運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-25 第84回国会 参議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午前十時六分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十二日     辞任         補欠選任      浅野  拡君     河本嘉久蔵君      降矢 敬義君     藤井 裕久君      吉田忠三郎君     丸谷 金保君      小巻 敏雄君     渡辺  武君  四月二十四日     辞任         補欠選任      野末 陳平君     柿沢 弘治君  四月二十五日     辞任         補欠選任      矢田部 理君     大塚  喬君      柿沢 弘治君     野末 陳平君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         嶋崎  均君     理 事                 藤田 正明君                 細川 護熙君                 福間 知之君                 塩出 啓典君                 中村 利次君     委 員                 岩動 道行君                 糸山英太郎君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤井 裕久君                 宮田  輝君                 穐山  篤君                 大塚  喬君                 竹田 四郎君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 佐藤 昭夫君                 渡辺  武君                 市川 房枝君                 柿沢 弘治君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  村山 達雄君    政府委員        内閣法制局第三        部長       前田 正道君        公正取引委員会        事務局取引部長  長谷川 古君        大蔵政務次官   井上 吉夫君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        大槻 章雄君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君        大蔵大臣官房審        議官       福田 幸弘君        大蔵大臣官房審        議官       海原 公輝君        大蔵省主計局次        長        山口 光秀君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省証券局長  山内  宏君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        国税庁間税部長  矢島錦一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        食糧庁総務部長  小野 重和君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○昭和五十三年度における財政処理のための公債  の発行及び専売納付金納付の特例に関する法  律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十二日、小巻敏雄君、吉田忠三郎君、浅野拡君及び降矢敬義君が委員辞任され、その補欠として渡辺武君、丸谷金保君、河本嘉久蔵君及び藤井裕久君が選任されました。  また、昨二十四日、野末陳平君が委員辞任され、その補欠として柿沢弘治君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 丸谷金保

    丸谷金保君 今回の酒税法の改正が五月一日に実施するというふうなことになっておりますが、現況から言いますとなかなか五月一日というのは大変じゃないかと思いますが、現在の状況でまいりましてやっぱり五月一日実施の方針でございますか。
  5. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生の御心配まことにごもっともでございますが、国税庁といたしましては、法律案が成立いたしましたら直ちに業界に対する周知ができますように、極力内部の準備を進めておるところでございまして、また、納税者の方に対しましてもできるだけ御迷惑をかけることのないように注意いたしまして、五月一日に円滑に実施できるよう万全を期したいと考えておるわけでございます。
  6. 丸谷金保

    丸谷金保君 物理的に大変だと思うんですが、一体業界指導その他、最低何日ぐらいあればできる予定なんですか。
  7. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 仮に、いつできるかということでございますが、五十一年一月にも実施したわけでございますが、なるべく可能な限り簡素化と、それから手持ち数量確認事務の省略を行うといったようなことで、極力事務を簡単にしていくということを考えております。ちなみに、仮に成立した場合でございますが、業界指導とかパンフレットの配付というのは自動車とかそういうもので手分けしてやればそれほど時間はかかりませんし、それから小売業者の方に記帳をお願いするということでございますが、これも成立いたしました直後から二週間程度施行日の後二週間程度お願いするといったようなこと、それから手持ち数量確認調査につきましては、一日施行ということになれば対象者を極力しぼるといったようなことで効率的に行いますので、五月一日ないし二日のうちに官僚できるのではないかというふうに考えております。前回も約一万九千軒の手持ち課税対象者がございましたんでございますが、本年もこのぐらいじゃないかと考えられますので、そうしますと一税務署当たりでは約四十社、それから間税職員一人当たりにつきましては六社程度てごさいますので、私どもといたしましては決して無理な事務量ではないというふうに考えておるわけでございます。
  8. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、手持ち品課税等についても十分対応できるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  9. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生おっしゃるとおりでございます。
  10. 丸谷金保

    丸谷金保君 今回は手持ち品課税の中に二級酒等は入らないわけですね。
  11. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 増税対象になります種類だけでございますので、二級の清酒は入っておりません。
  12. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、今回二級酒その他値上げ対象にならないものが何種類かございます。これについての問題で、最近特にひどくなってきているリベート問題、実は私ども業界とおつき合いするまではリベートというような言葉が平然として行われているというふうなことは考えてなかったんですが、もうこれは白昼公然とリベートということで取引が行われております。その取引実態を見ていきますと、十本に一本とか十本に二本というふうに、特に二級酒を中心に非常にリベートが多いというふうなことで、実際の現在の小売価格というふうなものと卸価格の差というものは実態よりもはるかに違ったものになっているんじゃないかと、かように考えますが、この点についてはどのように判断しておりますか。
  13. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生おっしゃるとおり、確かに清酒リベートはかなり相当に行われておりまして、たとえばサンプル――正確には把握しておりませんわけでございますが、昨年十二月中のものにつきましてサンプル調査いたしましたところによりますと、一升当たりでございますが、製造名平均値引きリベート額清酒一級の場合で約四十円、清酒二級の場合で約五十円ということになっております。  リベート値引きにつきましては長い間かかりました商習慣でございまして、全額廃止するというのは非常にむずかしいことでごさいますが、これはいわば実態と申しますと、リベート値引きというのは銘柄力の格差といいますか、そういうものを調整していくと、あるいは販売促進という観点から商習慣として相当行われておることは先生指摘のとおりでございます。ただ、そのリベートというものは流通段階にとどまりやすいという問題がございます。それからその支払いがやはりコストアップ要因となって、最終的には消費者価格の引き上げといいますか、値上げ要因になるという問題ということもございまして、消費者保護の面から申しましても好ましくない場合が多いというふうに考えておるわけでございます。また、それが度を超した場合におきましては過当競争ということになりまして、市場の混乱とか製品品質の低下ということにもつながっていくというふうに思っております。  したがいまして、私ども幾らお酒の価格自由価格であるといっても、自主的に判断して自由に決めるものだということは言うんでございますが、あくまでも銘柄力と遊離した販売価格を設定したり、やはり値引きリベートなどによって調整するということは避けるべきである。銘柄力に応じた適正な価格を設定するようにいままで指導をしてまいりましたところでございます。  まあ、確かに清酒の場合には、マーケティングという力が比較的ウイスキーとかビールのような大企業メーカーと違いまして、相対的な問題でございますが、そういう点で劣っているという問題もございまして、ややもすればリベートをたくさん出せばいいというような、そういうような傾向になりがちでございます。そういうことのないように私ども指導しておるところでございます。
  14. 丸谷金保

    丸谷金保君 リベートをできるだけなくするようにという指導をやっておるということですが、実態はどんどんふえてきているんじゃないですか、特に日本酒業界において。つい最近国税庁の方で抜き取りで各地の調査をした実態等も出ているかと思いますが、それらの傾向としてどうなんですか、指導の効果上がっているんですか。
  15. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 値引きリベートの推移でございますが、時系列で見ますと、先生指摘清酒二級の場合をとらしていただきますと、卸への支払いを例にとらしていただきますと、四十七年十二月には一升当たり三十三円七十三銭でありましたものか、五十二年十二月には四十九円八十銭、それから小売への支払いにつきましては、四十七年十二月が三十二円八十一銭だったものが三十四円三十一銭ということで、御指摘のとおりふえておるわけでございます。  しかしこの問題につきましては、私ども非常に、ことに清酒の場合には中小企業性が多いということと、先ほど申し上げましたようなマーケット力の問題というものもございまして、努めてそういうリベートを削減するようにということは、啓蒙的にももちろん指導しておりまして、いろんな会合等におきましても正常取引と申しますか、そういうような個別にも当たっておりますし、それから一般的にもそういうような指導を重ねております。さらに、年末需要のときとかそういう極端にリベートが出そうなときにつきましては拡販競争がエスカレートするというような問題もございますので、東京とか大阪とか大都市局におきましては、たとえば具体的な大卸の方々を集めまして注意を個別に促すといったようなこともやっておるわけでございます。こういうことをやりまして努力はしているわけでございます。  それから、一般的な問題以外に、さらにまあコストを割ってまでそういうような乱売が行われるということになりますと、私ども非常に困るものでございますので、こういうものにつきましては個別に調査をいたしまして、さらに指導をするということを徹底しておるわけでございます。
  16. 丸谷金保

    丸谷金保君 実はいまそのリベートの問題でコスト割れというふうな懸念も国税庁としておるということなんですが、一体日本酒コストというのはどれくらいに見ているんです、国税庁の方では。二級酒でひとつ……。
  17. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 清酒の場合には級別によって異なりますし、それから品質の態様がかなりあるものでございますから、価格についてもばらつきがあるといったようなことで、二級酒だけというのはなかなかむずかしいわけでございますが、一般的なものでございましたら各段階ごと価格構成とか、あるいは小売価格を一〇〇とした場合の割合いというのはわかるわけでございます。たとえば一升当たりでございますが、二級の場合でございますが、製造者税抜き価格が五百九十一円五十六銭と、一般的な全く平均なものでございます。酒税が百五十四円四十四銭、製造者税込み価格が七百四十六円、卸売マージンが百  一円、卸売価格が八百四十七円、小売マージンが二百三十三円、千八十円というのが小売価格ということになっております。  それから、先ほどおっしゃいました原価という点でございますが、原価になりますと具体的には非常にむずかしゅうございます。値上げの際などに必要がある場合におきましては特定の企業から説明を聞いておるわけでございますが、これはやはり企業にとっても最高機密だということで、公表した場合には清酒の場合にはかなりばらつきがございまして、そういうこともございましてかえって誤解を招くようなことになろうかと思うんでございますが、そういうことで一般的な原価ということにつきましては公表することは差し控えさしていただきたいと思うんでございます。  ただ、原料費につきましては、たとえば昭和五十一酒造年度製造実績を基礎といたしまして、昭和五十二酒造年度清酒の一升当たり平均的なものを推計いたしますと、米代が百九十三円、アルコール代が二十五円、糖類醸造用のいわゆる糖類でございますが、これが七円というような程度になるわけでございますが、これも清酒全体の平均的な原料費でございまして、級別とかいうような先生の御指摘の点についてはちょっとこれ以上はわからないというのが実情でございます。
  18. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、このリベートの問題が出る大きな原因も、現在の小売価格が元来計算できない歳出し価格、こういうものを一応設定しておいて、それから逆算するから千八十円というような値段が出るんで、これはもううんとばらついていると思います。これをどうしてこういうことに決めて、そうして従価税というふうなものを小売希望価格計算をしていかなきゃならないかと。  私もこの問題いろいろ考えてみたんですか、結局は課税客体として蔵出し原価を抑え切れないところに小売希望価格というふうなものを設定せざるを得なかった立法上の理由があるんではないか。先日も申し上げましたように、一方外国から入ってくる輸入ボトルについては明らかに原価計算ができます。したがって、それらの違いがこういう税法上二重の仕組みをつくらざるを得なかったんでないかと。  いまのお話でございますけれども、たとえば私もこれわかりやすいように尺貫法でやってみたんです。大体いま九億本と言われる清酒の数から概算して、現在の六十万トンと言われる米、それからそれの価格計算しますと、実際には二級酒は百九十三円なんという高い米の価格でないと思います。私の方の計算から言いますと、大体昔は米一升酒一升と言ったものなんです。ところが、いまはアルコール、ブドウ糖まぜますから、米一升からおおよそ二升五合から二升四合というふうなものが酒になると思います。三倍増というほどの実態でもないようでございます。三倍にはならないけれども大体こんなところになるんじゃないかと、普通の二級酒で。そうしますと、酒の一升の値段がおおよそ百五十円から百七十円、上下があってもそんな程度だろうと。それからアルコールとブドウ糖、これはまあ大体三十円から四十円、それに蔵の労務費だとか償却を三、四十円、その他の管理費二十円。したがって製造原価というのは大体二百五十円前後、それにびんが大体三十五円、詰め口に三十五円かけたとしても、酒税の百五十四円四十四銭をプラスしても蔵出し原価というのは四百七十四円四十四銭にしかならないんです。  ですから、本来ならこういう価格ですから、リベートを出しても売れりゃもうかるというのが業界として実際にリベートを出している現況でないかと思います。現に私の聞いているので、シーズンになりますと、特に三月、非常に金繰りが苦しいというようなときには一升五百円前後で問屋にとってくれと言っているようなメーカーもあるんです。こういうことになる一番大きな原因は何かというと、私はやはりアル添というものか諸悪の根源になってきているのではないか。たとえば米  一升の値段、米一升酒一升というふうなことにしても、純米醸造の場合でも三百五十円です、米の原価というのは。ですから、こういう点では表示をもう少しきちんとさせるような努力国税庁が行えば、もっともっと本当にいい酒が市場に出回るようになるんではないかと。小売希望価格というふうなことで課税標準を設定している真意は一体どこら辺にあるんですか。
  19. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 小売価格基準というのは、後で主税局の方から御答弁申し上げますが、先生四百七十四円、一升五百円というようなお話おっしゃっておられるわけでございますが、私ども実際に二、三のメーカー原価も当たっておるんでございますが、お言葉を返すようで大変失礼でございますけれども、それよりはもうちょ  っと高い原価ということになっているようでございます。  売れない原因でございますが、やはり先ほど来申し上げておりますように中小企業製品で非常に競争が激しいといったような問題がございます。それと、ややもすれば清酒というのは生産過剰になりがちであると、大せいのメーカーの方が一生懸命競い合っているわけでございまして、そういうような体質と申しますか、そういうような基本的な問題と、それからマーケットの力の不足といったようなものが総合いたしまして、いま申し上げたようなリベート競争といったようなことになりがちではないかというふうに思うわけでございます。   アル添根源だとおっしゃる点もごもっともではございますが、アル添につきましてはもう長い間の嗜好という問題もございます。材料費を少しでも抑えようという問題もございますが、清酒というものは昔からやはり柱じょうちゅうという形アル添はやってきておるわけでございまして、決してアル添をしたものか悪いものではないというふうに、くどいようでございますが私どもは考えておるわけでございます。  それから、表示をきちんとしておけばいいじゃないかというようなお話でございますが、表示につきましても業界の方で自主基準によりまして、先般もお話ございましたように八ポイントでは小さ過ぎるというような御高説は確かにあると思いますが、業界自体そういうものの品質といいますか、材料の内容というものにつきましてもきちんとやはり表示しておるわけでございまして、この点はひとつ御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
  20. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 御質問の中で課税標準のことにお触れになりましたわけでございますが、これは丸谷先生も御承知のように、従価税適用になる酒についての制度でございますので、ただいま御質問清酒二級にはそういう問題は実はないわけでありまして、従量税でございますから、蔵出しの量で税額が決まってまいりますので、小売価格云々の問題は、ウイスキーなり清酒特級の問題として後ほど恐らくまた御質問あると思いますので、そのときに詳しく申し上げたいと思います。
  21. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、清酒の二級酒でも多少の減価償却管理費の違いはあっても大づかみにおいてそんなに違わない程度蔵出し原価だと思うんです。これは私実際に当たってみたんです、どうしてそんなに安く出せるんだということで。克明に計算してその程度で出しても損はしてないと、もうけはないけれども金繰りで仕方がないからそういう出し方もせざるを得ないという点で、しかし損はしてないんだというふうな、日本酒メーカーさん実際に当たってみたんですが、これは中部地方のある市のあれですが、私は二級酒の問題取り上げたのは、二級酒もそうですから一級特級についてもそんなに違うはずがないんです。いいですか。小売価格が高いほどに、それほどに原価が違うはずがないと。ただし、醸造の技術その他で味の違いがあるから特級とか一級というのは値段が高く売れるのだと、こういうことだと思うんです。  そこで、酒税法清酒については特級一級基準を決めるのに当たって、中央酒類審議会というふうなところで厳重な検査をして特級とか一級を決めておりますわね。しかし、そうして特級一級の審査をして決めるのですが、その後の価格、このことについては、ただいま主税局長から話ありましたように、二級でもこれくらい安く、一級だって、あるいは特級だってそんなに高いはずがないんです、三倍増醸酒原価が。そうすると、そこで従量税におろすために小売希望価格というふうなものを法が設定して、小売希望価格というふうなものが中に入った場合には、一級酒といえども従量税だけというふうなことになるんでないですか、どうなんです。
  22. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 原価の問題につきましては、間税部長が申し上げておりますように、一一のものを全部をお示しするのは企業秘密の問題になりますが、先ほどお答えしました数字国税庁が把握しておる平均的な姿というものでございますから、製造場によりましてはそれよりも安くできているところは確かにあろうかと思うわけでございます。それよりも高くてできているものももちろんあり、その平均が申し上げた数字だというふうに御理解いただきたいと思います。  そこで、小売価格の問題をしばしば御指摘になるわけですが、小売価格一定率を掛けて課税標準を算定するというのは従価税適用する場合の便法でございまして、これは物品税にもその例があり、むしろ物品税のやり方を酒税がまねをして入れてきたわけでございまして、従価税適用になるのは清酒では特級だけでございます。したがって、一級、二級の場合に、小売値がどうであるか原価がどうであるかで税負担が変わるということはないわけでございますので、その点はぜひひとつ御理解をいただきたいと思います。
  23. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで、酒の場合だけでなくて、これはもうワインでもウイスキーでも同じことが言われるわけです。くどいようですが、輸入酒との間に税のかけ方の違いがございます。輸入酒の場合には、先日も申し上げましたように、CIFプラス関税酒税というふうなことで、プラス関税のところで課税価格が設定されますから、小売価格はどんなに高くしてもいいわけですね。先日も申し上げましたが、もう一遍この点ひとつ確認をいただきたいんですが、どうしてこういうふうに同じ酒類で別々のかけ方をするのか。これはある意味で言うと憲法違反にもなるんでないかと私は思うんです。すべて法の下で平等でなきゃならないという考え方から言いますと、特に税というそのうちでも公平を厳しく守っていかなきゃならない法律の中で、同じような製品について――ですから、片方は千五百円に売っても二千円に売っても、これは従量税の中で済んでしまうんです。いいですか、済むんですよ。たとえばワイン二千円に売っても、それが入ってくるときの値段が安ければ従量税だけで済むんです。しかし、国内で生産したものはそういかないわけなんですよ。こういう違いをこのままにしておいていいんですか。どういう理論的根拠によってそういう違いを認めていくんですか。
  24. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) どうもその点、先日来丸谷委員と私どもとが論旨がすれ違ってしまうんでございますが、酒税課税標準蔵出し価格従価税の場合に。従量税の場合は量でございます。従量税従価税を併用した制度になっている。従価税課税標準歳出し価格であるということは、製造業者が通常の卸売業者に対して販売する価格を意味いたしております。それとのバランスから見ますと、輸入酒につきまして、それが国内の流通過程に入る段階の値段というものと合わせることが一番バランスがとれた考え方であるというふうに私どもは考えるわけでございます。その国内の流通過程に入る値段というのは、これはどの国の例を見ましても、CIF価格に、関税がある場合には関税を加えた価格、それによって国内の流通に入ってくるわけでございます。したがいまして、従価税適用いたします場合の課税標準のバランスというものは歳出し価格CIFプラス関税かという意味で私どもはバランスがとれていると考えているわけでございます。したがって、蔵出し価格の高いものは高い従価税がかかりますからそれなりに高い税額になる、蔵出し価格が安ければ安い税額になる、従価税適用酒類につきましては。それが小売で幾らで売られるかということは、それは流通マージンなりそれぞれの製品の販売政策の問題でございますから、ウイスキー従量税適用になるすれすれのスコッチもございます、現に。それが仮に小売では国内の従価税適用のものよりも高く売られるかもしれない、高い方が売れるということで高くしているわけでございますから。その点を基本的に丸谷委員のような角度から別に考え直すとすれば、それは小売課税をやろうかという話になります、蔵出し課税でなくて。小売価格でそろえようかということでないと、その問題は基本的には解決いたしません。  しかし、小売課税というものは非常に場数が多うございますし、銘柄ごとに値段が非常にばらつきますので、それは言うべくしてなかなかできないと思います。やはり個別消費税の場合には小売課税というものは、非常に特殊な例を除きましてはきわめてなじみにくい。蔵出し価格でいく限りではいまの制度で十分にバランスがとれているはずでございまして、残っている問題は流通マージンをどうするかという販売政策の問題でございます。
  25. 丸谷金保

    丸谷金保君 この問題はすれ違いの論議になりますんで、時間の関係もありますから――ただ、いまの答弁ではどうも納得できない、私はどうもちょっと納得できないんですが、突っ込んだことをやっておりますと相当時間をとりますので、この問題は後日に譲りたいと思います。  それで、表示の問題に入っていきたいと思うんですが、実は、公取の方おいでになっていると思うんですけど、どうも表示問題については公取の方だけでもって取り締まったりなんかするというふうなのはちょっといまの法律的にはなじまないんじゃないかというようなお話もございました、アルコール添加の問題ですね。ただ、それそうかなと思いまして、私はその後調べてみたんですが、実は不当景品数及び不当表示防止法の中で、同じようなものについては同じような表示をしていかなければならないというふうな規定がございます。いま私、日本酒のことを言いましたけれども、今度は逆に、日本酒は八ポでも何でもアル添表示をしております。ところがウイスキーワインはしておらないんです。こういうことは公取の対象、この法律対象になるような問題じゃないですか。
  26. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) お答えします。  私どもも食品はその性格上、極力材料あるいは製造日についてできるだけ表示していただきたいと思いまして、そういう方針のもとに各業界に公正競争規約をつくるように指導しております。  それで、現実に材料表示、製造時期等の表示は公正競争規約という形でやっておりますので、取り締まりの根拠になります四条では、あくまでも不当な表示を取り締まるということになっておりますので、表示がしてないからといって取り締まるということはむずかしいと思います。
  27. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると不作為の場合には――一方の日本酒表示しているんです、片方のワインやなんかは表示してないんですが、これらは何もひっかかりませんか、おたくの方のに。
  28. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) 清酒表示業界の自主規約に基づいてやっておるわけでございます。したがいまして、自主規約あるいは公正競争規約ができていない業種につきましては、何ら拘束はないわけでございます。ですから、表示してないからといって規約違反あるいは法律違反に問われることばないと思います。
  29. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは国税庁主税局かどっちか、酒類の行政指導の方ですから。  昭和四十九年の八月二十一日に決定をした日本酒造組合中央会の全国会長協議会の報告事項があるんです。この中で、「清酒表示に関し、「不当景品類および不当表示防止法」の主旨にかんがみ、消費者の商品選択に資し、かつ、公正競争秩序を維持するため、準拠すべき表示基準を定める。」と、こういうふうになっておるんです。これらは、おたくの方が指導してこういうふうなことをさせたんでしょう、どうなんですか。そしてその準拠は、いまないと言っていますけれども、ちゃんと一方の国税庁の方の、大蔵の方の考え方としては、こういう指導をして、これに準拠してやれということを言っているんですよ。どうなんです。
  30. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生のおっしゃるとおり、確かに昭和四十九年八月二十一日の決定で、日本酒造組合中央会全国会長協議会という基準がございまして、これには「清酒表示に関し、「不当景品類および不当表示防止法」の主旨にかんがみ、」という先生のおっしゃるとおりの表現がございます。しかし、不当景品類及び不当表示防止法につきましては、国税庁の所管でございませんので、これは公正取引委員会の所管でございます。ただ私どもといたしましても、産業所管官庁という立場から、側面的にはいろんなアドバイスはしております。
  31. 丸谷金保

    丸谷金保君 いま答弁聞いたと思うんですが、おたくの方の所管だと言うんですよ。おたくの方の所管の法律に基づいて国税庁の方は指導してやらしたんですよ。おたくが関係ないということはないでしょう。
  32. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) 先生御案内のように、不当景品類及び不当表示防止法の恐らく先ほどの清酒業界の方の決議というのは、目的その他制定の趣旨を考えてという趣旨だと思います。私どもが取り締まり得るのは、あくまで四条違反の場合だけです。四条違反とは、一号、二号に規定された品質、内容及び取引条件についての不当表示及び第三号に基づきまして追加指定した規定に違反するものだけです。
  33. 丸谷金保

    丸谷金保君 時間がないので、ひとつ簡単にお願いしたいんですが。  そこで、そうすると公取というのはあれですか、結果に対して取り締まるだけで、行政指導的な役割り、勧告その他というふうなことは、私法律よく読んでませんが、ないんですか、大抵の官庁というのはあるものですが、どうなんです。
  34. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) 現実にはいろいろ行政指導しております。したがいまして、公正競争規約をつくるようにという行政指導は現在もやっております。
  35. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、この清酒とそれからワインウイスキーのように、同じような競争相手です。ウイスキーがうんと伸びれば日本酒が沈むとか、同じような種類のこういう中で、表示が一律でないのに対して勧告をするという考えはございませんか。
  36. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) 独禁法上の勧告というのはかなり重要な意味を持ちますので、勧告というふうなことは考えておりませんけれども、少なくともなるべく同じような表示をするような指等はかねてからやっております。
  37. 丸谷金保

    丸谷金保君 すると、国税庁の方はかねてから受けているんですか、そういう指導を。
  38. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 私どもは全般的な感じにおきまして、ウイスキー表示それから清酒表示それからワイン表示、全般的になるべくバランスのとれたような表示が行われるべきであるというような観点におきまして、公取の方にはお願いしているというようなスタイルでございます。
  39. 丸谷金保

    丸谷金保君 実はこれは非常にくどいようですが、いろんないまの酒の業界の問題を内包しているのがこのアルコールの添加の問題なんです。そしてワイン業界の方でも、ワイン表示に関する特別対策委員会というのを開いてそれぞれ検討しております。しかし、なかなか業界だけでは甲論乙駁まとまりません。ひとつ国税庁というのは、先日も申し上げましたように、税の徴収義務だけでなくて、酒類についての指導行政も行うという非常に特異な役所でございますから、これらについて今会期中にできるだけウイスキー及びワイン業界に対して独力な行政指導をしていただくというふうなお考えをお持ちいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  40. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生先ほど来おっしゃっている問題でございますが、私どもも先般来申し上げておりますが、表示の問題につきましては非常に関心を持っておるわけでございます。ただ、その具体的な内容をどういうふうに表示するのかということになりますと、やはり先ほど来申し上げておりますように、公正取引委員会の方が主体になりましてやっておられるわけでございまして、私どもといたしましてはそういう方向で、また各業界の方と、それから公取ともよく打ち合わせまして協議を重ねてまいりたいということを申し上げたいと思います。
  41. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと両方の答弁がお互いにキャッチボールしているようで納得できないんですが、一年生議員でまことに申しわけないんですが、こういうときはどうやったらいいものなんですか。暫時休憩でもしていただいて詰めるんですか。どういうものなんです、委員長さん。
  42. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) そう食い違っておると私は思っておりませんので、もう一度長谷川部長の答弁を求めます。
  43. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) 景表法の仕組みをごく簡単に申しますと、一つは四条で不当な表示を取り締まるということになっております。これは公取の責任で取り締まります。しかしながら、それだけでは不当表示あるいは不当景品等を行っている業種が非常に多いので、できる限り業界で自主的な規約をつくって自分で規制していただきたい、そういう趣旨で十条で公正競争規約という制度を設けております。もし業界が公正競争規約をおつくりになれば、それが適当なものかどうか私どもは検討いたしまして、もし適当なものと認めたらそれを認定する。その結果、これは横の協定でございますけれど、直ちに独禁法違反として処理することはないという法律的効果を与えております。私どものすべきことはその二つでございます。
  44. 丸谷金保

