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1978-04-25 第84回国会 参議院 地方行政委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午前十時四十四分開会     —————————————    委員異動  四月二十日     辞任         補欠選任      衛藤征士郎君     岩動 道行君      成相 善十君     亀長 友義君      小巻 敏雄君     神谷信之助君  四月二十一日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     衛藤征士郎君      亀長 友義君     成相 善十君  四月二十四日     辞任         補欠選任      佐藤 三吾君     上田  哲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         金井 元彦君     理 事                 夏目 忠雄君                 望月 邦夫君                 志苫  裕君                 神谷信之助君     委 員                 衛藤征士郎君                 金丸 三郎君                 熊谷  弘君                 鈴木 正一君                 鍋島 直紹君                 成相 善十君                 上田  哲君                 小山 一平君                 阿部 憲一君                 上林繁次郎君                 向井 長年君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    加藤 武徳君    政府委員        自治大臣官房審        議官       石原 信雄君        自治大臣官房審        議官       砂子田 隆君        自治大臣官房審        議官       福島  深君        自治省行政局長  近藤 隆之君        自治省行政局公        務員部長     塩田  章君        自治省財政局長  山本  悟君        自治省税務局長  森岡  敞君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 金井元彦

    委員長金井元彦君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十日、小巻敏雄君が委員辞任され、その補欠として神谷信之助君が選任されました。  また、昨二十四日、佐藤三吾君が委員辞任され、その補欠として上田哲君が選任されました。     —————————————
  3. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事神谷信之助君を指名いたします。     —————————————
  5. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。加藤自治大臣
  6. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) ただいま議題となりました地方交付税法等の一部を改正する法律案提案理由とその要旨について御説明申し上げます。  地方財政状況にかんがみ、地方交付税総額確保に資するため、当分の間、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金に係る借入増加額の二分の一に相当する額を、後年度臨時地方特例交付金として一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れることを法定するとともに、昭和五十三年度分の地方交付税総額特例を設けるほか、各種の制度改正等に伴って増加する地方公共団体財政需要に対処するため、地方交付税単位費用等改正する必要がございます。また、建設事業の円滑な実施を図るために特に必要があるものとして許可された地方債に対し公営企業金融公庫資金を融通することができることとし、あわせて地方公共団体手数料についてその適正化を図る等の必要がございます。  以上が、この法律案を提出いたしました理由でございます。  次に、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、地方交付税法の一部改正に関する事項でございます。  まず、地方交付税総額確保に資するため、当分の間、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金に係る借入増加額の二分の一に相当する額を、当該借入金をした年度後の年度において臨時地方特例交付金として一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れることとしております。  さらに、昭和五十三年度分の地方交付税総額については、現行の法定額に、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる臨時地方特例交付金二千二百五十一億円及び同会計において借り入れる一兆五千五百億円を加算した額とするとともに、借入額一兆五千五百億円については、昭和五十九年度から昭和六十八年度までの各年度に分割して償還することといたしております。  次に、昭和五十三年度普通交付税算定については、児童福祉老人福祉対策等社会福祉施策の充実に要する経費財源措置するとともに、教職員定数増加教員給与の改善、教育施設整備等教育水準の向上に要する経費を増額し、また、市町村道、公園、下水道、清掃施設等の住民の生活に直結する公共施設の計画的な整備及び維持管理に要する経費財源措置するほか、過密対策過疎対策消防救急対策等に要する経費を充実することといたしております。さらに、昭和五十二年度において発行を許可された地方税減収補てん債及び財源対策債並び昭和五十二年度の国の補正予算に伴い発行を許可された地方債元利償還金基準財政需要額に算入するとともに、特別とん譲与税に係る基準税額算定につき、精算制度を導入することといたしております。  第二は、公営企業金融公庫法の一部改正に関する事項でございます。  地方財政の現状にかんがみ地方公共団体によって行われる建設事業の円滑な実施を図るために特に必要があるものとして許可された臨時地方道整備事業等に係る地方債に対し、公営企業金融公庫資金を融通することができるよう所要の規定整備を行おうとするものでございます。  第三は、地方財政法の一部改正に関する事項でございます。  公営競技を行う地方公共団体公営企業金融公庫に納付する納付金を、今回公営企業金融公庫融資対象に加えられた地方債の利子の軽減に資するための資金として充てることができるものといたしております。  第四は、風俗営業等取締法等の一部改正に関する事項でございます。  最近における経済情勢変化等にかんがみ、風俗営業等取締法外十一法律に定める地方公共団体手数料の額またはその上限について改定を行い、受益者負担適正化を図ることといたしております。  以上が、地方交付税法等の一部を改正する法律案提案理由及びその要旨でございます。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  7. 金井元彦

    委員長金井元彦君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 小山一平

    小山一平君 私は、地方交付税また地方財政全般にわたって御質問を申し上げるわけでございますが、その質問に入る前に一つだけ、国家公安委員長にお尋ねしておきたいと思います。  けさの毎日新聞を見ますと、浅沼警察庁長官が、成田空港開港後、責任をとって辞任すると報じております。かつて警視総監が若い警察官の暴行殺人事件責任をとって辞任をされました。こうして潔く出処進退を決められるという点については敬意を表するわけでございますが、釈然としないのは、成田空港事件が発生をした直接の責任運輸省空港公団にあるはずです。その運輸大臣公団の総裁も何ら責任をとらずに、警察当局責任者だけが責任をとる、これは大変片手落ちのことでございまして、納得がいかないのです。国家公安委員長として、この点についてどういう見解をお持ちですか。
  9. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私も、けさ新聞報道を見まして、実は率直に申しまして驚いたようなことでございまして、当面の警察責任は三月二十六日のあの事件は、反省すべき点は反省をいたしながら、五月二十日の開港を目指しまして警備の万全を期することが当面の最大責任でございます。したがいまして、責任はどうかと、かように聞かれますと、五月二十日の開港に万全を期する、この一語に尽きると思うのでございまして、そして警察は全力を傾注いたしまして、断じて開港阻止はやらさない、かような不退転の決意諸般準備をいたしておるさなかでございます。さような時期にだれがどういう発言をいたしたのか、つまびらかには承知をいたしておりませんけれども、さような発言がどこかでなされたのは間違いないと思うのでございますけれども、このことはきわめて残念なことに思うのでありますが、しかし当面の最大の課題は、私を含めまして警察全員一丸となりまして断じて再びあのような阻止はやらさない、このことで全精力を結集いたしまして、万全の体制をとっておる、これが率直な現在の心境でございます。
  10. 小山一平

    小山一平君 そういうことだろうと思いますけれども新聞記事ですから、その真相はつまびらかではありませんけれども、あの新聞によると、もう後任者の名前まで出ております。かなりかたい決意があって、これが一つの既成事実としてとらえられているのではないかと察せられるわけです。その問題はその問題として、責任というものがああいう事件の直接の原因をつくり出した運輸省空港公団、これらの責任者態度責任というものについて大臣どう思うかということをぜひ聞かしていただきたいと思うんです。これは全く片手落ち責任のとり方だ、納得がいきません。
  11. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 運輸省空港公団も、私がいま申し述べましたと同じように、五月二十日の開港を目指しまして万般の準備をいたし、手抜かりのないようにきめの細かい心配りをいたしまして、断じて施設等を壊されるようなことにはいたさない、この決意でやっておると思うのでありまして、責任云々の問題は、やはり五月二十日に無事開港いたしまして、その後も継続をいたしまして空港が十全にその機能を発揮すると、このために努力をいたしておりますことが当面の責任であろうかと、かように存ずるのでございまして、ただ三月二十六日の責任云々ということになりますと、私やまた警察決意はいま申し上げたとおりでございますけれども、私がこの席で述べます事項ではないように思いますので、この点は御了承いただきたい、かように思います。
  12. 小山一平

    小山一平君 発言に慎重な大臣からこれ以上のことをお聞きをすることも無理だと思いますから、本題に入らせてもらいます。  地方財政、特に地方交付税内容というのはますます複雑化して、自治省専門家や学者などの研究者にはよくおわかりでしょうけれども、私のように専門家でもなければ、研究者でもない者にとっては、なかなか理解が不十分な点がたくさんございます。そういう私の質問ですから、できるだけわかりやすくひとつお答えをお願いしたいと思います。  地方交付税法第十条、また第六条の三の2等を素直に読んでみますと、財源不足についてはその全額交付税で補てんするのが正常な運営であるというふうに思いますが、いかがですか。
  13. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 残念なことに、ここ三、四年地方財政財源不足が生じまして、本来なら不足をいたしますものを交付税全額補てんをいたすと、これがたてまえであろうと思うのでございます。が、しかし、御承知のような流動的な昨今の経済情勢下におきましては、交付税率引き上げ等の恒久的な措置が困難であった、かようなことでございますので、十全な措置とは言いがたいかもしれませんけれども、当分の間借入金をいたしまして、その半額を国が負担をすると、かような措置をとらざるを得なかったのでございますから、本来のあるべき姿はどうかと、かように折り畳まれますと、それは交付税率引き上げることが理想でございますと、かように答えざるを得ないのでございますけれども、御承知のような情勢下でございますので、やむを得ない措置といたしましてただいま二分の一負担方式ルール化の御審議をいただいておる、かようなことでございますから、どうぞ御理解いただきたいと、かように思います。
  14. 小山一平

    小山一平君 地方交付税法を正常に運営をすれば、財源不足額全額交付税で見るべきものだと、こういうことが確認できればそれでよろしいわけです。  深刻な地方財政に対する対策として五十三年度もまた抜本的な対策が行われることなく、私に言わせれば、その場しのぎのごまかしで切り抜けようとしているように思います。五十二年度には交付税率引き上げ、もしくは行財政制度改正を義務づけている地方交付税法第六条の三の2の規定を無視をした措置をとりまして、前の自治大臣小川さんが大臣をやめられてから率直に告白されているように、三百代言的言辞を弄して苦しい言い逃れをしてきた、これは間違いのないことだと思いますが、五十三年度になりますと昨年度と同じ内容法定化して、これを正当化そうとしているばかりでなしに、この変則的な措置を五十四年度以降、当分の間という名のもとにルール化することは、私は地方財政健全化とは反対の方向だと思います。五十三年度地方財政計画地方交付税法の一部改正案は、明らかに地方交付税法六条三の2の規定に反するわけでございまして、常に法秩序を厳守することを国民に求めている政府が、みずからいかに財政事情が厳しいからといって、法を尊重しない態度はよろしくないのではないかと思うんです。自治省が頑強な大蔵省と苦労されて折衝された点は私もよくわかりますけれども、こういう措置制度化するということについては納得がいかないわけです。自治大臣の率直な所見を承りたいと思います。
  15. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 地方財政不足財源がございます場合には、理想的な姿といたしましては、交付税率引き上げでありますことは先ほど申し上げたとおりでございます。  そこで、交付税法六条の三の第二項についてのただいま御指摘でございましたが、同条同項は、地方財源不足が生じました場合には交付税率引き上げを行うか、いま一つの方法としては制度改正を行いなさい、かような二つの場合を指摘をいたしておるのでございまして、そこで、ただいま御審議いただいておりますものは、交付税率としては国税三税の三二%、従来どおりでございますけれども不足額につきましてはその一部を起債で充当し、また臨特等もございますけれども、一兆五千五百億円の借り入れを行いまして、そしてその借り入れは後年度にわたって国がその二分の一を見る、かようなルール化を行おうといたしておるのでございまして、この措置は恒久的な措置ではございませんで、暫定的な措置だと理解を願いたいのでございます。ですから、当分の間と、かような表現でございます。当分の間がどの程度のことになりますか、それは今後のことでございますけれども、私は当分の間は、地方財源不足を補てんいたします財源確保にたえ得る制度である、かような理解をいたしておるのでございますから、不十分な形でございますし、また暫定的ではございますけれども制度改正である、かような御理解をいただきたいのでございますのと、それからいま昭和五十二年度の場合のことについてお触れになられたのでございますけれども昭和五十二年度の場合と、ただいま御審議いただいております昭和五十三年度の場合は、若干その内容等について差異もありますものでございますから、私は三百代言的な言い方をいたすわけでは決してないのでございまして、まさに制度改正であると、かような御理解をいただけますとありがたいのでございます。
  16. 小山一平

    小山一平君 まあ自治大臣とすればそういうお答えでございましょうが、恐らくまた自治大臣大臣の座を去ると、小川さんと同じように、あのときは三百代言的な言辞を弄して苦しかった、こういうふうに述懐をされる日が必ずあると私は思います。  そこで、自治省と私たちで昭和五十年以来いろいろ論議を交わしてきた経過を私は振り返ってみる必要があると思うんです。五十年度、五十一年度には、地方交付税法第六条三の2の規定は、引き続き、この引き続きというのは二年以上である、あるいはまた著しく異なるというのは、その差が一〇%以上である、したがって、こういう事態が五十二年度まで続くと、五十二年度には交付税率引き上げが必要である、こういうお答えをいただいてまいりました。ところが、五十二年度自治省お答えになってきたように、税率引き上げが必要な事態であるにもかかわらず、ああいう臨時的な措置を講じて、これが制度改正であるからと苦しい答弁をされてきたわけですが、五十三年度にはなお財源不足が深刻になってまいりました。しかも法定化で正当なルールとして、それがまたいつまで継続をするのか全く不明確なまましのんでいこうとされているわけです。私は、五十年度以降この委員会でいろいろ議論をされてきた経過というものを顧みるならば、もう少し率直な反省というものがあってしかるべきではないか、こう思うんです。いかがでしょうか。
  17. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 五十年度以降御承知のような景気が停滞いたしておりますので、税収等の落ち込みもひどうございまして、したがって、これを補てんいたします地方財源不足を補います手段といたしましては、交付税率引き上げ理想でありますことは御指摘なされたとおりでございますけれども、しかし、諸般事情でそれがきわめて困難でございました。五十三年度におきましても少なくも六・五%の交付税率引き上げは行いたい、この考え方基本にいたしますと同時に、また、交付税対象税目国税三税に限定いたしませんで、新たな税目をも加えてそのパーセンテージを地方に交付さるべきだ、かような主張もいたしたのでございますけれども、これもまた諸般事情で目的を達成することができなかったのでございます。私どもといたしましては、交付税率引き上げを断念いたしているわけでは断じてないのでございまして、わが国経済安定成長段階に入りまするならば、新たな税目をも加えることとあわせまして交付税率引き上げを強力に主張いたす、かような基本考え方は微動もいたしておりませんけれども、ただ、五十三年度におきましては国の財政状況も御承知のとおりのことでございまして、大変な特例公債発行いたしましてようやく予算のつじつまを合わしておる、かようなことでございます。地方あっての国でありますと同時に、また、国あっての地方だ、かように考えまして、やむを得ざる措置といたしましての御審議を願っておりますような当分の間の措置としてのルール化をいたす、かようなことでございますから、これまた御理解を願いたいのでございます。
  18. 小山一平

    小山一平君 五十二年度もそうでありましたし、五十三年度自治省とすれば税率引き上げ、あるいは交付税対象となる国税拡大というようなことで大蔵省と折衝をされた、そして今後もそういう姿勢で御努力いただくと、こういうことだと思うんです。  そこで、自治省とすればそういう主張はしたけれども、残念ながらこういうことにならざるを得なかった、こういう率直な意見をお聞きしたかったわけです。しかし、今後も主張していくとおっしゃっても、当分の間という名のもとに一つルールが決定をされるということになれば、来年度になって交付税率引き上げろ、交付税対象となる税目拡大しろ、こういう主張ができなくなるんじゃないですか、できますか、おやりくださいますか。
  19. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 御審議願っておりますルール化は、当分の間の暫定措置ではございますけれども、しかし、この措置をとることによりまして、交付税率引き上げを断念いたしておるのではないのでございまして、なるべく早い時期に、理想的な姿は地方財政が好転いたしまして税収確保できれば、それが理想でございますけれども、しかし、ここことし来年の間にそういう状況がにわかに訪れてくるということは期待しがたい昨今の経済情勢でございますので、私は理想的にはそういう状況が好ましいのではありますけれども、しかし、それが不可能であるといたしますならば制度改正を早くやらなければならぬ。税制調査会地方制度調査会議論を拝聴いたしておりましても、この解決がおくれればおくれるほど事の解決がめんどうにむずかしくなってくるから、なるべく早く制度改正を行うべきだと、かような御提言でもございまして、私どももまた同様に考えておるのでございますから、できるだけ早い機会に制度改正に踏み切っていかなければならぬ、かような感を強ういたしております。
  20. 小山一平

    小山一平君 そういたしますと、さっき大臣が、交付税率引き上げ等主張はことしもやったし、これからも引き続いてやっていくんだということでございましたが、当分の間ということを決めておいて、五十四年度地方財政計画をつくるとき、予算をつくるときに、交付税率引き上げはぜひやってほしいという要求はことしのようにできないことになるんじゃないでしょうか。おやりになりますか、五十四年度を迎えるに当たって。
  21. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 先ほども申しましたように、この解決は先に延びれば延びるほど非常にむずかしくなってまいりますことが予想されるのでございますから、ですから当分の間と、かような表現はいたしてはおりましても、私ども基本考え方といたしましては、そう長い期間ではないと、かようなつもりでございます。そこで、なるべく早く、行く行くは税負担増加を求めざるを得ないのでございまして、これは地方においてそうであるだけではございませんで、中央においてもまた税負担増加を求めなければなかなかやっていけない状況でありますことは御承知のとおりでございますから、仮に国におきまして新しい税目を起こしますようなことがありました場合には、当然それは国税三税の対象拡大いたしまして税目拡大を図っていくと、かような基本姿勢でございますことと、そしてさような場合に、当然交付税率の問題をもあわせて解決を図っていきたいと、かように考えておりますので、当分の間とは申しましても、それがそう長い期間だとは理解いたしておりませんで、なるべく早く当分の間を脱却いたしまして、基本的な改正を行わなければならぬ、かように考えております。
  22. 小山一平

    小山一平君 政府は、高度成長経済が終わって、安定成長経済の時代に入って、再び高度成長というものはあり得ないこう言っていますし、私もそのとおりだと思います。また政府は、特に福田さんは、日本は石油ショックによる世界的な経済危機を克服したし、狂乱物価も鎮圧して、物価も安定の状況にある、こういうふうに強調しております。しかも、政府の積極的な景気対策が行われようとしているわけでございますが、これによしんば期待をするといたしましても、現在の財政制度のもとでは、危機に見舞われている地方財政が、税の増収などがあって大きな変化を遂げることができるということは、予想することが大変困難なように思うんですね。今日的な状況がかなり継続するのではないかと見るべきだと思うんですよ、どうでしょうか。
  23. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私どもは、これからのわが国経済の指針といたしましては、経済企画庁のいわゆる暫定試算、これを踏み台にして判断をいたします以外には道がないのでございますけれども、暫定試算によりますとGNPは年間一二%前後と、かようなことでございますし、また経済成長率も六%ないし七%、この程度のことでございますから、かつてのわが国経済のように十数%の経済成長、かようなことは望むべくもないし、またそのことは好ましいことではないと判断をされるのでございますから、やはり福田総理の言っていらっしゃいますような安定成長と、このことを考えざるを得ないのでございます。  そこで、安定成長の段階に入りましても、地方税収がにわかにそう大幅に増加し得ようとは考えられないのでございますから、したがって、当分の間は、先ほど申しましたように、地方財政が好転した場合と、いま一つは、制度改正が行われた場合、このことを当分の間、かように理解はいたしておりますものの、税収が大幅に増加いたしますようなことが困難でありといたしますならば、早い機会に制度改正を行わなければならぬ、かように考えております。
  24. 小山一平

    小山一平君 五十年度以降とってきた措置もそうでございますが、この五十三年度においてルール化そうとしている内容というものは、毎年度地方予算の総枠を中身がどうであれ確保されればそれでよい、こういうことでツケを将来に回して、財政構造の矛盾や欠陥を再生産をしていくんじゃないか、ますます地方財政危機拡大していくのではないか、こういう心配があると思います、いかがでしょうか。
  25. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私は、当分の間の今回の措置が、地方財源不足対策として、文字どおり当分の間たえ得るものと理解をいたしておるのでございまして、ただ、御指摘のように地方財政はきわめて厳しい環境下に置かれており、ここ数年来そうでございましたけれども、これからも決してたんたんたる地方財政状況ではないと思うのでございます。  そこで、今回のやむを得ざる措置をとったのでございますけれども、このことが地方財政危機を深めたとは考えておらないのでございまして、きわめて厳しい地方財政を打開する道として当分の間のルール化を行おうと、かような考え方でございますから、どうぞこの点も御理解をいただきたいのであります。
  26. 小山一平

    小山一平君 それでは、その点について少し具体的にお尋ねをしていきたいと思いますが、財源対策にかわる地方債、そして交付税特別会計借入金地方負担分等の償還額は今後毎年度増加をしていくと思います。償還計画の実態はどんなふうに推移をいたしますか。
  27. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 御指摘のとおりに、財源対策債なり、あるいは交付税会計におきます借入金の償還というのは逐年増加をある程度の期間はいたすかっこうでございます。手元に交付税特別会計におきます借入金の償還の表がございますが、五十三年度借り入れまでいたしました分含めまして、ピークの際の借り入れの償還額は昭和六十年で約六千六百九十億という程度になろうかと思います。ただし、今回ルール化されました事項、あるいはルール化より外れておりますけれども、過去の分についてもそういう措置をとるということを大蔵省とお約束をいたしました実質二分の一負担という制度の働きによりまして、これらの、実質的に約半分の額が臨特として特別会計に繰り入れられることになりますので、その分が約半減をいたしまして、六十年のピークのときで約三千六百億ばかりが実質返さなきゃならない額であると、こういうような数字がございます。それから、財源対策債の償還するものは五十二年までの分でいきまして、ピークのところでやはり約六千億ばかりになろうかと思います。  そういうように非常な額になるわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど来大臣お答え申し上げておりますように、非常に長い期間現在の地方財政制度というもののままであれば、この額はさらにふえてくるというようなことになるわけでございまして、そういうような体制では持ち切れないと、そういうような税財政制度にあるということでございまして、早い時期にこの税財政制度改正というものが行われなければならないということになろうかと思います。  なお、そういうようなこととの対比にいたしまして、たとえば本年度特別会計において借り入れます一兆五千五百億円は、五年据え置きの十年償還ということにいたしておるわけでございまして、その最初の五年間というのは、利子は当然国庫が全部見てくれますので実際上償還に入らないと、こういうような措置も従来に比べて地方にとって有利な措置を本年はいたしておるわけでございまして、それまでの間にそういう事態、非常にピークになるような時期より前に、先ほど来御議論の当分の間というのが終わってもらわなければ困るというように存じておるわけでございます。
  28. 小山一平

    小山一平君 私のこの手元にある資料によりますと、五十年、五十一年、五十二年と、この三ヵ年の財源対策地方債残高は三兆一千三百六十一億円、地方負担となる交付税特別会計借入額は三兆四千七百一億円、合計六兆六千六十二億円であります。そのうち国が措置するもの七千百八十五億円を差し引くと五兆八千八百七十七億円、こうなっています。この償還計画を見ますと、両者を合わせると五十五年度から八千億を超えて、ピークとなる六十年度には九千億円を超える。これにさらに五十三年度の建設地方債あるいは特別会計借入分の地方負担分、これが五年たつというと五十九年から償還に入るということになる、そうすると五十九年は一兆円を超すという数字になるように思いますが、違いますか。
  29. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 私どもの手元の資料で申し上げますと、いま五十九年度をおとりになりましたので五十九年度で申し上げますと、交付税特別会計におきます借入金の五十九年度の償還額は五千九百二十億、そのうち臨特として入ってまいりますのが二千七百十三億、したがいまして、特別会計におきますところの純地方負担額が三千二百七億と、こういう数字が出てございます。  それから、財源対策債の償還見込みでございますが、五十二年度までの分が、五十九年度におきます償還額が四千九百五十億、それから同じく五十三年度に、本年度に予定をいたしておる分の元利償還が五十九年度において千九百八十億と、約二千億と五千億、七千億に三千億でございますからほぼ一兆という数字でございます。
  30. 小山一平

    小山一平君 まあ五十九年度、それから六十年度になるとまず一兆円の大台に乗ると、こういうことになります。そこで、五十年度以降累積した財源対策債の償還金が基準財政需要額に算入されて交付税で見られることになっておりますが、いわゆる財源対策債については、地方制度調査会においても、本来一般財源で賄われていたものが地方債措置されたのであるから、財源対策債の元利償還については、地方団体に対して地方交付税により財源措置をすべきであるので、これに必要な地方交付税総額確保するための所要の措置を講ずべきである、こういうふうに指摘していますね。交付税総額確保するということはどういう意味でしょうか。
  31. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 交付税総額をこの関係で確保しろという指摘があることはそのとおりでございますが、御案内のとおり、ただいまのような経済状況のもとにおきまして率の改正というのが非常に困難だというような場合におきましては、交付税総額というのは地方財政計画の策定を通じまして、すなわちただいまの財源対策債と、その元利償還金というものは全額地方財政計画上歳出に計上するということによりまして、やはりその年度における個々の、その年度年度におきますところの必要とする財源不足というのを別途確保すると、こういうようなシステムに実は総体としては、マクロとしてはなっているわけでございます。したがいまして、各年度年度においては交付税の率によっての解決は現在では困難でございますけれども交付税総額そのものといたしましては、地方財政運営に支障が来さないような措置がなされておる、こういうことが申し上げられるであろうと思います。また同時に、各個々の団体に対しましては、その一定額というものを基準財政需要額に算入することによりまして、また個々の団体についての財源補償をいたしておる、こういう両面の措置をとっているわけでございまして、確かに、何といいますか、安定的恒久的な制度としての交付税確保にはなっていない場合もございまするけれども、個々の各年度においての財政運営にその関係で支障が来すということはないような措置は十分にとられていると存じます。
  32. 小山一平

    小山一平君 財源対策債などの償還金を基準財政需要額算定をして、償還年度にはそれだけ交付税の中に需要額がふえていくわけですね。ふえるけれども交付税率がそのままで、そして交付税対象となるものがいまの同じ国税三税であるとすれば、結局タコの足食いになって、その分を新たな借入金でカバーをする、こういう措置をとらざるを得なくなると思いますが、そういう判断でよろしいですか。
  33. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 万一当分の間というのが相当続くというような事態になりますと、御指摘のようなことにならざるを得ないわけでございます。あるいはまたそういうかっこうによりましてでも、各年度においての地方財政運営に支障がないようにせざるを得なくなるわけでありますが、しかしながら、それが長く続いては困ることは先ほど来るる自治大臣から申し上げましたとおりでございます。より早い時期にそういう地方財政制度におきます基本的な改正というものが行われなければならない、こう存じているわけでございます。
  34. 小山一平

    小山一平君 それから、地方交付税特別会計借入金の償還に当たっても、ことしの制度化によって国の責任で二分の一を負担される、残りの二分の一が地方負担となる。そこで、これまた償還年度に参りますと、この分が交付税の中から差っ引かれて、交付税総額が少なくなる、こういうことですね。
  35. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 実質二分の一負担ということでございますから、その残りの地方負担持たなきゃならない実質の二分の一というのは、やはり地方財政計画上これは必要経費として歳出に立つわけでございます。といいますより、返すべき金と入るべき金と両方に上がってきて、その差というのはやはり地方財政計画上に補てんをしなければならない、政府といたしましては補てんをすべき金額になってくるわけでございまして、そういうシステムを通じましては、やはりその年度において地方財政が困らないようにはなっている。しかしながら、たびたびの御指摘でございますが、安定的に当然にそうなるわけじゃない。今回のこの法律改正をお認めいただければ、その場合には、やはり足らなくなった分は交付税会計で場合によっては借入金によって埋めなきゃならない場合が起こってくる、こういうようなことになっております。その場合の、やはりまた今度はその二分の一もまたさらに国が見ていく、こういうようなことが、もしも長期にそういう事態が続けば繰り返されるということになってまいりますが、たびたび申し上げますように、それが長期に続いたんでは、このままのかっこうではとても地方財政全体として見通しがなくなってしまうということで、制度改正の早からんことを希望いたす次第でございます。
  36. 小山一平

    小山一平君 私は、この当分の間、当分の間という言葉がさっきからたくさん出てくるんですが、この当分の間の「間」というものは大変これは危険なことだと思うんです。財源対策債、交付税会計借入金、これが当分の間が続く限りにおいては、交付税総額から差っ引かれておる、その金額が時によると一兆円になる。こうなると、交付税内容的にどんどんやせ細ってまいります。そうしてますます借り入れをふやさなければつじつまが合わなくなってくる、後年度、後年度へとツケを回して、そのツケの額が大きくなっていく、こういうことは大変危険なことだと思うんですね。そこで、私はぜひこれは本来、最初に大臣からも確認していただいたように、この財源不足額というものは全額交付税で見る、国の責任で見るべきものが筋道だと、こういうことなんですから、いろんな改正というようなものができない段階においては、この財源対策債の償還金も、交付税会計借入金地方負担分も、臨時特例交付金をもって措置すべきである、そういうふうにツケを後へ後へと回さないで処理をしていくということをやっていく必要がある、こういうことを主張したいんです。臨特で措置をするという、そういう考えはありませんか。
  37. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 交付税特別会計におきましての借入金は、ただいま御提案申し上げておりますのは、実質二分の一臨特、二分の一地方負担ということでございますが、この実質二分の一という率で御提案申し上げました理由は、現在五十年から五十一、五十二というようなものをとってみまして、国税として、あるいは地方税といたしまして国民の方々から税金でいただいている金額、それを、御案内のとおり国税の方が多く、地方税の方が少ないわけでございますが、その中から一般財源として使えます金といたしまして、国税の中から交付税ないし譲与税といたしまして地方に配分をされておりますその金額を国税から引きまして、地方の方に回してまいりまして、これを平均をとってみますると、地方が五一、二%というような率になるわけでございます。すなわち国民からいただいております一般財源である税金の実質的に使っておりますのは、配分されておりますのは、ほぼ国と地方とが二分の一ずつ、こういうような実績でございますので、そういう点から考えまして、さしずめのところは二分の一ずつの持ち分でやむを得ないのではないかということで、借入金につきましての二分の一制度というものを御提案申し上げているところであるわけであります。したがいまして、現在におきましてはこの率でやむを得ないというように存じているわけでございますが、そもそもは地方財政の立場だけからいえば、それは臨特というもので補てんをされるということも非常に地方財政の立場としては有利な制度であろうと思います。御案内のとおり、地方の場合には公共事業の地方負担の九五%までは地方債ということでございますが、国の場合には一〇〇%建設国債、もう一般財源を投入する余地がないというようなことになっているような状況下におきまして、さらに地方の分は全部臨特で埋めろということがなかなか困難な事情もあったわけでございまして、ただいまのところはこの御提案申し上げているような制度でやむを得ないんではないか。しかし、国、地方を通じまして、これでは財政制度といたしましては済まないんじゃないかという気持ちは非常に強く持っているわけでございまして、早く基本的な制度改正がなければ困るということは非常に強く感じておるところでございます。
  38. 小山一平

