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1978-04-27 第84回国会 参議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十七日(木曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      市川 正一君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理事                 大谷藤之助君                 福岡日出麿君                 対馬 孝且君                 安武 洋子君     委 員                 下条進一郎君                 中村 啓一君                 長谷川 信君                 前田 勲男君                 真鍋 賢二君                 大塚  喬君                 小柳  勇君                 浜本 万三君                 森下 昭司君                 馬場  富君                 峯山 昭範君                 渡辺  武君                 藤井 恒男君                 柿沢 弘治君    政府委員        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    参考人        日本造船工業会        専務理事     中曽  敬君        全国造船機械        労働組合連合会        書記長      高橋 正男君        全国一般労働組        合書記長     佐野  明君        北海道室蘭市長  長谷川正治君        平電炉普通鋼協        議会会長     安田安次郎君        全国金属労働組        合副委員長    中里 忠仁君        全日本ゴム産業        労働組合連合会        書記長      西松 義夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、市川正一君が委員を辞任され、その補欠として渡辺武君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  本案審査のため、本日、お手元に配付いたしております名簿の七名の方々参考人として出席いただいております。なお、参考人方々は午前、午後に分けて御出席を願っております。  午前中は、日本造船工業会専務理事中曽敬君、全国造船機械労働組合連合会書記長高橋正男君及び全国一般労働組合書記長佐野明君の以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。  本案に対する皆様の忌憚のない御意見を承りまして審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、参考人方々には十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず、中曽参考人お願いいたします。
  4. 中曽敬

    参考人中曽敬君) 中曽でございます。  本日は、私ども造船工業会の正副会長のだれかがお伺いいたしまして御発言申し上げるべきところでございますけれども、出張その他差し支えがございまして、私専務理事中曽でございますけれども、私の口から申し上げることの御無礼を最初におわび申し上げたいと存じます。  まず、造船不況実情について最初申し上げたいと存じます。  現在、日本造船業は大変な不況に見舞われておるわけでございます。これは基本的には世界的な規模で起こっております海運不況というものに由来しておるということは皆様御存じかと思います。特に日本造船業の場合に、この最近の不況というものの非常に深刻毛引き金になったものといたしましては、昨年の秋口から始まりました急激な円高、この問題が非常に、まあ何といいますか、造船不況に拍車をかけておるということが言えるかと存じます。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕  ただいま申し上げましたように、世界的に非常に大きな海運不況に見舞われておるということでございますが、これを具体的に申し上げますというと、たとえばタンカーについて申しますと、船腹過剰が七、八千万重量トン、一説によりますと一億重量トンにも及んでおると言われております。それから、鉄鉱石とかあるいは石炭とかいうものを運びますいわゆるバルクキャリアにつきまして申し上げますというと、この船腹過剰も大体二千五百万トンから三千万トン、デットウエートでございますけれども、相当な量に上っておるわけでございます。そうして今日の経済情勢世界経済情勢から考えてみましても、この船腹過剰の状態というのはこの数年間恐らく解消することは望めないだろうと思われるわけでございます。したがいまして、造船業不況というものも今後恐らく四、五年は、少なくとも、四、五年は続くものと考えなきゃならぬというのが実情でございます。  五十二年度末におきます日本造船業手持ち工事量というものを見てみますというと、約六百五十万総トンでございます。これはピーク時の年間工事量千八百万総トン数字に比べてみますとわずかに三五、六%というふうなものでございます。この手持ち工事だけで今後過ごすというふうにいたしますというと、四十九年度はこれはピークでございましたから、これを一〇〇といたしまして考えますというと、五十三年度、今年度はわずかに三〇%ぐらい、そうして五十四年度に至りましては五%という非常に惨たんたる操業度維持しかできないということになるわけでございます。もちろんこれは現在の手持ち工事量をべースにいたしました数字でございますから、今後の新規受注ということによってこれをさらに上積みしていくことはできるわけでございますけれども、その新規受注というものがどういうものであるかと申しますというと、先ほど申し上げました海運不況、非常に海運不況というものは冷え切っておるというふうなことからいたしまして、そしてまた先ほど言いましたさらに円高傾向というもの、ということからいたしましても、せいぜい月間二十万総トンというものが受注できるのがやっとの状態ではなかろうか。場合によってはそれをさらに下回って十五万総トンぐらいと、月間でございますね。そういうふうな数字しかならないんではないかというふうに思われるわけでございます。  しかも、この一方におきまして先ほど六百五十万総トン手持ち工事があると申し上げましたけれども、この中から消えていく分もあるのでございます。つまり既契約船キャンセルというふうなことも出てくる可能性が大いにあるわけでございます。つまり円建てで契約しておりますので、円が非常に高くなりましたことによりまして非常に船主支払い負担がふえるというふうなことがございまして、そこでもってキャンセルということにつながってまいるという傾向があるわけでございまして、われわれといたしましてはこういった傾向を非常に憂慮している次第でございます。  そこで、そういうふうな状態を踏まえましてこの新規受注というものが、われわれの今後の仕事を支える一つのよすがになるわけでございますけれども、その新規受注による仕事量の増加というものを見込みましても、先ほど申し上げました数字がございますけれども、そういうものを見込んでみましても五十三年度の操業度というものはうまくいって四〇%ぐらい、そして五十四年度に至りましては三〇%前後というふうなことになるのではなかろうかということをわれわれとしては覚悟しなきゃならぬのではないかというふうに思っている次第でございます。このように操業度が五〇%をはるかに下回るというふうな極端な状態になるということが、今後の見通しでございますので、造船不況というものが、いかに他産業に比べまして深刻なものであるかということがおわかりいただけるんではなかろうかと思うわけでございます。  さて、日本造船業建造能力は現在千九百万総トン程度というふうに言われております。これは現在、ただいま申し上げましたような需要というものに対しましては大変大きな数字でございます。したがいまして、こういった供給力というふうなものの削減を大幅にやらなきゃならぬという必要は当然のことながら言えるわけでございます。そこで、現在の運輸大臣諮問機関でございます海運造船合理化審議会で、その供給力削減の方法の具体策につきまして検討が進められておる次第でございます。しかしながら、先ほど申しましたように、操業度が三〇%にもなっちゃうんだということになりますというと、仮に設備能力を半分ぐらいにいたしましても、なおかつ六〇%操業というふうなことにしかならないということでございまして、本当にこれは大変なことになっちゃうということが言えるわけでございます。  造船業は御承知のように労働集約産業でございます。そしてその関連工業すそ野も非常に広うございまして、一方、造船所というのは地方の海岸べりに存在する場合が多うございまして、その地域経済に非常に中心的な役割りを占めているというふうな企業が多うございます。したがいまして、この造船不況というものが先ほど申しましたような深刻度を増すということになりますというと、この社会的な影響というのは本当にはかり得ざる非常に大きなものになる可能性があるわけでございます。そこで造船不況対策といたしまして、何としてでも政府に思い切った措置をとっていただくということをぜひお願いしたいというのが私ども業界の人間の本当に偽わらざる気持ちでございます。  さて、今回の特定不況産業安定臨時措置法案について若干申し上げたいと存じますけれども、おかげさまをもちまして、造船業といたしましては、いわゆるこの特定不況産業安定臨時措置法案の中に例示業種といたしまして造船業を加えていただいたということは非常にありがたく存じておるわけでございます。今後は国会の御審議を得まして成立する、成立した暁におきましては政令指定を受けまして、そしてこの運用が開始されるというふうなプロシーデュアがあるわけでございますけれども、そういったプロシーデュアを経ました後で、いわゆる安定基本計画というものがつくられることになるわけでございます。この安定基本計画を立てていただくということが造船業構造不況対策を進める上には非常に大きな柱になるということを私どもは大いにいま期待をしておる、わけでございます。  ところで、この法律によりまして、こういった過剰な供給力削減をいたしましても、前に申しましたような非常に極端な低操業となってしまいますというと、とうてい経営が立ち行かなくなるわけでございます。そこで造船業の場合におきましては、この供給力削減がすべてではございませんで、この供給力削減と同時に、それと並行して最低仕事量を、造船業として生きていける、安定計画が立てられるといいますか、更生していける、そういう最低仕事量確保していただくということが非常に大事なことでございます。この後ろ向き対策といわば前向き対策というものがいわば車の両輪でございまして、これは同時並行にやっていただかなければならないということでございます。先ほどから申し上げておりますように、最近の極端な円高というものからいたしましてコマーシャルベースによります輸出船受注というふうなものが非常に困難になっておりまして、これによる仕事量確保というものはほとんど期待ができないという状況になりつつございます。  そこで、先ほど申しましたいわゆる前向き対策といいますか、最低仕事量確保ということの具体策は何かと申しますと、内需をふやすということがまず中心になるであろうと思われます。そこの内需をふやすということは、一体、じゃ具体的に言うとどういうことであるかと申し上げますと、次のようなことになるかと存じます。  まず、これは非常に造船業の場合緊急を要しますので、申し上げたいことは五十三年度の予算で何がしか船舶関係予算が組み込まれております。官公庁船建造を初めといたしまして、何がしか予算が組み込まれております。この五十三年度予算執行船舶建造に関する予算執行をぜひ前倒しにやっていただきたいということが、これがまずお願いしたいことでございます。  それをまず申し上げまして、次に五十三年度のできれば補正予算を組んでいただきまして、その補正予算以降、五十三年度の補正予算と五十四年度、五十五年度、いわばこの三年間にわたりまして、次に申し上げます内需振興策というものを取り上げていただくことをぜひお願いしたい、こう思っておる次第でございます。  その第一は、海上保安庁巡視船艇防衛庁艦艇など、官公庁が持っておられます船の中で、たとえば海上保安庁の船ですと二十年以上の船齢の船が三十数隻ある。それから防衛庁艦艇につきましても十六年以上のいわば老齢船と申しますか、そういう艦艇がやっぱり三十数隻ございます。そういうふうな老齢船の、何といいますか、代替建造というふうなことをぜひこの二、三年の間に、三年間ぐらいの間に集中的にやっていただいて、予算化していただくということをお願いしたい、こう思うわけでございまして、これはまさに政府と申しますか、あるいは国会先生方の御決断によって直ちにできることであろうかと存じますので、ぜひこの実現方につきまして、御配慮をいただきたいということがその第一でございます。  それから内需振興策の第二点はスクラップ・アンド・ビルド方式導入でございます。これは年間百五十万総トン程度国内船建造スクラップ・アンド・ビルドというふうなことによって三年間にわたってやっていただきたい。こういたしますと、三年間で五十三年度の補正から始めていただくとしまして、三年間で四百五十万トンということになるわけでございますけれども、そういうことをぜひやっていただきたい。このためには金融条件その他で船主サイドに対しまして、メリットがある、船をそれならばつくってみようかというふうなインセンティブを与えるような、そういうふうな何といいますか、財政支援制度導入していただく必要があるわけでございますけれども、こういういわゆるスクラップ・アンド・ビルド方式導入していただきますれば、現在船腹過剰というふうなことで海運市況は低迷していることを冒頭に申し上げましたけれどもスクラップをしてビルドするということでございますので、船腹過剰を助長することはないわけでございます。むしろ船腹調整になるわけでございまして、そういったことによりまして海運業国際競争力強化にも役立てることができるんだというメリット海運サイドにもあるわけでございます。このスクラップ・アンド・ビルドということをぜひお願いしたい、こう思うわけでございます。  第三点は、これは内需振興策ではございませんで、発展途上国に対する経済援助一環といたしまして、積極的に船舶の供与をやっていただきたいということでございます。従来のように、政府相手国の申し出を待って検討するというふうな消極的な態度ではございませんで、発展途上国需要わが国造船業仕事に結びつけるように、政府の方で積極的な働きかけをやっていただきたいというのが私どもお願いでございます。先ほど申し上げました官公庁船代替建造スクラップ・アンド・ビルドによる国内船建造とで、合わせますというと年間約五千億円、三年間で一兆五千億円程度国内需要というふうなものを私ども期待しておる次第でございまして、先ほど経済協力はこのほかにプラスアルファになるわけでございますけれども、そういうことでぜひともお願いしたいということでございます。  なお最近、先週の経済対策閣僚協議会でございましたか、二十一日の日にございました。あの日に政府緊急ドル減らし対策一環として打ち出されました外国船籍老朽船の購入、解撤実施ということにつきましても、造船不況対策として非常に役立つものでございますので、われわれ工業会といたしましてもこの具体策につきまして鋭意検討中でございます。このことをつけ加えさせていただきたいと思います。  さて、構造不況法案の問題に返りまして、この構造不況法案の中の一つの柱になっております債務保証基金制度運用につきまして、次のことをちょっとお願いしたいと存じております。  この基金を活用するのは、主として恐らく造船業の場合中手以下の造船会社になると考えられます。ところが、この中手企業には担保力が非常にございません、弱体でございます。本来造船業というものは担保力がない企業でございますけれども、中でも中手造船所についてはそのことが言えるわけでございます。したがいまして、基金保証に対しまして、さらに裏保証を必要とするということになりますというと、ほとんどこれはこの制度中手造船業には利用できないということになっちゃうわけであります。したがいまして、この点につきましては特段の御配慮お願いしたいというふうに思っておるわけでございます。  それから融資期間が五年というふうになっている由に聞いておりますけれども造船業不況は、冒頭に申し上げましたように四、五年ぐらいは最低回復しないと考えられますので、相当なやっぱり据え置き期間を含みます長期融資ということで運用していただかないと、造船業の場合には意味をなさないんではないかというふうに思う次第でございます。そして中手造船所におきます金融対策といたしましては、この債務保証基金制度だけでは決して十分ではございません。この制度のほかに、やはり設備の買い上げという制度がもしできるならばそういったこともやっていただかなきゃならぬし、そして同時に企業債務のたな上げというふうな抜本的な措置をあわせてやっていただかないことには、造船業の場合にはなかなかうまく構造改善というのはできないのではないかというふうに思う次第でございます。そこら辺のことにつきましてはぜひ御高配をお願いしたいというふうに思っている次第でございます。  以上、私の陳述を終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  5. 福岡日出麿

    理事福岡日出麿君) ありがとうございました。  次に、高橋参考人お願いいたします。
  6. 高橋正男

    参考人高橋正男君) 高橋です。  造船産業構造不況実情を申し上げ、まず御理解をいただきたいと思います。  わが国造船産業は、昭和三十年以来世界の第一位の建造量を占めてきました。昭和四十年以来世界の四〇%から五〇%の建造シェアを占めるように飛躍的な発展を遂げてきたわけであります。しかしながら石油ショック以来、海運不況によりまして船舶受注量は激減し、昭和四十九年以来今日までの造船会社倒産は四十社に及んでおるわけであります。昨年度だけで見ましても倒産は二十五社に達し、関連企業倒産は今年に入って十社の倒産を見ているわけであります。倒産した四十社の従業員は約八千名でありますが、負債総額は二千億にも達しているのが実情です。また昭和四十九年より今日まで、造船産業から離職した労働者の数は約五万一千名にも達しており、さらに今日段階の仕事量見通しから推定いたしますと、新造船部門だけで約三万五千名の余剰人員が見込まれておるわけであります。  昭和五十一年六月の海運造船合理化審議会の答申によりますと、昭和五十五年度の建造需要は六百五十万総トンと見込み、操業度は四十九年度のピーク時の六五%となっておるわけであります。しかしながら海運不況による大量のキャンセル、さらにEC主要造船国国家助成拡大、たとえば西ドイツが船価の二八%、スウェーデンにおいては四五%の国家助成をしておるわけであります。それに最近の異常な円高、さらに第三回の追い上げなどによりまして、手持ち工事量は大勢といたしまして今年の八月ごろまでしかなく、今後の倒産が続出するというきわめて深刻な事態が予想されるわけであります。  わが国造船業建造量は千九百万総トンと言われていますが、現在の受注量から推定いたしますと、昭和五十三年度の操業度は三〇%、四十九年を一〇〇といたしまして三〇%、五十四年度は五%と見込まれておりまして、きわめて深刻な事態にあるわけであります。たとえ造船市場が回復したとしても、過去のような大量受注は絶対にあり得ないと判断されますので、設備過剰は否定できません。現在海運造船合理化審議会施設部会供給能力削減問題について具体的な検討が進められていますが、雇用問題を含め慎重に対応されることを強く要請するものであります。  造船業労働集約産業で、関連産業すそ野は広い地場産業であります。そうして地域経済に及ぼす社会的影響が大きく、すでに佐世保、函館、今治地区などにおいては社会的な問題となっておるわけであります。いま中小企業から大手企業に至るまで、仕事量激減による経営減量化が急速に進められ、労働者の配転、出向、希望退職などの雇用調整が進められているのが実情であります。  次に、特定不況産業安定臨時措置法案について意見を述べます。  私たち基本理念雇用確保優先であり、労働条件維持、向上のため財政措置により仕事量増大を図ることが緊急課題と思います。構造不況産業は、景気が回復したとしても、根本的にすべてが立ち直ることが至難であり、このため過剰設備処理は不可避であると思います。したがって、円滑に供給力削減を図り、産業の安定を図るには、法律またそして政策面での総合対策が必要であると思います。  この法案構造改善を推進するために必要な法案であります。安定基本計画の策定と実施にあたっては関係労働組合代表意見反映がなされるべきであると思います。  過剰供給力削減することは雇用影響を及ぼすため、雇用確保対策を前提とした一定の操業度維持することが必要であります。したがって、財政措置を講じ、内需拡大を図るため仕事量増大を図っていただきたいと思います。  設備の廃棄、凍結等については労使事前協議を義務づけること、また地方自治体関連企業労使代表などと雇用問題を重視した事前の話し合いを行うことが必要であります。  信用保証基金の一千億ということでありますが、これはきわめて少ない額と思います。さらに債務保証裏保証の問題については、活用を制限しますので、これの改善お願いいたしたいと思います。さらに返済期間の延長を図っていただきたいと思います。  私たちがこの不況を克服するために、具体的な政策を今日まで政府及び各政党に要請してまいりました。その政策についてお願いを申し上げますと、一つ公共事業優先発注など、政府地方自治体において、不況産業優先発注お願いしたいということであります。  さらに官公庁船代替建造飛躍的増大を図っていただきたい。  さらにスクラップ・アンド・ビルド方式導入であります。この問題については全日海、まあ海員組合といいますか、先般合意をいたしまして、総理大臣以下各関係大臣海員組合造船重機は共同で政策を確立し申し入れてありますが、この場合についての御配慮は、船主に対するメリットある金融条件を付与していただき、国際競争力を強化していただきたいということであります。  さらに国内LNG船建造であります。これはエネルギー対策上、国家のプロジェクト体制をとり、金融、財政面での助成を図っていただきたいということであります。これも海員組合と共同で申し入れている事項であります。  さらに環境保全のための既存タンカーにおけるSBT並びにCOWの設置の法制化を図っていただきたいということであります。  さらに石油備蓄、浮体構造物、公共的海洋開発を促進していただきたいということであります。  さらにまた、開発途上国の経済協力として船舶の供与の促進。  さらに中小造船対策といたしまして、長期低利の事業資金の融資、設備の買い上げ、債務のたな上げなど、抜本的に中小対策として推進していただきたいことをお願いいたしまして、私の意見を終わります。
  7. 福岡日出麿

    理事福岡日出麿君) ありがとうございました。  次に、佐野参考人お願いいたします。
  8. 佐野明

    参考人佐野明君) 全国一般の佐野でございます。  本日は、合板業界の労働者を組織する立場から、この法案の問題について御意見を申し上げたいと思います。  合板業界は、五十年の一月以降今日まで、不況カルテル——操短を続けてきておりまして、大変厳しい状況に置かれております。しかし、この不況カルテルにより操短を続けておりますが、一向にその効果が出ていないというのが現状でございます。  その原因は不況カルテルによりまして一定期間工場は操短をするわけでございますが、実情は操短以外の日はしり抜け増産いたしまして、結果的にはむしろ局面的には生産が増大する。操短不況カルテルの割合に生産はやっぱり維持されている。増大する、そういう状況すら実は続いているわけであります。  一方、五十年以降の業界の中では、倒産、閉鎖、休業は六十五の工場に達しております。中にもちろん再建したところもございますが、約十工場再建しておりますが、六十五工場が倒産、閉鎖、休業。合板業界の特徴は、倒産が比較的少なくて、閉鎖、休業が多いわけであります。そういう状況の中で、人員の問題を見ますと、昭和四十八年をピークといたしまして今日まで約三三%、一万七千人の労働者が減少しておりまして、現在約三万五千名でございます。  先ほど申したとおり、実は不況カルテル、操短にもかかわらず、生産が落ちないというのは一体どういうことか。一方では人が大きく減っているわけであります。人が減って実は不況カルテルをして、生産が落ちないというのは実は残業が非常にふえている。いわゆる不況カルテルの裏をくぐりまして、やみ生産、増産、それはやっぱり残業が非常にふえていることと、労働時間の延長が非常に広がっておりまして、そういう意味では先ほど申したとおり不況カルテル全く効果がないわけです。このことは、実は設備廃棄をいたしましても、残りました企業なり工場が際限のない企業競争だとか、あるいは生産増大を続けている限りにおきましては、業界の安定どころか、私たちの立場から言うならば労働者の犠牲だけが残るおそれがあると言わざるを得ないのであります。そういう意味からいきますと、むしろ週休二日制の実施だとか夜勤労働の廃止だとか、あるいは残業の規制など、そういう方法によって安定を図るべきではないかというふうに思います。現に業界の中におきましても、私たち労働組合と同じような立場ではありませんが、そういう方法も賛成だ、これは中部の合板工業組合の一部ではそういう経営者の皆さんからの考え方も実は出ている。  最近のそうした目に余る状況に対しまして、私たち総評全国一般のみならず、同盟の一般同盟、あるいは全化同盟などの同じ合板を組織されている労働団体とも御相談申し上げまして、日本合板工業組合連合会に時間の短縮だとか、あるいは残業の規制だとか、あるいは休日の増加とか定年制の延長、こういう申し出をいたすと同時に、設備廃棄につきましてもいま申し上げた労働団体が事前協議について十分尽くすことを、工業連合組合に実は申し入れをしたところでございます。  私たちはそういう意味におきまして、業界のいまの状況というものは設備過剰というよりも、そうした生産のあり方に問題がありはしないか。あるいは低賃金によるダンピング、野放しによる輸入問題に対しても、十分考えていただく必要があるんじゃないかというふうに思っているところでございます。  また合板業界におきましては、流れ作業でございまして、原木から製品に至るまで一貫した設備によって実は生産をされるわけでございます。そういう性格上、部分的な設備の廃棄というものは事実上できない。そういう実は合板業界の性格といいますか、を持っているわけであります。そういう点におきまして、設備廃棄というものを合板業界に当てはめて考えてみますと、こういう問題が実は出ております。  一つは林野庁の計画では、三ヵ年間におきまして一一%、三十六ラインの廃棄ということを実は方針として出しておりますが、一ライン当たり従業員数は百二十名相当でありまして、三十六ラインになりますと四千二百人の従業員が失業するということに実はなるわけであります。とりわけ百人前後の中小の合板工場におきましては、いま申し上げたように、ラインが一ラインしかないのでありますから、したがって設備廃棄——設備廃棄の単位はラインでありますから、中小合板工場の場合には、設備廃棄イコール工場閉鎖、全員解雇ということにつながるわけでございます。中小合板工場は、そういう意味におきますと、大工場と違いまして、他の会社、工場に出向するとか配転するとかいう方法による雇用確保は全く不可能であります。したがいまして、中小合板工場における設備廃棄というものは、工場閉鎖、全員解雇という、文字どおり全体の失業という深刻な事態を実は迎えるわけであります。  とりわけ、この合板労働者というのは御承知かと思いますが、仕事の内容はきわめて単純労働労働集約的な産業でありまして、中でも労働力構成が中高年労働者が非常に多いわけです。したがいまして、この合板工場の技術を生かすような産業等はほかにございませんので、事実上再就職はきわめて困難な状況であります。  離職者法という法律が昨年制定されましたが、そういう意味からいきますと、せっかくできた法律でありますが、合板の中小労働者から見ると、余りメリットといいますか、というものは感ぜられない。たとえば職業訓練一つとりましても、中小の合板工場にはそんな暇も実はないわけであります。余裕も実はないという状況でございます。  もう一つ合板の立場でこの法案の中で問題だと思われている点を申し上げますと、使用者の人方が、いわゆる事業主が、極端な言い方でございますが、お金欲しさのためにこの法案が利用され、設備廃棄をされ、労働者だけ犠牲になるということがないよう、ひとつ十分処置をお願いしたいというふうに思います。ということは、希望退職を募りまして、事実上もう全員やめていただく。そうすると工場設備だけ実は残ってしまう。工場設備だけ残しておいて、後でまあたとえば買い上げなら買い上げ、あるいは設備廃棄をするということが実はできないわけじゃないのであります。多少そういう動きもないわけではございませんので、そうなりますと、まあ何といいますか、この法案で指摘されているところの雇用の安定ということについては、実態は非常にほど遠いことになりはしないかというおそれを実は感ずるわけでございます。  また業界の体質と申しましょうか、いわゆるこれらの問題が密室の中で担保権者、これは特に合板の場合は商社、銀行が多いわけではございますが、関係者が談合されまして事態が一方的に進められてしまうという危険性を非常に危惧するわけです。ということは、日本合板工業組合連合会と私どもの間で何回か交渉を持ちましたが、明確な回答といいますか、話し合いがなかなかできない、話し合いと申し上げても全く実は形式に終わっているという状況がございます。そういう意味合いにおきましては雇対法の運用などについてはもっと厳しく運用などをお願いしないと、労働者だけの犠牲になってしまうということを多分に実は恐れる次第でございます。  次の問題は、政府の諸政策とのかかわり合いの問題でございますが、合板業界は御承知のとおり、住宅産業あるいは住宅関連産業と深いかかわりを実は持っておるわけでございます。合板の用途の六〇%は住宅建設に充てられているというふうに言われております。そういう業界の特殊事情から申し上げますと、政府の住宅政策の立ちおくれの結果、住宅政策が目標どおり進んでいない、たとえば五ヵ年計画でいきますと、八百六十万戸が目標でございますが、五十一年度は百五十二万戸五十二年度が百五十一万戸という状況で、いわゆる住宅建設が目標どおり進んでいない、またもっと言うならば、国民が一番求めているところの住宅に対しまして積極的な政策を進めていただくならば、この需給ギャップというものを大幅に改善されたでありましょうし、今後も改善されるんではないかというふうに思うんであります。そういう意味からいきますと、設備廃棄だけが合板業界の場合には業界の安定ということにはならないんではないだろうか、業界の安定とは政府の住宅政策いかんに実はかかっているということを強く指摘をしておきたいと思うのであります。もちろん事業者の方自身が相当の努力をされることを私たち期待いたしますが、それを効果的なものにするためには、政府政策が決定的だということを申し上げたいんであります。  次の問題でありますが、合板の場合には監督官庁は林野庁でございますが、林野庁は去る五十年の八月木材産業基本問題調査会を発足させまして、五十二年の六月、調査会としての提言をまとめました。その中で設備の廃棄や凍結の問題も実は指摘をしてございますが、それと関連いたしまして、労働者雇用問題についても実は触れておるわけであります。その一つを御紹介申し上げますと、特に休止工場などの従業員雇用確保が不可欠であるということを指摘しておりますし、また雇用確保について適切な対応をとることが必要であるということを政府に求めるということを実はこの木材産業基本問題調査会の構成員全員が一致して決定をしておるということでございます。  ところが、この法案はそういう点から見ますと、雇用問題については考慮とか努力というきわめて精神的な表現にとどまっておりまして、設備廃棄によって生ずる労働者の深刻な人員整理の問題を避けていると言わざるを得ないというふうに思うんであります。端的に言いますと具体性がないんではないんでしょうか。設備廃棄をして労働者雇用確保する、安定する、そういうことがうまくできるかどうか実は疑問を持たざるを得ないんであります。  そこで、せめてお願いしておきたいことでございますが、第一点は、労働組合との事前協議をひとつ明確にしていただきたいんであります。お願い一ついたしたいと思います。単なる形式的な、先ほど御紹介いたしましたが、形式的な話でなしに、もっと内容のある実質的なやっぱり話し合いができるような事前協議ということを強くお願いしておきたいと思うんであります。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕  二番目に、各種審議会、関連する審議会の問題でありますが、審議会への労働代表の参加をお願いすると同時に、やっぱり審議会の構成にふさわしい一定数の労働者側代表の参加ということも御検討願いたいと思うのであります。  三点目は、新設、増設の規制の問題でございます。  四点目には、先ほど申し上げましたが、合板工場の場合、仮に設備廃棄ということになりますと、中小の場合にはその工場もろとも閉鎖、全員を整理するという状況に実はつながるわけでございます。とりわけ合板工場の中では身体障害者なども若干でございますが、いるわけでございます。そういうような身体障害者などの失業なんかの場合は、他の一般労働者に比べて大変深刻でございますから、このような法律政府の責任において施行されるとするならば、政府なり業者の共同の責任において、それらの人方の雇用確保というものをやっぱり明確にしていただくということが必要ではないかと思うのであります。  もう一つの問題は、これらの問題と関連しまして、それらの労働組合のところは労働協約が実はあるわけでありますが、この法案が仮に施行されるに従いまして予想されることは、そうした設備廃棄を中心とする合理化に便乗いたしまして、さまざまなやっぱり合理化というものが出てくるおそれが多分に実は考えられるわけです。そういう意味におきまして、労働協約に違反してはならないということを明確にしていただきたいというふうに思っているわけです。  合板の場合、特にさきに中小企業事業転換対策臨時措置法というものができておりまして、合板産業から他の産業への転換というものがすでに法律的な対策としても打ち出されておりますが、私どもの承知している限りにおきましては、合板産業が他の事業に、この臨時措置法ができてから転換をしている、あるいはこの法律が活用されているということを余り聞いておりません。そういう意味におきましても、この法案について合板業界の事業主の皆さん方、企業の対応の問題についても私どもきわめて注目しているところでございますが、一部でございましょうが、この法案が出るに伴いましてお金を出すのがいやだという声もあることや、あるいは現に工業組合からの脱退というものが起きていることなども実は聞いているところでございます。そういう点からいきますと業界の実態を正しく、一面におきましては反映されているといいますか、的確に把握されておられるかどうか、きわめて疑問を実は感ぜざるを得ないのでございます。  最後にもう一つお願いしておきたいことは、合板業界の実態というものは御承知かと思いますが、銀行だとか商社の系列の支配下に置かれているのが現状でございまして、原木輸入で九〇%、製品流通で六五%は実は商社の支配のもとに置かれているわけでございます。そこで問題になります点は、設備廃棄の資金の問題でございますが、そういう実態の中で商社や銀行が担保権者でございますから、そういう実態の中で労働債権の確保というものが一体保障されるかどうかということについても実は大変心配をしているところでございます。  以上をもちまして意見の表明にかえさせていただきます。
  9. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 参考人の皆さんにはただいままで、これからの審議に際しまして貴重な参考の御意見を賜りまして本当にありがとうございます。  二、三ちょっと質問を申し上げたいと思いますけれども、まず第一に中曾参考人にちょっとお伺いしたいのでありますが、端的に申しまして、これはきのうも申し上げましたが、この法案の私が判断している結論というのは、やっぱり中期的な産業政策の柱がいま一番必要とされているんじゃないだろうか。特に不況産業としては中長期のやっぱり産業政策というものが軸になって、その中で当面この対策をどうするのかという立て方ならいいんですが、この法案だけ見ますと、やっぱり設備廃棄をして、労働者にはやっぱり首切りをやって、結果的には政府の金を手当てをしようということに終わってしまうわけです。しかし、現状御案内のとおり円高が、当時これを設定した法案の時代は、二百四十五円の時代にこの法案ができているわけですから、すでに二百二十円前後になっている、こういう状況から判断しましても、私やっぱり一つは中長期に対する産業政策ということと並列的に、この問題が立てられなければ本来的な不況産業を立て直すことにならないんじゃないか、こういう考え方を持っておるんでありますが、この点どういうふうにお考えになっておるかということが一つであります。  それから二つ目は、いま申し上げましたが、そういう基本から出発いたしますと、やっぱり当面的な対策にいたしましてももっと具体的なやっぱり手だてというものがもっと必要になってくるんじゃないか、そういう観点から考えまして、これは、参考までちょっとお伺いするんでありますが、諸外国の例をちょっと私も調べてみましたが、EC諸国の雇用優先政策に基づいて、造船業界の国有または公営化という建造でありますけれども、このコストは大体三〇%から四五%、スウェーデンでは四五、ノルウェーでは四〇、英国でも三一、西独でも二八というような、こういうかなりの国家的な助成資金というものを出しているようでありますが、こういう点から考えまして業界の立場で、いま非常にお先真っ暗な造船業界として、どういう国家的な助成があるべきなのかという、諸外国の例に学んで日本の国家財政としてどうあるべきなんだという御所見がございましたら、ひとつお聞かせを願いたい、これが二点目でございます。  それから三点目の問題でありますが、全く内需拡大は同感でありまして、先ほども官庁のつまり代替、スクラップ・アンド・ビルド、これは同感であります。ただこの中で、私北海道ですけれども、特に私はこの間北方領土で現地調査に行ってまいりましたのでよくわかるんでありますが、非常に二百海里線引きで、つまり二百海里越境をめぐる拿捕事件というのが非常に多うございまして、こういう点でやっぱり監視船をぜひ強化をしてもらいたいというのが強い要望でございまして、加えてそういった対策のためには、むしろ監視船またそういったものをどんどんひとつ強化をすべきじゃないかということの現地住民の要請もございましたから、したがってそういう問題について、ひとつやっぱり造船業界としては、また組合としていまおっしゃっていただきましたから、これはひとつ割り切ってむしろやるべきだと、こういう体制にあるのかどうかということを、率直にお聞きかせ願いたいと、これが第三の問題でございます。  これから第四の問題は、何といっても中小の、私も北海道、先ほど高橋さんからも出ましたけれども、北海道の御案内のとおり日魯造船が、私も現地に行ってまいりまして、大変なことになりまして、日魯造船にまつわる関連企業が十三あるんですが、事実上倒産という結果に相なりまして、函館の矢野市長さんもずいぶん苦労しまして、運輸大臣ともやりましたけれども、結果的には御案内の裁判所の結果ああいう結果になったわけでありますが、したがっていま大手だけでも大変なわけですから、もちろん中小の方に、大手造船の方が中小造船の仕事に進出をしていくと、こういう傾向を何とかとめてくれないかというのが、きょうも室蘭市長参りますけれども、御案内の楢崎造船あたりは限度に達していると、何とかこれを食いとめる方法を考えてもらえぬかと。大手も大変なあれですから、気持ちはわかるのでありますが、それやられたんではとっても中小造船はばったばったいかれちゃう。そういう意味では、さきに法案で決定、取り決めましたが、つまり中小企業分野法の精神で何とか分野を守り抜くというような、こういう調整が当然やっぱり必要だと考えるのでありますが、この点どういうふうにお考えになっているかと、この点をひとつ中曽さんと高橋さんの方に関連したところで御意見があればお聞かせを願いたい。  いま一つは、タンカー備蓄の問題ちょっと高橋さんから触れられましたが、これは長崎県連からも私らの方に来ておりますけれども先ほどのかなり公害協定を規制してということはごもっともでありますが、その以前の問題として、タンカー備蓄の安全性という問題についての可否についてかなり技術的に相当なやっぱり研究を要するし、一朝事故が起きた場合にこれは大変なことになりますから、それこそ北海油田の二の舞というようなことになりかねない状況ですから、ここらあたり相当やっぱり技術的にも機能的にも注意しなければいかぬと。そういうもちろん環境立法をつくることは当然でありますが、それ以前の段階として、そういう段階が可能性があるのかどうかという点でひとつ御意見がございましたらお聞かせ願いたいと、こう思っています。  それから次に、全国一般の佐野さんにちょっとお伺いしますが、率直に申し上げて合板が先ほどお聞きしますと、全く、不況カルテルをやっていながら、片方では逆に残業その他をやって全部行われている、不況カルテルの意味をなさない、五年もやってきたけれども結果的にはなっていないという御指摘がございました。そこで、労働組合の立場からこの点ですがね、わが国の合板業界が持っている普通合板業界、この国際競争力というのは非常に弱くて苦境に陥っているんじゃないか、したがって合板業界に働く労働者側から見て、その原因は一体どこにあるのかということをどういうふうにお考えになっているのか、これを組合の立場から見た問題点としてお聞かせを願いたい。  第二の問題でありますが、それを克服するためにそれではどういうことが必要か。先ほど住宅政策の問題提起をされました。ごもっともでありますけれども、それだけで果たして合板の全体が救われるかどうかという問題もあるわけでありますが、政策としてはよくわかるのでありますけれども、これから克服すべき最も有効な政策的な課題というのは、一体住宅政策とあわせて、具体的にどういう方向が求められるかという点がございましたら、ひとつお聞かせ願いたい。  第三の問題は、事前協議制の問題がずいぶん高橋さんからも佐野さんからも訴えられました。これは同感であります。同感なんでありますが、きのうもちょっと紙パ産業の方から出ましたが、つまりいまの法案でいきますと労働組合と協議する、つまり衆議院段階の修正は、協議するというところでとまっているわけです。協議はあくまでも協議でありまして、協議整わざるときは、これは労働協約の性格は私も民間でありますからわかるのでありますが、労働協約上の性格からいきましても、結果的には経営者がこれを最後には発動するということになるわけでありますから、そこで出てきましたのは、協議整わざる場合の措置としてどういうやり方が必要なんだという面では、紙パ産業としては書面協定というのがきのう訴えられました。私は石炭産業に携わっておりますのでよくわかるのでありますが、設備廃棄と同じ性格になるのでありますが、炭鉱が閉山で買い上げる場合は、労働組合の同意文書がない限り、閉山の買い上げはしないと、これは石炭鉱業合理化事業団業務方法書第三十九条にはっきり載っておるのでありますけれども、つまりそういった性格ですね。つまり労働組合との協議ということで、労働組合の同意、それがつまり書面協定というそういう同意的な協定ということまでやっぱりきちっとしなければ、実際の歯どめといいますか、協議を本当に尽くすことにならないんじゃないか。先ほど佐野さんからその点ずいぶん強調されましたし、高橋さんからも強調されましたけれども、この点どういうふうにお考えになっているかということを、ひとつまずお伺いしたいと思います。  以上でございます。
  11. 中曽敬

