への振りかえ問題に象徴をされるわけでありますけれども、そもそも地方債でもって財源を充当するという際には、これは地方自治の趣旨から申しますと、地方公共団体の立場から当該事業の性格なり、あるいは今後の償還の可能性を考慮をして自主的に決定をされていくべきものであります。それが地方財政全体の財源不足対策というところから発想されて一定の枠がある意味では地方自治体のところにおりてくるというふうなこと、そしてそれは財源不足の補てんであると言われるけれども、これは一般財源ではもちろんないということでありますから、全体としてこういった措置一般財源の比率というものを相対的に圧縮をしてきているということは否定できない事実であります。それらを通して地方公共団体自主性財政面からの制約というものが一層強まる性格を持っている、この点も大きな問題点であるというふうに考えるわけであります。  そういったことを今回の改正案について私考えるわけでありますけれども、いま少しこの視野を広げまして、今日地方自治体地方公共団体に要請されている住民からのさまざまな課題の提起というところを考えますと、これは高度成長期以降のいわゆる積み残しの行政需要がある中で、不況とインフレがその上にかぶさるという形で、行政の水準にしても領域にしても、これは一層の拡充を図ることが求められているということであります。ですから、本来は単にこの不足財源をどう補てんをするのかということのレベルではなくて、まさに抜本的な地方財政拡充ということが要請をされるわけでありますけれども、それが、ましてや不足財源の補てんすら、いま申し上げたような非常に不十分な、また質的な面でも自治権の圧縮につながるような形で出されてきているということについては、まことに残念な事態であるというふうに考えております。  しかし、そういった地方財政拡充への意見に対しまして、これまた先日の本会議における政府の答弁でありますけれども、国と地方の関係を車の面輪にたとえられまして、国家財政における今日の困難な事態の中で、一方的な地方団体側の主張だけでは困るということが述べられたりしております。しかし、よく考えてみますと、国と地方が文字どおり両輪であり得るためには、いま何よりも地方の力をいかにつけていくのかということが求められるわけでありまして、今日の事態は両輪というよりも、言うならば、国が動力がついている動輪であって、今日のような措置の中では地方公共団体はますます動輪に対して従輪、これは国鉄の機関車なんか後ろに小さな車がついておりますけれども、そういう位置に置かれていくことになるんではないか。したがいまして、これは民主的な社会を維持し発展をさしていくという場合に、地方自治の持っている大きな役割りについてはあまねく認められているところでありますので、いやしくも財政地方自治を従属させていくというふうなことにはならないように、あくまで地方自治の本旨が貫徹されるような、そういった財政措置が講じられることを強く希望したい、このように考えております。  以上が私の意見であります。
  11. 金井元彦

    委員長金井元彦君) どうもありがとうございました。  それでは宇田川参考人お願いします。
  12. 宇田川璋仁

    参考人宇田川璋仁君) 宇田川でございます。  私が述べたいと思います問題は、主として経済学といいますか、財政学の立場から私が日ごろ考えていることを申し上げて御参考に供したいということであります。  問題は、ことしの地方財政財源不足額が三兆円を超えた、これをどうするかということにあるわけです。一応あり得べき極端な場合には、現行制度からカバーできないこの三兆円を起債でやってもいいわけであります。それからもう一つは、またあり得べき極端なケースは、交付税というものがいわば最後のバランスをとるファクターとして日本の国と地方財政機構の中にあるわけでありますから、交付税でそれを埋めても一応理屈の上ではよろしいわけであります。現実は一兆三千億が起債措置をとられて残りが交付税の特別措置でやったということでありますから、この起債措置の問題と交付税特別措置は全く同時決定でありまして、両方それぞれ論じることはできない。したがいまして、問題は、この公共事業等、従来経常収入でやっていたものを起債でやっていいのかということ、それと同時決定すべき問題として現在提案されております交付税改正措置というものは妥当と見てよいかどうかという二つを同時に考えなければならない。  まず、最初の起債措置について私は端的に次のように考えます。事実問題としては、戸十三年度予算においては、まず建設地方債を全面的に認めるということで、伺いますところによりますと、要するに建設公債のすき間率は五%、建設投資の九五%は起債でやるというようなことでありまして、その分だけ従来交付税で処理していたものが起債になった、これをどう評価するか。要するに公共事業、建設投資を経常収入でやるのが本来のたてまえなのか、あるいは借金でやるのが本来のたてまえか、そういう議論になるわけであります。私の結論は、同じ建設事業であっても毎年毎年行われるような経常的といいますか、それからどの地域でも行われるようなそういう建設事業は、これは経常収入でやるべきだと思います。臨時的なあるいは特別な地域が必要とするようなそういう建設事業は、これは起債でやって少しもおかしくない、こう思うわけであります。  それじゃ、そういう観点から見て九五%を起債でやったというこの五十三年度予算措置は妥当かどうか。これはなかなか——つまり地方が受け持つ公共事業が経常的なものと見るか、臨時的なものと見るか、なかなか判定しにくいわけであります。ただ、統計的に見ますと、地方の投資的経費の伸び率は五十三年度二六%だと、地方歳出の伸び率は一九・一%だと、だから地方全体の伸び率よりも一投資的経費の伸び率が高いということは、やはりことしの建設投資というものはコンスタントなピッチで上っていく率よりは少し高いという気もいたします。しかし、国の一般会計公共事業費は四三%ですから国よりはやはりステディーになっている。ですから、地方の投資的経費の伸びというものを本来的な、恒常的にやるべき仕事をやるもんだというふうに見ることもできるかもしれませんし、やはりある程度臨時的措置だというふうにも見ることもできる。そこら辺は事実問題として判定はなかなかむずかしいわけでありますが、私の感覚といたしますと、やや九五%を地方債で埋めるというのは率が高過ぎるんではないか、そういう意味では、もう少し経常収入でやっていってもよかったんではないかというような感じを持つわけでありますが、ここら辺はもう少し投資的経費の内容、それを支えている需要はどういうものかということについて厳密に検討さるべきものであるというふうに考えます。  それからもう一つ起債でやったとしても、この起債で確かに将来元利負担は増すと。しかし、これはまた交付税でめんどう見てもらえるということであるから、結局単年度経常収入じゃなくて、ロングランの交付税でめんどう見てもらえると。ロングランで見ればやはり経常収入になるんじゃないかという意見もあるだろうと思いますが、幾分そういう点はあることは間違いないわけでありますが、しかし交付税のこの五十三年度改定案によりますと、その借金分の二分の一は必ず地方負担になるように、そういうふうに制度的にこれは大蔵、自治の間で詰めたようでありますが、そういう仕組みになっておりますから、その将来の起債負担から生ずる交付税特別会計の支出の増大、もしそれがまた将来借金でやるというような循環をやっていきますと、必ずその二分の一は地方負担するということだけは間違いないわけでありまして、将来国の一般会計から出てくる将来の地方交付税で今日の起債元利負担をめんどう見てもらえると、単にその先へ繰り延べたというような理屈は必ずしも通らないというふうに思います。  それからもう一つ交付税措置の問題でありますが、これは要するに五十二年からやっていたのを当分の間と。ただ、五十二年度では国の財源対策分として行われた臨時地方特例交付金というものは、これは国の負担として五十二年度見ていたのが、五十三年度はこれは国の負担分と見ないと。ちょっとしたそういう地方財政から見れば改善が行われて、当分の間行うと。その評価でありますが、私は個人的に考えて次のように思います。  これは確かに現行制度の大きな改正であることは間違いない。しかし、その表面的な改正であること間違いないんであるけれども、先ほど申しましたように、これは必ずしも将来交付税がという形で国がめんどうを見るということではなくて、地方財政にやはり負担を求めているようなそういう改正であることも、これも一事実であります。  そこら辺をどう見るかということでありますが、先ほどほかの四人の方々がおっしゃいましたように、やはり国の今日の大きな問題は、石油危機以後円高不況、こういうものに対するマクロ経済政策としての財政支出の拡張というところが背景にあるわけでありますが、しかし、そういうマクロ経済政策の本来の役割りは国がやるべきものであって、地方財政にその役割りを持たせることは理論的に見てもおかしい。それから税負担の関係を見てもやはり地方に酷であります。たとえば景気が回復してくるといたしますと、現行税制では、地方税国税とを見ますと国税の方がはるかに収入獲得能力は高いわけでありますから、自然増収という観点から見ますと、同じ起債を持つということであってみれば、地方の方がそれだけ負担が大きくなるということは確かであります。したがって、そういう現行制度自然増収能力という観点から見ますと、私は、単に借金の二分の一が国が見るということよりも、もっとこれは国が見てもいいんではないかというふうに思うわけであります。  しかし問題は、そういう現行制度が、景気回復とともにもたらしてくる自然増収だけではこの国と地方財源不足は解決できないというところにあります。そしてまた、今日単に交付税率引き上げとかなんとかということができないというのは、全く国と地方財源不足であるということで、だれが見ましても、地方だけが現行制度を維持し、国がその分だけさらに大きな赤字公債を抱えるという姿は必ずしも妥当でないということから見て、いわば今日のような地方財政にも負担を求めるという形になっているだろうと思いますが、その財源を獲得するという場合、先ほど申しました自然増収ではだめだというのがこれが大蔵、自治省あるいは一般のすべての評価であります。要するに、将来増税しなければならないんだということにあるように思われます。したがいまして、私の見るところ、この当分の間ということは、結局大幅な増税制度が国と地方を通じて行われるときまで続くだろうと。だから大蔵省では五十七年赤字公債を消すと言っておりますが、それはどういうことになるのか。もし五十七年であれば少なくとも五十七年ぐらいまでは当分の間続くでありましょうし、諸般の事情からそれがもう五年延びれば、先になれば当分の間はさらに五年間。いずれにしましても、国と地方がそういう新たな財源獲得をしなければ、つまり一定のパイの中で取り合ってみてもどうしようもないということは、これはもうあたりまえなことであるわけです。  そういう場合に、本格的に制度改正をしようということであろうと思うわけでありますが、ですから、そういう場合の制度改正というのは、単に地方交付税の問題とか、あるいは交付税率の問題ではないわけでありまして、一体国はどういう増税政策考えているのか、地方はどういう増税政策考えているのか。だから国が増税し、さらには地方が大幅に増税するということになりますと、あるいは交付税というシステムではない別な制度に移ろうというのかもしれません。あるいは国が主として増税をやってくれと、地方はそれにおんぶしようというのであれば、その交付税というものをどういうふうに取り込むかということが問題になる。だから単に交付税を切り離して問題にできないんで、将来一体国と地方はどういう財源補強政策考えるかということの中で、もし地方も増税を図るとしても、なお交付税という措置が必要であるということになりますと、その場合恐らく、国も新たな税が入るのかどうか知りませんが、新たな税が入るということになりますと、それを対象税目の中に入れるのか、あるいは入れなければ税率アップとか、そういう全般の中でこれもまた同時決定さるべきである。そのときどういう方針が一番いいのかというのは、その中で一体地方財政のシステムとしてはどれがいいのか、交付税べったり型がいいのか、あるいは地方税充実して国庫支出金とかものすごく減らし、また交付税の役割りも必要最小限にとどめる方がいいというような、あるフレームワークが望ましいということになれば、おのずからそのときその増税政策との同時決定でこの問題は解決されるというふうになるだろうと思います。まあ私自身の気持ちといたしましては、できるだけやはり地方の独自の税を持つということが一番望ましいと。これは市長さんきょういらっしゃいますが、国のふところに、あるいは国の会計の中に地方がねらっていいような交付税や国庫支出金が目につけば、どんなりっぱな市長さんであっても、自分の地元の住民に税負担を求めるよりも、それに飛びつくのは当然であるわけでありまして、したがって、これをいけないと言うわけにはいかない。問題はそういうものをできるだけ飛びつくべき財源というものを小さくして、それぞれ自分のところで自分の業績という形で政治競争をきちんとやってその負担を求め、公共サービスを提供して、その住民の信頼を得るというやり方にするのか、あるいは現行のようにするのか、そういういわばフィロソフィカルな問題でありまして、やはりこれも十分将来の制度決定のときにはここら辺から考え直す必要があると思います。  それから最後一言だけ。日ごろこれまた考えていることでございますので、この機会に申し上げたいと思いますが、この国と地方財政関連というのは私はルールだろうと思うわけでありまして、このルールは年々の予算の編成という中で議論をすべきものではない。つまり年々の決定するべきものは、ちょうど土俵が与えられて、その土俵の中で合理的に財政を編成するということであります。ルールそれ自体を年々の都合、都合で議論したんではいけない。したがいまして、この国と地方財政制度というものは本来、国があるいは各地方団体がその従うべきルールでありますから、これはあるいは大蔵大臣、自治大臣の覚書というような行政府の中で決められるべき問題ではなくて、国会の中で、あるいはまあよいかどうかわかりませんが、地方制度調査会とか、しかるべきところでルールは厳正に明確に議論をされて、その中でワークすべきものが年々の予算編成であるというふうに思います。  簡単でございますが、私の意見を述べさせていただきました。
  13. 金井元彦

