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1978-03-24 第84回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十四日(金曜日)    午後一時四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         嶋崎  均君     理 事                 藤田 正明君                 細川 護煕君                 福間 知之君                 塩出 啓典君                 中村 利次君     委 員                 岩動 道行君                 糸山英太郎君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤井 裕久君                 宮田  輝君                 穐山  篤君                 竹田 四郎君                 多田 省吾君                 渡辺  武君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    政府委員        大蔵政務次官   井上 吉夫君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    参考人        税制調査会会長        代理       木下 和夫君        慶応義塾大学教        授        古田 精司君        一橋大学教授   石  弘光君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、税制調査会会長代理木下和夫君、慶応義塾大学教授古田精司君及び一橋大学教授石弘光君の三名の方々参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙中のところを大変御無理を申し上げ、本委員会に御出席をいただきましたことをまことにありがたく、心から御礼を申し上げます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げる次第でございます。  皆さん方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査参考にいたしたいと存じております。  これより参考人方々に順次御意見をお述べ願うのでございますけれども、議事の進行上、恐縮でございますが、お一人十五分程度でお述べを願い、参考人方々の御意見の陳述が全部終わりました後に、委員の質疑にお答えしていただくという方法で進めてまいりたいと思います。各位の御協力をお願いいたします。  それでは、まず木下参考人からお願いを申し上げます。
  3. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 木下和夫でございます。  私、昨年の十一月二十二日以来、税制調査会会長代理を務めております。  本日は、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について参考意見を述べよという仰せでございますが、この後の方の国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、昭和五十三年度税収伸び悩みを考えますと、明年度財政運営にあたって不可欠の財源確保を図るためにはやむを得ない措置と考えております。したがいまして、問題は租税特別措置法改正に関する点に触れることになりますが、この問題はしかし、税制全体の立場を離れて論じ切れないものと考えますので、この際、税制調査会の最近の論議を背後に置きながら、いわゆる中期答申及び昭和左十三年度税制改正に関する税調答申中心に申し上げることにさしていただきます。  まず中期答申でございますが、税制調査会は、昭和五十二年十月四日に「今後の税制あり方についての答申」を提出いたしました。これを普通に中期答申と呼んでおるわけでございますが、この答申は、第一に今後の税制あり方検討するにあたっての「基本的考え方」を述べまして、その次に、第二に「既存税目及び新税についての検討」の要約を示しました。第三に、「今後の税制あり方についての提言」を行っているものでございます。  以下、以上の三点について順次申し上げますと、まず第一に、今後の税制あり方検討するにあたっての基本的な考え方につきましては、福祉その他公共サービス確保を今後とも図りつつ、大量公債等への依存から脱却して、国民生活の安定と向上、国民経済の健全な発展を図るためには、国民に対して一般的な税負担引き上げを求めることが必要であるとしております。  第二に、既存税目及び新税についての検討につきましては、既存税目及び新税を通じて負担増加可能性を探るという見地から検討を行いますとともに、税制仕組みの問題のうち主なものにつきまして審議を行い、その要約を示しております。  さらに第三には、今後の税制あり方についての提言につきましては、まず第一に述べました基本的考え方のところで検討いたしましたところのいわゆる不公平税制の定義に即しまして、国民に一般的な税負担増加を求めるにあたりましては、租税特別措置、いわゆる私ども政策税制という言葉を使って呼んでおりますが、この租税特別措置につきまして今後一層強力に整理合理化を推進すべきであるとしております。  次に、既存税制の枠組みの中においても極力増収を図るべきであって、この見地から間接税等負担適正化法人税税率引き上げ検討すべきであるとし、さらにこれらの措置を実施するとしてもなお問題の解決にはほど遠いと考えられるので、所得税及び個人住民税について一般的な負担引き上げを求めるか、あるいは広く一般的に消費支出負担を求めるところの新税導入するかという問題に直面せざるを得ないが、これはまさに国民が選択すべき重要な課題であるとしております。  しかも、この選択の問題について示された税制調査会考え方によりますと、所得税等に大幅な負担増加を求めることには限界があると考えられることから、広く一般的に消費支出負担を求めるところの一般消費税導入することを考えざるを得ないと判断しております。そして、一般消費税導入につきましては、今後さらに具体的な検討を積極的に進めることが必要であり、政府としてもその導入必要性について国民に十分な理解を求める努力を払ってほしいということを述べておるわけでございます。  なお、中期答申に示されました以上の提言は、あくまで中期的視野に立つものでございまして、その実施につきましては各年度税制改正において、それぞれの時点における経済情勢等を配慮しつつ、財政経済政策全体の立場から総合的に判断すべきであるとしております。ただ、その際留意すべき点として、財政における大量公債等への依存事態に対して、対処策を講ずることがおくれればおくれるほど問題の解決を一層困難にすると指摘しております。  以上がいわゆる中期答申概要でございます。  次に、昭和五十三年度税制改正に関する税調答申について申し上げます。  税制調査会は、昭和五十二年十一月十一日、新しい委員の任命によって発足したのでありますが、同年十二月二十日に「五十三年度税制改正に関する答申」を提出いたしました。この答申に示されました基本的考え方と具体的な税制改正方針は、おおむね次のとおりでございます。  第一に、中期答申との関連に関する問題でございます。中期答申が提出されて以来、わが国経済財政をめぐる諸事情は一段とその厳しさを増しつつあるわけでございますが、中期的視野に立つ限り、中期答申基本的考え方及び今後の税制あり方についての提言をここで基本的に変更する必要はないと判断されるので、中期答申考え方を踏まえつつ、昭和五十三年度税制改正について検討を行うという態度をとっております。  第二に、昭和五十三年度税制改正基本方針につきましては、最近の内外経済情勢財政事情からすれば、昭和五十三年度財政運営は、一方において内需拡大の要請にこたえなければならぬと同時に、他方では、なお財政節度の維持に極力努力をしなければならないというきわめて厳しい状況にあると判断をいたしまして、こういう事情を踏まえて総合的に検討した結果、昭和五十三年度税制改正基本的考えとしては次のとおりとすることが適当であると言っております。  すなわち、まず経済情勢を考えると一般的増税を行うことは適当ではない。一方、中期税制あり方等からすれば所得税の減税を行うことも適当ではない。  次に、租税特別措置、いわゆる政策税制につきましては、昭和五十一年度以降、企業関係特別措置中心としてかなり大幅な整理合理化が進められ、その努力についてはそれなりの評価は与えてよいが、さきの中期答申の趣旨に即して租税特別措置整理合理化を一層強力に推進すべきであるということ。  さらに、当面の経済運営に背馳しない範囲においてできるだけの増収措置を講ずることとし、まず第一に酒税の従量税率引き上げ、第二に有価証券取引税税率引き上げを行うと同時に、第三に石油税を創設することとする。また、内需拡大等の観点から、民間設備投資促進に資するために投資促進税制を実施し、住宅対策に資するために住宅取得控除を拡充する。そのほか、タックスヘーブン対策中小企業対策等措置を講ずるというのがその概要でございます。  さて、昭和五十三年度税制改正につきましては、すでに政府から提案され、ただいま審議が行われておりますが、昭和五十三年度税制改正関係法律案は、いま申し上げましたような税調答申の線に沿って提案されているものと理解しております。  なお、社会保険診療報酬課税特例是正につきまして、答申は重ねてその是正を強く要請したのでありますが、今回もまたその是正が見送りになったのはきわめて遺憾に存じます。ただ、その後伝えられるところによりますと、自由民主党においてこの特例存続期間を五十三年度末とし、その間これに対応する諸般の施策を速やかに講ずることとする旨を決定され、これに伴って議員立法を行う動きがある由に承っておりますが、それが事実でありますならば、これまでに比べますとかなり前進したものと評価されますので、ぜひその実現方をお願いいたしたいと思います。  終わりに、今後の税制調査会の進め方について付言をいたしますと、次のとおりでございます。  昭和五十三年度税制改正に関する答申におきましては、特に一般消費税について中期答申でその骨格が示されましたものの、国民の間にもっと具体的な仕組みについて提案を受けて議論を深めたいとする機運が起こっていると判断されますので、今後できるだけ早い機会に各方面意見等を織り込みつつ、わが国経済取引の実態に即応した仕組み具体案を取りまとめまして、これを基礎として広く各方面検討を求めるよう措置することが適当であると述べております。したがいまして、税制調査会といたしましてはできる限り早い機会審議を再開し、この問題を中心検討を始めたいと考えております。  以上でございます。
  4. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) どうもありがとうございました。  次に、古田参考人にお願いいたします。
  5. 古田精司

    参考人古田精司君) 慶応義塾大学古田でございます。  できるだけ簡潔に申し上げて参考人としての責務を果たしたいと考えております。  五十三年度予算案租税政策、特に租税特別措置法人税一般消費税、この点につきましてお話し申し上げたいと思います。  今年度租税印紙収入予算額につきまして、二十一兆四千五百億円でございますが、少し過大見積もりじゃないかというふうな疑念を持っております。昨年度当初予算が十八兆二千四百億円でありましたけれども、御存じのように、補正後第二号予算では十七兆一千三百四十億円に低下いたしております。現在の円高持続状況を考えますと、これは今後の景気調整との絡み合いで考えるべき問題かと思いますが、果たして万全を期しているのかどうか、これが気がかりであるということを最初に申し上げます。  本題に入りまして、本年度税制改正に関しまして、租税特別措置整理合理化等によりまして平年度四百九十億円の増収見込みがあるという一点、これは評価できるのではないかと考えております。特別措置整理合理化を要求する声というのは、税制調査会を初めとしまして声が高まっております。その理由でございますが、御承知のように租税特別措置が一定の政策目標を達成するための手段として、減免税によるインセンティブ効果をねらっているわけであります。ところが、その反面三つコストを支払っているのではないか。  第一番目は、御承知のとおり租税負担公平、特に水平的公平という原則を阻害しているのではないか。もちろん所得税では総合累進課税構造が弱りますので、垂直的公平の原則をも阻害しているわけでございます。  二番目のコストですが、個人とか企業経済活動に対する租税中立性という原則、これも阻害されているという点。  第三に、租税特別措置が現在の段階国民一般の注目を浴びつつある、そういう状況では納税道義いわゆるタックスモラルの面で悪影響を及ぼしているんではないかというこの三つコストをここでは考慮すべき段階にきていると思います。そして、特に昭和五十五年度に多くの特別措置が期限切れになりますので、その際、次に申し上げますようなテストをお考えいただければ幸いと考えております。  第一は、個々特別措置が真に合理的な公共目的にかなっているのかどうか。  二番目は、個々特別措置がもたらす公共利益が、先ほど申し上げました三つコストを上回っているのかどうか。  三番目は、個々特別措置が同じ公共目的を達成する別の手段と比べまして果たして最善の措置と言えるのかどうか。  例として申し上げますと、政策手段目標の間のコンシステンシーを保つために、たとえば一方では貯蓄奨励のためという目的利子所得課税特例を設けておきながら、他方ではまた自己資本の充実という目標を追求するため配当軽課措置を設けるといった矛盾というのは、やはりこれは避けるべきではなかろうか。したがいまして、現行の租税特別措置をながめますと、先ほど申し上げました三つの基準をパスできるようなものはきわめて少ないのではないかと考えております。したがいまして、今後とも租税特別措置整理縮小に努めていただきたいと、そう考えております。  第三に、現在の財源対策法人税について簡単に申し上げたいと存じます。それは租税特別措置整理縮小を重ねましても、現在直面しているような税収不足という事態には対応できないのではないか。そういたしますと、一部には法人税率引き上げとか、あるいは大企業中小企業の間に累進税率を設けて税負担格差を設けようという案が出されております。要するに、法人企業税負担の増大を求める声が近年わが国では確かに高まってはおりますが、その際お考えいただきたい点は、企業自身が税を負担するということはあり得ないということであります。つまり法人税の場合、必ずや株主経営者従業員かあるいは消費者か、究極的にはそういった経済主体負担することになるわけであります。ただ問題は、現在のところそのどの経済主体負担するのか、その負担割合がはっきりまだ解明されておりません。したがいまして、仮にアメリカの財政学者の第一人者でありますマスグレイブ教授が仮定いたしましたように、法人税の三分の二は株主負担され、残り三分の一が消費者負担されるというふうにいたしますと、法人税負担引き上げた場合に、三分の一は消費者の方に転嫁されまして、企業負担増加にはならないわけでございます。  同じように、法人税累進税率導入した場合でも、恐らく大企業は名目的企業分割を行うなりあるいは細分化を行うというふうな、いわゆる租税回避行動に出ることが十分予想できるわけでございます。  今後の財源対策といたしまして法人税率引き上げなり累進税率の採用を考慮するとすれば、その際法人企業の対応、つまり行動変化、私ども言葉で申しますとアナウンスメントエフェクトと申しておりますが、それを十分に計算し尽くす必要があるのではないか、そのような計算なしに踏み切るということは非常に危険ではないかと考えております。言葉をかえますと、法人税の問題はそのアナウンスメントエフェクトを含めたところの経済効果を突き詰めた上で御議論いただきたいと、そう考えております。従来ともすれば実在説とか擬制説とかいったどちらかと言えばドグマ的な、あるいは哲学的なそういった側面だけで議論がなされる傾向がございますけれども、そういう面だけではなくて、ただいま申し上げましたような経済効果に御注目いただきたい、そう考えております。  最後に、財源対策に開通しまして一般消費税について若干申し上げたいと存じます。  私見でございますが、財源対策といたしましてはEC型の一般消費税をいま一度見直すことが必要なのではないか。確かに新税は悪税でございます。しかし、社会進歩につれまして税制進歩を常に図るべきではないだろうか。特にわが国の場合種々雑多な個別消費税、特に物品税というねらい打ち消費税がございますが、これはすでに時代遅れであって、その役割りをもう果たしてしまったのではないか。つまり一般消費税にその場を譲るべきではないか。特に一般消費税の持つメリットを考え合わせますとそういうふうに言わざるを得ないように考えております。そのメリットと申しますのは、およそ四つほどございます。  第一番目は、一般消費税が御承知のようにシンプルな税制であるという点。物品税でございますと御承知のとおり自動車とかテレビとか冷蔵庫とか、そういう特定の財をねらい打ちいたしますが、一般消費税の場合には一般的な財、サービスに広くかかるという意味で非常にすっきりした税制だと考えられております。  二番目のメリットは、中立かつ公正な税制である。その意味は、経済資源配分産業構造をゆがめない。しかも所得税のように名目上は公平でありながら、クロヨンといった徴税上の不公平を持っておりません。これは付加価値税にはございません。  三番目のメリットといたしまして、税収目的にとって有効な手段であると考えております。つまりタックスベースがかなり広いわけでございます。広範囲にわたっておりますので、低い税率で十分な税収が上げられるという点。  それから第四番目には、これが問題になるかと思いますが、国民性にどれだけマッチしているか。所得税の場合ですとプライバシーを侵すという点がよく議論されます。そういう点が一般消費税にはございません。それから消費しなければ一般消費税負担しなくてもいいという点がございます。そして最後に、現在の日本の国税制度を見ますと、直接税中心主義と申しますよりは直接税偏重主義になっているんではないか。  しかし、一般消費税の持ちますデメリットもここであわせて申し上げるべきかと存じます。  それは第一に、税率格差が現実にはございます。EC諸国を見渡しましても、生活必需品には低い税率ぜいたく品には高い税率、そして便宜品には中くらいの税率。そういたしますと、最初に申し上げましたメリット一、シンプルな税制というメリットと矛属するわけでございまして、どうしても繁雑な税制に陥りがちでございます。  二番目は、二番目のデメリットでございます逆進性と、すなわち大衆課税という点がしばしば指摘されているとおりでございまして、この点につきまして、たとえばフランスとかドイツとか実証分析した結果を見ますというと、税率格差のために実は必ずしも逆進的ではないという結果が出ております。そしてまたデンマークでは、たとえば低所得者のために年金増額を行ったり、あるいは所得税税率引き下げを行ったり、そういった措置をあわせてとっております。  三番目のデメリットといたしまして、行政コストあるいは徴税コストでございますが、EC諸国をながめてみますと、これは個別消費税ないしは売上税を持っていた国が一般消費税に切りかえましたもので、その点予想したほど徴税コストで苦しんではおりません。  それから四番目に、やはり企業面から見たコストを見てみますというと、これもしばしばわが国でも議論されておりますとおり、かなり企業活動影響があるんではないかというふうに言われておりますが、大企業には影響が見られておりません。中小企業の場合はどうかと申しますと、フランスではたとえばフォルフェ制度を採用いたしておりまして、税務署が納税者にかわって計算しているという点から、やはり企業コストは予想したほど大きくはないという点がございます。  最後デメリットといたしまして、これが一番重要な一般消費税批判になるかと思いますが、物価への影響がございます。これにつきましては、財政学者として私どもは、物価が確かに高くなると申しましても、一般消費税は必要な税収国民負担するのであって、いわゆる物価騰貴とは違うんだというふうに理解いたしております。物価上昇との関連で申しますと、一般消費税を採用するタイミングが大切ではないかと考えております。たとえば景気停滞期一般消費税導入いたしますと、かつてのドイツのように物価が半年で〇・九%しか上がらない。ところが、オランダのように景気上昇期一般消費税導入いたしましたため、便乗値上げも加わりまして五・一%上昇いたしております。もっとも一般消費税がそのうち一・五%寄与したという計算例もございます。したがいまして、一般消費税導入となりますと、経済情勢を十分に考え、また政府は十分なPRを行って、さらにデンマークのような所得政策的な措置も併用することが必要ではないか。  結論といたしまして、わが国財政が直面いたしております財源問題を解決するために、一般消費税を前向きに検討されることが必要なんではないかというふうに私は考えております。  以上をもちまして報告を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  6. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) どうもありがとうございました。  次に石参考人にお願いいたします。
  7. 石弘光

