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1978-04-13 第84回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十三日(木曜日)    午前時町四分開会     —————————————    委員異動  四月十二日     辞任        補欠選任      渡辺  武君     神谷信之助君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         嶋崎  均君     理 事                 藤田 正明君                 細川 護熈君                 福間 知之君                 塩出 啓典君                 中村 利次君     委 員                 岩動 道行君                 糸山英太郎君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤井 裕久君                 宮田  輝君                 穐山  篤君                 矢田部 理君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 佐藤 昭夫君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  村山 達雄君    政府委員        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁物価        局審議官     水田 治雄君        大蔵政務次官   井上 吉夫君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        大槻 章雄君        大蔵大臣官房審        議官       福田 幸弘君        大蔵省主計局次        長        松下 康雄君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        国税庁間税部長  矢島錦一郎君        国税庁調査査察        部長       藤仲 貞一君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部景        品表示指導課長  土原 陽美君        警察庁交通局交        通指導課長    広谷 干城君        食糧庁総務部長  小野 重和君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十二日、渡辺武君が委員を辞任され、その補欠として神谷信之助君が選任されました。     —————————————
  3. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。村山大蔵大臣
  4. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ただいま議題となりました酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  わが国の財政は、大量の公債、特に特例公債への依存から脱却し、財政健全化を図りつつ、同時に、速やかに景気を回復させるというきわめて困難な問題に直面しております。このため、昭和五十三年度の税制改正においては、当面の経済運営方向と背馳しない範囲でできる限りの増収措置を講ずることとし、その一環として酒税について税負担増加を求めることといたしたものであります。  また、清酒製造業経営基盤の安定に資するため、日本酒造組合中央会事業範囲拡大を図る必要があります。  以上のような観点から、ここに酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。  初めに、酒税法の一部改正についてその大要を申し上げます。  第一に、酒税従量税率引き上げを図ることといたしております。  すなわち、ビール果実酒類ウイスキー類スピリッツ類リキュール類及び雑酒について二四・三%程度清酒特級について一七・五%、清酒一級について六・九%、しょうちゅう甲類について九・九%、みりん本直しについて四・九%その税率引き上げることとしております。これを通常の容器一本当たりに換算いたしますと、たとえば清酒特級は百十円得度、清酒一級は二十五円程度ビールは二十円程度ウイスキー特級は二百十円程度増税となります。  他方、清酒二級、合成清酒、しょうちゅう乙類及び本みりんについては消費態様等を考慮して税率を据え置くこととしております。  なお、酒類販売業者等が、税率引き上げが実施される際に対象酒類一定数量以上所持する場には、従来と同様の手持品課税を行うこととしております。  第二に、こうじの製造または販売業開廃等に係る申告制度を廃止する等酒税制度整備合理化を行うこととしております。  次に、清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部改正についてその大要を申し上げます。  清酒製造業におきましては、現在、昭和五十六年度を目標年度とする第三次近代化計画を実施し、経営基盤の一層の安定に努めているところでありますが、今回、このような清酒製造業自動努力を実効あらしめたるため、日本酒造組合中央会事業範囲拡大することといたしております。  第一に、この法律の施行の日から昭和五十六年十一月三十日までの間に清酒製造業を廃止する者に対し、給付金を給付するとともに、これに係る納付金清酒製造業者から徴収することができるよう措置することといたしております。  第二に、経営の改善その他清酒製造業近代化を図るための事業を行うことができるよう措置することとしております。  以上、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由内容大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 矢田部理

    矢田部理君 最初に、大蔵大臣に伺いたいと思います。  今日の財政は異常な危機を迎えていると思うわけでありますが、大蔵大臣としていま抱えている財政問題点危機内容等々についてどのように認識をされているか、まず伺いたいと思います。
  7. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) すでに御高承のとおり、今年度は景気促進、特に内需拡大のために臨時異例財政措置を講じたところでございます。すなわち、財政主導型によりましてこの目的を達成しようとすることでございます。したがいまして、できるだけの景気に背馳しない範囲でいまお諮りしております酒税、あるいは先般御議決いただきました有価証券取引税、あるいはまた石油税等ある種の負担増を求めておりますし、また、いわゆる前倒しによりまして財源措置所属年度区分改正したにもかかわらず、公債依存度は異常の高さに達したわけでございます。前倒し分を除いて実質で計算いたしますと三七%という大変なものでございます。本年におきます各国の公債依存度はぼつぼつニュース入っておるわけでございますが、恐らく最高で一六%ぐらいではなかろうかといま思っておるぐらいでございます。その意味できわめて高い公債依存度でございます。  そこで、私たちが一番考えております問題は、一つはこのまま村政がふくらんでまいりますと、あるいは現行のままでありましても、やはり国債費償還利払い費は大変な額に達するわけでございます。したがいまして、一方財政需要の方は国民生活の向上とかあるいは福祉の問題とか文教問題であるとか、年々そのサービスの増加国民から期待されるところでございます。  こういったことを考えますと、今後の財政支出に当たりまして、ほとんど公債その他のいわば当然増経費が大きくなりまして、そのときどきに財政が機動的に応じなければならない政策経費がほとんどもう出てこないという問題が第一に指摘されねばならぬのでございます。これは財政に課せられましたいわば資源配分機能であるとかあるいは景気調整機能、こういったものが失われるということは当然でございまして、われわれはまず第  一にそのことを心配いたしておるのでございます。  それから第二番目に心配でありますのは、現在はまだ貯蓄投資関係で、家計の貯蓄を従来民間設備投資でこれは需要しておったわけでございますが、現在民間投資意欲はございません。したがいまして、財政がその分を肩がわりいたしまして、そして公共投資中心として投資を行い、立ちおくれておる社会資本の充実を図りながら内需拡大を進めていく、貯蓄投資のバランスをそこにとりつつ景気の振興を図っておるわけでございます。しかし、やがていつかは民需主導型の経済になってまいりますと、当然のことでございますが、資金需要が出てくるのでございます。  現在のように、その場合公共投資の方でございますと、これはその場合はちょうどある程度まで圧縮することができるわけでございます。なぜならば、もともと景気需要のためにやっているわけでございますし、ですからその点はある程度弾力的に抑えることはできるにいたしましても、特例債の方はこれは経常経費を賄っているわけでございまして、それが人件費であれあるいは社会福祉であれ何であれ、そういう経常経費を賄っておりますし、その裏づけとなっているものはすべて諸法律制度が決まっているわけでございますから急速には縮まらない。そういうことになりますと、両方の需要を満たさねばならぬということになって、それを金融面でもし賄うといたしますと、これはいわゆる過剰流動性のおそれが出てくるわけでございます。かつて、日本の戦前において同じような状態をしばしば経験したわけでございますが、その轍を踏むということでございまして、これは財政インフレの危険をはらんでおるわけでございます。  第三番目の問題はいわゆる償還の問題でございまして、いままで大量の国債を発行いたしておるわけでございまして、この償還の問題、それはやがて償還財源につながるわけでございますけれども、それを何の用意なくしてそのままずるずるいってしまうと、これは後代に負担を残すと、こういう問題につながりまして、そのことがあっては世代間の公平の見地からどのようなものであろうか。  大づかみに分けまして、私たちはこの三つの問題をいま財政問題として大きく考えておるところでございます。まあ世界でこんなに公債依存している国はございません。それから四十九年から考えてみますと、五十二年度まで歳出の方は大体二〇%のスピードで伸びてまいりました。ところが、租税収入の方は一〇%弱でしか伸びていないのでございます。このアンバランスを全部国債で賄っておる状態でございます。これは考えてみますと、歳入の方はいわば現実経済減速経済に入っておるそのままを反映しておるわけでございますし、歳出は、言葉はどうかわかりませんけれども、結果において高度成長時代歳出の後を追っておると、中身は違いましょうけれども。形でいうとそういうことになっておるわけでございまして、以上三点を考えますと、われわれはなかなか重大な財政時代を迎えておる、こんな認識でおるのでございます。
  8. 矢田部理

    矢田部理君 できるだけ簡単にお答えをいただきたいわけですが、そこで、いま問題になっております酒税法等改正に当たっても、酒税の値上げについては公債依存財政脱却を目指すんだということを一つ大上段に掲げているわけですね。一方で臨時異例措置とはいえ、いままで三〇%以上は出さないんだと何度もここで大蔵大臣も述べてきたのに、ことしはそれを破りました。しかも同時に、一方では公債に抱かれた財政を何とか克服をしたいという看板を出しているわけですが、その関係をやっぱりどういうふうに考えるのか。  それから、臨時異例措置というのは、まさにことし限りという意味なのか。来年以降の公債問題の扱いについてどう考えておられるのか。とりわけ脱却を目指すということであるならば、その目指す道筋といいますか、公債解消の手順といいましょうか、このことをやっぱり具体的に明らかにする必要があるだろうと思われますし、先ほど償還の問題についても触れられましたが、このための財源を具体的にどこに求めようとしているのか。どういう方法で財源を含めた償還計画考えておられるのか、その辺を明確にしてほしいと思うんです。
  9. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まず、臨時異例というのはいつまで続くかという話でございます。ことしはそのような意味でやったわけでございまして、目指すところは、自由体制経済でございますから、経済主導権を握るものは私は民間経済でなければならぬと思っておるのでございます。しかし内容を見てみますと、やはりこの二、三年来どちらかというと財政主導型であるわけでございまして、そして民間経済活動はそれほど盛り上がっておりません。そうして民間企業収益は非常に悪い状況に落っこっておるわけでございまして、経常利益率等は一ころの半分に落っこっておるわけでございます。これを財政によりましてある程度自立回復性を早めていくと、このための臨時異例措置であるわけでございます。総理もしばしば申し述べてまいっておりますように、少なくとも今年度の予算その他の施策を通じましてトンネルの先が明るく見えるところまで持っていきたい、こういうことをいま考えまして、ことしの予算編成並びに今後の執行に当たるつもりでございます。したがって、少なくとも経済再建の第一歩をこの臨時異例財政措置によって達成したい、かように考えておるところでございます。  来年度どのような財政運営を行うか、それはそのときの事情によりまして考えてまいらなければなりませんが、基本的には、さっきもお触れになりましたけれども赤字公債をできるだけ今後少なくするという方向考えてまいりたいと、これがまず第一の考え方でございます。  それから第二番目には、財政収支試算にお示ししてありますように、五十四年から始まりまして、できれば五十七年ぐらいまでに赤字国債の少なくとも発行をやめたいものだ、かような念願を持っておるわけでございまして、それができるかできないかという一種の経済試算をいたしたものが収支試算に示されておるところでございます。そのような考え方を持っておるのでございます。  それから第三にその償還財源の問題でございますけれども、これは正確に申し上げますとなかなか十何年も先の財政経済状況、それから財源状況をすべて財政計画を立てているわけでございませんので的確には申し上げられません。しかし、試算で示しておりますような形がもし実行できるとすれば、その後どのような償還財源、要償還額が出てくるか、そのための財源措置がどうなるかということはまた参考表としてすでにお示ししておるところでございます。これは一つの仮説に基づいてやっているわけでございますけれども、そういったものを手がかりにしながら最終的に償還財源に困ることがないように、特に特例債償還のための借りかえは行わないということは法律で明記しておりますので、その方針、法律の精神にのっとってスムーズに償還が行われるよういまから考えていかねばならぬと、かように考えておるところでございます。
  10. 矢田部理

    矢田部理君 公債の問題はいずれそれ自体を本格的に審議をしなければならぬということが予定をされておるようでありますから、ここではそれほど突っ込んだ話にはしませんけれども、いまの大蔵大臣の話を聞いておっても、どうもやっぱり薄らぼんやりしている感じで、具体的に、表題には掲げているけれども、どうもやっぱり説得力のある、なるほどそれならわかるという説明にはなっていないように思います。  特にそこで指摘をしておきたいのは、特例公債中心考えているようですが、建設公債だからといって実体がそう違っているわけではありません。これをも含めた解消策といいますか、圧縮策といいますか、これをやっぱりまず考えなければならぬだろうし、それを含めた財源問題を具体的に提起をしなければならぬ時期が、前々から要求をされておるわけでありますから、ひとつ考えてほしいというふうに思っています。  そこで次の問題に発展をさせたいと思いますが、財政は非常に危機的な状況にある、臨時異例措置とはいっても公債をますます大きく発行しなきゃならぬような情勢になってきてしまっている。これらを解決する今後の路線として、大蔵大臣は来年から増税路線を敷くんだということを述べておられるようですが、そのとおりでしょうか。
  11. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 財政収支試算でお示ししておるところは、経済企画庁との暫定委員会中期経済計画のフォローアップと整合性を持つかどうか、五十七年度までに特例公債から脱却するということを前提にして整合性を持つことができるかどうかということのための試算であるわけでございます。しかし、これは試算でございますけれども、さっき申し上げましたような事情からいきまして、私たちとしては一刻も早くやはり歳出の節減あるいは効率化、それからそれだけでは片づきませんので、一般的な負担増加をできるだけ早い機会に求めるチャンスがあればいいなということを考えておるのでございます。したがいまして、できますならば早く財政再建に取りかかりたい、こういういま考えを持っておるのでございます。そういう願望も込めまして収支試算をお示ししていると、このように御理解願いたいと思います。
  12. 矢田部理

    矢田部理君 収支試算それ自体についてはまた幾つかの問題点があるわけですし、これもいろんなケースに分けて出しているわけですから、どこをねらっているのかわかりませんし、私たちは、きのうも申し上げましたけれども、単なる試算ではなくて具体的な財政再建計画を少なくとも中期的に出して、その中で国民に是非を問うべきだというのが私たちの基本的な考え方でありますが、先ほど私が質問をいたしましたのは、試算でもそのことを幾つかのケースで出しているわけでありますが、来年からはいよいよ増税路線を敷くんだ、それしかないんだという考えに立っているのかどうかということなんです。
  13. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) だから、一般的に申しますれば、条件さえ許せばそのような方向で取り組みたいものだ、かように考えておるわけでございます。
  14. 矢田部理

    矢田部理君 その増税路線にまた問題が当然出てくるわけでありますが、その一つに、この国会が終わり次第税制調査会を再開をして、一般消費税の算入を前提にその具体案づくりに着手をするんだということが伝えられておりますが、そのとおりでしょうか。それについての具体的な計画なり考え方なり内容を含めて伺っておきたいと思います。
  15. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 先般衆議院大蔵委員会で同様の御質問を受けまして私がお答えいたしました、それに基づいていろいろな新聞記事が出ておりますが、私がお答えいたしましたのは、矢田部委員よく御承知の中期答申というのがまずございまして、中期答申の中では所得税一般的な負担増加一般消費税かというところに突き当たらざるを得ないであろう、税制調査会としては所得税一般的な負担増加というものはなかなか現実出題としてむずかしいのではないか、一般消費税を検討すべき時期に来たという判断を示しておられます。  中期答申が出ましてから、私どもできるだけ数多くの機会を見つけまして、税制調査会以外の一般の方々の御意見を聞く機会を持とうということで努力をいたしましたが、そのときに得せられました御意見は、こういうことを考え前提として、歳出をできるだけ節約すべきである、あるいはいわゆる不公平税制を是正するために最善の努力をしなくてはいけないという御意見がもちろんありましたけれども、それとあわせまして、一般消費税についての中期答申は基本的な仕組みにとどまっていて、もう少し具体的なものがないと突っ込んで賛成とか反対とか、あるいはここはこうすべきだということが言えないよという声もずいぶんあったわけでございます。そういうことを税制調査会に御報告いたしました。  それで、税制調査会の五十三年度の答申におきまして、まず政府に対して、政府責任で何らかの財政の中期的な展望をつくって調査会に示してほしい、調査会としては一般消費税についてなるべく早い機会にもう少し具体的な案をつくってみるからという御答申をいただいておるわけです。  それを受けまして私どもが、まだ会長に十分御相談するいとまがございませんのですけれども事務当局でございます私限りの考え方として御返事を申し上げたわけですが、国会終了後、まず従来どおり国会報告ということをいたします、国会でのいろいろの御議論を詳しく御紹介いたします、それを受けまして今後の日程協議をいただきます。今後の日程協議をいただきますときに事務当局の愚見を求められますれば、やはりなるべく早い時期に一般消費税についてもう少し具体的な検討をしていただきたい、その結果を試案と申しますか素案と申しますか、そういう形に仕上げてひとつ公表していただけないか、公表されたものを基礎にして、さらに各方面に御意見を十分伺って、その上で最終答申をしていただけないだろうかというお願いをするつもりでございます。  それで、試案なり素案というものをいつごろを目標にするかという点は、まだ私が勝手に決めてしまうわけにまいりませんのですけれども、余り拙速ではいけないだろうと、やはり二、三カ月はどうしてもかけないとその素案なり試案なりというものまで行けないんではないかというふうに私は感じております。したがいましてそういう面からしますと、おおむね秋口に何かそういうものをつくっていただきたい。それを公表して、また最終答申までの間に幸いに国会ということがまたございますれば国会にももちろん御報告をして、いろいろ御意見を伺った上で最終答申の方へ持っていっていただきたいというふうに私いまのところ考えております。ただ、くどくて恐縮ですが、まだ会長にも十分御相談しておりませんので、私限りの希望でございます。
  16. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますとそれは来年、先ほど大蔵大臣のお答えですとできれば増税方向を打ち出したい、その重要な中身として、税調に改めて一般消費税具体的素案づくりを求めると、こういう位置づけになりましょうか。
  17. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 税調素案づくりを私の方からお願いするということでございますが、しかしそれは同時に、さっき申し上げたように、税調自身がすでにそういうことをやるということを答申の中に言っておられるわけでございます。タイミングの問題は、その素案なり試案なりを慎重につくるために二、三カ月の期間は必要であろうと。  さらにそれを受けて、私申し上げたように、いきなりそれを答申してしまうということではなくて、それをもう一度公表して各方面の御意見を伺いたいと私として考えておりますので、その最終案がいつになるかということまでまだ決めてかかっておりません。ただ大臣が申し上げたように、条件さえ整えば五十四年度から財政再建のために具体的な一歩を踏み出したいと大臣考えておられましょうし、私どももそう考えておりますので、仮に条件が整った場合に、しかしまだ間に合わないよということでも私ども責任も果たせないわけで、具体的に実施するしないという問題ではなくて、とにかくできるだけの準備は急いでおきたいというふうに私ども考えておるわけでございます。
  18. 矢田部理

    矢田部理君 私は非常に危惧を感じておりますのは、公債依存財政を克服をしたいと、まあ言葉づらではそれはそれで十分理解をできるわけでありますが、そのために増税路線を敷く、その増税路線は言うならば間接税増徴の方向で問題の克服を図っていきたいということが大きな路線として敷かれ始めているんじゃなかろうか。一般消費税には強い抵抗があります。大変な反対もあります。いまその問題はまた独自の課題としていろいろ問題は提起しなきゃなりませんが、したがってまたその余裕はきょうはありませんけれども、やっぱりかねてから、とりわけ野党側から指摘をされておりますように、財政再建の第一歩は何といったって不公平税制の是正でなきゃならぬ。それをあいまいにして次に手をつけるということはやっぱり断じてしてはならないと思うんです。不公平税制についてはどうも歯切れが悪い。あるいは具体的にその日程なり是正の中身が示されない。たとえば医師優遇税制についても来年は考えたいということですが、来年は撤廃するという意味なのかどうか、その他の不公平税制について来年はどうしようとしているのか、全体的に不公平税制についてどういう日程でどういう内容でそれを是正しようとしているのか、それをまず第一にやるべきだし、それが財政再建の重要な第一歩でなきやならぬと思うのですが、大成大臣いかがでしょうか。
  19. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 御指摘の物の考え方は私どもも同じように考えているわけでございまして、それゆえにこそ五十年の八月という早い時期にすでに税制調査会にお願いをしまして、いわゆる不公平税制というものは何であるか、この総ざらいをお願いしまして五十一年度税制改正答申に載せていただいた。それに基づいて私ども五十一年度以降本年度まで、いわゆる企業関係の租税特別措置の整理については私どもなりに精いっぱいの努力をしてきたつもりでございます。企業関係特別措置につきましては、今後も引き続き期限到来分を中心に縮減合理化に努めてまいりたいと思っております。やはり政策税制でございますから、一挙に全廃するという考え方税制調査会もとっておられませんし、私どもも個別の措置に即応して漸次縮減合理化を図ってまいるつもりでございます。  利子、配当課税につきましては、当委員会でもしばしば御質問が出ましたけれども、これを完全に総合課税のもとに賢くというためにいま具体的、専門的な勉強を続けております。努力目標としましては、五十五年度に現在の制度が期限が参りますので、それに間に合うようにということを努力目標にいたしております。  社会保険診療報酬課税につきましては、率直に申し上げまして、私の立場からすればぜひとも、口も早くやめていただきたいのでございますが、しかしなかなか関係方面の御了解をいただけませんので、しばしば総理大臣大蔵大臣がお答えになっておられますように、いまの制度は五十三年度限りとする、五十四年度以降については適切な措置をその間に検討するということで自民党の方で御決定になっておりますので、私どもとしてはその御決定がどういう杉で具体化していくか、必要に応じて私ども意見も申し上げながら対処さしていただきたいと思っております。
  20. 矢田部理

    矢田部理君 税制問題はもうこの程度で、先の方に入っていきたいと思います、やめたいと思いますが、いま主税局長は、大蔵大臣、医師優遇税制は一日も早くやめてもらいたいと行政レベルでは言っているわけですが、問題はやっぱり大臣の姿勢、これが問われることになるわけです。来年撤廃を目指すと言っておりますが、本格的に撤廃して一般並みにするのか、それともまた適当な処理をしてごまかそうとしているのか、いろいろ問題がすでに出始めているわけでありますが、大蔵大臣の結論的な決意だけを明らかにしておいてほしいと思います。
  21. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 現行の診療報酬に対する課税を一日も早くやめたいというのは、税制を預かる大蔵大臣としては全くいま言ったとおり同感でございます。しかし、自局党がこの問題をひとつ今年度限りにするということを決めておりますし、また、この医師の優遇税制の始まった経緯を考えまして、その間必要なものがあればそれらの問題もあわせ調整すると、こういうことを決定いたしておるわけでございます。私はやはりいままでの経緯を考えてみますと、政府がいつもこの廃止という問題を出しておるのでございますが、党との調整がつかないままに来たことが、この税制が今日まで残った最大の理由だと思っておるわけでございます。その党がみずから決定したわけでございますから、私はその意義を向く評価しているわけでございます。問題はその中身がどうなるかという問題でございますが、党の今後の検討とあわせ、われわれも同時発足的に検討を進めてまいり、そして党と政府が力を合わせまして何らか合理的な改正を、国民に納得の得られる改正を実現したいものだと、このように考えておるところでございます。
  22. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵大臣なんですから、与党ではありますけれども、どうもやっぱり自民党の意向におもね過ぎている。何らかの改正ということじゃ歯切れが悪い。やっぱり大蔵大臣としては、自分の政治的な力量をかけてこれは撤廃するんだということを明言してしかるべきだと思うんですが、どうなんですか。
  23. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 現行の制度は今年度限りにするということは現行制度は撤廃するということでございます。ただそれにかわってどのような案を出してくるか、そこが中身の問題であるわけでございます。私は先ほど申しましたように国民の納得の得られるような税制をぜひつくりたい、そのことをいま念願しているわけでございます。
  24. 矢田部理

    矢田部理君 一応そう伺っておきまして、少し細かい問題に入ります。  今般酒税の値上げを提案されているわけですが、このお酒、ビールあるいはウイスキーなど区分がございますが、それぞれ飲量といいますか、飲む量ですね、いま国民ビールをどの程度飲んでいるか、お酒をどの程度飲んでいるか等々の状況についてまず伺いたいと思います。
  25. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) お答え申し上げます。  ごく最近の数字でございますが、昭和五十二年の暦年でございますが、国内分の需要動向を見ますと、合計で六百四十五万九千キロリットルの酒類消費されたわけでございますが、そのうち清酒が百六十五万七千キロリットル、うち二級が六十四万、しょうちゅうが二十一万八千キロリットル、ビールが四百十四万八千キロリットル、ウイスキー類が二十八万五千キロリットル、その他が十五万一千キロリットルとなっております。
  26. 矢田部理

    矢田部理君 いまちょっと突然聞いた数字なんでわからないんですが、その中でビールの伸び率、ビールの占める割合はどのぐらいでしょう。
  27. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) ビールの伸び率は最近の五年間で一二〇・九%でございまして、構成比は六四・二%でございます。
  28. 矢田部理

    矢田部理君 それからウイスキーは全体でどのぐらいの割合か、特級から二級まで含めてが一つと、それからしょうちゅう乙類清酒二級がそれぞれ占める割合について伺っておきたいと思います。
  29. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 五十二年の数字でございますが、国内だけでございますが、ウイスキー全体で四・三%でございます。それからしょうちゅうにつきましては甲類が二%、乙類が一・四%、合計で三・四%でございます。それから清酒二級でございますが、九・九%でございます。
  30. 矢田部理

    矢田部理君 今度の値上げでしょうちゅう乙類清酒二級を据え置かれたわけですが、酒税の税収全体に占めるしょうちゅう乙類並びに清酒二級の割合はどのぐらいになりましょうか。
  31. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 税額でまいりますと、国内分だけでございますが、清酒二級が五・二%でございます。しょうちゅう乙類が〇・三%、先ほどちょっと御質問がございましたウイスキーが二〇・七%というふうになっております。——失礼しました。ちょっとあるいは言い間違いがあったと思いますが、しょうちゅうの甲類が〇・八、乙類が〇・三%で、合計一・一%でございます。  以上でございます。
  32. 矢田部理

    矢田部理君 ビールはどのぐらいなんですか。
  33. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) ビールでございますか。ビールは五〇・六%でございます。
  34. 矢田部理

    矢田部理君 次の質問でありますが、いまの数値でかなり傾向がわかるわけでありますが、政府はしょうちゅう乙類清酒二級を据え置いた。したがって、今度の植上げに当たっても低所得者層に対して一定の配属をしたんだというようなことを説明をしているわけでありますが、実際はそういう配慮ではなくて、いまの数値でも明らかなように、ほとんどこの全体の酒税に占める割合というのは、その二つは小さいんですね。どちらかといえば、もうビールが圧倒的に全体の中では大きい比重を占めている、六割を超えるわけです。酒税でも五〇%を越える。その意味では大衆酒だから据え置いたということの意味は、むしろ宣伝効果にはなるかもしれませんが、この実態を探ってみるとそうではなくて、税収の伸び率も低下している、全体に占める割合も低い。そこで伸びの一番大きい、あるいは比重の一番大きいビールを上げる、あるいはウイスキーを上げる、税収に占める割合はウイスキーも大きいですね、そういうことが本当のねらいだったんじゃありませんか。
  35. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 今回御提案しております増税の趣旨は、先ほど提案理由大臣が申し上げたとおりでございまして、やはり現在の環境のもとで、酒という致酔飲料であり特殊な嗜好品を飲んでおられる方々にぜひ若干の負担増加をお願いしたいということでございます。その場合に、ビールを非常にたくさんの数の方が飲んでおられるという意味で、これは大衆酒類である、大衆酒であるというふうにおっしゃられることを私はあえて否定いたしません。ただ、その増税をお願いしておりますのは、やはりどういう所得階層にお願いするかという角度からは、酒税の場合になかなか説明はつかないと思います。やはりかなりの所得のある方でもお酒を召し上がらない方がいらっしゃいますし、それほど所得の少ない方でもやはりかなりのお酒を召し上がる方もいらっしゃるものですから、酒税負担をお願いするときにどういう所得階層に負担をお願いするかというようなアプローチはとりにくい。それからビール税率を据え置いたままで他の種類——種類と申しますのは、ちょっと酒と混同いたしますので、以後たね類と申し上げさしていただきますが、他の種類の税率を上げますと、やはり長年かかってきた種類間の競争上のバランスがございますので、なかなかそういうことは考えられない。  清酒の二級を据え置きました理由は、清酒の二級が比較的低所得の方々に愛されておるという面もございますけれども、一番大きな理由は、やはり清酒と他の種類との競争条件の問題であり、特にその背後にある食管制度のもとで原料米が逐次値上がりするという事情考えた結果の調整でございます。しょうちゅう乙類もこれと並んで考えたわけでございます。合成酒類につきましては、おっしゃるような最近全く伸びがないということも考えました。それぞれの理由考えながら、この三つにつきまして、またみりんはもういまやお酒としては全く飲まれていない、みりんは調味料として使われておるということを考えて据え置きというように、それぞれの事情考えながら御提案したわけでございまして、清酒二級と合成清酒、しょうちゅう乙類を据え置いたから、それは低所得者対策であるというふうに強弁するつもりはございません。
  36. 矢田部理

    矢田部理君 政府説明ではありますが、どうもやっぱり多少何か、清酒二級等については米価の値上げ等が絡むことは事実でもありますし、醸造業者が中小だということもわからないではありませんが、そういうことならば清酒の一級だって同じ線上で考えられるはずのものでありまして、一級と二級を特段区別する理由には必ずしもならないように思われるわけです。どうも政府の思想の中に貧乏人は安酒でがまんせよ、しょうちゅうか二級を飲めということが端的にあらわれているようにも思うし、もう一つは嗜好品だという説明を先般の値上げの際も非常に強調をされるわけです。  ところが、酒というのは歴史的にも今日的に見ましても、ますます生活の一部といいますか、必需品とまでは言い切れないかもしらぬし、飲まない人もあることも事実でしょうが、生活と非常に深くかかわって歴史的にも今日的にもきたわけですね。だから、それを値上げするというのは単なる嗜好品論ではやっぱり切り切れない、それぞれの生活に面接かかわる問題なんですから。どうもやっぱり嗜好品諭は余り説得力がないと思われますが、いかがでしょうか。
  37. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 先ほど申し上げましたことの続きになりますが、清酒一級、清酒特級負担増加の率をウイスキー、ビールに比べて低くしておりますのは、やはりその原料米の特殊性を考えて、私どもは必要な調整と思って御提案しているということをつけ加えさしていただきます。  酒とはそもそも人間にあるいは国民生活にとって何であるかという御質問は、衆議院でも受けまして、酒は百薬の長である、あるいは心の憂さの捨てどころということで、大臣の言葉をかりますと、人間が生活し始めて以来ずっと酒というものはあるんだ、そういう意味で生活に非常に密着しておるということは明らかである。しかし同時に、酒は気違い水であるということも言われるわけでございまして、過度に飲むと自分のみならず他人に非常に迷惑をかける。そういう意味で、酒をたくさん飲んで人に迷惑をかけてはいけないというわざわざそういう法律もできておる、単行法でできておる。また、各種の規制がいろいろにかかっておるということのように私ども思いますので、やはり非常に生活に密着しておるという点はもちろん私としてもわかりますし、私自身も大変な飲んべえでございますが、しかし、だからといって生活必需品であるというふうには私ども考えない。やはり致酔飲料としての特殊性を持った嗜好品であるというふうに考えることはこれは間違いはないんじゃないか。  ほかの国を見ましても、やはり石油ショック以後景気対策に力を挙げながら、同時にしかし財政再建するための努力は重ねられておりますし、ヨーロッパ諸国では毎年酒税引き上げておる国がある、あるいはここ一、二年どの国も一度は必ず引き上げておるというような状況でございますので、やはりこれだけ財政が苦しいときには、しょせん租税は国を支えるための会費であると私考えておりますから、やはり一般の方の会費はなかなか無理かもしれないけれども、お酒を存し上がる方は少し会費をふやしていただけないかということをお願いしておるわけでございます。
  38. 矢田部理