    小山一平君 私は、法律で国の責任の範囲を明快に規定をしておりながら、不景気財政事情が悪いからやむを得ないんだといって、その法律規定や精神を外すこともやむを得ないんだということは、これは少しまずいんじゃないかと思うんですよ。そして、いまも言ったように、何でもこのツケは後年度年度へ送って、そして借金財政を拡大をしていく、こういうやり方というものに非常な危惧の念を禁じ得ないわけです。そこで、いまのお答えでございますが、私は、これらの償還金は国の責任で処理すべきものであって、それには制度改正などというものができる間においては臨特で措置すべきである、こういうことを今後にわたって主張していきたいと、こう思っております。  それから、この基準財政需要額における経常経費と投資的経費の推移を見ますと、五十三年度は経常経費が七五・七%、投資的経費が二一・一%そして同時に公債費が次第に比率を高めている。これは包括算入されていた投資的経費のうち大幅に地方債に振りかえられるなどという措置がとられたから当然のことだと思うんですが、こういう状態を長期化するということはよろしくないんじゃないか。少なくともある時期がそうであったように、この投資的経費の比率を高める必要があるんじゃないか。そういう措置を講ずることがどうしても重要ではないかと思うんですが、どういうふうにお考えになっておられますか。
  39. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 昭和五十一年度以降御指摘のとおりな率で投資的経費に係ります基準財政需要額の率というのが従来に比べまして減少をいたしているところでございます。特に五十一年度は一番低いピークになっておりまして、一八%まで下がったというようなことになっております。御案内のとおりに、地方税あるいは地方交付税等の一般財源の削減に伴いまして公共事業に係ります地方負担額の大部分、現在で言えば九五%でございますが、大部分を地方債措置するという政策を、制度をとらざるを得ない状況で推移をいたしているわけでございまして、その反映といたしまして基準財政需要額算定におきますところの投資経費のウエートが下がってきているということでございまして、地方財政対策としての財源不足額というものを一部建設地方債の活用ということによって措置せざるを得ない状況下におきましては、こういう率になるのもやむを得ないことではなかろうかと思っているところでございます。しかしながら、たびたび申し上げて恐縮でございますが、こういう姿がノーマルとは私どもも思っていないわけで、やはりやむを得ざる暫定の措置という気持ちで対処いたしているわけでございまして、地方財政におきます一般の財源の増強というものができます度合いに応じまして、基準財政需要額算定上におきます投資経費のウエートというものを高めていく必要があると、こう思っているところであります。
  40. 小山一平

    小山一平君 私はぜひ、できるだけ早い機会にこの比率を改善をするようにすべきだと思うんです。五十三年度の比率を、たとえば四十八年度比率に合わせようとすれば、金額で一兆三千五百八十億も必要である、交付税率に換算すると八%以上になる、こういう非常なアンバランスの方へ悪化をしてきたわけです。私どもは少なくともこういう比率というものは何らかの措置を講じて改善をすべきだ。局長も改善することが望ましいし、そのことで努力をするということですから、ぜひそのことを要請しておきたいと思います。  次には、ことしの公共事業に対しまして自治省も完全消化のために異常と思われるほどハッパをかけておりますが、恐らく地方もこの強い要請にこたえて努力をしてまいることでしょう。公共事業優先のこの景気対策というのが七%経済成長という国の政策目標とこれは一体のものなのですが、そのために地方は膨大な地方債も背負って協力をすると、こういうことなんですが、私の聞く範囲で、知る範囲においては、地方団体は積極的に努力はするけれども、この公共事業で景気がよくなったり、雇用不安の中で雇用が創出されるような効果が出てくるだろうと期待を実はしていないですね。知事さんや市長さんなどに意見を聞いてみても、そういう期待を余り持っておらない。どうせやらなければならない事業、それが借金であってもできる機会だからやっておくんだといったような、大変政府の期待するところと自治体の期待するものとが合致をしておらない、こういう傾向がございます。大臣、どう思いますか。
  41. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 全国の三千数百の地方団体の中にはいろいろ意見がありますことは承知をいたしておりますけれども、しかしおしなべて判断をいたしてまいりますと、こういう機会にこそ、いままで立ちおくれておった社会資本の充実ができることだし、ぜひ早く改良したいと思っておったあの道路も改良することができ、また河川の改修も進み、また学校の建てかえもでき、あるいはその他の生活に密着をいたします関連公共事業等が推進することができるので、こういう機会にこそ地方もがんばっていこうと、こういう空気でありますことが一般的であろうと思うのでございます。がしかし、完全消化いたしますにはいろいろ苦労がありますことは想像にかたくないのでございまして、そこで政府といたしましても、さような苦労を最小限に減少せしめる努力をいたしており、それは起債の認可等につきましても自治省は特別の配慮をいたしますと同時に、財源対策もやってまいっておるのでありますし、また補助金交付等の事務につきましても、従来は相当繁雑な手続が必要でありましたものを、それを簡略化します努力もいたしておるのでございますから、まず私は消化ができる、かように思いますことと、そして今日の国や地方を通じましての最大の問題は、一日も早く失業者を減少せしめまして労働不安を解消する、かような基本考え方でございまして、今回の公共事業が片や社会資本の充実につながり、片や景気の回復に役立ちますと同時に、また雇用不安の解消にも役に立っておる、かように判断をいたしておるところであります。
  42. 小山一平

    小山一平君 私は、洪水的だと言われる公共事業が、果たして順調に実施でき得るのかどうか大変心配の面があるように思うわけです。建設省は技術者の不足の問題だとか、あるいは建設資材の値上がりだとか、あるいは資材の確保だとか、こういうようなことについては万全の措置を講じているからいま心配はない、こんなふうに言っておりますけれども、しかしもうすでに鋼材、生コンなどがかなりの値上がりをしていることは事実ですね。しかしそういうことでいろいろ心配はあるけれども大臣は努力を払って完全実施をして効果を上げたい、こういうことですから、せっかくの御努力を期待するわけですけれども、こうした政府の公共事業による景気対策、そしてそれが成長七%を目指して、さらにそういう状況の中で五十三年度べースによる財政収支試算も出ております。たとえ毎年大幅な手直しをしなければならない試算であるとしても、これはさっき大臣お答えにあったように、国が想定をするGNP伸び率を基礎にしたものでございますから、全く期待も見通しもない、こういう筋合いのものであってはならないと思うんです。あの収支試算というものを大臣どういうふうに思いますか。大いにあのような線でいく可能性ありと、こうお考えですか。
  43. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) あくまで試算でございまして、そしてケースケースによりましてその中身も違っておることは御承知のとおりでございます。  そこで自治省といたしましては、先ほど申しましたように、経済企画庁の暫定試算を踏まえまして、そして国が、大蔵省が御承知のような暫定試算をいたしました。それはケースAからケースEまでの五つのケースにつきましての試算をいたしておるのでございますけれども自治省といたしましては大蔵省の五つのケースに対応いたしますものを考えはいたしましたものの、その中で極端と思えます二つのケースを除外いたしまして、ケースI、ケースII、ケースIII、かような三つの試算をいたしておることは御承知のとおりでございました。そこで、ケースIは大蔵省の国の試算のケースAに対応いたすものでございますし、またケースIIは国のケースCに、それからケースIIIは国のケースDに対応いたすものといたしまして試算をいたしたようなことでございます。この試算はあくまで政策的な配意等をいたさないものの試算でございまして、文字どおり試みに算定いたした、かような性格のものであるとの御理解をいただきたいのであります。
  44. 小山一平

    小山一平君 まことにどうも心細いお答えでございますが、いずれにいたしましても、私はここではっきりさしておいていただかなくちゃならぬと思いますことは、五十三年度交付税関係の一連のルール化、当分の間、この当分の間を一体何年度までと自治省は想定をしているのか。全然五里霧中だということではこれは困るんです。何年度までと想定をして当分の間ということなのか。
  45. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 具体的にいつまでが当分の間かということにつきましては、今後のわが国の経済なり財政の推移等によって左右されるものでございますので、いま何年までなんだということを明確にいたしますことはきわめて困難な事情にありますことを御推察を賜りたいと思うわけでございます。ただいま御論議の対象になっておりますこの財政収支試算、これにおいてたとえばケースIIというのが企画庁の暫定試算に一番整合していると、こう言われておるわけでございますが、あの場合のケースIIというものをとってまいれば、五十七年度においては地方財源不足はなくなると、こういうような試算になっておるわけでございます。ただしこのケースIIというもので計算されております試算の中身につきましては、一般財源等につきまして増税なりあるいは交付税の増額なりということが行われるという計算になっておりますことは御案内のとおりでございまして、そういう前提を置けば五十七年度にはなくなる、こういうことは申せるわけでございますが、その前提が可能かどうかというのはこれは政策の論議でございまして、いまの試算の中には示されてないことは、ただいま大臣が申し上げたとおりでございます。
  46. 小山一平

    小山一平君 何分にも当分の間というのは前科がございましてね、たとえば地方債の許可問題なんかにしても、当分の間を三十年も続けて、これは不当でないというような社会常識を超えた政府は見解、これでは当分の間というものに対して私どもは信用することができないわけなんですよ。そこで、なるほどいつまでにという約束は困難でありましょうが、自治省としてはその目標は何年度に置く、何年度に置いて自治省としての最大の努力を払うのだという、その目標ぐらいは明らかにされておくべきだ。目標もなしに当分の間なんというと、また二十年三十年にならぬという保証はどこにもない、前科があるのですから、目標をいつに置きますか。
  47. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 目標ということも何しろこれだけの国、地方を通じましての財政状況下におきましての措置、これからとられるべき措置なり政策なりの問題でございますので、いつまでにという言い方は非常に困難なわけでございますが、いずれにいたしましても、国の財政も地方の財政も、現在のこの見込みによる経済情勢のもとにおきまして、現行制度のままでいったのでは、この収支試算で言えばケースAのように雪だるま式に財源不足というものはふえていくと、以後措置額というものはふえていくというような状況下にあるわけでありまして、これでは済まない。やはりなるべく早い時期に段階的にでも何でも国、地方を通じましての財源の増額を図る方途というものは講じられてこなければどうにもならないわけでございまして、それの時期というのは一気にできるのか段階的にやるのか、いろいろなやり方もこれからの御論議としてあるわけでございましょうから、そういったそれぞれの年度におきます対応策といたしまして、最も地方財政にとりましていいような姿になるように、私どもとしては努力をする以外にお答えする道がいまのところはないわけでございます。
  48. 小山一平

    小山一平君 私はそれでは承服できないんです。地方財政責任を背負っておられる自治省が、少なくともいろいろいまお答えのようにむずかしい政策的な問題あるいは経済の推移の問題あろうかと思いますが、自治省とすればある目標を立てて、そしてそれに向かって努力を払っていくのでなければ、むずかしいからといってその目標もなしにやるというのではこれはいけません。少なくともこれが実際にできるという保証があるなしは別として、目標は設定をして努力する。その目標は何年度に置くかというぐらいなことはこの席で明らかにしていくべきだ。当然の話だと思うのですよ。大臣どうですか。
  49. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 先ほど来お答えをいたしておりますように、当分の間とは地方財政が好転いたしますか、あるいは制度改正ができ上がりますか、この間のことを当分の間、かように理解をいたしておるのでございまして、そこで急速に地方財政が好転いたしますことが客観情勢上困難であるといたしますならば、制度改正が行えます時点までが当分の間、かような御理解をいただきたいと思うのでございます。
  50. 小山一平

    小山一平君 まことに頼りのないお答えで、納得ができません。もちろんむずかしいことはわかりますよ。わかりますけれども、何か他力本願で、どこかでだれかが何かをやってくれて、そしていろんな条件が整わなければならないというような印象を受けるわけです。もちろん自治省だけでできる問題じゃありませんけれども、しかし、自治省としては何年度ぐらいまでの間には、こういう変則的な措置はやめたいといったぐらいの意思統一をしてお取り組みなさらないというのでは、この法案審議に当たって私どもは困るわけです。いますぐ言うことが困難だというなら、この国会中に皆さんで相談をされて、少なくとも何年度を目標にして自治省とすれば、他省とのいろんな折衝もあろうし、努力をしていくのだ、当分の間でそれはいつのことかさっぱり見当がつかぬという取り組みは、こういう法案を提出しながら大変無責任だと思いますよ。どうですか大臣、少なくも自治省としての目標、こういうようなものはこの国会中にお示しになるべきだ。どうですか。
  51. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 先ほど税制調査会地方制度調査会の論議されております御意見の中身のことを若干申したのでありますけれども、さような御意見があるというのではございませんで、私どもといたしましても、一日も早く基本的な改正を行いまして地方財政の安定強化を図ってまいらなければならぬ、この基本考え方決意は微動だもいたしておらないのでございます。  そこで、具体的な当分の間の終了いたします年度を示せ、かような御指摘でございますけれども、一日も早く制度改正を行いまして、そしてその結果といたしましては改正が行えたら当分の間が解消いたす、かようなことでございますから、ともあれ一日も早く制度改正をやる、この目標でがんばってみたいと、かように考えます。
  52. 小山一平

    小山一平君 私は、この法案審議に当たってそれでは納得ができません。ひとつ委員長どうですか、理事会等で御検討をいただいて、私はこの国会中に自治省としての目標、こういうようなものを明らかにさせるようにお取り計らいを願いたい。あの答弁で私がわかりましたと言って引っ込むわけにはまいりません。お願いします。いいですか。御検討くださいますか。
  53. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 理事会で相談します。
  54. 小山一平

    小山一平君 それでは次に進みます。  私は、ああまた始まったかと思われるかもしれませんが、シャウプ勧告と、それを具体案として提示した神戸勧告、これについて幾たびか議論をしてきましたが、それらに関連をして大臣に見解をただしておきたいと思うのです。  まずその一つは、日本の地方財政制度はシャウプ勧告を土台にしてそれに修正が重ねられて形成されてきたと思います。経済の高度成長が進む中でその地方財政制度が構造的な矛盾を露呈をしてきましたし、その上さらに石油危機以降ますます深刻な財政危機に陥っているわけですが、さっきも言われたように、高度成長経済から安定成長経済への転換期だと言われ、日本の政治経済も大きな改革が求められている中で、私は特に地方財政制度の抜本改革がいま急務である、こう思うんです。この点。  もう一つは、その地方財政制度の改革に当たっては、いま申し上げた二つの勧告の理念が尊重されなければならない。その理念は、地方自治の確立と中央集権的官僚機構の民主化であります。三全総もその方向を示唆しているように思いますけれども、これからは新しい価値観に基づく豊かな地域連帯社会を築いていくことが重視されなければならないし、したがって地域問題に対応できるような自律的な地方財政制度というものが求められなければならないと思うのです。  大臣に、この二つの点についての所信を承っておきたいと思います。
  55. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) シャウプ勧告の精神につきましては、いま小山委員が御指摘なすったとおりでございまして、地方自治法が施行されまして三十年を経過いたしましたが、定着すべきものは定着をいたしておりますけれども、しかし今日三十年前を回顧いたしてみます際に、必ずしもシャウプ勧告の精神どおりに地方自治の確立ができたか、あるいは地方分権の徹底が期し得たか、かように思いますときに、隔世の感はいたしますものの、当初期待いたしておりましたほどの成果の上がっておらない面もまた多々あるという反省をいたさなければならぬ、かように考えます。先ほど来地方財政の問題につきましての御意見も拝聴いたし、かつまた答弁もいたしてまいったのでございますけれども、私どもが一日も早く地方行財政制度の改革を行わなければならぬ、かような考えを基本に持ちまして終始努力をいたしておりますのは、新憲法のもとに新しい地方自治がスタートいたしたあのときの精神や理念に返りまして努力をしてまいらなければならぬ、かようなことを背景に持ってのことでありますとの御理解をいただきたい、かように考えます。
  56. 小山一平

    小山一平君 ぜひ抜本的な財政制度の改革を急いでいただかなければならぬし、その場合にはシャウプ勧告の精神を尊重してその線に沿ってやっていただかなければならぬ。大臣もその方向で努力をするということですから、お願いをいたしたいと思います。  次は、当委員会でもしばしば議論されてきたのですが、国と地方との間の行政事務とその財源のアンバランスの問題です。私は、まあいろいろな調査の報告を見ているわけでございますが、行政事務の実質配分というのは、恐らく国が三〇%台、地方が大体七〇%前後。にもかかわらず、財源を見るとその反対というのが一般的な行政事務と財源の実態だと、こういうふうに見ていいと思いますね。大体そう見ていいですか。
  57. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 御案内のとおり、税の関係で申せば国税が七〇%、地方が三〇%、七対三ということがよく言われる言葉でございます。  それから、一般財源として言えば五対五という使い方になっている。そして実際に歳出として支出される方から言えば、国庫支出金等も入ってきて逆の三対七になるということがよく言われているところでございまして、ただいま御指摘のようなところになっているのではないかと存じます。
  58. 小山一平

    小山一平君 まあこの実態というのがよく言われる三割自治の姿だというふうに思いますし、またこれが、私に言わせると中央集権的な構造だと、こういうふうに指摘をせざるを得ないわけです。そこで、この事務と財源について少なくとも国民生活と密着した行政事務の大部分を執行する地方団体に対して、財政面でもう少し自立性を強化することができるような再配分が必要なのではないか、こう思います。いかがでしょうか。
  59. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 地方自治を推進してまいります立場から申しまして、地方団体がその行政事務をより自主的、自立的に行えるように、財政面におきましても措置をするということが非常に大切なことであろうと、御指摘のとおりでございまして、その関係から申せば、各種の地方関係財政制度改正に当たりましては、やはり地方自主財源の増強というのを第一の目標に掲げるべきことというように存じております。
  60. 小山一平

    小山一平君 まあ戦後三十年、地方自治を確立するという方向とは反対に、私は中央集権化が進んできたことは間違いないと思うんですよ。これは国が地方をあんまり信用しないんですね。そして、財政を通じて支配、統制をする。そのために地方自治体はその自主性や独立性を弱めて、それぞれの経営責任に対する自覚を失う傾向があると思うんです。だから、毎年次官の財政運営についてなどという通達が出る。ここに書いてあることで、地方はその線に沿わなきゃならぬというんできりきり舞いをする。時によっては紛争も起きる。こういうふうに国の方からいろいろ指図を受けなければその責任を果たしていくような経営ができない自治体が多くなっている。これは大変遺憾なこんだと思うんです。私に言わせると、自治省はどうも教育ママではないかと思うんですね。おんぶにだっこで甘えん坊の坊や的な意識を地方自治体に持たせるということでは、とうてい地方自治の確立などということは期待できないわけです。そこで私は、こういうふうに今日までのいろんな制度というものがいま申し上げたような傾向にある、だから、今後の改革に当たっては、もう少し自治体が経営責任をみずからのものとして受けとめてやっていくような仕組みと気風を養うことが必要なんじゃないか、こう思っておりますが、大臣はどう思いますか。
  61. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 全く同感でございます。
  62. 小山一平

    小山一平君 まあ同感だそうですから、ひとつぜひそのように今後御努力をいただきたいと思いますが。  次に、交付税そのものは、地域経済の不均等な発展によって地方団体の間に財政力に非常に大きなアンバランスを生じるのでありますが、そういう中で一定水準の財政需要を保障するという目的だと思うんですが、そういう意味で、今日まで産業、経済面で貧弱な地方団体に有効な役割りを果たしてきたすぐれた制度だと思います。ところが、かつて富裕団体で自立できたはずの大都市を中心とする地方団体が、ほとんど交付団体に転落してしまった、そして、地方より深刻な財政危機に苦しんでいる、こういうことに推移してきたように思うんですね。このことは、シャウプ勧告以来の財政制度が、高度成長を通じて財政需要の多様化や増大、行政機構の複雑化、こういったものについていけなくなって、制度的に矛盾や欠陥が出てきた、こういうふうに思いますね。したがって、この地方財源などの配分にいたしましても、日本じゅうの自治体がみんな交付税をもらわなくちゃならぬというような実態は、交付税の目的、精神、役割りと合致しないんじゃないか、少なくとも大都市を中心とするようなかつての富裕団体と言われた自治体などは、もう少し自立的に運営できるような方向というものが必要なんじゃないか、こう思いますが、自治省の見解はどうですか。
  63. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 御指摘のとおり、従来大都市等は多くは不交付団体であったわけでありますが、これが交付団体になってしまう。府県におきましても、東京都を除きまして交付団体と化するというようなことになっているわけでございまして、やはり高度経済成長期を通じまして機能を十分果たしてまいりました現在の地方制度というようなものが、現在のような減速経済下におきましてうまく対応できてない。やはりその面におきまして、まず税制面というような面におきましての改革が必要である、こういうような感じは非常に強く持つわけでございます。いずれにいたしましても、やはり地方税を中心といたします自主財源というもの、地方の自主財源というものが現在の状況においては不足している。その強化、それにあわせましての今度は交付税も含めましての一般財源の強化、こういうものが図られていきませんと、いまの地方財政はもっていけない、こういうように存じます。
  64. 小山一平

    小山一平君 まあ政府の抜本的な制度改革がいま迫られている時期だと思う。ところが、まあ国のこの制度改革というのはなかなかもって遅々として進まないというのが常識でございますから、当面可能なことから実行をしていく、こう思うんです。それはまず私は、いまもお話のあったように、地方財源を強化をするという面でまずできることを実施をしていく。しかも、それは先刻もいろいろ議論があったように、シャウプ勧告の基本理念に基づいて地方財政というものが自立性、独立性を尊重されなければならない、こういうことで、その一つとしてまず外形標準課税、これは全国知事会の強い要望もあって、自治省もこの委員会でその実施について賛成の方針を示されました。私はこの五十三年度にはこれが日の目を見るのではないかと思ったんですが、これが実施できなかったのは大変残念に思うわけでございますが、現行の事業税は収得課税になっていますから、どんな巨大企業でも、欠損企業は地方団体の公共サービスを受けるだけで税負担がない、これはまことに不合理なことだと思うんですね。ぜひこの外形標準課税の導入は一日も早く実行してもらいたい、こう思いますが、自治省の方針はどうですか。
  65. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) 事業税におきます外形標準課税の導入問題につきましては、いまお話がありましたように、自治省といたしましては従来からこの税の性格、それから収入の安定性の確保という観点からぜひ導入をいたしたいということで、政府部内あるいは税制調査会でいろいろ御審議を願って、また意見調整をしてきたところであります。ただ、昨年十月の税制調査会のいわゆる中期答申をごらんいただきますと、国及び地方双方の財源不足に対処いたすために結局既存税制の中での増税をお願いするか、あるいは一般消費支出に広く課税を求めますいわゆる一般消費税というふうな税の導入を図るか、いずれかの選択をせざるを得ないだろう、こういう問題を提起いたしておるわけであります。一般消費税とこの事業税の外形標準課税の導入問題とは、税の性格なり、あるいは負担の帰着関係なり、あるいは課税標準のとり方なり非常に共通性が多いということから、一般消費税の問題が検討課題になっておる時期でありますので、やはりその導入問題とあわせて決着をつけるべきだという答申が出されておるわけであります。私どもといたしましても、やはりその方向は適切であると思いますので、今後の新税の導入をどういうふうに取り進めて、取り運んでいくのかという検討と並行いたしまして、決着をできるだけ早い機会につけたい、かように思っておる次第でございます。
  66. 小山一平

    小山一平君 私は、これは独自の問題として取り扱ってよろしい性格じゃないかと思うんですよ。  それから、もう一つ伺っておきたいと思いますが、この外形標準課税は、都道府県が財政自主権に基づいて条例をつくって徴収していくというふうなことが法的に可能ですか。
  67. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) いわゆる一般消費税という新税と事業税の外形標準課税の導入問題とに共通性が多いということは、これは私は否定すべくもない事実だと思います。御承知のように事業税の外形標準課税を地方税法できちんと書いておりますのは、昭和二十五年から昭和二十八年まで設けておりました付加価値税であります。付加価値税は、これは売上額を基準として、それの中でまあ各段階の重複を控除するというふうなやり方をやりまして、課税標準をとっておったわけでございますが、これはシャウプ勧告をごらんいただきましても間接税であると、こういう定義をいたしておる次第でございます。ですから一般消費税と事業税の外形標準課税との共通性というのは、これは否定すべくもないと思います。ことに先ほど申しましたように、今後一般的に国、地方を通じて財源が足りない、それについてこの新税も検討せざるを得ないということでございますから、新税が導入される場合に、この事業税の問題の決着をつけるということがきわめて現実的な事柄、対処の仕方ではないかというふうに私どもとしては考えております。  なお、県が条例によりまして自主的にすることは、外形標準課税を導入いたしますことは地方税上認められております。ただ、技術的に非常にむずかしい面がいろいろあります。特に各府県にまたがっておりますいわゆる分割法人につきまして課税標準をとらえ、また各地域、各府県ごとに分割していくということが大変技術的にむずかしい面があることは御承知のとおりでございます。
  68. 小山一平

    小山一平君 この委員会自治省が、この問題でいろいろお答えになった折には、この一般消費税などとの関連とかかわりがなく、地方税の強化ということでこれを独立して導入をすることに対して賛成の方針を示されているように私は思うんですよ。これはぜひ一日も早く実現できるように御努力をお願いをしておきたいと思います。  それから、法人住民税の超過課税、不均一課税、これがいま全国的にどんなふうに実施をされておりますか。
  69. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) まず、県分について申しますと、昭和五十二年度の決算見込みで法人税割りの超過課税をいたしております団体は四十四団体であります。市町村の場合には市町村民税の法人税割りの超過課税団体は千二百四十四でございます。
  70. 小山一平

    小山一平君 まあ自治省とすれば、こうした問題が地方自治体の判断で今後積極的に取り組んでいく、実施をしていくということについて賛成されていると解していいわけですね。
  71. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) 租税負担をその地域でどう求めるかということは、まさしくその地方団体の自主的な判断に基づいてやることでございますから、超過課税に消極的であるとか積極的であるという立場は私どもはとりません。ただ、通常の標準税率よりも超えた超過負担を求めるわけでありますから、当然それに応じた行政サービスの向上というものがなければ納税者としては納得をしてもらえないという問題が一つあると思います。  それから、ちょっとお言葉の中にありました不均一課税の問題、これにつきましては、率直に申しまして取りやすいところから取るという姿勢ばかりが目につく面が若干ございます。これにつきましては、私どもはやはり公平に租税負担を求めるという態度をとってもらいたいと、こういう気持ちは持っております。
  72. 小山一平

    小山一平君 この地方税強化の一環として自治省の積極的な御指導もお願いをしておきたいと思います。  それから、固定資産税ですが、これは町村の普遍的、安定的な財源として大変有効な役割りを果たしてきたんですが、課税評価は時価と大変大きな隔たりを持っておりますね。特に昭和四十年代後半から地価が大暴騰いたしまして、土地を持っている人と持っていない人との間の経済的な格差が非常に拡大をしてまいりました。小規模宅地に対する減免措置もあるわけですが、必要あればさらに庶民資産の固定資産税軽減については格段の配慮をしていただくといたしましても、時価課税を考えてもいい時期じゃないかと思うんですが、どうですか。
  73. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) 先ほど来お話がございました地方税のウエートがだんだん下がってきておると、これがことに市町村において顕著であるわけでございますが、その一番大きな原因が固定資産税の伸長度が低いということであろうと思います。その基本的な要因は、まさしくお話のありました評価の問題に起因しておると思います。  私どもといたしましては、ことに土地の評価につきましては時価評価に近づけるようにあらゆる機会を通じて努力をしておるわけでございます。しかし、住宅用地でありますとかそういう土地につきましては、一挙にこの時価課税に持っていって税負担を急激に上げるということにはかなりむずかしい面もありますので、三年ごとの評価という現在の仕組みをとっておりますが、その基準年度ごとにはあとう限り評価の適正化を図って、負担のモダレートな増加を求めながら充実をぜひ図っていきたい、かように思っております。
  74. 小山一平

    小山一平君 固定資産税を強化をしてその比率を高めて地方財源を充実していくと、こういう方向でお考えくださるというわけですから、ぜひこれはそういう方向で進めていただくようにお願いをしておきます。  次は、高速自動車道路に対する固定資産税、この課税問題にも決着をつける時期じゃないかと思うんですが、自治省の方針はどうですか。
  75. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) まさしく私どもも五十三年度において決着をつけたいということで、政府部内で関係省と鋭意打ち合わせ、意見調整をしたわけでございますが、五十三年度の税制改正までに結論が出なかったわけでございます。したがいまして、もう一年こういう時間をかけざるを得ないということになりまして、関係省だけでは不十分でございますので、学識経験者なり地方公共団体の代表、当事者であります道路公団も全部網羅いたしました委員会を設けまして、そこで一年間かけて適切な結論を得るようにしたい、このように考えております。
  76. 小山一平

    小山一平君 そういたしますと、五十四年度から実施と、こう了解してよろしゅうございますか。
  77. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) 率直に申しまして、建設省と自治省との間で、当委員会でも先般話を申し上げたわけでございますが、意見は完全に食い違っております。この委員会では、まず、基本的な有料道路の性格なり負担のあり方について煮詰めるということと、それから個別の助成措置につきまして検討するということと、この二つをやりたいと考えておるわけでございます。で、五十四年度までに結論を得たいということでございますので、これからこの委員会の中で努力をいたしたいと、かように思っております。
  78. 小山一平

    小山一平君 これは年来の懸案でございますから、五十四年度には日の目を見ることができるようにぜひ御努力をお願いいたしておきます。  それから、高度成長政策を進める中で資本の蓄積、国際競争力の培養、産業育成、さまざまな目的、名目によって、特に大企業、大資産家などのための優遇税制ができました。そのために地方税にまで連動いたしまして、課税標準の特例だとか非課税規定だとか、特別措置が取り入れられてかなり地方財源にも影響を及ぼしております。  いま政府は、さっきもちらちら出てくるんですが、大衆増税というのをちらつかせている。しかし、こういう不公正税制というものを納得のいくように整理をした上でなければ、とうてい大衆に対する増税などという問題が素直に受けとめられることがないと思いますね。自治省としてはどうですか。
  79. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) 一般的な租税負担増加を国民にお願いいたします際には、当然租税特別措置等によって行われておりますいわゆる不公平税制と言われるものにつきましては思い切った整理合理化が必要だと思います。社会保険診療報酬の課税の特例でありますとか、利子配当所得の源泉分離選択課税制度でありますとかがその最も顕著なものでございますが、これらにつきましては国会でもいろいろ御論議いただいておりますし、また政府といたしましてもそれぞれの年限等をめどを立てましてこの整理合理化を進めたいと考えておる次第でございます。地方税自身の独自の非課税措置等につきましても同様の基調によりましてあとう限りの整理合理化を進めてまいりたいと、かように思っている次第でございます。
  80. 小山一平