    参考人石弘光君) 御指名いただきました石でございます。時間が限られておりますので、やや一般的な視点ではございますが、以下二点にしぼりまして日ごろ考えておりますことの一端を述べさせていただきたいと思います。  第一の問題は、中長期の視点から見てわが国で今後増税が必要かどうかという点、第二点が不公平税制との絡みで租税特別措置あり方をどう考えるべきかという視点でございます。  第一点の方から話を始めたいと思います。これは当然今後増税が必要だという、そういった問題と絡んでくるわけでありますが、すぐいまやれといったような議論ではございません。御承知のように、目下円高不況がかなりわが国経済に深刻な影響を与えておりまして、仮に増税をしたいといってもできるような経済環境にないという点はどなたもお認めのことと思います。したがいまして、今後経済が回復いたしまして増税ができる条件がきたとき、果たして増税をすべきかどうかというとらえ方の議論というふうに御理解いただきたいと思います。  結論から申しまして、私は将来わが国において増税は不可避であろうと考えております。理由は幾つかございますが、一番大きな理由は、現在の財政赤字というものはやはりこれは構造的なものであろうと。仮に完全雇用になったとしても赤字が残るという意味で、完全雇用赤字であろうと考えております。したがいまして、循環的な赤字ではなく、景気が回復して自動的に解消するという赤字でもない。したがって、構造的に赤字が積み重なる体質ができております。したがいまして、これをいずれかの時点において解消する方向に持っていくべきである、これが第一の理由でございます。  第二は、当然このように積み重なって累積してきます言うなれば過度の財政赤字というものは、さまざまな弊害をやはり与えるであろうということであります。これに関しましてはいろいろな方がもうすでに申しておりますので詳しくは触れませんが、たとえば当然のことクラウディングアウトの心配が出てまいりますし、財政の本来持つ資源配分機能を阻害されるというおそれもありますし、あるいは財政規律の弛緩を通じまして財政支出がむだ、浪費といった視点で支出されるといったような心配も大いにあるわけであります。  したがいまして、当然ある時点財政のバランスの回復に努めるべきであろう。この時点というのは、今後ある程度経済が回復した、あるレベルに達したときであろうというふうに理解しております。  したがいまして、中長期に見まして増税というものを避けられないということならば、こういった課題を抱えつつ短期的な、たとえば五十三年度予算といったようなものの問題も考える必要があるだろう、このように考えております。  このためにまず第一に念頭に置くべきことは、将来どのぐらい財政赤字というものが出てくるのであろうか、そういった予想され得る姿というものを念頭に描くことであろうと思います。たまたま大蔵省で財政収支試算というものを提出いたしまして、国会で問題になったのをわれわれ新聞報道等々で承っております。しかし私の感じでは、だれが試算をやりましても、程度の差はあれ、あのような結果がいずれは出てくるのではないか。つまり、高度成長というものがもう考えられないという以上は、試算の前提を幾つかかなりドラスチックに変えても、将来積み重なってくるであろう財政赤字というものを避けられないであろうと、こういう感じがいたしております。したがいまして、その試算のいろいろな諸過程の吟味あるいは不備、これは十分あると思いますが、その指摘より、より重要なことはやっぱり将来財政赤字というものが実態として出てくるんである、これを避けられないのだというそういった認識を持ち、その財政赤字の実態というものを直視して今後の財政運営というものを考えるべきである、このように考えております。  したがいまして、このようなかなり厳しい状況で今後の財政運営を考える必要がある。その視点から一番やはり重要なのは、財政規律とフィスカルポリシーというものを何か両立させるような方向で考えなければいけないということであろうと思います。と申しますのは、わが国経済、特に民間の経済は昔ほどの活力はございません。したがいまして、財政の出番が今後出てくる回数がますます多い、避けられない。そうなりますと、財政による景気の刺激というものが常に問題になる。これは財政赤字の解消の問題、言うなれば財政再建と当然矛盾してきます。今後こういうことが非常に大きな問題になるという以上は、この両立というものが考え得るならば考えられなければいけない一つの条件だろうと考えております。  そこで、可能な条件はありますが、それはかなり厳しい条件、それでかつこれは一つしかないであろうと考えております。それは財政をいかに景気引き締めに使えるかということであります。と申しますのは、財政を刺激的な方向に使うのはいとも容易でございますが、財政を引き締めの方向に使うのは当然のこと増税、歳出削減あるいは抑制、そういった政策の選択になるわけであります。これは国民に苦痛を強いる、言うなればなかなか政策的にかつ政治的にもとりにくい政策の選択になります。好況期に財政を引き締め的に運営いたしましてそれで余剰を造出し、その余剰でもって過去に生み出しました財政の赤字を相殺するという、そういったルートをつければ、恐らく財政の規律とフィスカルポリシーというものはロングランでは両立するはずであります。あるいは景気の一循環でもやり方によっては両立すると思います。したがいまして、何度も申しますように、かぎは、いまの時点より今後景気回復が現実になり、かつ景気が過熱気味になり、インフレへのおそれが出てきたときに、そういった不人気な政策をどれだけとれるかというところに今後の財政運営の大きなかぎがひそんでいるような気がいたします。したがいまして、現在景気刺激から減税というそういった主張は、裏返せば景気が過熱ぎみになったときに当然増税といったような言いにくいことも政策のプログラムにのせなければいけないという、そういったつながりがあるわけでありまして、仮にその増税というものを避けて通らなければいけないという主張ならば、現在景気刺激という視点から減税というものは余り大きく声を大にして言うべきではない、このように考えております。これが第一の問題。  第二は、先ほど申しました不公平税制租税特別措置、それをどう考えるかという視点でございます。私の立場から申しまして、増税が不可避と考えますと、今後この増税をどういうふうな具体的なルートで検討するかというところが次の問題になってくるわけでございます。先ほど木下先生もおっしゃいました昨年秋の税調答申以来、不公平税制是正というのは今後の増税のプログラムの大前提になっているということは、これは国民一般に広く認められていることであろうと思います。租税特別措置法もこの不公平税制是正という一環から取り上げられるべきであると、事実そのように取り上げられているんだろうと思います。  そこで、まず一般論といたしまして、租税特別措置法に関しまして私は次の二点を主張いたしたい、強調いたしたいと考えております。  第一点は、原則として私は租税特別措置法を認めるべきではないと考えております。理由は簡単でございまして、先ほど古田先生がコストという言葉で御説明になりましたが、三つほど御指摘になりましたが、その第一点が一番高いコストでございまして、税制の生命でもあるというべき課税の公平というものを租税特別措置法は大きく乱す、そういった要因になるからであります。課税の公平というのは、税制を一般的に広く包括的に適用することから出てくることであります。したがいまして、税制の一般性、包括性というのが一番重要な条件になります。ところが、特定のグループ、特定の経済行為あるいは人々、そういったものに特に限定いたしまして優遇措置を与えるという措置は、必然的に税制の不公平を招くという点でありまして、この点を強く主張したいわけであります。と申しましても、世界各国の事情を見ますと、租税特別措置を一〇〇%使うなとまでは言い切れないと思います。そこでその存在を認めるときは、あくまで原則を踏みにじる例外的な措置であるという立場を堅持すべきであります。したがいまして、その適用の期限あるいは対象の範囲などは厳しく条件をつけ、期限切れのときは一たん廃止する、安易に継続しないといったような、そういった歯どめも必要であると考えております。要約して言いますれば、臨時的な性格というものをあくまで特別措置にはつけておくべきである。そういたしますと、現在日本の経済の大きな目標から言いまして重要なのは、恐らく省資源とか省エネルギーとかいうものに限られるのではないか、このように考えます。端的に申しまして、私が認める言うなれば許容範囲はきわめて狭いと言わざるを得ません。  これに関しまして、昭和三十九年十二月に税調で出しました、これもしばしば引用されておりますが、租税特別措置を廃止するときのいろいろな理由あるいは継続するときの原則というものが公の文書になっております。これをもう一度思い起こすべきであろうと考えております。  それから、租税特別措置に関しましてもう一点主張したい点は、タックスエクスペンデチャーという概念を強く打ち出すべきである、つまり直訳すれば租税経費というタックスエクスペンデチャーですね。これはアメリカを中心に最近財政学界でも広く取り上げられております。過去二回ほど出席いたしました国際会議でも、これが各国の参加者の関心を呼び共通テーマになりまして、その意味では世界的な問題になっていると言えると思います。  これはどういうものかと言いますと、租税特別措置というようなものは隠れた補助金である、つまり租税側から支出されるエクスペンデチャー、支出であるという視点導入するわけであります。  わが国では、どうも過去に余りにも安易に税制というものを政策手段に使い過ぎてきたきらいがあるというふうに私は考えております。これが過去の租税特別措置の大きな拡張につながった原因であると、このように思います。そこで、こういった視点から重要なことは、タックスエクスペンデチャー対直接的な補助金、つまり英語で申しますとダイレクトサブシディという選択を常に考えるべきである。一定の財政資金を有効に使おうといったときに、税の方でまけてやるか、あるいは一たん取って支出の方で補助金あるいは移転支払いで払うか、そういったことを一つ一つ対応をつけて考えるという考え方が重要であります。つまり効率的な公平的なそういった視点から財政資金を使うときに、そうむやみやたらに税の方でまけてしまうのがいいかどうかというのは、当然のこと再考の余地があるわけであります。たとえば、税の方で零細企業あるいは弱者救済といった形でまけるのも一つの方法とは思いますが、それを一たん取って、補助金なりあるいは社会保障で還元するということも十分考えられる、この方が効率的であり公平であればはるかにこの方がいいわけであります。日本の予算編成のプロセスにおきましては、余りこのタックスエクスペンデチャーの地位が予算の中では高くございません。アメリカとか西ドイツではすでにこれが予算編成の中にかなりコミットしております。したがいまして、失われる財源といった視点から、予算編成プロセスの中でもこの租税特別措置財源の関係というものをもうちょっと検討してもいいのではないかという印象を持っております。  この租税特別措置法に関しましては、要約しますと、今後たどるであろう日本経済の進路から考えまして、過去にとったような資本蓄積とかあるいは輸出振興とかいった特定の政策目標から税制で優遇するといったようないわゆるタックスインセンティブの役割りはもう使命が終わったんではないかと、このように考えております。これから必要なことは、税制の公平という視点を大きく打ち出して、国民全体が納得できるようなそういった税制にすることで、それこそが今後の増税ということが避けられないとなったいま、国民に対する一番大きく政策当局がやらなければならない務めであろうというふうに考えております。かかる意味では、ここ数年間政府あるいは財政当局が租税特別措置法整理合理化ということを促進されておりますが、この努力は大いに評価すべきであるし、今後不退転の決意でもってこの方向を一層推進していただきたい。つまりこの方向と逆行するようなことをすべきではないというようなことをここで意見として強く述べたいと思います。  最後に、きょう取り上げました第一の問題と第二の問題の関係でひとつ結論をつけますと、不公平税制ということが大きな話題になり、これは絶対に是正しなければいけないことでありますが、これを解消したからといって、将来起こり得る財政赤字の解消に必要な財源が十二分に出てくるとは当然言えないわけであります。したがいまして、やはり今後は税制をひとつ公平なものにして、広く一般の国民大衆に負担をお願いするというかっこうの税体系にもっていかなければいけない。よく言われますように、日本の租税負担率はまだまだ国際比較の点から低い、これだけ世界的に注目される国民としてはまだまだ低いわけであります。したがいまして、まだ私は租税負担率を引き上げる余地はある。ただいろいろ条件はございます。そういった視点で、税制改正というのを今後考えていくべきであろうと、このように考えております。  終わらしていただきます。
  8. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) どうもありがとうございました。  以上で参考人各位の御意見の陳述を終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 福間知之

