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参考人(
大塚和三郎君) 私、
兵庫県の灘正郷の中に常業いたしております
金露酒造株式会社の
社長の
大塚でございます。
ただいま
桃井さんから
業界全般の
状況の御報告がございまして、私といたしましては主
産地の灘の
立場から、
業界の
現況等につきましてお話しをさしていただきたいと思います。
ただいま
灘五郷といわれる主
産地でございますが、その
企業の数は六十六
企業でございます。六十六
企業の中に常識的には非常に大きな酒屋が多いということになっておりますが、先ほど
桃井副
会長が大
企業十三とおっしゃいましたが、そのうちの七が私
たちの灘の地にあるわけでございまして、したがいまして、
残り五十九という約九〇%のものは
中小企業でございまして、私の
企業な
ども年間の
蔵出し数量が約六千キロリットル、大体
業界の中間の
業者でございます。中には主
産地の灘といいましても三百キロ以下の非常に小さい
企業も数社あるわけでございます。
灘といたしましては、
年間の
蔵出し数量、いわゆる
販売数量でございますが、ほぼ五十五万キロリッターでございまして、それは
全国の
移出数量の大体三分の一に相当いたしますので、それなりに
清酒の
業界に対するウエートは相当高いというふうに考えなければならぬと思うわけでございます。特に御承知のように
特級酒、
一級酒、二級酒とございますが、
特級酒は
課税移出の
蔵出し数量の中で約九%を占めておりますので、
全国の五・一%に比べますと相当倍近く多いわけでございまして、
全国の
特級酒の六一%に相当する
数量でございます。約六割は
灘五郷で蔵出しさせていただいているわけでございます。それからいま一番売れております
一級酒につきましては、
全国では全体の酒の中の五六%となっておりますけれ
ども、私
たちの方は七九・二%、
灘五郷の中の酒の出荷のうち約八〇%を占めるわけでございます。残るは二級でございますが、
全国では三九%の
シェアでございますけれ
ども灘五郷の場合はわずかに一二%、言いかえれば
特級と
一級と合わせましてほとんど九割、
灘五郷の売っておる酒というのは九割が特、
一級なのでございます。その全体で先ほど申しました
大手の
企業、大
企業七社が占めるのは大体七五%、いわゆる四分の三は
大手が占めておりますから、相当上位集中しているというふうに御解釈願いたいと思うんでございます。
最近の営業の状態でございますけれ
ども、大体
全国と同じ
環境のもとでございまして、残念ながらオイルショック以来伸び悩んでおります。その
理由としては幾つか挙げ得るわけでございまして、基本的には
企業努力の不足も反省しなければなりませんけれ
ども、先ほど
桃井さんのお話にありましたように、
主原料である米の
代金が上がるということが引き金になりまして、
昭和四十八年から、もっとも五十一年は税金でございましたが、五
年間連続して値上げをしておるというようなことがやはり
消費の伸び悩みにつながっておる
一つの大きな要因であろうかと思うわけでございまして、この
原料米の
価格の問題につきましては、われわれ灘といたしましてもぜひ
先生方の御理解をいただきたいと思うわけでございます。
それで、今回の
増税の問題でございますが、先ほど申しましたように、われわれ灘といたしましては
販売数量の九〇%が
特級、
一級でございますので、九割の
商品が今回の
増税に
関係をしてくるわけでございまして、そういう意味におきまして非常に重大な関心を持っておるわけでございまして、今後の
影響を心配しておるわけでございます。
それに関しまして、承りますところ、今回の
増税後の予算で百六十億の増徴と承っておるわけでございますけれ
ども、ちょっと先ほどの試算ではじいてみますと、
兵庫県、いわゆる
灘五郷で
特級酒で三十一億、
一級酒で六十一億、ざっと九十二億、これは非常に概数でございますけれ
ども、今回御
計画になっております百六十億円の中で九十二億円はわれわれが
負担させていただくことになる。大体六〇%近いということで、今回の
増税に関します六割はわれわれの方にはね返ってくるという受けとめ方をいたしておるわけでございます。
桃井副
会長の話にありましたように、
清酒は
ビールや洋酒との競合に非常におくれをとっておるということは否めないのでございまして、
清酒の主
産地であります灘の
立場といたしまして、この
