○
参考人(
北沢洋子君) 私は、昨年の国会におきまして
衆議院、
参議院ともこの
大陸だな
協定の
審議が行われました際に
参考人として発言をいたしましたので、今回はそれに加えまして、新しく現
時点におきまして東アジアをめぐるところの国際政治のコンテクストの中で、この問題を取り上げて発言したいと思います。
最初に私の
意見を述べさせていただきますと、一口に言いまして私は昨年の国会において
協定そのものが批准されたということは非常に残念なことであったと思うわけです。そして今年に入って東アジアの新しい国際政治の情勢のもとで新しい動きが見えてきた中で、この
協定の発効が、ペンディングされるべきであるというふうに私は考えます。そのためにはいま
審議中の特別措置法の成立をできるだけ避けなければならないというふうに思います。
まず
最初に特別措置法の前提となっているところの
大陸だな
協定そのものの本質について述べ、それから次に
協定文が書かれた、つまり
協定文が制定された
時点までに至るところの政治的なさまざまな動きについて、それから
協定文そのものが持っているところのもろもろの
問題点、それから現
時点における東アジアの国際政治とそれから
日韓大陸だなの
石油開発という
問題点について述べたいと思います。
最初の問題は
大陸だな
協定の本質なんですが、第一に言えることは、この
協定が作成される以前に
日本、
韓国それぞれが、
政府ともが鉱区権を設定し、そしてある地域が重複していた。その重複していた地域が現在の
共同開発地域として規定されているわけで、
両国政府は鉱区権を確定したばかりではなく、すでに鉱区権を、特に
韓国政府に至っては
アメリカ系
石油会社に
開発権を譲渡しているのであり、
日本の場合にはそれぞれの
石油会社が
開発権の申請をすでに行っているという状況のもとで、すでにあるところの事実というものを
両国間の
協定という形でまとめたものであって、したがって
協定として作成するためには非常に無理があった。それからその結果として二国間
協定としてはさまざまな点において不備な点があるということを私はまず指摘しておきたいと思います。
それから第二点については、
石油開発公団を通じてこの
石油開発に
政府資金が供与されるということがこの
協定の、
石油開発についての
一つのメリットになっているのであります。それについてはさまざまなところの傍証を固めていきたいと思いますが、五十年にわたって発効されるところの
協定に
日本の
政府資金が使われるということについていささか慎重に
審議をすべきであり、そして私は私自身の見解を述べさせていただければ、これは合法的に
日韓の間の癒着というものを
構造化していくということを指摘したいと思います。そういう危険があるということを指摘したいと思います。それから、これは本質について簡単に述べたわけですけれ
ども、まず第一に
エカフェ調査が行われた一九六八年からそれ以後
協定文が作成された七三年の
時点に至るまでの
日本と
韓国の間、それから
日本と
中国との間のさまざまな動きについて私は幾らかの
問題点を指摘したいと思います。
まず、この
日韓大陸だなの
共同開発区域の問題というのが、あたかも初めから存在したかのように考えられておりますが、実はこれは
エカフェの調査でありまして、
エカフェの調査というのは実は日、韓、台、米の科学者によって行われたものであることは調査の中にはっきりと書かれているわけですけれ
ども、非常にこの
エカフェ調査そのものが私は政治的な
意味を持っていたと言わざるを得ないわけです。というのは、六八年という段階にはベトナム戦争の真っ最中でありまして、ベトナムのテト攻勢がその年の一月に行われ、そして
アメリカが何らかの形で撤退せざるを得ないということが米国のトップのところで考えられていた時代であります。それで軍事的な撤退の後に問題となってきたのが
石油の
開発の問題でありまして、そこのコンテクスト中から
エカフェ調査というものが行われたわけであります。
エカフェ調査というものが非常に政治的なことであったというばかりじゃなく、
エカフェ調査の真髄というのは、
麓参考人が指摘されましたように、それはこの
日韓大陸だなの
共同開発地域にあったのではなくて、尖閣列島
付近の
大陸だなの
石油資源について、これは
世界的な
石油の
埋蔵があると考えられるというふうに結論さてれているわけです。そこに
問題点がありましたので、
最初に問題が起こったのは、
日本と台湾との間の鉱区権争いであったわけです。それで尖閣列島に関しましては、私は