    丸谷金保君 だんだんわからなくなるんですけれどもね。一体公取の方では、そういうものが出てきたら検討するということなんですよね。そしていろいろ助言もするし指導もしていくし。そうすると国税庁の方では、公取の方から強力にあれすれば相談をしながらやると言うんですが、国税庁はそういうことで業界指導してまとめていく責任あるんじゃないんですか。  これは実はこの間のあれでも、私が何かウイスキーの関税だけ下げろと言ったような業界日報が出ているので、間違ってもらったら困りますから念のために言いますけれども、私は御承知のようにワインに関係持っている人間なんです。その私がですよ、いいですか、ワインの方をもうちょっとちゃんとしなさいと言っているんですよ。ですからそこのところ間違わないでひとつお答え願いたいと思うんです。会期中にやる意向があるかどうか。
  45. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 国税庁の責任ではないかという御質問でございますが、先ほど来申し上げておりますように、現在、表示の内容をどうするかということについては、清酒の方は自主基準でやっております。それからウイスキーとかビールといったようなものは、やはり公正競争規約を結ぼうというような方向でやっておるわけでございまして、それぞれそういうものはやはり主として公正取引委員会と協議いたしまして、また、その御指導を受けながらやっておるというのが私どもは現実だというふうに思っておりますが、私どももそういうような和類間のアンバランスがあるということについては確かに問題であろうかと思いますので、公正取引委員会の方にもなるべく早い時期にそういうものをやっていただきたいということで申し入れもしておりますし、また、業界の方もそういうようなことで指導をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  46. 丸谷金保

    丸谷金保君 もう一遍確認します。簡単に言ってください。  今会期中にそういうことについて独力な指導を行うというお考えございますか。
  47. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 御指導は申し上げますが、ただ、いつまでにやるということにつきましては、ちょっと私どもは確信がございません。
  48. 丸谷金保

    丸谷金保君 このことは、実は私はもっと深い問題があるというふうに思うんです。  時間がありませんので飛ばしてひとつ申し上げますと、酒税法の五条で、日本酒については大変、特級及び一級については審査をすると。しかし、ウイスキー類の特級とか一級とかというのは政令で定めると。これ日本酒ウイスキーとで違いますね。ウイスキーは政令で定めているわけなんです。じゃ、どういう政令で定めているかというと、これば施行令の十一条「級別」というところで、ウイスキー類、「法第三条第九号イ又はロに掲げるもの」、それから二で、「法第三条第九号ハに掲げるもののうち、その加えたアルコール、スピリッツ又はしょうちゅうのアルコール分の総量が当該アルコール等を加えた後のウイスキーアルコール分の総量の百分の七十七をこえないもの」、それから三で、いいですか、三が大事なんです。「一又は二に掲げるものを除くほか、アルコール分が四十三度以上のウイスキー」とあります。  法制局来ておりますね。一体これ、「一又は二に掲げるものを除くほか、アルコール分が四十三度以上のウイスキー」といったら、これは混和率何にもなくても、ウイスキーだけでもいいということの規定でしょう、どうですか。
  49. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 御指摘の、「を除くほか、」という用語につきましては、これの対象になります事柄を除外する意味で用いる用語でございます。したがいまして、いまお話しのように、一または二のほかということで一または二のほかに三が追加されておりますけれども、この三が追加されたにつきましては、主としまして輸入酒、輸入ウイスキーを念頭に置いた規定でございます。と申しますのは、一が原酒でございますが、二は混和率が二三%以上のものということでございますが、輸入ウイスキーにつきましてはその混和率が不明であるということで、度数の高いものが高級である、そのような意味におきまして四十三度以上というのを掲げたということで承知をいたしております。
  50. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと持ってください。日本の法体系というのは名文主義ですわね。輸入酒をもとにしたと何にもここに書いてないじゃないですか。どこから輸入酒という、それは適用上の問題あるかしらぬけど、これからいきますと輸入酒でなくたって四十三度以上のアルコール使えば特級ということ言えるんでしょう、それ聞いているんですよ。輸入酒に限るとはどこにも書いてないんですから。
  51. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 三の文言としてはそのとおりでございます。ただ四十三度以上……
  52. 丸谷金保

    丸谷金保君 文言だけ聞きゃいいんだ、文言だけ聞きゃ。文言上そうでしょうということで法制局にはね。
  53. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 三だけの文言はそのとおりでございますが……
  54. 丸谷金保

    丸谷金保君 そのとおりですね。
  55. 前田正道

    政府委員(前田正道君) それとあわせてお考えいただきたいということでございます。
  56. 丸谷金保

    丸谷金保君 法制局に聞いているのは、文言の解釈を聞いているんで……。  そこで主税局にちょっとお伺いしますが、アル  コール四十三度だけで国内でウイスキーをつくって申請をしたら、中央審査会や何かないんですから、これ全部特級で通るんでしょう、この法律は。
  57. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 確かにおっしゃるとおり、四十三度以上のウイスキーの場合が、先生のおっしゃるような場合があるとしても、混和率は実際問題といたしまして国税庁の通達によりまして七%以上ないと承認しないということになっておりますので、全然ウイスキーの入っていない、いわゆる原酒の入っていないというものにつきまして承認するような場合はないというふうに考えていただいて結構だと思います。
  58. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで非常に勘ぐるんですが、一体日本におけるウイスキーの原酒の規定はどうなんです。イギリスでは、たとえばたるの中で三年以上連続式の蒸留器で蒸留したものを貯蔵したものを原酒といっているんですが、日本にはそういう規定あるんですか。
  59. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) ウイスキーの原酒と申しますのは、いわゆるモルトウイスキーとグレンウイスキーという二つございまして、先生御専門でございますので失礼でございますが、確かに貯蔵の問題については三年以上というような制限はございません。それが実情になっております。
  60. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうですから、たとえば日本の場合のウイスキーというのは、いまおっしゃったようにモルトの原酒といっても諸外国のような規制はないわけです。ですから蒸留したてでもいいんですね。蒸留したての湯気の出ているやつでもこれはモルトというんでしょう。どうです。
  61. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 一応形式的にはそういうことになろうかと思います。
  62. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと形式的にといって、実態もそうでしょう。
  63. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 実態につきますと、何年のものをどのぐらいまぜているということにつきましては、私どもも実は企業機密に属することでわかりませんわけでございますが、いま国際競争にさらされましたウイスキー業界といたしまして、少しでも品質のいいものをつくろうというような動きで一生懸命競争しているわけでございまして、現実問題といたしまして、そういうようなモルトを使うということは私どもはなかなか考えられないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  64. 丸谷金保

    丸谷金保君 この短時間の間に、酒税法の矛盾というのはいっぱいありますんで、全部ひっくり返してやるわけにもいきませんが、ただ私がいまアルコール表示義務、このことを言うのは、ワイン業界はすでにそういう点で策動始めています。日本酒がやったように、やっぱりわれわれもやらなければならぬでないかということで協議も何回かしているんです。ところがウイスキーの方はまだそこまでもいきませんでしょう。そうしてなかなか国税庁さんの方がみこしが上がらないのは、勘ぐるといかにもウイスキー業界をカバーしているように聞こえるんですよ、私にしてみると。  というのは、こういう法律が生きていて、ほかほかの湯気立てたてのものでも、しかもそれ七%でしょう、蒸留したての真っ白い湯気の立っているようなモルトを七%入れて、残りの九三%が外国から輸入した粗製アルコールを蒸留したアルコールをぶち込んでもウイスキーと言っていいとあなたいま言っているのですよ、そうでしょう。一体それがウイスキーですか、本来。そういうところの問題があるから表示のことで何としても歯切れが悪いのじゃないか。  特に、この問題について大臣にひとつお願いしたいのですが、関税が下がりました、そして私はウイスキー類の関税が高いのではないかと言ったのは、一つには日本のウイスキー業界というのは大手です。非常に市場の何といいますかシェアも大きい。そして経済力も強いのです。中には何千万というふうな広告賞伝費を出せるそういう大きな企業、何千万じゃない何十億ですか、何十億という宣伝広告費を出せる大企業、これらと、それからワイン業界なんというのは、ブドウ酒つくっているところにはどうしてもくずブドウやなんかもしばらなければならないし必要なので、いまでも二百四十もあるのです。一番大きなシェアを持っているマンズだって二〇%そこそこです。特定のウイスキー業界市場のシェアとは比べものにならない零細企業です。こういうのの関税も同じように下げて、関税法の精神で言う国内の一体どっちを……、しかも今度は関税法でバルクも下げているのです。日本の原酒と称して外国から持ってくるウイスキーのモルトの大方は特定の会社が輸入しているのですよ。そういうところの関税のモルトも下げているのです。そういうふうなものが同じレベルで扱われるということになったら私はワイン業界なんというのはかわいそうじゃないかと思うのです。これは大蔵大臣というより関税局長、一体どういう判断でそういう外圧に対して同じように下げていかなければならなかったのですか。関税というのはもともと国内産業の保護でしょう。
  65. 海原公輝

    政府委員(海原公輝君) お答えいたします。  これは先般の御質疑に対しましても関税局長からお答えしたかと思いますが、ウイスキーワイン共通いたしておりますことは、諸外国に比較しまして引き下げ前で六〇%を越えていてかなりの格差があるということが一つございましたし、それからまた、一方私どもとしましては消費者のことも考えなければならない。かてて加えて、現存日本が置かれております国際環境、そういうものを総合勘案いたしまして先般引き下げたわけでございます。  そこで、ウイスキーとそれからワインとの比較につきまして種々御議論がございますが、一つは、まず引き下げ前でございますが、保護水準は従来ワインウイスキーと比べて大体同程度であったということと、四十七年から五十二年、約五年の伸び率を勘案いたしましてもほぼ同様であったということ、それからワインにおきましては、自由化いたしましたのが四十五年二月でございますが、そのときに比較して現在の実行関税率の水準が二〇%、一方ウイスキーは自由化前と比較いたしまして六〇%にとどまっている等々、それからまた業界の状況にお触れになりましたが、ウイスキーにおきましてなるほどトップの会社は七〇%以上というような状況ではございますけれども、それ以外にもやはり企業の格差がある。それからまた国際競争力に対していろんなばらつきがある等々を勘案いたしまして、先般御賛成を得まして関税暫定措置法の改正に至った、こういう経緯でございます。
  66. 丸谷金保

    丸谷金保君 大変残念ながら時間がありませんので、ワインのホトル、ウイスキーのボトルを同じように下げたことに対する日本の業界内での苦しさの違い、そういった問題はまた別にいたします。それからなお、いまのアル添表示の問題、このことについては、ただいま明らかにしたように、酒税法の中でウイスキーについては政令で決めて、いい悪いがなかなかわからない。日本酒の方は審議会でもって克明に味を調査する。こういう不公平な取り扱い方、こういう点にも大変問題があります。  それと、最後にもう一つだけこれお聞きいたしたいのですが、信用保証基金協会の問題です。これは日本酒のことですが、実は補助金等の適正化法のあれによって昭和五十二年度の補助金便覧というのをわれわれいただきました。これを見ていきますと、国税庁というのはきわめて補助金を出していないので実は感心したのですが、その中で清酒製造業安定対策費という名前で五十一年は三億五千万、それからそれらの前も幾らかずつ調べてみると出ておりました。そしてこれを基金にして、それの八十何倍ですか借りられるような説明も提案された中に説明書もついておりましたが、これが五十二年だけぷつっと切れて、そして五千三年は今度五億です。それで巷間伝わるところは、この五十二年にぷっつり切っておいてそれから五十三年度でやっぱりどうしても必要だと言って五億追加したかわりに、仙台の国税局長をやった、これは名前はTとしておきましょう、それから庁の間税部長をやって専売公社の方に出ておられる、名前はSとしておきましょうか、この人たちのどちらかが見返りとして天下るのだといううわさが業界で流れております。大臣、そういうことを御存じですか。――そういうことはないでしょうね。まさか私はそんなことはないと言っておきましたが。
  67. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生お話しの清酒業安定法の信用保証基金でございますが、その必要額の三分の二が政府補助金として交付されておりまして、四十五年、四十六年と出まして、また四十七年から四十九年まで抜けまして、五十一年出まして、五十二年が交付されないといったような問題がございます。  この事業でございますが、酒造資金の融通の円滑化を図るという見地から、米代とか人件費の上昇に伴う酒造資金の増高ということがあった場合に、必要のあるときに信用保証を増額するということでやっておるわけでございまして、いま申し上げました趣旨からいきまして、必ずしも毎年基金の増額を行ってはいないというのが実情でございます。ただ、今回安定法の一部改正が行われた場合に信用保証事業についても全額五億円の補助金が出るわけでございますが、それの趣旨は、あくまでも信用保証事業のほかに新しく今度給付金の給付事業、いわゆる転廃給付金をお出しして、それによって……
  68. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは説明書いてあるのでわかっているのですが。質問にだけ答えてください
  69. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 近代化事業をやるという新しい専業を始めるわけでございます。こう  いうような質的に違う一つの事業をやるという趣旨で私どもは五十三年度におきましてお願いしておるわけでございます。   以上でございます。
  70. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 今度の信用保証につきまして国の方も五億円か協力することはよく承知しておりますが、それと引きかえに人事を何か決めるというようなことは一切開いておりません。
  71. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと何ですが、じゃあ大蔵大臣ひとつお願いしたいんですが、いまお聞きのように酒の法律そのものにもいろいろ問題もございます。しかし、これも一遍に全部直すといっても直していけるものでもございません。したがって、いま私が指摘したように、少しずつでもよくしていくというためにアルコール添加の表示義務、まず横並びに、第一段階としては日本酒と同じようにほかの酒もやるような努力をすることを大臣から関係部局に対して御指示いただけるようにお願いいたしたいと思いますが。
  72. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 検討させます。非常にむずかしい問題なのでございますが、検討させます。
  73. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、酒類販売業免許制度についてお尋ねいたします。  酒類販売業免許制度は昭和十三年に創設されたわけでありますが、同制度創設までのいきさつについて簡単に御説明をいただきたいと思います。
  74. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 酒類の販売業免許制度は昭和十三年に御案内のように設けられたわけでございますが、当時は不況によりまして需要の停滞がございまして、過剰生産が非常に続きます一方、販売業者の方が乱立いたしまして、たしか約三十五万ほどの販売業者の方がおられまして、市場が混乱いたしまして、販売業者の方々が倒産するといったような問題も起こりまして、ひいてはメーカーの貸し倒れも生ずるというようなことで、経営に破綻を来す例が多発したわけでございます。   そういうこともございまして、やはり酒税が非常に高額の税負担を負っておるというような問題もございまして、販売業者を通しまして消費者に最終的に行くと、それがまた消費者から戻って酒税額が戻ってくるということ、そういう酒税保全  というよう見地から、販売業者につきまして免許制度が採用されたというふうに聞いております。
  75. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 昭和五十年四月薬事法における薬局の適性配置、すなわち距離制限は憲法二十二条一項職業選択の自由に抵触すると、こういう最高裁判決が出されておりますが、酒類販売業免許制度も薬局の小売制限と同様の性格を持つものであり、違憲の疑いがきわめて高い、こういう意見もあるわけですけれども、どう考えておりますか。
  76. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 最高裁判決、その当時私どももしさいに読ましていただき勉強いたしたわけでございますが、判決の趣旨を私どもが受けとめておりますのは、許可制によって職業の自由に制約を設けるということを支持するためには、そのような制約を設けることが重要な公共の利益のために必要であり、かつ合理的な措置でなければならないというのが基本的な趣旨であると理解しておるわけでございます。その趣旨から申しますと、私ども酒類の販売免許につきましては、これによって酒税を保全し、かつ、結果として消者の利益を守るということで重要な公共の利益のために必要なものであるというふうに考えております。その意味で最高裁の判決に矛盾するものではない。   ただ、それが必要であるということは認められるとして、さて合理的であるかという点につきま  して、薬事法の場合には距離規制をしておかないといかなる弊害が起こるのかということについて説得的でない、不良医薬品の供給防止ということ  の説明に距離制限というものはつながらないのではないかという判示がされておると理解しておるわけで、酒類の販売につきましては、やはり距離制限をいたしませんと過当競争による経営不安と  いうことから、ひいては製造者の経営不安も招き酒税保全上も問題を生ずる。現に小売免許についてはいろいろ別の角度から大規模店などの免許に  ついてはきわめて慎重であるべきだというような御議論もあるのが現状でございますから、やはり公共の利益を守るという憲法上の趣旨からして現在の販売業免許制度は支持されてよいものであるというふうに私どもとしては考えておるわけでご  ざいます。
  77. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現在も清酒の製造業者、卸売、小売業者についてはそれぞれ免許を与えておるわけでありますが、昭和十三年当時からすればすでに四十年も経過をしておるわけであります。現在においてもその当時経験したような売掛金の回収不能による卸売店の被害の発生、つまり税の保全の不安定というようなことが予想される、もし免許制をなくした場合はそういうことが予想される、このように考えておることなんですか。
  78. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その点は残念ながらそういう事態を予想せざるを得ないんではないか。ほかの品物の例を引きまして恐縮でございますが、ガソリンについて似たようなことが起こり、それを許可制とまでもいかないで登録制ということでつい近年に立法化をお願いしたということもございますし、現実見ても小売免許につきまして大規模店の進出についていろいろな問題も現に御指摘受けているわけでございますし、いまの現状から見まして小売免許というものを一切やめてしまうという場合には、これ杞憂にすぎないということになれば幸せではございますけれども、私どもとしては非常な過当競争、場合によっては不当廉売というような混乱が起こる危険を感ぜざるを得ないんではないかと思います。
  79. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 酒税の納税義務者は製造業者であり、したがって製造業者を免許制にすると、これは一応納得できるわけですが、小売業あるいは卸売業者に免許制を適用した当時の社会的背景と、今日における経済基盤や社会的状況はまさに大きく変わっておるわけでありまして、現在も免許制度を用いなければ酒税確保が困難であるということはわれわれとしてもちょっと考えにくいんではないか、このように考えるわけでありますが、これはやはり免許制度、本来職業選択の自由から言えばこういうものは廃止すべきであって、こういうものを置くということは、もし置かなければやはり酒税の保全が非常に確実に困難になる。そういうことを国民の納得のいくように証明しなければならないと思うんですが、いまおっしゃったような程度ではなかなか納得しにくいではないか、やはり本来は自由競争、それが消費者の利益にな  っていくわけでありまして、そういう点ちょっと説得力が非常に弱いんじゃないか、このように思うんですが、その点はどうですか。
  80. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生おっしゃるように、確かにいまと創設された当時とで社会的な背景も違うし経済的な基盤も違うではないかという御質問でございますが、その点は確かにそうかと思うんでございますが、実際問題といたしまして、多数の、十六万場の免許場数がございまして、そういう方々が総売上金額のうちに占める酒の売り上げというのは八〇%を超えます。専業割合も非常に高いという状況でございます。こういうような多数の方が、再び酒類をたとえば自由にして販売するということになりますと、やはりどうしても売上高に、既存の零細な酒販店の売上高に大きく影響して死活問題にもなるということもございましょうし、また、経営を維持するためには市場での競争も激化するということになりますし、その結果やはり倒産するという事例も発生するのではないかというふうに思われるわけでございます。やはり酒販店の経営悪化という問題は製造者の代金回収、しかもこれが一般的に言いまして中小企業者数の非常に高い清酒業界がどうしても中心になりますので、そういう製造業者の方々の回収のリスクの増大ということを通じまして、酒税の保全上もやはり問題になるというようなことになろうかと思うんでございます。  こういう点から申し上げましても、大変先生の御意見に反するようで恐縮でございますが、やはり免許制度は維持していくことが必要ではないかと思うわけでございます。
  81. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 四十五年の衆議院大蔵委員会国税庁長官が、行政管理庁から小売免許制廃止の方向で考えるべきだと指摘されていると、こういう点を認めておるわけでありますが、現在行政管理庁はこういう考えを持ち続けておるのかどうか、その点はどうなんですか。
  82. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 確かに先生のおっしゃるように、四十五年、国税庁長官が販売業免許の廃止の問題につきまして、「酒類の販売業、特に小売りの免許につきましては、行政管理庁の監査結果からも、将来は廃止の方向で考えるべきだということの指摘も受けております。」ということでございますが、「もう少し酒類の供給の正常化、酒類全体の消費の状況が安定をいたしますまで、やはり小売り免許は据え置くべきであるというのが私どもの考え方でございます」というふうに御答弁申し上げておるわけでございますが、四十六年十月一日から販売業免許条件の解除、緩和という特別措置を実際には講じております。その結果、条件緩和あるいは解除を受けまして、即売業者の方がかなり小売ができるというような状態になっておるわけでございます。しかもその上、免許の取り扱い要領によります免許基準の中におきまして弾力規定を設けておりまして、弾力規定を積極的に活用するというように各種の会議を通じて趣旨の徹底を図っております。こういうような趣旨の徹底の効果もございまして、新規免許数は毎年二、三千軒程度ということになっておりまして、四十六年の十四万四千場から五十年三月には十五万七千場というふうにかなりの増加を見ておることが現状でございます。  ただ、免許場数というのは消費者の利便というものを考慮して増加している一方におきまして、やはり全体としての酒類の消費というのは必ずしもうんと好調というわけではございませんので、しかもその清酒小売業者の方々、零細な方も相当まじっておるということを考えますと、やはり経営環境も非常に厳しいということが推測されるわけでございます。不安定な材料もございますし、やはり直ちに免許制度を廃止した場合には酒類業界が混乱するということにもなりますので、いままでくどくどと申し上げて大変恐縮ではございますが、そういう方向で弾力的な運用を図っていくという方針には変わりないわけでございますが、いま申し上げたような事情も慎重に考えながら進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  83. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 五十年の六月五日の当委員会において、公明党の鈴木委員質問に対し、酒類の供給の正常化、酒類全体の消費の安定をするまで据え置くと、こういうことで答弁があったわけでありますが、酒類の供給の正常化、酒類全体の消費が安定をすれば小売免許制度は廃止すると、そういう方向で進んでおると、こう理解していいわけですか。
  84. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 非常にむずかしい御質問でございますが、先ほど来申し上げておりますように、小売免許というのはやはり酒税を確保する、保全するという見地から私どもはなかなかこれを撤廃するということはむずかしいというふうに思っているわけでございます。供給ないし消費が正常化した暁にはというようなお話がございましたんですが、依然としてやはり酒類業界、先ほどからも御質問のございますように、販売もございます、それからリベート競争とか、いろんな意味におきましてまだまだ行政上非常なむずかしい問題を抱えておるわけでございます。したがいまして、事情御賢察いただきますれば、当分まだなかなかそういう段階に至らないのではないか。将来の大きな研究課題として慎重に検討していくべきものではないか、かように考えておるわけでございます。
  85. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣に要望しておきますが、酒税の確保という点から、大蔵省の立場から見れば小売店を余りふやしたくない、これは当然わかりますが、しかし小売店がそういう保護のもとにあぐらをかいて消費者の立場を忘れるような姿勢に出るならばこれは非常に困るわけでありまして、やはり消費者の立場から見れば、競争があることが消費者の立場である。こういう相反する立場があると思うんですね。そういう点で、私も現段階においてはすぐこれを廃止しろということを主張するつもりはございませんけれども、やはり小売店に対しても常にそういう国民の立場もよく考えて、余りあぐらをかいて消費者の不利益になるようなことがあるならば、これはもう免許制を廃止せざるを得ないんだと、これぐらいの姿勢で、ひとつ小売店に対してはその経営の安定にも努めるとともに、消費者への利便も、十分消費者中心のサービスもやっていくように、こういう点を十分指導してもらいたい。今回の税制の値上げにおいても不当な便乗値上げ等起こらないように、こういう点もあわせて指導してもらいたい。このことを要望したいと思いますが、大臣の見解を承っておきます。
  86. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 酒類に限らず何でもそうでございますが、やはり取引というものは最終的には消費者の利益を考えない産業は必ず衰退するに違いないわけでございます。そういう意味で、長い目で見ますればやはり消費者の利益を考えていかなければならぬことは当然でございます。特に清酒の場合は、いまるる申し上げましたようにほかの種類に比べまして非常に競争条件が不利でございます。言ってみますといま買い手市場にあるわけでございます。したがいまして、いま小売業者がそこでマージンをよけい取ってやろうなどという態勢にはないわけでございますけれども、われわれいま塩出委員指摘されたことも十分考えまして、この上ともそのようなことがないように努めてまいりたい、かように思っております。
  87. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、ウイスキー級別認定について、日本酒の場合と同様に、わが国においては酒税法施行令第十一条で特級から二級まで規定しておるわけでありますが、欧米諸国では法律によって級別を行っている国はあるのかどうか。
  88. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生指摘のとおり、わが国の場合には級別制度をとっておりまして、特級一級、二級ということで、原酒の混和率によりまして二三%以上のものを特級と、一三%以上のものを一級、二級は国税庁の運用基準におきまして七%以上というふうになっております。  第二の御質問でございますが、外国において級別制度をとっているという国があるかという御質疑でございますが、十分な調べができておりませんのではっきりしたことは申し上げられませんが、非常に少ないのではないか。したがいまして、わが国独特の制度ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  89. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、ウイスキーの原酒及びアルコールのパーセントでウイスキー品質を判断するということでありますが、それではウイスキーの原酒あるいはアルコールというものは一体どういう概念であるのか。これは質問の意味わかりますか。
  90. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) ちょっと、御質問の御趣旨がちょっとわからないのですが。
  91. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ次へいきます。  ウイスキーの原酒というものにつきましては、これは昭和三十七年の酒税法の改正においてウイスキーの原酒についての規定が改定されたように私は理解をしておるわけでありますが、その趣旨は何か。当時大蔵大臣は主税局長であったわけで、まあその点よく承知していると思うのでありますが、大臣が承知していらっしゃれば大臣、もう三十七年で十六年前でございますので、お忘れであればほかの方でも結構なんですが、お尋ねします。
  92. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 塩出委員指摘のとおり、そのときの改正法で、ただいまの番号で申しますと九号の口というのが原酒に追加されたということでございます。その当時の説明によってお答え申し上げますと、たとえば外国輸出の途上で海難に遭ったビール、あるいは台風のために海水をかぶってビールの王冠が腐ってしまってビールとしては売れないというようなときに、それをもう一遍蒸留いたしましてウイスキーの原料に使用することがある。その蒸留されたものは味その他はウイスキー原酒にきわめてよく似たものになるということで、課税上のバランスということで問題になった。  そこで従来、改正前はウイスキー原酒というものは原料としては発芽した穀類と水だけ、あるいは発芽した穀類と水によって発芽しない穀類を糖化させたものというふうに限定されておったわけでございますが、いま申し上げたような実態でございますと、ビール原料にはそれ以外にホップやでん粉が入っております。したがって、その発芽した穀類だけということではさばき切れない。したがって、ウイスキー原酒にきわめてよく似たものであるから、これが定義上ウイスキー原酒になるように改正しようということで、「発芽させた穀類を原料の一部としたアルコール含有物」という定義づけを加えると。ただし、果実がまざり込んでまいりますので、そこは重量でもって穀類の重量が果実の重量より多い場合にウイスキーになる、逆に果実の方が多ければこれはブランデーになるというように定義を整理し、ウイスキー原酒とほぼ同じ味同じ質のものはやはりウイスキー原酒になるように改正をしたと、そういう趣旨のように私どもは理解しております。
  93. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 酒税法第三条第九号ロにつきましては「発芽させた穀類」、要するに大麦麦芽が原料の二〇%以上あればそのほかの原料は穀類でなくてもウイスキー原酒と見なすことができると、こういう意味に理解していいわけですね。
  94. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 百分の二十で切れております、ただいま御質問の点は。しかし、いずれにしても穀類の重量というものが重視されておるわけでございまして、半分以上というのはきわめて平べったい言い方でございますが、これは半分以上ないとウイスキーの方には入ってこないということになります。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 半分以上――いま私、二〇%以上でいいわけでしょう。
  96. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 失礼しました。二〇でございます。
  97. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、いわゆる原酒という規定ですね、モルトとして輸入もされておるわけでありますが、スコッチとかアイリッシュ、カナディアン、バーボン、それぞれのウイスキー原酒で穀類以外の原料を使っているものは一つもないと、このように聞いておるわけですが、これは事実なのかどうか。
  98. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) ちょっとお時間をいただきたいと思いますが、後ほどお答えいたしますので。
  99. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういうことは、すぐわからないのですか。
  100. 福田幸弘