    委員長金井元彦君) ありがとうございました。  以上で意見の陳述は終わりましたので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 成相善十

    成相善十君 諸先生方には大変熱心に貴重な御意見をお述べいただきまして、拝聴さしていただきましたことをまずもって厚くお礼を申し上げます。  まず、最初にお聞きいたしたいことは、将来の地方行財政の根本的なあり方、これについてたとえば税源の国と地方との再配分とか、あるいは交付税率引き上げ、なおまた制度全般の見直し、こういったような問題を含んでの御意見もいろいろあったわけでございますが、これはもとより抜本的な改正をしなければならぬということについては私どもも全くそのように考えているところでございますが、当面の経済情勢の中で、税収は落ち込んでおる、あるいは景気を浮揚させなきゃならぬ、こういう中で今回とられた措置が緊急やむを得ないところの暫定的な措置である、こういう観点から評価をするとかいうようにはっきり意見もお述べいただいた方もございますが、さらにそういった点にしぼって、大変御迷惑ですが、一言ずつ御意見をさらにひとつ聞かしていただきたいと思います。
  15. 横山和夫

    参考人横山和夫君) 私は結論といたしまして評価をするという立場に立って陳述を申し上げた一員でございます。今回の国の予算の編成の過程におきましても、地方六団体の中における全国市長会のそういう面のメンバーということでもかなり細かく編成過程の中身にもタッチをいたしましてまいりました。そういう中で、非常な腐心の上に成り立ったのが予算であると、こういうようによく理解をいたしております。抜本的には、これは先刻申しましたように問題がございますけれども、当面の今年度措置としては、これはまあ制度改正と一応理解してもいいと、こういう理解を特に持ち、あるいはまた交付税率引き上げにも、割り返し等でやってみますと相当すると、こういう一つの見解を持ちまして、この対応策というものは現時点においては評価をいたすべきものである。問題は、それと同時に速やかなる成立、現金交付をいただいて、先ほど最後に申しましたように四月のピンチを切り抜けていくということをぜひお願いいたさないと地方自治体は困ると、こういう立場で、この面も加えて評価をいたしておる次第でございます。
  16. 渡辺精一

    参考人渡辺精一君) 私は部分的に評価できるところもありますが、しかし全体として見るならば、評価は残念ながらできないというふうにお答えをせざるを得ないわけであります。部分的に評価できるというのはたとえばどんなところであるかと申しますならば、地方交付税交付総額が若干なりとも上回ったという点であります。  逆に、全体として見るならば評価できないというのは、それではどんなところであるかと申しますならば、私が先ほど申し上げました基本的な制度改革が、しかも全体を踏まえた上での制度改革が必要であるにもかかわらず、そういう改革ではないという点に根差しているわけであります。
  17. 深谷昌弘

    参考人深谷昌弘君) 私は、先ほども述べましたように、暫定的な施策としては評価できると申し上げたわけでありますが、その暫定的に評価できるということの意味は、一つは、このような財源難にあって毎年毎年地方財政の財源がどのようになるかわからないと、単年度ごとにそういうことに関してふらつくということは非常に望ましくない、地方団体自身が計画的に合理的に財政運営を行っていくためには非常にまずい。したがって、ある程度のこれでやっていけるというめどをつけるということは、ぜひとも必要であるという意味では、一応のめどにはなるというふうに評価しますので、まず暫定的な施策としてめどを立てたいという点で評価できるということ。  それからもう一つの意味は、この施策が暫定的であるということこそ、それがあるから評価できる。もし正規の抜本的な施策としてこれが提案されているとしたら私は問題である。宇田川参考人が申し上げましたように、こういういわば土俵のルールを決めるという問題はやはり自治・大蔵両大臣の覚書で決めるというような性格のものではないと考えております。やはり国会あるいは広く世の中で議論されて、詰められてしかるべき問題である。そういうものに対してもし覚書でルールがしかれてしまうならば、それはどうしても私は問題とせざるを得ないと考えております。その点に関してわざわざ「当分の間」という字句が入っているということは、暫定的であるということを十分認識した上だろうと私は考えますので、暫定的だということで評価できるだろうということであります。そして長期的にはやはりこの制度が暫定的にせよ制度としてもし続いて、長期にわたって続くならば、やはりマイナス面があらわれる。一つの問題は自主性の問題であるということ。一つの例として歳出決算額に占める単独事業費のウエートというのが四十九年までは着実に高まってきたにもかかわらず、昨今それがウエートが下がっているという問題、これはやはり一つ自主性がどの程度あるかということの指標であろうと私は考えているわけですが、それが下がってきている。それはなぜそうなっているかということを考えますと、四十一年から四十九年までの間というのは、いわば高度成長期の自然増収に頼った形で自主性引き上げられるということが実現されてきたわけです、この面に関して。単独事業というウエートの見方でいけば、高度成長の過程で自然増収が上がってくるというその過程の中でこの自主性引き上げが行われてきた。しかしながら、昨今これが下がっているということは、いわば財源難になると、途端にその自主性が引っ込んでしまうということでありますから、もし中長期の路線がシフトダウンしているとすれば、現行の制度のままではやはり自主性確保ということはむずかしかろうと思われますから、その点でマイナスが出てくる。それからまた、公庫の改正とも絡むわけですが、地方団体の借り入れがどの程度が適当であるかということに関しても、いまはなし崩し的にいわば借り入れ依存度が上がっている。しかし、根本的にはどの程度地方団体の借り入れとして適当なのであろうかということは何ら議論されていない。その点でなし崩しに借り入れをふやすということはやはり弊害が生ずる。そういう長期的な弊害がこの改正案にはやはりあるだろう、そのように考えております。
  18. 遠藤晃