最後のところで現
時点のところから考えるということで申し上げたいというので少しおきますが、とにかく
日本と台湾との間の鉱区権争いというものがいつの間にか横にずれ込んで、
日本と
韓国との間の鉱区権争いということにすりかえられていったわけです。それで、七二年の四月の段際に至るまで
日本外務省、
日本政府と
韓国政府はそれぞれ
大陸だなの、
韓国側は自然
延長論、
日本は
中間線論をもってそれぞれ
共同開発区域の
領有権の主張をしていたわけですけれ
ども、それが七二年九月の第六回
日韓閣僚会議においてこれを
共同開発するということで
領有権のたな上げが行われたわけで、この辺の事情に関しては恐らく国会において十分
審議がされることだと思いますけれ
ども、私はこの
協定の成立の前提となるところのこの
石油の
開発というのは、単に経済的な利益を追求するということではなくて、特にこれは公海上の問題でありますし、それから現在の国際政治の中における
資源開発の持っている
意味が刻々と変わっている、第三
世界の要求によって刻々と変わっていくという流動的な
世界情勢の中で、単に経済的な利益ということ、目先の利益ということだけでこの問題を論議するのは非常に危険だと思わざるを得ない。その
意味から言ってもこの
協定文が作成された
過程というものをもう少し政治的に検討する必要があると思います。
それでとにもかくにも七二年の九月に第六回
日韓閣僚会議において
領有権のたな上げが決まり、
共同開発が決まったわけですが、その七二年の
時点というのは東アジアをめぐる国際情勢が非常に動いた
時点でありまして、それで同じ年には日
中国交回復が行われておりますし、それからその年には非常に米中
関係が動いた年でありました。それでこの中でどのような政治的な取引が行われたかということは
審議を必要とするわけです。この点に至っては非常に不明朗であったと私は指摘せざるを得ません。この点については前の国会において十分述べましたのでこの程度の指摘にとどめます。とにかく
協定文の仕上がったのが七三年の七月であります。この年の翌月の八月金大中事件が起こり、そして政治的な解決を経た後で七四年の一月三十日に
両国政府間における
協定の署名が行われております。
このような
日韓の間の黒い癒着というものが金大中事件を頂点として火を噴いたさなかに、このような底流において国会でさまざまな
質問が行われたにもかかわらずこの
協定の成文というものが何ら発表されることなく、しかもマスコミにも発表されることなく非常に秘密裏にこの
協定の署名、
両国間の署名というものまでが運ばれたということの経過そのものも、つまり、七二年の九月に
共同開発が決まって
領有権のたな上げが決まって、それからその後
協定の署名に至るところの七四年の一月に至るところの期間の間の不明朗さというものも私は指摘せざるを得ないわけです。それで
韓国側が批准したのが七四年の十二月、この間には文世光事件というものをはさんでいたわけです。
時間がありませんのでこの程度にとどめまして、その
協定文そのものの
問題点、つまり
協定文そのものの
審議というものが、これまでのところ国会
審議の中で余り慎重にやられたというふうには私は思えないのです。で、幾つかの点について
協定文そのものがはらんでいるところの政治的、経済的な
問題点というものを私は指摘したいと思います。
第二条に
共同開発区域が画定されているわけですが、この画定に関しましても、その領海が十二海里になったときに、
共同開発区域の中に、つまり
大陸だなの中に
日本の領海が入り込むという事態が生じました。これを
日本政府は外交上の公文書なるものを
韓国政府と取り交わして、それでもってこの
協定が修正されたというふうに解釈をしておりますが、公文書をもって二国間の
協定が修正されたということはできないわけで、依然としてこの第二条の画定の問題というのは領海十二海里を軸として問題をはらんでいるのであります。
それから問題の中心は第六条にあると私は考えます。これこそ
最初に私が指摘しましたように、この
協定そのものが
両国間のすでにデファクトとして、あった事実をそのまま認めた上でそれを二国間
協定という形で強引に取りまとめたというところからも出てくるところの
問題点だと思うのですが、第六条で、実際にこの
共同開発区域の中で
石油開発を行うところのオペレーターをどう選ぶかということが規定されています。簡単に言えば、これは業者間の
協定、業者間の
合意に基づくということがうたわれているのです。確かに