    政府委員(福田幸弘君) 外国の事情なもんですから正確にはわかりかねますが、英国の場合は原料の定義がございまして、麦芽の糖化酵素により穀物を糖化し、酵母の作用によって発酵された原料物に由来する芳香を持つような蒸留方法でアルコール分九五%以下で蒸留されたもので、三年間木たるの中で熟成された蒸留酒、これがウイスキーの定義とされているものでございます。  アメリカの場合は、これは税法ウイスキーは無留酒と、こうなっておりまして、そのウイスキーの定義は特別にないようです。蒸留酒の定義のところに、エチルアルコール、エタノールもしくは酒精として擬せられる物質またはその稀釈物、混合物で、その原料のいかんまたは製法のいかんを問わないということで、ウイスキー、ブランデー等は蒸留酒に含まれると、こうなってまして、アメリカの場合には原料については税法上からは限定がないように一応承知しております。
  101. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私がいま言ったのは、スコッチ、アイリッシュ、カナディアン、バーボン、こういうものは穀類以外の原料は使っていないと、このように私の調査の結果なっておるわけでありますが、そういう点で日本のウイスキー原酒は穀類以外のものが八割占めていてもウイスキー原酒と見なすと、こういう点は日本のウイスキーの原酒というものはスコッチなどの原酒とはちょっと本質的に異なっておると、こう理解していいわけですね。
  102. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 確かに先生のおっしやるように、穀類以外のものを含めたものも全体としてウイスキーとして売られておるものがあるかもしれませんが、やはりこれは全く、先生を前にしてこんなこと失礼かもしれませんが、日本のウイスキーというのはスコッチタイプということで、スコッチのようないわばやり方をしながらつくってきたわけでございますが、いまややはり一つのジャパニーズウイスキーというローカル的なウイスキーとして独得なものができているのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  103. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 したがって、酒税法第三条九号のイということであればこれはスコッチなどと同じ原酒になるわけで、それが非常に口というものを拡大をして、そしてスコッチとは違う日本型ウイスキーというものをつくったと、こういうお話でございますが、現在わが国におけるウイスキーの原酒というものは、イとロというものを比べた場合どの程度の比率になるんでございますか。
  104. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 現在、いまおっしゃった規定に該当するウイスキー原酒といたしましては酵素剤を使用したものがある程度でございまして、糖みつ、芋でん粉といったものを使用したものはございませんで、その麦芽のほかにはトウモロコシ、大麦、ライ麦といったような穀物を使用しているというのが現状のようでございます。
  105. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど間税部長が日本型の、そういうスコッチとは違う日本型の原油を使ったウイスキーであると、こういうようなお話ですけれども、しかし名前はやはりウイスキーという、それならもっと別な名前使えばいいんじゃないかと思うんですけれども、やはり名前はウイスキー、いかにも本場スコッチに似たウイスキーであるような宣伝をしながら、しかも内容においてはいわゆる英国、イギリスにおけるスコッチのような原料は二割入っておれば、二割以上入っておればあとの八割未満はほかのものであってもこれは原酒として適合すると、こういうことは言うなれば「色沢その他の性状がウイスキー原酒に類似するもの」をウイスキーということを法律で認めておるわけで、ウイスキーのにせものをウイスキーとして、奨励しているんではないかと、こういう意見もあるわけなんですが、私はその点はまことにもっともであると、そういう気がするんですが、その点はどう考えますか。
  106. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その点は、先ほどの御質問の中で、極端に言えば原酒がゼロに近くてもアルコール度が四十三度以上なら特級かと、こういう御質問がございまして、それは法律及び政令をそのとおりに読めばそれはそうでございますけれども、現実にはそういうものはない。またそういうものにウイスキーという名前をつけて売りましても、それは飲んでもらえないということであろうと思います。ただいまの定義のイとロの問題も、間税部長が申し上げましたように、現在日本のウイスキーに使われておりますウイスキー原酒というのは圧倒的にイでございまして、定後上口に該当するというのは穀類以外に酵素を使ったものがあるというのが現状でございまして、その穀類が二〇%ぎりぎりしか入ってないものを原液に使ったウイスキーというものはいまないというふうに御理解いただきたいと思います。
  107. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、そういう、実際の原料の内容がどういうものであるかということは、国税庁長官がここで言われましても、すべて実際どうなっているのかと、こういうような点は素直にはなかなか信じがたいわけでございまして、そういう点からやはり適正な内容表示の方法等もこれを検討していただきたい。このことを要望いたしまして、あと一分時間がありますので、最後に、私は今回の酒税法値上げというものがやはり国家の赤字財政を、国債発行を少しでも減額をしていくと、こういう意図から行われたものであり、その必要性は認めるわけでありますが、しかし、やはり財政の再建というものはかなり長期的な問題でございますので、そういう長期的な一つの財政計画あるいはまた当然不公平税制の是正というものを、そういう中から、また今後の増税が必要ならばやはり増税計画、そういうような全体観の中にこの酒税値上げというものが行われていかなければならない。けれども、そういう全体的な見通しは何もなしに、ちょっとここで何か財源確保する、またこちらでちょろちょろと財源確保すると、こういうような長期展望を欠いた、それで一方では取りやすいところから取って消費者に負担をかけていくと、こういう酒税の改正は私としては非常によくないんじゃないか。政府としても当然そういう長期的な中期的なものを早くつくるべきじゃないかと、この点についての大蔵大臣の見解を承って終わります。
  108. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) しばしば御指摘を賜りましたように、今後は中期的な見通しのもとに計画的な財政計画をつくるべきであるという御指摘でございます。非常に困難なことではございますけれども、われわれは御所見に沿いまして鋭意努力して、できるだけ早くそのようなものをつくりたいと念願しておるところでございます。その前に、何よりもいわゆる不公平税制というものの是正につきましてはこれは言うまでもございませんので、歳出の効率化と不公平税制の是正には鋭意努力してまいりたい、このように考えているところでございます。     ―――――――――――――
  109. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、矢田部理君が委員辞任され、その補欠として大塚喬君が選任されました。     ―――――――――――――
  110. 渡辺武

    渡辺武君 私、前回の、質問の中で、清酒コストの最大部分を占める原料米の価格の引き下げのために、政府管理米の払い下げに当たってはこれを新米で供給してほしい、それからその量もふやしてほしいということをお願いしました。農林省からも大蔵大臣からも検討すると、あるいは努力するという御趣旨の御答弁があったわけですが、早速五十三年度産米からその方向を実施に移していただきたいと思いますが、いかがでしようか。
  111. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 五十三年産米からその方向で農林省と一緒になりまして鋭意検討するつもりでございます。
  112. 小野重和

    説明員(小野重和君) ただいま大蔵大臣が御答弁になりましたことと同様でございます。
  113. 渡辺武

    渡辺武君 早速やっていただくということで非常に結構なことだと思いますが、その点についてひとつ重ねて要望しておきたいことがあるんです。  この間、参考人の方々が見えられての意見陳述の中でも触れておられましたし、私業界からも聞いているんですが、清酒メーカーは七月に酒造計画を立てて国税庁に提出することになっております。それで、そういう関係で政府のそのような施策は八月末ぎりぎりぐらいまでにぜひ決めてほしいという強い要望があるわけです。ぜひそういう方向で努力していただきたいと思いますが、この点重ねてお伺いします。
  114. 小野重和

    説明員(小野重和君) 酒米の取り扱いにつきましては、これは例年七月に米の政府売り渡し価格、これは主食用を中心でございますが、これが決められるというのが例年でございまして、その後自主流通米の助成、これを決めるということで、これが八月中あるいは九月にちょっとかかるかもしれませんが、そのころ決められるというのがいままでの例でございます。  そこで、酒米の取り扱いにつきましても、御案内のように酒米につきましても自主流通米でございますし、それから政府米の取り扱いにつきましても同様の時期に決めるというのがいままでの例でございまして、本年についても同じような取り扱いになるのではなかろうかと思います。いずれにしましても施行日に間に合うようなタイミングで方針を決めたいと、かように存じております。
  115. 渡辺武

    渡辺武君 それからほかの問題ですが、私、二十日のこの委員会で、吟醸酒あるいは本醸造、純米酒、原酒、手づくり等々について、酒税法または酒税法施行令で、つまり政令のことですけれども、その品質などのいわば規格を明記するようにお願いしました。ところが間税部長さんが答弁に立たれて、そして「清酒表示に関する基準」というものがあって、その中で規格についていろいろ詳しく決められているんだという御答弁があったんです。私は法律の中で、あるいはまた政令の中にそういうものがあるのかなと思って伺っておったんですが、後から調べてみますと、その「清酒表示に関する基準」というのは、これは業界の団体が出したものですね。ですから私の伺った趣旨とは全く外れた御答弁をいただいたということになっているわけです。これは恐らく主税局から御答弁いただかなきゃならぬことじゃないかという感じもしますので、重ねて御答弁いただきたいというふうに思います。
  116. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ただいま酒税法清酒を、渡辺委員よく御承知のように、製造の方から定義をしておりまして、税率適用上の区分としては官能審査による特級一級、二級という区分をつくっているわけでございます。その意味で清酒の定義の中では米、米こうじ及び水を原料として発酵させてこしたものというのが一つございまして、いわゆる純米酒というのはこれに該当するわけでございますが、そのほかの吟醸とか木醸造とかいろいろの呼称がつけられて販売されておるものは、いずれも酒の定義といたしましては米、水及び清酒かす、米こうじのほかアルコール糖類等をそれに加えて発酵させてこしたもの、ただし、そのアルコール糖類等の重量は、米、米こうじの重量を超えてはならないというふうになっておりまして、みんなここに該当してくるわけでございます。税法上これをさらに細分いたしまして、アルコールの添加度合いとかそのほかで細分いたすということは、実は率直に申し上げて税法上は必要のないことになるわけでございます。  ただ、御指摘のようになるべく品質のいいものを、品質がいいならいいというふうに消費者にちゃんとわかるように、また品質がそうでもないのにいいもののように誤信させるようなことをしないようにという、それは大事なことでございますので、酒税法プロパーの問題ということとは若干外れますけれども、やはり景表法の趣旨にのっとって公正競争規約をつくっていただく、あるいはその表示についての本醸造とか吟醸とかあるいは生一本とかいうものはこういうふうにしてつくったものにしか使え得ないというふうに業界が自主的に決めてそのルールを守っていただくというのが一番適当なやり方ではなかろうか、主税局としてもそのように脅えておるわけでございます。
  117. 渡辺武

    渡辺武君 主税局長さんの御答弁ですから、税という見地から主として見られるということはこれはまあやむを得ないことだと思うんですが、局長さんも言われましたように、いろいろ業界努力をして、そして品質についても味についても一定の評価を得つつあるというようなものについて、たとえば模造品が同じ名称で売り出されるという可能性もなきにしもあらずということと、それからもう一つはやはり消費者の選択という点で、その自由を保障するという点も非常に重要だと思うんです。  それで、酒税法上では無理だということであるとするならば、公正取引委員会の方お見えになっていますね、いまおっしゃった公正競争規約ですね、これでやれますか。
  118. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) 公正競糸規約で製造方法等の表示につきまして基準を定めることは可能であると思います。
  119. 渡辺武

    渡辺武君 業者が申告しなければそれはできないんですか。それとも公正取引委員会の方でできるんですか。
  120. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) これはあくまで業者の自主的な規制でございまして、私どもはその内容が不当表示の防止のため適切であるかどうかというふうな立場から審査いたします。
  121. 渡辺武

    渡辺武君 これは大蔵大臣にもお願いしたいんですが、大臣、こういう特殊性を持った酒がいま業界努力でつくられつつある。味や品質についていいものであってしかも多様性のあるもの、これがつくられていく、そして地方の地場産業の振興という点からしてもこういうものが発展していくということは私どもやはり非常にいいことだと思うんですね。ですから税金という見地からだけでなくて、そういうものを育てていくという上からして、やはり業界に対してそういう方向で指導するというようなことをやる必要があるんじゃないか。  いま言った品質についての規格ですね、これは何らかの措置が大蔵省として講じられないかどうか。それから公正取引委員会の方も、業界の申請を待たずとも公取としてやはりそういう方向に行政指導するという措置はとれないかどうか、この辺重ねてお伺いいたします。
  122. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) いま自主基準といたしましていろいろ工夫しているところでございますが、監督官庁といたしましても、その自主規制の方向にわれわれも力をかしていきたい、かように思っておるところでございます。
  123. 長谷川古

    政府委員(長谷川古君) お答えします。  先ほど申し上げましたように、これはあくまで公正競争規約は自主規約でございますけれども、私どもとしましては、食品一般につきまして、これは消費者の利益に非常に影響するところの多い商品でございますので、なるべく公正競争規約を積極的につくっていただくよう指導してまいっておりますが、今後もそういう方向で指導してまいるつもりでおります。
  124. 渡辺武

    渡辺武君 公取の方どうも御苦労さまでした。これで結構です。  それから今度別の問題で伺いますが、清酒特級酒についての税制ですね、従量税従価税という二種類の税制が賦課されるということになっておりますが、この従量税の最局限度価格従価税の最低限度価格との間に特例税額帯というのが設けられているそうですけれども、これはどういうものなのか、時間が余りありませんので簡潔に御説明いただきたいと思います。
  125. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 従量税従価税を併用いたしますと、従量税率を従価換算いたしました場合の実効税率と従価税適用されます場合の実効税率との間のバランスをとらなくてはならない。したがって、ある部分非課税限度を超えました、現実に申しますと九百八十円ぐらいになりますが、ぐらいの価格帯におきましては、その間の調整をどうしてもとらないと高いものの負担が逆に下がってしまうという問題がどうしてもつきまといますので、それを調整するために特例価格帯というものをつくっているわけでございます。
  126. 渡辺武

    渡辺武君 改正前の現行の税制で私ども計算してみまして、一・八リットル入りで計算してみますと、メーカーの場合税込み価格千五百十九円二十銭というというのがこれが従量税の最高限度価格になっているんじゃないかと。それから小売価格でいうとそれが二千百十円ということになろうかと思うんです。それから従価税の最低限度価格ですね、これメーカー価格で二千二百二十七円五十銭と、小売価格で三千九十三円七十五銭と、この間がつまり特例税額帯ということになりますか。
  127. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) おっしゃるとおりでございます。その間が先ほど申しました九百八十三円七十五銭という価格帯でございます。
  128. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、この特例税額帯に含まれるものについては、あれですか、メーカーの手取りは変わらないというふうに聞いてますけれども、そのとおりですか。
  129. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 結果的にそうなります。
  130. 渡辺武

    渡辺武君 そこで、私はいろいろ問題が起こってくると思うんです。いろいろ税制上の難点はあろうかと思いますよ、あろうかと思いますが、しかし業界実態から考えてみますと、いろいろ努力をして、それで米もいいものを使う、それから精白度も高めて、そうして醸造も十分に念を入れて、それでかなりいい酒ができたと。しかし、そのコストに応じてもう少し値段を高くしたいと思って高くしても、結局そういう努力をしなかった場合と同じ手取りしか与えられないと、あとは全部税金として大蔵省に納めなきゃならぬ。こういうことになっているためにメーカーとしては努力のかいがないという状態が起こってきているというのは御存じですか。
  131. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 先ほど税込みのメーカー価格でおっしゃいましたが、これは税抜きのメーカー価格で申しますと、現行では八百九十一円というふうになっております。八百九十一円までで蔵出しできれば従量税ですが、そこで原料を米を多くしその他の工夫を加えて八百九十一円を突破してしまうということになると特例価格借に突っ込んでしまうという問題が確かにあるわけでございます。昨年も原料米価格が決まりました段階でその問題について業界の実情をいろいろ伺いまして、昨年の政令改正でそういう品質向上努力をして従来どおりに従量税特級で売りたいというものもカバーできるようにということを考えまして八百九十一円に直したわけでございます。今後とも一般的に従量税特級にとどまったいという中で、その原料の状況をよく見きわめまして従量税の非課税限度が適切な位置になりますように、私ども十分研究を続けてまいりたいと思っております。
  132. 渡辺武

    渡辺武君 業界の人たち聞きますと、その八百九十一円でもいま申しましたように原料も吟味し、いろいろ醸造に当たっても特別な努力をするというようなことをやりますと、かえって赤字が出るということを非常に強く言うんです。つまり努力すればするほど赤字が出るという仕組みになっているのがこの特例税額帯の仕組みじゃないかと。何しろどのぐらい努力しても手取りは同じで、それ以外のものは全部税金として吸い取られてしまうということでは、これは余りに気の毒だと思うんですよ。  それで、いろんな税の計算上のテクニックはあろうかと思うんです。あろうかと思うんですけれども、こういうことは一響いたくないんだが、酒税行政あって産業行政ないじゃないかと言われるその一つの典型例が私はこういうところに出ていると思うんですね。ですから、業界努力が正しく報われるような、そういう見地も十分に考慮して、やはり何らかもう少し検討すべきじゃないかと思いますけれども、いまのところはどうなんですか、どういうふうな方向での検討やっておられますか。
  133. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 先ほど申し上げましたように、昨年原料事情を十分調べまして、七百六十五円から八百九十一円に引き上げたわけでございます。百二十五円方引き上げた。その引き上げには、一般的に従来と同じ原料使用の場合でも、原料米が上がったという要素もございますけれども、そのほかの要素としてその原料米をふやすとかということがあってもこれでカバーできるようにというふうに考えて私どもとしては処置したつもりでございます。というのは、八百九十一円というのは非常に技術的でございますけれども、要するに小売値で二千百十円までなら、そこまでならば従量税にとまれるということを考えたわけでございます。今回の改正を、幸いにして成立いたしました後で、やはり清酒だけは原料米という特殊事情がございますので、いますぐにいじるよりも、この次の酒造年度のときの原料米の価格がどうなるかということと、さらにいまおっしゃったような企業努力というものがその後どのように進展していくか、またどういうことを皆さん考えておられるか、それらを考えまして従量税の非課税限度をどこに置いたらよろしいかということを改めて勉強いたすつもりでございます。  方向としては、率直に申し上げましてそういう方向しかないので、特例価格帯をやめてしまうというわけにはまいらない。従量、従価併用する限り、清酒に限らずどの酒類でもその問題はつきまとう。ただ価格帯が狭い方がおっしゃったようなひずみが少なくて済むわけでございますが、たとえばウイスキー特級の特例価格帯というのは二十ぐらいしかない。なぜそうなるかというと、実は従量税が高いわけです。ですからひずみの度合いが小さく、ごくわずかの調整で済む。したがって、基本的にこの幅を縮めますためには、従量税を上げるか従価税を下げるかということになってしまいますので、どうも清酒の場合になかなかそういうふうな解決の方法というのは現実問題としてうまくいかない。やはりいまの八百九十一円というものをどの辺に設定すれば一番実情に即するかということで勉強してまいりたいというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  134. 渡辺武

    渡辺武君 従量税の非課税限度額の引き上げの方向で検討しておられるということで、それはそれでひとつぜひ推進してほしいと思うんですね。業界の意見もいろいろ今後も聞かれるということのようですが、私の聞いた限りではやはりもっと非課税限度額を大幅に引き上げてほしいという要望が非常に強いですね。  それからもう一つは、思い切って清酒特級については従量税一本にしたらどうだと、つまり従価税はやめた方がこういう矛盾は起こらないんじゃないかという意見も非常に強いんです。これも私もっともだと思うんですよ。一方に従量税あり一方に従価税ありということで、その矛盾からこの特例税額帯というのが生まれていて、それが業界にとって大変な重しになっている。企業努力をかえって阻害するというような状況になっておりますので、そのいずれか、これはぜひ至急に検討していただきたい。  私、ここに資料があります。昭和五十一年度の従価税ですね。これが清酒全体の税額に対する割合、これを見てみますと、昭和四十八年度は四%でしたが、五十一年度は一・四%に下がっているというような状況でして、従価税の果たす役割りというのがだんだん低下していっているというのが現実だと思うんですね。ですから、この現実も十分に踏まえて従価税の廃止と――清酒特級についてですよ、これをぜひ検討する必要があるのじゃないかと思います。  それから同時に、あるいはさっき言った従価税の非課税限度額ですね、八百九十一円でしたかな、これを大幅に引き上げて、努力すれば採算がとれるようになるというような状況を税制上からも十分配慮してつくっていくということが必要じゃないかと思いますが、これはひとつ大蔵大臣、非常に大事な問題ですし、業界が非常に困っている問題でもありますので、ぜひ御答弁いただきたいと思います。
  135. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 大臣からお答えいただきます前に、従価税の問題でございますが、この点は率直に申し上げまして、ちょっと渡辺委員と私どもの考え方の方向が逆になっておるのかもしれません。私どもは、やはりほかの委員からいろいろ御指摘ございましたように、むしろ高いものは高いなりの負担ということの方が現実に可能であれば望ましい、したがって方向としては従価税の方向の方が望ましいと実は考えておるわけでございまして、まあせっかくできております制度でございますので、この清酒についてだけ従価税をまたやめて全部従量税に戻すというふうにはなかなか考えにくいと、正直に申し上げて私はそう思っております。  それから非課税限度の問題は、これは通常の、いまで申しますれば大体普通千九百円台の従来特級というものがきわめて一般的でございますから、それが二千百円、百十円ということで若干ゆとりがあるんだと私どもは考えているわけでございますけれども先生おっしゃったように、今後の品質改良の努力とか、いろいろの清酒製造業が新しく努力をなさっていくために税制上で配慮を加えられる余地がありますればそれはそれとして十分に考えていきたい。ただ、やはりそれは実情に即して実態をよくながめて決めていきたいと思っておりますので、一挙に大幅にとにかく上げさえすればいいというわけでもなかろうかとは思います。
  136. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) この問題は従価、従量をやっておりまして、従量税を上げますとまあ何と申しますか、数学的に必ず委員指摘の問題が出てくるわけでございます、酒税に限らず――酒税につきましては特に政府の税調等で従価税の方向で検討せいとこういう話で、いまのところなかなか踏み切れない、ということは、むしろ小規模のというか、販売力のない清洲業者の問題を考えておるものですから、なかなか踏み切れないところにあるわけでございます。
  137. 渡辺武

    渡辺武君 踏み切らない方がいいですよ。
  138. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) しかし、委員のおっしゃったこともよくわかりますが、全体の問題として検討してみたいと思いますが、なかなか非常にむずかしい問題だということだけは、私も非常にむずかしい問題だという感じがしています、
  139. 渡辺武

    渡辺武君 大臣は私の質問を逆に考えていらっしゃるんじゃないかな。
  140. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) いや、これは従量税の方をずっと上げてまいりますれば必ずそういうことになるわけでございます。したがって、いわばもう数字的にその問題は当然出てくるわけでございまして、やはりその従価税課税最低限のところを上げなくちゃいかぬ、そこのところではだからゼロからあそこまでいくわけでございます。これはしかし、どうしてもそれは数字的にその問題は出ざるを得ない、その点はよく理解しておるわけでございます。ただ、酒税のあり方としてはどちらかと言えば従価税が望ましい、それがいまできないということは、販売力のないものに対して、なかなか、値段を上げたいけれどもそれに従価税だとついでに税まで来る、こういう問題が競争力のないメーカーにとりまして大きな負担であるということでなかなか従価税に踏み切れない、こういうことでございますので、委員指摘される問題は問題といたしまして、全体との方向でどう考えるべきか、こういうことで検討してまいりたいと思います。
  141. 中村利次