    参考人遠藤晃君) 私は先ほど申し上げましたように、一定の評価の基準を置きまして、まあとりわけて地方交付税法第六条の規定でありますけれども、そこから評価をする場合に、その規定を満たす改正ではないということでありますから、評価ができないという、そういう立場でございます。その点ごくかいつまんで補足をいたしますと、あの規定の趣旨は財源不足というものがあった場合に埋めるという形での対処を行うか、これが交付税率引き上げでありますし、さもなくばその財源不足が起こるような制度そのものを改正することを通して財源不足という状態を解消する、これは具体的には基準財政収入額が引き上げられるような措置か、もしくはこの基準財政需要額が事務の再配分等を通して逆に低下するようないずれかの措置という、それらのことを求めているということでありますし、そういったことが今度の場合講ぜられていないわけでありますから、したがって、評価ができないということであります。以上です。
  19. 宇田川璋仁

    参考人宇田川璋仁君) 物事を評価する場合そのほかにどういうものがあり得るかと、世の中で一番いいものを選ぶというのが評価だと思うんでありまして、今日の状況考えますと四つしかないわけですね。一つは、地方の方に現行制度の言うように財源を十分与えるということになりますと、一定の税収の中では、国家の方がそれだけ建設公債を超えている赤字でありますから赤字公債と、それから今度逆の場合は、地方に全面的に起債を求めるということ。それからもう一つは、今度は増税、要するに国も地方も増税するということが制度改正なんですね。それからもう一つが、今日の改正案というようなことでありまして、で、その四つを一応考えますと、地方だけが現行制度確保できるということもやはり国債の全面的、特に赤字国債の拡張ということで、余りにも極端過ぎると。いわんや地方債に全面的におんぶすると、これはもう論外である。それから増税、これはさっき皆さん方おっしゃったように、今日の景気情勢考えますと、むしろ財政収支のバランス問題というのはいわば小さなターゲットなんですね。要するに、国民経済を回復するということを考えますと、経済政策の理屈から見て財政収支を確保のための今日的段階での増税ということは、これは経済政策としてまさしく理論的にもおかしい。そういうことを消去法をやっていきますと、私は今日の暫定措置というものは、つまり先ほど私申しましたように、将来の地方負担ということをできるだけカバーして国が二分の一負担すると、しかしそれでも私はやや国の方より地方負担が現行より増すということは間違いない事実でありますけれども、しかしそういうことで地方は苦しくなるということを確認した上で、まあできるだけ早くこういう時期を脱却してもらうためにはやむを得ない、早くこういう時期を脱却することが先決だと、こういうふうに考えます。
  20. 夏目忠雄

    ○夏目忠雄君 どうも皆さんのお話聞きますと、緊急避難というか、暫定措置としてやむを得ないというふうな大体の御意見のようですが、御存じのようにこれ「当分の間」と書いてある、この当分の間というのは、いろんなファクターがありますからなかなかお答えにくいでしょうけれども、きわめて大ざっぱに見て二、三年が適当か、五、六年が適当か、それとも十年ぐらいが適当か、その答えだけひとつちょっと聞かしていただけませんか。
  21. 横山和夫

    参考人横山和夫君) まあ、これは私たちの方の立場で的確にお答えするのもお答えにもならないと思いますし、立場上適当でないと思いますけれども、先ほどるる申し上げましたような観点からいえば、許しますならば私は早い方がいいと、こういうように思っております。したがいまして、それが二、三年か四、五年かということへの直接、ストレートのお答えはいたしかねますが、なるべく早い方がいいと、そういう状況理由は先ほど申しました意味でございます。
  22. 夏目忠雄

    ○夏目忠雄君 希望としては短い方がいいということですね、もちろんそうだと思いますが。
  23. 横山和夫

    参考人横山和夫君) さようでございます。
  24. 渡辺精一

    参考人渡辺精一君) きわめてまじめにお答え申し上げるとすれば、私はマイナス何年というふうに申し上げたいと思うわけです。理由は、私、先ほどの話の最後に今日の地方財政をめぐって起きてきているさまざまな問題は構造的なところにその原因があるんだというふうに申し上げました。そのときにあわせて、である以上は高度成長の時期にも問題が単に表面化しなかったというだけであって、潜在的には危機が包蔵されていたんだというニュアンスのことも申し上げたわけであります。そういう意味において改革はもっと早く行われるべきであったというふうに思うわけであります。しかし、過去の、死児のよわいを数えることは無意味でもございますので、したがって再びまじめなお答えに戻らせていただくとすれば、ただいまからでも直ちに制度改正のための検討に着手されるべきではないかというふうに考えるわけであります。
  25. 深谷昌弘

    参考人深谷昌弘君) 当分の間がどれぐらいになりそうかということなんですが、地方財政が好転するということによって当分の間が解消するというのは、私もどうも当分考えられそうもないというふうに申し上げたつもりでございます。そうしますと、結局抜本的な基本的な改正がどのくらい早い時期に行い得るかということにかかっているわけですから、この委員会初め皆さん方の御決意と努力に大いに依存せざるを得ないと私は考えているわけです。できるだけ基本的なところから将来のあり得べき地方行財政のあり方から詰めて、できるだけ早い時期にそのような当分の間を解消するような努力がなされてほしいと望んでおります。この暫定制度が長期化すればするほどマイナスの要素が出てくるというふうに考えております。
  26. 遠藤晃

    参考人遠藤晃君) 私、御意見申し上げました立場が少し違いましたので、直接お答えすることはできないわけですが、これが昭和五十年度の審議でありますれば、そのときからまあこのような深刻な事態が表面化をしたわけでありますし、先ほど申し上げましたように、きょうまでの国会答弁等で了承されているところは、三年次にわたってそういった事態を継続さしてはならないということであったと思うんです。したがって、その時点であればこの両三年くらいの間に抜本的な改正についての一定の合意を成立させるべきである、こういう御意見を申し上げることができたかと思うんです。そして、事が、いわば緊急避難と端的におっしゃいましたような現実を通してあらわれているわけでありますけれども、この点についても率直な意見を申し上げますと、これは、すでに昭和四十九年、あの高度成長の時代が終わったというふうに言われました。そのときに、すでに予見がされていた事態でありますので、今日の時点に、果たしてこの緊急避難ということを肯定し得るかという、そういったことも問われることになるんではないか、そういうふうに考えているということであります。
  27. 宇田川璋仁

    参考人宇田川璋仁君) これは経済問題ですから、要するに財源がないから今日のような起債で逃げているということでありますから、要するに経済問題をどのように展望いたすかということでして、だから、増税の措置経済的に合意性を保ち得るような時期と、だから、円問題がどのように日本の産業構造その他輸入の自由化というようなことをやるわけでありますから、そういう国の経済政策のできるだけ早い達成、そして財源を、自然増収でできるならばそのまま確保できますけれども、それではどうもできないということが事実だとすれば、その増税のタイミングが行われる時期ということだろうと思います。と申しまして、私は決して増税しか手がないということじゃなくて、私のベストの措置は、やはり歳出のカット、それを徹底的に行う必要があるというふうに思います。
  28. 衛藤征士郎

    衛藤征士郎君 貴重な御意見ありがとうございました。  私ども、市町村長に会う機会が多くていろいろと御意見をいただくわけでございますが、その御意見の中で、ひょっとすると地方交付税交付率が引き上げられるかもしれないという期待感が非常に多いんでございます。そして、市町村議会の議事録なんかを読んでみましても、そういうまことしやかに、真剣に議論されている。そして、地方交付税交付引き上げに対する甘い期待があって、それが実現すれば地方自治体の自主財源というのは非常に明るい展望が出てくるのだというような、そういう議論がされているわけでございますが、現実のところそうはいかないわけでございます。先ほど宇田川参考人から、一刻も早く明確なるルールをつくって、真の抜本的な税制度改正を初め、諸施策を打ち出して、ルールを示して、このルールをもって努力をすれば地方自治体はよみがえるのだという、そういうものをつくらなければいけないというような御意見ありましたが、ごもっともな意見だと思うんです。  そこで、お尋ねしたいことは、現行の諸制度をこのまま維持するという形の中で、それでは地方交付税交付率を幾らに引き上げれば地方自治体のこれからの明るい展望が出てくるのかという明確なるお考えを承りたいと思うんであります。もちろん現在、地方交付税を補完する諸制度がいろいろございますが、現在の諸制度のこの中に立って、地方交付税交付率を幾ら引き上げればよかろうというような参考人の皆さん方の御意見をぜひともお聞かせ願いたいと思います。  それからもう一点、横山参考人にお聞きしたいのですが、公債費比率、横須賀市四・四%でございますか、非常に低くてうらやましく思っているわけなんですが、こういう市町村は余りないと思います。この公債費比率でございますが、その中で特に縁故債ですね、横須賀市がお抱えになっている縁故債、オイルショック以後非常に高い縁故債を抱えられておると思うのですが、その後自治省の通達がありまして、多分市中銀行の方に借りかえがきくので、したらいかがでしょうというような通達があったと思うのですが、実際に市中銀行はそれに応じたかどうか、そうしてその借りかえが実際行われたかどうか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。  以上でございます。
  29. 横山和夫