    参考人中曽敬君) それでは、ただいまの御質問につきまして順を追うてお答え申し上げたいと思いますが、まず第一の御質問は、何といいますか、今回の構造改善対策を中長期的産業政策の中にどのように位置づけて考えるかというふうな御趣旨の質問であったかと存じますけれども、私ども造船業界におきましては、当然のことながら、今回の構造改善というのはおっしゃるとおり、中長期的展望のもとにやらなきゃならないというふうに思っておる次第でございます。まずそのためには、やっぱり今後の造船業需要というものが一体どうなっていくんだろうか、デマンドというものが一体どういう数量的にいくんだろうかということ、そしてまた質的にもどのような変化を来たしていくだろうかというふうないわゆる需要見通しというものがすべての根幹になるであろうと、こう思われますので、実はすでに海運造船合理化審議会、これ運輸大臣諮問機関でございますけれども、ここで造船業の対策の問題につきまして審議がすでに始まっております。そこで、この需要見通しというものをまずやりまして、そうして今後の日本造船業のあり得べき姿、そういったものをとらまえまして、そうしてその構造改善対策というふうなことを含めてやっていこうということになっておるわけでございまして、そういった観点から申しますれば、まさに先生のおっしゃいますとおり、中長期的展望に立って、造船業のあり方というものを考える中の一環としての構造改善であるというふうに私ども考えておる次第でございます。  それから第二点でございます。EC諸国がいろんな助成策をやっていると、船価の助成というふうなこともやっておるということはお説のとおりでございます。そこで、それに対して日本造船業は、どのような考え方を持っているかというふうな御質問かと存じますけれども、実はEC諸国がこういった助成策をしたのは、大体一昨年あたりから昨年の前半ぐらいにかけてであろうと存じますけれども、その際には、まだ日本造船業というのは競争力を持っておったということが誓えるかと思います。つまりわれわれの方では、非常に新鋭の設備を使いまして非常に合理化をやりまして、彼らが助成策をやってもなおかつ十分拮抗し得るだけの力を持っていたということが言えるかと思います。ところが、先ほど申し上げましたように、急激な円高という事態が発生いたしまして、日本造船業にとっては大変帯しい場面に立たされているというのが現状でございます。したがいまして、輸出船受注というものが、そういったことから非常にむずかしくなっておるということも事実でございます。  そこで、先ほどから申し上げておりますように、私どもといたしましては、何とかこの急場をしのぐために、非常に苦しいこの二、三年といいますか三、四年をしのぐためにぜひ内需の増勢ということを柱といたしましたこれまあいろんな財政援助が必要になろうかと存じます。そういった意味合いでの国のサポートをぜひお願いしたいと、スクラップ・アンド・ビルドとか官公需船の発注とか、そういうふうなことをぜひお願いしたいと申し上げておりますのは、そこら辺にポイントがあるわけでございます。  それから第三番目の内需拡大の一策として、二百海里水域問題に関連いたしまして、海上保安庁の巡視船の増強をやるべきではないかというお話でございますが、まことに私どもとしましても、ぜひそれをやっていただきたいというふうに感じておる次第でございます。冒頭の陳述に申し上げました中には、増強という言葉は使いませんでしたけれども、実は当然のことながら、それは海上保安庁で現在お考えになっております年次計画に合わせて、あるいはその年次計画を前倒ししていただきまして、この増強はぜひやっていただきたいと、これがまた国家的な要請でもあるというふうな観点からぜひこれはお願いしたいと、こう思っておる次第でございます。  なおつけ加えて申し上げますならば、私が最初申し上げました老朽巡視船のリプレースメントをやっていただきたいということを申し上げましたが、このリプレースメントをやることが、同時にまた増強にもつながるということが、ひとつ一面あるということをちょっと御説明申し上げたいと思います。と申しますのは、なかなか増強ということにつきまして、いま海上保安庁などのお話を伺っておりますと、総定員法の枠の問題がございまして、なかなか人間の方の枠を拡大することはむずかしいんで、なかなか増強はむずかしいんだという話を伺うんでございますが、リプレースをやっていただきます。そういたしますと、たとえば一隻三百五十トン型の巡視船ですと四十五名ぐらい乗っていらっしゃるそうでございますが、これを最近の造船業のいわゆる技術力、つまり超自動化といいますか合理化的な施設にいたしますれば、乗組員の数が少なくて済むと。  たとえばこれは具体的な数字を申し上げて恐縮なんでございますけれども、このとおりになるかどうかはこれは別問題といたしまして、たとえばの話でございますけれども、三十名でたとえばやれるということになりますれば、そのような近代的な設備を持った船に、自動化船にいたしますなれば二隻、つまり現在の老朽巡視船二隻つぶしますと、九十人の方が乗っていらっしゃるわけですけれども、二隻をつぶして三隻をつくることができることになる。一隻あたり三十人で済むということになりますが、そういうふうなことからも、リプレースをやることによって増強にもつながるということが、実は効果が出てくるということも御承知おきいただきたいと存じます。  それから第四点のいわゆる何といいますか、大きい造船所が中小造船所の分野にまで入り込んできて仕事を荒らしておるというふうなお話に対してのお答えでございますけれども、実は従来は、たとえば大きい造船所というのはULCCとかVLCC、いわゆる大型の何十万トンものタンカーとかあるいは大型のバルクキャリア、そういうものを大型の造船所は大型の設備を持っておりますので、当然のことながらつくっておりました。そうして中型の造船所は中型の船を、一万トンとか二万トンの中型の船をつくっておったということで、おのずからそこに甲らに似せて穴を掘ると申しますか、そういうふうな自然と分野の調整ができておったのでございます。ところが最近に至りましては、そういうULCC、VLCCというふうな大型の船が発注が全くとまっております。したがいまして、大きい造船所といたしましては、おのずから従来の感覚から申しますれば中型の船になりますけれども、そういう船をつくらざるを得なくなってきておるわけでございます。それしか仕事がないわけでございますから。したがいまして、たとえば海上保安庁の巡視船だとかあるいは船舶整備公団という公団がございます。そういったところでわりあい小さな船の建造をやっておられますけれども、発注もやっておられますけれども、そういう船舶整備公団とか海上保安庁の巡視船といったものにつきましては、なるべく大手は手を出すなというふうな行政指導がすでになされつつございますが、そういった限りにおきましてはある程度のことはやられておりますけれども、ただ一般の商船についてはなかなか分野の調整と申しますか、そういったことはなかなか言うべくしてむずかしいことではないかというふうに思うわけでございます。  それから第五番目、これは私に対する御質問であったかどうか定かでございませんけれども、タンカー備蓄の問題につきましての安全性確保ということに留意すべきであるという御意見につきましては、全くそのとおりであろうかと思います。現在、運輸省と通産省が協議されましてタンカー備蓄の問題がだんだんと具体化しつつあると。われわれ造船工業会の立場でこういうことを申し上げるのはいささか出過ぎた感がございますけれども、私どもが仄聞するところによりますれば、タンカーに備蓄する際に、安全性を確保するということが第一義であるという観点から、どこに一体タンカーを停泊させるのだ、持っていくのだと。そして石油の備蓄をやるんだということにつきましては、大変頭を痛めて当事者の方々がいろいろと検討なすっているというとことは、この安全性の確保ということに主眼があるからだというふうに私は伺っておる次第でございます。  以上でございます。   〔委員長退席理事大谷藤之助君着席〕
  12. 高橋正男

    参考人高橋正男君) 二、三の点について組合の立場から申し上げたいと思うんですが、まず中長期産業政策、これは当然だと思うんです。造船重機労連も結成以来、産業政策を確立してまいったわけでありますけれども、今日の構造転換をどうするかというのは、本来政府が長期政策ビジョンを明らかにしていかなくちゃいけないんではないか。当然、構造転換に伴うことは雇用労働力の再配置が行われるわけでありますから、職業訓練等当然でありますし、特に私は今日の職業訓練については、もっと高度なものにすべきだろう。たとえばアラブ語まで教えてノーハウとして輸出−海外に出るとか、そういうようなことが必要だろうと思いますので、特に政府経営者が政策ビジョンの策定に向けて労働組合と協議の上やるべきだというふうに考えているわけであります。  国家助成の問題でありますけれども日本の造船というのはきわめて飛躍的に拡大したわけであります。たとえば西ドイツは造船労働者が七万ぐらいでありますから、国家助成といっても少ない財政で済むわけでありますが、日本の場合はきわめて大きな財政になるわけであります。ただ、国営、国有化されますと自由競争の原則が否定されますので、その辺の懸念はありますけれども、何としても緊急避難的に、今日内需拡大で財政援助の措置を講じて、雇用を守っていただきたいという立場に変わりないわけであります。ただ問題は、内需拡大といってもどういう方向でやるのか。あくまでも国民のサイドに立った内需拡大、たとえば環境保全のためのいろんな施策、さらには流通改善のための施策等が必要だと思うわけであります。  たとえば空港の問題、成田空港をとって、十三年でいまだに開港できないというような実態。二百海里時代でありますから、やはり浮体構造物等における海洋開発、空港の問題についても浮体構造物で空港をつくるとか、さらに過密都市においてはベイブリッジ、すなわち京浜地帯においては、東京−千葉、千葉−神奈川と、そういうような抜本的な政策というものを確立することによって不況の鉄鋼、不況の造船、さらには関連産業雇用を守ることになるのではないかというふうに私たち産業政策を提案しているわけであります。特に二百海里時代でありますから、海洋開発する漁業、漁民の皆さんが非常に苦難な展望にあるわけであります。三百五十トンの巡視船で二百海里の外では木の葉のように揺れて作業もできない、観測もできないということでありますから、この増大は先生の指摘されたとおり、早急に二百海里海洋秩序を守るために、さらに国益を守るためにこの巡視船というものの拡大が必要だろうというふうに考えておるわけであります。  中小企業の問題でありますから、分野調整というものについては実は一つの構想として持たれるわけでありますけれども、実際線引きはわれわれも具体的に検討したわけでありますが、むずかしいわけであります。そのことは技術的な問題であります。小さい船でも観測船、これはいろいろな計器を積みます。そういうところは技術の高いところにいかないとつくれない、こういうような内容がありますので、一概に線引きというのは困難であろうと思いますけれども、これは大手は大手業界同士が協力して中小企業仕事量を回すというお互いの共同の責任、協調の責任でこの仕事量の配分の問題についてやらなければいけないだろう。私たちも一人五千円ずつ組合員から取りまして、これは産別でも初めてだと思うんですが、友愛救援基金制度と、二十三万人でありますが、約十億集めまして労金に預託して信用度を高めて、三十億から四十億円で中小企業倒産防止、解雇防止のために使おうという考えがあるわけであります。国家助成だけに求めるんでなくて、労働者みずからがそのような対応をしているということを申し上げておきたいと思います。  備蓄の問題でありますけれども、これは先生の指摘されたように、かけがえのない海洋を汚染しては絶対ならないと思います。したがって、このためにこの備蓄問題については、いま外貨が非常にたまっておるわけですから一石二鳥の面があるわけであります。したがって、陸上にタンクをつくれば一番いいんですが、立地的な条件が非常にむずかしいわけでありまして、浮体構造物で備蓄する、これはもうクローズドシステム、閉鎖システムをとらなければいけない、さらに台風とかそういう自然現象を十分防止する立場でこれを、備蓄をやらなければいけないんじゃないか。前の田中通産大臣にも昨年の七月強く申し入れたわけですが、七十七日分しか日本がないと、アラブにちょっと紛争かあれば日本列島が暗黒じゃないか、こういうような指摘もしたわけであります。したがって、政治レベルにおいてこれらの問題について、備蓄をタンカーなり浮体構造物なり陸上なり、そういう点について政治行動力をもってこの立地条件を解決されることを強く要望したいと思います。
  13. 佐野明

    参考人佐野明君) 日本の合板の国際的な競争力の問題なんですが、率直に見まして韓国あるいは台湾などに比較すれば国際的な競争力がやっぱり弱いと言わざるを得ないと思うんです。その原因は、やはり韓国の例でいきますと、非常に日本よりも生産性の高い新鋭設備を持ってやっておられるわけです。あるいはそれに加えて長時間労働、十時間あるいは十二時間というきわめて長時間労働がされておる。賃金に至りましては日本の合板労働者の賃金の三分の一、こういう状況でありますから、そういう点でいきますと、まさに国際的な競争力は韓国台湾に比べれば弱いと言わざるを得ないと思うわけです。では日本の合板の労働者の賃金は高いかといいますと、日本の全体の産業労働者の賃金の中では下から数えた方が早いぐらい、木材労働者とか繊維の労働者の賃金は非常に他の産業に比べてきわめて劣悪な低賃金なんです。日本の合板労働者の低賃金でありなりながらさらにそれを下回るという、ここに実は国際競争力の問題があるんではないかというふうに思います。  そうした問題を実は発生さしてしまった、私ども一つの見方でありますが、韓国には非常に高度の生産性の高い生産設備を送り込んだのは実は日本の商社でありまして、商社がどんどん——実は合板か一時もうかるという意味で韓国に資本の進出をする、あるいは協力をする形の中で今日の実は事態を招いているというふうに私どもは見ているわけです。でありますから、その辺のところの規制というものをやはりしていかない限り、こうした矛盾というものはなかなか解消しないのではないかというふうに思うんであります。  またもう一つ、それらの中で今後どう克服するかということでありますが、まあ国内的には住宅を中心とする国内需要の喚起以外、これ以外なかなかないと思いますけれども、もう一つは新設、増設をできればやっぱり規制をある程度していかなきゃいけないんじゃないか。  それから合板の産業の特殊事情というのはいわゆる南方から原木を輸入いたしましてそれを加工するのが実情であります。そうなりますと原木の輸入というものが、ほとんど大手商社によって押さえられておりまして、先ほども言いましたとおり商社によって輸入が九〇%押さえられておる、ところが合板のコストの六〇%は実は原木代であります。コストの六〇%の原木代、実は大手商社によって押さえられているというこの実態から見まして、その原価の公開といいますかを初めとして原木問題をどうやっぱり調整するかということが大事な問題である。一方今度は生産いたしました製品は、これまた商社を通しまして流通しているわけであります。六五%商社を通しまして流通する。そういう点で大手商社の支配というものが決定的でございますから、その辺のところをどういうふうに規制するかといいますか、調整するといいますか、それがない限りなかなか困難ではないかと思うんです。  一方人件費の方は年々実はもう低下をしているんです、これは。春闘といいましても合板業界の場合ほとんど春闘は他の産業労働者の三分の一から、よくて半分程度この四、五年続いている状況で、賃金はどんどん低下をしている、人件費は低下をしておるわけです。逆に原木はどんどん上がっている。これの矛盾を解消しない限り、なかなかむずかしいのではないかというふうに思っております。  それから事前協議制の問題でございますが、実は合板の場合には構造改善事業すでに行われておりますが、この構造改善事業の中での設備廃棄問題が実は取り上げられてまいりまして、林野庁と労働組合の間でもずいぶん話し合いをされましたが、林野庁の御見解といたしましてはこうした問題については労使間の合意がなければできないということを明確に実は指摘をされているわけです。私どもはそういう立場、これはもう当然のことだと思うのでありますから、そういう点で労働組合といたしましては、事前協議が単なる話し合い、単なる協議ではなしに、労働組合といたしましては同意という立場に実は考えているわけであります。したがいまして、紙パ労連の御指摘の書面協定の提出ということは、積極的に私どもとしては賛成でございまして、ぜひそういう方向をとっていただければどうかというふうに思っております。
  14. 小柳勇

    ○小柳勇君 対馬君の補充質問ですが、佐野さんに二問だけ御質問いたします。  一つは、五十年以降三年間で一万七千名の離職者が出ておる、そういう話でありますが、離職されたその一万七千名の方はその後どういう生活をしておられるか。たとえば職業訓練もありましょうし、あるいは再就職もありましょうが、追跡されておったら、それをお話し願いたい。  それから、第二問は、中小企業事業転換対策臨時措置法があるけれども、余り活用されていないというお話でありますが、その実態についてもうちょっと御説明を願いたいと思います。いま大手企業についてはこういう法律できますけれど、関連中小企業というのはそのまま野放しになるわけですね。したがって、この事業転換というならば、大企業よりむしろ中小企業にもっと政治としては考えなきゃならぬ。ところが、この転換対策臨時措置法はあるけれども、大した活用されぬぞと、特に業者もそう言っているなんというお話ですから、その点についてのお話を願いたいと思います。二点です。
  15. 佐野明

    参考人佐野明君) 退職者の追跡調査は実は必ずしも全国的、全面的に行われているわけでございませんので、結果面というか、部分的にしかお話しできませんが、退職されて三分の一ぐらいはなかなか就職困難であるということが報告をされております。  それから、就職された三分の二の人方はどういうところに就職したかといいますと、必ずしも同じ同業種、合板にはほとんど就職いたしませんで、いろいろな、金属とかあらゆるところに就職しておるのが実態でございます。ただ、就職の条件は、前の勤務しておるところに比べますと、三分の二ぐらいのやっぱり水準に落ち込んでいる。ほとんどかつて勤めていたところの賃金、労働条件よりも非常に悪いところに再就職しているという報告を実は受けております。  それから、事業転換、中小企業の転換法の問題でありますけれども、実は残念なことに私ども具体的に何件転換したという報告を聞いておらないわけでありまして、残念ながらお答えできませんが、私どももその合板関係の労働組合の会議の中で、いろいろ報告を求めておる限りにおきましては、あの転換法ができてから、業者の中でいわゆる合板業界から見切りをつけて他の業種に転換したという例はないと、閉鎖をしたりあるいは全くの自廃といいますか、いう話は聞いているけれども、あの転換法を利用して他の業種に転換したという報告を実は受けてないということを申し上げておきます。
  16. 小柳勇

    ○小柳勇君 ありがとうございました。
  17. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 本日は、大変お忙しいところを貴重な御意見を承りまして、本当にありがとうございました。  私の方からは、非常に短かい時間でございますので、端的に何点かをお伺いをいたします。  初めに中曽参考人にお伺いをいたします。私としましては初めに内需拡大具体策をお伺いしたかったわけですが、これは先ほど三点にわたってお述べになりましたので、その要望につきましては私たちとしてはもう全力を挙げて取り組みたいと思っております。さらに、本日はまた参議院の運輸委員会におきましても決議案が出され、決議されるようになっておりますので、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。  そこで、三点ほどお伺いしたいと思います。  まず第一は、造船業界の国際的な関係、いわゆる開発途上国やそういうところの追い上げというのもずいぶんありますので、国際国内ともにその環境は非常に厳しいわけであります。そこで、従来わが国造船業界のあり方としましては、いわゆる量的な生産に偏った傾向にあるのではないか。そこで、今後はやっぱりむしろ質的な変換を図るべきではないかという意見が現実にあるわけです。そういうような意味で、今後のわが国の造船界が取り組むべき、あるいは開発すべき造船というものですね。それでまた、そこでさらに、国際競争力に十分対応していけるその今後の経営あり方、この点についてはまずどういうふうにお考えかというのがまず第一点であります。  それから第二点としまして、現在の設備能力をいわゆる半減する、半減しなければならないというふうな意見が現実にあるわけです。しかしこの問題につきましては、私たちも造船工業界の中で、いわゆる何といいますか、設備の廃棄をしなければならないのは大手の造船であって、いわゆる中小造船はそうではないんだと、そういうふうな意見も現実にあるわけです。そこで、削減の方法ではいろんな意見の対立が現実にあると思うのです。こういうような点をどのように解決していかれるおつもりか。これ第二点目としてお伺いしたいと思います。  それから第三点目としましては、いわゆる今後問題になってくると私は思うのですけれども、いわゆるアウトサイダーの規制ですね、これをどういうふうにされるかという問題、この三点をお伺いいたします。  それから、高橋参考人に対しまして、これも二つ、三つお伺いしたいと思います。  一つは、造船業雇用確保の問題であります。現在の造船業における過剰設備の廃棄というのは、これは即雇用問題につながってくるわけであります。組合としましてこの雇用確保を前提としたある程度操業度、これはもうどうしても必要だと思うのですけれども、そのための方策について組合としてはどの程度操業度が必要であり、かつ、その点についてどのように考えているかというのがまず第一点であります。  それから第二点としまして、先ほどもちょっと出ておりましたが、いわゆる労使事前協議制の問題でございます。いわゆる造船業界における設備の廃棄あるいは凍結につきましては、直接雇用問題に関連するわけでありますが、組合として事前労使間で協議することについてどういう方針で対処するのかというのがまず第一。そして、もし協議が整わない場合の措置ですね、これについてどういうふうにお考えかということです。  それから三点目には、高橋参考人、衆議院の審議の際にお述べになっていらっしゃいますが、政府による早急な中期的または長期的にわたる産業構造ビジョンの策定という問題について意見をお述べになっていらっしゃいますが、この問題について組合としてお考えになっている点があれば御説明をいただきたいと思います。  それから次に、佐野参考人にお伺いをいたします。  大体実情につきましてはわかりましたし、また、先日から私たちも現場を見に行っていろいろ事情もお伺はいたしております。そこで、普通合板企業数というのは、現在私たちが掌握した範囲内では大体二百二十社前後と聞いているわけでありますが、その中で労働組合が結成されているのといないのとあるんだそうですが、結成されているのは何社ぐらいあるのか。また、そのうち佐野さんの組合でございます全国一般労働組合に加入されている組合はどのくらいあるのか、それちょっと一遍教えていただきたいと思うんです。  それで、この日本合板工業協同組合連合会というのは、合板製造業構造改善基金の創設によって、全生産能力の一二%の共同廃棄をしようとしておりますが、この廃棄計画の進展に伴って生ずるいわゆる雇用の不安の問題を、各社別の労使交渉に任せておいたのでは、いわゆる労働組合がない企業もある程度あるわけでございますね。そうしますと、企業規模もまた小規模なものが大半を占める現状では、決して労働者のプラスになるものとは考えられないと思うんですね。そこで、雇用不安をできるだけ回避するためには、全体的な雇用問題を労使で話し合う場を設ける必要があると、私たちこういうふうに思うわけですが、この点についてどういうふうにお考えかというのがまず第一点であります。  それから次に、合板業界を取り巻く経営環境の悪化というのは、先ほどから問題になっております東南アジア等の製品との競合により、もたらされている点もあるわけです。そこで、先ほどもお話ございましたが、原木の供給、製品の販売、輸出等により商社との結びつきが非常に強いわけでありますが、このような経営環境に陥っているとその干渉が強くなる、商社の干渉がうんと強くなると私は思うんですが、この実態はどういうふうにおつかみになっていらっしゃるかというのが第二点目であります。  それから第三点目に、こういうふうな経営環境が悪化すると業界の再編成という動きが出てくるんじゃないかと私たちは推測もいたしておりますが、現在そういうような動きがあるのかどうか。もしあるとすれば、労働組合としてはそういうふうな動きに対してどういうふうに対応をされるのか、以上の三点をお伺いいたしたいと思います。
  18. 中曽敬

    参考人中曽敬君) それでは峯山先生の御質問にお答えしたいと思いますが、まず第一点でございますが、日本造船業が置かれております環境からいたしまして、いろんな第三国の追い上げその他ございます。そういった環境下にあって、日本造船業の今後の方向としてはどういう方向にいくべきかというふうな御質問であったと理解するわけでございますが、これは先生御示唆ございましたように、全くそのとおりでございまして、質的に技術度と申しますか、付加価値の高いものをやっぱり日本造船業としては、何といいますか、つくっていくと、そういう方向に進むのが当然のことであろうかと存じます。もちろん将来ともULCCとかVLCCとか従来非常に出てまいりました大きな船、そういったものの需要がこれは今後、ただいまのところはとまっておりますけれども、数年たてばまた出てくるということは、当然考えられるわけでございますけれどもしかしながら日本造船業の将来のベクトルと申しますか、といたしましては、当然のことながらやはりほかの第三国などにはまねのできないようなそういうソフィスティケーテッドな船と申しますか、加工度の高い、付加価値の高いそういった船の方へやっぱり質的な転換を遂げていかなければいかぬのだろうということは当然私どもといたしましても考えているところでございます。  まあたとえばの話でございますけれども、LNG船ななんというような船がございます。これは日本のエネルギーのソースといたしましても将来このウエートが増してくるものでございますけれども、このLNG船につきましても、われわれといたしましては、もちろんいままで鋭意技術をみがいてまいりましたけれども、いろんな事情がございまして、今日までいわゆる実際に動いております国産のLNG船といたしましてはまだございません。わずかに川崎重工でつくりました船がございますけれども、将来の日本のLNG、これをやはり日本の船で運ぶというふうなことを一つの手始めにいたしましてつくっていこうというふうなことで、実は政府関係方面にもお願い申し上げまして、LNG船を国内船としてつくらしていただきたいということを、いろいろといま関係方面に働きかけておる次第でございますけれども、そういった船あるいはたとえば最近の省エネルギー的な政策、そういったものにマッチいたしまして、たとえば従来のタービン船とか大型のディーゼルエンジンというものに比べまして、中速ディーゼルエンジンというものが非常に何といいますか、省エネルギー的なエンジンとしてクローズアップしてまいっております。そういったエンジンを使った船とか、あるいは先ほどちょっと申し上げましたような超自動化船と、いろいろコンピューターその他電子関係、エレクトロニクス関係を駆使いたしましたそういう船、そういったものの建造というものを日本造船業としては将来お家芸としてひとつやっていかなければいかぬというふうにいま考えておる次第でございます。  それから二番目のお話でございますが、設備能力削減するにあたりまして、中手の方では、大手の方がそれは受け持つべきであって云々というふうなお話でございました。実は私ども造船工業会の中でもいろいろと大手、中手とございますので、いかに構造問題に対処すべきかということで、非常に何といいますか、何回にもわたって、そしてまた何時間にもわたって大変な論議をしておる次第でございますが、しかしながら、現在の時点までになかなかコンセンサスというものはつくられるに至っておりません。ただ、その大手、大手と申しましても、従来から何といいますか、エスタブリッシュされました造船所としてある造船所を大手と言い、かつその大手は結果的に見ますというとわりあい造船専業でございませんで、いろんな他部門の仕事をやっておるというのが大手でございます。それが大手と呼ばれておるわけでございますけれども、一方中手という造船所の中におきまして、最近非常にそのキャパシティーが大きくなりまして、先ほどから申し上げておりますようなVLCCとか大きなバルクキャリア、そういったものをつくり得る造船所が数多く出現しております。  したがいまして、やはり大手だけが設備削減して中手か全然手を加えないというふうなことでは、これはうまくいかないんではないだろうか。やはりそれは中手中手なりに設備削減といいますか、供給力削減と申しますか、そういうことをやっていくというふうなことは、需給関係のギャップをなくすという意味では、そして構造改善をやっていくという意味では一つの方向ではなかろうかと、こうまあこれは若干私見に属することであるかもわかりませんけれども、まあそういうことでございます。したがいまして、現在私どもの内部でやられております議論は、中手の方も供給力削減というふうなことを頭において、前提において議論がなされておるわけでございます。  事実上この供給力削減をどのようにしてやっていくかということにつきましては、造船業の特殊性というものがございます。これは単に設備能力だけを削減しただけではこれはうまくいかないんではなかろうか。どうしても造船業というのは労働集約産業でございますので、そういった観点から申しますならば操業度規制と申しますか、そういった一つの規制の仕方というものをあわせて考えなければ、うまく構造改善というのはやっていけないんだろうというふうなこともあるわけでございまして、そこら辺の問題をめぐりまして、いま盛んに部内で議論をやっておると、何とかひとつ部内でのコンセンサスづくりをやろうということで、鋭意議論をやっておる最中でございます。  それから第三番目のアウトサイダー規制の問題でございます。これは造船業の場合には幸か不幸かでございますが、造船法という法律がございます。   〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕 たとえばこの構造改善法律構造不況法案でアウトサイダーがいわゆる出てきたとします。つまり手を挙げた企業がございまして、その企業のほかにかなりの数のアウトサイダーが仮に出てきたとしますか。しかしながら、造船の場合におきましては造船法という法律があるもんですから、たとえば設備のその増設をやるというふうなときには一々これは運輸省の許可が要ることになっておるわけでございます。したかいまして、そういうふうな行政措置といいますか、法律的な措置によりましてこれは行政当局の方で規制をしていただくということができるものでございますから、われわれの場合におきましては、アウトサイダーの問題というのは余り問題にならないというふうに承知しておる次第でございます。
  19. 高橋正男