    ○中村利次君 財政事情あるいは財政の見通し等から税収をどうふやしていくかということが大事なこれは課題でございますから、ことしは特別措置の見直しあるいは手数料の改定あるいは酒税の増税等が政府から提案をされたわけでありますけれども、そういう意味で酒税――たばこは今度は入っていない、酒税を抜き出して増税をすることの可否については大いにこれは議論のあるところでございます。  幾らかの質問もしてまいりましたけれども、私はきょう政府の姿勢で大変に評価をしますのは、私も前回の質問清酒の原料米の政府払い下げについて、何も古米をやらなくても当年産米でやればいいじゃないか、これはもう品質のどうこうではなくて、これは政府の答弁にも前回ございましたように、たる取引があればたる買いをする、買う方は、やっぱり品質の差があろうとなかろうと新米を使った酒を置いたがるというのは、あるいはまた消費者もそういうものを求めるというのはこれは理屈抜きだと思うんですね。そういう点について固執をしないで当年産米にしましょうということは、これは私はまことにすっきりしていて評価をしていいと思うんです。あるいは売却決定の期日も努力をしようということでありますから、大分、私はいろいろ質問事項もあったんですが、政府の姿勢をきわめて高く評価して簡単に基本的なものだけ質問をして終わります。   これは、この前も申し上げましたように、酒税を仮にいじるとすれば問題になるのはやはり名酒の消費動向、それから政策を酒税にどう加えていくのか、果たして販売面において公正な競争が行われるであろうか、あるいは伝統ある民族酒である清酒に対する対策をどうするのか、これはもうきわめて特徴的なのは、九百万石の酒をつくる業者が三千社に余るという典型的な中小企業ですから、ビールやウイスキーとは全く事業形態そのものが違う、そういう点に対する配属と、もう一つは、最近国民の中でこれは評価し直しをされたというのか、要するに果実酒等についてどう政策的な配慮を加えるのかということ、それからさま変わり的な消費動向を示しつつあるしょうちゅうが一体どうなっているのか、こういう点が酒税を抜き出して考えた場合その対策がどうなのかということになろうと思うんです。  そういう意味では、確かに税調の答申を受けて政府も配慮の跡はあります。ありますけれども、なおかつ各委員あるいは私も取り上げてまいりましたように、たとえば清酒の場合にはここ数年間毎年上げておる。上げざるを得なかったんだかどうか、まあ得なかったんでしょう。それから質問による答弁によりましても、ウイスキーあるいはビールあるいは清酒、これのコストの動向はおのおのこれは違いますね。ですから、今度のこの酒税について質問をするのはよしましょう。今後酒税を考える場合、いま私が申し上げたようなそういうものを考慮に入れてどういう対処をされるおつもりか、それをまず伺いたいと思います。
  142. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 今回の改正につきましていろいろな配慮を加えておりますが、今後仮に酒税の負担を見直すという時期がまた参ります場合には、やはりただいま中村委員がおっしゃいましたように、そのそれぞれの酒類間の競争条件が今回の改正以後どのように変化したか、消費の伸びがどうであるか、原料事情がどうであるかということを考えながら、やはりそれぞれの酒類が、もちろん基本的には企業努力を期待したいわけでございますか、正常な取引のもとで正常な経営ができるようにという角度を常に念頭に置いた見直しをすべきであろう。抽象的で申しわけございませんが、基本的にはそういう考え方を忘れてはならないだろうというふうに私は考えております。
  143. 中村利次

    ○中村利次君 文句のつけようのない御答弁でございまして、ぜひそれをひとつ具現化をしてほしいと思います。  清酒だけについて考えますと、私はやっぱり二級酒の増税を据え置いて特級に厚く一級に薄い増税にしたということは原則的に理解できますし――これは増税に賛成ということではありませんから誤解があっちゃいけませんが、仮にする場合、これは理解をします。しかし、それに反対というんじゃありませんが、やっぱり、たとえば一級と二級の場合には小売価格で三百七十五円の差があります。それで実際の手取り額、これは途中の流通機構のあれも含めてですけれども、手取り額は百四十三円八十八銭ですか、それから一級特級では小売値段の差は五百五十五円、流通機構の経費も入れた実質価格の差は二百一円三十八銭。よく聞くんですけれども、たとえば中小酒造家ですね、まあ千石だとか二千石だとか三千石というようなそういうところでは、一級特級で売るだけの実力を打っておるんだけれども、宣伝費を出してやったんではかえって損になっちゃう。これはそうだと思うんですね。たとえばテレビに宣伝する、あるいは新聞広告する、これはもう広告代なんというものは何百万、何千万なんという、百ガ単位、一千万単位が一発で消えるわけでありますから。それから、私はこの広告そのものにも大いに議論があるんです。広告なんというのはあれは比較効果ですからね、広告がエスカレートして金をうんとかけ、この資源節約時代にうんと広告代をかけて広告しても、みんながやったんでは広告効果木なんというものは上がらない。中小企業の酒の場合には特にそのことが露骨でして、高い広告代を出して特級一級で売るぐらいなら、それだけの力はあるけれどもかえって手取りでは損しちゃうから二級で出すんだと。あるいは、そこら辺はどうだか知らないけれども、くやしいけれどもいわゆるたる売りをするんだと、こういうのがあると思いますが、そういう点の配慮はどうでしょう。
  144. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生おっしゃったとおり、清酒価格構成でございますが、確かに二級の場合ですと、製造者の税引価格が五百九十一円というような数字に対しまして、酒税がかかりまして、卸売マージンが百一円、小売マージンが二百一三十一円、全く平均数字でございますが、こういうようなマージンがありますが、そのほかいろいろリベートといったような形で清酒業界販売促進活動をやっておることは事実でございます。ただ、おっしゃるとおりの点もございますわけでございますが、リベートとかそういう販売促進費というものはある程度商慣習として業界にも定着している問題でございますし、余り過度のものにつきましては私どもももちろんそれは指導しているわけでございます。さらにまた、なるべくそういうものは価格に織り込まぬようにと。結局価格の引き上げを通じまして消費者価格が上がっていくわけでございます。そういう意味におきましても、こういうものが過度に流れるのはよくないということで指導を常々やっておるわけでございます。今後もそういう点につきましては、特に清酒の場合につきましてそういう出題について十分注意してまいりたいというふうに思っております。  それから、先ほど御質問ございました広告の問題でございますが、確かに大メーカーはテレビでどんどん広告できる、一方におきまして中小メーカーはなかなかそういうようなことができないというような実情にございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますマーケティング力の差という問題もございまして、どうしても勢いリべートとかそういうものに頼っていくというような問題もあるわけでございます。こういう点につきましても、宣伝費をどれほど使ってもいいというものでは、私は先般来申し上げておりますように、お酒というのは致酔飲料でございますし、やはり飲み過ぎては害が出るという問題もございますので、そういう特性から言いまして、極端なものはやはりうまくないということに思っておりますし、そういうような方向で私どもも広告費についてはある程度限度があるというふうに考え、またそういうような指導もしておるわけでございます。  その二級で出すといったような問題もございます。確かに清酒業界三千の方々が一生懸命努力しておられるわけでございますが、いま申し上げましたようないろいろな事情がございましてなかなか清酒が売れない、そこで二級で出すというような問題、あるいはおけ売りをするといったような問題もございます。しかし私どもといたしましては何とか、そういうような活動を自主的に任せておくということではやはり中小企業の対策としては不十分だということで、先般来申し上げておりますように、各種の近代化の計画に対しまして側面的に援助するというようなことで安定法の改正案も御提案申し上げておるわけでございますし、そのほかいろいろな各種の振興策を清酒だけにつきましては特別にやっておるわけでございます。  地酒の振興につきましてもお話ございましたけれども、地酒がやはり特色のあるお酒として選好されていきますことは、中小メーカーの対策としても、またその地域におきます産業振興の観点からいっても好ましいというふうに私ども考えておるわけでございまして、地酒の振興につきましても、いろんな県産酒愛用連動とか、あるいは特色のある地酒というものを奨励していくというような形におきまして、その地場地場におきます清酒が将来とも育っていくようにということを私どもも期待しているわけでございます。今後も先生のお言葉を激励のお言葉というふうに考えまして一層努力してまいりたいと思っておるわけでございます。
  145. 中村利次

    ○中村利次君 もういい気持ちになって、やめましょう。確かに清酒業界は非常にむずかしいと思いますね。細かくここでただしていくのはあるいはむしろ当を符ないのかもしれない。欠損業者が二九%もあって、まだ大蔵省の見通しから言っても、廃業をする方たちは、欠損業者の中でもかなりがんばって残る人がある。こういうのはやっぱり清酒が日本の伝統的な民族酒であるといういろんな理由も入っておりましょうし、ですからひとつ大変に困難なことではありましょうが、どうか主税局長の先ほどの御答弁、それから国税庁間税部長の前向きの御答弁等をひとつ具現化をして善導をしていただくことを要望いたしまして、御答弁要りません、私の質問を終わります。
  146. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  148. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は、日本社会党を代表して、ただいま審議しております酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、反対の立場を表明し討論を行います。  今回の改正に当たり、増税率や清酒製造業の安定策について若干の配慮をした点は認められますが、それはきわめて狭い視野においてなされようとするものであって、国民が今日最も望んでおります公平な税金の負担、大衆課税の重圧排除の基本的立場に立つならば反対の態度を表明せざるを得ません。  まず第一に指摘しなければならない点は、今回も政府は財源確保の道を大衆課税に求めているということであります。  酒税は去る五十一年、たばこの値上げとともに平均二二%の大幅増税を実施しました。当時の国会審議経緯やあるいは国民世論の動向を見ますと、非常に値上げ反対の強い状況であったことは周知のとおりであります。にもかかわらず、わずか二年余の今日、再び大幅増税を行うことは国民世論を全く無視することになります。今回の改正は清酒三六・七%、ビール四七・四%、ウイスキー特級五〇・九%に達し、実に五〇%にも上る負担となるわけであります。政府は、常に財源確保に当たって取りやすい、かけやすいということで大衆課税に安易な道をとっている点は全く不満であります。  第二は、増税の結果は必然的に小売価格販売価格の値上がりになることは必然であります。また、この位上げを理由とした諸物価への影響も明白であります。その結果は、家計への影響も過去の実績が示すとおり、生活費に大変大きな重圧となり、また長引く不況下で国民生活をますます暗いものにするものと思います。今日の最大の政治課題は言うまでもなく景気の回復であり、かつ国民生活の安定でありますが、今回の措置はこれに相反する政策と断ぜざるを得ません。  第三は、増税による税収入拡大の裏には、特に清酒製造業にとって死活の問題に直面した点であります。数字がいみじくも示しておりますとおり、ビール、ウイスキー類の販売量の拡大に反比例をいたしまして清酒の売れ行きは下落の一途をたどり、中小の企業が倒産し、転業しているものが逐次増大しているということであります。清酒は歴史的に見ましても日本文化を象徴するものであるだけに、古来の文化を守り、継承する立場から産業政策がなければならないと思います。にもかかわらず、政府は相変わらずただ税収対象物品として取り扱っているということは全く不満を表明せざるを得ません。諸外国の例を見るまでもなく、イギリスのスコッチあるいはドイツのビール、フランスのブドウ酒などはそれぞれの国を代表する飲料で、国も国民もこれに誇りを持っております。酒類消費者のニーズによることは論をまちませんけれども、日本古来の民族的文化である清酒について、文化的遺産を守るための産業政策がぜひ必要であります。そのためには、原料米が飯米との関係などできわめて硬直的な態度をとっておりますが、これを改めて政治的に決断をしなければならない時期だというふうに強く指摘する次第であります。  今日、税に対します国民の率直な要求は、まず大幅な所得減税などの実施とともに不公正税制の是正に代表されております。政府は本年度の予算編成の中心を公共事業投資に偏重しておりますが、国民は国民生活の安定とともに消費購買力の伸長を強く期待しておりますが、さきの野党五党要求に対しましてはわずか三千四百億円程度の減税で終わらせようとしております。減税措置は少なく増税規模を大きくしようとしているのが今回の特徴であります。不公正税制に対します今回の措置は具体的にわずか三百四十億円であります。これに比べまして酒税によります増収額は千七百億円に上っており、大衆課税への依存度が高く、不公正税制に対する意識はきわめて微々たるものと言わざるを得ません。  以上のごとく、特徴点のみを取り上げた次第でありますが、政府は経済成長率七%、経常収支六十億ドルの達成を内外に明らかにしたところでありますが、いずれもその達成は年度初めで危ぶまれており、その上に国民の消費意欲をますます減退させるような大衆課税の増税は絶対に許されるべきものではないと考える次第であります。  以上をもちまして私の反対討論を終わります。
  149. 細川護煕

    ○細川護熙君 私は、ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党を代表して賛成の意見を表明するものであります。  初めに、酒税法の改正法について申し上げます。  わが国の財政は、昭和五十三年度予算において見られますように、実質的にその歳入の四割近くを公債に依存しているという異常な状態にあるわけですが、当面の景気対策との関連を考慮しつつ財政健全化の推進を図るとすれば、致酔飲料という特殊な嗜好品に負担の増加を求めることはまことにやむを得ないところではないかと考える次第であります。この場合、原料事情や消費の態様等に配意して清酒等につき負担引き上げ幅を低く抑え、あるいは負担据え置きとするなどの配慮を加えていることは適当な措置であると思われます。  次に清酒製造業の安定に関する特別措置法の改正でありますが、現在第二次近代化促進計画に取り組んでいる業界の自己努力を側面からバックアップするために、今回この安定法を改正し、転廃業者への給付金の給付を再開するなどの措置をとることは時宜を得たものと考えられます。  ところで、清酒製造業については、清酒は伝統ある民族酒であり、またその生産者の大部分が中小企業者で占められているという点において、さらに主食である米を原料としている点において他の酒類業界に見られない特異性が認められるところであります。今回、この法改正を行う機会に、こうした観点に留意して清酒製造業についてより一層十分な指導育成措置が講ぜられることを関係当局に強く要望するものであります。  以上、私は本法案について賛意を表明して討論を終わります。
  150. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  反対理由の第一は、今日の財政危機を招いた反省もなく、財政再建の基本的、総合的な長期計画もないまま、取りやすいところから増税するという政府のこそくな姿勢であります。  財政再建は至難のことであり、短期間でなし得るものでないことば異論のないところであります。それだけに、長期的視野に立って国民の理解を得ながら勇気ある改革が行われるべきであります。政府には、国会対策しの財政収支試算はあっても真の財政計画はありません。こういう中で行われる今回の増税には賛成できません。  反対する理由の第二は、酒税の引き上げそれ自体は強いデフレ効果を持つものであって、当面する最大の政治課題である景気浮揚策に逆行することであります。  現在わが国の国内経済の情勢は、五十二年度の年間企業倒産が史上破局の一万八千件になるという深刻な不況の中にあり、昨年末以来の急激な円高によって輸出依存型のわが国経済は大きく揺れ動いているのであります。いまこそ速やかなる景気回復を図ることに努力しなければならないはずであります。   しかるに政府は、内需拡大の具体策については相変わらず公共事業編重であり、所得減税を見送ったのであります。その上に、大衆嗜好品であり国民の生活飲料である酒類の税金の引き上げを行うことは、それが最終的には消費者に転嫁されることになり、国民生活を圧迫するだけでなく、ひいては内需拡大に大きな妨げとなることは明らかであります。このように、酒税の引き上げは単に大衆課税の強化という問題にとどまらず、当面する経済政策に反するものとして賛成するわけにはまいりません。  第三は、不公平税制の是正措置を十分行わず、なおかつ、歳出の削減、機構の合理化も実行されず、大衆課税を優先させることであります。政府は、財政難を理由に酒税の引き上げを行おうとしておりますが、真に財政再建を図るために税制改正を行うならば、何よりも最優先すべきは不公平税制の是正なのであります。  五十三年度税制改正において是正された不公平税制は、有価証券取引税の若干の引き上げ、企業関係の租税特別措置の整理合理化も一部のみであり、その増収額は初年度でわずか三百四十億にすぎません。それに比べて酒税の引き上げによる増収額は一千七百七十億円にもなり、明らかに不公平税制を是正することよりも大衆課税の強化が優先されていると言わなければなりません。  酒税のように間接税は直接税と異なり、高額所得者も低額所得者も消費量に応じて一定に税を負担しなければならず、低所得者階層により負担が重くなる税の逆進性があるのであります。政府がわれわれの再三の要求にもかかわらず、いまだに不公平税制の是正など財政再建の方途を明確にしないまま酒税の引き上げを行うことは、国民生活、特に低額所得者に犠牲のみを強要するものであり、反対せざるを得ないのであります。  第四は、酒税の引き上げが不況下の国民生活を圧迫し、消費者物価の引き上げ、インフレ要因としての危険が伴うものであることであります。現在、消費名物価が落ちついているとはいえ、これは政府の物価安定の努力によるものではなく、長期の、不況と円高による内需の低迷がその原因と言えるのであります。政府は今後、公団家賃、国鉄運賃、大学授業料などの公共料金の値上げを予定しており、しかも一方では大量の国債発行、円高現象などインフレ要因が山積し予断を許さない状況にあります。このような危険な状況下のもとに酒税の引き上げを認めることはできないのであります。  最後に、消費の伸び悩みが著しい清酒についても増税の対象としているのでありますが、伝統的な国民酒である日本酒の製造業界は、そのほとんどが中小企業者で占められており、毎年の原料米の上昇、他の酒類業界との競争力の低下等で苦境にあえいでいる状況にあります。それゆえに、政府管理米の売却等に当たっては政府の特段の配慮が不可欠とされるわけで、手厚い措置を強く要請します。また、表示問題に関する酒類間の不公平是正も速やかに是正させることを強く要求して、反対討論といたします。
  151. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、日本共産党を代表して、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案に反対するものであります。  反対の第一の理由は、本法案が大衆課税の増徴にほかならず、停滞している国民の消費水準を一層圧迫して、政府の低福祉政策などとも相まって景気の回復を困難にするものだからであります。また、前回の酒税の増税と同様に、今回の増税も清酒の消費量を特別に減少させ、清酒業界に特別の打撃を与えることは明らかであります。  政府が昭和五十三年度の税制改正で、企業関係の租税特別措置の改廃による増税額を初年度わずか十億円にとどめながら、酒税の増税額は初年度で千七百七十億円としたのは、まさに国民生活と中小企業の犠牲によって当面の財源難に対応しようとするものであり、断じて容認できないのであります。  反対の第二の理由は、清酒業界に不利になるような取り扱いはしないという大蔵大臣のたび重なる答弁にもかかわらず、本法案成立の結果は、清酒特級の一七・五一%の増税率に比べ、サントリーオールドは一六・二四%、ロバートブラウンは一一・一八%の増率にとどまっており、明らかに清酒に不利な税率となっているからであります。ウイスキーやビールと公平な競争ができるように清酒に対して負担引き上げ幅について所要の調整を行うと述べた税制調査会の答申さえ無視する政府に、日本古来の清酒を民族の酒として保護育成する気持ちが乏しいことは明らかであり、本法、案のような措置はとうてい容認できないのであります。  反対の第三の理由は、政府には依然として酒税行政はあっても酒類産業政策はなく、特に清酒業界についてしかりであります。政府みずからが毎年原料米価格を引き上げ、酒類間の競争清酒が決定的に不利な条件をつくり上げていながら、いまなお原料米について根本的に解決しようとしておりません。この点に関する私ども質問に大蔵大臣は前向きの答弁をされておりますが、その根本的解決のため政府のなお一層の努力を強く、要請するものであります。  最後に、清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部改正案についてでありますが、サントリーに見られるように、その量においてもその内容においても多くの問題を含む広告宣伝や不完全な表示をいまなおウイスキー、ビール業界で野放しにしておいて、清酒業界にだけ構造改善の名のもとに弱小清酒メーカー、おけ売り業者の整理淘汰と転廃業を進めることは片手落ちであり、かかる措置に反対するとともに、ウイスキー、ビールの広告宣伝、表示などの規制を強化し、清酒とバランスのとれた酒類の振興のため、政府はなお一層の努力を行うべきことを強く要請して、私の反対討論を終わります
  152. 中村利次

    ○中村利次君 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対し、民社党は反対をいたします。  当面する決定的な政治課題は景気を立て直すことであり、あるいはまた、財政の健全化をどう図っていくかということにあると思います。財政の健全化につきましては、税収をどうふやしていくかということが避けられないということになりますと、その前提としては、各委員指摘しておりますように、税制の公正、税の公平化というのが前提になることは論を持ちません。景気の回復につきましては、これは政府も提唱をしておりますように、消費をいかにして回復をするかということに尽きると思うのです。  私は、反対の内容について細かな指摘を省略いたしますが、そういう当面する決定的な政治課題のたてまえから申しましても、とうてい本案に対しましては民社党として賛成するわけにはまいりません。  以上、反対の討論といたします。
  153. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  155. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  福間君から発言を求められておりますので、これを許します。福間君。
  156. 福間知之

    ○福間知之君 私は、ただいま可決されました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党、第二院クラブ及び新自由クラブの各派共同による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。   酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一謂を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について、留意すべきである。 一 清酒が伝統ある民族酒であることにかんがみ、清酒製造業に対し、原料事情の特殊性、業態の特異性に留意しつつ指導・育成に努めること。 一 清酒原料用の政府管理米の売却に当っては、できる限り新米をあてるように努力すること。 一 酒類の特性に配慮し、正常取引を維持するため、必要に応じ流通等のあり方について行政上及び制度上の措置を講ずるよう努力すること。 一 今回の酒税の改訂が小売価格の不当な値上げにつながらないよう十分に指導すること。 一 酒類アルコールを添加した場合の表示方法については、清酒の場合と同様、他の酒類においても不当景品類及び不当表示防止法の趣旨に即して適正な表示が行われるよう指導すること。   右決議する。  以上でございます。
  157. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいま福間君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  木附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  158. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 全会一政と認めます。よって、福間君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、村山大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。村山大蔵大臣。
  159. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意いたしたいと存じます。
  160. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。  午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ―――――・―――――    午後二時五分開会
  162. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、柿沢弘治君が委員辞任され、その補欠として野末陳平君が選任されました。     ―――――――――――――
  163. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 昭和五十三年度における財政処理のための公債八呼応及び専売納付金納付の特例に関する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。村山大蔵大臣。
  164. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) ただいま議題となりました昭和五十三年度における財政処理のための公債の発行及び専売納付金納付の特例に関する法律案につきまして、その提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和五十三年度の予算編成に当たりましては、わが国経済及び財政の状況にかんがみ、財政の節度維持にも配慮しつつ、民需の動向を踏まえ、内需の振興のため財政が主導的な役割りを果たす必要があるとの基本的な考え方に立って、臨時異例の財政運営を行うこととした次第であります。  ところで、昭和五十三年度においては、歳入面では、酒税及び有価証券取引税の税率の引き上げを行うとともに、新たに石油税を創設する等の措置を講ずることとし、さらに、税収の伸び悩みを補い、財源の確保を図るとともに、地方財政対策等にも資するため、昭和五十三年度内に納税義務が成立し昭和五十四年五月中に収納される税収について、年度所属区分を変更して、これを昭和五十三年度所属の歳入として受け入れることとしておりますが、なお十分な租税収入を期待し得ない状況にあります。  他方、歳出面では、投資的経費と経常的経費とに分けて検討し、投資的経費については、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備を一層推進するとともに、景気の回復を早めるため積極的に規模の拡大を図ることとする反面、経常的経費については、財政節度の維持に努める見地から極力その規模を抑制することといたしましたが、特に緊要な施策については、社会経済情勢に相応して、重点的にその充実を図ることとしたところであります。  このような歳入歳出両面の状況にかんがみ、昭和五十三年度においては、財政法の規定により発行する公債のほかに特例公債の発行によらざるを得ず、また、日本専売公社から通常の専売納付金のほかに特別の納付金を受け入れる必要があると考えるものであります。  このため、同年度の特例措置として昭和五十三年度における財政処理のための公債の発行及び専売納付金納付の特例に関する法律案を提出する次第であります。  しかし、このような措置はあくまで特例的な措置であり、特例公債に依存する財政からできるだけ速やかに脱却することが財政運営の要諦であることは申すまでもございません。政府といたしましては、財政の健全化を図るため全力を尽くす決意であります。  以下、この法律案の内容について御説明申し上げます。  第一は、特例公債の発行等についてであります。まず、昭和五十三年度の一般会計歳出の財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、特例公債を発行することができることといたしております。  次に、租税収入実績等に従って、特例公債の発行額の調整を図るため、昭和五十四年六月三十日まで特例公債の発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入は、昭和五十三年度所属の歳入とすることといたしております。  また、この法律の規定に基づき、特例公債の発行限度額について国会の議決を経ようとするときは、その公債の償還の計画を国会に提出しなければならないこととしております。   なお、この法律に基づいて発行される公債については、償還のための起債は、行わないものとしております。  第二は、日本専売公社の特別納付金の納付についてであります。まず、日本専売公社は、昭和五十三年度限りの措置として、通常の納付金のほか、積立金のうち千五百六十九億円に相当する金額を昭和五十四年三月三十一日までに国庫に納付しなければならないこととしております。  次に、この特別納付金に相当する金額は、積立金の額から減額して整理することといたしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。  なお、本法律案はその施行日昭和五十三年四月一日と提案しておりましたが、その期日を経過いたしましたので、衆議院におきまして公布の日に修正されておりますので、御報告いたします。
  165. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  166. 福間知之

    ○福間知之君 いま提案のありました五十三年度における公債の発行及び専売納付金納付に関する特例について質問をいたします。  まず、大蔵省にお伺いしますが、この三月で終わりました五十二年度のいわゆる公社債店頭売買の残高は幾らになっていますか。
  167. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 五十二年中の公社債合計の店頭売買高は百十三兆一千六百四十三億円でございます。
  168. 福間知之

    ○福間知之君 そんなものですか、百三十兆までいっていないですか。
  169. 山内宏

    政府委員(山内宏君) いまのお尋ねの点は、三月で切ればあるいはその程度までいっているかもしれませんが、いま私の申し上げましたのは五十二年分でございます。一月から十二月までの分でございます。
  170. 福間知之

    ○福間知之君 そしたらその数字で前年度に比べてどれくらい増加いたしていますか。
  171. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 年度で申しますと、先ほど御質問にございましたように百三十三兆余りでございますが、これはその前年には七十一兆三千九百億程度でございます。
  172. 福間知之

    ○福間知之君 そうしますと九割以上の増加、ほぼそういうことに――百四十兆でほぼ倍ですから九割以上の増加になると思うんです。   これは、昨年こういう高い伸び率になった原因なり背景というものをどのように見ておられますか。
  173. 山内宏

    政府委員(山内宏君) やはりこの点は、一つはいわゆる公共債の発行量そのものがふえたということ、それからそれに対応いたしまして公社債市場の育成強化に努めてまいりました結果、従来に比べましていろいろの流通面における制約がありましたのが逐次解除されてまいりまして、かなり市場においても弾力的な売買が可能になったということであろうかと思います。
  174. 福間知之