日本も
韓国も自由経済のたてまえから独自の業者間によるところの
合意というものが尊重されるべきであると言うかもしれませんが、これは二国間の
共同開発であって、二国の業者の
共同開発ではないということを、そのために国会において
審議され、批准されなければならない問題であるということを考えに及んだときに、この
協定に書かれたところの第六条は非常に妙なものであるというふうに私は指摘したいと思います。
それで、特にその業者が
日本と
韓国の業者ではなくて第三国、すなわち
アメリカのメジャーが入ってくる。つまり
韓国の場合には
開発権を得ているのは
アメリカ系メジャーでありまして、
日本の場合も、業者はそれはそれぞれが
開発に関、ましては業務
協定をメジャーと結んでいて、その中にどうしてもメジャーというものが介入せざるを得ない。そういうものを二国間の
協定でもってこのような業者間の
合意にまたまとめるということは非常に問題を残すことであると思います。できれば私は、この
協定に書かれるとすれば
両国間の
政府代表並びに何らかの共同会議というもの、共同
委員会というものが設置されて、それの管理のもとに行われるということが必要であると同時に、このような
国家的な行事すなわち外務省の発表によれば五千億の探査費がかかるということが言われておりますが、そのような膨大な
国家資金を使う場合には、この
開発に関する業者というものは私は国営化した形で行うのが順当だと思います。
それから第九条にはとれた
石油の分配の問題が書いてあります。それで、確かにこれは二国間の
共同開発でありますので、お互いに等分の分配を受ける権利を有するわけですが、その分配は業者の間の分配であって、それがどのような形で正確に五〇%、五〇%
日本と
韓国の間に入ってくるかということについてははなはだ疑問なのであります。何となれば、
韓国においてはすでに七〇年に海底鉱物
資源開発法というものが策定されておりまして、それに基づいて
開発権が譲渡されて、売り渡されております。その
意味で二つのメジャーというものが、二つの
アメリカの
石油会社がその利権を、
開発権を獲得しております。その間の
韓国政府とそれから米系
石油会社との間の
開発協定が、どのようなものであるかということを
日本側が知ることなくして、このような分配の問題というものを単に数量的に決めるということは非常に危険なことだと私は考えます。余りにも簡単過ぎて、その場合のたとえば価格の問題だとか、それから正確にその
韓国側の
開発協定がどのような形で、たとえばそのロイアルティーがどのような形で支払われるのか。それで、
韓国政府にメジャーが支払う場合に、それは
日本との
関係においてそのロイアルティーはどうなるかという、ロイアルティー分の
石油というものがどうなるかということがいかなるところにも書かれていない、そういうことに関しては私はもう少し詳しい、もう少し
協定が完璧になるということが、将来その後の五十年間にわたってこの
協定が発効し、
石油開発が行われ、そしてその
石油が
両国政府にとって、東アジアの政治にとって、それから
日本の民衆にとってもエネルギーという非常に重要な
資源であるということにおいて、それからまた、東アジアの政治の上において非常に
石油というものが重要な地位を占めるということにおいて、私はもう少し
協定が明文化される、詳細になるということが必要だと私は考えます。
それで、次に問題になるのは、私はこれは第七条と第十八条との絡みにおきまして、特に
日本と
韓国との間のこれまでの国会
審議なんかに見られましたように、黒い癒着ということが非常に不明朗な事態というものがまだ明らかにされてない段階において、
日本と
韓国との間の
石油開発であるということにおいて私は指摘したいのですが、第七条においては、この
開発に膨大な施設がこの膨大な地域の中に持ち込まれることになるのであります。この点については、さまざまな方が
石油は掘ってみなくてはわからない、まるで山師のようだということを言われておりますが、その
意味においては、私たちにとってはどれほどの施設が、どれほどの資金がここへつぎ込まれるかわからない。それは第七条によれば、その施設はそれぞれの国から領海を越えて公海上のこの地域に持ち込まれ、そしてそれが正常に動いているか、正常な形で使われているかというチェックをしなければならないわけですが、それが第十八条においては、その持ち込まれた際には輸出入というふうには認めないというふうに書いてあるわけです。輸出入でないならば、当然のことながらその持ち込まれる資材の管理というものが行われる機関というものがなければならないのでありまして、これについてもし第十八条を書き直すとすれば、何らかの形で