    参考人高橋正男君) 操業度でありますが、現在の雇用確保するために、これは四十九年度を一〇〇といたしまして六五%程度ぐらいの操業度維持できるならば現在の雇用確保できると思います。  次に事前協議、これはすべて事前協議労使合意のもとに実はいままでの企業合理化に対応してきておるわけであります。じゃ、事前協議が合意できなかった場合にはどうするのかということでありますが、できなかった場合はストライキなんですが、実際不況産業仕事量が減少しているわけでありますから、ストライキばかりに訴えることはできません。したがって、本部が介入いたしまして妥協点を見出さざるを得ないというのが実情であります。  さらに、その政策ビジョンの問題について組合としてどうなのか、この点については基本的に省資源、省エネルギー、知識集約産業としてどういう方向性を持って政策を確立するかという問題にしぼられるわけであります。国際的なそれぞれの国のニーズを把握して、それに対応するということも当然でありますが、当面、さきに申し上げましたように、何としても内需拡大でこの危機を回避しなければならない。たとえばいままでタンカーを中心とした——私はタンカーというのは余り高度な船じゃないと思う。タンクをつないでエンジンをつけた。そこに今日の不況が再来したと言っても過言ではないんじゃないか。したがって、付加価値の高いものを求めるわけでありますけれども、特に私たちが造船技術と請いますと航空機、車両、プラント、あらゆる仕事をやっているわけであります。  中小企業の場合は造船プロパーというところが多いわけでありますけれども、その今日持っている技術の多様性を生かすような方法をとらなければいけない。したがって、開発途上国に対するリース方式の導入、たとえば船をつくってそれを貸してやるとか、さらには給与をするとか、そういうことも一つ考えられますし、さらにプラント関係、陸上機械関係の方に転身をするということも考えていかなければならないし、さきに申し上げましたとおり、日本の海運も国際競争力がダウンしております。したがって、国際競争力維持さらに発展させるために、今日の不経済船をスクラップして、そして国際競争力のある新しい船をビルドする、こういうことをやらないと——海運も成り立つ、造船も成り立つ、両立するような政策を出しておるわけであります。それがスクラップ・アンド・ビルドであり、さらにはLNG船、さらにLPG船、そういう付加価値の高いもの、いま日本で一隻も建造してないわけであります。しかしながら、クリーンエネルギーとしてこれからLNGはきわめて需要が大きいわけであります。昭和六十年では約三十隻ぐらい必要じゃなかろうかと言われておるわけでありますが、一隻約三百億、こういうものでありますから、これにやはり取り組むということによって雇用が守れるし、さらに国際競争力が高まるだろう。したがって、仕組み船も、外貨減らしの一策として仕組み船を買い取って、そして不経済船、老朽船解撤して、そしてビルドするということを考えておるわけであります。これは今日の構造不況改善、構造転換に見習って、将来的な政策一つとしていま例示として申し上げたわけであります。
  20. 佐野明

    参考人佐野明君) 合板関係の労働組合の組織状況でございますが、合板産業全体として大まかに言いますと、約三万五千名の労働者、組合のございますのは約六〇%二万名というふうに踏んでございます。と申し上げますのは、つまり全国一般の場合、約三十社前後の八千名でございます。そのほかに全化同盟さんあるいは一般同盟という同盟系の労働組合の組織に合板労働者が組織されております。それから、総評にも同盟にも属さない中立関係の労働組合がございますので、正確な数字はちょっと把握できないのでありますが、約六割二万というふうに見ております。そうしますと、残余の一万五千名がいわゆる労保組合のない未組織でございます。これは多くは非常に企業規模の小さい合板工場の労働者であります。組織の実態はそういう実態でございます。  そこで、合板労働者全体に係る問題について、私たちはできる限りこの話し合いの場を持ちたいという意味で、先ほども申し上げましたが、総評とか同盟ということだけにとどまらず、私ども全化同盟あるいは一般同盟の合板の方々と何回か話し合いを持ちまして、合板労働者全体の責任を負う立場で日本合板工業組合連合会との話し合いを実は持っているわけでございます。しかし、非常に残念なことには、その何と言いますか、当事者の交渉能力とか、いろいろ口実を設けられまして実質的な話し合いがなかなかできない。林野庁の行政指導などもいただきながら、一歩でも前向きに話し合いをしたいと思っていますが、業界の対応はきわめておくれておりまして、私たちの立場から見ればおくれておりまして、実質的な話し合いになかなか入り切れないというのが、残念でありますが、実態であります。  したがって、未組織の労働者の問題も含めて全体の立場でこの問題に取り組んでいきたいという気持ちは持っておりますが、なかなかそういう意味での実質的な話し合いの場が実現していないというのが実情であります。がしかし、今日のこういう状況の中で、それにとどまることなく、できる限り日合連との話し合いは、実質的な話し合いの内容というものは高めるようにひとつ努力をしていきたいというように考えております。  それから、商社の合板業界に対する影響力の問題なんですが、御承知のとおり、合板はインドネシアとかあるいはフィリピン、東南アジアの方から輸入をするわけであります。ほとんど南方材に依存しているわけであります。そうしますと、その原木というものは膨大な実は資金を必要とするわけであります。結論的には原木を取り扱う商社が、金融の問題を通じながらそこで事実上の体制に実は入ってくるわけであります。四十八年ごろまでの間に合板業界は二倍、三倍の膨大な設備投資をいたしました。工場の増設、新設をいたしましたが、この膨大な設備の増設、新設の資金も多くは商社からめんどう見ていただいている。したがいまして、原木、設備、加えて販売、すべての面で資金その他の面を通しまして商社の支配下に実は置かれているわけでございます。その結果各会社のあるいは工場の管理体制の中にも役員が派遣されるなどという形で事実上この支配下に置かれているというのか一般的な状況であります。個別の問題は時間もありませんで省略さしていただきたいと思います。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕  再編成の問題でございますけれど、そういう状況の中で商社あるいは林野庁、そういうところを中心にいたしまして業界の再編成を進められているということを実は承っております。そのねらいはやっぱり効率的な会社、工場に集中生産をしていくということにねらいが置かれているようでございまして、その結果といたしましては、当然中小の合板工場の切り捨てにつながっていくわけであります。したがって、今日のこの法案の中心的な問題である設備廃棄の問題と、業界の再編成とも実はそういう点では一致をするというふうに見ているわけであります。私たちといたしましては、そういう結果各工場や会社に相当過酷な合理化が避けられないんではないかという点で、そうした動きについてはきわめて、何といいますか厳しく私たちとしては対処していくという、そういう決意でございます。
  21. 渡辺武

    渡辺武君 参考人の皆さんには、きょうは御苦労さまです。端的に幾つかの点を伺いたいと思います。  まず中曽参考人に伺いたいことですが、この法案による設備の廃棄、現実には海運造船合理化審議会の答申を待ってから行われるということになろうかと思いますが、日本造船工業会としてすでに大手それから中手及び小手などについて廃棄の割合などを試算しているということを伺っておりますが、どのようにお考えになっていらっしゃるか伺いたいと思います。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕  それからまたそうした操業度、これを前提とした場合に労働者はどのくらい削減されることになるのか、その試算がありましたらお知らせいただきたいと思います。  それからもう一点、いま造船不況が特に中小造船に集中的にあらわれているわけでありまして、私愛媛県の今治に調査に行きましたが、非常に深刻な状況でございます。それで、そのときに特に強く聞かされたことですけれども、大手造船会社が中小造船の分野にいわば進出してくると、それから船価についてもダンピング受注をやっているということを聞きました。もし御承知であれば、その実態をお聞かせいただきたいと思います。こうした大手造船の船価ダンピング、あるいは中小分野への進出、これがいまの中小造船や下請を特別に深刻な状態に陥れている原因になっているんじゃないかと思いますが、その辺の影響についてもお聞かせていただきたいと思います。  それからもう一点、関連しまして、こうした状態をやはり何とか改善しなきゃならぬじゃないか、つまり分野調整、それから船価ダンピングなどのチェックですね、こういうことをやって、中小造船を保護する行政指導が十分になされないならば、この法案による設備廃棄だけでは、現在の中小造船には余り役に立たないことになるんじゃないかというふうに思いますが、その点どのようにお考えか。  それからもう一点、先ほど官公庁船受注の問題、お話がございました。私海上保安庁から、どのくらい一体中小造船に注文がいっているのかということを伺ってみましたら、大手に九六・三七%ですね、この仕事がいっているんだと、ですから、逆に言えば中小造船所には三・六三%しかいってないという状況なんです。それで海上保安庁意見では、いや技術上問題がありますと、大手でなければむずかしいですということを言うのと同時に、大手に発注したように見えるけれどもしかし、その大手の下請に仕事がいっておりますので、そういう形で中小造船にいっているんですという答弁がありましたけれども、私はこれは技術的な問題は何とか解決できるんじゃないか。大手造船所もドックは遊休する、技術者も遊ぶというような状態になっているわけですから、大手の適切な協力があれば、仕事は直接に中小造船に回すことができるんじゃないか。運輸大臣もそういうことを希望しておられたような答弁でしたが、その点業界としてどう考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。  それから高橋さんに伺いたいと思いますが、大手造船所優先的に下請などを切り捨てていっている。いま下請に大量の失業者が出ているわけですが、同時に自分のところで雇っている労働者についても、大手造船所が次々に整理計画を発表しているという状況ですので、いま出されている人員削減計画ですね、これについてもし御存じであればお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一点、大手の造船部門仕事量が減少しているのにもかかわらず残業だとか労働強化、これがまた非常に強まっているという話を伺っておりますが、その実態はどんな模様なのかお聞かせいただきたいと思います。  それから、これは私の意見ですけれども、私どもが調べてみますと、大手造船所不況不況と言いますけれども、内部留保は非常にふえているんですね。大手造船七社の内部留保を計算してみますと、四十八年の三月には四百二十五億円、それが五十二年の九月には七百八十四億円と二倍以上に四年半の間にふえておるという状況です。  それからもう一つ、私どもが実は三菱重工の例で計算してみたんですが、資金運用などのためにたくさんの株を保有しているんですね、他社の株を。それでその保有株の約一九%、これを販売した場合に、これは銀行関係の株で計算してみました。時価で計算しますと約三百三十六億円という数字が出るんです。三菱重工の全労働者の一年間の賃金が三百二十四億円ですから、二割程度の株を販売しただけで労働者年間分の賃金が出てくるという状況です。しかも、株は取得価格に比べていま大分上がっていますから、売った株の中で約半分くらいは株式の売買差益として出てくるんですね。ですから大手造船所が自分のところの労働者の首を切るということを防ぐための物資的な条件、これはいま言ったように内部留保を何とかするとか、あるいは特に手持ちの株を時価で売って、その一部を充てるとかいうようなことで私はできると思うんですね。したがって、やはり労働時間の短縮あるいは週休二日制などこういう不況業種でこそ実行に移すべきじゃないかというふうに思いますが、その点どんなふうにお考えか伺いたいと思います。  それからもう一つ、三菱重工の中期事業計画、一九八〇年までの計画が発表されております。それを見ますと労働者は六千三百七十八名削減だということになっているんですけれども、事業量の方を見ますと、受注高はこの間に約一兆円ふやして五十一年度の一・七三倍になるんだという計画になっているんですね。造船部門の方も受注がふえることになっていますが、陸上部門がかなりふえるという形になっているんです。  そこで伺いたいんですけれども造船部門不況だからといって首を切るということをしないで、受注のふえる陸上部門の方にこの労働者を吸収するという措置を講ずるべきじゃなかろうかというふうに思いますが、その点どうでしょう。  それから佐野参考人に伺いたいと思います。  先ほど、非常に合板産業の深刻な状態についてお聞かせいただきましてありがとうございます。特にアウトサイダーまで規制して長期にわたって不況カルテルが実施されているのにもかかわらず、いまだにやはり業界の安定ができないという実態もお聞かせいただいて非常にありがたかったわけですが、今度のこの法案設備の廃棄ということが中心的に行われるわけですが、私ども特に心配しておりますのは、先ほど御報告のあったような合板業界の実態などから考えてみまして、このしわ寄せが全面的に労働者に来やしないかという点で、非常に心配なわけです。従来の設備廃棄などで労働者にどのようなしわ寄せがあったのか、もし詳しくお聞かせいただける点があればお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一点、やはり先ほど高橋参考人にも伺いましたが、どうしても週休二日制などを含めて労働時間を短縮するとか、やみ残業を規制するなどの措置をとらなければ、私、業界の安定そのものも困難になるんじゃないか。設備は一方で廃棄しながら残業などをやっているということで、ますますもって不況は解決できないという状態になるわけでありますから、その点についてどんなふうにお考えか。  それからもう一点、雇用確保の問題ですが、この法案では対象産業に指定されると主務大臣が雇用の安定を図る措置を含めて安定基本計画を定めることになっておりますが、佐野さんとして、こういう安定計画の中に、一体どういう点を盛り込むことが一番有効な措置になるとお考えなのか、その点もお聞かせいただきたいと思います。
  22. 中曽敬

    参考人中曽敬君) それでは渡辺先生の御質問に対してお答え申し上げたいと思います。  まず第一点、設備の廃棄問題についての御質問でございますが、これは先ほどもちょっと申し上げましたように、現在私どもの中でいろいろな議論をさしていただいておるわけでございます。ただ、ただいまの時点におきましては、まだコンセンサスを得るところまでいってないということでございます。これは造船業の場合は特殊でございまして、先ほども申し上げましたように、設備の何といいますか、能力の削減のみならず、やはり操業量といいますか、そちらの方の削減ということを合わせまして供給能力削減と申しますか、そういうことを図らなければいけないだろうということは先ほど申し上げましたとおりでございまして、現在までの時点、何か新聞に出ておったのかも存じませんけれども、私どもの方で、特に事務局の方でそういうふうな何といいますか、試算をした数字などというものはまだはじいたことはございませんし、またこれはまさにわれわれのメンバー会社がそれぞれ議論をいたしまして、そうして、こうやろうじゃないかというふうなコンセンサスを中の方から積み上げていくというものが筋ではなかろうか、少なくともコンセンサスをつくる場合には。そういうことであろうと思いまして、そういう方向で現在いろいろと議論をしておる最中でございます。  それから、操業度が四〇%ぐらいになったときには一体どのようなことになるだろうかというふうなお話がございました。これは後また高橋さんなり、佐野さんなりに対する御質問との関連がございますんでございますけれども、実は造船業の場合、また私どものメンバー会社は大手の造船所が多うございますのですけれども、いわゆる兼業部門をたくさん持っております。したがいまして、造船部門操業度が四〇%になりまして雇用の縮小をもたらすわけでございますけれども、直ちにこれがいわゆる会社の外に出ていただくというふうなことには直ちにはつながらない。と申しますのは、いわゆる他部門へ配置転換ということもございますし、もちろん工場があちこちにございますから、同じ造船所の中でなくても他の工場へ配置転換ということもございます。あるいはまあ系列会社に対する出向と申しますか、そういうことだって可能なわけでございまして、現在までやりました雇用縮減というのは、大半が実はそういう形によって雇用縮減が行われているというのが現状でございます。  それから、四〇%にまでなったら一体どういうことになるかというお話でございますが、実はわれわれ会員会社二十社の集計で申しまして、五十年三月には九万七千人の雇用を抱えておったのでございます。それが五十二年十月までには約一万二千人ほど減っております。造船部門だけでございます。この一万二千人はどうなったかと申しますと、先ほど申し上げましたとおり、社内での配置転換なりあるいは系列会社への配置転換なり——出向でございますね。そういったことによって大半が賄われておるわけでございます。  それから、さらにこれが四〇%ぐらいまでになったらどういうことになるかと申しますと、各会社の従業員はさらに二万人ぐらいは恐らく縮小しなきゃならぬだろう、こういうふうに考えます。この場合、二万人の方たちの身の振り方は、先ほど申しましたようなことをさらにやっていかなきゃいかぬというふうにも思いますけれども、場合によっては、現在すでに出ておりますような希望退職というふうなことも、あるいはとっていかなきゃならぬことになるかもわかりません。  もう一つ申し忘れましたのでつけ加えておきますけれども、実はだんだん操業度が減ってまいります第一段階でどういうことを造船所がいたしますかと申しますと、まず残業規制をやるのでございますね。この残業規制でかなり何といいますか雇用時間の縮小を支えることができるわけでございます。それをまず頭に置いていただきまして、いま私が申し上げましたことを御理解いただきたいと思います。
  23. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  24. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記を起こして。
  25. 中曽敬

    参考人中曽敬君) 第二点でございますが、造船業不況によりましていわゆる分野の問題、大手が中手に入ってくるというふうなお話がございましたけれども、これは先ほど御説明申し上げたので省略さしていただきたいと思いますが、なかなか現在出てくる船型が大きい船が出てまいらないものでございますから、分野の調整ということが事実上むずかしいということでございます。  そういうことでございますので、船価の問題等につきましても非常に競争が激しいというわけでございますので、これはやっぱり解消するためには需給ギャップをなくすということが一番決め手になるわけでございます。構造改善というのはそこをねらったことでございますので、ぜひこの構造改善を進めることによって、そういうことを改消していくということか第一義的な問題であろうかと思います。  それから第三点の海上保安庁の問題でございます。これは実はいわゆる海上保安庁の巡視船につきましては、非常にむずかしい船がございます。たとえばヘリ空母というのがございます。これは中手造船所で事実上おやりになろうと思っても、なかなかできないものであります。それからもう一つは、初めて出てくるような船でございますね。たとえば五十二年度の補正予算で初めて出てきたんだと思いますけれども、戦闘型の巡視船でございますが、こういった初めて出てくる船は、どうしても設計を大手の方でやっていただいて、そうして大手でおつくりいただくというようなことが必要であろうという海上保安庁側のお考えでございますけれども、そういうことがございまして大手にいったという例がございますが、ただ二番目につくる船は何も大手でなくてできるわけでございます、たとえば戦闘型の巡視船等につきましては。そういうことがございますので、先ほどの御質問に答えて申し上げましたけれども海上保安庁と申しますか、あるいは運輸省と申し上げた方がよろしいと思いますが、運輸省の行政指導といたしまして、今後出てくる船は、例外はございますけれども、大手の方はなるべく手を出すなよというふうな行政指導がなされつつあるということを申し上げておきます。
  26. 高橋正男

    参考人高橋正男君) 経営の方は、減量化に先行してやはり雇用調整というふうに取り組むということが実態、これはきわめて遺憾だと思うわけであります。特にこの雇用問題で非常に出向、配転、これが多いわけであります。大手においても中小手においても多いわけであります。ということは、労働条件の低下を認めない、そういう立場で配転はやむを得ないというふうに、雇用を守るわけでやっているわけでありますので、当然陸上部門とかそういうところに配転がたくさん出ておるわけです。問題は、下請協力であります。これは本工——本工といいますか、社員か一万六千名ぐらい減少し、下請が三万六千ぐらい大体減少しているわけであります。この点については、特に企業に対して下請協力についても他業種にあっせんということを組合からも強く申し入れているわけですけれども、何としても絶対量が少ないために離職してしまうというのが実態であります。  労働時間の問題については、これは造船重機は産別でも一番早く一番短い時間だと思う。四年前に千九百六十八時間でありますから、大体百十四日の休みがある。ですから三・五に一日休みと、こういうふうにしているわけです。これ一番短いと思います、電気や鉄鋼比べても。そういう時間短縮をして今日の不況を回避したいと、こういう努力をしておりますので、そういう点では時間短縮なり残業規制なりあらゆる努力をやっていると。労働強化という一面が指摘されたわけでありますけれども、集中生産、いままでは並行建造とかたくさんありました。集中的に建造するわけですから、確かに労働効率というものは上がっているということは言われると思います。  以上です。
  27. 佐野明

    参考人佐野明君) 設備廃棄の結果の労働者のしわ寄せの問題については、ずばり一口に申し上げれば、設備廃棄されるというような工場は失業であります。もちろん工場によっては残されている労働者もあり、その労働者に対しては、労働時間の延長など労働条件の低下というのがございます。また、再就職問題については先ほど質問いただきましたが、再就職した者の労働条件でいきますと、中には前の賃金、いままでの賃金に比べて五〇%、約半分ですね、の賃金で就職したのが一八・九%、四〇%賃金ダウンが一六・二%、三〇%の賃金ダウンが八・一%、二〇%のダウンが三二・四%という形で、これはある名古屋における合板工場における退職者の追跡調査でありますが、ほとんど以前の賃金に比べて大幅に賃金をダウンしているというそういう状況でありまして、再就職でも非常に困難な条件に置かれているということ、そういう実態でございます。  それから、安定計画の問題についてたくさん希望ありますが、一言で申し上げるならば、どういう事業であれ、働き手である労働者雇用安定、雇用確保あるいは労働条件維持というものなくしては、本当の意味での安定の立った事業計画はないと思う。その二点はぜひこれは織り込んでいただきたいと思います。
  28. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 本日は各参考人に御多忙の中を長時間本当にありがとうございました。時間がほとんどありませんので、造船関係につきましてはたまたま造船出身の同僚議員も私どもおりますし、内容もよく存じております。おおよその御見解承りましたので、質問をこの際省略いたしたいと思います。  一点だけ佐野参考人にお聞きしたいわけですが、私も合板の零細企業が零細過多性である、しかも組織化が非常におくれておるというような意味から、この掌握が非常にむずかしいということはよく理解するわけですが、だからと言って、長い間不況カルテルを結びつつもなお実効が上がらぬどころか、生産が伸びておるということは、私なかなか解せないんです。私も繊維産業、これは操短の歴史と言われる繊維産業の出身ですから、繊維産業も合板と同じように企業は零細過多性である、全国に散在しておるというような状況でございますけれど、しかし操短をやれば価格修正がやはりできるという過去何回とない経験を持っておるわけなんです。そういう中で不況カルテルをやりつつも生産が上がるということは、生産がさらに伸びるということは、お互いつぶし合いだと言っても過言ではない、これは大変な問題だと思うんです。組合としても雇用を守るという立場から、同時に企業の安定を図るという意味から、どのようにこれに対応しておるのか、その辺をもうちょっと聞かせていただきたい。  先ほどお話の中に、路線の違いはあっても、置かれておる企業の安定と雇用確保という意味で全化と手を組んでやっておるということは、私は大変傾聴すべきお言葉だと思います。これからもそうやらねばいけないというふうに私思うわけだけれども、当面どうしておるのか、それを聞かせていただきたい。  それからもう一つ、そういうような企業体質であるなら、私は全部の雇用というものを全部固定して、そして現在保有しておる機械を全部保持して、そして安定を図っていくということは不可能だと思うんです。だから、やはりいまの現実さらされた状況に立てば、何らかの法律の裏づけによって、設備削減というものを図っていかなきゃいかぬ。その場合に雇用を全部守っていくということが前提に立てば、これはもう企業産業がなし崩し的に私は倒産、崩壊に追い込まれていく。そうすると、もう好むと好まざるとにかかわらず多数の犠牲者がそこにいやおうなく発生していく。したがって、法の強い裏打ちのもとに、やはり不用な機械は、雇用というものを真剣に考えつつ、事前労働組合とのネゴシエーションをやりつつ廃棄せざるを得まい。  その場合、雇用した職から離れた人たちにさらに収益性の高い産業へ誘導する。それを路頭に迷わないように補完措置をとる。そのための雇用のための法律もあるけれど、それをさらに補強していくということが側面にやっぱり必要じゃないだろうか。だから、全体を固定してしまって動かすことはならぬのだと言えば、これはもう自然崩壊になっちゃう。カルテルを結んでも、なお生産が伸びるというようなところであればなおのこと、どうしようもないじゃないかという気がするわけなんで、その辺に対してどういうふうにお考えであろうかということをお聞きしたいと思うんです。
  29. 佐野明

    参考人佐野明君) 私の話、若干正確を欠いているかもしれませんが、先ほど申しましたとおり、不況カルテルというのは、そもそも操短をいたしまして生産数量をできるだけ抑えて価格を上昇するといいますか、市場の安定を図るというのが、これはもうねらいだろうと思うわけです。それに対しまして公取がそれをオーケー与えて行われているわけですが、月のうち四日ないし五日なり六日というものを一斉に操短いたしましても、その操短以外の日は特別の規制がないわけでございますから、そうしますと、残念なことには、業界全部が協調されて同じ足並みでやれればいいんでしょうけれども、実際問題としては何といいますか、金融その他の関係もあるのだろうと思いますが、残業を一斉に始めたり、休日出勤をしたりという形をやりますので、結果的にはさっきのカルテルの効果というのは減殺されてしまっているわけです。  その原因というのは、やはり何といいますか、労働組合の立場でいきますと、できるだけそれを規制しなければいけないというふうに指導はしているんですが、残念なことには、日本労働組合は企業労働組合でございますので、なかなか労働組合が労働組合を監視するわけにいかないのでありまして、それぞれが自覚的にその問題は規制していただく以外ないんですけれども、何といいますか、現実問題としては企業労使関係の問題もあって、労働時間を延長したり、残業したり、休日出勤した結果、当初のカルテルのねらいにはいかない、生産がやっぱり一向に減らない、こういう状況なんです。もちろん私どもがその問題については、全化同盟なり一般同盟とも話し合いしながら、年間の総労働時間を規制しよう、それから月間の残業その他の時間を規制しよう、そういう意味で生産効果をひとつあらしめるようにしていこうではないかということで、日本合板工業組合連合会に申し入れを実はしてあるんですが、この合板組合自身がそういう面で積極的に取り組もうとしない、残念なことに。ですから、そこに私は一つの問題なり、打開する方向というのはあるんじゃないかというように思っております。  それから、設備の過剰問題でございますが、私どもはこれは全化同盟さんなり一般同盟さんといろいろ御相談した中では、過剰在庫の問題についてはいろいろと議論がありますからこれは別にいたしましても、設備廃棄の問題については事前協議を十分ひとつやってもらうということについて、これは完全に意見が一致いたしまして、日本工業組合連合会なりあるいは監督省庁に対しての申し入れをしようということで、実は意見一致しているわけであります。この申し入れしてあるわけでありますが、具体的にまだ進んでいないわけです。  そこで、今度私ども全国一般の立場から言いますならば、先ほども言ったとおり今日の合板産業の状況というものは、住宅産業との関係から見た場合に、必ずしも設備過剰ということには当たらないのじゃないか、住宅建設が進むことによりまして、合板産業需要というものの需給のバランスは当然やっぱり確保されていけるのじゃないかというそういう立場から、設備の問題について必ずしも過剰であるというふうには、実は認識をしていないわけです。同時にまあ現状の中では、大変厳しい状況に置かれていることは事実でございますから、その問題については、いまの野放しの残業だとかあるいは労働時間の延長をできるだけそれを規制して、逆に週休二日制だとかあるいは夜間勤務ですね、夜間労働まだやっているところがあるんですが、それをできるだけ規制することによって、今日の矛盾というものを解決していくべきではないかというそういう実は認識を持っておるわけでございます。
  30. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 ありがとうございました。
  31. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言もなければ、午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には御多忙中のところ、長時間にわたり御出席いただき、また貴重な御意見を拝聴させていただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  再開は午後一時とし休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      —————・—————    午後一時九分開会   〔理事福岡日出麿委員長席に着く〕
  32. 福岡日出麿