    ○福間知之君 そのこととあわせましてさらに見落とせないのは、長期の不況で民間の資金需要というものが薄くなっている、そこへもってきまして金融はしたがって超緩和というふうな状況で推移をしていますから、機関投資家だとか事業会社だとかあるいは金融機関等で、いわば債券への志向というものがかなり強まった、こういうふうに見れると思うわけですね。  そうしますと、ここで問題は五十三年度、先ほどの提案のようにさらに特例債あるいは四条公債、十一兆円近くの発行が行われる、こういうことでございますんで、しかもそれは適切に市場を中心にして消化を図らなければならない、こういうわけでございますんで、昨年のそのような市場の拡大というものが一層進むのではないか、こういうふうに考えられるわけです。その場合に、大量の投資の資金というものを吸収する公社債市場の機能というものがどうあるべきか、これが非常に大きな問題だと思うわけでありまして、日本のいまの経済、景気動向からしまして、ことしの後半果たして資金需要というものが膨大なこの公社債を消化する上でそごを来さないだろうかという懸念を少し感ずるんですが、当局はどのように判断されていますか。
  175. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 数量的な点は別にいたしまして、御指摘のとおり、公社債市場がいかに有効に機能的に作動いたすかということが、御指摘のような点に対する一つの答えを提供するものであろうかと思う次第でございます。従来におきましても、発行形態の多様化を図りますとか、あるいは発行条件をかなり弾力的にその都度改定いたしますとかいうふうな形を講じてまいりますとともに、流通機構の面におきましても各種の改善措置を講じてまいっております。  たとえば、公社債の店頭気配の発表制度の充実でありますとか、あるいは流通金融の拡充でありますとか、そういった方法でもって流通機構の整備に努めてまいったわけでございます。今後もこういう努力をさらに引き続いて各般にわたって強化をいたしてまいりまして、いま御指摘のような形での今後における多量な公共債を中心とする公社債市場の、いわば流通市場の手厚い発達ということに努めてまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  176. 福間知之

    ○福間知之君 いま国民総生産、すなわちGNP比率で公共債の発行残高というのはどれくらいの比率になっていますか。これは国債なりあるいは政保債、非政保債、地方債に分けてどれくらいの比率になっていますか。
  177. 山内宏

    政府委員(山内宏君) GNPの全体が約百九十兆円でございますが、五十二年度の上期におきますところの各種公社債の現在高は約五十二兆円でございます。
  178. 福間知之

    ○福間知之君 私の手元の資料では、五十二年末の残高、額面ベースで五十七兆八千八百八十三億円、こういう数字が出ております。これ局長の方も調べれば出てくる、大蔵省の数字でございますけれども、間違いないと思うんですが、大体GNP比で五十三年度二百十一兆円ぐらいもくろんでいるわけですね。そうしますと幾らぐらいになりますか、これが比率にしますと三〇ぐらいになりますか、三〇近くなるということのようであります。  問題は、国債をわれわれはいま議論するわけですけれども、国債だけじゃなくて他の公共債を含めますとこの比率がかなり高くなってきておるわけでありまして、問題はだからこれを消化をしていく、なかんずく国債の場合にはいままで発行の条件というものがかなり硬直的であったということからしまして、今年度さらに多額の国債の発行ということを考えあわせますと、今後の無気動向、資金の需要動向と絡んで少し問題が出てくる危険があるんじゃないかと、こういうように懸念をされておるわけであります。当局はその点について、確かに先ほどおっしゃられたように、ここ四、五回ばかり条件の引き下げなどが行われたり、また最近におきましてかなり積極的に新しい中期債の発行を考慮しようとか、銀行の売買についても弾力化していこうとか、いろんなことが考慮されておるやにうかがうわけですけれども、それでいてなおこの資金需要というものが出てきた場合に一種の混乱というものが起こらないのかどうか、この点が懸念されておるわけですけれども、あるいはまた、その混乱というものの中に資金散布によってややインフレ助長というふうな危険が起こらないだろうかということも含めて、いま一般に懸念があるわけでありますけれども、当局はその点について心配ないんだと、こういうお見通しですか、いかがですか。
  179. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 先ほどの公共債残高のお話がございましたので、それに関連しましてお答えを申し上げたいと任じますが、私どもの推計、五十二年度につきましては地方債がまだ確定しておりませんので、公共債残高の総計がその部分は推計になりますけれども、五十二年度末におきます公共債の中身といたしましては、国債、政府保証債、政府関係機関の非政保債、いわゆる国鉄等の縁故債でございます、そのほか公募地方債、縁故地方債、これを含みまして残高で六十兆三千億程度というのが五十二年度末の数字であろうと思います。残高ペースで申しますとそういうことでございますが、いま本年度の資金需給その他から見て公共債が非常に大量に発行され、今年度下期において民間資金需要が出た場合にどういうことかと、クラウディングアウトその他の懸念はないかという御趣旨の御質問かと存じますが、私どもの推計では、五十三年度におきましては金融部門――これらの公共債は主として金融部門で消化されるわけでございますけれども、金融部門におきます資金需給を推計いたしましたところ、五十三年度におきましては金融部門における資金の増加額が約三十三兆円程度というふうに見込まれております。この三十三兆円程度の資金の増加額に対しまして、民間向けの貸し出し等が本年度約二十兆三千億程度と推定されますのに対しまして、来年これを約一割増と見ましても二十二兆五千億程度、これが民間部門への資金貸し出しということになろうと思います。それから公共債の負担分、公共債の負担と申しますのは、来年は二十兆程度の国債、政府債合わせて公共債が新規に発行されますけれども、いわゆる償還分がございますので、ネットの純増ベースでこれを考えてみますと、来年度の公共債の負担、民間金融機関で負担していただく分が約十兆五千億円程度というふうに推計されております。そういたしますと、民間の貸し出しと公共債負担、これらを合わせまして約三十三兆円程度でございますので、一割の貸し出し増があったといたしましてもほぼ金融部門における資金需給はとんとんであろうと、そういう意味におきましては本年度に関する限りはさしたる問題はないであろうというふうに考えておりま・す。
  180. 福間知之

    ○福間知之君 いまの御答弁は二月の十三日に村山蔵相が衆議院の予算委員会で御答弁されている内容とほぼ似通っていると思うわけであります。そのうち民間の公共値引き受けがいま十兆五千億とおっしゃいましたか。そんなに少ないわけですか。
  181. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 五十三年度におきます公共債の発行予定額をまず申し上げますと、新規発行予定といたしまして国債が十兆九千八百五十億、政府保証債が一兆三千六百億、それから政府関係機関等非政保債が一兆七十七百億、地方債が六兆二千百九十七億、合わせて二十兆三千三百四十七億の公共債の発行が予定されております。しかしながら、これらのうちで運用部で引き受けるもの、すなわち、地方債あるいは政府関係機関等の非政保債等で運用部で引き受けるものがございますので、これらかそのうち三兆三千五百億程度、それから地方債におきまして公営公庫で引き受けるもの、これが約九十億弱、これらを差し引きますと市中機関で引き受けるものは新規分として十六兆九千九百七十億程度ということになります。十六兆九千億程度の新規発行に対しまして、過去の既発債の償還分というものがございますので、純増ベースで申し上げますとただいま申し上げたように約十兆五千億程度の民間金融部門の引き受けになろうか、こういうことでございます。
  182. 福間知之

    ○福間知之君 さらっと申されたけれども、少しのみ込みにくいものですから、できましたらただいまの説明の資料を、後ほどで結構ですが、参考にちょうだいできたらと、こういうように思います。   私は、問題はそういう一般の資金需要と公共債全体の推移といいますか、関係というものはどのようになっていくのかと、こういうことがやはり経済動向と絡んでひとつ懸念をされますので、いまのお話では一応の見通しということで、生き物である経済のこれからの動向と、それに伴って変化するであろう資金需要関係というようなものは必ずしも十分に読み込むことができているとは言えないと思います。ただ、それはここで議論してみても仕方がないわけでありますが、要するに最近のこの円高の状況とか、あるいはまた局間資金の株式などへの移動だとか、あるいはまた公社債への志向というふうな傾向は、少なくともここ一年、二年一つの変化を示してきたことは事実であります。それに伴って大蔵当局も、一方における国債の大量発行ということとあわせ、国債の発行条件の弾力化ということを一つの大きな改革のテーマとして取り組んできているわけであります。そのことは私はさらに一歩進めていくべき方向だろう、こういうふうに思うわけでありますけれども、巷間、予算委員会でも議論の対象にしたわけですが、例の銀行における窓口販売等の問題一つとりましても、証券業界との対立といいますか、が見られるわけですね。いま大蔵当局としては、これほど国債を大量に発行せなきゃならぬ時代が来た。しかも財政収支試算によりましても、五十七年度までAケースでは百二十三兆円というふうな最悪の大量発行を余儀なくされるんだというような試算すら出しておられるわけでありまして、一方においてこれは膨大なまた国債費というものを伴うわけであります。そうしますと、国債を償還するために国債を発行せなきゃならぬという、ふうな事態というものがそこに読み取れるわけであります。そんなことを考えますと、どうしても国債というものをいままでの発行条件とは大きく転換を図っていく、そしてもっと国民全体がそれを買い、あるいは支えていく、結果において財政を支えていくというふうな状況を一日も早く拡大せなきゃならぬ、こういうふうに考えるわけであります。   最近――最近というと語弊かありますが、昨年の秋でしたか、証券取引審議会がその中の基本問題委員会におきまして、「望ましい公社債市場の在り方に関する報告書」というものを出しておりますが、その中の特徴的なことを御説明を願いたいと思います。
  183. 山内宏

    政府委員(山内宏君) かなり各般にわたっておりますけれども、取り上げました主たるテーマは、やはり国債の大量発行下におきますところの新しい証券市場のあり方いかんということでございます。したがいまして、主体が国債の発行形態、それから流通の態様、この点が中心になっておりまして、まず一つは、発行の段階におきまして発行形態の多様化ないしは発行条件の弾力化ということ、それから流通市場におきましては比較的現在の店頭市場を中心とした流通市場が学者の目から見て整備をされているという前提を置きながら、なお今後における各種の問題点を指摘しております。なお、それに付随をいたしまして若干事業債の問題あるいは投資家保護の問題、こういったものにも触れております。
  184. 福間知之

    ○福間知之君 その証取審の基本問題委員会の中で、国際的な一つの国債発行、インターナショナルな次元でのいわゆる国債発行条件というものとの横にらみで、わが国の現状というものに対して改革を必要とするという考え方というのが出ていると思うんですが、そういうふうに理解してよろしいですか。
  185. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 前回の証取審の基本問題委員会の際には、特に円建て外債について諸外国との間の比較をいたしました上での議論というのは、それほど深くは行われていないというように記憶いたしております。
  186. 福間知之

    ○福間知之君 いずれにしましても、金利体系だとか償還期限を初めとする発行条件というものはだんだん弾力化されてきている。なかんずく、アメリカのシアーズローバックなどが無担保債を発行したい、こういうことを要請してきているようですが、わが国の場合は有担保原則というものがございましてなかなかそれがしにくい。ところが、世界的には、国際的にはこの無担保債というのは一つの慣行になっているようでございますが、この点はいかがですか。
  187. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 御指摘のように、有担保原則に関連をいたしまして前回の証取審の報告はいろいろ討議をいたしております。基本的には、無担保債についても一つの考え方として避けて通れないという判断を示しながら、無担保債を現実に発行せしめるについての各種の条件を指摘をいたしております。  報告書の内容を簡単に申し上げますと、有担保原則を固守すべきでは必ずしもないというふうに述べながらも、一方財務制限条項など担保権の設定にかわる有効な手段について工夫をこらすこと等によって投資家保護に欠けることのないようにしなければならぬということの指摘があるわけでございます。  行政当局といたしましては、やはり何と申しましても、最後にその報告書が申しておりますような投資家保健の点において問題がないかどうか、この点に問題をしぼって考えるべきだというふうに考えておりますが、いま御指摘もありましたように、わが国においては過去かなり長い間、大正年代の社債浄化運動以来有担保原則が強く守られてまいっておりますし、投資家のビヘービアというものも大体それに即して形成をされておるという点もございますので、そういう点を考えますと、やはりいま直ちに有担保原則を崩すというのはかなり危険なことが多いというふうに考えております。何らかの方途を講じまして、たとえば銀行保証を取りますとか、あるいは公募債の形でなしに私募債でやっていくとか、何らかの方途を講じながら、徐々にやはりいま申しましたような投資家全体の雰囲気を変えていくというふうなことを前提にいたしながら、徐々に検討を進めていくべきものであろうかというふうに考えておる次第でございます。
  188. 福間知之

    ○福間知之君 貿易収支で多大の黒字を出している日本のことでございますから、かねがね当委員会でも、いわば資本というものをもっと積極的に輸出するという必要があるのじゃないかと、こういう議論も行われてきたところでありまして、そういう観点から見ると、いままでの慣行があるからそれは簡単にやめられないというだけではやっぱり通用しないんじゃないかという見方もあるわけでございますし、また、そういうことに踏み切っていくことを通じて、長期の金利体系というものも実勢を反映したものに変わっていくんじゃないかというふうな見方が一つできるわけでございますが、いかがですか。
  189. 山内宏

    政府委員(山内宏君) やはり何と申しましても、日本の国債市場の特色の一つは、投資家のサイドにおけるディフォルトに対する危険度の認識といいますか、警戒心の乏しいことにあります。他方、引受け会社の間におけるかなりの強度な競争状態がございます。この両者が両々相まちまして、債券の本来信用の区別に伴って生ずるべき条件のスプレッドというのが非常に少ないという点もございます。そういう状態でございますので、こういう前提のもとで直ちに無担保債を導入いたしますと、やはりその銘柄のいかんにかかわらず、将来においてディフォルトの危険がある程度あるものまで紛れ込む可能性がなしとしないという点もございますので、お書案ではございますけれども、われわれといたしましては、やはりその点はかなり時間をかけて検討してまいらなければならぬというふうに考える次第でございます。
  190. 福間知之

    ○福間知之君 それは大蔵省として、やはり今後の公社債市場の改革のための一つの項目として検討することにしているというふうに理解してよろしいわけですか。
  191. 山内宏

    政府委員(山内宏君) これは外債であると国内法人の発行いたします債券であるとを問いませず、同じような意味合いでいま申しました、その無担保債の取り扱いというものについては検討課題ではあると思いますけれども、公社債市場の全体の問題からいたしますと、順位はかなり後の方にならざるを得ないというふうに考えます。
  192. 福間知之

    ○福間知之君 じゃ、少し問題点を変えましてお尋ねしますが、先ほどお聞きし、御答弁もありましたが、昨年の公社債の売買高がかなりのピッチで増大したというわけでありますけれども、それは個人投資家とかあるいは機関投資家あるいは事業法人等がかなり積極的に買ったということでございますが、私の資料によりますと、中でも国債に関しましては発行額の二割以上に達している、二〇%以上に達している、いま申した機関投資家、個人投資家あるいは事業会社等が買った額が二割以上だということでございますけれども、それは一昨年に比べればかなりふえているというふうに考えていいんですか。
  193. 山内宏

    政府委員(山内宏君) おっしゃるとおりでございます。ちょっと正確な計数をいま私持ち合わせておりませんが、国債につきましてはほぼ年度を通じて二六%が個人消化になっていると思いますが、これはその前の年度に比べますと、ほぼ倍増いたしております。
  194. 福間知之

    ○福間知之君 しかし、依然として証券会社の店頭売買というのは大きいということでございますけれども、これはどれくらいのシェアになるんですか。
  195. 山内宏

    政府委員(山内宏君) いまのお尋ねは、公社債の売買全体のうちの店頭市場におけるシェアかと思いますけれども、これは国債その他債券すべて含めまして、それから転換社債を除きますと、ほぼ九九%が店頭で売買されております。
  196. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 証券局長お答え申しましたが、先生の御質問の御趣旨が、五十二年度中における公社債の売買高百三十三兆に対して国債がどれくらいかという御趣旨であるといたしますと、二十一兆八千億で、店頭売買総額に占める国債取引の割合というのは一六・三%になっておりまして、五十一年度の四・五%に対しまして飛躍的に増大をいたしております。
  197. 福間知之

    ○福間知之君 少しややこしいので、数字で教えていただいたら結構だと思うのですけれども、証券会社が行う自己現先というものも急増しているということのようですね。それは何というんですか、本来長期市場、長期的な市場であるはずの公社債市場が短期市場と一体になっているというふうな感触を持つわけでありますけれども、この証券会社の自己現先というものが拡大するということになると、長期債の価格変動にかなり影響が出てくる、こういう見方があるんですが、その点はいかがですか。
  198. 山内宏

    政府委員(山内宏君) その辺のところは非常にむずかしい問題かと思います。御承知のとおり、現在のところ日本の債券市場といたしましては、諸外国におきますように、たとえば政府の短期証券を中心にいたします典型的なる短期市場というのはございません。いま先生のおっしゃいますように、短期の資金を、長期の債券を種にして短期市場めいたものをつくっておるというのがいまおっしゃるような現先でございますけれども、こういったものがいわばセカンドベストのような形で自然発生的に生じておるのは御指摘のとおりでございます。  これが諸外国のような形に、つまり短期資金は短期市場でというふうに一応そこの区分をつけた方がいいのかどうかというのは大変むずかしい問題かと思います。私どもといたしましても、その点については大変関心を持ち、かつ勉強いたしておる途中でございますが、いままでのところ、確定的にいまの現先市場が非常にぐあいが悪いとか、あるいはセカンドベストではあるけれども、このままでそれほど長期市場に大きな悪影響を加えないでやっていけるものなのか、その辺のところはまだ十分な結論を出し切るに至っておりません。  実は、ことしの五月に証券取引幕議会を開いて、そういったものも含めましたところの今後における公社債市場価格形成をいかに円滑にしていくかと、そういう方策いかんということでしばらく論議をしてみたいというふうに考えておりますので、その中の一つのテーマになろうかというふうに考える次第でございます。
  199. 福間知之

    ○福間知之君 一方、昨年の六月に住友あるいは協和などの都銀五行が、余った資金を抱えている農林中金に対して千億円程度の赤字国債の売却を行ったと、こういうふうに承知をしておりますが、それは事実ですか。
  200. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 昨年中におきます金融機関の国債の売りというのは、私どもが承知をいたします数字では、いま個別銀行別には持っておりませんが、総額で約四千億足らずのものが銀行等から部外に流動化して売られたというふうに了解いたしております。
  201. 福間知之

    ○福間知之君 理財局長のおっしゃった四千億程度のものが昨年銀行から売却されたということだとしますと、それは大蔵省もいままでの銀行の国債売却についてかなり厳しく対処しておった姿勢を転換したと、こういうように受け取っていいわけですか。
  202. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私どもは、従来とも国債の売却というものを特にいけないという指示はしたことはございません。それぞれの銀行が自分の資金ポジションその他を見て、独自に判断をして行うべきものというふうに考えてそのようなことを申しておりました。  しかしながら、国債の流動化の阻外要因といたしまして、いわゆる建設国債、四条債というものにつきましては、強制借りかえ制度的ないわゆる乗りかえ制度というものがございますために、その国債の保有者が、それを売るにしましても買うにしましても、その借りかえの制度が現行のままであると非常に流動性を阻害するということがございましたので、昨年の秋でございますか、建設国債につきまして借りかえ制度を見なおす、改善をする。と申しますのは、建設国債が七年から十年債に切りかわりましたために、明年度から建設国債の償還予定額がなくなりまして、昭和五十七年まで償還がなくなります。その間三年間期間がございますので、この期間をかけまして五十七年の春ごろまでにはこの借りかえ制度の改善を図っていこうということを私どもがシ団、国債の引き受けシ団と協議して合意をいたしましたことから、国債の流動化、金融機関の保有する特に四条債についての流動性が高まったということから、金融機関が独自の判断で先ほど申しましたような金額を四条債あるいは特例債について売却をしたと、かように考えます。
  203. 福間知之

    ○福間知之君 いま理財局長おっしゃったのは、昨年のたしか十月というふうに承知をいたしますが、そのことは、したがって、さらに今後その方向を拡大していくというのか、積極化していくというのか、そういうお考えがあるわけでしょうか。何かいまの御説明の背景に、ただ五十億円という一つの金額上の制限だとか、あるいは農林系の金融機関や共済など安定消化先へ売却するならばいいというふうな条件があるやに聞くわけですけれども
  204. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私どもは特に条件を付しておりません。もし何らかのチェックがどこかで行なわれるといたしますと、各銀行の資金ポジションを見ております日本銀行におきまして、ポジション指導の関係でどういうことをされるかということはあろうかと存じますが、大蔵省といたしまして特にこれをチェックしているということはございません。  それからもう一つ、今後の流動化の問題についてさらに促進をしていくかというお話でございますけれども、やはりこれだけの大量国債がたまり、かつ今後も相当の大量の国債が発行されて、それが現在の引受方式によりますと大部分金融機関に保有されるということになりますと、金融機関の保有国債の残高というものは大変大きくなりまして、これは金融機関の経営上あるいは資金ポジション上相当な問題になろうと思います。に御質問のございましたように、今後民間需要が出た場合にこれに対してどういうふうに対処するかということになりますと、やはりそのためには流動性を高めておく、そしてその流動化した国債が公社債市場で円滑に受け入れられるという形で公社債市場の拡大安定化も必要であろうと思います。  しかし、いずれにしましても今後の国債の流動化の問題は、やはりそれぞれの銀行が独自の判断で自分の経営あるいは資金ポジションを見ながらやっていかれるということで、特にこれを促進するとか、あるいはチェックをするという特定のスタンスを政府としてはとっていかないつもりでございます。
  205. 福間知之

    ○福間知之君 おっしゃらんとしていることはわかるような気がするわけですけれども、しかし、本来この国債など有価証券というのは流動資産ですから売却できるのが当然と、こういう考え方があるかと思うんですけれども、それはそういう認識でいいわけですね、これは教えていただきたいんですけれども
  206. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 御主張のとおりだと存じます。
  207. 福間知之

    ○福間知之君 ところで、また、大蔵省はことしの一月に財政投融資資金の調達のために資金運用部資金が引き受けておりました国債の三千億円を市中売却にした。しかもその場合に初めての競争入札というシステムを試みられたと聞くわけですけれども、その概要について御説明を願いたいと思います。
  208. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 本年一月以降、三回にわたりまして資金運用部資金が保有をいたします国債を売却いたしております。第一回が三千億、第二回が二千億、つい先ごろ、四月十二日オファーをいたしましたものが三千億、合計八千億の運用部引受国債の売却をいたしております。  売却に当たりましては、日銀と協議をし、日銀を窓口といたしましてこれを競争入札制度にかけておりますが、競争入札制度も二種類の入札方法をとっております。  第一回の入札はいわゆるダッチオークションと申しまして、たとえば入札者が国債につきまして百七円で買う、百五円で買う、百三円で買うと、いろいろ入札がございますが、これらの上からとりまして売買予定額、たとえば三千億を売るといたしましたら、その入札価格が三千億に達しましたところで切ってみまして、百七円、五円、三円というものの平均価格で最終的にはその入札した方にこれを売却する、こういうものをダッチオークションと申しまして、そういう入札でいたしました。  それから二回目、三回目はコンベンショナルオークションと申しまして、ただいまのは売却予定額に達するまでの入札額の平均額で売るのがダッチオークションでございますが、今回二回行いましたのはそうでございませんで、上から順番にとっていく。たとえば百七円で百五十億買いますという方があり、百五円で五百億買うという方があり、百三円で千億買うという方がありましたら、それぞれその入札額が販売予定額三千億に達するところまでをその入札額によって売るということでございますので、一つの商品につきましてある入札者は百七円でこれを買い、ある入札者は百三円で買うというような形の入札をいたしました。このようなことをいたしまして八千億の資金運用部資金のものを売ったわけでございますが、これにつきましては金融当局であります日銀とも協議の上で、今後の日銀の金融調節手段としてのマーケットオペレーションにつきましても、日銀としてこういう方法を採用したいというようなことが国債売却前に発表されたことでもございますし、それにあわせて資金運用部資金の国債をそのような方法で売却したわけでございます。
  209. 福間知之

    ○福間知之君 それは今回初めてですか。ちょっと専門的でわかりにくいんでございますが、いずれにしてもそういうダッチオークションだとかコンベンショナルオークションですか、そういうシステムというものは今回が初めてでしょうか。さらにまた、それ以外に適切なといいますか、望ましい方法というのはあり得るわけですか。
  210. 田中敬

    政府委員(田中敬君) このような形での入札方法によります売却をいたしたのは初めてでございます。売却したこと自体が初めてでございますので、こういう方法でやったのも初めてでございます。  それから、それ以外に適当な方法があるかというお話でございますけれども、やはり国の持っております所有物を売却するということになりますと、会計法上その他の制約で随意契約ができないとか、これは随意契約が適格であるかどうかいろいろ問題点がございます。そういう意味でこういう入札方式というものはある程度会計法上も疑義がございませんし、また、現在の金融情勢下におきまして金利の弾力化と申しますか、そういうことで市場実勢に合うような形での販売方法と考えておりますので、私どもは現在の金融情勢下においてはこのような販売方法が一番いい方法であろうかというふうに考えております。
  211. 福間知之

    ○福間知之君 そのようにして資金運用部引受国債が八千億、まあかなりの金額だと思うんですが、初めて市中に売られたと。結果ですね、何か新たな問題は発生しておりませんですか。
  212. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私どもでは特に新たな問題が発生しているというふうには見ておりません。私どもがこの発売、入札による販売をいたしましたところ、大体市場実勢よりも若干低利と申しますか、いわゆる店頭気配等よりも十銭、二十銭程度高いところで応札されておりますので、いまの金融市場の実勢はこんなものかなあというんで、市場実勢を探る意味においては非常に意義があったと。そのほか特にこのことによって問題があるというふうなことはまだ耳にいたしておりません。
  213. 福間知之

    ○福間知之君 銀行の中には転売をするというふうなことが行われて、証券界がやや反発をしているというふうなことも耳にするわけですが、余り気にすることはないわけですね。
  214. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私どもも目下証券界の一部の方から、銀行がこうして入札したものを銀行の取引のある事業法人に買わないかという勤めがあって、当該事業法人からどうしたものかというような話があったという程度のことは聞いております。窓販問題とも絡みまして、銀行の証券販売業務、いわゆるディーラー業務というもののあり方につきましてまだ結論を得ていない現状でございますので、実際にはそういう売買が最終的には行われなかったと聞いておりますが、そういう問題を抱えておるという認識は持っております。
  215. 福間知之