    小山一平君 次には、地方財政に非常に問題をもたらしている超過負担の問題があるんですよ。これをいろいろ調査をしてみますと、産業基盤整備関係事業というのは超過負担というものはほとんどないか、きわめて少ない。たとえば道路、橋梁、港湾、こういったような事業については超過負担がほとんどない。その反対に生活関連事業と言われる学校、保育所、老人ホーム等々、社会福祉事業施設などには超過負担が非常に多い。生活関連事業を重点にして公共事業をやっていくんだと、こういうふうに政府も述べているわけですが、それには補助対象基準等々の中で、産業基盤整備の事業が超過負担がなくて、住民に密着した生活関連事業に超過負担が多い、こういう逆さまな実態があるわけです。自治省はこの点についてどういうふうにとらえておりますか。
  81. 山本悟

    政府委員(山本悟君) まあ産業基盤と生活関連をどういうふうに分けるかと、いろいろな問題はあろうかと思いますが、ただいま御指摘になりましたように、私ども超過負担という観点から見ますと、いわゆる公共事業、道路、橋梁、港湾といったようなものにつきましては、ちゃんとやった分量について一定の額が来るということで超過負担問題はほとんどない。それに対しまして、御指摘のように保育所でございますとか、社会福祉施設でございますとか、そういったものにおきましてはいろいろと問題があると、その点確かに御指摘のとおりのような感じがいたします。それぞれ所管省庁の取り組み方、現在はみんな各省庁一生懸命取り組んでくれていると思いますが、過去におきますところのそういったものに対します補助金あるいは負担金の支出のやり方というようなものがいささか違いがあったような点もあるように思うわけでございまして、建設なり、あるいは運輸なりというところの公共事業関係については比較的そういう事態が少なくて、文部省なりあるいは厚生省等においての所管事項に比較的そういうことが多いというような事実が見受けられるわけでございますので、それぞれ必要な省庁に対しましては申し入れをいたしまして改善を図るように努力をするようにお願いをしているところでございます。
  82. 小山一平

    小山一平君 自治大臣、いまも財政局長がお認めになられたように、超過負担の実態というのはいま申し上げたとおりなんですよ。政府が生活関連事業というものを優先してやっていくんだと、こういう方針を出しているからには、いまのように産業基盤関係の事業には超過負担がなくて、生活関連事業には超過負担が多い。これは大変問題でございますから、閣議等でぜひとも生活関連にかかわる事業も超過負担がないような各省の取り組みを自治大臣の立場で要請をしていただきたい。努力をしていただきたい。大臣の御答弁をお願いします。
  83. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 御指摘のように、生活関連の施設の整備に当たりましての超過負担地方では非常に多いのでありまして、超過負担は財政を乱るものでありますから、どうしても早期に解消をいたしてまいらなければならぬのであります。いつも予算編成期の前、七月か八月ごろに、各省庁に対しまして具体的な申し入れをいたしておるのでございますけれども、今後強力にこの考え方を推進いたしますと同時に、また、御指摘がございましたように、閣議等におきましても積極的に発言をいたしまして超過負担の解消を図ってまいりたい、かように考えます。
  84. 小山一平

    小山一平君 ぜひ大臣にその努力をお願いをしておきます。  時間もありませんから、最後になろうかと思いますが、不公正の最たるものだと私が常に考え、ここの委員会でも幾たびか取り上げた問題はギャンブルです。公営ギャンブルで収益金が多額にある。これは基準財政収入額にも参入をされずに、プラスアルファで自由に使える。これはまことに不届き至極なことだと思うんですが、昨年、五十二年のことがわかっているか——わかっていなければ五十一年でもいいんですが、公営ギャンブルの総収益金は幾らになっておるか。多分特別交付税に匹敵する額になっているはずですが、どうなっておりますか。
  85. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 五十二年度はまだわかっておりませんで、五十一年度の数字でございますが、収益金の総額は二千七百六十七億というような数字でございます。
  86. 小山一平

    小山一平君 この中で、その地方団体の地方税よりもこの収益金の方が多い団体がありますか。
  87. 山本悟

    政府委員(山本悟君) ちょっと手元に当該団体の地方税より多い数字を持っておりませんので、かわるものといたしましてその団体の標準財政規模よりも収益金の方が大きいという団体がわかっておりますので、それの分をお答えさしていただきたいと思いますが、五十一年度決算におきまして十一団体、大体三市八町が標準財政規模よりも大きいという数字になっております。
  88. 小山一平

    小山一平君 そういうことでも明らかなように、自治省が、自治体の人件費が国家公務員より高いのがあってよろしくない、こういうようなことで強い指導、勧告を行っておりますが、中には人件費総額の二倍以上の収益金があるなんというところもあるわけですよ。こういうところはどうしても甘くなって、人件費も他の団体よりもよけいに払う。そうすると、その隣近所の団体は、それによってやむを得ず、それに見合うところまでいかないにしても、引き上げを行わざるを得ない、こういう大変まずい原因をなしています。もうそろそろこういう目に余る不公正というものはなくすべきだ。いろいろむずかしい問題があることはわかっていますけれども、特定の団体だけが、中には人件費総額の二倍ものプラスアルファの財源を持っている。そういうところが、それじゃ社会福祉でもみごとにやってのけて、絵にかいたような姿であるというなら、まだ幾らかましだけれども、そんな特別の条件を持っていながら財政運営は必ずしも模範的、健全に行われていないなどということになる。それはよけいなものを持てばそういうことになりがちです。自治省として公営ギャンブルの収益金の不公正、これを断固としてひとつ改革をすべきだ。自民党の中でもこのことに対する何か検討の委員会かなんかがあるように聞いておりますけれども、何年も何年もこれは懸案になっている課題です。自治省元気出してこの問題のギャンブル収益の均てん化、不公正是正やっていただけますか。
  89. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 公営競技の収益金につきまして、できるだけ均てん化の必要のあることは御指摘のとおりであろうと思います。自治省といたしましては、御案内のとおり、昭和四十五年から公営企業金融公庫納付金制度をつくりまして、その一定部分を納付させまして、公庫の利率を下げるという方向によりましての措置をいたしていたわけでございます。また、各逐年その率を上げてまいったわけでございますが、五十二年度は売上額の〇・八%でありましたものを五十三年度は一挙に一%まで引き上げるということで、五十三年度にはさらに一歩前進した措置をとることにいたしました。また同時に、今回の御審議をお願いしております公営公庫の機能の拡充ということが行われれば、公営競技をやっている地方団体だけでなくて、広く臨時地方整備事業債等につきましても特利をつけるというようなことで均てん化をさらに全団体に及ぼすことができるというようなかっこうにいたしているわけでございます。また、財政上非常にそういった有利財源と見られるものがあるというような点におきましては、御案内のとおり特別交付税あるいは地方債の配分におきましても、そういったものを考慮いたしまして、財政上の調整措置というのをいま講じてきているところでございます。こういうような対策をいままでやってきたわけでございますが、今後の均てん化の方策、その方向というのは御指摘のとおりであろうと思いますが、昨年十一月以来総理府の方で公営競技問題懇談会を設置していろいろと論議をしている最中でございますので、その検討結果等も待ちまして、考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  90. 小山一平

    小山一平君 もう時間が参りましたから、地方財政の拡充強化、地方自治の確立、このことに格段の御努力をお願いをして終わります。
  91. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時五十分まで休憩いたします。    午後零時五十分休憩      —————・—————    午後二時開会
  92. 金井元彦

    委員長金井元彦君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  93. 金丸三郎

    ○金丸三郎君 それでは自治大臣に、今後の地方の税制あるいは財政の見通し等を中心にして御質問を申し上げたいと存じます。本当はゆかたがけのような気持ちでお尋ねしたいのでございますけれども、こういう公式の委員会でございますのでそういうこともできません。大臣から御所信なり御決意を、また地方自治全体についてのお考えを率直にお伺いいたしたいと思います。  第一は、現在のわが国の地方自治の現状をどう考えたらいいのか。今後府県や市町村の自治団体がどういうことをやるべきとお考えなのか。自治団体の役割りと申しましょうか、使命と申しましょうか、そういうことについてお伺いいたしたいと思います。  私は、昭和二十年から今日まで約三十年間のわが国の地方自治の移り変わりを見ておりまして、およそ三つの時期に分けて考えることができるんじゃなかろうかと思っております。第一は、昭和二十年からおよそ三十年までで、これは日本全体が混乱の時代でございました。地方自治団体も同じであり、財政は窮乏し、税制といわず行政の制度といわず、あるいは財政から、いろいろな面に新しい制度が次から次へつくられてまいりまして、それに歩調を合わせるのが精いっぱいで、財政の状態から申しましても、私どもが非常に印象に残りますのは、六・三制が実施されて学校建設のために金がなく、住民と財政との板ばさみになって数人の町村長が自殺したというような痛ましい例がございました。昭和二十九年、三十年が私は戦後の地方財政のどん底の時代ではなかったかと、このように思います。だから、昭和二十年代は地方自治団体が新しい装いにいかにして適応するかということと、環境は混迷の極に達しておったと。そして、昭和二十九年、三十年のそういう状態に立ち至った。これがおよそ昭和二十年代のわが国の地方自治の姿じゃなかったろうか、かように思います。私はちょうど二十九年、三十年の地方財政のどん底の時代を北海道庁で体験をいたしました。五ヵ年ぐらいの財政再建計画をつくりましてもなかなかできるという自信がなかったぐらいでございます。ところが、見る見るうちにこれがよくなりました。なぜかと申しますと、当時は気づかなかったわけでございますけれども、日本の高度経済成長のはしり、いわゆる神武景気昭和三十一年ごろ訪れた。したがいまして、昭和三十年代から四十年代、人によりましては昭和四十六年が日本の高度経済成長の最後の年だと言う方があります。大ざっぱに申しまして三十年代、四十年代は国全体としては日本始まって以来の高度経済成長。地方団体もベースアップをどんどんやっていける。橋もつくれる。学校も建てられる。道路その他いろいろなものが充実いたしました。これは国全体についても同様でございます。いわばわが国の地方自治団体が相当に公共、社会両方の資本が充実して、内容がよくなったのがこの時期じゃなかろうかと、私はこのように思います。  もう一つ、実は私一人の意見かもわかりませんけれども、日本のこの高度経済成長の背後に日本の地方政治が安定をしておった。これは知事公選、市町村長の直接選挙の制度が、市町村の行政を少なくとも二期一三期安定させておった。これは私は相当目に見えない日本全体発展の支えであり、日本の地方自治がよくなっていったやはり一つの原因ではなかろうか。直接選挙という制度は当初非常に心配されましたけれども、少なくともいままでの三十年間を振り返ってみますというと、私は、わが国ではうまくいっているんじゃないかと、こういう感じがいたします。問題が地方自治になかったわけではございませんけれども、いままでの約二十年間はこういうことでうまく参りましたのが、例のオイルショック以来国全体も船が何か氷山にでもぶっつかったようなかっこう、地方自治につきましても同様な問題が起こってきておるような感じがいたすのでございます。全体としてわが国は非常に政治的に地方分権の制度がとられながら、行政的にあらゆる面に非常に中央集権の強い国柄でございます。しかし、今後のことを考えますというと、やはりもう少し地方に力もつけ、また国も心配しないで府県や市町村に仕事を任していってもいいのではなかろうか。今度の三全総を見ましても三千万ほどの人口がふえますのを、日本列島のどこどこに住まわしていくかというのが大きな課題で、これにはやはり私、府県や市町村、地方の力を相当につけることの方がよろしいんじゃないかと。そういう意味では地方分権をもっと強めていった方がいいのではなかろうかと、こういうような感じがいたすのであります。昭和二十年代を混乱期と申しますならば、昭和三十年代、四十年代を成長期と言い、今後五十年代に入りまして日本の地方自治というものは、府県や市町村がどういうことを自治団体としてやるべきなのか、また国はどういうことを期待すべきなのか、これについての大臣のお考えをお伺いいたしたいのでございます。  私は、やはり居住環境の整備の問題とか、あるいは福祉の問題とか、教育は本来国の仕事と言われておりますけれども、私は、日本の将来を考えますと、やっぱり教育は非常に大事だと思っております。ところが、知事も市町村長も教育にどのように熱心でありましても口は差しはさまれない。市町村の小学校の教育はどうかということは、私たちは町村長でも大変な関心事だと思っております。実は知事でもそうでございます。しかし、教育委員会をしてやるたてまえで、予算を通じてある程度の自分の考えを示される、教育委員のいわば任免権があるといってもようございますけれども、これでそう教育行政が左右されるものとは思われません。これは自治大臣の直接の御所管じゃございませんけれども、私は教育につきましては、いまの教育委員会制度を改めてでも、やはり知事や市町村長という地域の本当の責任者が教育に関与できるようにいたしますことが非常に必要じゃなかろうか。教育と政治を離すという考え方からいまのような制度になっております。しかし、国によりましては徹底した教育に政治が関与しております。国々の必要によって制度は違っていいのであります。これは若干質問がそれておりますけれども、今後のわが国の地方自治にどういう役割りを期待したらいいのか、どういうことをやるようにした方がいいとお考えなのかをお伺いいたしたいと存じます。  次は、いわゆる財政自主権とか、行政自治とか、地方分権ということを先ほど申しましたが、これに関連してお伺いいたしたいと思います。  第一は、いわゆる三割自治という言葉がございます。これは地方税とか、手数料とか、純然たる自主財源だけならばそうでありましょうが、交付税まで地方の自主財源だという考え方でいけば、その点は変わってくるだろうと思いますけれども、今後わが国の地方自治団体の自主税源というものを考えてまいりますというと、三千数百の非常に税源に乏しい自治団体と、豊富な自治団体といろいろございますので、地方税だけで財政自主権というのをつくり上げていくと申しましょうか、確立するということはなかなかむずかしい。やはり三千数百の自治団体がミニマムの住民の必要とする行政水準と申しますかを達成するのには、どうしても交付税方式のものが考えられなければならないと、こういうふうに思うわけでございます。だから、非常に素朴な自治という考え方から申しますというと、この自主財源が豊富な方が望ましいように思われますけれども、国全体の自治団体のミニマムの行政水準を維持するという考え方でまいりますというと、そればかりでもいくまいと。だから、財政自主というようなことについて、それらの点を一般にどのように理解したらよろしいのか。ただ、形の上の地方税だけが豊富なことが地方自治が充実しておると言えるのかどうか、その点についてのお考えをお伺いいたしたいと思います。  次に、できるだけ地方自治団体が自主的にやることが望ましいわけでございますけれども、ことし、それから五十二年度、昨年度予算の編成の仕方、地方財政計画の決まり方、その過程を見ておりますというと、国も財源がない、地方もない。しかし、国全体の景気の浮揚のために、あるいは行政水準の維持ないし向上のために、いわば赤字国債でも出してやっていかなければならないという政治的な要求といいましょうかが非常に強いために、いわば昨年から、ざっくばらんに申しますというと、赤字国債を発行して国や地方の財政を賄うというようなことになってきておると思います。この点も過去の混乱の時期と成長の時期と今後の地方自治の当面をしておる段階の一つの私は大きな特色だろうと、こういうふうに実は思っております。この赤字になりましてから、もう国の方に全部あなた任せの財政措置になり過ぎてしまってはいないか。これは全国知事会にせよ、あるいは市長会にせよ、町村会にせよ、自分たちの努力によって予算を編成する力がなくなっちゃっている。国が公共事業をやる、これだけの公債を発行する、見合う地方負担はやはり公債で発行せにゃならぬ。今度交付税でそのような公債の償還も財政需要として見ていくようになった。これは一面から申しますというと、地方に自治団体としてこれは三千数百、ですから個々の自治団体では違いますけれども、自分たちで予算を決めていくというんではなくって、いわば自治省大蔵省の話し合いで地方財政の枠が決まって、それに従って府県や市町村は予算を編成していかなければならない。こういう趨勢が非常に強くなってきた。去年から特に私はそれを痛感いたします。  後ほど申し上げますけれども、いまの中期の地方財政の収支の予算政府で出された試算、私は、これも相当今後まだ論議の余地のあるものとは思いますけれども、したがってこれで永久にいくものじゃございますまいが、どうも現状は地方自治の方向に趨勢として向いていくようでありながら、財政面を見ますというと、いわば極端な中央集権的な現在地方財政の決まり方になり過ぎているのじゃなかろうか。これはできるならば数年で解消されることが望ましいと思うわけであります。  この決まり方について、私はいま申し上げましたように非常に一方的であり、地方から申しますというと、全くあなた任せの地方財政になり過ぎておるという感じがいたしますけれども大臣はこの点をどういうふうにお考えになりますか。また今後、そう一挙にというわけにはまいりますまいが、できるだけ地方が自主的に予算が編成できるようなふうにするにはどのようなふうにしたらよろしいとお考えになっていらっしゃるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  94. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) きわめて広範な、それも国政、地方行政を通じます根本的な問題についての御意見やまた御提言でございました。なかなかお答えしにくい、またきわめて基本的な問題ばかりでございますので、あるいはとんちんかんなお答えになる場合があったといたしましてもお許しをいただきたいのでありますけれども、戦後から今日までを振り返ってごらんになりまして、おおむね三段階に分けての御意見でございました。私もまた同様の感じを持つのでございまして、あの戦後の混乱期からわが国経済高度成長を遂げてまいりました段階から、そしてここ数年は、御承知のように昭和四十八年秋の第四次中東紛争以来、世界の不況のあおりを日本も食いまして景気の沈滞が続いておるのでございます。これをどのように脱却をして新しい道を求めていくか、これが国政と地方を通じての根本の問題でありますことは御承知のとおりでございます。  そこで、当面の大きな課題といたしましては、この景気の沈滞を脱却いたしましてわが国経済安定成長段階を早く求めていきたい。そのためには少なくも昭和五十三年度におきましては七%の経済成長を遂げていきたい。そのためには少々大きな借金をしてでも公共事業の大幅な拡大を行うことにより、そのことが社会資本の充実にもつながってくることでありますし、また雇用不安の解消にも直結をしてまいる、かようなことで施策が進められておりますことは御承知のとおりでございます。そういう段階において地方分権が埋没されてしまっておるではないかと、かような第一番目の御意見であったと思います。新しい地方自治法が制定され、新しい憲法のもとに発足をいたしましたあの段階では、もっと地方団体が自主性を持った、自立性のある団体として大きく発展を遂げていかなければならぬと、これが当時の基本考え方であったのでございますけれども、しかし、中には非常にすぐれて、地方自治のために安定的に定着いたしたものもございますけれども、またそうでないもの等もあるのでございますが、しかし、今後の大きな方針といたしましては、やはり地方分権を強化いたしまして、地方団体の自主性を高めていく、この基本の方向で努力をいたしてまいらなければならぬと思うのでございます。  それから、第二の問題は、教育の問題にお触れになられたのでございまして、都道府県の段階におきましては、高等学校を中心にいたします教育、また市町村におきましては、小中学校を中心にいたしましての教育に非常な関心を持っておりはいたしますものの、しかし、たとえば市町村等からの不満を聞きます際に、市町村としては学校の校舎の建築や、また教育委員選任などにはタッチをするけれども、教職員もみんな県の職員であって、県の自由に配置をするそのままを甘受しなければならぬ、こういうことでは本当の意味における義務教育の責任が持てない、かような意見等もしばしば私どもも耳にいたすのでございますが、しかし、いま教育制度をどのように改正していくか、これは私の所掌でもございませんし、また大変な問題でございますけれども、しかし、地方団体が教育に非常な関心を持っており、関心を持っておるだけにもっと深くタッチさるべきだと、すべきだと、かような意見の強いことは私もよく承知をいたしておるのでございます。  それから三番目は、財政の問題についてのお触れでございました。なるほど地方自治の本義からいたしますと、地方団体にできるだけ税源を付与いたしまして、自主的にその税源が使え、行政を取り運んでいくと、これが理想ではあるのでありますけれども、しかし、わが国が均衡ある発展を遂げておらぬこの現況下におきましては、やはり交付税制度が必要でございまして、この交付税制度が営んでおりまする機能は高く評価されなければならぬ、この点は私もまた同様でございます。したがって、一般財源の均てん化を図ってまいりましたり、あるいはわが国が均衡ある発展を遂げてまいります上では、やはり地方交付税制度の今後の活用と拡充、強化が必要である、かような基本考え方に立っておるのでございます。  それから、最後に御指摘になられましたのは、今日の地方団体はあなた任せの財政であって、大蔵省自治省で話をいたしますならば、その決まった枠内において半ば機械的に地方団体が律しられておるではないかと、かような御指摘でございます。私も現状はさように認識をいたしますけれども、しかし、このことが決していいとは考えられないのでありますから、今後の大きな方向といたしましては、やはり地方団体が自主性を持ってまいりますように、仕事の面におきましても、また財政の面におきましても格段の努力が必要であり、そういう努力を積み重ねることによって地方自治の確立を図っていき、自立性を高めていかなければならぬ、かような考え方では、金丸委員と私は全く同じ考え方に立っておるのでありまして、今後もそういう方向で努力をしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  95. 金丸三郎

    ○金丸三郎君 次に、最近の成田空港等の事例を見ておりまして、国と府県あるいは市町村という自治団体との協力関係と申しましょうか、これをよほどうまくやっていかなければ、国の大きな目標の計画もできないし、また府県や市町村も非常に迷惑をする面も多々あると、こういう感じが実はいたしております。私の体験からいたしましても、たとえば原子力の発電所の建設の問題、あるいは長崎県、佐世保市が非常に政治的にいまでも苦労しておいでになります原子力船の「むつ」の問題、大体原子力行政というのは完全に国の行政でございます。しかし、国が発電所をつくらせようとしましても、知事、市町村長が間に入りませんければ物事は進まないわけであります。全部、極端に申しますと、どろをかぶっておるのは知事や市町村長であります。どうもそれに対する科学技術庁なりあるいは通産省の理解が私は非常に足りないという気がいたします。  それから、原子力船の「むつ」の問題、これなんか完全に国のいわば政治といいますか、行政であります。長崎県にも頼み込んで、政府が何とか長崎県あるいは佐世保市に引き受けてもらうようにしておきながら、むつ市の方でまた受け入れるような人が市長に当選しそうになりますというと、また青森県に引き戻してもいいというような話が漏れます。こういうような政府態度では、それは知事も市町村長も協力のしようがありません。やはり政府も頼んだ以上は、その約束を守って、あくまでも一緒に行動してもらうんでなければ、頼まれた人も大変な迷惑でございます。私は長崎県の実情も相当知っておりますだけに、あれに対する政府態度には非常な不満を持ちます。  それから、今後の新幹線等の建設の問題でございますとか、あるいは水俣病の処理の問題でございますとか、まあ水俣病は法律で機関委任事務にされておるそうでございますけれども法律で決められておると否とを問わず、今日国の大きな事業で、府県や市町村の住民とかかわりが出てまいりますものはもう枚挙にいとまがございません。これには必ず市町村長が苦労をし、またいろいろな関係で知事なりあるいは市町村の議会、府県の議会が関与しなければ解決のできない問題が、もう枚挙にいとまがないと言ってよろしいと思います。これが現実の日本の姿でございます。これをどういうふうに考えていったらいいのか。何も地方自治とか地方行政とかいうだけの範囲では考えられない問題かもわかりません。  まあ一面から申しますと、国と地方の協力関係とでも申しましょうか。しかしこれはどうしても必要で、それを各省てんでんばらばらにやっておりましたんでは、地方団体は大変迷惑を実は私はしておるように思います。今後できるだけ自治大臣が各省との間に立たれて、まあコオーディネートの役割りと申しましょうか、何か調整をなさるようなことが必要ではなかろうかという感じがいたします。非常に問題がこじれたときに自治大臣を担ぎ出してきて、知事や市町村長を納得させるというようなことだけでなくって、もっとこううまくコオーディネートができるようなふうになさいませんというと、地方も迷惑、国の行政も進まないで、むだな国費ばかり使うというようなことが落ちになっている現状を改善する必要があろうと思います。この点についてお考えをいただきたいと思います。  次に、地方財政についてお伺いいたします。時間もそうございませんので、できるだけ簡潔に御質問を申し上げたいと思います。  先般、自治省から提出されました中期の地方財政の収支の試算、これを見ますというと、ケースIでは今後四年間に二十三兆三千億の不足を生ずる。四十七年に国も同じような、このケースIに相応するような試算でまいるといたしますと、国が百二十二兆の財源不足になる、地方が三十七兆の累積の赤字と申しましょうかになって、合わせますと百六十兆、そうしますとこれはインフレは必至というふうに見てよろしいのではないかと思います。したがいまして、ケースIでは自治省としてもやっていくお考えはないのではなかろうかと。ケースIIないしケース皿をおとりになるのではなかろうかと思いますけれども、その点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。これが一つでございます。  次は、ケースIIないしケースIIIでいくといたしますというと、ケースのIIの場合が、今後四年間に約四兆円の増税と申しますか、税の増収と申しますか、を図っていかなければならない。ケース皿でございますと三兆四千七百億という数字でございます。これはどのような内容税収増加あるいは新しい税を起こすことによってこれだけの収入を確保していこうとお考えになっておるのか。現在の段階、現時点におきます自治省のお考えを承りたいと思います。これに関連をいたしまして、やはり増税をやるといたしますならば、どうしても祖税特別措置の整理でございますとか、経費の節減であるとか、行政改革と申しましょうか、そういうことがどうしても必要になってくるのではなかろうか、かように存じますが、その点についての大臣の御決意あるいはお考えをお伺いいたしたいと思います。  次に、地方税収をふやそうといたします場合、ケースIIでございますと四ヵ年に四兆ですから大ざっぱに言って一年に一兆円です。ケースIIIの場合が三兆四千、ざっと八千億、八千五百億の毎年の増加でなければならない。地方税でこのようなものが考えられるか。今日のわが国の税制はシャウプ税制以来、市町村は固定資産税と住民税を基本にし、府県はまず法人事業税を基本にしてまいったといってよろしいと思います。これらの税はほとんど毎年毎年住民税も法人税もあるいは法人事業税も減らすという方向で来た。幸い高度経済成長の波に乗ってそれでやってこれたわけでございますけれども、今後の中期の見通しからいたしますというと、なかなかそれは困難じゃなかろうか。そうすれば固定資産税や住民税や法人事業税、これらについて増税ということが考えられないのか。それが非常にむずかしいとするならばどういうふうな税を考えるのか。  それから次に、——以上申し上げておりますのはこれは直接税でございます。直接税の中で、何らか地方のこの財政危機を乗り切っていくための緊急な措置と申しましょうか、恒久な措置ができればそれにこしたことはないわけでございますが、間接税を起こすということによってこの地方の歳入の増加が図れないものか。間接税の一つとして消費税が考えられますけれども地方税にはなじまないものか。地方税として消費税を考えるといたしますならば、どのようなものが考えられるか。私はケースI、II、IIIを比べて見、また国の財政の試算を見てみまして、まあこのままではもう国も行き詰まり、地方も行き詰まるということはきわめてはっきりしておると思います。だから、ここらでやはり政府としては相当な決意を持って、ある程度世論を聞かれることも大事でございますけれども、私はやはり国民をリードしていくというような御決意も必要ではなかろうかという感じがいたすわけでございますが、以上の諸点についてのお答えをいただきたいと思います。
  96. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 多数の項目にわたる御質問でございまして、最初の国と地方との関連についての御質問でございますけれども、金丸議員は、長い間地方自治で御苦労なすっていらっしゃる、その体験からのただいまの御意見やまた御質問でございまして、私もまた同様の感じを強く持つのでありまして、端的な言い方をいたしますならば国は余りにもわがまま過ぎる、かような感じを持ちます場合がしばしばあるのでございまして、やはり地方あっての国でありますことは申すまでもないことでございますし、また地方団体は第一線で日々非常な苦労をしておるのでありますから、その苦労のことも中央がよく理解をいたしまして対処してまいりませんことにはできるものもできなくなってしまう、かような感じを深ういたすのでありますから、自治省が間に立ちましてもとより調整等を行いまする場合もしばしばございますし、その面での努力は惜しまないのでありますけれども、しかし各省庁がもっと深い理解を持って地方に対処してもらわなければならぬし、地方の実情等を踏まえた国政のあり方でなければならぬ、このことを強く感じておることでございます。  それから、財政問題についての数点の御質問でございました。御指摘がございましたように、地方財政収支試算ではケースIからケースIIIまでの試算をいたしておるのでございまして、ケースIが国の場合のケースAに対応いたすものでございまして、ケースIIが国の場合のケースCに対応いたしておるものでありますことは御承知願っておるとおりでございます。そこで国の場合におきましても、ケースCの場合におきましては、昭和四十七年度においては十兆三千三百億円の税の増収を図っていかなければつじつまが合わぬ、かようなことでございますし、また地方財政収支試算のケースIIの場合におきましても四兆円を超えますような税源の確保をいたしてまいらなければ収支が償ってまいらぬ、かような試算をいたしておりますようなことでございます。そこでケースIIなりケースIIIの場合に相当の増税を期待しておる試算だけれども、その中身はどうか、かような御質問が財政に関する第二の御質問でございました。  私どもは単なる試算を行いましたのみでございまして、この間に政策的な配慮はいたしておらないのでございます。ですから、もとより国の暫定試算を前提といたし、そして大蔵省の国の財政試算を踏まえてはおりますものの、それに対応する姿とすればかような姿になると、このことを示しておるのみでございまして、ケースIIの場合の四兆円を超えます税源不足税収の補てんを何らかのかっこうにおいてせざるを得ないということは示しておりますものの、その中身につきましては、政策的な意図を持っておらぬのでありますけれども、ともあれ税の増徴を図っていかなければならぬ、つじつまが合わぬ、このことを皆さんに御理解願う、かような意味で試算をいたしたようなことでございます。  そこで、増税をいたすと仮定をするならば、事務、事業の見直しを行ったり、あるいは行政機構の改革を行ったり、あるいは税制上の特別措置の廃止を行ったり、各面にわたりましての取り運びをしなければならぬではないかと、かような御指摘でございますが、私も全くそれと同様に思うのでありまして、税の増徴を図ってまいります上では、国民の御理解を得なければならぬことは申すまでもないことでございますから、御理解の得られます客観情勢をつくり上げてまいりますことに取り組んでいかなければならぬと、かような感じを深ういたすのでございます。  それから、税に関します四番目は、地方税で、現行税制のみで四兆円なり三兆円の増徴は可能であるかどうか、かような御指摘でございました。  もとより税の増収を図ってまいります上では、現行税制の拡大措置等が必要であろうことは想像にかたくないのでございますけれども、しかし、これのみをもってして充足し得るとは考えておらないのでございますから、新たな税目等を起こす必要があり、そうしなければ四兆円を超えますような税収確保は困難だと、かように判断をいたします。  それから、最後の御質問は間接税につきましてのお考えでございます。申すまでもなく直接税は税負担をいたします者が非常な負担感を持つのでございまして、諸外国の場合を見てみましても相当の部分を間接税に依存しておる、かようなことでございますから、わが国の税体系の大きな方向といたしましては、やはり負担感を余り多く伴わない間接税に今後相当の重点を置いていくべきだ、かように基本的に考えておるのでございますけれども、さてそれならどういうものがあるかと、かように折り畳んで御質問でございますならば、私ども税制調査会でも鋭意御審議をいただいておりますし、また地方制度調査会等におきましてもただいま鋭意御審議を願っているさなかでございますから、さような結果を踏まえながら対処いたしてまいらなければならぬのでありますけれども、御指摘のございました地方税においても間接税で一般消費税に類するような形で取れる方法はないのかと、かような最後の御指摘でございました。  私どもがここ数年来法人事業税におきまして外形標準課税を導入いたしたい、かような考え方を持っておるのでありますけれども、この外形標準課税は、最終的には負担をいたします者は最終の消費者と、かようにならざるを得ないと思うのでございますが、この点が、仮に国の段階において一般消費税を考慮すると仮定をいたしますならば、それとの関連におきまして、税負担の最終負担が同じである、また課税方法等について類似のものがあるではないか、かような御議論が中期答申等においてもなされ、そして二つの考え方を述べておる、かようなことでございますが、いずれにいたしましても今後、国税との関連もございましょうけれども地方税はまた地方税の立場においていろいろ検討いたしまして、税源の確保を図ってまいりたい、かように考えておるところであります。
  97. 金丸三郎