    理事福岡日出麿君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き特定不況産業安定臨時措置法案を議題とし、参考人意見を聴取し、それに対する質疑を行います。  御出席をいただいております参考人方々北海道室蘭市長長谷川正治君、平電炉普通鋼協議会会長安田安次郎君、全国金偶労働組合副委員長中里忠仁君及び全日本ゴム産業労働組合連合会書記長西松義夫君の以上四名でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。  本案に対する皆様の忌憚のない御意見を承りまして審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、参考人方々には十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えをお願いしたいと思います。  それでは、まず、長谷川参考人お願いいたします。
  33. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 私は、現下の経済情勢の中にあって、業界全体の経営が最も逼迫し、いわゆる構造不況業種の代表的な造船産業を抱える地方自治体の首長の立場から、いま地域社会が造船不況の余波を受けて、いかに呻吟しているかという実態を皆様に御理解いただくため、室蘭市の現状を申し上げ、これに伴う要望事項の一端を述べさせていただきたいと存ずる次第でございます。  申すまでもなく、北海道開発については昭和二十五年北海道開発法が公布され、国の方針としてその開発事業が着々と進められ、今日に至っていることは、御高承のとおりでございます。  しかし最近に至り、二百海里問題に関連し、本道産業に高いウエートを占める水産業は減船問題などの状況に直面し、その影響が、道内経済の各面にわたって憂慮すべき広がりを見せているところでございます。一方、これら一次産業の水産業、農業を補完すべき工業生産についても、わが国経済基調の変化に伴い、全国水準を下回る推移を示すなど、わが国経済中心地と遠隔の地にある北海道工業は、非常に困難な立場に置かれているのか実情でございます。このような情勢下にありますが、室蘭市は、二次産業の脆弱な北海道工業の中にあって、鉄鋼、造船・機械などを基幹産業とし、その工業出荷額は、昭和五十一年実績で五千四十三億円、全道出荷額の一四%、重化学工業生産品に限って見ればそのウエートは約三七%に達する北海道最大の工業生産都市でございます。本道工業開発の先導的役割りを担い、今日に至っている都市でございます。  しかしながら、本市産業の活力は停滞し、鉄鋼業の生産は最盛期の三分の二、造船に至っては、三分の一近くまで低落を余儀なくされるなどまことに厳しいものがございます。とりわけ造船産業につきましては、現在室蘭市は、二社の造船会社が立地しておりますが、その抱える従業員は、当該業界の最盛期である昭和四十八年には、本工、社外工を合わせまして約三千名に達し、室蘭市の二次産業従事者の一〇%に達しておりました。しかし造船操業度が低下した今日では、それも約一千九百名にまで低下いたしまして、これに伴って、本市の雇用環境はまことに厳しい状況となっておるのが現状でございます。ちなみに、本年二月末の本市の有効求人倍率は〇・一八、これは、就職希望者のうち、五人に一人しか就職できない状態を指すわけでございますが、特に、造船技術者の転職の場合はむずかしいものとなっておるのが実情でございます。また、同月の全国の有効求人倍率が〇・五四であることと比べますと、いかに室蘭市の雇用環境が厳しいものであるかということが、おわかりいただけると存ずるところでございます。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕  以上のような状況から、いま、室蘭市においては、失業者が四千六百名に達し、これらの市民に対する職場の創出と、これに関連した下請一次、二次企業等の仕事量確保という問題が目下、行政の急務にしてかつ最大の課題となっておるところでございます。もとより本市といたしましても、このような事態に対処し、公共事業拡大発注、あるいは、緊急不況打開融資制度の創設などとり得るあらゆる手段を講じているものでございますが、一地方自治体の力だけではその展開にも限度がございまして、はなはだ苦慮しておりましたところ、先般、国におかれましては、労働省所管の特定不況業種離職者臨時措置法に基づくところの特定地域の指定、さらには、通産省所管の特定不況産業安定臨時措置法案が閣議決定されましたことは、このような意味からはまことに時宜を得たものと存じ、厚くお礼を申し上げるところでもございます。今後とも、これらの法律による措置が、真に実効性あるものとして機能するよう希望する次第でございます。とりわけ、地域社会にとりましては、失業問題の発生と、これにともなう人口の流出という事態か一番の不安を招く要因でもございますので、法案を一層強固なものといたし、きめ細かな御配慮を賜りたいと御要望申し上げるところでございます。特に、特定不況産業安定臨時措置法案に基づく設備処理構想は、当該業界を通して地域社会に多数の失業者を発生させる懸念もございますので、その運用に当たりましては、十分なる地方の実態調査と関係当局の御指導をお願いいたしたいと存ずるところでもございます。  このような意味合いから、室蘭市のような構造不況業種を抱える都市に対しましては、国会先生方による調査団の派遣をぜひお願い申し上げ、御要望の第二点といたしたいと存ずるところでございます。  次に、要望の第三点目といたしましては、公共事業の促進について申し上げたいと存じます。言うまでもなく、深刻化する不況の克服策といたしましては、大型公共事業を中心とした施策の推進が何よりも即効性があり、波及効果も大きいわけでございますが、その効果を上げる意味からも、事業発注の際、地元への配慮をぜひお願いいたしたいとともに、特にソビエト船の給水、給油、乗組員の上陸など、国内法での限度はあると存じまするか、法の弾力的運用を図るとともに、ソビエト大型船の修理を初め、海上保安部、北海道庁が所有しております官公庁老朽船スクラップ・アンド・ビルド、監視船及び巡視船に必要な船舶の製造等について、経験と実績のある企業への発注について特段の御配慮を賜りたいとお願い申し上げるものでございます。  造船不況対策として本市の造船会社は、その造船技術を生かしまして陸上部門へ進出を図っているという背景があるのでございまして、もしこういった造船企業の集中している地域周辺で、橋梁の構築、さらには懸案事業でございます当市の白鳥大橋の建設等の大型公共事業実施するならば、雇用、失業対策だけでなく、造船不況地域の繁栄ともつながりまして、不況対策としては相乗的な効果を上げ得るものと存じているところでもございます。したがいまして、このような大型工事の創出、あるいは計画中のものは、その繰り上げ等についてぜひ御検討を賜りたいと存じているところでもございます。  以上をもちまして、要望を含めた法案に対する意見といたす次第でございます。
  34. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。  次に、安田参考人お願いいたします。
  35. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 特定不況産業安定臨時法案に対しまして、平電炉の立場から若干要望を申し上げさせていただきたいと思います。  この法律は、業界の安定基本計画を策定して、計画的な設備処理の推進を図ろうというのがねらいでありまして、そのため必要なる資金の借り入れに係る債務保証を行う信用基金を創設するというふうに理解しております。  実は、われわれ平電炉業界におきましては、安定基本計画に相当するものといたしまして、昨年の二月、通産省の基礎産業局長のもとに私的諮問機関として平電炉基本問題研究会というものが設立されまして、そのもとでいろいろ調査いたしました結果、過剰設備があるということに報告ができたのでありまして、またその過剰設備の処理を容易にするために、昨年の十二月国庫補助金を得、また民間の資金も入れまして平電炉業構造改善の促進協会を設立するに至ったのであります。  平電炉の基本問題研究会というものの報告書の内容に若干触れておきたいと思うのでありまするが、平電炉業界の大幅な需給ギャップについては設備能力昭和五十一年度のまま五十五年度まで推移したといたしましても、少なくとも三百三十万トンが過剰であろうという指摘がされておるわけであります。この指摘に基づきまして次の三点が報告されております。  まず第一点、したがって電気炉の新設設備を抑制するとともに、今後電気炉を設置する場合に新しいルールを確立しなければならないというのが第一点であります。第二は、五十三年度、本年です、本年中にこの過剰の三百三十万トンの能力に見合う過剰設備を処理することというのが第二の指摘であります。この三百三十万トンというのは、電炉の所有している設備能力に対して約一六%に相当いたします。この処理方法については、いろいろ各社単独でもやりますが、高炉一貫メーカーの系列グループあるいは商社グループというようなグループ別によって処理をいたしております。第三は、需給ギャップの解消及び設備処理の効果が生ずるまでの間生産調整をやりなさいというのが第三点であります。平電炉業の構造改善は、この報告書に基づいて現在逐次進みつつあることを御報告申し上げておきたいと思います。  まず第一点についてでありますが、産業構造審議会鉄鋼部会の下に平電炉設備委員会というものを設けまして、先ほども言いましたように新設設備について今後の新しいルールづくりというものをここでやるということになっているわけであります。当初この安定法案ができましたときに、私は通産省から原案を、そのまま来てもらいまして、報告を受けまして、二度平電炉協議会の総会を開いたのでありますが、その安定計画に基づいて各企業が自主的に設備処理を行い、これが困難であった場合、主務大臣か設備処理及び設備の増設、新設抑制のため共同行為の指示を行うことができると、その場合、共同行為に加わらない事業者に対しては設備の新設、増設を禁止することができる、いわゆるアウトサイダー規制ができるのだというふうに盛り込んでありました。で、その法案の説明を聞いて私は二度総会を開きました結果、われわれの電炉業界のメンバーは六十社あるわけでありますが、そのうち五十社は賛成、六社は反対ということで圧倒的多数で指示カルテル、また設備の新増設に対するアウトサイダー規制にも賛成という数字が出たわけであります。  第二の点に関連いたしまして、報告書の提言にありますように、各メーカーは通産省に対しまして電気炉の新設設備を抑制するということを前提条件にいたしまして、三百三十万トン設備は自主的に廃却するということを申し出、現在休止状態に入っております。このような過剰設備の処理をするために企業がある中で、他方新設設備は自由に行ってもいいということになりますと、構造改善というわれわれの仕事は全く目的を達成することができなくなるということを申し上げておきたいと思います。  もっとも、衆議院におきまして本案が可決された際「共同行為に参加しない事業者に対しても強力な行政指導を実施すること」という附帯決議をなされたと承っておりまするが、われわれ業界の業者間の、熾烈なる競争が展開されておりますので、構造改善について国家が力を注いでいただけるとするならば、できることなら法律によっていま申し上げた矛盾の起こらないように、アウトサイダー規制をしていただくよう特に要望いたしたいと存じます。  さらに第三の生産調整についてでありますが、昨年の七月中小企業団体組織法に基づいて棒鋼工業組合を設立されまして、昨年の十月からことしの三月まで生産の数量、販売価格に関する制限を実施してまいりまして、アウトサイダーについては生産数量の規制も通産大臣からやってもらうことができました。しかし、この三月で切れましたので、なお市況というものに需給のギャップがございますので、四月から六月まで三ヵ月間さらに延長していただきまして、アウトサイダー規制も含めた生産制限を認められたのであります。業界といたしましては、本来望んでおることは、先ほど申し上げましたように需給ギャップの存在することを前提としております五十五年度までは、アウトサイダーをも含めた長期にわたる調整事業を認めていただきたいというのが平電炉業界の考え方であります。  小形棒鋼の市況は確かに最近やや上向きになってまいりましたが、これは在庫調整の進展と、主原料であります鉄くず価格が上がったという点によるものでありまして、メーカー自身の収支の点についてはさほど改善されておりません。こういう状態であったにもかかわらず、ここへきまして一週間くらい前からややまた軟調になってまいりました。現在アウトサイダー規制が行われておるにもかかわらず、市況が軟調になっているのがこの業界の実態であります。平電炉業にとって小形棒鋼というものは主力製品でありますし、平電炉業の不況克服と安定化は、過剰設備の処理と新設設備を抑制することと、この小形棒鋼の安定化ということが最も必要な条件なのであります。全国小棒組合においても調整事業を長期にわたって認めていただきたいという理由は、構造改善に本腰を入れてやるためには絶対必要だということからお願いに上がっておるわけであります。  一部には、市況が高騰する懸念があるのではないかというふうなことも言われておりますけれども、われわれは価格の安定については関係当局と密接な連絡をとりまして十分な注意をやっておりますので、そういう懸念はないと思います。現在、すでにもう一週間前から軟調になっておるということを見ていただければわかると思います。  さて次に、本案によりますと、特定不況産業の指定は、数及びシェアにおいて業界の大部分、約三分の二を占めなければならぬということになっておりますが、平電炉業界の平電炉協議会というのは、メンバーに入っておられる方は六十社、入っておられない方を入れまして約七十二社ございますので、それらの方々の三分の二の同意を得てやるというようなことになりますと、非常にむずかしいことになろうかと存じます。  最後に、特定不況産業についての信用基金について要望いたしたいと存じます。  過剰設備の処理がスムーズに行われにくいということは、所要資金の確保が非常に困難であるという点にあろうかと思います。平電炉自体はほとんどの企業は累積赤字でありますし、債務超過でありますし、工場であるとか建屋であるとか、設備はほとんど担保に入っております。したがって、企業の信用担保能力というものはないのでありますので、金融機関からの新規の借り入れというものは非常に困難な状態であります。一方、金融機関自体も利ざやの悪化や貸し付けの不良債権化から、不況業種であるわれわれ平電炉に対する貸し付けに対しても非常な厳しい状態になっております。  平電炉業界は、先ほど申し上げましたように、国庫補助金によりまして平電炉業構造改善促進協会を設立いたしました。しかし、基金というものはわずか七億でありまして、それを保証によって約十倍の七十億だといたしましても、資金の需要にとうてい応ずることのできない状態でありまするので、平電炉といたしましては次の点を含めまして、この法律による信用基金を十分利用させていただきたいとお願い申し上げたいと存じます。  第一に、企業の所要資金の確保自体を信用基金があっせんしていただきたいと存じます。この場合、政府系の金融関係機関が望ましいと存じます。  第二に、巨額の赤字累積により経営困難に陥っているところでありますので、さらに設備の廃却をして、それを廃却損を計上するということはむずかしいことでありますので、設備の処理に伴う退職資金の借り入れは一層経営を窮地に追い込んでおるのが実情であります。したがって、借入金の利率については、でき得る限り低い低利のものにしていただくことと、返済については最大限の長期間にしていただきたいというのがお願いでございます。  第三番目に、保証の対象資金は、設備の担保解除資金と退職資金になっておるようでございますが、われわれは本案が成立し、安定基本計画に基づくと聞いておりますが、平電炉業界においては昨年の平電炉基本問題研究会の提案によりまして、三百三十万トンという設備はすでに休止をしておりますし、転配置もやり、希望退職もとって雇用の問題は大体終わっております。したがいまして、退職金はすでに支払われており、企業に残されておるのは退職金によって得られた借入金だけであります。本基金において優遇された資金を利用されるということでありまするならば、これに借りかえをいたしまして、資金面での負担を減少し、少なくとも構造改善の一助にいたしたいと存じます。  こうした意味で、本法施行に当たっては、それぞれの業界の構造改善実情に合うよう、法律成立以前に遡及して適用していただくよう特にお願いを申し上げたいと存じます。  なお、第四点といたしてのお願いは、債務保証を行うに当たっては、当然審査が行われることと思いますが、業界、各企業の実態を配慮の上弾力的に運用していただいて、実際基金の利用困難にならないようお願いいたしたいと存じます。  以上、本法について多くの希望を申し上げましたが、平電炉の構造改善、つまり設備の処理も、小形棒鋼の調整事業も五十三年度が正念場になりますので、どうか本案を早急に成立さしていただきまして、構造改善の再建に力を添えていただくよう特にお願い申し上げまして、平電炉業界の希望といたしたいと存じます。(拍手)
  36. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。  次に、西松参考人お願いいたします。
  37. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) 私は、ゴム産業労働者六万名を組織する全日本ゴム産業労働組合総連合、略称全日本ゴム労連の書記長の西松です。  本日は、本法案の立案段階では恐らく考慮に入っていなかった業種の立場から意見を申し上げたいと思います。  ゴム産業は、製品別には自動車タイヤ、自動車用ゴム部品などの自動車関連製品、コンベヤーベルト、ゴムホース、ゴムロールなどの一般工業用ゴム製品及びゴム製履物類と大別して三つの分野に区分できます。そして、高操業ながら過剰生産と過当競争に陥っている自動車タイヤ、設備投資の冷え込みにより五割操業に陥っているコンベヤーベルト等、それぞれに問題を抱えておりますが、今回は、発展途上国からの輸入の増大により危機に瀕しているゴム履物業種にしぼって実情を申し上げることといたします。  ゴム履物は国民の生活必需品として、また昭和四十六年ごろまでは、アメリカを主たる市場とする輸出商品として一応順調に推移してきました。しか昭和四十六年のニクソン・ショックにより、労働集約型産業であるゴム履物産業は急速に国際競争力を失い、逆に発展途上国、特に韓国、台湾からの輸入が増加してまいりました。そして昭和四十八年のオイルショックはこの傾向をさらに激化させ、構造的問題が一層深刻となり、昭和五十年にはゴム履物産業に大きな首切り合理化の嵐が吹き荒れたのであります。そのため昭和四十八年三万三千名であったゴム履物労働者のうち約八千名が希望退職等の形で削減され、昭和五十二年には二万五千名程度になっているのであります。  この間の輸入の足取りは急ピッチで、昭和四十八年の輸入量は二千二百六万足、輸入比率は一七・一%であったものが、昭和五十二年には国内供給一億一千九百七十三万足に対し輸入量は四千三百六十八万足、輸入比率は三六・五%になり、今年一−二月には輸入比率が三九・九%に達しているのであります。そしてその伸び率は五十一年は前年比三五・一%、五十二年は前年比二七・一%という大幅なものです。この原因は、韓国、台湾の量産体制の確立、技術水準の向上、それに何といっても製造コストの差にあると言えます。  昭和五十二年の日本のゴム履物労働者の賃金が時間当たり千四十四円であるのに対し、台湾二百十七円、韓国百三十三円、すなわち日本の賃金に比べ、台湾は五分の一、韓国はわずか八分の一という実態であります。韓国の場合、昨年三〇%、ことしも三〇%程度の賃金引き上げを行ったようですが、急激な円高でむしろ差は開いたのではないかと考えます。しかも、韓国は昭和五十年、ゴム履物の世界への輸出能力一億六千万足を、五十六年には二億七千万足と二・三倍へ引き上げる目標を定め、文字どおりゴム履物を輸出戦略産業として育成しているのであります。  それに対し日本のゴム履物業界は、売上高、従業員数では大企業に属する企業を中心としながらも、体質的には過小資本、労働集約性、個人経営という中小企業的性格が強いため、業界内の協調性に欠け、さらには業界団体であるゴム履物協会の指導性欠除のため、輸入品対策についても統一した考え方を持ち得ないでいました。しかし、最近の輸入品の急増に危機意識を持ってきたようです。  全日本ゴム労連は、昭和四十九年以降、ゴム履物の構造問題を取り上げ、産業対策、雇用対策として、ゴム履物業界に対し、業界の協調、生産及び輸入対策の確立及び経営者の自助努力を求めてきました。また、国内需要に見合った生産と輸入の総量規制を行い、輸入の急増を抑える一方、少なくとも需要の五〇%は国内生産を維持し、雇用問題の発生を防ぎつつ、徐々に業種転換を行っていくべきであるとの観点から、労働組合としての要求をまとめ、行政当局に対しても善処を求めてきました。しかし、輸入品が仮に昭和五十二年の対前年伸び率である二七%で増大していくとすれば、昭和五十五年には輸入比率は五〇%を超えることとなり、そうなれば、日本のゴム履物は壊滅的打撃をこうむり、雇用に重大な影響が出るという、憂うべき状況が明らかになってまいりましたので、諸先生にお骨折り願い、国会の場においてゴム履物の問題を取り上げていただき、また直接通産大臣に陳情もしてまいりました。  全日本ゴム労連が政府・行政当局に要望していますのは、  一 発展途上国からの急激な輸入品の増加に一定期間歯どめをかけ、その間に雇用確保のため業界協調体制の確立と企業体質の改善あるいは転廃業を進める。  二 ゴム履物産業の存続と構造改善推進のため、政、労、使、学識メンバーによる政府主導の委員会を設置し、指導・助成を行う。  三 ゴム履物産業構造不況業種として、各種関連性を持つ法律制度の適用をお願いしたい。  以上の各点であります。  現在、この申し入れに関連して政府・当局からの働きかけにより、ゴム履物協会内に業界の自主的な組織としてゴム履物政策研究会設置の準備も進みつつあり、また、これを機に同協会内のさまざまな意見もまとまる方向にあると見られ、私どもが要望しております委員会の発足を期待したいところであります。  しかし、このような中で、今月八日、ゴム履物の最大手企業、月星化成とその系列企業であるユニ・スター、アイバン・シューズの三社において、労働者の二割に当たる千二百五十名の人員整理、氏家、三潴両工場の本社吸収、賃金の二〇%切り下げ、労働時間年間二百時間の延長、超勤手当、有給休暇の引き下げ、月給制の取りやめ等々、過去に例を見ない労働条件引き下げの合理化が企業再建の名のもとに提案されました。これを一部商業紙は円高先取りの合理化と報道しましたか、実際は発展途上国からの輸入品による市場混乱、在庫増加、借入金の増大等による経営悪化が原因であります。このことは単に月星化成にとどまらず、過当競争に明け暮れるゴム履物メーカーにとっては共通する問題といえると思います。しかも、今回の合理化は月星化成にとっては、昭和五十年の千八百名の人員整理、五十一年のユニ・スター二百三十名の人員整理に引き続くものであり、これまでの企業再建計画を信じて努力してきた月星三労組の組合員に大きな衝撃を与えているところです。  月星化成の所在する久留米市には、同じくゴム履物大手企業日本ゴムがあり、ブリジストンタイヤ久留米工場とともにまさにゴムの町といわれているわけですが、特にゴム履物産業は縫製加工等下請の分野も広く、福岡県南でゴム履物に従事する労働者は二万名、家族を含め四万名に上っており、今回の合理化問題の推移によっては、これらの人々の雇用と生活に影響を及ぼすことになるのであります。しかも福岡県は鉄鋼、電機、化学、窯業の操短、合理化等により、求人倍率は〇・二三倍と全国的に見ても大変雇用情勢の悪化している地方であり、再就職もままならない現状であります。また閉鎖が提案された栃木県氏家工場は、ほとんどの労働者が現地採用であり、福岡県の久留米転勤など考えられず、同工場七百名は、上指名解雇を通告されたに等しいとさえいえるのです。また同工場は氏家町における唯一の民間工場であり、地元において工場存続についての署名活動が大きな盛り上がりをもって進められています。  私ども日本ゴム労連としては、今回の月星化成の合理化提案が、労働条件切り下げによる生産コストの引き下げ、国内生産を落として輸入を拡大するということを通して、ゴム履物業界全体に新たな企業淘汰と合理化を引き起こす引き金となることを懸念しております。そうした意味で、単に月星三労組のみでなく、ゴム産業全体の労働者雇用労働条件を守るため、月星化成の合理化反対闘争を支援する闘いを進める一方、業界経営者に対し、輸入品対策、国内生産対策における一層の協調を求めていく考えです。すなわち、企業存続を意図するこうした身勝手な合理化によるコスト競争が、結局は業界の混乱につながり、急激な淘汰を促進することになることを強調していく考えです。  以上申し上げたような実情でございますから、私どもとしては特定不況産業安定臨時措置法にも大きな関心を寄せているところです。  本法案は、特定不況産業の過剰設備の廃棄、買い上げという面のウエートが大きく、雇用政策が従となっている感が強いわけですが、衆議院における改正により「雇用の安定」の文言が補強され、改善が図られたと考えたいと思います。この点、労働組合の意見を聞くということが、設備廃棄、買い上げのための形式を整えるというだけにとどまらないよう、ぜひともお願いしたいと思います。  次に、業種指定の問題ですが、本法案第二条の一から四までの業種については明確ですが、五の政令で定めるとする業種については今後の問題であります。この指定についてはぜひとも幅広く取り上げていただきたいことと、その場合の設備の処理について、業種の実態を勘案し、弾力的に認定していただきたいと思います。  具体的には、ゴム履物産業の場合、設備の廃棄、長期の格納もしくは休止ということに関して申しますと、ゴム履物の主たる製造設備としてはゴム練りロール、裁断機、作業台、加流かん等がございますが、ゴム練りロール、加流かんといったものは一台で相当な能力があり、全工場閉鎖とか休止とかという場合はともかく、何割かを廃棄するというような措置にはそぐわない実情がございます。  ゴム履物業の場合、労働集約性か強く、生産能力はかかって人員問題であります。操業を何割とめるというときには、設備、人員の使用時間を短くする以外にはありません。履物成形工程の作業台を廃棄してもいたし方ないわけですから、結局法案の考え方からすると、こういった産業をどのようにするかという問題であります。むしろゴム履物産業にとっては輸入の急増に対する適切なる措置産業雇用の安定に大きく影響することはすでに申し上げたとおりでございまして、その点では附帯決議の効果的運用期待するところです。また中小企業的体質なわけですから、構造改善のための長期融資、利子補給等金融面での措置法案により強化していただきたいと思います。  最後に、この法案が大きな産業、大きな企業、業種のものというのではなく、構造不況にある業種を広く救済していく立場から、法案審議中でも該当すると見られる業種は積極的に拾い上げていただきたい、その際ゴム履物業種の実情をぜひ御考慮いただきたいことを申し上げて、私の意見といたします。(拍手)
  38. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ありがとうございました。  次に、中里参考人お願いいたします。
  39. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) それでは、全国金属の中央の副委員長をやっております中里でありますが、特定不況産業安定臨時措置法案に対する全国金属労働組合としての意見を申し上げたいと思います。  全国金属労働組合は、広く金属機械各業種にわたって労働者を組織していますが、不況による影響は著しくあらわれております。全国で三十四都府県にあります地方本部傘下の約千三百の支部、二十一万人の組合員を擁している組合でありますが、ことし一月の段階で百七支部が倒産、工場閉鎖、首切り合理化の攻撃と闘っており、その後その数はさらに増加をし、いわゆる構造不況業種のみならず各業種で中小企業の整理淘汰が広がっています。この状況を踏まえて、特に本法案に関連する中小企業の実態と問題点を述べたいと思います。  本法案は、特定の不況産業について過剰設備の廃棄、格納などの処理によって不況の克服と経営の安定を図ろうとするものでありますが、設備削減は人員削減につながり、雇用不安を拡大するおそれが大きいばかりでなく、その処理の対象とされた設備につながる下請並びに関連中小企業仕事を奪い、その事業の縮小や破綻をもたらし、これを放置するならばその労働者に対する首切り、失業の犠牲を招くことが避けられません。その点で、さきの衆議院段階の本法案審議の中で、「雇用の安定及び関連中小企業者の経営の安定に配慮」して過剰設備処理を進める点が修正としてつけ加えられたことは重要なことです。しかし、この一般的な条項が加えられただけでどれだけ実効のある具体的措置がとられるのか、きわめて不明確であります。これまでに不況の進行の中で生じている状況を見れば、構造不況業種のみでなく、その関連産業で深刻な事態が進んでいることが明らかであります。  すでに四年前、産業再編成による犠牲として中小の印刷業界は整理をされました。そのために現在破産という極限の中で浜田精機という企業に働いている労働者企業再開を求めていまなおがんばっております。また、繊維産業不況とその設備廃棄は繊維機械産業に大きな影響をもたらし、現在なお長期の闘争となっている北陸機械倒産を初め、最近の平野織機の倒産日本スピンドルの人員整理など多くの繊維機械企業経営破綻と首切り合理化を生じています。造船関連では、たとえば甲板補機の東京機械における人員整理、指名解雇、賃金ストップ、労働時間延長などを強行しているところもあり、舶用関連機器での倒産、首切り合理化が多発しております。アルミ関係でも製錬から加工部門までの系列再編成が進められる中で、たとえば最近の三井軽金属の工場閉鎖を含む工場統廃合、それによる二百九十七名の人員削減提案に見られる合理化が各地で見られます。  これらの事例を見るとき、もし本法案が成立し、それによる設備休廃止の処理が広範に推進されるとしたら、その周辺にある関連企業中小企業経営破壊と雇用への圧迫がますます強められることが歴然としております。これに対して本法案は関連中小企業者の経営の安定に配慮しながら設備処理を進めるというだけで、これでは関連中小が新たな条件のもとで生きるには人員削減、工場縮小も経営安定に必要であり、首切り合理化促進が「配慮」の内容となったり、また減少した需要関連企業としての経営が困難であるならば事業転換を図ることであり、労働者も職種転換に対応する職業訓練を行い、それに耐えられない労働者の整備となってもやむを得ないとすることになりかねません。現状では中小企業の業種転換も容易でなく、中小企業事業転換法も十分な効果を発揮し得ていない状況を見るとき、単なる配慮程度では関連中小企業は結局工場閉鎖、倒産の経緯をたどらざるを得なくされるでありましょう。  特定不況産業企業は本法案で一定の援助策がとられたとしても、その周辺にある関連産業中小企業は適用対象外であり、ただ経営安定の配慮不況産業設備休廃止の側で考えられるにしても、結局若干の救済措置は特定不況業種離職者法や雇用安定資金制度の適用に任されるだけでしかありません。しかもこれらの制度にもそれぞれ適用対象業種の指定があり、たとえば、繊維不況影響で繊維機械倒産企業がかなりあっても、業界全体の状況から特定不況業種離職者法の対象業種となっていないといったような、救済措置が欠ける関連部門が出てくる場合もかなり予想されるなど、関連中小企業対策は十分でありません。その上、関連中小企業者の経営安定は配慮されてもその雇用安定は明記されていません。衆議院の附帯決議にはこの両者が併記されていますが、本法の中にこの点を明記するか、少なくとも経常安定の内容として雇用の安定も含まれることでなければ労働者への犠牲転嫁となるだけであることか明らかです。こうした点で、現状で構造不況業種の関連産業中小企業に犠牲が押しつけられているから、これらのところで臨時パートなどの不安定雇用拡大や現行最賃法にさえ違反する低貨金の存在という事態があらわれているのです。  したがって、こうした状態を少しでも改善するためには、まず本法案による特定不況産業設備休廃棄の処理によって生じた関連産業中小企業雇用問題については、少なくとも特定不況業種離職者法と雇用安定資金制度の適用対象に必ずすることが求められます。  第二に、本法案第三条五項の「安定基本計画」については関連中小企業経営安定と雇用安定についても単なる配慮でなく、具体的対策が基本計画そのものの中に明確にされる扱いでなければなりません。そのために同六項の関係審議会は、特定不況産業の主たる事業者団体と労働組合の意見を聞くとともに、関連中小企業の事業者団体と労働組合の意見を聞き、それを計画の中に生かすものとすべきです。こうした安定基本計画かあってこそ、第十条四項の関連中小企業経営安定に資する必要な措置についての国及び都道府県の努力も具体化することができます。もちろん、ここでも経営の安定だけでなく雇用の安定が不可分のものとしてとらえられなければならないことは当然であります。また、国及び都道府県のとるべき措置として、設備廃棄等が関連下請や労働者への不当な圧迫として利用されないように監視、規制する措置も考えられるべきです。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕 たとえばいま構造不況業種でも一部に見られるように、旧設備廃棄後に人員整理の上で、需要拡大が見込まれる。新鋭設備の強化と労働強化、時間延長など雇用の安定拡大に逆らう方向での対応がもっぱらとられたり、価格つり上げの操作が不当に進められたり、下請単価の引き上げが便乗して行われたりしないようにする監視や行政指導上の措置が考えられるべきです。  以上の安定基本計画をめぐる条件とともに、安定計画実施の過程での事業所レベルでの労働組合との協議についても、関連中小企業労働組合が、設備廃棄について受ける影響に関して、その雇用の安定のために事前協議を行うことを認めることが必要であり、この点が欠ければ、安定基本計画の策定における関連中小企業経営及び雇用の安定配慮も、現実の計画遂行の過程でうやむやにされるおそれなしとしません。特に設備廃棄等の合理化は、単独の企業としてでなく、銀行や商社も加わり、系列関連下請企業を含めた企業集団として計画され実施されている場合がふえています。ですから、関連企業の合理化も、親会社なり企業集団の意思に基づいていることが顕著となって、裁判上も背後資本の使用者責任が問われるように発展してきている中では、このことは欠かせない課題となっています。  全般的に見て、衆議院段階の審議労働組合との協議が加えられたことは前進とすべき点ですが、現実の事前協議の実態を見ると、経営者側は形式的に協議すればよいとして、誠意ある交渉で労働者側の意見を聞こうとせず、自己の計画を強行しようとする場合がかなり見られます。雇用安定資金制度の諸給付も労使間協定がなされていることを条件としていることと対照しても、本法案における設備処理とそれに伴う資金援助も、雇用との関連の重大さからも労使間協定をその実施の要件とすることが求められます。また、そうでなければ、本法で労使協定を経ないで設備廃棄と雇用合理化が決められてしまうとしたら、雇用安定資金制度労使協定を有名無実なものとしかねません。  次に、特定不況産業信用基金についても、設備処理に伴う銀行、商社のリスクを肩がわりすることとなる一方で、労働者や関連中小企業か首切り失業や工場閉鎖の犠牲を押しつけられることとなるのでは不公平であり、基金雇用安定のための心要にも役立てられるようにその使途を拡大することが望まれます。  以上挙げた諸点が満たされていない本法案は、実質的に人員整理による資本側のための合理化促進法としての性格をぬぐい得ません。したがいまして、中小零細企業か圧倒的に多い全国金属の立場からすれば、本法案について賛同し得ないものであります。いずれにしても、雇用削減の矛盾が払拭し切れないのは、各産業で異なる不況の要因を一律に設備過剰の問題に解消し、ただ設備廃棄等の処理を不況対策だとしていること、また、基本的には国民生活優先への経済の転換で需要拡大による不況打開への計画が進められるべきであるのに、これらの政策との関連が欠けていることによっています。したがって、基本的には各産業不況克服、雇用拡大を図る対策がそれぞれ具体的に追求されることが基本的な課題であると考えます。  以上をもちまして全国金属としての意見にかえます。以上であります。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕
  40. 楠正俊