    参考人横山和夫君) 最初の問題でございますが、これは私たちは交付税率引き上げという問題と国税三税という以外に、さらに、対象範囲の拡大といいますか、そういうようなものもお願いしたいというのが市長会等を中心にお願いをしてまいった基本的な姿勢だろうと思います。そうした中で一つ税率引き上げでありますけれども、これは専門的にどの辺がいいかということについては学問的、あるいは実証的にいろいろな要素を積み重ねませんと、どれが的確かということは言いにくいと思いますけれども、一応従来私たちが団体の名においてお願いをしておりました線は、現在の三二%をせめて四〇%くらいまでというのが要請、要望申し上げてまいった方法であります。ただし、それは四〇%が学問的にも、あるいは実証的にも本当に妥当欠くべからざるものかどうかは論議があろうと思います。一応そうであるということを私のきょうの立場としてはお答え申し上げたいと思います。  それから第二点の問題でございますが、これは、実は私たちの方の都市の恐らく唯一と申していい例だと思いますけれども、今回の借りかえ指導以前におきまして、縁故債消化は実はきわめて低い率であります。ここでパーセンテージはあえて省略いたしますが、今回指導を受けるがごとき内容のものがすでに市中銀行との間に現実に行われてまいった、こういうことでありますので、国の指導による借りかえ措置はいたす必要はないという状況でございます。
  30. 渡辺精一

    参考人渡辺精一君) 現在自治省が行っている計算方法に基づいて計算するということになりますと、複雑な計算上の要素が私たちにはわかっておりませんので、そういう意味ではお答えできないと思われます。ただしかし、別に計算する方法がないわけではございません。それは過去のすべての自治体決算数字をもとにしてはじき出せば、かなりなところまで可能であろうというふうに思われます。しかし、残念ながら私いままでそういった計算はしておりません。ただ私最初のお話の中で二つばかりの理由を申し上げて、交付税率はかなり大幅にアップされるべきであるというふうに申し上げたわけで、そういった程度のことは申し上げられるというふうに考えるわけです。先ほど参考人のどなたからか別の問題に関して、感覚的に申し上げるほかはないというような表現がありましたが、私もある程度はこの問題につきましても感覚的に申し上げざるを得ないような政治的な側面があるのではないかというふうに感じております。そういったさまざまな問題を総合的に考えまして、しかしあえて何らかの数字を挙げなければならないとすれば、私は四〇%かなり大幅に超えるぐらいのアップが必要ということになるのではないかというふうに考えます。
  31. 深谷昌弘

    参考人深谷昌弘君) 大変むずかしい御質問だと思うんですが、というのは、現行制度において交付税率引き上げ幅がどれくらいが適当か、答えてほしいという御質問だったかと思いますが、私は現行制度そのものが現在すでに問題になっているというふうに考えておりますので、現行制度をそのまま維持して交付税率引き上げ幅がどのくらいが適正かという質問にはちょっとお答えしかねるところがございます。問題は、やはり地域的な公共財サービスの水準をどれくらいが適当と考えるかということ、そうしてそのときにどのくらいの地域的公共サービス水準が適当かということ、それからそれがどのくらい借り入れで賄われるべきかという、これらが同時決定されて、なおかつ、今度は財源確保と財源調整を、両方を必要とする規模がどのくらいなのかということが明らかになって初めて必要な交付税額というものが出てきて、そしてその交付税額を満たすような交付税率とは一体どういったものになるかというのが、本来今後将来考えられるべき交付税率の問題だろうと思うわけです。その辺を詰められてから初めて将来の交付税率はどの程度が適当かということが私は出てくると思いますが、現行制度においてどうかということに関しては実務的な知識の不足もございますし、またその辺については私自身よく検討してございませんのでちょっとお答えできかねる次第でございます。
  32. 遠藤晃

    参考人遠藤晃君) 現行の制度とおっしゃった意味を全面的に前提にしまして申しますと、つまり現行制度算定される交付税総額というのは御承知のとおり五兆四千億であるわけですね。その五兆四千億に対して三兆五百億の財源不足があるということでありますから、機械的に申し上げれば地方交付税率を四九%くらいにしないとそれが埋まらないということであります。しかし、その場合はまた新たな問題が起こってまいりまして、一定の行政水準の保障ということと、地域間の財政調整という両方の機能というところから見れば、四八%というラインはすべての地方公共団体交付団体であるというふうなそういうことにもなってまいりましょうし、ここでやはり他の行財政制度、とりわけてこの地方税制度ですが、そのあたりの改革を含めて検討しないと、四八というのは、これは固定すればそうなりますけれども、かなり制度自体に別の新しい矛盾を生み出す、そういう数字になるのではないかと、そういうふうに考えております。
  33. 宇田川璋仁

    参考人宇田川璋仁君) 私は、問題は方程式を出す場合、解けない問題は方程式ができないわけでありまして、残念ながらいまの御質問はいわば解けない方程式を私どもに出しておるわけです。私はしたがって、いまのままではその方程式解けません。数字を出すわけにはいかないと。
  34. 志苫裕

    志苫裕君 皆さん御苦労さまでした。社会党の志苫裕です。  お伺いしておりますと、今度の法改正はやむを得ない措置として評価をする意見と、果たしてこれが制度改正と言えるのだろうかという問題を提起される意見とあるわけでありますが、将来の抜本改正という点では、その中身はよくわかりませんが、一致しておるようにお受けいたしました。  そこで総額——今度の改正一つ問題点を宇田川先生も御指摘ありましたが、今度のは足りない分は確保するよと、そのうちの半分は将来めんどう見るよと、こういう内容になっている。しかし、残念ながらだれもわからないのは、果たしてその額が足りない額であるかどうかですね。これは実はわからぬわけであります。法律では借りた分の半分は持ちますよということは、一応ルール化をするわけでありますから、将来の臨特の算定方法についてはルール化をするという内容になっておりますが、その足りない額を半分をはじき出す元値のことが全然載っておらないことに一番仮に評価をするにしても問題点があるのではないか。こう思うわけですが、その点について横山さんにお伺いしますが、六団体なり市長会としては、その不足額算定に果たして自治体として関与をできるのかどうなのか。自治省と大蔵省あたりが適当に何かごちゃごちゃ予算時期に編成をして、何だか知らぬ結論は三兆五百億円足らぬのだという結果だけをお聞かせいただいて、そうかな、三兆五百億も足らぬなら早く取ってくれと言ってわいわい言っているようにも思えてならぬのですが、その辺の点についてはひとつこれは六団体を代表しての意味で横山参考人にお伺いをしたい。  それから二つ目の問題でありますが、いま当分の間こういう暫定措置をとるという考え方には私二通りの意味があるような気がします。一つは、何か改革をしたいのだがとてもいまはめどが立たないのでしばらく模様を見るという意味での当分、しばらく、暫定的な措置をとるという考え方。それからもう一つは、先ほど渡辺先生もお話がありましたが、四十一年までは政府がちくちく微調整をやってきた。四十一年の交付税率というので大体国と地方との財源配分はほぼいいところへいっている。今日はむしろその経済状況の方が異常なのであって、異常に合わせて何も交付税率をさわることはない。したがって、異常がまた元に戻ればちょうどよくなるのだよという発想方法で、暫定的な措置を講ずるという二つがあるような気がするのでありますが、この点については渡辺先生あれでしょうか、財源配分は大体適当だという一部の大蔵等の判断はここにあるわけでありますが、この点についてはどのようにお考えでしょうかという点をお伺いしたい。  それから渡辺先生にお伺いをしたいのは、先ほど御指摘のありました点で、自治体自主性というようなのがこの交付税制度交付金化というようなものでどんどん狭められておるという御指摘がありました。そう言われてみますと、最近の財政対策というのは、善意に解釈すれば、足りない分を残らず計算をして交付税でめんどうを見ようということのために細かく計算をします。細かく計算をしたのがあべこべに規制になってしまう。大ざっぱに計算をして、大ざっぱに金くれれば自主性は強まるわけでありますが、細かく計算をするものだから身動きがとれないという意味で、この交付税制度というのが交付制度にだんだん変わっていって、いや、交付金なら自由があるかというと、逆に自由がなくなるというふうに進行しているように思えてならぬのでありますが、この財政自主権というものと、この交付税制度あるいは交付制度というものとの関係でひとつ御教示いただければありがたい、こう思うわけであります。  で、深谷先生にお伺いしますが、先ほど将来への改革に向けて、一つは、税負担率の引き上げの問題の提起、もう一つは、景気調整効果を持つ制度という問題の提起がありました。で、一方ではフィスカルポリシーは主として国にある。自治体はそれを受けて立つという構えのお話等もあったのでありますが、そういう自治体の持つ機能というものと、この景気調整効果を持つ制度というものとのかかわりあいのようなものが御教示いただければと、こう思うわけであります。  それから遠藤先生にお伺いしますが、先ほど交付税制度改正と言えないというので、ほぼ御教示いただいたのでありますが、実はこの六条の三の2の読み方にも幾通りの読み方がありまして、自治省の事務当局ではまずこの制度的な改正をいろいろやってみて、だめならこれは率の引き上げで対処するんだと、こういう解釈が一方にあり、もう一つは、制度改正または税率引き上げというのだから、どっちをとってもよろしいのだという解釈があり、もう一つ遠藤先生のお話しのように、率の改正やってみて、だめなら技本的な制度改正というふうに読むのが至当であるということになりますと、同じ法律で読み方が幾つもあるということになりますので、その辺再度御教示いただければありがたいと思います。  最後になりますが、宇田川先生には二つのお尋ねで恐縮でありますが、先ほど非常に大胆な指摘がありましたのは、当分の間の問題に触れまして、結局技本改正の意味というのは、単なる税率云々というんじゃなくて、いわば大増税といいますか、というふうな、そういうことに行きつくのではないかという、私の聞き違いかもしれませんが、経済予測を含めて言うと、私も結局は大増税と、高成長に転化しないというんでありますから。で、低いレベルの成長でうまくやろうとすれば、少し税金よけいちょうだいする以外にないというところに落ちつく、そこの環境の開けるまでが当分の間というふうに読んでおいた方が、対応としてはむしろ腹すわっていいんじゃないかという気もするんですが、その辺の御教示をいただきたい、こう思います。
  35. 横山和夫