    ○福間知之君 私は、証券業界からの銀行に対する一つの批判とか反発とかということもさることながら、むしろ資金需要が拡大していった場合に、民間事業会社が取引先の銀行からさらに資金の借り入れをしようという立場になれば、そこをつけ込んで銀行がよからぬ方針を事業会社に押しつけるというふうな危険が全く予想されないでもないわけです。それは銀行におけるその都度の資金ポジションというものからくる要請ではありましょうが、そういうことが一つの問題点というとちょっと大げさですが、成り行きとして顧慮しておかなきゃならぬ要素だなと、こういうふうに思うわけでありまして、これは当局がしっかり勉強いただいてそごのないようにしていただかないと、肝心かなめの角をためて牛を殺すということになってしまってもいけないことでございまするし、市場の流動化ということを基本に考えた場合には、大もとを守らなきゃならぬということははっきりしているわけですから、留意を願いたいと思います。  次に、問題を変えますが、最近の報道によりますと、新しい中期債というものを考えられつつあるようでございますが、具体的に当局としては腹を固められたんでしょうか。
  216. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 新聞に報ぜられておりますように、中期債問題を検討していることは事実でございます。先ほど委員がお取り上げになりました昨年度の証取審の基本問題小委員会におきましても、あるいはまた、私どもが理財局で持っております国債問題研究会におきましても、国債の種類の多様化、いわゆるニーズに合った多様化というものは今後大いに検討推進すべきであるというような趣旨の答申もなされております。  それに対応いたしまして、こういう金融情勢をつかまえまして、できれば国債の種類の多様化の一環として中期債を考えようということで、いろいろ問題点を検討いたしております。ただいままだ検討段階でございますし、かつて他の委員会でも申し上げましたけれども、やはり現在金融機関が持っております商品と競合するものがございます。たとえば二年期間でございますと銀行の二年定期、三年でございますと三年の債券を発行している銀行がございますし、四年、五年になりますと信託とかあるいは興長銀とか、いろいろ競合する面がございますので、これらの調整をどうやっていくかという点について検討をいたしておる段階でございます。
  217. 福間知之

    ○福間知之君 五十一年の正月明けでしたか、初めてこの中期債、中期割引国債ですか、が誕生したわけですけれども、そこへ至るまでやっぱり二年近くあのときにかかっているようであります。いま大蔵省は御説明があったようなことを、いつからできれば実現したいと、こういうように考えておられますか。
  218. 田中敬

    政府委員(田中敬君) いろいろいまから調整を要する問題でございますので、いつをめどにとかいつからできるという私どもいま確たる目算は持っておりませんが、先ほど申し上げましたような、現在のような金融情勢の中ではむしろ可能な時期であると、こういう金融情勢のうちにそのチャンスをつかまえたいということでございまして、これが本年中か本年度中になるか、あるいはもっと早い機会になるか、調整の進みぐあいいかんによって変わると思いますが、この前割引国債をやります場合に二年かかりましたが、やはり余り議論をいたしましてもこれはむしろ問題がややこしくなるだけでございまして、問題点はお互いはっきりそのうちしますので、その際にどう割り切るかという問題として、相なるべくは早く決断をいたしたいと考えております。
  219. 福間知之

    ○福間知之君 大変これは理財局長も前向きのお考えのようでございまして、かねがね私どもも主張してきておりまして、魅力のある商品としての国債ということを一層意味づけるわけでありまして、先ほどもちょっと御答弁の中にありましたけども、五十四年-五十六年というのは償還の期限が来る国債がたまたまちょうどないということでもあるようでございまするし、その空白を埋めるというと語弊がありますが、さしあたって二年債とか三年債は早期に発行すればそういう時期に償還期限が来るということで割合がいいんじゃないかと、こういうふうにも考えられるわけであります。発行の規模というものは、やっぱりかなりのものを考えられているんでしょうね。
  220. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 前回中期割引国債を発行いたしました際は三千億というような形で、発行額にある程度制限的な規定と申しますか、制限的にこれを行ったわけでございますが、今回の中期債につきましては、まだ中身も、中期債と申しましても期間から申しますれば二年、三年、四年もございますし、あるいは利付債方式にするか割引債方式にするかという問題もございますし、いまのお話しのように、これを一体従前どおり引き受けておりますシ団引き受けにする、すなわち条件を国で決めましてシ団に引き受けていただくという形にするのか、あるいはこれを先ほど資金運用部資金の国債を売りましたときのように入札制度にするのかというようないろいろの問題がございます。特に入札制度にするかシ団引き受けにするかということによりまして、この中期債はよし実現いたしたとして、その発行額というものはずいぶん変わってくると思いますので、私どもはいま発行額をどれくらいのめどというものは、この中期債の中身がどういうことになるか、それがはっきりしませんうちはまだ金額も確定しがたいというふうなのが現状でございます。
  221. 福間知之

    ○福間知之君 早急にこれは検討されないと、たとえば今年度中というわけにいかなくなりますし、ずるずると延びるという危険があるわけです。先ほど来相互にやりとりがあった中で、過剰流動性というものの危険に対する対策としても大変有意義で有効であるし、まあ硬直的ないままでの流動性というようなものを、あるいは市場というものを改善するためにも非常に有効ではないかと、そういうふうにも考えるわけです。また一般の国民のニーズからしましても、比較的短期の国債ということになりますと買いやすくなる、こういうことにも相なろうかと思いますので、私は積極的にひとつ進めていくという姿勢をとられることが望ましいんじゃないかな、こういうふうに存ずるわけであります。  それから、先ほども少し触れたわけでありますが、専門家の間にはことしのこの十一兆円近い国債の発行というものの受け入れマーケットということがいつも話題になっているようでありまするし、私たちも大いに議論をしているわけですが、金融がタイトになった場合、いま大蔵省が弾力化を進めていこう、自由化を進めていこうと、こういう方向をとっておられる姿勢が果たしてくじかれないだろうか、こういう心配があるんですがね。いま金融は緩和の状況にありますから、大蔵省が条件の引き下げだとか弾力化だとかいうようなことをしやすい環境だ、こういう見方ですね、これはいま政府も公共投資事業中心にした七%成長への努力は行われているわけでありまして、予想どおり景気が上昇局面に明らかに転じたという状況になり、あるいはまた民間の資金需要が設備投資その他在庫の積み増し等々で生まれてきた場合に、果たして大蔵省のいまの公社債市場弾力化、自由化という基本態度というものが崩れないかどうか、こういう懸念が感じられるわけですけれども、ずいぶんこれは最近に至るまで大蔵省内部としても当該課題については、問題については議論をやはり積み重ねてこられたんだろうと推察するわけです。  ましてや、先ほどの新しい中短期債の発行というような問題もそういう議論の中から初めて生まれてきて、ある程度障害があったとしても何とかそれは実現したいものだと、こういうふうに考えているように受け取っているわけでありますけれども、そういう点についての見通し、金融がタイトになっていくという場合でも、これだけの大量の国債がすでに累積している。  さらに五十七年に至るとかなりの、百兆になんなんとする残高になっていく国債というものを念頭に置いた場合に、やはりいままでの閉鎖的な市場を改めるというためには、大蔵省としては重大なひとつ方針の転換というものをやったと、こういうように見てよいわけでしょうかね。
  222. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私どもいま中期債を考えておりますのは、これは決して金利の自由化を志向しているものでないということはひとつ御認識をいただきたいと思います。金利の自由化につきましては、私どもいろいろ抱えている多くの問題点ございますので、金利の自由化を志向したということではなくて、いわゆる国債の消化、あるいはいろいろの観点から多様化の一環として中期債を考え、かつあわせて、もしこれを入札発行制にすると弾力化もある程度進み、いわゆる市場実勢に合った発行条件にし得る、それに一歩近づけるという手段として考えておるわけでございます。まだこれがシ団引き受けになりますか入札方法になりますか、先ほど申し上げましたように多くの問題を抱えておりますので、いま確定的なことは申し上げられませんが、決して自由化をねらっているものではないということ、それから金融情勢が非常にタイトになった場合にどうかというお話でございますが、私どもは中期債を発行いたすことにいたしましても、今後とも十兆、十一兆という大量の国債を消化をしていただかなくてはならない立場からいたしますと、やはりいまの日本の金融構造の中では現在のシ団引き受け方式というものは厳として保っていくべきであろうというふうに考えております。  御承知のように、ドイツにおきましては長期債はシ団引き受け方式、中短期債はシ団外の入札発行というような形になっておりますし、わが国におきましても、国債の大部分というものは従前どおりシ団引き受けをお願いいたしたいと存じますし、またそのシ団に引き受けていただく国債の発行条件につきましては、従来からしばしば御論議をいただいておりますが、一癖市場実勢に合ったような形での弾力化を進めてまいりたい、これが基本方針でございます。
  223. 福間知之

    ○福間知之君 いや、中期債と金利自由化を直接結びつけては私も考えておりませんけれども、金融がゆるんでいるという時期、あるいはまた言葉をかえればデフレギャップというものがかなり存在をしている今日の状況の中では、要するにインフレヘの心配というのはそうないかもしらぬけれども、その逆のことはまた逆のこととして理論的には考えられるわけでありまして、そういう場合には、これはいま口にされました金利の自由化というものまで含めて考えていかなければならない。四十年代のように比較的国債の発行残高も少なくて、一方また高度成長というふうに景気が年年上昇拡大を続けているというふうな時期ならいざ知らず、これからは低成長の時代だという認識をしなきゃならぬわけですから、その割りには国債の累積残高がかなりのものになるわけでありまして、GNPの数割になるわけでございまするから、これからの問題としては金利自由化ということも、これはこの委員会でもきょう以降さらに議論の対象にしなきゃならぬと思いますけれども、考えていくべきではないか、こういうふうに思うんですが、大蔵当局としては、それは大蔵大臣がこの間予算委員会で私の質問に対してもお答えいただいていますけれども、そういう範疇からまだ抜けておらない、自由化問題はね。そういうふうに私は理解をしておるわけであります。  やはりシ団の引き受けというものを無視はできないと思うわけでございますが、私は個人的には、やはりオイルショック以降の財政金融政策という中に欠落したものが一つあったんではないか。それは国債というものはこれは悪である、赤字国債は特に悪である、だからその赤字国債は極力抑えるべきだという、これは心情的にはだれしもそうなんですが、今日までの景気の推移を見てみますと、見方によれば国債はもう少し奮発してもよかったんじゃないかというふうな反省がないことはないわけでありまして、今年度もある意味では私は、十一兆円に近い国債ですからかなりの額であるとは思うわけでありますけれども、さりとて、予算委員会でいろいろ議論をしていますと、景気の動向が、場合によっては、やれ補正予算を組んでさらに公債の追加発行というようなことも考えなければならぬかもわからぬなど出ているわけでありますね。  したがって、どうしても公債問題からはここ当分は抜け切れないとするならば、いま幸か不幸か景気がまだまだ本格的に上昇の気品を見せてないというこういう段階で、やはり公社債市場の近代化といいますか自由化といいますか、金利も含めましてかなり勇気ある改革に取り組んだ方が将来を考えた場合にはベターじゃないのかと、もちろんそれに関連する周辺の条件、これは大蔵省も考えなければなりません、一つの安全弁的な手法はもちろん用意しなければなりませんけれども、これ一たび景気が回復し出しますわ、資金需要の状況は変化しますわとなりますと、どうしてもそっちの方に目を奪われましてなかなか議論も十分にできない、決断も非常にしにくくなるというふうになると私は思うんです。もういままでの実績がそうなんですから。  だから、むしろいまのような時期に将来を展望した布石をしておく、新しいレール、軌道というものを一応設定していく、市場の近代化ということに関してですよ。そのための勇断というのが私はあっていいんじゃないだろうか、こんな気がしてならないわけであります。  よその国のことも詳しく知りませんけれども、アメリカ等のいわば公社債の売買高というものは日本の比じゃなくてかなり大きいものがあるわけでありまして、わが国だってこれからは、アメリカ並みとは言いませんけれども、GNP比でいまよりももっと大きな売買水準というようなものが実現してもいいと思うんです。しかもそれは、当然その背景として自由化された市場、国民のニーズに沿った公社債政策というふうなものがもちろん前提でございますけどね。そして国民全体が、国の財政というものについても、あるいはまた自己の流動資産の保有というものとあわせてもっともっと普遍化する、こういうようなことにも結果としてなるんでありまして、ぜひそういうふうな姿を実現をすることが望ましい。  それからもう一つは、これはここで議論をしても始まらぬことでございますけれども、補正予算ということを口にしたついでに言いますと、公債を発行して減税をやることは矛盾じゃないかという議論が一面常識論としてありますけれども、私はそうは思わないわけでありまして、公債を発行してもその公債が社会資本ストックをふやす、長い将来における生活環境の改善というものに当たっていって、それ相応に国民が負担をすればそれはそれでいいわけであります。反面また、公債の原資を活用して景気を回復、刺激するために減税に回していくという手法だってあってしかるべきだと私は思うわけであります。政府のことしの投資的経費あるいはまた経常勘定、こう二通りに分けられてはおりますけれども、そればそれとして全く無意味とは思いませんけれども、そういう見方からすると、公債を発行して減税するのはおかしいというふうな理論につながりやすいですけれども、私そうじゃなくて、恐らく大蔵大臣、後ほどこれお答えをいただきたいんですが、どうなんでしょうか、補正予算はいま考えてないと、こう木で鼻をくくったようには御答弁まさかなさるまいと思うんですが、先回の三千億程度の減税では、これはまあ焼け石に水と、言っては語弊がありますが、専門家も余り評価をしてない、国会は総理大臣、政府以下国会議員は何を考えておるんだと、こういうふうな御批判こそあれ余り高い評価はいただいておらない。その責任は挙げて政府側が三千億に値切ったことにあるのでありまして、そういう問題一つとりましても、アメリカや西ドイツあるいはイギリスのように、もっと機に応じた意義ある決断というものがわが国においてはなぜできないんだろう、そんなことを感ずるわけであります。  ずいぶん余分なところへ話が行きましたけれども、理財局長には、したがって一層自由化を含めた近代化というものに当局は大いに今年度は積極的姿勢を貫いていくべきじゃないかということを申し上げ、大胆には、補正予算を含めて、先ほど申しましたようなこれからの景気浮揚策として、大体公共投資をさらに積み増すということは私は限界に来たし余り意味がないというふうに考え、そういう観点からお伺いをしておきたいと思います。
  224. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 先生のおっしゃいます自由化を含めということになりますと私もちょっと首をかしげるわけでございますけれども、こういう金融情勢をつかまえ、かつ大量の国債がさらに累積をしていくという状況でございますので、御主張のように国債の管理政策というものがますます日本経済にとって大きな課題になってまいることは十分認識いたしておりますので、できるだけの努力を挙げて万全の国債管理政策を推進してまいりたい、かように考えております。
  225. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 臨機応変の措置をとらねばならぬ――とこの国もそうでごさいますが、それぞれの国の置かれた条件がそれぞれ違うわけでございまして、そういう意味で、日本は日本なりの臨機応変の措置をとっておるつもりなのでございます。ことしの予算編成あるいは金融の持っていき方、これはすべてやはり現状に即した臨機応変の措置をとっておるつもりなのでございます。  御承知のように、日本はかつては貯蓄はほとんど民間の設備投資に回ったわけでございます。しかし、その後長年の不況でございまして、民間の方の資金需要がないわけでございます。それはそのままにしておきますとこれは大変な不況になるわけでございますから、その民間の投資、貯蓄をいかにして活用するかというところにまさに日本がいままで財政主導型でやってきたという理由があるわけでございます。しかし、これとてもいつまでもそれを続けていくことはとうてい不可能であることは当然でございまして、もとよりいまの経済は自由経済でございますから、最終的にはやはり民間資金というものが、あるいは民間の需要というものが日本の経済を引っ張ってくることがなければやがて財政が破綻するであろうということは理の当然であろうと思うのでございます。そういう意味でことしは臨時異例の財政措置をとり、そして最も効果の多いものとして公共投資、そのほか設備投資あるいは住宅投資もいたしましたけれども、やはり公共投資の方が同じ財源を使うとした場合に最も効果が多いであろう、こういう発想であるわけでございます。そしてまた、いま民間に資金需要がないということ並びに民間の採算がきわめて悪いということ――これは比較の問題でございますけれども、家計とそれから企業と公共部門と、こう並べてみますと、日本の場合は際立って民間の企業部門とそれから財政が非常に悪いということはもう歴然たるものであるわけでございます。しかし、それをいつまでも財政部門のことを心配しておっては結局立ち直るものも立ち直らないという問題でございますから、思い切ってことしは早く経済を直し、それがやがて財政の健全化につながる、遠回りのようでございますけれども結局早いだろうと、こういう見込みで今度の財政金融措置をやったわけでございます。  補正予算の話でございますけれども、私たちは、いまいろんな民間の機関が七%というのはむずかしいんじゃないか、あるいは経常収支黒字の六十億ドルというのはむずかしいんじゃないか、いろいろ言われていることはよく存じておるのでございます。しかし、まだわかりませんが、今年度の成長がもし五・――これは恐らく五月末にならぬとわかりません。しかし経済企画庁長官も言っておりますように、五%台は大丈夫だ、こういうことを言っているわけでございます。恐らく五・三になるかどうかそれはわかりません。しかし五・三になりますと、ちょうど五十二年度の平均の伸び率、四半期の伸びで見ますと、大体上の方のげたが二・二%ぐらいはくんではなかろうかと、こう思っております。そうしますと、七%の成長というのは、実はげたを差し引いて計算いたしますとまあ四・八ぐらいの平均の伸びでいいという答えになるでしょうし、五ということになれば一・七ぐらい引いて計算すればいいということでございますから、私はそれほど不可能であるというふうには考えていないのでございます。現に、最近におきますいろんな経済指標を見ますと、まだまだら模様ではございますけれども、漸次在庫の問題あるいは生産の問題、そういった面に明るい面が見えておりますし、設備投資が九・幾らでしたか、名目でいっておりますけれども、最近の民間の調査では一〇%を超えるというものがかなり出てきております。そういったことを考えますと、それからまた円高につきましては、従来どっちかと言いますとデメリットの面が非常によく出たわけでございますし、またそれが強調されたわけでございますけれども、今後はメリットの面も考えられますし、特に卸売物価あるいは消費者物価等が政府見通し以上にいま落ちついておるわけでございますから、これは成長の実質計算いたします場合にはかなりプラスの要素になってくることはもう間違いないのでございます。そういったことを考えますと、私たちは、いま補正、予算の話はすぐに出ましたけれども、なお当初予算におきましても公共事業の手術費を二千億、あるいは財投の弾力条項が特別会計なりあるいは政府機関を除きますと五割あるわけでございますから、私は機に応じてこれらの施薬をやっていけば七%は何とかいけるんじゃなかろうかという感じがしておるのでございます。  六十億ドルの問題はなかなかむずかしい問題でございまして、今年度百億ドルというのが土台でもって百三十一億三千万ドルになったわけでございますから、土台で四十億ばかり上がったのでございます。しかもわが国の方針といたしまして、いまの保護主義の高まりの中で保護主義的な傾向、つまり縮小均衡的な考え方はとらない。輸出の方は数量でグローバルでございますけれども横ばいである、こう言っておりますから、一にかかって輸入数量の増大をいかにするかというところにくるわけでございます。恐らく四十億ドル余りのものをやはり余分に輸入することができるかどうか、この辺に私は個人としてはその六十億ドルの経常黒字にとどめることができるかどうかということがかかっているように思うのでございます。   そういった意味で考えますと、やはり内需の拡大という問題が、あるいは金利の緩和ということが一番大きな問題に、内需拡大につながりますので、これが基本だと思いますが、そのほかにも市場開放政策はとっておりますし、ガットも何ほどかは影響いたしましょうし、特に緊急輸入政策をいまやっておるところでございます。政府による緊急輸入政策、あるいは民間による外貨貸し制度によってどれくらい一体出ていくか、これがまあ大きな問題であろうと思います。  もう一つは、いま日銀が踏み切りましたいわば輸入金融につきまして円シフトをねらっていくということで、今度は公定歩合、輸入為替につきましては公定歩合で貸しましょうということになりますと、従来為替銀行の方が輸入ユーザンスの資金を海外から仰いでおったその短期の債務残が恐らく百二十億ドル程度あるわけでございますから、それがもし日銀の円金融に移るといたしますれば、これはまた大きな問題になるわけでございます。これは経常収支の黒字幅の縮減につながってくるわけでございます。現在のところ、先物相場と直物相場の間の差が、スプレッドがまだかなり大きゅうございますけれども、だんだん、御承知のようにいま円はここのところ安くなりまして、二百二十八円という相場を示しております。したがいまして、だんだん円の先行きにつきまして見方が変わってまいりますと、この直物と先物のスプレッドが大分縮まる。そういたしますと、安い金利で借りた方が得だということになるわけでございましょう。こういった点もやはり大きく期待できるのではないだろうか。  まああれこれ考えますと、私は経常収支黒字の六十億ドルというのが一番むずかしい問題だとは思いますけれども、いま不可能だとは考えていない。あらゆる施策をやりまして内外の、総理の言葉じゃございませんけれども、何とか内外の期待にこたえたいと、このように思っているところでございまして、したがって、減税のために補正予算を組むというような考えはいまのところ持っていないのでございます。
  226. 福間知之

    ○福間知之君 終わりました。
  227. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公債、特例債の質問の前に、消費者保護の立場から銀行等のクレジットカードの問題で二、三質問したいと思います。  今回公定歩合の引き下げで庶民の貯金金利は約三千億円も減少したわけです。また金融機関でも利子収入が減ったと言われますけれども、関連会社の業務や付随業務等の収益というものが相当額あると言われております。  そこでお伺いしますが、クレジットカードというものは現在銀行の付随業務と見なされているのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  228. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) クレジットカードに関する業務でございますが、これは実は昭和五十年七月三日に金融機関の関連会社についての通達を出します際に、この業務をどのように位置づけるかということについて検討したわけでございますが、そのときのいろいろな検討の結果、クレジットカードに関する業務は銀行の本来業務ではもちろんございませんし、銀行の付随業務でもございません。銀行の付随業務に準ずる業務と、このように考えております。
  229. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまおっしゃるように、昭和五十年の七月三日銀行局長通達によって付随業務に準ずる業務とされてきておりますが、このクレジットカード業務に対する指導は一体どこが行っているのでございますか。
  230. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) このクレジットカードに関する業務は、一般の商店等の売り掛け債権の買い取り業務でございますので、これはもちろん銀行業務でもございませんし、また貸付金業でもないわけでございます。したがいまして、これは面接大蔵省の監督するあるいは所管する業務ではない、このように考えております。  ただ、銀行の関連会社が行っておりますクレジットカード業務につきましては、その銀行の関連会社であるという観点から、銀行に対しまして必要な指導は行っているわけでございます。
  231. 多田省吾

    ○多田省吾君 現在クレジットの会員数及びカード発行枚数はどの程度になっておりますか、また信用供与の残高はどれくらいになっておりますか、お伺いします。
  232. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 大蔵省で把握しておりますのは、銀行系のクレジットカード会社についてのデータでございます。これは六社あるわけでございますが、そのうちの日本クレジットビューローの会員が二百三十七万人、ダイヤモンドクレジットが百十四万人、住友クレジットが百二十二万人、ミリオンカードサービスが九十二万人、HCBが十七万七千人、ユニオンクレジットが百五十三万人、このような数字を把握しておりますけれども、信用供与につきましては、これは特にこちらとしては数字はとっておりません。
  233. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまおっしゃったのはクレジットの会員数ですか、発行枚数ですか、どちらですか。
  234. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) ただいま申し上げましたのは会員数でございます。
  235. 多田省吾

    ○多田省吾君 カードの発行枚数はわかりませんか。
  236. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) カードの枚数としてはとらえておりませんが、ほぼこの会員数がカード枚数に相当するものと考えております。
  237. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまざっと計算しましても、銀行関係の六社だけでも七百十五万と、相当な会員数になっているわけでございます。  このクレジットカードは、第三の通貨と言われるほどその普及ぶりというものは目覚ましいものがございまして、最近でも毎年十数%ずつ伸びているんじゃないかと、このように思います。このクレジットカードに関する法的な規制というものは一体どうなっているんですか。
  238. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) クレジットカード業務に対します直接の法律規制というのはございません。
  239. 多田省吾

    ○多田省吾君 現在は皆と違って販売形態というものは非常に多様化しております。そしてこのような状況に行政というものが全然ついていっていない現状でございます。  具体的にお尋ねいたしますけれども、紛失とか盗難等で他人がカードを不正使用した場合の予防策、あるいは消費者保護の面からどういう対策がとられておりますか。
  240. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) これは銀行系クレジット会社カードの場合には、盗難等が行われた場合には当然直ちにカード会社に連絡があれば支払い停止の処理をするわけでございますし、またカード保険というのがございまして、一定金額まではその保険でカバーするというような体制がとられております。
  241. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまお答えありましたけれども、詳しくその内情を調べれば調べるほど、そういった簡単なお答えでは消費者としては非常に納得のできないものが多くあるわけでございます。  御存じのように、クレジットカードの場合は、ちょうど金額の未記入の記名捺印済みの白地小切手のようなものでございまして、不正使用された場合は本人にもわからないような思いも寄らない大損害をこうむる場合がございます。いま銀行局長がおっしゃったように、保険があるとは言っても最高が二百万円にすぎません。そして紛失届を出しましてそのカードが無効になるのはその後三十日以降となりますから、事実上その間に悪用されるだけ悪用されるというすさまじい結果になるわけです。これは日本の場合は非常に消費者保護の対策がなおざりにされておりまして、クレジットカードシステムが進んでいるところのアメリカの場合は、いわゆる消費者信用保護法というものがございまして、カード保有者は責任額はわずか五十ドル以下だと言われております。五十ドルといえば、一ドル二百三十円としましても一万一千五百円ですか、その程度の責任額しかならないわけです。ところが、日本の場合は保険額を超えた場合は何百万円になろうともこのカード保有者の責任になってしまいます。こうした事件というものが最近非常に増加しているわけでございますが、いろいろな事例も報告されております。これは私は、サラ金業者の場合も問題になりましたけれども消費者保護の立場から何らかの規制措置が私は必要ではないかと、あるいは立法も必要ではないかと、このように思いますが、この問題をどう考えておられますか。
  242. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先ほど申し上げましたように、このカード業務につきましては、必ずしも金融業務とは言い切れない面があるわけでございまして、これを所管する官庁としてどこが適当かという問題はあるかと思いますが、ただ一般的な問題として申し上げれば、このカード業務がだんだん普及しまして、第二、第三の現金というようなことになりますと、先生指摘のようないろいろな問題が出てくるわけでございますので、消費者保護の立場からただいま申し上げましたように保険もございますし、それから一般の取り扱いとしては、一定の金額以上を超えた買い物をする場合には電話でカード会社に問い合わせをするとか、そのような手続も取られているようでございますけれども、しかし、消費者全体の保護の立場からいろいろな検討が行われることも必要ではないか、このように考えます。
  243. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、この消費者保護の対策にしましても、大蔵省や通産省が責任逃れで、これはもう大蔵省だ通産省だとお互いに相手の省の責任になすりつけ合って、どうしても責任を持てないような姿もあるわけです。私は、このクレジットカードが生まれた背景というものは、銀行が預金者獲得のために中心となって推進してきた事実というものは否定できないと思います。こういう意味でも、私は大蔵省は積極的に消費者保護の対策を考える時期に来ている、このようにどこまでも思うわけでございます。先ほど局長は保険もあるとおっしゃいましたけれども、アメリカ等と比べても非常にその対策がおくれていると思います。大蔵省としてのお考えをもう一度お聞きしておきたいと思います。
  244. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先ほど申し上げましたように、クレジットカード業務は必ずしも金融業務とは言えない面がございますので、これの所管の官庁と申しますか、監督はどこの省が行うかということについてはいろいろ問題があろうかと思いますが、銀行糸のクレジット会社につきましては、やはりこれは公共性ある金融機関が関連しているということでございますので、その運営の適正化については、その親会社である銀行を通じて必要な指導を現在も行っているところでございます。
  245. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一点、カードを利用するキャッシングサービスについてお伺いをいたしますけれども、現在は所定の手続を済ませますと、クレジットカード会員は全国の提携銀行で一カ月五万円まで借りられることになっておりますが、その手数料三%というものは利用日数いかんによっては利息制限法の限度を超えるという問題もありますけれども、その点大蔵省の御見解はいかがでしょうか。
  246. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) キャッシングサービスにつきましては、これは貸金業として行っている面がございまして、したがって、貸金業としてのいろいろな規制が適用になるわけでございます。銀行系のクレジットカード会社の行っているキャッシングサービスにつきましては、たとえば極度方式を認めない、その他いろいろ適正化については指導を行っています。
  247. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、具体的にその手数料三%という問題が、利用日数いかんでは利息制限法の限度を超えるという問題ありますけれども、具体的にこの問題についての大蔵省の見解をお伺いしたいと思います。
  248. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) その三%の計算につきましては、個々の場合によって判定する必要があると思いますが、ただ貸金業の場合には御承知のとおり金利の制限につきましては、出資の受入等に関する法律と利息制限法と二つがあるわけでございまして、利息制限法を考えたものについてはこれは裁判による保護が受けられない、それから出資の受入等に関する法律の制限を超えた場合にはこれは罰則の適用があるということでございまして、まあ恐らくキャッシングサービスの場合の貸金業者としての業務を行っている場合には、場合によっては利息制限法を超えている場合もあるいはあり得るかもしれませんが、出資の受入等の取締等に関する法律の制限を超えるものはないのではないかと、このように考えております。
  249. 多田省吾

