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政府委員(
中江要介君) 北朝鮮の抗議の実情として私どもが承知をしておりますのは、一九七四年二月二日の北朝鮮
外交部スポークスマン声明というものを朝鮮通信を通じて承知しております。で、これに対して
日本政府はどういうふうに受けとめているかという点でございますが、これは朝鮮半島の管轄権の問題について
日本が
考えております認識からいたしますと、北朝鮮の当局の抗議は根拠がないと、こういうふうに受けとめておるわけでございます。と申しますのは、
日本政府は一九六五年に
大韓民国との間に国交を正常化いたしましたときに、このいわゆる通常三十八度線と言われております朝鮮半島の真ん中で北と南に分かれている、南には
大韓民国政府というものが有効支配をしてこの政権を
日本は承認しこれとの
外交関係を持っている、その管轄権は実際に管轄を及ぼしているところであるということで、
国連決議を引用して
基本関係
条約を
締結したことは御承知のとおりでございます。それを裏返しますと、三十八度線の北には
大韓民国政府とは別の政権が存在するということを認識してはおりますが、この北の地域とはいまだ関係が正常化していない、したがってそこは白紙に残っているというのが日韓
基本関係
条約を
締結したときの
日本政府の認識だったわけでございます。
その白紙に残しました北との関係がどういうふうに発展しているかということは、これも先生先刻御承知のことと思いますけれども、貿易、人物交流、文化、スポーツ、そういった面では事実上の関係は徐々に伸びてまいりまして、一九七二年の七月四日に南北鮮共同声明が出ましてからはこれは非常に急上昇しておりまして人物交流もふえている。しかしながら実際の管轄権の及ぶ範囲はこれは日韓正常化のときと同じでございまして、三十八度線から南は
大韓民国政府が実効的に管轄権を及ぼしている、三十八度線から北の部分は、これは陸地部分も海の部分も同じでございますが、これは
大韓民国政府の管轄は及んでいない、そこには北朝鮮いわゆる朝鮮民主主義人民共和国
政府が管轄を及ぼしている。そのために
日本と北朝鮮との間で漁業の問題がありまして昨年来実際上の解決のための取り決めが行われているということも御承知のとおりでございます。こういう
日本と朝鮮半島の南と北との関係から見ましても、またそれのみならず、
国連にこそ双方は入っておりませんけれども、
国連には南北鮮がそれぞれにオブザーバーを出している、また七つぐらいの
国連の専門機関には南北鮮がそれぞれ加盟をしている、そういうところから見まして、朝鮮半島の実態はやはり三十八度線を境にして管轄権が分かれているというのが客観的な事実でございます。
それを前提といたしますと、この東シナ海
大陸だなについて境界線を画定してそれぞれ主権的権利を主張し得る部分というのはおのずから決まってくるわけですが、韓国と北朝鮮との間でこの
大陸だなの境界を画定するという場合には恐らくその管轄権の分かれているところから等距離の点を結んだ境界線が設定されると思います。いずれにいたしましても、日韓
大陸だな
協定が対象としております部分は、いかように見ましても朝鮮民主主義人民共和国の管轄の及ばないところでございますので、この部分について北朝鮮の当局が抗議を申しておりましてもそれは根拠がない。ただ北朝鮮の抗議の中には、これは朝鮮人民の財産である、したがって南であるか北であるかを問わず、これは朝鮮人民全体の財産であるのであるから、この問題の処理は
自分の、つまり北朝鮮と話をすることなく処分するのは問題だという部分がございますが、これは北朝鮮が全朝鮮半島を代表しておりますればそういう議論は成り立ち得ると思うのでございますが、ただいま申し上げましたように事実上客観的に管轄権が二つに分かれておる。その事実に即して処理していくというのが
外交案件の処理でございますので、
大韓民国政府との間でいまの
南部の
共同開発区域あるいは北部の中間線による分割というものを行いましても、そのことは何ら朝鮮民主主義人民共和国の権利は害していないということは、これは全く間違いのないことだというふうに思っておりますので、北朝鮮の当局の抗議声明はこれは
日本としては取り合うまでもない問題だと、こういう認識でございます。
しかしながら将来朝鮮半島が朝鮮半島の人
たちの
希望としては統一をする、あるいは共存していく、連邦
政府、いろんなアイデアが出ております。そういうときにどうなるかという問題は、これは通常
一つの国が二つになる、あるいは二つの国が
一つになる、そういったときに行われますような、国際法に従った権利義務の継承というものが行われるわけでございますので、この
大韓民国との間にこの部分の
共同開発を行うことが分断を固定化するとか、将来に非常に解決不可能な問題を残すというふうには
考えません。それの最もいい
一つの例はやはり漁業
協定だと思います。日韓漁業
協定は三十八度線以南の公海部分を含む漁業操業秩序について
合意をしておりまして、円滑な漁業が行われている。北との間ではいまだ
外交関係はございませんけれども、事実上の漁業取り決めを昨年来持っている。
〔理事
福岡日出麿君退席、
委員長着席〕
そうして北と南とにそれぞれの秩序を保って漁業利益を守っている。こういう
現実的な解決を行いつつ、将来それがどうなるかによって二つのままで現行のようになりますにいたしましても、
一つに統一されましても、それはそのときの国際法に従った解決が行われるということで処理できるのではないかというのが私どもの受けとめ方でございます。