    ○福間知之君 二、三各参考人にお伺いしたいと思います。  まず、木下参考人でございますが、先ほどの税調の代表というお立場から、いろいろお説を伺いました。その中で、中期答申については考え方としてその基本をさらに堅持しながら今年度税制改正、あるいは将来に向かって改革を推進していきたいということが妥当と、こういうふうなお話でございました。今回のこの租税特別措置、先ほども古田先生のお話にも出ていましたように、今年度改正に伴う税収は四百九十億程度だと見積もられておるわけでございます。昨年度、平年度でございますが二千三百四十億円、こういうことで約四・何分の一ぐらいの税収増にしかならない。改正の項目はわりあいに多うございますが、金額面では昨年に比べてかなり減っているということで、少しこれは不十分ではないかというふうに私は感じるわけでございますが、税調の方ではどのようにお感じになっておられますか。  それから、古田参考人の方にお聞きをしたいと思いますが、先ほどのお話の中で大変参考になるお説を拝聴いたしました。なかんずく一般的にいわれている消費税創設問題につきまして、しからば古田参考人の場合は、わが国の現状に照らしまして、あるいは国民の気持ちということも先ほど述べられましたけれども それ以外に中小企業が非常に多いということ、あるいはまた流通機構が大変特殊日本的であるということ、そういう前提で考えた場合に、古田参考人は、導入するとした場合に、EC型とかいろいろなやつがありまして、お互いにこれ勉強をしているわけですが、どのような示唆を与えていただけるものか、お伺いをしたいと思います。  それから、最後石参考人にお伺いしたいと思います。不公平税制是正ということではきわめて明快な御見解が示されました。もちろんそういうことを前提に税調の方でも考えておられることだろうとは思うんですが、そういう立場で今回の租特の改正について、木下参考人と同じような点でお伺いをしたいと思うんです。十分これはもっとやれるんじゃないのか、やるべきじゃないのか、こういう点であります。  それからそれに関連しまして、投資促進税制が今回時限的に導入されようとしておりますが、私は少なくともその効果についてやや疑問があるんですけれども、どのようにお考えかということ。  それから、これは三参考人ともそうでございましたが、時間があれば触れていただきたいのは、今回まあ所得減税をめぐりまして、衆議院審議段階で与野党間で一定の結論が出ました。あれをめぐりまして、予算委員会は参議院でも今日続いておりますが、当大蔵委員会でも、かねがね公共投資中心によるその景気浮揚への波及効果と減税による波及効果というものをめぐっての議論があることも御承知のとおりであります。私は、まあ所得減税というものは今回のように三千億程度では余り意味がない。やはり一兆円以上の水準のものをやるべきではないのか。公共投資に数兆円の金を投じるならば、その波及効果より若干少ないかもしらないけれども、一兆円ぐらいをこちらの方へ回すべきじゃないのかと、そしてまあ景気というものは、厳に事業の実績ベースが上がっていく、仕事量が拡大する、資金の回転が速まる、結果として雇用も一定水準が拡大するということをもってその公共投資が緊急用には最大のものだといって割り切るには、いささか今日の日本の経済の体質から言っても問題なしとしない。むしろ過去四年間の景気浮揚の実態、あるいはまた政策的ないろんな手段、効果というものを見れば、この際思い切って気分を転換するためにも一兆円水準の私は減税がやはり効果があるんじゃないかと、こう考えておったんですが、いまやそれもむなしい願望にしかすぎなくなりましたが、これはお三方、ひとつ御意見があればお聞かせ願いたいと思います。
  10. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 第一点でございますが、昨年度に比べて五十三年度租税特別措置の整理に基づく増収措置が不十分ではないかという御指摘であろうと思います。恐らくそれば、企業関係の特別措置の整理に基づきますところの増収は五十三年度で四百九十億になっておりまして、これは昨年に比べますと百五十億程度のふえ方でございますから、企業関係の特別措置の整理というのはいささかもその勢いを衰えさしておるんではない。ただ問題は、五十二年度に利子・配当に関する課税源泉率というものを従来の三〇%から年次計画で三五%に引き上げる等の措置がございましたので、租税特別措置法の緩和といいますか、緩和に基づくところの増収が昨年度は千七百五十億ほどあったと考えております。したがって、それを合計いたしますと二千億を超える増収措置租税特別措置の整理によって行われたわけでございます。ことしは利子・配当の問題は昨年と同じ源泉率三五%を維持しておりますから、新規に増収措置が表には出ておりませんけれども、しかし中身といたしましては、私は五十二年度に増して五十三年度は整理が進行しておるというふうに考えております。  それから第二点は、最後に御指摘の所得税の減税をことしもやるべきではないか。  まず税調審議の中から申し上げますと、税調の中でも、実は五十三年度税制改正につきまして、一つは個人消費を伸ばすために所得税の減税をしろという御意見、それからもう一つは、物価の上界について物価調整の意味での所得税の減税という、論拠は異なりますけれども所得税の減税を主張される意見がございました。しかし、全体といたしましてまとめ上げられましたものは、大多数の意見所得税減税には消極的であったということから、あのような答申になった経緯がございます。  私自身の意見をそれにつけ加えますれば、私はいま個人消費をふやすために所得税を減税するということの効果はきわめてわずかである。言いかえれば、個人消費を決定する要因というのはさまざまございます。税引きの所得、いわゆる可処分所得がその一つでございましょう。第二はその個人が持っておる、言いかえれば将来の見通し、その所得が将来とも継続していくかどうか。あるいはそのうちに失業するのではないかという心配等々の問題で、普通に恒常所得仮説と申しておりますが、その要因が個人消費を決定する第二の要因であろうと思います。それから第三の要因は、個人所得はまた個人が持っておりますところのさまざまな資産の保有によって決まると。所得は同じであっても資産をたくさん保有しておる人は消費が大きいというような関係がございまして、いわゆる消費関数に関する議論というのは、その三者をやはりあわせて考えなければいけない。  ところが、いまから十年あるいは十五年前の議論というのは、どこの国でも、可処分所得をふやせば個人消費はふえると。そしてそこにいわば消費性向というものを掛け合わせますれば、減税によってどのぐらい個人消費が全体として喚起されるかということを容易に計算できたわけでございますが、御承知のとおり、最近は今後の所得の動向に対する見通しがきわめて不安定でございます。いつ失業するかもしれないという問題もございます。それからまたごく最近は、私どもが注意しなければならぬのは、個人消費の動向について非常に大きな影響を持つものは、一つは価格効果であって所得効果ではない。言いかえれば一般的に価格が下がってくると消費がふえるという傾向が西独や米国その他の例ではっきり出てきております。わが国でもいまの物価上昇率の低減が相当長く続きますれば、私はこの傾向がはっきりと出てくるのではないかと思います。そのように、個人所得をふやすために所得税の減税をする、言いかえれば可処分所得をふやしてやるという考え方は現在では余り強くない、余り強い効果を期待できないというのが私の意見でございますので、その見解から申しますと、いまの財政状況を全く無視して、しかも所得税こそ税制の中で中心を占めるべき最もいい税だと私は思っておりますから、そういう税の地位を維持していくためにも、所得税減税にかわる個人消費喚起の方法があるならばその方がよろしい。所得税減税で個人消費を刺激しようというのは非常に安易であるというふうに解釈をしております。
  11. 古田精司

    参考人古田精司君) 先ほど御指摘ございましたように、わが国への消費税創設に関しましては、わが国の現状に即し、かつまた、中小企業あるいは流通機構の特殊性をも考慮した上で導入を考えるべきではないかと、そういう御指摘がございました。全くそのとおりだと、そのように考えております。  先ほど私が申し述べました一般消費税に関する意見は、実は昨年まで二年間かかりまして六、七人の研究者で共同研究をいたしました結果の結論でございます。それをまとめまして、先ほど私の意見として実は申し上げたわけでございます。  その際、やはりわが国一般消費税導入した場合、国民性にどの程度マッチするのかという点で種々やはり議論が交されました。一番卑近な例を申し上げますと、先ほど所得税に関しましてプライバシーの点を挙げました。たとえば国民がプライバシーと公平というものをどういうふうに考えているのか、もしオルタナティブとしてどちらかとれということになればどちらを国民は選ぶだろうか。私は率直に申しまして公平を選ぶと確信をいたしておりましたんですが、実は学生十人ほどと議論しておりまして、ちょうどいい機会だと思いまして、諸君ら目をつぶってほしい。いま所得税付加価値税かという議論をやってきたけれども公平かプライバシーかという問題になった、そこで率直に聞きたいけれども諸君らはどっちをとるのか、人の意見参考としないで自分の意見で答えてほしい、だからここで目をつぶってほしい、そして手を挙げてほしい。そして結果を調べましたところ、驚いたことにプライバシーが八でございまして、公平が二でございました。それを私がその十人の学生に告げましたところ、オピニオンリーダーと思われる学生が手を挙げました。先生、いまの結果はおかしいと思います、どこがおかしいんだと聞きましたら、私は十人が十人公平よりもプライバシーをとると、こう思ったと。これは偶然といたしました。私としては非常に奇異な体験でありまして、世代が違うと物の受け取り方もこれだけ違うのかというふうに考えました。したがいまして、先ほど御指摘のとおり、一般消費税導入する際に、特殊日本的なこの状況の中にどういうふうに抵抗なくといいますか、あるいは国民の方がそれなりの理解をもって受け入れてくれるかということは非常に重大な問題だと私も考えております。ただ、先ほどの例で申し上げましたように、世代間でやはり価値観がいま微妙に移動しつつあるように私には受け取れます。したがって、付加価値税がなぜこれまで——一般消費税がなぜわが国においてすんなりと理解されなかったかという点につきまして、やはり私は公平という問題もさることながらむしろプライバシー、つまり付加価値税がもし導入されますというと、企業にとってのプライバシーが侵されるという点が一つ重大な問題として、余り表面だって議論されておりませんけれども、あるんではないか。そういたしますと、言ってみれば、たてまえでは賛成しながら本音はやはり企業のプライバシーが税務署によって侵され、これは大変厳しいというところで、最も近代的な租税であると言われているような一般消費税について、たてまえでは賛成しながら実際には受け入れられないという点が強く働いているんではないか。先ほど中小企業についてはどうか、あるいは流通機構についてはどうかというふうな御指摘がございました。確かに、たとえば流通機構で申しますと、自動販売機でコカコーラは百円玉入れますと現在ではするっと一本出てまいります。しかし一〇%の付加価値税導入いたしますと、それに加えてもう一つ十円玉入れないと出てこない、そういうふうな事態になりますと付加価値税に対する反応というのも、これはやはり消費者においても複雑な反応が出てくるんではないか、そういった細かい問題は確かにございます。しかし繰り返し申し上げますと、新税はやはりどんな新税でありましてもこれは悪税でございます。ほかの税金が入ってくるときでもやはり抵抗は大きいかと存じます。その意味で、私ども一般消費税が最も近代的な租税であるという意味で、かつてイギリスの財政学者が、イギリスの税制というのは言ってみれば取れる税金から取っていったモニュメントのようなものである、理想的な税金というのはほとんどないというふうな悪口といいますか、批判をしていたのを思い出すんですが、わが国の場合でもそういった面がないとは言えない。その意味では、一般消費税についてはわが国の現状に合わせて考えろという先ほどの御指摘は全くそのとおりでございまして、さらに一層こういう問題を考えていきたいと私も考えておりますし、また国民の間でも議論をしていただきたいと、そう考えております。  それから第二点といたしまして、先ほど公共投資か所得減税かという、この波及効果を含めてどちらをとるべきかというふうな御質問がございましたが、私は、先ほども木下先生御指摘がございましたその線で考えております。つまり、現在問題になっておりますところの所得減税というのが、あくまでも物価調整というよりもむしろ景気調整じゃないか。その場合、私も大学の経済学の教師の一人でございまして、どの教科書を見ましても、公共投資と減税を行った場合にどちらが景気調整の効果が大きいかといった場合に、私も教壇で、乗数効果は限界貯蓄性向の逆数である、一番簡単に申しますとそういうことになりますが、その場合に、減税の場合には限界消費性向が分子にくるわけでございます。したがいまして、限界消費性向が一より小さくプラスである限り、これは乗数効果は公共投資の方が大だと言わざるを得ないわけでありまして、そういう立場から申しますと、先ほど御質問ございましたような、ここで気分転換をする意味で一兆円の減税が必要ではないかという御指摘がございましたけれども、気分転換に確かに役に立つかと思いますけれども、しかし所得を上に引き上げるような力というのは、先ほども御指摘にありましたけれども、現在の段階では余り多くを期待できないのではないか、そういうふうに考えております。
  12. 石弘光