    参考人横山和夫君) 私に対しましては、三兆五百といいますか、このもととなる額そのものの決定に対してどの程度にタッチし得るかと、どの程度に承知をしておるかと、こういう意味合いの御質問だったと、かように拝承いたしました。まあこれはいろんな要素があろうと思いますが、現実にはやはり大蔵・自治両大臣といいますか、両省において決定を原案としてはなされていると、こういうことでございますので、地方六団体が、あるいは全国市長会がその決定それ自体にタッチすると、こういう場面は、これはございません。しかしながら、予算が編成される過程におきましては、団体側は団体側でそれなりの要請をいたしてまいっておりますので、それらを通じて要望といいますか、主張をすると、こういう働きはいたしておるわけでございます。さような意味で、どこまでそれが決定的にタッチをし得る、あるいはそういう立場で的確に不足総額というものを決め得る立場にあるかどうか、これは私も的確にこうだとはお答えいたしかねますけれども、まあ無関係ではないという、間接的ながらただいま申しました範囲の携わり方であると、かように理解いたしております。
  36. 渡辺精一

    参考人渡辺精一君) 交付税の補助金化という問題を抱え込んでいる交付税制度財政自主権との関係をどう考えるかというのが私に対する御質問であったとお伺いいたしました。  私は、少なくとも二つのことは申し上げることができると思われます。確かに細かく計算すると身動きがとれなくなるという問題は出てこようかと思いますが、しかしそれは私が申し上げる第二番目の方で解消されると思いますので、それに期待をいたしまして、やはり基本的には細かく計算をするべきであるというふうに考えるわけです。ただ、細かくというよりも、私がむしろ強調させていただきたいと思うのは、地方公共団体で計算を行うということが必要ではないかというふうに思うわけであります。ただその場合、三千二百有余の地方公共団体が各個ばらばらの計算をしたのでは制度の意味がなくなりますので、国は一定の計算方法を提示する必要はあるだろうと思われます。その場合に、現在完全には明らかにされていない各種の算定要素までをも明らかにすることを含めて、国は計算方法を提示するべきであると、かように考えます。  それから、申し上げることのできる第二番目のことは、私の最初の話の中でも申し上げましたが、地方公共団体自主性を阻害している現行交付税制度の持つ幾つかの欠陥を、私が第一に申し上げましたことを実行に移すのと同時並行的に改革をするということは必須の要件になるだろうと思われます。  以上の二点を同時に行えば、少なくとも現在の交付税制度よりは地方公共団体財政自主権という点から見て、理想に近い制度になるのではないかというふうに考えます。
  37. 深谷昌弘

    参考人深谷昌弘君) 財政景気調整機能と、それから資源配分機能との間の調整、それに関して地方財政がどう対応するかということについての御質問だったと思いますが、これまでの地方財政に限らず、日本の財政の場合に、景気調整の手段として公共投資に依存する度合いが非常に強かったわけですが、それがいわば現在の社会資本の整備の立ちおくれの一つ原因になっているのではないかと私は考えておるわけです。というのは、高度成長時代においては、どうしても財政景気引き締め策として働く局面が長く続くわけです。そうすると、その場合にはどうしても公共投資を抑制ぎみにする。そのために必要な社会資本の整備がおくれがちになるという傾向にあります。そういうことなんですが、したがって、景気調整にうまく成功しないとまた資源配分もゆがめられてしまうという傾向をこれまで財政の体質として持っていたのではないかと思うわけです。で、そのために公共投資を余り景気調整の手段として、余りにもそれに依存することは適当ではないのではないか。むしろ税制をできるだけ景気調整に活用すべきなのではないかというような議論も出てきているわけです。  で、その中にありまして、地方財政がどういう状態に置かれていたかということを考えてみますと、国はもちろん景気調整の必要上から公共投資コントロールする。で、そのときに公共投資の中身としては、地方が自主的に行うものがかなりある。それを国の景気調整の必要上から撹乱する。これは地方財政の立場から言えば、地方地方なりに持っている長期的な資源配分の計画を、国の景気調整の必要性から撹乱してしまうと、そういう結果になるわけです。で、そうしますと、景気調整がうまくいかないと、また地方の方でもやはり自主的な、計画的な資源配分が不可能になってしまう。そういう悪循環をいわば持っているわけですが、これを何とか断ち切らなければならない。しかもまあ税制を景気調整に活用するといいましても、それだけではやはり不十分で、依然として公共投資景気調整の機能として使わざるを得ないだろうと思うのです。そうだとしますと、やはり長期の資源配分計画を余り撹乱しないような形で、地方が資源配分を行うことができ、なおかつ景気の調整という要請に関してもうまく即応できると、そういうような制度的な工夫が必要になってくるわけです。  一つの例として考えられますのは、たとえば国が景気を引き締めたいというので、地方公共投資も削られるというようなことがあった場合に、地方が持っております長期の計画から乖離して削られた分は、景気が回復してきたら今度はその時期に埋め合わせとして行い得るような権利を確保するというようなことがもしルール化されますと、長期のサイクルをならした長期のトレンドにおいては大体計画が達成される。その間でのサイクルに対するカウンターパワーが生ずる、そういうことが可能になってくるわけです。そういうものとして、たとえば地方公共投資景気調整基金というようなもの、基金から引き出したら次は埋め立てなければならない。あるいは積み立てたら次は引き出す権利を持つというような、そういうような何らかの制度的な工夫が考えられるのではないかというふうに申し上げたわけです。
  38. 遠藤晃

    参考人遠藤晃君) 地方交付税法六の三の2の読み方の問題ということで御質問をいただいたわけですが、あるいは私先ほど申しました意見が大変舌足らずであって、まあ誤解を受けることになったのかと思いますが、私自身税率改正の方が先だという、そういう読み方をしているということではございませんでして、かねて、ごく最近になって何らかの措置を講じなければなるまいということになってきた段階での自治省当局者の読み方に多少の幅は出てきておりますけれども、これは私自身の読み方にしましても、それから一般に自治省当局が公表してきました言い方にしましても、どちらをとってもいいんだと、いずれかということを規定しているんだという、こういうことで一般的な理解がきょうまではしてきておったように思っております。私自身もそういう読み方をしているということであります。ただ、実際上の政策的な見地も含めたこの法律の条文の運用というところでは、二十九年以来どちらかといえば税率改正に中心を置いて運用されてきたというのが経過であったように思われるわけですね。税率改正は四十一年までほとんど連年行われてまいりましたし、しかしこの制度改正の方はと言えば、これたとえば税制ですと、三十六年の住民税をめぐる地方税法改正幾つか大きなことはありましたけれども、税率改正に匹敵するような形でこの地方財源拡充に結びついた事例というのは、やはりこれは乏しいように思われるわけです。そしてこれからの運用ということを考えましても、税率改正というのは比較的作業の過程ということで言いますと容易でありまして、制度改正ということになりますと、これは一定の期間をかけた論議が必要になってくるかと思います。ですから、そういった見地も交えて、この二通りある方法の運用の仕方ということで意見を申し上げれば、比較的、まさに先ほどの緊急避難的なそういった必要性が起こった場合は税率改正で処理しながら、それが一定重なってくる中で、今度は行財政制度全般を見直して一つの節として改正を行い、またその時点で新しい税率から出発をするという、こういうことがこの制度の運用上適切ではないだろうかと、そういう意見は持っているということであります。
  39. 宇田川璋仁