    委員長楠正俊君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  41. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 各参考人方々より、ただいままで本法案のこれからの審議に際しまして、貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。特に室蘭市長は北海道遠路のところからおいでくださいまして、重ねて感謝を申し上げる次第であります。  きのう来、各産業方々、見識者の御意見を聞いてまいりましたが、私は、今回のこの法案が安定法ということになっておりますが、私をして言わしめればきわめて不安定法であると、こう申し上げているのでありますが、それは一口に言って、この設備廃棄という処理に従って政府は金を手だてをする、その設備廃棄が行われることにおいて、中小業者、下請の方々労働者の首切り合理化という形で結果的には犠牲にされる、それが今回の、一口に言ったらこの法案のポイントになっているんじゃないか。そういう意味ではむしろ前向きというよりも後ろ向きの法案になっていると、私はこう指摘をしているのでありますが、問題は何といっても今日の構造不況という循環的な性格のものではなしに構造的不況産業でありますから、そういう意味では、国としてやはり中長期の展望に立って、特にこれからの二十一世紀を展望することは別にいたしましても、当面やっぱり中長期ぐらいを見通し産業の構造的政策を打ち出すことが基本ではないか。その産業基本政策の中で当面する手だてをどうしていくかという対策をとらないと私はやっぱり基本的な解決になっていかないだろうと、こうきのう申し上げたら、東京大学の内田先生も全くそのとおりであると、こう言っているのでありますが、そこで、率直にそういう感じでこれからお伺いするのでありますが、まず最初に、私はそういう認識の中で、どんどん不況産業が進められていきますと、地域ではどんどん失業者が増大をしている。先ほど室蘭市長さんも非常に切実な訴えがありました。まさにお先真っ暗やみでございますと。  そこで、第一の問題としまして、この法案によりますと、衆議院修正の五十六条に関連でありますが、都道府県の知事の意見の申し立てをすることができるようになっています。そうするとこれは主務大臣がつまり、この安定基本計画が決定した後に所管の都道府県の段階の意見を聞くと。これでは私は本当のこの安定対策の基本はつくられないだろうと思うんです。一番問題は、産業がどんどん設備廃棄して合理化して、合理化すると失業者は全部地域に滞留してしまっている、これが現地の実態でもあり、市長さんが非常に苦労されているという実態はそこにあると思うのであります。その場合、安定計画を策定した後にあなた地方自治体意見を聞いたって、私はこれ本当の意味の対策にならないと思うんです。  その点、第一点お聞きしたいことは、市長さんとして実際に現地に携わっておりまして、これは基本計画決定後に意見を聞くのではなしに、安定計画実施する段階で各首長、自治体の意見を聞くというのがこれからのためには一番大事なことではないかと、こう私は考えますが、これにつきましての御意見をひとつお伺いしておきたいと、これが第一であります。  それから第二の問題でありますか、先ほど造船業界の幹部の方にも申し上げたんでありますが、私も室蘭を知っておりますから、現実に楢崎造船にしましても、室蘭ドックにいたしましても、ほとんど中小造船企業であります。いま問題になっておりますのは、大手自体が操業度が、けさほどの参考人によりますと、五十三年度は三〇%、四、五年の見通しは全く立たないと、こういう業界の訴えでありますから、室蘭でもしかりでありますけれども、大手造船業界がほとんど中小に進出をしてきておる。つまり、中小の分野の仕事まで全部大手造船企業に持っていかれたために、現実に楢崎造船にしても、室蘭ドックにしても、非常に困っているということをこの前も聞きました、市長の訴えもございましたが、この点について、やっぱり一定の分野の歯どめをかける必要があるんじゃないかと。そうしないと中小造船が守られていかないんじゃないか、こういうふうに考えますので、この点についてのひとつ市長さんの考え方をお伺いしたい。これが第二の問題であります。  それから第三の問題、先ほども陳述中にございましたが、ソビエト船の給水、給油、乗組員の上陸もしくはその沖合いでも結構でありますが、何とかひとつソビエト船の修理を室蘭の港でやると。それが造船のやっぱり仕事を発注する機会になるということはごもっともでありまして、これは園田外務大臣とも私、やりとりしておりますが、先ほどもありましたように、つまり国内法の関係で実はこれ支障になっているというのが実態でありますが、この場合市長さんにお伺いしたいのは、つまり具体的にこの問題につきましてどういう手だてをすることが一番いいのかと、こういう問題につきましてひとつぜひ御意見があればお伺いをしたい、こういうふうに考えるわけであります。  それから、次の問題でありまして、第四の問題は、新日鉄の室蘭は御案内のとおり大会社でございまして、これは大体私の知っている限りでは十四、五社が大体請負でもってほとんど解散という状態になって、退職金すら払われていないという一部のこういう状態が出て、非常に私どものところに陳情がまいっております。しかし、結果的には、今回のこの法案も、そこで私は言いたいんですが、これは確かに企業としては残っていますけれども、それは新日鉄の例を申し上げると、造船も同じでありますが、函館ドックも同じでありましたけれども、全部、たとえば日魯造船会社の下請が全部実は整理されちゃったと、これは一体どうするのか。これをただ地方自治体で市長の段階で処理しなさいって、できっこないんだ、これ。あえて私はここで市長さんにお伺いしたいのは、この処理について国の責任で私はやるべきことは一つある。何かといいますと、やっぱり室蘭開発、先ほど市長さんが訴えられました白鳥大橋の建設、こういう公共投資に思い切ったやっぱり国が手だてを講ずべきであると。同時に、この白鳥大橋の建設などに絡んで、開発の目的のためですから、私は九州の——私も火曜日行ってまいりましたが、飯塚が行っておりますように、緊急就労開発、これをやって雇用の創出、つまり先ほど言った新日鉄の下請関係の整理、失業者、こういった一定のあの程度の相当数の雇用対策というのはありません。幸いにして白鳥大橋という工事があるんですから、そこに緊急就労開発方式を、つまり飯塚方式、九州の、ああいう手だてを講ずることが何よりも雇用創出対策としては可能であると、こう私は具体的に考えておるわけでありますが、この点についてのひとつ市長さんのお考えがあればひとつお聞かせを願いたい、こういう四点でございます。  それから、それじゃゴム労連の方にちょっとお伺いいたしますが、ゴム労連の実態というのは非常に厳しい深刻なものであるということはよくわかりました。私も北海道にゴムを抱えておりますので、それなりに見ております。しかし、問題点は三点ないし四点出されましたが、私はゴム産業がなぜ構造不況業種として指定をされないのか、この点にやっぱり一つの問題点があると思うのです。  先ほど陳述の中にもございました、つまり発展途上国の台湾、韓国、東南アジア——この間コム懇談会に私も出していただきましたが、学校児童の運動靴を見せていただきましたが、韓国物と日本製品のものとほとんど変わっていない、私自身が素人で見たけれども見分けがつかぬというのが実態ですから。しかし、この講義をいたせば時間長くなりますから申し上げませんけれども、ともあれ日本企業が技術提供をしてどんどん韓国にやって、結果的にはいまになってみると発展途上国の追い上げで苦しんでいると、こういうことの輸入規制という問題について、ちょっとお伺いしたいのでありますが、これいろんな、繊維でもそうでありますけれども、二国間協定のやり方いろいろあるわけですけれども企業労働組合の段階で、輸入規制問題ということについてどの程度具体的な話し合いなり考え方をお持ちであるかということをひとつこの機会にお聞かせを願いたい。  それから二つ目の問題でありますが、これは不況業種指定にはなっておらないわけでありますけれども、本法案によりますと、これに類する業種というものは政令によって定めるということでさっと処理されているわけです。しかし、政令扱いということになりますと、これやっぱり非常に問題が発生してまいりますし、ある程度基本的な業種指定産業の性格位置づけというものを、この際法律的にやっぱり明確にしておく必要があるんじゃないか、むしろ政令で扱うという問題よりも、業種指定は政令じゃなくて、私に言わせれば法律の基本条項であると、こういう理解をしておるのでありますが、この点についてどういうふうにお考えになっているか、御回答願いたいと思います。  それから、平電炉の安田参考人にちょっとお伺いしますか、これ先ほども陳述中にもございましたけれども、この問題の審議でうちの同僚の森下委員からも公取委員長にこの問題質問しました。業界全体としてはもちろん先ほど言った五十社まとまって六社反対であると。これ私、やっぱり間違いであれば指摘願っていいのでありますが、この反対側の業者の言い分の中に、一番大事な点でありますけれども、つまりアウトサイダーをこの法案で「共同行為を指示するのは財産権の重大な制限である」と、こういうことが第一点言っています。間違いであれば御指摘になって結構です、これ「エコノミスト」に書いていますから。それから、第二の問題は、「アウトサイダー規制命令は企業の質的差異を無視して一律に課せられるため、健全な企業の体質を弱体化させ、産業界全般の正常な発展を阻害」すると、この点は明快にこう言っているわけであります。またこの考え方について、同僚の森下委員かきょう来ておりますけれども、橋口公取委員長がアウトサイダーによる共同廃棄、アウトサイダー問題については、独禁法二十四条の三との兼ね合いにおいてこれはやっぱり問題がある、したがって、これは通産省からありましたけれども、公取としてはこれを認めるわけにはまいらない、こういうことになりますから、そうしますと、いま平電炉業界としては、独占禁止法はどうあってもと言えば言葉は悪いのでございますけれども、独占禁止法はどのようなことがあってもわれわれの企業だけ守るためにはアウトサイダーをやる方がいいんだという御認識なのかどうか。そうなりますと、これいささかやっぱり問題が残りますので、独占禁止法との関係においてどういうお考えをお持ちなのか。先ほど二つの点が反対業界の意見に出ておりますから、その点ひとつ明快にお答えを願いたい。これが一つであります。  それから、次の問題としてお伺いをしたいのでありますが、先ほど公共投資が活発になったけれども、一時は上向きの傾向を見せましたけれども、最近はまた軟調になっているというふうな陳述がございました。ただ、私がこっちで聞いておりますのは、小形棒鋼の市況の値段が昨年の四月で四万八千円、最近では五万八千円の大体価格に回復していると、ある程度市況もこういうふうに、価格だけの問題ではなしに公共投資に関連をいたしまして、かなりの在庫の発注も回復しておるというふうにわれわれはつかんでおるのでありますが、この点もうちょっとひとつお聞かせ願いたい、これが一つであります。  それからもう一つは、設備の廃棄の問題につきまして三百三十万トン設備廃棄が先ほども出ました。しかし、これがある程度一律に強制的にやることになっているのかどうか別にしまして、仮に一律にやると仮定した場合、電気炉を一台しか持っていない中小の平電炉の場合、これは一台しかないんですからそれを廃棄しちゃったらもろともこの企業倒産してしまう。こういう結果に結びついていくのではないかというような心配を私なりにしておるわけであります。したがいまして、こういった廃棄の仕方といいますか、ルールについてのひとつ業界としての考え方がおありでありましたらお聞かせを願いたいと思います。とりあえず私から以上申し上げます。
  42. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) ただいまの御質問にお答えいたします。  法案の決まる前に、われわれの意見をぜひ聞いていただきたいという実情でございます。御承知のとおりこれは縮小再生産につながりますから、その失業者というものは全部私の方でもってこれ抱えなきゃならぬ。しかも、大手の方はそれぞれの手が打てます。しかしながら中小、下請、これはけさの朝日新聞にも出ておりますけれども、佐世保重工業の問題につきまして、これはいわゆる原子力船の「むつ」、これを人質にしてそうしてその佐世保重工業の再建を図ろうと、しかも、それで防衛庁の長官が潜水艦六隻をもって佐世保をいわゆる西の軍港にするというようなことが申し出られて、そうしてその再建が図られるとするならば、われわれ室蘭におきましても、私は決してこういうやり方には賛成ではないが、航路水深十六メーターを持ち、泊地面積二千平方キロ、いま埋め立てて千七百平方キロですか、そのキャパシティーにおいては十分その能力を持っている。  こういうことが各港湾の市長といたしまして花よりだんご、もはやがまんできないとなれば、あらゆる犠牲を払ってこれらの労働者を吸収するということになれば、そうした一つ政府の指導方針にのっとってやっていかなければ、その再建が図られないということになれば、この指導方針というものは縦割り式指導方針なんだ。そうでなしに私の考えるのは横の政策、すなわちわれわれの市町村に特別交付金をくれるならば、それをもって教育施設だとか環境設備だとかあるいは平和なレクリエーション基地だとか、そういったいわゆる内需拡大、平和的な方向、そういう方法を地方自治体の長の考え方によってこれをやることができる、そういうような問題にも関連してまいりますから、ぜひこの法案の成立する場合においては、われわれもその審議会の中に入れていただきたい、一例でございますが。  それで何せわれわれ一番困るのは、大手の方はいま言ったように、それは新聞に出ている限りですから私わかりませんよ、わかりませんが、当然更生法にかかるべき会社が政府その他関係者が全力を挙げてこれを支援しているという背後にはいろいろな大手にはそうした事情が絡んでいる。しかし、中小企業の方は何にもこれは絡んでない。たとえばさっきの話で私がなぜこういうことを言うかというと、私は全国の市長の代表として出てきてますから、室蘭のことだけを訴えてはやはり我田引水になります。この中で縮小下請会社ですか、三億円の負債でもはや六十六人の従業員を抱えておる下請が倒産しております。室蘭においても同しくそういった造船あるいは製鉄業における下請もどんどん倒産していっております。  それらのものを救済するには、私どものさっきも申しましたけれど一市町村だけでは、その財政力だけではどうしてもこれを私どものいわゆる雇用創設というものをもってこれを救済するわけにはいかないわけです。だからそういう事情、また室蘭におきましてもいわゆる会社更生法、これ行われておる会社の方は負債がそれだけ少なくなりますから、それでもってダンピングをやる会社がある。そうするとまじめに、会社更生法を受けないで営々としてやっているところの会社がばかをみる。室蘭に実際にあるのです、これは。貨幣にたとえれば、悪貨は良貨を駆逐するというグレシャムの法則が業界においても行われるということになればこれ大変なことでございます。それらの事情を把握しているものはこれすべて地方自治体を預かるわれわれの見識であり、われわれのやはり深く知るところでございます。そういった意見から、この法案の背後に秘められているところの問題が今後いかに展開するかという観点から見ましても、私どもをぜひ審議会の中に入れて私どもの事情も聞いていただきたいというのが私の意見でございます。  またソビエト船にいかなる手だてをするかということは、いわゆる船舶というものは給水、給油をやればそこにやはり必ずそのときに破損したものはそれを直すということで、まず第一に給油、給水をやるという、国内法はいろいろありますけれども、弾力的な運用をもちまして入ってまいれば必ずそこに破損の修理とかいろんなものをやると、それをやり得る設備がちょうど函館ドックにしても楢崎造船にしてもあるわけでございます。ですからそういう意味において、やはりこれはもう日本国内においてお互いにさっき言ったとおり仕事の奪い合ってやっていたんでは、結局防衛庁から仕事をもらわなければ、もうドックはつぶれるということを各ドックを所有している市町村がやったんではもはやこれはだめでございます。これに対して、さっき中期の展望ということ、これをいま先進国会議で行われていますけども、これはやはり不確定事実でございます。いわゆる先進国、EC、アメリカあたりでもって総合的な計画が確定した中でなければこの日本造船業のいわゆる廃転業にしましても構造改革にしましてもこれは計画が立たないはずでございます。その中で中期の見通しを立てるということでございますから、なかなかこれはめんどうなことである。めんどうなことであろうとは思いますけれども地方自治体といたしましてはやはり日本日本なりにこの中期の見通しを立ててそうしてこの法案運用を、実効あるものにしてもらいたいというのが私の意見でございます。  なかなか計画は立てにくいものと思います。私ども地方自治体の長といたしましては、何といいましても大手はいいんです。さっき言ったとおり、あるいは政府との何らかのかかわりを持つところはいいんです。一応その下請のどこにも救われない落ちこぼれた業者をいかにするか、これをいかに救済するか。それと金融問題もございます。やはり二十年ぐらいの長期にしまして利子補給を政府がやるというような一つの思い切った措置を講じていただくということでなければ、なかなかこの法案の実効ある実施は困難である。私はこの法案には賛成なんです、基本的には。賛成ではあるが、もっと地方の実情を深く踏まえた実効のある方法にしていただきたいと、こういう要望でございますが、どうぞひとつよろしくお願いいたします。
  43. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) ただいまの点が三点あったと思いますが、まず第一はアウトサイダー規制の問題。このアウトサイダーの方々の反対しておられる、この安定法案に対して反対しておられる理由はいま読み上げられたほかに三つあります、全部で。第一点は、これは統制法規で統制経済に通ずる思想であり、官僚統制であるというのが第一点です。第二の点は、設備廃棄しろというようなことは完全に所有権の侵害であり憲法違反であるというのが第二の点です。第三の点は、アウトサイダーを規制をして設備を新設増設しないということは企業に対する創意工夫の念をなくすることになると、それはいけないと、この三つのことであります。  第一点の統制経済とか官僚統制とかそういう問題については、われわれも官僚統制いいと言ったわけでも何でもないのでありまして、まずこれよりさきに申しましたように、昨年の二月のときにわれわれから、前に何遍となくこの業界は不況であるのですから、公取申請して不況カルテルをずっと続けてやってきましたけれども、とてもうまくいかない。そこで、何としたらいいだろうということで、いま言った基本問題研究会ということで、成躁大学の教授の上野裕也教授を座長にして調査してもらった結果、この業界は構造的不況である、したがって、最低三百三十万トンを廃却しなきゃだめですよということが第一点です。その廃却するまでの間は新設設備しちゃいけませんと。まず、新設設備するについてはルールをつくりなさいと。それは産業構造審議会のもとに設備委員会をつくって、そこでルールをつくって、そのルールに基づいてやりなさいと、こういうことなんです。それから第三番目は、その間、設備か過剰なんだから、需給がアンバランスだから調整措置をしなさいということだったんです。  で、いまの第一点のあの方々のおっしゃることについてはそういうことだけれども、われわれ全体はいま申し上げたそういうときに平電炉の総会を開きまして、やはりこの業界は構造的な不況だから、これはやろうじゃないかということで総意で皆さん納得したわけです。それか立法化されたのがこの安定法案だと。片方で三百三十万トン廃却しておるのに、片方で設備は何ぼつくってもいいんだというようなことでは構造改善にならないじゃないかと。したがって、それはおかしいじゃないかということを言われておるのが皆さんの意見であります。これが第一点の問題であります。  それから第二の点で、価格が大分変わったじゃないかというお話、これはそのとおりであります。この私原因を調べてみますと、私なりに調べて三つあると思います。  その第一点は、去年の十月から小棒組合をつくりまして、これは中小企業団体組織法に基づく小棒組合をつくって、どんどん減産してきて在庫調整をしてきたということが一つ。第二の点は、何といっても政府の大型予算を組まれたのが一般の市況に相当いい影響を与えてきておるということが第二の点です。第三番目は、昨年の政府の議会の予算で東南ア、中近東に対して援助物資として二十万トン相当のものを丸棒買い上げて、無償援助をするということが決まりました。そういうことが方況に非常な大きな影響を与えてきておると。この三点が価格に対する非常な大きな影響だったと私は思います。最近下がってまいりましたのは、私はやはり若干の年度がわりで、三月末まで年度も終わりですからざっと出ますけれども、新年度になると若干いつでも出がおくれる。それもありましょうし、それとスクラップがここへきて若干下がりました。それがやっぱりスライドして、丸棒下がったんじゃないかと言われておるのがこの五万八千円だったと。  それから三番目の、三百三十万トンの廃却は一六%に相当するんですから、先生のおっしゃるとおりに、理屈から言えば各社一六%義務廃却すべきです。それはあなたおっしゃるように一機しかない人に言うのは無理じゃないかということで、これを何としてもやり遂げるにはどうしたらいいかということを考えたのが、先ほど申し上げましたように、グループをつくりました。これは新日鉄グループ、これは鋼管グループ、これは三菱商事グループ、そういうグループの中でやってごらんなさいと。したがって、グループの中に入っておる中では、全然一八%おろさないけれども、二五%も廃却した人もおられる。グループ全体としては一六%やるということになればいいじゃないかということでできたのがこの案で、したがって、グループ別に見れば一六%から一六%以上全部なっていて、個々の別々に見ると、全然一機しかない人はやっておられぬ方相当おられます。先生のおっしゃるとおりであります。  以上です。
  44. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) まずこのような実情にあるのに、構造不況業種としての指定というのを、またこういうところへなかなか話が出てこないのはなぜかということから申し上げたいと思うんですが、まずゴム履物というのはこれは通産の考えでもあるんですけれども、国民の必需品ではあるけれども日本の貿易体制からいったら競争力を失った場合、発展途上国に置きかわるいわゆる水平分業、国際分業というふうなことがあっていいんじゃないかと、このような考え方がどうも長くあったようであります。私ども昭和四十九年からそのような問題がございましたときに通産省に対して、ゴム履物産業の将来についてどのように考えておられるのか、この点をぜひひとつ御審議願いたいという申し入れをしておったわけです。  ところが、五十年の秋に産業構造審議会の生活用品部会というのが開かれたわけなんです。ここへ全部で八つの項目、業種が入れられていろいろと対象になったわけです。しかし、この八つというのはガラス・ほうろう、日用金属製品、家具、陶磁器、楽器、喫煙具、かばん袋物、それから玩具と、これだけでゴム履物はなかったわけです。ゴム履物というのは、われわれとすれば相当多数の人数を抱えた労働集約産業であるし、これの雇用問題が大変なんで、何とか将来のことをと申し上げたんですが、この段階ですでに入っていない。そこで、その後結局ここでは日用品については広く全体の考え方を出すんだというのが通産省のその当時のお考えでしたが、その後出ました中小企業振興事業団ですか、の競争力調査によりますと、このままでいくとやはり遠からず競争力はなくなると。競争力というのはいますでに国際競争力はありませんが、いろいろな高級品化で何とか現在国内生産をやっておるのが、遠からずなくなるんじゃないかと。だからまず転換ということと、それから非価格競争力をいかにつけるかということをやれと、このようなことになっているわけです。  その過程で、結局世の中で騒がれ方が少ないのかどうかわかりませんが、構造的な問題を抱えながら比較的首切りだけで倒産がなかったということ、それから大企業における倒産がなかったということもあるかもわかりませんが、それ以上のことになかなかならなかったわけです。したがいまして、いまでもいろいろなことに関係をした法律を調べましても、つい最近やっと雇用保険法の雇用調整給付金の対象になったとかということであって、いまだに特定不況業種の離職者臨時措置法には入っておらぬわけです。そのようなどちらかというと、われわれの実情を訴えるというのが足らなかったというのか、業界の方が自分たちの考え方としては、資本家だけが生き残る方法はあるんじゃないかと、こう考えたために私はこの構造不況ということを余り強く言わなかったし、アピールできなかったからこの考え方が一般的になっていない、このように思います。   〔委員長退席理事大谷藤之助君着席〕  それでわれわれとしては中でも申し上げたように、いま構造不況になっている最大の原因が国際競争力の喪失というところにあるわけですから、何とか輸入規制ということを考えてもらわないといかぬと、これが一貫してわれわれが主張しているところなんですけれども、この輸入規制についていろいろ先生方に衆議院なり参議院で発言願ったときにも、まず一番問題になっているのが発展途上国との関係で、輸入制限ということはまことにむずかしいということなんです。われわれの方としては輸入を全部規制せいと、現在の状況で頭打ちで規制せいということを言っているんじゃなしに、いまの調子で輸入が拡大すると、これは日本におけるゴム履物というのは恐らくなくなるだろうと。いま通産省が考えているような形になるんじゃないかと、それではわれわれの雇用の問題と、もう一つはやっぱりこれは国民一億皆くつを履くわけですから、その需要という面、国民生活の面から見てこれは問題じゃないかと。  したがって、まず、国内生産の五割程度はこれは日本でつくらすような形をひとつ考えてもらいたい、それと五割になるまでに一定のスローダウンをした輸入政策というのを行ってもらいたいということなんです。これに対して通産省がいまわれわれに対して言っているのは、そう言いなからまず輸入の六割は、日本においてゴム履物をつくっているメーカーが輸入しているじゃないか、だからそのメーカーかまず制限すればそんなふえ方はしないと、このような言い方をするわけです。これもまたわれわれまるっきり否定するわけにはいきませんけれども、メーカーが輸入する最大の原因というのは、このまま仮に野放しにしておくとスーパーとか商社が向こうの安い品物を入れて国内でいま以上の競争を引き起こしてしまう、そうなると一層早く混乱が起こるので何とかその辺を考えて、われわれの方の手で韓国とか台湾とか話をして、むちゃなことはしてくれるなという考え方でやっているんだと。したがって、政府の考え方がはっきり、このゴム履物産業については将来とも国内で生産をさせるんだという考え方が決まり、輸入も漸増と、いわゆる秩序ある輸入ということにはっきりとやってもらえるなら輸入を抑えることはやりますと、このように言っているわけですから、私は輸入制限については、やり方によっては国内的には可能であろう、あと問題は国際的な問題だ。韓国、台湾それから香港と日本経営者が四ヵ国会談というのをやっております、これは事実。ただしかし、そこでやっているのは、日本は秩序ある輸入と言い、韓国はいま以上輸入を拡大してくるということを言い、台湾もそのようなことを言い、このようなことの言いっ放しであって、実際問題それは具体的な会合になっていない。  もう一つは、これは経営者の話ではございますけれども、韓国から契約をして輸入をしている日本のあるメーカーが、来年度はどうしてもこれを何割か上げてもらいたいという向こう側からの要請を受けた、それは困る、国内の市場に混乱を起こすので困るからそういうことはするなと言いますと、いやこれは国家命令なんだと、だから来年度韓国で自分の企業はいまの何割か増した設備投資をしないと自分のところでこれまた大変になる、したがって、もしおたくで買っていただけないならほかへ回す以外にないと、このようなことを言っているわけでして、このようなことに対しては、私は業者間で話し合いをする、自主的な話し合いで輸入を抑えるということはむずかしい、だから方法としては、これはもちろん韓国と日本の貿易でいうと、日本の方が黒字なんで、むずかしい問題あるかもわかりませんが、韓国と日本の二国間の話し合い、日本と台湾の二国間の話し合いで数量をある程度漸増という程度で、いわゆる現在のようなペースじゃなしに漸増という形で一定のところまで認めるという、こういう方法をとってもらわない限り、現在のところ大変むずかしいんじゃないかと思っています。  御存じのように、アメリカでは韓国、台湾製品が大量に輸入になって国内市場を荒らすために五割でもって抑えるという、こういう法律をこしらえて、それ以上は大変高い関税をかけると、このようなことをやっているわけです。そのようなことも通産省にはお願いをしておるわけでありますけれども、われわれとしては輸入制限というと名前がきついですけれども、秩序ある輸入、こういう形をメーカーとそれからその他アウトサイダーを含めてやっていただけることができれば、業界の安定につながると。そうなれば将来が見通せるわけですから、転換していくめどもつくし、国内の生産分野も安定するんじゃないかと、このように考えています。  それから最後の、ゴム履物産業を本指定にしてもらうという考えはどうかということでありますが、私はもちろんそうしていただければ大変ありがたいと思う。ただ、申し上げたいのはこのようにゴム産業と同じように恐らく多くの構造不況業種というのはあると思うんです。したがって、今回の法案審議の過程で、また審議の後でも、それは成立してからでもいいかもわかりませんけれども、現在代表的に出ているところ以外にも、業種というものを幅広く指定する、このような考え方を持っていただくことが一番必要じゃないか。そうして実際問題これは安定基本計画というのができなければ、これは実行に移せないわけですから、安定基本計画の必要な業種は、すべて拾い上げるというふうな考え方をぜひ持っていただきたい。そしてゴム産業の場合は、その場合にはぜひ入れていただきたい、このように考えております。  以上です。
  45. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 いま再度貴重な御意見を承りました。  そこで、長谷川市長さんに、先ほどちょっと関係したことで、先ほども室蘭は今度労働者の失業多発地帯として指定をされたという陳述がございましたが、それに伴って私が申し上げましたように、緊急就労事業をこの際起こすというその考え方を、市長としてこれからどういうふうにおとりになるかどうか、このことをちょっと先ほどの質問に関連しまして答えだけ、簡潔でいいですから、後でお答え願いたいと思います。  それから全金属の中里参考人に二、三ちょっとお伺いします。  全金の場合は先ほども陳述ございましたが、かなり中小金属機械産業、それからむしろどちらかというと、下請部分に属する関係が非常に多いわけですから、その中で今日まで、先ほどもちょっと聞きましたが、雇用安定資金制度あるいは特定不況業種離職者臨時措置法、こういうことで労働省は今日まで、国はそういうことで救済をしていくんだ、そういう意味では御心配なくという御意見はずいぶんわれわれの予算委員会の質問の中で出てくるのでありますが、実態的には雇用安定資金、離職者臨時措置法で本当に雇用が安定されているのかどうか。むしろ私が聞いている限りでは、相当指定から排除されている、つまり、離職者業種指定になっていないというのが相当、この前も同僚の浜本議員もおりますが、中小企業庁長官ともやったことがあるのでありますけれども、どうも労働省の指定の考え方と、中小企業庁長官のこの業種指定の離職者臨時措置法の扱いについての考え方がかなり違っているようであります。したがって、この点全金属の皆さん方の扱われている実態として、どういうふうになっているかということをひとつお聞かせを願いたい、これが第一点であります。  第二点は、労使協議会の中で先ほどもちょっと出ましたが、労働協約の基本約款として今回の法案でいきますと、衆議院修正では労働組合と協議をするということになっているわけです。協議はあくまでも協議でありまして、協議調わなければ、会社が一方的にやる、これは今日の実態ですから。これに歯どめをかけるとすれば、私は協議ということだけではやっぱり問題があるという御指摘ですから、きのうもこの問題につきまして紙パ産業の方からも訴えられましたが、つまり、書面協定、同意約款としての協定ということをこの際きちっとしてもらいたい、こういう陳述もございましたけれども、いま全金さんの陳述の中にも訴えがありましたけれども、そういう点をそういうふうに理解していいのかどうか、この点ひとつ第二点目にお聞かせ願いたい。  三番目は、合理化がどんどん親会社、銀行関係、商社を通じていまあなたのところはもうどんどん、北海道でもずいぶんありますけれども、まあばったばったこれいかれているわけです。先ほど長谷川市長さんが言うとおり、末端の中小部分にいったら、ほとんどもうこれを犠牲にして、親会社が生きているわけですから。したがって、そういう問題になってまいりますと、やっぱりおのずから地方の段階で相当行政的にどういう手立てがそれじゃあるかという、先ほども出ましたけれども、問題はやっぱり根本的な問題として職業訓練やった方がいいじゃないかとか、あるいは事業転換した方がいいじゃないかということを言うけれども、実際に事業転換をして、事業転換というのは一体あるか。今日通産省の段階で大体二月ごろのあれをちょっと聞いておりますけれども、若干の事業転換という問題について、ひとつ協力をしてくれということで、サービス関係にほとんどのものをやってくれぬか、こういうことは聞いております。  聞いておりますが、根本的にはやっぱり職業訓練なら訓練という仕方をきちっとやっぱり、法的には一応抽象的には出ているんだけれども、そういうものに対しての扱いがきちっとしてないというところが、いまなおやっぱり問題を残しているんじゃないか。それから、事業転換、転換とずいぶん言ったってそんなものは、ぼくが聞いているのは、ハイヤー会社に行ってみたり、ラーメン屋つくって食堂つくって事業転換してみたりという、せいぜいその程度が限度だということで、そういう点につきましてひとつ具体的に、これからどうするのかということについてございましたらお聞かせを願いたい、こう思います。  それから、平電炉の責任者に、安田さんにちょっとお伺いしますがね。これによると平電炉業界ではこの四年間大体一万人ぐらい減っている、こう私は聞いているのでありますが、したがって四人に一人の割合で大体雇用が減ってきているという実態なんでありますけれども、この点は一体、私は率直に申し上げるんだけれども、安田参考人にお聞きしたいことは、そろそろもうこの段階では週休二日制、あるいは労働基準法に従っての拘束時間、こういう方向に雇用構造というものをやっぱり変えていく段階に来ているのではないか。ただ、共同廃棄だけもうとにかく張り切っちゃえばいいのだ、あるいは金をうまく使えばいいんだというやり方ではなくて、つまりどれだけ完全雇用というものを基本的に守っていくか、守る立場で事業主としてどうしたらいいのだ、この点あたりを私はぜひ雇用を、事業主として考えていただかないと、ただ人を切ればいい、減らせばいいということだけでは、不況法案をつくった目的からいって私はそこが一番大事になってくるのではないか、こう考えるのでありますが、この点ひとつ安田参考人の御意見があればお聞かせを願いたい。  とりあえず以上であります。
  46. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 先ほどの緊急対策という問題でございますが……
  47. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 緊急就労開発……
  48. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 緊急対策ですが、これは具体的に言いまして、いまやはり何と言っても大型プロジェクトでやらなければ、公共事業投資でもってやっぱり混合経済の財政主導型ですから、それを行っていかなければ効果がないわけですよ。それには私ども九十億円、室蘭市で公共投資の予算は持っていますけれども、昨年度の当初予算に比較して三一・五%の増です。しかし、これがまず五月議会、臨時議会を経てそれから発注されてきますから、これがこう落ちていくわけですけれど、それまでの間のタイムラグというものがあるんですよ。ですから、緊急ないわゆる事態について、どういうような自治体として施策を講じているかというとわずかに千六百万円で、そしていろいろ墓場の草を刈るとか、それからとても困る者には道路の清掃をやるとか何とかということで、対策にもならない対策を一応立てているのが実情なんです。  それですから、この大型プロジェクト、とにかくドックの問題でもいま建設会社に変えているわけですよ。楢崎建設というのができまして。ところが在来の建設業者がいるわけですよ。これまた仕事の取り合いなんです。だから、これをひとつ優先的にこのドックの建築会社にやるというわけにもまたいかないわけなんですよ。新旧取りまぜながら、それが実態でございまして、まさに試行錯誤というのが実態で、まさに混乱中なんですよ。そこで、私の頭の病めるとこなんでございまして、正直言って緊急問題につきましては、そういう実情でございますかち、ひとつ……。
  49. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) それでは、まず先生の方からの御質問で、全国金属がいま御指摘のように約千三百の支部、分会が全国三十四都府県地本にまたがってあるんですが、その分類は大体百名以下が圧倒的です。これは千三百のうち約九百が百名以下で、そして百名から三百名までが大体三百支部ですね。それから三百から五百までの支部が約六十です。それから五百名以上、千名以上含めまして大体これが七十四、五あります。こういうような組織状況でありますからきわめて中小企業が圧倒的に多い。  で、いま御質問の点の雇用安定資金の問題にしろ、離職者の方の問題にしろ、どういうふうに適用されているのか、これは雇用調整給付金の問題についてはかなりいまこれは支払われております。指定業種になっているのが多いです。しかし離対法の問題の適用は、いまのところはほとんど適用されていない。問題は、雇用調整給付金の問題にしても、業界が足を引っ張る業界と、きわめて仲のいい業界がありまして非常に極端なんです。たとえば繊維、自動織機関係はこれは構造的不況です、決定的な。にもかかわらず先ほど若干申し上げましたように平野織機あたりは倒産に追い込まれている。あるいはまたスピンドルあたりは大合理化をやられている。にもかかわらず何なのかというと、やっぱり業界の中でのかなりの発言力のある、力のあるところがそれに乗っていかない、指定業種にしないというあれがあるんですね。  そうしますと、大体指定業種にならないためにどうしても企業倒産に追い込まれる。非常にこれはうがった見方になるかもしれませんけれどもしかし私たちは真剣にとらえていることがあるんです。ということは同じ業者仲間ですから、たとえば業者間の中の会合では恐らく親しくおつき合いになっているだろうと思うんですが、裏を返せば資本主義の原則ですから、この企業競争が、業界の中で減ればそれだけ自分の企業が救われるということがあるんですね。したがいましてそういう困っているところ、同じ業界でも、不況業種と思われる中でも、これは企業間格差というのがあるわけです。ですから比較的企業の健全なところ、要するに経営の健全なところはそんなの必要ないと。だから相手がつぶれるのを待っているようなきらいすらある、こういうことがね。ですからそういうようなことは、これはひとつぼくらも通産省にお願いしたり、あるいは労働省にお願いしているんですが、結局そういうのは直接指導以外にないんですね、これは。そういう実態がありますので、大変指定業種になるのが困難な面がある。  そしてもう一面の実態を御報告申し上げますと、それとまた違う面があるんです。確かに不況業種という業種に違いないんですけれども、簡単に仲のいい業者の集まりで業種指定になる。そうすると余り経営上悪化していない。仕事をそこそこに同じ不況業種でも持っている、抱えている。それにもかかわらず雇用調整給付金なり何なりの対象業種になる。ですからおかしな話で、そういうことで一時帰休制をとって雇調金でもって若干の経営維持をするようなことすらある。こういうことでありますので、その事実関係については、私はやっぱり業界それだけに任せるのじゃなしに、やはり地方行政なりあるいは中央行政の中の指導面で、もう少しきめの細かさをしていただかないと、なかなかわれわれが業者の経営者の皆さんに言っても、いやなかなかそれできないんだよということで一蹴する、ないしは簡単にこんな仕事あるじゃないか、何も一時帰休なんかする必要ないじゃないかと言っても、いやせっかくもらえるものだからということで、無理に一時帰休制をとってこの労働条件を切り下げる。こういうような実は事実関係としてあることを、御質問に対する御報告として言いたいと思います。  それから二番目の問題は、協議事項の問題ですけれども労働協約の、どこの労働組合でも無協約というのはほとんどいまのところはなくなりました。しかしたとえば無協約のところでもある一つ労働条件の問題、あるいは特に雇用にかかわる問題は大変な問題でありますから、これは労使で協議をして協定化をしていく。特に労働者の権利維持のために、この辺についての全国金属はうるさいほど指導しておりますので、労使関係の中ではそういう同意約款、取りつけられることならば同意約款、最低でも協議約款を、これはやっぱり事前協議制というものを確保しろということで実は努力をして、大方のこれは労使の関係では結ばれておるんです。  しかしこれは先生、問題はこれが空文化されるということなんですよ。結局、協議はする、そしてそういう先生御指摘のようにわれわれは文書でもってちゃんと確認をしております。協定書なり覚書なりいろんな書類でもって、文書でもって確認をしているわけですけれどもしか経営側は自分の企業のあれが押し込まれてきますると、書類だなんということは構ってられないと思う。それで一方的に工場閉鎖をしてみたり、あるいはまた不渡りを出して倒産になっていくとか、あるいはまた和議を申請するとか、こういうような形で労働者の意向というのが、ある一定の限界までは話し合うんですけれども、それ以上のことは経営サイドの一方的な強行策として行われている。しかし組合はいろんな、そういう中でも労使の中では、たとえば合理化問題でこれは大方の労働組合は、それはたとえば人員削減の問題にしてもあるいはその他の労働条件の問題にしても、労使の協議事項の中で理解できるものは理解していくと、こういうことはやって平和裏に実施をされていることが多いことは事実なんです。しかし残念ながら先ほど百七の支部分会がそういう工場閉鎖なり首切りなり、いま闘っていると申し上げましたけれども、そういう実態は残念ながら一方的に、協議とか同意約款があるにもかかわらず破棄をされて強行される。  しかしぼくらは、そのことが決して、そういうふうに強行されたからといってむだではないと思っているんです。このことは、残念ながら現実面としてはそういうふうにされてしまうんですけれども、裁判闘争の中で有利にこれを活用しております。ですからそのことは今後もやっていきたいと思いますけれども、より一層今度のこの法案の問題から私は心配しているんですけれども、いろいろなことを御配慮いただいて、労働者労働組合の位置づけを決めていただいたにしても、そのことが何か小手先だけに陥って、余り実態性のないようなことでは、字面だけの問題では私は困ると思っているんですよ。ですからそういう意味では、今後のこの種の問題の協議なり同意約款というのはもっと法的拘束力が、要するに労働者の側にどうつけられるのか、その辺が大変私は望みたいと思うんです。  それから極端な話ですけれども先生方おいでになりますので私は申し上げたいと思うんですが、ついででありますから。実はきわめて無責任な経営者の方が最近多くなっているということなんです。ということは、賃金も退職金も未払いのまま、工場を放り出してどこへかへ逃げちゃうということなんですね。そうしますと、そこに働いている労働者が営々として築き上げた自分たちの職場、そしてそこによりどころを求めて生活をしていた家族を含めた労働者が交渉の相手方もいないと。そして経営者はどこへ行っちゃっているんだかわからない。こういうようなことがあって、何ヵ月もその職場でがんばりながら自主生産体制でもってやってみたり、アルバイトに出て何とか経営者を捜したり何かして努力をしているところが結構あるんです、これは。それが残念ながら、何といいますか、大変地方行政の中でも、いろんな県庁にお願いをしたりあるいは市当局にお願いをしたり、あるいはまた基準局にお願いをしたりしているんですけれども、なかなかのれんに腕押しでもってうまい策がないんですね。  事実関係としてそういうことが実はありますので、労使協議制というものは十分われわれとしても大事にしたいと思うし、それはまたやらないといけないと思っているんですけれども、それが場合によっては、そういう経営者ばっかりじゃありませんけれども、そういうふらちな経営者もいて、きわめて困難な局面に立たされているという、そういうことも御報告申し上げたいと思います。   〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕  それから三番目の問題でありますけれども、これは親企業との関係に、若干先ほどの御質問では触れておられるというふうに思うんですけれども、まあ事業転換の問題とか、そうしたこと以前の問題として、実は背景資本といいますか、中小企業が圧倒的に多いわけで、先ほど申しましたように、全国金属幾ら大きいったってせいぜい資本力が五十億がらみが一番大きい企業ぐらいです。ですから圧倒的には中小、零細が多いんですけれども、その中の、その中小企業の背景にある要するに商社あるいはまた大企業、そうしたことの操作がきわめて強いということです。これは特にアルミ関係、平電炉関係あるいは製鉄関係あるいはまた弱電その他、もろもろのあれはほとんど背景資本がある。後ろに親企業がある。ここの大変圧力が強くなっていることですね。それとあとは銀行の支配介入ですね、これが強くなっている。  で、どういう事例があるかと言いますと、たとえば中小企業経営が悪化をしてくる、そうしますと、御存じのように連結決算による財務諸表の提出ということもあります、これかなりきつくなっております。そういう中から、赤字の経営については一定の経営者に対して合理化案を作成させる。そしてその合理化の答案が、作文が余り好ましくなければその役員は更迭しちゃう。で、自分のところから役員を送り込んでいく。そういうことで、いままでの労使関係なんというのは意に介さずに、一方的に強行するということか実はあるわけですね。ですから、おおむね背景資本を持っている中小、零細企業というのはどうしても親企業に頭を下げざるを得ないし、また合理化案の作成というものも親企業なり銀行、金融筋に顔を向けられるような、そして仕事なり資金なりを援助してもらうような作文を出して、それを労働者に押しつけていく。これがいま中小と背景にあります親企業、そうしたところの、きわめてわれわれとしては苦難なそういう状況も押しつけられる状態にある。こういうことを申し上げておきたいというふうに思います。  したがいましてそういうことから、まあたとえば先ほどもお話がありましたけれども、大企業でありますると、かなりマスコミもとらえますし、また政府あるいは地方自治体あるいはまた金融筋も、あるいは大株主関係も騒ぐんですけれども、したがってそういうところの労働者も、大変苦労は多いんですけれども中小企業の、あるいは零細企業に働いている労働者というのはきわめて、ますます条件としては非常に悪くなっている。  ですから事業転換というのも非常にむずかしい局面になっている。ただ私が言いたいのは、これは事業転換ということになるのかどうか知りませんけれども、たとえばここに労働組合がある事業場がある。これでは不採算だ。ところが別なところへ土地を求めてそっちへ新工場を建てちゃう。そこへ今度は労働組合のない事業場をつくって、そちらへいくんだったらそっちへ再興しようじゃないかというようなことを実はしてみたり、あるいはいままでの合理化を強烈にやって、たとえばいままで三百名いたやつを百五十名なり百名にしてしまう。それでそこへもってきて若干仕事が好転をしてきて出てくる。そうするといままで三百名当たりの労働力でやっていたのが、新鋭の機械を投入したりあるいはまたほかの設備をして、それに匹敵するような量をこなしていく。こういうようなことが実はあったりして、結局のところ雇用の不安というのは中小企業には絶え間なく出て  いるということをお答えとしたいと思います。   以上です。
  50. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 私からちょっと申し上げます。  先ほど先生からありました雇用の問題特に週休二日制の問題、簡単に申し上げますと、われわれ業界も研究しております。それで、いままでいろいろ三百三十万トンすでに廃却済みであってと言っておるというんですから、これは希望退職もとより全部終わっておりますし、今後起こるとすればその問題でありまして、現在鉄鋼労連の幹部と、平電炉の幹部と定時に会って、しょっちゅう会合をやっております。そうして、そのときに鉄鋼労連からも提案しております。ただ、私としては、いつからどうするかということをやるためには、結局、これは最終的には製品価格にはね返るおそれがあるということかある。それの点についてよほど慎重を要するということでありまして、現在労働組合の幹部の鉄鋼労連の方とわれわれの方と会って、この問題は取り上げておるということを申し上げておきたいと思います。
  51. 小柳勇