    矢田部理君 生活必需品か嗜好品かという論争じゃないんです。仮に嗜好品だとしても、生活に密接にかかわってきたし、現にかかわっているのであるから、そしてまた相当の人たちがそれを常用しているというか、飲んでいるわけですから、やっぱりそこは生活必需品に準ずるぐらいの位置づけで問題を考えないといかぬのじゃないか。とりわけこれは間接税ということになりますと、データにも出ておりますように、逆進性が強いわけですね。これは改めて指摘をするまでもありません。全体の収入に占める割合は低所得者ほど響きが強い、比重が重いわけです。その意味では低所得者は据え置いた二級やしょうちゅう飲んでおればいいんだということではなくて、含めて、いまビールが非常に大衆化してきているわけでしょう。そういう点で逆進性の問題とか、低所得者層に負担を加重させる問題とかいうことをどういうふうに受けとめているのか、考えておられるのか、そのことをやっぱりあわせて聞きたかったわけですが、もう一度その点について答弁を求めます。
  39. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 先ほど申し上げましたように、酒税負担考えるときに、これを所得階層の方からのアプローチというものは非常にむずかしいし、なじまない。やはり酒税が結果として所得階層別にながめれば逆進性を持っていることは私は否定いたしません。それはそういう性格を持つ税だと思っています。しかし、だから酒税増税は適当でないかということになりますと、やはり私どもとしては、これだけ苦しい財政のときには、お酒という特殊な嗜好品を楽しんでおられる方がもう少し負担をふやしていただけないかというお願いをしておるわけでございます。  それで、先ほどもお答えをいたしましたが、二級清酒なりしょうちゅう乙類を低所得者対策だと言って強弁するつもりはないんです、私は。それは現実にどうやってお酒を飲んでおられるかということで、それは一般的に申せば、二級酒は比較的所得の少ない方が飲んでおられるかもしれませんが、二級の地酒はおいしいからといって飲まれる方もあるわけですし、所得のいかんにかかわらず。それから学生さんは二級酒飲んでいるかというとそうじゃない、ビールを飲んでいると、最近はウイスキーを飲んでいるというふうなことでございますので、所得の方からのアプローチで種類の負担を上下左右するということはどうもうまくいかないんだと思います、酒というものについては。お答えになっているかどうかわかりませんが、そういうふうに考えます。
  40. 矢田部理

    矢田部理君 必ずしも納得できる説明ではありませんが、話題を変えます。  大蔵省は今度の酒税の値上げ分はそれぞれの小売価格に上乗せすることを許容するわけでしょうか。
  41. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 今回御提案申し上げております酒税増税につきまして、どの程度小売価格に反映するかという問題でございますが、酒につきましては、元来自由価格ということで、もちろん増税分を転嫁するかどうかということは、それぞれの企業の自主的な判断によるというのが基本でございますが、そういう意味では増税分を前提として、それを転嫁するということはいわば当然のことであろうかと思うわけでございます。  しかし国税庁といたしましては、今回の増税が行われました場合においては、値上げ額というのはあくまでも増税額の範囲内にとどめまして、便乗的な値上げはしないというように業界に対して強く要請してまいりたいと思っておるところでございます。
  42. 矢田部理

    矢田部理君 そこで問題になりますのは、値上げに私は反対ですから、この議論はそれを前提に聞いておいてほしいと思うのですが、仮に値上げをするとしても、いまの酒の価格の中に吸収できないのかどうかということを一回吟味してみたことがありますか。
  43. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 価格の中に吸収できないかとおっしゃいますと、それは企業が負担することになるかどうかという点でございますか。——まあ、それは当然そういうことも企業としては、自由価格でございますんで、競争条件ということによって基本的には決まるわけでございまして、市場における競争がどういうふうになっているかということによりまして、実質だれが負担するかということが決まってくることになろうかと思います。
  44. 矢田部理

    矢田部理君 私の質問が不正確だったのかもしれませんが、先ほどのお答えですと、いまの価格に増税分だけ上乗せするのはやむを得ないという考え方に立っているようですが、その前に、仮に値上げをしたとしても、企業努力等々の中で現在価格に相当程度吸収できる余地はないのか、価格を抑えた上で。その点は検討しましたか。
  45. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 各企業とも、御案内のようにそれぞれ企業努力を一生懸命やっているわけでございまして、清酒清酒、それからビールビールということでいろいろ努力をいたしまして、増産あるいは増産でなくてもそれぞれに経費の節減を図るということによって、極力経費の節減を図っております。したがいまして、増税額がどれほど転嫁できるかどうかという問題は、先ほど申し上げましたけれども、競争条件によると申しましても、現在の時点においてはそこは転嫁する方向でやはりやる、やると申しますか、お願いするというのが基本ではないかというふうに思うわけでございます。
  46. 矢田部理

    矢田部理君 どうも歯切れがそこは悪いわけでありますが。  じゃ別の角度から質問をいたしますと、酒よりもビールとウイスキーを中心に伺いたいんですが、ビールやウイスキーの製造原価、これはどのように抑さえておられますか。
  47. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) ビールとかお酒の製造原価につきましては、その側々のものについてはお許しいただきたい。
  48. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと大きい声で。——お許しできないんです。
  49. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) そういう原価という点からはちょっと申し上げられないわけでございます。ちょっとお許しいただきたいと思います。——失礼いたしました。まあ、原価については非常にいろいろな問題がありまして、先ほど来申し上げているわけでございますが、原価自体は各企業にとりましても最高の機密事項であるということでございまして、それを公表することは差し控えさしていただきたいわけでございますが、ただ清酒とかビールにつきまして、全体としての原料使用量あるいは原料価格といったようなものはある程度把握できますし、それから製品価格もかなりはっきりしているということでございまして、こういうことをベースにいたしまして、私どもが一定の前提を置いて推計することは可能だと思います。
  50. 矢田部理

    矢田部理君 その推計結果をそれではまず、それを了解するかどうかは別として、伺っておきたいと思います。
  51. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 一応清酒につきましては、たとえば生産価格の税込み価格一・八リットル、これは特級、一級、二級の加重平均でございますが、税抜き価格が六百四十四円六十二銭に対しまして、小売価格が一千三百十七円九十三銭、それに対しまして使用原料費が二百二十四円五十四銭ということになっておりまして、原料費割合は税抜き価格の生産者の場合で約三五%。  それからビールの場合につきまして申し上げますと、六百二十三ミリリットルの価格でございますが、生産者の税抜き価格が六十四円七十七銭、税込み価格が百四十六円八十銭、小売価格が百九十五円、そのうち使用原料費が十三円十一銭、その原料費割合は生産者の税抜き価格のうち約二〇%、それから小売価格のうちで七%ということになろうかと思います。  それからウイスキーにつきましては、七百六十ミリリットルの四十三度、二千二百円ものということを前提として申し上げますと、価格の場合でございますが、生産者の税抜き価格が七百九十四円、税込み価格が千七百十八円、小売価格が二千二百円ということで、使用原料費は百八十五円七十銭。それから原料史割合で申し上げますと、税抜き価格の約二四%、税込み価格の二%、小売価格の九%ということになっておるわけでございます。  ただ、これは非常に平均的なものを前提といたしましてやっておりして、全く、製造者あるいは級別あるいは銘柄別にそれぞれ差があるということはひとつお含みの上御理解いただきたいと思うわけでございます。
  52. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵省としては、銘柄別も含めてそれぞれについて、原価なり流通コストなり原料代なりを正確に抑えておられるんでしょうか。
  53. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 製造原価については、私どもは継続的に押さえているということはございませんが、価上げの際とか、必要に応じてそれぞれその価格を企業から聴取しておるわけでございます。  それから、さっき前提条件を申し上げなかったので、大変申しわけございませんが、ちょっと補足させていただきますが、二千二百円もののモルトウイスキーを仮に原酒五〇%、その五〇%が輸入と国産それぞれ二五%、それからグレンウイスキーの原酒を五〇%入れるという仮定で計算しているわけでございます。  以上でございます。
  54. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、一応その平均的な推計値は伺ったわけですが、また、全体の原価を出せとも言いませんが、少なくとも代表的な、たとえば麒麟麦酒なら麒麟麦酒、あるいはサントリーの角なら角、だるまならだるまということで、代表的なものの原価を当委員会に資料として出していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  55. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 原価の問題は、再々申し上げておりますように、私ども国税庁といたしましても守秘義務ということで、企業にとってもどの程度のものかということは最高の機密に属することでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、その価格につきましては、ある程度把握しているものもございますが、個々の企業のものにつきましてお出しすることは、有価証券報告書その他で公表されているものの範囲内以外のものについてはお許しいただきたいと思うわけでございます。
  56. 矢田部理

    矢田部理君 ここでもまた守秘義務論が出るわけでありますが、企業秘密は全部守秘義務でガードされるんだということにはならぬわけでしょう。もともと内閣の守秘義務に対する統一見解というのは、ケース・バイ・ケースだというのが基本的な法制局の考え方ですよ。具体的にこの酒税の値上げが論ぜられているわけでありますから、その値上げ分は当然のことながら小売価格に転嫁されるのか、あるいは転嫁せずに従来の価格の中に吸収可能なのか、あるいは両方にまたがるのか、酒興者の立場に立って考えれば一番そのことに関心が強いわけです。  したがって、これはどういうふうな取扱いにしていただくか、一度理事会の方で御協議をいただきたいと思うんです。つまり、私はここへ出してほしいというような強い希望でありますが、大蔵省で押さえておられる部分を、たとえば理事会の方に出していただいて扱いを協議するとかも含めて、その点はひとつ御協議をいただければありがたいと思うんですが、委員長いかがでしょうか。
  57. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまの矢田部君の資料要求につきましては、後刻理事会で協議をしたいと思います。
  58. 矢田部理

    矢田部理君 じゃ、そのようにお願いいたしまして、また、その扱いによってそれに関する質問をしたいと思いますので、その部分は留保しておきたいと思います。  いまの大蔵省の考え方は、従来のコストの中には今度の酒税値上げ分は吸収し得ないであろうと。したがって、その部分に限り小売価格等に転嫁してもやむを得ないという対応のようですが、それはそのとおりでよろしゅうございますか。
  59. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 再三申し上げておりまして、くどいようで申しわけないんでございますが、お酒は自由価格でございますから、本米間接税でございますので転嫁されるのがたてまえということは事実であろうかと思います。したがいまして、増税分については価格の上昇するということは差し支えないものだと思うのでございますが、競争条件あるいは合理化というようなことによって、部分的に値上げをしないで済むという企業もあるいはあろうかと思うわけでございます。
  60. 矢田部理

    矢田部理君 だから、その是非等についても一応大蔵委員会としては関心を打ちますので、それは資料を出したところでわれわれはまた論議の対象にしたいということであります。  そこで問題なのは、自分たちは税金を上げると、その分だけは小売価格に反映させてもしようがない、しかしおまえたちは値上げしちゃいかぬと、便乗上げはいかぬということを言うのはいかにも説得力に欠けるようにも思われるわけです。もちろんわれわれは便乗値上げに賛成するわけではありませんし、これはやめてもらいたいというふうに考えている以上に、むしろビールなどは四社か、大手のやっぱり独占になっている。四社くらいの独占になっているわけですから、非常にこの点は問題にしたいと思うわけでありますが、あわせて、どうやってそれならば税金の値上げ分以上の値上げを抑えようとしているのか。これ全体が自由価格になっているわけですから、それを抑える自信があるのか、抑えるためにどういう手段、施策を講ずるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  61. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 値段がなかなか増税分だけしか上げさせないのはおかしいではないかと……
  62. 矢田部理

    矢田部理君 そんなことを言っていないです。
  63. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 確かにございますわけでございまして、業界の中でもこの際マージンを上げてくれという御要望もあります。あるいはコストアップ分も含めてこの際引き上げもやってほしいというような御意見もあるわけでございますが、マージン率は確かに下がるかもしれませんが、マージン額は変わらないわけでございます。  それから、私どもはこういう際にやはり幾ら自由価格だからといって、それを野放しにしておくということになりますと、どうしてもこの際便乗値上げをするというようなことにもなるわけでございまして、私どもといたしましては法案が成立した場合には、関係酒類業団体にこういうような考え方を伝えまして、前回もそういうふうにいたしましたわけでございますが、そういう団体を通じまして、各業者に便乗値上げはいけないということは伝えてまいるつもりでございます。
  64. 矢田部理

    矢田部理君 誤解のないようにしておいてほしいのは、業界の値上げを私は賛成している趣旨では全くありませんから。  それから、いまの話でもただお願いするだけのことですか。便乗値上げはさせないという自信があるんですか、見通しがあるんですか。
  65. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) その点でございますが、私どもは前回、前々回の場合の値上げをどういうふうに指導してきたかという経過を顧みてみますと、ある程度は便乗値上げを防ぎ得たのではないかというふうに思っておるわけでございますが、いずれにしても基本的には個々の自主的な判断にゆだねられておるわけでございますが、あくまでもやはり便乗値上げといいますか、コストアップの値上げというものと増税による値上げというのは、やはり個別の企業の事情はいろいろございましょうけれども、やはり一応われわれとしては区別して考えるということでございます。当庁の指導は、もちろん強制力があるわけじゃございませんので、指道守にも限界はございますわけではございますが、極力そういうことで便乗値上げの抑制をするというふうに努力してまいりましたし、またこれからもしてまいりたいと思うわけでございます。  御参考までに前回、前々回の増税の場合にどういうふうになったかということを申し上げますと、五十一年の増税の場合にも、五十一年一月十日に酒税が値上げになったわけでございますが、たとえば、一般的な清酒の一級というものを見ますと、値上げといいますか、増税額が四十六円九十八銭値上げになったわけでございますが、その価格、値上げ価格は五十円ということになっております。まあ端数の範囲内で上げておるということでございます。その後それじゃ小売価格がいつ上がったか、これはコストアップという問題、御承知のように酒米とか、いろいろな問題でやはり中小企業性が高いという事情もございまして、清酒についてはその後値上げが行われたわけでございますが、それは一年半たちました五十二年六月に値上げが行われているという実情になっておるわけでございます。  それから、たとえばビールにつきましては、前回十四円九十四銭の増税額になりましたのでございますが、値上げ額は十五円にとどめておりまして、その後、コストアップその他による引き上げはございません。  ウイスキーにつきましては、たとえばサントリーの角でございますが、百四十九円二十五銭増税額があったわけでございますが、値上げ額は百五十円ということで千八百円の増税後の価格になりまして、その後値上げがないという状況になっております。
  66. 矢田部理

    矢田部理君 値上げがなかったとき、あるいはなかった種類についてのみいろいろ議論されても困るわけですがね。  過去の事例、私の方でいただいた資料によると、税率アップと同時並行的には上げないけれども、遠からず値上げをしている傾向がうかがわれるわけです。それは便乗値上げなのかコストアップによる位上げなのかというのは、これはなかなか判断のむずかしいところなんです。それだけに私どもは、先ほどのまた問題に戻るわけでありますが、いわば製造原価が一体どのぐらいなのか、製造原価に占める原料費の割合がどうなっているのか。その動向等についても率直にやっぱり伺う意味でも、先ほどのまた原価論に戻るわけでありますが、原価に関する資料をぜひ出してほしいと思うわけでありますし、同時に、過去の酒税のアップとそれからその後の小売価格の値上げの一覧表を一度まとめて出してほしいというふうに思っています、資料として。
  67. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) その原価の問題については、先ほど委員会の方にというようなお話でございますが、酒税のアップと小売価格の引き上げの一覧表につきましては、つくりまして御提出申し上げたいと思います。
  68. 矢田部理

    矢田部理君 経済企画庁、お見えになっていますね——経済企画庁に伺いたいのですが、酒税の位上げが物価ないし家計に与える影響、これは非常に小さいというふうにも言っておられるわけですが、私の感じで、行うと、酒税のアップ分だけではなくて、便乗上げの可能性も相当程度あり得ると、それは同町並行的ではなくても、しばらくたつとそちらに必ずコストアップを理由に値上げが出てくる可能性もあると、そういう見通し等も含めて、物価や家計に与える影響についてまず伺っておきたいと思います。
  69. 水田治雄

    政府委員(水田治雄君) ただいまの御質問でございますが、五十三年度の酒税値上げの五十三年度消費者物価に与える影響は〇・一%程度というように考えておりますが、便乗値上げの点につきましては、ただいま国税庁の方から御答弁がございましたが、前回の場合も国税庁の方から通達を出すなど指導をされまして、ある程度先ほど御答弁になりましたような計数でもってトレースができるわけでございます。今回も面接酒類製造業、販売業等を所管しておられる国税庁に強力な指導をお願いをしておるところでございますが、物価全体がこのところ、昨年の十二月ごろから消費者物価四%程度と四%台に落ちついておるときでございますので、五十三年度におきましても全般的に酒類に限らず、格別の物価高騰ということはなかろうかと思っておりますが、価格の問題は消費者物資全体に関係がございますし、国民生活に重大な関係があることでございますので、企画庁の方としても従来の各省連携の組織をもちまして強力にこれを監視し、指導を続けてまいりたいというように思っております。
  70. 矢田部理

    矢田部理君 あわせて伺っておきたいのは、所得減税をしないで間接税を増税する、しかも先ほど指摘をしましたように、大衆課税、逆進性の強い間接税の場合に家計に対する響きがそれなりに出てくるわけです。そうすると、単純に消費者物価に与える影響は〇・一%程度だというだけでは済まない心理的な波及効果と申しましょうか、つまり消費がずっと落ち込んでいるわけですね。いま景気対策の一つとして、消費拡大を通して景気を少し軌道に乗せようという議論もあるわけでありますが、いわば間接税の増税ということになりますと、どうしてもやっぱり勤労者に負担が加重をされる、消費性向の強い低所得者層に過重な負担をされる。そうすると〇・一%だけ響くというだけではなくて、消費抑制の効果、少なくとも心理的効果が相当程度働きはせぬか、そのことは消費拡大伸長を通して景気の浮揚をという方向と非常にやっぱり違った方向にいくのではないかという感じもするわけでありますが、その辺についての考え方を伺っておきたいと思います。
  71. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 確かにこの酒税をも含めまして間接税一般、そういったものの引き上げが先ほど御議論がございましたとおり、価格に転嫁されるということを想定いたしました場合には、それが確かに消費者マインドとか、個人消費支出ということに対して全く影響がないとは申せません。これは何がしかの消費抑制効果というものは起こってくるわけでございますけれども、これにつきましても先ほど主税局長が御答弁になりましたように、嗜好品とか生活に非常に密着したものというような面においていろいろな効果、効果と申しますか、消費抑制について、果たして消費抑制になるかどうかというような面についてのあらわれ方にはいろんな形態があるとは存じます。  しかし、確かに理論的には消費抑制効果を何がしかは持つということは申せるわけでございますけれども、一応この五十三年度の経済見通し、それから最近のいろいろな経済指標といったようなものと、ただいま物価の方から御説明いたしましたような、消費者物価に対する影響は〇・一というような面を勘案いたしまして、どういう効果を持ってくるかということを考えてみますと、最近の消費者物価の動向というのは、もう先生御承知のとおり非常に鎮静化いたしておるわけでございまして、また、今後ともかなり鎮静化した動きをかなりの期間は継続してまいるのではないかと思いますし、 方財政金融面からは先般三月二十五日の当面の経済対策等にも示されておりますように、内需の拡大ということを積極的に財政政策、公共投資というのを中心とする財政政策の積極的な運用ということで決まっていくわけでございまして、それによりまして内需の拡大が図られるわけでございまして、全般的な景気に対しては前半財政主導、後半民需主導とは申してはおりますが、そういったような効果が出てまいるということは、すなわち、これが個人の所得と申しますか、特に雇用者の所得ということの増加に影響を及ぼすわけでございまして、先行き最近のいろいろな経済指標、生産とか出荷とか在庫の調整といったようなものに明るい面が出てきておるということをしばしば申しておるわけでございますけれども、そういった面と相まちまして、消費者の心理の好転と申しますか、消費者マインドの好転ということは考えられるわけでございます。  したがいまして、今後先般の一月、二月の家計調査とか、毎月勤労者統計というようなものにあらわれております実質の所得の増加、個人の所得の増加に伴う消費者動向に対する影響といったようなものが非常にいい影響の方に持ってきておりますので、今般予想されております酒税の値上げ、それが〇・一%程度ということでございますれば、個人消費拡大、内需振興ということに対してはほとんど影響はないと考えておるわけでございます。
  72. 矢田部理

    矢田部理君 少し甘い見方、だと思うんです。物価が鎮静しているのは何も政府の功績だというふには私は思わないんです。むしろデフレ効果といいますか、等々も含めて個人の済費が冷え込んでしまったことが最大の原因だというふうに思うわけです。そういう物価の冷え込んだ、物価というか消費の冷え込んだ状況に乗っかって物価もやっぱりおさまっているという状況に乗っかって次々と政府は、ことしの特徴はつまみ食い増税といいますか、いろんなやりくりも含めてやってきていることにやっぱり問題点意識を持つわけですが、とりわけこれは、酒税だけではなくて今後いろんな公共料金の値上げが予定をされているわけですね。国鉄運賃、私鉄もそうでありましよう。あるいはすでに公立学校といいますか、国立学校等の授業料等も上がる、公団住宅の家賃も上がる、あるいは医療費、健康保険関係の診療報酬も上がる、保険料も上がる、こういうようなことを考えていきますと、酒だけというわけにはやっぱりいきにくいわけですが、この辺を含めたいわば物価見通しをひとつ伺いたい。  それから二番目には、公共投資を大々的に行っていることが一つのきっかけになって、御承知のように建設関連資材が急騰している、セメント等を初めとして。この状況がどうなるのか、それに対して対策なり含めてどう考えておられるのか。さらには、本委員会でも問題になったわけでありますが、土地税制が緩和されました。公共投資拡大と相まってそのことが土地の値上げを誘発する、現にそういう傾向が出始めているわけでありますが、危険性も高いと思われるわけでありますので、その点も含めて経企庁としてどういうふうにつかんでおられ、どういう見通しなりを持っておられる、そのための対策として何を考えておられるのか等々含めてお聞きをしておきたいと思います。
  73. 水田治雄

    政府委員(水田治雄君) ただいまの御質問でございますが、まず第一の公共料金の関係につきましては、五十二年度公共料金は大体一・五%以内におさまるというように考えておりますが、五十二年度全国の消費者物価、まだ三月が出ておりませんので、東京都の三月の速報から推計をするわけでございますが、三月が全国が火京都並みにおさまるという仮定でいけば、五十二年度十二カ月平均をいたしまして六・八%以内におさまるというように考えられるわけですが、これはその場合に、去年の三月に比べてことしの全国の三月が幾らになるかというのとはまた別問題でございますが、東京都ではことしの三月は四八でございます。この前後におさまるものと思いますが、この四・八前後の中の一・五%以内というのが公共料金の五十二年度の影響でございます。  五十三年度は、ただいまおっしゃいましたような国鉄の値上げが、これはまだ値上げ率等確定をいたしておりませんけれども、国鉄の値上げ、それから国立大学の授業料の値上げというようなものが予算関係り主なものでございますが、毎年個個の公共料金を積み上げまして、積み上げの予測というのは出しておりませんが、そういう国鉄料金、国立大学の授業料の値上げその他を含めまして、五十三年度も五十二年度と同程度におさまるんじゃなかろうか、消費者物価に対して一・五%以内というように考えております。もちろん公共料金はかなり政府がタッチし得るファクターでございますので、従来に増して厳しい態度で臨むということでやっておりますが、そのように御了解いただきたいと思います。  それから建設資材の関係でございますが、確かに公共事業の拡充実施を契機といたしまして、小型棒鋼とか生コンクリートとかセメントの関係が昨年の秋から値上がりを始めましたけれども、小型棒鋼につきましても生産能力が年間千五百五十万トンのようでございますが、この一月の需要を年率に換算をいたしますと一千万トン足らずということでかなり値段が上がってきておりますが、中小企業団体法による調整事業も二月でやめておりまして、いまのところ落ち着き傾向が出ております。ちょっと、小型棒鋼につきまして生コンクリートと間違えましたが、生コンクリートについて調整事業を一月にやめたわけでございますが、小型棒鋼につきましてもそういう生産能力なり所要量の関係では供給にゆとりがあるというように思います。生コンクリートにつきましても、これもこのところ一、二カ月落ち着いてきておりまして、これも供給力は十分あるわけでございます。セメントにつきましても二月ごろから落ち着いてきております。  しかしながら、建設資材の関係で物価が高騰するとかあるいは公共事業の円滑な施行が妨げられるということがないように、これは政府部内の中で公共事業施行推進本部を中心にいたしまして建設資材の価格動向の迅速な把握、供給力の安定確保ということでやっておりますが、企画庁におきましても、都道府県と連絡をとりまして、地域的にも支障が生じないように相当手厚い体制を整えております。各省と連絡して遺憾のないようにやっていきたいということでございます。  地価の問題は、先般国土庁から公示地価が発表されましたが、各種の土地の価格平均をいたしまして二・五%の上がりということで、いまのところ目立った上昇の気配というものは計数的には見られないわけでございますが、なかなか地価問題根深い問題でございますし、むずかしい問題でございますから、まあ国土庁を中心にやっておりますけれども、これにつきましても警戒を怠らないでやっていきたいということで、五十三年度の消費者物価、これはもうすでに資料も出ておりますし御承知だと思いますが、年度平均で六・八%というふうに考えておりますが、これはことしのものに比べてわりに高いようでございます。もっと下がるのじゃないかという考えもできますけれども、野菜、果物が去年に比べまして一〇%以上三月で下がっておるというような特殊事情もございまして、この辺は六・八ということで油断せずにやっていきたい。  卸売物価につきましては、二月で昨年の二月に比べまして一・七%の低下ということになっておりまして、これは景気回復が進むに従いましてだんだん上がっていくと思いますが、五十三年度二・七%ということで予測をされております。  ただいまの酒税関係、公共料金へ全般、建設資材等との関連で物価全体の見通しは以上でございます。
  74. 矢田部理

    矢田部理君 もう一点だけ関連して伺っておきたいと思いますが、間接税増徴と景気との関係といいますか、とりわけ個人消費、個人支出等に与える影響、さっき酒税等については若干の議論がございましたが、冒頭に問題になりました一般消費税の算入というのはもう間接税の最たるもので、とりわけ低所得者層に対する負担が非常に厳しくなる、究極的にはそこに転嫁される可能性が強い税になるわけでありますが、それについて経企庁は非常に慎重な態度をとっておられるということも聞くわけですが、間接税の増徴と景気との関係、あるいは個人消費等に与える影響についてどういうふうに考えておられるか。
  75. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 間接税の増徴に関する五十三年度の経済見通しとの関係についてはただいま申し上げたとおりでございまして、実は私、調整局の方は短期見通しの方をやっておりまして、いま先生御質問のはどちらかと申しますと、先般経企庁の方で発表いたしました暫定試算との関係といいますか、中長期の話だと思うんでございますけれども、中長期につきましても、よく国会で御議論がありますように、大蔵省の方の財政試算整合性を保つような暫定試算ということになっておりまして、必ずしも間接税の増徴、間接税というところまでしぼっておるかどうかということは私よく存じませんけれども、税の増徴ということにつきましてはきわめて整合性が保たれておるというふうに考えております。
  76. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵大臣戻ってまいりましたので、少し前の問題に戻していきたいと思いますが、円高対策のために日銀がかなりドルを買い支えた経緯がございますね。最近まででその総額は百億ドルを超えるとも言われているようですが、それがまた市中に放出されておりますので、言うならば過剰流動性がその面から高まっていはせぬかというふうに思うんですが、その点はいかがでしょう。
  77. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 日銀が介入いたしますと当然円貨がそれだけ流出するわけでございます。それをほっておきますとおっしゃるように流通通貨はふえるわけでございますけれども、片方、日銀の方では金融的な調整をやっておりまして、貸し出しの回収であるとか手形の売りオペであるとか、こういうことをやっております。したがいまして、現在M2で見ますとやはり一〇・八ぐらいでございまして、過剰流動性状況には幸いにしてないと、こういうことになっておるわけでございます。
  78. 矢田部理