    参考人石弘光君) 二点ほどお答えする義務があろうかと思います。  第一点は、租税特別措置整理合理化をもうちょっとやれたんじゃないかということでありまして、実は正直申しまして、いろいろ資料をいただいてその検討はしたんでありますが、非常にこの法律自体複雑でございまして、われわれ部外者が見ましてもどこがどうだということはなかなか言いにくいわけであります、はっきり申しまして。ただ数量的に見ますと、先ほど御指摘がございましたように、どうもずっと努力していたのを数量的にはかった場合には今年度落ちていると、全くそのような気がいたしておりまして、私の年来の主張から申します、原則としてなくすべきだという主張から見れば不満は残ると、正直そういう気がいたします。一番やっぱり不満が残っておりますのは、俗に言う医師優遇税制のところがそのままことしも残されたということは、やっぱり庶民的な感情から申しましてどうも何となく釈然としないものがある。  それから、投資税額控除が入ったということでございますが、これも本来的な私の考えから言うと望ましくないわけでございますが、あえてサポートする論理を持ち出しますと、省資源とか省エネルギーとかいったものに対象が限られているということと、それから暑気調整、特に景気刺激というのはいまや国民的な政策目標の一番高い順位につけられておるという点から見れば、たった一年間のことでありますし、認められないこともないんじゃないかというような気がいたしております。一直線にいろいろなことを改正しようといたしましても、やっぱりその途中ではジグザグのコースというのはたどらざるを得ない、その一環ではないかという気がいたしております。  第二点は所得税の減税でございますが、私はこれに関しまして大きな不満を持っております。不満は額にあるのではなくてその性格がきわめて不明朗というか、わからぬというところに不満があるわけでございます。ちょっとその点を御説明申し上げますと、やるならばぼくは、景気刺激ということで一兆円減税あるいは二兆円減税というような非常に大きな規模の減税しかなかった。今年度のように三千億円程度の減税というのが一体何で出てくるのかがよくわからなかった。はたから見ていますと、どうもこれは言葉が過ぎるかもしれませんが、どうも政治的妥協の産物ではないかというような気もしていたわけでございます。なぜ三千億円程度の減税というのが意味がないと私が感じるかと申しますと、一つは、何回も申されますように、景気調整意味は恐らくないだろう、三千億円程度のものでは。したがって、仮に三千億円程度の減税をしなくても景気の足を引っ張らないだろうといった意味で、その辺を景気調整とひっくるめるのは無理がある。それから、しからばどういう目的を強いてつけられるかというと、物価調整減税ではないかと思います。ぼくはここ数年主張していることは、物価調整減税というのはもうやめてもいいんじゃないかと、こう思っておるわけであります。つまりあれは高度成長期の過去の遺産でございまして、既得権益化しておりまして、毎年何かやらないとちょっと所得税改正として横綱が何か、ちょっと目玉がないような気になっておりますが、あれは要はやっぱり既得権益化しておるんですな。これから、私の中長期的な視点から申しますと、やはり所得税を中核にした負担をお願いしなければならないという視点から言いますと、実質的な負担になる、つまりインフレのふくらんだ部分を減らさなきゃいけないという点をしなければ実質的な増税になるわけでありますが、それもあえてするなということは、そういった意味負担をお願いするという方向と逆行することを短期的にさほどやる必要はないのではないかという印象を持っているからであります。したがいまして、三千億円程度の所得税減税というのはそういった性格の不明朗さがどうしてもぬぐい切れないので、その辺がどうも釈然としない。ですから、選択としてはオール・オア・ナッシングでありまして、一兆円、二兆円規模の大規模でやるかあるいはゼロであるかという選択を考えていたのでありますが、前者の方はちょっと私の主張から言いますとどうも踏み切れない要素が多々あるわけであります。いまやるということではなくて、これからの景気の推移、つまり公共投資ということをいま何といっても効果の浸透ぐあいを見ているわけでありますからしばらく待つべきでありますし、そのときでも相当な覚悟が必要ではないかという気がいたしております。  それから最後にもう一点だけ。七%の経済成長というのをまず前提にして大型予算にしてわあっと公共投資一点豪華的にやってきた景気刺激策に対しまして、もういまとなってはしようがありませんが、やはりぼくはそれほどまでに公共投資に金をかけるならタックスリベート方式の所得税に回すということもあったんではないか、選択の幅としてですね、そういう感じを持っているわけであります。まあそれが私の率直な意見でございます。
  13. 藤田正明

    ○藤田正明君 関連でちょっと質問させていただきますが、先ほど来のお話を伺っておりまして、確かに所得減税よりも公共事業中心の投資の方が暑気刺激になっていくであろう、それはそう思います。ただ、五十三年度予算景気刺激ということを中心課題といたしておることは間違いのないことですが、景気刺激を中心課題としながらも、そこへ公共事業に大量に予算をつけた、これが果たして——乗数効果というふうなものが昔のようにこれはあるわけじゃありませんし、一・四とか一・六とかそんなことを言われておるような次第ですが、私はそれほどにも実はないんじゃないかというような気がするんです。  と申し上げるのは、建設業というもの、まず第一に建設業が受注をするわけでありますから、この建設業の許容受注範囲といいますか、消化能力といいますか、そういうものに非常に限定がされておる。たとえば、不況産業の中の造船業なんかの人々が建設業の方に移動していくかというとこれはなかなか移動しない。あるいは円高不況による中小企業の人々が雇用面において建設業の中に吸収されるかというとこれはなかなかしない。一見、造船の溶接工あたりは建設の溶接と一緒じゃないかと、だからどんどん移れるじゃないか、こういうふうに一見考えられますけれども、実際問題としてはなかなかそれは困難であります。いろいろ私も調べてみましたが困難です。いま申し上げましたような建設業が乗数効果が昔のようにはないということが一点。それからまた消化能力にはなはだ問題がある、そして雇用面においてもそれほどの吸収力はない。としますと、私はこれほど建設あるいは公共事業に大量に集中した予算案について、景気刺激の面において疑問を持つんです。  じゃ、しからば所得減税にしていいか、私は所得税減やはり——各参考人の御意見どおり、これは乗数効果も乏しいし、そうしてまた線香花火に終わるおそれも多分にあると、かように思いますので、それよりも投資減税といいますか、それからまたスクラップ・アンド・ビルドと言いますか、そういう方面に助成金なりうんと金を使った方が産業の再構築、低成長経済時代の再構築という意味におきましても有効ではないか、かように思うんです。この点についてひとつ御意見を伺いたいことが一点。  それから第二点は、将来のことでありますが、これはもちろん景気が相当な刺激を受け、そして、私は七%成長なんというものは絶対のものじゃないと思うんですが、それに近い成長を上げないとこの高度経済成長から低経済成長への移行が十分にできないだろうと思うんです。それは雇用問題においてもしかりですね。ですから、国際公約とか国際的な約束であるとかないとか、そんなことは問題じゃないのであって、七%近い成長をやらざればこの大きな転換はできないと、それも数年間続いてそういう成長をやらなくちゃならぬと、かように思うんですが、そういうことで、財政主導型から民間主導型に逐次移行していくわけでありますけれども、その中において増税もこれまた必至であると思うんです。しかし、私はその増税の意義はある意味でもう福祉増税じゃないかと思うんです。いまはアメリカでも大変福祉の問題で、福祉後進国といわれるアメリカにおいて福祉で財源が行き詰まってしまっていると、非常にカーター政権も苦慮しているようでありますが、いまに日本もこれが大きな問題になるわけでありますから、要するにエクスペンシブな政府よりも安い政府を望む、当然であります。そうしてまた支出を少なくしていく、そして増税もなるたけ少なくしていく、そこで均衡のとれた財政というものをつくっていかなきゃならぬわけでありまして、支出を少なくするという意味においていまのエクスペンシブなガバメントをチープガバメントに直す、それとともに福祉のようなものをもう一度再編成してみる必要があるし、福祉の財源を均衡させる必要がある。ですから、掛金をふやすのもいいでしょうし、あるいは金持ちの組合と貧乏な共済組合と一緒にするのもいいでしょうし、いろんな方法がこれはあると思います。あると思いますけれども、将来はそういうふうな福祉増税というふうなことをやっぱり考えざるを得ないと、かように思うんです。税制なり租税特別措置とはちょっと離れましたけれども、これについて、いまの二点の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  14. 木下和夫

    参考人木下和夫君) お答えいたします。  第一の問題は、先生御指摘のように、今回予算に計上されました公共投資が執行面においてスムーズにいくかどうかは実は私は現在のところ判断ができません。恐らく御指摘のいわば建設業関係のボトルネックと申しますか隘路と申しますか、こういうものが顕在化いたしまして、ある種の物価騰貴というものが建設資材の面で起こるかもしれませんし、また労務者の問題もこれは危惧するところでございます。しかし、今年度経済運営については公共投資を中心にして進もうと、しかも景気回復をねらおうということでございますから、これを完遂させるように持っていくことが私どもの任務ではないかと思っております。御指摘のいわば乗数効果ということになりますと、普通に私どもは波及効果あるいは拡大効果ということの中には、乗数効果といわゆる加速度効果と二つを考えております。乗数効果と申しますのは、先ほど古田さんが御指摘の限界貯蓄性向分の一ということでございますから、限界消費性向が高まれば高まるほど乗数効果は高まります。ところがもう一つの加速度効果の方は、さまざまの生産物に対する注文が出てきました場合に、それを増産するために投資をしなきゃならぬ。その投資が最終商品の需要の増加率よりも投資の増加率の方が高いということに注目いたしまして加速度効果というものを出しているわけでございますが、この両方ともわが国では非常に低くなっておるということでございまして、この点から申しますと、公共投資の拡張効果もまた減税の乗数効果もともに低いと言わなければならないと思います。したがって、この間でどの程度の効果があるかということの論争テーマとして取り上げられます場合には、当然時間の問題が出てまいります。最初の一年ではどうであるか、あるいは二年、三年と続けばどうであるかという議論になりまして、早急に景気を回復すべきであるといういわば与えられた命題については、われわれは一年あるいは一年半ぐらいで考えなければなりませんので、減税よりも拡張効果の強い公共投資を選ぼうということになったのではないか。短期的に早く拡張効果があるのはやはり公共需要、公共投資の需要ではなかろうかという判断であろうと思います。  そこで、それではかわりに投資減税をもう少し拡張すればよかったのではないかという御意見でございますが、御承知のとおり、今回案として出ております投資減税は、投資をどの程度促進し得るかという判断につきまして、率直に申しまして税制調査会議論の内部で確たる信念あるいは見通しというものがあったわけではございません。これはいかなる人にもこの信念はなかなかつきにくいものと思いますが、一部の計量経済学的な都合のよい計算はございます。非常にそれがよくあらわれるような計算はございますが、その計算の前提になっております与件につきましては私は必ずしも賛成しない条件が入っておりまして、これも私どもはそのままうのみにできないということでございまして、いまのところは企業が設備投資をどしどし今後ともやっていくというような条件は、経済の先行きの見通しがかなり楽観ムードに支配されて、そして中長期的に経済の拡張の意向が強くならなければ、とうてい小手先の技術で投資を促進するということはなかなか望み得ないのではないかと思います。しかもその上、すでにわが国は長い間かかって非常に過大の設備を蓄積してまいりました。この過大の蓄積をいわばスクラップしていく、あるいは廃棄していく、あるいはこれを発展途上国に譲っていって、新しい産業構造のもとで新しい設備の計画をつくるというようなことまで問題を広げて考えませんと、なかなか直ちにこういうような税制による減税による投資促進効果というのにも期待できない。ただ、ある種の気分をよくするということがこれはあろうかと思いますので、限定条件を付してあのような措置を私ども提言をしたわけでございます。  そこで最後に、福祉増税ということはお説のとおりでございますが、ただ問題は、これだけの福祉の財源が必要だから特定の税と結びつけるというような発想は、これはある種の国民の同意をかち得るにはいいかもしれません。使途を明らかにいたしまして、そしてその費用を国民負担していただきたいということは国民の方でも納得のいくことではないかと思います。しかしそのことが余りに進みますと、一般の税収をどのように有効に国家全体の見地から配分するかという、いわば財政民主主義の立場にある種の制約を加えることになります。やはり税は本来は一般財源であるべきであって、特定財源化するということは、特定の例外的な場合を除いては避けなければならない。その例外として社会保障の財源を特定の税収に求めるということは、例外としてならばこれは考えてもいいことではないかと思います。  それから最後には、御指摘のわが国財政はこれからもう少しチープガバメントの方向へいくべきだ、安上がりの政府でいくということについては私も異論はございませんが、それはむだを排除して、少なくとも民間の手で個人や家計が自分でやれることを政府が肩がわりしてやるというようなことがあってはなりません。当然、公共部門が担当すべき仕事と個人あるいは家計が担当すべき仕事というのははっきりと境界線をつけるべきであります。最近はそれが大いに乱れてきておるということに注目なさってそのような御意見をお述べになるならば私は賛成でございます。しかし、一般にわが国が先進諸国の一員として行動しております場合、経済の中に占める政府の活動範囲あるいは公共部門の比重というのは圧倒的に低いわけでございます。ほかの国は、国民総生産の三割とか四割という分を公共部門が担当しているわけでございますが、わが国はわずかに二割にすぎない。これはやはり、将来チープガバメントの方向に長い間かかって長期の目標として進むべきであるという議論に対しては、私は反対をする根拠でございます。生活が非常に複雑になり、国民の生活にさまざまの要求、新しいニーズが生まれてくるというような状況を考慮いたしますと、やはり政府の活動分野は現在の水準よりもむしろ高くあるべきであろう。これははっきり数字で申し上げるということは私にはできませんけれども、従来の二割が三割になっていく、あるいは三割五分になっていくというのは、これは一つの必然的な傾向ではないかというふうに思います。したがって、ごく短期にいろんな節約をいたしましょうと、むだを排除いたしましょうと、要らないことをやめましょうという御意見はよくよくわかりますけれども、長い目で見てその御意見のとおりに進むのがいいというふうには必ずしも私は考えておりません。
  15. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 参考人の皆さん、きょうはいろいろ御苦労さんです。  時間もございませんので、御答弁も簡潔にお願いしたいと思うんです。  まず木下先生に、投資減税とそれから住宅新築の場合の控除の問題ですが、私たちは投資減税の場合は、投資できる企業よりもむしろ過剰設備を抱えている企業が非常に多い。そういう中で省エネルギー、公害に限ったにしてもかなり企業間の格差を増大させるのじゃないか。住宅の控除の場合も新築だけで中古の住宅は関係ない、あるいはさらに家賃を払って生活している人には何らの家賃控除もない。そういう意味で、本来からいえばこういうものは不公平を増大させるものだ。しかし、いまは景気回復あるいは新築の住宅をふやすという目的のためには効果はあるわけで、したがってやむを得ないけれども、その本質においては不公平を増大させるという危険性もある、そういう点を率直に認められるかどうか。恐らく税制調査会の方向も、そういうような不公平が増大するということはあるけれども、一方でより景気の回復ということを優先させた結果ではないか、このように考えるんですが、これについての御答弁を。  それから古田先生にお尋ねします。先生は非常に税制そのものに相反する矛盾があると。その例として、少額貯蓄優遇制度とか利子・配当の分離課税制度とかそういう貯蓄を奨励する制度、一方では配当軽課、そういう制度のことにちょっと触れられたわけなんですが、恐らく私は、日本は諸外国に比べて非常に間接金融が多いわけですね。そういう点、やっぱり間接金融を助長するのか、あるいは直接金融の方向に、アメリカやヨーロッパのように持っていくのか、そのあたりがはっきりしないという意味ではないかと思うんですが、しかしそうすると先生としては、確かに同じ国の税制でありながら相反する目的を持っていることはわかるんですが、じゃどうすればいいのか、御意見を承りたい。  それと、ぼくはいつも思うんですが、生命保険の控除ですね。いつもわれわれ確定申告のときに生命保険でぱっと書くわけですが、あれなども実際いま生命保険にかけることが本当に必要なのかどうか。もっとやはり、たとえば次代に備えて教育に力を入れていくならば教育減税というか、教育費を控除するとか、その方がはるかに理念があるのじゃないかと、こういう意味で、あわせて生命保険の控除についての先生の御意見をお聞きしたい。  最後に石先生には、先生は増税できるときにやるという、国民にいやな選択を迫らせる姿勢があればこそ、減税できるときに景気回復のために減税をすることはいいと、これは私はわかるんですけれども、いわゆる高度成長のときは経済全体がある程度伸びていっておりましたから、不景気があっても次の景気がよくなるという、そういうときにはそういう考えが当てはまると思うんですが、いまはもう余り景気のよくなるということは、ちょっと資源やエネルギーの面からも考えられない。そうなると増税できる環境というものは実際余り来ないわけで、やっぱり増税できない環境の中で、結局国民なり企業なりあるいは政府なり、それぞれがやっぱりじっとがまんをしてそれを負担をしていかなければいけないんじゃないか。そういうことでまことに灰色の時代というか、そんな感じがするんですが、その点についての先生の御見解を承りたいと思います。
  16. 木下和夫