    ○金丸三郎君 次に、交付税の役割りと申しましょうか、についてお伺いいたしたいと思います。  本朝も交付税の三二%の繰入率に関連した御質問がございました。できますならば、三二%をふやさないことには総枠としてはふえないわけで、交付税の中身の改正によって従来の国債の償還等を財政需要として見るということは、いわば自分の口で自分の手足を食っているような感じがあるわけでございます。だから、地方財政全体をよくするのにはどうしても交付税の繰入率をふやすということが私は必要だと思う。大臣もそういうような強い考えでやっていくつもりだという御答弁でございましたが、やはり今後どうしてもこれが必要ではなかろうかと思います。ただ、国のこの五ヵ年間のいわば財政の見通しにいたしましても、増税をやらないことにはとうていやっていけない。そういう国も、非常に財政の苦境の中で、交付税の繰入率、三二%を引き上げるということはなかなかむずかしいと、そういうお考えではなかろうかと思います。それはそれとして、しかしそれでも、それでは地方もやってまいれませんので、交付税の繰入率の問題を今後どのようにするか、それからもう一つ、ほかにできます税にリンクさせることによって、三二%はいじらないにせよ、いわば交付税の総量がふえるという方式、あるいはそれが交付税になるのか、譲与税になるのかわかりませんけれども、それ以外にリンクさせるということについての今後のお考えをお伺いいたしたいと思います。  それから、金額としては大したことにはならないかもわかりませんけれども、余りにも中央に対するあなた任せの態度を改めるために超過課税でございますとか、法定外の独立税であるとか、こういうものを地方地方で苦心をしてでも自主的にやっていくというような風潮が出てまいりますために、そのような方針をとることはどうであろうかと思いますが、これについてのお考えをお伺いいたしたいと思います。  それから、モーターボートでございますとか、地方競馬等でございますとか、宝くじでございますとか、地方の収入になる特殊なものがございます。これをできるだけ多くの府県なり市町村に均てんできるようなことは従来どのようにやっておいでになりましたか、また今後これをどのようにしてやっていこうというお考えでございますか、お伺いをいたしたいと思います。
  98. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 御質問の第一点の交付税率の問題でございます。五十三年度予算編成に当たりましても、少なくも六・五%の交付税率引き上げるべきだと、かような基本考え方のもとに大蔵省と折衝いたしたのでございますけれども、結果といたしましては、交付税率引き上げが不可能になってまいりまして、わが国の置かれております内外の情勢等から困難であることが明らかになってまいりました。そこで、ただいま御審議いただいておりますように、交付税特会において一兆五千五百五十億円の借り入れを行う、そしてその半分は国が負担をする、かようないわゆるルール化を当分の間いたす、かような結論に相なったのでございまして、そこで今後も交付税引き上げにつきましては、意欲を燃やしながら対処してまいらなければならぬのでありますけれども、いま金丸委員が御指摘になられましたように、単に国税三税の三二%が地方の固有財源だと、かような考え方だけではございませんで、新税等が導入されまする場合には、対象税目拡大を図り、拡大と同時に交付税率の問題も結論づけていくべきだと、かような根本の考えでございます。実は、五十三年度予算編成に当たりましても、石油新税が一般財源として確保されますならば、当然国税四税、かような考え方で対処いたしたのでありますけれども、結果といたしましてはエネルギー関係の目的税的なものにならざるを得ない、かようなことでございますから、対象税目に加え得なかったのでありますけれども、今後は単なるパーセンテージの問題だけではございませんで、地方財政基本的な改正の大きな柱といたしまして、税目拡大を含めました交付税率の問題の解決、かようなことで対処いたしてまいりたいのでございます。  それから、二番目の超過課税の問題や法定外課税の問題、それから三番目に御質問公営競技の均てん化、この問題は政府委員から答弁さしたいと、かように思います。
  99. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) 超過課税につきましては、標準税率をもって定めております税目については超過課税が可能であるという仕組みになっておることは御承知のとおりでございます。最近の財政状況から、各地方団体におきまして超過課税の件数がかなりふえてまいっております。もとより、標準的な負担以上の負担を求めるわけでございますから、それに見合った行政経費の充実、サービスの向上ということが当然必要であると思いますし、また納税者の十分な理解を得ることが必要だと思います。そういう意味合いでは、御指摘のように負担と受益との関係が超過課税をめぐりましてだんだん明確になっていくという自治の本旨に即した運用が行われる一つの機縁にもなっておるのではないかという感もいたします。自治省といたしまして、超過課税をやれやれと勧めるというわけじゃございませんけれども、やはりその辺の納税者の負担のあり方を十分考えながら、必要な超過課税につきましては、これを実施することもやむを得ないことと考えております。  法定外普通税につきましては地域の特性に応じた特別の税を起こせるという自治の本来に即した仕組みでございます。法定要件に該当いたしますれば積極的にこれを認める方向で処理をしてまいっておりますし、今後ともそういう態度で対処してまいりたい、かように思っております。
  100. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 公営競技の収入益金の均てん化の問題でございますが、自治省といたしましては、できるだけ均てん化を図るべきであるという考え方に基づきまして、昭和四十五年度から公営企業金融公庫への納付金制度を創設いたしました。以来この一定額を公庫に納付さしている、これによりまして公庫の融資の利率を特別に下げるという措置をとってまいったところでございます。逐年その率を高めてまいったのでございますが、五十三年度におきましては、五十二年度までの売り上げ額の〇・八%を納めさしておりましたのを一挙に一%まで高めまして、この機能をより強化をし、かつまた幸いにも公庫の融資範囲というのも拡大されましたので、全国の市町村に利率を下げるということによりましての均てん化というものが行き渡るようなことが本年度よりできるようになるんではないかと思っておるところでございます。なおまた、非常に収益金の多い団体等につきましては、特別交付税の配分に当たり、減額項目に立てる、あるいは地方債の配分に当たって制限を付する、こういう措置によりまして、ある程度の財源調整措置も講じてまいっているところでございます。今後の均てん化の方策は、なお一層これを進めるべきであるというお考えが非常にあるわけでございますが、私どもといたしましては、総理府に現在設けられております公営競技問題懇談会でいろいろと論議をされているところでございますので、その検討の結果等を待ちましてさらに措置を進めてまいりたい、こう思っているところでございます。
  101. 金丸三郎

    ○金丸三郎君 最後に、大臣の御決意を再度お伺いいたしまして質問を終わりたいと思います。  今日の国、地方とも財政状況はきわめて憂慮すべき事態になっておると、かように思います。しかしこれを改善いたしますのは、先ほども大臣がちょっと、そのような環境にしていかなければとおっしゃったように思います。私もその環境づくりが非常に大事だと実は思っております。   〔委員長退席、理事望月邦夫君着席〕 いままでは高度経済成長の余波、金が足らなくなったと思ったら赤字国債、非常に安易になってきております。本当に血のにじみ出るような経費の節約をして、足らず前を何とか補ってやっていこうというような気分が余りございません。私の体験を申し上げるのは大変失礼でございますけれども昭和三十年ごろ、財政の非常に悪かったころ、私北海道庁におりました。財政当局のある者が私に、各部から予算要求をするのがあたりまえで、これを切っているわれわれが無理なんですと、こう申したことがあります。無理なことはわかっておりますが、予算は切っても切っても切れますよ、手ぬぐいはしぼってもしぼっても一滴二滴水が漏れますと。私はこれは名言だったと思います。財政課には金がありませんので、予算要求に来た各部課の者と議論をする、しまいに立ち上がって議論をしておる。ないそでは振れぬから、議論には勝っても予算は取れないで各部課の者はすごすご帰っていった。それが昭和三十一年ぐらいから、だんだんだんだん道の税収が上がってまいりまして、よくなってきました。財政課の諸君が強く言えないんです。どうも最近道庁少し財政がいいらしいぞという空気が道庁全体にびまんしてきた、これは当然のことです。私は今後の経費の節約でございますとか租税の特別措置でありますとか、行政改革、やはりそういうことに中央、地方を通じてどうしても取り組むべきだ、同時に経費の節約にいたしましても、私は相当にやる余地があるんじゃないか、このように思います。一方には、地方団体及び国民に対しましても、地方財政の実情を私は訴えていただいて、そういう意味の環境づくりを、本当に地方の財政が悪くなって行き詰まりつつあるのだということを、恐らく国民はぴんときておらぬと思います。府県や市町村でも、いや足らぬところは、国と自治省大蔵省で公債を発行して、返すのはまた交付税で計算をしてくれるのだからというような安易な気持ちを持っておりましては、いつまでもだめでございます。そういう意味で、私は本当にこういう実情にあるということを大臣が訴えていただいて、そういう意味の環境づくりをしながら、このケースI、II、IIIのどれをおとりになりますか、II、III、をとるとすれば、やはり相当のこれは努力が必要でございます。どうぞこれらについての大臣の御見解と、御決意を再度お伺いをいたしたいと思います。
  102. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私は一番大事なことは、長い年月にわたるわが国経済高度成長段階がございましたので、それに対応いたしますような国や地方の行政組織ができ上がってしまっており、そしてここ二、三年きわめて厳しい財政状況下にありますことが十分に理解願えておらない節があろうと思うのでありますし、また長い間には、かつては必要でありました仕事でいまは必要でなくなっておるものがあるのでありますから、そういうことの見直しを積極的にやっていかなければならぬ、かような感じを強ういたすのでございます。昨年十二月二十三日に、国が行政改革についての閣議決定をいたしましたが、それを受けましてその直後に自治省といたしましては、地方に対しまして行政機構の見直しをやっていただきたい、また事務、事業の見直しを積極的にやっていただかなければなりませんよと、また定数管理等につきましても十分な御配意を願いたい、かようなお願いを地方にいたしたのでございますけれども、今後経済が回復いたしましても、わが国経済がかつてのような高度成長段階を迎えることはあり得ないと考えられますので、新しい体制づくりと積極的に中央、地方を通じて取り組んでいかなければならぬ、かように考えておるのでございまして、今後このような考え方のもとに積極的に地方行政と取り組んでいくべきだと、かように基本的に認識をいたしておるのでございます。ですけれども、さようなことをやりましても、なおかつ、今日の地方財政はきわめて厳しい環境下に置かれておるのでございますから、最終的には税負担増加を求めざるを得ないと思うのでございますが、先ほど私が環境づくりという言い方をいたしたそのとおり、やはり税の増徴を求めるならば、そのことを国民皆さん方が御理解願って、そしてなるほどそうなのか、国や地方としてもやるべきことはやっておるんだなと、かような理解を願わなければ、なかなか税の増徴は困難であることが私どもにもひしひしとわかっておるのでございますから、そういう方向での努力をいたし、また今日の地方財政の厳しい状況を国民の皆さん方によく御理解いただきますような、さような努力も最大限やってまいりたいと、かように考えておるところであります。
  103. 上田哲

    上田哲君 非常事態を迎えております窮迫の東京都財政を中心に政府の方針を承りたいと思います。  根本的に地方行政政策という枠よりも東京都、すなわちそれは、大都市問題というところに基本的な課題が発祥しなければならないと思いますし、歴史的な流れというところをさまざまな立場でとらえれば、すぐ口に出される高度成長、またその前、そして低成長への落ち込みというような兼ね合いから、大まかに言って、三十年代の前半と今日とをどのように、たとえば生活状況、文化状況として比較しておかなければならないというようなことに一つはなるだろうと思うわけです。  大臣に率直にまず伺っておきたいんでありますけれども、三十年代前半と比べて大都市、とりわけ首都東京の生活環境、広くは文化環境といってもいいと思いますけれども、その変化をどのようにお感じになっておられますか。
  104. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 池田内閣の時代に、所得倍増政策を明らかにいたしましたのが昭和三十五年であったと記憶をいたしております。それ以前のわが国の状況は、先ほど金丸委員も若干御指摘になられましたが、戦後の混乱期からようやく立ち直ってわが国経済がぐっと上向いて発展段階に入ろうといたしておった、そのことがちょうど昭和三十年代の半ばでございますから、その前半とそれ以後の間には、わが国の、ことに大都市におきましては非常な変革がやってきたと思うのでありまして、ことに東京や大阪のように中枢管理機能が大量に集積いたしておりますところへは、人口も急速に増加をしてまいりまして、端的な言い方をいたしますならば、都市政策なるものがそれに十分に対応し得なかった、かようなことが考えられるのでございまして、それが今日もなお大都市におきまして財政的に非常な御苦労をなすっていらっしゃるその原因は長い根っこがありますような、そういう理解をいたしておるところであります。
  105. 上田哲

    上田哲君 その大都市の住民の生活意識ということになると、生活環境が改善されたとか、暮らし向き条件がよくなったと思っている者は全くないだろうと思うんですね。繰り返すまでもないわけですけれども、教育環境、生活環境、騒音、大気汚染、水質汚濁、交通渋滞、緑地保全、水、ごみ、これ書き出してみると切りがないんですけれども、そういう悪条件の滞積のただ中に大都市生活者は投げ込まれていると思うのであります。で、その中の悪戦苦闘というのは、だから一義的、一元的に言うことはできませんけれども、これを財政的な側面からしぼっていくとすれば、こういう複雑化していく、困難化していく大都市型生活環境改善のための税源の配分の不適性といいますか、不十分さというものがやっぱり指摘されてくるだろうと思います。五十一年度の都道府県普通会計決算によりますと赤字団体が九団体でありますけれども、そのうち東京と大阪の赤字が飛び抜けて大きい、こういうところに税源配分の問題ということが一つ大きく反省されなければならないと思うのでありますが、いかがでございますか。
  106. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 税の制度が一たん決まりますと、なかなかそれを大きく手直しをいたしましたり、また中央と地方を通じましての税源配分は言うべくしてなかなか容易には行われないのが現状でございます。  そこで、いま御指摘がございましたように、大都市では公害の問題あり、あるいは清掃の問題あり、あるいは下水道の問題あり、あるいは教育の問題あり、かような問題のみが先行いたしまして、それに対応いたします十分な税源措置等が率直に申しましてなされておらなかった、かようなうらみがあろうかと思うのでございまして、大都市や大都市の周辺の都市におきまして非常に苦労いたしておりますその大きな原因の一つは、やはり税制が硬直しておった、急速に対応し得る姿ではなかった、このことも大きな原因だと判断をされます。
  107. 上田哲

    上田哲君 租税収入が適当に配分されるということが国土、経済全体の発展のために必要であるということは、これは当然な原理でありますから、そういう意味では私は、税源の多いところから少ないところへ公平に配分するという考え方、これは否定するものではありません。が、しかし、府県なり市町村という自治体が統治構造の基本として設置されて、住民の総意を地域の発展に生かしていくのが地方自治というものであるとするならば、やはり国なり府県なり市町村間でどのような租税の配分がなされてきたかということは住民の立場から見てもなおざりにすることができないわけであります。行政の責任というのはまさにそこにあると思うんでありますけれども、ここに住民一人当たり租税負担額と還元額という、これ四十九年度の資料がありますけれども、これを読みますと、東京都民は租税一人当たり国税が三十八万千三百円、地方税十三万三千四百円、合わせて五十一万四千七百円を負担して国や都に納めているわけでありますが、一方、租税の還元面では、地方税の十三万三千四百円がこれはこのまま都の行政費用となるほかは、地方譲与税の五百円、地方交付税つまり特別交付金分の二千二百円、国庫支出金の二万五千九百円、合わせて二万八千六百円が還元されるにすぎないことが明らかであります。で、申すまでもありませんが、租税負担額五十一万四千七百円というのはこれは全国第一位でありますから、日本じゅうで一番税金を納めている東京都民が、じゃ都民のために使われる財源としては地方税を含めて十六万二千円、これは実に全国三十二番目でありまして、一番金を納めていて三十二番目にしか使われない、と言ったら正確な言い方ではありますまいけれども、こういう立場というところにはもっと具体的に先ほど申し上げた税源配分の不適当という問題がしっかり出ているように思うんでありますが、いかがでありますか。
  108. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 確かに、東京都の租税収入とそれから還元というような点を取り出しますとそういうただいまのような御議論もできるわけでございますが、申すまでもなく、都はわが国経済の全くの中心であるわけでございまして、あらゆる産業活動の中枢が集まっている、それの中枢自体をつかまえまして、そこから当然国税にいたしましても徴収されているわけでございまして、税収自体が都に集中するという現象が起こりますのは、これはいまの日本におきます経済機構からいたしましてある程度当然予想もされ、またやむを得ないことであると思うわけでございます。また同時に、都にそれだけ租税が集中するということは、全国平均から申しますと全国平均にも達しないような地域というのが非常に多数あるということにも当然なるわけでございまして、しかも、地方行政といたしましては、各団体におきましても同じ程度の行政水準を確保する必要がある、こういう要請がまた一方であるわけでございます。その両面をあわせます調整をとりますための制度といたしまして、御案内のとおり、地方交付税制度が財政調整という機能を大幅に作用をいたしているわけでございまして、そういう点から申しますと、税源の偏在に対しまして財源調整を行っているということは、これまた日本の経済の現状からいたしましてやむを得ないところではないかと思うわけでございます。どの程度その財源調整の機能が働けばいいのかと、これはまたいろいろと政策的にも御議論があろうかと思います。ただ現在の、ここ数年のように経済の激変に伴いまして、なかなか地方税制がそれに対応していっていない、そのために非常に現在の地方税制のもとにおきましては不交付団体というものが減ってきて、府県の場合には東京都だけになってしまった、従来大阪なり神奈川なりあるいは愛知なりというのが不交付団体ということで、これは昭和四十年代はずっとそういうかっこうで来たわけでありますけれども、その体制が崩れてしまった。この崩れてしまったことには確かに問題点があろうと私ども思うわけでございまして、この姿がいいということではないわけでございますが、都の場合にはなおかつそういった情勢のもとにおきまして計算をいたしましても、なお交付税といたしましては不交付団体ということでございまして、なお相当な財政力を持った団体であるということは否定しがたいところであろうと思います。そういうような意味で、現在の姿ということがいいということを申すわけではございませんけれども、やはりいまのように非常に地域間の経済力のアンバランスのある状況のもとにおいては相当程度の財政調整というものを機能するような制度というものをつくっていくことは、やはりそちらの方から言えば必要であるということも御理解を賜りたいと存じます。
  109. 上田哲

    上田哲君 何言っているんだか全然わからぬ。一般論もいいところで、そんなくつを二重にして上からかくような話を聞いてもこれは困るんです。言っていることに二つばかり原理が交錯しているし、好意的にとらえると少しは前向きに言っているような気もするんで、何ですか、私が言うような、たとえば税源の調整というようなことをすべきである言っているんですか。それとも交付税システムというものはそういう調整機能を果たしているはずなんだということを言っているんですか。どっちなんですか。
  110. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 現在のような地域間に経済力のアンバランスのあるもとにおいては財源調整制度というものが必要である、これが一点であります。
  111. 上田哲

    上田哲君 そんなことはあたりまえのことじゃないか。
  112. 山本悟

    政府委員(山本悟君) あたりまえのことであります。したがいまして、先ほど御指摘いただきましたように、その租税一人当たりにとりますと非常に差があると、そんなに多く取っているのにかかわらず使える分量は少ないじゃないかと言われましても、やはりそれは調整制度ということが必要な現状におきましてはやむを得ないことではないかということが一点でございます。しかしながら、いまのように、要するに四十七都道府県の中で東京都だけが不交付団体だというような、そういったかっこうの税制というものは、地方財政制度から見て決して好ましい姿ではないので、それはやはり早い時期に直していく必要があるんじゃないか、この二点を申し上げたわけであります。
  113. 上田哲

    上田哲君 少しわかってきました。それくらいのところから始めてもらわないと、イロハのイの字のところはやめましょうよ。  だから私の申し上げているのは、そういう税源の配分について厚いところから薄いところへというふうにやるんだというところで、東京が少しはよそ様のお役に立たなきゃならぬということはよくわかると言っているんです。これは算術的に平均値に全部しなきゃならぬということを言っているんでは全くないのであって、そういう努力は当然なことでありましょうと、そのプリンシプルは認めましょうと、しかし本来のこの目的からするならば、あなたがおっしゃるような、東京の人は金持ちだから取ってもいいだろうというふうに聞こえるような、人が多ければということになればまた別な基準があるわけですから。そういうようなことじゃなくて、物にはバランスがあるじゃないかと、そこのところを強調されたと私は受け取りますから。私がここで数字を挙げたのは、これは別に当然秘密資料でも何でもない、だれでも知っている資料でありますから、こういうことになってみると、だれでも知っている資料の中で一番お金を払っている。何もそれを払っているぞ払っているぞという言い方しているわけではないが、また東京が一位でなければおかしいということもあると思いますよ。だがそれはそうだけれども、三十二番目だというアンバランスですね。それからあなた自身もおっしゃったような、たった一つ東京がこういう条件の中で全国的なたった一つ不交付団体になっているということでいいかどうかという問題は、そういうものを見るよすがとして考えなければならないだろうと、こういうことを私も言っているわけですから、そこは御同意いただけるならそれでいいんです。いいんですか。
  114. 山本悟

    政府委員(山本悟君) その点は、ただいま申し上げましたように東京都が一つだけ不交付団体というのは、やはりこういった経済の変動期に起こっておる現象でございまして、これは正常じゃないというように思います。正常ではないと思います。直さなければならないというふうに思います。
  115. 上田哲

    上田哲君 前段の分もね。最後の一行だけじゃないわけですね。まあ言っていることはわかりましたということですね。
  116. 山本悟

    政府委員(山本悟君) はい。
  117. 上田哲

    上田哲君 それで、その不均衡不均衡ということを言うつもりはないわけですけれども、都民の六分の一、東京の六分の一の負担でその二倍半も還元を受ける地域があるというようなことになると、東京都民の不公平感というものはやっぱり重要でなければなるまいということを言いたいわけでありまして、そこは余り具体的にというか、日常的にということよりも、せっかくのお話で大体原則的には状況認識が一致するわけですから、一つ踏み込んで見解を示していただきたいのは、そういうバランスあるいはアンバランスの調整をどういうふうな姿に持っていけばいいとお考えなんですか。いま東京だけがたった一つ不交付団体になるというようなことが、こういう中では望ましくないというような現象分析だけではなくて、あるべき姿としてはどういうバランス、あるいはこの程程のひずみというところへ持っていくのがいいとお考えなのか、政策原理をお聞かせいただきたい。
  118. 山本悟

    政府委員(山本悟君) ただいまのような都道府県税制のもとにおきましては、いまも申し上げましたように、東京都だけが不交付団体というようなかっこうになっているわけでございまして、これはやはり現在のような混乱期の経済情勢のもとにやむを得ないところであったとは思いますけれども、やはり将来の安定した財政状況というものを考えた場合には、もっと地方財源というものが多くなけりゃならない。これはやはり地方財源をより増強するということであります場合に、それを税制というかっこうで行います場合には、当然のことながらそういった財政力のあるところの税収はふえるというかっこうになろうと思うわけでありますが、もっとやはり全体として地方団体に与えられる税源が強化される必要があろうと、これが一点でございます。
  119. 上田哲

    上田哲君 ちょっと混線しているところもあるんですがね、不交付団体というところはそれでいいです。  それから、私は具体的に第一位と三十二位ということを挙げているわけですから、たとえばそこのところを断面としてとらえれば、一位と三十二位というのをどうすりゃいいと考えているか、端的に言えばそういうことを聞いているんですよ。
  120. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 一人当たりの財源をとりまして一位と三十二位というかっこうは、これは個々の独立した地方団体が標準的な行政を行う場合を基準財政需要額として計算しているわけでございまして、交付税制度のあり方から言うと、やはり小さい団体は割り高になるといったような事情がいろいろ出てまいります。したがいまして、何位であるから、東京都は何位でなけりゃならぬという言い方はいささか私どもとしてもしにくいわけでございまして、それじゃ東京都の都市としての財政需要というのが交付税の計算上的確に測定されていないんじゃないかと、こういう御議論であればやはり実態に即したようなかっこうで、その面におきますところの研究、検討というものを重ねていく必要というものは私ども十分認めるわけでありまして、改善すべきものは改善しなきゃならないということになりますが、この何位でどの程度にあればそれが適当なんだということは一概には申し上げかねます。
  121. 上田哲

    上田哲君 あっちこっちしちゃまずいんで、交付団体の可否についての議論は別におきますよ、そこでもっとわかりやすくこの数字を出したんです。  お認めになった第一点は、私自身も認めたように、調整機能としての意味合いというのはこれはわかっているんだと。だからイコールでなきゃならぬとは、ギブ・アンド・テイクでなけりゃならぬとは私は言っていない。しかし、その中でこのままではいかぬだろうということをお認めになったわけですね。だから一位と三十二位というのを、じゃ一位と何位にしたらいいかなどということは小学生の算術のようなことは聞きません。これはできないだろうと思う。だから、あなたも専門家としてあるいは理論家として何とか額といまおっしゃったから、そういう立場であるんならばわれわれのはるかに越えるような英邁なプリンシプルを出していただきゃいいだろうとちょっと皮肉ったんだが、そこまで言えなくとも、少なくともどこまで上げりゃいいとか下げりゃいいとかという議論をしなくても、少なくとも一位、三十二位というようなところをもっと変えなければならぬということまでは言えるわけですね。
  122. 山本悟

    政府委員(山本悟君) ちょっとその辺が申し上げにくいことでございますが、交付税の計算上財政需要を計算いたします場合に、まあ大きな団体、小さな団体によりまして、やはり一人当たりでとりました場合には経費が割り高にかかる、割り安で済むと、いろんな議論がございます。  それから都市と農村でどちらがかかるか、いろんな比較、費目によりまして……
  123. 上田哲

    上田哲君 そんなことはわかっているんだよ、そんなことは。
  124. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 増減がございます。それからそういうようなものをとっていきますと、どの辺がいいかということは、先ほど申し上げたように非常に低い。しかしながら……
  125. 上田哲

    上田哲君 それもわかっているんだ。
  126. 山本悟

    政府委員(山本悟君) いまのようなかっこうでの地方税制では、地方に与えられている税財源というものが少な過ぎるじゃないかと、そういう意味でもってもっとふやす必要がある。それがふえれば当然のことながら東京都の一人当たりもふえてきて順位も上がるだろうと、こういうことは申せると思います。
  127. 上田哲

    上田哲君 はいわかりました。そう言ってくれればよくわかる。それでいいですよ。そういう方向に努力をしていただかなきゃならぬだろうということで結構なんです。  そうするとね、あなたの方ではよく自治省の統計資料というのが、租税等の県別の一人当たりの負担額と支出額を出すわけですね。地方税に関する参考計数資料、都道府県財政指数表等々いっぱいあるわけです。これは何のために出しているのか。これは結局その個々の政策が累積して行き過ぎのないように公平を期するとか、あるいは均衡化を図るとかということなんでしょうね、そこはいいですよ。まあお経のような話はそれで結構として、いま言ったような考え方を、いまあなたがお認めになったような考え方を推進するとすれば、そういう資料はどういうふうに生きているのか、あるいはまたこれからどういうふうに生かそうとするのか、その辺をひとつ実感的に説明をしてください。
  128. 山本悟

    政府委員(山本悟君) まあ、いま財政指数表等御指摘になったわけでありますが、財政指数表はやはり地方団体、ことに府県で申せば幾つかにグループ分けいたしまして似通ったところをまとめて、その平均をとって大体こういった団体ならこの程度であるというようなことに使っているわけでございます。各団体のそういうものを見た上で自分のところがどういう財政状況にあるのかというようなことの参考資料にもなる、財政運営上の指標にもなるというような意味での使い方になっていると思います。  実を言いますと、端的に申して東京都というのがこういうかっこうで計算をいたしますと、都市行政をもう持っておるわけでございまして、消防だとか清掃だとか、そういった特殊行政もございますものですから、一般の四十七都道府県並みにはまいりません。それで、これを東京都だけ実を言うと別立てで一つだけの団体でもってランク分けをしているわけでございまして、そういう意味では東京というものについてこういったものの使い方というのは非常にむずかしい点が実はございます。これは特別区の関係その他でよく御案内のとおりであろうと思います。たとえば地方税というようなもの一人当たりとってみますと、これはどうしても都の場合には市町村税入るものでございますから、ほかの府県、大阪の倍みたいになっちゃったというようなこともございまして、なかなか使いにくい、それだけに東京都というものの実態というものがわかりにくい、こういったような問題点が出てくるというような感じがいたしております。
  129. 上田哲

    上田哲君 なかなかこういう資料というのは実情的には生きにくいということですか。
  130. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 特に都の場合には、やはり特別区との関係で行政事務のそれぞれ違いなり、また税収入の帰属の仕方も違うというようなことでございまして、他の一般府県がたとえば青森から徳島までまとめるというようなかっこうで、これは似通っているから比較ができるじゃないかという意味では東京は非常に比較しにくい団体だと思います。
  131. 上田哲