    ○小柳勇君 社会党の小柳でございます。御苦労さまでございます。私どもの与えられた時間わずかでありますから、簡単に質問いたします。  まず、市長さんに質問いたします。私どもの社会党で、地方自治体による雇用創出ということで、二十万人ぐらいの当面雇用創出しなきゃなるまいと。それで、地方自治体で自主的にいろいろ仕事はあろうから雇用創出していただこうと。たとえば一人の労働者年間の賃金を二百万円にすると、二十万人でありますと四千億円でありますが、そういう予算を一応頭に置きながら、その失業の発生の状況に応じて地方自治体雇用をつくってもらおうというようなことでいま衆議院の方に法案を出しています。したがって、さっきの対馬理事の質疑に関連していくわけでありますけれども、いま失業多発地帯、特定地域に指定されておられまして、そういう地方自治体による雇用創出として、特別に何かお考えあるかどうか。さっき緊就の話がありましたけれども、私も福岡ですが、緊就及び特定一般失対など私の方で四つございますけれども、なかなか予算単価が少ないものですから、うまくいかぬのです。だから、それも一つの方法、やむを得ぬ特定、これは知事が苦労いたしましてやっておるのでありますが、それも一つの方法でございましょうけれども、そういう型にはまった時限的なものでなくて、言うなら永久的な地方自治体雇用創出がどういうものがあるであろうか、これが質問であります。  それから、安田参考人に対しましては、平電炉のやつはもう大体一応合理化計画も立ちまして、人員整理もほとんど終わっているわけです。私どもも一昨年ごろからずいぶん商工委員会でもいろいろ論議いたしまして、三百三十万トンの目標も大体計画できています。そこで、お隣の中里参考人がおっしゃいましたが、この法案ができましてもこの雇用を調整するためには労働協約を締結してやってくれないかと。でないと、ここに法案を衆議院では修正いたしました。雇用の安定に「配慮しつつ」とか、中小企業経営に「配慮しつつ」とか言いますけれども配慮しないような業者はおらぬと思います。「配慮しつつ」と書いたって実際これは具体的にどういう力があるであろうかと。だから、平電炉はもうすでにおやりになったことでありますから、たとえば私の方の福岡の東海鋼業もすでに整理を終わりました。こういうときにこの雇用安定に配慮をしつつとかあるいは下請産業経営配慮しつつというのは、一体業界としてはどういうことを考えておられたであろうかと。だから、労働者、長く働いた労働者を解雇するんでありますから、業者としても何も考えないでやるはずはないと思う。最もスムーズに、最も混乱がなくやられた業者などの経験も生かして、法案として論議するときにどういうことを附帯決議なりあるいは論議の中へ入れておいたらよろしいかと、このことを安田参考人に教えてもらいたい。  いま一つは、この平電炉の場合はもうほとんど計画も大体業者間でできましたし、もうやるものはやったんでありますが、一体どこまでこの法律が遡及されたらいいのであろうか。これは大体これから一年間のうちに計画出しまして、五年間の時限立法です。過去の方についてはこれからまた国会の論議の中で詰めていきたいと思うのですけれども、過去どの辺までさかのぼったら本当にありがたいと考えられるのか、お聞きしておきます。  それから、最後の西松参考人には、これは業者の業種指定なんですね、だから、「月星」という一つの会社の指定はしないわけなんですよ。だから業界として、ゴム履物業界として七割なり八割の方がこれを指定してくれよという、そういうものでないと通産省としては政令適用しないと思います。あるいは省令もできないと思いますが、おたくの方の履物の業界としては一体どうとらえておるか。  もう一つは、おたくの方でも韓国に対する会社に出資いたしまして逆輸入しています。それはいまさつき公述の中で、デパートなどに任しておくとかえって困難だからうちの会社でやっているんだと、それと秩序ある輸入するんだとおっしゃいますけれども、まずやっぱり業界自体が発展途上国に出資をして、技術を輸出しておいて、それからの逆に追い上げにいま手を挙げているわけでしょう。そういうものは業界自体がどうするかという大きな方針もなきゃならぬ。同時に、そのために今度は労働者が犠牲になるんだから、もう労働集約型の産業でありますから、設備廃棄と言ったって、それはただ機械遊ぶだけでありまして、人員——それを動かしている人か減るたけなんてす。したがって、それに対しておたくの履物業界としては一体どういう心組みでおられるか。残念ながら私どもまだ直接陳情受けたことありません、組合から何回もいらっしゃるけれども。参議院でいま重要な法案を論議しているときに、業界として一体何しているかと本当は言いたいわけです。そのことも伝えてもらいたいけれども、したがって、業界は一体どういうつもりでおるのか、お聞かせ願いたいのです。
  52. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 雇用創出の自治体の問題でございますが、いま私の方も研究しているんです、それについて。ところが、非常にこれめんどうな問題があるんですよ。とにかく自治体労働組合の中にはやっぱり自治体固有の仕事と言って下請に出すということを非常にきらうんでして、その組合問題がまず一つあるということ。それと、じゃ特殊の仕事は何かというと、これもいままで失業対策事業の全日自労というものがあるんですよ。それで、これにもまた仕事をやっているわけですね。そうしまして、ですから、雇用創出を自治体でそれからまたしたらば、民間を圧迫しないようないわゆる自治体の固有な仕事というものはどういうものであるかということになってきますと、自由主義経済の枠組みの中で、まあ予算がつけられて、これとこれとこれとということを指定されまして予算配分がなされるならば、その法案によりましてそういった雇用創出をやっていきますけれども、自治体がそのある一定の条件のもとで、今日的政治情勢のもとで、いま、結構な制度でございますよ、結構な制度でございますけれども、特殊にどういうようなことを考えておるとか、なかなか考えていましても自由主義経済の中においては、そう簡単にこれとこれとやりますという結論はまだ出てないのです。ただしかし、その方向を研究しています、いま。それが実情です。
  53. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 小柳先生のお話二つあったと思いますが、一つ雇用の問題でありますが、現在の時点では大体電炉の丸棒の稼働は六五%ぐらいの稼働です。それで、私以上に詳しいので驚いておるのですけれども、大体三百三十万トンについては、もう去年の二月の上野先生の答申に基づいて自主的に廃却しておって、それに基づく雇用の問題も各企業が単独に全部やっております。したがって、この法案をつくる前にある程度解決されてしまっておりますので、いまの状態でいく限りは、私は今後平電炉に関する限り特別の増産をして何とかやれば別ですけれども、そうでない限りはそう大きな問題は起こってこないであろう。  ただ、この問題についてざっくばらんに申し上げますと、電炉業界のこの問題について鉄鋼労連の首脳部と会ったときに、ある会社は、人員をある程度減らしてまでも一生懸命価格を維持するためにやっているときに、片方はアウトサイダーでフル稼働をして人員整理も何もしないという業界があるということは、組合の立場から見てもわれわれは納得できにくいということを言っておられました。これは全体の労務対策の上からいって先ほどの週休二日制というような場合でも、ある会社は何かしらん残業ばかり手当てしてどんどん取るんだと、そういう会社あるかというと、そうじゃないということのない姿が欲しい、そういうことで組合の幹部の方とも話し合いをしておりまして、現時点における三百三十万トンでおさまる限りは、いまの六五%でこれ以上小柳先生なんかに御心配かけて何するようなことは私は起こりそうもないと思います。  先ほどおっしゃいました東海鋼業自身も堀君自身が自分の手でやっておりましたので、そういう問題の、この問題の起こる前の問題。今後についてはこの法案の適用を受けるかもしれませんけれども、そういうようなことで、一時は一時帰休制をとってみたり、いろんなことをやりましたけれども、一応は片づいてきてしまったという実情でありまして六五%の稼働だと、残念ながら。  それから、第二番目の、いつから一体この法案を遡及せいというのかということでありましたけれども、われわれ業界としてはやはり構造改善の問題は、上野先生が進言されました去年の二月に三百三十万トン少なくとも廃却すべきであるということで、受けて立って業界が自主的に廃却をいたしました。それのときに、廃却と同時に設備の廃却もしたし、それにつながっておる人員の整理も行われておるんですから、そのときにまで私は遡及していただきたいというのが私のお願いであります。
  54. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) まず御質問の第一の、今回の法案が「月星化成」いうふうな個別企業の問題でないということはわれわれよく承知しております。特にこの法案といい、離職者臨時措置法の問題といい、これは今回の月星問題が起こる前から、われわれは何とかしていただきたいということを当局にお願いしておった問題なんです。それでこの月星化成の問題が発生いたしましたために、かえって業界としては何とかしなければならぬというのと、月星の姿勢がどういいますか、国内生産を落として輸入をふやして利益を上げようという提案ですから、これでは一層問題があるじゃないかということで、業界内に波紋を投げた、この二面が起きておるわけなんです。  私どもとしては何とか月星化成で起きているという問題を一層業界協調といいますか、業界の体制を立てるという方向へ持っていくために努力をしたい。きょうも担当者が履物協会へ行っており、ますが、その点で話をするという申し入れをするために行っておるわけなんです。したがいまして、われわれとしては構造不況業種というゴム履物産業であると、このことをぜひひとつお考えをいただきたいというのが中心であって、月星化成はその過程で発生した問題であると、こう考えております。そのように申し上げておきます。  次は、輸入に対する姿勢でありますが、これはわれわれも全く先生の言われることに同意見でありまして、大体それは身勝手な言い分であるというふうに思っております。ただしかしながら、現在約三六・五%の輸入の六割がメーカーで、しかもメーカーの中の輸入の状況を、これはちょっときょう資料がありませんけれども、見ますと、ある企業では八割も九割も輸入である、ある企業はせいぜい一割ぐらいか一割五分である、このように大変なアンバランスがあるわけです、メーカーの内部の輸入の状況で。というのはそれだけ自分のところでほかのものに転換しつつ、しかし、履物のルートがあるわけですからそのルートに対しては輸入品も持ってくると、こういうことをいまやっておるわけです。  そうなりますと、現在のところ円高ですから、輸入をやっている方が国内でつくるよりはもうかるということで、むしろその方へ集中をしたい気持ちも相当あるようでありますけれども、それをやりますと雇用問題が起きますから、われわれとしてはそれは困るということと同時に、彼らが言っているのは、こういうのは実は企業存続のためにやっていると、業界存続じゃなしに企業存続のためには、将来の方向がはっきりしないから自分のところで生きていく道としてこれをやっているので、政府なり当局が展望を明確にしてもらえるということになるなら、その中ではっきりと業界の位置づけはできますというのが彼らがわれわれに盛んに言うことで、ただ私どもとしては先ほども言いましたように、四国会談の前にも履物協会とわれわれの履物部会とが会合を持って、四国会談に臨む態度についても注文をつけたいと思っております。  輸入に対する姿勢としては、いま一番初めの陳述で申し上げたとおり、昨年に比べてことし一−二月の方がはるかにふえているんですけれども、そのふえ方の中で見ますと、いまの一−二月だけのことですからこれは断言はできませんが、少なくともメーカー輸入よりもそれ以外の輸入の方がふえ方が多い、このような状況なんですね。われわれとしては労働組合がやかましく経営者の団体に言っていることも、彼らなりに考慮はしていると思います。そのようなところがいまの実態でございます。
  55. 馬場富

    ○馬場富君 お忙しいところ参考人方々には御参加いただきまして大変感謝しております。  最初に、室蘭市長さんにお尋ねいたしますが、先ほど来の御意見を拝聴いたしまして、非常に不況地域経済に大きい影響を与える、そういう中にありまして、特に室蘭市では造船あるいは鉄鋼、石油精製等の特に深刻な業界を抱えておいでになりまして、その中で非常に苦労なさっておるわけでございますが、特に造船に対する従事者が、やはり市民の中で二次産業従事者の中の約一〇%で約三千人であったのが約二千人というような御意見でございましたが、このような非常に大きいウエートを抱えて見えるそういう造船不況の中にありまして、実際の室蘭市として先ほど来いろいろお聞きしましたが、特に造船の不況の実態のポイントを御説明願いたいと思います。
  56. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 大体造船の変遷は、楢崎造船というのがあるのです。これが大体生産能力においては一万四千グロストンネージというから総トン数です。これが大体約十隻を生産する能力があるわけですね。それが大体五十二年度には六隻に減りまして、それからいま五十三年度は四隻に減っているという実態でございまして、それから函館ドックは大体一万八千グロストンネージ——総トン数、一年に四隻つくる能力を持っているのでございますけれども、五十二年度には二隻しかつくってない。五十三年度には一隻と、こういうような状況でございまして、もう三分の一あるいは四分の一と、こういうふうに減っているわけなんです。労働者の数にいたしましても大体六〇%ぐらいになっていますね。
  57. 馬場富

    ○馬場富君 それにつきまして、特にいま御指摘の楢崎造船あるいは函館ドックと、この両社におきましては特に私の調べたところによりますと、中小型の貨物船の建造が中心であったと聞いております。ところが、私は先日のこの委員会でもその点を指摘いたしましたが、実は大型タンカー等を建造する大企業造船がいま不況の中に追い込まれておるわけです。そのためにこの大企業造船が、いわゆる中小造船の分野に大きく食い込んできている。そして特に北海道の室蘭等においてはその不況をあおっておると、こういうのが実情だと聞いておりますが、その現状を御説明願いたいと思います。
  58. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) それはもうそのとおりてございまして、大型——いままで五十万トンつくるとか、あるいは三十万トンつくる。どこどこの会社とは言いませんが、そういうところの造船会社が一万トンあるいは二万トンというような貨物船をつくって、ですからここでもってひとつ、この造船会社等が言っていることは、いわゆるそういった何といいますか、船型の一定のシェアですな、つくる分野。それを企業に応じて決めていただきたいと、それで大きな船をつくっている大企業中小企業の分野には手を出さないというような一つ法案といいますか、そういう規制をぜひ設けていただきたいと。そうでなければいまのところは大きなドックが、いままで楢崎や函館ドックがやっていた中型、小型までもとってしまうということが実情でございます。いま先生のおっしゃるとおりで、それに対する規制をひとつぜひやっていただかなきゃならぬと、こう思うんですよ。
  59. 馬場富

    ○馬場富君 現状のこの法案等でいきますと、やはり室蘭にあるこの中小造船の、たとえばいま楢崎にしても函館ドックにいたしましても、やはり大手企業造船業者と同一の規制の中で乗せておくということは、非常にそこに大きい問題点が出てくるんじゃないかと、このように考えますが、どうでしょうか。
  60. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) そのように考えてよろしゅうございます。そのとおりでございます。
  61. 馬場富

    ○馬場富君 次に、先ほど市長さんのいろんな発言の中でもございましたけれども、特にこの造船等の対策の中で、まあこれにかわるべき一つ仕事量の関係で公共事業の推進だとか、あるいはソ連船とかあるいは北海漁業の関係の造船等の増強とか、あるいは陸上でのいわゆる架橋等の問題等の仕事量増大ということが挙げられましたけれども、こういう観点からいきますと、室蘭市でのやはり造船業界の実態といたしましては、どちらかというと結局仕事量増大による一つは体制と、あわせて事業転換等の方が適切ではないかと。その状況からいくと設備廃棄による処理による、そういう解決策が業界の皆さん方が果たして望んでみえるかどうかということをお聞かせ願いたいと思います。
  62. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) やはりこれは、企業を縮小するということよりも、やはり転換ですね。なるべき転換してやっていきたいというのが希望でございますけれども、函館ドックのごときはやっぱり転換が効きませんので、人員整理も相当やっております。楢崎の方はまだ自己経営の意欲を持ちまして、その転換に努めて建設の方に向かって橋梁その他で、やはり人員の整理も少のうございます。だけれど、でき得れば人員整理をしないで企業転換をしたいと。それでまた建設の業種の方に転換を図っておりますけれども、なかなかいま過渡期でございますから、間に合わなくてやはり首切りという事態に追い込まれております。
  63. 馬場富

    ○馬場富君 まあ、そういう立場からいきますと、今度のこの安定法というのは実は不況業種の関係のそういう対象の業種に対して、やはり信用基金による債務保証というのが問題になってきますが、室蘭のそういう造船業界で、こういう債務保証によっての適用で、これが効果が上がるかどうか、市長さんの立場から御説明願いたいと思いますが。
  64. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 債務保証はぜひやっていただきたいんです。それで先ほども申しましたけれども、どのぐらいの程度でやるかというと、大体やはり二十年ぐらいの長期の借り入れ、それでやはり利子は業者の言うには三・五%ぐらいの利子までは払ってもいいと、楢崎造船なんかは言っておりますが、まあ私の考えといたしましては、やはりこれは国でもって利子補給するというやはり長期展望に立って、立て直していかなければなかなか立て直らぬ、そういう考えでございます。
  65. 馬場富

    ○馬場富君 最後に市長さんの意見の中で、国会議員の調査団等の派遣等がございましたが、そういう、やっぱり要望されるからについては、何か室蘭でも構造不況とも合わせまして、特に国会議員としてよく見てほしいという何か問題点がございますか。
  66. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 国会議員の方々に見ていただきたいというぼくの希望ですか。
  67. 馬場富

    ○馬場富君 その問題点が何かありますか。
  68. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) それはいまの実態でございますね。大体いま、何といいますか事業規模、キャパシティーといいますかそういうものに対する稼働率とか、それから今後転換していく場合における、いわゆるどういうふうに転換さしていったらいいかとか、やはり、あと時間差の問題もありますので、それのおくれをどういうふうにするかとかというような問題を私どもとともに、ひとつ先生方に手伝っていただきたいという意向でございます。
  69. 馬場富

    ○馬場富君 次に安田参考人に質問いたしますが、平電炉問題につきましては、この委員会でも再三私も質問もし、論じてきました。そういう中で、先ほどもいわゆる平電炉基本問題研究会の提言が基本に挙げられましたが、その提言に基づいて、いわゆる平電炉業界が設備廃棄の基本に一つはしてみるということでございますけれども、その一番ポイントは通産に対して、電気炉の新増設を抑制するという条件のもとにスタートされたと、こう聞きますが、この問題については、やはり政府の公約と私は見るべきだと思うかどうでしょうか。
  70. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) この三百三十万トンを廃却せよということですから、片方で新設設備するということは意味のないことなんだと思います。そういう意味において新しい設備は廃却するまではやらないようにということは言えます。これは一つの前提です。けれども、各企業には合理化というものが絶対に不可欠なことでありますので、設備を合理化する、それまでやめろということは言えないので、あるいは、たとえばいまここに二十トンの電気炉あるやつをやめて、もっと合理化する四十トンか五十トンの電気炉にしたいとかいうようなことがあり得るといかぬので、産業構造審議会の下に電気炉の設備委員会というものをつくって、その委員会で通ったものは新設設備といえども認めようじゃないかというルールになっておるわけです。
  71. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、業界では三百三十万トンの廃棄というのは、そういうやはり、結局今後の新増設を抑制すると。いわゆる、先ほどから安田さんがお話しになりましたアウトサイダーの規制を一つは前提とした問題であったと、こういうことですが、最近聞くところによりますと、いろんな、業界の中にも、一つは小棒の組合とかによる価格あるいは数量等の規制が行われ、アウトサイダー規制等も行われまして、やや順調な方向に一つは出て、いままでのいわゆる対策が効果をあらわしてきたような傾向を私も見受けるわけでございますが、この中でやはりアウトサイダーの中に景気よしとするならばまた新設を、増設しようとするような動きが、もうかるんならやろうじゃないかというような動きがあるということを聞いておりますが、実情はどうでしょうか。
  72. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 価格の問題は、現在は小棒組合というものがつくられていて、その小棒組合にはアウトサイダー規制ができるということのたてまえで行われておる。したがって現在アウトサイダーあってでも、生産調整命令は出ておるわけですから、これはアウトサイダーとしての活動してないわけです。ところがいまおっしゃるように、これは一つのもので、もう一つはアウトサイダーの人たちがどうしてもあの中入るのいやだと言われる中に、自由にいろんなことをやりたいという人がおるんじゃないかと、これはわれわれの方にもそういうニュースが入っております。新しい電気炉をつくるんだとか、そういうことは確かに入っております。やるといううわさは聞いております。
  73. 馬場富

    ○馬場富君 そうした場合ですね、結局平電炉基本問題研究会等を結成され、そして業界が政府指導のもとにまとまって、一つのやはり自粛の中から生産を調整していこうという流れが出てきたと。だが、中にそういうアウトの規制が何ら行われなかったならば、そういうインサイダーの団結の結果が崩れてくるおそれもあるんじゃないかと。こういう点で今度の組織結成について私は非常に心配するわけですが、その点はどうでしょうか。
  74. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) アウトサイダー規制というものはいま申し上げましたように、アウトサイダー規制というものの前提として、私は平電炉の総会を開いて皆さんの意見を聞いたときに、六十社は賛成してアウトサイダー規制はやってもらわなきゃ困ると、アウトサイダー規制しちゃいかぬと言われたのは六社しかいないんですから、いま先生のおっしゃるとおり、大多数の者はアウトサイダー規制してきちんといってもらいたいという気持ちは変わっておりません。そのとおりであります。それで、業界の決議としてそれを決めろと私に言ったくらいですから、私やらなかったんですけれども。そういうのは大勢であることは間違いありません。
  75. 馬場富

    ○馬場富君 この三百三十万トンの廃棄に踏み切ったときに、先ほども御説明がありましたが、財団法人平電炉業構造改善促進協会というのが設けられて基金の創設がなされております。そして全部で七億ですか、そういう結局その十倍の七十億を保証の対象として設備をやっていこうじゃないかということでスタートされましたが、現状を聞いてみますと、やはり民間資本があるためにそういう点でこれはやや弱い点があると、そういう点では今度の安定法による基金の方が強力な力がある。非常にそういう点での兼ね合い等を心配されておるようでございますが、この財団法人の基金によってはその三百三十万トンのうちのどれほどが対象となるか、そこらあたりを御説明願いたいと思います。
  76. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) これは三百三十万トンのうち何トンなるかということは、大体一トンが廃却一億だと見ています。そうすると、三百三十万トンやると三百三十億が要るということなんです、本当は。ところが、七十億じゃどうにもならないと、したがって先生のおっしゃるように、どうしてもこの信用基金制度にジョイントしてつなげてもらって、そこで何らかの援助をしてもらわなければだめだろうというのがわれわれ業界の意見です。
  77. 馬場富

    ○馬場富君 それから七十億に対して、まあ七億の七十億ですね、十倍の保証度の問題でございますが、これもやはり先ほどお話ししましたように、やや弱い点があるんじゃないかと、そういう点については金融機関等の信用状態から推しても七十億の効果はあらわれぬのじゃないかという心配の向きがあるようですが、この点はどのくらいにひとつ力を入れておりますか。
  78. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) それはもう先生の方がずっと詳しいので驚きました。そのとおりです。七十億というのは見かけだけであって、実際の運用をするときにはもう恐らくその半分の三十億ぐらいしかギャランティーしないんじゃなかろうかと言われております。三十億ぐらいじゃないかと言ってます。しかも連帯保証を必要とすると言ってますから、これは非常にむずかしいという点がありますね。
  79. 馬場富

    ○馬場富君 それから価格の問題になりますが、小棒組合が結成されて、そしていま数量あるいは価格、そしてアウトと一つは規制を設けながらこれは進められておるわけでございますが、さっきの質問の中にもちょっと出ましたが、やや持ち上げてきたという点ですか、カルテルの価格は幾らなのか、そしてスタートされたときが五万二千円程度とこう聞いておりますが、現状とそのカルテル価格との問題ですね。それからあわせまして、最近業界で一つは材料が急騰してきておると言われておりますが、その急騰の原因と価格はどれほどかを御説明願いたいと思います。
  80. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 価格は五万二千円のときには去年の十月スタートしたときにやったことは間違いありませんし、その後最近になりまして、四月以後は価格のカルテルというものは外されたわけです。数量しか認められなくなったんです。それで各社が価格は自由になっております。それで、それがいま言いましたように五万七、八千円になった大きな原因というのは、いまの小棒の組合をつくって相当に在庫調整ができたということ、市中在庫。それから政府の大型予算が組まれておるということで、市中にそういうことが非常に一つの人気になってきておるということが一つ。第三番目は、先ほど申し上げましたように東南アジアの発展途上国に対して二十万トンぐらいのものを買い上げて無償援助物資にするんだということで予算に組まれておるということが流れた、それでこの値が上がってきた。最近また下がってまいりましたのは、スクラップの値の下がっただけ下がりました。
  81. 馬場富

    ○馬場富君 次は、この法案が業種指定する場合に、業界の大部分という一つ数字の中で、先ほど安田さんはこれをまあわれわれも先般論議しましたが、三分の二と踏んでみえるようでございますが、これはかなり平電炉業界の場合はむずかしいと、こういう御指摘でございましたが、実質これはどの程度なら、三分の二はいま出された数字でございますが、実質平電炉業界がこの特定産業の指定を受けようとする場合に、まとまった場合、組織された場合に、どの程度数字ならまとまりそうなのか、ひとつお示し願いたいと思います。
  82. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) ただ一番私心配するのは、現在でも六十社がカルテルの——平電炉協議会に入っているのが六十社なんです。協議会入っておられない方が十二社おられますから、それを全部合わして七十二社ですから、それが平電炉といわれることですから、その六十社だけにとってみると、先ほど申し上げましたようにアウトサイダー規制してくれというのは五十社なんですから、もしこの法案というものがアウトサイダー規制してわれわれの言うようなものであったら、私は三分の二はいくと思います。アウトサイダー規制も何にもやらないんだということになると、正直者がばかを見るようなものだったら、われわれ何にも入る必要ないじゃないかという人が出てくる可能性があるんじゃなかろうかと私は心配するので申し上げただけなんで、ところが衆議院でこういう附帯決議事項がついてますので大分違うと思いますけれども、業界の方が五十社賛成したときにはアウトサイダー規制するという通産省の原案の説明に基づいて賛成、不賛成をとったんですから、そのときにはアウトサイダー規制が載っておったのですから、あの法案には。だからそれがなくなりましたので、今度はどうなるかとなると、私はその点で多少不安があると申し上げたので、必ずしも三分の二ないということを申し上げたわけじゃないんですけれども、恐らく業界はもう不況カルテル何遍もやって苦しんでいますから、私が説明すれば皆さん納得してくれると思いますけれども、そう悲観はしておりませんけれども、ただアウトサイダー規制は全然しないんだ、君たちは新設設備もできない、廃却はするんだと。アウトサイダーの人は新設設備してもいいんだし、廃却しなくてもいいんだというようなことになると、インサイダーの人は果たして何人賛成するかということになると疑問があるということを申し上げたわけです。
  83. 馬場富