    参考人宇田川璋仁君) いろいろ御質問いただきまして、一つ一つお答えするよりもちょっと全体的にお答えした方がいいかと思いますので、そういう形でお答えしたいと思いますが、結局この地方財政問題というのは、私はやはり、一体、地方財政に対する国民の態度いかんによると思うわけですね。たとえば一つ地方財政のあり得べき形としては、国からできるだけ独立して、そして地方自治の名のもとに地方税、そして自分の負担する地方債、そういうものを中心に行うという、そして税率ももちろんサービスとの対応関係でありますが、かなり自由に変動できると、こういうのが大体連邦型のアメリカその他のような国だと思うんですが、どうも日本の場合はそういうのを好まない。それは私、歴史的に見まして、たしかシャウプ税制では住民税、幾つかのオプションは認めていたわけですね。たしか住民税は四、五本あったと思いますが、ところがわが国の国民は、これよくその根拠はわかりませんが、やはりどこへ行っても住民税は同じ率であるべきだと。ちょうどこれは私事申し上げて恐縮でありますが、私はそのころ税制調査会の基本問題委員会というようなことが初めてできたときで、新潟県の方へ税調の調査で行ったことがありますが、非常にあちらの方の住民がむしろ旗等で住民税の格差があるのはおかしいと。だからそういうような国民の選択がありますと、もう話は一気かせいに地方財政の秩序ができてきちゃうわけです。つまり、大体どこへ行っても同じ税目が望ましいと、同じ税率が望ましいと、そして歳出の方も同じようなミニマムエッセンシャルといいますか、ナショナル・ミニマム・スタンダードといいますか、そういうものがあるということになりますと、どうしても交付税と国庫支出金というものが出てくるわけでありまして、それが四割、五割、あるいは六割というようなことになってくる。ですから、そういうものがどうも国民のチョイスであるということになりますと、私としてはやはり将来も同じような税、同じような税率、つまり地方税についてですが、そういうもので構成されるということになるだろう。そういたしますと、将来、結局その交付税問題というのは、国と地方が全体としてのバランスを確保するというときにのみ成り立つ構想でありますから、経常収入でできるといえば。だからいずれにしても自然増収ではだめであると。すると、増税をやるというところで新たな制度ができるということになりますと、そういう一体地方税の方でどういう税が望ましいのか、国の方でどういう税が望ましいのか。そうすると歳出とのナショナル・ミニマム・スタンダードという形でどれほど国に依存しなければならないかというようなものが、これは方程式が解けるわけでありまして、そういう形で恐らく税目対象税率というものは同時に決定される。そうでないと言うんならば、国民がそうでなくって、たとえばわが選んだ市長が低福祉低税率でやってくれた方が私はその市長を評価すると、あるいは逆に、税金が高くても非常に内容のいいのをやってくれたと、それで評価するというようなことであれば、それならまた別個の再建ができるということで、どうもどっちをとるかというと、いままでの日本の国民のチョイスはいわば規格化ということをとってきた。これはわれわれ外部——外部といいますか、ややアカデミックな形で、頭の中ではそういうのよりももう少しバラエティーが望ましいといっても、国民はどうもそういうのは反対しているということになりますと、そういう税制を構成しなければならない、そういうシステムを構成しなければならない、こういうことになるだろうと思うわけで、そうするとさっき言ったような形で問題が一気に解けるということになるだろうと思われるわけです。あとそういう中で細かい問題としては、その場合の交付税というものの、先ほどいま御質問の方がおっしゃいましたように、財源不足額が本当にきちんとナショナル・ミニマム・スタンダードという名に値するものだけ入っているのかどうか、それからその場合、それと同じことになりますが、要するに地方公共投資起債でやるのがいいのか、あるいは経常財源でやるのがいいのか。もし起債でやるということになりますと、できるだけ三十年代のパターンから離れて起債でやるということになりますと、それだけ基準財政需要額は減るということになるわけでしょうから、これは先ほど申しましたように、私の、これは一体、基準から言いますと、経常的な投資は、毎年行われる投資は経常収入が望ましいということになりますと、これもやはり交付税で見なければならないというふうになるだろうと思います。そういうふうにして国民のチョイスをもとにして、五十七年だかあるいは六十年だかに行われるであろう増税を、交付税との絡みでどのように構成したらいいかといういわばスタンスがはっきりいたしますと、後は自動的に出てくるように思います。そのスタンスが私の見るところ、くどいようですが、どうやら日本の国民は余りバラエティーがあることを望んでいないように見えると、非常に私としては個人的には残念なことだなというふうに思うわけです。
  40. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 公明党の上林でございます。よろしくお願いいたします。  いろいろ先生方からお話がございましたけれども、各先生おっしゃったように、いまの地方財政、これを建て直していくためには、いわゆる地方公共団体自主性を高めていかなきゃならぬだろう、こういうお話がたしかあったと思います。そういう見地からわれわれもこういう場でもって絶えず論議をしてきたわけですけれども、なかなかその悪い点が除去されない。そして、されないままに現在に至っているわけです。そこに現在のようないわゆる地方財政のピンチというものが起きてきたと言っても、私は過言ではないんじゃないか、こう思うわけです。  そこで、当面の問題として、一遍で何もかもやらなきゃならぬということは、なかなかこれはむずかしいことだろうと思うんです。そこで、ここ二、三年の間にこの場で論議されてきたことは、やはり何といっても地方交付税率の引き上げであるとか、あるいは行財政制度のいわゆる改正であるとか、こういったことが強くわれわれとしては要望してまいったわけですけれども、それもいろいろな理由、いろいろの極端な言い方をすればごまかしみたいなことで今年度もそれが処理される、こういうようなことになっておるわけです。  そこで私がお尋ねしたい点は、そういったことでこの六条三の2、これは私が申し上げるまでもなく、その内容については引き続いて二年、三年著しい財源不足地方に起きたときに、この制度のいわゆる改正というものが行われるのだと、こういうふうにうたわれているわけですね。ところが、いろいろごまかし答弁でなかなかそれが行われない。そうすると、いまは著しい財源の不足を来しておるわけです。だとすると、その著しい財源の不足というのはどういういわゆる要素といいますか、によってそういう著しいその財源の不足というものが起きてきたのか。なぜそんな大きな財源不足というものができてきたのか、そのいわゆる要素というのはどこにあるのか、この問題を私は、わかっているようだけれども、そこのところを先生方からはっきりとお示しをいただきたいと思うんです。そしてそのお答えによって、また次の私が持っている考え方、それを先生方にお聞きしてみたい、こう思います。  その一つ、著しい財源不足を来してきたその要素となっているものは何なのかということを、これをひとつお聞かせいただければ幸いだと思うんですけれども、これは全部の参考人の皆さんからお尋ねするということは時間もかかりますので、渡辺先生と深谷先生からひとつお二人に伺いたいと思います。
  41. 渡辺精一

    参考人渡辺精一君) 私よりももう一人かわりの方の方がよろしいかと思うんです。と申しますのは、いまの御質問に対するお答えは、私の最初の話の中で少なくとも要点は申し上げたつもりでございます。  簡単にもう一度申し上げれば、いろいろな問題があるんだということを話させていただいた後で、問題は構造的なところにあるんだと、そしてそれを明らかにすることが展望にもつながるんだということで、私は地方税そして地方交付税、国庫補助金、地方債と四つの問題について簡単ではございましたが考えを申し上げました。要するに、そういうところに原因があったために今日の著しい財源不足という状態が導き出されたんだというふうに私は考えているわけでございます。
  42. 深谷昌弘

    参考人深谷昌弘君) 私も最初の意見の繰り返しになるかと思いますが、現在の著しい財源不足が生じた背景としては、まずマクロ経済的な側面としては中長期的に見て成長路線のシフトダウンが起きていること。  それから二番目に、それよりはやや短期的な局面としてオイルショック、円高等による不況が発生してきた。一方で、国、地方ともですが、財政支出に対する需要の方は長期的にはなお拡大基調にあるということ。それから短期的にはフィスカルポリシーの要請上、景気引き上げのためにさらに支出を拡大する必要がある。  その二つの側面からダブルパンチとして現在の状況が生じているというふうに考えているわけでございます。
  43. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、ちょうどいまの状況、これほどの財源不足を来しているというその要因になっているもの、まさにいまの状態は、そのまま深谷先生おっしゃったように経済的な問題ですね、物価の問題、円高いろいろのその要素がある。だからこうなったんだと言うわけですね。だとするならば、当然そのいまの時期に、この六条三の2という法でうたわれたこの問題をいまこそ実現をしなくちゃならない、改正をしなくちゃならない、そういうことが私は言えるんじゃないかと思いますね。いま先生方がおっしゃったそのほかに、いわゆるこういう財源不足を来したという要因があるならばこれはまた別です。だけれども、いまのお話を聞いていると、まさにいまの状況は、経済情勢からいろいろ踏まえて考えたとき、いまこそ改正するときじゃないか。こんな感じがいたしますけれども、この点はいかがでしょう、引き続いてお願いしたいと思います。
  44. 渡辺精一