    上田哲君 まあそうでしょうね、そこは御苦労のところはよくわかる。  それならば、さらに議論を進めるために、これはあらかじめ要求しておいたんですけれども、四十五年度から地方財政計画の伸び率と基準財政需要額の伸び率がどんな関係になっているか。また基準財政需要額の経常的経費と投資的経費の伸長率がどういうふうになっているか説明してください。
  132. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 四十五年度を一〇〇といたしまして、四十六年度から前年度の対比におきます伸び率を申し上げてまいります。  四十六年度は対四十五年度に対しまして、地方財政計画では二二・九%の伸びであり、順次各年度をずっと申し上げてまいりますと、四十七年度は二一・五、四十八年度二四・〇、四十九年度一九・〇、五十年度二五・三、五十一年度一七・六、五十二年度一四・三、五十三年度一九・四、それから基準財政需要額でございますが、これは四十六年度、対前年度伸び率二〇・〇、四十七年度一四・六、四十八年度二〇・二、四十九年度二四・七、五十年度二五・九、五十一年度八・一、五十二年度一三・七、五十三年度一五・三でございます。
  133. 上田哲

    上田哲君 基準財政需要額における経常経費の伸びなんですが、四十五年を一〇〇とすると、五十一年度が三一八、投資的経費の伸びは同じく四十五年を一〇〇とすると、五十一年度が一八一になるんですね。それで、ここで注目されるのが経常経費は年ごとに順調な伸びを示しているんだが、投資的経費、これが四十五年の一〇〇に対して四十六年一二五、四十七年一三八、四十八年一七六、五十年二二三、五十一年が一八一、ここで五十一年でぐっと急に落ちるわけですね。さらに投資的経費の需要額を府県市町村別に分けて府県別について見ると、これは四十五年の一〇〇に対して一二一、一一六、一五二、一八〇、一八四、一二三と、これは予想外の変化になるわけですね。これは四十七年、五十一年はその年度地方財政財源不足地方債の増額によって補って、その分を投資的経費に係る府県の基準財政需要額を削った結果、伸び率が低下した。こういう措置というのは、私は、地方交付税制度のあり方の根幹を崩壊させることになるんではないかというふうに思うんですが、いかがですか。
  134. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 五十一年度におきまして基準財政需要額の計算上、投資的経費の伸びが非常に落ちる、従来に比べてがくんとなった、これは御指摘のとおりでございます。この事情というのは五十一年度、実質には五十年度の途中から始まったわけでありますが、五十一年度、五十二年度、五十三年度、本年もそうでございますが、いずれも多額の地方財政といたしましては財源不足に見舞われたわけでございまして、その際、その財源不足を埋めて当該年度におきます地方財政運営が支障ないようにいたしますための手段といたしまして、一つには交付税の増額、これは借り入れその他の処置によりましての交付税措置といたしましての増額、それからもう一つは公共事業の地方負担に対します起債の充当率の引き上げ等、ことに五十一年はそれ以上にいわゆる特例公債的な意味での財源措置地方債の振りかえ四千億もいたしたわけでありますが、そういったような特別な処置によりまして、財政措置をやっと行った、こういうようなことがございましたために、それとの見合いにおきまして特別な地方債がそういう財源対策として出されました結果、その辺の見合いとしての基準財政需要額というものは落とさざるを得ない。そうしませんと、当該年度におきます地方財政全体の収支が合わない、こういうようなことになりましたために、その際から、五十一年度基準財政需要額の計算の際から、起債振りかえ分を基準財政需要額から落とす、こういう措置を行った結果でございまして、これはまさに現在の地方財政全体における大幅な財源不足を手当てしていきますためのやむを得ざる措置というぐあいに存じておるところでございます。
  135. 上田哲

    上田哲君 そのやむを得ざる措置ということなんですが、なるほど交付税の中で投資的経費をどの程度見るか、起債との関係でいろいろ問題は見方はあるんだろうと思うんです。しかし、私が言っていることは、今日の状況だ、状況だというのは、それは共通認識がそこにあるのはわかっていますけれども、ここで言いたいのは、こういう措置地方交付税制度の根幹を揺るがすことになりはせぬかと。つまり、何かルールをきちっとしないで、交付税財源が足りないと需要額を削ってしまう。で、起債に回す、こういうことを状況状況だということで、やむを得ざるやむを得ざるということでやっていると、結局原理の問題として、地方交付税というのは地方税にかわる地方団体の共通税源としての意味づけ、位置づけ、効力、働きというものを失ってしまうということになりはしないかという点をひとつ伺いたいわけです。
  136. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 御指摘のとおり、こういう状況というのがいい状況でないことはまさに私どももさように存じます。現在のところ、公共事業の地方負担に対して九五%まで地方債を充当しているというような状況でございまして、これが何%ぐらいが本来適当なのか、これもいろいろ議論がございます。従来の四十年度高度成長時代は平均いたして三〇%程度であったと思いますが、その程度までがいいのか、あるいは適債事業というのはもう少し地方債を充ててもいいのか、これは議論が存するところでございますが、九五というのは異常であろうということにつきましては、私どもそのとおりに存じておりまして、こういう状況が続くということ自体につきましては、非常に危惧を私どもも持っておりまして、なるべく早い時期に、いろいろな制度改正によりまして、そういうことが避けられるように持っていかなければならないと思っているところでございますが、ただいまのところは国、地方を通じてのこういった経済情勢のもとにおきまして、それだけのものを交付税によって処置をするということがきわめて困難な事情にあり、やはり地方債の活用ということによって切り抜けざるを得なかった。その意味でやむを得ざる措置と申し上げているわけでありまして、こういうかっこうが続くことにつきましては、なるべく早い時期に直さなければならないと思っているところでございます。
  137. 上田哲

    上田哲君 あなたはそこまでだと思いますよ。これは大臣ね、いま担当行政官としてはそうだと思います、ほかに方法がないんだから。とにかく緊急避難と言っては言葉はきついけれども、まあこれしかないよ、いいこととは思わないけれどもということだと思うんですが、しかし、よりすぐれた政治論として大臣の見解、見識という立場で言えば、これはいまの御説明は行政官としてはもっともでありますけれども、やはりしっかりしたルールなり原則なりということにいち早く戻る、守るということにしていかなければ、先ほど来問題にしている共通税源としてのこの制度を、財源というものがその基本を失ってしまうということについての認識がなければならぬだろうと私は思うわけです。大臣からその部分については確認しておきたいと思います。
  138. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 地方財政計画基準財政需要額を比較をいたしまして、後者の率が下がっておりますことは、先ほど来御指摘のとおりで、そして下がった原因につきましても、いま財政局長が説明をいたしたようなことでございまして、本来なら、五十三年度で考えてみます場合に、三兆五百億円の財源不足が生じてまいりまして、理想といたしますところは、交付税率引き上げあるいは対象税目拡大等によりまして三兆五百億円のすべてが交付税で賄い得ておりますと、こういう現象は生じなかったと思うのでありますけれども、残念ながら交付税特会におきましては一兆五千五百億円の借り入れをいたしまして、ようやく交付税額を確保いたしたと同時に、また一兆三千五百億円の公共事業の裏負担分の財源といたしまして起債で充当せざるを得なかった。かようなことが、いまのような後者が率が低いという現象を生じてしまったことに相なっておるのでありますから、今後のあり方といたしましては、公共事業の地方におきまする裏負担も、いわば一般財源で充てんし得ますような体制をとっていきたい。五十三年度におきましてはわずか五%でありまして、九五%が起債だ、かような異例な姿でございますから、ですから、地方財源の充実を図ってまいりまする観点からいたしまして、やはり制度改正を抜本的に行いまして交付税対象税目等の拡大も行い、なおかつ交付税率の問題にもけりをつけまして、こういう不正常な状態を早く解消していかなければならぬ、このことを痛感いたします。
  139. 上田哲

    上田哲君 基準財政需要額も基準財政収入額も、安定した公正な基準によって算定して、その上で財源不足額を国と地方との適正な租税配分による税源をもって補てんするということにしないと、地方交付税地方税にかわる自治体の共通独立財源だと、こういう大きなことは言えなくなってしまうだろうと思う。そのために投資的経費を安易に起債に振りかえない、これがまあ大事なところだと思うのですけれども地方財政計画における投資的経費の伸びと基準財政需要額の伸びを比較してみると、これは数字ですけれども、計画の一〇〇、一二一、一五一、一九四、二一二、二三五、二八〇に対して需要額の方が一〇〇、一二五、一三八、一七六、二〇六、二二三、一八一となる。昭和四十七年の場合は計画の一五一に対して需要額の一三八、需要額の方が相当低くなっているが、そのほかは五十一年の場合を除いて大体そう大きな開きはない。ところが、五十一年度になると計画の二八〇に対して需要額の方が一八一。府県だけをとってみてもさっき言ったように一二三でお話にならなくなってしまう。四十七年当時の財源不足のときと現在とは全く質的に違ってきていると思いますね。まあ、地方交付税の収入額や需要額はその算定方法の設定を通じて自治体の財政運営の指針とすべきものだとしても、こう大きく変動しては、自治体側はとまどうほかはないだろうと思うのです。計画の投資的経費の伸びが二八〇なのに、地方交付税の需要額が一二三しか見ないというのではまるでお話にならない。まあ地方交付税の根幹が大きく変更されようとしているというふうに見なきゃならないと思いますが、その地方交付税法改正とか、予算審議を通じてしか地方交付税改正の中身がわからぬので、鋭意努力するとかいろんなことをおっしゃるわけだけれども法律が成立した後に交付税の配分については自治省令でいろいろ決められてしまう。現実の問題としては自治省が行う省令の立案作業が自治体を完全に拘束するわけでありまして、拘束すると言ったら言い過ぎかもしれないけれども、とにかく非常に大きな影響を持つ、その作業過程とか内容とか、これはわれわれはもちろんですけれども、自治体でも非常にわかりにくい。特にその投資的経費については予測がつかないという、まあ伏魔殿的様相を呈するわけであります。こういう見解はお持ちになりませんか。
  140. 山本悟

    政府委員(山本悟君) なるべく具体的に事業収入の計算方法を法定すべきであるという御議論があることはよく存じているわけでございます。現在のところ御案内のとおり測定単位は具体的に書き、それからそれに対する単位費用は法定をし、補正係数は適用すべき補正の項目まで法定をいたしておりまして、具体の係数自体は御指摘のとおり自治省令にゆだねられている、こういうふうなかっこうになっているところでございます。補正係数自体は御案内のとおりに各単位地方団体の置かれております条件に的確に適応いたしますように、いろいろと計算上割り増ししたり割り減したり、いろいろやっているわけでございます。その影響がわりあいにあるものでございますから、ただいま委員指摘のとおりな御意見が出てくるわけであると思います。御存じのとおりに普通交付税は八月末までに決定するということにいたしております。各年度の国の予算というものがほぼ決まりまして、各省のいろいろな補助金その他の行き先が決まると、それを的確に反映いたしまして大至急単位費用を計算をいたしまして、単位費用は御案内のとおり府県で言うと百七十万の県、市町村で言うと十万の都市というものをもとにいたしまして計算しているわけでございます。これをやりまして法律案を御提出申し上げるのが二月の中旬と、そこまでがやっとのところでやっておるわけでございます。  同時にまた、たとえば人口といったようなものに対しましてもなるべく新しい数字を使う、小中学校の生徒数、学級数といったものも新しい数字を使う、その年度の数字を使いたいと、こういうようなことがございまして、どうしても補正係数というものを決めてまいりますのが、五月から六月にかけて最盛期の作業をいたすと、こういうような事情になってまいります。もしもこれを前の年の分を使ってやるということになりますと、法定化はそうなれば可能でございますけれども、その一年間のずれによって非常に大きな団体間の誤差が出てしまう、なるべく実態に近い新しい数字を使って、的確に測定をいたしたいという気持ちもあってただいまのようなシステムをとらしていただいているわけでございまして、したがいまして、そういう意味からいきますと、補正係数を中心にいたしまして、具体のところまで法定するというのは技術的にはきわめてむずかしい問題であると思っております。ただ、各団体がなかなかむずかしくてわからないじゃないか、こういう御意見に対しまして、われわれももっとわかるような努力をしなければいけないわけでございまして、補正係数にいたしましても収入額の算定の基礎にいたしましても、すべて八月決定を終わりましてから公表をいたしているわけでございまして、まあ非常に分厚いものになるものでございますから、なかなか各地方団体、特に市町村の場合なんかすべて御勉強いただくというわけにもいかないような事情ございますけれども、公表することによりまして決して秘密といいますか、というようなかっこうで作業いたしているものじゃないということは明らかにしていっているつもりでございます。
  141. 上田哲

    上田哲君 それはわかりますよ。段取りについては理解をする。特に秘密にどうしようと、悪代官が何か差配をするようなことだとは思いませんよ。思いませんが、たとえば昭和四十八年を一〇〇とした場合の五十一年度の東京都の投資的経費は四三なんですね。半分以下だ。ほかの府県を拾ってみると、たとえば大阪三八だが、福岡八九、新潟八七、福島八六、鹿児島八七だ。それで当時、社会党としては五十一年の交付税法改正審議の際に、法の改正内容が需要額の算定に当たってかくも不均衡な措置がとられることはないようにということを主張もしたはずだし、答弁はそういうことになっていたわけなんだけれども、たとえばこういうことが起きるとなるとどういうことになるのですか。
  142. 山本悟

    政府委員(山本悟君) ちょっと具体の数字つまびらかではございませんが、御指摘のような点について理由を私いまここで考えてみますると、やはり投資的経費の計算をいたします際には、事業費補正といったようなことでもってそれぞれ団体のやります公共事業なんかの地方負担をつかまえましてそれを算入する。一〇〇%算入の経費もあれば八〇%のものもいろいろございますけれども、そういったかっこうで計算をしてまいる。そうしますと相当事業分量が伸びてきた団体につきましては基準財政需要額も伸びる、しからざる団体については伸びが比較的少なくなる。まあいろいろな需要、そういった計算上の問題もあると思います。また同時に、先ほど申し上げましたように、五十一年度以降といいますのは、基準財政需要額の投資的経費の中から起債振りかえということで相当のものを落としてしまったわけであります。その落としたときの影響というのがどういうぐあいに各団体にあらわれてきているか、こういったような面も出てくる可能性がございます。それと個々の団体につきましてこれがこうだというお答えは、いまのところ手もとに資料がございませんものですから申し上げかねますが、総体として言えば、いま申し上げました事業費補正ということで実績をつかまえてきて需要額の中に入れていく、その実績の伸びが各団体によって違い得るということが一点と、それからいまの非常の措置といたしまして起債に振りかえた分を需要額から落としておりますから、その落とし方の影響がどうあらわれてきているか、この二点が非常に大きなウエートとして考えられるのじゃないかと存じます。
  143. 上田哲

    上田哲君 この年度については個別的にどの県がどうのこうのということはいいです、それは。そんなにほじくろうというのじゃないのですがね。たとえばこの年度については大量の地方債等の増額で経費を賄うことになっていると、そういうことで投資的経費に係る需要額が削られることはわかっていたんだが、問題は、個別団体ごとにこんなにアンバランスが生ずるというのはこれは問題じゃないかと、だからこの年度の特殊事情をいま説明してくれと言うつもりはありませんけれども、さっきの段取りもわかるけれども、秘密にしているとは特にあれしないでも、しかし結果的にはこういうアンバランスがどっと出ることになって説明が十分納得しがたい、あるいは説明不在だという形になるような形というのは問題ではないのかということなんですよ。
  144. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 具体にそういう事例が起こりましたといたしますと、まあただいま御指摘にございました説明不在というようなことでは、これはいけないわけでございます。やはりこの団体につきまして、納得いかれない分については十分な説明をし御納得いただかなきゃならない。そのための努力は私どもとしてはすべきだと存じます。
  145. 上田哲

    上田哲君 そういうことは、ここで財政局長と話をすれば話はすぐわかるわけですよ。いまそれは大阪、福岡、新潟、福島、鹿児島の例を全部ここに並べてやれとは言いませんし、そのことに意味あると、私は質問の趣意はないんです。だけど、たとえばそれを説明してくれと言えば説明してくれるでしょう。しかし、説明不在と私あえて言うのは、それをしなかったということじゃなくて、そういうような意思の疎通は説明ルートなり、説明メソッドとしては自治省と各団体との間にはないのじゃないかと、あるいは乏しいのじゃないかということを、何といいますか流れとして、制度として、パターンとして言っておきたい。その集約点は、こういう措置自治省令をもって行われるところに問題があるのではないかと私はつまり言いたいわけです。自治省令をもって行われるということは問題ではないのかと、それはどうですか。
  146. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 自治省令にならざるを得ないと申し上げましたのは、先ほどのような事務手続の点からでございまして、またこれをしかも省令というかっこうで非常に自治省としての意思のはっきりしたかっこうで、各団体にお示ししてそれでやっていただく。これはまあやはり公平を保ち、かつまた公正にやるための一つの手段ではないかということで、当初から省令というかっこうをとらしていただいているわけでございまして、まあ法定までの時期的に持っていけない限りにおいては、やはり省令というのは自治省といたしまして考えれば一番最高の法令でございますから、それによってやることがこの制度の公正さを確保するゆえんになり得るんじゃないかというように存じているわけでございます。
  147. 上田哲

    上田哲君 半分わからぬではない、半分わからぬではないが、事実問題としてやっぱりそれは一つは壁というか不透明というか、説明不在というか、そういうところになってくる理由でもあるだろう。ここでばしっと結論出してしまいたいとは言いませんけれども、そこに一つ自治省における最高の法令であると、まあ法律、省令、規則云々と、こうなるわけですから、それは最高官僚にそう開き直られたら——国会はいいですよ。だけど赤字団体なんていうのは、それこそ目がつり上がっちゃうでしょうから、そういうところでやっぱり地方自治尊重ということになると、もうちょっと考え方があっていいんじゃないかなと私はまあ見解を申し上げたいわけです。だからそうなるといろいろ言ってくれりゃいいじゃないかということにもなるだろうと思う。言えないですよね、言えないというのは勇気の問題じゃないんだから、制度の問題なんだから。四十八年の都の投資的需要額八百五十一億三千三百万円。この表を見て、もしこれが他府県並みに、このときの平均が八一ですね。投資的経費八一%ですけれども、これを八五%ぐらいというところで需要額に算入されているとすると、七百二十五億ほどとなる。そうすると五十一年度の実際の基準財政需要額は三百七十億円だったから、これよりも三百五十億円ぐらい多くなる計算になるわけです。そうすると、東京都の五十一年度財源超過額が四百五十八億円ということですから、この線で他府県並みに投資的経費を見るということになると、超過額は投資的経費分だけで百億円程度に縮小されるということになる計算ができる。しかも、その五十一年は各自治体がすべて振替措置を大幅にやって圧縮しているんだから、これを落とせば東京都だってあるいは財源不足団体になっていたはずだという言い方、計算というのはあるんじゃないか。そういう立場からすれば自治省は東京都を絶対に財源不足団体にしてはならぬという大前提を先に置いて、それで省令改正の作業を進めてきたというふうな批判もまたわいてくるのも、うべなるかなということになるのではありませんか。これに対する反論もいただくし、同時にそういうことを胸を開いて受けとめるありようというのはどうなのかというところを含めてひとつお答えいただきたい。
  148. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 投資的経費の伸び率が東京都の場合非常に低かったと、先ほど申し上げました、一般論的でございますが、事情が働いたものだと私は思っております。決してどこの団体をどうするということを前提に置きましての計算方式ということではございませんで、それはそれなりに補正係数の算定決定につきましても御説明するに足るだけの根拠を持っていると確信をいたしているところでございます。ただ、そういう観点から申し上げますと、たとえば平衡交付金制度以来、実を言いますと、府県で言えば東京、大阪とは並び称せられる両雄でございまして、いずれもずっと不交付団体を続けてきたわけでございます。大阪府も平衡交付金以来五十二年度までといいますか、五十一年度までずっと不交付団体を続けてきたわけでございますけれども、それがやはり計算によりまして普通交付税の交付団体になるというようなことが行われているわけでありまして、そういう意味では需要の計算というもの、あるいは収入の計算というものは、実態に即して正しく計算をしたいということで私どもやっているわけでありまして、その点は御理解を賜りたいと存じます。東京都につきましては全く同様で、何らそういう意味での特定の意図を持ってということはあり得ないことだと思っております。   〔理事望月邦夫君退席、理事志苫裕君着席〕
  149. 志苫裕

    理事志苫裕君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  150. 志苫裕

    理事志苫裕君) 速記をつけて。
  151. 上田哲

    上田哲君 そこでもっと深く、ひとつ東京問題にしぼっていきたいと思うんです。大臣、この緊急非常状態にある東京の姿、どうお考えになりますか。
  152. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) どう考えるかと申されましても、なかなか答えにくい御質問でございますけれども、今日の東京都の人口は大変なことであり、そしてかつての高度成長の段階ではございませんで、ここ数年来景気が沈滞いたしまして税源の確保等がきわめて困難な状況下にございまして、一言で申しますと大変で御苦労であろうと、かように思います。
  153. 上田哲

    上田哲君 東京都はいまや数少ない革新都政でありますから、私も野党の立場として、それを越える一千万東京都民の生活の安寧、自治体の高揚のために大臣が非常に前向きな建設的御意見をお持ちいただいたと受け取れる御発言をいま好感を持って受けとめながら前に進みたいと思うんでありますが、申すまでもありません、東京都の五十三年度予算一般会計で三兆三百四十一億円、前年比一六・八%増、企業会計等を加えますと四兆六千二百三十二億円でありますけれども、とうてい今日の苦境の中で都民生活擁護の施策というのは予算化されているとは言えません。しかも福祉、教育、防災、これまでの都政の看板とでも言うべきものは不況雇用対策や都営住宅、高校の新増設などというようなものとあわせて非常に不十分な水準にとどまっております。しかも、この年度は高校授業料の値上げなどいろんな住民負担が増大することになっていて、内部努力の一層の傾注はもとよりとしても、非常に強い定数抑制や、あるいは定期昇給分の計上、賃上げの追加需要が全然予算化されておりません。歳入の確保に当たっても現在の地方財政制度に規制されて限定された財源最大限に見込んで構成されていますけれども、歳入歳出の両面で不安定な様相を内包して、まず財務関係者は四月時点で千五百三十億の不足の予測を立てざるを得ないところに来ているわけであります。  で、るる申し上げたのは、改めて申し上げるまでもないところではありますけれども、単に現象面だけではなくて、ひとつ一歩踏み込んで、こういう東京都財政、とりわけ先ほど来議論もしてまいりました日本の最大都市の都市問題を抱え、あるいはそれに絡まる地方財政政策の集約点としてのメトロポリスの意味を含めてひとつマクロ的にといいましょうか、原理的にといいましょうか、先ほどの御見解に立った上で今日の東京都の財政危機の根本的理由というのをどういうところにお求めになるか、その御見解をただしたいと思います。
  154. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私が東京都は大変であろうと、かような言い方をいたしましたのは、今日の行財政両面から見まして、地方団体共通の現象ではございますけれども、わが国の経済が高度成長を遂げてまいりまして、税の自然増等に多くを期待し得ます段階にふさわしいそれなりの体制をとってきたと思うのでございまして、それはたとえば行政面でながめてみましても、国が基準として考えておりますことをはるかに上回る措置が財政的にもできるような余裕があったと思うのでありますし、また機構の面でも、どんどん発展を遂げてまいりまするそれにふさわしい機構を備えておったと思うのでありますが、ところがこういう不況下にさらされてまいりますと、行政面でかつて地域住民の皆さん方に喜ばれるような福祉政策等を活発にやっておりましたことがなかなか困難な面も出てまいりますし、それは大きな原因が税の自然増に期待し得ないような状況になってしまった、このことが大きな原因でございましょうけれども、にわかに縮小することは困難であります大変な悩みを地方団体が共通に持っておりますし、ことに東京都におきましてはいままで手厚い措置が、ことに福祉面等についてなされておったのでありますから、これは維持していかなければならぬけれども財源がこれに見合わないと、かような悩みがございますし、また機構の面におきましても、日本の中心都市としてのふさわしい行政機構等を持っていらっしゃったのでありますけれども、それをこのまま維持することはなかなか困難だと、かような問題にも直面をされまして、非常な苦労をなさりながら行政機構の改革もやっていらっしゃる、かようなことでございますから、これは単に東京都だけではございませんで、各地方団体に共通いたします現象でございますけれども、しかし新しい段階に移り変わっていかなければならぬその悩みや苦しみも東京都としてはおありでございますし、また地方団体としてもあるわけでございますけれども、ことに東京はこういうマンモスの、それもわが国の中心都市でございますだけに非常な御苦労がある、かように痛感をいたしております。
  155. 上田哲

    上田哲君 その大臣の御見解には私は同調できるところと、やはりどうしても意見を異にするところがございます。で、通常言われる東京の赤字、これは高度成長のときはよかったけれども、不景気になってやっぱりその余波を受けたんだというのがすぐ出てくる言い方であります。そのことは確かに一般傾向としてどこにもあることだというふうに認めていいと思います。しかし、そうは言っても予算に計上した都税収入が確保できなかったのは、そういう意味で四十九年度以来連続四年間、これはオイルショックの外圧で失速して以来の状況であるし、さらにまた、この円高不況というところにつながってくるという、これはもうまさに一般的な全国的なといいましょうか、姿であって、その波を大きい分だけよけい受けたということはあるとは思うんですが、しかしその不況が長引いていても、五十年下期以来五十一年下期まで企業業績は三期連続で増益決算であって、オイルショックの業績低下はほぼ回復しておると、国税庁の発表によっても資本金五億円以上の大企業の五十一年度の所得税額は、前年比で一四・二%減から三一・五%の増に転じておると、こういう中でも財政危機は緩和されないで、都の普通会計の実質収入の赤字が四十九年度の百八十九億円から五十年度の五百三十七億円、五十一年度の七百七十五億円と増大をしていった、自治体の破産というべき起債制限を受ける赤字限度額をわずかに免れようというところまで来ちゃったというのは御存じのとおりでありますから、そういうところを見て言えば、単なる一般的な不況というだけでは説明し切れない要素が残ってくる。で、これはやっぱり私は国の地方財政政策というものとの関連で見ざるを得ない。ずばり言えば、やっぱり国はもっとめんどうを見るべきだったということにならざるを得ない。特に大臣が、直接的な言葉ではないけれども、東京では少しレベル以上のことをやっておったと。それがもし俗論に言うところのばらまき福祉であるとか、高賃金であるとか、これが理由で東京の赤字ができたんだということを主原因として数えられるというようなことであるとは思いませんが、そうであるとすれば、これはやっぱり根本的に経済の流れや日本全体の社会経済動向の本質から目をそらして、むしろ俗事に入りやすい見解に流れてしまうということになるだろうと思うわけです。もう一遍申し上げるが、私は全般的な不況現象と、それから国の行政論としての影響と、ここに大きな二つの理由を見るべきであって、その他の主原因はとるべきではないと、こういうふうに思うんです。いかがですか。
  156. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私は、いま若干舌足らずではありましたけれども、両面から見なければならぬし、また両面から見ました場合に初めて正しく地方財政のあり方が浮き彫りにできると、かような気持ちを持って申したようなことでございまして、現行税制のもとにおきましても、かつては税の自然増が毎年相当ございましたから、地方団体としましてはそれにふさわしいといいますか、それに見合い得る行政をやってきたと思うのでありますが、ところが税の面で期待し得ますような自然増が困難になってきた、したがって財源的に非常に苦しくなってまいった面がひとつございますし、私は決して東京都がばらまき行政をやったなどという言い方をしているわけではございませんで、やはり大都市でございますだけに、いろいろ施策としてやっていかなければならぬ多くのことがございまして、それがやり得る財政状況であったと、かように思うのでございますけれども、がしかし、やってまいりましたことをにわかに縮小いたしますことは困難だと、これは行政の面におきましてもあるいは機構の面におきましても同じことが言えようかと思うのでございますけれども、これを縮小することは大変に困難でありますがゆえに、結果といたしましては非常に苦しくなったと、かような両面からとらえる必要がある、かような見方をいたしております。
  157. 上田哲

    上田哲君 ばらまき福祉行政等々のものではないとおっしゃることに大変同感をいたします。  具体的にひとつお話を聞かしていただきたいと思うんでありますが、先ほど来の税源問題とか、地方交付税制度の問題というのは省かせていただくとして、二、三具体的に申し上げると、たとえば国の施策としての不足分を言うわけですけれども、義務教育教職員給与費国庫負担金、これは五〇%が国の負担となっているわけでありますけれども、東京の特殊性といっては少し言葉が足らないかもしれませんけれども、とうていそれでは賄えないのが実情でありまして、これはもう今日の過酷をきわめる教育ママ論とか塾の教育とか、そんなこととは関係のないもっとべーシックなところの話でありますけれども、その補てんのためにも五十二年度において百五十一億のマイナスになるということがあります。あるいはたばこ消費税の改定によって五十二年度で三十二億円減収になるというような実態があります。これはどう考えたらいいのでありましょう。
  158. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) ただいまの前段の義務教育につきましては、東京都は標準、基準よりもそれなりに上乗せをした教育に力が入っておったと、かように判断をせざるを得ないのでございますけれども、あとのたばこの消費税のことにつきましては、三十二億円減少いたしました理由はよくわかりませんけれども、たばこは御承知のようにその地方地方で消費をいたしましたものが、都道府県並びに市町村に入る仕組みになっておりますから、その計算違いであったのかどうか、その点は明確ではないのでございますけれども、あるいは税務局長が承知をしておれば答弁いたすと、かように思います。
  159. 森岡敞

    政府委員(森岡敞君) いまのお話は、恐らく以前にたばこ消費税の財源配分が各県ごとの販売価格に税率を乗じたものを使っておりましたのを、地方団体からの財源配分としてはむしろ単価を全国共通にいたしまして本数割りで配分する方が合理的だということで、現在はそういうことになっております。     〔理事志苫裕君退席、委員長着席〕 それをもとの価格基準に戻した場合との比較ではなかろうか、かように思います。ただ、本数によりまして一定の全国共通単価でやる仕組みはもうすでに十年近く定着しておりますので、私どもとしてはこの財源付与の方法の方が合理的であろうと、かように考えております。
  160. 上田哲

    上田哲君 東京都が教育をよけいやり過ぎておったというのは、これは大臣、大変問題なことでありまして、教育は国のもとであって、これは大いにひとつ手厚くやるのが本当であります。今日のレベルが低いところがもっとせり上げろというのは結構ですけれども、高いところがやり過ぎであるというようなことは、これは大変誤解を受ける言い方でありまして、これが純粋に給与のことだけを言おうとしたんだというようなことであれ、やはり私は大変問題な言い方だと思います。  たばこの話もあいまいな答弁で、だろうと思います程度ではなくて、現実に東京都財政の中じゃこれだけの数字が上がってひいひい言っているわけなんですから、この点はひとつまた細かくなりましょうから後刻御回答いただきたいと思います。
  161. 山本悟