    参考人木下和夫君) ただいまの塩出先生の問題は、第一が投資減税の問題と住宅取得控除の問題でございますので、順を追ってお答え申し上げます。  投資税制の実施につきましては、税調では、御承知のとおり租税特別措置整理合理化を積極的に推進しておるところでございますので、企業関係の特別措置改正によって得られた増収分というものが投資促進税制導入のために減収になるというような事態があってはならないということをまず第一に非常に強く懸念をいたしました。また、この措置を採用するといたしましても、時限的な措置として一年間限りにとどめておくという苦策も打ったわけでございます。さらに、対象の設備を限定いたしまして、単に好況の、非常に調子のいい状態にある企業がこの恩恵を受けるということがないように措置を構ずると、またさらに、既存租税特別措置を重複して適用されることがないようにするというような歯どめをつけて、そういう条件のもとに、政策課題でありますところの景気浮揚に幾分でも役立てばという趣旨で私ども意見をまとめたわけでございます。したがいまして、いま申し上げました四つの条件は、いずれも先生御心配の、非常に景気のいい企業にだけ恩恵がいってそして不均衡を激化するのではないかという御心配はまずないようにという配慮が優先したことを申し上げておきます。  それから第二の中古住宅の問題でございますが、今回の住宅取得控除の拡張というものは、単に利子負担を軽減させようということを目的とするものではございませんで、本年度経済運営の基本にございますところの住宅建設の促進ということが景気政策からいっても、あるいはまた国民福祉の増加という点から見ても非常に重要な目標だということに集約して、検討のいわばポイントを置いたわけでございます。したがいまして、新築住宅の取得にかかるいまの制度を延長するという形でこのような実施を答申したわけでございます。したがいまして、すでに建設されました中古住宅の取得についてまでこの制度の適用を拡大するということは、発想の趣旨からして最初からなかったわけでございまして、この問題はむしろ税制の問題というよりも、一国の住宅政策全体との関連検討さるべきものと心得ております。  それからローンの問題でございますけれども、いま申しましたように住宅建設の促進が非常に重要な政策課題であるということから出てまいりまして、税制面でも住宅取得控除を拡充しようと、そして控除の最高額を六万円とするのが妥当ではないかという答申を出したわけでございますが、政府の案はこの答申案をそのまま御採用になったものと見ております。この拡充は、先ほど申し上げましたように制度改正の趣旨並びに所得税制の基本的仕組みとの調和ということを考えました上でのぎりぎりの線でございます。たとえば具体的な例を申し上げますと、給与所得が三百万円の人で標準家計の場合、所得税額は六万六千円でございます。いまの住宅取得控除は最高が三万円でございます。今回はさらに三万円の上積みをしたわけでございますから、六万円まで税額控除を認めるということになった。もう一度申し上げますと、所得税額六万六千円について、いままでは三万円であったのが三万円追加されて六万円になったと。これはある所得階層を前提にした話でございますけれども、実はこの六万円という数字を所得税の最低税率一〇%で還元して計算をしていただきますれば六十万円の所得控除をしたことになります。これは六十万円の所得控除をして一〇%の税がかかりますから六万円だけ控除が認められるということになりますが、この幅というのは私どもは現在の所得税の体系からいってもうぎりぎりいっぱいであって、これ以上に大きくするということはこれは無理なことであるというふうに判断をいたしました。そこで先生のお話の中で、これが本質においては不公平な措置ではないかという御指摘がございました。税制調査会議論の中ではこの住宅取得控除の拡充案全体について、これが不公平を助長するというような御心配をお述べになった方はいらっしゃいませんでした。ただ、現在の重点的な経済施策において、税制である程度のお手伝いをするならばこの程度がもうぎりぎりいっぱいで、これ以上にするとこれはやり過ぎだという感じはぬぐえないのでありますが、不公平を助長するというような御意見はなかったわけでございます。
  17. 古田精司

    参考人古田精司君) お答え申し上げます。  先ほど御指摘のとおり、租税特別措置が一方で間接金融を助長し他方では直接金融を助長する、一体どちらをとるべきかという御指摘がございました。結論を先取りさしていただきますと、租税特別措置両方をやめるべきではないかどお答え申し上げます。その理由でございますが、御承知のとおり、利子課税特例はこれは貯蓄増強を目的といたしております。現在の不況を顧みますというと、世界最高のわが国の貯蓄率、これが何とかして低い投資率に見合わせなきゃいかぬ、そういう事態にありながらわが国の政策当局が何とか、先ほど御指摘があったように、七%の成長路線に乗せようというふうに片一方では努力なさっていながら、片一方ではそれを阻害するような高い貯蓄率を助長するというのは確かにこれは矛盾しているんじゃないか、そういうふうに一方では考えられます。  それからもう一つ、配当軽課措置でございますが、これにつきましては昭和四十六年にすでに税制調査会ではっきりとした結論をお出しになっております。短い文章ですから読み上げさしていただきますと、一般的に見て企業における自己資本の充実が望ましいと考えられるにしても、このために税制上特別の措置を講じることは有効な手段とは言えないというふうにはっきり述べております。この場合、いたずらに税制を複雑にしながらその効果の定かでない配当軽課措置を廃止して、留保分、配当分に対する二本の税率を従来のように一本にすべきであるというふうに税調答申が出ております。私自身、法人税制をどうすればすっきりできるかというときに、まず租税特別措置を整理すること、これが手がかりになるんではないか、そういうふうに考えております。  それから第二の御指摘の点、生命保険料控除は必要かどうか、これをもっと現在緊急なニードである教育減税に向けるべきではないか、そういう御指摘がございましたが、私個人考え方といたしましては、生命保険料のみならず損害保険料、それから先ほどもお話がございました住宅取得の控除などもこれは整理合理化を進めるべきであると考えております。租税特別措置整理合理化という点で一挙になくせということを申し上げているわけではございません。そうではございませんで、たとえばほかの控除について見ましても、老年者控除とか障害者控除等ございますが、これは御承知のとおり社会保障的なねらいを持っておりまして、ただ税負担の軽減額が高額所得層になるほど大きくなるような所得控除方式がとられているんですが、そうじゃなくて、これをやめまして、むしろ税額控除方式に改めていく、そして一定額以下の所得に制限するというふうな措置をまず第一歩としておとりいただければ、この控除につきましても整理合理化の方向に歩み出すことができるのではないか、そういうふうに私としては考えております。
  18. 石弘光

    参考人石弘光君) 時間の関係で簡単にお答えいたします。  増税をいつやる、そういったタイミングをどうやってつかんだらいいかという御指摘だろうと思いますが、まさに私もそのことをいまから心配しておるわけでございます。と申しますのは、高度成長でございませんのでV字状に一直線に景気が回復するということはもはや望めないということを考えますと、いつまでたっても何かだらだらした景気の回復でありますと、その足を引っ張るんじゃないかというおそれがあって、増税に踏み切れないという事態は容易に予想されるわけであります。と同時に、増税ということはすべての国民が一番きらうことでありまして、増税ということを言いますと私の身内もえらい白い目で見るというような事態でございまして、これはなかなかむずかしいということは重々わかっております。したがいまして、従来の発想のように、ある程度、あるいはインフレ過熱ぎみで景気調整景気抑制的に使うという発想までは恐らく待てないだろうし、そういう事態は来ないかもしれない。ということになりますと、やっぱり過度の財政赤字は害があるということをよく理解を深めてもらうというルートから、その選択において増税というのをいずれ思い切った時点でやる必要があると。そのためには従来的な感覚はちょっとじゃまになるのではないかという感じがいたしております。
  19. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 どうもありがとうございました。
  20. 穐山篤

    ○穐山篤君 最初木下先生にお伺いをするんですが、私は最近いろんな会合に出ましてこういう質問をするんです。いま国会で税金の議論をしているけれども、来年度どういうものが上がるか承知していますかと、いろんな人にこう質問をしてみる。大体どうもビールが上がるかもしらぬというふうなことを言うのは十人に二人ですね。あと八人は承知をしていない。それから有価証券につきましては、相談する相手がごく限られておりますので全く知らないと。それから石油税につきましても、聞いてみると、ほう、そんなものがあるんですかというふうに、なじまない話が非常に多いわけですね。当然税金というのは、取る側あるいは納める側の合意が十分に働く必要があるわけですが、そういう意味でいきますと、今度の石油税なんかにつきましても非常に唐突とした感じがしないわけでもないというふうに思います。  そこで、一般消費税のことは大いに議論が始まっておりますけれども、今年度のものにつきましてはなかなか一般の納税者との間に合意がむずかしいという感じを受けるわけですが、税調審議の過程や、審議が終わって本格的に法律案になるまでの間に、やっぱり税調としても、あるいは政府としても、国民との合意を得るためのいろんな方法をとるべきだというふうにかねがね思うわけですが、そういうことにつきまして先生の考え方をお伺いをしておきたいと思うんです。  それから、中期あるいは長期の税制の中で一般消費税という問題は非常にウエートの大きい話です。これは仮の話ですけれども、四十何兆というふうな国債発行がないような場合には、多分一般消費税導入というのは、制度の上では議論があるでしょうけれども、ボリュームの大きい一般消費税の話はないんじゃないか。そういうことを裏返しに考えてみますと、税調というのは国の予算あるいは将来の財政の規模あるいは国債の発行などの問題についてどういうふうな考え方を基礎に置いて中期あるいは長期の税体制というものを対応しようとしておるのか。その点がどうもいままでのお話あるいはいろんな書物を読みましても明確でないわけですね。どちらかと言えば、政府からこれだけ銭が足りない、それを埋めるために何とか税金で考えてくれというふうな調子のことではないかと一般的には見られているわけですが、その中期あるいは長期の税制議論する場合の基礎あるいは前提条件というものについて、ひとつお伺いをしたいと思うのです。  それから、いままで税調から答申が出されたものは、まあまあ原則的には一〇〇%近い政府の提案になるわけですね。国会の勢力から言えば、政府が提案すれば大体通る。ところが政府の提案にもならない問題が、先ほどからも御指摘がありますとおり、医師の優遇措置の問題、これも再三再四国会の中でも議論されているわけですが、やっぱりそうなりますと税調そのものについての威信にもかかわることでありまして、取捨選択ができるなら取捨選択できるような税調の仕掛けにすればいいし、まあそういうふうに思うわけですが、特にこの問題についてこの段階ではこうしてほしい、あらねばならないという考え方が当然あると思うのです。そのことについてきちんとお話をいただきたいと思います。  それから、古田先生と石先生にお伺いをするわけですが、先ほどもお話がありましたが、法人税の場合、企業自己資本率が最近非常に落ちている。まあ実績でそうなっているわけですが、その場合に、たとえば去年から今回にかけて三回も四回もあるわけですが、公定歩合の引き下げというのが何回かありまして、戦後最低の利率になっているわけですね。これ客観的に言えば、企業にしてみればもうけの口になるわけですね。公定歩合の引き下げである一定の利息を払わないで済む。逆に言えば収入になるということになるわけです。その上に租特でいろんな措置をとる。特に輸出産業のような場合につきましては、公庫、公団から安い金利のものを借りてこれで商売をするというふうに、ある意味で言うと二重三重四重の優遇措置が特定な部分だけに作用をしている。しかし納税者の大部分、所得税を払っている者についての見返りがどうも公平を欠いているというふうに考えるわけですが、その点はどういうふうにしたらいいのか、お伺いをしたいというふうに思います。  それから、まだ日本人、所得税の場合にアメリカ、ヨーロッパに比べて担税力があるというふうに数字の上でも一応は明らかです。しかしこれはごく単純な比較計算でありまして、もう少し厳密に言えば、福祉の問題はどうなっているとか、あるいは税外負担をどういうふうに比較をするとか、たくさんの要素があるわけですね。ごく簡単なことを言えば、ヨーロッパ歩いておりましてほとんど水洗便所、ところが日本の場合には地方へ行きますと大部分水洗便所になっていない。ですから、当然のことでありますけれども、その負担が非常に大きいというふうなことも現実にあるわけです。ですから、比較する場合にどういう種類のもの、どういう内容のものを総合的に対比をして担税力が多いとか少ないとかというふうに言われているのか、あるいはこれから日本がヨーロッパに比べて、比較をする場合に、どういう範囲でそれを統計化したらいいのか、その点についてお伺いをしたい。簡単ですが、よろしくお願いします。
  21. 木下和夫