    参考人渡辺精一君) 今日ただいま即刻に制度全体の改正のための検討に着手すべきであるというふうに、私は考えております。
  45. 深谷昌弘

    参考人深谷昌弘君) 私も制度の根本的な検討に着手すべきであるということに関して、意見は全く同じです。  ただ、現在これはどこに責任を負わすべきかは別としまして、現在の抜本的な改正というのは、単なる地方交付税率の調整とかそういった範囲で済まないような問題であろうと思う。もっと基本的なところから煮詰める必要がある。それに対していまだ何も確立されていない。それはあるいはこの委員会も含めこれまでの対応の責任かもしれませんが、しかし、いまそういうものが出てきていない以上は、暫定的には仕方がなかろう。しかしながら、これを暫定措置を長期に続けていくならば、いろいろなマイナス面が出てくるということは指摘しているとおりです。それを防ぐためには、できるだけ早い時期、即刻、基本的な点からの改革の検討に着手すべきであろうというのも私の意見です。ただし、これは経済問題ですから、検討された結果、出てきました制度の運用に関して、いつからたとえば増税をするなら増税して、いつからそういうものをやるかとか、そういうものに関する決定、実施の決定は、またさらに諸般の事情のタイミングを考えてやはりやらなければならない問題だと思います。基本的な方向として、たとえば増税が必要だとしましても、不況が長引いている状態において、果たして増税をすることが賢明なのかどうかということはやはり考えなきゃならない問題ですから、実施においてはそういうタイミングのはかり方というのが必要だ。しかしながら、中長期の成長路線がシフトしている段階において、そういったところにうまく機能するような地方財政制度というものはどういうものであるかということは、もうすでに成長路線のシフトダウンが生じていると判断するならば、即刻もう開始しなければならない問題であるし、あるいは人によっては遅きに失していると言われても仕方がないような事態であると私は考えております。
  46. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 よくわかりました。ですから、当然いますぐにといってもそれは簡単にすぐにというわけにはいかぬかもしれません。いかないでしょう。だけれども、その考え方としては、たとえば国サイドの考え方とすれば、当分の間という、先ほどから話が出ておりました。その当分の間というのはいつまでかということ。それはたとえば地方財政が好転するまでとか、経済が安定するまでとか、いろいろな理由がつけられているわけです。ですから、この法の精神というものはそういったことにかかわりなく、著しいいわゆる財源不足が出たという場合には、それはその改正をする必要があるんだということを言っているわけだと私は思うんですね。ですから、いわゆる国の答弁を聞くと、いま申し上げたように、地方財政が好転するまでだ、あるいは経済が安定するまでだというような理屈をくっつけているわけです。そんなことに何らかかわりなくこの制度というものは変えていかなければならない問題なんだと、こう私は思うわけですね。その点について、わかり切ったようなことかもしれませんけれども、お答えいただきまして私は終わりたいと思います。
  47. 渡辺精一

    参考人渡辺精一君) 全く私も同感でございます。何度も申し上げますが、私は問題の基本は構造的なところにあるというふうに思っておりますので、そういう点から申し上げるならば、経済が低成長期に入ったから制度改革に着手するということではなく、私は高度成長のときであってさえ制度の基本的な改正に着手すべきであったというふうに考えているわけです。先ほど申し上げたことでございますが、この低成長期に入ったということは、むしろ制度改正に積極的に取り組むべき好機というふうにとらえることが可能であると思いますので、せめてそのようにとらえていただいて改革に乗り出していただきたいというふうに考えているわけでございます。
  48. 深谷昌弘

    参考人深谷昌弘君) 私自身は非常にプラグマティックな考え方を持っているために、高度成長期において果たしていまの制度が適切であったかどうかということに関しては、いま私自身やはり問題があるとは考えておりますけれども、しかし、やはりこういうような根本的な改革というのは本当にその制度で困ってしまうという機能面での実態的な弊害が出てこないとなかなか改革に着手できないわけですね。そういう意味では渡辺参考人意見が対立するわけではなくて、問題が過去にもあったとすれば、潜在的にせよあったとすれば、それも含めて現実に現行の制度がうまく機能しなくなっているとすれば、うまく機能し、なおかつ過去から問題もあったいろんな理念上の問題その他も望ましい方向に改革できるように、そうしてなおかつ新しい路線に合った、そこでうまく機能できるようなそういう制度を今後考えていく必要がある。  それから六条の三の2に規定されているような制度改正に今回の提案が合致するかどうかということは、私は法解釈上のことは自信がありませんので、お答えはできません。
  49. 神谷信之助

    神谷信之助君 共産党の神谷です。大変ありがとうございました。もう時間も遅いので、横須賀の市長さんに実際上の現場での問題についてお聞きをしたいというふうに思うのです。  一つは、これは深谷先生が引用されていましたけれども、四十一年から四十九年ごろまでは単独事業費というのはずっと伸びてきていますね、高成長で自然増が出ている時期は。ところが五十年、五十一年というのは急速に単独事業費というのは決算を見ても減少していますね。借金財政になりますから、前のような自然増といいますか、自由に使える金が少なくなっているのですから、当然そうなってきておる。そういう点、市長さんとして市民のいろいろな要求にこたえるという点で、自然増があったときにはある程度こたえられたけれども、そういう状態がなくなったときにそういう要求にこたえ切れないという点での問題点、だから一口で言えば、自主財源をもっとふやしてもらいたいということになるのでしょうけれども、そのことが市長さんとして市民に責任を持って市政を担当するという見地から御見解をひとつ聞きたいという点が第一点です。  それから第二点は、今年度景気浮揚対策ということで公共事業をどんどんやれ、しかも前倒しで早く消化せい、こういうようになっていますね。私ども聞いているところでは、だからしたがって、それだけにいまそれに手続——仕事をどんどん消化をしていくのに実際上能力が非常にフル回転している中で追いつけない状況になってきている。ただ一方地方財政計画では、ことし単独事業費も相当伸ばしているのですね、五兆余りだったと思いますが。だから実際問題として、去年の場合もそうですが、地方財政計画では相当見ているのだけれども、実際決算では単独事業費は消化し切れなかったというのが地方財政計画の点では出てきます。今度五十三年度の場合はそれだけ、さっき言いました公共事業の全般での消化に追われていますからね。そういう点で予定をされている単独事業というのは消化できる見通しがあるのかどうかという点について一体どうでしょうか。これは市長会全体として言うとなかなかむずかしいですから、横須賀の市長さんとして実際の経験上実情をひとつ聞かしていただきたい。  第三点は、きのうの委員会でも同僚議員から出ておったのですけれども、とにかく財源不足政府が責任を持って借金でも何でもしてそしてめんどう見てくれる、言うならお仕着せになってきているわけですね。前は自然増があったからある程度市長さん自身の計画も立つし、そしてある程度計画的に仕事を進める、あるいはそれぞれの地域の特殊性に応じた政策を進めるという、そういうゆとりもあるし計画性も持つことができる。いまではとにかく交付税率引き上げないで財源不足がもう二兆円から三兆円も出てくる。それは政府でめんどう見てくれて、それに対する借金の点も結局は政府の責任で借金しているのだから、政府が見ているのはあたりまえ、こうなってきますからね。一面では無責任だと同時に、一面ではもうきわめて市政を運営する上で計画性を持てない。とりわけ経済の見通しがまだ立たないという状況の中では、そういう状況が生まれているのじゃないか。これは何人かの方々にいろいろお聞きしますとそういう御意見をお聞きしているのですが、この点についての見解をお聞きしたい。  以上、三点だけひとつお願いしたいと思います。
  50. 横山和夫