清酒の不振というのは、灘の責任というのは非常におこがましゅうございますが、あるいは灘のプライドとしても何とかこれをはね返すといいますか、打開をしていかなきゃならぬということで、現に昨年度から始まっております第三次の
近代化構造改善の
事業にも参加いたしておりまして、まず具体的には
人材養成の
事業といたしましては、
近畿六府県の
主導権をとりまして
人材養成に努めており、今年も
計画をいたしております。
それからもう
一つは、
灘酒の
需要開発でございます。これにつきましては、
灘酒の
展覧会を東京、大阪、名古屋の百貨店を借りまして昨年も開催いたしまして、本年も
正月の二日、三日、四日というような
正月返上で
委員の者は
努力をしたような事情でございます。
特に灘といたしまして申し上げたいことは、最近不況のせいか
特級酒の
消費が減少いたしておる傾向がございます。とにかく先ほど申しましたように、
全国の六割の
特級酒をわれわれが引き受けておるわけでございます。何とかこの
特級酒の減退というものを食いとめ、さらに伸ばすということが
清酒全体のイメージアップにもつながるわけでございますので、小型の
卓上ボトルとか、あるいは陶器のつぼとか、いろいろ
努力をいたしております。また、米ばかりでつくります純
米酒というのは非常に
原価が高くなるわけでございますが、そういったものも
努力いたしておりますが、現在の税のシステムにおきまして、少し高くなりますと
特級酒は
従価税になりまして、一般の一升
びんの
税率負担が三十数%に対しまして、
従価税となりますと四十数%になるということで、
小売価格が急にはね上がってまいりまして
消費につなぎにくい。したがって、なるべく
末端価格を抑えた点にもっていくということになりますと、手取りが悪くなって、たとえ
材料費ぐらいは賄えましても、そういったものをつくります
技術料とか、それからあるいは非常に
手間がかかりますが、そういう
手間料というようなものはあきらめなきゃならぬ。
すなわち、
知識集約化の
荷付加価値の
商品をつくれということは、何も酒だけでなく、わが国の
産業として
一つのポイントでございましょうが、そういった点でせっかくやっても、いわゆる高収益の
付加価値の高いものを編み出すことができないというようなことでございます。何とかこの辺も今回の
増税に連動いたしまして、
特級酒の
従価税の非課税限度額というものをもう少し上げていただくようなお考えをしていただけないかということは、かねて大蔵御当局にも
お願いしておる次第でございます。そういうふうなことで、
特級酒の沈滞というものは、量的には非常に少ない
シェアでございますけれ
ども、イメージにおきましては、やはりこれがなければ
清酒が洋酒や
ビールに対抗するということで非常に旗印が悪いというふうにお受けとめ願いたいと思うわけでございます。
それから、われわれ主
産地の
販売市場といいますものは、東京とか大阪を中心としまして大市場、名古屋あるいは博多、福岡方面とかというふうに都市部でございます。
ビールとかウィスキー、ワイン、こういうふうなものも非常に流通する
地域でございまして、特に最近は輸入の
ウイスキー等も大変量がふえてまいりました。過当競争になっております。ワインまたしかりでございます。
業界は
清酒とか洋酒とかいろいろ分かれておるといいながら、
流通業界は一本でございます。われわれはそういったような洋酒の過当競争と対抗しつつ、これらと激しい競争をしていかなきゃならぬわけでございます。特に先ほど申しましたように、灘の
大手以外の
中小メーカーというものは数十社あるわけでございますけれ
ども、これもやはり過去の実績で大都市部に市場を持っております。こういったところは、片や
ビールや
ウイスキーとの競合に巻き込まれますし、また片や
業界の中で、最近これは
近代化の方向でもございますが、地酒の振興ということで各地で非常に熱心におやりになっておりまして、こういったいわゆる地酒ブームとも闘わなきゃならないということで、非常に両面から苦しい闘いをしておるというような現状も、灘といえば強い酒屋がおるんだという御
認識を若干改めていただきたいと思うわけでございます。
そういうようなことでございまして、一番大きな問題はやはり
原料米の
価格の問題で悩んでおります。しかし、その他流通等でいろいろ問題があるのでございますけれ
ども、時間が参りましたようでございますので、これで御報告を終わらしていただきます。
どうもありがとうございました。