    参考人木下和夫君) お答え申し上げます。  明年度税制改正について国民が余り関知していない、あるいは知識が十分でないというような御指摘がございましたが、これは私の周囲におります女子供も全くそうでございまして、家へ帰って夕食の話題にすることを避けておりますので、恐らく新聞で読む程度か、あるいはいまベストセラーになっております先生の書物を拝見するという程度だろうと思います。  で、酒税につきましては、私はかねてたばこと並んで負担増加させる余地がないものかと考えておりました。私にとっては、この発案は突然あらわれたものではございません。  それから石油税については、しばしばお説のようなお話を承りますけれども、今後予想されます石油対策に関しては、国は膨大な資金を準備しなければならないということは、もう皆様御異存のないところであろうと思います。その場合に、現在ございますところの個別製品課税と並んで、広く石油に対して課税をするというアイデアは、実はこれは当然行うべきものであって、タイミングとしてはいま導入の時期としても非常によい。実は、個人的なことを申しますが、先般外国出張命ぜられましたときに、数人の外国人記者に聞きましたところ、非常にほめてくれました。私が予想します以上に、それはいいことをやったと言っておりますが、果たしていかがなものでございましょうか。これはやはり国家百年の大計としてお考えをいただきたい。言いかえれば、納税者にとってはそれはなきにしくものはないわけでございますけれども、今後のエネルギー問題の解決の一端というふうにお考えいただく余地はないものかと、あるいはこれから国民にそのようにPRをしていく、説得をしていかなければならないと思っております。  また、税調答申につきましては、文句が非常にかた苦しい、一般向きをしない文句ではございますけれども、これは新聞が競って一刻も早く新聞に出すようにしております。時には間違ったものを早く出すということもございますけれども、非常にこれは私は一般世論としては関心の深い問題ではないかと思います。したがいまして、現在のところは、国会の審議を通じまして、国民が次第に新しい年度における税がどうなるかを理解していくという方法に頼る以外に特別方法はないんではないか。たとえば私に審議状況が実はどうであったか、あるいはどのような税制改正が企てられておるかを話をしろということになりますれば、私はお断りせずになるべく率直に客観的な事実を申し上げるように努力をいたしております。  次に、一般消費税の実施の場合、あるいはそれを含めて今後の税制改正について、本年も含めまして、その背後にある経済情勢に対する考え方というものはどうであるかということでございますが、これは申し上げるまでもなく、五十年代前期の経済計画を従来は参考にいたしております。そして、先般発表されました新しい財政収支試算というものは、まだ税調では皆さん集まって説明を承ってはおりませんけれども、それまでの昨年に発表されました財政収支試算というものは、私どもは数字のそれぞれについて問題を展開するという形の取り上げ方はしておりません。中長期で見たわが国財政運営の方向というものはあれで大体尽きておると思います。あれは実は表現の仕方なりあるいは表のつくり方なりが必ずしもベストであるとは私も思いません。もっと簡単に国民にわかるようにというような配慮がなされてしかるべきだと思います。そのためにはもっと違うやり方をあのほかに工夫していくのが必要ではないかと思いますが、私が考えますところ、恐らくこれから——これは個人的な計算でございますが、いまから十年もたちますれば、大体累積国債の残高というものが二百七十兆から三百兆になると思います。これはあの収支試算とは必ずしも一致しておりません。これは人によって計算はさまざまでございますから、おおよそのところを申しますと、二百七十兆から三百兆ぐらいに累積国債の残高はなるだろう。このような状況というのは、当時の、いまから十年先の国民総生産を考えましても、大体その三割五分から四割でございます。このような事態というのは国の経済政策が全く無力化して金融政策が全く動かない。しかも、民間の設備投資を非常に抑え込む欠陥を持った財政構造ではなかろうかと思います。しかも、その年度の公債の発行高はいまから十年先では大体七十兆ぐらいになると思いますが、それは所得税税収額の二倍以上、言いかえると所得税税収額の二倍以上の国債を発行するというのが果たして財政として許し得るかという問題でございます。そのような問題は絶えず税制改正の横に置いてにらみながら議論をしなければならないし、また従来はそのような財政収支試算をにらみながら審議を進めてきたということを申し上げておきます。  最後は、税制調査会のいわば答申について政府がどの程度これを取り上げるかという問題でございます。これは新しくかつ古い問題でございまして、私すでに十数年間税調委員を務めてまいりましたが、途中上陸をいたしましたけれども、再び呼び出されてまた同じような問題にぶつかるわけでございますが、私の頭にありますのは、特に社会保険診療報酬課税特例是正でございます。これにつきましては答申の中に、「五十三年度税制改正において、この問題について何らの法的措置も講じられないとすれば、国民の政治に対する不信感はぬぐい難いものとなろう。当調査会は、ここに重ねてその是正を強く要請する。」と。実は私個人は差し出がましいのでありますが、もっと強い言葉を準備しておったわけでございますけれども、皆さんの御意見でこのような私自身にしては不本意な、やわらかい表現になりましたが、人によってはこれをやわらかいと見ない方もございます。精いっぱいの抵抗をこれであらわしたというふうにおくみ取りいただければ幸せでございます。
  22. 古田精司

    参考人古田精司君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、税を払っている者に見返りが特定の企業、特定の階層に偏っているのではないか、御指摘のとおりだと思います。そういった実は不平不満が、わが国だけではなくて先進諸国にも戦後数多く見られているということも事実でございます。したがいまして、財政学者の間でもそういった見返りの関係をもっと科学的に突き詰めようという動きが種々ございます。ただし、これは非常にむずかしい問題だということも御了解いただけるかと思います。いわゆる公共財貨というものがもともとこれは共同消費という形、また実態もそうでございます、をとっておりますので、この配分をどうするかという点もございますので、われわれの間ではまだ決着がついていないということを申し上げたいと思います。  そして、第二に御指摘いただきました担税力の大小、これを何とか統計化ないしは指標化できないだろうかというふうな御指摘がございました。これも実は私ども常々痛感している問題でございます。たとえば担税力につきまして、一人当たり所得水準という指標が従来使われておりました。しかし、私ども先進諸国の実態調査に出かけますと痛感いたしますのは、たとえば富裕税一つとりましても、あちらの蓄積とこちらの蓄積がかなり差がございます。そして社会福祉関係も調べてみますというと、一人当たりのストックがヨーロッパと日本では、これはもう長年の蓄積でございます、医師とか病院、看護婦それから保健所、そういったものを人口十万人当たり幾つあるかというのを調べましたが、先進国は大体横並びに同じところへいっているんですが、日本はがたんとストックの面になるとかなり落ちます。そういう点で、たとえば一人当たり所得がイギリスをもう日本は抜いたんだから、したがってイギリス以上の税負担を求めてもいいんじゃないかという議論はすぐこれ暴論だというふうに皆さんお気づきになるのは、一つはストックでございますが、もう一つは見返りという先ほど御指摘の点になるかと思います。たとえばせんだって、と申しましても大分前ですが、スウェーデンの経団連の副団長さんが日本へ来られたときにちょっとお話しする機会がありました。その副団長さんの所得税は一一〇%だというお話でした。つまり一千万円所得があれば税金は一千百万円払わなきゃいけない。一体どうしてそんなことが生じるのかと申しますと、日本にはない富裕税がございます。したがいまして、富裕税を加味いたしますと一一〇%という私どもの想像を絶するような税負担が生まれてくるわけでございまして、それでは経団連の団長さん文句を言っているかといいますと、確かに文句は申しますけれども、にこにこと文句をおっしゃっていまして、スウェーデンはそれだけ私はすぐれた国だと思うとまでおっしゃってました。もちろんそのスウェーデン国民は、一般国民はその面の見返りを受けているわけでありますんで、現在の福祉国家体制を支持しているのだろうと考えられます。もちろん福祉体制自体曲がり角に来ておりますこともこれも皆さん御存じのとおりでございます。御指摘の点は全くそのとおりでありまして、今後とも突き詰めるべき問題だと、かように私どもは考えております。
  23. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 石参考人、ありますか。
  24. 石弘光

    参考人石弘光君) 同じ質問でございますか。じゃ簡単にお答えしましょうか。  第一点は、特定の部門に軽減措置特別措置がどうも集中しがちであるというような御指摘との絡みで、その企業あるいは課税の公平をどう考えるかというようなことの御質問だったと思いますが、確かにその特定部門に偏っているというのは事実であろうと思います。それだからこそ租税特別措置というのは不公平を招きやすいという意味で、ぼくは廃止ということをかねがね主張しておるわけでありますが、法人税課税の公平と所得税課税の公平というのはまたこれ違うのだということをやっぱり強調しておきたい。つまり企業負担するということはどういうことかということが実はよくつかめないわけであります。したがいまして、法人税課税の公平というのを資本階層別に分けたようなあれで、個人の所得の階層別を分けたと同じような視点で見るのはちょっとできないのではないか、そういったむずかしさがあるということだけ指摘しておきたいと思います。  それから、より私にとって興味のあります御指摘は、国際比較の上で租税負担率の高低を比較しても本当の租税負担率の比較になっているかという、そういう御質問が第二番目にございました。事実ぼくもそうだろうと思いますが、現在見ますとけた違いに日本の対GNP比率の租税負担率は低いわけでありまして、いま言ったいろいろな文化の程度とかストックの程度とか入れて議論することも必要でありますが、けた違いに絶対的なレベルではありますが租税負担率が低いというのは、やはり低いといってもそう大きな間違いはないのじゃないかというふうに考えております。ただ、より正確な指標をつくるためには私はケーススタディーがやっぱり必要ではないかと考えております。  たとえば、私がスウェーデンにちょっと行って学会に出たとき、全く向こうの、スウェーデンの財政学をやって同じ年配で同じ国立大学に勤めているやっと議論をいたしましたら、おれは平均実効税率で四〇%近く取られておると、私はせいぜい一二、三ではないでしょうかね。という比較からわかりますように、もっともそのかわり社会福祉や何かで彼は医療費はかからぬし年金はあるし住宅も安いし、いろいろ便益はもらっておるということははっきり言っておりましたが、しかし租税負担率の点だけから見ると実に私は五分の一とか四分の一程度の負担率であると、これが一つのケーススタディーの比較であります。  法人税に関しましても、たとえばアメリカの税法を持ってきて日本に当てはめたらどうか。逆は逆といったような感じでちょっと個別にミクロのレベルで議論するということをおいおいやるとこの租税負担率の比較がもっと正確になるのじゃないかと、こういう感じがいたしております。
  25. 渡辺武

    ○渡辺武君 最初古田参考人に伺いたいと思います。  いまは一億中産階級化というようなことも言われておりまして、確かに終戦直後などに比べれば国民の所得水準が上がっているということは否定することのできない事実だと思いますけれども、同時に、その反面で大きな企業あるいは大きな資産家ですね、これの方が一般国民の所得水準の向上よりもはるかに急テンポに蓄積をふやしているということもまた否定することのできない事実だと思うんです。つまり別の言葉で言えば、富の配分の著しい不公平ですね、これが年々拡大しているというのがわが国の実態じゃないかと思うのですね。他方で、先生先ほど強調しておられました一般消費税あるいはEC型の付加価値税というふうに限定してもよろしゅうございますけれども、これを見てみますと、何よりも国民の消費ということに焦点を置いて、そしてそこからの税収を求めるというところに最大の重点が置かれていると見て差し支えないと思いますね。つまり別の言葉で言えば大企業企業活動、あるいはまた大資産家の蓄積活動というようなところが視点から除外されているということじゃないかと思いますね。ですから、私は結局一般消費者負担せざるを得ないような一般消費税もしくは付加価値税、これは現在年ごとに拡大しつつある富の不平等を一層激しくする、そういうものじゃないかというふうに考えているわけですが、その点どんなふうにお考えになられるのか。  それから、ドイツフランスなどで実態調査をして、それほど不平等はないんだという御趣旨の御説明もございましたが、私その現物は見ておりません。したがって、ものについては何とも申し上げることできないんですが、従来わが国消費税、間接税ですね、間接税の所得階級別の負担の状態を調べたものがあります。これは何よりも国民をそれぞれの個人に分けて分解して、そしてその所得の階級に応じての負担割合というものを算出する方式になっておりまして、企業活動というのは初めから除外されているというのが特徴なんですね。だから、いま大企業国民との間の富の格差拡大という見地からすれば、この分析というのは非常に片手落ちにならざるを得ないと。それでも、いままでの調査によれば若干の格差はありますね。まあ独仏などの調査がそういう種類のものであるとすれば、税の何といいますか不公正はそれほど大きくないというのも、これちょっと当たらないんじゃないかという感じもしているわけです。その辺もあわせて御見解を伺いたいと思います。  それからもう一点は、先ほど一般消費税メリットデメリットということを幾つか詳細にお挙げいただきましたが、伺っておりますと、私のこれは聞き違いかもわかりませんが、どうも税収技術上の観点からのメリットデメリット、そういう点を主として問題にされているようでございます。私はそういう点も全然問題にするに足らぬということを言おうとしているわけじゃありませんけれども、むしろ先ほど申しましたように、社会的な観点、あるいはまた国民的な立場からのこの問題に対する接近が必要じゃなかろうかというふうに思いますが、その点も御見解を伺いたいと思います。  それから石参考人に伺いたいと思いますが、いま申し上げましたような日本の経済及び社会仕組みということを前提にして考えてみますと、税及び財政の主たる機能ですね、これはやはり古典的な見解になるかもわかりませんが、私はやはり所得の再配分あるいはまた国民の福祉の擁護という点こそが、まさに現在のような時点では特に重要視されなければならぬ点じゃなかろうかというふうに考えるわけです。もちろん財政のフィスカルポリシーとしての役割を全然否定しようとはいささかも考えておりません。しかし、現在の政府財政運営あり方を見ておりますと、不当にフィスカルポリシーという面が強調されているというふうに考えざるを得ないわけです。そういう点からしまして、先生先ほど、まあ財政規律とフィスカルポリシーを両立させることというふうにおっしゃいましたが、私はむしろ財政の所得再配分の機能、それからまたいま申しました国民福祉の擁護というような点をこそ重要視していただいて、そして将来当然、いまの深刻な赤字の解決ということで増税という点も当然起こってくるだろうと予想しますけれども、その場合でも、やはり税の不公正の根本的な是正という点から接近すべきじゃなかろうかというふうに思っております。その点の御見解をいただきたいと思います。  それからもう一つ、租税特別措置について非常に貴重な御意見をいただきました。重ねて伺いたいのですが、法人税法及び所得税法の本法に入っているものですね、いろんな引当金だとかあるいは受取配当益金不算入だとか、これは租税特別措置に若干関連はしますが、支払い配当軽課措置とか、あるいは有価証券譲渡益に対する課税だとかいうようなものですね。私ども客観的な数字から見てみますと、この引当金等々本法でやられているやつですね。これが非常に大企業や大資産家に有利になっているというふうに考えざるを得ないわけです。その辺についてやはり当然私ども是正すべきじゃなかろうか。もちろん企業会計原則で容認されているものですから、引当金など全部廃止しろなんていうことはいささかも考えていないのですが、余りに現実からかけ離れ過ぎた点があるわけで、当然是正すべきじゃないかと思いますが、その辺はどうお考えになるのか。  それから、今後新しい財源として一般消費税のほかにどんなものがおありと考えていらっしゃるか、これも伺いたいと思います。  それから、私はある新聞紙上で拝見したのですが、先生、包括的所得という概念で税を見ていらっしゃるような論文を拝見したわけです。簡単で結構ですがどんなふうな内容のものか御説明いただきたいと思います。  それから最後木下参考人に伺いたいのですが、租税特別措置、これを政策的な税制として、いま整理統合の方向に向かっているという御説明がありましたが、先ほど石参考人にも伺いましたように、本法でやられているものですね。法人税所得税など本法でやられているものですね。こういうものについては今後どうなさるおつもりなのか、これを伺いたいと思います。
  26. 古田精司