    矢田部理君 しかしながら、いずれにしても相当大量のものが市中に放出をされているという状況一つあるわけですね。それからもう一つは、もともと公債の発行にはインフレの素地があるわけでありますが、今度の政府景気対策が期待されるような効果を上げてきますと、民需が拡大をする、民間資金需要が高まってくる。その場合に民間金融機関はかなりの公債を抱えて資金面で非常に窮屈になってくるという状況考えられるわけですね。そうなってきますと、当然のことながら中小企業を中心にした民間資金需要の締め出しが行われる危険も検討しておかなきゃならない。それを締め出さないためには、回避するためには、日銀の買いオペ等のことも議論としては考えておかなきゃならぬ。そうなれば、さらにこの面からも大量の流動性が出てくる可能性があるわけですね。先ほどの円高対策として出てきた相当額の、円にして二兆五千億と思われますが、ものがやっぱり市中に放出をされておりますと、全体的にこの過剰流動性という問題が出てきて、景気の回復はある程度軌道に乗っても、同時にインフレになる可能性、危険性、インフレの再燃のおそれというのを考えないわけにはいかないとも思われるわけです。その点について、大臣としては今後の円高問題、それに対応する日銀の対策、対応、それから公債発行と景気対策の面から見る流動性の問題等々についてどのように考えておられるか、あるいはどのような見通しを持っておられるか、場合によってはどういう対策を講じようとしておられるのか等々について伺っておきたいと思います。
  79. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 民間設備投資需要がどれくらい出てくるか、それに伴いまして民間資金需要がどれぐらい、増加逆転資金等も含めましてどれぐらい出るか、そこがポイントなんでございますが、いま政府で見ておりますのは、民間設備投資九・九というお話でございます。それはうまくいかぬじゃないかといって、そんなにはいかぬだろうという、むしろ逆の批判を受けているわけでございます。最近の調査によりますと、いろんな、かなり権威のある金融機関では、前はそんなにはいかないと言っておりましたが、一〇%いくんじゃないかという金融機関も出ているわけでございます。  実は、われわれ資金計画の上で国債を発行し、公共債を発行したりあるいは社債それから民間設備投資、こういったものを全部ひっくるめまして資金の需給の見通しを持って、そして消化は大丈夫だと、こういう計算を立てているわけでございます。したがいまして、民間資金需要が爆発的になるなんていうことはちょっと考えられないのでございまして、私はまあおっしゃるような心配は今年度はある意味で残念ながらないんじゃないかと、こう考えるのでございます。  まあ先ほど申しました、先の、将来の問題として民間設備投資が出てまいりますれば、それによりまして一体GNPがどれくらいになるか。それにもよりますけれども、それに対応いたしまして通貨の供給量というのは、おのずから適正な通貸の供給量というのはあるわけでございますから、それを超える分はこれは金融操作によって当然調整してまいるのでございまして、いかなる場合でもインフレだけはこれはとめにゃならぬと思っているわけでございます。特に金融面からの、あるいは財政面からのインフレを起こすようなことは絶対にあってはならぬ、かような決意でおるわけでございますので、その点は、御指摘もございましたが十分配意してまいりたいと、かように思っております。
  80. 矢田部理

    矢田部理君 私が指摘をしておきたいのは、いまは物価が鎮静をしているから、つまり公共料金等の値上げをしてもそう大した響きはございませんと。それは、その話は話としてお聞きしておきますが、やっぱり景気の回復がまた政府の言うように順調に進むとも思えないほど事態は深刻です。その意味でやっぱりデフレ基調だというふうに、依然としてデフレ基調だというふうに私自身も受けとめているわけですが、ただ、政府が期待し予定をしているような方向が進むとすればという前提一つ置いているわけですね。今度は、景気の回復過程には入るけれども、同時に物価上昇なりインフレへの、とりわけ七%成長などという高成長をやっぱり掲げているわけでありますから、それが実現するような状況になれば、今度はそちらも気をつけなきゃならぬ、非常にやっぱりむずかしい何というか対応を迫られることを、これは中期的にはやっぱり考えておかなきゃならぬ。それをいまから構えとして持っていないと、またぞろデフレとインフレの同時進行みたいな事態を招きかねない危険を実は私は指摘をしているわけです。  そこで次の質問に移りますが、また酒の問題に戻りまして、ビールとかウイスキーの原料、これは大半を多国に依存している、輸入に求めているということになっておるようですが、その内容をまずお聞きをしたい。  それから二番目には、ビール麦等の買い付けは昨年の秋に本年度分をやられたようでありますから、直ちに差益といいますか、円高による差益の問題は出てこないというふうにも聞いておるわけでありますが、少なくともことしの買い付けでは、相当円高のおかげで安い買い付けが可能だというふうに考えられるわけですね。そういうことになってきますと、いわばさっきのコストの問題とまたかかわってくるわけでありますが、相当コストを引き下げることになり得るというふうにも思われるわけでありますが、その点どういうふうに見通されているのか。  それから三点目には、国内でも、全体の割合は少なくなっておりますが、たとえばビール麦等の生産もやっておるわけです。国内産品との関係についてどのぐらいの割合を持っており、外国のビール麦等と価格の上でどういう違いがあり、それを、食管とのかかわりも出てくると思うんですが、原料供給の立場からはどういうふうな扱いにしているのか。そこら辺、以上三点についてまず大綱的に伺っておきたいと思います。
  81. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) お答え申し上げます。  まず、酒類の原料の使用状況でございますが、先生お話しのように、輸入品が非常に多いじゃないかということでございますが、対比上、ちょっと清酒から申し上げたいと思いますが、清酒用のお米につきましては、最近五年間で比較いたしますと、数量的にはほぼ横ばいでございます。その間の価格はおよそ一・九倍になっております。  それからビール用の麦芽の使用量でございますが、これは最近五年間で一・二倍になっておりまして、内容的には輸入麦芽、輸入大麦による麦芽の使用割合というのが六五%程度から八八%程度に上昇しておる次第でございます。輸入麦芽の価格でございますが、この五年間に約一・七倍に上昇しておりますのに対しまして、国産大麦の価格は二・二五倍程度に上昇しておるわけでございます。  それから三留目にウイスキー用の麦芽の使用量は、この五年間で約三・二倍に急増しておりまして、このうち輸入麦芽の使用割合は九〇%を超えている。輸入麦芽の価格はこの五年間に約三八%の上昇ということになっておるわけでございます。  それから、ちょっと順序が逆になりますが、生産量のお話を申し上げますと、値段でございますが、清酒は、たとえば自主流通米が発足いたしました昭和四十四年には、三等六十キロのウルチ米でございますが、八千六百六十九円でございましたものが一万七千四百円に五十二年なっております。それから大麦でございますが、ビール、ウイスキー用の国産ビール大麦でございますが、これは二等で一トン、政府の告示価格でございますが、四十四年に六万一千二百九十五円であったものが十五万八千六百四十円。それからビールにつきましては輸入ビール大麦、これも一トン、政府売り渡し価格でございますが、六万三千百九十円が六万一千七百二十円ということになっております。それから麦芽でございますが、ビール、ウイスキー用の輸入麦芽、CIFプラス関税価格でございますが、一トン当たり四万九千七十九円が八万九千四百六十二円ということになっております。大体主要な原料はこんなところでございます。  それから、数量の御質問がございましたが、数量につきましては、原料米でございますが、清酒用の原料米は四十四醸造年度、会計年度でございますが、五十二万五千九百九十二トンでございましたものが、五十一年には五十六万七千六百七十六トンということで、一一〇%の伸びでございます。しょうちゅう乙用の原料米、これは破砕米でございますが、四十四年には一万七百六十四トンでございましたものが、五十一年には二万三千九百六十一トンということでございます。それから麦芽でございますが、国産の自製麦芽は、四十四年に二十二万六再六十四トンでございましたものが、五十一年には六万七千四百六十八トンということになっておりまして、それから輸入の自製麦芽につきましては一万七千三百四十二トンが七万三千五百六十二トン、輸入麦芽につきましては十一万五千八百五十三トンが四十万五千五百二十五トン、主要な原料につきましては大体こういうような輸入の推移になっておるわけでございます。  それから円高の問題でございますが、この間の夢精がいろいろちょっと御説明を申し上げますと長いのでございますが、御承知のように、お酒につきましては自主流通米になりまして、自主流通米の食管制度との絡み合いもございまして、政府米もいただいておるわけでございますが、原料がいま申し上げたように大体上がってきておるということでございます。それからビール、ウイスキー用の麦芽につきましては、ビール、ウイスキー用の麦芽をまず国産原料を優先的に使用しょうというような観点から、国産ビール及びウイスキーの大麦の検査合格数量の全量をまず農林省の告示価格で購入すると、それによって不足しました麦芽を関税割当制度のもとで輸入するということになっておるわけでございます。それからビール川につきましては、精麦設備が遊んではいけないという点で、一部食糧庁から外国産のビール大麦の払い下げを受けまして、これを含めた全体としての輸入依存度が、先ほど申し上げましたような、八五%程度ということになってくるわけでございます。  それから大麦の価格でございますが、これはビール、ウイスキーの原料になるものでございますが、御承知のように毎年上昇しておりますが、これは麦価の算定方式が五十二年にございまして、奨励金を廃止しまして麦価に算入するというような制度上の改正がございましたので、三〇%という大幅な値上がりをしています。  以上、主要な原料についてのいろんな価格体系の問題がございますのでちょっとくどくなりましたが申し上げました。  それから酒類用の原料につきましては、ビール川につきましてはその麦芽及びホップ、それからウイスキー用につきましては麦芽、これはピーテッドの麦芽でございます。  それからトウモロコシ、ウイスキーの原酒と、こういうようなものから構成されておると思うんでございますが、こういう輸入原料は、先生さっき御高説がございましたように、直接製造者の方が外貨建てで、たとえば米ドルとか英ポンドとかそういう形で輸入しておりますんで、円高による差益といいますか、為替差益は確かに直接ビールとかウイスキーの製造者の方に帰属するということはおっしゃるとおりでございます。しかし、実際の輸入価格、CIF価格の通関統計から見ますと、これは麦芽のたとえばビールのノンピーテッドの場合でございますが、五十一CYでトン当たり九万六百九十五円ございましたものが、五十二年には九万一千五百六十六円ということで一〇一%の上昇になっています。  ホップにつきましては、キログラム当たりでございますが、千二百四十円が千三百十七円ということで一〇六・二%という上昇でございます。ウイスキー用につきましては、そのピーテッドの麦芽が五十一CYでは八万二千九十五円、これトン当たりでございますが、それが八万三千五百七十円ということで一〇一・八%。トウモロコシにつきましては四万五百五十二円が三万三千二十円ということで八一・四%、若干下落しております。ウイスキーの原酒につきましては、リットル当たり三百六十一円が三百二十九円ということで九一・一、ここも下落しておるわけでございます。  そういう意味で麦芽とかホップにつきましては、先ほど御説明申し上げておりますようにむしろ値上がりとなっている状況でございまして、これはやはりFOB価格の値上がりということがもっぱらあるということであろうかと思います。しかし、反対にトウモロコシとかウイスキー原酒につきましては若干値下がりになっておりまして、特にトウモロコシにおきましては円高による値下がりだけでなくFOBの値下がりというものもあるわけでございます。  こういうように、くどくどと申し上げましたけれどもビール用の原料につきましては、輸入原料の価格が上昇しておりますということに加えまして、国産ビールの大麦の価格が生産者麦価の算定方式が変更になりまして非常に大幅に上昇しているということでございまして、原料面からいたします製品の値下げ要因というのは余りないのではないかというふうに思うわけでございます。  それから一方、ウイスキー原料でございますが、麦芽の価格は上昇しておることはおるわけでございますが、トウモロコシそれからウイスキー原酒の輸入価格は値下がりしていると先ほど申し上げましたとおりでございまして、仮に、仮定計算でございますが、五十二年に通関いたしましたウイスキー用の原料の全数量を五十一年度のCTF価格で通関したものというふうに仮に置いてみます。そういう仮定計算をいたしまして、五十二年度の通関価格との差額を業界のメリット額だというふうに仮定いたしますと、国産麦芽等の値上がりを差し引いて計算いたしますと十三億四十万円ほどの額になるわけでございます。しかし、このメリット額は五十二年の課税移出数量をもとにいたしまして製品の七百二十ミリリットル一本当たりに仮に試算して割り振ってみますと、製造原価で四円程度、正確に申しますと三円五十銭、末端小売価格で五円程度ということでございまして、特に値下げを指導するという程度の額とまではいっていないんではないかというふうに考える次第でございます。
  82. 矢田部理

    矢田部理君 いま最後のやつはウイスキーですね。
  83. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) そうでございます。
  84. 矢田部理

    矢田部理君 そうなれば当然のことながら先ほどの議論でありますが、相当コストは安くなってくるわけですね。今度の税金の一部をそれなりに吸収できる余力、全体吸収できるかどうかは別として、従来の単純計算でいっても余力が出てきはしまいかと思うのですが、これはさっきの原価との関係がありますからこれにかかわる質問は少しくやっぱり留保して、時間もそろそろ来たようでありますから、もう一点だけどうしても聞いておきたいと思いますのは、清酒製造業界の実情、問題点ですね。  これは今度の一部改正の中にも廃止する者に対して給付金を給付するというような内容のものがあるわけです。もともと清酒等の製造業界は今度の値上げに反対だと。その反対をなだめるためにこういう条項を置いたのだというような話も聞かないわけではないんですが、清酒製造業界の実情、問題点、そしてそれに対する大蔵省としての施策みたいなものについて時間も来ましたので最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  85. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) いま先生の御指摘のように、何か業界をなだめるためにあの補助金その他を出したのではないかというような御質問でございますが、決して私どもはそういうつもりでやっているのではございません。  御承知のように清酒製造業は中小企業産品でございまして、九九・六%までが中小企業でございます。非常にやはり経営努力は一生懸命やっておるわけでございますが、なかなかそういう意味でスケールメリットも出てこない。原料米価格についても毎年のように上がっていくと、いろいろな事情がございましてなかなか、他の酒類とのバランスにおいては伸び悩み、ここに大きな問題といたしまして一つはやはり嗜好の変化というものもあろうかと思うのでございますが、こういうものを総合いたしますと確かにおっしゃるとおり清酒製造業というのは他の酒類に比べて伸び悩みの傾向にあることは事実でございます。しかし、業界自体といたしましてもそこを何とか自分で、自助努力で業界の近代化を図っていこうというようなことをいままでいろいろ措置してきたわけでございまして、現在も五十二年を初年度といたしました近代化計画を、構造改善事業販売業も総ぐるみにした業種関連型の近代化事業として推進しておるわけでございます。  そのほか、やはり税率の面におきましても、今回の増税におきましても、先般来申し上げておりますように清酒については配慮されておるわけでございます。あわせて私どもといたしましても、そういうような業界の真剣な努力というものを国の側からも何かの形でお助けしていくというような立場から、今回の安定法の改正を御審議お願いしているわけでございまして、決して私どもはそういうような、いま先生がおっしゃいましたような業界をなだめるために安定法の改正を提出するというようなつもりは毛頭ございません。
  86. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 午前中の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零一時十分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  87. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  88. 岩動道行

    岩動道行君 酒税法改正について、まず基本的な点を伺いたいと思います。  今回の酒税引き上げということは、この不況時代においては非常に問題のある増税であると私は基本的に考えるわけでございまするが、そのような景気浮揚策を極力進めていかなければならない経済の実情あるいは企業体の実態、あるいはまた消費者の動向、こういうものの中で特に酒税増税財源を求めたということははなはだ残念という感じもいたしまするが、また諸般の財政事情から考えたならば、やむを得ないという面も理解ができるわけでございます。  そこで、まず、この増税によって国民消費者がどういう反応を示すと政府はお考えになっているのか。あるいはまた生販三層、生産者、卸、小売といったような、この財政物資を扱って、そして酒税確保のために努力をしていかなければならない業界がどのようにこれに対応していけるのか。この辺の基本的な認識政府からまず伺っておきたいと思います。
  89. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 今回酒税負担引き上げをお願いしたいと思っております趣旨は、けさほど大蔵大臣提案理由で申し上げたとおりでございまして、私ども考え方を繰り返し申し上げますと、当面の経済情勢に即応して財政が表に出てできるだけ景気対策を主導していかなくてはならない。しかし、同時にやはり財政が異常な危機状況にあるということも忘れるわけにいかないので、景気対策を主眼としながらも、景気対策に矛盾しないぎりぎりのところでできるだけの増収を図るという責任も持たされるという考え方から出発しているわけでございます。その意味有価証券取引税、企業関係の租税特別措置、石油税、いずれも税収としてさほど大きなものではございませんけれども、できる限りの努力ということで御提案を申し上げ、酒税についても同様でございます。やはり財政再建のために、一般的に負担増加を求める情勢にない場合でも、特殊な嗜好品でございます酒については、酒をお飲みになる方々に負担増加をお願いするというのは欧州諸国でも近年多く例を見ておりますし、何とかひとつその点は御理解をいただきたいと考えております。  消費者に対する影響の点ももちろんございます。その点も税制調査会でも御議論になり、しかし景気対策に矛盾しないぎりぎりの範囲内でということであれば酒税負担増加もやむを得ないであろうということで答申をいただいたわけでございまして、その場合に消費全体に対する影響としましては、岩動委員よく御承知なのでくどく申し上げませんが、家計の中での酒類に対する支出額というのは大体個人消費支出金額に対して三%程度であろうと思います。それが今回負担増加をお願いして、それが価格にそのまま転嫁されたとして平均的にどうなんだろうかというのは、これは酒の種類がいろいろございますからむずかしゅうございますけれども、非常に平均的な数値で荒っぽく試算をしてみますと、〇・〇四から〇・〇七ぐらいであろうかという計算もできます。心理的に、酒の値段が上がったのならばちょっと飲むのを控えるかというような気持ちをお持ちになる消費者の方もあろうと思いますけれども、私どもが五十三年度予算の税収積算の基礎にしております酒類消費の伸びというのは、今回の増税の案を念頭に置いた上での各酒造組合あるいはその他の酒類業団体の見通しも聞いてつくっているわけでございまして、今回の増税が個人消費全体を押し下げてしまうというような危険を心配する必要はないんではないか。個々の消費者の方についてはやはりそれなりに、前回の値上げのときに企画庁がいろいろ家計調査の面でお調べになった結果を衆議院でも私聞いておりましたが、消費として伸びがどうであるかとかなんとかということで見れば、マクロ的にはそんなに大きな影響はないんではないか。ただ個別に考えれば、恐らくは多少飲む量を減らしたという方もあるようだし、まあいままでに比べて若干安い酒の方へ切りかえたということもあるようには思われるけれども、全体として消費を落としてしまう、ひいては個人消費全体が落ちてしまうということまで考える必要はないんではないかというふうに企画庁も見ておるようでございますし、私どももそう考えております。  業界の問題は、それは率直に申し上げまして、やはり酒税増税ということには反対ということで強く意見をいただいておりましたけれども財政の苦しい事情をるる御説明しまして、この際はひとつ協力していただきたいということで、やむを行ないというふうに現在は受け取っていただいておるものと私どもとしては考えております。
  90. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、酒税財政における位置づけは数字的に言ってどうなっておるか。さらにこれに関連して、たばこの納付金がどうなっているのか、この点について数字で簡単に説明をしていただきたい。
  91. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) まず酒税について私から申し上げます。  五十三年度予算におきます酒税収入の国税収入全体に占める比率は六・二%でございます。この比率はここ六、七年少しずつ動いておりますが、水準自体としてそう大きく変化をしておりません。四十年のころには一〇・八ということでござました。さらにさかのぼりまして三十年のころには一七・一、よく比較に用いられます戦前ということでの昭和九年−十一年平均は一七・六でございます。
  92. 大槻章雄

    政府委員(大槻章雄君) 財政に占める専売納付金の割合というものは、そのときそのときの事情によって違うわけでございますが、たとえば昭和三十年度で申しますと、一般会計歳入総額に占める専売納付金の割合は一〇・一%、それから四十五年度は三・二%、五十年度は一・六%、五十一年度は二・六%、五十二年度は一・九%、五十三年度予算では一・六%、こういうようなことに相なっております。
  93. 岩動道行

    岩動道行君 たばこの方の割合はかなり低くなっているわけですが、酒税については六%を超えると、金額にしておおよそ一兆四千億を超える金額になっていると思いますが、それだけにきわめて重要な財政財源になっていると、そのような観点から、私は特に慎重に酒税の問題を扱っていただかなければならないという基本的な考え方を持つわけでございますが、酒の方は今度は増税をいたしますが、たばこの方は四八%余りを大幅に引き上げてことしは休み、そのかわり納付金、内部留保を使う、こういうようなことで法案が出されているわけでございますが、このたばこの方の価格が酒と大体比例をとりながらやってきているのではないかと思いますが、今後のたばこの価格について、あるいは納付金の見通しについてはどう考えておられるか、この機会に教えていただきたい。
  94. 大槻章雄

    政府委員(大槻章雄君) たばこにつきましては、先生御案内のように五十三年度につきましては定価の改定を行わないことにしたわけでございますが、その考えといたしましては、五十年度の定価改定に際しましての国会の論議を通じまして、値上げ分のうちで税負担の増分をより明確にすべきであるという御議論があったわけでございますが、この問題は現在公共企業体等基本問題会議においても検討されていることでございますので、その結論をも勘案しつつ検討することが適当であると判断されましたこと。第二に、五十年十二月に四八%の引き上げが行われておるわけでございますが、その後まだ日が浅いこと。第三に、性急な値上げをすると無用な混乱を招くということで、生産、販売両面にわたり周到な準備を行った上、定価の改定を行うことが適当であると判断されたこと等々から見送ったわけでございます。  しかしながら、国家財政が先生御案内のように緊急事態に直面していることから考えまして、専売公社に対しましても政府関係機関の一員として応分の協力を求めるということにいたしまして、五十三年度限りの特別の措置として、利益積立金の一部、すなわち千五百六十九億円を国に納付していただきたいということで、現在衆議院大蔵委員会において法案の御審議をいただいていると、そういう段階でございます。
  95. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、この酒税財政における位置づけはおよその見当がついたわけですが、今後、かねてからいろいろな機会に問題にされております長期の財政計画等においてどうしても増税をしていかなければいけない、その財源一般消費税に求めていかざるを得ないようなおよその基本的な方向が皆さんの間で検討されてきていると思うのでありますが、この一般消費税がもし実施に移されるということになった場合に、酒税とかたばこの価格とか、このようなものとはどのようなかかわり合いになっていくのか、その辺のことをどう考えておられるか、まだ検討中であるということかもしれませんが、一つの理論的な考え方はどうであるべきかということをこの機会に伺っておきたいと思います。
  96. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) おっしゃいますとおり、これからの検討課題の一つでございまして、けさほど矢田部委員の御質問にお答えいたしました試案あるいは素案というものをつくっていただく過程で、ただいま御指摘の問題も御議論をいただいて、ある程度具体的な考え方を公表すべきものであろうと思います。  ただ、おっしゃいますように、理論的にどうかということになりますと、諸外国の例を見ましても、やはり酒なりたばこというものに特別の税負担を求めておる場合には、仮に一般消費税に類する租税が導入されましても、両者は並行して残っていくということになるのではないかと思います。その場合に、並行して残るという状態で、税率で所要の調整を行う必要があるかどうかという問題になってくるのではないかと思います。非常に細かい税目につきましては、あるいは税目そのものがなくなるということもあり得るかとは思いますが、やはりたばこは日本の場合は税でなくて専売益金でございますが、たばこ、酒というものに対して普通の物資に比べて特別の負担を求めるということはそれとして残らざるを得ないのではないか。ほかにそういうタイプのものとしましては、たとえば自動車とかあるいは燃料油とか、そういうものがやはり並行して残るということになると思われます。  ただ、その税率調整が必要であるかどうか、また必要であるとしてどの程度が適当かという問題は、実は予想される一般消費税税率水準に非常に大きく作用されるだろうと思います。私の率直な感じは、その導入当時に非常に高い税率ということは恐らく現実にはないんで、非常に低い税率であるということが現実的な問題としては予想されますので、導入時に直ちに税率調整が必要であるかどうか、それはやはり試案素案のときにどの程度税率を想定するかということの方からまず議論をしてみていただいて、想定される税率が決まりました段階で改めて考えてみるということではなかろうかと思います。
  97. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、諸外国においてはすでに付加価値税が導入されて実施に移されておりますので、いまのいろんな品目について、自動車はどうであったとかいろいろなものがあると思いますので、できれば資料として後ほど出していただければと思いますので、委員長にこれはお願いをしたいと思います。  それから、今回は税は従量税の形であって従価税の方には手を触れなかったということでございますが、これもいろいろ問題があって是正をしなければならないという面もあろうかと思いますが、この従価税に触れなかったこと、そしてこれを将来どう考えるか、この点についてお考えをお示しいただきたい。
  98. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまの資料要求の件も含めてお答え願いたいと思います。
  99. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 最初に、お求めの資料でございますが、主要国につきましてわかります限りのものをつくりまして御提出いたしたいと思います。  それから、今回御提案しております増税案で従価税に手をつけていない、従量税だけを引き上げているというその理由でございますが、これは率直に申し上げまして国際的な配慮というものが一番大きな理由でございます。と申しますのは、沿革的に従価税が最初に採用されましたときに、ウイスキーについて言えばイギリス、ブランデーについて言えばフランスのように、それを輸出品として非常に大事なものと考えている国から、日本か従価税を採用したのはもっぱら輸入の高級なものをねらい撃ちするためであるという批判を受けたことがございます。私どもはそれはそうではない、酒税をどう仕組むかということはあくまでも国内的な問題であって、基本的な考え方として、高い酒にはそれなりに高い負担をしていただくというのが基本的考え方なんだから、別に特に輸入の高級物をねらい撃ちにするためにこれをつくったのではないだろう。現に清酒にも制度として従価悦があるではないかということを言っておりました。いまでもそういうことを言い続けているわけでございますが、どうもなかなか関係国はその説明を了としてくれない、遺憾ながら、というのが現状でございます。  そこで、たまたま昨年末に酒税増税をお願いせざるを得ないということを考えましたんですが、同時によく御承知の関税の前倒しというものが出てまいりました。それで関税前倒しは当然ウイスキーもブランデーも対象に入れられております。そこで幾ら私ども説明をいたしましても、片方は国内問題であり片方は国際的な問題であると言いましても、どうしても相手側は、どうも日本はやることがトリッキーだ。またここで関税を下げた下げたと言いながら、実は酒税の方は上げて帳消しどころかもっとひどくなるのではないかということを言いかねないし、現にそういう質問が非常にたくさんまいりました。やはり全体的な判断としまして、この際は従価税率が実はすでに一五〇、二二〇というようなかなり高い率であるということも考え合わせまして、従価税率はそのままとせざるを得ないのではないか。税調にもそのことは、若干デリケートな問題でございますので、口頭でいろいろ申し上げまして、答申としてはこの際は従価税率はそのままでやむを得ないという結論のところだけを書いていただいたのだと思いますが、税調の御判断もやむを得ないだろう、現在日本の置かれている状況からすれば、ということでございましたので、この際は従量税率の方だけという御提案になっております。  今後どう考えるのかという点につきましては、従価税率そのものは、ただいま申し上げましたように一五〇、二二〇というのはかなり高い税率でございますけれども、それは財政事情いかんによっては、これ以上上げないというお約束はなかなかできないかもしれませんが、問題は酒税全体について従量税から従価税に移せるものはなるべく移していくという考え方の方にむしろ焦点が当たるのではなかろうか。ただ現実には、なかなかいま従量税であるものについて従価税に移るということに、御質問ございますればさらにお答えいたしますが、いろいろむずかしい問題がございまして、今回はそこまでは手がついていない。繰り返して恐縮でございますが、今後の問題はむしろどの部分からか、できるものから従価税に移れるものは移るという方向の研究を続けてみたいということでお答えにかえさしていただきたいと思います。
  100. 岩動道行

    岩動道行君 それで、酒税清酒あるいはビール、ウイスキーといろいろな種類にわたっているわけですが、それぞれ業界の芳しさはあると、そして反対であるという意向もあるということは政府側からの御答弁で明らかになっているわけですが、特に清酒の業界というものは非常に苦しい立場にあるのではないか。したがいまして、この点について特に伺っておきたいのですが、この米価の上昇という、毎年ある米価問題、それによるコストアップ、これが非常に清酒業界の圧力になっている、そこへ今度増税ということになってき、一方において九九%の中小企業、零細業者である、過当競争であるというようなことから、この清酒業界に対していろいろな手を打っていかなければならないのでありますが、構造改善についてはこれはまた後ほどに譲りますが、とりあえずその原料米の問題について伺っておきたいと思います。  この酒米の助成については、農林省、食糧庁、食管の立場でも非常な協力をいただいておることは評価をいたしたいと思います。また、われわれの同原である桧垣先生を初め、党としても非常にこの点については努力をしてきておられることも高く評価をしなければならないと思いますが、それでもなおかつ業界には非常な不満と申しまするか、強い要望が残されているわけでございます。  そこで、五十二年度の酒米助成がどうなっているかということはおおよそわかっておりますが、ごく簡単に簡潔に説明をしていただき、さらに六万トンの政府米を売るということになっておりますが、その実績がどうなっているか、その点についてまず伺っておきたい。
  101. 小野重和

    説明員(小野重和君) 五十二年度の酒米助成でございますが、二つの種類がございます。  一つは、自主流通米に対する助成でございます。御案内のように、酒米につきましては自主流通米を使っていただくというのが原則になっているわけでございますが、これに対する助成といたしまして主食並みの助成をいたしておるわけでございますが、総額二百十八億円でございます。さらに五十一年度からでございますが、アルコール添加をなるべく減らして米に切りかえていただくという趣旨から、特に政府米を主食用価格で一定量を売る、こういうことをいたしておるわけでございますが、これを五十二年度は計画といたしまして六万トンを計画いたしておりまして、これの助成といいますか、自主流通米と政府米の主食用価格との差をとりますと約二十九億円ということに相なっております。  さらに六万トンが、これは計画でございますが、実績がどうなっているかということでございますが、これは政府米につきましては三万五千トンということになっております。そのほか、特に五十二年度御案内のように余り米と申しますか、限度超過米が出ております。これも使いたいという業界の希望もございましたので、これにつきましては一万トン、したがいまして合わせて四万五千トンと、こういう数字に相なっております。
  102. 岩動道行

    岩動道行君 そこで六万トンと予定したのが四万五千トンでとどまってしまっていると、そこにやはり古米を使うという限度が出ているのではないか。やはり新米によって質のいい酒をつくって売っていかなければいけないという業界の立場、あるいはそういうことによって財政物資としての役割りを果たしていく、そういう観点から見ますと、これはぜひ全部新米で品質のいい、そして消費者に好まれる、生産者もまた喜んでつくれる、そういう米の配分をして、また助成もしていくと、こういうことでなければならぬと思うのですが、財政当局はこの点についてはどうお考えになってますか。
  103. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) いまの御質問のお米の問題でございますが、私どもといたしましては、清酒の業界の方といたしまして、やはりお米が最も大きな原料であるということから見まして、何とかできるだけ安いお米を、しかも新米でというような業界の要望を受けまして、関係当局ともいろいろ折衝しておるわけでございます。ただ、いろいろこの問題は食管制度の問題もございますし、主食用に古米も使っているというような問題もございまして、今後いろいろ問題点が残されていると思うんでございますが、引き続きお願いはしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  104. 岩動道行