    ○多田省吾君 銀行局長から先ほどクレグット会員数についてお答えがございましたが、大蔵省で把握している銀行関係の六社でさえも七百十五万を超える会員数があるわけでございまして、普通もう一つ社がございまして七社と言われております。そうしますと、これは七社合わせればもう一千万近い会員数でございますから、昭和四十九年三月現在ではまあ四一八十万程度と言われておりますが、現在その倍近くなっている。一千万近いカード会員と言いますと、もうこれは決してなおざりにできない会員数でございまして、こういう一般消費者は、企業に対しても経済的に弱者でございます。また一般的に法律、経済その他の知識においてもとうてい一人一人は太刀打ちできないのが現状でございます。そこに私は消費者保護の立場から行政的、立法的に大蔵省あるいは他の省の関与が要請されるのでございます。いまは消費者が詐欺に遭った、あるいは紛夫した、あるいは被害に遭ったという場合でも、相談に行ってもどこでも相手にしないという姿がございます。結果としては、一千万近い消費者は不正使用された場合等においてもほとんど泣き寝入りせざるを得ないという現状でございます。私は、やはり大蔵省が主体になって各省にも働きかけて、早急にこの問題、総合的に立法措置をとるとか、あるいは少なくとも先にやっていたアメリカの実情等も調べまして、何らかの対策を立てなければならない、このように思いますが、これはどう思いますか。
  250. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) このクレジットカード業務全体についての監督の問題は、先ほど申し上げましたように、必ずしも金融業務ではございませんので、銀行局の所管とは言えないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、銀行糸のクレジットカード会社につきましては、先生指摘のとおり、消費者保護の立場から、やはり公共性ある金融機関が関与している会社でございますので、いろいろ適正化について指導してまいりたいと思っております。  それから、消費者信用全般の問題につきましては、やはり先生指摘のように、借り手としての弱い立場、貸し手としての強い立場との関連でいろいろ問題もございますので、この消費者に関する金融取引につきましては、たとえば借り手側からの相殺規定その他を含めまして、いろいろ約定その他の面で改善を図っていくことについて目下検討中でございます。
  251. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、次に国債の問題でお尋ねしたいと思いますが、先ほども質疑がございましたが、大蔵省としては国債の大量消化、特に個人消化の増大のためには具体的にどのような対策を考えておられるのか。
  252. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 個人消化の促進という御質問の御趣旨であろうと思いますけれども、従来とってまいりました措置といたしましては税制面の優遇措置、御承知のような特別マル優制度の導入でございますとか、あるいは一般個人が買いやすい小額券面を新たに設ける、たとえば従前ございませんでしたような五万円券の発行をいたしますとか、あるいは国債貯蓄、いわゆる累積投資制度を創設する、あるいはまた昨年一月に中期割引国債を創設して個人のニーズに合った商品を開発するというようなことをやってまいりました。先ほどから御議論がございました中期国債というものにつきましても、これは一つの金融商品といたしまして、先ほど証券局長から説明のございましたような日本における公社債市場の特殊性、いわゆる長期資本市場に短中期の金が流れ込んでそれが撹乱要因になる、そういう場合に、長期市場と中期市場とを分離するという形でこの中期債が出るといたしますと、非常に金融調節的にもいいものである。あわせまして、この中期国債というものは個人の非常に買いやすいものであるというような観点から中期国債の検討を進めてまいる、かような形で個人消化を図ってまいりたいと思っております。  と同時に、相当の広報宣伝費を支出いたしましたし、あるいはまた証券会社の販売努力もございまして、従前一〇%台で推移しておりました個人消化比率というものが、五十二年度におきましては二六%まで飛躍的に増大いたしております。個人消化比率といたしましては、諸外国の個人消化割合と比べましても遜色のないところに来ておりますが、ますますこの個人消化、安定保有ということを図ってまいりたいと思っております。
  253. 多田省吾

    ○多田省吾君 証券界は反発しているようでございますが、庶民の立場から言えば、個人消化に当たってはやっぱり銀行の窓口販売をやって欲しいという意見が非常に強いものと思います。この銀行の窓口販売の問題は現在どうなっていますか。
  254. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 銀行の窓口販売問題につきましては、昨年末窓口販売を実施したいという要請が銀行業界から提出をされております。それを受けまして、私どもといたしましても窓口販売の問題点、あるいは法律上のいろいろの疑義というようなものを目下解明中でございまして、御承知のように証券業界、銀行業界それぞれの領域の問題も絡んでいる問題でございますので、個人の立場、国債を買う立場の方からすれば、どこへ行っても国債が買えるということは望ましいことではございますけれども、そういう制度を仕組むことによって、従前促進されてまいりましたシ団引き受けでございますとか証券会社の個人への消化努力というものが阻害されて、結果的に個人消化がプラス・マイナス・ゼロというよりもむしろマイナスに作用した、あるいは窓口販売によって販売された商品が安定保有層に行かないというようなおそれがないかとか、いろいろ問題がございますので、私どもとしましては、少し時間をかけてこの問題は検討してまいりたいと考えております。
  255. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどの質疑でも、新しい中期国債、すなわち償還期間二年物、三年物、四年物等の新しい中期国債を発行するよう検討していると、本年中あるいはもっと早い時期に早く割り切って決断をしたいというような御答弁があったわけでございますけれども、私は西ドイツの例を挙げられましたように、これは中期国債でございますので公募入札の方がむしろ望ましいのではないか、このように思いますし、その方向で検討されていると思いますが、これはいかがでございますか。
  256. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 御指摘のとおりに、西ドイツにおきましても中期債は入札方法によっておりますし、アメリカにおきましては長期、中期いずれも入札方法によって発行が行われております。そういう諸外国に例も見られますし、わが国においても国債の発行形式の一つとして公募入札というものは検討に値する問題だというふうには存じておりまして、これ検討中ではございますけれども、やはり大量の国債を引き受けていただいておりますいまのシ団引き受け方式というもののメリットも考えなくてはなりませんし、あるいは公募入札方式にいたしました際に、現在のような金融緩慢期におきますと、かえってその方が財政負担が少なくなるというメリットも考えられますけれども、たとえばこれが資金がタイトになった場合というときには財政負担の増高というおそれもなきにしもあらずでございますので、それらの問題点をいろいろ探りながら、公募入札についてさらに検討を進めてみたいと思っております。
  257. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一つの問題として、証券市場においてはペーパーレス・システムというものを強く要望しているわけでございまして、今度、額面十億円の国債を出すそうでございますが、従来は一千万、百名集めてやっと十億ということで、テレビ等でも放映されておりましたけれども、各証券会社では国債だけでマンションのような部屋をいっぱいに使って、その他の債券もたくさんございますので非常に大変だということで、いわゆるペーパーレス・システムというものを強く要望しているようでございますけれども、大蔵省としてはこのペーパーレス・システムを導入する方向で検討をされていると思いますが、具体的にはどのようにお考えですか。
  258. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 御承知のように、個人が消化いたした国債につきまして、特にこれが税制上の優遇措置を受けようということになりますと、債券を登録債では無理でございまして、個人が持ったものを証券会社に保管を、保護預かりをしてもらうという形になっております。そういうことから、個人消化分の増高とともに、お説のようなペーパークライシス問題というものが深刻になっております。  現在は、それに対応する方法といたしまして、いわゆる混蔵保管方式と申しまして、A、B、Cというような個人が同一銘柄の国債を購入いたしました場合には、同一銘柄でございますからAが百万、Bが三百万でございましても、これらを合併いたしまして五千万とか一千万という券面で混蔵保管をするということで、小額券面を排除してペーパークライシスに対応してきたわけでございます。それでも追いつかなくなってまいりましたので、この四月の国債から額面一徳、十億という混蔵保管用を主とする高額券面を発行してまいりました。  今後ペーパークライシス問題にどう対応するかということといたしまして、ペーパークライシス対策と同時に、あわせていろいろ国債の流通移転の円滑化という観点から、何かこう振替決済制度的なものができないかというようなことも検討をしていったらどうかというふうに考えております。  御承知と存じますが、現在東京証券取引所におきましては、株式の振替決済制度というようなものが取引所の審議会においていろいろ勉強が進められておるやに聞いておりますが、これらの進みぐあいとにらみ合わせまして、国債についてもそういう方法を導入すればペーパークライシス対策にもなる、かつ流通、流動化の際の国債の移転その他を簡便化して国債の管理事務が非常に簡略化されるというメリットもあると考えられますので、その問題も検討に入ってみたいというふうに考えております。
  259. 多田省吾

    ○多田省吾君 そのほかに、有価証券を一カ所で管理するような中火機関を関係者間でつくりまして、いわゆる口座振替制度によってそれを運用するというような考え方もあるようでございますが、大蔵省はこの口座制度はどのようにお考えでございますか。
  260. 田中敬

    政府委員(田中敬君) ただいま私が申し上げましたように、いま多田委員の御指摘になりました口座振替制度というのも、この国債の振替決済制度の基本をなすものと存じますので、多田委員のおっしゃいました方法も一つの検討課題としていま私どもは勉強に着手したいというふうに考えております。
  261. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、いわゆる大蔵省が出した財政収支試算によりますと、昭和五十七年度には特例債をゼロにするという方向で考えておられるようでございますが、そうしますと、大蔵省試算では非常に大変な増税をしなければならないと、このようにおっしゃっているわけです。それで、三月の衆議院の予算委員会におきまして、ケースA、Bは極端であるということで、大蔵大臣はケースCあるいはケースDというものがいわゆる整合性を備えたものであろうというような答弁をなさったわけでございますが、ケースCにしましても五十四年度一兆九千億円、五十七年度までの増税累計が十兆三千三百億円、ケースDの場合でも五十四年度に一兆六千八百億円、五十七年度までの累計増税額は八兆九千八百億円という大変な増税になるわけでございます。  大蔵大臣は、いま現在もやはり昭和五十七年度の特例債をどうしてもゼロにするということを根底に置いて、しかもこのようなケースCあるいはケースDのような増税を図っていく以外にはないと、このように考えておられるのかどうかですね。
  262. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 財政収支試算は試算でございまして、財政計画ではないのでございます。その意味は、現在の財政がいかに危機ラインにあるかということを国民に御理解願い、また国会でも御理解願って御論議をいただくための試算でございます。その大きなねらいは、中期財政計画と整合性をもちまして、しかも五十七年までに赤字公債から脱却すると、この両方をやりながら果たして六%強の成長が可能であるかどうかということを試算するのが主たる目的であったわけでございます。  試算にお示ししてありますように、一般的な負担増加だけではなくて、歳出も今後は相当優先順位をつけまして、従来のような、ことしでございますと二〇・一%伸びるというようなことはいたしておらないのでございます。歳出もかなり切り詰めてまいります。しかし、その中ではいわば振替所得、社会保障系統のものに一番多く重点を置いているわけでございまして、公共投資の方は多分一三・何がしという伸び率になっておると思いますが、振替所得の方の歳出は大体一五%程度、そうしてその他の一般の経常費については思い切って節減する。その場合所要の一体税収は幾らであるか、弾性値を一・二と仮定した場合には各年における負担増はどれくらいになるか、こういういわば幾つかの前提をもって試算いたしたのでございまして、その結果は、そのように歳出を切り詰め、また一般的の負担を増加を求めても六%強の経済成長は可能である、こういう答えが出たわけでございます。私たちは、るる申し上げているような事情によりまして、特例公債から一刻も早く脱却したいということを念願いたしているのでございます。そういう意味では、試算であるとともに、われわれの願いを込めていることも事実でございます。ただ、それは財政計画ではないということだけ御理解を賜りたい、こう思います。
  263. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、ですから早く中期財政計画を立てなければ本当の日本経済の行く手というものが国民にも信用されませんし、やはりその場しのぎの後手後手に回るような対策しかとれない、このように思うわけです。私は、日本経済の現状というものは経済の内生部門の自律回復力がまだ十分でないということで、この内外の不均衡を解消するためには、すなわち総理や大蔵大臣が言う安定成長路線というものに到達するためには、私は五十三年度だけではまだ足りない、五十四年度もやはり七%程度の積極的な財政運営がなされなければならない。すなわち、臨時異例の財政措置というものは五十三年度だけでよろしいのかどうかという課題もあるわけでございます。ですから、私どもは早くても内生部門の回復というものは、いまの現状では五十四年の下半期以降ではないか、これは民間の機関等においてもほぼ一致している見方でございますけれども、大蔵大臣はこの問題をどうお考えですか。
  264. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 増税という、負担増加を求めるということはどなたも余り気が進まないであろうということはわれわれも容易に理解しているのでございます。ただ、増税がすぐデフレ効果になるかどうか、あるいは不景気をもたらすかどうか、それはわれわれは全然別の考えを持っているわけでございまして、それは一体どこから幾ら求めて、これは歳入になった分は全部歳出に出るわけでございますから、その効果の比較であろうと思うのでございます。どういうところからその負担を求めてそれをどの方に出していくことによって景気がどうなるかと、こういう問題であろうと思うのでございます。したがって、まあまだ一般的に、何といいますか、国民が非常に余り気が進まないうちに負担増を求めるのはどうかという観点では余り考えないのでございまして、ただ言えますことは、経済が非常に不安定なときに果たしてやれるであろうかどうか、そういう気持ちはございますけれども、増税すなわち不景気、増税すなわちデフレ効果というふうに短絡するとは考えていないのでございます。
  265. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、大蔵大臣の御答弁でございますけれども、やはり増税というものは直接的にはデフレ効果を持つものであると、このように考えざるを得ないわけです。やはり先ほども質疑ありましたけれども、いまの経済運営では、前にも申し上げましたが、民間の関係機関でもごく最近の調査でも、日興リサーチですか、やっぱりいまのままでは追加措置を若干とったとしても五・三%程度だろう、あるいは国民経済研究協会等でも前回の四・六から少し上げましたけれども、やっぱり五・三%程度、この前、参議院の予算参員会で自民党の呼ばれた参考人の学者の方も、やっぱり横ばいで五・三%だろう、このようにほぼ一致した見方があるわけです。公共投資の強化とか、あるいは在庫投資の伸長、一部には確かにありますけれども、個人消費は余り伸びないんじゃないか、あるいは円高の問題もございます。また設備投資の方も、大蔵大臣がおっしゃるようには全般的には進んでいないわけでございます。そうしますと、非常に何といいますか、政府に対して、また大蔵大臣に対して同情的に見てもやっぱりせいぜい五・三%程度ではなかろうか、こういう見方が圧倒的に多いわけでございます。  ですから、私は直接は聞きませんけれども、新聞紙上等によりますと、河本通産大臣等も会期延長しても補正を二兆ほど組まなければ七%は達成できないんだとか、あるいは中曽根総務会長等もやはり大幅減税が必要だとか、政府・与党の中からもそういう声が強いわけでございまして、いま大蔵大臣は補正の考えはないとおっしゃいましたけれども、昨日も総理大臣は質問に答えて七%はぜひ達成したい、そうして状況の推移を見て追加措置が必要ならすぐ追加措置をとるんだ、やはり補正予算を組むような示唆をなさっておられるわけです。ただ私は、それが九月、十月では非常に遅過ぎるんじゃないか、やはり一昨年もロッキード等の党内内乱のために大変打つ手がおくれて、そのためにやはり不景気というものが解消できなかったわけです。また、昨年も総理が八月の末の指数を見てから手を打とうというふうなことで、私どもが早期補正予算を組むように強く主張したんだけれども、やはり第一次補正も非常におくれて十月ということになってしまったわけです。そういうことを考えますと、私はやはり補正というものは速やかに組む必要があるんじゃないか。八月の指数を見てからとか、九月、十月とか、それでは遅過ぎるんじゃないか、このように思いますし、また、やはり大幅所得減税というものも、あるいは社会保障の追加というものも私は公共投資と相まってこの嫌気回復のためにはどうしても必要なんじゃないか、このように強く思いますけれども、ひとつもう一度大蔵大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  266. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) まだ予算が成立したばかりでございまして、これからの問題だと思うのでございます。最近におきます諸指標を見ておりますと、私たちが予算を編成した当時よりは各指標とも、どちらかといえば上向きに私はなりつつあると思っておるのでございます。もとより好況、不況業種その他がございますから、全体としてはまだら模様には違いございません。たとえば倒産であるとかあるいは失業率の問題であるとか、この辺のところはまだまだ明るさは見えておりません。しかし、在庫、生産、稼働率あるいは先行指標でございます官公需の受注はもちろんでございますけれども、民間の受注もややよくなっておりますし、それから設備投資に対する民間の見方も、政府を超える見方も大分出ております。それから九月決算の事業成績の予想も前回よりは大分そのマイナスの程度が少なくなりつつあるわけでございまして、そういった一連のことを考えますと、やはり、編成当時よりは少し明るい方向に向いている。それから、私たちがやりました施策が本当にあらわれてくるのは私はもうこれからだと思っているのでございます。  そういう意味で、別に自信過剰のわけではございませんけれども、でき上がったばかりの予算、それから、金利引き下げの効果もこれからも期待されます。円高によるメリットの方もこれから出てくると思われるのでございますので、われわれは今後この情勢を着実に遂行しながら、経済の動きを本当に毎日毎日と言ったら大げさでございますけれども、冷静に見守っていく必要があるであろう。しかし、おくれてはなりませんから、絶えず先行指標等いろんな角度でこれらの問題を注視してまいりたいと思うのでございます。総理がおっしゃいました必要があればあらゆる施策をとる、こう言っておるのでございますが、総理のお気持ちも恐らく私とそんなに違いないのであって、やはり公共投資予備費があるとか、あるいは弾力条項もあることであるから、そういった広い意味で機を逸することがないようにあらゆる措置を考えていきたい。現在のところは、いますぐ補正予算を考えるというようなつもりは私もございませんし、恐らく総理も現在の時点ではそういうことをお考えになっていないのではなかろうか、このように思っているわけでございます。
  267. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 本日、限られた時間でもありますし、第一回の質疑としてごく基本的な問題をお尋ねをしたいと思います。  まず、国債政策の基本的な考え方ですが、お尋ねするまでもない問題かと思いますけれども、国債には建設国債と特例国債とありますけれども、この双方含めて国債の発行という問題について、わが国の財政方針上その是非をどういうふうに考えておられるか、お尋ねしたい。
  268. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 一般論として申しますれば、国債の発行という問題は、それ自身悪だとも言えませんし、それ自身善だとも言えないわけでございまして、その環境においてどのように対処していくかということが最も大事であろうと思うのでございます。  ただ、現在の状況で申しますと、何といたしましても国債依存度実質三七%、これは世界にない比率でございまして、大体一二、三%、多いところで一六%、各国とも公債依存度は漸次縮小しつつあるのでございますので、日本の場合は全く異例と言わざるを得ないのでございます。しかも、その中でことしの予算で御案内のように半分近くが特例債だと、こういうところに最大の問題があるわけでございまして、特例債は言うまでもなく経常経費でございます。言ってみますれば、普通のベースアップもあるいは社会保障も、そういったものもすべて赤字公債でやっておるというところに最大の問題があるわけでございます。こういうことを長く続けるわけにはとうていまいらないのでございます。  二つの問題がございまして、経済的に考えてみますと、このままでいきますとやがて財政が硬直化してまいりまして、そして恐らく財政が国民から求めておられるところの臨機応変なその時代時代の要請に応じた歳出増、サービスの増加ということは硬直化の方からだめになってしまうということは第一に心配されます。  それから第二番目には、やがて民間の資金需要が出てまいりまして、そして民間の設備投資その他民間活動が経済を引っ張っていくということになりますと、そうすると、これはその上特例公債を発行するというわけにはなかなかいかぬのでございまして、両方満足させようとすれば恐らく過剰流動性の問題を起こしてくるであろうと思うのでございます。  建設国債の方は、御案内のようにこれはもっぱら景気対策上やっておるわけでございますので、資金需要が出てまいりますればこれはそっちの方は調節はきくわけでございます。しかし赤字国債の方は、その裏づけにほとんど全部が法律があるわけでございます。したがって、赤字国債を減らそうとしてみても、根元からよく見直せ見直せとおっしゃいますけれども、給与の水準の問題にいたしましても、あるいは社会保障の問題にいたしましても、すべて法律の裏づけがあるわけでございまして、根元から見直してそのときに思い切って減らすなんということは、これは口では言えても実際問題としてはなかなかやりにくいことはもう御理解賜れると思うのでございます。  そういうことを考えますと、いまのうちから、そういう経費の性質はいいか悪いかと言っているのではございません。経費の性質の経済性を言っているわけでございます。そういうものについては早くから依存しない方がよろしい、普通財源でやっていくという用意がありませんとそのときになって大変なことになるであろう、これは過去の経験において日本が幾たびか経験したところでございます。私たち財政当局といたしまして、いまからそれにやはり用意するところがなければならぬ、かように考えておるところでございます。
  269. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ただいまの御答弁聞いておりますと、特にわが国の現在の国債の増発というのが国際的に見ても異常な事態にある。何とかこういう事態から克服を図らなくちゃならぬということが前段で強調されておるわけです。後段部分で少し疑問が出てくるのですけれども、一つは建設国債についてはこれは民間の景気浮揚というような条件が生まれればいろいろな解決策は出るということでありますけれども、この財政収支見通しですね、もちろんこれは見通しだと、試算だという言われ方をするかと思うんですけれども、こちらの建設国債の方は依然として年々増大の一途をたどるという数字になっておりますね。このこととの矛盾は一体どうなるのか。  それから、特例国債の方については財政収支試算でも五十七年度を期してできるだけこれはゼロにしようという試算上の数字になっているんですけれども、もちろんたとえば五十四年度の予算をどう組むかというのがこれからの問題であるわけですけれども、政府としての目指すべき基本的見地といいますか、そういう点では五十七年度を目指して特例国債はひとつ解消していこうというのは、それはまだ海のものとも山のものとも決まっていないのだというきわめて不確かな話なんですか、その点特にお尋ねしておきます。
  270. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 先ほどほかの委員にもちょっとお答えして、重複にわたるかもしれませんが、これは試算という性質のものでございまして、前期経済計画と整合性を保ちながら財政がいま念願しております赤字公債を脱却できるかどうか、それを試算いたしたのでございます。  それで、歳出の方につきましてはかなり圧縮する試算になっているわけでございます。四条国債――公共投資の方はずいぶん伸びているのじゃないかというお話でございますが、そんなには伸びておりません。名目経済成長率が一二%ぐらい想定しまして一三・五ぐらいでございます。ことしは御案内のように一般公共事業は三四・五%伸びるというのでございますから、かなりそれは締まっていることだろうと思うのでございます。試算で一番伸びておりますのは振替所得でございますから、当然社会保障系統が一番伸びるという試算になっておるわけでございます。そして、負担増を求めても大体前期経済計画と整合性をもって六%強の実質成長は可能である、こういう姿になっているわけでございます。  これは財政計画ではなくて試算であることはもう御指摘のとおりでございますけれども、ただ、この姿をお示しすることによりまして国民の皆様から御理解を賜り、早くやはり特例公債から脱却すべきであると、こういう御論議がどんどん出てき、そしてこれを契機にしていろんな問題、財政と経済とのかかわり合いの問題、あるいは財政のあるべき姿の問題が広く論議されることを私たちとしてはお願い申し上げているところでございまして、これはあのような形でいってもわれわれが目指しております安定成長と申しますか減速経済と申しますか、かつての二分の一の成長率を目指しているわけでございますが、それが可能であるという姿を描き出しているわけでございます。
  271. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうもはっきりしないんですけれども、日付はちょっと失念いたしましたけれども、前に当委員会で私お尋ねをしたときに、政府の方針としては、まずできるだけ早い年度において特例公債からの脱却を図る、これを第一にするんだと、そしてそれに続いて建設国債の解消も図っていく、これを言うなれば政府の基本的方針としていると。このことを私は是としているものではありませんよ、この考え方を。しかし、そういう説明が何回かいろんな機会にあったので、どうもそれときょうの大臣の冒頭の御説明の仕方が少しニュアンスが違うので、特にしつこく聞いているんですけれども、その点はどうなんですか。
  272. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) できるだけ早い機会に特例公債から脱却したい、この念願にはもう変わりございません。私は、まず財政百姓の最大の道はそれであろうと思っておるのでございます。そして、それが可能であるという試算を五十七年脱却という姿でお示しいたしているのでございます。そのことは、私たちの財政方針といたしましてこれは中期的な考えでございますけれども、特例公債からの脱却が何よりも先決問題であるということは試算でお示ししたところでおくみ取りいただけるであろうと、こういうことでございます。
  273. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは、もう少し角度を変えてお尋ねをしますけれども、そもそも、しばしば言葉に出てきます臨時異例の措置をとらざるを得ないような今日のわが国の財政危機がどういうふうにしてつくり出されたのかという問題ですけれども、振り返ってみますと、戦後の国債発行本格化の出発になった昭和四十一年度の予算の審議の際に、当時の福田大蔵大臣が、予算委員会においてもこういうふうに述べておられるわけですね。公債発行は、公債が税その他の普通財源に比べまして安易な財政調達手段である、したがって乱に流れる傾向がありはしないか、そういうことをおそれてその発行自体を厳しく規制し、またその発行目的、発行方法、これについても制限を加えておくことが必要であると考えていますというふうに述べておられるわけですけれども、ところがその後の事態の推移を見ますと、たとえば例の列島改造の時期、この前後する昭和四十七年、八年、九年、こういった年度をとってみますと、昭和四十七年度については二千八百二十億円の税収増にもかかわらず三千六百億円の国債増発が逆に行われている。それから四十八年度には一兆六千百二十億円の税収増のもとで国債の減額はわずか五千三百億、四十九年度には一兆六千百二十億円の税収増、国債の減額はゼロ、こういう形で年々国債が累増をしてきているという、否めないそういう現実があると思うんですけれども、それが今日のこうした事態を生んできている経過だと思うんです。  そこで、大臣は新しくかわられたんですけれども、大蔵省当局として今日のこういう、さらに一層の国債の大増発を悪循環的に累増させていかざるを得ないような、ここへ導いたそこの責任についてどういうふうに思っておりますか。
  274. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 御案内のように、日本の高度成長時代の一番終わりでございますが、四十年から四十五年、このときが私は日本の高度成長のまあ一番最後であろうと思うのでございますが、このときは大体実質成長が一一%ないし一二%でございます。そのときには卸売物価は大体二%、消費舌物価は年率五%でございます。やや需要圧力は強うございますけれども大体バランスが  ついたところでございまして、また、賃金コストはこの間いわば上昇率ゼロでございます。そして  マネーサプライは見ておりますと大体名月成長率とほぼ同じというところであったわけでございます。四十六年はいわば循環的な不況側面が始まってくるわけでございます。四十七年からいわば変動為替相場に移っております。このときを契機にいたしまして、これはまあ私の個人的な見解かもしれませんが、同定為替相場のもとにおきましてはいわば景気循環の基軸をなすものは外準でございました。外準が減ってまいりますとこれは引き締め政策すると、そしてまたそれによりまして、そうしますとやがてまた回復してくる、こういう景気循環を固定為替相場時代は繰り返したと思っておるのでございます。しかし変動為替相場になりますと、当然のことでございますが、変動為林相場によるところのいわば対外収支の自動調節が行われるはずでございますから、理論としては。  ですから、四十七年から各個の財政当局がやはり一斉に拡大政策を私にはとったように思われます。そのことは必然のことながら世界の潜在成長力に比べまして需要インフレを起こしているように思います。したがって、四十七年の秋口以降すべての原材料はずうっと上がってまいりまして、木材を初めその他原燃料がずうっと上がっておるわけでございます。その象徴的なものが四十八年の石油ショックという形であらわれたわけでございます。これは、ほかの普通の原料は四十七年のときから石油ショックのときまでほぼ二倍に上がっておりますが、石油は一挙に四倍に上がったわけでございます。この石油、世界経済が石油に組み込まれておったということ、それが一挙に四倍に急激に上がったということ、これは恐らく世界経済に大変なショックを与えたに違いない。特に石油の依存度の高い、何にも国内で出ない日本が最大の影響をこうむったことはもう当然なことでございます。そして卸売物価は二%か三十何%というわけでございますから、まあ一挙に十五倍以上上がったわけでございます。消費者物価の方は逆に二六%ぐらい上がりまして、いわゆる狂乱物価時代を迎えたわけでございまして、あのままほっておきますれば日本経済が崩壊したであろうということは容易に想像つくわけでございますので、引き締め政策をどんどんとっていったわけでございます。引き締め政策いろいろありますけれども、やはり日本で特に顕著であったのは日銀の窓口指導というものが非常に大きな影響をなした。それから公共裏業も抑えました。実行上どんどん抑えていったわけでございます。   こういうことによりましてインフレはようやくおさまりましたけれども、まあ私たちの見るとこ  ろ、しかし当時まだ民間は設備投資をどんどんやっておりまして、したがいまして、石油ショックを契機とするところの日本の需要構造の変化、コストの変化、そういうものに十分対応し切れないまま今日を迎えておるように思うのでございます。そういう意味では、日本に限りませんけれども、石油ショック以来の世界の経済変動というものについて、世界経済はまだ対応のさなかであるというふうにいまわれわれは理解いたしておるのでございます。そして、だんだんこなしておるわけでございますが、日本なんかは、まあ経常収支をごらんになってもわかりますように、ずいぶんこなした方でございますけれども、しかしそれは海外収支の話でございまして、国内市場を見る限りやはり十分にはこなし切っていない。そのために企業の成績は経常利益率で当時から見ますといま半減いたしておるのでございまして、まだ六社に一社は赤字であるとか、あるいは四社に一社は赤字であるとか、こういうことでございますから、企業に力がつかなかったのは当然でございます。  そういう変動過程下にあるわけでございまして、私たちが今度とりました臨時特例の措置というものは、やはりできるだけ早く民間の自律回復性を早くもたらしたい、そのためには一時財政が大きな借金をしょってもこれはやむを得ない、それが結局早道であろうと、こういうことを決意いたしましてことしの予算を組ましていただいた、こういうことであろうと思います。
  275. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろ長いこと答弁なさったですけれども、私の聞いている肝心の点の答えがないんですけれども、さっき私が引用しました国債発行に踏み切ったその当初の年における当時の大蔵大臣の発言、別にこれを金科玉条とするわけではないですけれども、繰り返しこの委員会でも、現大蔵大臣もいまの過大な国債依存度というものは脱却を速やかに図る必要があるということを何遍も答弁をなさっているわけですけれども、それでどうなんですか、これからの国債発行についての具体的な歯どめ策、その指標ですね、これを抑えていく、発行を抑えていく具体的な指標は何を考えておられるんですか。
  276. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 特例債の依存度をことしの予算の依存度よりもできるだけ縮めていくということ、これが何よりも第一でございます。それから第二番目には、何よりも早く、できるだけ早い機会に特例債の発行から脱却するということ、この二つを大きく考えているわけでございます。
  277. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 延段国債の脱却についてはどうなんですか。
  278. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) これは景気との関係を考えているわけでございまして、景気との調整によりましてこの点は考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  279. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私はここで一つの提案をいたしたいわけですけれども、現在建設国債については実質の六十年償還と、こういう考え方で千分の十六の定率繰り入れをやっていくということになっていますが、この特例国債のできるだけ速やかな脱却を図るという基本的な見地からして、十年で一〇〇%の償還を目指すということを念頭に置いた百分の十の繰り入れを行うと、こういう問題を一遍積極的に検討すべきではないかというふうに思うんですけれども、その点についての見解はどうですか。
  280. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 特例公債は借りかえをしないということを申し上げておりますので、ただいま十年債を主体に発行しておりますので十分の一ずつ繰り入れたらどうかと、一・六の定率繰り入れのかわりに十分の一ずつ繰り入れたらどうかという御議論かと思います。その考え方は実はいろいろあるわけでございまして、財政制度審議会でも議論いたしました。そういう考え方は一つの考え方としてありますけれども、特例公債について、いわば余分に償還財源を積み立てるよりは特例公債依存の財政から早く脱却する方が先なんで、いわば特例公債を出しながらたくさん積み立ててもしようがないんじゃないかということで、結論的に申しますれば、現行の総合減債制度、つまり一・六%の定率繰り入れとそれから剰余金繰り入れ、それから予算の状況に応じて繰り入れます予算繰り入れと、この三本の財源繰り入れを主体にいたしまして償還財源を確保していくというのがいいんじゃないか。しかし、特例公債を脱却しました後におきましては、その予算繰り入れに  ついていろいろ工夫をこらす必要があるんではなかろうか、いずれ現在そういう総合減債制度ということで積み立てております償還財源が償還に追いつかなくなってくるという事態もあり得るわけでございますから、そういう場合に備えて、一遍に財政負担がかかってこないように、負担の平準化を工夫すべきではないかという御談論、これは衆議院の予算委員会でもございましたが、そういう御議論もございました。私どももそれに備えていまから工夫してまいりたいと思っております。
  281. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ただいまの御答弁ですと、特例公債からの脱却、これをまず先決に置いて、この繰入率改善の問題は二の次といったような感じですけれども、それは両側面から検討努力をするという、そういうアプローチの仕方もあるわけですね。この百分の十の繰入率というのも一つの考え方として提起をしたわけですけれども、現行よりも繰入率をもっと引き上げるというこの問題は、当局としては検討課題にのぼってないのですか。
  282. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 先ほど答弁申し上げましたように、いろいろ検討いたしましたが、建設公債を前提にしての一・六%ではございますけれども、その制度をつくりました四十一年当時の物の考えあるいは計算の基礎といったようなものを変更する必要がございませんので、その点は変えなくていいんじゃないか。だから、問題はその特例公債について別の制度を考えるかどうかということなんではないかと思いますけれども、これは先ほども詳しく申し上げましたが、特例公債から脱却するのが先決である。特例公債を出しながらそういう特例公債償還財源を余分に積み立てることが意味があるかということではなかろうかと思います。
  283. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 もう余り時間ありませんけれども、もう一つきょう冒頭から質問をしていることとの関係でお尋ねをしておきたいわけですけれども、特例公債からの脱却が第一だと、しかる上で景気の動向等をにらみながら建設国債の発行についても縮限を図っていくということの考え方については、前回の委員会でも私ちょっと申し述べておったわけですけれども、今度の予算編成の基本的な考え方として例の二分割方式というものをとられておるということで、建設国債は増大の一途をたどる、それの利払い、公債費、これはいわゆる経常部門に持ってこられてそれが経常部門を一層圧迫をしていくということで、言うなら社会保障費とか文教費とか、ここへの圧迫か、さもなくば依然として特例公債からの脱却のテンポもおくれると、こういう関係が政府が提出をしておる予算の骨組みとしてあるわけですね。特例公債からの速やかな脱却はもちろんのこと、建設公債の解消についても同時並行的なそういう努力が行われるべきだというふうに思うんですが、その点はどうですか。
  284. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 特例公債と建設公債の関係につきましては先ほど大臣から詳しくお話し申し上げたんで省略させていただきますが、特例公債を出しながら建設公債を圧縮する、つまり現在は公債対象経費につきましてはいわば満度建設公債を発行しているわけでございますが、それを満度でなくて何割かに落とすということをやるのはこれは意味がないんではないか、そういうことができるならばまさに特例公債を圧縮すべきではないかということではなかろうかと思うのでございます。当然、公共事業は景気の動向等に応じまして変動があるわけでございます。伸び率にも恐らく変動があるというのが正確かと思いますが、変動があるわけでございますが、その際には事業費が変動するわけでございまして、それに応じて国債も対応する、財源であります国債も変動ずると。したがって、建設国債の伸び率も低くなる場合があり得るということではなかろうかと思います。
  285. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 佐藤君いいですか。
  286. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 もう時間がないから次回にします。
  287. 野末陳平