政府によるところのそのチェックということが明確にされなければならないのであります。
そうでなければ、このままでいきますと、
開発に必要な資材というものがそれぞれの国からフリーパスで持ち込まれ、そして、フリーパスでそれがまた使用済みのものとして他国に、相手側のところに送り出された場合に、それが関税をかけられず、そこで何が行われているかがわれわれのチェックする機関がないとしたら、そのことでは、私は言いたくはないのですが、これは密輸ということが考えられるのではないかと指摘したいと思います。それで、そのような事態というものを防ぐためには、当然のことながら地方自治体なり何なり、
政府なり地方自治体によってこの
共同開発地域におけるところの業者の業務というものがチェックされなければならない。それは税金という形でチェックされるとか、法人税の徴収という形でチェックされるか、何らかの形でそれの規制がされなければならないわけですが、それは第十七条においては地方自治体はここの地域で活動している、事業を行っているところの業者に対する税金というものを免除するということを書いてあるわけで、その
意味においては、たとえば長崎県というものがたとえどのような自治体の構成になろうとも、ここのところで行われている、この地域で行われているところの業務活動というものをチェックすることができない。のみならず、その
石油の
開発に関する税金というものはどこの国においても非常に大きな比重を占めており、それで、ペルシャ湾については言うまでもないわけですが、歴史的にそれは
石油資本とそれから産油国の
政府との間の抗争の種になってきたわけでして、そして、現在
北海で行われているところのイギリス、オランダの例を見ましても、
石油に関する輸入税というものが国庫収入の大きな
部分を占めている。その
意味においては特別措置法もその点について何らかの規定がしていないということは、私は非常に不備だというふうに考えます。
それで、時間がありませんので、この
協定そのものがはらんでいる、
協定全体がはらんでいる
問題点について
一つだけ指摘したいと思います。
御承知のように、この
共同開発区域というのは
大陸だなのみにあるもので、
大陸だなというのは領海の外にあるところであります。それは公海上にある地域をいうのであって、その
意味において
大陸だながどこの国に所属するかということが明確にされない限り、その
大陸だなの
領有権というものがはっきりしていない限り、その国が
石油を
開発し、そのとれた
石油を所有するということは不可能なのであります。それはトルーマンの四五年の宣言以来そのことが問題になってきたのでありまして、その
意味においてこの二国間
協定、
日韓大陸だな
協定というものは規定がない。それは
最初に申しましたように、この
協定が
領有権のたな上げというところの上に成り立っているという、そういう不備があるということを私は指摘をしていきたいのです。
第九条においてはみなし権利ということが言われておりまして、そして、そのとれた
石油の半分を
日本なら
日本が所有する権利というものは、この
大陸だなに、この地域に
日本が
領有権を所有しているという、そういう立場に立つ、そういうものをみなした、みなすということの上において
石油を
日本のものにすることができるということが書かれてあるにもかかわらず、二十八条においては、これは
両国間の
大陸だなの
領有権に関しては何ら規定するものではないということを明確化しているわけです。
そうすると問題は、
日本と
韓国との間に、
世界の中で
日本と
韓国しかなくて、そして
日本と
韓国とで平等に分け合うというならば、それは了解のもとに分け合うというのはよいのでありますが、これは
大陸だなは公海上であり、そして、そのところに
中国の
大陸だなの
領有権の主張というものが現実として存在する限り、この二国間
協定というものが果たして第三国あるいは国際的に通用するのかどうかということは疑問になってくるのであります。私ははっきり言って、これは国際的には通用しないというふうに言わざるを得ません。
それはそもそものところ、
領有権のたな上げということが、単に
日本と
韓国の間の七二年の
共同開発を決めた
時点までの非常に不明朗な政治的な遺物というものをこの
協定というものは象徴的にあらわしていると私は言わざるを得ないのです。その
