○
国務大臣(
村山達雄君)
国会の方から御了承得まして、二十九日、三十日の
メキシコの
暫定委員会に
出席さしていただきました。二十九日の午前には十ヵ国
蔵相会議がございましたし、三十日の朝にはまた五ヵ国
蔵相会議がありました。その間を縫いまして、二十九日、三十日に正式の
暫定委員会があったわけでございます。
感触といたしましては、何と申しますか、
各国が非常に現実的にこの問題に対応しようという
空気が非常に支配的でございまして、やはり現在の
景気調整下におきまして
各国が協力して
共同の
目的を達成しなければならない。言いかえますならば、
インフレなき拡大という問題をお互いに追求していかなければならない。それからさらに雇用の問題についても
努力しなくちゃならぬし、
赤字国は
赤字国で、
黒字国は
黒字国でそれぞれ
努力していかなきゃいかぬ。それからエネルギー問題も
共通、全部で対処しなくちゃならぬ。こういう
共同の
目標に向かって
各国がそれぞれの立場で、
各国のそれぞれの事情に応じて最大限の
努力をすべきである。これが全体的な
トーンでございまして、その
意味では非常に現実的な
空気であったと思います。
それから第二番目に言われましたことは、
各国一様に、やはり
基軸通貨国である
アメリカが、現在の
ドル安の問題について本当に
努力しないと
各国が全部えらい影響を受けるからしっかりやってくれと、こういう
空気は一国残らず全部
アメリカに対する要望としてあらわれておりました。これに対しまして、
アメリカ側も率直に
基軸通貨圏としての
アメリカの態度を表明いたしまして、現在
エネルギー政策の
進行状況あるいは
インフレ対策に対して、生懸命やっておると、こういうことを素直といいますか率直に答えておりまして、その問題が
黒字国とどうだとか何かいう弁解は一切いたしませんでした。これは私は、非常にやはり
基軸通貨国というものがいかに大事であるかということがよくわかったわけでございます。
それから第三番目に、もちろん
黒字国の話が出ました。まあ私の
感触で申しますと、大体二十カ国、その他OECDの
事務局であるとか、ガットの
事務局次長なんかも
発言ございましたけれ
ども、
黒字国もやはりしっかりやってくれという
発言がございました。これはしかし全体の二分の一ぐらいの感覚でございます。それから、特に
黒字国として
日本とか
ドイツの名前を挙げたのは、またその半分ぐらいであったように思うわけでございます。それが第二点でございます。
第三点として、
国際通貨の安定のためには、もちろん
乱高下を抑えるということは大事ではあるけれ
ども、それは補助的な問題であって、やはり基本的には
実体経済における
各国の
経済の
均衡が先決する。これはもうどこの国といわず、ほとんど一致した
見解でございます。その上に立って、やはり
乱高下を抑えるということは
それなりの意義はあるけれ
ども、
実体経済の不
均衡を抑えたままで、いわば
通貨調整という技術的な問題でやろうとしてもそれには限界があるし、当然やはり
投機筋をかえって誘発するおそれがある。これが全体の
トーンでありました。
まあ第一
議題は
世界経済の
見通しとそれから
国際通貨の
調整過程、こういう
議題であったのでございますが、大体以上申しました三点なり四点なりが注目されたところでございます。
第二
議題は
IMFの
増資問題、あるいは
SDRをもっと
魅力のあるものにしたらどうか。それから
SDRを
魅力あるものにするという提案と同時に、それを少しふやしたらどうか。あるいはその、ふやすに当たって
各国がそれぞれ
ドルを払い込むような方法で一極の不
胎化をやったらどうか、こういう話題。
それから第四番目といたしまして、これは
IMFの第二次
協定の中にあるわけでございますが、今後
国際通貨の安定のために
各国がとっております
国内政策あるいはその一部といたしまして
為替政策、そういったものに対して
サーベイランスをやるということが第二次
協定でうたわれているわけでございますが、その
サーベイランスのあり方につきまして討議が行われました。
しかし、以上の問題を通じて
各国一致して出ました点は、SORについてもう少し
魅力のあるものにしろと、金利を少し上げろと、これだけは致したわけでございますけれ
ども、それに関連して不
胎化の問題であるとか、あるいはその額を幾らにすべきであるかというような問題については必ずしも
各国の
見解が一致しませんでした。
それから
増資につきましても、今度は第七次
増資が問題になっているわけでございますけれ
ども、第六次の
増資の払い込みをいまやっている最中でございますので、これも必ずしも、やるからには一般的に五〇%以上必要であろうという点は大体一致しておりましたけれ
ども、やる時期をいつにするか、こういう問題につきましては必ずしも一致いたしませんでした。
それから、
サーベイランスのやり方につきましても、これも必ずしも
各国一致しておりません。これらの問題は、次の世銀の会合がありますちょうど九月になりますけれ
ども、そのときまでに
事務局の方で検討して報告する、こういうことでございます。
以上が大体要約したところでございますが、その
過程におきまして二つだけ申し上げておきますと、
一つは
専務理事の
ウィッテフェーンさんが、今度おやめになるわけでございますが、いわゆる
ウィッテフェーンの
シナリオを書いた、今後
長期にわたりまして
各国の
成長率をいかに見るかというやつがありまして、
日本につきましては七九年、八〇年にわたって七・五%ぐらいを期待する、こういうのがありました。それに対しまして、私は十ヵ国
蔵相会議でもまた
委員会の席におきましてもそれは高きに過ぎる。恐らく
日本の
潜在成長力を
余り強く見過ぎているんじゃないか、不況業極のいわばアイ
ドルの設備の
割引歩合が足りないんじゃないか、
日本としてはもう
国会でしばしば申し上げておりますように、
長期経済計画では六%強と予定しておりますから、それ以上は無理でしょうということを申し上げました。これについては別に、
一つの
シナリオでございますから、七・五%を強制するという
意味ではもちろんございませんから、反論も何にもございません。ただ
日本としての
見解を述べておきました。
それから、やや
新聞報道等で誤解があったようでございますが、
減税を非常に
日本に勧めたんじゃないかという話が伝わっておるのでございますが、実はそうじゃないのでございます。いわゆる
シナリオにおきます
一つの勧告といたしましてこういうことを言っているわけです。
コストプッシュのある国においては
減税とそれからその他の
経常支出——資本支出ではございません、
経常支出の
増加というのは主として
振替所得の話だと思っておるのでございますが、どちらが有効だということになれば、それは
減税の方が有効であろう、こういう
IMFのいわば
事務局の
見解が
参考までに述べられておるのでございます。
コストプッシュのある国というわけでございますから、
日本はいま
コストプッシュが最もない国でございますから、当然これは
日本は除外されておるのでございます。しかも
公共投資と
減税との比較ではございません。
減税と振
賛所得の
増加、どちらが有効であるかという問題でございました。これは特にそういうふうにコメントがついておりますから、私からは何にも
発言しませんでした。聞かれるときに
日本の問題じゃございません、こういうことをお答えしておったわけでございます。
いずれにいたしましても、今度の
IMFの
状況は、当初われわれは円高問題あるいは
赤字国と
黒字国という問題からいたしまして、相当何と申しましょうか、少し激しい言葉の
やりとりあるいは
自国本位の考え方が述べられるのじゃなかろうかと心配しておりましたけれ
ども、そういう
空気は一切ございません。非常にそういう
意味では、私も初めてでございますけれ
ども、
条国とも現実的になってきたなという感じを持って帰った次第でございます。
以上でございます。