    岩動道行君 これは農林省においても前向きに検討してぜひお願いしたいと思いますが、私どももまた努力をしてまいりたいと考えておるわけです。  それで、四万五千トンであと残っちゃっているんですが、つまり特におけ売りの場合にこれを引き取らないと、おけ売りをする連中はどうも新米でやってもらわないとおけ買いをしてもらえない、こういうようなこともございます。そのようなことで、新米というものについてはぜひ財政物資の観点からも前向きに考えていただきたい。もう一度食糧庁の方からお考えをお聞きしたいと思います。
  105. 小野重和

    説明員(小野重和君) 政府米を売却する場合に、その政府米の種類でございますけれども、五十一年度の場合にはいわゆる低温米、これは古米でございますが、低温米と常温古米でございます。二種類といいますか両方を計画いたしたわけでございますが、やはり常温古米となりますとどうしても品質上問題があるということで、五十二年度は低温古米に限るということにいたしておったわけでございますが、これにつきましても品質上の不安があるという声がありまして、それで実績が下回っているというふうに見ておるわけでございます。ただ、低温米につきましては、これは主食用にも供給いたしておるわけでございますが、主食用について申し上げますと、これは品質上は新米と変わりないというふうに私ども考えておるわけでございます。そういうものとのバランスという問題もあるわけでございますが、しかし、要は酒に出す場合に品質上どうかと、新米と比べて差があるのかないのかというところが一番の問題だと思いますので、そういう点を含めまして今後十分に検討いたしたい、かように存じます。
  106. 岩動道行

    岩動道行君 御善処を要望して、次に移ります。  今日、清酒を初めとしてかなり需給状況がだぶついて緩んでいる。そういうところから特に小売りの面において非常に過当競争が目立ってきている、そして乱売が行われている、そして市場取引が乱されている、安定的な状態にはない、これが酒税の保全にいい影響を与えているとは思えないわけでございます。そのようなことから、私はこの過当競争、乱売防止、これらについて主税局あるいは国税庁で今日どのような基本的な対策を講じておられるのか、まずそれを伺っておきたいと思います。
  107. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生御質問の乱売が行われては困るというお話でございますが、確かにおっしゃるとおりお酒というのは財政物資でございますし、酒税の保全という点からいきましても、コストといいますか、要するに採算がとれるようにされることが究極的に酒税の保全にもつながっていくわけでございまして、私ども常々そういうような見方から指導を行っておるわけでございます。ただ基本的な問題といたしまして、酒というものは自由価格でございますので、やはり酒の小売屋さんも個々の自主的な判断で自由に価格を設定できるというのが基本でございます。  ただ国税庁といたしましては、その決定されます小売価格は、原則的には実質的な仕入れ価格に販売経費及び適正なマージンを加えたものとすべきであるというような考え方に立ちまして、その各小売りの業者の方々に対し自主的判断によりまして販売価格を決定していただくというようなことで、業界の会議等の機会を通じまして啓蒙的な指導を常々やっておるわけでございます。また、個々の価格が実質仕入れ価格に販売経費を加えた額を下回るような価格で過当に、まあ極端に安売りをされているというような場合には、やはり採算を考慮した合理的な価格に改定するように、またこれも指導しておるわけでございます。  それから、さらに安売りというものを酒税の保全という観点からもっと低くやったらどうだというような御意見もあろうかと思うのでございますが、先ほど来申し上げておりますように、お酒というのは自由価格でございまして、企業努力をやはり価格に反映するという問題もございます。また、消費所の利益という点もあわせて考えなければいけないと思うわけでございます。したがいまして、現実に行われておりますお酒の安売りが極端なものでございまして、かつ地域の市場全般の過当競争を誘発するというようなおそれがあるような場合でない限りは、行政サイドからその取りやめを指算するというのはなかなか限界がある問題ではないかと思うわけでございます。
  108. 岩動道行

    岩動道行君 そこら辺が問題なんでして、つまり最近はスーパーとか生協とかあるいは国鉄の物資部なんかもそういう例があったんですが、一般の員外利用の人たちに対してまで安売りをしちゃっているというような事例もありますし、また目玉商品にされている場合もある。そういうようなことで、その近辺の既存の小売業者が、秩序の正しい正常な取引を行っているのが非常に脅かされるというような事例も少なくないわけでございます。そのようなことから言いますと、その地域全体というような考え方でいくとなかなか行政指連なりあるいは法の規定の適用ということがむずかしくなるんですが、そこら辺はもっときめの細かいことをおやりにならないといけないのではないかと、かように考えるわけなんです。  そこで、たとえば酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の第一条の目的の中にも「酒税の確保及び酒類の取引の安定を図ることを目的とする。」という非常に大きな眼目がまず掲げられている。しかも八十四条には、「大蔵大臣は、酒類の販売の競争が正常の程度をこえて行なわれていることにより、」いろいろな問題が起こった場合には酒類の販売数量、販売価格等について指示ができると。いわゆる標準価格というものもこれに入ってくるかと思いますが、自由価格、自由価格とおっしゃるけれども、これは酒税確保という特殊な財政物資である限り、私はもっとこの点について厳しく行政指導あるいは法の運用というものをやっていただかなければいけないんではないか。酒の方は非常にそういう意味で乱れているんではないか。たばこの方は恐らく定価以下で売りますなんということをやっているところはどこもないんだろうと思うんです。そこに同じ財政物資でありながら、同じ大蔵大臣の監督下にある物資が、一方においては定価が守られている、一方においては非常な乱れがあって業界も困っている、こういう状態は私は非常に不思議な状態ではないか、是正をしなければならないのではないかと、こう思いますんですが、これはひとつもっと毅然とした態度で臨んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  109. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生御指摘の、確かに酒団法にも基準販売価格とか、あるいは非常に不況の場合には不況カルテルの発動というような規定がございますが、製造数量、販売数量、販売価格等についてそういう不況カルテルを行うとかあるいは基準販売価格を決めるということも可能なんでございますが、現在の時点がそこまでの時点に達しているかどうか。確かに先生のおっしゃるように安売りの問題はございます。それから、清酒につきましてもかなり伸びが鈍化しているということも言えることは言えるんでございますが、そこまでに達するまでに至っているかどうかというような御判断もひとつ御配慮いただければありがたいと思うわけでございます。  それから、確かにたばこと比べてというようなお話ございますんですが、たばこの場合にはやはり製造が官営と申しますか、でございまして、お酒の場合は製造者はむしろやはり民間の会社ということで基本的にその点が違っておるということ、それからそういう業者間の要するに競争によって成り立つという自由価格あるいは自由競争というものを前提としているという前提に立っておりますので、この点はやはりたばこができるからお酒の場合にもできるということを一概には申し上げられないのではないかというふうに思うわけでございますが、なお、今後ともそういうような極端な安売りが起こらないような指導を続けてまいりたいと思うわけでございます。
  110. 岩動道行

    岩動道行君 そういう過当競争、乱売、そして正常取引が乱れているというようなことは、業界にももちろん十分な反省が必要であろうと思いますが、小売の免許の出し方にも…題がありはしないか、そういう意味において、まず酒の小売免許制度、これは今後も堅持すると、そしていたずらにこれをふやすことによって過当競争、そしていまのような状態が起こらないような事前の基本的な姿勢というものが必要だと思いますが、この点についてどうお考えになりますか。
  111. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) お酒の免許の問題でございますが、現在は先生もう十分御承知のとおりなのでくどくど申し上げませんけれども、あくまでもやはり酒税の保全というものも含めましてそういう免許制度をとっておるわけでございますが、諸外国の販売規制の状況も見ますと、必ずしも正確でないかもしれませんが、たとえば免許を要しない国もございます。それから、卸売につきましてのみ免許を要するとしておる国もございます。アルコール度数の強い酒類の販売についてだけ免許を要するもの、あるいはすべての酒類の販売について免許を要するものというふうに態様は非常に異なっているわけでございます。わが国の場合はむしろそういう意味では最も厳しい範囲に入るのではないかというふうに思うわけでございます。ただ、この規制のあり方につきましては、先生先般来お話がございますが、消費者保護という観点もまたございまして、毎年消費者保護会議から免許要件をもっと弾力的に運用しろというような要請も一方でございますわけです。したがいまして、そういうような要請も一方では考えなくちゃいかぬということで、一概に規制の強化という方向だけで措置するということはなかなかむずかしいのではないかというふうに思っているわけでございますが、ただ従来、酒の致酔性といったような問題、そういう特性に着目した議論が余り行われておりませんので、酒の販売の自由化といいますか、という問題と、あるいはもっと規制を強くしろというような話につきましては、現在実は中央酒類審議会で流通問題というものを一応諮問いたしまして御検討いただいているわけでございますが、こういう中におきましても今後の論議を深めてまいりまして私どもの参考とさせていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  112. 岩動道行

    岩動道行君 その辺については最後にまとめて少し意見も述べ、要望もしたいと思いますが、そういう過当競争、乱売あるいはメーカーの直売といったようないろいろな業界の秩序を乱すような状態が起こっているわけですが、ここに一つ最近重要な判決が最高裁で出されたわけです。  それは、東駒が中身は二級酒にもかかわらず特級のラベルを張って売り出したと、これが裁判になって、そして五十三年三月二十二日に最高裁の判決でこれはよろしくないということで、会社は、法人は罰金刑が課され、そして役員は懲役刑を言い渡された、こういうような事件が起こったわけです。こういうようなことは非常に、適用の法律は不正競争防止法五条一号の違反と、こういうことになっておりますが、これは大蔵省の免許をもらって製造している重要な財政物資を扱っている厳格に法を守ってやらなければいけないそういう業者が、このような罰金刑を受けるとか、あるいは役員が懲役の刑を受けるということははなはだ好ましくない状態だと。しかも、この東胸というのはいろいろと直販のやり方で各地に問題を起こしている札つきのメーカーでもある。したがって、適用された法律は酒に関する法律とは違いまするが、この三月二十二日の最高裁の判決の結果これは現在どのようになっているのか、その点についてお教えをいただきたいと思います。
  113. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生御指摘の東駒の二重ラベル事件というのは、確かに御指摘のとおり、級別の審査、認定を受けなかったために、酒税法清酒の二級とされた商品であるそのびん詰めの清酒に特級という表示を貼付した、いわゆる二重ラベル事件というものでございまして、三月二十二日の最高裁の判決で不正競争防止法第五条第一号に違反するということでございます。こういうことは結局私どもの主張しておりました酒税法に定める級別制度を是認したというような判決でございまして、私どもとしては非常に力強い判決であるというふうに考えておるわけでございます。  確かに、東駒につきましてはいろいろ前からそういうような、先生御指摘のようなお話もございますが、昨年の夏ごろから合併というような問題もございまして、いろいろな問題が起こっていることも事実でございます。しかし、三月有罪が確定いたしました東駒の製造免許につきましては、本年三月三十一日、その免許を取り消しておるのが実情でございます。今後ともそういう点について指導といいますか、監督をしっかりやっていきたいというふうに思っています。
  114. 岩動道行

    岩動道行君 どうか十分に善処していただき、このようなことがほかのところにも起こらないような特別な監視の目を強めていただきたいと思います。  そこで私は、もう時間も終わりになってまいりますので、酒の免許に関連して、今日酒の特性という観点から酒の全体の見直しをする時期に来ているのではないか、こういうことを考えている一人でございます。  けさほど主税局長は、酒は百薬の長でもあればというようなことで自分も好きだと、大変いいお話を承ったんですが、まさにそのとおりであります。たとえば貝原益軒は、酒は天の美祿なり、少なく飲めば養気を助け、血気を柔らげ、はなはだ人に益あり、多く飲めばまたよく人を害することを先に過ぎたるはなし、こういうようにわれわれの先人が酒の特性を指摘しているわけでございますが、今日酒が単なる財政物資という考え方から、これがアルコール中毒患者が非常にふえてきている、もう数字なんかは申し上げる必要はございません。あるいはまた、飲酒逆転がふえて、そして自動車事故、交通事故、さらにそれによる死傷自故というものが多発をしておるわけであります。たとえば自動車事故のうちでも飲酒運転の事故率は、これは五十一年の数字でありますが、死亡事件が九千百九十六件、これは全体としては一万件を割って減ってきておるわけですが、そのうち飲酒逆転のための自故は一一・五%、千五十三件というふうに非常に多い割合を占めているわけでございます。そのようなことを考えますと、社会問題にもなってくるわけでございます。  そこで、酒の特性ということを考えた場合に、これを自由にただ売って売って売りまくればいい、そして税収が上がればいいんだ、こういう性質のものであるのかどうか。これはたばこについても言える問題なんで、たばこを飲むとガンになるとか何とか、そこまでは書かないけれども、吸い過ぎはいけませんといったようなことまで言われているんですが、酒の場合にもそのよさと悪さ、そういったようなものを特に背景とした新しい酒税法あるいは酒団法というものを改正をして、現代の実情に合った社会的な公共的な立場で酒という問題をとらえていく必要があるのではないか、かように私は基本的な考え方を持っておるのでございますが、その点について大蔵当局の考え方を、まず基本的な考え方を伺いたいと思います。
  115. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) けさほど、酒は百薬の長ということを申し上げましたが、同時にまた、酒は気違い水ということも申し上げたわけでございまして、やはり適量に飲んでいただくということが一番必要なことであろう、私個人的にはそう思います。  今回、酒に関するいろいろな規制面での現にある諸法律というものも調べてみたわけでございますが、まあよく御承知の未成年者飲酒禁止法、これは昔からございますけれども、そのほかに単行法で、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律というのが現在制定されておりまして、その第一条は、中間だけ沈みますと、「過度の飲酒が個人的及び社会的に及ぼす害悪を防止し、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。」と書かれておりまするし、第二条では、「すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならな。」ということで、立法府としての御意思はかなりはっきりしておるんだろうと思うんです。同時にまた、現実に社会的害毒を及ぼす危険があるということで、道路交通法では非常に厳密に酒気帯び運転を規制いたしておりまするし、また別途風俗営業取締法で、酒類提供の場合の二十歳未満に提供してはいけないとか、あるいは飲食店の営業の許可とかいろいろの規制が現に行われておるように考えます。  ただ、それをさらに広げまして、酒税法なり酒団法で何らかの規制があるかということになりますと、これはやはり率直に申し上げて非常にむずかしいんではなかろうか、と申しますのは酩酊するかしないかというのが非常に個人差があるわけでございまして、一人何リッターまでならよろしいというようなわけにはなかなかまいらないだろう。その意味で、個人別の販売数量の方からのアプローチというものは恐らく皆さまが納得されるような形というのはなかなか出てこないんではないだろうかという気はいたしますが、しかし、立法府全体の御意思として、とにかく過度に酒を飲んではいけないし、酒を飲んで特に人に迷惑をかけるのは一番いけないということははっきりしておりますわけですから、私どもが持っております手段の中で、たとえば未成年者に酒を売らないためにもっといい工夫がないかというようなことは引き続き十分勉強はいたしていきたいと思います。
  116. 岩動道行

    岩動道行君 基本的にはモラルの問題だとは思いますが、そこでだれに幾らしか売っちゃいかぬなんて、そんなことはとうていできる問題じゃないんです。問題は、売る方にやはり未成年者が来たらやっぱり売らないとか、あるいはこれは車から降りてきて買いに来たから売らないとか、そういったような、売る方にもう少し義務づけをしながら、したがって免許も厳格に、やはり販売業者に対しての厳格な規制をしながら、そして資格も十分に備えて、そしてまた教養も備え、あるいはいろいろ研修もさしたり、そういったような事業者の団体の方での規制なり指導なり、これは政府も一体となって進めていく必要がないだろうか、そういう意味で私は法律改正も検討に価するのではないだろうか、こういうようなことを申し上げているわけなんです。  そこで、まあたとえば自動販売機、これなんか外に置いておけばいつの間にか金はもうかる。しかしだれが飲むかわからない。これがいまのような社会悪につながってくるということにもなります。そこで、この自動販売機については今後どのような対策を持てばよろしいのかという問題について簡単に。
  117. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) お酒を基本的に規制したらどうかという御意見につきましては、先ほど来御説明申し上げておるとおりでございますが、団体等に当たりましても、もちろん私どもといたしましても、酒の売り方という面から未成年者に対しては売ってはいけないとか、それから極端な売り方はしないようにということは、これは業界の会合を通じまして常々指導しているところでございます。今後もこういう点はよく指導を徹底してまいりたいと思うわけでございます。  それから、酒の自動販売機の扱いでございますが、これは自動販売機だけによります酒数の販売につきましては、昭和四十八年から免許は原則として付与しないというたてまえにしております。ただ、既存の販売店が店頭に設置するものにつきましては、免許等の手続を要しないで、法的にはなかなか規制できないというのが現状となっておるわけでございます。しかし、自動販売機によります酒数の販売につきましては、未成年者が飲酒するんじゃないかとか、あるいは飲酒運転があるじゃないかというようなことを防止する必要もあるということで、夜間の販売は自粛するようにということで小売業界を指導してまいってきておるわけでございます。これを受けまして全国小売酒販組合中央会では、午後十一時以降翌朝五時までは自動販売機による酒類の販売を自粛するという決議をしておりまして、昭和五十年四月からこれを実施しているところでございます。実施状況は地域によっては必ずしも十分でないというところも現在ないわけじゃございませんが、昨年十一月にも、全国の小売酒販組合中央会に対しまして、傘下組合員に夜間販売の自粛をもっと趣旨を徹底するようにということを要請したところでございます。今後ともそういうような事態がないように、関係の酒販組合等を通じまして夜間販売の自粛といったような点で指導徹底してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  118. 岩動道行

    岩動道行君 それじゃこれで終わりにいたしますが、まず、現行法の中で正常取引が十分に確保できるような努力を重ねて要望を申し上げておきたいと思いますが、さらに、いまの酒の特性ということから、事業者に対する資格要件をさらに検討する必要があるのではないか、あるいは事業者の数の問題、これは現行法にも関連するわけです。そして免許基準の改定、これも大分古くなつておりますので実情に合わないと、こういうこともあろうかと思いますので、免許基準の改定の問題、あるいはその販売の方法についても、いろいろさっきも申したような未成年者の問題とか、自動販売機の問題とかいろいろございましょう。さらにまた、広告もみだりにやっていいのかどうかと、こういう問題も出てくるかと思います。一方において乱売を防ぎ、正当な利潤の中で酒が売られ、そして財政収入が確保されると、こういう点から大蔵大臣法律を逆用する前に業界の中で何か自主的な体制がつくれるような法改正考えられないか、こういったようなことを検討をしていただきたい。またわれわれも勉強したいと思いますが、こういう点を特に要望申し上げて、これに対する基本的な取り組み方について特に政府の答弁をいただいて終わりにいたしたいと思います。
  119. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生お話しのように、免許の数の問題、基準の問題、販売方法の問題、未成年者の問題、広告の問題、乱売の問題、いろいろ現在の酒の販売の問題については、確かにおっしゃるとおりいろんな問題があるというふうに私は認識しておるわけでございます。国税庁といたしましても、酒類に関する行政を行うに当たりまして、やはりこういった酒の特性といったものをいつも念頭に置きながら行政は実施しておるわけでございますが、現在こういうような問題も含めまして、先ほど申し上げましたように、中央酒類審議会で酒類の流通問題のあり方について研究をお願いしておるわけでございます。  また酒類業界におきましても、主として販売業者の方々が中心になりまして、酒類のもたらすいろいろな医学的な問題とか社会的な問題といった問題について論議がいま行われようというふうにしている段階でございますが、こういうような論議につきましても、私どもといたしましては理解をもって見守っていきたいというふうに考えておるわけでございます。まあしかし、酒の特性ということのゆえに、その製造とか販売のあり方につきましてはどの程度の規制をやっていくかということにつきましては、やはり消費者の利便というもの、あるいは先ほど来主税局長がおっしゃっておられます、酒の、まあ百薬の長だというような観点、まあいろいろ逆の意味でいい面もございますので、一概に規制することがいいのかどうかということは非常にむずかしい問題がございます。そういうようないま申し上げましたようなむずかしい問題はあるにいたしましても、将来の検討課題として私どもとしては先生の御趣旨を体しまして、よく研究してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  120. 岩動道行

    岩動道行君 政務次官一言。
  121. 井上吉夫

    政府委員(井上吉夫君) 先ほど来御質問を通していろいろ御意見を拝聴いたしまして、過当競争の問題であるとか、あるいは財政物資としての扱いの問題であるとか、沼に対する社会的評価の問題であるとか、そういう点から考えまして、先ほど間税部長がお答えを申し上げましたように、諸般の角度から検討しなきゃならぬというぐあいに考えるわけでございます。したがいまして、いままで御指摘のありました点を十分踏まえまして、今後酒の扱いをどういうぐあいに対応していくかということを十分検討してまいりたい、こういうぐあいに思います。
  122. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 私は、ただいま御提案になっていらっしゃいますこの酒税法改正酒税の値上げの問題につきまして、いま岩動委員質問された点と重複を避けまして、わずかな時間でございますので簡単に御質問を申し上げたいと思います。  まず第一は、今回のこの酒税増税景気振興のために五十三年度の予算というのはその財政の機能をフルに活用すると、こういう性格を持っている中で、やはり何といっても個人の消費の減退につながるような増税案が提案されておる。それはもう財政運営の方針に反しない範囲で、また全体の影響もネグリジブルだというお話はそれなりにわかるのでございますけれども現実にやはり過去に四十三年なり五十年なりの値上げ、増税のあったときには相当消費が減退をいたしておりますし、また特にこの日本酒については、増税前五十二年のカレンダーイヤーだけ見ても三%程度しか数量で伸びてない。特に特級は一%程度しか伸びていない。さらに、これちょっと言いにくいんでございますけれども、党が——わが党と野党と共同して国会の場で決まったものでございますから、与党でありまた国会の一員であります私が申し上げにくいんですが、そういう中で三千億円の減税というものが決まった。それがどういう方式になるのかはともかく、去年のような戻し税というようなことになると、どうもその効果は薄いというのが通説です。そういう中で消費の確実に減退するこの酒税が一方で提案されておる。これは政府はむしろ部外でございますから、その答弁を求めるというよりも、いまそういうような所得税の減税が決まっている中でこれが提案されていることについての御感想をいただきたい。
  123. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 先ほど岩動委員にお答えいたしましたように、今回の増税が実施される場合に、それが酒類消費に影響を与えないということを強弁するつもりはございませんけれども、しかし、家計における消費支出金額のウエート、あるいはけさほど企画庁からお答えがありました全体の物価に与える影響というものから見まして、今回の増税が個人消費を押し下げてしまうという心配をするというまでには、そこまでの大きさのものではないのではないかというふうに私どもは判断したわけでございまして、やはり何と申しましても財政が現在のようなはなはだしい危機状況にございます限り、全体の景気対策から見てまずまず許容できるという範囲内ではできる限りの増収の努力をさせていただきたい。わずかではありましても公債発行額を縮減して、なおかつ全力を景気対策に振り向けるという運営をさしていただきたいということをぜひお願い申し上げたいと思います。  三千億円の件につきましては、私から所感を申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。
  124. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 いまのようなお話ですと、結局たばこも状況は同じではないかという感じがいたします。四十三年、五十年二回にわたってたばこの値上げと酒税増税というものが並行して行われてまいったわけでございますが、今回はたばこについてその引き上げが見送られて酒税だけが増税をされておる。その理由は先ほど先売監理官からお話がございましたけれども、単に現在のたばこの売れ行きがどうこうというよりも、現在公企体の調査会で議論の進んでいる経営形態の問題とも関連しているというようなお話ございました。そういたしますと、この結論が六月には出て、しかるべき納付金制度も確立してくる可能性が強いと思います。その場合にはたばこについては一年おくれにはなりますけれども、来年は価格の引き上げを行う、こういう方針でいらっしゃいますか。
  125. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 私からお答えできる範囲でお答えいたしたいと思いますが、専売監理官が申し上げましたように、経営形態の問題があり、それとの関連で前回値上げを御審議願いましたときに、消費制度というようなものに対するはっきりした答えを持っていないとこの次の値上げは認められないよという国会での御審議の経緯もございまして、五十三年度に具体化するということにならなかった事情がございます。  五十四年度以降にどのように考えるかという問題につきましては、やはり非常な財政危機であり、財源事情がきわめて窮屈であるということから申せば、製造たばこの価格改定というものは、やはりどうしても検討項目としては爼上に上るであろうと申し上げた方がよろしいと思います。ただ、五十四年度にそれを具体化することになるかならないか、これはやはり五十四年度全体の財政運営につきまして、ほぼ予算の骨格を決める、経済情勢の見通しがわかるというときでないとまだ早急な結論は出せないんではなかろうか、私限りでございますが、そのように考えておる次第でございます。
  126. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 先ほど申し上げましたが、この酒の増税というものが消費全体に与える影響と同時に、実は業界の問題というのがもう一つあるわけでございます。特に先ほども申し上げた日本酒業界が非常に問題であろうと思います。この増税前であっても数%しか数母で伸びていない。しかも、いわば構造不況業種のような状況でございます。三千の中小企業が、非常にその半分以上実質赤字の状況になっている、そういう中で増税が行われる。そういう意味で私は特に日本酒については非常に問題がある。個別のこういう消費税を課していくことには問題があると考えておりますが、同時に、今回この増税と同時に酒造業界に対する対策というものもとっておられるんだと思いますが、国税庁からその内容、簡単におっしゃっていただきたいと思います。
  127. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 清酒製造業につきましては、もう御案内のように長年にわたりまして国家財政に非常に寄与してこられたこと、それから伝統的な産業でもあります。それからまた、三千の業者の方がおられるという意味で、九九・六%までは中小企業である、その中で嗜好が変化をいたしましてやはり清酒が比較的伸び悩んでおるということも十分認識しておるわけでございます。そういうような事態も踏まえまして、つとに清酒製造業につきましては、国税庁といたしましてもできるだけの配慮をしていくという観点に立ってやっておるわけでございますが、三十九年にも他の業種に先駆けまして中小企業の近代化計画を達成いたしまして、市場安定化のための指導、原料米関係の費用の負担軽減といったようなことも含めまして、いろいろの施策を講じておるわけでございます。  また今回、五十二年から第三次の近代化計画に基づく業界の構造改善計画が行われているわけでございますが、これも積極的に支援するというような意味合いにおきまして、ただいま御審議を願っております清酒製造業の安定法案の内容におきましても、国の補助金もお願いいたしまして、構造改善給付専業あるいは近代化推進職業というようなものを、業界の自助努力を側面的に援助するというような見地からつぎ込んでいくということによりまして、業界の近代化、構造改善計画を側面的に援助するということをやっておるわけでございます。  こういうようなことを通じまして、またその他生産から消費にわたること全般にわたりまして、国税庁といたしましても行政上できるだけの配慮を清酒の業界に対しては講じてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  128. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 ただいまのお話ですと、原料米の問題、それから転廃業に伴う給付金の問題、これが具体的にお話あったわけでございますが、原料米の問題は、先ほど岩動委員からもお話がありましたので、私からも食糧庁にぜひ今回の原料米の配付に当たっては十分の御配慮をいただきたいということを重ねてお願いいたします。  なお、転廃業の問題に絡みまして、かつて、うわさなんですが、国税庁が三千の業者のうち半分ぐらいは多過ぎるからこれは転廃業すべきじゃないかというようなことを言っておられるといううわさが出ておるのですが、これは本当のことかどうかということが一つと、それから現実にいまどのくらい転廃業が行われるかどうか、これは見通しは人によってまちまちだと思いますけれども、この転廃業の給付金財源というものが、この保証基金の運用益とそれから業界が共補償的に出す金と、それが合わせて二十九億円、こういうことになっておるわけでございますが、その転廃業が進んでこの金が足りなくなるということもまた一つの心配、業界の心配の種になっておるのでございますが、そういうときにはどのような措置をとっていただけるか、御答弁をいただきたいと思います。
  129. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 清酒製造業におきまして、五十六年度を目標年度といたします第三次の近代化計画に基づきまして業界の構造改善計画を現在やっておりますことにつきましては、もう御案内のとおりでございます。これはあくまでも業界が自主的にそういう計画をつくりまして自助努力をやっておるわけでございます。それを私どもといたしましては側面から支援するというような見地で今回の清酒業の安定法の一部改正もお願いしているわけでございます。したがいまして、あくまでも日本酒造組合中央会事業といたしまして、転廃業者に対して給付金の給付事業が再開できるように措置しようというわけでございます。これによりまして清酒製造業者の整理を目的とするということでは決してないわけでございます。あくまでも中央会が自主的にやるものを国として側面的に援助していこうと、こういう趣旨でございます。  それから、事業計画によりますと四百社の転廃見込みということでございますが、これは予算の積算上の数値でございまして、これだけの転廃を強制するというような趣旨でないことはもう当然のことでございます。たとえば、前回の場合でも六百三十社を見込んでおったわけでございますが、実績は二百二十一社であったという点をごらんいただきましても、その点は御理解いただけるんではないかというふうに思うわけでございます。  それから第二の御質問でございますが、二十九億円では足りないのではないかというようなことでございますが、これも先ほど来申し上げておりますように、構造改善計画に照らしまして一応転廃業者を四百社と、それから合併によりその免許が消滅する方を百社というふうに一応見込みまして二十九億円というふうにしておるわけでございまして、現段階ではおおむね妥当な計画ではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、そのための助成措置として本年度に信用保証基金に対しまして五億円の補助をお願いしたいということで御提案申し上げているわけでございますが、こういうような補助金のお話、ことしだけの話でもございませんし、この事業自体がもう何年にもわたる問題でもございます。当面はこれで間に合うのではないかということでこういうような御提案を申し上げているわけでございますが、したがいまして、万一当初の見込みと違ってたくさん出たらどうするんだというようなお話でございますが、そういうようなことはないと思いますが、万が一出た場合におきましては、そのときの情勢を見ましてその時点で十分検討いたしまして、しかるべくまたお願いをしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  130. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 いまお話しのあるように、結局、酒税とかという個別の消費税というのはいろいろと特別の分野にいろいろな影響を与えるという非常に問題があると思います。石油税にしましても、実はガソリンスタンドにいろいろな乱売の問題だとか混乱が起こって、どうもやはり財政収支試算で見ると総計で十兆円以上の増税が要るんだと、そういう財政環境の中でこういう個別消費税いじりというのはもう限度じゃないのか、特定の分野ばっかり結果としていじめるような形になるんじゃないかということを私は痛感をいたしております。主税局長から、この個別消費税についてどのようなお考えをお持ちか。また、将来の大きな財政の赤字と申しますか、その対策として昨年十月の税制調査会答申が出たわけでございますが、ああいう方向というものが当然指向されなければならないと思いますが、そういう中で個別消費税、物品税も含めましてどのようなお考えか、御答弁をいただきたいと思います。
  131. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 藤井委員、昨年の中期答申につきましては十分御承知の上での御質問でございますので、くどく申し上げることは避けたいと思いますが、あの答申の第二部のところで詳細に分析していただいておりますように、やはり、現在ございます既存の間接諸税につきましても適宜見直しを行って負担増加を求める余地はなお残されていると。ただ、それによって期待できる税収額は、現在私どもの直面している今後の所要な収入額に比べると量的にはきわめてわずかなものにとどまってしまうんではないか、したがって、やはり一般的な所得税負担増加かあるいは一般消費税かを考えない限り、この危機から基本的に脱却するということはできないだろう、そういう位置づけになっておりますので、一般消費税が検討され始めれば個別消費税はもう一切手をつけないということにはならないんだろうと思います。ただ、おっしゃいますように、個別消費税にそれなりの限界があるということは藤井委員御指摘のとおりでございますので、個別消費税の負担増加で全部を賄ってしまうということはとうていできないだろうというふうには感じております。
  132. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 時間がございませんのであと簡単に申し上げたいと思いますが、そういう財政環境、これが実は大蔵省から財政収支試算という形で過般提出されておるわけでございますが、実は、これぱっと見て第一に感じたことは、この赤中は少し小さ過ぎるんじゃないかということでございます。大分抑えた数字なんじゃないか。実は十兆円の増税云々というような活で、それじゃ大変だと、まさに大変であると存じますけれども、実はもっと本当は大きいんじゃないかという感じ、これは非常にラフな感じで恐縮なんでございますが持ったわけです。たとえば振替支出でございますが、過去五年間二八%というのは、昭和四十八年の福祉元年というようなああいう事態、あるいは狂乱物価というような事態の中で異常な数字かもしれませんが、過去五年間二八%振替支出が伸びたものが一五%でおさまるんだと、財政負担は一五%で済むんだというようなあたりを見ても、実はちょっとこれは過小なんではないかというふうに感じるわけでございます。  そこで、非常に簡単で結構なんですが、この振替支出が一五・七%であるという、どういう算定の根拠でできているか、簡単に教えていただけませんでしょうか。
  133. 松下康雄