    政府委員(山本悟君) ちょっと大臣の答弁を補足させていただきたいと思いますが、義務教育負担金につきまして差が出ると、やはりこれは御案内のとおり負担金の実額負担に対しまして一定の単価というものを決めている政令があるわけでありまして、その単価以上のものになった場合にはどうしても制限を受けると、恐らくその差が大部分ではなかろうかと存ずるわけであります。それの単価の差がどうして出るかということになりますと、やはりただいま御発言にもございましたが、給与の問題という点に触れざるを得なくなってくる、こういうようなことでございまして、そういった差がやはりこういう場合にも出てきていると思わざるを得ないところでございます。
  162. 上田哲

    上田哲君 そういう話になりますと、そこまで触れる気もなかったんですが、やっぱり東京が教育熱心だからけしからぬという言葉でもありますまいから、恐らく人件費ということなんですね。それだから、東京の人件費が高いぞというのが何かあたりまえのように言われているというのが非常におかしいと思うんです。四十二年度から五十年度までの人件費の伸びを見ますと、東京は四・〇一倍です。六大府県、これが平均四・六〇、道府県全体が四・四〇です。いずれも東京より高い。六大都市が四・二〇倍ですね。東京は高くないんですよ。で、歳出総額に占める人件費の割合、つまり人件費率で見ても、五十年度において東京都は四〇・〇%。申し上げますと、六大府県は四五・九%、都道府県全体が四二・〇%です。こういう数字が出ているわけです。だから決して、これは大づかみに人件費を言っているんですけれども、人件費の議論であるとおっしゃるのであれば東京都が決して高いということにはならないと思うんですが、数字の上で反駁できますか。
  163. 山本悟

    政府委員(山本悟君) ただいま御指摘のございました数字のうち、歳出総額に占める人件費の割合ということになってまいりますと、先ほどの御質問に対するお答えで申し上げたわけでございますが、東京都は何しろ都市行政というものを持っている。その関係でどうしても一般府県との単純な比較ができないような状況になるわけであります。一般の府県が平均が四二%、六大府県が四五・九と、こういうようなところから申し上げますと、やはりどうしても大府県というのは率が高くなっているということは示されているわけでありますが、東京の場合にその率が低く出てくるというのは、やはり大都市行政の部分におきます人件費のウエートというのはどうしても少なくなるわけでございますから、そういった分析をいたしませんと正確な比較にはなってまいらない。この辺が非常に他の府県と東京都との比較のしにくいところであろうかと存じます。ただまあ、そういった人件費の歳出総額に占める割合が多いか少ないか、これも非常に重要な問題でございますが、やはり人件費論議といたしまして議論にされておりますのは、単価が高いんじゃないかということが論議の対象にもなっているわけでありまして、その点はやはり毎年調べております、調査いたしておりますところの公務員給与の実態調査というような点からもあらわれているところでございまして、まあ一般に比べまして東京都の給与水準が高いということ自体は、なかなか否定しにくいこと事実であろうかと思っております。
  164. 上田哲

    上田哲君 そういうことになりますと、五十二年度において国を一〇〇とした場合の東京都それから主要府県、主要都市のラスパイレス指数はどういうことになっていますか。
  165. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 五十二年四月一日現在のラスパイレス指数を申し上げますと、東京都が一一三・六、都道府県全体の平均が一〇七・七、指定都市が一一二・〇、全地方団体の平均が一〇七・九というふうになっております。
  166. 上田哲

    上田哲君 都道府県のうちでラスパイレス比較で国の給与を下回るような団体がありますか。
  167. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 一〇〇を下回る団体はございません。
  168. 上田哲

    上田哲君 見てごらんなさい。そんなのはないんですよ、どこにも。しかも東京が一一三・六で指定都市が一一二・六。これで高い、高いって言うのは少しね、それはなるほど数字で言えば一つですよ。指数一が高いですよ。しかし、これが高い、これが高い、これでもって東京都財政の人件費が高いから問題である問題であるというほどの優位さがありますか。これはなるほど二メートルと二メートル一センチは一センチの方が高いですよ。しかし、ああ高い、ああ高いと高見山と貴乃花を比べるほどの比較はこれ絶対ないでしょう。これは少し話が大げさであると。しかもラスパイレスは下がっているじゃないですか、東京は。そういう傾向値をながめりゃ、これはちょっと話がためにするということになりますぞ。数値の上で議論するのは余りおもしろくないんだけれども、その数値を拡大をして議論をするということになると、ちょっといままでどおりの議論じゃ済まないというふうに私は申し上げておきたい。いかがですか。
  169. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いまも申し上げましたように、東京が一一三・六ですが、都道府県でいまのところ一番高いのが神奈川県の一一四・二でございますが、それに次いでいま東京都が第二位ということになっておりまして、まあおっしゃいますように数字で言えば一とか〇・幾らの差かもしれませんが、私ども、したがいまして東京都だけが高いと申し上げているんじゃなくて、全体的に都道府県で一〇七・七というのは、やはり国家公務員との権衡からいきまして高いんではないかということを申し上げておりまして、そういう点からいきますと、東京もやはり高いと申し上げざるを得ないのであります。
  170. 上田哲

    上田哲君 だから、ここは小学校の算数の時間をしているんじゃないんだと私は言っている。貴乃花と高見山の例を出したんだからもういいかげんその辺はわかっていいと思うんですよ。だから、二メートルと二メートル一センチのことを言ってそれでこの二人の相撲をとらせることは背の高さにおいて不公平であるということにはならぬでしょう。だからウエートの差をつけなければボクシングやプロレスができないというほどの優位さがないと言っているんです。言っているのは、算数の数値の比較を言っている、引き算を言っているのではないのであって、政策的な優位さをどこに認めるかということになれば、これだけの数値の差によって東京都の人件費が高いから、赤字の主たる原因になったなどというのは、これは木を見て森を失うということになるということを言っているんですよ。依然として高いと言わざるを得ないなんていうのは小学校へ行ってやっていらっしゃい。人事院勧告の基礎となる全国平均の民間給与及び標準生計費を一〇〇としますと、これに対応する東京都の民間給与及び標準生計費の指数、それぞれ一一四・二及び一二二・三、これは都の人事委員会の調査ですから、この数字から判断すると、東京都のラスパイレスの一一三・六というのは高過ぎるというよりは、低過ぎるといっても意味は出てくると思いますよ、いかがですか。
  171. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 各地区の民間の賃金統計等ございまして、いま東京都の場合お示しのような数字であることは承知いたしております。ただ、その問題はラスパイレス——ラスパイレスというのは御承知のように本俸だけの比較でございますが、各地区におきましてたとえば東京とか大阪とかというような地区におきまして民間給与との、高いという地区がございますので、その問題に対する対応の仕方としましては、御承知のように調整手当でやっておるというのが現状でございまして、その調整手当のよしあしの問題はこれはどこかあるかもしれませんが、本俸の比較だけで議論せずに、その上に調整手当をつけて大都市地域の民間の給与との比較の問題は考えざるを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  172. 上田哲

    上田哲君 許しがたい発言ですよそれは。さっきあなた、同じ政府の側からラスパイレスとは何だという説明がちゃんとあったじゃないですか。都合のいいときはライパイレスを使い、都合が悪くなったらラスパイレスの語意を変えるなんていうのは、そんなものはあなた答弁の技術としては問題にならぬですよ、議論の余地はないです。しかも、許しがたいというのは、そっちよりももっとこっちなんだ。これは本俸だけの基準であって、そのほかおまけがついているのは別だとは何事ですか、それならおまけを出しなさい数値で。そんなことが国会でいやしくも資料を挙げて追及する委員に対する政府答弁の姿勢ですか、そういうばかげた答弁の仕方がありますか。本俸をもって比較するんだと言った政府姿勢に従って聞いているんじゃないですか。それでぐあいが悪くなったら、今度は本俸だけじゃないんだと、それじゃそういう資料を出せばいいじゃないですか。いわんや東京都は、たとえば皆さんが乗っているでしょう、東京走っている都バス、そんなものは二十幾つあったものがみんななくなっちゃって、いまそういうものは何にもない代表ですよ。それでも東京にあってほかにはないというんですか。東京の方がそういうものが多いというんですか。そんなことを言っておっては三百代言です。客観性、科学性を失う、資料の討議のために。私は許せないですよ、そんなことは。いいですか、もし反駁があるんなら、東京都にはそういうおまけがあって、ほかにはないということをそこへ出しなさい、出せないなら謝罪しなさい、大臣からあわせて答弁いただく。
  173. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 私が申し上げましたのは、東京その他大阪等におきまして民間企業の高い地区があります。これはまあ数字を挙げて御説明になったとおりでございます。そういう地区に対しまして、国家公務員の場合どういう手当てをしているかと申しますと、八%の調整手当をつけておるということで、各地区のそういった生活あるいは民間給与との比較の対応をしておるわけでございます。ですから東京都の場合も、当然東京都の公務員も、東京都におる国家公務員もすべて八%ついておるわけでございますから、それはいまの給与の上に足して考えるべき問題であるということを申し上げたわけでございます。
  174. 上田哲

    上田哲君 大臣どうですか。
  175. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 答弁の仕方と、そして上田委員が受け取りになられたのが、私はすれ違いがあるようにいま受け取ったのでございまして、民間給与と公務員の給与との対比をいたします場合に、本俸のほかに物価の高いと言われます地域には、国家公務員、地方公務員を通じまして調整手当がついておるのでございますから、パーセンテージの高いところと低いところもございますし、またついておらない地域もあるのでございますから、したがって、民間給与との対比の場合には本俸プラス調整手当、これとの対比が必要であると、かような趣旨を説明いたしたと私はいま理解をいたしたところでございます。
  176. 上田哲

    上田哲君 東京都の給与水準は国との比較でも、また他団体との比較でもこれは低いとは言えても、決して高いということが言えない。これは数値の上でも先ほど来言っているように、決して政策的優位さを認めるようなものではないということがどちらについても言える上に、まさに政策議論としてはこれは全く、たとえば東京という過密地帯、あるいは首都、行政集中地区というような問題を全部捨象した議論になってしまっているんであって、これは私は妥当な言い方ではないと思います。さらに言えば、この東京都の給与決定の方法というのは、まさに人事委員会ルールにのっとって地方公務員法の趣旨に合致したものだと。私は、むしろ自治省主張するような形をとれば、またレベルも国並みにしてしまえということになれば、これは都道府県指定都市に個々に人事委員会の設置を理由づけたそのこと自身を消し去る結果になってしまう。私は、まあ人事委員会の勧告制度をうたった地方公務員法の精神にもとることになってしまうだろうと思います。そういう意味で、給与決定の方式を含めてこの部分は高過ぎる、それが理由だというような議論はしばらく他におくことが正しいということを申し述べておきたいわけであります。  大臣に感想がございましたら伺っておきます。
  177. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 地方団体の職員の給与につきましては、公務員と権衡を失してはならないことが明記されてあるのでございまして、したがって、自治省といたしましては著しく給与の高い公共団体に対しましては、やはりあなたのところは高うございますよと、かような言い方をいたすのが当然であろうと思うのでございます。  したがって、ラスパイレスなるものを使って、これを指標にいたしておるところでございますけれども、が、しかし、自治省といたしましては、個々の団体に対しまして指導や助言はいたしますけれども、しかし、具体的な介入はいたすべきではないと、これが基本考え方でございます。したがいまして、給与につきましては、国家公務員につきましてはもとより人事院が勧告をいたしますし、また地方公務員につきましては地方にございます人事委員会、公平委員会等が勧告をいたしまして、それに従って給与が決められておると、かように理解をいたしておるようなことでございます。
  178. 上田哲

    上田哲君 問題を先に進めますが、超過負担の問題が東京の場合はこういうことになるんですね。単価差、国庫支出金の単価が実際の単価より低いために生ずるもの。これは例としては公営住宅の建設の一戸当たり単価が東京都の場合は五百四十三万四千円。これは国の基準が四百九十五万一千円、二月当たりの単価差が四十八万三千円出てくるわけですね。同様に規模の差で言うと、国庫支出金の対象規模が実際に必要な規模よりも少ないために生ずる——国の基準は二千五百二十平米でありますが——失礼しました、内部障害者療護施設の例なんですが、ここで都の場合と実に四千六百五十平米の差が出てくる。単価二十一万九千円で、全体として十億二千二百万円の差が出てくる。その他いろんな差というのが出てくるわけで、五十二年度でこれらもろもろ合わせますと千三百四十八億円の超過負担額が出てくると、これはいかがでしょうか。
  179. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 具体の数字は御指摘のとおりであるかどうか疑問でございます。ちょっと私ども手元に数字を持っておりませんのでお答えしかねるわけでございますが、いろいろな面におきましてなお地方財政の困った問題といたしまして超過負担の問題があることは御指摘のとおりでございます。単価差、対象差、数量差といろいろな面にあるわけでありまして、自治省といたしましてはこの超過負担の問題は非常に地方財政にとっての問題となる点でございますので、その解消方につきまして関係省庁に常に強力な申し入れをし、解消の努力を払っているところでございます。ただ、これは申すまでもないことでございますが、まあ実績との、実事業費との差を単純にとれないことは御案内のとおりでございまして、そういう国の方で決めました基準といったようなものに従いまして一体どれだけ差が出るかというような計算をしてみませんと、国の各省庁との間の何と申しますか、申し入れになるといいますか、争いにはならないわけでございますが、そういったようなことをどんどん各省と詰めていきまして、なるべく超過負担というものが少なくなるように、解消するように努力をしてまいりたいと存じております。
  180. 上田哲

    上田哲君 まあこれはすっきりした答えがそんな出るとは私も期待はしていませんけれども、これはちょっとやっぱり一般的過ぎる話だな。具体的な例については言えないがとおっしゃられちまったら、一生懸命になってこれいまほじくってほじくってこう説明した理由がないわけだ、これは。ここにこれだけの差が出ているというのはやっぱり問題だろうと思うから言っているわけですよ。資料がなくたって、だからないために申し上げたんだから、この数字はどうですか。
  181. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 一般論でお答えを申し上げた次第でございますが、御指摘のようなことがあり得るということは私どもも十分推察つくわけでありまして、そういった点につきましては解消を図りますように各省に申し入れもしてまいりたいと存じます。
  182. 上田哲

    上田哲君 もうちょっと具体的に聞きたいんだけれども、どうするんですか、つまり。何となく、まあ役所用語で言うと、前向きに努力とかというと、かなり進歩することになるんですが、いまはそれをどういうような語意で言われたんですか。
  183. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 自治省といたしましては毎年度予算、国の概算要求の前、あるいは予算の査定が行われております秋の時分、そういった適当な時期をつかまえまして、次官名あるいは財政局長名をもちまして具体の事項を取り上げまして各省に申し入れをいたしております。たとえば公営住宅について単価差は困るじゃないかとか、あるいは社会福祉施設についてこういった基準は困るじゃないかとか、あるいは人件費補助についてこういうものを計算しないのはおかしいじゃないかとか、具体のものをつかまえまして各省に相当細部にわたりまして申し入れをいたしております。その申し入れをいたします際には、やはり協力団体その他の御意見もございましょうし、実態の調査もいたしますし、そういった事実を踏まえまして申し入れを具体にいたしておるわけでありまして、ただいま御指摘のような事項というのも恐らくお調べいただいたわけでございますから、あり得るべしと思われるわけでありまして、そういった際に参考にいたしまして各省に申し入れをいたしてまいりたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  184. 上田哲

    上田哲君 超過負担がいいわけがないんですから、ですから、そうするといま私が例を出した、この具体例を聞いてみると、これほどまでのものはよくないと、だから、できるなら、これが解消する方向に向かって具体的な努力はしてみると、こういうことですね。
  185. 山本悟

    政府委員(山本悟君) そのとおりでございます。
  186. 上田哲

    上田哲君 はい、わかりました。そのことを聞きゃ、それで非常に心が明るくなるんです。  心が明るくなったついでにもう一つ伺うけれども、たとえばさっき例が出たから言うんですけれども、まあ東京を走っているあの都バスですよ。都営交通がいま東京じゃ最大の問題になっておるんですね。これは私が言うまでもない。いやな言葉だけれども、赤字というなら、この赤字を両肩で背負っているようなのが都営交通の問題だと言ってもいい。これは世界的な問題でもありますけれども、たとえばニューヨーク、ロンドン、パリでもみんなああいうものがああいう経営形態では進まないということが、結論が出て、一定額に料金を抑えて、そして財政負担を高めていますね。こういう例にならうと、この東京の場合はどうも手が届いていないというか、弱い者いじめしているというような感じにしかならないわけですよ。だから、これじゃぐあいが悪いとお考えなら、いま大変明るい展望を出していただいたから、重ねて申し上げるんだが、たとえばこのままでいくと東京の都バスはなくなっちゃうんですよ。これはなくす以外にないんですよ。さっきのお話があったけれども、昔は正直な話ね、なくなっちゃったから言えることだけれども、二十幾つ手当てがあったんですよ、あすこには。これがいま完全にこの激しい赤字化の中でもって削り取られて、何にもなくなっちゃった。これはもう文字どおり何もないんです。あとは年齢もだんだん上へいくし、これはとてもじゃないが、このままでいくと都バスはなくなっちゃうんです。そういうことから言うと、これを救うのは、きわめて具体的に言えば、いまたとえばバス購入費に補助を与えるとか、国が。こういうことが必要だと思うんですよ。いかがですか。
  187. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) ただいま都バスのことでお話がございましたが、御案内のとおり、都バスにつきましては、これまで二度ほど実はそういうことで再建債のたな上げをやってきたわけであります。たまたま東京都はこの二回目の再建債のたな上げのときに——と申しますのは、交通事業の健全化のための法律をつくりまして、そのときに全部の不良債務をたな上げしまして健全な形でバス事業をやろうと思いましたときに、東京は自主再建をやるというお申し出がございまして、二十三団体ほどはこの法律に乗ったんですが、東京は乗らなかったわけであります。そのために青山の車庫なりあるいは浜松町の車庫なり売りまして、自主再建をやるという形で実は東京は現在まで来ているわけです。そこで東京自身といたしましても現在の形のままで再建ができないだろうということで、五十一年の十月に御案内のとおり自主再建のための委員会をつくりまして、その自主再建委員会の中で東京都がいま再建計画を立てているわけです。東京の中の全体の交通を見ますと、御案内のとおり民営のバスが相当走っておりまして、これは一般的に大都市と中小都市との違いはございますが、大都市の中、特に東京の中では民営のバスというのはおおむね収支が合って走っているように見受けられます。しかし、都営のバスだけはなかなかこれがおっしゃられましたようにうまくいっておりません。いろんな理屈がこれはあろうと思います。路線の関係がありましたり、あるいは先ほどからお話がございました人件費のお話がございましたり、いろんなものが重なりまして、現実にはなかなか都バスがうまくいかない。お話がありましたように、外国におけるバス事業というのは一応民間のバスが淘汰されたかっこうになっておりまして、公共的なバスとして走らせておるというのがニューヨークなりあるいはロンドンなりパリなり、そういうところのバスだとわれわれ理解をいたしております。そういうふうになりますれば、いま先生がおっしゃられたようなバスの運行ができると思いますが、なかなかそこまで——いまの民間と公共の間でうまくいっておりませんので、この問題解決しない限り、なかなか私はバス問題としてむずかしい問題だと理解しております。
  188. 上田哲

    上田哲君 これは、いまのは重要な発言でね、それを素直に聞いていきますと、バスはみんな民間にしちゃいなさいと、都バスはなくしちゃったらどうかと、こういうことになりますよ。
  189. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 別に都バスをなくすという意味ではなくて、将来の形としてはバスの一元化とというのがあるいは図られるかもしれません。その場合に、それが公共的なバスになるのか、民間的なバスになるのか、それはそのときの選択の問題であろうと思いますが、ただ現実にいまの形の状況を申し上げるとそういうことになっておりますということを申し上げたわけです。
  190. 上田哲

    上田哲君 そんな議論をしてもらったんじゃ困るんだ。都民は——きょうはたまたまストライキだけれども、あしたからせっせと仕事に行くんですよ。バスも乗るんですよ。自分の近いところに地下鉄があればもぐるけれども、バスストップがあればそっちに乗るに決まっているんですよ。便利にする方がいいに決まっているんです、これは。いわんや将来の都市交通の原理からすれば——こんなことは私はきょう議論しようと思ったんじゃないんだけれども、後にやるんですがね、時間がないから。しかし、将来の姿からすれば、マイカーを数を減らしたって、そういう公共的なバスを多くしなきゃならないぐらいのことは常識中の常識でしょう。そういう中で現実とにかくうっかり乗ったら肋骨が折れるような中で、しかもこれは全世界的なことだとは言いながら、運転をする技能と金を計算する能力とこれは別なんですからね。それが人件費が理由になってワンマンカーみたいになっていることだっていろいろ問題があるんですよ。そういう問題をいろいろ考えなきゃならない中で、現実しかし肋骨を折ってもぶら下がっていかなければならないという中で、将来どっちかに一本にすべきだろうということを申し上げるんで候なんということ言われたんじゃ、この際どうなるかわからぬ、あしたつぶれるかもしらないという現実の議論をしているときに合わない、これは。いまのあなたの論議だけを聞いていれば、民間はちゃんと収支償っておるんだから、民間でやったらいいじゃないかと、こういう話になってしまいますよ。そんなことになれば、これは現実の政策論争として政治問題なんだ、これは。いま議論しているのは現実の問題をどう救済するかという話をしているんですから、もしあなたが十年後に、こっちのバスとこっちのバスと二つあるやつ、悪いからどっちかに統合しようという議論をここでお出しになるなら、それはいい。そんな議論をいましているんじゃない。冒頭一番初めの言葉で申し上げたように、緊急事態の東京都財政について、東京都の生活環境論について議論をすると言っているのに、将来についてこうしたいなんということを私は全然聞いてない。だから、いまほうっておいたら、このままいったら、二つを一元化するなんという方向よりも、都バスがなくなっちゃいますよと言っているんですよ、おっしゃるように。向こうは収支が償っているかどうか知らないが、こっちはだめなことは明らかなんだ。なくなっちゃっていいですかと言ったら、都民は困ると言うんだから、いま。将来の交通計画としてなくなるべきであるかどうかなんという議論をいま聞いているんじゃない。なくさない方がいいことは明らかでしょう。そうでしょう、これはあなただって。そうだとすれば、これは一体このためにはどうするかという話として私は聞いているのは、そんな長ったらしい話を、時間がなくなっているときに聞いているんじゃなくて、都バスの購入費を補助する気はないかということを言っているんですよ。さっき財政局長が非常に明るい見通しを言ったから、具体論とまでは言わないけれども、そういうこともいい考えだなと言うなら、それはそれでいい。どうですか。
  191. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 都バスの購入費につきましては、実はいまやっておりまして、たまたま、これは先ほど申し上げましたように、再建の適用を受けている団体に対してバスの補助を出しているわけです。東京都は、先ほど申し上げましたように、その再建の計画に乗ってこなかったわけです。そのために東京都のバス購入費は出ていないというのが現実でして、再建の適用があればことしでもバスの購入費は出たという形になっておるわけです。
  192. 上田哲

    上田哲君 まあ微妙になりますから、向こうで答えてもらいたいな。どうですか、さっきと同じような声でいい。
  193. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 公営企業関係は砂子田審議官に主として担当してもらっておりまして、ただいま審議官から御答弁申したとおりであるわけであります。いろいろな事情が加わって恐らく都交通としては再建計画にお乗りにならなかった。乗った団体は大都市も含めまして、やはりバス購入費というのは、この五年ですか、ぐらいずっと続けて出していたわけでございまして、そういった制度のもとにおいて、これからのバスの購入費の補助というものを新規に都について始められるかということになりますと、なかなかやはり相当な問題があろうと思います。どういうかっこうで都のバスの再建を図っていくのか、これはよくよくやはり御相談もしなきゃならぬことと思いますけれども、ただいまの制度ではそういった制度が都のバスには働いてきていない、こう審議官申しているわけでありまして、そのことはやむを得ない。将来の問題というのはやはりいろいろとこれから考えていかなきゃならないことだと思っております。
  194. 上田哲

    上田哲君 そこが審議官と財政局長の役目の違いなんだから、審議官に答弁してくれと初めから言ってないんだから、財政局長さっきいいこと言ったじゃないですか。だから、バスの購入費を補助しようなんということも都バスをなくしてしまわないためには検討課題でしょうと、そうですねと言ったらいいじゃないですか。
  195. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 検討課題ですねと、こうお答え申し上げればいいというあれでございますけれども、やはりそれはそれなりに歴史があるわけでございますので……
  196. 上田哲

    上田哲君 歴史なんかいま問題じゃない。つぶれることが問題じゃないか。
  197. 山本悟

    政府委員(山本悟君) それやっぱり政策なり対策なりといたしまして、地方公営バスというものについてのやり方、やってきました方法というものもあるわけでございますので、そういったものを踏まえ、かつまた東京都の実情というものを踏まえまして、考えられるものは考えていかなければならないと思います。
  198. 上田哲

    上田哲君 考える中にこれは入りますか。
  199. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 東京都のバスにつきましては、一般的に……
  200. 上田哲

    上田哲君 長い話はいいんだよ、もう時間がないから。
  201. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 起債で措置をしておりますので、そういう方法でやりたいと思っております。
  202. 上田哲

    上田哲君 いまよくわからなかった。
  203. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 東京都のバスについては起債で措置をしておりますので、それでやっていきたいと思います。——起債、地方債でございます。企業債でございます。
  204. 上田哲

    上田哲君 いや、だからそういう話をまた戻したら、せっかく向こうへやった意味がないじゃないか。あなた向こうへ行きなさいよ、もう。答弁を要求してないやつが出てきて、せっかく話がまとまろうというときにだめだよ、それは。財政局長。
  205. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 再建団体のバス購入費の補助という制度自体、本年度限りの措置になっているものでございまして、バス事業そのものについて、東京都も含めまして結構でございますが、将来どう持っていくかということはこれからの問題でございまして、明年度予算要求までに十分検討して結論を出してみたいと思います。
  206. 上田哲

    上田哲君 押し問答したってしようがないんで、東京都民の足の問題なんだから、何か答弁技術でぐるぐる回っていりゃ、時間が切れりゃいいだろうという話にしたくはないから、私も何もこう畳み込んで何か一つ具体的な果実をどうしようと言っているんじゃないですよ。原点において、破産寸前どころか、破産状態の中を走っているようなバスなんだから、それを救ってやるのは都民へのためなんだと。そうすれば、そこのところを審議官が出てくるような兼ね合いになってくればいろいろ問題が出てくるのは百も承知だけれども、たとえばいまの場合何が東京側からすれば、あるいはそれが差し支えがあるなら住民の側からすればと言いかえましょう。何が具体的に救済策になり得るのかという対症療法的な見解でも述べるなら、私が、いいですか、述べるなら、バスの購入費というのを補助してくれると非常に助かるなあというのが東京の——東京のと言いましょう。都とは、東京都庁なんと言っていませんよ。声だというふうに私は考える。それに対して、うん、検討してみようじゃないかと、ああ言っておいたら、なぜ買わないんだというような話をしようと言っているんじゃないんだから、そういうところがやっぱり都民への還元論じゃないのかということを私は言っているわけですよ。これだけぐるぐる言っていると、またくどくなるのもいけませんから、もう一つ加えてまともにひとつぽんと答えていただこう。  地下鉄。地下鉄の建設費も補助をしてもらうという方向というのは大変助かることなんです。だから、そういうことについてひとつうんと、なるほどと、そういうことは検討課題なんだろうなあというふうな受け取りをしてくれますか。
  207. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 地下鉄の補助につきましては、五十三年度から……
  208. 上田哲

    上田哲君 いや、バスも一緒だよ。
  209. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 改正をいたしたところでございますが、やはりそういった都市交通の問題というのはいろいろ問題点があるわけでありまして、そういう問題点を踏まえた上で、やはり国の援助なり何なりという措置につきましても勉強もし検討もしなければならない問題だと思っております。
  210. 上田哲

    上田哲君 はいわかりました。いまはその限界で結構ですから、いろいろ問題が具体化したところで将来計画を踏まえながらでも、大いにひとつ検討していただきたいと思います。これは私は、こんなに長く触れるつもりはなかったんで、時間を食うことの方があれなんで、審議官にも失礼だけれども、時を改めてまたぜひひとつ検討を煩わしたいと思っているので、このことは後に譲ります。  時間の関係が出てきましたので急いでいきますけれども、未曾有の危機に直面しているのに、先ほど来だんだん議論がそっちへ向いてまいりましたように、交付税上では相変わらず財源超過団体なんですね。しかも、その財源超過額というのが縮小するどころか、むしろ増加の傾向を見せている。どうして実際の財政運営交付税の計算結果にこういう隔たりが出てくるか。基準財政需要額の推移を東京都と他の団体とを比べてみると、これは東京都の伸びがきわめて低いというのが特徴的なんですね。五十一年度の四十一年度に対する伸びを見ると東京四・五五倍、これに対して神奈川六・一九倍、愛知五・六六倍、京都五・六一倍、大阪五・二三倍、兵庫五・八一倍、東京都の伸びが極端に小さいわけです。東京都の特別区の分を他の大都市と比べても同様の傾向になるんですね。こういう日々都市問題の激化に悩まされている東京で最小限他の大都市、府県と同じ程度の基準財政需要額の伸びがあっていいはずじゃないかと、こういうふうに思うんですけれども、この点はどうなんでしょうか。
  211. 山本悟

    政府委員(山本悟君) それぞれの年度におきますところの基準財政需要の積算の中身の問題になるわけでございますが、たとえば五十二年度について考えてみますと、特別区分につきまして投資的経費のうちの都市計画費それから公園費の一部と、こういったようなことが起債と振りかえられたために基準財政需要額から外された。その外された部分についての額が実は相当大幅に算入されていたと、実はこういったような事情が具体の問題としては都の場合にございます。それがわりあいに大きく響いておりまして、そのために需要の伸びが比較的少ないというような面が、ただいま御指摘のような結果が出たというように私ども思えるわけでございまして、そういったような個々の経費の分析というようなところまでいたしてまいりませんと、的確なお答えができないわけでございますが、非常に目につくものといたしまして、いまの都市計画費、公園費の起債振りかえということによる需要減というようなことが考えられますので、この点をまずお答え一つといたさせていただきたいと存じます。
  212. 上田哲

    上田哲君 そこはわかりますよ。メカニズムとしてそういうことはこれまでも議論してきたところなんですけれども、やっぱりここまで違うと、どうも一定の操作あるいは政治的意図というものが加えられているんじゃないかというふうな疑念が生じてますよね、実際には。これはどうですか。
  213. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 先ほども申し上げましたように、決してさようなことから需要の計算をいたしているわけではございませんで、その実例といたしましては、都と大阪府は交付団体になったということを申し上げたわけでありますが、やはりそれはそれなりにあるべき姿としての需要の計算というのを私どもとしては一生懸命作業をいたしているというように存じておりますし、これからもそうしなければならないと思っております。
  214. 上田哲

