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参考人(
佐野明君) 全国一般の
佐野でございます。
本日は、合板業界の
労働者を組織する立場から、この
法案の問題について御
意見を申し上げたいと思います。
合板業界は、五十年の一月以降今日まで、
不況カルテル——操短を続けてきておりまして、大変厳しい状況に置かれております。
しかし、この
不況カルテルにより操短を続けておりますが、一向にその効果が出ていないというのが現状でございます。
その原因は
不況カルテルによりまして一定期間工場は操短をするわけでございますが、
実情は操短以外の日はしり抜け増産いたしまして、結果的にはむしろ局面的には生産が
増大する。操短
不況カルテルの割合に生産はやっぱり
維持されている。
増大する、そういう状況すら実は続いているわけであります。
一方、五十年以降の業界の中では、
倒産、閉鎖、休業は六十五の工場に達しております。中にもちろん再建したところもございますが、約十工場再建しておりますが、六十五工場が
倒産、閉鎖、休業。合板業界の特徴は、
倒産が比較的少なくて、閉鎖、休業が多いわけであります。そういう状況の中で、人員の問題を見ますと、
昭和四十八年を
ピークといたしまして今日まで約三三%、一万七千人の
労働者が減少しておりまして、現在約三万五千名でございます。
先ほど申したとおり、実は
不況カルテル、操短にもかかわらず、生産が落ちないというのは一体どういうことか。一方では人が大きく減っているわけであります。人が減って実は
不況カルテルをして、生産が落ちないというのは実は残業が非常にふえている。いわゆる
不況カルテルの裏をくぐりまして、やみ生産、増産、それはやっぱり残業が非常にふえていることと、
労働時間の延長が非常に広がっておりまして、そういう意味では
先ほど申したとおり
不況カルテル全く効果がないわけです。このことは、実は
設備廃棄をいたしましても、残りました
企業なり工場が際限のない
企業競争だとか、あるいは生産
増大を続けている限りにおきましては、業界の安定どころか、私
たちの立場から言うならば
労働者の犠牲だけが残るおそれがあると言わざるを得ないのであります。そういう意味からいきますと、むしろ週休二日制の
実施だとか夜勤
労働の廃止だとか、あるいは残業の規制など、そういう方法によって安定を図るべきではないかというふうに思います。現に業界の中におきましても、私
たち労働組合と同じような立場ではありませんが、そういう方法も賛成だ、これは中部の合板工業組合の一部ではそういう
経営者の皆さんからの考え方も実は出ている。
最近のそうした目に余る状況に対しまして、私
たち総評全国一般のみならず、同盟の一般同盟、あるいは全化同盟などの同じ合板を組織されている
労働団体とも御相談申し上げまして、
日本合板工業組合連合会に時間の短縮だとか、あるいは残業の規制だとか、あるいは休日の増加とか定年制の延長、こういう申し出をいたすと同時に、
設備廃棄につきましてもいま申し上げた
労働団体が
事前協議について十分尽くすことを、工業連合組合に実は申し入れをしたところでございます。
私
たちはそういう意味におきまして、業界のいまの状況というものは
設備過剰というよりも、そうした生産のあり方に問題がありはしないか。あるいは低賃金によるダンピング、野放しによる輸入問題に対しても、十分考えていただく必要があるんじゃないかというふうに思っているところでございます。
また合板業界におきましては、流れ作業でございまして、原木から製品に至るまで一貫した
設備によって実は生産をされるわけでございます。そういう性格上、部分的な
設備の廃棄というものは事実上できない。そういう実は合板業界の性格といいますか、を持っているわけであります。そういう点におきまして、
設備廃棄というものを合板業界に当てはめて考えてみますと、こういう問題が実は出ております。
一つは林野庁の計画では、三ヵ
年間におきまして一一%、三十六ラインの廃棄ということを実は方針として出しておりますが、一ライン当たり
従業員数は百二十名相当でありまして、三十六ラインになりますと四千二百人の
従業員が失業するということに実はなるわけであります。とりわけ百人前後の中小の合板工場におきましては、いま申し上げたように、ラインが一ライン
しかないのでありますから、したがって
設備廃棄——
設備廃棄の単位はラインでありますから、中小合板工場の場合には、
