○金丸三郎君 それでは
自治大臣に、今後の
地方の税制あるいは財政の見通し等を中心にして御
質問を申し上げたいと存じます。本当はゆかたがけのような気持ちでお尋ねしたいのでございますけれ
ども、こういう公式の
委員会でございますのでそういうこともできません。
大臣から御所信なり御
決意を、また
地方自治全体についてのお考えを率直にお伺いいたしたいと思います。
第一は、現在のわが国の
地方自治の現状をどう考えたらいいのか。今後府県や市町村の自治団体がどういうことをやるべきとお考えなのか。自治団体の役割りと申しましょうか、使命と申しましょうか、そういうことについてお伺いいたしたいと思います。
私は、
昭和二十年から今日まで約三十年間のわが国の
地方自治の移り変わりを見ておりまして、およそ三つの時期に分けて考えることができるんじゃなかろうかと思っております。第一は、
昭和二十年からおよそ三十年までで、これは日本全体が混乱の時代でございました。
地方自治団体も同じであり、財政は窮乏し、税制といわず行政の
制度といわず、あるいは財政から、いろいろな面に新しい
制度が次から次へつくられてまいりまして、それに歩調を合わせるのが精いっぱいで、財政の状態から申しましても、私
どもが非常に印象に残りますのは、六・三制が
実施されて学校建設のために金がなく、住民と財政との板ばさみになって数人の町村長が自殺したというような痛ましい例がございました。
昭和二十九年、三十年が私は戦後の
地方財政のどん底の時代ではなかったかと、このように思います。だから、
昭和二十年代は
地方自治団体が新しい装いにいかにして適応するかということと、環境は混迷の極に達しておったと。そして、
昭和二十九年、三十年のそういう状態に立ち至った。これがおよそ
昭和二十年代のわが国の
地方自治の姿じゃなかったろうか、かように思います。私はちょうど二十九年、三十年の
地方財政のどん底の時代を北海道庁で体験をいたしました。五ヵ年ぐらいの財政再建計画をつくりましてもなかなかできるという自信がなかったぐらいでございます。ところが、見る見るうちにこれがよくなりました。なぜかと申しますと、当時は気づかなかったわけでございますけれ
ども、日本の高度経済成長のはしり、いわゆる神武
景気が
昭和三十一年ごろ訪れた。したがいまして、
昭和三十年代から四十年代、人によりましては
昭和四十六年が日本の高度経済成長の最後の年だと言う方があります。大ざっぱに申しまして三十年代、四十年代は国全体としては日本始まって以来の高度経済成長。
地方団体もベースアップをどんどんやっていける。橋もつくれる。学校も建てられる。道路その他いろいろなものが充実いたしました。これは国全体についても同様でございます。いわばわが国の
地方自治団体が相当に公共、社会両方の資本が充実して、
内容がよくなったのがこの時期じゃなかろうかと、私はこのように思います。
もう
一つ、実は私一人の意見かもわかりませんけれ
ども、日本のこの高度経済成長の背後に日本の
地方政治が安定をしておった。これは知事公選、市町村長の直接選挙の
制度が、市町村の行政を少なくとも二期一三期安定させておった。これは私は相当目に見えない日本全体発展の支えであり、日本の
地方自治がよくなっていったやはり
一つの原因ではなかろうか。直接選挙という
制度は当初非常に心配されましたけれ
ども、少なくともいままでの三十年間を振り返ってみますというと、私は、わが国ではうまくいっているんじゃないかと、こういう感じがいたします。問題が
地方自治になかったわけではございませんけれ
ども、いままでの約二十年間はこういうことでうまく参りましたのが、例のオイルショック以来国全体も船が何か氷山にでもぶっつかったようなかっこう、
地方自治につきましても同様な問題が起こってきておるような感じがいたすのでございます。全体としてわが国は非常に政治的に
地方分権の
制度がとられながら、行政的にあらゆる面に非常に中央集権の強い国柄でございます。しかし、今後のことを考えますというと、やはりもう少し
地方に力もつけ、また国も心配しないで府県や市町村に仕事を任していってもいいのではなかろうか。今度の三全総を見ましても三千万ほどの人口がふえますのを、日本列島のどこどこに住まわしていくかというのが大きな課題で、これにはやはり私、府県や市町村、
地方の力を相当につけることの方がよろしいんじゃないかと。そういう意味では
地方分権をもっと強めていった方がいいのではなかろうかと、こういうような感じがいたすのであります。
昭和二十年代を混乱期と申しますならば、
昭和三十年代、四十年代を成長期と言い、今後五十年代に入りまして日本の
地方自治というものは、府県や市町村がどういうことを自治団体としてやるべきなのか、また国はどういうことを期待すべきなのか、これについての
大臣のお考えをお伺いいたしたいのでございます。
私は、やはり居住環境の
整備の問題とか、あるいは福祉の問題とか、教育は本来国の仕事と言われておりますけれ
ども、私は、日本の将来を考えますと、やっぱり教育は非常に大事だと思っております。ところが、知事も市町村長も教育にどのように熱心でありましても口は差しはさまれない。市町村の小学校の教育はどうかということは、私たちは町村長でも大変な関心事だと思っております。実は知事でもそうでございます。しかし、教育