    政府委員(松下康雄君) 大蔵省のお出しいたしました財政収支試算経済的な面での裏打ちといたしましては、経済審議会におかれて昭和五十年代前期経済計画につきまして、これの部分的な見直しの結果でありますところの暫定試算によっておるわけでございます。  そこで、この暫定試算で想定をいたしております五十七年度の経済の姿の中には、その時点におきますところの政府から個人への振替所得というものの量を想定をしておられるわけでございます。これによりまして、私どもがこれを財政ベースのいわゆる振替支出に換算をいたしまして考えてまいったのがこのお出しをいたしました数字でございます。  いまも御指摘のように、過去のこの二八・四%という数字が、その中間におきますところの物価あるいは所得の非常に異常な上昇を反映したものでございますから、この数字をもって将来を推しはかることはできないわけでございますが、しからば、ただいま御指摘の一五%強の将来に考えております伸び率で福祉の水準は果たして圧迫をされておるんだろうかという点でございます。この点につきましては、五十七年度におきますところの振替所得の国民所得に占める比率をどう見ておるかということでございますが、私ども試算の基礎では、これは国民所得そのものを、経済審議会の数字はございませんので私どもここから推計をやったわけでございますが、おおむね一二%強になるという見込みでございます。ちなみに、五十五年度では一一%強になっておるわけでございます。昨年までの、五十五年度特例債脱却前提に置きますところの財政収支試算の最終年度でございました五十五年度の想定は、振替所得はそのときの国民所得の一〇%弱という想定を実はいたしていたわけでございまして、これをもって見ましても、私どもとしまして、ここ数年来の福祉水準の向上を基礎として、将来にわたって非常に経常収支の節減を図りながら、しかしできる限り福祉の水準の向上ということには配慮をするという心構えで算定をいたしたものだとお考えいただきたいのでございます。
  134. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 いまのお話で振替所得一二%、これはまさにそのとおりだと思うのでございますが、結局それの基礎に、たとえばいま非常に急速に進んでいる老齢化の現象あるいはまた年金の成熟化の現象、こういうものが十分織り込まれているか、あるいは物価スライドという仕組みがいま年金の中に取り入れられておりますけれども、こういうものが入っているか。恐らく私はこの一二%というのはマクロで大体国民資源の中でこれだけは、一二%ぐらいが社会福祉に回るんじゃないかと、こういうような計算でできているのではないかと想像されるのでございます。したがって、その中では老齢化の問題だとか成熟化の問題というのが十分入っていないんじゃないかということ、したがってまた、この赤字の幅、強いて言うと増税の幅というのはずいぶん過小なんじゃないか、こういう印象を持っておるのでございますが、いかがでございましょうか。
  135. 松下康雄

    政府委員(松下康雄君) 御指摘のように、人口の老齢化等に伴いまして社会保障に対する財政的な需要は相当の勢いで増大をいたしてまいります。しかし、これは過去におきますところの社会保障関係の経費の伸びの中に実績としてあらわれておる傾向が、ただいまの物価とか賃金とかの水準の急激な変動の問題を除きますと、将来におきましても同じような老齢化の傾向がここ数年間あるいは十数年間続いてまいるわけでございまして、私どもの行っております推計のやり方から申しますれば、過去のそういう老齢化現象による財政負担増加の傾向そのものは、将来の見通しの中にも織り込んであるということが申し上げられるかと思います。  ただ、この社会福祉の問題には、ほかに制度全体をどう持っていくかという制度問題があるわけでございまして、これは当然のことでございますが、この財政収支試算という将来の制度の改革その他を前提といたさない試算の性格上は想定をいたしてはおりません。  ただ、そのように福祉につきましてはただいまのようなことでございますけれども歳出全体につきまして私どもがこれを何とか増加を抑制をいたしたいという気持ちで計算をいたしておりますことは事実でございます。このような歳出の抑制を将来にわたって続けていくということは決して安易にできることでないということは私ども重々承知をしておりますけれども、ただ実際問題としてこれがなおかつ非常に増加するのではないかというお尋ねに対しましては、私どもとしましてはそういう事態を招かないように今後極力努力をしてまいるつもりでございます。
  136. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 いまのこの穴がどのぐらいかという観点と、もう一つ今後増税ということが避けて通れないということになると、やはり国民に対して公共投資、たとえば下水道は四〇%ぐらいまでちゃんといくんだとか、あるいは社会保障、年金は二十八年間厚生年金に入っていればいまは九万円ですけれどもこれが十何万円になるんだと、こういう形で示さないと、振替所得一二%になりますと言っても国民の方は何のことだかさっぱりわからないわけでございます。相当な有識者じゃないとわからないわけでございます。  そこで、これは財政収支試算だし、そういう増税前提としたキャンペーンじゃないということをはっきり衆議院でもお話しになっておりますから、それはそれとして、やはりこれから増税の道が不可避だとするならば、こういう財政収支試算というのではなく、ヨーロッパ諸国で言う財政計画というのでしょうか、年金水準はわかりやすく二十八年いる厚生年金の人は何万円もらえるぐらいのところに持っていきたい、そういう姿を描いて、それでこれだけ穴があくんだからこれを増税に期待させてくれ、こういう話でないとなかなか国民の皆様の納得というものは得られないのじゃないかと思うのでございますが、これは現段階は財政収支試算を仮にすればこうなるという話でございますけれども、やはり政府の意思、政策意思というものを含んだ財政計画的なものに持っていかなければいけないのじゃないかという感を強くしているのでございますが、その点について大蔵省はどう考えるか、また作業は進んでいるのかどうか、伺いたいと思います。
  137. 松下康雄

    政府委員(松下康雄君) 財政計画をつくってまいるということは私どもに与えられました重要な課題であると思っております。ただ、現実財政計画の作成をいたそうとしますと、将来のたとえば経済あるいは社会の姿につきましても、かなり中期的にそれがどういうふうに推移していくか、具体的に想定をいたしていく必要がございます。この点はなかなか実は解決のむずかしい作業になるわけでございます。  なお、財政計画的に将来の歳出需要をある程度具体的に個別にお示しをしてまいりますと、事と次第によりましては、一種そこへあらわれました歳出の水準が、何といいますか、既得権化すると申しますか、それをもとにしてさらにより高い水準を求めていくというような可能性も考えられるわけでございます。それらむずかしい要素は幾つかございまして、このために外国あたりで財政計画をつくっておる国が幾つかございますけれども、いずれも相当の期間にわたって研究をいたしました上で試行的に段階的に財政計画へ持っていっておるというふうに見ております。私どもも、ただいまのところでは財政制度審議会におきまして、ここ数年間財政計画作成のための問題点なり手順なり想定される姿なりというものの御検討をお願いをいたしておりますし、また主計局としてもみずからそういう検討を重ねてまいらなければならないと思っているわけでございますけれども、なおしばらくの時間をおかしいただきたいと思うのでございます。
  138. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 じゃ時間来ましたので終わります。
  139. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、最初に警察庁にお伺いしたいと思いますが、最近の飲酒による検挙数と事故数はどうなっておりますか、お伺いしたいと思います。
  140. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 飲酒運転による事故の状況を過去三年間にわたって見てみますと、全事故の発生件数で申し上げますと、昭和五十年に一万七千四百九十二件発生をいたしておりまして、全事故の中に占める割合は三・八%でございます。昭和五十一年は一万七千二百九十九件発生いたしておりまして三・七%を占めております。昭和五十二年中におきましては、一万五千二十四件発生をいたしておりまして、三・四%の比率となっております。  なお、死亡事故について見てまいりますと、昭和五十年には一万九件で全体の死亡事故の中に占める割合は九・九%、五十一年は一万五十三件発生をいたしておりまして、全事故の中に占める割合は一一・五%、昨年、昭和五十二年は八百六十五件発生をいたしておりまして、全死亡事故に占める割合は一〇・二%、かような状態になってやります。
  141. 多田省吾

    ○多田省吾君 昭和五十二年度の死亡事故は昭和五十年、五十一年と比べますと極端に少ないようですが、これは何か理由があるんですか。
  142. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 死亡事故につきましては、五十年中は九・九%、五十一年が一一・五%、五十二年が一〇・二%ということで……
  143. 多田省吾

    ○多田省吾君 五十二年は。
  144. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 一〇・二%でございます。
  145. 多田省吾

    ○多田省吾君 いや、その前の数おっしゃったでしょう。
  146. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) はい、八百六十五件でございます。
  147. 多田省吾

    ○多田省吾君 いやいや、五十年と五十一年、一万九件と……。
  148. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) これは全交通事故でございます。それでは、全交通事故もう一回申し上げますと、五十年が一万七千四百九十二件、五十一年が一万七千二百九十九件、昭和五十二年が一万五千二十四件……。
  149. 多田省吾

    ○多田省吾君 それはわかった、その次です。
  150. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) それぞれの占める比率は三・八、三・七、三・四でございます。
  151. 多田省吾

    ○多田省吾君 その次おっしゃった死亡事故の方です。昭和五十年が一万九件、九・九%、昭和五十一年が一万五十三件、一一・五%とおっしゃっているでしょう、違うんですか、千ですか。
  152. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 千五十三件でございます。大変失礼いたしました。
  153. 多田省吾

    ○多田省吾君 千九件、千五十三件ですね。
  154. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) さようでございます。
  155. 多田省吾

    ○多田省吾君 一万とおっしゃったからね。
  156. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 大変申しわけございません、失礼いたしました。
  157. 多田省吾

    ○多田省吾君 交通事故の死亡事故は、飲酒によるものは原因の中でどういう順位を占めておりますか。
  158. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) スピード、わき見運転に次ぎまして第三位でございます。
  159. 多田省吾

    ○多田省吾君 飲酒による交通事故、死亡事故が第三位の原因になっているということはこれは大変なことだと思いますが、警察庁としてはこの飲酒運転の撲滅、あるいは事故防止についてどういう対策をとっておられますか。
  160. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 飲酒運転を防止いたします対策はいろいろあろうかと思いますけれども、まず強力な取り締まりが必要であろうということで、取り締まりの最重点にこれを掲げまして、強力な検挙活動を行っておるわけでございまして、ちなみに、昨年、昭和五十二年中には約三十六万四千件の飲酒運転の検挙をいたしております。なお、この検挙によりますほか、酒と車を切り離すという意味で、一般的に酒を飲んだら車を運転しないという社会的な気風を醸成をすることが大変必要であろうということから、各種の指導を徹底することといたしておるわけでございますけれども、具体的には風俗営業やドライブインその他の酒類の提供業者に対する運転者への酒類提供の自主規制を促進するような施策、あるいは駐車場経営者等に対しましては飲酒した者、または飲酒しようとする者への飲酒運転防止のための働きかけをしていただくようにお願いをする。あるいは関係機関の団体等と連携をいたしまして、飲食店街等に対する飲酒運転防止のための啓蒙指導活動、あるいは夜間のパトロール、こういうふうなことも実施をいたしておりますし、また各種の運転者講習、あるいは安全運転管理者の講習、あるいは座談会等におきまして飲酒運転防止のための啓蒙指導を徹底をしておるのが実情でございます。
  161. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、一ころよりは最近はよくなったとは思いますけれども、飲酒運転防止のために高速道路やあるいは国道など、周辺のドライブインあるいは飲食店の酒類の販売状況、これは現在どうなっておりますか。
  162. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 高速道路のサービスエリアやパーキングエリアには食堂や売店が設けられておりまして、それぞれ営業をいたしておるわけでございますけれども日本道路公団の附帯施設管理規程によりまして、営業内容から酒類の販売等、そういうものが除かれておるということでございまして、高速道路におきましては一切酒類の販売ができないことになっておるというふうに承知をいたしております。  なお、国道を初め一般道路につきましては、このような規制が行われておらないわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、これらの業者につきましても、警察といたしましては運転しようとする者に対して酒を売らないという指導を徹底をいたしておるわけでございます。そういう指導を徹底しておるわけでございます。
  163. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま高速道路においては酒類の販売は禁止しているということをおっしゃいましたけれども、もし売っている場合はどうなさるのですか。
  164. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 高速道路のサービスエリア等につきまして酒を売らないというのは、道路公団とその施設を設置する方々の契約内容によって取り決められておるものでございます。したがいまして、そこで酒を売った場合に、この管理規程の違反として処罰というふうなことは出てまいらないわけでございますけれども、これらサービスエリアの食堂等を含めまして、一般酒類販売業者あるいは各種の飲食店等が運転をする者に酒を売ると、それが刑法上の教唆もしくは幇助に当たるというふうな場合には、これを検挙してまいっております。
  165. 多田省吾

    ○多田省吾君 こういう国道あるいは一般道路におきましても、ドライブインあるいは飲食店等においては飲酒運転に非常につながりやすいわけでございますから、酒類の販売は時間的制限をして、夜間はやめるというような方向でいかなければならないと私は思いますけれども、また先ほどは自動販売機の販売につきましても、昭和五十年の四月から午後十一時より午前五時までは自粛するように小売業界に指導しているということでございますけれども、地域によっては全然徹底してないところもあるわけです。その自動販売機の問題も含めて、どのようにそれを注意しようとしているのか、大蔵省と警察庁にそれぞれお伺いしたいと思います。
  166. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 自動販売機によります酒類の販売につきましては、先ほど申し上げましたように、四十八年から自動販売機だけによる酒の小売免許はおろさないという方針で臨んでおりますが、既存の小売店が店頭に設置するものについては、そこまではなかなか行き届かないというのが実情でございます。まあしかし、私どもといたしましても未成年者の問題あるいは飲酒運転の問題ということは節度が必要だということで、夜間の販売を自粛するように小売の業界を指導してきておるわけでございます。中央会の方といたしましても、先ほどちょっと、るる御説明申し上げましたが、五十年四月からこれを受けまして実施しております。私ども昨年十一月、さらに全国の中央会の方に対しまして、組合員に夜間販売の自粛を徹底してほしいということを要請しておるわけでございます。  沿革的に申し上げますと、四十六年の六月から未成年者の飲酒防止対策を図るような指導を始めまして、四十六年には販売責任者を決めまして、そういう飲酒未成年者とか飲酒運転の防止のステッカーを張らせるといったようなこと、あるいは管理について一般消費者の方、あるいは飲酒運転するんじゃないかというような批判を受けないような指導をするというようなことを免許業者に対してやっております。これが四十八年にやっております。それから四十八年の七月には、さらに当分の間酒類の販売免許を自動販売機によるものについては与えないということをやっております。さらに五十年の十一月には管理責任者を明らかにするステッカーを張らせるというようなことをやっております。五十一年、五十二年、まあ最近頻繁にそういうような指導を徹底いたしまして、現在かなりの程度までそういうような夜間におきます自動販売機の酒の販売というのは自粛されるというような状況になっていると私どもは判断しておるわけでございます。
  167. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 自動販売機の問題につきましては、未成年者や逆転者が何のチェックも受けずに自由に酒を購入するというふうなことになりますと好ましくない問題が出てまいるわけでございまして、そういう意味では、警察庁といたしまして国税庁の方にもいろいろと適切な措置をお願いをいたしておるわけでございまして、ただいま御説明がございましたように、業界の自主規制その他が行われておるわけでございます。警察といたしましても、実際の現場で好ましくない酒の売り方がされないように十分指導を徹底してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  168. 多田省吾

    ○多田省吾君 自動販売機の夜間販売を自粛するような指導をしているとおっしゃいますけれども、具体的にはあれですか、お店にその自動販売機をしまうとか、あるいは表に出したままかぎをかけるとか、いろいろやり方はあると思うんですが、具体的にはどう指導しておられるんですか。
  169. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 自動的に時間が参りますとタイマーで切れるようになっております。
  170. 多田省吾

    ○多田省吾君 その場合に、その自動販売機には何時から何時までというような表示がしてあるのか、あるいはタイマーで切れるようになるといっても、それが果たして完全に夜間販売自粛につながっているのかどうか、その辺はどうですか。
  171. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) その辺になりますと、私どもも具体的には何と申しますか、十一時から五時までは売りませんというような表示まではしてないと思いますが、実際に売られてない状況を見ますと、八割五分ぐらいの数字が、サンプルでございますが出ております。  それから、自動上販売機の普及台数も現在十四万台ほどございますが、そういう意味におきまして、相当私どもとしてはできるだけのこともやっておりますし、行政指導としてはここまで再三にわたり指導しておるということもひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  172. 多田省吾

    ○多田省吾君 警察庁においては、そういうドライブインとかあるいは自動販売機とか、そういうところにおける夜間の酒類販売の自粛とか禁止とか、そういった指導によって、今後飲酒逆転による事故あるいは死亡事故というものを減少させていくと、またそういう事故を絶対起こさないようにするという、必ず減らしていけるんだという確信がおありなのかどうか、また目標をどのように掲げておられるのか。もう一回ひとつお聞きしたいと思います。
  173. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 夜間ドライブイン等で酒が売られる、あるいは自動販売機で売られるということは、どうしても飲酒逆転を醸し出しやすい雰囲気になることは事実であろうかと、こういうふうに考えておりますけれども、ドライブイン等の場合にいたしましても、その売店で酒をお買いになる人は必ずしも運転者だけには限らない。たとえば観光バスに乗っておるお客さんみたいな問題もあるわけでございますし、そういうふうなことも考えあわせますとなかなかむずかしい問題ではあろうと思いますけれども、何はともかく運転をする人は酒を飲まない、またそういう人には売らないということが大変必要なことでございますので、今後ともそういう面での指導を強力に推し進めてまいりたいと。また、その指導を推し進めれば飲酒運転の事故数というものもまだ減らすことができるであろうと、こういうふうに考えております。
  174. 多田省吾

    ○多田省吾君 去年あたりは少し飲酒運転による死亡事故等は減少しているようでございますが、まだまだやはり死亡事故の第三位を占めているということにおいては根本的な効果が私は上がっていない、このように思います。数年前もこの大蔵委員会等で、運転者には絶対ドライブイン等で売らないように強く規制すべきだとか、またアルコールの入らないビールに似た飲料というものを売り始めたところでございまして、そういった効果も期待したんですが、現在はそういうものはほとんどなくなっておりますし、やはりせんずるところは交通事故あるいは死亡事故等を防止するという警察当局の強い意欲と指導と適切な方法による以外に私はそれを減少させる道はない、このように思いますので、ひとつ五十三年度は飲酒運転による死亡事故、特にドライブインや自動販売機等が原因になっているというような事故は絶対なくすんだと、こういうはっきりした効果を私はあらわしていただきたい、このように最後に警察当局にお願いいたします。いかがですか。
  175. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) 警察といたしましても、いま先生御指摘のとおり、大変飲酒運転事故というものは悲惨な事故でもございますし、また非常に重大事故になるわけでございますので、取り締まりの面におきましても各種の指導の面におきましても、警察の最重点としてとらえまして大きな努力を今後とも続けてまいりたいと、かように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  176. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、私はこの酒税増税というものは大衆課税でございますので強く反対しているわけでございますが、不公平税制の是正あるいは歳出の節減合理化、そういったものを徹底的にやらないで酒税増税に踏み切ったということは非常に私は遺憾だと思います。  不公平税制の問題等で言いますと、アメリカ等でも今年の一月二十一日に、カーター大統領がアメリカの不公平税制の改革に取り組んだと。アメリカの税制というのは人類の恥辱だとまで言って、所得減税を中心に約二百五十億ドルの純減税案を提出すると同時に、企業課税というものを非常に強化しているわけですね。報道によりますと、たとえば銀行の貸し倒れ防止、あのような資金におきましても、もう実績主義をとっていくようにというような法案を出しているわけです。もちろん産業界あるいは議会等でも反対する向きもあるようでございますが、詳しく申しますと、まず交際費課税を非常に強化している、それから金融機関関係税といたしまして、銀行の貸し倒れ引当金を無税枠というものを改めて損害発生に伴う実績主義をとると、こういうような改革案を提出しているようでございます。  私は、本会議でも質問いたしましたように、まだまだわが国にはこういう不公平税制というものが、法人税法の中においてもあるいは租税特別措置法の中においても温存されていると、こういう点から見て、私は酒税増税に踏み切る前にどうしてもこの不公平税制の是正というものを強く実行していくべきではないか、このように思いますが、大蔵大臣いかがでございますか。
  177. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 一般負担増加を求めざるを得ないという状況のもとで、不公平税制といわれるものについてその是正に努めなくてはならないということは、考え方としておっしゃるとおりだと思いまして、そのゆえにこそ、すでに五十年八月に税制調査会にその件を包括的に審議していただくようにお願いをいたしまして、五十一年度の答申に詳細な答申をいただいております。私どもそれを受けまして五十一年度、五十二年度、五十三年度、三年度にわたりましていわゆる企業関係特別措置の縮減合理化に精いっぱい努力してきたつもりでございまして、アメリカよりもはるかに早くからやっておると私としては考えております。  ただ、社会保険診療報酬課税の特例がいまだに是正されていないという点については、少なくとも私の立場から申せばまことに遺憾であると思いますけれども、これも現在の制度は五十二年度限りとするということを自民党の方で決めておられる、その動きを見ながら私どもとしても適切な方法を研究してまいりたいと思っております。  また、利子・配当課税の総合課税化につきましては、五十五年末に現在の特例の期限が切れますので、そこを努力目標として、現実に総合課税ができるために何が必要かということにつきまして、再々お答えしておりますように、具体的な勉強をいま部内で進めているわけでございます。  なお、交際費保税は日本は累年強化してきております。その点も御評価いただきたいと思います。
  178. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、まだまだ不公平税制というものは是正すべき余地がある、このように思うわけでございます。きのう質問した不公平税制内容につきましても、私は早急にまだ行う余地がかるのじゃないか、このように思います。  また、二月には東京都で企業税制調査報告書というものを発表したわけでございます。法人の実質税率をこの数年間ずっと発表しているわけでございますが、若干それは、国が持っているほどの資料がございませんので前提が少し違うかもしれませんけれども、私はおおよそにおいては違わないと思っております。数年前、高木主税局長時代も、政府自体の大ざっぱな実質税率というものが本委員会にも提出をされましたけれども、その傾向を見ましても、どうも逆累進傾向があるんじゃないか、まだ消えていないんじゃないかということでございます。法人税率二八%適用の中小零細企業の実質税率と、もう資本金が百億円以上というような大企業の、すなわち法人税率が四〇%の大企業の法人三税の実質税率というものを見ますと、実効税率においてははっきり差があるのに実質税率というものになりますとどうも逆累進的傾向もあるし、またほとんど同じレベルだというような姿があるわけです。本当ならば中小零細企業の方が法人税率から見ましても一二%ほど低くてもいいはずなのに、特に大企業であればあるほど法人税中にあるところの法人税法上のいろいろな優遇措置あるいは租税特別措置法の中のいろいろな優遇措置、そういったものによって実質税率というものが非常に低く抑えられている、そういう傾向は私はまだまだ変わっていないと思うのです。そういった点から見て、私はまだまだ法人税法の中に、また租税特別措置の方に改めていかなければならない不公平税制の是正というものがあるわけだ、このように思います。ですから、いままで少しずつやってきたということじゃなくて、これからももっともっと不公平税制の是正というものをやっていくんだ、そういう決意がなければ私はどうしても納得できません。大蔵大臣いかがですか。
  179. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 東京都の計算を御引用になりましたが、東京都の計算は政府税制調査会にも御披露して御議論をいただいております。計算の仕方で一番大きな差は、政府税制調査会で本来保税所持の計算上合理的なものとして整理されております各種の引当金を全部優遇税制という前提で計算をしておられるという点が一番大きな相違でございまして、それはやはりいわゆる不公平税制を是正するというときには何が不公平税制であるかということをきっちりと議論をしてかからないと問題が混乱するということで、先ほど申し上げましたように、五十年八月にそこから入っていっていただいたわけでございまして、したがって、そこは立場が全く違うということはぜひ申し上げておかなくてはならないと思います。したがって、私どもの感覚からしますと、東京都の計算はきわめて誇大に表示されておるというふうに申し上げざるを得ないと思います。税制調査会でも、東京都の計算を論議の基礎とするのは適当でないという答申をいただいておりますので、その点だけはぜひ御理解をいただきたいと思います。
  180. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま引当金の話が出ましたが、もう一つ言っておきますと、私もあの東京都のを知っておりますが、いわゆる法人と個人の二毛課税排除の方式があるわけでございまして、これは世界の税制でもほとんど二重課税の排除は、やり方は別としましてやっているわけでございますが、あれがやはり優遇税制だとこういう立場で計算しているように思うのでございます。この点も大きく違う点であろうと思います。いずれにいたしましても、御趣旨は全く同様でございまして、一般的な負担の増を求める前に、国民から見てどうもおかしい、またそれぞれの専門家が見てもどうしてもおかしいというものについては漸次縮減していくつもりでございます。その点では御趣旨は全く同じでございます。ただ、先ほども政府委員からも申しましたように、これから、一つには利子・配当の総合というようなもの、これも不公平と言えば所得税法本法から言えば不公平でございますが、これを直すための実効ある方法をとるにはかなりの時間が要るわけでございます。それができるまでは一切の負担増ができない、こういうことになりますとこれはまた少し現実離れすると思いますので、それはそれとして、やはり国の財政健全化を図る必要がございますので負担増加を求めなくちゃならぬ場合があるということだけひとつ御理解賜りたいと思うのでございます。
  181. 多田省吾