設備廃棄イコール工場閉鎖、全員解雇ということにつながるわけでございます。中小合板工場は、そういう意味におきますと、大工場と違いまして、他の会社、工場に出向するとか配転するとかいう方法による
雇用確保は全く不可能であります。したがいまして、中小合板工場における
設備廃棄というものは、工場閉鎖、全員解雇という、文字どおり全体の失業という深刻な
事態を実は迎えるわけであります。
とりわけ、この合板
労働者というのは御承知かと思いますが、
仕事の内容はきわめて単純
労働、
労働集約的な
産業でありまして、中でも
労働力構成が中高年
労働者が非常に多いわけです。したがいまして、この合板工場の技術を生かすような
産業等はほかにございませんので、事実上再就職はきわめて困難な状況であります。
離職者法という
法律が昨年制定されましたが、そういう意味からいきますと、せっかくできた
法律でありますが、合板の中小
労働者から見ると、余り
メリットといいますか、というものは感ぜられない。たとえば職業訓練
一つとりましても、中小の合板工場にはそんな暇も実はないわけであります。余裕も実はないという状況でございます。
もう
一つ合板の立場でこの
法案の中で問題だと思われている点を申し上げますと、使用者の人方が、いわゆる事業主が、極端な言い方でございますが、お金欲しさのためにこの
法案が利用され、
設備廃棄をされ、
労働者だけ犠牲になるということがないよう、ひとつ十分処置を
お願いしたいというふうに思います。ということは、
希望退職を募りまして、事実上もう全員やめていただく。そうすると工場
設備だけ実は残ってしまう。工場
設備だけ残しておいて、後でまあたとえば買い上げなら買い上げ、あるいは
設備廃棄をするということが実はできないわけじゃないのであります。多少そういう動きもないわけではございませんので、そうなりますと、まあ何といいますか、この
法案で指摘されているところの
雇用の安定ということについては、実態は非常にほど遠いことになりはしないかというおそれを実は感ずるわけでございます。
また業界の体質と申しましょうか、いわゆるこれらの問題が密室の中で担保権者、これは特に合板の場合は商社、銀行が多いわけではございますが、関係者が談合されまして
事態が一方的に進められてしまうという危険性を非常に危惧するわけです。ということは、
日本合板工業組合連合会と私
どもの間で何回か交渉を持ちましたが、明確な回答といいますか、話し合いがなかなかできない、話し合いと申し上げても全く実は形式に終わっているという状況がございます。そういう意味合いにおきましては雇対法の
運用などについてはもっと厳しく
運用などを
お願いしないと、
労働者だけの犠牲になってしまうということを多分に実は恐れる次第でございます。
次の問題は、
政府の諸
政策とのかかわり合いの問題でございますが、合板業界は御承知のとおり、住宅
産業あるいは住宅
関連産業と深いかかわりを実は持っておるわけでございます。合板の用途の六〇%は住宅建設に充てられているというふうに言われております。そういう業界の特殊事情から申し上げますと、
政府の住宅
政策の立ちおくれの結果、住宅
政策が目標どおり進んでいない、たとえば五ヵ年計画でいきますと、八百六十万戸が目標でございますが、五十一年度は百五十二万戸五十二年度が百五十一万戸という状況で、いわゆる住宅建設が目標どおり進んでいない、またもっと言うならば、国民が一番求めているところの住宅に対しまして積極的な
政策を進めていただくならば、この需給ギャップというものを大幅に
改善されたでありましょうし、今後も
改善されるんではないかというふうに思うんであります。そういう意味からいきますと、
設備廃棄だけが合板業界の場合には業界の安定ということにはならないんではないだろうか、業界の安定とは
政府の住宅
政策いかんに実はかかっているということを強く指摘をしておきたいと思うのであります。もちろん事業者の方自身が相当の努力をされることを私
たちは
期待いたしますが、それを効果的なものにするためには、
政府の
政策が決定的だということを申し上げたいんであります。
次の問題でありますが、合板の場合には監督官庁は林野庁でございますが、林野庁は去る五十年の八月木材
産業基本問題調査会を発足させまして、五十二年の六月、調査会としての提言をまとめました。その中で
設備の廃棄や凍結の問題も実は指摘をしてございますが、それと関連いたしまして、
労働者の
雇用問題についても実は触れておるわけであります。その