意味においてこの
協定が第三国あるいは国際的に通用するためには、もう一度東アジアの国際政治のコンテクストの中において、つまりそれは
日本、それから二つの
朝鮮、それから
中国という、そして、全体にこれに絡んでくるところの
アメリカという、そういう国際政治の中でもう一度検討すべき問題だと私は思います。
次に、
最後にここで私は、一九七八年の今日という
時点において、この
協定文、それから
協定文そのものが持っている
問題点、それから
日韓で
共同開発することの
問題点、それから
日本の国内措置法を制定するに際しての
問題点ということを述べたいと思います。
御承知のように、去年とことしとでは非常に国際情勢がこの地域においては変わっている。それは福田内閣の日中友好条約締結へのスタートということが大きく、われわれの目には大きいのですが、それ以上に大きく底流として
流れているのは米中の国交回復化への動きであります。問題は、常に
日本の場合には、
日本の外交というものは目先のことによって覆われている。それで、たとえば、日
中国交回復の
時点において言いましても、ピンポン外交というドラスチックな国際情勢の変化に引きずられた形で急いでやらざるを得なかったということで、国連の中におきましても、
日本がさまざまなところで
中国の国連加盟だとか、カンボジアのロン・ノル政権の支持の問題に関してもさまざまなところで
——私が言うに及びません、言う必要はないのですが、目先の、つまり自分が、
日本が当面
関係しているところのバイラテラルな外交でしか物を見ない。そして、
世界的な視野に立って、あるいはその地域の全体の長期的な展望の上に立って
日本外交というものが設定される時期にそろそろ来ているのではないかというふうに私は思います。
日中平和条約のことに関しましても、この
大陸だな
協定とは絡みはないというふうに解釈されているきらいがありますし、ましてや尖閣列島のいわゆる領海侵犯、
中国船によるところの領海侵犯船の問題に関しても、日中平和条約交渉のコンテクストの中でしか考えられていない。それが偶発的なものであるという
中国側の
説明によって、それは日中においては問題ないのだというふうにみずから納得しているきらいがあると思うのです。これはそうではなくて
世界的な情勢、つまりヨーロッパ、アフリカにおいて、ソ連の攻勢に対抗するために、
アメリカが非常に大きなフリーハンドをアジアで持ちたいという、それから、カーター政権が、二年近くにおいて中間選挙をはらんでいる時期において、さまざまな外交的な手詰まりの打開をねらっているというふうな全体的な像の中で、この東アジアにおける
石油開発の問題というものがにわかにクローズアップされているというふうに私は考えざるを得ないわけです。
アメリカにおいては、さまざまな識者というものが議会において公聴会で発言をしたり、さまざまな論文を発表したり、論評が行われて、その
意味においては、米中問題というものは、これまで七二年にニクソンが上海コミュニケを発表して以来凍結されてきたような
状態になっているところの情勢から、一歩新しい情勢が生まれているというふうに私は感ぜざるを得ないわけですが、ここの中で
アメリカは、
中国側が出しているところの米
中国交回復における三
条件、すなわち米台条約の破棄、それから米軍撤退、それから台湾
政府の非承認という問題について、その三
条件というものを、これまでのところ政治的な問題としてだけ考えてきた。その場合に、
アメリカがその三
条件をのめば、それは全面的に
中国の前に屈服したことになるというふうな保守派の考え方によって、いままで米中
関係というものは凍結されてきたきらいがあるわけですが、これをオール・オア・ナッシング、すなわち三
条件を受け入れるか受け入れないかという政治的なコンテクストの中で考えるべきではないというふうな
意見が出始めてきたのです。ここのところで
石油という問題が登場してくるわけで、それは
麓参考人が言われましたように、そして
エカフェが指摘しましたように、尖閣
付近の
石油開発の問題なのです。
アメリカは、いままでのところ、台湾
政府というものを
中国大陸に主権が及ぶところの正統
政府だというふうに認めているわけですが、その
意味において、米
中国交回復というものは
一つの桎梏になっているわけですが、東シナ海に延びているところの
大陸だなというものは、台湾の
政府が
エカフェ以後主張していたように、それは台湾のものであったわけだし、したがって、台湾の
政府から