    ○多田省吾君 主税局長は相変わらず引当金等は優遇税制じゃないとこのようにおっしゃっておられるわけでございますが、国民感情から見れば、法人税法の適用によって結局課税が大企業ほど繰り延べになっているのだと、そして実際に税金を払っている額というものは中小零細企業とほとんど大企業が変わらないような、むしろ少ないような税金しか払っていないのだということははっきりしているわけですよ。これは昭和四十七、八年当時、高木主税局長時代に大蔵省からはっきり政府の出した計算が出ているじゃありませんか。それによってももう中小零細企業の、実効税率じゃなくて実質税率ですよ、実際に税金を払ったパーセントとそれから大企業の払っているパーセント、ほとんど並んでいるじゃありませんか。そういったところから見て、中小零細企業というのは、いろいろ引当金の制度があっても実際にそれを適用していないしまた適用できないような仕組みなんですよ、大企業ほどそれを利用できるんですよ。ですから、昭和五十年度のように不況がずうっと強まれば、大企業もそういう余裕がありませんから、実質税率というのは昭和四十九年、四十八年と比べれば少し高くなっているでしょう。だけれども、好況のときはそういう金を全部引当金に充ててしまって、実際に税金を払っている分が少ないと、そういう結果がはっきり出ているじゃありませんか。私たちは、それは大蔵省の言う優遇税制じゃないかもしれませんけれども、結局課税が繰り延べになるというようなことで、なぜその適用率を二分の一なり三分の一に下げれば税金として徴収できる分を引当金という名目で課税繰り延べにしておくのかと、そういう疑問がどうしても残りますよ、これは。それを企業会計上優遇税制じゃないからというような理由でそのまま、適用率を高く上げたままで放置しておくということは私は許されないと、このように思います。その点はいかがですか。
  182. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 大蔵省が会社標本調査結果という資料を用いましておっしゃいます実質税率というものを算定するということをここ数年来試みてきておりまして、一瀞最近のものとしましては、五十一年度分をすでに資料として御提出してあると思います。その結果を見ますと、資本金一億円以下は三六・六%、資本金百億円以上は三八・四%ということになっております。これは、もっとうんとこの差を持つべきだという角度からごらんになると差が小さ過ぎるということになるのかもしれませんが、その問題はまたひとつ基本的な議論に戻ってしまうかと思います。というのは、法人税に累進税率を採用することが適当かどうかという問題になってしまう。私どもとしては、中小企業のために特別に政策的に七百万円までは軽減税率を適用するということの結果はここに出ておるというふうに理解いたしております。  次に引当金でございますが、引当金は制度としては優遇のためにできたものでないという立場は私どもはがんこに主張したいと思います。しかし、その繰入率が適当であるかどうかということはそれはもちろん吟味をしなくてはならない、そのために引当金ごとにその都度私どもも詳細にながめているわけでございますが、一番大きな引当金でございます退職給与引当金について、この引当率を縮減すべき理由が私どもには見出せません。その意味で手をつけておりません。貸し倒れ引当金は、御承知のように千分の十五から千分の五まで段階を近って切り下げてきております、金融機関の。金融機関の現状から見ますと、私は当面千分の五を存続した方がいいのではないかというふうに考えております。最近の幾つかの例を申し上げるまでもございません。したがいまして、その辺は実情に即しながら法定の率を見直すということはもちろんいたしますけれども、まことにお言葉を返して恐縮ですが、引当金そのものが法人の負担をゆがめているというふうには私にはどうしても思えませんので、その点だけは申し上げておきます。
  183. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、政府昭和五十一年に実質税率を資本金別に発表したとおっしゃっていますけれども、前から指摘しているように、東京都のように細かい分類じゃなくて、一億円以下とか百億円以上とか三つか四つの分類だけじゃありませんか。それをやはり五百万円以下とかまた一千万円以下とか、そういう中小零細企業を含めた細かな分類にしなければ私は意味がないと思うんです。それからもう一つは、貸し倒れ引当金にしましても、アメリカの大統領が提案した法案の中には、もう実積主義ということをアメリカでさえ打ち出しておるわけですよ。私は千分の五でもまだ多過ぎるんじゃないかと、このように思いますし、そのほか大蔵大臣のおっしゃった利子・配当選択課税というものをやはり総合課税に持っていくというようなそういった努力、こういった面で私は不公平税制の是正というものは本当に大蔵省がその気になればもっともっと実効あるものができるんじゃないかと、このように私は主張したいのでございます。  次に、酒税のことでちょっとお尋ねいたしますけれども、この酒税引き上げた姿を見ますと、昭和三十五年から四十年までの間に酒税を相当引き上げておりますね。それから四十五年、前に一度引上げた、それから久しく引き上げなかったのでございますけれども昭和五十一年の初めにやはり引き上げているわけです。そのように引き下げたときもあったし、引き上げもやはり五年とか六年という期間があったわけですが、今回はもうわずか二年後に引上げているということ、これはどうなのか。それから、昭和三十五年から四十年までに引き下げたのはどういう理由か。あるいは、今回は二年前と違っていま嫌煙権とかあるいは火事の第一の原因と言われるたばこ、これはそのままにして酒だけを引き上げているわけですね、これはどういう理由によるものか。この三点をまずお尋ねしておきたいと思います。
  184. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 三十七年度の改正は減税でございます。四十三年度の改正増税でございます。それから五十年度に御提案申し上げて、成立は延びましたが、それが増税でございました。  三十年度までのことを振り返ってみますと、やはり戦後にでき上がった税体系の中での負担をもう少し全体に軽減したいという思想が強く残っていたように思われます。三十七年から四十三年までの間に全体としての意識が変わってきた点が一つございます。それは、従量税制度というものは所得・物価水準が動くと自然に負担率が低下していく、これはやはりある時期を見て調整しないと、当時言われました言葉を思い出してみますと、意図せざる減税の結果になる、これはある期間を置いて負担率を見直して調整すべきであるということで調整的な法律上の増税という考え方が出てまいりました。それを受けた最初の改正が四十三年度改正であったと思います。五十年度改正は同じ考え方によりまして、前回改正以後、所得・物価水準が変わり価格が変わったために相当負担率が下がってきておるのでそれをある程度、全部ではございませんが、ある程度もとに戻すための調整をしたいというふうに御説明をしておったと思います、当時の主税局長は。  今回の増税はそういう意味での調整的増税ではございません。提案理由に申し上げましたように、これだけ厳しい財政事情のもとで、しかし一方では景気対策のために歳出はできる限りがんばらなくてはならない、両者矛盾する政策的な要請のもとで、景気対策を最優先しながら、しかし景気対策に矛盾しないと思われる範囲内ではできる限りの増収努力を重ねておかないと、将来における財政危機の構造が一層深刻になるということは何とか御理解をいただきたい、そのために今回のは調整的増税ではなくてあえて実質的増税を、前回改正のときの考え方と比べまして実質的な増税をお願いいたしたい、そういう趣旨でございます。  それから、たばこを取り上げなかったということにつきましては、私からお答えする限りではないかもしれませんが、専売監理官がたまたまおりませんのでかわってお答えいたしますと、やはり現在公共企業体の経営問題というものが非常に大きな問題として審議の途中である。その結論いかんによっては従来から言われておりました消費制度、たばこに対する消費制度というものの見方があるいは考え方が変わるかもしれない、したがって五十三年度はたばこの問題は取り上げないことにしよう、財政的に専売公社から支援を求めるというのは別の方式でやろうという結論になりまして、その別の方式につきましては、後何日かいたしますと法案としてこの委員会でも御審議を願うことになろうと思います。
  185. 多田省吾

    ○多田省吾君 国税全体または間接税に占めるところの酒税の税収ウエートというものが、昭和三十五年はまだ減税前でございましたので、国税に対しては一三・八%、間接税に対しては三〇・二%、非常に高かったわけでございますが、昭和五十三年度はそれが国税に対して六・三%、間接税に対して二〇・二%と相当減っているわけです。今後酒税のあり方というものを大蔵省はどのようにこういった超勢から見て考えておられるんですか。
  186. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 税収のウエートは、ただいまお示しになりましたとおりの動きをしております。ただ、酒税というものが税全体の中でどういう地位を占めるのが適当かということは、やはり第一には酒に対してどの程度負担をお願いするかということから入っていくものではなかろうかと思います。と申しますのは、三十五年から五十年、五十一年にかけてかなりのスピードで酒税のウエートが減っておりますのは、やはりその間に高度成長があり、企業収益がふえ、法人税がふえたと。したがってウエートが変わったという要素も無視できないわけでございまして、国税に対するウエートというものを固定的に考えるということは必ずしも適当ではないんではないか。やはり酒に対する負担として物を考えていく、その結果がウエートになってあらわれるというふうに考えるべきではないかと思っております。
  187. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵省は、このたびの酒税引き上げを行ってもいわゆる業界の便乗値上げというものは絶対許さないんだと、まあこのようにおっしゃっておりますけれども、私は非常に心配でございます。たとえば税金の分だけ、これは業界では小売価格を上げるとは思いますけれども、大体、たとえばビールとかあるいは清酒の特級なんかは大蔵省はどの程度の値段をつけると思っていらっしゃるんですか。
  188. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先般来たびたび御説明申し上げておりますとおりでございますが、私ども、お酒というのは基本的に自由価格でございます。したがいまして、業界が自主的にいろんな値段をつけられるわけでございますが、私どもの指導といたしましては、先般来申し上げておりますように、増税分の値上げの範囲内、少なくとも、まあ多少取引単位がございまして、五円とかあるいは十円といったような形で取引されるのは現在の慣行でございますので、そういうものについても端数の範囲内でおさめてほしいということを推算しているわけでございます。一般的に申し上げまして、やはり幾ら自由価格といいましても間接税でございますので、転嫁はあくまでも予定しております。そういう意味におきましては、増税分がそのまま値上げにつながるということはやむを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  189. 多田省吾

    ○多田省吾君 増税分をそのまま価格に転嫁しますと、ビールなんかは二百十四円九十四銭となりますね。あるいは清酒は、自由価格だとおっしゃっても、特級ですと一・八リットルで二千九円九十八銭なんと、こう半端になるわけですけど、五円や十円はいたし方ないとおっしゃいますけれども、たとえばこのビール清酒の特級を考えますと、大体具体的にはどのようなことを見込まれているんですか。
  190. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) お答え申し上げます。  清酒の特級は、現在最も平均的なところで千九百円でございます。増税額はそれに対しまして百九円九十八銭ということになります。そうしますと、これを切り上げますと百十円ということになりますと、千九百円に百十円を足しますと二千十円というのが普通の値段になろうかと思うわけでございます。  それからビールの大びんで申し上げますと現在百九十五円、これが標準的な希望小売価格でございますが、これに対しまして増税額は十九円九十四銭、大びんの場合でございます。そういたしますと九十四銭というのは取引単位としてございますが事実上使われていないということで、二十円の切り上げということになりますと増税後の小売価格が二百十五円と、このような感じになればというようなことで私どもは指導してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  191. 多田省吾

    ○多田省吾君 ビールというものが、業界の値上げは昭和四十五年のときに十円値上げしています。それから三年たって昭和四十八年に二十円値上げしています。それから二年たって昭和五十年に二十円同じく値上げしております。私の記憶では、昭和四十五年当時の十円位上げのときは非常に国民から、世論から値上げ反対という声が強まりまして、この参議院の大蔵委員会におきましても、私ども質問に対しまして時の大蔵大臣は、十円の値上げは好ましくないと、何とか行政指導して値上げをやめさせたいというようなことで、相当長い期間十円の値上げがビール業界でできなかったと、そういう姿がはっきりあったわけですね。しかしこのように、いままでの実績が昭和四十五年から四十八年まで三年、四十八年から五十年まで二年、もう五十三年、また三年たっております。どうもこの機会ビールを値上げしようというような雰囲気があるんじゃないかということも心配されます。そうすると、ビール業界の値上げと酒税引き上げと両方で国民はダブルパンチを食うわけでございます。私はこのビール業界の値上げというものは、いま円高差益も麦の問題等で相当あるわけでございますから、絶対もう抑えるべきであると、このように思いますが、どうですか。
  192. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 確かに、おっしゃるとおり四十三年のときは七円の引き上げがございました。この時期には七円の引き上げにとどめております。大分たちましたが、時間的にどのくらいずれたかちょっと覚えておりませんが、それが三円乗せられまして十円になった事実はございます。しかし、その間には相当の期間がたっていたと思います。これはその間に合理化努力というものもございますが、やはりいろいろ原料事情とか、それからいろいろな時期における諸経費の増というものもございます。そういうことも含めまして、ある程度別の理由で上がっていったんではないかと思われるわけでございます。  ただ、あくまでも増税ということと、それからその時期におきます便乗的な値上げというものはこれは一緒に考えるべきではございませんし、筋としてそういうようなコストアップ要因があるからこの際に上げましょうというようなことに対しては、私どもはそこは違いますということを申し上げていかざるを得ないというふうに、それはまたそういうような見地に立ちまして今後も指導してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  193. 多田省吾

    ○多田省吾君 従量税と従価税の問題につきましては、大蔵大臣からも説明があったわけでございますが、私はこれは全部納得はできませんけれども、ECあるいは諸外国の関税障壁じゃないかというような非難もあるということで、従価税は対象外にしたわけでございますが、サントリーオールドなんかはもう従量税ということにして増税の対象にしているわけです。ですから、従価税対象の高級ウイスキーというものは増税すると批判されるということで、国産の手ごろなオールドだけを従量税に格下げして増税の対象にしたと、このように消費者から見ればどうしても思えるわけです。この辺の事情はどうなんですか。
  194. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 従価税につきまして今回改正提案していない事情は、当方からの御説明を繰り返して申し上げませんが、その結果として清酒もウイスキーもまたブランデーも特級グループの中に、負担引き上げゼロというものと二四・三というものと、それからその中間に人ってくるものと、清酒の場合は一七・五とゼロの中間というものが理屈としてどうしても出てこざるを得ない。その点は従価税を変えなかったことによるやむを得ない結果であるというふうにしか申し上げようがないわけでございます。具体的な銘柄としましては、いわゆるだるまだけではございませんで、通常スタンダードスコッチと言われておるようなものがその二四・三とゼロの間に入ってまいります。
  195. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから、私はビールの問題で若干質問をしておきたいと思いますが、初年度の酒税における増収見通し額千七百十億円と言われておりますが、そのお酒の種類別の内訳の増収見込みは大体どのようになっておるんですか。
  196. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 増収見込み額が初年度で千七百七十億円でございますが、種類別に区分してみますと、清酒で百六十億円、ビールで一千二百十億円、ウイスキーで三百八十億円、その他が二十億円という推計をいたしております。
  197. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから私は、初年度も平年度も大体ビールの分で七〇%近くの増税を図っているということになるわけです。大蔵大臣ビールというものは高級クラブ等でも置いているということから、外国と違って純然たる大衆品とは言えないんだと、こういうわかったようなわからないような御答弁をなさっておりましたけれども、私はやはり高級クラブにも確かにビールは置いておりますけれどもビールだけを目当てに飲みに行く人はほとんどいないわけでございまして、私はビールというのはいまや一般大衆の老若男女気やすく行ける場所で飲む、あるいは家庭で飲む飲料であって、国民感情からすればもう高級なものじゃなくて大衆品であると、このように常識的に見ても言わざるを得ないと思うんです。それなのにやはり今回の酒税引き上げによって七〇%近くの増税見込み額がこのビールから得られているということはどうしても納得できないわけです。一方においては、外国との関係で従価税を余り上げるわけにはいかないというような言いわけをなさっておりますけれども、さればといって、このような取りやすいところから取るということで、ビールだけの酒税引き上げによっても千二百十億円の初年度で増収見込みというのはどうしても納得いかない。あくまでもこれは大衆課税じゃないかと、このように思うわけですが、これはいかがでございますか。
  198. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ごく荒っぽく申しますと、量の方で大体六割ぐらいかビールだと、日本のお酒で飲まれているものの。それからお酒で負担していただいている税額の中で大体五割強がビールだと、そういう状態。で、そこに今回の増税をお願いするわけでございますが、全部同じ率で引き上げますと、大体そこは変わらないわけでございますけれども、今回は原料の特殊性、またメーカーが大部分中小企業であるというようなことで、清酒引き上げを、特に上げ幅を調整しましたものですから、結果として増収の中でのビールのウエートが高くなってしまったと、そのように御理解をいただきたいわけでございます。  それから、そもそもビールに対する税が高過ぎはせぬかということは、前回に増税をお願いしたときの当委員会でもずいぶん御議論があったというふうに私も聞いております。そのときに、やっっぱり水がわりに飲んでいる外国とは違うんでございますということも何度か申し上げているようでございますが、やはりそれぞれの国の事情で長年かかって負担が決まってきておりまして、結果としてそれなりの競争条件のもとで各種類が一生懸命努力をしておられるわけでございますので、いま現に存在している競争条件を余り大さく変えるということはまた別の意味で必ずしも適当でないんではないか。やはり現状から見ます限りは、ビールとウイスキーの負担率のアップというものは同じだということが、それぞれの業界に対して納得を求めるためにはやむを得ない行き方ではなかろうかと思います。結果として、清酒に特別な配慮をしたために増収の中でのウエートは高くなってしまった、そうお考えいただければ幸いでございます。
  199. 多田省吾

    ○多田省吾君 二年前の酒税引き上げのときには、まあビール製造年月日を入れるということで、これは実現したわけでございますけれども、また一方においてビールの成分の表示はどうなっているのかというような声もあるわけでございますけれども、これはどう考えてますか。
  200. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 御案内のように、清酒につきましては自主基準ということによりまして製造年月日及び原料の表示を行っております。一方また、その原料の表示につきましては酒団法上の表示義務はございませんわけでございますが、まあ業界が不当景品類及び不当表示防止法という法律の趣旨にかんがみて消費者の商品選択に役立つようにと、あるいは公正競争秩序を維持するために、その十条の規定に基づきまして公正競争規約を締結して表示する、あるいは全く任意に表示するというような事項であると考えられるわけでございます。まあビールの業界につきましては、すでに旬表示ということでやっておるわけでございますが、公正競争規約を締結いたしまして、原料等の表示をさらに実施しようということで現在規約の試案公正取引委員会に提出いたしましてその指導を受け、鋭意検討を進めているところでございます。
  201. 多田省吾

    ○多田省吾君 五月十七日にこの通常国会が会期末になるわけでございますけれども、その後ですぐにもう税調再開するというようなことが言われているわけです。どうも一般消費税の細かい検討が行われるのではないかというようなことが観測されているわけでございますけれども、私どもはこの一般消費税というものは逆進性が高く、また大衆課税になりますし、中小企業を苦しめるインフレにつながるものだということでずっと反対しているわけでございますけれども、私はこの前の税調の中間答申にいろいろ書いてありましたけれども、たとえば富裕税にしましても要検討である、あるいは法人事業税にしましても一般消費税とあわせて考えるんだと、こういうようなことで、一般の強い要求があるものに対しましては、全部この一般消費税と絡み合わせてその後で考えるというような姿でございます。私は、やはり不公平税制と言われているようなもの、あるいは富裕税とか法人事業税の外形課税の問題とか、こういったものは一般消費税と別個にして、やっぱりそういったものほど早く細かい検討をやるべきではないか、このように思いますけれども、これはいかがですか。
  202. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 具体的に税目を挙げて御質問になりましたんですが、富裕税につきましては税制調査会の中では、本当に公平に執行できるのかという点にかなり疑問をお持ちの委員が多いということは申し上げざるを得ないかと思います。しかし、だからだめだということではなくて、やはり仮に一般消費税のようなものが導入されるとすれば、それとの組み合わせで富裕税のようなものを考えるという考え方はあっていいではないかと、そのために本当に執行上公平にやれるのかということをもっと勉強しておきなさいよという段階にいまなっているわけでございます。  それから法人事業税におきます外形標準課税は、これはどうもまた多田委員にお言葉を返すことになってしまうのかもしれませんが、私どもはこれは消費者に転嫁する税としてしか考えられないわけでございます。法人企業が赤字でも負担するというのを利益に食い込んでというわけにまいらないわけでございまして、それはやはりコストに入って価格に転嫁さるべき税としてしか考えられない。そうであるとすれば法人事業税という形がいいのか、一般消費税の勉強が進むまで待って一緒に結論を出す方がいいのかと言えば、やはり後者にならざるを得ない、そういうふうに考えられておりますので、一括処理というふうに税制調査会は言っておられるわけでございます。
  203. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、大蔵省として考えておられる今度の税調の再開における審議内容というものはどのようにお考えでございますか。
  204. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) これはたびたび申し上げておりますように、まだ会長と御相談するゆとりがございませんものですから、事務当局としての私限りのいまの希望というふうにお聞き取りいただきたいんで、会長はもとより、実は大蔵大臣にも詳しく御報告をして御指示を受けていないという前提でお聞きいただきたいんですが、けさ矢田部委員にお答えいたしましたように、中期答申以後、その一般消費税に関してもう少し具体的な姿がわからないと突っ込んで賛成、反対を言うには余りに漠然としておるという御意見をかなり強く受けまして、それを受けて税制調査会でも税制調査会の五十三年度答申の中で、政府財政展望を示してくれれば、それを参考にしながら一般消費税についてもう少し具体的な案をなるべく早く税制調査会としてつくるということが言われておるわけです。したがって、その作業日程をどういうふうに設定いたしますか、なるべく早い時期に審議再開していただきまして、まず第一回目は国会における名種の御論議を詳細に御報告すると、それを受けて日程の自由討議をしていただく、その日程の中で事務当局からのお願いとしては、大臣会長のお許しを得ますれば、私の方から一般消費税についてもう少し具体的な試案なり素案というものを御論議願いたいというお願いをしてみたいなと思っているわけでございます。  その場合の審議の項目は、時間の関係でできるだけ簡潔に申し上げたいと思いますが、一つは、中小企業者を納税義務者からある程度除外したらどうかということが言われており、その場合には売上高基準が一番いいだろうと言われているわけですが、それは中期答申にそこまでは書いてございますが、それをさて具体的にどの辺に設定することにしようか、これが一つ大きなテーマであろうと思います。競争条件を撹乱することなしに、しかも零細小規模事業者にいたずらな事務負担を負わせることなしにという両方の要請を考えたらどこに線を引くのが一番いいのか、これが一つの重要な研究テーマでございます。  もう一つは課税対象から外すべきものの範囲、それをいまのところ漠然と基礎的食料品という表現が使ってあったと思いますが、これはお米は当然外れるでございましょう。それから先どこまで外すのかなと、加工食品というのはどう考えるのかなというようなことも試案なり素案のときにはある程度は具体的に出ていないと、やはりその試案なり素案を土台にして各方面の御意見をもう一度伺うというときには、ある程度はそこは具体的に決まっていた方が望ましいと思います。それも重要な検討課題。税率まで試案なり素案のときに決められるかというと、それはちょっとむずかしいかもしれません。  同時に考え方として、仮にどれぐらいの税率であればほかの税はどの程度の調整を必要とするかということがわかればある程度書いておいた方が問題を理解していただくためにはいいであろうと思います。  それから、さらには、仮にある程度税率で導入を考えるとした場合に、いわば周辺整備として何が必要かと、たとえば予想される税率で物価に対する影響がどの程度という推計ができるとすれば、それに応じて生活保護基準は当然引き上げるべきであろうなとか、それから非常に所得の低い階層の方の所得税を同時に考えるのか、いやそれは別だとするのかとか、そういう周辺整備の問題、それもある程度方向が出していただければ、問題を理解して賛否をいただくためには非常に役に立つのではないかと。しかし私がいま申し上げておることは、くどくて恐縮ですが、大臣にも会長にも御相談してないし、またある意味では非常に欲張ったことでございまして、二、三カ月という期間の間にどこまでやれるか、それはやってみないとわからない。本当に私限りの一種の希望であるということでお聞き取り願えれば幸いでございます。
  205. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、やはり一般消費税は各方面から強い反対がございますし、またインフレ懸念とか、あるいは中小企業対策とか、国民生活擁護とか、あるいは内需の拡大、こういったあらゆる面を考えますと、私は政府部内においても五十四年導入に対しては強い反対があるんじゃないか、このように私は考えております。むしろ私は、主税局長がいま個人的お考えとして申されましたけれども、個人的お考えで結構でございますから、われわれ野党が強く主張している不公平税制の是正という面について、私はより詳しく税調の再開に応じて審議してもらうのが政府のためにもよろしいのじゃないかと、このように思いますが、そちらの方のお考えはございませんか。
  206. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その点はすでに五十年八月から税制調査会審議をお願いしておりますし、各年度の改正に即しましてその都度また御答申をいただいているわけでございますので、いま始めることではないと思います。
  207. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、五十四年度における不公平税制の是正という点に関してはいつ税調に対して審議を求めるのですか。
  208. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 五十四年度改正を具体的に御審議願うというのは、恐らく秋以降になりましょう。時期的にはそういうことになろうと思います。
  209. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、税調は五月中旬ごろ再開されて、そしてもう一度秋以降において五十四年度の税制改正について諮問をし、また審議を願うと、そういうことになるわけですか。
  210. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 通常さようでございます、通常は夏はわりあいお休みになることが多くて、秋ごろに、まだ経済見通しができるかできないかというあたりから自由討議から入っていただく。昨年は中期答申を仕上げていただくために、非常に精力的に夏もやっていただきました。ことしの場合、こちらからのお願いは、また夏をつぶしていただかなくてはならないかもしれませんが、二、三カ月かけてひとつ一般消費税について残された問題を検討していただきたい。五十四年度に具体的にどういう税目で何を考えることになるかということはやはり秋、ある程度経済見通しのおぼろげな感じが出てくる、税収の感じもおぼろげに出てくる、財政をどう持っていくかというのもぼつぼつ考え始めるという時期以降になる。それは例年のとおりだと思います。
  211. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、私は酒税引き上げよりも先に、優先してやるべきことはあくまでも不公平税制の是正である。そしてそれは来年と言わず、私どもはこの五月中句から再開される見込みの税調でもよろしいから、やはり早急に不公平税制の是正の審議を強く求めて、そして早くこの不公平税制の是正ということはやるべきであると、このように思うわけです。  それからもう一点は、やはり政府は七%、あるいは経常収支六十億ドルの黒字にとどめるというような目標を掲げております。諸外国はみんなそれは約束だととっているように、これは重要な問題です。しかし、このような急騰する円高という実情から見ましても、この七%成長あるいは六十億ドルという問題は非常に私は困難だと思います。つい二、三日前も国民経済研究協会、あるいは山一証券、こういった民間調査機関の最も新しい研究データによっても、たとえ補正予算を、一兆ないし二兆円の補正予算を組んだとしてもせいぜい五・三%程度の成長率しか五十三年度は得られないだろう、あるいは経常収支の黒字についても百二十六億ドルの黒字にまた達するんじゃないかというような見通しを出しているわけですよ、現実に。これは一番最近の新しいデータによる発表ですよ。それをきのうの大蔵大臣の御答弁を伺っていても、補正予算はいま組む考えはないんだ、いまのままでも七%あるいは六十億ドルは可能なんだというようなことをおっしゃってますが、こんなことはだれも信用する人はおりません。私はやはり内需を拡大し、この経済危機を乗り切るためには補正を早く組んで、やはり内需拡大に向かって進むべきが本当ではないか、このように思います。この不公平税制の是正を早急にやるべきこと、それからもう一つはこの補正予算の問題、そして年金引き上げやあるいは所得減税、こういったものを行って国民生活を守り、この経済危機を乗り切るべきであるということを強く主張しますけれども、この二点についてのお考えをお開きいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  212. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 不公平税制の是正につきましては、結論におきましては私は多田委員と全く同感でございまして、そのために鋭意努力いたしているわけでございます。しかし、政策目的があるものにつきまして一概にいまの実情を無視して廃止すべきであるとは考えておりません。  それから、いわゆる不公平税制という内容につきましても、残念ながら多田委員と私たちの間に若干の見解の違いがあることは、残念でございますけれども認めざるを得ないのでございますが、しかし、結論的にわれわれは不公平税制というものにつきましてはできるだけ今後も是正の方向で全力を尽くしてまいりたい、このように思っておるのでございます。  それから経済の七%、経常黒字六十億ドルという問題でございます。これは初めからなかなか容易ならぬことではあるという認識は私たち持っておるのでございますが、不可能であるというふうには考えていないのでございます。しばしばこの点は申し上げておるのでございます。私たちは今度の予算が幸いにして成立いたしまして、公定歩合も史上最低になっているわけでございます。最近の指標を注意深く見ておりまして、また、いろんな調査機関のその後における見方を見ておりますと、漸次明るい方向に向かっておると、私はそのように沈んでいるわけでございます。したがいまして、私たちは今後この予算を所期の目的に沿いまして適正に、かつ迅速に、注意深く執行いたしますし、また金融面でもこれからいよいよ公定歩合の引き下げの効果があらわれるわけでございますので、それらを本当に忠実に着実に実行してまいりまして、そしてその後の状況を注意深く見守りたい。そして、必要に応じ適宜の措置が現在の予算の中でも盛られておるわけでございますので、できるだけ機を逸しないようにいたして果断の処置をとりたい、かように思っているわけでございます。したがいまして、現在のところ補正予算を組むということは残念ながら考えていないのでございます。
  213. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 まず、大蔵大臣質問をいたしますが、今日、酒類の業界の中で一番困難な問題を抱えているのは清酒の業界であるということはもう大方の一致をした見解だと思いますが、たとえば、自由競争といいながら、清酒の主要な原料である酒米は毎年引き上げられ、ウイスキーやビールに比較をして対等の競争条件が確立をしていない。したがってまた、こうした酒類の間での競争で清酒が長期にわたって後退をしている。このために清酒メーカーの半分以上が税引き前の利益が五十万円未満という状態でありますし、そのうちの半数以上が赤字企業ではないかということさえ観測をされておるという事態だと思います。  さらに、最近は清酒大手の売れ行きさえ伸び悩んで、一、二の大手の清酒会社の経営さえ重大化をしてきている。そのしわ寄せが、従来清酒の業界の骨格を形づくってきましたのは清酒の大手とおけ売り、こういう関係で形成をされてきたと思うのですけれども、勢いしわ寄せがおけ売り業者に集中をしていくという事態を生んでおると思うんであります。  そこで、前回のこの酒税法改正提案が出ました時期に、当時の大平大蔵大臣は、議事録によりますと、五十年六月二十四日のこの大蔵委員会の席上において、清酒業というのは大蔵省が直接所管をしておる数少ない産業の一つだ、大蔵省としては、また国全体としても大きな責任を持っておるんだというふうに答弁をされておるわけでありますが、以降、清酒業の実態というのは、さっきも簡単に触れましたように、一層悪化をしてきている、こういう現実の上に立って村山大蔵大臣はこの清酒業を、日本の民族の酒とも言うべきこの清酒業を育成保護をするという、この基本的見地についてまずお尋ねをしたいと思います。
  214. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 清酒業につきましては、いま佐藤委員が御指摘になりました幾つかの問題がございます。一つは、やはり原料米の関係から言いまして、ほかの種類と比べまして非常に不利な状況にあると。米が、食管制度関係がございまして年々やはり生産者価格が上がっているわけでございます。この点につきましては食管会計におきましてもかなりの努力をいたしまして、自主流通米に対して大体政府米の半額補助のやり方、去年からは政府米の一部を払い下げるというやり方、金倉も持ってやるとか、いろんな努力をいたしておるところでございます。そうしてまた、もう一つ事情がございますのは、やはり種類ごとの趣向が変わっていると申しますか、生活様式が、あるいは食べ物等との関係があるかもしれませんけれども、だんだん洋式な生活様式等がふえてまいりますと、どうしてもウイスキー類であるとかあるいはビール類だとか、こういった方面につい消費が伸びがちであることは数字をもってしても言えるわけでございます。  したがいまして、いま私たち日本古来の清酒をつくっている清酒業者に対しましては幾つかの助成をやっておるわけでございます。その一つは、先ほど申しました原料米に対する手当てでございます。それからもう一つは、今度の酒税法とあわせて出しておりますように、やはり近代化を進めていく、あるいは信用力、信用の補完制度をつけていく、こういう制度で何とかしてこの清酒業界の地盤沈下が来ないように一生懸命守り立てておるつもりでございます。  しかし、同時にまた他面におきまして清酒業界みずからの努力もお願いしているところでございまして、やはり生活様式が変わり需要が変わっていく、それに応じまして消費の態様に合わして努力をしてもらいたいということでございます。まあそのあらわれが、一つはワンカップになってみたり、あるいは冷酒になってみたり、さらには地場の酒、個性のある酒をつくっていくというようなことで、一生懸命業界の方も努力いたしているのでございます。  さらに、最近では流通問題といたしましていろんな、いままで木箱の問題がございまして、あれが問題になることがございますので……
  215. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ちょっと、基本的見解を聞いているんですから、そんなに長々やってもらわぬでいい。
  216. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) そういった意味で自助努力と、それから政府においてでき得る限りのいま助成をいたしておるところでございます。  もう一つつけ加えたいと思いますが、税制改正等におきまして税率の変更があるときには、当然そういう点もあわせて増税の場合には増税率を変更しておると。これも今度の酒税法改正でごらんのとおりでございます。
  217. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いま大臣、いろいろ答弁をいただいたわけですけれども、とにかくさまざまな措置を通じながら、単なるビール、ウイスキーとの自然競争にゆだねるということではなくて、積極的に民族の酒とも言うべき清酒を育成をするということでいろいろ努力をやっているんだという基本的見解として伺ったわけですけれども、そこで私は、社会党、公明党の委員も御指摘になりましたが、予算編成上仮に税収入の増加を必要とするという場合でも、まず第一に行うべき問題は、大企業を特権的に優遇をしているいわゆる不公平税制の是正、ここにこそ第一にそういう努力が求められるべきだということで、逆進的な大衆課税の最たるものとも言うべき今回の酒税値上げ、こういうことには求めるべきではないということを強く主張するんですが、この問題は次回の委員会で別途集中をしていろいろ質問をいたしたいと思いますので本日は省略をいたしまして、お尋ねしたいのは、五十三年度の税調答申でも、「当面の経済運営方向に背馳しない範囲で増収を図る」と、こういうふうに書いておると思うんでありますが、ここで言う経済という意味は、いわゆる重化学工業だけを指すものではない、酒造業も含めて日本経済が成り立っているわけでありますから、したがって、清酒業は衰退をしていってもいいんだという意味にはさらさらならないということは論を待たないと思うんであります。  そこで、さっきもお尋ねをしましたように、大臣清酒業の発展のためにいろいろ努力をするんだと言われていますが、もしも、今回の提案がこの委員会の審議を通して清酒業の苦境をかえって来たしてくるというようなことが明らかになった場合には、大臣はどうされますか。提案の手直しをやられますか。
  218. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 私たちは、今度の酒税法並びに安定法の一郎改正によりまして、日本酒をつくっている業者がほかのものに比べてより苦しくなるというようなことは考えていないのでございます。
  219. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、ただいまの答弁によりますと、清酒業が苦境に陥るということにはならないように改正案もよく考慮をしているし、また今後もそういう配慮を十分にやっていく決意なんだということで確認してよろしいですね。
  220. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 今度の酒税法とそれから安定法に関する限り、不利になるとは考えておりません。
  221. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 今回の提案に先立って、昭和四十四年から四十八年にさきの清酒業の関係の構造改善計画が実施をされてきたわけでありますけれども、今度のさらなる近代化計画、構造改善計画、これについては中小企業の近代化審議会大蔵部会、五十二年の四月の十一日だったと思いますが、そこで清酒業の近代化計面、数字を含めて構想が出されているわけですけれども、今後どれぐらいの清酒業の関係の転廃業を見込んでおるんですか。数字だけでいいです。
  222. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 転廃の数につきましては、清酒業安定法の改正につきましては四百社を見込んでおります。これは五十三年度から五十六年度まででございます。それから、第三次近代化計画中におきます転廃業者の数は二百三十七社ということになっております。  以上でございます。
  223. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 少しちょっと数字違うかと思うんですけれども計画では二百余、予上は四百、合併百が含まれますと五百と、こういうことになると思うんですけれども、私が恐れますのは、今度の法案並びに予算上の措置がばねになって転廃業を強制をするということになりはしないかという、その点はどうですか。
  224. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 確かに御指摘のとおり、転廃業の数が近代化計画によりますその数と、今度の安定法によります数とが違うことは事実でございます。これは一つはベースが違うという問題がございます。それから構造改善計画による二百三十七社というのは、業界が取りまとめましたものをもとにいたしまして近代化計画というのはできておりまして、やはりこの中には収益性が低くて年々業績が低下していくと、あるいは経営が相当困難になってきて経営継続が困難になってくると、あるいは後継者がいないといったような理由でおやめになっていく方もあるわけでございまして、したがいましてそういうような数字になっておるわけでございますが、このような構造改善計画ができましたときには、現在御審議をお願い申し上げております清酒業の安定法による給付金事業というものがまだなかった時代でございまして、こういう措置が構ぜられた場合には、やはり若干転廃業に踏み切るような企業が増加することになるのではないかと、なかなか決心がつかなかった方がおられる、そういうような方につきましては、従来は構造改善計画によりますれば転廃給付金が出ませんで、清酒の中央会から百万円ないし二百万円の見舞金出ておったにすぎないわけでございます。それがこのたびの安定法によりますと一社平均七百万、最高二千万円までの転廃給付金が出るということになりますれば、近代化計画によります構造改善計画期間中の転廃業者の数に比べまして、安定法によります転廃業者が若干ふえてくるであろうというような予想は考えられるわけでございます。  しかし、先般の御質疑のときにも申し上げましたわけでございますが、これはあくまでも、安定法自体清酒の中央会が自発的につくります近代化計画を一生懸命中小企業が集まってやっていこうというような動きの中でやっておられるわけでございまして、国といたしましてもこういうような業界の自主的な自動努力と申しますか、そういうような努力を側面的に援助していくというような趣旨でこのような御提案を申し上げておるわけでございまして、決して私どもはそういうような、強制的にどうのこうのというようなことは毛頭考えておりませんし、当然またその安定法で見込まれました転廃業者の数が、先ほども申し上げましたように、前回の安定法のときにおきましても計画よりもはるかに少ない数の転廃業者にすぎなかったという事実からも御理解いただけるように、決して私どもは強制するようなことはしておらないつもりでございます。
  225. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 四百という数字をてこに強制をするものではないということで理解をしておきます。  それでは問題を集めて、この清酒業の非常に重要な位置を占めます原料米の問題について質問したいと思いますが、まず農林省にお聞きしますが、五十二年度は低温古米を出したということになっておりますけれども、新米とこの低温古米というのは酒づくりの上でどういう違いがあるのですか。
  226. 小野重和