一つを御紹介申し上げますと、特に休止工場などの
従業員の
雇用の
確保が不可欠であるということを指摘しておりますし、また
雇用の
確保について適切な対応をとることが必要であるということを
政府に求めるということを実はこの木材
産業基本問題調査会の構成員全員が一致して決定をしておるということでございます。
ところが、この
法案はそういう点から見ますと、
雇用問題については考慮とか努力というきわめて精神的な表現にとどまっておりまして、
設備廃棄によって生ずる
労働者の深刻な人員整理の問題を避けていると言わざるを得ないというふうに思うんであります。端的に言いますと具体性がないんではないんでしょうか。
設備廃棄をして
労働者の
雇用を
確保する、安定する、そういうことがうまくできるかどうか実は疑問を持たざるを得ないんであります。
そこで、せめて
お願いしておきたいことでございますが、第一点は、
労働組合との
事前協議をひとつ明確にしていただきたいんであります。
お願いを
一ついたしたいと思います。単なる形式的な、
先ほど御紹介いたしましたが、形式的な話でなしに、もっと内容のある実質的なやっぱり話し合いができるような
事前協議ということを強く
お願いしておきたいと思うんであります。
〔
理事福岡日出麿君退席、
委員長着席〕
二番目に、各種
審議会、関連する
審議会の問題でありますが、
審議会への
労働代表の参加を
お願いすると同時に、やっぱり
審議会の構成にふさわしい一定数の
労働者側代表の参加ということも御
検討願いたいと思うのであります。
三点目は、新設、増設の規制の問題でございます。
四点目には、
先ほど申し上げましたが、合板工場の場合、仮に
設備廃棄ということになりますと、中小の場合にはその工場もろとも閉鎖、全員を整理するという状況に実はつながるわけでございます。とりわけ合板工場の中では身体障害者な
ども若干でございますが、いるわけでございます。そういうような身体障害者などの失業なんかの場合は、他の一般
労働者に比べて大変深刻でございますから、このような
法律が
政府の責任において施行されるとするならば、
政府なり業者の共同の責任において、それらの人方の
雇用確保というものをやっぱり明確にしていただくということが必要ではないかと思うのであります。
もう
一つの問題は、これらの問題と関連しまして、それらの
労働組合のところは
労働協約が実はあるわけでありますが、この
法案が仮に施行されるに従いまして予想されることは、そうした
設備廃棄を中心とする合理化に便乗いたしまして、さまざまなやっぱり合理化というものが出てくるおそれが多分に実は考えられるわけです。そういう意味におきまして、
労働協約に違反してはならないということを明確にしていただきたいというふうに思っているわけです。
合板の場合、特にさきに
中小企業事業転換対策臨時
措置法というものができておりまして、合板
産業から他の
産業への転換というものがすでに
法律的な対策としても打ち出されておりますが、私
どもの承知している限りにおきましては、合板
産業が他の事業に、この臨時
措置法ができてから転換をしている、あるいはこの
法律が活用されているということを余り聞いておりません。そういう意味におきましても、この
法案について合板業界の事業主の皆さん方、
企業の対応の問題についても私
どもきわめて注目しているところでございますが、一部でございましょうが、この
法案が出るに伴いましてお金を出すのがいやだという声もあることや、あるいは現に工業組合からの脱退というものが起きていることな
ども実は聞いているところでございます。そういう点からいきますと業界の実態を正しく、一面におきましては反映されているといいますか、的確に把握されておられるかどうか、きわめて疑問を実は感ぜざるを得ないのでございます。
最後にもう
一つお願いしておきたいことは、合板業界の実態というものは御承知かと思いますが、銀行だとか商社の系列の支配下に置かれているのが現状でございまして、原木輸入で九〇%、製品流通で六五%は実は商社の支配のもとに置かれているわけでございます。そこで問題になります点は、
設備廃棄の資金の問題でございますが、そういう実態の中で商社や銀行が担保権者でございますから、そういう実態の中で
労働債権の
確保というものが一体保障されるかどうかということについても実は大変心配をしているところでございます。
以上をもちまして
意見の表明にかえさせていただきます。