委員会をしてやるたてまえで、
予算を通じてある程度の自分の考えを示される、教育
委員のいわば任免権があるといってもようございますけれ
ども、これでそう教育行政が左右されるものとは思われません。これは
自治大臣の直接の御所管じゃございませんけれ
ども、私は教育につきましては、いまの教育
委員会制度を改めてでも、やはり知事や市町村長という地域の本当の
責任者が教育に関与できるようにいたしますことが非常に必要じゃなかろうか。教育と政治を離すという
考え方からいまのような
制度になっております。しかし、国によりましては徹底した教育に政治が関与しております。国々の必要によって
制度は違っていいのであります。これは若干
質問がそれておりますけれ
ども、今後のわが国の
地方自治にどういう役割りを期待したらいいのか、どういうことをやるようにした方がいいとお考えなのかをお伺いいたしたいと存じます。
次は、いわゆる財政自主権とか、行政自治とか、
地方分権ということを先ほど申しましたが、これに関連してお伺いいたしたいと思います。
第一は、いわゆる三割自治という言葉がございます。これは
地方税とか、
手数料とか、純然たる自主
財源だけならばそうでありましょうが、
交付税まで
地方の自主
財源だという
考え方でいけば、その点は変わってくるだろうと思いますけれ
ども、今後わが国の
地方自治団体の自主税源というものを考えてまいりますというと、三千数百の非常に税源に乏しい自治団体と、豊富な自治団体といろいろございますので、
地方税だけで財政自主権というのをつくり上げていくと申しましょうか、確立するということはなかなかむずかしい。やはり三千数百の自治団体がミニマムの住民の必要とする行政水準と申しますかを達成するのには、どうしても
交付税方式のものが考えられなければならないと、こういうふうに思うわけでございます。だから、非常に素朴な自治という
考え方から申しますというと、この自主
財源が豊富な方が望ましいように思われますけれ
ども、国全体の自治団体のミニマムの行政水準を維持するという
考え方でまいりますというと、そればかりでもいくまいと。だから、財政自主というようなことについて、それらの点を一般にどのように
理解したらよろしいのか。ただ、形の上の
地方税だけが豊富なことが
地方自治が充実しておると言えるのかどうか、その点についてのお考えをお伺いいたしたいと思います。
次に、できるだけ
地方自治団体が自主的にやることが望ましいわけでございますけれ
ども、ことし、それから五十二
年度、昨
年度の
予算の編成の仕方、
地方財政計画の決まり方、その過程を見ておりますというと、国も
財源がない、
地方もない。しかし、国全体の
景気の浮揚のために、あるいは行政水準の維持ないし向上のために、いわば赤字国債でも出してやっていかなければならないという政治的な
要求といいましょうかが非常に強いために、いわば昨年から、ざっくばらんに申しますというと、赤字国債を
発行して国や
地方の財政を賄うというようなことになってきておると思います。この点も過去の混乱の時期と成長の時期と今後の
地方自治の当面をしておる段階の
一つの私は大きな特色だろうと、こういうふうに実は思っております。この赤字になりましてから、もう国の方に全部あなた任せの財政
措置になり過ぎてしまってはいないか。これは全国知事会にせよ、あるいは市長会にせよ、町村会にせよ、自分たちの努力によって
予算を編成する力がなくなっちゃっている。国が公共事業をやる、これだけの公債を
発行する、見合う
地方負担はやはり公債で
発行せにゃならぬ。今度
交付税でそのような公債の償還も
財政需要として見ていくようになった。これは一面から申しますというと、
地方に自治団体としてこれは三千数百、ですから個々の自治団体では違いますけれ
ども、自分たちで
予算を決めていくというんではなくって、いわば
自治省と
大蔵省の話し合いで
地方財政の枠が決まって、それに従って府県や市町村は
予算を編成していかなければならない。こういう趨勢が非常に強くなってきた。去年から特に私はそれを痛感いたします。
後ほど申し上げますけれ
ども、いまの中期の
地方財政の収支の
予算、
政府で出された試算、私は、これも相当今後まだ論議の余地のあるものとは思いますけれ
ども、したがってこれで永久にいくものじゃございますまいが、どうも現状は
地方自治の方向に趨勢として向いていくようでありながら、財政面を見ますというと、いわば極端な中央集権的な現在
地方財政の決まり方になり過ぎているのじゃなかろうか。これはできるならば数年で解消されることが望ましいと思うわけであります。
この決まり方について、私はいま申し上げましたように非常に一方的であり、
地方から申しますというと、全くあなた任せの
地方財政になり過ぎておるという感じがいたしますけれ
ども、
大臣はこの点をどういうふうにお考えになりますか。また今後、そう一挙にというわけにはまいりますまいが、できるだけ
地方が自主的に
予算が編成できるようなふうにするにはどのようなふうにしたらよろしいとお考えになっていらっしゃるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。