    参考人古田精司君) 時間の関係もございますので、できるだけ簡単にお答え申し上げたいと思います。  第一点、所得及び富の分配が著しく不公平になっているんではないか、そういう御指摘がございました。たしか昨年でございますか、OECDの報告書がございまして、世界各国の所得分配の調査結果が出ておりまして、それによりますと、日本はかなり分配の平等度が高い国の中に入っているということを私は記憶いたしております。その点で、たとえばアメリカとかイギリスとか、それから先進諸国ほかにございます。確かにいわゆる福祉国家といわれております北欧諸国に比べますと、日本の所得分配の平等度は落ちたと思います。しかし、ほかの国に比べますというと、われわれが意外と思うほど分配の平等度が高いという報告、これは客観的な指標として出ているわけでございます。  第三点で、一般消費税消費者負担を求める、大企業になぜ求めないのかという御指摘がございました。それは先ほど私が申し上げました論点にまさに迫っているわけでございまして、転嫁と帰着をお考えいただきますと、いわゆる中国のことわざでいう朝三暮四というのがございますが、あれと同じ結果になる。国民をサルにたとえては大変申しわけないのですが、しかしそういう帰結に変わらないではないか。とりわけこの機会に申し上げたいのですが、社会保険の雇い主負担、それから被用者負担五、五という原則をし、三にしよう。つまり雇い主七、それから被用者三にしようという運動がございます。しかしあれも経済学者から申し上げますと、まさに朝三暮四のいい例でございまして、まさに雇い主の負担がふえたように見えますけれども、事実上は実質賃金の中から削られているだけの話でございます。しかし、それでも国民が喜ぶならやろうということになりますとこれはまた話は別でございますけれども経済学者といたしましてはそれは賛成しがたいということを申し上げたいと思います。  それから第三点の社会的観点から、徴税上じゃなくて社会的観点から一般消費税というものを見直すべきではないかという御指摘がございました。これはまさにそのとおりだと思います。したがいまして、私も申し上げたいんですが、今後、先ほども御指摘がございましたが、福祉財源は充実したくないと思ってもせざるを得ない、そういった老齢化社会にこの国は入っていくわけでございます。国連の定義によりますと、六十五歳以上の老人が六%以上、七%以上になりますと老齢化社会、エージングソサエティーと呼ばれます。日本は昭和四十五年にもうなっていると思います。そして統計によりますと、八〇年、九〇年になりますと老齢化パーセンテージが一九%、そのまま後は安定するそうであります。そうしますと、いやがおうでもこれまでの社会保障のトレンドとしまして、最初に公衆衛生、次に医療、そして年金がございます。この年金問題というのは避けたくとも避けられない、われわれに現在突きつけられている、いまから対応を整えなきゃならない問題だというふうに考えております。そうしますとその財源を一体どうするのか。イギリスや北欧型のように税金の方から持っていくのか、あるいは大陸型、つまりドイツとかフランス、イタリーのように社会保険でもって準備するのか。どちらにしても日本がいまから対応を整えてなきゃならない問題だと。その一つの案が一般消費税だと、私はそういうふうに理解しているということを申し上げます。
  27. 石弘光

    参考人石弘光君) 第一点のフィスカルポリシーが現在不当にも強調され過ぎているという御意見、全く賛成でございます。私は、財政規律との対応関係でフィスカルポリシーの両立を議論、同じレベルにおいて議論をしたように受け取られたかもしれませんが、やはり財政の本来の機能は、御指摘の所得分配にあり、再分配にあり、資源の配分にあり、国民福祉の向上にあり等々、そういった伝統的な財政の機能にあってしかるべきだと考えております。したがいまして、フィスカルポリシーというのはある意味では副次的な目標というような位置づけをしても差し支えないと。これは私、長い間主張していたことであります。しかし、フィスカルポリシーということを完全にネグったままで財政運営できるかというと、ぼくは今後これはできないと思っております。と申しますのは、民間で活力に満ち満ちた、そういった運営で高度成長が華やかにいった日本経済とは違いまして、今後ますます民間をてこ入れするという不況の時期の長期化、あるいは訪れる機会が多い。こういうことになりますと、やはり副次的とは申せフィスカルポリシーがどうしても第一順位に躍り出て景気のてこ入れをするということも考えられますので、これを不当に余り低い地位に追いやってしまうということは、好むと好まざるとにかかわらず今後はちょっと無理であろう。したがって、財政の規律も考えつつ、フィスカルポリシーが運営できるような制度的あるいは枠組みの変更をこれから真剣に考えるべきだということを主張いたしているわけでございます。  それから、租税特別措置と本法との関係で、引当金とか準備金とかいうのはどう考えるかという御指摘が第二でございましたが、事実、特別措置と本法との関係はどうもしかるべきところにぴしゃっとおさまってないというようなところもあるように考えられます。しかし、これはひとえに一番問題になったのは法人税であろうと思います。法人税仕組み自体がどうもまだ、日本のいろいろ事情はございますが、はっきりしてない。シャウプ税制以降法人税というのはそのときどきのいろんな事情によって、言うならば継ぎはぎだらけに、といっては言い過ぎかもしれませんが、そういう形で修正を加えられてきたものですから、いろんな要素が複合化されておりまして混在しております。したがいまして、ここを直さないと本法とか特別措置法とか言いましても、なかなかすっきりした回答が出てこないというふうに考えております。こういった基本的な性格をもう一回、やはりはっきりした答えが出ないまでも、いろいろ議論して詰めていく必要があろうかと思います。  それから、一般消費税以外に何か新規財源の候補はあるかという御指摘でございますが、私はどうもなさそうに思います。というよりは、私は所得税で今後の増税プランというものをやるべきであるということを主張しております。  その一環として、実は包括的所得税ということをちょっと提案したこともございますが、これは全然、これは何も小むずかしいことを言っていることではございませんで、課税ベースを極力包括的にとらえて低い税率を掛けろと言っているだけの話であります。つまり同額の所得税をとるときに二つチョイスがある。一つは高い税率掛ける狭い課税ベースでやるか、あるいはもう一つは広い課税ベース掛ける低い税率でやるかというチョイスでありまして、包括的所得税というのは極力その課税ベースを広くして、それで低い税率で同じ税収をあげたらいいだろうと、これはアメリカから出てきた考え方でございまして、日本でもシャウプ税制のときの総合課税方式というのはこれにごく近い考えだったと思います。問題は、戦後二、三十年たちましてその課税ベースがどんどん侵略され侵食されているということでありまして、この侵食の一つの例がここにある租税特別措置であるというふうに理解しておりまして、これに対して私は反対を述べておるということは、こういうところに私のもともとの考え方があるわけであります。
  28. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 先ほど租税特別措置のいわゆる政策減税と私申しました問題が、特に法人税法の本法に規定されておる問題、これをどのように考えるかという御指摘でございます。  確かに、現在の日本の資本主義社会における法人、営利法人というものが社会的実在であるということは否定することはできません。ただ問題は、税の問題になりました場合、これは先生のような学究の方に釈迦に説法でございますが、法律で使いますところの実在説とか擬制説とかいうような問題を、これは英米法的な考え方ドイツ法的な考え方との対立がございますが、税の問題に関して私ども実在説とか擬制説というような考え方をそのまま持ってきて議論をしておるのは、世界でわが国だけではないかと思っております。そうしますと、これはやはり経済的なメカニズムの問題として法人税は考えるべきであろうというのが、税や財政をやっておりますものの共通した考え方ではなかろうかと思います。したがって、税制調査会ではかなり前から、かつては御承知のとおり法人利潤税構想というのが出ました。これは当時のイギリスのしばらく実施いたしました税制にまねて日本の法人税制を根本的に変えようという考え方でございましたが、その後議論を進めるにつれて、実はそういう極端な立場は必ずしも賛成を得ずに今日に及んでおりますが、税の見地から見ました法人の性格につきましては、法人を単なる個人の集合体という考え方もございますし、それから法人利潤税構想のように法人を独立の存在と、税負担力がある存在と見るという考え方、あるいはさらに大法人と中小法人とを全く同一視して考えるという考え方には無理があるので、何かそこに調整を施す余地はないだろうかというような配慮等が議論されましたけれども、今日までのところ一つの方向にまとまっておりません。御指摘の配当軽課制度にいたしましても、法人の受け取り配当を益金に不算入という制度がございますのも、あるいは配当控除制度がございますのも、これは法人をそのようないわばシャウプ税制勧告の線に沿って、かなりよくも悪くも改正をしてきたわけでございますが、その線の思想というものが残っておりますためにこれは本法に入っておるわけで、法人税仕組みからこういうものは当然出てきておるものだというふうに私は解釈をしております。したがいまして、法人税の基本的な仕組みについて百八十度の転換が行われますならば、そのときに本法からこれは排除されるということになろうかと思います。現在のところは、配当にかかる法人税と、それから受け取った株主の配当に関する所得税との負担は部分的に調整されておるわけでございまして、全部ではございません、部分的に調整されておるわけでございまして、現在はその制度をとっておるわけでございますが、最近のヨーロッパその他の動向を見ままいりまして、最近の西独の改正もこれに沿った改正でございます。  実は、法人税の基本的なあり方についての税制調査会審議というものは長い間続いておりますけれども、一義的に答えを出すという段階に来ておりませんが、私個人考え方、この個人考え方税制調査会では恐らく取り上げられないと思いますけれども、私自身は、支払い配当を全額損金算入方式にもっていった方がいい、そうして株主の受取配当は所得税でフルに徴収するという形がすっきりしておると思います。この方式は、先ほど皆様からお話がありました法人税の転嫁を考慮に入れましても一番難のないやり方でございますが、これはなかなか一般の方々にわかっていただくためには時間がかかるわけでございます。どこの国でもそうでございますが、これは時間がかかる。この典型的な例はカナダのカーター委員会の報告というものに出ておりますが、カナダも実はそれをそのまま税制の中に組み入れるまでには至っていないのでございます。  そのように、法人税の基本的あり方に関する意見というのは、実はある方向に進んでおるとはいえ意見の一致を見るということの段階に入っておりませんので、今後税制調査会としては諸外国の動向も考えながら時間をかけて検討することにいたしておりますけれども、早急にいま本法に組み入れられているところの配当軽課制度なり法人受取配当の益金不算入制度なり配当控除制度を本法から除外してしまうということにはなかなか無理があろうかと思います。
  29. 中村利次

    ○中村利次君 御主張の差異はございましても、まことにすっきりした参考意見を拝聴させていただきました。すっきりしないのは政治の方でございまして、これは御指摘がございましたが、木下参考人は、社会保険診療報酬に関する答申の表現については、御自分としてはもっと厳しい表現をしたかったんだがやわらかい表現になったとおっしゃいましたけれども、いやいや、私はあれを拝見してまことに厳しい御指摘であるというので、政府にもそういう意味でただしましたが、そういう厳しい御指摘を受けてもなおかつこれは対処できないというすっきりしないむずかしさがあるんですね。これは何も租税特別措置に関する問題だけではございません。政府の表現をかりますと、臨時異例の五十三年度予算を組んだ。歳入面でも歳出面でもすっきりした、国民の合意を得られるようなそういうものでなければならないのだが、歳出面の、特にこれは厳しく指摘されておる行革なんかでも遅々として進まない。というよりも、やっぱり政治は国民の期待にこたえる対応ができないというのがもう見え見えであります。  そういう意味では、貴重な参考意見に対して質問をする筋道でもないとは思いますが、角度を変えまして、私は何といっても、いまこれは皆さんから御指摘がございましたが、五十四年度、五十五年度以降、中期的に見ても、歳入の増加をどう図っていくかということはもう決定的な政治課題だと思います。ところが、これはあくまでも不況からどう脱出できるのかということが前提にならなければ、——言い過ぎかもしれませんが、いま諸悪の根源はすべて不況にあると思います。ですから、公共投資か減税かという議論もそういう立場からいろいろ議論をされてまいりましたが、まだ参議院の予算委員会は残っておりますけれども景気回復策としては財政主導型の公共投資によるという方向でいまいっておるのです。  そこで私どもの不安は、公共投資で果たして景気の回復ができるんだろうかという不安があります。民間投資につないでいくといっても、これほどの需給ギャップが公共投資その他どういう対応で解消できるんだろうか。そういう問題に正しく対応できるような政策というものがないんだろうか。そうでありませんと、これは円高問題等を含めて、結果として経済政策は失敗であった、こういう答えしか出てこないような気がするのです。そういう議論を国会で幾らやっても、何かすっきりしない国会の議論ではそういうものをきわめることは非常に困難です。  申しわけございませんけれども、そういう意味で何かひとつお三方で、おれはこう思う、かくすべきだという御意見がございましたらぜひ拝聴をして参考にさしていただきたいと思います。
  30. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 非常な難問でございまして、私どうも、とても満足なお答えを申し上げる学識がございませんけれども景気回復というのがどの辺の水準の経済活動目標にしておるのか、これが非常にあいまいでございまして、たとえばデフレギャップと言うけれどもそれは現在の与えられた労働人口、求職者と、それから現在休んでおります機械設備その他をフルに活動させる水準まで持っていくことでなければ景気回復と見ないというのでございますれば、恐らくそれは昭和四十八年から九年の水準まで戻れということだろうと思います。恐らくその場合には失業率〇・九%ぐらい、一%をはるかに割る超完全雇用の状況を前提にしておると思いますが、そういう景気回復を期待するのは私は無理だと思います。今後は、景気循環の局面とそれから構造的にこのような低い成長しか続け得られない経済状況になったというのが混在しておると思いますが、後の方が私は非常に気がかりでございまして、中長期的にわが国経済の活動水準の増加というのは、実力から申しまして年率五%そこそこが精いっぱい。年々継続的に五%の実質成長率を達成できれば上等の成績であるというふうに思います。したがいまして、御指摘のように、経済政策でいろんな手を講じてもいわゆる景気回復の実感がわかないということでもって、直ちにそれが失敗であったというふうにきめつけることができるかどうか。それじゃそれをきめつける人はかわりの政策を当然出すべきである。その政策を実施した場合にどうなるかの処方せんまで出すべきであろうと思います。実は、その点になりますと私どももほとんどそれについては、——できる限りのさまざまの手をまじえてやる、そしてできる限り成長率を高める、それも七%であるかどうかは別といたしましてと。そのような努力を続けていく以外に方法はないだろうと思います。  ただ、現在の経済問題を離れて財政運営ということになりますと、一番手っ取り早い方法はインフレであります。名目の経済成長率が年に二〇%とか二五%になりますれば財政収支の問題はおのずから片づきますでしょう。恐らく、現在の税制をそのままにしておいても私は十分な税収入に恵まれると思います。しかしそのような方法は経済政策としてはとるべきでないと思いますので、それにかわる方法をいま申し上げているわけでございますが、それにかわる方法の決め手になるものは、何かこれがあればうまくいくというような方法は私はないというふうに思います。
  31. 古田精司