    ○馬場富君 今回の法案が、特に先ほどの安田さんのお話の中でも、平電炉業界については一応かつての鋳物を、通産の指導のもとに一応設備は休止状態であるという現状ですね。これから処理に入っていくということにあるようでございますが、そうした場合に現状から押してみますと、もう設備の休止については先ほどの説明でいきますと、雇用問題が解決されてしまったということのようです。  それで、今回の一つ一つ保証の対象になっていくのは、当然対象となる設備とあわせてそこの設備に従事していらっしゃる従業員方々の退職金が対象となると聞いておるわけでございますが、そうしていきますと、一応はやはり業界についてはもう先に退職金等も銀行等で借りて払ってしまったという御意見か出ておりましたが、そういう問題については一つはこの法案実施に当たって食い違いが出てくるし、平電炉業界については先取りだけに困難な点があると思うが、この点はどうですか。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕
  84. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 私は、先ほどから申し上げましたように、だからいま室蘭の市長もおっしゃったように、低金利で長い長期間のものを貸していただければそれを借りて切りかえたいということなんです、現在借りているものを。借りかえをやりたいということの思想だということを申し上げたわけです。いま借りていますね、そして政府のものを借りれば低金利であって、しかも長期の返還だというならそれと切りかえて銀行へ返してしまえばいいんですから、それだけ体質がよくなるだろう、こういう意味です。
  85. 馬場富

    ○馬場富君 でき得ればいまのこの法案の発生主義の問題点がありますが、そういう点でその対象設備の関係にさかのぼっても考えられればなお結構ですけれども、これが一番最高の方法だと……
  86. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) ああそうです、ぜひ。さっき小柳先生がおっしゃったと同じでございます。
  87. 馬場富

    ○馬場富君 そういう点でよろしゅうございますか。
  88. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) よろしゅうございます。
  89. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、特に平電炉問題についてはアウトサイダーの問題が大きい問題のようでございますが、こういう点で国は指導という行政指導という点で、法案には出さなかったけれども強力に行っていくということでございます。私どももやっぱり法の適用は公平でなけりゃならぬという点からしても、そういう点を強く望んでおるわけでございますけれども、行政指導と一つはアウトサイダー規制が入るのと実は現状を、その点安田さんが業界をながめられてどうでしょうか、その辺は。
  90. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 現在は小棒組合をつくっておりますのも、入っておられない方に対して通産省の行政指導でやっておられてそれを守られておるということですから、行政指導がきちんとやられれば、私はやっぱりある程度守っていただけると思うけれども、法的規制とはやっぱり大分違うんじゃないかと思いますね、その点は。やはり法的の規制の方がわれわれ望ましいけれども、いけなければそれはもう行政指導でやっていただくしかないと思います。
  91. 馬場富

    ○馬場富君 平電炉の関係で最後に、特に業界の不振の中で、先般通産大臣もそういう構造不況業種の中の製品を、でき得れば今年平電炉が考えられたようなああいう低開発国の無償援助の形でこれを振り向けることは非常に強くここで論じられたわけでございますが、そういう点についても特に通産大臣は考えていきたいということを希望をしておったようでございますが、この無償援助に対する私は立場からいって、特に国内での産業廃棄物である鉄くずを処理して、そしてこれが国内だけで使えなかった場合に、これは当然、その残余というものは無償物資で、結局海外の無償物資に考えられることはもっともなことだと、これは当然のことだと、このように考えておるわけですが、業界等での希望はどうでしょうか。
  92. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) われわれの方は、通産当局に対しては今年一年と言わないで継続でやってもらいたいということを申し出ております。来年もまた引き続いてやっていただきたいという意見は申し述べてあります。
  93. 馬場富

    ○馬場富君 じゃそれに関連しまして、現在の鉄くずの日本の発生状況と、これの消化状況ですね、それ、ちょっと御説明願いたいと思います。
  94. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 自然に発生する市中くずは大体二千万トンといわれております。これは産業状態にもよりますけれども、二千万トンといわれておりますから、それに相当するものは生産していいはずなんです。ところが最近の生産高というものは千四百万トンぐらいしか生産してないんです、われわれは。その点はやっぱりギャップがあってそれだけ余分になる、それはやっぱり韓国、台湾の方とかへ輸出しておるのもあるようです、日本から。だから本当は二千万トンぐらいは溶かしてやってもいい能力はあるわけです。
  95. 馬場富

    ○馬場富君 次にゴム産業労連の関係の方にお尋ねいたしたいと思いますが、先ほど意見を拝聴いたしまして、特にゴム履物の分野についての不況が特に目立っておるようでございますが、そういう点につきまして、その原因は特に韓国、台湾からの輸入あるいは並びに逆輸入によるその点がポイントにあるように拝聴いたしましたが、そういう点で現在ゴム履物の輸入は四十八年に比べて五十二年度は数量で七倍にまで急増して国内生産を圧迫しておると、このように報じられておるわけでございますが、この内需に対しまして輸入品の比率はどの程度でございましょうか。
  96. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) ここで申し上げているゴム履物の比率から言いますと三六・五になるわけです。それで、ただ履物ということになって幅広く申し上げると、そのほかにもビニール製のくつもございますし革ぐつがございますしサンダルもございます。そういうことになりますから、私どもとしては韓国、台湾から入っているゴム履物、これは向こうはいまのところビニール履物を製造しておりませんから、そういうふうな形で、今回申し上げているゴム履物の問題で輸入比率は三六・五と、このようにいま申し上げているところです。
  97. 馬場富

    ○馬場富君 次に、特に輸入の中でも逆輸入でございますけれども、現状ですが、日本企業が韓国、台湾等への投資によってそれがこちらへ輸入されておる、これは輸入量の中でどの程度でございましょう。
  98. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) 大体、正確な数字として申し上げにくいのですが六〇%であるというふうに考えています。したがって申し上げた数字の、一番初めの中で申し上げたように、総量のゴム履物の国内供給量一億一千九百七十三万足に対して輸入量が四千三百六十八万足ですからこれが三六・五であるというふうに申し上げているわけであります。
  99. 馬場富

    ○馬場富君 その中で特にいわゆる逆輸入の数字がね。
  100. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) はあ、だからこれの約六割。
  101. 馬場富

    ○馬場富君 六割ね。
  102. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) はい。
  103. 馬場富

    ○馬場富君 次に、いま業界が希望していらっしゃる輸入規制の問題ですけれども、これは日本が大幅な黒字という立場から、非常に輸入制限というのは厳しい、また困難な実情の中に来ておるわけですから、そういう中でいま一つ考えられるのは、その二国間協定の問題があるわけですが、この点についてはひとつ業界ではどのように考えてみえますか。
  104. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) 通産省当局も自主的に韓国との間で、また台湾との間で業界同士で話し合ってみたらどうかという意見があるんですがね。先ほどしか対馬さんの御質問にお答えしたときかしらぬが申し上げたように、韓国側は国の政策として企業に輸出割り当てをしてやらしている関係で、まず業者間で話し合ってそのことを結ぶことはむずかしかろう、私どもはそう考えておるところです。したがって私どもが当局にお願いしているのは、政府間でこの話を何とかしてもらいたいと、こういうことです。
  105. 馬場富

    ○馬場富君 次に、特に特定不況業種離職者臨時措置法の指定業種になっていない、そういう点についての希望があるようですが、この点についての理由はどんな点でしょうか。
  106. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) まあこれも対馬さんの御質問のときにお答えしたように、構造不況業種としての扱いがやっぱりこれまで十分なされていない。しか実情から申し上げると、いまは月星の問題ですが、それ以前にやっぱり北藤ゴムの合理化の問題がすでに出ておりますし、これはもう出て首切りが終わったんですけれども、そのようなことで断続的にあったわけです。したがって、離職者臨時措置法問題を何とかしてもらいたいということで盛んに働きかけておるんですが、いま一番問題になっているのは、業界内でいわゆる生産対策といいますか、設備の休止とかそれから生産量の縮小、それからそれに対する通産省の指導ですね、この面でちょっとまだなかなか準備ができておらぬために認可になっておらぬわけですが、私どもとしては、できる限り早い機会に特定不況業種離職者臨時措置法の適用業種にはしていただきたいという努力を目下しております。
  107. 馬場富

    ○馬場富君 おたくの業界では、昨年一年の倒産というのはどのようになっていますか。
  108. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) これが不思議な業界でございまして、メーカーという単位でいきますと、ここ数年の間に倒れたところは一社ぐらいしかないんです。というのは、一番初めの陳述のところで申し上げたように、過小資本でいわゆる個人経営的な要素ですから、しか設備投資というのが余り要らない業種なんです。その面で、何とか売り食いができればこれはやっていけるというのも一面あるわけです。そのかわり極端に労働条件を押さえたり、それからもう退職しても退職金を当分払えないからしばらくして一年ぐらいたってから払うとか、そんな極端な例もあるんですが、結局履物の中で大企業ほど借入金で金利に困っていますが、中小企業の場合はかえってその方がなくて、もう設備投資の費用はほとんどない、人手に対する費用だけ、人手とそれから材料費ですね。そのようなことのためにかえっていままでは倒産が起きてないんです。ただしかし、じりじりじりじり体力が落ちていますから、私は間もなくばたばたいくんじゃなかろうかと心配をしておるんです。
  109. 馬場富

    ○馬場富君 最後に、この法案によりまして、いろんな法案に参加する業種指定がございますけれども、こういうような条件の中で、ゴム業界については業界が果たしてこういう組織化がまとまるかどうか、この点ひとつ組合の立場から御説明願いたいと思います。
  110. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) その点は御指摘のとおり、やはり労働組合の方が雇用問題を抱えている関係ではるかに一生懸命やっているわけなんです。経営側の方は、それはもう危機感はあっても、それと自分のところだけ何とかなるんじゃないかということがあるために、まとまりの点では労働組合に比べればはるかに悪いということは言えると思います。しかし、だからといってそれでは自分のところだけが生き残れるかという、こういう自信もないので、その辺で、業界内で議論はいろいろあっても、何とか特定不況産業安定臨時措置法問題も考えざるを得ぬのじゃないかというふうなことになりつつあると思います。
  111. 馬場富

    ○馬場富君 最後に中里参考人にお尋ねいたしますが、この法案に参加することによって設備処理が行われるわけでございますが、当然それに対しての雇用問題が考えられるということでございますが、中里さんか関係される業界をながめられまして、そしてこの法案が果たして適用されることの方が効果があるのか、それともこういうものは適用されなくて現状維持の方が一つ雇用問題としていいのか、そこらあたりの問題について御説明願いたいと思います。
  112. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) 率直に申し上げて、私はない方がいい、そう思っています。ということは、いろいろ考えていただいて、たとえば衆議院段階でも中小企業を何とか保護するための内容になってみたり、あるいは労働組合の発言力を増したり、あったとしても、先ほど私が申し上げたようなことがありますので、どうしてもこの不信感というのが、経営サイドに対する不信感、あるいはまたこの法案そのものに持つ不信感というのが、どんな保護措置があったとしても、行政指導面で非常に欠けている面がある。そうした点を考え合わせてみますると、ぼくはこういうのはない方がいい、そういうふうに思っています。
  113. 馬場富

    ○馬場富君 先ほど中里さんがおっしゃった言葉の中に、この法案というのは経営者の安定であって、雇用の安定ではないということをおっしゃっておりましたが、そういう角度からいたしまして、この法案経営者の安定を主に考えたものならば、やはりこの法案を進めるからには別な雇用安定をしっかりと構えた法案を並行して考えるべきだと、こういうような考え方についてはどう御理解できますか。
  114. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) それは具体的に私は申し上げたいんですけれども、たとえば国会の中でいろんな法案が、中小企業に対する分野法の問題とか、あるいはまた離対法の問題とか、あるいは雇用法の問題とか、改正されたり何かするんですが、先ほどちょっと触れましたけれども、この問題とはちょっと離れますけれども、問題は、たとえば、やはり非常に叫んでいるんだけれども残念ながらまだそこまでいってないんですが、地域包括最賃なり業者間最賃なりがあるわけですね。そういうのが実施されて決まっても、その地域で、実際問題それを確実に守っているという中小企業経営者のあれが非常に薄いんですよ。そういった点は基準局なり何なりに言っても、手がないものだからなかなかそういう点が調べられない。あるいはまた安全対策上の問題でも、大変危険作業をやっているにもかかわらず、あるいはまた法を犯しているにもかかわらず、なかなかそれが実態把握ができてない、そこで大きな事故が起きている、こういうことが実は末端の中で起きているわけですよ。ですからこういう法案が、先ほど申しましたようにいろいろな保護策なり処置なり、あるいはまた救済処置がとられたとしても、どうしてもぼくはそうした実際面の行政指導面が、たとえば大企業、大資本、これが守られて、そのためには廃棄処分なりあるいは休止をする、あるいは封印をする、あるいは格納すると、こういうような処置がとられて、それはそれなりで一定の救済措置はとられるだろうけれども、その関連する中小企業へ行って一体どうなのか。こういうふうに法案の中で若干救済措置が求められているとしても、実際の行政指導面でどうなのかというと、ぼくはまた無視されてしまうんじゃないか、そういう不信感があるためにどうしてもそういう点が論議されないということです。以上です。
  115. 馬場富

    ○馬場富君 あわせまして、じゃ、構造不況の対策の中にはそういう設備の調整よりも、やはり事業転換の方が先決問題だと、こういう御理解のようですが、そこらあたりの意見をちょっと。
  116. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) そのとおりです。
  117. 馬場富

    ○馬場富君 何か具体的な例がありましたらひとつ。
  118. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) これはたとえば、いま私たちも、全国の特に企業倒産とか、特に企業倒産寸前の状態にある企業ですね、こうしたところにだってもうすでに別段そういう国の救済処置を求めなくても、自主的に労使の中で、事業転換が必要であるとすれば、いままでたとえば鋳物屋だったのが板金屋にしてみたり、あるいはまた平電炉関係やってたものを全然工場を改革をして、別な業種に転換をするとか、残念ながらそういう企業でそれの指定業種にならないところでもあるんですよ。しかしそれでもやっぱり事業転換というものはやむなくこれは応じている。ですから、私はやっぱりできれば全体に、そういう不況業種指定なり、あるいは事業転換の指定なり、個別企業の指導というものもひとつ考えていただきたいなと、こんなふうに思います。
  119. 馬場富

    ○馬場富君 この法案の中の一点に「資金の確保」というのが九条にございますがね。その中で資金の確保とは結局構造不況業種のいわゆる事業転換の資金だということを通産省言っておるわけですけれども、こういうものが含まれておる場合はどうでしょうか。
  120. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) 問題はそういう事業転換なりの資金になったとしても、労働者がいままで培った技術がありますね。そして特に高年者の労働者は、やはり転換するというのは非常にむずかしいのですね。ですからそういう意味では、やっぱりいままでやってきた職業、それをどうしても生かしたい、そういうことがあるんです。ですからできるだけそういう意味ではいろんな、たとえば失業給付の問題等についても手だてが最近は尽くされていますけれども、まだまだ不十分さがあるわけです。私はやっぱりそういうものと総合的な対応策がない限り、ただ単に事業転換の資金としてとれるとか何か言っても、具体的な問題としてはやっぱりそういう離職者に対する総体的な対応策を考えた上での対策を考えていただきたい、このように思います。
  121. 馬場富

    ○馬場富君 じゃどうも長時間ありがとうございました。
  122. 安武洋子

    ○安武洋子君 共産党の安武でございます。  きょうはお忙しいところお越しくださいましてありがとうございます。大変長時間になっておりましてお疲れと思いますけれども、もうしばらく御意見を聞かせていただきとうございます。  私まず最初に長谷川参考人にお伺いさせていただきとうございます。室蘭市長さんとしまして大変御苦労なさっていらっしゃるというふうなことを御意見を拝聴させていただきましたんですが、私が住んでおります兵庫県にも、造船とか繊維とかアルミとか鉄鋼とか、こういいますような不況産業が大変多うございまして、失業者も多発いたしております。有効求人倍率で見ますと、全国平均をはるかに下回りまして大変悪いという状況でございます。一例をとりますと、人口が四万三千人の相生市、ここには御存じかもわかりませんが、大手の石川島播磨造船がございます。ここでは失業問題、財政問題が特別に深刻でございまして、ちょうど四十九年度の好況のころは石川島播磨では本工は八千人おりました。そして下請は二千人、こういう状況でございましたけれども、現在本工は六千人、そして下請は二千人だったのがわずか四百人から五百人、こういうふうに減少いたしております。関連企業は市の製造業の八〇%を占めておりまして、石川島播磨に関係のない方はほとんどいないというのが相生市の状況でございます。操業率がいまのところ六〇%にも落ち込んでしまっているというふうな状況でございますので、残っている労働者も大変収入が減りまして、購買力も落ちてしまっている、そして下請も単価の切り下げが押しつけられまして、また一部では手持ちの仕事もなくなってしまったというふうな非常に深刻な状態が出てきているわけです。このために市民税ばかりでなくって、下請企業の法人住民税ももちろんこれは落ち込みますし、また修繕のために入港する外国船、これが減ってしまっておりますために特別とん譲与税、これが減少するというふうなことがございまして、市の財政というのが非常に逼迫をいたしておりますけれども。  いま本法が施行されるというふうになりますと、こういう状態が私は一層深刻になるのではないかというふうに懸念をいたしておるわけでございますけれども、財政面、それから雇用面で大きな問題が生じれば、いまの室蘭市でも大変ではなかろうかというふうな面でひとつお伺いいたしとうございますが、室蘭市は失業多発地帯、こういうことで指定になっておりますけれども、こういう法案と関連をいたしまして、雇用対策の実施に当たりましてはいろいろと問題が出てくると思うんです。こういう点で何か御要望がございましたら、ひとつ具体的に御要望をお聞かせ願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  123. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 具体的にでございますね、まず要するに雇用の創出、雇用の場をつくっていただきたい、一曹で言えばですね。それで、室蘭は造船所ばかりでなく、日鋼、日鉄もございますし、いろいろ漁業もやっておりますので、まあ財政的ににっちもさっちもいかなくなるというような、いまの見通しでは、ところまでは落ち込んでおりません。何とかかわしていけると考えておりますけれども、とにもかくにも人口が流出します、いまお話しのとおり。失業者もどんどんはっきりと苫小牧の方にも移っていきますから、もちろん税収も落ちてまいります。落ちてまいりますから、何とか先ほど来申しておりますとおり仕事をつくっていただきたい。これはもう端的に言いまして率直に御要望申し上げます。どんな仕事をつくってくれるかということになると、いまのところは公共投資でもって政府はどんどん上からやってきてますからね、事実はもう技術者が足りないぐらいのものです。ですからそれでもって公共投資でもって大体昨年に比べて三五・一%のプラスですから、増ですから、それで何とかしのいでいきますけれども、これはこの後がこわいですね、この後が。ですからやはりいまの構造不況業種にかわるべき知能集積度の高い、いわゆる工業とかあるいは飼料備蓄基地とか食糧の、そういったものを考えて、それにかわるべき構造をいま考えて施策を練っておるところです。そういうことです。
  124. 安武洋子

    ○安武洋子君 この商工委員会でも幾度も論議になりまして、私も何度も取り上げておりませんですが、いまの政府中小企業に対します対策といいますのは、非常に貧弱だというふうに思わざるを得ないわけなんです。そこで、金融対策などきわめて中小企業に対しても不十分でございますし、不況地域の中小企業対策として御要望もたくさんお持ちだろうと思いますので、そういう点もあわせて伺わせていただきとうございますが。
  125. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 中小企業対策は、いま中小企業センターというものもつくっております。それから金融対策ですね、これの融資対策も枠組みをいたしまして相当市としても力を入れておりますけれども、これに対するやはり政府の特枠などを許可していただければ、中小企業対策というのはいま非常に問題になってきております。そういうことをひとつぜひ御要望申し上げます。
  126. 安武洋子

    ○安武洋子君 市の財政も、この全般的な不況の中で大変な大きな影響をお受けになっていらっしゃると思うんです。市のいろいろの行政の中にも支障が生じるのではないかというふうに思いますので、国に対する御要望もございましたら、あわせてお伺いいたしとうございますが。
  127. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 国に対する要望は山ほどあるんですよ。その中で、まず税の、要するに税の配分ですね。要するに超過課税の問題はもう古くなりましたけれども、これもまだありますし、それから地方交付税の問題、特交の問題、そういった税制の根本的な改革を地方にもう少し、地方の首長が仕事のできるような、自由に使える金を国でもっとくださいと、三〇%の行政でなしに五〇%の行政までしてくだされば、私どもの方でもって国のお世話にならなくても構造不況の解決もいろんなことをやります。そういうことで、抜本的にそこがネックですから、そういうことでひとつ御理解願いたいと思います。
  128. 安武洋子

    ○安武洋子君 ありがとうございます。  それでは、続きまして安田参考人にお伺いをさしていただきとうございます。  平電炉の業界の場合、いまの設備の過剰と申しますのは需要の減退ということも確かにございますけれども、オイルショック後の膨大な設備投資にその原因があろうかと思うわけなんです。政府は過大な設備投資といいますのは個々の事業主の責任だと、こういうふうに申しておりますけれども、これらの設備投資の多く——全部とは申しませんけれども、ほとんどは銀行とか商社からの資金で行われてきている。こういう背景に銀行や商社が、政府の誤った経済見通しの上に立って指導をして、それに基づいて豊富な資金を投機的につぎ込んだ、ここに問題があるというふうに思うわけなんです。  現在、平電炉業界の中では財務内容の悪化とか、それから設備の休止に伴いまして人員の削減が進められているわけですけれども、これらのいきさつには労働者は全然責任がないわけなんですね。何ら責任がない。むしろいままでともにこの苦境を切り抜けてきて、その業界の仕事をして、本当に業界を支えてきた。大変労働者はそういう立場に立ってきているわけなんですけれども。ですから、主張すべき労働条件改善、この要望も抑えて、耐えるところは耐えて何とかというふうなことで労働者の方はやってこられたのではないかというふうに思うんです。ところが、いまになって人員削減の対象にされるというふうなことになる、解雇されるというふうなことでは、余りにも労働者に犠牲を一方的に強いることになるのではないかというふうに私は思うわけなんです。  そこでお伺いいたしますけれども、今日の財務内容の悪化の大きな要因は、やはり先ほど申しましたような膨大な金利負担という問題がある現状から見まして、業界としては、金融機関とかあるいは商社に対して過剰投資の責任と業界の救済上の役割りをやっぱり果たさせること、これに全力を挙げて要求すべきだと、こういうふうに私は思うわけなんです。この点につきましては、申しわけございませんけれども、全国金属中里参考人さんでございましょうか、この点につきましても中里参考人さんの御意見も御一緒にお伺いさしていただきとうございますが、私はやはり、労働者に一方的にしわ寄せするんではなく、この業界を救済するということから、金融機関とか商社に対して、やっぱり全力を挙げて要求をしていくというふうなことを考えておりますが、この点の御意見を伺わせていただきとうございます。
  129. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) いまおっしゃいました設備過剰の状態における責任ということなんですけれども、私、この前の衆議院の予算委員会でも言ったんですが、三つあると思います。  何といっても設備したのは経営者なんですから、第一に経営者の責任であることだけはこれは間違いないと思います、第一点に。第二の点は、政府の中長期見通しというものは、昭和五十五年度には、鉄鋼は一億数千万トンになるというガイドポストを出しております。それに基づいて設備をやっているんですから、政府のやはりガイドポストに過ちがあったということが第二点です。第三の点は、商社がこの平電炉の設備に金を投資しておる、設備資金を出している。商社というのは物を売ればいいのに、設備に金を出して、それからできた製品を自分の商圏に結びつけようということで商圏拡張というものに入って、これら三つのものが相乗積になってやはり設備過剰という大きな弊害がある。それがいわゆるオイルショックによってあらわれてきた。それがそのとき、五十五年のときは一億数千万と、いまやっと一億トンちょっとですから、そういう差額がここへあらわれたということだと私は思います。それと、いまおっしゃるように労働者には何の責任もないと言われればあるいはそうかもしれません。しかし、最近における特に電炉の方は、昨年からこの問題を取り上げて、構造的不況産業であるということで真剣に取り組んで長い期間かけてやってきております。それで、ここへきてまた二重に悪くなったのは円高に基づく輸出が非常に行き詰まってきたということです。いままでは大抵二五%から三〇%輸出やっておるわけですが、これが円高のために非常な赤字になってきておるということでございます。  これ以上私は業界の人たち労働問題という、雇用の問題に手を触れないようにやるべきである、何とかこれは切り抜けなければならぬということで、先ほどもう一人の先生がおっしゃったように、週休二日制というような問題などは当然起こってくる問題だと私は思います。労働組合の幹部の方の鉄鋼労連の宮田委員長その他と定期に会談をいたしまして、いろいろ話をしていますけれども、この問題についても最後はやはり週休二日制という問題について踏み切るときには、電炉業界全体が一丸となってやるということが一つと、その後、週休二日制に基づいて製品価格が何ぼ上がるかということが問題だと思うんです。それで、週休二日制にしただけ賃金カットしていいというのなら、それはまた別問題ですけれども、そうでない限り、これは当然製品にはね返るということを考えなければなりません。そういうことになろうと私は思います。
  130. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) まさにいま先生おっしゃられた第一点は、労働者に責任がないのにそこへしわ寄せをさせられているという点はお説のとおりで、われわれは、全国金属という組織は全国、先ほど申し上げましたように、三十四地本にまたがっておりますので、金融、商社だけではなしに、よりもっと、たとえば非常に私どもの方の組織は鉄鋼、造船、それから電気、自動車、大体金属四基幹産業のあれにかかわる企業が多いものですから、したがって非常にこれらの大企業影響が直接的に影響されてきます。したがいまして、今日までそういう背後資本といいますか、親企業に対する、これは商社であれ、金融機関であれ、要求も出し、そしてまた解決のための折衝もしております。しかし、残念ながら最近大変ガードが固くなってきて、ということは、これは商社なり大企業そのものの方も厳しくなってきたといいますか、   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕 構造不況が浸透したといいますか、そのためにかなり厳しくなって、逆攻勢といいますか、大変中小企業を取りつぶしというのが残念ながら多くなっているし、また職場の労働者経営者の経営を守るんだ、企業を存続させるんだという大義名分の中で実は職場を追われている、こういう現状にあります。  で、私はもう一言触れておきたいと思うんですけれども、たとえばこの法案がどんな形であれ通るとするとしますと、先ほど五ヵ年間の時限立法だという、この五ヵ年の中でいろいろなもう不要と思われる設備あるいはいろいろな機械、機具、それを廃棄ないしは格納、封印されるわけですね。そうなって、いま大変国の金を使おうとしている。これがもし好況になったらこれはどうなるんですか。いままでの歴史が物語っているんですね。また今度は過当競争が始まるわけでしょう。いまは困っているから何とか救済しろと言う。それも大資本、大企業中心でしょう。中小は忘れられているでしょう。それが、今度また好況に転じたら、設備拡大をし、新会社は設立をし、生産活動は増大していくわけでしょう。その中で確かに雇用の問題はある程度は解消されるかもしれませんけれども、そのときにはまた労働の生産力は労働者によって求められるわけです。ですから、私はそういう関係からいって、やはりこの種の法案というのはもっともっと、最終的にどうあらねばならないのか、国民生活にどうかかわり合いがあるのかというひとつ観点でお考えいただきたいということを申し添えます。
  131. 安武洋子

    ○安武洋子君 ありがとうございます。  再び安田参考人にお伺いさせていただきとうございますけれども、現在特に債務超過に陥っている企業に対しまして、金融機関などからの圧力で企業が当事者能力を失ってしまうというふうなことで、自主的に経営改善の努力が行い切れないというふうな状態も生じているわけなんです。で、本法の債務保証に関連いたしまして、金融機関などが担保抜き資金の貸し付けとか、それから債務保証裏保証の供与者としまして、こういう立場から業界の自主的な経営改善努力に圧力をかけるということがあってはならないわけなんですけれども、私はそういう懸念も十分に感じられるわけなんです。この点についてどうお思いでしょうかということと、また政府資金を使いまして債務保証が行われる以上、政府にそのようなことがないような必要な指導を要求すべきだというふうに考えておりますけれども、その点につきましても、どのようにお考えでございましょうか。二つの点でお伺いいたします。
  132. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 債務オーバーの会社というのは必ずないとは言えません。あるように私も聞いています。どこの会社がどうだということは具体的には存じませんが、しかし商社関係その他の系列に入って、そういう商社の金融によってとにかく息づいてきておると、そういうような会社は当事者能力ない会社になっているんだといううわさも私は聞いております。あなたのおっしゃるとおりのことを聞いております。  そこで先ほど申し上げましたように、いまのような信用基金制度というものができたときに、連帯保証がどうのこうのということになったならば実際の運用は困難になるから、そういうことのないように、ひとつわれわれに金の貸しつけその他についてやっていただきたいということを申し上げたのはそういうことでありまして、いま先生のおっしゃったように、少なくとも信用基金制度というものを構造不況業種に適用しようということであるなら、その中にはもう当事者能力のないぐらいに債務オーバーした会社があるのに、連帯保証出せとか、担保物件を出せとか言われても実質上はそれは不可能なんだから、そういうことのないように、政府の力でやられるだけの援助はしてもらいたいということを私さっき言ったけれども、それは相当入っていると思います。具体的にどこの会社どうだと言えぬけれども、先生のおっしゃることはよくわかると私は思います。
  133. 安武洋子

    ○安武洋子君 さらにお伺いさせていただきますけれども、平電炉業界ではいわゆるアウトサイダーも大変多いわけなんですけれど、この法案につきましてもさまざまな意見や要望が寄せられているわけです。  平電炉業界のあり方につきましては、通産省の指導もございまして合併とか協業とかあるいはグループ化など業界の再編成も論議されているわけですけれども、平電炉業界の会長さんといたしまして設備処理を進めながら平電炉業界の望ましい姿ですね、あるべき姿というふうなものはどのようにお考えになっていらっしゃるんでしょうか、その点をお伺いさせていただきます。
  134. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) これは私の個人の考えになりますので、電炉業界の集約した意見じゃございませんけれども、いま電炉業界というものは、市中の発生くずを電気炉で溶かすことによって、さらにそれを国民の経済上必要なる建設資材にするという産業である以上は、国内でスクラップが発生する以上、絶対不可欠な業種です、この電炉業界というものは。したがって、発生するスクラップが溶けて資材として、建設資材になる程度設備能力であるならば、これは不況産業になるべきはずがない、理論的には。論理的には私はそうだと思います。それが非常に過当競争の姿で、設備過剰になってこの姿になったということですから、いま少なくとも関東地区では幾らスクラップが発生するのか、関西地区で幾らスクラップ発生するか、それから地区別に発生するスクラップの量とそこに要する建設用の丸棒とかそういう資材の需要量と見合った、ミートするような設備にしておくことが、一番で望ましい姿だと私は思います。抽象的ですけれども私そう思います。
  135. 安武洋子

    ○安武洋子君 ありがとうございました。  では、中里参考人にお伺いをさせていただきます。  先ほどからいろいろと貴重な御意見を拝聴しているわけですけれども、私本法がもし成立するようなことがございますと、やはりこれは人員整理、中小企業の犠牲で設備の処理が行われることだというふうに思うわけなんです。労働組合の意見をどう反映していくか、果たして本法案雇用の安定が図られるというふうになるのかということでは、私も参考人先ほどからお述べになっている点、同じような危惧を持っているわけで、先日も私はこの問題につきまして本委員会で質問をいたしました。安定基本計画に定められております雇用の安定の措置というのは、この質疑を通じましてもはっきりいたしましたけれども、単なる一般的な事項が考えられているだけだということが判明したわけなんです。これまでも倒産などで大量の首切りが行われてきておりますけれども、こういう離職者が一体いまはどういうふうな状況になっているのか、調査をされたことかおありでございましょうか。おありでしたらお聞かせいただきたいと思います。
  136. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) これは私たちの周辺の仲間が、企業倒産あるいは減量経営によって人員削減に、希望退職に応じて職場を去っていったその先の、あるいはいまもって就職がされてない。つい二日前も私たちの組織である千葉にある東京機械という、これ指名解雇三十名でいま争っているんですけれどもね、これは約三百名の事業場が百五十名ほどもう整理されているのですよ。さらにその上に立って三十名は指名解雇というあれやられておるんですね。ところが、いままでやめた人が職業安定所に行ってみますると何と十分の一ですよ、いま雇用は。非常に雇用条件というのは悪化の一途です、これは。したがって、たとえば希望退職やむなしと、こういうことになったとしても、その雇用の先はきわめて不安定だし狭められているし、そしてやっと就職した場合には若い者は大体第三次産業ですねこれは、第三次産業です。ですから、いままでの製造産業からまるっきり変わった産業に方向性を求めている。高年者の方はこれまたたとえばビルの夜警とかそうした方向に行かれている。ですから賃金などもいままでの取っていた、生活をしていた賃金の極端なところでは半分ならまだいい方です、三分の一ぐらいに減少した中で働いている、働かざるを得ない。  ですから、ただ単に雇用が不安であると同時に、やっと就職を求めたとしても、その就職の先の賃金条件というのはいままでいたところよりも半分なり三分の二くらいだったらまだいい方です。極端なところでは三分の一ぐらい、それでもやっと就職にありつける、こういうような雇用環境にありますので、大変厳しいということを申し上げておきたいと思います。
  137. 安武洋子