アメリカ石油資本が利権を獲得していたという歴史的な事実があるのですが、これを簡単に言えば、スイッチを変えることによって、デファクトとして、すなわち
アメリカが東シナ海の
大陸だなを
中国政府のものである、北京
政府のものであるというふうに認めることによって、いままでのそのさまざまな外交的な困難さというものを乗り切ることができるのではないかというふうなことを言う識者が出てきているのでありまして、そのような態勢に従えば、
アメリカの
石油資本がベトナム戦争以来、東シナ海、南シナ海において
石油の利権の確保ということをねらってきたということを私は
最初に申し上げましたが、その
エカフェ調査以来の脈々として
流れているところの利益というものが合致することになるというふうに考えられるわけで、その点において尖閣列島の問題にしろ、日
中国交回復にしろ、それから
大陸だな
石油の問題にしろ、尖閣の
石油がらみで考えなければならない。この尖閣の
石油がらみというものが単に
アメリカの
石油会社の問題ではなくて、それは非常に米
中国交回復、それから
アメリカの
世界戦略、それは
中国の
世界戦略でもあるわけですけれ
ども、その
意味の中で問題が出されてきているということであって、単にそれがフィージブルであるかないかというようなところでもって、そしてそれが経済的にどういうふうなものであるというコンテクストのもとに考えるべきではないと私はそういうふうに考えるわけです。
台湾の問題も、その点では台湾をどう残すかということについてのさまざまな考え方があり、その中の
一つとしては、
石油製油所から
石油化学工場の、その
アメリカが持っているところの施設というものを尖閣の
石油によって利用するということまでも提案されているわけで、そのような全体像が進みつつあるところで、そしてまた新しい大国によるところの
世界戦略が進みつつある中で、そして、それからなおそれ以上に
——国際法の
専門の方がいらっしゃいますので私は詳しいことは述べませんが、
海洋法を中心として国連の動きなどを見ますと、
資源というものが単に、いままでは北の工業先進国の
技術と、お金のある工業先進国の意のままに使われてきた、意のままに収奪されてきたというところから第三
世界が、低
開発国、それから植民地から独立したばかりの国が
資源というものを自分のものにするという風潮から、最近では
資源というものは人類共通のものである。それは持てるもの、持たざるものの間に共通に平等にシェアすべきであるという時代にきているわけで、そのような思想というものが見えていて、非常に
国際法も、かつて
日本政府が尖閣列島の
領有権の主張の根拠としたように、無主地の先占論という、十九
世紀の
国際法によるところの植民地分割というようなものがすでに否定されている時代において、
資源を平等に分割するという思想、分け合いの思想というものが生まれてきているこの中において、単に
日本のいまの
石油の事情から考えて、そして
日本と現
時点の
韓国との外交
関係において、朴政権が現在どのような
状態に置かれていて、それを
日本が強力に支援しなければならないといったような現
時点の、一九七四年の短い
時点において考えるということが非常に危険なものであるかということを私は指摘したいのです。
このような
意味において、国会では
日韓という絡みでこの問題を考えるのではなくて、そしてまた
石油を
日本がどういうふうに物にするかということを考えるのではなくて、それよりもまず私は、政治的に東アジアの平和の実現というものにどのように
日本が貢献できるのか、そのような姿勢をどのように
日本が打ち立てていくのか、見せていくのかということを、それが大きな時間のスパンにおいて考えられなければならない、十年、二十年の歴史的なスパンにおいて考えられなければならないという
意味において、いますぐ
韓国に対する国際信義ということだけを問題にして、特別措置法を成立させるということの
危険性を私は指摘せざるを得ないわけです。その
意味において、私はこの問題をしばらく凍結し、そして
日本国政府が、
日本国国民を挙げて東アジアの平和の問題というものを考え、そして台湾、それから南北
朝鮮の分断という問題について
日本がどのような貢献をできるかということを明らかに明示した上において、その努力を示した上においてこの問題を再度将来に取り上げるということ、そしてそれは単に
日韓大陸だなの
共同開発地域という問題ではなくて、尖閣を含めたところの東シナ海の
大陸だなの
石油開発という問題の全体像の中で考えらるべきだと私は考えます。
以上です。