    上田哲君 ロンドンというのは有名な例ですね。その例をここで並みいる専門家を前に一々御紹介、披露しようとは思いませんが、そういう趨勢を考えても東京の場合を悪しき意味における特別扱いをしようというのじゃなくして、いまの言葉で言えば普通並みに扱えというあたりが私は実感ではないかという気がするわけですね。仮に神奈川、愛知、大阪、兵庫各地域の府県分と大都市分の合算、基準財政需要額を足し算してみる。東京都と同じレベルで四十一年度に対する五十一年度の伸びを比較すると、東京都が四・六二倍、これらの四地域の平均倍率は五・七一倍なんですね。したがって、この五・七一倍を使って五十一年度の東京都の基準財政需要額を試算してみると、実際の需要額よりおよそ二千六百億円多くなるんですね。東京都が一転して財源不足団体となるというわけです。これが東京の交付税上のありのままの姿だと言えるんじゃないですか。これはどうですか。
  215. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 個々の経費につきましてそれぞれの算定理由があるわけでありまして、ただいまの倍率について御指摘になったのはそのとおりであろうと存じますけれども、それはそれなりの個々の毎年度におきましての需要があってのそういう結果になっていると私は確信をいたしているところでございまして、特定のところについて特定の意図、目的を持って、たとえばこの団体を絶対不交付団体にするんだというふうなつもりでもって作業しておるものでないことはひとつ御理解を賜りたいと存じます。
  216. 上田哲

    上田哲君 ぜひひとつその精神その態度でなるほどと思えるように努力をしていただきたいと思います。私も誤解のないように申し上げておくけれども、東京都も交付団体になるべきであるということを主張するつもりではないんです。ただそもそも地方財政調整制度というものは、租税力の豊かな大都市地域の税収をその貧弱なその他の地域に再配分するということに基本的な目的があるわけであって、その意味じゃ東京は誇り高い役割りを果たせるならそれはそれで結構なことだと精神的には思うわけですね。それはそうなんだけれども、いま言いたいのは東京都の、この東京都が、つまり最先進地域であるという誇りを持っている東京都が、実質的な交付団体に陥ってしまわなきゃならないと、にもかかわらず武士は食わねど高ようじみたいな風情をさせられながら、東京からはるかに政府自治をながめていなきゃならぬという状況というのはやっぱりまずいじゃないか、民意としてまずいじゃないかということもあるし、そしてそれが私が言いたいことは、いかに税源が偏在しているかという問題として結論を求めたいわけです。これはやっぱり冒頭にも御議論があったように、こういう不均衡というものはひとつぜひ検討いただかなければならない。現実問題としても大阪、愛知、神奈川、兵庫、そういう大府県大都市が軒並みに交付団体に転落しているという状況というのは、現行地方交付税制度というものが破綻寸前の状態というか、あるいは元来の本質としての機能を失ってしまっているということを言わなきゃならないと思うんですね。これについてひとつ基本的に自治省政府の見解、反省、方針を伺っておきたいと思います。
  217. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 御指摘のとおりに、府県の中では東京都のみが不交付団体といったような税財政制度そのものをというのは、やはり地方制度の立場といたしまして適当ではない、やはりもっと自主財源としての地方税というものが増強さるべきであるということにつきましては、私どももさようなふうに存ずるわけでありまして、できるだけ早い機会に、地方税という自主財源の最も大宗をなす地方制度というものがより充実して、東京都におきましてもより税金がよけいに入ってまいりますように、制度的にも持っていくべきである。そして同時に、またやはり御指摘のとおり、地方団体間の財源の偏在というのはあるわけでありますから、交付税によってその間は調整をしていただきたい。しかしそのウエートというのは、やはりより自主財源である地方税の方が増強されますように、そういった制度に持っていくのが本来の姿である、こう思うわけでありまして、御指摘のような点を十分踏まえまして、これからの地方財政制度改正に取り組んでまいりたいと存ずる次第でございます。
  218. 上田哲

    上田哲君 最後に、大臣からひとつまとめて伺っておきたいのは、いま当局から見解を表明されましたけれども基本的には何と申しましても東京都に象徴されるようなこの不均衡、これを制度の根底に触れる問題としての反省、検討の立場に立っていただいて、可及的速やかに税源の適正な再配分の方向に行政的努力を、あるいは政治的判断を進めていただきたいということであります。  さらにもう一つ敷衍したいんでありますが、先般、東京で勤勉手当の問題をめぐって残念な事態が発生をいたしました。元来労使が合意をした問題についてさまざまな圧力等があってこれを撤回しなければならないというような事態というのは、私は当該労使関係のみならず、地方自治体の円満な発展のためにも好ましいことではないと思います。こうした点についてのひとつ御見解もあわせて伺い、それからさっき残しましたけれども、東京で定期昇給すら起債の振りかえとしてストップされているという現状、これはもう東京都の職員にとっての非常にゆるがせにすべからざる事態でありまして、こういう事態についての早期改善が求められるところでありますけれども、この問題、とりわけ先ほど例が出ましたけれども、都営交通の問題については非常に極限的な状況にも置かれているので、これについては将来計画を含めて資料を提出していただくことをお願いをし、これらについて以上三点でありますが、大臣から見解をまとめてお聞かせをいただいて終わりたいと思います。
  219. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 東京都を初めとする大都市の財政問題につきましては壁頭にお答えいたしたとおりでございまして、今日のような厳しい環境にさらされます原因には、やはり税制の見直しが絶えずなされておらなかったことにも大きな原因があろうかと思うのでございますから、今後税制並びに財政の基本的な改正の際に最大限に配意いたしまして、大都市が大きな苦労をしないような取り運びが必要だと、このことを痛感いたしております。  それから二番目の、東京都の勤勉手当の問題でございますけれども、私どもはいろいろ指導助言はいたしますけれども、しかし地方団体の個々の事案につきましては不当な介入があってはならぬと、かような根本の考え方でございまして、したがって、東京都内の問題として解決が一応はついたと、かように理解をいたしておるのでございまして、私どもはあのことに関心を持っていましたけれども、しかし、もともとこれに介入いたそうと、かような考え方はなかったのでありますから、地方団体の中において解決をいたした、このことは好ましい解決の方法だと、かように理解をいたしております。  それから、三番目の定期昇給等のストップを行わざるを得ないような事態に至りましたことは、東京都の職員といたしましてもあるいは理事者といたしましてもきわめて遺憾に思っていらっしゃることであろうと思うのでございますけれども、今日の都の財政状況を考えます際に、東京都みずからが健全な姿になろうと、かような健全化計画を策定されたのでございまして、これまた自主的な御判断によって処置がなされたものと、かように理解をいたしておるところでございます。  それから、最後の資料の点につきましては、どの程度の資料が整い得ますかわかりませんが、委員会の御指示に従いましてできるだけの資料は提出するように取り運びたいと、かように考えます。
  220. 上田哲