    説明員(小野重和君) 低温古米と新米でございますが、これは主食の場合におきましては品質上差はないというふうに私ども考えておりますが、酒米につきましても同様ではないかというふうに私ども考えております。
  227. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 国税庁の見解はどうですか。
  228. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) これは私どもも専門家でございませんので、技術行の専門家から聴取した話でございますが、一概に古米と言いましても、米の貯蔵の温度によって米質がかなり違ってくると、お米というのはそのぐらい、酒米というのはお酒に非常にデリケートな影響を与えるということは事実のようでございます。やはり貯蔵温度による米質の差というのは酒の質に相当大きな影響をもたらすというふうに言われております。  そのうち常温貯蔵古米は品質が不安定でございまして、比較的な話でございますが、酒造に当たりましては新米よりやはり精白度を若干高めなければいけないとか、あるいはかすの割合を多くする必要があるとか、あるいは一定量の原米からできる酒の割合が少ないといったような問題があるようでございます。それから、一般的に新酒になったときに古米臭というものが往々にして発現いたしまして、異臭を発するという問題があるために商品価値が低下する場合があるという問題があるやに聞いております。ただ、低温貯蔵古米ということになりますと、いま申し上げました常温貯蔵古米の欠点を相当程度カバーしているということで、新米に近い状態であるというふうによく言われておりますが、若干の差がございまして、たとえば精成された清酒も新酒のときにおきましては古米臭は認められないけれども、たとえば味のなれが早い、専門語でそういうふうに言っておりますが、短期間の貯蔵で出荷できるというメリットも同時にあると。しかしながら、良質の低温貯蔵古米であっても……
  229. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 答弁短くしてください。
  230. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) であっても、夏場におきます熟成の速度が早いので、秋になると老熟といいますか、劣化しがちでございまして、やはり冷蔵設備のないような中小メーカーではなかなか古米の使用を希望しないというような傾向があるやに聞いております。
  231. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 国税庁の方の詳しい見解を聞いたんですけれども、私は農林省の方もこの問題はよく見解の統一をしてやってもらいたいと思うのですよ。  いずれにしても、私も出身が京都ですし、京都は伏見の酒どころもあって、いろいろ知り合いもたくさんありますけれども、新米の方がいいのだということはこれは業界の常識で、現に国が醸造試験所ですか、ああいうものまでつくって古米をどうするかというわざわざ研究をやらなければならぬというのは、新米の方がいいからということでああいう研究をやっているわけでしょう。だからその点をひとつはっきりしてもらいたいと思うのです。  そこで、この業界が熱望しておるいいお酒をつくるためには新米が何とかひとつほしいという、こういう強い要望に対して、それに積極的に清酒業を育成保護するという基本的見地から、国税庁あるいは農林省どういうふうにお考えですか。
  232. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生御指摘のように、酒の原料米としては新米が望ましいということは私どもも承知しておるわけでございますが、食管制度といいますか、主食用のお米にも古米がまざっているといったような問題もございまして、そういうようなバランスの問題もございまして、政府米として新米の払い下げを全量受けるというところまでには至っていないことは事実でございます。もちろん自主流通米というのは全部新米でございまして、これは当然のことでございますが、政府米については低温古米が一部入ってくるということになっておるわけでございます。  この問題につきましては、業界の方でもぜひ新米をなるべく安くということは前からそういう要望もございますし、私どもも産業所管官庁といたしましてそういう立場で関係の御当局とも協議いたしまして、できるだけそういうような方向でお願いをしてまいりたいというふうに思っております。
  233. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 農林省何か。
  234. 小野重和

    説明員(小野重和君) ただいま間税部長からもお話がありましたように、私ども酒米を供給する場合に主食用とのバランスということを考えざるを得ないと、こういうことでまあ低温古米を供給しているということでございますけれども、問題は、やはり品質に影響があるかどうかというところだと思います。その点を含めまして、今後十分にこの問題について検討いたしてまいりたいと、かように存じております。
  235. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いまの農林省の答弁は品質検討も含めて前向きに検討したいということですね。  それで、重ねてお尋ねをしますが、昨年の政府米の売り払いによる低温古米がどういうふうに消化されておるかというこの数字ですが、いわゆる六万トン計画が実際は四万五千トン、七五%しか消化をされていない。これは私も業界の代表者から聞きましたけれども、企業者数で言いますと、受配の予定対象二千七百十五社のうち完全辞退及び一部辞退含めて辞退者は千五百八十九、五八・六%、六割の者が完全一部含めて辞退をしているという現実にあるわけでありますし、それからさらに立ち入って調べてみますと、完全辞退者九百二十二社のうちおけ売り業者が七百十七、八四・三%、一部辞退者六百六十七のうちおけ売り四百四十九、六七・三%、これトータル総辞退者で見ますと千五百八十九社のうちおけ売り千二百二十六、七七・二%と、こういう形で、いわば零細経営経営が最も苦しいおけ売り業者が八割も占めている、こういう実態にあると思います。この事実違うと言うんだったら否定をしてもらったらいいと思うんです。細かい数字はともかく、おおよそこのことは御確認になるだろうというふうに思うんです。  それで、こういう現実の上に立って、やっぱり業界の皆さん方はいい酒をつくるために新米がぜひ欲しいというのが心からの熱望だと思うんです。ぜひともこの要望に沿う方向での、今後鋭意そういう方向で前向きに検討を行うということについて責任大臣大蔵大臣どうですか。
  236. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま農林省からお答えがありましたが、この問題はやはり清酒製造業界としましては大きな問題でございますので、積極的に取り組んで、何らかいい結論を出したいものだと、かように考えております。
  237. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 さらに、もう一つ別の毎度から申し上げたいと思うわけですけれども、いかに清酒業の関係ビール、ウイスキーとの対比において経営困難を強いられているかという問題として、いわゆる製造原価における原料費の比重とそれの歴年の上昇率ですね、これをとってみれば非常に明確だと思うんです。  たとえば、国税庁からいただいた資料ですけれども昭和四十四年に比べて五十二年何倍になっているかということですが、糖みつが一・三九倍、麦芽が一七〇倍、ホップが一・六四倍、それからウイスキーの原酒のモルト、これは七七%に下がっている。一方、清酒の原料になりますいわゆる米価ですね、これは二・〇一倍というこの数字が示しますように、原料原価という点で非常に圧迫が加わってきているということが明らかだと思うんであります。  そこで、いま大臣の御答弁で前向き方向で検討をしたいという御答弁いただいているわけでありますけれども、ぜひひとつ積極的に進めていただきたいということを重ねて主張をするんですが、国税庁長官が会長をなさってる中央酒類審議会というのがありますね。ここが一昨年報告を出されておりますが、その報告を見ますと、「原料米問題については、」「清酒は、製造原価面で原料米の比重が大きいこと、しかも、その価格が生産者米価の引上げに伴って、年々引上げられていることは、酒類間競争の面で重大な問題であることを指摘しておきたい。」と一面書きながら、「特に立入つた審議を行わなかった」という、こういう報告があります。ですから、お互いに頭の中の認識としてはこの問題が重大だというふうに考えながら、実際にその問題についてどういう国としての施薬を講ずるかという問題については積極的な議論をやろうとしない、こういう審議会の実態になっていると思うんです。  そこで、重ねて大臣にお願いをいたしたいんですけれども、中央酒類審議会、大蔵省の設置法に基づく審議会でありますし、ここでひとつ積極的に清酒業の保護育成の見地から原料米の問題をどうするか、いわゆる新米を原料米としての道を開く問題について、ひとつ関係者の方々集まって鋭意検討をやってもらうということも含めて、前向き検討をしていただくという点についてどうですか。
  238. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) もう先生御承知のとおり、中央酒類審議会は酒税法三十七条の規定に差づきまして、酒団法の規定によりまして権限に属せしめられた事項を調査審議することを役目としているわけでございますが、御案内のように、五十年十二月から五十一年十一月まで八回にわたりまして中央酒類審議会において清酒業界の当面する諸問題、これは非常に大きな問題でございますので、この現状と施薬の方向審議したことは事実でございます……
  239. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 長い説明いいです。こっちの聞いておることに短く答えてください。
  240. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) はい。  清酒業界に対する当面の対応についての報告を受けたわけでございますが、原料米価格をいかにすべきかという問題につきましては取り上げてございません。これは審議会の性格が独立の審議会でございますんで、私どもは憶測するわけでございますが、原料米価格の問題というのはこのような審議会の権限に属する問題ではないと判断したからではないかと考えておるわけでございます。  ただ私どもは、審議会がやるやらないという問題でなくて、やはり清酒用の原料米の価格の上昇というものは、国税庁としても非常に重要な問題であるということで認識しておりますので、コストの上昇を少しでも緩和するために種々の助成金をお願いするというような措置もやっておりますし、現実にまたそういうようなこともお願いしておるわけでございます。いま申し上げましたような、新米の問題という問題につきましては、審議会の問題として審議するという問題よりも、むしろ私ども国税庁と役所の間で協議していくべき問題ではないかと考えるわけでございます。
  241. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いまの答弁ですと、あえて審議会というところでの検討を必要とせず、政府が決断をすればできることということでありますから、さっきの前向き答弁に従ってひとつやってくださいよ。  それでは次に移りますが、清酒の品質、中でも特級酒にかかる問題について幾つ質問をいたしたいと思いますが、最近地酒の振興だとか、古来から伝統のある民族の酒ふるさとの味を守れとか、いろいろな言葉が言われておるわけでありますけれども、本当に特色のあるいい清酒をいい水といいお米でひとつつくっていくという方向を積極的に重視をしていく必要があると思うのですけれども、どうも私の見るところ、国税庁なり大蔵省の行政は、今日までは、これからはさっき前向きでやるというふうに言われましたから注目をしていますけれども、これまでのところはどうやって税金取り上げるかということが中心部分で、清酒の積極的育成、その品質向上に具体的な援助指導をやっていくという点がどうしても弱かったんではないかというふうに思うんでありますけれども、いわゆるちょっと初等的質問しますけれども、品質のすぐれた酒というのはどういう酒なんですか。
  242. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) ちょっと私も専門家でございませんので、品質がいい酒というのはどういうものかと言われますと、ちょっと一言ではお答えできないのでございますが、清酒の級別によればまあ品質優良なものというふうにいわれておるわけでございます。これはどういうものが優良かということにつきましては、やはり中央酒類審議会の委任を受けまして、中央酒類審議会のメンバーが、これは非常に学識経験者、お酒屋さんとかあるいは技術者とか、そういう人が集まりまして官能審査によって決めているわけでございます。中にはですから非常にお米をみがきまして真っ白にしてそういうものからつくるもの、あるいは吟醸香のするもの、あるいは特色のあるお酒、いろいろなものをつくっているわけでございますが、そういうものの全体として非常に品質のいいものというふうに、専門家が官能審査によりまして判定したものを優良な酒というふうに私ども考えておるわけでございます。
  243. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 その品質が優良であるお酒というのは、あれですね、この酒税法の施行令第十一条で、特級酒とは品質が優良なものだと、こう書いておるわけですから、おおむね常識的に酒の中では特級酒がいいんだということですね。  そこでその特級酒が、最近の傾向というのはだんだんと課税移出数量が低下をしてきているということで、五年間の推移を見ますと平均伸び率がマイナス三・七%になっている。この要因はどういうふうに考えていますか。
  244. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 特級酒だけが特に減っているという事情については、私ははっきりした原因を申し上げることはちょっとできないのでございますが、二級酒も同様に減っておりまして、逆に一級酒が非常に伸びております。恐らくそういうような関係ではなかろうかと思っておるわけでございます。
  245. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 特級酒は清酒の中では一番高価なお酒ですけれども、同じ高価だといってもウイスキーの特級ですね、これは上昇をしているわけですね。たとえばサントリーオールドについて見ますと、最近五年間の平均伸び率、それを課税移出数量で見た場合に二三・三%という伸びを示している。そういう点から言って、単に値段だけの問題ではないだろう。やはり品質の問題が一つの要するにおいしい酒という、そういう品質の問題というのが重要な要因として考えられるんではないかというふうに思うんですけれども、そこでこの清酒の特級の品質向上について、何か監督官庁としての具体的な指導方向はありますか。
  246. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 清酒の品質を少しでもよくするということにつきましては、もう私ども苦心しているわけでございますが、やはり清酒そのものがなぜ伸び悩んでおるかということをまず考えてみる必要があろうかと思います。やはり大臣が先ほど申されましたように、一つはなかなか需要が、そういう好みが変わってきたというようなことが大きな原因ではなかろうかと思います。生活の洋風化とか、そういうものに根ざしました基本的な需要の減退というのがあると思います。しかし清酒全体を通じて見ました場合には、清酒ぐらい非常にバラエティに富みまして何千種類もあって、しかも特色のあるお酒というものはないというふうに私は思います。そういう意味におきまして、地酒の育成といったような問題につきましても、私どもは一生懸命いま取り組んでおるわけでございまして、少しでも、地方にあっても特色のある酒として選ばれる、必ずしも大手の酒だけがいいお酒ではございません。地方にある埋もれたお酒で一生懸命技術をみがいてりっぱな酒をつくろうとしておられる方がたくさんおられるわけでございまして、そういう意味におきまして特色のある地酒の育成ということは、同時に中小メーカー対策にもなるわけでございますし、地域振興の観点から見ても非常に好ましいことであるということでございます。  技術的に申しますれば、鑑定官室が試験所の指示を受けまして、いろんな面で中小のメーカーと接触いたしまして、たとえば原料米の品質と酒質の研究とか原料水の浄化法とか、あるいは清酒にうま味とか芳香をつける酵母をどうしていくかとか、あるいは貴醸酒とか発泡清酒をどうしていくか、そういうような地方の指導、要請の強いものに対して技術的に立ち入った指導をしていくというのが現実でございます。
  247. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろの考え、指導の手を打っているんだというお話でありますが、これは過日の衆議院大蔵委員会でわが党の荒木議員も指摘をした問題でありますが、この洋酒のサントリーオールドやG&G、ロバートブラウン、こういうものの特級の増税率、これが結果的には今度の改正案の結果もたらすもの、これが清酒の特級の増税率より低くなってくるという、この点は私はさっきからるるやりとりをしているわけですけれども清酒の保護育成を図っていくという見地から見て私は妥当ではないんじゃないか、何らかの手直しが行われてしかるべきではないかというふうに思いますが、この点どうですか。
  248. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) どうしてそういう結果か生じてきたかということは、先ほど多田委員にお答えいたしましたので省略さしていただきますか、結果としてそういうことが起こったのはやむを得ないことということで、何とか関係の方々に御理解をいただきたいという性質の問題でございます。  なお、改正後の負担としますと、いまおっしゃったようなウイスキーで負担がリッター当たり千四百十三円、清酒特級では四百十円というふうなことになりますので、その競争力を非常に大きく阻害してしまうということにはならないのではないか。つまり清酒の中でもさっき申し上げたように一七・五とゼロということにならざるを得なかったわけでございまして、やはり特級の負担引き上げが一七・五であり、ウイスキーは二四.三であり、結果として負担率が累年で比較してどうなるかと申しますと、減税がありました最後の年の三十七年の改正後で見ますと、いまからちょっと申し上げますのでお書きとめいただければ幸いですが、清酒特級の小売価格に対する負担率は五〇・七、一級四二・八、二級三二・二でございます。ビールが五二・三、ウイスキー特級が五〇・七、一級が四〇・二、二級が三一・六でございます。それが今回御提案しております改正が幸いに実現しまして、また増税額がそのまま小売価格に反映されたという計算をしてみますと、いま申し上げた順番で、清酒特級は三六・七、一級は二六・五、二級は一四・三、ビールは四七・四、ウイスキー特級は五〇・九、一級が四三・一、二級が二六・〇というふうになるわけでございまして、やはり改正の積み重ねがあり、また今回の改正でも上げ幅調整をするというようなことで、全体の流れとしましては、清酒の特殊な事情というものを酒税法の上で十分受けとめてきているのではなかろうかと私どもとしては考えるわけでございます。
  249. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろ言われましたけれども、私はだからこそ冒頭大臣にちょっと基本的見地を特別にお尋ねをしておったわけですけれども、今次法案は清酒関係が相対的に犠牲をこうむるということにならないようにいろいろ配慮をしたのだというふうに言われておるのでありますから、ところが結果はそうなってないじゃないかということで一つの具体的な問題を提起をしているわけでありますし、私思うんですけれども、たとえば政令公布の段階でそこらの問題についてはいろいろ行政上の工夫をやるといったような余地も考えられるんじゃないかといったようなこともあろうかと思うんですけれども、この点についてはできるだけ早い形で改善、手直しをやるという問題をぜひ検討していただきたいというふうに思います。  それから、時間の関係でついでに清酒の特級にかかわる税制の問題でもう一つお尋ねをいたしますが、いわゆる特別税額帯というのがありますね。ここの部分は、結局税が要するに生産者の手取りには一文もならない、全部すぽっと吸い上げられるというこの問題も一つは影響しておると思うんです。そういう点で、これの改善について特別税額帯の幅を縮小するというこの問題についてぜひ検討してもらいたいというふうに思うんですが、以上二点どうですか。
  250. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ただいまのお尋ねは、率直に申し上げまして技術的に非常にむずかしい面を含んでおります。というのは、特例価格帯というのは佐藤委員よく御承知のように、従量税適用分と従価税適用分の間をつなぐ、そこがぎくっと段ができないようにつなぐという趣旨のものでございますから、その間に入ってしまうと価格が上がってもさっぱり手取りがふえないという点は、御指摘のとおり、従量従価を併用した結果どうしてもそういう価格帯が一つ出てきてしまう。これがウイスキー類の場合はわりあい狭いわけでございますが、なぜ狭いかというと、従価税率が高いので調整が早く終わるわけです。ですから、清酒特級の場合には従価税率がむしろ——失礼しました。従量税率です、従量税率。従価と申し上げましたが、従量です。従量税率がかなり上がっておりますと、価格帯はわりあい狭くて済むわけです。ですから非常にむずかしいことになりまして、価格帯の方からそこを狭くしてしまうというわけになかなかまいらない。そういう非常にむずかしい問題を含んでおるということを申し上げてお答えにしたいと思います。
  251. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 技術的にどうむずかしいのか私はよくわからぬのですけれども、いずれにしても清酒関係に犠牲がきているというここの部分をどう改善をするかという問題として、鋭意検討していただきたいと思います。  公取来ておられますか。もう時間ありませんので、質問の要点だけお尋ねをいたしますが、昨年の十月の当委員会でいわゆる表示問題ですね、酒類の表示問題、これについて私は提起をいたしまして、公取として鋭意指導上の努力をやりますと、そういう表示上の不統一が生まれておるということは芳しくないということで、その後いろいろ接触指導をやられて、ウイスキーの業界側の方から仮の案ぐらいは出てきておるらしいけれども、しかしまだ煮詰まっておらぬというふうに聞いておるのですけれども、端的に聞きますけれども、この表示問題の解決のためにいつまでに解決を図るのかということで、日限切った指導を行うということを公取としては考えておられるのかという問題が一つです。  それから、あと免許基準の問題でいろいろ御質問したいことがあるんですけれども、もう時間ありませんのであれですが、純粋小売業者の場合には三つほどの要件を軸にして税務署長が認可する。大スーパー、別に大きくなくてもスーパーとか百貨店とかこういうところに店を開く場合には、これは国税局長の判断になるということですけれども、その局長判断の水準が定かでないという問題が一つある。それと当該組合の意見を聞くというのですけれども、私がいろいろ近畿の関係の人たちなんかに聞いてみますと、非常に広い範囲の業界のごくトップの人だけの意見を形式的に聞くということで、そのスーパーの中にお店ができることによって実際に影響を受ける近隣の業者の方々の意見を十分聞くということに運営上なっていないわけです、せっかく国税庁長官の通達が早くから出されながら。ということで、ぜひスーパーなどの中に店を開くそれの認可をする場合には、実際に影響を受けるだろうというその近隣の方々の業者の意見を十分聞いていただくというひとつ行政上の留意をよくやっていただきたいという、以上質問いたします。
  252. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 時間の関係がありますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
  253. 土原陽美

    説明員(土原陽美君) いま先生からお話がございましたように、無品表示法に基づきます公正競争規約を検討するようにということで、洋酒業界、特にウイスキーにつきまして指導をやってきたところでございますが、昨年の暮れから業界におきまして従来技術者専門に、技術者が中心となりまして検討をやってきたものを営業者、営業担当者が中心となった会議で検討するというようなことで、現在規約の案をつくりつつあるというふうに聞いております。従来よりは一歩踏み出しているということで理解しておりまして、毎月二回程度会合を開きながらいろいろ問題を詰めておるという段階でございます。そういうようなことで、私どもとしてさらに強力に指導してまいりたいと思いますけれども、そう遠くないうちに何らかの案が私どもの方に出されるのを期待しているわけでございまして、時期を限るということは特に考えておりませんけれども、できるだけ早くまとまりますように、今後とも強力に指導していきたいと思います。
  254. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) いま御質問のございましたスーパーとか大型免許の問題でございますが、これは国税局長に判断させているわけでございますが、大型店舖というのは御説明するまでもなく非常に広範囲にわたって、お客さんの吸引力が非常に高いと、周辺の酒屋さんに対する影響力も大きいといったようなことで、税務署長になかなか判断できないという問題がございます。また、それから大型店の場合には既存の零細小売店に対する影響も非常に大きいというようなこともございまして、特別にこういうスーパーとか百貨店のような大型店については、免許については慎重に扱う必要があるということでございます。このために国税局長が引き取って判断をしているわけでございますが、地域によって実情が非常に違うということが実情でございまして、大型店だからといってまた必ずしも既存の小売店に大きな影響を与えていないというような場合もないわけではございません。  それからまた、販売業の免許制度酒税の保全が目的というようなことでありまして、直接的にはやはり零細企業の保護というような社会政策的な観点に立っていないので、やはり中小と大型店という免許基準をなかなか別にできないという問題がございまして、合理的な理由づけができないということでなかなか国税局長の基準というのはつくれないというような実情でございますが、とにかくいずれにいたしましても慎重な検討をした上で、影響度などを十分見た上で、私どもとしてはスーパーに対する免許を考えておるわけでございます。  それから、御質問にございました近隣の酒販店の意見を十分に聞いていくべきではないかという御質問でございますが、通達が三十二年に出まして、私どもとしては酒販組合に対して業界の意見を聞けということをその長官通達で流しております。その中におきまして当然影響を受けますのは近所の酒屋さんたちでございますんで、組合が必要に応じてその近隣の酒屋さんの意見を聞くというのは当然やっていることではないかというふうに私ども考えておる次第でございます。
  255. 野末陳平

    ○野末陳平君 大蔵大臣にお聞きしますけれども、ついこの間お酒の税金が上がったという感じがしているのにまた上げるのはどうも早いんじゃないかと思いますがね。それにしても、今回引き続き酒税引き上げをやるという理由はどんなところにあるんですか。
  256. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 再々申し上げておりますように、五十三年度の財政にとりましては非常にむずかしい課題を二つ背負わされた。一つは、当面の経済環境のもとで財政が正面に出て、できるだけ景気対策の主導役を務めなくてはならない、しかし同時に、五十年以降財政は非常に深刻な状況になっておりまして、やはり無気対策と矛盾しない範囲ではできる限りの増収努力をしないとその危機が一層深刻なものにならざるを得ない、将来における負担が一層大きなものにならざるを得ないという状況であるように考えまして、そのために歳出面におきましては景気対策のために全力投球をする、そのためにはあえて大量の国債発行も辞さない、しかし租税の面では、当面の経済政策全体としてまずまず許されるではないかという範囲では極力増収を図るべきではないか、有価証券取引税しかり、石油税しかり、租税特別措置法における企業関係特別措置の縮減しかりというように考えてまいりまして、やはりこの際は国を支えるための会費として、一般的に会費をふやしていただきたいとはなかなか申し上げにくい状況でございますけれども、お酒を飲んでいらっしゃる方々はひとつ若干会費をふやしていただけませんでしょうかというお願いをしたいというのがこの提案の趣旨でございます。
  257. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、その会費の中でなぜ酒がやり玉に上がったのかがよくわからないんで、ほかにもあるだろうと思うんですが。
  258. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その点は、やはり酒が致酔飲料であり特殊な嗜好品である、したがってあえてさらに申せば、名国いずれの状態を見ても財政物資として考えられる特殊な物資である。こういうように財政の収支改善を図ろうとするときには、欧州の各国の例を見ましても、ほとんど連年引き上げている国とかあるいは最近一、二年にわたって引き上げている国というのが多いわけでございまして、やはり全体の経済政策の中での整合性考えながら、どこに税収を求めるかといえば、どうしても有価証券と並んで酒が出てきたというふうに申し上げたらよろしいかと思います。
  259. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうすると、いま年々引き上げというような表現がありましたけれども、わが国の場合お酒の税金は、今回引き上げが仮に決まりますと、その後の問題も含めてお聞きするんですが、消費者に負担を求めるというのは大体どの程度が妥当であるかというようなことまで考えた上の引き上げかどうか、その辺なんですね。  まず、いまの現行の小売価格における税の負担率を消費者の立場で見ていると、まあいいとこへきているんだと思っているわけですよ。今度改正された負担率はいままでより上がるわけですね。さて、この先また上げ得る余地を考えながら今回この程度引き上げにとどめているのか。というのは、前回もいろんな議論があったけれども、ここでもう一回上げるということは、前回の上げ方が小幅だったということにもなるわけですね。そんなふうに考えますと、この後も酒というものは年々あるいは何回も引き上げの対象になっていく可能性のあるものなのかどうか。税務当局から見てどんなものですか。
  260. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 最初に連年引き上げていると申しましたのは、たとえばイギリスが七四年以降毎年引き上げております。七四年一〇%、七五年芋〇%、七六年一一%、七七年一〇%という引き上げをしております。それからフランスも、アルコール消費制度でございますが、この四年間ずうっとやっております。七四年一五%、七五年一六%、七六年一四%、七七年一〇%。ドイツもここ二年やっております。七六年一〇%、七七年一八%。先ほど抽象的に申し上げましたのはそういうことでございます。  今後の問題でございますが、御質問の中で小売価格に占める負担率がどの程度ならばいいのかという問題は、実はそれはアプリオリな何かの基準があるというものではないだろうと思います。やはり財政状況とそれからその時点における物価とかいろいろなことを全部考えてみて、そしてまた国際的な比較とか、過去の水準とかというものを考えて、その時点でここまでならがまんしていただけるのではないかという水準を探していくべきではないかと思います。  それから、前回の増税との関係でございますが、前回の増税は四十三年度以来、間に約六年はさまって五十年度でいわゆる従量税の、決していい言葉ではないかもしれませんが、意図せざる減税分を全部ではないけれども一部取り戻させていただきたいという御説明をしておったと思います。今回のは実質負担増加をお願いしておるというものでございます。  今後どういうことになるであろうかという点は、実質的に女川の増加を求めるかどうかというのは、それはやはり今後の財政事情により、また他の税目で負担増加が求め得るかどうかによって妥当な立論を見出すべきではないか。しかし、ある程度の期間を置きますとやはり従量税部分におきましてはそのおくれを取り戻すという意味での調整は、税の性格上必要になる時期は来るであろうと思います。しかし、そういう意味の調整的な税率改正というものは毎年毎年やるというようなものではないであろう、ある程度の期間を置いてまた必要があれば御審議をお願いするものであろうと考えております。
  261. 野末陳平