    参考人横山和夫君) 第一点の問題でございますが、確かにお話のございましたように、高度経済成長時代に乗っかって自治体を運営してまいるというときの姿と、五十年度以降といいますか、今日見るような低成長ないしは安定成長、こういう中で自治体自治体の行政を運営していくというのにはやはり大変苦労があるということは事実でございます。ただ、そういう中でありますけれども、私自身は、これは第三問とも関係がございますが、現在地方自治体では、自治法の定むるところによりまして、都市基本構想を制定をいたしております。それに基づいて基本計画を策定し、かつ大体五ヵ年ぐらいな実施計画を立てて、その着実な実施ということを市民の前に公約し、進めてまいる、こういう状況でございます。それらの点に振り返ってみますと、これは全国都市にもいろいろございますので、先生の御指摘のように、ちょっと一般的には当たりさわりがありますが、私のところに関して申しますならば、不如意はいたす、苦労はいたしますけれども、スローダウンするとか、あるいは外すとかいうことは、あえてしないでやっておるというのが現在の姿勢でございます。ただ問題は、高度成長時代に住民のニーズというものを受けていろいろと立てた計画と、今日及び将来が再び高度成長が来ないであろうという時点で地方自治体考える自主的単独事業というのは、私はやはり一応シビアに考え直さにゃいかぬ、こういう姿勢をとっております。もとより、これは市民とのよきコンセンサスを得ながらでありまして、単独に市長がということにはまいりませんけれども、基本的な考え方はそうでないといかないのではないか、こういうことで立ち向かっておりますので、私はやはり現在、その面でぐあいが悪いということには考えてないという状況でございます。  それから、特に第三点で計画性のお話がございましたが、これは私は、こういう時期であればあるだけ計画性を持たなければいかぬと、実はこう思っておるんであります。で、横須賀の事情を話せという御指定でございますので、まあお言葉に応じまして率直に申しまして、私はやはりいま横須賀市におきまして市民の皆さんの前に、あるいは市の職員に向かって、地方自治体一つの経営体である、こういう言い方を申しております。この考え方にはいろいろなとり方があります、いい意味にも悪い意味にもとれますが、私はこれはいい意味において経営体である、こういう考え方を持っております。その一つは、経営体である以上は計画性を持っておかないと、景気のいいときにはそれなりに、不景気になると違うということではいかないんで、やはり一貫した計画性を持つことと、それからもう一点は、弾力性を持って財政運営をいたさないと、ちょっと調子がいいからというのでそれに乗っかると、次でぐあいが悪いと、これは市民の、特に福祉の問題では許されませんので、弾力性を持った対処の仕方をしていかなければならない、こういう考えであります。それからもう一つは、ちょっと渋くなりますけれども、やはりほどほどに受益者負担の原則というのは導入せざるを得ないと、こういう考え方を持っております。これらを考えてまいりますと、私はやはり、私のところにとりましてはそう著しく単独事業を圧迫しているということはございません。ただし、現時点に応じて見直すべきものは見直してまいるという姿勢はとってまいっておるつもりでございます。  それからもう一点、能力の問題でございますが、これはなかなかもって大変でございます。この能力は二点でございまして、第一点は、受けて立つ財政能力と申しますか、全額国費という形で公共事業にはなりませんので、それなりの手当てはなされておるものの、結論的には相当部分は地方公共団体がやはり裏打ちをせなければ遂行できないと、こういう能力問題でございます。これは考え方によっていろいろ差が出ますけれども、私は冒頭に陳述いたしましたように、一応今年度の見通しでは、現行のものが措置されればそれなりに評価をして対応できると、こういう考え方でございます。ただ、結論めいて恐縮でございますが、この四月という時期が大変なので、これはひとつよろしくお願いせんといかぬと、こういうことに相なるのでございます。  それからもう一点の能力は、これはこなす事務能力といいますか、技術能力というか、これは大変でございます。といいますのは、やはり今日の時点で考えてみますと、職員の数をどんどんふやすということで対応することは問題がございます。したがいまして、能率を上げて対応するという姿勢はどうしても、その程度は別として、とらざるを得ません。したがいまして、実は私の方での五十三年度予算編成では、もちろん足らざるものは補充もいたしてまいりますけれども、相当その外注といいますか、設計等も外に出すと、こういうことも織り込んで早期に実施ができるようにという態勢を踏まえております。まあこのようなものを踏まえまして、こなしていく能力についてはまあ工夫をすれば、まあ十分ではないかもしれませんけれども、やり得ると思いますし、やらなければならぬと、かように考えておるわけでございます。
  51. 向井長年

    ○向井長年君 長時間、先生方、御苦労さんでございます。  本委員会において今日、地方交付税の一部改正について審議をいたしておりますが、先ほどから各先生方の御意見を伺いまして、まずまず今回の場合は暫定緊急問題としてやむを得ないであろうと、しかしながらこれで満足ではない、少なくとも制度問題、財政構造問題、緊急にやはり改正を行うべきである、こういう意見のように拝聴いたします。  そこで私は、横山市長さんと、それから宇田川先生に一言だけお聞きしたい。ちょうど、地方自治制度が施行されて約もう三十数年になろうといたしております。しかしながら、事実上、これはもう成熟度といいますか、未成熟の状態ではないんであろうかと、こういう感じがいたします。少なくとも地方自治が成熟することによってわが国のあらゆる分野においての民主化というものが進んでいくのではないか、こういう感じでございまして、そういう中から考えますならば、いまや地方自治というものは、形式的には確かに自治でありましょうが、実際はこれは自治の様相をなしていない、ほとんどやはり中央集権である、こう言っても過言ではないと思います。それは一つには、先ほどから論議されておりますような財政問題、これが一つであり、続いて許認可事項とかもろもろの問題がやはりふくそうしておると思うんです。こういう中で私たちは、本来の地方自治をいかにあるべきかと、こういうことで、日夜あらゆる論議の中で政府当局ともやっておるわけでありますが、これはやはりどう考えても、国民の理解も得なけりゃならぬし、あるいはまた各政党もこれに対して十分これは対処しなきゃならぬと思います。こういう過程で、これはこんなこと言うていいかどうかわかりませんけれども、仕組みがそうなっているからやむを得ないと言うかもわかりませんけれども、あらゆる知事あるいは市町村選挙に——長の選挙ですよ、この横山先生もそのとおりであると思いますが、まあ先生はそんなこと言ってないと思う。しかし、各所ですべて、中央に直結した政治ということを常に言うんですね。これは確かに直結することは結構なことだと思う。しかしながら、現在の仕組みが少なくとも補助金制度とか交付税の問題、あるいは起債の問題、あらゆる問題が中央に依存しなければ地方自治が行われない、したがって、その首長たる者は中央に顔のきく、あるいは中央に十分これを納得さす、こういう力量を持った者が出なければその地方は決して発展しないんだと、あるいは住民の福祉にこたえられないんだと、こういう感じを訴えられるんですね。これは私は根本的に誤っとると思うんですよ。仕組みはなるほどそうなっているかわからぬ。この仕組みを変えなきゃならぬために、制度問題もいま皆さんから言われておると思う。こういう問題について、少なくともみずから地方自治を形骸化するような感じは、やはり国民とともになくしなきゃならぬと、そのことによって地方制度問題、あるいはまた地方財政構造問題、これがやはり解決できるものだと、私はそう思うんですが、その点について特に横山参考人と宇田川先生にお聞きいたしまして、私の質問を終わります。
  52. 横山和夫

    参考人横山和夫君) まあ大変向井先生の率直な御質問であり、かつまた御指摘もあったと思いますが、まあ私自身は、常に中央に向かなければ自治体の行政ができないということは申してもおりませんし、さような政治姿勢はとっておりません。これはここで申し上げていいと思います。ただまあ、現実の問題としては、やはり現行制度の中で、もらうべきものはもらってくるということにやりませんと困るということは、これはございますので、制度は私は一〇〇%利用するものはすると、こういう姿勢をとっておりますけれども、政治姿勢そのものが常に中央を向くということは絶対に考えるべきではないし、考えていないと思います。やはり文字の示すごとく地方自治でありまして、みずから治めるということでございます。私はいつも考えることでありますが、地方自治というものを本当に進めていくディメンションといいますか、どういう問題があるだろうとこう考えますと、一つは、やはり今回もその問題でありますが、自主財源といいますか、財源的に十分に保障されないといけないということは、これは大きな柱になると思います。  その次には、自主立法権と言っては語弊がありますけれども、みずからがルールをつくっていく。これはもちろん法律的に違反してはいけませんけれども、そういう中でやはり自主性が出てくるような体制はもっともっと考えなければいかぬと、かように思っておるのでございます。  それからもう一点は、これはわれわれの中の問題でありますけれども、住民の自治意識といいますか、この問題がやはり大きく問われないといけないと、かように思っております。それは、最近市民参加とかいろいろ申しますけれども、いずれにいたしましても住民が自治意識に燃えてくると、こういう体制をりっぱにつくっていくということが、これがやはりりっぱな自治をつくる第三の要素だと、かように思っております。  これらの問題の上に立ってこそ真の自治というものがあるわけでございまして、方向を常に東京に向けなければいけないということは、これは考える必要はない、そういう政治姿勢をとる必要はない。むしろ地方の特色を生かし、個性を生かし、伝統に乗ったそういう、何といいますか、ユニークな潤いのあるそういう都市づくりをしていくことこそ今日では要請されるのではないか、かように思っておるわけでございます。  答弁が的確ではないと思いますけれども、一応お答え申し上げます。
  53. 宇田川璋仁

    参考人宇田川璋仁君) いまの市長さんの率直な御意見どおりだと思うのです。つまり、あしき悪循環というものはいつでもあるし、よき循環はよくいつでもいく。ですからニワトリと卵どちらが先かわかりませんけれども、一たびそういう国中心の制度ができれば、今度はそれを使う方が率直に言って財政的に有効であるということになりますと、今度は住民もどこへ行っても同じようなことをやっているんだから安心して、それじゃそういう地方財政に関心を持たない。そうするとまた、市長さんあるいは理事者の方も、関心の持たないところに増税なんてとてもできない、やはり国だということでありますから、やはり制度とそれからビヘービアは悪循環を来す。ですから、それを断ち切る、やはりどっかでまあ痛くなる、痛くなればその地方財政に関心を持つ、それから国のもしあしき、あるいは不合理な何らかの干渉があれば住民の負担、タックスペイアーという名において自分の仕事ができるということでありますから、私としてもそういういわば、なるほど国庫資金におんぶするということは安くできるということはありますけれども、高い安いということは品物との関係で、悪い品物を値段を安く買ったとしても、これは決して安くならないわけで、いい品物を値段が高かった、これも高くはならないわけで、ですから住民も、あるいは理事者も一体安価、テープだということはどういうことなんだということをやはり考えるべきだと思うわけであります。
  54. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人方々には長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会