    上田哲君 ちょっと一言だけ。一言ですがね。勤勉手当の問題が、私が最後に一つ抜き出して言いたいのは、労使で解決すべきであって、これは大臣の趣旨と同じなんですが、労使で解決すべきものが他の外圧によって覆されるというようなことは、これはもう自治省なり政府なりが手を加えるという意味ではなくて、地方行政全体について監督をする見る立場にあるところからすれば、望ましい姿は何だといえば、労使の自主的な交渉によって解決すべきであるということが望ましいということが一点。  それから定期昇給は、これはない方がいいということにはならないので、可及的速やかに定期昇給の支給が行われるような事態が望ましいと、一般論で結構ですけれども、誤解が生ずるといけないので、この二点を一般論としてひとつあるべき姿をお答えいただきたいと思います。
  221. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 公務員の給与につきましては、もとより理事者でございます首長を中心にいたしまして組合の皆さん方と話し合いをなさりながら決定がなされていくことでございますけれども、ただ給与の支給に関しましては、やはり都道府県で条例に基づかなければならぬのでございますから、その条例は申すまでもなく議会の承認を得て制定さるべき性格のものでございますから、ですから、組合対理事者ということのほかに、やはり議会が参加いたしましての円満な解決、これが望ましいと思うのでございます。  それから、定期昇給につきましては、定期的に昇給いたしますことを公務員としては期待をいたしておるのでございますから、これまた財政の許す範囲内におきましてしかるべき時期に、しかるべき昇給がなされますことがノーマルな姿だと、かように存じております。
  222. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まず大臣にお伺いしますけれども、今回の交付税特別会計借入金の二分の一を国が負担することのルール化について大臣はさきの本会議の答弁で、このルール化交付税法第六条の三第二項に規定する行財政制度改正にまさに相当するものだと述べられているわけでございまするが、何をもって今回のルール化制度改正に当たるのか、その理由をお伺いしたいと思います。
  223. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 残念ながら五十三年度におきましては三兆円を超えます財源不足が生じたのでございまして、そこで、地方交付税法におきましては不足財源が生じました場合に、二つの場合を予定しておるのでございますが、その一つが、交付税率引き上げで対処いたします方法でありますことは申すまでもないことでございますのと、いま一つの場合といたしましては制度改正をいたしなさい、かような二つの場合を選択的に地方交付税法はその第六条の三の2におきまして定めておるところでございます。  そこで、交付税率引き上げまして対処いたしますことがオーソドックスな取り運びであることはよく承知をいたしておることでございますけれども、今日の国の財政状況等から見まして、そのことを期待はいたしましたものの、結果といたしましては引き上げが不可能な状況になってまいりまして、そこでいま一つの選択でございます制度改正を行わざるを得ないことに相なって、ただいま御審議をいただいておるのでございまして、ただ、この制度改正は恒久的なことではございませんで、やはり早い機会に税財政等の基本的な改正を行わなければならぬのでありますから、その改正を行いますまでの当分の間と、かようないわば暫定的な体制、かようなことの御理解をいただければありがたいのでございますけれども、しかし、それも単に借入金をいたす、借金をするということだけではございませんで、一兆五千五百億円の借入金をいたすのでございますけれども、これは利息のつかない金を五年据え置きまして、その後年賦で返還をいたす、かようなことでございますが、しかし、二分の一は国が負担をする、かような制度を設けたのでございますけれども、明らかにこれは私ども制度改正である、かように理解をいたしておるところでございます。
  224. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まあ制度改正であるとおっしゃられた大臣の御主張ではありまするけれども、いまも大臣のお話のように、ルール化には当分の間という条件がついておりますが、この当分の間ということについては、これは地方財政が好転するまでとか、あるいは行財政の基本的な改正が行われるまでの間なのだという大臣お答えでございまするけれども、これこそまさに暫定的なものであるということにほかならないと思います。したがいまして、大臣の言われるように、今回のルール化行財政制度改正である、私ども改正に準ずるものだというふうにも受け取りますけれども、さらに基本的な根本的な改正を待たなければならないということについてはどのようにお考えになっておられますか。
  225. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 今日の地方財政状況は御承知のとおりでございまして、解決を先に延ばしますと、延ばすだけむずかしくなってきますことを税制調査会におきましても、地方制度調査会におきましても指摘をいたしておるのでありますから、なるべく早い機会に基本的な改正を行いたいと、かように考えますけれども、それは具体的には現在の税制を強化してまいりますることも一つの道ではございますけれども、しかし、それのみを持ってしては対処しがたい、かように考えるのでございますから、たとえば法人事業税におきます外形標準課税の導入でございますとか、あるいは交付税につきましては国税三税にとどまらず対象税目拡大いたしまして、その拡大の機会に交付税率の問題も解決をいたしたい、かように考えておるのでございますけれども、単に地方税源のみのことではございませんで、国との関連においてそれもなるべく早く解決を図ってまいりたい、かように考えております。
  226. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この交付税法第六条の三の第二項、これにいいまする行財政制度改正ということは、いま大臣も述べられましたように、地方財政が赤字を生ずることのないように財源措置を講ずるということが基本だと思いますが、少なくとも地方自治を守る自治大臣としてはそのような解釈をしていただくべきだと思いますが、そのとおり間違いございませんか。
  227. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) そのとおりでございまして、ですから三兆五百億円の財源不足に対処いたしまして財源対策債を一兆三千五百億円いたしたのでございますけれども、これは本当は好ましいことではございませんで、やはり交付税特会ですべてを見ますのが正しい方向であったと思うのでございますけれども、なかなかそうはまいりませんでした。そして交付税特会におきまして、先ほど来申しておりますように、一兆三千五百億円の借入金と臨特によって措置をいたしたのでございますから、完全な形——姿といたしましてはいい姿ではないのでございますけれども、しかし三兆五百億円の不足財源は完全な形において埋めることができたと、かように承知をいたしております。
  228. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 地方交付税の交付を受けない不交付団体の数は先ほど来お話がありましたが、ここ数年だんだん減少をし、今年度は都道府県の中では東京都だけということであります。市町村レベルではどのくらいに、どのような状況になっていますか。
  229. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 五十二年度の市町村分におきます不交付団体は七十団体、五十一年度は五十七団体、その程度でございます。
  230. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そうすると、最近は五十七団体というわけですね。まあ地方交付税の趣旨としては財源の均衡化を図るということがうたわれておりますし、そのとおりでございまするが、現状のようにほとんど九八・五%でしょうか、九九%になんなんとする地方団体が交付金を受ける、このような団体であるということについては、どのようにお考えになっておられますか。
  231. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 交付税の機能といたしましては、地方団体相互間の財政力の不均衡を調整するという機能と、地方団体が標準的な行政水準を維持するために要する財源を保証する、二つの機能を交付税法上持っているわけでございますが、現在のように非常に不交付団体が少ないということは、標準的な行政水準を維持する分を超える以上の税源を得ている団体が少ないということをあらわしているわけでございまして、そういう意味から申し上げますと、現在のように不交付団体が非常に減少している状況というのは、やはり地方税源というものが比較的現在現状におきましては少なくなっているのではないかということを示していると思うわけでございまして、そういう意味から言いますと、自主財源の中心をなします地方税源というものがより強化されるような制度改正というものを考えていく必要があるということのように思える次第でございます。
  232. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 憲法で保障する地方自治の本旨から申しまして、せめて九九%はひどいですけれども、常識的に見て三分の一ぐらいの不交付団体があってこそ初めて地方に適切な自主財源が与えられると言えるのでありまして、地方自治が定着していると言えるには、やはりそのような少なくとも三分の一あるいは半分あればなおいいんですが、そのくらいあるのが望ましいことだと言えると思いますがどうでしょうか、その辺については。
  233. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 現在の日本の社会から申し上げますと、やはり相当に地域的な経済力のアンバランスはあるわけでございまして、団体の数によりまして三分の一あるいは半分というものが不交付団体になり得るという税制になりますと、相当にこれは地方税としては大量の税源配分を受けなければできないということになろうかと存じます。これをそういった団体数じゃなくて、人口だとかなんとか、そういうものにとってまいりますと、ウエートというのはずっと変わってくるだろうと思いますが、どの程度がいいのかということは、やはり国民全体が負担いたします税の負担というものとの関連もあるわけでございますので、慎重に検討する必要があろうと存じますが、少なくとも現在のような数であるということは非常に少ないのじゃないかという気持ちはいたしているわけでございまして、その増強というものは大いに努力すべきものと存じております。
  234. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 現状のように九九%近くの地方団体が交付団体である、こういう事態にこそ、今日に見られるような地方自主財源の強化や、それから行財政制度の抜本改正をおざなりにして、小手先だけの対策に終始してきた政府地方財政対策の結果であると言っても過言でないと思うわけでございまするが、知事の御経験もおありになりまする大臣の今後の御手腕に期待して、ひとつぜひこの抜本改正に対する思い切った決意を持って向かっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  235. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私は、このままの制度でございますと、地方団体の自主性が次第次第に失われてまいりまして、自治の精神が曲げられてしまう、かような感じを強く持つのでございますから、ですから、国におきましては勇敢に財源地方に付与すべきでございますが、ただ今日のわが国の状況はその発展状況がきわめて凹凸が多いのでございまして、非常に不均衡が深刻化してまいっておりますから、やはり交付税制度を大いに活用いたしましてその均衡を保ちながら均衡ある発展を遂げていかなければならぬと、かように感じております。
  236. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、交付税制度のあり方についてちょっとお尋ねいたしますが、全国町村会でも現場の声といたしまして種々改善を要望しておりまするので、具体的にそれらにつきましてお伺いしたいと思います。  まず、社会福祉、生活環境整備、それから農業振興等のこれらの行政経費財政需要の実態に即したものに引き上げるように強く要望しておったわけですが、この引き上げはどのようになっていますか、具体的に御説明を願いたいと思います。
  237. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十三年度のただいま御審議をいただいております交付税法改正法案の中で、御指摘の社会福祉関係経費でありますとか、あるいは農業振興関係経費については、地方の実情も踏まえまして他の経費以上に重点的に内容充実を図っております。一例を挙げますと、社会福祉費の投資的経費増加率は二一・八%、それから農業行政費は二七・六%というように相当大幅に引き上げております。内容的にも、たとえば農業について申しますと、地域農政特別事業費でありますとか、あるいはいま問題になっております転作関係の促進対策費、こういった経費を充実算入するというような改善を図っております。
  238. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 測定単位についての要望でありまするけれども、林野行政費それから水産行政費及び河川費を新設してもらいたいという声があるわけですが、これについてはどのようにお考えですか。
  239. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 御承知のように、林野行政費でありますとか水産行政費は、現在は市町村分のその他の行政費というところで一括して算定しております。その中で、各種の補正を適用するなどいたしまして内容的な充実を図っているわけでありますが、これをもしこの要望にありますように測定単位の数値を分けるといたしますと、その経費自体は非常に計算がすっきりするわけでありますけれども、それだけ単位費用をたくさんつくると計算過程が複雑になるというデメリットもあります。私どもは現状におきましては、現在の方式で内容の充実を図るということで関係団体の御了承も得られるのじゃないかと考えております。  それから河川費につきましては、現在はその他の諸費の中の面積の中で必要な経費算定を行っております。最近いわゆる普通河川についての財政需要がふえているというようなことから、河川費を別建てにして算定方法をもっと的確にしてはどうかという御意見もあるんでありますが、こちらにつきましては、都道府県の場合のように河川の数値をきちっと把握できないというふうな問題もありますので、今後の研究課題にさせていただきたい、このように考えております。
  240. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、もう一つつけ加えまして、地方の要望の強い消防費とそれから農業行政費の測定単位ですが、これは人だけでなくて、面積を採用することについては、どのようにお考えですか。
  241. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 消防費につきましては、現在人口を測定単位にしておりますが、非常に面積広大な団体等におきまして確かに消防費が割り高になるという傾向がありますので、これについては人口密度補正を適用することによってその間の経費の算入を行っております。したがいまして、面積を測定単位に立てるということと同じ効果があるわけでありますから、密度補正の内容の改善で対処していくことでいいのではないか、このように考えております。  それから農業行政費につきましては、農家戸数を基本にしておりますけれども、別途の補正の段階で面積の要素も加味して算定が行われておりますので、これまた測定単位を別建てにするという必要はないんではないか、このように考えております。
  242. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そうしますと、この地方の要望の中にそういうような強いのが起こるのはちょっとおかしいんですが、どうなんでしょうか、実情は。
  243. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) これはこれからいろんな議論が出てくると思いまするけれども、全国町村会の場合でありますというと、各市町村の意見を単純に集計しまして類型別にまとめて要望をされておるわけでありますが、ある要望を満たしますと、ほかの要望と矛盾するというケースもしばしばあるわけであります。全体として申しまして一般に測定単位の数値を分ける話でありますとか、あるいは新たな補正を適用するという話は、その要望されている事柄だけについて言いますと、確かに理由はあるんですけれども、同時にまたそのことによって、いまそうでなくても複雑過ぎる、わかりにくいと言われております基準財政需要額算定方法が一層複雑になるというデメリットもあるわけです。私どもはもちろん要望の中でその算定方法の複雑化というものを克服できる場合には採用するように努力しておりますけれども、また現在の方式の中で何とか御要望に沿えるような改善が加えられるならば新たな測定単位数値を採用するとか、新たな補正項目を取り上げるということをしないで、なるべくならば現在のやり方の中で改善していきたい、このように考えているわけでございます。
  244. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、各種補正係数の改善強化についても地方の要望が出されておったわけですけれども、まず農業行政費の各種補正の改善強化はどのようになっているか、お伺いしたいと思います。
  245. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 農業行政費におきましては現在は経常的経費の場合には段階補正と普通態容補正一、二、それら寒冷補正、それから数値急減補正、これらの補正が適用されております。それから投資的経費の場合で申しますと、投資補正の一、これは田畑や牧場の面積による補正、それから投資補正の二といたしまして農道とか林道による補正、それから普通態容補正二、これらの補正が適用されております。これらの補正、特にたとえば農道とか林道の補正などにつきましては、関係経費の充実強化を図るべしという意見が以前から強くありまして、五十三年度におきましてもできるだけその方向で努力したいと、このように考えております。
  246. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 道路橋梁費及びその他の諸費の種別、それから補正係数割り落としの緩和については、本年度どういうふうに行われる予定でございますか。
  247. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 道路橋梁費の場合でありますというと、現在は幅員別の補正と、それから橋梁による補正、これが設けられておりますが、この場合に、幅員別の補正につきましては、端的に申しまして、現在は幅員が六・五メートル未満四・五メートル以上というのを市町村道の基準にしております。これによって単位費用をつくっておるわけですが、これよりも広い道路の場合には、交通量の要素等を加味して一・一という係数を適用しております。それから、四・五メートル未満の場合には、その段階によって〇・七あるいは〇・一という種別が適用されております。特に非常に狭い、たとえば二・五メートル未満一・五メートル以上というような市町村道になりますというと、車は通らないわけであります。これらについて〇・一という種別補正を適用をしておるわけでありますが、端的に申しまして、大きな規模の市町村は種別補正の幅員の広い方の種別を上げてほしいと、それから田舎の町村は幅員の狭い方の種別を上げてほしいと、当然その団体の財政事情にそれぞれプラスマイナスがあるわけでありますから、それぞれ全く相反する要望があるわけです。一般的に申しまして、非常な田舎の山間僻地の市町村とそれから都会に近い市町村とでは意見が食い違うわけであります。まあこうした場合に、私どもはやはり実際の道路需要というものをにらんでこの係数のあり方を考えていきたいと思っておりまして、現在は特にいまの種別補正を大幅に変える必要はないと、全体としての財政需要はできる限り上げなきゃいけないと思っておりますが、いまのバランスを特に変える必要はないんじゃないかと、このように考えております。  それから、その他の諸費の場合には、田畑の面積とそれから宅地の面積、それから森林その他という土地の種類によって種別補正を適用しております。この場合に宅地の面積を一にしておりまして、それ以外の面積はいずれも、たとえば田畑の場合には〇・二、それから森林の場合には〇・〇六というような種別を適用しております。これは市町村行政の場合には面積に関連する経費といいますというと、どうしても人の住んでいるところ、住宅等が密集しているところほど河川の改修にいたしましてもその他各般の投資的経費がよけいかかっている実情にありますので、その宅地を基準にして他の地域の、他の種類の面積の種別補正を決めているわけであります。これにつきましても、やはり田舎の町村などではなるべく人間の住んでいない地域の面積の比重を高めてほしいという意見があります。これはそうすればその団体の交付税ふえますから、そういう要望が出るのはもっともなんですけれども、これにつきましても私どもはやはり現実の財政需要というものを、実態をよく踏まえて要望に対処していきたいと、このように考えております。
  248. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 同じく補正係数の改善についてですが、中小学校校費その他の教育費、それから社会福祉費について密度補正の強化が地方からのやっぱり要望として出ておりますが、どのように措置されておりますか。
  249. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 小中学校費の場合でありますと、密度補正によりまして遠距離通学に要する経費、あるいはスクールバス・ボートに要する経費、あるいは寄宿舎に要する経費、これらのものを密度補正という形で算入しております。これらにつきましては当然関係経費増加が予想されますので、それぞれ算入の単価の引き上げを予定しております。  それから、その他の教育費について申しますと、幼稚園の園児数の多少を反映させるための密度補正を適用しております。これにつきましても当然幼稚園関係の経費増加に見合った単価の引き上げを予定しております。  それから、公立大学の経費につきましては、各学科別にそれぞれ一定の単価を想定して計算をしておりますが、これらにつきましても国の方の、国立大学の状況どもにらんでそれぞれ経費引き上げを予定しております。  それから、社会福祉関係では保育所関係の入所措置児童数あるいは老人対策経費、それから老人医療経費、これを算入しておりますが、これらについても関係予算の増額に対応して必要な単価の引き上げを予定しております。  それから、清掃費では観光地域におけるごみ処理の割り増し経費を算入するために入湯税の納税義務者数というものを密度補正に反映さしているわけですが、これにつきましても経費増加状況を踏まえて、経費内容の充実を予定いたしております。
  250. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この下水道事業の経費の測定単位として、現行では人口集中地区人口が用いられているわけですけれども、実際には人口集中地区人口はないけれども、排水人口、それから排水面積の所在する町村には、財政需要に対処するために下水道費に算入されない部分について、他の費目における密度補正の採用を図るべきではないか、こういうふうに思いますけれども、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  251. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) まあ下水道経費につきましては、人口集中地区人口を一つの基準にして経費算定を行っておりまして、この方式でほとんどの団体については妥当な計算ができていると考えているわけでありますが、確かに御指摘のように、全国で十七団体ほど、現実にいま下水道があり排水人口があるにもかかかわらず、人口集中地区人口が全然ない団体があります。これらについて全く別の計算方式をつくるということになると、これまた算定方法が非常に複雑化するものですから、これにつきましては、仮に普通交付税で人口集中地区人口があるものと想定した場合の必要な経費を特別交付税算定いたしております。たとえば昭和五十二年度の例で申しますと、一億一千九百万円を算定しておるわけであります。これにつきましては、今後ともこのために新たな算定方法を考えるということは非常に算定方法の複雑化を招きますので、団体数も少ないし、いずれはまた人口集中地区人口もこれらの団体に出てくると思いますので、現在の方式で妥当な救済措置を講じていきたいと、このように考えております。
  252. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 もう一つ伺いますけれども、農業行政費の投資補正ですけれども地方が要望しておりまするところの酪農地域におきます牧場面積の算入率の引き上げについてはどのように対処をされますか。
  253. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 現在、まあ農業行政費に適用する投資割り増し補正の算式の中で、農家数でもって田畑の面積と牧野面積をそれぞれの要素を加味して一定の算式をつくっているわけですが、この場合に、酪農関係の団体からは当然この牧野面積の比率を高めてほしいと、こういう要望があるわけであります。しかし、一方、こちらを高めるということは、一般の農業、田畑の普通の酪農以外の農業との関係でバランスがどうかと、これは相対的な問題でありますから、それとの関係で一般の農業を減らして酪農をふやすべき実態にあるのかどうかということが問題点です。農業行政費全体として算入額を引き上げるということは、これは当然やらなきゃいけないんですけども、バランス論として牧野の方の算入率を一般の田畑よりもより高めなきゃいけない実態にあるかどうか。この点については、私どもまだそのような心証を得るだけのデータを持っておりません。したがいまして、これについては今後の検討課題にさしていただきたいと思います。
  254. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、過疎対策について若干お伺いしたいと思いますが、過疎地域市町村の振興対策に関連して、昭和四十五年に過疎地域対策緊急措置法が制定されまして、今日まで行財政上の各種の措置がとられてきたわけでございまするが、依然として人口減少に歯どめがかからず、劣悪な条件のもとで、地域社会存立の基盤さえも脅かされている市町村も数多く存在しております。加えて今日の財政難はますますその深刻さを加えている実情でございますが、こうした過疎市町村に対して一段と強力な振興対策の必要に迫られているのは当然でございまするが、これについて大臣いかが対処されますか、お伺いしたいと思います。
  255. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 国全体といたしましては、人口が年間百万人を超えます増加があるにかかわりませず、地域的にながめてみます場合に、農村地帯ことに過疎と言われる地域からは、どんどん人口が流出をいたしまして減少傾向が顕著でございました。ごく最近の現象としましては、若干歯どめはかかったような感じはいたしますけれども、それでもまだ全国的に見ます場合には過疎市町村がずいぶん多いと、かように考えられます。そこで、人口が減少をいたしますと、その地方団体等が地域住民の生活水準が維持していくにも困難な状況が生まれてまいりますし、また生産基盤等も壊されてまいりまして、きわめて好ましからざる方向へ動いていくと、これが過疎の現象でございます。そこで、どうしても歯どめをしなければならぬということで、昭和四十五年に立法措置がとられたのでございまして、自来十年近く経過いたしたのでありますけれども、その効果はじわじわ上がっているとは思いますが、しかし、なかなか飛躍的に過疎現象を解消し得ます体制にはなっておらないのでございますから、今後の基本的な考え方といたしましては、やはり過疎市町村に対しましては財政面やあるいは税制面等で格段の配意をいたしまして、そしてその面からもてこ入れを行うことによって過疎現象を解消していく。なかなかむずかしいことではございます。一挙にはなかなかできがたいことではございますけれども、じみではございましても漸進的にその体制をとって過疎市町村をなくしていくと、この努力を積み重ねてまいりたいと、かように考えております。
  256. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この過疎地域の振興のためにはやはり一般の財源確保を十分に図っていくことが言うまでもなく必要だと思います。そのためには地方交付税の過疎地域への各種補正措置を拡充強化していくことが必要であると思います。  そこでまず、後進地域町村への傾斜配分について伺いまするが、過疎地域、豪雪地域、それから離島などは特に財源も乏しく、将来にわたって財政力を強化することはほとんど困難と見られるわけですが、こうした後進地域に対しては、傾斜配分の拡充強化を図っていけたらと思うのでございまするが、またその必要性を十分認めるわけですけれども、また同時に地方からも強く要望していることなのでございまするが、今年度はどのように配慮されておりますか、お伺いします。
  257. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 過疎地域の市町村につきましては、従来からたとえば人口密度補正でありますとか、人口急減補正でありますとか、あるいは隔辺地補正といった各種の補正の適用を通じまして、かなり傾斜配分を行ってきたつもりであります。五十三年度におきましても引き続きその方針を強化してまいりたいと考えておりまして、たとえば先ほどもちょっと触れましたが、小中学校費に適用しております密度補正の中で、遠距離通学関係の経費でありますとか、あるいはスクールバスあるいはボート、寄宿舎の関係経費、こういったものはいずれも過疎地域の市町村に特有の財政需要でありますけれども、これを相当大幅に引き上げたいと考えております。  それからもう一つ、過疎地域の大きな悩みになっております僻地の医療対策に関連いたしまして、僻地診療所の運営経費でありますとか、あるいは患者輸送車、診療車、こういったものの運営経費内容も大幅に引き上げてまいりたいと、このように考えております。
  258. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 現在、準過疎町村については、特別交付税によって算入措置が講ぜられているわけですけれども、この算入措置の強化についてはどのようになっておりますか、伺いたい。  それから同時に、普通交付税による算入方式の改正を検討してもらいたいという地方からの要望がございますが、この辺についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  259. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) いわゆる準過疎町村、過疎法の規定による該当団体と、わずかの人口減少率の差のために過疎債が配分されないと、こういう団体については確かにボーダーラインであり非常に気の毒であるという実情を考慮いたしまして、現在は特別交付税で一定の方式で経費算定を行っているわけでありまして、たとえば五十二年度の特別交付税の場合には、この関係で約十九億ほどの算入を行っております。これらにつきまして、普通交付税で算入してほしいという意見が確かにあるわけでありますけれども、ただ、この算定方式は過去の人口減少率を基礎にとってこの団体を選び出しておりますので、現在の数値急減補正とダブってくるような面もありますし、また、何といいましてもこの関係の経費算定基準財政需要額の中でさらに上乗せするということになりますと、算定方法として一層複雑になるおそれがある。現在そうでなくても数値急減補正とか、あるいは隔辺地補正とか、各種の補正が適用されている上に、さらにこの関係の補正を上積みするということになりますと、大変計算方式が複雑になります。そこで私どもといたしましては、従来と同様特別交付税でこの算定方式を継続してまいりたいと、で、事情が許すならばその算定内容の強化を図っていくということが妥当な行き方ではないかと、このように考えております。
  260. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この過疎地域の強い要望としまして、過疎地域対策緊急措置法にありまする過疎地域該当要件を緩和してもらいたいと、こういうことがあるわけですが、これは緩和していただけるものでしょうか、どうでしょうか。
  261. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) まあ御案内のように過疎地域対策緊急措置法があと二年で期限が来るわけであります。したがいまして、当然この法律をその以後どうするかという議論があるわけでありますが、そのこととも関連いたしまして、現在の過疎市町村の適用要件を見直してはどうかという意見が確かにあります。まあこれらの点につきましては、あと二年しかないこの段階で適用要件を変えるということは実際問題としてむずかしいと思いますので、法律の二年後の扱いをどうするかというときに、その時点での関係団体の財政の実態をも踏まえて、その適用要件のあり方も検討すべきではないかと、まあいずれにしてもこの点については所管省庁であります国土庁とも十分協議してまいりたいと、このように思っております。
  262. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この過疎地域対策緊急措置法はいまのお話にありますように、あと二年でもって切れるわけですけれども、この延長についてはこれらの地域からも強く要望しているところでございまするけれども、これは延長を図っていくべきだと私ども思いますけれども大臣はどのようにお考えですか。
  263. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 国土庁が所掌しております法律でございますから、私がいまの段階で意見を述べるのはいかがかという感じはいたしますけれども地方の実情を最もよく承知しておりますのが自治省でありますことは申すまでもないことでございまして、今日の地方の実情からいたしまして、十ヵ年経過いたしましてもなお過疎現象に大きな歯どめがかけ得たとは言いがたいのが実情であろうかと思うのでございますから、私個人といたしましては、この法律は延長さるべき性格のものだと、かように考えております。
  264. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 態容補正の乙種地決定要件になっております距離の特例基準については、その緩和を図ってほしいという、こういう要望が出ておりますが、これについてはどのようにお考えですか。さらに、過疎法指定団体に対する過疎補正の適用はどのようになっているか、一緒に御説明願いたいと思います。
  265. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 御案内のように現在の態容補正に用います種地区分は、いわゆる中核都市である甲地と、その周辺市町村である乙地と、それからそれにどちらにも関係のない丙地と、この三つの区分がありまして、この丙地について、丙地と乙地の適用に関連いたしまして甲地からの距離をどう計算するか、これにどう点数配分をするかということで、以前からいろいろ意見があったわけであります。そこで、四十五年度に距離の特例というものを設けまして、初め十キロ未満であれば乙地にするという扱いをしたんですが、これが四十六年には二十キロにし、さらに五十一年度には二十五キロに延長して今日に至っております。  しかし、五十三年度からこの種地の全面的な計算がえを行わなきゃならない時期に来ております。これは昭和五十年の国勢調査のデータがすべて公表されましたので、これによって全面的な計算がえを行わなきゃならない時点に来ておりまして、その段階で各地方団体からも現在の区分のうち、特に丙地についてはこれを廃止してほしいと、こういう声が大変強いのであります。特に町村会あたりではその声が強いのであります。そこで、この距離の算定方法の特例にとどまらず、この際いまの三つの種地区分を改めまして、甲地、乙地の二つの区分にし、丙地の区分はやめてしまうということを、そういう方向で現在検討いたしております。そうなりますと、従来丙地に属していた団体は一様に乙地に属するということになりますから、この距離の問題にとどまらず、より抜本的な問題の解決が可能になるのではないかと、このように考えます。  なお、まあこのこととも関連があるわけでありますけれども、過疎地域について過疎補正を適用してほしいという意見が前々からあるのでありますけれども、この点につきましては先ほど来いろいろ申し上げておりますように、各種の密度補正あるいは数値急減補正、隔辺地補正、こういった補正によって実質的には過疎補正で要望されているような内容を算入しておりますし、ただいま申し上げましたようにそもそも態容補正の種地区分を甲地、乙地の二つに統合するということにいたしますれば、過疎市町村の要望はほぼ充足されるのではないかと、このように考えております。
  266. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 寒冷地補正の強化についてでございますが、豪雪地域町村の積雪度、それから級地区分が現状にそぐわないことが言われておりますが、この算定基準の改善を図ることは昨年度来約束されているわけですけれども、この実現についての作業はどのように進捗していますか。
  267. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 昨年の豪雪にも関連いたしまして現在の積雪度の級地区分が実情に合っていないのではないかという御指摘があり、まあ私ども事実関係団体からのお話聞きますと、そのように感じられますので、この基準そのものを全面的に見直したいということで、本年度調査経費を七百六十八万ほどちょうだいいたしまして見直しのための作業を行っております。現在五月中に気象協会において雪の深さをはかる積雪深の調査表の回収を大体終わってもらう。そうして七月ぐらいまでの間にこの観測地点ごとの資料の整理を行いまして、さらに八月から十一月までの間に地点別の累年平均の月の最深積雪値の算定、その他各般の積雪級地の指定に用いますグラフ、その他の作成作業を十一月ぐらいまでには終わっていただいて、十一月にできればその検討結果の報告書をちょうだいし、その報告書をもとにして来年の三月までには新しい級地の案を固めたい、このように考えております。したがいまして、五十四年度からはいずれにいたしましても新しい級地区分による積雪補正の適用が可能になろうかと思います。
  268. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 過疎地域にとりましては足の確保が深刻な問題になっているわけですが、過疎地域の町村が自主運行を行ってますバス路線についての運営費、それから国庫補助対策対象外になっている地方バスの路線維持費を交付税措置してもらいたい、こういう要望も出ていますけれども、これについてはどのようにお考えになっていますか。
  269. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) スクールバス等につきましては、先ほども申し上げましたように、普通交付税算定しております。これはその内容が国庫補助基準等ではっきりしておるからでありますが、過疎地域のバス路線の廃止に伴う自主運行その他の経費については、一定の基準をもって普通交付税で算入するということがきわめて困難であります。基準の立て方がどうもうまくいかない。そこで現在は、この自主運行バス等につきましては各団体の実情を伺いまして、きわめてやむを得ざるものと、どうしてもこれは運行が必要であるという団体につきましては、必要経費の一部を特別交付税によって算定しております。なお、参考までに、この関係の経費昭和五十二年度の場合は全体で三十四億円ほど算入をいたしております。
  270. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 過疎債及び辺地債について伺いますが、市町村の要望として過疎地域振興計画に基づくところの事業の実施に必要な財源確保するためにも過疎債、辺地債の増額を図るとか、それから過疎債の適用対象事業の範囲の拡大を図るということを望んでおったんですが、どのようになっておりましょうか。
  271. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) まず、過疎債の総枠の確保でありますが、五十三年度地方債計画におきましては総額百九十億円の増額を図ったところであります。それから、その過疎債を充当する対象事業につきましてでありますけれども制度が発足した時点以後、各団体が現実に計画を立てる過程で住民の要望にこたえるために対象を広げてほしいということで、これまで再三にわたって対象範囲の拡大を行ってきております。私どもは一番新しい改正といたしましては、五十年の四月に改正いたしまして、この場合には、農業や林業あるいは漁業の経営の近代化のための施設などを加えたわけであります。それから観光リクリエーション関係の施設も加えるというようなことで、この五十年の政令改正で、従来過疎振興計画の中で非常に切実に要望されていたものはほぼ満たされたと考えております。しかし、今後情勢の変化によりまして新しい事業が必要になってくるということであれば、またその段階で検討してまいりたいと考えております。
  272. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 過疎債の元利償還費の交付税の算入率ですけれども、過疎市町村としてはこの算入率を八〇%に引き上げてもらいたいと強い要望をしておりまするが、この引き上げについてはどのようにお考えですか。
  273. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 関係団体といたしまして、過疎債の償還金の算入率が現在七〇である。一方、辺地債の方が八〇であるというようなことから、八〇にしてほしいという意見が以前からあるわけでありますけれども、私どもは、この過疎団体に配分される地方債によってどの程度施設が整備されているか、過疎に適用されてない団体における施設整備状況とのバランス、あるいは他の費目に係る地方債の償還費の算入率、こういったものを勘案して、これを決めていかなきゃいけないと思うわけであります。そうした場合に、確かに辺地債の場合には算入率が八〇でありますけれども、それ以外ではこの種のものとしては算入率は最も高いのでありまして、たとえば義務教育の場合が六〇%、あるいは下水道の場合は五〇%、こういうようなこと等考えますと、私どもは、現状においてはこの七〇%という算入率は妥当なものではないかと、関係団体の本当の意味の公平という意味からいたしましても七〇%というのは妥当ではないかと、このように考えております。
  274. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、人口急増市町村対策について二、三お伺いしたいと思います。  過疎が深刻な問題になっている一方におきまして、人口急増の問題もまた同じく深刻な問題になっている実情でございまするが、特に膨大な関連公共公益的施設の整備に迫られている人口急増市町村にとりましては、五十年度以降地方財政財源不足対策として大量の地方債が導入された結果、財政運営に多種多様の問題を抱えて苦慮している現状でございます。  この問題について、どのように取り組んでおいでになりまするか、大臣のお考えをまずお伺いしたいと思います。
  275. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 人口が急減いたしまして、過疎現象が生じます場合の悩みもきわめて深刻ではございますけれども、反面、人口が急増いたします市町村におきましては、大変な苦労と悩みを持っていらっしゃる、かように見ております。急速に団地ができましたり、あるいは人口増加の現象が生じますと、それに対応いたしまして、上下水道の整備でありますとか、あるいはまた廃棄物の処理の問題でありますとか、さようなことのほかに、たとえば学校や幼稚園、保育園等を急遽に大量につくっていかなければならぬ、かようなことで、いわばそういう行政需要に現在の人口急増市町村はなかなか追いついておらぬ、かように思います。追いつき得たといたしましても、それは大量の財政負担を伴うのでございますから、そこで、たとえば文部省におきましては、小中学校の場合に、通常の場合は二分の一の補助でありますものを三分の二に引き上げておりますとか、あるいは用地を取得します場合には補助対象にならないのがたてまえでありますけれども、人口急増市町村につきましては、二分の一の補助をいたす、かような措置をとっておるのでございますし、各省庁におきましていろいろ苦労いたしておるところでございますけれども自治省がみずからなしてあげますことは、できるだけ起債の御要望等にこたえてまいりまする道と、そして交付税計算におきまして、人口急増補正等を大幅に行いまして、お助けを申していく、かような措置をとっておるのでございますが、それでもなかなか追いつき得ないというのが現状でございまして、これが体制を今後ますます深めてまいりますために、各省庁の協力も得てまいらなければなりませんし、また自治省みずからもなすべきことを勇敢になしていくべきだと、かような考え方を持っております。
  276. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 大臣の言われていましたように、人口急増市町村に対する交付税の算入、これについては人口急増補正の適用費目の強化拡大、これをお図りになってこられたわけでございまするが、反面、交付税におきまする非常な全体としての窮屈さがございますので、さらにこれを拡大強化していくというようなことは、その必要性があるにもかかわらず、非常に実際問題としてはむずかしいのじゃないでしょうか。その辺の事情はどうでしょうか。
  277. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 人口急増補正につきましては、人口を測定単位とする費目についてはほとんどこれを適用いたしております。で、人口以外の測定単位を用いておる費目についても急増補正を適用してはどうかと。具体的に申しますと、都市計画費でありますとか、あるいは下水道費、こういったものに適用してはどうか、こういうような御意見があるわけであります。で、私どもは人口系統のものでかなり実態を反映しているように考えておりますけれども、なお都市計画費等についてその必要があるかどうか。適用するということになれば、もちろん算定方法がそれだけ複雑になるわけですから、そういった犠牲をあえてしてでもこれを適用することの方がより妥当であるかどうか。これらについては財政事情の実態や関係団体の御意見も聞きながら今後検討してまいりたいと、このように思います。
  278. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いまお話ありましたように、人口急増市町村の強い要望としまして、人口急増補正の経常経費算定について全国平均増加率の控除を廃止してもらいたいということがあるわけですが、同時に国勢調査の後の増加人口に係る行政経費についても的確に算入してほしい、算入すべきではないか、このような意見もありますが、いかがでしょう。
  279. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) まず初めの人口急増補正の適用の仕方でありますけれども、現在の人口急増補正の係数を計算する場合には、その各団体の人口増加率から全国平均の増加率を差し引いて、いわば言うなれば全国平均を上回る部分だけを補正係数に反映さしているわけであります。これについて全国平均の基礎控除といいましょうか、引かないで、根っこから係数を適用すべきじゃないかという議論が以前からあるわけなんですけれども、この点はやや理屈になるわけですけれども、単位費用を計算する場合には全国の人口増加に伴う財政需要を平均的に算入しちゃっている、厳密に言いますというと、市町村の場合に人口十万の都市を想定しておりますが、人口統計が変わるごとに実際には想定された十万というのは同じ団体でなくなっちゃっていると、そういう形、実際には全国の人口がふえた分だけの平均的なものは単位費用に反映しているわけです。ですから、平均値を引かないというと過算入になってしまうと、これは理屈の話でございますけれども、そういう問題があるわけでございます。したがいまして、人口急増団体の、おっしゃるような形で基礎控除なしにするのであれば、人口増加要素というのは単位費用に入れないでおいて、全部増加補正で算入するという方式にならざるを得ないのですけれども、どちらがいいかということでありますけれども、人口急増補正というのはあくまで、何といいましょうか、人口が非常に異常にふえる団体の救済措置として適用された経緯がありまして、従来から、要するに単位費用には全国的な人口増加の平均値は入れてきたという経緯もありますので、私どもはこの段階でこの方式を根本から変えるだけの必要性は乏しいのじゃないかと考えております。  それから、人口統計が変わったら国勢調査以後の増加部分について反映させるようにということでありますが、これはまさに現在の人口急増補正の中の数値代置分についてはそういう考え方で適用しているわけでありまして、実際には住民基本台帳人口を使って最も新しい交付税算定時期に、最も近いときまでの人口の動態を反映させるようにしております。もちろん小中学校などのように、その年度の数値を使っている場合にはそれがずばり反映しているわけですが、人口については住民基本台帳人口によっていま御指摘のような点は反映さしていると言うことができると思います。
  280. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いまの御質問と同じようなちょっとややこしい問題なんですけれども、児童生徒の急増市町村の指定要件についてでございまするが、現在の指定制度でいくと、指定要件を欠けば、その年度に財政上の特例措置は適用除外になるわけでございますね。そうすると、実際には指定要件を欠いてもその年度に事業までもがなくなるかというと、決してそうではない。持ち越されている事業のために指定時に劣らぬ膨大な経費を必要とすることを考えますると、事業量に応じた要件の設定等を含めて児童生徒急増市町村の指定要件の緩和を図る必要があるのではないかと思いますが、これについてはどのようにお考えですか。
  281. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 確かにわずかのところで児童生徒急増団体に指定されないという現象があちこちに起こりまして、非常に要望が強かったわけであります。そこで、今回五十二年度から御承知のようにこの指定基準が緩和されまして、たとえば小学校の場合でありますと、従来は増加生徒数が五百人以上でかつ一〇%以上 それからあるいは千人以上でかつ五%以上という、どちらかの要件でないと指定されなかったわけです。これに対して五十二年度からは三百人以上でかつ一五%以上、すなわち従来五百人だったものが、人数が少なくても率が高ければ指定してやろうと、こういう緩和が行われました。その結果現実に五十三市町村が新たに指定されております。同じように中学校の場合で申しますと、従来二百五十人以上の増加数がなければ指定されなかったんでありますが、五十二年度から百五十人以上でかつ増加率が一五%以上であれば指定しようということで、これによって新たに五十市町村が指定対象になって救われております。昨年そういう改善が加えられたばかりでありますので、私どもはこの結果を見守りたいと、このように考えております。
  282. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、地方債の問題について若干お伺いしたいと思いますが、景気浮揚を図るということで公共事業予算の七〇%を上期の間に前倒し契約を行うことを目標としているようでありまするが、地方債の配分予定はどのようになっておりますか。特に補助金決定の時期なども十分に整合性がとれているかどうか、事業別に御説明願いたい。
  283. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 地方債の許可につきましては、御指摘のように、公共事業の執行促進をプッシュするねらいもありまして、本年度は例年よりもはるかに速いぺースで配分作業を進めております。本日までにすでに地方債計画全体に対して四一%、二兆五千五百億円の配分を完了いたしております。で、これからの予定といたしましては、できれば上期中に八二%ぐらいまで配分を終わりたいと。このペースは昨年度も相当ピッチを上げたんでありますけれども、昨年度よりもはるかに速いぺースで作業を進めている状況でございます。
  284. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 伺いますと、大量の地方債発行が予定されておるわけですが、いわゆる十五ヵ月予算の考えのもとに五十二年度第二次補正予算とあわせて切れ目のない執行を図ることが五十三年度予算基本方針とされているわけですが、果たして地方団体の執行面で問題を生じることはないのかどうか、自治省当局としてこの点についてどういうふうな御認識を持っておられるか伺います。
  285. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 御指摘のとおり十五ヵ月予算ということで、五十二年度の補正から五十三年度にかけまして公共事業等大量の事業執行ということになってまいりまして、それは各地方団体、それを受けましていろいろと苦心をいたしているところであろうと存じます。各府県等におきましても事業執行のための推進本部というようなものも設置しているところが大部分でございまして、部内の協調というような点にも非常に配意をいたしております。まあ国の方におきましても各省庁それぞれ公共事業配分の補助金の早期決定というようなこと。それから補助金配分手続の簡素合理化というような点につきましても、非常な努力をされているところでございます。そういう事務の簡素化、それから地方団体におきます事務執行の体制の整備というようなことによりまして事業は比較的スムーズに早く執行ができていくのではないかというように期待をいたしているところでございます。
  286. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 五十三年度地方債の許可方式の改正についてでありますが、主な改正点はどのようなものか御説明願いたいと思います。  それから、都道府県一般単独事業債の枠配分の移行に伴って、四年間の総枠方式を採用するようですが、その考え方についても同時に伺いたいと思います。
  287. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十三年度地方債の許可方針におきまして最大の特色は、地方債の許可事務の簡素化及び融資事務の簡素化、融資の方は大蔵省の所管でございますが、関連するわけですけれども、この簡素化にあると言うことができると思います。で、具体的に申しますと、従来市町村分の地方債の許可に当たりまして、政府資金によるもの以外の民間資金も含めましてすべて都道府県の各市町村が大蔵省の財務部に説明に行って、それからいわゆる事前調整というものをしてから資料が県に回ってくる、あるいは自治省に上がってくる、こういうような扱いがなされておりましたが、五十三年度からは、それらのうち全部民間資金による地方債、それからいわゆる補助裏債、国庫補助事業の裏負担に対して充当される地方債、これらについては財務部との協議は省略する。都道府県だけが許可事務を扱う、こういうようなことを行うことにしています。これによりまして許可関係の事務は大幅に簡素化される予定であります。  それから、このような簡素化措置に対応いたしまして、大蔵省におかれましても、政府資金の融資関係についてたとえば設計書であるとか写真とか、こういう添付書類を大幅に削減することによりまして融資関係の事務も大幅に簡素化される予定であります。  それから、もう一つの問題は、枠配分方式の拡大であります。ただいま御指摘になられましたように、市町村分につきましては、すでに昨年度までに、いわゆる枠配分方式を大幅に拡大いたしまして、五十三年度においては、恐らく一件審査方式で処理されるものは普通会計債の場合には五%未満程度になるんではないかと思います。それから都道府県については、従来一般単独事業は一件審査方式でやりましたけれども、これについても五十三年度から枠配分方式、一定の基準によって計算された枠の範囲であるならば、その団体、各団体が自由に充当事業を選んでくる。その範囲内であれば国の方はチェックしない。こういう方式に持っていく予定であります。ただ、その場合に、枠でありますから、その枠のつくり方といたしまして、いま考えておりますのは、過去四年間の実績を踏まえて基準財政需要額などを一つのバロメーターにして枠をつくりたいと考えております。ただ、その場合にどのような枠をつくりましても、個々の団体にあてはめた場合には、いわゆる激変が生ずる、枠にはまらない団体が出てくる。大きな事業などを行う場合には当然そういう問題が起こってまいります。この点については今回新たにこういう方式を採用するわけでありますから、当然経過措置といいましょうか、緩和措置を考えてまいりたい、実際には各団体が真に必要とする事業については地方債が許可できるように所要の措置を講じてまいりたいと、このように考えております。
  288. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いまの総枠方式ですが、非常に手続が簡素化される、非常に結構なことだと思いますけれども、いまちょっとお話のありましたように、私の心配としては五十年度、五十一年度、五十二年度、三年間許可実績が大き過ぎて来年度の許可枠がゼロになるといったような極端な例も出てくるんじゃないか、その点を懸念したんでございますが、いまの御説明でわかりましたが、もう一度ちょっとお話し願います。
  289. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 過去三年間の実績と、その年度と合わして四年で一定の枠をつくる、これは単年度で枠をつくったんでは非常にばらつきがありますから、ある程度長期に枠をつくっていこうという考えであります。その場合にいろいろいま試算をしておりますが、そう極端に不都合を生ずることはないと思っておりますけれども、個々の団体で臨時的な大きな事業をおやりになるということになれば、やはり枠をはみ出すということはあり得るわけでありまして、こういった新しい方式を採用する以上は、経過的に問題が生ずることは避けられないと思うわけであります。そこで、それらのケースにつきましては、真に必要とする事業がそのために抑えられるということのないように激変緩和措置を考えていきたい、このように思っているわけであります。
  290. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 もう一つそれに関連してお伺いしますけれども、枠配分への移行でもっていままでのように大蔵省との間で一件ごとに事前協議を行う、それが不要になったと、このようなお話でございますが、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  291. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 都道府県の調査の場合には、現行制度では、自治大臣が許可する場合に大蔵大臣と協議するという制度はあるわけでありまして、協議制度をなくすというわけにはいきませんけれども、ただ枠配分を採用する以上は、枠の中でどういう事業を選択したかについて一々チェックしたのでは枠配分の意味がないわけです。それは自治大臣だけじゃなしに大蔵省もそうしてもらわなきゃ困る、そういう意味で大蔵省についても枠配分、枠にはまるものについては個別にチェックしないというように話をいたしております。
  292. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 どうもその辺のところがちょっとあいまいのような感じをいたしますけれども、お話のように、せっかくこのような枠配分に移行さしても、大蔵省との間で一件ごとに事前協議を行うようなことにならないようにということを強く希望するわけですが、枠配分方式を採用しても、いまお話がありましたように、大蔵省の財務部と、それから都道府県との間でもって協議するというようなことが今後行われますと、せっかくいまの許可手続の簡素化を実行された、せっかく枠配分への移行を行ったといってもその効果が出てこないわけでございます。地方自治体にとってもそれだけ負担が以前と同じようになるわけでございまするので、その点大蔵省との調整を強く押しておく必要があると思いますが、その辺いかがでございましょうか。まだ協議中でございますか。
  293. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十三年度地方債の許可方針及びその運用のあり方については、すでに大蔵省と協議が整っておりまして、先ほど来申し上げておりますような簡素化措置大蔵省も合意いたしております。
  294. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、下水道事業債の充当率についてお伺いしますが、昨年の交付税法審議の際にこの問題を伺ったわけでございますが、石原審議官の御答弁ではこう言っております。五十二年度はとりあえずの措置として充当率を八五%にして五十三年度までに受益者負担制度のあり方について検討を行い結論を出したい、その結論に沿って妥当な充当率を決めるのだと、こう言っておられましたが、そのお答えについて今年度どのような結果になっておりまするか、お伺いします。
  295. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 昨年来下水道の受益者負担金のあり方について研究会が持たれまして、私どももその研究会に加わったわけでありますが、その結果といたしまして 現在の受益者負担制度というものは今日においてもその妥当性を失わない、引き続きこの制度は存続すべきであるという意見になったわけであります。そこで私どもといたしましては、五十三年度地方債の運用に当たりましても、昨年度とりあえずの形で補助事業について従来七五%の充当率であったものを八五%に引き上げたわけですが、この一〇%の引き上げは五十三年度も維持する、継続するという予定でございます。
  296. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 最後に、公営企業金融公庫の改組問題について若干お伺いいたしますが、今回の改組の大綱は、普通会計債についても資金を融通することができるようにすることであって、それに伴い名称も地方団体金融公庫に改めようとすることであったわけでございますが、この実現を見なかったことに対しまして大臣の率直な御感想をお伺いしたいと思います。  また、今回の改正は、当初の構想からすれば大幅な後退であると言わざるを得ないわけですが、あわせて大臣の御所見を伺いたいと思います。
  297. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 公営企業金融公庫の改組につきまして御審議をいただいておるところでございますが、私どもは当初完全な形における改組を念願いたしまして大蔵省とも折衝をいたしたのでございますけれども、改組ではございますが、完全な改組とは言いがたい面が残っておりまして、いま御指摘がございましたように、公庫の名称もそのまま存続することに相なって地方団体金融公庫と、かような改組が不可能でございました。  それから、臨時事業三事業につきましては、普通会計債の対象にすることが可能になってまいりましたけれども、これまた私どもは十分な改正であると、かようには考えておらないのでございますし、したがいまして、これは今後の課題といたしまして次年度以降努力をいたしまして、公営企業金融公庫の拡充強化のために努力をいたしてまいりたいと、かように考えております。
  298. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 今回の改組の骨子として、原資の安定的確保を図るために特別公募債を発行することが骨子となっていたと伺ったわけでございますが、これが実現できなかった理由はどういうところにあったか、原資の安定確保についてはどのように考えていかれるおつもりか、お伺いしたいと思います。
  299. 山本悟

    政府委員(山本悟君) 公庫の機能を拡充するに当たりましては、それに対処できますように公庫の原資の調達を行っていかなければならないわけでございます。現在の公庫の資金調達の大宗は、御案内のとおり、政府保証債と共済組合引受縁故債と二つでございますが、このうち共済組合引受縁故債、これはなかなかこれから増加しがたいであろうという見込みがあるわけでございますし、政府保証債におきましても、これは銀行引き受けになるわけでございますので、国債なり地方債なり大量に発行されるというものと競合すると、こういうような意味から債券市場から資金調達を特別公募債としてやったらどうだという意見を持っていたわけでございますが、端的に申し上げまして、大蔵省とこれにつきまして意見の一致を見ることができなかったわけでございまして、五十三年度におきましては公庫の機能の拡大に見合います資金の獲得方法といたしましては、政府保証債を二千億増額をするということによりまして、この臨時地方整備債等三事業の増額分を政府保証債の原資にして賄うということに決着を見たわけでございます。そういうような事情でございますので、当面のところ政府保証債というようなものの拡大によりまして機能は十分に果たし得るわけでございますけれども、なお特別公募債につきましては、公庫の原資の安定的な確保を図るという見地から今後とも必要に応じまして検討をしてまいりたいと存じております。
  300. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 公営企業金融公庫資金が、今回の長期金利改定で四月から基準金利が下がるのに対しまして、特別の貸出金利の引き下げは政府資金との絡みでもって五月となるために、基準金利が特利よりも低いという逆転現象が生じているようでございまするが、四月もあと幾日もありませんけれども、四月は五月とともに過年度債の貸し出しでもって地方団体の資金需要が非常に活発なときでございまするけれども、この辺について実態はどうなっておりましょうか。
  301. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 公庫の資金の利率につきましては、お話のように本年の四月一日から公営企業の債券の発行条件が改定されましたので、公庫の基準金利も七・三%から六・六%に改められたわけでございます。一方、公庫の特別利率は従来政府資金の改定を待ちましてそれに合わせて改定をしているというお話がございましたが、そのとおりでございまして、現在政府資金の引き下げが行われておりませんので、お話がありましたように、基準金利との逆転を防ぐという意味で、現在のところは基準金利と同率の六・六%で貸し付けることといたしております。五月に政府資金の改定がございましたら、そのときにさらに引き下げを検討いたしたいというふうに考えております。  そこで、地方公共団体によります公庫の特別利率事業に係ります借り入れにつきましては、五月に予定されております改定を待って借り入れさせることにいたしますが、当分の間、この五月の改定があるまでどうしても地方団体で資金が必要であるというものにつきましては、基準金利よりもさらに低い六・五五%の短期借り入れ措置でこの間の措置をいたしておきたいと思っております。現在この適用を受けておりますのが公共団体で合計で三百六十九億ほどございます。
  302. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 重ねて伺いますが、そうすると、金利の改定によって非常に支障を来たした、実害があったというようなことは避けたわけでございますね。
  303. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) そのとおりでございます。
  304. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 地方債資金の質的改善を図り、それから地方の民間資金の調達を円滑にするためには、公営企業金融公庫を完全に改組すべきことであると私は思います。したがいまして、地方財政の基盤の強化を図るためにも、今回措置された地方の臨時三事業だけでなくて普通会計債にも融通できるようにすべきでありますが、今後こうした機能強化のためにどのように取り組んでいかれるのか、大臣の御所見を伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  305. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 先ほど申し上げましたように、満足すべき改組ではございませんでしてその点は次年度以降の努力にまたなければならぬのでございますけれども、先ほど私は機能の拡充強化に努力をする、かような言い方をいたしたのでございますが、その主たるものは臨時三事業にとどまることなくて一般会計債全体に及ぼしますことが私どものねらいでございますから、さようなねらいのもとに努力をいたしてまいろう、かように考えております。
  306. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 本案に対する本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  307. 金井元彦

    委員長金井元彦君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案の審査のため、明二十六日の本委員会に、参考人として横須賀市長横山和夫君、神奈川大学教授渡辺精一君、成蹊大学助教授深谷昌弘君、立命館大学教授遠藤晃君及び横浜国立大学教授宇田川璋仁君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  308. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十五分散会      —————・—————