    参考人古田精司君) お答え申し上げます。  ただいまの木下先生の御意見に全くつけ加えるところがないんでございますが、将来の問題に関連しまして、私は現在、高度成長路線から安定成長路線へ移るいまや過渡期にあるというふうに経済を見ております。したがいまして、一〇%の高度成長パターンを国民がいずれも夢を見て、それを忘れかねているという、そういう問題の出し方ですと、実は見果てぬ夢を見続けなきゃならないと、むしろ……
  32. 中村利次

    ○中村利次君 いやいや、産業構造の転換を低い成長率に適応できるような、どうしてやっていくのかということが絶対的課題じゃないかという立場からでの御意見を伺いたいということですから……
  33. 古田精司

    参考人古田精司君) わかりました。それですと問題意識は全く同じでございます。特につけ加えることはございませんが、大体私は六、七%の成長率を安定成長路線というふうに考えておりますが、そこにこうソフトランディング、持ってくための措置というのはどういうものがあるかという御質問かと思うんですが、何よりも、政策の問題と申しますよりも、現在各企業が抱えております遊休施設、つまり低下した操業度でございますね、これを引き上げるということが目下急務ではないか。つまり、過渡期が終わるのはそれがその課題、操業度をどうやったら引き上げられるかという課題が済んだところで新しい段階が開けるんではないかというふうに考えております。  政策的に答えよというお話でございますが、私の力では、目下それは考えられないというふうに申し上げた方が率直かと思います。お答えになりませんが……
  34. 石弘光

    参考人石弘光君) 全く妙薬がございませんで、私も答えは両先生と同じでございます。  ただ、いまの経済がオイルショック以降のインフレを余りにも鮮やかに収束させたとかが出ているというふうなとらえ方をしております。仮に七%の目標を決めても雇用不安というのが解消するかというと、ぼくはそう急速に明るい兆しが日本にくるとも思いませんし、五とか五・五でどうだと、それでもそんなに悲惨な目でもないと思っております。要は、いまは手詰まり状態でありますから、じっとがまんの子じゃないかというのが私の率直な意見でございまして、つまり資本主義経済である以上、民間の経済が出てこない限りは幾ら政府が突っついたところで、それこそ呼び水政策というのがございますが、幾ら水を注ぎ込んでも本当の力でわいてこない場合はしようがないので、それはそのときを待つほかないのではないか。ちょっとやけばちの気持ちになっております。要は、不況不況というムードを余りかき立てない方がいいのではないか。つまり、五%達成すりゃ世界一ですからね、日本も。そういう感じがいたしております。
  35. 野末陳平

    ○野末陳平君 きょうは先生方にいろいろと示唆に富んだ意見を聞かせていただきましてとても勉強になりましたが、最後に二点だけ三先生に質問さしていただきます。  一点は、この租税特別措置は今後ともさらに一層縮少、整理合理化という方向と、これはもうわかるんですけれども、お話に出ました医師優遇税制は当然としても、そのほかにどんなところに余地があるかというところが一番問題だと思うんですね。大ざっぱに分けますと、大企業関係と中小企業関係ととった場合、大企業の方はもう当然悪でこれは整理しなきゃいかぬと、だけど中小企業の方はじゃあ残していいのかという問題あるいは個人で言うと、高額所得者に関するものとあるいは少額貯蓄非課税制度なぞを初めとしたいわゆる個人に、庶民ですね、そういうふうに関係したものと、こっちは残しておかなきゃいけないのか、これも切らなきゃいけないのかと、まあそんな意見も二、三ありましたけれども、いずれにしてもあとほとんどのすべてにやはり手を加えなきゃいけないのか、まあそろそろいいところにきて、あと少し大企業関係のがちょびっと残っててというところで妥協をしなければいけないのか、その辺の先生方の意見ですね。私はもう全廃の方向だと思うんで、それは当然個人のものも、いわゆるマル優から住宅関係から生命保険のなども当然だと思うんですが、しかしそれはいつということになりますと非常にむずかしい。そんなことで、これからの方向についてなるべく具体的に。  それから二点は、増税が不可避だという前提に立ちまして、じゃあその増税はお話に出てきました一般消費税のほかにはもう本当に何も考えられないんだろうかと。石参考人所得税を強化してということもおっしゃっておりましたが、そのほかに一般消費税ないとして、何か合わせて一本になるような構想でもあるのかどうか。何しろ結論がもう消費税しかないとなれば、先ほどの木下参考人のように、消費税の中身についてもっと検討して具体的に国民に問うということを早急にしなけりゃならぬと思ったりするんです。  その二点について、三先生にお願いします。
  36. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 第一点でございますが、私はきょうは二重人格で参りまして、税調会長代理という身分とそれから私個人という身分、前者の方が大きいようでありますんで、非常に発言に慎重な配慮を要しております。  まず最初の身分に立って申しますと、これからもなお従来の線に沿って租税特別措置整理合理化努力するという方向で税調審議は進むと思います。その具体的な中身というのは、私には目下のところわかりません。  それから、個人立場から申し上げますと、まず法人税については、一般的に申しまして、例外はございますけれども、引当金というのはこれは法人税の性格上、あるいは企業会計原則上、あるいは商法上、これは負債性がある、損金性があってこれは残すべきであろうと。例外はございますが。しかし、準備金というのはその色彩が薄いものでございますから、やはり整理の対象にしていくものが多いんではないかというふうに考えております。  それから、法人税で特別償却など、公害関係、省エネルギー関係、あるいは中小企業関係等々がございますが、本来、法人税でいま税率を二段階にしておりますけれども、あの二段階にしておるというのはまことに不思議なことでございまして、私は法人税税率は一本であるのが当然であって、中小企業だから税率を低くするというような発想というのはこれはとりません。したがいまして、中小企業だから特別償却を認めるというようなのは、これは税というよりもむしろ全般的な中小企業対策からやるべきことであって、それが税の中に混入しておるという立場をとっております。したがって、これも本来はだんだん整理をしていかなければならない。中小企業であろうと大企業であろうと、同じように法人税は処理していくのが原則だと思っております。  それから所得税関係の特別措置でございますが、いま残っておりまして非常に大きなのは、生命保険料控除なり少額貯蓄の利子等の非課税なり、あるいは住宅取得控除等々でございますが、これは皆様の国会の審議を見ておりますと、やはりこういう少額貯蓄の利子等の非課税は存続の御意見の方が多いようでございますし、それから住宅取得控除も新規の住宅じゃなくて中古まで及ぼせという御意見も伺いましたので、むしろこれは拡充の方向へ皆様は主張をしていらっしゃるというふうに私どもはとります。これは本来はやはりないにしくはない。幾ら少額貯蓄であろうと非課税ということをいつまでも続けておくのがいいのか悪いのか。これは所得税のすっきりした性質をゆがめるものでございますから、やはりやめるべきだろう。  ただ、これから恐れますのは、やはり弱者を救おうとか保護しようとかというような配慮というのは、わが国では特有の情緒的な観点から非常に大幅に出てくる可能性がございますが、それが新しい特別措置をつくっていくんではないかということを非常に私は恐れます。したがって、特別措置の整理はしたけれどもまた別に新しい特別措置が、不公平を是正するという名のもとに特別措置が出てくることはこれは好ましいことではなかろうと思います。  それから、第二番目の一般消費税増税の前にやることはないかとおっしゃれば、もう直ちにお答えをいたしますが、それは所得税増税をやることであります。どのような増税のやり方があるかといいますと、いまの日本の所得税というのはかなり外国では評判がいいんでありますが、しかし評判のよしあしは別といたしましてイギリスのようにしてしまう。いまよりぐっと高所得層も中所得層も低所得層も税率を上げる。それから第二番目のやり方は何かといいますと、アメリカ風にすることであります。そうすると、いまの日本の高い所得層の税率はダウンさせて、そして中小を上げることであります。モデルとしては手近な例がそこにあります。そういう以外にいろんな所得税のやり方はありましょうが増収になることは疑いない。まずそれをやるかやらないかをお決めになって、そしてそれはもうどうしても日本の風土に合わないと、反対が多くてだめだということであれば、法人税税率の若干のアップが残っておりますが、それと同時にやはり一般消費税を考える以外に手はないんではないか。もし一般消費税を考えずに済みますならばもうこれに越したことはございません。
  37. 古田精司

    参考人古田精司君) お答え申し上げます。  第一点、今後の租税特別措置の方向でございますが、御指摘のように、大企業中小企業租税特別措置の利用度が異なっております。これはもう統計資料からも明らかであります。その理由など追求いたしますとまた長くなりますのでここでは立ち入りませんが、いま一つの問題は租税特別措置か補助金かと、エクスプリシットな租税特別措置にしたらいいんじゃないかという議論もございます。この議論も実は私どもの間では片づいてない議論だと申し上げる方が率直ではないかと思います。基本的には、やはり最初に私が申し上げましたように、そして石さんも強調されておりましたように、租税特別措置といったインセンティブ措置が支払うコストは現在余りにも高過ぎるということですね。それを考慮に入れていただきますと、もともと租税特別措置は時限立法でございますので、役目を果たしたものからどんどんこれは整理していくのは筋でございます。残しておくのでしたらばこれは本法に繰り入れるのがやはり筋ではないかと、そういうふうに考えております。  それから第二点、一般消費税のほかに候補となるような増税の税金があるだろうかと。これはただいま木下先生が御指摘なさったように、所得税のほかございません。所得税について申し上げますと、かつてヨーロッパの社会主義政党が選挙のときに所得税の減税をもって戦ったことはございません。しかし四〇年代に入りましてから、いや三〇年代のもう末にはある国、ドイツあたりで始まっていましたが、所得税の減税ということを社会主義政党が訴えるほど所得税国民に与えるところのいわば重税感が高まってきている、これが現状じゃないかと思うんです。そういたしますと、先ほど木下先生御指摘になられたように、所得税が果たして現在の日本の現状でこれが政治のレベルでもって増税というふうに打ち出せることがどこまで可能か、非常に私としてはむずかしい問題だというふうに考えております。先ほど申し上げましたような論旨から、やはり一般消費税がいわゆるラストリゾートと申しますか最後のよりどころではないかというふうに、われわれ先ほど申し上げました六、七人ほどの研究者が集まっていろいろ議論を重ねたところの結論というふうに申し上げたいと思います。
  38. 石弘光

    参考人石弘光君) 第一点の、租税特別措置法をどこまでやったらいいかという御質問だと思いますが、結論から申しますと、私は個人所得税に関しては全然要らないと考えております。ということは、例の少額貯蓄のマル優から生命保険、配当等とすべて含みますが、そういったもので財源を失うよりは、一たん吸い上げた後で弱者救済という名目を、表に出すならばトランスファーズでやった方がずっといいのではないかという意見を持っております。と申しますのは、たとえばマル優などがあるがゆえに、いろいろ名寄せの問題が起こったり、何か利子所得に対してまともに税金を払うのはばかげているといった風潮が、まあそう言ってはなんですが、若干というよりは大いに社会に満ち満ちておるわけでありまして、利子に対しては全額課税されるということがおいおい定着いたしますと、そういった問題もなくなってくるわけであります。恐らく弱者救済の問題が絶えず出てくるでありましょうが、これは支出面でぼくはカバーした方が、いろいろ行政コストや何かの問題がありますが、筋としてはこちらの方がいいのではないか。  法人税に関しましても、できれば極力なくし、シャウプが言ったあたりまで戻ってもいいとは思いますが、ただ時代が変わり国際化しております。日本だけ厳しくするということも国際競争力の面から問題が出てくる場合もございます。そういった意味で、原則としてはやっぱり吸い上げた後で補助金ということがいいとは思いますが、しかしそのときどきで、一国の政策目標の上で非常に重要な目標が出てきてそれを税で助長するということも許されることがあろうかと思います。昔ならば資本蓄積であり輸出の振興であったでしょう。いまでは何ですか、ちょっとさっき申しましたが、恐らく省資源とか省エネルギーとか、何かそういう問題であろうかと思います。そういったごく例外的なものについて法人税あたりからのプッシュというものは、まあやむを得ざる事態として認めてもしようがないのではないかという気がいたしております。  それから第二点の方は、私もう言うべきことはないのであります。私は元来一般消費税より所得税でやるということを主張しておりますので、一般消費税は第二ランクであります。所得税の方が第一ランクでございまして、このためには私は納税者番号の導入まで考えた上で、資産所得の把握というものまで入れた形で、課税の公平ということを一層深めつつ所得税の強化をすべきであると、これを考えております。
  39. 野末陳平

    ○野末陳平君 ありがとうございました。
  40. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 参考人方々には、本当に長時間にわたりまして貴重な有益な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。重ねて厚くお礼を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。  次回は三月二十八日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会