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戸叶武君 園田外相は、政治はきわめて現実的なものであるが将来的な展望を踏まえて、本来ならばこの問題は
日本、
中国、
韓国とが十分話し合って問題の解決に当たるべきであるが、実情はそう必ずしもなっておりませんが、しかし、ここで
日本と
中国とは、日中平和友好
条約というものはきわめて世界環視の中にある重大な問題であって、この問題は
日本と
中国だけでなく、アジアの問題、世界の問題に大きな関連があるのだから、これの解決に当たりながら、お互いにさらに了解を深めていこうという態度で当たっているが、なかなか前途は私は波乱に富んだものがあると思います。しかし、いま
中国もアヘン戦争以来苦悩に苦悩を続けてきた民族の指導者が平和建設の方向へ前進しようと模索しているのは事実であります。
一九五九年に浅沼君が北京に行ったときに、
ソ連に突き放されて
日本だけに本当に理解してもらいたいと訴えたときの
中国の周恩来さんや廖承志君からの話を聞いたとき、私は一九六〇年の安保
条約阻止国民
会議の訪中代表団長として訪れましたが、本当に胸を打たれるものがありました。多く
日本の国内では、浅沼が社会党か共産党かわからないようなアメリカ帝国主義は日中
共同の敵だなんてぶち上げて、えらいことやってしまって次の選挙も思いやられるというような声もありましたが、浅沼君は単純のように見えて任侠の士です。素朴な大アジア主義的な考えを持っていて、
中国の人々が苦悩の限りを尽くして
日本にすがってきたときに、これを突き放すことができない。ここで浅沼は死のうということを私は覚悟してあの発言はして、あの発言の裏には言外の
意味に無限のものが含まれていると思いましたから、私は浅沼発言を取り消すことなく、もっと
中国も成長していくという信念のもとに浅沼発言というものの取り消しをしないできたのです。今日覇権問題が大きな障害になっていると思いますが、
中国には言葉の裏とか表とかというのじゃないが、の底にひそんでいる地下三千尺の心をくみ取る人、憶測の情を持っている人、それが知己と言えるので、自分だけのひとりよがりでなく、
中国人の持っている現在の苦悩というものをくみ取ってくれる知己を求めているのであって、別に
中国に無条件で雷同する必要はない。
日本は
日本の
立場、
中国は
中国の
立場から、友遠方より来たるじゃなくて、隣接している友として、しかも、いろいろな過ちを犯した
日本として、その罪をあがなう
意味においても多少
日本がどろをかぶってでも新しく立ち上がって、アジアの復興の主柱となるものはやはり
日本と
中国で、最大の責任があるということを受けとめて政治をやることが目下の私は急務だと思います。下手な表現をすると黄禍主義ととられるかもしれませんけれども、われわれは、やはり
日本と
中国がみずから覇権主義を戒めると同時に、
日本と
中国がおのれを捨ててアジアの平和共存体制をつくり上げ、世界の平和共存の方向に貢献しようという出発点がこの日中平和友好
条約の基本的な魂だと思うんです。やはり
日本人が功利打算でなく、権謀術策を捨てて真っ裸になって
中国と結びつかなければ、私は百年の悔いを将来に残すことになると思います。そういう
意味において、園田さんもすでに体を張っていこうという構えを——私は
国連の軍縮
会議の
会議場のあの演説を聞いても、われわれが下手な権謀術策をやることよりも、みずからの魂を、体をぶっつけてやらなけりゃこの難問題は解決しないという危機の中に立つ政治家の心構えをあなたは持ち切ったと思うのです。どうぞ浅沼のように殺したくはないけれども、時と場合によっちゃやむを得ませんから、それだけの決心を持って日中平和友好
条約と取っ組んでいくならば、私はこの
大陸だなの問題はずいぶん細かいことをみんな心配しております。これが国民の代表者の声です。しかし、人民の声は、
主権者としての国民の声はこれを達成させることにあります。まっしぐらに行くならば、皆さんのいろいろの心配事というのは雲散霧消すると思います。楽観じゃない。本当にみずからが苦悩の限りを尽くした者でなければ哲学はない。本で読んで文字を書いて哲学を論ずるやつに哲学はない。私は、
中国の中には、
日本の本当の政治の中におけるこの人なら大丈夫だという——
中国のモラルの根底は信義です。見てごらんなさい、いままでも。つらいことでも矛盾はあるけれども守ろうと努めています。そういう
意味において手練手管で興亡の歴史を四千年積み重ねた
中国のいま外交の基本には、自分が信ずべき人間を頼っているのです。どうぞそういう
意味において、これは一に園田さんだけというのじゃないが、今後
日本の政治をまともにやろうとするのにはそれだけの私は構えが必要だと思うのでありまして、一般は非常に心配しておりますが、日韓
大陸だなの問題、
日本と
中国において本当に話し合いを煮詰めて成果を得るならば、
韓国にも少しまともな政治家があって、こんなこっぱずかしいことをやっていちゃ笑われるということで、出した変な謀略の手も引っ込めることもあり得ると思うのです。人間とサルの違いは、サルはなかなかチェンジができない、人間はみずから変えることができるのです。革命の源泉はみずから自分の恥ずかしさを変えていく見識と勇気を持つことです。その点で園田さんはいろいろな線を通じて
中国側にも訴えるべきものは訴え、線は通じており、外務省もずいぶんこのごろは細かく走り回っていろいろな取りつけをやっているようですが、どうぞこの日韓
大陸だなの問題の見通しですけれども、余り日韓
大陸だけにおぼれていると、シカを追う者山を見ずというのがあります。このごろの自民党の実力者たちは中原のシカを追うために山を見ないで馬ごと山へぶつけているような状態ですが、いま国家の安危の決するようなときに解散だとか総裁選挙だとか、こんな小人のやることで、大したことじゃありません。どうぞこの日中平和友好
条約だけはまっすぐに
日本がこれを貫かなければ、これは一福田さんだけじゃなく、
日本の政治家を世界が信用しなくなると思いますが、これはあなたの私見でもいいですが、あなたはどういうふうにこれを考えておりますか。