    野末陳平君 先ほども出ておりました公債の銀行の窓販について二、三お尋ねして、それから増税などについてもお聞きしたいと思いますけれども、理財局長の答弁ですと、やはり銀行の窓販にはいろいろな問題点あるいは疑義などもあって、それも整理してというようなことでしたけれども、先日ぼくなんかも証券取引所へ行ったときに、証券業界はどうも余り好んでいないというか、むしろ反対のような感じを受けまして、これは銀行と証券恐らく利害が対立している問題じゃないかと、こういうふうに考えたわけですけれども、そこで銀行局長のお立場で、まずこの銀行に窓販をさせた場合のメリットについて一つあるいは二つとわかりやすくひとつお願いしたいです。
  288. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 国債の窓口販売の問題は、先ほど理財局長から答弁申し上げましたように、昨年金融機関からこういうものを実施したいという要望が出ているわけでございますけれども、これにはかねてからいろいろ問題もあるわけでございますので、今後慎重に検討をすべきものと考えております。  この窓販を実施した場合銀行にとっての利害ということでございますが、この窓販の問題というのは金融機関あるいは証券業のそれぞれの業務分野の問題としてではなくて、むしろ国債管理政策として本来どのようなものが望ましいかという角度から、あるいは国債の安定発行であるとか、あるいは公社債の市場の整備であるとか、そのような角度から検討されるべきものと考えておるわけでございます。したがいまして、個々の金融機関であるとかあるいは証券会社の利害であるとか、そういうことでこの問題が左右されるべきものではないと、このように考えます。
  289. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、この場合は銀行に当然窓販を許せば新発物、既発物どちらをも扱うということになりましょうか。
  290. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) この点につきましては、窓販をどのような形で導入するかにつきましてまだこれから、検討が行われている最中でございます。その結論に従うことになるかと思います。
  291. 野末陳平

    野末陳平君 確かに銀行の立場の利害でもってこの問題を論ずるというのはおかしいと思いますが、しかし証券業界はもう明らかにそれも頭に置いた上で、何となくこの問題に、何といいますか、反対というのでしょうか、やってほしくないような感触を受けるわけですね。ですからひとつ証券局長の立場になりましてね、どうして証券業界はこの問題に消極的であるかと、当然大きな立場から言うべきものであるが、やはりこれは利害に微妙に関係してきますから、これを証券業界が敏感なのは当然だと思うんです。そこでひとつ証券業界のこの問題に対するむしろマイナス点のような、あるいは困る面があるならばそういう点をお答え願いたいと思います。
  292. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 証券界の方で挙げておりますその国債窓販に対する反対意見の理由といたしましては、たとえば現在の証券団の販売努力によって消化が十分できるとか、あるいは金融機関の参人が流通価格の二重価格化になるとか、あるいは金融の寡占化を強化するおそれがあるとかい  ったようなことを挙げているように思われます。ただ、これはそれぞれの、つまり証券業界あるいは金融業界それぞれの業界の立場からの議論であろうと思いますので、それをいかに全体の立場から調整をしていくかというのは、先ほど銀行局長がお答えしたとおりであろうかと思います。
  293. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、いま幾つか挙げられましたけれども、大蔵省として、証券局としてはどうでしょうか。この中で特に問題になるというところはどこらあたりとお考えでしょうか。
  294. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 業界の方で挙げておる問題点は、その業界活動として当然の問題として問題になり得る事柄だろうとは思いますけれども、やはりこれだけ多量の国債あるいは公共債が発行される経済を円滑に運用していきますために、どういうふうな公社債市場のあり方であるべきかというところをまず主眼点として物事の判断をつけていかなければなるまいというふうに考えております。
  295. 野末陳平

    野末陳平君 銀行がやはり窓口で売った方がこれからは非常に便利にもなるし、それから個人消化も、現にいままで証券界でも十分消化していますけれども、だからといってやはりこれからももっとどんどん消化できるかどうかということはわかりませんので、どうでしょうか、銀行局の立場で、ぼくはやはり窓販ができるようになった方がいいんではないかと思いますけど。
  296. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) この問題は先ほども申し上げましたように、銀行あるいは証券のもちろんそれぞれの利害はあるわけでございますけれども、そういう角度からではなくてこの問題を議論すべきであるし、またそれを議論してもらいたい、このように銀行局は考えておるわけでございます。
  297. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、今度公社債市場のあり方という問題になりますと、これはどういうふうに、今後、たとえば買った人がこれをどういう形で、あるいはそのときの相場がどうのとかまた非常にむずかしい問題出てくるのですが、その公社債市場のあり方を考えた上で結論を出すということになりますと、その場合の一番のポイントはどこになるんですか。それだったら強いて言えば、証券界が恐れる混乱しそうな要因というのは  一番大きいのはどこにあるんでしょうか。
  298. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 先ほどからも当委員会で御議論がございますように、大量国債発行をいたしましたもとにおける公社債市場の整備の方策というのは非常に今後の大きな問題でございます。この問題につきましては、この五月の下旬以降、証券取引審議会を再開いたしましてかなり時間をかけて基本的に御議論願おうと思っております。テーマはいま申しましたようなことでございますけれども、ややブレークダウンをして申し上げますと、将来のある種の金利水準の変動に対応いたしまして異常な投機が起こることがあるのかどうか。もし起こる可能性があるとすればどのような措置あるいはどのような点の勉強を現在の段階において公社債市場整備として考えておく必要があるのかどうかというような問題であろうと思います。そういう問題の一環といたしまして、たとえば公社債の保有者層を一体どのように、どういうところにどの程度の任務の分担をお願いをしておけば将来の公社債市場が過度な変動にさらされることがなくて済むかといったような問題も恐らくその一項目として出てこようかと思いますので、そういう問題、つまりそういう角度からの問題の論議として今後証取審においても議論が行われる可能性があるということでございます。
  299. 野末陳平

    野末陳平君 じゃその中で一つだけ、先ほどから出ておりますけれども、安定保有層というような層が一体どこなのかがわかるようでわからないので、そこだけもう一つお聞きしたいと思うんですが、何かいかにも銀行でどんどん売るようになると不安定な保有層にまで広がるというような、そんな受け取り方もできるし、それから今度証券界に聞きますと、結局われわれが相手にしている客はそう簡単にぼんぼん金に困って売るような客じゃなくて、これは安定した保有層だから市場を混乱させることもないしとか、そんなことも聞くんですが、どちらの客もそれほど違わない部分もありますからね。だから安定保有層というのは一体どこを指して言っているのか、その点だけ教えていただきたいと思います。
  300. 山内宏

    政府委員(山内宏君) いま申しましたようなことはこれからの議論にかかわるわけでございますから、いまここで結論を出しておるわけではございませんけれども、われわれが漠然と頭の中にありますのは、個人が全体として大体どのぐらいのシェアを持っておればいいのか、つまり多ければ多い方がいいのか、あるいはある程度のノーマルな基準的なものがあるのかどうか、これは諸外国の実勢なんかも一つの参考になろうかと思います。あるいはまた、機関投資家をどのように育てていけばいいのか、それから個人、機関投資家のちょうど中間に存在するものとして公社債投資信託をどのように育てていけばいいのか。あるいは先ほどからるる御議論のございますように、非常に多くを金融機関に消化を依頼しておるわけでありますけれども、これが一体どこまで続くものであろうか、そういうようなものをひっくるめていわば投資家層、保有者層の物の考え方をどう見ていけばいいのかというふうな考えでございます。
  301. 野末陳平

    野末陳平君 それでは、また次の機会に続きにしまして、今度は、さっきちょっと出ましたけれども増税に絡んだ公債の問題をお聞きしたいんですが、ことしもまた特例公債これだけ出すことになりますと、いよいよ財政は危機だということはよくわかりますし、そうなりますと増税が当然議論にのぼってきてこれはやむを得ないと、そこまではわかるんですが、そこで大蔵大臣に基本的にお聞きしたいんですが、先ほどもちょっと御答弁の中にありましたけれども、経済が不安定のときに増税はやれるかどうかというようなことをちらっとお答えになりましたが、果たしていまの状況は、この財政危機を切り抜けるために、経済的環境にこだわらずにとにかくもう増税はやるべきときに来ているという御認識なのか、それとも環境によってはやれないと、まだまだこれについてはいろいろ経済の推移を見きわめながら考えるべき流動的な時点であるということなのか、どちらか大臣の現在の御認識なのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  302. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) まず二つぐらいあるんじゃないかと思います。やはり国の財政が非常に異例の状況にあって、このままやっていったらこれはなかなか大変なことになるという問題。さっきも申しましたように、負担を現代が負わないでみんな子供たちに負わしてしまうという問題は別にいたしまして、その次に財政硬直化がきたときにはどうなるんだろうとか、あるいは民間資金需要が起きてきたときにはどうなるんだろうか、これはもう日本で何遍も経験したわけでございますので、そういったことからいまの財政状況をこのまま続けていっていいかどうかというようなことについても、やはり四足的なコンセンサスができるだけできるということが一つであろうと思うのでございます。  それからもう一つは、仮に負担増を求めるとしてどのようなものを求めるかということでございますが、それは同時に歳出ともつながるわけでございますけれども、歳入の面だけを申しますれば、それはある種の負担増は特に一体何に影響するであろうか、物価に影響するのか成長率に影響するのか、何に影響するのか、そこの点がやはり一つの問題点になるでありましょうし、それは当然そのときにおける経済環境との関連において考えていかなければならない性質のものでございましょう。それから同時にまた、その負担増を求めたものは一体歳出としては最終的にどこに帰属するのか、この問題もあわせ考えていかなければならない。そういう意味で申し上げているわけでございます。
  303. 野末陳平

    野末陳平君 それでは、いまのお答えに関連してもう少し具体的にお聞きしますけれども、増税をしますと結果的に――たとえは頭に消費税を置きますとこれは物価の値上げにつながるんだと、実質的には物価値上げになりますけれども、その場合に、いまのところ消費者物価の指数が落ちついてますね。落ちついているんだったら、いまぐらいだったらばそれほど問題にならないのか、それともある程度数字が大臣の頭の中にあるのかどうか。物価指数がこのぐらいだったらばちょっと増税は無理だとか、このぐらいならまずまず考えていいんではないかというラインがあるならば、これについてもう少し説明してほしいと思うんです。
  304. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) まあ消費者物価は大きな問題でございますけれども、それは経済全般との関係でやっぱり論ぜらるべき話であろうと思うのでございます。やりやすいのはやはり消費者物価が落ちついておるとき、そしてそれがかなりの永続性を持っているというときの方がやりやすいであろうということは容易に考えられると思います。
  305. 野末陳平

    野末陳平君 さっき大分いろんな指標が上向きになったということをお答えになっていまして、新聞なぞ見てますとそんな記事も多いし、それからぼくなんかも感じとして、わりといわゆる消費景気というようなものが出てきているのかなということを感じるときもあるんですね。それはなぜそうなっているかということについてはいろいろな見方があるとは思うんですけれども、しかし、これがある程度消費景気が出てきたとしまして、たとえば来年の四月ごろに消費税なんということになりまして、それが夏過ぎにでもそんな声が具体的になってきたり、あるいは仮に大臣の理想――理想ということはないけれども、大臣が一番望ましい時期に、来年の四月ごろにいよいよ実現と、こうなるとやはりせっかく出てきた消費景気というものが冷え込んでしまうような、これがまた全体の景気に影響を及ぼすという不文があると思うんですね。先ほど増税がすぐにデフレ、不景気につながっていくというようなことではないというお答えでしたけれども、しかし、せっかく出てきた消費景気に水をぶっかけるようなこともこれは当然考えられるわけですが、それについては大臣はどうお考えですか。
  306. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 抽象論で論じますと、なかなか消費税一般でもって論じますと大変でございますが、一体どれぐらいの負担で、どれぐらいの税率で、課税標準はどれぐらいで、そしてたとえばこれこれは対象から外すというような、何らかの具体案でもってやらないと論議というものはもう極端から極端まで私はいくと思うのでございます。したがいまして、やはり実行可能な案をできるだけ早くたたき台でつくっていただいて、そしていろんな――政府だけがやるわけではございませんで、各層のいろんな御批判をいただきまして、それをじっくり反省の材料にいたしまして、そしてこういう批判もあるけれどもそれはそう心配ない、あるいはこういう批判に対してはこう手直ししないといかぬとか、いろんなことを考えてやはり試行錯誤的にやる場合には私はやるべきであろうというふうに考えているわけでございまして、一般消費税という抽象論でもって論ずるのはいかがなものであろうかという感じがいたしておるわけでございます。
  307. 野末陳平

    野末陳平君 これからがいろいろと議論が出てくるところで大変だろうと思いますけれども、ただ一つ増税考える場合に、大臣もおっしゃいましたけれども、国民的なコンセンサスをというようなことはどうしても出てくるんですが、実際に国民がコンセンサスを、つまり国民的コンセンサスが得られるというような問題ではないと思うんですね。やはり一々聞いてみて、やむを得ないと思っている人でもこれはいやがりますからね。だから言葉のあやだとは思うんですけれども、しかしこの増税はやはり説得するかどうかであって、国民的コンセンサスというような消極的なことではちょっとむずかしいといいますか、得られないだろうと思うんですよ。  そこで、今後増税についていろいろなことを大蔵省はキャンペーンといいますか、問題提起をされるとは思うんですけれども、やはりここまでもうお金がない、お金がないためにこれからこういう計画ももう現実にこうだという、財政収支のことで、あれは試算であるか計画であるかということが大分問題になっておりますけれども、ああいう数字とは別の、国民に対してもう少しわかりやすい考え方を、まあPRというところまでいきませんけれども、国民に示す材料というのをやはりつくらなければいけないと思うんです。それがどういう形のものかというのがむしろむずかしいのかもしれませんけれども、ぼくはやはり増税はやむを得ないんだということは徐々に浸透はしても、自分からは取られたくないとか、あるいは人から取るなら大いにやれとか、非常に無責任なところに落ちついちゃうので、やはりそれにはきちっとした説得する材料がこちらにないとだめだと思うんです。  それで、ぼくらもやはり余りおもしろくないと思いますから、どうしても反対反対ということだけになってしまいがちですので、その辺、ちょっと財政収支試算だけでは、あれは国会用というか玄人用であって、もう少し素人用に何かを考えるべきじゃないかと思うんです。そういう問題について大臣あるいは当局の方に何か今後プランがおありなのかどうか。つまり、国民的コンセンサスを得なければならぬと言いながら、具体的にじゃあ何をやっているのかというところが一番気になるので、それをお答えいただいて終わりにします。
  308. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 野末委員のお説全く同感でございます。もう納得したからぜひ取ってくれなんという、そういう性質のものでは本来税はあり得ないと思うのでございまして、やむを得ないかと、これがもう精いっぱいのところであろうと思いまして、われわれはそういう意味で、言葉は適当でないかもしれませんけれども御理解いただく、あるいは説得まではいかなくてもやむを得ないかというところまで何らかの形でやはり国民の理解を深めるためのあらゆる努力をしなければならぬと思っておるわけでございまして、これは今後精力的にやってまいりたいと思っているのでございます。  ついででございますけれども、実はこの財政特例法につきまして衆議院大蔵委員会で附帯決議がつきました。もうあの附帯決議を見ますと、私たちの言いたいことがそのまま附帯決議に出ているわけでございまして、いままでいろんな悪口を言われたけれどもやはりご理解いただいていたんだなということで、全党一致の附帯決議をちょうだいいたしているのでございます。その意味で、やはり苦しくても困難であっても、いま野末委員がおっしゃったようなことにわれわれは力を入れていかなくちゃならない、このように考えているところでございます。
  309. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回は四月二十七日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会      ―――――・―――――