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政府委員(大永勇作君) 為替差益の問題でございますが、これは経理のいわゆる専門的な
意味におきます為替差益と申しますのは、契約時とそれから決済時のレートの差でございますから多少
意味が違いますが、五十一年度と比べまして五十二年度におきまして為替レートが、円が上がったということに伴います利益というものをいま仮に為替差益ということで呼んでみた場合にどうかということの御
質問であろうかと存じますが、まず
石油につきましては、為替レートが一円高くなりますとキロリッター当たり八十六円
コストが低下するということに相なります。五十二年度の為替レートでございますが、上期は平均がこれはもう実績が出ておりまして二百七十二円でございます。それから下期をどう見るかということでございますが、これを仮に二百四十――ちょっと厳密な数字がございませんが、二百四十数円ということに考えられますが、それを平均いたしまして五十二年度中の為替相場を三百五十九円ということで
計算いたしますと、五十二年度全体で七千八百億円のメリットが出たということに相なります。
それに対しまして
コストアップ要因といたしましては、五十二年の一月と七月に
原油の
価格が合計一割上がっております。これによります
コストのアップが五千三百億ございます。それにさらに
備蓄関係の経費あるいはコンビナート法の実施によります防災
関係の経費、これが
コストアップ要因といたしまして約千九百億と見込まれるわけでございます。これを足しますと
コストアップ要因は七千二百億円ということになりまして、六百億円のメリットがさらに残るわけでございますが、ただ下期におきまして十-十二月に約千円、一-三月に二千円
程度のいわゆる
製品価格の下落がございます。こういうものを総合的に判断いたしますと、五十二年度において
石油業界のふところの中に残った差益というのはこれはほとんどないと、したがいまして、これは会社によって著しくでこぼこがあるわけでございますが、五十二年度を通じての
石油企業全体の経常損益というのは五十一年度と大差はないのではないかというふうに考えております。しかし五十三年度におきましても、現在の為替レートが続きますればもちろんこれはまた差益が出るわけでございますが、それにつきましては、適正な
価格形成が行われるように今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
それから、電力会社の為替差益でございますが、数字的な点につきまして申し上げますと、先ほどのような為替レート上期二百七十二円、下期が二百四十数円、これでは二百四十五円と出ておりますが、そういう
前提で
計算いたしますと、五十二年度全体を通じまして千三百七十五億円の為替差益があったということになっております。それに対しまして、
石油価格の値上げの
影響額というのが三百六十九億円でございますので、差し引きをいたしまして約一千億円の為替差益が出ておるということに相なります。これを仮にキロワットアワー当たり幾らかということで直しますと、キロワットアワー当たり二十五銭、一ヵ月の使用量が百二十キロワットアワーの家庭につきましては月に三十円
程度という形になるわけでございます。
この差益をどうするかという問題でございますが、今後におきます方向を考えて見ますと、いま申し上げましたような円高による差益は発生いたしておりますが、今後とも設備投資の増加に伴います資本費あるいは人件費、修繕費といったような諸経費の増加によりまして総
コストはさらに増高するということが考えられるわけでございますし、また六月におきますOPECの
原油価格の向も予断を許さないというふうに考えるわけでございます。こういう点を考えますと、この為替差益につきましては、そういった今後におきます
コストの増高にもかかわらず、料金をなるべく長期に安定的に維持するという形で還元していくことが適当ではないかというふうに考えておりまして、具体的には先般九電力に対しまして大臣から指導したところでございますが、今後少なくとも一年間は現行料金を捉え置くと、五十三年度中でございますが。さらに、その後におきましてもできる限り長期に現行料金の捉え置きを図る。さらに為替差益につきましては、これを不当に社外流出するというふうなことをいたしませんで、料金安定化にのみ使うよう各事業者を十分指導監督するという方針でまいりたいと存じている次第でございます。