    ○野末陳平君 さっきお答えの中で、酒は特殊なものだというようなことちょっとありましたね。そうなると、今後、先ほどからも話題になりました一般消費税というものを検討しなければならぬという段階になった場合、このお酒の扱いはどういう位置づけになるんですか。これはぜいたく品とも言えない、大衆品とも——そちらに近いのか、いろいろそういう分け方が妥当かどうかわかりませんが、やはりこれは一般消費税考える場合には特別扱いの品だということですか。
  262. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 現に一般消費税を狩っております国の例を見ますと、やはり一般消費税一般消費税として酒の取引に対して課税され、別途酒に対して特別の負担を求める酒税なりアルコール税なりというものが併存しておると申し上げてよろしいかと思います。仮にわが国で一般消費税の導入が具体化されるということになりましても、やはりわが国の場合も両者が併存するということが予想されるのではないかと思います。ただ問題は、両者併存になった場合に、どちらかの税で一種の税率調整というようなことをやるのかやらないのかという問題は、今後の検討課題であろうと思います。
  263. 野末陳平

    ○野末陳平君 いま言ったような意味で、併存するものはほかにどんなものが考えられますか、現在いろんな品物ありますけれども
  264. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その点は、実は仮に導入されるとした場合の導入時点の一般消費税税率水準がどれぐらいであるかということによってかなり大きく結果が変わってくるのではなかろうかと思います。  現実の問題としましては、やはり一般消費税というものは、仮に導入されるとしますれば、物価に与える効果というものを無視できない性格のものでございますから、非常に大きな、ヨーロッパでやっているように標準税率が二けたであるというようなものがいきなり入ってくるというふうにはどうしても予想ができないわけで、したがって、その意味で言えばその導入時点で直ちに調整しなくてはならない税目、調整という意味はやめてしまうというような税目というのは実は余り多くないんではないか。ただ、残したままで税率調整をどの程度やることが必要かという問題になるのではなかろうか。そんな感じがしておりますが、しかし、これは税制調査会で十分議論を詰めていただかなくてはならない項目でございますので、いまお答えしておりますのは、私限りの漠たる感じという程度でお受け取りいただければ幸いです。
  265. 野末陳平

    ○野末陳平君 よく酒たばこと言いますが、たばこもやっぱり似たような扱いを受けると考えていいんですか。
  266. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 日本の場合、たばこは専売益金という特殊な制度のもとにあるという点を若干留保させていただきました上で、実質的に税であるとして考える場合には、やはり同じような位置づけになることの方が多い。ただ、専売がいまのまま残っておりますと、専売の取引に対して付加価値税を課税するのかしないのかということは、別の角度からの検討が必要になるかもしれないと感じております。
  267. 野末陳平

    ○野末陳平君 初めの方に戻りますけれども景気対策と矛盾しない範囲で増収を図らなきゃならぬと、これは当然だと思いますから、その意図はいいんですけれども、その場合に、ほかにいろいろあるだろうに酒をということで、余り賛成もできないんですがね。  ぼくは個人的に、いま酒税引き上げで平年度千九百何十億ですか、それを図るならば、たとえばギャンブル税みたいな方がもういい税だと思いますよ、支持される税といいますかね。だからそんな意味で、これを比較するわけじゃありませんが、たとえばこのギャンブル税なんというのはどうして、構想が幾らかあったにもかかわらず断念したのか。そして酒税をそのかわり選んだわけじゃないでしょうが、やはり増収を図るという意図のもとに酒税引き上げを決めたのか、その辺がわからない。ギャンブル税なぜ、どこにネックがあったんですか。
  268. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ギャンブル税は、その名前がギャンブル税というのがいいかどうかわかりませんが、断念したと申しますよりは、税制調査会の方で継続審議ということになりました。なぜいますぐ踏み切れないかという角度からの御質問としてお答えいたしますと、現在すでにギャンブルの収益というのは、納付金とかいろいろな形で公共支川財源に実はなっているわけでございます。  そこで、主として中央競馬を除きますとみんな地方団体が施行者ということでございまして、現在の問題は、むしろ地方団体の中でそういう財源の配分をもう少し均等化すべきではないかと、そっちの方が先ではないかという議論が一つございます。これは、公営企業公庫へのあれは納付金と申しましたか交付金と申しましたか、というものである程度調整がとられつつあるわけでございますが、その問題を含めて、施行団体だけでなくて、すぐ隣のところはいろいろとギャンブル公害を受けるからとか、いろいろな議論がいまなされつつある。  それともう一つは、申し上げたように中央競馬だけ国がやっておりますので、国の収益としては中央競馬会の納付金に改善の余地があれば、納付金を改善することで実質的に答えは同じになるわけでございますが、地方営につきましては、国が税の形で吸い上げるということを考えますと、施行者団体の側は配当率が下がる、つまり納付金プラス国税になっている、配当率が下がる。納付金を減らすのはそれは地方財政の上から困るから、納付金率は減らさない。そうすると配当率が下がるんで売り上げが減る、かつまたのみ屋がふえる。そうすると、結果として地方財政に寄与する分がむしろ減ってしまう危険がある、こういう主張があるわけです。配当率が下がったら本当に売り上げが減るのかねというのは、そこは実はよくわからないんでございますけれども、そういう議論が強い。もう一つののみ屋の話というのは、それはどこへ行ったっていっぱいで、実際に入場できないからという面が大きいんだから、もっと場外売り場をふやしたらいいではないかという議論がございますが、これは野末委員よく御承知かと思いますけれども、いわゆる長沼答申というのがまだ生きておりまして、あの答申状態以後はふやさないんだと、場外は、という考え方がひとつまだ生きている。それらの問題すべてを含めまして、いま何と申しましたか、公営競技問題懇談会というのがつくられておりますので、その審議の模様ももう少し見きわめたい、いろいろくどく申し上げましたが。というのは、いろいろな意見が錯綜しておりましてまだ継続審議状態でございます。
  269. 野末陳平

    ○野末陳平君 いろいろな事情があることもたしかで、また新税ですから、つくるときにはそういう問題一つ一つぶつかると思うんですが、それにしてもそういうむずかしいのがあるからと、何か酒の方は余りなくて、むずかしいことが、わりと安易な引き上げだというふうに大臣考えるんですよ。だから、これはどちらを選べという問題じゃないんですけれども、もう少しことし当たり新税をつくるというか酒の引き上げ以外に増収を図ることをやってほしかったと思いますね、不公平税制などというのも出ておりましたけども、そういうことも含めましてね。  このお酒ですけれども、この中でも二級酒とかしょうちゅうなぞは、いわば大衆が愛飲するものだというような観点から、かなり低い税率になって税額も低いですね。そうなっているんですがね。しかし、それにしても一三%か二五%ぐらいの負担率になっていますよね、現在でも。そうですね。そうすると、今度全く酒とは別ですが、宝石とか毛皮とか、これはぜいたく品、これは同じく比較することは無理ですよ。無理だけれども消費するということから考えますと、これはこっちはだれが見てもぜいたく品だと、こういうものもせいぜい二三%から一五%ぐらいの負担ですよね。何か非常にアンバランスだという気がしましてね。担税能力のあるところに税を求めるんだとするならば、これは一体どうなっているんだと、比較が無理というよりも、こういうことが生まれるのはもうやむを得ないんだからということなのか、それともぜいたく品、奢侈品と言われるようなものはいまの酒とは別個にやはり検討に値するということなのか、いろんな問題あると思うんですがね。どうなんですか。片や大衆の飲むしょうちゅうや二級酒も一三%、一五%負担する。ダイヤモンドもせいぜいその程度負担率、どう考えてもおかしいと思うんですけど。
  270. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 野末委員のおっしゃる角度から、もう少し宝石とか毛皮とかゴルフ道具とかいうものの負担が高くてもいいではないかという御意見は、別の機会にも私どももよく伺うことがございます。ただ、言いわけじみて恐縮でございますが、やはり個別消費税体系で考えられます場合には、それぞれの個別消費税の中での一つの限界というものがどうしてもつきまとうのではなかろうかと、たとえば極端な例でございますが、毛皮に対して、あるいはゴルフ道具の方がいいかもしれませんが、ゴルフ道具に対して、小売価格に対して五〇%の負担を求めようかと考えると、製造段階では大体一〇〇%の税率にしないといけないのではなかろうかと思います。やっぱり物品税という体系の中でのおのずからなる限界というものがどうしてもつきまとってしまう。同時にまた、酒というのはやはりどの国でも習慣性を持つ致酔飲料であるという非常な特殊性も考慮に入れられて、ほかの物価に比べると特別に高い負担を求める例が多いわけでございます。なかなか日本の物品税のようなものを持っている国がございませんので実例が引用できないわけでございますが、私いま正確に記憶しておりませんけれども、イギリスは付加価値税を採用する前には仕入れ税という税がございまして、これは日本の物品税よりもかなり広い範囲に課税しておりましたが、性格的には日本の物品税と同じものでございますが、そのときもたしか製造あるいは卸段階での最高税率というのは五〇ぐらいにとまっていたんではなかろうかと思います。したがいまして、小売段階で言いますと、マージン率によりますけれども二五とか三五とかいうことにとまってしまっていたんではなかろうかと思います。それに対してウィスキーは大体七、八割でございます、イギリスの場合小売価格に対する負担率は。ですから、どうしてもそこの差というものは酒の特殊性ということでひとつ御理解いただくよりしようがないんではなかろうかというふうに感じております。
  271. 野末陳平

    ○野末陳平君 余り特殊性を強調されると、酒を飲む好きな人は、ぼくはもう酒飲まないからそれはわからないんだけれども、特殊性を強調すればするほど弱みにつけ込まれているみたいな感じがして、カモにされているというか、酒というのは。だからまた税務当局は取りやすい税の一つでしょうけれども、どうも何か釈然としないところがありますよ。局長はダイヤは高くてもいいというふうにお受け取りになったけれども、もっと高くてもいいじゃないかというようなことから御答弁になったけれども、逆に言えば、酒飲みから言うと恐らくしょうちゅう、二級酒はもっと安くてもいいんだと、こういうことも言えますから、何とも諸外国と比べてもわが国はまた事情も違うしというようなことで、なかなか説得のある説明というのはむずかしいような気がしますね。酒飲まないぼくがどうも何か首かしげるようなもので。  物品税の話も出てきましたので、それに関連してさらにお聞きしたいと思いますが、先ほどは、もし一般消費税というものを検討していく段階になったら、お酒は特別扱い、あるいは二段構えの二種類の税の対象になると言いますか、併存するというようなことをおっしゃいましたが、いま六十数品目あるこの物品税の位置づけですね、一般消費税の中に吸収されてしまうものなのか。それとも新たに仮に一般消費税が創設されるという構想のもとに検討を始めたときに、どうでしょう、いまの六十数品目の物品税はどういう扱いになりますか。もちろんいろいろな品目ありますが、まず大ざっぱに見て。
  272. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その点はやはり先ほどの繰り返しになりますが、どのぐらいの税率水準で新しい税が入ってくるのかということと非常に密接に絡みますので、それがまだ全く未確定のいまの状況で、具体的に品目を挙げて御説明する用意は実はないわけでございます。ただ考え方としましては、とにかく方向として私が漠然と一種の予感を持っておりますのは、物品税の体系の中でやはり税率にいろいろな理由があってでき上がって高いものと低いものとございます。高い方のグループというのは、少なくともその一般消費税税率水準がかなりのものになってこない限りは併存して残るんではないかなと思うわけです。しかし、税率の一番低いグループというものは、一般消費税税率水準とのにらみで、その税率が下がるとか、あるいは場合によってはもう物品税としては取り上げないようにするとかいう可能性はあり得ると思っておるわけでございます。しかし、くどくて恐縮ですが、一般消費税税率水準そのものが決まる前に、必ずこの品目をこういたしますというふうに申し上げるわけにまいらないものでございますから、非常に抽象的な答えで恐縮でございますが、私限りの一種の予想としてはそういう方向考えられるだろうということでお答えにさしていただきたいと思います。
  273. 野末陳平

    ○野末陳平君 税率の面から見た場合は、いまのお答えはそれなりにわかりますが、今度品目の決め方、現在の物品税の体系の中で、決め方についてもどうも何といいますか、不統一というか、無原則といいますかね、いろいろな矛盾点、不合理な点もあるようなんですね。  そこで、この物品税を決めたときにどういう基準、まあどういう物差しで決められたのか、これもわかりませんので、品目を選んだときの基準と、税率を高い低いを決めたときの基準と二通りあるのかもしれません。一応説明してほしいと思うんですが、なぜならば、今後たとえば新しい税を考えるという時代が来たときに、やはりあいまいなままに決められても困る、かといって、過去にもしそういうあいまいな決め方をして、現在の物品税体系非常に不合理だと思われる点があれば、それを再び繰り返しても困るというようなことも考えて、今後の参考というか教訓といいますかね、そんな意味からお聞きするわけで、物品税を決めたときに、まずどういう基準でこの品目が選ばれたか、一般にぜいたく品なのかなと思うんですが、当時はぜいたく品、いまはそうでなくなったというのか、それともほかの基準もあったのか、まず品目の選び方について伺いたい。
  274. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) これは、実は私もそれほど自信を持っておるわけではございませんけれども、私の理解しておりますところでは、まずは戦争という状態で物品税というものが出てきた。したがって、創設の初期におきましては非常に広い範囲のものが課税対象になっておったというふうに私としては理解しております。野菜は入らないけれども果物は入ると、そうするとミカンは果物かというような議論がずいぶんあったという話もよく聞かされました。非常に広い範囲を課税対象にして取り上げて、いまにして申せば、言葉は悪いかもしれませんが、戦費調達の一部ということで、かなり重要な位置を占めていたのではないかと思うわけでございます。したがいまして、それ以後の物品税の歴史というのは、広い課税範囲をだんだん狭めていくと。主として奢侈品、便益品というものは残ってもいいだろうけれども、まあとにかく果物なんかから先になくし、それから家具もかなり免税点が上がるというかっこうで落ちていくし、という歴史をたどってきておるように思います。その間、税率もかなりの幅でいろいろに決められておりましたものを、何年でございましたか、とにかく税率簡素化という別の面からの御議論もあって、いまの税率の和み立て方は製造段階課税は原則として二〇か一五、特にこれはもう少し高くてもいいではないかというのが三〇。これはまあ物品税に残すには残すけれども、ちょっと負担としては一番低くていいじゃないかというのが五というような形ででき上ったという歴史がある。したがって、いま白紙の状態でなぜこれが三〇でありなぜこれが二〇であるかというふうに問いかけられますと、なかなかその一つ一つについての説得的な説明というのはむずかしい。それなりにその歴史があり、それぞれのバランスが議論され、バランスが議論されながら全体としてまあこの辺かという歴史が積み重なって今日に至っていると申し上げるのが一番いいんではないかと思いますが、ただ私もそう古い時期におったわけではございませんので、私が申し上げておるのが間違っておりましたらむしろ大臣から直していただかなければいけないと思います。
  275. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、何か税率の決め方も感じで決めたような、それからだんだん広い範囲のものが狭くなってきたというけど、これも何となく原則が、ルールというか、何かないような感じもしましてね、それは現行残っているんですから、初めからつくったわけじゃありませんから、理屈で割り切れない面もあると思いますがね。どうも税率もこれは何となく三〇かいいだろうとか、そういう決め方はちょっとこれからはもう通用しないと思いますね。ですからどうなんでしょうか、大臣、今後どういう形の消費税ができても、やはりぜいたく品というものは恐らく、永久にとは言いませんけれどもかなり長く残るわけで、それは特別高い税率をかけるのが当然だと思うんですよ、別扱いするのが。  そこで、ぜいたく品といわゆる一般品というものをどうしても分けざるを得なくなってくる。その場合にぜいたく品とは何かという定義はなくちゃまずいと思うんですね。十年前はたとえばルームクーラー、エアコンディショナーみたいな、あれがぜいたく品だったかもしれないが、いまはそうも言えなくなっているという時代の変遷もまたありますから、それはそのときに応じてまた変えればいいわけで、いまこの時点で、大臣、ぜいたく品というのは一体どういう物を考えたらいいか。これは高い物は担税能力があるからというふうに考えるべきなのか、それともたくさんの人はまだこれをとても使用できないというような物、希少価値のようなところでとらえるのか、ぜいたく品についてどういうお考えか、それをちょっと大臣にお聞きしたいですね。
  276. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ちょっと大臣からお答えいただきます前に、私が御説明したのは、実にいいかげんであるというふうに受け取られたとしますとちょっと私も困ってしまうわけでございまして、税率というものは、先ほど酒の税率で申し上げましたようにアプリオリな基準というものはないんだろうと思うんです、所得税の場合でも法人税の場合でも。必ず何%でなくてはいけなくて、一%上でも下でもいけないんだというものは実はないんだろうと思うんです。やはりその時点において大多数の方々が、まあそういうことだといって納得していただけるものを探すという作業の積み重ねだろうと思うんです。そういう趣旨で申し上げたつもりでございますのが一点と、もう一つは、ぜいたく品だけではなくてやはり便益品というものがかなり色濃くいまの物品税には残っていると思います。つまり別の角度からの議論をなさる方は、いまや自動車は大衆の生活必需品であるという議論をなさる方がありますが、しかしやはりそれは自動車というのは便益性が高いんだから、それをお買いになる方には物品税の負担はしていただきたいというふうに申し上げるわけで、何がぜいたくであるかというのは、おっしゃるように所得水準が上がってくればそれによって変わりましょうけれども、普及度が非常に高くなったからもはやぜいたく品でない、あるいは便益品でないという考え方というのはなかなかすぐには採用できないんではないか、そういうふうに考えておりますが。
  277. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 間接税を考えるときの非常にむずかしい問題でございます。私は戦争前から税金やっておったわけでございますので、北支事変特別税ということで起こされたのがこの物品税、入場税、通行税、建築税等でございます。しかも戦争が深まりますとその税率はものすごい高いことになりまして、百分の三百というような、遊興飲食税、芸者の花代もやっぱり百分の三百ぐらいいったと思います。通行税も、いまで言う特急料金ですか、これは百分の三百ぐらいいったのでございます。したがいまして、その税率の物の考え方というのは、そのときどきのやはり考え方で決まってくるのであろうと思うのでございます。  その後、もういまずっとその当時出ましたのでほとんど姿を消しておるのは建築税、別の面で不動産取得税というような形で地方税に残っておりますが、建築税というものはもうなくなっていソわけでございます。それから遊興飲食、税でござますが、いま料理等消費税ということで地方税で残っております。一律に百分の十という形で残っているわけでございます。入場税もひところたしか百分の二百ぐらいいったと思いますが、いまはほとんどもうかかっていないと言った方がいいわけでございまして、演劇については三千円、それから映画については千五百円でございますので、ほとんど大部分はかかっていない、ごく一部に残っていると、こういうような形になっているであろうと思います。物品税も、これもたしか高いところは百分の百ぐらいまでいきましたか、そんなに高くはなかったと思いますが、いったと思い化す。これを戦後的な税率に直そうというのが昭和三十八年でございまして、それがいま主税局長から言いましたように、おのずから間接税というものには限界があるじゃないかと、まあ当時まだ高度成長の時代でもあったわけでございますので、そこで五段階かもっとありました税率を、基本税率を大体一〇と二〇に置いたと思います。小売りの方は一〇、それから製造の方は二〇と、多少そこにばらつきを置きまして税率構造を組んだと思うのでございます。  そこで、いま大体私の記憶しているのをざっと申し上げたわけですが、何がぜいたくかという問題でございます。いま主税局長は主税局長の感覚で申し上げたのでございますが、実は非常に所得水準が上がってきますと消費の選択がいろいろ行われるわけでございまして、ですからどういう一体間接税を持つかということ、どういう税目についてはどういう税率を盛るかというのは、この消費の選択が行われる、あるいは消費の多様化になりますと、なかなか一般的な説得力を持たないというのが現実の姿ではないかと思うわけでございます。したがいまして、むしろ現在の世界の大勢は一般消費税に向かったということ、あるいは欧州では付加価値税に向かったということは、むしろ時代の変造をあらわしておって、そういう点からもひとつ出てきたのではなかろうか、これは私の推測でございます。そういう所得水準が高まり、それから消費の多様化、そうしてその間に選択が行われるわけでございますから、そこにはいろんな主観が入るわけでございます。そういう意味で、個別消費税の限界というものがやはり世界の間接税史上起こりつつあり、それが一つ、やはり間接税に相当ウエートを置く国におきましては付加価値税とか一般消費税というものに移ったのではなかろうか、そのように理解しているわけでございます。  ですから、一般消費税になりますと、ほかの国の例を見ますと、その消費の態様によりまして多少税率に差がございますけれども、付加価値を基準とし、あるいは売り上げを基準にしておるわけでございますから、その間おのずからそういうややこしい問題についてはある程度税制そのものが片づけてしまう、こういうことではないであろうか、そのように考えております。
  278. 野末陳平

    ○野末陳平君 大臣の講義を聞いていると、何となく一般消費税が一番いいみたいな話になってしまいますけれども、ただそういう場合に、まだ幾つもお聞きしたいことがあるのですが、いまの物品税の中にも非課税のものがあるわけですね。なぜそれが非課税になったかというのは、いろいろな理由があるでしょうからあえて聞きませんけれども、こういうのは一つの既得権として残っていくのか、あるいはいま非課税が、たとえば桐のたんすがどうしたとか、お茶道具がどうだとかありますが、そういう非課税の品目を白紙に戻すのかどうか。その辺もまた別の角度から考えないと、これはやはり物品税の欠陥だと思うのですね、こういう非課税を幾つかつくったということは。やむを得ない理由があるにせよ、やはりおかしい。もっとも物品税そのものがいまや非常に矛盾しているというか、おかしいと思うのですけれども、いずれにしても既得権として非課税のものを残すのか、それともこれを白紙に戻すべきなのか、考え方でいいんですけれども、これはどうですか。
  279. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ちょっと御質問の趣旨を私誤解しておるかもしれませんが、仮に一般消費税が導入されるということを考えた場合に、いま物品税が課税されているものの処理がどうなるかは先ほどお答えした方向ではないかと思うわけでございます。  それで、一般消費税の方でどういうものを非課税にするのかということになりますと、それは先ほど多田委員にお答えいたしましたように、まだ中期答申では基礎的食料品という程度の抽象的なものにとまっておりまして、これをできますれば試案なり素案を詰めていただく過程でもう少し具体的に拾っていく、米は当然非課税ではないかとまずは考えておりますが、インスタントラーメンというあたりが一体どっちなのかねという議論をかなり慎重に詰めていただくということでございますが、いずれにしてもいまの物品税の、歴史的な背景を背食った物品税非課税というものとは非常に異質な物の考え方で整理をされるんではないかと思っています。
  280. 野末陳平

    ○野末陳平君 いまのお答え、後で聞こうと思っていたところですけれども、さきにお聞きしたのは、物品税の品目の中で、たとえば家具なら家具の中で桐はいい、漆製品はいいとか、そういう意味の非課税の特別扱いを受けているもの、これを既得権として残すのか、白紙に戻すべきなのか、そのこともお聞きしたいわけです。
  281. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) それは一つ考え方として、今国会ではございませんでしたけれども国会でときどき御指摘を受ける問題でございます。ただ、物品税の歴史の流れの中で非課税の方に整理されました理由づけの一つに、メーカーが主として中小零細メーカーだけでなかなか転嫁ができないとか、あるいは伝統工芸品を育成しなくてはならないからこれは値段は高いけど特に非課税だとかいうふうな、いろいろの経緯をしょっておりますので、高いものの代表例としてよく言われますのは桐だんすと西陣の織物でございますが、両方ともいま申し上げたような理由で現在非課税になっておりますので、仮に新規物品の課税ということを考えなくてはならないという状態がまたあるかもしれません。というのは、先ほど物品税はもっぱら課税範囲の縮小という歴史だというふうにだけ申し上げましたが、しかし、歴史の中では新しく開発された物品税、すでに課税されている物品とのバランス上新たに取り入れてきたというものももちろんあるわけでございまして、ですから、そういう新規課税物品を考え機会には、やはり現行法のもとで非課税となっているものももう一遍見直していくということは常に私どもとしては必要だと思います。ただ、直ちにそれが現在非課税の物品を保税に持ってくるという、直ちに具体化されるかと申しますと、やはり長い歴史をしょっており経緯をしょっておる、当時主張されたことといまと事情がどう変おっているかということも考えてみなくてはならないだろう、そう考えております。
  282. 野末陳平

    ○野末陳平君 じゃ税調に非課税枠を検討するようにというような課題が今後、今度の国会後の税調審議に出てくるというのを新聞の記事でちょっと読んだんですけれども、基礎的食料品が何かということも一つですね。それからいま言った長い歴史をしょっていると言われる伝統工芸品とか、それから中小メーカーのものであるとか、そういう理由もまだ生きてくるわけですか、非課税の物品を考える場合に。
  283. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) でございますので、先ほど一般消費税の課税対象外に置く品目の選び方というのは、物品税の場合とは全く異質の角度で考えることになるんではなかろうかと申し上げたのでございます。
  284. 野末陳平

    ○野末陳平君 まだ具体的にいろんな案が出ていない段階ですから、余りお聞きしてもはっきりした答えはないと思うんですが、大臣に最後にお聞きしたいのは、間接税を強化する方向というのはまあ世界的傾向であるかもしれないし、それからわが国の場合でも直間の比率でいけばやはり間接税にもっとウエートをかけてもいい、ここまではわかるんです、間接税の中で消費税が考えられているというのもこれもやむを得ないと考える段階では。でも一つ心配というか疑問なのは、間接税を強化していく場合にこの逆進性を考えると、所得税の累進構造はいまのままでバランスがとれるかどうかという、ここに突き当たるんじゃないかと思うんです。全体ではうまくバランスがとれていると、いま。とするならば、間接税強化すれば累進構造も一部もう少しきつくしなければバランスがとれないのか、それともこの所得税の方はそのままにしておいて間接税を強化する方向考えてもバランス上はおかしくないのか、その辺のお考えをお聞きしておきたいんです。そうしないと、何かどうしても常に大衆課税というような観点に立ちますと、やはり間接税強化されるときには一番しわ寄せを食うのはやはり三百万、四百万、二百万とか、まあいわゆる大衆ですから。そこで所得税の累進構造と間接税強化というこのバランスを今後どうお考えになっているか、それをお聞きして終わります。
  285. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは、たしか税制調査会答申でも同じような趣旨のことをうたっておりまして、一般消費税所得税か、あるいは一般消費税所得税というか、あるいは、一般消費税と富裕税というふうないろんなことを与えておったと、非常に幅のある答申が出ておったと思うのでございます。ただ一般消費税と言うときに、やはり日本消費税、間接税負担が荒っぽく申しますればほかの国の大体三分の一だと、消費税、間接税は。所得税はまあ二分の一だと。全体合わせて三分の二だと。まあ大体それぐらいの負担関係にあるわけでございます。したがって今後考えるときに、やはり先ほど申しましたような租税体系の上で一般間接税を持っていないということ、間接税のウエートが少ないという、そういった点から一般消費税というものはクローズアップされてきたんだろうと思うのでございます。しかしこの問題は、言うまでもない話でございますけれども財政は本米やはり資源配分機能であるとか景気調整機能であるとかあるいは所得再配分機能というものを当然考えていかなくちゃならないわけでございます。したがって、歳入面でどのように考えるかという問題とあわせて、歳出面は一体どっちの方にどうなるのか、この問題を考えていかねばならないと思います。また歳入面だけを考える場合にも、そういった全体として一体税体系の所得再配分機能はどうなるのか、この問題も忘れてはならぬのであろうと思うわけでございまして、かなり広範の検討がやっぱり背景としては、当然もういままでもやってきておりますし、税制調査会もその点に十分留意しながら検討が進められることであろうと、こう思っておるわけでございます。  現行で言いますと、やはり一般的に申しますればアメリカが所得税比率、所得再配分機能の一番強いところでございますが、八〇%以上はもう直接税、それから日本はその次だと、こういうわけでございます。そういった国際的水準を考えながら、今後のいろんな需要に対応するためにはどのような租税体系を考えるべきか、その一つの大きな問題としてまあ消費税が浮かんできたと、こういうことでございますが、あれやこれやと考えて、やはり慎重な答えが出ることを期待しております。また、当然そうであろうと思うわけでございます。
  286. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 本案に対する本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  287. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回は、四月十八日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十一分散会      —————・—————