    ○安武洋子君 先ほどからの御意見を拝聴いたしておりまして、私も参考人か御指摘なさるとおりに、労働者への、中小企業影響というのは大変大きいというふうなことで心配をいたしております。それで当面雇用確保するというために、どういう御意見をお持ちでございましょうか、その点を一点お伺いいたしとうございます。  それからまた、本法が施行されますと一層事態が深刻になると。倒産合理化反対闘争を進めておられます全金の組合といたしまして、本法でいう雇用の安定のための措置というのは具体的にどういう事項が盛り込まれるなら、雇用の安定が図られるものとお考えになっていらっしゃいますでしょうか。この二つの点をお伺いできますでしょうか。
  138. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) 大変これはむずかしい問題ですけれども、まず第一点の問題として、私はやっぱり雇用確保はたとえば職業訓練をどうするかとか、事業転換どうスムーズに行うかとか、それあると思います。しかし、先ほどもちょっと触れましたけれども、やはり労働者は、特に製造労働者はその職種によっては五年十年と経験を積んだ上で熟練に達して、やっと一人前になるというのが多いんです、これは。それがやっぱり変わるわけですから、ですからこのことが、たとえばいままで溶接作業をやっていたあるいは旋盤をやっていた、あるいはまた技術者であれば設計をやっていた、そうした者がいきなり、たとえばその地域の中で一つ雇用対策のために、地域事業のために学校の建設をやるとか病院の建設をやるとか下水道の工事をやるとか、そういうような救済対策は大変必要だろうと思うのです。しかし、だからといって直ちに日本酒に転換ができるのかというと、これはきわめて困難な面があるんです。  しかし、それをあえて生活を守るためには、それはやる人もいます、やる人もいますけれども、私は職業訓練というのが何よりも優先しなくちゃなりませんけれどもしかし地域社会でもって、室蘭の市長さんおいでになっておりますけれども、その地域社会の中でどういうふうにその職業といいますか、それをどういうように生かしながら、ないしはそれをもし百八十度転換するにしても、どういうふうに、徐々に方向転換ができる、なじむようなそういう就業の対策といいますか、就労対策といいますか、そうしたものがやっぱり必要なんではないか、それがないでただ単にこういう事業があるからこれを公共事業ここへやるから、ここへここの首切られた、ないしは倒産した労働者こっちへ来なさいよといっても果たしてスムーズにいくものかどうなのか、きわめてこれはむずかしい問題だろう。したがってそういう問題については、ひとつ地域全体の問題としてどういうふうに労働動態、動向を変えることができるのか、そんなことを、これはひとつ行政面の指導策としてお考えいただければ大変幸いだなと、こんなにも思うんです。  それから二つ目の問題は、どういうことが欲しいかということですね、雇用確保のためには。何といってもこれは端的に言って雇用の不安というのはぼくは話は早いと思うんですよ、そうむずかしくないと思っているんです。ということは、仕事をやはり出してもらうということです、これは。職場に仕事をやはり確保してもらうということ、そのためのやっぱりいろいろと公共関連事業が今度の予算の中では大変ふくらんでいるようでありますけれどもしかし本当にこれは生活密着型の公共関連事業になるんだろうかどうなのか。そうしたことからすると、若干私はやっぱり大衆性を失っているような面があるんではないか。したがってそういう面からするなら、雇用をどう確保する、その処置は何かって言ったら、ぼくはやっぱり端的に言ってむずかしいことではない。そこの職場に、その労働者仕事を与えてほしい。そのことによって雇用問題というのは解消するであろう。こんなように思います。
  139. 安武洋子

    ○安武洋子君 ありがとうございます。  続いて西松参考人にお伺いいたしとうございます。  私の住んでおります神戸市でも、ケミカルシューズ産業が大変盛んでございまして、昭和三十六年ごろからポリエステルやポリウレタンなどの樹脂−の開発、合成ゴムの使用で生産も大きく飛躍をいたしまして、輸出が四五%、こういうようなのを占めたときもございました。しかしドルショック、オイルショック、それから円高と、まあアメリカのそれから雑貨輸入制限などによりまして、輸出が激減いたしまして、大変大きな打撃を受けたわけなんです。  で、現在は内需に転換をいたしまして、知識集約化というふうなことで婦人ぐつを中心に活路を開いておりますけれども、皆さん方のところは運動ぐつを中心に台湾とか韓国とか、こういうところからの輸入によって大きな影響をこうむっていらっしゃるというふうに伺ったわけですけれども、この原因の一つ日本企業が海外にダミー会社をつくって逆輸入してくることではなかろうかというふうに思うわけです。それからもう一つ、台湾や韓国がアメリカの輸入制限のために新たに日本の市場をねらって行政的にもバックアップを受けて、日本向けの輸出を増大させていると、こういうことが大きな原因になっているのではないかというふうに思うわけでございますけれども、いかがお考えでございましょうか、お伺いできますでしょうか。
  140. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) いま御指摘のございました、第一点のいわゆる台湾、韓国に子会社もしくは合弁会社をつくって、そこから品物を入れることによって利益を確保したいという考え方は、おっしゃるとおりだったと思うんです。当初は海外進出をして安くつくったものを、アメリカへ向けたり、ヨーロッパへ向けたりということを言っておったわけです。しかし実態は必ずしもそうならなくて、むしろ日本に持ってくると。最近は韓国との関係はこちらが主導権が持てなくて、技術指導であるとか資本進出はしましても向こう側が経営権持っていると、このような形の合弁会社が多いんで、こちらはもうむしろ技術とお金だけ出して、向こうからどんどんと押し込まれているというふうな面も出てきています。そういう面でいきますと、私はやっぱり経営側が戦略的に考えたことで自分の首を締めている面は多分にあると思います。しかし、そのことによってわれわれ労働者にも大きく影響が出てきているところが、やっぱりひとつ問題ではないかというふうに考えております。  その面でいきますと、技術水準の上がった国外の商品が日本に入ってくることが国民生活にとってはプラスじゃないかと、安い物が入ったからですね。こういう御指摘の向きもあるんですけれども、その面で一番初めに私が申し上げたように労働組合の立場で言いますと、自分の雇用を守るという立場から、徐々に一定量までふえる分はいたし方ない。その間に転換しようということと、もう一つは何遍も言いますけれども、それでは日本の国内においてゴム履物一切なくなっていいのかどうかと。このことをやっぱりはっきりさしてもらいたいという二点。  それから、もう一つ御質問のございましたアメリカのいわゆるゴム履物、非ゴム履物という表現なんですが、実際はゴム履物なんです。ゴム履物の輸入制限によって日本に大幅にアメリカ向けのが入ってくるんじゃないかということなんですが、われわれも大変心配をいたしました。しかしながら、最近は韓国が大量生産方式をやっております関係で、すぐに日本向けに切りかえられないということで、いまのところまだ影響がないんですが、おいおいに影響が出てくるんじゃないかと心配をいたしております。
  141. 安武洋子

    ○安武洋子君 大変長時間でお疲れのことと思いますので、質問をかためてさせていただきますのでよろしくお願いいたします。  台湾とか韓国の日本向けの輸出政策をどのようにお考えになっていらっしゃるのかということをお伺いいたしたいわけなんですけれども、これに対する日本政府の対応策でございますね、政府間の話し合いということがお話の中にも出ておりましたけれども政府の対策と、それ以外にどのようなことを御要望なさるかということをお伺いいたしとうございます。  それから、お話の中に再三出ておりましたように、雇用問題は、これは大変でございます。この法案によって人減らし、合理化が進むということが予想されるわけなんですけれども労働組合の意見を聞くということが単なる形式とならないようにするために、一体どのようなことをやればいいというふうにお考えでございましょうか。こういう点と、それからいまお話の中に出ておりましたように、ゴム産業の振興をやはりやっていかないといけないと思うわけなんですけれども、ゴム産業の振興について、国にどういうことを望まれるでございましょうか。そういう点をお伺いさせていただきとうございます。
  142. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) まず第一点の台湾、韓国の輸出政策なんですが、これは台湾と韓国は大分状況が違うようにわれわれ感じておるわけなんですが、台湾は労働者労働意欲の面、労働事情の面も多少違うようでありまして、もちろん低賃金で、日本にも大分入ってきておりますけれども日本に入ってきている約六十何%は韓国物なんです。二五%ぐらいが台湾、そういうことなんで、実際に一番脅威になっているのは韓国。韓国は先ほども申し上げたように国の政策として輸出振興なんで、それで第一のいま目標はアメリカですけれども日本にも相当数入れていると。韓国の労働組合とコンタクトして話し合いをしましても、日本実情もわかるけれどもというふうなことなんです。これからアメリカとか日本向けだけではなく、もっと仕向け地を広くしなきゃならぬということも言っていますけれども、やはり日本側の対応がいまのままであれば、私は韓国物といいますか、いわゆる発展途上国からの輸入はふえ続けるんじゃなかろうか。こういうふうに思っています。  それからもう一つは、この法案ができた場合、首切り法案になる可能性について、労働組合が話し合いに入ったからそれでいいというふうなことだけでいいのかどうか。こういうふうに言われたわけなんですが、私どもはまず確かにこのことによって、特にゴム履物の場合は設備廃棄というよりは人の廃棄の方が大きいわけなんで、この安定法に乗ることは即首切りを認めることになるんじゃないか、こういう心配もなくはないんですが、だからといってこのままでほうっておいてもこれまた首切りが起こる可能性がある、こういうことになりますんで、私どもとしては、まずこれに乗れるような条件になりましたら、安定計画の作成の段階で、実際問題これからゴム履物産業としてどうするかというこのところで、やはり徹底して一遍議論をさせてもらう必要があるんじゃないか。だから労働組合サイドがそのところで発言ができるようにしておいていただかないと、本当を言うとこれは何にもならない、単に労働組合には話があったということだけになるんじゃないか、こう考えまして一番初めに申し上げたわけです。  それからゴム履物産業として国へ何を求めるかということでは、私はやはり発展途上国との水平分業のことも全然無視をするわけにいきませんから、やっぱり大衆製品についてはある程度輸入品で賄う、それから高級品については国内生産でやる、このことをやっぱり国の政策としてという——これは国の政策だけではなしに業界の自助努力も大変必要なんですけれども、そういうふうなことをやっていかないといけないのじゃないか。もう高級品といいましても、御存じのようにこのごろは布ぐつでも一足六千円も七千円もするくつがあるわけなんです。そういうくつが現在外国から輸入をされているわけです。もちろん国内で外国商標のをつくって売っている分もございますけれども、そういうふうなことを考えますと、まだやり方によってはある程度はいける、したがって従来日本の国内でやっておった布ぐつの少品種大量生産ではなしに、多品種少量生産の方へ切りかえていけば、まだあるいは活路があるんじゃないか、いわゆる高級品化であるんじゃないか。したがって、そうなりますと多品種少量生産というのは現在のような大量生産方式にそぐわないわけですから、人の問題が当然出てまいりますから、そういうことから考えても、われわれがいま盛んに申し上げているように一定の期間に徐々にそういうふうに転換できるように、これは国の政策としてやっていただきたいというふうに思っておるわけです。  で、最後にこの機会に申し上げておきたいんですが、小柳さんから御指摘がありました今回のいろいろなことと月星化成の合理化問題とは直接関係ございませんけれども、申し上げたように相当大きな影響力のある合理化問題なんで、これは安定法とは直接関係なくても、いろいろな面で国の指導なり援助がいただければありがたいと、このように考えております。
  143. 安武洋子

    ○安武洋子君 これで終わらせていただきます。どうもいろいろとありがとうございました。
  144. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 きょうは各参考人の方お忙しい中を大変ありがとうございました。お疲れでございましょうし、時間もずいぶん経過しておりますので、各委員から出た質問と重複するところは一切避けて、短時間で西松参考人だけにひとつしぼって私御質問いたしたいと思います。  ゴム業界に例のタイヤと工業用品といましきりに述べておられるゴム履物と三つあるわけですが、タイヤはともかくとして、工業用品がいまどういうことになっておるのかちょっとお知らせいただきたい。
  145. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) 意見冒頭にちょっと触れましたけれども、工業用品の中もたくさんありますから、その中で問題点だけ申し上げますと、一番問題になると思われますのはコンベヤーベルトなんです。コンベヤーベルトといいますのは、従来はソ連向けとかアメリカ向けで相当量輸出がございました。それともう一つは、これはそれ以前は、石炭事業が盛んなときには石炭向け、それから高炉の増設が盛んなときには高炉向けに広幅物のコンベヤーベルトがどんどん出たわけでありますけれども、それが最近のように高炉は三分の一とまっている、それから輸出は特殊物を除いては各国で自家生産ができるような段階がきておりますので、そのために最盛期に比べると現在はまず半分の生産になっている、そういうふうなことがございます。  ただ、それでは企業別に問題がなぜ出ないかということなんですが、幸いなことにコンベヤーベルトの専業メーカーというのでなくて、Vベルトであるとか特殊ホースであるとか、あるところはタイヤと一緒にやっているとかいうことがございますので、まだ特に人員問題にかかわるようなところまでいっておりませんけれども、コンベヤーベルトだけ見ると、私はこれはもう合理化カルテル、生産カルテルでもやらなきゃいかぬのじゃないかというふうな気がしているのが一つ。  もう一つは自転車タイヤなんです。自転車タイヤというのは、これも一ころサイクリングブームで大変伸びたことがございますし、これも輸出か大変ありまして一ころは花形だったわけでございますが、輸出が、これも韓国物とか東南アジア特に置きかえられたこと、それから自転車がやっぱり普及されてしまって、御存じのように自転車タイヤというのはこのごろ強くなりまして、自転車一台タイヤ一代のような感じですから更新をするというのはほとんどないと、こういうことから自転車タイヤは大幅に数量が減りまして、現在のところ一ころのこれもやっぱり半分から四割ぐらいに落ち込んでいるんじゃないかと。したがって、そういうことに関係しているところでは、配置転換だけではなく合理化が起きております。ただ、ここも幸いなことに専業メーカーというのが大変少のうございまして、そのことによって企業が倒れたとかどうこうというふうな問題になりにくいために、まとまってゴム履物のように問題になって表面化しない。  それからもう一つは、工業用品の中で問題になっておりますのはライニング、これも設備投資関連でございまして、化学とか製鉄関係のいわゆる液をためるタンクにゴムの被覆をするわけです。この業界も現在のところ公害問題、公害機器が一わたりしたとか、設備投資が落ち込んでいるということからいろいろ問題が出てきております。ただ、このところも生産を大幅に落としているという状況で、まだ雇用問題までは至っていない、このような状況でございます。
  146. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 わかりました。  ゴム履物の場合、たしか神戸大学の教授の試算による競争力調査というのが行われたと思うんだけれど、たとえば不況の代名詞のようにいわれる繊維の中でもスポーツウエアは不況知らずですよ。だからそういう点考えると、それに付随するゴム履物がかなり需要が伸びておると思うんですが、この需給見通しですね、国内における。輸出は別ですよ、それはどういう姿を描いておるのか、あるいは見通しを持っておるか、どうでしょう。
  147. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) 細かい数字で申し上げることはちょっと本日持ち合わせございませんけれども、ゴム履物の全体の需要はやはりどう言うんですか、下降というよりは横ばいもしくは人口のふえた分ずつぐらいふえる可能性のある産業だと思っているんです。ただ、いわゆる輸入品との競合による価格の問題と、それからもう一つは、カジュアルシューズであるとかスポーツシューズというのは多分に好みの関係がございますので、先ほどもちょっと御質問のあったときに申し上げたように、一足が六千円も八千円もするようなくつが売れるかわりに、国内のつくっている二、三千円のくつか売れない——売れないというよりは在庫が多いとかいうふうな問題が起きたりしますので一概に何とも言えませんが、その面からいうと構造不況業種なんですが、履物全体の数量で見たらこれは将来とも落ち込むというふうなことではないと思います。
  148. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは繊維産業の場合も、不況というものの、実質経済成長率ぐらいの対前年伸び率を持っておるわけですから、これは十年ほどまだ続くと思う。だから、ゴム履物業界もいまおっしゃるように需要は伸びていく。その伸び方が急ピッチではなくても対前年比必ず伸びていくのだと、しかもこれは耐用年数の短い消耗品ですからね。だから私は、その面で、現在非常に困っておられるけれども、処方せんをうまく書けば生きていく産業でなければならないというふうに思っておるのです。  私は業界の皆さんやあなたの組合の皆さんともたびたび懇談の機会を得て、いささか内容も知っておるつもりなんだけれども、いまのような状況で、当初経営側が三角貿易みたいな形で、設備を韓国へ持っていってそいつをアメリカへ持っていこうとしたのだけれども、逃げ場がなくなってこれを自分で引き取っているというのが現在の状況でございますが、これは産業の中でも特異なケースでして、内需に占める三七%ほどの輸入のうちの六〇%を商社でなくてメーカー、おのれが買って、そしてそれを国内価格に引き上げて売っておるわけで、利益を上げておるわけですわね。だから、月星に見られるように、国内生産で自分が手を染めるよりも、きわめて安易な委託加工的な輸入をして、円高も加えてこれを高くして売りさばけば利益が上がるわけですから、ああいうふうに傾斜していく。非常に危険なやり方だと私は思うのです。そういう面では、私はお上手言うわけじゃないけれども、皆さん、あなたが言われるように、この際輸入を完全にシャットアウトさせるということじゃなく、少なくともわが国のシェアの五〇%体制をわが国でしくべきだ、そういう産業体制に位置づけろ、したがっていまのテンポでいくと三年も待たずして五〇%を凌駕するから、この間秩序ある輸入で漸増方式をとってくれ、これは非常に私説得力あると思うのですよ。  ただ問題は、輸入品の六割を占める経営サイドがどういう姿勢を持つかということです。ジョイントでやっておるのですからね、韓国に。自分の分工場ですよ。それで、自分のところを減らして輸入をすれば輸入するほど得するのだということなのだから、これはちょっと他の産業とは違う。だから、経営サイドが本気になってやる気があるのかどうか。労働組合がやる気があると言ったってどうしようもないのですから。そういう面で、政労使三者によって、わが国におけるいわゆるゴム履物産業というものを、産業体制の中でどれほどに位置づけるか、こいつをきちっとしたら私は問題は解決する。その席にやはり業界の皆さんに座ってもらうということが必要だと思う。そういう面で私通産大臣にも、その点は非常に、これはむちゃ言っておるのじゃない、きわめて説得力のあることだから通産大臣よく考えなければいかぬということも、私皆さんあえて労使一緒にして陳情した経緯もあるわけなんです。  その後全然私話聞いてないので、経営側がそういう気になっておるのかどうか。そうじゃなくて、たとえば月星のような形がどんどん出ていくとしたら、日本のゴム履物業界それはもう安楽死だ、もう三年たったらギブアップだということに私はなると思うのですよ。この辺組合としてどのように把握しておるか、またそれをどうアプローチしておるか。問題はそこしかないと私は思うので、その辺ちょっと聞かしてもらいたい。
  149. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) こういう話はどうか知りませんが、何はともあれ業界内では大激論があったことは事実です。しかし、激論をやった結果、やっぱりこれはいま通産省にお願いしている方向になるべきであるというのが大勢を占めたというふうに聞いておるわけです。ただ、それでいきますと、先ほども申し上げたように、何といっても労働組合の方が結束が先ですから、経営の方が様子を見ながらついてきている面がありますから、われわれとしては引き続き経営側にどういう姿で——われわれか言っているような姿以外にないと思いますけれども経営側の生き残る姿は何かということも聞きながらやっていく必要があるのじゃないか、こういうふうに思っています。だから、その面で言うと、月星が今回提案したやり方というのが本当は資本の本心かもわからぬけれども、それをやればそれこそ崩壊を早くするだけじゃないかということは、もう月星の経営者に対してもこの間抗議に行ってきたところなんです。そういうふうなことなんです。  だからそれは、資本家だれしも、自分のところでもうけができればと、それは業界のことも大切だろうけれども何とか自分だけはという気はあると思いますから、議論があるのは事実ですけれども、この間も協会の方から話があったんですが、協会のまとまりが悪いという印象が大変通産省に強いようだけれども、そういうことはない、いま一生懸命努力をしております、こういうことなんで、われわれもそれはある程度信じて努力をしたいと思います。
  150. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは大変重要なことで、国際分業ということは非常に美しいことではあるけれども、私は五〇%のシェアを自国で賄うということは国際的にも通用する。現にアメリカがそれをとっておるわけですからね。だから、いまのままでむしろ手をこまねいて、五十二年度が対前年比二七%の輸入増ということ、これはほとんど韓国と見ていいわけだけれども、その姿勢を明示しなかったら韓国はどんどん増産体制をとってくる。ある日突然五〇%以上の輸入物資で埋められて、それはもうだめだということになれば、韓国はその輸出先をスイッチすることはできませんからね、だから自国だけじゃなく韓国にも大変な迷惑を与えることになる。そういう意味で、私は早くこの問題をきちっと位置づけをしなければならないと思うのです。  それはそれとして当然やっていくべきだけれどもしかし一面また、このゴム履物産業のいわゆる零細過多性ですね、しか労働集約的産業であるという状況から見ると、本法に乗っかっていわゆる設備廃棄する業種とはいささか違うと私は思うんですよ。だから、本法に言うところの対象業種というのは直接的には手並びに中手企業を指しておるのであって、また、現にみずからの構造改善を促していこうとするなら、中小企業の場合には、業界のまとまりよろしきを得るなら、むしろ本法よりも中小企業振興事業団によって転廃業を促すための十六年無利子の融資を受ける方がずっと賢いわけです。これは通利でいくわけですから、いまのところ。いまの通産省の考え、通利ですからね。だからそれは、保証はしてくれても裏保証も要る、普通の市中銀行から金を借りるわけだから。これでは、とてもじゃない、中小零細企業はやれない。同時にまた、ゴム履物のマシンそれ自体がそう大きな金を動かすものでもなかろうとするなら、私はこの際、産地をたまたま形成しておるわけだから、しかも中小零細であるなら、これをグルーピングする、オーナー企業だから非常にむずかしいかわからぬけれども、ある程度のグルーピングを促すというような形で、むしろ中小企業の振興資金、これを活用していくという道を模索する方が賢いような気がするのだけれども、その辺グルーピングなどの動きかどうなのか。  同じような業態でたとえば繊維なんかの場合、産地をたまたま形成しておる、そういうところでは、小が全部集まってグルーピングして、ある程度の規模のメリットといいますか、規模の利益を得るようなことを過去にも構造改善でやっておる。そのためには政府系金融機関のきわめて有利な資金を手当てしておるわけですから、そういう辺も研究なさればと私は思うのだけれども、どうでしょう。
  151. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) もちろんいま先生のおっしゃられたようなこともいろいろと考えておるわけでありまして、中小企業設備近代化資金であるとか、中小企業事業転換臨時措置法にも幸いなことに入っておりますから、そういうのの利用といいますか、ということは当然考えさすべきだと思うのですが、ただ、ちょっと話触れましたように、構造不況業種であるというふうなことの、どういうんですか、はっきりとしたもの、これがいまのような形ではなかなかとれそうにないというふうな気もあるわけです。  だから、何度も言いますように、離職者臨時措置法にもまだ乗れないというふうな状況というのは、これはもちろん経営側のまとまりの悪さもございますけれども一つ構造不況というふうなことが政府段階の考え方の中に中小企業構造不況と言うんですか、構造問題、これに対するやっぱり配慮が十分でないんじゃないか、こんな気がして仕方がないわけです。したがって、たとえばこの特定不況産業臨時措置法では、どちらかと言えば設備廃棄とか買い上げというのが主でございますから、ゴム産業というのがこれはなじむかなじまぬかということになれば、われわれもまだもっと勉強しなきゃいかぬ分野であるかもわかりませんけれども、まず私どもが考えておりますのは、特定不況産業というふうな分野にぜひひとつ入れていってもらいたい、こういうところでございます。
  152. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 おたくでは細かい資料もたくさんつくって、中期的な、どちらかと言えば業界がつくるべきことかもわからぬのだけれどもわが国におけるゴム履物産業の将来展望なんかも政策としてつくっておられるわけだから、どうかがんばってもらいたいし、また資料などもできればいただきたいというふうに思います。  まだ時間ありますけれど、皆さんお疲れのようでございますので、以上で失礼いたします。  ありがとうございました。
  153. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 新自由クラブの柿沢でございます。  きょうは本当に御苦労さまでございます。いま藤井委員からもお話がありましたように、長いこと御説明をいただいておりますので、簡単に一点だけ御質問したいと思いますが、私もほかの委員会とかけ持ちで、もしかするとダブルかもしれませんが、お答えいただければ幸いだと思います。  市長さんには地方行政をあずかっておられて大変御苦心が多いと思います。先ほどおっしゃった地方分権、それから地方財源の充実、私も大蔵省におりましたけれども、余り中央集権はよくないというふうに思っておりまして、できるだけ地方財源の充実を図り、そして自主的に自治体の方々に活動いただくのがいいのではないかと思っておるわけでございます。その意味で構造不況業種を抱える市長さんとしての御苦心がおありだと思いますが、この法案で衆議院の修正がありまして、地方自治体  知事からでございますが、意見を申し出ることができるということになっておりますので、通産省の方からも実際の設備廃棄その他実施の段階以前でも、たとえば安定計画をつくる段階でも、意見があればどんどん承っていきますということでございますから、そういう点では地方の実情を十分御説明があっていかれるべきだと思いますが、その点について、この法案が成立した後、どういう形の希望をこの法律実施についてお述べになるのか、それをお伺いいたしたいと思います。
  154. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 法案は結構でございますので、その実効性のある、そして地域地域に沿った、そうして公平な施行がなされれば結構だと思いまして、その意味におきましては、私どもも加えていただいた審議をしていただくということで、とかく審議会というのはかくかくかく、先ほど労働代表の方も言われましたが、いわゆる自分たち意見が通らぬ、ある勢力の意見が通るというような審議会になりましてはまことに困りますので、われわれの意見も十分通さしていただきたい、また将来意見書のごときものもひとつ述べさしていただきまして、通産行政においてもめんどうを見ていただきたいと、原則的にはこの法案には賛成でございますので、そういう御配慮を賜りたいと、こう思っている次第でございます。
  155. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 信用基金には日本開発銀行以外のものも出資ができることになっておりますが、地方公共団体もてきるわけですね。−地方公共団体も当然できると思いますが、地方からいろいろな希望を出す場合には、ひとつ信用保障基金に地方団体からも出資をするというようなことも考えられると思うんですけれども、それは可能でございましょうか、室蘭の場合に。
  156. 長谷川正治

    参考人長谷川正治君) 可能でないですか、可能と考えております。
  157. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 そうですか。ありがとうございます。いまの御意見は大変貴重だと思います。たとえば構造不況業種を抱える地方公共団体が、その対策について若干でもみずからも出資をしていく、それに対して国の金をつけ、いろいろな金をつけて大きな金額にしていくということが可能であれば、大変地方の自治体の主体性というものも出てくるのではないかと思います。  それから、平電炉関係それから全金属、ゴム産業の御三方に同じ質問でございますが、お聞かせをいただきたいと思います。  先ほどからアウトサイダー規制の話が出ておりまして、私もその設備廃棄なり産業調整をしっかりやっていくためにはアウトサイダー規制があることが望ましい、理想的だと思うわけですけれどもしかし例の附帯決議の行政指導、強力な行政指導というのがついたからといってうまくいくかどうか、それからたとえこれを法文化したとしても、いまの自由経済体制というものの前提の中で、うまくいくかどうかという点について、いささか疑問を感じているものでございます。といいますのは、繊維の例を見ましても、設備の廃棄とそれからやみ織機の発生というものの繰り返しのようなことになっておりまして、そういう意味では法制化されていてもなかなかうまくいかない。その点で平電炉業界もしくはそれぞれの参考人の関連の業界で、もしもそうしたアウトサイダー規制を行政指導なり法制化したら、本当にうまくいくんだろうか。先ほど中里参考人からだったと思いますが、必ずしもうまくいかないんじゃないかという御意見があったように思うんですが、それぞれの業界でもしも安定計画をつくってアウトサイダーが出た場合に、強力な行政指導もしくは法制化、それで五年なら五年の間アウトサイダーなり新規業者を生まずにいくような業界の体質だろうか、その点御意見、御判断といいますか、お伺いできれば幸いだと思います。
  158. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 平電炉の方から申し上げます。  現在の安定法案について通産省の案は、初めから立法化されてアウトサイダー規制というものがあったわけですが、それがはずされて今度衆議院の決議事項としてなっておるわけでありまして、ないよりはわれわれはあった方がいいというふうに考えておるんで、少なくともアウトサイダー規制というものはないと、片方で三百三十万トン設備を廃却して、片方の方は新設設備自由だということになれば、われわれはもう廃却するのもやめるんだと言うてきておる人が現在おるんですから、もうこの法案それ自体は無意味になるということだけははっきりしておると私は思います。その意味においてアウトサイダー規制をしていただいたことはいいことだと思う。  ただ、そういうときにうまくいくのかということになると、私はそういうこととは全然別個に業界の方々に、こういう法律ができたからといってうまくいくと思うのは非常な間違いであると、いずれにしても自分のことだから自分でやらなければいけないんですよと、そうしなければだめになるんだと、要するに業界みずからやることができなかったから政府の力によって、君たちは今度低成長時代でも安定していけるような仕組みを考えてやろうと言っているんだから、それは自分みずからやる意思がなければ、何をやったってだめなんですよということを言ってあります。  そういう意味において、いま申し上げましたように業界みずからの仕事を言えば、この安定法案ができても、たとえば業界の再編成の問題であるとか、先ほど申し上げましたように地域的に発生するスクラップというものを中心にした電炉なんだから、それに見合うような設備がその地区地区になければならないとか、価格体系については北海道と九州は別だけれども、その他は同一でなければならぬとか、いろいろな問題が私は絡むと思います。それは何も官庁の命令によってやるんじゃなくて業界みずからやるべきことでありまして、これはあっても、それを有効にやるということは、業界みずからの自覚によるものだと私は思っております。
  159. 中里忠仁

    参考人(中里忠仁君) 私は、先ほど申しましたように必要悪だろうと思うんですよ。いままでの各種の立法されている不況対策の内容で十分だろうと思うんですよ。これは政令で決めるんでしょう、業種を。そこにぼくは問題があるだろうと思うんですよ。そして、特にこれは求めているのは、鉄鋼なり造船なりあるいはまたそれにまつわる大企業がきわめて求めているっていうところに、問題がぼくはあると思うんですよ。ということは、やはり国の金でもって何とか処分したいということのメリットであるわけでしょう、これは。問題は、そこからくる企業の内容の体質をどう改善するかとか、あるいはまたそれをどういうふうに方向を求めるかというのは、ぼくはそこの事業所の労使でもってとことん協議して、話し合ってその方向性を求めれば事足りるだろうと思うんですよ、問題は。  問題は、われわれが心配するのは、そういう大資本なり大企業にまず第一番目に目を向けながら、企業サイドの法律でもって、特に私が先ほど申しましたような、幾つかの諸点をたとえば入れてもらったとしても、現実の問題としてこれから起こる問題というのは、特に中小零細企業労働者としてこれはある。どうしても欠かせない条件といたしましては。したがいまして、これはいままでのいろんな各種の不況対策による、あるいはまた中小企業を守る、あるいはまたその他のそういう雇用を守るという政策の中での立法処置がとられておるわけですから、あえて政令でもってこの業種を決めて、そして廃棄処分にしたり、あるいは格納してみたり、あるいは封印をしてみたり、そういうことは必要ないだろうと、こういうふうに思います。
  160. 西松義夫

    参考人(西松義夫君) まあ私は、この安定基本計画というのができるわけですから、まずこの不況業種安定臨時措置法の適用を受けようというふうに、業界のいわゆる大多数ですね、三分の二ですか、というのがもし同意をしてやるとするなら、私はやっぱりアウトサイダーはある程度規制する必要があるんじゃないかと、そうでないと、まあこれをつくるメリットというものが大幅に薄れるような気がするんです。ゴムの場合を考えてみますと、大手四社で七五%のシェアである。だから、数でいくのかシェアでいくのか、私そこまでちょっと聞いておりませんけれども、これはやっぱり業界安定、それからそのことによって雇用が安定するかどうかというのは、これはちょっと話が必ずしもかみ合わないかもわかりませんが、ということになりますと、この法律の施行の考え方からいけば、やっぱりある程度規制をした方がいいんじゃないかと思います。
  161. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 もう少しお聞きしたいこともありますけれども、これで終わりにしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  162. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑は終了いたしました。  一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙中のところ長時間にわたり御出席をいただき、また貴重な御意見を拝聴させていただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日午後の理事会で、商工委員会、社会労働委員会、農林水産委員会、運輸委員会連合審査会を明二十八日午後一時から開会することに協議決定いたしましたので、御報告いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十三分散会